哀訴
(あいそ)哀訴とは、大審院の裁判言渡に對し、檢事長其他訴訟關係人より、其院に對して爲す訴の一種にして、□一法定の手續に違背して判決をなしたるとき、□二訴訟關係人より申立たる條件に付き判決をなさヾるとき、□三同一の裁判言渡に付き二箇の條件齟齬したるときの三場合に於て、此訴を爲し得可し、而して哀訴を爲さんとする者は、裁判言渡ありたるときより三日以内に、書記局に其の申立をなす可きものとせり、又哀訴は、普通上告の手續に從ひて判决をなす可く、且つ哀訴の申立ありたるときは、其判決ある迄、前判决の執行を停止する效あるものとす、之を要するに、哀訴は大審院判決に對する復審制度なりと謂ふ可し。(舊治罪法四三六條乃至四三八條)舊治罪法は、原則として一箇の上訴方法を認むるに過ぎざりしかば、現時の如く大審院は三審に非ず、故に哀訴なる制度を設けて、反覆之を審理する必要ありしも、現行法に於けるが如き、反覆三度にも及べる大審院判决に對しては、最早錯誤なしと見るを得可く、猶再審、非常上告等を認むるを以て、哀訴なる制度を存する必要なきものとして、廢止せられし也。(刑訴法附則三條)
- 英
- Entreaty
- 独
- Bitte
- 仏
- Instance
相手方
(あいてかた)或る法律行爲につき、其の當事者の一方に對し、他方の當事者を其相手方と謂ふ、再言すれば、相手方なる語は關係的のものにして、法律行爲の對抗を受くる或る一方の當事者を、他の一方の當事者に對して、相手方と謂ふなり、例へば甲乙間の或る契約に就きて、甲者は乙者に對して其の相手方にして、又乙者は甲者に對して其相手方なり、されば何れの場合に於ても、漠然相手方と云ふ可きものにあらずして、苟も相手方と云はんには、常に之に對する他の當事者在りて存するものとす、訴訟の關係に於て之を見るも、兩々相對する當事者ありて、一方は攻擊的に之に向ひ、一方は防禦的に之に對す、此の一方は他の一方に對して相手方たり、他の一方は、又此の一方の當事者に對しては相手方なりと知る可し、彼の單獨行爲に於ても亦然り、單獨行爲は、元來其の對抗を受くる相手方に對しては、何等の義務を負はするものに非らずと雖も、相手方なしに偶然と、何者にも向はずして意思を發表するも、法律上單獨行爲と云ふ可らず、故に單獨行爲者を基準として、相手方は誰なりやと言はヾ、其の對抗を受くる總ての者たること知る可きのみ。(民一九條、六五七條、民訴三五條等)
- 英
- Party
- 独
- Gegner
- 仏
- Partie
押收
(あうしう)押收とは、物件の差押及沒收を云ふ、所謂差押とは、訴訟に於て或る物件を保全し、若くは沒收の處分を爲さんが爲に、裁判所の命令に依て、他人の所持内より強制的に、證據材料及び沒收物件を取り上ぐるを云ふ、茲に取り上ぐると言ふも、單に差押のみにては、其所有權を剝奪するにあらずして、物件を所持者の占有より取り放ち、之を裁判所の占有に移すことを指すなり、次に沒收とは、法律に於て禁制したる物件及犯罪の用に供したる物件、犯罪に因りて得たる物件等の所有權を、消滅せしむる處分にして、凡そ沒收の處分をなすには、常に差押を前提要件とす、此の如き沒收物件を差押へて、現實に沒收するを押收と稱す。(刑一九條二〇條、刑訴一〇六條、關税法七四條七五條八三條等比較參照)
- 英
- Confiscation
- 独
- Wegnahme
- 仏
- Confiscation
押丁
(あうてい)押丁とは、行刑の補助機關にして、典獄は拘禁男子五百人に付き、十名を置くことを得るものなり、イ押丁人員の增減は、拘禁男子二百人の差を生したるときに於て、一名を增し又は減ずるものなり、ロ押丁の職務は、看守長看守を補助して、拘禁者の取締をなす可きものにて、場合に依りては、犯人の護送及出廷の場合に、巡査廷丁の補助として看護するものなり、ハ押丁の俸給は、月額五圓以上拾圓五拾錢以下とし、通辯其他特別の技能を有するものには、俸給二拾五圓迄を給することを得可し、尚押丁は、被服、手帖、捕繩、呼子笛等を現品を以て給與せらるるもの也、二押丁にして左の各項に該當するときは、功勞の適度に應じ、金拾五圓以下を賞與せらる可きものとす、A反獄を鎭制したるとき、B自己の監守に在らざる在監人にして、逃亡する者を捕獲したるとき、C監獄内の水火風震及ひ流行病に付き、所置宜しきを得たるとき、D自己の危難を顧みず在監人の生命を救援したるとき等是なり。(一四年大政官八六號達、二七年内務省訓令一號、三四年司法省訓令五號、三一年内務省訓令三五號、二二年同一號、二二年同二九號、看守及監獄傭人の分掌例六二條乃至七七條參照)
惡意
(あくい)法律上惡意なる語は、普通、善意なる語と對稱して用ひられ、相對的の語義を有す、即ち當該法律關係の成立を妨げ、又は之を成立せしむ可き事情内容を知りて、猶之を遂行する其の心意狀態を謂ふなり、例へば、甲、乙に其の地所を賣渡したる後、丙者甲乙間の賣買を熟知し、其の地所を甲より買受けたりと假定せよ、此の場合に、丙者の心意を稱して惡意と云ふ、素より詐害の意思を以て、丙者敢て是れを爲したりとせば、惡意にして、且つ不法なるは言を要せざるも、斯る不法の意思なき場合にも、猶法律は其知情の故を以て、之を惡意と稱す、通俗の意義に於ては、惡意なる語を害意なる意味に解するを常とす、然れども法律上惡意は、前述の如く他人を害するの意思あるを必要とせず、故に例へば狂者が戎器を弄するを危險也とし、之を保護するの意にて取り上げて占有したりとするに、此の場合に、其の占有の權原が、引渡其他の適法の法律行爲に出でたるにあらざるが故に、其の情を知れる此の如きは、惡意の占有者たるを免れざるなり、之を要するに、善意、惡意の區別は、單に或る事實を知りたるや否やの類別に過ぎずして、之を知らざるときは、法律上呼んで善意と謂ひ、之を知りたるときは、惡意とは謂ふなり。(民一九〇、一八九、七〇四條、善意の部參照)
- 英
- Malice
- 独
- Bosheit
- 仏
- Malice
預
(あづかり)寄託契約に於て、受寄者の行爲を汎く稱して預かると謂ふ、所謂寄託とは、當事者の一方が相手方の爲めに、保管を爲すことを約し、或る物を受取るに因りて成立する契約にして、之が保管を約する者を稱して受寄者と云ひ、受寄者の爲す可き義務を、通俗「預る」と謂ふ、彼の預金契約の如きは、一種の「預」の適例にして、寄託契約の一種なり、尤も預金契約は、寄託契約の一種なる不規則寄託に屬するものの如く―此の點に就ては異論あり、不規則寄託參照尚急迫の場合に、物を他人の家宅内に投入するときは、其處に「預」の關係を生するが如き、宿泊者が、旅店に物を携帶せし場合にも亦同じく「預け」の關係生ずるものなり、以上の類例は、法律上當然預の關係生ずと見做さるるものにして、法律は當事者の意見を推測して、急迫の塲合に、他人の庭宅内に物を投入するが如き、宿泊者が旅店に物を携帶せし場合の如きは、通常は之を預くるの意思ありと見て、是を寄託の一種とせしなり。(民三篇二章一一節寄託參照)
- 英
- Receive in trust
- 独
- Verbürgung
- 仏
- Garantir
預證券
(あづかりしようけん)受寄者が、保管の證として寄託者に交附する證券を云ふ、學者が物權的證券と稱する如く、本證券の賣買質入は、物品其物の賣買質入と等しく、之に依りて物の移轉を容易にし、以て金融を補助し、銀行制度と相俟つて、有力なる信用機關となる、商業上貴重なる流通證券の一種なり、通常本券は、裏書に依りて讓渡さる、所謂裏書とは、其の目的を證券の裏面に記載し、署名するに依て成立し、交付を俟つて賣買質入を完成せしむる法律行爲なり、我商法に從へば、受寄者(主として倉庫營業者)が、保管の證として發行する證券に二あり、一は前説明の預證券にして、一は質入證券なり、之を二券主義と云ふ、之に反して一券主義は、英獨二國の採用する所にして、一の證券にて、以上の二目的を兼ねたる證書のみを交付するに過ぎざる主義を云ふ、我法は、前記の如く、二券主義なる佛法制度を採用するが故に、預證券は單に寄託物の所有權を表示し、物の最後の處分をなすに供用せらるるのみにして、物に質權を設定するときの如きは、別に質入證券に依らざる可らず。
預り證券に記載す可き事項を、我商法は左の七件と定めたり。
□一受寄物の▲類、品質、數量及び其荷造の種類、個數並に記號
□二寄託者の氏名、又は商號
□三保管の場所
□四保管料
□五保管の期間を定めたるときは其の期間
□六受寄物を保險に付したるときは、保險金額、保險期間及ひ保險者の氏名又は商號
□七證券の作成地、其作成の年月日及證券の番號
終りに保税倉庫の發行する預り證券に就きて一言せん、元來此の保税倉庫に藏置する貨物は、輸入手續未濟のものとして、出庫まては、輸入税を納むることを猶豫せらるる特權を亨くるもの也、而して保税倉庫に藏置する貨物に對しては、記名式の預り證券を發行して、之を預主に交付し、其の裏書讓渡は、貨物の賣買と同一の效力を有すること等は、普通の預り證券と異なる所なきも、納税猶豫の特權と、其の形式に於て、多少の異なる所あるに注意するを要す。(保税倉庫法二章、商三五九條參照)
- 英
- Warehonse receipt
- 独
- Waren-lager Quittung
- 仏
- Recue de magasin
預手形
押送
(あふそう)囚人若くは刑事被告人を移送することを押送と云ふ、囚人を押送す可き場合大略四あり、□一刑罰執行の便宜に由り、囚人を一監獄より他監獄に移す可き場合、□二裁判所の命令に依り、囚人を拘置囚監に移す可き場合、□三獄外の病院に於て、治療を要す可き不健康の狀態に在る場合、□四水火風震等非常の變災に際し、監獄内に於て避災の手段なしと考定するときは、其の狀况により是を他監獄に押送する場合是なり、刑事被告人を押送する場合も之に凖ず、囚人及び刑事被告人を裁判所、又は他監に押送せんとするには、男と女とは之を別ち、時宜に依りては、戒具を用ふるを得るなり、例へば逃走の恐ある場合の如し。(三〇年勅令四一五號囚人及刑事被告人押送規則、監獄則九條、一六條等參照)
- 英
- Escort
- 独
- Bedeckung
- 仏
- Es-corte
押送官衙
(あふそうくわんが)囚人及刑事被告人の押送者が、隷屬する官衙を押送官衙と云ふ、現行法に從へば、監獄、〔□一集治監、□二假留監、□三地方監獄、□四拘置監、□五留置場、□六懲治場〕警察署、憲兵屯所の三にして、是等の官衙は夫れ〳〵内務大臣、警視總監、北海道長官、府縣知事、司法大臣、裁判所、陸軍大臣等の監督に服す。(明治三二年勅令四〇五號軍衙間囚人及被事被告人押送規則一四條參照)
- 英
- Escorts office
- 独
- Bedeckungs-amt
- 仏
- Office d'escorte
押送者
(あふそうしや)囚人及び刑事被告人押送の任に當る國家機關を總稱して、押送者と謂ふ、必ずしも押送しつつある者たるを要せず、押送の全責任を有する官公吏を指稱するものにして、主として、檢事、典獄、警視、警部、憲兵下士、看守長、看守、巡査、憲兵上等兵之を執行す。(囚人及刑事被告人押送規則五條參照)
- 英
- Escort
- 独
- Bedeckung
- 仏
- Escorte
押送狀
(あふそうじやう)軍衙間の押送に當り、發送軍衙が被押送者の本籍、住所、所屬部隊、身分、氏名、年齡、刑名、刑期又は被告事件人相並に着用被服、所持品、送致貨幣、物品、書類の目錄等を記して、押送者に交付する書面を押送狀と謂ふ、元來軍衙間に於て、囚人及刑事被告人を押送せんとするときは、押送狀及被押送者に關する必要なる書類を添へ、被押送者と共に押送者に交付す可きものにして、押送者は、押送經路、宿泊、被押送者の傷痍、疾病、暴行其他押送中に生したる、重要なる事項を之に記入す可きものとす。(三二年勅令四〇五號二條參照)
- 英
- Written Escort
- 独
- Bedeck-ungsschrift
- 仏
- Escorte écrite
押送費用
(あふそうひよう)押送に要する旅費、宿泊料等の費用を押送費用と謂ふ、押送者の旅費竝に囚人の押送費用は、押送をなす各官衙の區別に從ひ、其の經費を以て之を支辨す可きものとす、但し他廳府縣より囚人の送還を求めたる場合に於ては、其の押送費用に限り、送還を求めたる官衙の經費より支辨せらる可きものなり。(刑事被告人及ひ囚人押送規則五條參照)
- 英
- Escort expence
- 独
- Bedeck-ungskosten
- 仏
- Frais d'escorte
押捺
(あふなつ)押捺とは、印顆の壓迫作用により、印影を他物の表面に現すことを謂ふ、所謂印顆とは、一面若くは他面に、一定の形狀を刻める物體にして、之を他の物體に壓するときは、常に一定の影蹟(印影)を永久的に現出せしめ、以て或る事實を證明するの用に供せらるる物の謂ひにして、その是を捺す方法に至りては、濕用のもの(印肉に依るもの)と、乾用のもの(燒判の如き類)とあり、而して印顆を、他物體に、一定の影蹟を顯はす爲めに、以上の如き乾濕の二方法に從て壓するを押捺と云ふ、故に印顆を用ひずして、單に印影のみを摸寫するが如きは押捺と云ふ可らず、俗解すれば押捺とは、ハンコを押すと云ふことにて、之を押すには赤、黑、青等の印肉に依るを普通とするも、燒きて押す所謂燒判も、是を押すに於ては同じしく、法律上押捺と謂ふなり、我が邦に於て署名と言へば、常に記名、捺印(印顆押捺)の方法に從ふ慣習なれば、法律も是れを認めて、記名の後に(記名は自署なるを要せず)自己の印顆を押捺すことを要すとせり、押捺の意義以て知る可し。(三三年法一七號參照)
案
(あん)是を主觀的に解すれば考案を指し、客觀的觀察に從へば稿本の義なり、再言すれば未確定の考案及び之を記したる稿本を謂ふなり、普通は之を客觀的意義に解釋し、法律命令等の下書、例へば刑法改正案、刑事訴訟法改正案、破産法草案等を擧ぐ、彼の議會に於て、審議せられんとする提出案など言ふも、同一意義なりとす、之を要するに案は、左の觀念を含む、イ案は未確定のもの也、例へば法律と云へば、最早制定發布せられたる確定のものなるも、法律案は確定に至らざる考乃至下書なり、ロ案とは考乃至下書也、所謂考とは、案を主觀的に觀察したるものにして、一個の計画が組織せられたる思想として現はれたるときは、是考案なり、次に下書とは、考案を記したる稿本を指すものにして、案を客觀界の對象として觀察すれば、一の下書と云ふの外なし、例へば工事設計圖案と云へば、既に考案を外界に發表して、圖画として現はされたるものを指すが如し。(法制局官制一條二號參照)
- 英
- Bill
- 独
- Billet
- 仏
- Note
行在所
(あんざいしよ)天皇が一時滯在せらるる所にして、滯在中其の處を奉稱して行在所と謂ふ、されば行在所は、一時的のものにして、天皇が現在せらるる事實ある場所に限り用ひらるるものなり、然れども茲に一時的のものと言ふ、素より比較上の言語にして、單に用事の爲めに、天皇が數分間立寄り給ひたる所の如きは行在所にあらず、唯歸來せらる可き意思を以て、某所に假寓し給ふ其所を行在所と奉稱す、故に永久的なる皇居又は離宮が、行在所にあらざるは明かなりとす。(舊刑一七三條)
- 英
- Imperial stopping
- 独
- Ort, wo der Kaiser auf einer Reise ansruht
- 仏
- Résidence impériale temporaire
暗示
(あんし)表面明かに其意識の意味する理由を與へざれども、其言語、容貌、擧動等の外部の作用によりて、意識の意味を他に自發的に了解せしめ、或は其心裡に影響を與ふるを謂ふ、古歌に「忍ぶれど色に出にけり我戀は、物や思ふと人の問ふまで」とあるは、是一の暗示也、他人の談話を傾聽して點頭し、其人に賛成の意あるを自ら悟了せしむるも亦一の暗示なり、近來催眠術の硏究旺なるにつれ、暗示を最も能く行ひ得るは、催眠の狀態中なること、幾多の心理學者によりて説明せらる、卽ち被催眠者は、催眠術者の暗示に隨ひ、其感覺、觀念、動作の各方面の暗示に從ひて、或は見、或は聞き、或は記憶し或は信仰するが如きは、全然暗示的狀態なりと謂ふ可し。
- 英
- Suggestion
- 独
- Eingebung
- 仏
- Suggestion
闇室
(あんしつ)獄則違反の囚人に科する一種の懲罰なり、此罰を科せらる可きものは、獄則違犯の情狀稍重き者にして、五晝夜以内の範圍に於て、之を闇室に屏居せしめ、一日の食糧を二合乃至三合に減じ、鹽湯二品の外食副物を與へず、仍ほ臥床の使用を禁ぜらるるものとす、されば此闇室の科罰を受くるものは、先づ醫師の診察の結果、身體に妨げなきを證せし後、是を執行し、其の處罰中と雖も每日之を檢察せしめ、身體に故障生ずるときは、處罰は中止せらる可きもの也、元來懲罰の目的は、遷善感化とあるが故に、其の執行も必要の限度に止めざるべからず、これ闇室なる科罰あるも、猶且つ醫師をして、其健康を顧診せしむる所以なりとす。(監獄法六〇條重屏禁の部參照)
- 英
- Dark cell
- 独
- düsteres Zimmer
- 仏
- Cellule obscure
暗默の意思表示
(あんもくのいしへうし)暗默の意思表示と、明示の意思表示との區別は、意思表示の明瞭を缺く程度の區別にして、實は相對的のものなりとす、最も之に就きては四説あり、□一一般生活上に於て、慣用せらるる方法(假令ば言語、文字の如き)又は特に定められたる方法(電信略符、手旗信號の如き)に依りて、爲さるるは明示の意思表示にして、其他の方法に依りて爲されたるものに、暗默の意思表示なりと、然れども人類が、生活上意思を表示せんには、如上の慣用及び特定の二方法に依るに非らずんば、行ふ能はざるが故に、之を以て暗默と明示との意思表示の區別となすは穩當ならず、□二積極的行動に依らざる意思表示を、暗默の意思表示と謂ひ、然らざるものを、明示の意思表示と云ふ、然れども債權者が、債務關係の存在をを知りながら、債權證を返還し、債權免除の暗默の意思を表示するが如き積極的行動に依るも、猶これを爲し得るにあらずや、故に此説明も適切ならずと謂ふべし、□三耳目を以て直に其の意義を知ることを得ずして、解釋に依り始めて其の意を了解するを得可きが如き意思の表示は、暗默の意思表示にして、然らざるものを明示の意思表示となすと、然れども總て意思表示なるものは、解釋の難易こそあれ、何れも之を解するにあらざれば、其意義を了知すること能はざるものなるが故に、本説も亦常を得たるものと云ふ可らず、□四前説の如く、總じて意思表示は、積極、又は消極的の行動に依りて表示するものなるも、其れが直接に表示せられたるときは、之を明示の意思表示と云ひ、或る一の意思の表示を目的として、發表せられたる行爲により、推論の結果、間接に或る他の意思を知り得可きときは、この意思表示は、暗默に發表せられたるものなりと言ふ可し、例へば辨濟期に達したる債權の次年度の利息を受領したる者は、其の受領と同時に、暗默に元金の返還を猶豫したりと云ふ可きなりと、盖し本説は最も穩當なる解釋なるべし。
- 英
- Tacit declaration of will
- 独
- Stillschweigende Willenserklärung
- 仏
- Déclaration tacite de volontè
案内支拂命令
(あんないしはらいめいれい)國庫が支拂を爲すには、現金を支拂はずして、現金は必らず金庫に於てせざる可らず、此の場合に於て、支拂命令官が、其受取人に交付するものを仕拂命令(金庫を支拂人として振出されたる手形の如きもの)と云ふ、支拂命令官は、斯る仕拂命令を交付すると同時に、金庫に向て該金額を支拂はる可しとの通知狀を發す、案内仕拂命令とは、此の通知書を謂ふなり、金庫は、仕拂命令官より送付せられたる案内仕拂命令に依凖して、仕拂命令と引換へに、其の仕拂命令持參人に、現金を交付するものなり、尤も仕拂命令と、案内仕拂命令とが符合せざるときは、其の仕拂を拒む可きは勿論にして、種々の間違生せざらしめんが爲めに、案内仕拂命令なるものの必要を見るなり。(會計規則三六條)
爭
(あらそひ)單は爭と言へば、訴訟の意にあらず、又爭鬪の意にもあらずして、當事者間の意思衝突の狀態を指すに止まる、然しながら法學上の用語として、係爭物など言ひて、民事訴訟の目的物(訴訟物)となるには、多くの場合に於て「爭ひ」の存することを認むるが如き用例なきにあらず、此の場合に於ける爭は、一面に於ては少なくとも訴訟上に於ける、意思衝突の狀態を指すものたるや明かなり、或は民事上の行動に於て權利ありと主張し、一方は之を然らずと否認せる場合の如き、民事上に於ける意思衝突の狀態を爭と云ふことあり、民事訴訟法五條三號に「賃貸借又は永貸借の契約の有無、又は其の時期が訴訟物なるときは、▲ある時期に云々」とあるは其用例なり。(民訴五七條二項、一一一條二項等參照)
- 英
- Dispute
- 独
- Streit
- 仏
- Dispute
意
(い)意識作用は、通常、智情意の三作用に區別せらる、然るに近時の心理學者中には、之を智と情意との二作用に分ち、意は情の分化發達せるものなりとする者多し、意に就きては、古來、宗教家、哲學者等の硏究甚だ旺に、實に彼等の重要問題たるにも拘らず、今猶滿足なる解釋を見る能はず、是れ意識現象卽ち心的活動の、極めて微妙なる作用なるが爲めにして、特に意思の中心發動的なる、容易に吾人の硏究を許さざるを以てなり、次に斯の如く分類するも、心的活動にかかる區別の實際存するにあらず、學者便宜の爲めにせるものなり、唯其間自ら異なる趣を有し、一般に意志は智の向内的受容的なるに反し、向外的發動的なるにあり、爰に注意すべきは、かくの如く兩者の性質は異なると雖も、其の作用に於て、兩者は常に相伴ひ、決して分離することなきこと是なり、完全なる人格にありては、智情意等しく發達し、其間に矛盾なきを特色とす、而して意思は人間の活動にありて、大なる動力をなすものなるを以て、これが發達は、人的活動の發達に大なる關係を有す、以上は一般に意思に關する説明なるが、要するに意思の作用は、或る事抦を思念し、これに對して注意を拂ひ、斷判を與へ、而して行爲に現はさしむる作用をなす一種の努力なり、而かも初め斯の如く努力的なる有意識的活動も、常住反復することによりて、終に能く努力を要することなく、全く無意識的に行動するに至り、本能の如き特殊の活動をも釀成するに至るものなり。(刑三八條一項及び三項等參照)
- 英
- Will
- 独
- Wille
- 仏
- Volonté
委員
(いいん)國家、若しくは公共團體より、或る一定職務の囑托を受け、其權限の範圍内に於て、公共事務を所理するものを云ふ、例へば議會に於ける請願委員、豫算委員等の如く、其他種々ありと雖も、一般的に其性質を揭ぐれば、□一委員の職務は、一定したるものなること、□二其職務は、公共の事務なること、□三委員の職務は、名譽職たること是なり、官吏の如く國家の官廳に對して特別服從義務を有し、無定量に國家事務を掌理すべき性質を有するものとは、明らかに區別することを要す。(議員法六三條、刑七條參照)
委員會
委員會とは、通常委員を以て組織する公共機關を指し、所謂所得税調査委員會、小學校圖書審査委員會と云ふが如きは、其の用例なり、或る特種の場合に於ては、委員の會議其の者を客觀視して、委員會と名付くることあり、例ば議院法二十四條に「委員會の經過及結果云々」とあるが如きは、此の意味に於て使用せられたるものにして、普通、貴族院全院委員會とか、衆議院常任委員會と云ふが如きは、此の用例に屬す。(議院法二二條乃至二四條)
有意退社
(いういたいしや)商事會社、又は民法上の社團法人の社員が、任意に退社することを云ふ、任意とは、自己の意思に基くことを意味するものなりと雖も、其定欵又は法律の定むる所の規定を、履踐するに非れば退社すること能はざるもの也、今其重なる場合を説明せんに、□一合名會社々員の任意の退社、定欵に於て存立時期の定めある場合は、其會社の存立時期中は退社することを得ず、何となれば、この場合に於て、總社員の同意を以て、存立時期を定欵に定めたるものなれば、これを承諾したる各社員は、其期間内社員たる地位を、繼續することを豫期したるものと云ふべく、從つて其期間内任意に退社することを得ざるは當然なり、然れども法律は、已むことを得ざる事由ある時は例外として、各社員は、何時にても退社を爲すことを得るものと定めたり、果して已むことを得ざる事由あるや否やは、裁判所の認むる所に從はざるべからず、又定欵を以て或社員の終身間、會社の存續すべきことを定めたるときに、法律は會社事務の紊亂を來さざる限度に於て、自由に退社することを許容したり、卽ち六ケ月以上の豫告を爲すこと、及び營業年度の終りに於てすることの二制限の下に、退社を爲すことを得るものとせり、但し已むを得ざる事由あるときは、此二個の條件を具備せずと雖も、退社することを得、之に反して、存立期間の定めなき時は、各社員は六ケ月以上の豫告を爲し、營業年度の終りに於て退社することを得可し、但し已むを得ざる事由ある時は前項に同じ、□二合資會社の無限責任社員及び有限責任社員は、前説明の合名會社と同樣の場合には、退社する事を得べし、又有限責任社員は、無限責任社員全員の承諾を得て、其持分の全部を、他人に讓渡すことを得るものなれば、此條件の下に於て、何時にても退社することを得るものとす、□三株式會社の社員卽ち株主は、其有する株式を他人に讓渡す等、株主たる資格を喪失せしめれたるときは、同時に退社の結果を來たすものなり、□四株式合資會社の無限責任社員は、合名會社員の退社の場合に同じく、又株主は株式會社の株主の場合と同じ、□五民法上の社團法人の社員の退社は、總べて其定欵の定むる所に依らざるべからず、因に有意退社は、普通之を任意退社と稱す。(商六八、一〇五、一一二、一四九、二三六、民三條)
- 英
- Voluntary retirement from association
- 独
- Freiwilliger Austritt
- 仏
- Retraite volontaire de l'association
有意的
(いういてき)有意的とは、行爲が、意識的に吾人の意思に依りて營まるるをいふ、即ち其の行爲が、單に外界の刺戟に反動し、無意識的に、或は又生理的に發現し來るにあらずして、其原因が、明に意思によりて認められ、其進行が意思によりて、有意識的に營まるるを謂ふなり、而して之が反對語としては、反意的、無意的、不故意的等の言辭を用ふ。(刑三八條、三九條)
- 英
- Voluntary
- 独
- willent-lich
- 仏
- Volontaire
故意的
(こいてき)- 英
- Voluntary
- 独
- willent-lich
- 仏
- Volontaire
有意犯
(いういはん)有意犯は、彼の無意犯に對する名稱にして、故意に罪を犯すを云ふ、故意とは、罪となるべき事實を認識し、其結果の發生を豫期して、其動作の决意を爲すことを稱す、故意は犯罪の成立に欠くべからざる要素にして、此故意なきときは過失犯として、法律の明文を以て罰せらるるの外は、犯罪は成立せざるを通則とす、元來有意犯、無意犯の區別は、過失犯を無意の犯罪とせし謬觀に基くものにして、法學上正當なる用語にあらず、唯茲には用語の慣例に從ひて、有意犯とは故意に犯せる罪なりと定義せるのみ、法理の實際に於ては、過失ある行爲も一種の行爲として、有意的行動云爲なり、單に結果の必成を豫見す可きに拘らず、又之を豫見し得可きにも拘らず、之を豫期せざるが故に、過失存するに過ぎず、何ぞ無意的行動と言ふ可けんや、故に過失犯も一種の有意犯と言はざる可らず、唯故意犯を有意犯と爲すが故に、過失犯を有意犯に非らずと云ふなり、混同せざるを要す。(無意犯の部參照)
- 英
- Voluntary crime
- 独
- Freiwil-liges Verbrechen
- 仏
- Crime volontaire
有益費
(いうえきひ)物の價格を增加し、又は物の改良の爲めに費されたる費用を有益費と稱す、例へば荒蕪地を開拓して、畑地、又は田地となしたる場合の費用の如し、然れども土地の開墾、事物の改良、若しくは建設に費用を投じたるに、其價格を增加せざる時は、其費用は所謂冗費にして、有益費にあらざるなり、而して有益費は、必要費と其性質を異にし、必ずしも支出することを要するものに非ず、盖し物の價格の增加及改良を欲せざるものは、是を投ずるの必要存せざればなり、必要費は之に反して、必ず支出せざるべからざるもの、卽ち租税の如きものを云ふ、民法一九六條によれば、物の占有者が改良の爲に費したる金額其他有益費は、其所有者に對して、費用償還の請求を爲すことを得べし、本條の場合に於ては、其增加價格の現在する場合に限るものにして、有益費と雖も時の經過と共に、其增加價格が消滅することなきを期せず、此場合も猶有益費と稱することを得れども、所有者に對して何等の利益なし、從て夫れが償還請求を爲すことを得ざるものとせられたり、要するに有益費とは、物の現狀を維持する費用にあらずして、進んで積極的に物の價格增加の爲めに、費されたるものを指稱す。(民一九六條)
- 英
- Beneficial expence
- 独
- Nütz-liche Auswendung
- 仏
- Dépense utile
誘拐
(いうかい)僞計又は誘惑の手段を以て、人を他に誘ひ去る義にして、人を錯誤に陷らしむる總べての行爲を含むは勿論、智慮淺薄なる幼者を瞞著して、逃亡を承諾せしめたる場合をも包含す、以上の手段は、第三者に對して施したる時も同樣なり、他に誘ふとは、被害者の現在する場所より、他の場所に伴行する行爲を示稱するものにして、其距離の遠近を問ふものに非ず、されど誘拐は全く害を加ふるの意思なく、本人に利益を與ふるの目的を以て、拐取したる場合も罪となるなり、何となれば、刑法上誘拐罪の成立するには、犯人が犯行を爲すに至れる源因卽ち犯罪の遠因如何は、全く無關係なれば也、但し監督者が懲戒の範圍を越ゆる虐待を爲しつつある場合に於て、其害を救ふが爲め一時之を防禦するの目的を以て、他に奪ひ去るが如きは固より罪となるの限りにあらず。(刑二二四條乃至二二九條)
- 英
- Abduction
- 独
- Entführung
- 仏
- Enlèvement
有效
(いうかう)吾人の意思表示が、法律上の效果を發生する可能を稱するものにして、事實上に於て、或る效力を發生するも、法律に於て保護なき以上は、有效と云ふ可らず、而して其効力の發生は、吾人の全然希望したる所と相一致することを要せず、例へば手形を振出したる場合に於て、其手形たる條件を具備せず、手形としては、卽ち行爲者の希望したる效果を生ぜずと雖も、或る場合に於ては、民事上の債權として有効なる場合あるが如し、次に法律上效果と稱するは、意思表示に其基礎を置く場合多しと雖も、時としては他の事變によりて、法律上の效力を發生し得る場合あることも記臆せざるべからず、例へば、憐家の土塀が崩壞して、自己所有の家屋を損ぜしめたるに對して、法律上の效果發生し、損害要償を爲し得る時の如し。
- 英
- Fffect
- 独
- Gültigkeit
- 仏
- Effet
有效期限
有效期限とは、法律上發生したる效果が、或る期間内有効に存續し得る時期を云ふ、有效とは前項に説明したるが如し、期限とは、法律行爲の效力の實行又は消滅の繫るべき、將來の時期にして、其早晩來るべきこと確實なるものを云ふ、彼の法律上の所謂條件と相似たるものなり、されど條件と期限とは同一にあらず、條件は到來すべきや否や不確實なるを要するに反して、期限は到來すること確實なることを要す、次に期限に始期と終期とあり、始期とは其到來によりて、法律行爲の履行を請求するを得べきものを云ひ、終期とは其到來によりて法律行爲の效力の消滅するものを云ふなり、例へば、某月某日に物を引渡すべしと云へる場令の時日は始期なり、何某の死する迄年々若干金を與ふべしと云へる「何某の死亡」は終期なり、すべて期限到來せば、始期を附したる法律行爲は、其の履行を請求することを得べく、終期を附したる法律行爲は、其效力を消滅するなり、而して期限は、債權者の利益の爲めに定むることあり、債務者の利益の爲めに定むることあり、若し何れの利益の爲めに定めたるや不明なる場合は、法律は、債務者の利益の爲めに定めたるものと推定す、期限の利益は、之を抛棄することを得可し、然れども、之が爲めに相方手の利益を害することを得ず、又債務者が破産の宣告を受けたるとき、債務者が擔保を毀損し、又は減少したるとき、擔保を供する義務を負ふ場合に、之を供せざるときの三場合は期限の利害を喪失するものとす。(民一三五、一三六、一三七條)
- 英
- Time of effect
- 独
- gültige Frist
- 仏
- Terme d'effet
有價證券
(いうかしやうけん)普通の意味に於て、有價證券とは、經濟的價格を有ずる證券を指稱するものにして、之を嚴格に解釋すれば、證券の占有と、權利の利用と離るべからざる關係にあるもの、即ち有價證券なり、常に其權利の利用に、證券の占有あることを必要とするものは、所謂證書債務にして、此等の權利は、啻に證券の占有なきの故を以て、權利の利用を爲すことを得ざるのみならず、尚嚴格なる法定の形式を履準して、作成せらる可きものなり、元來有價證券なるものは、以上の如く證書債權の一種にして、裏書又は交付に依りて、權利の流用を爲し得る點に於て、經濟上便宜とせられ、以て法律が之を認め、商業其他萬般の取引に於て、之が通用を保護するに至りたるもの也、有價證券の效用は全く此の點に存す、次に有價證券を或る標準に基きて區別すれば、□一指圖證券とは、記名者又は其指圖人を、證券上の權利者とする證券を云ひ、□二無記名證券とは、單に所持人を權利者とする證券なり、□三指名持參人拂證券とは、一に選擇持參人拂證券、又は跛行的無記名證券と云ひ、記名の者を權利者とするも、猶持參人に支拂ひて、其の義務を免るることを得る證券也、次に他の標準に基き、有價證券を區別すれば、A債權的有價證券とは、手形、國債證券等を指し、債權證書にして、有價證券たるものを云ふ、B物權的有價證券とは、船荷證券、倉庫證券、荷物引換證等にして、物權を代表する有價證券を云ふ、C團體證券とは、主として、株券等を指し、尋常の給付を約する證券と異なる有價證劵を言ふ、此種の證劵に就きて今猶定説なし。(商二六三條、民訴四八四條、五八一條參照)
- 英
- Documentary securities
- 独
- Wertpapier
- 仏
- Documents
有價物
(いうかぶつ)物にして經濟上の金錢的交換價格あるものを云ふ、價格には、主觀的價格、交換的價格の二種あり、爰に謂ふ價格とは、客觀的價格を意味するものにして、主觀的價格を有するも、有價物に非らざるものあり、彼の死者の遺髪の如きは、之が遺族より觀れば、千金に換へ難き價格を有すれども、他人よりこれを觀れば、殆んど厘毛の價格を有せざるが如き、此の例なりとす、次に有價物は、物たることを要し、無形の權利の如きは、有價物と云ふ事を得ず、されど我民法上に於て、無記名債券は物と同列に措くものなるが故に、有價物と稱することを得べし、他の證券と同じく、無記名債權も、素より無形の權利なるが故に、有價物と云ふべからざるが如きも、權利其ものは、證券と分離すべからざる意味よりして、之を有價物と見做すものなりとす。(民八六條二項)
經濟學上有價物とは、議論多くして、未だ定説なしと雖、其最も汎く行はるる説は、有價物とは次の三資格を要すとなすもの是なり、□一有用の效力ある物、即ち贅澤品、日用品、軍用品、機械等苟も人類に有用なるものは價格あり、□二數量に限りあるものは價格あり、如何に有用なりと雖、空氣日光等の如く、分量無限にして何人も勞せずして得るものは價格なし、□三法律上私有を許さるるものにあらずんば、是亦有價物にあらず、例へば學者、職工、画工或は川、海等は有用にして又有限なれども、私有賣買を許さヾるが故に價格なし、之を要するに、有價物とは、有用有限にして、私有し得べきものなりと謂ふに在り。
- 英
- Valuables
- 独
- Kostbares
- 仏
- choses de prix
有期刑
(いうきけい)刑法上一定の期間、犯罪人の自由を剝奪する刑を云ふものにて、有期懲役有期禁錮、拘留及び奮刑の有期徒流刑を指すものなり、元來有期刑なる語は、彼の無期刑即ち無期懲役、無期禁錮等に對するものにして、自由刑に於ける自由剝奪の期間の有限なると、無限なるとの差別より生する、一種の法律上の用語なりとす。(刑一〇、一二、一三、一四、一六條)
有期徒刑
(いうきとけい)重罪犯に科する主刑の一種にして、十二年以上十五年以下の期間、島地に派遣して、定役に服する刑なり、徒刑は其の有期、無期を問はず、裁判を爲したる地の司獄より内務省に上申し、其の命令を待ちて、發船の地に護送す可きものにして、徒刑の囚は、島地に於て便宜に從ひ、獄外の役に服せしむることを得るものなり。(舊刑一七條、刑法施行法二條)
- 英
- Penal servitude for a time
- 独
- zeitliche Zuchthausstrafe
- 仏
- Ser-vitude pénale temporaire
有給
(いうきう)給料を受くることを意味す、給料と云ふは、或る期間内或る勞働に服したるものに對する定期の報酬を指す、而して永續の意思を以て、勞務に服することを要し、一時一定の仕事に對する報酬の如きは、給料と云ふことを得ず、然れども無限に繼續するの意思あるを要せず、少くとも不定の期間繼續することを意味す、例へば官吏の給料、雇人の給料の如し、其の公法上の報酬たると、私法上の報酬たるとは問ふ所にあらざるなり。有給吏員とは、廣義に於ては、總べて給料を受くる國家の官吏、又は自治團體の公吏を意味すれども、狹義に於ては、自治體の有給公吏のみを指すものとす、而して普通有給吏員と云ふは、後者の狹義に用ふるを例とす。(市制五條、五二條、町村制五六條二項)
- 英
- Paid
- 独
- Bezahlt
- 仏
- payé
有給吏員
- 英
- Paid officials
- 独
- bezahlte Beamten
- 仏
- Officiers payés
有機體
(いうきたい)有機體とは、其各部分が全體として統一せられたる自然體を謂ふ、詳言すれば、其の各部分が個々獨立することなく、全體として一定の統一を保ち、而して又部分と全體とは、亙に分離すべからざる必然的關係を有し、部分の變化は卽全體の變化となり、若しまた全體に變化起らば、そは軈て部分全體の變化となる如く、部分を離れて全體なく、又全體を離れて部分なしと云ふが如き、自然體を稱す、特に自然體といふ所以は、斯くの如き必然的又相制的全體は、到底人爲を以て製出すべからず、獨り自然の作爲に存するを以て也。
然るに、彼の社會又は國家といふ如きものも、其の構成分子(例へば、社會ならば其の各員、國家ならば其の國民の如き)と、全體とは、或は密接なる關係によりて統一せられ、或は因果的の關係を以て總括せらるるが如き、甚だ有機體と類似し居るより、時に有機的なる語を適用せらるることあり、有機的とは、上述の如き意義を有する有機體を形容詞としたる語なり。
- 英
- Organism
- 独
- Organismus
- 仏
- Organisme
有刑流刑
(いうきりうけい)重罪たる主刑の一種にして、十二年以上十五年以下の期間、島地の獄に幽閉し、定役なき刑なり(奮刑七條)
有形的文書僞造
(いうけいてきぶんしよぎざう)文書僞造に、有形的文書僞造と、無形的文書僞造との二種ありとするは、古來の通説也、然れども現今刑法上に於ては、單に文書僞造と稱して、此兩者を包含せしむるを例とす、文書僞造とは、文書に依りて文書が證明せんとする證據力の眞實を僞はり、依つて害を生ぜしむるの所爲なり、次に有形的文書僞造とは、其文書の作成名義に僞りあるを云ふ、例へば甲者が、乙者の名義を以て、文書を僞り作成するが如し、而して文書とは、言語又は言語に代るべき符號(電信符號の如し)を以て、或る物品の上に附著せしめたる、吾人が思想の説明なり、故に下足札、名刺の如きは、思想の説明にあらざるを以て、共に刑法上の文書に非ず、又單純なる繪画による思想の説明の如きも、文書と云ふを得ず、要する文書とは、後日何等かの證據となし得る爲めに、作成するものならざるべからず。(刑一五四條以下一六二條以下、文書僞造罪の部參照)
- 英
- Material forgery of pri-vate writing
- 独
- Materiellfälschung der Urkunde
- 仏
- Falsification materielle des documents privés
有形人
(いうけいにん)法律上に於ける、人の意義に二種あり、卽ち無形の法人、例へば商事會社の如きと、自然人、即ち吾人人類是れなり、而して有形人と云へば、生存する人類を指示するものにして、出生に始まり、死亡するに至る迄を有形人と云ふ、出生の時期は、母體と分離して獨立なる自己の機能による呼吸を始めたる時を云ひ、死亡は呼吸を閉息して、機能の活動を閉息したる時を云ふ。(人及び出生、死亡の部參照)
- 英
- Natural person
- 独
- Naturper-son (physische Person)
- 仏
- Personne naturelle
有限
(いうげん)空間上、時間上、又は思惟上、事物又は思想が、其延長連續、又は追求に於て、其の境界制限又は終點あること、吾人の判斷上其の極限の認めらるるを謂ふ、無限と對して用ひらるる言辭なり。
- 英
- Finite
- 独
- beschränkt
- 仏
- Fini
有限責任
(いうげんせきにん)凡そ他人に對して債務を負擔するものは、無限の責任を負ふを以て元則とす、換言せば、債務者の全財産は、其債務の包括的擔保として、債務の目的たるもの也、故に債務者にして、其財産を增殖すれば、債權者の擔保は從つて增加し、爲に其辨濟を受くるに易く、之に反して、債務者が其財産を減少すれば、債權者の擔保は從つて減少したるものにして、其辨濟を受くるに難し、斯の如く債務者は、自己の全財産を擔保として、債務履行の責に任ずべきを原則とするなり、然るに社會の必要は、債務者を保護する爲に、此元則に對する例外を認む、之を法律上有限責任となす、所謂有限責任の形式に三種あり。□一責任額に制限ある場合、□二責任財産に制限ある場合、□三一及び二の場合を合したる場合にして、債務者は、或一定の最高限の額まで、特定財産のみに就き、責任を有する場合也とす、我現行法上に於て、明かに規定したるものは、□一船舶所有者は、船長が其法定の權限内に於て爲したる行爲、又は船長其他の船員が、其職務を行ふに當り他人に加へたる損害に就ては、航海の終に於て、船舶運送賃及び船舶所有者が、其船舶につき有する損害賠償、又は報酬の請求權を債權者に委付して、其責を免るることを得、卽此場合は、或る一定の財産を限度として、責任を有する例なり、□二合資會社の社員にして有限責任を有すものは、一定の支出したる資金を限度とし、會社の償權者に對して責に任ずる場合を云ひ、□三株式會社の株主は、株金を限度として、責任を負ふ等の場合を指すものにして、要するに有限責任なる語は、或る一定の財産を限度として、責務の辨濟に任ずるの程度を云ひ現はすの語なり。(商五四四條一〇八條一一六條等)
- 英
- Limited liability
- 独
- be-schränkte Haftung
- 仏
- Responsabilité limités
有限責任組合
有限責任組合とは、或る一定の出資額を限度として、責任を帶ぶ者より組織されたる組合を云ふ、例へば無限責任組合及び保證責任組合に對する産業組合の一種たる、有限責任組合の如し。(無限責任組合の部參照)
- 英
- Limited liability associa-tion
- 独
- Gesellschaft mit der beschränk-ten Haftung
- 仏
- Corporation de res-ponsabilité limitée
有限責任社員
(いうげんせきにんしやいん)合資會社の社員にして、自己が諾約したる出資額を限度として一定の責任を負ひ、其他には何等の義務を有せざる社員を云ふ、合資會社の有限責任社員は、會社の業務を執行し、又は會社を代表することを得ず、而して同條に關する規定は、公益規定なる故に、定欵を以て左右することを得ず、されど會社と雇傭契約を爲し、其支配人となるは別段なり、然し法律は他面に於て、有限責任社員に與ふるに、會社の財産目錄及び貸借對照表の閲覧を求め、且つ會社の業務及び財産の狀况を檢査することを得る權利を與へたり、有限責任社員が此權利を行ふには、營業年度の終りに於てする事、營業時間内に於てする事を要す、更に會社の業務行執に就きて疑ふべきものあるが如き、重要なる事由あるときは、裁判所に請求して、何時にても會社の業務及び財産の狀况を檢査する許可を受くることを得しめ、大に有限責任社員を保護せり、有限責任社員は、自己又は他人の爲に、會社の營業の部類に屬する商行爲を爲し、又は同種の營業を目的とする、他の會社の無限責任社員となることを得、是盖し無限責任社員の如く、會社の利益と衝突することなきを以てなり。(商一五條、一一一條一項及二項、一一三條)
- 英
- Limited Partner,
- 独
- Commanditist. (gesellschafter mit der besch-ränkten Haftung.)
- 仏
- Associé limité
有罪
(いうざい)刑罰法令に列擧したる行爲にして、裁判官によりて刑の言渡しを受けたる狀態を云ふ。(犯罪の部參照)
- 英
- Guilt
- 独
- Verurtheilung
- 仏
- Crime
有罪破産
(いうざいはさん)詐僞破産及び過怠破産の二場合を總稱して、有罪破産と云ふ、詐僞破産とは、破産宣告を受けたる債務者が、支拂停止又は破産宣告の前後を問はず、履行する意なき義務、又は履行する能はざることを知りたる義務を負擔したるとき、又は債權者に損害を蒙らしむる意思を以て、貸方財産の全部、若しくは一部を轉慝し、藏慝し、若くは脱漏し、借方現額を過度に揭げ、又は商業帳簿を敗滅し、若くは僞造變造したる場合を云ふ、過怠破産とは、破産宣告を受けたる債務者が、支拂停止又は破産宣告の前後を問はず、下に揭ぐる行爲を爲したる時を云ふ、□一一身又は一家の過分なる費用、博奕、空取引又は不相應の財利によりて、貸方財産を甚しく減少し、若くは過分の債務を負ひたるとき、□二支拂停止を延ばさんが爲め、損失を生ずる取引を爲して、支拂資料を調べたるとき、□三支拂停止を爲したる後、支拂又は擔保を爲して、或る債權者に利を與へ、財團に損害を加へたるとき、□四商業帳簿を秩序なく記載し、藏慝し、毀滅し又は全く記載せざるとき等にて、此等の行爲ある者は、過怠破産者として、刑を科せらるものとす、以上の場合に於て、何れも民事裁判所に於て、破産の宣告を受けたるものならざるべからず、故に例令以上の所爲あるも、破産の宣告を受けざる以上は、有罪破産として所刑せらるることなしとす、而して法律には有罪破産の行爲を列記せるが故に、假令此列記以外に於て、債權者を害することあるも、本罪を構成するの限にあらず、之に反して苟も以上列記の所爲ある以上は、法律は當然、債權者侵害の行爲ありたるものと見做し、之を所刑す可きものとす、以上を要するに、有罪破産とは、債務者が自己の財産を故意又は過失によりて減少し、若しくは財産の狀况を僞ることによりて、債權者の債權を危險ならしむる所爲なりとす、而して以上列記したる所爲ある以上は、其行爲が無效又は取消さるる行爲なるも、猶本罪を構成す可きものなり、又破産法の規定する所によれは、商事會社の業務擔當の任ある社員、若しくは取締役及精算人も、詐僞破産及び過怠破産の主體となり得べきこと、破産管財人も詐欺破産の主體となり得べきこと、及び破産の宣告を受けざる者が、詐欺破産の共犯者たり得べき場合を規定せり、有罪破産の刑罸は、詐僞破産を爲したるものは輕懲役、過怠破産を爲したるものは、二ケ月以上四年以下の重禁錮に處せらるるものとす。(奮商法一〇五〇條以下、二三年一〇月法一〇一號參照)
- 英
- Penal bankruptcy
- 独
- Straf-barer Bankerott
- 仏
- Faillite pénale
猶子
(いうし)天皇が、皇子にあらざる皇族を以て、皇子に凖ぜられたる場合に、之を皇猶子、又は單に猶子と云ふ。(皇室典範五八條)
- 英
- Adopted son
- 独
- Adoptivsohn
- 仏
- Fils adoptif
有償
(いうしやう)或る行爲につき、反對給付として對價を受くることを意味す、例へば賣買、交換等の場合の如し、必らずしも其對價として受くべきものは、金錢のみを指稱するものに非ずして、苟も經濟上の意味に於ける、金錢的價値を有すれば足れりとす、然し現實に之を受けざるべからざるの意となす可らず、後日之を受くべき方法さへ備りあれば、猶有償と云ふことを妨げざるなり。
- 英
- Consideration
- 独
- Belohnung
- 仏
- Considération
有償行爲
有償行爲とは、財産權に關する法律行爲にして、各當事者が相互に出捐を爲すにより、相手方に利益を供與する法律行爲を云ふ、通常有償行爲に於ては、各當事者は相手方の出捐に因りて、利益を取得すると同時に、自己の出捐に因りて、相手方に利益を供與するもの也、卽ち一方の出捐は、他の一方の出捐を前提とし、一方の出捐に依る供與と、他の一方の出捐に依る利益の供與とは、相互に對價となるべきもの也、双方の爲すべき出捐に因る利益の供與は、互に牽聯して、同一の法律行爲の内容を組成すべきものにて、之を分離することを得ず、若し二者獨立して別異の法律行爲と成るときは、二個の無償行爲存する者にして、有償行爲あらず、例へば賣買交換は、有償法律行爲にして、贈與は無償法律行爲なり、賣買に於ては、當事者の一方が、或る物又は權利を移轉し、他の一方がこれに對して金錢を支拂ふ、此場合には、物又は權利を移轉する債務を負擔することと、代金支拂の債務を負擔することとが、互に前提となりて、一個の法律行爲の内容を組成するもの也、故に之を有償行爲と爲す。
- 英
- Act of consideration
- 独
- entgeltliches Rechtsgeschäft
- 仏
- Acte de considération
有償貸付
有償貸附とは、對價を得て或る物又は金錢を相手方に貸附くるを云ふ、利子の契約を附して、金錢の貸附を爲すが如く、小作料を得て土地を小作人に貸附くるが如し、但し單に有償貸附と稱する場合は、其對價として受くべきものは、金錢たると其他の物たるとを問はざれども、必らず經濟上の利益を有するものたらざる可からざるは勿論なり。(次項參照)
- 英
- Lending upon consideration
- 独
- entgetliche Verleihung
- 仏
- Prét de considération
有償契約
(いうしやうけいやく)當事者双方が、互に利益を受くる契約を云ふ、賣買交換又は利息附貸附契約の如し、有償契約は、互に有償行爲を爲す契約にして、之を一方より觀察すれば、有償行爲となり、双方より觀察すれば、有償契約となる、其觀察の立脚點を異にするに從ひ、此名稱を異にすれども、全く二者其意義を同うするものなり、何となれば、有償行爲と云へば、已に相手方の出捐を出提とする法律行爲なるが故に、從つて有償行爲には單獨行爲なく(遺言による賣買の意思表示の如きは、純然たる賣買契約と云ふを得ず)すべて有償契約なれば也、詳細は有償行爲の項を參照すべし、唯茲に注意すべきは、双務契約は常に有償契約なれども、有償契約は、常に双務契約也と云ふ事を得ず、何となれば、當事者双方に利益あるが故に、双務契約は常に有償契約也と云ふを得れども、當事者双方に利益あるも、常に双方に義務あるものと云ふことを得ざるを以て、有償契約は必ず双務契約なりと云ふこと能はざるなり、又利益を受くる者が、當事者一方のみなるときは、必らず義務を負擔するものは一方のみなるを以て、無償契約は常に片務契約なりと云ふことを得れもど、利益を受くる者が双方にありと雖も、出捐者が一方のみなるときは、義務を負擔するは一方のみなるが故に、片務契約は、必ずしも無償契約なりと云ふことを得ず、彼の利息附消費貸借は有償契約なるも、双務契約にあらざるが如し。
- 英
- Contract done upon considera-tion
- 独
- entgeltlicher Vertrag
- 仏
- Contrat de considération
有償取得
有償取得とは、出捐を爲して、物又は權利を自己に取得するを云ふ、卽ち買賣契約に於て、對價を支拂ひて物を受くるが如きは其好適例也。
- 英
- Acquisition for value
- 独
- Anschaffung
- 仏
- Acquisitioin pour valeur
有爵議員
(いうしやくぎいん)貴族院議員にして、爵位を有するものを有爵議員と稱す、貴族院令に依れば、公侯爵を有する者が、滿二十五歳に達したる時は、當然議員となり、伯子男爵を有する者にして、滿二十五歳に達し、各其同爵間に選出されたるものは、七ケ年の任期を以て議員たるものとす。(貴族院令三條、四條)
- 英
- Member of Peers
- 独
- Pair-vertreter
- 仏
- Membre de pair
優先株
(いうせんかぶ)優先株は、普通の株式と異り、株式會社が、其資本を增加する場合に限り、發行するを得る株式にして、種々の特權を有するものなり、會社はこれに依りて多數の引受を誘導し、其特權としては、會社解散に際しては、先づ幾分の配當を受け、其殘餘を他の株主と平等に分配せらるる等なり、斯の如く不平均にして、株式平等の原則に反するを以て、斯かるものを認めざる立法例ありと雖も、實際には之を認むべき必要あり、監督宜しきを得れば弊害を除き得るを以て、我商法は之が發行を許容したり、而して之を會社設立の際に認めずして、單に資本增加の場合に限りて認めたる理由は、初めより之を許す時は、弊害の生じ易きと、設立の際に於ては、之を許すべき必要殆ど無きを以てなり、會社が成立して事業を開始したる後、資本が不足の爲め、充分の利益を得る能はざる場合に、社債を募集するを不利益とし、株式を募集せんとするも、普通の權利にては應ずる者なき場合に、優先株を發行して必要に應ぜしむるなり、奮株主にして此優先株を引受け得るは隨意なるも、舊株主は或方法により、從來の所有株式を其儘に優先株とするが如きは、法律の許す所に非ず、優先株を發行する場合には、必ず、定欵に記載せざるべからず、故に豫め定欵變更の手續を履踐するに非れば、優先株を發行すること能はざるものとす。(商二一一、二一二條)
- 英
- Preference Share
- 独
- Priori-tätsaktie
- 仏
- Action de priorité
優先株主
(いうせんかぶぬし)株式會社の優先株を所有する株主を云ふ、優先株の性質は前項に説明する所の如し、而して優先株主の利害は、屢普通株主の利害と衝突するなり、然るに會社の諸般の事項を株主總會のみに於て决議するものとせば、優先株主は往々多數の普通株主に壓せらるる虞れあるを以て、これを免れしむる爲め、法律は優先株主總會なるものを認めて之を保護す、優先株主と雖も、素より普通株主總會の决議に參與することを得るものなれども、定欵の變更を議决されたる場合に於て、其變更が特に或優先株主の全員、又は一部にのみ損害を及ぼすべき時は、其優先株主は决議すべき事項につき、特別の利害關係を有するものとして、其决議に加はることを得ず、而して優先株主をして、自己が决議に加はることを得ざる株主總會の决議に拘束せられ、自己に損害を受くるにも拘はらず、猶其定欵の變更を甘受せざるべからざるものとせば、優先株主の地位は常に不安にして、優先株の發行を許したる實益なきに至るべし、茲に於てか法律は、右の定疑の變更事項は、株主總會の决議の外、特に優先株主總會の决議を經るを必要とせり、例へば優先株の利率を減少し、又は優先株を消却せんとする場合の如し、次に優先株主總會招集、開會等は、總べて普通株主總會の規定を凖用せらるるを以て、株主總會の項を參照して、其手續を知るべし。(商二一六條、二三六條)
- 英
- Preference Shareholders
- 独
- Prioritätsaktionär
- 仏
- actionnaire de priorité
優先權
(いうせんけん)吾人が、或る物の上に物權を有する時は、後に至り、他人は最早同一物の上に、同一の物權を取得する事を得ず、故に同一物上に時を異にして、數個の物權が設定せられたる時、假へば抵常權の目的たる土地の上に、永小作權が設定せられたる場合の如きは、其權利の優劣は、常に設定の前後によりて定まるべきものにして、前の權利は後の權利に優先するを常とす、優先權と稱するもの卽ち是也、盖し或物が、既に或る關係に於て、或人の支配權に服從する以上は、最早同一の關係に於て、他人の支配權に服從し得べからざるは、事物の性質上明白にして、所謂一物二主を容れざる格言ある所以なりとす、例へば甲が一の土地を所有し、乙の爲めに其地所の上に地上權を設定したる後、更に丙の爲めに其地所の上に永小作權を設定したる時は、前に設定せられたる乙の地上權は、後に取得したる丙の永小作權に優先すべきものとす、何となれば、乙は完全に地上權を得取し、其の地上權は丙に於て、之を尊重せざるべからず、丙は乙の地上權を無視して、其地上權ある土地の上に、永小作權を行使することを得ざれば也、其他、抵當權、質權等に就きても同じ、之に反して債權は、其效力は甲乙同等にして、何れの債權も優先の權利を享受せざるを原則とす、從つて物權の如く、其發生の前後により、其效力の強弱を異にする事なし。
- 英
- Preferential right
- 独
- Vorrecht
- 仏
- Droit de préférence
有租地
(いうそち)地租條例により、其所有地に地租を賦課する土地を云ふ、田、畑、宅地、鹽田、鑛泉地、池沼、山林、牧塲、原野、是なり、地租條例に依れば、有租地を區別して、□一田、畑、郡村宅地、市街宅地、鹽田、鑛泉地と、□二池沼、山林、牧塲、原野、雜種地との二類とす、但し公立學校地、鄕村社地、墳墓地、用惡水路、溜池、堤塘、井溝、鐵道用地、禁伐林、及公衆の用に供する道路は、地租をば免る可きものなるが故に、所謂有租地の内に入らざるものとす。(一七年三月七號布告三條及四條)
- 英
- Land to be taxed
- 独
- Steuer-pflichtiges Land
- 仏
- Terre taxée
有體動産
(いうたいどうさん)有體物に不動産、動産の二種あり、而してこの分別を明かにするにつき、古來より數説あれども、吾民法は土地及び其定著物を不動産となし、其他の物を動産とする説に從へり、故に土地及び其定著物を除く外の物は、總べて動産と稱することを得べし、卽ち動くことを得るものは動産なり、然れども嚴格に云へば、凡そ物にして自然若しくは人爲に依りて動かざるものなし、地球の如きも一日一回轉を爲し、一年にして太陽の周圍を一旋轉するものなりと雖も、法律上に於ては、此の如く理學的に之を云ふにあらずして、地球上に於ける物の意義なりとす、故に地球の自動の如きは、茲に所謂動くの意義に入れざる也、然らば物にして、自然又は人工によりて動かざるは土地のみなり、依て土地及び定著物を不動産とし、それ以外の物を總稱して動産と云ふなり、而して有體動産も物の一種なるが故に、吾人の支配力の範圍内に置き、利用することを得べき物ならざるべからず、山間の清風、大海の水の如きは、吾人の支配力の及ぼすべからざる物なるが故に、茲に所謂動産と云ふことを得ざるものとす。(次項有體物の項參照)
- 英
- Corporeal movable
- 独
- körperliches Mobiliar
- 仏
- meubles corporels
有體物
(いうたいぶつ)有體物とは、外界の一部にして、獨立の一體として、人の需要を充たし、人の支配力の範圍内に屬し得べきものを云ふ、人類も自然界の一部にして、古代に於ては之を物としたること有りと雖も、近世の法律に於ては、之を有體物とすることなし、有體物は自然界の一部なれども、法律上の意義に於ける有體物は、必らずしも物理學上の有體物と一致せず、法律上の有體物は、必らず人類の支配力の範圍に屬し得べきものならざるべからず、故に日月星辰の如きものは、物理學上は有體物なりと雖も、人類の支配力の範圍外なるを以て、法律上有體物と稱することを得ず、而して有體物は外界の一部として、獨立の存在を有することを要するが故に、空間を占領し、場所的の存在を有せざるべからず、人の視官又は觸官に依て覺知し得べきものは、皆形體を有す、故に有體物と稱し得るも、聽官臭官のみに依て、存在を覺知し得べきが如きものは、通常形體を具備せざるが故に、有體物と云ふを得ず、斯の如く形體を有し、場所的の存在を有するを要するも、定形を有することを必要とせず、氣體液體も亦有體物と云ふことを得、次に有體物は、法律上吾人の需要を充たし得るものならざる可らず、吾人の必要を充たさざるものは、權利の目的たる事を得ず、從つて法律上の物たるを得ざる也、最後に有體物は獨立體の存在を有することを要す、物の一部の如きは、獨立の存在を有せず、故に法律上之を物と稱する限りにあらず。(民一編三章參照)
- 英
- Material thing
- 独
- körperliche Sache
- 仏
- Chose corporelle
宥恕
(いうぢよ)刑法上に於て、犯人の精神不成熟、其他或る特別なる事情の加はりたる爲めに、其刑罸を輕減又は全免せらるるを云ふものにして、之等の犯人が他の犯人に比して、或る理由の下に責任を宥怒せらるるものとす。
- 英
- Excuse
- 独
- Verzeihung
- 仏
- Excuse
宥恕減輕
宥恕減輕とは、犯人が、刑罸を宥恕せらるる場合に於て、本刑を輕減して科せらるる事を意味するものにして、所謂刑事未成年者中、十六歳以上二十歳未滿の者は、精神不成熟なるものとして、他の犯人より特に一等を宥恕減輕せらる、其他の場合に、挑發的犯罪、即自己の身體に暴行を受くるによりて、直に怒を發し、暴行人を殺傷したるもの、及び本夫が、其妻の姦通を覺知し、姦所に於て直に姦夫又は姦婦を殺傷したるものは、其罪を宥恕せらる、正當防衛の過度によりて、人を殺傷したるものも亦同じ、而して特に宥恕輕減すべき場合は、總べて刑法の正條に明文あることを要するなり。(舊刑八一條三〇九條以下)
- 英
- Abatement of penalty by legal excuses
- 独
- Strafmilderung von der gesetzlichen Verzeihung
- 仏
- Diminuation de peive par l'excuse légale
宥恕全免
宥恕全免とは、宥恕によりて刑罸を全く免ぜらるるを意味す、舊刑法に於ては前述の如く宥恕減輕に就いて規定したりしが、改正刑法に於ては此種の理由による輕減又は全免を認めず。
- 英
- Exemption from punishment by legal excuses
- 独
- Straffreiheit von der gestzlichen Verzeihung
- 仏
- Exemp-tion de peine par l'excuse légale
郵便
(いうびん)政府が獨占の事業として、公衆の文書による音信を送達する方法を稱して郵便と云ひ、文書送達の外、貨物貨幣の送達を附隨的に行ふ、此の如き事業は、其實質上必要的國家の事業に非ず、私人の事業として營み得べきもの也、然れども我が國に於ては、特別の理由により、政府に於て之を獨占する事となせり、蓋し郵便事業を獨占する必要は、社會的、經濟的、及び國家的の諸種の理由によるもの也、或は財政上の理由により、國家が收入を得る目的の爲めに、國家が獨占して此等の事業を經營することあるべしと雖も、此の如きは決して公共の利便を保護助成する所以に非ず、我郵便制度に於て、此事業を政府の管掌するところとするは、其理由一に公益の爲めに在り、郵便に就きて注意すべき二三を揭ぐれば、郵便物の遞送を命ぜられたる連送營業者は、之を拒むことを得ず、郵便に關する人馬は、通行錢を、通路若しくは橋渠に對し支拂ふ事を要せざるのみならず、塀障を有せざる宅地若しくは田畠をも自由に通行することを得べし、且つ郵便料を完納したる郵便物を、受取人に於て之を受取ることを拒むを得ず、また書換郵便物、小包郵便、價格表記の郵便物、若くば郵便による取立金の亡失の場合にあらざれば、賠償を爲さざること等なりとす。
- 英
- Post
- 独
- Post
- 仏
- Poste
郵便爲替規則
(いうびんかはせきそく)郵便爲替規則とは、通常郵便爲替、電信爲替、小爲替の振出、拂渡等に關する細則にして、□一郵便爲替は、郵便局にて取扱ひ、郵便爲替貯金管理所に於ては、特に指定したる郵便爲替に限り、之を取扱ふものとす、□二廣義に所謂郵便爲替を別ちて、通常爲替、電信爲替及小爲替となす、其の爲替料金は通常爲替に在つては、十圓以内は六錢、二十圓以内は十錢、卅圓以内は十五錢、四十圓以内は十八錢、五十圓以内は二十二錢とす、電信爲替に在りては、金額十圓以内は三十錢、二十圓以内は三十五錢、三十圓以内は四十錢、四十圓以内は四拾五錢、五十圓以内は五十錢とす、又小替爲は常に金額五圓以下に限り、爲替料金を參錢とす、□三通當爲替を拂出さんとする者は、郵便局所に於て、通常爲替請求書用紙の交付を受け、相當事項の記入を爲し、之に爲替金及爲替料を添へ差出し、通常爲替證書及同受領證書を受取る可し、□四電信爲替の差出人は、郵便局所に於て電報爲替振出請求用紙の交付を受け、相當事項を記入し、差出人及受取人の宿所氏名に、片假名文字を附記し、之に爲替金及爲替料を添へて差出し、且つ電信爲替金受領證を受取る可きものなり、□五小爲替は、單に料金及爲替金を差出し、請求す可きものにして、通常爲替に凖ず可きものとす。(三三年九月、遞信省令四五號)
- 英
- Regulation of postal money order
- 独
- Regeln der Postanweisung
- 仏
- Loi de mandat-poste
郵便爲替居宅拂規則
(いうびんかはせきよたくばらひきそく)明治三二年遞信省令五一號を以て、發布せられたる規則なれども、今は之を廢止せられ、郵便爲替居宅拂に關する細則は、前項郵便爲替規則第七章を以て、其細則を定められたり、今其の槪要を述れば、□一郵便爲替の差出人又は受取人は、爲替金の居宅拂を請求することを得るものにして、但し差出人は爲替拂出後に於て、及び小爲替受取人の爲めには、居宅拂の請求を爲すことを得ざるなり、□二差出人が受取人の爲めに、居宅拂を請求せるときは、郵便局所に於ては、相常證印を押捺したる爲替證書を交付す可きものにして、又郵便爲替の受取人が、居宅拂を請求せんとするには、其の宿所、氏名、郵便爲替種別、證書の記號及番號、並に爲替金額を記載したる居宅拂請求書を作り、之に料金相當の郵便切手を貼用して、拂渡郵便局に差出す可きものなり、該請求書は、無料郵便物として、請求書封入の郵便物封皮に、爲替事務と明記するときは、郵券の貼用を免ぜらるるもの也、□三爲替居宅拂の料金は、郵便爲替一口に付、通常爲替又は電信爲替は金四錢、小爲替は金二錢とす。(三三年九月遞信省令四五號六〇條以下)
郵便爲替證書
(いうびんかはせしやうしよ)郵便局吏員が、其職權内に於て作成交付する證書にして、官文書たるの性質を有す、爲替金額の受取人、之を拂渡局に呈示して、拂渡を受くるものなり。(郵便爲替法二條以下)
- 英
- Postal draft
- 独
- Post-wechselschein
- 仏
- Traite postale
郵便爲替貯金管理所
(いうびんかはせちよきんくわんりしよ)郵便爲替貯金管理所官制により、遞信大臣の管轄に屬し、郵便爲替資金及郵便貯金を管理し、及び郵便爲替貯金の檢査計算に關する事務を管掌する官署なり。(三〇年八月敕二七一號)郵便貯金爲替管理所官制とは、明治三十年勅令第二七一號を以て、發布せられたる規定にして、明治三六年勅令四二號を以て、本令中に改正を加へられたり、イ郵便貯金爲替管理所は、所長、通信事務官、同補、通信書記及同補を以て組織せらる、通信事務官、及同補は奏任とし、所長の事務を助け、又は支所長となりて、其事務を掌理す、通信書記は判任とす、通信書記は上官の指揮を承け、書記、簿記、計算の事務に從事するものなり、書記補は通信書記の事務を補助するものにして、同じく判任とす、ロ遞信大臣は、必要なりと認むる地に、郵便爲替貯金管理支所を置き、其事務を分掌せしむることを得るものにして、元來郵便爲替貯金管理所は、郵便爲替資金、郵便貯金を管理し、及郵便爲替貯金の檢査事務を掌理するものなること、前項説明の如し。
- 英
- The office of postal orders and savings bank
- 独
- Verwalt-ungsamt des Postwechsels und Postdeposi-tums
- 仏
- Office de mandat-poste et de caisse d'épargne
郵便貯金爲替管理所官制
- 英
- Government organization of the office of postal orders and savings bank
- 独
- Behërdeordnung des verwaltungsamtes des Postwechsls und Postdepositums
- 仏
- Organisation ad-ministrative de l'office de mandat-poste et de caisse d'épargne
郵便爲替法
(いうびんかはせはふ)明治三三年法律第五五號を以て發布せられたる、郵便爲替に關する法律なり、此の法律は、郵便爲替に關する原則を定めたるものにして、郵便爲替規則は、此の法の細則なり。(郵便爲替規則參照)
- 英
- Law of postal money order
- 独
- Gesetz des Postwechsels
- 仏
- Loi de mandat-poste
郵便爲替渡濟通知
(いうびんかはせわたしずみつうち)郵便爲替の差出人は、爲替振出の際、郵便又は電信による爲替金拂渡通知を、請求することを得べく、此の場合に、郵便爲替の拂渡局所が、其差出人に發する爲替金拂渡濟の通知を云ふ。(郵便爲替規則第六章五五條以下)
郵便切手貯金規則
(いうびんきってちょきんきそく)郵便切手貯金規則は、郵便切手を以て、郵便貯金の預入を爲すことを得る旨を規定したる法則にして、郵便切手貯金をなさんとする者は、一人月額一圓以内を限り、郵便切手貯金臺紙に、同一種の郵便切手を貼用し、之を貯金通帳に添へ、貯金取扱局所に差出すものなり、次に貯金臺紙は、五厘切手、一錢或は二錢切手を印刷し、郵便局所に於て賣下ぐるものにして、此の種の印紙に限り、貼用することを得るものなりとす。(三三年遞信省令二號、三三年同一號、三四年同四七號參照)
- 英
- Rule of Postage stamp deposit
- 独
- Regel der postmarke Depo-sitengelder
- 仏
- Loi de dépôt des tém-bres postales
郵便禁制品
(いうびんきんせいひん)法令によりて、或る物品は、其牲質上、郵便として差出すことを禁ぜらるるものあり、之を指稱して郵便禁制品と云ふ、現行郵便規則によれば、□一公安を妨害し、又は風俗を壞亂すべき文書、圖画、其他の物件、□二爆發性、發火性又は危險性の物件、其他郵便吏員に危害を加へ、又は郵便物に損害を與ふべき物件之なり、而して郵便官署は、郵便物に郵便禁制品を封入し、又は成規に違反して、差出したる物件ありと認むるときは、差出人に其開示を求むることを得べく、差出人が若し其開示を拒みたるときは、其取扱を拒絶することを得、郵便禁制品を郵便物として差出したるものは、五十圓以下の罸金に處し、其郵便物は沒收せらるるものとす。(郵便法一條一六條四六條參照)
- 英
- Postal forbidden article
- 独
- verbotene Postsache
- 仏
- Choses postales interdites
郵便注文業
(いうびんちうもんぎやう)國の内外遠近を問はず、汎く商品目錄を配置し、顧客より郵便にて注文を受け、迅速に物品を發送する小賣大商店なり、歐米に於けるデバートメント、ストアー(普通の小賣大商店)は、大低此郵便注文業を兼業とす、斯業專問にて有名なるは、米國シカゴ府のモンガモリー商會なり、而して我國に於ても、三越、白木屋、高島屋等の大呉服店は、呉服類の郵便注文業を營みつつあり。(小賣大商店の部參照)
- 英
- Mail-order de-partment store
- 独
- Versandgeschäft
- 仏
- Affaires
郵便貯金
(いうびんちよきん)郵便貯金規則により、郵便官署の取扱ふ貯金制度にして、普通方法、特別方法の二種あり、普通方法としては、一人一度の預金は十錢以上とし、端數は厘位に限る、一人の預金總額は、公共團體、社寺、學校又は營利を目的とせざる法人、又は團體の預入金、命令の規定による共同貯金の預金、産業組合の預金、振替計算の爲めにする預入金の外は、元利併せて千圓を過ぐることを得ず、利子は勅令を以て之を定むるも、現時は五分一毛とす、郵便貯金の預け人は、何時にても貯金の全額、又は其幾分の拂戾を請求することを得、其預け人、最後に貯金預け入を爲したる日、又は拂戾を求めたる日より、十年間預入を爲さず、拂戾を求めず、又は通帳檢閲の爲にする提出なき場合に於ては、郵便官署は其者に對し、通帳の提出、又は預入金の處分を爲すべき旨を催告し、其催告ありたる日より、六十日内に何等の申出なき時は、其預金は、國庫の所有に歸す、其他特別方法としては、切手貯金、規約貯金、特別取扱貯金等あり。(郵便貯金法、貯金規則、郵便振替貯金規則、郵便切手貯金規則參照)
- 英
- Postal Deposit
- 独
- Postde-positum
- 仏
- Dépôt postal
郵便貯金條例施行細則
(いうびんちよきんでうれいしかうさいそく)明治廿三年、遞信省令第二三號を以て布告されたる、郵便貯金條例施行に關する細則を定めたるもの也。
- 英
- Subdivision of regulations for the application to the re-gulations of Postal Deposit
- 独
- Ausführ-ungsregel der Postdepositenkasseordnung
- 仏
- Subdivisions des regulations de dépôt postal
郵便條例
(いうびんでうれい)明治十五年、第五九號布告を以て定められたる、郵便に關する規定なりしが、現時は廢法に屬す。
- 英
- Postal act
- 独
- Postregel
- 仏
- Acte postale
郵便電信局官制
(いうびんでんしんきよくくわんせい)明治三〇年勅令二六九號を以て發布せられたるものなれども、其後明治三六年、勅令四〇號を以て發布せられたる、通信官署官制の施行と同時に、廢止せられたり。
- 英
- Government organiza-tion of post and telegraph office
- 独
- Behördeordnung des Post-und Telegraphen-amtes
- 仏
- Organisation administrative de l'office de poste et de télégraphe
郵便法
(いうびんはう)明治三三年法律第五四號を以て制定せられたる、郵便に關する原則法なり。(郵便の部參照)
- 英
- Law of Post
- 独
- Postgesetz
- 仏
- Loi de poste
有夫
(いうふ)有夫とは、夫を有するを意味し、法律上有效に成立したる、婚姻中の婦女を有夫の婦と云ふ、元來最初より無效なる婚姻は、法律上有效なる婚姻關係を成立せしめず、之に反して、一旦有效に成立せる婚姻たる以上は、假令法律上取消し得べきものなりと雖も、其取消の判决確定する迄は、其婚姻は有效なるが故に、其婦を稱して有夫の婦と云ふことを得、婚姻の形式は、戸籍吏に屆出づる事を要す(外國にあるものは、其國に駐在する公使、若しくは領事に屆出づるを要す)るが故に、假令近隣鄕黨の認めて、事實上夫婦と看做すべきものと雖も、若し婚姻の屆出を缺きたるときは、その婚姻は法律上無效にして、從て有夫の婦と稱することを得ず。(民法七七五條乃至七七七條、刑一八三條)
- 英
- Married woman
- 独
- Ehefrau
- 仏
- Femme mariée
有名契約
(いうめいけいやく)法典に於て、特別の名稱を附せられたる契約を、有名契納と稱す、凡そ契約事項は、其細目に至る迄、悉く當事者に於て之を約定することは、頗る煩勞に堪へざるが故に、法律は其煩勞を避けんが爲めに、契約中重要にして、且つ適用の頻繁なるものを選び、豫め之が細目の規定を爲し、其契約に特別の名稱を附するもの也、現行民法上の有名契約を擧ぐれば、即ち贈與契約、賣買契約、交換契約、消費貸借契約、使用貸借契約、雇傭契約、請負契約、委任契約、寄託契約、組合契約、終身定期金契約、和解契約の十三種とす、此有名契約に反して、其適用の多からざる爲め、法律に於て豫め細目の規定を爲さず、又特別の名稱を附せざる契約を、無名契約と稱す、例へば豫約、賭事、無期定期金契約の如き之に▲す、吾人の意思は自由にして、苟も公安良俗に害のなき限りは、如何なる事項と雖も、自由に契約を締結し得るものとす、故に法律が、特に名稱を附せざる契約と雖も、法律の保護を受くることは、言を俟たざる所、唯有名契約と、無名契約とによりて生ずべき法律上の結果の差異は、法律の適用方法を異にするにあり、即ち有名契約にありては、其契約に特別なる規定を適用するも、無名契約にありては、其契約に最も類似する有名契約に、特別なる規定を凖用せらるるものとす、假へば有償の無名契約なれば、賣買等の規定を凖用するが如き、是なり。(民五二一條以下參照)
- 英
- Legally named contract
- 独
- Vertrag mit namen
- 仏
- Contrat légale-ment nommé
猶豫契約
(いうよけいやく)或る法律行爲につきて、即時履行、若くは條件、期限の到來によりて、履行すべき場合に於て、當事者が履行すべき義務あるに拘らず履行せざる時は、債權者は法律の規定する所により、救濟方法を有するは無論なれども、或る事情により、更に一定の期限を附して、其履行を延期せしむる事あり、之を稱して猶豫契約と云ふ、例へば支拂猶豫の契約の如し、猶豫契約は、必ず到來すべきことの確實なるものたることを要し、來るべきことの不確定なることを得ざるなり、若し來るべきことの不確定なる時期を以て、其履行期となしたるときは、條件附契約として、全く其性質を變ずる法律行爲となるものなり、故に猶豫契約は必ずその法律行爲の性質を變ぜしめずして、單に履行期を延期するの契約たることを要するは明なりとす。
- 英
- Contract of grace
- 独
- Stund-ungsvertrag
- 仏
- Contrat de grâce
有料郵便物
(いうれういうびんぶつ)有料郵便物とは、無料郵便物に對する名稱にして、料金の支拂を要する通常郵便物を總稱す、公衆一般が、郵便局所に託して發送する郵便物は、普通有料郵便物にして、郵便局所は、此料金を完納したる通常郵便物は、特別なる事情ある場合、例へば郵便禁制品たるが如き場合の外は、其送達を拒む事を得ず、有料郵便物に數種あり、第一種は書狀、第二種は葉書、第三種は每月一回以上發行する定期刊行物にして、特に第三種郵便物として許可を得たるもの、第四種は書籍、業務用書類、寫眞等、第五種は農産種子及び小包貨物とす、料金の大要を揭ぐれば、第一種郵便物は、重量四匁又は其端數每に金三錢、第二種郵便物は、通常葉書一枚金一錢五厘、往復葉書金參錢、封緘葉書金參錢、第三種郵便物は、一號一個重量二十匁、又は其端數每に金五厘、二號又は二個以上一束重量二十匁、又は其端數每に金一錢、第四種郵便物は、重量三十匁、又は其端教每に金二錢。第五種郵便物は、重量三十匁、又は其端數每に金一錢とす、小包郵便物料金は、一個につき五錢以上にして、詳細は其項目を參照せらるべし、既納又は過納の料金は之を還付せず、料金未納、又は不足の郵便物は、受取人に於て其不納額二倍の料金を納付して、之を受取ることを得、其納付を拒みたるときは、差出人に還付し、差出人よりこれを徵收す。(郵便法、郵便規則參照)
有料貸附
(いうれうかしつけ)有償即ち或る料金、又は報酬物を得て、物又は金錢を他人に貸附くることを意味す、例へば小作料を得て他人に土地を貸附け、利息を得て金錢を他人に貸附くる場合の如し、單に有料貸附と云へば、其受くべき料金又は報酬は、金錢たると、又取は物たるとを問はず、一定のものたると、不定のものたると、定期たると、不定期たるとを問はず、共に有料貸附たることを得るものとす。
- 英
- Lending upon consideration
- 独
- Verleihung mit Vergeltung
- 仏
- Prêt de considération
有料使用
(いうれうしよう)報酬を仕拂ひて、他人又は他人の物を使用することを云ふ、然れども、民法上に於ける使用貸借などは、この中に含まず、何となれば、使用貸借は、無償を原則として、有償の場合を含まざればなり、尤も賃錢を支拂ふ所の雇傭契約の如きは、廣く有料使用中に、包含せらるるものと解するを正當と信ず。
- 英
- Use with consideration
- 独
- Gebrauch mit Vergeltung
- 仏
- Usage avec considération
意向
(いかう)自己の嗜好、或は目的に對する欲求、或は他の提供に係る意見、又は物件に同意を表するを云ふ、然れども、倫理學に於て意向と謂へば、稍々異るものありて存す、倫理學に於ては、目的とせる結果に對して意向を置き、其の必しも目的とする所にはあらざるも、而かも其の目的を達する上に於て、豫期せらるべき結果をも併せて包括し、之を意向と稱す、假令ば乘車中の一人を殺さんとする、終極目的を遂行せんが爲めに、其列車を轉覆せんとする人の心中には、其れが爲めに何等關係なき、他の多くの人を害ふべきを豫期するが如し。
- 英
- Intention
- 独
- Absicht
- 仏
- In-tention
委棄
(いき)一定の目的を以て、權利を他人の爲めに抛棄しることを委棄と稱す、最も其適例なるは、民法に於ける地役權の效力に關する場合なり、地役權設定の場合に於て、承役地の所有者が、特に其地役を負ふ土地の上に、自己の費用を以て、地役權者の權利行使の爲めに、或る工作物を設け、又は其修繕を爲す義務を負ふことを約することあり、此特約の存する場合に於ては、其約旨に從ひ、工作物の設置及び修繕に關する義務は、承役地の負擔として、承役地の所有者に於て、之を履行するの責に任ぜざるべからず、而して承役地の所有者が、到底其負擔に堪へざる場合に於ては、之を委棄することを得可し、蓋し承役地の所有者は、地役權者に對して、積極的に或る行爲を爲すの義務を負はざるを原則とし、工作物の設置保存につきて義務を負擔するは、一の例外なれば、此義務は承役地の所有者たるが爲に、負擔する義務あらざるを以て、承役地の所有者にして、其土地の所有權を抛棄するに於ては、其義務を免脱することを正當且つ便宜なりとす、されば法律は、承役地の所有者は、地役權の行使に必要なる範圍に於ける、土地の所有權を、地役權者の爲めに抛棄して、其工作物設置、又は修繕の義務を免るることを得るものとせり、而して此の場合に、其抛棄したる土地の所有權は、即ち地役權者に轉付せらるるものと稱するも差支なし、此の如き抛棄を、法律上委棄と指稱するものとす。(民二八六條、二八七條)
- 英
- Abandonment
- 独
- Verlassen
- 仏
- Abandon
異議
(いぎ)或る一の行爲が、法律上の效果を生ずることに反對して、其效果を滅せしめんとする所の意思表示を異議と云ふ、各場合に就き其申立の方法、手續等を異にするものありと雖も、最も廣く用ひらるるを、民事訴訟上の異議の申立とす、□一民事訴訟上に、督促手續と稱する訴訟あり、是は一種の特別訴訟手續にして、口頭審理の方法に依らず、即ち債務者を審訊すること無くして、債權者の申立のみにより、直ちに條件附の仕拂命令を發する手續にして、債權者が一定の金額の仕拂、代替物、一定の數量の給付、有價證券の一定の數量の給付を目的とする債權を有する塲合に、債務者が任意に履行を爲さヾるときは、債權者は區裁判所に對して申立を爲し、債務者に向ひて、仕拂命令を發せられんことを請求することを得、債務者が、此仕拂命令の送達を受けたる場合に於て、給付すべきものに非ずと思料するときは、其命令の送達ありたる日より、十四日間内(特に債權者の申立により、三日に短縮せらるることあり)に、異議の申立を爲すべきものとす、此異議の申立ありたるときは、仕拂命令は其效力を失ひ、債權者は、通常の訴訟手續によるにあらざれば、終に其權利拘束の效力をも失ふものとす、債權者が異議の申立を爲したるときは、裁判所は、異議申立の通知書を債權者に送達すべく、債權者は此送達を受けたる日より、一ケ月内に管轄裁判所に訴を起さヾるときは、權利拘束は其效を失ふものとす、是を異議の一用例とす、□二民事訴訟上の強制執行の場合に關する異議の申立なることあり、即ち強制執行の執行文附與に對する異議の場合にして、裁判所書記、若しくは公證人の執行文附與が不適式なる場合に、債務者が不服を主張することを云ふ、此異議申立の目的は、強制執行を許さずとの裁判所の宣言を得て、執行文の效力を失はしめ、強制執行の開始を妨げ、若くは執行開始後に於て其執行を停止し、且つ已に爲したる執行處分の取消を求めんとするもの也、此場合に於ける異議申立の手續は、執行文を付與したる裁判所書記の屬する裁判所に、書面を以て之を爲す、執行文の付與が、裁判長の命令によると、又書記が專行したる場合なるとを問はず、書記所屬の裁判所に提出するものとす、公證人が執行文を付與したるときは、公證人の職務上の住所地を管轄する區裁判所に、執行方法に關する異議の申立を爲すべき場合あり、是は強制執行の方法、又は執行に際して、執達吏が遵守すべき手續につきての不服申立なり、又債務者は、強制執行の基本たる債務名義を排除することによりて、強制執行を避くることを得、これを稱して請求に關する異議と稱す、此請求に關する異議と云ふは、債務名義の成立につきて、缺點を主張するに非ず、正當に成立したる債務名義が、其成立後の原因により、執行を要せざるに至りたる事情を主張するものなりとす、此手續は、訴の方式による事を要す、つぎに來るべき異議は、強制執行に關する第三者の主張する異議なりとす、強制執行の目的物に就きて、所有權若しくは其他の權利を、第三者が有する場合には、實體法上の權利を基本として、異議の申立を爲す事を得べく、其手續は訴の形式に依り、訴を提起し得る期間は、強制執行の開始後、其完結に至るまでとす、其他議院法に於て、議員の資格に就きて異議を生じたるときは、特に委員を設け、時日を期し、之を調査せしめて報告せしむるものとす。(民訴三八九、五二二、五四四、五四九條、議院法七八條等)
- 英
- Objection, opposition
- 独
- Ein-wendung, Widerspruch
- 仏
- Réclamation, Contredit
意外の障礙
(いぐわいのしやうがい)刑法上に於ける未遂犯に關する用語にして、犯人が其意思實行に著手するも、外來の故障によりて之を遂ぐる能はざりし場合を云ふ、著手未遂犯の成立するには、其一條件として、犯人が意外の障礙の爲めに、其實行を遂ぐる能はざりし事實あることを要す、犯人若し他より障礙の來る前に、自己の意を以て遂行を中止すれば、學説上所謂中止犯として全然無罪となる、例へば甲某、豫め其怨める乙某を斬殺せんことを計り、劔を懷にして乙の住宅に忍び入り、今や將に其刀を振り上げて乙を斬殺せんとする所を、他人の爲めに取押へられたる如き場合は、所謂外來の意外の障礙に該當するものにして、未遂犯を構成するものなり、之に反して、犯人が刀を振りあげたるも、或る動機によりて斬殺を中止したる如き場合は、所謂中止犯として無罪となる可し、詳細は未遂犯の項に於て説明せん。(舊刑一一二條、改刑四三條)
- 英
- Unexpected disturbance
- 独
- unerwartetes Hindernisz
- 仏
- Emeute inattendue
依願歸鄕
(いぐわんききやら)依願歸鄕は、或る場合に於て、法令の認むる所により、陸海軍人其他官吏の出願により、上長官の許可を得て歸鄕することを稱す、現時は、多く之を請願休暇として規定せらる、請願休暇の項を參照すべし。(陸軍々人休暇規則、海軍々人軍屬休暇規則參照)
- 英
- Going back to one's native place by solicit
- 独
- Von Bitte nach Heimat zurückzukehren
- 仏
- Retourner à la place natale par demande
意見
(いけん)人が或る事物につき、自己の理解力に訴へて爲したる判斷を表白することを意味す、最も混じ易きは、事實の陳述と、意見の陳述との境界なりとす、例へば民事上に於ける詐僞の意思表示の場合に、虛僞の事實の表白あることを、其成立要素とす、若しや其陳述にして、意見に關するものならんか、敢て事實の僞白と稱することを得ざるを以て、詐僞を構成せず、所謂事實の陳述とは、自己が過去に於て見聞したることを、有りの儘に陳ぶるを云ひ、意見の陳述とは、或る事物につき、理解力を用ひて判斷したる結果を、綜合して陳述することを意味す、法律上此區別は、最も重要なるものにして、以上の如く兩者は、其效果を異にする甚しきものなればなり、尚訴訟法上に於ても、證人は、事實の陳述を爲すを義務とし、鑑定人は、意見の陳述を爲すを義務とする場合の如し。(逃亡犯罪人引渡條例六條參照)
- 英
- Opinion
- 独
- Gutachten
- 仏
- Opinion
意志
(いし)意、意志に同じ、同條下を見らるべし。
- 英
- Will
- 独
- Wille
- 仏
- Volonté
意識
(いしき)意識は、極めて廣汎なる意義を有し、一切の心的活動、精神現象を總稱して、意識作用と云ふことを得べし、之を論ずるは心理學の本領にして、智情意等と分類して論ずるを常とするも、意識に斯く明かに分類せらるべき、三つの異なる能力あるにあらず、實は意識としては、唯一の渾一的作用あるのみ、此の渾一的意識の活動が、一瞬時と雖も停滯することなく移動し去りて、其刹那々々に異なる趣を呈するより、學者これを稱して意識の流れと謂ふ、河の流れの斷ゆることなく、而かも一瞬每に異なる趣を呈するを形容せるなり、かかる意識の流れが、其の屬性として、或は智情意の色合ひを有すと云ふに過ぎず、而して此の屬性が、其の場合々々に互に強弱を異にする處に、或は智が優り、情意が勝ると云ふことの存するなり、然らば意識現象は、かかる屬性を離れて別に存するものなりやと云ふに、决して然らず、或は精神なる本體ありて、其の作用が意識現象なりと考ふる如きは、今日の學者の採らざる所なり、偖、意識は斯く渾一的流れなればこそ、記臆、想像、判斷、推理の如き作用も存し得るなれ、一瞬每に別個の意識現象起こるものとすれば、其所に何等の連絡統一なく、是等の精神作用は全く不可能とならざるべからず、又かく一個の連續せる意識の流れなればこそ、其所に自我の念を生ずる所以を説くことを得るなれ、然れども、この連續する意識の流れは、常に同一の力を以て進むこと能はず、音律的に一高一低をなす、其の低度甚だしく、心理學者の所謂意識の閾の下に落ちたる狀態を、無意識の狀と稱す、假令ば睡眠假死の場合如し、然らば此の如き狀態より醒めたる後の意識は、前の意識と全然無關係なりやと云ふに然らず、今日の心理學に於ては、未だ十分説明せられざる狀態に於て、保存連結せらるるなり、又かの催眠術、或は夢の作用の如きを説明せんとして、或は意識には二種類ありて、他の種の意識は、吾人覺醒時の意識とは沒交渉のものなるが、吾人の第一種の意識が眠れる際に、この第二種の意識が發現して作用するに因ると説くも、多くの難點を有す、意識は一種にして、識域下に潜める意識か、或る機會によりて發現し來たるに因ると説く方、困難尠なきが如し、而して斯の如き無意識の場合あると共に、半意識の場合あることを説かざるべからず、一體吾人が或る事物を意識する際に當りても、其所に併立存在する總てを一樣に、同じ明瞭さを以て意識すること能はず、吾人の意識には限りあり、其中の或るものが中心となりて、最も明瞭に吾人に認識せられ、他は漠然と吾人に映じ來たるものなり、此の後者の狀態を半意識と稱すべし、然れども其は單に程度の差のみ、全く性質を異にするにあらざるなり、かの美にうたれて恍惚たる狀態、睡眠より漸次醒め來たる場合に、吾人の經驗する所のものの如きこれなり、而して一般に注意力の大小によりて、意識作用強弱の上に、大なる影響を及ぼすは事實なり。
- 英
- Consciousness
- 独
- Bewusztsein
- 仏
- Conscience
意思機關
(いしきくわん)意思機關とは、意思活動の因つて基く源泉を云ふ、意思表示は、凡べて意思機關に依つて意思を綜合せられ、表示機關に因つて、外部にこれを表白せらるるものなり、吾人人類に於ては、意思機關と表示機關とは、共に生理的作用にして、法律學上明かにこれを分別することを得ず、然れども無形の生活機能を有せざる法人に於ては、明かに之を分別することを得べく、又分別すべき必要あるを見るなり、卽ち自然人に於ては、意思機關と表示機關とは、同一人に屬するも、法人に關しては、意思機關と表示機關とは、其屬する機關を異にす、商事會社に例を取りて之を云はヾ、株主總會は、意思機關として、或事項を決議し、取締役が代表者として外部に其決議事項を表白する場合の如し、素より法人に關する機關分屬説の詳細を究めんと欲せば、法人の本質につき評論せざるべからず、故に其本質に對する見解岐るるに從ひて、其結論又異るべきも、要するに意思機關とは、意思決定に關する作用を爲す機關と解するを得べし。
- 英
- Organ of the will
- 独
- Willens-organ
- 仏
- Organe de volonté
意思能力
(いしのうりよく)意思能力とは、行爲の基本となるべき意思を決定表示する能力を稱指す、法律上の能力は、之を法律行爲能力、責任能力、權利能力等に別つことを得、法律行爲能力、責任能力は、法律上に於て、明文を以て一定の限界を附し、これを明らかにせりと云へども、意思能力の有無は、我民法上は之を事實問題に委ね、一定の標凖を揭げず、抑も事實上行爲を爲す能力なきものは、法律上に於ても亦意思能力無し、行爲を爲すの能力は、人の意思に基き、人の意思の發達は、人の身體智識の發育に伴ふものなるが故に、人の意思能力の完備するの時期は、人の身體智識の成熟せるの時にあらざる可らず、我民法は、滿二十年を以て成年となし、此成年に達したるものを以て、法律行爲能力を有するものと認むるが故に、成年に達したるものは、凡べて完全なる意思能力を有するものと、法律上認められたりと云ふことを得可きか、而して未成年者中に於ても、嬰兒の如く全く意思能力を有せざるものと、成年年齡に近き者の如き意思能力を有するも、完成を欠くものあるを、實際とするより察すれば、法律は、意思能力の有無を實際問題にまかせたるものと云ふ可し、所謂全く意思能力を有せざる未成年者は、法律行爲の基本たる意思を缺如するが故に、其行爲は、法律上有效に成立せざるは勿論にして、意思能力ある成年者の法律行爲は、完全ならざるも成立するの理なり、故に獨乙民法の如きは、未成年者を七年未滿と、七年以上とに區分し、七年未滿の幼者は、全く無能力とし、七年以上の未成年者の能力を制限せり、我民法は前述の如く、斯く區分を設くることなく、未成年者の意思能力の有無は、專らこれを事實問題とし、七年以上と雖も、事實上意思能力を有せざれば、其行爲は成立することなしとせるが如し、然して未成年者にして、事實上意思能力を有する者は、其法律行爲を成立せしむるを得べしと雖も、元來未成年者は、身體智識の發育未だ充分ならざる者にして、自己の行爲の利害得失を辨別するの能力に缺くる所あるが故に、單獨に權利の發生消滅變更の效力を生ずべき行爲を爲さしむるは、未成年者の爲めに危險なりとし、法律は未成年者を保護せんが爲めに、未成年者の法律行爲には、法定代理人の同意を必要とし、法定代理人の同意なき未成年者の法律行爲は、未成年者の側より之を取消すことを得しめたり。
- 英
- Capacity of will
- 独
- Willens-fähigkeit
- 仏
- Capacité de volonté
意思表示
(いしへうじ)意思表示は、法律行爲成立の一要件にして、法律的意思を外界に發生することを云ふなり、故に意思表示は、法律的意思及び之を表白すべき行爲の存在を要件とす、而して表白行爲の存するには、表白の源因となるべき意思活動と、其意思活動に伴隨すべき表白の認識あることを要す、盖し意思は心裡内の作用にして、内界を離るること能はざるものなれば、之を外界に發表するに非ざれば、人は之を知ること能はず、從ひて發表せられざる意思は、法律上效力を有せしむること能はざるなり、次に意思表示の方式に就きては、近世は、一般に方式を必要せざるに至れり、故に如何なる方法によるも、人をして知らしむるを得れば足れり、只例外として、或る意思表示に限り方式を要するものあり、これを特に要式行爲と稱す、たとへば手形行爲、婚姻の屆出の塲合の如し、意思表示は、意思を以て基本となすは論なき所なれども、意思と表示とは、互に齟齬するなきを保せず、意思と表示と相一致せざるときは、其何れによるべきや、之に關して意思に重きを置く主義と、表示に重きを置く主義との二あり、我民法は、元則として表示に重きを置き、意思と表示と符合せざる場合と雖も、表示せられたるものを以て、其表示者の眞意なりと認め、相手方を保護するの主義を取れり、法律上に於て、意思と表示と相一致せざる場合を、□一心裡留保、□二虛僞表示、□三錯誤及□四暴行に依る表示とす、□一心裡留保とは、眞實の意思を隱秘して、故意に之と異りたる意思表示を爲すを云ふ、此場合は原則として、其意思表示は有效なり、何となれば、此の如き場合に、意思表示が眞意と一致せざるの故を以て、無效なりとせば、善意の人を害し、取引の安全を保つことを得ざればなり、□二虛僞表示とは、相手方と通謀して爲す、眞實にあらざる意思表示を云ひ、當事者間にありては、全く之れを無效とす、然れども善意の第三者に對しては、無效を主張することを得ざるものとす、□三錯誤とは、故意なくして不慮に生ずる、眞意と意思表示との齟齬を指す、前二者は故意に生ずる意思と表示との齟齬なれども、此場合は故意なきを要し、而して其錯誤が法律行爲の要素に關する時は、其意思表示を無效なりとす、□四暴行による意思表示とは、他人の身體に暴力を加へ、或る意思を表示せしむるを云ひ、強迫による意思表示とは、他人に對して一定の意思表示を爲すに非ざれば、害惡の來るべき事を告げ、畏怖を生ぜしめ、其畏怖の結果或る意思表示を決定表示せしめたる場合を稱す、暴行による意思表示は、法律上成立せず、強迫による意思表示は、表示者に於て、任意に之を取消すことを得るを原則とす。(民法九三條乃至九八條)
- 英
- Declaration of will
- 独
- Willens-erklärung
- 仏
- Déclaration de volenté
醫師免許規則
(いしめんきよきそも)醫師の開業免許に關する法律にして、其大意を擧ぐれば、□一醫師は其の開業試驗を受け、内務大臣より開業免狀を得ることを要す、□二開業免狀を得んとするものは、試驗及第證書を添へ、地方廳を經由して、内務大臣に願出すべし、□三官立及府縣醫學校の卒業證を得たものは、試驗を要せずして、開業免狀を受くることを得、□四外國の大學醫學部、若くは醫學校に於て卒業したるもの、或は外國に於て醫術開業免狀を得たるものが、其卒業證書又は開業免狀を以て、開業免狀を受けんことを願出つるときは、内務大臣は其證書を審査し、試驗を要せずして免狀を授與することを得可し、□五醫師其業に關し、犯罪又は不正の行爲あるときは、中央衞生會の審議を經、内務大臣に於て、其業を停止又は禁止することを得、□六前項の場合に於ても、内務大臣は本人の行狀を審査し、中央衛生會の審議を經て、其禁止を解くことあるべし、若し此規則によらずして、私に醫業を爲したるものは、刑法上の罪人として、其裁判を受けざるべからず。(三九年法四七號醫師法、同年法四八號齒科醫師法、舊刑二五六條參照)
- 英
- Law of medical practi-tioner's license
- 独
- Diplomsregel
- 仏
- Loi de certificat du médecin
意匠
(いしやう)意匠は、既に存在する物品に對して、新なる外觀を呈出せしむる所の、精神的勞力の結果を意味す、我意匠登錄法によれば、工業上の物品に應用すべき形狀、模樣、色彩、又は其結合にかかる意匠は、これを登錄することを得るなり。(意匠法參照)
- 英
- Design
- 独
- Muster
- 仏
- Dessin et modele
意匠原簿
意匠原簿とは、意匠登錄の出願ありたるとき、特許局審査官之を審査し、登錄すべきものと査定したるときに於て、登錄局長が之を登錄する所の帳簿を云ふ。(意匠法)
- 英
- Original list of design
- 独
- Originalliste der muster
- 仏
- Livre or-iginale de dessin
意匠專用
意匠專用權とは、意匠法により、意匠の登錄を受けたるものが、其意匠を專用する權利を謂ふ、意匠專用權は、發明專用權、商標專用權と同じく、所謂精神的所有權の一種にして、此等の權利が、民法上の所有權とは全く其性質を異にし、從ひて精神的所有權の名稱の不當なることは、今日の學者の汎く異論なき所なれども、從來の用語の慣例により、今日に於ても公文書中往々此名稱を用ゐ居るなり、意匠專用權は、純然たる私法上の權利にして、其結果は一定の期間、他人の不行爲を要求するにあり、即ち純然たる禁止權なり、詳言すれば、登錄を受けたる日より十年間は、權利者の承諾を得るに非れば、其意匠を他人に於て、營業の目的に利用するを得ざるなり、斯くの如く意匠專用權は、私權にして財産權の一種なるが故に、讓渡、共有若くは質權の目的と爲し得るは勿論なり。(意匠法三條四條、六條一七條)
- 英
- Right of using design
- 独
- Mustersrecht
- 仏
- Droit d'employer les dessins
意匠登錄
(いしやうとうろく)意匠登錄とは、新規の意匠を案出したる者、若くは其承繼人、又は委託者、若くは費用を出したる雇主の請求により、特許局長が之を意匠元簿に登錄することを云ふ。(意匠法二條)
- 英
- Registration of design
- 独
- Mustersbeurkundung
- 仏
- Enregistrement des dessins
意匠登錄證
意匠登錄證とは、意匠登錄の證として、特許局より交付せらるる證書を云ふ、其證書には、出願者の住所氏名、意匠の名稱、意匠の應用すべき物品等を記載し、意匠原簿に登錄せられたる旨を、併記せらるるものとす。(意匠法施行細則第五條)
- 英
- Certificates of the registration of design
- 独
- Mustersbeurkundungsschein
- 仏
- Enregistrement des dessins
意匠登錄證主
意匠登錄證主とは、意匠法により、意匠專用權を得たるものを稱す、意匠登錄證主にして、意匠料納付期限後六十日を經過するも、猶納付せず、又は意匠法に基き、正當の事故なくして、代理人を置かざる場合は、特許局長は、其登錄を取消ことを得、意匠登錄證主は、其意匠を應用したる物品に、意匠登錄の標記を附することを要す、若し此標記を爲すことを怠りたるときは、其意匠登錄たることを知りて爲したる、權利の浸害者のみに對して、要償の訴を爲すことを得るに過ぎざるなり。(意匠法一三、一五、二一條)
- 英
- Possessor of the right of using design
- 独
- Besitzer des musters-rechtes
- 仏
- Possesseur du droit d'em-ployer les dessins
意匠登錄記
意匠登錄標記とは、登錄を受けたる意匠なることを、汎く世人に知らしむる爲め、其意匠を應用したる物品に附する、意匠登記の表記を云ふ、必ず此標記を附することを、法律上の義務とするものにして、其標記を怠りたるときは、其意匠登錄たることを知りて、其權利を浸害したる者に對してのみ、要償を請求することを得べく、知らずして爲したるものに對しては、何等の請求を爲す權利なきものとするは、前説の如し。(意匠法一五、二二條)
- 英
- Trade-mark
- 独
- Handels-mark
- 仏
- Marque de commerce
意匠法
(いしやうはう)意匠登錄に關する規定をなしたる法律にして、今爰に其大要を摘記すれば、意匠登錄を受くるに必要なる條件は、イ工業上の物品に應用すべき形狀、模樣、色彩、又は其結合にかかる意匠なる事、ロ其意匠の新規にして、登錄出願前公に知られ、また公に用ひられたるものにあらず、又はこれに類似するものならざる事、ハ菊花御紋所と、同一又は類似の形狀模樣を有するもの、又は秩序若しくは風俗を紊るの恐れあるものならざる事の三條件を具備するを要す、意匠專用權の附與に付きては、審査主義により、意匠案出の前後によらず、出願の前後によりて、前なるものを登錄す、其年限は十年以内なりとす、他人の登錄意匠を摸擬したるもの、又は情を知りて其摸擬したるものを販賣したるものは、十五日以上一年以下の重禁錮、又は十圓以上二百圓以下の罸金に處せらる、他の登錄意匠を侵害すべき物品なることを知り、之を外國より輸入したる者、又は情を知りて其物品を販賣したる者も亦同じ、詐僞の所爲を以て意匠の登錄を受けたる者、又は登錄を受けざる意匠を應用したる物品に登錄標記を付し、若くはこれに紛らはしき表示を爲したる者、又は情を知りて其物品を販賣したる者は、十五日以上六月以下の重禁錮、又は十圓以上百圓以下の罸金に處せらる、登錄を受けざる意匠を應用したる物品を販賣する爲め、廣告看板引札等に於て、其意匠の登錄を受けたるに、紛はしき表示をなしたる者も亦同じ。(明治三二年意匠法參照)意匠法施行細則とは、明治三二年六月、農商務省令第一四號を以て、發布せられたる規則にして、意匠法の施行に關する手續等を規定せるものなり。
- 英
- Law of design
- 独
- Musters-recht
- 仏
- Regles des dessins
意匠法施行規則
意匠料
(いしやうれう)意匠登錄證主が、國庫に納むる法定の手數料を云ふ、其大要を擧げんに、□一意匠登錄證主は、意匠料として、各意匠につき、第一年より第三年迄は、每年金參圓、第四年より第六年迄は、每年金五圓、第七年より第十年迄は、每年金七圓を納むべし、□二類似意匠の登錄を受けたる時は、各類似意匠に付き一時に金三圓を納むべし、□三意匠料は、每年一年分を登錄證の日付に應當する日に於て、前納す可きものなり、□四初年及び類似意匠の登錄にかかるものは、登錄査定書到達の日より、六十日以内に納むべし、□五前納したる意匠料は、之を還付せず、但し一時に二年分以上の意匠料を納付したる場合に於ては、未だ其納付期限に至らざるものに限り、之を還付することありとす。(意匠法一三條、一四條)
- 英
- Design fee
- 独
- Mustergebühr
- 仏
- Honoraire de dessin
移送
(いそう)一の裁判所が受けたる、自己の管轄權なき訴訟事件を、他の管轄權ある裁判所に繫屬せしむることを移送と稱す、即ち地方裁判所が、事物の管轄違なりとして訴を却下するときは、原告の申立により、同時に判決を以て、原告の指定したる自己の管轄内の區裁判所に、其訴訟を移送すべく、區裁判所が、事物の管轄違なりとして、訴を却下するときは、同時に判決を以て、其訴訟を所屬の地方裁判所に移送すべし、移送言渡の判決確定したるときは、其訴訟は、當然移送を受けたる裁判所に繫屬するものと看做さるるが故に、原告は其移送を受けたる裁判所に對し、訴狀を提出する等、新なる凖備手續を爲すを要せず、其確定判決を爲したる裁判所は、判決原本及記錄を、後に繫屬すべき裁判所へ送附すべきもの也、是れ即其裁判確定したる時は、移送を受けたる裁判所に、訴訟事件の繫屬するものと看做せる結果に外ならず、次に其移送の言渡にして、區裁判所が爲したる場合に、地方裁判所に繫屬するものとせられたるときは、先に區裁判所に提出したる訴狀に貼用せる印紙の不足分は、地方裁判所の裁判長が、原告をして之を補正せしむるものなり。(民訴九條)
- 英
- Reference
- 独
- Verweisung
- 仏
- Renvoi
委託
(いたく)委任契約の場合に於て、委任者が受任者に對して、法律行爲を爲すことの依賴、又は法律行爲に非らざる、卽ち凖委任の場合に於て、或る事務を爲すことを依賴するを、法律上委託と稱す、委託は單獨行爲を以ては成立せず、必ず相手方の之に對する承諾あることを必要とす。(民六四三、六五六條、商三一三條)
- 英
- Mandate
- 独
- Auftrag
- 仏
- Man-dat
委託販賣
委託販賣とは、商法上に用ふる語にして、自己の名を以て、他人の物を販賣することを委託販賣と稱す、法律上最も其主要なる場合は、問屋營業に關する場合なりとす、卽ち問屋營業者は、自己の名義を以て他人の爲めに、物品の販賣又は買入れを爲すを業とする者を云ふなり、問屋に關する權利義務は、問屋の項目を參照すべし、問屋にあらざる委託販賣の場合は、民法上の委任に關する規定等が、之に凖用せらるるものとす。(商三一三條以下、民六四八條)
- 英
- Consignment Sale
- 独
- Con-signation
- 仏
- Consignation
委託物費消罪
(いたくぶつひしやうぎい)受寄の財物、借用物、又は典物、其他委託を受けたる金額物件を費消したる罪を總稱す、本罪の成立條件を摘記すれば、□一犯罪の目的物は、受寄の財物、借用物、又は典物、其他委託を受けたる金額物件たる事を要す、所謂受寄の財物とは、民法上の寄託に基き、保管する所の財物を云ひ、借用物とは、使用貸借、又は消費貸借賃、貸借等によりて、占有を得たる物、典物とは、質物の謂ひなり、其他委託を受けたる物件とは、民法上の委任事務を所理する爲め、又は其事務を所理するに當り、受取たる物件を總稱す、要するに本罪の目的物は、法律行爲に基き、返還又は特定の目的方法に於て、使用すべき義務を以て、自己の所持に移されたる他人の所有物を總稱す、他人の所有物たることを要し、所有權の目的物となり得るものなりや否や、及他人の所有に屬するや否やは、民法上に於て決すべき問題なりとす、□二不法に費消したる事を要す、費消とは、自己の物とする意思實行の一種にして、換言すれば、他人の物を自己の經濟上の財産とするの謂なり、卽ち權利者を排斥して、物を處分し、物自體又は物に伴ふ經濟上の利益を喪失し、又は他に移すことを意味す、□三費消行爲の不法なることを知りたることを要す、故に例へば、他人より委託せられたる他人の金額を費消するに當り、消費者に於て、現に賠償金額を凖備し、且つ寄託者との現時の關係に於て、一時之を融通するも、別に寄託者に於て異議なかるべしと思料したるときは、假令其行爲は、外觀的に違法なるも、犯人の意思に於て不法の要件を缺くが故に、本罪を搆成せず、以上は其成立に缺くべからざる條件にして、若しも其所爲にして、騙取、拐帶其他詐僞の所爲あるときは、詐欺取罪を以て論せらるべきものなり、最後に本罪に關して、最も困難なる一二の實際問題を揭げんに、イ五圓紙幣と誤信して、十圓紙幣を引渡したる場合に、差額五圓に付きては委託關係ありやと云ふに、大審院に於ては、引渡の當時に於て委託するの意思及委託を受くるの意思なき故に、受託物に非ずと判決せり、ロ物品を買受くるに當り、目的物以外の物件が紛れ入りたる場合に、其物件につき買受人は、委託を受けたりと云ひを得るかと云ふに、即ち前例と同一理論を以て、委託關係なしと云ふを正當とす、ハ右二例に示す所と極めて相類似して、其實性質を異にするものあり、受任者が、委任事務を所理する爲め、必要なる委託關係を生じたるものこれ也、例へば、他人の爲めに、物を買入るヽに當り、賣渡人より受取たる剩錢の如きは、初め委任ありたる當然の結果として、委託物件となるものなり、二會社の重役が、會社の財産を管理する場合には、之を刑法上より云へば、委託を受けたる物件となる也、ホ郵便局吏員、配達夫の如きは、郵便物につき委託を受けなるものなり、官吏の資格に於て窃盜したる時は、監守盜罪となれども、其以外に於ては本罪を搆成す。(舊刑三九五條橫領罪の部參照)
- 英
- Embezzlement
- 独
- Ver-untreuung
- 仏
- Détournement
委託林野
(いたくりんや)國家が、市町村又は市町村の一部に、國有林野の保護を委託する事あり、其國有林野を稱して委託林野と云ふ、ア委託林野の區域は、市地村の位置、緣故及地方の狀况を參酌して、農商務大臣之を定む、イ委託林野の委託關係は、五年を超ゆる事を得ざるも、期間は之を更新することを得る也、ウ受託者は、委託林野につきて、火災豫防及消防、盜伐、誤伐其他加害行爲の豫防及防止を爲す等の義務あり、從て受託者は、其委託林野に損害を加へたるときは、之を賠償するの責に任ず、エ其他林野産物を讓與せられたるとき、必要なる場合に於ては、農商務大臣は、其委託を解除することを得。(三二年勅三六號、國有林野委託法參照)
- 英
- Entrusted forest
- 独
- Ver-trauter Forst
- 仏
- Bois consigné
意中の留保
(いちうのりうほ)慣用の法律用語としては、心裡留保と稱し、即ち表意者が其眞意に非ざる事を知りて、意思表示をなしたる場合を指す、例へば賣ることを欲せざるに拘はらず、故意に賣るとの意思表示を爲したるが如し、詳言すれば、眞實の意思を穩秘して、故意に之に異りたる意思表示を爲すを云ふ、或は相手方を欺く爲め、或は諧謔の爲めこれを爲すことあり、心裡留保の場合は、原則として、其意思表示は有效なりとす、何となれば、此の如き場合に、意思表示が眞意と符合せざるの故を以て、無效なりとせば、善意の人を害し、取引の安全を保つこと能はざればなり、然れども相手方にして、意思表示者の眞意を知り居らば、毫も損害を蒙らず、又假令表意者の眞意を知らざるも、之を知り得べかりし時は、其眞意を知らざるは相手方の不注意と言ふ可く、故に意思表示を無效とするも差支なきを以て、此場合は例外として無效となすなり。(民九三條)
- 英
- Mental reservation
- 独
- stillschweigende Vorbehalt
- 仏
- Réserve mentale
一時慰勞金
(いちじいらうきん)或る特定の場合に、一時限り慰勞として給與する金錢を指稱する也。(一五年一二月、大政官六六號達參照)
一時救貧義
(いちじきうひんぎむ)一時貧窮者を救助する義務を云ふ、此義務は、其費用を終局義務者より追徵することを得。(行旅病人取締規則參照)
- 英
- One time's duty to sup-port poors
- 独
- vorläufige Pflicht der Armenunterstützung
- 仏
- Devoir tem-poraire de sauver les pauvres
一私人
(いちしじん)國家内にありて、其統治の下にある各個人を一私人と稱す、一私人を、國家との上下の關係に於て、服從義務ある方面より之を觀察して、臣民と云ふ、故に法律上一私人と稱するは、多く各個人が對等の關係にある場合に用ふる語なるを普通とするなり。
- 英
- Inddiviual
- 独
- Einzelwesen
- 仏
- Individu
一事不再理
(いちじふさいり)一事不再理とは、刑事訴訟法上、同一事件、即ち同一の被告人に對する同一犯罪事實に付き、數多の訴訟を成立せしめざるを云ふ、故に一事不再理の原則には、次の二事項を含む、□一一の被告人に對する一の犯罪事實につき、確定裁判あれば、同一事件につき新なる訴訟を成立せしむる事なし、此禁制は、裁判に確定力を附し、公訴權を消滅せしむるに因りて認めらるる者也、□二一の被告人に對する一の犯罪事實につき、公訴が裁判所に繫屬する時は、同一事件につき新なる訴訟の起ることなし、元來一事不再理の原則適用の條件は、前後の訴訟事件同一なる事これなり、事件が同一なるには、所爲同一にして、且つ被告人同一ならざるべからず、蓋し裁判の目的たるものは、訴に係る請求にして、此請求は所爲及び人につき一定す可きものなれば也、これ訴訟法の全體より生ずる所の原則なりとす、既に裁判の目的にして、茲に制限せらるるものとすれば、本原則適用の範園も、亦これと同一ならざる可らず、然し確定判决は、被告人以外の人に對し、訴を提起するの妨となる者に非ず、即ち一定の犯罪ありとして、甲に對して有罪を言渡したる判决は、乙に對し同一の犯罪につき訴を起し、之に對し刑を言渡すの妨とならざるなり、縱令其犯罪が、一人の外犯す能はざるものなる場合に於ても、亦然りとす、此の如き場合は、本原則を適用す可き限りにあらず、同一の被告人に對する同一の所爲につき、再び起訴するを得ずとの事につき注意すべきは、各犯罪の種類が訴訟の目的たるに非ずして、所爲が訴訟の目的たることこれなり、今此所爲の同一なる事につき、二三の要點を擧ぐれば、□一所爲の同一なる事は、刑法の適用の變換、即ち罪名の變更あるも影響することなし、□二所爲の同一なることは、事實の補充又は減縮によりて變ずる事なし、□三判决に認めたる事實を變更したる場合には議論あり、例へば犯罪の日時、場所、目的方法、結果を變更するも同一所爲なりや、此解説に於ては、之等數個の事實が變更せらるるも、動作若くは結果の同一なるときは、犯罪行爲は同一なりとの説を採用せん、□四繼續犯に就きては、確定判决後の繼續の所爲は、之を新に起訴するを得れども、確定判决前の所爲は、之を提訴するを得ずとするを通説とす。(刑訴法六條の三號、二四一、二六三、二六四、二七條)
- 羅
- Ne bis in idem
一時扶助金
(いちじふじよきん)官吏及公職にある者が、其在官又は在職中、未だ遺族扶助料を受くべき年期に達せざるに、職務以外の原因によりて死亡せる時、其遺族に一時に支給せらるるものを、一時扶助金と稱す、一時扶助金を支給せらるる重要なる場合は、市町村立小學校正教員が、在職中職務の故に非ずして死去したる時は、其遺族に一時扶助料を支給せらるるものにして、其扶助料金は、在職三年未滿の者にありては、在職最終の給料一ケ月に當る金額を支給せられ、二年以後一年每に、給料年額百分の三に當る金員を增加せらる、斯の如く一時扶助金なるものは、職務以外の原因によりて死去したる場合にして、其在職年限が、遺族扶助料を受くるに足らざるときに、支給せらるヽものにて、在職年限十五年以上に亘るか、若しくは公務の爲めに死去したる場合に於ては、遺族扶助料を每月支給せらるるものなりとす。(尚官吏恩給法、軍人恩給法參照)
- 英
- One time's support
- 独
- vorläufiges Unterstützungsgeld
- 仏
- Pro-tection temporaire
一部主權國
(いちぶしゆけんこく)一部主權國とは、或一部の主權を享有することを得ざる國家を云ふ、詳言すれば、一國家にして對内主權の一部を行使するも、對外主權の行使を他の國家によりて制限せられ、若しくは全く停止せらるる國家を云ふなり、一部主權國は、如何なる主權を行使する事を得ざるやは、各場合に依りて異るも、多くの場合に於ては、外國に對して交戰するの權を有せざるもの也、而して此一部主權國の交戰權を併せ有する國家は、これを上主權國と稱す、交戰權以外の主權は、原則として、一部主權國に於て當然之を享有するも、條約を以てその享有を制限することを得るは勿論なり、一部主權國は、事實上より之を觀れば、完全なる主權國が、實力を喪失したる結果、一部主權國と爲りたるもの多しと雖も、亦未だ國家を爲さざるものが、漸時勢力を得て、完全なる主權國と爲る前に當り、先づ一部主權國と爲りたる例も亦尠からず、一部〓權國は、他國と交戰する事を得ざるものなりと雖も、宗主權國の承諾を得たる場合に於ては、此權利を有すること勿論なり、而して此交戰權なしと云ふは、自己が積極的に進むで戰爭を爲すを得ずと云ふに過ぎず、故に一部主權國は、此點に於て永久局外中立國と稍類似する所あるが如し、されど永久局外中立國に於ては、單に此制限を受けたるのみにして、一部主權國に於ては、此外權利を宗主權國に於て有せらるることあるもの也、一部主權國としては、保護國、附屬國の如き之に屬す、而して保護國は、條約によりてこれを定め、其保護の内容も亦條約によりて定むるを普通とす、附庸國は其所屬する國家の自由の權利により、束轉を受くる者にして、保護國の如く、其權利義務は條約によりて定まるものに非ず、次に以上の一部主權國を指して半主權國、又は半獨立國と稱する學者あれども、半主權國又は半獨立國と云ふときは、其主權の半分を享有するが如き疑あるを以て、之を避け一部主權國の名稱に從ふを可とす、要するに一部主權國たるには、主權の一部のみを享有するを以て足り、若し全然主權を喪失するときは、既に國家たることを得ざるなり。
- 英
- Semi-sovereign or imperfectly independent state
- 独
- Halbsouveränstaat
- 仏
- Etat mi-sou-verain
半主權國
- 英
- Semi-sovereign or imperfectly independent state
- 独
- Halbsouveränstaat
- 仏
- Etat mi-sou-verain
半獨立國
- 英
- Semi-sovereign or imperfectly independent state
- 独
- Halbsouveränstaat
- 仏
- Etat mi-sou-verain
一部出庫
(いちぶしつこ)寄託者が、倉庫營業者に寄託したる貨物の一部の返還を受くる場合を、一部出庫と稱するものにして、寄託したる者が、倉庫證券の所持人として、物品の返還を求むるを得るは勿論、其一部の返還も、亦これを求むるを得るなり、此場合に於ては、其報酬及び立替金、其他受寄物に關する費用を、其物品の割合に應じて仕拂はざる可らず、寄託者自身に於て、倉庫證券と引換へに物品の返還を求むる場合は、右の如く甚だ簡單にして、何等の疑點を生ぜずと雖も、倉庫證券は物權的性質を有し、其證書自體の轉輾流通によりて、寄託貨物の讓渡、または質入れと同樣の效果を生ずるものなるが故に、若し倉庫證券が轉々して、寄託者以外の者の手に渡りたる場合に、該貨物の一部出庫は、如何にして之を爲すことを得るやの點は、少しく説明を試むるの要あり、抑も我が法に於て、倉庫證券なる者は、倉庫營業者が、物品の寄託者の請求に應じて發行する一種の商業證券にして、一定の形式を具へ、預證券と質入證券との二を包含し、一は以て貨物を預りたることの證明となし、一は以て質入れの場合に、質入證券を以て、その貨物の質入れを爲さしむるの便宜に供するものなり、今質入證券の所持者が貨物の處分を爲し、自己の債權の辨濟を受けんとする場合は、多くは全部貨物の出庫となり、一部出庫の場合を生ずること甚だ稀れなり、また質入證券と預證券とを合して質入れしたる場合にも、前段の如く全貨物の處分となり、一部出庫の問題を生ずること少し、故に預證券を所持するものが、倉庫營業者に對して、一部出庫を請求することに關して説示する所あるべし、即ち質入證券と分離して、質入證券のみを以て質入れしたる場合は、甚だ面倒となるなり、この場合に於て、預證券のみを所持する者が、其寄託物の全部返還を求むる時には、先づ質入證券に記載したる債權の全額、及び利息を倉庫營業者に供託して、物品の返還を請求せざるべからず、而して預證券のみを所持者が、物品一部の出庫を請求するには如何、商法は單に此の場合にも、一部出庫を爲し得ることを定めたるに過ぎずして、其詳細なる規定を存せず、實際に於ては、商業の敏活を計るが爲めに、必要を感じ、此等の場合にも、頻りに一部出庫を行ふものあるの姿にして、その方法は實際上二派に分る、一は相當の金額を倉庫營業者に供託して、一部の出庫を爲し得るものとし、他は相當の金額を質權者に辨濟して、一部の出庫を爲し得るものとせり、然るに第二の方法は、畢竟質權者の何人たるを知ることを得ざる場合に於ては、到底實行し難し、故に此弊害を免るる爲めに、倉庫營業者と質權者との間に特約を設けて、質權設定每に之を通知するものとなしたり、然れども特約なきときは致し方なき爲めに、一般前揭第一の方法は、頗る勢力あるものの如し、斯る方法は、法律の規定を俟つにあらざれば、圓滑に行はるべきものに非ず、實際に於ては、倉庫營業者と質權者との特約によりて、一部供託を爲すことを得るの姿なりとす、過般倉庫營業者總會に於て議決したりし結果は、第二の方法を採用したり。(商三七七條)
- 英
- Partial delivery
- 独
- theil-weise Zurücknahme
- 仏
- Retrait partiel
一分判決
(いちぶはんけつ)裁判の判決に、訴訟の全部又は一部を終局する所の判決を總稱して、終局判決と云ふ、前述の如く、終局判決なるものは、必らず訴訟の全部に對する判決たることを要せず、或る場合に於て、訴訟の一分に對して之を爲すことあり、此一分に對する判決を一分判決と稱するなり、民事訴訟法は、訴訟が裁判を爲すに熟する時は、裁判所は終局判決を以て裁判を爲すと規定し、又一の訴を以て起したる數個の請求中の一箇、又は一箇の請求中の一分、又は反訴を起したる場合に於ては、本訴若くは反訴のみ裁判を爲すに熟する時は、裁判所は終局判決(一分判決)を以て裁判を爲す、但し裁判所は、事件の事情に從ひて、一分の判決を相當とせざる時は、これを爲さざることを得云々と定めたり、即ちこれによりて見るも一分判決は、終局判決の一種なることを明かなり、次に一分判決と中間判決とは、時として甚だ分別し難き場合あれども、其效果を甚だしく異にするものなれば、此二者は明かに分別して、混同せざらんことを要す、所謂中間判決とは、終局判決に對する名稱にして、訴訟の全部若くは一部を終局する判決に非ず、其全部若しくは一部の終局判決を凖備するが爲め、又は當事者と第三者との爭を決するが爲めに、爲す所の判決を云ふなり、民事訴訟法の定むる所によれば、中間判決を爲すべき場合は、各個の獨立なる攻擊、若しくは防禦の方法が、裁判を爲すに熟したるとき、及び中間の爭が裁判を爲すに熟したるとき之なり、之に依り前揭の二者を明かに區別するを得可し。(民訴訟法二二五、二二六條)
- 英
- Partial judgment
- 独
- Teil-urteil
- 仏
- Jugement partiel
一部保險
(いちぶほけん)火災保險、海上保險等の捐害保險の場合に於て、保險金額を定むるに關し、保險價格の一部のみに就きて、保險を契約する事あり、此れを稱して一都保險と云ふ、例へば一千圓の價格を有する家屋を、五百圓の保險金額として、保險契約を締結する場合の如し、此等の場合に、損害が發したるときは、保險者の負擔は、保險金額と保險價格との割合に應じてこれを定むるものにして、前例に於ける家屋が全燒したる時は、五百圓を保險者より支拂ふべく、半燒の場合に於ては、二百五十圓を支拂ふべきが如し、海上保險契約に於ては、保險者が被保險者に於て、負擔すべき共同海損の分擔額をも、塡補するの責に任ずるものにして、此場合に一部保險たりしときは、前同樣に保險金額の保險價格に對する割合に依りて、これを定むるものとす、一部保險に於ては、困難なる問題の實際に生ずること尠からず前例の如き場合は、一部保險たること最も明かなりと雖も保險契約は、必ずしも、保險價格の全部を包有するものに非ず、當事者の意思によりて、保險金額を自由に定むることを得るものなるが故に、一部保險は屢行はるる所にして、且つ目的物の價は、時々變動すると同時に、使用によりて減價するを普通とするものなれば、事故の發生に際する損害の額が、保險價額に超過せざること屢なり、特に被保險者が、目的物の價の下落によりて、寧ろこれを抛棄して、代價を得んと欲する念慮を起し、或は之れに惡意の加はる場合を慮りて、保險者は常に保險價額の全部を保險に附する事を避け、或は八掛、九掛と云ふが如く、責任額を定むるを通常とす、これ素より一部保險の場合たるは勿論なれども、其目的物の價格と保險金額と、最も近づきたる場合、例へば千圓の家屋に對して九百九十九圓の保險金額を契約したる場合は如何にと云ふに、これも等しく一部保險と言はざる可らず、要するに全部保險たるや、一部保險たるやの分別點は、其契約に於ける額が、亙に一致するや否やによりて定むるものとす、而して保險契約を爲すに當り、目的物につきて保險價格を定めずして、保險金額のみを定めたる時は、普通に於て其保險金額を以て、保險價格と推定せらるるものとす、何となれば、定額保險に於て、保險價格を定めざるときは、保險金額を以て當事者間に於て、保險價格と見做したるものと推定することを得ればなり。(商三九一、六五五、六五八條)
- 英
- Partial Insurance
- 独
- theil-weise Versicherung
- 仏
- Assurance par-tielle
一人數罪
(いちにんすうぎい)一人にて二個若くは二個以上の罪を犯したるものを、一人數罪と稱し、再犯及數罪俱發は、これに該當するものなり、再犯と云へば、一度罪を犯して、其確定裁判を受けたる後、再び他罪を犯したる總ての場合を包含し、數罪俱發とは、同一の犯人につきて、確定判決を受けざる二個以上の罪の發覺したる場合を云ふ、數罪俱發と、再犯との區別は、確定判決を受けざる二個以上の犯罪なるや、又は確定判決を受けたる後の犯罪なるやによりて、區別するを普通とす。(刑四五條乃至五五條)
- 英
- Many crimes committed by one person
- 独
- viele Verbrechen von einer Person
- 仏
- Beaucoup de crimes commises par une personne
一年志願兵
(いちねんしぐわんへい)我帝國臣民にして、滿十七歳以上二十八歳以下の男子の、豫備陸軍將校たるの希望を有するものは、官立學校(小學校及撰科を除く)府縣立師範學校、中學校、若しくは文部大臣に於て、中學校の學科程度と同等以上と認めたる學枚、若くは文部大臣の認可を經たる學則によりて、法律學、政治學、理財學を教授する私立學校の卒業證書を所持し、若くは陸軍試驗委員の試驗に及第し、服役中、食料、被服、裝具等の費用提出して、一ケ年間現役は服することを得るものなり、是等の者を一年志願兵と稱す、一年志願兵を出願するものは、其願書に、戸籍謄本、履歷書(後に書式雛形あり)を添へ、本籍地の市町村、島司、郡長、聯隊區司令官を經て、一月三十一日迄に師團長に差出す可し、此願書には、前揭學校卒業者にありては、學校長の卒業證明書、戸主に非ざる者は戸主、未成年者にありては、親權者の服役承認書(書式後にあり)を添付すべし、志願者にして一月三十一日迄に、前揭學校を卒業せざるものは、其年の十月三十一日迄に卒業すべきものに限り、學校長の證明書を以て、卒業證書に代ふることを得、志願者にして、專門學校又は之と同等以上の學校に於て、法律又は經濟の學校を卒業したるものは、主計生に、醫術開業免狀を有し、又は之れを受くべき資格ある者(官立醫學校の卒業生)は、軍醫生に、藥劑師免狀を有し、又は之を受くべき資格あるものは、藥劑生に、獸醫開業免狀を有し、又は之を受くべき資格あるものは、獸醫生たらんことを志願することを得るものとす、一年志願兵の納むべき金額は百〇五圓にして、騎兵科に出願するものは、此外に百五十六圓を要し、入營する前月十五日迄に、所屬隊に納付すべきものとす、一年志願兵は、營内に居住するを本則とし、入營後六ケ月を經過したるときは聯隊長に於て外泊を許し、通勤せしむることを得るなり、一年志願兵として認定せられ、認定證書を有するものは、每年十二月一日に入營する者とし、戰時又は事變ある場合は、特に變更せらるることあるべし、而して此認定證書を有するものにして、傷痍疾病其他已むを得ざる事故あるときは、入營を延期せらるることあり、一年志願兵は、現役滿期後、終末試驗を行ひ、其試驗の成績と、平素の勤勉とを參酌し、及第者には豫備役編入の際に、終末試驗及第證書を下付す、又各兵科の者は軍曹に、主計生は二等計手に任じ、軍醫生及藥劑生は二等看護長の階級に、獸醫生は二等蹄鐵工長の階級に進めらる、而して豫備役後將校たるには、陸軍服從條例の定むる所によりて、少尉相等官に任ぜらるるものとす、一年志願兵の豫備役は、六年四ケ月、後備役十年にして、(一年志願兵條件改正の件にて、五年を十年と改められたり)司法官試補及判任官見習、幷に非職休職の官吏にして、一年志願となるものは、其儘にて服役することを得、但し有給者には俸給を給せず、試補及判任見習にありては、服役時日を實務練習の時期に算入せざるものなり。(軍陸一年志願兵條例、同條施行細則、三七年九月、一年志願兵條件中改正の件參照)
一年志願兵出願に關する書式左の如し、
一年志願兵服役願
某儀
徵兵令第十三條ニヨリ服役中ニ關スル費用金額ヲ自辨シ一年志願兵トシテ服役致度候間御許可相成度別紙所要書類相添此段奉願候也
追テ陸軍一年志願兵條例第二十六條ニヨリ勤務演習ノ爲メ召集セラルル際ニ於テハ之ニ要スル費用モ自辨可致候也
本籍
寄留地
年月日氏名□印
何年月日生
何師團長爵位氏名殿
追テ左ノ通希望致候也
一受驗場何地
第一何兵
二希望兵科第二何兵
(主計生、軍醫生、藥劑生、獸醫生希望者は其旨を記すべし)
受驗場は、本籍地師管内又は寄留地師管内に限る、臺灣に於て服役せんとするものは、臺灣守備混成旅團司令部所地とす
履歷書
一、何年何月何日何學校へ入學何年何月何日同校卒業
一、何年何月何日何所ニ於テ何々硏究
一、何年何月何日何々ニ從事ス
一、一年志願兵出願ニ關スル件左ノ如シ
一、未ダ出願セシコトナシ
一、何年何々ノ爲メ何所管ニ於テ不採用
一、何年一年志願兵認定證書ヲ受領セシモ何々ノ爲メ服從セズ
一、例年何月何日何ニヨリ賞(罰)等(右の外履歷に關する事項は悉く記載すべし)
右之通相違無之候也
年月日氏名印
一年志願兵服從承認書
氏名
年月日生
右者一年志願兵トシテ服役ノ儀承認致候就テハ服役幷一年志願兵條例第二十六條ニヨリ勤務演習ニ要スル費用ハ無相達上納可致候也
本籍地
寄留地
年月日戸主氏名印
(二十未滿の志願者にありては、戸主及親權を行ふものの連署を要す、此場合には氏名の上に親權者と記載すべし)
- 英
- One-year volunteer
- 独
- Einjahr Freiwilliger
- 仏
- Volontaire pour un au
一年志願兵認定證書
(いちねんしぐわんへいにんていしようしよ)一年志願兵の出願者に對し、相當の檢査を行ひ、合格者と認められたる場合には、本籍所在師管の師團長は、之に認評狀を下附するものにして、此認許狀を稱して、一年志願兵認定證書と稱す、此證書を有するものにして、正當の事由無く、所定の期日に入營せざるときは、一年志願兵たるの資格を失ふものとす、其形式左の如し。(陸軍一年志願兵條例第十條)
一年志願兵認定證書
府(縣)族籍
氏名
年月日生
陸軍一年志願兵タル資格ヲ具有スル者ト認定す
但何兵第何聯隊ニ於テ服役スベシ
年月日職爵氏名印
(他師管軍隊に於て服役するものにありては但書を「但何師團ニ於テ服役スベシ」と記す)
- 英
- Permission writing of one-vear's volunteer
- 独
- Erlaubnis-schein des Einjahrfreiwilligen
- 仏
- Lettre de permission du volontair pour un au
市場
(いちば)商品の賣買取引の目的を以て、一定の日時に於て、營業者の集合する一定の場所を指稱す、市場には竸賣を爲すものと、單に公に賣買を爲すものとの二種あり、而して通俗に市場と稱する場合には、此何れのものをも包含す、現時に於ける取引所の如き、著しきは古道具營業者間、古着營業者間、書類營業者間にかける市場と稱するものは、茲に所謂市場の適例なりとす。(民一九四條)
- 英
- Market
- 独
- Markt
- 仏
- Marchè
一覽拂
(いちらんばらひ)一覽拂とは、手形行爲に關する法典上の用語にして、手形金額の支拂義務者が、手形所持人より支拂要求の爲め、手形の呈示を受けたる場合に、手形を一覧後即時に支拂ふべき支拂方法を云ひ、其手形を稱して、一覽拂手形と云ふ、抑も手形振出人が、手形の振出を爲すに當りては、一定の滿期日を記載せざるべからず、一覽の日も亦確定したる日時にして、一覽拂たる旨を記すれば、一覧拂手形となるなり、法律は共に此滿期日の記載なき時は、之を一覽拂手形たるべきと看做せり、故に滿期日を記載すべき場合に、年のみを記載したる時は、一覽拂手形たりと認めらるるものとす、一覧拂手形(爲替手形、約束手形の二者を含む)にありては、所持人が支拂要求の爲め、呈示を爲したる時に於て、滿期日となる、呈示の日即滿期日なり、而して其呈示は、一年を以て法律上の期間となし、手形所持人は、必ず一年内に手形支拂の爲めに、呈示を爲さざるべからず、振出人は、一年よりも尚短かき期間を記載して、呈示を爲すべきことを定め得べし、所持人に於て、右の一年、または振出人に於て定めたる期間内に、呈示を爲さざるときは、手形上の前者(振出人及裏書人)に對する償還請求の權利を失ふべく、此場合には、唯不當利得によりて、償還を求むることを得るに過ぎざるに至る、若し爲替手形が、一覽拂たる場合に於ても、其手形支拂の引受が、存し得るや否やは、法律上の問題として、聊か硏究するを要す、蓋し一覽拂手形は、呈示の時に於て、滿期日となり、所持人は、呈示期間内何時にても、手形を呈示して、支拂を求むることを得るが故に、先づ引受を求め、然る後更に呈示して、支拂を求むるは、徒に無用の手數を勞するのみならず、即時の仕拂要求に代へて、特に支拂の引受を求むるが如きは、寧ろ必要は道理を爲すと言へば、其反對に不道理なりと云ふ可し、我商法は、一覽拂手形の引受に就きて、何等の規定を爲さず、又引受人に對する權利につきて、何等の明文なきは、詢に故あるなり、小切手は、我商法上總べて一覽拂のものとし、一定の支拂期日を附するを認めず、小切手の所持人は、其日附より一週間内に、遠近を問はず、支拂者に呈示して、其支拂を求むることを要す、若し此期間内に呈示を爲さざる時は、前者(振出人、裏書人)に對して償還請求權を失ふ、唯不當利得によりて、償還請求を爲すを得るは、他の手形に同じ、小切手に支拂期日を附記したる時は、其支拂期日は、手形法上何等の效力なしと雖も、小切手たる效力を害するものに非ず、外國の立法例に於ては、小切手に支拂日を記載するも、常に一覽拂と看做すべきことを規定するものあれども、我商法はかかる明文を揭げず、されど法律上小切手は、一覽拂たるの精神を推して、同一の解譯を爲すを妥當と信ず、最後に注意すべきは、茲に一覽と稱するは、支拂義務者が、偶然に一見したる場合を云ふものに非ずして、支拂要求の呈示を受けたる場合を意味するものなること是なり。(商四五一、四八二、五三二條)
- 英
- Payment at sight
- 独
- Sichtzahl-ung
- 仏
- Paiement à vue
一覽拂手形
一覽後定期拂
(いちらんごていきばらひ)一覽後定期拂とは、手形に關する法典上の用語にして、手形所持人の呈示によりて、支拂義務者が、一覽後確定せる期間を經過したる日を以て、手形金額の支拂を爲すを云ひ、其手形を稱して、一覽後定期拂手形と云ふなり、例へば振出人に於て、此手形一覽後何日を以て、滿期日とすと記載したる場合の如し、而して此一覽後定期拂も、前項に於ける説明の如く、法定の最長期を一年とし、所持人が必ず一年内に呈示せざるべからず、また振出人に於て、一年より短き期間を定むることを得べく、此場合は、其期間を遵守せざるべからず、所持人に於て、此呈示を怠り、其期間を徒過したる時は、前者即ち振出人又は裏書人に對して、償還請求權を行ふことを得ざるに至る、而して此手形は、一覽したる後に記載の期日を經過して、初めて支拂の滿期日となるものなり、之を要するに、一覽後定期拂なる語は、爲替手形及約束手形に用ひらるる語にして、小切手は、總べて一覽拂たる性質を有するが故に、一覽後定期拂の問題を生することなし。(商四五〇、四六六條)
- 英
- Payment on a fixed day after sight
- 独
- Nachsichtzahlung
- 仏
- Paiement â un jour déterminé après le vue
一方行爲
(いつぱうかうゐ)一人の意思表示によりて成立する法律行爲を、一方行爲と稱し、我民法に於ては、之を單獨行爲と稱す、例へば寄附行爲、遺言、催告、法律行爲の取消、追認等は、此種の法律行爲に屬するもの也、而して一方行爲に相對するものは、双方行爲にして、即ち契約の場合なりとす。
- 英
- Unilateral transaction
- 独
- einseitiges Rechtsgeschäft
- 仏
- acte uni-latéral
一方的商行爲
(いつぱうてきしやうかうゐ)商行爲を或る方面より分類するときは、一方的商行爲と、双方的商行爲とに別つ事を得、即ち當事者一方に對してのみ商行爲たる場合を、一方的商行爲と稱し、双方に對して商行爲たるものを、双方的商行爲と稱する也、講學上所謂相對的商行爲の如きは、之を營業となしたる場合に於てのみ商行爲たるものなれば、商人と非商人との間に、其行爲が爲されたるときは、當事者の一方に對してのみ商行爲となり、所謂一方的商行爲に該當する也、又手形に關する行爲の如きは、商人たると非商人たるとを問はず、双方に對して商行爲たるものなれば、一方的商行爲の部類に入るべからず、我商法は、一方的商行爲の場合に於て、商法の規定を、當事者双方に適用することを原則とす、詳言すれば、商人たると非商人たるとを問はず、當事者の一方のみにとりて、商行爲たる法律行爲を成立したる場合には、總べて商法の適用を受けざるべからず、我商法第三條は、此旨を規定するものにして、一方に商法を適用し、一方に民法を適用するは、當事者間の法律關係を煩雜ならしむるの虞あるを以て、特に双方に商法を適用するものと規定したり。(商三條)
- 英
- Unilateral commercial transaction
- 独
- einseitiges Handelsges-chäft
- 仏
- Acte de commerce unilatéral
一級選擧人
(いつきうせんきよにん)等級選擧の制度に於て設くる選擧人の等級中、第一位にある選擧人を一級選擧人と稱す、我市制によれば、市會議員の選擧人は、之を分ちて三級となし、選擧人中、直接市税の納額最も多き者を合せて、選擧總員の納むる總額の三分の一に當る可き者を、一級選擧人となす、是一級選擧人の例なり、又町村制によれば、町村會議員の選擧に關して、選擧人を別つて二級となし、選擧人中直接町村税の納額多き者を合せて、選擧人全員の納むる總額の半に當るべきものを、一級選擧人と爲す旨を規定したる場合も、亦其一例なりとす。(市制一三條、町村制十三條)
- 英
- First class elector
- 独
- Wahlmann der ersten klasse
- 仏
- Electeur de la première classe
一級町村
(いつきうちやうそん)北海道一級町村制の條文中に用ひらるる語にして、北海道中の町村を分ちて、一級町村、及び二級町村に分ち、之に關する行政法の適用を異にする爲め、特に一級町村制、幷に二級町村制を規定して、之を適用するなり、如何なる町村を以て一級町村とするやは、法令の定むる所によらざるべからず、即ち三三年五月、内務省令一九號に於て指定する所なりとす。(北海道一級町村制、一級町村制實施地指定參照)
- 英
- First class town or village
- 独
- erste klasse Stadt oder Dorf
- 仏
- Ville ou village de la première classe
一級俸
(いつきうはう)官吏の俸給を、一級二級三級等に分ち、其第一位の等級に位する俸給を一級俸と云ふ、尤も同じく一級と稱するも、高等官、判任官、武官等の別により、俸給額も同じからず、高等官一級俸は、各所屬官署によりて同じからざるも、年俸二千五百圓、二千圓、千二百圓の三級に分たれ、判任官の一級は月俸七十五圓、技師の年俸は勅任四千圓、奏任二千五百圓、等の別あるが如し、詳細を知らんと欲せば、各俸給令によらざるべからず。(高等官俸給令、判任官俸給令)
- 英
- First class salary
- 独
- erste klasse Gehalt
- 仏
- Salaire de la première classe
一家創立
(いつかそうりつ)一家創立とは、新戸創立の場合の一にして、戸主權取得の一なる特別原因なり、即ち或る家族が分家によらずして、其家より分離して、別に新家を創立する場合を指稱す、其場合の重要なるものを擧ぐれば、□一父母共に知れざる子は、一家を創立す、父母共に知れざる子とは、主として棄兒、迷兒を云ふ、棄兒の處分は、本邦の舊慣に於ては、所預り又は貰受の二とし、一時これを無籍者となし、或は貰受人の戸籍に附せしめたるも、新民法は、其子は一家を創立して當然戸主となり、新に氏名を稱するものと定めたり、然れども、これは父母共に知れざるにより、巳むを得ざるに出でだる臨機の處分なるを以て、その後父又は母の認知したるときは、當然其新家を廢して、父又は母の家に入り、其氏を改あて、父又は母の氏を稱するものとす、□二私生子が、父又は母の家に入ることを得ざるときは、一家を創立す、家族の庶子又は私生子が、戸主の同意を得る能はずして、其父又は母の家に入る事を得ざる場合に生ず、例へば、庶子が其父の認知を受けたるも、其父の戸主の同意を得ざるがため、父の家に入るを得ざるときは、母の家に入り、又母の家にても入る能はざるとき、又は父の認知を受けざる私生子が、母の戸主の同意を得ざるがため、母の家にも入る能はざるときは、別に一家を創立す、此場合に於ては、父又は母の氏を稱するを要す、□三或る家が絶家となりたる場合、卽ち戸主なきに至るときは、其家族は、新に一家を創立す、□四其他歸化人にして、日本人の家族とならざるものが、日本に於て一家を創立する場合等は、その主たる場合なりとす。(民七三三、七三五條、戸籍法一五三條、國籍法參照)
- 英
- Establishment of a house
- 独
- Gründung eines Hauses
- 仏
- Eta-blissement d'une maison
一審
(いつしん)一審とは、訴訟法上に於ける用語にして、裁判手續進行に關する段階の一種なり、即ち最初に於て裁判を爲し、訴訟事件を終局せしむる迄の間を稱して、第一審と云ふ、第一審裁判所としては、區裁判所及地方裁判所なりとす。(民訴二一條以下)
- 英
- First instance
- 独
- erste Instanz
- 仏
- Première instance
一式引受人
(いつしきひきうけにん)伊豆國大島の波浮港(村名)に於ける、行政機關の名稱にして、内地の町村長に該當するもの也、元來伊豆國大島は、本土より七里を離れし絶海の一孤島なるが故に、内地の如く、一時に舊慣を改むる事をせず、言語風俗等も、恰然元祿時代に於けるが如し、而して島民統治上斯かる舊慣は、寧ろ之を保存せしむるを可とし、法律も敢て村長を戸長若しくは村長と云はず、依然として舊來の一式引受人の語を使用せるものなり。
- 英
- Head of village
- 独
- Dorfs-häuptling
- 仏
- Chef d'un village
一親等
(いつしんとう)民法上親族の遠近を表はすために用ふる語にして、親族間に一世を隔つる者の上に存する距離を一親等と云ふ、主として親等とは、血統の遠近を表はすために使用せられしものにして、其本來の性質に於ては、血族間にのみ適用せられしものなりと雖も、姻族間に於ても、亦血族に凖じて其親等を定むるを得、卽ち姻族間に於ける親等は、其配遇者との間に於ける親等によりて定まるものなり、例へば、自己より指す場合に於て、自己の父母、又は自己の子は一親等と云ふが如く、其隔つる世數を計算して何親等と稱するなり、又自己の祖父母、及び自己の孫は、卽ち二親等となるなり、次に配遇者の父母は一等姻族親にして、其祖父母は二等姻族親たり、右は直系の親族間に於ける計算法なれども、傍系親に係る計算は、自己より同始祖に遡り、其始祖より他の一人に下るまでの世數による、故に自己の兄弟の親等を計算せんとすれば、先づ父(一親等)に遡り、父より兄弟に下る、即ち兄弟は二親等となる、傍系親間には一等親なし、其最も近親なるは兄弟姉妹にして、二等親なり、伯叔父母と甥姪とは三等親、從兄弟は四等親なり、其他之に凖ず、傍系の姻族の親等も亦之と同じく、配遇者の兄弟姉妹は、傍系の二等姻族親にして、配遇者の伯叔父母、甥姪は、三等姻族親なり、今讀者の便宜の爲めに、大畧を圖解すべし。(民七二六條)
曾孫
(三)
孫
(二)
子
(一)
自己
兄弟
(二)
甥姪
(三)
兄弟の孫
(四)
父母
(一)
伯叔父
(二)
從兄弟
(三)
從兄弟の子
(四)
傍系親
直系親
祖父母
(二)
曾祖父母
(三)
- 英
- Family of first degree
- 独
- Familie der ersten klasse
- 仏
- Famille de la première degré
一身に專屬する權利義務
(いつしんにせんぞくするけんりぎむ)權利者、又は義務者の一身に專屬して、他人に移轉し、又は他人が承繼する能はざる權利義務を指稱す、財産權以外の權利、就中、戸主權、親權、夫權、後見人の權利、離婚又は離緣を求むるの權利、私生子の認知、其他一般に親族關係より生ずる權利は、權利者其人に附著する權利にして、之を他人に讓與する事を得ず、財産權は、槪して權利者の一身に附著せずと雖も、常に必しも然らざるものあり、例令ば委任契約、又は雇傭契約は、多くは當事者一人の一身に着眼して締結せらるるを以て、此種の約束より生ずる權利義務は、其者以外に於て、行使すること能はざるもの多きに居るなり、一身に專屬する權利義務に關して、法律上の關係を生ずる場合の重なるものは、□一家督相續人は、相續開始の時より、前戸主の有せし權利義務を承繼するも、前戸主の一身に專屬せる權利義務は、之を承繼することを得ず、□二債權者は、自己の債權を保全する爲めに、其債務者に屬する權利を行ふことを得(間接訴訟と稱す)るも、債務者の一身に專屬するものは、此限りに非ず、□三定期の給付を目的とする贈與は、贈與者、又は受贈者の死亡と共に、其效力消滅し、相續人に於て之を承繼するを得ず、□四使用貸借の場合に於ける借主は、貸主の承諾を得るに非ざれば、借用物を他人をして使用せしむる事を得ず、□五雇傭契約に於て、使用者は、勞務者の承諾あるに非ざれば、其權利を第三者に讓る事を得ず、又勞務者も使用者の承諾を得るに非ざれば、第三者をして自己に代りて、勞務に服せしむる事を得ず等は、重要なる場合なりとす、終りに注意すべきは、扶養義務、終身年金雇傭契約に關して、已に仕拂期限に至りたるも、未だ其支拂を受けざりし金錢の如きは、之が請求に關する一種の債權として存在するものなるが故に、此場合には、其權利を讓與、移轉し得べく、一身に專屬するものと云ふを得ざるなり。(民五五二、五四九、六二五、九八六、四二三條等)
- 英
- Right and duty which is merely personal
- 独
- Recht und Pflicht der höchstpersönlichen Natur
- 仏
- Droit et Obligation purement person-nels
一定の申立
(いつていのまうしたて)民事訴訟法上の用語にして、判决を求むる要點、判决の基本となるべき要點を、當事者より裁判所に對して申立つることを、一定の申立と稱す、訴訟を提起する場合には、訴訟狀に必ず一定の申立を記載することを要し、此記載を缺く訴狀は無效なり、例へば契約履行の訴に於て、被告に契約を履行すべしと、命ぜられたしと請求する如き、損害賠償の訴に於て、被告に幾何の損害金を支拂ふべしと、裁判ありたきことを請求するが如き、又控訴にありては、原裁判は不法に付き、全部取消の上更に適當の裁判ありたしと請求するが如き是なり、而して一定の申立は、起訴者が事件につき、如何なる判决を請求するにあるやを表示するためのものなれば、其請求の主旨を明記すれば足り、必ずしも其訴求の目的を逐一列託するに及ばす、若し訴狀にして一定の申立を缺くときは、裁判所はこれを受理することなし、然れども、直にこれを無效とするも、亦嚴格に失するの嫌あるを以て、裁判長は相當の期間を定め、而して其期間内に、欠缺を補正するの條件を以て、其訴狀を預り置く事を得るものとす、而して原告にして、期間内に欠缺を補正するときは、其訴狀は之を差出したる日に遡りて、效力を生ずるものとす、故に例へば、訴狀の欠缺補正期間中に、出訴期間を經過することあるも、原告にして其欠缺を補正するときは、其出訴期限は、前に訴狀を差出したる日に於て、其進行を中斷せられたるものと爲るなり、去れど若し原告に於て、欠缺を補正せず、空しく期間を經過するときは、裁判長は其訴狀を差戾すを以て、出訴期限は中斷せられざることとなり、遂に原告は、再び訴を起す事能はざるに至ることあるべし。(民訴一九二條)
一等郵便局
(いつとういうびんきよく)遞信官省官制に依れば、郵便局は、之を一等、二等、三等に分つ、即ち茲に所謂一等郵便局とは、其最上位に位する郵便局を指稱するものにして、一等郵便局は、其管轄區域内の郵便、郵便爲替貯金、電信及電話の管理事務、竝に局舍營膳事務の一部、及電信電話の建築事務を管掌し、其局長は奏任とし、遞信大臣の命を受けて、局務を掌理するものとす。(通信官署官制三條、五條)
- 英
- First class post office
- 独
- erste Klasse Postanstalt
- 仏
- Bureau de poste de la première classe
一等傷
(いつとうしやう)巡査、看守、皇宮警手等が、其職務によりて受けたる傷痍、其他一般人民が、巡査同樣の働きを爲して受けたる傷痍の輕重により、之に一等、二等の等級を付して、給助、又は扶助料額の等差を定むる標凖となし、其終身不具となり、自用を辨ずる能はざる程度の傷痍を一等傷と云ふ、軍人の疾病、傷痍に就きても亦此の如く區別せらる、例へば軍人が、公務上受けたる疾病傷痍は一等傷にして、普通の疾病傷痍は之を二等傷となし、特に軍人の品位を害す可き行動に依りて受けたる疾病傷痍、例へば花柳病の如きは、所謂三等傷なりとす。(皇宮警手給助例五條一號等參照)
- 英
- First class wound
- 独
- erste klasse Wunde
- 仏
- Blessure de la pre-mière classe
一般
(いつぱん)特殊に對して用ひらるる漠然たる語にして、この漠然たる所、軈て其本性を表はし居るなり、實際は、一般てふ語を使用する場合に依りて、幾分か其意義を異にするものあるべしと雖も、要するに專門、部分、界限等に對して普通、多數、大部等の意義を表はすに用ひらる。
- 英
- General
- 独
- allgemein
- 仏
- Général
一般會計
(いつぱんくわいけい)會計法に凖據すべき國家の普通の場合に於ける會計を、一般會計と稱し、之に反するものを特別會計と云ふ、國家の會計は、多くは普通の場合に於ける一般會計として、會計法の規定によらざるべからざるも、特別の場合に於て、會計法に凖據し難きことあり、此等の場合に於て、政府は特別法を以て、特別會計を定むるを例とす、臺灣總督府特別會計法の如き是也。(會計法參照)
- 英
- General account
- 独
- allge-meine Rechnung
- 仏
- Comte général
一般承繼人
(いつぱんしようけいにん)或人に屬せし一般の權利義務を、包括的に承繼せる者を一般承繼人と稱す、相續人は、被相續人に對する一般承繼人にして、包括受遺者は、遺贈者の一般承繼人なり、此一般承繼人に對するものを特定承繼人と云ふ、即ち或る特定の權利のみを承繼したるものを指すなり、彼の賣買に於ける買主の如し、承繼人の用例は、民法上に於て所謂取消し得べき意思表示を爲したる場合に於て、其取消し得べき行爲は、承繼人に於て之を取消すことを得と云ふ方面より觀察して、之を用ふ、茲に所謂承繼人は、一般、特定二種の承繼人を包含するなり、又占有回收の訴の場合に於ては、被侵奪者は、侵奪者の一般承繼人に對しては、其訴を爲すことを得るも、特定承繼人に對しては、之を爲すことを得ざるものなり。(民一二、二〇〇條)
- 英
- General successor
- 独
- allgemeiner Nachfolger
- 仏
- Successeur général
一般成立要素
(いつぱんせいりつえうそ)總べて或る事物の成立には、一般成立要素と、特別成立要素との二要素あるを見る、或る事物全體に通じて、其事物の成立に必要なる普遍性を有するものを、一般成立要素、又は一般構成要素と稱す、今民法上及刑法上に於て、其用例を説明せんに、民法上法律行爲の成立するには、法律行爲の一般要素と、特別要素とを具有することを要す、一般要素としては、法律行爲當事者の行爲能力、目的、意思表示の三種の要素を具備することを必要とするなり、當事者にして行爲能力を有せず、又其目的を有せず、若しくは目的を有するも、不法の目的たるとき、當事者に於て意思表示なきときは、法律行爲は其成立要素を缺くの所以を以て、成立せざるなり、刑法上に於ける犯罪成立の一般要素としては、法律の明文、犯意、所爲の三を以て成立要素とし、若しも其内の一を缺くときは、犯罪は成立することなし、其他すべて事物の成立に關して考ふるときは、千態萬狀、今茲に一々例擧するを得ざるも、事物の成立に通じて要する要件を、一般成立要素と稱するを得べし。
- 英
- Generalessence
- 独
- allgemeines Bestandtheil
- 仏
- Eléments générals
一般構成要素
- 英
- Generalessence
- 独
- allgemeines Bestandtheil
- 仏
- Eléments générals
一般人
(いつぱんにん)汎く一般人と云へば、法律上特別の地位、身分を有するものに對する場合の用語にして、其の特別の地位、身分等を有せざる普通人を一般人と云ふなり、例へば官吏に對して、官吏にあらざる普通の人を一般人と云ひ、軍人に對して、軍人に非ざる普通の人を一般人と云ふが如し、此の如く、常に一般人と云ふは、特別の身分關係に對して、其身分なきものを表はす用語なりとす、或は特定の人に對して、不特定の人を一般人と云ふことあり、この意味に於ての一般人は、不特定の義にして、其の特定せられざる一般普通の人の意味に用ふるものと云ふ可し。(一般の部參照)
- 英
- General person
- 独
- allgemeine person
- 仏
- Personne générale
一般の先取得權
(いつぱんのせんしゆとくけん)先取得權とは、民法上物權の一種にして、法律が特種の債權を保護するが爲めに、之に附隨せしむる所の特別の權利なり、此先取特權は、權利の目的たる物との關係に於て、之を二種に區別することを得べし、即ち一般の先取特權及特別の先取得權これなり、一般の先取特權とは、債務者の總財産上に行はるる權利にして、此特權を有する債權者は、動産、不動産、債權の別なく、債務者の所有する一切の財産につき、其權利を行ふことを得べし、民法上一般の先取特權は、是を別つて四種と爲すことを得、第一、共益費用の先取得權、第二、葬式費用の先取得權、第三、雇人給料の先取得權、第四日用品供給の先取特權是なり、今以上の特權に關して、大要を説明せんに、□一共益費用の先取特權は、或る債權者が、總債權者共同の利益のために支出したる費用に關するもの、即ち債務者の財産保存の費用、清算費用、配當費用を支出したる場合に關するものにして、其支出したる費用は、各債權者の共同利益の爲めに、支出したることを條件とす、故に債權者の一人の支出したる費用にして、共同債權者の利益とならざるときは、其支出したる債權者は、此特權を享有することを得ず、□二葬式費用の先取特權は、債務者の身分に應じたる葬式費を支出したる債權者の有すべき特權にして、其債權が、葬式の費用に基因すること、其葬式費用は、債務者、若しくは債務者の扶養すべき親族、又は家族に關する費用なること、而して死者の身分に相應したることの條件を具備するを要す、故に身分に不相應なる葬式費用、若しくは葬式後に關するものを含まずして、單に屍體を納むべき柩、墓地の代金、火葬料、其他埋葬の儀式に必要なる費用を含むものとす、□三雇人給料の先取特權は、雇人が債務者に對する債權は、給料たること、其給料は最後六ケ月の給料にして、且つ其金額は五十圓を越えざる以内たる事の二條件を必要とす、所謂雇人とは、其の意義稍明瞭を缺くと雖も、要するに廣狹二樣の意義あり、廣き意味に於ける雇人とは、雇傭契約によりて勞務に從事する總べての人を云ひ、狹き意味に於ける雇人とは、雇傭契約によりて勞務に從事する者の中に於て、特に他人に隨身して其身上の役務に從事し、又は他人の財産に附隨して、之に關する勞役に從事する者を云ふ、此場合に於ける雇人とは、後の狹義の雇人を稱するものにして、僕婢、園丁、馬丁、車夫等の如きものを指すなり、□四日用品供給の先取特權は、日用品を債務者に供給したるものが、其供給より生ずる債權につき、債務者の財産上より優先權を受くる權利にして、其債權は、飮食品及薪炭油の供給より生じたること、此等の日用品は、債務者、又は其扶養を受くべき同居の親族、幷に家族及僕婢の生活に必要なること、及びその日用品は、最後の六ケ月に供給したるものたることの條件を具備するを要するなり、右の如く一般先取特權にして、或る制限を附したる所以のものは、この特權は強大なる權利にして、債務者の總財産を以て、辨濟を受くるの權利なるが故に、之を無制限に認むる場合には、之がために他の債權者を害するに至り、法律上其衡平を失するに至るべければなり、故に以上列記の諸條件は、之を嚴格に解决するを要し、類推して擴張するを許さざるものなり。(民三〇六條乃至三一〇條)
- 英
- General preferential right
- 独
- allgemeines Vorzugsrecht
- 仏
- Droit de préférence général
一般の抵當權
(いつぱんのていたうけん)汎く一般の抵當權と稱すれば、債務者の總財産の上に存する抵當權を指稱することを得れども、我民法は、此種の抵當權を設定することを許さず、法文を以て、抵當權の目的となり得るものを特に限定し、當事者間に於て、その設定行爲により、特定不動産のみに關して、抵當權を設定することを認むるのみなり、即ち抵當權の目的と爲し得るものは、不動産たることを要し、例外として、地上權及永小作權、若しくは是等目的物の代表物、換言すれば、目的物の賣却代金、滅失又は毀損によりて、抵當權設定者の受くべき金錢に及ぼすことを得、此他には、當事者の意思を以て、自由に一般抵當權を設定することを得ざるなり、抑も抵當權なるものは、他の債權者を排斥して、その目的物に關し、優先辨濟を受くるの強大なる權利なるを以て、無制限に一般の抵當權を認むるに於ては、善意の第三者を害すること甚しきに至るべく、惹ひて取引の安全を害すべきが故に、我民法は、特に限定列擧法により、この他に設定することを許さざる所以なり、之を要するに我法律は、一般の抵當權なるものを認めざるものと云ふ可し。(民三九六條以下)
- 英
- General mortgage
- 独
- allgemeines Pfandrecht
- 仏
- Hypothèque générale
一般の留置權
(いつぱんのりうちけん)一般の留置權は、特別の留置權に對する語にして、特別留置權の如く、債權者が占有する物と、債權との間に、何等の直接關係なき場合に生ずる留置權を云ふ、我民法上に於て認むる留置權は、特別の留置權にして、他人の物の占有者が、其物に關して、直接に生じたる債權を有する場合に當り、其債權の辨濟を受くる迄、其物を留置することを得(債權が辨濟期にあることを要す)るに過ぎず、飜つて商法を見れば、稍廣き範圍に於て留置權を認む、之を講學上呼んで商事留置權と云ふ、即ち商人間に於て、其双方の爲に商行爲たる行爲によりて生じたる債權が、辨濟期にある場合に、債權者は濟辨を受くる迄、其債務者との間に於ける商行爲によりて、自己の占有に歸したる債務者の所有物を、一切留置するの權利なり、此商事留置權も、最も廣き意味に於ける一般留置權と云ふことを得ざるも、其占有物と債權との關係が、直接ならざる點に於て、一般的と云ふことを得べし、然れども我現行法は、所謂一般なる留置權を認めざるものと解するを正當と信ずる也。(民三九五、商二八四、四一條參照)
- 英
- General lien
- 独
- allge-meines Retentionsrecht
- 仏
- Gage général
一般法
(いつぱんはう)一般法は、特別法に對する語にして、普通法とも稱せらる、而して一般法と然らざるものとの區別は、法律其ものが效力を及ぼすべき範圍の廣狹によるものなり、此一般法と特別法とを區別するの標凖は、□一適用すべき場所の範圍を標凖とす、即ち國内一般に總べての土地に行はるる法律を一般法と稱し、之に反して、國内の一部一地方のみに行るる法律を特別法と稱す、□二法律を適用せらるべき人によりて二者を分別す、即ち國民が一般に導奉すべき法律を一般法と稱し、特種の人のみに適用すべき法律を特別法と稱す、□三法律を適用すべき事物の範圍によりて二者を分別す、以上の三標凖によりて、之を分別するに、例へば憲法、民法、刑法等の如きは一般法にして、警視廳令、府縣令の如きは特別法なり、此二者を區別するの效果は、法律適用の原則として、特別法は一般法に先立ちて適用せらるるの點にありとす。
- 英
- General law
- 独
- allemeines Recht
- 仏
- Droit général
移牒
(いてふ)汎く移牒と云ふときは、文書を以て或る場合に通知を爲すことを指稱す。(二九年二月、閣令一號、明治二十七八年戰役從軍徽章奏請授與規定一條乃至二條參照)
- 英
- Notification
- 独
- Bekanntmachung
- 仏
- Notification
移轉
(いてん)法律用語としての移轉には三意義あり、第一に於ては、吾人の住所又は居所を轉ずるを移轉と云ひ、第二に於ては、物の所在を轉ぜしむるを移轉と云ひ、第三に於ては、吾人に屬する權利を他に移すを移轉と云ふ、第一第二の場合は、特に説明を附加するの要なしと雖も、第三の意義、即ち權利の移轉に關しては、多少説明を試みざるべからず、而して權利の移轉にも、物權の移轉と、債權の移轉との二あり、先づ物權の移轉とは、如何なる意義なるやを明かにせんに、物權の得喪變更を生ずる原因には種々ありと雖も、物權取得に關する原因は、之を大別して二と爲す事を得、即ち原始取得及繼承取得これなり、繼承取得は、物權の移轉によりて生ずる取得方法にして、他人に屬する權利の全部、又は一部を受繼して物權を取得するを云ふ、當事者の意思表示に基く物權の設定移轉は、總べて此種の取得原因に屬す、而して物權の移轉による繼承取得にありては、物權取得者の權利は、原權利者の權利を基本とし、其全部又は一部を受繼するに外ならざるを以て、原權利者の有せし權利如何は、常に物權取得者の權利に重要なる關係を有するものなり、何となれば、何人と雖も自己の有せざる權利を、他人に移轉せしむることを得ざるは、法理上の原則なるを以て、物權取得者が、其物權を取得するには、物權を設定移轉したる原權利者に於て、現に其權利を所有する事を前提要件とし、物權取得者は、唯原權利者の有せし權利の範圍内に於て、物權を取得するに過ぎざる也、我民法の規定する所に依れば、物權の設定移轉は、當事者の意思表示のみによりて其效力を生ず、此規定による時は、物權を設定し、又は移轉する能力權限を有する當事者の一方が、相手方の爲めに物權を設定又は移轉するの意思を表示し、相手方がこれを承諾し双方の意思か合致したるときは、別に何等の方式を要せずして、相手方は直に物權を取得するに在り、尤も不特定物の權利移轉の場合は、別段の規定の存するものなることを注意せよ、つぎに債權の移轉に關する場合は、即ち債權の讓渡に關する場合にして、債權も物權と同じく移轉を許す、所謂債權の讓渡とは、一人が債權者たるの地位を脱退し、他人がこれを繼承するの謂ひにして、同一の債權を繼承することを云ふ也、之に依つて觀れば、債權者其人は變更するも、其要素に別段更新せられたる所あらず、故に債權の移轉は、同一の債權を繼續せしめ、敢て一の債權を消滅せしめて、新に他の債權を發生せしむるものに非ざる也、債權の移轉は、法律行爲に因る場合あり、他の事實による場合あり、法律行爲によりて生ずる債權の移轉は、遺言に因るものの外、之を移轉すべき人と、之を承繼すべき人との契約に依り其效を生ず、債權の讓渡即これ也、債權は總べて移轉せしめ得るを原則とするも、例外として、債權の性質が讓渡を許さざる場合、當事者の意思により讓渡を許さざる場合は、他に移轉するを得ざるものと知るべし。(民法七一六、四六六條參照)
- 英
- Transfer
- 独
- Veräusserung
- 仏
- Transfert
移轉の自由
(いてんのじいう)移轉の自由とは、吾人が法律の制限内に於て、移轉することの自由なるを稱し、學者の所謂自由權の一種に屬す、此移轉の自由は、憲法の明文によりて認めらるる所にして、其第二十二條によれば、日本臣民は、法律の範圍内に於て、居住、及び移轉の自由を有すと規定せられたり、此主旨は、移轉の自由を禁ずべからざることを意味するのみならず、又間接に移轉に苦痛を科すべからざることを定む、而して此等移轉自由に對する制限、若くは苦痛は、間接たると直接たるとを問はず、間接に制限するとは、他に移轉するものに對して、特別に多額の金圓を出さしめ、或は一定の場所に居住するものに對して、特に或る苦痛を與ふるが如き是なり、例へば、移轉に關して移住税を科し、又は一定の場所に住するを以て、或る能力剝奪の條件とするが如し、國家が臣民に對して、是等の制限を設けんと欲せば、必ず法律の規定を以てせざるべからざる也、移轉の自由は、必ずしも移居の制限を目的とする場合のみならず、衞生及風俗取締等他の目的の爲めにする場合にも、法律の根基あることを要す、故に例へば、傳染病豫防の爲めに通行を禁じ、風俗を害するものの居移制限の如きも、法律に依ることを要す、又移轉の自由は、啻に國内に止まらずして、海外に移轉する場合をも包含す、然れども茲に所謂移轉の自由なるものは、一般臣民に對する國民の發動を制限したるに止まり、特別關係に基くものを制限せず、即ち官吏の如き然り、官吏は、君主と特別服從關係に立つものにして、其職務を執行する場所に、居住せざるべからざるの義務あり、此の如き義務は、法律の規定によらずして、官吏の義務として定められたる所にして、憲法の保障の關する所にあらず、故に法律以外の命令を以て之を制限するも、憲法違反と云ふ可からざる也、何となれば、官吏たる身分を得るは、自己の意思に基くものにして、居住の制限を受くるは、官吏なる身分を得たるの結果なるを以て、畢竟居住の制限を受くるは、自己の意思によりたるものと云ふを得べければ也、軍人も一般官吏と同じく、或る一定の場所に居住せざるべからざるの制限を受く、而も此制限は、法律の規定によることなきも、憲法上違反の問題を生ぜざるなり、蓋し軍人は、憲法上特別の大權行動に依る可きものなることを定められたればなり。(憲法二二條、三二條、刑法附則、行政執行法、傳染病豫防法、豫戒令、官吏服務規律、陸軍服役規律、民八八〇條等參照)
- 英
- Liberty of changing
- 独
- Wohnsitzfreiheit
- 仏
- Liberté de trans-fert
營む
(いとなむ)營利を目的とすると否とに關係なく、常業として或る事業を繼續して行ふことを「營む」と稱す、彼の所謂營業よりは、稍其範圍を擴くし、營業と云ふ場合は、必ず營利の目的のこれに伴はざるべからざるも、單に「營む」と云ふ場合は、營利の目的を有すると否とを問はず、常業として行ふ場合を總稱するものなり。(保險業法二條)
- 英
- To perform
- 独
- zu machen
- 仏
- Faire
委任
(いにん)委任とは、當事者の一方が、法律行爲を爲すことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾するによりて成立する契約なり、委任の目的は、法律行爲に限るものにして、法律行爲以外の事務を處理せしむるものは、所謂委任にあらず、我民法は、法律行爲以外の事務の委託を凖委任と稱し、委任に關する條文を之に準用するものとせられたり、故に訴訟行爲の如きは、私法的效果を發生せしめんことを直接の目的とするものにあらず、ある一種の公法的關係を生ずるものなるが故に、法律行爲と云ふことを得ず、從つて訴訟委任は、茲に所謂委任にあらざるなり、雇傭契約も、委任契約と其性質を異にす、二者共に他人の爲めに事務を處理するものなれども、かれは勞務を供給して、或事務を所理するに止まり、これは法律行爲を所理するものなれば、受任者の意思の作用を以て、其委任事務を處理するものと言ふ可し、換言すれば、雇傭契約は、勞務そのものを供給することを約し、勞務に服するものにして、之に反して委任は、勞務に服することを約するに非ずして、委任事務を所理することを約したる結果として、勞務に服するものなり、而してこの受任者が處理する所の法律行爲は、槪ね委任者の利益となるを以て常とすれども、常に必ずしも委任者のみの利益たることを要せず、委任者受任者双方の利益となる場合に於ても、委任たるに於て毫も妨げなし、又法律行爲を爲すに當りて、代理權の授與あるときは、委任者の名義に於て之を爲すことを得れども、其然らざるに於ては、受任者の名に於て法律行爲を爲すべきものとす、委任契約は、諾成契約たる性質を有するものなるが故に、常に受任者の承諾あることを、成立要件とするもの也。
以上は專ら私法上の委任に關するものなれども、公法上に於ても、委任の語を用ひらるることあり、即ち法律の委任、勅令の委任と云ふ場合の如し、法律の規定を以て、或事項を勅令又は其他の命令に規定せしむること、又は勅令の規定を以て、或事項を閣令、省令等に規定せしむることあり、此等を總稱して、公法上の委任とは呼ぶなり。
- 英
- Mandate
- 独
- Auftrag
- 仏
- Mandat
委任者
委任者とは、委任契約に於て、法律行爲を爲すことを委任する者の謂ひにして、これに對するものを受任者と稱す、委任者は、受任者に法律行爲を爲すことを委任したるの結果として、受任者に對して、或る義務を負ふなり、即ち□一報酬支拂の義務は、特約ある場合に限りこれを負ふ、その支拂の時期は、委任事務履行後に於てこれを支拂ふ可きものにして、支拂時期に就きても、特約ある場合は其の特約に從ふ可きは素よりなりとす、□二費用支拂の義務、損害賠償の義務を負ふ受任者が、委任事務を所理するに當りて、必要と認めて支出したる費用は、委任者に於て、其總額及び支出したる日以後の利息を償還せざるべからず、又受任者が、過失に基かずして、委任事務所理中に損害を受けたる場合に於ては、委任者は、其損害を賠償せざるべからず、例へば無報酬の受任者が、委任事務を所理するが爲めに職業を休み、日當を得ること能はざるときは、損害として、相當金額を請求し得べし。
- 英
- Mandator
- 独
- Mandant
- 仏
- Mandataire
委任狀
委任狀とは、委任者が受任者に對して、其委任權限を記載し、其委任を證明するの具として交附する證書を云ふ、其書式は、一定の方式なしと雖も、其委任の範圍を明かにする事を要す、然らざれば、不慮の損害を蒙むることあるべきなり。(竸賣法一四條二項參照)
- 英
- Power of attorney
- 独
- Voll-macht
- 仏
- Lettre de mandat
委任の終了
委任の終了とは、委任契約の終了することを意味す、委任も亦一の契約なるが故に、契約一般の消滅原因によりて消滅するは論を俟たず、唯委任契約に特別なる終了原因は、□一當事者任意の解除、有効に締結したる契約は、一方の意思のみを以て、廢棄することを得ざるは、契約の原則たるに拘はらず、委任契約のみに關して、我民法は特例を設け、各當事者は何時にても、之を解除することを得しめたり、蓋し委任契約なるものは、慨ね委任者の利益のために設けらるるものなれば、今委任者自ら其事務を處理することを得るに至るか、又受任者を信ぜざるに至るも、猶契約に覊束せらるるものとするは、事理の穩當を得たるものに非ざるを以て、委任者に解任權を與へたるは當然と云ふべし、□二死亡及破産の場合にして、當事者の何れか一方が死亡し、又は破産宣告を受けたるときは、委任契約は當然に終了するものとす、□三受任者が、禁治産の宣告を受けたるときは、委任を終了せしむ、以上述ぶる所の原因により、委任終了するも、受任者、其相續人又は法定代理人は、急迫なる事情あるときに限り、委任者、又は其相續人、若くは其法定代理人が、委任事務を處理することを得るに至る迄、必要なる處分を爲さざるべからざるの義務を負ふものなり。(民六四三條乃至六五四條)
委任經理
(いにんけいり)或る者が他の委任によりて、會計事務を處理することを委任經理と稱し、現行法上に於ては、主として公法上に於て用ひらるる語也、例へば明治二三年、法律第二七號、陸軍々隊の糧食、被服消耗品、陣營具及馬匹に係る委任經理に關する件に於て、是等の物の給付は、其定額を各隊に交付し、各隊長に經理を委任する場合に用ひらるるが如し。
- 英
- Management of mandate
- 独
- Auftragsverwaltung
- 仏
- Direction de mandat
委任權
(いにんけん)當事者の一方が、法律行爲を爲すことを相手方に委任し得る權利を委任權と云ふ、委任權の行使も、法律行爲の一種たるべきは無論なるを以て、法律上の無能力、即ち未成年者、禁治産者、凖禁治産者等は、單獨に之を行使することを得ず、必ず法定代理人により、又は法定代理人の同意を經て、之を行使せざるべからず、若し此手續を缺きたる場合は、無效もしくは取消しの原因となるものとす。
- 英
- Right of mandate
- 独
- Auf-tragsrecht
- 仏
- Droit de mandat
委任權限
(いにんけんげん)委任權限とは、或る人又は或る機關が、他の者より、委任に基きて與へられたる行爲を爲し得る能力範圍を稱する也、即ち私法上に於て委任權限と云へば、受任者が、委任者に依りて與へられたる法律行爲を爲し得べき行動の範圍を稱し、公法に於ては、上級官廳によりて、下級官廳が委任によりて與へられたる行動を爲し得べき範圍を稱するなり、總べて權限と稱する場合は、權利と稱する場合と異ることを注意せざるべからず、權利と云へば、自己の利益を必要の觀念とすれども、權限と稱する場合は、他人の利益の爲めに、自己が行動を爲すことを意味するものとす。
- 英
- Competency of mandate
- 独
- Auftragsgrenze
- 仏
- Compétence de mandat
委任支拂命令官
(いにんしはらひめいれいくわん)各省大臣の委任によりて、仕拂命令を發する權限を有するものを委任支拂命令官と稱す、二十九年、農商務省訓令第十號により、農商務大臣は、生絲檢査所の仕拂命令を發する權を橫濱生絲檢査所長に委任せるを以て、該所長は即ち橫濵生絲檢査所に於ける委任支拂命令官たるが如く、其他法令の各所に散在するを見るなり。(二二年七月勅八九號仕拂命令委任規程、三一年一月農商務省訓令一號、二二年一二月同省訓令四一號、三二年四月同二〇號及海軍召集諸費支出規程一〇條參照)
- 英
- Officials of payment by mandate
- 独
- Aufgetragener Beamte der Zahlungsanweisung
- 仏
- Officiers de paie-ment par le mandat
委任事務
(いにんじむ)委任の目的たる事務を總稱して、委任事務と云ふ、公法上のものと、私法上のものとあり、逐一之を擧ぐるを得ずと雖も、公法上に於ける委任事務とは、官廳が法令の規定、又は自己の上級官廳より委任せられたる事務を指し、又は地方自治體が、國家より委任せられたる事務を稱す、例へば國家は市町村に對して、其固有事務たる公共事務以外に於て、特種の或る事務を市町村に委任することあり、國税徵收法によりて、國税の徵收事務を市町村に委任したる場合の如きは、即ち委任事務の好適例なり、又私法上に於ける委任事務とは、專ら委任契約の場合に用ひらるる語にして、此場合に於ける委任事務は、即ち委任せられたる法律行爲を指すものなり、而して受任者は、委任せられたる事務を、委任の本旨に從ひ、善良なる管理者の注意を以て處理せざるべからざるは、民法の定むる所なりとす。(民六四四條)
- 英
- Business intrusted
- 独
- An-vertrautes Geschät
- 仏
- Affaires confiers
委任代理
(いにんだいり)委任契約に於て、委任事務を爲すに當り、代理權の授與ありたる場合を稱して委任代理と云ふ、この委任契約に於て、代理權の授與あるときは、委任者の名義にて法律行爲を爲すことを得れども、その然らざるに於ては、受任者自己の名義を以て、法律行爲を爲さざるべからず、乃ち委任契約に於て、委任者が代理權を授與すれば、受任者は代理人となるも、委任契約成立の當然の結果として、受任者は常に委任者の代理人となるものに非らず、之委任契約と代理と異る點なり、再言すれば、代理は或る人が他人の爲めに、或る事を爲すにつき、第三者に對する關係を云ふものなり、之に反して委任は、委任當事者間の債務關係に過ぎず、故に單に委任と云ふときは、當然代理權を包含するものにあらざるなり、委任契約の外に代理權の授與せらるるありて、始めて委任代理となるものとす、代理權の授與は、必ず委任契約によらざるべからざるや否やは、民法上の一大議論ある所なれども、今日の通説としては、代理權の授與は、必ず委任契約によらざるべからざるものとするを穩當なりとす。(授權行爲の部參照)
- 英
- Representation of mandate
- 独
- Auftragsvertretung
- 仏
- Représenta-tion de mandat
委任命令
(いにんめいれい)委任命令は、國法上これを二樣に用ひらる、第一の意義に於ける委任命令とは、天皇が發する命令の一種にして、憲法上法律を以て定むべき事項を、法律の委任によりて定めたる命令を云ふ、歐洲諸國に於ては、法律執行の爲めに發する所謂執行命令の外に、命令を以て法規を定むることを許さず、然るに行政の便宜上、法律を以て定むべき事項を、命令を以て定むるの必要あること少なからず、茲に於てか法律の委任なる慣例起り、法律の委任ありたる以上は、警察その他の事項に關しても、尚命令を以て規定することを得るものとするに至りたり、委任命令によりて規定することを得る範圍は、法律の委任によりて定まるものにして、其實質は、立法事項に屬するもの也、若し立法事項以外のものなる時は、法律の特別なる委任を要せざるが故に、これに關して委任命令の問題の生ずることなしとす、法律が其立法事項の規定を命令に委任するに當りては、一定の限界なく、特別の明文を以て制限せざる以上は、如何なる事項も、命令に委して定むることを得るなり、例へば憲法の明文に、法律によるにあらざれば、或は法律によるにあらずして云々と定めたる場合と雖も、尚これを命令に委任することを得るものとす、憲法二十三條によれば、法律によるにあらずして、逮捕、監禁、審問、處罰を受くることなしと規定せられ、第五十七條には、法律により裁判所之を行ふと定めらるると雖も、之等も法律の委任ある以上は、命令を以て定むる事を得可く、裁判所は、裁判を委任命令に基きて爲し、又は委任命令に依りて逮捕、監禁を爲し得可し、或る學説に依れば、之等は總べて違憲也と論ずる者ありて、一考す可き有力なる説なりとす、第二の意義に於ては、行政官廳が、法律の規定による特別委任、若くは君主の委任によりて發する命令を委任命令と稱し、其權限を委任命令權と云ふ、委任命令は、第一に法律の委任によりて發することを得、法律の委任は、或は命令を發する機關を定めずして、廣く命令に委任することあり、或は特別の機關を定めて、委任することあり、其機關を定めたる場合に、其機關のみが、獨この命令を定め得べきは素よりにして、或學者は、法律が勅令に委任したる場合は、君主は更に行政官廳の命令に、再委任を爲し得と云ふものあれども、法律を以て、勅令に委任することを定めたる以上は、勅令を以て定むることは、法律が委任せる一の要件となり、故に更に他の行政官廳に再委任し得るものと、認むるは正當ならず、又法律が、特種の官廳の命令に委任したる場合は、其官廳の命令を以て定むることが、法律の委任の要伴にして、其上級官廳、又は勅令を以て定むることを得ざるものと言はざるべからず、然れども此場合に、上級官廳又は君主が、之に對して其訓令を發し、命令を如何に定むべきかを指揮し得るは勿論也、法律が、特定の機關を定めずして、一般に命令に委任せし時、何人が命令權を有するかは、官制によりて定まるべき問題なり、官制によりて、是等の種類に關して一般權限を有する官廳が、命令權を有する也、若し官制に於て、斯くの如き事項に關する權限を有する官廳なき時は、勅令によるの外、定むるを得ざるものと言はざるべがらず、盖し官制は、勅令に依るを原則とするを以てなり、委任命令は、第二に君主の委任によりて發することを得、君主の命令權は、緊急、獨立、委任、執行の四に分つことを得べし、此四種の中、緊急命令は、憲法上勅令を以てすることを要するが故に、これを行政官廳に委任することを得ざるは勿論也、委任命令も、亦さらに官廳に再委任することを得ざるは、前述の如し、君主が、官廳に委任し得るは、獨立、執行の兩命令にあり、而して此兩命令にありては、憲法の明文を以て、之を官廳に委任し得ることを定む、君主の命令權の委任には、一般委任あり、又特別委任あり、一般委任とは、官制に於て、各官廳の權限に屬する事項に就きては、命令を發する權を與へたるものを云ひ、特別の委任とは、個々の事項につき、特に命令を發せしむるものを云ふ、我國に於ては、各大臣、總督、長官、知事及警視總監は、其權限事項につき、一般に命令を發する權を委任せらる、之に反して、郡長、嶋司、支廳長等は、一般に命令權を委任せらるることなく、唯法令又は上級官廳より、特に委任せられし事項につき、命令を發する權を有するのみとす。
- 英
- Order intrusted
- 独
- Auf-tragsgebot
- 仏
- Ordre confiée
言渡
(いひわたし)言渡とは、訴訟法上の用語にして、裁判所が判决、又は决定命令等を訴訟當事者に告知することをと云ふ、言渡と云へば、主として口頭の告知の場合に用ふるものなれども、我訴訟法は、文書を以て爲す場合にも、亦言渡の文字を用ふることあり、故に言渡とは、總べて裁判の告知を意味するものと解し得べきに似たり。(民訴二三四、刑訴二〇四條)
- 英
- Announcement
- 独
- Verkündung
- 仏
- Prononciation
委付
(いふ)委付とは、法律上保險に關する用語にして、損害の塡補を受けたるものが、其過失に因らずして、負擔せる債務を免るるがために、右に關係ある財産權を、該塡補者に移轉する單獨行爲を指稱するものなり、其の主なる場合を擧示すれば、海上保險に於て、保險の目的が、絶對的、又は事實上全滅したるときは、保險者は、保險金額の全部を支拂ふべきは勿論なるも、全部の滅失なしとするも、其損害非常にして、全部の滅失と同一視せられ得る場合、又は全部の滅失たる事の充分なる證明、竝に計算を爲すは、其手續煩雜に失し、保險金支拂を遲延し、保險契約を爲したる目的に背くに至らしむる場合に於て、法律上、全部滅失と同一視し、被保險者をして、保險の目的に就きて有する一切の權利を擧げて保險者に移轉し、以て保險金額の全部を請求し得るものとしたり、即ち之を法律上委付行爲と稱す、此委付を爲し得べき場合は、法律を以て限定的に列擧せられたり、□一船舶が沈沒したるとき、如何なる事實ありたる場合に沈沒と見るべきかは、事實上の問題なり、□二船舶の行先不明なるとき、此場合は、六ケ月間存否の知れざることを以て、行方の知れざるものと看做す、□三船舶が、修膳を爲すこと能はざるに至りたるとき、□四船舶の積荷が、捕獲せられたるとき、□五船舶又は積荷が、官の處分によりて押收せられ、六ケ月間解放せられざるとき等にして、此等の場合に限り、被保險者は、其目的物を保險者に委付して、保險金額の全部を受取ることを得るものなり、委付は三ケ月の期間内に、必ず爲さざるべからずして、又委付は、單純なることを要す、換言すれば、之に條件を附し、或は之に期限を附するが如きは不可なり、次に委付は、保險の全部に就きて爲すことを要す、以上は委付を爲すことを得べき場合及其時期、方法なるが、委付の效力としては、委付は單獨行爲なるを以て、相手方の承認を待たずして其效力を生ず、然れども相手方即ち保險者に於て、之に異議を述ぶることを得るは勿論なり、保險者に於て承認したるときは、そこに二個の效力を生ず、イは、保險者をして、後日に至り其委付に對し、異議を述ぶることを得ざらしむること、ロは、委付の原因を證明することなくして、保險金の支拂を請求するを得ることこれなり、更に保險者の爲めに生ずる效力としては、被保險者が、保險の目的につきて有せる一切の權利は、委付によりて當然保險者に移轉し、被保險者のために生ずる效力としては、保險金額の全部を請求することを得るにあり、以上の説明は、保險に關する場合なるが、此外に商法上委付と稱する場合は、船舶所有者は、船長が其法定の權限内に於て爲したる行爲又は船長其他の船員が、其職務を行ふに當り、他人に加へたる損害に付きては、航海の終に於て、船舶運送賃等を債權者に委付して、其損害賠償の責を免るることを得るもの也。(商六七四、六七六、六七七、六七九、五四四、及有限責任の部參照)
- 英
- Abandonment
- 独
- Abandon, Ab-tretung
- 仏
- Abandon, délaissement
移付
(いふ)區裁判所の管轄に屬する一定の犯罪事件を地方裁判所、若くは其の支部の檢事局より、其審理判决を爲さしむる爲め、區裁判所に爲す訴追處分を移付と稱することあり、又或る物件、又は權利を或る者の管轄より移して、他の者の管轄に屬せしむることを移付と云ふことあり、例へば公共團體に於て、内務大臣の直接施行に係る事業の爲めに、取得したる物件及權利を、内務大臣に移付す可きが如し、(三一年八月勅一八四號國庫より補助する公共團體の事業に關する法律施行の件三條及六條、裁構法一六條參照)
- 英
- Abandonment
- 独
- Abandon oder Abtretung
- 仏
- Abandon ou delaissement
家
(いへ)法律上家と稱するは、物質的の家屋を意味するに非ずして、戸主の統轄する事實上、もしくは想像上の家族團體を云ふ、家を組織するものは、戸主と家族となり、一家の長として、其家を統轄するものを戸主と云ひ、戸主の親族にして、其家に在るものを家族と云ふ、戸主が其家を統轄する爲めに、家族に對して有する權利の全體を總稱して、戸主權と稱す、家は、斯くの如く戸主及家族より成る集合體也、家は法人に非ず、獨立して權利義務の主體たることなし、權利義務の其家に屬するが如き外觀あるものは、其戸主に屬するものなり、戸主の一身に專屬するものの外、戸主の有する權利義務の全體を總括して之を家督と云ふ、我國古代に於ける家の觀念には、廣狹の二意義を有せしものの如し、其狹義に於けるものは、現に同一家長權の下に服從するものを云ひ、其廣義に於ては、同一家長權の下に服從すべかりし全體を指稱せり、古代に於ける戸令中、一戸と稱するものの中には、數家もしくは數十家を包含せるものありしは、最近に於て二三法制史家の證明する所なり、盖しもと同一の家に屬したるものが、世を逐ひて其家分岐し、かくて數家若くは數十家となりし後も、猶多少もと同一の家にありしが如き關係を其間に持續すべきこと、家族制度を認むる社會に於ける當然の狀態と云ふべく、斯の如き關係を持續せる數家を稱して、廣義に於ける家と云ふも、必ずしも不可なきなり、我現行民法に於ては、現在の戸主の下に服せる一家の外、法律上別に所謂廣義の家なるものを認めず、されどもと同一の家に屬し、其家より分れて數家となりたるものは、其間に本家分家の關係を認め、本家分家との間に於ては、本家相續の必要あるに當りて、特に分、家の推定家督相續人に、其家を去ることを許し又は分家の戸主に隱居を爲すことを許し、又は分家を廢家することをも許し、種々の特例を設けたるより觀れば、或る意味に於て、古代に於ける廣義の家族制度を持續せりと云ふ可し、次に民法に於て、其家と云ふ場合は、何れも法律上の家を指すものにして、事實上の家屋を指すことなしとす、一家の組織は、總べて戸籍を以て之を證明するが故に、家に在る云々の規定ある場合は、戸籍を同ふすとの意義と、同樣なりと解するを得可し、彼の雇傭契約によりて、實際に其家に同居するものと雖も、戸籍を同うせざるが故に、同一の家にあるものと云ふことを得ざるは素よりなり。(民七三二、七三三條)
- 英
- House
- 独
- Haus
- 仏
- Maison
移民
(いみん)移民とは、勞働に從事する目的を以て、清韓兩國以外の外國に渡航する者、及び其家族にしてこれと同行し、又は其所在地に渡航するものを云ふ、而して其勞働の種類は、□一耕作、栽培、牧畜、漁業、鑛業、製造、土木、運搬、建築に從事し、勞力を供する者、□二炊事、洗濯、裁縫、給仕、看病等のため、家事に使役せらるるものに限るなり、移民に關する詳細を知らんと欲せば、次項の移民法に關する條下を參照せらるべし。(移民法第一條)
- 英
- Emigration
- 独
- Auswanderung
- 仏
- Émigration
移民取扱人
移民取扱人とは、何等の名義を以てするに拘はらず、移民を募集し、又は其渡航を周旋するを以て營業と爲すものを云ふ、移民取扱人たらんと欲する者は、行政官聽の許可を受けざるべからず、帝國臣民、又は帝國臣民のみを社員、もしくは株主とする會社にして、帝國に於て主たる營業所を有するものに非ざれば、移民取扱人となることを得ず、移民取扱人は、渡航の周旋を爲したる移民に對し、滿十ケ年間該移民の疾病其他困難の場合に於て救助し、若くは歸國せしむるの義務を負ふ保證人たるの地位にあるものとす、移民取扱人の行爲にして、法律命令に違反したるとき、若くは公安を害するものと認むるとき、又は移民取扱人保證金の納付を怠りたるときは、其營業を停止せられ、又は許可を取消さるることあるものなり、移民取扱人は、手數料の外、何等の名義を以てするを問はず、移民より金錢、又は物品を受くることを得ず、移民取扱人は、行政廳に保證金を納めざるべからず、其金額は一萬圓以上とし、行政廳に於て適宜之を定む、行政廳の許可を受けず、又は營業停止中に移民を募集し、其渡航の周旋を爲したる者は、二百圓以上千圓以下の罰金を科せらる可し、誘惑の手段を以て移民を募集し、若くは渡航の周旋を爲したる移民取扱人、若くは其代理人は、一ケ月以上一ケ年以下の重禁錮に處せらるるもの也。(移民保護法五條乃至二七條)
- 英
- Manager of emigrants
- 独
- Auswanderungsexpedient
- 仏
- Gérant des émigrants
移民保護法
(いみんほどはふ)移民保護法は、移民幷に移民取扱人に關する規定を爲したる法律にして、今其大要を抄記すれば、イ移民は、行政官廳の許可を受くるに非ざれば、外國に渡航することを得ず、渡航の許可を受けたる者は、其許可の日より六ケ月以内に出發する事を要す、然らざれば、其許可は效力を失ふ、ロ行政官廳は、渡航者に對して、渡航すべき地の情况により、移民取扱人によらざる移民をして、適當と求むる二人以上の保證人を立てしむることを得、若し移民取扱人の取扱にかかる場合は、其移民取扱人を以て保證人とす、此等保證人は、移民の疾病、其他困難の場合に於て之を救助し、之を歸國せしめ、又行政廳に於て、移民を救助し、又は歸國せしめたるときは、其費用を辨償するの義務を負ふものなり、ハ行政廳は、移民保護のため、若くは全安保持のため、又は外交上必要と認むるときは、移民の渡航を差止め、其許可を取消すことを得、二移民にして渡航の許可を受けず、又は渡航地を詐りて認可を受け、又は渡航停止命令に違反して渡航したるものは、五圓以上五十圓以下の罰金に處せらるるものとす。(二九年四月法七〇號移民保護法參照)
- 英
- Protection law of emigrant, and the regulation for the application to this law
- 独
- Schützgesetz der Auswanderung und Regulierung für die Anwendung zu diesem Gesetze
- 仏
- Loi de la protection des emigrants et les règles pour l'application de cette loi
同施行細則
移民保護法施行細則は、移民保護法施行に關する詳細なる規定にして、今其大要を擧ぐれば、渡航の認可を受けんとする移民は、渡航地名、渡航の目的及渡航年限を詳記し、原籍地の地方長官(東京府にありては警視總監)に出願すべし、但し移民雇主の申請により、外務大臣特に認可したる場合に於ては、之に雇はるべき移民は、單に其所在地の地方長官(東京府は警視總監)に出願するを以て足る、右の移民にして、移民取扱人によるものは、渡航願書に移民取扱人をして連署せしめ、取扱人によらずして、保證人を要する地に渡航すもるのは、保證人をして、之に連署せしむることを要す、其他移民取扱人に關する詳細なる規定あれども、之は省略す。(二九年五月外務省令三號參照)
醫藥行政
(いやくぎやうせい)衞生行政の一種にして、醫藥に關する行政を指稱す、其大要を抄記すれば、□一は、醫士に關するものにして、原則として、醫師の醬術開業試驗に及第したるものに、醫師開業の免狀を與ふ、但し官公立の醫學校、文部大臣の指定したる私立の醫學校、外國大學の醫學部を卒業したる者、又は外國に於て、開業の免狀を得たる者に對しては、内務大臣に於て、無試驗にて開業免狀を與ふることを得可し、若し此免狀なくして醫業を營むときは、刑法上の制裁を免れず、□二は、産婆に關するものにして、産婆たるの資格要件は、滿二十歳以上の婦人たること、地方長官に於て行ふ試驗に及第したるものなることを要す、産婆は、地方長官に對して願書を差出し、産婆名簿に登錄を受けたる後にあらざれば、其業を營むことを得ず、又其業務に關して、犯罪又は不正の行爲ありたる時は、地方長官より其業務を停止することを得、産婆は、其職務上の義務として、胎兒に異狀ありと認むるときは、醫師の診斷を受けしめざるべからず、□三は、藥劑師に關するものにして、藥劑師とは、醫師の處方箋によりて、藥劑を調合するを業とする者にして、其資格要件は、滿二十歳以上なること、藥劑師の試驗に及第し、免狀を得る事を要す、藥劑師も醫師の如く、營業免許を受けて、其業を營むには、内務省の名簿に登錄せざるべからざるなり、□四は、製藥者及藥種商に關するものにして、製藥者とは、藥品を製造し、自製の藥品に限りて販賣するものを稱し、藥種商とは、廣く藥品の販賣を爲すものを稱す、此二者は、共に地方長官の免許鑑札を受くることを要す、□五は、藥品の取扱に關するものにして、原則として、日本の藥局方と、外國の藥局方との規定に適合せざるものは、之を販賣授與する事を得ず、例外として、新藥に限り、衛生試驗所の檢査を經、其試驗成績を記したるときは、藥局方の規定に適合せざるも、之を販賣授與することを得可し、藥品取扱上の最も嚴密なる規定は、毒藥、劇藥に關するもの也、卽ち毒藥は鎖鑰を備へたる場所に非ざれば、之を貯ふる事を得ず、又毒藥、劇藥は、職業上必要なる者より、其職業使用上の目的氏名等を記載したる證書を提出するにあらざれば、販賣又は授與することを得ざるなり、又内務大臣は、官吏をして藥局、及び藥品を販賣し、もしくは製造する場所を監視せしむる事を得る也、□六は、阿片に關する規定にして、阿片は、其害毒甚大なるが故に、嚴重に取締るの必要あり、阿片を製造するものは、地方官の許可を受くべく、又製造したる阿片は、これを政府に納めざるべからず、政府は其納めたる阿片を適當の品と認めたるときは、之に賠償金を與へ、若し不適當なる品と認めたるときは、無償にて之を燒棄するものなり、又政府は、其阿片を地方長官の指定したる卸賣人に賣下ぐるものにして、醫藥の目的に供する場合に限り、其者をして小賣を爲さしむるものなり。
- 英
- Medical administration
- 独
- Arztverwaltung
- 仏
- Administration mé-dicale
印
(いん)印とは、或る物體の一面に存在する一定の形狀を他の物體に押捺して、常に一定の形跡を永久的に現出せしめ、以て或る事實を證明する用に供するものにして、又之を印顆と稱すことを得、一私人が證明の用に用ふものを私印と云ひ、官の證明に用ふるものを官印と稱す、其押捺の方法に至つては、濕用のもの、(例へば印肉による類)と、乾用のもの、(例へば燒判の類)との二種あり。
- 英
- Seal
- 独
- Siegel
- 仏
- Sceau
印影
印影とは、印顆に依りて現出ぜらるる所の影跡にて、印顆其者に非ず、されども、例へば附木を以て輪廓を画き、筆を以て文字紋章を書きたるが如き、其他總べて印顆を製せずして、單に影蹟のみを摸寫したる場合は、未だ以て印影と云ふことを得ず。
- 英
- Seal
- 独
- Siegel
- 仏
- Sceau
印顆
印顆とは、一定の印影を現出して、或事實を證明する要に供する物體にして、其印顆に用ひらるる材料の如何は、問ふ所にあらざるなり、例へば石若くは玉を以てすると、木材を以てするとは、印顆たる點に於て、何等の區別の存せざるものなりとす。(官印僞造罪の部參照)
- 英
- Seal
- 独
- Siegel
- 仏
- Sceau
瘖啞者
(いんあしや)瘖啞者とは、聽能と語能とを共に喪失したる者を云ふ、即ち聞く能はず、語る能はざる者を稱するものにして、もし一方のみを缺く場合は、未だ以て瘖啞者と云ふことを得ずして、彼の民法上の所謂聾者、及び啞者に該當する者なり、瘖啞者なる要語は、主として刑法上に用ひらるヽ所にして、刑法は、瘖啞者は、智識を得可き機關を缺くの故を以て、精神の發達不完全となし、常に是非の辨別なき者と見做し、且つ其所爲は、或は罪を構成するも、是を論ぜざるものとせり、刑法の明文には、明示せられずと雖も、刑法上の年齡に關する責任、無能力の規定と對比して、刑法上に所謂啞瘖者とは、生前又は幼少の間に於て、瘖啞となりたる者のみを指すと解すべきが如し、抑も教育制度の進步したる今日に於て、生前又は幼年よりの瘖啞者と雖も、是非辨別の智能を備ふるもの尠からず、故に瘖啞者なりとの理由のみによりて、常に刑事責任無能力とする舊刑法の規定は、當を得たるものに非らざるが故に改正刑法は、其事情に依り之を罰せず又は其刑を減輕すべきものとなせり。(刑四〇)
印行の自由
(いんかうじいう)(出版の自由)日本臣民は、法律の範圍内に於て、印行の自由を有すとは、憲法の明定せる所なり、印行とは、活版、石版、木版、其他機械的又は化學的の方法を以て、多數のものを複製して頒布し、思想を發表する事を云ふ、故に動作を以て發表する方法、例へば演劇の如きは、包含せられず、從ひて演劇の脚本につき、法律に基かざる制限を加ふるも、憲法違反にあらざるなり又文書、圖画を用らるも、思想發表の用に供せられざるものは、之に包含せしめず、抑も著作、印行等は、思想の交通を媒介し、智識の普及を計り、且つ人文の發達を援くるものなるが故に、之を行ふ自由を與へざるべからず、されどこれを亂用するときは、或は治安を妨害し、罪惡を教唆し、風俗を紊る等の用に供せらるることなしとせず故に之を制限するの必要存するもの也、然も漫りに制限を加へんか、人文の進步を妨害するの恐れあり、これ憲法が、特に明文を以て、法律の範圍内なる文字を措き、その制限は、必ず法律を以てせざるべからざることを明かにし、併せて其の自由を公認せる所以なりとす、印行の取締に關して、從來より二種の方法行はれたり、□一は、檢閲主義にして、□二は、屆出主義なり、所謂檢閲主義とは、出版物を頒布する前、豫め行政官廳の檢閲を經たる上、其認可を得るを要し、之あるに非ざれば、頒布することを得ずと爲すもの也、届出主義とは、唯頒布前に屆出を爲さしむるに止まるものにして、其出版を自由となし、治安を紊る恐ある者と認むるものに限り、其頒布を禁じ、又は停止するもの也、而して檢閲法は、永年專制時代に於て行はれたる主義にして、之によりて或は文化の發達を妨げ其の必要以外に、之を濫用したるの弊少からざるは、歷史の證明する所、故を以て、今日文明諸國の法制に於ては、殆ど總べて檢閲法を採用せるものあらず、我國に於ても、明治初年に於ては、第一主義を採用したりしも、明治二十年頃より、第二の屆出主義を採用することとなれり、次に印行物は、通常に之を普通出版物と、新聞紙と、定期刊行雜誌とに區別す、新聞紙及雜誌は、專ら學術、技藝、廣告の類を記載する物の外は、普通出版物と異り、特別の法規によりて支配せらる、普通出版物に關する法規は、明治二六年、出版法に依り、新聞紙及學術雜誌以外の雜誌は、明治二十年、勅令新聞紙條例によりて支配せらる。(憲法二九條、出版法、新聞紙條例參照)
- 英
- Liberty of publication
- 独
- Schriftsfreiheit
- 仏
- Liberté de publica-tion
印鑑
(いんかん)印鑑とは、或事柄の證明につき、吾人が使用すべきことを定めたる、印章の見本を指稱するものなり。(公證人規則十條)
- 英
- Seal
- 独
- Stempel
- 仏
- Sceau
允許
(いんきよ)法律上允許なる用語は、許可と云ふ語と同意に用ひらる、然れども我現行法上、允許、認可、許可等は、殆どその用例一定せず、時として、其意義全く相矛盾する事なきに非ず、唯彼の命、禁許と云ひて、允許若くは許可と稱するは、法律の一般に許さざる行爲を特定の場合に、許されたる行爲となす行政上の一の處分たることは、其通有性也とす、法律の用例として、或は特別の身分を附與せらるる場合に用ひらるることあり、或は個人又は團體の行爲に、法律上の效力を附與する場合に用ひらるることあり、或は義務の免除の意義に用ひらるることあり、或は權利を設定する場合に用ひらるることあり、然れども、是等の場合は、總べて一私人又は團體の出願に對して下す所の處分たる點に於て、一も異らざるものとす。(刑訴一一一條參照)
- 英
- Permit
- 独
- Erlaubnisz
- 仏
- Permis
隱居
(いんきよ)戸主が一定の條件の下に、任意に其戸主權を抛棄する法律行爲を隱居と云ふ、隱居なることは、必ずしも我國に特有なる一の風俗に非ずと雖も、我國に於ける隱居の風俗が、何れに其源を發したるやは、法制史上の一疑問なり、然して我民法に隱居の制を認めたるは、事實上の必要に基くよりは、寧ろ古來の慣習を維持せんと欲するに出でたるが如し、唯無制限に隱居を爲す事を許すは、多くの弊害を生じ、其ことは舊民法時代に於ても、甚だ弊害の少なからざるを經驗したる所にして、現行法は、其弊害を防止せんがために、種々の制限を設け、一定の條件を具備するに非ざれば、隱居することを得ざるものと定めたり、今其條件を説明すれば、□一隱居者の任意に出づることを要す、隱居は、即ち戸主權の抛棄也、故に權利者の自己の意思に出づることを要す、是當然云ふを俟たざる所にして、民法に別段に明文を揭げず、此の如く、隱居は戸主の意思に出づることを要するを以て、心神喪失中、又は意思能力なき幼者の爲したる隱居は、全く無效なりと言はざる可らず、□二年齡六十歳以上に達したることを要す、戸主が、疾病、本家相續、又は本家再興其他已むことを得ざる事由ありて、家政を執ること能はざるに至りたる場合を除くの外、年齡六十歳以上に達せざれば、隱居を爲すことを得ざるなり、我民法は、其の是非は兎に角、六十歳を以て老耄者と認め、戸主權の行使に支障あるものと認めたるなり、□三完全の能力を有する家督相續人が、相續の單純承認を爲したることを要す、單純承認とは、相續人に於て、被相續者の權利、義務を無限に引受くることを云ふなり、以上の三條件は、原則として、隱居の場合に具備せざるべからざる條件なれども、其例外として、下の如き場合は、特に理由あるものとして隱居を爲すことを許せり、即ちイ戸主が疾病、本家の相續、又は再興、其他已むことを得ざる事由によりて、家政を執ること能はざるに至りたるときは、其の條件に拘はらず、裁判所の許可を得て、隱居を爲すことを得、此場合に於ても、法定の推定家督相續人あらざるときは、家督相續人たるべきものを定めて、其承認を得ることを要するなり、ロ戸主が婚姻によりて、他家に入らんと欲するときは、前「イ」の場合に凖じて隱居を爲すことを得、若し此場合に、戸主が隱居を爲さずして、婚姻によりて他家に入らんと欲するときに、戸籍吏が其屆出を受理したるときは、其戸主は婚姻の日に於て、隱居を爲したるものと見做さる、ハ女戸主は、年齡の如何に拘はらず、隱居することを得、但し有夫の女戸主が隱居を爲すには、夫の同意を得ることを要す、以上の三場合は、特別なる例外なりとす、元來隱居は、隱居者、及び其家督相續人より、之を戸籍吏に屆出づるに因りて、其效力を生ずるものにて、事實上に於て隱居を爲し、相續人が家政を執れる場合と雖も、戸籍吏に屆出なきときは、其隱居は、法律上に於ては效無きものとす、又無能力者が隱居を爲すには、其法定代理人の同意を得ることを要せざるなり、盖し隱居は、固より一の法律行爲なるが故に、法定代理人の同意を得るを本則とするが如しと雖も、隱居は、身分上の關係にして、法定代理人の同意を要すとするときは、却つて弊害を生ずべきが故に、我民法は、之を原則の例外となしたり、隱居者が、適法に隱居を爲したるときは、戸主權を失ひて、新戸主の家族となり、家督相續人は、隱居者の權利義務を承繼するものなり。(民七五二條乃至七五八條)
- 英
- Resignation of headship of house
- 独
- Zurückgezogenheit
- 仏
- Abandonne-ment de la direction des affaires d'une maison
隱居事件
隱居事件とは、隱居に關する訴訟事件を稱するものにして、隱居の屆出に關して、取消の原因存するときは、其親族、又は檢事は、隱居屆出の日より、三ケ月内に取消を裁判所に請求することを得、隱居者、又は家督相續人が、詐僞、或は強迫によりて、隱居の屆出を爲したるときは、隱居者、又は家督相續人は、其詐僞を發見し、又は強迫を免れたるときより一年内に、隱居の取消を裁判所に請求することを得、此等の場合に起訴する事件を慣用語として、單に隱居事件と稱す、隱居事件に關する訴は、隱居者が普通裁判籍を有する地、又は其死亡の時に於て有したる地方裁判に起訴すべきものとす。(民七五八、七五九條、人事訴訟手續法三五、三六條)
- 英
- Case of retired person
- 独
- Zurückgezogenheitsfall
- 仏
- Cause d'une personne retirée
因果
(いんぐわ)世俗に所謂因果應報の如く、宗教的意義は別として、學問上、因果、又は因果律、因果の法則等と稱する時は、古來哲學者の重要なる問題としたる所、特にカントの因果律の説明の如きは、彼の地動説が、天動説に代りしと同じく、從來の吾人の自然現象に對する觀念を一變せしめたる、大哲理の重要なる點なりと稱せらる、今其の大體の説明をなすに先だち、因果の法則が、果して存するものなりや否やに就きて一言せんに、世上の學者、多くは無造作に、其の必有を信じて疑はず、唯ヒユームの如き、反對の學説を唱へたるを見るのみ、偖、學術上の因果とは如何、一言にして時間的に連結して繼起する二現象に對し、その前立つ者を因と稱し、後れ來る者を果と稱するなり、今雨降りたるが爲に、路惡しくなれりと云ふ際に、吾人は、明かに因果律の支配を信じ居るなり、盖し雨が降りたる結果として、路惡しくなれること、路の惡しくなれる原因は、雨が降りし爲めなることを、暗に表し居るを以てなり、實に宇宙の現象一として、この法則を脱することなしとするは、吾人の確信なり、而して原因は、其原因を有し、其原因は、又其原因を有し、順次此の如くにして限りあることなく、結果は、其結果を産し、其結果は、やがて又其結果を生じ、順次此の如くして限りなかるべし、されば或る結果の原因と見られたるものも、その原因より見る時は結果也、結果に於ても亦然り、斯くして、實に因果の連りは、永刧より來りて、永刧に去る鎖の如きものなり、かくの如き鎖其者の關係のみを抽象して考ふる所に、因果律又は因果の法則なるものを得。
- 英
- Causality
- 独
- Causalität
- 仏
- Causalité
隱語
(いんご)隱語とは、電信規則に用ひらるる語にして、元來電信に用ふる語を、普通辭、秘辭、隱語の三種に區別し、隱語とは、普通辭を普通の意味以外に於て使用し、其意味の他人に通解し難き用法を云ふ、歐文の隱語は、一聯綴十字以下のものを用ひ、日耳曼、英吉利、西班牙、佛蘭西荷蘭、伊太利、葡萄牙、及羅甸の國語中より採擇することを要す、但し固有名詞は、萬國電信總理局の刊行する隱語集に揭載するものの外、之を用ふることを得ざるなり。(電信規則一〇條、一二條)
- 英
- Jargon
- 独
- Kauderwälsch
- 仏
- Jargon
印刷
(いんさつ)活版、石版、木版たると、其他の機械的、又は化學的の方法によるとを問はず、多數の文書圖繪を一時に複製することを印刷と云ふ。
- 英
- Printing
- 独
- Buchdruck
- 仏
- Imprimerie
印刷者
印刷者及印刷人は、法律上に於ては全く同意義に用ゐられ、區別あるを見ず、印刷者なる語は、新聞紙條例及出版法に於て用ひらるる所にして、新聞紙、又は出版物には、必ず印刷者の氏名を明託することを要し、新聞紙の印刷者たるものは、年齡滿二十歳以上にして、帝國内に居住する者たることを要し、署名したる以上は、事實上に於て、印刷の事務に與らざる場合と雖も、猶印刷者としての責任を免るることを得ざるものとす、新聞紙條例によらざる雜誌、又は文書圖画の印刷者は、其文書の末尾に、必ずその氏名を記載せざるべからず、若し此記載を爲さざるときは、二圓以上三十圓以下の罰金を科せらるる者なり、印刷者は、自己の氏名を記載したる以上は、如何なる理由ありと雖も、出版法に關する責任を免るる事を得ず。(新聞紙條例、出版法參照)
- 英
- Printer
- 独
- Buchdrucker
- 仏
- Imprimeur
印刷人
印刷局
(いんさつきよく)明治三一年、勅令印刷局官制於て定められたるものにして、内閣總理大臣の管理に屬し、下に場ぐる事務を掌る官署を印刷局と稱す、□一官報、法令全書及職員錄の編輯、幷に發賣に關する事項、□二官報其他の印刷に關する事項、□三印紙、郵便切手、幷諸證券類の製造に關する事項、□四抄紙に關する事項の四項目の事務を掌るものとす、印刷局には、勅任の局長一人、技師六人、屬三十二人、技手四十人を置き、以上の事務を掌理するものとす(三一年勅二五六號印刷局官制)
- 英
- Printing office
- 独
- Buch-druckerei
- 仏
- Imprimerie
印紙
(いんし)法令の定むる形式に從ひ、一定の金額を券面に表示し、政府が製造發賣する印刷物にして、一定の手數料、又は租税を納付するに當り、各場合に於ける税法の定むる所により、其料額、又は税額に相當する印紙を貼用して消印すれば、納税と同一の效果を生ずるものなり。(印紙税法、三一年大藏省令一二號收入印紙形式の件參照)
- 英
- Stamp
- 独
- Stempel
- 仏
- Tim-bre
印璽
(いんじ)御璽、國璽を併稱して印璽と云ふ、御璽とは、天皇の御印にして、文に天皇御璽とあり、國璽とは、日本帝國の印にして、文に大日本國璽とあり、印璽は、内大臣之れを尚藏し、御親署の後、内大臣これを鈴す、法律勅令には、親署の後御璽を鈴す。(公式令一條乃至一七條)
- 英
- Emperor's Seal
- 独
- Kaiserssiegel
- 仏
- Sceau d'un empereur
印紙再貼用
(いんしさいてふよう)已に一度貼用の上使用したる印紙、郵便切手を再び貼用することを印紙再貼用と云ふ、此行爲ありたるときは、刑法上の犯罪を構成するものにして、二圓以上二十圓以下の罰金に處せらるるものとす、本罪の構成要件を槪説すれば、□一所爲の目的物は、已に貼用したる各種の印紙、又は郵便切手たることを要す、已に貼用したるとは、一旦其效用を遂げたることを意味す、苟も一旦其使用を遂げたる以上は、偶々其消印を脱したる場合と雖も、本罪を構成するに缺く所なし、□二再び貼用したることを要す、再び貼用すと云ふは、既に貼用し了り、從ひて眞正の印紙切手としての效果を發現せしめたるものを、更に貼用するの意にして、若し印紙切手に、更に工作を加へたるときは、印紙僞造罪を以て論ぜらるべし、而して貼用は、二度目のみの貼用を指すものに非ずして、二度目以上の貼用をも包含するなり、また必ずしも同一人によりて、貼用せらるることを要せず、他人の已に貼用したる印紙を更に貼用するも、本罪を構成するは無論とす、故に、一旦正當の印紙を貼用し、登記を受けたる如き場合は、未だ消印を爲さざるも、既に一旦效用を遂げたるものなるを以て偶々消印なきを發見して之を剝取り、其個所に消印ある已濟の古印紙を貼付せるが如き、單に窃取の犯跡を掩ふに過ぎざるものは、再び印紙を貼用したるものと云ふことを得ず、此場合は、窃盜罪として論ぜらるるも、印紙再貼用罪として論ぜらるる事なし、□三既に貼用の了したるものなる事の情を知りて、再び貼用したる事と要す、以上の三要件を具備して、初めて印紙再貼用罪を成立するものなり、茲に注意すべきは、印紙脱税の所爲に對しては、印紙税法に於て、脱税額二十倍の科料、又は罰金に處すとあり、然るに印紙再貼用の場合には、必ず印紙税の不足を來すものにして、この場合に於ける脱税は、印紙再貼用に伴ふべき必然の結果と言ひ得可く、從つて印紙再貼用の罪のみを以て論ずるを要し、印紙税法違反と、再貼用との二罪俱發と云ふを得ざるなり、又事實問題として屢々起るは、古印紙の消印なき部分を、亙に次ぎ合せて貼用したるものにして、これは印紙の再貼用にあらずして、印紙の僞造となる可し、何となれば、既に前使用によりて、一旦效力を失ひたる紙片を續ぎ合せて、印紙らしきものを作りたるものなれば、之を印紙僞造と云ふを正當とする也。(舊刑一九九條、印紙税法一四條)
- 英
- Retrying of Stamp
- 独
- wiederholentliche Anwendung des Stem-pels
- 仏
- Remployer les timbres
印紙税
(いんしぜい)印紙税、又は印税とは、印紙税法の定むるに所により、財産權の創設、移轉、變更、若くは承認を證明すべき證書、帳簿、及び財産權に關する追認、若くは承認を證明すべき證書を作成するものに課せらるる租税の一種なり。(印紙税法一條、二條、四條)
- 英
- Stamp-duty
- 独
- Stempelsteuer
- 仏
- Droit de timbre
印税
- 英
- Stamp-duty
- 独
- Stempelsteuer
- 仏
- Droit de timbre
印紙税法
印紙税法は、印紙税の賦課、徵收、税額等に關する規定をなしたる法律にして、□一普通、權利義務を定むる證書は、一通每に其記載金高五圓以上のものに限り、記載金高一萬分の五の割合を以て、印紙税を納む可きものなり、但し印税額五十圓となるときは、五十圓に止め、一錢未滿となり、又は一錢未滿の端數を生ずるときは、一錢に切り上ぐ可きものとす、□二印紙税は、證書帳簿等に印紙を貼用して納む可きを原則とするも、印紙税額に相當する現金を政府に納付し、税印の押捺を受けて、印紙貼用に代ふることを得可し、印紙を貼用するときは、證書等の紙面と、印紙の彩紋とにかけて、證書等の作成者の印章、又は署名を以て、判明に之を消す可きものとす。(三二年三月法五四號參照)
- 英
- Law of Stamp-duty
- 独
- Stempelsteuersrecht
- 仏
- Loi de droit de timbre
陰私漏告罪
(いんしろうこくぎい)陰私漏告罪とは、醫師、藥商、産婆、辯護士、辯護人、神官、僧侶が、其身分、職業に於て、委託を受けたることによりて知り得たる陰私を漏告する犯罪を云ひ、犯人は、之を十一日以上、三ケ月以下の重禁錮に處し、三圓以上三百圓以下の罰金を附加せらるるもの也、但し裁判所より呼出を受け、證人として事實を陳述するものは、此限りに非ず、以下分説すれば、□一犯罪の主體は、右に列擧したる身分あるものたるを要す、而して何れも正當の手續に依りて、其業務を認められたるものならざるべからず、其補助に從事するものの如きは、本罪の正犯人たることを得ざるも、教唆、又は從犯として、其責を負はざるべからず、□二其身分職業に於て、委託を受けたる事に因りて、知り得たる所の陰私たること、所謂身分とあるは、親族關係に於ける地位と云ふが如き、嚴格の意義に於て用ひられたるものに非ず、其職業、又は業務と同一意義に解すべきなり、本罪に關して、法律の保護する陰私は、第一要件に列記したる職業あるものが、各自の職業の執行に關連して、知覺したる所の陰私に限るものとす、然れども其陰私は、特に他人より、秘密にすべきことを委託せられたると否とを問はず、法律は汎く此種の陰私につき、秘密の義務を負ふものとせり、□三漏告したること、漏告とは、未だ知られざる事實を他人に告ぐることを意味す、從ひて既に世に公にせられたる事實は、之を告ぐるも漏告と云ふを得ず、又假令未だ公にせられざる事實なりと雖も、既に其事實を知得せる人に對して、之を告ぐるも亦同じ、之に反して、未だ或事業の眞實なることが、世に公にせられたるに非ず、單に眞僞不確實なる風評が、傳播しつつあるに止まる場合に於て、これを他人に告ぐるは、漏告と云ふことを得べし、次に本罪は、陰私に關する私人の利益を保護するものなるが故に、若し其人の承諾を得たるときは、違法に非ず、又法律上之に漏告するの權限を認められたる時も亦同じ、本罪は親告罪の一種にして、被害者の告訴を經て、初めて訴追せらるべく、所謂本罪の被害者とは、陰私を漏告することに依りて、直接に其利益を害せられたる者を云ふ、從つて本罪の被害者は、多人數あり得ることを想像し得べし、例へば、醫士が甲を診察するに當り、遺傳病あることを知り、之を漏告したるときは、其被害者は、現に診察を受けたる甲者にあらずして、其血族は總べて此被害者にして、何れも告訴權ありと云ふことを得べし、又死者に關する陰私を漏告したるときは、死者の血族に於て告訴權を有する也。(刑一三四條、舊刑三六〇條)
- 英
- Vlolation of secret
- 独
- Verrat des Privatgeheimniszes
- 仏
- Viola-tion du secret
印象
(いんしやう)身體の感覺機關に、外物の刺戟を與ふるや、其所に物理的、或は化學的變化を起し、その結果、腦中樞に連繫せる末端神經に興奮を生じ、この興奮は、腦髓の皮質に傳へられて、その組織に變化を與ふる時、其處に感銘起るべし、これ即ち印象と稱するものなり。然るに、今日哲學上の意見として、精神作用と、物質作用とを峻別し、兩者の間には、何等因果の關係ある能はず、精神作用は、永久に精神作用として、それ以外の或る者に換へらるる事なく、物質作用にも、亦精神作用を生ずる能はざると同樣に、精神作用によりて生ぜらるることなし、物質不滅の法則は、此場合に於ても嚴密に遵奉せらるべきものなりと説き、兩者の間は、全く因果的に沒交渉なりとせらる、然れども兩者全然無關係にして、何等の所緣もあることなしとは云ふべからず、兩者は亙に條件をなし、精神作用は、其裏に物質作用を條件として働き、物質作用の在る所には、精神作用も亦其所緣、即ち條件として同伴し、兩者は平行的に作用をなすと云ふ説、最も穩當なり、故に前に物質的なる感覺機關に、物質的なる刺戟を與へ、物質的に腦中樞に變化を起したりとするも、そは單に物質的經過として進行するのみ、その結果として、感覺なる精神作用を生ずとは、决して謂ふことを得ず、この際起りし精神作用の原因は、必ずやその物質的作用に供へる其裏に平行せる、換言すれば、物質作用の經過を條件とし、所緣とせる、然かも其際には、現はれざりし精神作用を原因とせざるべからざるなり、今日の通説なるも、通俗には猶物質的刺戟が、精神的感銘を生じたりと云ふこと、敢て妨げなかる可きか、尤も印象てふ語も、學者によりて異る意義に用ゐられ、「ヒユーム」の如きは、今日廣義に解する觀念を印象と觀念とに區別し、人が直接に感覺、又は感情に訴へたる所のものを以て、象印と名け、此の印象の再現したるものを觀念と謂へり。
- 英
- Impression
- 独
- Eindruck
- 仏
- Impression
姻族
(いんぞく)姻族とは、所謂親族の一種にして、婚姻により夫婦の一方と、其配遇者の血族との間に生ずる關係を姻族關係と云ひ、此關係にあるものを稱して姻族と云ふ、姻族は、血族に相對する語にして、血族關係は、自然に生じ、姻族關係は、人爲によりて生ず、何となれば、血統の作用は、造化自然の作用なるも、姻族關係は、婚姻なる人的作用に基けばなり、婚姻は、姻族關係の本源にして、各結婚者の血族は、姻族として其配遇者の親族となる、例へば妻の父母兄弟は、夫の姻族にして、夫の祖父母、父母、姉妹は妻の姻族なり、唯茲に注意すべきは、姻族關係は、夫婦の一方と其配遇者の血族との間にのみ存在するものにして、各結婚者の血族間に存するものにあらざるなり、故に夫の父母と、妻の兄弟との間には、姻族關係なきなり、姻族は三等親内に於てのみこれを親族とす、故に妻の曾祖父母又は從兄弟は、夫の親族に非ず、妻と夫の血族者との間に於ても亦同じ、此の如く法律が、姻族に就きて三等親を以て限界としたるは、血族に比して、其範圍を減縮するの必要ありたが故に外ならず。(民七二五條)
- 英
- Relation
- 独
- Verschwägerung
- 仏
- Rélation
姻族關係
- 英
- Relationship by affinity
- 独
- Schwägerschaft
- 仏
- Relation de l'affi-nité
引致
(いんち)引致とは、國家の公力を用ひて、當該官の面前に、強制して出頭せしむることを意味す、主として此語の用ひらるるは、刑事訴訟に關する場合にして、檢事の起訴により、呼出を受くるも出頭せざる時は、拘引狀に依りて強制引致を受くるものとす、犯人呼出しの場合は、召喚狀を以てなし、一定の日時に於て、出頭せしむる命令あるも、故なくして被告人が出頭せざるときは、即ち強制して拘引せらるるものなり、是を引致と言ふ。引致狀、又は拘引狀とは、召喚を受けたる被告人が、其日時に出頭せざる場合に於て、豫審判事、又は受託判事の發する令狀にして、被告人を強制引致する要件としての文書を指稱す、原則として、拘引狀を發するは、召喚に應ぜざる場合にして、その他被告人定りたる住所なきとき、被告人罪證を湮滅し、又逃亡する恐あるとき、被告人未遂罪、又は脅迫罪を犯し、仍ほ其目的を遂げんとする恐れある時に限り、召喚狀を發せずして、直に拘引狀を發することを得るものなり、拘引狀には、一定の形式を必要とし、被告事件、及び被告人の氏名、職業、住所を記載すべく、但し其氏名分明ならざるときは、容貎體格等を明示するを要す、又拘引狀には、これを發する年月日を記し、判事及裁判所書記之に署名捺印するを要するなり、この拘引狀は、巡査、憲兵上卒兵をして執行せしめ、この原則の例外として、現行犯の場合に於ては、檢事、司法警察官も、亦拘引狀を發することを得可し。(刑訴七一條乃至七三條)
- 英
- Arrest
- 独
- Verhaft
- 仏
- Ar-restation
引致狀
- 英
- Warrant for arrest
- 独
- Verhaftungsbefehl
- 仏
- Mandat d'arrêt
拘引狀
隱匿
(いんとく)隱匿とは、總べて物件の所在を不明ならしむるとこを稱するものにして、遺失物法に依れば、遺失物、其他本法の規定を凖用する物件を隱匿し、又は不正に處分したる者は、三ケ月以下の重禁錮に處せらるる旨を規定す、而して本法に所謂隱匿とは、自己の物とするの意思を以て、物件の處在を不明ならしむる總べての場合を指示するものにして、自己の物とするの意思ありて、始めて本罪を成立せしむるものとす、自己の物とする意思は、遺失物を拾得する當時に於て、存在することを必要とせず、其拾得後に於ても、此意思を實行するときは、本罪を以て論ずるに差支あることなし、又本罪は、自己の物とするの意思實行あるを要するが故に、遺失物を拾得するも、屆出を怠りたる故を以ては、本罪を成立せしむるものにあらず、もし遺失物なりと誤信して、他人の所有物を窃取して處分したるときは、罪本重かる可くして、犯すとき知らざるものなるが故に、又遺失物法を以て論ずべきものならん。(遺失物法一六條刑六二三條)
- 英
- Encroachment
- 独
- Verbergung
- 仏
- Détournement
隱蔽
(いんぺい)隱蔽とは、廣く人、又は物件の發見を妨くる行爲を總稱す、其用例の最も主なる者は、刑法第百五十二條にして、犯罪人庇護に關する場合なりとす、同條の規定によれば、他人の罪を免れしめんことを計り、其罪證となるべき物件を隱蔽しだるものは、十一日以上六ケ月以下の輕禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罸金を附加すとあり、此場合の隱蔽も、其罪證となるべき物件の發見を避くる行爲にして、その方法に何等の制限を設けざるを見て、單に其所在を不明ならしむこと、若しくは之を變形、又は滅盡することを包含せらるるものならん。(刑一〇三條)
- 英
- Concealment
- 独
- Unterdrückung
- 仏
- Recélement
隱避
(いんひ)隱避とは、發見を妨ぐる一種の行爲にして、主として用ひらるるは、刑法上の罪人庇護の罪に係る場合なりとす、刑法に曰く、犯罪人、又は逃走の囚徒、及び監視に附せられたる者なることを知りて、之を藏匿し、もしくは隱避せしめたる者は、十一日以上一年以下の輕禁錮に處す云々とあり、所謂隱避とは、藏匿以外の方法により、犯人の發見、又は逮捕を妨害する行爲を指稱す、而して其妨害の方法に就きては、刑法は之を明定せざるが故に、犯人の潜伏すべき場所又は方法を教示し、或は潜伏に要する費用、又は發見を避くるに必要なる衣服を給與するが如き、總べて之を包含するものとす、犯罪人に逃走を煽動し、或は其逮捕を解くが如きも亦然らん、されど一私人は、犯人の潜伏を告發すべき法律上の義務なきが故に、其潜伏を知り乍ら、單に之を官に告げざるのみにては、所謂隱避せしめたりと言ふ限りにあらざるなり。(刑一〇三條)
- 英
- Giving a place of refuge to the prisoner
- 独
- Zufluchtsort einem gefan-genen zu geben
- 仏
- Donner le lieu de refuge a'un prisonier
隱秘占有
(いんぴせんいう)隱秘占有とは、公然占有、又は平穩占有に相對する反語にして、物に關する實力の取得、又は行使を秘して、外形上の行爲に顯はさざるを云ふ、即ち物の實力の占領乃至行使の方法に關する瑕を有する占有にして、例へば、犯罪に關する物件を買取りて、之を隱匿する場合の如し、隱秘占有と雖も、占有の一種にして、法律上の保護を受け、其占有を不當に害したる場合に於ては、占有權の浸害を來すものとす、而して我民法上に於ては、隱秘の占有と雖も、物に關する實力の行使が、外形上の行爲に表はれ、利害關係人に於て、之を認知し得べきときは、公然の占有に變ずるものなり、例へば臟物を隱匿したる後、更に公然之を販賣するが如し、次に隱秘の占有者は、本權者より訴を以て占有物を回收せられたる時は、果實を返還し、且つ其既に消費し、又過失によりて毀損し、及び收取を怠りたる果實の代價を償還する義務あるものなり。(民一九〇條)
- 英
- Private occupation
- 独
- private Besitznahme
- 仏
- Occupation privée
陰謀
(いんぼう)陰謀とは、一個、又は數個の特定したる犯罪を實行するために、二人以上のものが、陰かに謀議廻策することを云ふ、故に彼の漫然として、或る罪を犯さんとする通謀の如き、所謂犯罪組合の如きは、陰謀と云ふことを得ず、苟も陰謀と云はんには、必ず特定したる犯罪行爲に關することを要す、されど其犯罪行爲は、必ずしも一個たることを要せず、數個たりと雖も、特定したる場合は、之を陰謀と云ふことを得べし、又一人が、陰かに罪を犯さんの意思あるも、陰謀と云ふことを得ず、及び單に他人に對し、相謀りて罪を犯さんことの意思を通ずると雖も、陰謀と云ふを得ず、必ずや二人以上の間に於て、相謀りて罪を犯さんとする契約の成立したることを必要なる條件とす、一方より罪を犯さんことを申込み、相手方に於て之を承諾したる場合に於て、初めて陰謀と云ふことを得るなり、我刑法は原則として、陰謀のみを以て罰せざれども、國事に關する犯罪に於て、特に陰謀を所罰することとせり。(刑法七八條
- 英
- Plot
- 独
- Complott
- 仏
- Complot
請合證書
(うけあひしようしよ)請合證書とは、債務の履行を確保する證書を云ふ、例へば請負契約に於て、建築請負人が、甲家屋を必ず何年何月何日迄に落成せしめんことを約するが如き、又は酒幾樽かの賣買に於て、賣主が其品質の善良なることを誓言するが如き證書を云ふ。(民六三二條)
- 英
- Certificate
- 独
- Certifikat
- 仏
- Certificat
受入
(うけいれ)金錢、又は物品に關する計算上、收入、又は貸方を受入と云ふ。(商二六條、市制一〇七條以下、町村制一〇七條以下等)
- 英
- Income
- 独
- Einkommen
- 仏
- Revenu
請負
(うけおひ)請負とは、當事者の一方が、或仕事を完成することを約し、相手方が、其の仕事の結果に對して、之に報酬を與ふることを約するによりて、其效力を生ずる契約を云ふ、仕事を完成することを約する者を請負人と名づけ、報酬を與ふる者を注文者と稱す、請負人は、必ず或仕事を落成することを約するを要す、請負の目的は、必ずや仕事の落成、即ち勞役の結果ならざるべからず、この請負人の勞役は、學術枝藝なると、將た勞力なるとを問はざるなり、例へば車夫が客を乘せ、或場所より或場所に運送することを約するときは、これ勞力の結果を目的とするものなり、又建築師が、美術館を建築することを約する時は、之全く技術上の勞役の結果を目的とするもの也、從つて請負の結果の有形なると、無形なるとを問はざるなり、例へば家屋建築の結果の如きは、前者に屬し、仲裁判斷の結果の如きは、後者に屬す、又材料を供する者が、當事者の中何れにあるも、請負契約たることを妨げざるもとのす、注文者は、仕事の結果に對して、請負人に報酬を與ふることを約するを要す、請負契約たるには、注文者は、請負人の勞役其ものに對して、報酬を與ふることを約するにあらずして、勞役の結果に對して、之を與ふることを約するものなり、報酬は、金錢を以てすることを通常とするも、金錢以外の物、又は勞役を以てすることを妨げず、報酬の額は、當事者に於て、必ずしも其總額を指定することを必要とせざるも、之を確定し得べき方法は、必ず約定せざるべからず、若し當事者が、報酬の額を確定すべき方法を約定せざるときは、請負契約は、决して成立するものにあらず、何となれば、報酬の額は、當事者の約定すべきものにして、裁判所の定むべきものにあらざればなり、尚請負は、諾成契約なるが故に、當事者の合意のみに因りて成立し、法律上特定の條件、例へば物の現實の授與等を要せざるものとす。(民六三二條乃至六四二條)
- 英
- Contract work
- 独
- Entreprise
- 仏
- Contrat
請負金
(うけおいきん)請負金とは、請負契約に依りて、其仕事の結果に對して、注文者より、請負人に報酬として支拂ふ金錢を云ふ、茲に請負金と云ふも、金錢其のものを指すに限らず、金錢に代へて或る物品を給與するをも、法律上請負金と云ふに妨げなし、請負金は、請負仕事其ものの引渡と同時に支拂はるるものなり、例へば自動車を注文して製造せしめたる場合に於ては、其自動車の引渡と同時に、報酬(即ち請負金)を支拂ふべきが如し、之を法律上同時履行の原則と名づく、然れ共其仕事が、本來目的物を有せざるとき、又は目的物を有するも、之が引渡を要せざる場合に於ては、注文者は、仕事の完成したるとき、直に請負人の請求に應じ、請負金を支拂はざるべからず、例へば、仲裁判斷の請負の如き、目的物なき場合の如き、又現に注文者が住する家屋を修繕することを請負ひたる場合の如きは、其結果を特に引渡すの必要なきを以て、其仕事の成就せるときは、請負人の請求に應じ、直に請負金を支拂はざるべからず。(六三三條但書、六二四條一項)
- 英
- Contract money
- 独
- Vertrags-geld
- 仏
- Argent de contrat
請負業
(うけおいげふ)請負業とは、請負行爲を爲すを目的とする業務なり、其業務の異るに從ひて、種々の請負業あるは當然の事にして、例へば運送請負業、土木請負業の如き是なり、電氣、又は瓦斯の供給を目的とする行爲も、亦請負の一種とするを妥當とす、而して之等の請負を營業として爲すときは、其行爲は商行爲となり、其人は商人なり、故に商法の規定に從ひて、商業登記をなし、又商號の選定を爲すことを得べし、又商業帳簿を備へて、取引の狀態、其他財産に關する一切の事項を明記するの義務あるものなり。(商二五條以下)
- 英
- Contract business
- 独
- Vertrags-geschäft
- 仏
- Affaires de contrat
請負人
(うけおいにん)請負人とは、請負契約に於て、或る仕事の完成を爲すべき義務を負ふ者を云ふ也、請負人は、一個人たることあり、又法人たることあり、請負人の權利は、報酬を得るにあり、其義務は、仕事を完成するにあり、此義務ある結果として、□一瑕疵修補の義務、仕事の目的物に瑕疵あるときは、注文者は請負人に對して、相當の期間を定め、其瑕疵の修補を求むることを得べし、蓋し仕事に瑕疵あるときは、請負人は、未だ完全に、其義務を盡したりと云ふを得ず、從ひて請負人をして之を完全に修補せしむるは、最も至當の請求也と謂はざるべからず、□二損害の賠償、請負人は、仕事の結果に就き、苟も瑕疵の存するときは、其有形なると無形なると、將た表見なると、不表見なるとを問はず、注文者に對して、損害賠償の責に任ぜざるべからず、而して仕事の目的物に瑕疵ある場合、即ち瑕疵が有形なる場合に於ては、注文者は修補に代へて、損害賠償を求むることを得べく、又修補と共に損害賠償を求むることを得べし。(民、三三條、六三四條)
- 英
- Contractor
- 独
- Unternehmer
- 仏
- Contractant
受附
(うけつけ)受附は、又受理とも云ふ、國家機關が、他の機關、又は私人より、或る事項に關する意思表示(即ち願書、屆書等)を受納するを云ふ、受附に二種あり、司法上の受附、及び行政上の受附是なり、民事訴訟を提起せんが爲に、訴狀を司法裁判所に差出し、裁判所之を受附くるが如きは、前者に屬し、又子の出生ありたるとき、出生屆を戸籍吏に差出し、戸籍吏之を受理するが如きは、後者に屬す。(民訴一九〇條、戸籍法六八條)
- 英
- Acceptance
- 独
- Annahme
- 仏
- Acceptation
受附帳
受附をなしたる年月日、受附けたる事項、申請人の氏名、及び受附の番號等を記載する帳簿を受附帳と云ふ。(不動産登記法四七條)
- 英
- Note of acceptance
- 独
- An-nahmesbuch
- 仏
- Livre d'acceptation
受附番號
受附の順位を表示する番號を受附番號と云ふ、普通は、其番號の順序に依いて、事件を處理するものなり、例へば不動産登記の如し。(不動産登記法四八條)
- 英
- Number of acceptance
- 独
- Annahmszahl
- 仏
- Nombre d'accepta-tion
受取證書
(うけとりしようしよ)受取證書とは、債務辨濟の證據として、債權者より債務者に交付する證書を云ふ、故に此證書は、債務者にとりては、極めて必要なるものにして、後日其債務に就き、爭ひの生じたる場合に於ては、唯一の有力なる證據方法也、受取證書は、斯くの如く重要なるを以て、受取證書の持參人に對して爲したる辨濟は、有效也とす、盖し我邦日常の取引に於て、先づ辨濟者は、受領者に對し、受取證書の有無を質し、其證書と引換に辨濟するを通例とす、夫れ故に、受取證書を持參したる者を以て、受領の權限ある者と認むるは、當然なるのみならず、若し證書を有するに拘はらず、なほ進みて受領權限の有無を調査せざるべからずとするは、是債務者に難きを責むるものにして、其結果は、取引の敏活を妨ぐるに至るべし、故に法律は、此の便宜の方法を求めたるものたり、されど債務者が、其受取證書持參人に、實際受領の權限なきことを知り、又は過失に因りて、之を知らずして返濟したるが如き場合に於ては、縱令其受取證書を有するも、其辨濟は有效となることなし、唯辨濟者の善意の場合に限り、有効なるものとす。(民四八〇條)
- 英
- Receipt
- 独
- Quittung
- 仏
- Recu
受取人
受取人とは、金錢、または物件の支拂、若くは引渡しを受くべきものにして、普通の場合に於ては、債權者也とす、例へば運送物品の荷受人、保險契約に於ける保險金受取人、爲替手形、約束手形、小切手金額の受取人等是なり。(商三四三、六〇六、六〇七、四二八、四三〇、四四五、五二五、五三〇條)
- 英
- Receiver
- 独
- Empfänger
- 仏
- Receveur
受戾
(うけもどし)質契約、又は抵當權等の關係を解除し、設定者より差入れたる財産權を受出すことを受戾と云ふ。(破一〇一九條三號、質屋取締規則參照)
- 英
- Redemption
- 独
- Rückkauf
- 仏
- Rédemption
氏
(うぢ)氏とは、一家と、他の一家とを區別する爲めの表章記號也、氏は「うぶち」即ち生地の意義より起因せるものにして、我國封建時代に於ては、士分以上のものを除くの外は、姓氏を有することを得さざりしが、明治三年三月の布告を以て、平民に苗字を允許せられ、續きて明治八年二月の布告を以て、爾後必ず苗字を唱へざるべからざる事となり、祖先苗字不明の向は、新に苗字を設くべしとの制を定められたり、右の如く、氏は家の記號なるを以て、其家を構成する所の戸主、及び家族は、其家の姓氏を稱すべきは當然なり、古來の慣習に依れば、人の妻となりて、他家に入りたる後も、なほ生家の姓氏を稱するを得たりしと雖も、時勢の變遷上此慣習は破れ、苟も同一の家籍に屬する以上は、妻たると子たるとを問はす、皆同一の氏を稱すべきことを必要とするに至りたり。(民七四六條)
- 英
- Name
- 独
- Name
- 仏
- Nom
運送
(うんそう)廣義に運送と云へば、人、若くは物品を一定の場所により、他の一定の場所に移すを目的とする行爲を云ふものにして、其の方法、及び場所の如何を問はず、營業の爲めにするもの、若しくは郵便の如き、總べて之を包含す。營業税法一條、三三年三月法五四號郵便法、明治三三年三月法六五號鐵道營業法)
- 英
- Transit-trade
- 独
- Frachtges-chäft
- 仏
- Commerce de transit
運送營業
(うんそうえいげふ)運送營業とは、物品又は旅客を、甲地より乙地へ移轉する行爲にして、此行爲を目的とする者を運送營業者と云ふ、運迭營業も亦商行爲の一なり、運送には、海上運送と、陸上運送とあり、(海上運送の部參照)陸上運送營業とは、陸上、又は湖川港灣に於て、物品、又は旅客の運送を爲すを業とするを云ふ、所謂湖川港灣の範圍は、遞信大臣の定むる所に依るものにして、明治三二年五月、遞信省令二〇號によれば、湖川港灣とは、平水航路を謂ふものとせり、次に運送營業は、請負の一種に屬するものにして、雇傭關係也と言ふ可からず、何となれば、運送契約の目的は、物品、又は旅客の輸送と云ふ仕事を完成するにありて、輸送と云ふ行爲自身にあらざればなり、其證とすべきは、商法三三六條に依れば、送運品の全部、又は一部が、不可抗力に因りて、滅失したるときは、運送人は、其運送賃を請求することを得ざることを定めたり、これ盖し、此場合に於ては運送人は、契約の目的たる所の仕事を完成すること能はざるを以てなり、夫れ運送營業は、請負の一種なるが故に、之を賃貸借と區別せざるべからざるは勿論とす。(商一二二、二六四、三三一、及五九〇條乃至六八九條、民六〇一、六二三、六三二條、)
- 英
- Shipping trade
- 独
- Einschif-fungsgeschäft
- 仏
- Affaires de transporta-tion
運送營業者
運送人(運送營業者)とは、陸上、又は湖川港灣に於て、物品、又は旅客の運送を爲すことを業とする者を謂ふ、分説すれば、□一運送人は、運送を爲すものなり、運送を爲すとは、運送と云ふ事實上の行爲を爲す意味にあらず、他人と運送契約を結び、他人の爲に輸送を爲すことを約するを謂ふ、而して其物品の所有者の誰たるを問はざるも、之を輸送するには、他人のためにすることを要す、自己のために自己に屬する物品を輸送する如きは、之を包含せず、又他の一方に於ては、苟も他人のために、輸送を爲すことを約するものなる以上は、其輸送は、自己の運送具に依りて之を爲すと、又他人より借受けたる運送具に依りて爲すとを問はず、又更に第三者と運送契約を結び、之を輸送せしむるも不可なきなり、故に運送具を有せざるも、運送人たることを得可く、但し第三者と更に運送契約を結ぶに方りては、自己の計算に於てすることを要す、□二運送人は、運送を爲すを業とする者なり、業とするとは、營業とする意味なり、營業とは、所得の通常の根源とするの目的を以て、同種の連續せる一團の私法的行爲を爲すを云ふ、故に單に賃金を得る目的を以て勞役に服するものは、運送人たることを得ず、(商二六四條、及三三一條但書)
- 英
- Transit trader
- 独
- Frachtführer
- 仏
- Commerçant de transit
運送貨物引換證
(うんそうくわぶつひきかへしよう)運送貨物引換證と云ふは、運送人が、荷送人の請求に因りて、之に交付すべき物權的有價證券也、貨物引換證には、次の事項を記載し、運送人之に署名するを要す、イ運送品の種類、重量、又は容積、及び其荷造の種類、個數、幷に記號、ロ到達地、ハ荷受人の氏名、又は商號、二荷送人の氏名、又は商號、ホ運送賃、へ貨物引換證の作成地、及び其作成の年月日、□一貨物引換證は、もと船荷證劵より出たるものにして、其存在の理由は、運送のために委託せられたる貨物を、運送營業者の手中に在る間に於て利用し、轉換するにあり、故に其性質は、運送狀の如く簡單なるものにあらず、然しながら、此の貨物引換證の作成は、運送契約の要素にあらずして、偶素とも云ふべきものなりとす、□二貨物引換證は、物權的有價證券なり、貨物引換證の内容は、託送貨物の引渡を請求する債權なるも、亦一面に於ては、其移轉は、託送貨物の引渡と同一の效力を有す、故に之を引渡證券とも稱す、商法に、裏書に依り貨物引換證を讓渡したるときは、運送品の讓渡と、同一の效力を有すと云へるばこれなり、□三貨物引換證は證券的有價證券なり、證券的とは、證券に記載したる文句は、當事者間の權利義務を决定する效力を有するものを云ふ、詳言すれば、權利義務の範圍は、一に證券に記載したる文句に依りて定り、反對の證據を許さざるものの謂なり、このことは、素より善意の第三者を保護するの趣旨に出でたるものなるが故に、荷送人と、運送との間の法律關係は、之に依りて影響あることなし、□四貨物引換證の證券的有價證券なるの結果として、貨物引換證を作成したる場合に於ては、之と引換にあらざれば、運送品の引渡を請求することを得ざるものとす、若し之を喪失したるときは、公示催告の申立を爲し、除權判决を得ることを要す、又債務者をして、其債務の目的物を供托せしめ、又は相當の擔保を供して、其證券の趣旨に從ひ、履行を爲さしめ得べし、□五貨物引換證は、指圖式に依りて發行することを要するものにして、法律上當然指圖證券なるにあらず、是預證券及船荷證券と異る所なり、貨物引換證は、裏書、其他債權讓渡の方法に依りて、讓渡し得べきことは、其指圖式にて發行せられたる場合と、否らざる場合とを問はざるなり、尚貨物引換證は、船荷證券などと異り、その性質上、作成は、一通に限らるるものなり。(商二八一、三三二、三三四、三四四、三五八、六二〇、民施五七條、民訴法七六四條、鐵道運輸規程八九條、民四六六條乃至四七一條)
- 英
- Bill of lading
- 独
- Konossament
- 仏
- Connaissement
運送契約
(うんそうけいやく)運送契約とは、當事者の一方が、物品、又は旅客の運送を爲すことを約し、相手方が、之に運送賃を支拂ふことを約するによりて、效力を生ずる契約なり、□一運送契約は、請負の一種なり、□二運送契約は、不要式契約なり、不要式とは、其契約の成立上、一定の形式を必要とせざるものなり、運送狀、貨物引換證の如きは、契約書にあらず、却つて契約成立後に於て、其效力として當事者が、互に其交付を請求し得るもの也、又必ずしも常に運送契約に伴ふものにあらずして、當事者の請求ありたる場合に於て、始めて交付せらるるものたるに止まる、□三運送契約は、双務契約なり、又多くの場合に於ては、有償契約なり、こ運送が營業として爲すを必要とする當然の結果なり、而して運送人が、偶々箇々の運送を無償にて引受くることあるも、これが爲め其運送契約の運送契約たることを害せざるものとす、なほ海上運送に於ては、運送契約の一種たる傭船契約あり、所謂傭船契約とは、船舶所有者が、船舶の全部、又は一部を相手方の使用に供し、相手方は、一定の運賃を支拂ひて、其部分に運送品を積込み、而して船舶所有者は、船長をしてこれを運送せしむる契約なり。(商三三二、三三三、五九〇條、民五二一條乃至五三一條、及五三二、五五九條)
- 英
- Oontract of carriage
- 独
- Frachtvertrag
- 仏
- Contrat de transporta-tion
運送契約書
運送契約書とは、運送契約の成立を證する證書なり、舊商法(八八七條)に於ては、運送契約は、之を要式契約とし、書面の作成を必要としたれども、現行商法は、之を不要式契約となせるを以て、此證書の作成を必要とせざるに至れり、唯傭船契約の場合にありては、當事者の一方が、運送契約書の作成を請求したるときは、相手方は、これを拒むことを得ざるものとせるのみ。(商五九〇條)
- 英
- Written contract of carriage
- 独
- Frachtschein
- 仏
- Contrat écrit de transportation
運送狀
(うんそうじやう)運送狀とは、荷送人が運送人の請求により、法定の事項を記載し、且つ署名して、運送人に交付することを要する證書なり、運送狀に記載すべき事項は、イ運送品の種類、重量又は容積、及び其荷造の種類、箇數、並に記號、ロ到達地、ハ荷送人の氏名、又は商號、ニ運送狀の作成地、及びその作成の年月日、以上の事項の外に、或る事項を記載するも支障なし、□一運送狀は、普通に送り狀と稱するものなり、商法には其效力に關して、何等の規定なきも、荷送人及運送人の契約に關して、唯一の證據方法たること明かなり、□二運送狀は、運送人の請求に因り、作成せらるる者にして、小荷物に就きては、之を作成せざるを常とす、されど運送狀の交付を求むる慣習なき場合に於ても、運送人は、之を欲するとするときには之を請求するを得可きなり、之に反して運送狀の交付を常慣とする場合に於ても、荷送人け、運送人に對して、運送狀を受取ることを強ふるを得ず、鐵道運送に於ては、大荷物のみに關して、常に之を交付すべきものなりとす、□三運送狀は、荷送人が、これを交付して署名するものなるも、運送人は、之に署名するものにあらず、運送狀の作成交付は、荷送人が之を爲すも、其證據としての效力は、兩當事者の爲めに、又兩當事者に對して平等なり、これに對して、反證を許し、又は之が效力を制限することを約し得べきは勿論なり。(商三三二條、鐵道運輸規定八三條以下)
- 英
- Way-bill
- 独
- Frachtbrief
- 仏
- Itinéraire de voiture publique
運迭賃
(うんそうちん)運送賃とは、運送人の爲したる運送に對して、荷送人又は荷送人が支拂ふべき報酬也、運送賃は、契約に依りて定められ、又は慣習に依りて定めらる、之を定むる標準は、運送品の容積、重量、性質、運送の距離、又は期間、及び運送の方法等に依る、□一運送賃は、運送契約の締結者たる荷送人、之を支拂ふの義務を負ふ、されど荷受人は、其運送品を受取りたるときは、運送人に對して、法律上運送賃を支拂ふの義務を負ふものとす、受取とは、必ずしも現實に運送品を受取ることを要せず、所謂占有の改定に依るも可なりとす、□二運送人は、運送品の全部、又は一部が不可抗力に因りて、滅失したるときは、其運送賃を請求することを得ず、若し運送賃の前拂に因り、已に其運送賃の全部、又は一部を受取りたるときは、之を返還するを要す、但し運送品の性質若くは瑕疵、又は荷送人の過失に因りて、其滅失を來したる場合にありては、此等の損害は、荷送人の負擔すべきものなるを以て、運送人は、運送の結果なきにも拘はらず、運送賃の全額を請求することを得るなり、□三荷送人、又は貨物引換證の所持人が、運送人に對して、運送の中止、運送品の返還、其他の處分を請求したる場合に於て、運送が、半途にて中止せられたるときは、運送人は既に爲したる運送の割合に應じて、運送賃を請求することを得、□四運送品の全部、又は一部を運送せざるに拘はらず、運送賃の全額を支拂ふべき場合は、次の如し、A全部の傭船者が、運送品の一部分のみ船積して、未だその全部を船積せざる場合に於て、船長に對して、發航の請求を爲す場合、B個々の運送契約に於て、荷送人が運送品の船積を怠り、船長が直に發航したる場合、C傭船者が、運送品の積替を爲すことを得る權利を有するに、之を怠りたる場合、D航海中船長が、職務上の權限に依り、運送品を賣却、若くは質入し、又はこれを航海の用に供し、又はこれに對して、共同海損の處分を爲したる場合、□五運送人は、運送品に關して、受取るべき運送賃に就きて、運送品を留置することを得、又運送人は、運送賃に就き、其手中に存する運送品の上に、先取特權を有するを以て、之を賣却し、その代價に就きて、其優先權を行使することを得可し。(商三二四、三三六、三四二、三四九、五九二、五九六、六〇二、六〇六、六〇八、六〇九、六一五、六一七條、民一八三、三一八條)
- 英
- Freight
- 独
- Frachtgeld
- 仏
- Fret
運賃
- 英
- Freight
- 独
- Frachtgeld
- 仏
- Fret
運送料
- 英
- Freight
- 独
- Frachtgeld
- 仏
- Fret
運送取扱營業
(うんそうとりあつかひえいけふ)自己の名を以て、物品運送の取次を業とするを運送取扱營業と云ふ、運送取扱營業は、所謂取次に關する行爲の一種にして、之を常業とするものは、商人なり、而して運送取扱營業は、法理上廣義の問屋の一種とも云ふことを得べきとのなりとす、唯其取次の目的たる行爲が、物品の販賣、又は買入れにあるときは、之を問屋と云ひ、物品の運送にあるときは、之を運送取扱營業と云ふに過ぎず。(商三一三、三二一條)
- 英
- Forwarding agency
- 独
- Frachtgeschäft
- 仏
- Agence d'envoyer les marchandises
運送取扱契約
運送取扱契約とは、當事者の一方が、相手方の爲めに、物品運送の取次を爲すことを約し、相手方が、之に報酬を與ふることを約する契約なり、而して契約の内容は、當事者の定むる所に由る、□一運送取扱契約は、不要式の契約なり、□二運送取扱契約は、請負契約の一種なり、□三運送取扱契約は、双務契約にして、又多くの場合に於ては、有償契約なり。(商三二三條)
- 英
- Contract of forwarding
- 独
- Frachtvertrag
- 仏
- Contrat dénvoyer les marchandises
運送取扱人
運送取扱人とは、自己の名を以て、物品運送の取次を爲すを業とする者を云ふ、□一運送取扱人は、自己の名を以てするものなるが故に、此點に於て、運送契約の代理の引受を爲す代理人、代理商とは異る、又契約を取結ぶ點に於て、運送契約の媒介を爲す所の仲立人と異るものなり、□二物品運送の取次を爲す點に於て、問屋と異る、□三運送取扱人は、之を營業として爲すものなり、營業とせざるものは、未だ運送取扱人とは云ふを得ざるものとす。(商三二一、三六、三〇五、三一三條)
- 英
- Forwarding agent
- 独
- Speditör
- 仏
- Envoyeur
運送品
(うんそうひん)運送契約に於て、運送せらるる物品を運送品と云ふ、故に其種類を一々例記するは、不能にして又無益の業也、貨幣有價證券、其他の高價品に就きては、荷送人が運送を委託するに當り、其種類、及び價額を明告すべき義務あるもの也、彼の禁制物、例へば僞造貨幣、僞造文書の如きは、法律上運迭品と爲すことを得ず、又運送物品の運送中は、運送人に於て、善良なる管理者の注意をなすべきものとす、然しながら、若し荷造の不完全なる火藥、其他の爆發物の如き、船舶、又は他の積荷に危害を及ぼすの虞ある運送品は、之を海中に投棄するを得るものとす。(商三三六條、乃至、三三八條、五九三條、民四〇〇條)
- 英
- Goods
- 独
- Waren
- 仏
- Biens
運送保險
(うんそうほけん)運送保險とは、當事者の一方が、陸上湖川港灣に於て、貨物を運送する間に、偶然なる一定の事故に因りて生ずる損害を塡補する事を約し、相手方が、之に報酬、即ち保險料を與ふる事とを約する契約を云ふ、單に運送保險と稱するときは、内容甚だ廣汎なり、されど海陸旅客の生命保險、及び海上運送に於ける貨物の保險は、全く此中より除外して論ずるを常とす、故に我商法に於て、運送保險と云へば、必ず海上保險に相對するものにして、其所謂海上保險なるものは、海上運送保險に外ならざるなり。(商三八四、四二三、六五三條)
- 英
- Insurance on carriage
- 独
- Frachtversicherung
- 仏
- Assurance de transportation
運送保險契約
運送保險契約とは、當事者の一方が、陸上湖川港灣に於て、貨物を運送するに就き、偶然なる一定の事故に因りて生すべき損害を塡補ずることを約し、相手方が、之に報酬を與ふることを約する契約なり、□一この契約に於ける當事者は、保險者たる運送保險會社と、保險契約となり、運送保險株式會社は、我邦にあるものにては、單に運送保險のみを以て營業とするものなく、何れも他の損害保險を兼業とせり、例へば橫濱火災運送信用保險株式會社の如きは、火災保險と、信用保險とを兼ぬるが如し、□二危險(損害の事故)とは、例へば火災、水災、暴風雨、雪崩等を云ふ、□三被保險利益の客體は、有體物たるを普通とす、其保險價額は、發送の地及時とに於ける運送品の價額、及び到達地までの運送賃、其他の費用を合算したるものにして、なほ特約の存する場合に於ては、運送品の到達に依りて得べき利益を、之に算入することを得るものとす、□四保險料は、當事者の協議によりて定め、保險契約の無效なる場合、效力を失ふ場合、若くは解除の場合に於ても、已に受取りたる保險料は、これを返還せさるを以て原則とす、唯これに例外をなすは、契約の無效、失效、若くは解除が、保險者の責に歸すべき事由に基きたる場合なり、□五損害の塡補、即ち損害の依りて生じたる場合に於ては、保險者は、これが塡補額(普通は金錢なり)を支拂ふべきものとす。(商三八四、四二三、三九五、三九六、四二四、三九九、四〇八、四〇九、四一三條)
- 英
- Contract of insurance on carriage
- 独
- Frachtversicherungsvertrag
- 仏
- Contrat de l'assurance de transporta-tion
運送保險證券
(うんそうほけんしやうけん)運迭保險證券とは、運送保險契約に於て、保險者が、被保險者の請求に依りて、之に交付する要式の證券なり、運送保險證券には、次の事項を記載し、保險者之に署名することを要す、イ保險の目的、ロ保險者の負擔すべき危險、ハ保險價額を定めたるときは、其價額、ニ保險金額、ホ保險料、及び其支拂の方法、へ保險期間を定めたるときは、其始期及び終期、ト保險契約者の氏名、又は商號、チ保險契約の年月日、リ保險證券の作成地、及び其作成の年月日、ヌ運送の道筯及び方法、ル運送人の氏名、又は商號、ヲ運送品の受取、及び引渡の場所、ワ運送期間の定めあるときは、其期間、保險證券は、記名式なることを通例とするも、無記名式、又は指圖式なることなきにあらず、その何れの場合と雖も、有價證券たらざるを原則とし、唯特に約欵を以て、證券の正當なる所有者にあらざれば、保險金額を拂渡さずと定めたる場合に限り、有價證券たるものとす。(商四〇三、四二五條)
- 英
- Policy of insurance on carriage
- 独
- Frachtpolice
- 仏
- Police d'assurance de transportation
運命
(うんめい)吾人の知識は、到底宇宙の眞相を解釋し、又は洞察するを得ず、自然力の作用の千變萬化なる、到底吾人の能力によりて、如何ともすべからざるもの多し、斯くあるべしと期待せる事も、反對の結果となりて現はれ、斯くあるまじと思へる事の案外然るが如き例は、日常絶へず吾人の遭遇する所なり、若し斯かる現象に對し、單に吾人の智識の足らざりし爲めと云ふのみを以て、滿足する事能はざるときは、其處に何等か自然力の作用に本來定まれる所ありて、然かするにあらざるかと、瞑想せざるを得ず、運命てふ觀念は、斯くの如き感想より生じ來るものにして、即ち事物の成否興廢は、豫め造物者に依つて先天的に規定せられありて、人爲の作用は、總べてその規定以外に、一步も出ずる能はず、吾人の企圖を充たすものあるは、唯偶然に其規定に投合したるに過ぎずとなすをいふ。
- 英
- Fortune
- 独
- Sohicksal
- 仏
- For-tune
裏書
(うらがき)證書に、債權の讓渡を爲したる旨を記載するを裏書と云ふ、裏書の普通の文例を示せば左の如し
表書ノ金額(又は物品)某殿又ハ其指圖人ニ御支拂可被下候也
年月日何某
裏書は、必ずしも證書の裏面に記載することを要せず、唯裏面に記載するを普通となすを以て此名あるいみ、故に表面の餘白に記載するも、又は付箋を以てするも、法律上其效力に差異あることなし、次に裏書に、記名式裏書と、無記名式(白地裏書)裏書との二あり、□一記名式裏書とは、裏書人たる讓渡人、讓渡の年月日、及び讓渡人の氏名を記載するものにして、右文例に示せるが如し、□二無記名式裏書とは、裏書人たる讓渡人、及び讓渡の年月日は之を記載するも、讓受人の氏名を記載せざる裏書を云ふ、此裏書に於ては、爾後の讓渡は、其證書の交付のみを以て爲し、最後の讓受人は、自己の氏名を之に記入し、以て其債權を行使することを得るものなり、故に證券の流通は、頗る圓滿に行はるるものとす、尚此外に手形に於ける取立委任の裏書と質入裏書なるものあり、即ち其所持人は、裏書によりて、爲替手形の質入をなし、又は其取立の委任を爲すことを得、此場合に於ては、裏書に其目的を附記することを要すとせられたり。(民四六九條、商三六五條、四五五條乃至四六四條)
- 英
- Indorsement
- 独
- Indossament
- 仏
- Endossement
裏書禁止
「裏書禁止」手形、其他指圖債權は、裏書によりて、甲より乙へ、乙より丙へ、順次轉々流通するものなり、之を證書の裏書連續と云ふ、然るに此の流通を妨止する方式あり、之を裏書禁止と稱す、今爲替手形の裏書禁止に就きて言はんに、此禁止に二種あり、□一手形の振出人が爲す裏書禁止、此場合にありては、其手形は、裏書の方法によりては、絶對に流通せざるに至るもの也、是盖し手形の振出人は、發行者として、手形の效力を定むるの全權を有するが故に、其手形を流通せしむると否とは、隨意に決する所なればなり、されど此場合に於ても、手形上の債權をして、性質上讓渡するを得ざるものとせるにあらず、債權一般の原則に從ひ、指名債權として之が讓渡を爲すことを得るものとす、□二裏書人が爲す裏書禁止は、單に裏書人自身の利益を保護するの目的に出でたるものと解すべく、即ち裏書人は、被裏書人の後者に對して、手形上の責任を負擔せざもの也、盖し被裏書人に對して責任を負擔すべきは、裏書の效力當然の結果なるも、裏書人の裏書禁止の場合に於ては、手形は順次流通するを得るものにして、振出人が爲す裏書禁止とは、大に其效力を異にし、單に其の手形上の責任を負はざるに過きざるものなり。(商四五五、三六四、四四五、四六七條)
- 英
- Prohibition of endorsement
- 独
- Rektaindossament
- 仏
- Défense de l'endossement
裏書の連續
裏書の連續とは、數個の裏書が中斷なく行はるる事を云ふ、例へば最初證書に債權者として指定せられたる者が、裏書人となりて乙に裏書し、其被裏書人卽ち乙は、更に裏書人となりて丙に、丙は丁に、丁は戊にと云ふが如く、順次裏書し、而して現在の所持人に至る迄、連續せる狀態を云ふ、此の裏書の連續は、手形上の權利を行使するの條件にして、之なきに於ては、其權利を行ふことを得ざるなり。(商四六四條)
- 英
- Continuation of indorsement
- 独
- fortgesetztes Indossament
- 仏
- Con-tinuation le l'endossement
讓書讓受人
(うらがきゆづりうけにん)裏書讓受人とは、證書債權の裏書に依りて、其權利者となりたる人、即ち證書の所持人を云ふ、盖し指圖債權は、裏書に依りて轉輾するものなるが故に、債務者は、何人か其債權の讓受人なるやを知る能はず、故に債務者より見れば、其證書の裏書を受け、現に所持する人を以て、正當なる讓受人と看做すの外なし、從つて債務者は、其證書の所持人が、正當の讓受人なりや否や、又證書の讓渡人、又は讓受人の署名捺印が、眞正なりや否やは、之を調査するの義務なく、苟もその證書の裏書連續し、且つ現に其證書を所持するの條件を具備する者なるに於ては、之に對して、有效に債務の辨濟を爲すことを得るものとす。(民四六九、四七〇條)
- 英
- Endorsee
- 独
- Indossat
- 仏
- Porteur
裏書讓渡人
裏書讓渡人とは、指圖債權の所持者が、裏書の方式に依りて、讓受人に其權利を讓渡する者を云ふ、裏書讓渡は、即ち債權讓渡の一種たるが故に、茲に債權者の更替を來すは言ふ迄もなし、例へば約束手形の所持人(即ち讓渡人)甲が、裏書によりて、乙者に之を交付するが如し、此の場合の甲者は、即ち裏書讓渡人なり。(民四六九條、商五二五條)
- 英
- Endorser
- 独
- Indossant
- 仏
- Endosseur
賣
(うる)賣買契約に因りて、或る財産權を移轉し、又は移轉する義務を負ふことを「賣る」と云ふ、□一賣買の目的物は、財産權ならざるべからず、從つて親權、後見權の如きは、財産權にあらざるを以て、賣買の目的となす事を得ず、□二賣買の目的物は、讓渡を禁ぜられざる財産權ならざるべからず、彼の華族の世襲財産の如きは、讓渡を禁ぜられたる財産なるが故に、賣ることを得ざるなり、□三賣買の目的物は、賣買の當時滅失せざる財産ならざるべからず、賣買の目的物たる財産權は、現に賣主の所有に屬すると否と、又現に存在すると否とを問はずと雖も、賣買は、財産權讓渡の方法なるが故に、賣却の當時已に滅失したる財産權は、賣買の目的物となすことを得ざるは當然なり、今賣買の種類を示せば、イ即時賣買、及び猶豫賣買、此區別は、財産權移轉の時期を標凖となしたるものなり、ロ現金賣買及び信用賣買、此區別は、代金支拂の時期を標凖となしたるもの也、ハ任意賣買、及び強制竸賣、此區別は、賣主の意思を標凖としたるもの也、ニ見本賣買、及び現物賣買、此區別は、賣却物を點檢すると否とによるものなり、ホ試驗賣買及び試味賣買、此區別は、普通其目的物を試驗せるか、試味せるかによるものとす。(民五五五條乃至五八五條)
- 英
- Sale
- 独
- Verkaufen
- 仏
- Déb▲t
賣主
(うりぬし)賣主とは、賣買契約に於て、或る財産權を相手方に移轉し、又は移轉する義務を負擔する者を云ふ、我民法に於ては、賣主は常に債務者なり、□一、賣主の義務、賣主の義務は、之を本來の義務と、擔保の義務の二種とす、賣主の本來の義務とは、賣買本來の效力として、賣主の負擔する義務にして、財産權を移轉するの義務、目的物引渡の義務の如き即ち之なり、擔保の義務とは、賣主が其本來の義務を完全に履行すること能はざる場合に、救濟の方法として負擔する義務を云ふ、□二、賣主の權利、賣主の權利は、即ち代金支拂を受くることこれなり、其支拂を受くべき場所は、普通賣却物を引渡す場所なりとす、又賣主は、賣却代金に對する利息を受くる場合あるものにして、例へば代金支拂を延期したりたる場合の如し、尚賣主が、未だ引渡さざる賣買の目的物に就き、果實を生じたるときは、其果實は當然賣主に屬するものなり。(民五五五、五五七、四〇〇、四八三、四〇一、五六一、五七二、五七三、五七四、四〇四、五七五條)
- 英
- Seller
- 独
- Verkäufer
- 仏
- Ven-deur
營外居住
(えいぐわいきよぢゆう)軍人軍屬が、兵營以外の處に居住するを營外居住と云ふ、例へば准士官以下の現役軍人は、陸軍服役條例に依り、一般に兵營内に居住するを本則とするも、憲兵上等兵、樂手補に限り、營外に居住するを得るが如き、或は又樂生中、品行方正、勤務勉勵、技藝熟達、且つ樂生を命ぜられたる日より、一箇年以上精勤せし者は、師團長、又は戸山學校長の許可を得て、營外に居住することを得るが如き是なり。(陸軍服役條例九四條、及び二九年六月陸軍省一〇六號特務曹長以下外泊又は營外居住に係る取扱の件)
- 英
- Residing out of military camp
- 独
- Wohnen auszer dem militärischen Lager
- 仏
- Résidence hors des champs militaires
營業
(えいげふ)營業なる語の意義に關しては、議論少しとせず、今普通の解釋に從つて説明すれば、繼續して營利の目的を以て爲さるる、同一種類に屬する行爲の包括的名稱たるに外ならず、隨ひて或行爲が營業たるには、其目的の營利的なる事、其行爲の繼續的なる事、及び同一性質の行爲に屬する事の、三要件を具備せざるべからざるものとす、但し商法に於ては、營業者の事業そのものは勿論、店舗、貨物、商業帳簿等の如き、有形的の物、及び事業に關聯して生じたる債權、債務、並に其得意先に對する事業上の關係をも、包含する用例なきにあらず、次に現行法上營業を種別すれば、免許を要するもの、認可を要するもの、屆出を要するもの、及び此等の手續を要せざるものとの四種あり、而して營業税法第一條の規定に依り、營業税を課せらるる營業の種類は左の如し。物品販賣業、銀行業、保險業、金錢貸付業、物品貸付業、製造業、運送業、倉庫業、運河業、棧橋業、船渠業、船舶碇繫場業、貨物陸揚場業、土木請負業、勞力請負業、印刷業、寫眞業、席貸業、旅人宿業、料理店業、公なる周旋業、代辨業、仲立業、仲買業等にして、此他一定の製造場なく、職工を使役することなく、原料を供給し、工錢を支拂ひ、物品を製造せしめて販賣する者、一定の製造場を設けず、店頭に於て物品を製造し、主として小賣を爲す者、牧場にあらざる飼料を購求して家畜、又は家禽を飼養し、之を賣り、又は鷄卵、牛乳等其の産物を販賣する者、魚介類を養殖して之を販賣する者、動植物、其他普通に物品と稱せざるものを販賣する物にして、一箇年賣上金額千圓以上に出ずるものは、物品販賣業と看做さるるものなり、尚同法により、營業税は賦課せられざるも、營業としては、□一政府より發行する印紙、切手類の賣捌業、□二自己の採堀、又は採取したる鑛物の販賣業、□三度量衡の製作、修覆、販賣業等是なり。
- 英
- Business, commercial business
- 独
- Geschäftsbetrieb
- 仏
- Affaires
營業規則
營業規則とは、營業に關して制定せられたる行政法規を云ふ、現行法に於て、特殊の營業に對して規定する各種の法規は、主として課税の目的、又は警察上取締の必要に出でたるもの多し、未だ營業其ものに關し、且つ一般に通ずる法規の制定せられたる見ず、元來營業規則なるものは、其性質上、施行地方に於ける民情風俗に隨ひ、之が制定上大に斟酌を要す可きものあるを以て、營業其ものに關する規定は、專ら地方規則に委せらるるもの多く、全部を包括する規定の存せざる、素より其の所也とす。(一八八三年發布、獨乙帝國營業法參照)
- 英
- Law of business
- 独
- Gewer-bordnung, Betriebsreglement
- 仏
- Loi des affaires
營業財産
(えいげふざいさん)營業者が、其營業上の用に供する特別財産を營業財産と云ふ、例へば店舗の建物、敷地、資本、營業品、營業用の器具、機械類等是なり、而して之を家事上の財産と區別するは、或る特殊の場合に限りて、必要を見るに過ぎず、例へば海上運送營業者が、その營業の用に供する、所謂海産を、或る責任を免るる爲めに委付し得るが如し、(有限責任の部參照)故に營業者の破産等の場合の如きは、その家事上の財産たると、營業上の財産たるとを問はず、これを差押へ得るのみならず、營業者は、其所有に係る一切の財産を以て、債務の額に達するまでは、無限にその義務を負ふものなり、ただ枝術者、職工、勞役者、及び穩婆等の營業上缺くべからざるもの、及び藥舗に在りては、調劑を爲すために缺くべからざる器具、及び藥品の如きは、民事訴訟法の規定に依り、之を差押ふることを得ず。(民訴五七〇條以下)
- 英
- Business property
- 独
- Ges-chäftsvermögen
- 仏
- Biens des affaires
營業成績一覽表
(えいげうせいせきいちらんへう)一定の期間に於ける、營業成績の明細表を云ふ、通常個人、又は會社が、將來に對する營業方針に就き、或は其他の參考に供するため、任意に作製するものなれども、時としては監督官廳が、其監督上命令的に之を作製せしむることなきにあらず、例へば臺灣に於ては、保險會社は一定の書式により、之を作製して、營業報告書に添附するを要するが如き是なり。(三三年臺灣總督府令二三條の九參照)
營業年限
(えいげふねんげん)個人、又は會社其他の法人が、營業を繼續するを得る期間にして、公に認められたるものを指す、營業期間は、何人も自由に之を定むるを得べしと雖も、法律上、或る效力を有するものは、許可、又は認可を受けたるものなるか、若くは登記の手續を經たるものに限る、又營業期明は、任意に定めて、許可、認可、登記等の手續を經べき者と、國立銀行の如く、條例に依りて、營業年限の定まりたる者との二種あり。(國立銀行條例參照)營業年度は、營業年限の一期間にして、營業者が、執務及び計算の便宜上區分したる期間なり、現行商法の規則に依れば、商人幷に會社は、每年一回一定の時期に於て、財産目錄及び貸方、借方の對照表を作製せざる可らざる義務あり、是即ち營業年度にして、隨つて營業年度は、必ずしも每年一月に始りて、其年の十二月を以て終ることを要せざるなり、合資會社の有限責任社員が、會社の財産目錄、又は貸借對照表の閲覽を求め、會社の業務、及び會計財産等の檢査を爲さんとする場合には、其會社の營業年度の終に於てのみ、之を爲すことを得可し。(商一一一條)
- 英
- Business duration
- 独
- Ge-werbesdauer
- 仏
- Terme des affaires
營業年度
- 英
- Business year
- 独
- Gewerb-jahr
- 仏
- année des affaires
營業の自由
(えいげふのじいう)各種の營業を爲し得る法律上の自由を營業の由由と云ふ、我現行法上行政官廳は、公益上の必要、又は安寧秩序を維持する目的のため、普通の警察權限に依り、營業規則を設け、又は處分を爲すことを得るものにして、未だ嚴密なる意義に於ては、保障せられたる法律上、營業の自由なるものあらず。
- 英
- Liberty of business
- 独
- Ge-werbefreiheit
- 仏
- Liberté des affaires
營業報告書
(えいげふはうこくしよ)通常每營業年度に於ける營業の狀况、其他營業に關係ある重要の事項を記し、官廳、及び資本主等に報告する書面を云ふなり、銀行の如きは、銀行法の規定に依り、每半期の終に於て、その年期間の營業報告書を作製し、地方長官を經由して、大藏大臣に送附す可きものなり、行政官廳が或營業者に對し、特に其報告書を徵するは、其營業者の業務の執行に關し、監督上必要なるを以てなり。(商一九條の三、銀行法三條)
- 英
- Business report
- 独
- Ges-chäftlicher Bericht
- 仏
- Rapport des affaires
營業費
(えいげふひ)營業費とは、營業者が、其營業を爲すに就き、直接必要なる費用を云ふなり、營業税法施行規則第十條に「營業上直接に必要と認むべき費用に就きて」云々とあり、これ其用例にして、苟も營業を爲すに當り、直接必要なる費用は、其臨時なると經常なるとを問はず、之を營業費と云ふことを得べし、例へば資本の利子、使用人の報酬、原料の購買費、又は器具、機械の消耗費の如き之なり、商人の如きは、商法の規定に依り、貸借對照表を調製すべき義務あるものなるを以て、營業費の計算等は、帳簿上最も明かにすることを要するものなり。(營業税法一〇條)
- 英
- Business expence
- 独
- Gewerbe-kosten
- 仏
- Frais des affaires
營業部類
(えいげふぶるい)取引の實質によりて、類別したる營業の各部類を營業部類と云ふ、例へば或商人が、綿糸の卸賣、及び小賣を營業とするときは、此兩個の取引は、何れも其商人の營業部類に屬するなり、商法の規則に依れば、代理商は、使用人にあらずして、一定の商人のために、平常其營業部類に屬する商行爲の代理、又は媒介を爲ず者を云ふとあるが如き、其用例なり、而して代理商は、本人の承諾あるにあらざれば、自己又は第三者のために、本人の營業部類に屬する商行爲を爲し、又は同種の營業を目的とする會社の無限責任社員となることを得ざるものにして、若し代理商が、此義務に違反したるときは、本人は其行爲を知りたるときより二週間、行爲の時より一ケ年間は、其代理商が爲したる取引行爲を以て、自己のために爲したるものと看做すことを得べし。(商三六、三八條、取引所法一〇條參照)
- 英
- Business department
- 独
- Gewerbdepartement
- 仏
- Département des affaires
營業者
(えいげふしや)營業者とは、自己の名を以て營業を爲す者を云ふ、實際に於ては、自から營業に從事せざる者と雖も、苟も自己の名を以て營業をなし、及び營業税法に規定する營業者として、屆出等の手續を爲したる者は、營業者と云ふことを得ると同時に、自己の名を以てせざる者は、縱令其實際に於ては、日々營業行爲をなすと雖も、營業者と云ふことを得ざるなり、例へば會社の支配人、又は番頭手代の如き者の營業者にあらざるが如し、而して營業税法に依り、納税義務を有する營業者は、每年一月三十日迄に、業名、及び課税標凖を詳記し、其店舗、又は其他の營業場所在地の地方長官に屆出づることを要す、若し店舗、又は其他の營業場が、内外國に渉りて數個を有する時は、主たる店舗、又は主たる營業場所在地の地方長官に屆出づるを以て足る、尚又新に營業を開始したる者、新に店舗又は營業場を增設したる者、及び新に營業の種類を增加したる者は、開業後十月以内に、上記の屆出を爲す事を要す、此他營業者は其住所氏名を變更し、又は店舖其他の營業場を移轉したる時は、十日以内に其旨を屆出づるを要す、相續、讓渡、其他原因の何たるを問はず、營業を繼續する者は、これまた繼續後十日以内に屆出を爲さざる可からず、營業者が、店舗其他營業場外に居住し、又は旅行し、店舖其他の營業場外にあるときは、營業税に關する事項を處理せしむるために、納税代理人を定め、地方長官に屆出づるを要す、營業者は、常に營業に關する各種の帳簿を備へ、貨物の仕入、賣上、受入、貸附、廻送、從業者の人員、及び金錢に關する出納を明かにし、且つ營業上一切の事實を記入する義務あり、若し營業者が、上述の屆出(營業管理人に關する屆出を除く)を爲さず、若くは虛僞の屆出を爲したるとき、及び帳簿の記載を怠り、若くは虛僞の記載を爲したるときは、一圓以上一圓九十五錢以下の科料に處せられ、其脱税を計りたるときは、脱税金額三倍の罰金、又は科料に處せらるるものなり、此種の違反者には、刑法の不論罪、減輕、再犯過重、及び數罪俱發の例を用ひず。(營業税法、及び營業税施行規則參照)
- 英
- Merchant
- 独
- Komplementär
- 仏
- Marchand
營業會社
營業會社とは、營利の目的を以て、或る私法上の行爲を事業とする會社を云ふものにして、營業者の一種たり、普通商業會社を指して云ふものなれども、苟もその會社の事業が、性質上營業に屬する以上は、商行爲を事業とするものにあらざるも、營業會社たることは勿論也とす、隨つて商事會社にあらざる營業會社は、民法の規定に依り、商法の準用を受く可きものなりとす。(官吏服務規則七條、及び營業參照)
- 英
- Business company
- 独
- Gewerb-gesellschaft
- 仏
- Compaguie des af-faires
營業所
(えいげふしよ)營業所とは營業者が、營業に關する行爲を行ふ場所を云ふ、例へば店舗、營業事務所、又は營業本部の如き是也、而して或營業者の營業の中心たる場所を主たる營業所と云ふ、例へば支店、又は出張所に對する本店の如きこれなり、營業所の法律上の關係は、營業税法に於て、營業者が各種の届出を爲すべき場合には、其營業所々在地の管轄地方官廳に之を爲すを要し、又商人が商法の規定に依りて登記すべき事項は、其營業所の裁判所に備へたる商業登記簿に、登記を受くるが如き、若くは商行爲に依りて生じたる債務の履行を爲すべき場所が、其行爲の性質、又は當事者の意思表示に依りて定まらざる限りは、(特定物の引渡は、行爲の當時其物の存在せし場所に於て、之を爲すべきも)其物の履行は、債權者の現時の營業所に於て、之を爲すことを要するなり、此外民事訴訟の場合に於て、製造、商業其他の營業に就き、直接に取引を爲す店舖を有する者に對しては、其店舗所在地の裁判所に、營業に關する訴を起すことを得るが如き、また訴狀の送達を爲す場合に於て、本人其他の者が、不在又は他の事故にて、送達を施行する能はざるときは、其送達告知書を營業所の戸に貼附することを得るが如き等なり。(營業税施行規則一條、商九條―二七八條、民訴一六條―一四八條の二)
- 英
- Seat of business
- 独
- Handelsniederlassung
- 仏
- Établissement commercial
營業場
- 英
- Seat of business
- 独
- Handelsniederlassung
- 仏
- Établissement commercial
營業使用人
(えいげふしようにん)營業使用人とは、營業者が、其營業の爲に使用する者にして、或は營業の全部に關する各種の行爲をなさしむる爲に、使用するものあり、或は營業の或種類、又は特定の行爲を限りて爲さしむる爲めに、使用する者あり、又單に勞務に從事せしむるために、使用するものあり、商業に就きて言へば、其の營業の全部に關する使用人は、之を支配人と云ひ、特種の行爲を限りて使用する者は、是を番頭、又は手代と云ひ、單に勞務に從事する使用人を其他の使用人と謂ふなり、主人たる營業者と、營業使用人との關係は、民法の雇傭契約の原則に依るべきものにして、此等の者と第三者との關係は、民法の代理の原則に依るべきものなり、又營業使用人は、其性質上一定の地、即ち營業者の所在地に寓在すべき者なるを以て、之等の者に對する財産權上の訴は、其現在地の管轄裁判所に出訴することを得るものとす、民事訴訟法上、これを其者の特別裁判籍と云ふ。(民訴一五條―一四六條)
- 英
- Business assistant
- 独
- Gewerbegehülfe
- 仏
- Assistant des af-faires
營業補助人
營業補助人とは、營業使用人なると否らざるとを問はず、營業者の爲に、其營業の補助を爲す人を云ふ、例へば普通の使用人の營業補助人たることは勿論、また代理商の如き、本人の爲に平常其營業部類に屬する商行爲の代理、又は媒介を爲す者の如き是なり。(代理商の部參照)
- 英
- Business assistant
- 独
- Gewerbegehülfe
- 仏
- Assistant
營業禁止
(えうげうきんし)行政官廳が、特定の營業者に對し、營業に從事することを禁止する處分を營業禁止と云ふ、例へば古物商を營む者が、古物商取締條例、其他之に關する法律規定に違反の行爲を爲すときは、行政官廳が、其取締の必要上、違反者に引續き營業を爲すことは勿論、同時に他人の名義を以て營業すること、他の營業者の代理人となることをも、禁ぜらるるものなり、禁止中營業に從事したるときは、二圓以上百圓以下の罸金に處せらる可し、次に禁止は停止と異りて、一定の期限なきも、禁止中これを解除せらるることなきにあらず、禁止の效力は、或は全國に及ぶものあり、或は一定の地域を限定するものあり。(古物商取締條例一四條、及び行政處分參照)
- 英
- Business prohibition
- 独
- Gewerbverbot
- 仏
- Prohibition des af-faires
營業停止
營業停止とは、行政官廳が、特定の營業者に對し、一定の期間を限り、其營業に從事することを停止する處分を云ふ、其性質の行政處分なること、及び其效力の如きは、營業禁止と異ることなきも、唯禁止の場合にありては、一定の期間なきを以て、官廳より更に禁止解除を受くるまては、營業に從事するを得ざるなり、之に反して停止は、其期間を經過すれば、自由に其營業を繼續するを得べし。(營業禁止參照)
- 英
- Business suspension
- 独
- Suspension des gewerbes
- 仏
- Suspension des affaires
營業特許
營業特許とは、公益上一般に禁ぜられたる營業を特に願出者に對して、許可を與ふる行政處分を云ふ、特許は、免許と其性質を異にし、免許は、單に官廳と、其免許を得たる營業者との關係に止るも、特許は、啻に官廳と營業者との關係たるに止らず、一種の私權を設定する處分なり、故に此の特許權の侵害に對しては、民事訴訟の手續に依り、之が救濟を求むる事を得べし、例へば專賣特許の如き是なり、然れども現行法令上、特許と云ひ、免許と云ひ、其用例を一定せざるより、各場合の實際に就きて其性質を判するの外なし。(特許法、商標法、鑛業法參照)
- 英
- Business patent
- 独
- Ges-chäftspatent
- 仏
- Brevet des affaires
營業免許
營業免許とは、一般に禁ぜられたる營業に就き、行政官廳が、特定の人に對して之を許す行政處分を云ふ、則ち免許は、或行爲をなすべき自由の制限が、特定の場合に解除せらるるものにして、其關係は、專ら國家と私人との間の關係に止まり、敢て私權を設定し、又は變更するものにあらず、從つて免許の侵害に對しては、行政訴訟に依りて救濟を求むる事を得べきも、民事訴訟を提起することを得ず、之に反して、特許は、啻に或行爲の自由の制限を解除するに止らず、直に私人と私人との間に、侵す可らざる一の權利を設定するものなり、故に其關係は、啻に官廳と私人との關係たるに止まらずして、同時に私人と私人との關係をも拘束するもの也、前説の如く、行政法上、免許、許可、認可、及び特許の四者は、各其性質を異にするものなるも、現行法令上、之が用例を一定せざるを以て、其處分の實質に從ひて、之を判するの外なしとす。(二三年法一〇六號行政廳の違法處分に關する行政裁判の件三條參照)
- 英
- Business permission
- 独
- Gewerberlaubnisz
- 仏
- Permission des affaires
營業行政
(えいげふぎやうせい)營業行政は、所謂内務行政中、經濟行政の一種別にして、即ち商工の如き、營業の保護奬勵を圖り、又は課税其他取締を目的とする行政なり、諸般の行政中に於て、最も重要の地位を占むるものは、内務行政にして、内務行政中に於て、最も廣き地位を占むるものは、經濟行政なり、現在の官制に於て、經濟行政に關する監督官廳は、内務大臣あり、農商務大臣あり、遞信大臣あり、大藏大臣あり、而して其下に各種の下級監督官廳あるなり、經濟行政の如きは、國家經濟政策中、最も大切の事項に屬するを以て、將來國力の發展上、大に研究を要するものとす、現今營業行政として、特殊なる行政の形式、及び課税、其他取締に關する法今の外に、一般の營業に通じて規定せられたる法規無し。(營業規則參照)
- 英
- Business administration
- 独
- Gewerbverwaltung
- 仏
- Administration des affaires
營業區域
(えいげふくいき)營業區域とは、營業を爲し得る土地の限界にして、營業の性質により、其區域の定まりたるものあり、例へば農工銀行の營業區域が、原則として一府縣内、及び北海道廳管内に限るが如き、又は營業者の出願により、官廳の認可を得て定まるものあり、例へば同業組合の營業區域の如き是なり。(獸醫免許規則一四條、同業組合法參照)
- 英
- Business district
- 独
- Gewerbe-bezirk
- 仏
- Région des affaires
營業組合
(えいげふくみあひ)營業組合とは、一定の地域内に於ける同業者、又は營業上の利害を共にするものが、共同の利益を計り、又は營業上の取締をなすを目的として、設立する公共團體を云ふ、隨ひて或る組合の營業組合たるには、一定の地域を限定する事、同一地域内に於ける同業者、又は營業上の利害を共にする者より組織すること、共同の利益を計り、又は營業上の取締を爲す目的を有すること、及び監督官廳の認可を受けたる事の、四要件を具備せざる可からず、而して營業組合は、一の法人なるを以て、其目的の範圍に於ては、權利義務の主體たることを得れども、營利組合にあらざれば、組合の資格を以て、營利の事業を爲すを得ざるなり。(一七年達三七號同業組合規則、三三年法三五號重要物産同業組合法參照)
- 英
- Business guild
- 独
- Gewerb-verein
- 仏
- Corporation des affaires
營業警察
(えいげふけいさつ)營業警察とは、安寧秩序に對する危害を豫防し、及び之を排除するの目的を以て、營業の自由を制限する警察行政を云ふ、例へば警察上、古物商、又は質商の取締を爲し、或は湯屋營業者に其の屋室の改築を命じ、又は其營業を停止するが如きこれなり、元來營業警察は、行政警察の一種別して、府縣に在りては、府縣知事、東京に在りては、警視總監の權限に屬するものとす。(行政警察の部參照)
- 英
- Business police
- 独
- Gewerbe-polizei
- 仏
- Police des affaires
營業法
(えいげふはふ)營業法とは、營業の保護取締のために制定せられたる法則を云ふ、從ひて營業に關する法律を指して云ふことあり、又命令を指して云ふこともあるべし、現行法上、營業の保護取締、又は課税に關して、制定せられたる特殊の法令の外、單に營業其物に關して、一般に規定せられたる營業法なるもの無し。
- 英
- Law of business
- 独
- Gewerbe-ordnung
- 仏
- Loi des affaires
營業税
(えいげふぜい)營業税とは、營業の收入に就き、營業者に課する處の租税にして、一定の課税標凖、及び税率に依り、賦課せらるるは勿論、每年徵收せらるる所のものなり、本税の課税物件としては、營業收入それ自身、又は其收入の多少を推定するに足る處の外部の表彰を以て之に充つ、所謂營業收入を推定する外部の表彰とは、營業地に於ける人口の數、營業の種類、資本の額、雇人の數、使用機械の數、原料の消費額、及び家屋の賃貸價格、即ち家賃等を云ふなり、營業税の徵收は、其賦課すべき年額を二分し、每年五月及び十一月の兩期を以て納税期となす、但し廢業したる場合に於て他に其營業の繼續者なきときは廢業の月まで徵收せらるるのみならず、納税期にあらずと雖も未納の分を即納することを命ぜらる可し、通常營業税は、開業の翌年より微收するものなれども、同一の場所に於て六箇月以内に、前の營業者と同一の營業を開始する者は、其開業の月より徵收せらる可し、唯銀行業、保儉業、倉庫業、製造業、印刷業、運送業、運河業、棧橋業、船渠業、及び船泊碇繫場業のみは、開業の翌年より起算して三箇年間は營業税を徵收せらるることなし。(營業税法、及び營業税法施行規則、營業、及び營業人參照)
物品販賣業賣上全額卸賣は萬分の五
小賣は萬分の十五
建物賃貸價格千分の四十
從業者一人每に金一圓
銀行業、保險業、金錢貸付業、物品貸付業資本金額千分の二
建物賃貸價格千分の四十
從業者一人每に金一圓
倉庫業資本金額千分の二
建物賃貸價格千分の二十
從業者一人每に金一圓
製造業、印刷業、寫眞業資本金額千分の一半
建物賃貸價格千分の四十
從業者一人每に金一圓
從者の内職工勞役者一人每に金三十錢
運送業、運河業、棧橋業、船渠業、船舶碇繫場業、貨物陸揚場業資本金額千分の二半
從業者一人每に金一圓
土木請負業、勞力請負業請負金額千分の二
從業者一人每に金一圓
席貸業、料理店業建物賃貸價格千分の六十
從業者一人每に金一圓
旅人宿業建物賃貸價格千分の四十
從業者一人每に金一圓
公なる周旋業、代辨業、仲立業、仲買業報償金格百圓每に金一圓
從業者一人每に金一圓
營業税法は、明治二九年三月、第三三號を以て、發布せられたるものにして、營業税を課すべき營業の種類、課税標凖、税率、其他徵税上諸種の取締手續を規定したり。
- 英
- Business tax
- 独
- Gewerbsteuer
- 仏
- Impôt des affaires
營業税雜種税規則
營業税雜種税規則は、明治十一年十二月、第三十九號布告を以て、地方税中、營業税、及び雜種税の種類を改正規定したるものなり、此規則に依れば、營業税を課すべき營業の種類は、商業及び工業の二種にして、雜種税を課すべき營業の種類は、料理屋、待合茶屋、遊船宿、芝居茶屋、飮食店の類、湯屋、理髪店、傭人受宿、遊藝師匠、遊藝稼人、相撲、俳優、幇間、藝妓の類、市場、演劇、其他興業遊覽所、遊技場、玉突、大弓、揚弓、射的、吹矢の類、人寄席、船(艀舟、漁船、川船及び五十名未滿の海船)車(馬車、人力車、荷積馬車、荷積大七大八車、荷積小中車、荷積牛車の類)水車、乘馬、屠畜、漁業採藻の類にして、漁業税、採藻税の類は、各地從來の慣例に依り、之を徵收することを得べく、若し慣例を改正し、又は新税を賦課せんとするときは、縣府會の决議を經て、府縣知事より内務、大藏兩大臣に具狀し、其裁可を受くべしと定められたり、官用の船舶、馬車、及び皇族所有の馬車には、明治十五年、内務、大藏兩省乙五十七號、十六年、兩省乙三十號達を以て、地方税を課す可からざることを定めたり。(明治十三年四月一七號布告)
營業税法
營業税法に於て規定せられたる營業名と、その課税標凖及び税率を表示すれば左の如し。業名課税標凖税率
- 英
- Law of business tax
- 独
- Gesetz der gewerbsteuer
- 仏
- Loi de l'impôt des affaires
營業税法施行規則
營業税法施行規則は、明治二九年七月、勅令第二六九號を以て發布せられたるものして、前項營業税法施行に關する詳細の手續を規定せり。(營業、の部參照)
營業附加税
(えいげふふかぜい)又各府縣が營業税法に依り營業者の營業に對し、本税に附加して徵收するものを營業附加税と云ふ、營業税法第三十六條に、府縣は、此税法に依り、納税義務を有する營業者の營業に對し、本税十分の二以内の附加税を課することを得と定められたり。(二九年三月法律三三號營業税法一〇條)
- 英
- Additional tax of business
- 独
- Gewerhenebensteuer
- 仏
- Impôt supplémentaire des affaires
永小作權
(えいとさくけん)永小作權とは、小作料を拂ひて、他人の土地の上に耕作、又は牧畜を爲すの權利を云ふ、此權利は、物權の一種にして、其一般の性質は、他の物權と異ることなしと雖も、法律に於て公益上の理由に依り、其存續期間を限定せらるるを以て、當事者は、任意に其期間を伸縮して、此權利を設定することを得ざる也、但し其期間の消滅期に至りて之を更新することは、法律の禁ずる處にあらず、法定の存續期間は、二十年以上五十年以内にして、若し當事者が、設定行爲を以て、其期間を定めざりしときは、別段の慣習ある場合を除き、三十箇年とす、又他の物權と等しく、當事者が設定行爲を以て禁ぜざる限りは、權利者は、自由に之を他人に讓渡し、又は其權利の存續期間内に於ては、耕作、若くは牧畜のため、其土地を賃貸することを妨げず、然しながら、地主の承諾を得るにあらざれば、土地に永久の損害を生ずべき變更を加ふることを得ざるなり、永小作人は、天災地異其他の不可抗力に依り、引續き三年以上、全く收益を得ず、又は五年以上小作料より少き收益を得たるときは、其權利を抛棄する事を得れども、不可抗力に因りて生じたる收益の損失を理由として、小作料の免除、又は減額を請求することを得ず、地主は、小作人が引續き二年以上小作料の支拂を怠り、又は破産の宣告を受けたるときは、小作權の消滅を請求し得べし、永小作人の義務に就き、設定行爲を以て、別段の定めなき時は、通常賃貸借に關する規定を凖用せらるるなり。(民二七〇、二七八條、賃貸借の部參照)
- 英
- Emphyteusis
- 独
- Erbpacht-recht
- 仏
- Emphytéose
永小作人
永小作人とは、永小作權を有する者、即ち他人の土地に耕作、又は牧畜を爲す權利を有する者を云ふ、永小作人に二種あり、一は地主より直接に此權利を得たる者にして、他は永小作權者より此權利を讓受たる者なり、但し其權利義務に至りては、兩者の間に異同あること無し。(民二七條―二七二條)
- 英
- Emphyteuta
- 独
- Pächter
- 仏
- Emphytéote
營造物
(えいざうぶつ)營造物ば國家の命令的關係を離れて、公共の目的を達するが爲に、認められたる設備なり、凡そ行政法上、或設備が營造物たるには、公共の目的を達するがために、認められたるものなること、公共の目的の爲に、設けられたる設備、即ち人又は物を以て組織せられたること、國家の命令的關係を離れて設置せられたるものなることの、三要件を必要とす、されば公衆の使用に供するものなるも、公供の目的のために、設備せられたるものにあらざるときは、之を營造物と云ふことを得ざる可く、又營造物は、公共的の人、又は物を以て組織せられたるものなり、營造物は、人民公共の利益のために、設けられたるものなるを以て、官廳又は公署の如く、命令的關係を有するものにあらず、營造物が、目的を達する爲には、或は物のみを以て足れりとなし、之を使用する人民の行爲に依りて、直に其效用を現すものあり、例へば道路、又は河岸の如きものにして、此場合には、營造物は、單に公有物より成ると云ふことを得べし、或は國家の機關の行爲と、物との兩者の動と相待つて、始めて其效用をなすものあり、例へば鐵道又は郵便局の如きものにして、此場合には、營造物は、國家の機關と物との二者より成ると云ひ得べし、營造物は、其目的を達するに必要なる一切の手段を包括したる觀念なるを以て、其手段の一部に就きて云ふときは、或は單に公有物たる事ある可く、或は國家の機關たることあるべきも、此等のものを指しては、未だ以て營造物と云ふことを得ざるなり、要するに、營造物の觀念は、國家の命令權の關係を脱離して、直接に公衆の利益に供用する設備の全體を指して云ふものとす、營造物の作爲は、其性質上、國家に專屬するものはあらず、從ひて其設立維持は、國家の獨占するものにあらざる也、公共團體の如きも、啻に營造物を設備することを得るのみならず、寧ろ之を以て、主たる事務となすものなり、一私人も、亦之を設立維持することを妨げず、一の營造物の國家に屬するや、又は公共團體に屬するや、はた一私人に屬するやは、其何人の事業なるや、其維持費用は、何人の負擔に屬するや等の點より、之を決することを得べし。(市制一〇條の二)終に營造物の何たるやは、「イヱリネツク」、「オットマイヤー」其他二三の學者に依りて硏究せられたるものにして、未だ學者間の定説として見る可きものなきを以て、茲には唯其觀念の大要を記すに止む。
- 英
- Public building
- 独
- öffentliche Anstalt
- 仏
- Etablissement public
營造物規則
營造物規則とは、營造物の維持、又は保護、其他使用等に關する法則なり、現今特殊の營造物に關して、各別に規定せられたる法規の外、一般營造物に通ずる營造物規則なるものなし、かの道路取締の如きは、即ち特種營造物規則の一種なり。
- 英
- Regulation of public build-ing
- 独
- Gesetz der öffentlichen Anstalt
- 仏
- Règles de l'établissement public
榮賜
(えいし)榮譽の表章たる物、又は行爲を榮賜と云ふ、官吏服務紀律第八條二項に「官吏は、外國の君主、又は政府より授與せんとする處の勳章、榮賜、俸給並に贈遺を受くるには、天皇陛下の裁可要す」とあるが如き其用例なり。
- 英
- Imperial gift
- 独
- kaiserliche Gabe
- 仏
- Grâce impérial
榮典
榮典とは榮譽の表章として、天皇より下賜せらるるものを云ふ、例へば爵位、又は勳章を授與せらるるが如き、若くは陸海軍大學、陸軍士官學校、海軍兵學校等の卒業生が、天皇より恩賜の軍刀、或は時計等を受くるが如き是なり、蓋し君主は、榮譽の源泉なりと云へる諺の如く、君主より授けらるるものは、凡て榮譽の賜、即ち榮典と云ふことを得べし。(憲一五條)
- 英
- Mark of honour
- 独
- Zeichen der Ehre
- 仏
- Marque de l'honneur
榮譽權
榮譽權の語義に就きては學説一定せず、今普通の解釋に從へば、天皇の榮譽權としては、天皇が天皇なる稱號を用ひ、又は陛下なる敬稱を享け玉ふ權は、尊榮の徽章、其他三種の神器、御璽、國璽、又は徽紋等を有し、或は之を行使し玉ふ權、及び天皇の尊嚴を他に表彰するがため、宮廷を組織する權の如きを云ふ、此他、爵位、勳章、及び其外の榮典を授くるの權を天皇の榮譽權中に加ふるものあれども、此等は受くるものの榮譽權にして、榮典授與權は、天皇の榮譽權に屬せざるなり、蓋し之に與りたる臣民は、之を榮譽とするに足るも、之を授與するの權は、榮與權と云ふを得ざるなり、故に榮典授與權は、天皇の施政權に屬すとの説を穩當なりとせん、臣民の榮譽權としては、官吏となる權、勳章、年金、位記、貴號、恩給を有する權、外國の勳章を佩用する權、及び兵籍に入る權等とす、而して此種の榮譽權は、刑法に於ては附加刑として、本刑の種類に從ひ、或は剝奪せられ、或は停止せらるものなり。(刑三一條以下)
- 英
- Right of honour
- 独
- Ehrenrecht
- 仏
- Droit de l'honneur
永世中立
(えいせいちうりつ)永世中立は、國際法上の用語にして、或國家が、國際法上特に條約上の義務として、永久に外國に向つて戰端を開き、又は他の國家間の戰爭に關係せざる義務を負擔する地位を云ふ、國際法上永世中立なるものの存する理由は、□一弱國をして、強國の併呑を免れしむること、□二強國間の勢力の平均を維持すること、及び數個の強國間に、何れの國家も侵すことを得ざる國土を置きて、雙方の衝突を避くること等の必要にあり、而して通例、利害關係を有する數國家間の條約に依りて、成立するものなりと雖も、時としては、慣習に依りて認めらるることあり。
- 英
- Eterual neutrality
- 独
- ewige Neutralität
- 仏
- Neutralité éternelle
永世中立國
永世中立國とは、永世中立の地位にある國家を云ふ、永世中立國は、固より他國と干戈を交へ、又は他國間の戰爭に、干與することを得ざるは勿論にして、其性質上、他國の中立を擔保し、又は他國と攻守同盟を結び、若くは外國と共同平和の條約を締結することをも得ざるなり、又重大なる利害に就きて、一國を利して他國を害するが如き、直接間接に戰爭の原因となる可き國際的關係を避くる義務あるものとす、然し現に他國の攻擊を受けたる場合に於ては、自衛の必要上、之を防禦し、又は他國と防禦同盟を爲すを妨げず、是等は國家自存の必要上言を要せざる也、永世中立國は、時としては中立條約に依りて、兵備を爲す事を禁ぜらるることあり、而して通常其意思能力を制限せらるるの代償として、他の國家より、其中立の地位を擔保せらるるものとす、隨つて或る場合には、永世中立國は、擔保國の承認を經ずして、領土の狀態を變更し、其他永世中立國たる地位に、變動を生ずるが如き行爲を爲すを得ざるものとす、現今存在せる永世中立國は、瑞西、白耳義、及びルクゼンブルグの三國とす。(永世中立參照)
- 英
- Eternal neutral country
- 独
- ewig neutraler Staat
- 仏
- Etat de la neutralité éternelle
永世祿
(えいせいろく)永世祿とは、舊藩の制度、又は明治維新の際、下賜せられたる無期限の家祿、及び賞典祿を云ふ、明治九年、政府は金祿公債證書發行條例を發して、此制度を改め、祿の種類、及び金祿元高に依り、年分と利子の割合とを定め、公債證書を以て、一時に下渡す方針を取りたり、(賞典祿は家祿に合算し、元高とす)而して此公債證書の元金は、五箇年間之を据置き、六箇年目より都合三十箇年間に、償却すべきものとせられたり。(明治九年八月一八號布告)
- 英
- Eternal remuneration
- 独
- ewige Belohnung
- 仏
- Rémunération éternelle
永貸借
(えいたいしやく)永貸借とは、舊民法の用語にして、三十箇年以上、五十箇年以下の期間を以てする、不動産上の有償貸借を云ふものにして、新民法の永小作權に該當するなり、新民法に於ては、既に永小作權なる物權を認めたるを以て、永貸借の如きものを認むるの必要なきのみならず、本邦從來の慣習にも、存在せざるものなるが故に、全く之を削除せり
- 英
- Emphyteusis
- 独
- ewige (lange) Leihe
- 仏
- Emphytéose
永代借地
(えいたいしやくち)永代借地なるものは、吾政府が、内地に居住する外國人、及び外國法人のために、その土地所有權を與へざる代りに、永代借地權なる一種の物權を與へたり、此の物權を設定したる土地を云ふなり。(明治三四年、勅一七八號)
- 英
- Ground of emphyteusis
- 独
- ewige Miethe
- 仏
- Terre de l'emphy-téose
永代借地券
永代借地券とは、外國人、及び外國法人にして、永代借地權を有する者に、政府より交附する地券を云ふ、此の地券は、物の移轉、讓渡を證明するの用に供せらるるものにして、永代借地權所在地の地方廳に於て、此の旨を記載するにあらざれば、之を以て第三者に對抗することを得ざるものなり。(三四年法三九號永代借地權參照)
- 英
- Certificates of emphyteusis of ground
- 独
- Langes Miethezeugnis
- 仏
- Certificat de la terre de l'emphytéose
永代借地權
永代借地權は、舊條約時代より、我政府が、内地に於ける外國人民留地に付き、永代借地券を以て、外國人、及び外國法人のために設定したる無期限の借地權なり、此借地權は、一定の期限無きを以て、子々孫々に傳へ得べく、又賣買、讓渡、質入、書入の目的と爲し得べし、其性質は、民法上の物權に屬すれども、所有權に似て所有權にあらず、或場合には、所有權以上の效力あり、又地上權に似て、地上權にもあらず、地上權以上の廣濶なる範圍を有するなり、明治三四年法律第三號を以て、之を物權として、所有權に關する規定を凖用することと定められたり。永代借地建物登記簿とは、永代借地に於ける建物に關する登記簿なり、永代借地權に關する登記簿に二種あり、一は專ら永代借地其ものに關する事項を登記する者にして、他の一は、永代借地上に存する建物に關する事項を登記するものとす、即ち永代借地建物登記簿は、後者に屬するなり。(三四年勅一七八號第三條)永代借地登記簿とは、永代借地權なる一種の物權に關する登記簿を云ふ。(前項、及び前々項參照)
- 英
- Perpetual lease
- 独
- ewige Verpachtung
- 仏
- Droit de l'emphytéose
永代借地建物登記簿
- 英
- Register of the building of the ground of emphyteusis
- 独
- Register des Gebäudes auf der langen Miethe
- 仏
- Registre des établissements de la terre de l'emphytéose
永代借地登記簿
- 英
- Register of perpetual lease
- 独
- Register der langen Miethe
- 仏
- Registre d'emphytéose
營利
(えいり)營利とは、財産上の利益を圖ることを云ふ、法人の如き、營利を目的とすると否とに依りて、設立の手續を異にす、即ち營利を目的とする社團を法人と爲さんとするときは、商事會社設立の條件に從ひて、其手續を爲すを要す可く、また營利的社團法人には、總べて商事會社に關する規定を凖用せらるるなり。(民三五條の一―二)
- 英
- Making of profits
- 独
- Gewinn-sucht
- 仏
- Bénéficier sur
營林主事補
(えいりんしゆじほおよびしんりんかんしゆにんようれい)營林主事補森林監守任用に關する事項を規定せる法則を云ふ、此規則に依るときは、主事補、及び監守は、一定の試驗を執行し、其合格者中より採用するものなり、然れども前に判任文官を勤めたる者、滿期の下士、滿期上等兵にして下士適任證を有する者、滿二年以上巡査看守を奉職したる者、滿二年以上府縣師範學校、尋常中學の教員を勤めたる者、及び滿二年以上林務に關する官廳の雇員たりし者は、此試驗を受くことを要せずして、之に任用することを得、試驗科目は、現行法令の講述、作文(假名交り文、及往復文)筆算、及球算、筆寫(楷行)簿記、寫圖、代數、幾何、測量等にして、志願者の資格は、滿二十歳以上の男子たること、及び身體強壯なることを要す、而して禁錮以上の刑を受け、又は國事犯に關し復權を受けざる者、破産、或は家資分散を爲し、復權を得ざる者、及び身代限の處分を受け、債務の辨償を爲さざる者は、志願者たることを得ざるなり、志願者は、左の書式に從ひて認めたる願書に、履歷書を添へ、大林區署長宛に差出すべし。
願書書式(美濃紙)
試驗願
私儀營林主事補(又ハ森林監守)志願ニ付キ御試驗被下度別紙履歷書及ビ兵役ニ關スル證明書相添へ此段相願候也
年月日
現住所
氏名□印
何大林區署長何某殿
及森林監守任用令
永遠保存品
(えいえんほぞんひん)通常官廳、又は公署所管の器具、機械、其他の物件には、一定の保存期限を定むることあり、永遠保存品とは、即ち無期限に保存する事を要する物件を云ふ、例へば作業、及鐵道會計規則上、使用、或は時日の經過に因りて、其品質、及び價格に變動なき物品を永遠保存品として取扱ふ類を云ふ。(作業及鐵道會計規則三四條―一項參照)
- 英
- Things to be kept per-petually
- 独
- ewig erhaltendes Ding
- 仏
- Choses conservées perpetuellement
要員
(えういん)要員とは、徵兵に關する法令上の用語にして、每年徵募すべき現役、及び補充役の兵員を云ふ、此兵員の數は、上裁を經て、陸軍大臣之を各師團に配賦し、師團長は其配賦せられたる要員を各聯隊區、或は警備隊區に配賦し、聯隊區司令官、及び警備隊區司令官、更に之を各徵募區に配賦す、此の配賦は、壯丁の總數を率と爲し、比例を以て之を定む。(徵兵事務條例一九條)
- 英
- Necessary member
- 独
- erforder-liche Glieder
- 仏
- Membre nécessaire
要員超過名簿
要員超過名簿とは、徵兵に關し、壯丁の身體檢査、及び抽籖の終了したる後に於て、聯隊區司令官、或は警備隊區司令官が、徵集名簿に依りて作製する、要員超過の裁决を受けたる者の姓名を記錄する名簿なり。(徵兵事條例川一條、要員參照)
- 英
- List of exceed necessary member
- 独
- Liste der übersteigenden erforderlichen Glieder
- 仏
- Liste des membres nécessaires excédés
要因債權
(えういんさいけん)要因債權とは、舊民法の用語にして、債權發生の原因が、其債權存在の實質的要素をなす債權を云ふ、例へば賣買、交換の如き、即ちこれなりき。要因債務とは、債務の存在が、其原因を實質的要件となすものを云ふなり、這は要因債權を義務の方面より見たるものに外ならず。(要因債權參照)
- 英
- Obligation of material conditions
- 独
- Obligation der Materiellconditionen
- 仏
- Obligation des conditions mate-rielles
要因債務
- 英
- Obligation of material condi-tions
- 独
- Obligation der Materiellcondi-tionen
- 仏
- Obligation des conditions materielles
要役地
(えうえきち)地役權の行使によりて、便益を受くる土地を云ふものにして、要役地の便益に應ずる他人の土地、即ち承役地に對する用語なり、要役地は、其性質として、承役地と隣接密合するものにして、また此兩地の所有權は、必ず別個の人に屬するものなり、而して要役地たる性質は、地役權の消滅と、同時に消滅す。(民二八一條、地役權參照)
- 英
- Dominant land
- 独
- herrschendes grundstück
- 仏
- Terre dominante
要港
(えうかう)要港とは、軍事上の必要により、要港として指定せる港灣を云ふ、例へば對馬、竹敷、澎湖島、馬公島等の港の如き是也、要港は、其水域を三區に分ち、水域、及び其以外三海里内の處に繫泊し、又は運航する艦船は、萬國船泊信號令に依りて、各自の艦船名を表明し、及び其國籍表明の旗章を揭揚し、また日沒より日出迄の間は、海上衝突豫防に關する各種の船燈を揭ぐることを要するが如き、其他軍事上の必要より、要港區域内所在の人民に對しても、各種の制限的規定あり、而して若し之に違反したるときは、十一日以上一年以下の重禁錮、或は二圓以上五十圓以下の罰金に處せらるるものなり。(三三年海軍省令七號)
- 英
- Important port
- 独
- wichtiger Seehafen
- 仏
- Port important
要港部條例
要港部條例は、明治二九年、敕令第四號を以て發布せられたる法規なり、所謂要港部とは、要港の直轄官廳にして、鎭守府に隷屬し、要港の守備を掌り、軍需品の配給、艦船兵器の小修理を爲す等の事務に任ず、要港部には、司令官、副官、知港事、機關長、軍醫長、主計長等を置き、司令官は鎭守府司令長官の下に在りて、部下艦船隊を統卒して軍紀風紀を維持し、要港の靜謐、其他防禦に任ずる者なるも、戰時に在りては、獨立の指揮權を有し、要港内に在る他管の船泊に對しても、指揮を爲すの權を有す。(要港參照)
- 英
- Regulation of department of important Port
- 独
- Marinestationsregel
- 仏
- Règlement du département du port important
要求
(えうきう)要求とは、請求と云ふに同じく、他人に對し、或行爲、又は不行爲の實行を求むることを云ふ。(民訴法七三條の二、刑附五一條)
- 英
- Claim
- 独
- Anspruch
- 仏
- De-mande
要求額
要求額とは、要求の目的たる金錢、又はその物の量額を云ふ。(民訴法七三條)
- 英
- Sum of claim
- 独
- Anspruchs-summe
- 仏
- Somme de lemande
要求權
要求權とは、或行爲の給附を他人に爲さしむることを求むる權利を總稱して、要求權と云ふ、例へば賣買の當事者中、買主は、賣主に對して、其契約に基き其目的たる物の引渡を要求する權利を有し、賣主は買主に向つて、其代金の支拂を要求する權利を有するが如き是なり。(要求の部參照)
- 英
- Right of claim
- 独
- Anspruchs-recht
- 仏
- Proit de demande
要件
(えうけん)必要條件の意也、即ち或事の成立、存續、又は效力の發生、消滅等に必要缺く可らざる條項を指して要件と云ふ、例へば日本臣民たるの要件は、日本の法律に依りて、日本の國籍を有すること、及び日本臣民たる權利を有し、義務を負ふことの如きこれなり。(憲法一八條)
- 英
- Important condition
- 独
- wichtige Bedingung (Erfordernisz)
- 仏
- Conditions importantes
要塞
(えうさい)要塞とは、永久の防禦工事を施し、兵力を以て守備する地を云ふ、各要塞には、其地名を冠して、是を某要塞と稱す、例へば東京灣要塞、又は下ノ關要塞と云ふが如し、要塞は、其の地域の大小に從ひて三等に區分し、要塞砲兵隊を置きて之を守備す、各要塞には司令官ありて、之を指揮し、特に規定あるものの外、通常要塞所在地所管の師團長に隷屬し、要塞防禦の計画、並に防禦用諸材料、建築物、及び兵器、其他需諸品、整備等の事務に任ず、而して要塞司令官は、平時豫め地方官と協議し、臨戰、又は合圍の日に當り、軍隊の宿營給與、及び住民公共の保安に關し、必要なる諸件を實行するの方法を計画す、其他各要塞には、要塞動員計画を策定するため、要塞司令官を以て議長と爲し、以下の將校を以て組織せられたる防禦諮詢會議の設置、及び平戰兩時に於ける、兵器其他軍需品の貯藏保存、及び補給法に關する軍需品調査委員を設くるものなり。(三四年三月勅二七號參照)
- 英
- Fortress
- 独
- Festung
- 仏
- For-teresse
要塞司令部條例
要塞司令部條例は、明治二八年三月、勅令第三九號を以て發布せられたるものにして、各要塞に於ける司令部の組織、權限等を定めたる條例なり。
- 英
- Regulation of the staff of fortress
- 独
- Regulierung des Festungs-commandos
- 仏
- Règles du département de forteresse
要塞地帶
(えうさいちたい)要塞地帶とは、各要塞に於ける防備上の必要より、要塞周圍に於ける一定の土地を區劃し、其區域内を要塞地帶と稱す、要塞地帶内に居住する人民は、要塞地帶法に依り、土地、建物、其他の不動産の使用に關し、各種の制限を加へらるるものなり。(要塞地帶法參照)
要塞地帶法施行規則は、要塞地帶法施行に關する細則を定めたるものなり。(三二年、陸軍省令第二二號)
- 英
- Zone of fortress
- 独
- Fest-ungsbezirk
- 仏
- Zone de forteresse
要塞地帶法
要塞地帶法は、明治三三年、法律第一〇五號を以て發布せられたるものにして、其内容は、軍事上の必要より、要塞地帶に於ける一般の所有權に、或種の制限を加ふるものなり、例へば要塞地帶に於ては、不燃質物を以て築造せる家屋、及び倉窖室、若くは固定竈爐、不燃質物を以て築造せる諸般の築造物にして、一定の高さを越ゆるもの等の新設を禁じたるが如き、又は埋葬地、水車、及び木造の圍檣、其他或種の家屋、又は倉庫を新設するには、要塞司令官の許可を要するが如きこれなり。
- 英
- Law of the zone of fortress
- 独
- Festungbezirksgesetz
- 仏
- Loi de la zone de forteresse
同法施行規則
- 英
- Regulations for the application to the law of the zone of for-tress
- 独
- Ausführungsregel des Festung-bezirksgesetzes
- 仏
- Règles pour l'applica-tion de la loi de la zone de forteresse
要式行爲
(えうしきかうゐ)要式行爲とは、法律行爲の一類別にして、行爲の成立、若くは其完全なる效果を發生するには、或る法律に定めたる方式を必要となす者を云ふ、例へば遺言の如きこれなり、遺言は、嚴格なる法定の方式によるを要するものにして、法律は之に關する諸種の方式を定めたり。(民一〇六七條乃至一〇七五條、遺言の部參照)
- 英
- Formal act
- 独
- Formalhandl-ung
- 仏
- Acte formelle
要式契約
要式契約とは、契約の成立、若くは其完全なる效力を生ずるに付き、法律上一定の方式を必要とする契約を云ふ、例へば爲替手形、及び約束手形には、必ず法律に定めたる書面の作製を要するが如し、元來要式契約は、昔時各個人間の信用未だ發達せざる社會に於て、當事者の一方が、其契約を否認したる場合に、之を證明するの方法として、豫め一定の方式を用ふることを必要とせしものにして、社會の發達して、個人の信用增進せる今日は、啻に其必要なきのみならず、頻繁なる取引に、一々斯かる方式を履ましむるが如きは、煩雜に堪へざるを以て、要式契約の範圍は漸次減少し、僅に立法者が特別の必要を認めたる場合に於ける、例外のみとなれり、されど又一方より考ふれば、要式なるものは、此形式だに履行しあれば、その原因の如何に論なく、有效と見做さるるものなるが故に、快速を尊ぶ商業の實際に於て、これに因る必要少なからず、爰に於て乎近時、手形、その他或る一定の場合に於て、その行爲をなすには、必ず法定の形式に依らざるべからざる者とせるものあり、前記手形を初め、荷物引換證、船荷證券、倉庫證券これなり、かの贈與に於ては、この理由以外に、發意の眞實を證するがため、即時に履行せられざる贈與は、書面に依らされば之を取消すことを得るものとなし、書面の形式に依ることを他面より強制せり。(商法及び民五五〇條)
- 英
- Formal contract
- 独
- For-malvertrag
- 仏
- Contrat formel
幼者
(えうしや)法令に幼者と云ふは、槪して滿二十歳に達せざる者を指す、舊刑に於ては、幼者を三期に區別し、第一期の幼者、即ち滿十二歳以下の者の犯罪に就きては、全く其罪を論せず、唯情狀に因り、滿八歳以上の者は、之に懲治を爲すに止め、第二期の幼者、即ち滿十二歳以上滿十六歳以下の者は、其所爲に付き、是非を辨別したると否とを審案し、辨別無くして犯したる者は、不論罪と爲し、情狀に因り之を懲治場に留置するこを得となし、若し辨別ありて犯したる者は、犯罪を宥恕して本刑より二等を減じたるものを科し、第三の幼者、即ち滿十六歳以上滿二十歳以下の者は、犯罪を宥恕して、本刑に一等を減ずることとなせり、民法に於ては、單に二十歳未滿の者を無能力者と爲し、之に二樣の保護を與ふ、一方に於ては、無能力者には、法定代理人を附し、他方に於ては、無能力者が、獨斷にてなしたる法律行爲を取消し得るものとなせり、蓋し行爲の本體は、外部に發表したる本人の意思たるに外ならず、然るに意思能力の發育不完全なる幼者の行爲に對して、完全なる意思能力を備ふる成年者の行爲と同樣に、その責任を論ずるは、當を得ざるを以て、斯くは幼者に對し、法律上一般に特典を賦與するなり。(不論罪、宥恕減刑、無能力者、又は未成年者參照)
- 英
- Infant
- 独
- Kind
- 仏
- Mineur
幼者誘拐罪
幼者誘拐罪とは、詐僞の手段に依り、滿廿歳以下の幼者を奪取して、自から之を藏匿し、又は他人に交附するの罪を云ふ、此犯罪の客体となるものは、幼者に外ならざるも、實際其被害の主体たるべきものは、父母、又は其後見人なりとす、隨つて父母又は後見人の承諾ある場合には、本罪を構成することなかるべし、次に此犯罪は、單に詐僞的手段に依り、奪取するを以て足れりとせず、更に進んで奪取したる幼者を自ら藏匿し、又は他人に交附するを要するなり、幼者誘拐罪は、幼者略取罪と同じく、親告罪の一種に屬し、被害者、又は親族の告訴を待ちて、其罪を論ずべきものなれども、誘拐せられたる幼者が、式に從つて婚姻を爲したる時は、告訴の效なきものとす、本罪に對する刑罰は、幼者が十二歳未滿なるときは、二年以上五年以下の重禁錮、十圓以上百圓以下の附加罰金、十二歳以上廿歳未滿なるときは、六月以上二年以下の重禁錮、二圓以上廿圓以下の附加罰金に處せらる、若し誘拐に條る幼者なることを知りて收受したる時は、本犯の刑に照し、一等を減じたるものを科せらる、但し廿歳未滿の幼者を誘拐して、外國人に交附したる者は、告訴の有無に拘はらず、其罪を論じ、輕懲役に處せらる可し。(刑二二四條)
- 英
- Seducing of children and minors
- 独
- Kinderverführungsverbrechen
- 仏
- Séduction des mineurs
幼者略取罪
幼者略取罪とは、暴行脅迫の手段に依り、滿二十歳以下の幼者を奪取して、自から之を藏匿し、又は他人に交附するの罪を云ふ、此犯罪も、亦幼者誘拐罪に等しく、其目的となるものは、幼者に外ならざれども、其實際の被害主體たる可き者は、父母若くは後見人の監督、及び教育權なり、隨つて父母、若くは後見人の承諾ある以上は、其幼者を奪取するも、本罪を成立する事なかる可し、勿論幼者の承諾の有無は、問ふ處にあらざるなり、此犯罪の手段は、暴行脅迫なることを要するも、ただ此等の手段に依り、奪取するのみを以て足れりとせず、更に奪取したる幼者を自から藏匿するか、之を他人に交附するにあらざれば、本罪を構成せず、唯藏匿交附の所爲あるを要するも、必ずしも其所爲を完了するを要せざるを以て、苟も故意、即ち藏匿交附の意思を以てする以上は、未だ奪取したるのみにて、藏匿交附の所爲に著手せざるも、本罪を構成するに妨なし、刑罰は、幼者が十二歳未滿なるときは、二年以上五年以下の重禁錮、十圓以上百圓以下の附加罰金、十二歳以上廿歳末滿なるときは、一年以上三年以下の重禁錮、五圓以上五十圓以下の附加罰金、略取誘拐に係る幼者なることを知りて、自己の家屬僕婢と爲し、又は其他の名稱を以て之を收受したる者は、主犯の刑に照して一等を減ず、元來此犯罪は、親告罪の一種なるを以て、被害者、又は其親屬の告訴を待ちて其罪を論ずべきものとす、唯略取誘拐に係る幼者を、外國人に交附したるものは、告訴の有無に拘らず、其罪を論じ、輕懲役に處す、蓋し之を親告罪となさざるは、人身賣買を禁ずるの精神に外ならざる可し。(刑二二四、條乃至二二九條)
- 英
- Kidnapping of children or minors
- 独
- Kinderraubsverbrechen
- 仏
- Enlèvement des mineurs
要償
(えうしやう)要償とは、不法行爲を原因として、損害の賠償を請求し、又は公用徵收、若くは徵發等の場合に於て、財産の減損額、又は損害額の賠償を要求することを云ふ、例へば他人の故意、又は過失によりて權利を侵害せられたる者は、司法裁判所に出訴して、其損害の賠償を請求する事を得るが如き、或は公用徵收に依り、鐵道の敷地として、其所有地を徵収せられたる者は、其地代金、又は損害額の補償を行政官廳に對して、要求する事を得るが如き是なり。(民七九條、土地收用法一條、徵發令三一條、三二條)
- 英
- Demand for restitution
- 独
- Rechtsanspruch für die Wiederherstellung
- 仏
- Demande pour la restitution
要素
(えうそ)要素とは、或行爲の成立に必要缺く可からざる條件を云ふ、例へば契約の要素を爲すものは、□一二人以上の人の間に、意思の表示あること、□二表示したる意思の合致あること、□三私法上の效果を生ぜしむる目的を以て爲したる意思表示の合致したること、□四當事者相互の間に發表せる意思表示が、合致して私法上の效果を生ぜしめんとする意思を以てなす事の、四條件を要し、此内何れの一を缺くも、契約は成立せざる也、即ち此四個の條件は、契約の要素にして、其成立に必要缺べからざるものなるが如し。(一般要素、特別要素の部參照)
- 英
- Essence
- 独
- Essenz
- 仏
- Es-sence
幼年囚
(えうねんしう)滿十二歳以上、滿十六歳未滿の囚人を幼年囚と云ふ、幼年囚と雖も、重禁錮の如き刑に處せられたる者は、他の囚人と等しく、體力相當の定役に服せざる可からず、唯他の囚と聊か待遇を異にする點は、其教育、及び懲罰の二事なり、即ち幼年囚は、小學程度に依り、每日四時間以内の時間を定め、修身、讀書、算術、地理、歷史、習字、體操、其他必要なる學科を授けらる、而して幼年囚が獄則を犯したるときは、其輕重に依り、獨愼、又は減食の罰に處せらる、獨愼とは、七晝夜以内の或時間内、一室に獨居せしめらることにして、減食とは、三日以内の或時日内、一回の糧食を二分の一乃至三分の一に減ぜらるることを云ふ。(監獄則三一、四三條、監獄則施行細則九二條)
- 英
- Juvenile criminal
- 独
- jugend-lich Gefangene
- 仏
- Criminel juvénile
要物契約
(えうぶつけいやく)契約の成立上、物の引渡を必要とする契約なり、例へば使用貸借、消費貸借、寄託、又は質契約の如き、何れも其成立上、物の引渡を必要とするを以て要物契約なり、要物契約は、物の引渡を竢ちて、其效力を生ずるものなりと雖も、要物契約の豫約は、所謂諾成契約、即ち合意のみに依りて成立するを以て、物の引渡を要せざるなり。(民五八七、五九三、六五七條等參照)
- 英
- Contract which needs things
- 独
- Realkontrakt
- 仏
- Contrat ayant besoin d'une chose
要約者
(えうやくしや)要約者とは、舊民法の用語にして、契約の申込をなしたる者、即ち現行民法の申込者の義なり、而して舊民法は、申込を承諾したる者を諾約者と云ひ、此諾約者に對して要約者と云ふ。(申込參照)
- 英
- Contract offerer,
- 独
- Ver-sprechensempfänger
- 仏
- Demandeur du contrat
驛遞
(えきてい)驛遞とは、舊郵便制度に於ける用語にして、現今の郵便なる語に該當するなり。(刑訴一一三)
- 英
- Post
- 独
- Post
- 仏
- Poste
驛遞局貯金
驛遞局貯金とは、舊制度上の用語にして、郵便貯金と云ふ語に該當す。(明治十八年十三號布告預金規則一條)
- 英
- Postal Deposit
- 独
- Post-spargeld
- 仏
- Caisse d'épargue
越權
(えつけん)官吏、公吏、若くは會社の社員の如き、或ものの機關たる地位に在る者が、其權限以外の行爲をなすを越權と云ふ、例へば官廳の如きは、官制に依りて其處理す可き一定の事務の範圍、即ち一定の權限を有す、然るに其官廳を組織する官吏が、官制に依りて定められたる事務の範圍を超越して、其事務を行ひたる時は越權なり、隨つて其事務が、國家のために利益たると、不利益たるとを問はず、等しく越權行爲たり、苟も越權の處爲たる以上は、之に對して相當の責任を負はざる可らざるは勿論のことなりとす。(越權行爲參照)
- 英
- Intruding of right
- 独
- Macht-überschreitung
- 仏
- Usurpation de droit
越權行爲
越權行爲とは、或ものの機關たる地位に立つ者が、其權限を越えて爲したる行爲を越權行爲と云ふ、越權行爲は、行爲者の屬する機關の行爲としては、全然無效也、隨つて越權行爲に對する責任は、行爲自身に於て負ふ可きものとす、例へば行政官廳の命令、又は處分が、權限外に超出するときは、國家の行爲としては、全く無效にして、其行爲に對する責任は、官廳を組織する官吏が、一私人の資格に於て負はざる可からざるもの也、即ち越權行爲は、當初より全然效力を生ぜざるものにして、之を取消すの必要なしと雖も、官廳の命令、又は處分の如きは、その將來に對する疑義を防ぐの必要より、時としては其上級官廳の命令、又は處分を以て、取消なる形式に依る事ありとす。(越權、及び權限參照)
- 英
- Act out of competency
- 独
- Machtüberschreitungshandlung
- 仏
- Acte d'usurpation
圓
(えん)圓とは、吾國現今の貨幣制度上に於ける價格の單位にして、即ち純金の二分を以て一圓と爲す。(貨幣法一條、貨幣及價格參照)
演繹法
(えんえきはふ)演繹法とは、自明の理、即ち公理といふが如きもの、或は人の觀察に依りて、確證せられたる事實を基礎として、毫も之に主觀的意見を加味るすことなく、必然に出で來る斷案を引出す所の推理法を謂ふ、例令ば「總ての人は死すべきものなり、某は人なり、故に某は死すべき者なり」と謂はば、その「總べての人は死すべし」てふことは、吾人の公理と認むる所、之より必然に「某は死すべし」てふ斷案を引出し來たるが如し、故に演繹法は、基礎となる命題より正確に推論を爲す方法にして、誤謬なき限りは、必ず確實なる斷案を導き來ることを得べし、かの三段論法は、一種の演繹法にして、必ず前例の如き、大前提、小前提、及斷案の三段を有す、即ち總ての人云々を大前提といひ、某は人云々を小前提と云ひ、故に某は死云々を斷案と稱する也、此法は、二千年の昔「アリストーテレス」によりて唱ひ出され、今に至りて猶論理學の主目をなす、然るに近世の初めより、英國派の學者中歸納法なるものを唱道し出すものありて、眞の論理法は歸納法に限る、演繹法の如きは、全く循環論法なり、即ち演繹法に於ては、新しき斷案を引き出すと號するも、常に新しき斷案を引き出すことなく、引き出されたる斷案は、既に大前提中に存する判斷に過ぎず、尚詳言すれば、斷案によりて新知識を得るにあらず、實は大前提中に明には現はれずして潜みたる命題を、斷案に至りて明白にせるのみ、即ち前例に於て、某の死すべしと云ふ事は、斷案を俟ちて始めて知るにあらずして、大前提に於て總ての人は死すべしといひたる時に、已に某の死すべき事を豫想し居るなれば、こは新しく知識を增すにあらずして、實は不明なりし某の死すると云ふことが、斷案に至りて明白にせられたりと云にふ過ぎずと、然れども歸納法に於ても、この非難は免るべからずして、演繹法の今日尚論理學の主眼たる所以なり、その新發見をなすことによりて、全然新智識を得ること能はざる迄も、尚不明なりし事抦を明白になす效力を以て甘んずべしとなすなり。
- 英
- Deduction
- 独
- Deduction
- 仏
- Déduction
沿海航船
(えんかいかうせん)沿海航船とは、船舶檢査法施行細則に規定せる、沿海航路に使用する船舶を云ふ、船舶檢査法第四條は航船を分ちて、遠洋航船、近海航船、沿海航船、平水航船(以上汽船)となし、帆船は、遠洋航船、及び近海航船の二種となせり。(二九年四月法六四號船舶檢査法)
- 英
- Coaster
- 独
- Küstenfahrer
- 仏
- Caboteur
沿海航路
沿海航路とは、船舶檢査法施行細則五一條に列擧する航路を謂ふものにして、之を二十九區に分ちたり、今初の一區、及び最終の二十九區を揭ぐれば「上總國大東崎より、安房國野島崎、伊豆國大島、及び神子元島を經て、遠江國御前崎に至る線内」は一區にして「沖繩島沿岸及沖繩群島間の線内」は第二十九區なりとす。(船舶檢査法施行規則)
- 英
- Coasting line
- 独
- Küsten-linie
- 仏
- Ligne de cabotage
緣組
(えんぐみ)緣組とは、養子をなすことを云ふ、即ち事實上、親子にあらざる者の間に、法律上親子と同一の親族關係を生ぜしむる法律行爲を云ふ、緣組は、其法律上の效力として、緣組成立の日より、養子をして養親の嫡出子たる身分を取得せしめ、又養親は、勿論其血族との間に於けると同一の親族關係を生ぜしむ、緣組は、之を戸籍吏に屆出づるに依りて其效力を生ずと雖も、緣組の有效なる成立には、以下の各要件を充實することを要す、□一當事者間に自由の承諾あること、もし養子となるべき者が、十五歳末滿なるときは、其家に在る父母之に代りて、緣組の承諾を爲すことを得べく、繼父母、又は嫡母が此承諾をなすには、親族會の同意を經るを要するものとす、□二父母の同意あること、成年の子が養子を爲し、又滿十五歳以上の子が養子となるにも、其家に在る父母の同意を得ることを要するなり、もし婚姻、又は緣組に因りて、他家に入りたる者が、更に養子となりて、他家に入らんと欲するときは、實家に在る父母の同意を得ることを要す、但し妻が夫に隨ひて、他家に入るは此限にあらず、(父母の同意を必要とする場合に於て、父母の一方が知れざるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は其意思を表示する事能はざるときは、他の一方の同意のみを以て足るものにして、もし父母共に知れざるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は其意思を表示すること能はざるときは、未成年者は、其後見人、及び親族會の同意を得ることを要す、然れども繼父母、又は嫡母が同意を與へざるときは、親族會の同意のみを得て、養子を爲すことを得べく、又養子となることを得べし、□三養子を爲す者は、成年に達したる者なることを要す、□四養子となる者は、養親の尊屬、又は養親より、年長者にあらざることを要す、□五養子を爲す者は、法定の推定家督相續人たる男子無きことを要す、但しこの場合に於て、女子を養子となすも妨げざるのみならず、男子と雖も女婿となすためすにる場合は、法律の禁ずる所にあらず、□六養親は、養子となる者の後見人にあらざることを要す、但し後見の任務終了し、且つ管理に關する計算の全く結了したるときは、此限にあらざる也、□七配遇者ある者が、緣組をなすには、其配遇者と共にすることを要す、此場合に於て、もし夫婦の一方が、其意思を表示すること能はざるときは、他の一方は、双方の名義を以て緣組を爲すことを得べし、又夫婦の一方が、他の一方の子を養子となすには、他の一方の同意を得るを以て足るものとす、□八養子となる可き者は、戸主、又は推定家督相續人にあらざることを要す、但し分家の戸主、又は推定家督相續人にして、本家の相續者として、本家に入る場合は、此限にあらず、緣組にして、以上の各要件を充足せざるときは、取消すことを得べし、其他人違等の事由に因りて、當事者間に全く緣組を爲す意思なき場合、及び當事者が綠組の屆出を爲ざさるる場合には無效なり、又家族にして、緣組を爲さんとするには、戸主の同意を得ることを要し、もし同意を得ずして緣組を爲したるときは、戸主は、緣組の日より一ケ年内に離籍を爲し、復籍を拒むことを得るなり、尤も此場合には、裁判上取消の原因となること無し、禁治産者が、緣組を爲す場合には、後見人の同意を得ることを要せず、遺言を以て養子をなすの意思を表示したる場合には、遺言執行者は、養子となるべき者(養子となるべき者が、十五歳未滿なるときは其父母)及び成年の證人二人以上より、遺言が效力を生じたる後に、遲滯なく緣組の屆出を爲す事を要す、此屆出には、遺言者の死亡の年月日を記載し、養子に關する遺言の謄本を添ふることを必要とするものなり、而して普通の緣組届書には、□一緣組事件、□二當事者の氏名、出生の年月日、職業及び本籍地、□三養子の實父母の氏名、職業、及び本籍地、□四當事者が家族なるときは、戸主の氏名、職業及び本籍地、もし養子が婚家、又は養家より更に緣組に因りて、他家に入る場合には、婚家の戸主、又は前養親の氏名、職業、及び本籍地を記載し、また戸主、父母、配偶者、後見人、又は親族會の同意を要する場合には、此屆書に同意の證書を添へ、然らざるときは、同意を爲したる者をして、此▲書に同意の旨を附記し、之に署名捺印せしめて、屆出人本籍地の戸籍吏に差出す可し、若し屆出人か、本籍地以外に在る場合には、其所在地の戸籍吏に屆出づることを得、此屆出人たる者は、當事者双方にして、成年の證人二人以上を立合はすことを要するもの也、通常書面を以て屆出づることを要するも、正當の事由あるときは、戸籍吏に其理由を陳述し、口頭にて屆出を爲すことを得べし。(民八三七條乃至八七六條、戸籍法八五、一〇一條參照)緣組事件とは、緣組に關する一切の訴訟事件をいふなり、たとへば養子緣組の無效、若しくは取消、又は離緣を目的とする訴訟事件の如き之也、緣組事件の裁判管轄は、養親が普通裁判籍を有する地、又は其死亡の時に、之を有したる地の地方裁判所の管轄に專屬するを原則と爲すも、婚姻事件に附帶して、緣組の取消、又は離緣の請求を爲す場合は、此限にあらざる也、緣組の無效、又は取消の訴に於ては、夫婦の一方が、其配偶者を以て、相手方とすることあり、或は第三者が、夫婦を相手方する事あ、或とりは又相手方となすべき者が、死亡したる時に、法律依りて、檢事が相手方となる事あり、或は又檢事が當事者の一人となりたる後、相手方が死亡したるときは、裁判所が、職權を以て辨護士を選定し、相手方の承繼人たらしむることあり、通常無能力者が訴訟行爲を爲すには、法定代理人、又は保佐人、若くは夫の同意を得る事を要するも、緣組の無效、若くは取消、離緣等に關する訴訟を爲す場合には、其同意を得ることを要せざるなり、此場合に於ては、申立に依り、又は申立を爲さざるも、受訴裁判所の裁判長が、訴訟代理人として、辯護士を選任する事ありとす、法定の原因により、養子を離緣する必要ある場合に於て、養親が禁治産者なるときは、親族會の同意を得て、其後見人より離緣の訴を提起するを得べく、もしまた養子が禁治産者なる場合に於て、養親に離緣の原因あるときは、實家の直系尊屬、又は實家の戸主より、右の訴を提起することを得るなり。(明治三一年六月、法一三號人事訴訟手續法)
- 英
- Adoption
- 独
- Annahme an Kindes-statt
- 仏
- Adoption
緣組事件
- 英
- Marriage case
- 独
- Ehefall
- 仏
- Cause de mariage
鹽業調査所
(えんげふてうさじよ)(廢)
- 英
- Inspection office of salt busi-ness
- 独
- Untersuchungsamt des Salzges-chäfts
- 仏
- Office de l'inspection de sel
鹽業調査所官制
鹽業調査所官制により、設置せられたる官廳にて、吾國鹽業の改良、及び調査試驗の事を掌理する役所也。(鹽業調査所官制參照)鹽業調査所官制は、明治三二年三月、勅令九一號を以て發布せられたる命令にして、鹽業調査所には、所長(一人)、技師(專任四人)、技手(專任八人)、書記(專任二人)等の職員を置き、所長は、農商務大臣の指揮監督の下に、部下を指揮し、所中全般の事務を掌理すべきものなることを規定せり、目下は、鹽業專賣制度に變りたる結果として、本法は廢止せられたり。
- 英
- Government organization of the inspection office of salt business
- 独
- Untersuchungamtsordnung des Salzges-chäfts
- 仏
- Organisation de l'office de l'inspection de sel
淵源
(えんげん)法律の淵源なる語義に關しては、學説一致せず、或は法律の基礎と云ふ義に解する者あり、例へば法律は神意に出でたりと爲し、又は人意に基くものなりと解するが如し、或は法律關係の生ずる原因、若くは法律の拘束力を生ずる原因と云ふ義に使用する者あり、例へば法律の淵源は、契約、不當利得、不正の損害、及び法律の規定なりと云ふが如し、或は法律の智識を得ることの義に用ふる者あり、例へば學者の著書、若くは判決例に依りて、智識を得るを以て、法律の淵源と爲すが如し、或は法律の規定を構成する材料と云ふ義に用ふる者あり、例へば慣習、判決、又は法典は、法律の淵源也と云ふが如し。
- 英
- Source
- 独
- Quelle
- 仏
- Source
緣故者
(えんとしや)緣故者とは、國有林野法上の用語にして、國有の林野と利害上、又は緣故上特別の關係ある者を云ふ、即ち國有林野法施行規則第七條に依れば、□一部分林に在りては、其分收の權利を有する者、□二官地民木の森林に在りては、其樹木の所有者、□三府縣設置前、主産物の採取をなしたる慣行ありし林野に在りては、その採取をなしたる者、□四府縣設置以前入會の慣行ありたる林野に在りては、其入會を爲せる市町村、又は其内の一部、□五城趾の舊藩主、□六神祠、佛堂、墓碑等の遺跡ある林野に在りては、其遺跡に緣故ある者、□七古記社傳、又は歷史の證明に依り、社寺に緣故ある林野に在りては、其社寺等は、所謂緣故者にして、緣故者に特別の緣故ある林野を賣渡すには、國有物拂下規則に依らずして、隨意契約を以て之を賣渡すことを得るものなり。(國有林野法八條以下)
- 英
- Party
- 独
- Partei
- 仏
- Partie
捐資
(えんし)捐資とは、出捐賦資の義にして、日英通商航海條約第二條に「兩締盟國一方の臣民にして、他の一方の版圖内に住居するものは、一切の強募公債、及び軍事上の賦歛、或は捐資を免る可し」とあるは其用例なり。
- 英
- Contibution
- 独
- Beitrag
- 仏
- Contribution
演習召集
(えんしうせうしう)演習召集とは、平時に於て、豫備後備の將校、下士卒、及び補充兵を勤務演習、又は其他教育演習の場合に、召集するを云ふ、陸軍在鄕軍人にして、召集令狀を受けたる者は、市町村役場にて旅費を受取り、期日までに召集部隊に到著するを要す、もし傷痍疾病其他やむを得ざる事故ありて、召集に應ずる能はざる場合には、町村長の證印を得て、其屆書を入隊期日迄に、郡長を經由して、所屬聯隊區司令官に差出す可きものとす、尚疾病傷痍の場合には、此屆書に醫師の診斷書を添へざる可からず、父母の危篤死亡等の場合にありては、將校は、聯隊區司令官を經て師團長に、下士卒は、町村長を經て聯隊區司令官に願出づる時は、十四日以内の期間召集の延期を許さる可きものにして、延期の事故罷みたるときは、十日以内に召集部隊に到著するを要す、海軍々人の場合に於ても、其手續殆ど陸軍々人と大同小異なり、即ち召集令狀を受取りたるときは、旅費、及び旅費證票を受け、豫定期日までに、准士官以上は指定の場所に、下士卒にありては、所屬海兵團に到著すべし、疾病其他召集に應じ難き事故ある場合には、本人より廿四時間内に、市町村長を經て、准士官以上は海軍大臣に、下士卒は海兵團長に、其旨を屆出でざる可からず、尚傷痍疾病等の場合には、診斷書を添ふること勿論なり、また途中に於て、上述の事故を生じたるときは、其地の市町村長、警察官、船長、又は驛長等の證明を得て、診斷書を要するものは之を添へ、所屬長官を經て其旨を屆出でざる可らず、もし此等の手續を爲さざるときは、五十錢以上一圓以下の科料、又は五日以上十日以下の拘留に處せらるること、陸海軍共に同じ、而して召集に應ずべき者、旅行、犯罪、又は失踪等にて不在の場合には、其召集令狀を受取りたる者より、其旨を屆出づる事を要す、此手續を怠りたる場合には、上記の罸を受くることある可し。(陸軍召集條例、海軍召集條例參照)
- 英
- Calling for maneuver
- 独
- Manöverberuf
- 仏
- Iuvoquer pour la manoeuvre
延納
(えんなふ)官廳、又は公署に納付すべき金錢、若くは其他の物を所定の時期、又は期日に後れて納付することを延納と云ふ、例へば葉烟草の賣渡を受けたる者が、烟草專賣所の指定する金錢を提供して、その代金の延納をなすことを得るが如き、或は一回二千圓以上の印紙類の賣下を受けたる者が、公債證書を抵當として、六ケ月以内の期間、其代金の延納を許さるるが如きこれなり。(三〇年一〇月勅三七五號の二條、二三年一月勅二七號七條の二參照)
- 英
- Postponed paying in
- 独
- Rück-stand
- 仏
- Paiement ajourné
遠洋航船
(えんやうかうせん)遠洋航船とは、遠洋航路に使用せらるる汽船、及び帆船を云ふ、船舶は、凡て船舶檢査法の規定に依り、一定の檢査を受け、船舶檢査證書を交附せらるるものにして、遠洋航路に使用せんとする船舶は、此檢査に合格したるものならざる可らず。(船舶檢査法)
- 英
- Pelagic ship
- 独
- Seeschiff
- 仏
- Vaisseau pélagique
遠洋航路
遠洋航路とは、船舶の内外國の各地に通ずる航路を云ふ、例へば米國航路、又は濠洲航路と云ふ如き是なり、航路には、命令航路、及び任意航路の二種あり、所謂命令航路とは、政府の命令にかかる航路にして、任意航路とは、個人、又は會社が任意に開始したる航路を指す。
- 英
- Pelagic Line
- 独
- Seelinie
- 仏
- Ligne pélagique
遠洋漁業
(えんやうぎよげふ)遠洋漁業とは、帝國臣民、または帝國臣民のみを以て、社員、或は株主とする商業會社が、自己の所有に專屬し、帝國船籍に登錄したる船舶にて、遠洋漁業奘勵法に指定する海洋に於ける、指定の魚類の捕攫に從事するを云ふ、此法律の規定に依れば、遠洋漁業とは、支那海、臺灣海峽、東海、黃海、朝鮮海峽、日本海、阿哥德斯克海、及び太平洋に於てする漁業にて、其捕攫すべき魚簇は、鯨、臘虎、膃肭獸、鱶、鮪、鰹、鱈、鯖、鰤、柔魚、大鮃等とす。(遠洋漁業奘勵法參照)
- 英
- Deep-sea fishery
- 独
- See-fischerei
- 仏
- Pêcherie pélagique
遠洋漁業奬勵
遠洋漁業奬勵とは、遠洋に於ける漁獵を奬勵するの謂にして、三十八年二月、法律四〇號遠洋漁魚奬勵法に依れば、帝國臣民、又は帝國臣民を社員、或は株主として、帝國法律の規定に從ひて設立したる、法人の遠洋漁業を奬勵するため、政府は、每年國庫より、十五萬圓以内の金額を支出して、此種の漁業者を補助するものなり。(遠洋漁業及遠洋漁業奬勵金參照)
- 英
- Encouragement of deep-sea fishing
- 独
- Aufmunterung der See-fischerei
- 仏
- Encouragement de la pê-cherie pelagique
遠洋漁業奬勵金
遠洋漁業奬勵金とは、遠洋漁業奬勵法の規定に依り、同法指定の遠洋漁業に從事する漁業者に、每年下附せらるる奬勵金を云ふ、此奬勵金を受けんと欲する者は、遠洋漁業奬勵金下附願に、各種の船舶書類を添へ、住居地、又は其船舶碇繫港を管轄する地方官廳を經て、農商務大臣に出願せざる可からず、而して遠洋漁業者は、遠洋漁業奬勵法指定の海洋に於て、同法指定の魚簇の漁獵に從事すべきは勿論、尚遠洋漁業船舶艤裝規程に從ひて、艤裝したる船舶を以てすることを要するものとす、而して五十噸以上の汽船にありては、總乘組員の五分の四以上、日本臣民たる事を要す、此奬勵金額は、每一噸に付き、汽船は一ケ年十五圓(三百噸以上は、數に應じて增加せず)帆船は、一ケ年十圓(二百噸以上は增加せず)乘組員一人に付き、何れも一ケ年十圓の割合にして、五ケ年以内下附せらるるものとす。(三八年三月、農商務省令一〇號、三八年二月、法四〇號參照)
- 英
- Bounty for the deep-sea fishing
- 独
- Beförderungsgeld der See-fischerei
- 仏
- Don pour la pêcherie péla-gique
遠洋漁業奬勵法
(えんやうぎよげふしやうれうはう)遠洋漁業奬勵法とは、遠洋漁業奬勵金下付に關する各種の事項を規定せる法則也。(三八年二月、法四〇號及遠洋漁業奬勵金の部參照)
- 英
- Encouragement law of deep sea fishing
- 独
- Aufmunterungsgesetz der Seefischerei
- 仏
- Loi de l'encourage-ment de la pêcherie pélagique
援用
(えんよう)援用とは、訴訟の場合に、自己の利益のため、立證上の材料として、證書、又は時效其他の事實を引用主張することを云ふ。(民一四五條、民訴法一一五の一參照)
- 英
- Claim
- 独
- Verweisung
- 仏
- Réclamation
應用
(おうよう)廣義に於ては、一を他に適用することを稱し、その物質たり理法たるを問はず、然れども狹義に、而して一般に應用と謂へば、學理を實際の上に運用するをいふ、換言すれば、吾人の思考にて得たる諸般の理法を實際事物の上に適用し、以て其效果の發揮を計る作用を謂ひ、常に理論と併稱せられて、理論應用と謂ふ、例令ば數學は理論にして、之を測量術、航海術に應用すと云ふ如き、尚平たくは學問を學びて、實地に應用すと云ふ如き場合の用語也。
- 英
- Application
- 独
- Anwendung
- 仏
- Application
毆傷
(おうしやう)故なく人を毆打して、身体に創傷を蒙らしむる所爲を毆傷と謂ふ、故なくとは、權利なくと云ふ意味にして、例令ば他人が無法にも自己に對して、暴行を加ふる場合に於て、之を防衛せんとして、其加害者、即ち亂暴人を傷付けたる事ありとせんか、之等は事實上毆傷に相違なきも、茲に曰ふ毆傷にあらず、又醫師が患者を治療するために、局部切開を爲すことあるも、無論毆傷にあらず、前例は止むを得ざる正當防衛なれば、刑法は之を罸せす、後者も亦醫師の職務上當然の事に屬し、法律の罪とする所謂毆傷にあらず、次に毆傷は、他人の身體に傷害を蒙むらしむことを要す、所謂傷害とは、人の肉体の生活機能を毀損するの意にして、例へば棒を以て人を打ち、人の肉体に創傷を負はしむるが如き、又は劇毒藥を身体に灌ぎ、或は之を飮用せしめて、肉体を有形的に傷害せしむるを云ふなり、之を要するに毆傷とは、權利なくして、他人の肉体上の生活機能を毀損するの行爲と云ふ可し。(舊刑一四〇條、改刑第二編第二十七章)
- 英
- An incised wound
- 独
- Körper-verletzung
- 仏
- Coups
應召員
(おうせういん)召集に應じて指定せられたる場所に、參集すべき者を指稱する語にして、おもに陸海軍に關する法律規則等に使用せらる、日露戰爭に際し、豫備、後備、又は補充兵より國民兵に至る迄、赤紙令狀により、充員召集、又は動員令と云ふ呼出を受けたる時に於て、其命令狀に記載せられたる人が、示されたる場所に向け、一定の時日迄に參集する場合の如きは、適切の應召の例也、而して其召集に應じて集る者を應召員と云ふ、又應召人と云ふときは、私的關係に用ひられ、應召員と云ふときは、公的關係に用へらるるを例とすと雖も、兩者別意義を有するものにあらず。(陸軍召集條例、及海軍召集條例參照)
- 英
- Man to be assembled
- 独
- Mann zu sammelnd
- 仏
- Personne convoquée
毆打
(おうだ)毆打とは、刑法、刑事訴訟法等に於て用ひらるる語にして、不法に他人の身體に暴行を加ふる所爲を謂ふ、其所爲たる手、又は足を以てすると、物件を以てするとを問はざる也、即ち暴行は、廣き意味に於ては、種々に是を想像し得らるるも、先づ他人の身體に苦痛を感ぜしむる意思にて、急劇に打撲するが如き所爲なりと謂ふを得べし、刑法中の毆打創傷罪の創傷の程度に達せさる狀態は、即ち毆打なり、而して刑法上の毆打は、不法なることが一つの要件を爲すものにして、假令ば親が子を教育する手段のために、必要上些少の打ち叩き(假令嚴正に善良の方法とは謂ふべからざるも、確かに刑法上の罪となる不法にあらず)等は、刑法は罪として之を罸せざるが如く、本題に於げる毆打は、少くも他の身體の安全を害する不法のものならざる可からざるなり、終りに注意す可きは、單に字義上より解すれば、一見毆打と云へば、恰も固形体を以て肉体を打擊するを意味するが如きも、刑法は單に人を押倒し、又は劇毒藥を身體に灌ぐも、之を毆打の一種となせり。(舊刑三〇四條參照)
- 英
- Violence
- 独
- Schlägerei
- 仏
- Violence
毆打創傷
毆打創傷とは、暴行手段を以て、他人の身体を傷害する所爲也、例へば藥物等を使用して、他人の肉體を毀損する等、尤も殺人の意思を以て之をなしたる時、又は他人の肉體を打擊して之を殺害するが如き場合は、殺人罪となるべし、もし死てふ結果生ぜずとするも、殺人未遂犯となるものとす、總べて表見的に傷害を與ふるを指すのみならず、不表見的に肉體の活機能を毀損する場合をも含む、故に穴勝ち身体の外部に、攻擊を加ふるのみが、毆打創傷とは限らさず。(刑二〇四條乃至二一一條及毆傷並に毆打の部參照)
- 英
- Blow, wound and bodily in-juries
- 独
- Körperverletzung
- 仏
- Coups et blessures
應當日
(おうたうび)應當日とは、或る期間、又は期限を算定する場合に、起算日に對する結了の日を稱するものにして、假令ば一月一日より十五日間と云ふときは、一日は起算日にして、一月十五日は、茲に所謂應當日なるが如し、要するに應當日とは、讀みて字の如く、應じ當る日にして、週を異にして曜を同じくするが如き、又は月を異にして日を同じくする如き、年を異にして月日を同じくするが如きを云ふなり、唯茲に注意を要するは、月を以て計算する期間の場合に生ずる疑なり、即ち五ヶ月間と云ふ時に、終了の月が二月に相當すとすれば、二月は三十一日なき月なるが故に、二月の末日を以て滿期日となし、二月廿八日を應當日と見做す旨の便宜方法を採りたること之なり、されどこは單に疑を防ぎたる法律上の便宜に過ぎずして、嚴格に應當日と謂ふ以上は、前陳の如く最終日即ち滿期の日を指すに外ならず。(民一四三條)
- 英
- Corresponding day
- 独
- Er-widerungstag
- 仏
- Jour courespondant
毆打創傷罪
(おうださうしやうざい)毆打創傷罪とは、故意又は豫謀を以て人を毆打し、其結果之を創傷せしめたる罪にして、或る場合に於て毆打したる結果、被害者が死する事ありとするも、最初より生命を奪ふと云ふ意思なき以上は、次に述ぶる毆打致死罪とはなり得べきも、殺人罪にあらざる也、されば毆打創傷罪の成立要件としては、單に毆打すると云ふ意思の存在と、其意思に因りて爲したる手段と、結果の發生とを待ちて成立するもの也、學者が結果犯と稱するは此の故にして、即ち毆打創傷罪は、□一人の身体に對することを要す、人とは出生により、生存を持續する者にして、出生以前の脱兒を包含せざるは言明を要せず、元來毆打創傷罪は、人の身体即肉体を毀損するの罪にして、此の點は彼の生命に對する殺人罪に異るものとす、□二生存せる人の身體を毀損したることを要す、毀損の行爲は、所謂毆打によるものにして、歐打に因りて創傷ありたるときは、これ身體の毀損なり、茲に毆打と云ひ、創傷と云ふも、彼の固形體を以て、肉體を打擊せるが如き具體的の場合のみにあらずして、要するに洽ねく人の肉體上の生活機能を毀損するの行爲を總稱するものなり、□三此の毀損の結果を豫見せることを要す、結果の豫見を必要とすと云ふも、通常の場合と異り、本罪は、現に發生したる結果に附き、客觀的にその責を負ふものなるが故に、其行爲が身體の一部に對して、果して如何なる傷害を生ず可きやを犯人に於て、豫見することを要せず、苟もその行爲に基きて或る人の身體に傷害を生す可きことを豫見せるときは、現實に發生し得る結果に付きて、犯意、又は錯誤の有無に關せず、その責を負ふ可きなり。(刑二〇四條乃至二一一條及結果犯の部參照)
- 英
- Crime of blows, wound and bodily injuries
- 独
- Körperverletzungs-verbrechen
- 仏
- Infraction de coups et blessures
毆打致死罪
歐打致死罪とは、刑法に所謂「人を歐打創傷し因つて死に致したる」の罪にして、本罪の成立要素を擧ぐれば、□一歐打創傷の手段ある事、□二傷害の故意あること、□三結果が死の事實を生じたること□五生命を奪ふの意なかりしこと、以上の四要素を具備して、始めて歐打致死罪を搆成するものなり、即ち他人の身體に對して暴行を加へ、其暴行に依りて受けたる創傷が原因となりて、死てふ結果を生ずるものなりと云ふ此點が、單純なる創傷罪と區別あるところにして、又一面に於て、故殺罪との區別を注意するを要す、元來殺人罪も人の生命を奪ふ犯罪行爲にして、一見本罪と區別するの理由なきに似たりと雖も、歐打致死罪は、死と云ふ結果が初めより豫見せられたるにあらず、故に初めより他人を殺す意思ありたるときは、明かに故殺、又は謀殺の罪に當るべきものなり、再言すれば、歐打致死罪は、身體に對する歐打創傷の結果、最初の豫見の意思と相違して、奪命と言ふ事實が現出したるものにして、殺人罪は、之に反して、著手の當初より、人の死を豫見せるものなり、此の點に於て、二者全く異るものなり。(刑二一〇條)
- 英
- Blows, wound and bodily injuries caused death
- 独
- Verbrechen des Todesstreiches
- 仏
- Infraction de coups et blessures qui causent la mort
歐文電報
(おうぶんでんぼう)歐又電報とは、和文電報に對し、電報規則に於て、電報の記載方に就きて、分類せる電報の一種にして、羅馬字(A,Ä,Á,又はÅ,B,C,CH,D,E,É,F,G,H,I,J,K,L,M,N,▲,O,Ö,P,Q,R,S,T,U,Ü,V,W,X,Y,Z.)亞刺比亞文字(1,2,3,4,5,6,7,8,9,0.)及び以下の記號のみを使用すべきものなり、以下の記號とは即ち、.(終點),(讀點);(小讀點):(重點)?(問標)一(感符)’(略符)=(新章)―(連結點()(括孤)“„(轉倒句讀)―(字下線)/(歸除線)之れなり而して和文電報に用ふる文字記號たると否とを問はず、歐文電報には、此以外の文字記號を使用することを得ず。(電信取扱規則二五條乃至三五條、及び電報規則八條)
- 英
- Foreign language telegram
- 独
- Telegramn der europäischen Schrift
- 仏
- Télégramme à la langue européenne
應募價額
(おうぼかかく)應募價格とは、公債もしくは株式の募集に當り、實際其募集に應じたる方の出資したる金額を謂ふ、而して募集方は、或は□一應募價格全部の手取りとなることあり、或は□二全部の手取とならざることあり、普通株式會社創立の場合に於ける株式募集は、定欵により、其株金全部の拂込たると、半額、もしくは四分の一拂込たるとを問はず、應募額全部の手取りとなるを例とす、而して應募申込非常に多く、滿株を超過するときは、之を按分比例にて分配する以前に、先づ株金以上の競爭申込を受け、最高額に優先權を附することあり、假令ば五十圓の株式に、七十圓もしくは百圓まで應募する者あるときは、此百圓を優先株となすが如し、此場合に於ける應募者の出資額も、亦應募價格なり、又既設會社が、增資の場合に、舊株主以外より新株を募集する際に、もし積立金多く、利益配當多き會社ならば、五十圓の株式を百圓、もしくは二百圓にて、募集することあり、此際に於ける應募者の出資したる百圓、もしくは二百圓を應募價額と稱す、政府外債を募集するや、應募價額の手取りとならざるを例とす、假令ば額面百圓の債額を九十五圓に賣出し、之が責任仲介者たるシンジケート若しくは個人に、千分の二のコンミッションを拂ふものとせば、應募價額は九十五圓なれども、政府の手取りは九十四圓八十一錢となるが如し、何故に外債募集に責任仲介者を置くを便宜となすやと謂ふに、政府が、額面百圓手取九十五圓にて、一億圓の公債を海外に募集する場合に、萬一應募額不足なるか、もしくは應募者中拂込を怠りたる者ある場合には、仲介者は其募集額全部を引受くる責任を負ふものなればなり、又内債募集には、政府自ら募集の任に當り、コンミッションを支拂ふことなきは勿論なるも、額面百圓の債券を九十五圓内外に賣出すものとせば、其百圓債券なるに係らず、應募價額は九十五圓内外なり、之を要するに、應募價額とは、全部募集方の手取となるや否やに係らず、實際應募方の出資額を指稱するもの也。
- 英
- Sum of snbscription
- 独
- subskribierte Summe
- 仏
- Somme de souscription
犯
(おかす)法律規則を遵守せざる意義にして、即ち犯罪犯則の如き是なり、總べて法律命令は、種々の性質を備ふるものにして、或る事を行ふべし、又は或る行爲は爲すべからずと、二樣の意を有する場合少ながらず、即ち爲すべし、爲すべからずにして、學者之を稱して、單に爲、不爲即ち命令法、禁止法と區別して説く、本題の「犯」すは此二者に從はざる場合にして、假令ば人を殺すべからず、他人を毆打すべからずとあるを顧みず、他人を毆打殺害するは、禁止法を犯したるものなり、或は危險なる築造物の取毀ちを爲すべしと云ふに、之を爲さざるは、命令法を犯したるものなり。(刑三八條)
- 英
- Offence
- 独
- Begehung
- 仏
- Infrac-tion
侵
(おかす)侵害、侵反など重用して、法律中に使用せらる、而して其義は、犯罪、犯則等の犯の文字と大差なく、共におかすの意たり、只用例として別意義の場合を擧ぐれば、侵は人の權利を認めずして、之を無視したる作用を指稱する場合に限り、又犯は、命令、禁止の法則に違反する場合に使用せらるるもの也、以上を要するに侵は、所有權を侵し、居住權を侵すと云ふが如く、他人の利益若くは權利の範圍を凌破する場合に、即ち私的關係に於て、他人の權利を侵害するを指稱し、犯すは之に反して、命令服從の關係に違犯するを指すものと知る可し。
- 英
- Violation
- 独
- Verletzung
- 仏
- Violation
沖繩縣區制
(おきなわけんくせい)沖繩縣の區を獨立の地方自治團體と認めて、郡の區域に屬せず、別に行政區劃をたて、是を公法人とし、法律命令を以て定めたる範圍内に於ける、公共事務、又は從來法令、若しくは慣例上區に屬する事務を處理するの制度を定めたる法則を沖繩區制と云ふ、區制は此區の構成、及び機關の組織權限を規定したる法則にして、内容は、第一章總則、第二章區行政以下區會、區の財務、區内一部の行政、區行政の監督、附則の七章九十八條より成る、因に沖繩縣に於ける自治團體に關しては、他に沖繪縣間切島規定あり、所謂區は内地に於ける市に該當し、間切嶋は町村に相當す。(二九年勅一九號、及び三一年、勅三五二號沖繩縣間切嶋規程)
- 英
- District system of Okinawa prefecture
- 独
- Bezirksystem von Oki-nawa präfektur
- 仏
- Système du district d'Okinawa
沖繩縣酒類出港税則
(おきなわけんしゆるゐしつかうぜいそく)沖繩縣内に於て釀造したる酒類を帝國内の他の各地へ移送販賣する場合に、これに對して課すべき租税の税率、徵収、及び其の手續、機關等に關する規定を網羅したる法律なり。(二一年三月勅一二號)
- 英
- Duty on spirits export of Okinawa prefecture
- 独
- Ausfuhrzoll der geistigen getränke von Okinawa prä-fectur
- 仏
- Impôt sur les liqueurs spiri-tueux exportés de la prefecture d'Okinawa
奥印
(おくいん)奥印とは、證印の義にして、末だ公證人規則發布なかりし以前に於ては、直接に國民に接近する公吏又は官吏が權利關係を有する書類に署名捺印して、其證書の作成を保證し來りたる慣行ありたり、此書類を指して舊公證と稱したるものにして、現今に於ては、前陳の慣行に依るに非ざるも、或る官公署に於て、同樣の手續を爲すことなきにあらず、一例を擧ぐれば、在鄕軍人が、聯隊區に提出すべき請願書、又は屆書に、原籍地の戸籍吏が、共に署名、又は經由したる旨の記載を加ふる如きことあり、此の場合に於て、戸籍吏が公吏としてなしたる「經由したる旨」の記載、及び署名は、所謂奥印なり。(官吏遺族扶助法施行規則七條參照)
- 英
- Official seal
- 独
- Officiellsiegel
- 仏
- Sceau officiel
屋外集會
(おくぐわいしふくわい)屋外集會とは、屋内集會に對する用語にして、茲に屋外とは、家屋又は建造物等の外の意味にして所謂不定多數の人が、何等の物質上の障害なく來集し得らる可き場所を云ふ、次に集會とは、多人數が一ケ所に參集し、或る問題に對して講談論議し、各自の意見を表白し、又は多數の一致を以て、决議をなすが如き人の集合狀態を稱す、屋外集會は、或は政治、文學、宗教、等政治上、又は公事上の目的を以て、之を開くことを得るも、其の取締を要するは、多くは警察上の目的に出づるもの也、蓋し屋外集會なるものは、性質上不定多數の者が、參會するに易く、從つて多人數合同は、往々社會の秩序、公共の安寧を害するが如き場合少からず、故に其政治上たると、公事上の屋外集會たるとを問はず、法律は、屋外集會發起人に命ずるに、十二時間前、警察官署に屆出づ可きことを命じ、取締と監督とを爲す可きものとせり。(治安警察法八)
- 英
- Out-door meeting
- 独
- Feld-versammlung
- 仏
- Assemblée hors de la maison
屋外竊盜
(おくぐわいせつたう)屋外竊盜とは、所謂竊盜罪の一種にして、屋外に於て物を竊取するを意味す、法律上屋内と屋外とは、如何なる標凖を以て區別す可きかは、多少議論の存する點にして、普通所謂家屋外の意義と一致するものとは、早斷すべからざるも、要するに家屋其他の建造物外に於て犯したる窃盜を所謂屋外窃盜と云ふべく、即ち建造物外、又は田野山林、川澤、池沼、海上に於て、他人の所有に屬する物を權限なくして、不法に領得するの意思を以て、奪取したる所爲を云ふものなり、普通窃盜、即ち家屋内の窃盜に比し、屋外窃盜の其罪輕きは、他人の居住を侵す事情の存在なきが故にして、且つ屋内に於ける犯行と、屋外に於ける犯行とは、其情狀に於ても輕重ありと云ふべく、被害の點に於ても、多寡あるは當然なればなり、特例の場合はいざ知らず、屋外に生命を寄托して安眠し、或は貴重なる物品を抛置するが如きは、萬々之無しと推すを得べければ、結局奈邊よりするも、屋外の窃盜は、屋内の夫れに比し、輕度の罸を科するは、道理上正鵠を得たるものなり。(二三年法九九號參照)
- 英
- Out-door theft
- 独
- Feld-diebstahl
- 仏
- Vol hors de la maison
臆測
(おくそく)何等の事實的根據、理論的手續く、單に自己の獨斷揣摩に任せて、事を思考することを云ふ、吾人もし事物の眞相を知らんとせば、種々の討査考究を經て後僅かに、事物の眞相を判斷すべきなり、然るに臆測にありては、全く是等の手續を缺如し、何等客觀的確實性を顧みざる主觀的判斷を謂ふ。
- 英
- Conjecture
- 独
- Muthmassung
- 仏
- Conjecture
屋内集會
(おくないしふくわい)屋内集會とは、家屋、又に建造物内に於ける集會を謂ふ、元來屋の内外を問はず、日本臣民は、憲法上集會、及び結社の自由を保障せらるるものにして、正當の方法により、愼重なる態度を以て眞面目なる目的の爲に集會を爲すには、些の干捗と制限とを加へらるるものにあらざるも、人住々にして多衆の集合及論議表决する事あるときは、騒擾を釀し、社會の秩序を維持する能はざることなきにしもあらず、且つ其目的は、大槪政治上若くは社會的のもの多きに居るものなるを以て、從つて國家は之が監視を爲し、公共の安寧を維持し、又は福利を增進するが爲に、集會に關する人の自由を制限し、其の濫用を防止する所以なり、而して結社に關する警察は、所謂保安警察の一種にして、通常治安の名を用ふるものなり。(治安警察法、及び二六年法一四號集會及び政社法(廢)參照)
- 英
- Indoor meeting
- 独
- Haus-versammlung
- 仏
- assemblée daus la maison
屋内窃盜
(おくないせつとう)屋内窃盜と稱する別個の罪名あるにあらざるも、單行法を以て規定せられたる屋外窃盜なるものあるが故に、夫れに對して、普通の窃盜罪に、屋内の文字を冠し、講學上、屋内窃盜罪と稱するに過ぎざるなり、故に屋内窃盜は、刑法第二章第一節財産に對する罪の一種なる普通の窃盜罪なり、而して窃盜罪とは、他人の所有物を侵害する罪の一種にして、不法に他人の所有物を自己を物として處分するの意思を以て、他人の所持より自己の所持に奪取することを云ふものとす。(刑二三五條、以下及竊盜の部參照)
- 英
- Indoor theft
- 独
- Hausdiebstahl
- 仏
- Vol daus la maison
追越船
(おひとしせん)海上に於ける船舶に關する用語にして、航海中背後の船が、前方の船を追越す時に於て、後より來り將に馳け拔けんとする船を追越船と云ふ、如何なる場合にかかる文字を使用せられたるかを示さんに、海上衝突豫防法第十條に於て「他船に追越されんとする船舶は、他船に向ひて船尾より白燈を表示し、又は閃火を發すべし、本條に於て表示すべき白燈は、豫め船尾に揭げ置くを得」とあり、而して航海中に於て、他船の兩舷、正橫後の二點以外、即ち夜間にありて、船燈を見難き位置より、其船を追越さんとする船舶、又は晝間にありても、背後より他船を追越さんとする船舶を指して、追越船と稱す、元來追越船なるものは、凡て前船の追ひ越さるる船舶が、取る可き普通の航路を避くる義務あるものなり。(海上衝突豫防法)
- 英
- Ships passed over
- 独
- Vorbei-fahrendes Schiff
- 仏
- Navire surpassant
覺書
(おぼえがき)或る事實、若くは理由の記憶保存のために、之を記載し置く書面を覺書と謂ふ、軍に覺書と云へば、種々なる性質、及び意味に使用せらるる場合ありて一定せず、假令ば日露媾和談判に於て、兩國全權委員が覺書を交換すとか、其他國際間に於ける問題に繫る覺書と云ふ意は、正確なる一定の性質を具備する書面なるが如きも、日常世俗に、備忘錄の意味に使用せらるる事もあるべく、又後日に於て、或事實の存在を其事實發生の當時作成したる書面に依りて證據立つる時に、之をも稱して、覺書に因る證明とも云得べし、故に此の如きは時と場合とに應じ、任意に解釋すべきものと見て可なり。
- 英
- Memorandum
- 独
- Anmerkung
- 仏
- Bordereau
大藏省
(おほくらしやう)國家が統治權を行ふに當りて、資財を要するはなほ個人が一家の會計を要すと同樣なり、而して其資財の収支、並に管理に關する行政は、之を稱して財務行政と云ひ、大藏大臣の主管に係る、大藏省なる官廳は、此の大藏大臣より以下、諸官吏を以て成る、財務行政の機關なり。(各省官制通則一條、大藏省官制參照)
- 英
- Financial Department
- 独
- Finanzministerium
- 仏
- Ministère de finance
大藏省官制
(おほくらしやうかんせい)大藏省官制とは、大藏省に關する大藏大臣以下、大藏省直轄の官府、官吏、官職の全部に渉り、詳細なる職務の權限、分配を規定したる敕令也、其の大要を擧ぐれば、□一大藏省には、主計局、主税局及理財局を置き、主計局は、主として總豫算、總決算、特別會計に關する豫算、及决算等を掌り、主税局は、租税に關する事務を掌り、理財局は、國資の運用、出納、管理を掌るものなり、□二大藏大臣は、政府の財務を總轄し、會計、出納、租税、國債、貨幣、預金、保管物、及び銀行に關する事務を管理し、併せて府縣郡市町村、及び公共團體の財務を管理するもの也、□三大藏省には、專任參事官二人、專任書記官十人、專任鑑定官二人、同補二人、專任技師一人、專任技手三人、及專任屬百九十二人を置くことを得、之等の者を補助として、所謂財務行政を處理するものなり、(三一年勅二六九號)
- 英
- Government organization of the Financial Department
- 独
- Behörde-ordnung des Finanzministeriums
- 仏
- Organisation du Ministère de finance
大藏省證券
(おほくらしやうしやうけん)國庫の出納上、一時使用の目的にて發行する短期の公債證書にして、無記名利札付、定期拂の證券なり、其支拂は、證券發行年度の歳入を以て之に充て、其の年度内に償還を期するものなり、而して大藏證券は、彼の國家が、憲法の條項に依り、帝國議會の協賛を經、法律を以て起す公債とは、其性質を異にするを記臆せざるべからず、元來公債を起す場合は、□一一ケ年度内の収入を以て、支出に充つるに足らざる場合に、其支出に充つるの目的、若くは□二一ヶ年度内の収支相並行せざるため、其年内に限り、一時繰替の目的を以て之を起すものにして、通常公債と云ふは、唯前者のみを指稱し、且つ前者は、議會の協賛を要するも、後者の場合は之を要することなく、大藏證券を發行するか、又は日本銀行より一時借入金を爲し、其目的を達するものなり。(大藏證券條例參照)大藏省證券條例とは、大藏省が、大藏省證券の發行、種類、取扱、償還等の手續を規定したるものなり、元來大藏省證券は、出納上一時使用の爲め、大藏省より發行するものにして、無記名利付定期拂證券なり、而して其の償還は、之を發行したる年度の歳入を以て、仕拂をなすものとす、此の證券は、常に額面百圓以上にして、その仕拂期限は、十二箇月以内、又割引にて發行することを得るものなり。(一七年九月二四號布告)
- 英
- Treasury Bills
- 独
- Kas-senschein
- 仏
- Bill du Trésor
大藏省證券條例
- 英
- Law of Treasury Bills
- 独
- Kassenscheinsgesetz
- 仏
- Loi du bill du Frésor
大藏省令
(おぼくらしやうれい)大藏省令とは、大藏大臣が、其職權、若くは國家の委任によりて、國民に對して發する行政命令を謂ふ、元來廣義に於て法律と云ふときは、□一狹義の法律即ち帝國議會の協會を經て、天皇の裁可せる國家の意思、□二勅令、(緊念勅令を含む)□三内閣令、即ち内閣の發するもの、□四省令、即ち各省大臣の發するもの、□五府縣令、即ち各府縣の長官の發するもの、□六警視廳令、□七其他北海道條例、又は各地方自治團體の發する條例の如く、種々に區別を試むるを得るも、茲に所謂大藏省令は、即ち上記の省令の一種に該當すべきものにして、大藏省に屬する職務の範圍内に於て、大臣が一省の長官として發布し、法律、敕令、閣令を施行し、又は之等の法規に基きて人民を覊東する規則を云ふ。(省令の部參照)
- 英
- Ordinance of the Financial Department
- 独
- Verordnung des Finanz-ministeriums
- 仏
- Ordonnance du Minis-tère de finance
公なる周旋業
(おほやけなるしうせんげふ)營業は、營利の目的を以て、繼續的に爲す法律行爲の包括的名辭にして、公なる周旋業は、其一種なり、茲に所謂公なる周旋業とは、官府の許可に係り、土地、家屋の賣買貸借、金錢貸借其他の取引を、他人間に介在して周旋し、一定の報酬を受くるを目的とする一種の營業なり、營業税法に從へば、公なる周旋業者には、一箇年報償金額百圓以上ある者每に金一圓、從業者一人每に同じく金一圓の割合を以て、營業税を課せらるるもの也。(營業税法一〇條の二、一二條等參照)
- 英
- Public agency
- 独
- öffentliche Agentschaft
- 仏
- Agence publique
公の營造物
(おほやけのえいざうぶつ)行政法上營造物とは、物及び人、又は物を以て之を組織し、物の所有權の所在管理、若くは費用の負擔が、何れに屬するを問はず、國家又は公共團體の意思表示に因り、直接公共の利益に供用せらるる設備を謂ふ、左に營造物とは如何なるものかを例せんに、□一官公立諸學校、□二官公立病院、□三鐵道、郵便、電信、電話、□四官公立博物館、博覽會、圖書館、□五公園、道路、河川、港灣の如し、以上の中□一乃至□三は、物、及び人を以て組織せらるる設備に屬し、□四乃至□五は何れも物のみを以て成立せる營造物の例なり、營造物は、之を別ちて國家の營造物と、公共團體の營造物、及私有の營造物となす、例へば公園、道路の如きは、普通公共團體の營造物と云ふを得べく、尤も國有道路の如きは格別也、又河川にして河川法の支配を受くるものは、國家の營造物と稱するを得、彼の私立圖書館の如きは、之を營造物となすときは私有營造物なり、其他施設經營を爲す主體の如何によりて、國家の營造物となり、或は公共團體の營造物となり、又は私有の營造物となる、此場合に、公共團體に、屬する營造物を公の營造物と云ふことあり、又は洽く營造物を公の營造物と云ふ事あり、此の意味に於ては、公共の目的の爲に使用せらるる設備となし、公なる形容詞を付するに過ぎず。(營造物の部參照)
- 英
- Pnblic building
- 独
- öffentliche Anstalt
- 仏
- Etablissement public
公の告示
(おぼやけのとくじ)或る書類を社界公衆に告知せしむる必要上、裁判所に備付の揭示板に貼付告示する事を公の告示と云ふ、其事抦に至りては、廣く種々なる點に渉り、一々説明し能はざるも、例へば彼の破産者に對する破産の決定、又は失踪宣告の決定、動産、不動産に對する強制竸賣開始決定の告示の如き、總べて何事によらず、裁判構成法、民事訴訟法上に於て規定せられ、此手續を要するとなすもの、及び裁判官が、職權内に於て必要ありと認むる廣告に至る迄、揭示の方法に據る以上は、之を公の告示と稱するを得べし、茲に注意を要すべきは、公示催告と公示送達とを同一視すべからざること之也、固より右二者も亦共に公なる告示の方法に據るは論なき處なるも、只其方法を公なる告示に採るに云ふに過ぎずして、法律上に於ては、公示催告、公示送達は、別個の權利義務の效果を生ずべき性質を要する法律行爲なることを一言し置く。
- 英
- Public announcement
- 独
- öffentliche Bekanntmachung
- 仏
- Annonce publique
御歌所
(おんうたどころ)敷島の道、即ち和歌は、我國粹の精華にして、古昔まり上下を通じてこの嗜みあるもの多し、されば兩陛下を始め雲上人の御製詠を掌り、兼ねて臣民の詠進を管理する所を宮内省に於て設けらる、之御歌所にして、特に御歌所官制の發布あり、其職員は、御歌所長(敕任一人)、主事(奏任一人)、寄人(七人敕奏任)、參候(一五人奏任待遇)及び錄事是也、而して□一御歌所長は、御製を掌り、兼ねて臣民の詠進を管理し、所務の總理及職員監督を爲すもの也、□二主事は、御歌所長の命を承けて、所務を掌理する機關にして、□三寄人は、同じく長の命を受け、短歌、長歌、唱歌等に關する編纂選述を分掌するもの也、□四參候は、御歌所の名譽職にして、御歌會の儀式典例を掌り、□五錄事は、以上の上官の指揮を承け、庶務に從事する書記なり。(三〇年一〇月宮内省達甲七號參照)
- 英
- The National Peotry Office
- 独
- National Gedicht Amt
- 仏
- Bureau des poèmes nationales
恩給
(おんきふ)恩給は、官吏在官中職務に精勵し、人生の必要なる老後の計画を爲すを得ざる者に對して、給與せらるる所の金錢的公法上の權利にして、之を分ちて通常恩給、及び特別恩給(非常恩給)の二となす、通當恩給とは、文官判任以上の者が、十五年以上在官して、法定の事由により、退官したる後に受くるものにして、又特別恩給とは、公務に原因する傷痍、疾病に因りて、不具癈疾となりたるものが、在官年數に關係なく受くるもの也、恩給は、其額俸給より少きを例とす、これ退官後の官吏には、在官當時に於けると同一程度の生活を營ましむるの必要なきを以て也、元來退官後の恩給は、老後の計画を爲す能はざる年數の長短に比例して、給與す可きものなるを以て、法律は、恩給額は、俸給額、及び勤續年數に應じて、多少の差を付する事となせり、以上を要するに恩給制度なるものは、官吏は常に一定の俸給に於て、生活の収支をなし、退官後に多大の資産を餘すが如きは、普通あり得べからざることなれば、晩年職を退くの時を顧慮せしめずして、忠實に其職務に盡さしめ、且つ退官後とは云へ、官吏なるものの老後の面目を保たしめ、從つて國家が自らの威信を保たんとの根底に出でたるなり。
- 英
- Pension
- 独
- Pension
- 仏
- Pen-sion
恩給權
恩給權とは、國家は官吏をして其品格を保たしめ、其職務に全力を注がしむるが爲めに、營利事業に關係するを禁ずる等、嚴重なる官吏服務規則を設く、故に官吏をして退官後其生活を安固ならしむるの途を開くにあらざれば、之をして後顧の憂なく、其職務に忠實なることを望むべからず、加之退官後の官吏をして、俄に窮乏に陷らしむるは、國家の威信を維持する上に於ても得策にあらず、是恩給制度を設けたる理由にして、同時に、一面此の如き權利を一定の條件の下に、官吏其者に與ふるは、重大なる國家政策として、試に至當なることに屬す、此恩給を得べき權利を稱して、恩給權と謂ふ、而して此權利は、法律上、俸給權と其の性質を同くし、退官後の官吏が、國家に對して有する公權の一種にして、私權にあらざることは、現行法の明記する處なり、之に對しては、間接直接に裁判上の保證、即ち其全部を差押ふべからざるが如き、特別保護の存するあり。
- 英
- Right of pension
- 独
- Pensions-recht
- 仏
- Droit de la pension
恩給法
恩給法とは恩給、恩給權の條に於て説明せる如く、官吏が、如何なる條件によりて、恩給を受くべきかを規定し、尚進みて年數と在官中の捧給額とに比例して、恩給額の算定、恩給受取の手續方法を規定する法律を總稱して、恩給法と謂ふ、普通の官吏恩給法、軍人恩給法、其他種々なる法律命令を含む、官吏は、在官滿十五年以上のものにして、左に揭ぐ事項の一に當るときは、終身恩給を受く、□一年齡六十歳を超え、退官を許したるとき、□二傷痍を受け、若くは疾病に罹り、其職に堪へずして退官を許したるとき、□三廢官廢廳、若くは官廳事務の伸縮、又は非職滿期によりて退官したるとき、但し滿五年以上國務大臣の職に在りし者、及び公務の爲め癈疾となり、若くは其職に堪へざる迄に健康を害したる者は、以上の年限に滿たざるも、終身恩給を受くる事を得、其の恩給の年額は、退官現時の俸給と、在官年數とによりて之を定む、卽ち在官滿十五年以上、十六年未滿にして、退官したる者の恩給年額は、俸給年額の二百四十分の六十とし、十五年以後滿一年每に、二百四十分の一を加へ、滿四十年に至りて止む又軍人恩給法によれば、陸海軍人の恩給は左の六種とす、□一退職恩給、□二免除恩給、□三增加恩給、□四賑恤金、□五給助金、□六扶助料これなり、而して退職恩給、免除恩給、增加恩給、及び寡婦の扶助料は、終身、孤兒の扶助料は、年齡滿廿歳に至る迄、賑恤金、給助金は、一時限り之を給與せらるるもの也、其他法律、省令、省達等にて規定せられたる恩給に關する規則尠からず、其重なるものは、公立學校職員退隱料(二九年三月法一三號)、府縣立師範學校長俸給、並公立學校職員退隱料及遺族扶助料法(二三年一〇月、法九一號)、市町村立小學校教員退隱料、及遺族扶助料法、(二三年一〇月法九〇號)巡査看守退隱料、及遺族扶助料法、(三四年七月法三八號)、宮内省官吏准官吏恩給例、及遺族扶助例(二三年八月宮内省達一六號)等是也。(軍人恩給法、及び官吏恩給法の部參照)
- 英
- Law of Pension
- 独
- Pensions-gesetz
- 仏
- Loi de la pension
恩惠期限
(おんけいきげん)恩惠期限は、之を別ちて法定上の恩惠期限、裁量上の恩惠期限とし、或は此外當事者間に於ても、恩惠期限を定むることを得可し、されど當事者間に於けるものは、一定の原則、若くは慣例あるにあらざるは、茲に説明する限りにあらず、而して此法定恩惠期限とは、民事訴訟法中の不變期間の延長を許す場合、例へば原告、若くは被告の住所より裁判所に至るべき距離に對し、八里を一日を計算して伸長するが如き、又手形に於ける滿期日後二日内に、拒絶證書作成の權を認めたるは、元來不渡手形の拒絶證書を作成するは、其滿期日となすを正當とすべきも、實際の便宜を參酌して、その後の二日を與へたるものなれば、之を恩惠期限と言ひ得べし、裁量恩惠期限とは、裁判官が事情を參酌して、總べての訴訟當事者に對し、訴訟の進行を阻止せざる範圍内に於て爲す猶豫期限なり。(民訴法一六七條、商四八七條等參照)
- 英
- Term of grace
- 独
- Gnaden-frist
- 仏
- Terme de la grâce
穩和調停
(おんわちようてい)穩和調停なる語は、通常國際法に於て使用せらるるものにして、係爭國家の間を、平和の手段を以て調停することを意味す、凡そ國家が自己存立のために國是を立てて、種々なる活動發展を試むるに際し、他と其利害を異にして、國際間の粉議を釀し、圓滿なる解決を得ざる事あるは屢なり、此の場合に於て、近く、日清、日露の戰役に於けるが如く、國家は常に最後の戰鬪手段に因る解決を待つ可き乎、さりながら戰爭は、人間社會の最も悲慘なる現象にして、經濟的關係より見るも、人道上より見るも、之を避くるの得策たるや論を俟たざる所也、されば出來得る限りは、國家間の紛議をして、事の未發に調停し、圓滿なる解決を求むるは、人道の上に於て正義のみならず、又必要なるものとす、國家其ものの存立繁榮の上よりするも、亦緊要のことに屬す、ここに於てか國際法上、或兩國が外交關係に於て紛議を釀したるときは、隣邦は之に相當なる條件と手段を以て、仲裁、又は勸告、若くは周旋中介と同樣の名稱の下に、居中調停を爲すに努む、之を稱して國際間に於ける第三國の穩和調停と謂ふ、日露戰役前、及び終局の際に於ける米國の行動は、一種の穩和調停に外ならず。
- 英
- Amicable settlement of dispute
- 独
- friedlicher Schiedsspruch
- 仏
- Ar-rangement amical de la dispute
卸賣人
(おろしうりにん)或る物品の卸賣を爲す人を卸賣人と總稱す、單に卸賣人と稱するときは、其の爲す所爲が、民法上の行爲たると、或は商行爲たると、又之を營業として爲すと否とは、問ふ所にあらざるなり、從つて其人の商人たると非商人たるとを問はざるは、固よりその所なりと言ふ可し。(阿片法五條)
- 英
- Wholesale merchant
- 独
- grosz-händler
- 仏
- Marchand en gros
卸賣商人
(おろしうりしやうにん)卸賣商人は、通俗に小賣商人に對する稱呼にして、法律語としても亦同樣の意味を有す、然れども如何なる程度の賣卸を爲す者が、卸賣商人なりや、又小賣商人なりや、其嚴正なる標凖は、法律上に於て之を一定する能はず、案ずるに、商人間に於ける慣習と、事情とを參酌して之を定むるの外なし、先づ程度論と假定したる上に於て區別を求むる時は、卸賣人は、同種類の物を販賣する商人に對し、其商品を比較的多數に供給する商人を指し、小賣商人は、之に反する世間普通の顧客を相手として、或る物品を賣卸する商人を指すは、普通の解釋なり、固より商人たる以上は、卸賣商人も小賣商人も、商法なる特別法の支配を受くるは勿論也、(注意)茲に小賣商人と云ひたるは、商法に所謂小商人に非らず、法律上小商人とは、商法中商業登記、商號、商業帳簿に關する規定の支配を除外せらるる者にして、所謂、小賣商人とは、全く別箇の槪念を有するものなりとす。(民一七三條一號商八條)
- 英
- Wholesale dealer
- 独
- grosz-händler
- 仏
- Marchand en gros
オーソリティー
(おうそりてい)譯語の適當に其眞を移すものなきを以て、多くは原語の儘用ひられ、時に或は典據、權威等と譯す、然も其意義も全く一定せりとはいふべからず、或は權力の意味に於て、他を支配し命令する權力、例令ば帝王のそれを臣下に對する帝王のオウソリテイと稱するが如き、或は更に具體的に命令を發し、權力を行ふ一個人、若しくは團體を云ふことあり、然れども今日一般に用ひらるる意義は、一切の意見行動の憑據として承認せられたる權威を謂ふ、例令ば或る問題に關し、或る卓出せる學者の議論が、萬人によりて信賴せらるる時に、其人の見解は即ちオウソりテイを有すと稱せらる、要するに、一世、又は其問題に關係を有する總べての人々に承認せられ、以て其の憑據となり、模範となる所謂權威を稱して、オウソリテイと謂ふなり。
- 英
- Authority
- 独
- Autorität
- 仏
- Autorité
海員
(かいいん)海員とは、普通の意味に於ては、船舶に於ける船長以下一切の乘組員を云ふも、稀には海技免狀を有する者を指して海員と云ふことあり、此意義に於ては船長をも含み、前者の意義に依るときは、水先人も包含するものの如し、されど水先人に就きて、は、水先法として別箇の規定あるのみならず商法の規定に依るも、水先人の報酬に就きては、水先案内料と稱し、海員の報酬と異る取扱を爲したるが故に、水先人は、海員の中より除外せらる可し、故に海員中より船長、及び水先人を除外したる一切の乘組員にして、航海に從事する者を云ふと解するを以て、妥當とす可きに似たり。(海員法第二條)
- 英
- Seaman
- 独
- Seemann
- 仏
- Marin
海員懲戒法
海員懲戒法は、海技免狀を受有せる者の所爲に就き、懲戒を加ふ可き事項(懲戒の種類は、免狀行使の禁止、免狀行使の停止、譴責)及び、所爲の輕重に從ひ、海員審判所之を定むること、海員審判所は、地方海員審判所、及び高等海員審判所とし、前者は船舶司檢所に置き、後者は遞信省に置く事、此審判に附すべき事件の管轄權は、其事件の生じたる船舶の定繫場を管轄する地方海員審判所に屬す、若し同一事件に就き、二個以上の地力海員審判所、管轄權を有するときは、其事件の生じたる地に最も近きものの管轄とする事、被害人若くは證人、正當の理由なくして、受命審判官の呼出に應ぜざるときは、受命審判官は、引致狀を發して之を引致し得る事、審判は之を公開する事、但し安寧秩序、又は風俗を害する虞あるときは、地力海員審判所の决定により、其公開を停止する事、呼出を受けたる被害人、審判期日に出頭せざるときは、缺席判决を爲す事、但し被害人、疾病其他の故障によりて、審判を行ふ事能はざるときは、决定を以て其審判を延期、又は中止するを得る事、審判に關し、海員懲戒法に規定なきものに就きては、刑事訴訟法の規定を凖用する事を規定せられたり。(二九年法六九號)
- 英
- Disciplinary law of Seaman
- 独
- Disciplinargesetz der seeleute
- 仏
- Loi disciplinaire des marins
海員雇入契約書
(かいいんやといいれけいやくしよ)海員雇入契約書とは、海員を雇入れて、船舶の役務を執らしむる際、船長と海員との間に締結する契約書を云ふ者にして、被傭者の之に署名する者なり、凡そ權利義務を定むる證書に、設權的證書、證明的證書の二あり、前者は證書の作成に因りて權利義務を生じ、證書の滅失によりて、權利義務も亦消滅するを常とす、後者は、證書は當事者間の權利義務を定めたるを證するに止まり、其權利義務の發生消滅に關係なきもの也、而して海員雇入契約證は、其何れに屬するやと云ふに、後者即ち證明的證書なり、故に此證書なきも、契約の作成に妨げなきは勿論也、唯實際の例として、契約成立と同時に、雇入契約書を作るに過ぎず、但し普通の證明的證書と異る點なきにしもあらず、特に公認せる手續を要する點、即ちこれなり、主務官廳の爲すこの公認の手續は、要するに、海員保護の行政上の必要より出でたるものにして、此公認の手續を經るも、海員雇入契約書が、設權的證書となるものにあらざるは勿論なり、尚海員雇入、雇止公認の事務は、市役所、町村役場に於て之を行ふものとす。(海員法施行細則參照)
- 英
- Ship's articles
- 独
- Vertragsurkunde der Seemannsanstellung
- 仏
- Contrat écrit d'engager les marins
拐引
(かいいん)僞計、誘惑等の手段を用ひて、人の場所的存在の自由を侵害するを云ふ、換言すれば、或人を他所に連れ去る義なり、衆議院議員選擧法第八八條第一號に「選擧人に暴行強迫を加へ、若しくは之を拐引したる者云々」とあるは、此意味に外ならず。
- 英
- Kidnapping
- 独
- Kinderdiebstahl
- 仏
- Enlèvement
海運
(かいうん)海運は、海上運送の略語にして、我國に於ては、從來回漕の文字を慣用したり、抑も海運と云へば、必ず其の反對に、陸運、即ち陸上運送を聯想するものにして、これ等兩者の總合は、所謂通運若しくは運送と稱するものなり、海運は、歷史上陸運と別箇の發達を爲し、從つて異る點も尠しとせざるが故に、我商法に於ては、別異の規定を設けたり、蓋し兩者の運搬具が異なると、危險の程度が著しく異るとは、その規定を異にせしめたる一因なり、即ち一方は滊車等の運搬具により、陸上に於けるが故に、極めて安全なるにも拘らず、他の一方は船舶に依り、海上航行をなさざる可からざるが故に、其の特殊の危險少からず、是に於てか海上運送に就きては、海運業者を保護する爲に、委付の規定を生じ、海上保險に於ても、亦陸上保險と異る規定を生じ、共同海損、船舶の衝突に關する規定を生ずるに至りたるなり、委付、海上保險、共同海損、衝突の部を見よ。(商五九〇條乃至六四〇條參照)
- 英
- Shipping or carriage by sea
- 独
- Verschiffung
- 仏
- Transportation mari-time
海運政策
海運政策とは、□一航海業に屬する政策、□二造船業に屬する政策、□三海員に關する政策を總稱するものなり、航海業に屬する政策とは、例へば航海業者に或一定の奬勵金を與へ、沿岸航海は内國船にのみ之を許し、外國船の沿岸運送は之を禁止し、商船學校を設けて船員を養成し、航海業の發達を企圖奬勵する如き即ち是なり、造船業に屬する政策とは、造船の事業末だ發達せず、之を民間の企業に放任して顧みることなきときは、自國の海運を盛ならしむることを得ざるが故に、此の如き場合に、國家自ら造船業に從事し、或は民間に委するも、猶未だ幼稚たるを免れざる場合には、造船業者に補助金を與へ、内國製造の船舶には、或る特權を與ふる如き是なり、海員に關する政策とは、海員雇入に關しても、全然船主、船長と、海員との契約に放任せず、國家に於て、場合に應じ、多少の干渉を爲すにあり、即ち海員が其職務の從事中、疾病に罹りたる場合と雖も、契約の報酬を與ふ可く、歸國を望む場合には、無賃を以て之を送還す可しと云ふが如き其一例也。(商五七六條乃至五八九條は、殆ど全部海員に關する政策と見るを得べく、尚航海奬勵法參照)
- 英
- Shipping policy
- 独
- Ver-schiffungpolitik
- 仏
- Politique de la transportation maritime
開港
(かいかう)外國と通商を許されたる港を開港と云ふ、貨物を外國に輸出し、又外國より貨物を輸入するは、必ず開港に由ることを要す、而して我國に於て、開港場として指定せらるるものは、□一橫濱、□二神戸、□三新潟、□四夷、□五大坂、□六長崎、□七凾舘、□八清水、□九武豐、□十四日市、十一下ノ關、十二門司、十三博多、十四唐津、十五口ノ津、十六三角、十七嚴原、十八佐須奈、十九鹿見、二十那覇、廿一濱田、廿二境、廿三宮津、廿四敦賀、廿五七尾、廿六伏木、廿七小樽、廿八釧路、廿九室蘭の諸港なり。(噸税法第一章、開港々則第一條參照)
- 英
- Open port
- 独
- Eröffnung eines Handelshafens
- 仏
- Port commercial
開港港則
開港港則とは、諸開港の境界、及各船舶が之に出入する手續を定めたる勅令なり、即ち港外へ、各船舶が入港するに當りては、其國旗、及び信號符字を揭ぐ可く、定期郵便船は、會社旗を以て信號符字に代用することを得、國旗及信號符字、又は會社旗は、船舶の著港を港長に屆出でたる後に非ざれば、之を引下す可からず、著港屆は、日曜日及大祭日を除くの外、着港後二十四時間内に之を差出す可し、但し著港屆を差出したる後にあらざれば、如何なる船舶たりとも、税關手續の便利を與へざるものとす、船長は其著港に際し、自由交通の許可を受くる迄は、其船舶と他の船舶、或は陸地との間に於ける交通を差止めらるるものなり、港長の端艇は、港の入口近傍に出向き居り、港長は各船舶の入港するに當り、其泊船所を示定す可し、各船舶は止むことを得ざる場合を除く外、特許なくして其泊船所を去る可からず、但し港長に於て必要と認むる時は、船舶をして其泊船所を移さしむることを得、各港に於ては、其一部分を軍艦の碇泊所として取除け置く可し、以上其大要なり。(三一年勅一三一號參照)
- 英
- Regulation of open port
- 独
- Regulierung des freien Handelshafens
- 仏
- Loi du port commercial
同施行細則
開港港則施行細則とは、明治三十一年、遞信省令第一六號を以て發布せられたる規則にして、其内容は、港務局官吏、船舶に臨檢したるときは、檢疫に關する許可證を査閲す可し、許可證を檢閲したるときは、請求により他の交通證を與ふ事るを得、
交通證
何々船ハ健康ト認ムルヲ以テ船長某へ此交通證書ヲ付與ス
年月日
何港務局長□印
船舶著港したるときは、左の屆を港務局に差出す可し
著港屆
一、船ノ種類、一、船名、
一、船主、一、國籍、
一、船籍港名、一、總噸數、
一、登簿噸數、一、發航地名(原發航地、最後發航地)及發航年月日
右何年何月何日何時當港ニ入船致シ候間此段及御屆候也
年月日船長某
何港務局宛
出港せんと欲するときは、左の屆を爲す可し
出港屆
一船名
右何年何月何日何時何地ニ向ケ當港出船可致候間此段及御屆候也
年月日船長某□印
何港務局宛
以上は其主なるものなり。
- 英
- Regulations for the application to the port opened for foreign Ship
- 独
- Ausführuugsregel des Handel-shafensgesetzes
- 仏
- Règles pour l'applica-tion de la loi du port commercial
海港檢疫
(かいかうけんえき)海港檢疫とは傳染病豫防の爲め、海外諸港、及び臺灣より來る船舶に對し、海港檢疫法により、内務大臣の指定する海港に於て行ふ檢疫を云ふ、畢竟、外來の傳染病豫防のために外ならず。
一、橫濱海港檢疫所武藏、橫濱
一、神戸同上攝津、和田岬
一、長崎同上肥前、女神
肥前國口ノ津に長崎海港檢疫所の支所を置く、其職員は、各檢疫所に左の如く之を置く
所長一人
海港檢疫官專任一人奏任
海港檢疫醫官專任一人奏任
海港檢疫官補專任三人判任
海港檢疫醫官補專任二人判任
海港檢疫所藥劑手專任一人判任
海港檢疫所書記專任二人判任
其他所長の選任、各職員の職掌、及支所の職員等に關する事項に就きて規定せられたり
- 英
- Quarantine of sea-port
- 独
- Seehafensquarantäne
- 仏
- Quarantine du port
海港檢疫所官制
海港檢疫所官制とは、明治三二年、勅令第一三七號を以て發布せられたる官制にして、海港檢疫所は、内務大臣の管理に屬し、海港檢疫に關する事務を掌り、其名稱及位置は左の如し、
- 英
- Government organiza-tion of sea-port quarantine station
- 独
- Amtsordnung des Hafensquarantäneortes
- 仏
- Organisation de l'office de quarantine du port
海港檢疫法
海港檢疫法は、明治三十二年、法律第一九號を以て發布せられたる法律にして、海外諸港、及臺灣より指定の檢疫港に來る船舶は、其入港前に於て、海港檢疫法によりて、檢疫を受け、許可證を得たる後にあらざれば、其港に入港し、陸地又は他船と交通し、船客乘組員の上陸、物件の陸揚を爲すことを得ず、其船舶にして、入港後傳染病疫患者を發生したる時は、檢疫官吏の指定に從ひて、更に檢疫を受け、許可證を得るに非ざれば、他港に進航し、陸地、又は他船と交通し、船客、乘組員の上陸、物件の陸揚を爲すことを得ず、船長其他の乘組員及船客は、檢疫官吏の訊問に對して應答し、船長其他の乘組員は、檢疫官吏の請求あるときは、所定の式紙に事實を記入し、其氏名を署したる明告書を差出す可し、船舶及物件の消毒は、檢疫官吏之を施行し、船長、其他の乘組員は、其施行上に關し、之を補助するの義務あり、而して其消毒費は、船主、船長、又は其代理人より徵収す、檢疫所に移轉せしめられたる船客、乘組員は、檢疫官吏の許可を得るに非ざれば、本船其他と交通し、若くは物件を搬出するを得ず、海港檢疫法に背きたる或場合には、二十圓以上二百圓以下の罸金に處せられ、又は五十圓以上五百圓以下の罸金に處せらるるとあり、以上其大要なり。
- 英
- Sea-port quarantine regula-tions
- 独
- Gesetz des Hafenquarantäne-ortes
- 仏
- Loi de la quarantine du port
海港檢疫法施行規則
海港檢疫法施行規則は、明治三十二年、内務省令第三四號を以て發布せられたるものにして、和船、漁船に對しては、下の如き規定を適用せざるも、その他は適用を免るる事を得ず、イ檢疫を施行する海港は、橫濱、神戸、長崎、門司、下ノ關及口ノ津の六港とす、其他の海港に於て、臨時に檢疫を施行するときは、告示を以て之を指定す、ロ檢疫を施行する傳染病は、虎列刺、痘瘡、猩紅熱、「ベスト」及び黃熱の六種とす、其他の傳染病に對し、臨時檢疫を施行するときは、内務大臣告示を以て之を定む、ハ傳染病によりて死亡したる者あるときは、其死體を所定の場所に於て火葬し、其遺骨は、引受人、船長、又は其代理人に引渡すべし、もし引受人なく、船長若くは其代理人あらざるか、又は引受を拒むときは、行路病人及死亡人取扱法に依りて處分す、親族、又は緣故ある者より、死體引渡を願出したる時は、病毒傳播の虞なのしと認むる場合に限り、之を許可する事を得、ニ檢査を爲し、異狀なきものと認めたるときは、許可證を與ふ。
- 英
- Regulations for the application to the Sea-port Quarantine regulation
- 独
- Ausführungsregel des Hafenquarantänegesetzes
- 仏
- Règles pour l'application de la loi de la quarantine du port
海技免狀
(かいぎめんじやう)海技免狀とは、海員試驗規程によりて、試驗を受け合格したる者、及び海軍艦船艇に乘組み、運送、若くは機關運轉に從事し、又は商船學校全科卒業證書を有し、遞信大臣に於て、海員試驗規程に合格すと認めたる者にして、海員名簿に登錄を受けたる者に、授與するものを云ふ。海技免狀の種類は、□一甲種船長、□二甲種一等運轉士、□三甲種二等運轉士、□四乙種船長、□五乙種一等運轉士、□六乙種二等運轉士、□七丙種船長、□八丙種運轉士、□九機關長、□十一等機關士、十一二等機關士、十二三等機關士の十二種に從ひて、各其旨を異にす、海技免狀の書式左の如し。
花紋
割印
第何號
道府縣華士族平民(外國人は其國籍)
氏名
出生年月日
紋章明治何年何月何日登錄
「免狀種類」免狀
明治二十九年法律第六十八號船舶職員法ニ依リ之ヲ授與ス
明治年月日
遞信大臣爵氏名印
- 英
- Marine art permit
- 独
- Marineerlaubnisschein
- 仏
- Permis del'art maritime
海技免狀取扱規則
海技免狀取扱規程は、海技免狀の授與、海技免狀の變更、書換、海技免狀の抹消登錄、登錢の訂正、海技免狀行使の停止等を規定したる省令也。(三二年遞信省令四七號參照)
- 英
- Rule of treatment of marine art permit
- 独
- Behandlungsregel des Marineerlaubnisscheines
- 仏
- Règle de traitement du permis de Part mari-time
戒具
(かいぐ)囚人、又は刑事被告人の逃走、暴行等を警戒する爲めに用ふる器具を云ふ、監獄則に、囚人及刑事被告人を裁判所、又は他監に押送するときは、男と女とを分ち、時宜により、戒具を用ふることを得、但し懲治人には戒具を用ひず云々、即ち囚人、刑事被告人を他監に押送する場合に用ふる戒飾の器具に外ならず。(監獄則一六條)
- 英
- Fetters
- 独
- Fessel
- 仏
- Entraves
海軍刑法
(かいぐんけいはう)海軍刑法は、所謂特別法の一種にして、海軍々人、軍屬の職務に關する犯罪、及び特別の場合に於ける常人の犯罪に、其の刑罪を科することを定めたるものにして、茲に軍人と稱するは、將官、上長官士官、同相當官、下士卒を云ひ、軍屬とは、海軍出仕の文官、其他海軍附屬の諸生徒を云ふ。(四一年四月法四八號海軍刑法參照)
海軍公債證書條例
(かいぐんとうさいしやうしよでうれい)明治一九年、勅令第四七號を以て發布せられたる法律にして、其内容は、海軍公債證者は、海軍々備の費途に充▲る爲、一千七百萬圓を限り、三個年間に漸次之を發行すること、其利子は、一個年百分の五となす事、元金は、證書發行の年より五個年据置き、其翌年より向三十個年間に、抽籖を以て償還すること、公債書は、無記名利札付にして、千圓、五百圓、百圓の三種なること、但し應募者の望みにより、記名とするを得ること、引受申込高、每期需要の高に超過するとき▲、其申込額の高きものを取ること、利子の支拂期は、每年五月、十一月なること、公債證書抽籖の時は、大藏省官吏三名以上、會計檢査院官吏二名以上、及び日本銀行役員二名以上立會の上執行す、但し額面十萬圓以上を有する者は、抽籖の席に臨むことを得ること、以上の外は凡て明治十九年、勅令第六六號整理公債條例に據ること是なり。
- 英
- Regulations of naval bond
- 独
- Regulierung des Marinestaats-schuldscheines
- 仏
- Règles du bon mari-time
海軍造船〓條例
(かいぐんざうせんしやうでうれい)明治三〇年、勅令第三二〇號を以て公布せるものにして、其内容は、各軍港に海軍造船〓を置くこと、造船〓は、鎭守府に屬し、船艦の製造、修理、艤裝、其他造船事業に關する事を掌ること、海軍造船〓に〓長を置き、鎭守府司令長官に隷屬し、〓務を總理せしむること、〓内に造船科、造機科、會計課及材料庫を置くこと、而して造船科、造機科には、各科長、主幹を置き、會計課には課長を置き、材料庫には主管を置くこと、尚軍醫長を置き、〓長の命を承け、醫務、衛生に關することを掌らしむること等其大要なり。
- 英
- Regulation of naval arsenal
- 独
- Regulierung des Marine-schiffoauplatzes
- 仏
- Régles de l'arsénal maritime
海軍造兵材料資金
(かいぐんざうへいざいれうしきん、ざうせんざいれうしきんくわいけいきそく)明活三三年勅令第五五號を以て、公布せられたる者にして、造兵材料資金、及び造船材料資金は、貯蓄材料賣拂代金を以て歳入とし、材料購入代、製作費、改製費、修理費並に其附屬諸費、及び損失金を以て歳出とす可きもの也、造兵材料資金及造船材料資金の歳出は、實際の歳入額、及び資金に屬する現金の持越高をを以て支辨す可し、歳入歳出豫の算、決算収入支出の取扱は、總べて作業、及鐵道會計規則の例に依る、貯畜材料の原價は、購入代價、製作費、改製費、修理費並に其附屬諸費を以て計算す可し、但市價の低落、又は毀損等により、其實價減少したる時は、每年度の終に、當時の市價に依りて其價額を改定す可し貯畜材料を使用する時は、原價に損減步合を加へて賣拂ふ可し、此規則に規定せざるものは、會計規則の各條項を適用す、以上其主なるもの也。
造船材料資金會計規則
- 英
- Rules of accounts of the fund of the material of naval arsenal
- 独
- Rechnungsregel des Fonds des Materials des Marinearsenales
- 仏
- Règles du compte du fonds des matières de l'arsénal maritime
海軍造兵生徒條例
(かいぐんざうへいせいとでうれい)海軍に海軍造兵生徒を置き、東京高等工業學校に於て、指定の學科を修めしむ、海軍造兵生徒は、東京高等工業學校生徒にして、海軍出身を志願する者に就き、身體檢査を爲し、之に合格したる者の中より採用す、下の者は、海軍造兵生たるを得ず、□一徵兵令第二八條に當る者、□二禁錮以上の刑に處せられたる者、若くは賭博犯の處分を受けたる者、□三破産若くは家資分散の宣告を受け、復權せざる者、又は身代限りの處分を受け、債務の辨償を終へざる者、海軍造兵生徒は、自己の便宜を以て之を辭する事を得ず、海軍造兵生徒にして、左の諸項の一に該るときは、生徒を免ず、□一品行不良、又は惰怠なる者、□二學業進步せずして、卒業の目途なき者、□三傷痍を受け、又は疾病に罹り、前途職務に堪へ難しと認むる者、海軍造兵生徒にして、高等工業學校を卒業したる者は、海軍技手に任用することを得、以上の者が海軍技手に任ぜられたるときは、十年以上海軍の事務に服する義務あり、此の事に就きて規定したるものが、海軍造兵生徒條例なり。(三二年勅二一四號)
- 英
- Regulations of the student of naval technic
- 独
- Regulier-ung der Marine Technik Schüler
- 仏
- Règles des élèves de l'art maritime
海軍造兵生徒規則
海軍造兵生徒規則は、明治三二年、海軍省令第十三號を以て發布せられたる規則にして、その内容は、海軍造兵志願者は、東京高等工業學校長を經由して、願書、並に戸籍謄本を添へ、海軍艦政本部長に出願す可し、海軍造兵生徒を命ずるは、海軍艦政本部長、東京高等工業學校長と協議して之を定む、海軍造兵生徒を命ぜられたる者は、東京工業學校長を經由して、誓約書及身許引受書を證海軍艦政本部長に差出す可し、海軍造兵徒にして、海軍造兵生徒條例第五條の諸項に(海軍造兵生徒條例の部に明也)該當するものあるときは、東京高等工業學校長は、之を海軍艦政本部長に通告し、該部長は、生徒たることを免ず、以上其大要なり。
- 英
- Rules of the studentof naval technics
- 独
- Regel der Marine Technik Schüler
- 仏
- Loi des élèves del'art maritime
海軍葬送令
(かいぐんさうさうれい)海軍現役軍人及召集中なる海軍豫備役、後備役軍人の葬喪は、海軍葬送令の定むる所により之を行ふものにして、もし死亡者處刑中に係るときは、此限にあらず、水葬は、陸葬する能はざる事由ある場合に限り之を行ふ、葬喪の禮を別ちて下の五種とす、□一半旗、□二分時砲、分時銃、□三儀仗隊差遣、□四弔砲、弔▲、□五表喪、海軍大臣の葬喪は、元帥の稱號を有する海軍大將に凖ず、特殊の場合に於て行ふ可き葬喪の禮は、海軍大臣之を定む、本令の規定により葬喪を行ふは、同一人に對し一囘とす。(三三年勅一七號海軍葬送令)
- 英
- Ordinance of naval funeral
- 独
- Marineleichengebräucheverordnung
- 仏
- Ordonnance des funérailles maritimes
海軍葬送細則
海軍葬送細則は、明治三三年、海軍省令第一號を以て發布せられたる規則にして、その内容は、葬喪管理者は、葬儀を執行する日時、及び其場所等を所在海軍首席指揮官、及ひ關係各部に通報す可し、艦船に於て行ふ可き葬喪の禮は、所在海軍首席指揮官の指圖に依り、若くは當該指揮官の艦に傚ひ、之を行ふ可し、儀仗隊を出すには、喪家の所在地が、儀仗隊を出す可き艦船團體等の所在地より、三里以内なる場合に限る、但し東京、橫濱及其附近に於ては、此限にあらずとし、儀仗隊中銃隊は、喪家の門外に列整し、柩の喪家を出るとき、又は艦船より陸上に葬送する際に、其行列の過ぐるとき、柩に對して敬禮し、然る後側面縱隊して行進するを例とす、葬祭場に着すれば、其地形に應じ、柩に面し、縱隊、又は橫隊を作り、祭主の拜禮に次ぎて敬禮す可し、將官相當官の葬儀には、士官以上の者、上長官、士官の葬儀には、准士官以下の者、一名を以て先導とす、葬儀に關し、葬喪令、もしくは本則に規定なき事項は、一般の習慣に從ふ可し、以上其一班なり。
- 英
- Regulation concerning naval funeral
- 独
- Marineleichengebräuche-regulirung
- 仏
- Règles en matière des funérailles maritimes
海軍志願兵條例
(かいぐんしくわんへいでうれい)海軍志願兵條例とは、海軍兵役に服せん事を志願し、認可を得て、海軍志願兵籍に編入せられたる者に關して、定められし法令を云ふ、海軍志願兵として徵募す可き卒の種別は下の如し、水兵、信號兵、軍樂生、木工、機關兵、鍛冶、看護、主厨之なり、志願兵の徵募は、其年に於て、下の各號に適合する者に就きて之を行ふ、□一水兵、機關兵は、十七年以上二十一年未滿、□二木工、鍛冶、看護、主厨は、十七年以上二十六年末滿、□三軍樂生は、十六年以上十九年未滿、志願兵の服役は、海軍下士卒服役條例による、志願兵現役中は、家族ある者に限り、扶助金として一箇月八十五錢を其家族に給す、但し下の事項の一に當るときは、其間支給を停止す、□一恣に艦船、及び海兵團、其他各部を離れ、若くは役務を離れ、又は允許を得て他方に赴き、故なく歸着の期限に後れ、二箇月を過ぎたるときは、其翌月より、自首、又は捕縛の前月まで、□二禁錮の刑に處せられたる時は、其翌月より刑期滿限の前月迄、以上は其大要也。(三二年勅七一號參照)
- 英
- Regulations of navalvolunteer
- 独
- Regulierung von der Marine Freiwilligen
- 仏
- Règles des volontaires maritimes
海軍志願兵徵募細則
海軍志願兵徵募細則は、明治三一年、海軍省令第三號を以て、發布せられたる規則にして、その内容は、海軍志願兵は、須要に應じ、各鎭守府をして、本則により徵募せしむ、但し當分の中橫須賀鎭守府に於て徵募す、徵兵令により、補充兵及國民兵にある者と雖も、猶海軍志願兵たるを得、志願人身幹下の定尺に達し、身體完全強健精神異狀なき者を、身體檢査合格とす、□一水兵、機關兵、看護志願者に在りては、身長五尺二寸、□二軍樂生志願者に在りては、齒列齊正にして身長五尺、□三木工、鍛冶、主厨志願者に在りては、身長五尺、志願人の身體檢査合格者を甲乙の二種に別ち、先づ甲種合格者を採用し、次に乙種合格者に及ぼすものとす、特に學藝優等なる者あるときは、前項の順序によらざることを得、木工、鍛冶志願者は、一ケ年以上該職業に服せし者に限り採用す、其證明書は、市町村長より、巡の兵事官に出す可し、軍樂生、看護志願者は、身體檢査に合格すと雖も、讀書、作文、算術の試驗に合格せざれば採用せず、讀書は、平易なる漢字交り文、作文は通俗文、算術は四則を解し得るを以て程度とす、以上は其大要なり。(海軍志願兵條例參照)
- 英
- Regulations for the collection of naval volunteer
- 独
- Zusam-menrufregel der Freiwilligen
- 仏
- Règles de convoquer les volontaires maritimes
海軍省
(かいぐんしよう)海軍省の意義は一定せず、海軍大臣を指して云ふことあり、例へば海軍省の命ずる所により云々、海軍省の許可を受けて云々と言ふは、其用例也、海軍大臣、及び其屬僚が、其職務を行ふ場所を指して、海軍省と云ふことあり、例へば海軍省に於て、試驗を行ふ云々と云ふが如き其の用例也、又海軍大臣が、處理する行政事務の全體を指して云ふこともあり。(海軍省官制參照)
- 英
- The Naval Department
- 独
- Marineministerium
- 仏
- Ministère de la marine
海軍省官制
海軍省官制は、海軍省の職務、組織、權限を定めたる者にして、その内容は、海軍大臣は、海軍々政を管理し、海軍々人、軍屬を統轄し、所轄諸部を監督す、海軍省に副官を置く、副官は海軍大臣の命を享け、總務局の事務を掌る、海軍省に編修を置く、編修は、上官の命を享け、翻譯、編纂の事務に服す、海軍省に軍務局、人事局、醫務局、經理局、及び司法局を置く、各局に局長を置き、局長は、海軍大臣の命を受け、各其主務を管理す、司法局には、局員を置き、其他の各局には、課長を置き、課長は、局長の命を受け、其分掌の事務を掌る、海軍省に技手及び錄事を置き、各課に分屬し、上官の命を受け、事務に服せしむ、司法局の職員は、海軍高等軍法會議の事務に服す。(三〇年勅五九號海軍省官制)
- 英
- Government organization of the naval Department
- 独
- Behördeord-nung des Marineministeriums
- 仏
- Or-ganisation administrative du Ministère de la marine
海軍將校分限令
(かいぐんしやうかうぶんげんれい)海軍將校、同相當官の位置、身分、禮遇の保障を規定したる勅令にして、其内容は、將校は終身其官を保有し、其制服を著し、其官に對する禮遇を享く、之を將校の分限とす、將校は下に揭ぐる事項の一に因るに非ざれば、其分限を失ふことなし、□一本人の請願を許容し、其官を免ぜられたるとき、□二日本人たるの分限を失ひたるとき、□三重罪の刑に處せられたるとき、□四剝官の宣告を受けたるとき、□五禁錮に處せられ其官を失ひたるとき、□六武官たるの本分に背き、勅裁に依り、免官となりたるとき是なり、將校の位置は、イ現役、ロ豫備、ハ後備、ニ退役に別つ、豫備後備者は、召集に應ず可きものとす、本令は、將校相當官に適用す、以上其大要なり。(二四年敕七九號、參照)
- 英
- Ordinance of the limit of naval officers
- 独
- Verordnung von dem Stande der Marine-officiere
- 仏
- Ordonnance de la limitation des officiers maritimes
海軍省令
(かいぐんしやうれい)海軍大臣が、其職權、もしくは特別の委任により、其主管事務に就きて發する行政命令を云ふ、凡そ廣義の法律は、之を狹義の法律と、命令とに別つ、命令は、更に之を細別して、勅令と其以外の命令とに別つ、其以外の命令は、其發する者の資格により、閣令、省令、府縣令、警視廳令とに別つを常とす、閣令とは、内閣總理大臣の發する命令にして、府縣令、警視廳令とは、府縣知事、警視總監の發する命令、省令とは、各省大臣の發する命令にして、或は直接に自己の職權に本づきて發することあり、或は法律、又は命令の委任に基づきて發することあり、何れも其效力に至りては、則ち一なり、海軍省令とは、此の省令の一種にして、海軍大臣の發する命令を指すに外ならず。(各省官制通則及海軍省官制參照)
- 英
- Ordinance of the Naval Department
- 独
- Verordnung des Marine-ministeriums
- 仏
- Ordonnance du Ministère de la marine
海軍水路少技士候補生採用試驗規則
(かいぐんすゐろせうぎしこうほせいさいようしけんきそく)海軍高等武官補充條例により、海軍水路少技士候補生たらんとする者は、願書、履歷書及戸籍謄本を添へ、試驗期日十日前までに、海軍省人事局に差出す可し、學術試驗の科目は以下の如し、□一測量術、(陸地、海面)□二製圖法、□三數學及實算、□四用器画及自在画、□五水路記事、□六星學及地文學、□七外國語學、(和譯)の七科目也、試驗合格を定むる方法は、候補生採用試驗委員の議定する所に依るものにて、又試驗合格の有效期限は、一箇年間とす、不正の方法によりて、試驗を受けんと企たる者、又は試驗に關する規程に違背したる者は、其期の試驗を受くることを得ざるものにして、試驗合格の後、是等の事實を發見したるときは、其合格は無效とす、試驗當日、開始の時刻に出席せざる者は、其期の試驗を受くることを得ず、以上の細則を規定したるものが、海軍水路少技士候補採用試驗規則なり。(三二年海軍省令三號參照)
- 英
- Ex-amination rule for the adoption of the third naval constructor cadet of naval hydrographical bureau
- 独
- Examenregel für die Adoption des Dritten Marine-künstlers des Marine Hydrographie Bu-reaus
- 仏
- Règles des examens pour adopter les cadets du bureau hydrographique maritime
海軍生徒學生手當金規則
(かいぐんせいとがくせいてあてきんきそく)明治三〇年、勅令第三九九號を以て發布せられたる規則にして、其内容は、海軍將校生徒及機關生徒には、一日十八錢の手當金を給し、被服、其他日用物品の費用に充てしむ、但し實地練習の爲、乘艦中は、内國に於ては一日三十錢、外國に於ては一日五十錢の手當金を給す、海軍學生には、一日四十錢、造兵生徒には、月額十圓の手當金を給し、授業料、宿料、賄料其他日用物品の費用に充てしむ、海軍將校生徒、機關生徒にして、傷痍を受け、又は疾病に罹りて病院に入る者、或は在艦在校せざる者には、其間一日十八錢の手當金を停止し、一日二錢の手當金を給す、但し外國航海中なるときは、猶手當金の全部、即ち十八錢を給す、將校生徒、機關生徒にして、天災其他避く可からざる事故に因り、被服其他日用物品を亡失したる時、及び學生、又は造兵生徒にして、同一の場合に於て、被服を亡失したるときは、將校生徒若くは機關生徒には、七十五圓、學生には三十六圓、造兵生徒には三十間以内に於て、實費に相當する金額を給することを得、學生、生徒を免じたるときは、六十日以内に於て既に給與したる手當金、及び被服費の全額を辨償せしむ、以上其大要なり。
- 英
- Rules of re-muneration of the naval student
- 独
- Ver-geltungsregel der marinestudenten
- 仏
- Règles de la rémunération des élèves maritimes
海軍召集條例
(かいぐんせうしうでうれい)豫備、後備に在る海軍軍人の召集に關する事を規定したる勅令なり、其内容を揭ぐれば、□一准士官以上の召集は、海軍大臣之を行ひ、下士卒の召集は、鎭守府司令長官之を行ふ、戒嚴を宣告するを得るの權ある諸官、時機切迫する際、命を請ふ暇なきときは、獨斷にて豫備後備の下士卒の召集を行ふ事を得、□二召集は、充員召集、演習召集及簡閲點呼の三種とす、充員召集、演習召集には、召集令狀を發し簡閲點呼には、點呼令狀を發す、□三豫備、後備軍人は、その本籍地に於て召集に應ずるを例とす、但し本邦に於ては、寄留地に於て、外國在留の者に在りては、其所在地に於て、海員たる者に在りては、本人の屬する船舶の船籍港、若くは通常寄航の一港に於て、召集に應ずることを得、本籍地以外に於て、召集に應ぜんとする者は、市町村長を經て、准士官以上に在りては海軍大臣に、下士卒に在りては、其兵籍を管する海兵團長に屆出づべし、但し外國在留の者は、本文の手續を爲すと同時に、在留國の領事官、貿易事務官を經て、准士官以上に在りては海軍大臣に、下士卒に在りては、在籍鎭守府の兵事官に屆出づべし、以上其一班なり。(三一勅年二四七號)
- 英
- Regulation of navalmobilisation
- 独
- Regulierung von desMarinezusammenrufes
- 仏
- Règles de lamobilisation maritime
海軍大學校
(かいぐんだいがくかう)海軍將校、機關官に、高等の學術を教授する所にして、官立なり、海軍軍人に高等の學術を教授する所は、之を措きては他にあらず。(海軍大學校條例の部參照)
- 英
- Naval college
- 独
- Marine-akademie
- 仏
- Collège maritime
海軍大學校條例
海軍大學校條例とは、其組織、目的、學生に關して、規定せられたる勅令にして、其内容は、海軍大學校は、海軍將校機關官に高等の學術を教授する所とす、あ其職員は、□一校長、□二副官、□三教頭、□四教官、□五主計長、い其學生を五種に區別す、□一將校科甲種學生、□二將校科乙種學生、□三機關科長期學生、□四機關科短期學生、□五選科學生是なり、將校科甲種學生は、樞要の職員、若くは高級指揮官の素養を與ふる爲、高等の兵學、及び其他の學術を教授す、將校科乙種學生には、砲術、水雷術、もしくは航海術の學理を教授す、機關科長期及短期學生には、機關に關する高等の學術を教授す、選科學生には、各自の選擇する學術を修めしむ、う入學試驗の規程は、海軍大臣の認可を經て、海軍教育本部長之を定む、校長は、海軍教育本部長の認可を受け、學生を實地硏究の爲め、海軍砲術練習所、海軍水雷術練習所、海軍造兵廠、海軍造船廠等に派遣して修學せしむることを得、派遣せられたる學生は、派遣中硏究す可き事項に關し、當該廳長の指揮を受く可し、海軍大臣は、或場合に退學を命ずることを得、以上其大要なり。(三〇年敕三二六號)
- 英
- Regulation of Naval College
- 独
- Regel der Marineakademie
- 仏
- Règles du collège maritime
海軍治罪法
(かいぐんぢざいはふ)海軍刑法を適用する場合に必要なる、訴訟に關する規定なり、普通の刑事訴訟法と異る重要の點は、其實體法が、一方は普通刑法にして、一方は海軍刑法たるの點にあり、從つて皆軍法會議を以て、犯罪の有無、輕重を决す。(二二年法五號參照)
- 英
- Code of naval criminalprocedure
- 独
- Marinestrafprozeszordnung
- 仏
- Procédure criminelle maritime
海軍治罪法執行規則
海軍治罪法執行規則は、檢察、審問及判决、再議、再審及特赦、宣告執行、罸金、科料、沒収物、臟物、證據物の處分等を定めたる省令なり、其一班を擧ぐれば、海軍檢察官、犯罪の捜査を爲したるときは、捜査始末書を作り、事證と爲す可し、長官、審問、若くは審判判决の命令を下すときは、命令書を訴訟書類と共に、主理に下付す可し、艦隊に在りては、長官其部下の將校、若くは相當官に主理を命じ、以て前項の手續を爲す可し、裁判管轄にあらざるもの、及び命令を下す可からざるものは、其書類を返還す可く、收禁を受けたる被告人に對し、無罪免訴、若くは罸金、科料の宣告ありたるときは、主理直に之を釋放す可し、禁錮、拘留等の言渡ありたるときは、主理被告人を監獄に交付す可し。(二四年海軍省令一八三號參照)
- 英
- Regulation for the application to the code of naval criminal procedure
- 独
- Ansführungsregel der Marinestrafprozeszordnung
- 仏
- Règles pour l'application de la procédure crimi-nelle maritime
海軍懲罰令
(かいぐんちよばつれい)海軍軍人の故意、疎虞、懈怠等の所爲にして、刑法に該らざる者、及び素行修らず、海軍軍人の體面を汚す者を懲戒するの罰典なり、但し他の法律規則によりて論ず可き者は、其法律規則に從ふ、罰目は下の如し、□一謹愼、□二禁足、謹愼は、准士官以上に科する罰とし、禁足は、下士以下に科する罰とす、犯行二個以上俱に發するときは、各其罰を併科す、但し一所爲にして二個以上の犯行に觸るるときは、其一を科す、本令により處分したる軍屬の犯行は、官吏服務規律に觸るるも、懲戒處分を爲すことなし、甲所に於て本令を犯し、未だ處分を受けずして乙所に轉じたる者は、甲所其罪を擬定し、乙所之を處罰す、本令を犯したる者、未だ處分を受けずして、現役を離れ、若くは非職となり、又は海軍の名籍を除かれたるときは、其罰を科せず、練習所、病院、監獄に於ける犯行者は、夫れ〳〵艦團校内に於ける犯行と同じく處分す、而して犯行の種類は六十五あり。(二二年勅一三四號參照)
- 英
- Ordinance of naval punish-ment
- 独
- Ordnung der Marinedisciplinar-strafe
- 仏
- Ordonnance de la punition maritime
海軍通譯特別任用令
(かいぐんつうやくくわんとくべつにんようれい)海軍通譯官は、文官任用令の規定によらず、文官高等試驗委員の詮衡を經て、任用し得ることを定めたるものなり。(三〇年勅三六九號同令參照)
- 英
- Ordinance of special appointment of naval interpreter
- 独
- besondere Anstellungsordnung der marineübersetzer
- 仏
- Ordonnance de ai noménation spéciale des interprêtes mari-times
海軍定期職工條例に依り海軍諸工採用就業及滿期賜金給與規程
(かいぐんていきしよくこうでうれいにより、かいぐんしよこうさいようしゆげふ、およびまんきしきんきふよきてい)明治二九年、海軍省令第四號を以て發布せられたる規則にして、海軍定期職工は、海軍工廠に就事する職工中、其工廠に於ける定期職工を志願する者より選拔し、其工廠に必要なる人員を採用するものなり、定期職工に採用す可き職工は、就業後滿一ケ年以上を經、身體強健にして、將來工務熟達の見込ある者たるべきことを要す、定期職工を志願する者は、每年六月一日、及び十二月一日の二回とし、志願者は、每年四月三十日、及び十月三十一日迄に願書を差出す可し、定期職工に採用するときは、每期辭令書を下付す、定期職工次期に繼續せんとする時は、現就業年期滿了の前月末日迄に、願書を差出す可し、但し身體強健ならざる者、及び將來工業熟達の見込なき者は、次期に繼續するを許さず、定期職工、官命により、甲海軍工廠より乙海軍工廠に轉じたるときは、乙海軍工廠の定期職工として、從來の資格を繼續するものなり、以上其大要とす。(海軍職工條例參照)
- 英
- Regulation of the fixed naval workmen
- 独
- Regulierung der regelmässigen marinehandarbeiter
- 仏
- Règles des ouvrier maritime fixes
海軍内國旅費規則
(かいぐんないこくりよひきそく)海軍軍人軍屬、公務により、本邦内を旅行するときに、支給する旅費を定めたる規則なり。(三一年海軍省令二號參照)
- 英
- Rules of naval home travel expence
- 独
- Regel vom Marine-binnenlandreisegelde
- 仏
- Règles des dépens de voyage dedans l'état
海軍筆記任用令
(かいぐんひつきにんようれい)明治二九年、敕令第一四六號を以て公布せられたるものにして、海軍筆記は、身体檢査、及び學術試驗を行ひ、合格したる者に就き、鎭守府司令官之を任用し、其初任は三等筆記とす、身体檢査及學術試驗に闢する規定は、海軍大臣別に之を定む、下に揭ぐる一に該る者は、海軍筆記に任用するを得ず、□一年齡二十才未滿三十歳以上の者、□二禁錮以上の刑に處せられたる者、□三破産又は家資分散の宣告を受け、復權を得ざる者、又は身代限りの處分を受け、債務の辨濟を終へざる者、□四品行不良の者是なり、豫備役にある海軍下士、豫備、後備に在る海軍卒は、本令により海軍筆記に任用するを得、前項により任用せられたる者の服役期限に關しては、更に海軍下士卒服役條例を適用するものなり。
海軍筆記任用試驗願(用紙美濃紙二ツ折一通)
氏名
何年何月何日生
私儀海軍筆記任用試驗相受度履歷書竝ニ戸籍謄本相添へ此段奉願候也
本籍
住所
年月日氏名□印
何鎭守府御中
(二九年海軍省令一〇號其規則參照)
- 英
- Ordinance of appoint-ment of naval clerk
- 独
- Verordnung von der Anstellung des Marineschreibers
- 仏
- Ordonnance de la nomination des employés maritimes
海軍筆記任用試驗規則
海軍筆記任用試驗規則は、海軍筆記任用令に基き、其の學術及體格試驗に關して規定せられたる海軍省令にして、其内容は、あ海軍筆記を志願する者は、願書に履歷書、及び戸籍謄本を添へ、鎭守府に差出す可し、い試驗は、分ちて身體檢査、及學術試驗の二とす、學術試驗は、身體檢査に合格したる者に非ざれば行はず、學術試驗の科目は左の如し、□一讀書(漢文、歷史類、諸規則類)□二作文(通俗文、記事文)□三算術(四則但し筆算、珠算共)□四書法(楷行草)試驗願の書式左の如し。
- 英
- Examination rule for the appointment of naval clerk
- 独
- Examenregel für die Anstellung des Marineschreibers
- 仏
- Règles des examens pour adopter les employés maritimes
海軍被服條例
(かいぐんひふくでうれい)海軍士官、淮士官及士官候補生に、被服の實額を以て、給與する旨を規定したる勅令にして、准士官以上、初任及候補生採用の隊は、武裝手當として、下の金額を給し、兵曹長及機關兵曹長より、各其上官に進級したる者には、士官初任と同額を給す、但し准士官より、士官に任ぜられたるときは、武裝手當を給せず、其金額は、□一士官以上八十圓、□二准士官四十圓、□三候補生三十圓、准士官以上及候補生にして艦船の破壞、又は沈沒に因り被服品物を亡失したる時は、其狀况に應じ、服裝手當として、下の金額以内を給す、□一將官二百四十圓、□二上長官二百圓、□三士官百六十圓、□四准士官八十圓、□五候補生六十圓、次に下士卒には、被服物品修補科として、一ケ月十錢を給す、但し入院、在監、又は逃亡中の者には、之を給與せず、下士卒、現役を離れ、若くは歸休を命ぜられたるときは、數額を定め、其被服物品を給與す、其定額は、海軍大臣之を定む、豫備後備下士卒歸休兵にして、召集を解きたる場合に於て、被服物品の給與を必要とするときは、適宜之を給與することを得、下士卒死亡したる場合に於て、被服物品の給與を必要とするときは、適宜之を給與することを得、以上其大要なり。(三四年勅四號其條例)
- 英
- Regulation of naval garment
- 独
- Regulierung von der Marinebekleidung
- 仏
- Règles des habits maritimes
海軍病院條例
(かいぐんびようゐんでうれい)明治三〇年、敕令第三二一號を以て公布せられたる規則にして、い軍港に海軍病院を置く、海軍病院は、其所在の地名を冠して、之を稱呼す、海軍病院は、鎭守府に屬し、治療並に、治療品の凖備、供給、被服、糧食、藥品等の衞生試驗、看護の教育を掌る所とす、ろ海軍病院に下の職員を置く、□一院長、□二副長、尚必要に應じ、軍醫官、藥劑官を置く、は療品庫、試驗所及看護術練習所を設く、療品庫に於ては、海軍病院に治療品の凖備供給に關する事を掌る、試驗所に於ては、被服、糧食、藥品の衞生試驗に關する事を掌る、看護術練習所に於ては、高等看護術の教授を掌る、以上は其大要なり。
- 英
- Regulation of naval hos-pital
- 独
- Regulierung von dem Marine-hospital
- 仏
- Règles des hôpitals maritimes
海軍服制
(かいぐんふくせい)明治二九年、敕令第三三四號を以て公布せられ、海軍々人の服制を定めたるものなり。
- 英
- Naval uniform
- 独
- Marine-uniform
- 仏
- Uniformes maritimes
海軍兵備品會計規則
(かいぐんへいびひんくわいけいきそく)下に例記せる海軍兵備品に關する、収入、支出等其の會計に關する詳細を規定せるものにして、海軍兵備品とは、左の諸品を云ふ、□一兵器、彈藥、水雷及其附屬品、□二秘密圖書、測器海國、□三艦營需品、□四被服、糧食、□五治療品是なり、海軍兵備品の會計は、本則に明文あるものを除くの外、物品會計規則に依る、鎭守府にある兵器、彈藥、水雷の保管出納は、武庫主管をして、管理せしむ、物品會計規則第一五條、第一七條により、會計檢査院に送附する計算書中、兵器、彈藥、水雷及其附屬品、並に秘密圖、測量海圖は、價格のみを明記し、其數量は檢閲官の證明書を以て保證す可し。(二三年勅六四號及物品會計規則參照)
- 英
- Fiscal rule of the naval ammunition
- 独
- Fiskalregel der Marine-munition
- 仏
- Règles fiscales des munitions maritimes
海軍禮砲條例
(かいぐんれいはうでうれい)軍艦、砲臺等より行ふ可き禮砲の規則を定めたるものにして、禮砲は、之を別ちて皇禮砲、帝國文武官に對する禮砲、外國及び其文武官に對する禮砲及答砲の四種とす、之を行ふは、禮砲を爲す可き時に遭遇したる後、二十四時間内に行ふ可きものにして、若し此時期に行はざるときは、之を行ふと同時に、其禮砲を受く可き相手方に對し、其之を行はざりし理由、即ち事情を説明せざる可らざるもの也、然れども、日出前及日沒後は、之を行はざるを例とす、日沒後は、次日之を行ふを普通とするも、特別の場合、即ち旗章を見別け得る限り、砲臺の任意により、日出前、又は日沒後と雖も、之を行ふべきもの也、皇禮砲は、天皇旗、皇后旗、皇太子旗及皇族旗に對して行ふ可きものにして、其數を二十二發とす、帝國文武官に對する禮砲數は、多きは十九發にして、少きは七發也、外國及其文武官に對する禮砲は、其數二十一發なるを常とす、答砲は、先方の砲數に應ずるを常とするも、五發なることもあり得べし。(三〇年勅六號參照)
- 英
- Regulation of naval salute
- 独
- Marinesalutschuszregulierung
- 仏
- Règles des salves maritimes
海軍糧食條例
(かいぐんりようしよくでうれい)海軍所屬の艦船、營舍、學校、病院及監獄に在る軍人、軍屬に給與する糧食に就きて規定したる勅令なり、其最上限は、麵包一貫匁、獸魚肉類一貫匁、乾物、野菜類一貫二百匁、茶、焙麥類二十匁、砂糖百六十匁、醬油、酢、油類五合、鹽四十匁、凝脂三十匁を以て一週間に充つるを常とし、非常の勞働を爲し、若しくは衞生上必要とするときは、更に每一日に一人に付き、火酒六勺以内を給與することを得、又前記最上限の外に、火酒四合二勺を加ふる事を得るものとす、傷痍疾病に罹る者には、其症狀に應じ、糧食の幾分を滋養食品に換へて、給與することを得可し、其他現金を給與して、糧食を自辨せしむる場合は、□一艦爨營内に於て、准士官以上文官及候補生各別に炊爨するとき、□二生徒に外泊を許したるとき、□三生徒、下士卒、及艦營傭人に休暇を與へ、糧食を自辨せしむるの必要ある時、□四現品を以て、糧食を給與するを得ざるとき等なりとす。(二三年勅一四號本條例參照)
- 英
- Regulation concerning naval provisions
- 独
- Marineproviant-regulierung
- 仏
- Règles en matière de provision maritime
慨括の委任
(がいかつのいにん)特別の事項を委任するの語に對し、或事項を槪括的に委任するの謂なり、元來委任なる語の用例は、極めて廣し、□一法律を以て定む可き事抦を、命令を以て定めんと欲する場合に、之を命令に委任すと云ふが如き、□二知事の職權に屬す可き事抦を、郡長をして定めしむる場合に、之を郡長に委任すと云ふが如き、□三吾人が自ら爲す可き事抦を他人に爲さしむる如き場合是なり、而して、□一の場合に委任を許す可きや否やに就きて、國法學者間に異論あり、これを許すものとせば、概括の委任も許し得る事勿論なり、□二に就きては、法律に明文ある場合に、始めて許さる可きものにして、而も法律上特別事項の外、未だ槪括に之を許す可き旨を定めたるものなし、□三の場合には、所謂總理委任代理人と、特別委任代理人とあり、總理委任は、茲に所謂槪括の委任なり、例へば甲野乙太郞が、丙山丁吉に對する貸金請求の件一切を、戊川巳助に委任すと云ふが如き場合は、總理、又は槪括の委任なり、之に反して、單に支拂命令を申請することを委任すと云ふが如き場合は、特別、又は特定の委任なり、但し委任と代理とは、異る所あり。(民六四三條以下、商一六七條、二六八條、委任、代理の部參照)
- 英
- Absolute mandate
- 独
- All-gemeines mandat
- 仏
- Mandat absolu
海關税
(かいくわんぜい)海關税とは、商品即ち貨物が、經濟、及び租税領土の限界を越ゆるに當り、徵収する公課にして租税の一種なり、租税は、種々に分類せらるるも、之を國内税と、海關税とに別つを得べし、海關税に付きて起る可き間題は、□一關税政策、即ち外國商品に高率の海關税を課して、内國品を保護す可きや、□二其税率は、協定率に依るべきや、國定率によるべきや等即ち是なり、英國は、自由貿易主義を取るが故に、所謂關税政策を採らず、獨逸は、保護貿易主義を取るが故に、關税政策を取る、而して其利害得失は、時と所とにより一樣ならず、一國の政策としては、大に熟慮を要する事抦なり、又税率が、國定率なるや協定率なるやは、一國の經濟政策に大なる關係あり、國定率とは、輸入の物品に對し、如何なる程度に於て課税す可きやを、自國の法律によりて、任意に定むるを云ひ、協定率とは、輸入の物品に對して、如何なる程度に於て、課税す可きやを條約を以て定むるを云ふ、而して現時、多くは國定率によるを常とし、傍ら協定率を取る、我國の現狀に於ては、協定率によるべきもの多くして、國定率によるは少し、故に外國貿易に不利益鮮しとせず。(租税、條約の部參照)
- 英
- Custom duty
- 独
- Zoll
- 仏
- Droit de douane
開業免狀
(かいげふめんじやう)行政官廳が、法令の定むる特別の場合に、特定の人に對して、其營業を開始することを許可する書面なり、昔時は、凡ての營業を爲すに當り、行政官廳の許可を要するものなりしも、今日に於ては、必ずしも然りとせず、法律命令の範圍内に於て、自由に之を營み得るを原則とす、諸國の憲法中には、明文を以て、人民は營業を爲す權を有すと、定むるもの尠からず、我國の憲法中には、斯かる明文なきも、固より自由を認むるは言を須ゐず、然りと雖も、凡ての營業を爲すに、何等の制限なしと、早斷す可かず、國家は、其經濟政策、若くは公衆の安寧秩序等に顧み、制限を附すこと屢あり、其制限ある營業を營む場合には、則ち許可を要し、其許可を記載したる書面が、即ち開業免狀なり、要するに、一般に營業を許さざる事業に付き、之を許す證書なり、例へば醫術開業免狀の如し。(營業の部、醫術開業試驗規則等參照)
- 英
- Permit of establishment of business
- 独
- Ladeneröffnungserlaubnis-schein
- 仏
- Permis de l'étabiessement des affaires
戒嚴
(かいげん)戒嚴とは、戰時若しくは事變に際し、兵備を以て全國又は一地方を警戒するを云ふ、之を別ちて、□一臨戰地境、□二合圍地境とす、戒嚴を宣告するものは、天皇たるを普通とし、或場合には、司令官之を發すことあり、戒嚴は、常時と異り、非常の事情あるとき、法律命令の定むる所に從ひて、平時の如く國家の施設を爲さざる可らずとせば、爲に國利を損ずるの虞あるを以て、一時法律命令の全部、又は一部の執行の停止を爲すものにして、臨機應變の所置を爲すを目的とするものなり、故に猥りに之を爲す可きものに非ざるは勿論、警察權を以て臨機の所置を爲すも、過大の不利を來す場合に於てのみ、之を行ふを其精神となす、斯く云ふも、人民は戒嚴の宣告を以て、不當なる者とし、之に反對するを得ざるや勿論なり、故に假令其を不當なりとするも、戒嚴の宣告ありたる以上には、或は財産を徵収せられ、封書を開かれ、動産不動産を破壞せられ、家屋、建物、船舶中に立入り、檢察せらるること等あるも、或場合には、之を不法也と云ふこと能はざることある可し、以て如何に其權力の大なるかを知るに足らん、從つて又之を爲すことを愼まざるべからざることをも悟る可きなり。(戒嚴令參照)
- 英
- State of siege
- 独
- Belagerungs-zustand
- 仏
- Loi de siège
戒嚴解止
戒嚴解止とは、戒嚴の效力を、將來に向つて解除する事を云ふ、從つて一時停止せられたる法律命令は、當然其效力を回復すると共に、人民の權利も、亦平時の法律を以て保護せらるることとなる、即ち戒嚴解止の日より、地方行政事務司法事務、及裁判權は、其常例に復す、故に假令事實上戒嚴の宣告を維持するの必要を認めざることとなるも、之を解止せざる以上は、依然として、戒嚴の狀態にあり、人民は、戰時又は事變の止みたるの故を以て、其必要なしとし、或は戰時又は事變中にあるも、戒嚴の必要なしとして、戒嚴令の定むる所に違反するを得ざるは勿論なり、尚戒嚴によりて生じたる損害は、政府に於て之を賠償するを要せず、人民は其損害を理由として、政府に向ひて賠償を求むることを得ず、盖し戒嚴の宣布は、非常權にして、人民の權利を無視するの嫌なきにしもあらずと雖も、依然國家の適法行爲として、憲法に認められ、唯之を行ふべき場合が、戰時又は事變と云ふが如き、極めて狹き範圍を有するに止まるなり、故に戒嚴の宣告、又は戒嚴解止の遅きを以て不法なりと云ふは、要するに政治上より見たる事にして、法律上に於ては、毫も咎む可き點なしとす。(戒嚴、戒嚴令參照)
- 英
- Dissolution of law of siege
- 独
- Belagerungsauflösung
- 仏
- Dissolu-tion de la loi de siège
戒嚴地境
戒嚴地境とは、戒嚴の宣告により、警戒せられたる地域を云ふものにして、之を別ちて、□一臨戰地境、□二合圍地境とす、臨戰地境は、戰時若しくは事變に際し、警戒す可き地方なりとして、區畫せられたる地域を云ひ、合圍地境は、敵の合圍、若しくは攻擊其他の事變に際し、警戒す可き地方なりとして、區畫せられたる地域を云ふ、臨戰地境内に於ては、地方行政事務及司法事務の軍事に關係ある事件を限り、其地の司令官に、所管の權が移るものにして、從つて地方官、地方裁判所、及檢察官は、其戒嚴の宣告ある時は、速に該司令官に就きて、其指揮を請はざる可がらず、猶合圍地境内に於ては、地方行政事務及司法事務は、總べて其地の司令官に管掌の權が移るものとす、從つて地方官、地方裁判所、及檢察官は、其戒嚴の宣告ある時は、速に該司令官に就きて、其指揮を請はざる可からず、猶合圍地境内に於ては、軍事に係る、民事及び僅少の輕罪を除き、爾余の重罪輕罪の大部分に就きては、軍衙に於て裁判す、然も此軍衙の裁判に對しては、控訴、上告を爲し得ざるもの也、其他戒嚴地境内に於て、臨戰と合圍とを問はず、種々の制限を受くるものとす。(戒嚴、戒嚴解止戒嚴令參照)
- 英
- District of law of siege
- 独
- Belagerungsbezirk
- 仏
- Zone de la loi de siège
戒嚴令
戒嚴令は、戒嚴の要件效力等に就きて規定せられたる法律にして、其規定せられたる事柄は、□一如何なる場合に戒嚴を爲す可きや、□二戒嚴せられたる地域に、臨戰地境と、合圍地境との二あること、□三之を爲し得可き者、□四地方官、地方裁判官、檢察官と、司令官との關係、□五地方行政事務、及司法事務と、軍衙の權力との關係、□六軍衙の權力の範圍、效力、□七戒嚴の解止、□八戒嚴解止と、地方行政事務、司法事務、及び裁判權との關係等を規定せる者なり、之を要するに戒嚴令は、國家非常の場合に處する規則にして、この法規に基きてなさるる戒嚴の宣布と共に、國家統治の狀態は、平時の關係を離れて、權利義務の諸則は停止せられ、世は全く戰地と同じく、戰時統帥權の支配に變ずるもの也。(憲法一四條一五年布告三六號戒嚴令參照〕
- 英
- Law of siege
- 独
- Belagerungs-gesetz
- 仏
- Loi de siège
解散
(かいさん)解散なる文字は、種々の場合に用ひらる、□一人の集會、又は團體を解くことに用ひらるる場合あり、集會、演説會の解散を命ずと云ふが如し、□二議會、其他合議制に依る機關をして、其存在を失はしむる場合に用ひらるることあり、此場合は、其機關を組織する議員の資格を、任期滿了前に解くを云ふ、□三法人の行動が、精算の範圍内に収縮せらるるを云ふことあり、最も合併によりて解散する場合に於ては、全然其存在を失ひて消滅す、故に解散と云ふも、必ずしも其意味を同うするものにあらず、而して解散は、自然的に解散することあり、人爲的に解散することあり、集會、演説會等に於て解散を宣せす、又は之を命ずることなきも、自ら解散に至ることあるは、吾人の日常實見する所なり、之に反して、法人組合等に至りては、或一定の原因、例へば、社員、組合員等の死亡により、當然解散となる事あり、社員、組合員の全部の死亡したるが如き、蓋し其著しき例なり、然れども議會の如きは、如何なる場合に於ても、自然的に解散することなし、解散を命ぜざれば、期間の滿了に依りて、議員たるの地位を失ふことあるも、解散とはならず、何となれば、故らに任期滿了前に、其資格を解くを以て、解散と云ふものなればなり。(治安警察法二三條、憲法七條、四五條、民六八條以下、六八二條、商七四條以下、一一八條、二二一條以下、二四六條以下參照)
- 英
- Dissolution
- 独
- Auflösung
- 仏
- Dissolution
海事局官制
(かいじきよくくわんせい)海事局の組織權限を定めたる法規にしては、海事局は、遞信大臣の管理に屬し、各局を通じて、局長は、奏任を以て之に充て、其數四人、海事官も、亦奏任にして、其數は專任四十九人、書記は判任官にして、其數專任三十六人、技手專任三十人を以て組織し、船舶職員、及水先人の試驗、船舶の測度、檢査、其他法令の定むる所に從ひ、管海官廳の事務を掌る、海軍局は、東京、大坂、長崎、凾館の四個所に之を置く。(三二年勅二六三號參照)
- 英
- Government organization ofmaritime authority
- 独
- Amtsordnung des Seemannsamtes
- 仏
- Organisation ad-ministrative du bureau de la marine
開申
(かいしん)開申とは、或る事抦に解きて之を開陳申述することを指す、例へば私立學校令二條二項に「云々は監督官廳に開申し」とあるは、其の用例なり。(三二年勅三五九號二條二項、及び高等教育會議規則八條參照)
- 英
- Application
- 独
- Anlegung
- 仏
- Application
海商
(かいしやう)海商とは、海上に於ける商業と云ふ義なり、換言すれば、航海業を云ふ、凡そ商業は、之を種々に別ち得べきも、其行はるる場所により、陸商と、海商とに別つを常とし、且つ此兩者は、其行はるる場所の異ると共に、各特殊の發達を爲すに至れり、即ち航海業に從事する船主は、或一定の場合に、船舶、屬具、及運送賃を委付して、其費を免るる事を得るも、陸商に於ては、決して然らず、其資産のあらん限り、其責に任ぜざ可かるらず、又海損なるものあり、即ち船長が、船舶及積荷をして、共同の危險を免れしむる爲め、船舶、又は積荷に付き爲したる處分に因りて生じたる損害、及費用に付きては、其損害及費用に因りて、利益を受けたる船主、又は荷主に於て、其負擔に任ずる制度にして、蓋し保險等と同じく、危險をして多數に分擔せしむるの社會政策にも合するものとす、其他海商と其盛衰を共にする海舶に就きても、特殊の定めあり、即ち登記したる船舶は、之を費權の目的と爲し得ざるが如き之なり、尚一定の船舶債權者に先取特權を認め、動産たるに係らず、抵當と爲し得べきものと爲したるが如き、皆海商と、陸商との異るより生じたるものなり。(商五四四條、六四一條以下、六八六、六八八條參照)
- 英
- Maritime commerce
- 独
- See-handel
- 仏
- Commerce maritime
海上衝突豫防法
(かいじやうしようとつよばうはふ)明治二五年法律第五號を以て公布せられ、更に三〇年法律第四三號を以て、多大の修正を經たるものにして、全文三十四個條を以て成り、□一船燈、□二霧中信號、□三霧中速力□四、航力、□五航路信號□六、懈怠の責、□七特例、□八難船信號、□九晝間信號、□十夜間信號に關して、是を規定す、即ち天氣の如何に關せず、日沒より日出まで、必ず本法の規定を遵守し、他の紛れ易き燈を揭ぐるを得ず、霧中、降雪、其他暴雨中は、各般現時の狀况に注意し、適度の速力を以て進行すべし、汽船其正橫より前面に當りて、他船の霧中信號を聞き、其所在を定め得ざるときは、成るべく機關の運轉を止め、全く衝突の虞なきに至る迄、其運轉に注意せざるべからず、衝突の危險は、其現况により、我船に近寄り來る他船の方位を看守して、之を豫知するを得、若し其方位慥に變更するを認めざる時は、危險あるものと知るべし、他船に我航の船路を通知するには、我船鍼路を右舷に取るときは、短聲一發、左舷に取るときは、短聲二發、公速力にて變退するときは、短聲三發を發すべし等其一班なり。
- 英
- Precaution law of col-lision at sea
- 独
- Vorbauungsgesetz des Zusammenstoszes in der See
- 仏
- Loi de précaution contre la collision sur la mer
海商法
(かいしやうはふ)海商法は、海法の一部にして、航海事業に關する法律なり、狹義はこれを海事に關する私法と解す、我國に於ては、商法の一部なり、其規定の内容は、□一船舶、及び船舶所有者、□二船員即ち海長、海員、□三運送、即ち物品運送、船荷證券、旅客運送、□四海損、□五船舶保險、□六船舶債權者等にして、皆陸商との差異を規定したるものなり、抑も船商法は、他の法律と異りて、頗る特質を有す、即ち委付の規定あり、普通の契約と異る海員雇傭契約あり、船荷證券の規定あり、共同海損の規定あり、その他大多數は、皆陸商と大に其面目を異にす、之盖し陸商は、其危險甚だ小にして、資本も亦多からざるを常とするも、海商は、其危險甚だ大にして、資本も亦多からざるべからざるを以て、之を同一の規定に依りて支配することを得ざると共に、其發達の歷史も亦大に異る所あるを以て、特別の規定を必要とする所以也、我商法は、此の理由に基き、特に一編を設けて、海商と題し、以て此要求に應ずるの規定をなしたること前説の如し。(船舶、船舶所有者、船長、船員、運送、船荷證券、海損、保險、商五三八條以下參照)
- 英
- Law of maritimec ommerce
- 独
- Seerecht
- 仏
- Loi du commerce mari-time
海上保險
(かいじやうほけん)廣く海上保險と言へば、海上に於て、偶然なる一定の事故に依りて生ずる損害を塡補するを云ふと解するも、不可なかるべし、されど今日斯くの如き廣き意昧に用ひらるる事なく、我商法の規定する海上保險のみを意味するものとせらるるを常とす、即ち航海に關する事故に依りて生じたる損害を塡補するを云ふに外ならず、彼の河川を航行するに過ぎざる船舶の危險を、保險に付することあるも、海上保險にあらざるは勿論、航海に關して生じたる偶然の事故に依りて生ずる損害にあらざれば、之を海上保險と云ふべからず、故に船舶が暴風雨の爲に塡覆し、他船と衝突したるが如き場合に、生ずることあるべき損害を塡補することを約して、斯かる危險を避けんと欲するは、一種の損害保險にして、又海上保險なれども、船舶が朽癈したる場合に、一定の金額を授受する如きは、偶然の危險に依ると云ふべからず、從つて之を海上保險と云ふを得ざる也、一方は陸上に於ける危險を擔保し、他は海上危險を擔保補償するものなり、故に保險者の塡補すべき責任に於ても異る所少からず、例へば海上保險は、共同海損の分擔額をも負擔する如き、委付なるものをも認むる如き、其重なるもの也。(保險、塡補、危險、商六五三條乃至六七九條參照)海上保險契約とは、當事者の一方が、航海に關する事故に依りて、生ずることあるべき損害を塡補することを約し、相手方が之に其報酬を與ふることを約するに依りて、效力を生ずる契約なり、故に契約たる點に於ては、普通の約束、即ち日常實見する金錢貸借等と異ることなし、唯海上の事故による損害分擔の契約なるが故に、其の負擔したる範圍内に於て、責を負ふべきは素より言明を要せざる所なり、而して海上保險契約が、他の保險契約と異る點は、例へば生命保險契約は、人の生死に依りて、一定の金額を支拂ふものなるが故に、損害保險契約の一種たる、海上保險契約と別なるは勿論、損害保險契約とも、其危險が航海より生ずる、偶然なる事故たるの點に於て異るものとす、本契約を締結する要件、及び其效力等に至りては、普通の損害保險、即ち火災保險等と大なる差異なし、尤も委付等特別なる制度存するも、之等は他の損害保險に於ける、殘存せる保險利益を保險者に與へて、保險金額の全部を受取るものと、大なる差異なく、其立法上の趣旨も異らざるなり。(商法六五三條乃至六七九條特に商六七一條と、四一五條との比較參照)
- 英
- Marine insurance
- 独
- See-assekuranz
- 仏
- Assurance maritime
海上保險契約
- 英
- Contract of marine in-surrance
- 独
- Seeassekuranzvertrag
- 仏
- Contrat de l'assurance maritime
海上保險證券
海上保險證券とは、海上保險契約に於ける保險者が、保險契約者の請求に依り、之に交付すべき證書にて、商法の規定に依れば、□一保險者の署名、□二保險の目的、□三保險者の負擔したる危險、□四保險價額を定めたるときは其價額、□五保險金額、□六保險料及其支拂の方法、□七保險期間を定めたるときは、其始期及終期、□八保險契約者の氏名、又は商號、□九、保險契約の年月日、□十保險證券の作製地及其製作の年月日、十一船舶を保險に付したる場合には、其船舶の名稱、國籍並に種類、船長の氏名及發航港、到達港、又は寄航港の定あるときは、其港名、又積荷を保險に付し、若くは積荷の到達に依りて得べき利益、若くは報酬を保險に付したる場合に於ては、船舶の名稱、國籍、並に種類、船籍港及陸揚港等を記載すべきものなり、尤も此以外に記載するも何等妨ぐる所なし、實際に於ては、此外當事者間の契約文句等を記載するを例とす、海上保險證券の作成は、保險契約の成立事項にあらず、故に其の證券の作成は、單に海上保險契約締結の有力なる證明方法たるに過ぎず、但し實際に於ては、此の證券を作製せざること殆なし。(商四〇三六六一條參照)
- 英
- Policy of marine Insurance
- 独
- Seepolice
- 仏
- Police d'assurance maritime
解職
(かいしよく)或人をしてその職を去らしむることを云ふ、ほぼ解任と云ふと同義なり、官吏、公吏にある者の官公職を去らしめ、兼職を帶ぶる者の兼職を解くが如き其場合に用ひらる、要するに一定の職務に從事する者をして其地位を去らしむるに外ならず、而して其原因は、或は官制、法律命令の改正によることあり、廢止によることあり、其職を怠りたるが爲めなることあり、或年齡に達したるが爲めなることあり、又死亡等の自然的のものあり、監督權の作用に基く人爲的のものあり、然れとも其效力に至りては、殆ど差異なき也、次に在職中になしたる事抦に就きては、解職後と雖も其の責を負ふべきは勿論、在職中の職務に關する犯罪の如きは、解職後に於ても、時效に罹らざる限りは、職務犯として所罸せらるべきものなり、况んや其の他の犯罪に就きては、解職の故を以て、其責を免るることを得ざるは、言を要せざるなり、故に解職は其職務に從事するの義務を解くも、全然其責の免ずる者ならざるに注意するを要す、(市制一二四條二項三號等參照)
- 英
- Dissolution of service
- 独
- Dienst-auflösung
- 仏
- Dissolution du service
改正電報
(かいせいでんほう)電報を發したる者が、改正を要するとき、即ち既に發したる電報に誤り等あるときに、之を訂正するがために發する電報にして、改正せらるべき電報の發信を爲したる時より、七十二時間内に爲さざるべからざるものなり、電報の改正を請求する者は、其通知に要する電報料を豫納せざるべからず、其電報料は、返信電報と同じく、字數又は語數に應じて精算せらるべきものとす。(電報規則九八、一〇〇條乃至一〇二條參照)
- 英
- Revised telegram
- 独
- Ver-bessertes Telegramm
- 仏
- Télégramme revisée
改選
(かいせん)改選とは、更任の爲めにする選擧を指し、例へば選擧に依り、現に或職務に任ずる者ある場合に、或事由に基きて之を更任する爲め、又は選擧の結果に依りて之を更任する爲め、新に選擧を行ふことを改選と云ふなり、其原因一ならず、衆議院議員選擧を以て譬ふれば、或は滿期となりたる場合に爲すことあり、解散となりたる場合に爲すことあり、又被選擧人全部に就きて爲す事あり、被選擧人の一部に對して爲すことあり、町村制に依れば、町村會議員は、其任期を六年とし、三年每に各級其半數を改選す、若し各級の議員二分し難きときは、初回に於て多數の一半を改任せしむとあるが如きは、其の半數改選の例なり、之に反して國會議員の如きは、四年每に其全部を改選す。(衆議員選擧法七七條、市町村制一六條及選擧之部參照)
- 英
- Re-election
- 独
- Wiederwahl
- 仏
- Ré-élection
開戰
(かいせん)國際法上、交戰行爲の實行開始を指し、實際に戰爭を始むるを開戰と云ふ、然れども必ずしも干戈相見ゆることのみを云ふにあらず、宣戰の布告にても戰爭となり、開戰となることあり、又必ずしも双方より戰鬪行爲を爲さざれば、開戰とならざるにあらず、一國にて戰闘行爲、例へば相手國の砲臺を攻擊し、宣戰の布告を爲せし如き場合は、茲に開戰と云ふを得べし、元來國際法上の戰爭は、國家間の戰鬪をのみ指すにあらずして、内亂の結果、其反徒が戰爭法則を遵守し、且つ一定の條件を具備すれば、之を戰爭と云ひ、開戰と云ふに妨げなし、抑も開戰と否とは、國際法上重大なる結果を生ずるものにして、平和狀態を變じて交戰狀態となし、各當事國の公使は、旗を捲きて本國に引揚ぐべく、平時罪惡視しせられたる殺傷行爲も、戰爭の目的の爲めには正當にして、且つ名譽なる行爲として稱賛せらるるに至る、當事國以外の國家に於ても、外國間にて戰爭を開始せるときは、局外中立法に從ふを要し、中立法規を犯したる人民は、或は船舶荷物を捕獲せらるることあり、自國の法律により、一定の刑罸を科せらるることあるなり、次に開戰を爲すの權利は、天皇の有せらるる所のものにして、私かに戰端を開きたる者は、一定の刑罰を科せらるるものとす。(刑一三三、一三四條戰爭參照)
- 英
- Outbreak of hostilities
- 独
- Er-öffnung des krieges
- 仏
- Commence-ment des hostilités
海船
(かいせん)海洋を航行する船舶を海船と云ふ、其の海船の多くが汽船なること勿論なり、海船と否とは、商法に於て船舶として取扱ふと否とにより、その實益大なり、即ち海船にして商行爲を目的とするものは、商法の所謂船舶として、之に海商法を適用せらる、商法に依れば、端舟、其他櫓擢のみを以て運轉し、又は主として櫓擢を以て運轉する舟は、海船として取扱はざるものとせり、商法上の般舶としての特則は、發航を爲す爲に生じたる債務を除き、其他の債務に就きて、發航の凖備を終りたる船舶に對しては、差押、及び假差押を爲すことを得ず、航海中にある船舶を讓渡したるときは、特約ある場合は、勿論其特約に從ふべしと雖も、然らざる場合には、其航海に依りて生ずる損益は、讓受人に歸す、船長が法定の權限内に於て爲したる行爲、又は船長其他の海員が其職務を行ふに當り、他人に加へたる損害に就きては、航海の終りに於て、船舶、運送賃、及び船舶所有者が其船舶に就きて有する損害賠償、又は報酬の請求權を債權者に委付して、過失なき船舶所有者は、其責任を免るるを得べし、以上は其の重なるものなり。(商第五編、刑訴三〇、四八條)
- 英
- Sea vessel
- 独
- Seeschiff
- 仏
- Navire
海賊
(かいぞく)海賊とは、海上に於て掠奪を働く者を云ふ、國法上に於ては、普通の竊盜、強盜と區別するの實益なきも、國際法上に於ては、其性質を明白に爲し置くの必要あり、國際法上海賊とは、公海又は無所屬の土地、或は海上より上陸し、一國領域内に於て行ふ暴掠にして、政治的組織を有する社會の權力の下に立たざる者の行爲なり、船舶内部の乘込員が暴行を企て、其船舶、又は積荷を掠奪する者も亦海賊にして、其掠奪を爲したる時より、直に本國の國籍を失ふ、日本軍艦外務令に曰く、本令に於て海賊と稱するは、左に揭ぐる二項の一に該るべき行爲ある者を云ふ、□一何れの主權にも屬せず、又何れの主權者よりも免許を得ずして、暴行掠奪を爲す者、□二交戰國双方より、特許狀を得て捕獲を爲す者、指揮官は、以上の者あるときは之を海賊とし、逮捕の上便宜の港に引致し、海軍大臣に具申し、其指令によりて之を處分すべきものなり、若し其指令を待つ能はざるときは、之を其他の相當の官廳に引渡すことを得べし、このことは敢て我が國に拘はらず、國際法上の海賊は、無籍人なるが故に、各國皆處罰の權を有するものなり。(日本軍艦外務令三一、三二條參照)
- 英
- Pirate
- 独
- Seeraub
- 仏
- Pira-terie
海損
(かいそん)海損を廣く解せば、單獨海損あり、共同海損あり、大海損あり、小海損あり、所謂小海損は、通常の經過に於て生ずべき損害にして、例へば船舶の自然の消耗の如し、之等は物の經過に於て、當然生ずべき損害なるが故に、特に海損として論ずるの要を見ず、次に單獨海損とは、船長の故意の處分に由らず、非常原因に依り、船舶、又は積荷が蒙りたる損害を云ひ、或は天災に依ることあり、或は他人の不法行爲に依りて生ずることあるもの也、從ひて單獨海損に於ては、物は所有者の爲めに亡ぶと云ふ原則に從ひ、又民法の不法行爲の原則に從ひて、之が損害を定むべく、特に海損として論ずるの要なし、唯特殊の法則を定め、之を硏究すべきは即ち共同海損也、共同海損とは、船舶及積荷に對する共同の危險を免れしむる爲め、船舶、又は荷積に就きて爲したる處分に依りて生ぜし損害、及び費用を云ふ、分説すれば、□一、船舶、及び荷積に對する共同の危險を免れしむる爲めに生じたること、但し其危險の原因の何たるは問ふ所にあらず、□二、船舶又は荷積に就きて爲したる處分なる事、□三、船長の故意の處分に因る損害、又は費用なること、□四、其處分に依り、船舶、或は積荷の全部、又は一部を保存し得たること、以上の要件を備へたる海損は、所謂共同海損として、各自に其の損失を分配せらるるものなり、例へば、船舶が暴雨に遇ひ、其儘航海を繼續するときは、沈沒の虞れあるが如き場合に、其積荷の一部を海中に投棄し、以て船舶、及び積荷の大部分の安全を計りたるときは、荷主及び船主に於て、其損害を負擔するが如き、暴風雨の爲に船體に毀損を生じ、積荷の一部を他の船舶に依賴して、漸くにして到達港に送り屆けたるが如き場合に、其運送賃を荷主、及び船主に於て負擔するが如き是なり。(商六四一條以下參照)
- 英
- Average
- 独
- Haverei
- 仏
- Avarie
拐帶
(かいたい)拐帶とは、他人より正權原を以て委せられたる物品を自己の利益に消費處分せん爲めに、居所を不明ならしむる所爲を云ふ、普通に委託物品の持逃げの如きは、この適例なり、例へば番頭が、主人より委託せららたる金品を持ち逃げするが如き是也、斯くの如き委託品、其他の金額物件を携帶の儘逃走することに依りて、橫領を遂ぐる者は、詐僞取財罪と等しく、所分せらるるものなり、元來拐帶なる所爲は、一種の委託物費消なるも、情に於て詐僞的行動に近似する所多きを以て、法律は之を騙取と等しく、詐僞取財を以て論ずべきものとせり。(舊刑三九五條末段)
懈怠
(かいたい)懈怠は、彼の疎虞と總稱して、刑法上所謂過失をなすものなり、過失とは、自己の行爲に依りて生ずることあるべき結果を、防止し得る地位にありながら、且つ之を防止すべきに係らず、等閑に附して、遂に其の結果を發生せしめたるを云ふ、再言すれば、或る行爲に伴ふ物界の現象を豫見すべきに係らず、不注意に依りて豫見せざる意思の狀態と、不注意なるが故に結果の發生を防止せず、遂に惡結果を發するが如きに至りしものとす、學者は此過失を別ちて二種となす、一は疎虞にして、他は懈怠是なり、この二者の區別の標凖に就きては、或は結果の認識ある過失が疎虞にして、之なき過失を懈怠と説くものあり、或は苟も過失と云へば、等しく認識を缺くものにして、唯特別の注意を爲すべき義務ある者が、この區別の注意を怠りたる爲めに生じたる過失は、所謂懈怠にして、一般人を標凖として、各人に要求せる注意を缺くに依りて生ずる過失は疎虞なりと、茲には第二の説を採用せん、盖し第一説の如く、認識を伴ふ過失なるものは、人が死するを知りて、敢て致命の手段を採る故意と異ることなく、結果に對する認諾の有無を以て、此の過失と故意とを區別せんとするも、所謂認諾なるものは、畢竟するに結果の必成希望の有無と同じきに至り、この種の學者が、希望主義の故意説を反駁する説と、全く同じきに至らん、故に認諾を以て故意と過失とを區別する學説は、舊時の意思主義なりと云ふべし。
懈怠致死罪
懈怠致死罪は、過失殺傷罪の一種にして、懈怠に依りて、人を死に致したるの罪なり、例へば醫師が手術の際、誤つてガーゼーを縫ひ込みたるが爲に、人を死に致したる場合の如し、本罪を構成するには、□一本人に注意の責任あること、□二注意し得べかりしに、過失に依りて注意せざりしこと、□三犯人の任意に依りて、死の原因を與へたること、□四特別の職業、身分、地位により、特に注意の責任が加重せられあるに、其注意を缺きたること、以上の四條件中其一を缺けば、本罪を構成せず、終に一言すべきは、從令犯罪となるも、民事上損害賠償の責任なしと云ふべからずして、不法行爲として其責に任ずるを要する也、即ち過失に依りて、他人の權利を害したる者は、之に依りて生じたる損害を賠償せざるべからず、然も被害者の父母、配偶者、及び子に對しても、亦損害を賠償せざるべからず、故に刑法上責任を負ひ、刑罰に處せられたる以上は、民法上責任なしと解するは、早計の甚しきものなることを注意せざるべからず、刑法ば、本罪を二十圓以上二百圓以下の罰金に處するに過ぎずと雖も、民法上の損害は、其數萬倍となるも、猶その責を負ふものとす。(刑二一〇條、民七〇九、七一一條致死の部參照)
懈怠創傷罪
懈怠創傷罪は、懈怠致死罪と同じく、過失殺傷罪の一種にして、懈怠に依りて人を創傷したる罪也、懈怠致死罪と殆ど同じ、唯其異る要點は、他人を創傷したるに過ぎずして、死に致さざる點にあるのみ、過失に依りて人を創傷し、癈篤疾に致したる者は、十圓以上百圓以下の罰金に處せられ、過失に依りて人を創傷し、疾病休業に至らしめたる者は、二圓以上五十圓以下の罰金に處せらる、民事上の責任あることは、懈怠致死罪と同じ。(刑二〇九、民七〇九、七一一條創傷の部參照)參照)
該當
(がいたう)相當、又は適合と云ふと同じ、例へば人を殺したる者は、刑法第二九四條に該當すと云ふが如く、窃盜を爲したる者は、刑法第三六六條に該當すと云ふが如し。
- 英
- Correspondence
- 独
- Übereinstimm-ung
- 仏
- Correspondance
開廳時間
(かいちやうじかん)官廳に於て、每日事務の開始時刻を云ふことあり、例へば裁判所構成法に、控訴院長、及び檢事長は、前項の規則に依り、各自管轄區域内の裁判所、及び檢事局に對して、事務の一般の取扱に關し、成るべく統一を旨とし、殊に裁判、及び檢事局の開廳時間、及び開廷の時日に就きて訓令を發すとあるが如し、或は開廳に於ける執務時間を指して云ふこともあり、例へば某省に於て、朝九時より夕四時までは、開廳時間なりなどと云ふが如し。(裁構法一二五條二項)
- 英
- Opening time of office
- 独
- Eröffnungszeit des Amtes
- 仏
- Temps d'-ouvrir l'office
解除
(かいぢよ)解除とは、既に生じたる法律關係を解くを云ふ、或は條約を解除すと云ふが如き場合あり、或は契約を解除すと云ふが如き場合あり、要するに合意に依りて生じたる法律關係を解く事に用ひられ、殊に契約關係を解くことに用ひらる、今民法の規定する所を見るに、□一解除を爲す方法は、相手方に對する意思表示、即ち口頭、書面、電報等に依りて爲し得べく、□二一旦爲したる以上は、之を取消す事を得ず、即ち解除を取消す事を許さず、□三或る一定の期間を定め、其期間内に契約を履行せざる時、始めて之を爲し得べきを常とし、唯例へば婚姻に必要なる物を注文したるに、婚姻の間にあはざるが如き場合、棺を注文したるに、葬送の間にあはざるが如き場合は、直に之を解除することを得、□四、契約が債務者の過失に依り、到底履行すること能はざるときは、直に解除し得べく、□五注文者が數人あるとき、又は請負人が數人あるとき等には、其全員より全員に對して解除せざるべがらず、即ち單に一人のみにて爲し得ざるを原則とし、□六解除したるときには、相互に契約を爲さざる時と、同一狀態に回復せざるべからず、□七解除したる場合には、各自返還すべき物なるときは、相手方に返還するにあらざれば、自ら進みて解除を爲し、其物の返還を請求するを得ず、例へば、賣買契約を解除して、一方は代金を返還し、一方は米を返還する義務を負ふ場合に、相手方が米を返還せざれば、代金を返還する事を要せず、即ち相手方は、代金を返戾せずして、他の相手方に對して、米を返還すべしと請求するを得ざるなり、□八相手方より解除せらたる場合に、前例の如き時は、米が天災、例へば地震に依りて、消滅したるが如き場合には、米を返還せずして、自己の拂ひし代金の返還を請求するを得べし、從つて解除を申込みたる相手方は、米と引換にあらざれば、代金を返還せずと抗辯するを得ざるものとす。(民五四〇條乃至五四八條、商二八七條乃至二九〇條參照)
- 英
- Dissolutlon
- 独
- Rücktritt
- 仏
- Dissolution
解除權
解除權とは、解除を爲し得る權利を云ふ、これを例へば、民法に依れば、或る契約に就き、當事者の一方が其債務を履行せざるときは、相手方は、相當の期間を定めて其履行を催告し、若し其期間内に、履行を爲さざるときは、契約を解除するの權利を有す、斯くの如き權利を解除權と云ふ、而して此權利は、當事者間の契約に依りて生ずることあり、法規の規定によりて生ずることあり、然れども其權利の性質は、毫も異ることなし、其消滅も、法律の規定によることあり、當事者間の定むる所によることあり、民法の規定によれば、解除權を有する者が、自己の故爲、又は過失に依りて、著しく契約の目的物を毀損し、若くは之を返還すること能はざるに至りたるとき、又は加工、若くは改造に依りて、之を他の種類の物に變じたるときは、解除權は消滅すと、之其一例なり、例へば受取りたる煙管を改造して、時計の鎖と爲したる場合には、假令解除權を有したりとするも、最早消滅し、煙管の代りに時計の鎖を返還して、豫て支拂ひたる代金の返還を求むることを得ざる也。(民五四〇條以下五四八條、商二八七條乃至九二〇條參照)
- 英
- Right of rescission
- 独
- Auf-hebungsrecht
- 仏
- Droit de la rescision
解除條件
(かいぢよでうけん)條件を大別すれば、解除條件、停止條件の二種となる、停止條件とは、例へば明日雨降りしならば、此金圓を與へんと約したる場合に、明日果して雨降るや否やが停止條件也、雨降れば條件成就と云ひ、雨降らざれば條件不成就と云ふ、解除條件は、此反對に、吾輩が國務大臣となりしならんには、返戾せしむるも、兎に角今日此家屋を汝に與ふべしと約したる場合に、國務大臣となるや否やが解除條件也、要するに解除條件と云ふときは、一旦效力を生ぜしむるも、或事由によりて、其效力を消滅せしむるの事實也。(民一二七條乃至一三三條、解除條件附法律行爲參照)
- 英
- Conditional rescission
- 独
- Aufhebungsbedingung
- 仏
- Rescision con-ditiounelle
解除條件附
解除條件附とは、法律行爲、又は權利義務等に、解除條件の附隨するを云ふなり、例へば解除條件附法律行爲、解除條件附權利、解除條件附義務と云ふが如き場合即ち之なり。(民一二七條乃至一三三條參照)
- 英
- With conditional suhsequent
- 独
- Mit aufhebender Bedingung
- 仏
- Avec la rescision conditionnelle
解除條件附行爲
(かいぢよでうけんつぎかうゐ)解除條件附行爲とは、解除條の附隨する行爲を云ふ、例へば汝に此禮服を與へん、然れども汝が免官となりたる場合には、之を解除すべしと約したるが如き是なり。民一二七乃條至一三三條參照)
- 英
- Conditional rescissory act
- 独
- Handlung mit aufhebender Be-dingung
- 仏
- Acte avec la rescision con-ditionnelle
解除條件附義務
(かいぢよでうけんつきざむ)解除條件附義務とは、解除條件の附隨する義務を云ふ、例へば某家屋を贈與するの義務を負ふも、本年の米作にして凶作ならんか、之を贈與するを要せずと云ふが如き場合なり。(民一二七條乃至一三三條解除條件、解除條件附法律行爲參照)
- 英
- Conditional rescissory obligation
- 独
- Schuld mit aufhebender Bedingung
- 仏
- Obligation avec la resci-sion conditionnelle
解除條件附權利
解除條件附權利とは、解除條件の附隨する權利を云ふ、例へば某家屋の贈與を受くる權利を有するも、本年の米作にして凶作ならんか、贈與を受くるを得ずと云ふが如き場合なり。(民一二七條乃至一三三條、解除條件、解除條件附法律行爲參照)
- 英
- Conditional rescissory right
- 独
- Recht mit aufhebender Be-dingung
- 仏
- Droit avec la rescision con-ditionnelle
解除條件附法律行爲
(かいぢよでうけんつきはふりつかうゐ)解除條件附法律行爲とは、例へば汝が汝の妻を離婚せば、贈與は其效力を失ふべしと約して、金壹萬圓を與ふるが如き、即是なり、斯かる法律行爲は、一個の法律行爲なろか、二個の法律行爲なるかは、説の岐るる所なり、或る學説に曰く、一は無條件の法律行爲にして、唯之と同時に成立する停止條件附法律行爲を伴ふのみ、而して其停止條件附法律行爲は、無條件の法律行爲の效力を制限せんとするものり、前例に依りて説明すれば、汝に此壹萬圓を與ふべしと云ふ法律行爲成立し、又一方には、妻の離婚迄、其解除を停止するの法律行爲成立すと、又或る説は之に反して、一個の法律行爲なりとなす、曰く條件附法律行爲は、單に效力の消滅を未來の不確定なる事實に繫らしめたる、一個の法律行爲のみなりと、以上何れの説に依るも、其效果に於ては大差なく、畢竟學説上の問題たるのみにして、唯之を二の行爲となすに於ては、意思表示に、錯誤、無效の原因等なきや否やは、各別に判斷すべきに止る、次に法律行爲には、一般に解除條件を附するを得るを原則とするも、或特種の行爲に限り、之を附するを得ざるものあり、例へば養子緣組、婚姻の如し、或る行爲が、果して解除條件附なる行爲なるや否やは、當事者の意思を各場合に從つて解釋し、之を判定すべきものなりとす。(民一二七條乃至一三三條、解除條件の部參照)
- 英
- Conditional rescis-sory juristic act
- 独
- juristische Handl-ung mit aufhebender Bedingung
- 仏
- Acte juridique avec la rescision conditionnelle
開廷
(かいてい)開廷なる語に就きては、其用例一ならず、□一法廷を組織し、裁判手續を開始するを開廷と云ふとあり、例へば裁判所構成法第一〇三條一項に於て「開廷は裁判所又は支部に於て之を爲す」とあるが如きは、此用例也、□二、以上の意味に於て、開廷せられたる法廷自體を開廷と云ふことあり、例へば裁判所構成法第一〇二條一項に「廷丁は開廷に出頭せしめ、及び司法大臣の發したる一般の規則中に定めたる事務を取扱はしむ」とは、此意味に於ての用例也、從つて開廷なる意味を解するには、前後の條文を參照して、始めて决せざるべからず、多くは、前者の意味に用ひらるるを常とす。開廷日とは、裁判を開始する期日を其事件に於ける開廷日と云ふ、刑事訴訟法に、判決の言渡は、辯論を終りたる後、即日、又は次の開廷日に之を爲すべしとあるは、其用例なり。(刑訟法二〇四條二項開廷の部參照)
- 英
- Session
- 独
- Gerichtssitzung
- 仏
- Session
開廷日
- 英
- Day of session
- 独
- Gerichtstag
- 仏
- Jour de session
改訂特許證
(かいていとくきよしやう)特許法の規定に基き、特許證主が、其特許發明の明細書、若くは圖面を提出して特許を受けたる場合に、不完全なることを發見し、改訂明細書、若くは圖面を添へ、特許證の改訂を出願すべきものなり、特許局に於ては、此の出願ありたるときは、審査官をして之を審査せしめ、改訂すべきものと査定せる場合に、特許局長より願主に交付する證書を改訂特許設と云ふ。(特許法二六條參照)
- 英
- Rectified patent license
- 独
- erneuerte patenturkunde
- 仏
- Brevet rectifié
改訂明細書
(かいていめいさいしよ)特許法二六條に曰く「特許證主、其明細書、若くは圖面の不完全なることを發見したるときは、改訂明細書、若くは圖面を添へ、特許證の改訂を出願することを得、一個の特許證を分割して、二個以上と爲す必要あることを發見したるときも亦同じ、但し發明の要部を變更するものはこの限にあらず」と、要するに、前の明細書の不完全なる點を改めて、以て特許證の改訂を出願する書面、又は特許證を分割して、二個以上と爲すの必要を發見したる場合に、其許可を受けんとして、出願する書面なりと云ふを得べし、何れの場合に於ても、發明の要部を變更することを得ざるは勿論なり、此他或る事實の明細書に於ける誤謬、不完全等の改正校訂を爲せる明細書は、等しく改訂明細書と云ふことを得べし。
- 英
- Rectified specification
- 独
- erneuerte specifizierung
- 仏
- Spécification rectifiée
海難
(かいなん)暴風、雲霧其他海洋の航行に關し、船舶に對して生ずる危難を廣く海難と云ふ、故に航海中、人に對して生ずる危難は、之を海難と云はず、必ず船舶に對して生じたるものならざるべからず、然れ共船舶と人と双方に對するも妨げざるは勿論なり、否船舶に對する危難は、殆ど同時に乘客其他の人に對する危難とならざることなし、海難に關しては、水難救護法、海難、其他の事實屆出の件なる遞信省令等あり。(噸税法三條參照)
- 英
- Maritime perils
- 独
- Marine-gefahr
- 仏
- Dangers maritimes
改任
(かいにん)或る任務にある者を解任し、新に他者をして其任務に就かしむるを改任と云ふ、其多くは、任期滿了前になすものなり、其原因種々ありと雖も、要するに不都合の所爲あるによりて爲すか、被任者の辭任によりて爲すか、選任者の任意によるか也、唯其の效力に至りては固より大差なし、改任は、一方に於て或者を解任し、他の一方に於て解任者以外の者を選任することなるが故に、或者を解任して、更に其者を選任するは、之を改任と言はざるを常とす。(訴訟事件手續法六〇條二項等參照)
- 英
- Changing position
- 独
- Änder-ung
- 仏
- Changement des situations
槪念
(がいねん)哲學上重要なる用語なり、一言に槪念とは、個々の想念に共通なる點を抽象し來りて成立せる一般的、普遍的想念なり、例令ば甲某乙某丙某と稱せずして、單に人と云ふ時は、吾人は夫れ等に特殊なる人相を想念せずして、極めて漠たる一般人、即ち身長の大なるにもあらず、又小なるにもあらず、老年なるにあらず、又若年なるにあらざる人を想念するなるべし、槪念とは、即ちかくの如き漠然たる想念に與へられたる名辭なり、三角形と云ふに於ても亦然り、三角形として實際存在するものは、必ず鈍角三角形か、鋭角三角形か、直角三角形かの何れかの特殊なる形相を備へざるべからず、然るに吾人が、漠然三角形と唱へて、其特殊なる形相を示さざること多し、此際起るべき三角形に就きての想念を名けて、槪念とはいふ也、尚槪念に就きて、其の内包と外延と稱する名辭を解釋せざるべからず、槪念は總べて内包と外延とを有す、今馬、又は人と云ふ槪念と、動物と云ふ槪念とを比較するに、其内容は、後者の方遙かに前者に劣れり、人と云はば、步行し、言語を有し、又は推理力を有する動物也との如く、人間に特有なる諸種の屬性が、直に想念の上に浮び來るべし、然れども動物と云ふ時には、其内容甚だ乏しく、唯漠然と運動する生物と樣に考へらるる外、人と云ひ、或は馬と云ひたる時に起る如き、數多き屬性を有する想念起らざるべし、内包とは、この内容の謂にして、外延とは、人間とか動物とか云ふ如き、其種類全般を包むべき範圍の謂なり、勿論この場合に於ては、動物と云ふ方、人間と云ふよりの其範圍大なり、されば内包と外延とは、反比例をなすと云ふ、即ち人と云ふより動物と云はん方、其範圍(外延)廣けれども、其内容(内包)は乏しくなるなり、尚一例を動物と生物とに取りて見るに、動物と云ふ方、生物と云ふより其内容豐富なれども、其範圍は狹小なるが如し、之生物中には、植物をも含むを以て也、かく人と動物との如く、一槪念が他槪念に包含せらるる時は、前者は後者に對して下位にありと云ひ、又人と馬との動物に對する如く、一槪念中に、甲乙兩槪念が、亙に獨立の範圍を有して存する時は、兩槪念は亙に同位なりと稱せらる、其他類似槪念、不同槪念、相關槪念等多くを數ふべし、最後に槪念は、科學的、又は哲學的原理を得るに缺くべからざるものなり。
- 英
- Conception
- 独
- Begriff
- 仏
- con-ception
海兵團條例
(かいへいだんでうれい)海兵團の設置及び其組織權限等を規定したる法規にして、□一各海港に海兵團を置くこと、□二海兵團は鎭守府に屬し、海軍下士卒の教育、訓練、艦船團、その他各部下士卒の定員補缺、軍港の守衛、兵員の徵募召集を掌る所なること、□三補缺員を設け、□四職員を團長、副長、徵募官、機關長、分隊長、軍醫長、及び主計長とし、尚必要に應じ海軍中尉、少尉、中機關士、少機關士、軍醫、及び主計を置くこと、□五團長以下各職員の職務を定めたるもの也。(二九年勅六〇號本條例參照)
- 英
- Regulation of marine Divi-sion
- 独
- Regulierung der Marinesoldaten-division
- 仏
- Règles de la division mari-time
界標
(かいへう)土地水面等の境界を標示する爲めに設置する標識を云ふ、民法第二二三條に曰く「土地の所有者は、隣地の所有者と、共同の費用とを以て、疆界を標示すべき物を設くるを得」と、又其二二四條に曰く、界標の設置、及び保存の費用は、相隣者平分して之を負擔す、但し測量の費用は、其土地の廣狹に應じてこれを分擔すと、以て界標の何たるやを知るべきなり。(民訴三五六條等參照)
- 英
- Boundary
- 独
- Grenzzeichen
- 仏
- Limite
開票
(かいへう)投票凾を開きて、投票の數を計算し、其結果を點檢することを云ふ、例へば國會、縣會、市町村會の議員の選擧、物品の竸賣等に於て、被選擧人の氏名を投票し、物品の價額を記載し、投票したる場合に於て開札するを云ふ、前者の用例は、衆議院選擧法第五一條乃至第六三條にあり、後者の用例は、市町村役場等に於て、物品の購買を爲す場合に、賣却人をして竸爭入札に付せしむる場合等之なり。
- 英
- Counting of ballots
- 独
- Bal-lotierenzählung
- 仏
- Compte des boules
開票區
(かいへうく)一開票所を設置する土地の區域を云ふ、即ち其區内に於ける投票は、總べて此開票所に於て開票すべきものとす、例へば、甲、乙、丙なる三地に於ける投票は、Aなる開票所に於て、丁戊巳なる三地に於ける投票は、Bなる開票所に於て開票するものとせんか、甲、乙、丙三地を包含するA地區、丁、戊、巳を包含するB地區は、各一開票區なるが如し、要するに開票區なる者は、彼の選擧區と同じく、一種の土地の區域にして、此の區域内に於て行はれたる投票は、全部同一開票所に於て開票計算せらるべきものなり、衆議院選擧法に於ては、此開票區は、郡市の區域によりて定め、一郡、又は一市を一開票區とし、每區に各一開票所を設くるものとせり。(衆議院議員選擧法五條參照)
- 英
- Counting district
- 独
- Zählungs-bezirk
- 仏
- Region de compter les boules
開票管理者
(かいへうくわんりしや)開票行爲を指揮管理する者を云ふ、例へば衆議院議員の選擧に於ける郡長市長の如し、開票管理者は、開票に關する一切の事務を掌るものにして、豫め開票所を指定告示し、投票後、郡に在りては投票凾の總べて到達したる翌日、市にありては投票の翌日、開票立會人立會の上、投票凾を開き、投票の總數と、投票人の總數とを計算し、開票立會人と共に、投票を點檢し、其有效無效を決定の上、之が結果を選擧長に報告する等の職責を有するものなり。(衆議院議員選擧法、五一條乃至六四條參照)
- 英
- Counting overseer
- 独
- Re-chnungsverwalter
- 仏
- Surveillant der compte des boules
開票所
(かいへうじよ)開票に關して、開票を行ふ場所を云ふ、例へば衆議院議員選擧の場合に、開票所は郡市役所、又は地方長官の許可を得て、開票管理者の指定したる場所に之を設け、開票管理者、豫めこれを告示するが如き場所是なり、衆議院議員選擧法第五一條及び第五二條に「開票所」と云ふは此用例なり。
- 英
- Counting office
- 独
- Rechnungs-amt
- 仏
- Office du compte des boules
開票立會人
(かいへうたちあいにん)投票の開票に立會ひて、之を監視する者を云ふ、衆議院議員選擧に關しては、地方長官、即ち府縣知事、選擧人中より三名以上七名以下を選任するものとす、但し市に於ては、投票立會人を以て開票立會人とし、特に開票立會人を選任せず、開票立會人は、正當の事由なくして、例へば病氣の爲に其職責を盡す事能はざるが如き事情なきに於ては、之を辭するを得ず、而して其職責は、開票に立會ひて之を監視するにあり、即ち□一投票の拒否に就きては、投票立會人に其意見を述べ、□二開票管理者と共に投票點檢し、□三開票管理者が投票の效力に對して有效無效を決定する場合にも、其意見を述ぶる等之なり。(衆議員議員選擧法三九條、五三條乃至五五條、五七、六〇條參照)
- 英
- Counting witnesses
- 独
- Re-chnungszeuge
- 仏
- Témoin du compte des boules
開票錄
(かいへうろく)開票の投票に關する一切の顚末を記載せる記錄を云ふ、例へば衆議院議員選擧の場合に於て、開票に關して生じたる一切の終始顚末を記載すべきものにして、此記載したる書面が即ち開票錄なり、開票管理者は、開票立會人と共に之に署名し、投票錄と併せて、議員の任期間、即ち普通の場合に於ては四個年、補缺選擧等の特別の場合には、其補缺員の任期間保存するの義務あるものなり。(衆議院議員選擧法六〇條參照)
- 英
- Minutes of counting
- 独
- Bal-lotierenzählungsprotokoll
- 仏
- Note du compte des boules
海務署
(かいむしよ)海事局官制に依り、海事局管轄區域内須要の地に之を置き、海事局の事務を分掌せしむる所なり、本署は、遞信大臣の管理に屬し、船舶職員、及び水先人の試驗、船舶の測度、檢査、其他法令の定むる所に從ひ、管海官廳の事務を掌る、其名稱、位置、管轄區域を擧ぐれば左の如し。
名解位置管轄區域
橫濱海務署武藏橫濱神奈川縣
(三浦郡、鎌倉郡を除く)
清水海務署駿河清水靜岡縣
鳥羽海務署志摩鳥羽二重縣
石卷海務署陸前石卷宮城縣、巖手縣
新潟海務署越後新潟新潟縣、山形縣
伏木海務署越中伏木富山縣、石川縣
(加賀國を除く)
神戸海務署攝津神戸兵庫縣、岡山縣
德島縣
高知海務署土佐高知高知縣
多度津海務署讃岐多度津香川縣
糸崎海務署備後糸崎廣島縣
赤間關海務署長門赤間關山口縣
(大島郡を除く)福岡縣、(筑前國を除く)大分縣
境海務署伯耆境鳥取縣、島根縣
(海事局官制第一一條參照)
- 英
- Marine business office
- 独
- Marinegeschäftsbureau
- 仏
- Office des af-faires maritimes
開院式
(かいゐんしき)□一帝國議會の識員召集後、勅令を以て議會開會の日を定め、天皇が、帝國議會の開會を命ずる法式を指すことなり、□二一般に院と名くる公私の法人機關、團體、營造物等の存立、又は其業務を開始する方式を開院式と云ふことあり、例へば病院の開院式と云ふが如し、要するに開院式なる語は、常に院と云ふ名稱を有するものが、その存立、又は活動を初むる方式を言ふものと解すべきなり。(議院法五條參照)
- 英
- Opening ceremony (of the Diet)
- 独
- Eröffnungsceremonie
- 仏
- Cérémonie d'ouverture (du Parlement)
項
(かう)或種類の事項の分類に關し、各個の事抦を稱して項と云ふを常とす、或は法令に於ける各法條中に、數多の格別なる規定ある場合に、此各規定を特に項と云ふことあり、例へば民法第何條第何項と云ふが如し、條約、規約、契約等に於ても、各條規を條項、又は項と云ふことあり、其他豫算に於ける各事項を項を云ふ、會計法に「欵項」とあるは此意味に外ならず。(會計法六條)
- 英
- Article
- 独
- Artikel
- 仏
- Article
衡
(かう)重量の標凖を衡と云ふ、その單位は、□一貫を以てし、貫の千分の一を匁と云ひ、貫の萬分の一を分と云ひ、貫の十萬分の一を厘と云ひ、貫の百萬分の一を毛と云ふ、□二又百六十匁を以て斤と云ひ、□三更に「メートル」法の衡は、左の比較によりて定む。(度量衡法三五條參照)
グラム毛〇、〇〇〇三七五「ミリグラム」
(〇、〇〇〇二七一萬五千分の四)
厘〇、〇三七五〇「センチグラム」
(〇、〇〇二六七一萬五千分の四十)
分〇、三七五〇〇「デシグラム」
(〇、〇六六六七一萬五千分の四百)
匁三、七五〇〇〇「グラム」
(〇、二六六六七一萬五千分の四千)
貫三七五〇、〇〇〇〇〇「デカグラム」
(二、六六六六七一萬五千分の四萬)
「ヘクトグラム」(二六、六六六六七一萬五千分の四十萬)
斤六〇〇、〇〇〇〇〇「キログラム」
(二六六、六六六六七一萬五千分の四百萬)
- 英
- Weight
- 独
- Wage
- 仏
- Poids
號
(がう)□一、事務の順位を示し、其他各個の事物を互に區別する爲めに、夫れ等の各事務に附する記號、又は稱號を云ふ、□二、法令に於ける各規定中に、數多の事項を列擧する場合に、此各事項を特に號と云ふ、例へば民法、商法、其他の法令に、第何條、第何項、第何號と云ふが如し、法令の用例に於ては、項中に各個の事抦を規定せられたる場合に、之を別ちて一號、二號とするが如し。
- 英
- Number
- 独
- Nummer
- 仏
- Numéro
更改
(かうかい)更改とは、舊債務を消滅せしめ、新債務を發生せしむことを云ふ、その種類三あり、□一目的の變更による更改、例へば米百俵を引渡すべき債務を消滅せしめて、金六百圓を仕拂ふべしと云ふが如し、□二債務者の交替による更改、例へば甲一が金二千圓を仕拂ふ債務を消滅せしめて、乙次が金壹千圓を拂ふべしと云ふが如し、この場合には、乙次と債權者との約束に依るものにして、甲一の承諾を要せずと雖も、甲一が之に反對を唱へたるときは、更改は成立せざるなり、□三債權者の交替による更改、例へば債權者丙三は、其地位を退き、丁吉が債權者となる如し、此場合には丙三、丁吉、及び債務者の約束を以て成立す、而して丁吉が其債權を第三者、即ち債務者以外の者に向つて、自己が債務者に對して債權を有する事を主張するには、確定日附ある證書を以て其契約を證明せざるべからず、又此場合に、債務者は前債權者丙三に對し、貸金ありしを以て、自己の債務と差引勘定を爲す心組なりしを理由として、丁吉に對して差引勘定を主張する事を得ず、斯かる差引勘定を主張せんと欲せば、更改を爲す當時に、丁吉に對して、自分は後日或は差引勘定を爲すやも知れずと、豫め斷り置かざるべからず、若し又更改にして成立せず、又は取消されたるとき、例へば債務者が未成年者なるの故を以て、其更改を取消したるが如き場合には、更改によりて消滅したる舊債務は、消滅せざりしものとなるなり、其他舊債務に抵當權を設定し置きたるが如き場合に、其債務を消滅せしめて、新債權を發生せしむれば、其抵當權は、更改によりて當然に消滅するを常とす、但し特に其抵當權を更改によりて、新に生じたる債權に移すことを得るものなり、然れども若し其抵當物が、債務者以外の者が供したる場合には、其者の承諾を得る事を要す、確定日時、取消、未成年者の部を見よ、(民五一三條乃至五一八條參照)
- 英
- Substitution
- 独
- Neuerung
- 仏
- Novation
更改契約
更改契約とは、舊債務を消滅せしめ、新債務を發生せしむることを内容とする契約なり、故に更改契約は、有償にして且つ片務契約の一種なりと云ふべし、從つて更改に於ける當事者の意思は、彼の代物辨濟に於ける當事者の意思と異るを見る、蓋し後者は、單に債務を消滅せしむるにあればなり、又更改契約は、債權の讓渡と異るものとす、何となれば債權の讓渡は、舊債務の移轉なるも、更改契約は、舊債務の消滅と新債務の發生とを内容とすればなり。(民五一三條以下參照)
- 英
- Contract of novation
- 独
- Neuerungsvertrag
- 仏
- Contrat de nova-tion
梗槪
(かうがい)摘要と云ふに同じ、敷衍せられたる思想の要點を摘出して、全體の意義を簡單に表明するをいふ、俗に「あらすぢ」と稱するもの是也、例令ば一大著述、又は演説等の梗槪といへば、その細密に論述せられたる枝〓的部分、又は廣く考證せられたる事實の例證等は省略し去り、唯其本幹と認むべき部分のみを簡明なる形に現せるものを謂ふ。
- 英
- Outline
- 独
- Umrisz
- 仏
- Contour
航海奬勵法
(かうかいしやうれいはう)明治二九年遞信省令第一五號を以て公布せられたるものにして、其内容は、航海奬勵金を受くべき者の資格、受くべき船舶、其船舶は總噸數一千噸以上にして、一時間十海里以上の最強速力を有し、遞信大臣の定むる造船規程に合格したる鐵製、又は銅製汽船に限る、(明治二九年十月一日以後、帝國船籍に登錄の際、五ケ年を經過したる外國製造の船舶、製造後十五ケ年を經過したる船舶、帝國政府の命令に依れる航路に使用する船舶は、奬勵金を受くるを得ず)其給與額は、總噸數一噸、航海里數一千海里に就き二十五錢を支給し、總噸數五百噸を增す每に其百分の十、最強速力一時間一海里を增す每に其百分の二を增給す、但し總噸數六千五百噸以上、又は最強力一時間十八海里以上の船舶に對しては、總噸數六千噸、又は最強速力一時間十七海里の船舶に對する割合に依て支給す、奬勵金は、製造後五ケ年を經過せざる船舶に對しては、全額を支給し、五ケ年を經過したる船舶に對しては、一年每に其百分の五を減ずる等其主要なる點なりとす。
- 英
- Law of navigation subsidia-ry
- 独
- Gesetz der Schiffahrtsbeförder-ung
- 仏
- Loi de l'auxiliaire de la naviga-tion
航海獎勵金
航海奬勵金とは、帝國臣民の航海業奬勵の爲め、航海奬勵法に依りて、帝國臣民、又は帝國臣民のみを社員、もしくは株主とする商事會社にして、自己の所有に專屬し、帝國籍に登錄したる船舶を以て、帝國と外國間、又は外國諸港間に於て、貨物旅客を運搬する者を奬勵するが爲めに下附する金錢なり。(航海奬勵法參照)
- 英
- Navigation bounty
- 独
- Schiffahrtsprämie
- 仏
- Don pour la na-vigation
高價競買の申込
(かうかきやうばいのまうしこみ)或物の竸賣に就きて、竸買申込價格中、一層高價なる竸買價格の申込を云ふ、例へば某家屋を競賣に付したるに、甲は一萬圓にて竸買せんと申込み、乙は一萬一千圓にて競買せんとの申込を爲したりとせよ、乙が一萬一千圓にて竸買せんとの申込は、乙の一萬圓に對して高價竸買の申込と云ふべきなり、竸賣法第一條に曰く、「竸買の申込は、他の高價竸買の申込みありたるとき、又は竸落を爲さずして竸賣を終了したるときは、當然其效力を失ふ」と、即ち高價竸買の申込ありたるときは前の竸買の申込は、其效力を失ふに至るものなり。
- 英
- Offer of more charge-able auction
- 独
- Übergebot
強姦罪
(がうかんざい)強姦に就きては、我刑法何等の定義を下さずと雖も、法の全體より推定すれば、葢し暴行又は脅迫に依る姦淫と云ふを得べし、分説すれば、□一強姦の所爲あること、□二婦女に對すること、故に男子に對しては、如何なる場合と雖も、強姦罪なしとす、十二歳以上の婦女と、十二歳以下の婦女とによりて、處分を異にす、十二歳以上の女を強姦したる者は輕懲役、十二歳未滿の女を強姦したる者は重懲役に處せらる、何れも被害者、又は其親屬の告訴に待ちて始めて刑罰に處せらるるものなり、若し又強姦に依りて癈篤疾に致したる者は、有期徒刑に處せらる、死に致したる者は、無期徒刑に處せらるべし、強姦に依りて人を癈篤疾に致し、又は死に致したるときと雖も、被害者又は親屬の告訴を待つにあらざれば、其罪を論ずることを得ざるや否やは、學者に異説あり、大審院にては、告訴を待たずして、其罪を論ずることを得と、判決したることあり、其他議論ある點は、□一夫は妻に對して強姦を犯すことを得るや、□二女子は強姦罪の主體として罰せらるることあるや、即ち是也、一に就きては、強姦罪成立することなきを普通とし、二に就きては共犯、又は間接正犯の場合に、女子と雖も其主體たるを得べしとするを通説とす。(刑一七六條乃至一七九條參照)
- 英
- Violation of woman ; Rape
- 独
- Notzucht
- 仏
- Violence
效果
(かうくわ)或る行爲、もしくは行爲以外の事實に依りて得たる法律的效力を云ふ、例へば吾人が、私法上の效力を生ぜしむるの意思を以て爲したる行爲に對して、法律が其欲せる一定の效力を與ふる場合の如き、吾人が不法行爲、即ち故意、過失を以て、他人の權利を害したるが故に、之に一定の制裁を加へらるるが如き、工業上の物品及方法に關し、最先の發明を爲したる者が、特許を出願したる場合に、物品の發明に係る特許は、特許を受けたる者に限り、その發明の物品を製作、使用、販賣、若くは擴布するの權利を與へ、方法の發明に係る特許は、特許を受けたる者に限り、之を使用もしくは擴布するの權利を有せしめ、其特許の效力は、同一方法に依りて、製作せられたる物品にのみ及ぶが如き、戸主の死亡によりて家督相續を開始し、戸主權が相續人に移轉するが如き、破産の宣告によりて、衆議院議員選擧權を失ふが如きは、等しく效果なり、要するに具體的事實、即ち吾人の行爲、行爲以外の事實、例へば出生、死亡等に、法律上の效力を與ふるを效果と云ふに外ならざるなり。(民一、七〇九、九八六條、特許法一條參照)
- 英
- Fruit
- 独
- Frucht
- 仏
- Fruit
交換
(かうくわん)當事者が、亙に金錢以外の財産權を移轉することを云ふ、例へば米一俵と麥二俵とを取換ゆるが如し、故に一方が米を與へ、他方が金錢を與ふるは、交換にあらずして賣買なり、□一兩換、例へば紙幣と金貨との交換の如きと、□二一方が織物を與へ、他方が木綿と金錢とを與ふる場合、この性質に關しては議論あり、然れどし我民法に依れば、交換に就きては、何れも賣買の規定を準用するものなる故に、之等は畢竟机上の空論に過ぎずして、實益少きものなりとす。
- 英
- Exchange
- 独
- Tausch
- 仏
- Échange
交換契約
交換契約とは、當事者が亙に金錢にあらざる財産權を移轉する、所謂交換を約する契約也、故に交換契約は、□一有償契約なり、□二双務契約也、□三當事者の一方が、他の權利と共に、金錢の所有權を移轉する事を約したるときは、其金錢に就きては、賣買の代金に關する規定を準用すべきもの也、元來此種のものは、純然たる交換契約にあらざるも、前述の如く其性質如何を論ずるは、畢竟無益に過ぎざるが故に、重ねて茲に論述せず。(民五八六條一項及二項參照)
抗告
(かうこく)抗告とは、裁判所の處分、即ち決定に對する上訴方法にして、控訴及上告の如く、實體的の權利關係を裁判するものとは異る、從ひて抗告は、控訴上告の如く、當事者の權利關係の存否を爭ふ者にあらずして、裁判所に對し其處分の當否を爭ふものとす、例へば訴訟費用額の決定に對し、不服の申立を爲すが如し、上記の如く判決に對しては、之を爲すを得ずして、常に決定命令に對するものなり、抗告は一面に於ては、控訴、及び上告を以て、當事者の利益を保護し得ざる所を補充する不服申立法にして、他の一面に於ては、控訴、及び上告に於ける附帶の爭點を分離し、控訴審、及び上告審に於ける訴訟材料を簡單に歸納する方法たるものとす。(民訴四五條乃至四六六條、刑訴二九三條乃至三〇〇條)
- 英
- Complaint
- 独
- Einrede
- 仏
- Plainte
抗告期間
(かうこくきかん)抗告期間とは、抗告を爲し得る期間を云ふ、其期間は、刑事訴訟と民事訴訟とによりて異る、□一刑事訴訟に於ては、裁判の送達ありたる日より三日とす、例へば一月一日に送達ありたる時は、四日迄に爲さざるべからず、□二民事訴訟に於ては一定せず、各場合に依りて異る、唯即時抗告の場合には、七日以内也とす、期算點は、送達の翌日より始る、例へば一月一日に送達ありたる時は、八日迄に爲さざるべからず、イ、缺席判决の申立を却下する决定に對して抗告爲し、ロ、不動産の強制執行の場合に、竸落の許否に就きて利害關係人が、其决定によりて損失を被るべき爲めに抗告を爲し、ハ、除權判決の申立を却下する決定に對して爲すべき等、以上の場合には、裁判の言渡より、七日の期間に之を爲さざるべからず、即ち一月一日に裁判言渡ありたる時は、未だ送達なくとも八日迄に抗告を爲さざるべからざるが如し、若し即時抗告にあらざるときは、裁判の終結迄、何時にても爲し得るものなり、但し訴訟手續の進行により、抗告の目的なきに至りたる場合に於て、之を爲し得ざるは勿論なり。(民訴四六六條、刑訴二五九條參照)
- 英
- Time of complaint
- 独
- Ein-redefrist
- 仏
- Délai de plainte
抗告裁判所
(かうこくさいばんしよ・こうこくしよ)抗告裁判所とは、抗告を裁判する裁判所を云ふ、即ち不服を申立てられたる裁判を爲したる裁判所、又は裁判長若くは、豫審判事の屬する裁判所に對する直近上級裁判所之也、例へば區裁判所の決定命令に對しては地方裁判所、地方裁判所の決定命令に對しては控訴院、控訴院の決定命令に對しては大審院なるが如し。(裁構法二六、三七、五〇條參照)
- 英
- Court of the complaint pro-testation
- 独
- Beschwerdegericht
- 仏
- Tribunaux de protestation
抗告審
(かうこくしん)抗告に關する抗告裁判所の爲す審理を云ふ、例へば地方裁判所が、區裁判所の決定命令に對して爲したる抗告、控訴院が、地方裁判所の決定命令に對して爲したる抗告、大審院が、控訴院の決定命令に對して爲したる抗告が、適法なるや否やを調査審判するが如し。(民訴六八二條の三)
- 英
- Complaint instance
- 独
- Ein-redeinstanz
- 仏
- Instance de protesta-tion
抗告狀
(かうこくじよう)抗告狀とは、民事訴訟法により、抗告人が抗告を爲す方法として、其不服なる裁判を爲せし裁判所、又は裁判長の屬すち裁判所に差出す書面也、其文例左の如し。抗告狀
府縣郡市町村番地平民(士族)職業
抗告人氏名
何々ノ決定(命令)ニ對スル抗告
理由
一抗告人ハ何裁判所明治何年何月何日第何號何々事件ニ付「何々」ノ申請ヲ爲シタルニ同裁判所ハ「何々トシテ」却下セラレタリ然ルニ依告人ノ申請ハ「何々」ノ理由アルモノナルニ依リ之ヲ却下セラレタルハ不服ナリ
一定ノ申立
一右ノ理由ナルヲ以テ前却下ノ決定ヲ取消シ「何々」ヲ命ズルコトノ裁判相成度候
右及抗告候也
附屬書類
一何々何通
年月日右
氏名印
何裁判所長判事氏名殿
- 英
- Written protestation
- 独
- Be-schwerdeschrift
- 仏
- Lettre de protesta-tion
抗告人
(かうこくんに)抗告人とは、民事訴訟法、又は刑事訴訟法によりて、抗告を爲し得る權利者を云ふ、民事訴訟法に於ては、裁判により不利益を受けたる訴訟當事者、又は利害關係人なり、刑事訴訟法に於ては、檢事、被告人、證人、鑑定人なり。(民訴四五五、二五三、六八〇、七六九、刑訴法一〇八、一三六、一七二條參照)
- 英
- Protestant
- 独
- Einredner
- 仏
- Plaignant
抗告申立書
(かうこくもうしたてしよ)刑事々件に就き、抗告申立人が抗告を爲す方式として不服の裁判を爲したる裁判所、又は豫審判事に差出す書面也、其書式左の如し。(刑訴二九六條參照)
抗告申立書
何縣何郡何市町村何番地平民何業
刑事被告人何某
右被告ニ對スル何々被告事件ニ付何地方裁判判豫審判事ハ被告ヲ同裁判所重罪公判ニ付スル旨豫審終結決定有之候處本件被告事件ハ何々ノ理由ニ依リ明瞭ト相成重罪公判ニ付ス可キモノニ無之候仍テ抗告申立候也
右
年月日何某□印
何控訴院長判事氏名殿
交亙計算
(かうごけいさん)商人間、又は商人と非商人との間に、平常取引を爲す場合に於て、一定の期間内の取引より生ずる債權債務の總額に就き、相殺を爲し、其殘額の支拂を爲すことを約する契約なり、而して何等の形式を要せず、即ち口頭にて約するも書面にて約するも毫も妨なし、唯平常取引を爲す場合に於て、一定の期間内其取引より生ずる勘定を、差引計算するを要するものなるが故に、單に二回のみの取引を差引勘定するも、交亙計算と云ふべからず、從ひて例へば、商人間にて一方は米を賣り、一方は酒を賣り、其勘定を差引計算するも、其取引を爲す場合にあらざれば、所謂交亙計算として、特別の法則に依るべきものにあらず、次に本契約を爲したるときは、各其契約を無視し、前例の如き場合に米代のみ、又は酒代のみを請求することを得ざるものなり、若し其期間を定めざるときは、之を六個月とす、期間を定めたるときは、一ケ月にても二ケ月にても可なるは勿論なり、又各當事者は、各項目を記載したる計算書を承認したるときは、其各項目に就き、異議を述ぶるを得ず、もし錯誤又は脱漏あるときは、此限りにあらずとす、實際に於てもS.E.&.O.と書し、異議を述ぶることを留保するを普通とす、終に注意すべきは、各當事者、即ち交亙計算の約束を爲したる者は、何時にても其契約を廢止するを得ること是なり、此場合には、直に差引計算を爲し、其殘額を支拂ふの義務を負ふものなり、破産、又は家資分散の宣告ありたるときは、直に解約せらる。(商二九一條乃至二九六條、特に二九二條參照)
- 英
- Account current
- 独
- Kon-tokurrent
- 仏
- Compte courant
行使能力
(かうしのうりよく)權利を行使する事を得る法律上の能力を、特に權利の享有能力に對して、行使能力と云ふ、換言すれば、權利者が義務者に對して、其權利を實行することを得る法律上の資格を云ふなり、債權を有する者が債務者に對して、債權の目的たる給付、即ち行爲、不行爲を請求し、物權を有する者が、他人を排斥し、自己の任意に其目的物に對して、使用、收益、處分を爲すが如き能力、即ち此例也凡そ權利を亨有する者は、原則として同時に之を行使するの能力をも有するを常とす、然れども或場合には、權利亨有能力ありと雖も、之を行使する能力を全然有せざる事あり、例へば幼者、若くは全く意思を欠缺する者是なり、又之を制限せらるる、即ち一部を有せざることあり、公權に關しては、槪括的にかかる制限を定めたる法規なきを以て、具體的に各場合に依りて、法規の性質を案して之を知り得べし、私權に關しては、民法を以て、一般に或種の人に對して、この行使無能力者を定めたり、所謂限定無能力即ち是なり、私權に關しては、民法を以て無能力と規定せられざる者は、行使能力を有するを普通とし、唯特別の理由に基き、私法上の權利の行使を制限したるものなり、尚無能力の部を見よ。(辨護士法第一五條等參照)
- 英
- Exercising capacity
- 独
- Übungsfähigkeit
- 仏
- Capacité de l'ex-ercice
行商
(かうしよう・ぎやうしよう)商人自ら各顧客の居所に就きて、商品を販賣するを行商と云ふ、一定の店舖に於て行ふ營業に相對する名稱なり、彼の富山の賣藥業者の如きは其例にして、全國に行商す、斯くの如き方法に依りて、營業を爲す商人を行商人と云ふ、商法第八條の「戸々に就き、又は道路に於て物を賣買する者」市制第九三條の「行商」賣藥規則第七條の「自ら行商し」等其用例なり。
- 英
- Peddler
- 独
- Hausierer
- 仏
- Col-porteur
向上
(かうじやう)宗教上に於ては、吾人が執著の念を離れ、邪を去り德を修めて、只管精進することをいふも、一般に向上とは、現在の狀態程度を不完全なり、或は不滿足なりとし、美化し善化せられたる理想に向ひて、精進勵行するをいふ、故に向上と云ふ時は、少くとも明確なる理想と、之を實説せんとする努力とを兼備せざるべからす。
- 英
- Aspiration
- 独
- Aspiration
- 仏
- Aspiration
強竊盜
(がうせつたう)強竊盜とは、強盜、竊盜の畧語にして、所謂強盜とは、暴行強迫を以て他人の財物を竊取する事を云ひ、竊盜とは、不法に他人の所有物を自己の物とし處分するの意思を以て、暴行、脅迫、又は詐欺、恐喝の手段に依らず、他人の所持より自己の所持に移すを云ふ、茲に暴行、強迫、又は詐欺、恐喝の手段に依らずと云ひたるは、竊取か暴行強迫によりたるときは強盜となり、詐欺恐喝によるときは、詐欺取財、又は恐喝取財を構成すべければなり。(舊刑三九三條、強盜罪、竊盜罪、詐欺取財、恐喝取財罪の部參照)
交戰
(かうせん)戰爭と云ふに等しく、國家と國家、又は交戰國と交戰團體との間に於て、公然兵力を以て爲すの爭鬪なり、□一兵力を以てする爭鬪なるが故に、兵力に依らざる爭鬪は、如何に大なる爭鬪と雖も、之を戰爭と云ふべからず、所謂兵力とは、常に戰鬪の目的の爲めに養成せられ、公然武器を取つて立つ軍隊、又は軍艦、及び之に準ずべきものなり、□二國家と國家、又は國家と交戰團體との間に於ける爭鬪なるが故に、例へば日本と露國と戰爭を爲すと云ふも、日本人と露國人との間に於ける爭鬪にあらざる事明なり、茲に交戰團體と云ふは、交戰權の主體として、國際法各國家より承認せられし團體を云ふ、普通反亂團體にして、遂に國家の萌芽と云ふべきもの等は之に屬す。(詳細は戰爭、兵力の部參照)
- 英
- War
- 独
- Krieg
- 仏
- Guerre
交戰行爲
交戰行爲とは國家と國家、又は國家と交戰團體との間に於て、公然兵力を以てする敵對行爲なり、夫れ戰鬪行爲たるや、千差萬別一々之を揭ぐるを得ずと雖も、或は沿岸を砲擊することあるべく、砲臺城塞の突擊砲攻もあるべく、さては斥候、偵察、沿岸封鎖、分捕、課金、徵發等苟も戰爭の目的を達する範圍内に於ては、之を爲すを得るなり、唯茲に注意すべきは、作戰手段は其方法の如何を問はず、或は殺傷、或は敵有財産の破壞等、見て以て平時の不法行爲と爲すことを敢てするを得べしと雖も、唯仁慈、博愛、人道の爲、殘酷手段を採るを得ざるものとす、例へば毒殺、猛獸を使用するが如き、其他詭計、僞旗、或る程度の武器(ダムダム彈、又は鉛彈の如き)等の使用に就きては、之を禁止せらるるもの也。(尚戰鬪手段、赤十字條約等の部參照)
- 英
- Hostile action
- 独
- feindliche Handlung
- 仏
- Acte hostile
交戰主體
(かうせんしゆたい)交戰主體とは、戰爭行爲の當事者たるものを云ふ、交戰國家、及び交戰團體は、茲に所謂交戰主體たるものとす、國家に就きては「交戰國」於ける説明を見よ、所謂交戰團體とは、國家にあらざるも戰爭主體として認められたる團體を云ふ、分説すれば、□一一定の根據地を有し、□二戰爭に耐ふる實力を有し、□三戰爭法規を遵守する能力を有し、□四交戰團體として本國、又は第三國より承認せられたるものを云ふ、例へば本國に反して、獨立せんと欲するが如き場合に起る團體、又は漸々に國家とならんとして立つ團體の如し、茲に所謂交戰團體は、國家にあらざるが故に、交戰團體の承認と、國家の承認とは、其性質、效果に於て、著しく異るもの也、國家の承認あれば、その團體は國家となるも、交戰團體の承認は、交戰主體として認めらるるのみにして、未だ國家となるものにあらず、國家の承認は、建國の當初に遡りて其效力を生ずるも、交戰團體の承認は、承認の時より效力を有するに過きず。
- 英
- Subject of war
- 独
- Subjekt des Krieges
- 仏
- Subjet de la guerre
交戰國
(かうせんこく)交戰國とは、國際法上、交戰主體たる國家を云ふ、凡そ一定の領土を有し、唯一の權力によりて統治せらるる人民あるときは、之を國家と云ふは國法上の觀念にして、國際法に於ても亦然り、唯國際團體の一員たるにあらざれば、國際法上の國家にあらず、即ち文明國にあらざれば、國際法上の國家と云ふ能はざるなり、或は曰く、苟も國法上の國家たる以上は、國際法上に於ても、亦國家也と云はざるべからず、文明國にあらざれば、國際法上の國家にあらずと云ふが如きは、歐米學者の一種の偏見なりと、然り、理論上に於ては、爾かく解するを正當とすべきに似たりと雖も、今日の狀態に於ける國法上、國家の觀念と、國際上に於ける國家の觀念とは、別異のもの也との説有力なり、故に爾か解するを妥當とせん、從つて國際團體に加入せざる國家は、假令現實に戰爭行爲を爲すも、國際法上より見れば、交戰主體、則ち交戰國にあらず、其戰爭は一の私鬪に過ぎずと看做さる、茲に注意すべきは、交戰國と看做さるると否とは、結果に於て大なる差あることこれなり、國際法上の國家にあらざる以上は、國際法の適用を受けざることとなるが故に、戰爭法規の適用をも受けざることとなり、殊に第三國は、之が爲め中立義務を負はずして、戰時禁制に關する行爲を爲すも、何等の制裁を受けざることとなるべし。
- 英
- Belligerent powers
- 独
- Kriegs-macht
- 仏
- Puissances belligérantes
交戰者
(かうせんしや)交戰者とは、交戰行爲に從事する人を云ふ、即ち、□一戰鬪員、軍隊中戰鬪に從事すべき者、□二非戰鬪員、軍隊中にあるも戰鬪に從事せざる者、例へば從軍記者、僧侶等是なり、而して戰鬪員には下の者を含む、イ正規兵、一國の編制する正式の兵士なり、ロ民兵、平生軍隊を編制せず、事起るに及び、人民を召集して、兵器を執り敵に當らしむる兵なり、ハ義勇兵、國に正規兵あると否とを問はず、有志の徒團結して、自國の爲に、又は外國のために戰ふ者なり、ニ地方防禦兵、敵の接近するに當り、急に立ちて之に對抗する一地方の團結を謂ふ、何れも交戰者なるを以て、敵に捕獲せられたる場合には、俘虜としての取扱を受くる權利あるものとす。(一八九九年、海牙會議に於て决議せる三條約中の第二條約の附屬書、陸戰の法規慣例に關する規則一條乃至三條參照)
- 英
- Belligerent person
- 独
- krieg-führende Person
- 仏
- Personnes bnllige-rantes
強盜
(がうとう)強盜とは、暴行、脅迫に依りて、財物を奪取するを云ふ、以下分説すれば、□一犯罪の目的物は、他人の財物たる事、他人の財物とは、自己の所有にあらざる財産物件の意味にして、自己の所有物と雖も、質物として他人に引渡し、又は官署の命令例へば差押によりて、他人の監督にある間に、暴行強迫を以て之を奪ふは強盜也と解す、大審院判例又同じ、□二人を脅迫し、又は暴行を加へて、他人の保有を奪ふ事、此暴行、脅迫なるの點に於て、竊盜と異る、所謂暴行とは、人に對して不法に體力を行使することを云ふ、故に帶に挾まれたる懷中時計を奪ふが爲めに、時計の鎖を切り取るが如き、馬を奪はんが爲めに、馬に對して暴行を加ふるが如き、物に對するの暴力は、茲に謂ふ暴行にあらず、されど直接に暴行を加へずと雖も、例へば戸を閉して人を一室に押込め、梯子を取外して人を二階に押込むが如きは、所謂暴行の一種なり、次に脅迫とは、危害を加ふることを示し、相手方をして信用せしむるを云ふ、其危害は、行爲者に於て、眞實危害を與ふるの意思あること、其手段が眞實に危害を加ふに足る事を要せず、例へば彈丸を込めざるピストルを以て人に擬するも、尚脅迫と云ひ得るが如し、犯人が、以上の脅迫を以て、財物を奪ふの手段として行使したるときは、強盜罪を成立せしむ、されども他人の財物を奪ふの豫備行爲として、甞て人に對して、暴行、脅迫を加へ置くも強盜となることなし、又例へば他人の所有物を奪ふ手段として、或人を脅迫し、金庫の合鍵を作らしめ、其合鍵を以て金庫を開き、財物を竊取するも強盜にあらず、次に暴行脅迫は、財物奪取の手段なるが故に、必ずしも物の所持者に對して暴行脅迫を爲すにあらざれば、強盜とならずと云ふにあらず、されど物の竊取中、家人の目覺めんことを恐れ、赤兒を殺害する如きは、強盜と云ふ限りにあらず、又竊盜の目的を以て、兇器例へば鐵砲、仕込杖等を携へ、屋内に忍び入りたるに、犯人の知らざる間に家人自ら大に恐怖し、爲めに竊盜を拒ぐことを爲さざりし如きは、暴行脅迫の手段なし、故に持兇器竊盜たることを得るも、所謂強盜にあらざるなり、然れども、藥酒等を用ひて人を醉迷せしめて、財物を竊取したるも、被害者、又は其他の者より迫跡せられ、其取戾さるるを拒ぐ爲めに、暴行脅迫を爲したる者は、強盜を以て論ぜらるるものとす、強盜は、輕きは輕懲役、重きは無期徒刑、死刑に處せらる、其重きは、強盜殺傷罪、強盜強姦罪の如き是なり、減刑に依りて輕罪の刑に處せらるる者と雖も、六ケ月以上二年以下の監視に付せらる。(刑二三七條乃至二四一條、舊三七八條參照)
- 英
- Robber
- 独
- Räuber
- 仏
- Voleur à l'aide de violence
強盜罪
強盜罪とは、強盜を爲す犯罪にして、即ち他人の財物を暴行脅迫の手段に依りて奪取するを指す、通俗、強盜と云ひ、強盜罪と云ふ、些の區別なきに似たりと雖も、法理上に於ては、□一強盜は、暴行脅迫による他人の財物奪取行爲其ものを云ひ、□二強盜罪とは、強盜を爲せる犯罪を云ふの差あるものとす。(前項強盜の部參照)
強盜強姦罪
(がうとふがうかんざい)強盜強姦罪とは、所謂加重強盜罪の一種にして、即ち強盜し、且つ婦女を強姦するの罪なり、所謂強姦とは、強ひて姦淫するを指し、敢て強盜強姦罪と雖も、財物奪取の目的の爲に強姦するを要せず、唯強盜の現場に於て、又は現場より婦女を跡迫して強姦したる場合を意味するなり、されど本罪は強盜強姦と云ふ一個の犯罪にして、強盜と強姦との二罪俱發にあらざるを注意せよ、本罪は無期徒刑に處せらるるを普通とし、強姦の結果、婦女死したるときは、普通強盜罪の法條に從ひて死刑に處せらるべきものならん、猶強盜強姦罪は、普通の強姦罪の如き申告罪の一種にあらざるに注意すべし。(刑二四一、舊刑三八二條參照)
強盜殺傷罪
(がうとうさつしようざい)強盜殺傷罪とは、強盜を行ふに際して人を殺傷する罪を云ふ、從つて傷人行爲が、強盜の手段となりたる場合なると、強盜の現場に於て爲したるとを問はざるものなり、強盜の現場とは、強盜の著手後、實行を終る迄は勿論、現に行ひ終りたる際、及び強盜犯人が、其現場より迫跡せられて逮捕、又は臟物の取戾を免るる爲めに、人を傷したる場合をも含むものとす、傷人に就きては、人を創傷するの意思あることを要するや、將又過失に依りて、即ち創傷の意思なきも妨げなきやは異論の存する所、大審院の判决は、其強奪の所爲よりして人を傷したるときは、毆打の意思の有無を問はず、強盜傷人罪を構成すと判决せられたり、(三五年六月二三日)又強盜の著手後、人を殺傷したるも未だ財物の強取を遂げざる場合は、強盜殺傷罪の未遂なるや、既遂なるやに就きては異論あり、通説は、苟も強盜の著手以上の程度に於て殺傷行爲ある時は、常に本罪の既遂を以て論ずべく、又殺傷行爲は未遂なるも、強盜行爲が既遂なれば、等しく本罪の既遂を以て論ずべしと、茲には此説を採用せず、等しく之を未遂とせん。(刑二四〇條、舊刑三八〇條參照)
- 英
- Robbery and murder
- 独
- Raub und Mord
- 仏
- Vol causant les blessures ou la mort
耕地整理
(かうちせいり)耕地整理とは、耕地の利用を增進する目的を以て、其所有者共同し、土地の交換、分合、區劃形狀の變更及道路、堤塘、畦畔、溝渠の變更、廢置及之に伴ふ灌漑排水に關する設備、竝に工事を行ふを謂ふ、凡そ農業改良の事たる、其方途多端なりと雖も、耕地整理の如き、實に根本的農業改良の事業たり、從つて極めて必要なる國家事業なりとす、我國に於ける三九年六月末日迄の耕地整理の現狀は、實に下の如し、耕地整理を爲したる個所は、千四十二個所、此面積五萬四千百三十七町步、其費用、六百二十六萬六千圓、即ち一段步十一二圓の割合なり、現在我國の田畑は、五百萬餘町步にして、田は二百八十萬町步あり、之を比較するに、その耕地整理を要すべき田畑の如何に多きかを知るなり、從ひて政府が鋭意其奬勵に努めつつあるは、誠に故なきにあらざるなり。
- 英
- Arrangement of Land
- 独
- Anordnung des Landgutes
- 仏
- Arrange-ment de la terre
耕地整理法
耕地整理法は、明治三二年法律第八二號を以て公布せられ、同三六年法律第一一號、及び同三八年法律第三一號を以て改正せられたるものなり、其内容は、□一耕地整理の意義、□二整理地區、即ち耕地整理を爲すべき區域に於ける關係、□三整理施行を爲したる爲、土地或は建物に就き登記、又は登錄を爲すときは、登錄税を免除すること、□四整理施行を發起するには、イ整理地區内に於ける、土地所有者の三分の二以上の同意あること、ロ整理地區内に於て、同意者の所有する土地の面積、整理地區の總面積の三分二以上なること、ハ整理地區内に於て、同意者の所有する土地の地價、地區の地價總額の三分の二以上なるを要すること、□五發起人は、設計書、及び規約を作り、地方長官を經由して、之を農商務大臣に差出し、發起の認可を申請すべきこと、□六整理委員三人以上なるときは、委員長一人を亙選すべきこと、委員長は整理委員を代表すべきこと、□七整理土地に編入したる土地にして、先取特權、質權、又は抵當權の目的たる場合に於て、其所有者が補償として金錢を受取るべきときは、先取特權者、質權者、又は抵當權者は、其金錢に對して該權利を行ふを得る等、其主なるものなり。
耕地整理法施行細則
耕地整理法施行細則は、耕地整理を施行するに當り、必要なる細目を規定したるものなり、□一發起人たるには、土地所有者たること、但し地方の狀况により、特別の事情あるときは此限にあらず、□二發起人は、參加土地原薄、及び參加土地權利者名簿を調製すべきこと、□三發起人は、整理地區の屬する市町村内に、事務所を設くべきこと、事務所には、參加土地原簿、參加土地權利者名簿、設計書、規約及總會の决議錄を備へ置くべき事、□四整理施行の發起屆書には、下の事項を記載し、發起人之に署名捺印すべきことイ整理地區、及び之に隣接する土地の現形、畧圖、ロ整理地區内に於ける土地所有者の總數、整理地區の總面積、及び地價總額、ハ同意者の總數、其所有する土地の總面積、及び地價總額、ニ事務所の所在、□五總會の決議は、耕地整理法、又は規約に別段の定ある場合を除く外、出席したる參加土地所有者の議決權の過半數を以て之を爲し、參加土地所有者は、代理人を以て議决權を行ふことを得べく、但し代理人たるの資格は、參加土地所有者たるを要すべきこと、及び代理權を證する書面を發起人、又は整理委員に差出すべきこと等之なり。(三〇年農商務省令三二號參照)
- 英
- Regulations for the application to the law of arrangement ofland
- 独
- Ausübungsregulirung des Land-gutsanordnungsgesetzes
- 仏
- Règles pour l'application de la loi de l'arrangement de la terre
交通警察
(かうつうけいさつ)交通に關する危害を除去する爲に、人の自由を制限することを以て目的とする警察行政を云ふ、例へば道路の使用に對して、警察官署の許可を要するが如し、警覗廳官制第一八條に「交通警察」とあるは、其用語例の一なり。
- 英
- Communication police
- 独
- Verkehrspolizei
- 仏
- Police de com-munication
交通遮斷
(かうつうしやだん)特定の場所に限り、人の交通を禁止するを云ふ、其原因種々あり、例へば道路の修繕等の爲めなることあり、出水甚だ多く、橋梁防險に迫りしが爲めなることあり、傳染病豫危の爲めたることあり、即ち病毒の傳播を危ぐの手段として、患者を特に設けたる場所、例へば病院に入れ、又は該病の發生したる場所に、健康者の交道を禁ずるが如き是なり、或は刑罰執行の爲めに、犯人を監獄に留置し、其犯人の交通を禁ずることあり、之等皆交通遮斷の例なりとす、要するに或る目的を達する爲め、人の自由の交通を禁ずることを指すを普通とするも、其最も多きは、傳染病豫防等の場合に、健康者の交通を禁ずるを謂ふ用例なりとす。(傳染病豫防法參照)
- 英
- Cutting off the communication
- 独
- Verkehrssperrung
- 仏
- Séparation
行動
(かうどう)一般には、その働の性質の能動的たると、所動的たるとを問はず、或は又單に生理的なる、例へば反射的行動、無意的行動と言び得る如きものたるとを問はず、總じて吾人の體的意思の外的擧動を稱して行動と云ふなり、故にこの意義に於ては、猶動作と云ふに等しとす、然れども今日最も普通に用ひらるる某の行動を監視す、或は一國の行動を監視すと云ふが如く、種々抽象的意義を有し、單に體的動作と云ふべからざるが如し、此際は、寧ろ處置などと云ははんが如き意義を有し、又敵の行動を監視すなど云ふ時は、動作の意義を多く有するが如し、畢竟兩者の意義の區劃判然たるものにあらずと知るべきなり。
- 英
- Action
- 独
- Action, Tätigkeit
- 仏
- A ction
高等行政官
(かうとうぎやうせいくわん)高等官たる行政官を云ふ、官吏に文官と政務官とあり、文官に行政官と司法官とあり、司法官とは、民事、刑事の裁判に爲す官吏なり、行政官とは、民事、刑事の裁判を除く外、一切の行政を實行する官吏なり、司法官は、高等官のみにして、普通文官なるものなしと雖も、行政官には高等官と、普通文官との區別あり、普通文官とは、判任官にして、高等官とは勅任官、奏任官を包含するものなりとす、即ち高等官一等、二等は勅任官にして、高等官三等以下は奏任なりとす。(高等官等及俸給令參照)
- 英
- Higher administrative official
- 独
- höherer Verwaltungsbeamte
- 仏
- Officier haut administratif
高等警察
(かうとうけいさつ)公安警察と云ふに同じ、要するに公共の安寧、秩序に對する危害防止を目的する警察を云ふなり、例へば出版、集會、結社に關する警察の如し、此等の警察事務は、通俗之を高等警察係と稱す。(公安警察の部參照)
- 英
- Higher police
- 独
- höhere Polizei
- 仏
- Police haute
高等保安警察
高等保安警察と云ふは、單に保安警察、又は高等警察と云ふと同じく、一般國家、又は公共の安寧秩序に對する危害を防止する目的を以て、人の自由を制限する警察なり、通俗に國事犯者、社會主義者等の如き者を取締る一種の警察事務を、高等保安警察事務と云ふは、當れるものと云ふべし。(保安條例參照)
- 英
- Higher peace preservation police
- 独
- Obersicherheitspolizei
- 仏
- Police haute de salut public
更任
(かうにん)改任と云ふと同じく、現に或る任務に任ずる者を解任して、新に他の者をして任務に就かしむることを云ふ。(改任の部參照)
- 英
- Remove of service
- 独
- Entvern-ung des Dienstes
- 仏
- Changement du service
行犯
(かうはん)積極的に或る行爲を行ふことが犯罪たる場合に、之を稱して行犯と云ふ、凡そ吾人の行爲は、積極的に現はるることあり、消極的に現はるることあり、例へば刀を振つて人を殺すが如き、引金を引きて人を銃殺するが如き、何れも皆積極的に現はれし吾人の行爲なり、之に反して、例へば赤兒に乳を與へずして之を餓死せしめ、或は今や將に河中に落ち入らんとする人あるを見て、之に匡救するを敢てせず、依りて溺死せしめたる如き、皆何れも消極的に現はれし吾人の行爲なり、而して刑法が、吾人の行爲を罰するは、多くは積極的に現はれたる行爲にして、例へば豫め謀りて人を殺したる者は謀殺の罪と爲し、死刑に處すと云が如き、殆ど刑法の大部分、及び其他の刑罰法令は比々として、皆然らざるはなし、この如く或る積極的の行動に依りて罪を犯すを作爲と云ひ、其犯罪を行犯と云ふなり、故に行犯は、作爲即ち積極的行動に依りて犯されたる犯罪なりと云ふを得べし、次に不作爲に依りて犯罪を成立すべき場合は、例へば子孫が、其祖父母、父母に對して衣食を供給せず、其他必要なる奉養を缺きたるが如き場合にして、之等の者は、十五日以上六ケ月以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加せらるるもの也、以上を要するに、行犯は彼の不行犯に對する名稱にして、自然に放任せば生ぜざりし結果を、自己の意思發動に基きて作爲せる場合に、其作爲が罪となるを謂ふものなり。(刑法、七二一條以下及不作爲犯、又は不行犯部參照)
- 英
- Positive offence
- 独
- positives Verbrechen
- 仏
- Contravention positive
交付
(かうふ)引渡しと云ふに同じく、即ち物件の保有を他に移すことを云ふに外ならず、再言すれば、自己が有する物件の保有を、自己以外の第三者の保有に移轉することを指す。(刑一九八條及引渡の部參照)
- 英
- Transfer
- 独
- Auslieferung
- 仏
- Transfert
抗辯
(かうべん)訴訟法に所謂防訴抗辯、證據抗辯、及び本案の抗辯を總稱することあり、被告は或義務者より、抗告又は權利者に對抗し得べき凡ての事情を稱ずることあり、要するに抗辯なるものは、一方の者が、他の一方の者に對して、對抗し得べき總べての事情を指すもの也とす、抗辯中重要なるものは、裁判上の抗辯たる、本案の抗辯、妨訴抗辯、失權の抗辯等これなり、所謂本案の抗辯とは、相手方の陳述を否認するにあらず、又相手方の主張する義務消滅の原因を主張するにもあらず、相手方の主張する事實を認むるも、法律上相手方の主張の不當なるを主張するを云ふ、例へば、不法の原因に基く債務なることを主張するが如し、失權の抗辯とは、原告主張の事實は、法律上有效に成立したるも、其權利は既に消滅したることを主張するを云ふ、例へば既に被告の請求する權利は、時效に罹りて消滅したりとか、返濟を爲し終りたりとか主張するを云ふ、妨訴抗辯とは、相手方の主張する事實上、及法律上の主張は、其當否如何に拘らず、先づ訴自身が違法なれば、辯論を爲すことを得ざる旨を主張するを云ふ、即ち民事訴訟法第二〇六條第一項第一號乃至第六號に列擧せられたるものは、原因に從つて主張する抗辯なり。(妨訴抗辯、本案の抗辯、等の部參照)
- 英
- Defence
- 独
- Verteidigung
- 仏
- Défense
行旅病人及行旅死亡人取扱法
(かうりよびやうにん、およびかうりよしばうにんとりあつかひはふ)行旅病人とは、步行に堪えざる行旅中の病人にして、療養の道を有せず、且つ救護者なき者を云ふ。(行旅病人及行旅死亡人取扱法の部參照)行旅死亡人とは、行旅中に死亡し、引取者なきもの、及び住所居所、もしくは氏名知れず、且つ引取者なき死亡者を云ふ、即ち住所、居所若しくは氏名知れず、且つ引取者なき者は、行旅中にあらざる者と雖も、行旅死亡人と同一に看做され、同じく行旅病人及行旅死亡人取扱法に依りて、之を處置するものなり。(行旅病人及行旅死亡人取扱法參照)
- 英
- Law of treatment of the dead on travel
- 独
- Behandlungsgesetz des kranken oder Toten im Reisen
- 仏
- Loi de traitement du mort et du malade sur le chemin
行旅病人
行旅病人及行旅死亡人取扱法は、明治三二年法律第九三號を以て公布せられ、全文二十二箇條を以て成る、その内容は、□一行旅病人とは、步行に堪えざる行旅中にある病人にして、療養の途を有せず、且つ救護者なき者、行旅死亡人とは、行旅中死亡し、引取人なき者、住所居所、若くは氏名知れず、且つ引取者なき死亡人は、行旅死亡人と看做す、□二行旅病人の救護は、其所在地の市町村長之を爲すべきこと、□三救護に要したる費用は、被救護者より辨償を得られざる時は、扶養義務者の負擔とすること、□四行旅死亡人あるときは、其所在地市町村長は、其狀况、相貎、遺留物件、其他本人の認識に必要なる事項を記錄し、其屍體は假土葬すべきこと、但し法令に別段の規定あるときは、火葬に付するを妨げざること、□五行旅死亡人取扱の費用は、先づ其遺留の金錢、有價證券を以て之に充て、仍ほ足らざるときは、相續人の負擔とし、相續人より辨償を得ざるときは、死亡人の扶養義務者の負擔とすること等を規定せられたり。
- 英
- Patient in travel
- 独
- Kranke im Reisen
- 仏
- Le malade sur le chemin
行旅死亡人
- 英
- Dead on travel
- 独
- Toter im Reisen
- 仏
- Le mort sur le chemin
航路信號
(かうろしんがう)航路信號とは、航行中の船舶が他船に近寄り、又は航路を變ぜんとするとき、汽笛若くは汽角を以て、他船に我船の航路を通知することを云ふ、其方法は、短聲一發を以て、我船航路を右舷に取るものとし、短聲二發を以て、我船航路を左舷に取るものとし、短聲三發を以て、我船公速力にて後退するものとす、而して短聲とは、大凡一秒時間の發聲を云ふなり。(海上衝突豫防法二八條參照)
- 英
- Plying signal
- 独
- Fahrt-signal
- 仏
- Signal de navigation
航路定限
(かうろていげん)船舶の大小、構造、季節に依りて、船舶の航路を制限することを云ふ、之を定むる者は、船舶檢査法によりて規定せられたる檢査官吏なり、遠洋航路、近海航路、沿海航路、及び平水航路に依りて、其定限を異にするものとす、(船舶檢査法參照)
- 英
- Plying limit
- 独
- Fahrtgrenze
- 仏
- Limite de navigation
航路標識
(かうろへうしき)航路の安全を保護する爲めに設置する標識を云ひ、政府に於て設置するものと、私人に於て設置するものとあり、政府設置の航路標識の位置、又は性質を變更し、或は之を停止若くは廢止せんとするときは、其實施期限を定め、二個月以前に管海廳を經由して、遞信大臣に屆出づべきものとす、私設航路標識建設人は、標識看守上に就き、遞信省燈臺局、又は同局派遣の視察官より教示することあるときは、之を遵守すべし、私設航路標識に於て、燈費を徵收するものは、建設人に於て帳簿を備へ、其徵収額、及び維持費支出額を記載し置き、遞信省燈臺局派遣視察官吏の檢閲を受くべきもの也、要するに、航路の安全を保護せんとする爲めに設置する、標稱識物を航路標識と云ふなり。(航路標識條例參照)
- 英
- Beacon
- 独
- Signalfeuer
- 仏
- Balise
媾和
(かうわ)媾和とは、交戰行爲を廢止して、平和狀態に復るを云ふ、例へば甲國と乙國と干戈相見えし非常狀態をして、通常狀態に歸せしむるを云ふ、其原因一ならず、交戰國の一方が、到底勝算なきを察したるに依りて、和を乞ふに出るづことあり、交戰國の双方が、其終局の前途頗る瞭遠なるを察したるに依り、和を媾するに出づる事あり、實業の發達に妨害を來すを慮りたるに出づることあり、第三國と更に事端を構へざるかべらざるが如き虞れあるに因る事あり、又交戰國の一方より、相手國に直接申込みを爲したるに依ることあり、例へば媾和の使節を相手國に派遣するが如し、第三國の中介に依りて爲す事あり、日露戰爭の終結の如し、更に其媾和談判の場所が、交戰國の何れか一方なることあり、第三國なることあり、昔時は往々征服によりて、戰爭を終局したることなきにあらずと雖も、今日に於ては殆ど其例を見ず、戰爭を終局せしむる條約、之を媾和條約と云ふ、媾和條約は、條約の一種にして、交戰行爲を廢止して、平和狀態に復せしむるを特質とする、交戰當事國間の條約也、何故に交戰兩國は、媾和條約締を結したる以上は、其媾和條約に拘束らせれ、交戰行爲を止めざるべからざるか、元來條約は、交戰國双方の任意に締結したるものにして、交戰國双方の上に立ちて、其任意に締結したる條約を遵守する事を強制する國家なし、之に反して、吾人が契約を締結したる場合に、後日若し其契約を履行せざらんか、相手方は、裁判所に訴を起して、其契約を遵守せしむることを得べし、即ち當事者の一方が、後日返金するの契約を以て、金圓を借りたるに拘らず、期限に到るも尚返金せざるときは、貸主は民事訴訟を提起し、以て裁判所の保護の下に其返金を迫るを得べし、然るに條約の場合には、右契約の場合に於ける貸主、借主あるも裁判所なし、即ち當事者の上に立ちて、之を強制するものにあらず、從つて交戰國の一方が、其條約を守らざるも、毫も法律上咎むべき點なきが如し、之所謂條約の拘束力に就きての問題にして、議論ある點なりとす。
- 英
- Reconciliation
- 独
- Friedensstift-ung
- 仏
- Reconciliation
媾和條約
- 英
- Peace-treaty
- 独
- Friedens-vertrag
- 仏
- Traité de paix
媾和條約拘束力
媾和條約の拘束力に就きては以下の數説あり、□一德義上の義務なりとの説、本説の如く德義上の義務とすれば、假令條約を破るも國際法違反とならず、之今日の實狀に反するもの也、□二宗教上の命令に從ひて、遵守するの義務あるものなりとの説、即自然法上の義務なりと云ふ説、何れも今日學者の排斥する所にして、採るに足らず、□三國家が發表したる自由意思の效力に依ると云ふ説、此の説に依らんか、自己の意思を自ら制限するの要なしと認めたるときは、何時にても條約を破棄する事を得と云ふに歸するもの也、從つて本説も穩當なりと云ふべからず、□四人間の法律的知覺に出づと爲す説、此説は、個人間、社會間の關係にも適用すべきものにして、獨り之を以て國際條約の拘束力を説明するに足らずとの非難あり、□五國際團體の觀念に歸すと云ふ説、國家は國際團體の一員として、國際法規を遵守するの義務あり、而して國際法規は、條約の破るべからざることを規定し、換言すれば條約を遵守すべきことを命ず、故に結局條約の拘束力を有する所以は、國際團體の觀念に歸すと云ふにあり、反對論なきにあらずと雖も、本説を以て正當の所説となす。
媾和條約成立條件
媾和條約成立候件、媾和條約の成立には、下の條件を要す、□一交戰國に、條約を締結するの能力あること、□二調印者が正當に權限を有すること、多くの場合に於ては、國家は全權委任狀を以て、此權限を委任したるの證とす、故に實際論として、調印者が委任狀を有せざるか、有するも形式上不完全なるときは、假令調印するも條約は成立せず、而して全權委任狀なくして、又は不完全の全權委任狀を以て爲し、もしくは委任を受けたる事項より超越して、條約を締結したる場合に於ては、其條約を稱して、「スホニジオネス」と謂ひ、此條約は、普通の他の條約と異り、後日調印者の屬する國家の容認を得るにあらざれば、全く無效也とす、□三意思の自由、條約が有效なるには合意を要す、合意とは、締結國が、相互に又は片面的に負擔せる義務に關し、意思を投合する事是なり、然れども、私法上の契約と異る所あり、卽ち契約に在りては、暴行脅迫は常に契約を不成立に至らしむるも、條約は原則として、斯かる場合にも猶拘束力を有す、蓋し媾和條約の如き、多くは強暴的の性質を有すと雖も、この場合に於も、尚國家の滅亡を賭して戰はんか、又は屈從してその條約に從はんかの其一を任意に選ぶことを得べく、故に假令強迫によるも、自由意思たるを失はず、且つや宣戰を爲したる當時、勝者の示す媾和條件に從はざるべからざる事を豫想したるものと云ふべく、強ひて抵抗するは、一般人民の幸福に反するものなれば、強迫を忍びて、媾和條約を有效ならしむるものなればなり、さりながら條約を締結するの衝に當る個人が、強迫を受け、爲めに自由意思決定の能力を失ひたるときは、其條約が拘束力を生ぜざるは勿論なり、□四目的の正當なること、不能又は不法にあちざるを云ふ、不法とは國際法に反し、又は文明國の普通慣例に違反するものなるを云ひ、例へば奴隷賣買を目的とすること、大洋を私有とすること、世界を支配せんことを定むる等之なり、條約は以上の修件を具備するに依りて有效也、媾和條約に於ても亦然りとず。
媾和條約の効力發生時期
媾和條約の效力發生時期、媾和條約も、條約の一種なるが故に、他の條約と同じく、適法に全權委員の調印ありたる後、更に批准交換を俟つて、其效力を生ずるものなり、□一批准、批准とは全權委員の締結したる條約を無條件に容認するを云ふ、條約は調印によりて制定せられ、批准を俟ちて有效に成立す、交換は、效力發生に必要ならずとするを穩當と信ず、批准を爲す者は、國法に依りて定まる、我國に於ては天皇なり、□二批准の範圍、批准は、全權委員の調印したる條約の全體に就きて爲すを要す、一部に就きて爲すとは變更を意味し、更に兩締監國の同意を要す、□三批准の效力發生期、批准あるときは、全權委員が調印したる時より效力を生ずるものにして、批准の時より效力を生ずるものにあらず、但し特別に批准、又は交換の時より效力を生ずと定むるも可なること勿論なり、□四批准の許否、全權委員が締結したる條約は、如何なる場合に其批准を拒み得るか、或は條約は、批准又は交換の時始めて效力を生ず者なる故、絶對に批准を拒むことを得ずと論ずる者なきにあらざるも、穩當を缺く、左の如き場合は之を拒み得となすを通説とす、ア全權委員が其委任の權限を超越したるとき、イ全權委員が、其國の憲法に違反したる條約を結びたるとき、ウ他國に對する義務に抵觸したる條約を結びたるとき、エ條約の要點に就きて、相手方に詐欺脅迫ありたるとき、オ強暴に依り全權委員を脅迫したるとき、カ調印の時と國の狀態が變じたるとき、例へば委任したる君主が、其皇位を失ひ、又は條約の目的物が、消滅したるときの如し、キ其國の憲法上、條約の批准に必要なる協賛を拒まれたるとき、但し締結國他方は一方に對し、條約の履行を請求する事を得、蓋し相手方國は、批准者が國内に於て、違法越權の行爲を爲したるや否やを探究せざるべからざる義務なければ也、次に媾和條約は、其後條約國に於て、戰爭を爲したるときは消滅するやと云ふに、必ずしも同一に論決することを得ざるも、消滅せざるものと信ず、例へば、英國と米國と開戰するも、米國の獨立當時の媾和條約は、消滅することなし、若し消滅すとせば、米國は其獨立を失ふの結果を生ぜん。
行爲
(かうゐ)行爲とは、人類の意思發動に基く物界の現象也、凡そ法律上の效力は、事實と法律との關聯に依る、法律上の效力を生ずべき事實は之を別ちて、事件及行爲となす、事件は、人類の意思に關係なき物界の現象なり、出生、死亡、天災に依る物の滅盡、無意識の動靜の如き是なり、人類の意思發動して、動作又は靜止となり、其動作、又は靜止が、或物界の狀態を伴ふ行爲也、人は物質的に、凡ての行爲を爲すことを得べし、されど行爲に就きて、法律上の效力を生ずるには、行爲者に行爲能力の存することを要す、法人は、物質的に存在するものにあらず、故に物質的の觀念を以て、其行爲を認むる能はず、然れもど法律上に於ては、一定の條件の下に、其機關の行爲を之に歸し、之に對して法律上の效力を生ぜしむ、行爲に適法行爲あり、違法行爲あり、適法行爲は、更に別つて、法律行爲と其他の適法行爲となす、違法行爲に、犯罪行爲と其他の不法行爲とあり。
- 英
- Conduct; action
- 独
- Handlung; that
- 仏
- Conduite
法律行爲
法律行爲は、私法上の效果を生ぜしめんことを目的とする私法的意思表示なり、故に公法上の效果を生ぜしめんことを欲して爲したる意思表示は、所謂法律行爲にあらず、法律上の效果は、之を欲して爲したる場合に、その效果を付することあり、其欲望の有無に拘らず、效果を付することあり、例へば賣買の如きは、當事者之を爲さんとするが故に、法律に於て、其效力を與ふるものなり、之に反して、他人の財産を破壞したるが如き場合には、假令加害者が、損害賠償の義務を負ふことを希望して爲すことありと雖も、法律は其當事者の希望に應じて、損害賠償を命ずるにあらず、其希望と嫌忌とを問はず、之に損害賠償を命ずるものなり、此點に於て著しく違法行爲と異る。
法律行爲以外の適法行爲
法律行爲以外の適法行爲とは、法律行爲にもあらず、又違法行爲にもあらざる行爲なり、例へば自己の金剛石と、他人の金とを以て指環を作り、依りて其指環の所有權を取得するが如し。(民二四六條參照)
犯罪行爲
犯罪行爲とは、國家が刑罰を科したる有責違法の行爲なり、例へば貨幣を僞造し、官文書を變造するが如し、而して犯罪が、同時に民法上の不法行爲となることあるは勿論にして、例へば他人を毆打するときは、刑法上に於ては、毆打創傷罪となることあるべく、民法上に於ては、不法行爲となることあるべきが如し。
不法行爲
不法行爲とは、故意又は過失に依りて、他人の權利を侵害す(を云ふ、例へば他人の財産を破壞し、他人の財産を過失にて燒失せしむるが如し、從つて、□一殊更に他人の權利を侵害するの意思あるを要せず、過失に依りて侵害するも可なり、□二他人の權利は、身體權なると、自由又は名譽權、もしくは財産權なるとを問はざるものとす、茲に注意すべきは、過失に依りて火を失し、他人の權利を害するも、不法行爲とならず、蓋し失火の結果は、數百千戸を烏有に歸するものにして、輕微の過失ある者に、其の全部の責任を負はしむるは過當なれば也、但し重大なる過失ありたるときは、不法行爲となるが故に、損害賠償の責に任ぜざるべからず、茲に注意すべきは、他人の家屋を借受けて住居せる者が、過つて火を失し、其家屋を燒失せしめたるが如き場合なり、この場合には、假令大過失にあらざるも、其責を免るるを得ず、是蓋し不法行爲として責を負ふにあらずして、賃借したる家屋は、期限に到れば、之を返還せざるべからず、然るに之を返還すること能はざる結果を惹起したるに依るものなり。(民七〇九、七一〇條、失火の責任に關する法律參照)
行爲權關
(かうゐきくわん)法律上の效果を生ずべき事項に就き、行動云爲する機關は種々あり、意思機關、行爲機關、代表機關の如き之なり、意思機關は、本人の意思を作製するの機關なり、市會の如き、株主總會の如し、代表機關は、本人を代表するの機關なり、町村長の如き、會社の取締役の如し、行爲機關とは、本人を代表して、或行爲を爲す機關にして、廣く云へば代表機關をも含む、卽ち會社の業務執行の任に該るも、代表せざる機關あり、會社を代表するも、業務執行の任に該る機關あり、何れも行爲機關たるに至りては則ち一也、次に機關は、彼の代理人と異るものなるに注意するを要す、代理人とは、本人を代表して法律行爲を爲すものにして、その行爲の效果が、直接に本人に及ぶものとす、之に反して、機關の爲したる行爲は、法律上に於ても、本人の行爲なり、之を例へば市町村長の行爲は、法律上に於て、市町村夫れ自身の行爲なり、市町村が行爲の當事者なり、單に法律上の效果が、市町村に及ぶに過ぎざるものと異る、之を要するに、機關は本人の手足口舌の如く、本人其者の内容なり、故に記せよ、行爲機關とは、意思機關に對して、實際にその意思を發表活動する機關を指すものなりと。(市制三〇條、六四條以下、町村制三二條、六八條以下、民五二條乃至六七條、商五六條、六一條、六二條參照)
- 英
- Organ of action
- 独
- Handl-ungsorgan
- 仏
- Organe de conduite
行爲地
(かうゐち)人類の意思發動、即ち行爲は、時、及び場所の觀念を外にしては思考し得べからず、故に行爲は、場所、及び時と密著なる關係を有す。
行爲地とは、行爲を爲したるの土地なり、例へば、□一日本人が米國に在りて、英國に居住する佛國人と契約を爲したるときは、何地即ち何國に於て行爲をなしたりと云ふべきや、我法例第九條は、其通知を發したる地、即ち米國に於て行爲の成立ありとし、若し其申込を受けたる者、即ち佛國人が承諾を爲したる當時、果して米國より發したることを知らざるも、申込を爲したる日本人が、米國に住所を有したるときは、米國に於て行爲の成立ありたるものと看做す、即ち行爲地を定むるは、何國の法律に從ひて、當事者間の法律關係を定むべきやに就きて實益あり、殊に方式を要する法律行爲に就きては、其方式は、法律行爲地の法律に依りて定むるを原則とする故に、行爲地を知るは、特に必要多しとす、□二殺人罪の被害者が、汽車中橫濱に於て傷き、名古屋に於て死亡せりと假定せよ、此場合の殺人行爲は、如何なる地に於て行はれたるか、い擧動のありたる地を犯罪地、即ち行爲地なりとなす、ろ、犯罪行爲は、結果あるが故に犯罪たり、されば結果の發生したる地、即ち死亡したる地が、行爲地なりとなす説、は行爲は外界の變動を生ずる擧動なり、故に擧動も結果も、共に行爲の觀念中に含まる、從つて人を傷けたる地も、死亡したる地も、共に行爲地なりとの説、に擧動即ち人を斬りし結果、即ち死する迄の犯罪行爲全體の連鎖は、單一不可分なれば、犯罪は、犯行の經過せる凡ての土地に於て行はれたるものなりとなす四説あり、以上の犯罪爲行地を定むるは、國際刑法上の問題として、何國に刑罰權ありやを決定する上に、及び刑事訴訟法の問題として、裁判所管轄の如何を決定する爲に必要なり、而して以上數説中、上記にの説を妥當とするを通説とするものの如し。(刑訴訟二六條、二七條參照)
- 英
- Place of offence occured
- 独
- Thatplatz
- 仏
- Place de conduite
行爲地法
行爲地法とは、數國の法律に關聯する或る行爲に就きて、其行爲を爲したる地の法律をと云ふなり、例へば米國にある日本人と、佛國人と契約したる場合に、其行爲地なる米國の法律は、即ち行爲地法なり。
- 英
- Law of the place where offence was committed
- 独
- Gesetz des Hand-lungsplatzes
- 仏
- Loi de place de con-duite
行爲の時
行爲の時とは、行爲を爲したる時を云ふ、所謂行爲を爲したるときとは、擧動のありたるときか、結果發生の時か、解た又双方を含むが、この如何を決定するの必要は、例へば刑法の改正ありたる場合に、舊法によれば無罪にして、新法によれば有罪なるが如きときなり、この場合に、行爲が舊法時代に始り、新法時代に至りて結果を發生したるときは、犯罪として處罰することを得べきや否や、舊法時代に於ても犯罪にして、新法時代に於ても亦犯罪なるも、刑の輕重ある場合には、新舊刑法比照の問題となるべきや否や、更に舊法に於ては無罪なりしも、新法に於て罸せらるる時は如何にすべきか、總べて上記の疑問は、行爲の時を定むるに依りて氷解すべし、さらば行爲は何時に於て爲されたりと見るべきか、あ擧動に依りて行爲の時を定むれば、舊法に於て無罪なるときは、縱令新法に於て之を有罪とするも、亦無罪なりと云はざるべからず、新舊法に於て刑の輕重あるも、比照の問題を生ぜず、假令新法に於て罰せざるも、舊法に於て罰するときは、其罪を論ぜざるべからずとなる、い若し行爲の時を定むるに、結果をも包含すべきものなりとせば、比照の問題を生ぜざるも、新舊法何れの法律に依りて處罰すべきや、即ち擧動當時の法律に依るべきや、結果當時の法律によるべきやの問題は、依然として問題たり、う結果の時を以て行爲の時とせんか、或は以上の問題を氷解するを得るも、意思發動は每に結果を俟つて、初めて行爲たりと云ふは信ずる能はざる所、故に擧動ありしときを以て行爲の時とするのあ説を信ぜんとす、否歟。(刑六條等參照)
行爲能力
(かうゐのうりよく)行爲能力とは、完全に法律行爲を爲し得る法律的可能を云ふ、意思ある者、即ち辨識力ある者は、意思を表示し、法律行爲を爲し得べしと雖も、行爲能力者にあらざれば、之を取消すことを得るものなり、即ち法律行爲を爲さざると同一狀態に復することを得るものとす、如何なる者が行爲能力を有するやは、民法は之を定めざるも、反面より行爲能力を有せざる者、又は之を制限せらるる者を定めたり、曰く、未成年者、禁治産者、凖禁治産、及び妻是なり、此他特種の場合に於て、特種の能力を制限せらるる者あり、例へば辯護士は、自己の關係したる係爭事件の權利を買ひ受くるを得ざるが如し。(辯護士法一五條等參照)
- 英
- Capacity
- 独
- Handlungs-fähighkeit
- 仏
- Capacité d'exercice
行爲無能力
行爲無能力とは、上記の如く、全く行爲能力なき者、(獨逸民法は、之に限りて行爲無能力者と云ふ)及び行爲能力を制限せられたる者を云ひ、斯かる者を行爲無能力者と云ふ、民法が單に無能力者と云ふも其意同じ、左に之を擧ぐれば、□一未成年者、即ち滿二十年未滿の者は、法律行爲を爲すに就きて、法定代理人例へば親權者(父なることあり、母なることあり)又は後見人の同意を得ざるべからざるを原則とす、但し之等の者と雖も、單に權利を得、又は義務を免るべき行爲、及び法定代理人が、目的を定めて處分を許したる財産、例へば婚姻に要する衣服を新調する爲めに渡したる金錢、もしくは隨意に費用するも可なりとして渡したる金錢等の如きは、之を自由に處分するを得べし、一種又は數種例へば米商、若しくは米商と共に油商を許されたる末成年者は、其米商又は油商に關する法律行爲を爲すには、一々決定代理人の同意を經るを要せず、即ち其範圍内に於ては、行爲能力を有するものとす、□二禁治産者、即ち心神喪失の狀况に在る者にして、裁判所より禁治産の宣告を受けたる者は、凡て法律行爲を爲したる場合に、之を取消すことを得るを原則とす、尚法定代理人の同意を得るも、等しく取消し得とするを通説とす、但し禁治産者と雖も、本心に復したる時に於て、醫師二人以上の立會あるときは、遣言を爲すことを得、故に此範圍内に於てのみ、行爲能力を有するものと云ふべし、□三凖禁治産者、即ち心神耗弱者、聾者、啞者、及び浪費者にして、凖禁治産者として裁判所の宣告を受けたるものは、下の行爲に就き、保佐人の同意を得るにあらざれば、之を爲すことことを得ず、從つて下の事項以外に就きては、行爲能力あり、イ元本を領收し、又は之を利用すること、ロ借財、又は保證を爲すこと、ハ不動産、又は重要なる動産に關する權利の得失を目的とする行爲を爲すこと、ニ訴訟行爲を爲すこと、ホ贈與、和解、又は仲裁契約を爲すこと、へ相續を承認し、又は之を抛棄すること、ト贈與、もしくは遺贈を拒絶し、或は負擔附の贈與、もしくは遺贈を受諾すること、チ新築、改築、增築、又は大修繕を爲すこと、リ樹木の栽植、又は伐採を目的とする山林の賃貸借は十年、其他の士地の賃貸借は五年、建物の賃貸借は三年、動産の賃貸借は六個月、以上の期間を超過する賃貸借を爲すこと、猶裁判所は、以上の外と雖も、請求ある場合には、行爲能力を制限することを宣告し得べし、□四妻、即ち失ある婦人は、下の事項に就きて無能力者なり、イ、ロ、ハ、ニ、ホへ、ト凖禁治者と同じ、チ贈與若しくは遺贈を拒絶し、又はこれを受諾すること、リ身體に覊伴を受くべき契約、例へば下女奉公の如き契約を爲すこと、次に夫より一種又は數種の營業を許されたる妻は、其營業に關しては、夫なき者と同一の能力を有す、即ち其營業に關する範圍内に於ては、行爲能力者なり、猶左の場合に於ては、前記の場合に於ても、夫の許可を要せざるものなり、い夫の生死分明ならざるとき、ろ夫が妻を遺棄したるとき、は夫が禁治産、又は凖禁治産なるとき、に夫が瘋癲の爲め、病院又は私宅に監置せらるるとき、ほ夫が禁錮一年以上の刑に處せられ、其刑の執行中に在るとき、へ夫婦の利益相反するとき是なり、以上は、成年者たる妻に就きての説明と知るべし、元來妻は、他の無能力者の如く、その意思の不完全なるを保護するが爲めに、定めたる法律上の無能力の狀態にあらずして、一家の平和の爲、妻の能力を制限したるものとす、以上を要するに、行爲無能力とは、意思の不完全、其他の理由に基き、之を保護する爲め、或る行爲に對する法律上の效力を全く發生せしめざるか、又は之を取消し得べしとなす法的狀態なりと云ふべし。(民三條以下三二條參照)
加役
(かえき)加役とは、船長が船員の行動が、左の各項に該る可き場合に、懲戒として科する制裁の一種なり、即ち□一海員が上長者に對して尊敬、又は從順の道を失ひたるとき、□二海員が其職務を怠りたるとき、□三海員が他の海員の職務執行を妨げたるとき、□四海員が喧爭したるとき、□五海員が船長の許可を得ずして船舶を去りたるとき、又は船長が指定したる時迄に歸船せざりしとき、□六海員が海長の許可を得ずして點火、又は焚火したるとき、□七海員が船長の許可を得ずして端艇を使用したるとき、□八海員が食料、又は飮料を濫費したるとき、□九海員が船長の許可を得ずして酒類を所持するとき、又は喫煙したるとき、□十海員が酩酊して事を省みざるとき、十一其他海員が、船中の秩序に反する行爲を爲したるとき等の場合に、常務時間以外に一日二時間以内の範圍内に於て、七日以内役務に就かしむるを云ふ、監禁、上陸禁止、減給と同じく、特に海員に科する懲戒の一種なり。(船員法三六條乃至九條參照)
- 英
- Accession
- 独
- Beitritt
- 仏
- Ac-cession
家屋管理人
(かおくくわんりにん)事實上他人の家屋を管理する者を家屋管理人と云ふ、彼の差配人の如きは、家屋管理人の適例なり、而して、家屋管理人が、持主に對して、賃貸料等を自ら全部支拂たるときは、持主の權利を賃借主に對し、法律上當然行使することを得るものなり。(民四二二條、三十二年内務省令三二號參照)
- 英
- Receiver of house
- 独
- Hausaufseher
- 仏
- Receveur d'une mai-son
家屋税
(かをくぜい)家屋を課税物件として、其所有者に對し、一定の税率に依りて、賦課徵収する一種の租税也、我國に於て、國税としては、未だ此種の税目なし、東京市の如き地方公共團體に於て、之を課することあり、例へば東京市區改正條例によりて、東京市に於ける家屋所有者に、府税十分の四以内に於て、賦課徵收するが如き是なり。(府縣制、郡制、町村制、市制等參照)
- 英
- House tax
- 独
- Haussteuer
- 仏
- Impôt sur la maison
加害行爲
(かがいかうゐ)廣く他人、又は社會に害を加ふるを加害行爲と云ふ事あり、此意味に於ては、犯罪行爲、民法上の不法行爲、債務の不履行等、其他不道德の行爲を含む、然れども法律上に於ては、他人の權利を害するを指して云ふを普通とす、此意味に於ては、社會に對して害を加ふる行爲は之を含まず、更に他人の私權を害するを云ふことあり、此意味に於ては、民法上の不法行爲と、債務の不履行とのみ、其他は之を除外す、更に債務の不履行を除き、不法行爲のみを云ふことあり、普通用ひらるる用語は、不法行爲と同義に於けるものとす、然れども我民法の用例に依れば、更に一層狹し、即ち民法第七二〇條に、他人の不法行爲に對し、自己、又は第三者の權利を防衞する爲め、止むことを得ずして加害行爲を爲したる者は、損害賠償の責に任ぜず云々、同條第二項に、前項の規定は、他人の物より生じたる急迫の危難を避くる爲め、其物を毀損したる場合に、之を凖用すと、之に由つて之を觀れば、他人の不法行爲に對し、自己又は第三者の權利を防衞する爲め、止むことを得ずして、他人の權利を害するの行爲を加害行爲と云ふなり、例へば民法上の正當防衞、緊急行爲の如し。(民七二〇參照)加害者とは、加害行爲を爲したる者を云ふ、前説明の狹義に從へば、他人の不法行爲に對し、自己又は第三者の權利を防衞する爲め、止むを得ずして他人の權利を害し、又は他人の行爲より生じたる急迫の危難を避くる爲め、其物を毀損したる者を云ふ、客觀的に之を見れば、不法行爲と云ふべきが如しと雖も、法律は斯かる場合には、他人の權利を害するも、止むを得ずとして、之を許容したるものなれば、寧ろ權利行爲なりと云ふを可とせん、或は斯くの如き場合は、單に損害賠償の責任を免脱するに過ぎずして、權利行爲にあらずと云ふ者あり、かく云ふも、或る場合に於ては正當なり、次に我民法の規定に依れば、前記の用例と異り、不法行爲者を指して加害者と云ふ場合あり、即ち民法第七二四條に依れば、不法行爲に因る損害賠償の諸求權は、被害者、又は其法定代理人が、損害、及び加害者を知りたる時より、三年行はざるときは、時效によりて消滅す云々と、此場合に於ては、不法行爲者を稱したること明かにして、前説明の加害行爲を爲した者を指したるにあらざるは明白なり、畢竟加害者なる語も、各場合に依りて決定すきべきものならん。(民七二四條等參照)
- 英
- Harmful act
- 独
- Schädliche That
- 仏
- Acte misible
加害者
- 英
- Injuring person
- 独
- Schädi-gende Partei
- 仏
- Auteur d'un tort
價格表記
(かかくへうき)郵便物に對する特殊取扱の一種にして、貴重品を封入したる郵便物の表面に記載する文言なり、但し書留と爲したる郵便物は之を除く。(郵便規則四六條參照)
- 英
- Declaration of value
- 独
- Werthangabe
- 仏
- Tableau de prix
價格表記小包郵便物
價格表記郵便物とは、郵便物の封皮に價格表記と記載したるものにして、貴重品を封入したるものなり、而して其價格は、一千圓を以て最高額とす、價格表記郵便物と、普通の郵便物との異點は、郵便局に於て、受取證を差出人に交付し、配達、又は還付の際、受信人又は差出人より受取證を差出さしめ、若し亡失、又は毀損し配送したる場合には、政府は其表記せられたる價格に凖じて、損害を賠償するにあり、其範圍は、亡失の時は表記金額の全部、毀損のときは其表記金額と、殘存價格との差額、もし表記金額市場價格より超越するときは、市場價格に依りて算定す。(便郵規則四七條參照)
價格表記料
價格表記料とは、價格表記と爲すに就きて納入すべき料金なり、即ち表記金額十圓迄は十五錢、十圓以上は十圓を增す每に五錢を加ふ。(郵便規則三五條參照)
書入
(かきいれ)物の占有を移さずして、擔保權を設定するを云ふ、不動産の書入とは、即ち抵當權を設定するを云ふ也、第市制三〇條六號に「質入、書入云々」軍人恩給法第四二條に「恩給は賣買、讓與、質入、書入する事を得ず」とあるは即ち之にして、所謂書入は、物の占有を移さずして、擔保權を設定するに外ならず、此點に於て、著しく質入と異るを注意せよ。(質入の部比較參照)
- 英
- Mortgage
- 独
- Verpfändung
- 仏
- Hypothèque
書留郵便物
(かきとめいうびんぶづ)特殊取扱に依る郵便物の一種にして、普通郵便物の表面に書留と記入し、一定の料金、即ち書留料を納付して差出したる郵便物なり、而して普通郵便物と異るのは、若し紛失したるときは、遞信省に於て、一箇に就き金拾圓を賠償するの點にあり。(郵便規則四五條參照)
- 英
- Registered mail matter
- 独
- eingeschriebene Postsendung
- 仏
- Poste enregistrée
書留料
書留料とは、郵便物を書留として差出す場合に納付する料金にして、郵便物規則によれば、一郵便に就き普通郵便料の外金七錢とす。(郵便物規則三五條)
書留郵便配達
(かきとめいふびんはいだつ)電報に於ける指定事項の一にして、到著せる電報を、該局所より受信人に、書留郵便を以て配達を爲さしめんとするものなり、其畧符號は、和文にありては、ツナ、歐文にありてはPRなり。(電報規則九條參照)
下級機關
(かきふきくわん)凡そ機關に上級下級の區別あり、國家、又は自治團體の或一定の機關に對し、服從の關係に立つときは、其機關を下級機關と云ふ、大審院は、控訴院の上級機關にして、控訴院は、地方裁判所の上級機關なり、而して地方裁判所は、區裁判所の上級機關なり、郡長は、知事に對して下級機關にして、知事は、大臣に對して下級機關たるが如し。
- 英
- Lower organ
- 独
- niedriges Organ
- 仏
- Organe subordonnée
下級行政機關
下級行政機關、機關の執る事務の種類に依りて別つときは、行政機關と司法機關となし得べし、裁判所は司法機關にして、府縣知事、郡長は行政機關なり、而して其機關の關係により、更に上級と下級とに別つを得、即ち郡長は知事、大臣に對して下級の行政機關なり、知事が大臣に對する關係も亦同じ。
- 英
- Lower administrative organ
- 独
- niedriges Verwaltungsorgan
- 仏
- Organe administrative subordonnée
下級行政官
下級行政官、行政官吏の階級により、上級行政官と、下級行政官とに別つ、郡長と府縣知事とに就きて云へば、前者は下級行政官なり。
- 英
- Lower administrative official
- 独
- Unterverwalter
- 仏
- Officier administratif subordonné
下級行政官廳
下級行政官廳、行政官廳の階級により、上級行政官廳と、下級行政官廳とに別つ、郡長は知事に對しては、下級行政官廳にして、知事は大臣に對しては、下級行政官廳なり、上級下級を別つ要點は、指揮監督を爲すや、之に服するやに在り、行政官吏が、官廳を組織する場合に於ては、事實上下級行政官と、下級行政官廳と同一に歸するも、觀念の上に於ては、固より差異あり。
- 英
- Lower administrative government
- 独
- Unterverwaltungsregier-ung
- 仏
- Gouvernement administratif subordonné
下級行政官府
下級行政官府、下級行政官廳と云ふと大差なし、唯官府と云へば、官廳及政府を包含する語たるの差あるのみ。
- 英
- Lower administrative government
- 独
- Unterverwaltungsregier-ung
- 仏
- Gouvernement administratif subordonné
下級行政廳
下級行政廳、下級行政官廳と云ふと同じ。(河川法九條參照)
- 英
- Lower administrative office
- 独
- niedriges Verwaltungsamt
- 仏
- Office administrative subordonnée
下級官廳
下級官廳、官廳間に上下の關係あり、即ち服從するや否やによりて別つ、郡長は知事、大臣に對して下級官廳なり、下級機關と云ふと大なる差異なし。
- 英
- Lower government
- 独
- niedrige Regierung
- 仏
- Gouvernement subordonné
下級檢事局
下級檢事局、下級檢事局も一の國家機關也、從つて行政官廳と同じく、また上級下級の區別あり、區裁判所の檢事局は、地方裁判所の檢事局に對し、地方裁判所の檢事局は、控訴院の檢事局に對し、控訴院の檢事局は、大審院の檢事局に對して、下級檢事局なり、其他下級行政官廳と異る所なし。(裁構法一三五條參照)
- 英
- Lower public procurator's office
- 独
- Unterstaatsanwaltschaft
- 仏
- Office subordonnée des procureur
下級裁判所
下級裁判所、上級下級の區別は、行政官廳、檢事局と異り、命令服從の關係にあらずして、裁判所の爲したる宣告は、他の裁判所を羈束するや否やにあり、即ち上級裁判所の判决は、當該事件に就きては、下級裁判所の判決を破毀、變更するの效力あり、之上級裁判所と下級裁判所との關係あるが故也。(裁判所構成法四八條參照)
- 英
- Lower court
- 独
- niedriges Gericht
- 仏
- Tribunal subordonné
下級公共團體
(かきふこうきようだんたい)下級公共團體の用例一ならず、□一數多の公共團體中、其指揮監督等の點に著眼し、上下の階級を付する場合に、下位に在る公共體團體を下級公共團體と云ふことあり、町村は府縣、郡の下級公共團體にして、郡市は府縣の下級公共團所と云ふが如し、□二更に其構成の點に著眼し、公共團體を上下に別つことあり、即ち自己は他の公共團體を組織するも、他の團體より組織せらるることなきときは、前者を下級公共團體と云ふが如し、然して郡の如き中級公共團體に對して、下級公共團體と云ふこともあり、□三監督權を有する者に相對するの名稱として、公共團體の或ものを下級公共團體と云ふこともあり、即ち町村は、行政官廳たる府縣知事、又は郡長に對しても、指揮監督の下に立つことあり、此場合に町村を下級公共團體と稱す、河川法二三條に「地方行政廳は其管内の下級公共團體に命じて」云々とあるは此用例なり。
- 英
- Lower public association
- 独
- niedrige öffentliche Sammlung
- 仏
- Association publique subordonnée
下級團體
下級團體、下級公共團體と云ふと殆ど同じ、唯單に團體と云へば、公共團體以外の團體をも包含するの語となるなり。
- 英
- Lower body
- 独
- Unterkom-mune
- 仏
- Organisation subordonnée
下級地方自治體
下級地方自治體、地方自治體中の上下の關係に基き、其監督せらるる地方自治體を下級地方自治體と云ふ、例へば、町村は府縣郡に對して下級地方自治團體なり、又行政官廳に對して、下級地方自治體と稱する也。
- 英
- Lower class of local self-governmental body
- 独
- niedrige provinzielle Selbstregierung
- 仏
- Organi-sation locale indépendante subordonnée
下級自治體
下級自治體、下級地方自治體と云ふに同じ。
- 英
- Lower self-governmental body
- 独
- Unterkommunalverband
- 仏
- Organisation indépendante subordonnée
下級地方公共團體
下級地方公共團體、下級地方自治體と云ふに同じ。
- 英
- Lower local self-governmental body
- 独
- niedrige provin-zielle Selbstregierung
- 仏
- Organisation locale indépendante subordonnée
下級地方行政官廳
(かきふちはうぎやうせいくわんちやう)下級地方行政官廳は、一の行政官廳に對して監督に服する地方行政官廳を云ふ、郡長は府縣知事との關係に於て、下級地力行政官廳なり。下級地方官廳、下級地方行政官廳と云ふに同じ下級地方政廳とは、執政の任に當る官府にして、被監督の地位に立つ地方政廳を云ふ、單に下級地方行政官廳と云ふと異るを注意せよ。
- 英
- Lower provincial administrative government
- 独
- Unter-lokalverwaltungsbehörde
- 仏
- Gouverne-ment administratif local subordonné
下級地方官廳
- 英
- Lower provincial govern-ment
- 独
- niedrige Provinzielle Regier-ung
- 仏
- Gouvernement local subordonné
下級地方政廳
- 英
- Lower provincial govern-ment
- 独
- niedrige provinzielle Regier-ung
- 仏
- Gouvernement administratif local subordonné
下級法院
(かきふはふゐん)臺灣總督府法院中、覆審法院に相對して、地方法院を下級法院と云ふ、兩者の關係は、上級裁判所に、下級裁判所が覊束せらるると同じ。(臺灣總督府法院條例六條參照)
- 英
- Lower court
- 独
- Unter-gericht
- 仏
- Tribunal subordonné
閣議
(かくぎ)内閣の决議を稱して閣議と云ふ、閣議は、會議の通則に依り、多數决を以て定むるものにして、閣議の效果たるや、天皇は勿論各省主管の事務に就きても、各省大臣を拘束することなし、唯これ等の者に向つて參考に供し、其反省を求むるに過ぎず、蓋し各省大臣は、其主管事務に就きては、直接に天皇に隷屬し、所謂補弼の責に任ずるものにして、内閣に隷屬するものにあらざればなり、然りと雖も、法令を以て、特に内閣の權限に屬せしめたる事項に就きては、各省大臣を拘束するものと解す、例へば各省に於ける主管權限の爭議は、その積極爭議たると、消極爭議たるとを問はず、内閣官制に基き、閣議を以て决定すべきものなるが故に、斯かる决議は、各省大臣を拘束するの效力ありと云はざるからず、特に内閣官制を以て規定したる閣議の效力、其他のものに就きても亦然り。(内閣官制五條參照)
- 英
- Cabinet conference
- 独
- Kabinett Unterhandlung
- 仏
- Conseille d'Etat
客觀
(かくくわん)主觀を離れて客觀なし等、哲學上隨分議論ある問題なるも、今は暫く措きて論ぜず、唯客觀と稱する時は、少くとも主觀を聯想せしむ、客觀とは、即ち吾人の主觀以外の存在、又は主觀以外のものを單に存在物として認むるか、もしくは之等の存在物に目的を認めて認むるか、何れにしても吾人の主觀の作用、即ち精神作用の向けらるる所の對象、又は對境を意味するものなり、更に語を換へていへば、客觀とは吾人の精神作用の認識の對象たるもの、吾人の行爲の目的物たるもの、主觀以外の存在物其者と云ふことを得べし。
- 英
- Object
- 独
- Objekt
- 仏
- Objet
客觀的
客觀的とは、吾人の觀察が、所謂客觀界より發足するときは、その立論を形容して客觀的と云ふ、要するに客觀を基準として、又は自己の關係を離れての觀察なりと云ふときに、之を形容して客觀的と云ふなり。
- 英
- Objective
- 独
- Objektiv
- 仏
- Objectif
客觀的商行爲
(かくくあんてきしやうかうゐ)客觀的商行爲とは、商行爲を其本質より定めたるものにして、其行爲を爲す者が、商人たると非商人たると、營業として爲すと否とを問はず、商行爲たるものを絶對的、又は客觀的商行爲と云ふ、□一投機購買、即ち利益を得て讓渡す意思を以てする動産、不動産、若くは有價證券の有償取得、□二其實行行爲、即ち利益を得て讓渡を目的とする行爲に依り取得したる動産、不動産、若くは有價證券の讓渡を目的とする行爲、□三投機賣却、即ち他人より取得すべき動産、又は有價證券の供給契約、□四其實行々爲、即ち供給契約の履行の爲にする有償取得を目的とする行爲、□五取引所に於てする取引、即ち取引所が一定の時間に閉開する市場に於て、法令並に取引所の定欵、營業細則、其他の規則、及び取引所に行はるる商慣習の定むる方式に從ひ爲す市場掛りに依りて、取引所の帳簿に登錄せらるる賣買取引を云ふ、其取引の種類には、直取引、延取引、定期取引等あり、□六手形其他の商業證券に關する行爲、即ち手形、貨物引換證、預證券、質入證券の發行、交付、裏書等は、客觀的商行爲なり。(商二六三條參照)
- 英
- Objective commercial transaction
- 独
- objektives Handelsges-chäft
- 仏
- Acte commercial objectif
各省行政
(かくしやうぎやうせい)各省行政とは内務大臣、外務大臣、大藏大臣、陸軍大臣、海軍大臣、司法大臣、文部大臣、農商務大臣、及び遞信大臣の各自分掌する所の行政事務を指して云ふなり。各省官制とは、内務省官制、外務省官制、大藏省官制、陸軍省官制、海軍省官制、司法省官制、文部省官制、農商務省官制、遞信省官制を指して云ふ、宮内省官制は特殊のものにして、茲に云ふ各省官制中に包含せず。(各省官制通則一二條參照)
- 英
- Administration of every department
- 独
- Verwaltung jedes Departements
- 仏
- Administration de cha-que ministère
各省官制
各省官制通則とは、明治二六年勅令第一二二號を以て公布せられたる勅令にして、要するに内務省、外務省、大藏省、陸軍省、海軍省、文部省、農商務省、及び遞信省に相共通する官制を規定したるものなり。
- 英
- Government organisation of every Department
- 独
- Behördeordnung jedes Departements
- 仏
- Organisation d'Etat de chaqne ministère
各省官制通則
- 英
- Common rules to the government organisation of every Depart-ment
- 独
- Allgemeine Regeln zur Amts-ordnung jedes Departements
- 仏
- Règle commune à l'organisation de chaque mi-nistère
各省大臣
各省大臣とは、各省に於ける行政事務を分掌する長官を云ふ、即ち内務大臣、外務大臣、大藏大臣、陸軍大臣、海軍大臣、司法大臣、文部大臣、農商務大臣、及び遞信大臣是なり、之等の者は天皇に隷屬し、其主任事務を總攝し、天皇に對して直接施政の責に任ずる最高の行政官廳なり、從つて國務大臣とは異る、國務大臣は、天皇を補弼し、其責に任ずるとのなりと雖も、行政機關にあらず、唯實際として我國に於ては、各省大臣と同一の人を以て之に充つるが故に、偶その資格が相合致するのみ、國務大臣たるには、行政事務を分擔せざるも、固より妨なき也、又國務大臣の地位權限は、憲法の規定によりて定るが故に、其存發、權限の伸縮は、憲法を變更せざれば爲す能はずと雖も、各省大臣は、各臣官制によりて始めて設められたるものなれば、各省官制の變更によりて、其職務權限を自由に伸縮するを得べし、各省大臣は、行政官廳なり、即ち天皇の委任に依り限られたる國務の一部に就き、法律上の决定權を有ずる國家機關なり、從つて此點に於て、府縣知事、郡長と其性質を同うす、但し上級官廳にして、中央官廳たるの點に於て異なる所あるは別論なり、各省大臣は、最高の行政官廳なり、故に内閣、又は内閣總理大臣に依りても、拘束せられざるを原則とす、而して其職權の範圍は、□一省令權、□二行政官廳に對する監督權、□三部下の官吏に對する監督權等其主なるものなり。(各省官制通則二條參照)
- 英
- Minister of department
- 独
- Minister des Departements
- 仏
- Ministre de département
客體
(かくたい)客體とは、恰も目的と云ふが如き意味にして、或る主體が他の者に對し、或行爲を及ぼす場合に、之を及ぼすものを主體と云ひ、之を及ぼさるるものを客體と云ふを普通とす、例へば國家を統治權の主體と云ひ、領土臣民を其客體と云ふが如し、又或る場合に於ては、目的物と同義にして、猶進んでは、目的格と云ふが如き意味に於て使用せらるるものなり、人を權利の主體となし、物を權利の客體となすと云へば、物を權利の目的物と爲すと云ふと同義にして、犯罪行爲に就きて、犯罪者を犯罪の主體と云ひ、被害者を犯罪の客體と云ふは、犯罪の目的格の意味なりとす。
- 英
- Object
- 独
- Objekt
- 仏
- Objet
隔地者
(かくちしや)隔地者とは、對話者に相對する語なれども、如何なる場合を隔地者と云ひ、如何なる場合を對話者と云ふかは、學説の一定せざる所なり、或は意思表示の場合に於て、各當事者が同一の場所にあるときは、對話者と云ひ、然らざるを隔地者と云ふものあり、例へば書面を以て相亙に意思を表示するが如きは、之を隔地者也と云ひ、或は言語を以てするを對話者と云ひ、然らざるを隔地者と云ふものあり、然れども彼の畜音器に音聲を吹き込みて、意思表示を爲す如き場合は、本論者は如何に解せんとするか、茲には對話者とは、直接に意思表示を爲すを云ひ、隔地者とは、他の媒介物を介して、間接に意思表示を爲すを云ふとの解説を可とせん、例へば相對話するが故に電話に依るが如き場合は、之を對話者となし、相近接せる場所に在るも、書狀を以て往復する場合の如きは、之を隔地者と云はん、蓋し此場合は、書狀を媒介物として、間接に意思を表示すれば也、以上は普通の場合に用ひらるる用例なるも、國際私法上に於ては、別異の意義を有するを注意すべし、即ち意思表示の成立に於て、例へば申込が甲國に於てせられ、承諾が乙國に於てせられたる場合には、廣く隔地行爲として説明せらる、此場合には、國際的の關係あるに止り、意思表示が直接に爲されたると、他の媒介物に依りて、間接に爲されたるとを問はざるなり。(民九七條、法例九條參照)
- 英
- Person at a distance
- 独
- Ab-wesende
- 仏
- Personne éloignée
確定期限
(かくていきげん)普通に所謂期限とは、當事者が一定の法律行爲の履行、又はその消滅を繫らしめたる將來の事實にして、その到來することの確實なるものを云ふ、期限を別ちて、到來すべき時期の豫め確定せると否とに依りて、確定期限と不確定期限との二となす、例解すれば、明治四十五年一月一日と云へば、其到來すること、及び其時期確實なる故に、確定期限なり、某の妻が死したる場合と云ふときは、早晩死することは確實なるも、其到來すべき時期不確定なる故に、不確定期限也、以上の用例と異り、或る場合には事抦が確定し、動かすべからざる狀態に達する時期を指して、其事抦の確定期限、又は確定時期と云ふことあり、例へば衆議院の選擧人名簿は、每年十二月二十日を以て確定し、其後に於ては修正を許さざるを以て、此十二月二十日を以て、衆議院議員選擧名簿の確定期限なりと云ふが如し。(貴族院多額納税議員互選規則一三條、民四一二條一項、及び不確定期限の部參照)
- 英
- Fixed Term
- 独
- festgesetzte Frist
- 仏
- Temps fixe
確定期日
(かくていきじつ)確定不動の日を指して、確定期日と云ふを普通とす、某年某月某日某所に於て、陸軍の演習を爲すと云ふは此例也、即ち其指定したる日時は、到來すること、及び其時期共に明白にして、動すべからざるを指す、是其一義なり、次に事抦が確定して、動すべからざる狀態に至りたる期日を指して、其事抦の確定期日と云ふことあり、例へば衆議院議員選擧人名簿は、每年十二月二十日を以て確定し、其後に至らば如何なる事情ありとも、變更修正することを許さざるを以て、此十二月二十日は、即ち選擧人名簿の確定期日なりと云ふが如し、貴族院伯子男爵議員選擧規則に「確定期日の前に於て、新に資格を得、又は回復したる者あるときは、之を名簿に記入すべし」とあるは其用例なり、されど普通に確定期日と云へば、前例即ち確定不動の日時を指して云ふを例とす。(同則六條二項)
- 英
- Fixed date
- 独
- festgesetztes Datum
- 仏
- Date fixe
確定推則
(かくていすゐそく)或一定の事實が發生したる場合に、其事實に適合すると否とを問はず、或一定の效果を附して、反對の證明を許さざるを確定推測と云ふ、凡そ法の推測に、不確定推測と確定推測との二種あり、而して前者は反證を許す推定也、故に當事者は何時にても、法律が一應推定したる事項に反對する事實を提供して、其推定を覆すことを得べし、之に反して後者は、如何なる事情ありとも、即ち法律が定めたることと絶對に相反するも、尚當事者は、如何なる證據を以ても之を覆すことを得ざるものなり、例へば民法第一〇〇條に「代理人が本人の爲にすることを示さずして爲したる意思表示は、自己の爲め之をなしたるものと看做す」とあるは、確定推則の一例なり、從つて斯かる場合は、其反對の證據を擧げて、自己の爲になしたるにあらずと云ふことを得ず、現行法律の文例として、單に「推定す」と揭げたるときは、上記の不確定推則を示したるものにして、之に反して「看做す」と規定したるときは、確定推測を現はすを普通とす。(民三一、一二五、八二〇、四四九條參照)
- 英
- Definite Supposition
- 独
- bestimmte vermutung
- 仏
- Supposition définite
確定判決
(かくていはんけつ)判決が、不服の申立、即ち故障、又は上訴を爲し得ざるに至るときは、之を確定判決と云ふ、故に判決其ものを、直に確定判決と云ふにあらずして、判決が上訴、故障等その不服を申立つるを得ざる確定力を有するに至れるとき、之を確定判決と云ふに過ぎず、普通刑事の判決に於ては、第一審の判決は五日、第二審の判決は三日を經過するに依りて確定となり、民事に於ては、一ケ月を經過するに依りて確定力を生ず、判決確定すれば、民事上に於ては、或は強制執行を爲し得べく、刑事上に於ては、或は刑の執行を爲し得べく、或は放免を爲し得べし、但し民事、刑事其他の判決に於て、上訴を爲し得べきものにあらざる判決は、その言渡と共に、直に確定となるものなり、例へば上告審の判決の如し、確定判決書とは、確定判決に於ける判決書を云ふ、即ち判決文にして、上訴期間を經過したるときに、始めて確定判決書となる、從つて初めより直に確定判決書なるものあらず、強制執行等は、此確定判決書に基きて爲し得べしとするを原則とす。(衆議院議員選擧法三七條、民訴強制執行篇等參照)
- 英
- Final Judgment
- 独
- letztes Urtheil
- 仏
- Jugement décisif
確定判決書
- 英
- Final Adjudication
- 独
- letzte Urtheilsschrift
- 仏
- Arrêt decisif
確定日附
(かくていひつけ)確定日附とは、法律上確定の效力を有する證書の日附を云ふ、民法施行法第五條の規定に依れば、左の場合に於て、日附は確定力を有するものとす、□一公正證書なるときは、其日附を以て確定日附とす、□二登記所、又は公證人役場に於て、私署證書に日附ある印章を押捺したるときは、其印章の日附を以て確定日附とす、□三私署證書の署名者中に死亡したる者あるときは、其死亡の日より確定日附あるものとす、□四確定日附ある證書中に、私署證書を引用したるときは、其證書の日附を以て、引用したる私署證書の確定日附とす、□五官廳、又は公署に於て、私署證書に或事項を記入し、之に日附を記載したるときは、其日附を以て其證書の確定日附とす、元來確定日附の效力は、其證書の成立に就き、第三者に對抗し得るにあり、若し確定日附なからんか、其證書の日附に就き、第三者より否認せらることあるも、之を以て對抗するを得ざるものにして、又特に法律に於て、確定日附に效力を付する事あり、民法第四六七條第一項に「指名債權の讓渡は、讓渡人が之を債勝者に通知し、又は債務者が之を承諾するにあらざれば、之を以て債務者其他の第三者に對抗することを得ず」とし、第二項に「前項の通知又は承諾は、確定日附ある證書を以てするにあらざれば、之を以て債務者以外の第三者に對抗することを得ず」と、即ち此場合には、其日附に就きてのみならず、讓渡したる其讓渡に就きても、第三者に對抗するには、確定日附を要すものなり。
- 英
- Fixed date
- 独
- festgesetztes Datum
- 仏
- Date fixe
確定日附簿
確定日附簿とは、登記所、又は公證人役場に備へ置き、私署證書に確定日附を付することを請求する者ある場合に、之を登錄するの要に供する帳簿なり、民法施行法の規定に依れば、確定日附簿には、豫め登錄番號を印刷し、地方裁判所長は、其紙數を表紙の裏面に記載し、職氏名を署し、職印を押捺し、且つ職印を以て、每紙の綴目に契印を爲すことを要す、若し登記所、又は公證人役場に對し、私署證書に確定日附を附することを請求する者あるときは、登記官吏、又は公證人は、確定日附簿に署名者の氏名、又は其一人の氏名に、外何名と附記したるもの、及び件名を記載し、請求の順序に從ひ、其證書に登記番號を記名し、帳簿及び證書に日附ある印章を押捺し、且つ其印章を以て、帳簿と證書とに割印を爲すことを要するもの也。(民施法五條乃至八條參照)
- 英
- List of fixed date
- 独
- Liste des festgesetzten Datums
- 仏
- Liste de la date fixe
革命
(かくめい)一國の政體、國體、社會の組織、階級、事物の關係、方法等、若くは人の性格、觀念等に急劇に加ふる根本的變化にて、要するに現狀を根本的に變革するものなり、例へば君主政體を共和政體となし、或は私有財産制度を全廢して、之を國家の手許に收むるが如き、彼の佛蘭西革命、産業革命等は、歷史上著名のものなり、革命は、多くは現時の制度を根本的に變革するものなるが故に、現狀を前提としたる權利義務にも、勢ひ變化を及ぼすものにして、舊制度の下に於ては、善事たることも惡事と化し、又は惡事たることも、善事と變ずることなきにあらず、國體變更の場合に於ては、舊君主制度に對しては纂逆となる行爲も、新共和制度となりたる曉には、適法善良の行爲となること多し、從つて國家と臣民との關係に於ては、又變革を生ずる固より其所なり、されど外國との關係、即ち國際間の權利義務に就きては、大なる影響なきを原則とす、蓋し外國より見れば、國體は變ずるも、國家其ものは依然として同一なればなり、從つて君主政體時代に締結したる條約も、共和政體時代に變ぜられたるの故を以て、その遵守を肯ぜざること能ざるを原則とす。
- 英
- Revolution
- 独
- Revolution
- 仏
- Révolution
額面
(がくめん)公債、株券等の有價證券の表面に記載したる一定の金額を額面と云ひ、市價と相對するの語なり、例へば額面百圓の公債、市價九十圓なりなど云ふが如し。(衆議院議員選擧法八五條、海軍公債證書條例八條參照)
- 英
- Face value
- 独
- Vorderseitepreis
- 仏
- Valeur
額面額
額面額とは、券面記載の金額を云ふ、嚴格に云へば額面とは、單に有價證券等の證書面と云ふと同じく、敢て額面に表示せられたる金額を云ふにあらず、されど通俗に於て券額面と云ふも、額面額と云ふも、等しく額面表示金額を意味し、之を市價と相對照して、額面五十圓の某株、市價八十圓となれりなど云ふこと前例の如し。
- 英
- Face Value
- 独
- Vorderseite-preis
- 仏
- Valeur
閣令
(かくれい)閣令とは、命令の一種にして、内閣總理大臣が擔任する職務に就き、法律勅令の範圍内に於て、其職權、又は法律勅令の委任に依りて發するものを云ふ、其發布の形式は、年月日を記載し、内閣總理大臣之に署名するものなり、其實質的效力は、他の法律勅令と等しく、臣民の自由を覊束すべく、形式的效力は、法律勅令の下に位し、府縣令の上に在るものなり、而して各省大臣の發する省令と同一の效力を有し、敢て上下の關係なし、即ち法律勅令は、閣令を廢止變更することを得るも、閣令は法律勅令を廢止變更することを得ず、又閣令を以て府縣令を廢止變更することを得るも、府縣令を以ては、閣令を廢止變更することを得ず、省令と閣令とは、各其規定すべき事項を異にするが故に、相衝突する場合あることなし、恰も各省令が、相衝突せざると其理同一なり、盖し各省大臣は、直接に天皇に隷屬し、内閣總理大臣の監督に服せざればなり。(公式令一〇條、一一條)
- 英
- Ordinance of cabinet
- 独
- Kabi-nettsordre
- 仏
- Ordonnance de l'Etat
格例
(かくれい)日本の古代に於ては、凡そ人民の遵奉すべき國家の凖則を別ちて、律、令、格、式の四となせり、所謂律令は、現時に於ける公法私法の實體法の如きものにして、格、式は、現今の形式法及訓令の如きものを總稱するもの也、之に依つて之を觀れば、格例は、準則の一種にして、その手續に關する規定の大要也と云ふべし、(例の用例は、刑法に於ける法例と云へるが如く、その綱領を指すものなり)海軍兵學校第條例に「檢査格例」とあるは、即ちこの意にして、檢査に關する手續法の大要と解するを至當とす。(同例一七條)
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
學位令
(がくゐれい)學位令は、明治三一年勅令第三四四號を以て發布せられたるものにて、學位の種類、之を授與する者、及び褫奪に關する規定也、□一學位は、法學博士、醫學博士、藥學博士、工學博士、文學博士、理學博士、農學博士、林學博士、及び獸醫學博位士の九種とす、□二學位を授くる者は文部大臣にして、下に揭ぐる者に授く、ア帝國大學大學院に入り、定規の試驗を經たる者、又は論文を提出して學位を請求し、帝國大學分科大學教授會に於て、之と同等以上の學力ありと認めたる者、イ博士會に於て、學位を授くべき學力ありと認めたる者、ウ帝國大學分科大學教授には、當該帝國大學總長の推薦により、文部大臣に於て學位を授くることを得、□三文部大臣は、學位を有する者、其榮譽を汚辱するの行爲あるときは、博士會の議を經て其學位を褫奪することを得べし。
- 英
- Imperial ordinance of degree
- 独
- Gradsordnung
- 仏
- Ordonnance du degrée
學位令細則
學位令細則は、明治三二年文部省令第一號を以て發布せられ、學位令に關する細則を定めたるものなり、□一學位は、學位受領者の專攻したる學科の區別に從ひて之を授く、□二帝國大學大學院に入り、定規の試驗を經たる者あるときは、當該帝國大學總長は、其試驗成蹟に履歷書を添へ、文部大臣に具申すべし、其他論文を提出して、學位を請求する者あるとき等の手續を定めたり。
- 英
- Regulation of ordinance of Degree
- 独
- Regulirung von der Grads-ordnung
- 仏
- Règles de l'ordonnance du degrée
掛賣
(かけうり)凡そ賣買は、代金支拂の態樣により、之を種々に別つことを得、現金賣買、代金前拂賣買、掛賣買即ち之なり、現金賣買とは、品物と代金と引換に受渡しするを云ひ、代金前拂賣買とは、品物を受取らざる前に、代金を支拂ふを云ひ、掛賣買とは、品物を引渡し、後日代金を受取るを云ふ、即ち代金前拂賣買と相反對するものなり、掛賣とは、掛賣買と云ふと同じ。(商二五條參照)
- 英
- Credit Sale
- 独
- Verkauf auf kredit
- 仏
- Vente de crédit
假決
(かけつ)終局的に决定するにあらずして、假りて決定するを假決と云ふ、即ち或一定の條件を附して、一時決定することを指し、若し其條件にして成就すれば、假決の時より終局的の決定となるを普通とす、若し條件にして成就せざらんか、假決は其時より、若くは初より、これなかりしものと看做さるるものとす。(徵兵事務條例三五條參照)
- 英
- Temporary pass
- 独
- zeitweilige Zustimmung
- 仏
- Passe temporaire
可決
(かけつ)多數に於て會議する場合に、原案を是認するを可決と云ひ、之は相對して原案を否認するを否決と云ふ、可決の方法は、必ずしも其條件を一にせず、或は過半數を以て決する場合あり、四分の三以上の多數によりて決する場合あり、三分の二以上の多數を以て決する場合あり、過半數を以て決する場合は、原案に賛意を表する者、過半數なれば可決にして、過半數に至らざれば否決なり、四分の三又は三分の二以上の同意を以て、可否を決する場合に於ても、其理は則ち一也。(憲法七三條、議院法二七條參照)
- 英
- Pass
- 独
- Zustimmung
- 仏
- Pssee
家憲
(かけん)國家統治の根本原則を定めたる法律を憲法、又は國憲と云ふが如く、一家經營の根本規定を定めたるものを家憲と謂ふ、例へば帝室、王室、諸侯の家憲と云ふ如し、家憲は、唯一家の内部の準則を定めたるに過ぎずして、廣く吾人相亙の關係を抽象的に定めたるものにあらざれば、國法上法令にあらざるは云ふ迄もなし、從つて家憲は、如何なる場合に於ても、國法に背くことを得ざるは勿論、國憲の遵守を理由として、法律上の責任を免脱せらるることなし、然りと雖も、皇室王室の家憲と稱するものは、往々にして其實國法なる場合あり、我皇室典範は、其名に於て家憲たるが如きも、實に於ては全く然らずして、國法の範圍に屬する規定甚多し、或は國法と家憲との區別を、公布の手續を盡したると否とによりて別つべきものとし、皇室典範を家憲なりと云ふ者あるも、多くの學者の排斥する所也、盖し公布は、單に法令發布の手續に過ぎず、國法の實質を成す唯一の要素と云ふべからざればなり。
- 英
- Family regulation
- 独
- Familien-regel
- 仏
- Règle de famille
加減順序
(かげんじゆんぢよ)裁判官が犯罪を處斷するに當り、其情狀により、本刑を加重減刑すべき場合に、刑名を定むる順序に關する準則によりて、刑を加重減輕すべき順序なり、刑法第九九條に依れば、□一再犯加重、□二宥恕減輕、□三自首減輕、□四酌量減輕、即ち是なり。(舊刑九九條參照)
- 英
- Concurrence of causes in aggravation or extenuation of penalties
- 独
- Ordnung von vermehrung und Ver-minderung der strafe
加減例
加減例とは、刑法により、犯人の刑罸を加重、若くは減輕すべき場合に、凖據すべき標準を定むる規定を云ふなり、例へば刑を加重し、又は減輕すべき場合に、一等又は二等と稱するは、如何なる標準に依りて定むるかを決定したる規定の如し、刑法に依れば、重罪の刑は、□一死刑□二無期徒刑、□三有期徒刑、□四重懲役、□五輕懲役と云ふ如き順序によりて減刑す、輕罪の刑は、各本條に記載したる刑期全額の四分の一を以て、加重減輕の標凖と定む、故に一等を減ずと云へば、本來なれば、四年の重禁錮に處らるるものを三年の刑に處す、又二等を減じたるときは、二年の刑に處するが如し。(刑六八條乃至七二條參照)
加工
(かこう)加工とは、或物に工作を加ふるを云ふ、例へば絹地に画を書き、木材に彫刻するが如し。(民二四六條乃至二四八條、商二六四條參照)
以上の加工に就きては、加工物の所有權が何れにありや、即ち他人の物に彫刻を加へたる場合に、材料の所有者に其彫刻物の所有權ありや、將た加工者、即ち彫刻を爲したる者が、所有權を取得するやに就きて實益あり、我民法の規定によれば、動産に加工したる場合には、材料の所有者に屬するを原則とし、加工の結果、價格が著しく材料の價格に起過するときは、加工者は、その物の所有權を取得す、若し加工者が、材料の一部を供したるときは、價格の超過することなきも、材料の價格に、其加工に依りて生じたる價格を加へたるものが、他人の材料の價格に超ゆるときは、其所有權を取得するものと定めたり。(民二四六條乃至二四八條參照)
- 英
- Working up of things
- 独
- Ver-arbeitung
- 仏
- Oeuvre
加工者
加工者とは、或物に工作を加へたる者を云ふ、例へば絹地に画を書き、木材に彫刻する人の如し。(民四二六條參照)
- 英
- Worker
- 独
- Arbeiter
- 仏
- Ouvrier
加工物
加工物とは、工作を加へたる物を云ふ、例へば画かれたる絹地の如き、彫刻せられたる木の如し。(民二四六條參照)
- 英
- Thing worked up
- 独
- ver-arbeitetes Ding
- 仏
- Chose ouvrée
瑕疵
(かし)廣く瑕疵と云へば、不完全なる狀態を指す、□一物が不完全なりと云ふ如き場合に用ふることあり、例へば賣買の目的物に瑕疵あるが如し、□二或は意思表示が不完全なりと云ふ如き場合に用ふることあり、詐僞強迫等に基き、法律行爲の緣由に錯誤ありて、其法律行爲を取消し得るが如き場合は、意思表示が不完全なる場合の一例なり、何れの場合にも、法律上種々の效果を生ず、□一の場合には、所謂瑕疵擔保責任の問題を生じ、買主は或は契約を解除し得べく、損害の賠償を請求し得べし、□二の場合には、法律行爲を取消して、原狀に復せしむることを得べし。(民九六條五七〇條參照)
- 英
- Defect
- 独
- Mangel
- 仏
- Défaut
瑕疵擔保の責任
瑕疵擔保の責任、賣主等が、賣買其他の法律行爲に就き、瑕疵を負擔するを瑕疵擔保と云ひ、其責任を稱して、瑕疵擔保の責任と云ふ、瑕疵擔保の責任は、必ずしも其程度を一にせず、イ贈與に於ける瑕疵擔保の責任、贈與者は、贈與の目的たる物、又は權利の疵瑕に就き、其責に任ぜざるを常とし、唯□一贈與者が其疵瑕を知りて、之を受贈者に告げざるとき、□二負擔付贈與に就きては、其負擔の限度に於て、賣主と同じく擔保の責任を負ふ、ロ消費貸借に於ける疵瑕擔保の責任、□一利息附の消費貸借に於て、物に隱れたる疵瑕ありたるときは、貸主は疵瑕なき物を之に代ふることを要す、但し借主より損害賠償の請求を妨げず、□二無利息の消費貸借に就きては、借主は其借用物を返還せずして、其價格を返還して(責を免るることを得、但し貸主が其疵瑕を知りて告げざりしときは、借主は疵瑕なき物と代へんこと、又は損害賠償の請求を爲すことを妨げず、ハ請負契約に於ける瑕疵擔保の責任、□一仕事の目的物に瑕疵あるときは、注文者は請負人に對し、相當の期限を定めて、其瑕疵の修補を請求することを得、若し瑕疵が重要ならざるとき、然も其修補が過分の費用を要するときは、損害賠償の請求權を有するのみ、□二注文者は、瑕疵の修補に代へ、又は其修補と共に、損害賠償の請求を爲すことを得、□三仕事の目的物に瑕疵ありて、之が爲に契約を爲したる目的を達すること能はざる時は、注文者は、契約の解除を爲すことを得るを原則とするも、建物其他土地の工作物に就きては、解除を爲すことを得ず、□四以上の場合に於て、仕事の目的物の瑕疵が、注文者より供したる材料の性質、又は注文者の與へたる指圖に依りて生じたるときは、請負人に於て、之が責を負ふべきにあらざるも、若し其材料、又は指圖の不適當なるを知りて之を告げざるときは、猶其責任を負ふ、□五同上の場合に、其の責任を負はざる旨を特約することは有效なるも、請負人が其知れるにも拘らず、之を告げざりし事實に就きては、猶其責を免るることを得ざるものとす、□六上記の責任は、仕事の目的物を引渡すごとを要するものに就きては、引渡したるときより、仕事の引渡を要せざるものに就きては、仕事終了の時より、一年間相手方より請求を受けざるときは、其責を免る、但し土地の工作物の請負人に、其工作物、又は地盤の瑕疵に就きては、引渡の後五年間擔保の責に任ず、猶石造、土造、煉瓦造、又は金屬造の工作物に就きては、十年間其責を負はざるべからず、若し工作物が、瑕疵に依りて滅失毀損したるときは、注文者は滅失、毀損の時より一年内に、瑕疵の修補、又は損害賠償を求めざれば、請負人は其責を免るるもの也、ニ寄託契務に於ける瑕疵擔保の責任、寄託者は、寄託物の瑕疵より生じたる損害を受寄者に賠償するの責任あり、但し寄託者が過失なくして、瑕疵あるを知らざりしとき、又は受寄者が之を知りたるときは、其責を負はず、ホ賣買契約に於ける瑕疵擔保の責任、賣買の目的物に隱れたる瑕疵ある場合に於て、買主が之を知らざるが爲に、契約を爲したる目的を達すること能はざるときは、買主は契約を解除することを得るなり、其他の場合に於ては、單に損害賠償の請求のみを爲すことを得、而して契約の解除、又は損害賠償は、之を一年内に行使せざれば、最早行使することを得ず、(強制竸賣の場合に於ては、賣主に瑕疵擔保の責任なし)賣主は、假令瑕疵擔保の責任を負はざる旨を約するも、知りて告げざりし事實に就きては、準責任を免るることを得ず、尚此賣買契約に於ける瑕疵擔保の責任は、其他の有償契約にも凖用せらる、例へば、交換の目的物に瑕疵ある場合の如きは、賣買に於ける瑕疵擔保の責任と、同一の責任を負ふが如し、ヘ共有物分割の場合に於ける瑕疵擔保の責任、共有物を分割したる場合、例へば家屋と土地とを共有したる場合に之を分割し、甲は家屋を取り、乙は土地を取りたるときに、各其目的物に就き、賣買契約に於ける賣主と同じく、瑕疵擔保の責に任するものとす。(民五五一、五九〇、六三四條乃至六四〇條、五五九、五七〇、五七二、二六一條、商二八八、二八九條等參照)
嫁資
(かし)嫁資の起原は、羅馬法に發したるものにして、今日に於ては、佛國、西國等に行はるる所の一種の夫婦財産制にして、我國に於ても持參金、化粧用等と云ひて、この制度存したりき、所謂嫁資とは、妻が婚姻の際、其父より受くる財産にして、婚姻によりても、猶其所有權は依然妻に存するものなれども、その管理、收益の權利のみ、當然夫に歸する者とす、我法定夫婦財産制に依れば、妻が婚姻前より有せる財産、及び婚姻中自己の名に於て得たる財産は、別段の契約なき限りは、悉皆妻の特有財産にして、夫は單に其管理收益の權利を有するに過ぎず、故に嫁資の制度を認むる必要存せざるなり。(民七九九、八〇一、八〇七條參照)
- 英
- Marriage Fund
- 独
- Heiratsgut
- 仏
- Douaire
嫁資財産
嫁資財産とは、嫁資として妻が婚姻の際持參したる財産を云ひ、單に嫁資と云ふを、客觀的に觀察して云ふなり、嫁資方法とは、佛國、西國等に於て認むる夫婦財産制にして、要するに婦の財産を二種に大別し、一を其特有財産とし、之に就きて婦は、其所有權を完全に有し収益及び管理權を有す、他の一は之を嫁資財産とし、之に就きては、婦は所有權を有するも、収益、及び管理權は、其夫に屬するものとせる也。(我民法は前記の如く斯かる制度を認めず)
貸付
(かしつけ)貸付とは、物を他人に交付して、之を使用せしむるを云ふ、□一消費貸借、使用貸借、又は賃貸借等によりて、他人に或物を交付し、又は使用収益を爲さしむる契約を貸付と云ふことあり、□二廣く上記の外、自己の土地に就き、他人の爲めに地上權、又は永小作權を設定することを貸付と云ふことあり、質屋取締法第八條に「貸付」とあるは一の例にして、官有財産、管理規第則三條に「貸付」とあるは二の用例なり。貸付契約とは、普通に所謂貸借契約を指す、消費貸借、使用貸借、及賃貸借契約等是なり、されど廣く地上權、又は永小作權を設定する契約をも、貸付契約の一種とすることなきにあらず、官有財産管理規則第六條に「貸付契約」とあるは其一例なり。
- 英
- Loan, Rent
- 独
- Verleihung
- 仏
- Prêt
貸付契約
- 英
- Loan contract
- 独
- Ver-leihungsvertrag
- 仏
- Contrat de prêt
貸付期限
貸付期限とは、消費貸借、使用貸借、及び賃貸借等の存續期間を指すを常とするも、廣く其外地上權、又は永小作權の存續期間をも、貸付期限と稱することあり。(官有財産管理規則第八條)貸付財産とは、消費貸借、使用貸借及賃貸借等によりて、貸付けたる財産を指して云ふを常とするも、廣く其外國人の爲めに地上權、又は永小作權を設定したる土地をも稱することあり、官有財産管理規則第六條に「貸付財産」とあるは其用例に屬す。
- 英
- Term of Loan
- 独
- Ver-leihungstermin
- 仏
- Terme de prêt
貸付財産
- 英
- Loan property
- 独
- Ver-leihudgsvermögen
- 仏
- Propriété prêtée
貸付料
貸付料とは、賃貸借契約に於て、借主が貸主に支拂ふ賃金を云ふ、例へば土地の地代、家屋の屋賃の如し、然れども更に廣く地上權、又は永小作權を設定したる場合の地代、永小作料等を貸付料と稱することあり、官有財産管理規則第五條に「貸付料」とあるは、此用語例とす、而して消費貸借に於ては、利息を生ずるも貸付料なるものなし、又使用貸借は無債なるが故に、借主は何物も貸主に支拂ふ事なし。
- 英
- Rent
- 独
- Rente
- 仏
- Rente
貸主
(かしぬし)貸主とは、貸付する者を云ふ、□一貸借契約に於て、金錢其他の物を交付し、又は或物の使用收益を爲さしむる事を約する當事者を貸主と云ふを常とす、□二現行民法に於ては、賃貸借契約に就きては、貸主を賃貸人と云ひ、貸主を賃貸人と稱し、唯使用貸借、消費貸借に於てのみ、貸主又は借主なる用語を採る、□三更に廣く貸借契約の場合の外、地上權、永小作權設定したる場合に於ける土地の所有者をも、地上權者、永小作人に對して、貸主と稱することもあり。
- 英
- Lender
- 独
- Verleiher
- 仏
- Prêteur
貸料
貸料、貸付料と云ふと同じく、唯この語を簡畧にしたるものなり。(貸付料の部參照)
- 英
- Rent
- 独
- Rente
- 仏
- Rente
下士適任證書
(かしてきにんしやうしよ)下士たる資格を有することを證する爲めに、上等兵及同相當官に授與する證書を指して、下士適任證書と云ふ、これを付與する場合は、例へば一年志願兵條例によりて、一年志願兵の豫備士官たるを得べき材幹ありと認められたる者にして、服役滿期の際、其成蹟優等なる者に、此證を付與するは其一例也、又各兵科の現役上等兵にして、下士候補者となり、その業を卒へたるも、定員過剩のため、之を伍長に爲すこと能はざるときに、下十適任證書を附與し、下士勤務上等兵となす場合、及び以上の下士候補者にして、其業を卒ふると共に、滿期除隊となる者にこの證書を付與するもの也、其效果は、陸軍服役條例第一三二條に依り、豫備役後備役兵卒にして、各兵科、又は衛生部下土適任證書を有する者は、滿期後引續き服務するを得、且つ下士定員に不足を生じたるときは、之を下士に任用すべきものなり。(陸軍一年志願兵條例一九條等參照)
家資分散
(かしぶんさん)家資分散とは、民事訴訟法に基く強制執行處分に依り、債務を辨濟するの資力なき非商人に對して、管轄裁判所が職權、又は申立に依りて、決定を以て宣告する一種の破産處分にして、其效果は、宣告の日より選擧權、被選擧權、其他の公權を失ふものなり、而して商人に就きては、破産の宣告あるが故に、家資分散なるものなしと云ふを現行法の解釋とす、家資分散者が、後日其債務を完濟したる場合には、復權を爲す事を得、復權を爲したるときは、失權したる選擧權、被選擧權其他の公權を回復するものなり。(民施法二條參照)
- 英
- Insolvency
- 独
- Konkurs
- 仏
- Insolvabilité
家資分散者
家資分散者とは、強制執行の結果、債務未濟の者に對して、家資分散者として宣告を受けたる者を云ふ、結局破産者と大同小異なり、唯破産の宣告を受くる者は商人なるに、家資分散者は、非商人なるの點にあり。
家資分散法
家資分散法は、明治二三年法律第六九號を以て公布せられしものにして、家資分散に關する手續、效果等を定めたるもなり。
- 英
- Law of Insolvency
- 独
- Konkursgesetz
- 仏
- Loi de l'insolvabilité
家從
(かじゆう)皇族職員の一種にして、親王家、又は諸王家の庶務に從事するものなり、元來親王家、及び諸王家の職員は下記の如し、□一別當、親王家輔翼の責に任じ、家務會計を總理し、家令以下を監督する者にして、□二家令、別當の職務を助け、庶務會計を管理する者にして、王家に於ては輔翼の責に任じ、家扶以下を監督するものなり、□三家扶、庶務會計を掌理する者にして、□四家從とは、庶務に從事するものなり。(皇族職員職制一、二條參照)
- 英
- Domestic servant
- 独
- Hausgenos-senschaft
- 仏
- Domestique
家税
(かぜい)家屋を課税物件として、一定の税率に從ひ、家屋の所有者に賦課する租税にして、臺灣に於て行はるる地方税の一種たり、其他の地方税に於ては、之を家屋税と云ふ。(臺灣地方税則一條、家屋税の部參照)
- 英
- House tax
- 独
- Haussteuer
- 仏
- Impôt sur la maison
假設登記
(かせつとうき)登記簿の全部、又は一部が滅失したる場合に於て、司法大臣の定めたる期問内に、登記の回復を爲すを假設登記と云ふ、要するに既に登記を爲したるも、登記簿滅失等の、爲に、其利益を豫防する目的を以て爲す一種の登記に外ならず。(不動産登記法二三條參照)
假設登記簿
假設登記簿とは、假設登記の申請ありたる場合に、之を受理し、登記する帳簿を假設登記簿と云ふ。(不動産登記法七二條乃至七五條參照)
- 英
- Temporary register
- 独
- Vormerkungbuch
- 仏
- Enregistrement temporaire
河川
(かせん)法律上河川とは、主務大臣に於て、公共の利害に重大の關係ありと認定したる河川を云ふ。(河川法六條參照)
- 英
- River
- 独
- Flusz
- 仏
- Fleuve
河川行政
河川行政とは、公益上重大の關係ありとして認定したる河川の管理、河川の使用の制限等に關する行政を云ふ、例へば河川法の執行に關する一切の行政事務の如し。
- 英
- Admimistration of river
- 独
- Fluszverwaltung
- 仏
- Administration d'une fleuve
河川法
(かせんはふ)河川法は、明治二九年法律第七一號を以て公布せられ、河川の管理、河川の使用に關する制限、及び警察、河川に關する費用の負擔、土地所有者の權利義務、河川の管理より生ずる收入、河川に關する監督、強制手續並に之に關する訴願、及び訴訟手續を定めたる法律也。
- 英
- Law of river
- 独
- Fluszgesetz
- 仏
- Loi d'une fleuve
河川法施行細則
河川施行細則、明治二九年勅令第二三六號を以て公布せられ、河川法の施行に關する細規凖則を定めたる命令なり。
- 英
- Rule for the applica-tion to the law of river
- 独
- Ausfüh-rungsregel des Fluszgesetzes
- 仏
- Règle pour l'application de la loi d'une fleuve
河川附屬物
(かせんふぞくぶつ)河川附屬物とは、提防、護岸、水制、河津、曳船道、其他流水に依りて生ずる公利を增進し、又は公害を除却し、若くは輕滅する爲に設けたるものを云ひ、地方行政廳に於て、河川の附屬物と認定したるものなり、而して此等の設營は、命令を以て特に規定を設けたるときは格別、其他の場合は、凡て河川に關する規定に從ふべきものとす。(河川法參照)
- 英
- Appurtenances of river
- 独
- Fluszpertinenz
- 仏
- Appartenance à une fleuve
家族
(かぞく)戸主の親族にして、其家に在る者及其配遇者を家族と云ふ、但し戸主の變更ありたる場合には、舊戸主及其家族は、當然新戸主の家族となるを普通とす、所謂親族とは、六親等内の血族、配偶者、及び三親等内の姻族を指し、其家に在る者とは、其戸籍を同ふする者の謂ひなり、故に其居を同うするも、戸籍を同うするにあらざる者は、所謂家族にあらざるなり。(民七三二條)
- 英
- Family
- 独
- Familie
- 仏
- Famille
家屬
家屬とは、家族關係を指す場合を普通とす、例へば舊民法の用例の如し、舊民法に於ては、家族と家族關係とを別たんが爲めに、特に家屬の文字を使用せり、現行民法に於ては、家族關係なる文字を用ひ、家屬なる文字を使用せず、或は家族と同義に用ひらるる場合あり、例へば刑法第三四三條に「家屬」とあるが如きは、その用例に屬す。
- 英
- Member of family
- 独
- Glieder der Familie
- 仏
- Membre de famille
家族關係
家族關係とは、戸主と家族との關係、即ち戸主と家族との權利義務を云ふ、例へば戸主は、家族の居所指定權を有し、これを扶養の義務を負ふ如し。
- 英
- Familiar relation
- 独
- Familien-verhältnisz
- 仏
- Relation defamille
家族團體
(かぞくだんたい)家族團體とは、戸主と家族とを以て成る團體、即ち家を云ふなり、然れども常に戸主と家族とを併存することを要するものにあらずして、單に戸主一人のみにても家族團體たるを失はず、何となれば、戸主一人にても家を構成するに妨なく、家は即ち家族團體たればなり、要するに家族團體則ち家、家即ち家族團體なりと云ふべく、從つて家は、戸主一人にのみにて家族なきこともあり、尚家即ち家族團體に、戸主も家族もなき場合あり得べし、例へば單身戸主死亡したるときに、相續人曠缺せる場合の如し、此場合に、猶家族團體、即ち家は存在するものとして取扱はるる事は明かなりとす。(民一〇五一條乃至一〇五九條、及び家の部參照)
- 英
- Body of family
- 独
- Familien-körperschaft
- 仏
- Organisation d'une famille
家族制
(かぞくせい)凡そ社會を構成するには種々の制度あり、數多の個人相集りて、直に社會を組織するの制度あり、之を個人制度と云ひ、數多の個人相集りて、先づ家を成し、數多の家相集りて社會を爲すものあり、之を家族制度と云ふ、現時に於ける歐米各國は、殆皆個人制度なりと雖も、我國に於ては未だ然らず、抑も我邦は建國の初より、寧ろ大なる一家を爲したるが如し、即ち日本なる一大家ありて其日本なる一大家の家族が、即ち日本臣民なりしが如し、之我國の家族制度を改むるは、同時に國體を改むるの觀ありて、容易に箇人制度に變易すべからざる所以なり、從つて我國の現狀は於ては、社會を組織する單位は家にして、其家を組織する者は即ち各個人なり、故に我國民たる者は、一人として戸主又は家族にあらざるものなしと云はざるべからず、斯かる家族制度による家の法律上の編制を名づけて、家族制と云ふ。
家族制度
家族制度とは、上記の如く社會國家の組織上に於て、個人主義に相對するの名稱なることは明かなり、唯一國の組織編制に於て、法律上個人の制度に依るべきか、家族制を採用すべきかは重大なる問題にして、單に理論一遍を以て論じ去るべきものにあらず、一國現在組織の沿革に基き、或は之を各國法制の實際に鑑みて決定すべきものとす、歐洲諸國の現狀態を見るに、社會は恰も身分より契約に進みたると同じく、實に社會の單位は、一家より一個人となれるが如し、吾人は、猶茲に重ねて曰ん、我法が採用せる家族制度は、果して何時までも我國に於ける社會關係を支配すべき者なるか、乃至一時過渡時代に存立せる戸籍法上の規定に加ふるに、親族上の權利義務を調味したるものに過ぎざるべきか、之實に重且つ大なる國家問題なるも、斯くの如きは社會政策の硏究に委ね、茲には之を畧す。(民法親族編參照)
- 英
- Family system
- 独
- Familien-system
- 仏
- Système de famille
家宅捜索
(かたくさうさく)刑事訴訟手續により、被告人、又は證據物件を發見する爲めに行ふ捜査處分にして、被告人に就きて之を云へば、令狀執行の命を受けたる巡査、憲兵卒が、被告人を潜匿したりと思料する被告人、又は其他の者の家宅に對し、市町村長の立會を求め、若し差支等の爲め立會なきときは、隣祐二人以上の立會を求めて之を行ふものなり、又物件捜索に就きて云へば、豫審判事が、被告人の住所、又は犯罪事實を證明すべぎ證據物件を藏匿する疑ある者の住所に對之を行ものとす、若し被告入、又は物件藏匿の疑ある者住居にあらざるときは、市町村長の立會あることを要す、家宅捜索は、其被告人捜査の爲めにすると、物件搜索の爲めにするとを問はず、日出前、日沒後に之を行ふことを得ざるを原則とす、但し旅店、料理店、其他夜間と雖も衆人の出入する場所に就きては、其公開時間中は、之を爲しを得るものなり。(刑訴法七八條參照)
- 英
- Domiciliary search
- 独
- Heim-suchung
- 仏
- Recherche domiciliaire
家宅侵入罪
(かたくしんにふざい)家宅侵入罪とは、故なく人の住居したる邸宅、或は人の看守したる建造物に侵入し、又は在留する罪なり、分説すれば、□一侵入の所爲あること、茲に少しく疑あるは、一旦正權限によりて邸宅其他の場所に入りたる者が、其後管理權者の督促あるにも拘らず、猶止りて去らざる場合に於ては、之を罰することを得るや否やこれなり、不純正、不作爲を認むることを得とすれば、無論家宅侵入罪として論ずるを得べきなり、□二侵入の場所は、イ人の住所したる邸宅、ロ人の看守したる建造物、ハ皇居、禁苑、離宮、行在所、及び皇陵なること、□三故なくして入りたること、故なくとは、權利なくしてとの意にして、從つて豫審判事の家宅捜索令狀執行、巡査の家宅侵入等は、其權限ある場合には、無論本罪とならざること明なり、尤も其侵入の遠因に就きては毫も問ふ所なく、管理權者の意思に反し、權限なくして之に侵入し、其管理權を侵害する以上は、常に本罪を構成するもの也、例へば一時の睡眠を取る爲に、無斷にて他人の住宅に侵入するが如き、或は強ひて談話を求むる爲に、家内に侵入するが如き、何れも他に罪を犯すの意なき場合に於ても、猶本罪を構成するに妨なし、次に人の住居したる邸宅に就きては、其邸宅の主宰者、又は其代理人、若し邸宅内の各室が、特定の各人に別々に給供せられたりときは、其特別の人々、例へば旅人宿に於て、各旅客に供給せられたる客室、又は大家に於て書生房室、下婢房室と區別するが如き、又は家庭教師の爲に特に供給せられたる房室の如きは、之等旅客、下婢、教師の承諾を得るときは、假令家の主宰者の承諾を得ざるも本罪を構成せす、若し多くの住居者に於て、同一の玄關、又は梯子段、庭園等が、共同に使用せられたるときは、各人は他を害することなく、亙に之が管理權を有す、彼の遊野郞が、他家の婦人に情を通し、夜間密かに其婦人の房屋に到りたるが如き、豫め承諾の上なるときは、家宅侵入罪とならずと云はざるべからず、但し反對の判决ありたることあり、注意すべし、本罪の處分は、晝間なれは十一日以上六ケ月以下の重禁に處せらる、但し□一門戸牆壁を踰越損壞し、又は鎖鑰を開きて入りたるとき、□二兇器其他犯罪の用に供すべき物品を携帶して入りたるとき、□三暴行を爲して入りたる時、□四二人以上にて入りたる時は、一等を加ふるものとす、夜間なるときは、一月ケ以上一年以下の重禁錮に處せらる、但し晝間家宅侵入の場合の加重情狀あるときは、更に一等を加ふるものとす、皇居、禁苑、離宮、行在所、及び皇陵内に入りたる者は、以上の處分より又更に一等を加ふべきものなり。(刑一三〇條乃至一三一二條參照)
- 英
- Burglary
- 独
- Hausfriedens-bruch
- 仏
- Vol avec éffraction dans une maison habitie
家長
(かちやう)一家族團體に長として、團體員を統率する者を家長と云ふ、されど必ずしも現實に團體員を統率する事を要するの意味にあらずして、之を統率するの權利者たれば可なりとす、現行制度上戸主は、即ち家長なり、而して戸主が現實に自ら其權利を行使すること能はざる場合も亦之を認む。
- 英
- Head of the family
- 独
- Familien-herrscher
- 仏
- Père de famille
家長權
家長權、我現行法に於ては家長なる者なく、之に相當する者を戸主となす、故に家長權とは、戸主權を指すに外ならず、民法上戸主權として認められたるものは、□一家族が、庶子、又は私生子を其家に入れんとする時、其許否を決するの權、□二家族が、他家の家族とならんとするとき、許否を爲すの權、□三或る人が家族として、他家より入らんとするとき、許否を爲すの權、□四家族が、婚姻、又は養子緣組を爲さんとするとき、許否を爲すの權、□五家族が、他家を相續せんとするとき、許否を爲すの權、□六家族が、分家を爲さんとするとき、許否を爲すの權、□七家族が、廢家絶家を再興せんとするとき、許否を爲すの權、□八婚姻、又は養子總組によりて他家に入りたる者が、其配家者、又は養家の家族にあらざる自己の家族を婚家、又は養家の家族と爲さんとするとき、許否を爲すの權、□九婚家、又は養家を去りたる者が、其家に在る自己の直系卑族を他家の家族と爲さんとするとき、許否を爲すの權、□十婚姻、又は養子綠組に依りて、他家に入らんとするとき、同意を與ふるが權、(この權利は、實家の戸主のみか、婚家、又は養家の戸主にもこの權あるか、又は双方にもこれあるかに就きて議論あり、司法省は双方にありとの説を採る、)十一婚家、又は養家を去りたる者が、其家に在る自己の直系卑族を自家の家族と爲さんとするとき、同意を與ふるの權、十二家族の居所を指定するの權、十三自己の意に反して、居所を定めたる場合に、他所に轉ずべき旨を催告するも應ぜざる場合に、之を離籍するの權、但し、い家族が未成年者なるとき、ろ法定の推定家督相續人たるとき、(此點に就き反對論あり)は戸主の配偶者なるときは、此權利を行ふことを得ず、十四家族が同意を得ずして妻を娶り、又は養子と爲したるとき之を離籍するの權、十五一定の場合に復籍を拒むの權、十六戸主、又は家族の孰れに屬するが分明ならざる財産に就き、一應自己の財産と推定せらるるの構等これなり。(民七三五、七三七、七三八、七四一、七四三條乃至七五〇條七八九條參照)
- 英
- Right of head of the family
- 独
- Recht des Familienherrn
- 仏
- Droit de père de famille
家女
(かぢよ)婚姻によりて入りたる女と相對するの名稱にして、其家に生ひ立ちの女と云ふに同じ、然れども實子たると、養子たると、繼子たるとは之を問はず、蓋し繼子養子は、實子と同一の待遇を受くるを原則とすればなり。(民八一三條參照)
- 英
- Daughter of the house
- 独
- Tochter des Hauses
- 仏
- Fille de famille
割讓
(かつぢやう)自己の領土の一部を割きて讓與するを割讓と云ふ、元來領土權は、所有權にあらざる故に、假令領土の割讓ありと雖も、其所有權には何等の影響を及ぼさざる者と云はざるべがらず、所有者は、割讓前は割讓國の法律によりて、所有權を得たるものなるも、割讓後は割讓を受けたる國家の法律によりて、之を有するの差あるのみ、故に割讓を受けたる國家は、其所有權を剝奪して、自己の掌裡に收むることを得べしとするを論理上の結果とするも、國際法上の原則としては、其權を認めざるべからざるものとす、又領土の一所有部を他國に讓與するも、之を以て統治權の一部を割きたるものと云ふとこを得ず、單に統治權の及ぶ範圍が、割讓國家より觀て收縮したるものとす、而して割讓地住民の國籍の何れの國にあるかは、學者間に爭ある所なりと雖も、多くは條約を以て一定期間を定め、住民に選擧せしむるを國際法上の慣例とす。
- 英
- Cession
- 独
- Abtretung
- 仏
- Ces-sion
割讓地
割讓地とは、割讓の目的物となりたる土地を云ふに外ならず、例へば清國が、わが國に臺灣を割讓したりと云へば、臺灣は所謂割讓地なりとす。
- 英
- Land of cession
- 独
- Abtret-ungsland
- 仏
- Terre cessée
假定
(かてい)假定とは、事實として在り得べく考へらるるも、未だ十分に證明せられざる考案等に付せらるる名辭なり、今日存する多くの學理學説、又は發明發見の類も、其初は皆學者實際家の腦中に潜める想像假定に過ぎず、之が其後の經驗により證明せられて、動すべからざる眞理となりたるに過ぎず、然らば眞理と假定とは、全然其性質を異にせるものにあらずして、その相去る實に一步のみ、唯一は證明の稍十分なるに對し、他は未だ不十分なるの點が異るに過ぎざるなり、今日眞理なりとせらるる彼の引力説の如きも、實は唯當面にては在り得べしとせられたる一大假定が、幸にも今日まで有力なる反對に遭遇せざるを以て、動すべからざる眞理なりとせらるるのみ、又今日全く假定とせらるる星雲説の如きも、今後の經過に於て、之を破るに足るべき有力なる反對説の出でざる限りは、終に眞理と認めらるるに至るべし、要するに假定は、其後の經驗證明により、所謂眞理と稱せらるるに至るべき考案なり。
- 英
- Presumption
- 独
- Wahrschein-lichkeit
- 仏
- Présomption
家督
(かとく)家督とは、戸主の有する權利義務を總括したるものなり、然れども家督相續と、同義に用ひらるることなきにしもあらず、貴族院多額納税者議員亙選規則に「家督に由り財産を相續したる者云々」とあるは其用例なり。(同則二條)
- 英
- Inheritance
- 独
- Erbschaft
- 仏
- Héritage
家督相續
家督相續とは、戸主權を承繼するを云ふ、即ち前戸主が死亡、隱居等により、其地位を退き、新に戸主となるを云ふ、其開始原因は、□一死亡、□二隱居、□三國籍喪失、□四戸主が、婚姻の取消に依りて、其家を去りたるとき、□五戸主が、養子緣組の取消によりて、其家を去りたるとき、□六女戸主が、入夫婚姻を爲したるとき、□七入夫が離婚をしたるとき即ち是也、以上の原因によりて、家督を相續して戸主となりたる者は、相續開始の時より、前戸主の有せし一切の權利義務を承繼す、但し一身に專屬せる權利義務は、之を承繼することなし、例へば前戸主が画伯にて、他人の肖像を画かんことを約せし場合に、新戸主は官吏なるが如き場合には、之を承繼することなく、又之を承繼するを得ざればなり、尚注意すべきは、□一隱居者及入夫婚姻を爲す女戸主は、確定日附ある證書に依りてのみ、其財産を留保することを得、但し家督相續人の遣留分に關する規定に、違反することを得ざるは勿論なり、□二隱居、又は入夫婚姻に依る家督相續の場合に於ては、前戸主の債權者は、其前戸主に對しても、猶辨濟の請求を爲す事を得べく、又入夫婚姻の取消、或は入夫の離婚に依る家督相續の場合に於ては、入夫が戸主たりし間に負擔したる債務の辨濟は、其人夫に對して、之を請求することを得ると同時に、尚相續人に對する請求を妨げざる也、□三國籍喪失者の家督相續人は、戸主權、及び家督相續の特權に屬する權利のみを承繼す、但し遺留分及前戸主が、特に指定したる相續財産を承繼することを妨げず、國籍喪失者が、日本人にあらざれば、亨有することを得ざる權利を有する場合に於て、一年内に之を日本人に讓渡さざるときは、其權利は、家督相續人に歸屬するものなり、□四國籍喪夫に依る家督相續の場合に於ては、前戸主の債權者は、家督相續人に對して、其受けたる財産の限度に於てのみ、辨濟の請求を爲すことを得。(民五六四九條、八六條乃至九九一條參照)
- 英
- Succeeding to an inheritance
- 独
- Erbfolge
- 仏
- Succession à un héri-tage
家督相續人
家督相續人とは、家督相續の開始に依りて、前戸主の有せし一切の權利義務を承繼する者を云ふ、家督相續人には、法定の法定家督相續人、指定相續人、第一次の選定相續人、尊族の推定相續人、及び第二次の選定相續人の別あり、法定の推定相續人とは、相續開始の場合に、直に相續人たるの地位にある者にして、指定家督相續人とは、死亡、又は隱居による家督相續の場合に於て、法定の推定相續人なき場合に、被相續人と指定したる者なり、第一次の選定相續人とは、法定の推定、又は指定の相續人なき場合に於て、其家に在る被相續人の父母、又は家族議會の選定によりたる相續人なり、尊族たる法定相續人とは、戸主に對する尊族にして、第一次の選定相續人なき場合に相續すべき者を云ふ、第二次の選定相續人とは、以上凡ての相續人あらざる場合に於て、家族會議が選定したる相續人を云ふ。(民九六八條乃至九八五條參照)
- 英
- Heir
- 独
- Erbe
- 仏
- Hér-itier
假納
(かなう)假納とは、假定的に金錢、又は物品を納入するの意にして、之を例へば、條件附にて物を納入するものが、物品又は金圓を納入するは、一種の假納にして、假納は、普通その條件が成就して納入すべき義務確定するときは、その時より假納は確定の納入となり、或は過納の時期に遡りて確定の納入となり、又條件成就せざるときは、其納入したる物件は、返戾せらるるを普通となす、保税倉庫法に「輸入税金を假納せることを云々」とあるは、此用例なり。(同法九條一項)
- 英
- Temporary paying in
- 独
- zeit-weilige Bezahlung
- 仏
- Paiement tem-poraire
爲替
(かはせ)爲替と云ふ語の用例、必ずしも一ならず、□一約束手形、爲替手形、小切手等、所謂手形を指して云ふ事あり、民事訴訟第四九五條に「爲替」とあるは其用例也、□二或は金錢仕拂の手段として、其支拂を第三者に委託し、他人に仕拂を爲さしむる方法を指して、爲替と云ふことあり、例へば甲者が乙者に對して或金額支拂を爲すべき場合に、丙者を支拂人として、爲替手形を發行し、之を乙者に與へ、期日に至りて丙者をして、乙者に其額を支拂はしむる方法の如き、又は甲者が、乙者に或る金額を送らんとする場合に、A地の郵便局に其金額を支拂ひて、替郵便爲替の振出を請ひ、其證書をB地なる乙者に送り、B地の郵便局をして、爲替證書と引換に、乙者に其金額を支拂はしむる方法の如き是なり、□三以上の意義に於ける爲替證書其ものを、爲替と稱することあり、爲替證書の發行を爲替の振出と云ふ場合の如し。(民訴三六八條三項、郵便爲替規則參照)
- 英
- Exchange
- 独
- Wechsel
- 仏
- Change
爲替金
爲替金とは、郵便爲替に依りて送金する金錢を云ふ。(郵便爲替規則一二條參照)
- 英
- Money of exchange
- 独
- We-chselgeld
- 仏
- Argent de change
爲替金額
爲替金額とは、郵便爲替に於ける爲替金の金額を云ふことあり、又商法等に所謂手形金額の意に用ふることあり。(郵便爲替規則二一條商法參照)
- 英
- Sum of money order
- 独
- Wechselgeldsumme
- 仏
- Somme de change
爲替義務者
(かはせぎむしや)爲替義務者とは、手形上の債務を有する者、即ち爲替手形、小切手の引受人、振出人、裏書人、約束手形の振出人、裏書人等を云ふ、民事訴訟法に「爲替義務者」とあるは其用例なり。(民訴法四九五條)
- 英
- Person liable under bill
- 独
- Wechselschuldner
- 仏
- Obligé du billet
爲替資本
(かはせしほん)爲替資本とは、郵便爲替、郵便貯金、郵便取立金取扱の爲め、特に設置せる運轉資本を云ふ。(三六年法五七號、二三年法二一號中改正の件參照)
- 英
- Capital of money order
- 独
- Wechselkapital
- 仏
- Capital de change
爲替資金
爲替資金とは、爲替手形の資金關係に於て、振出人より支拂人に送り置ける金錢、又は信用等を指す、現行商法は、手形に於ける資金關係を手形法上の關係とせざるが故に、法典上の用語としては之なし。
爲替證券
(かはせしやうけん)爲替證券とは、□一爲替手形、約束手形、小切手と同一の意に用ひらるることあり、□二爲替證書と同一の意義に用ひらるることあり。(執達吏手數料法則三條參照)
- 英
- Certificates of money order
- 独
- Wechselcertifikat
- 仏
- Certificat de change
爲替手形
(かはせてがた)爲替手形とは、一定の金額を一定の時、及び一定の人に支拂はしむる爲の第三者に委託せる形式證券なり、手形は、形式證券なるが故に、若し其形式を具へざるときは、手形として成立せざるものなり、其形式は、□一爲替手形たることを示すべき文字、□二一定の金額、□三支拂人の氏名、又は商號、□四受取人の氏名、又は商號、□五單純なる支拂の委託、□六振出の年月日、□七一定の滿期日、□八支拂地の八要件とす、而して以上要件中最も注意を要するは、一定の金額と支拂地是なり、一定の金額なるを要するが故に、利息を附したる金額の如きは、一定と云ふべからず、又米穀にて支拂ふべしと云ふが如きは、金額にあらざるが故に、手形としては何等の效力なし、又支拂地とある故に、必ず地名、即ち東京市、又は龜非戸町の如く、所謂最小の行政區劃を記載せざるべからず、單に京橋區、日本橋區と記載するが如きは無效なり。(商四四五條乃至五二四條)
- 英
- Bill of exchange
- 独
- gezo-gener wechsel
- 仏
- Lettre de change
爲替訴訟
(かはせそしよう)爲替訴訟は、民事訴訟法に規定する一種の特別訴訟手續にして、即ち商法に規定する手形に基く請求を、證書訴訟手續によりて主張する訴訟手續也、分説すれば、□一商法に規定する手形に基く請求に限ること、□二手形金支拂地の裁判所、又は被告が有する通常裁判籍の裁判所等に起訴すべきものとし、□三訴狀は、常に爲替訴訟として訴ふる旨を揭げ、且つ證書訴訟手續の如く、手形の原本、若くは謄本を添付することを要す、□四訴が適法なるときは、訴狀送達と口頭辯論期日との間には、少くとも二十四時間以上を存し、裁判長口頭辨論期日を指定すべきものにして、其他は、一般證書訴訟手續に從ふもの也。(民訴法四九四條乃至四九六條、並に證書訴訟の部參照)
- 英
- Law suit about exchange
- 独
- Wechselprozesz
- 仏
- Action de change
家範
(かはん)一家經營の根本凖則を家範と云ふ、家範は、家長、即ち戸主と家族との關係を定むる凖規にして、家族以外の者に對し、何等效力を及ぼすものにあらず、其性質は畧家憲と同一なり、華族令第一二條に「家範は、宮内大臣の認許を經べし」とあるは其一例なり。(家憲の部を見よ)
- 英
- Law of house
- 独
- Hausgesetz
- 仏
- Loi d'une maison
買入代金
(かひいれだいきん)賣買契約に於て、財産の反對給付として支拂ふ金額を買入代金と云ふ、買入代金は、通常賣買の目的物たる財産と、引換に支拂ふを普通とするも、□一目的物の引渡前に支拂ふべき義務を負ふことあり、例へば前金拂賣買の如し、□二目的物の引渡を受けたるに拘らず、猶支拂を拒み得べき場合あり、掛賣買の如きは、當事者間の契約を以てする場合の一例にして、或は賣買の目的に就き、權利を主張する者ありて、買主が其買受けたる權利の全部、又は一部を失ふ虞あるとき、買主が其危險の限度に應じ、代金の全部、又は一部の支拂を拒み得る場合の如き、又買受けたる不動産に就き債權、又は抵當權の登記ある時、滌除の手續を終る迄、代金の支抵を拒み得る場合の如きは、法律の規定に基く一例なり。
- 英
- Purchase-money
- 独
- Kauf-geld
- 仏
- Prix d'achat
買主
(かひぬし)買主とは、賣買契約に於て、財産を受取り、其對價たる金錢を支拂ふ者を云ふ。(民五七五條乃至五七七條、民訴六九九條參照)
- 英
- Buyer
- 独
- Käufer
- 仏
- Ache-teur
買戾
(かひもどし)買戾とは、不動産の賣主が、賣買契約と同時に爲したる特約によりて、買主が其支拂ひたる代金、及び契約の費用を返還して、其賣買を解除するを云ふ、廣く買戾と稱するときは、動産に就きてもあり得べし、即ち一旦完全に賣買を爲し、何等の特約なきに拘らず、或は特約をなして、後日再賣び買の目的物を買受くるが如きも含まんかなれども、法律上にては、買戾と云ふは上説の場合に限り、必ず買賣の目的物不動産にして、買戾の特約に依りて解除する場合に限るものなり、而して買戾の法律上の效果は、最初より他人に賣渡さるると同一の效力を生ずるものとす。(民五七九條參照)
- 英
- Re-purchase
- 独
- Rückkauf
- 仏
- Rachat
買戾權
買戾權とは、買戾特約付賣買に於て、賣主の留保せる契約解除權を云ふ、此の權利を有するものは、前説の如く、不動産の賣主が、買戾を特約して讓渡をなしたる場合に限るものなり。
- 英
- Right of re-purchase
- 独
- Rück-kaufsrecht
- 仏
- Droit de rachat
買戾特約附賣買
(かひもどしとくやくづきばいばい)買戾權の附隨する賣買契約を買戾特約付賣買と云ふ、其要件は、□一賣買契約と同時に爲さざるべからず、後日買主より賣主に再び賣渡さん事を約するも、之賣買の豫約に過ぎずして、所謂買戾にあらず、□二賣主は、買主が支拂ひたる代金及契約の費用を支拂ふべき事、更に一定の金額を附加すべき旨を約するを得ず、代金の利息を付する旨を約するも、不動産の果實と相殺したるものと看做さる、□三買戾の期間は、十年以内たる事、若し十年以上に定めたるときは、法律上當然十年に短縮せらるるもの也、又期間を定めざる時、五年内買戾を爲さざれば最早爲す事を得ず、□四目的物には必ず不動産ならざるべからず、故に動産に就きては假令買戾を爲し得べき旨を約するも、何等の效力をも生ずる事なし、其效力の發生は、賣買と同時に、買戾特約あることを登記したる場合にあり、登記したる以上は、後日其不動産が轉輾して、第三者の手に至るも、買戾特約付賣買なりしを主張して、買戾を爲す事を得、第三者は、自己が何等關知する所なかりしとの理由を以て、買戾を拒むを得ざる也、買主は、前説の如き、賣主の提供したる代金、及び契約の費用を以て、甘んぜざるべからず、茲に多少議論あるは、賣主が買戾を爲さんとする場合に、現在に於ては、其目的物が、第三者に轉輾し居り、最初の買主の手許にあらざるときに、最初の買主、即ち買戾特約付の相手方に、代金、費用を提供すべきものなるや、現在の所有者に對して爲すべき者なるや是なり、現今の裁判所に於ては、現在の所有者に對して爲すべきものとせられたり。(民五七九條乃至五八五條參照)
- 英
- Sale with special agree-ment of repurchase
- 独
- Handel mit dem besonderen Vertrage des Rückkaufsrechtes
- 仏
- Vente avec une convention spéciale de rachat
買戾約欵賣買
買戾約欵付賣買は、買戾特約付賣買と云ふと同じ、即ち約款と云ふも、特約と云ふも、其主觀的の意義に於ては、何等異る所なきものなり。(上説の説明を參照)
- 英
- Sale with the special agreement of repurchase
- 独
- Handel mit dem Vertrag des Rückkaufsrechtes
- 仏
- Vente avec une convention spéciale de rachat
合
(がふ)用例一ならず、□一度量衡法に依るに、度(地積の標凖としての度)の一名稱にして、一步の十分の一を合と云ふことあり、度量衡法第三條に「合」とあるは其用例なり、□二度衡量法に依る量の一名稱にして、一升の十分の一を合と云ふことあり、度量衡法第三條に「合」とあるは其用例なり。
株
(かぶ)株に三種の意義あり、□一株式會社、株式合資會社の資本の單位を指して云ふことあり、此用例は、株式と云ふと同じ、□二株主が、會社に對して有する權利義務を指して云ふことあり、此用例は、株主權と云ふと同じ、□三株主權、又は資本の一部を表彰する有價證券を指して云ふことあり、此用例は株券と云ふと同じ。
- 英
- Share
- 独
- Aktie
- 仏
- Action
株金
株金とは、株式會社、又は株式合資會社に於ける株式の金額を云ふ、一株五十圓なり、百圓なりと云ふが如きは、即ち是なり、(商一二三條)株金額とは、株金の額を指して云ふ。(商一九七條參照)
- 英
- Capital stock
- 独
- Aktienkapital
- 仏
- Argent d'action
株金額
- 英
- Amount of share
- 独
- Aktien-geldsumme
- 仏
- Somme d'action
株券
(かぶけん)株券とは、有價證券としての株式を云ふ、之に依りて株主は、其權利を表彰するを常とす、株券記載の法定事項は、□一會社の商號、□二株式の總數引受ありたる場合に要する登記の規定に從ひ、本店の所在地に於て、登記したる年月日、□三資本の總額、□四一株の金額、□五番號□六、取締役の氏名等是なり。(商一四七條一項參照)
- 英
- Share certificate
- 独
- Aktienschein
- 仏
- Action
株式
(かぶしき)株式とは、株式に割當てたる會社資本の單位を指して云ふ、然れども株主が、會社財産に對して有する持分にあらず、會社の財産は、會社の所有にして、株主の共有する所のものにあらざればなり。(商一四三條、一四五條參照)
- 英
- Share
- 独
- Aktie
- 仏
- Action-naire
株主
(かぶぬし)株主とは、株式會社の社員、又は株式合資會社の社員にして、無限責任社員にあらざる者を云ふ、株式會社の資本は、全部株式に分ち、株式合資會社の資本は、無限責任社員の出資の外は、株式に分たるるが故に、正當に株を有する者を株主と云ふべし。(商一二五條)
- 英
- Shareholder
- 独
- Aktionär
- 仏
- Actionnaire
株主權
株主權とは、株式會社、又は株式合資會社に於ける、株主の有する權利を云ふ、其主なるものは、□一法律、定款の定むる所に從ひ、會社の事務に參與するの權、□二利益、利息の配當に與かるの權、□三會社解散の場合に、其殘餘財産の分配に與かるの權等なり。
- 英
- Shareholder's right
- 独
- Aktion-ärsrecht
- 仏
- Droit des actionnaires
株主名簿
株主名簿とは、株式會社に於ては、取締役、株式合資會社に於ては、無限責任社員が調製し、本店に備へ置くことを要する會社の帳簿にして、下の事項を記するの用に供するものなり、□一株主の氏名、住所、□二各株式の取得の數及其番號、□三各株に就き、拂込みたる株金額、及び拂込の年月日、□四各株式の取得の年月日、□五無記名の株券を發行したるときは、其數、番號、及び發行の年月日之也、而してこの帳簿は、會社の定款、總會の決議錄、社債原簿等と共に備へ置き、株主又は會社債權者の閲覽に供するものなり、株主、會社債權者等は、營業時間内は、何時にても閲覽することを得べく、又記名株式の讓渡は、讓受人の氏名住所を株主名簿に記載し、且つ其氏名を株券に記載するにあらざれば、之を以て會社其他の第三者に對抗することを得ざるものなり。(商一五〇一七二條參照)
- 英
- Shareholders' list
- 独
- Aktien-buch
- 仏
- Liste des actionnaire
合意
(がふい)意志の投合をいふ、即ち一の希望、又は提言に對し、他が有意的に肯諾、又は承認の意志を與ふることをいふ、例へば彼等は合意的に其企畫を完成せんことを希望せりと謂はば、其事業に關係を有する人々が、互に意見を異にすることなく、總じて同じ意志の下に、一意完成を期すといふ意義を表はすが如し、法律上に於ても亦之と同じく、法律的效果の發生を目的とする二人以上の意思表示の合致なり、例へば條約、契約の如し、合意は、必ず特定の效果を生ずることを目的とせざるべからず、例へば夫婦となるが如き、相手方に財産を與へんことを約するが如し、故に法律上に於ては、單に甲が明日は雨天ならんと云ひ、乙之に應じて然らんと云ふも、合意と云ふ能はず。(民訴二九條參照)
- 英
- Consent; agreement
- 独
- Ein-willigung; Einstimmung; Übereinstim-mung
- 仏
- Consentement; accord
合議
(がふぎ)合議とは、數多の人が共同の目的を以て、或事項を協議すること、又は此協議によりて生じたる意思の合致を云ふ、故に契約の如き、各自其利益の爲に協議すること、又は其協議によりて生じたる意思の合致は、之を合議と云はず、合議制とは、國家、公共團體、又は私法人の如き、或組織に關する形式にして、一個の機關を構成するに數多の人を以てし、其機關の職務權限を行はしむる制度を云ふ、帝國議會、府縣、郡、市、町村會、各裁判所、株式會社の株主總會等の如き、皆合議制なり、合議制の機關を組織するに、一人を以て組織するあり、例へば帝國議會、府縣會、裁判所の如し、之等を指して合議制の機關と云ふ、合議制の官廳とは、官廳を組織するに、合議制を以てするを云ふ、例へば行政裁判所の如し、合議制の官廳は、彼の單獨制の官廳と相對す、單獨制の官廳とは、例へば各省大臣、府縣知事の如し、合議制の官府とは、合議制の官廳政府と同じ、合議體とは、合議制によりて組織する人の團體を云ふ、茲に所謂團體とは、必ずしも人格を有するものに限らず、多數を以て組織し、一體としての存在を有するものなり、例へば帝國議會、府縣郡會、市町村會等の如し。(北海道區制一一條參照)
- 英
- Council
- 独
- Rat
- 仏
- Conseil
合議制
- 英
- Council system
- 独
- Kollegial-system
- 仏
- Système de conseil
合議制の機關
- 英
- Organ of council system
- 独
- Organ des Kollegialsystems
- 仏
- Or-gane du système de conseil
合議制の官廳
- 英
- Office of consultation system
- 独
- Behörde des Ratsystems
- 仏
- Office du système de conseil
合議制の官府
- 英
- Office of consultation system
- 独
- Behörde des Kollegialsystems
- 仏
- Gouvernement du système de cor-seil
合議體
- 英
- consultation body
- 独
- Colleg-ium
- 仏
- Organisation de conseil
下附金
(かふきん)特定の事由ある時、國家、又は公共團體より私人に、或は國家より公共團體に付與する金錢を云ふ、教育基金令第三條二項に「府縣は、前項の下附金を以て云々」とあるは其用例なり。
合式
(がふしき)法令に定むる方式に適合する事を云ふ、民事訴訟法第二五四條一項に「合式に呼出されたる時」とあるは其用例なり。
- 英
- Regularity
- 独
- Regelmässigkeit
- 仏
- Régularité
株式合資會社
(かぶしきがふしくわいしや)株式合資會社とは、無限責任社員と、株主とを以て組織する會社なり、我商法の規定によれば、會社に四種あり、□一合名會社、社員の全員が、連帶無限の責任を負ふを以て特色とする會社なり、□二合資會社、社員の一部は、連帶無限の責任を負ひ、他の一部は、連帶有限の責任を負ふを以て特色とする會社なり、□三株式會社、社員の全部が、株金の限度に於て、責任を負ふを以て特色とする會社なり、□四株式合資會社、株式合資會社の他の會社と異る主なる點は、社員の一部は、連帶無限の責任を負ひ、他の一部は、株金を限度とする有限責任を負ふところにあり、即ち無限責任社員あるの點に於て、合名會社、又は合資會社と同じく、株主ある點に於て之と異り、株主あるの點に於て、株式會社と同じと雖も、無限責任社員あるの點に於て異る、猶株式合資會社は、無限責任社員發起人となり、會社を代表すべき社員となり、無限責任社員退社したるときは、會社解散の原因となる等其主なるものなり。(商二三五條乃至二五四條參照)
- 英
- Joint stock limited partner-ship
- 独
- Aktienkommanditgesellschaft
- 仏
- Société en commandite
株式合資會社登記簿
株式合資會社登記簿は、非訴事件手續法に依り、各登記所に備ふべき商業登記簿の一種にして、商法の規定により、株式合資會社に關し、登記すべき事項を登記する帳簿なり、非訴事件手續法に「株式合資會社登記簿」とあるは其用例なり。(同法一四〇條)
- 英
- Register of joint stock limited partnership
- 独
- Register der Aktienkommaditgesellschaft
- 仏
- Reg-istre de la société en commandite
株式會社
(かぶしきくわいしや)株式會社とは、株主のみを以て組織する會社なり、株式合資會社にも株主あれど、株主のみを以て組織するにあらずして、外に無限責任社員あり、この點に於て兩者全く異る、株式會社を認めたる實際上の理由は、株式なる制度方法により、零碎なる資本を聚集して、大事業を爲さんとするものに適せんが爲なり、從つて資本は、全部之を株式に別ち、之を以て社員の權利義務の標凖となし、株主總會を最高機關とし、取締役會社の業務を執り、監査役之を監督するものなり。(商一一九條乃至二三四條參照)
- 英
- Joint stock company
- 独
- Aktiengesellschaft
- 仏
- Société en com-mandite simple
株式會社組織
株式會社組織とは、株式會社として或團體を組織する方法を云ふ。(取引所法施行規則二條參照)
- 英
- Organization of joint stock company
- 独
- Organisation der aktien-gesellschaft
- 仏
- Organisation de la société en commandite
株式會社登記簿
株式會社登記簿は、非訴事件手續法に準據し、各登記所に備ふべき商業登記簿の一種にして、商法の規定に基く株式會社の登記事項を登記するの帳簿也。(非訴事件手續法一四〇條參照)
- 英
- Register of joint stock company
- 独
- Register der aktiengesell-schaft
- 仏
- Registre de la société en com-mandite
株式取引所
(かぶしきとりひきじよ)株式取引所とは、政府の免許を受けて設立する法人にして、一定の地區を有し、一定の時に於て、一定の場屋に、一定の人を會して、一定の方式に從ひて、株式の賣買を爲さしむるを目的とするもの也、取引所に於てする取引の當事者は、會員組織の取引所に在りては、會員及仲買人、株式組織の取引所に在りては、仲買人に限る、取引所は、會員を以て組織するものと、株式を以て組織するものとあり、會員組織の取引所は、他邦にもこれありと雖も、株式組織の取引所は、我國に特有なる制度にして、外國法制の認めざる所なり、株式組織にして、取引所が其取引所に於て行はれたる取引に就き、擔保の義務を負ひ賠償の責に任ずるが如きは、外國に其例なし、取引所は、定期取引に就きては、有價證券賣買約定代金の一萬分の六、國債及地方債證券に就きては、同じく一萬分の三の割合に從ひて、税金を納むることを要するものとす。(取引所法、取引所税法參照)
- 英
- Stock exchange
- 独
- Aktien-geschäft
- 仏
- Bourse pour les fonds pub-lics
株式の引受
(かぶしきのひきうけ)株式の引受とは、株式會社、又は株式合資會社の發起人、或は其株式募集に應じて、株式の申込を爲したる者が、或一定の株式を引受け、其數に應じて、株金の拂込を爲す義務を負ふを云ふ、一旦株式を引受けたる以上は、證據金を抛棄して、拂込の請求を拒むを得ず。(商一二七條參照)
株式の申込
「株式の申込」株式會社、又は株合株式會社に於て、株式を募集するに當り、一定の株式を引受けんとする意思を發起人に對して表示する行爲なり、發起人が之に株式を割當てたるときは、拂込を爲すの義務を負ふものにて、必ずしも申込みたる丈けの數を引受拂込を爲すものと限らず、會社好况にして、引受を申込みたる總數が、株式數に超過する場合には、發起人は各申込數の割合に應じて、株式を割當つるを常とし、斯かる場合には、割當られし株式を引受くるの義務を負ふに過ぎず、(商一二六條、一二七條參照)
- 英
- Subscription for shares
- 独
- Aktienzeichnung
- 仏
- Souscription pour les actions
株主引受人
「株式引受人」、株式の引受を爲したる者を云ふ、(商一三〇條參照)
- 英
- Share-receiver
- 独
- Aktien-übernehmer
- 仏
- Agioteur
株式申込人
「株式申込人」、株式の申込を爲したる者を云ふ。(商一二六條參照)
株式申込證
(かぶしきもうしこみしやう)株式申込證とは、株式の申込を爲さんと欲する者が、其引受けんと欲する株式の數を記載し、署名すべき證書にして、株式の申込は、常にこの證書に依らざるべからざるもの也、之を作製する者は發起人にして、下の事項を記載する事を要す、株式會社の場合には、□一定款作製の年月日、□二會社の目的、□三商號、□四一株の金額、□五取締役が有すべき株式の數、□六本店及支店の所在地、□七會社が廣告を爲す方法、□八資本の總額、□九發起人の氏名住所、□十各發起人が引受けたる株式の數、十一第一回拂込の金額、猶下の事項を定めたる時は、之をも記載するを要す、十二存立時期又は解散の事由、十三株式の額面以上の發行、十四發起人が受くべき特別の利益、及び之を受くべき者の氏名、十五金錢以外の財産を以て、出資の目的と爲す者の氏名、其財産の種類、價額、及び之に對して與ふる株式の數、十六會社の負擔に歸すべき設立費用、及び發起人が受くべき報酬の額是也、株式合資會社の場合には、□一定欵作製の年月日、□二第一回拂込の金額、□三會社の目的、□四商號、□五一株の金額、□六本店、及び支店の所在地、□七會社が廣告を爲す方法、□八株金の總額、□九無限責任社員の氏名、住所、□十無限責任社員の株金以外の出資の種類及價格、又は評價の標凖十一無限責任社員が株式を引受けたるときは、其各自が引受けたる株式の數、猶下の事項を定めたるときは、之をも記載せざるかべらず、十二存立時期又は解散の事由、十三株式の額面以上の發行、十四發起人が受くべき特別の利益、十五金錢以外の財産を以て、出資の目的と爲す者の氏名、其財産の種類、價格及之に對して與ふる株式の數、十六會社の負擔に歸すべき設立費用、及び發起人が受くべき報酬の額是也、元來株式申込證を以て株主を募集する場合は、株式會社、又は株式合資會社の發起人が、全部の株式を引受けざる時、又は既設の會社が、資本增加を爲さんとする場合に爲すべきものにして、之に應募せんとする者は、株式申込證二通にその引受くべき株式の數を記載して、之に署名すべきものなり。(商一二六條二三八條)
- 英
- Instrument of subscription
- 独
- Aktienzeichnungschein
- 仏
- Docu-ment de la souscription
株式引受資金
(かぶしきひきうけしきん)農工銀行法の規定に從ひて設立する農工銀行の營業を補助する爲に、政府より其營業區域を管轄する府縣(沖繩縣は之を除く)に交付し、其府縣が農工銀行の株式を引受くるの用途に充つる資金を云ふ、而して其給與せらるる金額は、該府縣の宅地、鑛泉地、池沼を除き、有租地反別百町に就き七十圓以内とし、尚一府縣に交付する總額三十萬圓、又は農工銀行拂込資本金の三分の一を超過せざる範圍内に於て、下附せらるるもの也、府縣は、此資金を目的以外に使用すべからざるは勿論とす。(農工銀行補助法一條以下)
合資會社
(がふしくわいしや)社員の一部が連帶無限の責任を負ひ、他の一部は有限連帶の責任を負ふ會社なり、連帶無限の責任を負ふ點に於て合名會社、株式合資會社と同じきも、本會社は其一部が、有限連帶の責任を負ふ者ある點に於て異るものなり。
- 英
- Limited partnership
- 独
- Kommaditgesellschaft
- 仏
- Société ano-nyme
合資會社登記簿
合資會社登記簿は、各登記所に備ふべき商業登記簿の一種にして、商法の規定により、株式合資會社に關し登記すべき事項を登載する帳簿なり。(非訴事件手續法一四〇條參照)
- 英
- Register of the limited partnership
- 独
- Register der Kommandit-gesellschaft
- 仏
- Registre de la société ditanonyme
株主總會
(かぶぬしそうくわい)株式會社に於ける會社の意思を作成する機關、及び株式合資會社に於ける株主共同の意思を作成する會社の機關にして、會社に關する重要なる事項を議決するものなり、株主總會には、定時總會と臨時總會との二あり、定時總會は、每年一回一定の時期に於て、取締役之を招集すべき者なり、但し年二回以上利益の配當を爲す會社に在りては、每配當期に總會を招集する事を要す、定時總會に於ては、取締役が提出したる書類、及び監査役の報告書を調査し、且つ利益、又は利息の配當を決議す、臨時總會は、必要ある每に取締役之を招集する者也、總會の決議は、商法、又は定欵に別段の定めある場合を除く外、出席したる株主の議決權の過半數を以て之を爲す、無記名式の株券を有する者は、會日より一週間前に、其株券を會社に供託するにあらざれば、議決權を行ふを得ず、株主は代理人を以ても其議決權を行ふを得、但し總會の決議に就き、特別の利害關係ある者は、其議決權を行ふを得ず、各株主は一株に就き、一個の議決權を有するを原則とし、十一株以上を有する株主の議決權は、定款を以て之を制限することを得るものとす。(商一五六條乃至一六三條參照)
- 英
- General meeting of share-holders
- 独
- Aktionärsgeneralversamm-lung
- 仏
- Assemblée générale des action-naires
株主割賦金
(かぶぬしくわつぷきん)株式會社又は株式合資會社に於ける、其株主に配當すべき利息、又は利益を云ふを用語の慣例とす、例へば日本銀行條例第一〇條に「純益金總額より株主割賦金を引去り云々」とあるは其用例なり。
合法的
(がふはふてき)合法的行爲、合法的手續、若くは合法的無能等、多くは、法律關係の事項に用ひらる、其他法律に適法することを衡平より區別せられて、法律に關係する事、或は法律によりて決定、若くは設定せらるることを表す事あり。
- 英
- Legal
- 独
- Gesetzlich
- 仏
- Légal
寡婦扶助料
(かふふじよれう)遣族扶助料にして、寡婦の受くべきものを云ふ、寡婦は下の事項に當るときは、扶助料を受くるの權利有す、□一夫が在官十五年以上にて、在官中死去したるとき、□二夫が在官十五年未滿なるも、公務の爲死去したるとき、□三夫が恩給を受くる場合に死去したる時、但し夫が文官判任以上にして、其俸給百分の一を國庫に納むる者ならざるべからず、其扶助料年額は、亡夫の受けたる、若くは受くべき恩給年額の三分の一とし、公務の爲め受けたる傷痍に原因して死去し、又は非常の勞動困苦を忍び、勤務に從事し爲に發病死去し、たる時、又は公務に依り、傳染病に接し、該病毒に感染して死去し、又は戰地に於て、若くは公務旅行中、流行病に罹り死去したる者の寡婦扶助料は、亡夫の俸給に對し、退官當時の俸給と、在官年數とに依り、若し在官年數十五年未滿なるときは、十五年と退官當時の俸給とにより、其三分の二とす、下の事由あるときには扶助料を受くる權利消滅す、□一扶助料を受くべき權利を生じたる日より三個年間請求せざるとき、□二寡婦の死去、婚嫁、又は戸籍を去りたるときこれなり。(官吏遣族扶助法一、二、四、七、一二、一四條參照)
- 英
- Allowance for the support of widow
- 独
- Witweunterstützungsgeld
- 仏
- Gratification pour la protection des veuves
可分義務
(かぶんぎむ)可分義務とは、義務者が數人ある場合に、各自に其義務を分割せらるるを云ふ、可分債務は其一種なり。
- 英
- Divisible obligation
- 独
- theil-bare Pflicht
- 仏
- Obligation divisible
可分債務
可分債務とは、債務者數人ある場合に、債務が債務者の數に應じて分割せらるる債務を云ひ、之に相對する債務を不可分債務とす、凡そ債務は、債務者の數に應じて分割せらるるを我民法上の原則とす、然れども債務の目的が、性質上分割し得ず、又は當事者の意思表示によりて之を不可分と爲したるときは、當事者は、其債務の全部に就きて、責任を負はざるべからず。(民四二七條參照)
- 英
- Divisible obligation
- 独
- theil-bare Schuld
- 仏
- Obligation divisible
可分物
可分物とは、物の一類別にして、不可物に對し、物の性質上分割するを得べく、且つ當事者の意思により分割を禁ぜられざる物を云ふ、例へば米、味噌、醬油の如し、要するに分割するも、其性質を害せざる物なり、之に反して、馬一疋の如きは、之を分割すれば、最早馬としての效用を爲さず、即ち其性質を害す、故に不可分物也。
- 英
- Divisible thing
- 独
- theilbares Ding
- 仏
- Chose divisible
合名會社
(がふめいくわいしや)無限責任社員のみを以て組織する會社にして、會社債權者に對して、各社員連帶無限の責任を負擔するを特色とす、株式會社は、社員の全部、株金を限度として責任を負ふに過ぎず、又合資會社は、其社員の一部連帶無限の責任を負ふも、他の一部は有限責任を負ふ、株式合資會社も亦無限責任社員を有するも、他の一部は株主なり、從つて合名會社と其性質を異にす。
- 英
- Partnership
- 独
- offene Handels-gesellschaft
- 仏
- Association
合名會社登記簿
合名會社登記簿、合名會社に關して商法、上登記すべき事項を登載する爲め、各登記所に備ふる登記簿を云ふ、所謂商業登記簿の一種なり。(非訴事件手續法一四〇條參照)
- 英
- Register of the partner-ship
- 独
- Register der offenen Handels-gesellschaft
- 仏
- Registre de l'associa-tion
合圍地
(がふゐち)合圍地とは、戒嚴の宣告によりて、合圍地境と定められたる土地の區域を云ふ。
- 英
- Besieged place
- 独
- belagerte Gegend
- 仏
- Lien siegé
合圍地境
合圍地境とは、敵の合圍、攻擊、其他の事變に際し、警戒すべき境區と宣告せられたる地境なり、戒嚴を宣告するは、憲法上天皇の大權に屬す、故に合圍地境も亦天皇の定めらるる所也。されど天皇は、此權を軍團長、師團長、旅團長、要塞司令官、警備隊司令官、分遣隊長、艦隊司令官、鎭守府長官若くは特別司令官に付與せらるる事あり、臨戰地境に於ては、戒嚴の宣告と同時に、地方行政及司法の事務は、軍事に關係あるものに限り、其地の司令長官の管掌に歸するに止るも、合圍地境に在りては、啻に軍事に關係ある事件のみならず、一切の行政、司法の全權は、擧げて之を其地の司令官に歸する事となる、從つて國法上、臣民の權利義務に至大の關係を及ぼすものなり。(戒嚴、戒嚴の宣告の部、及び戒嚴令參照)
- 英
- Besieged district
- 独
- belager-ter Bezirk
- 仏
- Région siegée
合理的
(がふりてき)合理的なる語は、第一には普通に不合理、即ち非論理的てふ語の反對の意義を有す、假令合理的判斷といへば、吾人が事物を判斷するに、論理の規則に從ひて下す判斷をいふ、第二には感覺的てふ語に對して用ひられ、理性的なる意義を表はす、例へば人間の合理的生活と云へば、人間が唯單に自己の感覺に支配せらるる事なく、理性を以て感覺を制し、且つ理性の指導に從つて行動するを謂ふ、第三には哲學上の用語として、經驗的てふ語に對す、例へば合理的心理學と云へば、經驗的心理學に對する如く、全く經驗を滅却し、心意自然の論法に依りて立ちたる處を以て、眞理とし、然も之に相應する實體が、客觀世界に實在すと信ずるをいふ、例へば靈魂の不滅、神の存在が合理的に論證せられたる時には、神又は靈魂の實在は疑ふべからざるものとするが如し、近世歐洲大陸の哲學者、多く此傾向を有す、(英國の哲學者等は、多く經驗學派に屬す)所謂合理學派なるものなり。
- 英
- Rational
- 独
- Vernunftig
- 仏
- Rationnel
加俸
(かほう)本俸以外に特別の事由に基きて給與する增加俸給なり、例へば外交官、領事官等が、新に任地に赴任するとき、轉勤、轉官のときに歸朝を命ぜられ、又は賜暇歸朝を許されたる者が、歸朝又は歸任するときに、在勤俸の外に支給せらるる加俸、或は文武官の年功加俸、並に海軍在役艦艇の定員及び乘組候補生に給する航海加俸等の如し、公使館領事館費用條例第一條に「加俸」とあるは其用例なり。(俸給の部參照)
- 英
- Increased salary
- 独
- vermehrte Salarie
- 仏
- Salaire augmentée
姦〓罪
(かんいんざい)廣義の姦〓罪とは、強姦罪、準強姦罪、及び狹義の姦〓罪を含む名稱として使用せられ、狹義に於ては、十二歳に滿たざる幼者を姦〓する事を云ふ、其姦〓に當りては、承諾ありたると否とは問ふ處にあらず、蓋し斯くの如き幼者は、其貞操に對して諾否を爲すの智能發達せざれば也、從つて□一被害の客體は、十二歳未滿の婦女たること、婦女たることを要するが故に、十二歳未滿の男子に對して爲す姦〓は、茲に所謂狹義の姦〓罪を構成せず、□二姦〓したること、姦〓の何たるかは茲に説明する迄もなく、諸君の知らる所なるべきも、一言すれば、男女の生殖器を相交媾せしむることにして、通俗考ふるが如く、必ずしも交媾の目的たる快美感覺を達したると、又は射精したると否とは問ふ所にあらず、單に相交接沒入したるとを以て、本罪の既遂となるものとす、本罪は輕懲役に處せらるるものにして、藥酒等を用ひて婦女を昏睡せしめ、其他精神を錯亂せしめて姦〓したる者は、強姦罪の刑罰と同じく、重懲役に處せらるるものなり。(刑一七七條、民八一三條、及び猥褻罪の部參照)
- 英
- Criminal carnal intercourse
- 独
- Beischafsverbrechen
- 仏
- Relation ad-ultérine
刊行物
(かんかうぶつ)公に發行せる印刷物を刊行物と云ふ、普通の場合に於ける新聞紙、雜誌、書籍は皆刊行物也、之に反して公に發行するも、寫本の如きは印刷物にあらざるを以て刊行物にあらず、又印刷に付するも公にせざるものは刊行物にあらず、例へば、或る會の會則の如し、出版法に定期刊行物とあるは其用例なり。(出版法、新聞紙條例參照)
間行里程
(かんかうりてい)居留地等に於ける外人の、遊步區域の限界に達する里程を間行里程と云ふ、朝鮮國間行里程取極書第一條に「間行里程」とあるは其例なり。
感覺
(かんかく)心的活動を二大別して、知的作用、及び情意的作用とするは、今日多數の心理學者の分類法なるが、其知的作用とは、受け容るる方面の作用にして、情意の發動的なるに對し、想像推理の如き、一般に理性なる方面を指す、而して感覺は、此知識的作用の關門にして、實に吾人の知識の根元をなし、知識の發達を致さん爲には、この感覺の豐富を先づ期せざるべからざる也、然れども感覺は、其他の觀念知識とは獨立に存し、吾人は感覺のみを抽出して感ずることを得と考ふるは、大なる誤なり、吾人の心的作用は、常に渾一的なるを以て、かかる分類は、畢竟學説の便宜の爲なりと稱せらる、されど感覺を以て、知識の構成元素と見做し、總へての高尚なる知識も、之を還元して感覺となすを得べしと云ふことに於ては、一般に承認せらるるが如し、偖かくの如き感覺には、如何なる種類ありやといふに、多くは生理的機關によりて之を分類し、五感と云ひ、或は六感以上を數ふ、視覺、聽覺、觸覺、味覺、嗅覺の五の外部感覺に加へ、内部感覺として、一般感覺と稱する筋肉感覺、運動感覺の如き、專ら身體内部に關する感覺を擧ぐ、今感覚の起る大體の經過を述べんに、目耳皮膚口鼻の如き生理的機關が、外界の刺戟に遭ひて、化學的、若くは物理的變化を惹起し、その變化の影響が直に末端神經に傳はりて、腦中樞に或る一定の變化を與ふるか、或は神經纎緯中に變化起りて、腦中樞に傳へらるるか、又は腦中樞中に變化起るか、何れにもせよ、かくの如き變化が條件となりて感起せらるる、最も單簡なる知的現象を感覺と稱す。
- 英
- Sensation
- 独
- Empfindung
- 仏
- Sensation
監禁
(かんきん)人を或一定の場所に幽閉して運動の自由を束〓するを云ふ、刑法第三二二條に「私家に監禁し云々」とある如き、又船員法により、船長が海員に加ふることを得る懲戒罰の一種にして、三日以内一室に拘置する處罰の如き、皆運動の自由を束〓するに外ならず。(船員三八條一項參照)
- 英
- Imprisonment
- 独
- Einsperrung
- 仏
- Emprisonnement
感化法
(かんくわはふ)明治三三年法律第三七號を以て公布せられし者にして、□一地方長官は、其府縣に不良少年等を収養教化すべき、感化院設置の義務あること、□二感化院に入院せしむる者は、地方長官に於て、滿八歳以上十六歳未滿の者にして、之に對する適當の親權を行ふ者、又は適當の後見人なく、遊蕩又は乞丐を爲し、若くは惡交ありと認めたる者、及び懲治場留置の言渡を受けたる幼者、裁判所の許可を得て、懲戒場に入るべき者なること、□三入院者の在院期間、は滿二十歳を超ゆるを得ず、但し裁判所の許可を得て在院する者は、期限に制限なきこと、□四感化院長の權限は、感化院在院者及假退院者に對し親權を行ふ、從つて在院者の父母、又は後見人は、在院者及假退院者に對し、親權、又は後見を行ふを得ず、但し懲治場留置の言渡を受けたる者、裁判所の許可を得て懲戒場に入るべき者に對しては、親權者、又は後見人に財産の管理權あること、□五在院費は、地方長官より扶養義務者に對して、請求し得べきこと等を定めたるものなり。
- 英
- Law of conversion
- 独
- Be-kehrung gesetz
- 仏
- Loi de la conversion
監護
(かんご)監護とは、保護監督と云ふと同じ、民法第八七九條に親權を行ふ父、又は母は、未成年の子の監護、及び教育を爲すの權利を有し、義務を負ふ」とあるは此例也。監護義務者とは、或人を保護監督すべき義務ある者を云ふ、通常親權を行ふ父又は母は、未成年の子に對し、後見人は、被後見人たる未成年者、禁治産者に對する監護義務者なるが如し、又後見人、配偶者、四親等内の親族、又は戸主は、精神病者に對する監護義務者なり。(精神病者監護法一條參照)
監護義務者
監獄
(かんごく)刑事被告人、又は禁錮以上、若くは拘留の刑に處せられたる犯罪人を拘禁留置する所を監獄と云ふ、これを別ちて普通監獄と然らざるものとなす、後者は更に別ちて陸軍監獄と海軍監獄とす、普通監獄は、監獄則に依り、普通の刑事被告人、囚徙、又は不論罪に係る幼者、瘖啞者等を拘禁留置する所にして、之を左の五種に別つ
監獄{□一集治監{徒刑、流刑、及び舊法の懲役終身に處分せられたる者を拘禁する所なり。
□二假留置{徒刑、流刑に處せられたる者を集治監に發遣する迄拘禁する所なり。
□三地方監獄{拘留、禁錮、禁獄、懲役に處せられたる者及び婦女にして徒刑に處せられたる者を拘禁する所なり。
□四留置場{刑事被告人を一時留置する所なり、但し警察署内の留置場に於ては罰金を禁錮に換ふる者、又拘留に處せられたる者を拘禁するを得。
□五懲治場{不論罪に係る幼者、及び瘖啞者を懲治する所なり、本來懲治場は監獄中に入るべきものにあらざるも、現行法に於ては之を監獄の一種とせり。
陸軍監獄は、輕罪以下の刑に處せられ、未だ現役を離れざる軍人、若くは其官職身分を失はざる軍屬、諸生徒、及び刑事被告人を拘禁留置する所にして、左の三種に別つ
陸軍監獄{□一未決監{刑事被告人を抅禁する所なり。
□二既決監{禁錮、抅留の刑に處せられたる者、及び罰金、科料を禁錮抅留に換へたる者を抅禁し、竝に集治監、假留監、及び地方監獄に送付すべき者を一時留置する所なり。
□三留置場{刑事被告人を一時留置する所なり、又拘留の刑に處せられたる者及罰金、科料を禁錮抅留に換へたる者をも抅禁することを得るなり。
海軍監獄も、亦陸軍監獄と同じく、輕罪以下の刑に處せられ、未だ現役を離れざる軍人、若くは其官職、身分を失はざる軍屬、諸生徒、及び刑事被告人を抅禁留置する所なり、左の三種に別つ
海軍監獄□一{監倉{{刑事被告人を抅禁留置する所なり、但し東京の監倉に於ては、抅留、及び十日以下の禁錮に處せられたる者を抅禁するを得。
□二輕禁錮場輕禁錮、若くは抅留の刑に處せられたる者を抅禁する所なり、又懲治人を一時留置することを得、但し他の抅禁者と區別するを要す。
{{□三重禁錮場{重禁錮の刑に處せられたる者を抅禁する所なり。
元來監獄に囚徒を抅禁する所以は、之を感化遷善の感化主義に依るべきや、又は一定の懲罰を科して之を懲戒せんとするに、畏嚇主義に基くべきか、之等のことは、監獄問題として、將又國家刑罰權の根本觀念として、頗る議論の存する所なり。(監獄問題の部參照)
- 英
- Prison
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Prison
監獄署
- 英
- Police prison office
- 独
- Ker-keramt
- 仏
- Office de prison
監獄則
(かんごくそく)監獄則は、監獄に關する規則にして、□一監獄の種別、□二監獄は司法大臣の監督に屬する事、□三囚人の待遇等に就きて規定せられたり、今少しく説明せんに、あ水火風震等、非常の變災に際し、監獄内に於て、避災の手段なしと考定する時は、典獄は、其狀况に依り、在監の囚人懲治人、及び刑事被告人を他所に押送し、其災を避けしむべく、若し押送の遑なきときは、一時之を解放するを得、解放に遇ひたる者は、其時より二十四時間以内に、監獄署又は警察署に其旨を申出ざるべからず、茲に疑問となるは、若し之等の囚徒又は刑事被告人が、二十四時間以内に屆を爲さずして、却て之を好機會とし、他に遁逃したるときは、如何なる罪を以て論ぜらるべきや是なり、此問題に關し、或學者は、不作爲に依る、逃走なる故と見るを得べきが故に、囚徒逃走罪を以て論ずることを得と云ひ、或は現行刑法の解釋として、不純正不作爲犯なるものありや否やすら問題なるに、本問題の場合に於ては、毫も獄舍を遁逃したりと云ふ論據なし、故に囚徒逃走罪は成立することなしと論ず、茲には後説を採用せん、い刑事被告人は、各罪質に從つて、嚴に其監房を別異にし、其中に就きて年齡に從ひ、左の如く區別すべきもの也、□一滿十二歳以上十六歳未滿の者、□二滿十六歳以上二十歳未滿の者、□三滿二十歳以上の者、□四滿十六歳以上二十歳未滿の再犯者、□五滿二十歳以上の再犯者又懲治人は左の年齡に從ひ、其監房を別異するを要す、□一滿八歳以上十六歳未滿の者、□二滿十六歳以上二十歳未滿の者、□三滿二十歳以上の者等とし、更に男監、女監の監を嚴隔すべきものとす、う定役囚現役一百日を純たるときは、重罪囚には、其工錢の十分の一乃至五、輕罪囚には十分の二乃至六を給すべく、猶科程外の作業を爲すときも、之に凖じて工錢を給與す、無定役囚、懲治人、刑事被告人にして、作業する者には、其工錢の十分の七を給すべし、え囚人、懲治人、及び刑事被告人には、各自の身體作業等を斟酌して、左の糧食を給すべし。
□一下白米十分の四麥十分の六一人一回三合以下
□二菜一人一日三錢以下
但し地方の狀况、又は在監人の體質等により、司法大臣の認可を得て、前記の糧食を變更する事を得べく、懲治人、刑事被告人にして、糧食を自辨せんと請ふときは、之を許可するを得べし、お囚人、懲治人及刑事被告人の頭髮、鬚髯は、必要と認むる場合に於て、之を短薙剃滌せ、しむ、か囚人及懲治人には、教誨を施すべく、刑事被告人にして、教誨を請ふ者あるときは、之を許すべし、き囚人十六歳未滿の者及懲治人には、每日四時以内讀書、習字、算術を教ふるを要す、く囚人、懲治人及刑事被告人現行の法律命令書を看んと請ふときは、之を許可するを得、囚人、懲治人中書籍の看讀を請ふ者あるときは、感化、若くは紀律に妨なしと認めたるときに限り、之を許し、刑事被告人書籍を看んと請ふ時は、總べて之を許す、唯領置の外、書籍は當該裁判官の承認を經ざるべからず、け囚人の發する信書は、一個月一通とし、囚人及懲治人の發する信書、又は外人より送り來る信書は、典獄之を檢閲すべく、若し書中不正不良に渉り、又は其改悛を妨ぐるものと認むるときは、之を發送付與する事を許さず、刑事被告人に係る信書は、總べて常該裁判官の檢閲を經べきものとす、こ囚人、懲治人、及刑事被告人に接見せんと請ふ者あるときは、監獄官吏の立會を以て、之を許し、形勢の疑ふべきことありと認むるときは、之を許さざるを得べし、但し刑事被告人にして、重罪裁判所に移すの言渡を受けたる者は、裁判言渡ある迄、辯護人を除くの外、其現在地の裁判所長の允許を受くべく、密室監禁者は當該裁判官の允許を受けざるべらず、さ囚人、懲治人及刑事被告人死亡したるときは、典獄は看守長、醫師の立會を以て、之を檢視すべく、刑死者は死相を檢したる後、五時間を經ざれば其遣骸を絞架より解下するを得ず、親屬若くは故舊にして、遣骸を請ふ者あるときは、之を下附し、若し死亡後二十四時間以内に、其下附を請ふ者なきときは、監獄署に於て之を假葬すべし、又傳染病豫防上必要あるとは、監獄署に於て、之を火葬に付するを得べし、□四囚人獄則を謹守し、作業に勉勵し、且つ改悛の行爲ある者と、典獄之が確認するときは、賞譽すべきものにして、賞譽せし者には、之を表する爲め、賞表を與へ、獄衣に縫著せしむ、賞表は、假出獄、免幽閉、又は特赦を具狀するの憑據と爲すことを得べし、囚人、懲治人及刑事被告人、司獄官吏の處置に對して情苦を訴へんとするときは、監獄巡閲官巡、閲の際、封書、又は口述を以て、申告することを得べし。(二二年數九三號)
- 英
- Regulation of prison
- 独
- Reg-ulierung des gefängniszes
- 仏
- Règles de la prison
監獄則施行細則
監獄則施行細則、監獄則施行に關する細則を定めたるものにして、其大要は、□一在監人の遵守すべき事項は、册子として、監房内に備へ置くべく、□二在監人入房の際は、總べて通身の檢査を爲すべく、通身の檢査は、一人宛之を爲し、他人をして見しめざるを常とするも、工場、教誨堂、運動場、浴室等より、一時多人數を還房せしむる場合に見しむるも可なり、而して男子は看守長、監視、看手之を行ひ、女子は女監取締之を行ふ、□三囚人の監房には疊を敷くことを得ざるも、病監、又は特に司法大臣の認可ありたるときは、之を敷くを得、□四刑事被告人及び懲治人に差入るべき飮食物は、酒及び煙草を除き、監獄内に炊烹を要せざるものにして、一日三回、一人一食の量に限る等規定せられたり。(二二年内務省令八號)
- 英
- Regulations for the ap-plication to the prison rule
- 独
- Aus-führungsregel der Gefängniszregulirung
- 仏
- Règles pour l'application de la loi de la prison
監獄問題
(かんごくもんだい)監獄に關して解決すべき案件を稱して、監獄問題と云ふ、方今各國に於て、監獄問題として議せらるるは、懲罰主義に依るべきや、感化主義に依るべきや即ち之なり一時世論に上りし、分房制度を採るべきや、雜居制度を採るべきやは、過去の論題に過ぎざることとなりぬ、而して其决否に就きては、今遽かに斷ぜん事素より難し、我國に於ても、近年試驗的に感化主義に基きて、監獄組織を爲すに至れり、浦和の川越分監、熊谷分監、金澤の七尾分監、佐賀の唐津分監、靜岡の沼津分監、東京の八王子分監、及び神奈川の小田原分監即ち是なり。
- 英
- Problem of prison
- 独
- Gefäng-nisfrage
- 仏
- Problème de la prison
監査
(かんさ)監査とは、監督檢査と云ふに外ならず、市制第三三條に「市會は收入支出の正否を監査するの職權を有す」とあるが如し。
- 英
- Inspection
- 独
- Aufsicht
- 仏
- Inspection
監査員
監査員とは、或事項を檢査監督する爲め、特に設定せらるる者を云ふ、例へば私設鐵道法に於ける主務大臣が、私設鐵道會社の工事を監視査定せしむる爲めに派遣する、監査員の如し。(私設鐵道法四四條參照)
- 英
- Auditor
- 独
- Rechnungsrevisor
- 仏
- Auditeur
監査役
監査役とは、株式會社、又は株式合資會社の監督機關なり、□一監査役となり得べき者は、株主に限り、株主以外の者を選任する事を得ず、之を選任する者は、株主總會なり、故に取締役、其他の者が選任するものにあらず、□二其數は一人以上とし、最多限に就きては、必ずしも制限なし、一人にても可なりと雖も、之を缺員の儘に付するを得ず、取締役に缺員あるときは、監査役に於て、一時其職務を行ふことあるも、監査役に缺員あるときは、取締役をして、一時其職務を行はしむるを得ず、□三監査役は、何時にても、株主總會の決議を以て之を解任することを得、但し任期の定めある場合に於て、正當の理由なくして、其任期前に解任したるときは、監査役は損害賠償を求むることを得、□四監査役の任期は一年とす、但しその任期滿了の後、再選する事妨げず、□五監査役は、取締役、又は支配人を兼ぬることを得ず、但し取締役中に缺員あるときは、取締役、及び監査役の協議を以て、一時取締役の職務を行ふべき者を定むる事をべ可し、□六監査役が受くべき報酬は、定款に其額を定めざりしときは、株主總會の決議を以て、之を定むるものなり、□七監査役は、株主總會を招集するの必要ありと認めたるときは、其招集を爲すことを得、此總會に於ては、會社の業務及會社財産の狀况を調査せしむる爲め、檢査役を選任することを得、□八監査役は、取締役が株主總會に提出せんとする書類を調査し、株主總會に、其意見を報告するの義務を負ふものなり、□九會社が、取締役に對し、又は取締役が、會社に對し、訴を提起する場合に於ては、其訴に就き、監査役會社を代表す、但し株主總會に於て、代表者を特に選任したるときは、監査役之を代表することなし、□十監査役が其任務を怠りたるときは、會社及第三者に對して、損害賠償の責に任ず、十一監査役が破産、又は禁治産の宣告を受けたるときは、當然其職を退くを要するものなり、十二其他監査役は、取締役の如く、會社の營業の部類に屬する商行爲を爲し、又は同種の營業を目的とする、他の會社の無限責任社員となるには、必ずしも株主總會の認許を要するものにあらずして、任意に爲すを得べく、又取締役は、監査役の承認を得たるときに限り、自己、又は第三者の爲め、會社と取引することを得るに過ぎずと雖も、監査役は、自己、又は第三者の爲、會社と取引するに就きて、取締役又は株主總會の承認を要せず、任意に之を爲しを得るものとす。(商一七五、一七六條、一八〇條乃至一八九條參照)
- 英
- Auditor
- 独
- Aufsichtsrath
- 仏
- Auditeur
監倉
(かんさう)監倉とは、海軍監獄の一種にして、刑事被告人を拘禁、又は留置する所なり、東京の監倉に於ては拘留、及十日以下の禁錮に處せられたる者を拘禁することを得。(海軍監獄則一條參照)
- 英
- Naval prison
- 独
- Schiffsgefäng-nisz
- 仏
- Prison maritime
鑑札
(かんさつ)鑑札とは、政府が私人に或行爲の免許を與ふる證票なり、例へば營業鑑札の如し、刑法第二一三條に「官の免狀、又は鑑札」とあるは其用例なり、
- 英
- Public license
- 独
- Erlaubnis-schein
- 仏
- Certificat public
鑑札料
鑑札料、私人が政府より或行爲の免許鑑札を受くるに當り、納入する料金にして、其性質は手數料たるを常とするも、或場合に於ては、租税の性質を帶ぷることあり。(賣藥規則一六條參照)
- 英
- License fee
- 独
- Erlaubnisscheins-steuer
- 仏
- Honoraire du certificat
監視
(かんし)監視なる語の用例頗る區々たり、□一裁判所が附加刑として、犯人に科したる宣告に基き、主刑の執行を終りたる犯人に就きて執行する、行政處分を意味するを普通とし、其處分を申渡されたる者は、一定の期間内、警察官吏をして、被監視者行狀を監視せしめ、其間特に居住移轉の自由を制限し、其他法定の事項を遵守せしめらるるものなり、刑法第三七六條に「監視」とは此用例なり、□二以上の外、廣く假出獄を許されたる者に對して命ずる特別監視をも、監視と稱する事あり、此特別監視は附加刑にあらず、□三官署に於ける職名を指すことあり、税關監視、臺灣總府税關監視、專賣局監視等の如し、□四或事項を監督視察することを監視と云ふことあり、農工銀行法第四三條に「農工銀行の業務を監視せしむ」とある其用例なり。
- 英
- Police surveillance
- 独
- Polizei-aufsicht
- 仏
- Surveillant
監視員
監視員とは、或事項を監督視察する爲め、特に設定せられたる者を云ふ、例へば藥品營業並に藥品取扱規則により、内務大臣が、藥局及藥品を販賣、又は製造する場所を巡視せしむる爲めに任命する監視員の如し。(藥品營業並に藥品取扱規則三八條參照)
監視假免
監視假免とは、監視に付せられし者が、其規則を嚴謹し、改悛の狀現れし場合に、内務司法兩大臣の命を受けて、假に監視なる附加刑處分を免除する行政處分を云ふ、されど監視假免の處分を受けたる場合に於ても、之等の者が其住居を移轉するには、猶警察官署の許可を受けざるべからざるものなり、内務省官制第一〇條に「監視假免」とあるは其用例なり。
監視者
監視者とは、或事柄を監督視察する者を云ふを通例とし、衆議院選擧法第八九に「監視者」とあるは其用例なり、又監視の處分に附せられたる、被監視者を、通俗に監視者と云ふことあり、されど斯くの如きは、嚴格なる法律上の用語にあらず。
- 英
- Inspector
- 独
- Oberaufsehre
- 仏
- Inspecteur
監事
(かんじ)監事とは、□一民法上の法人の監督機關を指して云ふことあり、民法上の法人は、商法の會社と異り、必ずしも之を置く事を要する者にあらず、唯定欵、寄附行爲、又は總會の決議を以て、一人、又は數人の監事を置く事を得べし、監事の職務は、あ法人の財産の狀況を監査すること、い理事の業務執行の狀況を監査すること、う財産の狀況、又は業務の執行に就き、不整の廉あることを發見したるときは、之を總會又は主務官廳に報告すること、え以上報告を爲す爲め必要あるときは、總會を招集すること等これなり、株式會社、株式合資會社に於ける監視役も、畢竟監事の一種なりと云ふべし蓋し等しく法人の監督機關なればなり、唯特別の法人なるが故に、特殊の規定ありて、必ずしも、以上の説明と符合することなきに過ぎず、(民五九條、日本銀行條例等參照)□二特種の團體、又は機關に於ける、其庶務を掌理する職名を指すことあり、例へば水産講習所監事、海軍主計官練習所監事等之なり。
- 英
- Supervisor
- 独
- Aufsichtsrath
- 仏
- Inspecteur
感情
(かんじやう)心的活動を分類し、知的及情意的作用となす時は、情意的活動は一層内部的にして、知的作用に反應して、心意の中心より發動する吾人の精神活動の一切を包括すと云ふを得べし、學者或は、吾人の心意を知、情意と分類することあるも、之等は截然たる區別あるものにあらず、特に近時の學者、多くは情意を以て同一根莖の分枝せるものとし、意志とは、即ち感情に根ざせる一層努力的なる精神作用を指す、換言すれば單純感情は、其自身已に意思の向ふ方角を示す、例令ば苦しみを感ずるや之を避けんとするは、之即ち苦と云ふ感情が避けんとする意思を導きたるに依ると、然れども單純感情より發展せる情緖の如き高尚なる感情と、又單純感情より分化發達せる意志とは、自ら其本領を異にし來たるを以て、兩者の關係は、恰も木の双枝の如きものなり、感情は之を分類して、最單純感情、單純情緖、複雜なる情緖等となす事あるも、其間截然たる區劃あるべきものにあらず、單に發達の段階に便宜上名けたるに過ぎず、單純感情とは、知的作用の感覺に應ずべき一般感情の構成元素にして、其種類無數なるを以て、心理學者多くはそれ等に共通なる色合ひともいふべき、快苦の情を摘出して論し、ヴントの如きは更に二對の色合ひを設けたり、單純情緖とは、喜怒哀樂の如きを指し、復雜なる情緖とは、宗教的、道德的、審美的、知識的、情緖等の如き、高尚なる感情を指すものなり、實に感情は、人心の奥底に潜む微妙なる活動たるを以て、之を充分に硏究せんとするも、其之を對象となさんとする瞬間に逸出し去りて、再び之を捕捉すべからず、從つて其硏究甚だ不十分なり、而して古來哲學者、宗教家等の甚しく之を卑下し、之を押壓せんとせる者多きも、今日は却て之が發達の望み、高尚なる人格は、高尚なる感情趣味の發達に俟つもの多しとせらるるに至れり。
- 英
- Feeling
- 独
- Gefühl
- 仏
- Pensée
看守者
(かんしゆしや)看守者とは、或る人、又は物件を看護守備する者を云ふ、刑事訴訟法第一〇七條に「豫審判事は臨檢、搜索、物件差押に付、其日に處分を終らざるときは、場所の周圍を鎖閉し、又は看守者を置くことを得」とあるは其用例なり。
監守者
(かんしゆしや)監守者とは、或物件を監督守護する者を云ふ、遺失物法第一〇條に「監守者ある船車、建築物」とあるは其用例なり。
- 英
- Overseer
- 独
- Oberaufseher
- 仏
- Surveillant
監守盜
(かんしわたう)官吏自ら監守する所の金穀物件を竊取する犯罪を云ふ、分説すれば、□一犯罪の主體は官吏たる事、故に官吏以外の常人は、犯罪の主體となるを得ず、單に教唆犯、又は從犯となることあるに過ぎずと解するを妥當とすべし、然れども大審院にては、官吏と共同するときは、常人と雖も監守盜の主體たり得べしと判決したることあり、尚公吏は、官吏と同一の取扱を受くるが故に、監守盜の主體たるを得べし、例へば市町村の収入役の如し、□二犯罪の目的物は、自ら監守する金穀物件たる事、自ら監守すとは、官吏が官吏たる資格に於て受領し、又は保有するの義にして、官吏たる資格に於てとは、目的物を受領、又は保有することが、其官吏の權限に屬する場合は勿論、假令其官吏の權限外なりと雖も、目的物を交付する者に於て、官吏に此權限ありと誤認し、其信用に於て物を交付したる場合をも、包含するものと解すべきなり、例へば訴訟當事者に於て、裁判官は訴訟費用を領収する權限ありと誤認し、之に訴訟費用を支拂ひ、又は郵便局に至り、爲替係にあらざる局員に對し、爲替取組の爲め金圓を交付したる場合に於て、之を受領する權限なき官吏が、交付者の錯誤を利用して金圓を受取り、之を橫領すれば本罪を構成すべきなり、之に反して、若し交付者に於て、官吏に斯くの如き權限なき事を知るに拘らず物を交付し、官吏之を受領するも、官吏たる資格に於て、受領したりと云ふを得ざる故に、他の犯罪となるは格別、監守盜となるべきにあらず、而して官吏が、其金穀物件を竊取したる以上は、其遠因の如何を問はざる故に、自己の監守する金錢を自己の金錢と兩替したる場合に於ても、監守者に於て其行爲の違法たる事を知りたる以上は、監守盜を構成すと論ぜざるべらず、□三竊取の所爲あること、竊取は故意を要するが故に、過失に依りて之を費消することあるも本罪は成立せず、本罪の處分は輕懲役に處せらる、監守盜を爲す爲、官の文書簿冊を增減變換し、又は毀棄したる時は、重懲役に處せらるべし、猶自首減輕、宥恕減輕、酌量減輕の爲、輕罪の刑に處せらるることあるも、尚六ケ月以上二年以下の監視を附加せらるるものとす。(刑二八九條、二九一條參照)
- 英
- Theft of money or commodities entrusted to one's charge
- 独
- vertraute Sachen zu stehlen
- 仏
- Vol commis sur l'argent ou la propriété confié à lui-même
艦籍
(かんせき)軍艦の所屬籍を艦籍と云ふ、艦籍は常に何れかの鎭守府にありて、例へば某艦の艦籍は横須賀鎭守府にありと云ふが如し、軍艦水雷艇補充基金特別會計法第三條に、艦籍とあるは其用例なり。
- 英
- Register of men-of-war
- 独
- Orts-angehörigkeit des kriegsschiffes
- 仏
- Re-gistre de la vaisseau de querre
間接
(かんせつ)時間、空間、因果の觀念に基く觀念にして、夫等の連接の間に直接の關係を有せず、一若くは二以上の第三者を介して、關係を有する狀態を間接といふ、詳言すれば、二者の接續上の關係が、直接因果の關係に連結せられ、或は空間上時間上の直接觸接を保つことなく、其因果たり連續たる事が、第三者の介在によりてなさるる狀態を謂ふなり。
- 英
- Indirect
- 独
- Indirekt
- 仏
- In-direct
間接税
(かんせつぜい)間接税とは、直接税に相對する租税の一類別にして、租税負擔の所在を標準として、定めたるものなり、即ち事實上租税を負擔せしめんと欲する者より、直接に賦課徵收する租税を直接税と云ひ、事實上、租税を負擔せしめんと欲する者より、直接に賦課徵收せず、却て其以外の者より徵收し、其者より更に之を轉嫁して、實際上の負擔者に歸せしめんとする目的を以て、賦課徵收する租税を間接税と云ふなり、地租、所得税等の如きは、國家が土地所有者、及び所得を有する者をして負擔せしむるの目的を以て、賦課徵收する租税なれば、則ち直接税なり、酒造税、砂糖税の如きは、營業者をして負擔せしむるを目的とするにあらず、其消費者より徵收するの目的を有するものなるが故に、間接税なり。
- 英
- Indirect tax
- 独
- indirekte Steuer
- 仏
- Contribution indirecte
間接國税
間接國税とは、國家が課する租税にして、間接税たるものを云ふ、例へば、北海道區制によれば、之を消極的に定義して、所謂直接國税にあらざる一切の國税を云ひ、間接國税犯則者處分法は、之を設例的に定義し、酒造税、混成酒税、沖繩縣酒類出港税、醬油税、賣藥印紙税、及び印紙税を指すものとす。(猶市制一二二條、町村制一二六條參照)
- 英
- Indirect national tax
- 独
- indirekte Reichssteuer
- 仏
- Impôt na-tional indirect
間接府縣税
間接府縣税とは、府縣の課する租税にして、直接税にあらざるものを云ふ。(府縣制一〇三條乃至一一〇條參照)
- 英
- Indirect tax of Fu or Ken
- 独
- Indirektsteuer von Fu oder Ken
- 仏
- Impôt indirect de Fu ou de Ken
間接市税
間接市税とは、市の課する租税にして、直接税にあらざるものを云ふ。(市制九〇條參照)
- 英
- Indirect municipal tax
- 独
- indirekte stadtssteuer
- 仏
- Impôt munici-pal indirect
間接町村税
間接町村税とは、町村の課する租税にして、直接税にあらざるものを間接町村税と云ふ。(町村制九〇條)
- 英
- Indirect tax of town or village
- 独
- indirekte Gemeindesteuer
- 仏
- Impôt indirect de la ville et de la village
間接區税
間接區税とは、區の課する租税にして、直接税にあらざる租税を云ふ。(沖繩區制及北海道區制參照)
- 英
- Indirect district tax
- 独
- indirekte Bezirksteuer
- 仏
- Impôt indirect de district
間接機關
(かんせつきくわん)國家は機關人格也、即ち國家なる無形の統治主體は、機關を俟つて始めて人格を有し、統治權を行ふを得、若し國家の觀念より機關を除外せんか、國家なる人格者は不可解となり、現實に統治權を行使する現象を説明するに由なかるべし、然れども國家機關の凡てが、國家の觀念に必要缺くべらずと云ふにあらず、國家は、其職能を凡ての機關によりて行ふ、從つて機關は頗る多數也、各省大臣も機關なり、裁判所も機關なり、府縣知事も機關なり、郡長も機關なり、然れども之等の機關は、必ずしも國家の存在に必要ならず、唯現行制度の下に於て必要なるのみ、之即ち間接機關なるが故也、之に反して君主、及び帝國議會は、立憲國に於て缺くべからず、若し立憲國にして帝國議會なからんか、立憲國は其意義をなさずして、即ち專制國となるなり、要するに、直接機關とは、國家と運命を始終する機關の謂ひにして、間接機關とは、直接機關の行爲によりて創設せらるるものを云ふ、以上は、國家人格説に基く説明なり、之に反對する説は、君主を統治權の主體とし、帝國議會、國務大臣及裁判所を直接機關とし、其他凡百の機關を間接機關と解す。
- 英
- Indirect organ
- 独
- indirektes Organ
- 仏
- Organe indirecte
間接國税犯則者處分法
(かんせつこくぜいはんそくしやしよぶんはふ)間接同税犯則者處分法は、明治三三年第法律六七號を以て公布せられたる法律にして、其内容は、□一間接國税に關する犯則あるときは、收税官吏は、犯則事實を證明すべき物件、帳簿、書類等の差押を爲す事を得べく、藏匿すと認むる場所に臨檢して、捜索を爲すことを得べし、□二收税官吏は、犯則事件を調査する爲め必要と認むるときは、犯則嫌疑者、參考人を訊問する事を得、□三収税官吏、臨檢、捜索、尋問、差押等を爲すに當り、必要なるときは、警察官吏の援助を求むる事を得べし、□四收税官吏捜紊を爲すときは、捜索すべき家宅、倉庫、船車、其他の場所の所有主、借主、管理者、事務員、又は同居の親族、雇人、隣佑にして成年に達したる者をして立會はしむべし、以上の者其地に在らざるとき、或は立會を拒みたるときは、其地の警察官、又は市町村吏員をして立會はしむべし、□五收税官吏は、日沒より日出までの間は、臨檢、捜索、又は差押を爲すことを得ず、但し現行犯の場合は此制限外とす、□六收税官吏、犯則事件の調査を終りたる時は、之を税務管理局長に報告すべし、但し以下の場合に於ては、直に告發すべきもの也、あ犯則嫌疑者の居所分明ならざるとき、い犯則嫌疑者逃亡の虞あるとき、う證憑煙滅の虞あるとき、□七税務管理局長は、犯則事件の調査により、犯則の心證を得たるときは、其理由を明示し、罰金、若くは科料に相當する金額、沒收品に該當する物品、徵收金に相當する金額、及び書類送達、並に差押物件の運搬、保管に要したる費用を指定の役所に納付すべき旨を通告すべし、但し犯則者通知の旨を履行する能力なしと認むるときは、直に告發すべし、□八犯則者通告を受けたる日より、七日以内に之を履行せざるときは、税務管理局長は告發の手續を爲すべし、但し七日を過ぐるも告發前に履行したるときは、告發することを得ず。間接國税犯則犯者處分法施行細則とは、間接國税犯則者處分法の施行に關する規定にして、間接國税犯則者處分法に於ける間接國税とは、□一酒造税、□二酒精及酒精含有飮料税、□三沖繩縣酒類出港税□四麥酒税、□五醬油税、□六砂糖消費税、□七賣藥印紙税、□八印紙税、□九骨牌税の九種とす、收税官吏は、直接と間接とを問はず、差押物件、又は沒收物件を買受くることを得ず等其重なる規定なり。(三三年勅五二號參照)
間接國税犯則者處分法施行細則
間接選擧
(かんせつせんきよ)直接選擧に對する選擧の一方法として、被選人を定むるに至る迄、二重の手續を要する選擧方法なり例解すれば、甲を選擧する爲めに、先づ乙を選擧し、乙が更に甲を選擧するの制度なり、之に反して、直接選擧とは、甲を選擧せんとする場合に乙を選擧せず、直に丙自ら甲を選擧するの制度なり、其制各一長一短ありて、容易に得失を判じ難しと雖も、近時の趨勢に於ては、間接選擧は漸々其迹を斷ち、直接選擧となるの傾向あり、舊府縣制、郡制に於ては、間接選擧を採りたりしも、現行府縣制、郡制に於ては之を斥け、直接選擧の方法を採用するに至れり、其他衆議院議院選擧法、市制、町村制、皆直接選擧の方法に依る、猶今日に於ても、單に多額納税議員の選擧、所得税調査委員の選擧、市長、町村長の選擧等に就てのみ、間接選擧の制度を採る、選擧の精神を貫徹せんと欲せば、直接選擧を以て比較的當を得たるものなりとは、普く認めらるる所説なりとす。(直接選擧の部參照)
- 英
- Indirect clection
- 独
- indirekte Wahl
- 仏
- Election indirecte
間接訴權
(かんせつそけん)近世の法律に依れば、債務者の總財産は、自己が負ひたる債務の擔保たるの觀あり、故に債務者の財産にして、充分に其債務を完濟する能はざるの虞れなき間は、債務者が自己の權利を行使し、その財産を消費すると否とは、全く債務者の自由に委すべしと雖も、一旦其虞を生ずるに及びては、或る權利を制限して、債權者を保護するの必要なしとせず、蓋し債務者が、其資力足らざる曉には、務めて利殖の道を計るも、斯くの如きは、啻に債務者を利するに過ぎざるを以て、自棄の結果其行使を怠る事ある素より其所也、茲に於て乎法律は、債權者保護の爲め、債務者に屬する權利を行使するの權利を債權者に與ふ、之所謂斜めの訴權、代位訴權、又は間接訴權と稱する所のものなり、要するに間接訴權とは、其債權を保全する爲、債務者の權利を行ふ事を得る債權者の權利なりと云ふべし、次に債權者が、此附與せられたる間接訴權を行ふに當りて、如何なる資格に於て其權利を行使するものなるかは、法理上の問題として疑問あり、或は債權者は債務者の代理人なりと云ひ、或は債權者は自己の名に於て、債務者の權利を行ふものなりと説く、されど債權者は、間接訴權權利者として、自己の利益の爲めに、債務者の名に於て、債務者の權利を行ふものなりと解するを以て妥當とす、此權利を行ふには、以下の條件を要す、□一債務者が行使を怠りたる權利は、財産權なること、蓋し身分權、其他一身に專屬する權利は、之を行ふ能はざるのみなちず、之を行使するも、債權者に取りて何等の利益を與へざればなり、□二債權者は、自己の財産權の行使を怠りたること、怠らざるに於ては、債權者は、債務者の權利を行使することを得ざるは勿論也、□三債權者の有する債權の期限が到來したるときは、直に之を行ふ事を得るも、未だ期限前なるときは、裁判所の手續に依り、代位權を得るにあらざれば、間接訴權を行ふ事を得ず、但し保存行爲に就きては、期限前と雖も、間接訴權を行ふことを得、而して其權利を行使したる結果は、總債權者の利益に歸し、行使したる債權者のみの利益に歸すべきにあらず、例へば間接訴權の效果として、債務者の債權を取立つることを得るも、自己のみ其利益を獨占することを得ざるものなり、尚停止條件附債權者は、間接訴權を行ふ事を得るや否やに就きて疑あるも、期限附債權者にても、既に期限前は裁判上の代位に依らざれば、其權利を行ふこと能はざるものなるを以て、效力發生未定の債權を有する者は、尚更行ふことを得ずと解するを可とせん。(民四二三條、及び代位の部參照)
- 英
- Indirect right of prosecution
- 独
- indirekte Actio
- 仏
- Action indirecte
間接代理
(かんせつだいり)間接代理とは、或る行爲を代理して爲したる者が、其結果を本人に移轉すべき法律關係を云ふ、元來代理とは、代理人の爲したる意思表示、又は受けたる意思表示が、直接に代理人に對して效力を生ずるを云ふ、從つて代理人の爲したる法律行爲の效力は、代理人其れ自身には何等の效果を生ぜず、當然に本人に效力を及ぼすものにあらざれば、民法の所謂代理にあらず、然るに、間接代理なるものは、其實本人と代理人との間に、或る法律關係、即ち代理人の爲したる法律行爲の效果を、更に本人に移轉するの權利關係にして、代理人が相手方と爲したる法律行爲の效力は、先づ代理人に生じ、更に之を本人に移轉するものなり、從つて我民法上の代理にあらずと云はざるべからず、要するに所謂間接代理なるものは、學理上の用語とし、存在するに過ぎずして、成法上の觀念に之なし、商法の所謂問屋營業は、此間接代理の一例となすを得んか、葢し問屋と相手方との間に法律關係を生じ、更に問屋は之を本人に移轉するものなればなり。(商三一三條乃至三二〇條參照)
- 英
- Indirect representation
- 独
- indirekte Stellvertretung
- 仏
- Représenta-tion indirecte
艦船
(かんせん)廣く軍艦其他の船舶を總稱して艦船と云ふ、民法第一〇八〇條に「艦船」とあるは其用例にして、或は海軍に於て、艦船即ち軍艦、水雷艇、及び海軍の役務に供にする雜役船舟を總稱する狹義に使用する用例あり、例へば海軍艦船條例第一條に「艦船は鎭守府を本籍とす」とあるが如き場合之なり。
- 英
- Vessel
- 独
- Schiff
- 仏
- Vaisseau
艦隊條例
(かんたいでうれい)明治三〇年勅令第二五六號を以て公布せる勅令にして、□一艦隊は、軍艦二艘以上を以て編制す、艦隊は編制の目的に依り、又は差遣する所の海洋、若くは地方の名稱を冠し、某艦隊と稱すべきものとす、□二艦隊は、其必要に應じ、水雷艇、水雷艇隊、水雷敷設隊、及び運送船、病院船、工作船等を附す、□三艦隊に司令長官を置く、司令長官は天皇に直隷し、麾下の艦隊を統率し隊務を總理す、但し司令長官は、軍政人事に關しては海軍大臣の指揮を受く、□四司令長官は、緊急の場合に方り、指令を仰ぐの暇なきときは、指令を待たずして麾下の艦隊、若くは其一部を巡航區域外に差遣することを得、此場合には事後海軍大臣に報告すべし、□五司令長官、若くは司令官の乘る所の軍艦を旗艦と稱す、□六艦隊に幕僚として下の職員を置く、參謀長、參謀、副官、航海長、機關長、主計長、主理、海軍通譯官、但し艦隊の編制上其一部を置かざることを得、□七二隻以上の驅逐艦を艦隊に編入する場合に在りては、之を以て特に驅逐隊を編制し、驅逐隊司令を置くことを得、以上其大體なり。
- 英
- Rule of fleet
- 独
- Flotte Verordnung
- 仏
- Règle de la flotte
姦通
(かんつう)姦通とは、有夫の婦と、故意に交接するを云ふ、故に犯罪の主體として、必ず一方は有夫の婦ならざるべからず、然れども有夫の婦と通じたる相手方は必ずしも有婦の夫たる事を要せず、姦通は有夫の婦に於ては、自己が有夫たる事、有夫の婦と通じたる者は、有夫の婦と通ずることを知るにあらざれば、本罪を構成せざるものにして、相方共に有夫の婦たることを知らざるべからざるものとす、從つて過失を以ては、姦通罪を犯すことを得ざるなり、但し本罪は所謂親告罪の一種なるが故に、本夫に於て、妻が他人と交接することを〓容したるときは、之を告訴するも其效なきものなり、從つて此場合には、又姦通とならざるものと云はざるべからず、本夫が廣く他の男子と交接することを〓容したるときは疑なきも、特定の者と交接することを認容したるに、更に其以外の第三者と交接したるときは、姦通として罰することを得るやは多少の疑ある所なるも、罰することを得ずと解するを妥當とす。(刑一八三條)
- 英
- Adultery
- 独
- Ehebruch
- 仏
- Adultère
姦通罪
姦通罪とは、姦通を爲したる罪にして、姦通したる有夫の婦及相姦する者は、六ケ月以上年以下の重禁錮に處せらるべきとす、但し本罪は親告罪の一種にして、本夫の告訴を待つて其罪を論ずべきものなり。(刑一八三條、及親告罪の部參照)
姦夫
姦夫とは、有夫の婦と姦通したる男子を云ふ。姦婦とは有夫にして、夫以外の第三者と交接したる者を指すものなり。
- 英
- Adulterer
- 独
- Ehebrecher
- 仏
- Adultère
姦婦
- 英
- Adulteress
- 独
- Ehebrecherin
- 仏
- Femme adultère
鑑定
(かんてい)鑑定とは、或人が特別の知識により、現在の事實の判斷を爲すことを云ふ、從つて過去の事實に就きて、判斷を爲す者は、鑑定にあらずして證人なり、又特別の知識による點に於ても證人とは異る、茲に鑑定證人なるものあり、即ち特別の知識によりて過去の事實を立證する者是なり、斯くの如き鑑定證人と證人との區別は、必ずしも特別の知識の有無を以て確然たる區別とするを得ず、結局現在の事實に就きて、判斷を與ふる者にあらざれば、其他一切證人なりと云ふを可とせん。(民訴三三一條乃至三三三條、刑訴一三五條乃至一四一條參照)
- 英
- Expert evidence
- 独
- Schätzung
- 仏
- Témoignage d'un expert
鑑定書
鑑定書、鑑定人が其鑑定の結果を記載したる書面を鑑定書と云ふ。(民訴三三〇條、刑訴一四一條參照)
- 英
- Written opinion
- 独
- Schätz-ungsschrift
- 仏
- Opinion écrite
鑑定人
鑑定人、廣く或事實の艦定を爲す者を鑑定人と云ふ、されど訴訟法に於ける鑑定人とは、裁判所が民事、又は刑事の訴訟に就き、或現在の事實を判斷せしむる爲めに、鑑定人として選定したる者を云ふなり。(民訴三二二條乃至三三三條、刑訴一三五條乃至一四一條參照)
- 英
- Expert
- 独
- Schätzer
- 仏
- Ex-pert
監督
(かんとく)或人、又は機關が他の人若くは機關の行爲に就き、其行爲が積極又は消極に、違法、越權の處置ありや等を監査督勵し、必要なる場合に指揮命令し、又は其行爲を取消し、譴責、制裁を加ふる等を云ふ、例へば上級官廳が、下級官廳の行爲が違法、越權にあらざるやを監督し、主人が支配人、番頭、手代の行動を監督し、上官が下級官吏を監督するが如き、皆其例なり。(民八二條參照)
- 英
- Supervision
- 独
- Kontrole
- 仏
- Surveillance
監督義務者
監督義務者とは、ある人又は機關を監督すべき義務を有する者を云ふ、各法令によりて定り、一々枚擧する事を得ず、一二を擧ぐれば、未成年者に對して親權を有する、父又は母が監督する義務を有するが如き、後見人が禁治産者、又は後見に服する未成年者を監督する義務を有するが如き、教師が生徒を監督する義務を有するが如き、監査役が取締役の業務執行を監督するが如き、監事が理事を監督するが如き即ち是なり。(民五九、七一四、八七九、九二一、九二二條、商一八〇條乃至一八九條參照)
監督官
(かんとくくわん)監督官とは、人又は機關を監督すべき地位に在る官吏を云ふ、郡長は町村長の、府縣知事は市長、又は郡長の、各省大臣は府縣知事の、區裁判所判事は戸籍吏の監督官たるが如し。(戸籍法九條參照)監督官廳とは、人又は機關を監督すべき職務權限を有する官廳を云ふ、多くの場合には監督官と一致するも、監督官にして官廳を爲さざることあるが故に、差異なきにあらず、内務大臣は、知事、郡長の監督官廳なるが如し。(市制三三條府縣參照)
- 英
- Superintendence
- 独
- Inten-dantur
- 仏
- Surveillant
監督官廳
- 英
- Intendant office
- 独
- Ober-aufseherbehörde
- 仏
- Office intendante
監督權
(かんとくけん)監督權とは、人又は機關が監督を行ふ權利、又は權限を云ふ、内務大臣は、地方團體に對して監督權を有し、各省大臣は、部下の官吏に對して監督權を有し、親權者は、未成年者に對して監督權を有し、主官廳は、法人に對して監督權を有するが如し。
- 英
- Right of supervision
- 独
- Kon-trolrecht
- 仏
- Droit de surveillance
監督者
(かんとぐしや)監督者とは、監督權を有する者を云ふ、然れども監督官廳、監督官は之の一種なり、尚親權者、後見人、監査役は、未成年の子、禁治産者、取締役に對して監督者なるが如し。(民七一五條參照)
- 英
- Superintendent
- 独
- Oberauf-seher
- 仏
- Surintendant
監督總監
監督總監とは、陸軍監督總監の如き即ち是なり、要するに監督官の一種に外ならず。
- 英
- Chief of the intendant
- 独
- Hauptoberaufscher
- 仏
- Surveillant-général
監督判事
(かんくとはんじ)區裁判所に判事二人以上ある場合に、司法大臣が、其内の一人に命ずる一種の職名にして、同大臣の委任によりて、司法行政事務を行ふ官吏なり、監督判事は司法行政官として、唯司法大臣の委任により、司法行政事務を行ふも、裁判官たる職司に至りては、毫も他の判事と異る所あらず。(戸籍法五條、裁構法一三四條參照)
- 英
- Presiding judge
- 独
- Haupt-richter
- 仏
- Juge présidant
家名相續人
(かめいさうぞくにん)家名相續人とは、家督相續人と畧ぼ同義にして、一家の家名を承繼するものなり、明治二十七八年從軍徽章奏請授與規程第二條に「家名相續人」とあるは、其用例なり。家名襲繼者とは、家名相續人と同じ、官吏遣族扶助法に「家名繼襲者」とあるは、其用例なり。(同法六條)
家名繼襲者
- 英
- Successor of the name of family
- 独
- Nachfolger des Hausnamens
- 仏
- Successeur du nom de la famille
監吏
(かんり)監吏なる文字は、税關監吏、臺灣總督府税關監吏等に用ひらるる官名の一種にして、要するに一種の監督官吏なり。監理官とは、或事項を管理する官職の名稱なり、例へば日本勸業銀行管理官、農工銀行管理官等の如し。
- 英
- Inspector
- 独
- Oberaufseher
- 仏
- Inspecteur
監理官
- 英
- Official inspector
- 独
- Officiell-oberaufseher
- 仏
- Inspecteur
假登記
(かりとうき)假登記とは、登記の申請に必要なる手續上の條件が具備せざる場合、不動産の所有權、地上權、永小作權、地役權、先取特權、質權、抵當權、及び賃借權の設定、移轉、變更、又は消滅の請求權を保全せんとする場合に爲す一種の登記にして、其目的は依つて、以て上記の權利を保全し、登記の申請に必要なる期限の到來、又は條件の成就ありたるときに、本登記の申請あれば、假登記の順位によりて、其效力を發生せしむるもの也、不動産の所在地を管轄する區裁判所は、申請者の請求により、遲帶なく假登記の囑托書に、假處分命令の正本を添付して、之を登記所に囑託するを要す、此假處分に限り、區裁判所之を發するものにして、若し假登記義務者の承諾あるときは、申請書に其承諾書を添付して、申請するを得るものとす。(不動産登記法二條以下)
- 英
- Provisional registration
- 独
- Vormerkung
- 仏
- Enregistrement tem-poraire
假登記義務者
假登記義務者とは、假登記に於ける登記義務者を云ふ、不動産登記法第三三條に「假登記者」とあるは、其用例の一なり。
- 英
- Obligor in provisional registration
- 独
- Schuldner der Vormerk-ung
- 仏
- Obligé en enregistrement tem-poraire
假登記權利者
假登記權利者とは、假登記の場合に於ける登記權利者を云ふなり、不動産登記法第三二條に「假登記權利者」とあるは、其用語例とす。
- 英
- Obligee in provisional registration
- 独
- Rechthaber der Vor-merkung
- 仏
- Créancier en enregistrement temporaire
假登記原因
假登記原因とは、假登記の場合に於ける登記原因を云ふ、例へば賣買豫約の假登記の場合に於ては、賣買豫約が即ち登記原因なり、不動産登記法第三二條に「假登記原因」とあるは其用例とす。(登記原因の部參照)
- 英
- Reason of provisional regi-stration
- 独
- Ursache der Vormerkung
- 仏
- Raison de enregistrement temporaire
假登記名義人
假登記名義人とは、假登記の場合に於ける登記名義人にして、要するに自己の名義にて假登記を申請する者を云ふなり、不動産登記法第一四四條に「假登記名義人」とあるは其用語例なり。
假議長
(かりぎちやう)議長が一時其職務を執る能はざる場合に、其職務を執る者を假議長と云ふ、彼の副議長の如く、議長の故障ある場合に、當然之に代る職責を有する者は、所謂假議長にあらず、議院法により、貴族院、又は衆議院に於て假議長を置く場合は、議長、副議長共に故障ありて、其職務を執る能はざる場合にして、其選任の方法は、選擧によるものとす、假議長に選任せられたる者は、議員の權利を行ふ能はざるか、例へば甲案に賛成する者五名、乙案に賛成する者四名なる場合に、假議長は乙案に賛成し置き、(即ち議員たる資格に於て)可否同數なるの故を以て、更に議長の資格に依り、其決する所に依るべしとなし、結局乙案をして成立せしむることを得べきや、即ち假議長は、二票を投ずるの權利を有するや、行政裁判所は、消極に決したりしことあるも、有力なる反對説もあり。(議院法一四條)
- 英
- Temporary chairman
- 独
- vor-läufiger höchster Ratsherr
- 仏
- Président temporaire
假決議
(かりけつぎ)假決議とは、假定的の決議を指し、即ち其效力が不確定の狀態にある決議を云ふ、商法に依れば、株主總會に於て定欵の變更を議するに當り、總株主の半數以上にして、資本の半額以上に當る株主の出席なき場合には、出席したる株主の議決權の過半數を以て假決議を爲し、各株主に對して、其假決議の趣旨を通知し、且つ無記名式の株券を發行したる場合には、その趣旨を公告し、更に一ケ月を經ざる期間内に、次回の株主總會を開き、出席株主の議決權の過半數を以て、此假決議の認否を決す、假決議を是認すれば、假決議は變じて本決議となり、否認すれば、假決議は其效力を失ふものなり、假決議の認否を決する總會に於ては、假決議の趣旨を變更して是認することを得ず、單に認否を決するに止る。(商二〇九條參照)
- 英
- Provisional resolution
- 独
- vor-läufiger Entschlusz
- 仏
- Résolution pro-visoire
假決議錄
假決議錄とは、假決議を發したる場合の記錄を云ふに外ならず、之を以て後日の紛議を防がんとするにあり。(非訴事件手續法一九四條參照)
- 英
- Provisional record of resolu-tion
- 独
- vorläufiges Entschluszverzeichnis
- 仏
- Rapport de la résolution provisoire
假差押
(かりさしおさへ)假差押とは、金錢の債權、又は金錢に換ふることを得べき請求に就き、動産、又は不動産に對する強制執行を、保全する爲めに行ふ一種の訴訟處分なり、之を爲すには、□一金錢、又は金錢に換ふることを得べき請求の爲めなること、□二動産、又は不動産を目的とすること、□三強制執行保全の爲めなること、□四保證を立つること、□五假差押を爲すの必要あること、即ち假差押を爲さざれば、判決の執行を爲す能はざるとき、又は判決の執行を爲すに、著しき困難を生ずる恐あるとき等にして、未だ期限に至らざる請求にても、之を爲すことを得べし、次に假差押の申立は、差押すべきものの所在地を管轄する區裁判所、又は本案の受訴裁判所に對して、書面、又は口頭にて申立つるものにして、其書式の一例を示せば左の如し。
有體動産假差押命令申請□一
住所身分職業
債權者氏名
住所身分職業
債務者氏名
債權ノ表示
一金何圓何年何月貸付何年何月期限元本
一金何圓右利息合計何ケ月分
假差押ノ事由
債權者ハ債務者ニ對シ前記金額ノ債權ヲ有スル者ニ有之候然ル處債務者ハ期限ヲ經過シ辨濟ノ義務ヲ盡サザルニヨリ債權者ハ數回ノ請求ニ及ビ候處債務者ハ不法ニモ自己ノ債務ヲ免レン爲メ目下頻リニ財産隱匿ニ著手致居候コトヲ相認メ候
若シ夫レ債務者ニシテ以上ノ行爲ヲ爲シ終ランカ債權者ハ本案判決ノ執行ヲ爲シ能ハサルニ至ルベシ仍ツテ強制執行保全ノ爲メ債務者所有動産假差押致シ度保證ハ御下命次第相立可申候條假差押御命令被下度申請仕リ候也
疎明方法
一某ヨリ債權者宛書面ヲ以テ本件差押ノ必要アルコトヲ疎明仕候
附屬書類
一何々何通
一何々何通
年月日右
氏名印
何々區裁判所
監督判事何某殿
(本案が地方裁判所に繫屬するときは、同裁判所長宛)
債權假差押命令申請□二
住所身分職業
債權者氏名
住所身分職業
債務者氏名
住所身分職業
第三債務者氏名
請求金額
一金何圓也委託金
差押フベキ債權ノ種類及數額
一金何百圓也但シ債務者ガ第三債務者ニ對シ何々ノ爲メ提供セル身許保證金
假差押ノ事由
一、債權者ガ何々ノ件ニ付キ債務者地方何々金ノ取立ヲ委任シ債務者ハ之ヲ取立直ニ債權者ニ支拂フベキ約ナルニ何年何月迄ノ間ニ於テ前記金額ノ取立ヲ爲シタルニ拘ラズ之ヲ債權者ニ支拂ハザルモノナリ
二、債務者ハ屢々債權者ノ請求ヲ受クルモ其都度言ヲ左右ニ托シ辨濟ノ義務ヲ盡サス
三、債權者ハ何年何月中債務者住所近傍ニ居住セル知己ニ依囑シ債務者ノ財産上詳細ノ視察ヲ爲サシムル所アリシニ何ゾ計ラン別紙疏第何號ノ如キ書簡ハ債權者ノ手中ニ來リ申候在中文詞ハ添付セル寫ニヨリテ明白ナレバ茲ニ反覆仕ラズ候
四、若シ夫レ債務者ノ奸策行爲ヲ看過センカ債權者ハ他日本案判決ノ執行ヲ爲シ好結果ヲ得ル能ハザルヤ瞭然タルモノニ有之候
仍テ強制執行保全ノ爲メ前揭債權假差押致シ度申請仕候也
疏明方法
別紙疏第何號ヲ以テ事實疏明仕候也
附屬書類
一何々何通
一何々何通
年月日右
氏名印
何々地方裁判所所長
判事某殿
債權假差押命令ニ付申立□三
債權者氏名
債務者氏名
第三債務者氏名
右當事者間ノ委託金請求事件ノ執行保全ノ爲メ債權假差押命令申請致候ニ付テハ左ノ如ク御命令被成下度候也
申立
第三債務者ハ債務者ヨリ……ノ爲メ身元保證トシテ預リ置キタル金何百圓ノ債權ヲ債務者ニ支拂フベカラズトノ御裁判相成度候
年月日右
氏名印
何々地方裁判所所長
判事某殿
不動産假差押命令申請□四
住所身分職業
債權者氏名
住所身分職業
償務者氏名
請求金額
一金何千圓也貸金
目的タル不動産
何府縣郡市町村所在
一田(數多きときは別紙目錄と爲すを常とす)
假差押ノ事由
□一の文例と殆ど同じ故に略す
不動産假差押登記囑託申請□五
債權者氏名
債務者氏名
右當事者間ノ不動産假差押命令申請事件御廳へ申請致候ニ付テハ御命令ノ上ハ別紙目錄ノ不動産ニ付キ管登記轄所へ假差押登記囑託相成度申請仕候也
年月日右
氏名□印
何々地方裁判所所長
判事某殿
(動産の假差押に就きては、□一一通のみにて可なり、債權者の假差押に就きては□二□三を、不動産の假差押に就きては、□四□五の書面を裁判所に提出するものなり)
- 英
- Provisional seizure
- 独
- Arrest
- 仏
- Saisie provisoire
假差押有價證券
(かりさしおさへいうかしようけん)假差押有價證券とは、假差押命令に依りて、假差押を爲したる有價證券を云ふ、民事訴訟法第七五〇條に「假差押有價證券」とは、其用例也。
- 英
- Documentary securities subjected to provisional seizure
- 独
- Ar-restwerthpapier
- 仏
- Nautissements docu-mentaires provisoirement saisis
假差押裁判所
假差押裁判所とは、假差押命令を管轄する裁判所を云ふ、即ち假差押の目的物の所在地を管轄する區裁判所、又は本案の管轄裁判所なり。(民訴七三九條參照)
- 英
- Court of provisional seizure
- 独
- Arrestgericht
- 仏
- Tribunal de la saisie provisoire
假差押物
假差押物とは、假差押命令に依り、假差押を爲したる動産、又は不動産なり。(民訴七五〇條參照)
- 英
- Provisional seizure
- 独
- Ar-restsache
- 仏
- Saisie provisoire
假差押命令
假差押命令とは、假差押裁判所が、債權者の申立を採用せる場合に、債務者の動産、不動産、又は債權に對して、假差押を爲すことを命ずる裁判所の宣言なり、即ち債權者は、此命令に基き、債務者の財産に對して、假執行を爲し、自己の債權の保全を爲し得べきなり。(民訴七五〇條參照)
- 英
- Order of provisional seizure
- 独
- Arrestbefehl
- 仏
- Ordre de la saisie provisoire
假證書
(かりしようしよ)假證書とは、一時假に作成し、確定永續の效力發生は、本證書作成に俟つ證書を云ふ、即ち或事件、又は期限を定め、その條件の成就、又は期限の到來に依り、本證書と引換ふるものとす、若し條件成就せず、期限到來せざれば、其效力を失ふを例とす、船舶檢査法第一〇條第一項に「船舶檢査證書若くは假證書」とあるは、其用例なり。
- 英
- Provisional document
- 独
- vor-läufige Anweisung
- 仏
- Document provi-soire
假處分
(かりしよぶん)假處分とは、係爭物に關する現狀の變更により、當事者の一方の權利の實行を爲すこと能はず、又は之を爲すに、著しき困難を生ずる恐れあるとき許さるる訴訟處分也、其目的は、□一係爭物其物に對して、處分を爲すを目的とする場合あり、□二係爭の權利關係に就き、假の地位を定むるを目的とする場合あり、其假處分の方法は、□一假處分申立人の相手方に行爲を命じ、若くは禁じ、又は或る給付を命ずる場合あり、□二不動産を讓渡し、又は之を抵當と爲すことを禁ずることあり、假處分裁判所は普通の場合には、本案の管轄裁判所、急迫の場合には、係爭物所在地の裁判所とす、假差押申請書の書式左の如し
有體動産假處分命令申請□一
住所身分職業
申請人氏名
住所身分職業
被申請人氏名
目的物
一何々(員數多きときは別紙目錄とす)
一何々
計何點此價格何程
假處分ノ事由
一、申請人ハ前記物件ノ所有者ニシテ何年何月何日被申請人ニ預ケタルモノニ有之候
二、然ルニ被申請人ハ不法ニモ該物件ヲ自己ノ所有物ナリト稱シ目下賣却セントシ其奔走中ナルコト申請人ノ知人某ナル者ヨリ通知有之候ニ付キ直ニ被申請人ニ對シ返却ヲ求メ候ニ不法ニモ自己ノ所有物ト主張シ返却セザルモノニ有之候
三、於茲申請人ガ被申請人ノ行爲ヲ看過センカ該物件ハ遂ニ第三者ノ占有ニ歸シ現狀ノ變更ニヨリ申請人ノ權利ヲ實行スルニ著シキ困難ヲ生ズルヤ勿論ノ事ニ有之候條至急假處分御命令相成度此段及申請候也
疏説明方法
一知人某ノ書面ヲ以テ事實疎明可仕候
附屬書類
一何々何通
一何々何通
年月日右
何裁判所
判事某殿
氏名□印
不動産假處分命令申請□二
住所身分職業
申請人氏名
住所身分職業
被申請人氏名
假處分ノ目的タル不動産
何々何番地宅地所在
一木造、瓦葺、平屋、一棟
此建物何坪
右價格金何程
假處分ノ事由
一、申請人ハ前家屋ヲ一ケ月家賃何程每月何日拂ノ約ニテ何年何月何日被申請人ニ賃貸シタルモノニ有之候
二、被申請人ハ賃貸後何ケ月家賃ノ支拂ヲ爲シタルノミニテ申請人ヨリ何程督促スルモ依然トシテ之ガ支拂ヲ爲ザサルノミナラズ頃日隣人ニ語ツテ曰ク申請人若シ被申請人ニ對シ家屋明渡ノ請求訴訟ヲ提起スルガ如キコトアラバ轉貸其他ノ奸策ヲ以テ判決確定何ケ年ニテモ無賃ニテ居住スベシト放言セルノミナラズ申請人ガ被申請人ニ對シ家屋明渡ノ請求ヲ爲サントスルヲ聞キ標札等モ換ヘントナシ居候次第ニ有之候ヘバ申請人ガ今被申請人ノ行爲ヲ看過セバ現狀ノ變更ニヨリ權利ノ實行ヲ爲スニ著シキ困難ヲ生スルヤ瞭然タル義ニ有之候ヘバ本案判決確定マデ假處分致度此段及申請候也
申立
一本件係爭ノ建物ニ付キ被申請人ノ占有ヲ解キ本案判決確定ニ至ル迄何區裁判所執達吏某ヲシテ保管セシムル旨御裁判相成度候
疎明方法
一何々ヲ以テ疎明仕候
附屬書類
一何々何通
年月日右
氏名□印
何裁判所
判事某殿
- 英
- Provisional disposition
- 独
- einstweilige Verfügung
- 仏
- Disposition provisoire
假處分命令
假處分命令とは、假處分裁判所が、被申請人に對して、假處分を爲すことを許容する命令にして、申請人は、此命令に基き、始めて假處分を實行することを得、而して之を發するは、本案裁判所にして、裁判所は急迫なる場合に於ては、口頭辯論を經ずして之を爲すことを得るなり。(民訴七五六條乃至七六三條參照)
- 英
- Order of provisional dis-position
- 独
- einstweiliger Verfügungs-befehl
- 仏
- Ordre de la disposition pro-visoire
假出獄
(かりしゆつごく)假出獄とは、重罪、輕罪の刑に處せられたる者にして、獄則を謹守し、改悛の狀ある者に、其刑期四分の三を經過せる後、(無期徒刑の囚なれば十五年を經過せる後)假りに獄外に於て、生活を爲すことを許す行政處分なり、但し流刑に處せられたる者には、別に免幽閉の制度あるを以て、此例によらず、假出獄は、監獄に於ける拘禁を免し、刑の殘期間特別監視に附し、若し其間に更に重罪、輕罪を犯したるときは、直に出獄を停止し、出獄中の日數は、刑期に算入することなし、特別監視期間重罪、輕罪を犯さざるときは、假出獄の期限經過と共に、本刑も亦終了す、(刑五三條乃至五七條參照)
- 英
- Preparatory liberation
- 独
- vorläufire Entlassung
- 仏
- Libération pre-paratoire
假出獄證票
假出假證票とは、段出獄を許されたる犯人に、獄司より下附する證票を云ふ、その記載事項は、□一本人の屬籍、氏名、年齡、住所、罪名、刑名、及び處刑の日、□二殘期何年何月何日間假出獄を許すこと、□三假出獄中は、特別監視に付すべきこと、□四假出獄中更に重輕罪を犯したるときは、直に出獄を停止し、出獄中の日數を刑期に算入せざること即ち是なり。(刑法附則四〇條參照)
- 英
- Certificate of preparatony liberation
- 独
- Urkunde der vorläu figen Entlassung
- 仏
- Certificat de la libéra-tion preparatoire
假船籍證書
(かりせんせきしようしよ)假船籍證書とは、船籍港外に於て、船舶を製造し、若くは之を取得したるとき、又は船籍證書を喪失し、毀損し、又は用ふべからざるものとなりたる場合に、内國に於ては本船所在地の地方官廳に、外國に於ては本船所在地、又は其附近帝國領事舘に申請して交付を受け、其船籍港に到著する迄、船籍證書に代用すべき性質を有する證書なり。(臺灣船籍規則三條參照)
假船舶國籍證書
假船舶國籍證書とは、船舶法の規定により、日本に於て船舶を取得したる者が、其取得地の管轄區域内に船籍を定めざる場合、及び外國に於て船舶を取得したる場合、日本船舶が外國の港に碇泊する間、又は外國に航行する途中に於て、般舶國籍證書を滅失、又は毀損したる場合に交付を受け、以て船舶國籍證書に代用するの證書なり、其交付を請求するには、船舶取得地を管轄する管轄官廳、其取得地、又は碇泊港に於ける日本領事官、又は貿易事務官(若し外國に航行中なれば、最初に到達したる地、又は取得地、碇泊港もしくは、最初に到達したる地に於て之を得ること能はざれば、其後最初に到達せる地の領事官、又は貿易事務官)に交付を請求するものとす、その效力は、船舶國籍證書と殆ど同じきも、唯有效期限ある點に於て異るのみ、即ち外國にて交付を受けたるときは一年、内國にて交付を受げたるときは、六ケ月にて效力を失ふ、但し其期間内と雖も、船籍港に到達すれば、直に其效力を失ふものとす。(船舶法五條乃至一九條參照)
- 英
- Provisional certificate of nationality of vessels
- 独
- vorläufige Urkunde der Schiffstaatenangehörigkeit
- 仏
- Certificat provisoire de la nationalité
假逮捕
(かりたいほ)假逮捕とは、司法大臣が假逮捕狀を以て、逃亡犯人を逮捕する事を云ふ。(逃亡犯罪人引渡條例一四條參照)假逮捕狀とは、逃亡犯罪人引渡條例により、司法大臣が、外務大臣の請求に基き、一名又は二名以上の上席檢事に命じ、逃亡犯罪人を逮捕する爲め、逃亡犯罪人引渡條例附錄第一號書式に依りて、發せしむる所の一種の逮捕狀を云ふ、要するに犯罪人引渡條例に於ける逃亡犯罪人は、必ずしも我國に於ては、犯罪人なりと云ふを得ざるものなるが故に、刑事訴訟法上の令狀と、多少異る假逮捕狀を發するものにして、大體に於ては、刑事訴訟法上の令狀と同じ。(逃亡犯罪人引渡條例九條參照)
- 英
- Provisional arrest
- 独
- vor-läufige Verhaftung
- 仏
- Arrêt provisoire
假逮捕狀
- 英
- Provisional written arrest
- 独
- vorläufiger Verhaftungsbefehl
- 仏
- Arrêt écrit provisoire
假住所
(かりぢゆうしよ)或特定の事項に就き、本來の住所、居所以外に定めたる一時的の居所を假住所と云ふ、例へば訴訟事件に於て、送達を受くる爲めに、假住所を選定するが如し、假住所を定むるに至りたる特定の事項に關しては、本來の住所、居所と同一の取扱を受く。(刑訴一八條、民一四三條參照)
- 英
- Temporary lodging
- 独
- zeit-weiliger Wohnsitz
- 仏
- Domicile tempo-raire
假開業免狀
(かりかいげふめんじやう)醫師免許規則に依り、醫師に乏しき地方に於て、府縣知事の具狀を以て、内務大臣より、醫術開業試驗を經ざる者に、其履歷に依りて付與する特種の醫術開業免狀なり、名稱に於て異る所あるも、其效力に於て普通の開業免狀と殆ど差異なし、唯此免許狀は、免許區域外に出でて、區域外の患者を診察治療するこを得ざるものとす。(醫師免許規則五條參照)
- 英
- Temporary physian license
- 独
- vorläufiges Diplom
- 仏
- Certificat tomporaire du médecine
假免除
(かりめんぢよ)廣く或條件にて特定の義務を免除することを云ふ、若し其條件成就すれば、免除は其時より、又は始に遡りて本然の效力を生じ、若し成就せざれば、免除は其時より、又は始に遡りて其效力を失ふ、民事訴訟法に「裁判費用を清濟することの假免除」とあるは其用例とす。(民訴九七條)
- 英
- Provisional dispensation
- 独
- vorläufige Dispensation
- 仏
- Dispense provisoire
借主
(かりぬし)消費貸借、使用貸借、賃貸借等の場合に於て、目的物を消費し、又は使用收益して返還を爲す義務を負ふ者を借主と云ふ、賃借人と云ふも異る所なし、唯此賃借人なる語は賃貸借に於ける借主を指す場合にのみ用ひらる。(民五九、五九四、六〇八條參照)
- 英
- Borrower
- 独
- Entleiher
- 仏
- Emprunteur
假留監
(かりりうかん)假留監とは、監獄の一種にして、徒刑、流刑に處せられたる者を、集治監に差遣する迄拘禁する所なり、監獄則に「假留監」とあるは其用例なり。(同則一條)
假理事
(かりりじ)法人の理事の缺けたる場合に、遲滯の爲め損害を生ずる虞あるとき、裁判所が利害關係人、又は檢事の請求に依り、假理事を選任する理事を指稱し、即ち理事の缺けたる場合に、一時其職務を行使する法人の機關なり、若し理事の選任ありたるときは、當然其地位を失ふ。(民法五六條參照)
- 英
- Temporary manager
- 独
- zeit-weiliger Geschäftsführer
- 仏
- Gérant temporaire
歸
(き)法律に於て、歸なる文字の使用せらるる場合は、□一權利若くは利益の歸す云々と稱し、或は責任、若くは負擔の歸す云々と稱し、其意義、及び用例は、聊か異る所ありと雖も、畢竟歸屬、若くは歸著を意味するものに外ならず、換言すれば、權利、利益、責任、負擔等の主體を確定するの義なり。(民五三四條、民訴二三一條)
- 英
- Accord
- 独
- Übereinstimmung
- 仏
- Accord
歸屬
歸屬とは、前項の歸なる語の意義に同じく、或物の主體を確定するの義なり、即ちこの歸屬なる語は、通常權利、義務、利益、責任等の如き、無形の物の主體を確定する場合に用ふるものとす、例へば民法第四二條第二項に「遣言を以て寄附行爲をなしたるときは、寄附財産は、遣言が效力を生じたるときより、法人に歸屬したるものと看做す」と云ひ、又同法第一〇五九條に「前條の期間内に、相續人たる權利を主張する者なきときは、相續財産は國庫に歸屬す」と云ふが如きは、其財産上の權利の主體を確定したるものなり。
- 英
- Accord
- 独
- Anfall
- 仏
- Accord
歸屬權利者
歸屬權利者と云ふは、即ち歸屬せしめられたる權利の主體を指すの語なり、例へば或權利の主體たる者が不確定なる場合に、法律が主體たる者を確定したるときは、其權利の主體と確定せられたる者が、歸屬權利者となりたるなり。
起案
(きあん)起案とは、文案を起草する意義なり、例へば法律命令の起案と云ふは、即ち法律命令の文案を作成することを意味し、又豫算を起案すと云ふは、即ち豫算案を起草することを意味するが如し、詳言すれば、或事物に對する考案を文章に現はすの謂なり、法典調査會規則第一條に「法令の改正、又は制定に關する事項を起案審議し云々」とあるは、此意義に於ける用例なり。
- 英
- Initiative
- 独
- Initiativ
- 仏
- In-itiative
議案
(ぎあん)議案とは、通常、議會の議事に付すべき事項の記錄、即ち文案を云ふものなれども、時としては、文案を以てせずして、唯言語を以て議事に付したる事項をも、議案と云ふことなきにあらず、議案は、議題と其觀念を異にす、固より議題とは、議案の議事に上りたるものを云ふに外ならずと雖も、未だ議事に上らざる議案は、之を議題と云ふことを得ざるは勿論、一切の議案は、必ずしも悉く議題となるものにあらざるなり、議院法第二九條に「凡て議案を發議し、及び議院の會議に於て、議案に對し修正の動議を發するものは、二十人以上の賛成あるにあらざれば、議題となすことを得ず」とあるは、即ち此意味に於ける用例なり。
- 英
- Bill
- 独
- Bill
- 仏
- Bill
生絲檢査
(きいとけんさ)生絲檢査は、生絲檢査所が、内外人を問はず、其請求に依り、本邦製産の生絲に對し、檢査規定に從ひ、生絲の原量、正量、再繰、纎度、類節、強力、及び伸度、練減等を檢査し、正副二通の檢定證を檢査請求者に附與するものなり、此檢査は無料にて受くるを得るも、其生絲は、本邦生産のものに限るべし。(生絲檢査所法、及び生絲檢査所法施行細則參照)
- 英
- Inspection of raw silk
- 独
- Rohseidenbesichtigung
- 仏
- Inspection de soie crue
生絲檢査所
生絲檢査所は、本邦産の生絲を賣買する者の請求を受けて、其生絲の品質を檢査する所なり、此檢査所は、橫濱、及び神戸の兩地に設置し、所長、技師、技手、書記等の職員を以て組織す、所長は一人、奏任とし、技師をして之を兼ねしめ、農商務大臣の指擇監督の下に、所中全般の事務を掌理す、又生絲檢査所内には、拾名以内の臨時商議員なるものを置くことあり、此臨時商議員は、橫濱、若くは神戸に於て、現に生絲の貿易に從事し、經驗ある者の中より選定し、農商務大臣の奏請に依り、内閣に於て命ずるものなり、之等の者は、農商務大臣の諮詢に應じ、生絲の檢査、及び之が施行に必要なる事項を審議するものとす。(二八年七月敕九三號參照)
- 英
- Office of inspection of raw silk
- 独
- Rohseidenbesichtigungsbehörde
- 仏
- Bureau de l'inspection de soie crue
議員
(ぎいん)廣く議員と稱するときは、合議制の機關を組織すると同時に、其議事の討議をなすものを云ふ、然れども之を通俗の意義に解すれば、主に議會を組織する一個人を指すものとす、我帝國議會の議員には、貴族院議員、及び衆議院議員の二種ありて、貴族院議員には、身分によりて議員たる者、(即ち皇族男子の成年者、及び滿二十五歳以上にして公侯の爵位を有する者是なり)選擧によりて議員たる者、(即ち伯子男爵を有する者にて、滿二十五歳に達すれば、各其同爵者の選擧によりて、議員たることを得べし)及び勅任によりて議員たる者、(即ち國家に功勞あり、又學識ある滿三十歳以上の男子にして、勅任せられたる者、及び多額納税議員之なり)の三種あり、衆議院議員は、凡て國民の選擧にかかるものとす、議員の任期は、貴族院議員にありては、伯、子、男爵議員、及び多額納税議員は七年、其他は皆之を終身とし、衆議院議員は四年なりとす、以上の國會議員の權利としては、□一意見、及び表決の自由、即ち議員は、議院に於て發言したる意見、及び表決に就き、刑法に於て其責任を問はるるが如きこと無きなり、□二身體の自由、即ち議員は、現行犯罪、又は内亂外患に關する犯罪を除くの外、會期中、其院の許諾なくして、逮捕せらるることなし、□三歳費、及び旅費を請求するの權等なりとす、議員の義務としては、議員は、國家機關の關節たる地位にある者なるを以て、常に國家の利害休戚を本務となすべく、又其召集に應じて、議會に出席し、議院内部の規則を遵奉して、忠實に議事の討論、表決に勉めざるべがらず、議員にして、議院の規則に違反したるときは、公開したる議場に於て、遣責、謝辭、出席停止、及び除名等の懲罰を受くるものとす。(憲法、貴族院令、議院法、其他市町村會、府縣會、郡會、同上參事會の部參照)
- 英
- Member
- 独
- Mitglied, Volksver-treter
- 仏
- Membre
僞印
(ぎいん)僞印とは、印章の原體たる印顆を僞造したるものを云ひ、即ち他人の印章の眞狀に摸倣して製作したるものを指す、單に僞印と云ふときは、僞造したる印顆其物を指して云ふことあり、又僞印を押捺したる印影を指して云ふことあり、印章なるものは、社會の信用上、文書、又は或事の信實確正なることを證明する用に供するものなるを以て、他人の印章を僞造行使するときは、刑法上の犯罪となる。(僞印行使罪參照)
僞印行使罪とは、僞印を文書に押捺し、或事の信確を證するの用に供するの所爲を云ふ、僞印行使の罪に對する刑罰は、下の如し、□一御璽、國璽を僞造行使したる者は、無期徒刑、□二官署の印を僞造行使したる者は、重懲役、□三産物商品等に押用する官の記號印章を僞造行使したる者は、輕懲役、□四書籍什物等に押用する官の記號印章を僞造行使したる者は、一年以上三年以下の重禁錮、□五他人の私印を僞造行使したる者は、六ケ月以上五年以下の重禁錮、五圓以上五十圓以下の罸金を附加せるべきものとす、僞印行使の罪にして、輕罪の刑に處せもるるものは六ケ月以上二年以下の監視に付せらるべし、又此種の輕罪を犯さんとして、未だ遂げざる者と雖も、未遂犯罪の例に照して、處斷せらるる也、茲に官署、又は官の印と稱するものの内には、官署公署の印、及び官吏公吏の職印を包含すること、及び他人の私印とは、通常權利義務に關する文書等の確信を證するために用ふる實印、檢印の類を指すものなることを注意すべし、彼の雅號等を彫刻したる印章の僞造行使にかかるときは、他の犯罪を構成することあるべきも、刑法の僞印行使罪となること無し。(刑一六四條乃至一六八條參照)
- 英
- Counterfeit seal
- 独
- falsches Siegel
- 仏
- Sceau contrefait
僞印行使者
牛疫檢査規則
(ぎうえきけんさきそく)明治三三年農商務省令第五號を以て發布せられたる規則にして、韓國、清國、及び露領西伯利亞の諸港より輸入する牛羊皮骨類、其他牛疫傳播の虞ある物品に對する檢疫の施行、及び之に關する處分法を定めたるものなり、同規則に依れば、此檢疫は、神戸、及び長崎の兩港に於て之を行ふものにして、牛疫感染の疑あり、又は之に罹りたる牛羊、及び病毒に汚染し、又は其疑ある牛骨類、其他の物品は、戰疫豫防法の規定に從ひて處分せらるるものとす。(獸疫豫防法參照)
- 英
- Inspection rules of cow's desease
- 独
- Besichtigungsregel der Ochsen-krankheit
- 仏
- Règles de l'inspection de la maladie des boeufs
休暇部
(きうかぶ)合議裁判所に於て、休暇中事務を取扱ふ部を休暇部と云ふなり、休暇部の組織は、每年休暇の始る前に於て、裁判所長の定むる處たり、元來休暇部なるものは、訴訟其他の事件の性質上、迅速の決定を要し、若し之を延引するときは、回復しがたき損害を生ずる虞ある如きものを取扱はせんがために、設けられたる司法上の制度にして、其休暇中取扱ふべき事件は、法律に於て限定せり。
休暇事件
休暇事件とは、裁判所が、休暇中取扱ふ事件にして、裁判所構成法によれば、□一爲替手形、若くは約束手形、其他の流通證書に關する請求、□二船舶、又は運送賃、或は積荷に對する請求、□三財産差押事件、□四住居、其他の建物、又は或部分の受取、明渡、使用、占據、若くは修繕に關し、或は賃借人の家具、または所持品を賃貸人の差押へたることに關し、賃貸人と賃借人との間に起りたる訴訟、□五養料の請求、□六保證を立るの請求、□七取係りたる建築の繼續に關する事件、□八以上揭げたるものを除く外、區裁判所の判事に於て、又は民事訴訟法の定むる處に從ひ、休暇部若くは休暇部長に於て、直に著手すべき緊急のものと認めたる請求、若くは事件、□九非訴訟事件、□十判決執行、十一破産事件、十二畧式を以て取扱ふことを得べき訴訟是なり。(裁構法二八、二九條)
救濟方法
(きうざいはうはふ)救濟方法とは、或損害に對し、法律上認められたる救濟手段を云ふ、例へば他人の不法行爲に依りて、權利を侵害せられたるものが、司法裁判所に出訴して、損害賠償の請求を爲すことを得るが如き、或は行政官廳の違法處分に依り、權利を毀損せられたる者が、監督官廳に訴願の手續を爲し、又は行政裁判所に行政訴訟を提起して、其權利の回復を請求することを得るが如き、何れも權利上の損害に對する法律上の救濟方法なり。(民訴法、訴願法等參照)
- 英
- Means of relief
- 独
- Unter-stützungsmittel
- 仏
- Moyeu de secours
休職
(きうしよく)官吏其他公職に在る者の職務を、一定の期間内罷免することを休職と云ふ、休職は、一定の期間全く職務を離るるも、官吏たるの關係は、依然として存續するものなるを以て、從つて官吏に伴ふ義務は、職務に關するものの外、在職の官吏と毫も異ること無し、即ち休職は、此點に於て、免官免職と同じからず、又一時職務の執行を中止するにあらずして、全然職務より脱退するものなるを以て、停職と其性質を異にするなり、一般文官の休職の事由として、文官分限令の規定する處に依れば、□一懲戒令の規定に依り、懲戒委員會の審査に付せられたるとき、□二刑事々件に關し、告訴、若くは告發せられたるとき、□三官制、又は定員の改正に依り、過員を生じたるとき、□四官廳事務の都合に依り必要なるとき等にして、休職の期間は、□一及び□二の場合に在りては、其事件が懲戒委員會、又は裁判所に繫屬中とし、□三及び□四の場合に在りては、滿三ケ年とす、此期間經過の後復職を命ぜられざるときは、當然官吏たるの地位を失ふべきものとし、休職期間中の俸給は、其三分の一を給せらるべし、休職、及び復職の命令は、勅任官に在りては、内閣總理大臣より請奏し、裁可を得て之を行ひ、奏任官に在りては、内閣總理大臣の裁決を經て、本屬長官之を命ず、官吏の非職なるものは、休職と其性質を同うし、唯其用語を異にするのみなり。(文官分限令參照)
求償權
(きうしやうけん)辨濟、其他自己の出捐に依りて、他人の債務の全部、又は一部を消滅せしめたるものが、主たる債務者、又は其前者に對して、償還を求むる權利を求償權と稱す、例へば連帶債務者の一人が、債務を辨濟し、其他自己の出捐を以て、共同の免責を得たる場合に、他の債務者に對し、其各自の負擔部分に就き、求償權を有するが如き、或は保證人が、主たる債務者の委托を受けて、保證を爲したる場合に於て、過失なくして債權者に辨濟すべき裁判言渡を受け、又は主たる債務者に代りて辨濟を爲し、其他自己の出捐を以て、債務を消滅せしむべき行爲をなしたるときは、其保證人は、主たる債務者に對して、求償權を有するが如き之なり、求償權は、通常事後に行ふことを得るものなれども、時としては、豫め之を行使することを得る場合なきにあらず、例へば保證債務の場合に於て、保證人が、主たる債務者の委托を受けて保證を爲したるときは、其保證人は、□一主たる債務者が、破産の宣告を受け、且つ債權者が其財團の配當に加入せざるとき、□二債務が、辨濟期にあるとき、□三債務の辨濟期が不確定にして、且つ其最長期をも確定すること能はざる場合に於て、保證契約締結後十年を經過したるとき、以上の事由ある時は、豫め求償權を行ふことを得るなり、又普通の場合に在りては、債務者は、求償權者に對し、辨濟其他免責ありたる日以後の法定利息、及び避くることを得ざりし費用、其他の損害をも賠償すべきものにして、若し保證人が、主たる債務者の委托を受けずして、保證をなしたる如き場合にありては、債務者は、保證人が、辨濟其他免責行爲をなしたる當時に、利益を受けたる限度に於て、賠償をなせば足る、主たる債務者の意思に反して、保證をなしたる場合に在りては、債務者は、現に利益を受くる限度に於て、賠償をなせば足り、即ち求償權の範圍は、債務者と、求償權者との關係に依りて、その廣狹の範圍を異にするものとす。(民四四二、四五九、四六〇、四六二條等參照)
求償者
求償者とは、求償權を行使する者を云ふ、民法第一〇一五條に「擔保の責に任ずる共同相續人中、償還をなす資力なき者あるときは、其償還すること能はざる部分は、求償者、及び他資力ある者、其相續分に應じて之を分擔す」とあるは、これ其用例なり。
休戰
(きうせん)休戰とは、交戰者双方の合意に依り、一時戰鬪行爲を停止することを云ひ、此合意を休戰條約と稱す、休戰條約と、戰鬪中止規約とは、共に戰鬪行爲を停止するを目的とするものなりと雖も、戰鬪中止規約は、其締結の目的、單に軍事に關する一時の必要に基くものなり、例へば負傷者を轉送し、戰死者を埋葬し、又は降服に就き上官の命令を受くるの時間を得る等の必要よりして、之を締結するものなれど、之に反し休戰條約は、其目的單に軍事上のみに存せずして、同時に政事上に關係ある點に於て、前者と異るものとす、又戰鬪中止規約は、一定の小區域を限りて戰鬪を停止し、且つ其停止期間も極めて短きものなり、然るに休戰條約は之に比すれば、通常其戰鬪停止時期も長く、其區域の如きも廣し、又戰鬪中止規約は、軍隊の司令官が、これを締結するを通例となすに反して、休戰條約は、軍隊の司令官が之を締結するにあり、或は特別の委任を受けたる外交官の之に當ることあり、而して休戰の效力廣く全軍に亘るものは、軍の司令官之を締結することなく、特に權限を委任せられたる全權委員のみ、之が締結の任に當るを常とす、又戰鬪中止規約は、其效力、交戰軍隊の行爲を覊束するの結果を生ずるに過ぎざれども、休戰條約は、交戰國の政府、其軍隊、及び臣民をも覊束するの結果を生ずるものとす、而して戰鬪中止規約は、常に軍事規約の一種なるに反して、休戰條約は、必ずしも之に屬せざるが如きを兩者の主なる相違の點とす、休戰は、兩交戰國の軍隊艦隊の全部に亘ることあり、之を一般休戰と稱す、或は單に其一部に限ることあり、之を一部休戰と稱す、一部休戰には、休戰の區域を限定するものあり、或は又特定の軍隊、艦隊に限りて休戰することあり、休戰は、其期間を條約に於て明定するを常とすと雖も、稀に之を明定せざることあり、若し期間を定めたるときは、其期間經過後に於て、更に之を延長すとの約定を爲すにあらざれば、直に戰鬪行爲の停止解除せられて、戰鬪の狀態に復するものとす、然れども休戰條約中に、特別の約欵を置きて、休戰期間盡くると雖も、豫め通知を爲すこと無くして、戰鬪を開始するべからざる旨を定めたる場合には、此通知を發せずして、戰鬪を開始する能はざるなり、之に反して、休戰條約に休戰の期間を明定せざる場合にして、戰鬪開始の豫告期間の約定あるときは、其所定の豫告期間前に、又此約定無きときは、相當の期間前に於て、戰鬪行爲を開始すべき旨を豫告したる後にあらざれば、直に戰鬪を開始すべからざるものとす、要するに休戰條約の一般の效果は、兩軍が戰鬪行爲を停止し、其現在の地位に止りて、敵を攻擊せざるにあり、其特別の効果に至りては、休戰條約中、明確に定むきべきのにして、若し明確の規定なき場合に、疑義を生じたるときは、國際公法上の理論に從ひて解釋すべきものとす、終りに休戰軍隊の一方が、條約に違反して、戰鬪行爲を行ひたる場合に於て、他の一方は、休戰條約の覊束を免れ、休戰條約の廢棄を宣言せずして、直に戰鬪行爲を開始することを得べきや否やの問題あり、之に就きては、學説未だ一定せず、最も穩當の説は、休戰條約違反の場合を分ちて、一方の軍隊が條約を無視して、他方を攻擊する場合と、然らざる場合とになし、前の場合に於ては、他方は違反者の攻擊を防禦し、進んで何等の方式をも踏まずして、直に攻擊を開始するを得べきも、此種の緊急なる場合を除きては、對手は戰鬪行爲を始むるに先ちて、休戰條約廢棄の意思を表示するを要し、尚且つ交戰者の信義上、條約廢棄の宣言と、戰鬪開始との間に、相當の期間を存し、違反軍隊をして、戰備を整ふるの猶豫を與へざるべからずとなすなり。
- 英
- Truce
- 独
- Waffenstillstand
- 仏
- Trève
舊典
(きうてん)舊法と云ふに同じく、甞て有效なりしも、現時は廢止に歸したる典令法則を云ふ、明治二一年一月三日勳章潤飾增設の詔勅に「朕曩に勳位を定め、佩章の制を設く、茲に復濶飾を增設し、新舊典に併行して、勳功ある者を賞旌し、以て獎勵の道を擴む云々」とあるは是其用例とす。
- 英
- Old code
- 独
- altes Gesetzbuch
- 仏
- Vieux code
記憶
(きおく)過去に於て經驗せる事柄を再び心意の上に現じ、その現ぜられたるものが、過去に於て經驗せられたるものなることを認識する作用なり、されば記憶作用には、その心的過程に三段を有す、即ち過去に於て經驗したる事柄を潜在的に留保する把住作用、其把住しあるものを、再び心意の對象として喚び起す復起作用、以上の二作用によりて、吾人の心意上に現はれたるものを、そは過去に於て確か經驗せしとのなりと認むる再認作用の三段之なり、かくして喚起せられたる想念は、最初經驗せる際の觀念其儘にして、些の變化なきやと云ふに然らず、吾人の記憶は、其追想に於て、必ず多少の變化は免れざるなり、而してその變化の度は各人等しからず、其人の體質、性質、或は時間の長短等によりて、益變化を呈し來るを常とす、人爲的に記憶を確實ならしめんとする記憶法の如き、未だ充分なる效果を奏する能はざるが如し。
- 英
- Memory
- 独
- Gedachtnisz, Erin-nerung
- 仏
- Mémoire
麾下
(きか)麾下とは、軍事上の用語にして、部下、又は配下と云ふに等しく、或特定人の指揮權の下にあるを云ふ、例へば聯合艦隊司令長官の麾下に屬すと云ふ如き、即ちこの意義に於て用ひられたるものとす、我法律の正文に求むれば、鎭守府條例第三條第二項に「司令長官は天皇に直隷し、麾下の軍艦團體を統卒し云々」、又其第四條に「司令長官は、麾下の軍紀風紀を統監す」とあるは、其用例なりとす。
- 英
- Follower
- 独
- Nachtreter
- 仏
- Seclateur
危害品
(きがいひん)危害品とは、火藥、硝石、硫黃の類、及び發火し易き製藥品、其他脂醬液、並に腐敗し易き性質のもの等にして、他物を損害すべき恐ある物品を云ふを普通とし、刑法に危害品と稱するは、其性質上、多數の身體、又は財産に危害を及ぼし易き物品を云ふなり、而して官許を得ずして危害品の製造所を創設したる者は、二十圓以上百圓以下罰金に處せらるべく、又官許を得て、其製造所を創設せるときと雖も、危害の豫防に關する規則に違反したる者は、上述の刑より一等を減じたる刑を受くべし、之等の罪に依りて、人を疾病死傷に致したる時は、過失殺傷の各本條に照し、重きに從ひて處斷せらるべきものとす。(刑二〇九條乃至二一一條)危害品船積規則は、火藥、硝石、硫黃等他物に危害を及ぼすべき諸種の危險なる貨物の船積に關し、其危險豫防の方法、其他の手續を定めたるものにして、警察上の取締に關する規則也、隨つて此規則に違反したるときは、處罰を受くることあるものとす。(明治六年二九二號布達)
- 英
- Dangerous goods
- 独
- Gefähr-liche Waren
- 仏
- Choses dangereuses
危害品船積規則
- 英
- Law of shipping of dangerous goods
- 独
- Schiffladungsgesetz der gefährlichen Waren
- 仏
- Loi de charger les choses dangereuses
規格
(きかく)規格とは、規則格式の義なり、陸軍士官學校條例第二二條に「試驗規格云々」と規定せられたるは、即ちこの意義に於て用ひられたるものとす、又時としては、單に規則、或は規定なる語と、同一の意義に使用せらるることあり、要するに憑據すべき準則の意を現はす語辭なるべし。(格例の部參照)
- 英
- Norm
- 独
- Norm
- 仏
- Règles
期間
(きかん)期間とは、一定の時期より他の一定の時期に至る限定時間にして、法律上の效力を生ずるものなり、即ち始期終期ある、時の繼續にして、其期間内に於て或法律行爲をなすべく、或は其滿了と同時に權利を發生し、若くは其消滅を來すものとす、例へば時效の如きは、期間の滿了に依りて、法律上の效力を生ずるものの一例なり、期間の計算法に就きては、法令に特別の規定あることあり、或は裁判上の命令を以て定むることあり、或は又法律行爲に於て、當事者が別段の定めをなすことあり、然れども、法令の規定、裁判上の命令、若くは法律行爲に別段の定なき場合には、民法總則編第五章に定めたる、一般の原則從ふべきものとす、民法の規定に依れば、□一時を以て期間を定めたる場合には、時の自然の標準に從ひて之を定むべきものとす、即ち五時間、若くは六時間と定めるたときは、一定の事實の生じて即時より五時間、若くは六時間を計算するものなり、□二日、週、月、又は年を以て、期間を定めたる場合には、期間の初日、即ち期間の始期の標準となるべき事實の發生したる日は、之を其期間に算入せずして、其翌日より計算すべきものとす、例へば一月一日に於て、本日より一日と定めたるときは、二日の午前零時より始りて、其日の午後十二時に至りて滿了すべく、又日曜日に於て、一週間と定めたるときは、月曜日の午前零時より始り、次の日曜日の午後十二時を以て滿了すべし、若し又一月一日に於て、一ケ月と定めたるときは、一月二日午前零時より始り、二月一日午後十二時に至りて滿了するものにして、一月一日に於て、一ケ年と定めたるときは、一月二日午前零時より始り、翌年一月一日午後十二時を以て滿了するものとす、されど其期間が、午前零時より始まる場合には、其日より起算すべきものなり、期間の末日が、大祭日、日曜日、其他の休日に當るときは、之等の日に取引をなさざる慣習ある場合に限り、其翌日を以て期間の滿了日とす、□三週、月、又は年を以て期間を定めたるときは、曆に依るべきものにして、週、月、又は年の始より起算せざるときは、其期間は最後の週、月、又は年に於て、其起算に應當する日の前日を以て滿了す、月、又年を以て、期間を定めたる場合に於て、最後の月に應當日なきときは、其月の末日を以て滿期日とす。(民一三八條乃至一四三條、應當日の部參照)
- 英
- Space of time
- 独
- Frist
- 仏
- Délai
起期
(きき)期間の起算點となるべき時期を起期と云ふ、我民事訴起法第一六四條に「裁判所、又は裁判長の定むる期間の進行は、期間を以て定めたる書類の送達を以て始り、又送達を要せざる場合に於ては、期間の言渡を以て始る、但し期間指定の際、これより遲き起期を以て定めたるときは、此限にあらず」とあるは、即ち是なり、普通の原則として、期間の起期は、民法の規定に從ふべきものとす、即ち時を以て期間を定めたる場合には、起算期は即時にして、日、週、月、又は年を以てしたる場合には、其翌日とし、曆に從ふ場合には、其日を起算期となすものとす。(民一三八條乃至一四三條)
- 英
- Commencement of the term
- 独
- Anfang
- 仏
- Commencement du terme
疑義
(ぎぎ)疑義とは、なほ疑問と云ふが如く、當該法律命令の解釋に就き、其意義の判然せざることを云ふなり、樞密院官制第六條第二號に「法律命令に關する、、、、疑義」とあるは、其用例なりとす。
- 英
- Question
- 独
- Frage
- 仏
- Ques-tion
棄却
(ききやく)棄却は、訴訟上の用語としては、訴訟關係人が、裁判所に對して爲したる申立を、其裁判所が調査の結果、許可せざる裁判を云ふ、即ち上訴にかかる事件、又は第一審の訴訟手續に於て申立てたる事項に對し、裁判所が其申立の適法なるや否や、又は理由ありや否やを調査し、若し之を不適法、又は理由なきものと認めたるときに於て、判决を以て之を許容せざる旨を言渡す棄棄却と云ふ、第一審の手續に於ける棄却の判决は、通常所謂中間判决なり、但し防訴の抗辯に對する棄却判决の如き、特に明文を以て、或條件の下に終局判决と看做されたるものは此限にあらず、之に反して、訴訟以外の場合に於ける用語としては、單に權利、又は其他の物の抛棄なる意義に使用することあり、例へば市制第三一條第八號に「權利の棄却をなすこと」とある如きは、其用例なりとす。(民訴二五九、四〇六、四二四條參照)
- 英
- Rejection
- 独
- Verwerfung
- 仏
- Rejet
歸化
(きくわ)歸化とは、人が、他國の臣民たる資格、即ち國籍を取得するの事實を云ふ、歸化は、之を分ちて法律上の歸化と、國權の特別の行動に依る歸化との二種となすことを得、所謂法律上の歸化とは、法律の規定上、當然國籍を取得するものにして、又國權の特別の行動に依る歸化とは、歸化を許容する各場合に就きて、國家が一々許否の判斷を爲すものなり、國權の特別の行動に依る歸化は、尚之を區別して、任意の歸化と、然らざる場合との二種に分つことを得べし、通常歸化と云ふ語は、之を狹義に解して、單に此任意の歸化のみを云ふなり、我國籍法に於ける歸化なる語も、亦任意の歸化を意味するものとす、狹義に於ける歸化は、個人の特別の志望に基き、國家の特別なる許可に依り、國籍を取得する事實を云ひ、歸化の許否は、通例行政上の處分を以てするものなれども、稀には立法機關(和蘭、白耳義の如き)又は裁判所(北米合衆國の如き)に於て、之を決する國あり、我國籍法に於ては、内務大臣の許可を得るにあらざれば、歸化することを得ざるものとす、歸化の條件としては、□一引續き五年以上日本に住所を有すること、□二滿二十年以上にして、本國法に依りて能力を有すること、□三品行方正なること、□四獨立の生計を營むに足るべき資産、又は技能あること、□五國籍を有せず、又は日本の國籍の取得に依りて、其國籍を失ふべきこと等を必要とす、然れども、い父、又は母の日本人たりし者、ろ妻の日本人たりし者、は日本に於て生れたる者、に引續き十年以上日本に居所を有する者等を、現に日本に住所を有するときは、引續き五年以上日本に住所を有せざるも、歸化することを得べし、最もい乃至ろに揭げたる者は、引續き三年以上日本に居所を有するにあらざれば、歸化を爲すことを得ざるなり、但しはに揭げたる者の中、父、又は母が日本に於て生れたる者なるときは、此限にあらず、又外國人の父、又は母が、日本人なる場合に於て、其外國人が、現に日本に住所を有するときは、前記□一、□二、及び□四の條件を具備せざるときと雖も、歸化を爲すことを得べし、又日本に特別の功勞ある外國人は、前記歸化條件に拘らず、内務大臣は、勅裁を經て、歸化を許可することを得、外國人の妻は、其夫と共にするにあらざれば、單獨にて歸化することを得ざるも、其夫が歸化したる場合には、妻の本國法に反對の規定なき限り、妻は當然我國籍を取得すべく、若し夫と共に我國籍を取得せざりし場合には、歸化の條件を具備せざるも、歸化を爲すことを得べし、又日本の國籍を取得する者の子が、其本國籍法に依りて、未成年者なるときは、子の本國法に反對の規定なき場合に限り、其父、又は母と共に、日本の國籍を取得するものとす、歸化は之を官報に揭載し、一般に告示するものにして、其告示ありたる後にあらざれば、之を以て善意の第三者に對抗するを得ず、歸化を爲したる者は、歸化の許可を受けたる日より十日内に、其住所地の戸籍吏に、内務大臣の許可書の謄本を添へて、歸化の旨を屆出づる事を要す、其屆書には、□一歸化人の氏名、出生の年月日、職業、住所、及び原國籍、□二父母の氏名、出生の年月日、職業、及び國籍、□三歸化人と共に、日本の國籍を取得したる者あるときは、其氏名、出生の年月日、職業、及び其者と歸化人との續抦、□四許可の年月日等の諸件を具記するを要し、妻、又は子が歸化人と共に、日本の國籍を取得せざるときは、屆書に其事由を記載することを要す、(國籍法七條乃至一五條、戸籍法一五九條)
- 英
- Naturalization
- 独
- Naturalisation
- 仏
- Naturalisation
歸化人
歸化人とは、歸化に依りて、國籍を取得したる自然人を云ふ、歸化人、歸化人の子にして、日本の國籍を取得したる者、及び日本人の養子、又は入夫と爲りたる者は、國籍取得の時より十年を經過し、且つ内務大臣より勅裁を經て、之が解除の命を得るまでは、□一國務大臣、□二樞密院の議長、副議長、又は顧問官、□三宮内勅任官、□四特命全權公使、□五陸海軍の將官、□六大審院長、會計檢査院長、又は行政裁判所長官、□七帝國議會の議員等に任ぜらるる權利を有する資格無きものとす、ただ例外として、日本に特別の功勞ある外國人にして、一般歸化條件の規定に拘らず、歸化を許されたる者に限り、國籍取得の時より五年を經過するときは、内務大臣より勅裁を經て、之を解除することあるべし。(國籍法一六條及一七條)
- 英
- Naturalized subject
- 独
- Nation-alisierte
- 仏
- Naturalisé
議會
(ぎくわい)普通の意義に於ては、單に合議制の機關にして、或事項の會議をなす所を云ふ、即ち衆智を集めて、或事項の審議討論をなす機關なりとす、帝國議會、府縣會、郡會、市町村會等この例なり、帝國議會は、統治機關の一にして、貴族院、及び衆議院の二局部より成立す、議會は、國政の凡ての關係に參與するの權限を有するなり、蓋し立法の範圍は、國家作用の全般に渉るを以て、實質上に於ては、之を限界する能はず、然れども議會は、内に向ひて、國家の政務に參與するに止まり、外部に對して、政務を執行するの權限を有することなし、議會が、國家の行爲に參與する形式に依りて、其權限を區別するときは、□一法律、及び豫算に協賛すること、即ち法律、及び豫算の成立するには、議會の協贊を必要とす、協贊なきときは法律、及び豫算は、成立せざるなり、協贊とは協同贊成するの義にして、議會が、政府の提出にかかる法律案、及び豫算案に同意するは即ち協贊にして、又議會自ら法律案を提出して、之を議決するも協贊なり、□二緊急勅令に承諾を與へること協贊も承諾も、共に議會が、國家の政務に關して、其意思を發表するものなれども、協贊は、事前に必要なる意思の發表にして、承諾は、事後に與ふるものたるの差あり、また協贊の有無は、法律、及び豫算の成否に關するも、承諾の有無は、緊急勅令の有效無效に關することなし、これ協贊と承諾との異る點なりごす、□三質問報告の請求、即ち議會は、政府に對して、諸般の質問を發し、又報告を求むることを得るものにして、政府は、之に對して答辯をなし、報告をなすの義務あるものとす、之議會が政府を監督するの一方法なり、□四請願を受くること、即ち議會は、人民の請願を受け、其採用すべきものなることを議決したるときは、其請願書を政府に送付することを得るものとす、然れども其請願の採否は、固より政府の權限に屬すべし、□五上奏を爲すこと、即ち議會は何事に關せず、上奏を爲すことを得るなり、此上奏に二種あり、一は儀式上の上奏にして、例へば祝賀、弔傷の表辭を上り、又は詔勅に對して、奉答文を奉る場合の如き是なり、他は政治に關する上奏にして、例へば政府の行動に異議を唱へ、又は國務大臣の進退に關することを奏聞するの類これなり、天皇は此上奏を受領するの義務ありや否やに就きては議論あり、或學者は、苟も憲法が、議會に上奏なる特別の權能を興へたる以上は、天皇も亦之に對し、相當の義務なかるべからず、故に天皇は、上奏あれば必ず之を受領せざるべからずと論ぜり、何れにするも上奏に係る意見を採用すると否とは、固より天皇の隨意なりど云ふべし、□六建議をなすこと、即ち議會は、諸般の政務に關して、政府に建議することを得、建議と上奏とは、共に議會の意見を發表するものなるも、上奏は天皇に提出するものなるに反し、建議は政府に提出するなり、其他建議は、將來に向つて希望を述ぶるものなるに反して、上奏は、槪して既往の得失を論白するものなり、□七訴訟を提起すること、即ち明治二二年法律第二八號第一條に依り、議會に對して、公然誹毀、又は侮辱を加へたるものあるときは、議會は、刑事の訴訟を提起することを得べし、以上は、議會の外部に對する權限にして、其内部に對する權限は、□一議員の資格檢査をなすこと、即ち貴族院は、其議員の資格を檢査し、又選擧に關する訴訟を判決するなり、衆議院も亦其議員の資格を審査し、且つ之を議決することを得るも、裁判所に於て、當選訴訟の手續をなしたるものに關しては、衆議院は之を審査すること能はざるものなり、□二議院内部の整理に必要なる諸規則を定むること、□三議院内部の警察、及び議員の懲罰を行ふこと、即ち各議院の開會中にありては、内部の警察は、議院法、及び各議院の定むる規則に從ひて、議長之を行ふものとす、□四議院内部の組織を定むること、即ち議員を數部に分ち、每部に一名の部長を部員中より〓選する如き、又議案、及び其他の事件を審査せしむるがために、各種の委員を設くるが如き是なり、委員には、全院委員、常任委員、及び特別委員の三種あり、全院委員は、議員の全員を委員となすものを云ひ、常任委員とは、豫算委員、請願委員、懲罰委員を云ふ、特別委員は、特別の事件を審査するために、臨時設くるものにして、貴族院には、此外資格審査委員なるものあり、議長、副議長は貴族院に在りては、其議員中より勅任するものにして、衆議員にありては、其議員中より各三名の候補者を選擧し、其中より勅任せらるるものとす、其他兩院の書記官長以下の任命は、他の官吏と異る事なし、議會は、每年一回之を召集すべきものにして、之を召集するは天皇の大權に屬す、每年召集するを通常議會と云ひ、臨時緊急の必要ある場合に召集するを臨時議會と云ふ、議會の開期は、通常三ケ月にして、議會の開會、閉會、及び停會は、共に天皇の勅命に依るものとす、唯停會は、政府も十五日以内の期間に於て、之を命ずることを得べし、解散は、衆議院にのみ行ふものにして、勅命によるものなり、その效力は、議員の任期を解くものなるを以て、解散の勅命あるご同時に、議員は其資格を失ふ者とす、解散したるときは、勅命を以て新に議員を選擧せしめ、解散後五ケ月以内に之を召集すべきものとして、其間貴族院は、當然停會するものとす、休會は、祝賀、祭日、其他の場合に、議會自ら其議事を中止するもの也、休會と停會との異る點は、停會は、法律上其作用を爲すを得ざるものなるに反し、休會は、事實上、其作用を中止するものにして、又停會は、天皇又は政府の之を命するものなるも、休會は、議會自ら之を爲すものとす、議會の會議は、公開するを原則とすと雖も、政府の要求、又はその院の決議により、必要の場合には、秘密會と爲すこと得、公開の場合は、公衆之を傍聽することを得べし。(憲法、議院法、及び貴族院令參照)
- 英
- Parliament; Diet
- 独
- Reichstag
- 仏
- Parlement
機會均等
(きくわいきんとう)機會均等とは、或一國に對し、利害關係を有する一國、又は數國が、商工業上の或利益權利を得る場合には、他の利害關係を有する列國も、亦同時に或利權を獲得するを得るを云ふ、即ち或一國に對し、利害關係を有する列國は、何れの一國も、獨り商工業上、優越の利權を占むることを許さざる主義を云ふものにして、支那問題より起りたる外交上の用語也、日英改正條約の前文に、清國の獨立、及び領土保全、並に清國に於ける列國の商工業に對する機會均等主義を確實にし、清國に於ける列國の共通利益を維持する事、又其第五條に(前略)大不列顚國は、日本國が、該利益を擁護增進せんがために、正當且つ必要と認むる指導、監理、及び保護を韓國に於て執るの措置を承認す、但し該措置は、常に列國の商工業に對する機會均等主義に反せざることを要す」云々と是其用例なり。
- 英
- Equal opportunity
- 独
- gleiche Gelegenheit
- 仏
- Opportunité égale
機關
(きくわん)機關とは、他人のために、他人の事務を掌理する目的の範圍内に於て存する人、又は人の團體を云ふ、機關は、自ら權利の主體にあらずして、權利の主體のために存在する設備に過ぎず、機關を組織する人自身は、固より人格を有すれども、機關として獨立の人格を有するものにあらざるを以て、權利義務を有するを得ざるは勿論のこととす、即ち機關は、自己固有の目的のために存在するにあらずして、他人の目的のために存在し、且つ動作するものなり、機關は、其本人のために掌理すべき事務に就き、一定の權限なかるべからず、而して機關は、其與へられたる權限内に於てのみ活動し得るものにして、其正當の權限内に於ける機關の行爲は、外に對し、本人の行爲たる效力を有すべく、但し其權限を踰越したる行爲は、其機關を組織する個人の行爲に外ならず、即ち機關の行爲と認むることを得ずして、外に對し、本人の行爲たる效力を有することなし、此權限は、機關の性質により、或は法令に依りて定るものあり、或は法律行爲を以て定むるものあり、又機關には、外に對し、本人を代表して其意思を表示し得る權限を有するものあり、之を代表機關、又は執行機關と云ふ、或は唯本人のために其意思を決定し、若くは單に利害を判斷して、本人を輔佐するに止まり、外に對し、毫も本人を代表する動作を爲し得る權限を有せざるものあり、之を顧問機關、又は議決機關と云ふ、通常機關を大別して二種となす、即ち國家機關、及び私人機關之なり、國家機關とは、政府、又は議會の如き之に屬す、私人機關とは、私法人の理事、其他の役員の如きは、之に屬すべし、茲に注意すべきは、機關の主體たる本人は、自然人たることあるべく、また法人たることあるべきも、機關は、法人には缺くべからざる要素をなすものにして、法人に機關なければ、其意思を決定發表するの手段なし、意思の働なければ法人の存在なし、故に法人あれば、必ず其機關あり、機關なければ、又法人無しと云ふことを得べし、從ひて法人は、其意思を決定する機關、及び其意思を執行する機關の二個を具備するを通例とす、而して機關を組織する人の數人よりなるものを合議制、又は合議體の機關と稱し、其一人よりなるものを單獨制、又は單獨機關と稱す、以上所説を實際の觀念よりして總合すれば、□一機關は總べて物質と勢力との法則によりて、構成せられたる運動裝置にして、動力を加ふれば、全く自動的に働くもの也、道具は之と異り、全然他動的にして、鋏、鋸、鋤、刀の如く、一々人力を俟たざるべからず、器具は、唯物を容るるに用ふるものにして、棚、箱、鞄、椀、鍋の如きもの是也、政治法律に於て、機關とは、政治の目的、或は立法の精神を貫徹する爲めに設けられたる國家の裝置にして、行政機關(官廳、及び自治團體)立法機關(議會)司法機關(大審院、控訴訟院、裁判所)等の如きもの之なり、或は警察、及び監獄を司法上の執行機關と稱し、政府、政黨、若くは或團體が、其主張を發表する爲めに設けたる新聞紙を、機關新聞と稱する事あり、哲學上の機械論とは、世界一切の事物は、唯盲聾的の作用をなすのみ、唯機械的に生起せらるるのみとなし、目的論に反對の見解を有する學説なり。(國家の機關の部參照)
- 英
- Organ; mechanical
- 独
- Organ; mechanisch
- 仏
- Organe; méca-nique
議決
(ぎけつ)多數人の合議に依りて、或る事項に對する意思を決定することを議決と云ふ、通常合議體の機關が、其意思を決定するには、議決に依るものとす、議決をなす方法には種々あり、即ち、□一其會議に出席したる者の過半數の同意あるを要すとなすもの、或は其三分の二以上の同意あるを要すとなすもの、或は全員の同意あるを要すとなすものあり、□二出席せると否とに拘らず、其合議に與る資格ある者の過半數の同意、或は其三分の二以上の同意、或は其全員の同意あるを要すとなすものあり、過半數の同意を要すべき方法に依りたる場合に於ては、可否の意見の同數なること無きにあらず、斯かる場合に、其採否の決定の議長を意見に一任するを通例となすも、若し議長無く、又は其他の方法に於て、採決の方法を定めざる場合には、其議事は成立せざるものとす、我帝國議會の議事は、出席議員過半數の同意を以て之を決定し、若し可否の意見の同數なる場合には、議長の採決に任ぜられたり、次に議決なる語は、又合議の結果を指すの意味に使用せらるることあり、即ち議院法第五十四條に「乙議院に於て、甲議院の議決に同意し云々」とある是其用例なりとす。(憲四四條)
- 英
- Resolution
- 独
- Entschlusz
- 仏
- Résolution
已決監
(きけつかん)已決監は、陸軍監獄の一種にして、陸軍々法會議に於て、禁錮、拘留の刑に處せられたるもの、及び罰金、科料を禁錮、拘留に換へたるものを拘禁し、並に集治監、及び地方監獄、若くは假留監に送附すべきものを一時留置する處なり、已決監は、軍法會議所在の地に設置し、陸軍大臣監督の下に、衛戍司令官、又は屯田兵司令官の管理に屬するなり。(陸軍監獄條例二條乃至四條)
- 英
- Jail (where condemned criminals are confined)
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Geôle(où les condamnés sout mis)
議決議關
(ぎけつきくわん)多數人の合議に依りて、或事項を議決する議關を云ふ、議決機關は、其主體たる者より委任せられたる事項を議決するの能力を有するに止り、議決以外の働をなすの權限を有することなし、隨つて其議決したる事項を實際に執行するは、之を其主體たる者、若くは他の執行機關の行動に俟つべきものごす、法人の如き理想上の人格に在りては、全く意思能力を欠缺するものなるを以て、常に必ず此種の機關に依りて、其意思を議定せざるべらざるを以て、通常法人は、議決機關、及び執行機關の二者を具備するものとす、我制度上に於ける議決機關の重なるものは、例へば帝國議會の如き、或は府縣會、郡會、市町村會の如き何れとも國、又は府、縣、郡、市、町、村等の法人の議決機關なりとす。(議決及び機關參照)
- 英
- Organ of resolution
- 独
- Ab-stimmungsorgan
- 仏
- Organe de résolu-tion
議決權
(ぎけつけん)議決機關の會議、又は多數人の合議に參與して、其議事の表決に加はるるの權利、又は權限を云ふなり、隨つて斯かる合議に參與して、其意見を陳述するの權利を有するも、其表決の數に加はるることを得ざる者は、議決權を有せず、例へば我帝國議會に於て内閣各大臣、及び政府委員は、議場に出でて、其意見を演逃し、或は各種の報告をなし、又は議員の質問に對して、答辯をなすことを得るも、議決權を有せざるを以て、其議事の表決に加はることを得ざるが如し。(議院法參照〕
- 英
- Right of voting
- 独
- Abstim-mungsrecht
- 仏
- Droit de voter
既決囚
(きけつしう)裁判の結果、有罪の判決確定したる者を既決囚、又は既決囚徒と云ひ、未決囚、又は未決囚徒に對する語とす、既決囚、又は既決囚徒たるには、必ず監獄内に拘禁せらるべき者に限るべし、隨つて有罪の裁判確定したる者と雖も、單に罰金、又は科料の刑に處せられたるのみにて、亳も身體の拘束を受けざる者は、之を既決囚徒と云ふことを得ざるものとす、既決の囚徒にして逃走したる者は、一月以上六月以下の重禁錮に處せらるべく、逃走の爲め獄舍、獄具を毀壞し、又は暴行脅迫等をなして、此罪を犯したるときは、三月以上三年以下の重禁錮に處せらるべし、若し三人以上通謀して逃走したるときは、上述各場合の刑に照して、一等を加へらるるものとす、又逃走の罪は、刑期限内、再び逃走したる場合を除き、前に犯したる罪に對して、再犯の例に照さるる事なし、猶此種の犯罪は、輕罪の未遂犯にかかる時と雖も、其刑を免ぜらるることなし。(刑九七乃至一〇二條)
- 英
- Convict
- 独
- Verbrecher
- 仏
- Condamné
既決囚徒
- 英
- Convict
- 独
- Verbrecher
- 仏
- Condamné
棄權
(きけん)棄權とは、權利を抛棄することを云ふ、權利には、私權、及び公權の二種ありて、私權は、其權利者の任意に處分し得るを原則となすと雖も、時としては永小作權の如く、其抛棄の爲に、他人に損害を及ぼす虞ある場合には、法律の規定に從ふにあらざれば、之を抛棄を許さざるものあり、之に反して公權は、之を享有すると同時に、行使すべき義務の伴ふ場合多きを以て、告訴權の如く、之が行使を權利者の自由に任ずるものの外、其行使義務の伴隨する權利は、抛棄する事を得ざるべし、尤も法律に於て、特例を定めたるものは此限にあらず。
- 英
- Release
- 独
- Entlassung
- 仏
- Abandon
期限
(きげん)期限とは、將來必ず到來すべきものにして、法律行爲の效力の實行、又は其消滅に繫るべき事實を云ふ、隨つて或法律行爲に附したる事實の期限たるには、必ず未來に屬する事實なる事、其事實の到來の期日は確定せざるも、必ず將來到來なすべきものなること、及び法律行爲の實行、即ち履行、又は其消滅に繫るべき事實なることの三要件を具備せざるべからず、期限は、時の觀念より云ふときは、時期を指すものに外ならざるべきも、期間と異りて、時の繼續を意味するものにあらざる也、期限には、到來すべき時期の豫め確定せるものあり、例へば來月何日とか、又は何年何月何日と云ふの類之なり、これを確定期限と云ふ、又豫め到來すべき時期の不確定なるものあり、例へば何某の死亡の時と云ふが如く、何某の死すべき時期は、必ず到來すべきものなるも、其時期は、果して幾年の後なるや、豫め之を知ることを得ざるが如し、これを不確定期限と云ふ、また期限には、始期と、終期との二種類あり、始期は、法律行爲の效力の實行を始むる時期にして、條件に對して云ふときは、即ち停止條件に比すべく、隨つて始期を附したる法律行爲の履行は、其期限の到來するまで、之を請求することを得ざる也、次に終期は、法律行爲の效力の消滅する時期にして、即ち之を解除條件に比すべく、隨つて終期を附したる法律行爲の效力は、其期限の到來したる時に於て、消滅するものなり、或る債務關係に期限を附したるときは、法律は、之を債務者の利益の爲に定めたるものと推定す、尤も債務者は、相手方の利益を害せざる限り、期限の利益を抛棄するを得べし、例へば利息附貸借の場合に在りては、其返濟期限は、債務者の利益の爲めに定めたるものと推定せらるるが故に、債務者に於て、其利益を抛棄して、期限の到來前に於て、之を返濟するは差支なきが如し、されど、若し債務者に於て、貸借の期限中、利息を受取り得るときは、返濟ある場合に、剩餘期間内利息を受取る利益を失ふが故に、債務者は、返濟の時より、其期限に至る間の利息を支拂ふにあらざれば、任意に期限の利益を抛棄して、期限前に返濟を爲す能はざるなり、唯債權者が、期限前の返濟を承諾したるときは、債權者に於て、期限の利益を抛棄したるものと認むべきは勿論なり、以上の如く債務關係に於ては、法律に依り、期限は債務者の利益のために定めたるものとの推定を受くるを以て、債務者は、期限の利益を主張するの權利を有すれども、債務者が、破産の宣告を受けたるとき、又は債務者が、擔保を毀滅し、或は之を減少したるとき、及び債務者が擔保を供する義務を負ふ場合に於て、之を供せざるときの如きは、債權者に對する信用の基礎を滅却したるものなるを以て、法律に依り、期限の利益を主張することを得ざるものと定められたり、終に、期限と條件とは、其外形に於て、往々酷似することあるを以て、或法律行爲に附したる事項が、果して條件なるや期限なるや、疑はしき場合なきにあらず、斯かる場合には、當事者の意思を考察して、事實の認定をなさざるべからざるものなり、故に各場合に當りて決定するの外なし。(民一三五條乃至一三七條)
- 英
- Term
- 独
- Termin
- 仏
- Terme
危險負請會社
(きけんうけおひくわいしや)危險負請會社とは、舊法時代に於ける保險業、又は保險に類したる營業をなす會社を呼びたる語にして、現今の保險會社なる語に該當するなり、其用例は、明治六年第九二號を以て布告せる、危害品船積法則の規定にあり。(同則參照)
貴號
(きごう)貴號とは、廣く榮譽の表章たるべき稱號を云ふ、舊刑法三一條第一號に「貴號」とあるは其用例にして、公侯伯子男爵等の稱號の如く、國家より受領したるものを指し、又學位の如き一種の稱號も、之を貴號と云ふことを得べし、されど學位は、特に文部大臣より褫奪せらるるにあらざれば、刑罰宣告の結果として、當然剝奪せらるることなかるべし。
- 英
- Honorary title
- 独
- Ehrentitel
- 仏
- Titre honoraire
徽號
(きごう)徽號とは、標章記號の義にして、例へば紋章の如きこれ也、明治一四年一二月第六三號布告に「褒章は本人に限り終身之を佩用し、及び徽號となすを得」とあるは、是其用例なりとす。
- 英
- Sign
- 独
- Zeichnung
- 仏
- Signe
記號
(きごう)記號は、人の思想を代表する標章符號と云ふ義にして、又文字を以てしたるものに限らず、或るものは、形象を以てしたるものをもなほ記號と云ひ得べし、要するに通俗謂ふ所の符牒の義なりとす、而して記號は必ずしも書面に記し、又は印したるものと限らず、其他の物に現はしたるものをも記號と云ひ得べく、官の記號、印章を僞造し、又は盜用したる者は、刑法に於て官印僞造の罪に問はるべし。(刑一六八條一項及二項參照)
- 英
- Mark
- 独
- Marke
- 仏
- Marque
寄藏
(きざう)寄藏とは、他人より寄托を受けたる或る物件を藏匿するの所爲を云ふなり、寄藏は左の要件を具備するときは、刑法上の犯罪として罰せらるべきものとす、□一受托者、即ち寄托を受けたる者が、其不正の所爲なることを知ること、單に他人より或物件の寄托を受けて、秘密に之を所藏するが如きは、所謂寄藏にあらず、□二寄托に係かる物件は、必ずしも有體動産に限らずして、無記名債券の如きも、寄藏の目的物となる事を得べし、但し不動産の如き、到底秘密に之を藏匿すること能はざる物は、此犯罪の目的物たることを得ざるなり、□三強竊盜の臟物なることを知りて寄藏したる者は、一ケ月以上三年以下の重禁錮に處し、三圓以上三十圓以下の罸金を附加せられ、猶六ケ月以上二年以下の監視を付せられ、詐欺取罪、其他の犯罪に關したる物件なることを知りて之を寄藏したる者は、十一日以上一年以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加せらるべし、又古社寺保存法に依り、特別保護にかかる國寶たる物件なることを知りて之を寄藏したる者は、同法により、六ケ月以上三年以下の重禁錮に處し、五圓以上五十圓以下の罰金を附加せらるるものなり。(刑二五六條及二五七條、
及び古社寺保存法三條)
- 英
- Receiving objects stolen or embez-zled
- 独
- Empfang des gestohlenen Dinges
- 仏
- Recevoir les choses volées ou dissipées
僞造官印行使罪
(ぎざうくわんいんかうしざい)僞造官印行使罪とは、僞造にかかる官印を行使するの罪にして、官印とは、啻に官廳の印、又は官吏の職務に關する印のみならず、天皇の御印たる御璽、及び國の印たる國璽をも包含す、次に行使は、普通印の用法に從ひて行用するを指し、果して如何なる場合が行使なるかは、各場合に於て決すべき事實問題なり、例へば辭令書を作成し、その用法に從ひて夫れ夫れの官印を押捺するが如き、又書籍の檢閲を經ずして、官署の檢印僞造物を押捺するが如きは此一例なり、之に對する刑罰は、其行使したる僞印の種類に依りて、其輕重を異にす。(僞印行使罪參照)
- 英
- Crime of counterfeiting and using offlcial seal
- 独
- Verbrechen der Officiellsiegelfälschung und Ausübung
- 仏
- Infraction de contrefaire et démployer le sceau officiel
僞造罪
(ぎざうざい)廣く僞造罪と云ふときは、□一貨幣を僞造する罪、□二官印を僞造する罪、□三官の文書を僞造する罪、□四私印私書を僞造する罪、□五免狀鑑札、及び疾病證書を僞造する罪等を包含すべし、即ち社會の信用を害する犯罪の一種にして、刑法第二編第一六章乃至第一九節に規定せるものなり、之等各種の犯罪の性質は、各題下の説明に就きて參照すべし。
- 英
- Crime of forgery
- 独
- Fäls-chungsverbrechen
- 仏
- Infraction de forge
僞作
(ぎさく)僞作なる語の法律上の意義は、著作權法に依れば、僞作とは他人の著作權を侵害するの所爲を意味し、即ち權利、又は其承諾なくして、他人の著作にかかる文書、演述、圖画、彫刻、摸型、寫眞、其他文藝、學術若くは美術等の著作物をし複製て之を發行し、又は之に依りて利益を圖る等、法律に依りて保護せられたる著作者の權利を、侵害するの所爲を云ふなり、又同法に依れば、我國に於て發布頒賣するの目的を以て、僞作物を輸入したる者、及び練習用の爲に著作したる問題の解答書を發行したる者は、共に僞作と看做さるるべし。
- 英
- Counterfeit
- 独
- Nachahmung
- 仏
- Contrefaçon
僞作者
僞作者とは、他人の著作權を侵害するの所爲をなしたる者、及び著作權法の規定によりて、著作者と看做されたる者を云ふ、僞作者にして、惡意、即ち他人の著作權を侵害するの所爲なることを知りて僞作をなしたる者は、被害者の告訴に依り、五十圓以上五百圓以下の罰金に處せらるべく、僞作物、及び專ら僞作の用に供したる器械、器具は之を沒收せられ、猶損害ある場合には、之が賠償の責に任ぜざるべからず、之に反して僞作者が、善意にして且つ過失なく、僞作を爲して利益を受け、之がために他人に損害を及したるときは、其利益の存する限度に於て、之を被害者に返還する義務を負ぶに過ぎざるものとす。
- 英
- Counterfeiter
- 独
- Verfälscher
- 仏
- Contrefacteur
僞作物
僞作物とは、他人の著作權を侵害して作りたる著作物を云ふ、著作權法は消極的に僞作物と看做さざるものを列擧せり、即ち同法第三〇條に□一發行するの意思なく、且つ器械的又は化學的方法に依らずして複製したるもの、□二自己の著作物中に正當の範圍内に於て節鋒引用したるもの、□三普通教育上の修身書、及び讀本の目的に供する爲に、正當の範圍内に於て拔翠蒐輯したるもの、□四文藝學術の著作物の文句を自己の著作したる脚本に挿入し、又は樂譜に充用したるもの、□五文藝學術の著作物を説明するの材料として、美術上の著作物を挿入し、又は美術上の著作物を説明するの材料として、文藝學術の著作物を挿入したるもの、□六圖画を彫刻物摸型に依りて作り、又は彫刻物摸型を圖画に作りたるもの等は、既に他人の發行したる著作物の複製にかかるも、之を僞作物とは看做さるるものとせり、故にこの以外の方法によりて、他人の著作權を侵害したるものは、之を僞作物と云ふべきなり。(著作權法第二章第三章)
- 英
- Counterfeit work
- 独
- Ver-fälschtes Werk
- 仏
- Oeuvre contrefaite
僞璽
(ぎじ)僞璽とは、御璽、國璽を僞造したるものを云ふ、御璽とは天皇の御印を云ひ、國璽とは國の印を云ふものにして、共に内大臣の尚藏する處なり、御璽、國璽を僞造したる者、及び僞璽を使用したる者は、無期徒刑に處せらるるものとす。(刑一五四條、僞印の部參照)
- 英
- Counterfeit seal of emperor
- 独
- falsches Kaiserssiegel
- 仏
- Sceau de l'Empereur contrefait
議事
(ぎじ)議事なる語には、廣狹兩樣の意義あり、即ち廣義に於ては、多數人の合議、又は一般の議決機關の會議に於ける議案の審議討論を指し、狹義に於ては、帝國議會の議場に於て、議員が議題たる問題に對して、審議討論をなすこと、其他法定の議會、例へば市町村會、郡會府縣會等の審議討論をなすことを云ふなり。(憲四六四七條參照)
- 英
- Debate
- 独
- Debatte
- 仏
- Débat
議事規則
(ぎじきそく)議事規則とは、總べて議事に關する規定を云ふ、凡そ合議制の機關が、其議事を開くに當り、必要なる手續、順序、其他議場の秩序維持等に關して定めたる規定也、例へば議院法第八十七條に「會議中議員此法律、若くは議事規則に違ひ云々」とあるが如き其用例なりとす。
- 英
- Rules of debate
- 独
- Debatte-regel
- 仏
- Règles de débat
氣質
(きしつ)人の刺戟に對する感情の強弱遲速の原因をなし、意思的固執力の強弱を固有的に決する本來性具の心質をいふ、氣質の如何なるものかに關しては、古來學者の苦心研究する所なるも、未だ一定の説明を見ず、然れども氣質は、其本性に於て、遺傳的傾向著しき特殊性にして、體質の關係より起る性具の心質なることは、一般に學者の認むる所なり、然れども氣質は、其本來の素性、生得的、又は遺傳的のもの也とするも、其後の境遇と、教育とに依りて、大に變化せらるるは事實なり、氣質に關する見解中、今日最も行はるるは、瑞西の生理學者「ハレル」の説にして、即ち氣質は其特質よりして四種に區別せらる、一、多血質、二、神經質、三、膽汁質、四、粘液質これなり、而して實際は、唯その人の最も特殊なる處を取りて名けたるものに過ぎざるを以て、一人にして之等の氣質の二以上を併有するを通例とす、更にこの四種の氣質の特殊的性質を述ぶれば、多血質は、諸般の刺戟に感應し易く反動急なれども、其興奮力弱く、沈靜耐久の心度なし、神經質のものは、常に感情の支配の下にありて、諸般の刺戟に感應すること強しと雖、快濶なる心胸に乏しきが爲め、沈思に陷り固陋に流れ易く、其感情は常に憂欝にして、厭世的に趨り易し、膽汁質は、諸般の刺戟に感應する事鈍く、反動速なからず、沈著にして思慮に富み、感情の冷熱常ならざる如きことなく、能く困難に堪ふと雖も、稍もすれば傲慢粗暴に陷り易し、粘液質は、諸般の刺激に感應すること遲弱にして反動鈍く、且つ活氣なく熱心に乏しく、忍耐力強く果斷に缺くる處あり、唯其長所は、凡て極端に趨らざるにあり、又ヴントは、情緖の強度と速度の關係より、之を四種に區別し、その弱にして速力なるものを多血質とし、強にして速かなるものを膽汁質とし、弱にして遲きものを粘液質とし、強にして遲きものを憂欝質とせり。
- 英
- Temperament
- 独
- Temperament
- 仏
- Tempérament
期日
(きじつ)期日とは、或行爲をなすべく定められたる時日を云ふ、民事訴訟法に所謂口頭辯論期日、或は證據調の期日、判決言渡の期日、競賣期日、競落期日、及び配當期日等と稱するが如きは、皆此意義に於て用ひられたるものとす。
- 英
- Hearing time
- 独
- Verhörstag
- 仏
- Jour de l'audience
議事日程
(ぎじにつてい)數日繼續すべき或會議に於て、豫め各個の日に於ける議案の分配、其他議題の順序を定めたるものを云ふ、議事日程は、通常議長之を定めて各議院に報告するものとす、例へば議院法第二六條に、「各議院の議長は、議事日程を定めて、之を議院に報告す」とあるが如き其用例なり。
- 英
- Orders of the day
- 独
- Debatte-tagesordnung
- 仏
- Ordres de débat
擬人
(ぎじん)人以外のものに、人類性又は人類型を附異し、人同樣にそのものを思ひ做すことを謂ふ、總べて其本質の有機たり、無機たり、有形たり、無形たり、死物たり、生物たり、自然物たり、人爲物たるに關せず、之等のものの動的、又靜的風情を其境其樣に於て、恰も吾人人間の擧止なるが如く觀ずるをいふ、例令ば「柳は招き花は笑ふ」とか、又は「風怒り雨狂ふ」と云ふ如く、恰も之等に人間の手足を有し、人間の心意を有する如く思ひ做す作用、これ即ち擬人なり、元來擬人は、人の情に基くものなれば、冷然人と人以外のものとを峻別して思念するものには、擬人的感想浮ばざれども、其性能性觀に富めるものには、殆どこの感想を有せざるものなし、未だ自然に對し何等の科學的知識を有せざりし古代純樸の民が、自然を解するに、總べて擬人的感想に依り、今日物質的勢力の作用として解釋せらるる一切の現象は、彼等に取りては有情の有主的作用として、敬尊せられたるなり、今日に於ても藝術上以外に、人類に深く擬人的感想を與ふるものは、宗教的觀念にして、古來神に對する擬人的信仰は、殆ど宗教の本質的要素をなし居るなり。
- 英
- Personify
- 独
- Personificieren
- 仏
- Personnifier
擬人法
擬人法とは、修辭學上の用語にして、美文製作の上に於て、其情の高まれる結果、非情物を人同樣なる有情物の如くいひ做す、一種の文飾法とす。
僞證
(ぎしやう)證人、鑑定人、又は通事として、裁判所に呼出されたる者が、裁判所の訊問に對し、詐欺の陳述をなすの所爲を僞證と云ふ、僞證をなしたる者は、僞證罪として刑法に問はるるものなり、此犯罪の主體たる者は、刑事、民事、商事、又は行政の裁判に於て、證人、鑑定人、又は通事として呼出を受けたる者に限るべく、之等の者の所爲、即ち陳述が、僞證罪を構成するには、故意に詐僞の陳述をなすに在り、故に、□一詐僞の陳述を知りつつ之をなすに於ては、即ち故意あるものと認め得べく、從つて原被一方を利し、又は一方を害せんがための目的に出でたると否なとは、問ふ所にあらざる也、唯刑事裁判上の僞證たるには、啻に僞證の陳述たるを知りつつ爲すことを要するのみならず、尚被告人を曲庇し、若くは陷害するの故意あるを要するものとす、□二詐僞の陳述たることを要す、されど陳述する處の事實は、必ずしも虛妄のことたるを要せず、即ち事實は現に存在するも、其陳述は尚虛僞のものたるとき、例へば原告、又は被告が、某月某日何々の事を爲せしことありやとの訊問に對し、證人が全く其事實の有無を知らざるに拘らず、尚其事實のありたることを確答したるときは、縱令實際に於ては、斯かる事實のありて、其陳述と事實とが偶然暗合すとも、其證人は僞證をなしたるものと認めざるべからず、蓋し僞證罪は、虛妄の事實を陳述するの罪にあらずして、詐僞の事實を證言するの罪なればなり、□三證僞者の陳述は、訴訟の爭點に關する事實、若くは判決の基本となるべき事實たらざるべからず、換言すれば、證據となるべき事實の陳述ならざるべからず、故に意見、又は法律の解釋等に就き、詐僞の陳述をなすも、此犯罪を構成することなかるべし、但し鑑定人は、其技術上の鑑定に基きたる意見を陳述すべき者なるを以て、判決の基本となるべき要點に關し、詐僞の意見を陳述したるときは、本罪を構成するに缺くる所なし、僞證罪に對する刑罰は、刑事の裁判に於て、被告人を曲庇せんが爲め僞證したるとき、(重罪の曲庇)二ケ月以上二年以下の重禁錮、四圓以上四十圓以下の附加罰金(輕罪の曲庇)一ケ月以上一年以下の重禁錮、二圓以上二十圓以下の附加罰金、(違警罪の曲庇)違警罪の各本案に依りて處斷せらるべし、又證僞のために被告人正當の刑を免れたるときは、各場合に於ける僞證の刑に一等を加ふ、次に被告人を陷害せんがために僞證したる場合に、(重罪の陷害)二年以上五年以下の重禁錮、十圓以上五十圓以下の附加罰金、(輕罪の陷害)六月以上二年以下の重禁錮、四圓以上四十圓以下の附加罰金、(違警罪の陷害)一ケ月以上三ケ月以下の重禁錮、二圓以上十圓以下の附加罰金、陷害のため僞證したる場合に於て、被告人處刑の後に至り僞證罪發覺したるときは、反座の刑を受くべく、反座の刑僞證の本刑より輕きときは、僞證の刑を受くべし、若し被告人の刑期限内に於て發覺したるときは、既に經過したる日數に照らして、反座の刑を減ぜらるべきも、各場合に於ける僞證の刑より輕減せらるることなし、僞證の爲め被告人死刑に處せられたるときは、反座の刑一等を減じ、死刑執行前に於て發覺したるときは、二等を減ぜらる、若し被告人を死に陷るるの目的を以て僞證したる時は、死刑に反座すべく、死刑執行前に於て發覺したるときは、死刑より一等を減ぜらるべし、次に民事、商事、又は行政裁判に關して僞證をなしたるものは、一ケ月以上一年以下の重禁錮、五圓以上五十圓以下の罰金に處し、又賄賂、其他の方法を以て、人に囑托して僞證をなさしめたる者は、僞證罪と同樣の刑を受くべし、終りに僞證罪は主たる裁判事件の裁判宣告前に自首するときは、其刑を全免せらるるものとす。(刑二編第二〇章)
- 英
- Perjury
- 独
- Meineid
- 仏
- Par-jure
僞證者
僞證者とは、刑事、民事、商事、又は行政裁判所へ、證人、鑑定人、又は通事として呼出を受ひたる者が、裁判所の訊問に對し詐僞の陳述をなして、僞證したる者を云ふ。
- 英
- Perjurer
- 独
- Meineidiger
- 仏
- Parjure
氣象臺測候所條例
(きしやうだいそくこうじよでうれい)此條例は、明治二〇年八月勅令第四一號以て發布せられたるものにして、中央氣象臺、及び測候所に關する規定也、本例に依れば、中央氣象臺は之を東京に置き、地方測候所は、地方便宜の地に設置し得るものとし、其位地は、文部大臣の指定すべきものなること、此他別に測候所を設置せんとする場合には、文部大臣の認可を受くるを要すること、中央氣象臺は、文部大臣之を管轄し、地方測候所は、文部大臣監督の下に、地方長官之を管理し、其他の測候所は、地方長官之を監督すべきものなること、地方測候所の費用は、地方税を以て支辨すべきこと、中央氣象臺、及び各測候所は、互に氣脈を通じ、通信をなすべきこと等を規定せり。
- 英
- Observatory regula-tion
- 独
- Sternwarteregulierung
- 仏
- Règles de l'abservatoire
既遂
(きすい)刑法に所謂既遂とは、犯人が、或犯罪の成立に必要なる行爲を完了したるに依り、其結果たる害惡を生じたる場合を云ひ、犯罪の未遂に對する語なり。
- 英
- Consummation
- 独
- Vollendung
- 仏
- Consommation
既遂犯
既遂犯とは、未遂犯に對する語にして、即ち既遂の犯罪と云ふ義なり、或る犯罪が既遂犯たるには、犯人がその犯罪成立に必要なる行爲を完了すること、及び其法定の結果たる害惡を生じたることの二條件を必要とす、隨つて或原因によりて、其行爲を完了し得ざりし場合、若くは其結果たる害惡を生ぜざりし場合には、之を既遂犯と云ふべからず、刑法學上前者を著手未遂犯と云ひ、後者を缺效未遂犯と云ふ、而して上述の二條件を具備する以上は、既遂犯たるに充分にして、更に犯者の期待せる結果を生じたると否とは之を問ざるものとす、詳言すれば、通常或る犯罪が、既遂の域に達する迄には、犯罪の發意、犯罪の豫備、及び犯罪の實行の三時期を經るものにして、犯人は其間絶えず犯意を繼續し、且つ能力ある手段に依り、能力ある物體に對し、有効なる方法を以て、其所爲を實行したるに依り、竟に其結果たる害惡を生じ、茲に初めて既遂犯の存在を見るものとす。(未遂犯の部參照)
- 英
- Cousummated crime
- 独
- ge-vollendetes Verbrechen
- 仏
- Infraction consommée
擬制
(ぎせい)擬制とは、法律上摸似擬眞と云ふと同じく、其實際に於て標凖とたるべきものと、性質を異にする或ものに對し、法律の規定を以て、之を同一の性質を具備するものと看做し、法律上同等の效力を付して、同樣の取扱をなすことを云ふ、例へば法人の擬制説に於て、法人は元來無形のものなり、然るに法律上之に權利義務を與へて、人格を有するものと認むるは、取りも直さず、法律の擬制に依るものなりと云ふべし。
- 英
- Fiction
- 独
- Erdichtung
- 仏
- Fiction
起訴
(きそ)起訴とは、檢事がその所屬裁判所に對し、一定の被告事件に就き、訴訟を提起するを云ふ、刑事訴訟法に依れば、檢事は或犯罪の搜査を終り、其犯罪事件が、公訴を提起すべき條件を具備するものと認めたるときは、直に其裁判所へ起訴、即ち公訴提起の手續をなすべきものににして、公訴提起の手續は、□一原告人、及び裁判所の表示、□二證明せらるべき事件、□三一定の申立、及び其請求三要件を具ふべきものとす、而して檢事が此手續をなすに二途あり、公判、及び豫審之なり、即ち重罪と思料する事件に就きては、必ず豫審判事に豫審を求むることを要し、輕罪と思料する事件に就きては、其罪質の輕重難易に從ひ、或は豫審を求め、或は直に公判を求めざるべからず、公訴提起の手續は、或は書面を以てし、或は口頭を以てすることを得べしと雖も、現今の慣例に依れば、公廷外に於て此手續をなす場合には、一般に書面を用ふるなり、一たび檢事が此手續をなしたるときは、其事件は檢事の手を離れて、裁判所に繫屬するものとす、從つて最早檢事と雖も、之を取下ぐる事を得ざるのみならず、裁判所は、其公訴事件に就き、事實並に法律の點を審査して、裁判を下す法律上の義務を生じ、被告人に對しては、權利抅束の效果を生ずるものとす。(刑訴三篇二章參照)
- 英
- Commencing suit
- 独
- Klage an-bringen
- 仏
- Poursuite
規則
(きそく)規則とは、なほ法則と云ふが如く、一定の原因に、常に一定の結果を隨伴する義なり、元來規則なるものは、萬般の現象に於て存在するものにして、獨り人類の行爲に限るものにあらず、例へば自然界の現象に於ても、天體に其運行の規則あるが如き、或は物理又は化學上にも、夫れ夫れ一定の規則あるが如し、法學上の用語として、形式上、或は法律と云ひ、或は勅令、命令、又は條例と云ふも、苟も其實質に於て、吾人の行爲を原因となし、常に之に一定の結果を伴はしめたるものは、皆規則と云ひ得るなり、又規則を設くるは、啻に國家のみならず、私人、又は私の團體も之を設くることを得、唯國家の法律を以て效力を與へたるものにあらざれば、強制的に之を實行せしむる事を得ざるのみ、規則の目的、及び其内容は、固より一定せず、或は人の行爲を規定したるものあり、或は單に事務上の準別を示したるあり、而して規則の中人と人との間に於ける、意思の範圍を定めたるものを法規と云ふ。(法律及法則の部參照)
- 英
- Rule
- 独
- Norm
- 仏
- Règle
覊束
(きそく)覊束とは、抅束の意にして、法律の力を以て、人又は機關の行爲を強制的に抅束するの義なり、例へば法律命令は、人民の行爲を覊束するの力あるを以て、人民は強制的に之に服從せしめられ、其規定に違反して、自由行動をなすを得ざるが如し、民事訴訟法第八條末段に「此裁判は、後に其事件の繫屬すべき裁判所を覊束す」とあるは其用例なりとす。
- 英
- Binding
- 独
- Verbindlichkeit
- 仏
- Commissoire
貴族院
(きぞくゐん)貴族院は、帝國議會を組織する所謂上院にして、其組織は、貴族院令の定むる處に依るものとす、貴族院を組織する議員は、□一皇族の男子にして、成年に達したる者、□二公侯爵を有する者にして、滿二十五歳に達したる者、□三伯子男爵を有する者にして、滿二十五歳に達し、各其同爵者間より選擧せられたる者、此種の議員の任期は七年とす、□四國家に勳勞あり、又は學識ある滿三十歳以上の男子にして、勅任せられたる者、此種の議員の任期は終身とす、□五各府縣に於て、滿三十歳以上の男子にして、土地又は工業商業に就き、多額の國税を納むる者、十五人の中より〓選の結果、當選して勅任せられたる者、此種の議員の任期も七年とす、貴族院は、以上五種の議員を以て組織するものにして、其數に對する制限は、伯子男爵議員は、伯子男爵各總數の五分の一を超過すべからざること、及び國家に勳勞あり、又は學識ある者、又は多額納税者にして勅任せられたる議員は、有爵議員の數に超過するを得ざること是なり、貴族院の議長、及び副議長は、其議員中より勅任せらるるものにして、其任期は七年とず、帝國議會は兩院制の結果として、貴衆兩院個々別々に行動する事を許さず、隨つて兩院は、其權限を異にせざるは勿論、又兩院同時に成立するにあらざれば、議會として效力ある行動をなすを得ざるを原則となす、例外として、兩院の間に、多少其權限を異にするものなきにあらず、即ち貴族院の有する特殊の權能としては、□一天皇の諮詢に應へ、華族の特權に關する條規を議定すること、□二其院の議員の資格、及び選擧上の訴訟に關する規則を議定すること、□三其院の議員の資格、及び選擧に關る訴訟を判決すること、□四貴族院令の改正、又は增補するの必要ある場合に、之を議定すること等なり。(貴族院令)
- 英
- House of Peers
- 独
- Herren-haus
- 仏
- Chambre des pairs
貴族院議員資格及選擧訴訟判決規則
(きぞくゐんぎいんしかくをよびせんきよそしやうはんけつきそく)明治二三年十月勅令第二二一號を以て發布せられたるものなり、此規則の内容を槪言すれば、貴族院に於ては、每年會期の始に於て、其院の議員の資格、及び選擧に關する訴訟を審査するため、審査委員を設くべきこと、及び審査委員の審査手續、原被告議員の權利義務、議長の審査事件取扱手續、其他議院の訴訟事件に對する判決等を規定せり。
- 英
- Law of Qualifica-tion for the member of the house of peers
- 独
- Gesetz von der Qualifikation für den Mitglied des Herrenhauses
- 仏
- Loi de la qualification des membre de la chambre des pairs
貴族院令
(きぞくゐんれい)憲法第三四條の規定に基き、貴族院の組織、同院の特別權限、議員の資格、及び其任期、議長、副議長、及び議員の任命、其他同令の改正等に關する事項等を定めたる法則なり。(明治二二年二月勅一一號、及び貴族院の部參照)
- 英
- Imperial ordinance concern-ing the House of Peers
- 独
- Herrenhaus-ordnung
- 仏
- Ordonnance impériale de la chambre des pairs
貴族院規則
貴族院規則は、明治二三年一二月中、貴族院が貴族院令に基き、その議決を以て定めたる同院内部の整理に關する規程なり。
- 英
- Regulation of the House of Peers
- 独
- Regulirung des Herrenhauses
- 仏
- Règles de la chambre des pairs
議題
(ぎだい)議題とは、通常合議機關の會議に於げる議事、即ち審議討論の題目たる事項を云ふ、議題は、議事日程に於て其順序を定むるを通例とす、又議題は、必ずしも議案なる形式を具へたるものに限らず、凡て議事の題目となるものは、之を議題と云ふを得ん、議院法第二九條に「凡そ議案を發議し、及び議院の會議に於て議案に對し、修正の動議を發する者は、二十人以上の賛成あるにあらざれば、議題となすことを得ず」とあるは、即ち其用例なりとす。(議案の部參照)
- 英
- Subject of debate
- 独
- Debatte-subjekt
- 仏
- Questions de débat
〓道條例
(きどうでうれい)此條例は、明治二三年法律第七一號を以て發布せられたるものにして、其内容は、一般運輸交通の便に供する馬車、鐵道、及び其他之に凖すべき〓道は、起業者に於て内務大臣の特許を受くるときは、之を公共道路上に布設することを得る旨、此種の〓道布設のため、起業者の負擔を以て、在來の道路を取擴め、又は更正し、若くは新に〓道敷を設くる必要あるときは、起業者は内閣の認定を經て土地收容法の規定に依り、之に要する土地を收容するを得ること、在來の道路を取擴め、又は更正したる部分、及び新設したる〓道敷は、倶に之を道路敷に編入することを規定せり。
- 英
- Railway regulation
- 独
- Eisen-bahnsregulirung
- 仏
- Règlement des che-mins de fer
〓道敷
〓道敷とは、一般交通運輸の便に供する馬車鐵道、及び其他之に凖ずる〓道の敷地を云ふ。(〓道條例參照)
- 英
- Railway construction
- 独
- Eisen-bahnsbau
- 仏
- Etablissement des chemins de fer
寄託
(きたく)寄託とは、當事者の一方が、相手方のために保管をなすことを約し、或物を受取るに依りて效力を生ずる契約を云ふ、即ち寄託は、要物契約の一種なるを以て、物を受取るにあらぎれば成立せさるものとす、本契約は原則として、無償契約に屬し、受寄者は寄託者に對し、其報酬を請求することを得ざるものとす、但し商事に於ける寄託契約の一種たる、倉庫業者の寄託の如きは、この例外と知るべし、寄託契約は、保管の期限を定めて之を爲すことあり、又期限を定めずして之をなすことあり、受寄者は、返還の時期を定めざる場合には、何時にても其保管物を返還することを得るものとし、之を定めざるときは、止むことを得ざる事由あるにあらざれば、其期限前に保管物を返還することを得ざるなり、之に反して、寄託者の返還は、時期を定めたると否とに拘らず、何時にても其保管物の返還を請求し得るものとす、受寄者が無報酬にて寄託を受けたる場合には、其保管物に對し、自己の財産に於けると同一の注意を以て、之を保管するの責任を有するに止まり、若し報酬を受くる場合には、善良なる管理者が、將に爲すべき程度の注意を以て、之が保管をなすの責任あるものとす、尤も報酬を受くると否とに關せず、其物の保管上必要なる費用は、之を寄託者に請求する權利あり、受寄者が、其物を保管中其物に對し、權利を主張する者ありて、受託者に對し訴を起し、又は差押を爲したるときは、受託者は、遲滯なく其事實を寄託者に通知する事を要す、次に受託者は、寄託者の承諾あるにあらざれば、受託物を使用し、又は他人をして保管せしむることを得るざを原則とし、其承諾を得て更に他人に寄託したるときに於ても、第二の受託者に關して、其責に任せざるべからず、若し寄託者が、第二の受寄者たるべきものを指定したるときは、第一の受託者は、唯其不適任、又は不誠實なることを知りて之を本人に通知し、又は其契約を解除することを怠りたるにあらざる限りは、其責任を負ふこと無し、又第二の受託者は、寄託者、及び第三者に對して、第一の受託者と同一の權利義務を有す、寄託物の返還は、受託者が正當の事由に依りて其物を轉置したるときは、其現在の場所に於て返還する事を得べきも、其他の場合に在りては、保管を爲すべき場所に於て、之を返還せざるべからざるものとす、而して受託者と、其物の保管中其物に關して、他人より受取りたる金錢、其他の物、又は其物より收得したる果實ある時は、之等の物を寄託者に返還するの義務あるは勿論、若し其金額、又は其物の保管のために用ふべき金額を自己のために費消したるときは、其費消したる日以後に於ける利息を支拂ふことを要す、猶損害ありたる場合には、其損害をも賠償すべきものなり、受寄者が、其物の保管中必要なる費用を支出したるときは、寄托者に對して其費用、及び支出の日以後に於ける利息の償還を請求することを得、其物の保管に必要なる債務を負擔したるときは、寄托者をして、自己に代りて其辨濟を爲さしめ、又は其債務が辨濟期にあらざるときは、相當の擔保を供せしむることを得べし、猶寄托物の性質、又は瑕疵に原因して或損害を受けたるときは、寄託者をして之を賠償せしむるの權利を有するなり、但し此場合には、受寄者が豫め損害を生ずべきことを知り、或は寄托者が過失なくして、斯かる性質、又は瑕疵を知らざりしときは、受託者に損害賠償請求の權利なきものとす、受寄物が消費物なるとき、契約に依りて、受寄者が之を消費することを得る場合には、消費貸借に關する規定に從ひて、其權利義務を定むべきものなり、之を不規則寄托と云ふ、唯消費貸借の場合に、當事者が返還の時期を定めざるときは、貸主が返還の請求を爲すに、相當の猶豫期間を定めて、之を爲す事を要するに反し、寄託の場合には、寄託者は、何時にてもその寄託物の返還を請求することを得るのみ、以上述ぶる處は、一般寄托に關する原則として、民法に規定する處なるも、商業上の寄托は、自ら別異の所ありて存す、商法の規定に依れば、商人が其營業の範圍内に於て、或物の寄托を受けたる時は、報酬を受けざるときと雖も、善良なる管理者の注意を以て、之を保管すべきものなることを定め、旅店、飮食店、浴場其他客の來集を目的とする場屋の主人は、客より寄托を受けたる物品の滅失、又は毀損に就き、其不可抗力に依りたることを證明するにあらざれば、損害賠償の責任を免るることを得ざること、客が特に寄托せざる物品と雖も、場屋中に携帶したる物品が、場屋の主人又は使用人の不注意に依りて、滅失、又は毀損したるときは、損害賠償の責任あること、この責任は、場屋の主人が客の携帶品に就き、責任を負はざる旨を特に告示したるときと雖も、免るべからざること、但し貨幣、有價證券、其他高價の物品に就きては、客が其種類、及び價格を明告して、之を場屋の主人に寄託したるにあらざれば、其滅失毀損に就き、損害賠償の責任なき事、此種の責任は、場屋の主人に惡意なきときは、其寄托物を客に返還し、又は客が其携帶品を持去りたる後、一ケ年を經過したるときに於て、時效に依りて消滅し、其時效期限は、物品の全部滅失の場合に、客が其場屋を去りたる時より起算すべきものなることを定めたり、尚茲に注意を要するは、舊刑第三三八條に所課寄托なる語にして、この語は以上の意義と、全く其性質を異にし、即ち或人が他人より老者、幼者、又は病者の看護保養の委托を受けたることを意味するなり。(民六五七條乃至六六六條、商三五〇條乃至三八三條)
- 英
- Deposit
- 独
- Hinterlegung
- 仏
- Dépôt
寄託者
寄託者とは、寄託契約を爲したる當事者の一方にして、物の保管をなさしめたる者を云ひ、保管を引受けたる相手方即受寄者に對するの語なり、前述舊刑第三三八條の場合に在りては、幼者、老者、又は疾病者の保護養育の委托をなしたる相手方を云ふものとす。
- 英
- Depositor
- 独
- Hinterleger
- 仏
- Déposant
寄託物
寄託物とは、寄託契約に依りて保管すべき物件を云ふ、即ち寄託契約上の保管物は、寄託者より云へば寄託物にして、受託者より云へば受託物なり、唯觀察の方面の異るにより、其稱呼を異にするのみ。
- 英
- Deposit
- 独
- hinterlegte Sache
- 仏
- Dépôt
規定
(きてい)或る目的、又は興味の對象となれる數多のものの中より、其決するものを選び定むるをいひ、法律上に於ては、法の精神を條文の上に定むる行爲をいふ、假令ば刑の執行猶豫は、歐洲に於ける最新の制度なるが、我國に於ても之を認容し、法律若くは勅令の條文中に加ふるが如き、或は舊習慣を新民法の條文中に加ふるが如き行爲をいふなり。(民三三條參照)
- 英
- Determination; Rule
- 独
- Norm; determination; bestimmung
- 仏
- Détermi-nation
規程
(きてい)規程とは、規則程式の意にして、なほ準規、又は準則と云ふが如し、例へば船舶檢査規程の如き、或は農事試驗場處務規程の如き、其用例なり、其名稱を異にするのみにて、實質に於ては、略ぼ他の規則、又は條例と同じく、人の行爲に關する規定に外ならず、強ひて之が特質を求むれば、規程は槪して或機關内部に於ける處務の準則を示したる規定を指稱するものの如し。
議定
(ぎてい)通常軍事上、又は外交上に多く用ひらるる語にして、二個以上の國家、又は軍隊の代表者が、或事項、又は問題に就きて、合議協定をなすことを云ふ、例へば戰場に於て、兩交戰軍隊の司令官が、休戰條約の條件を議定すと云ひ、或は或國際問題、又は條約等に就き、二國若くは數國の全權委員が、會議を開きて之を議定すと云ふが如し。
- 英
- Resolution
- 独
- Entscheidung
- 仏
- Résolution
議定書
議定書とは、議定したる事項を記錄したる書面を云ふ、例へば韓國問題に關する日露議定書の如きこれなり。
- 英
- Document of resolution
- 独
- Protokoll
- 仏
- Document de résolution
既定の歳出
(きていのさいしゆつ)憲法第六七條に、所謂憲法上の大權に基ける既定の歳出とは、疑問あるも、要するに前年度の豫算にて、既に定れる歳出と解するを可とす、總べて國家の豫算は、憲法上議會の協賛を經て、天皇の裁可を仰ぎ、公布して始めて豫算たる效力を有するものなるを以て、未だ議會の協贊なく、天皇の裁可なきものは、之を國法上豫算と云ふべからず、而して既定の歳出は、斯くの如くにして定れる、前年度の豫算の一項目を云ふなり、爰を以て、既定の歳出たるには、前年度の豫算に於て、その項目中に編入せられ、議會の協贊、及び天皇の裁可を經、且つ公布せられたるものならざるべからず、今憲法上の大權に基ける既定の歳出となり得べきものを擧ぐれば、官吏の俸給、官廳の經費、陸海軍の軍費等、凡て法律に基かずして、天皇の命令に依りて定りたる歳出等なり、議會が此種の既定の歳出を廢除し、又は削減せんとするには、必ず政府の同意を得ることを要するものにして、政府の同意なきときは、隨意に之が削除を議決することを得ざるものとす。(憲法六七條參照)
- 英
- Already fixed expenditure
- 独
- festgesetzte jährliche Ausgabe
- 仏
- Dépens déjà fixe
既定豫算
(きていよさん)既定豫算とは、國又は府縣郡市町村の豫算にして、法令の規定に依りて、豫算成立に必要なる手續を履みたるものを云ふ、隨つて未だ適法の手續を經ざるものは、豫算案と云ふことを得べきも、法律上之を豫算と云ふことを得ず、即ち既定豫算とは、既に此手續を經て成立したるものを云ふなり、郡制第九七條に「既定豫算の追加云々」とあるは、この用例なりとす。
- 英
- Already fixed budget
- 独
- festgesetztes Budget
- 仏
- Budget déjà fix
既登記
(きとうき)不動産に就き、既に或種の登記の存在することを既登記と云ひ、所謂未登記なる語に對す、元來登記なるものは、法律上一種の公示的效力を有するを原則とし、從つて既登記の權利義務に就きては、第三者に對抗するを得るを普通とす、登記法第一三二條に「既登記の不動産に就き云々」とあるは、其用例なり、この語は通常登記事務取扱上の用語として使用せらるるものなり。
- 英
- Registration
- 独
- Eingetragen
- 仏
- Enregistrement
既得權
(きとくけん)既得權とは、人又は國家が、新法規、或は新條約以前の法規、又は條約に依りて、從來既に享有する處の權利と云ふの意味なり、通常既得の權利は、奪ふべからずとか、或は既得權不可侵の原則などと云ふことあれども、法理上に於ては殆ど理由なきことなり、元來權利なるものは、法規に依つて與へられたるものなれば、法規に依つて之を奪ふべからざるの理由なく、國家は、法規を制定して、人民に權利を與へ、又其法規を廢止變更して之を奪ふは、固より其自由に屬す、元來既得權不可侵等の法諺は、天賦人權説より出でたるものにして、その説の哲學上の價値は免に角、法理上に於ては、寸亳の價値なきことは、前説に依りて明かなるべし、再言すれば、法規は權利の前提をなすものにして、法規なければ權利なきなり、盖し法規の制定、廢止、變更は、國家の統治權の作用にして、絶對に國家の統治權に服從すべき人民が、其作用を拒止すべき力なきは當然なり、惡法また法なれば、人民に取りて、如何に不利益なる法規なりとも、人民は甘んじて之に服從するものにして、斯かる關係に在る人民に既得權なるもの存せざるは、固より言を竢たざるなり、されど國際間の關係に就きて云ふときは、之と大にその趣を異にするものあり、盖し國際間の關係は、もと平等對等の地位にあるを原則とし、從つて或一國は、他國の統治權に服從する義務あるものにあらざれば、其國の制定せる法規に覊束せらるべきものにあらざるは明かなり、兩國間に於て、〓に服從すべき條規は、唯其間に締結せる條約を外にしては、全くこれある事なし、爰を以て、或一國が、條約に依りて他の國家、又は其國民に與へたる權利を奪はんと欲するには、其條約を改正するの一途あるのみ、若し其の國家が、之に同意を表せざるせときは、その國家の意思に反してこれを廢棄んか、茲に至つては最早平和の關係を脱するものなり、故に苟も平和の關係を持續するに於ては、條約上の義務に服從せざるべからず、隨つて條約に依りて與へたる他の國家、又は國民の既得權を尊重するを要すべきなり、これ國際間に於て、既得權の不可侵を云爲するの理由ありと云ふ所以なり、其他既得權不可侵の原則は、政治上に於ては重要の原則たるを失はず、蓋し漫りに法規を改廢して、權利の享有を不安ならしむるときは、其結果として國力の發達を沮害するの虞あればなり。(舊法例二條參照)
- 英
- Already obtained right
- 独
- gewonnenes Recht
- 仏
- Droit déjà acquis
歸納法
(きなふはふ)歸納法とは、論理學上演繹法と相並びて、吾人の智識が正確なる判斷に到達せんとする法式の一なり、即ち演繹法が、普遍的原理より出發して、特殊の判斷を引き出さんとするに反し、個々の經驗、即ち特殊の事實より、漸次普遍的原理を發見せんとする方法を謂ふ、例令ば釋迦は死せり、孔子は死せり、基督は死せり、甲某乙某丙某丁某等は死せり、即ち之等特殊の事實を基礎として、人は死するもの也てふ、普遍的原理を發見し來るが如し、然るに演繹法にありては、其推論の基礎たるものは、普遍的原理なるが故に、其推論によりて得來たるものは、豫め基礎槪念中に包含せられたるものを導き出す迄の作用に外ならず、斯くの如きは、勢ひ歸納法の依つて生じ來らざるを得ざる所以なりと、斯くして歸納法の開祖とも稱すべきべーコンは、先づ經驗に訴へて事實を蒐集すること、其蒐集したる事實を整齋すること、最後にその整齋分類せられたる事實に依り、之を綜合して、夫れ等の事實の普遍原理たる法則を發見すること、即ち前二段の手續を經て、歸納の目的たる第三段の歸結に達すべきものなりと、ベーコンの此歸納法は、演繹法と比較し、總べての研究法として、完全なるものといふことを得ず、□一歸納法に於ては、その一派が演繹法に對して發すると同樣なる困難あり、即ち歸納法は大前提として、自然法の一致なる大假定を有す、この假定なくしては、歸納法は全然成立することを得ざるなり、これ三段論法なる演繹法と、撰む能ばざる所以なり、□二氏が第一階段として擧げたる事實の蒐集なるものは、果して如何なる範圍迄正確を期し得べきものなるが、可及的廣汎にと謂ふにあるも、可及的てふことは、唯程度問題のみ、未だ其全體に及ぶとの謂にあらず、從つて正確なる全事實の蒐集を終りたるものといふを得ざるなり、しかも吾人は、宇宙の全體に渉りて、其事實を蒐集せん事は到底不能事に屬す、これ歸納法の演繹法と比して、完全なる推論の方式也と云ふことを得ざる所以なり、されば歸納法の大成者とも謂つべきミルは、ベーコンとは大に其趣を異にし、歸納の正確なる方法を定めんとして、次の四種の研究方法を案出せり、即ち一、類同法、二、差異法、三、共變法、四、剩除法これなり、類同法とは、個々の事實を觀察し、その類を同じくせる事相によりて、その現象の原因、又は結果を發見する方法をいふ、差異法とは、其現象の存在する場合と、其現象の存在せざる他の場合とを比較し、その差異の點を見て、一現象の結果、又は原因を推知する法を謂ふ、相變法とは、一現象が、其量、強度、或は性質等に於て、如何にか變ずるに連れ、他の一現象のみが、獨り其變化に伴ひ相應じて變化するを見て、其兩者の間に因果の關係の存することを推知する法をいふ、剩餘法とは、爰に若干の現象ありて、之に踵ぎて若干の現象繼起したりとせんに、若し既往の研究に依り、其現象中或る現象が、他の現象の原因、又は結果なりと認知せらるるあらば、之等の現象を除き去りて、其殘れる現象の間に、原因結果の關係あることを推知する法を謂ふ。
- 英
- Induction
- 独
- Induktion
- 仏
- Induction
機能
(きのう)機能とは、猶官能と云ふが如く、或機關が、其權限内に於て活動をなし得る能力を意味する也、而して機關と機能との限界は即ち其權限なり、隨つて權限を踰越したる機關の行爲は、其機能の働と云ふことを得ざるものとす、例へば帝國議會が各種の法律案を議決するが如きは、國家機關としての其機能をなすなり、然れども其議決を外に向つて執行するの機能を有せざるを以て、斯くの如きことをなすも、法律上何等の效力なきものとす。
- 英
- Function
- 独
- Kraftäuszerung
- 仏
- Fonction
既判力
(きはんりよく)訴訟上の用語にして、判決の確定に依りて生ずる效力の一なり、即ち或事件に對する判決が、既判力を有するときは、其事件に對し、再び上訴等に依りて審理せらるること無きを云ふものにして、既判力は、常に判決の確定に依りて生じ、判決の確定は、判決が上訴其他の方法を以て、不服を申立つることを得ざるに至ることを謂ふなり、即ち知る既判力なるものは、判决が、上訴其他の方法を以て、不服を申立つることを得ざる效力なりと、但し再審、非常上告等の方法は、以上の既判力の效果を破ることを得るものなり、盖し再審、其他非常上告なる制度は、上訴と同じく一種の復審制度なるも、常に既判の判決に對する不服方法にして、既判の判決を再び審理判決する方法なればなり。(再審、非常上告及判決の確定力の部參照)
忌避
(きひ)忌避とは、裁判所に於て、或事件の掛り判事又は書記に、法律の定めたる一定の原因、又は偏頗の裁判をなす虞ある場合に、訴訟關係人の申請に依りて、其判事、又は書記の其裁判に參與するを禁ずることを云ふ、一定の原因とは、所謂除斥の原因と法律の明定せる事項とにして、□一掛り官たる判事、又は書記が、其訴訟事件の原被告たるとき、□二其妻が原被告たるとき、□三、判事又は書記が原被告と親族なるとき、□四其事件と過去現在に於て、或關係を有するが如き場合を云ふ、次に偏頗の恐ある場合とは、之等の職員が、裁判の際、又は裁判以外に於て、原被の一方を利するが如き行爲をなしたるとき、或は其他依姑等の事情ある場合を云ふ、訴訟關係人は、除斥の原因、又は偏頗の虞あるときは、書面或は口頭を以て、其職員に對する忌避の申請なすことを得るなり、此制度は、裁判をして公正と信用を保たんが爲に設けられたるものにして、民事、刑事、又は行政の訴訟に於て、各その訴訟手續法に從ひて之をなし得るものとす、民事訴訟法の規定に依れば、訴訟關係人は、判事、又は書記に除斥の原因、及び不公平なる裁判をなすことを疑ふに足るべき事情あるとき、書面又は口頭を以て、忌避の原因の理由を疏明し、其判事、又は書記の屬する裁判所に、避忌の申請をなすべきものなり、忌避の申請は、除斥の原因ある場合には、訴訟の如何なる程度にあるを問はず、之をなすことを得べしと雖も、偏頗の虞あるを理由とする場合には、これを覺知したるとき、直に之をなすを要するものにして、若し偏頗の虞あることを覺知したるに拘らず、引續き其判事、又は書記の面前に於て申立を爲し、又は相手方の申立に對して陳述をなしたるときは、其判事、又は書記に對し、忌避の申請をなすの權利を失ふべきものなり、忌避の申請ありたるときは、判事は猶豫すべからざる行爲を除き、其申請に對する裁判を完結するまで、總べての行爲を避くべきものにして、合議裁判所に在りては、其裁判所に於て、忌避の申請の裁判をなし、其判事の退去に依りて決定をなすこと能はざるときは、直近上級の裁判所に於て、之が裁判を爲し、區裁判所に在りては、上級の地方裁判所に於て之をなすべし、尤も其判事が、忌避の申請を正當なりと認めたるときは、其裁判を要せざるものとす、忌避申請の管轄裁判所は、其申請なき場合に於ても、忌避の原因たる事情に就きて、其判事、又は書記より申出ある時、若くは他の事由により、判事、又は書記が、法律により除斥せらるる疑あるときも、之が裁判をなす也、忌避の裁判は、豫め當事者を審訊することを要せず、且つ其裁判を當事者に送達することを要せざるものとす、書記を忌避する場合には、其書記所屬の裁判所に於て、之をなすべきものなり、次に刑事裁判の場合にありては、檢事に對しても忌避の申請をなし得るものにして、又以上の者に對して、忌避の申請あるときは、公判に在りては直に辯論を中止し、豫審に在りては仍ほ其處分を續行すべきも、急速を要せざる事件に就きては、其手續を中止することを得べし、其他の手續は、民事訴訟の揚合と異る事なし、次に行政訴訟の場合在りては、訴訟關係人は、長官又は評定官に、□一裁判すべき事件が、之等掛官の身上、又は父母、兄弟、姉妹、若くは妻子の身上に關するとき、□二之等掛官が、一私人の資格を以て、其事件に就きて意見を述べたるとき、又は理事者、代理者、若くは職務外の地位に於て、其事件を取扱ひたるとき、□三普通行政官たるの資格を以て、其事件の處分、又は裁決に參與したるとき等の原因ある場合に、忌避の申請をなすことを得るなり、而して其裁判は、行政裁判所に於て議決するものと定められたり。(民訴一編一章五節、刑訴一編二章、及び行政裁判法一〇、十一條)
- 英
- Refusal
- 独
- Ablehnung
- 仏
- Refus
寄附
(きふ)寄附とは、公益上の目的のために、自己の財産を無償にて贈與るすことを云ふ、通常寄附と稱するものは、其性質一種の贈與行爲なるを以て、必ず之を受くる相手方あるものなり、隨つて民法上の寄附行爲なる語とは、其意義を異にするものとす。
- 英
- Contribution
- 独
- Beitrag
- 仏
- Contribution
寄附金
寄附金とは、寄附の目的物たる金錢を云ふ、寄附金の募集に關しては、各地方に夫れ夫れ警察上の取締規則の設けあれば、其規則の規定に從ひて屆出等の手續を了し、之に著手するにあらざれば、處罰を受くることあるべし。
- 英
- Subscriptions
- 独
- Stiftung
- 仏
- Souscription
寄附財産
寄附財産とは、寄附の目的物たる財産を云ふなり、民法上の寄附行爲の場合に於ては、即ち財團法人を設立せんがため處分したる財産にして、其法人に歸屬すべきものなり。
- 英
- Contributed property
- 独
- Stiftung
- 仏
- Propriété contribuée
寄附者
寄附者とは、金錢其他の物を寄附する本人を云ふ、民法上の寄附行爲の場合に於ては、即ち財團法人を設立せんが爲に、財産を無償にて贈與したる者を云ふ。(寄附行爲參照)
- 英
- Contributor
- 独
- Beitragende
- 仏
- Collaborateur
寄附行爲
(きふかうゐ)或人が無償にて自己の財産を處分し、之に依りて設立せんとする財團法人の存在に、必要なる事項を定むる單獨行爲を云ふ、□一寄附行爲は、單獨行爲なり、即ち寄附行爲をなず當時には、相手方あることなし、□二寄附行爲の目的は、非營利的法人を設立するにあるを以て、其出捐にかかる財産は、無償の處分ならざるべからず、□三寄附行爲には、必ず其設立せんと欲する法人の存在に必要なる、各種の條件を定めざるべからず、蓋しこれを定めざるに於ては、法人の成立を見る事を得ざればなり、□四寄附行爲は、無償にて財産を處分するものなるも、贈與の一種にあらず、即ち其行爲を爲す當時に於ては、法人は未だ存在せざるのみならず、又何人もこれにより利得を得る者あることなし、□五寄附行爲は、其行爲身體に於て效力を發生し、毫も他人の同意を要せざるを以て、契約と異るものとす、民法第三九條に依れば、寄附行爲に定めざるべからざる事項は、第一に其設立せんと欲する法人の目的なり、之其最も必要なる事項にして、新に設立する法人の人格の範圍は、全く之に依りて決定するものとす、即ち法人は、其目的の範圍内に於てのみ、權利を有し、義務を負ふべきものなるが故に、寄附行爲をなすものは、必ず祭祀、宗教、慈善、學術、又は技藝等に就き、其法人の目的となさんとする處のものを明定せざるべからず、第二は法人の名稱なり、これ其稱呼の便を計る等のために必要なりとす、第三は法人の事務所なり、法人の事務所は、恰も自然人の住所の如く、法人の本據たるべき場所にして、諸般の必要なる登記を爲すに際し、其登記の管轄を定むる等の爲に必要の事項なりとす、第四は法人の資産に關する規定なり、此規定の如きは、特に財團法人の存在上、最も重要の事項なるを以て、其寄附財産の種類、數額、其他管理の方法等に關し、明確に定むることを要す、第五は法人の理事任免に關する規定也、法人は、全然理想上のものに屬するが故に、全く行爲能力を缺如するは勿論のことなりとす、爰を以て法人は、其機關の補助に依りて、必要の行爲を爲さざるべからず、即ち其機關たるべき理事の選任、又は免職に關する規定を明定せざるべからざること、また言を竢たざるところとす、隨つて若し法人を設定せんとする者が、之等の事項を定めずして死亡したる場合には、到底其法人の設定を見ることを得ず、されど斯くの如きは元來公益上の事業なるを以て、國家は可成的これを保護し、寄附行爲者の目的を成就せしむるは、固より其當を得たる處置なりとす、故に寄附行爲者が、其定むべき事項の中、其最も重要なる目的、及び資産に關する規定の二件を定めたるときは、他の事項は他人と雖も、法人の目的に從ひて、便宜之を規定し得べく、必ずしも本人自身に於て、之を定むる事を要せずとせり、依つて法律は、寄附行爲者が、法人の名稱、其事務所、及び理事の任免に關する事項を定めずして死亡したる場合には、裁判所は利害關係人、又は檢事の請求に依りて之を定むべきものと規定せり、利害關係人とは、寄附行爲者の相續人の如きを云ひ、檢事は公益の保護者なるを以て、之等の者の請求に依りて、寄附行爲の欠缺を補充せしむることを定めたるなり、又寄附行爲は、生前處分を以てこれを爲し得ると同時に、遺言を以ても之を爲し得べし、死後處分を以て寄附行爲をなしたる場合には、遺贈に關する規定を凖用するものとす、而して其寄附にかかる財産は、生前處分を以てこれを爲したる場合には、法人設立の許可ありたるときより、法人の財産を組織し、遺言を以てしたる場合には、遺言が效力を生じたるときより、法人に歸屬するものとす。(民三九條乃至四三條)
- 英
- Act of endowment
- 独
- Stift-ungshandlung
- 仏
- Acte de la dotation
給額
(きふがく)給額とは、猶支給定額と云ふに同じく、俸給其他支給すべき金圓の定額なり、明治二二年六月閣令第九號豫定經費算出槪則第三條に「一人當りの給額を算出するに云々」とあるはこれ其用例なり。
給助金
(きふじよきん)給助金なるものは、軍人恩給法に依り給せらるる恩給の一種にして、陸海軍の軍人にして、下士以上の者が、現役中に死殁し、若くは現役四年以上十一年未滿にして現役を離れ、退職恩給、免除恩給を受けざる者に給與せらるるものとす、而して其額は、將官、及び相當官に在りては、親任官千五百圓、勅任官一等千二百圓、同二等千五十圓、佐尉官及び相當官に在りては奏任官、一等七百五十圓、同二等六百圓、同三等四百五十圓、同四等三百圓、同五等二百二十五圓、同六等百八十圓、准士官及び下士に在りては、判任官、一等百五十圓、同二等六十圓、同三等五十四圓、同四等四十八圓なりとす。(軍人恩給法參照)
- 英
- Allowance
- 独
- Nachsichtsgeld
- 仏
- Gratification
給助料
(きふじよれう)給助料は、判任以上の官吏にあらずして、傳染病の豫防救治に從事する者が、公務に依り、病毒に感染したる時に給與せらるる手當金の一種にして、其治癒したる者に、一時限り給與せらるるものなり、其給與額は、遺族扶助料の二分の一に相當する金額とす、遺族扶助料は、一等(月給二百圓以上)千圓、二等(月給百六十圓以上)九百圓、三等(月給百三十圓以上)八百圓、四等(月給百圓以上)七百圓、五等(月給八十圓以上)六百圓、六等(月給七十圓以上)五百圓、七等(月給六十圓以上)四百五十圓、八等(月給五十圓以上)四百圓、九等(月給四十圓以上)三百五十圓、十等(月給三十圓以上)三百圓、十一等(月給二十圓以上)二百五十圓、十二等(月給十圓以上)二百圓、十三等(月給十圓未滿)百圓なりとす。(三三年三月法三號、傳染病豫防救治に從事する者の手當に關する件)
- 英
- Support
- 独
- Unterhalt
- 仏
- Soutien
給付
(きふふ)給付とは、債權に依りて要求せらるべき特定人の行爲、又は不行爲を云ふ、蓋し債權者が債權に依りて得んとする目的は、或は有體物の所有權の取得に存することあり、或は單に有體物を占有し、之を使用せんとするに存することあり、或は身體上、又は精神上の勞務を供せしむるに存することあり、法律は、之等の目的を達せしめんが爲めに、特定人の自由を制限し、債權者に對して或る行爲を爲し、又は爲さしめざるの法律上の抅束を命ず、これ即ち給付の義務なり、故に給付は、債權の目的たる特定人の行爲、又は不行爲なりと謂ふべし、給付は債權の目的なるが故に、その不能ならざることを要す、蓋し不能なるときは、債權の目的を達することを得ざればなり、給付の不能は、之を分つて絶對的不能、及び相對的不能、客觀的不能、及び主觀的不能、事實上の不能、及び法律上の不能となす、絶對的不能とは、給付の性質上全く不能なることを云ひ、相對的不能とは、給付が其性質上可能なるに拘らず、或場合に於て不能なることを云ふ、例へば天に昇ると云ふことは、絶對的不能にして、貧者が一萬圓の債務を即時に辨濟すと云ふが如きは、相對的不能也、客觀的不能とは、何人に對しても不能なることを云ひ、主觀的不能とは、債權者、又は債務者其人に取りて不能なることを云ふ、例へば前例に於ける天に昇ると云ふは、即ち客觀的不能にして、相手方の現に占有せる物を、相手方に引渡さんと云ふが如きは、即ち當事者の一身に基く不能なり、事實上の不能とは、自然界の原則に依りて不能なることを云ひ、法律上の不能とは、法律上に於て不能なることを云ふ、例へば死したる人を活かさんと云ふが如きは、事實上に於ける不能にして、法律上不融通物と定められたる物を讓渡さんと云ふが如きは、法律上の不能なり、次に債權の目的たる給付は、之を分つて特定物、及び不特定物の給付、金錢の給付、及び利息の給付等とす、□一特定物給付とは、當事者が債權の目的物として、特に定めたる物を給付するを云ひ、□二不特定物の給付とは、給付せらるべき物が、當事者の指定に依りて、特定したる物にあらずして、唯一定の屬性に依りて定れる物を給付するを云ふ、例へば或倉庫中の米何俵を引渡さんと云ふが如し、□三金錢の給付、金錢とは、貨幣の一定の數量を指稱するものにして、貨幣なるものは、財産上の價格を算定する標準となり、法定の強制通用力を有するものを指す、而して金錢を給付する場合には、日本貨幣なることあり、或は外國貨幣なることあり、□四利息の給付、利息とは、債權者が債務者をして、金錢、其他の代替物を利用せしむる報酬として、元本を利用する期間の割合に應じ、一定の率に依り、債務者より得る所の元本と種類を同うする代替物を云ふ、利息を生ずる場合は、通常元本が金錢なる場合なり、然れども元本が米なるときは、利息もまた米ならざるべからず。(民三九九條乃至四一一條
- 英
- Action
- 独
- Leistung
- 仏
- Action
給與
(さふよ)給與なる語は、通常官廳より俸給、給料、又は手當金等を下給せらるるを云ふものにして、尚支給と云ふが如し、隨つて購買品の代價を支拂ふ場合等は、之を給與と云はず、又給與にかかる物は金錢にあらずして、現品なることもあり得ん、或は給與なる語を下給せらるるを指さずして、下給の目的物其のものを稱することあり、例へば陸軍給與令第一條に、「陸軍軍人、及び各隊各部に係る給與は云々」とあり、これ其用例とす。(二三年三月勅六七號)
- 英
- Gift
- 独
- Geschenk
- 仏
- Dona-tion
給料
(きふれう)給料とは、一定の勞務に對し、定期に支給する報酬を云ふ、隨つて時々不定の勞務に對して支給するものは、給料と云はず、又臨時に支給する報酬は、給料と云ふべからず、而して給料として支給する物は、金錢を以てするを通例とす、陸軍給與令第六條に「俸給を分つて三とす、□一俸給、□二給料、□三手當」とあり、即ち本令に依れば、給料は廣義に於ける俸給の一種なり。
- 英
- Salary
- 独
- Salär
- 仏
- Salaire
詭辯
(きべん)遁辭、若しは瞹眛なる言辭を用ひて、故意に虛僞の推論をなすを云ひ、詭辯を弄する者を詭辯論者と稱す、元來詭辯論者なる原語「ソフヒスト」とは、初め希臘に於て賢人を意味し、他人に智識を傳達するを以て職業となせるものを指せるが、其後漸く辯證法を亂用するに至り、詭辯とは、虛僞を眞實らしく陳述することを意味するに至れり。
- 英
- Sophistry
- 独
- Sophistik
- 仏
- Sophisms
詭辯的
詭辯的とは、總べて詭辯論の傾向、或は其著色を有する陳述に適用せらるる形容辭なり、即ち正確なる論理學上の規則を守らず、唯臨機應變に白を黑とし、黑を白とするが如く、巧に當座を胡麻化すことをいふ。
基本金
(きほんきん)基本金とは、經濟上の用途に於ける財産の一種別にして、これより生ずる利息を、或事業の維持費に對する財源として積立たる金額なり、例へば學校、病院等の基本金の如し。
- 英
- Fund
- 独
- Fond
- 仏
- Fonds
基本財産
基本財産とは、これまた財産の一種別にして、即ち之より生ずる收益を以て、事業の維持費に對する財源として、積立てたる金錢其他の財産を云ふ、例へば市制第八一條に「市は其不動産、積立金穀を以て基本財産となし、之を維持するの義務あり」とあるは、これ其用例なりとす。
- 英
- Fundamental property
- 独
- Grundkapital
- 仏
- Propriété fondamentale
欺罔取財
(ぎまうしゆざい)欺罔取財は、詐欺取財の一種にして、人を疑惑、若くは錯誤に陷らしめ、依つて以て其財物、又は證書類を騙取する罪を云ふ、即ち欺罔取財たるには、□一人を疑惑、若くは錯誤に陷らしむることを要す、疑惑錯誤を生ぜしむるの手段としては、現存の事實を隱蔽して其人を欺き、又は虛妄の事實を信ぜしむべく、誘導的方法を試むるが如きこれなり、此罪は、必ず事實を誤らしむることを必要とするを以て、意見を陳述したるもの、或は未來の事實に對する豫想として陳述したるものは、縱令その陳述が詐欺的心事に出でたりとするも、犯罪を構成するものにあらず、されど疑惑、又は錯誤に陷らしむる方法に出でたる以上は、單に其言語を以てしたると、文書又は動作を以てしたるとを問はざるなり、但し消極的行爲、即ち單に沈默に止るものは、其事實の眞實ならざることを知りて爲したるときと雖も、此罪を構成するものにあらず、□二依つて財物等を騙取したることを要す、本罪の目的たる財物は、その有形無形を問はず、一切の財物を包含し、證書類を騙取するも、なほ本罪を構成するものとす、彼の竊盜の罪と異る點なり、而してその所爲は騙取、即ち詐欺の手段を以て、財物を奪取するに依りて成立するものをり、唯時としては、其實際の被害者と、欺罔せられたる人を異にすることあり、欺罔取財に對する刑罰は、二ケ月以上四年以下の重禁錮、四圓以上四十圓以下の附加罰金とす、本罪を犯すに當りて官私の文書を僞造し、又は之を增減變換したる者は、文書僞造罪の各本條に照らし、重きに從つて處斷せらるるものとす、終りに刑法の詐欺取財罪の分類を擧げんに、現行法は實に、□一欺罔取財、□二恐喝取財、□三知慮淺溥、又は精神錯亂を利用して、財産を授與せしむる罪、□四販賣交換に際し、その性質分量を僞りて人に交付する罪、□五冐認罪、□六凖冐認罪の六罪を包含するものとなす、故に欺罔取財は、この一種なりと云ふべし。(刑二四六條乃至二五一條)
- 英
- Guilty of swindling
- 独
- Bekommen vom Betrug
- 仏
- Infraction d'escroquerie
期滿得免
(きまんとくめん)期滿得免とは、一定の義務を負擔する者が、法令に規定せる一定の期間を經過したるがため、其義務の負擔を免るることを云ふ、再言すれば、時效其他法令の規定に依り、其履行すべき義務の期滿免除を得ることを云ふなり、市制第一〇二條第二項に、「本條に記載せる徵收金の追徵、期滿得免云々」とあるは、是其用例なりとす(期滿免除參照)
- 英
- Prescription of duties
- 独
- Pflichtsverjährung
- 仏
- Prescription de devoirs
期滿免除
(きまんめんじよ)舊刑に所謂期滿免除とは、犯罪人が法律に定めたる或期間、刑の執行を遁れたるがため、其執行を免除せらるる事を云ふなり、期滿免除を得る期間は、各犯罪に對する刑罰の種類に依りて同じからず、即ち□一主刑は、死刑三十年、無期徒流刑二十五年、有期徒流刑二十年、重懲役、重禁獄十五年、輕懲役、輕禁獄十年、禁錮罰金七年、抅留、科料一年、□二附加刑の内、附加罰金は、主刑の期間と同じく、沒收は禁制品を除き、五年を經れば期滿免除を得べきも、剝奪公權、停止公權、及び監視は、期滿免除を得ざるものとす、而して此期間を計算すべき起算點は、對審裁判の場合に在りては裁判確定の後、犯人が刑の執行を遁れたる日より之を起算すべきものにして、缺席裁判の場合に在りては、其裁判宣告の日より之を起算すべきものとす、此期間は、間斷なく經過するを要するものにして、若し犯人が逃走中逮捕の令狀を發し、又は一たび逮捕せられたるときは、茲に中斷を來すものにして、其以前に經過したる期間は、之がために無效となる、隨つて此期間は、其最後の令狀を發したる日、若くは再度に逃走したる日より、更に起算すべきものなり、此期滿免除なる制度を設くるの理由に就きては、議論少なからず、或學者は、期滿免除は刑罰權の基本に出づとし曰く、抑も刑罰權は、社會の正義と利益とを以て其基本となすものなり、期滿免除は、正義の方面より論ずるときは、到底これを設くるの理由を見ずと雖も、利益の方面より見るときは、大に其理由あり、蓋し犯人に刑を科して、久しく之を執行せざるときは、犯罪事實は、漸く社會の遺忘する處となり、刑の目的たる威赫の必要も、亦自ら消滅すべく、隨つて社會の刑罰權も、之を施すべき必要なし、故に一定の期間を經過したるきに於て、犯人に對する刑罰を免除するは、これ社會が犯罪の宣告を遺忘したりとの推定に基きたるものと云ふべし云々と、元來期滿免除なる制度は、一種の時効にして、時の經過が、法律の上に及ぼす效果と云ふべく、果して然らば、本説は其當を得たるものといはざるべからず。(舊刑五八條乃至六二條參照)
- 英
- Prescription of penalties
- 独
- Verjährung
- 仏
- Prescription de peines
機密
(きみつ)機密とは、機務に關する秘密を指し、例へば軍事上の機密と云ふときは、軍事上に關する機務に於ける秘密と云ふに同じく、或る必要上、或事項を當局者以外に知らしめざることを云ふ、刑法八五條二項に「軍事上の機密を敵國に漏泄し云々」とあるは其用例なり。
- 英
- Secret
- 独
- Geheimnisz
- 仏
- Secret
機密事項
機密事項とは、即ち機務に關し秘密を要する事項の義なり。
- 英
- Secret article
- 独
- Geheim-artikel
- 仏
- Article secret
機密文書
機密文書とは、即ち機務に關する秘密を要すべき事項を記錄したる文書の義なり、内閣所屬職員官制第二條に、「書記官長は、内閣總理大臣の命を受け、機密文書を掌理し云々」とあるは、其用例なりとす。
- 英
- Secret document
- 独
- geheime Urkunde
- 仏
- Document secret
義務
(ぎむ)義務とは、權利に對する觀念にして、所謂權利の對抗を受くる抅束を意味するなり、隨つて權利の性質、種類、及び其發生消滅の原因の異るに依り、義務もまた異るものとす、されば權利の觀念を理解すれば、自然義務の觀念を了得し得べきを以て、權利の説明を參照すべし。
- 英
- Duty, obligation
- 独
- Pflicht, Obli-gation
- 仏
- Devoir, obligation
義務教育
義務教育とは、國家が父母の義務として、學齡兒童を尋常小學校に在學就業せしめ、教育するを云ふ、即ち國家が、其國民の或る一定の年齡に於ける者を學齡兒童となし、之等の者に對し、強制的に施す所の教育にして、學齡兒童の父兄たり、保護者たる者は、尋常小學の教科を終るまで、其學齡兒童を就學せしむるの義務ある者にして、貧窮のため、又は其兒童の疾病、其他止むを得ざる事項ある時は、其旨を市町村長へ申立て、就學の猶豫、又は免除に就き許可を受くべき者とす。(小學校令二〇條乃至二一條)
- 英
- Compulsory education
- 独
- Zwangserziehung
- 仏
- Enseignement ob-ligatoire
義務者
(ぎむしや)義務者とは、一般に或義務を負擔する者を云ふ、即ち權利者の權利を對抗せられ、其抅束を受くる者を謂ふものとす。(公證人規則四四條)
- 英
- Obligator
- 独
- Schuldige
- 仏
- Obligé
禁壓警察
(きんあつけいさつ)禁壓警察とは、時に制壓警察とも云ひ、共に司法警察の別名にして、豫防警察に對するの語なり、即ち禁壓警察は、既發の犯罪を搜査し、犯罪人を逮捕して、安寧秩序を維持する警察なり、而して禁壓警察と豫防警察とを併せて、私安警察と稱し、私安、秩序、戎器の三警察を併せて、高等警察に對して普通警察と謂ひ、此兩者を併せて保安警察と稱するなり。
- 英
- Prohibition police
- 独
- Pro-hibitriumpolizei
- 仏
- Police de l'interdic-tion
近海航船
(きんかいかうせん)近海航船とは、船舶檢査法施行細則に定められたる近海航路を航行する船舶にして、船舶檢査法に依りて、檢査を受くべき船舶の一種別なり、同法第二條に「此法律に依り檢査を受くべき汽船は、遠洋航船、近海航船、沿海航船、平水航船の四種とし云々」とあるは其用例なりとす。
- 英
- Coasting vessel; home-trade or short-sea-going vessel
- 独
- Küsten-schiff
- 仏
- Navire cabotant
近海航路
近海航路とは、東經百十三度より同百五十七度に至る間、及び北緯二十一度より同五十二度に至る總内に於ける船舶航路を云ふ。(船舶檢査法施行細則一五條)
- 英
- Coasting line
- 独
- Küsten-schiffslinie
- 仏
- Ligne cabotante
銀行
(ぎんかう)銀行は、信用を基礎として、公衆の餘金を吸收し、之を巧に運用し、預金に對して支拂ふ所の利子と、運轉資本に對して收得する所の利潤との差額を利得となすものを謂ふ、銀行條例に依れば、銀行は如何なる名義を以てするに拘らず、公開したる店舖に於て、營業として證券の割引を爲し、爲替事業を爲し、或は預金及貸付を併せ爲すものを云ふと、之銀行を具體的に定義したるものにして、これによりて、質屋の如き一種の金融機關なるも、單に動産抵當貸をのみ爲す者と區別したり、銀行は之を別ちて、普通銀行、及特種銀行となし、特種銀行を別ちて、□一中央銀行とは、一國金融機關の中樞として、兌換券發行の特權を有し、國庫金取扱の任等に當る銀行にして、我國に於ては、日本銀行即ち是なり、□二特殊銀行とは、或る特種の目的を以て、國家の賦與せる特權の下に設立せらるる銀行を總稱す、例へば外國爲替の衝に當り、日本銀行と内外相應じ、以て金融の流通を助くる所の橫濱正金銀行の如き、又内地農工業の改良發達を扶くるの目的を以て、勸業債券發行の特權を有し、專ら長期貸付法を行ふ、日本勸業銀行の如きこれなり、□三貯蓄銀行とは、複利の方法を以て、專ら零碎の預金を取扱ひ、國家有用の資金を求めん爲に、國民の勤儉貯蓄を奬勵するの目的を以て、設立する銀行を云ふ。(銀行條例一條)
- 英
- Bank
- 独
- Bank
- 仏
- Banque
銀行業
銀行業とは、即ち銀行營業の謂ひにして、預金、手形割引、貸付、爲替等の營業を云ふなり、營業税法第一條第二號に「銀行業」とあるは、その用例とす。
- 英
- Banking
- 独
- Bankiergeschäft
- 仏
- Banque
銀行券
(ぎんかうけん)銀行券とは、銀行に於て、何時にても、之が持參人の要求に應じ、額面記載の金額を支拂ふ所の一種の約束手形にして、英國に於て金鍛治が預金者に對し、預り證を交付したる其保管證券に起源する者也と、以上は一般銀行の發する者なるも、我國に於ては特種の銀行券あり、即ち日本銀行、及び臺灣銀行か發行する兌換券にして、此種の銀行券は、法律の力により、打步なく、公私の支拂に通用せらるもの也、恰も兌換紙幣の如き效用を有す。(日本銀行條例及臺灣銀行條例參照)
- 英
- Bank bill
- 独
- Banknote
- 仏
- Note de banque
銀行紙幣
銀行紙幣とは、國立銀行が、國立銀行條例に依りて發行せる紙幣なり、明治二九年法律第八號に依り、同三二年二月九日限り廢止せられたり。
- 英
- Bank note
- 独
- Banknote
- 仏
- Billet de banque
銀行條例
(ぎんかうでうれい)銀行條例は、明治二三年八月法律第七二號を以て公布せる條例にして、此條例の内容を要言すれば、銀行事業を營まんとする者は、其資本金額を定め、地方長官を經由して、大藏大臣の認可を受けざるべからず、若し此認可を受けずして銀行事業を營みたるときは、其營業主、會社の業務執行社員、及び取締役、外國の會社なるときは其代表者は、十圓以上五百圓以下の過料に處せらるるものなり、又銀行は、半ケ年每に營業の報告書を調製し、地方長官を經由して、大藏大臣に送付し、且つ財産目錄、及び貸借對照表を調製して、新聞紙に廣告するか、或は其他の方法を以て之を公告するを要す、この報告書を提出せず、若くは公告を爲さず、又は其報告書中、若くは公告中に、詐僞の記載をなし、其他事實を隱蔽したるときは、營業者、會社の業務執行社員、取締役、外國會社の代表者は、五圓以上五百圓以下の科料に處せらるべし、大藏大臣は、銀行營業の監督上何時たりとも、地方長官其他の官吏をして、其業務の實况、及び財産の現况を檢査せしむることを得べきものにして、銀行は其檢査を拒むことを得ず、若し之を拒みたるときは、前記の營業者其他の役員は、十圓以上五百圓以下の過料に處せらるるものなり、銀行の營業時間は、午前九時より午後三時迄とし、營業の都合に依りては、其時問を增加するを妨げず、其休業日は、大祭日、日曜日、及び銀行所在地に於ける定例の休日の外は、休業することを得ざるものにして、若し已むを得ざる事故に依りて休業するときは、地方長官に屆出で、豫め新聞紙、其他の方法を以て之を公告せざるべからざるものとす、要するに銀行なるものは、經濟上に於ける重要なる金融機關なるを以て、若し銀行が其營業方針を誤りて、破産をなしたるとき、其他營業者が不正の取引をなすが如き事あらば、其結果として、忽ち經濟界を攪亂し、商工業の發達を沮害すること尠少ならず、故に其監督上斯くは嚴重の規定を設けたるものとす。
- 英
- Bank act
- 独
- Bankgesetz
- 仏
- Règle de la banque
銀行條例施行細則
銀行條例施行細則は、明治三六年五月大藏省令第七號を以て發布せられたる條例にして、前記銀行條例の施行に關する細則を定めたるものなり。
- 英
- Regulation of execu-tion of bank regulation
- 独
- Ausführungs-regulierung des Bankgesetzes
- 仏
- Règle-ment de l'exécution des affaires de banque
義務額
(ぎむがく)義務額とは、或義務の目的たるものの確定量を云ふ、例へば租税の賦課、又は個人間の契約等に依り、或人が義務として納付し、又は支拂ふべき一定額の金錢、其他の代替物を謂ひ、其負據せる金錢其他の代替物の一定量は、即ち其人の負擔せる義務額と云ふが如し、市町村立小學教員俸給令第一條に「義務額」とあるはこれ其用例とす。
- 英
- Amount ef duty
- 独
- Pflichts-summe
- 仏
- Somme de devoir
緊急命令
(きんきうめいれい)緊急命令は、天皇が憲法の條規に依り、帝國議會閉會の場合に於て、公共の安全を保持し、又は災厄を避くるため、緊急の必要に由り發せらるる勅令にして、法律と同一の効力を有するもの也、元來法律と命令とは、憲法上二者規定の内容に於て、〓に侵すべからざる範圍を有す、又憲法上命令を以て、法律を廢止變更することを許さず、故に命令を以て立法事項を定め、又は命令を以て法律を癈止、變更するは明に違憲のことたりとす、然るに緊急命令は、此憲法上の原則に例外をなすものにして、左の條件を具備するに於ては、立法事項を命令を以て定め、之を公布施行するを得るものとせり、而してこれを發し得る場合が、緊急の必要ある場合に限るを以て、學者講學上の便宜より、この命令を緊急命令と稱す、本命令を發するの要件は、□一帝國議會の閉會中なること、隨つて議會開會の場合には、緊急命令を發する事を得ず、然れども憲法第七〇條に規定せる、財政に關する非常處分と異り、議會閉會の場合なる以上は、議會を召集する能はざる故障あるを必要とせず、財政上の非常處分は、臨時召集する暇なきときに限り、此處分を行ふことを得るものなるも、緊急命令の場合には、斯かる條件を必要とせざる也、□二公共の安寧を保持し、又は災厄を避くるの目的に出づること、即ち消極的に安寧に對する危害を防衞し、又は既に發生したる災厄を除去する場合に限り、此緊急命令を發することを得るものにして、積極的に臣民の幸福を增進するが如き目的のためには、之を發することを得ざるなり、□三緊急の必要ある場合なること、緊急の必要とは、事情の極めて切迫せるものあるにより、次の會期を待ちて議會の協賛を經、法律を發布する暇なき場合を云ふ、以上の三要件を具備ずるときは、緊急命令換言すれば法律に代るべき命令を發することを得るなり、即ち此命令は、法律と同一の効力を有するものなるを以て、憲法上の立法事項を定むることを得るのみならず、又此命令を以て、既定の法律を癈止變更するも妨げざるものとす、但し憲法を變更するは、一種の法律變更と云ふことを得べきも、元來緊急命令なるものは、憲法の規定上之を發することを得るに過ぎずして、憲法の條規を變更するには、同法第七三條に規定せる特別の手續を要するを以て、緊急命令を以て憲法を變更することを得ざるは勿論なりとす、緊急命令を發したるときは、政府は必ず次の會期に於て、之を帝國議會に提出せざるべからざるものにして、此場合に於ては、議會が緊急命令に對して承諾を與ふれば、依然として其效力を保持すべきも、之に反して若し不承諾を表したるときは、政府は必ず特別の廢止命令を發して、之を公布せざるべからざるものとす、但し議會が不承諾を與ふるも、緊急命令は當然其効力を失ふものにあらず、何となれば、議會は外部に對して、有効の意思を表示する權能を有せざるものなるを以て、緊急命令の癈止をして、一般國民に對し效力を有せしむるには、更に癈止の命令を發して、公布の手續をなさざるべからざればなり、政府は次の會期までに、緊急命令を癈したるときと雖も、猶此命令を議會に提出せざるべからざるものとす、憲法の規定によれば、之を次の會期に於て、議會に提出すべしとあるのみにて、次期議會開會前に癈止すれば、之を提出せずして可なりとの規定なきを以て、爾く解するを可とす、緊急命令の提出ありたるときは、議會は一面に於て、其緊急命令は憲法上の要件を具備せるものなるや、又憲法の實質に違反せざるや等の審査をなすと同時に、他の一面に於ては、此命令を將來に向つて、存續せしむるの必要ありや否やの點を審査し、其承諾不承諾を決定せざるべからず、緊急命令が議會の不承諾の結果として、政府の他の命令を以て癈止せられたるときは、前に此緊急命令に依りて廢止せられたる他の法律、又は命令は、其廢止と同時に再び效力を發生するに至るものと云はざるべからず、盖し廢止命令を廢止するは、其廢止命令に依りて廢止せられたる、前の命令を復活するの精神に出でたるものに外ならずと見るべければなり、次に緊急命令を廢止せる命令の效力は、既往に遡るや否やと云ふに、緊急命令は、議會の承諾を條件として、效力を有するものにあらざるが故に、緊急命令の下に生じたる事件は、緊急命令癈止の後と雖も、其支配を受けざるべからず、即ち其効力は、緊往に遡らざるものと云はざるべからず、緊急命令は、前述の如く、全く法律と其效力を等しくするものなるを以て、或は法律又は法律に代るべき命令にあらざれば、之を廢止するを得ずとなすものあり、盖し憲法上臣民に與へられたる權利、又は自由は、法律若くは緊急命令を以てするにあらざれば、其圍範を伸縮するを得ず、然るに緊急命令を以て其範圍を減縮したる場合は、他の命令を以て其緊急命令を廢止するときは、即ち普通の命令を以て其範圍を伸張するものなり、換言すれば、普通の命令を以て、立法事項を侵す結果となるが故に、緊急命令を廢止するには、法律若くは法律に代る命令ならざるべからずと。(憲法八條參照)
- 英
- Urgent order
- 独
- Nothver-ordnung
- 仏
- Ordre urgente
義務共通
(ぎむきようつう)義務共通とは、民事訴訟上に於ける共同訴訟提起の一要件にして、即ち訴訟物上に數人が、共同義務者たる關係を有する場合を云ふ、斯くの如き共通の義務を生ずる原因は、或は法令の規定に因ることあり、若くは事物の性質に依ることあり、又は當事者の合意に依る場合あるも、其何れの場合を問はず、義務共通の地位に在る者に對して、債權者は、其數人の義務者を共同被告として、同時に起訴することを得るものとす、民事訴訟法第四八條第一號に「數人が訴訟物に就き、權利共通、若くは義務共通の地位に立つとき」とあるは其用例なり。
- 英
- Common obligation
- 独
- all-gemeine Obligation
- 仏
- Obligation Com-mune
金貨幣
(きんくわへい)金貨幣とは、主として金を材料として鑄造せられたる貨幣を云ふ、我國の金貨幣には、五圓、十圓、及び二十圓の三種あり、金貨幣の量目は、二十圓金貨、四匁四分四毛四とし、十圓金貨は其半量にして、五圓金貨は十圓金貨の半量とす。(貨幣法)
- 英
- Gold coin
- 独
- Goldmünze
- 仏
- Coin d'or
銀貸幣
銀貨幣とは、主として銀を材料として鑄造せらる貨幣を云ふ、我國銀貨幣は、五錢、十錢、二十錢、及び五十錢の四種あり、本位貨幣に對して、補助貨の位置を有す、銀貨幣の量目は、五十錢銀貨は三匁五分九厘四毛二とし、二十錢銀貨は一匁四分三厘七毛七にして、十錢銀貨は七分一厘八毛八なり、而して其品位は純銀八百三分に對し銅二百分の割合なりとす。
- 英
- Silver coin
- 独
- Silbermünze
- 仏
- Coin d'argent
禁錮
(きんこ)禁錮は、輕罪の主刑にして、之を分つて重禁錮、及び輕禁錮の二種とす、禁錮刑に處せられたる被告人は、禁錮場に留置し、輕禁錮は定役に服することなきも、重禁錮は定後に服せざるべからず、禁錮刑の刑期は重輕を分たず、十一日以上五年以下にして、減じて十日以下に及ぶときは、抅留に處せられ、加へて七年を越ゆることなし、罰金を言渡されたる者にして、裁判確定の後一ケ月内に完納せざるときは、一圓を一日に打算して輕禁錮に換刑せらるべきも、此場合には二年を過ぐることなし、但し禁錮の刑期内に、罰金を納めたる時は、其經過したる日數を控除して禁錮を免ぜらるべし、又禁錮の刑に處せられたる者は、別に宣告を用ひず、現任の官職を失ひ、及び其刑期間公權を行ふ事を停止せらるべきも、罰金及監視は、法令に特別の規定あるにあらざれば、當然附加せらるることなし、禁錮の刑の加減は、其刑期の四分の一を以て一等とし、又禁錮の刑に處せられたる者、七年間間斷なく刑を遁るるときは、期滿免除を得るものとす。(舊刑二四、二七條等參照)
禁錮場
禁錮場とは、禁錮の刑に處せられたる者を留置する所にして、即ち監獄の一種なり、刑法第二四條に「禁錮は禁錮場に留置し云々」とあるは、其用例なり。
- 英
- Prison
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Prison
金庫規則
(きんこきそく)金庫規則は、明治二二年一二月勅令第三六號を以て發布せられたるものなり、此規則に依れば、金庫には中央金庫、本金庫、及び支金庫の三種あり、何れも大藏大臣の管理に屬し、國庫に於て保管出納する現金を取扱ふ所なり、中央金庫は、之を東京に置き、本金庫及支金庫は、之を地方に置き、中央金庫は本金庫を統轄し、本金庫は、支金庫を統轄するものとす、中央金庫は本金庫、及び支金庫に於ける現金の保管出納は、日本銀行之を取扱ひ、政府に對し、一切の責任を有するものにして、大藏大臣は、何時にても檢査官吏を派し、日本銀行の本支店、及び出張店、代理店に於ける金櫃帳簿は勿論、銀行全部の金櫃帳簿を檢査し得るものなり。
- 英
- Reggulation of Safe
- 独
- Fiskusregel
- 仏
- Règles du coffre-fort
金庫檢査規程
金庫檢査規程は、明治二二年一二月大藏省令第三六號を以て發布せられたるものにして、金庫の檢査に關する時期、及び其手續方法等を規定せるものなり、此檢査に定時及臨時の二種あり、定時檢査は、每年三月三十一日、當日の出納を結了せし後直に檢査を行ひ、臨時檢査は、金庫出納役及其代理人交替するとき、若くは大藏大臣の必要と認むるときに於て、之を行ふものとす。
- 英
- Rules of inspection of safe
- 独
- Besichtigungsregel des Fiskus
- 仏
- Règles de l'inspection du coffre-fort
金庫事務
金庫事務とは、金庫に於て取扱ふ現金の保管、及び出納に關する事務也、明治二六年一一月大藏省令第三九號金庫出納事務規程第一條に依れば、金庫事務には、歳入部、歳出部、各特別會計の歳入歳出部、雜部、及び預金部の五部ありて、金庫の出納は、大藏大臣の指定せる開庫時間内之を取扱ふべきものなることを規定せり。
- 英
- Safe business
- 独
- Fiskus-geschäft
- 仏
- Affaires du coffre-fort
禁獄
(きんごく)禁獄は、所謂國事に關する重罪主刑の一種別にして、之を分つて重禁獄、及び輕禁獄とす、禁獄の刑を受けたる者は、内地の監獄に收容せられ定役に服することなし、其刑期は、輕禁獄六年以上八年以下、重禁獄九年以上十一年以下にして、其加減は、重禁獄の加重は有期流刑となり、其輕減は輕禁獄以下となり、又輕禁獄の加重は重禁獄以上となり、其輕減は二年以上五年以下の輕禁錮となるなり、而してなほ輕減すべきときは、禁錮の加減例に依るべきものとす、禁獄の刑は、重罪刑なるを以て、此刑を受けたる被告は、別に宣告を用ひず終身公權を剝奪せらるべし、此刑の期滿免除は十年とす。(舊刑二三條、三二條參照)
- 英
- Imprisomnent
- 独
- Gefangenschaft
- 仏
- Emprisonnement
禁止期限
(きんしきげん)禁止期限とは、法令の規定を以て人民に對し、或行爲を禁止したる場合に於ける期間の滿了期を云ふ、又時としては、禁止中の期間を指して云ふことあり、明治二九年法律第八〇號(清國及韓國在留帝國臣民取締法)第八條に、(前略)「禁止期限を犯したる者は云々」とあるこれ其用例なりとす。
- 英
- Prohibition term
- 独
- Ver-botstermin
- 仏
- Délai de l'interdiction
近親主義
(きんしんしゆき)近親主義とは、皇位の繼承、又は私人の相續に關し、其承繼者の順位を定むる場合に於て、前君主又は被承繼者と親等の最も近き者、即ち血緣の最も近き者を以て、其承繼又は相續を爲さしむる主義を云ふ、而して此場合に於て、同親等者數人あるときは、男子、及び年長者を先きにするを例とす。
禁制
(きんせい)禁制とは、なほ禁止、又は制限と云ふが如く、人民に對し、法令を以て或行爲、又は或物の所持を禁止、制限する場合に用ふる語なり、例へば阿片烟を輸入し、又は製造し、若くは販賣するが如きは、刑法に於て禁制する處のものなり、刑法第四三條第一號に「法律に於て禁制したる物件」とあるは、其用例なり。
- 英
- Prohibition
- 独
- Verbot
- 仏
- Prohibition
金錢
(きんせん)金錢とは、貨幣の一定の數量を指示するものなり、抑も貨幣には、取引上の習慣に依りて定るものと、法令に依り貨幣として強用通用の效力を付したるものとあり、凡て法令上金錢と稱するは、此第二の貨幣にして、其一定の數量を意味したる語なりとす、民法第四〇二條に、「債權の目的が金錢なるとき云々」とあるは、即ち此意味に於て用ひられたるものなり。
- 英
- Money
- 独
- Geld
- 仏
- Argent
金錢債務
(きんせんさいむ)金錢債務とは、金錢を給付すべき債務と云ふの義なり、即ち債權の目的が、金錢なる場合に於ける債務なり、債務者が金錢を給付すべき場合に於ては、債務者は苟も通貨なる以上は、其種類の如何を問はず、之を以て債務の辨濟に充つる事を得べし、然れ共債務者が、特殊の通貨を給付すべき場合に於ては、自由の撰擇を爲す能はざるを以て、必ず特殊の通貨を撰びて辨濟を爲すべく、これ債務者が、債務契約を訂約したる當初の目的と云ふべければ也、されど辨濟期に於て、其特殊の通貨が、強制通用の效力を失ひたる場合には、債務者は、他の通貨を以て辨濟を爲し、其債務を免るるを得べし、此場合に其特殊の通貨が強制通用の效力を失ひたるによりて、目的物の滅失して履行不能となりたりとの理由を以て、其債務を免るること能はざると同時に、債權者は、また他の通貨の辨濟を拒むこと能はざるものとす、然れども債務者が、或特殊の通貨を給付すべき場合に於て、其特殊の通貨を或一種の物の如く特定したるときは、金錢債務、即ち通貨を以て、目的とすを債務と云ふべからずして、或一種の物を以て目的と爲したる債務と云はさるべからざるに至らん、此場合には、縱令其特殊の通貨が、辨濟期に至り、強制通用の力を失ふも、債務者は給付の不能として、其債務を免るるを得ざるなり、次に當事者が外國の通貨を以て債務の數額を指示したる時は、債務者は、其債務の履行地に於ける爲替相場に依りて、外國の通貨を日本の通貨に換算して、其辨濟を爲すことを得るものとす、例へば債務者が米貨五十弗の債務を負擔したる場合に、辨濟期に於ける爲替相場が、本貨一弗我二圓なるときは、債務者は此割合にて計算したる金額、即ち我一百圓を辨濟すれば、其債務を免るるが如し、但し此場合に、若し特に米國の或通貨を以て辨濟すべきものと定めたるときは、其特に指定せる米國の通貨を以て辨濟すべきこと勿論にして、若し其通貨が辨濟期に於て、強制通用の效力を失ひたるときは、他の米國の通貨を以て辨濟を爲し得ることは、叙上の日本通貨の場合と異ることなし、金錢債務は、通常利息を伴ふべきものにして、若し當事者が其利息の割合、卽ち利率を定め置かざりし場合には、民法の規定に從ひ、年五分の利率を以て之を支拂ふべきものとす、之を法定の利率と云ふなり。(民四〇二條乃至四〇四條)
禁治産
(きんぢさん)禁治産とは、一私人の意思能力不完全なる者を保護する、民法上の制度なり、民法第七條に依れば「心神喪失の狀况に在る者に對し、又裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、戸主、後見人、保佐人、又は檢事の請求に依り、禁治産の宣告を爲すことを得」とあり、即ち此制度は白痴、瘋癲等に依りて通常自己の心神を喪失し、其行爲の利害關係を辨別すること能はざる者を保護するが爲に、設けられたる制度にして、之等の者が爲したる行爲は、其財産に關するものと否とを問はず、凡て之を取消し得るものとす、盖しこれ等意思能力の不完全なる者が爲したる行爲に對し、普通の健全なる意思を有する者の爲したる行爲と等しく、一々其責に任せしむるときは、啻に其者の不幸と云ふべきのみならず、國家が人民を保護する上より見るも、また公平を缺くものあるべきを以て、此制度を設けたるものとす、されど之等の者の行爲を悉く無效のものと定むるときは、反つて其保護厚きに失して、之等の者に不便を與ふること多きを以て、斯くは其行爲を取消し得べきものと定め、之を取消すと否とを、その保護者の利害判斷に任じ、以て其保護の全きを期したるなり、而して之等の者が禁治産者たるには、裁判所の宣告を待つて、始めて一般に對し效力あるものにして、此宣告を請求し得る者は、之等の者の保護の位地にある配偶者、四親等内の親族、戸主、後見人、保佐人、及び國家の公益上一私人の利害關係に關渉して、私權保護の職權を有する檢事とす、此請求は、本人の普通裁判籍を有する地の區裁判所に申立づべきものにして、其申立には、原因たる事實、及び證據方法を表示し、書面又は口頭を以て、之を爲す事を得るなり(妻が夫の禁治産の申立を爲す場合には、夫の許可を要することなし)裁判所は之等の人々より、治産の禁を申立たるときは、之を檢事に通知し、申立に係る事實、及び證據方法を斟酌し、職權を以て本人心神の狀况に關する探知、及び必要と認むる證據調をなすべきものにして、或は本人に關する醫師の診斷書の提出を命じ、或は本人の健康に害なき限り、鑑定人の立會を以て之を訊問し、或は證人を召喚して其申立の當否を審査するものとす、而して此宣告は、本人心神の狀况に就き、鑑定人を訊問したる後にあらざれば、之を爲さざるものにして、其手續は、公行せざるを普通とす、斯くて裁判所は、之等の手續を經て、其申立を理由あるものと認むるときは、直に決定を以て治産を禁ずるの宣告を與へ、職權を以て之を其申立人、檢事、及び本人の法定代理人、又は法律に依り後見人となるべき者に送達し、之と同時に其の宣告を公告するものにして、此宣告に對して本人なる禁治産者は、其宣告を知りたる日より一ケ月内に、又禁治産者の申立をなすことを得る者は、其決定が效力を生じたる日、印ち其送達を受けたる日より一ケ月内に、其宣告をなしたる區裁判所の所在地を管轄する地方裁判所へ、訴を以て不服を申立つるを得べく、裁判所が此訴を理由ありと認むるときは、其宣告を取消すべきものとす、之に反して裁判所が禁治産の申立を却下したるときは、申立人、及び檢事は却下の決定に對し、即時抗告を爲すことを得るなり、次に禁治産の效力は、之を受くる者に特別の保護を與ふるものなると同時に、他の一方に於て此者と法律行爲をなしたる相手方は、其取消に依りて、往々不識の損害を被るのみならず、禁治産者本人も亦自ら其行爲の自由を抅束せらるるものなれば、苟も禁治産の原因にして消滅し、全然其心神を回復したる以上は、決して一般の無能力者たらしむべきにあらず、然れども既に裁判所の宣告に依りて禁治産者たる者が、其心神を回復したるの故を以て、當然能力者に復すとなすに於ては、果して其者が何時能力を回復せしや、其時期全く不明了にして、之がために種々の弊害を釀し、徒に其紛擾を生ぜしむべき虞あり、故に禁治産者が其能力を囘復するには、最初請求を爲したる者、又は禁治産の請求を爲すことる得る者の申立に依り、裁判所の取消の宣告を俟つて、初めて效力あるものと定められたり、而して此申立を却下したる決定に對しては、訴を以て不服を申立ることを得るものとす、禁治産の宣告、及び其取消の申立に關する手續の費用は、宣告又は取消ありたる場合には、禁治産者の負擔すべきものにして、其他の場合は、申立人の負擔とし、檢事の申立に係る場合には、國庫の負擔とす。(人訴手續法四〇條乃至六九條、民七條乃至一〇條)
- 英
- Incompetence
- 独
- Entmündig-ung
- 仏
- Incompétence
禁治産者
禁治産者とは、禁治産の處分を受けたる本人を云ふ、即ち心神喪失の狀况に在る者にして、其配偶者、四親等内の親族、戸主、後見人、保佐人、又は檢事の申立に依りて、裁判所に於て禁治産者なりとの宣告を受けたる者なり、心神喪失の狀况に在るとは、時々本心に復することあるべきも、槪して喪失の狀態に在る者を云ふものとす、若し間斷なく其心神を喪失せるに於ては、假令如何なる行爲を爲すも、其行爲は常に其基本たる意思の存在を缺くものなるを以て、當然無效にして、斯かる者に對しては、別に禁治産の宣告を爲すの必要なきなり、唯時々其本心に復することある者が、其本心に復したる時に於て爲したる行爲は有效にして、其喪失の狀態に於ける間の行爲は、無效なりと云ふを正當とするも、其或行爲は果して本心に復したる時の行爲なるや、或は又其心神を喪失せる時の行爲なるやを判別すること頗る困難にして、其結果各種の弊害を釀すの虞あり、且つ一々其行爲に對し責任を論ずることとせば、本人に於て之を證明するを要すべく、元來心神喪失の狀况に在る者なれば、其證明を爲し能はざる場合多くして、隨つて意外の不利益を被るべきは當然なり、斯くの如きは、事情甚憐むべきものあるにより、法律は禁治産なる制度を設けて、特別の保護を與へ、禁治産者が爲したる行爲は、常に取消し得べきものとなすと同時に、禁治産者には後見人を附し、其者のために利害を判斷し、其保護監督をなさしむるものとせる也。(前項禁治産參照)
- 英
- Incompetent person
- 独
- Unvermögender
- 仏
- Interdit
禁令
(きんれい)禁令とは、國家が、一私人に對し、或行爲をなすことを禁ずる法律、又は命令を云ふ、即ち不行爲を命ずる法規、又は處分なり、例へば酒造税法第一七條に「酒類を製造する者は、納税保證として、保存の義務を有する酒類は、之を他人に讓渡し、質入し、消費し、又は製造場外に移出することを得ず」とあるが如きは、酒造者に對する一種の禁令にして、同法第二八條に「第七條第一八條の禁令を犯したるとき云々」とあるは、これ其用例なり、而して通常禁令には、其違反に對する制裁を伴ふものとす。
- 英
- Interdict
- 独
- Interdikt
- 仏
- In-terdit
金祿公債證書發行條例
(きんろくこうさいしようしよはつかうでうれい)明治九年八月第一〇八號布告を以て公布せられたる條例にして、其内容は、從來家祿及賞典祿は、永世或は年限を定めて下賜するの制なりしを、此條例を以て改正を爲し、賞典祿は家祿に合算して元高となし、祿の種類、及び金祿元高に依り、年分、及び利子の割合を定め、公債を以て一時に下渡すの方針を取りたるものなり、此公債證書の元金は五ケ年間之を据置き、六年目より向ふ三十ケ年間に償却すべきものなることを規定せり。
- 英
- Issue regulation of capitalized Pension bonds
- 独
- Aus-gebungsregulierung der kapitalisierten Pensionsschuldscheine
- 仏
- Règles de la publication des bons de pension
記名
(きめい)記名とは、なほ署名と云ふが如く、人の姓名を記することとを云ふ、また時としては、凡て物の名稱を記する場合に用ふることあり、貴族院伯子男爵議員選擧規則第一一條第二項に「其表面に記名云々」とあるは、即ちこれなり。(手署名及署の部參照)
- 英
- Signature
- 独
- Signatur
- 仏
- Signature
記名式
記名式とは、證券又は投票等の記載事項に關する一方式にして、權利者の姓名、又は其商號を記載する書式を云ふものとす、例へば投票用紙に、投票者の姓名を記載するは、記名式の投票にして、株券、債券等に、株主、又は債權者の姓名を記載するは、記名式株券、又は記名式證券と云ふが如し、商法第四一五五條に「爲替手形は、其記名式なるときと雖も云々」とあり、これ其用例なり。
- 英
- Registered system
- 独
- Namen-system
- 仏
- Système enregistré
記名爲替手形
(きめいしきかわせてがた)記名爲替手形とは、所謂記名式にて振出したる爲替手形を云ふなり、即ち手形金額受取人の氏名を記載したるものとす、凡そ手形には、其受取人を指定するに四種の方法あり、□一單に「何某殿に御支拂被下度云々」との文言を記載するもの、上述記名式の手形之なり、□二「何某殿、又は其指圖人に御支拂被下度云々」との文言を記載するもの、之を指圖式の手形と云ふ、□三「何某殿、又は此手形持參人に御支拂被下度云々」との文言を記載するもの、之を記名持參式の手形と云ふ、□四單に「此手形持人に御支拂被下度云々」との文言を記載するもの、之を持參式の手形と云ふ、元來記名式なる文字を廣義に解すれば、第一の記名式を始め、第二の指圖式、及び第三の記名持參式の手形をも包含せしむる事を得べく、又之を狹義に解すれば、第一のものに限るべし、要するに記名式手形なる語は、無記名手形に對當するものにして、手形の記名式なると無記名式なるとは、其讓渡の場合に於ける方法を異にす、即ち無記名式の手形は、單に手形の交附のみにて、直に讓渡の效力を生ずるものなるも、記名式手形にありては、唯交附のみにては未だ讓渡效の力を生ずることなく、更に裏書の手續を爲して、始めて之を讓渡すことを得るものとす、而して持參式の手形は、總べて之を交附するのみにて、讓渡すことを得るものなれば、記名式なる文字を廣義に解したる場合と雖も、第三の記名持參式の手形は、無記名式の手形と同じく、唯之を交附するのみにて、讓渡の效力を生ずるものと云はざるべからず。(商四五五條參照)
記名約束手形
記名約束手形とは、記名式爲替手形と同じく、即ち記名式にて振出したる手形にして、手形面に受取人の氏名を記載したるものこれなり、而して裏書により又讓渡を爲し得ること、て記名爲替手形と異ることなし。(商五二九條)
記名株券
(きめいかぶけん)記名株券とは、記名式にて發行せる株券の義なり、即ち株券面に、株主の氏名を記載したるものなり、凡て株式は、市場に於て自由に賣買せらるるを原則とし、其讓渡を制限するは、寧る例外に屬す、隨つて特に其讓渡を禁ずる場合の外、株主は他の權利と均しく之を讓渡すことを得べく、且つ當事者間に在りては、契約と同時に、其權利を讓受人に移轉することを得るものなり、されど記名式の株券は、其讓受人の氏名、及び其住所を會社の株主名簿に記載し、同時に株券に其氏名を記載するにあらざれば、之を以て會社其他の第三者に對抗することを得ざるものとす、盖し株主は、株券に依りて其株式の所有を證し、會社は其株主名簿に依りて、何人が株主なるかを確定することを得るものなるが故に、株主變更の場合には、株券、及び株主名簿に其變更の旨を記載し、始めて會社、及び第三著に對して、株主變更の事實を證することを得べし、隨つて讓受人は此手續を履行するまでは、會社、及び第三者に對し、其株主たることを主張するを得ざるなり、記名式にて發行せる株券に對して、株金、全額の拂込ありたる場合には、會社に請求して之を無記名式となすことを得べし、これ株主をして、金融上の便宜を得るの途を與ふるものに外ならずして、又無記名式の株券は、何時にても更に記名式のものとなすを得るなり。(商一五〇條、及び一五五條參照)
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- Registered Share
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- Namen-aktienschein
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- Action enregistrée
記名券
記名券とは、記名式にて發行せる證券類を總稱するものなれども、特に記名式の株券に對して用ふることあり、例へば日本銀行條例第五條に「日本銀行の株券は、總べて記名券となし云々」とあるが如し。
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- Registerd instrument
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- Namen-urkunde
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- Document enregistré
記名公債
(きめいこうさい)記名式にて發行せる公債を云ふ、換言すれば、記名公債證書を以て表示せる公債と云ふに同じ、公債の記名式なると否とは、金融上大に其便不便を來すのみならず、或特殊の公債を除くの外、凡て市場に於て自由に賣買せらるるものなるを以て、普通の公債は、公債政策上無記名利札附にて發行するを通例とす、整理公債條例の規定に依れば、無記名公債證書を記名式に變換せんとする者は、戸長の奥書を請けたる請書に、其公債證書を添へ、日本銀行本支店、又は其代理店を經由して、大藏省に申出でざるべからず、又記名公債證書の賣買讓與を爲したるときは、双方連署の請求書に、其公債證書を添へ、日本銀行本支店、又は其代理店に差出し、名前の書換を請求することを要し、記名公債證書の所有者死亡したる場合には、其相續人請求書に、正當の相續人たることを證する戸長の奥書を得て、前記と同樣なる書換の手續を爲さざるべからず、若し死亡者の遺言に依りて、相續人以外の者が記名公債證書を讓受けたるときは、相續人ある場合には相續人、相續人なき場合には、死亡者の親戚二名以上を以て保證人と爲し、名前書換の手續をなすことを要するものとす、記名公債證書を紛失したる場合に、其屆出後に於て、一回の利拂ありたるときは、二名以上の保證人を立て、日本銀行本支店、又は其代理店を經て、大藏省へ代證書の下附を請求する事を得、又記名公債證書の所有者、身代限の處分を受けたる場合に、其處分に依りて之を引受けたる者は、其記名公債證書に、裁判所の證明書を添へて、前説書換の手續をなすべきものとす、以上の規定は海軍、軍事、事業、台灣事業の諸公債證書に準用せらるものとす。(整理公債條例一五條乃至一九條二四條)
記名債券
(きめいさいけん)記名式に依りて發行せる債權證書を云ふ、廣く債券と云ふときは、凡ての國債證券を始め、會社の社債券等をも包含するものとす、而して之等の債權を證する證券面に、權利者の氏名を記載したるものは、皆之を記名債券と云ふを得べし、通常無記名の債券、例へば貯蓄債券の如きものは、市場に於て自由に賣買せらるるものなれども、之に反して記名債券は、全く金融の手段とならざるにあらざるも、一般金融市場に於ける取引の目的物となることなし。
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- Registered bonds
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- Namenanleiheschein
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- Bon enregistré
記名證券
(きめいしようけん)記名證券とは、即ち記名式に依りて發行せる總べての證券を總稱するものとす、例へば記名株券、記名債券、其他記名の手形、保險等に關する各證券類是なり、又證券なる文字を一屑廣く解し、凡て證券印紙を貼用するものは證券なりと云ふときは、更に財産權に關係なき委任狀の如きものをも記名證券と云ふことを得んか、されど通常單に證券と云ふときは、凡て財産權に關する、權利義務を證明する證書類を指稱するものとす。
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- Registered document
- 独
- Namenschein
- 仏
- Document enregistré
記名證書
記名證書とは、記名證券に同じく、記名式にて發行せる財産權上の證書類を總稱するもの也、證券と云ひ證書と云ふも、唯其用語の上の相違にして、其實質に於ては異ることなく、共に同じく權利を證明する手段として用ひらるる書面に外ならず、強ひて之が區別をなさんと欲せば、即ち證券なる文字を記載せる者は、之を證券と云ふべく、證書なる文字を記載せるものは、之を證書と云ふべし、例へば國庫債券の如きものは前者に屬し、公債證書の如きものは後者に屬するなり。
- 英
- Registered document
- 独
- Namenschein
- 仏
- Document enregistré
記名社債
(きめいしやさい)記名社債とは、記名式の債券に依りて表示せられたる會社の債務と云ふ義なり、記名社債も亦他の權利と同じく、通常之を自由に讓渡すことを得るを原則とす、然れども會社、及び第三者に對抗する必要條件として、讓受人の氏名、住所を社債簿に記載し、且つ其氏名を債券面に記載することを要し、若しまた之を質權の目的と爲したるときは、社債の讓渡に關する規定に從ひ、質權の設定を會社の帳簿に記入するにあらざれば、質權者として會社、及び第三者に對抗することを得ざるものとす。(商二〇六條及、び民三六五條參照)
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- Registered Debenture
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- Namenobligation
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- Obligation enregi-strée
記名社債券
記名社債券とは、記名式に依りて發行せる會社の債務證書なり、換言すれば債權者の氏名を記載せる社債券を云ふものとす、社債券とは、會社の或債務を等分に分割したる、其一口の金額を表示せる證書なり。
記名投票
(きめいこうへう)投票權利者が、自己の投票權を行使する場合に、其投票用紙に氏名を記載して爲す投票の方法を謂ふ、元來投票とは、投選證票の意にして、或る者又は事を選定せんとする場合に爲す選定の一方法なり、例へば議員を選擧するが如き、又は其意見を表决する場合に、特定の用紙に何れを選むべきかを記載して、採决する方法を云ふ、此場合に、その用紙に投票者の氏名を附託するを記名の投票と云ひ、爾かせざるを無記名投票と呼ぶ、凡そ投票を以て事を決する場合に、記名投票に依るべきか、無記名投票に從ふを可とずべきかは大問題なり、記名投票は、投票者の責任を明にする上に於て、無記名投票に優るものなれども、現時の如く政弊甚しく、風儀宜からざるときに當つては、記名投票は、詐僞脅迫行はれ易し、故に現行の選擧法に於ては、多く無記名投票を採用するの傾を生ぜり、されど學理上に於ては、記名投票の正當にして、且つ理由あること明かなり、彼の所得税調査委員の選擧に於ては、此方法を採用せり。(所得税法一八條)
- 英
- Disclosed ballot
- 独
- Namen-wahlzettel
- 仏
- Scurtin révelé
享有
(きやういう)享有とは、或權利を享受し保有するの義なり、凡て權利は、國家が、其意思の發表たる法規を以て創定し、之を人民に賦與するものとす、隨つて一切の權利は、法規を以て其前提となし、法規を外にしては權利の存在あることなし、されば法規の側より見たる權利の賦與は、之を受くる者の側より見れば享有なり、從つて權利を享有せんには、法の保護を受くることを以て其要件となす、法の保護なき權利の取得は、之を享有と云ふを得ざること勿論なりとす、次に或權利を享有するには、其權利を享有し得べき能力あることを必要とす、例へば外國人の如きは、公法上の或權利を享有する能力を有せざるが如し。(民法一條參照)
次に享有能力も、また其目的たる權利と同じく、法規の認むる處の資格なるを以て、法規を外にして、之を論ずべからざるは言を俟たざるなり。(民一條二條)
- 英
- Enjoyment
- 独
- Genusz
- 仏
- Jouissance
享有能力
享有能力とは、法律上私人が、或權利を享受し、之を保有する能力を云ふ、換言すれば、自然人又は法人が或權利を享受し、其權利の主體として、法律上の保護を受くべき資格と云ふに異ならず、法律上或權利の主體として認めらるる資格を人格と云ふ、隨つて人格なき者は、權利の享有能力を缺くものとす、例へば昔時に於ける奴隷の如き是なり、然れども人格を有する者は、必ずしも一切の權利に對して、享有能力を有する者と云ふことを得ず、例へば外國人の如きは、公法上の或權利を享有する能力を缺く、享有能力と行使能力とは、また自ら區別あり、行使能力は、其享有せる能力を法律上有効に行使し得る能力なり、爰を以て享有能力は、苟も人格を有する者は、意思を缺く者と雖も、之を有し得るに反し、行使能力は、意思健全なる者にあらざれば之を有する能はざるなり、例へば私權の如きは、出生と同時に之が享有能力を認められ、且つ全く心神を喪失するに至るも、之を保有すと雖も、行使能力は、丁年即ち滿二十歳に達するまでは、之を認められざるを原則とす、丁年以後と雖も、意思の喪失と同時に之を失ひ、或は本人の身分、若くは健康上の事由によりて、之を制限せらるることあるものとす
- 英
- Capacity
- 独
- Rechtsfähigkeit
- 仏
- Cpacité de jouissance
強行
(きやうかう)強行とは、尚強制と云ふが如く、國家の權力を以て、其意に反し、或人の行爲の自由に制肘を加ふること也、例へば警察の如きは、其性質上強行的のものなり、若し安寧秩序を維持する上に於て必要なる限りは、之を強力に訴ふるも人民の行爲を節制し、以て國家の命令を推行するものなればなり。
- 英
- Enforcement
- 独
- Zwang
- 仏
- Force
強行法
強行法とは、法規の一種別にして、其性質上絶對の服從を要し、其適用を受くると否とを各人の自由意思に任せざる法規を云ふ、所謂任意法に對する區別にして、任意法とは、法律上一定の範圍を設け、其範圍に入ると否とは之を各人の自由意思に任じ、若し其範圍に入りたるときは、初めて其適用を受くる者とす、例へば民法、商法の如く、契約を結び、商取引をなすと否とは、各人の自由に存すれども、一朝之等の行爲をなしたるときは、其適用を受くるものこれなり、然るに刑法、租税法、若くは徵兵令の如きは、其適用を受くると否との自由を各人の意思に任ずることなく、苟も其國の臣民たり、又は其國權に服從する者に對しては、強制的に之を適用するものなるを以て強行法たり、或學者は、強行法を細別して、命令法、及び禁令法の二種となし、即ち或規定の命令を含むものを命令法となし、禁令を含むものを禁令法とし、命令法に支配せらるると、禁令法に支配せらるるとの間には自ら差異ありて、禁令法に違背する行爲は、槪ね無效なりと論せり、此區別は規定の實質より觀察したるものにして、この區別に從へば、民法又は商法と雖ども、一槪に之を任意法と云ふことを得ず、其規定にして命令、又は禁令を定むるもの、例へば何々すべしとか、何々するを要すとか、若くは何々せざるべからずと云ふが如き規定は、之を強行法と云ふべく、之に反して、何々することを得と云が如き規定は、之を任意法と云はざるべからず、隨つて以上二の説明とは、全く其區別の標凖を異にするものなりとす。
- 英
- Imperative law
- 独
- zwingendes Recht
- 仏
- Droit impératif
競合
(きやうがふ)同一の効力を有する二個以上の權利が、同一の目的物に共存する狀態を云ふ、□一競合たるには、同一の目的物の上に、二個以上の權利が存在することを要し、目的物を異にして存在する場合は、競合にあらず、□二同一の效力を有する二個以上の權利が、共存することを要す、其效力を異にする二個以上の權利が共存する場合、若くは同一の效力を有する二個以上の權利が、時を異にして存在せし場合には、縱令同一の目的物に關するときと雖も、之を競合と云ふを得ず、今競合の一例を擧ぐれば、茲に甲乙丙の三人ありて、同一の建物に就き、甲は其保存に關して生じたる債權を有し、乙は其工事に關して生じたる債權を有し、丙は其賣買に關して生じたる債權を有する場合には、即ち三種の先取特權が競合しなるものなり、斯くの如く同等の權利が〓に衝突して、一般の原則に從ひ、之を決定しがたき場合に、民法は特別の規定を設けて、各種の權利の間に於ける優先の順位を明定せり、即ち民法第三二九條以下先取特權の順位に關する規定の如きこれなり。
- 英
- Conflict
- 独
- Konkurrenz
- 仏
- Conflit
競業禁止
(きやらげふきんし)競業禁止とは、即ち營業の競爭を禁止する義にして、例へば或市が其市内に於ける或會社に對し、或營業の獨占を許可したる場合に、他の會社に對して、之と同一の營業を許可せざる如きは、之を競業禁止と云ふことを得ん、されどこれを狹義に解するときは、法律が或人に對し、其營業上特別の關係を有する他人と、同一部類に屬する營業を禁止するを云ふものとす、例へば代理商、又は合名會社の社員が、其本人若くは會社の營業と同種の營業をなすを得ざるが如き、即ち狹義に於ける競業禁止なり、若し之等の者が、其本人又は其所屬會社と同種の營業をなすを許すときは、自然其間に利害の衝突を生じ、以て商業の發達を妨ぐるに至るべきが故に、法律は之等特別の關係を有する者の間に、公益保護の必要より競業を禁止したるに外ならず。(商三八條及六〇條參照)
- 英
- Prohibition of strife of business
- 独
- Konkurrenzverbot
- 仏
- Prohibition de la compétition des affaires
競爭價額
(きやうさうかかく)競賣又は入札其他の競爭契約等に於て、各競爭者が申込みたる最高、又は最低の價額を云ふ、明治三二年勅令第四五號四條に「前畧各人の競爭價額云々」とあるは、これ其用例なりとす。
競爭契約
(きやうさうけいやく)契約事項を表示して申込者を競爭せしめ、豫定承諾方法に依りて取結ぶ契約を云ふ、例へば物件の入札拂の如き場合に之を公告するは、即ち契約事項を表示して申込者の誘致をなすものなり、而して豫定の賣却價額を定め置きて、入札者の申込を促し、開札の結果最高價額申込にして、豫定の賣却價額以上に達したるときは、之を賣拂ひ、若し豫定價額に達せざるときは、賣拂を拒むものなるを以て、即ち豫定の承諾方法に依りて、取結ぶ契約なりと云ふことを得べし、會計規則第七章第二款に「競爭契約」とは、之其用例也、因に政府の工事、又は物件の賣買貸借は、法令に特別の規定ある場合の外、凡て之を競爭契約に付するを會計法上の原則となす、競爭契約は、入札を以て之を行ふものにして、揭示板、官報、新聞紙、又は其他の方法を以て、十五日以上之を公告し、各省大臣、若くは其委任を受けたる官吏は、其競爭入札に付したる工事、又は物件の豫定價額を封書とし、開札の時之を開札場に置くべきものにして、開札は公告に表示したる場所、期日、時刻に入札人の面前に於て行ふものとす、若し入札一も豫定價額に達せざるとき、又は落札となるべき同價額の申込者數人あるときは、之を再度の入札に付し、再度入札の場合に、開札の結果、尚落札となるべき同價額の申込者の數人ある場合には、數人の落札價額の申込者をして抽籖をなさしめ、之を決するものとす。(會計規則七四條以下、及び三二年勅四五號參照)
強制
(きやうせい)吾人の意思に反すると反せざるとを問はず、或行爲を強ふることを云ふ、例へば臣民は納税の義務を強制せらると云へば、國家が其權力に依りて、臣民の意思に反して迄も納税を爲さしむるが如し、河川法第五六條第一項に「此法律若くは此法律に基き發する命令により、行政廳に付與したる職權は、行政處分に依り、之を強制することを得」又刑法第七五條第一項に「抗拒すべからざる強制に遇ひ其意にあらざるの所爲は、其罪を論せず」とあるが如き、此用例なり。
- 英
- Compulsory
- 独
- Zwang
- 仏
- Obligatoire
強制手段
強制手段とは、人の意思に反せざると否とに拘らず、強制して或る事抦を行はしむる手段を云ふ、例へば民事訴訟法第六編以下の強制執行は、茲に所謂、強制手段なるが如き、刑事訴訟法に基き、逮捕監禁するず如き、刑罰法令に基き、或期間、重禁錮に處して、之を強制するが如き、傳染病豫防の爲め疾病者を病院に入らしむるが如き、皆茲は所謂強制手段の例なりとす、次に所謂手段とは、或結果を得るの方法を云ふものにして、彼の手續と云ふも略同義なりとす、前例に於く即ち強制執行は、債務辨濟の手段なるが如き是なり、要するに強制手段とは、或目的を達する爲めになす強制の手續也と云ふべし。
- 英
- Compulsory means
- 独
- Zwangsmittel
- 仏
- Moyeu obligatoire
行政
(ぎやりせい)行政なる語の意義に就きては學説一定せず、隨つて其觀念又區々たり、されば今は唯比較的通説と思考せらるる意義に就き、聊か説明を試むるに止む、抑も國家の統治權の作用を分つて、立法及び執政の二となし、更に執政を分つて、司法、及び行政となす、通常行政と稱するは、一方に於ては立法行爲に對し、他方に於ては司法行爲に對するなり、故に行政の觀念を明かにせんと欲せば、須らく以上三種の統治作用の限界を明劃にせざるべからず、されど此三種の統治作用、即ち立法、司法、及び行政を其性質に從ひて區別するときは、往々現時の普通國法上に於ける觀念に矛盾するの虞なきにあらず、蓋し普通の觀念に於ては、之を行爲の性質によりて區別することより、寧ろ之を行ふ機關の種類によりて區別すればなり、我邦の制度に於て、立法權は帝國議會の權限に屬し、司法權は裁判所の權限に屬すること、憲法の明定する處なり、されば行政とは、帝國議會、及び司法裁判所の權限に屬せざる統治權の作用なりと云ひ得べし、統治權は即ち治者が被治者に對する命令強制の權なり、隨つて行政もまた此命令強制權の作用に外ならず、而して近世法治國の理想として、國家は常に法規を以て、國家と其臣民との間に於ける權利義務の關係を定め、其法規を變改せざる限り、國家は任意の決定を以て、猥りに其臣民の權利を侵すなからんことを期す、斯かる思想に基き、法規の範團内に於ける活動なることは、行政なる觀念に、缺くべからざる要件となるに至れり、以下分説すれば、□一行政は統治權の作用なり、統治權なるものは、治者が被治者に對して行ふ權力なるを以て、行政は即ち國家と臣民との間に於ける關係なり、國家が他の國家と平等の關係に於て活動する作用は、之を行政と云ふことを得ず、例へば、戰爭、及び外交の如きこれなり、□二行政は、法規の範圍内に於ける統治作用也、所謂緊急權の作用の如く、國家が危急の場合に於て、既定の法規を侵越して行ふ作用の如きは、固より行政行爲にありざるものとす、□三行政は組織せられたる國家の統治作用なり、蓋し行政は法規の範圍内に於ける統治作用なりと云ふときは、既に組織せられたる國家の統治作用なることを意味すべし、これを以て國家の成立に必要なる直接機關の組織等に關する國權の作用は、行政行爲にあらざることを知るべし、例へば皇位の繼承を定め、又は攝政を置く行爲の如き是なり、□四行政は、公法上の作用也、國家と臣民との間に於ける關係を定むるものは公法なり、行政はこの國家と臣民の關係を規定したる法規の範圍内の活動なるを以て、行政の公法上に於ける作用たるは、固より其處にして、國家が臣民と私法上の關係に立ち、財産權に關する契約を結ぶ場合の如きは、之を行政と云ふ事を得ざるも亦明なり、要するに行政は、公法の範圍内に於て國家の目的を達するが爲に行ふ、統治權の作用に外ならざるべし、隨つて行政の實質は、國家の目的に從つて異るものとす、近代の立憲制度に於ける國家は、啻に國家内の安寧秩序を維持し、國家の獨立生存を全うするを以て、目的となすのみならず、更に國民の福利を增進し、其發達を計るを以て理想となす、故に行政の内容の如きも、自然複雜を極むるを免れず、通常學者は行政を分つて、内務、外務、司法、軍務、及び財務の五種となすなり。行政行爲とは、即ち國家が行政のためにする行爲なり、行政行爲の實質は、行政の目的によりて異るが故に、茲に之を枚擧し難しと雖も、其形式より觀察するときは、國家の單獨の意思を以て行はるるものと、國家と人民との合意を以て行はるるものとの二種あり、前者は命令及び處分にして、後者は所謂公法上の契約とす、命令、及び處分は、之を行政命令、及び行政處分の項に讓り、茲には唯公法上の契約に就きてのみ説明するに止むべし、公法上に於て契約の存ずるや否やは、公法學者の常に爭ふ處也、否定論者の要旨に曰く、國家と臣民とは、命令服從の關係に在るものなり、然るに契約は、元來對等者間に於ける合意なるを以て、國家と臣民との如き不平等の關係に立つ者の間に、契約の存する理由なしと云ふにあり、蓋し公法上の契約なるものの存在は、寧ろ稀有の事例に屬すと雖も、必ずしも絶無のことにあらざるのみならず、理論上に於ては決して否認すべきものにあらざるなり、抑も國家は其臣民に義務を負はしむるに於て、亳も制限せらるることなく、固より其自由に屬すと雖も、法規の存する限り、又法規を變更せざる限り、其制限を受けざるを得ず、國家が法規に依りて、自ら其意思に制限を加ふる事著しき場合は、私法の區域に在り、私法上の關係に於ては、國家も私人と對等の地位に立ちて、權利を有し、義務を負ぶことを得べし、是畢竟國家が法規に依りて、其命令權を制限し、自ら私人と對等の地位に立ちたるに外ならず、此場合に於て、私法上の主體たる國家は、命令權の主體たる國家と、其人格に於て亳も異ることなきなり、之と同じく公法の區域に於ても、國家が法規に基て、自己の意思を制限し、或範圍に於て私人の自由意思を認めたるときは、其制限の範圍内に於ては、私人との合意に依るにあらざれば、其義務を強制するを得ざるなり、即ち知る公法上の契約の存在は、決して國家の觀念と矛盾する者にあらざるを、而して茲に注意を要するは、公法上の契約も私法上の契約と同じく、其成立には獨立したる二個の意思を必要とするも、唯私法上の契約に依りて生ずる效果は、常に對等の權利關係なるに反し、公法上の契約より生ずる效果は、命令服從の關係なる點にあり、此點より觀察して、公法上に契約なし、契約と見ゆるは、一種特別公法上の行爲也と云ふ説、最も正當なるものならん、此行爲の例としては、歸化、及び官吏任命の場合等也。(行政命令、行政處分、歸化、官吏關係參照)
- 英
- Administration
- 独
- Verwaltung
- 仏
- Administration
行政行爲
行政機關
(ぎやうせいきくわん)行政機關とは、行政事務を司掌する機關を云ふ、例へば行政官廳、及び公共團體の如き是なり、行政官廳に就きては、行政官廳の項に讓り、茲には唯公共團體に就きて少しく説明を試むべし、公共團體は、又之を公法上の團體と云ふことあり、其性質は官廳と同じく、一の國家機關にして、國家の組織の一部をなすものとす、即ち公共團體は、國家の事務施行を以て、其生存の目的となすものにして、其事務は、國家の事務なると同時に、また自己の事務なり、之公共團體が官廳と異る點なりとす、元來官廳は、人格なきを以て、自己生存の目的なるものあることなし、從つて其掌理する處の事務は、凡て國家の事務なりとす、而して公共團體は、又私の團體と異る、一は公法上の團體なるに反して、他は私法上の團體なり、其結果として、國家に對する義務を異にす、即ち公共團體の事務は、團體自身の事務なると同時に、國家の事務なるを以て、正當に其事務を掌理するの義務を有するも、私の團體に在りては、國家の事務を行ふものにあらず、故に之を行ふと否とは、固より團體の自由にして、唯其事務を行ふに方りて、法令に違反し、又は公益を害すべからざるの義務を有するみ、次に公共團體は、之を分つて、領地團體、及び組合團體の二種となすことを得、此兩團體は、何れも人民の團體を基礎として成立するものなるも、領地圍體は、國家の領土の一部を以て其支配地となすものにして、其團體員は、領土との關係上團體の組織に加入するなり、故を以て團體員は、其領土との關係の消滅すると同時に、團體との關係をも離脱するものとす、之に反して組合團體は、一定の領士を以て其成立の要件となずものにあらず、從つて組合團體の團體員は、其地域との關係を以て、團體の組織に加入するの條件とはなさざるなり、次に領地團體は、また之を分つて地方自治團體と、然らざるものとの二種となすことを得、以上の各團體は、何れも國家の機關なると同時に、等しく法人なるを以て、各自其機關を備へざるべからず、通常地方自治團體の如きは、議決機關、及び執行機關の二者を具備するものとす、茲に行政機關と云ふは、直接之等の機關を指すにあらずして、斯くの如き機關を包有する公共團體、及び官廳を指すものなるの點は特に注意を要す。
- 英
- Adminishative organ
- 独
- Verwaltungsorgan
- 仏
- Organe administr-ative
行政官署
行政官署とは、行政事務を掌る官署を云ふ、時として、行政官廳と同一の意味に用ふることあり。(官署の部參照)
- 英
- Administrative office
- 独
- Ver-waltungsbehörde
- 仏
- Bureau administr-atif
行政官廳
行政官廳とは、他の國家機關の委任に依りて一定の範圍を限り、國家の事務を行ふ機關にして、一人又は數人の自然人より組織するものなり、即ち□一行政官廳は、一人又は數人の自然人より組織するもの也、行廳官廳は、國家の機關にして、國家に代つて其意思を表示し、其事務を行ふべきものなるを以て、必ず自然人より組織するものならざるべからず、其一人より組織するものを單獨制の官廳と云ひ、數人より組織するものを合議制の官廳と云ふ、□二行政官廳は、國家の事務を行ふものなり、官廳の事務は、凡て國家の事務にして、官廳自身の事務にあらず、蓋し官廳は國家の機關にして、別に人格なく、從つて其固有の事務あることなきは勿論なり、之官廳は、地方自治團體と異る點なりとす、□三行政官廳は、一定の範圍を限りて國家の事務を行ふものなり、其事務の範圍を權限と云ふ、權限は、事務の種類に依りて之を定むることあり、或は地域に依りて之を定むることあり、官廳は其定められたる權限内に於ては、國家の事務を行ふことを得べきも、其區域を超えては何等の事務を行ふことを得ず、之官廳が元首と異る點なりとす、蓋し元首の權は廣くして、及ばざる處あることなければなり、□四行政官廳は、他の國家機關の委任によりて國家の事務を行ふものなり、官廳は獨立して國家の事務を行ふ權能を有せずして、必ず他の國家機關の委任を待たざるべからず、而して國家の事務を總纜するものは、元首なるを以て、官廳は、直接間接に、元首の委任を受くるものとす、元首が官廳に行政事務を委任する規定は、之を官制と云ふなり、次に官廳の組織には、單獨制と合議制との二種あり、單獨制の官廳とは、例へば各省大臣の如し、前述の如く、單獨制の官廳は、一人を以て組織するものにして、其一人の意思が直に國家の意思となるものなり、其事務を掌理すもの、例へば局長以下の官吏の如きは、之を補助官、又は補助機關と云ふ、之に反して合議制の官廳は、多數の人より組織し、其多數人の意思が國家の意思となるものなるを以て、其多數人の意思を結合する方法なかるべからず、此方法を決議と云ふなり、而して行政官廳には、中央官廳と地方官廳との二種あり、中央官廳とは、其權限の全國に及ぶものにして、最上級の行政官廳なり、例へば各省大臣、内閣、及び内閣總理大臣の如き之なり、地方官廳とは、其權限が一定の地域に限られたる官廳を云ふ、地方官廳は、之を分つて普通官廳、及び特別官廳の二種となす、普通官廳とは、一定の地域内に於ては、廣く一般の行政事務を行ふ權限を有する官廳を云ふ、例へば府縣知事、郡長、島司の如きこれなり、特別官廳とは、一定の地域内に於ける特定の事務のみを行ふ權限を有する官廳を云ふ、例へば税務監理局の如き之なり。
- 英
- Administrative office
- 独
- Verwaltungsbehörde
- 仏
- Bureau ad-ministratif
行政廳
行政廳とは、行政官廳と云ふに同じく、唯官の一字を省畧したるに過ぎず。(訴願法二條)
- 英
- Administrative office
- 独
- Ver-waltungsbehörde
- 仏
- Bureau administr-atif
行政府
行政府とは、行政官府と同じく、官の一字を省きたるものなり、元來官府とは、官廳、官署、及び政府を含有したる總稱なれば、茲に所謂行政官府も、之等の者が行政を爲す場合を包含したる名稱と見るべきなり。
- 英
- Administrative office
- 独
- Ver-waltungsbehörde
- 仏
- Bureau administr-atif
行政區劃
(ぎやうせいくかく)行政區畫とは、行政官廳の權限の限界たる土地の區劃を云ふ、抑も行政官廳の權限を定むる方法に二あり、一を事務分配制、又は分職制と云ひ、他を管轄區域制、又は分地制と云ふ、事務分配制は、事務の種別に從ひて官廳の權限を定むる制度にして、管轄區域制は、土地の區劃によりて其權限を定むる制度を云ふ、即ち行政區劃は、此管轄區域制によりて定めたる、行政官廳の管轄區域に外ならず、例へば、府、縣、郡、市、町、村の如き土地の區域を云ふ、從つて府、縣、郡等を管轄する行政官廳の權限は、府、縣、郡等の行政區劃を以て其限界となす、斯くの如き官廳を地方官廳と云ふなり、次に國の行政區劃たる府、縣、郡は、之を地方自治體の領域と混同ずべからず、通常自方地治體の領域は、國の行政區劃と一致すれども、また必ずしも一致すべきものと云ふことを得ず、爰を以て國の行政區劃は、自治體の領域を脱して之を定むることあるべきものとす。(民法三六條一項、衆議院議員選擧法七條參照)
- 英
- Administrative jurisdiction
- 独
- Verwaltungsbezirk
- 仏
- Juridiction administrative
行政官
(ぎやうせいくわん)行政官とは、行政事務を掌理する官吏を云ひ、通常司法官、又は立法官に對する稱呼なりとす。(文官任用令五條參照)
- 英
- Administrative officials
- 独
- Verwaltungsbeamten
- 仏
- Officier admin-istratif
行政官吏
行政官吏とは、行政官廳、又は其補助機關を組織する自然人を云ふ、官吏は通常國家の事務を掌理する各個人を云ふものなれども、時としては國家の事務に參與せざるものあり、例へば休職官吏の如し、從つて官吏は、國家の事務を掌理すべき義務を有するに止り、必しも國家の事務を掌理することが、官吏の觀念の要素にあらず、また之と同時に、國家の事務を掌理するものは悉く官吏なりと云ふを得ず、現に兵士の如く、國家の事務に從事するも官吏にあらず、故に官吏たるには、特別の法律行爲に依りて、國家の事務を掌理すべき義務を有する者ならざるべからず、彼の私法上の行爲に基きて國家の事務に從事するもの、例へば國家の工事を請負ふ請負人の如きは、之を官吏と云ふ能はざるものとす、而して公法上の行爲に依りて負擔せる事務掌理の義務は、無定限のものたることを要す、從つて一定の範圍内に於て、此義務を負べる特殊の事件に關する委員の如きは、官吏にあらざるべし、再言すれば官吏たるには、特別なる公法上の行爲に基き、其分量に於て、定限なき國家の事務を掌理すべき義務を有すると同時に、直接間接に元首の監督を受くることを要件となす、茲を以て帝國議會の議員の如き公法上の行爲たる撰擧に由りて就職し、定限なき國家の政務を擔任するものなれども、元首の監督の下に立たざるを以て、之を官吏と云ふことを得ざるものなりとす。
- 英
- Administrative officers
- 独
- Verwaltungsbeamten
- 仏
- Officier adminis-tratif
行政監督權
(ぎやうせいくわんとく)上級行政官廳が、下級行政官廳の行政事務を監視するの權を云ふ、元來行政官廳の組織は、極めて複雜にして、無數の機關が各自一定の權限を有する故に、順次上級の官廳に一種の統一權を與へ、以て之が統一を圖るにあらざれば、行政上に於ける一定の方針を保持するを得ず、且つ又下級官廳を督勵して事務の進捗を圖り、或は其違法越權等の行爲を匡正する上に於ても、必要の手段なかるべからず、訓令權、及び監督權は、之に應ずる爲め、上級官廳に與ふる所のもの也、前者は積極的に指揮命令を爲すの權にして、後者は、消極的に下級官廳の事務を監視するの權なり、而して監督權には、通常下記の職權を包含するものとす、□一報告を徵し事務を檢閲するの權、上級官廳は、下級官廳の監督上其事務の實况を知ることを要する結果、此種の權を必要とするは、固より其處なるべし、□二下級官廳の命令、及び處分を取消し、又は停止するの權、即ち下級官廳の行爲が其權限を踰越し、法規又は訓令に違反したる場合、若くは公益を害するが如き場合には、其命令又は處分を停止し、或は取消すことを得るものとす、□三下級官廳の不當處分に對して、人民より提起する訴願を裁決し、其處分を取消し、又は變更するの權、□四下級官廳と下級官廳との間に於ける權限の爭議を裁決するの權、□五下級官廳に於ける官吏にして、職務上の義務に違反せる者を懲戒するの權等之なり、次に上級官廳は、下級官廳が其職務を執行せざる場合に、代つし之を行ふことを得るや否やの問題に就きては議論あり、或學者は此問題に對し、上級官廳は通常下級官廳に指揮命令するの權を有すれども、上級官廳自ら下級官廳の權限内の事務を掌理すること能はず、斯くの如きことをなすは、權限の分配を亂すものなりと、然れども上級官廳が、下級官廳に對して、監督權を有する以上は、少くとも下級官廳が法規を犯すことを防ぐべき、相當の手段なかるべからず、而して下級官廳は、其權限外の行爲をなすに依りて、積極的に法規を犯すことあり、又法律上其職務に屬することを行はざるに依りて、消極的に法規を犯すことあり、前の場合に於ては、上級官廳は取消の權を行ふことを得べし、後の場合に於ては、下級官廳に訓令を發するも尚其命を奉ぜざるときは、任免の權に依り、下級官廳の組織員を變更することを得れども、事の至急を要する場合に於ては、此手段を以て足れりとせず、此場合に上級官廳自ら其事務を執行するは、下級官廳の故意、又は怠慢より生ずる違法の結果を避くべき唯一の手段にして、監督權に缺くべからざる作用なりと云ふべし。
- 英
- Administrative right of con-trol
- 独
- Verwaltungskontrolrecht
行政權
(きやうぜいけん)統治作用の一種にして、立法權及び司法權と相對するものなり、統治作用を立法、司法行政と別つことは前説の如くなるも、(行政の部參照)近時に於ては、猶之に加ふるに政府行爲、即ちレギールングスアクトを以てす、政府行爲とは、我大權作用に類應するもの、其他政治の方嚮を定むる統治權の一作用にて、宣戰、媾和、條約の締結等、皆之に屬す、元來統治權は、其立法、司法、行政たると、政府の行爲たるとを問はず、等しく元首の總攪する所にして、統治權の一作用たる行政權の元首に屬する、固より其所なり、然れども國家の行政事務たる、極めて多岐にして、且つ複雜なるが故に、一定の範圍を限りて、其事を掌裡せしめ、而して元首は其凡ての行政機關を統一監督するものとす、斯くの如く元首の委任を受けて國家の行政事務を擔任するものは、即ち行政官廳なり。(行政の部參照)
- 英
- Administrative authority
- 独
- Verwaltungsbefugnisz
- 仏
- Droit ad-ministratif
行政裁判
(ぎやうせいさいばん)行政裁判とは、行政裁判所が行政裁判法の規定に依り行政上の訴訟に對して爲す裁判を云ふものとす、其司法裁判と異る點は、一は私人が、法規に違反したる場合に於て、之が救濟を目的となすものにして、一は行政機關が、法規に違反したる場合に於て、之が救濟を目的となすものなり、即ち兩者共に或實在の事件に對し、法規の解釋適用を決定するものなるを以て、其性質上に於ては、共に之を司法裁判と云ふことを得べきも、國法上普通觀念に於て司法裁判と云ふときは、單に民事刑事の裁判を指稱するものにして、之を行政上の裁判と區別するものとす、此の區別は、歷史上用語の慣例に基因するものにして、行政機關が法規に背違したる場合に、司法裁判所をして、其行爲を審査せしむるときは、即ち司法機關と、行政機關との間に劃然たる限界を定め、〓に其權限をして相侵さざらしむるの主義に背反するが故に、所謂三權分立説に依りて涵養せられたる思想は、行政上の處分を審査する機關に、司法の名を冠するを忌む歷史上の理由に基くものとす、つぎに行政裁判は、裁判長、及び評定官を併せ、五人以上列席して合議を爲し、其議事は、列席員の過半數を以て之を決定するものとす、此結果として判席員は必ず奇數なることを要し、若し缺員のため偶數となりたるときは、官等の最も低き評定官を退席せしめ、其官等等しき場合には、任官の順席に依りて、最後の任官者を除きて奇數となす、行政裁判また司法裁判と同じく其對審は公開するを原則となす、但し安寧秩序、又は風俗を害する虞ある場合、若くは行政官廳の要求ありたる場合には、裁判所の決議を以て公開を停むる事、及び公衆を退かしむる前に、公開停止の決定を言渡すべきものなり、其他公開停止は、單に對審に就きてのみ之を行ふべきものにして、判決言渡の時には、再び公開すべきこと等は、司法裁判と異ることなきも、行政裁判には、階級なく、隨つて上訴の途なく、又其判決は官渡と同時に確定するものとす、唯其審問手續に就きて故障の申立を爲すを得べきも、其申立は、行政裁判所自ら審査判決するもの也、行政裁判は、單に行政上の違法處分を審理するに止り、損害賠償の訴訟を裁判することなし、故に其處分に依りて損害を被りたるものは、更に之を司法裁判に訴へざるべからす、行政裁判の確定判決は、其事件に就き、關係の行政官廳を覊束すべく、又審問中其事件に就き、利害關係を有する第三者をして、其願に依り又は職權を以て、訴訟に參加せしめたる場合には、第三者をも覊束する效力を有するものとす、されども此判決は、特定の事件に對してのみ效力を有するに過ぎざれば、一般に其效力を及ぼすものにあらざるは勿論とす、上記の如く其事件に關して、法たる效力を有するものなれば、如何なる官廳と雖も、處分を以て之を變更するを得ざるなり、之に反して同一の事件に對し、更に同一の處分をなすは固より妨げざる處なるも、唯此場合に於ては、更に行政裁判所の判决を以て、其處分を取消さるるの危險あるのみ、行政裁判の當事者を覊束するの點は、行政訴願の裁決と異る處あり、即ち訴願の裁決は、唯下級官廳を覊束するに止るを以て、裁決を爲したる行政官廳、又は上級官廳は、或場合に於て、其裁決を廢止變更するも妨げざるなり。(二三年法四八號參照)
- 英
- Administrative trial
- 独
- Ver-waltungsentscheidung
- 仏
- Jugement ad-ministratif
行政裁判所
行政裁判所は、行政訴訟事件を審理する裁判所なり、歐洲諸國にては、必ずしも行政裁判所なる特設の裁判所を設置することなく、或は司法裁判所をして、行政訴訟を司らしむるものあり、或は普通行政官廳をして、之を裁判せしむるものあり、又之に反して特に行政裁判所なる獨立の裁判所を設置するありて、其制度一定することなし、我國は即ち獨逸の制度に做ひて、特設の裁判所を設置す、唯其異る處は、中央に一個の裁判所を置くのみにて、審級の制を採らざる點にあり、我行政裁判所の組織は、長官一人、評定官十一人、及び書記十五人を以て定員となし、長官、及び評定官となるには、年齡滿三十歳以上にして、五年以上司法裁判官又は高等行政官の職にありたることを要す、其在職中政治に關係し、衆議院議員、又は府縣郡市町村會の議員等となり、兼官の場合の外俸給を受け、金錢上の利益ある公務に就き、若くは商業を營み、其他行政上の命令を以て禁じたる業務に從事するを禁ぜらるると同時に、刑法の宣告を受け、又は懲戒の處分を受けたる場合、若くは身體精神の衰弱に依りて、職務を執行する能はざるに至り、其裁判所總會の決議に依りて、退職せしめらるる場合の外、其意に反して退職、轉官、又は非職を命ぜらるることなきものとす、蓋し行政裁判所なるものは、行政訴訟事件に對する終局裁判所にして、且つ其判決は、國家の最高行政官廳たる各省大臣をも覊束するの效力を有するものなれば、其一面に於ては、經驗に富み、事務に老練なる士を撰み、他の一面に於ては、裁判官の地位を確保し、在職中其職務に影響を及す虞ある如き行爲を禁じ、以て其裁判の嚴正と、精確を期したるものとす、其他長官又は評定官に對して、特定の原因により、除斥、及び忌避の申請を爲し得べきことは、司法裁判に於ける場合と異ることなしとす、次に行政裁判所の權限に就きては、行政裁判法第一五條に「行政裁判所は、法律勅令に依り、行政裁判所に出訴を許したる事件を審判す」と規定し、明治二三年一〇月法律第一〇六號には「法律勅令に別段の規定あるものを除く外、左に揭ぐる事件に付き、行政廳の違法處分に依り權利を毀損せられたりとする者は、行政裁判所に出訴することを得」と規定す、即ち□一海關税を除く外、租税及び手數料の賦課に關する事件、□二租税滯納處分に關する事件、□三營業免許の許否、又は取消に關する事件、□四水利、及び土木に關する事件、□五土地の官民有査定に關する事件の數件を列記せり、即ち行政裁判所へ、法律若くは勅令を以て、其權限に屬することを明定したる事件のみを管轄するものにして、法律又は勅令に別段の規定なき場合には、行政上の違法處分に關する事件と雖も、之を審理するの權限を有せざるものとす、斯くの如く行政裁判所は、違法の行政處分に關する一切の事件に對し、其權限を有するものにあらざるを以て、違法處分に關する事件にして、司法裁判所の權限に屬するものなにきあらず、例へば衆議院議員の當選訴訟を、司法裁判所たる控訴院の管轄と定めたるが如き是なり。(行政訴訟事件參照)
- 英
- Court of administrative litigation
- 独
- Verwaltungsgericht
- 仏
- Tribunal administratif
行政裁判所處務規程
(ぎやうせいさいばんしよしよむきてい)行政裁判所の事務處理に關する規定なり、此規程に依れば、行政裁判所長官は、各事件に就きて掛評定官を指定し、又は一事件每に審判凖備のため、掛評定官の一名、若くは二名に專理員を指命するの權能を有し、又總會議の場合には、其議事の整理に任ずるなり、總會議は、評定官總員三分の二以上出席するにあらざれば、其决議をなずを得ざるものとす、而して行政裁判所の休日は、每年七月十一日に始り九月十日を以て終るものにして、其間緊急と認むる事項の外は、既に著手したる訴訟を中止し、幷に新たなる訴訟に著手せざるを得、次に行政裁判所に於ける訴訟の呼出狀、及び其他の書類の送達は、或は使丁を以て送達せしめ、或は郵便に附する事を得べく、又は通常裁判所に囑托して之を爲すことを得るものとす。(二三年八月勅一九二號參照)
行政裁判所長官評定官懲戒令
(ぎやうせいさいばんしよちやうくわんひやうぢやうくわんちようかいれい)明治三二年七月勅令第三五四號を以て公布せられたるものなり、其内容の梗槪を摘錄すれば、行政裁判所の長官、及び評定官にして、□一職務上の義務に違反し、又は職務を怠りたるとき、□二職務の内外を問はず、官職上の威嚴、又は信用を失ふべき所爲ありたるときは、懲戒裁判所の判決に依り、懲戒の處分を受くべき者にして、其懲戒には、譴責、減俸、免官の三種あり、減俸は、一月以上一年以下の期間、年俸月割額の三分の一以内を減ずるものにして、免官の處分を受けたる者は、其官職を失ひたる日より、二年間官職に就くことを得ず、又免官の處分を受けたる者にして、其情重きときは、位記の返上を命ぜらるるものとす、懲戒裁判所には、裁判長一人、裁判官六人と、外に豫備裁判官六人、及び檢察官一人と、書記五人を置き、裁判長には、文官高等懲戒委員長、裁判官には、文官高等懲戒委員、豫備裁判官には、文官高等懲戒豫備委員を以て之に充て、檢察官は勅任檢事の中より、内閣總理大臣の奏請に依りて之を命じ、書記は五人の中三人は文官高等懲戒委員會書記を以て之に任じ、二人は大審院書記の中より裁判長之を命ずるものとす、懲戒裁判の開始は、檢察官の申立に依り、又は懲戒裁判所自ら其職權を以て之を決定するものにして、懲戒裁判を開始したるときは、其裁判の終結に至るまで被告となりたる長官、又は評定官は、其職務を執ることを得ざるなり、懲戒裁判の開始を決定したるときは、直に口頭辯論の期日を定め、若くは下調に付するの決定をなすを要し、下調は、裁判長之を裁判官に命ずるものにして、受命裁判官は、或は自ら證據を集取し、或は通常裁判所に囑托して、證人訊問其他必要なる證據を蒐集し、全く其下調を終りたるときは、調書其他一切の證據を懲戒裁判所に差出すべきものとす、此場合に於ける受命裁判官は、唯抅引狀、又は抅留狀を發することを得ざるも、其他の權限は、刑事訴訟に於ける豫審判事と異ることなし、斯くて懲戒裁判所に於て、受命裁判官の下調を充分なりとするときは、口頭辯論の期日を定め、之を檢察官に通知すると同時に、被告に對して呼出狀を發するものとす、口頭辯論の開始は、裁判長之を宣告するものにして、裁判長は、先づ被告を審訊し、次ぎて證據調を爲し、後檢察官、及び被告に辯論を爲さしめ、被告又は檢察官の申立あるとき、若くは職權を以て、更に證據を提出せしむることを適當とするときは、之が爲め必要なる命令を發し且つ口頭辯論を延期することを得べく、又裁判所に於て、事件の辯論充分なりとするときは、被告をして最後に發言を爲さしめたる後、辯論を終結し、直に判決を言渡し、若し直に判決すること能はざる場合には、七日以内に判決を爲し、之を檢察官、及び被告に送達するものにして、此判決は、檢察官より之を内閣總理大臣、及び行政裁判所長官に報告するものとす、而して懲戒裁判に於ける裁判官の忌避、回避、評議、及び證據の判斷等に關しては、裁判所構成法、及び刑事訴訟法の規定を凖用するものなり、次に懲戒裁判所、又は受命裁判官、若くは受托判事より、證人、鑑定人、通事として呼出されたる者にして、正當の理由なく呼出に應ぜず、又は其義務を盡さざるときは、四圓以上四十圓以下の罰金に處せらるべく、又證人にして僞證したるとき、鑑定人通事にして、詐僞の陳述をなしたるときは、一ケ月以上一年以下の重禁錮に處せられ、五圓以上五十圓以下の罰金を附加せらるべく、賄賂其他の方法に依り、人に囑託して僞證、又は詐欺の鑑定通事を爲さしめたる者も、また同一の刑に處せらる、證人其他の僞證罪は、判決前に於て自首したるときは、本刑を免ぜらるるものとす。
行政裁判法
(ぎやうせいさいばんはふ)此法律は、明治二三年六月法律第四八號を以て公布せられ、同年一〇月一日より施行せるものなり、其内容は行政裁判所の組織幷に其權限、行政訴訟上の手續を規定したるものとす。(行政裁判、行政裁判所の部參照)
- 英
- Law of administrative trial
- 独
- Verwaltungsgerichtbarkeitsgesetz
- 仏
- Loi du jugement administratif
強制執行
(きやうせいしつかう)強制執行とは、裁判所が債權者の申立に依り、之に終局判決其他債務名義に於て確定せられたる權利に、實際的滿足を得しむるが爲め、債務者に對して行ふ國家強制力の適用なり、從つて□一民事上の義務を執行せしむる方法にあらざれば、強制執行を爲す事を得ず、行政上刑事上の義務の執行は、強制執行手續によらずして、例へば租税滯納處分、行刑處分等に依る、□二國家強制力により、義務者を強制して行ふものなり、故に義務者が判決に從ひ、任意に其義務を履行すれば、強制執行を行ふの必要存せざる者とす、□一判決其他の債務名義に依らざれば、強制執行を爲す事を得ず、所謂債務名義とは、イ判決、ロ抗告を以てのみ不服を申立つる事を得る裁判、ハ執行命令、ニ受訴裁判所、又は受命判事、受託判事の面前に於て爲したる和解、ホ當事者が訴を起さんとするとき、和解の爲めに請求の目的物を開示して、相手方を其普通裁判籍を有する區裁判所に呼出すべき事を求めたる場合に、和解が成立したるときは其和解、ヘ一定の金額の支拂又は其他の代替物、もしくは有價證券の一定の數量の給付を以て目的とする請求に就き、適法に公證人が其權限内に於て作り、且つ直に強制執行を受くべき旨を記載したる公正證書、ト破産手續に於て、確定したる權利主義、チ刑事裁判所の私訴の判決、リ刑事裁判所に於て、言渡したる賠償及訴訟費用の判決、ヌ行政裁判所の判決、ル軍法會議の私訴の判決等に依る、一切の權利名義を指すものなり、強制執行は之等の權利名義あるにあらざれば、之を爲すことを得ざるものとす。(民訴法四九七條以下參照)
- 英
- Execution
- 独
- Zwangsvoll-streckung
- 仏
- Saisie-exécution
強制競賣
強制競賣とは、財産に對する強制執行の一方法にして、裁判上の手續に依り、公力を以て債務者の不動産を差押へ、競賣することを云ふ、□一債務者が、其債務を履行せざる場合に、裁判所又は執達吏に依りて、債務者の財産の全部、又は一部、もしくは其擔保に供したる第三者の財産を、強制に賣却することを云ふことあり、この場合は、不動産、動産、權利たるとを問はず、等しく強制競賣を爲すことを得、民法第五六八條第一項に「強制競賣の場合云々」とあるは此用例なり、□二民事訴訟法に於て認むる所の不動産に對する強制執行中、強制管理に對して、強制競賣と云ふことあり、此場合に於て、その強制競賣の目的物となるものは不動産にして、然も讓渡し得べきものに限り、上説の如き、權利、動産の強制的競賣は、茲に所謂強制競賣にあらざるなり、民事訴訟法第六四〇條第一項第一號に「強制競賣」とあるは此用例なり。(民訴六四〇、六四二條乃至七〇五條、民五六八條參照)
- 英
- Compulsory auction
- 独
- Zwangsversteigerung
- 仏
- Encan obliga-toire
強制管理
強制管理は、不動産の收益のみを以て、債權の辨濟に充つることを目的とする強制執行なり、從つて強制競賣と異り、□一強制競賣は、假差押命令の執行の爲めには、之を爲すことを得ざるも、強制管理は、假差押命令の執行方法としても爲すことを得、□二強制競賣は、不動産其物の賣却代價を目的とするも、強制管理は、不動産より生ずる收益を以て、債權の辨濟に充つるを目的とす、裁判所に於て強制管理を命ずるときは、管理人を選定す、此管理人は、管理収益の爲めに、自ら不動産を占有する權利、及び債務者に代り、第三者の給付すべき收益を取立つる權利を有し、不動産より收得したる利益より、租税其他の公課を控除したる後、管理の費用を辨濟し、殘額を債權者に配當するを其任務の主なるものとす、強制管理の結果、不動産の收益を以て各債權を辨濟し終りたるときは、強制管理は、其目的を貫徹したるの故を以て終了す、從つて不動産の所有權は、依然としし債務者の權利に屬するものとす。(民訴七〇六條乃至七一六條參照)
- 英
- Compulsory administration
- 独
- Zwangsverwaltung
- 仏
- Administration obligatoire
行政處分
(ぎやうせいしよぶん)行政處分とは、行政官廳が法規の範圍内に於て、特定の事件に關し、法律上の關係を定むる行爲なり、處分は、法規の範圍内に於ける行政行爲なるを以て、新に臣民の意思の範圍を制限するものは、之を處分と云ふことを得ず、處分は特定の事件に關し、法律上の關係を定むるものなるが故に、處分の效力は、特定の事件、及び其關係當事者をぼ束するに止り、一般に對しては、直接に何等の效力を及ぼす者にあらず、從つて處分は、法律又は命令の如く、必ずしも一定の形式を備へ、一定の方法に依りて、公布するを要せず、唯其處分を受くる者に對し、便宜の方法を以て之を告知すれば足るものとす、要するに處分もまた一種の命禁にして、臣民の權利義務を定むるものなるも、唯その特徵とする處は、常に法規の範圍内に於ける活動なること、及び特定の事件に關する法律關係を定むる、の二點に存するものと云ふことを得べし、次に處分は通常處分令の形式を以て發せらるるものなるも、處分を定むるものは、必ずしも處分令のみに限らず、往々法律、又は命令の形式を以て定めらるることあり、例へば憲法第七〇條の所謂財政上の緊急處分を勅令を以て定め、若くは府縣會の解散を勅令を以て行ふが如き是なり、因に處分令とは、法律及び命令に對する語にして、法律及び命令の形式に依らざる、國家の單獨なる意思表示なり、唯其特徵とする處は、一に處分を定むるに在りて、法規は決して處令の形式を以て定めざるなり、處分令は之を其實質より區別するときは、□一命令、及び禁令、即ち人民に對して或る行爲、若くは不行爲を命ずるものなり、命令、及び禁令を發するには、必ず法規の規定に基くことを要すたども、法規に依りて與へられたる權能の範圍内に於て之を發する場合には、行政官廳に於て、自由に其實質を定むることを得るものとす、□二免許、即ち一般に禁ぜられたる行爲を特定の場合に於て許すことを云ふ、例へば營業の免許の如し、而して免許の處分は、國家と人民との間の關係を定むるものなるを以て、免許に關しては、人民間に侵害の爭を生ずることなし、故に免許の許否に就きては、行政訴訟を生ずることあるも、民事の訴訟は生ずることなきものとす、□三認可、即ち或特定の行爲に對し法律上の效力を與ふるものなり、例へば會社の定欵の認可の如し、認可に係る行爲は、一般に禁ぜられたるものにあらざるを以て、認可を受けずして自由に之を行ひ得べきも、認可を受けざるときは、唯法律上の效力を生ぜざるに止るのみ、これ免許と異る點なり、□四公權の設定、即ち處分に依りて公權を設定する場合、例へば市町村公民の資格に關する法律上の要件を特免するが如し、□五公權の剝奪處分令に依りて、公權を剝奪する場合は、例へば市町村公民權の停止、營業停止、又は新聞雜誌等の發賣禁止の如し、□六私權の設定、即處分に依りて私權を設定する場合、例へば專賣特許の如き其最も著しき例なりとす、特許は、即ち一種の私權設定の行爲なるを以て、特許權の侵害に關しては、民事訴訟を生ずるは勿論のことなりとす、其他版權の免許の如きも、私權を設定するものと云ひ得べし、免許、特許、許可等の語は、現行法上其用例を一定せざるを以て、各場合に於ける事例に依りて之を判定するの外なし、□七私權の剝奪、即ち處分に依りて私權を剝奪する場合、例へば獸疫に罹れる畜類の撲殺、危險なる家屋の破壞其他徵發令に依る動産の徵發等の如し、□八權利主體の設定、又は其廢止處分は、啻に公私の權利を設立し、又は之を剝奪するのみならず、更に進んで權利の主體を設定し、又は之を消減せしむる場合あり、例へば會社其他の團體に法人たる資格を賦與するが如きは、之其權利の主體を設定するものにして、又會社其他の法人に解散を命ずるが如きは、即ち權利の主體を消滅するものなりとす、□九公の證明、こは其事實の眞確なることを認むべき義務を關係者に負はしむる處分なり、例へば度量衡の檢定、又は貨幣の鑄造の如し、次に處分の方式、及び處分令の發布の方式に關しては、一般の規定なし、蓋し其種類の異るに從ひて其形を異にすべきを以て、一般の定規を設くることを得ざるべきも、文書を以てするを通例となす、されば徵發書又は徵税令書の如く、特別の規定ある場合の外、正當の職權を有する官廳の發したるものなることを認識し得べく、且つ其處分を受くべき者に告知示決することを得ば、言語、又は符號、其他の法式を以てするも其效力の發生を妨ぐることなし、又數多の人、又は不定の人に對する處分は、官廳に往々規定を設けて豫め其方式を定むる場合あり、例へば新聞紙、又は揭示等の方法に依りて告知の手段となすが如し、次に處分の取消に就きては、之を權限外の處分に係る場合、違法の處分に係る場合、及び違法ならざる處分に係る場合とを區別せざるべからず、權限外の處分は、元來效力を有せざるものなり、隨つて之を取消すと云ふは、抑も矛盾の言なり、故に斯かる場合には、唯其無效を宣告して將來に對する疑惑を防ぐに過ぎず、之に反して違法の處分に係る場合は、全然無效也と云ふにあらざるも、本來效力を有せしむべからざるものなり、爰を以て官廳は、何時にても之を知ると同時に、取消さヾるべからざるものとす、最後に違法ならざる處分、例へば處分か公益に反し、又は便宜に反するが如き場合に於て之を取消すは、更に新なる處分を發するに外ならざるを以て、官廳は其新なる處分を發することを得べき正當の權限を有せざるべからず、例へば營業免許を取消すは、即ち營業を禁止するの處分を發するものなるが故に、法規に依りて、營業を禁止することを得る權限を與へられたる場合に限り、之を取消すことを得るものとす、而して本來取消なる行爲は、有效のものを始より無效なりしと同一の結果に至らしるむ行爲なれば、取消すと同時に、既往に於て生じたる效果を其原狀に回復せしめざるべからず、然れども通常の意義に於ける命令、又は處分の取消は、既往に於ける效果を消滅せしむること無く、唯將來に向つて其效力の繼續を停むるに過ぎざるものとす。(民一〇七七條)
- 英
- Administrative execution
- 独
- Verwaltungsverfügung
- 仏
- Exécution administrative
行政手段
(ぎやうせいしゆだん)行政手段とは、行政の目的を達する手段を謂ふ、即ち法規による行政手段、(行政法規)及び行爲による行政手段(行政行爲)との二となす。
- 英
- Administrative means
- 独
- Moyeu administr-atif
- 仏
- Verwaltungsmittel
行政法規
行政法規とは、直接に行政の目的を達する爲めに制定發布する法規を云ふ、分ちて行政法規、行政命令、行政規則となす、行政法規とは、行政の目的に出でたる法律、及び其法規を強制するために定めたる法律を云ふ、行政命令とは、行政の目的を達するために制定發布せらる命令を云ふ、彼の獨立命令、執行命令の如き之に屬す。
行政規則
行政規則とは、行政機關が其目的を達する爲めに、その權限内に於て發する規則を謂ふ、例へば閣令、省令、府縣令等の如きこれなり。
- 英
- Regulation of administration
- 独
- Verwaltungsordnung
- 仏
- Bègles del'administration
行政行爲
行政行爲とは、行政の目的を達する爲めの國家行爲を云ふ、別ちて行政命令、行政處分となす。(行政命令、及び行政處分の部參照)
- 英
- Administrative action
- 独
- Verwaltungsgeschäft
- 仏
- Acte administr-atif
行政事務
行政事務とは、行政に關する一切の國家事務にして、立法事務及び司法事務に對する分類なりとす。
- 英
- Administrative business
- 独
- Verwaltungsgeschäft
- 仏
- Affaires ad-ministratives
行政訴願
(ぎやうせいそがん)行政上の不當處分に原因して、私人が其利益を侵害せられし場合に、其處分の取消、又は變更を求むるものなり、□一訴願は、自己の利益を直接に侵害せられたる處分に對して、不服を訴ふるものなり、之を提起し得る者は、必ず其處分を受けたる者ならざるべからず、訴願の原因たる事項は、必ずしも權利を毀損せられたることを要件となざさるも、直接に利害の關係を有する事項たるを要す、□二利益を侵害せられたる處分は、必ず行政上の處分たることを要するは勿論、なほ又不當の處分たることを要件とす、不當處分とは、必ずしも法令に違背したる處分を云ふにあらず、違法の處分は、勿論不當のものなるも、公益に反する處分の如きは、之を不當の處分と云ふことを得べし、□三訴願の旨意は、其不當處分の取消、又は變更を求むるにあれども、之を取消し、又は變更すると否とは、固より審査の結果如何に係るを以て、訴願權の本質は、其處分の當否に對し、再審を請求するの權利なりと云ふを適當とす、□四訴願は、また何時にても之を提起し得るものにあらずして、一定の出願期限あり、蓋し行政上の處分は、訴願に依り、何時にても之を取消し、又は變更し得るものとなすときは、其處分に依りて生じたる權利義務は、常に不確定の狀態に在るものといふべく、其結果私人の權利、利益の保護を目的とする制度を不安ならしむる虞あるを以て、其處分の後六十日間を以て其出願期限と定め、此期間を經過するときは、これを提起し得ざるものとせられたり、□五訴願は、文書を以て之を提起するを原則となし、文書に依りて審理し、裁決を異ふるものとす、但し審理をなす官廳に於て必要と認むるときは、訴願人を召喚てし、口頭審問を爲す事なきにあらず、而して其文書は、其處分を爲し又は其處分に對して、裁決を與へたる官廳をして、其訴願に係る處分に對し、説明をなさしむるため、之等の官廳を經由して、管轄官廳に提出するものとす、□六訴願は、通常其處分をなしたる官廳に對し、監督權を有する上級官廳に提起するを原則となせども、時としては、其處分をなしたる官廳に提起するを要する場合あり、或學者は、之を抗議と稱し、訴願と區別すれども、現行訴願法は、共に之を訴願と爲せり、□七訴願は、法律命令に特別の規定ある場合の外、其處分の執行を停止せざるを原則となす、然れども行政官廳は、其權限に依り、又は訴願人の申請に依り、必要と認めたる時は、其處分の執行を停止することを得るものとす、□八訴願は、凡ての行政處分に對して提起し得るものにあらず、法律勅令に別段の規定ある場合の外、一定の事件に限るものとす、訴願法の規定に依れば、訴願を提起し得る事項を列擧せり、即ち第一租税、及び手數料の賦課に關する件、第二租税滯納處分に關する件、第三營業免許の許否、又は取消に關する件、第四水利、及び土木に關する件、第五土地の官民有區分に關する件、第六地方警察に關する件等となす、次に訴願に對しては裁決を與ふるもるとす、裁決の實質は種々あり、イ下級官廳の處分、又は裁決を理由ありとすることあり、此場合は、即ち上級官廳の裁決に依りて訴願に係る處分を確定するものして、其處分は將來に向つて效力を存續すべく、隨つて當該官廳と雖も隨意にこれを取消し、又は變更することを得ざるものとす、ロ訴願を理由ありとして、其處分を取消すことあり、此場合には、其處分は將來に向つて效力を失ふものとす、而して取消の裁決は、單に特定の事件に對する處分を失效せしむるに過ぎざるを以て、下級官廳は、更に同種の事件に對して、同樣の處分を爲すを妨げざるものとす、ハ訴願を理由ありとして、其處分を變更する事あり、此場合は、訴願に係る處分の全部、又は一部を取消し、上級官廳の處分を以て之に代ふるものなり、隨つて取消されたる部分は、勿論其效力を失ふべく、而して取消されざる部分は、依然として其效力を存續するものとす、ニ訴願を理由なしとして却下することあり、却下は訴願の目的たる處分に對し、單に審査をなさざるに止らず、其處分が、訴願をなすべきものにあらざることを決定するものなり、此決定も亦裁決の一種にして、之に對し、更に其上級官廳に訴願を提起することを得るものとす、次に訴願と行政訴訟との區別に就きては、學説一定せず、行政裁判法の規定に依れば、行政訴訟は、法律勅令に特別の規定ある場合を除き、第一先づ地方上級行政廳に訴願し、其裁判を經たる後にあらざれば、これを提起することを許さず、故に行政訴訟を提起するには、先づ其要件として、訴願に依り地方行政官廳の裁決を經たる事を要す、然れども其例外として、各省大臣の處分、内閣直轄、又は地方上級行政官廳の處分に對しては、直に行政訴訟を提起することを許し、而して各省、又は内閣に訴願を爲したる事件に對しては、行政訴訟を提起することを得ざるものと定めたり、之唯其手續上の差異にして、其實質上の差異に就きては、或は權利の毀損に對する救正手段は、行政訴訟にして、利益の侵害に對する救正手段は、行政訴願也と論ずるものあれども、我現行法上の解釋としては、其當を得たるものと云ふを得ず、我現行法上に於ては、訴訟も、訴願も、共に均しく行政上の違法處分に依り、權利又は利益を侵害せられたる場合に於ける救正手段たり、隨つて其實質に於ては、劃然たる差異を認め難し、之を以て形式上の差異を外にしては、其訴求の目的に依りて判定するの外なかるべし、即ち訴願の目的は、不當處分の内容を審査し、當否判定の結果、更に取消、又は變更の行政處分を求むるにある也、而して此處分は、一般の行政處分と同じく、法律の範圍内に於ける行政行爲の一種たるは勿論のこととす、之に反して行政訴訟は、各個の事件に對する法の確認を求むるにあるなり、隨つて權利の爭なると否なとを問はず、單に法律上の問題を決する國家の行爲を要求するものとす、即ち個々實在の事件に對する法の適用を決定するに過ぎざるなり、次に訴願と請願との區別に就きては、訴願とまた廣義に於ける請願の一種にして、共に均しく將來に向つて國家の行爲に要求するもの也と雖も、訴願は特定の行政處分によりて、權利又は利益を侵害せられたるを理由となし、其不當處分の取消變更を目的とする點に於て、請願と異るものとす。(二三年法一〇五號訴願法)
- 英
- Administrative demand
- 独
- Verwaltungsbeschwerde
- 仏
- Demande administrative
行政訴訟
(ぎやうせいそしやう)行政訴訟の性質に就きては、學説一定ならず、之を大別すれば、其實質より説明せんとするものと、其形式によりて説明せんとするものとの二あり、又其實質より説明せんとする學説を分つて二となす、即ち法規説、及び權利説之なり、權利説の大要に曰く、抑も行政訴訟は、行政裁判を求むる行爲にして、行政裁判は、一種の裁判なり、近世法治國に在りては、法律によりて範圍を定められたる被治者の權利は、同じく法律によりて、其範圍を定められたる治者の權利と相對す、之等の權利は、其實體に於ては同じからずと雖も、其性質に至りては異ることなし、茲を以て此種の權利に就て爭を生じたるときは、他の權利に就きて爭を生じたる場合と同じく、訴訟手續に依りて、司法裁判所に於て之を決定すべきもの也と、此説は多數學者の賛同する處にして、結局權利の實體が、一は私法に屬し、他は公法に屬するの差こそあれ、民事訴訟と均しく、權利の爭に就き裁判するものに外ならずと云ふにあるなり、次に法規説の梗槪に曰く、公の權利の施行に關する準規たるものは、即ち行政法規なり、隨つて行政法規の本旨によりて之を施行するは、啻に治者の權利たるのみならず、又實に其義務なり、されば行政法の主眼とも云ふべき法規は、縱令關係當事者の請求なき場合と雖も、治者の位地に在る者は、公の秩序、公共の福利のために之を執行するを要す、然るに法規を執行するに方りて爭を生じたるときは、私人に辯論を許すことあるも、這は畢竟法規の適用を確實ならしむるの手段たるに過ぎず、行政法の區域に於て主となるものは、法規の施行たるべく、訴訟人の地位の如きは、從たる關係に在り、之猶刑事訴訟の場合に於て、訴訟人の地位を認むるも、其主となる者は刑法の適用にして、訴訟人の如きは之に對し單に從たる關係を有するに過ぎざるが如し、即ち裁判は、公法の區域に於ては、關係者に機會を與ふるが爲に、形式上認められたるものに過ぎずと云ふに在り、次に訴訟の形式より説かんとする者は、行政訴訟は、行政裁判なる國家の行爲を要求するものにして、即ち行政訴訟なる手續に依りて行ふものなり、行政手續とは、關係者が口頭辯論をなす權利を有し、且つ之に參與して行ふ行政上の手續なりとなし、或學者は之に加ふるに判決が確定力を有することを以て、行政訴訟の特質となせり、以上の諸説は、何れも未だ行政訴訟の性質を説明するに充分なりと云ふを得ず、抑も訴訟は、各個の場合に於ける事件に對し、法の適用を目的とするものにして、關係者の口頭辯論、又は其參與を許すが如きは、此目的を達するの手段たるに過ぎざるべく、又訴訟當事者を以て、法の適用に對して從たるものとなす法規説の如きは、極端に失すのる嫌を免れず、訴訟は多くの場合に於て、權利の爭を決するものなれども、權利の爭は、必ずしも訴訟の觀念に缺くべからざる要件にあらざるなり、殊に行政訴訟に關する我國の制度は、法律、勅令に特別の規定ある事項に限り、行政訴訟として訴ふることを許し、其事項の性質に區別を置かざるを以て、事物の性質より之を論定するを得ず、要するに行政訴訟は、即ち行行裁判を求むる行爲にして、各個の場合に於ける事件に對し、行政法規の適用を確定するものなりと云ふ事を得べし、隨つて行政訴訟に於て要求する處は、行政處分の適法なるや否やを定むるに在り、故に行政訴訟の原因たる處分は、必ず法規の適用に關する者たるを要し、その處分の便宜なるや否やをす決るものにあらざるを以て、行政官廳の自由裁量に屬する訴訟の如きは、行政訴訟の原因となすことを得ざるものとす、且つや行政法規の適用に關するものなるを以て、民事及び刑事の訴訟と異るは論を俟たず、而して行政機關に對してのみ之を提起することを得るものなるが故に、國家の直接機關たる元首の行爲に對しては、之を提起することを得ざるものとす、本來行政裁判は、各個の事件に對し、行政法規の適用を定むるものなるを以て、行政官廳には、其訴訟の原因となるべき實在の事件あることを必要とす、故に一般の命令に對し、行政訴訟を提起するを許さざるは固より其處なりとず、次に行政訴訟の手續上の要件として行政訴訟は、各省大臣、内閣直轄官廳、又は地方上級行政官廳の處分に係る場合を除き、行政訴願を以て、其基礎となすものにして、或事件に對し、行政訴訟を提起するには、每に先づ訴願を提起して、其裁決を得ることを必要とす、行政訴訟の提起は、法律勅命に特別の規定ある場合を除き、行政處分に於て官廳書又は裁決書を交付し、若くはこれを告知したる日より、六十日以内に提起するを要するものにして、若し天災其他避くべからざる事變に依り、行政訴訟を提起すること能はざりし場合、及び自己の過失に依らずして、處分のありしことを知らざりし場合の外は、如何なる事情あるも、此期間後には、出訴することを許さざるものとす、以上例外の場合に於ては、其障碍の止みたる日、若くは行政處分のありたることを知りたる日より十四日以内に、行政訴訟を提起することを得、行政訴訟の手續は、口頭審問を原則となすを以て、原告、及び被告の間に於て、訴狀及び答辨書の往復を終りたるときは、期日に至り原被告、及び利害關係を有する第三者を呼出し、口頭審問を開始すべきものにして、若しこの三者共に、口頭審問を爲すことを望まざる旨を申立てたるとき、又は原被告及び第三者共に出廷せざるときは、行政裁判所は、文書にのみ依りて判決を爲すを得べし、口頭審問中、原被告及び、第三者は事實、及び法律の點に就きて盡さざる處を補足し、誤謬を更正し、若くは新に證憑を提出し、及び證書を提示するを得べく、又審問中主務大臣は、訴訟の原因たみ事件に關し、公益保護の心要ありと認めたる場合に、特に委員を命じて出廷せしむることを得るものにして、裁判所は、判决の前に、其委員をして意見を陳述せしむべきものとす、而して行政裁判所は、關係當事者の立證に依り、拘束せらるる事なさを以て、其必要と認むる場合には、自ら進んで證據を蒐集し、以て判決の基礎となすことあるべし。
- 英
- Administrative Procedure
- 独
- Verwaltungsprozesz
- 仏
- Procédure admin-istative
行政訴訟事件
行政訴訟事件とは、行政裁判の手續に依りて、裁判を求むる事件を云ふなり、抑も行政訴訟事件を定る方法に二種あり、□一列記法とは、各種の法令中に、行政訴訟を許すべき場合を一々列記するものにして、一般の原則に依りて事件を定めず、各種の場合に於て、之を決定するものとす、隨つて此方法に依るときは、法規又は權利の侵害ありたる場合のみならず、全く法規の適用に關せざる事件に對しても、行政訴訟を許すことを得べし、□二之に反して槪括法は、一般の原則に依りて事件を定め、其事件の場合如何を問はざるを以て、苟も其原則に適合する事件は、行政訴訟事件となす事を得べく、必ず權利の侵害を以て、其要件となすものとす、我國の制度は列記主義を採り、行政訴訟を提起し得る場合を各種の法律命令中に規定せるを以て、一々茲に揭ぐるを得ざるも、明治二三年法律第一〇六號の規定に依りて説明すれば、行政官廳の違法處分に依りて、權利を毀損せられたる事件は、之を行政訴訟事件と爲せりと云ふを得べし、即ち□一處分ありたる事を要す、處分には、積極的のものと、消極的のものとの二あり、積極の處分に對し、行政訴訟を提起し得るは勿論の事にして、消極の處分、即ち行政官廳が法律上爲さざるべからざることを拒みたる場合に於ても、行政訴訟を提起し得るものとす、□二行政官廳の處分なることを要す、隨つて元首の行爲又は直接外部に對して、效力を有せざる議會の議決等は、行政訴訟の原因となることなし、□三違法の處分なることを要す、即ち法規に違反したる處分ならざるべからず、不當處分の如きは、行政訴願の原因となることあるべきも、行政訴訟の原因とならざるものとす、□四權利を毀損せられたることを要す、行政處分に依りて毀損せらるる權利は、必ず公權にして、私權を毀損せらるるが如き場合は、全く無きものとす、以上は唯前記法律第一〇六號に從つて説明したるものにして、特別の場合に、特別の規定に依り行政訴訟を許したるものは、上述の要件を具備すると否とを問はず、又何等の事項に關する處分たるを論ぜず、其法律、又は命令の規定に準して、行政訴訟を提起するを得べし。(二三年法一〇六號、及河川法、官吏恩給法參照)
- 英
- Administrative case
- 独
- Verwaltungsrechtssache
- 仏
- Cause administrative
強制通用
(きやうせいつうよう)強制通用なる語は、貨幣の流通に關して用ひらる、即ち打步なく、公私の支拂に於て、流通する法律上の狀態を云ふ、故に強制通用力と云へば、法律上當該貨幣が、公私の支拂に於て、打步なしに通用せらるるの力なりと定義するを得べし、再言すれば、法律にて定めたる本位貨幣は、相手方に於て何れの貨幣を以て返濟せらるるも、常に之に應ぜざるべからざるを云ふなり、例へば十圓金貨を以て借受けたる債務の返濟の場合に、二十圓金貨を以て返濟するを得るが如き之なり、但し當事者間の特約を以て、十圓金貨を返濟することを約するは別論なり、補助貨幣の強制通用の範圍、其他に就きては、通貨の部を見よ。(民四〇一、四〇二參照)
強制罰
(きやうせいばつ)強制罰は、一に之を執行罰、行政罰と稱し、彼の刑事罰たる刑罰、警察罰に對す、即ち行政上の目的の爲めに科する一種の惡報也、その本質に就きては、確定の議論なきも、要するに左の特質を有するは明かなり、□一行政罰は、行政の目的の爲めに科する惡報なり、例へば行政官廳が或る行爲を命じたるも、被命者之を遵行せざるとき科するものにして、刑罰と異なり、之を遵行せざる間は、幾度にても之を科することを得べし、又刑罰の如く、所犯ある每に必ず科すべきものにあらずして、これを科すれば、果して人民の服從遵行を強ふる上に有效なるべしと認むる場合に、戒告の後之を科すべきものなり、□二強制罰の惡報なる過料は、彼の刑罰の科料とその内容を同うするも、その形式を異にし、然も強制罰は、同一行爲に對して、特に禁ずる法令なき限りは、之を刑罰と併科し得るものなり、要するに強制罰なるものは、官廳が人民に向て爲したる處分に對し、服從を強制する爲めに被らしむる所の惡報にして、その目的は、刑罰の如く、社會の爲めに既に實行せられたる惡事を懲すにあらずして、唯不順の繼續を停止せしむるに在るものとす。(二三年法八四號五條二號、六條及同年敕二五三號四條以下、執行罰の部參照)
- 英
- Compulsory punishment
- 独
- Exekutivstrafe
- 仏
- Peine obligatoire
行政法
(ぎやうせいはふ)行政法の意義に關しては、學説一定せず、今其最も穩當なる解釋に從て説明すれば、憲法と行政法とを相合して、國法と云ふは學説の一致する處なり、行政法の意義を明かにせんと欲せば、先づ憲法との區別を説かざるべからず、然るに憲法なるものは、立憲政體の國家に於て存在するものたるを以て、憲法は如何なる法律なるやを決する方を其先決問題として、立憲制度の組織を考察せざるべからず、抑も立憲制度を採用する國家にして、君主國なるときは、之を立憲君主國と稱す、立憲君主國に於ける統治權は、君主、議會裁判所、國務大臣なる四機關を通じて行はるるものにして、此四機關を通じて統治權を行ふことは、また實に立憲君主政體に於ける一大原則なりとす、即ち憲法なるものは、此四機關の組織、權限、及び其作用の形式を定めたるものに外ならざるなり、然るに此四機關のみ成立して其作用をなすと雖も、國家萬般の政務は、唯僅に之等の機關の作用に依りて、これを掌理し得べきものにあらざるを以て、其政務の圓滿に行はるるために必要なる幾多の機關を設けざるべからず、此種の機關は、固より間接には憲法の規定に基くものなるべきも、直接の規定に依りて之を設置するものにあらざるが故に、此種の機關を設置するに方りては、其組織、權限、及び其作用に關し、必要なる諸般の規定を設けざるべからず、是即ち行政法なり、換言すれば行政法は、行政機關の組織、權限、及び其作用を定めたる法規を云ふものとす。
- 英
- Administration law
- 独
- Ver-waltungsrecht
- 仏
- Droit d'administra-tion
行政法學
行政法學とは、所謂國法學の一分科にして、憲法學に對す、されど行政法學は法的現象を硏究する科學なるが故に、政治現象を硏究する彼の行政學と異るは、明かなりとす。
行政命令
(ぎやうせいめいれい)行政命令は、天皇が憲法第九條の規定に依り、公共の安寧秩序を保持し、又は臣民の幸福を增進するがために、天皇自ら之を發し、又は行政官廳をして發せしむる處の命令にして、緊急命令、及び執行命令に對するものとす、緊急命令、執行命令、及び行政命令の外に、猶委任命令なるものあり、委任命令とは、法律の委任に依りて、天皇自ら之を發し、又は行政機關をして發せしむる處の命令なり、行政命令は、また此委任命令に對して、獨立命令と云ふことあり、或は法規命令と云ふものあり、されど行政命令の實質は、必ずしも法規のみを定むるものにあらず、時としては處分を定むることあるを以て、法規命令と稱するは、稍隱當を缺くの嫌なきにあらず、行政命令は、即ち行政の目的のた一めに發する命令にして、積極、消極の、二樣の制限あり、消極的制限は、既に法律を以て規定せる事項は、更に行政命令を以て規定することを得ざることこれなり、現に法律の規定に係る事項は、特に法律の委任ある場合にあらざれば、行政命令を以て、廢止變更することをも許さざるものとす、又行政命令を以て、憲法上の立法事項を規定するを許さざるものとす、立法事項なるものは、憲法上法律を以て規定すべきことを要件となしたる事項なれば、行政命令を以て、立法事項を規定するを得ざるは言を俟たざるべし、つぎに積極的制限、即ち行政命令は、公共の安寧を保持し、又は臣民の幸福を增進するがために發すべきものなること之なり、憲法義解の説明に依れば、公共の安寧を保持するは、警察の消極的手段(即ち警察の目的也)を云ふものにして、臣民の幸福を增進するとは、經濟上教育上、臣民の生活、及び智識を發達せしむる處の、積極的手段を云ふもの也、之に依つて見れば、行政命令は、所謂内務行政の範圍に於てのみ發することを得るものと云ふべし、行政命令は、之を發する官廳の種類によりて區別すれば、勅令、閣令、省令、府縣令、北海道廳令、警視廳令、郡令、島廳令等の數種ありとす。
- 英
- Administrative order
- 独
- Verwaltungsverordnung
- 仏
- Ordre ad-ministratif
行政命令權
行政命令權とは、行政命令を制定發布するの權を云ふ、行政命令權は、憲法上の大權として、天皇の有する處、行政官廳は、此權を有することなし、行政官廳が行政命令を發するは、其有する行政命令權に基くものにあらずして、法律又は勅令の委任に依りてこれを發するものとす、法律、又は勅令が、行政官廳に之を委任する方法に二種あり、一は特に事項を指定して委任する場合にして、他は其官廳の職務に關する事項に就き、槪括的に委任をなす場合なり、次に行政命令權に對しは、憲法上積極的制限、及び消極的制限の二あるは前説せる所なり、即ち積極的制限は、公共の安寧秩序を保持し、又は臣民の幸福を增進するために、行政命令を發すべきものにして、消極的制限は、憲法上の立法事項、及び法律の既に規定せる事項に就きては、行政命令を以て之れを規定し、又は法律の規定を廢止變更する事を許さざることこれなり。(憲法九條參照)
強制豫算
(きやうせいよさん)監督官廳が地方自治體に對し、其監督權に依りて強制的に自治體の豫算を定むるを云ふ、これ自治團體に對する國家の監督權による作用にして、重要なるもの也、市制第一一八條、町村制第二一二條に依れば、市或は町村、又は町村組合が、法律勅令によりて負擔し、又は當該官廳の職權に依りて命令する所の支出を定額豫算に載せず、又は臨時之を承認せず、又は實行せざるときは、府縣知事、或は郡長は理由を示して其支出額を定額豫算表に加へ、又は臨時支出せしむべしとあり、之市町村の支出を強制せしむるの方法なり。
- 英
- Compulsory Budget
- 独
- Zwangsbudget
- 仏
- Budget obligatoire
強制履行
(きやうせいりかう)直接履行と云ふに同じく、債務者が、任意に債務を履行せざる場合に、債權者が裁判所に請求し、國家の公力に依りて債務者を強制し、其債務の本旨に從ひ、之を履行せしむることを云ふ、即ち債務の不履行に對する救濟手段の一なり、例へば特定物の引渡しを爲すべき義務を負ふに拘らず、之を引渡さざるとき、裁判所の宣言に基き、執達吏が其目的物を差押へ、之を債權者に引渡すが如き場合也、茲に注意を要するは、強制履行と強制執行との區別なり、普通強制履行は、その最後の手段として強制執行の方法によるも、債務者裁判所の宣言によりて止むなり、債務を履行せる如き場合は、必ずしも強制執行によらざるも、猶強制履行と云ふことを得るものとす、凡そ債務者が完全なる履行を爲さざる場合に、必ず強制履行の方法を講ずべきや否やは、古來より疑問とせられたる所なりき、今日と雖も、各國其制度を異にす、佛法系に於ては、債權者は、制強履行と其不履行より生ずる損害賠償とを選擇するを得るものとし、羅馬法及獨法系に於ては、原則として強制履行により、其不能なる場合にのみ賠償を許すものとし、英法系に於ては、損害賠償を常とし、特別の理由ある場合にのみ強制履行を許す、我國にては直接履行によるを原則とし、性質上直接履行を爲し得ざる場合には、結局損害賭償を求むるの外なしとせり、例へば他人の爲めに書画を揮毫すべき債務の如きは、強制するに由なく、從つて不履行の場合には、損害賠償を求むるの外なきなり。(民四一四條參照)
競賣
(きやうばい)競賣とは、競賣手續に依りて行ふ、動産、不動産、又は船舶等の賣却方法なり、競賣手續を定めたる法律は二種あり、其一は競賣法にして、其二は民事訴訟法中の強制執行に關する規定これなり、即ち一般の競賣に就きては、競賣法の規定に依るべきものにして、競賣法の規定に依れば、競賣には動産の競賣、不動産の競賣、船舶の競賣、及び增價競賣の四種あり、動産の競賣は、競賣をなすべき地を管轄する區裁判所所屬の執達吏が、之を取扱ふものにして、競賣は、競賣に付すべき物の現在地に於て爲すを原則とし、若し其現在地に於て、競賣に付すべき物の性質に依り、相當の代價を得る見込なきときは、現在地以外に於て之を爲すことを得るなり、留置權者、先取特權者、質權者、其他民法、又は商法の規定に依りて、或動産の競賣を爲さんと欲する者は、先づ競賣を爲すべき地を決定し、後書面を以て其地の區裁判所々屬の執達吏に委任を爲さざるべがらず、此委任は、競賣物件競落の告知あるまでは、何時にても取消し得るものとす、尤も此場合に於ける競賣手續の費用は、委任者の負擔に屬するものとす、執達吏が、競賣の委任を受けたるときは、特別の事情なき限り、直に競賣の日時を定むべきものにして、競賣の日時、及び其場所を定めたるときは、競賣物件の品質、及び價格に準じ、競賣地に於ける適當の方法を以て、□一競賣委任者の氏名及び住所、□二競賣物件の種類、數量、及び品質、□三競賣の條件、□四競賣の場所、及年月日時、□五競賣の委任を受けたる執達吏の氏名、住所を記載したる公告をなすと同時に、競賣に就き利害關係を有する者にして、其住所、又は居所の知れたる者に對しては、競賣の場所及日時を通知するものとす、競賣物件に關する特別の事情に依り、急速の競賣を爲すを要する場合の外、此公告と競賣との間には、五日以上の期間を存することを原則とす、而して競賣物件にして高價品なるときは、豫め鑑定人をして評價を爲さしむることを要す、競賣の方法は、競賣の條件を告知し、各競賣物件に就き競買の申込を催告するに依りて始るものにして、各競買の申込中、最高價競買の申込を三回呼上げたる後、更に以上の高價競買の申込なきとき、最高價競買申込人に對し、競落の告知をなすに依りて終了するものとす、競賣物が金銀、又は金銀の製品にして、最高價競買の申込が地金銀の相場以下なるとき、又は競賣物が取引所の相場ある物にして、最高價競買の申込が取引所の相場以下なるときは、之を競賣することを得ざるものとす、競賣に就き利害關係を有する者は、競賣手續に關する執達吏の處分に就き、競賣の完結するに至るまでは、何時にても其執達吏の所屬區裁判所に、異議の申立をなすことを得るものにして、裁判所は、異議の申立あるときは、競賣の停止に依りて、著しき損害を生ずる虞ある場合の外、其競賣の停止を命じ、異議の申立を審査して、其裁判を申立人に通知するものとす、異議の裁判の結果、其競賣の取消を命ぜらるるが如きことあるも、善意の競落人の權利には影響を及ぼす事なく、又第三者が、競賣の目的物に關して、訴を提起したることを證明したるときは、執達吏は、直に競賣を停止せざるべからざるも、若し競賣の目的物に就き過分の費用を要し、又は遲滯のため著しく其價格を減少する虞ある時は、競賣を續行して、其賣得金を供托することを得るものとす、何れの場合に於ても、執達吏は、其競賣を停止したるときは、相當の方法を以て、競賣物を保管する義務を負ふものにして、此場合に於ても競賣手續、及び保管の費用は、委任者の負擔すべきものなり、執達吏競賣手續を終了したるとき、又は競賣物件が金銀、若くは金銀の製品、其他取引所の相場を有する物にして、地金銀の相場以上、又は取引所の相場以上の競買申込なかりしため、之等の物件を地金銀の相場以上、又は競賣當日に於ける取引所の相場以上の代價を以て、任意に賣却したるときは、直に競賣調書を作製し、□一競賣委任者の氏名、住所、□二競賣に付したる物件の種類、數量、及び品質、□三鑑定人をして評價をなさしめたるときは、其評價額、競賣の場所、及び日時、□四若し競賣に關する事情に依りて、競賣の公告と競賣との間に於ける期間を、五日以内に短縮したるときは、其事情、□五利害の關係を有する者に通知を發したること、若し之を發せざりしときは其事由、□六告知したる競賣の條件、□七各競賣物に對する競落人の氏名、及び其申込價額、□八競賣を停止したるとき、又は競落をなさざりしときは其事由、□九競賣の開始及完結の日時、□十競賣調書を作りたる年月日等の事項を記載し、自ら之に署名捺印すると同時に、委任者、又は其代理人をして署名捺印せしめ、且つ競賣の公告をなし、及び通知を發したることを證する書面、及び委任狀を之に添附せざるべからず、而して競賣に就き正副二通の計算書を作り、其正本は計算に關する證明書と共に、之を委任者に交附し、其副本は競賣調書に添付し、委任者の請求あるときは、競賣調書の謄本を交附せざるべからざるものとす、競賣完結の後上記の手續をなすと同時に、執達吏は其賣得金の中より競賣の費用を控除し、其殘金及び競落せざりし物は、遲滯なく之を受取るべき者に交附し、又は其者のために之を供托せざるべからず、不動産の競賣は、其不動所在地を管轄する區裁判所に對して、申立を以てこれをなすべきものにして、若し其不動産が、數個の區裁判所の管轄區域に亘る場合には、競賣申立人は、各區裁判所を併せて管轄する直近上級裁判所に對し、其不動産競賣に關する管轄裁判所指定の申請をなすことを得べし、不動産の競賣に就きての申立書には、□一債務者、及び所有者の氏名、住所、□二競賣に付すべき不動産の表示、□三競賣の原因たる事由、□四年月日、□五裁判所等の事項を記載して申立人自ら之に署名捺印し、競賣に付すべき不動産に關する登記簿の謄本、及び若し代理人に依りて此申立をなすときは、其委任狀を添ふることを要し、全く登記なき不動産に就きては、債務者の所有なることを證すべき證書、地所に就きては、國、郡、市、町、村、字、番地、地目、反別若くは坪數、土地臺帳に登錄したる地價、及び其地所に就て納むべき一ケ年の租税、其他の公課を證すべき證書、建物に就きては、國、郡、市、町、村、字、番地、構造の種類、建坪、及び其建物に付き納むべき一ケ年の公課を證すべき證書、地所建物に就き、賃貸借ある場合に於ては、其期限幷に借賃を證すべき證書等を呈出することを要す、此申立あるときは、裁判所は競賣開始の決定をなし、競賣期日及び競落期日を公告し、且つ競賣期日は之を申立人、債務者、及び債權者、其他登記薄に登記したる不動産上の權利者、又は不動産上の權利者として、其權利を證明したる者等の利害關係人に、之を通知するものとす、競賣期日は、競賣公告より少くとも十四日後に定むべきものにして、競賣期日には、其擔當を命ぜられたる執達吏は執行記錄を示し、又特別の條件あるときは、其條件を告知し、競賣價額の申出を催告して競賣を開始するものとす、この催告をなしたる後滿一時間を經過せざれば、これを終了することを得ざるものにして、最高價競買人の氏名、及び其價額を呼上げたる後、競賣の終決を告知するなり、若し競賣期日に相當の競賣申込なきときは、裁判所は其意見を以て、最低競賣價額を相當に低減し、更に十四日を隔てて、新競賣期日を定むべきものなり、尤も競賣期日と競落期日との間に、天災其他の事變に依り、其不動産が著しく毀損したるときは、最高價競買人は競買を取消す權利あり、裁判所の競落を許す決定が確定したるときは、競落人は、直に其代金を裁判所に支拂ふを要し、其代金の全額を支拂ひたる後にあらざれば、不動産の引渡を求むる事を得ず、代金支拂義務を完全に履行せざるときは、裁判所は、更に其不動産の再競賣をなすべきも、競賣人が再競賣期日の三日前に、其代金及手續の費用を支拂ひたるときは、再競賣手續を取消すべきものなり、競落人が其代金を支拂ひたるときは、裁判所は其中より競賣の費用を控除し、殘金は之を受取るべき者に交附するなり、申立人は、最高價競買申込人の同意ある場合に限り、競落期日まで其申立を取消することを得べく、尚競賣期日の公告前に、競賣に代へて、其不動産の入札拂を、裁判所に申立るを得るものとす、次に船舶の競賣に就きては、其船舶の碇泊港、又は其現在地を管轄する區裁判所に對し、船舶所有者、幷に船長の氏名、住所、船舶の表示、及び競賣の原因等を記載したる申立書に、船舶登記簿の謄本、及び官の認可を要する場合に於ては、其認可を得たることを證する書面を添附せざるべからず、而して船舶競賣期日の公告には、申立に依りて競賣をなす旨の外、船舶の表示、及び其碇泊港、又は現在の場所を記載することを要するものとす、其他の手續は、不動産の競賣に關する規定、及び民事訴訟法中船舶の強制執行に關する規定を適用せらるるなり、次に增價競賣に關する説明は、增價競賣の項を參照すべし。
- 英
- Auction
- 独
- Auktion
- 仏
- En-chère
競買
(きやうばい)競買とは、競賣に付せられたる物件を、競落に依りて買取ることを云ふ、競賣法の規定に依れば、競買の申込は他の最高競買の申込ありたるとき、又は競落をなさずして競買を終了したるときは、當然其效力を失ふべきものなり。
- 英
- Bid
- 独
- Versteigerung
- 仏
- Enchère
竸賣委任者
競賣委任者とは、動産の留置權者、先取特權者、又は質權者等にして、競賣法に依りて其動産の競賣を執達吏に委任したる人を云ふ、委任者は競落の告知あるまで、競賣手續の費用を負擔して、其委任を取消することを得べく、競落の完結したる後、執執吏に對して、競賣調書の謄本を請求し、又其完結の至るまで、競賣手續に關し、執達吏の處分に就き、其裁判所へ異議の申立を爲すを得、又利害關係人の異議の申立等のため、競賣の停止を命ぜられたきは、競賣の費用、及び競賣物件の保管費用を負擔すべきものとす。(竸賣法三、一七、一九條二項、二一條參照)
- 英
- Entruster of auction
- 独
- Versteigerungsmandant
- 仏
- Mandataire de l'enchère
竸賣金額
(きやうばいきんがく)競賣に付したる物の代金額を云ふ、競賣法の規定に依れば、動産の競賣に就きては、執達吏は競賣完結後、賣得金、即ち競賣金額の中より競賣の費用を控除し、其殘金は之を受取るべき者に交附し、又は其者のために之を供託すべきもとのとし、不動産に就きては、裁判所は其代金中より竸賣の費用を控除し、其殘金は遲滯なく之を受取るべきものに交附すべきものとせり。(競賣一五、三三條の二項參照)
- 英
- Sum of auction
- 独
- Auktions-geldsumme
- 仏
- Somme de l'enchère
竸賣調書
(きやうばいちやうしよ)竸賣完結後、執達吏が競賣法の規定に依り、又は裁判所の命に依り、作製すべき競賣に關する調書なり、動産の競賣に關する調書には、□一競賣委任者の氏名、住所、□二競賣に付すべき物の種類、數量、及び品質、□三鑑定人をして評價を爲さしめたるときは、其評價額、□四競賣の場所及び日時、□五競賣に付すべき物に關し、速に競賣をなすことを要する特別の事情ありて、競賣公告後五日以内に執行したる時は、其事情、□六利害の關係を有する者に通知を發したること、若し之を發せざるときは其事由、□七告知したる競賣の條件、□八各競賣物に對する競落人の氏名、及び其申込價格、□九競賣を停止したるとき、又は競落をなさざりしときは、其事由、□十競賣の開始、及び完結の日時、十一競賣調書を作りたる場所、及び日時、以上の事項を記載して、執達吏自らこれに署名捺印し、且つ委任者、または其代理人をして署名捺印せしめ、之に競賣の公告をなし、通知を發したることを證する書面、及び委任狀を添附するものとす、執達吏は、委任者の請求あるときは、其謄本を作りて交附せざるべからず、不動産の競賣に關する調書に就きては、民事訴訟法第六六七條の規定を凖用すべきものとせり。(競賣法一四條、及び三〇條參照)
- 英
- Protocol of auction
- 独
- Versteigerungsprotokoll
- 仏
- Protocole de l'enchère
競賣法
(きやうばいはふ)明治三一年六月法律第一五號を以て公布せられたるものにして、動産、不動産、船舶の競賣、及び增加競賣に關する手續を規定せる法律なり。(競賣、增加競賣の部參照)
- 英
- Law of auction
- 独
- Verstei-gerungsrecht
- 仏
- Droit d'encan
強迫
(きやうはく)強迫とは、或危害を加へんことを示して、相手方に畏怖の念を生ぜしめ、以て其人の自由なる意思の決定に制肘を加ふるを云ふ、□一或行爲が強迫たるには、相手方に對し、或危害を加へんとの意思を表示することを要す、其意思は言語、又は文書、若くは其他の動作を以てするも可なり、要は唯相手方が其危害を加へんとの意思を解するを以て足る、而して強迫は、唯其危害を加へんとの意思を表示するの處爲なるを以て、腕力を以て相手方の肉體を強制するが如きは、強迫の範圍を過ぎて暴行に屬ずるものとす、□二強迫の處爲は、相手方に畏怖の念を生ぜしむることを要す、如何に恐るべき危害を加ふるの意思を示すも、相手方が毫も之に對して恐怖の念を生ぜざるときは、其人の自由なる意思の決定を制肘することなきを以て、強迫と云ふことを得ざる也、□三強迫に依る意思表示は、その人の意思の自由を缺くものなるを以て、法律行爲に關する場合には、民法の規に依りて、其法律行爲を取消すことを得るものとす、民法の規定に依りて、法律行爲を取消すことを得る場合は、法律行爲の重要ならざる部分に關して、強迫せられたる時の意思表示に係る場合なるを要す、盖し強迫に依りて、法律行爲の要素に錯誤を生じたるときの如きは、全然其法律行爲は無效なるを以て、之を取消すの必要なかるべし、□四強迫は相手方に於て、或範圍の意思の自由を存したることを要す、何となれば、若し或法律行爲に應ぜずんば、忽ち其生命を奪はんと脅すが如きは、相手方に於て、全く意思選擇の餘地なきのみならず、全然意思を喪失せるものなるを以て、斯かる強迫に基く法律行爲は、初めより無效にして、取消有無の問題を生ずることなきものとす、□五強迫は身體に對するも、或は名譽、若くは財産に對するも問ふ處にあらず、唯之に依りて相手方に恐怖の念を生ぜしめ、以て其自由なる意思の決定に制肘を加ふることを得ば足る、然れども刑法第一三七條の兇徒嘯集罪の場合に於ては、強迫せられたる官吏が、畏怖の念を生ぜしことを要せず、苟も強迫の所爲にして存在すれば、毫も官吏が畏怖せしことなきも、本罪の構成を妨げざるものとす。(民九六條、刑一三七條)
- 英
- Coercion
- 独
- Bedrohung
- 仏
- Coercition
強暴
(きやうばう)強暴とは、強迫暴行の義にして、暴行とは、腕力其他の方法を以て、他人の身體の自由に抑制を加ふるが如き處爲を云ひ、強迫とは、或危害を加ふべき意思を示し、以て他人の精神に恐怖を生ぜしむるが如き、處爲を云ふものとす、民法第一九〇條第二項に「強暴、又は隱密に依る占有」とあるは之其用例なりとす。
- 英
- Threat
- 独
- Zwang
- 仏
- Menace
競落
(きやうらく)競賣に於て、競買人が、最高價競買の申込を爲したるに依り、競賣物件に關する權利を取得する事實を云ふ、競賣法の規定に依れば、競落に依り、競賣の目的の上に存する先取特權、及び抵當權は、消滅するものにして、競賣物件が動産なるときは、執達吏が、最高價竸買の申込を三回呼上げたる後、競落を決するものとす、不動産、又は船舶に在りては、所定競落期日に於て、裁判所の決定を以て、競落の許可をなすべきものにして、利害關係人は競落期日の終に至るまで競落の許可に就き、異議の申立をなすことを得、然れども其異議の申立は、特定の理由あるときに限りて之をなすことを得るに過ぎず、裁判所に於て異議の申立を正當とするときは、競落を許さざる決定を言渡すべく、若し更に競賣を許す場合には、職權を以て新競賣期日を定むるものとす、利害關係人は、競落の許否に就きての決定に依り、損失を被るべき場合に於ては、民事訴訟法の規定に基きて、其決定に對し即時抗告をなすことを得べし。(競賣三二條、民訴六六〇、六七一條乃至六七四條、六七六條乃至六七八條參照)
- 英
- Highest bidding
- 独
- Zuschlag
- 仏
- Enchère la plus haute
競落價額
(きやうらくかがく)競落價額とは、競洛を得たる最高價競買人の申込價額を云ふ、競賣法の規定に依れば、競賣物件が金銀、若くは金銀の製品に關する競賣の場合には、地金銀以上の價額なることを要し、取引所の相場ある競賣物件に就きては、競賣當日に於ける取引所相場以上なることを要すとせり。(競賣法一一條、一二條、二八條參照)
- 英
- Sum of highest-bidding
- 独
- Zuschlagswerth
- 仏
- Somme de la plus haute enchère
競落期日
(きやうらくきじつ)競落期日とは、不動産又は船舶の競賣に就き、管轄裁判所が、競落の許可を確定するために定めたる期日を云ふ、競落期日は、競賣期日後七日以内に定むべきものにして、競賣の開始決定をなすと同時に、これを競賣期日の公告に附加して、其裁判所、及び不動産所在地の市町村役場に揭示して公告するものとす、而して競落期日は、裁判所に於て之を開始し、競落の許否を決定するなり、利害關係人は、競落期日の終りに至るまで、其裁判所に出頭して、競落の許可に就き異議の申立を爲し、又は其他の申立をなすことを得べし。(竸賣法二七條、及び三二條、民訴六五七、六五九、六六一條參照)
- 英
- Date of highest bidding
- 独
- Zuschlagsdatum
- 仏
- Date de la plus haute enchère
競落代價
(きやうらくだいか)競落代價とは、競賣に於て、競落を得たる最高價競買人が支拂ふべき代金を云ふ、競落代價は、動産に在りては、競落物と引換に支拂ふことを要し、不動産に在りては、競落日に於て、裁判所の競落を許す決定が確定したる後、直に支拂ふことを要するものとす、增加競賣の場合には、競落代價の完濟に依りて、增加競賣の擔保は、其效力を失ふものなり。(競賣法三三條、四八條參照)
- 英
- Sum of highest bidding
- 独
- Zuschlagskaufpreis
- 仏
- Somme de la plus haute enchère
競落人
(きやうらくにん)競賣に於て競賣物件の競落を得たる人を云ふ、競落人は、競落代金を支拂ひたる後にあらざれば、競落物件の引渡を請求することを得ざるものにして、不動産又は船舶が競賣物件なるときは、裁判所の競落許可の決定に依りて其權利を取得するものとす、競落人は、競賣期日、競落日、若くは競賣條件に定めたる代金支拂日に、競落代金支拂の義務を完全に履行せざるときは、裁判所は、職權を以て競賣の再競賣を命ずるものとす、而して再競賣の場合には、競落人は競買人となることを得ざるは勿論、再度の競落代價が、最初の競落代價より高かりしときと雖も、その剩餘の金額を請求することを得ず、之に反して若し低かりし場合には、其不足の金額、及び再競賣手續の費用を負擔せざるべからず、されど再度の競賣期日の三日前までに買入代金、及び手續の費用を支拂ひたるときは、再競賣を取消さるるものなり。(競賣法三二條の二、及び三三條の一、民訴五七七條の三、六八六條、六九七條の一、六八八條の一、四、五參照)
- 英
- Highest bidder
- 独
- Zuschläger
- 仏
- Enchérisseur à la plus haute somme
競落物
(きやうらくぶつ)競賣に於て競落と決定したる物を云ふ、競落物は、競落前に於ては競賣物件にして、競買人に取りては競買物なりとす、民事訴訟法第五七七條第二項に「競落物の引渡は、代金と引換へに之を爲す」とあるは、之其用例なり。
- 英
- Object knocked
- 独
- Zuschlags-sache
- 仏
- Chose cognée
規約
(きやく)關係者の協議に基きて定めたる規則を云ふ、行政法上に於ける規約は、國家が其命令を以て關係者の定めたる約定に、關係者全體が、之を遵奉すべき效力を付したるものなるを以て、一種の法規也と云ふことを得べし、隨つて其規約の協議に不同意を表したる者と雖も、既に其規約が公に認められたる以上は、之に服從せざるべからず、例へば行政上に於ける町村組合、又は水利組合等の規約の如き之なり、其他私法上に於ける契約との異同は、共に同じく關係者の協議に依りて成立し、關係者の協議の上にあらざれば、これを廢止變更することを得ざる點に於て兩者相似たりと雖も、契約の場合には、關係者全體の意思の合致を要するに反して、規約は多數を以て定むることを得べく、契約は唯私法上權利義務の關係を生ずるに止るも、規約の場合には、公法上の關係を生じ、服從を強制するの效力を有す、契約の效力は、其事項に同意を表して、之に加はりたる者のみを覊束し、其契約に對し、反對の意見を表したる者を覊束する力なきに反して、規約の場合には、多數決を以て之を決し、又或場合には、關係者以外の者が之を決定することあり、例へば町村組合の場合に於て、或町村に法律上の義務を負擔する資力なきがため、他の町村と合併せざるを得ざる事情あるとき、若し斯かる場合に、其組織等に關して規約成立ざるときは、郡參事會併せて之を定むるが如き場合これ也、斯くの如きときも、規約は其協議に對して、反對の意見を表したるものをも覊束する力を有すべし、或一説には、規約は、公法上の契約なりと論ず、されど其性質は契約にあらずして、寧ろ一種の協定に近しとす、水利組合條例第五二條に「組合規約」とあるは其用例なり。
- 英
- Promise
- 独
- Versprechen
- 仏
- Promesse
却下
(きやくか)訴訟又は申請の形式上、實質上の條件を調査して、その缺點ある場合に、裁判所又は裁判長が、之を返付して受理せざるを云ふ、即ち不適法又は不完全なる申立なるが故に、これを受理せずして返戾せらるるを云ふ也、却下は之によりて全く訴又は申請なきと同じきに至るものにして、訴訟當事者本來の目的たる效果を發生することなし、從つて民事訴訟法に於ては、之に對して抗告を許すことあり、今左に重なる場合を例示せんに、□一刑事の訴訟に於て、檢事又は被告人は、第一審、第二審を問はず、本案の判決ある迄は、何時にても管轄違又は公訴受理すべからざる申立を爲すことを得るものにして、其申立を採用すべからずとなす時は、裁判所は中間判決を以て之を却下すべきものなり、而して此判決に對しては本案の判決を俟たず、獨立して控訴又は上告を爲し得べきものとす、□二刑の言渡を受けたる者が、法定の條件を具備せるときは、復權の願を司法大臣に爲すことを得るものにして、司法大臣は復權の、願に關する書類を檢閲して、之に意見書を添へ上奏すべく、復權を許すべきものにあらざる時は、勅裁に依り復權の願を却下すべきものなりこの場合に於ては、尚一定の期間を經過するにあらざれば、再び復權の願を爲すことを得ざるものとす、□三民事訴訟に於て、缺席判決に對して故障の申立ありたる場合に、其故障にして判然許すべからざるものなるか、又は判然法律上の方式に適せず、若くは故障期間經過後になしたる故障は、裁判長の命令を以て之を却下する事を得べし、此却下の命令に對しては、即時抗告を爲すことを得、□四督促手續に於ける債務者は、其支拂命令に對して異議の申立を爲すことを得、されど時期に後れて申立てたる異議は、命令を以て却下することを得べし、此却下の命令に對しては、不服の申立を爲すことを得ざるものとす、□五證書訴訟、又は爲替訴訟に於て、原告が訴を以て主張したる請求が理由なしと見え、又は被告の抗辯に依り理由なしと見ゆるとき、其他證書訴訟を許すべからざるとき、殊に適法の證據方法を以て、原告の義務たる證據を申出でず、又は完全に之を擧げざる場合に於ては、被告が缺席し、又は理由なき異議、或は證書訴訟に於て許さざる抗辯を爲したるときと雖も、其訴を許さざるものとして却下し得べし、之を要するに、却下は訴又は申請の不完全なる場合に、其申立を受理せずして返戾せらるることを云ひ、其效果は各場合に依りて異るものなり。(刑訴一八七、三二九條、民訴一七一、二五七、三九五、四〇二、四七六、四八九條、訴願法一四條等、棄却の部參照)
- 英
- Rejection
- 独
- Abweisung
- 仏
- Rejêt
虐殺罪
(ぎやくさつざい)情狀重き故殺罪の一種にして、慘酷の所爲を以て人を殺すを云ふ、以下其槪要を分説すれば、□一殺人の手段としは、慘酷の所爲に依りたること、慘酷の所爲とは、法文例示の如き、支解、折割等を指すものにして、身體を裂き、四肢を折るが如き、其他一般殘忍と認むべき殺人行爲を總稱す、故に、一旦殺人の結果を生じたる後に於て、屍體に對して、支解、折割、其他慘酷の行爲を加ふるも、本罪を構成するものにあらず、□二人を故殺したることを要す、故殺とす、豫謀に出でざる殺人行爲を意味し、豫謀とは、犯罪行爲(此場合に於ては殺人行爲)を行はんとの積極觀念と、これに伴ふ諸種の消極觀念、即ち宗教的道德的觀念、若くは法律の制裁を恐るるの觀念、及び智識等と相衝突して、互に相爭ひたる結果、遂にこの消極觀念に打勝ちて、積極觀念が肯定せらるる狀態を云ふ、故殺は、斯かる豫謀なき殺人なるが故に、沈思熟慮行爲の結果にあらずして、憤怒の餘りに人を殺すが如き殺人を云ふ、虐殺罪は、斯く殺人の手段が慘刻の所爲に依るが故に、普通の故殺罪に比し、特に重く處罰せらるるものとす、されば虐殺罪は慘酷の所爲を加ふるも、豫め謀りて之を爲すときは、謀殺罪としにて處罰せらるべし、終りに慘酷なるや否やは事實問題にして、一に裁判官の判定に任ぜざるべからざるものとす。舊刑二九五、及び故殺罪の部參照)
共有
(きよういう)共有とは、數人が共同して一個の所有權を保有するを云ふ、即ち共有は一個の所有權に對し、數人が相像上權利を分割して、各自其持分を保有するものとす、隨つて想像上に於ける數人の持分を併合するときは、茲に始めて完全なる一個の所有權を成すなり、元來所有權の本質は、各自其目的物の使用、收益、處分にあるを以て、共有者は各自其持分に應じ、其目的物を使用し、收益し、若くは處分するを妨げず、次に共有の生ずる主なる原因は、各種の契約、相續、遺贈、混和、附合等とす。(民二四九條參照)
- 英
- Joint possession
- 独
- Mitbesitz
- 仏
- Posséssion commune
共有權
共有權とは、各共有者が、其共有に係る目的物に對して有する權利を云ふ、換言すれば、相像上に行ける所有權の一部分にして、各共有權を合併するときは、一個の所有權を成すものとす、共有權の性質は、一種の私權に外ならざるを以て、他の私權と等しく、之を處分するを妨げざるは勿論、其效力の如きも、各共有者の持分に就きては、所有權の效力と異ることなきも、元來其持分なるものは、想像上に於ける區分なるを以て、各共有者は、他の同意あるにあらざれば、共有物に變更を加ふるが如きことをなすを得ず、民法第一一〇一條第二項に(前略)共有權を以て云々」とあるは其用例なり。(共有參照)
- 英
- Common right
- 独
- Miteigen-thum
- 仏
- Droit commun
共有財産
(きよういうざいさん)共有權の目的物たる財産を云ふ、共有財産は、各共有者が共同して保有せるものなるも、各共有者は、何時にても之を分割することを得べし、民法第七九六條第二項に「共有財産に付きて云々」とあるは其用例なり。(共有、及び共有物參照)
- 英
- Common property
- 独
- Ge-meinvermögen
- 仏
- Propriété commune
共有者
(きよういうしや)或物に對する所有權を有する各人を共有者と謂ふ、共有者は、或物に對する所有權を、共同して保有するものなるが故に、其持分に應じて、其權利義務を有するものとす、各共有者の間に其持分の多寡に就き、別段の協定等の無き場合には、法律に依り各共有者は、各共有者が共同して所有するものなるを以て、其管理は、共同して之を爲さざるべからず、時としては、管理の方法等に關して、各共有者の間に、其意見を異にする場合には、法律は、共有物管理に關する事項は、其共有者の持分の價額に從ひ、多數決を以て之を定むべきことを規定せり、今各共有者の共有物に關する權利と義務とを摘錄すれば、共有者の權利としては、□一共有物の全部に就き、其持分に應じて使用をなすを得ること、□二任意に共有物の保存行爲をなすを得ること、□三他の共有者が、一年間、共有物に關する費用支拂等の義務を履行せざるときは、相當の償金を拂ひて、其者の持分を取得するを得ること、□四他の共有者の同意不同意に關せず、其持分を抛棄するを得ること、□五何時にても、共有物の分割を請求するを得ること等にして、次に共有者の義務としては、□一他の共有者の同意なくして、共有物に變更を加ふるを得ざること、□三其持分に應じ、管理の費用を拂ひ、其他共有物の負擔に任ずること、□二共有物を分割したる場合に、他共有者が分割に依りて得たる物に就き、賣主と同じく其持分に應じて擔保の責に任ずること、□五分割が結了したるときは、其受けたる物に關する證書を保存すること、此場合に共有者一同、又は其中の數人に分割したる物に關する證書は、其物の最大部分を受けたる者、之を保存することを要し、最大部分を受けたる者なきときに於ては、分割者の協議を以て之を定むる能はざる場合には、裁判所の指定を受くることを得べし、證書の保存者は、他の分割者の請求に應じて、其證書を使用せしむる事を要す。(民法二編三第三節參照)
- 英
- Joint proprietor
- 独
- Miteigen-tümer
- 仏
- Propriétaire commun
共有物
(きよういうぶつ)共有物の目的たる物を共有物と云ふ、即ち數人の共同所有に係る物件なり、共有物に就き、共有權の抛棄、又は共有者が、相續人なくして死亡したる等の事實に原因して、無主の持分を生じたる時は、其無主の持分は、他の共有者に歸屬すべく、又共有物に就きて共有者の一人が、他の共有者に對して有する債權は、其持定繼承者に對しても、これを行ふことを得るものとす、次に共有物は、建物及び其附屬物の共用部分、又は境界線上に設けたる界標、圍障、墻壁、及び溝渠等を除く外、共朋者の請求に依りて、何時にても之を分割し得べきもの也、但し五年以内の期間を限りて、其分割を爲さざる契約をなすを得、又其期間の消滅期に至り、契約の更新をなすを妨げざるものなり、尤も其期間は、五年を過ぐることを得ざるものとす、法律が何時にても共有物の分割を許したるは、其財産の融通を便ならしめんがために外ならずして、又一方に於て其不分割の契約を認めたるは、當事者の意思を容れたるものに外ならず。元來共有物なるものは、之に關する利害は、一人の損益に歸すること無く、多數の負擔に屬するより、人情の自然として、各共有者が共有物に對する注意、疎慢に傾くは避けがたき結果なるを以て、斯くは其不分割契約の期間を五年に限定して、公益上財産の保護を期したるものなり、共有物分割の場合に、共有者間に其協議の調はざるときは、裁判所に請求することを得べく、裁判所は、其共有物を現物のまま分割し能はざるとき、または分割に依り著しく其價格を損する虞あるときは、其共有物の競賣を命じ、其代金の分配をなすものとす、共有物分割の場合に、共有物に就き權利を有する者、及び各共有者の債權者は、自己の費用を以て、共有物の分割に參加するの權利あり、此場合に、參加の請求ありたるに拘らず、其參加を待たずして、分割をなしたるときは、其分割は、之を以て參加を請求したる者に對抗することを得ざるものとす。(民二編三章三節及び共有、共有者等參照)
- 英
- Common property
- 独
- Mitbesitz-tum
- 仏
- Propriété commune
共益費用
(きようえきひよう)共益費用とは、或物に對し、數人共同の利益となるべき費用を云ふ、例へば債務者の財産の保存清算、又は配當に關する費用の如き是なり、此共益費用なるものは、多く破算等の場合に生ずるを常とす、共益費用を出したる者は、債務者の財産上に、一般の先取特權を有するなり、民法第三〇七條に「共益費用の先取特權は、各債權者の共同利益の爲になしたる債務者の財産の保存、清算、又は配當に關する費用に就き存在す」同第二項に「前項の費用中、總債權者に有益ならざりしものに就きては、先取特權は、其費用の爲め、多く利益を受けたる債權者に對してのみ存在す」とあり、蓋し共益費用に關する債權に、一般の先取特權を與ふる所以のものは、畢竟各債權者が、之に依りて利益を受くるを以てなり、從つて債務者の財産を保存する場合に於ても、その保存の行爲たる一切の財産に關せず、特定の動産、若くは不動産に關するときは、其共益費用の債權に就きての先取特權は、特定の動産、若くは不動産の上に過ぎざるものとす。
- 英
- Expense for common benefit
- 独
- Gemeingewinnskosten
- 仏
- Dépens commun
恐喝取財
(きようかつしゆざい)恐喝取財は、詐欺取財の一種にして、人を恐喝して、其財物、又は證書類を騙取するの罪を云ふ、恐喝なる語の意義に就きては、學者の間に、議論の存する所にして、或學者は之に對し、意見、若くは未來の事實を告知し、人をして恐怖の念を生ぜしむることなりと解釋せり、されど恐喝とは、或害惡を告知して、相手方を恐怖せしむる處爲の全體を指すを可とす、例へば或犯罪を犯したる者に對して、告訴、又は告發せんことを告知し、以て其人を恐怖せしむるが如きは、即ち恐喝なり、恐喝の材料たるべき事實は、過去若くは現在なるべきも、これに依りて恐怖の念を生ぜしめんとする方法は、必ず未來の事實、若くは意見に屬するものとす、而して此犯罪の處爲は、騙取するに在り、この場合に於ける騙取なる語は、深き意義を有せず、即ち恐喝に依りて財物、若くは證書類を交附せしむることを云ふものとす、次に恐喝取財の罪に對する刑罰は、二ケ月以上四年以下の重禁錮、四圓以上四十圓以下の附加罰金、若し此犯罪に依りて官私の文書を僞造し、又は增減變換したる者は、僞造の各本條に照し、重きに從つて處斷せらるるものとす。(舊刑三九〇條、改刑二四九條)
- 英
- Crime of Blackmail
- 独
- Schützgeldsverbrechen
- 仏
- Infraction de l'extorsion
兇器
(きようき)兇器とは、通常の解釋に依れば、人を殺戮するの用に供する目的を以て製造したる器具を云ふ、例へば刀劍銃砲等の類是なり、然れども刑法に所謂兇器の解釋に就きては議論あり、比較的穩當なる説に依れば、兇器とは、人を殺戮するに足るべき利器を云ふ、例へば持兇器竊盜の場合に於て、實丸なき短銃、又は銀紙を粘付したる木刀の如き物を携帶したるときは、或は之を以て強迫をなすことを得べきも、人を殺戮するに足る利器にあらざるが故に、之を持兇器竊盜と云ふことを得ず、さればとて、必ずしも人を殺戮するの目的を以て製造したる器具たることを要せず、出刄庖丁の如きは、我國に於て最も普通の利器なりと、或學者は兇器を分つて、性質上、及び用法上の兇器となし、出刄庖丁、又は小刀の如き物を以て、之を用法上の兇器と稱すれども、凡そ如何なる物體たるを問はず、用法に依りては悉く人を殺戮するに足るべき物となる、彼の洋杖を以て人を打殺し、若くは手拭を以て人を縊殺したる場合の如き、なほ兇器を以て人を殺したりと云ふことを得べき乎、果して然りとせば、用法上の兇器なるものは、犯罪の終りたる後にあらざれば、其兇器たるを知る能はずして、持兇器竊盜罪の如き、單に兇器を持するを以て、此犯罪を構成するに充分なりとし、敢て人を殺すことを必要とせざる場合に於ては、終に如何なるものを兇器とすべきかを知ること能はざるに至らん、故に兇器なるものは、悉く性質上の兇器にして、別に用法上の兇器なるものなかるべし、而して如何なるものが、果して兇器なるや否やは、單に社會の實況に從ひ、通常一般人の認めて兇器とするや否やを以て、之を區別するの外なかるべきか。(刑訴五七條二號、舊刑三七〇條)
- 英
- Dangerous weapon
- 独
- Waffe
- 仏
- Arme dangereuse
供給契約
(きようきうけいやく)普通供給契約と云へば、廣く物、又は權利を第三者より取得して、供給せんことを約するを云ふ、例へば商法第六三條第二號に「他人より取得すべき動産、又は有價證券の供給契約」とあるはこれにして、即ち現在に於ては、自己の有せざる動産、又は有價證の如きものを、他日第三者より取得して、給付することを約するに依りて成立する契約を謂ふ、通俗投機賣買など云ふものの内容は、供給契約なるを普通とするなり。
- 英
- Contract for the delivery
- 独
- Lieferungsvertrag
- 仏
- Contrat de la livraison
共産商業組合
(きようさんしやうげふくみあい)共産商業組合とは、産業者が共同して爲す、商業組合の一種にして、或は産業者と、商業者と結託して爲すものあり、或種の匿名組合の如し、或は産業者のみが結托して、組合員にのみ分配するものあり、或種の消費組合の如し、或は産業者のみ共同して、一般人に向つて商業を營むものあり、彼のトラストの或ものの如きはこれなり、要するに共産商業組合なるものは、生産者が共同して、所謂富の分配をなす組合關係をさすものにして、組合なるが故に、法律上の觀察よりすれば、一種の契約關係に過ぎざるなり。(組合の部參照)
供述
(きようじゆつ)供述とは、訴訟法上の用語にして、裁判官等の訊問に對し、一定の事實、又は意見の陳述をなすことを云ふ、供述は、必ずしも口頭の陳述たるを要せず、或は文書、又は其他の方法を以てするも、訊問に關する事項に應答するの意思を以て、發表したる事實、又は意見の陳述なるときは、之を供述と云ふを得べし。(刑訴九〇、九六條、民訴三一三、三一四條參照)
- 英
- Statement
- 独
- Anweis
- 仏
- Exposé
供托
(きようたく)供托とは、法令の規定に依り、金錢其他の物件を、法令の定めたる供托所に保管せしむるを云ふ、即ち供托は、金錢其他の物件の保管に外ならずと雖も、特別の事情の下に在る物件の處置に就き、公益保護の必要上、國家が其保管方法を定めたるものなるを以て、一般の寄托とは、全然其性質を異にするなり、供托は、法令の規定に依りて供托することを要すると同時に、必ず法令の定めたる供托所に、供託するを要するものとす、供託は、一般の寄託と異る法律上の效力を生ず、例へば債務者が辨濟の提供を爲すも、債權者が其受領を拒み、又は之を受領すること能はざるが如き場合に於て、債務者が民法の規定に從ひ、其辨濟の目的物を供託するときは、法律上辨濟を完了したると同一の效力あるが如し。(民四九四條、及び次項參照)
- 英
- Consignment
- 独
- Consignation
- 仏
- Hinterlegung
供托金
供託金とは、法令の規定に基き、供託所に於て、保管する金錢を云ふ、供託金は、金庫に於て保管するものにして、供託を受けたる翌月より、拂渡請求の前月まで、利息を附すものとす、供託金は、供託者自ら之を金庫に持參するを要せず、銀行の送金手形、若くは郵便爲替券等を以て、供託書と共に之を金庫に送附することを得、然れども此場合には、供托者に於て、途中に於ける危險を負擔せざるべからず、供託金の利息の拂渡を受けんとする場合には、左記の書式に從ひ、請求書を作製して、之を金庫に提出し、金庫にて利息金額を計算し、式の如く記入し、中央金庫に在りては日本銀行へ、本支金庫に在りては日本銀行支店、又は代理店へ、之を廻送するものにして、日本銀行、又は其支店代理店にては、請求書を受くると同時に、之を調査し、利息受取人をして受領を證せしめ、其現金を交附するものとす、但し利息は、現金と同時に拂渡を受くべきものにして、元金と利息と、其受取人を異にする場合には、元金拂渡の後に利息の拂渡を受くるものとす。
利息請求書
(用紙美濃紙、紙數二枚以上に及ぶときは其間に契印をなすべし)
何年何月何日第何號供託受領ノ金何圓ニ對スル利息支拂相成度請求候也
府縣郡市町村番地
年月日受取人何某□印
何金庫宛
(利息記入式)
一金何圓也
何年何月ヨリ
何年何月マデ
利息額
右之通に候也
年月日何金庫□印
(現金領收の式)
前書之金額正ニ領收候也
年月日受取人何某□印
日本銀行本支店
又は其代理店
宛
供託書
(金錢と有價證券とは各別に作製するを要す
府縣郡市町村番地)
供託者何某
(第三者に於て供託をなすときは供託者第三者何某と記入すべし)
一金何圓也
又は
一何々公債證書額面何圓也
何圓券何第何番又は何第何番ヨリ第何番マデ何枚
(全額拂込未濟のものは其拂込額を左側に記入する事を要す以下之に同じ)
但し何年何月又は何期以降利札付(以下之に同じ)
又は同
一何銀行又は何會社株券額面何圓也
記號番號枚數記載方前に同じ
又は同
一何々前に同じ
供託ノ原因
供託スべキ法令ノ條項
供託物ヲ受取ルベキ者ノ指定
反對給付ノ目的物
官廳名又ハ訴訟事件名及ビ裁判所名
右供託ス
年月日
右
何某□印
何金庫宛
(受領書式)
第何號
右受領ス何金庫□印
年月日
(奥書の書式)
前書ノ金額(又は有價證券)正ニ領收候也
年月日
府縣郡市町村番地
受取人何某□印
(何金庫宛)
(内渡書式)
内
一金何圓也
又は
一何々公債證書額面何圓也
何圓券何第何番又は何第何番ヨリ第何番マデ何枚
又は
一何銀行又は何會社株券額面何圓也
同記號番號枚數記載方前に同じ
又は
一何々
同前に同じ
(種類多數なるときは別に内譯書を添付するも妨なし此場合には本文高書の箇所へ公債證書其他額面何圓也別紙内譯書の通りと記入し内譯書と契印すべし)
右金額(又は有價證券)何年何月何日内渡濟
何金庫□印
- 英
- Money deposited
- 独
- hinterlegtes Geld
- 仏
- Argent déposé
供託書
供託書とは、或物件を供託せんとする場合に作製する文書を云ふ、金錢又は有價證券を金庫に供託する場合には、大藏大臣の定めたる書式に依るべきものなり、また金錢、若くは有價證券にあらざる物件にして、司法大臣の指定せる金庫に供託する場合には、司法大臣の定めたる書式に從ふべきものとす、明治三二年三月大藏省令第六號に示せる金錢、又は有價證券に關する供託の書式は左の如し。(用紙美濃紙、紙數二枚以上に及ぶときは其間に契印をなすものとす)
- 英
- Deposit document
- 独
- Hinterleg-ungsschein
- 仏
- Document déposé
供託所
(きようたくしよ)供託所とは、法令の規定に依りて、供託物を保管する所を云ふ、供託法の規定に依れば、金庫を以て金錢、及び有價證券の供託所となし、司法大臣の指定に係る倉庫營業者を以て、金錢、及び有價證券以外の物件の供託所となせり、法令に別段の規定なき供託物に就きては、裁判所に於て之を指定することあり。
供託物拂渡請求書々式
(用紙其他供託書に同じ)
供託物拂渡請求書
(供託受領證一葉每に請求書を作製することを要す)
一金何圓也
(幾分のときは請求額の上部に何年何月何日何號供託受領證の内と肩書すべし)
又は
一何々公債證書額面何圓也
(何圓券何第何番又は何番ヨリ何番マデ何枚)
又
一何銀行又は會社株券額何圓也
同記號番號枚數記載方前に同じ
又は
一何々同、前に同じ
前書ノ金額(又は有價證券)何々ノ事由ニ依リ拂渡相受度別紙證明書並ニ供託受領證相添へ請求候也
年月日府縣郡市町村番地
供託者何某□印
何金庫宛
領收證書々式
(用紙美濃紙紙數二枚以上に及ぶときは其間に契印すべきこと前に同じ)
領收證書
(供託書受領證一葉每に領收證書を作製することを要す)
何年何月何日第何號供託受領證ノ内
一金何圓也
又は
一何々公債證書額面何圓也
何圓券何第何番又は第何番ヨリ第何番マデ何枚
又は
一何銀行又は何會社株券額面何圓也
同記號番號枚數記載方前に同ジ
又は
一何々同、前に同ジ
前書之金額(又は有價證券)正ニ領收候也
年月日府縣郡市町村番地
受取人何某□印
何金庫宛
- 英
- Deposit office
- 独
- Hinterleg-ungstelle
- 仏
- Bureau de dépôt
供託者
供託者とは、法令の規定に依り、金錢、又は其他の物件の供託をなす者を云ふ、供託法の規定に依れば、供託者にして、金錢、又は有價證券を供託せんとする場合には、供託物取扱規程の定むる手續に從ひ、之を金庫に供託すべきものにして、金錢、又は有價證券以外の物件を供託せんとする場合には、司法大臣の定めたる書式に從ひ、供託書を作りて供託物に添へ、同大臣の指定に係る倉庫營業者に供託するものとす、供託物取扱規程に依れば、金錢、及び有價證券の供託をなさんとする者は、供託せんとする物件に、二通の供託書を添へて、金庫に提出するものとす、金庫に於て之を調査し、其要件の具備したることを認めたる後、供託書の一通に、式の如く受領を證して、供託者に交附するものとす、供託者が、供託物取戾を爲んとするとき、その全部の取戾を請求する場合には、左記の請求書式に從ひて作製したる請求書には、供託の際金庫より受取たる供託受領證(即ち金庫の受領を證せる供託書)に、式の如く奥書をなし、又其幾分の取戾を請求せんとする場合に、同上書式の請求書、及び供託受領證の外に、左記の書式に從ひて領收證書を作製し、且つ其請求の原由を證すべき下記の書類を添へて、金庫に提出するものとす、第一、債權者が供託を受諾せざる場合に於ては、其事由を表示したる債權者の書面、第二、供託を有效と宣告したる判決が、未確定なる場合に於ては、其判決書の正本第三、第一第二の場合に於て、供託が質權、または抵當權の消滅に關するものなるときは、其質權、又は抵當權の消滅せざることを證明し得べき書類、第四、供託の原因が消滅し、又は供託が錯誤に出でし場合に於ては、其事實を證明するに足るべき書類、又は判決の正本、若し官廳に對する保證、又は擔保として供託したるものなるときは、其官廳、又は裁判所の證明、但し官吏公吏の公務上取扱ふものなるときは、其事由を表示したる書面、若し此種取戾の原因を證明するに足るべき書類を提出すること能はざる、正當の理由ある場合に於ては、其書面に代へて、金庫の承諾を得たる二名以上の保證人の連署を以て、其供託物取戾のため、政府に損害を生ぜしめたる時は、賠償の責に任ずる旨を記載したる書面を提出することを得べし、金庫に於て、以上の請求を受けたるときは、之を調査し、請求の理由あることを確認したる後、供託物を交附するものにして、若し其幾分取戾の請求に係る場合には、供託受領證に式の如く、其拂渡額を記入し、請求者に交付するものとす。
- 英
- Depositor
- 独
- Hiuterleger
- 仏
- Déposant
供託受領書
(きようたくじゆりようしよ)供託所が、供託物の受領證として、供託者に交付する書類なり、金庫に供託したる場合には、供託者が差出したる二通の供託書の一通に、金庫にて式に依り受領し、供託者に交付するものなり。(供託書參照)
- 英
- Receipt of deposit
- 独
- Hinterlegungsempfangsschein
- 仏
- Reçu de dépôt
供託法
(きようたくはふ)明治三二年二月法律第一五號を以て公布し、同年四月一日より施行せられたるものにして、一般の場合に於ける供託の手續を規定したるものなり、此法律に依れば、供託物を分て二種となせり、即ち金錢、又は有價證券は、大藏大臣の定めたる書式に從ひて作製したる供託書を添へて、之を金庫に供託すべきものなることを規定し、金錢又は有價證券にあらざる物件は、司法大臣の定めたる書式に從ひ、作製したる供託書を添へて、同大臣の指定せる倉庫營業者に供託すべきものなることを規定せり。
- 英
- Law of deposit
- 独
- Hinterleg-ungsordnung
- 仏
- Loi de dépôt
供託物
(きよたくぶつ)供託物とは、法令の規定に依り、供託者が供託したる金錢、有價證券、又は其他の物件を云ふ、供託物は、金錢又は有價證券なる場合には、之を金庫に供託すべきものにして、金錢を供託したるときは、供託をなしたる翌月より拂渡を受たる前月まで、利息の支拂を受くることを得べし、若しその他の物件なるときは、之を司法大臣の指定せる倉庫營業者に供託することを要す、この場合には、一般に同種の物件に對する保管料を支拂はざるべからず、供託物は、供託者が指定したる者、又は法令、若くは裁判に依り定りたるものに還付するものにして、若し供託者が、之を受取る權利なき者を指定したるときは、其供託は、無效に屬するなり、供物託を受取るべき者が、若し反對給付をなすべき場合には、供託所に其給付をなすか、否らざれば供託者の書面、又は裁判に依り、其給付をなしたる事を證明するにあらざれば、供託物を受取ることを得ざるもとす、供託者が供託物を取戾さんとするには、民法の規定に依り、供託が錯誤に出でたること、若くは其原因が消滅したることを證明するを要す、若し之等の事實を證明することを得ざるときは、之が取戾を請求することを得ざるべし、供記物取扱規程に依れば、金錢又は有價證券を供記せんとするものは、第一、供託者の住所、氏名、官吏、公吏の公務上取扱ふ場合は、其官廳名、官氏名、又は職氏名、但し代人を用ふるときは、尚代人の住所、氏名、第二、供託せんとする金額、有價證券は、其種類、記號、番號、券面額、枚數、但し全額拂込未濟のものは、券面額の左側に、其拂込濟額を記入することを要す、第三、供記の原因(事實を詳記するの外、利害關係人の法律上の位置、及び氏名、第四、供記すべき法令の條項、第五、供託物を受取るべき者の指定を要する場合は、其者の法律上の位置、(質託權者、抵當者等は、殊に其名稱を記することを要す)及び氏名、住所、官廳なれば其官廳名、官氏名、又は職氏名、第六、供託物を受取るべき者より、反對給付を受くることを要すろ場合は、其反對給付の目的物、第七、官廳に對する保證、又は擔保として供記するときは、其官廳名、若し訴訟に關するときは、其件名、及び裁判所名、之等の事實を明示したる供託書二通を作製し、供託物に添へて、金庫に提出するものにして、又供託物は、郵便に依りて供託することを得べし、金庫に於て郵便に付したる銀行の送金手形、若くは爲替券等の供託物を受取りたるときは、之を現金に交換したる後、供託受領證を發するものにして、此場合に於ける危險は、供託者の負擔とす、供託物にして有價證券なるときは、其償還金、利息、又は配當金は、之を供託所にて受取り、或は供託物に代へ、又は其從として保管せらるるものなるを以て、若し受取人に於て、其受取方を請求せんとする場合には、左記の書式の請求書二通を作製して、之を金庫に差出すを要す、金庫にて此請求を受くるときは、其償還金、利息、又は配當金を受取り、償還金は、供託物、利息又は配當金は附屬供託物として保管し、請求書の一通に、式の如く其受領を證して、交付せらるる者とす、保證金に代へて有價證券を供託したる者は、其利息、又は配當金の拂渡を請求し得べきを以て、前記附屬供託物受領證(即ち先きに其受取方を請求せし際、供託所が其受託を證して交附したる請求書の一通を云ふ)に式の如く領收の奥書をなし、其拂渡を金庫に請求するときは、附屬供託物、即ち利息又は配當金の交附を受くべし、若し保證金に代へて、利札附有價證券を供託したる場合には、左記の第二の領收證書を作製して請求する時は、直に其利札の交附を受るもとす、次に供託者の指定せし受取人、又は法令、若くは裁判に依りて定められたる者が、供託物の全部、又は其幾分の拂渡を受けんとするときは、前項供託者が、供託物の取戾を請求する場合と同樣の手績を要するものにして、唯其請求の原由を證すべき書類の異るのみとす、即ち此場合に提出するを要する書類は、第一、供託者が指定したる者は、其供託通知書、第二、法令に依りて定りたる者は、其受取るべき事由を證するに足る書類、第三、裁判に依りて定りたる者は、執行力ある判決の正本、又は裁判所の命令書、若し反對給付をなすべきものなるときは、其給付をなしたる金錢證券、若くは物件の數量等を表示したる下記の證明書を提出せざるべがらず、□一供託所に給付をなしたるときは、其金庫、又は倉庫營業者の作りたる供託受領を證する書類、□二反對給付を受くべき者に給付をなしたるときは、供託者の書面、又は判決の正本等とす、而して此場合に提出すべき各種の書類を、提出する能はざるときに於ける手續は、供託者の取戾請求の場合に同じ、次に裁判所に於て裁判の結果等に依り、分割拂渡をなす場合には、左記第三の書式に從ひ、作製したる請求書に、供託受領證、及び附屬供託物受領證を添へ、金庫に提出するものにして、此場合には、第四の書式の拂渡證書を交付せらるるを以て、請求裁判所は、式の如く受領を證し、供託物の拂渡を請求するものとす、金庫に於ては、此拂渡證書と引換に、供託物を交附せらるべく、若し其幾分拂渡の請求に係るときは、供託受領證に式の如く、拂渡額を記入して、請求裁判所へ返還するものなり。
請求書々式
(用紙美濃紙、紙數二枚以上に及ぶときの契印前に同じ)
請求書(代供託物と附屬供託物とは各別に請求書を作製するを要す)
一金何圓也(所得税法第三條の税額を控除し其殘額を記載するものとす)
何々公債證書(又は何々銀行株券)(又は何會社株券)何圓何年何月(又は何期)渡利息(又は配當金)(又は何年何月償還金)何年何月何日第何號供託受領ノ分
前書金額御受取相成度(又は別紙委任狀相添へ)請求候也
府縣郡市町村番地
年月日何某□印
何金庫宛
(受領の式)
第何號
右代供託物(又は附屬供託物トシテ)受領ス
年月日何金庫□印
(奥書の式)
前書ノ金額正ニ領收候也
府縣郡市町村番地
年月日何某□印
何金庫宛
(内渡の式)
表書ノ金額ノ内
一金何圓也
右金額何年何月何日内渡濟
(受領證の餘白に記入しがたきときは繼紙をなすべし)
何金庫□印
利札領收證書の書式(用紙其他前と同じ)
利札領收證書
利札券額面何圓也何枚
但シ何月何日第何號供託受領證ノ何公債證書又は何銀行若くは何會社株券額面何圓ニ對スル何年何月又は何期渡ノ分
右領收候也
府縣郡市町村番地
年月日供託者何某□印
何金庫宛
請求書書式(其二)
請求書(供託受領證一葉每に請求書を作製することを要す)
府縣郡市町村番地
供託者何某
何年何月何日第何號受領證
一金何圓也
又は
一何々公債證書額面何圓也
何圓券何第何番又は何第何番ヨリ第何番マデ何枚
又は
一何銀行又は何會社株券額面何圓也
同記號番號枚數
記載方前に同じ
又は
一何々同前に同じ
内
一金何圓也
又は
一何々公債證書額面何圓也
何圓券何第何番又は何第何番ヨリ第何番マデ何枚
又は
一何銀行又は何會社株券額面何圓也
同記號番號枚數
記載方前に同じ
又は
一何々同前に同じ
府縣郡市町村番地
受取人何某
右ハ何々ノ事由ニ依リ内譯ノ通リ拂渡證發行候ニ付キ分割拂渡スコトヲ要ス依テ別紙供託受領證相添へ請求候也
年月日裁判所名□印
官氏名□印
何金庫宛
拂渡證書々式
拂渡證書
府縣郡市町村番地
供託者何某
何年何月何日第何號受領證ノ内
一金何圓也
又は
一何々公債證書額面何圓也
何圓券何第何番又は何第何番ヨリ第何番マデ何枚
又は
一何銀行又は何會社株券額面何圓也
同記號、番號、枚數
罰載方前に同じ
又は
一何々同前に同じ
右金額(又は有價證券)府縣郡市町村番地
何某へ拂渡スコトヲ要ス
年月日裁判所名□印
官氏名□印
何金庫宛
(奥書の式)
前書ノ金額(又は有價證券)正ニ領收候也
府縣郡市町村番地
年月日受取人何某□印
何金庫宛
供託物取扱規程とは、明治三二年三月大藏省令第六號を以て公布せられたるものにして、供託物取扱に關する手續を定めたものなり。(供託物の部參照)
- 英
- Thing deposited
- 独
- hinterlegte Sache
- 仏
- Chose déposée
供託物規程
- 英
- Rules of treatment of things deposited
- 独
- Unterhandlungs-reglement der hinterlegten sache
- 仏
- Règles du traitement de la chose déposée
共同行爲者
(きようどうかういしや)共同行爲者とは、同一の行爲を共同してなしたる二人以上の人を云ふなり、即ち同一の行爲をなしたる二人以上の人が、共同行爲者たるには、共同してなしたるものならざるべからず、共同とは、其二人以上の人の間に、意思の共通あることを意味す、換言すれば、共謀するの義なり、隨ひて二人以上の人が同一の行爲をなすも、其間に意思の共通なく、各別に之をなしたるに過ぎざる時は、之を共同行爲と云ふことを得ざるものとす、例へば二人以上の人が、共謀して他人を毆打したる場合には、其數人を共同行爲者と云ふことを得べきも、之に反して、各別になしたる場合は、之を共同行爲者と云ふことを得ず、民法第七一九條第一項に「數人が、共同の不法行爲に依りて、他人に損害を加へたるときは、各自連帶にて、其賠償の責に任ず、共同行爲者中、何れか其損害を加へたるかを知ること能はざるときまた同じ」とあるは其用例なり。
共同義務者
(きようどうぎむしや)共同義務者とは、同一の債務を共同して負擔する二人以上の人を云ふ、即ち二人以上の人が一體となりて、同一の義務を負擔する場合なり、隨つて二人以上の人が、同一の義務を負擔するも、各別に之を負擔する場合には、共同義務者と云ふことを得ず、爰を以て共同義務は、共同義務者中の一人が、其義務を履行すれば、他の共同義務者は、各自の負擔せる義務の履行を免るべきものとす、例へば民法に所謂不可分債務者、又は連帶債務者の如きは、即ち共同義務者なり、民事訴訟法第三二條第一號に「共同義務者云々」とあるは其用例なり。
- 英
- Co-obligor
- 独
- Gemein-schuldner
- 仏
- Co-obligé
共同鑛業人
(きようどうくわうげふにん)共同業人とは、共同して或鑛業に從事する二人以上の人を云ふ、即ち鑛業條例第六條に「二人以上共同して鑛業をなすときは、總代一名を選定し、豫め所轄鑛山監督署に屆出づべし、總代は鑛業上に關し、政府に對して共同鑛業人を代表するものとす」其第七條に「共同鑛業屆の變更、採掘權の賣買、讓與、書入、及び廢業屆には、總代の外、少くも共同鑛業人過半數の連署を要す」とあるこれなり。
共同權利者
(きようどうけんりしや)共同權利者とは、同一の目的を有する權利の主體たる二人以上の人を云ふ、即ち二人以上の人が一體となりて、同一の權利の主體たる場合なり、例へば民法に所謂共有權者の如し、民事訴訟法第三二條第一號に「共同權利者云々」とあるは其用例なりとす。
- 英
- Concurrent person
- 独
- Besitzer des Gemeinrechtes
- 仏
- Con-courant
共同相續人
(きようどうさうぞくにん)共同相續人とは、共同して遺産を相續したる二人以上の人を云ふ、相續法の規定に依れば、同順位に在る遺産相續人は、共同して其遺産を相續すべき者とし、其數人の相續人を共同相續人と稱せり、共同相續人は、同順位にある者なるが故に、被相續人の直系卑屬の數人なることあるべく、又其直系尊屬たることあるべし、共同して相續したる場合に、其相續財産は數人の共有に屬すべくして、其相類分は、或は均一なることあるべく、或は不均一なる事あるべし、而して各共同相續人は、其相續分に應じて、被相續人の權利義務を承繼するものとす、法律は各共同相續人の相續分は、均一なるを原則とし、被相續人は、遺言を以て各自の相續分を定め、又は第三者に委托して、之を定めしむることを得べからしめ、以て被相續人が之等の方法に依り、之を定めたる場合には、其意思に從ふものとす、若し被相續人が、之等の方法に依り、共同相續人中の一人、又は數人の相續分を定め、又は之を定めしめたるも、其他の者の相續分を定めざりし場合には、法律は、其他の共同相續人の相續分は均一なるものとせり、唯此原則に例外をなすは、庶子、及び私生子の相續分にして、之等の者の相續分は、嫡出子の二分の一なりとす、共同相續人中の一人が、其相續開始前に死亡し、又は相續權を失ひたるとき、其者の相續分は如何にするかと云ふに、此場合には、其者の直系卑屬が代つて相續をなすものにして、若し數人の直系卑屬ある場合には、其數人の直系卑屬は、嫡出子の間に在りては、其相續分を均一に分ち、庶子及私生子あるときは、嫡出子の二分の一を受くべきものなること前の場合に異らず、共同相續人中被相續人より遺贈を受け、又は婚姻、養子緣組、分家、廢絶家再興のため、若くは生計の資本として、贈與を受けたる者あるとき、受贈者の行爲に依り、其贈與の目的たる財産が滅失し、又は其價額の增減ありたるときと雖も、相續開始の當時、なほ原狀にて存在するものと看做し、被相續人が相續開始のときに有せし財産の價額に、其贈與の價額を加へたるものを相續財産として、各共同相續人の相續分を定め、其相續分中より遺贈、又は贈與の價額を控除し、其殘額を以て、其者の相續分となす、此場合に以て、遺贈又は贈與の價額が、相續分の價額に等しきとき、又は之に越ゆるときは、受遺者、又は受贈者は、其相續分を受くることを得ざるものとす、然れども被相續人が、以上の方法に異なりたる意思を表示したるときは、其意思に從ふべきもの也、元來相續分なるものは、相續人の承繼すべき權利義務を、理想上定めたるものに過ぎざるを以て、更に實際に於て、之を分割するの必要を生ずるは勿論のことなり、最も共同相續人は、其分割前と雖も、自己の相續分を第三者に讓渡すは、固より其自由に屬すべし、此場合に於て、他の共同相續人が、之が爲に格別の影響を被らざるときは可なるべきも、相續財産の狀況に依りては、可成的其分離をなさざるを便宜となすこと無きにあらず、この理由に基きて、法律は共同相續人に與ふるに、其讓渡後一ケ月以内は、其價額、及び費用を償還して、其相續分を讓受くるの權利を以てせり。(民一〇〇二條乃至一〇〇九條參照)
- 英
- Co-parcener
- 独
- Miterbe
- 仏
- Propriétaire indivis
共同狩獵
(きようどうしうれふ)狩獵法上の用語にして、地方の慣行に依り、一定の地域を限りて、數人が共同して狩獵をなすことを云ふなり、狩獵法、及び狩獵法施行規則に依れば、共同狩獵地の免許を受けんと欲する者は、免許期限を定め、其地形、面積を記載したる圖面、及び其土地に於ける狩獵の慣行を詳記したる書類を願書に添附し、地方長官を經由して、農商務大臣に出願することを要す、而して共同狩獵の免許を受けんとする場所が官有に屬するときは、豫め所轄廳に願出で使用の許可を受けざるべからず、若しその場所が私人の所有に係るときは、其所有者の承諾を受くるを要す、而して此場合には、其官廳の使用許可書、又は承諾を證する書類を、前記の免許願書に添附することを要す、之等の手續を履行して其免許を得たるときは、共同狩獵地と定めたる地域の周圍五十間を越へざる距離每に、見易き場所を撰び、法定の雛形に據りて目標を建設し、其旨を所轄警察署に屆出づべきものとす、共同狩獵地の區域を變更せんと欲する場合には、其地形、面積、及び變更の區分を明記したる圖面を願書に添附し、地方長官を經由して、農商務大臣に出願することを要す、免許期限の減盡したる場合に、其繼續を出願する手續は、最初免許を出願せし場合の手續に異らず、又共同狩獵地を廢したるときは、地方長官を經由して、其旨を農商務大臣に屆出でざるべからず。(狩獵法七條、狩獵法施行細則八條乃至一一條參照)
- 英
- Co-shooting
- 独
- Mitjagd
- 仏
- Co-chasse
共同訴訟
(きようどうそしよう)共同訴訟とは、民事訴訟法上の用語にして、即ち二人以上の原告、又は被告、苦くは二人以上の原告、及び被告を同一の訴訟に併合する場合を云ふ、此共同訴訟は、所謂併合訴訟なるものとは、全く其性質を異にのるものとす、併合訴訟は、一人の原告より、一人の被告に對し、請求の數箇ある場合に於て、其數個の請求を、一個の訴に併合することを云ふものにして、共同訴訟は、數人が原告となり、又は被告となりて、訴を爲す場合を云ふ、換言すれば、併合訴訟は、訴訟を併合するものなるに反して、共同訴訟は、訴訟人を併合するものなり、元來法律が、共同訴訟なるものを許したるは、啻に日時を省き、手數を簡易にし、又は訴訟費用を節減する等の便益あるのみならず、同一なる爭點に對して、歸一の判決を得る等の利益あるに基く、隨つて併合訴訟は、獨り原告の撰擇に任ずべきものにあらずして、場合に依りては、裁判所に於て之を命ずることあるべし、例へば其訴訟の目的物たる請求を、本來一箇の訴に於て主張し得べき場合に、裁判所が、民事訴訟法の規定に依り、同一の人、又は別異の人の數個の訴訟に關する辯論、及び裁判の併合を命ずるが如きこれなり。(民訴一二〇、四八條乃至五〇條)
- 英
- Co-litigation
- 独
- Streitgenos-senschaft
- 仏
- Co-procès
共同訴訟人
共同訴訟人とは、共同訴訟の當事者たる原告、及び被告を云ふ、二人以上の人が、共に訴をなし、又は訴を受くる場合に以ける訴訟當事者なり、如何なる場合に、二人以上の人が共同訴訟人として、共に訴を起し、又は訴を受くることを得るかと云ふに、民事訴訟法に於ては、之を三個の場合に區別せり、即ち□一數人が訴訟物に就き權利共通、若くは義務共通の地位に立つとき、茲に權利共通の地位に立つときとは、即ち訴訟物上に共同權利者たる關係を有する場合にして、義務共通の地位に立つときとは、訴訟物上に共同義務者たる關係を有する場合也とす、□二同一なる事實上、及び法律上の原因に基く請求、又は義務が訴訟の目的物だるとき、茲に訴訟の目的物と云ふは、訴訟に依りて得んとする處のものを指すものにして、即ち同一なる事實上、及び法律上の原因に基く權利者又は義務者は、共同訴訟人として、共に出訴せらるる事を得べし、次に同一なる事實上、及び法律上の原因に基く權利者とは、例へば數人にて、一の證書を以て貸金をなしたる債權者の如きを云ひ、又同一なる事實上、及び法律上の原因に基く義務者とは、例へば一の證書を以て、各別の責任にて連借せる債務者の如きを云ふものとす、□三性質に於て同種類なる事實上、及び法律上の原因に基く同種類なる請求、又は義務が、訴訟の目的物たるとき、茲に性質に於て同種類なる事實上、及び法律上の原因に基く同種類の請求をなす者とは、例へば一の會社に對して、利益の配當を請求する株主の如きを云ふ、即ち之等の株主中には、或は會社の創立者たる者あるべく、又他の株主より、株券を購入したるがために、株主たる資格を得たる者もあるべければ、之等請求權の基く事實上の原因は、同一也と云ふを得ずと雖も、然かも其性質に於ては、之を同種類なる事質上、及び法律上の原因に基きたるものと云ふを得べし、次に性質に於て、同種なる事實上、及び法律上の原因に基く、同種類の義務を負擔する者とは、例へば會社より株金の拂込を督促せらるる株主の如し、即ち之等株主の負擔する株金拂込の義務は、株主たる關係に基くものなれば、其義務の發生したる事實上、及び法律上の原因は、其性質上同種類なりと云はざるべからず、會社の請求する處は、株金の拂込を求むるにあれば、即ち其請求もまた同種也とす、上述の如き場合には、共同訴訟人として、數人の原告と、被告と同一の訴訟に合併することを得るものとす、而して共同訴訟人の法罪上の位地は、各自獨立なるものにして、各別に訴をなしたる訴訟人に異ることなし、故に共同訴訟人は、各自各別に攻擊、または防禦をなし得るものにして、これが相手方たるもの、又其共同訴訟人に對して、各別に攻擊、又は防禦をなすことを得るを原則とす、故に共同訴訟人中の或者の行爲、及び懈怠は、他の共同訴訟人の利害に影響することなく、またその相手方が、共同訴訟人の或者に對してなしたる行爲、及び懈怠は、他の共同訴訟人の利害に影響することなし、故に共同訴訟人に對する裁判は、必ずしも一齊なるべきものにあらざるは勿論のことなりとす、されど總べての共同訴訟人に對し、訴訟に係る權利關係が、合一にのみ確定すべきとき、例へば共有者に對する訴、又は地役が訴訟物たる如き場合には、以上の原則に例外をなすものにして、□一共同訴訟人中の或人の攻擊、及び防禦の方法は(證據方法を包含す)他の共同訴訟人の利益に於て效を生ずべく、□二共同訴訟人中の或人が爭ひ、又は認諾せさる時と雖も、總べての共同訴訟人が悉く爭ひ、認諾せざるものと看做され、□三共同訴訟人中の或人のみが、期日又は期間を懈怠したるとき、其懈怠しる者は、其懈怠せざる者に、代理を委任したるものと看做さるるものなり、從つて凡ての送達及呼出は、各次之を受くるの權利を有し、又何時にても、其後の訴訟手續に加はることを得るものとす、法律が斯かる例外の規定を設けたる精神は、各共同訴訟人に對する判決の抵觸を避くるがための目的に外ならざるものなり。(民訴四八條乃至五〇條參照)
- 英
- Co-litigant
- 独
- Streitgenosse
- 仏
- Co-plaideur
共同被告
(きようどうひこく)共同被告とは、民事訴訟法上、所謂共同訴訟、又は其他の場合に於て、二人以上の人が同一の訴訟事件に關して、共に訴を受けたる時、其數人を共同被告と云ふ、民事訴訟法第四八三條第二項に「此場合に於ては、原告及び被告を共同被告となす」あるは之其用例とす、此場合は、第三者が原告、及び被告の共謀に依り、第三者の債權を詐害する目的を以て、裁判を爲さしめりと主張し、其判決に對して不服を申立たる訴訟にして、本訴の原告被告は、この詐害の訴に於ては、所謂共同被告なりとす。
- 英
- Co-defendants
- 独
- Mitange-klagte
- 仏
- Co-défendeur
共同被告人
共同被告人とは、多く刑事訴訟に於て、二人以上の人が同一の訴訟事件に就き、共に訴を受けたる場合に、其數人を共同被告人と云ふ、例へば二人以上の人が、共謀して或一罪を犯したるとき、檢事が其數人に對し、共犯として起訴したる場合の如きこれ也、刑事訴訟法第九七條第二項に「共同被告人云々」とあるは其用例とす。
- 英
- Co-defendants
- 独
- Mitange-klagte (streitgenossenschaftliche Verklagte)
- 仏
- Co-défendeur
共同拿捕
(きようどうだほ)共同拿捕とは、戰時に於て、交戰國一方の軍艦、又は捕獲免許を有する私船が共同の力に依り、若くは海陸兩軍共同の力に依りて、敵國の艦船を拿捕するを云ふ、即ち共同拿捕は、分つて四種となす事を得□一二隻以上の軍鑑が、共同して拿捕を行ふ場合、□二二隻上の軍艦、及び捕獲私船が、共同して拿捕を行ふ場合、□三二隻以上の捕獲私船が、共同して拿捕を行ふ場合、□四海陸兩軍が、共同して拿捕を行ふ場合是なり、私船をして數船の拿捕に從事せしむるは、所謂巴里の宣言の禁ずる處なるを以て、將來に於ては、私船が共同拿捕を行ふが如きことはなかるべし、茲に注意を要するは、拿捕と捕獲との區別なり、即ち拿捕とは、主に兵力に依る有形物の占有にして、捕獲とは、國家が拿捕したる有形物上の物權を沒收すること也、故に捕獲したる物は、捕獲審檢所の審理を待ちて、初めて國際法上正當の捕獲物となることを得べきものとす。
- 英
- Joint captures
- 独
- gemein-schaftliche Caperei
- 仏
- Prises faites en commun
共同不法行爲
(きようどうふはふこうゐ)二人以上の人が、共同して爲したる不法行爲を云ふ、民法第七一九條第一項に「數人が共同の不法行爲に依りて他人に損害を加へたる時は、各自連帶にて其賠償の責に任ず、共同行爲者中の孰れが其損害を加へたるかを知る事能はざるとき、亦同じ」第二項に「教唆者、及び幇助者は之を共同行爲者と看做す」とある即ちこれなり、之を區別するときは、□一數人共謀して、一の不法行爲をなしたるとき、此場合に共謀者が連帶して、損害賠償の責に任ずべきは勿論のこととす、□二共謀せざるも、數人の行爲が同時に併發して、一の不法行爲となりたる時、此場合は、各行爲者の間に共謀なしと雖も、其結合したる行爲は、損害を與へたる一の不法行爲となり、一の債務として、其加行爲者損害の全部に就き、責任を員ふべきものなりとするを至當とす、□三共同行爲者中、孰れが其損害を加へたるや明ならざるとき、この場合は、數人の行爲の結果として、一の損害を生じたるにあらずして、其數人の行爲者中の一人、若くは數人の行爲が損害を加へたるも、何人が損害を加へたるや明ならざる場合なり、純理上より論ずるときは、其損害を加へざる行爲者は、何等の責任をも負ふべきものにあらず、されど斯かる場合に、實際の加害者を求めたる上にあらざれば、損害賠償を請求するを得ずとせば、其證明の極めて困難なるため、被害者は到底其要償權を實行すること能はず、從つて法律上、被害者の權利を保護せざる結果を生ずるに至るべきを以て、法律は斯かる場合に、各共同行爲者をして、連帶して賠償の責任を負はしむることとせり、□四教唆者及幇助者、即ち他人を教唆又は幇助して不行法爲をなしたるもの也、刑法上に於て、教唆者及幇助者の犯罪に對する責任は、之を異にす、されど民法上の不法行爲に就きては、之を共同行爲者と看故し、連帶の責任を負ふべきものとせり、蓋し立法上の理由は、刑罰權の基本は、國民の正義及社會の利益の保持に在るを以て、其犯罪に對する責任は、之を嚴格に論する心要あるべきも、之に反して民事上に於ける不法行爲に對する責任は、單に被害者の權利を保護するにあるを以て、爾く嚴格に論して、之を區別するの必要なし、故に之を共同加害者と看倣して、共に同一の責任を負しめたるものならん。(民七一九條一項及二項)
- 英
- Joint illegal act
- 独
- rechtswidrige Mitthat
- 仏
- Acte illégal commun
兇徒聚衆罪
(きようとしうしゆうざい)舊刑法に依れば、兇徒聚衆罪は、之を分ちて二となすを得、一は即ち多數集合の罪にして、他の一は即ち多數暴動の罪也、多數集合の罪とは、兇徒多衆を嘯集して、暴動を謀り、官吏の説諭を受くれども、猶解散せざるの所爲にして、多數暴動の罪とは、兇徒多衆を嘯集して、官廳に喧鬧し、官吏に強逼し、又は村市を騷瀀し、其他の暴動をなすの所爲を云ふ、兇徒聚衆の罪は、公共の安寧を害するの罪にして、此犯罪の主體たる者は、多數の人也、其人數は一定の制限なきを以て、時と所の情況に依りて判定せざるを得ず、此犯罪の所爲は、暴行をなすにありて、其手段となるべきものは、多數共同の力に出でたる暴動也とす、從つて集合せる多數の人が、個々別々に暴行を働く場合は、此犯罪を構成するものにあらず、多數集合の罪に對する刑罰は、首魁、及び教唆者は、三ケ月以上三年以下の重禁錮、附和隨行したる者は、二圓以上五圓以下の罰金、多數暴動の罪に對する刑罰は、首魁及教唆者は、重懲役、其嘯聚に應じて煽動助勢したる者は輕懲役、其情輕き者は一等を減し、附和隨行したる者は、二圓以上二十圓以下の罰金、暴動の際人を殺し、若くは家屋、船舶、倉庫等を燒毀したる時、現に手を下したる者、火を放ちたる者、情を知りて之を制せざりし首魁、及び教唆者は、死刑に處せらるるものとす。(舊刑一三六條乃至一三八條)
- 英
- Crime of riot
- 独
- Auf-ruhrsverbrechen
- 仏
- Crime de riboter
共犯
(きようはん)二人以上の人が、同一の犯意と同一の目的とを以て、或る一罪を犯すを云ふ、共犯を分つて三種となす、第一正犯、第二教唆者、第三從犯これなり、刑法上此三者の性質、及び其犯罪の責任に關しては、議論少なからず、其最も妥當なりと思考せらるる一説の梗槪を記さんに、抑も刑法が共犯の原則を設けたる理由に二あり、□一は一人にして一罪を犯す場合と、數人共同して一罪を犯す場合とを比すれば、其社會に對する危害の程度を異にするものあること、□二は數人にて一罪を犯す場合には、其數人の犯罪行爲に關する加效の程度に差あり、然るに此數人の犯者に對し、一樣に其最も重き行爲に對する責任を負はしあんか、輕易の行爲者に對して、酷に失するの嫌あり、之に反して、一樣に其最も輕き行爲に對する責任を負はしめんか、重き行爲者に對する刑罰其當を得ざるの弊あり、爰を以て其加效の程度と、其行爲の輕重とを論じて、各犯者に對する責任を區別するの必要あり、是即ち共犯責任に關する原則の由りて起る所以なり、或犯者が共犯たるには、第一犯罪の事實を知りて、之に加效するを要すること、第二犯行を共にし、之を教唆し、又は之を幇助する意思を有することの二要件を具備せざるべからず、或る人が犯罪行爲に加效するも、全く其犯罪の事實を知らざる場合には、之を共犯と云ふを得ざるべく、又或る犯罪に加效するも、犯罪を共にする意思なく、或は犯罪を教唆し、苦くは之を幇助する意思なければ、之を共犯と稱することを得ざるべし、過失に依りて共に加效したる者は、犯罪を共にするするの意思なきを以て、共犯と云ふことを得ず、又犯罪を共にする意思だに存在せば、數人が實際に其犯行を實行するを必要とせず、されば共犯は、其所爲より區別せば、間接直接に犯行に加效するものと、其犯罪を教唆、指示するものとの二となすを得べし、要は唯其數人の間に意思の共通あることこれなり、又共犯なるものは、犯罪の前、若くは犯罪の際にあらざれば、存在するを得ざるは明なり、□一正犯とは、二人以上の人が、共に一罪を犯したる事實を云ふものにして、苟も犯行の著手、若くは執行中、共に加效したる者は、其加效の多少を問はず、所爲の全體に對する責任を負ふべきものとす。舊刑第一〇四條に「二人以上現に罪を犯したる者は、皆正犯となし、各自に其刑を科す」とある即ちこれなり、□二教唆者とは、或る人に犯罪の意思を注入し、依つて以て犯罪を犯さしめたるものなり、舊刑第一〇五條に「人を教唆して重罪、輕罪を犯さしめたる者は、亦正犯とす」とあるこれなり、人を教唆するも、其人が犯罪を行はざるとき、又は犯罪を行ふも、重罪若くは輕罪にあらざるときは、教唆者として犯罪の責任を負ふことなし、されど教唆者を教唆するも、從犯を教唆するも、亦教唆者として、其教唆したる教唆者、又は從犯と同等の責任を負ふべきものならん乎、元來教唆者の犯罪に對ずる責任は、正犯の所爲に伴ふものなるを以て、若し正犯にして犯罪を中止したるときは、教唆者も併せて無罪となるべく、又正犯の所爲未遂に止まるときは、教唆者の責任も正犯と等しく、未遂犯に對する責任を負ふに止まるべきもの也、教唆者にして苟くも犯罪を教唆したる以上は、正犯が其實行に際し、過誤、不熟練等より、他の犯罪、又は重き罪を犯したるときと雖も、其責任は、自己が教唆したる正犯行爲に準じて責に任ずべきものとず、□三從犯とは、舊刑第一〇九條に「重罪輕罪を犯すことを知りて、器具を給與し、又は誘導指示し、其他豫備の所爲を以て正犯を幇助し、犯罪を容易ならしめたる者」にして、これ等は從犯とし、正犯の刑に一等を減ぜらるべきものなり、即ち換言すれば、從犯は、他人が重罪、輕罪を犯すことを知りて、これを幇助し、其犯罪を容易ならしめたる者とす、隨つて從犯なるものは、正犯が重罪又は輕罪を犯す場合にあらざれば生ずることなく、また縱令正犯を幇助するも、其重罪又は輕罪を犯すことを知るにあらざれば、從犯として其責任を負ふことあらず、從犯の所爲は、唯正犯を幇助するに在るを以て、從犯の從犯は、罪となるへきものにあらず、又幇助の所爲なるを以て、毫も正犯の所爲に加效することなし、從つて正犯の所爲中には、從犯の所爲の一分子をも包含すべきにあらず、次に共犯の身分に關する情狀は、他の犯罪者に及ばずと雖も、正犯の身分の存否にして、罪の有無に關し、又は他罪を構成する場合には、他の共犯者に及ぶべきものなりとす。(刑六〇條乃至六五條參照)
共分組合
(きようぶんくみあひ)元來共産商業組合なるものは、生産者が共同して、經濟上所謂富の分配を爲す組合なるが、共分組合は其一種別にして、二人以上の生産者が共同して、各自獨立又は連合して商行爲を爲し、依つて生じたる利益を分配する組合を指す、抑も法律上に於て組合とは、二人以上の者が出資を爲し、共同事業を經營するを約するに依りて成立するものにして、其經營する事業の如何に依りて、種々の名稱を附し得べく、又その内容目的は、契約に依りて定まるものなるが故に、共分組合も、其契約の内容に依りて、多少實質に異る所あるべく、今茲に一々説述し得べからず、從つて法律上に於ては、一種の組合契約に外ならずと云ふの外なし。(組合、組合契約の部參照)
- 英
- Profit and loss association
- 独
- Verlust- und Gewinnverband
- 仏
- Associa-tion du profit et de la perdue
興味
(きようみ)興味とは、無約的に集注する樂しみの感を伴ふ心意の發動をいふ、即ち或る事物に對し、或は或る觀念の復起に對し、自然的に注意を惹起し來る心意の活動が、毫も其ものを得たし、又は爲めにしたしといふが如き欲求の觀念を混ずる事なく、唯一種の快情に依りて誘致せられたる心意の狀態をいふ、古來興味に就きて、心理學上種々の研究を試み、科學的に之を説明せんとすれども、未だ定説なし、然れども一般に興味あるもの、即ち價値あるものなりとせらる、これによりオステルマンは、興味の感情に基者なることを説きて、興味を全然感情と解するは不可なれども、歸する處感情となさざるべからず、即ち感情其者にあらざも、感情が其本たるは疑なしと説けり、蓋し氏は、興味は價値決定にして、價値決定は、全然感情の上にあるものなりとの論證より到達したるものなり、最後にかくの如くなれば、興味の大小有無が、吾人の生活現象に大なる影響を及ぼす力を有することを知るべきなり。
- 英
- Interest
- 独
- Interesse
- 仏
- In-térêt
共領地
(きようりやうち)國際法上の用語にして、二國以上の國家の共同領有に屬する土地を云ふ、抑も或一の土地に於て、一國家の領有權、即ち學者の所謂領域高權が行はるる時は、同時に其土地に他國家の領域高權を行ふことを許さざるを原則とす、されど時として、事實上同一の土地に、二國以上の領域高權の行はるることなきこと無きにあらず、一六六四年より、一六六六年に至る間、墺太利が普魯四と共同として、シェレスウィツヒホルスタイン及びラウヱンブルグの地方を領有したるが如きは其一例なり。
共和國
(きようわこく)共和國とは、共和制の國體を存する國家を云ふ、瑞西、佛蘭四、及び北米合衆國等の如きこれなり。(共和國體參照)
- 英
- Republic
- 独
- Republik
- 仏
- République
共和國體
共和國體とは、國民全體が統治の權力を有する國體を云ふ、國民全體が統治の權力を有する國家は、學者之を民主制の國家と稱す、民主制の國家に在りては、國民全體が統治の權力を共同して保有する國柄にして、國民に上下の階級なるものあることなし、民主制の國家は、國民全體が統治權の主體たると同時に、政權の主體として國政に參與するものと、國民の少數に政權を委して、國政の處理に任ぜしむる者とあり、學者は、前者を名けて直接總攬と云ひ、後者を名けて間接總攬と云ふ、直接總攬の實例は、昔時のゲルマンの人種の建設せる國家制度に存在せし者なるも、固より發達せる國家の採用すべき制度にあらざれば、國家の發達、人智の進步と共に其跡を滅せり、要するに共和國體は、統治の權力が或一人の優者の手にあらずして、人民全體が、統治の主體として權力を握有し、一面に於てはその容體として、被統治者たる國柄を謂ふ、抑も統治權が、一人たる君主又は數人なる貴族、或は全部としての人民に存すべきか否かの問題、即ち其權力の所在如何は、理論上の問題にあらずして、實は歷史上の事實に基くものとす、茲に注意を要するは、國體と政體とは、別異の觀念なる事これなり、即ち國體は歷史的事實に基くものにして、政體は人爲的制度なり、爰を以て、統治の權力は、國民全體の有する處なるも、或は政體の異るに依りて、其行使を一人又は數人に委するものなり。(國體の部參照)
- 英
- Republic
- 独
- Republik
- 仏
- République
許可
(きよか)單に許可と云ふときは、或事項に就き、他人の要求に應ずる事を云ふ、許可は之な分て、公法上の性質を有するものと、私法上の性質を有するものとの二となす事を得べし、公法上の性質を有する許可とは、法令の規定に基き、官廳又は公共團體のなす者を云ひ、例へば隱居の場合に於ける裁判所の許可、法人設立の場合に於ける主務官廳の許可、若くは町村會の決議に對する郡參事會の許可の如きこれなり、官廳の許可は、多くの場合に於て、行政處分の一種たるものとす、次に私法上の性質を有する許可とは、法令の規定に基きて私人のなすものを云ひ、例へば無能力者に對する法定代理人の許可、又は妻に對する夫の許可の如きこれなり。(民六、一四、三四、七五三條等參照)
- 英
- Permision
- 独
- Erlaubnisz
- 仏
- Permission
局外中立
(きよくぐわいちうりつ)局外中立とは、一國が、他國の間に於ける戰爭に關與せざる國際上の地位を云ふ、局外中立の地位に在る國家は、交戰國の一方、又は双方に對し、依然として無關係の地位を守るべきものなるを以て、兵力を以て應援をなすが如きは勿論、其他何等の方法を以てするを問はず、苟も交戰に影響を及すが如き行爲は、全然之を避くべきものとす、即ち交戰國双方に對しては、依然として平和の關係を持續するなり、通常局外中立の地位に在る國家は、他國交戰に當り、局外中立に關する宣言を發するを例とす、されどこれ唯自國の地位を明かにし、交戰國、又は他の國家の疑惑を避けんとする手段たるに止まり、國際法上必ずしも之を宣言すべき義務あるものにあらず、この宣言の效果を區別すれば、二となすことを得べし、□一は主として外に對するものにして、上述の如く外國をして、自國が局外中立の地位を守ることを認識せしむること、□二は主として内に對するものにして、即ち中立の宣言に依りて、自國の臣民及自國法權の下に在る人民をして、自國の中立の地位に立つことを知らしむると同時に、局外中立の義務に反するが如き行爲を禁ずることこれ也、次に完全局外中立、及び不完全局外中立の區別は、往時一般に國際法學者に依りて認められたるものなるも、現時に於ては此區別を認むることなし、完全局外中立とは、全然局外中立の地位を守るを云ひ、不完全局外中立とは、或程度に於て局外中立の地位を守るを云ふ、例へば或一國が交戰國の一方に對し、開戰前に於て、戰時と雖も或特別の權利、又は利益を與ふべきことを約したるときは、開戰後に於て其條約を履行しつつ、尚中立の義務を全うすることを得となすが如きを云ふ、斯くの如きは近世の局外中立に關する觀念と、全く相容ざるもの也、或國家間の開戰に方りて、一部の土地の局外中立を生ずる事あり、則ち交戰國双方、又は其他の國家との條約に基き、交戰國、又は第三國の領土の一部を限定して、局外中立地と認むるを云ふ、例へば日清戰爭の當時、吾國が清國の戰爭行爲をなさざるを條件として、清國の領土たる上海を、局外中立地と認むべき旨を各國に約したるが如き其例也、學者は之を一部局外中立と稱し、之に對して或國家の全然局外中立の地位に立つを、全部局外中立と稱することあり、此他に永世局外中立なるものあり、或國家又は或地方が條約に基き、永久に局外中立の地位に立つを云ふ、例へば國家としては瑞西、白耳義、ルクゼンブルグ、及びコンゴー國の如きこれなり、地方としては、蘇士運河、ドナウ河會、黑海、クラカラ都府等の如きこれなり、抑も昔時に在りては、或國家の間に戰端を開く時は、他の國家は必ず交戰國の一方に加擔するを例とし、未だ局外中立なる者なかりしも、國際法學の進步に伴ひ、局外中立なる觀念も次第に發達し、漸く近代に至りて、一般國際間に認めらるるに至れり。
- 英
- Neutrality
- 独
- Neutralität
- 仏
- Neutralité
局外中立國
(きよくぐわいちうりつこく)局外中立國とは、他國家の交戰に際し、局外中立の地位に立つ國家を云ふ、局外中立國の交戰國に對する關係に就きては、國際法學者の間に議論少しとぜず、或學者は、此關係を單に義務の方面より觀察して、局外中立國は、交戰國の雙方に對し、避止の義務、妨遏の義務、觀過の義務なる三種の義務を負ふもの也となし、□一避止の義務とは、即ち交戰國の一方又は雙方に對し、全然援助的行爲を避止するの義務にして、其援助的行爲は、物質的のものなると、無形的の者なるとを問はず、又豫め交戰前に於て、條約に依りて定めたるものなると否とに關せず、一たび局外中立の地位に立つ以上は、依然として之を避止すべきものにして、若し此義務に反するに於ては、中立の地位よりして享受し得べき利益を失ふものとす、□二妨遏の義務とは、局外中立國の領域内に於て、自國の臣民、又は交戰國一方の國家機關が、他の交戰國の一方を害すべき行爲を妨遏するの義務なり、即ち此義務は、自國臣民の行爲に關する場合と、交戰國一方の國家機關の行爲に關する場合とあり、第一自國臣民の行爲に關する場合、ア私船を以て商船捕獲を行ふ免許、又は委任を受くることを妨遏するの義務、イ交戰國の軍隊、又は艦隊に入ることを妨遏するの義務、ウ軍艦又は其他の船舶の製造、及び賣買を妨遏するの義務、エ交戰國の船舶の修繕を妨遏するの義務、ワ兵器の賣與を妨遏するの義務、カ石炭の賣與を防遏するの義務、キ食料品の供給を防遏するの義務、ク金錢の貸與、及び寄附の行爲を防遏するの義務等にして、第二交戰國の國家機關の行爲に係る場合は、(い)交戰國の軍隊、又は艦隊が、其領域内に於て、戰鬪行爲を爲す事を防遏するの義務(ろ)交戰國の軍隊又は艦隊が、その領域を通過する事を防遏するの義務、は間諜のために其領域を利用するを防遏するの義務、に領域を利用して、兵員を募集する事を防遏するの義務等これなり、□三觀過の義務とは、局外中立國が、或場合に、自國臣民に對する交戰國の處分を觀過するの義務なり、即ち局外中立國は、自國臣民が交戰國の一方に、有害なる質易を防遏するの義務を負ふことなしと雖も、交戰國は、直接に局外中立國の臣民の行爲より、其利益を害せらるるが如き場合には、其行爲を防止するに必要なる手段に出ることを得べきを以て、斯かる場合に、交戰國の自國臣民に對する處分を觀過するの義務あるものとす、此義務は、交戰國の側より見れば其權利にして、局外中立國は、交戰國が自國臣民の行爲に關し、その權利を行ふを妨げざるの義務と云ひ得べし、如何なる場合に觀過の義務を生するかと云ふに、(甲)自國臣民が、所謂戰時禁制品を交戰國の一方に供給するに際し、他の一方の軍隊、又は艦隊が、其軍艦の途上にて之を捕獲したる場合、(乙)自國臣民が、交戰國の一方のために、情を知りて他の一方に對し、有害なる書類を傳達し、又は其一方の陸海軍人等を運送するの用に供したる船舶を、其敵國が沒收したる場合、(丙)對鎖を犯したる自國臣民の船舶を、交戰國の一方が捕獲し、又は攻擊したる場合、(丁)交戰國の一方が、其敵國船舶に搭載したる自國臣民の貨物、及び自國臣民所有の船舶に搭載したる交戰國一方の貨物を捕獲したる場合、(戊)其他交戰國一方の軍艦が自國の船舶に對し、臨檢搜索又は拿捕を行ひたる場合等なりと説明せり、次に或學者は、局外中立國の交戰國に對する關係を權利と義務とに分ち、上述防遏の義務中、第二の部類に屬するものを反對に觀察して、之を局外中立國の權利として論ぜり。(局外中立參照)
- 英
- Neutral country
- 独
- neut-raler Staat
- 仏
- Etat neutral
局外中立法
局外中立法とは、國際法中、局外中立國の交戰國に對する權利義務に關する法規を云ふ、即ち局外中立國の權利、又は義務として、國際團體に依りて認められたる法則を云ふものとす、例へば戰時に於て、交戰國の一方はその戰畧上の必要ある場合に、敵國の港灣、河岸、又は海岸を對鎖し、一般に船艦の出入を禁ずるは、其權利なりと認めらるが如き、或は又交戰國の軍隊、又は艦隊が、中立國の領域内に於て、戰闘行爲をなす場合に、中立國が之を防遏するは其義務なりと認めらるるが如きを謂ふ。
- 英
- Law of neutrality
- 独
- Ne-utralitätsrecht
- 仏
- Lois de neutralité
御璽
(ぎよじ)御璽は、天皇の御印章なり、傳來の御印は、銅材にして方曲尺二寸七分なり、明治七年新製に係る御印は、金材にして方曲尺三寸、天皇御璽の四字を刻せり、御璽は法律、勅令、勅任官の辭令書、爵位の辭令書等に鈐するものにして、國璽と共に内大臣之を尚藏し、親署の後にこれを鈐するものとす。(四〇年一月敕六號公式令二條乃至九條、一四條乃至一七條參照)
- 英
- Seal of Emperor
- 独
- kaiserliches Siegel
- 仏
- Sceau d'Empereur
居所
(きよしよ)或人が現に在住する場所を云ふ、居所なる語は、元來住所、即ち生活の本據たる場所に對し用ふる語にして、住所と異るは言を俟たず、單に居住の事實だに存在せば、永久定居の意思なきも、之を居住と云ふを得べし、民法第二五條に「從來の住所又は居所云々」とあるこれ其用例なり。
- 英
- Residence
- 独
- Aufenthalt
- 仏
- Résidence
擧證
(きよしよう)擧證とは、證據法上の用語にして、或る訴訟事件に就き、當事者の一方が、自己の主張を立證すべき證據を提出する事を云ふものとす、所謂證明とは、全く其意義を異にし、證明は、或係爭事實の存否に就き、相手方が提出する凡ての反對證據を排し、自己の主張を終局まで保持し、以て裁所判に確信を起さしむる行爲なるも、擧證は之に反して、單に訴訟の格段なる程度に於て、當事が、或證據を提出する事を指す、換言すれば證明の手段に外ならず、民事訴訟法第三三七條に「擧證のため引用云々」とあるは其用例なり。擧證者とは、訴訟中係爭事件に就き、自己の主張を立證すべき證據を提出する當事者の謂なり、即ち裁判所にて、一定の事を申立てたるものは、其事實の確實なるを證する爲めに、證擧をなす責任あり、例へば訴訟に於ける原告は、自己の請求または供述せる事實に就きては、擧證の責あり、被告は防禦方法として、提出せる事實に就き、擧證の責任あるが如し、この擧證の責任あるものを擧證者といふ。民事訴訟法第三三五條に「擧證者」とあるは其用例なり。
- 英
- Evidence to be adduced
- 独
- Beweisführung
- 仏
- Evidence
擧證者
擧證の責任
擧證の責任とは、或訴訟事件に就き、裁判所に於て自己の主張を立證する證據を提出すべき責任を云ふ、隨つて所謂證明の責任とは、全く其性質を異にするものなり、擧證の責任は、訴訟の格段なる程度に於て、唯自己の主張を立證する體據を提出すべき責任に過きざるも、之に反して證明の責任は、係爭事實に就き、裁判所をして完全なる確信を惹起せしむるの行爲なり、換言すれば、相手方の提出する反對證據を拂斥し、その主張に係る事實を、最終まで立證するの責任也、次に擧證の責任は、何人に在りやの問題に就きては、學者の間に議論あり、或學者は□一擧證の責任は、事實を主張する當事者にあり、凡て證明は、係爭事實に對する證據に依りて之を決すべきものなるを以て、證明の責任には、當然擧證の責任を包含するものと言はざるべからず、從つて證明の責任を有する當事者は、また擧證の責を有するものと云ふことを得べし、□二然れども事實を主張する當事者に對し、法律上利益ある推定あるとき、若くは斯かる推定を生じたるときは、擧證の責任は、他の當事者に移轉するものとす、是證明の責任と異る點也、即ち證明の責任は、爭はれたる事實の存否に關し、最終に至る迄自己の主張を立證すべき責任なるも、擧證の責任は、訴訟の或格段なる點に於て、裁判官に一應の確信を惹起せしむるが爲め、證據を提出するの責任に過ぎざるを以て、或事實を主張する當事者に對し、法律上利益ある推定あるとき、又は斯かる推定を生じたると時、擧證の責任は、隨つて反對者に移轉するものと云はざるべからず、□三然れども事實を主張する、當事者に對する利益なる推定の結果、其反對者に擧證の責任の移轉するは、其推定の效力の存續する間に限るものとす、反對者が、事實を主張する當事者に對する利益の推定を、或反證を以て打破したるときは、茲に再び證明の責任は、事實の主張者に復歸するものと云ふべし、例へば法律に於て、共有者の持分は均しきものとの推定ある場合に、均等の持分を有する事を主張する當事者の擧證の責任は、此推定のために相手方に移轉すべきも、相手方に於て或反證を擧げて、其持分の均等ならざる事實を立證するときは、擧證の責任は、再び持分の均等を主張する當事者に復歸すべきを以て、其當事者は、之に對し更に其主張の立證方法として、適當の證據を提出せざるべからざるが如し。
- 英
- Responsibility of testifica-tion
- 独
- Beweislast
- 仏
- Solidarité de témoignage
居所地法
(きよしよちはふ)居所地法とは、或人が現に在住せる地を支配せる法なり、抑も此居所地法なる語は、國際私法上多く用ふる者にして、外國人の行爲に適用すべき準據法を定むるに、本國法主義、住所地法主義、居所地法主義又は行爲地法主義等の法制あり、我法例第二七條に「當事者の本國法に依るべき場合に、其當事者國籍を有せざる時は、其住所に依るべきもの」と定め「若し住所が知れざるときは、居所地法に依るべきもの」と定めたるは其用例也。
- 英
- Law of settlement
- 独
- Auf-enthaltsrecht
- 仏
- Loi de résidence
拒絶證書
(きよぜつしようしよ)手形、又は倉庫營業者の發する質入證書の支拂人、又は引受人が、其支拂又は引受を拒絶したる場合に、其所持人の請求に依り、公證人、又は執達吏の作製する證書を云ふ、元來拒絶證書なるものは、支拂、又は引受の拒絶ありたることを公證する證書にして、殊に遠隔の地方に住居する償還義務者をして、その拒絶の事實の眞確たることを認めしむるがために、必要の手段と云ふべきのみならず、若し法律が其規定を以て、之を作製すべきことを命じだる場合に、其所持人が之を怠るときは、その手段又は質入證券に關する權利を失ふべきを以て、其權利を保持するの方法としても、極めて重要なるものなり、商法第五一五條の規定に依れば、拒絶證書には下記の事項を記載し、これを作りたる公證人又は執達吏は、之に署名すべきものとせり、□一爲替手形、其謄本、及び補箋に記載したる事項、□二拒絶者、及び拒絶者の氏名、又は商號、□三拒絶者に對してなしたる請求の趣意、及び拒絶者が其請求に應ぜざりしこと、又は拒絶者に面會する事能はざりし理由、□四以上の請求をなし、又は之をなすこと能はざりし地、及び年月日、□五拒絶者の營業所、住所、又は居所が知れざる場合に於て、其地の官署又は公署に問合せをなしたること、□六法定の場所外に於て拒絶證書を作るときは、拒絶者之を承諾したること、□七參加引受、又は參加支拂あるときは、參加の種類、及び參加人、並に被參加人の氏名、又は商號等なり、以上の書式は、本來手形に關するものなれども、質入證券、其他法定の拒絶證書を作成すべき有價證券の場合に準用せらるるのものなり。(商三七三條、及び五一四條乃至一七條其他參照)
- 英
- Protest
- 独
- Protest
- 仏
- Protêt
居住地
(きよちゆうち)居住地なる語は、法令上確定の用例を見ず、隨つて一定の意義を附しがたきも、通常住所地、即ち或人の生活の本據たる地を指すものの如し、時としては、所謂永寓地を意味することあり、要するに居所、又は所在地と異り、半永久的に住する地を云ふものと知るべし、此語の用例は、勳章年金支給細則第一四條に「居住地の戸主」云々すとある即ちこれなり。
- 英
- Residence
- 独
- Aufenthalt
- 仏
- Résidence
居住の自由
(きよぢゆうのじいう)日本臣民が法律の範圍内に於て、自由に其居住を定むることを得る憲法上の權利を云ふ、屋住の自由は、帝國憲法に依りて、保障せられたる日本臣民の權利にして、外國人は特別なる條約に依る場合の外、此種の權利を有することなし、又居住の自由は、法律の範圍に於けるものなるを以て、法律の規定を以て之を制限するは、毫も妨げざるなり、而して此自由は、臣民が臣民たる資格に於て享有するものなるを以て、官吏の如く特別たる服從關係に立つ者は、行政權を以て其居住を制限せらるるも、此權利の侵害となる事なく、又憲法が居住の自由を保障する目的は、臣民の居住其ものに關する場合なるが故に、制限の理由にして、或る他の目的に出でたる場合の如きは、行政命令を以て之を行ふ事を得べく、必ずしも法律を以てするを要せざるものとす、例へば傳染病の危險を避けしめんがため、一定の地域内に居住するを禁ずるが如きこれなり。(憲法二二條參照)
- 英
- Liberty of abode
- 独
- Aufenthaltsfreiheit
- 仏
- Liberté de résider
許否
(きよひ)許否とは、或る事項に對する要求を許可し、又は許可せずと云ふ義なり、民事訴訟法第六八條に「利害關係人は競落の許否に付き云々」とあるは其用例なり。(二三年法一〇六號參照)
- 英
- Permittance or rejection
- 独
- Erlaubnisz oder auswerfung
- 仏
- Permis on rejêt
許容法
(きよようはふ)許容法とは、法令の規定にして、禁令又は命令にあらざるものを云ふ、即ち或行爲を爲すと否とを、其人の自由意思に任じ、若し其人が任意決定を以て其行を爲なしたるときは、其法令の保護を受け、また其規定の制限を受けるものとす、例へば法文に何々することを得、又は何々することを妨げず等の規定あるものこれなり、即ち多くの場合に於て、權利を與たる規定なり、次に許容法なる語は、任意法又は聽許法の意義に用ふる事あり、任意法、又は聽許法とは、一定の範圍を定めて、其範圍の内に入ると否とを其人の自由に任じ、若し其範圍内に來りたるときは、必ず其法令の適用を受けざるべからざるものを云ふ、即ち任意法は、其範圍に入ると否とが其人の任意なるに過ぎずして、苟も一旦之に入りたる以上は、其法令の拘束を免がるべからざるものとす、民法、商法の大部分は任意法也、例へば契約をなすと否とは其人の任意に屬するも、一たび契約をなすときは、契約法の規定に支配せられざるべからざるが如し。
居留地
(きよりうち)一國の政府が其領土内に於て、外國人の居留を許したる一定の地域を云ふなり、居留地なるものは、國際條約を以て定むべきものにして、通常外國人の内地雜居を許さざる國家に存在する制度なりとす、居留地制度に二種あり、□一は一般居留地にして、□二は專管居留地なり、一般居留地とは、條約全體の國民に居留を許すものにして、專管居留地とは、或一國の國民に專占的居留を許すものなり、居留地に及ぼす其國の主權の範圍は、條約に依りて定むべきものなるを以て、之を槪言すべからずと雖も、通常一般居留地は、單に領土の一部に居留の自由を認めたるに過ぎず、之に反して專管居留地は、警察權は勿論、其他の行政權も、其國領事の權限に屬せしむるを通例となすが如し、清國重慶日本專管居留地取極書第三條に「居留地内の警察權、道路管轄權、其他一切の行政事務は、日本領事官の管理に歸す云々」とあるは其一例なり。
- 英
- Foreign settlement
- 独
- fremde Niederlassung
- 仏
- Colonie étrangère
寄留
(きりう)寄留とは、或人が本籍地以外の地に、或期間居住するを云ふ、明治四年四月四日の布告戸籍法則第一六條に依れば、旅籠屋に限らず、總べて逗留九十日以上は、寄留として屆出で手續をなすべき事を規定せり、而して明治一九年九月内務省令第一九號寄留者屆出方の規定に依れば、他府縣又は他郡區に寄留したる時は、自己の所有地に於ては寄留者より、他人の所有地、又は自己若くは他人の借地借家に於ては、寄留者、及び地主、又は家主、或は其地所其家を管理する者より、十日以内に其地戸長に屆出で、且つ同時に本籍地戸長へ屆書を發送するを要し、又寄留地を去る場合には、自己の所有地に於ては寄留者より、其他に於ては地主、又は家主、或は其地所其家を管理する者より、十日以内に其地の戸長に屆出で、寄留者が本籍地に歸へりたる時は、戸主又は本人より十日以内に、本籍地戸長に屆出でざるべからず、若し正當の理由なくして、以上の屆出を怠りたる場合には、二十錢以上一圓二十錢以下の科料に處せらるべし、次に明治二九年六月六日内務省訓令第四號寄留屆、寄留者復歸屆取扱方に依れば、上記、内務省令の規定に依る「寄留の屆出あるときは、市長(東京、京都大阪の三市に在りては區長、以下同じ)町村長は、戸籍取扱手續第二〇條の手續を了したる後、其屆書に年月日、登記濟の旨を記入し、其職印を押捺し、直に之を寄留者本籍地の市町村長に送附すべし」「出寄留の屆出ある時は、市町村長は、戸籍取扱手續第二三條の手續を了したる後、前項寄留地より發送屆書到達の日數を經たるも、尚到達せざるとは、其寄留書に前項の如く記入捺印し、之を市町村長に屆出づべし」「寄留者本籍に歸へりたる屆出ある時は市、町村長の戸籍取扱手續二〇條の手續を了りたる後、其書に前項の如く記入捺印し、直に之を其元寄留地の市町村長に送附すべし」とあり、而して明治一九年一〇月内務省第二二號、戸籍取扱手續第二〇條には「他府縣、又は他郡、市區、他町村より寄留したるの屆出あるときは、入寄留簿に登記すべし、其登記は凡て戸籍の例に依る」第二三條には「他府縣、又は他郡市區、他町村へ寄留したるの屆書到達したるときは、出寄留薄に列記すべし」其第二四條には「出寄留者復歸したるの屆出あるときは、朱にて記入し、其氏名に朱線を畫すべし」とあり、而して明治三一年五月法律第一二號戸籍法には、寄留に關する事務の監督に就きては、本籍と同じく、戸籍役場の所在地を管轄する區裁判所の一人の判事、又は監督判事の監督に屬するものとす。(戸籍法二二條)
- 英
- Sojourn
- 独
- Aufenthalt
- 仏
- Séjour
寄留者
寄留者とは、本籍地以外の地に居住し、且つ寄留の屆出をなしたる者を云ふ、明治二九年六月六日内務省訓令第四號に寄留者とあるは其用例なり。(前項參照)
- 英
- Sojourner
- 独
- zeitweiser Be-wohner
- 仏
- Habitant temporaire
寄留籍
寄留籍とは、寄留者が、寄留地に於ける戸籍吏の管轄の下にある地位を云ふ。
- 英
- Domicil of sojourn
- 独
- Logierens-registrierung
- 仏
- Domicile du séjour
寄留地
寄留地とは、或人が寄留する地を其人の寄留地と云ふ、戸籍法第六九條に「寄留地嫡出子出生の屆出は、生地又は父母の本籍地、若くは寄留地の戸籍吏に之を爲することを要す」とあるは其用例なり。
- 英
- Place of sojourn
- 独
- ver-weilender Platz
- 仏
- Lieu de séjour
規律
(きりつ)規律とは、なほ準則、又は準規と云ふが如く、人の行爲の規準たる律則を云ふ、普通此語は、一般人民の行爲に對する場合に用ひず、主として一定の服從關係に在る人の行爲を律する場合に用ひらる、例へば軍人の規律、生徙の規律、官吏服務規律の類之なり、現今の法令中規律なる語の用例少なからず、例へば二〇年七月法三九號官吏服務規律の如き之なり。(軍隊内務書、艦船條例等參照)
- 英
- Order
- 独
- Ordnung
- 仏
- Ordre
擬律
(ぎりつ)擬律とは、訴訟法上の用語にして、或る實在の事件に對して、裁判官が法規の解釋適用をなす事を云ふ、刑事訴訟法第二六九條第一〇號に「擬律の錯誤あるときは、裁判は法律に達背したるものとす、法律に違背したる裁判なるときは、上告することを得」とあるは其用例なり。
- 英
- Adoption of norm
- 独
- Normen-anwendung
- 仏
- Adoption des règles
議院
(ぎゐん)議院とは、貴族院、及び衆議院を各別に見たるとき、之を議院と云ふ、即ち帝國議會は、兩院制にして、貴族院、及び衆議院の二者より構成するものなるが、之を各別に見るときとは所謂議院にして、之を合一する時は議會なり、貴衆兩議院併立して、初めて立法機關を構成するものなるが故に、各議院は各別に立法の作用をなす能はざるものとす、兩議院内部の組織は、殆ど同一にして、議長、副議長、書記官長、書記官の外、每議會の開會前に於て、全議員を數郡に分ち、各部に部長ありて部内を統一す、又全院委員、常任委員、及び特別委員なる三種の委員を選定し、議案及事件の審査に任ぜしむ、常任委員は、之を豫算委員、請願委員及び懲罰委員の三種に分ち、豫算委員は專ら統計豫算案の審査に任じ、請願委員は、人民よりする各種の請願事件の審査に任じ、懲罰委員は、議員中に懲罰事犯あるに當り、其事件の審査に任ずるものとす、此外貴族院には、議員の資格の審査に任する資格審査委員なるものあり、以上を議院内部の組織に於ける主要なる關節とす、兩議院の異る點は、□一各議院を組織する議員の性質を異にす、即ち衆議院は一般國民の公選に依りて選擧せられたる議員を以て組織し、議員の任期は總べて四箇年なるに反し、貴議院を組織する議員には三種あり、各其任期を異にす、イ身分に依りて議員たる者、皇族男子の成年に達したる者、及び公、侯の爵位を有する者にして、滿二十五歳に達したる者は、終身貴族院議員たることを得るものとす、ロ選擧に依りて議員たる者、滿二十五歳以上の男子にして、伯、子、男の爵位を有する者は、各其同爵者間の互選に依族院議員たることを得べし、但し其數は各有爵者總數の五分の一を超ゆる事を得ずとの制限存す、此種の議員の任期は七年なり、ハ勅任に依りて議員たる者、此種議員には二種あり、其一は即ち滿三十歳以上の男子にして、國家に勳勞あり、又は學識ある者の勅任せられたる者とす、其任期は終身なり、其二には各府縣にて滿三十歳以上の男子にして、土地又は工業、商業に就き、多額の國税を納むる者十五人の中より互選の結果、當選し勅任せられたる者とす、此種議員の任期は七年にして、其數は有爵議員の數に超ゆるを得ずとの制限あり通常前者を單に勅選議員と稱し、後者を多額納税議員と稱す、□二議長、副議長の選任方法、及び其任期を異にす、即ち貴族院の議長、及び副議長は、其議員中より直に勅任せられ、其任期は七年なるに反し、衆議院の議長、副議長は、先づ其院議員の中より、各三名の候補者を選擧し、其候補者中より勅任せらるるものにして、其任期は四箇年とす、□三其權限に異同あり、即ち貴族院は、天皇の諮詢に應へ、華族の特權に關する條規を議決し、其院の議員の資格、及び選擧に關する爭訟を判決し、及び貴族院令の改正增補の必要を生じたる時は、之を議決する等の特別權限を有するに反し、衆議院は、此種の特別權限を有する事無し、唯其特別權限としては、豫算の先議權を有するのみ、其他の權限は、兩院の間に異るもの無しとす、次に議院は、政府、及び他の議院と交捗往復をなし、議院侮辱事犯あるとき訴訟を提起する事を得るの外、外部に對して其行爲をなす權限を有すること無し、政府、及び他の議院に對して交捗をなす場合には、議長の手を經て之をなすものとす、兩議院相互の關係は、全く同等なるが故に、政府提出の議案を一議院にて否決するときは、之を他の議院に通知し、又は送附するの必要なく、他の議院より送附の議案に同意し、又は可決するときは、直に其議院より上奏すると同時に、これを他の議院に通知することを要し、若し否決したる場合には、唯之を他の議院に通知することを要するのみ、若し他の議院より送附の議案を修正したるときは、直に之を送附し來りたる議院に回付すべきものにして、之を受けたる議院が、其修正に同意するときは、直に上奏の手續をなすと同時に、其旨を修正を加へたる議院に通知することを要す、此場合に、他の修正に同意せざるときは、兩院より各同數の委員を選定して、協議會を開かしむ、此協議會に於て議決したる議案は、最初其議案を政府より受取りたる議院、又は其議案を提出したる議院に於て、先づ之を議し、可決したるときは、直に他の議院に送附す、而して之を受けたる議院に於て、可否の決議をなしたるときに於ける手續は、上述の場合と異ることなし、要するに兩議院の内、何れの一院が否決するも、廢案に歸するは勿論、尚此協議案に對しては、更に修正を加ふることを得ざるものとす。(貴族院令、及び議院法注參照)
- 英
- Parliament
- 独
- Reichstag
- 仏
- Parlement
議院法
(ぎゐんはふ)議院法は、帝國憲法附屬の法律にして、明治二二年二月法律第二號を以て公布せられたるものなり、その規定せる事項の主なるものを擧ぐれば、□一帝國議會の召集、成立及開會に關する手續、□二議長、書記官及經費に關する事項、□三議長、副議長及議員の歳費に關する事項、□四各種の委員に關する事項、□五會議の方法に關する事項、□六停會、閉會に關する事項、□七秘密會議に關する事項、□八豫算案の議定に關する事項、□九國務大臣及政府委員に關する事項、□十議員の質問に關する事項、十一上奏及建議に關する事項、十二兩議院の關係、十三請願手續に關する事項、十四議員と人民及官廳地方會議との關係、十五議員の退職及議員資格の異議に關する事項、十六請暇辭職及補缺に關する事項、十七議院内部の紀律及警察に關する事項、十八議院の懲罰事犯に關する事項等とす。
- 英
- Law of the House
- 独
- Reichs-tagsrecht
- 仏
- Loi du parlement
區
(く)區とは、廣く之を區劃、若くは區域の意に用ふ、□一事物の區劃を云ふことあり、例へば彼の裁判所に、區裁判所、地方裁判所等の別ありて、事物の如何に依りて、其管轄を異にする如き是なり、(裁構法一四、一七條、三八年三月法六七號)、□二國の行政區劃の名稱たることあり、所謂行政區劃とは、各省の所管事務の爲めに、全國を數多の部分に區劃し、之に地方廳を設け、以て統治せしむる區域をいふ、斯かる區域を定むるの理由は、單に距離の上より見るも、中央に居て全國に及ぼすの不便あるのみならず、又地方に依りて、幾分か狀況を異にするを以て、同一の行政事務に於ても、幾分か執行の方法、樣式を異にせざるべからざるに在り、例へば、A軍務行政の爲に、全國を師團、旅團、及び大隊區、又は警備隊區とし、或は數多の徵兵區、徵募區に別つが如き、B土木監督事務の爲に、全國を幾多の土木監督區に、又山林事務の爲に、幾多の大小林區を定むるが如き、C彼の鑛山監督署の配置、税務管理局の配置、郵便電信局、海事局等皆地の區劃に依りて、其管轄範圍を定むるものなり、□三地方自治體の名稱となることあり、例へば市を以て區域とする市、町村を以て區域とする町村、郡府縣を以て其區域とする郡府縣の如き、皆廣義に於ける行政上の區劃たり、彼の沖繩縣區制を執行せらるる土地の區の如きは、其最も顯著なる一例なり、□四自治體内の行政區劃の名稱たることあり、此種の區に二種あり、イ市町村の區域廣濶にして、人口稠密なるときは、處理の便宜上之を數區に分ち、これに區長其他の代理者を置き、その區内に關する市町村事務を處理せしむるものにして、この區は獨立の法人にあらず、ロ市町村の一部に於て有する財産、又は市町村の一部に於て利用する營造物あるとき、之等の事件に關して、市町村會は議決すべき事項の全部、又は一部を議決せしめんが爲に、其一部を區劃し、之に區會、又は區總會を設くるものにして、これ第二種の區なり、其性質は制度上不明とす。(區財産の□二參照、及び市制一一三、一一四條、町村制一一四、一一五條、市制六〇條、町村制六四條)
- 英
- District
- 独
- Bezirk
- 仏
- District
區有財産
(くいふざいさん)□一北海道區制に依りて定められたる區、及び沖繩縣區制に依りて定められたる區(公法人なる地方自治體)の所有する財産を謂ふ、所謂財産には、積極財産と消極財産とありて、例へば土地、家屋、その他債權の如き、權利に屬するものを積極財産と云ひ、負債の如き、義務に屬するものを消極財産と稱す、然れども茲に謂ふ所の區有財産は、その積極財産のみを指す、又區有財産と云へば、區なる公法人が有する財産の謂ひなるが故に、區がその財産の所有權者なることは明かなりとす、(沖繩縣區制、公法人參照)□二市町村内の區の所有する財産を、其區有財産と稱することあり、尢も其區の公法人なりや否は、區有財産と關聯して一疑問なり、イ市町村制第五章の區も、行政區劃に過ぎず、從つて其財産も、區の住民の共有財産に過ぎずとなす説、然れどもこは市制六〇條、町村制六四條の區に就きてのみ謂ひ得べきことにして、已に市町村制に於て、區なるものの財産を所有することあるを規定せるを見るも、その當を得たる解説といふべからず、ロ市町村制第五章の區は、獨立の法人なり、從つて區有財産は、區なる法人の財産なり、彼の市町村制理由書を見るに、一點の疑を容るべき餘地なしとの説、異論者あるも暫らく本説を可とせん、ハ市町村制五章の區は、公法人にあらず、又區有財産は、區住民の共有財産にもあらずして、總べて市町村の財産なりとの説、本説は法律が區の財産を所有することを、特に認めたる立法の旨趣より見るも、正當の見解ならず。(市制一一三條、町村制一一四、一一五條、冲繩區制參照)
- 英
- Property of the district
- 独
- Bezirksvermögen
- 仏
- Propriété du dis-trict
空間
(くうかん)空間とは、長さ、廣さ、厚さの三元なるものを有し、無限に分つことを得、且つ又其延長が、同質の無限の連續なるをいふ、心理學上にては、吾人の視覺、觸覺、筋覺によりて知覺せらるる字宙の事物の廣がり、又は其間の間隙を謂ふと定義するもの、一般に承認せらるるが如し、希臘哲學者の空間に對する見解は種々の相違點あれども、要するに空間は、客觀的實在にして、單に吾人と關係的のものにあらずと云ふ點は、多く一致するものの如し、又近世哲學史上最も有名なるものは、カントの空間に對する見解なり、カントの哲學は、時間空間は、先天的主觀の直觀形式なりといふことを基礎として立てられたる學説なり、即ち空間てふものは、唯吾人の心裏にあるもの夫れが、外界に披陳せられて、吾人の所謂外界世界なるものを成すに過ぎす、實際に於ては、この所謂宇宙に空間なるものの存在するものなるか否かは、吾人には到底不明の事に屬す、例へば赤色の眼鏡によりて物を見るに、物として赤色を帶ばざるなきが如く、吾人は空間といふ自己心内の眼鏡によりて、外界世界を觀、以て外界世界は、空間を有するが如く考ふるに過すと、カントが空間の主觀的形式なることの證明として擧ぐる所の例證は略す。
- 英
- Space
- 独
- Raum
- 仏
- Espace
空想
(くうさう)實際にあり得べからざる性質のものと思考する想像、又は吾人の推理に訴へて、全然認許すべからざる基礎に立てる觀念をいふ、換言すれば實際界に於て、現在は勿論、過去、將來共先には存在し、或は存在したりし、又は存在すべくもあらじと思考せらるる構想、或は如何なる論理の道筋を辿るも、あり得べき事柄として、許容し能はざる結構より成る心意の現象を謂ふ、然れどもかくいへばとて、決して實際に何等の緣もなく、又理論と何等の關係も有せずと云ふにあらず、吾人の精神の内容は、總べて實際より得たる觀念と、理論より得たる觀念とに依りて構成せらるるものにして、物質的方面のエネルギー不滅の法則は、又精神界にも適用せられ、一見根もなき全くの空想と目せらるる如き想念も、實は過去の經驗に依りて得たる槪念に其根を置きて、出來上れるものに過ぎず、されば空想の分子を解剖する時は、或は甲槪念より、或は乙槪念、丙槪念との如く、過去に得られたる槪念の部分々々より、拾ひ集め來れるものなるを認むることを得べし、此意味に於て想像と異ることなく、唯其眞に近き程度の稍異る所に名けられたるに過ぎざる也、かく想像と空想と相去る眞に一步にして、想像と事實との境界も、亦甚だ明かならざるより、一人の事實とする所を、他人之を空想と觀ずること尠からず、例令ばコロンバスの亞米利加發見の如き、氏には亞米利加發見の決して空想にあらざることの確信ありしに拘はらず、當代の人皆これを目して、架空の甚しきものとせるが如し、されば空想と見ゆる事も、一槪に否定すべきにあらず、今日の理論、又は實際にして、曾ては空想として斥けられたるもの尠からず、而して空想の豐富は、實際經驗の豐富に依らざるを得ず、而して藝術に於て、特に空想の切要なるを見る。
- 英
- Fancy
- 独
- Fantasie
- 仏
- Fan-taisie
空取引
(くうとりひき)空取引とは、俗に所謂「相場」にて、實際物品の受渡をなすの意なきに拘らず、賣買約定を爲し、相場の高下を利用し、更に轉賣して利を得んとする取引を云ふ、破産法第一〇五一條第一號に「破産宣告を受けたる債務者が、支拂停止、又は破産宣告の前後を問はず、空取引を爲して、貸方財産を甚しく減少し、若くは過分の債務を負ひたるときは、過怠破産の刑に處せらるるものなり」と、是其用例なり。
- 英
- Gambling in stocks
- 独
- Spielen in Waren
區規則
(くきそく)區規則とは、區に於て發布施行する規則を云ふ、之を發布し得る區(公法人なる地方自治團體)は、沖繩縣區制に依りて成立せる區、及び北海道の區にして、市町村内の區にはこの權なし、北海道、及び沖繩縣の區は、區有財産、及び區の營造物に關する事項、其他、區制中特例を以て規則發布を許されたる事項に就きては、區規則を發布することを得るなり、但し區規則は、法律命令に牴觸することを得ざるものとす、蓋し地方公共團體なるものは、國家の命令に依りて、成立するものなるが故に、團體規則を以て、國家の意思たる國の法令を變ずべからざるは、素より其所と云ふべし。(北海道區制七條、沖繩縣區制七條)
- 英
- District rules
- 独
- Amtsregeln
- 仏
- Règles du district
區行政
(くぎやうせい)區なる地方自治團體が、自治することを許されたる場合に爲す地方行政を謂ふ、例へば北海道廳及沖繩縣の區が、自己の有する自主權により、其區内の住民に對して命令權を行使し、或は區の條例規則を制定施行し、其他事務を施行するが如きを云ふ、其重なるものを揭ぐれば、衞生、土木、救育、教育、及び軍務に關して、或る最小の權限、並に豫算を編制し、區税を徵收するが如き是なり。(北海道及沖繩縣區制第二章參照)
- 英
- District administration
- 独
- Amtsverwaltung
- 仏
- Administration du district
區會
(くくわい)區の議決を區會と云ふ、□一北海道、又は沖繩縣に於ける區(自治體)の議決機關は、第一義の區會なり、所謂議決機關とは、區の意思を決定する機關の意味なり、蓋し公共團體は、吾人の如く自然人にあらざるにより、其意思を構成する爲めに、機關の介在を必要とするものなり、斯かる機關は、其區會議員を以て構成せられ、議決の方法に依り、其意思を決定し、以て執行機關たる區長、及び區參事會をして、之を現實せしむるものなり、□二市制、又は町村制に依り、市町村内の一區にして、特別に財産を所有し、若くは營造物を設け、其區限り特に其費用を負擔する場合は(所謂市町村制第五章の區)之等の事務を議決する爲めに、機關を設くることを得、市町村制に所謂區會及區總會は即ち之なり、而して其區會及區總會なるものが、區の機關なるか、又は市町村の機關なるかは疑問の存する所なり。(區有財産の説明□二並に北海道區制及沖繩縣區制二章參照)
- 英
- District assembly
- 独
- Amtsver-sammlung
- 仏
- Assemblée du district
區會議員
區會議員とは、區會なる議決機關を組織する議員を謂ふ、議員とは、區民中より法定の資格ある自然人が、議決機關構成の一員として、法定の方法により公選せられたるものを稱す、今北海道及沖繩縣に於ける區會議員の選擧權を擧ぐれば、イ區公民は總べて選擧權を有し、等級選擧の方法により、選擧人は之を三級に區別す、即ち區税納額最も多き者を合せて、選擧人總員の納むる總額の三分の一に當るべき者を一級選擧人となし、一級選擧人を除き、其他納額多き者を合せて、同じく三分の一に當る者を二級選擧人と爲し、他を三級選擧人となす、而して選擧人は、每級各別に等しき數の議員を選擧するもの也、ロ被選擧資格は、選擧人資格と等し、但し官吏、公職に在るもののみに、此權を停止せらる、次に市町村内の區會議員は、市町村會議員と等しく、之が準用せらるるもの也。(市會議員の部、及び北海道區制三八條乃至五八條、沖繩縣區制二八條乃至五九條參照)
- 英
- Member of the district as-sembly
- 独
- Amtsverordneter
- 仏
- Mem-bre du district
區債
(くさい)區が其負債を償還する爲め、又は天災事變等止むことを得ざる支出、若くは區の永久の利益となるべき支出を要するに當り、通常の方法に依りて歳入を增加するときは、區住民の負擔に堪へざる場合に限りて起すことを得る、區の公債を云ふ、所謂公債とは、國家、又は公共團體の負債を稱するなり。(市制一〇六條、町村制一〇六條比較參照)
- 英
- District debt
- 独
- Amtsschuld
- 仏
- Dette du district
區裁判所
(くさいばんしよ)司法裁判所の最下級に位する單獨制の裁判所にして、單獨判事之が裁判を爲すものとす、區裁判所の權限の重なるものを擧ぐれば、民事に就きては債格百圓を超過せざる金額、又は物の請求に關する訴、其他占有に關する訴等にして、刑事に就きては、違警罪、竊盜罪、及び罰金二百圓以下を附加せらるべき、又は附加せられざる六ケ月以下の禁錮、並に本刑二百圓を超過せざる罰金に該る罪等に就きて、其管轄を有す。(裁構法一四條乃至一七條、三八年三月法六七號參照)
- 英
- District court
- 独
- Amts-gericht
- 仏
- Tribunal du district
具狀
(ぐじやう)具狀とは、具申陳述の意にして、私人より官廳へ、又は下級官廳より上級官廳に對し、或る事件に關する事態狀情を陳具開申するを云ふなり。
- 英
- Circumstantial report
- 独
- Zu-standsbericht
- 仏
- Rapport des circon-stances
具體
(ぐたい)總べて體を具ふる各個の現象、若くは或る現象の綜合を、具體、或は具象といひ、抽象の反對に用ひらる、而して體を具ふる現象とは、其體の大小、長短、廣狹、單複を問はず、木石の一個も體を具ふる現象にして、此木石と山川との複合より成る景色も、將た又人類の集合より成る社會も、等しく體を具ふる現象と謂ふべし、之を要するに、時間、空間なる二大形式によりて、吾人に認めらるる現象をいふ、具體的とは、叙上の意義を有する具體の形容詞にして、抽象的とは正に其反語なり。
- 英
- Concrete
- 独
- Concret
- 仏
- Concret
區條例
(くでうれい)普通市町村、及び區等にて發布施行する命令法規は、條例及規則の形式を以てせらる、其條例、及び規則は、實質並に許可の手續に於て異るものなり、イ實質上に於ては、條例は主として命令權の作用を包含し、規則は斯かる強制的性質を帶びざるを普通とす、ロ許可の手續に於ける差異は、條例は、内務大臣の許可を要するも、規則は地方參事會の許可を經るに止まる、蓋し條例は、主として住民の權利義務に關することなければなり、但し規則條例間には、效力上の差異存することなし、以て區規則と區條例との差異を知るべし。(區規則參照)
- 英
- District regulation
- 独
- Amts-regulierung
- 仏
- Règles du district
國
(くに)國には二義あり、□一國家の領土を國と稱することあり、大日本帝國は、萬世一系の大皇之を統治すといふ用例の如き是なり、(憲法一條)□二國家と同意義に用ふることあり、國の元首と云ふが如し、所謂國家とは、實在の現象としては國民、及び領土を唯一の權力の下に統治する單一體を謂ふ、彼の國家を一の有機體なりと云ふは、此實在の現象を、他の有機體と比較解説したるものなり、法律上の觀念としては、素より此實在の槪念を是認し、或はイ國家を統治權の目的物となし(天皇主體説)ロ或は統治の關係なりとなし(國家狀態説)ハ或は國家を統治權の主體なりとなす(國家人格説)以上の各説、何れも眞理を包含するも、最も正當なる槪念として認めらるべき説は、國家を領土團體と解し、集合人格なりといふ説ならんか。(國家の部參照)
- 英
- State
- 独
- Staat
- 仏
- État
國の行政
(くにのぎやうせい)國家統治權の作用は、四方面に現はる、所謂立法、司法、行政、及び政府行爲、或は大權作用と謂ふは、此四方面を槪稱する名なり、行政とは、其本來の性質よりいふときは、法規の範圍内に於て實在の事件に就き、國家の目的を達するの作用を云ふなり、行政作用は、其行はる機關の如何によりて、自治行政、及び國の行政と區別せらる、國の行政とは、國家が行政機關たる官廳により、直接に行ふ所の行政作用を謂ふ、其之を行ふ組織に至りては、中央組織、及び地方組織の區別あり、所謂中央組織とは、事務分配制を云ふものにして、全國を數多の事務に種別し、この種別に依りて、全國を通じて同一なる機關に分掌せしむる制度なり、地方組織とは、管轄區域制を云ふものにして、全國を多數の管轄區域に分劃し、事務の種別に據らず、單に此區域によりて機關の權限を定め、其管内の事務を處理せしむるものなり、但し此類別を、彼の官治行政(國の行政)と、自治行政の區別とに混同すべからず、蓋し地方組織による地方官廳の分權と、自治行政との異る點は、一は自己の事務として行政をなすも、他は彼に於て、自己の事務として處理するにあらずして、單に委任の形式に依るに過ぎざるなり。(分權及自治の部參照)
- 英
- State administration
- 独
- Staatsverwaltung
- 仏
- Administration de l'Etat
國の警察
(くにのけいさつ)國の警察官廳の權限に屬する警察事務を國の警察と云ひ、以て專ら市町村の利益に關する警察、即ち地方警察と區別す、然れども國の警察と、地方警察との區別を、彼の國の行政と、自治行政との區別と混同すべからず、地方警察と雖も、又國の行政に屬し、唯地方團體の機關に委任して行はしむるに過ぎざる也、此區別は、訴願と行政訴訟との場合に於て實益あり、地方警察に關する事項に就きては、訴願を提起するを得れども、行政訴訟を提起することを得ざるなり、最も現今の實際に於ては、警察事務にして、地方團體の機關に委任せられたるの實例なし、故に此區別の實益は多からざると同時に、警察と云へば、必ず國の警察なりと速了するも、敢て誤謬と云ふ能はず。(市制七四條、町村制九六條)
- 英
- State police
- 独
- Staatspolizei
- 仏
- Police de l'Etat
區別法説
(くべつはふせつ)一名を法則類別説と云ひ、通常國際私法の始祖と稱せらるる、伊太利の大法學者バルトルス氏に依りて唱導せられたるものなり、曰く人に關する法律の規定は、國境外に於ても、尚その人に追隨するを以て、其人の本國法を適用し、主として物に關する法律の規定は、物の所在地法を適用すと云ふに在り、即ち法律の種類に由りて區別し、何れの國法を適用すべきかを定めんとする學説なり、本説は、十六世紀に至りては、佛國に盛に研究せられ、ダルヂャントレー、ヂユムーラン等は、バルトルス氏の説を承繼して、大に之を進步せしめたり、降りて十八世紀の後半に於て有名なりし、ボチエに傳はり、ボチエ更に佛蘭西民法の編纂者に傳へ、十八世紀の終に編纂せられ、十九世紀の劈頭に於て發布せらし那翁法典は、其前加篇三條に、從來の學説を結合して、左の三個の原則として揭げたり、□一警察及安寧の法律は、凡そ領地内に住する各人を羈束す、□二不動産は、外國人の占有するものと雖も、佛蘭西の法律に依る、□三人の身分、及び能力は、外國に居住する佛蘭西人をも支配す、茲に於て乎、從來の住所地方主義の屬人法たりし區別法説は、變じて本國法主義の屬人法となれり、これ法典統一の偶然の結果なりと云ふべし。
斯くの如く、佛法典編纂と同時に、各地の法律は統一せられ、今や各地の慣習法の異同を前提とする區別法説は、其根據を失ひ、新に國際私法の沿革として、多大の趣味を殘すに過きざるに至れり。(國際私法の部參照)
組合
(くみあひ)社會の複雜なる、事業の繁多なる、吾人は單獨の力を以て、到底各種の事業を完成することを得ざるに至れり、爰に於て同志相集まり、有志相合して一の團體を組織するの必要生ず、此必要に應じて生じたる團體には、會社あり、組合あり、或は其他の團體あり、皆夫れ夫れの需要に應じ、以て共同の事業を經營す、所謂組合とは、各當事者が互に出資をなし、以て共同の事業を營むことを約する契約なり、抑も組合契約なるものは、各當事者が出資を爲すこと、共同の事業を爲すことの二要件に就きて一致せるときに、成立する諾成契約の一種なり、諾成契約の一種なるが故に、彼の會社の如く、組合なるものは、決して當事者を離れて、別箇の法律上の人格を有するものにあらず、何所までも契約關係に過ぎずして、法人にあらざるなり。(民六六七條乃至六八八條參照)
- 英
- Partnership
- 独
- Genossenschaft, verein
- 仏
- Societé
組合員
組合員とは、組合契約の各當事者を云ふ、但し現行商法は、所謂匿名組合契約の一方の當事者たる營業者を組合員とは云はずして、常に營業と者稱す。(民六六七條乃至六八八條、及び商二九八、二九九條)
- 英
- Member of partnership
- 独
- Mitglied
- 仏
- Associé
組合員名簿
組合員名簿とは、組合員の氏名、住所等を記載せる帳簿を云ふ。
- 英
- Register of the members of partnership
- 独
- Mitgliedernsverzeichnisz
- 仏
- Liste des membre de la société
組合規約
(くみあひきやく)組合の設立、組合員相互の關係、例へば出資の割合、利益、損失分配の割合、業務執行の關係、其他組合の事業等に關し、組合員間に約束せられたる組合の規則を組合規約と云ふ、民法第六七二條に「組合契約云々」とあるは、上説組合規約のことを指せるなり。(民六七八、六八七條)
- 英
- Articles of association
- 独
- Genossenschaftsreglement
- 仏
- Articles de la société
組合契約
組合契約とは、二人以上の當事者が出資を爲して、共同の事業を營むことを約する契約を云ふ、彼の組合規約と異る所は、組合規約は、組合契約の結果生じたる組合の規則にして、組合契約其ものにあらず、但し組合規約を記載したる書面と異るは言を要せず、之を會社の關係と比較すれば、組合は會社の如く、組合規約は定款の如く、組合契約は會社設立行爲と相似たるものなり。(會社と組合との異同は、組合の説明を參照すべし)
- 英
- Partnership contract
- 独
- Genossenschaftsvertrag
- 仏
- Contrat de société
組合財産
(くみあひざひさん)組合に屬する財産を組合財産と云ふ、尤も組合は人格なきが故に、組合財産は組合に屬する財産と云ふも、決して組合自身が、權利主體となるにあらず、皆組合員の共有財産に過ぎず、唯組合の目的たる共同事業遂行の爲めに、必要なる財産なるを以て、法律は組合員の固有財産と、相殺すべからざることを命じ、又組合員が、其持分を處分したるときも、之を組合と取引をなしたる第三者に對抗するを得ざらしめ、以て組合に屬する財産たる面目を維持したり。(民六七六條乃至六七八條)
- 英
- Partnership property
- 独
- Vereinsvermögen
- 仏
- Propriété de la société
郡
(ぐん)市町村の直近上級に位する地方公共團體を郡と稱す、郡は去る明治二三年初めて郡制の施行せらるるまでは、一の行政區劃たるに過ぎざりしも、郡制施行に至り、之を一の公法人となし、三二年改正現行郡制は「郡は法人とし」と明定するに至れり、之を外國の制度に見るに、佛蘭西に於ては、縣、郡、鄕、及び町村の地方區劃存すと雖も、自治團體たるものは、其中縣及市町村の二あるに過ぎず、又英國に於ては、縣を自治團體の最も大なるものとなし、其下に町村救貧組合、衞生組合あるのみ、故に英吉利に於ては、郡に相當する自治團體なし、僅に普魯西に於て、州、郡、及び市町村を自治團體となす、(なほ普國は、縣を加へて四の行政區劃存する也)以上の諸國と比較するに、我國は、自治團體の數多きに過ぐる嫌あり、素より或る團體を自治せしむべきかは、各其國情如何に依るべきなれども、從來我國に於ては、郡の自治團體たりし歷史存せず、且つ郡の事業として、特別に經營せざるべからざるものなし、此點よりして、郡制廢止の説世に高きは宜なりと謂ふべし。
- 英
- County
- 独
- Kreis
- 仏
- Comté
郡有財産
郡有財産とは、郡なる地方自治團體の權利に屬する財産を云ふ。(郡制參照)
- 英
- Property of the county
- 独
- Kreisvermögen
- 仏
- Propriété du comté
郡委員
(ぐんいいん)郡行政を掌る委員を云ひ、郡委員の組織、及び其選擧方法、竝に任期に關する事項は、郡長の權限と定められたり、郡委員は、一種の委員なるが故に、彼の吏員(公吏)又は官吏と異り、任命の方法に依らず、選出の方法に依りて命ぜらるるものとす、郡委員の權限は、郡長の指揮監督の下に、郡有財産、若くは營造物を管理し、其他行政事務の一部を調査し、又は一時の委託により、事務を處辨するものなり。(郡制六五、七八條)
- 英
- Member of the county committee
- 独
- Landkreiskommissariat
- 仏
- Membre du comité
軍港
(ぐんかう)海軍軍事上の需要の爲め、一定の區域を劃して指定せる港を云ふ、橫須賀軍港、呉軍港、佐世保軍港、舞鶴軍港、及び室蘭軍港之なり。
- 英
- Naval station
- 独
- Marinestation
- 仏
- Place maritime
軍港規則
軍港規則なるものは、軍港要港境内に所在の人民、及び出入する船舶の從ふべき準則を定めたるものにして、違背したる者は、十一日以上一年以下の重禁錮、又は二圓以上五十圓以下の罰金に處せらるべき罰則を附しあるものなり。(二三年法二號、同年法八三號、及び三三年四月海軍省令七號軍港要港規則參照)
- 英
- Law of the naval station
- 独
- Marinestationsregel
- 仏
- Règles de la place maritime
軍艦
(ぐんかん)軍艦と稱するは、海軍旗章條例に依り、旗流を揚ぐる艦船艇の一、又は二以上を云ふ、上記の定義は、軍艦を其特權上より觀察したるものにして、戰鬪艦、巡洋艦、砲艦、海防艦、水雷母艦、哨艇、水雷艇、及び附屬の小蒸氣船までを指すものなり、然れども作戰機關としての軍艦は、其範圍稍狹く、實際戰鬪に堪ゆる武裝を要す、茲に於てか、軍艦旗を揭揚するも、商船を軍艦に急變することを得ざるなり、一七八二年に起れる丁抹船サンヂャン號事件に關し、丁抹政府が「軍艦に缺くべからざるる唯一の要素は軍艦旗なり」との主張に對し、和蘭政府の意見は「單に旗章のみを以て、軍艦と商船とを判別することを得ず」といひたるは正當なり、故に艦船が、其屬する本國の習慣に從ひ、軍旗を揭ぐるの許可を得るときは、軍艦と見ること、國際法の實際に協ふものなりと云ふは、彼の露國の如き、義勇艦隊を以て、軍艦に代用せんとする國にとりては、好都合なるべきも、正當なりと謂ふべからず、要は戰鬪に堪へ得る武裝の存否如何にあり。(日本軍艦外務令八條)
- 英
- Man-of-war
- 独
- Kriegsschiff
- 仏
- Vaisseau de querre
軍紀
(ぐんき)軍隊の紀律を軍紀と云ふ、彼の通俗に軍紀風紀と續用するものは之なり。(軍隊内務書、海軍艦船條例六條參照)
- 英
- Military discipline
- 独
- Militär-disziplin
- 仏
- Discipline militaire
軍機
(ぐんき)軍事に係る機務を軍機と云ふことあり、内閣官制第七條に「軍機」とあるは其用例なり、又軍情機密を意味することあり、軍機保護法中この字義にて用ひらる。(三二年法一〇四號及刑一三一條)
- 英
- Military secret
- 独
- Kriegs-geheimnisz
- 仏
- Secret militaire
軍機保護法
軍機保護法とは、軍情機密に關する諸種の事項を發表、漏泄したる者を罰する法則にして、依つて以て軍機を保護するの規則なり、本法に依りて罰せらるべきものは、軍事上の秘密事項、及び圖畫物體を漏洩交付し、又は公表し、知情收集、其他軍港、要港、要塞等を測量、模寫、撮影したる者にして、重き者は有期徒刑に、輕き者は一ケ月以上の禁錮、或は二圓以上の罰金に處せらるるものなり。(三二年七月法一〇四號、及び三四年六月勅一三二號參照)
- 英
- Protection law of the mili-tary secret
- 独
- Schützgesetz des Mili-tärgeheimniszes
- 仏
- Loi de la protection du secret militaire
郡行政
(ぐんぎやうせい)郡なる地方自治團體が取扱ふ公共事務を稱して郡行政と云ふ、其公共事務の範圍は、法律命令の規定によりて定まり、原則上郡全體の利害に關係すべきものなるも、必ずしも然るを要せず、其一部の利益に關する事業も、郡の事業として爲すことあり、或は郡長が郡内に行ふ國の行政事務を郡行政と稱することあり、然れども此用法は、正當と云ふこと難し。(郡制二、八八條)
- 英
- County administration
- 独
- Kreisverwaltung
- 仏
- Administration du comté
郡會
(ぐんくわい)郡會は、郡の議決機關なり、郡會の權限は、明文を以て法定せられ、市町村會と異り、制限以外の總べての事務を議決する權能なし、又郡會は、其權限に屬する事項を郡參事會に委任することを得。(尚郡制二九、三〇條參照)
- 英
- County assembly
- 独
- Kreistag
- 仏
- Assemblée du comté
郡會議員
郡會議員とは、郡會を組織する議員を云ふ、議員の數は、十五人乃至三十人にして、各郡の議員定數、及び各選擧區議員の定數は、郡會の議決と府縣知事の許可とを以て、郡長之を定むるものなり、又選出の方法は、直接選擧に依るものと定められたり、現今の郡制によりて、郡會議員選擧人の資格要件を述ぶるれば、イ郡内の町村公民にして、町村會議員の選擧權を有すこと、ロ郡内に於て、一年以來直接國税年額三圓以上を納むること、又郡會議員の被選擧資格要件を擧ぐれば、あ郡内の町村公民にして郡會議員選擧權を有すること、い一年以來直接國税年額五圓以上を納むること、う官吏有給吏員等の職にあるものならざること之なり。(郡制四條乃至二八條參照)
- 英
- Member of a county assembly
- 独
- Kreisverordneter
- 仏
- Membre de l'assemblée du comté
訓告
(くんこく)訓示戒告の意なり、單に戒告といふも同義なり。(戒告の部參照)
- 英
- Advice
- 独
- Rat
- 仏
- Avis
訓示
(くんし)上級官吏が、下級官吏に向つて下す職務上の注意を謂ふ、尚訓諭示達と云はんが如し。(訓令權參照)
- 英
- Instruction
- 独
- Unterweisung
- 仏
- Instruction
軍事行政
(ぐんじぎやうせい)軍備の爲めにする國家の行政事務なり、軍事行政は、之を憲法上天皇大權に屬する陸海軍の統帥、即ち軍隊の指揮命令權と區別せざるべからず、何となれば兵馬の大權は、天皇が行政機關を經由せず、親裁して行はるる所にして、之を行政と云ふべからざるも、所謂軍事行政は、行政機關が、其職權として行ふ所にして、外部に對して法を執行するもの也、軍事行政事務を分ちて、□一兵役に關する事務、即ち國家の戰鬪力の組織に關する事務と、□二軍事負擔に關する事務、即ち軍事に關する財産上の負擔に就きての事務との二に區別す。(兵役義務、軍事負擔の部參照)
- 英
- War administration
- 独
- Kriegsverwaltung
- 仏
- Administration militaire
軍事公債
(ぐんじこうさい)國家有事の時に當り、軍事上の必要の爲め、軍事公債條例に基きて募集せる公債を軍事公債と云ふ、軍事公債は、金額五十萬圓を限り、漸次募集するものにして、此公債の元金は、五箇年据置、其翌年より向ふ五十箇年以内に償還すべきものなり、其利率は、年六分以下とし、軍事公債の募集に應じたる者は、一回拂込の上假公債證を受け取り、金額拂込の後に於て、本公債證書を受領するものなり。(二七年勅令一四四號、同年八月大藏省令一五號)
- 英
- War loan
- 独
- Kriegsanleihe
- 仏
- Prêt de guerre
軍事裁判所
(ぐんじさいばんじよ)陸海軍の軍法會議を云ふ、軍事裁判所は、□一軍人、即ち將校、同相等官、下士卒、軍屬、及び陸海軍所屬の諸生徒、(陸海軍治罪法三條、陸軍刑法三、九條、海軍刑法五〇、五一條)□二歸休兵、及び豫後備の軍籍に在るものにして、召集中のもの、(陸治七條、海治七條)、□三俘虜降人、(陸治二五條、海治三〇條)□四海軍諸用に供する船舶に在りて、重罪、輕罪を犯したる常人、(陸海軍交渉處分法三條)等の犯罪の審判を爲すの權限を有す。
- 英
- Martial court
- 独
- Militär-gericht
- 仏
- Tribunal de guerre
軍事參議院條例
(ぐんじさんぎゐんでうれい)軍事に關する天皇統帥の大權を行ふが爲めの諮謀の府を軍事參議院と云ふ、此組織、及び權限を定めたるものが、軍事參議院條例なり、即ち軍事に關する機務を參議せしむる爲めに、軍事參議官を帷幄に置き、陸海軍大臣、參謀總長、海軍々令部長、教育總監を以て組織し、凡そ事の陸海軍事に關するものは、各參議會員をして其議に參與せしめ、以て軍務に關する諮詢顧問の府たらしめたり。(二六年勅三五號參照)
- 英
- Regulation of the military Counselors
- 独
- Regel von den Militärratsherren
- 仏
- Règles des conseils militaires
軍事司法
(ぐんじしはふ)軍法會議權限に屬する司法事務を軍事司法と云ふ。(二二年法二五號、及び軍事裁判所の部參照)
- 英
- Military Judicature
- 独
- Kriegsjustiz
- 仏
- Juridiction militaire
軍事負擔
(ぐんじふたん)軍事負擔とは、軍事上の目的の爲めに、財産に關して命ぜられたる公法上の義務なり、□一軍事負擔は、公法上の義務なるが故に、縱令私法の範圍に於ける義務に類似すとも、之を契約等法律行爲に基く義務と混ずべかず、例へば徵發の如きは、物品を軍隊に供給する契約に類すと雖も、一は國家の命令權に基くものなるが故に、私法の原則に依りて支配せらるべきものにあらざるなり、□二軍事負擔は、財産上の義務なるが故に、縱令勞務の給付を目的とする場合と雖も、兵役義務の如き、軍隊の組織に入り、一身を捧げて服役すべきものと異る、又要塞地帶法に於ける禁止制限の如きは、彼の地役に類すと雖も、これ又私法上の義務にあらざるが故に、之を區別すべきは勿論なりとす、今軍事負擔の重なる類別を擧ぐれば、イ徵發(戰時事變に際し、陸海軍を動かすに當り、又は平時に於て、演習行軍を爲す場合に必要なる物件、勞力を徵收する處分)ロ軍事上の禁止制限(要塞地帶の如し)等なり。(一五年大政官布告一三號徵發令、三二年法一〇五號要塞地帶法參照)
- 英
- Military charge
- 独
- Kriegs-last
- 仏
- Charge militaire
軍人恩給法
(ぐんじんおんきうはふ)軍人は、一身を捧げて、以て國難に當るの職にあるものなるが故に、勢ひ人生の必要なる老後の計畫を爲すこと能はず、蓋し老後の計畫を爲すと、專ら軍務に從事するとは、到底兩立することは望み得べからざるを以て、此理由に基き、國家は軍人關係消滅後と雖も、その生活費を給與し、在職中後顧の憂なからしむるを計るなり、而して其終身給與する所のものを恩給と名づく、軍人恩給法は、如何なる者が恩給を與へらるるか、又は恩給の額、其他の要件等に就きて規定せられたる規則なり、陸海軍人が受くべき恩給は、退職恩給、免除恩給、增加恩給、賑恤金、給助金、扶助料の六種にして、退職恩給は、準士官以上の者が、退職の原因(十一年以上定役に服し滿期となりたるとき、戰役、又は公務の爲め傷痍を受け不具となり、退職したる者の如き)に基き受くる恩給にして、免除恩給とは、下士以下の者が、現役十一年以上服役滿期の場合等に受くるもの、增加恩給は、主として一等傷によりて、不具となりたる者が受くるものなり、其他賑恤金、給助金、扶助料は、一時限り之を給せらるるものとす。(二三年法律四五號參照)
- 英
- Pension regulation of the soldiers
- 独
- Militärpensionsgesetz
- 仏
- Règles de la pension des soldats
軍法人給恩施行細則
恩給法施行細則とは、軍人恩給法に規定せられたる法則を、一定の時期、及び場所に於て實施するの手續を定むる一の執行命令なり。(二三年閣令五號、三五年六月閣令二號、二三年陸軍省令二二號)
君主
(くんしゆ)君主とは、襲世的、或は無限なる一國の元首を謂ふ、國法學の理論に依るときは、國家は、國民を包括する最大公共團體にして、自ら其意思を定め、自ら之を實行するものなり、故に之を以て一の人的存在者と云ふ、而して元首は、即ち之が神識たる地位に在るもの也、換言すれば、國の首腦の地位に在るものは國の元首にして、國家の元首中、襲世的、又は無限なるものを君主と云ふ、憲法第四條に「天皇は、國の元首にして」とあり、又第一條に「大日本帝國は、萬世一系の天皇之を統治す」とあるを綜合すれば、我國の天皇は、所謂君主にして、我國の政體は、又君主政體なること明かなるべし、君主に選立と世襲とあり、選立制度は近來廢れたり、蓋し君主崩じて、新君主を選置せんとする等は、國家擾亂の基なれば也、世襲制度は、皇子孫之を承繼するの制度にして、我法も亦此制度に依る、次に君主の稱號に帝號と王號とあり、ブルンチユリー曰く「世界に君主たるを帝と云ひ、世界の一部に君主たるを王と云ふ」と、以て其區別を知るべし、彼の秦の始皇が自ら帝と稱し、朕と呼びたるも、所謂六王畢四海一なる觀念を表したるものにして、其考慮一に出でたるを見るべし。(憲法一條乃至四條、及び典範參照)
- 英
- Monarch
- 独
- Monarch
- 仏
- Mo-narque
軍需
(ぐんじゆ)軍隊、軍艦等、軍の維持行動に要する物件の需用を云ふ、漫然軍事上の需用と云ふも同意義なり。(一五年太政官布告一三號參照)
- 英
- Military demand
- 独
- Kriegsbedarf
- 仏
- Demande militaire
君主國
(くんしゆこく)君主政體の國家を君主國と云ふ、(君主參照)抑も君主は、家長の大なるもの、國家は、家族を持筆大書したるものの如し、君主が家長の如く、一國を統帥する政體の國を稱して君主國と云ふ、君主國にも、立憲政體なるあり、君主が國家の根本法たる憲法を制定し、其憲法の條規によりて統治する國家を立憲君主政體と云ふ、專制政體なるあり、立憲政體に對して、何等の法序を定めずして統治する國家を專制政體と云ふ、而して以上の君主政體に反する政體を共和制と云ひ、共和政體の國家を稱して共和國と云ふ。
- 英
- Monarchy
- 独
- Monarchie
- 仏
- Monarquie
君主主權説
(くんしゆしゆけんせつ)國家主權説に對して、主權は君主に存すと唱ふる學説を君主主權説と云ふ、所謂國家主權説とは、國家を一の人的存在と認め、其國家が統治權の主體なりと説くものにして、本説に對して國家の人格を否認し、國家を統治權の客體目的物に過ぎずと看、統治權の主體は君主にあり、君主は統治權の主體なりと説く國家客體説を、君主主權説と云ふ、故に君主主權説に從へば「朕は國家なり」との極説生ず、又「天皇は死せず」との擬制を用ひざるべからず。(國家及國の部參照)
- 英
- Souvereignity theory
- 独
- Sonveränitätstheorie
- 仏
- Théorie de sou-veraineté
軍事用廳舍
(ぐんじようちやうしや)軍事上の目的に供する事務所、宿舍の類を謂ふ。(一五年布告四三號一五條以下二二條參照)
- 英
- Buildings for military ser-vice
- 独
- Kriegsgebäude
- 仏
- Etablisse-ment militaire
郡制
(ぐんせい)郡制とは、郡の要素(自治行政、郡區域、郡住民)郡の機關、(郡會、郡參事會、郡長、郡吏)郡の事務、郡の財政、及び郡の監督等に就きて定められたる規則なり、其詳細は、各項に就きて參照すべし。(三二年法六〇號參照)
- 英
- County organization
- 独
- Kreis-verfassung
- 仏
- Organisation du comté
軍政
(ぐんせい)軍政なる語は、或は□一軍事行政の略語として用ひられ、(軍事行政參照)□二或は天皇の統帥權に關する大權作用に就きて用ひらる。(憲法一二條)
- 英
- War administration
- 独
- Kreigs-verwaltung
- 仏
- Administration militaire
軍籍
(ぐんせき)軍人たる地位を軍籍と云ふ、即ち現役、豫備、後備の將校、同相當官、准士官、下士兵卒、雜卒の身分を軍人と云ひ、軍人たる地位を軍籍とは云ふなり、或は軍籍を兵籍の意味に用ふることあり、所謂兵籍とは、軍人たるの地位其他を登記せるものにして、恰も戸籍と云ひたらんが如きものなり。(三四年一〇月陸軍省令一四號、二九年七月陸軍省令一六號、民訴一一、三〇二條參照)
- 英
- Position in military service
- 独
- Militärstand
- 仏
- Place en service mili-taire
郡村宅地
(ぐんそんたくち)地租條例に依る有租地第一類に屬する地目の名稱なり、元來郡村宅地とか、市街宅地とか云ふは、名詮自稱の如く、郡村に存する宅地、市に存する宅地の意味にして、等しく有租地に於ても、田、畑、宅地、其他に依りて地價を異にし、從つて納税額に異同を生ずるなり。(地租條例一條以下參照)
- 英
- Home lot in counties and villages
- 独
- Bauplätze in den Kreisen und Dörfern
- 仏
- Partie des comtés et des villages
郡長
(ぐんちやう)郡長は、歐米各國地方公共團體の如く、郡公民の選出せるものにあらずして、我現行法に於て官吏なり、而して郡長は、郡の執行機關として郡を統轄し、郡務を執行し、郡を代表するものなり、尚郡長は、郡の行政執行機關としての外、國家の官吏として事務を執ることあり、之を要するに、我國に於ける郡長は、郡を統轄し、其郡を代表し、郡會、又は郡參事會の議決を執行するの外、尚郡會、又は郡參事會の權限に屬するもの、其他總べて郡行政に關しては、專決處分をなし得るものなり。(郡制二三、三七、三九、五九、六六、七一、六九、七〇、七二條以下七四條參照)
- 英
- Chief official of the county
- 独
- Landrat
- 仏
- Chef du comté
軍法會議
(ぐんぱふくわいぎ)特別裁判所の一種にして、軍人、軍屬の犯罪の審判、及び違警罪の正式裁判をなす所のものを云ふ。(陸治、海治及び一九年五月勅令五五號、二二年一〇月法二五號、軍事裁判所の説明參照)
- 英
- Martial court
- 独
- Kriegs-gericht
- 仏
- Cour martial
軍費賠償金
(ぐんひばいしやうきん)軍費賠償金とは、國際戰爭、又は二國以上に渉る事變(例へば北清事變の如き)に於て、一國が、他國の費したる軍事上の費用を賠償する爲めに支拂ふ金錢を云ふ。
- 英
- Compensation for the war ex-pense
- 独
- Ersatzgeld für die Kriegskosten
- 仏
- Compensation des depens militaires
郡部議員
(ぐんぶぎいん)市部議員に對し、府縣議員中、其府縣の郡部より選出せる議員を郡部議員と云ふ、斯くの如く府縣を市部郡部に分つは、特別事情ある府縣に限りて之を許す、蓋し市部と郡部とは、經濟上事情を異にし、共通經濟を以てするときは、不公平なる結果を生ずるを以てなり、然り而して市部會、郡部會、市部參事會、郡部參事會は、各その市、又は郡に關する事件のみを議決するを以て原則となす、されど市部會、郡部會を以て一の府縣會となすものなれば、その一解散せらるるときは、全部府縣會議員たるの職を失ふものとす、現今此特別組織を有する府縣は、東京府、大阪府、京都府、神奈川、兵庫、愛知、廣島の四縣なり。(府縣制一四〇條、三二年勅二八五號、同年内務省令二二號參照)
- 英
- Member from county
- 独
- Mitglied vom Kreise
- 仏
- Membre de la chambre du comté
郡部參事會
(ぐんぶさんじくわい)郡部名譽職參事會員八名を以て組織せられ、市部參事會に對するの名稱なり、共に府縣參事會の一なるも、郡市の經濟事情の特に異る府縣に限り、勅令の定むる所により、府縣經濟を市部郡部に分ちて、其郡部に關する事件のみを議決するものなり。(三二年勅二八五號、及び郡部議員の部參照)
- 英
- Privy council of the county
- 独
- Kreisausschusz
- 仏
- Conseil du comté
軍用電信法
(ぐんようでんしんはふ)軍用電信に二種あり、□一固定軍用電信は、要塞、衞戌、軍港、要港、海岸、望樓、監視哨所、其他局地の防禦に必要なる地點間の通信の爲に建設するものにして、□二遊動軍用電信とは、事變、又は演習に際し、臨時其必要ある各地に建設するものなり、何れも電信機械を以て、軍事に關する通信を爲すものとす、而して之等の電信架設に關して、私設電信、及び私設の建造物を利用することを得る旨を規定せるものが、軍用電信法にして、尚軍用電信を毀損せしもの等に關する罰則をも附加せり。(二七年六月法五號參照)
- 英
- Telegram regulation of mi-litary service
- 独
- Kriegstelegrammsgesetz
- 仏
- Règles de la télégramme militaire
軍虜
(ぐんりよ)國際法上捕虜と云ふに等し。(捕虜參照)
- 英
- Captive
- 独
- Kriegsgefangene
- 仏
- Captif
訓令
(くんれい)訓令とは、豫め法令の解釋を與へ、或行政の方針を示す爲めに、上級官廳が、下級官廳に下す命令なり、抑も各官廳は、其職權の範圍内に於て、自由裁量認定の權あり、然れども各自隨意に認定裁量して處分するときは、行政事業の統一得て期すべからず、茲に於てか上下階級の間に、嚴密なる命令服從の關係を定め、上級官廳の自由裁量する所を以て、下級官廳を抅束し、之と異る意見を採らしめざるなり、斯くの如く上級官廳が、自由裁量する所を下級官廳をして知らしめ、之を拘束するに二場合あり、□一指令、格段なる一時の事件に對して取るべき處分方法を指揮命達する之なり、□二訓令、或る一種の事件の起る每に、常に據るべき處分方法を示達するものにして、普通訓令と云ふの外、心得、取扱手續、通牒、通知等の名稱を用ふるもの之なり。(公文式九條、各省官制通則參照)
- 英
- Official order
- 独
- Instruktion
- 仏
- Instruction
訓令權
訓令權とは、一官府が他の官府に對して、訓令を發する事を得る權限を云ふ、元來訓令は、其監督の權ある官廳より、他の官廳に向つて發する示達なるが故に、官廳に向つて效力あるも、直接に人民を抅束するの準則にあらず、從つて公布するの必要なし、啻に公布せざるのみならず、時としては之を秘密に附する事あり、例へば外務大臣より公使に發する訓令の或るものの如し、斯かるが故に、訓令權なるものはその性質上、一般に向つて效力を有する命令強制の權力にあらず、單に監督の權に基く指揮の權限に過ぎざるなり。(各省官制通則、公文式九條)
- 英
- Instruction power
- 独
- Instruk-tionsrecht
- 仏
- Droit de l'instruction
郡令
(ぐんれい)郡令とは、郡長が法律命令に依り、若くは府縣知事より委任せられたる事項に就きて、郡内に發する處の行政の命令なり。(地方官官制四四、五二條、二六年一〇月勅三九九號)
- 英
- County order
- 独
- Lan▲kreisver-ordnung
- 仏
- Ordre du comté
庫入申告
(くらいれしんこく)庫入申告とは、輸入貨物を保税倉庫に庫入したることを、税關に通知することを云ふ、元來保税倉庫なるものは、輸入手續未濟の貨物を藏置し、茲に藏置中は、該貨物を輸入したるものと見做さざるものなり、故に税關は、嚴格に其通路を示して庫入せしめ、其申告をなさしめ、以て收税を一時猶豫するものなり、此場合の申告を特に稱して、庫入申告と云ふものとす。(税關法三條)
- 英
- Warehousing report
- 独
- Bericht des Aufspeicherns
- 仏
- Rapport du magasin
倉敷料
(くらしきれう)倉敷料とは、他人の依賴により、その物品を自己の倉庫に保管するに對して受くる保管料の謂ひにして、通常金錢を以て受授せらるるものなり、商法の用語に從へば、之を倉敷料と云はずして保管料と云ふも、通俗の所謂倉敷料と同意にして、等しく寄託の賃料なり、されど營業税法は、倉敷料なる語を用ふ。(營業税法七條)
- 英
- Storage
- 独
- Lagergeld
- 仏
- Magasinage
倉荷證券
(くらにしやうけん)倉荷預證券は、單に預證券と云ふに同じ、即ち貨物が、倉庫營業者の手中に存する間に於て、之を利用する爲め、物品寄託者の請求に由つて發行する物權的證券なり。(商三五九、三六〇、三六一、三六二條等、預證券の部參照)
- 英
- Certifcate of goods in ware-house
- 独
- Lagerschein
- 仏
- Certificat des biens du magasin
倉荷預證券
倉荷預證券、及び倉荷質入證券を總稱して倉荷證券と云ふ。(預證券、及び倉荷質入證券參照)
- 英
- Warrant of warehousing goods
- 独
- Lagerverbürgungsschein
- 仏
- Garantie des biens du magasin
倉荷質入證券
倉荷質入證券は、倉庫營業者が物品寄託者の請求により、寄託物に就き發行する證券にして、寄託者は之に依りて、在庫物品を動かさず、自由に其質入を爲すことを得るもの也、最初質入をなす場合には、質入證券に債權額、其利息、及び辨濟期を裏書して、之を質權者に讓渡し、又質權者の質入者の所持する預り證券に、右と同樣の事項を明記し之に署名し、依つて以て寄託品の已に質入せられたるものなることを明記せざるべからず、若し然せざれば、後日に至りて證券が他人に轉々したる後、讓受人が、既に其在庫物品の上に質權の設置せられしものなることを知らざるの虞あればなり。(商三六七、三五九條)
- 英
- Pledge certificate of goods in warehouse
- 独
- Lagerpfandschein
- 仏
- Certificat du gage des biens du magasin
區吏員
(くりいん)區に於て其行政執行の事務に從事する吏員を云ふ、所謂吏員とは、官吏に對して稱せらるる公吏なる語と同意義なり、公吏とは、自治體の機關として活働する自然人にして、其服務規律等に就きても、官吏と略ぼ相同じ、唯異る點は、官吏は國家に直屬するものなるも、公吏は自治體に屬するものなり、而して其採る所の事務は、等し行政の事務なりとす。(二三年一〇月法律一〇〇號參照)
- 英
- District official
- 独
- Amtsbe-amte
- 仏
- Officier du district
外役
(ぐわいえき)定役に服する囚徒の獄舍外に於ける役務を外役と云ふ、元來定役なるものは、囚人に科する一種の積極的畏嚇方法なり、蓋し人類の弱點として、難を避けて易に就き、勞働を嫌忌して安逸を欲する比々皆然り、爲めに放恣懶惰の輩相率ゐて遊民の群に投じ、殺傷姦盜の法禁を犯するに至る、此故を以て、力作勞働を強制して、勉勵の習性を成さしむるにあり。(監獄則施行細則三九條參照)
- 英
- Out-door labour
- 独
- freie Arbeit
- 仏
- Travail audehors de la maison
會員
(くわいいん)多人數を以て組織する團體(集會結社の如き)又は機關(親族會の如き)を構成する分子をその會員と云ふ、之を例解すれば、甲乙丙の三人にて或る結社を組織したりとせんか、その甲乙丙は即ち會員なり。(集會結社法、民九四條乃至九五五條參照)
- 英
- Member
- 独
- Mitglied
- 仏
- Membre
外交機關
(ぐわいかうきくわん)國と國との交通は、即ち外交にして、この外交の衝に當るものを外交機關と云ふ、外交機關の主なるものは、□一外務大臣、□二大使、(公使)□三領事官之なり、イ、外務大臣は、外國に關する政務の執行、外國に於ける帝國商事の保護、及び外國在留帝國臣民に關する事務を管理し、外交官、及び領事官を監督するものにして、この内外國に關する政務の執行と云ふは、外交事務を指すものなり、ロ、公使(大使を含む)は、外務大臣の監督の下に於て帝國を代表し、外國に駐在して、專ら國と國との交通に關する事務を執行するものなり、ハ、領事が外交機關としての作用は、私の國際的交通に過ぎず、外交官には、全部外交官と一部外交官とあり、其何れに屬するを問はず、政治上の目的を以て外國に派遣せられ、駐在的に於て政治的行爲をなすものを云ふ、國際法の慣例に從へば、外交官に左の階級あり、ア大使、イ公使、ウ辨理公使、ヘ代理公使の四是なり、又一部外交官と云ふは、一部主權國より派遣する外交官を云ふなり、元來一部主權國は、全部の主權を享有することを得ざるが故に、全部の權限を有する公使を派遣するを得ざるは、固より多言を要せず、故に期くの如く一部のことを處理する爲めに派遣する外交官を、一部外交官と云ふ。(二六年一月勅二一三號參照)
- 英
- Diplomatic organ
- 独
- diplo-matisches Organ
- 仏
- Organe diplomatique
外交官
- 英
- Diplomatic official
- 独
- aus-wärtiger Beamte
- 仏
- Diplomate
外交官領事官
(ぐわいかうくわんりやうじくわんおよびしよきせいにんようれい)名詮自稱の如く、外交官領事官、及び書記生任用の件に關する命令にして、如何なる資格を有する者の中より、之を任用するかを定めたる法令なり、曰く「外交官、及び領事官は、必ず外交官領事官試驗に合格したる者にあらざれば任用することを得ず」と、尚經過法として、本令施行の際、現に外務省試補たる者、又は試補に採用せらるべき資格を有して、公使館書記生、又は領事館書記生たるものは、別に試驗を要せず、外交官補、又は領事官補に任用することを得るものと定めたり。(二六年十月勅一八七號)
- 英
- Ordinance of special appointment of diplomatist, consul and clerk
- 独
- Anstellungsver-ordnung des Diplomaten, Konsuls und Schreibers
- 仏
- Ordonnance de la nomi-nation spéciale des diplomates, consuls et employés diplomatiques
及び書記生任用令
外交官及領事官々制
(ぐわいかうくわんおよびりようじくわんくわんせい)外交官たる公使、並に其補助機關たる書記、及び領事等の組織權限を定めたる法則なり、即ち外交官に特命全權公使、辨理公使、公使館一、二、三等書記、及び外交官補あること、領事館は、總領事、領事、領事官補あること、及び外交官を置かざる地に於ては、領事官をして外交事務官を兼ねしむること、其他外務書記生等に就きて、種々規定せるものなり。(三二年勅二八〇號)
- 英
- Government organi-zation of diplomatist and consul
- 独
- Amtsordnung des Deplomaten und des Konsuls
- 仏
- Organisation des diplomates et consuls
外交官及領事官試驗委員規則
(ぐわいこうくわんおよびりようじくわんしけんいいんきそく)外交官、及び領事官補の登用試驗委員の資格、任用方法、並に委員が遵奉すべき準則を規定したる法則を云ふ、即ち委員は、□一委員長、外務次官、□二委員、外務省政務局長、外務省通商局長、文官高等試驗委員、二名、帝國大學教授二名を以て組織するものなり。(二六年一〇月勅一二六號)
- 英
- Govern-ment organization of diplomatic and con-sular service examination committee
- 独
- Amtsordnung der Prüfungscomités der Diplomaten und Konsuln
- 仏
- Organisa-tion des comités des examens de scrvice des diplomates et consuls
外交官及領事官試驗規則
(ぐわいかうくわんおよびりやうじくわんしけんきそく)外交官、及び領事官志願者の爲めに、其資格、試驗科目、及び試驗方法を定めたるものなり、即ち□一資格、年齡滿二十年以上の男子にして、重罪を犯したることなき者、定役に服すべき輕罪を犯したることなき者、破産等の宣告を受けたることなき者たるを要し、□二試驗科目は、外國語(英文、佛文、或は獨文)公文摘讀、外國語作文、憲法、國際公法、國際私法、經濟學、行政法、刑法、民法、商法等なりとす、□三試驗法は、論文試驗、第一次試驗、第二次試驗、則ち筆記試驗、及び口述試驗とす。(二六年勅二一三號、三〇年勅四五四號、二七年六月外務省令七號)
- 英
- Rule for diplo-matist and consul examination
- 独
- Ex-amensregel der Diplomaten und Consuln
- 仏
- Règles des examen de service des diplomates et consuls
外交官領事官赴任及賜暇規則
(ぐわいかうくわんりようじくわんふにんおよびしかきそく)外交官、及び領事官の赴任の準則、幷に待命中の準規、賜暇中の遵奉をすべき法則、及び賜暇を給はるべき場合を規定せる法則を云ふ。(二六年勅令一七二號參照)
- 英
- Rule of going to appointed position and leave of absence of diplomatist and consul
- 独
- Regel des Ganges zum Amtsführungsorte und des Unlaubes des Diplomatikers und des Konsuls
- 仏
- Règles d'aller à la place nommée et départir en absence des diplo-mates et consuls
外交官補
(ぐわいかうくわんほ)外交官補とは、外交事務を習修する見習にして、外交官の一種なり。(外交官、及び領事官官制二條)
- 英
- Attaché of Legation
- 独
- Ad-junct des auswärtigen Beamten
- 仏
- At-taché à la légation
外交事務官
(ぐわいわうじむくわん)外交官以外の者にして、其地に於ける外交事務を行ふ外交官の補助機關なり、通例は、領事に之を兼ねしむるものなり。(外交官、及び領事官制五條)
- 英
- Diplomatic agent
- 独
- di-plomatischer Agent
- 仏
- Agent diploma-tique
會議
(くわいぎ)合議することを會議と云ふ、憲法第四八條に「兩議院の會議は公開す云々」とあるはその用例なり。
- 英
- Deliberation
- 独
- Konvention
- 仏
- Délibération
會議規則
會議規則とは、會議に關する準規にして、多人數が或る事項の合同審議を爲す場合に、遵奉すべき手續を定むる法則を云ふなり、或は之を議事規則と云ふことあるも同義なりとす。
- 英
- Rule for Deliberation
- 独
- Beratungsregel
- 仏
- Règles de la délibéra-tion
會議細則
會議細則とは、會同合議に關する詳細なる準規にして、多數人が或る事項を合議する場合に、遵由すべき手續の細則を云ふ。
- 英
- Rules for council
- 独
- Ver-sammlungsregel
- 仏
- Règles du conseil
會議錄
會議錄とは、會議に於ける一切の經過事故を登載する記錄を云ひ、即ち會議に關する歷史を記載せるものなり。(府縣制五九條、市制四八條、陸軍衞生會議條例二條以下參照)
- 英
- Record of Deliberation
- 独
- Beratungsprotokoll
- 仏
- Archives de la délibération
外患罪
(ぐわいくわんざい)刑法第二編第二章第二節に規定せる犯罪の總稱にして、イ、外國に與みし、本國に抗敵したる罪、ロ、外國と交戰中同盟國に抗敵したる罪、ハ、本國に背叛して、敵兵に附屬したる罪、ニ、交戰中敵兵を誘導して、本國營内に入らしめたる罪、ホ、本國及同盟國の都府城塞、又は兵器、彈藥、船艦、其他軍事に關する土地物件を敵兵に交付したる罪、ヘ、本國及同盟國の軍情機密を敵國に漏泄したる罪、ト、兵隊屯集の要地、又は道路の險夷を敵國に通知したる罪、チ、敵國の間諜を誘導して、本國管内に入らしめ、若くは之を藏匿したる罪、リ、陸海軍より委任を受けて物品を供給し、及び工作を爲したる者、交戰の際敵國に通謀し、又は其賂遺を收受して命令に違背し、軍備の缺乏を致すの罪等を云ふものなり、舊刑法に於ては、此外尚外交に關する罪を加へて、第二節外患に關する罪となせり。(舊刑三九條乃至一三五條參照)
會計規則
(くわいせいきそく)一般會計上、即ち收入支出の上に於て、遵奉すべき會計法の細則として發布せられたる規則を謂ふ。(二二年勅六〇號、及び會計法の説明參照)
- 英
- Regulation of account
- 独
- Rechnungsregel
- 仏
- Règles du compte
會計檢査院
(くわいけいけんさいん)會計檢査院は天皇に直隷し、官金の收支、官有物及國債に關する計算等、總べて國家の歳出入の現計に就き、檢案査定し以て會計を監督する國家機關なり、會計檢査院には、院長一人、部長三人、撿査官十二人を置き、之を會計檢査官とし、外に書記官、檢査官補あり、以て撿査の事務を分掌す、會計撿査院の議事は、總會議及部會議を以て之を決す、所謂總會議は、院長を以て議長とし、部會議は、部長を以て議長とす、議事は多數決により、可否同數なるときは、議長の決する所に從ふ、總會議に於て議すべき事項は、各年度の會計檢査の成績を上奏し、天皇の下問に奉答する等の場合とす、會計檢査院の檢査を要するものは、□一總決算、□二各官廳、官立の諸財團の收支、及び官有物に關する決算、□三政府より補助金、又は特約保證を與ふる公私諸團體の收支決算、□四法令の規定により、特に會計檢査院の檢査に屬せられたる決算等之なり、但し政府の機密費に關する計算に就きては、檢査を行ふことなし、又會計檢査院に於て、出納官吏の會計書、及び證憑書類を檢査し、正當なりと判決したるときは、認可狀を付して其責任を解除するも、若し必要なりと認めたるときは、出納官吏を訊問し、又は之をして辯明正誤を爲さしめ、尚正當ならずと判決するときは、本屬長官に移牒して之を處分せしむ、而して此判決によりて、辨償を命ぜられたる者の責任は、天皇の大赦、特赦によるの外、本屬長官に於て減免することを得ざる也、以上の如く會計檢査院は、その公平と嚴正とを維持するの必要あるよりして、國務大臣の監督を受くることなく、天呈に直屬す、蓋し若し會計檢査院をして、金錢出納の衝に當る國務大臣の監督の下に立たしめんか、充分に其職責を盡す能はざるの虞あれば也、會計檢査院の會計檢査は、總決算、及び各省決算報告書の金額と、計算書の金額との符合如何、並に歳入の賦課徵狀、歳出の使用、官有物の取得、讓渡等が、豫算及法令に違ふなきや否にあり、而して檢査確定する時は、之等の點に關する報告書を作り、以て各年度の會計檢査成績を上奏す、若し其成績に就き、法律等の改正を要することありと認むるときは、併せて其意見をも上奏するを得るなり。
- 英
- Board of Audit
- 独
- Ober-rechnungskammer
- 仏
- Bureau de l'audi-tion
會計檢査院法
會計檢査院法は、憲法第七二條に「會計檢査院の組織、及び職權は、法律を以て之を定む」とあり、之に應せんが爲めに制定せられたる法律が、會計檢査院法なり。(二二年法律一五號)
- 英
- Law of the Board of Audit
- 独
- Oberrechnugskammersgesetz
- 仏
- Loi du bureau de l'audition
會計檢査官徵戒法
(くわいけいけんさくわんちようかいはふ)會計檢査官は、其地位を鞏固にし、以て檢査の嚴正と公平とを保たしむるの主旨に出で、刑事裁判、若くは懲戒裁判に依るにあらざるば、其意に反して退官、轉官、又は非職を命ぜらるる事なきを會計檢査院法を以て確保したり、之に應せんが爲めに發布せられたる法を會計檢査官懲戒法と云ふ、即ち職務上不正の行爲あるときは、懲戒に附せらるべきことを規たるものなり。(三三年法律二一號)
- 英
- Disciplinary law of auditors
- 独
- Disciplinargesetz des Re-chnungsrevisors
- 仏
- Loi disciplinaire des auditeurs
會計年度開始前現金支拂規則
(くわいけいねんどかいしぜんげんきんしはらひきそく)會計年度は、每年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものなるが、此年度開始前現金前渡を要するときは、其經費を査定し、計算書を作り、之を大藏大臣及會計檢査院に送付して、金庫に令達すべき旨を揭けたる法律なり。(二三年勅九五號、同二六年勅二三號)
- 英
- Ordinance of the cash payment by the opening of the fiscal year
- 独
- Barbezahlungsregel von der Öffnung des Fiskaljahres
- 仏
- Règles du paiement en caisse au commencementde l'année fiscale
會計法
(くわいけいはふ)國家一般會計の準規を定めたる法規を會計法と云ふ、所謂會計とは、國庫の出納、即ち國庫金の收入支出の事務の意にして、會計法は、豫算の調制、及び效力、支出の方法等に就きて規定せる法律なり、其詳細は、各項に就きて參照せられたし。(二二年法第四號)
- 英
- Law of account
- 独
- Rech-nungsgesetz
- 仏
- Loi du compte
外國郵送
(ぐわいこくいうそう)電報に於ける指定事項の一名稱にして、其電報を外國に郵送すべき旨を指定するものなり、其略符合は、和文に於ては「ツタ」にして、歐文にてはPNと記す、電報規則第九條に「外國郵送」とあるは其用例とす。(三三年九月遞信省令四六號一四六條乃至一四八條參照)
- 英
- Foreign mail
- 独
- fremde Post
- 仏
- Poste étrangère
外國勳章佩用願規則
(ぐわいこくくんしやうはいようねがいきそく)賞勳は、榮典大權の作用なる故に、我國民にして外國の勳章を受領、及び佩用せんとするものは、榮典大權の機關たる賞勳局の免許を受けざるべからず、而してこの免許を受くる手續を規定したるものが、外國勳章佩用願規則なり。(一八年布告三五號)
- 英
- Rule of wearing the foreign decorations
- 独
- Tragsregel der fremden Dekorationen
- 仏
- Règles de mettre les décorations étrangères
外國會社
(ぐわいこくくわいしや)外國法律の擬制に依りて設立せられたる會社を外國會社と謂ふ、會社とは、商行爲を爲すを業とする目的を以て設立したる、社團法人を云ふものなれば、外國社團法人の中、商行爲を爲すを業とするものが外國會社なり、(外國法人參照)或は曰く會社本店の所在地に依りて、内國會社と外國會社との區別の標準となすべしと、然れども外國の法律に從ひて設立せられたる會社が、其本店を日本に置きたる偶然の事實を以て、其會社を日本の會社なりと云ふは、正當の見解にあらず、蓋し會社設立に關する諸種の規定は、一國の政策上、公益上の理由に基くもの多く、故に偶然なる事實を以て、之を左右すべきにあらざるなり、恰も人の國籍は、住所の如何に依りて區別すべからざると等しく、會社の國籍も、(即ち内國會社たると、外國會社との區別も)其本店の所在地、又は營業の中心如何に依りて區別するが如きは、茲に採用せざる所なり。(商二五五條乃至二六〇參照)
- 英
- Foreign company
- 独
- fremde Gesellschaft
- 仏
- Compagnie étrangère
外國貨物
(ぐわいこくくわぶつ)帝國より輸出したる貨物、及び未だ帝國に輸入せざる貨物を總稱して外國貨物と云ふ。(關税法一六條參照)
- 英
- Foreign goods
- 独
- fremde Güter
- 仏
- Biens étrangers
外國貨幣
(ぐわいこへくわへい)外國の法律により、其國に於て、辨濟の用具として、強制通流力を有する貨幣を外國貨幣と云ふ、抑も外國の通貨は、我國に於ては、一の物たるに過きず、されども尚法律に於て、これが僞變造を罰し、或は辨濟の用具として、金錢債務の目的物となるを得る旨を規定したり、之に依りて之を觀れば、我法律は、國外の通貨を單純なる物に過ぎずとなさず、多少金錢たるの性質を有するものと見たるが如し。(刑一八三、一八四條、民四〇二條二項、印紙税法八條參照)
- 英
- Foreign currency
- 独
- fremde Münze
- 仏
- courant étranger
外國官廳
(ぐわいこくくわんちよう)外國の國家機關たる官廳を云ふ、所謂官廳とは、一人、又は數人を以て之を組織し、一定の範圍を有する國家事務を、他の委任によりて處理する爲め、命令權を外部に向つて行使するの義務を有する機關を云ふなり、例へば佛國の各省大臣の如き、英米の各官署、獨乙帝國の裁判所の如き之なり。(民訴五五七條參照)
- 英
- Foreign government
- 独
- fremde Regierung
- 仏
- Gouvernement étranger
外國公使
(ぐわいこくこうし)我國に駐劄する外國の公使を云ふ、所謂公使とは、國と國との交通に任ずる外交機關を指す。(外交官の部參照)
- 英
- Foreign minister
- 独
- aus-wärtiger Gesandte
- 仏
- Ministre étranger
外國在勸警部巡査任用及支給規則
(ぐわいこくざいきんけいぶじゆんさにんようおよびしきうきそく)明治二五年勅令第一四號を指す、即ち外國在勸の巡査警部の任用資格、並に之に仕拂ふべき俸給手當等を規定せる規則なり。
- 英
- Rule of supply and appointment of police in-spector and policeman resident in foreign land
- 独
- Regel von dem Zuschusz und der Anstellung des Polizeioffiziers und des Polizeidieners
- 仏
- Règles de fournir à et nommer les police-inspecteurs et les agents de police à l'étranger
外國裁判所
(ぐわいこくさいばんじよ)外國の司法機關たる裁判所を云ふ、民事訴訟法第五一四條に「外國裁判所」とあるは、即ち外國司直の機關を指すものなり。(裁判所の部參照)
- 英
- Foreign court
- 独
- fremdes Gericht
- 仏
- Tribunal étranger
外國人
(ぐわいこくじん)日本臣民にあらざる者を廣く外國人と謂ふ、畢竟外國に國籍を有するもの、及び何所にも國籍を有せざるものを指すに外ならず。(三二年三月法六六號、國籍法五條乃至一〇條參照)
- 英
- Foreigner
- 独
- Fremder
- 仏
- Étranger
外國人取扱規則
外國人取扱規則とは、外國人取扱に關して遵奉すべき法則を云ふ。(三二年臺灣總督府令七一號)
- 英
- Treatment law of forei-gners
- 独
- Behandlungsregel der Fremd-ling
- 仏
- Loi de la traitement des étrangers
外國駐在海軍武官手當金規則
(ぐわいこくちうざいかいぐんぶくわんてあてきんきそく)外國駐劄を命ぜられたる公使館附海軍武官等に給與する手當金に就きて、規定せられたる法則を云ふ。(三二年勅七二號)
- 英
- Rule of remuneration of naval officers resident in foreign land
- 独
- Vergeltungsregel der Marineoffizieren im fremden Lande
- 仏
- Règles de rémunération des officiers mari-times résidant à l'étranger
外國駐在陸軍武官給與令
(ぐわいこくちうざいりくぐんぶくわんきうよれい)陸軍武官にして、公使館附、其他として、海外諸國に駐在を命ぜられたる者に給する俸給、手當、其他の給與に就きて定められたる規則を云ふ。(三〇年勅二一六號)
- 英
- Ordinance of supply of the military officers resident in foreign land
- 独
- Ordnung der Gebung an die Militärofficieren im fremden Lande
- 仏
- Ordonnance de fournir aux officiers militaires résidant à l'étranger
外國條約
(ぐわいこくじようやく)條約とは、二個以上の國家が、或事項に就きて、權利義務を定めんが爲め、國家の機關に依る意思の合致を云ふ、外國條約とは、單に以上の條約と同意義なり、唯我國が當該條約の當事國家にあらざるときは、普通之を條約と區別して、外國條約とは謂ふなり。(條約の部、及び内閣官制五條二號參照)
- 英
- Foreign treaty
- 独
- fremder Vertrag
- 仏
- Traité étranger
外國法
(ぐわいこくはふ)外國の國法を外國法と云ふ、例へば法例(三一年法律第一〇號)第三〇條に「外國法に依るべき場合に於て、其規定が公の秩序、又は善良の風俗に反するときは、之を適用せず」とあるは其用例なり、現時國際私法に於ける外國法は、法律なりや將た事實なりやの問題は、即ち我國法解釋上に於ても、尚法律と云ふべきや否やの疑問なるが故に、茲に一言説明するの必要あり、本問に對して英米の法學者は、外國の法律は、内國に於ては法律として效力を有すべきにあらず、單に事實たるに過ぎずと説き、之に反し大陸學派は、彼のサビニーが外國法律を適用すべきことは、裁判所の任意の事柄にあらずして、裁判官は之を適用すべき職務を有するものなりと主唱せし以來、外國法も亦法律にして、事實にあらずと認めらるるに至れり、依つて按ずるに、英米學者の如く、外國法は事實なるが故に、裁判官に於て之を適用する義務なしと云ふは、固より誤認なるも、又大陸學説の如く、外國法も亦内國に於て法律なりと云ふは謬論なり、蓋し外國法律は、國境を超えて、我國迄效力を及ぼすものにあらざるも、法律上之を適用せざるべからさるの義務あること少なからす。(法例三條以下參照)
- 英
- Foreign law
- 独
- ausländisches Recht
- 仏
- Droit étranger
外國法人
(ぐわいこくはふじん)外國法人とは、外國の法人を云ふ、自然人に就きては、特に國籍法の規定ありて、内外人の區別は明瞭なるも、法人に關する國籍法の規定存せず、且つ民法、商法は、唯外國法人、又は外國會社と稱するのみにして、其區別を學説に委したるより、甲論乙馭定説あるを聞かず、左に一二の説を揭げん、(尤も國、又は國の行政區劃の如き公法的法人は、一定の領域を基礎とするが故に、その地理的區別によりて、直に其外國法人たるや否やを知り得べし)、イ社員の國籍主義、或る學説は法人設立者、又は社員の國籍に依りて、法人の國籍を定むべしとなし、外國人によりて成立する法人は、外國法人なりと謂ふ、されど法人は、社員よりは別に、獨立の人格を有するものなるを以て、社員の國籍如何に依りて、法人の内外を區別するは正説ならず、ロ營業中心主義、營業中心點の所在地方の國籍を以て、内外法人を區別せんとするの説なり、然れども本説は、保險業、海上運送業など、數國に於て營業する會社には、之を適用するに由なし、こは營業の施行地内外に渉ればなり、ハ主たる事務所、又は本店所在地主義、法人の住所は、其本據、即ち主たる事務所の所在地に在れば、法人の國籍は、この住所の如何を以て定むべきものなりとするに在り、例へば南滿洲鐵道會社の如きは、其營業を外國に於てなすも、本店の所在地が我國に存する故に、内國法人にして、縱令我國に於てのみ、營業をなすの目的を以て設立せられたる會社ありとするも、本店の所在地外國にあるときは、外國法人なりと謂ふにあり、この説は、外國に於て有名無實の本店を有するの一事を以て、之を外國法人となし、内國法の規定の適用を免れしむる危險の説なりと云はざるべからず、ニ準據法主義内國の法律に準據して設立したる法人は、内國法人にして、これ以外の法人、即ち外國官廳の認許に依りて成立し、又は外國法律に準據して設立せられたる法人は、外國法人なりと、本説を以て通説となす、然れども設立後は、本説に從ふ或は可ならんも、設立せんとする法人は、何れの國法に從はざるべからざるかは、依然として疑問なりとす、然れども茲には、本説に從ひて下の如く定義せん、「外國法人とは、外國の國法に從ひ設立せられたる法人を謂ふ」。
- 英
- Foreign juridical person
- 独
- fremde juristische Person
- 仏
- Personne morale étrangère
外國領事廳
(ぐわいこくりやうじちよう)日本駐劄の領事官廳を云ふ、領事とは、本國の經濟上の利益を圖る目的を以て、他國に駐劄する者なり。
- 英
- Foreign consulate
- 独
- fremde Konsulat
- 仏
- Consulat étranger
外國旅費規則
(ぐわいこくりよひきそく)命を帶びて海外に旅行する者に、給與する旅費を定めたる規則を外國旅費規則と云ふ。(二〇年閣令一二號參照)
- 英
- Rule of Expence of travelling abroad
- 独
- Regel vom Aus-landreisegeld
- 仏
- Règles de dépens à aller à l'étranger
外國行の郵便葉書
(ぐわいこくゆきのいうびんはがき)自今左の諸號に該當する便郵端書は、左表の諸國へ郵便葉書として、發送することを得、□一私製通常葉書にして[CartePostale]なる標記を有せざるもの、□二料金前納用郵便切手を、裏面に貼附したるもの、□三表面左半部に通信文を記載したるもの、但し此場合にありては、左の樣式に準じ、表面を左右兩半部に區劃し、名宛及郵便業務に關する事項(書留到達證等)は、其右半部内に記載することを要す、□四裏面及表面左半部に、簿紙の摸樣畫、又は寫眞を貼附したるもの、但し葉書面に密著したるものに限る、□五差出人の宿所氏名を記載したる、幅二サンチメートル長五サンチメートルを超過せざる紙札を貼附したるもの之也、而して其國名は、獨逸亞米利加合衆國、墺地利、白耳義、ボスニー、ヘルゼゴヴヰス、伯西兒、勃爾瓦利、古倫比亞、公果獨立國、コスタリカ、クレート、丁抹、丁抹領アンチーユ、ドミニカ共和國、佛蘭西、埃及、大不列顚、英國諸殖民地(パハマ、パルバトス、バーミユダ、錫蘭、サイプラス、ジブラルタル、英領ホンジユラス、ジアマイカ、マルタ、ナタール、オレンジリウアー殖民地、ローデシア、聖ヘレナ、聖リユシア、聖ヴヰンセント、サラワツク、ソマりランド、海峽殖民地、ニユーフアンドランド、トランスヴァール、トリニダツト、タークス諸島)英領印度、濠洲聯邦、加那太、ニユージーランド、ハイチ、洪曷利、伊太利、歷山保、墨西哥、滿得𣵀各羅、那威、パナマ、葡萄牙及葡萄牙殖民地、パラゲー、和蘭、蘭領東印度、波斯、羅馬尼、暹羅、瑞典、瑞西、突尼斯、ウルゲー(附註)第三號のみを適用し、且つ郵便繪葉書の場合に限る(四〇年一月遞信省告示)
- 英
- Private postal card for foreign
- 独
- private Postkarte nach dem Ausland
- 仏
- Carte postale privée à l'étranger
回漕免許
(くわいさうめんきよ)關税法に依り、内外國貨物を外國貿易船に、又は外國貨物を沿海通航船に積載し、開港場間を回漕せんとする者が、其旨を税關に申告したる場合に、貨物の檢査を行ひたる後、之を免許する行政處分を回漕免許と云ふ。(關税法三九條參照)
- 英
- Transportation permit
- 独
- Verschiffungserlaubnisz
- 仏
- Permis de transportation
外人
(ぐわいじん)外國人と云ふに等しく、換言すれば日本の國籍を有せざる凡ての人を云ふ。(外國人の説明參照)
- 英
- Foreigner
- 独
- Fremder
- 仏
- Étranger
外人警察
外人警察とは、外國人の我國に居住、滯在する者の保護、及び取締に關する警察行政を云ふ、例へば我國に滯在する支那人、朝鮮人、歐米人等凡て我が國人にあらざる者の保護、及び取締に關する内務行政の如し。
- 英
- Police for the protection of foreigners
- 独
- Polizei für den Fremd-lingsschutz
- 仏
- Police pour la protection des étrangers
會社
(くわいしや)□一營利を目的とする社團法人を總稱して會社と謂ひ、民法は之を分ちて、民事會社及商事會社となす、所謂商事會社とは、商行爲を業とする社圍法人を謂ひ、商法の單に會社と云ふに該る、商行爲以外の業務を以て、營利を目的とする會社を民事會社となす、(民三條一及二項)□二商法に會社と云ふは、商行爲を爲すを業とするを以て目的とし、設立せられたる社團法人にして、分ちて左の四種となす、イ合名會社とは、社員の全體が、無限の責任を負擔する所の會社なり、ロ合資會社とは、社員の一部は、會社の債務に就き、債權者に對して無限責任を負擔し、他の一部は、持分の範圍内に於てのみ、責任を有する會社なり、ハ株式會社とは、會社資本を株式に分割し、社員は、其有する所の株式の金額を限度として、責任を負擔する會社なり、ニ株式合資會社とは、無限責任社員と、株主とより組織する所の商事會社なり、此會社は、合資會社の如きも、法律上の形式、及び經濟の效用は、寧ろ株式會社に類似するものなり。(商四二條以下舊商法七四條參照)
- 英
- Company
- 独
- Gesellschaft
- 仏
- Compagnie
會社契約
會社契約とは數人が或る會社を設立すること、及び其業務執行等に關す須要なる事項に就きて一致するを云ふ、此會社の設立行爲、及び定款作成の行爲が、果して契約なりや、又は集合行爲(一致したる單獨行爲の集合)なりやは、疑問の存する所なり、獨乙最近の學説としては、集合行爲説有力なり。(定款の部參照)
回避
(くわいび)刑事事件に就きて、判事自ら其情に於て、裁判の公平を保持する能はざる原因存する場合に、裁判所に申立つる脱退の申請を回避と云ふ、換言すれば、判事自ら除斥の原因ありと認むるか、又は回避すべきものと思料したる場合に、忌避申請の管轄裁判所に、脱退せんとして爲す申立を回避とはいふ也、此規定は、裁判所職員たる書記にも準用せらるものなるを以て、裁判所書記にも回避なることありとす。(刑訴四四條一項及二項同四五條)
外務
(ぐわいむ)外國交通に關する國家事務を總稱して外務と云ふ、此意味に於ては、宣戰、媾和、條約の締結、使節の接受、派遣等をも包含す、然れども普通外務と云へば、外務行政の意味なりとす、
外務行政、國と國との交通は、所謂外交にして、又私の國際的交通は、單に私人の交通に止ると雖も、國家は之を保護進捗するの必要あり、これ等を併稱し外務と稱す、所謂外交事務の中、宣戰、媾和、及び條約の締結は、天皇親裁の大權事項にして、之を外交機關の職權に委任せられざるなり、尤も事實上は其準備として、外務大臣等一定の機關に、其事務を執らしむるも、之等は外交機關として行動するにあらず、單に大權行使に參與する補助機關に過ぎず、故に宣戰、媾和、及び條約の締結等は、所謂外務行政の内に入るものにあらず、然れども其他の外交事務は、憲法上必ずしも天皇自ら處理する事を必要とせず、寧ろ之等は、外交機關に委任するを便宜とす、斯くの如き委任せられたる外交事務に關する行政を名けて、外務行政と云ふ、例へば私の國際的交通、及び在外帝國臣民に對する事務の如き、行政機關が官制の委任により、其職權として行ふは其一例なり、其他の外務行政事務の内容は、豫め法令を以て定むる事困難なるが故に、一々茲に説示すること能はず、之等は多く國際法の研究に委せらる。(憲法一三條)外務省とは、外務大臣が、其職務を行ふ事務所を云ふ、明治三一年勅第二五八號外務省官制第一條に「外務省」と云ふは其用例なり、元來外務大臣なるものは、外國に關する政務の施行、外國に於ける帝國商事の保護、及び外國在留帝國臣民に關する事務を管理し、外交官、及び領事官を監督するの職權を有するものなるが、この職務を執行するの場所を外務省と云ふに外ならず。
- 英
- Foreign business
- 独
- auswärtige Angelegenheiten
- 仏
- Affaires étrangères
行務行政
- 英
- Foreign administration
- 独
- Fremdegeschäftsverwaltung
- 仏
- Admini-stration étrangère
外務省
- 英
- Foreign Office
- 独
- Ministerium der auswärtigen Angelegenheiten
- 仏
- Ministère des affaires étrangères
外的
(ぐわいてき)外的とは、自己以外の存在、即ち社會自然界を意味す、然るに單に自己てふことにも二個の別意義ありて、即ち一は精神の城廓たる一定の體を備へ、其身體を外物との境界としたる自己、他は其身體の主宰たる自我てふ精神のみを意味する自己之なり、若し前者の意味に從ふ時は、身體以外の空間、即ち社會乃至自然界を意味し、後者の意味を以てする時は、自然以外となり、自己の身體も亦外界の一部と觀ずるなり然れども一般には、自己の身體をも含めて自己とし、自己の身體以外を以て總じて外的と稱す。以上の意義の外に、内的に對して外的と云ふ時は、稍異る意義を有す、即ち内側に對する外側と云ふが如く、強く自己を中心とせずして或者を中心とし、夫れより示す方角位置を指すことあり。
- 英
- External
- 独
- äuszerlich
- 仏
- Extérieur
活動
(くわつどう)活動とは、其運動の動機が自己より出でたると、將た他より與へられたるとを問はず、心的、又は體的に、活潑に働くをいふ、然れども一般に活動といへば、多く體的活動を意味し、而して其活動の目的は、職業上、或は公事經營上等の實際的事項なること多し。
- 英
- Activity
- 独
- Tätigkeit
- 仏
- Ac-tivité
過程
(くわてい)過程には心的のものと、社會的のものとの二種ありて、心的過程といへば、意識の進行を指し、社會的過程といへば、社會的體制の資料の間に行はるる連續的變化をいふ、一切の現象は、皆過程を有す、此一切の現象は、時間の制約を脱する能はず、而して過程は、時間的進行を本資とするを以てなり。
- 英
- Prccess
- 独
- Prozesz
- 仏
- Pro-grès
過渡
(くわと)一般には、事物がある場合、又は狀態より他の場所、又は狀態に變り行くをいふ、凡そ世に存するものにして變化し、又は進化するものには、必ず過渡を有するなり、而して其過渡の狀態にある時期を歷史的に見るときは、吾人之を過渡期と名つけ、又狀態が過渡のなることを形容するに、過渡的なる言辭を用ふ、例令ば文明史上十五六世紀に於ける歐洲の社會的狀態の如き、最もよく之を表明す、即ち中世と近世との過渡の時代にして、在來の社會を支配せし文化を以てしては、當代を支配するに足らず、然かも其後に興りしが如き、清新なる文化は未だ來らず、唯僅に前文化の隋力によりて生存を保ち、漸く一道の光明ほのぼのと認められんとする推移の時期、即ち文明史上の過渡期なり、其他文藝上の過渡期、宗教上の過渡期、政治上の過渡期、經濟上の過渡期等稱するもの、皆以上の如き狀態を指示するものなり。
- 英
- Transition
- 独
- Übergang
- 仏
- Transition
鑛區
(くわうく)農商務大臣の特許を得て、鑛物の採堀、又は採掘を爲す土地の區域を鑛區と謂ふ。(三八年法四五號、及び臺灣鑛業規則參照)
- 英
- Mine district
- 独
- Bergbezirk
- 仏
- District de mine
鑛區税
鑛區税とは、鑛業者が鑛區の地積に應じて納むべき租税を謂ふ、元來鑛物(鑛業條例に鑛物と云ふは、金銀銅鐵等二十一種なり)の採取には、先づ鑛山監督署長の認可を經て、鑛物の存在を確むる爲めに試掘をなし、(試掘に依りて得たるものは、鑛山監督署の認可を經、尚其代價の百分の一を國庫に納めざるべからず)鑛物の存在明になりたる上は、農商務大臣の特許を受け、初めて採取に從事すべきものなり、此場合に、鑛區に應じて納付する租税を鑛區税と稱す、(鑛業法、及び臺灣鑛業規則、並に鑛業税の説明參照)
- 英
- Tax on mine district
- 独
- Berg-bezirkssteuer
- 仏
- Impôt sur le district de mine
鑛業
(くわうげふ)廣く鑛業と云へば、鑛物を採掘し、又は採取するの業を謂ふ、鑛業人となるを得るものは、帝國臣民、又は帝國法律に從ひて設立したる會社に限り、鑛業特許の取消の處分を受けたるものは、同一の鑛區に於て、一ケ年間鑛業の特許を出願するを得ざるものなり。(三八年一月法四五號鑛業法)鑛業税とは、彼の鑛區税に對し、鑛業條例に依りて、鑛業人が鑛業生産物の價額に應じて納付すべき租税を謂ふ。(二三年法八七號及三八年一月法四五號、並に鑛區税の部參照)
- 英
- Mining
- 独
- Bergwesen
- 仏
- Mine
鑛業税
- 英
- Tax on mining
- 独
- Bergsteuer
- 仏
- Impôt sur le mine
鑛業抵當
鑛業抵當とは、鑛採掘權者が、鑛業抵當法の規定に從ひ、抵當權の目的となす爲めに、鑛業財團を設立し、以て抵當權を設定するを謂ふ。(三八年三月法五五號鑛業抵當法參照)
- 英
- Mining pledge
- 独
- Berg-pfand
- 仏
- Gage de mine
鑛業警察
(くわうげふけいさつ)鑛業警察とは鑛業に關する危險を防止する爲め、人の自由を制限することを目的とする行政を云ふ、即ち鑛業に關する建築物の保安、工夫の生命、及び衞生上の保護等に就きて、鑛山監督署長が、農商務大臣の監督の下に行ふ警察事務なり、而して鑛山監督署長は、鑛業上危險の虞あり、又は公益を害する恐ありと認むるときは、鑛業人に對して豫防に關する施設を命じ、又は鑛業を停止することを得るものなり。(一五年農商務省令七號、及び鑛業警察規則の説明參照)
鑛業警察規則とは、鑛業の取締、及び工人の衞生等に關して發布せられたる規則なり。(三八年六月二二日農商務省令一九號)
- 英
- Mine police
- 独
- Bergpolizei
- 仏
- police de mine
鑛業條例
(くわうげふでうれい)現行鑛業法の發布迄有效なりし法律にして、金、銀、銅、鐵等二十一種の鑛物の採掘試掘に關して規定せられたるものなり。(二三年法八七號參照)
- 英
- Mine regulation
- 独
- Berg-wesensordnung
- 仏
- Règles de mine
鑛業條例施行細則
鑛業條例施行細則は、鑛業條例を實際に施行する爲め定められたる細則を指す。(二三年農商務省令三號參照)
鑛業登錄
(くわうげふとうろく)鑛業に關する諸種の登記載錄を鑛業登錄と云ふ、即ち鑛業權、鑛業抵當權、及び抹消に關する登錄、假登錄、並に豫告登錄等、主として鑛山監督署に於て之を爲すものなり。(三八年六月勅一八三號鑛業登錄令、三八年六月農商務省令一八號鑛業登錄施行細則參照)
- 英
- Mining registration
- 独
- Bergwesensregistrirung
- 仏
- Enregistre-ment de mine
鑛業特許證
(くわうげふとくきよしよう)農商務大臣が採掘の特許を出願する者あるとき、其採堀の特許を與ふべきものと認めたる場合に、特許の證據として下附する書面を云ふ、元來採掘權は、一種の私權なるが故に、農商務大臣の特許は、一種の私權設定の行政處分にして、所謂鑛業特許證は、この私權の存在を證明する一種の證書と云ふべし、恰も土地の所有權を證明する地券の如し。(三八年法四五號鑛業法、及び三八年六月農商務省令一七號鑛業法施行細則、二三年法八七號鑛業條例參照)
- 英
- Certificate of patent of min-ing
- 独
- Bergpatentschein
- 仏
- Certi-ficat de brevet de mine
鑛業特設電話
(くわうげふとくせつでんわ)鑛業者は、遞信大臣の認可を經て、其指示に從ひ、電話に要する機械、線路、其他一切の物件を供給し、且つ其設備及維持費を負擔し、鑛業電話を使用することを得、此特設に係る電話を形容して、鑛業特設電話と稱す。(三八年一二月二八日遞信省令八四號參照)
- 英
- Special telephone of mining
- 独
- Specialtelephonie zum Berg-wesen
- 仏
- Téléphone spéciale de mine
廣告
(くわうこく)通常私人が、或る事實を公衆に告ぐることを汎く廣告と云ふ、廣告は、又特定人に對する通告にして、其人の所在不明、或は直接に通告することを不便とする場合に爲すことあり、何れにするも、廣告は、或る事實の公なる告知を謂ふものとす、而して廣告の法律上の性質に就きては、イ契約の申込なりと論ずるあり、曰く廣告は、一の申込に過ぎざるが故に、此申込に應じて一の行爲をなしたる者は、これ暗默の承諾を與へたるものにして、爰に契約成立し、この契約の成立に依りて、廣告者が義務を負ふものなりと、ロ單獨行爲なりと論ずるものあり、曰く廣告は、公の不定多數の人に對する一種の片務約束にして、廣告者は、此約束に基きて行爲を果したる者に向ひて義務を負擔するもの也、敢て承諾あるを要せずと、以上兩説の差は、申込説に依れば、指定行爲を爲す者なき間は、廣告者に於て隨意に之を取消すことを得るも、約束説に從へば、之を取消すことを得ず、又申込説に依れば、廣告を知らずして廣告指定の行爲を爲す者あるも、これに對して義務を負ふことなし、約束説は、この場合にも、猶義務を負擔すとなす、我民法は、法文規定の順序より見るときは申込説を採るものの如し。(民五二八、五二九、五三〇、五三一、五三二條參照)
- 英
- Advertisement
- 独
- Anzeige
- 仏
- Avertissement
鑛山監督署官制
(くわうざんかんとくしよくわんせい)鑛山監督署は、農商務大臣の管理に屬し、全國を通じて五ケ所あり、署長、(奏任)事務官、(奏任)技師、(奏、判任)その他書記、技手の職員を置き、鑛業に關する事務を掌らしむ、斯かる鑛山監督署の官制を定めたるものが、鑛山監督署官制なり。(三八年三月二八日勅九九號)
- 英
- Government organiza-tion of mining intendant office
- 独
- Be-hördeordnung des bergrathes
- 仏
- Or-ganisation du bureau de surveillance de mine
皇嗣
(くわうし)天皇崩御の場合に、皇位を繼承する人を皇嗣と云ふ、即ち祖宗の皇統に出づる男系の男子にして、親等の近き者の中、長系を先きにするものなり、皇室典範第一〇條に「天皇崩御するときは、皇嗣即ち踐祚し云々」とあるは其用例なり。(憲法二條、典範九、一〇條)
- 英
- Imperial heir
- 独
- kaiserlicher Erbe
- 仏
- Successeur impérial
皇室典範
(くわうしつてんぱん)皇族自治の盛典を皇室典範と云ふ、即ち我皇室の家法なり、夫れ一門一家の爲めに自ら法則を設けて自ら守るは、敢て何人に於ても爲し得ざるの業にあらざるも、之を以て一般臣民としての身分、及び國家の司法、行政に關する權利義務迄をも左右するを得ざるなり、獨り皇室に限り、其家法を以て國家法令の上に加へ、憲法と相並びて、公然の效力を有せしむるの權あり、是蓋し皇室自治自主の權は、天皇特權の一なるが故なり、凡そ團體自主の權に依りて成定せられたる法則は、常に國家の法令の範圍内に於てのみ效力を有し、之を改廢するの力あらざるは國法の常規なり、然るに獨り皇室の家法に限り、これを爲し得るは、學者の絶えず疑問とし、研究する所なり、然れども是我國體の沿革を無視するより生ずる疑問にして、蓋し我憲法は、皇室典範所定の天皇に依り、欽定せられしものにして、他外國の例の如く、鐵血の結果に成りたるものと異ればなり。(尚憲法二、七四、七七條、及二二年二月一一日制定皇室典範一條參照)
- 英
- Imperial House Law
- 独
- kaiserliches Hausgesetz
- 仏
- Loi de la famille impériale
皇室
皇室とは、帝室と云ふと同じく、天皇御一家を奉稱するなり。(典範四七、四八條、皇室會計法等參照)
- 英
- Imperial Household
- 独
- kaiser-liche Familie
- 仏
- Famille impériale
皇庶子
(くわうしよし)庶出の皇子を皇庶子と謂ふ、皇室典範に依れば、皇男子孫の皇位を繼承するは、嫡出を先にし、皇庶子孫の皇位を繼承するは、皇嫡子孫皆在らざるときに限ると規定せられたり。(典範四、八條)
- 英
- Illegitimate Crown Prince
- 独
- unehelich erzeugter Prinz
- 仏
- Prince de couronne illégitime
皇族
(くわうぞく)皇族とは、至尊の御一族の奉稱にして、□一太皇太后、□二皇太后、□三皇后、□四皇太子、□五皇太子妃、□六皇太孫、□七皇太孫妃、□八親王、□九親王妃、□十内親王、十一王、十二王妃、十三女王を謂ふ、而して皇子より皇玄孫に至るままで五世を、男は親王、女は内親王と謂ひ、五世以下は男を王、女を女王と奉稱す、但し皇族女子臣籍に嫁したる者は、皇族の列に在らざるものとす。(典範三〇、三一條以下參照)
- 英
- Imperial family
- 独
- kaiserliche Familie
- 仏
- Famille impériale
皇位
(くわうゐ)天皇の御位を皇位と謂ふ、即ち皇位は至尊の地位にして、統治權の所在を意味するなり。
- 英
- Imperial throne
- 独
- Thron
- 仏
- Trône
皇位繼承
皇位繼承、皇位は、至尊の地位にして、この地位を充たす所の一個人たる天皇は、國家と共に永久なること能はず、故に天皇一度崩御あれば、これが繼承なかるべからず、天皇崩御の場合に於て、皇嗣が皇位を承けて、天皇の位に即くを皇位繼承と謂ふ、皇位繼承は、民法上の相續と異るものなり、蓋し古代に在りて、國家の統治權を以で、君主の所有權と混同し國土臣民を以て、所有權の目的となしたりし時に當りては、君位の繼承は、全く民法上の相續と異らざりしなり、然れども近時の如く、宮中府中の別明かにして、皇位の承繼は、全く國法的のものとなりたるを以て、私法上の觀念たる相續と同視すべからざるや明かなり、皇室典範の定むる所に依れば、皇位繼承は、皇男子孫に限り、皆祖宗の皇統に出でたることを要すとせり。(憲法二條典範一條以下參照)
- 英
- Succession of the imperial throne
- 独
- Thronfolge
- 仏
- Succession du trône
課金局報
(くわきんきよくほう)既に差出したる電報の尋問、改正、及び停止に關して往復する電報を課金局報と云ふ、例へば或る郵便電信局に、一の電報を發送せんことを託したるものありと假定し、其發送人が意外の理由に依り、其電報の文字を改正せんことを請求し、若くは最早必要なきに至りたるが故に、電報發送を停止せんことを請求するが如き、或は記憶を失したるが爲め、發送せし電報の何なりやを尋問するが如き場合に、當該電信局に請求し、電便局に於て尋問、改正、停止の電報を發するときは、此電報を稱して課金局報と云ふ。(三三年九月遞信省令四六號電報規則一〇四條參照)
火災保險
(くわさいほけん)火災保險とは、當事者の一方が、火災に依りて生ずることあるべき損害を賠償することを約し、他の一方が之に對し、報酬を與ふることを約するに依りて成立する損害保險契約の一種なり、火災保險が、他の損害保險と異るの點は、其危險が火災なるの一事にあり、從つて火災保險の被保險利益となるものは、火災に依りて損害を蒙むる恐あるものに限り、例へば家屋商品等なりとす、茲に一言すべきは、元來被保險利益なるものは、動産、不動産の如き、物夫れ自身にあらずして、物の上に存する利益なるにあり、所謂利益とは、吾人が生活上要すべき資料の謂ひにして、且つ體的の物にあらず、假令ば茲に家屋なる有體物ありとせんに、今此上に法律上利益を有するものは、その所有權者のみならず、尚賃借人、質權者、抵當權者等あり、故に之等の者は、等しく一の家屋の上に火災保險契約を締結し、其危險を分配し、被保險者として保險金額を受取るを得るなり、普通火災保險に三種あり、□一家屋火災保險、不動産なる家屋を被保險物とする火災保險なり、例へば家屋所有主が、一の家屋を火災保險に付し、常に保險料を支拂ひて、火災に罹れるとき、該家屋の價格の賠償を受くるが如き之なり、□二動産火災保險、動産にありては、通常之を包括して保險に付することは屢行はるる所なり、例へば家屋内の家具、商店の商品の如きを包括し、火災保險に付するが如きこれなり、斯くの如く包括して、財産を保險に付したるときは、包括財産の當然の性質として、保險期間中物品の增減變更あるは素より其所なり、然れども之が爲に、保險契約に影響を及ぼさざるを普通とす、されど物品の增減し、變更が著しく保險價格を減じたるとき、又は著しく危險に變更を生じたるときは、無效又は保險料の減額を請求するを得るもの也、唯斯くの如く甚しきに至らざる場合に於ては、被保險者は、約束通りの保險料を支拂ふを要し、保險者は如何なる場合に於ても、實際の損害額を賠償せざるべからず、但し定額保險の場合は格別と知るべし、□三賃借人、其他物を保管する者が、自己の過失によりて、火災の爲に保營物を滅失したるときに、其損害賠償義務を果すを一種の損害として附する保險契約、此種のものは、純然たる火災保險にあらざるも、其危險が火災にあるを以て茲に附説せるなり。(商四一九條乃至四二二條、尚□三に就きては責任保險參照)
火災保險證券とは、火災保險に於ける保險者が、保險契約者の請求によりて交付すべき證券にして、實際家は之を裏書讓渡すに依りて、其保險の目的、即ち(被保險利益)及び之に關する一切の權利を讓與するの效あるものとなす、火災保險證券に記載すべき事項は、□一保險の目的□二保險者の負擔したる危險、□三保險價格を定めたるときは其價格、□四保險金額、□五保險料、及び其支拂の方法、□六保險期間を定めたるときは、其始期及終期、□七保險契約者の氏名、又商號、□八保險契約の年、月、日、□九保險契約の作成地、及び其作成の年月日、□十保險に付したる建物の所在、構造、及び其用方、十一動産を保險に付したるときは、其貯藏建物の所在、構造、及び其用方等の十一件なり
火災保險證券
保險契約者
一保險價額金圓也
一保險金額金圓也
一保險料
一保險期間
自明治年月日午時
至明治年月日午後四時
一保險ノ目的ノ所在
一保險ノ目的
右保險ノ目的ノ者
殿明治年月日
當會社ト火災保險ノ契約ヲ締ビ前記ノ保險金額金圓ニ對シ明治年月日ヨリ明治年月日ニ至ル期間ノ火災保險料トシテ金ヲ當會社ニ拂込ミタルヲ以テ當會社ハ此證券裏面ニ記載ノ約款ニ據リ右保險ノ目的ノ火災ヲ保險スルモノ也
東京市區町ニ於テ
明治年何々保險株式會社
月日
- 英
- Fire insurance
- 独
- Feuer-versicherung
- 仏
- assurance contre l'in-cendie
過失
(くわしつ)認識すべき事實を認識せずして爲したる意思の發動、過失に基く行爲と云ふ、換言すれば、不注意に依りて生じたる、錯誤に基く意思發動を謂ふ也、單に過失といへば、認識することを要し、且つ認識することを得る事實を認識せざるを謂ふ、□一故に過失は、事實の不識を要素とす、事實を知り得べきに拘らず、之を知らざることが過失の骨子なり、これを知れば所謂故意を成立せしむ、□二過失は認識の可能なりしことを要素とす、即ち理由ある錯誤は過失とならず、錯誤の理由なきこと、則ち認識し得べかりしことが、過失ある行爲と、無意の動靜とを區別する要點也、過失も、偶成の事實も、結果の認識を缺くは等しきも、過失は認識の可能なるに拘らず、不注意の爲めに之を敢てせし點に於て異る、□三認識すべき事實を知らざるは、普通人が行動に隨伴して爲すべき注意の欠缺に依を過失の一要素とす、而して各人の用ふべき注意の程度は、抽象的客觀的に定むるを要し、具體的主觀的に本人を標準として決すべきものにあらず、一説に曰く、過失を存するには、抽象的客觀的に定りたる注意の欠缺と、具體的主觀的に定むべき認識の能力とを要すと、此説に從へば、錯誤が避け得べかりし時と雖も、能力が足らざりし爲め、之を認識するを得ざりし時は、過失の責に任ずべきにあらずと、次に學者は過失を分ちて、認識ある過失と、認識なき過失とに區別するを普通とす、所謂認識ある過失とは、本人が結果の出來の恐あることを認識するも、之を避け得べしと信じ、放膽事に從ふ場合に存す、(尤も本人が、結果の現出を或然的に認識せるときは、之を認諾と云ひ、此場合には、故意の存するものとなす)所謂認識なき過失とは、全然結果に對して、觀念を有せざる場合に存す、學者が前者を名けて懈怠と云ひ、後者を稱して疎虞と云ふ、過失は、刑法上責任を生ぜざるを原則とす、現行法に於て、單獨の犯罪を構成する場合は、過失殺傷罪、失火罪、囚徒の逃走を覺らざるの罪、過失によりて水害を起したるの罪等にして、故意と合併して罪責を加重すべき場合は、毆打致死等に於て之を見るなり。(刑三八條、一二二條、一一七條三項、一二九條、二〇九條、二一〇條)
- 英
- Culpability
- 独
- Verschulden
- 仏
- Culpabilité
果實
(くわじつ)廣義に於て果實とは、物の用法に依りて生ずる一切の經濟上の利益を謂ふ、民法は之を分ちて、天然果實、及び法定果實の二となす、□一天然果實とは、物の用法に從ひて收取する産出物を指す、故に天然果實は、二個の要素を含む、イ天然果實は、産出物、即ち有機的、又は物理的に、元物より發生する收穫物の謂にして、本來産出物といへば、其物を發生せしむる所の元物中に含まるる、自然の力に依りて發生せしめらるる物のみを意味せしと雖も、社會の進步に從ひ、此固有の意義を擴張して、物理的に發生する果實あることをも認むるに至れり、例へば有機的に發生する産出物は、草木の實の如きものにして、鑛山より出づる鑛物、土地より生ずる粘土、砂利の如きは、物理的に發生する果實の例也、ロ天然果實は、元物の用法に從ひて收取せらるるを要し、從つて物の用法、即ち元物存在の經濟上の目的が、乳を得るにあらざる場合に、例へば荷牛より生ずる乳は果實にあらず、之と同じく暴風の爲めに生ずる落葉は、縱令元物なる樹木より生ずる場合と雖も、果實にあらざるなり、以上を要するに、果實は常に相對的の名稱にして、元物に對するものなり、即ち牛乳は乳牛なる元物の果實にして、鑛物は鑛山の果實なり、茲に附言すべきは、草木より生ずる果實は、草木そのものの果實なりや、又は其草木の存在する土地の果實なりやの疑問也、學者は、普通之を土地の果實なりと解す、蓋し草木は、土地と離れて生存を持續すべきにあらず、故に草木の果實にあらずして、實は地中に包藏せらるる潜勢力の所出なれば、土地の果實と謂ふを正當とすと、此説は、草木と土地を同一視し、別箇の所有權の目的とせざる歐米法律の解釋としては正當ならん、以上説述せる所の果實が、元物と分離して別箇の存在を持する場合に、その所有權は何人に屬するや、法律は、其果實を收取する權利を有するものに屬すと規定せり、例へば元物の所有權者、元物の實借人、又は使用人、其他善意の占有者等は、各其權利に應じて、果實の所有權を取得するを得るものなり、□二法定果實は、本來の意義に於ては果實にあらず、されど果實に關する規定を適用せんが爲めに、羅馬法以來認めらるる所にして、我法も亦此區別を採用せり、所謂法定果實とは、物の使用の對價として受くべき金錢、其他の代替物を謂ふなり、□三金錢其他の物なること、一説に依れば、法定果實は、金錢其他の物にあらずして、之等の物を請求するの權利を云ふと、例へば家屋を賃貸せし場合に、拾圓の家賃は法定果實にあらずして、其拾圓を請求する債權が法定果實なりと、然れどもこは通説にあらず、我法は物夫れ自身、即ち拾圓の家賃を法定果實となせり、□四物の使用の對價として受くべき物たることを要す、所謂使用の對價とは、物の使用に依りて得る利益に對する報酬を云ふ、例へば家賃、利息、借地料等は、使用の對價として支拂はるべき法定果實也、民法の規定に依れば、法定果實は、之を取得する權利の存續期間、日割を以て之を收得すと定められたるが故に、例へば一箇月拾圓の家賃を受くべき家屋の權利者に變更ありたりと假定し、月半ばを權利名義變更の時日とせば、日割計算の結果、拾圓づつを受くべきが如し。(民八八、八九條)
- 英
- Fruit
- 独
- Frucht
- 仏
- Fruit
過失殺傷
(くわしつさつしやう)疎虞、懈怠、又は規則慣習を遵守せず、過失に依りて人を死に致し、又は創傷したる場合を總稱して、過失殺傷と云ふ、疎虞懈怠の説明に就きては、二樣の解釋あり、い、疎虞とは、結果を豫見するも、其認諾を缺く場合に於ける過失にして、懈怠とは、其結果の發生を自覺せざる過失を云ふと、ろ、疎虞とは、一般人に要求すべき注意を標準として、之を缺きたる場合を指し、懈怠とは、特定の地位、例へば官公吏、醫師、船長の如き、各自の職業に伴ひて必要なる所の注意を缺くに依りて生ずる過失を指すと、但し以上何れの説を採るも、兩者の區別は必要なし、何となれば、二者何れの場合に於ても、其刑罰を同うすればなり、次に規則慣習を遵守せずとは、法律は此場合を以て、常に過失あるものと見做し、其結果に就きて責任を負はしむる場合の例となせり、(此他過失の何たるかは、過失の説明を參照せよ)終に殺傷とは、依つて人を死に致し、又は依つて人を創傷したる場合の略語にして、死に致すとは、人の生命を斷つ行爲を意味し、創傷とは、人の身體を傷害することを意味す。(刑一〇九條乃至二一〇條參照)
- 英
- Homicide or corporal wound by mistake
- 独
- Tödtung oder Verwund-ung vom Irrtum
- 仏
- Homicide ou bles-sure involontaire
過失殺傷罪
過失殺傷罪とは、過失殺傷に依りて犯したる罪を云ふ、即ち過失殺傷なる事實に依りて構成せる犯罪の謂ひにして、過失殺傷罪中、死に致したる者は、二十圓以上二百圓以下の罰金、創傷の結果、廢篤疾に致したるものは、其半額、又創傷の結果疾病休業に至らしめたる者は、二圓以上五十圓以下の罰金に處せらるべきもの也。
過失犯
(くわしつはん)過失犯とは、通俗に謂ふ所の無意犯の意味也、但し無意犯なる語は、誤謬矛盾の語にして、無意なれば行爲にあらず、行爲にあらざる犯罪は、偶然の出來事と異るところなし、從つて無意にして犯罪なるもの存するの理なし、過失に基く犯罪、即ち過失犯と雖も、等しく意思の發動なり、意思發動して外的擧動となり、この外的擧動が、每に件ふ物界の現象、即ち結果を豫見し得べきに拘らず、又豫見すべきに拘らず、これを豫見せざるが故に過失存し、從つて過失犯は成立するなり、故に記せよ、過失犯は、無意の犯罪にあらずして、過失の爲めに誤決せられたる意志發動が、法定の惡結果を伴ふ場合に存するものなりと、現行法の規定する所の、過失犯の重なるものを擧ぐれば、過失致死罪、過失創傷罪、過失に依りて囚徒を逃走せしめたるの罪、失火罪、過失決水罪等の數罪に過ぎず、元來犯罪は、故意に基くを要し、因果報酬、罪惡必罰の理に基き、其動機の惡なるを懲戒す、然るに過失犯は、動機必ずしも惡ならず、單に惡結果の發生を認識せざる不注意が、正しからざるに依り、之を罰するものなるが故に、重大なる結果を伴ふ場合の外は、法律は之を假容するなり。(刑三八條及過失の部參照)
課税價格
(くわぜいかかく)以上三語皆租税の賦課に就きて用ひらるる語なり、□一課税物件とは、課税の目的として定められたる物件を謂ひ、□二課税標準とは、以上の物件の數量的表示を云ひ、□三課税價格とは、以上課税物件の價格を云ふ、抑も租税の源泉は、國民の自由所得なり、國民の自由所得は、個人所得の總合にして、個人の所得は、物、人、並に其行爲に依りて表稱せらる、物、人、並に其行爲は、計算し易しと雖も、所得其ものは計算するに難し、計算し難きものは、如何に眞正のものと雖も、時に公平を失することあるべく、計算し難きものは、表見の代稱物なりと雖も、其公平を保することを得べし、是法律が、租税は其目的所得の上に在るを知るも、尚課税物體として、左の代表物に依る所以なり、イ財産、ロ人、ハ行爲これ也、次に課税標準は、實にこれ等課税物件の數量的表示にして、此數量に税率を乘じ、以て納税額を算出するの用に供すべきものなり、例へば土地、家屋、株券、俸給、賣上等は、地租、家屋税、所得税等の課税物件にして、地價、家賃、株金額、俸給額、實上高は、之等租税の課税標準たるなり、人又は行爲に就きて譬ふれば、人又は行爲は、或種の營業税、或は行爲税の課税物件にして、從業者の數、消費額の如きは、其課税標準なりと云ふべし、課税價格なるものは、物を以て課税物件となしたる場合に限り、或る方法に從ひて算出する物件の價格にして、多くの場合に於て、之が課税標準となること多きも、亦必ずしも然らざもるのなり、要するに一は租税賦課の方面より觀察し、其價格を標準として課税するときは、斯かる物の課税價格は、課税標準となるものなり、故に單に課税價格と云へば、それが租税の標準とせらるると否とを問はず、課税物件の價格にして、租税法上課税物件の價格を稱して、課税價格と云ふなり、但し課税價格は、彼の課税額若くは課税價額と異るに注意するを要す。(營業税法一二條乃至一四條、同一六條乃至一八條、及び地租條例所得税法、登錄税法、印紙税法等參照)
- 英
- Value of tax
- 独
- Steuers-werth
- 仏
- Valeur de l'impôt
課税物件
- 英
- Things taxed
- 独
- besteuerte Sachen
- 仏
- Choses imposées
課税標準
- 英
- Standard of tax
- 独
- Steuers-norm
- 仏
- Etendard de l'impôt
過怠破産
(くわたいはさん)過怠破産とは、有産破産の一種にして、彼の詐欺破産に對する用語なり、治く有産破産と云へば、債務者が破産宣告を受け、且つ支拂停止の前後、又は破産宣告の前後に於て、其財産を故意、又は過失によりて減少し、又は隱匿するに依りて成立する、債權者の權利を侵害する犯罪なりと謂ふべし、所謂過怠破産は此一種にして、破産宣告を受けたる債務者が、支拂停止、又は破産宣告の前後に於て、左記の行爲を爲すに依りて成立するものなり、□一一身又は一家の過分なる費用、博奕、空取引、又は不相應の射利的行動に依り、著しく財産を減少し、若くは過分の債務を負ひたるとき、□二支拂停止を延ばさんが爲め、損失を生ずる取引、即ち一時支拂資料を得るも、他日著しく財産に減少を來す取引を爲して、支拂資料を調へたるとき、例へば高利の金圓を借り受けたるが如きこれなり、□三支拂停止を爲したる後、(本項に限り後なることを要し、前後を問はざるの例外とせり)支拂又は擔保を爲して、或る債權者に利益を與へ、破産財團に損害を加へたるとき、但し此場合に、債務者が支拂停止後、物上擔保債權者に債務を支拂ひ、爲に擔保の目的物を滌除せられたるときは、毫も財團を害するの事實なきを以て、過怠破産の罪を構成すべきにあらず、□四債務者が商人なるときは、商業帳簿を備へ、明瞭に法定事項を記載するの義務あるは商法の命ずる所、破産者が此義務に違背して、商業帳簿を備へざるか、又は法定事項を秩序なく記載し、或は之を藏匿し、若くは帳簿の全部又は一分を毀損滅失したるとき、□五破産者の財産目錄、貸借對照表の作成、若くは支拂停止屆の義務を怠りたるとき、及び裁判所の許可を得ずして、其住所を離れたるとき等の五場合は、過怠破産を構成するものにして、又破産者に準ずべき破産會社の業務擔當社員、若くは取締役、及び清算人にも、適用せらるべきものとす。(破産法一〇五一、一〇五二、一〇五八條參照)
- 英
- Neglection bankruptcy
- 独
- Vernachlässigungsbankerott
- 仏
- Banque-route de négligence
過怠約款
(くわたいやくわん)過怠約款は、債務不履行、又は履行遲延に依りて生ずる損害賠償の額を、豫定することを以て目的とする債權者、及び債務者間の契約なり、而して此文字は、舊民法に於て使用せられたるも、現行民法は單に「賠償額の豫定」と云ひて、暗に過怠約欵の内容を指せり、獨乙民法に於ける過怠罰なる語も我民法に於ける過怠約款に略ぼ似たるものにして、唯過怠罰なる語は、契約罰の性質を含めり、佛國民法に於ける過怠約款は、我民法と同じ、元來過怠約款を協定する當事者の目的は、債務を履行せざるとき、又は履行遲延の場合に當り、一々損害を證明して、其賠償をなさしむる煩を避けんが爲に約するものなり、故に法律は此事情を思ひ、過怠約欵あるときは當事者の立證を免除し、裁判官をして其賠償額を增減することを得ざるものと定めたり、されど賠償額の豫定あるときと雖も、素より當該契約の履行を請求し、又は其の解除を請求するの妨となるべきにあらざるなり。(民四〇二條、獨民三三九條乃至三四五條、佛民一二二六條乃至一二三三條參照)
- 英
- Neglection article
- 独
- Kon-ventionalstrafe
- 仏
- Article de négligence
過納
(くわなふ)過失、誤解、又は或事項の未定等の事由に基き、正當に納入すべきにあらざるを、誤つて納入せる金錢、其他の物あるとき之を過納と云ふ、或は納入の額以上を納入せる場合も同一なり、例へば納入すべきにあらざるものを、納入すべきものなりと誤解して納入せるが如き、又は五圓を納むべきに、誤つて拾圓を納めたるが如き場合は過納也、以上の場合に於て、其正當に納入すべき數量を超加する部分を過納額と云ふ、故に前例の五圓を納むべき場合に拾圓を納めたるときは、差引五圓は過納額なりと謂ふべし。(電報規則四七條三號參照)
- 英
- Over paying
- 独
- Überbezahlung
- 仏
- Surpaiement
過納額
- 英
- Amount of over paying in
- 独
- Überbezahlungssumme
- 仏
- Somme de surpaiement
過年度
(くわねんど)政府の會計年度は、每年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る、この現在の年度を現年度と謂ひ、現年度に對し、既往に屬する年度を過年度と稱す。
過年度支出
過年度支出とは、過年度に屬する經費の現年度に於ける支出の謂にして、本來なれば過年度の經費は、過年度に支出すべきも、收支事務の完結せざるが爲め、現年度に於て支出することあり、之を現年度經費の現年度支出に對して、過年度支出と謂ふ、而して此支出は、必ず翌年度の十一月三十日を以て、完結せしむべきものなるが故に、現年度の十一月三十日までは、追々過年度支出なるもの存すと謂ふべきなり。(會計規則六〇條、及び會計法、並に二二年勅九五號參照)
科罰
(くわばつ)罰を科せらるるを科罰と云ふ、彼の處罰と云ふも同義なり、尤も之を一箇の名詞となし、科せらるる罰を謂ふことあり、抑罰とは何なりやと云ふに、一言以て之を示せば、罰とは許すべからざる行動に對して、その不法を自覺せしむる爲めに、首長より科せらるる惡報を云ふ、故に彼の損害賠償、過怠約欵、私法上の權利の喪失、訴訟上の失權、警察及行政處分の或るもの、訴訟費用の負擔の如きは、何れも罰と云ふべからず、普通學者は罰を分ちて四となす、□一懲戒罰、一般國家的共同生活とは別異なろ階級的生活、即ち監督、被監督の特別關係に於て行はるる惡報にして、その關係に於ける秩序維持の爲め、首長より團體員に科するものとす、此階級的生活は、或は國家的生活の一部に關するものなることあり、例へば官吏關係の如し、或は他の公的生活のものあり、例ば船長と船員、校長と生徒との關係の如し、而して此種の懲戒罰に二あり、一は其階級外に放逐するものにして、例へば免官、退校の如し、他は懲冶的のものにして、譴責、罰俸、退學の如きは其例なりと、以上徵戒罰は、彼の刑罰と異るものにして、即ち刑罰は、一般普通の關係に於て科せらるるものなるに反し、懲戒罰は、特別の監督關係に於て科せらるるの差あるなり、□二強制罰、又は行政罰は、官廳の命令する所の一定の行爲、不行爲を強制せんが爲めに科するものとす、(此目的なるが故に、其命令を實行する迄は、幾度科罰を繰り返すも妨げなし)行政罰の刑罰と異る點は、將來の行爲不行爲を目的として強制し、刑罰の如く過去の罪惡を罰するにあらざるにあり、□三規律罰は、國權の行動に對して、抵抗する者に加へらるる惡報にして、例へば不參の證人に對して、民事及刑事訴訟法の規定する罰金の如き、又は戸籍登記に關する屆出の怠慢に依る過料の如し、本罰と刑罰との異る點は、單純なる義務違反に過ぎざるにあり、□四刑罰とは、國家的協同生存の利益を害する有責の行爲に對し、國家が一般普通の關係に於て、行爲の不法を自覺せしむる爲めに加ふる所の惡報なり、其國家的利益の侵害に伴ふ點は、前三者と異り、又刑罰の目的は將來に向ふと雖も、主として過去の事實に關係す、上説の廣義の刑罰を分ちて二となす、イ警察罰、ロ刑罰是なり、此二者の區別に就きては諸種の説ありと雖も、其要點に至りて畢竟程度の差に過ぎざるが如し。(警察罰の部、刑罰の部參照)
- 英
- Punishment
- 独
- Strafe
- 仏
- Punition
過半數
(くわはんすう)全數の半を超過する數の意にして、主として會議の場合に、其採決の方法として用ひらるるものなり、例へば憲法第四七條に「兩議院の議事は、過半數を以て決す云々」とあるが如きこれなり、今茲に拾人の人ありて、或る一の題目を議しつつあるものと假定せよ、而して議論二派乃至三の分派を見るとせば、各其持する所の見解をとりて動かざるときは、遂に決する所なきに終らん、此場合に議事の法則として、全員の半數以上を占めたる説を以て、究極の勝を得しめんとなしたりとせば即ち其終極を見るに至るべし、此方法を過半數の方法と云ふ、終に多數決と過半數決との異同を擧げんに、二者何れも多數の意見に從ふの點に於て一致するも、多數決に於ては、過半數に達せざる場合に於て、尚多數を占むることあるべきも、過半數に於ては斯くの如きことなし。(民九四七條、商二〇九、五七條參照)
- 英
- Majority
- 独
- Stimmenmehr-heit
- 仏
- Majorité
貨幣
(くわへい)貨幣を經濟上廣き意味に解すれば、世人が一般に認めて、交換の媒介、價格の尺度標準及蓄積の用に供する物を謂ふ、されど法律上の要語としては、斯くの如く廣義にあらず即ち法律が認めて辨濟の用具と爲したる物を貨幣と謂ふ、所謂法律が認めて辨濟の用具となしたる物とは、法律に依りて、強制通用の力を有する辨濟の具也との意に過きず、何を強制通用の力と謂ふか、曰く公私の流通に於て打步なく、然かも辨濟の具として受領を拒むことを得ざるものを云ふなり、我が法制に於て、強制通用の力を有する辨濟の具は、通貨と兌換銀行券の二にして、所謂紙幣は、明治三六年法律第六號、及び同二九年三月法律第八號によりて、今日に於ては貨幣にあらざるなり、而して兌換銀行券は、日本銀行に於て發行し、金貨を以て兌換するものなれば、正確の意義に於ける貨幣にあらず、單に法律が辨濟の用具として、金錢たるの用を爲さしむるに過ぎざるなり、兌換券條例第四條に「兌換銀行券は、租税、海關税其他一切の取引に、差支なく通用するものとす」とあるを見れば一應貨幣の如きも、畢竟兌換保證の爲めに、この效あるを認めたるに過ぎざるべし、次に貨幣を分ちて、本位貨幣及補助貨幣の二となす、前者は無制限なる強制通用の力を有し、後者の中銀貨は十圓を限り、白銅及銅貨は一圓を以て限度とし、強制通用の力を有するなり、(貨幣法三條、及び七條並に貨幣の性分に就きては貨幣法の部參照)
- 英
- Coin
- 独
- Münze
- 仏
- Coin
貨幣交換金
(くわへいかうくわんきん)貨幣は、常に交換の用具として使用せらるるが故に、其通用の度繁きに從ひ、或は磨滅減損することなきを保せず、又貨幣の形狀如何に依りて、國家が流通不便上なりと自覺し、其通用を廢止することあり、前者の場合に法律は、貨幣の磨滅造幣の不完全よりして、勢ひ品位量目の差あるを免れざるを見て、法律上一定の公差を定め、其範圍内に於ては、縱令量目少なきも、品位劣るも、強制通用の力を附與し、公差を超ゆる場合に於ては、無手數にて之が交換を爲すべしと規定したり、此場合に、無手數にて引換へに、請求者に交付する金錢を貨幣交換金と謂ふ。(三〇年法一七號、二三年法二四號參照)
貨幣僞造行使罪
(くわへいぎぞうかうしざい)貨幣僞造行使罪とは、僞造したる貨幣を行使するか、或は僞造して貨幣を行使するの罪なり、僞造の何たるかは前記の如く、不正の貨幣を新に製出するにありて、この貨幣を行使するが本罪の構成要件なり、所謂行使とは、流通に置くの意にして、眞正の貨幣として、支拂其他の取引に於て、他人に引渡すを謂ふ、故に之を例へば單に支拂方法として他人に引渡す場合のみならず、贈與、供託するも引渡を伴ふが故に、行使罪を構成するに於て妨なし、但し當初より引渡の意思なく、唯自己の信用を博せんが爲めに、不正貨幣を他人に示すも、行使なる所爲ありと謂ふべからず、されど苟も引渡の意思を以て、之を指示したる以上は、未だ全く之が引渡を了せずと雖も、行使未遂として所罰することを妨げず。
- 英
- Forgery and fraudulent use of money
- 独
- Fälschung und be-trüglicher Gebrauch der Münze
- 仏
- Forge et emploie fraudulante de l'argent
貨幣僞造罪
貨幣僞造罪とは、新に眞貨に摸して造出するに依りて犯す罪を謂ふ、再言すれば、僞造は摸造と同一義にして、眞正にあらざる貨幣を不法に製出することなり、而して其僞貨が、實價にして眞價と同一なると、却つて優れると否とを問はず、等しく不法の製出にして貨幣僞造たり、唯其製出せられたる僞造貨幣は、或一定の程度迄は、眞正の貨幣に類似することを要す、然らざれば假令之を行使するも、不能犯として、不問に付するか、或は詐欺取財の既遂として、處罰するの外なきなり、而して所謂或る程度迄眞貨に類するを要すとは、如何なる點迄を指すか、之を數示的に擧ぐるは不能なるも、苟も普通の取引に於て、人をして眞正貨幣と誤信する程度に於てせられたる以上は、其信念は一時の誤信を價するに過ぎざるときと雖も、猶僞造貨幣たるに缺くる所なきなり。
- 英
- Forgery of money
- 独
- Münzfälschungsverbrechen
- 仏
- Forge de l'argent
貨幣僞造變造罪
貨幣僞造變造罪とは、貨幣を僞造するか、又は變造するの罪にして、僞造の何たるかは前説の如し、變造とは、眞正貨幣の上に變更を加ふるの謂ひにして、例へば眞正貨幣の外觀を變更して、高價なる貨幣の外觀を現出するが如き、或は眞正貨幣の緣邊を剪取り、又は磨削して、其定量を減少するが如き之なり、(獨乙刑法は、この後者の場合を變造罪と區別す)以上の僞造と變造との差異に就きて一言すれば、不正貨幣の模造と、眞正貨幣の變更との差あるのみ、されど假令その材料を眞正貨幣に取るも、之が變更の程度を超えて、一度貨幣の貨幣たる所以の原形を失はしむるに至るときは、茲に不正貨幣の模造となるが故に、こは變造と謂ふべからずして、僞造なりと云はざるべからず、其變更の程度を超過したるや否やは、全く事實上の程度問題にして、各場合に就きて決するの外なきものとす、茲に注意すべきは、去る二八年一三四四號大審院判例に「同質の貨幣を變更するの所爲を變造とし、他質の貨幣を改刪し、水銀を鍍する等の所爲を僞造なり」とせることあり、此判例の如くんば、變造なるもの生ることなしと謂はざるべからず、何となれば、五厘銅貨を變更して、一錢銅貨として使用するが如き、拾錢銀貨を變更して、貳拾錢銀貨として使用するが如きは、眞正貨幣に變更を加へて、他質を摸擬すると謂ふべからず、盖し五厘貨と一錢貨との如き、拾錢貨と二拾錢貨との如き、比較的接近せる價格のものと雖も、尚且つ形狀を甚しく異にするが故に、普通人の要すべき注意をだになさば、決して誤信することなければなり、故に此判例は、彼の貨幣の一部を奪ひし場合にのみ適用するを得べく、彼の獨乙刑法の如く、此場合を特別の一罪とせる法律に在りては、變造罪なしと謂はざるべからざるに至らん、唯紙幣の變造等に於てのみ、此判例は正解たり、蓋し紙幣の變造は、常に實貨の一部を奪ふ方法に依りては行はれざるが故に、同質の貨幣の變更を、變造といふの外なければなり。(刑一四八條乃至一五三條、獨刑一七七條)
貨幣會議
(くわへいくわいぎ)貨幣は、價格の代表物として、世間至る所に使用せらるるものなり、然れども其法貨としては、各單位基準を異にし、國々に從ひて、或は弗貨(ドル)を用ひ、磅貨(ポンド)を用ひ、或は法貨(フラン)を用ひ、馬貨(マルク)或は留貨(ルーブル)を用ふるが如き、基準區々にして海外替爲の換算甚だ便ならず、加之或國に於ては、金畢本位を採用して金を基準とし、或國は銀を基準とし、銀本位を採用し、乃至金銀兩本位を採るが如き、兔に角國際商業の金錢取引上、其不便尠なからざるは識者の常に槪嘆する所、茲に於て乎各國の識者有志家、或は代表者相集まりて、其事を議し、以て全然同一に至らざる迄も、相似寄りたるものと爲さしめんが爲め、會同合議もせしこと屢なりき、貨幣會議とは、即ちこのことなり、歷史上尤も有名なる貨幣に關する萬國會議は下の如し、□一一八七八年の貨幣會議、□二一八八一年の貨幣會議、□三一八九二年の貨幣會議等これなり。
- 英
- Monetary conference
- 独
- Münzunterhandlung
- 仏
- conférence mo-nétaire
貨幣經濟
(くわへいけいざい)交換の中介具として、貨幣を使用するに至りたるを稱して、貨幣經濟の時代と謂ふ、故に貨幣經濟なる語は、彼の物々交換の自然經濟、並に異時交換に於ける信用經濟なる語に對して、中介具たる貨幣に依る經濟の意味なりとす、夫れ太古草味の世にありては、人類未だ社會を成さず、寒暑飢渴を凌ぐには、各自其材料を外界に求め、從つて分業生ぜず、未だ所謂交換なるものの生ぜざる固より其所なり、然るに人智漸く進み、團結以て社會を爲すに至るや、人各其境遇と技能とに從ひ、職業を分ちて、有無相通づるの方法に出づ、茲に於て乎各自其剩餘物を交換し、直接必要の欲望を滿足せしむ、之所謂自然經濟時代にして、彼の獵夫は其穫物を以て、他の有する弓箭と交換し、若くは他人の勞務と交換せるが如き此例なり、然りと雖も物々交換は、直に交換者の欲望を滿足することを得べしと雖も、相互需用の投合容易ならざる等の不便少からざるにより、價格の基準たり、媒介の要具たる貨幣を用ゐて以て中介具とし、需用供給の投合を容易ならしむるの方法を執るに至れり、これを貨幣經濟の時代と云ふ。(世益進みて、異時交換の反對給付たる信用を利用する、信用經濟時代に進むことは、信用經濟の部を參照すべし)
- 英
- Monetary Economy
- 独
- Geldwirthscbaft
- 仏
- Économie moné-taire
貨幣整理資金
(くわへいせいりしきん)貨幣整理資金とは、流通不便の貨幣、及び一圓銀貨幣引換交換の爲めに設置する資金を云ふ、元來流通不便の貨幣及磨損せる貨幣は、政府に於て無手數料に交換し得しむるものなるが、此交換の爲めに、政府は明治三〇年度以後、造幣局特別會計作業益金を以て、貨幣整理資金に充て、貨幣交換金を準備するものなり。
貨幣整理資金會計規則は、貨幣整理資金の收入支出に關する細則規定にして、歳入としては、引揚たる貨幣地金賣拂代を、歳出としては、貨幣交換金、貨幣交換及地金賣拂に伴ふ諸費を以てすること、及び歳出歳入の豫定計算書、並に決定計算書は、大藏大臣之を調製し、帝國議會に提出すべき旨を定め、尚大藏大臣は、其年三月末日迄に終りたる會計年度の受拂勘定表を添付して、提出すべきことを定めたり。(三〇年勅一二八號)
- 英
- Fund of arranging of money
- 独
- Münzeinrichtungsfond
- 仏
- Fonds de l'arrangement de l'argent
貨幣整理資金特別會計法
貨幣整理資金特別會計法とは、上説の貨幣整理資金の爲めに、その歳出入を一般會計と區分し、特別會計を設置することを定めたる法律にして、交換の上引揚たる貨幣を地金として賣却するときには、隨意契約に依ることを得る旨を定めたり。(三〇年法一七號)
- 英
- Law of special account of fund of arranging money
- 独
- Specialrechnungsgesetz des Münzeinricht-ungsfonds
- 仏
- Loi du compte spécial du fonds de l'arrangement de l'argent
貨幣整理金特別會計規則
貨幣同盟
(くわへいどうめい)貨幣紙幣の鑄造本位を定むること等は、全く各國家が自由の權利を有する事、説明を要せず、然れども各國間に、貨幣の名稱、貨幣の單位等を異にすことは、今日の如く交通頻繁なる時代に於ては、國際取引上不便を來すこと少からず、この理由に基き、今日迄各國貨幣に關して同盟をなし、又は同盟のことを會議したること多々あり、然れども其同盟を見たること前後二回に過ぎず、即ち□一ラティン同盟なるものにして、一〇六五年白、佛、伊、瑞西の四箇國間に締結し、一八六一年希臘之に加入せり、その後一八七四年、同七八年、同八五年、同九五年の四回之が補正をなせり、該同盟は、銀貨同盟にして、一法以上の金銀貨幣は、此五締盟國間何れの國にも通用することを約定せるものとす、□二一八七三年、丁抹、瑞典、那威間に締結せられたるものにして、金貨を以て共同の幣制と爲し、其他の貨幣を以て補助貨幣と爲すものなり。
- 英
- Monetary union
- 独
- Münz-bund
- 仏
- Union monétaire
貨幣法
(くわへいはふ)貨幣法とは、何を貨幣と爲すや、其實質、量目、公差、及び貨幣の強制通用力を有すること等を定めたる法規にして、曰く貨幣の製造及發行の權は政府に屬し、純金二分を價格の單位として圓と稱すべきこと、及び貨幣を九種に分ち、二十圓、十圓、五圓、(以上金貨)五拾錢、二拾錢、拾錢、(以上補助貨幣たる銀貨)五錢(同上白銅貨)一錢、五厘(青銅貨幣)となす事、並に貨幣の算則は、十進法に從ふとせられたり、而して金貨幣は無制限に、銀貨は十圓まで、銅貨は、一圓を限り強制通用の法貨たる事、金銀貨純分の公差は、金貨は千分の一、銀貨は千分の三等となし、貨幣にして摸樣の認識し難きもの、又は私に極印を爲し、其他故意に毀損せりと認むるものは、量目の如何を問はず貨幣たるの效なきこと、及び金地金を輸納し、金貨幣の製造を請ふ者あるときは、政府は其請求に應ずることを規定したり。(三〇年三月法一六號)
- 英
- Law of coin
- 独
- Münzrecht
- 仏
- Loi de coin
貨幣拂渡證書
(くわへいはらひわたししやうしよ)造幣規則に依り、金貨幣の製造を請はんとする者が、地金を造幣局に輸納し、造幣局に於て試驗の上、地金の品位一千分中金九百九十以上にして、其含有物の性質造幣に障害なきものと認めたる場合に、量目を査定し、一百目以上なるときは、試驗表を勘定書に添付して輸納人に交付すべし、輸納人が、前上の證書類の送付を受けて、異議なきときは、先きに輸納地金と引換に交付せられたる預り證書を提出して、造幣の上、貨幣を拂渡す旨の證書を受取るものとす、此證書が貨幣拂渡證書にして、此貨幣拂渡證書と引換に、現物の貨幣を受け取るものなり、故に貨幣拂渡證書なるものは、政府が造幣の受諾と、地金相當の貨幣交付を爲すべき旨を記載せる證書にして、輸納人の方面より觀るときは、前記の勘定書、及び試驗表に異議なき場合に、請求するものなるを以て、勘定書、及び試驗表の至當なるを、暗默に認むることを伴ふものとす。(三〇年四月勅一三八號造幣規則七條迄參照)
官
(くわん)統治權の主格たる一方に立ちて、國家の權力を執行するの地位を官と云ふ、然れども或學者の説に依れば、廣く政府または官署と同意義に使用する者あり、此意義に從つて官を使用せるものは、之を客觀的に解し、官署、政府の如き設營を指すか、或は官吏、其他官署、政府の機關を指すを例とす、或は又官職の義に用ふるものあり、所謂職とは、公法上より限定せさられたる範圍内に於て、執行すべき義務ある國家事務を云ふものにして、官に居て職を行ふ之官職なり、故に官と職とは、區別すべく、混同せざるを要するは明かなりとす、されば以上の如く諸種の意義に用ふるものあるも、畢竟するに官なる語は、近時に於て專ら彼の自治に對して、官治と云ふ如き場合に用ひらるるものなり、所謂自治とは、公共團體が、その存立の目的たる、自己の事務を自己の意思により、自己の定めたる機關を以て、處理するを指すものにして、之に對して官を最初に記したるが如く定義せば、最も穩當を得たるものならんと信ず、(因に舊刑第八五條は、官を官署、又は官吏の義に用ひたり)
- 英
- Authorities
- 独
- Authorität
- 仏
- Autorité
款
(くわん)法令、條約、契約書等に於ける編別の名稱として、編、章、節に對し、常に章、又は節の内に於ける編別の名稱を款と云ふを普通とす、尤も或は單に、一の事項の分類に就き、其部分の或る楷級を表はす名稱として用ひらるることなきにあらず、又法令、條約、契約等の各條項其ものを條と云ふに代へて、款と云ふこともあり、されど最も普通の用法は、第一義に於けるものにして、例へば民法第二編物權、第八章先取特權、第二節先取特權の種類、第一款一般の先取特權と類別するときの如し、次に豫算は常に款項に分つべきものにして、款項所定の額は、彼此流用すべからざるものなれば、款、項の意を知るは極めて必要なり。(會計法六、一二條、民及商法等の類別參照)
- 英
- Article
- 独
- Artikel
- 仏
- Article
貫
(くわん)衡の基本を貫と云ふ、貫は度量衡法の定むる所によれば、三七五〇瓦にして、瓦は貫の一萬五千分の四なりとす、元來貫の原基は、白金、「イリヂウム」合成の分銅にして、攝氏零下十五度に於ける、分銅の實量四分の十五を貫と定めたるものなり、而して原器は、(衡度量ともに)農商務大臣之を保管し、此原器に依りて、副原器二組を作り、一は農商務大臣保管し、他は文部大臣保管の任に當るものとす、農商務大臣は、副原器によりて地方原器を作り、地方長官に保管せしめ、以て市井販賣の衡、又は度量を檢定するものとす、然れども地方原器なるものは、前陳の如く、原器によりて作れる副原器に基きて作製せられたるものなるが故に、溫度氣壓等の關係により、勢ひ其衡、又は度量製作の上に差の生ずることあるは、固より其所なり、此場合に法律は、一定の公差を定めて、檢定、製作兩技術上の誤謬を寬容せり、(三四年三月法三號度量衡法參照)
官有財産
(くわんいうざいさん)官有財産は、國有財産と同義にして、即ち國の所有に屬する土地、森林、原野、營造物、家屋、船舶、及びその附屬物の六種を指す、此他別に所謂公用財産なるものあり。
- 英
- Government property
- 独
- Reichsvermögen
- 仏
- Propriété publique
官有財産管理規則
官有財産管理規則とは、前記六種の官有財産を賣拂、讓與、交換及び貸付するときは、特別の規定を除くの外は、總べて依準すべき規定也、遂次説明すれば、□一貸付は、貸付料を徵收するを普通とし、公益の爲め、森林經營の爲め、官有財産、又は森林を貸付するときに限り特例に從ふ而して以上の貸付料は、每年前納を正規とし、前納し能はざるときは、相當の保證を立てしむるものとす、借受人は、主管大臣の許可を經るにあらされば、其財産の原形を變じ、若くは轉貸し、又は故意怠慢に依りて、之を荒廢に歸し、又は毀損亡失するを得ず、以上の場合に於ては、場合に依りて損害の賠償を命ぜらるることあるものとす、□二交換は、同一種類の財産にして、少くとも評定價格相均しきものに限る、但し營造物、家屋、船舶、及び其附屬物は、他人の所有物と交換することを得ざるなり、□三讓與は、府縣、郡、市町村、公共の道路、公園、市場、河川、竝木敷、堤塘、溝渠等の用に供する爲め、官有の土地森林を必要とするときに限り、主務大臣に於て之を爲すことを得るなり、□四賣拂は、官有財産賣拂に就きては、何等の制限なきも、其賣拂代金は、財産引換と同時に一時に納入すべきものとせられたり、但し官有財産を賣拂、貸付、又は交換する場合に於て、其財産を管理し、若くは其取扱を爲す官吏は、之を買受け、又は自己の所有物と交換することを得ざるものなり。(二三年一一月勅二七五號)
- 英
- Rule of superinten-dence of governmental property
- 独
- Oberaufsichtsregel des Regierungsver-mögens
- 仏
- Loi de la surveillance de la propriété
官有地
(くわんいうち)官有地とは、國家の所有權に屬する土地を云ふ。
- 英
- Government land
- 独
- Reichs-land
- 仏
- Terre du gouvernement
官有地特別處分規則
官有地特別處分規則とは、特定の場合に限り、内務大臣に於て、官有地を競爭に付せず、隨意の契約を以て貸渡、又は賣渡する事を得べき旨及び其場合等に關して規定せる法則を謂ふ、即ち其場合を擧ぐれば、□一直接公用に供する爲め又は公益となる事業の爲め、府縣、郡、市町村及公共組合、其他の起業者に官有地を貸渡、又は賣渡すとき、□二不用に屬する官有地一箇所の坪數百五十坪に滿たず、其評定價格二百圓以内のものの賣渡、又は其貸渡料一箇年五圓以内にして、貸渡期限五箇年以内の土地を貸渡すとき、□三鑛山に於ける鑛物運搬道路、冷溫泉場に於ける汲泉場、又は導泉敷地の如き、官許を與へたる主たる事業に直接附隨し、必要缺くべからざるものと認めたる官有地を、其事業者に貸渡又は賣渡すとき、□四會計法施行以前土地の形質を變更し、又は建物を建設するが爲め、貸渡したる官有地を其借地人に賣渡し、又は引續き貸渡すとき等にして、此場合に限り、内務大臣は、隨意契約を以て、貸渡、又は賣渡することを得るなり、尚直接公用に供する官有地を特に府縣郡町村、又は公共組合が、直接公共の用に供するときは、借地料を徵收せざること等に就きても規定せられたり。(二三年七月勅一三五號)
- 英
- Rules of special measures of state-land
- 独
- Specialver-waltungsregel des Reichslandes
- 仏
- Loi du traitement special de la terre du gouvernement
官有地取扱規則
官有地取扱規則とは、官有地の賣買、讓與、交換及貸付に就きて定められたる規定にして、官有地開墾者に無料貸付の件、並に官有地と民有地と交換は、兩地の坪數及價格稍相均しきものにあらざれば、之を許さざる事、或は各廳に於て、國有地を使用せんとするときは、内務大臣に請求すべきこと、その他、官有地借地人は、特に許可を受くるにあらざれば、其地を當初借受けの目的以外に、使用することを得ざる旨等に就きて、規定せられたり。(二三年一一月勅二七六號)
- 英
- Rules of treatment of state-forest
- 独
- Behandlungsregel des Reichsforstes
- 仏
- Règles du traitement des forêts de l'Etat
官有物
(くわんいうぶつ)官有物とは、國家の所有權に屬する物を云ふ、彼の廣義に於ける官有財産と同一の義なり、例へば官有土地、官有森林、官有原野、官有營造物、官有家屋、官有船舶等を總稱して官有物と云ふなり、會計檢査院法十二條に「官有物」とあるは其用例なり。(官有財産の部參照)
- 英
- Government property
- 独
- Regierungsvermögen
- 仏
- Propriété de l'Etat
官印
(くわんいん)官印とは、御璽、國璽、及び官署の印を謂ふ、洽く印とは、或る物體の一面に存する一定の形狀を他の物體に押捺して、常に一定の印影を永存的に現出せしめ、以て或る事實を證明するの用に供せらるる印顆の謂ひにして、官、及び天皇、國家が證明に用ふる印を官印と謂ふ、今現行刑法の用例に從ひて其重なるものを擧ぐれば、□一御璽、國璽、御璽とは天皇の御印にして、文に天皇御璽とあり、國璽とは、日本帝國の印にして、文に大日本國璽とあり、□二各官署の印官、署とは、一人又は數人を以て組織し、一定の範圍を限り、國家の事務を處理する所の機關を總稱し、之等機關が官の證明に用ふる印を官署の印と云ふ、以上の官印にも乾用のもの、例へば燒判の如き類と、濕用のもの、例へば印肉に依りて押捺するものと二種あり、然れども、何れも皆一定の記號文字を刻せられたる物體にして、之を押捺するときは、常に其影蹟を一面に現出するものたる點は相等し。(刑一六四條乃至一六六條參照)
- 英
- Government seal
- 独
- Regierungs-siegel
- 仏
- Sceau officiel
官印僞造罪
(くわんいんぎぞうざい)官印僞造罪とは、官印を摸造し、又は摸造して使用する犯罪を謂ふ、所謂官印とは、官の證明に用ふる印顆にして、之が僞造又は僞造行使が、本罪構成の主要件也、僞造とは摸造の謂ひにして、普通人をして、眞物なりと誤信せしむるに足るべき影蹟を現出する印顆を、新に作製するを謂ふものにして、其印材の如何、及び類似せるや否やは、問ふ所にあらざるなり、唯印材によらずして、單に一回限り影蹟を現はすが如きは、未だ以て官印僞造罪と云ふべきにあらず、終りに注意すべきは、法律が本罪を認めて保護する所の利益は、眞の官印の或る事實に關する證明力を保護するにあるを以て、假令廢印となりたるものと雖も、其使用當時の事實を證明する爲めに、これを僞造するときは、本罪を構成するの妨とならず。
- 英
- Crime of forgery of govern-ment seal
- 独
- Verbrechen der Nach-machung des Offiziellsiegels
- 仏
- Infrac-tion de contrefaire le sceau officiel
官印盜用罪
官印盜用罪とは、官印の影蹟を、職權外に使用する犯罪なり、本罪は官印僞造罪と異り、盜用の所爲あるを以て構成要件とす、所謂盜用とは、職權なき者が、又は職權外に印影を使用すると謂ふ意にして、例解すれば、眞の印顆を盜みて、之を押用すべからざる書類、其他の物件に押用するか、又は既に押用しある白紙に記載すべからざる事項を記載し、或は既に正當に、押用せられたる影蹟を切り取りて、之を押用すべからざる不正の書類、其他の物件に貼付する等の所爲を云ひ、以上の書類物件を正當に押捺せられたるものの如く行使するを以て、官印盜用罪を構成するものとす。(刑一六四條乃至一六六條參照)
官衙
(くわんが)官衙とは、官廳又は官署と同義に用ひられ、場合に依りては、官署等の設營の意味に用ひらるることあり、所謂官署、或は官廳とは、一人又は數人を以て組織し、一定の範圍を有する國家の事務を處理する機關を謂ふものにして、其内官廳は官署と區別して、命令權を行使する義務あるものとなす、而して此意義に於て、官衙を使用するを普通となすも、然も嚴格なる法律上の用語にあらず、若し夫れ政府、若くは官的設營を指稱する名詞として、官衙なる語を使用するは、極めて通俗的にして又政治的の言語なりとす。(官廳の部、及び三二年三月法三九號六條參照)
- 英
- Government office
- 独
- Behörde
- 仏
- Bureau du gouvernement
勸解
(くわんかい)勸解とは、當事者相互間に介入して、民事上の爭ひを調停することを謂ふ、所謂調停とは、彼の仲裁の如く、又は民事上の和解の如く、當事者間に存する爭に介入して、判斷以て爭を停むるを謂ふなり、勸解は、此意味に於ける調停の勸告を意味することあり、係爭事件に於ける該係り判事は、此意味に於ける勸解の權を有す。(民訴三八一、二二一條、民訴法施行條例七參照)
- 英
- Compromise
- 独
- Vergleich
- 仏
- Compromis
官階
(くわんかい)官階とは、官等上の階級をいふ語なり、今左に高等官の官等に就きて少しく説明せん、高等官は其任命の形式に依りて、勅任、奏任、勅任にして、然も親任式によるものの三に區別す、而して親任式を以て叙任する官を除く外、高等官を分ちて九の官階を設く、即ち高等官一等より高等官九等に至る之なり。(二五年一一月勅九六號高等官々等俸給令、三〇年六月勅一九六號、三〇年六月勅一九七號、二七年四月勅四三號文武判任官々等給表、二二年七月宮内省達一一號、二三年六月宮内省達九號、二三年七月宮内省達一四號、三二年六月勅二八二號、三三年三月勅一六號、三三年勅九〇號、三五年二月勅三一號、三二年三月勅九四號、三五年一月勅一一號陸軍武官官等表、三〇年九月勅三一〇號海軍武官官階の件、三二年四月一五三號判事檢事官等俸給令、二七年二月勅一八號、三〇年六月勅二一二號、三二年四月勅一一九號、三五年三月勅一〇一號、三三年八月勅三二六號等參照)
- 英
- Official rank
- 独
- offizielle Reihe
- 仏
- Degrès officiel
管海官廳
(くわんかいくわんちやう)管海官廳とは、海軍に關する行政事務を掌理する官廳を謂ふ、即ち海事局、及び海務署是也、之等の官署は、海員の取締、其他進退に關する手續、水先人の進退、其他船燈、信號器、救命具製造、販賣免許の取締、其外海事に關する行政の事務を掌るものにして、船員法第七九條の規定により、尚管海官廳の事務を行ふべき市町村長を、左の如く指定せり、□一北海道岩内郡岩内町長、宗谷郡雅内村長、室蘭郡室蘭町長、根室郡根室町長、□二東京府荏原郡品川町長、□三京都府與謝郡宮津町長、□四神奈川縣三浦郡三崎町長、□五兵庫縣三原郡福良町長、赤穗郡坂越村長、城崎郡港村長、□六長崎縣東彼杵郡佐世保村長、下縣郡今屋敷町外十町村戸長、□七新潟縣佐渡郡夷町長、□八千葉縣海上郡銚子町長、安房郡館山町長、□九茨城縣那珂郡湊町長、□十三重縣四日市市長、志摩郡濱島村長、十一愛知縣愛知郡〓田町長、寳飯郡三谷町長、知田郡坂井村長、十二靜岡縣賀茂郡下田町長、磐田郡掛塚町長、十三岩手縣上閉伊郡釜石町長、十四青森縣青森市長、下北郡大湊町長、三戸郡湊村長、十五山形縣飽海郡酒田町長、十六秋田縣南秋田郡土崎港町長、南秋田郡船川港町長、山本郡能代港町長、十七福井縣敦賀郡敦賀町長、坂井郡三國町長、十八石川縣鹿島郡七尾町長、十九富山縣下新川郡魚津町長、二十島根縣周吉郡西鄕西町外二町戸長、廿一岡山縣淺口郡玉島町長、廿二廣島縣廣島市長、尾道市長、豐田郡東野村長、廿三山口縣都濃郡德山村長、大島郡久賀村長、廿四和歌山縣海草郡港村長、東牟婁郡三輪崎村長、廿五德島縣名東郡加茂村長、板野郡撫養町長、廿六香川縣綾歌郡坂出町長、廿七愛媛縣北宇和郡宇和島町長、越智郡波止濵村長、廿八高知縣長岡郡三里村長、安藝郡甲浦村長、幡多郡下田村長、廿九福岡縣遠賀郡若松町長、門司市長、三池郡大牟田町長、三瀦郡大川町長、三十大分縣北海部郡佐賀關町長、丗一佐賀縣東松浦郡溝島村長、西松浦郡西山代村長、小城郡芦刈村長、丗二宮崎縣東臼杵郡細島町長、宮崎郡赤江村長、丗三熊本縣宇土郡三角村長、丗四冲繩縣那覇區長之なり、但し以上のものは海員の雇入れ、雇止公認の事務を取扱はざるものにして、之等は總べて海務署、又は海事局に於て取扱はるべきものとす。(三二年法四七號船員法、三二年六月遞信省令二六號、三二年六月遞信省訓令三號參照)
- 英
- Maritime authorities
- 独
- See-behörde
- 仏
- Bureau de marine
款項
(くわんかう)款項とは、款或は項、又は款及び項の義なり、所謂款も項も、共に編別の名稱として、節章に對し用ひらるるを普通とし、此場合に於ては、第何款、第何項と云ふが如く、編別其ものの代表名辭たり、或は單に編別の記號として、上に數詞を冠し、以て索引に便ずるあり、この場合に於ては意義なく、唯通俗には、此兩者の場合を竝合して用ふるもあり、之を要するに、款項ともに編別の名稱として、款は節の分別代名辭、項は款の分類代名辭として、特異の事項を代表せしむ。(憲六四、七三條、會計法六條等參照)
- 英
- Titles or paragraphs
- 独
- Titel oder Absatz
- 仏
- Titres
慣行
(くわんかう)慣行とは、或期間、同一の事項に就きて、同一の行爲を反覆するを謂ふ、同一とは、例外なく反覆せらるるの意にあらずして、其全部より觀て反覆せられたる數が、例外に比して著しく大なるときは、其所に慣行ありと云ふなり、但し慣行を慣習、又は慣例と混同すべからず、蓋し慣行は、同一行爲の繰返さるるを云ふものなるも、慣習又は慣例は、此慣行によりて生じたる規則を云ふなり、故に慣行は原因にして、慣習は、慣行が社會の習ひ性、即ち社會の品性の傾向を作りたる場合に於ける規則なりと云ふべし、然れども社會全體なることを要せず、單に一部分なるも、尚慣習は存するも、必ず不定多數の人に依りて、遵奉せられざるべからざるもの也、之に依つて之を觀れば、慣行は個人的にして、慣習又は慣例は、社會的の性質を帶ぶるものと云ふべし。(尚慣習及慣例の部、國有林野法一九條二項參照)
- 英
- Custom
- 独
- Gewohnheit
- 仏
- Coutume
慣行犯
(くわんかうはん)同種の行爲を繰返すに依りて成立する罪を慣行犯と稱す、本罪にありては、犯人が屢犯行を反覆するに依り、續きて行ふの嗜慾を生じ、所謂犯行の習性、即ち品性の傾向が犯行を敢てするに至るべきが故に、之を罰するものにして、彼の連續犯の如きは、其之を組成すべき一箇の行爲に依りて、一の犯罪を成立せしむるも、慣行犯は然らず、屢々反覆して行ひたることの證明あるときに限り、一罪として罰せらるべし、故に其一を採れば、罪とならざるか、又は別箇の罪となる場合に之を合するに依りて始めて罪となり、又は別罪を成立せしむるなり、常業犯、常習犯の如し、所謂常業犯とは、例へば官許を得ずして醫を業となしたる犯罪にして、業とすることを目的とするが故に、絶えざる收入の目的を以てこの行爲を反覆することを要すとなし、慣行犯の一とせしなり、身體に剌文を爲すを業とするを罰するも、常業犯の一なりとす、阿片煙の製造及販賣罪、健康を害すべき物品の販賣罪等もこの例ならん、常習犯は、常業犯と同じく、單に業と云ふ能はざる行爲を繰り返す場合を稱する語にして、例へば博徒を招結したる罪の如し。(刑二三六條乃至一四〇條、一八六條、醫師法一一條、刑法施行法二五條參照)
管轄
(くわんかつ)管轄とは、國家の命令權、又は國家機關の權限の及ぶべき土地、事物又は人の範圍を謂ふ。
- 英
- Competency
- 独
- Zuständigkeit
- 仏
- Compétence
管轄區
管轄區とは、或る國家機關の管轄に屬する土地の範圍を云ふ、例へば東京は東京府廳の管轄區なるが如し。
- 英
- District of competency
- 独
- Aufseherbezirk
- 仏
- District de compé-tence
管轄區域
管轄區域とは、管轄區と同義にして用語正當なるものなり。
- 英
- Compass of competency
- 独
- Regierungsbezirk
- 仏
- Zone de compé-tence
管轄官廳
管轄官廳とは、或る事項の管轄權ある官廳を謂ふ、例へば海軍に關しては管海官廳、海事局、海務署等の權限に屬するが如きこれなり。
- 英
- Authorities
- 独
- Aufseherbe-hörde
- 仏
- Autorité
管轄權
管轄權とは、或る人、土地、又は事物に關して之を管轄する權利、若くは權限を有するを謂ふ、例へば外務行政に關する管轄權は、外務大臣、公使、領事に屬し、之等外交機關は、外務行政に關する管轄權を有するが如し。
- 英
- Right of competency
- 独
- Zu-ständigkeit
- 仏
- Droit de compétence
管轄地
管轄地とは、或る國家機關が管轄を有する土地を謂ふものにして、土地に關する管轄を範圍の方面より觀察して、管轄區域と謂ひ、管轄する事物、人、土地を區別する方面より觀て、管轄地とは謂ふなり。(憲六〇條、民訴二二、二四、二八條一項、九三條、非訟事件手續法四六條等參照)
- 英
- Jurisdiction
- 独
- Gerichtsbezirk
- 仏
- Juridiction
管轄裁判所
(くわんかつさいばんしよ)管轄裁判所とは、土地の區域、事物の種類、又は職務の性質、或は當事者の合意等に依り、或る事件に就きて、管轄を有する裁判所を謂ふ。(民訴法二六條等參照)
- 英
- Competent court
- 独
- zu-ständiges Gericht
- 仏
- Tribunal de oom-pétence
管轄執行裁判所
管轄執行裁判所とは、我る執行行爲、例へば強制執行等に就き、管轄權を有する裁判所を謂ふ、彼の船舶の強制競賣に就きては、船舶が差押の當時碇泊せる港の區裁判所を以て、管轄執行裁判所となすが如きこれなり。(民訴法七一八條等參照)
- 英
- Court of execution
- 独
- Ausführungsgericht
- 仏
- Tribunal de l'exécution
管轄區裁判所
管轄區裁判所とは、土地、事物等に就き、管轄權を有する區裁判所を謂ふものにして、例へば違警罪が、當該區裁判所の管轄區域内に行はれたるときに、その違警罪の正式裁判に對しては、その區裁判所が管轄區判所なり。
- 英
- Competent district court
- 独
- zuständiges Amtsgericht
- 仏
- Tribu-nal du district de compétence
管轄地方裁判所
管轄地方裁判所とは、或る土地、又は事物に就き、管轄權を有する地方裁判所の謂ひにして、當該土地、又は事物に對して管轄地方裁判所と云ふ。(民訴二六、五六一、七一八條三項參照)
- 英
- Competent local court
- 独
- zuständiges Landgericht
- 仏
- Tribu-nal local de compétence
管轄登記所
管轄登記所とは、或る事項の登記事務を管轄する登記所を謂ふものにして、其事項に對して管轄登記所と稱す。(不動産登記法八條參照)
- 英
- Competent registry office
- 独
- zuständiges Grundbuchamt
- 仏
- Bureau de l'inscription compétent
官紀
(くわんき)官吏の服務上遵奉すべき紀律を官紀と云ふ、官吏服務紀律に依れば、凡そ官吏は、天皇陛下、及び天皇陛下の政府に對して、忠順勤勉を旨とし、法律命令に從ひ、各其職務を盡すべく、其職務に就きては、本屬長官の命令は事の如何を問はず之を遵奉し、又官吏は職務の内外を問はず、廉耻を重んじ、淺劣貪汚の所爲あるべからざること、虎の威を籍る狐の如き所爲なく、常に謹愼懇切なるを務むべき事、職務上の機密を漏洩し、又は發表公示の所爲を爲すべからざること、其他職務に關して贈遺を受け、又は饗燕を受くることを得ざる旨等に就きて規定せられたり、官吏其紀律を紊るときは、素より懲戒處分を受くべしと雖も、所屬長官は、可成的訓告を與へ、以て其侮改を勉むべきものなり。(二三年七月法三九號官吏服務規律、六年四月太政官一三一號達、八年七月太政官一一九號達、八年四月太政官達六五號、一四年五月太政官三七號達、八年八月太政官一五二號達、三二年三月勅六三號文官懲戒令等參照)
官給
(くわんきう)金錢其他の物品を政府、又は官署より給與せらることを謂ふものにして、例へば清貧のものにして無告の窮民に、一箇米一石八斗の積を官給せらるるが如き、罹災者を救助する爲めに避難所費、食料等を官給せらるるが如し、明治八年七月内務省乙第八五號達第二條に「官の給與を云々」とあるは之を謂ふなり、尚屯田兵移住給與規則第一二條四號に「官給を受る者云々」とある、其他官給に係る屯田兵の建物、馬匹讓與、質入、書入に關する件なる法律に於ける官給なる語等は此用例なり。(三〇年四月法四二號等參照)
官金
(くわんきん)國庫の所有に係る金錢を謂ふ、官金は、常に金庫に保管すべきものにして、出納官吏は、其取扱ふ所の現金を保管の爲め、其地所在の金庫に委托すべきものとす。(二二年一〇月大藏省令一三號、會計檢査院法一二條參照)
- 英
- Government money
- 独
- Regier-ungsgeld
- 仏
- Argent de l'Etat
官許
(くわんきよ)凡そ國家の行政行爲を別ちて三種とするは、古來の俗習にして、即ち命、禁、許となす、所謂命とは、命令にて行爲を命ずるもの、禁とは、禁止にして不行爲を命ずるもの、許とは、許可にて禁の變體なり、即ち一般に禁じながら或る例外の場合に、其禁を解く行爲を稱して許可と謂ふ、故に官許とは、官に於て禁止を解く許可の意にして、斯かる行政行爲を稱して官許と云ふ、刑法策二五六條に「官許を得ずして醫業を爲したる者は云々の罰金に處す」とあるが如きは其用例なり。(刑二五〇、二五一條參照)
- 英
- Government permission
- 独
- Re-gierungserlaubnisz
- 仏
- Permission offici-elle
關係
(くわんけい)關係とは、二個以上のものが全然孤立的に存在するにあらずして、一が他に、或は他が一に、或は兩者相互に何等かの作用を及ぼすをいふ、而してその有形なると無形なると、或は單に思惟上のものなると、將た物質的のものなるとを問はざるなり、關係的とは、叙上の意義を有する關係てふ語の形容詞なり、或は又相對的ともいふ。
- 英
- Relation
- 独
- Relation
- 仏
- Rela-tion
關係的不能犯
(くわんけいてきふのうはん)行爲の性質上、本人の豫期したる結果を惹起すこと能はざる場合は、所謂不能犯にして、單に障害の爲めに遂げざりし場合、即ち未遂犯に同じからずと云ふ思想の應用を、一般犯罪の態樣類別に試みんとするに至りしは、十九世紀の始以來のことに屬す、先づ□一不能なる所以を目的物と、手段とに別つ説を生じ□二不能の性質を絶對と相對(即ち關係的)とに分つ意見現はれたりしなり、爾來此區別に基きて、有罪無罪を爭ふを常とす、或る一派の説に依れば、行爲は結果を生ずるか、これを生ずるを得ざるか、二者其一を出でず、從つて絶對的不能、關係的不能と云ふが如き區別をなし得べからずと、其説の良否は免に角、茲には不能犯を分ちて、絶對的不能犯と、相對的又は關係的不能犯の二に區別し得と解し、その關係的不能犯の意義を説かん、抑も罪素となるべき結果を豫見して爲したる行動が、始めより結果を完成するに適せざるときは、其行爲を稱して不能犯と謂ひ、本人の意中に存する目的物、又は本人の採りたる手段が、其性質上結果を生じ得べからざるにあらざるも、偶々實在したる特別の事情の爲に、これを生ずるに適せざる場合を關係的不能と謂ふなり。
- 英
- Relative unsuitable crime
- 独
- relativ untauglicher Versuch
- 仏
- Infraction peu faite relative
還元
(くわんげん)事物現象の有形無形を問はず、夫れを本源的狀態、或は性質に歸せしむるをいふ、例へば演繹せられたる吾人の推理を、其根本的出發點に歸納するを、精神的現象の上に行はるる還元といふが如し、其他一物體を分析して、其分子又は原子となすを、物質的事物の上に行はるる還元作用と云ふが如し、若し又之を政治法律の上に見る時は、現在の制度を舊法に復古するが如き作用を謂ふ、
- 英
- Reduction
- 独
- Zurückführung
- 仏
- Réduction
官業
(くわんげふ)公益又は營利の目的を以て、國家が自ら營む事業を官業と謂ふ、官業を分ちて普通二となす、□一は一私人と等しくなす營業にして、□二は個人の營業を禁止して獨占する專賣之なり、前者は、鐵道營業等にこれを見、後者は煙草專賣、鹽專賣等に於て之を見るなり、彼の郵便、電信、電話等の事業は、公益の爲めに營造物として設營せるか、又は營業として爲すものなるかは、現行制度上不明なるも、事業として自ら營むものなるを以て、等しく官業と謂ふべきなり、私人と同樣の地位に立ちて爲す國家の事業に就きては別に説明すべき必要なきも、所謂專賣に就きては一言するの必要あり、專賣の法律上の性質は、正當の見解に依れば私法上の行爲なり、國家は個人と同等の地位に立ちて、普通の賣買契約を爲すに過ぎず、唯普通の私法上の營業と異る所は、法律の規定によりて個人の營業を禁止するの點にあり、然れども之あるを以て、專賣を私法上の行爲ならずと云ふは過なり、何となれば國家の專賣も、事實上の獨占も實質に於ては何等異る所なく、何れも事業の獨占なれば也、唯上記の個人の營業を禁止するは、別に國家の命令權に依り、所謂財政上の禁止命令なる公法上の關係たるも、專賣による賣買其ものは、國家の命令權によりて、強制するものにあらざるが故に、專賣を私法上の行爲と云ふを妨げざる也、或は曰く、專賣は一種の租税の徵收方法に過ぎず、若し專賣による收入が租税にあらずとせば、政府は法律に依らずして、消費税の大半を徵收するを得るに至るべきを以て、之を租税の徵收方法なりと解するを正當とすと、然れども此議論は、結果より推して性質を判斷するものにして、政治論としては或は可ならんも、法理論としては何等の根據なし。(郵便法、電信法、官設鐵道規則、煙草專賣及鹽專賣の諸法律參照)
- 英
- Government industry
- 独
- Re-gierungsabsicht
- 仏
- Industrie du gou-vernement
勸業債券
(くわんげふさいけん)勸業債券とは、農業、工業の改良發達の爲、資本を貸付するを以て目的とする勸業銀行が、發行する社債證券にして、之を發行するには、資本金四分の一以上の拂込ありたるとき、拂込金額の十倍を限り發行することを得るものなり、勸業債券は、常に無記名利札附とす、尤も應募者又は所有者の請求に依りて、記名と爲すことを得るものなり、勸業債券は、少くとも每年二回以上抽籖償還すべきものにして、償還する場合に、割增金を附與することを得るものとす、次に勸業債券の所有者は、其元金、又は利子を要求せざるときは、元金は拾五箇年、利子は五箇年にして、その要求の權を失ふものなり、元來勸業債券は、勸業銀行に對する純然たる債權證券にして、唯特殊の目的の爲めに爲すものなるが故に、資金募集奬勵の爲めに、割增金等を附するを得るなり、然るを以て、この特別の目的の爲めに設けたる法令の外は、普通債權法に從ふを原則とすべきは勿論なりとす。(二九年四月八二號日本勸業銀行法三四條乃至四二條參照)
官憲
(くわんけん)官憲とは、俗に其筋と云ふと等しく、行政機關の各部を指稱するものなり、由來此熟語は、一種の政治上、通俗上の稱呼として、外國官衙などに用ひたる語なりしが、近頃に至りて始めて法令上の用語となれり。(統監府及理事廳官制三、五條參照)
- 英
- Official authority
- 独
- officielle Authorität
- 仏
- Autorité officielle
完濟
(くわんざい)完濟とは、全部を辨濟するを謂ふ、民法第七〇條に「法人が其債務を完濟する能はざるときは云々」とあるは其用例なり、所謂全部とは、全額の謂ひにして、辨濟とは債權の目的たる給付を行ふに依りて、債務を消滅せしむるの行爲をいふ、故に完濟は、債務の目的たる給付の全額を交付するに依りて、債務を消滅せしむるの行爲と謂ふべし。
- 英
- Full payment
- 独
- Ganzbezahl-ung
- 仏
- Paiement plein
管財者
(くわんざいしや)管財者とは、財産管理をなすものをいひ、民法に管理者といふと同義なり、例へば義務をくして、他人の事務の管理を始めたるものを管理者と云ふが如きこれなり。(典範五三條)
- 英
- Administrator
- 独
- Aufseher des Vermögens
- 仏
- Administrateur
管財人
管財人とは、民法の所謂財産の管理人と同義に用ふることあり、假令ば刑法第三一條第八號に「分散者の管財人」とあるは其用例なり、然れども多くの場合に於て管財人と云へば、破産管財人を指すが如し、所謂破産管財人とは、破産裁判所の選定に依りて、破産主任官の指揮、及び監督を受け、破産財團の管理、換價及び配當に從事する公の機關なり、元來破産者は、破産宣告に依りて、當然破産財團に屬すべき財産の管理、及び處分權を喪失するものにして、此場合に於て破産財團の管理は、債權者をして管理せしむべきを至當とするに似たりと雖も、破産宣告の當時に於ては、事實上全部の債權者を知ること困難なるが故に、全部債權者の管理を認むべからず、茲に於て乎商法は、破産手續上の執行機關として、破産管財人なる制度を認めたり。(商法破産法一〇八條以下參照)
- 英
- Administrator
- 独
- Verwalter
- 仏
- Administrateur
觀察
(くわんさつ)觀察とは、自然現象、又は心意現象を考察推理等の態度を以て、注意深く經驗することをいふ、即ち其經驗が、單に感覺的識認たるに止らずして、吾人の思考と注意とが、目的の意議を伴ひ、その物象に對して研究の態度を執るをいふ。
- 英
- Observation
- 独
- Beobachtung
- 仏
- Observation
官私
(くわんし)廣く官とは、統治權の主格たる一方に立ちて、國家の權力を使行するの地位を云ひ、私とは、被治者たるの地位を謂ふ、而して官私とは、この官又は私、或は官及私の意義なり、刑法第三九條第二項に、「依つて官私の文書を云々」とあるは、官又は私なる義に於ける用例なり。
- 英
- Official or private
- 独
- officiell oder privat
- 仏
- Officiel ou privé
慣習
(くわんしう)慣習とは、慣行によりて生じたる規則なり、所謂慣行とは、或る期間同一の事項に就き、同樣の行爲を反覆することを謂ふものにして、慣行によりて生じたる規則とは、此慣行が、不定多數の人の間に、例外に比して著しく數多く遵奉せられ、社會品性の傾向を形成せる場合を指稱するものにして、斯かる場合の慣行則を慣習と云ふ、彼の慣例と謂ふも同一の義なり。(刑三一七條法例二條參照)慣習法とは、法たるの效力を有する慣習にして、慣習が法たるの效力を有するには、必ず法律に依りて認められざるべからず、何となれば法律は、國家の意思なれば也、我法例第二條によれば、左の條件を以て、慣習は法たるの效力を有するものとなす、□一公の秩序、又は善良の風俗に反せざること、□二法令の規定によりて認められたる慣習、又は法令の規定なき事項に關するものなること。
古來慣習が、法たるの效力を有するに至るの理由に就きては、大に論議の存せし所にして、法律は總べて人民の總意なりとの論者は、慣習は總べての人民が確信せしものなるが故に、法律となるは當然なりとなし、法は主權者の命令なりとの説を主張する者は、或は慣習は主權者の明示、又は點示の認定あるが故に法律となると説明し、或は裁判官が慣習を適用するに依り、法律たるの認定を受くとなす、然れども裁判官は法を適用するものにして、法を創設するものにあらざることを思はば、此説の當を得ざること明かなり、而して我立法者は、明示認定説を採用して、法例第二條を定めたるは前説の如し。(刑三一七條、民二七七、九二條參照)
- 英
- Custom
- 独
- Gewohnheit
- 仏
- Coutume
慣習法
- 英
- Common law
- 独
- Gewohnheits-recht
- 仏
- Droit coutumier
環象
(くわんしやう)有形無形を問ばず、總べて其者の周圍を圍繞する一切物なり、例へば地球を本位とすれば、地球以外の宇宙現象は總べて環象なり、又個人を中心とすれば、社會現象は其環象なり、吾人の心意に對しては、其心意に影響する一切物は總べて環象なり、元來環象なる語は、有機體、即ち生物の外圍にありて、有機體に影響を及ぼす一切の事情、條件、狀態に旨意したるを更に轉用せられ、其構成素たる細胞に對して、有機體は環象なりと云ふ如き、要するに前述の如き意義を得來れり。
- 英
- Environment
- 独
- Umgebung
- 仏
- Environnement
管掌
(くわんしよう)或る事務を管理司掌することを謂ふ、舊刑二〇五條に「官吏其管掌に係る文書を僞造し、又は增減變更して行使したる者は云々」とあるは其用例なり、尚同第二七三條に「官吏其管掌に係る法律規則を公布施行せず云々」とあるも亦同じ。(其他市制五〇條等參照)
- 英
- Overseeing
- 独
- Aufsicht
- 仏
- Surveillance
官署
(くわんしよ)官署とは、彼の所謂官廳と同じく、一人又は數人を以て組織し、一定の範圍を有する國家事務を、委任によりて處理するの機關なり、唯官廳と異る所は、外部に對して命令權を行使せざるにあり、例へば傳染病研究所、製鐵所、造幣局の如し、或は官署を廣義に解して、總べての國家機關を指稱することあり、此意義に於ては、官廳官署總べてを包むものとす、刑法第一七四條、第一九五條等に官署とあるは其用例なり、或は官署を解して、國家事務を所理するの設營なりと爲すものあり、此意義に從へば、官署は有形の建築物にして、一種の事務所を指すものとなる、されど事務所そのものを官署と云ふは、餘りに通俗的にして、法律上の用語としては不當なり、又官署を一の設營なりと解すれば、官署と營造物との區別明ならず、故に本見解は正當ならず。舊刑一七七、二三一條、商四四二條等參照〕
- 英
- Government office
- 独
- Behörde
- 仏
- Bureau du gouvernement
願書
(ぐわんしよ)私人が國家に對し、又は國家機關たる官廳、其他自治公共團體等に對して、或る行爲を請求する書面の義なり、私設電信規則第五條に「願書云々」とあるは其用例なり。(三三年九月遞信省令四八號、及び公證人規則二四條等參照)
- 英
- Written petition
- 独
- Bittschrift
- 仏
- Pétition
官職
(くわんしよく)官職なる語に二義あり、□一は官吏に委任せられたる國家事務の全體を謂ふ、此意義に於ける官職は、單に職と謂ふと同じく、公法上より限定せられたる範圍内に於て執行すべき國家事務を指すものなり、□二は國家事務を委任せらるべき資格、又は設營を官職と云ふ、此意義に於ては、官衙、又は官廳と云ふと同じく、國家事務を執行する所以の設營にして、以て自治體の公職に對す。
- 英
- Government post
- 独
- Amt
- 仏
- Place oflicielle
官制
(くわんせい)官制なる語には、形式上の意義と、實質上の意義とあり、形式上の意義に於ける官制とは、官制と名けて發布せられたるものを謂ふ、例へば印刷局官制、法制局官制、傳染病硏究所官制といふが如し、實質上の官制とは、官廳の組織權根を定むる法令にして、其名稱の官制たると否とを問はず、又發布の形式法律たると、命令たるとを問はざるなり、尤も實質上の官制に就きてはその性質二議に分れ、或は曰く、官制とは職務分配の規定なりと、此説によれば官廳の權限等は、他の法令によりて定るを要すべく、單に行政便宜の爲めに事務を分配するの規定たるに過きず、或は曰く、官制は官廳に事務を委任すると同時に、此官廳の權限に服從すべき義務を暗默に發表するものなりと、以上の兩説を綜合するに官制なるものは、必ずしも職務分配に止まるを要せず、尚官廳の權限を創設し得べきものなるが故に、以上両説を包含して、官廳の組織に關する事務規程と、官廳の權限に屬する法規を官制と云ふを至當とす、終りに官制は、特に憲法に於て、法律を以てすべしと定めあるときの外、天皇大權に屬するものなり。(憲法一〇參照)
- 英
- Official organization
- 独
- Behörde-ordnung
- 仏
- Organisation de l'Etat
關税
(くわんぜい)關税とは、一國が其自國に輸入せられ、又は自國より輸出せらるる貨物に對し、税關に於て課する所の租税にして、之を分つときは輸入税、及び輸出税の二種となる、而して輸出税は、徒に内國貨物の生産を妨害し、加ふるに課税の負擔は内國に落つるが故に、國庫に於て利益する所は、人民に於て損失し、其相殺の結果は、徵税費の損失を蒙むるまでにして、何等の益なきものなれば、我國は、現行關税定率法施行と同時に全廢するに至れり、輸入税に關しても、極端なる貿易主義を取る者は、之が全廢を主張す、蓋し輸入物に課税するときは、一部の人民を利する爲めに、一般多數人に損害を與ふるの憾あるのみならず、一度之を始むるときは殆ど際限なく、却て内國の産業者に依賴心を生ぜしめ、殊更に萬國交通を制限し、而して其結果は、内地に於ける物價の騰貴を惹起し、一般消費者殊に勞働者をして、困難ならしむるに至るの弊あるを以てなりと、然れども各國産物の種類相異り、文明の程度、生計の程度、金利の高低相同じからず、且つ貿易を保護することは、必ずしも外國に對して敵意を表するものにあらず、又直接には、一部人民を利する如きも、間接には、國民全般を利するものなきにあらず、況んや他國の立法時に、或は保護貿易に出づるなきを保せず、故に必ずしも否とのみ云ふべからず、所謂近時に於ける財政關税主義なるものは、實に保護貿易主義と自由貿易主義この折衷に出づるものにして、國庫の收入を測ると同時に、同種の物に課する内國税との權衡を得んが爲め、外國輸入品に課税するものなれば、其正當なるは辯明を要せざるなり、輓近各國の制度を見るに、英本國を除くの外、輸入税を廢したるものなく、これすらも保護政策に出でんかとの傾向を呈することあり、或は關税を廣義に解して、彼の所謂通過税を含むとなすものあり、所謂通過税とは、他國より來る貨物の自國に於て消費せらるるにあらず、遂に他國に輸入せらるべきものなるも、自國が其通路と爲る場合に課する所の租税にして、中世歐洲諸國に於て專ら流行したり、我邦關税法に依れば、通過貨物には關税を課することなく、單に關税に相當する擔保を供せしめ、若し該貨物が内國に於て賣却、又は消費せられたるときに限り、擔保物を以て税金に充つるものとせり。(關税法及關税定率法參照)
- 英
- Custom duty
- 独
- Zoll
- 仏
- Douane
關税警察
(くわんぜいけいさつ)關税警察とは、國家が關税制度の目的を達する爲めに行ふ行政警察にして、關税法規を勵行し、密商脱税を防止し、貨物を保護する爲に、船舶、貨物、並に關税通路の取締に關する一切の事務を謂ふものなり、税關監吏は、以上の事務を行ふ爲め必要と認むるときは、船車倉庫其他の場所に臨檢し搜索を爲すことを得るものなり、尚税關官吏は、犯則事件の調査を爲すためには、證據物件の提出を求め、又は犯則者、證人、參考人を訊問することを得るものなり、税關官吏が、前上の訊問、臨檢、搜査及物件差押をなしたるときは、總べて調書を作り、立會人、若くは訊問を受けたる者に示して、共に署名すべし、税關長は、犯則事件の心證を得たるときは、其理由を明示し、罰金若くは科料に相當する金額、沒收に該當する物品、又は徵收金に相當する金額を、税關に納付すべき旨を通告すべきものにして、犯則者は、五日以内に通告の旨を履行すべく、履行せざるときは、税關長に於て告發の手續を採るべきものとす、而して此税關長の處分は、違警罪の即決例と同じく、行政處分なるも、一度その旨に從ふときは、同一事件に就きて再び訴を受くることなきものとす。(關税法八四條乃至九七條參照)
- 英
- Custom police
- 独
- Zollpolizei
- 仏
- Police de douane
官制權
(くわんせいけん)官制權とは、行政機關の官制を定むる大權を謂ふものにして、憲法第一〇條に「天皇は、行政各部の官制を定め云々(中略)但し此憲法又は他の法律に特例を揭げたるものは、其條項に依る」と定められたるは即ちこれなり、之に依れば通常官制は、憲法上天皇の大權に依つて制定せられ、特例として憲法、其他法律に、法律を以て定むべしとせられたるものは、法律を以て之を定め、未だ何れに依つても定められざるものは、法律を以ても尚定め得べきものなり、或は曰く、憲法に法律を以て定むべしと爲したる場合の外は、法律を以て官制を定むることを得ずと、此論者は、官制は必ず事務規定なるが故に、命令を以て定むるを本則とし、行政監督者たる元首の制定せざるべからざるものなりと謂ふなり、然れども此論に依るときは、憲法第一〇條但書の法律云々の文字は贅文に屬するものとなる、何となれば法律を以て定むべきは常に殊例なれば、特にこれを規定するの要なしと云はざるべからざればなり。(憲法一〇條一項及二項參照)
- 英
- Organization power
- 独
- Or-ganisationsgewalt
- 仏
- Pouvoir de l'or-ganisation
關税通路
(くわんせいつうろ)外國より外國に貨物の輸送をなすに當り、通過の爲め我國に輸入せる貨物を運送すべき國内の通路を關税通路と謂ふ、此關税通路は、勅令に於て定めらる、即ち下の如し。□一橫濱新潟間は官設鐵道、日本鐵道及北越鐵道。□二橫濱大阪間は官設鐵道、□三四日市大阪間は關西鐵道、□四大阪敦賀間は官設鐵道、□五大阪神戸間は官設鐵道、□六神戸下關間は山陽鐵道、□七小樽室蘭間は北海道炭鑛鐵道、□八博多長崎間は九州鐵道、□九博多長崎間は九州鐵道、(注意、鐵道國有の結果、鐵道の名稱異るに至れり)上記の如く、我國を通過する外國貨物は、必ず以上の通路に依るを要するものにして、通過の爲め、貨物の輸入を爲さんとするときに、之を輸出する地を異にする每に、其目錄を提出すべきものとす。(關税法三三條乃至三八條、三二年九月勅三八三號、三四年勅二二〇號及三五年勅一九七號參照)
- 英
- Way of custom duty
- 独
- Zollsweg
- 仏
- Chemin de l'impôt de douane
關税定率法
(くわんぜいていりつはふ)關税定率法とは、如何なる物品に關税を課し、或は免ずるか、及びその定率は如何なる割合を以てするかを規定せし法規也、今其定むる所を見るに、輸入物品を三に區分し、□一を有税品となし、兵器、時計、機械、飮食物、衣服、藥材、染料、玻璃、穀物、象牙毛甲類、金屬、油蠟、紙文具類、布絲、煙草、酒類、雜品の十六種を云ふ、これ等は各その税率を異にす、□二を免税品となし、廣告用の書畫、骨灰以下三拾五種を包含す、□三を禁制品となし、法律を以て禁ぜられたるもの、及び法律に違反する物、並に公安良俗を害すべき物となし、而して關税は、從價税に依るを原則とし、物品の課税價格は、其仕入地、産出地若くは製造地に於ける原價に、荷造貨、運送費、保險料、其他輸入港に到達する迄の諸費を加へて算定するものなり、從價税に依るは原則なるも、從量税に依るを便宜とするものは、勅令を以て其物品、及び細別を定むることを得るものとせり。(三〇年三月法一四號、三五年九月勅二一九號、三二年法一八號、同六九號、三五年同一七號參照)
- 英
- Law of custom tariff
- 独
- Zolltarifsgesetz
- 仏
- Loi du tarif de douane
關税同盟
(くわんぜいどうめい)關税同盟とは、政治上獨立せる關税權を有する國家が聯合して外部に對し、統一せる關税區域を構成する同盟を云ひ、此同盟の種類は一定せずと雖も、略ぼ次の三種に類別することを得べし、□一關税區域加入とは、締盟國が關税徵收の區域を一にするものにして、□二關税聯合とは、締盟國相互に關税を聯合して、輸出入税を徵收せざるもの、□三狹義の關税同盟とは、關税組織、及び其税率等全部を同一とし、且つ相互に徵收を免ずるものなり。
- 英
- Custom union
- 独
- Zollverein
- 仏
- Union douanière
關税法
(くわんぜいはふ)關税法とは、關税の賦課及徵收、並に船舶入港時の屆出、其他の手續、貨物の調査方法、税關官吏の職權、以上に關する異議、及び訴願、竝に違反罰則に就きて規定せられたる法律なり、關税は、關税定率法に依りて賦課徵收するものなるも、條約に於て特別の協定あるものは、其協定税率に依る、但し通過の爲め輸入するものには、關税を課せざるものとす、之等の關税は、輸入申告の日に於て行るる法規に從ひ徵收するものにして、關税の徵收權は、貨物輸入の日より滿二ケ月を經過したるときは、時效に依りて消滅するものなり、次に税關長は、その職權の執行に必要と認むるときは、船車の出發を止め、又は進行を停止することを得るの職權あり、其他税關長は必要と認むるときは、船舶若くは貨物に關する書類を提出せしめ、或は他に必要の處分を爲すことを得るものとす、以上關税の賦課に關する税關長の處分に對して不服ある者は、異議の申立を爲すことを得べし、尚大藏大臣に訴願することを得るなり、凡そ關税の逋脱を圖り、又は逋脱したる者、並に輸入禁制品の輸入を圖りたる者等は、貨物沒收及罰金に處せらるべきものとす。(三二年三月法六一號)
- 英
- Law of custom duty
- 独
- Zolls-gesetz
- 仏
- Loi de l'impôt de douane
關税未納
(くわんぜいみなふ)關税の納入末濟を謂ふ、關税法の規定によれば、關税未納の貨物は、その關税の擔保たるものとせらる。(關税法五條)
- 英
- Duty unpaid
- 独
- unbezahlter Zoll
- 仏
- Impôt non-payé
官設
(くわんせつ)官設とは、國家の設立維持に係るを謂ふ、凡そ國家の事業にして國家の設立維持に係るものは、その收益の目的に出づると、或は公益の爲めに設置せるを問はず、等しく之を官設といふ。
- 英
- Governmental
- 独
- Regierungs-
- 仏
- Gouvernement
官設鐵道
官設鐵道とは、國家が直接經營する鐵道事業を謂ふ、元來鐵道の敷設は、國權の作用を必要とする事務にあらず、隨つて私人をして經營せしむるを妨げず、若し國家が之を經營するときは、之を營造物として施設するを得、或は一の營業として經營することを得べし、我邦にては、鐵道は私人の經營を許し、唯國家も亦等しく敷設經營せるものにして、然かも純粹なる營業となしたるものの如し、現在に於ては、鐵道に關する法規は、普通の私法に對する例外規定をなすものといふべし。(二三年三月法二〇號、二三年三月勅三三號、二六年一月法二號、二六年七月勅七一號)
- 英
- Government railway
- 独
- Regierungseisenbahn
- 仏
- Chemin de fer de l'Etat
官設鐵道會計法
(くわんせつてつどうくわいけいはふ)官鐵道設會計法とは、官設鐵道は、特別會計に依ることを定めたる法律にして、政府は每年鐵道事業の歳出歳入豫算を調制し、歳出歳入の總豫算と俱に、帝國議會に提出すべきこと、及び災害事變に依り、鐵道財産に大破損を生じ、豫算額を以て修理するに足らざる場合に其費用を補ふ爲め、鐵道事業の歳出豫算に豫備費を設くるを得る旨等を規定せり。官設鐵道用品資金會計規則とは、鐵道用品に關する資金の收入支出に就きて規定したる勅令にして、何を鐵道用品資金の歳入となすか、又は歳出となすか、其受拂勘定の受入拂出等に就きて規定せられたり。
- 英
- Law of government railway finance
- 独
- Rechnungsgesetz der Regierungseisenbahn
- 仏
- Loi de la finance du chemin de fer de l'Etat
官設鐵道用品資金會計規則
- 英
- Rule of ac-count of fund of material of Government Railway
- 独
- Rechnungsregel des Mate-rialsfonds der Reichseisenbahn
- 仏
- Règle des comptes du fonds des matériels du chemin de fer de l'Etat
官設鐵道用品資金會計法
官設鐵道用品資金會計法とは、官設鐵道用品を購入貯藏し、官設鐵道運輸營業、竝に建築事業の需用に應ずる爲めに置かられたる、官設鐵道用品資金の特別會計に就きて規定せる法律なり。(二三年三月法二〇號、二六年一月法二號、二六年七月勅七一號參照)
官設保税倉庫
(くわんせつほぜいそうこ)官設保税倉庫とは、國家の設立維持に係る保税倉庫を謂ふ、所謂保税倉庫とは、輸入手續未濟の貨物を藏置し、その藏置中は輸入せざりしものと見做して、收税を猶豫せらるるものとす、官設保税倉庫に於て貨物を藏置せるときは、記名の預證券を發するものにして、この預證券は、裏書を以て讓渡すことを得るなり、而してこの預證券の讓渡は、藏置貨物の讓渡と同じく、物權的效力を生ずるものとす、故に藏置の貨物は、常に預證券と引換にあらざれば交付すべきものにあらず、官設保税倉庫に於ては、藏置期限を經過したる貨物にして、貨主か之を引取らざるときは、當該官廳は其貨物の番號、品名、箇數等を公告し、六箇月を經過するも引取る者なきときは、其物品を競賣に付し、輸入税、公告料其他の手數料を差引き、殘金あるときは、貨主に還附すべきものとす、尚貨物腐敗其他の事故に依り、倉庫又は他の貨物を害する虞あるときは、公告して指定の期限内に引取を命じ、引取らざるときは、夫れを減却するを得るものとす。(三〇年三月法一五號保税倉庫法一〇條乃至一七條參照)
- 英
- Government bonded ware-house
- 独
- Regierungszollspeicher
- 仏
- Magasin du gouvernment
管船局
(くわんせんきよく)管船局とは、遞信省の一課局にして、□一航路標識に關する事項、□二航路、船舶、海員、水運、及び保護海事會社の監督に關する事項等の事務を掌るもの也。(三一年一〇月勅二九五號遞信省官制三條乃至六條參照)
- 英
- Marine Bureau
- 独
- Schiffamt
- 仏
- Bureau de navires
官廳
(くわんちやう)官廳とは、一人又は數人を以て組織し、法令の規定に依りて、一定の範圍の國家事務を處理する爲め、命令權を外部に向て行使するの義務を有する機關なり、分説すれば、□一官廳は、一人又は數人を以て組織するものなり、一人を以て組織するを單獨制の官廳と云ひ、數人を以て組織するを合議制の官廳と云ふ、單獨制は、事務を敏捷に處理することを得るの利あるも、往々過誤を生ずるの虞あり、議合制は、愼重の考量を要する事務を處理するに適するも、敏捷を缺くの不便あるを免れず、□二官廳は、一定の範圍に限られたる事務を處理するものなり、これ機關の統治者と異る點にして、或は事務の範圍、又は種類によりて限られ、或は管轄區域によりて定めらる、之中央官廳、及び地方官廳の別、又中央官廳中にても、各省の別、或は地方官廳にても、府縣、警視廳の別生ずる所以なり、□三國家の事務を處理するもの也、此點に於て公共團體と區別せらる、盖し公共團體は一の法人にして、各固有の意思を有し、從つて自己の事務を處理するものなり、唯之を執行する義務を國家に對して有し、併せて其遂行を以て團體の生存目的となす、之に反して官廳は人格なく、自己の意思を有せず、從つて自己の生存なき也、唯其行ふ所の事務は國家の事務にして、權限として委任せられたるものなり、□四官廳は、外部に對して命令權を行使するものなり、此點に於て彼の官署と異る、盖し官署は等しく、國家の事務を處理するも、單に事實上の行爲に限りて命令權を行使せず、之に反して官廳には、命令權の觀念を要するものなり、終に官廳を補助する補助機關に就きて一言せん、所謂官廳は、其委任せられたる國家の事務に關して、之を處理するの義務を有し、且つ其責任を負ふものなり、補助機關は之と異り、官廳を補助するの機關にして、官廳より委任せられ、唯其委任せられたる事務處理に對して、官廳に向ひて責任を負ひ、直接に國家に向つて責任を負ふものにあらざるなり。
- 英
- Government office
- 独
- Behörde
- 仏
- Bureau du gouvernement
官廳用電信電話規程
(くわんちやうようでんしんでんわきてい)官廳用電信電話規程とは、官廳が事務執行の爲め施設する電信電話に關して、當該官廳が事務執行に差支なき限りは、之を公衆通信の用に供するの義務あることを定めたるものにして、官廳用の電信又は電話は、左に揭ぐるものに限る、□一一構内に施設するもの、□二警察事務、及び刑事訴訟事務の專用に供する爲め施設するもの、□三鐵道、軌道、竝に運河、水利、水防、火防、水道、水難救護、及び氣象觀測の事業、或は高壓及特別高壓の電氣事業等の爲に設施するもの、□四電報送受の目的を以て、郵便電信局又は電信局との間に施設するもの、□五一市區町村内、若くは隣接市區町村内間に於て、又は電信電話の連絡なく、且つ以上□六に依ることを得ざる市區町村間に於て施設するもの、以上の場合に、電話又は電信を架設せんとするときは、所轄一等郵便局を經て、遞信大臣に願書を提出し、其許可を受くべきものとす。(三三年九月遞信省令五一號、及び三三年八月勅令三五六號參照)
官等
(くわんとう)官吏の官職上に於ける等級を謂ふ、例へば高等官一等より九等まである如く、武官に大將以下少尉まであるが如し、高等官々等令の定むる所によれば、初めて高等文官に任ぜらるる者の官等は六等以下にして、高等官の官等は、別に進級の例を定めたる者、及び七等以下の者を除く外、在職滿二年を踰ゆるにあらざれば陞敍することなしとす。(二五年一一月勅九六號高等官官等俸給令、二七年四月勅四三號文武判任官等級表、三五年一月勅一一號陸軍武官官等表、三〇年九月三一〇號海軍武官官階參照)
- 英
- Official rank
- 独
- offizielle Reihe
- 仏
- Degré officiel
觀念
(くわんねん)心理學上最も普通に觀念といへば、實際の經驗が既に去りたる後、時を經て再び其現象が想念せらるる、その心裡に留存する心像をいふ、而して其經驗は、外界事物の經驗たると、内界意識の經驗たるとを問はざるなり、吾人の想像、推理等の智識作用は、此過去の經驗が觀念として、心裡に保留せらるるによる、而してかかる觀念が何等かの機會、剌激、又は必要に應じて追想せらるる作用を觀念の聯合と云ひ、特に英國派の心理學者は、之によりて吾人の一切の精神作用を説明せんとせり、觀念の例を擧ぐれば、爰に櫻の花を眼前に眺むるときは、吾人の心意に之は櫻なりてふ意識起るべし、併し一旦現物を離るると共に、其意識も消え去るべし、然るに其後何等かの緣によりて、其意識が再び心象に上り來る時、これを觀念と稱するなり、哲學上に於ては其意義特殊的にして、一般に確定せる意味なし、然れども多く最も根本的なる思惟の本源となるものを意味するが如し。
- 英
- Idea
- 独
- Idee
- 仏
- Idée
官費
(くわんぴ)私費、公費に對し、國家の負擔する經費を官費と云ふ、彼の官費留學生など云ふは其用例なり、外國旅費規則に依れば、官吏、公務に依りて外國に旅行するときは、其行程日數により、乘船料、滊車料、客舍料、食卓料、日當支度料、其他を官費支給せらるるものなり。(二〇年五月閣令一二號、一乃至四條、陸軍一年志願兵條例六條、葉煙草專賣法五條等參照)
- 英
- Government Expense
- 独
- Re-gierungskosten
- 仏
- Dépens du gouverne-ment
官府
(くわんぷ)官府とは、官廳及政府を包含せるの語にして、官廳とは、一人もしくは數人を以て組織し、法令によりて定められたる範圍に於て、國家事務を處理する機關をいひ、(官廳の部參照)政府とは、政治の府を意味す、所謂政治とは、普通泰西學者の政府行爲と云ふものにして、我國に於ける大權作用に類應するものなり、換言すれば大政の方嚮を決定するの作用にして、政府と云ふべきものは、内閣、國務大臣、樞密院等にして、斯かる意味の政府と、官廳とを總稱して官府と稱す。
- 英
- Government office
- 独
- Behörde
- 仏
- Bureau du gouvernement
還付郵便物
(くわんぷいうびんぶつ)郵便物の容積及重量の制限を超過し、其他制規に違反して差出したる爲め、又は郵便物の受取人所在不明なる爲め、或は郵便料不納たるに依り、受取人が其受領を拒みたるとき、並に留置期間を經過したる理由等に基き、郵便官署より差出人に返還する郵便物を還付郵便物と云ふ、小包郵便物に關しては以上の理由の外、差出人が其小包差出の際、名宛地の郵便局所に於て、配達を遂ぐる能はざる場合に於ける轉送、又は棄却の請求を爲さず、又は小包の受取人が、該郵便物の轉送を請求なさざるときに、配達を遂ぐる能はざるときは、直に之を差出人に還付するなり、又輸送の請求を爲したる郵便物にして、其配達を遂ぐる能はざる場合も、亦還付せらるべきもの也。(三三年九月遞信省令四二號、郵便規則四、六、三二、三三、八二條參照)
官文書毀棄罪
(くわんぶんしよききざい)官文書毀棄罪とは、官の文書を毀棄する罪にして、所謂官の文書とは、□一官に於て作成する文書を總稱し、閣令、省令、判決書、其他官署の會計帳簿、又は官署より發する諸般の書簡に至る迄、苟も官署の事務として、作製せられたる總べての文書を包含す、□二官の文書中には、作制者の官吏たると、私人たるとを問はず、官署に於て、證據として保管する所の文書をも包含することあり、此意味に於ける官文書は、假令官吏の公證したる文書と雖も、一旦私人の專有に歸したるものは、官文書の中に入らず、從つて之を毀棄するも、官文書毀棄罪を構成せざなり、次に毀棄とは、文書を毀損して、文書の有する證據力の一部、又は全部を滅却するを云ふ、其方法に二種あり、□一は文書の記載しある實體を、有形的に毀損するものにして、□二は文書の記載しある物體は、之を其儘保存し、其文字のみを抹消するを云ふ、之を例ふれば、文書を燒却するとか、之を引裂くとかの如きは前者に屬し、其記載文字の一部、若くは全部を抹消するが如きは後者の例なり。(刑二五八條文書毀素罪の部參照)
- 英
- Crime of breaking the authentic writing
- 独
- Vernichtungsver-brechen der rechtskräftigen Schrift
- 仏
- Infraction de briser les documents authen-tiques
官文書僞造行使罪
(くわんぶんしよぎそうかうしざい)官文書僞造行使罪とは、官の文書を僞造して行使する罪なり、洽く文書と云へば、吾人の思想を發表するの記錄にして、記錄は普通文字なる記號の配列に依りて成るものなり、而して刑法に於て論ずべき文書は、權利義務に關する證書類等、少くとも或る事實を證明するものに限る、官の文書は以上説文書の一にして、官に於て作制する文書、又は官に於て證據として保管する文書を指すものとす、次に僞造とは、作製者の名義を僞りて、新に文書を作製することを云ひ、其名義者の死亡者たると、又全く架空の者たるとは問ふ所にあらざるなり、普通の解釋によれば、文書の僞造を二種とす、□一は有形的僞造にして、作製名義を僞り、新に文書を作制するものにして、□二は無形的僞造と云ひ、作制名義は眞實なるも、其内容が眞實に反するを指すと、而して曰く法律の文書を保護するは、有形の文書にあらず、無形の證據力と、之に依りて證明せらるべき事實の眞正となり、故に無形的僞造なるものは、其内容の虛僞にして、意思表示の虛僞に屬し、文書の僞造と云ふべきにあらざるが如し、次に僞造文書の行使とは、欺罔の目的を以て、其文書が證明せんとする方法に於て、他人に指示するを謂ふ、然れども現實に、他人が其文書に依りて、誤信すると否とは問ふ所にあらず、又其行使は、必ずしも他人を錯誤に陷らしむる以前たることを要せざるなり、猶一の注意を要すべきは、僞造文書に依りて欺罔せらるべき人と、其欺罔に基きて眞實損害を被るべき人とは、必ずしも相一致することを要せざること之なり、例へば甲者の貯金引出願書を僞造し、之を貯金取扱郵便局に提出して、甲者の貯金の一部を引出すが如し。(以上官文書に關する罪は、公文書に準用せらる)
- 英
- Forgery and fraudu-ient use of the authentic writing
- 独
- Fälschungs- und Betrüglichgebrauchsver-brechen des öffentlichen Documentes
- 仏
- Forge et emploie fraudulante des docu-ments authentiques
官文書僞造罪
官文書僞造罪とは、現今刑法に於ては左の犯罪を總稱するの名稱なり、即ち詔書僞造罪、詔書變造罪、詔書毀棄罪、官文書僞造行使罪、官文書變造行使罪、官文書毀棄罪、公證文書僞造行使罪、公證文書變造行使罪、官吏其管掌に係る文書を僞造し、又は增減、變換、毀棄する罪、官の文書を僞造するに依りて官印を僞造、又盜用するの罪等を總稱す。(刑一五四條二項以下)條、二三年一〇月法一〇〇號參照)
- 英
- Forgery of authentic writing
- 独
- Fälschungsverbrechen des öffentlichen Documentes
- 仏
- Forge des documents authentiques
官文書變造行使罪
(くわんぶんしよへんぞうこうしざい)官文書變造行使罪とは、官文書を增減變更して行使する罪なり、(官文書の意義及行使に就きては、官文書僞造行使罪の部參看)文書の增減變更とは、眞正なる作制名義に依りて作制せられたる文書の内容を、增減變換することを意味す、而して其文書の增減變換は、文書が證明せんと欲する所の事實に關することを要するは明なり、唯其增減變換の結果が、眞實に反すると否とは問ふ所にあらざる也、或は曰く、文書增減變換の結果、却て文書が眞實となりたるが如き場合、例へば「十」と書せられたるを「拾」と變換し、或は「右せよ」との意味を誤つて「左せよ」と書せられたるが如き場合に之を、訂正するが如きは、所謂變造と謂ふべからずと、或は然らん、されど下の如き場合は如何に解すべき乎、例へば支拂命令官が其支拂命令に、金五千圓と書すべきを誤りて、金五十圓と書し、之を交付したる場合に、これを五千圓と訂正し、現金受領の爲め、當該金庫に提示したるときは、官文書の變造と云ふべき乎、或は曰く官書僞造變造罪は、共に官文書の實質的眞實を保護するものなる故に、以上の場合には實質の侵害なく、從つて罪責なしと、或は曰く、文書の形式的眞實を害するが故に、以上の場合は有罪なりと、茲には後説を採用せん。(刑一五四條乃至一五八
官簿
(くわんぼ)官簿とは、官署の諸帳簿を指し、その記入樣式等は、法令を以て明定せられたるものなり、現行官廳の帳簿整理記入方法は、其事務分掌の上より分れて左の二種となる、□一科目整理の樣式□二現全整理の樣式これなり、科目整理は、現金を取扱はず、單に書類の授受を以て收支を整理するの方法にして、常に歳出歳入の種目に就き、收支の金額を整理するを以て目的とす、現金整理の樣式は、專ら現金を出納するものの整理にして、常に現金在高を知るを目的とし、其收支の種目性質を區別せざるものなり、今その帳簿を擧ぐれば、□一國庫日記簿、原簿、補助簿、□二主計簿、□三收入官吏收入簿、□四歳入事務管理廳歳入簿、□五金庫出納役支出簿、□六出納官吏現金出納簿等なり。(明治二六年一〇月大藏省令三二號、三〇年大藏省令二二號、三一年同二號、三二年同四二號、三三年同一〇號、三五年同六號及九號參照)
- 英
- Government book
- 独
- Regier-ungsbuch
- 仏
- Livre du gouvernement
官房
(くわんぼう)官房とは、各省、道、府、縣、警視廳等に於ける長官補佐の爲めに設けられたる補助機關なり、今各省に於ける大臣官房の職務の重なるものを擧ぐれば、□一機密に屬する事項、□二官吏の進退身分に關する事項、□三大臣の官印及び省印の管守に關する事項等にして、各府縣に置く知事官房の採るべき事務を擧ぐれば、□一官吏の進退及身分に關する事項、□二文書の往復に關する事項、□三官印府縣印の管守に關する事項、□四褒賞に關する事項等なり、又北海道廳官房に於ける事務を擧ぐれば、□一官吏の進退身分及褒賞に關する事項、□二文書の往復及記錄編纂に關する事項、□三官印、廳印の管守に關する事項之なり、警視廳に於ける總監官房の事務の主なるものは、第一課は、各部署成案の審査、制規に關する事項、官吏の進退及身分に關する事項、公文の編纂、保存、統計、竝書籍の管守に關する事項、文書の往復、及び官印、廳印の管守に關する事項、他課及各部署の主務に屬せざる事項にして、第二課は、高等警察に關する事項、及び外國人に關する事項、第三課は、經費の豫算、決算、及び金錢の出納に關する事項、金錢、物品出納の檢査に關する事項、需用物、品の調度等に關する事務等なり。(各省官制通則一〇條、地方官々制一五條、北海道廳官制一八條等參照)
- 英
- Secretariate
- 独
- Secretaärstelle
- 仏
- Secrétariat
官報
(くわんぼう)官報とは、政府に於て發行する文書にして、明治一六年七月一日より發行せられたるものなり、官報に記載せらるべきものは、□一詔勅、□二賞勳、□三叙任、□四官令、(布告、布達、省令等)□五達、(公示を妨げざる官省、院廳及東京府訓令)□六告示、(官省、院廳及東京府の告示)、□七官廳廣告、□八雜件、(例へば行幸、行啓、觀謁、參事院回答竝に審理、諸官廳伺指令、軍港の出入、官吏の辭職出入等)□九外報、(例令ば公使官、領事官報告、外國新聞抄譯等)□十説明正誤、十一學報教育に關する事項、十二農工商業山林に關する事項、十三統計報告、十四氣象報告、十五汽船出入、十六廣告等にして、各官廳の廣告は、常に官報を以てすべきものとし、尚官報及新聞紙に揭載するは其便宜に任ず、又銀行會社等の報告類にして、法律規則、若くは定款に依りて廣告を要するものは、官報に揭載することを得るものとす、官報は左の定價を以て官報局に於て發賣す、一箇月送費とも金六十錢、一部參錢なり、終に一言すべきは、官報なる語は、電報規則に於ては彼の局報及私報に對し、官廳其他官公署、政府の公信等を意味することあり、電報規則一條等に官報とあるは其用例に屬す。(一六年太政官二二號達、一六年六月太政官二九號達、一八年八月太政官一八號布達、三二年閣令二號參照)
- 英
- Official gazette
- 独
- Amtsblatt
- 仏
- Gazette officielle
官命
(くわんめい)官命とは、官の命令を謂ふ、官の命令とは、國家が私人に命ずる禁止、許可其他の處分を指す、刑法第一五七條に「官命を受けず云々」とあるは其用例なり。
- 英
- Government order
- 独
- Regier-ungsbefehl
- 仏
- Ordre du gouvernement
換用物
(くわんようぶつ)代替物と謂ふに等しく、民法の不特定物と同義なり、元來代替物と、特定物の區別の標準に就きては二主義あり、□一は客觀主義とも謂ふべきものにして、一般取引上の觀念に基き、數、度、量に依りて定められ得べき物は代替物、即ち不特物にして、然らざるものは特定物なりと、例へば米、酒、金錢等は代替物にして、土地、家屋、時計等は特定物なりと、最も金錢の如きも金封となして、特に指定する時は特定物となり、時計の如きも百箇とか云ふ如く、數を以て指定するときは、不特定物となると云ふ折衷説を唱ふるものあり、□二は主觀説にして、代替物と特定物との區別は、性質上の區別にあらずして、當事者の意思に基くものなりと謂ふ説なり、例へば百石の米、百斤の砂糖と謂へば、不特定物たるも、其米其の砂糖といふが如く、當事者が變更すべからざるの程度に於て、確定したるときは特定物となりと、我民法はこの□二の主義を採用したるものなり。(民五三四、四〇一條二項、公證人規則四三條一項參照)
官吏
(くわんり)廣く官吏と謂へば、統治機關、即ち政府、官廳、官署、及び營造物等を主として組織し、又は之を活動せしむる人を云ふ、固より之を組織するものの内には、官吏以外のものを包含すべしと雖も、其主たる要素は官吏なり、この廣義に於ける官吏の内には、教官、技師等をも包含するものなり、狹義に於ける官吏とは、之等のものを除き、即ち統治者の命令權行使に與かる自然人にして、特別公法上の行爲によりて、其身分を取得したるものを云ふことなり、分説すれば下の如し、□一官吏は自然人なり、公共團體營造物の如きも官吏と等しく、行政機關として活動するものなれども、自然人にあらざるが故に、官吏と異るものなり、□二官吏は、特別の公法上の行爲によりて、その分限を取得したるものなり、特別公法上の行爲とは、任命の形式によりて、その分限を得ることを云ふもにして、この點に於て選擧人、選擧立會人、兵士等と區別すべく、任命は契約にあらざるが故に、彼の雇の如きは官吏にあらざるなり、□三官吏は統治者に隷屬するものなり、此點に於て公吏と異る、盖し公吏は地方公共團體に隷屬する吏員にして、官吏の如く統治者に屬するものにあらざるが故なり、又彼の宮内省の官吏は、純然たる官吏にあらず、昔時の如く宮中、府中の別明かならざりしときは、天皇の私務に從事する者も、亦等しく國家の官吏たりしなり、然れども現時は之を區別し、天皇の私務に從事するものは官吏にあらずとせり、□四官吏は法令により、分配せられたる範圍内に於て、無定限に國家事務を管掌すべき、公法上の義務を負擔するものなり、彼の定限ある國家事務を管掌する者は官吏にあらず、然れども官吏は、現實國家の事務を擔任するを要せず、待命又は休職中のものも等しく官吏なり、唯官吏は國務を管掌すべき國法上の義務あるものなり、□五官吏は俸給を受くるを普通とす、彼の無給試補の如き、無俸給のものなきにあらずと雖も、國家は官吏相當の地位を保たしむる爲め、生活に必要なる資料を給す、これ即ち俸給なり、俸給は、元來公法上の給與にして、俸給請求權は、私法上の債權にあらず、故に之を辭すること、及び賣買質入等を爲し得ざるを原則とす。
- 英
- Officer
- 独
- Beamte
- 仏
- Officier
管理
(くわんり)管理なる語は、民法其他の法令に散見する所なりと雖も、其意義甚だ漠然たり、或は財産の本質を變ぜずして、之を維持保存するの行爲を爲すことを謂ふことあり、或は之等の行爲の外收益を爲すことをも包含することあり、或は非常に廣汎なる意義に解し、單に處分と云ふと同じく、所有者が其所有物の上に爲し得る一切の行爲を總稱することあり、之を要するに管理なる語の意義は、法律の各條に就きて確定せざるべからざるも、最も多くの場合に於ては、彼の處分行爲に對して、保存行爲、及び利用行爲を包含するの意義となす、所謂保存行爲とは、將に倒れんとする家屋を修繕するが如き、債權が時効に罹りて消滅せんとするを中斷するが如きを謂ふ、利用行爲とは、物又は權利の本質を變ぜざる範圍内に於て、夫れの使用收益を謂ふ。(民二五條以下、同一〇四三條、及び四二條等參照)
- 英
- Management
- 独
- Verwaltung
- 仏
- Administration
官吏恩給法
(くわんりおんきうはふ)官吏恩給法とは、官吏は在職中身命を抛ちて、國務を處理するものなるが故に、彼等は人生の必要上、老後の計畫を爲すこと能はざるを憐みて與ふる所の公法上の生活資料に關するものなり、此恩給を受くべき者、及び恩給額等を規定せる法規を云ふ、イ恩給を受くべきものは、國庫より俸給を受くる判任以上の官吏にして、商業を營むことを得べき官吏にあらざるもの、及び郡區の判任官、ロ恩給を受くべき要件は、在職十五箇年以上のものにして、且つ年齡六十歳に達せるか、創痍疾病の爲め職務に堪へざるか、又は廢官廢廳、若くは休職滿期となるが爲め退官したるものに給與せらる、法律の設置に係る議會の議員となり、辭職するの外、自己の便宜、又は懲戒處分、刑事裁判の結果退官したる者は、恩給を受くることを得ず、十五年に滿たざるも公務の爲に創痍疾病に罹り、職務に堪えざるの故を以て退官したる場合は、之を給與せらるべく、又國務大臣の職にありたる者は、例外として滿五年以上なるときは、之を支給せらるるものとす、ハ恩給年額は、勤續十五年以上十六年未滿のものは、俸給年額の二百四十分の六十を給與し、十五年以後は滿一年每に二百四十分の一を加へ、四十年に至りて止む、ニ在官年數計算方法は、判任官以上就任の月より起算し、退官の月を以て終る、而して恩給を受くるものが再び官に就き、滿一年以上在官の後退官したるときは、最終在官年數を通算するものとす、ホ恩給權の決定は、三年以内請求せざるときは、恩給を受くるの權を抛棄したるものと看做され、又恩給は、本人の請求に基き、本屬長官の證明により、審査を経て内閣總理大臣之を決定するものとす、ヘ恩給額の消滅及停止は、死亡の月を以て恩給權消滅し、重罪の刑に處せられ、若くは日本臣民の分限を失ひたるものは、恩給權を剝奪せらるるものとす。
- 英
- Law of official pension
- 独
- Beamtenpensionsgesetz
- 仏
- Loi de la pension officielle
官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則
官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則とは、地方税支辨の俸給を受くる郡、區長等の在官年數計算法に就きて規定せる法則なり。
同上施行規則
官吏恩給法及官吏遺族扶助法補則施行規則とは、同上法律の施行細則なり。
官吏恩給法施行規則
官吏恩給法施行規則とは、官吏恩給法を、時と所とに從ひて施行する細則なり。(二三年六月法四三號、二三年七月閣令三號、二九年三月法三六號、二九年三月閣令二號)
管理行爲
(くわんりかうゐ)管理行爲とは、物又は權利の保存に必要なる行爲、及び其物又は權利の本質を變ぜざる範圍内に於ける利用、又は改良を目的とする行爲を云ふ、物の保存行爲とは、將に倒れんとする家屋を修繕するが如き行爲を云ひ、權利の保存行爲とは、債權が時效に罹りて消滅せんとするを中斷するが如きを謂ふ、物又は權利の利用行爲とは、利息を得んが爲めに、金錢を銀行に預くるが如き、又は家屋の貸金を得んが爲めに、他人に貸與するが如きを謂ふ、物の改良行爲とは、家屋に裝飾を施して、その價額を高むるが如きを謂ひ、權利の改良行爲とは、例へば條件附の債權を變じて無條件とし、又は其期限の債權を變じて期限附となすが如き之なり、以上の利用行爲、又は改良行爲は、總べて其物又は權利の本質を變ぜざる範圍内に於て、之を爲す場合に限り管理行爲なり。(民二五條參照)
元利金
(ぐわんりきん)或る金額の元金に、其利息を合算したるものを其金額の元利金と云ふ、所謂利息とは、或期間元本の使用を爲さざるの故を以て、其期間に應じ、債權者に給付すべき報償にして、元本の分數より成るものを謂ふ、利息に三種あり、イ遲延利息とは、金錢の給付を目的とする債務の履行遲延によりて生ずる損害賠償を云ひ、其本質は、損害賠償の一種なれども、外國に於ても利息と云ふ、我國も亦然り、民法第六六九條に「金錢を以て出資の目的となしたる場合に、組合員が其出資を爲すことを怠りたるときは、其利息を拂ふ外云々」とあるは其用例なり、ロ中間利息とは、債務者が辨濟期前に辨濟を爲したる場合に生ず、即ち辨濟期前に辨濟をなしたる債務者は、其債務が無利息なるときは、中間利息を元本より控除するの法制ありき、例へば一割利引計算なる制度の如し、現行法は斯かる法制を認めず、ハ塡補利息とは、通常の所謂利息にして、前揭の定義の如く、元本使用の對價なり、次に元本とは、利息を生ずる主たる債務の給付の目的たる金錢にして、元利金とは此元本に利息を合算したるものを謂ふなり。(質屋取締法一〇條等參照)
官吏關係
(くわんりくわんけい)或人が、國家に對して有する特別服從の關係を稱して官吏關係と云ふ、官吏關係は、任官に依りて始る、所謂任官とは、任命の形式に依つてなる、初め任命は、私法上の契約となし、雇傭契約、委任契約、無名契約等種々の説明をこれに附したるもの也、然るに一八八年ギヨンネル氏出でて其迷妄を破り、官吏關係は全く臣民の義務に基くものとせり、次ざてラバンド氏出で、任命は臣民の義務に基くにもあらず、私法上の契約にもあらずとて、所謂特別公法上の行爲に依りてなるものとせり、曰く今日國務擔任の實際を觀るに、兵土の如き臣民の義務としての國務擔任と、請負人の如き私法上の關係に於ける國務擔任とあれども、官吏は以上何れとも異り、任官關係による國務擔任は、一種の公法上の行爲にして、任官は被任者の合意を條件としたるものならざるべからずと、今日の學者は、槪ねこの説を祖述するものなり、官吏關係の消滅原因は、□一死亡、□二任期在るときは其滿期、□三刑事裁判の宣告、□四職務の廢滅、□五辭職、□六免官等これなり。
- 英
- Official relation
- 独
- Beamten-verhältnisz
- 仏
- Rélation officielle
管理權
(くわんりけん)管理權とは、他人の財産、若くは事務を管理する權利、又は權限を云ふ、例へば親權を行ふ父又は母は、子の財産の上に管理權を有するが如き、夫は妻の財産を管理するの權を有するが如きこれなり。管理者とは、他人の財産、又は事務を管理する者を謂ひ、民法に所謂管理人と云ふと同義なり。(民八八九條一項八〇一、八〇三、二五條、小學校令一三條參照)
- 英
- Right of management
- 独
- Ver-waltungsrecht
- 仏
- Droit de l'administra-tion
管理者
- 英
- Superintendent
- 独
- Ober-aufseher
- 仏
- Surveillant
官吏收賄罪
(くわんりしゆうわいざい)官吏收賄罪とは、官吏瀆職罪の一種にして、官吏が其職務に就き、人の囑託を受けて賄賂を收受し、又は之を聽許するの罪を謂ふ、以下分説すれば、イ犯人は官吏たることを要す、故に一私人が官吏なりと詐稱して、他人より囑託を受け、贈與を收受するも、或は詐欺取財を構成することあるも、本罪を構成することなし、ロ職務に關することを要す、故に官吏が、自己の權限外の事頂を自己の權限内に屬する如く、他人を欺罔して囑託を受け、贈與を收受せるときは、詐欺取財罪を構成するも、本罪を構成することなし、ハ囑託を受諾することの報酬として收賄することを要す、但し收賄者に於て眞實に受託せることを要せず、單に送賄者が條件として、受託を贈與に附帶すれば可なり、これ盖し官吏に於て、其囑託を容るると否とを問はず、世人をして職務の公平を惑はしむるの點に於て、差異なければなり、二賄賂を收受し、又は聽許することを要す、所謂賄賂とは、公の職務に關し、囑託を受諾することの對價として、私人より提供する所の利益を謂ひ、必ずしも有形のものたると、無形の利益たるとは問ふ所にあらず、收受とは受領を云ひ、聽許とは受諾を意味す。(刑一九七條、一九八條參照)
官立學校及圖書館會計法
(くわんりつがくこうおよびとしよくわんくわいけいはう)官立學校及圖書館會計法とは、文部省直轄學校、圖書館、竝に農商務省所管東京農林學校が其資金を所有し、特別會計を立つることを得る旨、及び收入支出に關する法律を謂ふ。
官立學校及圖書館會計規則
官立學校及圖書館會計規則とは、同上の法律に關する細則にして、收入、及び支出豫算決算に關し詳細なる規定をなしたり。(二三年三月法二六號、二三年三月勅五三號)
官吏瀆職罪
(くわんりとくしよくざい)官吏瀆職罪とは、官吏が其職務上の義務に違犯し、且つ個人或は公衆の利益を害し、又は害するの虞あるの所爲を罰するものにして、官吏と謂ふ身分に伴ふ所の職務に違反することに依りて、罪を構成する固有瀆職罪と、官吏なるが故に其罰を加重する非固有瀆職罪とを包含す、今其各場合を擧ぐれば、イ官吏が其管掌に係る法律規則を公布施行せず、又は他の官吏の公布施行を妨害する罪、ロ兵權を以て鎭撫すべき時に當り、其處分を爲さざる罪、ハ官吏規則に違背して商業を爲したる罪、ニ官吏威權を濫用する罪、ホ官吏人の身體財産を妨害する犯人あるに當り、保護の處分を爲さざるの罪、ヘ官吏不法に人を逮捕監禁する罪、ト官吏囚人を虐待する罪、チ拷問を爲す罪、リ刑事の訴を受理せず、又は遷延する罪、ヌ收賄罪、ル抂法の罪、オ官吏自ら監守する所の金穀物件を竊取する罪、ワ官吏正數外の金穀を徵收する罪これなり。(刑一九三條乃至一九八條、舊刑二七三條以下)
官吏服務規律
(くわんりふくむきりつ)官吏服務規律とは、官吏は天皇陛下、及び天皇陛下の政府に對して忠順勤勉を主とし、法律命令に從ひ、その職務を盡すべきことを規定したる法規にして、官吏が服務上遵奉すべき紀律なり、凡そ官吏はその職務に就き、本屬長官の命令を遵守し、又職務の内外を問はず、廉耻を重んじ、貪汚の所爲あるべからざること、官吏は己の職務に關すると、他の官吏より聞知したるとを問はず、官の機密を漏洩することを禁ぜらる、又官吏は職務の内外を問はず、威權を濫用せず、謹愼懇切なることを務むべきこと、及び本屬長官の許可を得るにあらざれば、その職務にして關慰勞又は謝儀を受くること、或は饗燕を受くることを得ざるものなり、官吏にして浪費し其産を破り、其分に應ぜざる負債を爲す者は、過失の一たるべく、又官吏は本屬長官の許可を受くるにあられば、本職の外給料を得て、他の事務を行ふことを得ざるものなり、而して以上の紀律は、高等官判任官及俸給を得て公務を奉ずる者に適用せざるべきものとす。(二〇年七月勅三九號)
官吏侮辱罪
(くわんりぶじよくざい)官吏侮辱罪とは、官吏の職務に對し、其目前に於て、形容若くは言語を以て、又は其目前にあらざるも、刊行の文書、圖書或は公然の演説を以て之を侮辱する罪なり、分説すれば、イ官吏の職務に對することを要す、故に侮辱は官吏の職務執行中、又は執行中ならさるとき、官吏の職務上の品格、尊嚴を毀損するの行爲たらざるべからず、單に官吏に對する個人的の侮辱は、未だ以て其官吏の職務の尊嚴を毀損したりと云ふことを得ざる也、ロ目前なるときは、形容若くは言語を以て、目前にあらざるときは、刊行の文書、圖書、又は公然の演説を以て侮辱することを要す、所謂目前とは、現在と謂ふ義にして、視力、及び聽力の達すべき範圍と云ふに等しく、必ずしも面前なる事を必要とせず、背後にても亦可なりとす、形容とは、身振、若くは容體と謂ふと同じく、命ぜられたるに舌を出し、又は手を以て人を打つ眞似をなすが如きを謂ふ、言語とは、口頭より發する音聲を云ふ、例へば馬鹿痴漢と謂ふが如し、刊行の文書、圖書とは、原稿を機械的に復寫して、許多の文書圖畫を公衆に配布するを云ふ、公然の演説とは、不定多數の人に覺知せらるべき方法に於て演出するを謂ふ、ハ侮辱したることを要す、侮辱とは、官吏の職務上の威信を毀損し、又は毀損する恐ある行爲にして、侮辱は犯人以外の者に於て、其侮辱行爲を覺知したるときに於て既遂となるもの也、但し之を覺知したる者の被侮辱者たると否とは問ふ所にあらず、以上の要件を備へたるときは、其犯者は、一ケ月以上一年以下の重禁錮、五圓以上五十圓以下の罰金に處せらるべし、但し改正法に於ては之を癈削せられたり。(舊刑一四一條)
- 英
- Crime of insulting public officer
- 独
- Beamtenbeleidigungsver-brechen
- 仏
- Infraction d'outrager les officiers
官林
(くわんりん)官林とは、所謂國有林のことにして、森林法によれば、森林を分ちて、御料林、國有林、部分林、公有林、社寺林、及び私有林の六種となす、この内官林とは、國有林を指し、御料林、公有林及保安林は、準官有林とも謂ふべきものなり、官林に關する重なる規定は、二四年九月農商務省訓令三八號、官有森林交換規程、三〇年同省令一三號、二四年四月同五號、社寺土地官林委託規則、同年七月同八號官林立木、木材檢査竝に引渡用極印の件、其他森林法を參照せよ。
- 英
- Government forest
- 独
- Regier-ungsforst
- 仏
- Bois de l'Etat
官吏遺族扶助法
(くわんりゐぞくふじよはう)官吏遺族扶助法とは、官吏在官中は、子孫の計を爲す餘裕なきを以て、其死亡後、國庫より其遺族に對し、生活必要費を給與するものにして、之に關する法規を謂ふ、イ扶助料を受くる原因、判任官以上の文官在官十五年以上に渉り、在官中死亡したるとき判任以上の文官在官十五年未滿なるも、公務の爲め死亡したるとき、但し以上の場合に於て、政府より恩給を受けざる官吏、及び商業を營むことを得べき官吏は例外とす、其他判任以上の文官にして、恩給を受くるものが死亡したるときは、遺族扶助料を受くるものなり、ロ扶助を受くるの資額、夫の退官前結婚したる寡婦、扶助料を受くる寡婦なきときは孤兒、寡婦孤兒なき場合には父母、祖父母、二十歳未滿なるか、又は二十歳以上なるも不具廢疾なるときは之を給與し、且つ産業を營む能はざる場合に限り、兄弟姉妹に給與す、ハ扶助料の額、一般の場合には、死亡官吏の受けたる、若くは受くべき恩給年額の三分の一、但し公務の爲め受けたる瘡痍によりて死亡し、又は非常の勤務に從事し死亡したるときは三分の二とす、ニ元來扶助料を受くべき遺族は、其官吏生存するときは、當然扶助すべき義務を有するものに限らるるに依り、寡婦の再婚、孤兒の獨立生計を營むの期に達したるときの如きは、扶助料を與へらるることも消滅す、ホ扶助料を受くる手續は、請求書を地方長官に差出し、地方長官之を審査の上、扶助料年額の計算書を作り、證據書類を添へて内閣總理大臣に差出し、大臣は之を恩給局に下して、審査決定せしむるものなり、扶助請求を三年以内之を爲さざるときは、其權利を抛棄したるものと看做さるべし。
官吏遺族扶助法施行細則
官吏遺族扶助法施行規則とは、遺族扶助料請求に關する細則を定めたるものにして、本屬廳は、扶助料を與ふる官吏の死亡者ある時は、死者の履歷書、及び疾病の公務に起因したる證據となるべき書類を下附すべく、遺族は之を以て扶助料請求の證となすべき旨等を規定したり、官吏遺族扶助料納金收入規則は、文官判任以上のものにして、政府より俸給を受けざる官吏、及び商業を營み得べき官吏の外は、扶助料基金に充つる爲め、其俸給の百分の一を納むべきものなり、而してその納人額及納入手續を規定せる法規を謂ふ。(二三年六月法四四號、二三年七月閣令四號、同年勅一二號參照)
官吏遺族扶助法納金收入規則
慣例
(くわんれい)慣例とは、慣習上の例規法則を謂ひ、慣習とは慣行に依りて遵奉せらるる習性にして、これを客觀的に見れば慣例なり、故に慣例と慣習とは、一物を見方を代へて言現はせるに外ならず、慣習といふときは、慣行に依りて遵奉せらるる社會品性の傾向にして、主觀的なり、慣例と謂へば、社會品性の傾向を客觀視して言現はせる、慣習的法規を謂ふものなりとす。(尚慣習の部參照)
- 英
- Custom
- 独
- Gewohnheit
- 仏
- Coutume
過料
(くわれう)過料とは、法令違反の行爲に對し、その制裁として過料の名を附し、國家が其命令權に依りて、違反者より強制徵收する金錢を謂ふ、元來過料の名を附せられたる制裁は、一種の規律罰にして、單純なる義務違反に基く制裁なり、例へば戸籍登記に關する屆出の怠慢に依る過料、法人の理事が登記の申請を怠りたるとき等に科せらるる過料の如し。
- 英
- Penalty
- 独
- Strafgeld
- 仏
- Amende
科料
科料も、等しく犯人より強制徵收する金錢なるなれども、こは犯罪に科せらるる科罰方法にして、一種の刑罰なり、刑罰なるが故に、單に義務違背の制裁と異り、その法律上の形式に於て全く別種の性質を有す、然れどもその實質上より觀察すれば、過料、科料等しく財産の上權利剝奪にして、又等しく制裁として強制徵收するものなりとす、唯過料は科料と異り、義務履行までは幾度も之を科することを得れど、刑罰は一事不再理と同じく、一行爲に就きて數度科刑せざるを本則となすものなり。(民八四條、戸籍法二一〇條乃至二一三條、刑九條、一七條參照)
火藥商
(くわやくしやう)火藥商とは、火藥類の賣買、輸入を營業とする者を謂ふ、火藥商の營業を爲さんとする者は、地方長官の許可を受くることを要し、甲乙の二種となす、甲種の許可を受けたる者は、火藥類に關する各種商行爲を爲し得るも、乙種の許可を受けたるものは、火藥類を輸入するの外、之を官廳又は火藥商に賣渡すことを得るも、其他の火藥に關する商行爲を爲すことを得ず、次に火藥商の定員は、甲種は東京府、京都府、大阪府、神奈川縣、兵庫縣、長崎縣各二拾三人、北海道四拾五人、其他の府縣は各十八人にして、乙種は神奈川縣十八人、兵庫縣二十五人、長崎縣五人に限るものとす。
- 英
- Gunpowder dealer
- 独
- Schiesz-pulverhändler
- 仏
- Marchand à poudre à canon
火藥類
火藥類とは、火藥、雷管、導火線、其他爆發質物品を謂ふ、例へば劇發火藥、通常火藥、無煙火藥、綿火藥、ナイトログリセりン、ダイナマイト、雷汞等を云ふ、又導火線には、普通導火綿、ビツクホール導火線等あり。(三二年八月法一〇六號、三二年八月勅三六號、同年内務省令四三號、同年同告示九一號)
- 英
- Gunpowders
- 独
- Schieszpulver
- 仏
- Pondre à canon
刑
(けい)刑とは、その動詞としては、犯罪者が罰せらるるを謂ひ、名詞としては、其科せらるる刑罰を意味す、所謂刑罰とは、國家が犯罪に對する制裁として、犯人に科する惡報なり、□一刑罰は惡報なり、惡報として犯人に科する方法は、利益の剝奪なり、法益の侵害なり、古來より刑罰は、其剝奪すべき利益の異るに從ひて、イ生命刑、死刑の如き、ロ身體刑、墨刑、笞刑の如き、ハ自由刑、懲役、禁錮の如き、ニ名譽刑、市街を引き廻す刑の如き、ホ財産刑、罰金、科料の如き、五種に分類せらる、然れども現今文明國に於ては、身體刑は殆ど其跡を斷ち、(但し近時臺灣に於て、笞刑を採用せるが如き例外はあれども)名譽刑は其形を變じて、資格喪失の刑即ち能力刑となり、積極的に名譽を剝奪せずして、唯消極的にその資格能力を停止、剝奪する刑に變ぜり、□二刑罰は犯罪の制裁として、國家より科せらるるものなり、刑法上の刑罰は、國家と一私人との間の關係として存在し、國と國との間、一私人と一私人との間に於ける制裁は、所謂刑罰にあらざるなり。刑法一編二章刑罰の部參照)
- 英
- Punishment
- 独
- Strafe
- 仏
- Peine
契印
(けいいん)二個以上の面が結合することを證する爲めに、押捺する印影を謂ふ、面とは、最も廣き意味に於て之を用ひ、具體的に説明すれば、今茲に一冊の帳簿ある場合に、其紙數を限りたりとせば、その紙數の增減を爲さしめざる爲めに、各葉の連綴に、再紙に跨りて印を押捺する如き、又は或權利義務に關する書面を作成し、一の紙と他の一の紙との間に、關係者の印形を押捺し、作成が確的なると共に、其連結を保つが如き、或場合に於ては、書面を發信する場合に於て、發信と同一の控を手許に殘し、其兩者の間に渉りて印形を施し、以て控と發信との同時作成を證する爲めに保存する如き、其他種々なる場合に於て、用途を異にすべきも、要するに如上の場合の實用と方法とを意味して契印と稱す。(不動産登記法細則三六條、民施行法六條二項)
- 英
- Joint seal
- 独
- Siegelverbindung
- 仏
- Sceau réuni
刑期
(けいき)刑罰の期間を謂ふ、刑罰に期間を以て定めらるるものは、自由刑、能力刑、及び或種の附加刑これ也、舊刑法第一編第二章第五節に刑期計算と題し、第九條乃至第五二條に規定せらるる事柄は、刑罰に關する期間の起算點、及び終期等に關する計算を規定したるに外ならず、元來刑期は、刑法各本條に於て重禁錮何箇年に處すとか、又は重懲役何箇年に處すとか規定せらるる如き、犯罪の輕重と其性質の如何により、種々の刑罰を科せらるる或る一定の期間を指稱するものにして、此期の計算は、一日は二十四時を以てし、一ケ月は三十日を以てし、一年は曆に從ふものとす、而して受刑の初日は、時間を論ぜずして一日に算入し、放免の日は刑期に算入せず、刑期の起算は、裁判宣告の日より初め、又上訴が正當なるときは、前の判決の時より起算し、其不當なる上訴は、終局判決の時より起算するものにして、檢事の上訴は、其結果の如何を問はず、常に前判決の時よりし、保釋責付は、期間中に算入せざるものとす。
- 英
- Term of penalty
- 独
- Straftermin
- 仏
- Délai de peine
輕禁獄
(けいきんごく)舊刑法は、刑を主刑と附加刑とに區分し、又刑名を重罪、輕罪、違警罪に三大別す、即ち重罪は死刑、無期徒刑、有期徒刑、無期流刑、有期流刑、重懲役、輕懲役、重禁獄輕禁獄となす、輕禁獄は以上の重罪の主刑の一種にして、六年以上八年以下の間定役に服せしめずして、内地の獄に抅禁する刑罸なり、所謂主刑とは、附加刑に對する語にして、定役とは、入獄中の囚人が爲す作業の法律語なり、而して輕禁獄は、有無の流刑、死刑と共に、國事犯人に科する刑罸なり。舊刑七、六八條)
- 英
- Minor detention
- 独
- leichte Detention
- 仏
- Emprisonnement
經過法
(けいくわはふ)經過法とは、民法、刑法と稱するが如き意味に於ける名稱にあらずして、諸法令が改廢せらるる場合に、新に發布せられたる法令の實施に際して生ずる諸問題を、解結するが爲めに設けらるる法則を指稱する法律上の語也、されば經過法は、多く施行法、又は施行細則、其他の名稱を以て發布せらるるを普通とし、特に經過法なることを示すことなきも、學者講學の便宜より、新舊法律の經過に際して發する、両者の關係を定むる法規を抽出して、之を經過法と呼ぶものとす、例へば舊法に於ては、或る行動を罰するに、新法に於て之を罪とせざる場合に、其行爲が舊法存在當時に起り、新法施行の後に於て終結を告げたりとせば、如何にすべきかの如き點は、即ち經過法の規定すべき事項に係るものなり。
- 英
- Transition law
- 独
- Übergangs-recht
- 仏
- Loi de transition
經驗
(けいけん)經驗とは、吾人自ら或事物に接觸し、其事物の何たるを識認する作用をいふ、換言すれば、吾人の心に感ぜられ認めらるる一切事を擧げて經驗といふべし、而して其感得認識に當りて思考作用の加はると、將た單に知覺感覺の作用のみに止まると、或は感情的なると、將た意力的なると、其他如何なる方法に於て、心に銘せらるるとを限らざるなり、故に經驗は、吾人の所謂觀察實驗等と稱するものを總括せるものなり、而して経驗的とは、叙上の意義を有する經驗を形容詞としたるものなり。經驗論とは、吾人の一切の知識は、経驗によりてのみ、正しくは得らるるものなりと云ふ哲學上の認識論の一説にして、此論は近世の英國の哲學者間に一貫せる意見なりき、尤も人と年代と共に其學説も自ら異り、ベーコン、ホップスの如きは、唯專ら五感より來る外的知覺のみを知識の根源たる經驗となししも、ロッロクに至りては、更に反省の如き内的經驗をも加へぬ、彼は吾人の情神を白紙の如きものと見、之に外界の感覺知覺、心内の反省省察によりて印銘を與へ、斯くして漸次其の内容を增すものなりと、ロックの後バークレー、ヒュームの如きあり、經驗論を一層極端に論究し、前者は精神論に走り、後者は或は懷疑論に陷れりとせらる、經驗論の難點は、認識上に於ける主觀、即ち吾人の先天的に心裡に具ふる認識の統一的形式的方面の能力を減却し、唯專ら認識の特殊的内容的方面の料となせるものにのみ當れるにあり、彼の合理論と稱せらるるものも、亦この形式的方面をのみ論ずる獨斷説なり、其両學説の弊を認めて折衷的位置に立ち、然かも獨創の旗織を翻して、認識論上に批判論なるものを建説したるは、即ち有名なるカントなり。
- 英
- Experience
- 独
- Erfahrung
- 仏
- Expérience
輕罪
(けいざい)舊法は、凡そ法律に罰すべき罪別を重罪、輕罪、違警罪となし、所謂輕罪は其一なり、而して輕罪とは、刑罰の上に於ける性質の差異に基けるあらずして、刑罰に於ける期間の長短によりて、重罪に比して短き、即ち輕き刑と云ふ意に過ぎず、舊刑第八條に「左に記載したる者を以て輕罪の主刑となす」と規定し、□一重禁錮、□二輕禁錮、□三罰金となせり。(舊刑一、八條)
- 英
- Misdemeanor
- 独
- Vergehen
- 仏
- Délit
經濟
(けいざい)經濟とは、人が經濟的貨物を穫得し、之を使用し、以て其欲望を充す所の各種の秩序的活動、又はその狀態を稱す、天然物、勞力、資本の浪費を節して、生産の多額を計る事等、即ち経濟なりと云ひ得べし、凡そ人には常に不足と云ふ感情あり、斷えず之が滿足を得ることを勉む、渴して飮み、饑えて食はんとする如き、斯かる不足の感情と滿足を得んとする情願とを併せて欲望と云ふ、其欲望を滿さんが爲めには、或る何物かを得ざるべからず、經濟學上に於て欲望の對象たる物を貨物と名く、人類が斯くの如く、其欲望を滿足せしめんが爲めに、貨物を得んことを務め、生産の多額を計り、交換分配に於ける浪費を節する秩序的活動の狀熊を指して、經濟と云ふに外ならず、尚説明を要するは、其秩序的にして又社界的の活動たることが、經濟と云ふ上に必要なること是なり、經濟の根義は、素と道德に背き、單獨我欲の方法にてもよしと云ふものにあらず、其觀念は、倫理及心理に適合したるものならざるべからさるや勿論にして、人類の欲望と稱する前上の意も、社界的のものにして、生存上各人の必要を滿す合理の欲望を指し、天然に反し、道義に背き、單獨我欲の方法に於て、所謂經濟狀態の存せざる素よりその所と云ふべし。
- 英
- Economy
- 独
- Oekonomie
- 仏
- Économie
經濟行政
(けいざいぎやうせい)經濟行政とは、國民經濟上の利益を保護進捗することを目的とする行政を指す、個人生存に必要なる物を生産するは、各人の爲すべき所なりと雖も、人口繁殖して、内外の生存競爭日に激甚を極むるの時に當りては、國家は自己の生存と福利とを保全する目的上、臣民の經濟的活動を、其爲すが儘に放任することを得ず、茲に於て乎各般の法規を宣布して、臣民の經濟的活動を保護助長し、永久に其發達を期するの政策を講ぜざるべからず、之經濟行政の基本なり、而して其法規は多樣多種にして、難なく網羅し離きも、一例を示せば□一原始産業に關する法規、漁業、狩獵、鑛業、農業、牧畜等の如き、□二商工業に關する法規、商業に對する一般法規、銀行業、取引所商業會議所、工業所有權の法令、□三土地、森林原野に關する法規及其名稱區別、北海道に於ける國有地の處分、沖繩縣の土地整理、國有林野の經營、森林の監督、國有土地、森林、原野の拂下處分、□四度量衡及び貨幣に關する法規、□五交通に關する法規、郵便、小包郵便物の料金、電信、及び電話、鐵道、船舶、道路、□六土木に關する法規包、河川、堤防、□七産業團體に關する法規、産業組合、同業組合、農會等以上列擧の事項に關する諸法令は、即ち経濟行政の目的を有する法令なり、國家が斯くの如き法令を制定施行して、國民經濟上の利益を保護進捗する行政は、即ち經濟行政なり。
- 英
- Economical administration
- 独
- Ökonomieverwaltung
- 仏
- Administration économique
輕罪公判
(けいざいこうはん)刑事訴訟は、之を重罪公判、輕罪公判と區別して審理判決す、重罪事件を審理、裁判する場合の公判を重罪公判と稱し、輕罪事件の審判を爲す公判を輕罪公判と謂ふ、形式上に於て、別に二者の關係異同あるにあらず、例へば同一檢判事、其他の職員が、一日の内に多數の事件を取扱ふ場合に於て、最初開廷したる重罪公判の終結後、直に輕罪公判を前同一の職員にて審理するが如き事あり、從つて法律上に於て、重罪公判と輕罪公判とに就きて存する必須の形式手續あるにあらずして、單に豫審判事、檢事が、事件の性質輕罪なりと思料したる場合に於て、其事件を輕罪裁判所の公判に移す決定を爲し、依つて開かれたる公判が輕罪公判たるに過ぎず。(刑訴一六六、一六七條)
- 英
- Public trial of minor crime
- 独
- Vergehenshauptverhandlung
- 仏
- Ju-gement du délit
係爭權利
(けいさうけんり)二人以上の間に於て、爭の目的となれる權利を謂ふ、法律上他に係爭物と稱する語ありて、係爭權利と實際に於て同一の如く、一は物の方面より觀察し、一は權利の方面より觀察したるに過ぎざるもの也、假令ば原告が、或物品の引渡を被告に請求する旨の訴訟を提起したりとせんに、此請求物を稱して係爭物と云ひ、被告は抗辯として、係爭物は元來被告所有の物にして、原告の所有にあらずと云ふときは、其所有權は係爭權利となるべし、然れども正確なる解釋としては、爭が權利其ものなる場合に於ての稱呼と解する方可ならん。
係爭事實
(けいさうじじつ)二人以上の人の間に、或事實の存否が爭となりたる場合に於て、其事實を係爭事實と云ふ、例へば原告が何年何月何日被告に對して、金若干圓を貸與したりと云ひ、被告は借りたる覺なしと抗辯する場合の金錢貸與は、所謂係爭事實なり、民事訴訟法第二七六條第一號に「證すべき係爭事實の表示」とあるは其用例なり、茲に注意を要するは、係爭事實と係爭權利との區別にして、元來訴訟の目的物たる權利關係と、事實關係なるものは、普通に同一視する傾向あるも、法律上に於ては斷然たる境界の存するものにて、訴訟事件に於ける目的は、權利關係の判定を得んとするにあり、其目的を得んが爲に、内容の事實を開陳するに當つて、當事者に於て攻擊防禦の狀態が、事實の存否にある場合は之を係爭事實と謂ふなり。
計算事件
(けいさんじけん)計算の當否が爭點となれる民事訴訟事件にして、換言すれば數額に就きて、原告の主張と被告の認否と一致せざることを、訴訟とする事件の謂也、裁判所は、斯くの如き民事々件、其他財産分別、及び之に類する訴訟は、特に錯雜にして、他の單純なるものと趣を異にし、數額誤算等の虞あるを認め、當事者の申出ありたるとき、又は裁判所が事件審理の上に於て必要と見る時は、特に口頭辯論を延期し、準備手續を命ずることを得、但し其事件に就き妨訴の抗辯を提出したる場合に於ては、該抗辯の結果如何によりては數額の計算を要せず、事件の終結を告ぐることあるべきが故に、此場合に抗辯に關する裁判の完結後に於て、其計算を命ずべきものとす。(民訴二〇八條)
- 英
- Suit for counting
- 独
- Rechn-ungsfall
- 仏
- Cause des comptes
係爭物
(けいさうぶつ)係爭權利、係爭事實等と略ぼ同樣に使用する語にして、一は權利二は事實なり、又本題の場合は、物を對象とするが故に、稱呼を異にするに過ぎず、適切なる例を引きて説明せんに、甲は或物品を或日時又は場所に於て、所有權を獲得したりと主張し、乙は同一物に關して、甲同樣に甲の主張を排斥し、そは自分が或時某所に於て、所有權を取得したりと主張するとせんか、斯くの如く甲乙兩者間の爭の對象となれる物を指して係爭物と謂ひ、或日時某所に於て所有權を得たりといふ事實が、係爭事實となるべく、又其所有權が係爭權利となるなり、民事訴訟法第七五五條に「係爭物に關する假處分」とあるは其用例なり。
警察
(けいさつ)社會に於ける共存條件に對する危害を防止する目的に出で、行政手段を以て、國家が人の自由を制限する事を謂ふ、尤も警察の觀念に就きては學説區々一定せず、其重なるものを擧ぐれば、□一範圍に依る説、警察を内務行政の範圍と同一に解する説にして、本説は獨の有名なる學者モール氏の始て主唱せし所にして、警察なる語の沿革に基きたるものなり、元來警察即ちポリツイなる語は、國家の政務全體を彼の教務と區別する爲め用ひられたるものにして、追々外交、軍事、財政等の行政事務が、國家の他の政務より獨立するに及びてポリツァイなる語は、今日の所謂内務行政と同一の範圍を現はす語となれり、本説はこの沿革に基くものにして、現時の如く内務行政を大別して、消極的に公共の安寧秩序を保持するを目的とする部分と、積極的に公益の增進を目的とする部分とに爲す以上は、學者の本説を採用せざる素よりその所也、□二目的に依る説、警察の觀念を行政行爲の目的に依りて定めんとする説にして、社會及人民の安寧秩序に對する、危害を防制するを目的とする行爲を警察と云ひ、此目的に於て警察と他の内務行政とを區別せんとなす、されど斯くの如き危害を防止するを目的とする行政は、悉く皆警察なりと云ふは、不當に警察範圍を擴張するものなり、例へば街路に點燈し、堤防を修築するが如きは、皆公共の安寧に對する一種の危害防止と云ふことを得るも、現時の觀念に於ては、之等は所謂警察にあらず、唯其目的を達するが爲めに、命令幷に強制を用ふるに及びて始めて警察と稱するを得べきなり、□三手段主義に依る説、曰く警察は國家が強制權を以て、人の自由に關渉するときに存す、即ち公共の利益を保護する爲めに一個人の自由を制限し、必要の場合に之を強制する國家の行爲なりと、然れども國家が統治の目的を達するに當りて、殆ど一として命令、及び強制を伴はざることなし、兵役を強制するも、租税を徵收するも、共に人の自由を制限するもの也、されど之等は通常の觀念に於ては、警察と云ふことなし、□四折衷主義に依る説、以上の二主義を折衷する説にして、警察を定義し、人の自由を制限するによりて、社會及個人の安寧幸福に對する、危害を防止するを目的とする行政行爲なりと、本説は少しく小刀細工の觀あるも、暫く本説を穩當なるものと見ん。
- 英
- Police
- 独
- Polizei
- 仏
- Police
警察行爲
警察行爲とは、警察行政を行ふ國家行爲を指す、其實質は種々多樣にして、豫め之を限定する能はざる、恰も社會人事の出來事の總べてを揭げ能はざるに等し、斯くの如く廣く總べての人民の行動に關係を有するものなるも、先づ之を大別して、警察命令を發すること、及び警察處分をなすこととするを得、□一警察命令とは、廣く警察に關する法規を意味し、國家が警察に關する命令を發する場合と、更に警察機關が自己の權限内に於て、人民に對して命ずる法規との兩樣を意味するも、茲にはこの後義に從ふ、□二警察處分とは、警察機關が直接人民に對して或禁制命令を爲す行動を謂ふ、例へば巡査が泥醉者を保護するが如き、又は夜間戸締を注意するが如き、卑近の例なりと雖も一種の警祭處分と謂ふべし。
- 英
- Police action
- 独
- Polizei-handlung
- 仏
- Acte de police
警察事務
警察事務とは、恰も町村役場事務若くは裁判事務と云ふが如く、其實質は、警察行政に關する事柄を處理する總べての稱呼に外ならず、其種別に至りては警察行政の區分に從ひ、廣く社會の出來事に關し、法令の範圍内に於ける臨機應變の狀態に出づべければ、唯讀者の想像に任せん、例へば犯人ありて之を捕〓し、若くは囚人を遞送するか如き、汎く警察權の行動に關する事務は、總べて之を警察事務と謂ふを得べし。
- 英
- Police business
- 独
- Polizei-wesen
- 仏
- Affaires de police
警察行政
(けいさつぎやうせい)警察行政とは、社會の危害を防止するの目的を以て、人の自由を制限する行政なり、されば、□一警察行政は、危害防止を目的とする行政なり、危害とは、社界の現狀を破壞すべき各般の原因を謂ふ、其原因は、人に存することあり、又物に存することあり、對人警察、對物警察の區別は之に依りて生ず、危害防止とは、所謂安寧秩序を保持する作用に外ならず、□二警察行政は、人の自由を制限する行政なり、自由制限とは、身體、及び財産に關する個人の意思の作用を制限することを稱す、元來自由制限は、敢て警察行政のみに限らず、他の助長行政に於ても之を爲す場合あれども、警察行政に於ける自由制限は、總べて危害防止の目的を含む點に於て、他の夫れと區別あり、警察行政は、前陳の如く危害の人に存するときは、其人の自由はこれを制限し、危害を未發に防ぐものにして、例へば暴行脅迫を爲す人に對しては、其人の自由を制限するが如き、又は危害が物に存するときは其物に對し、法定の關係を有する人の自由を制限し、その危害を防止するものなり、例へば防火に際してその風下に在る家の所有主が、自己の家の破壞を甘受せさるべからざるが如き、總べて警察行政は危害防止の目的に於て、人の自由を制限するものなり、以上を要するに、警察の目的は、安寧幸福の保持にあり、其手段は危害の防止にあり、其形式は自由の制限にあり、之等の目的、手段、形式を具備する行政を、警察行政とは云ふなり、明治八年大政官達二九號第一條に、行政警察の趣旨たる人民の危害を豫防し、安寧を保全するに在りと規定せられ、同三條に、行政警察の職を、□一人民の妨害を防護し、□二健康を看護し、□三放蕩淫逸を制止し、□四國法を犯さんとする者を隱密中に採索警防するにありと規定せるは、前述の所に符合するもの云ふべし。
- 英
- Police administration
- 独
- Polizeiverwaltung
- 仏
- Administration de la police
警察官廳
(けいさつくわんちやう)警察官廳とは、警察行政に關し、其名に於て命令を發し、又處分を行ふ權限ある國家爲政機關を謂ふ、元來官廳とは、國家の命令權を外部に行使する所の機關にして、此機關には、尚幾多の補助機關ありて、或は官廳の内部に活動し、官廳の行動を準備し、或は既に發表せられたる官廳の意思を執行するものなり、而して警察官廳は、その名に於て命令を發し、又は處分を行施することを得る官廳なるが故に、彼の警察執行機關なる警部長警視等と異るや明なりとす、警察官廳を例へば、内務大臣、北海道長官、警視總監、地方長官等其重なるものとす、尤も或る場合に於て、警察官廳と警察官署とを同意義に用ふることなきにあらざるも、之等は法の便宜に基き採りたる名稱なれば、各場合に依りて其内容を定め、混同すべからず。(議院法八九條一項參照)
- 英
- Police office
- 独
- Polizei-behörde
- 仏
- Bureau de police
警察官署
警察官署とは、主として警察處分を執行する官署を云ふ、元來官署なる意義は、廣く官廳、及び命令權を行使せざる其他官署を包含して稱することあるも、命令權の有無を以て、國家機關を官廳と官署とに區分するを普通とす、警察官署の重なるものは、警察署、警察分署等これなり。(治安警察法一條)
警察權
(けいさつけん)警察權とは、行政官廳が警察行政を行ふ權限を謂ふ、即ち社界及個人の安寧に對する、危害を防止する目的を達する爲めに行ふ人の、自由制限乃至強制の權を、行使し得る權限を云ふ、例へば一般臣民の家宅は、憲法上の保證に依りて侵さるるものにあらざるも、萬一或る犯罪に對する檢擧、其他警察の目的に於て必要なりとするときは、警察官吏は何時を問はす、家主の意に反しても、尚其居住に立入ることを得る如き、又暴行者を捕〓するが如も、皆警察權の發動なり、警察命令權とは、私人に對して警察上の命令を發することを得るの權限を云ふ、前説警察權の一態樣なりとす。
- 英
- Police authority
- 独
- Polizei-authorität
- 仏
- Autorité de police
警察命令權
- 英
- Power of police order
- 独
- Polizeiverordnungsrecht
- 仏
- Pouvoir de l'ordre de police
警察執行機關
(けいさつしつかうきくわん)法律上執行機關とは、常に意思機關に對して用ひられ、意思を外部に執行する機關を意味す、警察執行機關もこの一種にして、彼の警察官廳に對し、專ら警察處分の執行に從事する國家機關を云ふ、例へば警部長、警視、憲兵、警部、巡査等之なり。
- 英
- Organ of police execution
- 独
- Polizeiausführungsorgan
- 仏
- Organe de l'exécution de la police
警察賞與規則
(けいさつしやうよきそく)國家が統治の目的遂行に於て、總べて樣々なる方法を以て之に臨む、其方法の何たるを問はずと雖も、治績を擧ぐるに務むべきは、爲政の途に於て忘るべからざる所とす、警察實與規則は、立法の趣旨を茲に採り、即ち警察上特に功勞ある一般人に賞與を給與すること、及び其賞用負擔を定むるの規定を爲したるものなり。(三二年勅四〇二號、二一年一〇月内務省訓令二一號)、
- 英
- Police rewarding regula-tion
- 独
- Polizeibelohnungsreglement
- 仏
- Règles de la récompence de police
警察賞與規則施行細則
警察賞與規則施行細則は、警察賞與規則を實施する爲めに、内務大臣の發したる細則命令なり。(三二年内務省令第五二號)
警察處分
(けいさつしよぶん)警察上の行政處分、即ち國家及人民の安寧幸福に對する危害の防止、排除を直接の目的として、人の自由を制限する行政上の處分の謂なり、抑も國家は法令を發布し、自己と國民との關係を規定すと雖も、法規は素と人によりて適用執行せらるるもなれば、其之に依りて初めて所期の結果を得べきものなり、斯くの如く警察行政の上に於ても、直接國民に臨む機關の行動が、處分の性質を有するものとす、例へば警察官が群集に向つて解散を命ずるが如き、又は市内の通行を禁止する如き之也、故に處分とは、機關が法規の範圍内に於て、特定の事件を規律す目的をるの以て發する意思表示と定義するを得べし、處分を區別して、□一準法處分、□二裁量處分と爲す、前者は法規の上に指示せられたる標準を、遵守して爲したる處分にして、後者は法規が廣汎なる範圍に於て、官廳に自由活動の餘地を與へたる場合に、自己の判斷に基きて發す所の處分なり。
- 英
- Police excution
- 独
- Polizei-verfügung
- 仏
- Exécution de la police
警察處分權
(けいさつしよふんけん)私人に對し、其名を以て警察處分を行ふ事を得る官廳の權限を云ふ、警察處分權は、警察官廳之を有す、素より其權限たるや、法規に依りて許されたるものなると同時に、其範圍も自己の權限内に限局せらるるものとす、即ち警察處分に對して、警察處分權と謂ふ時は、處分に伴ふ行動を爲し得る基本の權能にして、具體的に謂ひ現せば、處分は或る事實の發生する場合に際し、其事件の處理を指し、之に反して處分權とは、其一事實に對し行ふ處分に對し、權力關係より見て爾か云ふのみならず、如何なる時と場合とを問はず、かかる事件に際して常に處分し得る權力、即ち法令の範圍内に於て許され、且つ警察行政の目的又は助長行政の一端として、國民に對する社界の危害を防止し、以て幸語を增進する權力なり。
- 英
- Power of police execution
- 独
- Polizeiverfügungsrecht
- 仏
- Pouvoir de l'exécution de la police
警察法規
(けいさつはふき)行政法上警察に關する總べての法律命令を包含して、之を警察法規と謂ひ、警察の目的の爲に發布せられたるものなる以上は、法律なると命令なるとを問はず、共に警察法規にして、警察官署の組織權限、事務の取扱等を定めたる官制を初め、警察權の基礎を定めたる行政執行法、出版法、治安警察法、其他警察官署が自己の權限に於て、直接人民に對し發する處の命令迄を含みたる廣汎なる意味を有するものとす。
- 英
- Police regulation
- 独
- Polizei-norm
- 仏
- Règlement de la police
警察規則
警察規則とは、警察官廳が警察行政に關して發する行政命令の全般を謂ふ。
- 英
- Police rules
- 独
- Polizeiregel
- 仏
- Règles de la police
警察命令
警察命令とは、社會、及び個人の安寧幸福に對する危害の排除を目的として、人の自由を制限する爲めに發する行政命令を云ふ、此命令は天皇の發することあり、各省大臣の發することあり、以て警察官廳の發する警察規則と相對して、警察法規の一部をなすものとす。
- 英
- Police order
- 独
- Polizei-befehl
- 仏
- Ordre de police
警察罰
(けいさつばつ)刑罰とは、法規に對する服從に違背したる者に對し、國家が臣民の法律上、當然享有すべき利益を剝奪する所の處分なり、刑罰は分らて二となす、曰く刑法上の刑罰、(單に刑罰と稱す)警察上の刑罰、(警察罰)之なり、刑法上の刑罰とは、現に社界又は私人の利益を害する所爲に對する制裁を謂ひ、之に反して警察上の刑罰とは、現に利益を害することなしといへども、これを害するの虞ある所爲、又は現に利益を害するの所爲に導くの虞ある所爲に對して科する制裁を謂ふ、學者或は此二者の區別を、權利侵害の有無に求むる者あり、曰く刑法上の刑罰は、權利侵害の所爲に對するものにして、警察罰は權利に危險を與ふる所爲に對するものなりと、然れども國家が法規を發して、行爲不行爲を命ずる以上は、臣民は之に依りて公法上の義務を負擔し、國家は之に依りて公法上の權利を有するに至る、而して苟も服從義務に違背する所爲あるに於ては、何れの場合を問はず、常に權利侵害なる事實の之に伴ふべきを以て、二者の區別を權利なる形式觀念に求むるは穩當ならずと信ず、尤も所謂刑罰と警察罰との區分點は、法學社會に於ける未定の問題なれば、重要なる數説を揭げて諸君の參考に資せん、□一刑罰と警察罰との間には性質上の區別なく、若し二者を強ひて區別せば、單に其德義に反する程度の差別に過ぎずとなす説、獨のバール、ベッカー氏等の主唱する所也、□二刑罰は成法以前に存する法益、(例へば法以前より一般に認められたる身體、生命、自由、貞操等の權利)侵害に對する制裁にして、警察罰は成文法、(主として行政法規)に依りて始めて認められたる法益侵害の制裁なりとなす説、フヰエルバッハの主唱する説なり、□三は前説の如く、權利侵害の罪を罰する制裁を刑罰となし、且つ體的の實害を生ぜざる罪を罰する制裁を警察罰となす説、□四刑罰は犯人の客觀的の所爲を罰するのみにあらずして、主觀的の惡性をも併せて罰するものとし、警察罰は、單に客觀的の所爲を罰し、其主觀の善惡如何を問はざるものとなす説、□五刑罰は故意、又は過失に出づる犯罪の制裁なることを要し、警察罰は、單純なる行政法規の違反に科する制裁なりとの説、□六刑罰は、立法者が直接に社會の秩序維持に害ありと見て科する罰を云ひ、警察罰は、行政法規の實行を目的とし、之が違反は、間接に社會維持に害ありとして科する罰を云ふとなす説、以上の如く數説あるも、茲には最初説明の如き説を採用せるものなり。
- 英
- Police punishment
- 独
- Polizei-strafe
- 仏
- Punition de police
警察分署
(けいさつぶんしよ)地方官官制に依りて、管下警察署の下に之を置き、警察分署長が、事務を總括して行ふ一種の支官署なり、明治二〇年以前は、警察出張所並に屯所等の名義を使用し來りたるも、内務省達を以て、特に分署と改稱すべきこととなれり。(一〇年内務省乙第五號達、及び地方官官制三一條等參照)
- 英
- Detatched police station
- 独
- Polizeizweigstation
- 仏
- Poste détachée de police
警視
(けいし)警察行政に於ける執行機關にして、巡査、警部の上位に位する奏任の官吏なり、警察に關する機關としては、内務大臣、警視總監、地方長官、警部長、警視、警部、巡査、憲兵等ありて、各次其警察事務を鞅掌す、之等の機關中、命令權、及び處分權の兩者を具有するものと、處分執行權のみを有する者との二種に分る、上記の官吏中警部長以下は、所謂警察の執行機關にして、之等の官吏は、皆獨立の命令權なく、唯上官の命を受けて、之を執行するの權限と職務とを有す、故に一種の警察官廳に於ける補助機關なりと云はざるべからず、茲に注意すべきは、警視、或は警部が、警察署長として命令權を行使することあるも、之を彼等が有する職權と混同せざることこれなり、斯くの如きは唯上官の委任によりてのみ行使する所に係り、警視又は警部としては、命令權を行使するの職權なきものとす。
- 英
- Police inspector
- 独
- Polizei-hauptmann
- 仏
- Inspecteur de police
繼子
(けいし)俗に「ママ子」と謂ふ稱呼と同一義にして、法律上之を繼子と謂ふ、即ち自己と同一の家に在る配偶者一方の子にして、自己の實子、養子にあらざるものを、自己に對して繼子と云ふ、再言すれば、親族法上に於ける自已の嫡出子、庶子、及び私生子にあらざること、及び血續關係なくして、法定の條件を具し、子たる身分を取得する養子を除外したる、自己の配偶者の子を云ふものとす、民法に依れば、繼父母と繼子との間には、實親子と同一の關係を生ずるものにして、所謂法定血族の一種とす。(民七二八條、及び法定血族の部參照)
- 英
- Step-son (daughter)
- 独
- Stiefsohn
- 仏
- Beau-fils
刑事
(けいじ)刑事とは、民事に對するの區別にして、刑法其他刑罰を科せらるべき法規を犯したるものに對する、國家機關の行動を指す。(裁構法二、一六條、貴族院伯子男爵議員互選規則四條參照)
- 英
- Criminal case
- 独
- Kriminalfall
- 仏
- Cause criminelle
刑事事件
刑事事件とは、刑事訴訟事件と云ふと同義にして、刑法其他一般廣義に於ける刑事法に違犯したる者に對し、確實に法則を適用せんが爲めに、國家裁判所なる司法機關を設けて、之を審理判決せしむ、而して刑事法は一定の行爲あれば、其法律上の結果として、刑罰あることを規定せるものなるが故に、此刑罰なるものの意義如何に依りて、自ら刑事事件の意義を定むるものと云ふへく、即ち刑事事件とは、刑罰の適用に關する法律上の爭議なりと論斷することを得ん、例へば或る者が竊盜罪を犯し、訴追せられて被告人となり、刑事裁判所に於て審理せられつつありとせんが、之謂ふ所の刑事訴訟にして、この事件を指して、刑事事件と稱するに外ならざるなり。
- 英
- Case of criminal action
- 独
- Strafsache
- 仏
- Cause criminelle
形式
(けいしき)形式の意義は、其場合に應じて稍異るものあり、第一、内容に對し夫れを支持する形體の結構を意味す、即ち其ものの本來の目的、又は意義に對し、その目的意義を支持する外部の組み立、例へば住居てふ本來の目的に對すれば、家屋は其形式なるが如き、又描寫てふ意義に對しては、文章の文字の配合音韻の次第の如きは形式なるが如く、專ら皮殼を指すものなり、第二體的心的たるを問はず、苟も活動又は作爲を規定する法則、猶細別すれば儀式、格式、禮法、習慣、定義、定則、文法、語法等其他一般に事物行動の準則となるべき方式を意味す、例令ば體的活動に於て、その擧止動作を規定せる禮義作法の如き、又心的活動に於て、其思考感想の述べ方を規定する文法語法の如き之なり、第三、思考の根本的槪念を謂ふ、即ち吾人が一切事物を認識するに、其認識の條件として、必ず依據すべき普通的槪念を指す、カントの時間、空間、及び十二範疇の如きこれなり、形式的とは、形式を形容詞として用ひたるものなるが、第一、第二の意義を有すること多く、これより時に内實なき空虛として、惡樣に唱ふるに用ゐらるる事あり。
- 英
- Form
- 独
- Form
- 仏
- Forme; formalité
形式的
形式主義
形式主義とは、一般に謂へば事物、又は行爲の外形に重きを置き、其外形の意義たる内容を深く問はざるものをいふ、例令ば文藝上形式主義と謂へば、作物の内容に重を置き、其思想の變化事件の發展等を主とする、所謂ローマンチスズムの如きに反對し、專ら其作物の結構、外形、例へば字句の配列、韻律の具合等に重を置く希臘文學、又は十八世紀文學等に現はれたる傾向特色の如きを指す、形式なる語は、法律上に於ても之と同じく、其内容に相對して外面に表章する形の意に外ならず、例へば要式方式の如き、又實體法に對する形式法とか、或は形式手續、形式の完備とか云ふ即ち之なり、書籍に就きて例へば、表紙、各頁より活字等總べて表装の體裁を見て、之を形式に於て云々と謂ひ、内容に於て著述せられたる書籍の論旨を實質と稱するが如き、其他願書、屆書の如き、印紙の貼用提出者の署名捺印等、一應願書、屆書として備へざるべからざる諸點の完全なるを、形式の具有、又は完全なる形式と云ふが如き、皆形式なる文字の意を適切に謂ひ現したるものなり。
形式法
(けいしきはふ)講學の便宜上より、學者は種々なる點を標準として、法律を彙類分別し、或は公法、私法、一般法、特別法、固有法、繼受法等となす、形式法も亦斯かる分類に基き、彼の實體法に對する區別の稱にして、例へば民法は國民一般に對する日常生存に關し、有らゆる權義の關係を實體的に規定したる點より之を實體法と云ひ、其權利の伸長救濟を現實にせんが爲め、裁判所に保護を求むる手續を規定したる、此手續的行動の外面作用を形式と云ひ、其形式手續を規定したる民事訴訟法等を形式法と謂ふなり、尚刑法に對する刑事訴訟法も、同一見解に於て形武法と謂ふべきものとす。
- 英
- Adjective law
- 独
- Formalrecht
- 仏
- Droit formel
刑事裁判權
(けいじさいばんけん)犯罪あるに當りて、刑罰の權を有するものは獨り國家のみ、之を以て法律に定めたる刑事の手續を實行し、犯罪者に判決を言渡すの制度組織を設くるを得るも亦國家なり、即ち通常裁判所を設置するものは國家なるを以て、從つて刑事裁判所も亦國家の裁判所なるは言を俟たず、換言すれば裁判所は、唯國家の設置したるもののみに限り、他の團體若くは一私人の設置したるもの無きなり、斯くの如く刑事裁判所を設置し、其行動を規定し、其權利義務の範圍を定むる所の國家の大權を、司法權、即ち廣義の裁判權と云ふ、犯罪にも夥多の種類あり、國家は刑事裁判所に數個の階級を設け、犯罪の輕重に從ひ、各其階級の裁判所に屬せしむ、斯くの如く國家は、一定の種類の犯罪は、一定の階級の裁判所に屬する事を定むのみならず、土地の管轄區域をも定め、或一定の犯罪は、一定の土地を管轄する裁判所に屬するものと爲せり、又國家は、或▲判所は所謂第二審又は第三審として、第一著に被告事件を審理したる裁判所の判決の當否に就き、復審を爲すべきものとせり、斯く國家は刑事事件を裁判するに就きて、各裁判所の權能を定むる外、尚刑事裁判所に付與するに、訴訟を圓滿に實行するを得しむる所の他の權限を以てせり、即ち被告人又は證人等に對し、廣く強大なる強制力を有し、又關係人の意思に反しても、訴訟に於て證據方法として、必要なる物件を利用することを得しむるか如きこれなり、その他訴訟指揮權の如き、訴訟に關する權利を有するものとす、斯くの如く刑事訴訟の實行に關し、刑事裁判所に付與せられたる總べての權能、及び權利を狹義の刑事裁判權と云ふ、刑事裁判に關與する官吏には、判事の外、裁判所書記、及び執達吏なる裁判所の職員あり、國家は之等の者に就きて、其判事、書記、執達吏となるには如何なる資格を要するかを定め、又刑事事件の職務に就きて、如何なる權利義務を有するかを定む、而して此場合に於ても亦裁判權なる語を用ふることあり、即ち裁判所の職員として、一定の方法に於て、刑事事件を取扱ふ權利を裁判權と云ふが如し。
- 英
- Power of criminal trial
- 独
- Strafgerichtsbarkeit
- 仏
- Pouvoir du juge-ment criminel
刑事裁判
刑事裁判とは、國家が特定の犯罪事件に刑罰を審判適用せしむる爲め、司法裁判所に爲さしむる行爲を云ふ、刑事裁判は、常に法定の方式に從て定められたる定數の判事、書記其他を以て訴廷を構成し、法定の準則に依りて之を行ふ、其準則方式は、一般の刑事裁判に就きては、刑事訴訟法、裁判所構成法是なり。(會計檢査院法二八條二項等參照)
- 英
- Criminal trial
- 独
- Strafent-scheidung
- 仏
- Jugement criminel
刑事裁判所
(けいじさいばんしよ)國家は、統治の必要より法規を發布し、或は刑罰を之に付して、若しこの禁制、命令に背反するものあるに於ては、確實に刑罰を科すべきことを以てす、而して其手續を實行する爲め、犯罪者に對して判決を言渡す制度組織を設く、これを稱して刑事裁判所と謂ふ、裁判所には、特別裁判所、通常裁判所の區別あるも、單に刑事野判所と謂へば、常に通常裁判所を意味するを普通となすが故に、茲には特別裁判所に論及せず、以下通常裁判所に對する地位の如何を略述せんに、□一通常刑事裁判所に關しては一大原則あり、裁判權は、法律にのみ服從する獨立の裁判所之を行ふこと即ち之也、□二通常裁判所に關する重なる規定は、イ何人と雖も法律に定めたる裁判官の裁判を受くる權を奪はるることなし、ロ司法及び行政は、嚴に之を區別せざるへからず、即ち通常裁判所は、同時に行政官府たるを許さず、但し司法行政は例外たるべきもの也、□三裁判の獨立も、亦裁判所構成法の規定に依り、通常裁判所の判事をして、各種の權力の爲めに關渉を受けざるの地位に在らしむることを保證するものなり、□四通常裁判所は、法律にのみ準據すべきものとす、即ち通常裁判所に屬する刑事事件には、現行刑法及び刑事訴訟法の規定を適用するを要す、各裁判所には、判事の外尚他の職員の關與するあり、之等の者を總稱して裁判所の職員と云ふ、所謂裁判所の職員とは、判事、書記及執達吏の三者にして、檢事は、裁判所の職員にあらずして獨立の官府たるなり。(裁構法一、一一、一六、一九、二七、三四、三七、四三、五〇條、
刑事裁判費用
(けいじさいばんひよう)刑事訴訟事件の審理裁判を爲すに際し、費したる裁判上の訴訟費用を云ひ、或は在監の囚人及懲治人に對する總べての費用をも、含ましむる如く解する場合もあり、此點に關する法規は其正確を缺くと雖も、要するに刑事裁判費用とは、刑法第四五條乃至四八條中に規定せられたる徵償處分、即ち刑事の裁判費用は、其全部又は幾分を犯人に科すを基礎とし、費用の額に就きては、別に規則を定めらるるものなるも、常に犯人の負擔額に關しては、各事件の判決に於て同時に通告せらるるものとせり、特に區別すべきは、刑事裁判費用と民事裁判費、所謂訴訟費用との差異ある點なり、民事訴訟費用は、個人の利益を目的とする訴訟なるが故に、其負擔の額、及び義務者等に關し、自ら刑事訴訟費用と異る見解の上に立ち、後者は、社界公共の安寧を保持する強制的の訴訟なるが故に、費用負擔の責任を國家も亦分擔するものたること之なり。(刑法施行法六二條乃至六七條參照)
- 英
- Expense of penal pro-ceeding
- 独
- Strafgerichtskosten
- 仏
- Dépens du jugement criminel
刑死者
(けいししや)死刑の執行を受けて死亡せる者を云ふ、監獄則第三七條第二項に「刑死者」とあるは其用例なり、又明治二四年内務省令第一一號を以て、刑死者の墓標祭祀等に關する命令を發布せられ、刑死者の墓標は氏名、法號、族籍、年齡、生死の年月日を記入するに止め、他の事項を記入するを許されず、又墓標地は、遺骸埋葬地、又は組先墓域の外之を建設するを得ず、警察の許可なく、刑死者の爲め、公然祭祀を行ふべからず、且つ寫眞肖像を公然陳列し、又は販賣するを得ざるのみならず、總べて刑死者を稱場哀悼することを許さず、之に反する者は二圓以上二十五圓以下の罰金、若くは十一日以上二十五日以下の輕禁錮に處すことを規定し、又地方長官、及び警視總監は、安寧秩序を保持する必要あるに於ては、死刑に該當すべき犯人が、判決言渡前に死刑執行の方法に依らずして、死去又は刑を免がれん爲め自殺したるときも、刑死者に準じ、以上の制限と罰則とを加ふる事を命令し得る旨を規定せられれり。
- 英
- Executed person
- 独
- am Leben gestrafte
- 仏
- Exécuté
刑事上の責任
(けいじしやうのせきにん)廣く責任と云へば、行爲に伴ふ法律上、道德上の效果を行爲者本人に歸するを云ふ、法律上の責任と云ふは、そが中の法律上の效果を、行爲者本人に歸するを指すなり、學者の責任を解して、身體の動作と、其本人と連結する精神上の關係なりとなすは、茲に所謂責任の前提要件なりとす、法律上の責任は、その責を負ふ理由たる法律現象の異るにより、或は民事上の責任となり、或は刑事上の責任となり、或は公法上の責任となり、或は國際上の責任となる、所謂刑事の責任は、刑事法上の責任の意なりとす、刑事上の責任を負ふ者は彼の犯罪者にして、犯罪者とは犯罪をなしたる者を云ふ、謂ふ所の犯罪とは、有責違法の行爲にして、責任能力者が犯法の意思を以て、法定の禁制命令を犯したる時に成立す、責任能力とは、精神の未發達者(幼者の如き)精神の不健全者(狂者の如き)にあらざる者が、障碍なき狀態に於て有する認識力を云ふ、犯法の意思とは、犯罪遂行に當り、故意又は過失に基く意思に依りて決意するを指す、佛法學者は、責任の前提要件を是非の辨別、意思の自由、犯法の故意の三となせり、曰く是非を辨別するものが、之を爲さざらんと欲すれば、之を爲さざることを得るに、敢て之を爲さんとするときに、茲に初めて犯罪成立し、責を負はざるべらざるに至ると。(刑三八、三九、四〇、四一三五乃至三七條等參照)
- 英
- Criminal responsibility
- 独
- Kriminalverantwortlichkeit
- 仏
- Cul-pabilité criminelle
形而上學
(けいじじやうがく)純正哲學といふに同じ、動物學生物學等の如き一般自然科學(即ち形而下學)に對し、專ら正しき推論を基礎として、一層究理的に一切事一切物を論究し、夫等の究極原理を發見せんとするを目的とす、今形而上學にて論究する重なる問題を擧ぐれば□一存在、實在、本體、時間、空間、運動、變化、同一、差別等を含める一切現象の基礎たる諸槪念、又は諸原理を論ず、□二現象的存在より區別せられ、其本質たる實在を論ず、□三事物の究極の性質、原因、理法を攻究す、□四一切の存在に關し、其有限なりや、無限なりや、精神的なりや、物質的なりや、一元的なりや、二元若くは多元的なりやを論ず、然るに一般には、□二及び□四を以て形而上學の主なる問題とす、更に形而上學を特殊の意義に解し、此中に自然神學、合理的宇宙論、合理心理學の三目を立つることあり。
刑事職權法
(けいじしよくけんはふ)刑事職權法とは、刑罰法の適用を掌る國家機關の組織管轄等を定むる法規を總稱す、如何なる法律が之に屬するやは、解釋の標準如何によりて差異を生ずべきも、先づ刑事裁判所權に關する諸法規例へば裁判所構成法等は、刑事職權法の一なるを知るべし。
- 英
- Law of criminal authority
- 独
- Strafauthoritätsrecht
- 仏
- Loi de l'au-torité criminelle
刑事制裁
(けいじせいさい)刑事制裁とは、國家が刑罸法上に於て、犯罪者に加ふる惡報を意味す、茲に注意を要するは、刑罰法上の刑罰は、一種の制裁に外ならざれども、刑罰其者は必ず制裁と一致するものにあらざること之なり、刑事制裁とは、廣き意義に於ける刑事法の違犯者に對して科する、總べての法益の剝奪と云ふべく、刑罰と云ふは、特に刑事法上嚴重なる一定の意義を有するものなれば、其間に於ける區別は克く之を認め置かざるべからす、一言以て之を盡せば、刑罰とは刑事上に於ける制裁の一種にして、制裁とは、法律が刑事法の違背者に科する、法益の奪取の全般なりと云ふを得べし。
- 英
- Criminal sanction
- 独
- Kri-minalsanktion
- 仏
- Sanction criminelle
刑事訴訟
(けいじそしよう)抑も刑法は、一定の行爲をなしたる犯人に對し、國家が處罰を爲すべきことを規定せるものなり、此故に、刑法に規定する所の行爲が、實際行はれたる時は、何人が其所行者なるか、其行爲に對し、所行者に刑を科すべきや否や、又之を科するとせば、如何なる刑を科すべきやを定むるの必要を生ずべし、國家は之を定むるに就き、其行動を一個の官府たる刑事裁判所に一任せり、現行刑事訴訟法によれば、裁判所は自から進みで犯人の訴追をなすものにあらずして、常に裁判所に提起せられたる訴を受理し、後始めて之が審理に著手するもの也、されば國家は、訴を以て處罰權を主張するの權限を有する檢事なる一官府を設け、犯罪あるや常に國家の刑罰權を主張して、以て社會の安寧幸福を確保す、斯くの如く檢事公訴を提起し、被告之に應じ、裁判所兩者の上に立ちて審理裁判す、此目的に向つて此三者が種々なる行爲をなし、其行爲より或る連鎖層一層を重ね、恰も階段の如く、前後各序一個の手續を組成す、これ即ち所謂刑事訴訟にして、今定義を下せば、裁判所、原告及び被告人間に有する訴訟行爲の連鎖、即ち手續を刑事訴訟と云ふこととなるべし。
- 英
- Criminal action
- 独
- Krimi-nalprozesz
- 仏
- Procès criminel
刑事訴訟事件
刑事訴訟事件とは、刑事事件が檢擧せられて、裁判所に繫續中の攻擊防禦の狀態を云ふ。
- 英
- Case of criminal action
- 独
- Strafsache
- 仏
- Cause du procès crimi-nel
刑事訴訟手續
(けいじそしようてつづき)訴訟を一個の權利關係とすれば、此訴訟の權利關係が成立するには、如何なる條件を必要とするか、又一且成立したる訴訟關係が、適法に進行發達するには如何、又其事件の目的たる國家處罰權に就きて終局の裁判を爲し、之に依りて權利關係が適法の終了を告げんには、如何なる事實を存在せしむべきか、總べて之等を實現せんとする行爲が、刑事訴訟の手續なり、而して手續と稱し去れば、至極單純なるものと觀ずるも、尨大なる刑事訴訟法の一編、皆訴訟手續に關する規定を以て埋められたるものにして、實際各場合の訴訟手續を知れりと謂はんには、刑事訴訟法の全編に捗りて、知悉せざるべからざるものとす、故に茲には之を抽象的に定義して、一定の法則に從ひて、國家刑罰權の存否、及び範圍を判決を以て確定する爲め、裁判所及當事の爲す所爲の全體を云ふとするに止めん。(民訴一二二條參照)
- 英
- Process of criminal action
- 独
- Strafverfahren
- 仏
- Progrès du procès criminel
刑事訴訟法
(けいじそしようはふ)刑事訴訟法とは、刑事訴訟に關し、遵守せられ、且つ適用せらるべき規則の全體を云ふ、廣義に於ては、刑事裁判所に關する總べての法規は、之を刑事訴訟法と云ふ事を得ん、即ち判事等の資格、各裁判所に於て刑事事件に關すべき判事の員數、各階級の裁判所に於ける刑事事務の分配等に關する規則の如き之なり、然れども此の如き刑事裁判所の組織に關する規則の全體は、特に之を刑事裁判所構成法と稱す、形式的の意義に於ては、現行の刑事訴訟法、即ち二三年法律第九六號を以て發布せられたる刑事訴訟法を指す、現行刑事訴訟法は、裁判所構成法第一條に、所謂通常裁判所に屬する刑事訴訟の手續に關する法則の全體なり、但し犯罪の捜査及裁判執行の手續をも附規せられたり。
- 英
- Code of criminal procedure
- 独
- Strafprozeszordnung
- 仏
- Code de l'intruction criminelle
刑事訴訟費用規則
(けいじそしようひようきそく)國家が處罰權を有する結果、裁判所なる官府を設けて、刑法の審理適用を掌らしむる以上は、之等官府の組織、存在、其他刑事訴訟の進捗結了に關し、多樣の行動を要し、從つてこれに隨伴する費用の生ずるは、數の免れざる處なり、刑事訴訟費用規則は、この點に關する總べての規定を爲せる法規なり。(三二年律令一一號參照)
- 英
- Law of the expense of criminal action
- 独
- Gesetz der Straf-prozeszkosten
- 仏
- Règles de dépens du procès criminel
刑事訴追
(けいじそつい)國家は、刑事裁判所なる官府を設け、刑事訴訟事件の審理裁判を爲さしむるものにして、現行刑事訴訟法に於ては、特に裁判所に對して檢事なる獨立の官府を設け、處罰權を主張するの權限を與へて、之に一定の權利及び義務を負はしめたり、檢事は所謂原告官にして、檢事が其處罰すべき者即ち被告人に對して、起訴を爲すを訴訟法上訴追と云ふ、現行訴訟法に依れば、訴は常に檢事の手を通して提起せらるべきものにして、或る特種の場合の外、裁判所直接に訴を起して、自ら審理する能はざるものなり、之を不告不理の原則と云ふ、又檢事が常に犯罪を捜査し、起訴するの責任あるを稱して、講學上勵行主義と云ふ、裁判所構成法第七三條第二項に、「刑事追訴」とある其用例なり。
刑事手續法
(けいじてつづぎはふ)刑事手續法とは、刑事訴訟に於ける訴訟手續の規定を云ひ、現今法令にては、刑事訴訟法の如きを云ふ、元來手續法は、實體法に對する名辭にして、實體法を實際に現す爲めに要する、諸種の行動の準則を定めたるものを手續法と云ふ、刑事手續法もこの手續法の一種にして、刑事實體法たる刑法、其他の刑罰法令を、犯人の上に實現する爲めになす行動の準則を規定したるものなり。(刑事訴訟法の部參照)
- 英
- Law of criminal process
- 独
- Strafverfahrensgesetz
- 仏
- Loi du progrès criminel
刑事法
(けいじはふ)刑事法とは、刑罰法令を總括して付したる稱呼にして、單に刑法法典のみならず、民法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法と云ふ如き、他の名稱を付したる規則中に在りても、若し犯罪と刑罰との關係を定めたる條項あらば、其條項は刑事法なり、換言すれば、刑法と其他の刑罰法令とを包含して、之を刑事實體法と云ひ、刑事實體法に對する彼の刑事手續法を併せて、之を刑事法とは云ふなり、之を圖解すれば左の如し。
刑事法
{刑事
實體法
{刑法
其他の刑罰則
刑事
手續法
{刑事職權法
例へば裁判所構成法の或る條の如し
狹義刑事手續法
刑事訴訟法の如し
- 英
- Criminal law
- 独
- Kriminal-recht
- 仏
- Droit pénal
刑事被告人
(けいじひこくにん)刑罰法上の犯罪人、即ち刑罰の附せられたる禁制命令の法規を犯し、告訴、又は告發を受け、所謂訴追せられたる者に對し、其裁判の確定に至らざる間、之を稱して刑事被告人と云ふ、判決確定後刑の執行を受くる者は、之を囚人、又は囚徒と呼びて、被告人と區別す、例へば裁判所に於ける刑事事件の強盜殺人、被告人、又は竊盜罪被告人と云ふが如き之也。(監獄則三八條、囚人刑事被告人押送規則參照)
- 英
- Criminal defendant
- 独
- Strafangeklagte
- 仏
- Défendant criminel
刑事部
(けいじぶ)裁判所構成法に依り、地方裁判所、控訴院、大審院に於て、刑事事件に就き審理、裁判する裁判所を指す、茲に裁判所と云ふは、嚴正なる訴訟法上の意味にして、彼の世俗に地方裁判所、若くは控訴院なる官府を呼ぶものと趣を異にす、即ち裁判所は、裁判長陪席判事、及び檢事、書記の立會に依り、被告人の出延を爲さしめ、公判を爲すものにして、證據調より順次審理判決を爲し、公廷、及び公判開廷にあらざる時と雖も、裁判事務の分配により、一裁判所に於て、民事事件又は刑事事件のみを取扱ふ構成法の職員を以て成る一部署を云ふ、裁判所構成法第九條、第三四條、第四三條に「一若くは二以上の民事部及刑事部を置く」とあるは其用例なり。
- 英
- Criminal court
- 独
- Strafkam-mer
- 仏
- Cour de justice criminelle
繼受法
(けいじゆはふ)直接、間接に、或る一國が他國の法典を模範として、自國の法典を編纂するの謂にして法典の體裁は、素より其實質の意をも受繼ぐことを繼受法と稱す、講學上摸範とされたる法典を呼びて母法と謂ひ、摸倣したる法律を繼受法と云ふ、例へば我國に於ける新民法が、編纂の順序より實質の大體迄も、獨逸民法の主義を採りて成りたるが如く、現行刑法は、佛國刑法を典型とせるが如き、この場合に摸倣したる法、即ち我民法、刑法を繼受法と呼び、摸範となりたる獨民法、又は佛國刑法を繼受法に對して母法と云ふなり。
敬稱
(けいしよう)敬稱とは、敬意を表彰するに用ふる稱呼なり、至尊が御自身に對する憲法上の尊稱權の如きは、明かに法律上に於ける敬稱の一種にして、又通俗に樣と稱し、殿と呼ぶ如きも、亦皆一種の敬稱なり、彼の軍人間に於て、規則上敬稱を強制して用ひせしむることあるは、普く人の知る處なり、即ち、天皇、皇后御二方を陛下と奉稱し、皇太子以下各皇族に對し奉りては殿下、將官を閣下、上長官以下を殿と呼ばしむることを、下級の者に訓命するが如きこれなり。(典範第一七條、衆議院議員選擧法五八條五號參照)
- 英
- Honorable title
- 独
- Ehrentitel
- 仏
- Titre honoraire
頸飾
(けいしよく)頸飾は、明治二一年一一月勅令第二一號を發布せられたる法規に依り、國家に對し、大功勳ある者に賜はる大勳位菊花章を、喉下に佩るに用ふ、其圖樣は、菊花、菊葉の形と、明治の二字を古篆文にて飾れるものなり。
- 英
- Neck lace
- 独
- Halsband
- 仏
- Collier
刑事律例法
(けいじりつれいはう)弘仁格の序に、蓋聞律以懲肅爲宗とあり、又舊唐書の刑法志に、人之爲惡入干罪戾一斷律云々とあり、之に依つて觀れば、元來律なるものは、彼の令格等に對し、刑罰を規定したる命禁の法規の謂ひの如く、又例へば、刑例、法例と云ふが如く、一般に通ずる總則の意なれば、茲に刑事律例法と云ふは、明治六年發布の改定律例の如く、一般の刑罰法を指すものと解するを至當とせん、現行に於ける刑法、陸海軍に於ける陸軍刑法、海軍刑法の如きは此實例なり。
- 英
- Criminal law
- 独
- Kriminal-recht
- 仏
- Droit criminel
契税規則
(けいぜいきそく)明治三〇年律令第四號を以て、臺灣總督が特に臺灣の内に於て施行する爲めに發布せられたる法規にして、土地建物を買受けたる者、又は之を質入れしたる者に對し、夫々一定の税率即ち比例を以て、取立つる税金に關する規定なり。(三〇年臺灣律令四號)
繼續地役權
(けいぞくちえきけん)地役權が、他人の土地に就き間斷なく繼續して、或る便益を受くべきものたる場合に、此種の地役權を稱して繼續地役權と云ふ、例へば他人の土地より間斷なく水を引用して、耕作に資する地役の如きこれなり、民法第二九一條に「繼續地役權」とあるはその用例とす。
- 英
- Continuing servitude
- 独
- fortdauernde Servitut
- 仏
- Servitude con-tinuante
繼續犯
(けいぞくはん)繼續犯とは、犯人が犯行により、法の禁止する狀態を惹起するに止まらず、これを繼續的に維持する場合を云ふ、是犯罪の實行に就きて、長き時間を要したるを云ふにあらずして、犯罪の實行を終了し、其結果を見たる後、猶其狀態を多少長き時間繼續する犯罪を云ふ、犯行の維持と實行の繼續とは決して混同すべからず、例へば不法監禁罪の如き、監禁を行へば茲に犯罪成立するも、一度監禁後其儘に擱置くときは、即ち監禁の狀態長く繼續するなり、斯く如く監禁の事實の存在する間、犯罪の終了せざる如き、或種の犯罪を繼續犯と云ひ、彼の即時犯と對す、所謂即時犯と繼續犯との區別を知らんと欲せば、各犯罪に就き、其成立要件を討究し、其成立するや否や直に終了するか、又は成立して尚同一の狀態にて長く繼續するかを詳にするを要す、この區別は二三の實益あり、□一刑の適用に就きて、不法監禁の如きは、日數十日を過ぐれば一等を加ふるが如き之なり、即時犯は、犯罪成立の後に於て加重の原因あることなし、□二公訴時效の起算點に就きて、即時犯は其犯行の終了を告げたる日より起算し、繼續犯は、繼續の狀態が止みたる日より之を起算す、□三舊法に於て罰せざる所爲にして、新法に於て之を罰するときは、繼續犯に就きては、假令同一の事實なるも、舊法時代の繼續行爲は之を罰せずして、新法時代に入りて尚繼續したる行爲は、罰せざるべからず、即時犯は之に異り、其犯罪は舊法時代に於て終了する場合は、新法の規定に依りて罰することを得ざるが如し。(刑二二〇條、刑訴一〇條)
- 英
- Continuing crime
- 独
- fort-dauerndes Verbrechen
- 仏
- Infraction continuante
繼續犯罪
繼續犯罪とは、繼續犯と云ふに同じ、刑訴第一〇條に、「公訴私訴の時效は、犯罪の日より其期間を計算す、但し繼續犯罪に付きては、其最終の日より起算す」とあるは此用例なり。
- 英
- Continuing crime
- 独
- fort-dauerndes Verbrechen
- 仏
- Infraction continuante
繼續費
(けいぞくひ)一定の年限間支出すべき經費を云ふ、その經費たるや、國家の經費たることあり、市町村府縣の經費たることあり、私人の経費たることあり、茲に國家の經費に就きて説明すれば、繼續費たると、一會計年度間に支出すべき經費たるとを問はず、國家の經費は常に豫算を以て、議會の協賛を経ざるべからず、抑も豫算なるものは、一箇年度間の收支を豫め計算したるものにして、一箇年度間の收支は、必ず豫算に編制せられざるべからざるもの也、豫算は、一會計年度間の收支の見積書にして、租税、及び其他一切の收納を歳入とし、一切の經費を歳出とす、憲法第六八條は、特別の須要に依り、政府は豫め年度を定め、繼續費として議會の協贊を求むることを得べき規定を設け、此場合に於ける繼續費に關する豫算は、數會計年度に亘りて編制することを得るものとせり。(憲法六八條、府縣制一二〇條等參照)
- 英
- Continuing expenditure
- 独
- fortdauernde Kosten
- 仏
- Dépens con-tinuant
輕懲役
(けいちようえき)舊刑法に認むる重罪の主刑の一種にして、六年以上八年以下宣告により、内地の懲役場に入れ定役に服せしむる刑罰なり、刑法第七條第七號に「輕懲役」とあるは其用例なり。
- 英
- Minor confinement
- 独
- leichte Zuchthausstrafe
- 仏
- Emprisonnement
繼任者
(けいにんしや)一定の任期ある職務に在る者が、その任期の到來、又は其任期の到來前に、辭職其他の事故によりて闕位となりたる場合に、其地位を繼承して、前任者の殘期間内、或は更に一定の期間其任務を執る者を謂ふ。(議院法九條)
- 英
- Successor
- 独
- Nachfolger
- 仏
- Successeur
刑の執行猶豫法
(けいのしつかういうよはふ)明治三八年四月より施行せられたるものにして、一種の刑事政策より出でたる恩惠制度なり、元來刑の執行猶豫に關する法律は、重に白耳義法を母法として繼承したるものにして、其主旨の大要は、犯人に特利の事情ある者、例へば幼年者、若くは婦女の如き、或は事情憐むべき者の如き、犯人に對し犯罪の性質を參酌して、刑の執行を猶豫し、遷善感化を目的とする刑法上に於ける最新の制度なり、何れ國を問はず、刑の執行を爲すに就きては、多數の犯人を集めたる懲役場に抅禁するを常とす、斯くの如き罪惡を冒したる多衆の集合場に於ては、各惡奸の間に於ける風習も、亦實に厭ふべき者ありて存す、然るに一度刑罰に觸れたるも、未だ甚しき惡風に染まざる者、或は前非を悔ひて善良なる臣民に復歸することを希ふが如き犯人を、之等惡漢の集合場に投じて顧みるところなきは、懲治の結果を得んとして、却て犯罪の教習を爲さしむが如き危險あるべきを慮り、犯人に於ける身分と犯罪の性實とを參酌し、場合によりて刑の執行を猶豫し、之に代る相當の監督を加ふるの方法を規定したる制度、即ち刑の執行猶豫なりとす。(追加、刑の執行猶豫の部參照)
- 英
- Law of reprieve
- 独
- Fristbefehlsrecht
- 仏
- Loi du sursis de la peine
競馬會
(けいばくわい)爾來馬匹改良奬勵の目的を以て競馬を許可し來りしも、更に閣令第一〇號を以て、競馬會規程(明治三九年一二月一〇日)を發布せり、該規則の内容は、競馬の開催を目的とする社團又は財團を、民法第三四條に依りて法人と爲さんとする者は、定款又は寄附行爲を以て定めたる事項の外、資産の總額、調書及設計書を差出すを要し、其業務に關しては、馬政長官の監督を受くべきものとし、又競馬會は、競馬開催に必要なる建物、及び一哩以上の馬場を設備し、每年新馬匹を加へ、總べて四歳以上の馬匹を以て、二回以上定期競馬を行ひ、每年度剩餘金の幾分を以て、産馬奬勵の目的に使用せざるべからざること等を規定したり。
- 英
- Horse-race association
- 独
- Pferderennen Gesellschaft
- 仏
- Assemblée de course de chevaux
刑罰
(けいばつ)刑罰なる文字は支那語にして、歐洲諸國に於て使用する刑罰の文字と、其意義を異にす、歐洲諸國の刑法に慣用する刑罰の文字は、其源を羅甸語に汲み、痛苦の意義を有し、支那語の刑罰なる文字は、脅迫の意義を有す、然るに方今一般に法曹界に於て、二者を同視して區別することあるなく、其字義に至りては、却て痛苦と確定せしが如し、夫れ支那語に所謂刑の文字は、素と荊の字にして、刀井に從と云ふ語源を有し、罰とは素と罰の字にして、刀罵に從ふと謂ふ辭に外ならず、何れも刀を以て、人を威嚇し罵るが如き意味を有するものたりしに、現行刑法に於ける刑罰を、却て西歐の解と同一に、刑罰を以て、栽判所に於て犯罪人なりとの宣告を受けたるものに科する痛苦を指稱するに至れり、故に刑罰の性質を有せしむるには、痛苦を感ぜしむるものならざるべからず、而して其痛苦は、或は身體に對するあり、財産に對するあり、名譽に對するあり、就中其最も甚しきを生命に關する死刑とす、以上は刑罰に關する字義性質及び種類の一般なれども、刑法上に於ては、學説として刑罰を定むる數個の條件あり、□一刑罰は適法なる事を要す、即ち犯罪人に科するに、一定の刑罰を以てする準則に適ふものならざるべからざる事を意味し、裁判官、其他犯人に對し接する官吏私人の、應報的制裁を除外することを云ふ、□二刑罰は各犯人に對して、平等均一ならざるべからず、即ち一見誤り易き傾きあるも、眞意は同一の罪を犯したる者に對し、同一の刑を科すべしと云ふにあらず、唯同一の罪を犯したる者は、其身分の如何に拘はらず、同一の刑を科すべく、刑罰は犯罪が相當る以上は、老弱男女と貴賤貧富とを區別するを許さずして、公平なるべしと云ふにあり、□三刑罰は犯人の一身に專屬することを要す、即ち所爲者自身に責任を負擔せしむべしと云ふにあり、犯人に代りて刑を受け、或は其罪三親九族に及ぶと云ふが如き、野蠻時代の刑を排斥するにあり、此三點を具有したる刑と雖も、尚罪人に科するには左の條件を要す、あ刑罰は公然之を宣告するを要すること、是裁判の公平を示し、罪惡必罰の理を世人に知らしむるにあり、い刑罰は、裁判確定後にあらざれば之を執行するを得ず、う刑罰は死刑を除くの外、身體に對して之を科するを許さざること是なり。(刑の部參照)
- 英
- Punishment
- 独
- Strafe
- 仏
- Punition
刑罰權
(けいばつけん)刑罰權とは、犯人に對して刑罰を加ふる國家の權力を謂ふ、由來國家が何故に其權力を有するやと云ふ問題を、國家刑罰權の限據として論ずるを常とす、されど此ことは誤れる見解にして、國家が刑罰權を有するは、國家が統治權を有する結果として、素より自明の理に屬す、唯刑罰の目的は何なりやとして之を論ずるは大に必要あり、又趣味ある點なりとす、左に重なる説を擧ぐれば、□一純正主義に在りては、刑罰權の目的は專ら正義の要求に在りとし、因果應報、罪惡必罰の純理を以て之を説明す、□二實利主義に在りては、刑罰權の目的を專ら利益の關係に在りとし、國利民福の實益を以て之を説明せんとす、□三折衷主義に在りては、正義と利益と兩々相俟ちて刑罰權の目的となし、其一を缺きたるを不正の處罰也と斷定するにあり、從つて犯罪の關係に於て、國家は德義に反くものを悉く犯罪なりと爲すは、是政教の混同なるも、然れども德義に反かざるものを罰するは無道也、即ち德義に反くものの中に就きて、更に利益を害するものにして初めて犯罪なる名稱を下すことを得、略言すれば犯罪は、背德と加害との二點より成る、刑罰の關係に於て、國家は苟も罪あるものを不問に付すべからず、罪惡必罰は嚴に德義の要求する處なり、然りと雖も、刑自體の性質、及び分量も、不德且つ有害たるべからさるが故に、罪刑其權衡を保ち、自懲他戒の效を收めざるべからずと、要するに國家は、國家自存の目的に於て、其存立を危からしむへき犯人、即ち法規を無視して禁制命令を犯す者に對し、刑罰を以て之に臨むべきは素よりにして、若し夫れ以上に刑罰權の目的を求むれば、吾人は折衷主義に從はん。
- 英
- Criminal jurisdiction
- 独
- Straf-recht
- 仏
- Pouvoir de la punition
刑罰法
(けいばつはふ)刑罰法とは、犯行と刑罰との間に原因結果の關係を定むる法規を云ふ、夫れ犯罪と刑罰とは、刑罰法に於ける二大基礎的觀念にして、有責違法の不法行爲を犯罪と云ひ、犯罪に科する惡報を刑罰と謂ふ、刑罰法はこの一定の犯罪に、常に一定の刑罰を科することを規定したる法規にして、刑法其の他刑罰法令即ちこれなり。(刑事法の部參照)
刑法
(けいはふ)刑法とは、犯罪と刑罰とを定めたる國法を云ふ、廣狹二樣の意義あり、廣義の場合には、犯罪と刑罰とを定めたる國法全體を稱し、刑罰法と云ふに同じく、狹義の場合には、其中に就きて特に刑法の名ある法律のみを指す、次に舊刑法と云ふは所謂狹義に於ける夫れにして、時の政府法律顧問たりし佛人ボアソナード氏の起稿に係る、氏は佛國刑法の主旨に範り、其最も非難の存する點を修正して、日本刑法草案を作り、之を政府に提出し、政府は其草案を飜譯して、之を元老院の審議に付し、元老院に於て、多少の修正を加へて確定草案と爲し、遂に明治一三年七月第三六號布告を以て全國に頒布せられ四十一年まで施行されしが、現時は四〇年法四五號之に代るに至れり。
- 英
- Criminal law
- 独
- Strafgesetzbuch, Strafrecht
- 仏
- Droit criminel
刑法改正案
(けいはふかいせいあん)刑法改正は朝野多年の問題なり、明治三年新律網領を頒布し、六年改正律例を公布し、一三年現行の刑法を布告し、一五年より之を實施せり、三五年法典調査會の起草にかかる刑法改正草案を公にせしも、三九年更に刑法取調委員を任命し、該改正案を基礎として審議決定したり、其委員は、貴衆兩院議員中の刑法學者、及び大學教授より組織せられしものにして、法制局及議會に於て、多くの修正を加へられしと雖も、其大體に於ては原案と異る所なくして、四〇年三月二五日二三議會に於て可決確定し、四〇年法四五號として發布せられ、四一年拾月より實施せらるゝに至れり、今舊刑法と異る點を對照して示さん、第一、現行法の不備を補ひたる點、□一國内に於ける外國人の犯罪處分、□二國外に於る帝國人の犯罪處分、□三國外に於ける外國人の犯罪處分に關する規定、□四外國裁判の效力に關する規定、□五電氣を財物と見做す規定、□六信書の秘密を侵す罪、□七重婚者雙方を罰する規定、□八外國の主權者及び使節に對する暴行の罪、□九文書僞造に關する知情行使の罪、□十贈賄者を罰する規定、十一中止犯を罰する規定、第二、單行法を法典中に集輯せる點、改正案にては、刑事法に屬すべき單行法律、即ち□一刑の執行猶豫に關する法律、□二瀆職法、□三外國流通の貨幣僞造に關する法律等を法典中に集輯整理したり、第三、規定の範圍を擴張せる點、□一有期刑の範圍を擴張したる事、舊刑法にては、有期刑の刑期は相交叉することなく、例へば重懲役は九年以上十一年以下、輕懲役は六年以上八年以下となしたるが如く、各其刑に固有の範圍を定めたりしが、改正案にては、大に範圍を擴張し、有期懲役、有期禁錮共に一ケ月以上十五年以下とし、而して抅留の一日以上十日以下を、一日以上一月未滿と改めたり、□二換刑處分に關する規定を改めたる事、舊刑法にては、罰金科料を期限内に完納せざる者は、一圓を一日に折算し、之を輕禁錮に換へて處分する事となしたるが、改正案にては、裁判官をして犯人の情狀を考案せしめ、一日以上一年以下の範圍内に於て、相當の期間獄舍に留置する事となせり、□三刑期起算點を改めたる事、舊刑法にては、刑期は刑名官告の日より起算せるも、改正案にては、之を改めて、裁判確定の日より起算すとせり、□四未決抅留日數を刑期に算入するの規定を新設したる事、舊法には全く此規定なく、改正案にては、初め抅留三日を懲役一日に、抅留二日を禁錮抅留一日に算入す云々と起草したるが、最後の委員總會に於て其區別を廢し、單に(未決抅留の日數は、其全部又は一部を本刑に算入する事を得)と規定せり、□五執行猶豫の範圍を擴張したる事、現行法にては、執行猶豫の言渡をなす事を得る者を、一年以下の禁錮に處せられたる者に限りたるが、改正案にては、之を二年以下とし、又猶豫期間の二年以上五年以下を、一年以上五年以下と擴張し、且つ無事猶豫期間を經過したる效果に就き、舊刑法にては、單に刑の執行を兔除するに止めたるが、改正案にては、刑の言渡は其效力を失ふと規定せり、□六自由刑執行の場所を限定せざる事、舊刑法にては、徒刑、流刑は特に島地に發遣すと定めたるが、改正案にては、之を削れり、□七放火罪に關する規定を改めたる事、即ち舊刑法の家屋、建造物、汽車、船舶の外、雷車、鑛坑を加へ、其刑の範圍を廣くし、新に鎭火妨害に關する罪を設けたり、□八信書秘密の罪を設けたる事、即ち舊刑法の職業に依りて知り得たる陰私を漏告する罪と併せて、秘密を侵す罪てふ一章を設けたり、□九重婚の相婚者を罰す事、舊刑法にては、重婚者を罰するは、配偶者ある者の一方に限りしが、改正案にては、其相婚したる者も同罪となせり、□十國交に關する罪を設けたる事舊刑法に於て、國交に關する罪に就き規定する所は、唯外國に對し、私に戰端を開きたる者と、局外中立の命令を違背したる者との二點に過ぎずして、外國の主權者及び使節に對し、暴行脅迫又は侮辱を加へたる者に關する規定なし、故に改正案にては、之を補足せり、十一再犯加重の適用を制限したる事、舊刑法にては、犯罪の性質如何に拘らず、再犯加重の規定を適用せしが、改正案にては、先きに懲役に處せられたる者が、五年内に更に懲役に該る罪を犯したるときのみを再犯とし、其刑を加重することとなせり、又舊刑法の再犯加重は一等を加ふるに過ぎざれど、改正案にては、各本刑の二倍まで上すことを得しめたり、十二文書僞造罪に變更を加へたる事、イ官文書僞造と、私文書僞造とを同一章内に規定し、ロ文書僞造罪の成立には、僞印の使用、若くは眞印の盜捺を要することとし、ニ僞造變造の所爲のみを以て罪となし、公正證書に不實の記載を爲さしめたる者を罰するの規定、知情行使の罪を新設したり、十三誣告罪に關する修正の事、舊刑法は、刑法上犯罪となるべき事實を構造して、誣告したる者のみを罰し、懲戒處分を受くべき事實の誣告を缺たるが、改正案にては、之を補へり、十四猥褻姦淫罪に關する年齡を改めたる事、舊刑法にては、十二歳以上の男女に對し合意を以てする猥褻、又は姦淫は不問に附せしが、改正案にては、之を十三歳以上と改めたり、即ち十三歳未滿の者に對しては、和姦と雖も之を罰す、十五賭博罪に關する規定を改たる事、イ舊刑法にては現行犯のみを罰せしも、改正案にては、非現行犯を罰し、ロ舊刑法は、體刑也しが、改正案は、之を罰金(千圓以下)となせり、但賭博を常習とする者は體刑なり、十六贈賄者を罰する規定を設けたる事、舊刑法にては、收賄者のみを罰し、贈賄者に就きては何等の規定なかりしが、改正案にては、之を罰するの規定を設けたり、但し犯罪の發覺を容易ならしむるため、贈賄者に限り自首したるときは、其刑を減輕、又は免除することを得と規定せり、十七共犯の規定に改正を加へたる事、改正案にては、教犯者の教唆者、從犯の教唆者、及犯人の身分に依り構成すべき犯罪行爲に、加功したる者に關する規定を新設したり、十八誹毀罪に關する修正の事、イ舊刑法の誹毀罪を改めて名譽罪と名け、ロ其刑の重禁錮(定役あり)なりしを懲役(定役あり)、若くは禁錮(定役なし)又は罰金と改め、ハ原則としては依然親告罪なるも、公務員に對する誹毀の場合には上司の請求あるときは、本人の親告なくも其罪を論ずとの新規定を設けたり、第四舊刑法に修正を加へたる點、□一盜罪に關する修正の事、□一舊刑法にては、監守盜と普通竊盜とを區別したれど、改正案にては、之を一律の下に規定し、□二舊刑法にては、監守盜、及び持兇器竊盜も輕懲役にして、八年以上に處すること能はず、殊に普通竊盜は僅に二ケ月以上四年以下也しが、改正案にては、之を改め、一括して十年以下の懲役に處すと規定せり、□二詐欺罪の刑を重くしたる事、此罪も亦舊刑法の二ケ月以上四年以下を輕しとし、十年以下の懲役と改めたり、□三幼者の無責任年齡を改めたる事、舊刑法は十二歳未滿なるも、改正案にては之を十四歳未滿となせり、□五毆打創傷を傷害と改めたる事、蓋し字義狹隘に失するがためなり、□六過失傷害の罪を親告罪となしたる事、但し過失殺人罪は、舊刑法と同じく親告罪にあらず、□九外患罪の刑を改めたる事、舊刑法にては、外患罪を以て政事犯となし、定役なき刑を科したるが、改正案にては、常事犯となし、懲役を以て之を罰する事となしたり、□十公務員侮辱罪を削除したる事、この點衆議の削除に係り、實に至當なる事を云ふべし、十一兇徒聚集罪を騷擾罪と改めたる事、但し其内容に就きては大差なし、十二數罪俱發の處分に變更を加へたる事、舊刑法にては、所謂吸收主義を採り、數罪中一の重きに從つて處斷せしが、改正案にては、制限的併科主義を採り、而して數罪俱發の名稱を併合罪と改めたり、十三通貨僞造罪の規定を改めたる事、舊刑法は通貨を僞造して、既に之を行使したる者と、未だ之を行使せざる者との間に、輕重の別を立てしも、草案にては此區別を廢し、又舊刑法にては金銀貨及紙幣を僞造したる者と、銅貨を僞造したる者とは、大に其刑を異にすと雖も、改正案にては之を同一視し、尚現行法にては、僞造と變造とを區別し、其刑を異にしたれど、改正案にては、之をも一律の下に規定せり、十四懲治に關する規定を削りたる事舊刑法の幼者及瘖啞者の行爲に對し、懲治場に留置する規定は總べて削れり、蓋し特別法を以て、其手續を定るを可とせるものならん、第五、舊刑法より刑の種別を減じたる點、□一刑名を減じたる事、舊刑法にては、死刑無期徒刑、有期徒刑、無期流刑、有期流刑、重懲役、輕懲役、重禁獄、輕禁獄の九種を重罪の主刑、重禁錮、輕禁錮、罰金の三種を輕罪の主刑、抅留、科料の二種を違警罪の主刑とし、剝奪公權、停止公權、監視、罰金、沒收の五種を附加刑としたるが、改正案にては死刑、懲役、禁錮、罰金、抅留、科料の六種のみを主刑とし、而して附加刑は沒收の一種に減じたり、剝奪公權、停止公權及監視の廢止に注目すべし、殊に剝奪公權の廢止は、最後の委員總會に於て決したるもの也、□二犯罪の種別を改めたる事、舊刑法にては、罪の種類を別ちて重罪、輕罪、違警罪の三種とし、更に之を細別して公益に關する罪、身體財産に關する罪等とせしが、改正案にては、既記目錄の如く此區別を廢したり、□三重罪輕罪違警罪の區別を全廢したる事、隨つて舊刑法第一條に相當すべき規定なし、□四橫領罪てふ一章を設けたる事、即ち現行法の受寄物費消罪、遺失物、埋藏物に關する罪を一括したるものなり、□五徵償處分及復權に關する規定を全部削除したる事、舊刑法の徵償處分及復權(大赦、特赦)に關する規定は、其性質上刑法中に規定すべきものにあらずとて、改正案にては全く之を削りたり、□六僞證罪に關する修正の事、イ刑事裁判と民事、商事、又は行政裁判との區別、及びロ曲庇と陷害との區別を廢し、ハ反坐刑を廢したり、以上は改正の要點を舊刑法に對照したるものなれど、中止犯を罰するの規定を新設したるが如き、或は沒收の附加刑を削除せざるが如き、死刑無期刑を廢せざるが如きは、未だ立法の進步なりと謂ふを得ずと雖も、之を舊法、及び舊草案に比すれば大なる進步にして、歐洲の刑法に比し斷じて遜色なし、殊に大赦、特赦、懲治、監視、の規定を刑法中より削除したるが如きは、立法の形式、及び實質より論ずるも、最も其當を得たるものなり。
- 英
- Revise bill of criminal law
- 独
- Erneuerungsbill des Kriminalrechtes
- 仏
- Note de la réfome du code pénal
繼父
(けいふ)繼父とは、自己と同一の家に在る母の配偶者にして、自己に對し、法律上の實父、又は養父にあららざる者を云ふ、元來繼父母は、繼子に對し法律上實親子に於けると同一の關係を生じ、法律上に於ては血族なるも、實父母又は養父母と異にして、其子に對する權利を大に制限せらるるものなり、例へば子の婚姻に際し、又は子が養子とならんとする場合に、實父母ならば、自己單獨にて之に承諾を與ふることを得るも、繼父母に至りては、或は親族會の同意を經ざるべからざることありとす。(民七二八、七七三、八七八條、非訟事件手續法一六六條二項)
- 英
- Step-father
- 独
- Stiefvater
- 仏
- Beau-père
警部長特別任用令
(けいぶちやうとくべつにんようれい)明治三二年勅令第一號を以て發布せられたる法規にして、五個年以上警察に關する職務に從事したる者にして、判任官三級俸以上の官職に在る者に限り、當分の内試驗を要せずして、文官高等試驗委員の詮衡を經て、之を警部長に任用することを得る旨を規定したる命令なり。
- 英
- Ordinance of special appointment of the chief of police
- 独
- Specialanstellungsordnung des Haupt-polizeibeamten
- 仏
- Ordonnauce de la nomination spéciale du chef de police
繼母
(けいぼ)繼母とは、繼子の母にして、實母、養母、嫡母にあらざる者を云ふ、即ち自己と同一の家に在る父の配偶者にして、自己の實母、養母、嫡母にあらざる者なり、繼母は繼父と同じく、繼子に對し、實親子間に於けると同一の親族關係ありと、法律上より見做さるるものなるも、或る場合に於て、實父母の有する親權より制限せられたる權利を有するに過ぎざることありとす、繼父母、繼子の關係は、離婚に止む、父死して繼母其家を去りたるとき、又同じ。(民七二八、八七八條、非訟事件手續法一六六條二項、及び繼父、繼子の部參照)
- 英
- Step-mother
- 独
- Stiefmutter
- 仏
- Belle-merè
刑名
(けいめい)刑名とは、刑罰の名稱を謂ふ、舊刑法に依れば、刑名を區別し左の如くす、□一死刑、無期流刑、有期流刑、(十二年以上十五年以下)重禁獄、(九年以上十一年以下)輕禁獄、(六年以上八年以下)以上は重罪の主刑にして、主として國事犯人に科する刑なり、次は、死刑、無期徒刑、有期徒刑、(十二年以上十五年以下)重懲役、(九年以上十一年以下)輕懲役、(六年以上八年以下)以上は非國事犯に對する重罪の主刑なり、□二輕罪の主刑は、重禁錮、輕禁錮、(共に十一日以上五年以下)にして、重禁錮は非犯國事犯に科し、輕禁錮は國事犯人に科する刑なるを本旨とし、時としては非國事犯と雖も、破廉耻罪にあらざるものには之を科す、罰金(二圓以上と爲し、仍ほ各本條に於て其多寡を區別す)□三違警罪は、抅留、(一日以上十日以下)科料(五錢以上一圓九十五錢以下)にして、何れも主刑なり、この外刑罰に附加刑なるものあり、附加刑中にも、裁判所の宣告を要するものと然らざるものありて、剝奪公權、停止公權は宣告を要せざるもの、監視、罰金、(附加刑としての)沒收は、宣告を要するものとす、而して剝奪公權は、重罪の刑に處せられたるときは終身間、停止公權は、禁錮の刑に處せられたるときは其期間、輕罪の刑に於て、監視に附せられたるときは其監視期間、公權の剝奪及停止を受くるものなり。(舊刑六條乃至一一條)
- 英
- Name of the punishment
- 独
- Strafnamen
- 仏
- Noms des peines
契約
(けいやく)契約とは、當事者間に法律上の效果を生ぜしめんとする、同趣旨の相牽連する二箇以上の意思表示なり、分説すれば、□一契約は、同趣旨の二箇以上の意思表示なり、元來契約は一方の當事者よりする申込と、相手方より爲す承諾とにより成立するものなれば、二箇以上の意思表示なるも、その意思表示は同趣旨にして、目的とする所一に歸するが故に、合して契約なる一の法律行爲となるものなり、例へば賣らんとする意思表示と、買はんとする意思表示と存する場合に、この二箇の意思表示は、有償にて財産權の移轉を爲さんとする點に於て相一致するが故に、賣買と稱する一の契約をなすものなり、□二契約は、當事間に法律上の效果を生ぜしめんとする意思表示なり、當事者間に、法律上の效果を生ぜしめんとする同趣旨の相牽連する二箇以上の意思表示なるが故に、例へば法定代理人が、未成年者の法律行爲に同意を與ふるが如き場合に於ては、同趣旨なる二箇以上の意思表示存在するも、その目的たる法律上の效果が、當事者間に生ずべきものにあらざるが爲あ、所謂契約の成立を來すことなきものとす、□三契約は、相牽連する二箇以上の意思表示なり、凡そ契約は、當事者の一方が申込をなし、相手方が斯かる同趣旨なる意思表示あるを知り、旦つ承諾するに依りて成立し、各自獨立の法律行爲にあらざるもの也、唯承諾の期間を定めて爲したる申込に限り、其期間内之を取消すことを得ざる法律上の效果を發生するも、斯くの如きは例外に屬す、所謂申込とは、相手方の承諾に依りて、契約の成立を來さんとする意思表示なり、故に申込は、申込の誘引と區別せざるべからず、申込の誘引は、契約成立の機會の存することを示し、以て申込を促すに過ぎざれども、申込は之に反して、相手方の承諾あるや、直に契約を成立せしむるものとす、承諾とは、申込と同趣旨なる意思表示にして、申込に對して契約を成立せしめんとするもの也、從つて申込を受けたる者が、申込に條件を附し、其他變更を加へて申込に應ずべき旨を返答したる時の如きは、所謂承諾にあらずして、一種の申込の拒絶と、新なる申込と見るべきもの也とす、契約は之を分ちて、イ双務契約、片務契約、双務契約とは、當事者の雙方が債務を負擔する契約にして、片務契約は、當事者の一方のみが義務を負ふ契約也、假へば交換賣買の如きは双務契約にして、贈與、使用貸借の如きは片務契約也とす、ロ有償契約、無償契約、有償契約とは、當事双方が出捐を爲し、互に利益を受くる契約を云ひ、無償契約とは、當事者の一方のみが利益を受くる契約を云ふ、例へば賣買、交換は有償契約にして、使用貸借、贈與の如きは無償契約の例也、ハ諾成契約、要物契約、諾成契約とは、當事者の合致したる意思表示のみに依りて成立する契約を云ひ、要物契約とは、當事者の意思の合致に現實に物の引渡を要する契約を云ふ、彼の賣買、交換は前者の例にして、消貸費借、使用貸借は後者の例也とす、ニ要式契約、不要式契約、要式契約とは、契約の成立に或る方式に從ふことを要する契約を云ひ、不要式契約は然らざるものを云ふ、現今に於ては要式契約の例なきも、彼の羅馬法に所謂問答契約、書面契約等は之にして、現時に於ける現實に取引を了せざる贈與は、書面を以て之を證するにあらざれば、取消すことを得となしたるは、要式契約の唯一の例となすことを得んか、ホ實定契約、射倖契約、實定契約とは、契約締結の當初より其契約上の損益が確定するものを謂ひ、賣買交換の如きは之也、射倖契約は、一に委運契約と稱し、契約取結當時は、其契約上の損益未確定にして、當事者の知らざる事實發生に依りて損益定る契約を云ふ、修身定期金契約の如き、又彼の保險契約の如きも此一種なりと云ふ、へ有名契約、無名契約、凡そ各般の契約に於て、其細目に至る迄、悉く當事者に於て之が取極めを爲すことは、頗る煩勞に堪へざるが故に、法律は此煩勞を避けしめんが爲めに、重要にして且つ適用の頻繁なる契約を選び、法典中に其細目の規定を爲す、此契約を有名契約と云ふ、吾人の意思は自由にして、苟も公安に害なき限りは、法律に規定なき事項と雖も、自由に契約を締結するを得べし、此法律に規定せざる契約を、有名契約に對して無名契約と云ふ、敢て契約が名無きにあらざるなり、以上の如く契約を分ちたりとて、この分類にのみ該當する個々特別の契約存すと速斷すべからず、此分類は觀察點を異にしたる分類なれば、一の契約にして二三の分類中に相當するものあるは言を俟たざる所なりとす。(民五二一條乃至六九六條參照)
- 英
- Contract
- 独
- Vertrag
- 仏
- Con-trat
契約關係
(けいやくくあんけい)契約は、法律上の效果の發生を目的とするものなれば、契約成立せる以上は、之に關する當事者に法律上の連鎖の發生するは勿論の事に屬す、契約關係とは、即ち之を謂ふ、例へば申込者たる甲が、自己所有の家屋を五千圓にて乙に賣らんと申込み、乙は之を買受けんと謂ひたりとせば、初めて法律上の契約は茲に成立を告ぐるに至らん、而して甲は契約の結果、家屋を乙に賣渡さざるべからざることとなり、又乙は金五千圓にて家屋を買取らざるべからざることに立至る、此關係は、即ち契約なる原因に依りて生じたる權利義務の關係にして、之を稱して契約關係と稱す。
- 英
- Relation of contract
- 独
- Vertragsverhältnisz
- 仏
- Rélation du contrat
契約者
(けいやくしや)契約當事者の意にして、契約締結に依りて、權利義務の關係を有する總べての者を云ふ、通例申込者、承諾者は、契約關係の當事者なるも、或は第三者の爲めにする契約の如き、第三者にして、契約によりて生ずる權利を得る者あり、斯くの如き者も、利益を受くる旨の意思を表示したるときは、或は契約者として之を包含せしむるを得んか、されども嚴格なる意味に於ては、常に第三者にして、契約者にあらざるを普通とす。(民五三八條、非訟事件手續法一二三條)
- 英
- Contractor
- 独
- Kontrahent
- 仏
- Contractant
契約上の利息
(けいやくじやうのりそく)法定利息に對して使用せらるる文字にして、當事者に於て特に欲する處を協定して結約したる、元金に對する果實、即ち利息、又は利子を云ふ、法定利率は、年五分と確定せられたり、契約上の利息は、人民相互の契約を以て定め得べき利息なるが故に、其範圍を定むるは自由なるも、法律は公益の爲め、之を制限せり、即ち元金百圓以下は、一箇年に付百分の二十、百圓以上千圓以下は百分の十五、千圓以上は百分の十二(一割二分)以下とす、若し此制限を超過する分は、裁判上無效のものとし、各制限にまで引直さるるもの也、定限利息の外、總べて人民相互の契約を以て、禮金棒利等の名目を用ふる者あれども、之等は總べて裁判上無效のものとす、又返還期限を違ふるときに、負債主より債主に對して若干の償金、罰金、違約金、科料等の名義にて差出すべきことを約定するも、之を賠償金の豫定と見得べきときは、損害の補償と看做し、然らざるときは、等しく制限額まで減少せらるるものなり、蓋し斯くの如くなすは、借者の弱點を利用して、不當の暴利を貪らんとする貸者の不法を防がんとするにあり。(一〇年九月六六號布告利息制限法二條、商法施行法一一七條參照)
- 英
- Interest of contract
- 独
- vertragsmässige Interesse
- 仏
- Interêt du contrat
契約書
(けいやくしよ)契約の成立、效果等所謂契約事項を文字にて記載、又は印刷せる書面を契約書と云ふ、元來契約書は、要式契約にあらざる限り、契約の成立に必要なる條件にあらざれど、契約上の權利關係を證明するには、契約書に依るを唯一の方法とす、故に後日の爲め萬一に備ふるには、契約書を作成するを最良安全の方法なりとす、されど契約にして眞に成立し、證書以外の方法を以て完全に立證し得べき手段ある以上は、何れも契約書の成立を必要とするにあらざるなり、唯彼の證書債務を發生せしむる契約の如きは、常に證券の作成を要し、然も一定の文句、及び方式を法律を以て法定せらるるものなり、之等所謂要式行爲に屬するものれば、前説せる所の例外なりとす。(契約、要式行爲の部參照)
- 英
- Written contract
- 独
- Ver-tragsurkunde
- 仏
- Document de contrat
經理
(けいり)會計給與に關する事務の處理を經理と云ふ、即ち經務處理の意なりとす、彼の軍隊に經理部なるものありて、會計處務を掌るが如きは此用例なり、二三年法律第二七號第一條に「隊長に經理を委任することを得」とあるは同樣なる用語例とす。
- 英
- Counting
- 独
- Rechnung
- 仏
- Comptes
刑例
(けいれい)舊法第二章に刑例と云ふは、刑罰に關する總則規定の意にして、刑の種類、名稱、區別、刑の實質、懲償處分、即ち刑事裁判に於ける裁判費用とも云ひ得べきもの、刑期計算、假出獄、期滿免除、復權等に關する規定を總稱す。
- 英
- Penalties
- 独
- Strafexempel
- 仏
- Peines
教育
(けういく)人の知識德性を開發涵養するを廣く教育と云ふ、我國語に譯して教育といふ英語のエデュケーションは、もと拉丁語のエデュコより出てたるものにして、引き出すと云ふ意を含むものなり、又彼の獨乙語なるエルチーヘンも、引き立つると引き除くとの兩意を含むものにして、蓋し善きは引き立て、惡しきは除かん意なかるべきか、我國語なる教育も、教へは愛し導くの意にして、育つるは、添ひ立つる意なりと云へば、矢張り微弱なる少年子弟を介抱して、圓滿なる人間に導くものなりと云ふべし、夫れ教育なるものは、或一定の目的に向つて、兒童の身體及精神に施す所の淘治なれば、教育者其人を得ると否と、學校設備の如何等は、淘治の上に至大なる關係あるは言を要せず、故に國家は、教員檢定の手段により、又國家自ら學校を設備し、其他の公共團體に學校設備のことを命し、以て教化の事務を保護監督する所以なりとす。(教育行政の部參照)
- 英
- Education
- 独
- Erziehung
- 仏
- Enseignement
教育基金に關する法令
(けういくききんにくわんするはふれい)基金又は基本金とは、一般に特定したる元本に對する利殖を以て、或る事業の目的を使用する場合の元本を謂ふ也、教育基金に關する法令は、三二年勅令第八〇號、同年勅令第四三五號による、即ち償金特別會計資金の内、一千萬圓を普通教育費に使用するの目的を以て、教育基金に組入れ、一般の國家會計と區別し、其使用に關する規定は、命令を以て定むべきものとす、而して基本金千萬圓は、之を費消するを許さず、基金は大藏省預金に寄托し、其利子は基金に編入し、若し基金を使用せんとするときは、其金額を一般の歳入に組入れ、一般の歳出として拂出すべく、政府は、每年教育墓金特別會計の歳出入豫算を調製し、總豫算と共に帝國議會に提出すべきが如きことを規定せられたり。
- 英
- Law of special ac-count of educational fund
- 独
- Special-rechnungsgesetz des Erziehungsfonds
- 仏
- Loi du compte spécial du fonds de l'en-seignement
教育行政
(けういくぎやうせい)國家は、國民の物質的生活を完備ならしむるが爲めに、經濟に關する行政を施行す、然れざも國家は、單に物質的性質に對する行政を爲すを以て足れりとせず、進みて國民の精神的生活を高尚圓滿ならしめんが爲めに、行政せざるべからず、蓋し有形無形に國民の幸福を增進するの行政は、固より並行せざるべからずして、所謂唇齒輔車の關係を有するものなることは、多言を俟たずして明なるべし、教育行政は此點に於て其立脚を有す、抑も國家が教育を以て、其行政の一となすに至りたるは近世のことに屬し、往古の所謂警察國時代と、近時文明の開發時代とは、自ら其趣を異にす、今や列國生存競爭劇甚を加へ、内に進步發達したる國民を有するにあらざれば、以て對外に勝を制する能はず、充實したる國力は、教育ある國民に依つて得らるべく、學理は遂に最後の戰勝者にして、國家の權力と雖も、克く學理眞理を制壓するは、企及すべき所にあらざること分明となりたるを以て、近世の國家は、學術の自由を以て原則とするのみならず、其保護奬勵を以て重要なる行政事務となすに至れり、詳言すれば私人に教育を放任するは、到底不完全なるを免れずとし、國家自ら進みて教育に關渉するに至れり、然れども教育に關する總べての事を、國家が獨占的に施行するも、放任と共に極端に失し、今日の世運に適せざるものあるが故に、茲に見る處ありて、我國現下の方針は、初等教育は、其普及を期する目的を以て、國家又は公共團體自ら之を設備する事となし、然かも必ずしも私人の事業を排斥せずして之を保護し、又中等及高等教育に在りては、往々私人の力及ばざるあるべきを以て、國家自ら其教育を行ひ、又は一定の法規を定めて私人の計營を認む、即ち教育行政に關する法規は、總べて這般の消息より出づ、其一般を擧げんに、小學校令、中學校令、高等女學校令、師範學校令、實業學校令、高等學校令、帝國大學校令、私立學校令、其他教員に關する法令等にして、總べて教育行政に關しては、他の行政の如く、文部省なる獨立の省を設け以て、其行政の管督指揮を掌らしむ。(各省官制通則、文部省官制參照)
- 英
- Educational administration
- 独
- Erziehungsverwaltung
- 仏
- Administra-tion de l'enseignement
教育事務
(けういくじむ)教育事務とは、教育實施に關する總べての事務を謂ふ、例へば教員が生徒に學術の課業を授け、其品行を匡正する手段より、授業課目時間割の如き、直接學務に關する總べての事項は、素より學校の監理者が學校に對して爲す施設の全般、又は國家が教育行爲として行動する有樣、大にしては學校の創設より、國民教育としての教育事項の選定、教科書に關する選定、教員の任命の如き、其他之等に關する法規の發布に至る迄、皆教育事務と謂ひ得べく、官立公立と私立の學校とを區別せず、あらゆる教育に關する事を處理する作用行動は、何人の手に出づるも、廣義に於ては教育事務と名付け得べし。(小學校令六五條參照)
- 英
- Educational business
- 独
- Erziehungsgeschäft
- 仏
- Affaires d'en-seignement
教育召集
(けういくせうしう)陸軍召集條例に依る召集の一種にて、補充兵の教育を爲す目的を以て、每年補充兵服役の初年二月一日に、聯隊區司令官は其現在員を調査し、之を各兵種に分ちて師團長に報告し、師團長は、教育すべき人員を諸部團隊長に達し、且つ聯隊區司令官は、各郡の教育召集名薄を作りて之を郡長に送付し、郡長は、更に各町村の召集名簿を作りて町村長に通知す、而して其實施は、師團長、其兵種、期日及召集日數を聯隊區司令官、地方長官、憲兵長に通知し、地方長官は更に郡長其他關係官衙に達し、管内に告示す、郡長は、其達を更に町村長に移達し、又聯隊區司令官は、前陳の通知を師團長より受けたる時は、教育召集令狀を作りて郡長に送付し、順次町村長より本人、又召集通報人に交付す、應召員は、令狀を受領したるときは旅費を受取り、令狀の示す期日に其集合地、又は部隊に到著し、部隊其他召集掛に屆出づべし、若し應召員にして何等の手續を爲さず、無斷に其召集に應せざるものは、一日以上十日以下の抅留、五十錢以上一圓九十五錢以下の科料に處せらるるものなり、故に自己又は父母の死亡、傷痍、疾病其他の事故ありて召集に應し得ざるものは、醫師の診斷書を添へ、町村長の奥印を受け、郡長を經て聯隊區司令官に差出するを要するものなり。(陸軍召集條例六二條)
- 英
- Educational summon
- 独
- Erziehungsberufung
- 仏
- Assignation de l'enseignement
教員免許令
(けういんめんきよれい)教員免許令とは、教員免許狀の授與資格、其手續、免許剝奪の事由、及び其效果に就きて規定せる法規なり、□一教員免許狀を受くる者は、教員養成の目的を以て設置したる官立學校の卒業者、又は教員檢定に合格したる者に限り、文部大臣より之を授與するもの也、教員檢定を分ちて、試驗檢定及無試驗檢定となし、試驗檢定は、每年少くとも一回之を行ふ、無試驗檢定を受くる事を得る者は、イ文部大臣の指定したる學校の卒業者及選科修了者、ロ教員免許資格に關し、文部大臣の許可を受けたる公私立學校の卒業者、但し三年以上在學したる者にして、師範學校、中學校、高等女學校卒業者に限る、ハ外國大學、又は之に準すべき學校を卒業し、學位又は卒業證書を有する者、但し内地又は外國に於て、師範、中學、又は高等女學校を卒業したる者に限る、ニ教員たらんと欲する學校の學科程度以上の教員免許狀を有する者等これなり、□二教員檢定を受けんとする者は、手數料として一科目每に金三圓を納付する事を要し、教員檢定は、受檢人の學力、品行、身體に就きて教員たるに堪能なるや否やを檢定するものとす、學力の檢定は、受檢人出願科目に就き、其教員たらんと欲する學校の學科目を教授するに足るべき程度を標準とし、教授法を併せて之を行ふものなり、□三左の一に該當する者は、教員檢定を受くることを得す、ア禁錮以上の刑に處せられたる者、但し國事犯にして復權したる者は例外、イ信用又は風俗を害する罪を犯して罰金の刑、又は監視に付せられたる者、ウ破産、家資分散、又は身代限りの處分を受け復權せざる者、四教員免許狀を有する者、不正の所爲、其他教員たるべき體面を汚辱するの所爲ありて、其情狀重しと認むる時は、文部大臣は其の免許狀を剝奪すべきものなり、教員免許狀を有する者、前記□三の一に該當するときは、免許狀は其效を失ふべきものとす、終に教員檢定願書式を示さん。
(三三年勅一三四號、同年文部省令一〇號、三四年同省令一二號)
教員檢定願(用紙美濃紙)
「消印」住所族籍
收入印紙
氏名
生年月日
何學科何學科
何學科
私儀師範學校(中學校)(女子師範學校師範學校女子部)(高等女學校)教員志願ニ候間前記ノ學科ニ就キ試驗檢定(無試驗檢定)相受度別紙履歷書竝ニ醫師身體檢査書相添へ此段相願候他
年月日右
何某印
文部大臣何某殿
- 英
- Ordinance of permit of tea-cher
- 独
- Erlaubnisverordnung des Leh-rers
- 仏
- Ordonnance du certificat du maître
教誨師
(けうかいし)教誨師は、囚人及懲治人に對し、遷善誨過の道を講ずる者を謂ふ也、國家は法規を犯す者に對し、嚴重なる制裁を加ふと雖も、反面に於ては、其依つて來る心事の不良を憐み、犯人をして充分なる精神上の修養をなさしめ、前非を誨ひ、更に出獄後の生活は、良民の伍に列して、圓滿なる人世の意義を解せしめんことを圖り、宗教家、教育家をして、囚人懲治人に教化の道を開く、即ち教誨は、免役日又は日曜日午後、或は平日罷役後、休役間に於て行ひ、免役日及日曜日の教誨は、特に設けられたる教誨堂に於てし、休暇間又は罷役後の教誨は、被教誨者の居所に就きて爲すものとす。(監獄則三〇條)
- 英
- Prison chaplain
- 独
- Kerker-Kaplan
- 仏
- Chapelain
教義
(けうぎ)普通に宗教上、又は神學上に於て、其各自の宇宙觀、世界觀、人生觀、又は信條を稱し、或は一個人が眞理なりとして、專ら信仰によりて保特する特殊問題に對する見解を謂ふ、政沿上に於ては、之を主義と同樣に用ふることあり、例へば米國大統領モンロー氏が、南北亞米利加の諸問題に就きては、諸他列國の關渉を容れず、亞米利加も亦列國の事件に關しては、關渉せざるべしと宣言したる主義をモンロー主義、又はモンロー教義と稱するが如し。
- 英
- Doctrine
- 独
- Lehre
- 仏
- Doc-trine
教化行政
(けうくわぎやうせい)助長行政事務の一種にして、教育、宗教に關する行政を總稱す、即ち國民の精神上の化育を、進捗啓導するを目的とする行政を云ふ、今其重なる網目を擧ぐれば、□一教育に關する行政即ち國民淘治の行政と、□二宗教に關する行政、例へば信仰に關する行政、信仰に基く集會結社に關する行政、禮拜場即ち社寺、佛堂、教會堂の保存維持禁止に關する行政之なり、元來教化行政は、國民の経濟的方面、即ち富力等を保護增進する行政に對し、國民の智力方面に於ける化育を掌る助長行政事務なりとす。
- 英
- Educational administration
- 独
- Erziehungsverwaltung
- 仏
- Administration de l'enseigement
教唆
(けうさ)汎く犯罪の教唆と云ふときは、他人をして罪を犯す決意をなさしむる總べての行爲に該當す、然れども現行刑法に於て、正犯の中に列したる教唆には、□一教唆行爲あること、□二重罪又は輕罪の教唆に係ること、□三被教唆者教唆に係る重罪、又は輕罪を犯したることの三條件を具備することを要す、所謂教唆行爲とは、故意に人をして罪を犯す決意を生ぜしむる動作にして、其決意を生ぜしむる方法に就きては、言語、文章其他の方法を以てするを問はず、故意に他人をして一定の罪惡を行ふ造意をなさしめんと欲し、之を勸誘する行爲を謂ふ、例へば甲が乙に向つて、丙は汝と吾れとに關して非常なる恨を抱き、常に害惡を加へんと企圖せり、故に汝は先んじて彼れ丙を殺すべしと説き、乙は其甲の言を信じて丙を殺したりとせば、其甲の動作は明かに乙に對し、罪を犯すの決意を生ぜしめたるもの、即ち教唆をなしたるものなり、刑法第一〇五條は、此意義に於て教唆なる文字を使用す、斯くの如き教唆者は、罪の犯行者と共に正犯として之を罰す。(刑六一條、六二條二項)
教唆者
教唆者とは、犯罪造意者を指す、換言すれば教唆犯に於ける教唆行爲者にして、教唆者は、常に刑法上正犯として、責任を歸せらるるものなるを以て、獨立しても尚犯罪の主體となり得る有能力者ならざるべからず、又教唆は、他人の犯行に對し、其犯行の意思を造るものなるを知る時は、犯罪の助勢者と區別あるは勿論なり、即ち乙が丙を殺さんと決意するも、或事情の爲めに其決行を躊躇しつつある場合に於て、甲が犯後の善後策を獻じたるが爲め、進んで其犯罪を遂行したりと假定せんに、此場合は、乙は犯罪の決意ありたるものなるが故に、甲が其犯罪に對する行動は、犯罪の造意者にあらずして、助勢者たるに過ぎず、從つて之を教唆者となす學説なきにあらざるも、茲には之を教唆者となさずして、彼の言語による勢助行爲者と見るを可とする説に從ふ、教唆者に對する教唆は、現行法上に於て、無罪たるや否やに就きて議論あるも、假令ば汝は他人をして人を殺さしむべく教唆せよと云ふが如きは、所謂教唆にあらずとなす説を可とせん、但し講學上所謂共同教唆なるものは、一種の教唆にして、二人以上の同一目的に向つて共に教唆するを云ふものなれば、之は教唆者として責任ありと云ふを可とす。(刑六一條參照)
下水道法
(げすいだうはふ)下水道法は、衞生上土地の清潔を保持する爲めに、立法せられたる法律にして、家屋の新築、改築其他增築を爲す場合に、之に附する下水道、即ち雨水、汚水を排除、疏通するに必要なる設備を爲し、及び之を管理すべき義務、依つて生ずる土地所有權の制限、又は義務強制の方法を定めたる法律也、此法律に關しては、其義務を市、又は町村の如き公共自治團體に命ずる場合もあり、土地家屋の所有者のみに限らず、使用者若くは占有者に及ぶ場合あり、總べて社會公衆の衞生上其施設を命ずる衞生行政に關する法規なりとす。(三三年法三二號)
- 英
- Law of sewer
- 独
- Abzugs-kanalsgesetz
- 仏
- Loi de l'égout
缺效未遂犯
(けつかうみすいはん)講學上法律が或る犯罪に就き、犯人希望の結果を生ずることを其犯罪の既遂と定むる場合に、此種の犯罪に就き、犯人が其罪の實行を終りたるに、未だ其結果を生ぜざるに當り、意外の舛錯生じて、遂に其豫期せる結果を見る能はざりし場合の未遂犯を缺效果未遂犯と云ふ、廣く未遂犯と云へば、犯人以外の障碍舛錯により、罪を犯さんとして其事を行ふと雖も、未だ遂げざるを云ひ、別ちて著手未遂犯、缺效未遂犯となす、著手未遂犯とは、犯罪の發意豫備の行爲を以て著手に取り掛りたる狀態に於て、他の故障の爲めに希望の結果を得ざる場合、例へば人を毒殺せんと發意し、其飮用の藥劑を備へ、他人に之を飮ましめんとしたるに、其毒藥なることを察知したる如き場合を云ふ、之に反して缺效未遂犯とは、罪を犯さんとし已に其事を行ふと雖も、犯人意外の失策により、未だ遂げざるを云ふ、前例に於て被害者は、其毒藥たることを知らずして之を飮下するも、分量の少弱、其他毒藥なりと信じたるものが、實は毒藥にあらざりし等の理由に基きて、豫期の結果を生ぜざりし場合を云ふ、之を要するに、著手未遂も缺效未遂も、共に未遂の狀態にして、唯著手未遂にありては、犯罪の實行に著手したる場合に、意外の故障起り、之を遂行する能はざる場合にして、缺效未遂は之と異り、既に實行を結了せるも、意外の失策に依りて、其豫期せる結果を發生せざる場合を稱するものとす、而して現行刑法にありては、二者ともに之を單に未遂犯となし、既遂の刑より減輕したるところの刑を科するを原則とす、改正刑法に於ては、罪を重罪、輕罪、違警罪等に區別せさるか故に、重罪の未遂は常に之れを罰すとなすことなく、總て各本條の定むるところに從ふなり、終に既遂犯と未遂犯、又は豫備犯なるものは、完全に成立したるときは唯一箇の罪を成すに過ぎずして、即ち完全に成立したると不完全に成立したるとの差あるのみ、決して別種の罪にあらざるなり、未遂行爲、又は豫備行爲を法律が獨立の犯罪としたる場合には、法理之と異り、之を完全になし遂げたる場合も、一箇の犯罪なれば、未遂又は豫備の狀態に止るも、亦一箇の犯罪なりと云はざるべからず此點特に注意を要す。(刑法四三、四四條)
- 英
- Unsuccessful crime
- 独
- Fruchtlosverbrechen
- 仏
- Infraction in-fructueuse
決議
(けつぎ)決議とは、合同會議に於て表決せられたる會議全體を代表する意見の謂也、例へば衆議院、貴族院の如き合議體、其他縣會以下各自治圍體の各會議は、一定の手續形式によりて、職權ある議長が議會の指揮監督を掌り、選出の方法による資格ある議員の表決を以て成るが如き、又民法其他私法に此文字を使用する場合に於ても、其實質に至りて同一にして、事に當りて意見を發表する資格ある多人類が、或問題に對し、意見の發表交換を爲し、對論審査の結果一定の裁決方法、例へば過半數とか、又は出席者の三分の二を以て確定議と爲すが如き方法に依り、其會議に於ける意見の表決を決議と謂ふ、國會に於て豫算を決議すと稱し、又は株式會社に於て、增資に關する決議を株主總會が決議すと云ふ如きは皆其用例なり。(民四四、五三、六七條、非訟事件手續法一〇二條)決議錄とは、或る合議體に於ける決議事項の經過、及び表決を記載したる記錄を指す、換言すれば、汎く決議錄とは、決議に關する確定議の記載あるもののみに限らず、決議に關する案の提出者より、議案の性質及對議者の意見の大要、及び議案が確定議となる間に於ける狀態を記載したるものを謂ふ、彼の帝國議會の議事錄の如きも、決議錄と謂ひ得べし、但し特定の決議に關する決議の結果のみを記錄したるものを決議錄と云ひ得るは勿論なりとす。
- 英
- Decision
- 独
- Abstimmung
- 仏
- Décision
決議錄
- 英
- Book of decision
- 独
- Abstim-mungsbuch
- 仏
- Bèvre de décision
決議攻擊權
(けつぎこうげきけん)株式會社の各株主が有する株主權の一にして、株主が其株式會社に於ける總會招集の手續、決議方法の法令、又は定款に反する場合に、其決議無效の宣告を裁判所に請求することを得る權利を云ふ、其請求を爲す期間は、決議の日より一箇月内に於て爲すことを要し、又取締役、監査役にあらざる株主が、其請求を爲すときは、株券を供托し、且つ會社の請求あるときは、相當の擔保を供することを要す、之一面に於ては株主に對して、會社内に於ける專斷を匡すの權利を與ふると同時に、亂用に依りて生ずる損害を豫防する爲めの救濟手段に外ならず。(商一六三條參照)
結婚
(けつこん)結婚とは、法律を以て公認せる一男一女の共諾に依りて、畢生間共同生活を目的とする、生存間の關係開始の法律行爲也、此結果現實せらるる一男一女の共同生存は、之を婚姻と稱す、左に結婚の要件を擧ぐれば、□一婚姻は一夫一婦の結合なり、婚姻當事者の一男一女に限らるべきは、一夫多妻のモルモン宗の國、數夫一妻のチベットはいざ知らず、苟も當世文明國を以て任ずる各國の道義は、法律上に於ける男女の均等を認め、且つ婚姻を以て男女の性欲の秩序的滿足方法となせる以上は、皆等しく認めざる能はざる所なればなり、□二婚姻は、夫たり妻たらんとする者の共諾に出でたるものならざるべからず、蓋し婚姻たる男女畢生の問題にして、實に人生に於ける一大重要なる事件なれば、輕卒なる親任せ、他人任せの意思を以て決定せんか、或は不測の難件出來せずとも限らず、故に當事者に於て互にその心を知り合ひ、愼重なる態度に於て之を決意せざるべからず、民法が人違ひ其他の事由により、當事者間に婚姻を爲す意思なきときは無效とすと規定せるは、素より當然のことに屬す、□三婚姻年齡に達したることを要す、婚姻年齡は、男は十七歳、女は十五歳に達したる者を指す、元來婚姻權能は、萬人の有する所なれども、生理上の原因より相當の年齡に達せざれば、肉體の發達も充分ならず、又其間に生れたる子も自ら虛弱なるべく、延ひて子孫に迄害を及ぼさんことを恐れ、斯くは定めたるものとす、□四再婚者に就きては、前婚の解消、又は取消後六箇月經過したることを要す、これ然らざるときは、婦女懷胎の場合に、前夫の子なるか將た後夫の子なるか不明なれば、爭議を釀す虞あるを以てなり、從つて懷胎の婦女、婚姻解消取消後分娩したるときは、この制限の必要なきものなり、□五當事者間に綠故なきこと、これ近親婚は風儀上より見るも、子孫に及ぼす影響より見るも正當ならざれば、法律は、イ直系血族、例へば親子、祖父母と孫の如き間、ロ傍系血族三親等、即ち兄弟姉妹、又は伯叔父姑と甥姪の間、ハ法定血族の直系間、即ち養親、其尊屬親と養子、又はその直系血族との間、ニ姻屬の直系間、ホ繼子、庶子と繼父母嫡母間とは、忌婚とせられたり、□六相姦者間も忌婚たり、蓋し之等不道德を恕して夫婦たらしむるは、偶々姦通を奬勵するが如き有樣を呈すればなり、□七父母其の他の同意あること之なり、以上の要件を具備せる上、尚婚姻は戸籍吏に屆け出づることを要す、之を結婚とは云ふなり。(陸軍將校結婚條例、勳章年金支給規則一一條參照)
- 英
- Marriage
- 独
- Eheschlieszung
- 仏
- Mariage
決算案
(けつさんあん)決算に關する草案の謂にして、總べて案と稱するは、草案と同一義に外ならず、決算案も亦數額に於ける決議を得んとする場合に於ける、一應の仕組書又は下書と云ひて差支なからんか。(内閣官制五條一項一號參照)
- 英
- Closing bill
- 独
- Abstmmungs-bill
- 仏
- Bill de conclusion
結社
(けつしや)結社とは、政治其他一定の目的を達する手段として、合意により多少繼續して存立する特定人の團體を云ふ、以下分説すれば、□一結社は、政治其他一定の目的の爲めに存立するものなり、從つて特定の目的なき交際團體乃至社會の如きは、所謂結社にあらず、□二結社は、特定人の合意に依りて設立せらるるものなるを要す、故に國家の如き、地方公共團體の如き、法律上設立を強制せらるるものは結社にあらず、□三結社は、永續的の關係を有するもの也、之集會と區別するの點にして、彼の一時的なる集會は、この點に於て結社と異るものとす、現行規定に依れば、結社を設立したるときは、其設立を主幹者より屆出づべきもの也、但し議會の議員が、議事準備の爲めに相團結する團體は、例外として此屆出義務を負ふことなし、結社に關する禁制命令の主なるもの下の如し、□一法定の人の結社加入を禁ずること、法定の人とは、イ現役及び召集中の豫備、後備軍人、ロ警察官、ハ神官、神職、僧侶、其他の宗教師、ニ官立公私立學校の教員、學生生徒、ホ女子、ヘ未成年者、ト公權剝奪、又は停止中の者之なり、□二法令を以て組織したる議會の議員に對しては、其發言評決に就き、議會外に於て責を負はしむるの規定を設くるを得ざること、結社に對する行政權能は、内務大臣に於て安寧秩序を害するものと認めたるときは、之を禁止することを得、尤も此禁止處分に不服なるときは、行政訴訟を提起することを得るの規定あれども、行政官廳の認定處分に對し、訴訟を許したるの理由極めて學理に背反するものなりとす。結社の自由とは、憲法上日本臣民が隨意に結社を起し、又は之に加入することを得る法律上の自由を云ふ、この法律上の自由は、憲法の保障する所にして、議會の協贊を經たる所謂法律に依るにあらざれば、之を制限することを得ざるものとす、古來政治上の變革は、何れの國に於ても、其源を結社に發するもの多く、爰を以て時の政府たるもの、之に嚴重なる制限を加へ、自己の存立を安固にするは、理の當さに然るべき所、蓋し往時專政時代に於ては、國内の政治は、一人の意思に依りて定まるものなれば其結果、集會若くは結社に關する團結の力を排斥し、其自由を剝奪するにあらざれば、得て權其力を維持し得べからざりしに依る也、斯くの如く自由制限の範圍廣くなれば、廣くなるに從ひて、其反動として遂に各國憲法の制定を促すの源泉となり、人の集會結社の自由を保護することを請求するに至れり、之を以て各國の憲法は、凡て結社に關する人民の自由を保障せざるものなし、我國は此沿革に基くにあらざるも、命令を以て、濫りに其自由を制限すべからざるの主義を確立したり、要するに往時稍々結社の自由を認められたる國に於ても、尚所謂許可主義とも稱すべき、即ち許可に依るにあらざれば、集會若くは結社を爲すことを得ざりしなり、然るに各國憲法發布以來一二の例外を除く外は、總べて屆出主義を採用するに至りき、之を憲法上結社の自由と云ふ。(憲法二九條參照)
- 英
- Public meeting and association
- 独
- Versammlung
- 仏
- Association
結社の自由
- 英
- Liberty of public meeting and association
- 独
- Versammlungsfrei-heit
- 仏
- Liberté de l'association
決水罪
(けつすいざい)舊刑法第三編第二章第八節に定むる犯罪にて、(甲)、堤防を決潰し、又は水閘を毀壞して、□一人の住居したる家屋を漂失し、(此場合は無期徒刑に處す)□二人の住居せざる家屋其他の建造物を漂失し、(此場合には重懲役に處す)又は□三田圃、礦坑、牧場等を荒廢(此場合は輕懲役に處す)する罪、(乙)、水利を防害する罪、(此場合は、一月以上二年以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加す)及び、(丙)、過失に依りて水害を起したる罪、(此場合は失火の例に照し、二圓以上二十圓以下の罰金に處す)を總稱す、(甲)は其手段が堤防の決潰、又は水閘の毀壞に依るにあらざれば本罪を構成せず、又之ありとするも、前揭の結果を生じたる場合にあらざれば、同じく決水の罪とならず、(乙)の罪は他人の便益を損し、又は自己の便益を圖る目的を以て、堤防の決潰、水閘の毀壞、其他水利防害の所爲をなしたる罪にして、(甲)の罪に定むる結果を生ぜざるも、苟も此目的を以て堤防決潰、水閘毀壞の處爲を爲せるものは、本罪に問ひ、又之等以外の處爲なるも、同一の目的を以て水利を防害する所爲ある以上は、又本罪なり、(丙)の罪は失火罪の例に從ひ、水害に依りて他人の家屋財産を毀壞せる者に限り之を罰し、其結果なきものは無責任として罰せざるものとす。(舊刑四一一條乃至四一六條、四〇九條)
- 英
- Inundation
- 独
- Überschwem-mungsverbrechen
- 仏
- Inondation
闕席判決
(けつせきはんけつ)元來訴訟は、當事者双方、即ち原告被告出頭の上審理判決するを必要條件とす、されど斯くの如きに於ては、當事者一方の怠慢、又は故意により、徒らに訴訟の延滯を來す虞あるにより、法律は出頭したる相手方の陳述、及び證據方法を基礎として、判決を爲すべきものとせり、之を闕席判決と云ふ、□一民事訴訟に於て、原告若くは被告が、口頭辯論期日に、合式の呼出を受けたるにも拘はらず、出頭せぬ場合に、(出頭するも辨論をなさざるとき又同じ)出頭したる相手方の申立に依り、この判決を爲すことを得るものにして、其闕席者が原告なるときは、訴の却下を言渡し、被告なるときは、準備書面が適法に送達せられある場合に、被告は原告の口頭供述を自白したるものと見做し、その申立正當なるときは、被告の敗訴を言渡すべく、但しその申立にして理由なきときは、訴の却下をなすべきものとす、總べて闕席判決を受けたる者は、判決送達の日より十四日以内に、闕席判決をなしたる裁判所に、故障の申立をなすことを得るものなり、□二刑事訴訟に於て呼出を受けたる被告人、又罰金以下の刑に該るべき事件に就きては、其本人又は代人公判の期日に出頭せざる場合に、檢事の請求に基きて此判決をなすことを得るものにして、但し民事訴訟の如く、原告主張の事實を被告が、自白せりと見做すべきものにあらずして、實體的心證を得たる場合に、裁判所は闕席判決をなし得るものなり、故に被告の闕席は、本案に就きて不利益を招くことなく、裁判所は被告人なくとも爲し得べき證據調、其他審理は之を爲さざるべからざるものとす、闕席判決を受けたる刑事被告人は、三日内に其裁判所に故障の申立を爲すことを得。(民訴二四六條乃至二六五條、刑訴二二六條乃至二三四條)
- 英
- Judgment by default
- 独
- Versäumnisurtheil
- 仏
- Jugement par défaut
闕席裁判
闕席裁判は、闕席の場合に於ける審理判決を云ふ。(缺席判決の部參照)
闕席訴訟手續
闕席訴訟手續とは、闕席の場合に於ける審理判決の條件、其他の手續を云ふ。(民訴二編一章三節、刑訴二二六條乃至二三四條參照)
- 英
- Procedure ofjudgment by default
- 独
- Versäumnisverfahren
- 仏
- Progrès du procès par défaut
決選投票
(けつせんとうへう)選擧せられたる者が、豫定の最少投票數を得ざる場合に、更に其被選者數名を限りて爲す選擧の方法を謂ふ、用例として見るべきは、府縣制第五五條に「法律命令の規定に依り、府縣會に於て選擧を行ふときは、一名每に匿名投票をなし、有效投票の過半數を得たる者を以て當選とす、若し過半數を得たる者なき時は、最多數を得たる者二名を取り、之に就き決選投票を爲さしむ云云」の如き即ちこれなり、決選投票の普通の選擧と異る點は、有效點數が過半數に充たざる時に於て、最多數を得たるものを被選擧人と限定して、更に投票の方法に出づるにあり、而して府縣制に於ては、特に決選投票に就きては二名なることを明記せられたるも、決選投票の性質は、必ずしも二人の決選のみに限らるるものにあらず、法規に於て右の如き限定あらば格別、然らざれば人員の多寡に關せず、方法にして前述の如くならば、又決選投票と稱するを憚らず。(府縣制五五條)
- 英
- Decissive vote
- 独
- Entscheid-ungswahlstimme
- 仏
- Vote décisive
血族
(けつぞく)血族とは、共同始祖より出でて、血統の關係ある人を謂ひ、其共同始祖より出たる者の間に存する關係を、血族關係と稱す、血統の關係にして、夫婦、即ち正當の婚姻をなしたる男女間より生起するものは、之を嫡出若くは正出系統の血族關係と云ひ、男女の私通に起るものは、之を庶出若くは私出の血族關係と云ふ、されば情誼の厚薄、親等の遠近はこれあるべきも、總べて血統の連續したるものは、之を血族と稱するも間違なし、夫れ血族とは、共同始祖より出でて、血族の關係ある人を云ふが故に、其關係は、正しく天然的のものたるを要す、然るに家族制の下に在る法制は、其制度の然らしむる所、全く血統の關係なきに拘らず、天然的の血族關係あるものと看做すことあり、之を稱して法定血族と云ふ、法定血族とは、血統の關係なきも、法律の擬制に依りて生ずる血族と云ふに外ならず、例へば民法上に於ける養子緣組は、血族關係を形成するものなれども、素と之他人間の關係にして、肉親の血統あらざるが如き、繼親子、嫡母庶子の關係の如き、皆血統の關係に於て、天然的のものにあらざるも、なほ法律上血族關係なりと看做すものなり、斯くの如きは個人制の法制に於ては、左程の必要を認むることなきにも拘らず、今日尚諸國の法律に、多少此種の制度の現存せるは、畢竟家族制の遺風に外ならざるなり、古代にありて、同姓氏の者、若くは他邑族中の者が、或る事由に依りて同一姓氏を冐し、若くは同邑族中に入るときは、親族關係なしと雖も、之を以て親族となしたる實ありき、これ畢竟親族と同一視したるものにして、中世以來現今に於けるが如く、法律制度に依りて以て血族關係の存在を認めたるものにあらざらんか、現今に於ても歐洲諸國の法律に、尚此種の制度を存するものなきにあらず、されどそは之を養子緣組の場合に限るものとし、敢て其他の場合に及ぼすことなし、然して縱令形體のみにせよ、家族制の現存せる我國に於ては、養子綠組に依るものの外、他に之を認めざるべからざるは言を要せざる所、即ち繼父母と繼子、嫡母と庶子との間に於ける關係等、全く家に重きを置くの觀念、未だ人の腦裡を離れざると、一家の構成上家族の親睦を維持せしめざるべからざるとに由るなり、故に家族制全く廢頽して、家に重きを置くの觀念、人の腦裡を離るるの曉に達せば、斯くの如き異例に屬する法律上の擬制血族は、自ら其必要を見ざるに至るべきか。(民法七二五條乃至七三條)
- 英
- Blood relation
- 独
- Verwandt-schaft
- 仏
- Relation du sang
決定
(けつてい)決定とは、訴訟を進行せしめ、又は確定したる裁判を執行せしむる爲めに、障害を排斥する裁判所の宣言にして、決定は訴訟の實體、即ち原告被告兩造間に於ける攻擊防禦の實質に關する場合と、訴訟進行の形式に關する場合、其他訴訟事件に於ける起訴より、確定若くは執行濟に至る間、常に存在し得るもの也、觀察の方面を換へて之をいへば、決定とは、裁判所が爲す判決命令以外の裁判を云ふ、イ決定は判決、及び命令と共に、裁判の一種なり、ロ決定は常に裁判所の爲す所にして、裁判長の發する命令と同一視すべからず、裁判長の發する命令とは、特に法律の與へたる限局の場合に限る、之に反して決定は、即ち裁判所てふ官府の意思の發表なればなり、終に通俗所謂決定なる語も、亦人の意思を定むる行爲の全體を指稱すものなれども、法律上に於て決定と云へば、普通は裁判所のなす宣言の一種なる決定を指すものとす。(民訴八四條等參照)
- 英
- Settling
- 独
- Beschlusz
- 仏
- Solu-tion
決鬪罪
(けつとうざい)決鬪とは、二人以上合意して鬪爭する行爲を謂ふ、決鬪罪は明治二二年一二月二八日法律第三四號を以て規定せられたる犯罪にて、□一決鬪を挑み、又は之に應じたる罪、(六ケ月以上二年以下の重禁錮、十圓以上百年以下の附加罰金)、□二決鬪を行ひたる罪、(二年以上五年以下の重禁錮、二十圓以上二百圓以下の附加罰金)、□三決鬪に依りて人を殺傷する罪(刑法の各本條と同一の處分)□四決鬪の立會を爲し、又は立會を約する罪、但し名義の如何に拘らず、假令ば證人介添人の如き別個の名を以てするも同一の(一ケ月以上一年以下の重禁錮、五圓以上五十圓以下の附加罰金)處分を受く、□五情を知りて決鬪の場所を貸與し、又は供用したる罪、(處分は四の罪と同一なり)□六決鬪の挑みに應ぜざるの故を以て人を誹毀したる罪、(刑法の誹毀罪を以て處斷す)、而して之等犯罪が刑法の規定する罪と對照し、重きに從ひて處斷すべきものとす。
- 英
- Duel offence
- 独
- Zweikampfs-verbrechen
- 仏
- Crime de duel
業
(げふ)業なる語は、種々の方面に使用せらる、假へば營業、職業、商業、農業、工業の如く多樣なるも、槪括して之を謂へば、利益の收入に關し、繼續的淵源となすの意思を以て、連續したる多數の私法的行爲をなすを云ふ、分説すれば、□一利益を得るの目的に出つること、人誰か利を得るの目的なからんや、されど義の爲めに行動する者あり、娯樂の爲めに行動を爲するものあり、社會百般の行動必ずしも射利の目的とのみ云ふべからず、獨り業は、常に利を得る目的に出づるを要するものとす、□二斷えざる收入の淵源となすこと、人は生活資料を得るにあらざれば生くる能はず、此生活資料の收入に關し、斷えざる淵源となす爲めに爲す行爲は所謂業なり、□三連續したる私法的行爲なること、假へば販賣業者が、雜多の貨物を顧客に賣渡す場合に、各個の物品を買主より對價を受けて、其所有權を移轉する法律行爲、即ち賣買が、一定の月日の間幾回となく繰り返さるるときは、之業なり、幾回となく繰り返さるべき狀況に於て在るときは所謂業にして、實際に於ては、或は一回なるも素より妨けなしとす、商法第四二條に「會社とは商行爲をなすを業とする目的を以て云々」とあるは此用例なり。(商四、三一三、三二一、三三一、三五七條等參照)
- 英
- Business
- 独
- Geschäft
- 仏
- Af-faires
協諧契約
(けふかいけいやく)協諧契約は、破産者と債權者との間に於て締結せらるる一種の和解なり、和解は、當事者相互に讓步して、紛爭を落著する契約を云ふ、債務を負ひたるものが、債務を辨濟せざるが爲めに、債權者、之に對して訴訟を提起したる後、債務者の要求を容れて、費用若くは利息を抛棄し、又は債務の一部を支拂はしめて、其殘部の延期を承諾し、以て訴訟の落著を告ぐる方法は、適々以て破産の場合に應用することを得べし、破産の場合は、槪ね債務者に對し、多數の請求湊合するものなれば、斯かる方法に依りて其局を結ぶの便利なるは、言を俟たざる所なり、協諧契約の起る所以は、實に茲に存するものにして、其實體たるや、數個の和解の合併したるものと見て差支なからん、我國現行の主義として破産制度を見るに、多少制裁的の觀念を以てするが如き故に、從つて此協諧契約に於ても、多少普通の和解と趣を異にする所あり、まして破産なる法律關係の存在する以上は、之に繫るべき結果、種々なる手續と制限とを附加するは當然也、以下協諧契約の要件を説示せんに、此契約の特典を得んには、□一有罪破産の宣告を受けたる債務者たらざること、又其審理中にあらざる事、□二破産主任官(地方裁判所の判事にして、破産主任官なる名稱を以て破産事件に關與する者)の認可を受けざるべからざる事、□三債權者に協諧契約を提供することを得るには、第一の集會(債權者集會)に於てせざるべからざる事、但し十分の理由あるときは、以後の集會に於ても爲すことを得、□四其提供は、前後を通じ一回に限らる、□五契約の承諾には、出席債權者の過半數の承諾を要し、其過半數は議決權ある總債權額の四分の三以上に當る事を要す、此外協諧契約が、詐僞其他不正の方法を以て、又は公益に觸るるが如き契約に依りて、債權者が偏頗の配當を受けざること、或は破産者が後に至りて有罪破産の判決を受けたるときは、消滅又は棄却の原因となるべきものとす、之を要するに協諧契約なるものは、當事者信用の持續事務の省略を根源となす破産制度上の便宜的救助手段が、基礎となりたるものなり。(破産法一〇三八條乃至一〇四條)
協議
(けふぎ)多人數が或る一定の事項に關して、確定の意見を得んが爲に、協商會議する事を謂ふ、換言すれば意思の交換を爲すことの謂にして、公法上に散見する議決、決議等の如きも、皆廣き意味に於ては協議なりと云ひ得べし雖も、斯くの如きは自體に於て既に確定的の名稱を有し、且つ法律上一定の意義と條件の附隨したるものなれば、茲に論究を略すべきも要するに協議其ものの性質は、前陳の如く一事實に就き、二人以上の人の間に於て、確定の意見を得んとする手段と見るを至當也とす、假令二人以上の人の意思が存在する場合と雖も、何等利害の關係なき者に向つて、自己の判斷若くは意見を定めんが爲め、參考的に人の意思意見を徵するが如きは、協議に似て而して非なるものなり。(民八〇八、八一二、八六二條、議院法六一條、戸籍法九六條五號)
- 英
- Mutual consent
- 独
- Unterredung
- 仏
- Conseil
協議上の離緣
(けふぎじやうのりえん)談合上養子緣組を、解除することを協議上の離緣と云ふ、元來養子綠組は、これに依りて養子と養親との間に、親子の關係を生ぜしむるものなり、されど此關係たる、專ら當事者の任意の協議に依り、人爲を以て作りたるものなれば、當事者が其關係を持續するを欲せずして、斷絶せんとするに於ては、法律は其意に反し、強ひて其關係を永續せしむべき公益上の必要は、毫も之あることなし、加之我國從來の慣習に於ても、當事者間の協議調ひたるときは、裁判所、又は行政廳の許可を要せず、自由に離緣を爲す事を許したるを以て、協議上の離婚と同樣に、又協議に依る離緣を認めたり、而して協議上の離緣の要件には、實質上の要件と、形式上の要件との二種あり、□一實質上の要件、更に三別してイ養親及養子が、共に離緣に一致する事を要す、但し夫婦養子の場合に於ては、必ずしも其夫婦が共に離緣に同意することを必要とせず、配偶者の一方が獨立して、其養親と協議の上、離緣を爲す事を得べし、此原則に二の例外を認む、養子が十五歳未滿なるときは、其實家の父母之に代りて同意の意思表示をなさざるべからず、一方のみなるときは其一人のみの意思を以てし、父母共にあらず、又は意思表示を爲す能はざれば、親族會及後見人の意思を以て代ふ、養親が死亡したる後に於ては、(夫婦が共同して養子を爲したるときは、其共に死亡したることを要す)養子は、戸主の同意を得て離緣を爲すことを得、茲に注意を要するは、婚姻は一方の死亡によりて、已に婚姻の解消を來し、また離婚の必要なきも、綠組は之と異り、死後と雖も離緣の必要あることこれなり。ロ尊屬又は之に代るべき者の同意、即ち滿二十五年に達せざる者が協議上の離綠を爲すには、最初綠組を爲す時に同意を爲す權利を有するものの許諾を得ざるべからず、之離緣せられんとするものの利益を保護するに外ならず、其成年以上の者にも、尚同意を必要とする所以のものは、他の普通の法律行爲と異り、一層重要の效果を有し、動もすれば利害得失を考察すること充分ならざるの危險あればなり、年齡の制限を廿五年となしたるは、立法者が認めて以て、危險とする考慮判斷に缺くるなき程度の年齡と信じたれば也、畢竟何歳とするも、程度に過ぎざる問題にして、且つ同意を受くる方法と手段、又は其他の點は、共に緣組締結當時の同意を受くると同一の途に出づべきものとす、ハ法定の推定家督相續人たる養子ならざること之なり、こは民法第七四四條當然の結果にして、養子が推定家督相續人たるときは、之を廢除したる上にあらざれば、離緣を爲すを得ざるものとす、□二形式上の要件、之に就きては婚姻、協議上の離婚、養子綠組等に關して採用したると、全く同一の主義を採り、當事者の双方(又は之に代りて意思表示を爲す者)及成年の證人二人以上より、口頭又は自署したる書面を以て、之を戸籍吏に屆出づるに依りて效力を生ずることと爲せり、其屆出を受けたる戸籍吏にして、其離緣が凡て法定の要件を具備せることを認めたる後にあらざれば、之を受理することを得ざるの義務を負はしめたることも、婚姻、離婚、緣組に於けるが如し、又協議上の離緣は、當事者が離綠の屆出を爲さざりしときに於て無效なり、蓋し協議上の離緣は、一の要式行爲なるを以て、其方式を缺きたるときは、全く成立することを得ざればなり、戸藉吏が、其屆出を受理したる場合に於ても亦然り、當事者が、離綠を爲すの意思なきに於ても亦無効なり、故に當事者の相通じて爲したる虛僞の離綠は無效なり、行爲の要素に錯誤ありたる離綠は無効なり、又父母又は親族會等が當事者に代りて、意思表示を爲すべき場合に於ては、意思の有無は其代理人に就きて之を決し、無效の緣組を有效と信じて爲したる離綠も亦無效なり、離緣の取消し得べき場合は、詐僞又は強迫に依りて、離緣を爲したる場合に限るものにして、其他屆出の方式を誤りたるとき、又は同意を得べきものが、同意を得ざりしときは、取消の原因とならざるなり。(民八六二條乃至八六四條)
- 英
- Dissolution of adoption by agreement
- 独
- Adoptionsscheidung vom Vertrag
- 仏
- Dissolution de l'adoption par l'accord
協議上の離婚
(けふぎじやうのりこん)夫婦の談合によりて爲す婚姻解除を協議上の離婚と云ふ、元來婚姻は、男女の共諾に依りて成るものとなす以上は、其共諾に依りて之を解くことを得しむるは、自らなる所なり、されどこれ決して婚姻を以て、物的契約視したるより生ずる結論にあらざることに注意せざるべからず、婚姻は固より男女生存間の關係なり、結合なり、唯其結合は、男女の共諾に基づきて生じたるものなるが故に、其結合を生ぜしめたる目的を達すること能はざるときは、夫婦の協議に由るも、尚其結合を解離することを得しむべしとの意たるに過ぎず、或は云はん、婚姻は固と男女の共諾に由りて成るものなれば、又協議に由りて之を解くことを得しむべしとなすは、婚姻が男女畢生間の重大なる關係たることを忘却したるものにして、婚姻を單純なる物的契約と同視するものなり、斯くの如き説は、婚姻其ものの性質に違背する甚しと、夫れ或は然らむ、されど其所謂生存間の關係なるものは、婚姻當時に於ける意思に基づきたる論結に外ならずして、協議に依りて離婚を爲すも、決して婚姻の本體に違ふものにあらざるなり、ある外國の法律に於て、裁判上の離婚、即ち法律に於て揭げたる原因あるにあらざれば、絶對に之を許さずと規定するものありと、實に奇怪の極也と云はざるべからず、若し斯くの如くせんか、常に一家の耻辱を世間に表白するにあらざれば、離婚の目的を達する能はざることとなるのみならず、法律に定むる所の原因以外に、何等の事故を生ずることあるも、離婚を行ふことを得ざるに至り、頗る不都合を免がれず、蓋し一家の耻辱は、成るべく之を隱秘し、世に公にせざることを期せざるべからざるは、啻に個人上の必要のみならず、法律に定むる原因以外の事故と雖も、夫婦の性情相和合せず、到底互に耐忍すること能はざるが如き場合に、離婚を行ふことを得しむるは、啻に一家の利益のみならず、社會の安寧上より見るも、其利あるは言を要せず、之我新舊民法が、共に協議上の離婚を行ふことを許す所以にして、他意あるにあらざるなり、然れども德義の進まざる今日に在りては、法律が協議離婚を許すを奇貨とし、動もすれば婚姻を輕んじ、又從令之を輕んぜざるにもせよ、輕卒に離婚を爲す如き弊を生じ、獨り當事者の不幸を他日に來すの虞あるのみならず、實に社界の風紀を紊すの虞なきを得ざるを以て、諸國の法律槪ね協議に依り離婚を爲すにも、或る條件に依らざるべからざるものとせり、我が改正民法も、この點に注意する所あり、即ち滿二十五年に達せざる者が協議上の離婚を爲すには、其家に在る父母の同意を得ることを要し、父母の一方が知れざるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は其意思を表示すること能はざるときは、他の一方の同意のみを以て足り、父母ともに知れざるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき、又は意思を表示すること能はざるときは、未成年者は、其後見人及び親族會の同意を得ることを要す、繼父母又は嫡母が同意を爲さざるときは、子は親族會の同意を得て爲すことを得、其他離婚に關しては、總べて結婚と同樣の人の同意を要するの外、之を戸籍吏に屆出づるに依りて其效力を生じ、且つ屆出は當事者双方、及び成年の證人二人以上より口頭、又は署名したる書面を以て之を爲すこと等、規定を同うするあるを見る、尚協議上の離綠を比較參照せよ。(民八〇八條乃至八一二條)
- 英
- Divorce by consent
- 独
- Ehescheidung von der Verhandlung
- 仏
- Divorce par accord
協贊
(けふさん)協贊とは、協翼贊成の義にして、例へば帝國議會の協贊と云へば、或る議案、即ち法律案又は豫算案に對し、協翼贊同の所爲を爲すを云ふ、協翼贊成とは、平易にいへば、ある草案に對し、審議討論を爲し、贊成の決議を爲す態樣と見る時は大差なからん、我憲法第三七條に於て「凡て法律案は、帝國議會の協贊を経ることを要す」と規定したるは之が用例なり、元來我國法上法律の發布に關しては、必ずこの手續を踏まざるべからす、萬一内容は法規として完全なる性質を有するも、議會に於て一定の形式と、實質を有するこの協贊なる方式を経ざるときは、命令としての效力を有する法規として、國民を覇束することあるべきも、狹義に於ける所謂法律として效力あるものにあらず、故に草案に對し、裁可、公布、週知期間等總べての手續が完全なる時と雖も、一の協贊なき以上は、法律と云ふを得ざるものとす。(憲六二條三項、六四、六八條)
- 英
- Consent
- 独
- Zustimmung
- 仏
- Consentement
協定税率
(けふていぜいりつ)輸入貨物の關税賦課に關して、條約を以て他國と協議約定せる税率を云ふ、元來税率とは、課税物件に對し、賦課徵收する標準比例にして、一國課税の權利上税率は、其國の税權に依りて定むべきを原則とす、されど或る理由よりして、止むなく税率を協定せしめらるることあり、我國に於ては關税は原則として、關税定率法所規の定率に依りて賦課するも、歐米諸國との條約に於て、特に協定の税率を定めたるものは、之に依べるきものなり(英、獨、佛、米と我國との通商條約參照)
- 英
- Conventional tarif
- 独
- Kon-ventionaltarif
- 仏
- Tarif conventionel
脅迫
(けふはく)汎く脅迫と謂ふ時は、人をして畏怖心を抱かしむべき一切の行爲を謂ふ、即ち自らこの害惡を加ふべき旨の通知にして、其種類は多々ありと雖も、刑法上に於ては、限定的の意味を有す。(刑二二二條、民九六條一項の強迫も略同義也參照)
- 英
- Threat
- 独
- Bedrohung
- 仏
- Menace
脅迫罪
脅迫罪とは、舊第三編第一章第七節に規定する犯罪にして、此罪の成立は、□一畏怖の材料と爲す事項は、殺人、放火、毆打、創傷等特に法文に列擧するものたるを要し、□二脅迫の行爲は、文書又は擧動にして、被害者の見聞に觸れたるを要し、□三之等の條件を具ふるに於ては、犯人實際に其害を加ふる意あると否と、又被脅迫者これが爲めに眞に畏怖したると否とを區別することなし、從來脅迫罪、又は誹毀罪の如きは、被害者の感情を害する罪と認め、脅追の場合には、之に畏怖を生ぜしめたるときは、罪を成すと論じ來れり、然れども現今多數の學者の認むる如く、共に公の利益を害する罪にして、敢て被害者の感情如何を問ふを要せず、又此二罪を親告罪と爲したる理由は、判決を爲すに當りて、受動者の感情如何を知るに、極めて重要なる參考となるが爲めに、受動者の意に反したる公訴の堤起に依り、却て其苦痛を大ならしむる場合あるを恐れたるとに基き、別に其感情如何に依りて、罪の成立を來たすことなしと解釋せざるべからず、尚法文に脅迫の材料となるべき危害を限定したるが故に、茲に揭げられざる危害を以てすれば、假令被害者が如何に畏怖心を懷くとも、又如何に屢行はるる事實なりとするも、脅迫罪として論ずることを得ず、今其適切なる例を揭ぐれば、人の名譽を傷けんとの脅迫なり、惡事醜行を摘發し、人の名譽を傷くべしと脅迫するの類は、實際屢起る所の事實なるのみならず、又被害者に對しては、些少の財産を失ふよりも、一層重大なる畏怖心を懷かしむることあり、然も法文には何等の規定を爲さざるが故に、脅迫罪として論ずることを得ず、(但し之を材料として財物を騙取したる場合は、刑法第三九〇條に依り、恐喝取財なる罪名に於て罰する也)本罪の刑は、人を殺さんと脅迫し、又は人の住居したる家屋に放火せんと脅迫したる者は、一ケ月以上六ケ月以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加す、歐打創傷其他暴行を加へんと脅迫し、又は財産に放火し、及び毀壞却掠せんと脅迫したる者は、十一日以上二ケ月以下の重禁錮に處し、二圓以上十圓以下の罰金を附加す、又兇器を持し前條の罪を犯す時は、各一等を加へ、親族に害を加ふべき事を以て脅迫したる者は、亦前陳の刑に同じく、而して本罪は他の犯罪、即ち普通の告訴告發を以て訴追せらるる犯罪と異り、脅迫を受けたる者、又は其親屬の告訴を待ちて、其罪を論ずる所謂親告罪の一種なりとす。(舊刑三二六條乃至三二九條)
業務執行者
(げふむしつかうしや)業務執行者とは、業務を實際に執行するの責任を有するものを云ふ、例へば法人の理事の如き即ち是なり。(三三年勅一〇〇號)
- 英
- Manager
- 独
- Geschäfts-führer
- 仏
- Directeur
業務執行社員
業務執行社員とは、合名會社、株式會社等に於て、其會社の目的とする業務に關し、總べての衝に當り執行する社員を指稱す、商法第五七條條に「業務執行社員」とあるは其用例とす。
- 英
- Managing partner
- 独
- Führer einer Gesellschaft
- 仏
- associe gérant lens affaires
業務擔當者
業務擔當社員とは、業務執行を擔任する社員にして、合名會社に於ける業務執行社員の如き之也、元來業務執行社員と云ふも、業務擔當社員と云ふも、略ぼ同義にして、實際自ら業務を執行する者たると否とを問はず、之を現實すべき責任を負ふ社員を謂ふ。(移民保護法一一條)
- 英
- Managing partner
- 独
- Geschäftsführender
- 仏
- Associé gérant les affaires
業務停止
(げふむていし)業務停止とは、必ずしも營業停止のみに限らず、廣義に於ける業、例へば職業を停止せらるるも、一の業務停止なり、彼の私立小學校長、又は教員が、職務違反、或は職務の怠漫其他體面を汚辱する所爲ありたるとき、地方長官が爲す業務停止の如きもこの一種なり、又銀行事業に於ける支拂拒絶も、一種の業務停止なるべく、又物品販賣業に於ける商人の都合上、一時的營業の中止を爲すも、亦然り、而して廣く業務の停止とは、刑罰又は行政處分によりて、強制的に業務の停止を命ぜらるる場合と、業務者自己の意思に基く業務の停止との兩者を含む、何れも皆繼續的の業の狀態が、無限に若くは一時的に中止せらるることを謂ふなり。(小學校令五〇條)
權
(けん)權とは、權力、權限、權利等を包含したる意味に用ふるを普通とし、或る場合には、便宜乃至臨機の如き意に用ゐらるることあり、彼の行政上に於ける權限處分、或は權謀術數と云ふはこれなり、されど權なる語は、多くは前義に解せられ、或る人の意思範圍が、他人の意思範圍を侵し得る可能を指すものの如し、以下分説すれば、□一權力の意に用ふることあり、例へば國權、命令權、強制權と云はんが如し、□二權限の意味に使用せらるることあり、例へば抽象的に官府の職權と云ひ、具體的に立法權、司法權、行政權、裁判權、刑罰權と云ふが如し、□三權利の意に使用せらるることあり、人格權、所有權、債權と云ふは其例なり。(權利、權力、權限の部參照)
- 英
- Right
- 独
- Recht
- 仏
- Droit
間
(けん)度量衡に於ける度の一種長さなり、六尺を指して間と名付く、度量衡法第三條に間とあるは其用例なり、
縣
(けん)縣は、國の最上級の行政區劃なると同時に、一の自治公法人なり、縣が公法人としての法人格は、府縣制の實施に依ると雖も、絶對に其施行にのみ依りて然るものにあらず、府縣制の施行以前に於ても、獨立の經濟上の能力を有し、租税の徵收、府縣會なる議決機關をも有したりき、縣は右の如く一の公共團體にして、市町村、及び郡と同一に、一定の住民を以て之を組織し、一定の地域内に其公權を行ふものとす、縣の區域は、從來の區域を變更せずして、郡市、及び島嶼を包括す、島嶼と稱するは、小笠原島の如く郡市の區域に屬せざる島地を云ふ、縣の區域の變更若くは廢置分合は、共に法律を以てするにあらざれば之を爲す事を得ず、又所屬未定地を市町村の區域に編入したるとき、一縣の境界は當然變更せらるるものとす、此場合に於て、財政處分を要するときは、法律の規定以外、内務大臣は、關係ある府縣郡市參事會及町村會の意見を徵し之を定むるものとす、縣の住民は、即ち縣域内の郡市の住民にして、郡市の住民は、同時に所屬縣の住民たり、然るに或一派の説は、縣の構成に關しても亦郡と同樣、縣は所屬郡市を以て編成せらるるものなりと論ずる者あり、されどこは誤れるものにして、縣は郡と異り、直接に其住民に對して課税し、又郡と同じく直接選擧の制を採用せるを以て、其所説は見解の不當なるを免がれず、縣の機關は、郡の機關と同じく、縣會、縣參事會、及び縣知事の三者より成立す前二者は議決機關にして、後者は執行機關なり、縣の自治はその固有事務、及び委任事務を處理するが爲めに自治を行ふ、其範圍の廣きこと郡の比にあらず、即ち郡は其公共事務並に法律命令に依りて、郡に屬する事務を處理するものなれども、縣はその公共事務、並に從來法律命令、又は慣例に依り、及び將來法律、勅令に依りて、縣に屬すべき一切の事務を處理することを得、又縣は郡と異り、既に法人たるの資格を具有したるを以て、府縣制施行以前に於て縣に關する事務を有したりき、而して府縣制は、特に之等の事務を依然府縣に屬せしめたり、されば府縣は前述したる事務を行ふに必要なる費用、及び法令に依り府縣の負擔に屬する費用を支辨するが爲めに、資財を必要とす、府縣に於ける財政の郡と異る點は、即ち府縣税、及び經費賦課に關する規定之なり、即ち□一國庫の補助、及び下渡金、□二其の營造物、及び財産より生ずる收入、□三手數料、□四其他縣財産より生ずる收入、□五夫役現品其他の雜收入を以て、其費用を充たすを原則とすと雖も、其足らざるに及びては、住民に對して直接に縣税を賦課するの權能を有し、又場合に依りては勅令の定むる所に從ひ、其費用を市村町に分賦するの權利を有す、而して其納税義務者は、縣内に住所を有する者にして、槪ね市町村の納税義務者なり。(府縣制參照)
- 英
- Prefecture
- 独
- Bezirk, Präfectur
- 仏
- Préfecture
縣有財産
(けんいふざいさん)縣なる地方自治體に屬する一切の財産を稱して、縣有財産と云ふ、縣なる地方自治體も、所謂國家内の公法人なれば、法律の範圍内に於て、財産を有し得ることは勿論、又法律の認むる所により、其處分管理を爲すことを得るものとす、我府縣制によれば、府縣は積立金穀を設くることを得べく、又府縣は、營造物、もしくは公共の用に供したる財産の使用につき、手數料を徵收することを得、而して總べて縣有財産なるものは、内務大臣の監督の下に縣知事の管理すべきものとす、又公益に供する爲めに、有志人民の協力を以て設立したる學校、病院の類は、府縣立の名義を附せられ、府縣知事に於て、之を管理すべきものにして、之又縣有財産中に包含せらるるものたるや勿論なりとす。(府縣制、各府縣下に存する公共の財産管理法等參照)
- 英
- Prefectural property
- 独
- Bezirksvermögen
- 仏
- Propriété de la préfecture
現役
(げんえき)徵兵令、及び陸海軍服役條令による常備兵役の一種にして、現に其役務に服するものを稱して現役と云ふ、陸軍と海軍とによりて、多少其年限、及び規定を異にす、□一陸軍の現役將校に關するものと、下士以下に關するものとによりて異る、イ現役將校、現役將校は、所屬部隊の兵籍に編入せられ、現役定限年齡に滿つる迄服役するもの也、將校の現役定限年齡は、大將は六十五歳、中將は六十二歳、少將は五十八歳、大佐は五十五歳、中佐は五十三歳、少佐は五十歳、大尉は四十八歳、中少尉は四十五歳とす、(但し元帥たる大將の現役年齡はこれを定めず)此年齡に滿つるも、他人を以て代ふべからざる職に在るもの、又は補充上必要あるものは、留任を命ぜらるることあるものとす、又戰時若くは事變に際するとき、及び航海中、或は外國駐在中は此期限を延ばさることあり、而して右に示す現役定限年齡に滿たざるものと雖も、服役十一年以上にして、現役に堪へざるものは、將官は上諭により、上長官士官は陸軍大臣旨を諭して、現役を退かしむることあるものとす、現役將校にして傷痍、若くは疾病により、職務若くは永久服役に堪へずと思惟するときは、陸軍醫官の診斷證書、若くは地方醫師の病況書を添へ、順序を經て休職、又は退役を陸軍大臣に願出づることを得べし、ロ準士官の現役、準士官の現役定限年齡は、砲兵工兵の上等工長は五十歳、憲兵特務曹長、樂長補は四十八歳、上等計手は四十五歳、步、騎、砲工、輜重兵の特務曹長は四十歳とす、右の定限年齡に逹せざる者と雖も、服役十一年以上にして現役に堪えざるものは、所管長官旨を諭して、現役を退かしむる事あるべきものとす、特務曹長は、定限年齡に滿たざるも、正當の事故あるときは、陸軍大臣は、本人の出願によりて、現役を免ずる事を得べし、此外は前示の現役將校に關するものと異らず、ハ下士の現役、現役下士は、所屬部隊の兵籍に編入し、現役年齡充つる迄服役するものとす、隊附現役下士は、營内に居住するを例とし、憲兵科下士及軍樂部下士は、總べて營外に居住せしめらる、下士の現役年限は、憲兵科下士は、前服役年限を通算して六箇年、步、騎、砲、工輜、重兵科下士及衞生部下士は、入隊の月より四箇年とし、警備隊附下士にして警備隊區在籍の者は三箇年とす、豫備役後備役下士にして、再び現役に服したる者及豫備役上等兵にして、現役下士となりたる者は、再入隊の年の十二月より二箇年とす、總べて下士は、現役滿期の後服役定限年齡に充つる迄、數次再服役を志願する事を得べし、隊附下士の服役定限年齡は四十歳とす、但し特別任務あるものは、四十八歳乃至四十五歳の特例あり、現役中本人を要するにあらざれば、一家の生計を營み難き事項生ずる時は、本人の出願によりて現役を免ぜらるることを得、又疾病傷痍によりて現役に堪へざるものは、現役を免ぜらる、現役中禁錮の刑に處せられ、又は逃亡したるもの、其刑期中、及び逃亡中の日數は、現役服役年限に通算せられざるものとす、ニ兵卒の現役、現役兵卒は、入隊の日より其隊の兵籍に編入し、現役期限充つる迄服役するものとす、現役兵は營内に居住するを例とし、憲兵上等兵及樂手補は、營外に居住せしめ、又警哨隊、下士勤務上等兵、計手勤務上等兵及看護手中にして、品行方正勤務勉勵且つ技藝に熟逹せる者は、外泊を許可せらるる事あるべし、憲兵上等兵の現役期間は、前服役年月を通算して六箇年とし、砲兵助卒、砲兵輸卒、輜重輸卒及看護卒の現役期間は二箇年四箇月として、砲兵助卒は一箇年間、砲兵輸卒は四箇月間、輜重輸卒は三箇月間、看護卒は三箇月間在營の後歸休せしめらる、其他總べて步、騎、砲、工兵科にあるものは三箇年とす、步、騎、砲、工、輜重兵卒、看護卒にして下士たるの技能を有するものは、現役滿期の後、一箇年を一期として再役を爲す事を得、以上兵卒の定役年齡はすべて四十歳として、現役中本人を要するにあらざれば家族自活し能はざる事故を生ずるときは、其家族の願によりて現役を免ぜらる、又痍傷若くは疾病によりて、一時服役に堪へ難き者は現役を免せらる、又常備役、後備役に堪へざるものは、永久服役を免ぜらるるものとす、□二海軍の現役、海軍高等武官、準士官と下士卒とによりて規定を異にす、イ海軍高等武官、準士官の現役、海軍高等武官、準士官服役令によるときは、現役とは武官を以て充つべき軍務に服するものを云ふ、現役中にして海軍大臣又は海軍次官に任ぜられたる者、及び修學を命ぜられたる者、及待命休職停職に在るものは、現役に在るものと看做るる也、現役年齡は次に揭ぐるが如し、即ち大將六十八歳、中將六十三歳、少將五十八歳、大佐五十三歳、中佐四十八歳、少佐四十五歳、大尉四十三歳、中少尉三十八歳とす、高等武官及準士官は、現役定限年齡に充つる迄現役に服せざるべからず、又此年齡に滿つるときも、他人を以て代ふべからざる職に在るときは、留任を命ぜらるることあるべし、又戰時事變に際する場合同じ、而して右の定限年齡に滿つると雖、現に十一年以上服役し、現役に堪へざるときは退役を命ぜらるる事あるものとす、ロ海軍下士卒の現役、現役下士卒は鎭守府の「兵籍に編入し、現役期限滿つる迄服役せしむるものとす、現役下士の服役期限は、下士に任用せられたる日より起算して六箇年とし、兵卒の服役期限は、兵籍に入りたる日より起算して八箇年とす、但し服役定限年齡に逹する迄に、數次再服役を願ふことを得。(徵兵令、陸軍服役條例、海軍高等武官準士官服役令、海軍下士卒服役條例參照)
- 英
- Active service
- 独
- Activdienst
- 仏
- Service actif
元號
(げんがう)元號とは、俗に所謂年號と稱するものに該當し、明治、慶應、元治と云ふが如し、我皇室典範の定むる所によれば、天皇踐祚の後元號を立て、一世の間に再び改めざること、明治元年の定制に從ふとせられたり、故に天皇御在世の間は、元號は再び改めらるることなきを以て、今後の定例とせらるるなり。(典範一二條)
- 英
- Era
- 独
- Ära
- 仏
- Ère
現行條約
(げんかうでうやく)現行條約とは、現在に效力を有する國際間の條約を指示するの語なり、條約の效力を發生したるものにして、未だ消滅に歸せざるもの、即ち現行條約なりとす、條約は如何なる時期に於て有效に成立し、又消滅するやは、條約に關する項目の下に於て研究すべき問題なりとす。
- 英
- Treaty in operation
- 独
- Ver-trag in der Gewalt
- 仏
- Traité en opéra-tion
現行法
(げんかうはふ)現在に於て效力を有する法規を總稱して現行法と云ふ、故に單に現行法と云ふ場合は、法律のみならず他の命令規則等、苟も國家の有效に公布せられたる法規は、すべて此中に包含せらるるものとす知るべし。(憲法七六條一項參照)
- 英
- Law in operation
- 独
- Recht in der Gewalt
- 仏
- Loi en opération
現行犯
(げんかうはん)現行犯とは、犯罪の發覺の狀態の名稱にして、刑事訴訟法の規定する處に依れば、現行犯には現に罪を行ひつつある際に發覺したるものと、これを行ひ終りたる際に發覺したるものとの二種あり、前段の場合は、頗る明哳にして疑を容れずと雖も、後段の場合は、其限界甚だ不明なり、從つて種々學者間に議論あり、或は曰く、現に行ひ終りたる際發覺したるとは、犯罪事實と犯人との關係を認むることを得る場合にして、例へば犯人が犯行の後に犯罪の場所を去らざるか、又は其場所を去るも、尚犯人其者たる事を知るを得べくして、之を追捕し得る如き場合なりと、此説は、現行犯の發覺とは、事件の發覺したる場合なりと爲すものあらざるが故に、犯人の逮捕にのみ適用する現行の獨乙治罪法に於ける主義には、適當なるものなり、然れども我刑事訴訟法の所謂發覺と云ふは、犯人の發覺を要するものにあらず、抑も法律が現行犯の規定を設けたるは、事件が急速の處分を要し、若し通常の手續によるときは、被告人は迯亡し、現在する所の證據は消失するが故に、現行犯の規定は斯る場合に處する特別手續なりとす、從つて刑事訴訟法に於て、現行犯ある場合には、豫審判事は檢事の請求を待たずして、處分に著手することを得るものとせる所以なり、若し被告人の不明なる場合は、現行犯にあらずとせば、死に頻せる重傷者あるも、之を訊問すること能はず、從つて加害者が、何人なるやを知るを得ざるに至ることあるべし、これ刑事訴訟法上犯人の不明なる場合と雖も、現行犯ありと云ふ所以にして、現に大審院の判例に於ても、犯罪を行ひ終りたる際直に發覺したる事件は、犯人の誰なる事を知ること能はざる場合と雖も、現行犯なりとせり、次に被告人と犯罪事實との關係の牽聯するや否やを以て、現行犯と、非現行犯とを區別する能はざるが如く、又犯罪行爲と發覺との間の時間を以ても、之を區別する能はずして、例へば二十四時間内、又は一週間内は現に行ひ終りたる際なりと云ふこと能はず、從つて現に行ひ終りたる際とは、全く犯罪行爲に密接したる時を云ふものにして、發覺當時に於ける犯跡の狀態が、犯罪當時の有樣を存するや否やによりて、之を區別せざるべからず、例へば他殺に出でたる死體を發見したる場合に於て、仍ほ鮮血淋漓として、犯人の犯行終りたること遠きにあらざるときは、之を現行犯なりと云ふを得べきも、死體の腐敗を來たし、既に數日を經過したるが如き場合は、之を現行犯なりと云ふ能はず、また犯跡の消散し易き場所に行はれたると否とにより、犯罪狀態の現行犯たると否とが定る事あるべし、要するに現行犯なるや否やの區別は、各場合に於ける發覺の狀態によりて、之を〓別するの外なく、此問題たるや、事實問題にあらずして法律問題なるを以て、各事件につき大審院の判定する所により、豫め兩者の意義を一定するを要するものとす、而して其發覺なるものは、何人に限らず、犯人以外に發覺したる場合にして、其一個人に知れたると、官の知る所となりたるとに區別あることなし、若し通常人、又は巡査に發覺すれば、其者は犯人を逮捕するを得べく、司法警察官に發覺したるときは、逮捕の爲現行犯の處分を爲すことを得るものとす、尚刑事訴訟法上に於て、現行犯に準ぜらるる場合あり、即ち準現行犯と云ふべきものにして、犯人として一人又は數人に追呼せられたる時、兇器臟物其他の物件を携帶し、又は身體被服に顯著なる犯罪の痕跡ありて、犯人と思料すべきとき、家宅内に於て犯したる罪を檢證する爲め、又は犯人と思料すべきものを逮捕する爲め、戸主より官吏に其處分を求めたるときの三場合なりとす。(刑訴法五六條乃至六一條)現行犯罪とは、現行犯として取扱はるべき犯罪を云ふ。(刑訴三編一章二節)
- 英
- Fragrant delict
- 独
- frische That
- 仏
- Délit fragrant
現行犯罪
- 英
- Fragrant delict
- 独
- frische That
- 仏
- Délit fragrant
現行犯人
(げんかうはんにん)現行犯として發覺したる場合の犯人を現行犯人と云ふ、現行犯人の逮捕に關しては、司法警察官、巡査、憲兵上等兵、及び通常人は、其犯人を令狀を持たずして逮捕する事を得べきものにして、此逮捕は、禁錮以上の罪に該る犯罪に限り之を許す、罰金以下の罪に該るべき犯罪につきては、巡査、憲兵、上等兵は、被告人の氏名住所を問ふに止め、檢事又は即決を爲すべき官署に告發すべきものとす、若し被告人の氏名、住所分明ならず、又は逃亡の虞れ有るものなる時は、檢事、又は即決官署に引致することを得、此場合に爲す引致は、留置を爲すが爲めにあらずして、氏名、住所を確め、且つ訊問を爲さんが爲めなりとす。(刑訴五八條乃至六一條)
- 英
- Fragrant Delictor
- 独
- frisher Thäter
- 仏
- Condamné fragrant
權義
(けんぎ)權義とは、權利及義務の意にして、權利義務と併稱するの簡約に過ぎざるなり、例へば相續人は被相續人の權利義務を承繼すると云ふ場合に、權義を承繼すと云ふべきが如し。
- 英
- Right and duty
- 独
- Recht und Pflicht
- 仏
- Droit et devoir
原器
(げんき)原器とは、度量衡法に用ふる語にして、度量衡器の基本標準として製作せられたる白金「イリヂユム」合金製の棒、及び分銅を元器と稱す、度量衡の原器は、農商務大臣之を保管し、其原器によりて副原器二組を製作せしめ、原器の代用に供せらるものとす、而して農商務大臣は、其副原器によりて檢定原器を製作せしめ、度量衡器檢定の標準に供せらるるものとす。(度量衡法一、六、七條)
- 英
- Standard
- 独
- Standhaft-masz und-wage
- 仏
- Étendard
嫌疑
(けんぎ)犯罪たるべき疑ある場合を稱して犯罪の嫌疑と云ふ、故に犯罪者たらずと雖も、時に犯罪の嫌疑者たる事あるべく、此嫌疑ある場合は、所謂搜査官の搜査の目的となるものにして、未だ犯罪事件は、裁判所に繫屬せずと雖も、搜査手續を開始せらるるものとす、斯かる場合の犯罪の嫌疑者は、訴訟行爲の主體たらずして、搜査手續の目的物たるものとす、又檢事の搜査手續の結果として、抅留せらるる場合あるものとす。(刑訴三六條乃至三八條)
- 英
- Suspicion
- 独
- Beschuldigung
- 仏
- Suspicion
建議案
(けんぎあん)建議の議案となるべきものを稱して建議案と云ふ、議院法の認むる所によれば、帝國議會の議員は、三十人以上の贊成を得て、建議の動議を提出することを得るものとす、而して爰に建議と云ふは、政府に對して、或る事項の施設に對する建白の意にして、消極的に既得の行爲を責むるにあらず、積極的に或る行爲を施設すべきを誘導する場合に用ひらるるものとす。(議院法五二條)
- 英
- Propositional bill
- 独
- Vor-schlagsbill
- 仏
- Bill de proposition
元金
(げんきん)利息に對するの語にして、利息を生ずる源となるべき一定額の金錢を指して元金と云ふ、利息は、此元金使用の時期に比例して生ずるものにして、元金に比例せざる利息なるものある事なし、例へば金千圓を使用したる年限に比例して、百圓の利息を生じたりとせば、此利息に對して其利息發生の源たるべき金千圓を稱して元金と云ふなり。(民法六二七條、元本の部參照)
- 英
- Principal
- 独
- Prinzipal
- 仏
- principal
縣行政
(けんぎやうせい)自治團體なる縣の行政を汎稱して縣行政と云ふ、縣の行政機關は縣知事、縣參事會、縣會にして、その行政事務は、總べて國家的事務なり、從つて縣の行政事務は、法定の定むる所に依る、故に縣行政の事務の範圍は、法規によりてこれを決する外、一般に限界を附して説明することを得ず。(府縣制參照)
- 英
- Prefectural administration
- 独
- Bezirksverwaltung, präfecturverwaltung
- 仏
- Administration de la préfecture
縣會議員
(けんくわいぎゐん)縣の公共團體として、其事務に屬する一切の事件を決議するの縣會を組織する議員を稱して縣會議員と云ふ、縣會議員は、各選擧區に於て選擊し、其選擧區は郡市の區域に從ふ、但し東京市、京都市、大阪市其他勅令を以て別に特定せられたる市にありては、區を以て選擧區とす、縣會議員の總數は、縣の人口七十萬未滿は議員三十人を以て定員とし、七十萬以上百萬未滿の地にありては、五萬每に一人を增し、百萬以上の地にありては、七萬を加ふる每に一人を加ふるものとす、縣内の市町村公民にして、市町村會議員の選擧權を有し、且つ其縣内に以て一年以來直接國税年額三圓以上を納む▲者は、縣會議員の選擧權を有す、縣内の市町村公民にして、市町村會議員の選擧權を有し、且つ其府縣内に於て一年以來直接國税年額金十圓以上を納むる者は、府縣會議員の被選權を有す、縣會議員は住所を移したる爲め、市町村の公民權を失ふことあるも、其住所同縣内なるときは、之が爲めに其職を失ふものにあらず、下に揭ぐるものは、縣會議員たることにを得ず、其之を罷めたる後、一箇月を經過せざるものも亦じ、即ち、□一其縣の官吏及有給吏員、□二檢事、警察官、及收税官吏、□三神官、儈侶、其他諸宗教師、□四小學校教員の四種之也前示以外の官吏にして縣會議員に當選し、之に應ぜんとするときは、所屬長官の許可を受くることを要するものとす、選擧事務に關係ある官吏、吏員は、其關係區域内に於て被選權なし、其之を罷めたる後、一年を經過せざる者又同じ、縣の爲め請負を爲す者、又は縣の爲め請負を爲す法人の役員は、其縣の縣會議員として被選權なし、縣會議員は、衆議院議員と相兼ぬることを得ず、縣會議員は、之を名譽職として任期を四個年とす。(府縣制四條以下參照)
- 英
- Member of a prefectural as-sembly
- 独
- Mitglied einer Bezirksver-sammlung
- 仏
- Membre de l'assemblée de la préfecture
減刑
(げんけい)既に宣告せられたる刑罰執行の一部を免除することを減刑と云ふ、彼の法律上の減輕、若くは裁判上の減輕と混同せざらんを要す、之等は宣告前に於ける刑量の減輕に過ぎずと雖も、減刑と稱すべきものは、既に宣告せられたる刑を免除することを意味するなり、減刑は、所謂恩赦の一種にして、我憲法上天皇の大權に屬する事項なり。(憲法一六條)
- 英
- Commutation
- 独
- Strafminderung
- 仏
- Commutation
權原
(けんげん)權利を取得したる原因となるべき法律行爲を指して權原と云ふ、例へば賣買によりて、所有權を取得したる場合に於ける其所有權取得の權原は、即ち賣買なる法律行爲を指すものなるが如し。(民一八五條)
權限
(けんげん)或る人が授權者の利益の爲めに、法律上の行動を爲し得べき範圍を稱して權限と云ふ、而して他の方面よりこれを謂へば、他人の爲めにその行動を犯さるることなき範圍を權限と云ふなり、法律に於て權限なる語の最も多く用ひらるるは、官廳の權限、代理人の權限の二場合なりとす、この二場合に就きて少しく説明する所あるべし、□一公法上に於ける官廳の權限、官廳とは、或る限りたる國家事務につきて、法律上の決定權を有する國家の機關にして、官廳が國家の機關として、國家の意思を決定することを得るは、唯限られたる國家事務の範圍に限るものなり、この國家事務の範圍を稱して官廳の權限と云ふ、官廳の權限の法律上の效果は、二の方面より觀察することを得べし、其積極的方面に於ては、權限は其範圍内に於ける官廳の行爲をして、國家の行爲たる效力を有せしむべき效果を有せり、官廳は、其權限内に於ては國家を代表するものにして、權限内に於ける官廳の行爲は、其適法なる行爲によりて取消され、又は廢止せらるるに至る迄は、完全なる國家の行爲として存在するものなり、官廳は其權限内に於ては、自ら法規を解釋適用するものなるが故に、權限内に於ける官廳の行爲は、假令其實質に於て法規に違反することあるも、其解釋の誤れることが、別の國家行爲によりて公に證明せらるるまでは、官廳自身の解釋を以て正當なるものと認めざるべからず、從つて有效なる國家行爲なり、また權限内に於ては、官廳の行爲が假令違法なるも、これ國家が違法の行爲を爲したるものにして、有效なる國家行爲たるを妨げず、例へば裁判官が、法規の適用を誤りたる判決を爲すも、その判決が更に上級審に於て取消さるるまでは、有效なる國家の判決なり、行政官が違法なる命令を發するも、その命令が上官によりて取消さるるまでは、有效なる國家の命令なり、國民はこれに服從することを拒むを得ざるが如し、つぎに權限の消極的の效果としては、權限外の官廳の行爲をして、國家の行爲たる效力を生ずること能はざらしむるにあり、官廳が國家を代表し、國家の機關として行動し得るは、唯其權限内の事務に限る、權限内に於ては、國▲の行爲は、假令法規に違反することあるも、なほ國家の行爲にて效力を有し得べきに反し、權限外に於ては、官廳は國家の機關たる地位を有せず、從つて權限外に於ける官廳の行爲は、全く一私人の行爲と同じく、國家の行爲たる效力を生ずることなし、□二私法上に於ける代理人の權限、代理人が、本人の爲めに爲し得べき行爲の範圍を代理人の權限と云ふ、法定代理人の權限は、法律を以て限定す、故に法則を解釋して、之を決せざるべからず、例へば親權者の權限に關する民法第八八四條以下、後見人の權限に關する民法第九二三條以下、法人の理事の權限に關する民法第五三條以下の如し、任意代理人の權限は、授權行爲によりて、定まるべきものなり、故に此場合に於ける授權者の意見表示の内容を探究して、其權限の範圍を決すべきものなり、何れにせよ代理人の權限は、法律の規定若くは授權行爲に依り、指定せられたる事項を遂行する爲めに必要なる一切の行爲、並に之を遂行したる結果として、當然爲すべき一切の行爲を包含す、然れども一の法律行爲を爲す權限を授けられたる者が、同一の目的を逹し得べきを理由として、他の法律行爲を爲すことを得ず、又法律の規定若くは授權の主旨より類推して、其指定せざる事項を權限の範圍内に入らしむるが如きは、不當と云はざるべからず、但し商法に於ては、商行爲に關して特例を設け、大に代理權限の範圍を擴張せられたるを見る、民法上授權行爲を以て權限を定めざるときは、代理人の權限の範圍は、下の事項に限定せらるるものとす、即ち、イ保存行爲、ロ代理の目的たる物又は權利の性質を變ぜざる範圍内に於て、其利用又は改良を目的とする行爲に限り、之を爲すことを得べきものとす。
- 英
- Competency
- 独
- Zuständigkeit
- 仏
- Compétence
權限權限
(けんげんけんげん)國法學上の用語にして、國家が自ら隨意に、自己の權限を伸縮する事を得る力を稱して權限權限と云ふ。
- 英
- Limit of Competency
- 独
- Zuständigkeitsgrenze
- 仏
- Limite de com-pétence
權限裁判所
(けんげんさいばんしよ)權限爭議ある場合に、之を審査決定するの裁判所を稱して權限裁判所と云ふ、權限爭議は、我國法の認むる所なれども、現行法中權限爭議に關する規定は、行政裁判法中、第二十條に唯一箇條を存するのみ、即ち「行政裁判所は、其權限に關しては、自ら之を決定し、行政裁判所と通常裁判所、又は特別裁判所との間に起る權限爭議は、權限裁判所に於て之を裁判す」とあり、而して此條の規定に於ける權限裁判所なるものは、今日に至るも實際に設立せらるるに至らず、同法第四五條に權限爭議は、權限裁判所を設くる迄の間は、樞密院に於て之を裁判決定すとあり、故に現今に於ては、權限裁判所なる官署なしと雖も、法律上に於て、樞密院が、右の權限爭議を裁決すべき行動を開始するときは、即ち權限裁判所なるものを組織するものなりと云ふべきなり。(行政裁判法二〇、四五條)
- 英
- Court of competency
- 独
- Kompetenzgerichtshof
- 仏
- Tribunal de compétence
權限爭議
(けんげんさうぎ)權限爭議とは、行政裁判所と、司法裁判所との權限範圍の爭ある場合に於て、之を審査決定する手續を云ふ、總べて官廳は一定の權限を有し、互に相犯すことを得ず、然れども行政官廳相互の間に於て、其權限範圍につき爭ある場合に於ては、之に共通なる上級官廳に於て之を決定するの權を有し、別に權限爭議の手續を必要とせず、之に反し司法裁判所と、行政裁判所との間に於ては、之に共通なる上級官廳なく、從つて權限爭議の必要を生ずるなり、行政裁判法第四五條によれば「權限裁判所を置く迄は、樞密院に於てこれを裁決す、其手續につきては、別に勅令の定むる所によるべきもの云々」の規定あれども、其手續に關する勅令は、今日に至るも未だ發布せられず、從つて何人が權限爭議を提起することを得るや、又如何なる時期に於て之を提起し得るやに就きては、何等の規定を存せず、一に學理によりて決するの外なきものとす、此意義の外に、官廳と官廳との間に於ける權限の衝突ある場合を稱して、權限爭議と云ふものあれども、嚴格なる意義に於ける權限爭議は、この場合を指さずして前示する所の如し。
- 英
- Dispute of competency
- 独
- Kompetenzkonflikt
- 仏
- Dispute de com-pétence
原告
(げんこく)民事、刑事又は行政訴訟に於て、裁判を求むる訴訟當事者を稱して原告、又は原告人と云ふ、原告たるには、訴訟當事者能力を有するものならざるべからず、今各場合に就き分説せんに、□一民訴上に於ける原告、元來民事訴訟は、私權保護の方法なれば、原告たるには、私權關係につき主體となるの能力あるを要す、換言すれば積極的に私權を享有し、消極的に義務を負ふの能力あるものたるを要す、然れども實際に於て、其訴訟事件につき權利を有するものたることを要せず、眞正の權利者たるや否やは、裁判の結果に於て定まるべきものにして、原告たるには、必ずしも眞正の權利者たるを必要條件となさず、唯私法上の權利を享有すべき能力者たることを要するのみ也とす、而して此私權享有は、民法に於て規定する所にして、其私權享有には、自然人と法人とによりて、其範圍を異にするが故に、分説せざるべからず、イ自然人は、生れながらにして私權享有の能力を有することは、我民法の規定する所にして、唯或る特別なる種類の權義につきては、法律に於て或る身分を有する者のみ、其權利の能力を制限するものあり、即ち身分上の權利の如きこれなり、之等の制限なき者に至つては、各人は悉く私權享有の能力を有す、故に財産上の權利の如き、自然人は皆當事者能力を有するものと斷言するを得べく、從つて訴訟上の原告たるを得べきや勿論なりとす、ロ法人は、其目的の範圍内に於てのみ權利を有し、義務を負ふ、故に其範圍内に於ては、其權義の主體たる能力を有し、從つて訴訟當事者能力を有するものとす、然れども其範圍外の權利義務に關する訴訟に於ては、當事者能力を有せず、從つて原告の地位に立ち得べからざる場合ありと知るべし、□二刑事訴訟に於ける原告、刑事訴訟法に於ける原告たるべき地位に立つものは、公訴提起の職務を有する檢事、及び附帶私訴を提起したる民事原告人也とす、刑事訴訟法上の學説として、當事者訴訟を認めざるの説による時は、刑訴に關しては、原告なるものを認められず、然れども當事者訴訟を認むる學説に從ふときは、刑事上の原告たるべきものは國家にして、檢事は、國家機關として原告の地位に立ち、公訴を提起するものと爲さるるなり、普通後説に從ふを可とす、又附帶私訴を提起したる民事原告人に關しては、民事原告人の條下を參照すべし、ハ行政裁判に於ける原告、國家の行政處分によりて、私權を侵害せられたるものと思料するときは、行政訴訟を提起するを得べきものなるが故に、斯かる場合に於ける被侵害者は、即ち行政訴訟の原告と爲り得るものなりとす、即ち明治二三年法律第一〇六號によるときは、下の事件につきて行政訴訟を提起することを得るものとす、□一海關税を除く外、租税及手數料の賦課に關する事件、□二租税滯納處分に關する事件□三營業免許の許否及取消に關する事件、□四水利、土木に關する事件、□五土地の官、民有區分の査定に關する事件これなり。
- 英
- Plaintiff
- 独
- Rechtssucher
- 仏
- Demandeur
原告人
- 英
- Plaintiff
- 独
- Rechtssucher
- 仏
- Demandeur
減債基金
(げんさいききん)國債整理基金を指すものにして、國債整理基金特別會計法により、國債の償還發行に關する費途に使用する基金を云ふ、其歳入歳出は、一般の會計と區分し、特別會計を設置するものにして、其基金に充つべき資金は、每年度一般會計より、その基金を特別會計に組入るるものとす、其一般會計より組入るべき資金中、明治三十七八年戰役に關する經費支辨の爲めに發行したる國債、及び其借換の爲に發行したる國債に關する分は、年額一億一千萬圓を下す事を得ざるものとす、國庫整理基金の運用より生ずる損益は、本特別會計の所屬として整理せらるるものとす、基金は每年度に使用せざるものは、翌年度へ繰越すものとす、政府は每年國債整理基金特別會計の歳入歳出豫算を調製し、總豫算と共に之を帝國議會に提出すべきものとす。(三九年三月法六號國債整理基金特別會計法參照)
- 英
- Sinking fund
- 独
- Schulden-tilgungsfond
- 仏
- Fonds d'amortissement
現在地
(げんざいち)人又は物が現に存在する場所を指して、其人又は物の現在地と云ふ、現在地は、其物及人の法律關係を定むるにつき最も必要なるものにして、物の現在地と稱し得る場合は、疑點を生ぜずと雖も、人の現在地と云ひ得る場合につきては、多少の議論の存する所にして、即ち其人の意志の伴ふことを必要とせざるや否やにつきて、學者間に爭あり、然れども現在地と云ふべき場合は、其人の現在地として存在する意思の伴ふを必要とするものにあらずとの説、一般に用ひらるるものの如し、故に國家強制力の適用によりて、其人の意志に反して抑留せられたる場合に於ても、尚其人の存在する場所を稱して、現在地と云ふに妨げざるものとす、彼の住所に於けるが如き條件を必要とせず、單に其場所に存在するの事實あれば、其事實のみを以て、現在地と云ひ得べきものとす。(民訴一五條一項)
檢索の利益
(けんさくのりえき)保證人が債權者の請求を受くるに當り、先づ債務者の財産につきて執行を爲し、尚足らざる所あれば、之を自己に請求すべき旨を、債權者に對抗することを得べき權利を稱して檢索の利益と云ふ、檢索の利益に關する規定は、民法の規定に依れば、債權者が主たる債務者に催告を爲したる後と雖も、保證人が主たる債務者に辨濟の資力ありて、且つ執行の容易なることを證明したるときは、債權者は先づ主たる債務者の財産につき、執行を爲すことを要するものとす、即ち保證人が檢索の利益を享有せんとするには、二の前提を必要とす、□一保證人が主たる債務者に、辨濟の資力あることを證明すること、□二保證に於て、主たる債務者に對する執行の容易なることを證明するを要することこれなり、通常の場合に於ては、債權者が主たる債務者に對し、催告を爲したるに拘らず、主たる債務者が辨濟せざるときは、保證人に於て直に履行せざるべからず、然れども前示したる條件を具備するときは、保證人に於ては、檢索の利益を以て之に對抗し、債權者に於て主たる債務者に對して、執行を爲す迄其履行を拒絶することを得るものとす、凡そ主たる債務者が催告を受けて、尚これに應ぜざるときは、強制執行を爲すも實益を收むる能はざるを以て、保證人は直に履行せざるべからず、また有資力なるも、之に對する執行が困難なるときは、債權者をして煩雜の手續を盡くしたる上、加へて辨濟を遲延するの恐れあり、故に斯くの如き場合に於ては、主たる債務者が、催告に應ぜざるの事實あれば、直に保證人をして履行せしむべきものなり、然れども主たる債務者に資力あり、且つ其財産に對して容易に執行を爲し得べき時は、直に保證人をして履行せしめず、主たる債務者の財産を盡くして、自己の債權を滿足せしむるも、別に煩雜の手續を要することなく、辨濟を甚しく遲廷せしむるの憂なし、故に保證人に於て此事實を證明せば、債權者が主たる債務者に對して、執行を爲す迄履行を拒むことを得べきものとす、此資力の有無、及び執行の容易不容易は事實問題にして、各場合に從ひ、裁判所の認むる所によりて決せざるべからず、以上に述べたる保證人の有する檢索の利益は、保證債務の必要素にあらず、唯法律が保證人を保護する爲に、一般の場合に於て此規定に從ふべきことを定めたるに過ぎず、故に保證人が保證契約を爲すに當り、豫め此檢索の利益の抗辯を爲さざることを特約するも、決して保證債務たるの性質に反するものにあらず、此特約は、保證人と債權者との間に明示せらるることあり、又保證人と債權者間に存する法律關係の性質より、當然生ずる結果なることあり、保證人が主たる債務者と連帶して、義務を負擔する場合の如き、其最も顯著なる者とす、之等の場合に於ては、保證人は檢索の利益を有せざるは勿論なりとす。(民四五三、四五四條)
縣參事會
(けんさんじくわい)縣參事會は、縣の意思機關の一種なり、今其組織權限を説明せんに、□一縣參事會の組織、縣參事會は、縣知事、縣高等官二名、及び六名の名譽職參事會員を以て組織す、縣高等官にして參事會員たるべき者は、内務大臣これを任命し、名譽職參事會員は、縣會に於て、縣會議員中より選擧するものとす、名譽職參事會員中闕員を生ずるときは、縣知事は補充員の中につきてこれを補缺す、名譽職參事會員は、縣會議員の改選每に改選するものとす、參事會は、知事を以て議長と爲し、知事故障あるときは、高等官參事會員、議長を代理するものとす、□二縣參事會の職務權限及處務規定、職務權限としては、イ縣會の權限に屬する事件にして、其委任を受けたるものを議決すること、ロ縣會の權限に屬する事件にして、臨時急施を要し、知事に於て縣會を招集するの暇なしと認むるとき、縣會に代て議決すること、ハ知事より縣會に提出する議案につき、知事に對し意見を述ぶる事、ニ縣會の議決したる範圍内に於て、財産及營造物の管理に關し、重要なる事項を議決すること、ホ縣費を以て支辨すべき工事の執行に關する規定を議決すること、ヘ縣に係る訴願、訴訟、及び和解に關する事項を議決すること、ト其他法令により縣參事會の權限に屬する事項、及び縣參事會は、名譽職參事會員中より委員を選擧し、縣に係る出納を檢査せしむることを得るものとす、縣參事會は知事之を招集し、名譽職參事會員中半數以上の請求ある場合には、相當の理由ありと認むるときに限り、縣參事會を招集するものとす、其參事會の會期は、知事之を定む、其會議は、傍聽を許さざるを原則とす、參事會は、議長又は代理者及名譽職參事會員の半數以上出席するにあらざれば、會議を開くことを得ず、議事はすべて過半數を以て決し、可否同數なるときは、議長の決する所によるものとす。(府縣制六五條乃至七四條)
- 英
- Prefectural privy council
- 独
- Präfecturausschusz
- 仏
- Conseil de la préfecture
檢事
(けんじ)檢事は、公訴を通常刑事裁判所に提起實行する國家の官職也、而して檢事は、裁判所に屬する官職にあらずして、司法行政上の官職なり、故に檢事は如何なる場合に於ても、刑事事件を裁判するの權なきものとす、被告事件は、其種類によりて、公訴を或は區裁判所、或は地方裁判所、或は大審院に提起するものとす、從つて之等の裁判所には、檢事を附置する事を要するのみならず、尚檢事の職務は、刑事手續の實行をも包含するが故に、控訴院に於ても亦檢事を必要とす、而して一個の裁判所の檢事局に數人の檢事あるは、恰も區裁判所に數人の判事あると均しく、所謂單獨制の官府にして、合議制の機關にあらず、即ち職權の主體は、常に一人の檢事也とす、□一公訴提起の職務、檢事は、公訴提起の職務を有するものにして、此職務あるが故に、搜査の職務を併せ有するものとす、檢事が各場合に於て起訴すべきものにあらざるに起訴し、又は起訴すべきものなるに起訴せざることあるは、豫め法律の規定を以て抑制することを得ざるもの也、故に法律は斯くの如き場合を慮り、救濟法を設けたり、即ち檢事が不法に豫審を求めたる場合に於ては、豫審免訴の決定ありて、之が救濟を爲し、不法に公訴を提起せざる場合には、司法事務取扱の方法に對する抗告によりて、之を救濟することを得べし、□二公訴實行の職務、檢事は公訴提起の義務を負ふのみならず、提起したる公訴に於て原告となり、之が實行を爲すの義務あり、檢事が一且提起したる公訴を取下ぐるを得ざるは、蓋し公訴實行の義務あるが爲めなりとす、檢事が豫審を求めたる場合に於て、豫審を終結せしむるには、檢事の意見を求めざるべからず、而して檢事が其意見を附するに就きて、法律は三日の期間を與へたり、故に檢事は其期間内に意見を附し、始めて豫審判事は豫審終結を爲すを得、豫審終結決定後に至りては、其訴訟の進行は、全く檢事の手中に存するものとす、假令被告事件は、豫審判事の決定によりて公判に附せらるるも、公判裁判所は直に公判を開くことを得ず、檢事は被告人に對して呼出狀を發すべきことを裁判所に求め、裁判所は此申立を待ちて、公判を開くことを得るものなり、公判開廷後に於ても、檢事は其公訴の實行を爲さざるべからず、例へば公判には檢事の立會を要し、若し檢事の立會なきときは、公判の構成を缺くを以て、訴訟手續を進行せしむる能はざるなり、又檢事は、證據調の後に辯論を爲すを要す、其他上訴の申立を爲すも亦公訴權の實行なり、□三公益の代表者としての職務、これ再審非常上告を爲すの職務なり、及び民事に關しても、檢事の立會を要すと規定せられし場合あり、即ち檢事が其職務上の義務として、民事事件に立會ひ、意見を述ぶべき場合は、婚姻事件、緣組事件、親子關係事件、相續人廢除事件、隠居事件、禁治産、準禁治産事件、夫婦事件に關する場合なりとす、其他民事の訴訟に於て、原告となり、被告となる場合もありとす、之人事訟訴手續に於て規定せらるる所なり、□四特種の職務、裁判執行を指揮する職務なり、裁判所構成法によれば、檢事は判決の適當に執行せらるることを監視することを規定し、又刑事訴訟法に於ても、刑の執行を指揮することを定むるが故に、總べて裁判の執行は、檢事の監督の下に於て行はるるものなること明なりとす。(裁構法六條、刑訴一、一六五、一六一、二一三、一七六、二二〇條參照)
- 英
- Public procurator
- 独
- Staatsanwalt
- 仏
- Procureur
檢視調書
(けんしてうしよ)死者の檢視を行ひたる檢視官が、其檢視の顚末を記載して作成する調書を檢視調書と云ふ、
- 英
- Corpse examiner's document
- 独
- Leichenschausprotokoll
- 仏
- Docu-ment de l'inspection
檢眞
(けんしん)民事訴訟に於て、私書證書の眞否につきて爭ひある場合に、當事者の申立により、裁判所に於て其眞否を裁判する手續を稱して檢眞と云ふ、私書證書の檢眞は、總べての證據方法、及び手跡、若くは印章の對照によりて、之を爲すものとす、證書の眞否を證せんとする當事者は、裁判所の定むる期間内に、手蹟もしくは印章を對照する爲めに、適當なる書類を提出するの義務あるものなり、又眞正なりと自白、又は證明したる適當の對照書類なきときは、對照の爲め、原告、もしくは被告に對し裁判所に於て、一定の語辭の手記を命ずることを得べく、裁判所は、其手蹟もしくは印章を對照したる結果に就き、自由なる心證を以て裁判を爲し、又必要なる場合に於ては、鑑定を爲さしめたる後に、檢眞を爲すべきものとす、原告もしくは被告が裁判所の定めたる期間内に、對照書類を提出せざるとき、又は語辭を手記すべき裁判所の命に對し、十分なる辯解を爲さずして之に從はざるとき、又は書樣を變じて手記したるときは、證書の眞否に就きての相手方の主張は、其他の證據を要せずして、之を眞正なりと見做すことを得るものとす。(民訴三五一條乃至三五三條)
縣社
(けんしや)神社の中にて官幣社、國幣社、鄕社にあらずして、府知事の管轄に屬するものを縣社と云ふ、縣社の神職としては、社司一人、社掌若干人を置く、社掌の負擔は、社司、及び氏子總代の議定によりて之を定む、社司は、社掌を指揮して神明に奉仕し、祭祀を掌り、庶務を管理す、社司及社掌は判任官の待遇を受く、社司社掌試驗に各格したるものにあらざれば、社司、又は社掌たることを得ざるもす、社司の試驗科目は、明治三五年内務省令第四號の定むる處とす、(二七年勅二二號府縣社、鄕社の神職に關する件參照)
- 英
- Shinto shrine under the jurisdic-tion of a prefectural government
- 独
- Shintotempel unter der Präfecturverwalt-ung
- 仏
- Châsse sous la juridiction du gouvernement de préfecture
現象
(げんしやう)現象とは、自然界、精神界に通じて現はるる一切の事物事件をいふ、即ち吾人の經驗する固體、液體、氣體、生物、無生物、物理的事件、化學的事件等の一切物、一切事より、更に吾人の心意中に生滅出沒する思想、觀念、喜怒、哀樂、注意、欲望等の出來事一切を含み、苟も吾人の經驗する限りの事象は、總べてこれを現象と稱す、古來哲學者間に、現象の本性に就きて種々の議論あれども、今日普通に行はるる現象の解釋を記せば、現象は客觀に實存する本體が、吾人の主觀即ち心裡に映ずる相なり、吾人の感覺の起原は、何等か夫を觸發する所のものが、客觀界に存在することを許さざれば、説明すること能はず(尤も吾人の感覺は、有限にして不完全なるものなれば、斯かる實在を有する本體は、到底其有の儘に之を認識するを得ざれども)、之を以て現象とは、主觀以外に存在する實體が、何等かの作用を以て主觀に觸發し、其處に現はれたる事象に過ぎずと、此説に從ふ時は、現象は實體に原因して生じ來る主觀の現はす象となる、然れどもカントの如く、之を何等實體に關係なきものと見るべからず、主觀の精神が客觀の(實體其儘といふ事能はずとも)實體の相に接して、關係的に現はれたる實像と見るべく、實體との交渉なくして現はるる事の不可能なるは勿論なり、然れどもこの説は、專ら外界現象物質現象と内界現象(心意現象)との交渉に成る現象に對しての解釋なることを注意せざるべからず。
- 英
- Phenomenon
- 独
- Phänomen; Erscheinung
- 仏
- Phénomene
原狀回復
(げんじやうくわいふく)或行爲により、事物の狀態に變狀を受けたる場合に、其行爲の取消し、又は其他の事由に基づきて、行爲後の狀態を、其行爲前の狀態に復歸せしむる事を稱して原狀回復と云ふ、例へば法律行爲の取消しによりて、双方は各相手方を原狀に復せしむるが如き場合を云ふ、而して爰に原狀回復と云ふは、必ずしも私法關係のみに限りて用ふるにあらず、公法關係、例へば行政處分等のありし場合に於ても、其處分にして取消されたるときは、原狀に回復せしめざるべからず、總べての方面に於て、原狀回復なる語は用ひられるものなり、されど必ずしも以前の狀態其儘に回復せしむることを意味するにあらず、事實上に於て、原狀の回復は到底爲すことを得ざる場合なきにあらず、之等の場合に於ては、可及的原狀に回復せしむる場合に於ても、尚原狀回復と云ふを妨げざるものなりとす。(民五四五條、民訴一七四條乃至一七七條等)
原狀回復の訴
(げんじやうくわいふくのうつたい)原狀回復の訴は、民事訴訟法第四六九條に規定する所にして、再審の訴の一種に屬す、再審の訴と云ふは、確定の終局判決によりて終了したる訴訟手續を更新し、其判決の當否を審査するの手續にして、所謂一事不再理の原則に對する例外也とす、此再審には、取消の訴と原狀回復の訴との二種ありて、何れも下級裁判所の判決を上級裁判所が、審査する手續にはあらずして、確定の終局判決を爲したる裁判所か、再び之を審査するもの也、從つて彼の上訴の場合の如く、訴訟事件を他の裁判所に移轉するの效力を生ずるものにあらず、又彼の不變期間を追究して、曾て期間を經過せざると一般ならしむる原狀回復の申立とも、其趣を異にするものなるを注意せざるべからず、而して原狀回復の訴なるものは、判決の實體に關して、不法あることを主張するものにして、次に述ぶる原因に基くことを要す、□一刑法に揭げたる職務上の義務に違背したる罪を、訴訟に關して犯したる判事が、裁判に參與したるとき、即ち判事が原狀回復を求むる事件に於て、刑法上の罪を犯したる場合を云ふ、此場合には、不利益の裁判を爲したるものと認め得べきを以てなり、□二原告、被告の法律上、代理人、訴訟代理人、相手方、其法律上代理人、若くは訴訟代理人が罰せらるべき行爲を訴訟に關して犯したるとき、即ち之等の者が、刑法上罰すべき罪を訴訟に關して犯したるときを云ふ、□三判決の憑據となりたる證書が、僞造、又は變造なりしとき、即ち證書の僞造或は變造は、相手方の所爲たると、又第三者の所爲たるとを問はず、又證書を提出したる當事者が、僞造もしくは變造なりし事を知ると否とを區別せず、□四證人、又は鑑定人が供述により、或は通事が判決の憑據となりたる通譯によりて僞證罪を犯したるとき、證人、鑑定人は、當事者の申立によるときも、職權を以て訊問したるときも區別なし、□五判決の憑據となりたる刑事上の判決が、他の確定となりたる刑事上の判決を以て、廢棄もしくは破毀せられたるとき、刑事の裁判は、民事の裁判を覊束するものにあらず、然れど民事裁判官が、自由心證に依りて刑事上の判決を引用し、裁判を爲したるとき、刑事の判決が未確定なるときは、其判決は上訴により、取消さるることあるべく、又確定せる刑事上の判決も、刑事上の再審の訴に依てり取消さるることあるべし、斯くの如き場合に於て、民事の判決は、取消されたる刑事の判決を準據としたるものなれば、その原狀回復を許すは當然なり、然れども後に爲すべき民事の判決は、刑事の新判決に覊束せらるることなきは勿論なりとす、□六原告、もしくは被告が、同一事件に關する判決にして、前に確定となりたるものを發見し、其裁判が不服を申立てられたる判決と抵觸するとき、□七相手方、もしくは第三者の所爲に依りて、前訴訟に提出することを得ざりし證書にして、原告もしくは被告の利益となるべき裁判を爲すに至らしむべきものを發見したるとき、以上に揭げたる理由に基くにあらざれば、原回狀復の訴を起すことを得ず、且つ原告もしくは被告が、自己の過失に依れるにあらずして、前訴訟手續に於て、之を主張するを得ざりしとき、特に故障、又は控訴もしくは附帶控訴に依りて、原狀回復の理由を主張すること能はざりし時に限り、提起することを得べきものとす、而して前示□一乃至□四の場合に於ては、唯之等の事實の存在を主張するの外、其行爲につき確定判決あるか、又は證據欠缺以外の理由に依りて、刑事訴訟手續の開始、もしくは實行を爲し得ざるときに限り、原狀回復の訴を許すものとす、故に裁判官が訴訟に關して、當事者の一方より收賄を爲したる事實のみにては、原狀回復の訴を爲す事を得ず、其收賄罪の判決確定するか、もしくは證據不充分以外の理由、即ち死亡時效等によりて、刑事の手續を爲し能はざる事實存在するときに限り、原狀回復の訴を許すが如し、原狀回復の訴は、一箇月の不變期間内に之を起さざるべからず、此期間に原告もしくは被告が、不服の理由を知りたる日を以て始まる、若し判決の確定前に、不服の理由を知りたるときは、判決の確定を以て始るものとす、又確定判決の日より起算して、五箇年を經過したるときは、其不服の理由あるを知ると否とを問はず、此訴を爲すを得ざるものとす。(民訴四六九條乃至四八三條參照)
- 英
- Suit of the recovery of original state
- 独
- Klage der Wieder-einsetzung in den vorigen Stand
- 仏
- Procès de recouvrir l'etat original
元首
(げんしゆ)元首とは、一國の首長の義なり、我國の如き君主國體にありては、君主は即ち元首なりとす、各國の憲法に於て、君主の元首なることを規定し、我帝國憲法第四條に於ても、天皇は國の元首なることを定めたり、然れども、此元首なる語は、單に國家活動の中心たる形容の語に過ぎずして、國法上に於ける君主の地位を明示するものにあらず、或學者は、我國に於て、此元首なる語は、國家の最高機關たることを示すものなりと説明せるものあり、要するに元首は、國家主權説に根據を有するものにして、國家は總合的單一體なり、故に國家の君主は、元首なりとの説より來れるものに過ぎざるものとす。(憲法四條)
- 英
- Head of the Empire
- 独
- Staats-oberhaupt
- 仏
- Chef de l'Empère
檢證
(けんしよう)檢證とは、裁判手續に於ける物件の實見によりて證明を援くる方法なり、而して其實見を爲すべきものは、動産たると不動産たるとを問はず、又請求の目的物たると證據物たるとを論ぜず、之を爲すことを得るものなり、即ち裁判官の檢證物其物につきて、之を檢視し、自己の五官を以て、直接に考覈を確むる手段に外ならざるなり、而して裁判所外に於て、其檢視物の所在につき、此方法を執る事あり、之を臨檢と云ふ、故に檢證は、裁判官が自ら實物につき、即ち係爭物につてき考覈を要すべき場合にあらざれば、之を爲すの必要なし、然れども檢證の目的物につき、其考覈を爲さんとするも、裁判官の智識のみにしては、未だ以て判斷し能はざる場合あり、斯くの如き場合には、正當なる判斷を爲し得、且つ其物を實見し、鑑定をなし得べき人をして、之に立合はしめ、裁判官の不足する智識を補充せしむる事を得、例へば土地の境界につき爭ある時は、實地に臨み、審査を爲すの類、又は鑑定人に補助を要すべき場合、即ち賣買の價に就き爭ある場合等に於て、審査の上鑑定人をして、評價を爲さしむるの類これなり、此檢證なる方法は、證據方法の一に屬すべきや否やに就きて議論あること、鑑定に關する議論と同一なれば、吾人は檢證も亦當事者の申立によるときは、證據方法の一に屬し、職權を以てするときは、然らずと云ふの説を正當と信ずるものなり。(民訴三五七條)
檢證物
- 英
- Things for vertification
- 独
- Sache für das Augenschein
- 仏
- Chose pous la vérification
檢證處分
(けんしようしよぶん)檢證物に關し、證據調を爲す手續を稱して檢證處分と云ふ、此檢證處分の手續は、檢證物を表示し、且つ檢證によりて證明せらるべき檢證物を申出づるによりて始まるを原則とす、唯職權を以て檢證をなす場合は例外とするのみ、若し檢證につき、特別の手續を要するときは、その證據決定を爲すを要す、殊に實地臨檢を爲す場合の如きは、證據決定を爲さざるべからず、而して其期日は、受訴裁判所に於て開くを通例とするも、檢證物の所在につきて、檢證を爲すとき、即ち臨檢を爲すときは、其場所に於て期日を開くべきものとす、尚檢證處分を爲す場合に於て、裁判官の智識のみを以て、其檢證物につき充分なる判斷を爲す能はざるときは、鑑定人を命じ、之を補助と爲すことを得べきものなり。(民訴三五八、三五九條)
- 英
- Execution of vertification
- 独
- Augenscheinverfügung
- 仏
- Exécu-tion de la vérification
檢證調書
(けんしようてふしよ)裁判手續に於て檢證を爲したる場合に、其顚末を記載して作成する文書を檢證調書と謂ふ、我訴訟法によるときは、檢證を爲す際發見したる事項は、之を調書に記載し、之を明確ならしめ、又必要なる場合に於ては、圖面を作りて、調書に添附すべきものとせり。(民訴三五九條)
- 英
- Document of vertification
- 独
- Augenscheinprotokoll
- 仏
- Documen-de vérification
減食
(げんしよく)監獄則により、囚人が獄則を犯したる場合に科する所の懲戒罰の一種にして、一回の食量を二分の一乃至三分の一に減ぜらるることを稱して、減食と云ふ、減食は、一週日以上を繼續せらるることなし、懲治人に對しても、亦右の法則によりて、減食の制裁あるものなり、但し懲治人に對しては、三日以上を繼續するを得ざるを原則とす、其何れの場合たるを問はず、減食の罰に處すべきものあるときは、當該官は醫師をして診察せしめ、身體に妨げなきを證して後に、之を行ふべきものとし、且つ處罰繼續中は醫師をして、每日之を視察せしめ、醫師に於て其身體に妨げあることを證するときは、處罰を中止すべきものとす。(監獄則四二、四三、四四條)
- 英
- Lessening food
- 独
- Speisever-minderung
- 仏
- Diminution de provision
元帥
(げんすゐ)天皇の特旨により、元帥府に列せられたる陸軍大將に賜る稱號なり。(元帥府條例一條)
- 英
- Marshal
- 独
- Feldmarschal
- 仏
- Maréchal
元帥府
(げんすゐふ)元帥府は、天皇に直隷し、天皇の軍務を補翼し奉り、軍事上に於ける國家の最高顧問たるべきものなり、明治三一年一月一九日、元帥府設置の詔勅にいはく、「朕が軍務を補翼せしむる爲め、特に元帥府を設け、陸海軍大將の中に於て、老功卓拔なる者を簡撰し、朕が軍務の顧問たらしめんとす云々」とあり。
- 英
- Gensui Office
- 独
- Gensui Amt
- 仏
- Etat-major de Gensui
元帥府條例
元帥府條例は、明治三一年一月勅令第五號を以て公布せられたる所に係り、元帥府に關する規定を爲したるものとす、元帥府に列せらるる陸海軍大將は、特に元帥の稱號を賜る、元帥府は、軍事上に於て、天皇の最高顧問たるものなり、元帥は、勅を奉じて陸海軍の檢閲を行ふことあるべく、副官として、佐尉官各一人を附屬せしめらるるものとす。
譴責
(けんせき)官吏に對する懲戒罰の一種にして、其官吏の過去の非行を責め、將來を訓戒するもの也、□一文官懲戒令の示せる所によれば、官吏が職務上の義務に違背し、又は職務を怠り、及び職務の内外を問はず、官職上の威嚴、又は信用を失ふべき所爲ありたるときは、懲戒罰を受くべきものにして、懲戒には免官、減俸、譴責の三種別あり、而して譴責は、其所屬長官に依りて行はるるものとす、□二判事懲戒法に依るときは、判事にして職務上の義務に違背し、又は職務を怠りたるとき、及び官職上の威嚴、又は信用を失ふべき所爲ありたるときは、懲戒に附せらるるものにして、其懲罰は、譴責を以て最も輕きものとす、此譴責は、判事懲戒裁判所の定むる所によりて行はるるものなり、□三行政裁判所長官評定官懲戒令による譴責も、前上の場合と殆ど同樣なりとす。(文官懲戒令、判事懲戒法、會計檢査官懲戒法等參照)
- 英
- Reprimand
- 独
- Verweis
- 仏
- Réprimande
原則
(げんそく)如何なるものを以て原則とするやに關しては、其意義を一槪に説明することを得ず、又學者間の用例も區々なり、然れども、□一數多の事物に通ずべき法則を原則と云ひ、又□二或る法律の主たる本源の法則を指して、原則と云ふが如し。
- 英
- Principle
- 独
- Grundursache
- 仏
- Principes
檢束
(けんそく)人の自由を束〓することを檢束と云ふ、例へば法律が、臣民に對して檢束の力を有すと云へば、法律が臣民の自由意志を束縛して、其行爲に對して一定の準規となる力ある意なるが如し。(行政執行法一條等參照)
- 英
- Constraint
- 独
- Beschränkung
- 仏
- Contrainte
縣道
(けんだう)明治九年六月大政官逹第六〇號によれば、通路等級を別ちて、國道、縣道及里道の三種とせらる、縣道を別ちて更に三等とし、一等縣道は各縣を接續し、及び各鎭臺より各分營に逹するもの、二等縣道は各府縣本廳より其支廳に逹するもの、三等縣道は著名の區より都府に逹し、或は其區に往還すべき便宜の開港等に逹するものとすと定められたり、而して縣道は、其道幅四間乃至五間を保たしむべく、勾配は二十五分の一、即ち延長一間につき二寸四分内外とす。
- 英
- Prefectural road
- 独
- Bezirksweg
- 仏
- Rue de la préfecture
見地
(けんち)物質界精神界を問はず、現象の事相は實際多樣にして、吾人の能力には、一見其眞相を看破し、判斷する識量なきが故に、其事相を識知し、比較し、推考し、評價せんが爲めには、先づこれに對する自己の位置を定めざるべからず、此位置を見地、若くは觀察點と稱す、通常同一問題に對しても、各人の見地を異にする事によりて、各異る解釋意見を呈出するを見る、例へば農事に對するにも、工業家は工業上の見地より、氣象學者は氣象上の見地より、經濟學者は經濟學上の見地より、政治家は政治上の見地より、農家は農家自身の見地より、各自趣を異にする見解を下すが如し。
- 英
- Standpoint
- 独
- Standpunkt
- 仏
- Point du vue
縣知事
(けんちじ)縣知事は、縣なる國の行政區劃を以て其管轄區域とし、中央の行政を行ふ所の分地制に依る獨任制の官廳なり、知事は内務大臣の指揮監督を受け、各省の事務に就きては、各省大臣の指揮監督を受けて法律命令を執行し、部内の行政事務を管理し、其行政事務に就き、其職權、若くは特別の委任に依りて、縣令を發することを得るものとす、此縣會には、十圓以内の罰金、拘留以下の自由刑を科することを得、又非常急變の場合、其他救護の爲に兵力を要する時は、師團長、又は旅團長に移牒して出兵を請求するの權を有す、其下級官廳たる郡長、又は島司の命令、處分にして、法規に違ひ、公益を害し、若くは職權を犯すものありと認めたるときは、その命令處分を取消し、又は停止することを得るの職權を有す、なほ此他知事が、法令の結果に依りて有する所の職權は、甚多し、而して知事は、各省大臣の補助機關として行動すると同時に、又外部人民に對して命令權を行使するが故に、一個の官廳たることは疑なき所なり、此官廳の行ふ命令及び處分は、其種類も亦甚だ多く、一々之を枚擧することを得ず、或は警察規則あり、或は公の營造物の規則あり、又或は法令の執行に關する規則あり、知事にして事故ある時は、書記官は當然其職務を代理し、書記官事故ある時は、内務大臣は縣高等官の一人に命じて、知事の職務を代理せしむるものとす。
- 英
- Prefectural governor
- 独
- Be-zirksvorsteher, Präfekt
- 仏
- Préfêt
建築物警察
(けんちくぶつけいさつ)家屋其他建築物の構造に關して行はるる警察行政を稱して建築物警察と云ふ、例へば石油取締規則に於て、石油營業者が一定の石油を貯藏する場所、建物及精製所の構造法は、總べて管轄官廳(東京府にありては、警視廳)の許可を受けざるべからざるが如き、又電氣事業につき、其建築物に關する制限の如き場合は其一例なりとす。
- 英
- Police for buildings
- 独
- Gebäudepolizei
- 仏
- Police des établisse-ments
檢定
(けんてい)或る事項に關し、國家公力の證明を以て檢査確定をすることを檢定と云ふ、度量衡器の檢定、教科用書の檢定、教員資格檢定等は其主要なる場合なりとす。
- 英
- Official sanction
- 独
- officielle Sank-tion
- 仏
- Sanction officielle
限定承認
(げんていしようにん)限定承認とは、相續人が相續によりて得たる財産の限度に於てのみ、被相續人の債務、及び遺贈を辨濟すべき事を留保して爲す相續を云ひ、其相續人を稱して限定承認者と云ふ、限定承認に反對するものは、單純承認にして、この場合には、相續人は被相續人の代表者となりて、兩者の財産は混合を來たし、無限に前人の權利義務を承繼することとなり、前者の資産にして、借方が非常に貸方よりも超過せるときは、破産の如き結果を受けざるを得ざるの慮あり、故に法律は、この危險を免れしむると同時に、債權者をして相當の辨濟を得しむる爲めに、限定承認なる制度を認めたるものとす、尤も一旦單純承認を爲したる後は、限定承認を爲すを得ざるものなり、今之に關する規定の大要を説示すれば、□一相續人の受くべき利益、限定承認者は、相續財産の限度に於て、被相續人の債務、及び遺贈を辨濟せざるべからずと雖も、若し其辨濟を完了したる結果、なほ相續財産に剩餘あるときは、固より相續人の所得に歸するものとす、而して相續人が被相續人に對して有せし權利、及び財務も消滅することなし、故に限定承認者に對しては、混同の規定を適用せず、□二限定承認の方式、限定承認は利害關係の及ぶ所大なるを以て、嚴格なる方式に依るべきものとせられたり、即ち先づ限定承認を爲す旨を裁判所に申告することを必要とす、裁判所外に於て、限定承認の意思を表示するも、何等の效なし、此管轄裁判所は、相續開始地の區裁判所なりとす、而して限定承認の申立書には、イ申立人の氏名、住所、ハ代理人によりて申立を爲すときは、其氏名、住所、ハ年月日、ニ裁判所の表示、ホ被相續人の氏名、及び最後の住所、ヘ相續の限定承認を爲す旨の六事項を記載することを要し、此申立書に、財産目錄を調製して添付する事を要するなり、即ち相續財産を明にし、相續債權者、及び受遺者の受くべき財産の限度を、一目にして明瞭ならしむる目的に出づるものなり、此財産目錄を作成するには、正確にして完全ならざるべからず、若し不正の點あるときは、限定承認の意思表示は無效とせられ、單純承認者と見做さるる場合あるものとす、而して限定承認を爲すべき時期は、相續人が自己の爲めに相續の開始ありたることを知りたる時より、二ケ月以内に其申立を爲す事を要す、但し二月の期間は、利害關係人又は檢事の請求によりて、伸長することを得るものとす、□三限定承認者の管理義務、限定承認の場合に於ける相續財産は、以て相續債權者、及び受遺者の辨濟に充てざるべからざるものなり、故に此場合の相續財産は、限定承認者に歸屬すと雖も、一物一件をも減少滅失せしむるを許さず、唯限定承認者之を管理するの義務あるものとす、即ち自己の固有財産に於けると同一の注意を以て、管理を爲し、若し相續債權者、若くは受遺者の請求あるときは、何時にても相續財産の狀況を報告し、又精算の後は、遲滯なく其顚末を報告せざるべからず、相續財産の管理につきて、受取りたる金錢其他の物、及び其收取したる果實あるときは、相續債權者及受遺者に分配せざるべからず、又相續財産の管理に必要と認むべき費用を出したるときは、相續財産中より其費用、及び支出の日以後に於ける利息を控除することを得べく、又其管理に必要と認むべき債務を負擔したるときは、相續財産中より辨濟を求むることを得べきものなり、□四限定承認の公告、及び催告義務、限定承認者は、相續財産を以て被相續人の義務を其性質に從ひ、公平に辨濟するの義務あるものとす、故に相續債權者及受遺者に對して、次に述ぶる如き義務あるものとす、即ち限定承認の申立を爲したる後五日内に、一切の相續債權者、及び受遺者に對して公告を爲さざるべからず、而して其公告には、限定承認を爲したる旨、及び二箇月を下らざる期間を定め、其期間内に請求の申出でを爲すべきこと、權利者にして、其期間に申出でを爲さざるときは、其債權又は遺贈は、辨濟より除斥せらるることを附記せざるべからず、尚限定承認者が知れる債權者、及び受遺者には、格別に其權利を申出ずべきことを通知するを要す、故に公告によりて請求の申出でを爲さざるも、限定承認者自ら帳簿其他の方法に依り知り得べき者に對しては、其辨濟配當より除斥する事を得ざるものなり、更に其催告を爲したるに拘らず、正當の期間内に申出でなきときに限り、これを除斥するを得るものとす、以上の公告及催告の義務は、限定承認者に於て、必ず盡さざるべからず、若し右の公告、又は催告を怠りて、債權者、或は受遺者に損害を蒙むらしめたるときは、限定承認者は之を賠償するの責に任ず、□五辨濟の義務、限定承認者は相續財産を以て、被相續人の債權者及受遺者に辨濟を爲さざるべからざるは論を俟たず、而して其辨濟は成るべく公平に爲す事を要するが故に、請求申出の公告期間後に於て爲すべきものとす、公告期間前と雖も、辨濟を爲し得ざるにあらざるも、若し其辨濟の結果殘餘の相續財産を以て、他の債權、又は遺贈を辨濟すること能はざるときは、相續人は、自己の財産を以て、償還を爲さざるべからず、故に限定承認者は、公告の期間滿了前は一切の請求額を詳にする能はざるを以て、相續債權者、及び受遺者に對して、辨濟を拒むことを得るものとす、而して公告期間滿了したるときは、次の順序によりて、辨濟を爲すことを要す、イ優先權ある債權、即ち優先權ある債權に對しては、その價格に限り、他の債權者、又は受遺者に先立ちて、辨濟せざるべからず、又之等の權利が、同一の財産につきて競合するときは、民法總則の規定に依りて、其先後を定むべきものとす、ロ普通債權、前示の優先權の存する財産の價格につきては、優先權者先づ辨濟を受くべしと雖も、普通の債權者は公告の期間内に申出でたる者、及び其他限定承認者に知れたるものを集め、其割合に應じて辨濟を爲すべし、ハ遺贈、普通債權の辨濟を終了し、相續財産に尚剩餘あるときは、受遺者に辨濟を爲すべし、受遺者たる以上は、特別相續權を有するものも亦同樣なりとす、ニ公告期間内に申出でざりし債權者受遺者にして、限定承認者に知れざる者の權利、前に述べたるが如く、請求申出の公告には、期間内に申出を爲さざりしときは、辨濟を爲さざる旨を附記するを以て、期間後に申出でたる債權者、及び受遺者にして、限定承認者の知らざりしものには、辨濟を爲すの要なし、然れども期間後に申出でたる者の權利と雖も、全くこれを無視するを得ず、其權利は、正當の原因を以て發生したるものなれば、權利者が、期間を失して申出でを爲したればとて、直に其效力を全滅せしむべきものにあらず、故に之等の權利者に對しては、公告の效力を害せざる限度に於て、辨濟せしむべきものとす、即ち期間内に申出でたるもの、及び限定承認者の知りたるものを辨濟し盡し、尚相續財産に殘餘あるときは、之を以て辨濟すべきものとす、以上は、辨濟を爲すにつきての先後の順序なりとす、而して限定承認者が、故意若くは過失によりて以上の順序を遵守せず、以て權利者に損害を生ぜしめたるときは、其損害を賠償せざるべからず、又情を知りて、不當に辨濟を受けたる債權者、又は受遺者は、他の債權者に對して、賠償の義務あるものとす、何となれば、故意もしくは過失によりて、他人の權利を侵害したるものは、不法行爲の原則によるべきものなればなり、□六相續財産の競賣、相續債權者、及び受遺者の債權にして、相續財産中の或る特定の物件を目的とするものなるときは、其物を引渡して辨濟を了るべし、然れども債權者の請求が金錢にして、相續財産が物件なるときは、限定承認者は、其辨濟を爲すに相續財産を賣却して、其代價を以て之に充つるの必要を生ずべし、而して相續權利者に對し、其辨濟配當を公平に爲さざるべかざるを以て、相續財産を賣却するには、競賣法の規定によるを要す、然らざれば種々の弊害を生じ、權利者の權利を保護すること能はざるに至るべし、相續財産中祖先傳來の寳物、系圖等相續人に於て保存せんと欲するものあらん、斯くの如き物までを、必ず賣却せざるべからずとするは、相續人の正當なる希望を害するものと云はざるべからず、然かも債權者の權利は、之を害することを得ざるが故に、此場合には、限定承認者は、裁判所に於て選任したる鑑定人の評價に從ひ、相續財産の全部、又は一部の價格を辨濟して、其競賣を止めしむることを得るものとす、以上相續財産の競賣は、競賣法の規定により、鑑定は裁判所の命ずる鑑定人によるが故に、不公平の事なきなり、然れども相續債權者、及び受遺者は之によりて、大に利害の影響を受くるものなれば、自ら之に參加して、監督せんと欲することあるべし、此希望は固より正當なるを以て、法律は之を許すも、其費用は、債權者、又は受遺者が自己の利益の爲めに參加するものなれば、自ら支辨することを要するものとせられたり、而して此參加權を認めたる以上は、其參加の請求あるに拘らず、競賣又は鑑定を遂行せるときは、之を以て參加を請求せる債權者、及び受遺者に對抗することを得ざらしむるは、素より當然なりと云ふべし。(民一〇二五條乃至一〇三七條、非訟手續一〇四、一〇六條參照)
- 英
- Limited recognition
- 独
- beschränkte Genehmigung
- 仏
- Recon-naissance limitée
限定承認者
- 英
- Limited recognisee
- 独
- beschränkter Genehmiger
- 仏
- Recon-naissant limité
檢認
(けんにん)檢認は、法律上遺言執行の件に關し用ふる語にして、公正證書による遺言の場合を除き、其他の遺言書は、相續開始を知りたるとき、保管者は遲滯なく其遺言書を裁判所に提出して、檢査認證を請求することを要するものとす、此場合を指して遺言の檢認と云ふなり、遺言書の保管者ある場合は、其保管者より之を請求し、若し保管者なきときは、相續人に於て遺言書を發見したるとき、直に檢認の請求を爲すべきものとす、公正證書に係る遺言は、檢認を爲すを要せず、自筆證書、秘密證書、及び特別方式による遺言は、總べて裁判所の檢認を經ざるべからず、而して遺言書の正確を保證するには、此檢認を以て足れりとせず、又遺言書に封印ある時は、裁判所に於て相續人、又は其代理人の立會を以てするにあらざれば、之を開封することを得ず、而して開封の際此手續を要するは、獨り秘密證書のみに限らず、其他の遺言書と雖も、封印あるときは必ず裁判所に於て、立會人の面前にて開對することを要するなり、以上の遺言書の保管者、又は相續人が之を裁判所に提出することを怠り、其檢認を經ずして遺言を執行したる場合には、二百圓以下の科料に處せらるるものとす。(民一〇一六、一〇一七條)
- 英
- Certification
- 独
- Certifikat
- 仏
- Certificat
兼任國
(けんにんこく)或る一國に駐在する外交官が、其本職外に他國に駐在すべき職務を兼任する場合に、此他國を其外交官につき兼任國と云ふなり。
檢認調書
(けんにんてうしよ)遣言執行の準備手續として、遣言執行者が、其遣言書の檢認を求めたる場合に、裁判所は、其遺言書の檢認に關して、凡べての事實を調査するものにして、之に關する一切の顚末及結果を記載して作成する調書を檢認調書と云ふ、非訟事件手續法の規定する所によれば、檢認調書には、次の事項を記載して、判事、書記、及び立會人之に署名捺印することを要するものとす、即ち、□一提出者の氏名、及び住所、□二提出開封、及び檢認の年月日、□三立會人の氏名、住所、□四訊問したる證人、鑑定人、相續人其他の利害關係人の氏名、住所、及び其陳述、□五事實調査の結果の五事項なりとす。(非訟手續一一四條)
- 英
- Document of certification
- 独
- Bestätigungsprotokoll
- 仏
- Document de vérification
權能
(けんのう)權利享有の能力、即ち權利能力を指して權能と云ふ、彼の權利と云ふと其意義相同じからず、權能は、權利享有の適格を稱するものなることに注意せざるべからず、例へば人の權利能力と云へば、權利享有を爲し得べき適格者たることを稱する場合の如し。
- 英
- Competence
- 独
- Dürfen
- 仏
- Compétence
憲法
(けんぱふ)憲法とは、一國の組織、及び國權の作用を規定する法、即ち國家公法上の大原則を規定する法を指稱するものにして、我國に於ては、古へ聖德太子の憲法十七箇條なるものありと雖も、之は道德の教訓を交へたるものにて、斯くの如き憲法とは、稍其意義を異にするもの也、然れども今日一般に憲法と稱するときは、單に一國の根本法と云ふ意義にあらずして、立憲政治國、又は議院政治國の根本法と云ふことなり、若し單に一國の根本法は憲法なりと云へば、國として憲法を有せざる所なく、又國として憲法國たらざる所なしと雖も、今日憲法國と云へば、立憲政治國たると、議院政治國たるとを問はず、總べて民選議會を有する國を云ふものにして、憲法とは、即ち此諸國の組織作用を定めたる根本法を云ふものなり、彼の佛國の人權宣言第十六條に、權等の分立確定せられざる社會は、憲法を有するものにあらずと云へるは、即ち之を云ふなり、而してこの意義に於ける憲法は、民選議會を有する國の根本法なりと云へば簡明なれども、其根本法の如何なる範圍までが憲法なりやに至りては、學説一致せず、今其重なるものを揭げんに、第一説によれば、憲法は國家の組織を規定する法なりと、之はクナイスト、シュツェ氏等の唱ふる所なれども、此説によるときは、憲法は獨り國家組織の事のみを規定し、國家の作用は除外せらるることとなり、其範圍狹きに失するの嫌なきにあらず、故にこの説は採用すべからず、第二説によれば、憲法は國家の直接機關、即ち君主、及び議會の權限を定めたる法なりと云ふ、之はエリネック氏一派の唱ふる所にして、我國の學者中又之に賛成するものなきにあらざるも、此説は君主を以て國家の機關となす説を前提とするものなれば、一般に通ずる定義としては肯認すべからざる也、第三説によれば、憲法は國家の要素、及び統治者自ら行ふ統治作用を規定する法也と、之はホルニハック氏の唱ふる所にして、此説は國家の統治權の主體たることを前提と爲すものなるにより、之を採用する事を得ざるのみならず、統治者自ら行はずして、他の機關をして行はしむる作用、例へば司法權の行使の如きも、此説によれば憲法の範圍外と爲り、此點に於て、其當を得たるものと云ふ事を得ず、吾人は右の諸説を參酌して、憲法とは統治權の所在、及び其行動を定め、且つ立憲國に缺くべからざる統治機關の權限を規定したる法を云ふと定義するを正當と信ず、我帝國憲法は、明治二二年二月一一日を以て發布せられたることは、皆人の知る所にして、其憲法は獨逸諸邦の憲法、殊に普漏西國の憲法を參照して制定せられたるものとす、憲法制定に至る迄の過程と、我憲法の結果とを略述せんに、明治元年三月一四日五箇條の誓文を發せられ、其一に「廣く會議を起し萬機公論に決すべし」とあるは、これ今日立憲政體に至るの萌芽を爲したるものなり、次いで明治元年四月立憲制度調査の爲め、東京に議事取調局を置かれ、明治二年變更せられて制度寮となりしも、其調査を繼續したり、明治七年民選議院設立の議起るに及び、更に憲法取調委員を置き以て、各國憲法の取調べを爲さしめしが、其結果は明治八年四月十四日の勅諚として現はれ、元老院、及び大審院の設置と爲りたり、このことたる我國に於ける立法權と、司法權とを特に分たんとする始にして、以後法律の名を以て發布せられたるものは、必ず元老院の議決を經ざるべからずと定め、又大審院の設置によりて、民刑事の裁判は、特設の司法機關によりて行はるるものと爲したり、これ今日の立憲政體の基礎を造りたるものと云ふを得べし、其後明治一三年國會開設の建白頻々として提出せられ、爲めに明治一四年國會開設の詔勅下り、歐洲各國の憲法取調べの爲め、伊藤參議を歐洲に派遣せられたり、伊藤氏歸朝の後、制度取調局設置せられ、該局は專ら立憲制度準備調査を爲せしが、此調査の一部の結果は、明治一八年一二月の制度改革となり、内閣なるもの始めて組織せられたり、次いで明治二一年樞密院を置き、憲法の草案を其議に附し、十分審議の上、翌年紀元節に帝國憲法として發布せらるるに至れるものなりとす。
- 英
- Constitution
- 独
- Verfassungsrecht
- 仏
- Constitution
憲法上の大權
(けんぱふじやうのたいけん)憲法上の大權とは、憲法上天皇の親裁する政務の範圍にして、憲法上統治機關に委任せられざるものを云ふ、憲法は、一定の事項はこれを統治機關の權限に附與し、或部分は、天皇親裁して行はせ賜ふことを明言す、大權事項とは、即ち天皇親裁の事項にして、天皇に專屬し、他の機關をして關與せしめざるを憲法上の要件と爲すものを云ふなり、歐洲諸國に於ては、君主は統治の機關にして、其權限は憲法に由り、特に附與せられたるものとなし、之を大權と稱せずして、君主の特權と云ふを例とす、然れども我帝國の君主は、皇統連綿古來より握持し給ふ權力を憲法を以て明定したるに過ぎずして、大權と稱するは、憲法によりて附與せられたる權限にあらず、君主固有の大權なり、之を以て特權と云はずして特に大權と云ふ所以なり、故を以て憲法上の大權なるものは、憲法によりて發生し、若し憲法なくんば、統治權の全體は大權にして、君主之を專制し、一切の萬機は天皇自由に處斷せらるべき所なりき、されど憲法は、一定の事項を特に大權として明言し、其結果君主親裁の事項と、他の機關に司掌せしむる事項とを明劃し、大權事項は、他の機關の侵略を許さず、又他の機關の容喙を許さざるを其要件とせられたり、其事項の大要は主として、憲法第一章に規定するものにして、次に述ぶるが如し、□一法律の裁可、公布、執行、□二帝國議會の召集、開會、停會、解散、□三緊急命令、執行命令、行政命令、□四官制、文武官の任免及俸給、□五陸海軍の統帥、□六陸海軍の編制、□七宣戰、媾和條約締結、□八戒嚴の宣告、□九榮典の授與、□十大赦、特赦、減刑及復權、十一皇室典範の改定等に關するものなりとす、而して爰に注意すべきは、右に列擧せる君主親裁の事項と雖も、事實上君主悉く親ら其政務を執行せらるるの意味にあらず、政府は大權執行の任に當りて事實的行爲を爲す、之我大權作用の或る部面に類應する行爲を、歐洲の學者が政府行爲と稱する所以なり、所謂國務大臣の輔弼なるものは、即ち大權の行動をして、圓滿に執行することに外ならず、然れども輔弼あるが爲めに、天皇親裁にあらずと誤解せざるを要す、輔弼は、意見を奉りて、君主の聰明を啓くにあり、君主と大臣とが合意約束を爲して、大權を行ふにあらず、大臣は、君主の命令を拒む權なく、君主も又大臣の同意を求むるにあらず、故に大權は、事實上に於て輔弼によると雖も、尚親裁たるを失はざる所以なり。(憲法四條乃至一七條)
- 英
- Right of sovereignty on constitution
- 独
- verfassungsmässiges Kronrecht
- 仏
- Droit de souveraineté dans le droit constitutionel
憲法上の統治機關
(けんぱふじやうのとうちきくわん)國家統治の機關は、憲法によりて設定せらるるものあり、法律、又は命令によりて設定せらるるものあり、前者を稱して憲法上の統治機關と云ふ、憲法上の統治機關なるものは、憲法によりて直接に設定せらるるものなるが故に、憲法の變更あるにあらざれば、廢止變更する事を得ず、其職權の範圍も、亦憲法によりて規定せらるるものとす、憲法上の統治機關は帝國議會、政府(國務大臣及樞密顧問を含む)及び裁判所の三とす、□一帝國議會は、天皇統治權の行使に參與する憲法上の直接機關の一種也、議會の組織は、人民の選擧によるも、其權限は人民より委任せられず、人民の選擧を行ふは、自己の代人を選任する事にあらずして、國家の機關を組織する爲めに、公の職務を行ふもの也、故に議員と選擧人との間、人民と議會との間には、法律上何等の關係あるものにあらず、政治上の觀念に於ては、國會は國民を代表して、國民の權利を行ふ機關なりと云ふを得れども、法律の上に於ては、直に此説を採用すべきにあらず、臣民は選擧權を有すと雖も、選擧によりて組織せられたる議會其ものは、國家統治の機關にして、臣民の機關にあらざればなり、次に議會が天皇の統治權の行使に參與するの機關なりと云ふの意は、政府、又は裁判所は、國家を代表して命令權を行使するを以て其職司とすれども、議會は、國家の内部に於て意思を表示するに止まり、外部人民に對して直接に命令、又は處分を爲すことなく、議會は單に天皇立法の手續に參異すれども、之を行使するの機關にあらずして、直接に施政に關與せざるの意なりとす、又憲法上の機關なりと云ふは、憲法によりて設定せられ、憲法の變更あるにあらざれば、之を廢止する事を得ず、其權限は、憲法に依りて制限せられ、天皇が立法權を行使するには、必ず議會の協賛を要するを憲法上の要件と爲すものなるが故なり、□二政府とは、憲法上の大權を輔弼し、執行する統治機關にして、國務大臣及樞密顧問を云ふ憲法上の大權は、天皇の親裁に屬す、然れども總般の政務は、天皇自ら之を行ふことを得ず、政府は天皇の大權を行使するにつき、これを輔弼するの機關として組織せらる、大權は天皇に專屬して、臣民に對し、政府は、大權の發動流出する溝渠たるのみ、これを執行するは、其大權の行使に參與するにあらず、之前示せる議會の立法權に對する地位と異る所なり、而してこれを憲法上の統治機關と云ふは、憲法によりて直接に設定せられ、大權の行動は必ず政府を經由すべきことを其必要條件と爲すを以てなり、これ行政官府が天皇の官制權によりて設定せられ、大權によりて權限を附與せらるるが如きものと、全く異る要點なりとす、□三裁判所とは、天皇の名に於て司法權を行ふ憲法上の機關なり、天皇の名に於て行ふと云ふは、司法權は固より、統治權の一部にして、故に君主に歸することを明かにすると同時に、君主が大權として自ら行ふにあらずして、之を行はしむることを意味するなり、憲法上の機關なりと云ふは、司法權を行使するには、必ず裁判所を經由すべきことを要件とし、憲法を變更するにあらざれば、裁判所を廢止すること能はざるを以てなり、而して茲に司法權と云ふは、民事、刑事の審判を指すものなり。(憲法三三條乃至六一條參照)
- 英
- Organs of exercising the right of sovereignty
- 独
- verfass-ungsmäszige Regierungsorgane
- 仏
- Or-gane d'exécuter le droit de souveraineté dans le droit constitutionel
憲法上の立法事項
(けんぱふじやうのりつぱふじこう)憲法の規定に基き、必ず帝國議會の協贊を經たる法律を以て、規定することを要する政務の範圍を憲法上の立法事項と云ふ、如何なる事項につきて法律を以て規定すべきや、又は如何なる事項は、法律を以て規定し得べきや、歐洲諸國の憲法は、この點につきて原則を揭げて其主義を明かにす、例へば人の自由、權利、財産に關することは、細大となく法律を以て定むべしと云ふが如き、原則主義を揭ぐるものなり、或は一定の事項に限り、其以外に於て法律を以てするを許さざる限定主義のものもあり、我帝國憲法は、列擧主義に則り、一定の事項は、之を法律の事項として條文に列擧し、此事項につきては、必ず法律の規定に待つべきことを憲法上の要件となし、此事項以外のものは、法律命令何れによるも、立法上の政略に任じたり、之盖し立法は、社會の變遷に伴ひて變動すべぎものなるが故に、憲法上豫め列擧せんとするは、事實到底期し得べからざると同時に、或る種の事項につきては、特に之を尊重し、其之に制限を加ふるにつき、特に愼肅の態度を執らしめたる所以に外ならず、從つて我憲法上に於ては、法律も命令も、共に人の自由權利に關する規定を設くる事を得ると同時に、一方に於ては、憲法上必ず法律を要する事項あり、之即ち憲法上の立法事項と稱すべきものにして、主として人民の自由に關するものなりとす、其主要なるものは、□一住所の自由に關する件、□二信書の秘密に關する件、□三財産權の自由に關する件、□四言論出版及集會結社の自由に關する件等は主要なるものとす。(憲法二三條以下參照)
- 英
- Articles of legisla-tion in constitution
- 独
- verfassungs-mäszige Gesetzgebungsgegenstände
- 仏
- Article de la régislation dans le droit constitutionel
元物
(げんぶつ)或る物の利用によりて果實を生じたる場合に、其源たる物を指して元物と云ふなり、例へば利息を生じた場合に、其源たる元金は、利子に對して之を元物と云ひ、又田地より小作米を生じたるときは、其源たる田地を小作米に對して、元物と云ふ場合の如し。(民八九條)
- 英
- Natural fruit
- 独
- Naturfrucht
- 仏
- Fruit naturel
兼補
(けんぽ)職務ある官吏が、兼ねて他の職務に補せらるるを兼補と云ふなり、兼任と云ふと同意義とす。
原本
(げんぽん)原本と云ふは、其基礎たる書面、即ち原書を云ふ、例へば訴訟記錄に編入したる裁判上の調書の如き、戸籍吏の保管に屬する戸籍簿の如きは其例なりとす。(民訴三四九條一項及二項)
- 英
- Original document
- 独
- Urschrift
- 仏
- Document Originel
元本
(げんぽん)元本とは、繼續的收入を生ずべき淵源たる物、又は權利を汎く稱するの語なり、例へば貸金の元金、貸家、貸地、公債、株券等は其例なりとす。(民一二條)
兼務
(けんむ)或る人が其本務として從事する職務の外に、他の職務に兼任就職するを兼務と云ふ。
現務
(げんむ)現に繼續して執行しつつある事務を稱して現務と云ふ、例へば官吏が、現に執行中に屬する事務の如き、又法人解散の場合に於ける清算人の職務として、現務の結了と云へば、現に繼續して、法人に屬する事務の全般を指稱するが如き其適例なり。(民七八條一號)
- 英
- Present business
- 独
- gegenwär-tiges Geschäft
- 仏
- Affaires present
券面額
(けんめんがく)有價證券の券面に記載する金錢、其他の物の量額を稱して券面額と云ふ、例へば公債證書、株券、債券等の券面に記載せられたる金額の如きは其券面額なり。
- 英
- Face value
- 独
- Nennwerth
- 仏
- Valeur
權利
(けんり)權利とは、一の人格者が、他の一の人格者、又は他の總べての人格者に對して、自己の利益の爲に、自己の意思を主張し得べく法によりて認められたる所の力なりとす、之を分析して説明すれば、□一權利は、意思を主張し得べき力なり、權利は意思の存在を以て其第一の要素とす、凡そ法律は、人類が自由意思を有することを以て前提とす、意思を有する者の間にあらざれば、法律は存在すること能はず、法は、人類の自由意思を規律して、この範圍に於ける意思の力は、法律上正當に他人に對して主張し得べき事を認む、法律上正當に主張し得べきものと認められたる意思の力は、即ち權利なり、此意額が權利の要素なることは、へーゲル氏以來一般の通説にして、又爭ふべからざる眞理なりとす、然るに近時に至りて、學者のこれに對する批難を試むるもの少なからずと雖も、之等の批難は、一として何れも皆意思説の根據を動かすに足らざるなり、權利は、意思を主張するの力なりとする説に對する最も有力なる批難は、この説によれば、意思能力なき者の權利は、これを説明すること能はずとするにあり、曰く若し意思を以て權利の要素なりとせば、法人又は無能力者は、自ら意思の力を有せざるが故に、權利の主體たる能はざるに至るべしと、然れどもこの批難は、法學上の觀念と、物質上の物理的觀念とを混同するの誤に出でしものとす、權利が意思を以て要素とすと云ふは、必ずしも物質上心理上の意志を意味するにあらず、法律上の意志を云ふなり、所謂法律上の意志とは、法律が認めて以て意志の表現となすものを謂ふなり、法が認めて意思と爲すは、素より心理上の意思を基礎とすれども、必ずしも之と相一致するものにあらず、恰も法律上の觀念に於ける人とは、必ずしも生物學上の人と同じからざると一般、法律上の觀念に於ける意思は、必ずしも心理學上の觀念の意思と同一にあらず、法人、又は無能力は、心理上の意思を有せずと雖も、心理上の意思なきものは、法は意思あるものにして依りて之を代表することを認む、心理上より謂はば代表者の意思は、常に代表者の意思にして、被代表者の意思にあらず、然れども法律は、之を以て被代表者の意思なりと認むるにあり、これ法人、又は無能力者には、心理上の意思能力なきも、法律上に於ては意思能力ある所以なり、法人の機關の意思は、法人の意思にして、未成年者の意思を代表する後見人の意思は、未成年者其者の意思なるが如きこれなり、斯く權利は意思の力なりと謂ふの説を批難して、之によりて意思能力なきものの權利を、説明すること能はずとする一派の學説は、權利の本質を以て利益となし、利益の歸屬する所、即ち權利の主體なり、必ずしも權利主體自ら意思を主張する力を有することを要せず、意思の力は、他の力に屬するも、其意思によりて主張せらるべき利益を有するときは、權利主體たるを妨げずと云ふにあり、然れども吾人の信ずる所によれば、意思の主體と利益の主體とは、斯くの如く分離する事を得るものにあらず、利益は權利の目的也、意思は其目的を逹する爲めの手段也、目的と手段とは、必ず相伴はざるべからず、目的ある所、又必ず其目的を逹すべき手段なかるべからず、手段ある所、又必ず之によりて逹せらるべき目的なからざるべからざればなり、利益のみを與へられ、而して之を逹すべき意思の力を有せず、意思の力のみを有して、其目的たる利益を有せざることは、實際に不可能なるもの也とす、上説の如く、權利は、意思を以て要素と爲すと雖も、意思其者が即ち權利にあらず、權利は、意思を主張し得る力なり、力とは、或る結果を惹起し得べき原因たる狀態を云ふ、此狀態が權利の内容となるなり、意思は、權利を逹するの手段にして、權利其ものにあらず、例へば權利とは、債務の辨濟を請求するの意思を云ふにあらず、之を請求し得べき可能を云ふ也、可能を遂行する意思の力は、之即ち債權とす、□二權利は、自己の利益の爲めに、自己の意思を主張し得べき力なり、權利は前示するが如く、意思を以て要素と爲すと共に、利益を以て又其觀念の要素とす、單に權利が意思の力なりと云ふの點に於て、利益の要素を度外視したるは、極端なる意思説の缺點なり、法律上意思の力を認めて、全く其利益を認めざる所のものは、權利にあらざるなり、□三權利は、一の人格が、他の一の人格又は他の總べての人格に對する意思の力也、權利は常に人と人との間に於て存し、權利の主體は人にして、權利の對抗を受くる者も亦人なり、此特定の人一人に對して行はるる權利は、相對權、又は對權と云ひ、其總べての人格に對して行はるる權利は、之を絶對權、又は對世權と云ふ、□四權利は、法の之を認むるによりて生ず、權利の存在は、法の存在を以て前提とす、法あるにあらざれば、權利は存在することを得ず、權利を以て人生の天賦なりとしたるは、自然の事實を以て權利なりとなしたる謬見なり、故に權利は法律が可能として認めたるものなるべからざるは明なりと云ふべし。(義務、私權、公權の部參照)
- 英
- Right
- 独
- Becht
- 仏
- Droit
權利行爲
(けんりかうゐ)人が自己に屬する權利を行使するの行爲を權利行爲と稱す、例へば所有權の行使として、其所有物を利用し處分するが如き、又は債權者が債權の行使として、債務者に辨濟を請求するが如きこれなり、權利行爲に對するの語なる、不法行爲を爲して、他人に損害を生ぜしめたる場合は、賠償の責任ありと雖も、權利行爲の場合に於ては、常にかかる問題を生ずる餘地なきものとす。
權利確認説
(けんりかくにんせつ)權利確認説と云ふは、一に法律確信説と稱せらるるものにして、事實上の慣習が、變じて慣習法となるべき理由、及び其時期を説明する學説の一なり、この説は獨乙のプフタ氏、サビニー氏等の唱導する所に係り、慣習が法律となるは、國民が之を以て法律なりと確信するに基くと説く、されどこの説は、法律そのものと、法律の内容たる規則とを混同したる謬説なり、蓋し慣習法のみに限らず、成文法に於ても、法律として發布せられ、人民も之を受け入れて服從せんには、其以前該法則が、永く國民の間に渴望せられ、或は便利なりとか、必要なりとかの確信により成立つものにして、敢て立法者の勝手なる私案にあらざるは明かなり、然り、然れどもこれ法律の内容となるべき規則にして、法律は此以外に國家權力とか、其他有權者の命令として、其形式によるにあらずしては、成立せざるものなりとす、故に此説は、惡令惡法の立法に反抗して、法律は、歷史的經過を有せざるべからずといふ點に於てのみ、立法者を反省せしむる功を有する學説なりとす。(主權者確認説の部參照)
權利義務の關係
(けんりぎむんのくわんけい)權利者と、義務者との間に於ける法律的關係を稱して、權利義務の關係と云ふ、權利關係と云ふと同意義なり、例へば債權者債務者間に生ずる法律上の關係の如し。
權利關係
權利關係は、權利義務の關係と云ふに同じく、權利者が法律の認許の下に、義務者の意義を制限する法律的關係を云ふものなり、或は之を義務關係とも云ひ得んか、彼の債務關係など云ふは、同じく債權者債務者の間に於ける法律關係を意味するものなればなり。
權利共通
(けんりきようつう)事物本然の性質に基くと、當事者間の同意に基くと、又は法律の規定に基くとを問はず、數人の間に共同の權利ある場合に於ける權利存在の狀態を稱して、權利共通と云ふなり、例へば共有權、又は不可分債權を有する場合、共同相續權を有する場合の如き其例なり。(民訴四八條一號)
- 英
- Common right
- 独
- Gemein-recht
- 仏
- Droit commun
權利拘束
(けんりこうそく)訴訟法上の用語にして、即ち一定の目的物につき、一定の相手方に對し、一定の裁判所に訴訟關係を生じたる狀態を稱して權利拘束と云ふ、我民事訴訟法による時は、獨乙法の如く、訴の提起と同時に、權利拘束の效を生ぜず、訴の提起は、訴狀を裁判所に提出して之を爲し、權利拘束の效力は、訴狀を裁判所より相手方に送逹するによりて、之を生ずるを本則とす、然れども區裁判所に於ける當事者双方が出頭して、口頭にて訴を爲す場合の如きは、訴の提起と同時に、權利拘束の效を生ずることありて又口頭辯論中に於ける申立により、權利拘束の效力を生ずる場合もあるなり、又刑事訴訟に於ける權利拘束は、公訴提起の主たる效力として生ずるものにして、一旦檢事が公訴を提起したる以上は、檢事が其訴を取下ぐるが如き、其他處分權を行ふ事を得ざる等の關係を生ずるものとす、今民事訴訟、刑事訴訟とに區別して、權利拘束の發生、及び效力の主なる點を槪説せんと欲す、先づ第一に民事訴訟に於ける權利拘束より説明せんに、□一權利拘束の發生時期は、即ち次の如き場合に於て生ずるものとす、イ訴狀を被告に送逹したるとき、一般の場合には、この訴狀の送逹に依りて、權利拘束の效を生ずるを原則とす、ロ反訴を答辯書、又は特別の書面に記載し之を原告に送逹したるとき、ハ訴訟の口頭辯論の進行中に於ける反訴の申立、訴の擴張、訴の變更の申立、控訴審に於て、訴の擴張、又は變更を申立られたるとき等、ニ區裁判所に於て、當事者双方が、開廷日に出頭して辯論を爲さん事を申立てたるとき、ホ督促手續に於て、支拂命令書を債務者に送逹したるとき等にして、即ち權利拘束の效力を生ずる凡ての場合なり、□二權利拘束の效力、權利拘束の效力は、學者之を區別して、實體上の效力と、形式上の效力とに分つ、實體上の權利拘束の效力の重なるものは、例へば訴狀の送逹に依りて、時效の中斷を來すが如き、相手方を遲滯に附するが如きこれなり、權利拘束の實體上の效力は、主として民法、商法等實體法に依りて定めらるるものにして、訴は一種の請求なれば、請求としては總べての效果を生ずるや明なりとす、又形式上の效力の主たるものは、イ當事者の一方が、本訴又は反訴を以て、同一の訴訟物につき、他の裁判所に訴を提起したるときは、權利拘束の抗辯をなすことを得べし、斯かる規定を存する理由は、同一の事件につき、數個の訴訟を許すは、其必要なきのみならず、尚數個の裁判抵觸するの虞あるを以て、其弊を避けんとするにあり、ロ裁判所の管轄を一定すること、其管轄は事物の管轄と、土地の管轄とを問はず、權利拘束の效力發生するときは、茲に於て一定し、爾後事情の變更により變換することなし、ハ原告は、訴を變更する事を得ず、訴なるものは、當事者、請求の原因、及び其目的物の三者より成立すべきものにして、其當事者、請求の原因を變更する以上は、別個の請求と爲るに至るものなれば、即ち新訴を起したると同一にして、上説、イと同一に至るべければ也、ニ權利拘束效力發生の後被告は、其原告に對し、反訴を起すことを得、ホ權利抅束の效力發生の後は、第三者は其訴訟に參加することを得、以上は、權利拘束の重要なる效力也とす、□三權利拘束の終了、訴訟物の權利拘束を終了する場合は、訴訟の完結に至る場合にして、訴訟の完結は確定の終局判決によるを常とすれども、その他の原因によりて、訴訟の完結する場合あり、以上之を分説すれば、イ本案の終局判決の確定したる時、訴訟中に於て、中間判決の言渡あるも、未だ以て權利拘束の終るべき者にあらず、唯本案の終局判決確定するに依りて、權利拘束の終了を告ぐべきものとす、然れども其終了は、判決の言渡のみに依るにあらずして、確定の時に於て、其訴訟完結すべきもの也とす、ロ訴を取下げたる時、ハ上訴を取下げたる時、但し中間判決の性質を有する判決に對する上訴の取下は、此限りにあらず、ニ裁判上の和解ありたるとき、ホ支拂命令に對し、異議の申立ある場合に於て、其請求は、地方裁判所の管轄に屬すべき場合に、原告は一箇月の期間内に、同裁判所に訴を提起せざりし時、ヘ原告が請求を抛棄し、又は被告が原告の請求を認諾して、之を調書に記載し、明確にしたる時、以上擧げたる場合は、權利拘束は終了したるものとす、第二に刑事訴訟に關する權利拘束の效力を説明せんに、刑事訴訟に於ける權利拘束の意義も、又其訴訟が、目的物と當事者と裁判所との間に、結合の關係を生じたる狀態を云ふに過ぎざる也、□一公訴は、一定の所爲に對して提起するものなれば、權利拘束の效力も、亦一定の被告人の特定なる犯罪所爲に關して生ずるものとす、然れども、檢事が起訴する所の事件に就きて有する法律上の意見、及び事件の取扱に關する申立に至りては、裁判所は其覊束を受くる事なく、權利拘束の範圍に於ては、自由に其審理を爲すを得べき也、□二權利拘束の效力は、一定の被告人に對し、裁判所に事件の目的物に就き、訴をなすによりて生ずるものなれば、此三個の訴訟主體、及び目的物の間に、訴訟上の結合關係を生ぜしむるもの也、故に公訴の提起は、此結合關係を成立せしめ、其關係の内容を限定するの行爲也とす、之を以て法律には直接の明文なきも、權利拘束中には、同一の被告人に對し、同一事件につき新に公訴を提起するを得ざるものとす、□三民事訴訟法に於ては、權利拘束の效力を生ずるも、なほ訴の取下げを許せり、刑事訴訟は之に反して、起訴によりて權利拘束となりたるときは、檢事は其取下を爲すを得ざるものとす。(民訴一九五、一九六、二〇一、二〇二、四一六、三七八、二〇六、二〇七條)
- 英
- Restriction of right
- 独
- Rechtshängigkeit
- 仏
- Restriction du droit
權利質
(けんりしち)權利質とは、權利を目的として質權を設定するを云ふ、凡そ動産、不動産以外の財産權も、亦動産不動産と同じく、吾人の資産を構成するものなれば、既に動産、不動産の所有權を以て、質權の目的と爲し得る以上は、他の財産權も亦質權擔保の目的に供し得ざる理由なし、之近時の立法例に於て、權利質なるものを認むるに至れる所以也とす、然れども質權は、元來物の上に行使することを得るの權利なるが故に、物にあらざる權利の上に行使すべき權利質なるものは、其性質物權也と云ふを得ず、唯其效用は、動産、不動産に關する質權と同一なるを以て、便宜の爲め我民法は、之が物權編中に規定したり、權利には、物を目的とする權利(物權)あり、行爲を目的とする權利(債權)あり、又智能を目的とする權利(智能權)あり、故に其各種の權利を質權の目的する各場合に於て適用すべき規定は、自ら異る所あり、故に物權を以て、質權の目的となしたるときは、質權の規定を併せ適用すべく、債權を目的としたるときは、主として權利質の規定を適用すべきものとす、而して權利質の目的たるべき債權の種類に從ひ、數種に分たるものなれば、其種類の異るによりて、質權の設定條件を異にす、左に區別して大要を揭げん、□一證書ある債權、債權に證書ある場合と否らざる場合とあり、證書ある場合に於ては、債權證書を質權者に交附するにあらざれば、質權成立せざるものとす、□二指名債權、指名債權とは、債權者の確定せるものを云ふ、即ち普通の債權は、一般に此種に屬するものにして、指圖債權、無記名債權にあらざる債權を云ふ、此指名債權を以て質權の目的とするときは、質權を設定したることを第三債務者に通知するか、または第三債務者の承諾を得るにあらざれば、質權の設定を第三債務者、又は其他の第三者に對抗することを得ざるものとす、蓋し質權設定は、質權者と設定者との間に於ては、單にその契約のみにてよりて成立するものなれども、債務者、若くは他の第三者は、之を知らざるが故に、債務者は、債權者(即ち質置主)に辨濟其他の給付を爲すことあるべし、又他の第三者は、之を讓受くるが如き事あるべし、然るに已に質權の設定しある故を以て、其辨濟は無效となり、更に質權者に辨濟せざるべからざるに至らんか、これ債務者に不測の損害を蒙むるものなれば、法律は、債權讓渡の場合と同じく、右の如き手續を要するものとし、其弊害を防がんとの主旨に出でたるものとす、以上謂ふ所の通知、若くは讓渡の手續は、記名株式には適用せざるものとす、即ち記名株式を質權の目的となすときは、單に其株券を質權者に交附するのみにて、債務者以外の者にも對抗することを得べきものとせり、其理由は、商業上の利便迅速を得むには、斯くせざるべからざるものと云ふにあり、但し記名社債は、前株式と異にして、之を質入れせんには、社債讓渡の手續に從ひ、會社の帳簿に記入せしむるにあらざれば、會社若くは他の第三者に對抗することを得ざるものとす、□三指圖債權、指圖債權とは、流通債權にして、爲替手形、約束手形、小切手等の如く確定せる債權者、若くは其指圖したるものに支拂はるる債權を指し、常にその成立に證書の存在を必要とする債權を云ふ、この債權の轉輾流通は、單に其證券の交附と裏書とに依りて有效なるものにして、普通債權の讓渡に要する如き、煩雜なる手續を要せざるものとす、故に之を質權の目的と爲す場合にも、質權設定の旨を裏書して、其證書を交附するを以て足るものとせり、□四無記名債權、無記名債權とは、債權者の記名なき債權を云ふものにして、我民法は、之を動産と同一の取扱の下に置くものなるが故に、質權を設定する場合にも、動産質に關する規定によるべきものとす、以上は質權設定の場合に關するものなるが、今其債權質實行の方法を見るに、債權の目的の異るに依りて其規定を異にす、若し債權の目的が金錢なるときは、質權の目的なる債權を讓受けたる場合と同じく、直接に其債權を取立つることを得るものとす、而して其取立つる所の債權の目的たる金錢額に關しては、自己の質權に關する額を限度として取立つべきものにして、其以外に取立つることを得ざるや勿論なりとす、右は質權利者の債權が、辨濟期に到著したるものなるときに適用するものにして、その質權者の期限が到來せざる以前に於て、質權の目的たる權債が、期限に到逹したる場合には、債權者は、直接に取立つることを得ずして、第三債務者をして其金額を供託せしむるものとす、而して此場合には、質權は其供託金の上に存することとなるなり、次に債權の目的が金錢にあらざるときは、質權者は、債權の期限に關係なく、債務者より、其辨濟を受くることを告げて、其辨濟を受けたる物の上に質權を有することとなすなり、尚債權質實行方法としては、民事訴訟法上の規定に從ひ、轉付、若くは換價の方法を採ることを得べきものなりとす。(民三六二條乃至三六八條)
- 英
- Pledge of right
- 独
- Rechts-pfand
- 仏
- Gage de droit
權利主體
(けんりしゆたい)法律上權利を享有する者を稱して權利主體と云ふ、權利の享有なるものは、之を權利の實行と混合せざるを要す、權利の目的の上に、支配力を及ぼすことを得べきこと、及び其支配力に對する妨害を排除し得べきことが、權利享有の實質なり、現に權利の目的を支配する行爲を爲すこと、これに對する妨害を排除する爲めに爲す行爲の如きは、權利の實行なり、而して權利の享有者と實行者とは、通常は同一人也とす、然れども時として權利の享有者は、法律上、又は事實上其權利に實行するも能はざる場合あり、此場合には、享有者と實行者と異らざるを得ず、彼の未成年者其他の無能力者の如き其一例也とす、抑も權利なるものは、主體なくして存在する事を得ず、權利存在すと云へば、當然享有者あることを意味す、而して權利の主體と爲り得べき適格は、法律に依りて定まる也、法律上權利の主體と爲り得べき適格を權利能力と稱す、現行民法に於て、權利能力を名けて權利の享有と稱せり、次に權利能力を有するものを人と稱し、人たるの法律上の地位を人格と云ふ、法律が如何なるものに權利能力を附與するや、換言すれば如何なるものを以て、權利主體と認むるや、我法律の下に於ては、一切の人類を權利主體となし、又或る限定せられたる範圍内に於て、人類にあらざるものをも權利主體と認む、法律によりて權利主體とせらるる人類を自然人と云ひ、此人類以外にして權利主體たり得べきものを法人と稱す、右述ぶる所によりて、我法律上に於ける權利主體は、自然人、及び法人たることを知るを得べきなり。
- 英
- Subject of the right
- 独
- Subjekt des Rechtes
- 仏
- Sujet du droit
權利名義
(けりんめいぎ)權利關係の名義を稱して權利名義と云ふ、例へば債權關係に於ける債權なるものは、權利名義にして、所有權ある場合に於ける所有權なるものは、其權利名義なるが如し、而して權利の名義者と云ふ場合と混同すべからず、權利の名義者と云ふは、法律上の權利歸屬者、即ち權利主體を指すものとす。
權力
(けんりよく)權力とは、法律上の服從關係に立ちて、即ち上下の關係に於て上級者が、下級者の意思を強制する法律上の力を云ふ也、權力は、對等者間に於ける權利と其意義を異にし、不對等間に於ける意思範圍を侵し得る法律上の力、例へば國家が臣民に對して有する統治權の如き、所謂權力と稱すべきものなり、從來父母の子に對して有する親權、戸主の家族に對して有する戸主權、夫の妻に對して有する夫權等は、その不對等者間に於ける意思範圍を侵し得る法律上の力なる點より、之が權力たりしことありしも、現今私人間は、凡て法の前に平等とせられ、我民法の如きは、純然たる一種私法上の權利なりとせられたり、故に權力と云へば常に治者、被治者、即ち國家が臣民に對する場合に限るものなりとす。
權力服從の關係とは、單に權力關係と云ふに同じく、權力者が服從者に對し、其意思の力を以て、強制を加ふることを得る法律上の關係を云ふものなり。
- 英
- Authority
- 独
- Authorität
- 仏
- Autorité
權力關係
權力關係とは、命令服從の關係を云ふものにして、權力者が自己の意思の力に依りて、服從者の意思の範圍に限界を付する法的關係を指すものなり。
- 英
- Relation of subjection
- 独
- Machtverhältniz
- 仏
- Relation de pou-voir
權力服從關係
- 英
- Relation of subjection
- 独
- Machtverhältniz
- 仏
- Relation de pou-voir
權力者
(けんりよくしや)權力者とは、權力を握持する者、即ち權力の主體を稱す、所謂權力の主體とは、彼の權利の主體と云ひたらんが如く、權力の源泉を云ふものにあらずして、單に權力即ち命令服從を命じ得る造意者を云ふ、我憲法の下にありては、天皇は唯一の權力者なり。(憲法四條)
- 英
- Authorities
- 独
- Gewalthaber
- 仏
- Autorité
權力團體
權力團體とは、權力關係によりて結合せる團體即ち國家の如き、又國家より或る種の權力を分與せられたる地方公共團體の如きこれなり。
縣令
(けんれい)縣知事の發する命令規則を縣令と稱す、地方官官制の認むる所によれば、知事は部内の行政事務につき、其職權若くは特別の委任により、管内一般、又は一部に對して有效なる縣令を發することを得るものなり。(地方官官制七條)
- 英
- Prefectural instruction
- 独
- Be-zirksinstruktion
- 仏
- Instruction de la préfecture
子
(こ)子とは、天然的血族關係によりて生ずる者、及び法定的血族關係により生ずる者を總稱す、天然的血族關係とは、出生したるものにして、之を實子と云ふ、實子に嫡出子、庶子、私生子あり、嫡出子とは、父母の正當なる婚姻によりて生じたる子なり、庶子とは、父母の婚姻外、即ち野合によりて生じたる子にして、父の認知したる子なり、私生子とは、父母の野合に依りて生じたる子にして、父の認知せざる子なり、法定的血族關係より生ずる子とは、法律の規定によりて、始めて子たる身分を有するに至るものなり、例へば養子、繼子の如き之なり、但し繼子は、父母の一方より云へば實子なりとす。(民八二〇、八二七、八三七、八二八條)
- 英
- Son
- 独
- Sohn
- 仏
- Fils
故意
(こい)故意とは、行爲の客觀的方面を認識したる場合に、發動する意思の狀態を謂ふ、最近の學説に依れば、行爲は意思の發動なりと云ふ、意思の何たるかは茲に述ぶべき限りにあらざるも、一言すれば、或る現象を遮斷して、或る現象を呈する所の人に存する非物的過程を指し、通俗に心と云ひ、意識と謂ふはこれなり、而して吾人の行爲は、斯かる意思の發動にして、意思の發動するには、各其動機存す、動機とは、決定せられたる欲望にして、欲望とは、吾人がある事物を認識し、之に依りて快不快を感じ、爲に之を取捨せんと努力する場合に起る觀念なり、而して斯かる欲望、若し現實せられ得ざる不可能のものなるときは、吾人は普通希望を斷つも、夫れが充實は可能にして、然も其手段方法を不明了ながらも認識するに至る時は、茲に欲望は、動機となりて、有意的動作の原因となる、而して動機が充實せられんとして起る意思の狀態を、學者が刑法學上名けて故意と謂ふなり、故に故意は、行爲の基本たる意思といふべく、即ち自己の意思發動の客觀的方面の認識を伴ふ決意そのものと謂ふを得ん、換言すれば故意は、其動機となりたる欲望を追求することに於ける客觀的關係の認識なり、茲に客觀的關係の認識と云ふも、彼の主觀的關係を離れて、故意を想念し得べきにあらず、何となれば、意識の不完全なる所謂精神病者、又は不成熟なる未成年者等の故意が、謂ふ所の眞正なる故意と云ふべきや否やは、少くとも疑問とせざるべからざればなり、彼の普通刑法學者が、故意を行爲、即ち意思發動の認識と解し、犯罪の故意即ち犯意を犯罪事實の認識とせるは、ここに前説する所と一致するものとす、犯意は上説の如く、犯罪事實の認識なり、所謂犯罪事實とは、犯罪の構成要件、及び刑罰加重の條件たる事實の認識を云ふ、學者は通常故意を別ちて左の數種とす、□一確定の故意、不確定の故意、本人が具體的に確定せる事實に對する觀念を有するときは、これを確定の故意と云ふ、然らざるものは、不確定の故意なり、不確定の故意は、之を別ちて、ア槪括の故意、(例へば群集中の何人にか命中すべしと信じて發砲したる場合の故意)イ擇一の故意、(例へば甲に命中せざれば、乙に命中すべしと信じて發砲したるが如き場合の故意)ウ未必の故意、(例へば甲に命中するや否やは、豫め必し難きも、或は命中すべしと信じて發砲したるが如き場合の故意)の三とす、□二豫謀と然らざる故意、本人が深思熟慮の結果、決意を構成する場合の故意を、豫謀に出づる決意に伴ふ故意と稱し、其他の故意を然らざる故意となす、元來豫謀の有無は、決意の狀態なれば、之を故意の區別として論ずるは正當にあらず、唯茲には普通學者の例に從ふのみ、□三不法の故意と單純の故意、不法の故意とは、違法たらしむべき事實の認識にして、所謂犯意これなり、然らざるものを單純の故意と云ふ。(なほ意思、犯意の部參照)
- 英
- Deliberation
- 独
- Vorsatz
- 仏
- Délibération
犯意
固有法
(こいうはふ)固有法とは、一國固有の民情、風俗、習慣等に依り發生したる法律を云ふものにして、全く他國の法律を模範とし、材料を其法律に採らざるものなり、我國の貞永式目、武家百箇條の如きは、蓋し我國固有の民情、風俗に基きたるものと見るべく、故に固有法に屬するものとす、固有法にも亦其發生の次第によりて、成文法、不成法の類別あり、□一成文法とは、文書に依りて制定したる法律を云ひ、□二不文法とは、文書に依らずして發生したる法律、即ち慣習法を云ふ、其之を不文法と稱するは、文書に記載せられざる法律と謂ふの意義にあらずして、其法律たる效力あることが、文書に記載せられたるに依りて生ずるにあらざるを謂ふなり。
- 英
- Native law
- 独
- einheimisches Recht
- 仏
- Loi naturel
公
(こう)公共の利益など云ひて、オホヤケ又は一般と云ふ如き場合に用ひられ、私に對するの言葉なり、法律上種々なる場合に使用せられ、又華族制度に於ける五等の階級の最上級にある爵の名稱として用ひらる、(民九〇、一九二條、刑二三三、二五八、二五九條、法例三〇條、憲法四八、五九條、華族令等參照)
- 英
- Public
- 独
- öffentlich
- 仏
- Publique
公開
公開は、無條件、又は一定の條件の下に、一般公衆の會同、傍聽、觀覽を許すことを云ふ、例へば公園は公開場なるが故に、人は茲に散步し、又は茲に會同することを得、博物館の如きも公開せる設營なるが故に、何人にても之を觀覽することを得、又裁判は公開するを原則とするを以て、何人にても之を傍聽することを得るが如きこれなり。(憲法五九條、裁構法一〇五條等)
- 英
- Public opening
- 独
- Öffentlichkeit
- 仏
- Ouverture publique
公安
(こうあん)公安は、又公序とも云ひ、公共の秩序整然し、社會に危害なきことを云ふ、公共の安寧と云ふも亦此義なり。(憲法八條、三〇年勅令三七七號五條一號)一國の安寧秩序中、外國人に依りてのみ、又は外國人に依りても犯さるることある安寧秩序を、國際關係の上に於て、特に國際公安と云ふ。(法例三〇條)
一國の安寧秩序を國内公安と云ふ、其内外國人に依りて犯さるるものなると、内國人に依りてのみ犯さるるものなると、外國人に依りてのみ犯さるるものなるとを問はざるは勿論なり。(民九〇條)
- 英
- Public safety
- 独
- Gemeinwohl
- 仏
- Sûreté publique
國際公安
- 英
- International public safety
- 独
- internationales Gemeinwohl
- 仏
- Sûreté internationale
國内公安
- 英
- National public safety
- 独
- Landesgemeinwohl
- 仏
- Sûreté publique nationale
公安警察
(こうあんけいさつ)公安警察は、保安警察の一種にして、尋常警察(私安警察)に對する名稱なり、公安警察は、一に高等警察とも云ふ、警察權の豫防する危害の性質が、廣く國家そのものに關するものなるときは、之を高等警察と稱す、而して公安警察は、多くの場合に於て、政事に關する警察と一致し、又多くの場合に於て、法律の規定に依りて活動す、故に之を主管する者は、内務大臣なり、他の大臣は特別の委任なき限り、管掌の權なし。公共警察は、之を保安警察と云ふ、公共警察は、行政警察に對するものにして、其目的とする所は、個々の行政各部の特別利益に關することなく、個人、及び公衆に對する危害を一般に保護するに存するものなり。(保安警察參照)
警察
{司法警察
行政警察
{保安警察
{公安警察(高等警察)
私安警察(個人又は通常警察)
行政警察
{森林警察
鑛山警察
關税警察等
- 英
- Police for public safety
- 独
- Gemeinwohlpolizei
- 仏
- Police de la sûreté publique
公共警察
- 英
- Community police
- 独
- Gemein-polizei
- 仏
- Police communauté
個人警察
個人警察とは、即ち對人警察なり、對人警察とは、人の行爲より生ずる危害の豫防を目的とする警察を云ふ、以上三警察を圖解すれば、
- 英
- Police of private safety
- 独
- Privatwohlfahrtspolizei
公有財産
(こういうざいさん)公有財産(又行政財産と云ふ)とは、專ら公共の目的に供するものにして、國家に對して何等の收入を生ぜざるものを云ふ、故に其管理は、決して財務行政機關の權限に屬せず、其供用せらるる目的の異るに從ひて、當該各大臣之を管理するものなり、官廳の建物、城砦、軍艦、砲臺の如き之に屬す、此種の財産は、其目的に供用せられつつある間は、特別の法規の司配を受くるが故に、之に關しては、其用法を害するが如き私權作用を行使することを得ず、若し國家が之を公共の目的に使用することを廢したる以上は、國家が其物件に對して有する私所有權は、完全に其作用を發揮することを得るに至る、之を要するに公有財産に對しても、國家は所有權を有す、唯此所有權が、民法の普通原則に從ひて、行使せられ得ざる地位に在るが故に、其作用を除外して之を公有財産(行政財産)と云ふに過ぎざるなり。
- 英
- Public property
- 独
- öffent-liches Vermögen
- 仏
- Propriété publique
公有水面
(こういうすゐめん)公有水面とは、直接に公共の利益に供用せらるる河川、湖水、池沼、及び澤を云ふものにして、國家は之が所有權を有するものなり、又公有財産の一種なりとす。(河川法等參照)
- 英
- Public surface of the water
- 独
- öffentliche Wassersoberfläche
- 仏
- Surface de l'eau publique
公有地
(こういうち)國家、又は公共團體の公用に供用せらるる土地を云ふ、又行政財産の一種なり、例へば官衙の敷地、砲臺場の如し。(七年一二〇號布告地所名稱區別、二三年勅二七六號等參照)
- 英
- Public soil
- 独
- öffentliche Erde
- 仏
- Perre publique
公有物
公有物とは、公共團體が所有に屬する物を普通とし、或は官有物と同義に使用せらるることあり。(市町制村、郡制、參照)
- 英
- Public thing
- 独
- öffentiliches Ding
- 仏
- Chose publique
公有林
公有林とは、公共團體の所有に係る森林を云ふ。(森林法一條參照)
- 英
- Public forest
- 独
- öffentlicher Forst
- 仏
- Bois publique
拘引
(こういん)拘引とは、被告人を訊問するの目的を以て、裁判所に出頭せしむることを強制する命令を云ひ、強制力を用ふる點に▲て、呼出(刑訴六九條)と異る、拘引は、拘引狀を以てするものにして、之を執行するものは、巡査、憲兵上等兵なり、而して其效力は、四十八時間繼續するものとす、夫れ以上拘引するには拘留狀を要す。(刑訴七三條二項、同七七條參照)
- 英
- Arrest
- 独
- Arrest
- 仏
- Arresta-tion
拘引狀
拘引狀とは、訊問の目的を以て、被告人を裁判所に出頭せしむることを強制する令狀なり、拘引狀には、被告事件、及び被告人の氏名、職業、住所、(但し其氏名分明ならざるときは容貎、體格等を明示するものなり)並に之を發する年月日時を記載し、判事、及び裁判所書記署名捺印す、拘引狀を發する場合二あり、豫審の場合、及び公判の場合之なり、豫審の場合に於ては、□一召喚狀を受たる被告人が、其日時に裁判所に出頭せざるとき、□二直に拘引狀を發し得る場合、即ちA被告人定りたる住所あらざるとき、B被告人罪證を湮滅し、又は逃走する恐れあるとき、C被告人未遂罪、又は脅迫罪を犯し、なほ其目的を遂げんとする恐あるとき等なり、公判に於ては、何時にても裁判長は、拘引狀を發することを得るものにして、拘引狀は、一通又は數通を作ることあるべし、拘引狀の效力繼續時間は、四十八時間内に限り、其時間は判事の面前に、被告人を引致したる時より起算するものとす、而して其時間を經過するときは、縱令被告人を訊問し終らざるも、當然之を釋放せざるべからず。(刑訴七一條、乃至七三、七六、七七、一七八條)
- 英
- Warrant for arrest
- 独
- Verhaftungsbefehl、Ver-haftsbefehl
- 仏
- Mandat d'arrêt
公益行改
(こうえきぎやうせい)公益行政(又は助長行政と云ふ)とは、警察行政に相對する行政にして、臣民の利益幸福を積極的に增進する行政を云ふ、助長行政(即ち公益行政)は、法令に基きて行はる、其命令に依るものにありては、憲法第九條に所謂、臣民の幸福を增進するを目的とする獨立命令之也、獨立命令は、固より法律事項を侵すことを得ずと雖も、由來公益行政事務は、警察事務と異り、必ずしも臣民の自由制限を以て、其手段となすことを必要とするものにあらず、之を以て助長の爲め發せらるる命令の活動範圍は、警察の目的を以て發せらるる命令の範圍よりも、頗る廣汎なるものなり、現時に於ける公益行政事項を分つときは五となる、人事事項、衞生事項、經濟事項、教化事項、救恤事項即ち之なり、□一人事行政は、人の法律上の地位を明にするを以て目的とする行政事務なり、例へば戸籍身分登記に關する行政の如きこれ也、□二衞生行政は、國民の健康を保全するを以て目的とする行政にして、例へば傳染病豫防、醫師、産婆、藥劑師、藥品に關する行政の如き之に屬す、□三經濟行政は、國民の經濟上の利益を進捗する行政にして、農業、工業、商業の施設、即ち度量衡制度、農會等に關する行政事務はこの例なり、□四教化行政は、國民の精神上の利益進捗に關する行政にして、例へば學校、宗教等に關する行政これなり、□五救恤行政とは、生活の途なき者に救助を與へ、或は罹災を豫防し、罹災者を救恤するの行政にして、以て個人の生活を保護進捗するの行政事務なり。(助長事務の部參照)
- 英
- Administration of public in-terest
- 独
- Verwaltung der öffentlichen Interesse
- 仏
- Administration de l'intérêt public
公共組合
(こうきようくみあひ)公共組合は、産業上の利益を增進し、及び弊害を防止するの目的を以て、法令に依り組織せられたる公法人なり、公共組合の主なるものは、水利組合、土地組合、商業會議所、重要物産同業組合、及び農會之也、□一水利組合、此組合は、分ちて普通水利組合、水害豫防組合の二種となす、前者は、用惡水等專ら水害防護に關する事業の爲めに設け、後者は、水害防禦の爲にする堤防、浚渫、砂防等の工事にして、普通水利組合の事業に屬せざるものの爲めに設く、□二土地組合、此組合は農業上必要なる道路、橋梁、用水、排水又は、堤塘等を施設維持し、及び農業上の有害物を除去し、又は豫防する爲めに設くるものなり、□三商業會議所、商業會議所は、商工業の發逹を計る爲めに設けたるものにして、イ商工業に關する事項に關し、行政廳の諮問に應ずること、ロ商工業の發逹に必要なる方案を調査すること、ハ商工業に關する法規の制定、改廢、施行に關し意見を監督官廳に開申し、及び商工業の利害に關する意見を表示すること、ニ商工業の狀況、及び統計を調査發表すること、ホ商工業者の委囑に依り、商工業に關する事項を調査し、又は商品の産地、價格等を證明すること、ヘ官廳の命に依り、商工業に關する鑑定人又は參考人を推薦すること、ト關係人の請求に依り、商工業に關する紛議を仲裁すること、チ農商務大臣の認可を受け、商工業に關する營造物を設立管理し、其他商工業の發逹を圖るに必要なる施設を爲す等の權限を有す、□四重要物産組合、此組合は、重要物産の生産、製造、又は販賣に關する營業者相集りて、其營業上の弊害を矯正し、其利益を增進せんとする目的の爲めに設立するもの也、何種の營業者が公共組合を設置するを得べきかは、農商務大臣之を認定す、□五農會、農會は、農事の改良發逹を計る爲めに設立するものにして、其目的を逹する爲めに必要なる百般の施設を爲すことを得、農會は農事改良の意見を行政廳に建言するの權利を有し、又行政廳の諮問に應答するの義務を有す、農會は分つて市町村農會、郡農會、北海道農會、及び府縣農會の四種とす。(水利組合條例、北海道土功組合法、商業會議所法、重要物産組合法、三二年勅三〇號等參照)
- 英
- Public guild
- 独
- Gemein-verein
- 仏
- Corporation publique
公共組合會
公共組合會とは、公共組合の發逹改良を計る爲めの議決機關を云ふ、例へば水利組合に於ける組合會、重要物産同業組合に於ける組合聯合會の如き之なり。(水利組合條例、重要物産組合法)
- 英
- Association of public guild
- 独
- Verein von der allgemeinen Zunft
- 仏
- Association de la corporation publique
口供書
(こうきようしよ)口供書は、裁判所の訊問に應じて爲せし口述を筆記したる書面を云ふ、又これを供述書とも云ふ、例へば裁判所が被告人を訊問する場合に於て、裁判所書記が被告人の供述を錄取せる書面の如き之なり、口供書は、證據方法の一種とす。(刑訴九五條乃至九七條、民訴三一一條乃至三一五條、裁構法九一條)
- 英
- Testimony
- 独
- schriftliches Zeugnis
- 仏
- Déposition
公共團體
(こうきようだんたい)公共團體とは、國家に對して、法律に規定せられたる事務を處理すべき公共義務を有し、其義務の履行を以て生存の目的とする、法令に依りて組織せられたる團體にして、國家の積極的の監督の下に成立する公法人なり、□一公共團體は、公法人なり、法人は凡て公私法上の人格を有す、茲に公法人と稱するは、必ずしも公法上の人格者なりとの意義にあらずして、自己の名を以て強制力を用ふることを得る法人全部を意味するなり、□二公共團體は、國家の積極的監督に服するものなり、國家内の團體は、其性質の如何を問はず、總べて國家の監督に服するものなりと雖も、公益を目的とするものにありては、其事業の盛衰興亡は、公の利害に關すること大なるを以て、國家は其監督を嚴にし、其成立、及び作用等に關して必要なる干渉を加ふるものなり、□三公共國體は、法令に依り組織せられたる團體なり、國家は其目的を逹する一手段として、公共團體なる機關を設くるものなるを以て、其之を設くるに際しては、法令を發布せざるを得ざるは固より言を俟たず、之公共團體が、人民任意の團體と異る點也とす、又公共團體は、一定地區の人民をして、自ら其公共事務を處理せしむるものなれば、其實質は、人民の集合體なりと云ふを得ん、□四公共團體は、法令の命ずる事務を處理す、其事務は、次の要件を具備する事を要す、イ直接に團體員の利益に關すること、ロ團體の區域内に於て執行し得ること、ハ原則として、自己の費用を以て處理することこれなり、□五公共團體が其事務を處理するは、公法上の義務なり、即ち國家に對する義務にして、私人に對する義務にあらざるなり、□六公共團體は、其義務の履行を以て、其生存の目的となす、生存の目的とは、此義務の履行の外別に目的の存せざることを謂ふ、公共團體の種類は、市、町、村、郡、府、縣等なり。(市制二條、町村制二條、郡制二條、府縣制二條等)
- 英
- Public body
- 独
- öffentliche Kommune
- 仏
- Corps public
公課
(こうくわ)國家または公共團體が、一個人に賦課する公法上の負擔を廣く公課と稱す、例へば府縣税、營業税、租税、兵役の義務負擔の如き之なり。(租税、兵役の義務の部、民訴六四三條三號、及び四號同六五八條二號等參照)
- 英
- Charge
- 独
- Befehl
- 仏
- Charge
工業所有權
(こうげふしよいうけん)工業所有權とは、特許權、意匠權、實用新案權、及び商標權を總稱するものなり、□一特許權、特許權とは、工業上の物品及び方法に關し、最先の發明を爲したる者、若くは其承繼人に於て、農商務省特許局の特許處分に依りて、專有することを得る權利なり、□二意匠權、意匠權とは、工業上の物品に應用すべき形狀、模樣、色彩、又は其結合に係る新規の意匠を案出したる者、若くは其承繼人が、農商務省特許局の登錄を受けて之を專用するの權を云ふ、□三實用新案權、實用新案權とは、工業上の物品に關し、其形狀、構造、又は組合せに係り、實用ある新規の考案を爲したる者、又は之を繼承したる者が、特許局の登錄を受けて之を專用する權を云ふ、□四商標權、商標權とは、自己の商品なることを表彰する爲めに、商標を專用する權を云ふ。(商標法一條、特許法一條、意匠法一條、實用新案法一條)
- 英
- Right of possession of In-dustry
- 独
- Industrieeingenthum
- 仏
- Droit de la possession de l'industrie
工業所有保護同盟條約
工業所有權保護同盟條約とは、締約國が工業上の意匠、發明、商標、及び商號を相互國間に於て保護する約定にして、一八七八年、及び一八八年、佛國政府の招待に依り、十八箇國が巴里に會議を開き、一八八三年一二月二日、白、西、佛、伊、蘭、葡、瑞西、並に伯西爾、ギユワテマラ、サルブァドル諸國が、締結せる同盟條約也、而してペヰンに其中央事務所を置き、其後十七箇國の同盟ありて、一八八六年羅馬、一八九一年マドリッドに於ける會議に於て、英、獨、米、諸國も代表者を出して、前條約を修正加入し、我國も明治三二年之に加入せり。
- 英
- Convention of protection league of the right of posses-sion of industry
- 独
- Schützbundsvertrag des Industrieeigenthums
- 仏
- Convention de l'alliance pour la protection des droits de l'industrie
公權
(こうけん)公權とは、公法上の權利を謂ふ、公權の何たるやに就きては、諸説必ずしも一致せず、されども最も隱當なる説に依れば、公權を如上の如く定義するを可とす、左に其の所以を論せん、□一公權なるもの果して之ありや、或は全く公權の存在を否認するあり、曰く權利は、唯對等の主體間に於てのみ存することを得、公法は權力服從の關係法則なり、斯くの如く命令服從の關係者に、如何にして權利あらんや、若し之ありとすれば、權利にあらずして權力なり、見よ、臣民は國家に對して義務を負ふも、國家は之に對し權利を有せずして、常に權力を以て臨むにあらずやと、されど治者被治者の間に於ても、常に權力關係のみにあらず、國家の如き被治者は統治者に對し、實際上絶對服從の義務あるも、其絶對の服從たるや、常に公法の範圍内に於てし、敢て國民を奴隷視するものにあらざる也、從つて臣民も、統治者に對し、又一個の人格者として、公法上權利を有し義務を負ふものなり、この權利が所謂公權にして、其義務は公義務なり、此ことは全部者たる國家と、部分たる個人との關係を一考せば思ひ半に過ぎん、蓋し全部統一體なる國家は、其部分たる個人の總合人格にして、國家も人格者なれば、國家の觀念より見たる個人も等しく人的存在なり、此大全部なる國家と、小全部なる國民と、其全部たる關係に於て、等しく公法上の支配を受くる以上は、豈に權利義務の關係なからんや、唯學者が其統一的全部たる國家を見るに急にして、國民を其構成分子となし去り、國民を小なる統一的全部たることを忘れたるに依り、公權なるものなしとの謬説を生じたるものとす、□二公權の本質、公權も一種の權利なり、故に一般の權利と同じく、自己の利益の爲めに主張し得べき意思の力なりと云ふを得べし、(權利の何たるかに就きて諸説あるも、以上の折衷説を可とす)唯公權は、上記の如く公法上の權利なるが故に、權力服從の關係に於て現はるるに過ぎず、(茲に注意すべきは、學者の所謂國際公法なるものは、嚴格の意義に於ては、實は公法にあらずして、國家を當事者として、平等の關係を規定せる私法なることこれなり、唯學者國際私法なるものに對して、之を國際公法と云ふのみ、寧ろ所謂國際私法こそ一國内に於ける公法と云はさるべからず、國際私法參照)□三公權の種類、學者は公權を分ちて、左の數種となすを普通とす、ア參政權、即ち國家機關に參與するの權にして、議員の當選者が議員たる地位に即くの權、兵役の權利、選擧權の如きはこの例なり、イ國家行爲要求の權、例へば裁判請求權、立法上の保護を請求するの權、即ち請願權の如きこれなり、ロ自由權、即ち一定の事項に關する自由を國家に對して、主張するの權にして、例へば集會結社、出版言論の自由、信教の自由權の如きこれなり、終に、或る者は國家の有する權力、即ち統治權を公權の一種となすものあり、或る者は、國家が國際法上他國家に對して有する權利を、公權の一種となすものあり、之等は公權の意義を主體其者に求めたる謬説にして、茲に採用せざる所とす。
- 英
- Civil right
- 独
- Obrigkeit
- 仏
- Droit civil
後見
(こうけん)後見とは、親權を脱したる未成年者、又は禁治産者の身體、及び財産を保議監督すべき權務なり、後見の職務が公の職務なるや、將た又私の職務なるやに就きては、諸國立法の主義必ずしも一ならず、凡そ一の職務が公の職務なるや、私の職務なるやを決するは、其職務とする所、國家の事務なると否とに依りて決せざるべからず、而して國家の事務なると、否とを決するは、國家が其事務を執行するを以て、國家に對する義務となすや否やを其標準と爲す外なし、後見事務にして、若し國家の事務なりとせば、其事務の擧否は、國家直接の利益に關するものなるを以て、國家は啻に其執行者が法規を犯し、又は公益を害するなきことを監督するに止らず、積極に其事務の擧否を監督し、若し其事務の擧らざるに於ては、國家自ら之を強制して執行せしむるの手段を有せざるべからず、之に反して其事務を行ふと否とを、當事者の自由に任し、國家は唯其事務の執行が法規に反し、又は公益を害することなきを監督するに止らば、之國家が其事務を以て國家の事務と看做さざるの意思を推測するに充分なり、今後見の事務に就きて民法の規定する所を見るに、後見事務の擧否を監督するは、一に後見監督人、又は親族會にして、國家自ら之を監督することなく、其任務を曠しくすることあるも、國家自ら之に關渉して、其事務を強制執行せしむることなし、國家は、唯親族會の請求ある場合に於て、始めて之に干渉する事あるのみ、之即ち國家が後見の事務を以て、國家の事務と看做すことなく、其事務を行ふことを以て、國家に對する公の義務と爲さざりし明證なり、要するに我民法に於ては、後見は純然たる私法上の職務なり、後見の職務は、之を三に大別することを得べし、身體の保護監督は其一なり、財産の保護は其二なり、行爲能力の補充は其三なり、蓋し無能力者は、或は智能の發逹不完全なるに依り、或は心神の喪失に依り、自ら其行爲を爲すこと能はざるものなり、よし其行爲を爲すことを得とするも、其行爲たるや、極めて不完全なりと云はざるべからず、故に何人か、爲めに其利益を保護する者存するの必要を見る、後見は即ちこの爲めに出でたる制度の一なり、學者が後見を親權の延長なりと云ふ所以も、亦實に茲に存すと云ふべし。(民九〇〇條乃至九〇七條)
- 英
- Guardianship
- 独
- Vormundschaft
- 仏
- Tutelle
後見開始
後見は、左の場合に開始す、□一未成年者に對して、親權を行ふ者なきとき、又は親權を行ふ者が、管理權を有せざるとき、□二禁治産の宣告ありたるとき、元來未成年者に對して、其家にある父、又は母あるときは、其父又は母、先づ之が身上、及び財産を保護する職務を擔任す、之即ち親權なり、而して未成年者に對し親權を行ふ者なきとき、或は親權を行ふ者が管理權を有せざるときに於て、始めて後見に付するの必要を生ず、即ち父母共に死亡したるときは、後見を開始し、父母の一方が死亡したる時に於て、他の一方が知れざるとき、既に其家を去れるとき、禁治産者なるとき、其他親權を行ふ能はざるときに於ても、亦其死亡に依りて後見を開始す、父母共に生存するも、或は其家を去れるとき、或は禁治産の宣告を受けたるとき、或は親權喪失の宣告を受けたるときは、後見を開始すべし、又親權を行ふ母が、財産の管理を辭したるとき、又は親權を行ふ父母が、管理權の喪失を宣告せられたるときに於て、他に親權を行ふ者なきときは、其財産管理に就きては、又之を後見に付するの必要あり、未成年者にあらざるも、同理により禁治産者は、以上に準じて之に後見を付すことを得、禁治産の宣告は、未成年者と雖も、之を受くることを妨げず、未成年者が禁治産の宣告を受けたるときは、縱令之に對し親權を行ふ者あるときと雖も、尚後見を開始す、但し此後見の開始は、唯名義のみに止まり、別に獨立の後見人を選定するにあらずして、親權を行ふ父、又は母が、同時に後見人の職務を行ふも可なり。(民九〇〇、九〇二、八條)
- 英
- Opening of guardian
- 独
- Beginn der Vormundschaft
- 仏
- Com-mencement de la tutelle
後見の機關
(こうけんのきくわん)後見の機關とは、後見に關する事務を行ふものにして、分ちて三とす、後見人、後見監督人、及び親族會之なり、前二者は、各其部に述ぶるが故に、(後見人、後見監督人參照)之を略す、親族會は、合議制の議決機關なり、後見に關して、親族會の有する職務權限の重なるものを擧ぐれば、イ指定、又は法定の後見人、又は指定後見監督人なき場合、其他後見人、後見監督人を選任する必要ある場合に於て、之を選任すること、ロ一定の場合に於て、後見人を免黜すること、ハ後見人、又は後見監督人の辭任を承認し、又は其免黜を裁判所に請求すること、ニ後見人が、被後見人の爲めにする重大なる行爲に就き、同意を與ふること、ホ後見人に報酬を與ふべきや否やを定むること、ヘ後見人就職の始に於て、後見事務執行に要する費用年額を豫定すること、ト後見人就職の始に於て、其被後見人の爲めに受取りたる金錢を、寄託すべき義務を定むること、チ後見人より財産狀況の報告を受くること、リ財産調査、又は後見の計算に就き、必要あるときは、法定期間を伸張すること、ヌ後見人の計算を認可すること等なりとす。(民九四四條乃至九五三條)
- 英
- Organ of the guardianship
- 独
- Vormundschaftsorgan
- 仏
- Organe de la tutelle
後見人
後見人とは、親權を脱したる未成年者、又は禁治産者の身體、及び財産を保護監督すべき職務を有する者なり、後見人は、一人たることを要す、後見人に三種あり、指定後見人、法定後見人、及び選定後見人之なり、□一指定後見人とは、未成年者に對して、最後に親權を行ふ者が、遺言を以て指定するもの也、後見は、親權の延長とも云ふべきものなるに依り、最後に親權を行ふ者に後見人を指定することを許すは、當を得たるものなり、□二法定後見人とは、法律の規定によりて、當然後見人となるものにして、例へば親權を行ふ父、又は母は、禁治者の後見人となり、妻が禁治産の宣告を受けたるときは、夫は其後見人となり、夫が禁治産の宣告を受けたるときは、妻は其後見人となるが如し、□三選定後見人とは、指定、法定後見人あらざる時、親族會に於て選定する後見人なり、左に揭ぐるものは、後見人たることを得ず、イ未成年者、ロ禁治産者、及び準禁治者、ハ剝奪公權者、及び停止公權者、ニ裁判所に於て免黜せられたる法定代理人、又は保佐人、ホ破産者、ヘ被後見人に對して訴訟を爲し、又は爲したる者、及び其配偶者、竝に直系血族、ト行方の知れざる者、チ裁判所に於て、後見の任務に堪へざる事跡、不正の行爲、又は著しき不行跡ありと認めたる者これなり、後見人の事務は、被後見人の身上、及び財産に對する事務、並に其法律行爲に就き、之を代理し、又は其行爲に同意を與ふるの事務を云ふ、被後見人の身上に對する事務とは、被後見人の未成年者たると、禁治産たるとに依りて異り、前者に對しては、之を監護教育するを以て、其事務の主眼とす、從つて後見人は、被後見人の居所を指定し、之を懲戒し、其兵役の出願を許否し、其營業を許可し、又は許可を取消し、若くは制限する權利義務を有す、後者に對しては、之を療養看護するを以て其事務の主眼とす、從つて後見人は、被後見人を瘋癲病院に入れ、若くは自宅に監置する等の權利義務を有するものとす、然れども親權を行ふ者が、管理權を有せざるに依り、後見を開始したる場合に於ては、後見人は、全く身上に對する權限を有せざるなり、又後見人の財産に對する事務とは、即ち財産管理の義務なり、後見人が其管理事務を行ふに就きては、有給の財産管理人、又は復代理人を使用することを得べきも、被後見人の爲めに受取りたる金錢が、一定の額に逹すれば、之を寄託するの義務を負ひて、一定の額を超えては、其費用を支出することを得ざるのみならず、每年少くとも一回財産狀況を報告するの義務を負ふ、又其責務を終了したるときは、遲滯なく管理の計算を爲すことを要す、次に後見人の財産に關する法律行爲に就き、被後見人を代理し、又は被後見人が未成年者なるときは、其行爲を爲すに同意を與ふるの權利を有す、但し此代理權、及び同意權に關しては、多くの制限を受け、其重大に渉るものは、親族會の同意を得ることを要す、後見人は、又被後見人に代りて、其戸主權及び親權を行ひ、及び其配偶者の財産を管理することあり、後見人が以上の行爲を行ふには、善良なる管理人の注意を爲す事を要し、其注意を怠り爲めに、被後見人に損害を與へたるときは、損害賠償の責に任ぜざるべからず、後見人の義務は、法律上の強制負擔たり、後見人として指定せられたる者、法定の後見人、又は其選任を受けたる者は、何人と雖も其指定を拒辭することを得ざるものとす、されど左の場合に於ては、其義務を辭することを得、但し婦女に限り、常に其任務を辭することを得るものとす、□一軍人として現役に服すること、□二被後見人の住所の市、又は郡以外に於て公務に從事すること、□三自己より先に後見人たるべき者に就き、後見人たることを辭する事由の存せし場合に於て、其事由が消滅したるとき、□四禁治産者に就きては、十年以上後見を爲したること、但し配偶者、直系血族、及び戸主は、此限りにあらず、□五此他正當の事由等とす。
- 英
- Guardian
- 独
- Vormund
- 仏
- Tuteur
後見監督人
後見監督人とは、後見人の事務を監督するの機關なり、蓋し後見人の事務は、極めて汎博複雜なるを以て、或は時に曠職に流れ、或は時に奸曲を營まむ事なきを保せず、斯くては被後見人の不利甚大なるが故に、之等の弊害を豫防し、以て被後見人の利益を計るの必要を見る、即ち後見監督人の制度は、この必要に應ずる所以なり、後見監督人の事務の大要を示せば、□一後見監督人は、後見人の事務を監督するにあり、其監督の目的は、後見人が其任務を曠くすることなきや否や、及び事務の執行が法規に違反し、又は被後見人の利益を害する事なきや否や等を監督するを以て主眼とす、故に法律は、後見人をして被後見人の財産を調査し、目錄を調製するに當りて、後見監督人の立會を必要とし、管理の計算を爲すに當りても亦其立會を必要とせり、其他後見人に不正の所爲あるを見るときは、後見監督人は、直に相當の措置を執ることを要す、□二後見人は、一日も缺くべからざるが故に、後見監督人は、遲滯なく後任後見人の任務に就くことを促し、若し後任者なきときは、親族會を招集して、其選任を爲さしむるの義務を負ふ、然れども後任者が、法定後見人たる場合に於ては、別に之を選任せしむるの要なきを以て、此場合には、其後見人の任に當れることを通知し、其就職を促すを以て足る、但し法定後見人なき場合に於ては、親族會を招集することを要するものなり、□三後見人が不在なるとき、其他後見人が任務を行ふ能はざるときに於て、被後見人の利益の爲めに、放擲し置くこと能はざる事情あるときは、後見監督人は、後見人に代りて必要の處分を爲すべし、後見人の缺けたるとき、後任者の未だ就職せざるときもまた同じ、□四後見人が、被後見人に對して、債權を有し、債務を負ふとき、後見人が、被後見人の財産を讓受けたるとき、又は親族會の同意を得て其財産を賃借するとき等、其他、凡て後見人と被後見人との利益相反する場合に於て、後見監督人は、被後見人の法定代理人となる、後見人が被後見人の外他の者に對して、代理人たる場合に於て、其代表する者と、被後見人と利益相反する場合もまた同樣なり、後見監督人に二種あり、指定後見監督人、選定後見監督人之なり、後見監督人は、何人にても其職に就くことを得べし、然れども後見人の配偶者、直系血族、又は兄弟姉妹は、後見監督人たることを得ざるものとす、尚無能力者、破産者、剝奪公權者、及び停止公權者は、後見監督人となることを得ざるはいふ迄もなし。(民九一〇條乃至九一六條)
- 英
- Supervisor
- 独
- Gegenvor-mund
- 仏
- Inspecteur
後見人登記籍
(こうけんにんとうきせき)後見人登記籍とは、後見人が被後見人の爲めに、商業を營む場合に於て、後見人登記簿に登記せられたることを謂ふ、後見人が、被後見人の爲めに其營業を爲すに當りては、個々の相手方の爲めに、個々の行爲を爲すにあらずして、廣く公衆に對し、繼續して取引を爲すを目的とするが故に、後見人に關する法律關係は、ある程度までは、一般世人に對して公示せしむるにあらざれば、之をして信用を博せしめ難し、又他方に於ては、商人に關する法律關係を公示せしむるは、之と取引を爲さんとする公衆を保護し、不測の損害を被むることなからしむる爲めにも亦必要なり、後見人が登記を爲し、所謂登記籍を有するの必要も、亦茲に存するものなり。(商七、九條、非訟事件手續法一三九條乃至一五七、一七一條)
- 英
- Register of guardian
- 独
- Register des Vormunds
- 仏
- En-registrement du tuteur
公告
(こうこく)國家、又は公共團體が、或る事實を公衆に告ぐることを公告と云ふ、公告は、法律上種々なる場合に規定せられたるものにして、例へば相續人の曠缺の場合に於て、財産管理人を選任したるときは、其旨を公告し、相續財産に對する債權者の、其債權申出を公告に依りて催告するが如き、又商業登記の場合に於て、登記したる事項を官報、及び新聞紙上に公告するが如き之なり。(民一〇五二、一〇五七、一〇五八條、非訟事件手續法一四四條乃至一四六條等)
- 英
- Public notification
- 独
- Bekannt-machung
- 仏
- Notification publique
公差
(こうさ)貨幣、及び度量衡器の一定の標準分量に對し、或る一定の範圍内迄は、法令上之を有效となすものにして、之を名けて貨幣、及び度量衡の公差と云ふ、公差は、其目的とする所、技術の不完全を認容するにあり、蓋し國家は、貨幣の一定の量目を定め、其範圍内に於て、之を法律上の通貨となし、強制通用の力を與ふるものなり、されど技術上各個の貨幣は、必ずしも同質同量となし得られざるのみならず、日々使用の結果として、其幾分減質することなきを保せず、此場合に於て、或る一定の範圍内までは之を有效とし、以て技術上の不完全を認容す、此場合に於ける、或る範圍内まで認められたる差額が所謂公差なり、度量衡に就きても亦同じ、蓋し度量衡は、農商務大臣の保存する原器に基きて作られたる、地方原器を標準として作成するものなるも、溫度、氣壓、其他技術の不完全よりして、度量若くは衡の差異あるを免れず、法律はこの場合に於ても、一定の公差を定めて、其不完全を認容するものとす。(貨幣法及度量衡法參照)
- 英
- Remedy and allowance
- 独
- Heilmittel und Genehmigung
- 仏
- Grati-fication
公債
(こうさい)國家、及び自治團體は、自己の生存を計らざるべからざることは、毫も自然人と異るなし、唯自然人は自己の所得に從ひ、其幾分を蓄積し、更に其蓄積を增大ならしむるも隨意なりと雖も、國家又は地方團體の如き公法人は、自己の職分に要すべき經費以外に、國民より徵收して蓄積するを得ず、又其徵收も、國民の負擔力に鑑みて、租税其他手數料等を賦課するものなるが故に、國家が一朝不時の事件に遭遇するか、若くは一時國民の負擔が、其生存條件に必要なる經費の支出に堪へざる場合等は、國家若くは自治團體なる公法人が、負債を爲さざるべからざるのときなり、斯かる負債を、一定の形式に從つて募集したるものは公債なり、公債に二種あり、國家の負債は國債と稱し、國家の一部分たる地方團體の負債を地方債と云ふ、又公債には通例、一時拂、有期定額拂、有期臨時拂、及び永遠公債の四に別つ、第一種は、期限に至り一時に元金を償却するものを謂ひ、第二種は、一定の年間元金を据ゑ置き、其後に於て、一定金額を每年元金に充て償還するものを謂ひ、第三種は、一定の年間元金を据ゑ置き、其以後一定の年限内に便宜に依り、隨時元金を償却するものを謂ひ、第四種は、單に永遠にわたりて、隨時元金の一部づつ償却するものを謂ふ、又發行の方法には、平價發行と、呼價發行とあり、百圓の債券に對し、八拾圓とか九拾圓とか云ふが如く、債務者の手取り少きものを呼價發行と云ひ、百圓の債券を與へて、百圓を政府に收むるを平價發行と云ふ、呼價發行は極めて不當の方法なり、然れども又一方より見れば、低利の金を得るの便あり、各其時と場合とに依るものなり。(憲法六二條、府縣制、郡制、市町村制等參照)
- 英
- Public debt
- 独
- öffentliche An-leihe; Staatsschuld
- 仏
- Dette publique
國債
公使
(こうし)公使は、外交官の一種にして、外國に駐在し、帝國政府を代表して、國際交渉の機關たるもの也、公使の職務の詳細は、總べて其本國の法令幷に訓令によりて定るものなり、要するに其任地に於て、本國と駐劄國間の外交事務を整理し、兩國の平和を保ち、調和を圖り、其紛爭衝突を未萠に防ぎ、又紛議の生じたるときは、之を輕減して無事に終局せしむるを勉め、其他本國の權利を保持し、其利益を增進するの目的を以て、駐劄國との交渉を爲し、又任地に在りて、駐劄國、其他諸國間の國際關係にして、直接又は間接に、本國の政略、及び利害に影響すべきものに注目し、之を本國政府に報告し、且つ駐劄國に於ける本國、及び本國人民の利益を保護し、國際公法、及び條約の實行上不當なるものあるときは、之を駐劄國政府に交渉して、平和的に其救濟を爲さしむる事を努め、更に又任國に對しては、其國の憲法其他の法規、若くは人民の信仰を侵さず、兩國間、及び兩國人民の感情を密接ならしむるに在りとす、公使に特命全權公使、辨理公使、代理公使あり、公使は駐劄國に於て、其國法權の下に立つ事なく、殊に身體に關して不可侵權を有す、斯かる特權は、其身分に於て、本國の主權を代表し、列國は平等なる原則に基き、自國の主權を以て、他國の主權を▲せざる相互の尊重、並に便宜に出づるのみならず、其職務の行使に關する必要に出づ、若し其身體を不可侵とせざる以上は、在留國の爲め、自由に其行爲を左右せられ、到底其職務を執行し能はざるべきを以てなり、從つて公使にして犯罪あるときは、其召還を本國に請求し得べく、本國も之に應せざるを得ず、此故に假令駐在國に於て、叛亂の企圖を爲す場合に於ても、駐劄國は、濫りに之を逮捕拘留すること能はず、又民事事件に於ても、駐在國に於て、民事訴訟を強制せらるる事なく、契約其他の法律行爲、並に不法行爲に就きても、悉く本國の法律に依り、本國の法廷に於て審判を受くるの特權を有す、又公使は、駐劄國に於て、自己の信仰する宗教を禮拜するの自由を有し、假令駐在國に於て、其信仰を嫌惡し、若くは禁止する宗教と雖も、公使館、若くは其附屬の寺院内に於て、之を禮拜するを妨害せらるることなし、然れども其禮拜の方法にして、駐在國の治安を妨害し、地方人民の信仰を之に導き、之が爲め其國の禁制を破ること能はざるは勿論、地方の妨害とならざる範圍内に於て、信仰、及び禮拜を爲し得るに過ぎず、公使の所有品は、一切の課税を免除せらるるのみならず、駐在國は之に管轄權を及ぼすこと能はざるものなり、之を公使の特權とす。
- 英
- Foreign minister
- 独
- Gesandte
- 仏
- Ministre étranger
公使館
公使館とは、公使が其駐在國に於て職務を行ふ事務所なり、公使館は不可侵とす、何となれば、若し其居所にして其國管轄の下に在りとし、之に權力を及ぼさるるときは、諸種の口實の下に其居所に侵入せられ、啻に國家代表者たる公使の威嚴を侵し、又其快樂を殺がるるのみならず、其職務を妨害せられ、又檢閲等の爲め、職務上の秘密をも暴露せらるるに至るべきを以てなり、此故に公使館は、公使の許可なくして、當該官憲に侵入すること能はざるなり、又公使館は、國際上の慣例に依り、其所在國の課税は如何なるものなるを問はず、一切免除せらるるものとす。
- 英
- Legation
- 独
- Gesandtschaft
- 仏
- Légation
公式令
(こうしきれい)凡そ國家の意を外部に向つて發表せんには、夫れ夫れの定式を依るを要す、公式令は、主として此定式を定めたる法規なり、□一法律、帝國議會の協贊を得たる國家の意思は、所謂法律にして、法律を公布せんには、天皇の上諭を附すべきものとす、上諭には、帝國議會の協贊を經たる旨を記載し、親署の後御璽を鈐し、内閣總理大臣年月日を記入し、之に副署し、又は他の國務各大臣、若くは主任國務大臣と倶に之を副署すべきものにして、樞密顧問の諮詢を經たるときは、上諭中にその旨をも附記すべきものとす、□二勅令、天皇の制定公布せらるる命令は所謂勅令にして、法律と等しく、上諭を附して公布すべきものとす、勅令の上諭は、普通は親署の後御璽を鈐し、内閣總理大臣年月日を記入し、又は他の國務各大臣、若くは主任の國務大臣と倶に、之を副署すべきものにして、樞密顧問の諮詢を經たる勅令、及び貴族院の諮詢、又は議決を經たる勅令には、その旨を記載するを要し、尚所謂緊急勅令の場合は、憲法の條項に依り、之を發する旨を附記すべきものなり、又帝國議會が承諾せざる場合に於て、緊急勅令が、將來に向つてその效力を失ふことを公布する場合に於ては、尚憲法の條項により、其旨を附記するを要す、□三條約、我國と或る他の一國、又は數國との權利義務に關する合意は所謂條約にして、條約も亦法律勅令と同じく、上諭を附して之を公布す、此上諭には、樞密顧問の諮詢を經たる旨を記載し、親署の後御璽を鈴し、内閣總理大臣之に年月日を記入し、主任各大臣と倶に副署するものとす、□四豫算、及び豫算外の國庫の負擔となるべき契約を爲すの件、以上の國家意思と等しく、上諭を附して公布すべきものにして、この上諭には、帝國議會の協賛を經たる旨を記載し、親署の後御璽を鈴し、内閣總理大臣年月日を記入して、主任の國務大臣と倶に之に副署すべきものなり、□五皇室の大事を宣誥し、及び大權の施行に關する勅旨、以上の行爲を宣誥するには、別段の形式を定めあるものの外、詔書に依るべきものにして、詔書には親署の後御璽を鈐し、其皇室の大事に關するものには、宮内大臣年月日を記入し、内閤總理大臣と倶に之に副署す、又大權の施行に關するものに就きては、内閣總理大臣之に年月日を記入して副署し、又は他の國務大臣と倶に之に副署す、□六文書に由りて發する勅旨にして宣誥せざるもの、上説の皇室の大事に關する勅旨と同じく、別段の形式に依るものを除く外、勅書を以てするを原則とす、□七憲法の改正、憲法の改正は上諭を附して公布すること、法律の場合と同じきも、其上諭には、特に憲法上定められたる特別の條件を具備せること、及び樞密院の諮詢を經たることを記入すべきものとす、□八皇至典範、及び附屬諸規則、皇室典範の改正は、上諭を附すること憲法と等しきも、其上諭の内容は稍之と異り、皇族會議及樞密顧問の諮詢を經たる旨を記載すべきものとす、又皇室典範に基く諸規則、官内省官制其他皇室の事務に關し、勅定を經たる規定にして發表を要するものは、皇室令として上諭を附すべく、此上諭は以上と畧同じ、□九閤令及宮内省令、閣令發布の形式は、内閣總理大臣、宮内省令に於ては、宮内大臣年月日を記入し、之に署名するものとす、以上の勅令、皇室令、閣令及省令は、別段の施行時期ある場合の外、公布の日より起算して、滿廿日を經て之を施行せらるべきものにして、總べて之等の公文を公布するには、官報を以てすべきもの也、□十國書其他外交上の親書、條約批准書、全權委任狀、外國派遣官吏委任狀、名譽領事委任狀及外國領事認可狀には、親署の後國璽を鈐し、主任の國務大臣之に副署すべきものにして、外務大臣に授くる全權委任狀には、内閣總理大臣之に副署するものとす、十一親任式を以て任ずる官の官記には、親署の後御璽を鈐し、内閣總理大臣年月日を記入し、之に副署す、内閣總理大臣を任ずる官記は、他の國務大臣、又は内大臣年月日を記入して副署す、總べて勅任官の官記には、御璽を鈐し、内閣總理大臣年月日を記入して之を奉ずべく、官記には内閣の印を鈐し、内閣總理大臣年月日を記入して、之を宣するものとす、以上各官の辭令書又之に準ず、十二爵記には、親署の後御璽を鈐し、官内大臣年月日を記入し、之に副署すべきものにして、位記又之に準ず、十三勳等の勳記には、國璽を鈐し(勳三等功五級以上は親署)内閣總理大臣旨を奉じ、賞勳局總裁をして年月日を記入し、之に署名せしむ、徽章(例へば從軍徽章の如き)外國叙章及記章の佩用免許の證狀には、内閣總理大臣旨を奉じて、賞勳局總裁をして、年月日を記入し、賞勳の印を鈐し、之に署名せしむ、以上の返上或は褫奪の辭令書、又これに準ず。(四〇年一月三一日公布勅六號公式令)
公示催告
(こうしさいこく)公示催告は、一種の特別訴訟手續にして、不知の相手方又は關係人に對し、權利主張の催告を爲し、其催告に應ぜざれば、失權の宣告を爲すを以て目的となす、凡そ訴訟には、特定の相手方あるを常とし、相手方不明なるに訴訟を起すは、極めて變例に屬す、されど相手方の知れざる爲、法律關係を永遠に不確定ならしむるは、公益上利益あるものにあらず、場合に依りては速に其法律關係を確定し、之が處分を爲す必要あり、斯かる場合に當りては、不知の相手方に對しても、公示の方法に依り、其權利の主張を催告し、之に應じて其主張を爲さざれば、失權の宣告を爲すの必要あり、之公示催告のこの必要に應ずる制度たる所以なり、而して其場合は、例へば不動産登記抹消を爲すべき場合に、登記義務者の行衞知れざるとき、公示催告手續を爲すが如き之なり。(民訴七六四條、不動産登記法一四二條)
- 英
- Public summon
- 独
- Auf-gebot
- 仏
- Assignation publique
公示催告期間
(こうしさいこくきかん)公示催告期間とは、權利者をして其權利を申出せしむるの期間にして、公告催告を官報に揭載したる日より二箇月の時間とす、但し其期間の長短は、當事者の定むる所によるものなり。(民訴七六七條)
- 英
- Term of public summons
- 独
- Aufgebotstermin
- 仏
- Terme de l'as-signation publique
公示催告期日
公示催告期日は、權利を爭はんとする者の陳述を聽き、公示催告申立人の除權判決の申立に就きての辯論を爲し、除權判決の許否を決すべき期日なり、故に權利を爭はんとする者は、其期日までに權利を屆出でたる者は勿論、未だ屆出でざりし者も、出頭して屆出を爲し、且つ陳述を爲すことを得、此期日に於て、申立人も出頭せざるときは、其手續は休止すべきものにして、屆出人のみ出頭し、申立人が出頭せざるときは、未だ除權判決の申立あらざる場合なるを以て、缺席判決を爲し得べき事項なし、以上二個の場合には、新期日指定の申立に依り、裁判所は更に新期日を定むべきものとす。(民訴七六七、七七一條)
- 英
- Time fixed for proceed-ing under the public summons
- 独
- Auf-gebotstermin
- 仏
- Temps fixe pour l'as-signation publique
公示催告裁判所
(こうしさいこんさいばんしよ)公示催告裁判所は、公示催告手續を處理する裁判所にして、其管轄區裁判所なりとす。(民訴七六四、七七九條)
- 英
- Court of public sum-mons
- 独
- Aufgebotsgericht
- 仏
- Tribu nal de l'assignation publique
公示催告手續
(こうしさいこくてつづき)公示催告手續は、不分明の相手方に對し、その有する請求、又は權利に就き、失權の效力を付して、これを裁判所に屆出づべき旨を告示して爲す、裁判上の催告を許すべきや否やを調査する手續なり、故に之が爲めには、公示催告申立人が、書面又は口頭を以て之を申立つるを必要とす、申立を許すときは、裁判所は公示催告を爲すべく、其公示催告には、左の諸件を揭ぐべきものとす、□一申立人の表示、□二請求又は權利を公示催告期日までに屆出づべきことの催告、□三屆出を爲さざるに依り生ずべき失權の表示、□四公示催告期日の指定等これなり、又公示催告に就きての公告は、裁判所の揭示板に揭示し、及び官報又は公報に揭載して之を爲すものとす、右期間内に屆出人なきときは、申立に依りて、裁判所は、除權判決を宣言し、以て權利關係を確定すべきものとす。(民訴七六五條乃至七六九條)
- 英
- Public summon's procedure
- 独
- Aufgebotsverfahren
- 仏
- Progrès de l'assignation publique
公示送逹
(こうしさうたつ)公示送逹は、裁判所書記が送逹すべき書類を、裁判所の揭示場に揭示して爲すべきものにして、之を爲すべき場合は、當事者の居所不明なるとき、又外國に於て爲すべき送逹に就き、準據すべき規定なく、若くは規定あるも、到底其送逹の效なかるべしと認むるときに爲すものなり、されど當事者以外の者に對しては、此方法に依るを得ず、此送逹は、原告若くは被告の申立に依り、裁判所の命令を以て之を許容し、其命令に從ひ、裁判所書記が之を取扱ふを原則とす、又職權を以て送逹すべき書類に係るときは、當事者の申立を俟たず、之を命ずることを得べし、而して其送逹方法は、送逹すべき書類、殊に判決及び決定は、其裁判の部分を裁判所の揭示場に貼付し、又相當と認むるときは、其抄本を新聞に公告して之を爲すべきものとす、其貼付の手續を爲したる月日より十四日を經過したる日を以て、送逹を實施したるもの看做さる、最も裁判所は、必要と認むるときは、公示送逹を命ずるに際し、之より長き期間を定むることを得べし、之を定めたるときは、此期間の經過したる日を以て、送逹を爲したるものと看做す、唯同一の事件に就き、同一の原告、若くは被告に對し、再度以上の公示送逹をなすときは、十四日の期間を俟つを要せず、其再度以上の送逹は、書類の貼付を以て、直に送達したるものと看做す。(民訴一五六條乃至一五八條)
- 英
- Service by public notification
- 独
- Aufgebotszustellung
- 仏
- Notification publique
後者
(こうしや)手形其他裏書を以て讓與することを得る證券の振出人、又は裏書人に對する其人以後の裏書人、又は所持人を稱して後者と云ふ、例へば茲に爲替手形あり、甲は其振出人、乙は其裏書人、丙は其所持人なりと假定せば、乙は甲の後者なり、丙は又乙の後者なるが如し。(商四七六、四八八條)
- 英
- Subsequent party
- 独
- Nachmann
- 仏
- Partié postérieure
後者總員
後者總員とは、後者全員と云ふに同じ、例へば前例に於ける乙、及び丙は、甲の後者にして全員なるが如し。
- 英
- All of subsequent parties
- 独
- alle Nachmänner
- 仏
- Tous des parties postérieures
公證
(こうしよう)權限ある官吏、又は公吏が、其與へられたる職權職務に依りて、或る事實を公に證明する行爲を公證と云ふ、例へば裁判所書記が、訴訟上に於て、公判始末書、又は公判調書を作製して、其事件の成績を證する如き、又登記官吏が不動産登記を爲すが如し。(民訴一二九、一三〇、一三四條、裁構法九一條、不動産登記法參照)
- 英
- Public register
- 独
- Notariat
- 仏
- Enregistrement public
公證人
公證人とは、司法大臣に隷屬して、公證人規則に依り、人民の囑託に應じ、民事に關する公正證書を作るを以て職務となす公吏を云ふ。(一九年八月法律二號公證人規則一條)
- 英
- Public notary
- 独
- Notar
- 仏
- Notaire
公證人規則
(こうしようにんきそく)公證人規則とは、公證人の職務權限、公證人の選任、及び試驗等に關する事項を規定せる法律なり。(公證人規則)
- 英
- Regulation for public notary
- 独
- Notargesetz
- 仏
- Règlement du notaire
公證人規則施行條例
公證人規則施行條例は、公證人の受持區、試驗登用に關する詳細の手續等を規定せるものなり。(一九年八月司法省令甲二號)
公證役場
(こうしようやくば)公證人が職務を行ふ事務所を稱して、公證役場と云ふ、公證役場には、公證人某役場と記せる表札を揭ぐべきものとす。(公證人規則施行條例四條)
- 英
- Office of public notary
- 独
- Notariat
- 仏
- Bureau de notaire
公證文書
(こうしようぶんしよ)權限ある國家機關、又は公共團體が其職權に依り、或る事實を公證したる文書を公證文書と云ふ。
- 英
- Public registered document
- 独
- Notariatsurkunde
- 仏
- Document in-scrit public
公正證錄
公正の效力を有する記錄を公正記錄と云ふ、例へば公判始末書、判決書の如き之なり。
- 英
- Registered record
- 独
- notarielles Protokoll
- 仏
- Note enregistrée
公正證書者
公正證書とは、公證人が私人の囑託に應じて、法定の方式に從ひて作成したる民事に關する證書を云ふ、而して其原本は、公證人役場に保存し、正本、謄本は、囑託者の請求に依りて之を下付するものとす、公正證書は、僞造の證明ある迄は、一應完全なる證據力を有するものと看做さる、私書證書と大に其效力を異にする處なり。(公證人規則三九、四三條)
- 英
- Registered bond
- 独
- Notariats-instrument
- 仏
- Bon enregistré
公正の效
(こうせつのこふ)或る文書に法律上公認せられたる證據力あることを云ひ、例へば公正證書が公正の效ある證書なるが如し。
- 英
- Effect of the official register
- 独
- notarielle Wirkung
- 仏
- Effet de l'authentique
公選
(こうせん)公選とは、法令の規定に基き、公職に從事すべき者を選擧することを云ふ、例へば國會、府縣會、市町村會等の各職員、市町村の吏員、又は所得税調査委員等を選擧するの類之なり、□一法律命令の規定に基きて行ふ處の選擧たる事を要するが故に、例へば何々鄕友會、何々青年會の幹事、又は理事の選出は、法令に基き選擧せらるる者にあらざるを以て、其選擧は公選と云ふを得ず、□二公職に從事すべき者を選擧するを要するが故に、例へば株式會社の取締役、監査役を選擧するが如き、假令其選擧が法律に基くと雖も、之等は公職に從事するものと云ふべからざるを以て、公選と云ふことを得ざるなり。(衆議院議員選擧法等參照)
- 英
- Public election
- 独
- öffentliche Wahl
- 仏
- Election publique
控訴
(こうそ)一審の主たる裁判に對して、第二次の無制限なる更審を求むる爲めに爲す上訴を云ふ、無制限なる更審とは、裁判所の審理が、その事項に制限なく、且つその材料に制限なきことを云ふ、故に控訴は、恰も第一審に於けるが如く、裁判所の審理を求むる爲めになす上訴なり、これを以て控訴は、第一審の裁判の正當、若くは不當を裁判するを直接の目的となすものにあらず、爭に係る權利其ものの正否を、總べての材料を用ゐて判斷するを、其目的となすものなり、主たる裁判なる語は、蓋し不服を申立てられたる裁判を、その實質より觀察して與へたる名稱なり、控訴の條件を擧ぐれば、□一不服を申立らるる裁判は、第一審の主たる裁判なることを要す、主たる裁判とは何ぞや、法理上より裁判を見るときは、訴に係る請求、若くは法律關係其ものに就きて爲したる裁判あり、又訴訟的法律關係が成立したるや否やの點に就きて爲したる裁判あり、此兩者は、一箇の訴訟として、繫屬したるものに對する最終の目的たる裁判なりとす、尤も原告の方面より觀て最終の目的を達するものと、被告の方面より觀て最終の目的を達するものとの二者なきにあらずと雖も、結局權利の保護を直接の目的とする裁判なり、之を主たる裁判と云ふ、次の裁判は、所謂主たる裁判に屬す、イ請求又は法律關係其ものに就きての裁判、ロ訴訟關係の條件が存在せざることに就きて言渡す裁判、□二控訴は、第一審の敗訴者に限り之を爲すことを得、之控訴を爲すことを得る主格に就きての條件なり、控訴を爲すことを得る者は、第一審の原告若くは被告なり、故に甲乙當事者間の判決に對しては、丙なる第三者は控訴を爲す事を得ず、例へば甲が原告として所有權を主張したる訴に就きての判決に對し、丙なる者其所有權自己に在りとなし、控訴を爲すことを得ざるが如し、原告又は被告本人にあらざるも、其相續人其他一般承繼人は、控訴を爲すことを得るは勿論なり、次に控訴を爲すことを得る者は、第一審の敗訴者ならざるべからず、□三控訴を受くる裁判所は、不服ある裁判を爲したる裁判所の直接上級の裁判所なることを要す、控訴を受くる裁判所は、不服ある裁判を爲したる裁判所に對し、第二審の關係にある裁判所たることを要す、之訴訟に就き、更審を爲すべき裁判所に關する條件なり、即ち不服ある裁判をなしたる裁判所が、區裁判所なるときは、其裁判に對する控訴は、其區裁判所を管轄する地方裁判所に之を爲さざるべからず、若し不服ある裁判をなしたる裁判所が、地方裁判所なるときは、其裁判に對する控訴は、其地方裁判所を管轄する控訴院に之を爲さざるべからず、□四控訴を爲すには、恰も訴を提起するが如く、訴訟を控訴審に繫屬せしむる行爲を必要とす、此行爲を控訴の提起と云ふ、控訴提起の條件としては、控訴狀の提出を要し、又提起に就きては、控訴期間を遵守するを要す。(民訴三九六、二二八、二一〇、一七八、一七九、一八一條、刑訴、二五〇條)
- 英
- Appeal
- 独
- Berufung
- 仏
- Appel
控訴期間
(こうそきかん)控訴期間は、一箇月の不變期間内に之を爲すを要す、控訴提起の期間は、控訴を以て不服を申立てらるる判決の送達より之を起算す、而して控訴は、右の不變期間内に之を爲す事を必要とす、即ち期間の經過したる後に於て、控訴を提起する事を得ざるは勿論、期間の始らざる時に於ても、等しく控訴を爲すを得ざる也、故に判決の送達前に爲したる控訴は無效なり第一審裁判所が、控訴期間内に追加裁判(追加裁判とは、主たる請求、附帶の請求、費用の全部、若くは一分の裁判をなすに際し、脱漏したるとき申立により、其裁判を補充することを云ふ)を以て、判決の補充をなしたるときは、之に對する控訴期間は、追加裁判の送達の時を以て始まる、以上は民事裁判に對する控訴期間なりとす、刑事裁判の控訴期間は五日なり、而して其期間は、第一審の判決言渡の日より起算す。(民訴四〇〇、二四二條、刑訴二五二條)
- 英
- Term of appeal
- 独
- Anklage-frist
- 仏
- Délai de la poursuite
控訴裁判所
(こうそさいばんしよ)控訴裁判所とは、控訴を受くる裁判所を云ふ、故に第一審が地方裁判所なるときは、控訴裁判所とは、其地方裁判所を管轄する控訴院なる如し。(控訴の部參照)
- 英
- Appellate court
- 独
- Ober-landgericht
- 仏
- Tribunal d'appel
控訴審
控訴審とは、控訴事件を審理處置するを云ひ、時としては、地方裁判所に於てすることあり、又控訴院に於てすることありとす、一に控訴裁判所の審理と云ふに同じ。(民訴七六二條)
- 英
- Instance of appeal court
- 独
- Oberlandgerichtsuntersuchung
- 仏
- In-stance d'appel
控訴狀
(こうそじよう)控訴の提起は、控訴狀なる書面を控訴裁判所に差出して、爲すものとす、控訴狀に記載すべき必要條件は左の如し、□一控訴を以て不服を申立てらるる第一審判決の表示、□二其判決に對して、控訴を爲す旨の陳述、第一審判決を表示するに、如何なる方式を以てすべきやに就きては、別段の規定なし、故に數多き判決中に就き、何れの判決が不服なるやを、特に指定することを得べき文字の記載あるに於ては、右要件を充たすものなり、例へば原告某、被告某間の何々事件に就き、何年何月何日に言渡されたる判決と記載するが如きも、此要件に適合するものならん、控訴せらるべき判決の表示としては、必ずしも其判決の全文を寫出するの必要なき也、以上二箇の事項のみが、控訴狀に具備すべき要件にして、當事者、即ち控訴を爲す者、及び其相手方の表示も、控訴を受くる裁判所の表示も、共に必要條件中に入らずと雖も、之等の事項も亦控訴を爲す者の意思に依りて定まるべきものなれば、控訴の適否を判斷するに就き、標準となるべきものにして、故に之を記載すべきは當然なり、次には要件にはあらざるも、控訴狀に揭ぐべきものあり、A判決に對する不服の程度、即ち第一審判決の全部に對する不服申立なるや、又は其幾部分に對する不服申立なるや、及び之に牽聯して、第一審判決に就き、如何なる變更を求むるやの申立を揭ぐるは其一なり、此申立は、控訴人の一定の申立にして、即ち控訴の申立と稱するもの之なり、B控訴人が口頭辯論に於て、新に主張せんとする事實、及び證據方法は其二なり。(民訴四〇一條)
- 英
- Letter of appeal
- 独
- Anklege-schrift
- 仏
- Lettre d'appel
控訴人
(こうそにん)控訴人とは控訴を提起したる人にして、通常は第一審の敗訴者也、控訴申立人とは、刑事訴訟に於て、控訴を提起する者を云ふ、即ち通常は刑事被告人也。
- 英
- Appellant
- 独
- Appellant
- 仏
- Appelant
控訴申立人
- 英
- Appellant
- 独
- Appellant
- 仏
- Appelant
控訴院
(こうそゐん)控訴院とは、地方裁判所の直近上級の裁判所にして、即ち第二審の合議裁判所也、控訴院は、全國七箇あり、□一東京控訴院、□二名古屋控訴院、□三大阪控訴院、□四廣島控訴院、□五長崎控訴院、□六宮城控訴院、□七函館控訴院之なり、控訴院は、左の事項に就き裁判權を有す、イ地方裁判所の第一審判決に對する控訴、ロ區裁判所の判決に對する控訴に就きて爲したる、地方裁判所の判決に對する上告、ハ地方裁判所の決定、及び命令に對する法律に定めたる抗告、特に皇族に對する民事訴訟に就きては、第一審、及び第二裁の裁判權は、東京控訴院に屬す。(裁構成三七、三八條)
- 英
- Court of appeal
- 独
- Ober-landgericht
- 仏
- Cour d'appel
公訴
(こうそ)凡そ犯罪あれば、國家の法律秩序は害せらるるが故に、公益の爲め、犯罪者に刑罰を加へて、此侵害に對し、回復を爲さしめざるべからず、之國家自身の爲すべき事項に屬す、故に犯罪よりして、國家に科刑權を生ず、此科刑權の確定、及び實行は、即ち刑事訴訟の内容を成すものなり、而して國家の科刑權は、同時に國家の義務たり、從つて之を處分せしむるを得ず、蓋し國家が公益の爲めに科刑權を有する以上は、犯罪あれば、又公益の爲めに、必ず刑罰を加へざるべからず、犯罪より生ずる科刑權は、之を隨意に處分し得ざるもの也、此國家の科刑權を行使せんことを國家に請求するを公訴と云ふ、而して公訴は職務として、檢事が行ふものなり。(裁構法六條、刑訴一條)
- 英
- Law suit
- 独
- Strafklage
- 仏
- Poursuite
公訴權
公訴權は、裁判所に對し、國家の科刑權に就き、判決を求むる訴權を云ふ、其發生は、犯罪の時にあるを通常とすれども、科刑權の成立を條件として存在するものにあらず、犯罪の嫌疑者に對しても、亦公訴權を成立す、公訴に就き、固有の主義を生ず、□一職權訴追主義、及び勵行主義、科刑權は、公益の爲めに存するが故に、絶對に行はるるを要し、從つて公訴權は、被害者の意思如何に拘らず、國家の機關たる檢事をして、職權を以て追行せしむべきものとす、之を職權訴追主義と云ふ、又公訴提起の職務ある檢事は、便宜に從ひ、任意に起訴、不起訴を決すべきにあらず、犯罪あれば、必ず之を訴ふるの義務あり、之を勵行主義と云ふ、□二不變更主義、科刑權は之を處分する能はず、又公訴權も之を處分する能はず、從つて被害者は、私訴の場合を除く外、公訴の訴訟關係に參與するを得ず、又科刑權、及び公訴權は、被害の處分を許さざること明なり、又國家に於ても、此權を自由に處分するを得ざるが故に、之等の權利が實際存在すれば、裁判所をして、實際存在するが如くに確定せしめ、決して其成立、及び範圍を變更するを許さず、之を不變更主義と云ふ、此主義の例外は、親告罪(被害者の告訴によりて刑を適用する罪)に於ける告訴の抛棄に依り、公訴權消滅する場合なり、□三實體眞實發見主義、裁判所が、判決の基礎たるべき事實を確定するに當り、此主義に依るを要するなり、所謂實體眞實發見とは、裁判所が實際生じたる犯罪事實と符合する認識を得るを云ふ、若し裁判所が權利の爭に就き、裁判を爲すに當り、實際生じたる事實を裁判の基礎となすときは、其訴訟は、實體的眞實を發するに努むるものと云ふべし。
- 英
- Right of appeal
- 独
- Anklage-recht
- 仏
- Droit d'appel
公訴の時效
公訴の時效は、公訴權を消滅せしむるもの也、即ち法律に定めたる刑を各場合に適用する國家の權利と、義務とが、時效に罹るものにして、犯罪に依りて生じたる國家の科刑權、及び之に伴ふ義務を消滅せしむ、公訴時效を設けたる理由に就きては、社會の怠慢と犯罪の遺忘とに基くものとなすか、若くは證據の湮滅に基くものとなすを普通の學説とす、然ども此兩説は、其當を得たるものと云ふべからず、公訴の時效を設けたるは、事實の勢力に重きを置きたるが爲め也、元來法律秩序は、犯罪必罰の原則を貫徹するに依りてのみ維持せらるるものと云ふべからずして、國家現實の目的と投合し、初めて法律秩序の維持を望む事を得べし、然るに今犯罪を數年の後に至りて罰せんか、却て現在の秩序を蹂〓するに止まり、犯罪人及び世人に對しては、何等の效驗なかるべし、時效を設けたるは、實に犯罪後に生じたる總べての事實と、法律の正義と相抵觸するに當り、法律をして事實に屈從せしめ、以て其調和を圖るに外ならざるなり、而して此調和をなす爲めに、罪の輕重に由り、各異る時效期間を設く、即ち、イ違警罪は六月、ロ輕罪は三年、ハ重罪は十年にして、時效は犯罪の日より起算す、但し繼續犯罪(繼續犯とは、行爲者が不法行爲に依り發生せしめたる犯罪行爲の狀態を持續する場合の犯行を云ふ)に就きては其最終の日とす、時效の期間は初日を算入すべきものとす、之犯罪の日を以て、公訴權、及び科刑權は發生するを以て也、又犯罪日に相當したる前日の終了、即ち午後十二時を以て、時效は完成するものにして、最終の日休暇に當るも、之を期間に算入するものとす。(刑訴八、一〇、一五條)
拘束
(こうそく)拘束とは、廣く人の自由を束〓することを云ふ、例へば身體の拘束、權利の拘束と云ふが如し、元來人は自由權を有するものなるが故に、徒に斯かる自由の制限を爲さざるを文明國の通義とす、故に人の自由を拘束するには、必ずや法律命令に依らざるべからず、我憲法又之を認めたり。(憲法二三條)
- 英
- Binding
- 独
- Einband
- 仏
- Reliure
公道
(こうどう)公道(公路)とは、一般の自由交通に供せられたる土地にして、私權の作用に依りて、其使用權を剝奪せられざるものを云ふ、□一道路が公路たる爲めには、其土地の所有權が、何人に屬するを問はず、國家の土地にても、一般の自由交通に供するにあらずして、或る工場、又は山林、其他特別の目的の爲めに開設したるものは、公道にあらずして私道なり、又私人の土地に設けたる道路にても、一般の自由交通に供し、私權の行使に依りて、其使用を剝奪する能ざるに至りたるものは公道なり、□二一般の自由交通に供するにあらずして、自己の土地の上に道路を開設するは、所有權の自由行使にして、官廳の許可を要せず、此場合に於て土地所有者が、私道を一般公衆の交通に許すも、之が爲めに私道が變じて公道となることなし、公道は、私權の行使に依りて、其使用を剝奪する能はざるものたらざるべからず、之が爲めには私權の行使を制限するか、又は私道を徵收して公共團體の所有物とせざるべからず、之所有權の公用徵收、又は公用制限なるが故に、法律の規定に基きて初めて爲すことを得べし、故に私道を如何に公衆の白由交通に供する事實あるも、公用徵收を行はずしては、決して公道となることなし、從つて私道所有權は、何時にても、其道路を廢止することを得べし、□三公道は、道路警察の作用に服す、故に道路警察の支配の及ぶ範圍に於ては、私權は其行使を停止せらる、例へば公道の敷地が私有地なる場合に於ても、交通を害する工事を其上に設くる能ず、然れども私權行使の制限は、道路警察の目的の範圍内に於て、制限せらるるに過ぎざるなり、故に公道たる性質の儘にて、土地の私有權を他人に讓渡することは、何等の妨ぐる處なし、□四土地の所有が、公道となりたる爲めに制限せらるる結果として、其土地に對して、第三者が有する地上權、永小作權、其他の他物權は、公道たる間、其行使を制限せらる、□五公道に對しては、私權を行使する能はざるが故に、其土地の上に存する一切の私權は、土地が公道たる間、決して時效に罹ることなし。
- 英
- Public road
- 独
- öffentlicher Weg
- 仏
- Rue publique
國道
國道とは、公道の一種にして、太政官達によりて、道路を分ち、國道、縣道、里道の三種となしたる其一なり、而して國道の幅員は、道敷四間以上、並木敷、濕拔敷を合せて三間以上、總べて七間より狹少ならざるものとす。(九年六月太政官六〇號達、一八年一月太政官一號布達)
- 英
- Highway
- 独
- Landstrasze
- 仏
- Grand chemin
工場抵當
(こうぢやうていたう)營業の爲め、物品の製造、加工、又は印刷、撮影、及び、電氣又は瓦斯の供給の目的に使用する場所を工場と謂ひ、其所有者が、之に抵當權を設定する事を工場抵當と云ふ。(三八年三月法五四號工場抵當法)
- 英
- Manufactory pledge
- 独
- Werkhaus Pfand
- 仏
- Gage de la factor-erie
公定相場
(こうていさうば)取引所に於て、賣買したる物件の相場を公定相場と云ふ。(二六年三月法五號取引所法二六條)
- 英
- Market price
- 独
- Marktpreis
- 仏
- Cours du marche
後天的
(こうてんてき)先天的、或は生具的なる語に對して用ゐらる、即ち經驗に基ける、又は經驗より導き出されたるてふ意義の語なり、故に哲學上等に於て後天的と云へば、吾人の認識、又は智識が、經驗界に屬することを意味し、經驗に俟たざる、又は經驗を超越したるてふ事に反するものなり、例へば吾人の智識は、總べて後天的也と謂へば、吾人の智識は生得のものにあらず、又神より直接超絶的に賦與せられたるものにもあらず、即ち吾人の經驗を俟たずと云ふことに反對し、全く吾人が此世に於て、直接經驗をなすことによりて得たるものなりてふことを意味するが如し、又論理學上に於ける歸納的推理は、其程理の基礎又は過程が、總べて吾人の經驗的事實に依るを以て、之を後天的なりと謂ふが如し、之を要するに、後天的は、經驗的てふ語と、其意義に於て大同なり。
- 英
- A-posteriori
- 独
- A-posteriori
- 仏
- A-posteriori
口頭委任
(こうとういにん)口頭委任とは、口頭を以て、即ち書面に依らずして、委任契約をなすことを云ふ、委任とは、當事者の一方が、法律行爲を爲すことを相手方に委託し、相手方が之を承諾するに依りて、效力を生ずる契約なり、□一委任は、諾成契約なり、卽ち委任契約の成立するには、一定の方式を要せざる者なり、即合意によりて成立す、□二委任は無償なることを通性とす、故に受任者は、特別の意思表示あるにあらざれは、其報酬を請求する事を得ざるものとす、□三委任は、片務契約なることを通性とす、之委任は、其通性に於て無償なることに依りて自ら明なり、詳言すれば、委任は片務契約なることを以て通常とし、唯委任者が受任者に對し、報酬を與ふることを特約したる場合に於て、雙務契約たるべきものとす。(民六四三條)
- 英
- Verbal trust
- 独
- mündilches Vertrauen
- 仏
- Confiance verbale
口頭契約
(こうとうけいやく)口頭に依りてなす契約を、書面契約に對して口頭契約と云ふ、契約とは、私法上の效果を生ぜしめんととを目的とする、二人以上の合致の意思表示なり、□一契約は、少くとも二人の當事者ある事を要す、契約は、合致したる意思の表示に依りて成立するものなるが故に、二人以上の當事者を必要とするは論を俟たず、□二契約は、意思の合致ある事を要す、契約の當事者は、各分明なる意思を有し、而して其意思が互に投合一致する事を必要とす、若し意思にして明瞭を缺くか、或は意思の合致なければ、決して契約は成立すべきものにあらず、□三契約は、合致の意思の表示せられたる事を要す、契約とは、二人以上の意思の合致を云ふものなれども、其意思は必ずや外界に表示せられたるものならざるべからず、唯各當事者が、其腦裡に懷ける意思が、偶々一致する事あるも、未だ外界に表示せられざる以上は、法律上契約と稱すべきものにあらす、故に契約を成立せしむるには、當事者が相互に意思を外界に發表することを必要とす、而して先に表示せられたる一方の意思表示を申込と云ひ、之に對する他の一方の意思表示を承諾と云ふ、□四契約は可能にして、且つ適法なる目的を有することを要す、契約の目的が不能、又は不適法にして、當初より其目的を達し得べからざるときは、契約は成立することなし、例へば泰山を挾んで北海を越ゆることを契約の目的と爲すが如き、又會社設立登記前の株式の讓渡を其目的と爲すが如き、前者は事實上の不能に依り、後者は不適法の理由に依り、其契約成立せず、されど一度成立せし契約は、後に至り目的の不能、若くは不適法に歸することあるも、右と同一に論斷するを得ず、何となれば、此場合は、唯契約の目的を達することを得ざるに止まり、成立せし契約の不成立を來すものにあらざればなり、□五契約は、私法上の效果を發生せしむる意思表示なる事を要す、法律行爲は、私法上の效果を生ぜしむることを目的とする意思表示なり、而して契約は法律行爲の一種なるが故に、此要件を必要とするは論を俟たず、從つて單に社交上、又は德義上の性實のみを有する合意の如きは、之を法律上の契約と稱すべきものにあらず、例へば明日友人の病氣を見舞はんことを約束するも、契約の效果を生ぜず、蓋し當事者に於て、私法上の效果を生ぜしむる意思を有せざればなり、之に反して書籍を賣買する合意の如きは、法律上の契約なり、□六契約は、私法上の效果が、當事者間に發生し得べきものならざるべからず、私法上の效果が、當事者に及ばずして、第三者にのみ及ぶものは、之を契約と稱すべきものにあらず、彼の合議裁判所の判決、又は數名の仲裁人の爲したる仲裁判斷の如きは、私法上の效果を發生せしむべき目的を以て爲されたる一種の合意なれども、之を契約と稱するを得ず、契約の種別を擧ぐれば次の如し、イ双務契約、及び片務契約、契約當然の效果として、當事者双方が債務を負擔するときは、之を双務契約と云ひ、單に當事者の一方のみが債務を負擔する時は、之を片務契約と云ふ、ロ有償契約、及び無償契約、當事者が出捐を爲し、相互に利益を得、又は第三者をしてこれを得しむる契約を有償契約と云ひ、當事者の一方のみ利益を受け、他の一方は、何等の利益をも受けざる契約を無償契約と云ふ、ハ諾成契約、及び要物契約、諾成契約とは、當事者の合意のみに依りて成立する契約を云ひ、要物契約は、當事者の合意以外に、法律上一定の條件を履行せざれば、效力を生ぜざる契約を云ふ、二條件付契約、及び無條件の契約、條件付契約とは、契約の效力の發生、又は消滅が、不確定なる事實の發生に繫る契約を云ひ、無條件契約とは、然らざる契約を云ふ、ホ實定契約、及び射倖契約、實定契約とは、契約より生ずる當事者の損益が、結約當時に確定せる契約を稱し、射倖契約は、之に反し契約より生ずる當事者の損益は、結約當時に於ては確定せずして、或不確定なる事實の發生するや否やに依りて、始めて定まる契約を云ふ、へ主たる契約、及び從たる契約、主たる契約は、他の契約に關係なく、獨立して成立する契約を云ひ、從たる契約は、他の契約に附隨して成立する契約を云ふ、ト有名契約、及び、無名契約、有名契約とは、法律上一定の名稱を有し、特別の規定を存する者を云ひ、無名契約は然らざる契約を云ふ、チ明示契約、及び默示契約、明示契約とは、當事者が直接に意思を表示して締結する契約を云ひ、默示契約は、間接に意思を表示して、契結する契約を云ふ。(民五二一條乃至五二八條)
- 英
- Verbal contract
- 独
- Ver-balkontrakt
- 仏
- Contrat verbal
口頭審判
(こうとうしんぱん)口頭審判とは、裁判所が書面審理によらずして、當事者の口頭辯論を聽き、以て爭訟を審理することを云ふ、農商務省特許局に於ける特許、意匠等の審判は、口頭審判に依るが如き之なり。(特許法、意匠法等參照)
裁判所が口頭に依り係爭事件を審糺することを口頭審問と云ふ。
- 英
- Verbal trial
- 独
- mündliche gerichtliche Untersuchung
- 仏
- Jugement verbal
口頭審問
- 英
- Verbal trial
- 独
- mündliche Untersuchung
- 仏
- Jugement verbal
口頭辯論
(こうとうべんろん)口頭辯論とは、公廷に於て、訴訟當事者が口頭を以て、攻撃、防禦をなす方法を云ふなり、口頭辯論主義は、民事訴訟法の採用せる訴訟上の原則なり、□一辯論公開の原則實行、眞正なる公開は、口頭辯論に依りて實行せらる、書面審理に依るときは、之を査閲する裁判官、及び當事者の外は、其關係を知る能はざるを以て、その審理は公開と云ふを得ず、□二原被對等の實行、卽ち當事者雙方を出廷せしめ、互に辯論をなさしむべく、一方の辯論のみに依らずして、必ず相手方に攻撃、若くは防禦を爲すの機會を與ふべきものとす、□三直接辯論、口頭辯論主義は、一名これを直接辯論主義とも云ふ、卽ち裁判官の面前に於て、直接に口頭を以て辯論を爲せばなり、故に當事者の提出したる書面、若くは裁判官の報告書に、如何なる事項の存在するも、裁判官の面前に於て、當事者が口頭を以てこれを援用し、直接に辯論をなさざる以上は、裁判所は申立なきものと見做し、其書面を顧みざるものとす、最も訴狀、控訴狀、上告狀の如きは此限りにあらず、□四口頭の申立及び陳述のみを判決の基本とす、故に判決は口頭の陳述の範圍内に於てし、心證の自由も、其陳述、及び證據調の範圍内に於てす、□五判決の基本たる辯論に臨席したる判事に限り、之が裁判を爲す、即ち當事者より直接に辯論を聽き、之を記憶する判事に限り、評議を遂げ、裁判を爲すべきものとす。(民訴一〇三、二三二條)
- 英
- Oral discussion
- 独
- mündliche Verhandlung
- 仏
- Dispute orale
公認
(こうにん)國家がある事實に就き、其國法上の成立、存在、效力等を認むることを公認と云ふ。
- 英
- Public approval
- 独
- öffentliche Billigung,
- 仏
- Approvation publique
公認教會
國家が公認して、一方に特別の權利を附與すると同時に、他の一方に於て、特別の監督に附する宗教教會を公認教會と云ふ。
- 英
- Officially permitted church
- 独
- öffentliche Kirche
- 仏
- Eglise of-ficiellement permise
後任者
(こうにんしや)前任者に代つて、其任務に就きたる者を後任者と云ふ、例へば後見人が死亡したる場合、若くは行衞不明となりたるが如き場合に於て、其任務を襲ひて、後見人と爲たりる者は、即ち後任者也。(後見の部參照)
- 英
- Successor
- 独
- Nachfolger
- 仏
- Successeur
公賣
(こうばい)競爭入札拂、又は執達吏が、債權者の爲めに、債務者の財産を差押へたる場合に、競賣の方法に依りて、或る物件を賣却する如きを公賣と云ふ。(民訴五七二條)
- 英
- Public sale
- 独
- öffentlicher Ver-kauf
- 仏
- Vente publique
公賣處分
官廳、又は公署が行ふ公賣行爲、例へば陸軍省に於て、不用被服等を賣却するが如き行爲を公賣處分と云ふ。
- 英
- Public sale of confiscated pro-perty
- 独
- Verauctionirungsverfügung
- 仏
- Vente publique des biens confisqués
公賣品
公賣に依りて賣却する物品を公賣品と云ふ。
- 英
- Things to be sold by auction
- 独
- Verauctionirungssachen
- 仏
- Choses vendues par l'enchère
購買組合
(こうばいくみあひ)購買組合とは、産業又は生計に必要なるものを購買して、之を組合員に賣却することを目的として設立する産業組合を云ふ、例へば米穀購買組合、雜貨購買組合の類之なり、元來此の制度は、一種の社會政策として考出せられたるものに係り、然も其最も善良なる方法の一種なり、蓋し購買組合、又は消費組合は、出來得る限り生産者より直接に物を購買し、之を組合員たる消費者に分配するものなるが故に、中間の媒介者たる商人の手を俟つことなく、又これ等の者に支拂ふべき一種の手數料たる利益は、購買組合の利得となりて、畢竟購買者たる消費者の利益となり、生活の程度低き者をして、購買力を大ならしむるに至るものとす、これ貧民救濟を以て自任する或る種の社會主義者が、極力此の制度の善良なるを稱贊する所以なり。
- 英
- Purchasing guild
- 独
- Ein-kaufsgenossenschaft
- 仏
- Corporation de l'achat
公報
(こうはう)國家が、或る事項の一般公布を目的として發する報導を云ふ、例へば特許公報、商標公報と云ふが如し。(三二年三月法三六號特許法四二條、三二年三月法三八號商標法三八條)
- 英
- Official report
- 独
- Intelligenzblatt
- 仏
- Rapport officiel
公法
(こうはふ)公法人、公法は、一の人格が、權力の主體たる性格に於て、他の人格に對して有する關係を支配する法則にして、一面に於ては、權力團體と、其團體員との關係を支配し、他の方面に於ては、二個の權力團體相互の關係を支配すとなすを通説とす、權力團體の最も發達したるものは國家なり、國家は其領域内に於て、最高權力を以て其構成分子を支配す、國家が此最高權力の主體たる性格に於て有する關係を規定するものは公法なり、又内部に於ては、其構成分子に對して有する關係あり、外部に於ては他の國家に對して有する關係あり、此關係を規定するものは國際公法なり、(國際法の部參照)之等の關係を支配すべき法制は、皆公法の領域に屬すとなす、而して最高權力者たる性格に於ける國家と、其構成分子との内部關係は、權力關係なり、此權力關係は、自然に存在し、法律に依りて生ずるものにあらず、國家は本質に於ては、絶對無限なる權力者なるも、自ら行使の範圍を制限し、之を一定の形式に從はしむる事を得、國家が自ら行使の範圍に制限を加ふるときは、其制限に拘束せらるべきものなり、國家は素より其有する所の最高權力に依り、其制限を除く事を得るも、之を除かざる間は、其制限を超越するの自由を有せず、即ち自然に存する權力の實質は消滅せざるも、之を行使すべき範圍と形式とを定むる法則は、嚴乎として拘束力を有す、斯くの如く國家が、自ら加へたる制限に覊束せらるるときは、國家と其構成分子との間に、一の法律關係を生ず、此法律關係を規定するものは公法也、憲法、行政法、裁判所構成法、刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法に於ける規定の如き、多くは直接間接に、國家權力の作用に關するものにして、公法の領域に屬す。
- 英
- Public law
- 独
- öffentliches Recht
- 仏
- Droit public
公法人
(こうはふじん)國家、及び其機關として、國家の政務を行ふ事を目的とする法人を謂ふ、國家の機關たる公法人、即ち公共團體は、更にこれを普通公共團體と、特別公共團體とに別つを例とす、前者は、一般の公共事務を行ふを目的とするものにして、其權限は席き推定を受くるを常とし、則ち府、縣、郡、市、町、村等の如き之なり、後者は、特別の公共事務を行ふことを目的とするものにして、其權限は狹き推定を受くるを常とす、水利組合、北海道土功組合等の如き之なり。
- 英
- Public juriical person
- 独
- öffentliche juristische Person
- 仏
- Per-sonne morale publique
公法上の義務
(こうはふじやうのぎむ)公法關係に基く義務にして、例へば徵兵の義務、納税の義務の如き之なり。(憲法二一、二二條、公權の部參照)
- 英
- Duty in public law
- 独
- öffentliche Pflicht
- 仏
- Devoir dans le droit public
公法上の關係
主として國家と國家構成分子間に生ずべき關係を廣く公法上の關係と云ふ、即ち公法上の權利義務と云ふが如き皆之なり。
- 英
- Relation in public law
- 独
- rechtliches Verhältnisz
- 仏
- Relation dans le droit public
公法上の權利
公法上の權利とは、一に之を公權と云ふ、即ち公法上の義務に對するの名稱なり。(公權の部參照)
- 英
- Public right
- 独
- öffent-liches Recht
- 仏
- Droit dans le droit public
公法上の收入
(こうはふじやうのしうにふ)主として公法上の原因に依りて生ずる國家、又は公共團體の收入を云ふものにして、私法上の收入に對する語なりとす、租税、行政上の手數料の如き、之を公法上の收入と云ふ。(憲法六二條)
- 英
- Income by public law
- 独
- rechtliches Einkommen
- 仏
- Revenu dans le droit public
公法上の人格
(こうはふじやうのじんかく)公法の規定に依り定まる區域内に於て、法律上意思の活動をなし得べき公的能力を云ふ、公法上に於ける權力關係の源泉として、活動を爲し得べき能力者を謂ふ、故に公法人の人格と云ふは、公法上の人的存在者と云ふの意味にして、公的關係に於ける活動有能力者を云ふ。
- 英
- Personality in public law
- 独
- öffentliche Personalität
- 仏
- Per-sonalité dans le droit public
公法上の責任
(こうはふじやうのせきにん)公法の規定に依りて定まる責任を云ふ、例へば官吏が官吏法上に於ける責任の如き、主として公的關係に於て生ずる人又は機關の責任を謂ふ。
- 英
- Obligation in poblic law
- 独
- rechtliche Verpflichtung
- 仏
- Obliga-tion dans le droit public
後判
(こうはん)同一事件に關する前後二箇の判決に就き、後の判決を前の判決に對して後判と云ふ、例へば犯罪人が東京に於て殺人行爲を行ひ、其後長崎に於て逮捕せられたる場合に、長崎地方裁判所は、被告人所在地の故を以て、之に對し判決を下したるにも拘らず、東京地方裁判所は、其事件の犯罪地なるの故を以て、被告人に對し、缺席判決を爲したる場合に於ては、此判決は即ち後判なり。
- 英
- Latter judgment
- 独
- letztes Urtheil
- 仏
- Jugement postérieur
公判
(こうはん)公判とは、豫審終結決定に依り、又は直接の起訴により、裁判官が事件を審理し、法律を解釋適用して、國家刑罰權の有無、及び範圍を決定することをと云ふなり、約言すれば本案の刑事裁判を云ふなり、公判は一定の期日に裁判官、檢事、裁判所書記出廷して之を行ひ、公衆の傍聽を許すを原則とす、而して開廷あるや、裁判長は先づ被告人の氏名、年齡、身分、職業は住所等を問ひ、檢事の被告事件の論告を聽き、次ぎて被告人を訊問し、後證人、鑑定人の訊問、其他の證據調を爲し、其終りたる後、檢事、被告人、辯護人の辯論あり、辯論終了せば茲に判決の言渡を爲す、而して判決は、其言渡を俟つて成立し、公判は判決の言渡に依り終了するものとす、公判は其辯論を爲し、判決を言渡すに當りて、被告人の出頭在廷するを要す、然れども被告人、逃亡其他の事由に依りて、出頭せざるときと雖も、永く犯罪を不問に置くことを得ざるを以て、此場合にも一定の條件の下に判決を爲すことあり、之を缺席判決と云ふ、之に對して通常の場合を對席判決、又は對審判決と云ふ、何れの場合も等しく之を公判とす。(刑訴一七六條)
- 英
- Public trial
- 独
- Hauptverhandl-ung
- 仏
- Jugement public
公判始末書
公判の一切の訴訟手續を記載して、後日の證據に供するものを公判始末書と云ふ、公判始末書は、裁判所書記之を作り、裁判長、及び書記之に署名捺印す、裁判長及び書記の署名捺印するを要するは、公判始末書に記載するものの正確なるを保證するの責任あるを以てなり、若し此署名捺印を缺けば、其公判始末書は證據力なし、而して書記と裁判長と意見を異にしたるときは、書記は其末尾に自己の意見を附記することを得、若し裁判長差支ありて署名捺印する能はざるときは、公判に關與したる陪席判事、代りて之を爲すも違法にあらず、公判始末書は、判決言渡より三日内に之を調整すべきものとす、公判始末書の效力として、公判手續の方式なるものは、此始末書のみを以て證明するを得、他の證據方法にては、證明すること能はざるものなり、然れども此事たる、證明の方法に關するに止まり、上訴者が依りて基く所の手續の違背は、實際に生じたるものなることに就きては、毫も關する所にあらず、公判始末書には、左の事項其他一切の訴訟手續を記載すべきものなり、□一公に辯論を爲したること、又は公開を禁じたる事及び其事由、□二被告人の訊問、及び供述、□三證人、監定人の供述、及び宣誓を爲したること、若し宣誓を爲さざるときは其事由、□四證據事件、□五辯論中異議の申立ありたる事、其申立に就き檢事其他訴訟關係人の意見、及び裁判所の裁判□六辯論の順序、及び被告人をして最終に供述せしめたること、其他公判始末書には、裁判を爲したる裁判所、年月日、裁判長、陪席判事、檢事及び裁判所書記の官名氏を記載す、又辯論數日に渉るときは其旨、及び同一の判事出席したることを記載すべく、辯論中補充判事をして代らしめたるときは、其旨を記載するものとす、公判始末書の原本は、訴訟記錄に添付し、其裁判所に保存す、若し上訴ありたるときは、之を上訴裁判所に送付す、判決と公判始末書の記載と相牴觸せるときは、公判始末書を以て、正當なりとざさるべからず、例へば判決には、其言渡の年月日を記載せる場合に、其日附が公判始末書に揭ぐる所と相違せるときは、公判始未書を以て正當なりとせざるべからず、之公判始末書は、認證の效力を有し、判決書は其效力を有せざるが爲めなり。(刑訴二〇八、乃至二一一條)。
- 英
- Minutia of a trial
- 独
- Hauptverhandlungsprotokoll
- 仏
- Minuties du jugement
公判廷
(こうはんてい)公判廷とは、刑事訴訟の公判の爲めに開きたる法廷を云ふ、公廷とは審判廷等を云ふ。
- 英
- Court of trial
- 独
- Gerichtshof der Hauptverhandlung
- 仏
- Cour du jugement
公廷
- 英
- Law court of public trial
- 独
- Sitzung
- 仏
- Cours de jugement public
公布
(こうふ)公布は、國家の意思を外部に對して宣言するものにして、公布ありて法律、及び命令は、臣民に對して拘束力を生ずるものとす、從つて法律、命令の公布は、唯臣民に之を周知せしめ、且つ其拘束力を生ずるものに外ならずして、成文法は公布なしと雖も、制定手續の完了と共に成立するものとす、而して法令の公布は、天皇の大權に屬す、法律命令の一たび公布せらるるや、其法令は即ち茲に覊束力を受け、當局官吏には執行の義務を生じ、一般の人民には、遵守の義務を生ずるが故に、假令實際其法令を知らざりし確證あるものと雖も、之に依りて遵守の義務を免るる能はざるを通則とす、(憲法六、八條、公文式一條)
- 英
- Public proclamation
- 独
- Ver-kündung
- 仏
- Proclamation publique
公布式
公布式とは、天皇が法律、命令の公布を爲す方式を云ふ。
- 英
- Form of proclamation
- 独
- Verkündungsform
- 仏
- Formalité de la proclamation
公文
(こうぶん)國家、又は國家機關が、其職務に關して發する文書を公文と云ふ。(二二年二月法二號、議院法一七條)國家、又は國家機關が、其職務に關する事項を記載したる書面を廣く公文書と云ふ。
- 英
- Official document
- 独
- offizielle Vorschrift
- 仏
- Document public
公文書
- 英
- Official document
- 独
- offizielle Urkunde
- 仏
- Document officiel
公表選擧
(こうへうせんきよ)公表選擧とは、口頭指名、又は記名投票に依りて之を行ひ、何人が何人を選擧したるかを知り得る選擧法の方法を指す、彼の無記名投票等に於ける不公表選擧と相對す。(選擧の部參照)
- 英
- Open selection
- 独
- öffentliche Wahl
- 仏
- Selection ouverte
公簿
(こうぼ)官廳、又は公署に於て、法令の規定に依りて製作する總べての帳簿を公簿と云ふ、例へば商號登記簿、支配人登記簿、合名會社登記簿、株式會社登記簿の如き皆公簿なり。(非訟事件手續法一四〇條、官簿の部比較參照)
- 英
- Public register
- 独
- öffentliches Register
- 仏
- Enregistrement publique
公民
(こうみん)公民なるものは、古昔は市町村を組織する要素、即ち市町村團體員にして、其時に於ては、團體員則ち公民たり、其以外に住民なる者認められざりしものなり、即ち市町村に住居するの權を有するものは、皆公民たりき、然れども現今に於ては、市町村には、獨り公民のみならず、住民(普通人民)も亦住居す、公民たるに要する資格は下の如し、□一帝國臣民たること、□二公權を有すること、□三獨立の男子たること、□四廿五歳以上なること、□五町村内に於て地租、又は直接國税二圓以上を納むること、□六二年以來住民となり、二年以上町村の負擔を分任すること、□七公費を以て救助を受けず又救助を受けたるものは、其以後已に二年を經過したること、斯くの如き要件を具備したる者に限り公民なり。(市制七條、町村制七條)
- 英
- Citizen
- 独
- Bürger
- 仏
- Cito-yen
公民權
公民權とは、公民の有する權利なり、公民は、市町村の選擧に參與し、市町村の名譽職に選擧せらるる權利と、義務とを有す、イ疾病に罹り公務に堪ざる者、ロ營業の爲め常に其市町村内に居る能はざる者、ハ六十歳以上の者、二官職の爲め市町村の公務を執る能はざる者、ホ四年間無給にて市町村吏員の職に任じ、爾後四年を經過せざる者、及び六年間市町村會議員の職に居り、爾後六年を經過せざる者、へ其他市町村會の議決を於て、正當の理由ありと認むる者等にあらざれば、名譽職を拒絶し又は任期中退職するを得ず、之等の理由なくして、名譽職を拒辭し、又は任期中退職し、若くは無任期の職務を少くとも三年間擔當せず、又は其職務を實際に執行せざる者は、市町村會の議決を以て、三年以上六年以下、其市町村公民たる權を停止し、且つ同年期間其負擔すべき市町村費の、八分の一乃至四分の一を增課するを得、但し此場合に市町村會の議決に不服あるものは、郡參事會、府縣參事會に訴願し、其裁決に不服ある者は、行政裁判所に出訴する事を得、市町村公民は、其資格の一を失へば、公民權を失ふ、公權停止中、及び租税滯納處分中は、公民權を停止す、家資分散者、破産者が復權の決定を受くる迄の間も亦同じ、公權の剝奪、又は停止を附加すべき犯罪の爲め、公判に付せられたる時は、其裁判の確定に至る迄公權を停止せらる、陸海軍の現役に服する者、及び召集中の者は、市町村の義務を負擔する義務なし。(市制、町村制八、九條)
- 英
- Citizenship
- 独
- Bürgerrecht
- 仏
- Droit de cité
公務
(こうむ)國家又は公共團體の事務を公務と云ふ。
- 英
- Public service
- 独
- öffentlicher Dienst
- 仏
- Service publique
公傭
一個人が國家、又は公共團體と雇傭關係に立つ場合を公傭と云ふ、私傭に對す。(私傭參照)
- 英
- Public hire
- 独
- Staatsmiethe
- 仏
- Louage public
公用歸朝
外國にある者が、公務の爲め本國に歸朝することを公用歸朝と云ふ。
- 英
- Returning home on govern-ment service
- 独
- vom fremden Lande auf Staatsgeschäft zurüchkommen
- 仏
- Rétourner par le service officiel
公用
(こうよう)公用とは、種々の場合に用ふる言葉にして、大要左の如し、□一公共の便益に供することを指すことあり、□二國家、又は公共團體の使用に關することを指すことあり、□三國家、又は公共團體の用務自體を指すことあり。
- 英
- Official business; government ser-vice
- 独
- offizielles Geschäft, Regierungs-dienst
- 仏
- Affaires publiques
公用財産
國家、又は公共團體の使用に屬する財産を公用財産と云ふ。
- 英
- Property for public service
- 独
- öffentliches Vermögen
- 仏
- Propriété pour le service public
公用制限
(こうよせいげん)國家が公益の爲にする目的を以て、特定の物に對する所有權、其他の物權を制限する行政處分を公用制限と云ふ。
- 英
- Public limitation
- 独
- Staats-schranke
- 仏
- Limitation publique
公用徵收
(こうようてふしう)公用徵收とは、公共の利益の爲めに、賠償を與へて財産權を徵收し、國家自身、または第三者に所有權を移轉する國家の權力作用なり、公用徵收は國家の權力に基く行爲なり、從つて公法上の行爲にして、民法の規定に從ふものにあらず、公用徵收は、財産權を移轉し、而して之に對する代價を給與するものなるが故に、其外形に於て賣買に類似すと雖も、賣買は常に當事者の意思の合致あることを必要とす、然るに公用徵收は、國家の一方的意思に基き、財産を移轉するものにして、之を賣買と比較し得べきものにあらず、其效果に於ても、賣買に於けるとは、種々の點に於て異るものあり、例へば徵收物件に隱れたる瑕疵あるも、被徵收者は、之が責に任ずることなく、一度決定せられたる賠償金は、之が影響を受くることなし、又徵收物件が、被徵收者の權利に屬せずして、第三者の權利に屬したる場合に於ても、被徵收者は之が責に任ずることなし、公用徵收は、國權の作用なれども、必ずしも行政處分に限るものと看做すべき理由あることなし、固より多くの場合に於ては、公用徵收は、個々の特定の物件に對して行はるるものなるを以て、原則としては、處分の形に行はるるを例とするも、法規に依りて、廣く一定の條件に該當すべき一般臣民の財産權を徵收することをも爲し得て、若し此場合に於て、これに賠償を給與するに依りて、之を徵收するときは、尚之を公用徵收と云ふを妨げず、公用徵收は財産權の移轉に對し、之が賠償を給與することを以て、その要素とす、賠償を給與せずして、單に財産權を徵收するは、公用徵收にあらず、公用徵收は、權利の移轉あることを必要とす、權利の移轉は、或は國家自身の利益の爲めに行はるることあり、或は其他の公共團體、或は私の團體、又は一私人の利益の爲めに行はるることあり、公用徵收は公共の利益の爲めに行はるるものなるが故に、若し國家以外の團體、又は私人に於て、公共の利益に必要なる事業を起す場合に於ては、國家は其者の利益の爲めに、財産權を徵收して、之を其者に移轉するを得るものなり、若し權利の移轉あるにあらずして、單に個人の財産權を剝奪する場合には、縱令之に賠償を給與する場合に於ても、尚公用徵收の範圍に屬せざるなり、又公用徵收の目的たるべき物は總べての財産權なり、財産權は、必ずしも私法上の權利のみに限らず、財産上の價格を有するものは、公法上の權利と雖も、公用徵收の目的物たることを得、例へば煙草營業權を徵收する場合の如し。
- 英
- Public collection
- 独
- Ent-eignung
- 仏
- Collection publique
公用物
(こうようぶつ)公用物とは、國家又は公共團體、或は特許を受けたる事業者に屬する物體にして、公共の使用に供せらるるものを云ふ、故に□一公用物は公共の使用に供せらるるものなり、公用物の觀念は、行政財産の觀念と相一致するものにあらず、行政財産の觀念は、單に公用に供せらるるものなるを以て足れりとす、例へば官衙の敷地、建物、學校の建築物、軍艦、砲臺の類、悉く皆然らざるなし、之に反して公用物の觀念は、單に公用に供せらるるを以て足れりとせず、公共の使用に供せらるるものなるを必要とす、詳言すれば、一般人民が、直接に之を使用するを得べきものならざるべからず、故に官衙の敷地、建物、又は軍艦の如き、直接に國家の用に供せらるるものにして、人民の使用に供せられざるものは、行政財産なれども、公用物にはあらず、公用物とは、例へば航通し得べき河川、道路、橋梁、公園地の如き、物件其ものが其形態に於て直接に、公共の使用に供せらるるものを云ふ、然れども公共の使用は、必ずしも自由使用を必要とするものにあらず、廣く一般公衆の自由使用に供せらるると、又は其使用に對して、手數料を徵收するとは、公共使用の觀念に影響する處なし、□二公用物は、國家、又は公共團體、或は特許を受けたる起業者に屬する物件なることを要す、公用物が國家、又は公共團體又は特許起業者に屬するを要すと云ふは、必ずしも之等の主體が、公用物の上に所有權を有する者ならざるべからずと謂ふの意にあらず、公共の使用に供するは、通常は其所有者の爲す所なりと雖も、場合に依りて、所有權は第三者に屬し、國家、或は公共團體又は起業者が、其上に或る支配權を有し、此支配權によりて之を公共の使用に供する場合に於ても、尚公用物たるを妨げず、故に公用物に對する所有權は、或は公用物の主體たる國家、又は公共團體に屬することあり、之通常の場合なりとす、或は其所有權は、公共物の主體以外の第三者に屬し、公用物の主體は、單に其上に地上權、又は占有權を有するに過ぎざる事あり、然れども國家、又は公共團體等が、少くとも其物の上に、地上權、又は占有權の如き、或る支配權を有する事は、公用物の觀念に缼くべからざる要素也。
- 英
- Public goods
- 独
- öffentliche Dinge
- 仏
- Biens publics
拘留
(こうりう)被告人をして、訴訟に現在せしむるて目的とし、裁判所の拘留狀に依り、被告を逮捕監禁する命令也刑事訴訟に於ける監禁は、唯此拘留の處分あるのみ、拘留は、未だ罪責確定せざる嫌疑者の身體の自由を拘束する者なれば、一定の原因なかるべからず、□一拘留には、公訴の提起ありたることを條件とせず、豫審判事及び、公訴裁判所が拘留するを原則とすれども、又檢事が拘留を爲し得る場合あり、□二拘留に就き一般に必要なる條件は、十分なる嫌疑の存すること之なり、イ一定の人が其處爲を行ひたりとの嫌疑、ロ其所爲が犯罪なりとの嫌疑あることを要し、單に犯罪を爲したりとの嫌疑のみにては、拘留するを得ず、□三拘留をなすには、右條件の外、尚被告人の身上に關する他の特別の條件を要す、即ち被告人の逃亡する虞あること、被告人が罪證を湮滅する虞あることなり、逃亡の虞には、事實に基くことあり、又は法律上の推定に依る場合あり、茲に所謂逃亡とは、廣く訴訟上の意義に解すべきものにして、即ち犯罪人が、遠隔の地、又は外國に渡航するが如き場合のみならず、近傍に潜伏する場合、又は所在を移し、若くは姓名を變ずるが如き場合をも包含すべし、但し之等の場合に於て、拘留の處分を爲すには、逃亡の事實の十分確定するを要するものにして、若し逃亡を推定すべき一定の事實なきときは、拘留すること能はざるものとす、被告人が罪證を湮滅する虞あるときは、其罪責を確むべき證據に就き、即ち不利益の證據に關して、犯罪の痕跡を蔽ひ、又は其犯者、若くは證人と爲るべき者に、虛僞の陳述を爲さしめんとするが如きを云ふ、而して湮滅の虞は、將來のものならざるべからず、縱令過去にありて、斯かる虞ありたりとするも、以後其虞なきに於ては、拘留の必要なかるべし、又證據の湮滅を恐るる所以のものは、專ら罪責の歸する證據を左右するを慮るに外ならずして、被告人の利益の證據に就きて云ふものにあらざるは勿論なりとす、拘留は如何なる種類の犯罪にても、必ず命ずべきものと云ふを得ず、常に判事の斟酌に依るものにして、縱令事件の重罪なるも亦然り、又拘留は被告にとりて重大なる自由の拘束なれば、輕微の罪に就きては、其權衡を失するが故に之を許さず、即ち犯罪が罰金以下の刑に該るものなる時は、之を許さず、其犯罪が、禁錮以上の刑に該るや否やは、訊問の後にあらざれば、之を定むることを得ざるが故に、豫審に於ても、將た公判にても、常に被告人を訊問したる後にあらざれば拘留するを得ず、但し豫審にて被告人が迯亡したるときは、訊問を爲さずして、直に拘留することを得べし、拘留を命ずる權は、公判裁判所、豫審判事、及び受託判事、受命判事に屬す、但し現行犯の場合には、檢事も亦これを命ずることを得、公訴裁判所も、亦拘留を命ずる事を得、拘留は裁判の確定に至るまでは、其效力を有するを原則とすれども、左の場合には訴訟の進行中と雖も、拘留は消滅す、甲罰金以下の刑に該り、釋放、又は取消の言渡ありたるとき、乙公訴裁判所に於て、無罪、免訴、公訴不受理、又は管轄違の言渡を爲したるとき、但し管轄違と共に拘留狀を保存するときは、此限りにあらず。(刑訴七五、一七八、七〇、二四一、二六四、一四四、一四六、八六、二七二、二六二條)
- 英
- Confining
- 独
- Verhaftung
- 仏
- Arrêt
拘置監
拘置監は、刑事被告人を拘禁する所とす。(二二年七月勅九三號監獄則一條四號)
- 英
- Prison
- 独
- Kerker
- 仏
- Prison
公吏
(こうり)公吏とは、國家の公務を執行するものにして、官制に基き任命せられたるものにあらざる者を云ふ、即ち公證人、市町村吏員等之なり、元來公吏なる觀念は、彼の官吏に對し、官吏にあらずして、國家事務を擔任するものを謂ふ、但し此内より雇なるものを除外す、分説すれば、□一公吏は、國家事務を擔任する義務者也、國家事務を擔任する者に、官吏と公吏とあり、等しく國務を掌握するも、以下の數件に於て其觀念を異にす、□二公吏は、公法人を組織するものなり、公吏も官吏と同じく國家事務を擔任するも、公吏は其公法人の機關として、國務を擔任するの點に於て官吏と異る、所謂公法人とは、國家の政務を行ふことを生存目的とする法人を謂ふ、市町村の如き、公證人の如き、是なり、之を組織する市町村吏員、公證人の如きは、所謂公吏なりとす、□三任命の形式に依りて、其身分を取得したるものなるを要す、この點に於て彼の雇及委員、議員等と異るものとす、所謂任命とは、被任命者の合意を條件とする特別公法上の行爲なり、此點官吏に於けると異らざるものとす。(官吏の説明と比較參照)
- 英
- Public official
- 独
- öffentlicher Beamte
- 仏
- Offiicier public
拘留
(こうりう)拘留は、違警罪の主刑にして、拘留所に留置し、定役に服せざる者とす、其刑期は、一日以上十日以下とす、但し各犯罪に依りて刑期に長短あり。(刑一六條)拘留囚とは、拘留刑の執行を受けつつあるものを云ふ。
拘留囚
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefangene
- 仏
- Prisonnier
拘留所
拘留所とは、拘留囚を留置する所なり。(刑一六條)
- 英
- Detention House
- 独
- Haft-haus
- 仏
- Maison de détention
拘留狀
(こうりうじよう)拘留は、判事、又は檢事の發したる拘留狀に依りて、執行するものとす、拘留狀には被告事件、被告人の氏名、職業、住所を記載し、及び之を發する年月日時を記入し、判事、及び裁判所書記署名捺印すべきものとす、拘留狀執行の機關は、巡査、憲兵卒也、在監中の被告人に對し發したる拘留狀は、司獄官吏之を執行す、拘留狀の效力は、裁判所の管轄によりて制限せらるる處なく、我裁判權の及ぶ限りは、全國に於て其效力を有す、故に之を執行するは、何れの監獄署に於て爲すも可なり、然れども拘留狀を帶行して、他管内に於て逮捕する場合には、他管内の豫審判事、又は司法警察官の認可を得るを要す、拘留狀執行の制限は次の如し、□一執行方法に關する制限、一般に時に關する執行の制限なきも、家宅捜索の時に關する制限あり、尤も監視執行中の者に對し、夜間と雖も家宅に臨檢を爲し得べし、□二場所に關する制限、通常裁判權の行はれざる場所に於ては、其補助なければ、拘留狀を執行するを得ず、軍艦、兵營内の如き是なり、□三人に關する制限通常裁判權に服せざる人に對しては、執行するを得ず、即ち外國公使の如き是なり、右の制限を以て、令狀執行の命を受けたる巡査、憲兵卒は、其執行を爲すが爲めに、被告人其他の者の家宅を捜索すること▲得、此場合には、市町村長、又は其差支あるときは、隣佑二名以上の立會を要し、且つ捜査調書を作るべきものとす。(刑訴七六、七八、七九條)
- 英
- Warrant of arrest
- 独
- Haft-befehl
- 仏
- Mandat d'arrêt
功利説
(こうりせつ)功利とは有利、又は幸福てふ義にて、即ち利益を計り幸福を進め、其效驗を發揮すと云ふ意なり、故に廣義に功利説と謂へば、功利如何を以て、行爲の善惡を判斷する標準となす倫理學上の見解を謂ふ、而して功利を增進することによりて益せらるる主體は、一個人たる事もあるべく、又公衆たる事もあるべし、前者とすれば利己的功利説をなし、後者とすれば公衆的功利説となる、然れども今日功利説と稱するは、專ら後者を意義す、此説初めベンザム之を唱道し、其後ミル、シヂュヰック、ホェフディング等によりて繼承せらる、此意味に於ける功利説の目的とする所のものは、最大多數の最大幸福てふ言葉なるが、其幸福といふことは、詮ずるに快樂と謂ふこととなり、隨つて功利説は、社會的快樂主義、又は公衆的快樂主義と謂ふことと同義たるべし、約言すれば功利説とは、社會公衆に快樂を與ふる所の行爲は善にして、社會公衆に苦痛を與ふる所の行爲は、惡なりとなす倫理學説の一なり、然るに此説の金言たる最大多數の最大幸福とは、一見甚だ明瞭なる如くなるも、少しく考案する時は、實に種々の難點を有するを發見すべし、先づ最大多數といふことは、一國を指してなるか、一社會を指してなるか、將た一般に人類を指してなるか、其何れかを採ることによりて、見解の上に種々の區別を生ずべきに、此派の見解は、此點に關しては甚だ曖昧なるを免れず、更に又最大幸福、或は最大快樂の計量に於て、大なる困難あり、特に困難を感ずるは、其派の中に於ても議論一定せざる、快樂には、性質上又は種類上の差別ありや如何てふ問題なり、ベンザムは快樂の性質の差別を否定し、快樂は一なり、快樂には種類なしといひしも、ミルは之に反し、快樂には種類あり、性質上高下の差別あることを論じたり、即ちベンザムは、幸福の價値は、單に分量によりて定まるものにして、如何なる種類の快樂も、其快樂の分量さへ多からんには善なりと、此説を分量的快樂説といふ、然るにミルは、快樂には、もと性質上に種類ありて、單に分量のみを以て、其價値を論すべからず、或る種の快樂を以て、最大幸福なりとして撰擇するは、單に其が分量の大なるのみの故にあらず、又其性質の優秀なるが故なりと、此説を性質的快樂と云ふ、然れども若しミルの如くんば、吾人善なりとして、幸福を選擇するに當り、快樂の分量以外に、他の評價を認むるものにして、即ち快樂説として、其目的とする所甚だ曖眛に、本來の最大幸福てふ意義とは、矛盾せざるを得ざるに至るべし、之功利説の倫理學説として不充分なる所以なり。
- 英
- Utilitarianism
- 独
- Utili-tarismus
- 仏
- Utilitalianisme
功利主義
- 英
- Utilitarianism
- 独
- Utili-tarismus
- 仏
- Utilitalianisme
小賣大商店
(こうりだいしやうてん)社會は益々進歩し、各個人益々繁忙なるに至り、最も少なき時間に、最も多くの種類を、も廉價に供給する主義に基き、あらゆる人生の最必要品を網羅し、最新式の商業經營法に依りて營業する、一種の組織的勸工場を小賣大商店、又は小賣大店舗と云ふ、佛國のボン、マーセイ、米國紐育のワナメーカー、及び市俄古のマーシヤル、フヰールド、倫敦のホワイト、レーの四商會は、世界に於て有名なるものなり、而して此種の商業は歐米至る處の都市に發達しつつあり。
- 英
- Department store
- 独
- Warenhaus
- 仏
- Grands magasins
小賣大店舗
公立
(こうりつ)公共團體の設立維持に係るものを公立と云ふ、例へば公立小學校と云ふが如し。
- 英
- Public
- 独
- Staats-
- 仏
- d'Etat
公立圖書館
公共團體の設立維持に係る圖書館を、公立圖書館と云ふ。
- 英
- Public library
- 独
- öffent-liche Bibliotik
- 仏
- Bibliothèque publique
小切手
(こぎつて)小切手は、商人たると非商人たるとを問はず、自ら金錢を授受すべき場合に、銀行をして之を爲さしむるの制度より發生し來りたる、支拂證券を云ふ、凡そ債務者が支拂を爲さんとするに當りて、小切手を發行し、之を債權者に交付し、債權者は支拂人として指定せられたる銀行に就き、現金を收受するなり、斯くの如く小切手の職分は、現金の授受に代ふるにあるを以て、自ら貨幣の輸送保管の勞と費用とを省き、之に伴ふ盜失、紛失、遺失、私消等の危險を排し、貨幣の眞贋を鑑別するの勞と危險とを避くるを得、計算の錯誤を憂ふるの要なく、又自ら金錢の取立を爲すの不便を蒙らざるの利あり、貨幣は銀行の手裏にありて、運轉の資となり、預金者は低率の利息の割當を受くることを得べし、之小切手の經濟的作用の主要なるものなり、故に人は小切手を貨幣と同視し、或は小切手に附するに支拂證券の名稱を以てす、小切手には左の事項を記戴し、振出人之に署名するを要す、□一小切手たることを示すべき文字、□二一定の金額、□三支拂人の氏名、又は商號、□四受取人の氏名、若くは商號、又は所持人に支拂ふべきこと、□五單純なる支拂の委託、□六振出の年月日、□七支拂地等これなり、振出人資金なく、又は信用を得ずして小切手を振出したるとき、又は小切手に虛僞の日附を記載したるときは、五圓以上千圓以下の過料に處せらるるものなり、小切手は前記の如く支拂證券にして、常に一覽拂たるを要し、商法は小切手の所持人が其日附より一週間内に之を呈示して、支拂を求めざるときは、前者に對する償還請求權を失ふものとし、其支拂の用具たるを認めたり、左に普通小切手の樣式を示さん。(商五三〇條乃至五三七條)
小切手
渡先
一金也
右金額名指人又は此小切手所持人へ御拂渡可被成候也
支拂地
明治年
月日
何々銀行御中
- 英
- Cheque
- 独
- Wechsel
- 仏
- Chèque
獄
(ごく)獄とは、監獄と云ふに同じ、即ち已決囚を監禁する場所なり。
- 英
- Prison
- 独
- Kerker
- 仏
- prison
獄舍
囚人、懲治人、又は刑事被告人を拘禁留置する監獄の建築物を獄舍と云ふ。
- 英
- Prison
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Prison
獄則
獄則とは、法令の範圍内に於て、監獄内に於ける秩序を維持する爲めに定めたる規則を云ふ。(監獄則の部參照)
- 英
- Rule of prison
- 独
- Kerkerregel
- 仏
- Règlement de la prison
國有
(こくいう)國家の權利、特に其所有權に屬することを國有と云ふ。
- 英
- State
- 独
- Staats-
- 仏
- Ètat
國有財産
國家の權利に屬する財産を國有財産と云ふ。
- 英
- State property
- 独
- Staats-vermögen
- 仏
- Propriété d'Etat
國有地
國有地とは、國家の所有權に屬する土地を云ふ(三二年三月法八二號耕地整理法五條)
- 英
- State land
- 独
- Staatsland
- 仏
- Terre d'Etat
國有土地森林原野下戾法
(こくいうとちしんりんげんやさげもどしはふ)國有土地森林原野下戾法は、土地森林原野の下戾手續を規定したるものにして、即ち土地及び北海道の森林原野に係るものは、地方長官を經て内務大臣に、森林原野に係るものは、大林區署長を經由して、農商務大臣に申請するものとす、其申請の書式は左の如し。
何々申請書
住所身分職業
申請者氏名
年齡
申請の目的物
何
(所在地、種目、面積、樹種、本數竝に地番號あるものは、其番號を詳記すべし)
事實
何
理由
何
立證
何
(證據は、本書、並に寫を添附すべし)
右申請仕候也
年月日
氏名印
市町村長氏名印
主務大臣宛
- 英
- Law of recover of state forest and field
- 独
- Wieder-erobernsgesetz des Staats-forstes und-feldes
- 仏
- Loi de recouvrir les bois et Champs d'Etat
國有林
國有林とは、國家の所有に屬する森林を云ふ。三〇年四月法四六號森林法一條)
- 英
- State forest
- 独
- Staatsforst
- 仏
- Bois d'Etat
國有林野
國有林野とは、國家の所有に屬する森林原野を云ふ。(三二年三月法八五號國有林野法一條)
國有林野委託規則
國有林野委託規則は、國有林の保護を市町村、又は市町村の一部に委託する方法を規定したるものなり。(三二年八月勅三六四號國有林野委託規則參照)
- 英
- Rule of trust of state field and forest
- 独
- Kommissionregel des Staats-forstes und -feldes
- 仏
- Règles de la confiance des champs et bois d'Etat
國有林野及産物賣拂規則
國有林及産物賣拂規則は、國有林野及産物賣拂の方法に關する手續を定めたる規則なり。(三二年八月農商務省令二六號)
國有林野及産物賣拂代金延納規則
國有林野及産物賣拂代金延納規則は、國有林野、又は産物賣拂代金を一時に納付せずして、數回に納付する手續を規定したる規則なり。(三二年一一月農商務省令三〇號)
- 英
- Rule of delay of paying in of the price of state-forest,-field and their products
- 独
- Rück-standsregel des Erlöses des Staats-forstes-feldes und der produkte
- 仏
- Règle de délai du paiement de prix des bois, champs et ses produits
國有林野法
國有林野法は、國有林野を保存、經營等に關する事項を規定したる法律なり。(三二年三月法八五號國有林野法參照)
- 英
- Law of state forest and field
- 独
- Gesetz des Staatswaldes und Staats-feldes
- 仏
- Loi des bois et champs d'Etat
國有林野法施行規則
國有林野法施行規則とは、國有林野の境界査定、賣拂豫約、讓與等に關する事項を規定したるものなり。(三二年八月農商務省令二五號)
國有林野部分林規則
國有林野部分林規則とは、部分林(即ち營林者と林野土地所有者との間に、其收益分配すべき森林を云ひ、公有林及社寺林にして、其經濟の保續を損し、又は荒廢するの虞あるときは、主務大臣に於て、營林の方法を指定し、若し其指定にも拘はらず、造林を怠る場合に於て、公有林、社寺林の所有者より費用を徵收せず、政府に於て造林する場合に生ず)の設定、收益分收の方法等を規定したるものなり。(三二年八月勅三六二號)
- 英
- Rule of the part of state forest
- 独
- Regel des Staatsforsts-theiles
- 仏
- Règle de la partie des bois d'Etat
國家
(こくか)國家を實際上の現象として觀察すれば、人類の政治的團體にして、一定の領土に存在し、其團體の行爲は外部よりの拘束を受けざるものなり、□一人類の政治的團體なる事、國家は人類の圖體なるが故に、個人にては、國家の組織し能はざるは勿論、天變地異其他の災危に依り、國家が盡く人民を失ひたるとき、若くは人民の四散したるときは、其成立を失ふものとす、加之其團體は、確乎たる政治的組織を有せざるべからずして、假令人類の集合體と雖も、政治上の組織を有せず、無政府の形にて烏合の集なるときは、國家を成立せざる事疑なく、之に依りて之を觀るも、團體が國家たるには、確實なる政治上の組織を有すること明なり、□二一定の領土に存在すること、國家は其成立上一定の領土を必要とするは、一般に異論なき處にして、人類の政治的團體は、一定的區域内に存在し居るものなるを要す、□三團體の行爲は外部よりの拘束を受けざること、國家は、國内に於て自由なる政治を行ひ、外部に對しては、其行爲に就き、他國の牽掣を受けざる事を必要とす、換言すれば、其内政に關し、任意に行動し得べき主權を有する事を要す、若し内部に對する主權にして、完全の自由を有せざるに於ては、其國成立の基礎を失ひ、外部に對する主權に就き、完全の自由を失ふに於ては、之を獨立の國家と爲す能はず、然れども國力に強弱あり、國運に消長あるは、免るべからざるの數なるが故に、一國が、一時他の強國の意に從ひて行動することあるも、又他國の勢力の爲め、冥々の裡に自國の行爲に影響を受くることあるも、之が爲め、其國は任意に行動し得べき權能を失ひたるにあらず、苟も國家が外國との關係上、任意に行動し得べき性格を喪失せざる間は、假令其行動は、一時他國の爲めに制限を蒙ることあるも、之が爲め完全なる主權其ものの性質を變じたるにあらざるを以て、獨立の國家たるに妨なし、國家の分類は、諸種の觀察點より之を試むを得、(甲)其成立の組織上よりせば、單獨國、及び聯結國と爲すを得べく、(乙)政治上の組織よりせば、君主國及び共和國の二種とし、更に君主國を君主專制國と、立憲君主國との二種に區別し得べく、又共和國を貴族的共和國、及び平民的共和國との二種に區別するを得べし、(丙)國家を對外主權の差異より分類せば、主權國、一部主權國、及び屬國の三種と爲すを得。
- 英
- State
- 独
- Staat
- 仏
- État
國家行爲
廣く國家行爲と云へば、統治の目達を達すべき法規、若くは處分令を發し、及び契約を締結する等國家の爲す各般の行爲を云ふ、國家行爲を分ちて三とす、公法上の行爲、私法上の行爲、及び事實たる行爲之なり、□一公法上の行爲、國家は、或る意昧に於ては、公法人なるが故に、其資格に於て諸種の行爲を爲す、例へば行政行爲の如きは、其著しきものなり、之を公法上の行爲と云ふ、□二私法上の行爲、國家は、統治の目的を達する爲め、各般の物、又は勞力等を需用す、而して之等の物件は、必要なき限りは人民に對し、強制して之を供給せしめざるを可とす、故に國家は、斯かる場合に於ては、自ら私人と同樣の地位に立ち、特權なき人格者として、民法、商法、其他私法規の支配の下に、各般の行爲を經營するを通例とす、此行爲の種目は、千差萬別にして、一々枚擧するの暇なし、而して此行爲の局に當るものは官吏なり、例へば物品の購買契約を締結するが如し、□三事質たる行爲、事實たる行爲とは、何等の對人關係をも生ぜざる技術的の作爲を云ふ、例へば鐵道、電信。要塞、軍艦、兵營を設くるが如きを云ふ。
- 英
- Action of the state
- 独
- Staatshandlung
- 仏
- Acte d'Etat
國家學
(こくかがく)國家學とは、國家に關する科學にして、國家の要件、本質、其種々なる形體、及び其發達等を研究する學問なり、國家學は、通常下の如く分類して研究せらる、□一國家學汎論は、國家に關して、其一般普通の關係を研究するものなり、□二國法學、一國々法の制定、發布に關し、其他組織權限に關して研究するものなり、□三政治學は、一國組織の各制度に對する可否、其採るべき方針等に對して研究するものなり。
- 英
- Theory of state
- 独
- Staats-theorie
- 仏
- Théorie d'Etat
國家機關
(こくかきくわん)國家機關、凡そ國家の意思は、法律に基き、自然の一個人の意思に依りて成立するものなり、國家の意思を發表する自然人が、其國家の爲めに作用するは、國家の機關としてなり、國家を人に例ふれば、機關は、腦其他手足等なり、國家の機關となる人に、或は直接に憲法に依りて、其機關の作用を爲し得る者あり、或は他の機關の公法上の委任に依りて、其作用を爲し得る者あり、故に機關を分ちて、直接機關と、間接機關と爲すことを得、然れども此區別は、機關の地位を充たす者の階級に就きての區別にして、機關の作用に就きての區別にあらず、國家の機關は前説の如く、其ものとしては人格を有する事なし、機關の地位を充たす所の人の意思は、其權限内に於ては、國家の意思となる、機關は、畢意意思を發表する國家其ものにして、國家は機關の媒介によりて、意思を發表し行爲を爲すものとす、國家は數多の機關によりて動作するものなり、即ち國家の作用は、多數の機關中に分配せられ、其各機關に屬する國家作用の分配は、即ち機關の權限となる也、而して此權限外にありては、機關の意思は、法律上國家の意思と見るを得ず、故に機關は、唯國家を代表するものにあらずして、獨り其權限内に於て國家を代表するのみ、國家は、權限を以て境界せられたる機關として、現はれ來るものなるを以て、國家の各機關は外觀上數多の人格として、互に對立するものの如く見ゆ、裁判所としての國家は、行政廳としての國家に對し、大臣としての國家は、議院としての國家に對す、されどもこは國家が各機關に其作用を分配して對立せしめたるに過きず、又機關を上下主副の關係に置く事を得、機關の權限の境界に就きても、裁判することを得、即ち權限裁判所としての國家は、帝國議會としての國家、又は大臣としての國家に對し、其爭論を判決することを得、君主たる國家は、大臣たる國家、又は議院たる國家に向つて、拘束力ある意思を發表することを得、即ち權限の主格を異にするも爲めに、國家の單一を害せざるを知るべし、國家機關の意思發表は、國家人格の内部の現象のみ、確定の意思を制定する手段のみ、凡そ國家機關の組織は、國家の意思の単一を保持するを目的とするものなり、最高權者の決定に對しては、他の決定は、不確定なる國家の意思に過きず、故に最高の權限を有するものの決定は、他の機關を拘束す、確定の國家意思は、渾て國家意思成立に參與する所の機關に對して拘束力を有す、機關が其權限内に於て、一たび發表したる處の意思は、國家自ら之を廢止するの外は、消滅することなし、其間機關を組織する自然人は、幾度新陳代謝するも、意思の效には少しも影響せず、又或る一の機關が、其事務を他の機關の管轄に移したる場合に於ても、其事務に就きて、前の機關の發表したる意思に影響することなし、何となれば、一度機關が有效に發表したる意思は、即ち國家の意思として存在し、又有效に發表したる意思に依るにあらざれば、之を廢止することを得ざるが故なり、國家機關を例示すれば、國務大臣、帝國議會、司法、行政各裁判所等の如きこれなり。(憲法三、三三、五五、五七、六一條等)
- 英
- Organ of the state
- 独
- Staats-organ
- 仏
- Organe d'Etat
國家主權
(こくかしゆけん)國家主權とは、國家が、内政、及び外政を自由に處理するの權利ににして、其獨立不可侵なるを現はす、凡そ個人が社會に於て生活を營むに當り、他人の權利を侵害せざる範圍内に於ては、自由に行動し得ると均しく、國家も亦他國よりして、如何なる牽制をも受くることなく、自國の内政、及び外交に就き、其自由の意思を實行し、他國をして之に容喙せしめざるの權利を有するものにして、換言せば、國家主權とは、内外に對する國家獨立權の行使に關して、他國の牽制を受けざる權利なりとす、國家の主權は、完全なるが故に、之を侵害するときは、加害國に對して、その救濟を求め得べく被害國も、亦其救濟の責に任ぜさるべからず、但し國家が任意に他國との合意に由り、自ら其行使を制限することあり、又國際公法の法則として、其行使に一定の例外あり、國際公法は、素と文明諸國に行はるるが故に、國家主權を完全に行使すべき國家は、其必要條件として、其内國に於て、文明の思想に基きたる國法の存在することを必要とし、他國人民と本國人民との間に就き、公平に民事刑事事件の裁判を爲すべき制度の存在せざるべからず、故に國家が、民事刑事の法律を具備せさるが、又は其法律は、文明國一般に行はれ居るものと性質上大差あるに於ては、列國は其人民の身體、及び財産を安固ならしむるが爲め、條約を以て、特別の約定を設け、其國主權の一部を制限することを得、例へば領事裁判制度の如きは即ち是なり。
- 英
- Right of sovereignty
- 独
- Staatssouveränität
- 仏
- Droit de souver-aineté
國家主權説
統法權は君主にありや、或は國家にあるものなりやは、議論の一致せざる處なり、而して統治權が、國家に存在すと云ふ學説を國家主權説と云ふ。
國家承認
(こくかしようにん)國家が、國際社會の一員と爲り得べき實質上の性格は、固より他國の承認あると否とに依りて生ずるものにあらず、然れども其國家が列國に對して、國際關係を生じ、國際公法上の權利を享有し、又其義務を負擔するに就きては、他國よりして、文明國社會の國家と看做すとの承認あるを必要とし、假令舊國と雖も其承認は、以て國際公法上の權利義務を有するに至るべき必要條件とす、之を國家承認と云ふ、國家の承認は、通常列國公會、又は列國會議の結果に依る決議又は列國の各自の宣言に依り、之を明示して承認する事あり、又は諸國が之に公使を派遣して條約を締結し、其他の國際關係を生ずる如き行爲を以て默認する事あり、其承認の方法は一定せずと雖も、明示又は默示に依りて、其團體を國家と看做すの意思表示あるを必要とし、其意思表示、即ち承認に依り初めて其團體は、之が承認を與へたる國家に對し、國際公法上の權利義務の關係を生ずるものとす、□一明示承認の實例を擧ぐれば、一八三〇年三月三日英、佛、露三國が、希臘國の承認を倫敦議定書に言明せしが如し、□二默示承認は、例へば條約の締結、外交官の派遣、若くは接受、又は領事館に對する認可狀の交付を以て、默然其國家を國家として承認するが如きを云ふ、國家の承認は、元來無條件なるを必要とし、其承認に條件を附するときは、完全なる獨立國の資格に缺くる所あるべき理なり、然れども承認を與ふると否とは、全然承認國の任意にして、其性質たる德義上の行爲なるが故に、時としては、已存國家に於て、條件を附するにあらざれば、其承認を與へざることあり、從つて條件を附し、承認を爲したる實例なきにあらず、例へば一八七八年七月十三日伯林條約に於て、歐洲諸國は、二條件を附してルーマニヤ國の獨立を承認したるが如し、國家承認の效果は、通例A承認國、及び被承認國間に國際公法上の權利義務の關係を生ずること、B國家の承認は、取消し得べからざること、C國家の承認は、遡及力を有する事等なり。
國家承認説
慣習は、國家が明示に承認したる時に於て、法律となると云ふ説を國家承認説と云ふ、例へば裁判所が、慣習を適用して、判決を爲したるが如き場合に於て、其慣習は法律となりたるものと云ふが如き是なり。(法例二條參照)
國家默認説
(こくかもくにんせつ)國家默認説とは、慣習が永く人民間に行はるるときは、國家の默認に依りて、法律と爲ると云ふ説也、此説は、英國のベンサム、佛國のエシュバック、其他佛國大半の學者の唱道せる處に屬す、エシュバック曰く、慣習法とは、立法者の默認したる風俗、若くは慣習より成りたる法律規則の全體なり、一國人民にして、久しく或行爲の規則を守り、立法者にして之を認了し、或は直接間接に、之を拒止せざる時は、一方に於ては、人民の意思に基き、他方に於ては、立法者の默認に淵源する慣習法を生ずと、蓋し慣習は、國家の承認あるにあらざれば、法律と爲らざること論を俟たざるも、此説に依るときは、慣習法は慣習法たる時に於て、慣習法と爲ると云ふと一般にして、甚だ空漠に失するの嫌あるを免れず。(主權默認説參照)
國家聯結=國家聯合
(こくかれんけつ)國家聯結とは、素と二個以上國家が、元首を同一にし、若くは對外關係上同一の中央政府を有するものにして、その組織は、個々獨立なる政治機關を有するものを云ふ、國家の聯結は、上説の如く、之を人的聯合、及び政的聯合の二種に區別す、人的聯合とは、君主聯合を指し、又君主聯合とは、眞正聯合、物質的聯合、並に聯邦、及び合衆國を總稱す、□一君主聯合國、君主聯合國とは、二箇以上の主權國が、一時其君主を同一にし、其聯合を組成する各國は、個々獨立の主權國たるを失はざるものを云ふ、君主聯合に於ては、政治聯合の如く、永久的の國家の聯結にあらず、一時同一の君主が、數國の元首なるに止まり、其各國は、獨立なる主權國の性格を變ぜざるものにして、嚴正に之を云はば、決して國家聯結にあらず、君主聯合の期限に就きては、一君主の終身とすることあり、一王統の繼續間と爲すことありて、其條件一樣ならずと雖も、要するに永久的に同一主君を戴くものにあらず、又其聯合の期限内に於ても、其各國は、國際公法上個々の人格を有するを以て、其各國は單に外國に對し、同一人を國家主權の代表者と爲し居るに過ぎず、此故に君主は同一人なれども、其政府は、全然互に獨立して、内外の政務を行ふのみならず、聯合國相互間に於ても、條約の締結其他獨立國間に於ける一切の關係を生じ得ること、恰も他國に對すると何等の差異あるなし、□二眞正聯合國、國家の眞正聯合とは、二個以上の國家が、相互間に於ては、別箇の國家たる關係を有し、各々固有の憲法、及び政府を有するに拘らず、他諸國との關係に於て、永久的に一主權國として、存在するものを云ふ、眞正聯合は、聯合國全體が、一主權國たる關係に立つが故に、國際公法上、其聯合を組成する各國は、各別なる主權國にあらずして、單に一部主權國と見るべきものとす、□三物質的聯合、物質的聯合とは、二ケ國以上が、同一主權の下に立ち、其合同に依りて、各自の國家たる資格を喪失し、別箇なる内閣、並に國内關係を有せざる國家、換言すれば、其國内關係上同聯合は、眞正聯合より一層鞏固なるものとす、而して其適例として、英蘭、蘇蘭、及び愛蘭の三國が聯結して、英國を爲すが如し、然るが故に、此所謂物質的聯合とは、歷史的國家の分類に止まり、國際公法に於ては、之を區別するの必要なく、其聯合は、決して斯法上國家の聯合にあらず、□四聯邦、聯邦とは、二箇國以上の國家が、互に同一地位を保持しながら、合同したる政的聯合の一にして、之を組織する諸國は、其共通の利益を互に保護し、其各國の内部、及び外部に對する獨立を相互に保障するを目的とし、各國は、其國内に對して、完全なる主權を行使し、聯邦組織の爲め、毫も直接制限を受くることなく、唯對外關係に於て、各國は聯邦條約、若くは國法に依る同組織の目的に反せざる範圍内に於て、自ら外交事項を處理し、他國と條約を締結し、外交官を派遣、及び接受し得るが如き、又聯邦全體に共通なる問題は、各國より選出したる代表者を以て組織せる中央政治機關に於て、之を決定するものにして、其諸國を綜合したる政治的團體を聯邦と稱す、從つて聯邦を組成する各國は、對内、及び對外主權を有すると同時に、聯邦組織の條約に依り、一定の事項を各國代表者よりて成立する中央會議體に於て決定すと雖も、其決定は、聯邦各國の版圖内に對し、又圖内の人民に對して、直接に拘束力を有するにあらず、其決定を實行するは、各自由の責任に屬し、各政府は、自己の權力に依り、之を強行するものとす、□五合衆國、合衆國とは、二個以上の國家が結合して、最高權力を有する中央政府を設定し、其政府に於て、聯合諸國に共通なる内政を行ひ、又對外主權を行使すると同時に、之等諸國は、憲法上自ら其對外主權を有せざるか、又は少くとも其行使を爲すべからざるものを云ひ、國際關係に於ては、合衆國全體を以て、一主權國と看做すべきものとす。
- 英
- Joint states
- 独
- Staatsverein
- 仏
- Réunion des Etats、Union des Etats
國旗
(こくき)國家を代表する旗を國旗と云ふ、今船舶に就きて云へば、國旗の揭場は、船舶の國籍を表彰するものにして、船舶が其國旗の示す國の船籍に屬することを指示するものなり、國際法の慣例に依れば、國旗の揭場は、左の效果を生ず、□一國旗は、船舶の國籍を示し、其正當の船舶なることを證明す、□二戰時に於て、中立國の國旗を揭ぐるときは、交戰國の捕獲を免がる、□三船舶の過失は、國旗の示す所の國家の責任に歸すること、是なり、斯くの如く國旗は、海上に於て重大なる效果を生ずるを以て、諸國の法律は、皆之を國籍に伴ふ特權となせり、從つて之を濫用する者に對しては、嚴罰を科するを通例とす、船舶法第二條に「日本船舶にあらざれば、日本の國旗を揭ぐるを得ず」と規定し、其第二二條に「日本船舶にあらずして、日本の國旗を揭げ、國籍を詐稱するときは、其船長を百圓以上千圓以下の罰金に處し、且つ情狀に依り、船舶を沒收す」と規定せるが如し。(三二年三月法四六號船舶法二、二二條)
- 英
- National flag
- 独
- Nationalflagge
- 仏
- Drapeau national
國外主權
(こくぐわいしゆけん)國家の獨立權と云ふに同じく、或る國家が外國に對し、獨立國として、毫も他國の拘束を受けざる地位、即ち國際法上獨立の人格を稱して、國外主權と云ふ。
- 英
- External Sovereignty
- 独
- äuszerliche Souveränität
- 仏
- Souverai-neté externale
國教
(こくけふ)宗教の人心を支配する勢力は、政權の以て企て及ぶべからざるものあり、之を以て古來權謀に富めるの君主は、宗教と政權とを一致せしめ、以て其政權保全に力めたり、宗教の力は重要なる社會力なり、施政の要訣は、自己の目的を達するが爲め、及ぶ限り社會力を利用するに在り、國權は、法理上宗教に對して、無制限の支配力を有す、然れども事實上國家が、社會力たる宗教を、如何なる程度迄自己の意思通りに支配すべきかは、研究するの價値あり、□一白由主義、自由主義は、各種の宗教信仰を平等に許可し、其間に取扱の差等を設けず、權利の享有、義務の負擔に就き、偏頗の取扱を爲さざるものを謂ふ、近世文明國は、思想の自由を尊重するが故に、信教の自由を認むるを原則とす、□二絶對國教主義、絶對國教主義は、一定の宗教を以て國家の宗教とし、國民は此宗教の外、他の宗教を信ずることを得ざるものを謂ふ、古代に於て政教一致なりし時には、此主義は常に實行せられたり、何となれば、政務これ教務なる故に、教務は、國家之を獨占して、他教の存在を認許する能はざれば也、□三相對國教主義(又は公認教主義)、相對國教主義とは、或る宗教を以て國教となし、傍ら他の宗教に對しても、亦之を信仰する自由を與ふるものを謂ふ、例へば露國に於ては、ギリシヤ教を以て國教とし、皇帝も亦之に歸依することを要し、此宗教には、幾多の特典を與ふ、但し他の基督教、並に基督教にあらざる凡ての宗教にも、信仰自由の權利を與ふ、而て其特典は基督教、猶太教、回教、及び偶像教の信徒に移傳することを得ず、此特典は、獨り國教のみ之を有すとせるが如し、我現在の制度は、全く宗教自由の主義に依る、國家には國教なく、何れの宗教に對しても、特別の保護を與ふることなし、啻に其主義に於て自由なるのみならず、宗教に關しては、國法の規定極めて不完全なり、之が爲め政府は、明治三二年一二月九日を以て、宗教法案を貴族院に提出せしも、俗僧の反對ありて、遂に通過するに至らずして止みぬ。
- 英
- Established religion
- 独
- Staats-religion
- 仏
- Religion nationale
國憲
(こくけん)實質的意義に於て國法と云ふに同じく、國家の組織機能を定むる根本法規を國法と云ふ。(憲法の部參照)
- 英
- Constitution
- 独
- Verfassungsrecht
- 仏
- Constitution
國庫
(こくこ)國庫に關する解釋には三説あり、國庫を以て、國家以外に獨立せる一個の私法人、即ち財團法人となすもの、國庫は、國家が私法上の關係に立つ場合を指すとなすもの、國庫は、國家が財産權の主體として働く一面にして、私法上の關係に立つや否やを問はずとするもの是なり、分説すれば、□一國庫を國家以外の私法人となす説、國庫の觀念は、羅馬法に基く共和時代に於て、國家財産を「ヱラリウム」と稱したり、帝政の時代に至り、諸州を分ちて二種となし、一は元老院之を管理し、一は皇帝が其資格に於て之を管理せり、此外に猶皇帝の私有財産ありき、而して皇帝の管轄に屬する州より生ずる歳入を以て、組織せる金庫を皇帝金庫と稱したりかしば、パドりアヌス帝以來、帝權益盛となり、元老院の權力衰へし爲、「ヱラリウム」は、遂に皇帝金庫の爲めに合併せられ、以後國庫を皇帝金庫と稱し、前の「ヱラリウム」と同しく、一種の法人と看做されたり、當時羅馬法の所謂國庫が、國家の人格の片面と見られしや否やは、多少の疑問ある處なれども、其最後の時代に於ては、國庫、皇帝と相並びたる一の法人なりと看做されたるが如し、歐州中世の封建制度破れて、極端なる中央集權起り、世は所謂警察國となるに至りて、統治權の主體たる國家は、全く法の上に超脱して、如何なる事をもなし能はざることなしとの觀念を生ぜり、然れども私法の上に於ては、國家も亦之に服從し、通常裁判所の管轄の下に立たざるべからざるを以て、若し國庫を國家の一面と解すれば、國權萬能の主義に反するに至る、茲に於てか私法上の關係に於ける國家を、國家より離れたる獨立の法人、即ち國庫と稱する私法人なりと解釋せり、即ち此意味に於ては、國庫は人民と同じく、國家の臣民たりしなり、斯くの如き觀念は、獨り中世に於て行はれたるのみならず、近代に至る迄、なほ其餘燼を存せり、□二國庫は、國家が私法上の關係に立つ場合を指すとの説、國家より離れて、國庫なる文字を用ふる以上は、其働作は、必ずや國家の統治權行使と異るべきものにして、從つて國庫が、私法上の關係に於ける國家なりと解するは、正當なりと云はざるべからず、然れども此問題は、各國の法規に從ひて決すべきものなり、若し或る國に於て、國庫の文字が、國家が權力を行使する場合に於ても、なほ用ひらるる處ありとせば、其國の國法上國庫を、國家の私法的方面なりと解するは狹きに失すべし、ただ國家が權力行爲をなす場合をも、亦國庫と稱すあならば、國家の外に別に國庫の文字を設くる必要殆どなきに至る、故に國庫の文字は、之を私法上の關係に於ける國家の一面なりと解するの適當なるを信ずと、□三國庫は、國家が財産權の主體として働く半面にして、私法上の關係に立つや否やを問はざるものとする説、國家が、其公法上の行爲に於ても、亦法の規定に從ふべきものなりとの觀念が、今日に至りて確定せし結果、國庫の觀念も、亦漸く其範圍を擴張したるが如し、此點に就きては、オットー、マイヤー氏の論ずる所其眞相を得たり、曰く今日の國庫は、憲法以前の警察國時代に於ける國庫とは大に異る、然れども、之國庫の學問的認識が、今日に至りて發達したる結果にはあらずして、實は國家の觀念が變化し、從つて國庫の意義も亦之に伴ふて變化せるに依る、舊時に於て國庫を國家以外の特別法人とせしは、適當の解釋なり、今日に至りては、國庫は國家自身にして、唯特定の方面より之をに見たるに過ぎずとする見解は、事實に適合するものにして、又少くとも、言語上一般に認めらるる處なり、即ち國庫とは、國有財産の所有者なり、財産の占有、及び取得に關して働く國家なり、(中略)然れども經濟上の方面に於ける國家は、必ずしも常に私經濟的、換言すれば、臣民と同一の地位に在るを要せず、國家が沒收を爲し、租税を徵收し、官吏の俸給支辨の義務を負擔する等の公法上の働をなす時に於ても、彼は猶ほ國庫なり、故に吾人が國庫に就きて云ひ得べき點は、唯其私法に服從する傾向を有すと云ふに過きず云云」と、斯くの如き解釋は、法文の影響を受けたる結果なるが如し、獨逸に於ては、國家が公法上の關係に立つ場合にも、仍ほ國庫の文字を用ゐることあり、例へば租税國庫と云ふが如し、この如き文字を解するには、國庫が國家の私法的片面なりと云ふのみにては、不十分なるが故に、マイヤー氏の如き解釋を採らざるを得ざるに至るなり、我國に於て、國庫を如何に解すべきかは、多少の疑問の存する所なれども、我國庫とは、統治主體が國家經營の爲めに定めたる財産(國有財産)の歸屬する庫(金庫とは云はず、何となれば國有財産は金のみにあらざればなり)と解すべく、別に統治主體の一面なりと解する必要もなく、又此意義を表示せる法律上の文字もなしと信ず。(民訴一四、民二三九、一〇五九條、二四年一月勅令三號民訴一四條に依り國を代表するの規定、憲法六二條二項)
- 英
- Fiscus
- 独
- Fiskus
- 仏
- Fisc
國債
(こくさい)國債とは、租税其他の收入により國費を支辨する能はざる場合に、國庫の負ふ處の債務也、然れど國庫が負ふ所の債務は、凡て國債と稱すべきものにあらず、債務中財政上の目的の爲め、負擔する債務のみを國債と稱し、行政上の債務の如きは、此中に包含せざるものなり、大藏省證券の如き、一時の借入金の性質を有するものも、亦此國債中に含まるるを普通とす。(憲六二條)
- 英
- National debts
- 独
- Staatsschuld
- 仏
- Dette de l'Etat
國債計算書
國債計算書は、每年大藏大臣の調製すべき、國債に關する計算書なり、國債計算書には、□一當該年度末日に於ける國債の種類、及び現高を示す所の計算、□二當該年度に於て償還し、仕拂ひたる各種國債の元高、及び利子の計算、□三最近五年度に於ける各種國債增減の形況を示す所の計算等を示すべきものとす。(二二年四月勅六〇號會計規則五四條)
- 英
- Acoounts of the national debts
- 独
- Rechenschaft der Staatsschuld
- 仏
- Comptes de la dette nationale
國債證券買入消却法
國債證券買入消却法とは、政府が、國債證券を買入れて、之が消却する方法を規定したるものなり、而して政府が、國債證券の買入消却を爲したるときは、大藏大臣は、其證券の種類、番號、總額、及び其買入の價格を告示すべきものとす。(二九年二月法五號國債證券買入消却法一條乃至三條)
國債整理基金
國債整理基金の歳入歳出は、一般會計と區分し、特別會計を設け、國債の償還、發行、借換に關する費途に使用するものとす、此基金は金銀地金、及び有價證券を以て之を保有し、其他有利確實の方法を以て、日本銀行に其運用を取扱はしむ。(三九年三月法六號)
國債簿
國債簿とは、大藏大臣が國債に關する事項を登記する爲めに備ふる帳簿なり。(三一年一〇月勅二六九號大藏省官制六條五號)
- 英
- Register of national debts
- 独
- Register der Staatsschuld
- 仏
- Enregistre-ment de la dette nationale
國祭
(こくさい)四方拜、元始祭、孝明天皇祭、春季皇靈祭、神武天皇祭、秋季皇靈祭、神甞祭、新甞祭、即ち之なり。
- 英
- National festival
- 独
- Staatsfesttag
- 仏
- Festival national
國際關係
(こくさいくわんけい)國家と、國家との間に存する國交上の關係を、廣く國際關係と云ふ。
- 英
- International relation
- 独
- Internationalverhältnisz
- 仏
- Relation internationale
國際條件
國際關係上ある事項を國家間に於て、條件に繫らしむることを國際條件と云ふ。
- 英
- International condition
- 独
- Internationalbedingung
- 仏
- Conditions internationales
國際慣例
(こくさいくわんれい)國家間の交通關係上一定の事情の下に於て、數國が常に同一の行爲を爲すことよりして生じたる、一般の慣行例規を國際慣例と云ふ、國際慣例は、國際公法の大部分を占め、數國の習慣が列國を通じて、明示、又は默示に承認實行せらるるに至るときは、自ら國際公法の原則、若くは法則と爲るものとす、例へば現行法中條約の締結、又は使節に關する原則の如きは、皆古來諸國の慣習より發生し、加之今日海上に關する國際公法の多くは、中世に於て地中海沿岸の都市に行はれたる慣行に其淵源を發し、古代小亞細亞の商業に關しては、ローデス法あり、十字軍以來、歐州西部の通商に就きては、十三世紀のオレロン法あり、又十一世紀以後に於て、地中海の諸都市に行はれたる慣習は、十四世紀のコンソラート、デル、マアレ法と爲りたるが如し、此等の法は、實は其の慣習を蒐集したるものなりしなり。
- 英
- International usage
- 独
- Internationalgewohnheit
- 仏
- Usage inter-nationale
國際刑法
(こくさいけいはふ)通常國際法を分ちて、國際公法、國際私法、及び國際刑法の三種とす、所謂國際刑法は、人民の犯罪行爲、若くは犯罪者の居住、其他の箇人關係が、二箇國以上に渉る場合に於て、其關係國は、之を如何に處理すべきやを論定せるものにして、方今文明諸國は、我國に於ける法例、逃亡犯罪人引渡條例を始め、其他の法律規則中に斯る規定の存在する如く、各自國の便宜、及び一般の公益上より制定したる國法が、自から他國の規定と相一致する所あるよりして、列國間に於ける一種の慣例法と見るべきものあるに依り、之を國際刑法と名け、以て國際法の一部として研究するに外ならず。(一九年九月日米犯罪人引渡條約)
- 英
- International criminal law
- 独
- Internationalstrafrecht
- 仏
- Droit criminel international
國際法
(こくさいはふ)國際法とは、國家と、國家との法律關係を規定する法規の總稱にして、之を分ちて國際公法、國際私法、及び國際刑法と分つを普通とす。
- 英
- International law
- 独
- Inter-nationalrecht
- 仏
- Droit international
國際公法
國際公法とは、文明諸國一般の承認に依り、國家相互の關係に於て、遵守せらるる行爲の法則なり、□一文明國間に遵守せらるる法則也、國際公法は、國家と國家との關係上、其權利義務を規律するものなり、而して國際公法は、文明社會に於ける國家のみに行はる、然らば如何なる程度の文明ありて、國家は甫めて國際公法の諸國團體中に入り得べきや、換言すれば、國家にして國際公法の下に立つものは、如何なる文明の程度に在ることを必要とするや、文明の程度如何の問題に就きては、抽象的に之を量定すること能はず、又實際各國の有する文明の程度に就き、精細に之が分界線を劃すること能はざるものなるが故に、結局は、事實上の問題に歸す、□二文明國一般の承認に係る法則なり、國際公法法則が、方今文明諸國間に遵守せらるは、その諸國一般の明示、又は默示の承認に依ること疑なし、何となれば、各獨立國は、悉く自主平等にして、自國以外に、如何なる政治上の優等なる權力をも認むることなきが故に、其國家を拘束すべき法則は、國家自ら其遵守を承認したるものならざるべからずして、文明諸國一般に遵守する國際公法は、其諸國一般の承認に係る法則なるを要する所以なり、□三國家行爲の法則なり、國際公法は、對外關係を規律する法則にして、國家が、他國に對して有する權利義務のみを規定し、一國と他國人民、並に一國人民と他國人民との權利義務に關するものを規律するものにあらず、然れども國際公法は、他諸國との關係上國家行爲の法則なるが故に、單に他國に對し、兩國政府間直接の行爲を規定するのみならず、例へば平時國際關係に於て、他國商船、若くは他國人民にして、自國の管轄領域内に在るもの、及び自國商船、若くは人民の自國版圖以外に在るものに就き、國家との關係上其權利義務を規定し、又戰爭中、敵國戰鬪員、及び非戰鬪員に對する國家の行爲、若くは敵國領土を自國軍隊の占領するに當り、徵發、取立金を爲し、又は封鎖等に關する諸法則の如き、國家が敵國個人、若くは中立國個人に對する行爲の法則を定め、更に又海賊其他の無籍人民に關する國家行爲の法則をも規定し、斯かる私人に關する國家の權利をも規律するものとす。
國際私法
國際私法とは、一の私法的關係にして、兩國以上に跨るものあるとき、其法律關係に對し、如何なる國の法律を適用して、法律關係の效果を定めんかを規定したる法律也、故に一國法律の適用の方面より云へば、國際私法は、外國的法律關係に對し、何國の私法を適用すべきかの適用區域を定むるの法則と云ふべし、元來國際私法は、各國の法律相異なるが爲めに發生すべき權利保護の不調和を、法律の適用に關する法則の同一に依りて矯正し、調和するを以て理想とし、發生したるものにして、從つて□一國際私法の存在には相異る、法律の行はるる諸國の人民が、相往來交通することを條件とす、相異る法律の行はる諸國人民が、相來往取引するに當つて、兩國以上に跨る法律關係の發生するは、素より其所にして、此場合に何れの法律を適用すべきやを示す準則が、國際私法なり、□二國際私法は、一の法律關係が二國以上に跨る場合の準則なり、斯かる場合に於ては、學者の所謂法律の牴觸にして、即ち法律關係の一方が外國人なるか、其目的物が外國に存するか、或は其行爲が外國に於て發生する場合に當り、何れの法律に依るべきかを決定するものが、國際私法なり、之に依つて之を觀れば、國際私法は、國際法にあらずして、一國裁判所が、法律を適用するに當つて、依るべき國内法なりと云ふべし、唯權利保護の不調和を矯正する爲めに、文明諸國は、國際私法を定むるの義務ありてふ點が、國際法の規定に過ぎざるなり。(法例修正案理由書參照)
- 英
- International private law
- 独
- internationales Privatrecht
- 仏
- Droit in-ternational privé
國際婚姻
(こくさいこんいん)婚姻を行ふ人、又は之を行ふ土地が、二個以上の國家に〓る場合に、此種の婚姻を國際婚姻と云ふ。
- 英
- International marriage
- 独
- internationale Ehe
- 仏
- Mariage interna-tional
國際裁判所
(こくさいさいばんしよ)國際裁判所とは、土耳古國、及び埃及國等に行はれ居る裁判所組織なり、土國に於ては、一八四七年以來、商事、及び刑事に關する事件は、此裁判所に於て、之を管轄するものと爲せり、即ち歐洲人と土國人との間に起りたる商業上の訴訟、及び歐洲人の犯したる犯罪事件は、之を此國際裁判所の管轄に屬せしむ、而して其裁判所は、第一審、第二審共にコンスタンチノープルに在り、其裁判所を構成せる裁判官は、歐洲人半數、土耳古人半數を以て組織することとなれり。
埃及に於ては、一八六七年、一八六九年、一八七〇年、一八七三年の前後四回の條約を以て、國際裁判所を設置することとせり、而して一八七三年の條約に於ては、佛、英、獨、墺、以の各國會合し、埃及に於ける國際裁判所構成法を制定したり、其裁判所は、當初五ケ年間設置の豫定を以て成定したるものなりしも、其後漸次延期して、遂に今日に至り、現今に於ては、既に永久存續せしむべきことを各國の間に約定したり、其第一審は三個あり、即ちアレキサンドリヤ、カイロ、イスマイラに在り、其裁判官は、歐洲人四人、埃及人三人を以て組織するものとす、控訴裁判所は、アレキサンドリヤに在りて、歐洲人七人、埃及四人を以て組織せり、又此裁判官に歐洲人を任命するは、埃及王なりと雖も、之を發議するは、歐洲各國なりとす、即ち歐洲各國の同意を得て、埃及王之を任命す、其裁判所の權限を擧ぐれば、□一民事に關する事件に就きては、(甲)埃及國にある不動産、又は其不動産に關する權利關係が、目的となりたる爭訟、(乙)歐洲人と、埃及人との間に於て起りたる一切の爭訟是なり、□二刑事に關する事件に就きては、重罪、輕罪、違警罪等とす、埃及國際裁判所の管轄する事件は、以上の如しと雖も、其權限外に屬する事件に就きては、埃及國裁判所、及び埃及國際裁判所に專屬する事件を除きたるものは、領事裁判所之を裁判す。
- 英
- International court
- 独
- internationalgerichtshof
- 仏
- Tribunal in-ternational
國際事務局
(こくさいじむきよく)國際關係上の或る事項に就き、關係諸國間に成立せる條約に關する事務を共同處辨せしむる爲め、之等諸國の合意を以て、各國より委員を派し、組織する事務局を國際事務局と云ふ。
- 英
- International business office
- 独
- internationalgeschäftsamt
- 仏
- Bureau des affaires internationales
國際上の聯結
(こくさいじやうのれんけつ)國際上の國家の聯結は、分ちて國家の同盟と、國家の聯合との二種となす、國家の同盟とは、數個の國家が合意に依り成る特定の事件に關し、共同の行爲を爲す爲めの結合にして、例へば郵便、關税、版權、電信、通商に關する同盟條約を締結するが如き、經濟上相互の利益を增進する場合も、また同盟なれど、殊に同盟國家と稱するは、例へば攻守同盟、防禦同盟を締結するが如く、兵力を以て互に相救援するを約するを云ふ、國家の聯合とは、例へば一八一五年より、一八六六年に至る迄の獨逸聯合の如く、國家全般の繁榮、及び國力の增進を謀る爲め、殊に外國に對して、其權力を共同に行ふが爲めに、永久を期する條約的結合也、國家の聯合は、單に國家と國家との結合に過ぎずして、之に依りて一の國家を組成するものにあらざるが故に、統治的關係は聯合各國に存し、この聯合と人民との間には、其關係存することなく、又其結合は條約的結合にして、國法上の結合にあらざるが故に、聯合各國の合意に依り、直に其聯合事項を變更することを得べし。
- 英
- International union
- 独
- internationalverein
- 仏
- Union inter-nationale
國際證券
(こくさいしようけん)國際間に流通する有價證券を國際證券と云ふ、例へば國際手形の如し。(國際手形參照)
- 英
- International bond
- 独
- Inter-nationalpapier
- 仏
- Papier international
國際條約
(こくさいでうやく)國際條約とは、國家間の契約にして、國家は獨立權の作用に依り、國際公法の範圍内に於て、如何なる事項をも他國と契約し得べく、從つて其契約に依り、國際關係上、當然有すべき義務にあらざるものを負擔し、又享有すべからざる權利をも、取得し得べきものとす、條約は、國家と國家との契約に限るを以て、國家と個人間の契約、又は國家が個人の資格に於て爲したる契約は、條約にあらずして、一種の契約たるに過ぎず、條約を締結するの權利は、獨立國に屬し、又一國家に於て、何人が其權利を行使すべきものなるやは、各國の憲法に依り、自から定まるものなり、又國家が、他國と條約を締結するに就きては、列國公會、例へば列國會議の結果に出づることあり、特定の一國、若くは數國の談判に依ることあるも、何れ場合に於ても、條約の談判、及び締結は、全權委員を當事者に於て選定し、之に全權書即ち委任狀を交付し、以て全權委員の會合に於て之を締結す、條約の種類は多樣なれども、其主要なるものを揭ぐれば、國際公法の法則に關する條約、政事上に關する條約、社會的經濟的の條約の三者とす、□一國際公法の法則に關する條約とは、締約國が、其條約の當時に行はるる國際公法上の法則を明かにし、若くは之を變更し、或は現行法に關係なき法則を將來に向ひ、新に設定せんことを目的とする條約なり、□二政治上に關する條約とは、締約國が、自國又は第三國の利益を保護、及び防禦し、其生存、獨立、保全、若くは平等を保護するを目的とする條約なり、□三社會的、及び經濟的の利益に關する條約とは、締約國が、各自單獨の政略上よりも、寧る列國共同なる社會上、及び經濟上の利益を目的とする條約を云ふ。(憲法一三條)
- 英
- Treaty
- 独
- Staatsvertrag
- 仏
- Traité international
國際手形法
(こくさいてがたはふ)手形は、流通證券にして、國際商業上の相殺具たるは、其經濟的作用の著しきものなり、手形は常に一國に於て發行し、始終其國に於て輾轉し、又は其國に於て支拂はるるものにあらず、寧る甲國に於て發行したる手形が、乙國に於て流通し、更に丙國に轉じ、竟に丁國に於て支拂はるるが如き、蓋し稀ならず、其他引受、又は支拂を求むる爲めにする呈示、引受、又は支拂拒絶の場合に於ける遡求權等は、必ずしも一國に於て生ぜざる也、而して各國の法律は、之等に就て、其規定を同じくせざるに於ては、手形上の債務者能力、手形行爲の形式、手形行爲の法律上の效力、手形上の權利の保全、若くは執行に必要なる手續等は、何れの國の法律に從ひて定むべきやの問題を生ず、之國際手形法の規定を必要とする所以なり、□一手形能力、我國に於ては、手形能力に關して特別の規定なく、一般法例の適用を受くるものなり、即ち外國人が、日本に於て手形行爲を爲し得る場合に於て、其本國法に依れば、無能力者なるときは、其行爲は、或は不成立、或は取消し得べきなり、然れども日本の法律に依り、能力者(滿二十年)たるときは、其外國人の日本に於て爲したる手形行爲は、之を有效とす、□二手形行爲の形式、手形行爲の形式は、彼の行爲地の法律に依るの原則に從ふ、外國に於て爲したる手形行爲の要件は、總べて其行爲を爲したる國の法律に依りて定まるものにして、其行爲者の本國法の如何を問はず、支拂を爲すべき國の法律如何をも問はざる也、此行爲地法の定むる形式を履行したるときは、我法律は、其行爲を有效とし、其行爲が、日本法律の定むる要件を具備せるや否やを問はず、其手形が日本に於ける手形上の效力を發生するものなり、行爲地の法律に從はざる手形行爲は無效とす、此原則に對し、二個の例外あり、(甲)外國に於て爲したる手形行爲が、其國の法律に定めたる形式を具へず、從つて其法律に依れば、無效たるものと雖も、日本の法律に定めたる要件を具備する時は、爾後日本に於て爲したる手形行爲は有效とす、(乙)日本人が外國に於て、日本人に對して手形行爲を爲したる場合に、其行爲が外國法の定むる處に適せざるも、日本の法律の定むる所に適したる時は、我法に於ては之を有效とす、□三手形上の權利の行使、及び保全に關する行爲の形式は、其行爲地の法律に依る、故に支拂拒絶を證するの手續如何、拒絶證書の作成期間、場所、作成等は、即ち行爲地の法律に依る、□四外國に於て爲したる手形行爲の效力、手形行爲の效力は、當事者の意思を問はず、常に行爲地法によるものとす、手形行爲の效力と稱するは、行爲者の負擔する責任の種類、範圍、債務の執行を強制する條件、其消滅理田、特に時效、不可抗力の拒絶證書作成の期間に及ぼす效力、手形上の權利の保全に、如何なる條件を必要とするや等是也、□五支拂の體、例へば支拂日、恩惠期等は、支拂地の法律に依るべきなり。(法例三條、商施一二五、一二六條)
- 英
- Law of international bill
- 独
- internationale Wechselordnung
- 仏
- Loi du billet international
國際破産
(こくさいはさん)國際破産とは、一國に於て爲したる破産宜告が、他國に對して如何に效力を有するやを定むるを云ふ、破産宣告の國際的效力に關しては、從來二主義あり、普通主義及屬地破産主義之なり、□一普通破産主義とは、一國に於て宣告したる破産は、當然外國に於て效力あり、外國所在の破産者の財産は、破産財團に屬すとなすものなり、從つて效果として、國際上一人一破産の制を認むるものとす、□二屬地破産主義とは、凡そ破産は、之を宣告したる一國内に於てのみ其效力を有し、外國所在の破産者の財産は、當然破産財團に屬せずとなすものなり、從つて外國に於ても、亦更に其外國所在地の財産に對して、破産宣告ある事を豫想し、國際上一人數破産の制度を認むるものとす、各國法律上より論ずれば、破産は屬地的のものとするを至當とす、蓋し破産は、一般的強制執行に外ならずして、執行の效力は、唯其國の領土内にのみ及ぶとなすを當然とすれば也、故に破産の國際的效力に關して、何等の明文なきときは、其效力は屬地的のものとなすを至當とす、現行破産法には明文なきが故に、理論上斯く解釋せざるべからず、而して我大審院も、亦斯くの如く認めたり、破産草案に於ては、原則として屬地主義を採り、日本に於て宣告したる破産は、外國に在る破産者の財産に就きては、其效力を有せず、又外國に於て宣告たる破産は、日本に在る者の財産に就きては、其效力を有せざるものとせり、而して債權は債務者の住所地にあるものと見做さる、然れども此原則に對しては、例外を設け、條約、又は命令に依り別段の定を爲し得べき旨を認めたり。(破産法草案三、四條)
- 英
- International bankruptcy
- 独
- Internationalbankerott
- 仏
- Banqueroute internationale
告示
(こくし)國家が或る事實を一般に告知することを告示と云ふ。(三二年三月法六六號國籍法一二條)
- 英
- Public announcement
- 独
- öffentliche Ankündigung
- 仏
- Annonce publique
國璽
(こくじ)國璽とは、日本帝國の印にして、文に大日本國璽とあり、國璽は、内大臣之を尚藏し、國書、條約批准、外國派遣官吏委任狀、在留各國領事證認狀等に親署の後これを鈐す。(公式令一三、一九條、刑一九四條)
- 英
- Seal of the state
- 独
- Staatssiegel
- 仏
- Sceau de l'Etat
國事犯
(こくじはん)國事犯とは、國家の統治權を侵害し、其存在、又は對外關係を危うする罪にして、内亂外患に關する犯罪行爲即ち之なり、一に政事犯と云ふ、國事犯は其性質上、□一國法の上に於ても、常事犯(非國事犯)と、其刑罰を異にし、(常事犯に比して其科を加重すへきも、侮辱的性質の刑を科せざること)、□二國際間の共助に就きても、特別の取扱を受く、(政治犯人は國際間に於ける引渡の目的とならざるを原則とす)、國事犯は、羅馬法以來の沿革に從ひて、左の如く區別する事を得、(甲)國家内部の秩序に對する攻撃、換言すれば、其成文法たると不文法たるとを問はず、一國の憲法に對する攻撃にして、例へば國土及國の主體に對する犯罪、此種の犯罪を稱して内亂罪と謂ふ、(乙)一國の對外的安固に對する攻撃、及び武裝的平和の時に於て、軍備に對する攻撃、前者を外患罪と云ひ、後者を軍事上の機密漏洩罪と云ふ、(丙)外國に對する攻撃、即ち國際間の和親を害し、延ひて自國の利益を害する罪是なり。(刑七七條乃至八九條)
- 英
- Political offence
- 独
- politisches Verbrechen
- 仏
- Crime politique
國書
(こくしよ)天皇が、日本帝國の名を以て發する文書を國書と云ふ。(公式令一三條)
- 英
- Credential
- 独
- Beglaubigungs-schrift
- 仏
- Lettres de créance
國税
(こくぜい)國税とは、中央政府維持の爲めに、國庫に徵收する租税を云ふ、卽ちこれに屬するものは、地租、所得税、營業税等なり。(直接國税、間接國税の部參照)
- 英
- National taxes
- 独
- Reichssteuer
- 仏
- Impôt national
國税滯納處分
國税滯納處分とは、國税滯納者に對して爲す強制徵收處分を云ふ、即ち祖税の納入期限を過ぎ、其税金を完納せざる者あるときは、收税官吏は、期限を指定し之を督促す、但し納税人が納付期限の利益を失ひたる場合に於て、國税徵收を爲すときは、此限りにあらず、督促狀を發したる時は、手數料として金拾錢を徵收す、督促狀に、指定の期限迄に督促手數料、及び税金を完納せざるとき(最も脱税、逋税の所爲あるときは、納期到來せざるもその即時納付を告知することあり、斯かる場合に其告知を受け、税金を完納せざるとき)は、收税官吏は納税者の財産を差押ふ、但し□一滯納者及其同居の家族の生活上缺くべからざる衣服、寢具、家具及厨具、一月間の食料及び薪炭、□二實印其他職業に必要なる印、□三祭禮禮拜に必要也と認むる物、及び石碑墓地、□四系譜、其他滯納者の家に必要なる日記書籍類、□五職務上必要なる制服、祭服、法衣、□六勳章其他名譽の票章、□七滯納者、及び其同居家族の修學上必要なる書籍、器具、□八發明又は著作に係る物にして、未だ公にせざるものは、差押ふる事を得ず、又農業に必要なる器具、種子、肥料、及び牛馬並に其飼養料、職業に必要なる器具及材料は、他に督促手數料、並に滯納處分費、及び税金を償ふに足るべき物件を提供するときは、滯納者の選擇に依り差押を爲さず、差押の效力は、差押物より生ずる天然、及び法定の果實に及ぶ、差押ふべき財産價格が、督促手數料、滯納處分費、國税徵收法三條(納税人の財産上に質權、または抵當權を有する者、其の質權、又は抵常權の設定が、國税の納期限より一箇年前に在ることを公正證書を以て證明したるときは、該物件の價額を限りとし、其の債權に對して國税を先取せざるものとす)に依り控除すべき債務額に充て、殘餘を得る見込なきときは、滯納處分の執行を止む、差押へたる財産は、之を公賣に付す、公賣に付するも買受人なきか、又其價格見積價格に達せざるときは、其見積價格を以て政府に買上ぐることを得べく、又見積價格僅少にして、公賣費用を償ふに足らざる物件は、隨意契約を以て之を賣却する事を得、賣却せる財産の代價にして、督促手數料、滯納處分費、及び税金を控除して餘剩あらば、之を滯納者に還付す、但し賣却したる物件が、質權抵當權の目的物たるときは、其代金の餘剩は、滯納者に還附する前、先つ債權者に交付し、餘剩あるにあらざれば、滯納者に還附せざるものとす、收税官吏が、財産の差押を爲したる場合に、第三者其財産に就き、所有權を主張し、取戾しを請求せんとするときは、賣買決行の五日前までに、所有者たるの證據を具へて、收税官吏に申出つべし、納税の義務は、□一税額の納付、□二滯納處分、□三免除に依りて消滅す。(國税徵收法一條乃至三二條)
國税滯納處分法
國税滯納處分法とは、國税滯納者に對する國家の處分方法、即ち國税取立に關する事項を規定したる法律なりしが、三〇年三月法律二一號國税徵收法の發布と共に廢止せられたり。(三〇年三月法二一號國税徵收法三四條)
- 英
- Law of remedies for recovery of the direct national tax
- 独
- Rückstandbehandlungsgesetz der Reichs-steuer
- 仏
- Loi de la remède pour recou-vrer l'impôt national
國税徵收法施行規則
國税徵收法施行規則は、國税徵收の方法手續等に關する事項を規定せる法則なり。(三五年四月勅一三五號國税徵收法施行規則)
國税品
(こくぜいひん)國税として納付する物品を云ふ、例へば伊豆七島、小笠原島に於て、物品を以て納付することを許せる租税の如し。
- 英
- National tax goods
- 独
- Sachen für Reichssteuer
- 仏
- Biens imposés par l'Etat
國籍
(こくせき)國籍とは、一國の臣民たる身分を云ひ、一國の臣民たるには、其國家構成分子として、其國家に對する絶對的服從關係に立たざるべからず、絶對的服從と云ふは、外國人の如く、我國に滯在する間のみ、我國權に服從するのみならず、世界何れの處に至るも、絶對的に我國權に服從する永屬的關係を云ふ、國籍は斯くの如く、内國人と外國人とを區別するの標準なり。
- 英
- Nationality
- 独
- Staatsangehörig-keit
- 仏
- Nationalité
國籍回復
(こくせきくわいふく)國籍の回復とは、一旦我國籍を喪失したる者が、更に再び我臣民と爲らんとすることを云ふ、國籍回復の條件は、□一婚姻に依りて國籍を喪失したる者の國籍回復の條件、イ婚姻の解消したること、女子が我國籍を喪失したる原因は、婚姻なりしを以て、我國籍を回復する爲めには、先づ其婚姻が止みたること、即ち婚姻の解消を要す、ロ日本に住所を有すること、我國籍を回復せんとする女子は、我國に歸來し、我國に於て、現に住所を有することを必要とす、但し住所の年限の長短は、敢て問ふ處にあらざれども、我國を以て、再び生活の中心とし、本國とするの意思を確めんが爲めに、我國に住所を有することを必要とす、ハ内務大臣の許可あること、二歸化に依りて國籍を失ひたる者の國籍回復條件、生來の臣民が自己の志望に依りて、任意に外國の國籍を取得するときは、我國籍を喪失す、斯かる舊日本人が、後日に至りて、再び故國に歸らんと欲する場合に、國籍の回復を許す、此場合には、我國に住所を有すること、内務大臣の許可との二條件を以て、我國籍を回復し得るものなり。(國籍法二五、二六條)
- 英
- Recovery of nationality
- 独
- Wiederherstellung der Reichsangehörig-keit
- 仏
- Regagner la nationalité
國籍回復者
國籍の回復を爲したる者を國籍回復者と云ふ。
- 英
- Regainer of nationality
- 独
- Wiederhergestellte der Staatsangehörig-keit
- 仏
- Regagnant de la nationalité
國籍喪失
(こくせきそうしつ)國籍喪失とは、我國民たる分限を喪失するを云ふ、その原因は凡そ四あり、遂次説示すれば、□一婚姻、日本の女が、外國人と婚姻し。外國人の妻ととなりたるときは、日本の國籍を喪失す、□二離婚又は離緣、外國人たる者が、入夫婚姻又は養子緣組に依りて、我國籍を取得し、其後斯くの如き者が、離婚又は離緣により、日本の家を出づる場合に於ては、引續き日本人と看做すべき必要なきが故に、斯かる者は其國籍取得の原因たりし婚姻關係、又は養子關係の消滅と共に、我國籍を喪失す、□三認知、日本の國籍を有する子が、外國人たる父、又は母が認知に依りて、外國の國籍を取得するときは、父子國籍を同うするの精神よりして、我國籍を喪失す、□四歸化、我日本人が、自己の志望に依りて、外國の國籍を取得するときは、我國籍を失ふべきものとす、自己の志望に依りて、外國の國籍を取得する者とは、即ち歸化なり、故に縱令外國の國籍を取得するも、若し外國の法律上、強ひて國籍を付與するものにして、個人任意の志望に出でたるものにあらざるときは、之が爲めに我國籍を喪失すべきものにあらず、以上四個の原因に依り、我國籍を喪失すべきを原則とするも、一大制限あり、即ち我國籍を喪失すべき者が、十七歳以上の男子にして、陸海軍兵役の義務を有するとき、例へ以上の原因に依りて、我國籍を失ふべき者と雖も、先づ兵役の義務を履行し、若くは之を免除せらるるにあらざれば、我國籍を喪失することを許さず、又國籍を喪失すべき者が、若し文武の官職を帶ぶるものにして、我國家の官吏なるときは、先づ其官吏たる資格を失ひたる後にあらざれば、我國籍を喪失することなしとす。(國籍法一八、一九、二三、二〇、二四條)
- 英
- Loss of nationality
- 独
- Ver-lust der Reichsangehörigkeit
- 仏
- Perdre de la nationalité
國籍取得
(こくせきしうとく)人の國籍は、其出生と同時に取得するを例とすと雖も、畢生間一定不易なるにあらずして、出生後の事實に依り、之を變更し、更に他の國籍を取得する事ある故に、國籍の取得を生來の取得と傳來の取得との二種とする得、□一生來の取得、生來の國籍とは、人が出生に依りて取得るす國籍にして、人の出生は、一方に於ては其兩親と子との間に親子の關係を生じ、他の一方に於ては、子と其出生地との間に一種の事實關係を生ずるもの也、生來の國籍取得は左の場合に生ず、(甲)出生の當時、父が日本人なりしとき、(乙)懷胎の當時、父が日本人なりしとき、(丙)出生の當時、母が日本人なりしとき、(丁)我國に於て出生したる棄兒、又は國籍なき者の子、之也、□二傳來の取得、傳來の國籍取得とは、出生の事實に依り、已に一旦國籍を取得したる者が、更に出生以後の原因に依りて、他國の國籍を取得せる場合を云ふ、(甲)親族法上の原因、イ婚姻、ロ入夫婚姻、ハ養子、二認知、(乙)歸化、歸化とは個人の志望に基き、國家が特別の行政處分に依り、我國籍を許與する場合を云ふ、從つて歸化はA外國人の任意の出願を前提とし、B此出願に對して、我國家が特別處分を以て、許可を與ふることに依りて成立するものなり、(丁)領地割讓に依る國籍の取得、即ち國際條約に依り、土地の一部を割讓したる場合に於て、其土地の住民は、讓受國の國籍を取得するを普通とす。(國籍法五、七條、憲法一三條)
- 英
- Acquirement of nationality
- 独
- Erwerbung der Reichsangehörigkeit
- 仏
- Acquisition de la nationatité
國籍牴觸
(こくせきていしよく)國籍の牴觸には、積極的牴觸と、消極的牴觸との二個の場合あり、積極的牴觸とは、特定の一個人に就きて、二箇、若くは二箇以上の國家が、同時に自國に屬する臣民たること主張する場合にして、斯かる牴觸は、或は生來の國籍取得に就きて發生し、或は又傳來の國籍取得に就きても發生する事あり、消極的牴觸とは、特定の一個人に對して、何れの國家も、自國に屬する臣民なる事を認めざる場合に發生するものにして、斯かる牴觸は或は傳來の國籍取得の場合に發生するものなりと雖も、生來の國籍に就きても亦發生する事あり、我國籍法は此二個の牴觸に就き、成るべく之を避くることを努め、外國人が國籍を取得する場合に在りては、先づ其本國の國籍を喪失すべきことを條件とし、又我臣民が、我國籍を喪失する場合にありては、先づ外國の國籍を取得することを條件とするが故に、消極的國籍の牴觸は、大に豫防し得たりと雖も、積極的牴觸に至りては、斯くの如く完全に豫防し得ざるのみならず、我國家族制度を維持するの必要より、入夫婚姻、又は養子等の場合に於ては、國籍の牴觸を發生することを避くるに遑あらざる場合ありて、牴觸の原因を增加せり。
- 英
- Contradiction of nationality
- 独
- Kollision der Reichsangehörigkeit
- 仏
- Contradiction de la nationalité
國籍法
(こくせきはふ)國籍法とは、我國籍の取得、喪失、回復等に關する事を規定せる法律にして、三二年四月一日より施行せられ居るものなり。(三二年三月法六六號國籍法)
- 英
- Law of nationality
- 独
- Staats-angehörigkeitsrecht
- 仏
- Loi de la nation-alité
告訴
(こくそ)犯罪に依り損害を受けたる者は、當該、官廳に其害を被りたる犯罪の事實を申告して、訴追を希望するの意思表示を爲す事を得、此申告及訴追の希望意思表示を告訴と稱す、告訴は、告發と同性質のものにて、唯其申告者の異ると、訴追希望を包含せざるとの點に於て異る、即ち告訴は、被害者が申告するを云ひ、告發は、被害者以外の者が申告するものにして、法律上訴追希望を包含する能はざるの差違あり、其他兩者の差異を擧ぐれば、□一申告罪に就きては、告訴は訴追條件なりと雖も、告發は然らず、□二告訴人に對しては、檢事は捜査の結果たる處分を通知するを要すれども、告發人に對しては、之を通知するを要せず、□三告訴を爲すの地と告發を爲す地とを異にす、其他に就きては、告發と同一なり。(刑訴四九條乃至五一條告發の部參照)
- 英
- Accusation
- 独
- Anzeige
- 仏
- Accusation
告訴人
告訴を爲すべき人を告訴人と云ふ、其責任如何等に就きては、亦告發人に同じ。(刑訴一三條、刑三五五條、民七〇九條告發人の部參照)
- 英
- Accuser
- 独
- Ankläger
- 仏
- Accusateur
國體
(こくたい)國家の形體を國體と云ひ、彼の立憲、獨裁の政體に對する語なり、國體は、建國の時に定まり、其國の滅亡に至る迄、常に同一の團體を以て始終繼續するものなり、國體を分類するときは、君主國、貴族國、及び民主國の三種となる、君主國とは、統治權の一人に歸屬する國を云ひ、貴族國とは、國民の一階級を以て、統治の主體と爲す者を云ひ、民主國とは、國民全體を以て、統治の主體と爲す國を謂ふ、之に反して政體は、主權執行の形式にして、彼の獨裁專制政體、立憲君主政體と云ふが如きは此例なり、政體國體の區別以て知るべし矣。
- 英
- Nationality
- 独
- Nationalität
- 仏
- Nationalité
告知
(こくち)告知とは、廣く事件を通知告達する事を云ふ、法律上の用語として、種々なる場合に用ひらる、例へば告知義務、告知參加と云ふが如し。(民訴五九條等)告知參加とは、本訴訟の當事者の一方より、其訴訟に關係せざる第三者に對し、訴訟を告知して、參加すべきことを催告し、之に應じて第三者が訴訟に參加するを云ふ、若し第三者が本訴訟に參加したるときは、補助參加人と等しき地位に立つべきものとす、所謂補助參如人は、第三者が自ら進みて本訴訟の當事者一方を補助せんとして、參加するものなれども、告知參加は、本訴訟の當事者の一方より、告知あるに依りて、參加すべきもの也、當事者が訴訟告知を爲す目的は、第三者をして、訴訟に參加するの機會を與へ、其補助に依りて勝訴せんことを期すると、若し敗訴したるときは、告知者と被告知者との法律上の關係に於て、其被告知者より本訴訟の行爲を不十分に爲したりと、主張することを得ざらしむるにあり、訴訟告知の要件は、□一本訴訟の權利拘束中に爲すことを要す、□二本訴訟の當事者の一方、卽ち告知者が敗訴したるときは、第三者に對して擔保、若くは賠償の請求を爲し得べしと信じ、又は第三者より、之等の請求を受くべき虞ある場合なることを要す、如何なる法律關係の存在するときは、當事者の一方の敗訴に依り、第三者に對し請求權ありや、又は第三者より請求を受くべき義務あるやと云ふに、例へば連帶債務者間、又は主たる債務者と保證人との間、若くは賣主買主との間の如きこれなり、訴訟告知を爲さんには、本訴訟の繫屬する裁判所に、書面を差出して之を爲さざるべからず、訴訟告知書に記載すべき事項は、(甲)告知の理由、(乙)本訴訟の程度之なり、訴訟告知書は、第三者に送達し、其謄本を相手方に交付すべきものとす、訴訟告知のみにては、本訴訟には何等の關係なきものなれば、之が爲め本訴訟の進行を停止せず、又被告知者を強制して、其訴訟に參加せしむべきものにあらず、唯被告知書が訴訟行爲を爲さんと欲せば、任意に參加すべきのみ。(民訴五九乃條至六一條)告知書とは、或る事件を相手方に通知すべき旨を記載したる書面なり、例へば訴訟告知書等の如し。
- 英
- Notice
- 独
- Kündigung
- 仏
- Noti-fication
告知參加
告知書
- 英
- Written notice
- 独
- kündigungs-schrift
- 仏
- Lettre de notification
國内法
(こくないはふ)法律を大別して國内法、及び國際法の二とす、國内法とは、國内の法律にして、統治者と被治者との關係、或は行政機關各部の關係、又は被治者間の關係に就き、規定したる總てての法律命令を云ふ、之を分ちて國内公法、國内私法の二となす、通常公法、私法と云ふものこれなり、例へば民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、憲法等の如き是なり。
- 英
- National law
- 独
- National-recht
- 仏
- Droit national
國内公法
國内公法とは、卽ち通常公法と云ものにして、主として國家と國家の機關との間、又は國家の機關と一私人との間、或は國家と私人との間を規定したる法令にて、例へば憲法、行政法、刑法刑事訴訟法の如き皆公法に屬するものなり。
- 英
- National public law
- 独
- nationales öffentliches Recht
- 仏
- Droit public national
告發
(こくはつ)告發とは、被害者以外のものが、犯罪あることを捜査官に申告するを云ふ、告發には私の告發と、公の告發とあり、私の告發は、何人と雖も各人の權利として、之を爲すことを得べきものなり、公の告發は、官吏、公吏に對し、告發の義務を負擔せしめたる場合を云ふ、□一一般の官吏公吏が、其職務を行ふに依り、犯罪を認知思料したるときは、速に其職務を行ふ地の檢事に告發するの義務を負ふものとす、此告發の義務ある官吏の中には、檢事、司法警察官は、これを包含せざるものとす、□二巡査、憲兵上等兵が、其職務を行ふに當り、重罪、又は禁錮の刑に該る輕罪の現行犯ある事を知りたるときは、被告人を逮捕して、速に之を司法警察官に引致し、口頭を以て告發するの義務あり、此場合に、被告人を受取りたる司法警察官は、巡査等の逮捕、及び告發の顚末を聽取し、之に就き調書を作るべきものとす、又巡査、憲兵上等兵が、罰金の刑に該るべき輕罪、又は違警罪の現行犯あることを知りたるときは、輕罪に就きては、檢事に、違警罪に就きては、即決官署に之を告發すべきものとす、□三私の告發にして義務に屬する場合は、何人に限らず、重罪又は禁錮の刑に該るべき輕罪の現行犯に就き、被告人を逮捕したるとき、之を司法警察官に引致する能はずして、假に巡査、憲兵卒に引渡したるときは、告發するの義務あるものとす、又爆發物あることを知りたるときは、直に警察官吏、若くは危害を被らんとする人に告知すべきものとす、公の告發は、官吏の署名したる書を以て之を爲す、私の告發の場合に於ては、書面又は口頭を以て之を爲す、又私の告發は、之を代人に委任して爲すことを得、告發は何れの場合に於ても、成るべく證憑、又は事實參考となるべきことを申立つるを要す。(刑訴五二條乃至五五條、一七年一二月太政官布告三二號爆發物取締罰則八條)
- 英
- Accusation
- 独
- Anklage
- 仏
- Accusation
告發人
告發人とは、告發をなすべき人なり、告發人が不實のことを申告したるときは、誣告罪の責任を免れざるは當然なれども、此刑事上の責任の外、惡意の場合は勿論、善意の場合にても、告發人の重過失に出でたるときは、民事上の損害賠償を負擔すべきものとす。(刑訴一三條、刑三五五條、民七〇九條)
- 英
- Accuser
- 独
- Ankläger
- 仏
- Accusateur
國法
(こくはふ)國法なる名稱は、獨逸公法學者の一般に採用する所なるも、その用法に至りては、一定することなく、或は國法と、公法とを同意義に用ふる者あり、或は之を公法の一部とし、憲法、及び行政法を合せて國法と稱する者あり、或は行政法を國法より除外し、憲法と國法とを同意義に用ふる者あり、或は憲法と行政法とのみを併せて國法と爲す者あり、此最後の見解を通説とす。
- 英
- National law
- 独
- Staatsrecht
- 仏
- Droit national
國寳
(こくはふ)國寳とは、一國内に於ける寳物を指す、例へば官幣社の寳物、貴重什器と云ふの類是なり。(三五年三月内務省訓令二號)
- 英
- Treasures of state
- 独
- Staats-schätze
- 仏
- Trésor d'Etat
國寳監守
國寳監守とは、國寳を監督守理するものを云ふ。(三〇年勅令一四六號)
- 英
- Superintendence of the trea-sures of state
- 独
- Aufsicht der Staats-schätze
- 仏
- Surveillance du trésor d'Etat
國民
(こくみん)國民と云ふは、臣民と云ふに略ぼ同じくして、一國に於ける統治權の客體たる人を總稱するものなり。(憲法一八條)
- 英
- Nation
- 独
- Volk, Staatsbürger
- 仏
- Nation
國民權、
國民權は、之を分ちて、自由權、國家行爲請求權、參政權の三種とす、□一自由權、自由權とは國家の干渉を受けざる自田の範圍を云ふ、自由權に屬するものは次の如し、(甲)身體、住所、及び文書の不可侵、イ身體の不可侵、茲に身體の不可侵とは、國家、及び國權力と雖も、法律に依るにあらざれば濫りに個人を逮捕、監禁、審問、處罰する事なきを云ふ、近世の文明國に於ては、人の身體は、妄に國權行動を以て覊束する事なきを通義とし、國民は、國家に對し、其身體の自由を安全に保持する權利を有す、唯此自由は法律に依りて制限せらるる事あるべきのみ、凡そ逮捕其他の強制手段は、刑事訴訟手段として、犯罪の處罰又は嫌疑の爲め行ふことあり、又警察手段として、公共の安寧秩序、善良の風俗を維持せむが爲めに行ふことあり、現今文明諸國の國法は、刑事訴訟、及び警察の手段として、逮捕、監禁、審問、處罰等を認むと雖も、亦同時に法律を以て之を行ふべき範圍と形式とを定め、官廳官吏の專恣に一任することなし、ロ住所の不可侵、國民は、法律に定めたる場合を除く外、其許諾なくして、住所に侵入せられ、又は捜索せらるることなし、之を住所の不可侵と云ふ、住所とは、民法上の意義に於ては、各人生活の本據を云ふを常とすと雖も、憲法上の意義に於ては、家宅又は居宅を指示す、盖し住所は、各人の城壁なり、家宅の平和安全を保障せられずんば、人は一瞬たりとも枕を高くするを得ざるなり、敢て財産の損害を受けず、又は身體の自由を妨げられざるも、家宅の平和を害せられたるのみにて、人は非常の苦痛と損害とを感ぜずんばあらず、之諸國の國法に於て、必ず家宅の安全を保障し、保護する所以なり、ハ信書の不可侵、個人は、法律に定めたる場合を除く外、信書の秘密を侵さるることなし、之を信書の不可侵と云ふ、信書とは、郵便又は電信に依り、特定人間に意思を通ずることを云ふ、信書にして秘密を保つ能はざらんか、當事者の不利、損害は、實に測られざるものあり、人は安んじて其意思を他人に通ずること能はざるに至らむ、故に隔地者間の、交通の要具たる信書の秘密を保障し、他人殊に官廳官吏をして、之を侵害せしめざるは、頗る重要の事に屬す、(乙)身體的動作の自由、イ居住の自由、國民は、國家を組成する基礎なり、隨つて國民が、其屬する國家の版圖内に住居し得ることは、國民たる者の當然の權利にして、國家と雖も、之を剝奪するを得ざるものとす、昔時にありては、國家は、國民を國外に放逐せしことありしと雖も、今や國家は、自國の臣民を國外に放逐するを敢てせず、唯已むを得ざるときは、國内に於て之を處刑すべきのみ、外國より放逐せられたる自國の國民は、之を國内に收容せざるべからざると共に、自國の臣民は、犯罪を理由として、外國に引渡すことを避くべきものとす、ロ移轉の自由、移轉の自由にはA脱籍の自由あり、B外國居住の自由あり、C内國に於て移轉の自由あり、(丙)經濟的動作の自由、國民は、各自經濟的活動を爲し、其慾望を充たさむ爲めに、經營するの自由を有する事は、近世諸國憲法の認むる處なり、營業の自由是なり、然れども、往時を顧れば、職業は、或は世襲獨占の狀態をなし、或は一定の團體、又は組合の專領に歸し、其國體又は組合に加入するにあらざれば、營業を爲す事を得ざる等、職業發達の上に妨害を爲したると共に、種々の弊害を釀生したる事あるは、歷史の證明する所なり、故に近世諸國の憲法が、營業の自由を保障する所以のもの、實に此歷史の存するあるが爲に外ならず、唯公益の爲にする職業、又は事業に至りては、國家は特に法規に依り、特許許可等の條件を定むるものあるのみ、(丁)精神的動作の自由、イ信教の自由、歐洲諸國に於ては、古來宗教上の抑壓、制限、干渉は、人類社會に最も悲慘なる歷史を殘せり、即ち或は一定の信教を禁止せる事あり又は、或信教者を異教徒として、虐遇せる事あり、されど我國には古來一定の國教なるものなく、苟も安寧秩序を妨害せず、及び臣民たる義務に背かざる限りに於ては、如何なる宗教を信仰するも差支なし、之を信仰の自由と云ふ、ロ出版の自由、印刷術の發明と共に、個人の精神的活動は出版に依りて表はる、著作印行の自由之也、由來印刷物に關する國家の法制には、檢閲主義を採るものと、自由主義を採るものとの二樣あり、前者は印刷に關する危險、又は不法を未發に豫防するを以て目的とし、其印刷物を公にするに先だち、國家機關の檢閲を必要と爲し、後者は之に反して、自由に印刷物を公にする事を許し、唯危險又は不法の印刷物を公にしたる時、事後に於て之を禁壓するものと爲す、我法制に於ては、後者の主義を採り、法律の範圍内に於ては、出版の自由を保障したり、ハ言論、集會、及び結社の自由、言論とは、口頭を以て思想を外部に發表するを云ひ、集會とは、多數の人が、共同の目的に依り、一時集合する事を云ひ、結社とは、多數の人が其合意に依り、共同の目的の爲め多少永續すべき團體を組織することを云ふ、此三者は、其目的にして善良なるときは、社會の進運發達に缺くべからざる手段たるに拘はらす、由來君權強大を極たる時代に於ては、其專制を行ふの妨害と爲るものとし、極端に之を禁遏したるの結果、其反動として近世諸國の憲法は、此三者の自由を保障し、唯法律に依りてのみ制限する事を得るものと爲すに至れり、我憲法もまた然りとす、(戊)所有權の不可侵、我憲法に於ては所有權の不可侵なることを擔保し、公益の必要なる處分に就きては、一に法律に定むる處に從ふべきものとしたり、國家は司法、又は行政の處分として、私人の財産を徵收し、或は沒收することの必要なることあり、刑法其他の刑罰法に定むる罰金、沒收の如き是なり、又公益行政の爲に、私人の財産を徵收することの必要なることあり、徵税、公用徵收の如き是なり、然れどもこれ皆法律の規定に俟つべきものとす、□二國家行爲請求權、凡そ國家の行動は、公益の爲めにす、而して公益は、常に私益を排斥せざるのみならず、其相一致する場合には、寧る國家は私益をも滿足せしむるものなり、然れども國家が公益の爲めにする行爲にして、偶々私益を滿足せしむること能はさる場合なきにあらず、例へば種痘強制は、個人の健康を裨益し、保安警察は、個人の生命財産を安固にすること頗る大なるものありと雖も、其反動として私權を無視することあり、又國家は私人の請求を俟つて、初めて或る積極行爲を爲し、然かも之を請求すると否とは、其私人の自由に委することあり、之等の場合に於て、私人は國家の行爲を要求する權利を附與せらるるものなり、卽ち國民は、或る場合に國家に對し、自己の爲めに積極的行爲をなさむことを要求するの權利あり、此權利を稱して、國家行爲請求權と云ふ、イ在外國民の本國保護請求權、國民は、國家の一員として、其國家に對する關係頗る密接なるものあり、自國内に在るときは勿諭、外國にあるときと雖も、其本國と離るべからざる地位にありて、卽ち本國は在外國民を召喚して、兵役義務を強ゆることを得べく、また國民は、内國に於て自國の保護を受くるのみならず、外國に滯在する時と雖も、本國の保護を要求する事を得べし、隨つて本國は之が爲めに、或は外國に公使、領事を置き、或は臨機の必要ある時は、軍艦又は軍隊を派遣すること等あるなり、唯當該場合に於て、如何なる手段を採るべきやは、國家の獨り自ら選擇すべき所に屬す、ロ行政行爲請求權、國家は行政を爲すに當りては、固より私人の意思如何を問ず、公益の爲めに適宜の處分を爲すこと多しとす、然れども時に私人の要求を俟つて、或る行爲をなすことあり、殊に公益行政に於て然るを見る、例へばA或る關係、又は事實を確認することあり、公證、登記を爲すが如き之なり、B自由の制限を解くことあり、許可を與ふるが如き之なり、C或る權利を設定することあり、營造物の使用を許し、特許を與ふるが如きこれなり、D違法處分を廢止變更することあり、行政訴願、又は行政訴訟の如き是なり、之等の場合に於ては、個人は國家に對し、公證、登記、登錄、許可等を請求する權、營造物使用請求權、處分の變更廢止請求權を有するものとす、ハ司法行爲請求權、國民は又國家に對し、司法裁判を請求する權を有すること、諸國憲法の等しく認むる所にして、現に我憲法に於ても「日本臣民は、法律に定めたる裁判官の裁判を受くる權を奪はるることなし」と規定せるを見る、この權利は、即ち司法行爲請求權にして、約言すれば訴權なり、訴權は、即ち國家に對し、裁判を要求する權利なるを以て、國民公權の一たるや明なり、然るに民事訴權に關しては、往々之を私權なりとするものなきにあらず、之蓋し實體權にして私權なるときは、之より流出する訴權も亦私權たるべしとの觀念に基くものならん、實體とは特別のものにして、其性質の相伴ふものにあらざるなり、二請願權、國民に請願を爲すの權利あることは、憲法の認むる處にして、言路を開き、民情を通ずる所以なり、抑も請願とは、國民が自己又は一般の利益に關し、巳往、現在、若くは將來の事項に就き、國家に對し、其希望を申述するの謂にして、其之を申述するの自由を法律に認むるに依りて、一の權利たる也、之を立法上の行爲請求、權と云ふ、A請願の事項は、私益に關すると公益に關するとを問ふことなし、B請願の事項は、巳往、現在に關すると將來に關するとを問ふことなし、C請願は、國家に對して爲すものなり、D請願は希望を申述して、或る立法上の行爲を爲すを希ふにあり、□三參政權、國家は、統治を行ふに當り、自然人又は自然人の集合に依りて、自己の意思を形成し、自然人又は自然人の集合を以て、其機關と爲し、國家の爲めに行はしむ、故に機關の意思は、國家の意思にして、機關の行爲は、國家の行爲なり、而して其機關の地位に就き、又は其機關の構成に參與する事を得る、各個人の權利を稱して參政權と云ふ、イ選撃權、及び被選擧權、立憲國に在りては、公選の議員又は公吏を以て、議會の少くとも一院、及び公共團體の或る機關等を組成するものなり、而して之等の機關を組成する所の議員、又は公吏を選擧する權利は、個人の公權中最も著しきものにして、法律に定めたる要件を具備するものは、即ち其選擧に參與することを得るものとす、所謂選擧權とは此謂にして、其之を行ふは、個人が國家機關の構成に參與する一場合と云ふことを得べきなり、又一定の要件を具備する者は、議員、又は公吏に選擧せらるる權利あり、之を被選擧權と云ふ、然るに一定の要件を具備する者は、直に議員、又は公吏と爲り得るにあらずして、當選したるとき、初めて議員、又は公吏と爲る能力あるに過ぎざるの點より觀察して、學者或は被選擧權は權利にあらずと爲すものあり、固より被選擧權は、即時に議員、又は公吏たらむことを要求する權利にあらずと雖も、當選を俟ち、當選人として國家機關組成の一員たる地位を要求し得べぎもの、之を一の權利と認むるに於て、何等妨げあることなき也、我憲法第一九條中「公務に就くことを得」と規定せる所以のものも、亦實に之を國民の一權利と認めたるに在ること疑ふべからず、ロ官吏と爲る權、官吏と爲るの權も、また被選擧權と同じく國民の權利にあらずして、一の資格たるに過ぎずと爲すものあり、官吏と爲る權とは、官吏たることを要求し得るの意義にあらずして、官吏たるべき資格を要求することを得るの意義なりとせば、之を以て一の權利と爲すに於て、何等妨げあることなきなり、顧ふに往時にありては、官吏は世襲と爲すか、又は門地品流を擇んで之を任命し、官吏たる地位は、國民の一部が橫領する所なりき、然るに立憲諸國に於ては、身分の如何を問はず、國民一般に官吏たる資格を要求する權利を付與し、憲法上之を保障することを通則と爲すに至りたり、官吏は、國家の事務を行ふべき義務を負擔する地位に立つものなるが故に、官吏と爲るの權は、即ち國民參政權の一として、之を數ふるを得べきなり。(憲法一九、二二條乃至三二條)
- 英
- Right of the nation
- 独
- Staats-bürgersrecht
- 仏
- Droit de la nation
國民籍
(こくみんせき)國民は、國家なる全部に屬する一員にして、國家の關節たる位置を有し、國家に對して必要的に永久附屬の關係を有す、斯くの如く永久に國家と附屬の關係にある者を國民と云ひ、また斯くの如く一個人が、永久國家と、附屬の關係にある狀態を國民籍と云ふ、即ち國民籍とは臣民たる身分を云ふなり、□一國民籍の所得、國民籍は親族上の關係に依りて、當然これを所得することあり、また國法上の行爲に依りて、これを所得することあり、(甲)親族上の關係に依る所得、イ出生、ロ認知、外國人たる子は、日本人たる父、又は母の認知によりて、日本國民籍を取得す、ハ婚姻、日本人と婚姻したる女は、日本の國民籍を取得す、二入夫、ホ養子、(乙)國法上の行爲に依る、取得(卽ち國民籍の附與)、國民籍の附與を掌るは、内務大臣の權限内に屬す、此國民籍附與は、公法上の處分にして、合意にあらざるなり、即ち歸化是なり、□二國民籍の喪失、國民籍の喪失も亦親族上の關係によることあり、又國民の任意の志望に依ることあり、(甲)親族上の關係による喪失、イ認知、即ち外國の國籍を有する父が、其子を認知したる場合是なり、ロ婚姻、即ち日本人たる女が、外國の國籍を有する者と婚姻したる場合是なり、(乙)國民の任意の志望に依る喪失、日本人が任意に外國の國民籍を取得したるときは、日本の國民籍を喪失するなり、然れども任意の志望に依る國民籍の喪失には、種々の制限あり、即ち陸海軍の現役に服する義務ある時、其他官吏たる間は、外國の國民籍を取得する事を得ず、尚以上の外、領土變更等の場合に、國民籍の取得喪失の場合を生する事あり。(憲法一八、一三條國籍法一條乃至二七條)
- 英
- Nationality
- 独
- Nationalität
- 仏
- Nationalité
國民分限
國民分限とは、國籍と云ふに同じ、蓋し國民分限なる用語は、我舊民法人事編第二章に用ひたるものなれども、舊民法と共に廢止せられ、更に三二年三月法律第六六號を以て、國籍(即ち國民分限)に關する規定を設けたり。(國籍參照)
- 英
- Nation's social position
- 独
- Staatsbürgersstand
- 仏
- Place spéciale de la nation
國民兵
(こくみんへい)我國古代の制度は、國民皆兵の制なりしが、武門政を擅にするに及びて、兵役の權利と義務とは、總べて武士の階級に屬し、將軍政治の時代に於ても、獨り士族のみこの權利、及び義務を有せしが、明治八年一一月徵兵の詔書出づ、宣して曰く「朕惟るに古昔郡縣の制全國の壯丁を募り、軍團を設け以て國家を保護す、固より兵農の分なし、中世以降兵權武門に歸し、兵農始めて分れ、遂に封建の治を成す、戊辰の一新は、實に千有餘年の一大變事也、此際に當り、海陸兵制も亦時に從ひ宜しきを制せざるべからず、今本邦古昔の制に基き海外各國の式を斟酌し、全國募兵の法を設け、國家保護の基を立てんと欲す、汝百官有司、厚く朕の意を體し、普く之を全國に告諭せよ」と、兵役は、忠誠奉公の精神を以て、國家の軍隊組織の一部に入る義務なり、兵役は身體上の負擔なり、即ち其身體上の勤勞を給付する義務なり、兵役の種類は次の如し、イ常備兵役、常備兵役は、更に之を現役、及び豫備に分つ、現役とは、軍隊教育を施す爲め、現に兵營に入りて役務に就かしむるものにして、滿二十歳以上の男子が、所要の人員に應じ之に服役するもの也、但し滿十七歳以上の者は、志願に依り現役に服する事を得、其年限は、陸軍は三年、海軍は四年とす、豫備役は現役を終りたる者之に服す、其年限は、陸軍は四年四箇月、海軍は三箇年とす、豫備兵は、戰時、若くは事變に際して之を召集し、又平時に在りては、每年一度六十日以内勤務演習の爲に召集し、又每年一度簡閲點呼をなす、一年志願兵、及び六週間現役兵は之が例外なり、ロ後備兵役、後備兵役は海陸軍共十箇年にして、常備兵役を終りたる者之に服す、召集、及び簡閲點呼は、略ぼ豫備兵と同し、ハ補充兵役、補充兵役は、陸軍に在りては十二箇年四月にして、其年所要の現役兵員に超過する者の中、所要の人員之に服す、海軍に在りては、補充兵役は一箇年にして、其年所要の現役兵員に超過する者之に服す、二國民兵役、日本帝國民にして、滿十七歳より滿四十歳迄の男子にして、前述各種の兵役にあらざる者之に服す、更に分つて第一、及び第二國民兵役とす、第一國民兵役は、後備兵役を終りたる者之に服し、第二國民兵役は、常備、後備、補充、及び國民兵役にあらざる者之に服す、各兵役の期限已に滿つると雖も、戰時或は時變に際する時、若くは臨時に演習或は觀兵の擧あるとき、若くは航海中或は外國駐在中は、其期を延長する時あるべし。(憲法二〇條、二二年一月法一號徵兵令)徵集手續、徵兵事務の管轄を定むる爲め、全國を數多の徵兵區に分つ、徵兵區は、師管、及び聯隊區、又は警備隊區の區域に從ふ、聯隊區、又は警備區は、更に之を數多の徵兵區に分つ、徵募區は、通常一郡又は一市を以て之に充つ、各區には、文官と武官とを以て組織せる徵兵官を設け、其種類は、總理徵兵官、師管徵兵官、聯隊區徵兵官、警備隊區徵兵官、及び聯隊區聯合徵兵署徵兵官とす、其手續には每年徵收すべき現役兵、及び補充兵の員數、配賦、壯丁名簿の作成、身體檢査、抽籖、徵兵表の作成等あり、國民兵徵集手續も亦之に準ず。(二二年二月徵兵事務條例)
- 英
- Militia
- 独
- Landwehrmann
- 仏
- Milice
國民兵役
- 英
- Military service of the militia
- 独
- Militärdienst des Landwehrmannes
- 仏
- Service militaire de la milice
國民確信説
(こくみんかくしんせつ)國民確信説は、一時歐洲に偉大の勢力を揮ひたる沿革法學派の主張する所に係り、其有力なる代表者をサヴニー、及びプフタとす、其主張する所に曰く、法律は立法者の隨意に製作せるものにあらず、國民の法律觀念の凝成せるものにして、即ち國民の法律確信の表現せるものなり、國民の法律確信は、直接に發現して慣習法となり、間接に立法者の手を假りて、發現せるものは成文法となる、國民が久しく一定の慣行を維持し、慣例として、之に覊束せらるるものなりとの確信を有せしときは、茲に慣習法の成立せるものと云はざるべからず、成文法に於ても亦然り、前説の如く、法律が法律として發布遵守せらるるには、夫れ以前に於て、既に國民が之を法律として受け入れ、之に服從するの確信、及び必要を認めたるにあらずんば能はずと、然れども法律が國家の權力を俟たずし發生すと云はんか、これ斷じて誤謬なり、國民の確信其ものは、未だ或る慣習を法律とするの力なし、國家の之を認むるに依りて、或は成文法と爲り、或は慣習法と爲るべきのみ、國民の法律確信は、法律の内容を定むることあらむ、然れども法律の覊束力を生せず、法律は其覊束力を得るに依りて初めて法律たり、而して之實に國權の付與する所なればなり、沿革法學派は、歷史偏重の極、遂に法律の發達を以て、直に法律の成立其ものと看做すに至れるものならん。
國務
(こくむ)一國々家の事務を國務と稱す、夫れ國家の事務たる、多端にして、立法あり、司法あり、行政あり、所謂政府行爲、又は大權作用なるものあり、到底之を精密に分類するを得ずと雖も、古來より上記の如く、立法、司法と、行政とに分つを普通とし、近時に於ては、之に加ふるに所謂レギールングスアクトを以てす、學者の譯して政府行爲、又は政治の大嚮となすものは即ちこれ、我大權作用に類應するものなり。(其詳細は各其部を參照せよ)
- 英
- State affairs
- 独
- Staatsdienst
- 仏
- Affaires nationales
國政
國政とは、一國國家に於ける政治の大嚮に關する事務を謂ふ、所謂政治の方嚮とは、一國統治の大網を定むる作用にして、大權行動の如き其他百般の政務を指す、總べて立法、司法、行政の上に立つて爲す國家の事務を云ふなり。
- 英
- State affairs
- 独
- Staatsangelegen-heit
- 仏
- Affaires d'Etat
國務大臣
(こくむだいじん)君主國に在りて、君主を輔弼する機關は、國務大臣なり、即ち國務大臣は、國法の認めたる國家機關の一なり、我國法に依るに、國務大臣は天皇を輔弼することを以て其職とし、その責とす、換言すれば、國務大臣は、天皇が大權を行ふに當り、或は意見を上奏し、或は諮詢に應ずる等の方に依法り、輔翼獻替するの外、國務大臣としては、特有の政務を管掌するなく、ただその責に任するのみ、現行の制度に於て、同一人にして一方に於ては、各省に長官たると同時に、他方に於て國務大臣たり、然かも各省に長官たるは、國法上國務大臣たるの要件にあらざるが故に、各省に長官たらざるものと雖も、なほ國務大臣に任ぜらるるを妨げず、而して國務大臣の合議の府を内閣と云ひ、其合議を閣議と云ふ、斯くの如く國務大臣は、天皇を輔弼する職に在るを定て、法律、勅令、其他國務に關する詔勅に副署し、其輔弼の責任を明にすることを以て、國法上の必要條件と爲す、從つて國務大臣の副署は、法律、勅令其他國務に關する詔勅の效力を生ずるに必要なる形式なりと云ふべきなり。(憲五五條)
- 英
- Ministers of state
- 独
- Staats-minister
- 仏
- Ministre d'Etat
互惠主義
(ごけいしゆぎ)國際間に通商條約を締結し、又は其他の通商政策を施すに當り、締盟國が、互に通商上均等の利益を交換する主旨を以てする、商政上の一主義なり、例へば日英條約に「兩締盟國ば、其一方の通商、及び航海を他の一方に於て、總べて最惠國の基礎に置く主意を有するに依り、通商、及び航海に關する一切の事項に關し、其一方より別國の政府、船舶、臣民、或は人民に、現に許容し或は將來許容すべき一切の特典、殊遇、若くは免除ば、他の一方の政府、船舶、臣民、或は人民にも、即時に且つ條件を附せずして、之を許容すべきことを兩締盟國に於て約定す」と規定せるが如き是なり。(二七年八月日英通商航海條約一五條)
- 英
- Reciprocity
- 独
- Gegenseitig-keit
- 仏
- Reciprocité
小作料
(こさくれう)法律に於て、小作料とは、永小作契約に於ける永小作人が、土地使用の對價として、年々又は定期に支拂ふ金錢其他の代替物を云ふ、故に小作料は、永小作權の要素にして、地上權に於けるが如く、一時に土地使用の代價を支拂ひて、永小作權を設定せしむること能はざるものとす、小作料支拂ひの時期に就きては、其契約の定むる所に從ふべく、契約に其定めなきときは、收穫季節後、直に之を支拂ものなり、永小作人は、不可抗力に依り、收益に就きて損失を受けたるときと雖も、小作料の免除、又は減額を請求することを得ず、永小作人が不可抗力に依り、又は其他の事由に依り、引續き二年以上小作料の支拂を怠りたるときは、地主は永小作權の消滅を請求することを得、通俗に小作料と唱ふるものの多くは、土地の賃貸借に於ける賃料を指す如きも、之等は法律の用語にあらず、從つて上記の小作料の理論とは、自ら別なる賃料の理論に依て支配さるべきものとす。(民二七〇、二七四、二七六條)
- 英
- Rent
- 独
- Pachtzins
- 仏
- Fermage
誤殺
(ごさつ)誤殺とは、錯誤の爲め、犯人が目的としたる以外の人を殺害したる場合を云ふ、誤殺に二箇の場合あり、殺害の目的體たる人に關して錯誤ありたる場合、(人違の場合)及び殺害の手段に關して錯誤ありたる場合是なり、□一殺害の目的たるに人關する錯誤ありたる場合、例へば豫謀、又は故意を以て甲なる人を殺害せんと欲する者が、偶々乙を甲なりと誤信して殺害したるが如し、此場合に於ては、犯人は殺人の意思に基き、人を殺害したるものにして、假令其殺害せられたる人が、犯人の豫期したる人と相違するも、法律上殺人の犯意と、殺人の結果とは、互に相一致したりと云ふべく、犯人が被害者を誤信したりと云ふは、犯意の遠因と結果との間に、錯誤ありたりと云ふに過ぎざるものとす、蓋し普通殺人罪の成立に就きて、犯意の遠因と結果との間に、一致することを必要とせざるを以て、此場合は、別に明文を待たずして、當然謀殺又は故殺を以て論すべきものなり、□二殺人の手段に錯誤ありたる場合、例へば右なる甲を謀殺又は故殺するの目的を以て、甲に向つて發砲したるに、彈丸誤つて左なる乙を斃したるが如きを云ふ、刑法第二九八條に「謀殺故殺を行ひ、誤て他人を殺したる者は、仍ほ謀故罪を以て論ず」と規定し、其誤つてと云ふ文子は、殺人の目的體に錯誤ある場合と、手段に錯誤ある場合とを包含し得るに拘はらず、法律は其何れを指示するかを限定せざるが故に、殺人の手段に錯誤ある場合をも併せて、規定せるものと解するを正當とす。(刑二九八條)
- 英
- Mis-murder
- 独
- Miszmord
- 仏
- Meurtre par erreur
故殺罪
(こさつざい)故殺罪とは、一時の憤激に依りて殺人の行爲を爲したるもの、換言すれば、決心と行爲とが、殆ど同時に行はるるものを云ふ、故殺罪を構成するには、□一犯人が一時の憤激に依りて殺意を生したること、□二生存せる人の生命を奪ひたる結果を發生したること、□三他人の死を惹起したる原因と爲りたる所爲あることを要す。(刑二九四條乃至二九七條、殺人罪の部參照)
- 英
- Premeditated murder
- 独
- Totschlagsverbrechen
- 仏
- Homicide pré-méditée
孤兒扶助料
(こじふじよれう)孤兒に給與する扶助料を孤兒扶助料と云ふ、孤兒とは、年齡二十歳未滿の死亡者の遺兒にして、未だ結婚せざる者を云ふ、但し男女子は、家名繼襲者に限る、孤兒の扶助料は、滿二十歳迄之を給す、孤兒扶助料は、數子ある時は、家名繼襲者に給し、非戸主軍人の孤兒に在りては、長子に給す、其繼襲者、及び長子死歿し、又は權利消滅し、若くは支給期限の滿つる時は、順次年少者に及ぶものとす、但し家名相續者を除くの外男子を先にし、女子を後にす、扶助料を受くる者、左に揭ぐる事項の一に當るときは、其權利消滅す、□一重罪の刑に處せられたるとき、□二日本臣民たるの分限を失ひたるとき、□三扶助科を受くへき權利の生じたる日より三箇年内に請求せざるとき、□四死歿若くは戸籍を去り、若くは婚嫁したるとき、又扶助料を受くる者、公權を停止せられたるときは、其間扶助料を停止す。(二三年六月法四五號軍人恩給法三、二九、三〇、三二、三六條)
- 英
- Allowance for the support of the orphan
- 独
- Waisenunterhalt
- 仏
- Gratification pour la protection des or-phelins
個人手形
(こじんてがた)個人手形は、又商業手形と稱し、銀行手形に對する名稱にして、一個商人が、銀行又は他商人に宛てて振出せるものなり、重に爲替上の言葉なりとす、之を細別すれば左の如し、□一銀行宛ての商業手形、□二荷爲替手形、□三普通商業手形是なり。
- 英
- Private bill
- 独
- Privat-wechsel
- 仏
- Billet privé
五親等
(ごしんとう)五親等とは、親族關係の第五位にあるものを云ふ、而して親等は、親等間の世數を算して之を定む、傍系親の親等を定むるには、其一人又は其配偶者より同始祖に遡り、其始祖より他の一人に下るまでの世數に依る、例へば自己より尊族の五親等と云へば、父は一世、祖父母は二世なり、故に五世の祖は即ち五親等なり、又自己より卑族の五親等と云へば、子は一世、孫は二世なり、故に來孫は五親等なり、なほ傍系親に就きて云へば、自己の兄弟は二世、甥、姪は三世なり、故に兄弟の曾孫は五親等なり。(民七二五、七二六條)
- 英
- Fifth degree
- 独
- fünfter Grad
- 仏
- Cinquième degrès
故障
(こしやう)法律上故障と云へば、缺席判決に對し、其缺席者が前判決を除外し、口頭辯論期日に懈怠したる訴訟行爲を追完し、同審級に於て、缺席前の程度に復し、更に其訴訟の辯論を爲さんことを申立つるの意味なり、(尤も原狀回復申立に就きての缺席判決、及び新缺席判決に就きては、故障を許さざるものとす)故に故障は上訴にあらずして、唯懈怠したる訴訟行爲の追完を許す所の申立に過ぎず、されば敢て前判決の當否を主張するを要せず、又缺席したる理由を疏明するを要せず、單に其申立を爲すことを得るなり。(民訴二五五、二六三、一七七條)
故障申立は、其缺席判決を爲したる受訴裁判所に書面を差出して、之を爲すべきものとす、故障申立書に記載すべき要件は、□一故障を申立つる缺席判決の表示、缺席判決の表示とは、必ずしも其判決の全部を揭ぐるを要せず、如何なる判決なるやを知り得べき程度に記載するを以て足れりとす、故に何年何號何事件と云ふが如き當事者の表示、其他判決主文、及び之を爲したる裁判所を表示すれば足るなり、要するに他の判決を混同せざる記載を爲せば足る、□二缺席判決に對する故障を申立つる旨の陳述、此申立は、缺席判決に對し不服なるを以て、故障を申立つると云ふが如き陳述を明示すれば足れり、固より其理由を揭ぐるを要せず。(民訴二五六號)
- 英
- Objection
- 独
- Hindernis
- 仏
- Objection
故障申立書
- 英
- Complaint of protest
- 独
- Einspruchspetitumbrief
- 仏
- Plainte de l'objection
故障申立人
故障申立人とは、前判決に於ける缺席者にして、故障を申立つる者を云ふ。
- 英
- Complainter of protest
- 独
- Einspruchsantragsteller
- 仏
- Plaignant
古社寺保存會
(こしやじほそんくわい)古社寺保存會は、古社寺保存に關する事項に就き、内務大臣の諮詢に應し、意見を開申し、又はこれに關する事項に就き、内務大臣に建議することを職とする國家機關を云ふ。(古社寺保存法一條)
古社寺保存會規則
古社寺保存會規則とは、古社寺保存會の組織權限に關する事項を定めたる勅令なり。(三〇年一〇月勅四〇六號)
- 英
- Rule of the preserva-tion association of the old temples
- 独
- Regel der Erhaltungsgesellschaft der alten Tempel
- 仏
- Règles de l'association de la préservation des monastères vieux
古社寺保存法
古社寺保存法は、古社寺の建造物、又は寳物類、殊に歷史上の參考、若くは美術上の模範となるべきものの保存に關する法規なり。(三〇年六月法四九號古社寺保存法)
- 英
- Law of the preservation of ancient temples and shrines
- 独
- Erhalt-ungsgesetz der alten Tempel und Heiligen-schreine
- 仏
- Loi de la préservation des monastères vieux
古社寺保存法施行細則
古社寺保存法施行細則は、古社寺保存に關する保存金の下付等に關する手續を定めたる細則なり。(三〇年一〇月内務省令三五號古社寺保存法施行細則)
個人
(こじん)集合人、或は社會、或は國家に對比して用ひられ、心理學的に謂へば、智情意の統一ある人格の主體を指し、生理的に云へば、渾一的有機體を指す、而して個人てふ渾一的存在物を、假りに心と身との二つに分ちて觀ずるに、之等は各個人に於て差別を有し、前者は個性なるものをなし、後者は體質なるものをなす、此正態的個人に對し、變態的個人とは、心理學に智情意の統一、卽ち人格の統一なき狂人の如きを謂ひ、國家、並に社會上よりは、責任の觀念を以て律せられざる者なり、個人的とは、其形容詞にして、集合的、或は、共同的、或は、社會的等の形容詞と反對の意義を有す、然れども個人は、社會を離れて存せず、社會も亦個人を離れて存せざるが故に、之等は相關的のものなることを注意せざるべからず。
個人主義とは、極端に自利を謀ること意味し、或は個人の利益を獲得せんが爲めの努力は、國家によりて關渉せらるべからずとなす主義なり、然れども決して無政府主義と相容るるものにあらず、猶政府の必要を認め、唯政府の權能を、可成局限せんと欲するのみ、而して個人主義と正反對の見解に立つるものは社會主義なり。
- 英
- Individual
- 独
- Individuum
- 仏
- Individu
戸主
(こしゆ)戸主は、即ち家長にして、家族制度に伴ふ家の主宰たり、故に戸主の制は、家族制度と、其運命を共にするものと云ふべし、家族制の嚴正に行はるる時代に在りては、一家は法人の態を成し、家族は、其法人に於ける社員たる者の身分に該當し、戸主は、其法人の代表者たる者の身分に該當する者たりしが故に、戸主たる身分を有する者は、一家の事に關しては公私細大となく、權利を有し、義務を負擔し、通稱の如きも當主の一身に專屬するものにあらずして、祖先八兵衞なれば子子孫孫に至るまで、其通稱を襲ひ來りたるの家ありき、今や我國は、家族制度と、個人制度との混合の時に屬し、一家は已に法人たるの實なきに至りたる結果、戸主たるの身分も、殆ど亦其實を失ひたるに拘はらす、其形體に於ては、依然異るなくして、一家の長、卽ち主宰たる身分を云ふに外ならず、戸主の身分とは、本來の性質より云へば、卽ち一家に屬する權利義務の集合を指示し、自然人たる代表者之に代りて、其權利義務を行ふものたること、自ら明かなり、これ故に、家督相續に依りて戸主の身分を相續すると、遺産を相續するとは、全く其效果を異にし、遺産の相續に在りては、其遺産に於ける權利は、其之を相續したる者の一身に連結すべしと雖も、家督の相續にありては、戸主の身分を代表するに過ぎざるなり、然れども今日に在りては、一家に屬する權利義務あることを認めざるのみならす、財産權は、個人を以て其主體となし、身分の戸主たると否とを問はざるが故に、戸主なる身分は、家族に關する權利義務の集合を指すに外ならず。
- 英
- House holder
- 独
- Hausherr
- 仏
- Chef de famille
戸主權
戸主權は、其家族に關する權利の集合也、戸主權の内容を分析するときは、主たる權と從たる權との二樣に區別する事を得、□一主たる權、主たる權は、之を細別して同意權、及び居所指定權とす、A同意權、戸主の同意權は、或は家族に對する場合あり、或は家族たらんとする者に對する場合あり、或は家族たりし者に對する場合あり、即ち(甲)家族に對する同意權、イ家族が其庶子、又は私生子を自己の家に入れむとするとき、ロ家族が他家の家族とならむとするときハ家族が婚姻、又は養子緣組を爲さむとするとき、二家族が他家を相續し、分家を爲し、又は廢絶家を再興せむとするとき、ホ婚姻又は養子緣組に依りて、他家に入りたる者が、其配偶者、又は養親の親族にあらざる自己の親族を、婚家、又は養家の家族と爲さむとするとき、へ婚家、又は養家を去りたる者が、其家に在る自己の直系卑屬を、他家の家族と爲さむとするとき、(乙)家族たらんとする者に對する同意權、他家の家族となるには、其入らんとする家の戸主の同意を得るにあらずむば、之を入るることを得ざるべきが故に、其家の戸主は、即ち自己の家に家族たらむとする者に對して、同意權を行ふことを得、而して其之を行ふを得べき場合は、戸主の親族にして、他家にある者が、其家に入らんとするときに在り、(丙)家族たりし者に對する同意權、イ婚姻、又は養子緣組に依りて他家に入りたる者が、更に婚姻、又は養子緣組に依りて、他家に入らんとするとき、ロ婚家、又は養家を去りたる者が、其家に在る自己の直系卑屬を、自家の家族となさむとする時、B居所指定權、一般に指定とは、家族の居所を指定するの權、及び法定の推定家督相續人なき場合に、家督相續人を指定する權を併稱す、然れども前者のみが戸主が家族に對する權利にして、後者は、被相續人たる戸主の身分に屬する特別權なり、故に民法は前者を以て、戸主權の一部として、親族編に規定し、後者は戸主權に屬せざるものとして相續編に規定したり、□二從たる權、從たる權は之を細別して離籍權、及び復籍拒絶とす、A離籍權、離籍權とは、家族を其家籍より排除するの權を云ふ、而して此權は、戸主が家族に對する同意權、及び居所指定權の實行を確實ならしむる爲めに與へたる一種の裁制權なり、イ家族が戸主の意に反して、其居所を定めたるときに於て、戸主が指定せる居所に轉ずべきことを催告せるに拘はらず、なほ之に應ぜざるとき、但し家族が、未成年者なるとき、家族が法定の法定家督相續人なるとき、戸主の配偶者なるときは、此限りにあらず、ロ家族が戸主の同意を得ずして妻を娶り、又は養子を爲したるとき、B復籍拒絶權、復籍拒絶權とは、婚姻、又は養子緣組に依りて他家に入りたる家族が、離婚、又は離緣となりたるときは、實家に復籍するを得べきは當然なるも、其婚姻、又は養子緣組を爲したる當時、法律の定むる條件を履行せざりしが爲に、其制裁として、復權を拒絶することを得るの權利を云ふなり、イ婚姻、又は養子緣組に依りて他家に入りたる者が、實家の戸主の同意を得ずして、更に他家に入りたるとき、而して戸主が此權利を行ふことを得るには、婚姻又は養子緣組の日より、一年内なり、ロ家族が戸主の同意を得ずして、婚姻、又は養子緣組に依り他家に入りたるとき、此場合に於ても、戸主が此權を行ふには、婚姻又は養子緣組の日より一年内なり、戸主にして、能力者なるときは、自ら戸主權を行使すべきは勿論、無能力と雖も、準禁治産者、及び有夫の婦は、自ら戸主權を行使するを妨げず、されど戸主にして未成年者なるか、又は禁治産なるときは、之を行使するの能力なし、故に戸主が未成年者なるときは、親權を行ふ父、又は母之に代りて戸主權を行ひ、被後見人が戸主なるときは、後見人之に代りて戸主權を行ふべきものとす、殊に財産に關しては親權を行ふ父、又は母は未成年の子の行爲を代表し、又後見人は被後見人の行爲を代表するものなればなり、然るに、又戸主が自ら戸主權を行使すべき場合に於ても、事實上之を行使する能ばざることあり、例へば不在者なるときの如き、又は出征中のときの如き之なり、斯くの如き場合に於ては、親族會代つて之を行使すべきものとす。(民七四九條、乃至七五一、八九五、九三四條)
- 英
- Right of the house-holder
- 独
- hausherrnrecht
- 仏
- Droit du chef de famille
戸數割
(こすうわり)地方税の一種目にして、各戸に就きて賦課するものを戸數割と云ふ。
- 英
- House tax
- 独
- Haussteuer
- 仏
- Impôt sur la maison
戸籍
(こせき)戸籍は、人の身分(例へば戸主、家族、親子、夫婦、後見人、隱居、嫡庶男女等)家の所在、人口、戸數、及び男女老幼の別を明にするもの也、□一人の身分は、各種權利の享有、及び義務の負擔に就き重大關係を有す、身分の關係は、刑法、民法、行政法の上に於て種々の關係を生ずるが故に、國家は、身分登記簿を設け、其關係を登記して公證す、□二家の所在は、即ち其家の戸主、又は家族の屬籍也、國家の構成には、個人を單位とするものと家を單位とするものとの二あり、我建國の大本は家族制に在り、爾來傳へて今に及び、家を以て國家構成の單位とするの觀念は、之を廢滅する能はず、然れども一方には、又近世の個人主義を採用したる結果として、現在の有樣は、個人制度、家族制度混用の時期と云ふべきものなり、已に家を以て本位となす以上は、必ず家の所在を登錄するの制度なかるべからず、所謂本籍人身分登錄簿なるものは、家を本として人の身分を登錄するの用に供するもの也、□三人口戸數、及び其年齡は、租税の徵收、公權、及び私權の行使、行政の設備、及び取締其他の點に於て、最も必要の關係を有す、古來戸籍の目的は、主として此點に存したるものと云ふも可なり、身分登記簿は、實に之等の用に供せらるべき公簿なり、身分登記簿は、本籍人身分登記簿、及び非本籍人身分登記簿の二種とし、各正副二本を備ふ、其使用は一年限りとし、一年每に之を編製す、何人と雖も、手數料を納付して身分登記簿記簿の閲覽、又は登記の謄本、若くは抄本の交付を請求する事を得、身分登記は、次の場合に之を爲す、□一戸籍吏が身分に關する屆出を受け、又は其屆出の送付を受けたる時は、□二戸籍吏が身分に關する報告を受けたるとき、□三戸籍吏が、身分に關する證書の謄本を受け、又は其謄本の送付を受けたるとき、□四戸籍吏が、身分に關する事項を記載したる航海日誌の謄本の送付を受けたるとき、□五籍戸吏が登記の取消、又は變更の申請又は請求を受けたるとき、□六戸籍吏が登記をなすべき旨の裁判を受けたるとき之なり、但し如上の場合と雖も、屆出、送付、其他の手續が、戸籍法に反したるものなるときは、登記するを得ず、又登記は本籍人、非本籍人及び登記を爲すべキ事件の區別に從ひ、相當の登記簿に之を爲す。(戸籍法一條乃至四一條)
- 英
- Census register
- 独
- Census des Personenstandes
- 仏
- Registre du dénom-brement
戸籍事務
- 英
- Census registry business
- 独
- Personenstandsgeschäft
- 仏
- Affaires de l'inscription du dénombrement
戸籍法
(こせきはふ)戸籍法は、戸籍、即ち人の身分、家、人口、戸數等に關する事項を規定したる法律にして、明治三一年七月一六日より施行せられしものなり。(三一年六月法一二號戸籍法)。
- 英
- Law of the census register
- 独
- Personenstandsgesetz
- 仏
- Loi du registre du dénombrement
戸籍役場
(こせきやくば)戸籍役場は、戸籍事務を取扱ふ處にして、市役所、又は町村役場を以て之に充て、區長が戸籍吏たるときは、區役所を以て之に充つ。(戸籍法四條)
- 英
- Census registry office
- 独
- Personenstandsbureau
- 仏
- Bureau de l'inscription du dénombrement
戸籍吏
(こせきり)戸籍身分登記に關する事務を管掌するものにして、市町村長を以て之に充つ、區を置きたる市に於ては、區長を以て之に充つる事を得、戸籍吏、又は之と家を同うする者の戸籍、又は身分登記に關しては、市町村、又は區長の事務を代理すべき者、戸籍吏の職務を行ふ、代理者にも同樣の事情ある場合には、市にありては、市參事會員の一人、町村又は區にありては、他の吏員の上席者、戸籍吏の職務を行ふ、戸籍吏の事務に關しては、戸籍役場の所在地を管轄する區裁判所の一人の判事、又は監督判事之を監督す、戸籍吏が其職務を執行するに當り、屆出人其他の者に損害を加へたるときは、其損害が戸籍吏の故意、又は重大なる過失に依りて生じたる場合に限り、之を賠償する責に任ず。(戸籍法一條乃至六條)
- 英
- Census registry officer
- 独
- Personenstandsbeamte
- 仏
- Officier d'ins-crire le dénombrement
互選
(ごせん)特定の數人が、其範圍内の人に就き、互に選擧を行ふことを互選と云ふ、例へば多額納税議員互選と云ふが如し。
- 英
- Mutual election
- 独
- gegenseitige Wahl
- 仏
- Election mutuelle
互選資格
互選資格とは、互選人中に加はりて、互選を行ふことを得る資格を云ふ、即ち貴族院多額納税議員互選資格を云へば、□一積極條件、イ日本帝國臣民たる男子にして、互選名簿調製の期日より起算し、年齡滿三十歳以上なること、ロ互選名簿調製の期日より前、滿一年以上其府縣内に本籍を定め住居せる者、ハ多額の直接國税を納め、なほ引續き住居し、及び納税する者、但し家督に由り財産を相續したる者は、其財産に付、前財産主の納税額を以て、其納税資格に算入す、□二消極條件、イ瘋癲白痴の者、ロ公權を剝奪せられたる者、又は停止中の者、ハ禁錮の刑に處せられ滿期の後、又は赦免の後滿三年を經ざる者、ニ懲役の刑に處せられ、滿期の後、又は赦免の後滿三年を經ざる者、ホ賭博犯に由り處刑を受け、滿期の後又は赦免の後滿三年を經ざる者、ヘ衆議院議員の選擧に關る犯罪に依り、選擧權及び被選權の停止中の者、ト神官及び諸宗の僧侶、又は教師たる者、チ現役中の海陸軍軍人、但し其休職、停職に在る者又同じ、リ刑事の訴を受け、又は保釋中の者は、其裁判確定に至るまで互選人たるを得ず。(二二年六月勅七九號貴族院多額納税者議員互選規則一條乃至六條、二二年二月勅一一號貴族院令六條)
- 英
- Qualification for mutual elec-tion
- 独
- Qualifikation gegenseitiger Wahl
- 仏
- Qualification de l'élection mutuelle
誤納
(ごなふ)納付すべき原因なくして、誤りて金錢其他の物を官に納入することを誤納と云ふ。(三三年九月遞信省令四六號電報規則四七條三號)
- 英
- Mis-lay-up
- 独
- Miszbezahlung
- 仏
- Paiement par erreur
故買
(こばい)故買とは、交換、販賣等、廣く有償名義にて之を獲得することをいふ、刑法に於て、強竊盜の臟物なることを知りて、之を故買したるものは、故買犯として處罰せらる、之蓋し不法なる財産の狀況を更に安固ならしめ、以て被害者をして被害物件に關する返還請求權の行使を困難ならしむるの故なり。(刑二五六二項)
- 英
- Purchase of things stolen
- 独
- Kauf der gestohlenen Artikel
- 仏
- Achat des choses volées
古物商
(こぶつしやう)古物商とは、主として一度使用したる物品、若くはその物品に幾部の手入を爲したるものを、賣買交換するを以て營業と爲す者を云ふ、古物商の營業を爲さんとするときは、その物品の種類を定めて、行政官廳(例へば内務省行政警察官署等)の免許を受くべきものなり。(古物商取締法一、二條)
- 英
- Second hand dealer
- 独
- Anti-quitätenhändler
- 仏
- Marchand eu choses d'occasion
古物商取締法
古物商の意義、古物商の免許方法、及び古物賣買等に關する規則を定めたる法律を、古物商取締法と云ふ。(二八年三月法一三號古物商取締法)
- 英
- Law of superintendence of the antiquities dealers
- 独
- Verwalt-ungsgesetz der Antiquitätenhändler
- 仏
- Loi de la surveillance des marchands eu choses d'occasion
古物商取締法細則
古物商取締細則とは、古物商の市場開設、鑑札、罰金等に關する規則を定めたる省令なり。(二八年七月内務省令八號)
股分
(こぶん)船舶、即ち商船其他の海船の共有者の持分を船舶の股分と云ふ、船舶の性質たるや、他の商品に比すれば、危險を冐す事多く、其結果として、損害を被むる事亦多きものとす、從つて之等の巨額の資本、及び航海に依りて生ずる損失を、一人にて負擔するは、甚だ困難なりと雖も、多數人の間にて資本を集め、損失を負擔する時は、比較的容易なりと云はざるべがらず、故に船舶が、數人の共有に屬することは、事實上決して尠なからず、又各國に於て之を奬勵したりし所以なりとす、其共有の割合に就きては、各國の法制異る處あり、英國に於ては、船舶は之を六十四の部分に分つものとし、各共有者は、其六十四分の苦干の股分(持分)を有するものとせり、佛國に於ては、之を二十四に分割することとせり、然れども我國に於ては、股分の數を定めず、所有者は隨意に其持分の數を定むることを得べし、持分の數と共有者の數とは、必ずしも一致するものにあらず、一人にして數個の持分を有することあり、又數人にして一個の持分を有することあり。(舊商法八四一條乃至八四八條、商五四六條乃至五五一條、民訴七二六條)
- 英
- Share
- 独
- Antheil
- 仏
- Part
婚姻
(こんいん)婚姻は、社會の進化と共に其形を變し、結婚者の數、結婚の儀式、其他婚姻の要件に關しては、時と所とに依りて各其規則を異にせり、我民法に於て婚姻とは、法律を以て公認せる一男一女の共諾に依り、生存間の共同生活を目的とする法律行爲なり、□一婚姻は、男女兩性の結合なり、人の結合は、之を大にしては國と爲り、小にしては組合社團と爲る、然かも婚姻は、男子と女子との間の結合に限り、男子と男子との結合、又は女子と女子との結合は、決して婚姻たるを得ず、□二婚姻は、一男一女の結合なり、チベツト國に於ては、數人の男子と一人の女子と結合する婚姻あり、又回々教國に於ては、一人の男子と數人の女子と結合する婚姻あり、然れども我民法に於ては、我邦古代の慣習と、歐米諸國の法制とに鑑みて、婚姻は、常に之を一男一女の結合に限れり、□三婚姻は、夫たり妻たる身分を取得する目的に出づるを要す、一男一女の結合と雖も、夫たり妻たる身分を取得する目的に出でざるときは、婚姻にあらず、假令平常恰も夫妻の如き生活を爲すと雖も、之を婚姻と云ふべからず、之等は野合私通にあらされば、亂倫姦通のみ、而して夫たり妻ある身分は、畢竟法律の要件を充たす婚姻を爲すに至り、初めて取得すべきものなれば、法定の要件を充たす適法の男女兩性間の結合にあらざれば、婚姻成立することなし、即ち法定要件を缺く場合には、夫たり妻たる身分を取得する目的無效と爲るなり、或は婚姻を以て、祖先の血統を繼續する爲めの制度となし、又子孫を繁殖する目的に出づるものとす、或は又婚姻は、肉體上の情欲を秩序的に滿足せしむるものとなし、又婚姻を以て、生計上の利益を計る爲めの結合と爲すものあり、然れども之等は、皆正鵠を得たるものにあらず。(民七六五條乃至七七七條及結婚の部參照)
婚姻解消
(こんいんかいしよう)婚姻解消とは、一旦有效に成立したる婚姻を解除することを云ふ、蓋し婚姻は、夫婦を分離すべからざる共同生活の狀態に置くものにして、その性質上夫婦の一方の死亡に至るまで、此婚姻關係を繼續せしむべき意思を以てすることを要し、これに一定の終期を附し、または解除條件を付するを許さすと雖も、共同生活を爲すは、愛情の一致あることを要す、相互間に敬愛の情を存せざるに拘はらず、強ひて其共同生活を爲さしむるは、徒に諸種の弊害を釀すに止まり、家族、及び社會の平和を保つ所以にあらざるなり、而して人の愛情は、必ずしも死に至るまで、永久に變更せざるものにあらざる勿論、婚姻の繼續中に於て、夫婦相反目するが如きとなきを保す能はず、茲に於てか夫婦一方の死亡に依りて、婚姻の自然に消滅する場合の外、尚夫婦の生存中に在りても、亦之を消滅せしむるの必要を生ずるものとす、離婚制を設くるの要即ち茲に存す、婚姻の解消は或は自然の事實に由りて生じ、或は人爲の事實に由りて生ず、自然の事實に依りて婚姻を解消するものは、配偶者一方の死亡(失踪宣告を包含す)なり、人爲の事實に依りて、婚姻を解消する原因を離婚とす、婚姻解消の自然の事實に由るものは、事實上夫婦間の關係を消滅せしむるに止まり、婚姻より生じたる親族關係、及び家族關係を消滅せしむることなし、故に配偶者の一方の死亡あるも、姻族關係、親子の關係、嫡母庶子の關係は、皆之に由りて消滅することなく、然かも婚姻に依りて其家に入りたる妻、又は入夫、若くは壻養子は、其配偶者の死亡に依りて、當然其家を去るものにあらざるを以て、夫婦一方の死亡に依る婚姻の解消に就きては、別に何等の規定を要せず、然れども離婚の場合に於ては、婚姻に依りて生じたる一切の親族關係、家族關係をして、將來に消滅せしむるものたり、離婚に二種あり、即ち當事者の意志に依りて生ずることあり、又裁判所の宣告に依りて生ずることあり、前者を協議上の離婚と云ひ、後者を裁判上の離婚と云ふ、協議上の離婚は、男女の共諾に依るものにして、當事者の合致を以て行ふ、裁判上の離婚は、次の十種の場合に於て爲すことを得、イ配偶者が重婚を爲したるとき、ロ妻が姦通を爲したるとき、ハ夫が姦淫罪に依りて刑に處せられたるとき、□二配偶者が僞造、賄賂、猥褻、竊盜、強盜、詐欺取財、受寄物費消、臟物に關する罪、若くは官の封印破棄盜取罰、賭場開場、博徒招集罪に依りて、輕罪以上の刑に處せられ、又は其他の罪に依りて重禁錮三年以上の刑に處せられたるとき、ホ配偶者より同居に堪へざる虐待、又は重大なる侮辱を受けたるとき、ヘ配偶者より惡意を以て遺棄せられたるとき、ト配偶者の直系尊族より虐待、又は重大なる侮辱を受けたるとき、チ配偶者が自己の直系尊族に對して虐待をなし、又は重大なる侮辱を加へたるとき、リ配偶者の生死が三年以上分明ならざるとき、ヌ壻養子が養子緣組の場合に於て離緣ありたるとき、又は家女と婚姻を爲したる場合に於て、離緣、若くは緣組の取消ありたるとき是なり。(民八〇八條乃至八一九條、人訴一條乃至一九條)
- 英
- Dissolution of marriage
- 独
- Eheauflösung
- 仏
- Dissolution du mariage
婚姻事件
(こんいんじけん)婚姻事件とは、婚姻の無效、若くは取消、離婚を目的とする訴にして、夫が普通裁判籍を有する地、又は其死亡の時に之を有したる地の地方裁判所の管轄に專屬す、但し緣組事件に附帶して、婚姻の取消、又は離婚の請求を爲す場合は此限りにあらず、夫婦の一方が提起する婚姻の無效、又は取消の訴に於ては、其配偶者を以て相手方とし、第三者が提起する離婚の訴に於ては、夫婦を以て相手方とし、夫婦の一方が死亡したる後は、其生存者を以て相手方とす、若し相手方とすべき者が死亡したる後は、檢事を以て相手方とす、檢事が當事者と爲りたる後、相手方が死亡したるときは、本案の訴訟手續受繼の爲め、裁判所は辯護士を承繼人として選定することを要す。(裁構法二六條、人訴一條乃至三條)
- 英
- Law suit in marriage
- 独
- Ehesache
- 仏
- Cause du mariage
姻婚能力
(こんいんのうりよく)婚姻能力とは、人が婚姻爲し得る能力を云ふ、男は滿十七年、女は滿十五年に達したる時は、婚姻を爲す事を得、凡そ法律上行爲能力に就きては、年齡に依り成年者及び未成年者に區別し、未成年者は之を無能力と爲す、以上は、婚姻を爲すに就き、別に年齡上の制限を設くるの必要なきが如きも、婚姻の適齡と肉體の發達とに懸隔あるときは、情慾の制すべからざるより、却て風俗を紊すの虞あるを以て、婚姻を爲すに就きての年齡の制限は、之を普通行爲能力(滿二十年)に關する年齡の制限と殊別せり。(民七六五、三條)
- 英
- Capacity of marriage
- 独
- Ehefähigkeit
- 仏
- Capacité de se marier
婚家
(こんか)婚家とは、人が婚姻に依りて新に獲得したる家籍を云ふ、例へば妻が婚姻に依りて入りたる夫の家、入夫が入夫婚姻に依りて入りたる妻の家の如し。(民七八八條)
- 英
- House into which one is married
- 独
- Haus von der Ehe
- 仏
- Maison où on se marie
權化
(ごんげ)神が體を假りて現はるることを謂ふ、多く人間の形に據り、人間の性質をとるものとす、例へば高僧を如來の化身、又は權化と稱し、基督教に於ては、基督の人格を神人合一體と稱するが如し、又權化は、總べて或る無形の槪念が形體をとりて現はれたるをいふ、されば固より想像上の事に屬す、例へば慈悲憐愛の情に充ちたるものを、慈愛の權化と謂ひ、時代精神を最もよく體現せる當代の人物を、時代精神の權化と謂ふが如し、體現の語能く其意義を表はす。
- 英
- Incarnation
- 独
- Fleischwerdung
- 仏
- Incarnation
混成酒
(こんせいしゆ)混成酒とは、混成酒税法に依り、左のものを指す、□一精酒と酒類にあらざるものを混和したるもの、□二一種の酒類又は酒類にあらざるものを混和して酒類となしたるもの、□三酒類と酒精を混和したるもの、□四二種以上の種類を混和したるもの是なり。
- 英
- Mixed sake
- 独
- gemischtes Sake
- 仏
- Saké mêlé
混成酒税法
混成酒税法は、混成酒の成分、及び税法等に關する事を規則したる法律なり。(二九年三〇號混成酒税法)
- 英
- Law of mixed sake tax
- 独
- Steuerrecht des gemischten Sake
- 仏
- Loi de saké mêlé
混成酒税法施行規則
混成酒税法施行規則は、混成酒を製造せんとするものの製造場、及び製造方法等に關することを規定したるものなり。(二九年勅二八八號)
混同
(こんどう)混同は、之を廣義に解せば、衝突せる二箇の資格が、同一人に歸するを謂ふ、故に混同は獨り債權に於て生ずるのみならず、物權其他一切の權利關係に就き發生するものとす、例へば物權に於ては、地役權の場合に、要役地の所有權と承役地の所有權とが、同一人の手に歸するが如し、而して混同を債權の場合に適用せば、即ち債權、債務が同一の人に歸するを云ふものなり、例へば債權者が債務者の相續人となり、又は債務者が債權者の相續人となりたるが如し、元來債權者の地位と、債務者の地位とは、利益の牴觸するものなるに、若し兩者の資格が合一したるときは、其結果自ら自己に對して債權を執行し、又自ら自己に對して債務を負擔する事となり、事實上全く不能なるものと云はさるべからず、從つて混同を權利實行の不能なる狀態也と云ふことを得べし、混同は、斯くの如く二箇の資格が、同一人に歸することを云ふものなれども、之が爲めに第三者の權利迄をも、害することを得ざるものなり、故に物權に就きて云へば、地役權の場合に要役地の所有權と、承彼地の所有權が、同一人の手に屬する場合に、第三者が、承役地に就き抵當權を有するときは、其抵當權は混同の爲めに影響を受けず、依然として存在するが如し、又債權に就きて云へば、債權が更に第三者に對し、質權の目的物たるが如き場合には、縱令混同の事實あるも、其債權消滅せざるものにして、質權者(第三者)に對し、擔保の實を供せざるべからず。(民一七九、五二〇條)
- 英
- Confusion
- 独
- Vereinigung
- 仏
- Confusion
混和
(こんわ)混和は、所有權取得の一方法なり、混和は二種の併合を包含す、混同、及び融和之なり、混同とは、米穀其他微細の固形物、又は絲、其他繊維質の物件の混同して一となりたるを謂ひ、融和とは、同種、又は別種の液體、又は金屬が溶解して一となりたるを云ふ、混同の場合に於ける動産の併合は、附合の場合に於けるより完全なりとす、附合の場合に於ては、附合したる動産は、附合後に於ても、尚之を識別すること容易なるに反し、混同の場合に於ては、原物を認識し得べからざるを常とするを以てなり、從つて一旦混和したる物件は、更に之を分離して、舊體に復することは、附合の場合よりも一層困難にして、分離の爲め其價格を損し、過分の費用を要するのみならず、之を分離して原狀に復すること能はざる場合、十中の八九に居る、故に民法は、此場合を所有權取得の一原因とせり、即ち、□一各別の所有者に屬する物が、混合して識別する事能はざるに至りたるときは、各所有者は、其分離を請求するを得ず、□二主たる動産の所有者は、合成物の所有權を取得す、□三主從の區別を爲す能はざるときは、各所有者は、混合當時に於ける動産物の價格の割合を以て、混合物を共有することとせり、混同の效果として、イ舊所有者の權利は消滅す、ロ物の所有者が、混同物の單獨の所有者となりたるときは、物の上に存せる權利は、爾後混同物の上に存し、其共有者となりたるときは、其持分の上に存す、ハ混同に依りて損失を受けたる者は、償金を請求することを得、融和に就きても亦之に準ずべきものとす。(民二四五、二四七、二四八條)
- 英
- Combination
- 独
- Vermischung
- 仏
- Combinaison
雇傭
(こよう)雇傭とは、當事者の一方が相手方に對して、勞務に服することを約し、相手方が之に對して、報酬を與ふることを約する契約なり、而して勞務に服する者を勞務者と云ひ、報酬を與ふる者を使用者と云ふ、□一勞務者は、使用者に對して勞務に服することを約するを要す、勞務者の服すべき勞務には、何等の制限なきを以て、體力上の勞務は勿論、精神上の勞務をも雇傭の目的となすを得べし、例へば醫師、辯護士、教師の勞務の如きも之に屬す、□二使用者は、勞務者に對して報酬を與ふることを約するを要す、雇傭の報酬は、金錢に限るべきものとなす立法例なきにあらずと雖も、我民法は之に就き、何等の制限を設けざるを以て、金錢は勿論、其他各種の給付を以て報酬となすことを得と解するを可とす、故に勞務も、亦其報酬となすを得、即ち當事者双方が、相互に勞務に服することを約する場合に於ても、雇傭契約は成立するものと云ふべし、此場合には、各當事者は、勞務者にして同時に使用者たるものとす。(民六二三條)
雇傭關係
(こようくわんけい)雇傭關係とは、雇傭契約に依りて生ずる使用者と、勞務者との間の債權債務の關係を云ふ、□一勞務者の義務、勞務者は、契約の本旨に從ひ、自らその勞務に服すべく、第三者をして自己に代り勞務に服せしむるを得ざる也、蓋し雇傭は、特定の人の勞務を目的として取結ぶものなり、換言すれば、勞務者その人の技倆、誠實、注意、勉勵等に著眼して之を取結ぶを通例とすればなり、彼の普通の債務は、第三者の辨濟を容るると雖も、雇傭に於ける勞務は、その性質上これを許さざるものなり、但し使用者の承諾あるに於ては、第三者をして勞務に服せしむるを得るは論なり、蓋し當事者の合意の效果を無效ならしむるの理なきを以てなり、□二使用者の義務使用者は、約定の報酬を勞務者に支拂ふの義務を負ひ、其支拂の時期は當事者に於て特別の契約を爲さざる場合に於ては、勞務者が其約したる勞務を終りたる後、勞務者より請求を受けたる時也とす、斯く報酬支拂の時期を定めたる理由は、イ本邦從來の慣習に於て、報酬は前拂を爲さずして、向拂を爲したること、ロ雇傭に就きても、亦所謂同時履行の原則を適用すべきものとせば、到底契約の履行を見ることを得ざること、ハ勞務は、其性質に於て強制履行を許さざるも、報酬は、通常財産なるを以て之を爲すことを得るが故に、當事者を公平に保護する上に於ても、然らざるを得ず、然れども週、月、半季若くは年と云ふが如き、期間を以て定めたる報酬は、勞務者が其期間勞務に服したるときは、其期間の經過する每に、之を支拂はざるべからず、例へば月三圓の給金を以て下婢を雇入れたるときは、翌月一日に前月の給金を支拂はざるべからざるが如し、報酬支拂の時期に就き、以上の説明は當事者間に何等特約のなき場合に關し、若し當事者がこれに異る合意を爲したるときは、之に從ふべきは勿論なり、□三雇傭關係の終了、イ期間の定めある場合、此場合に於ては、其期間の經過と共に終了すべきはいふを俟たず、ロ期間の定めなき場合、A期間を以て報酬を定めざる場合當事者が、雇傭の期間を定むることなく、且つ期間を以て報酬を定めざる場合に於ては、各當事者は何時にても、解約の申込を爲すことを得、而して解約の申入を爲したるときは、其申入の後二週間を經過すれば、雇傭は其終了を告ぐるに至る、B期間を以て報酬を定めたる場合、當事者が雇傭其ものの期間は之を定めざるも、一定の期間を以て報酬を定めたる場合に於ては、其當期の解約を爲すことを得ず、必ず次期以後の期間に對して之を爲すことを要す、而して其申入は、當期の前半に於て之を爲さざるべからず、例へば一月一日に每月四圓の給金を以て、下婢を雇入れたるときは、當月に於て之を解傭するを得ず、必ず翌月以後の期間に對して之を爲さざるべからず、ハ止むことを得ざる事由の存する場合、當事者が雇傭の期間を定めたる場合と否とを問はず、止むことを得ざる事由の生じたるときは、各當事者は直に契約を解除することを得、而して其事由が自己の過失に出でたると否とを問ふことなし、但し自己の過失に依りて生じだるときは、相手方に對して損害賠償の責に任ぜざるべからず、ニ雇傭の更新を推定する場合、雇傭期間滿了後に至り、勞務者が引續き其勞務に從事せる場合に於て、使用者が之を知りて、異議を述べざる時は前の雇傭と同一の條件を以て、更に雇傭契約を取結びたるものと推定を受くるものとす、此場合にありては、各當事者は、雇傭の期間を定めざりし場合と同一の方法を以て、更新の雇傭を終了せしむるを得、蓋し期間以外の事情に就きては、前契約と同一のものと見るも、期間に就きては然らずと見たるものなり、ホ使用者が破産の宣告を受けたる場合、此場合に於ては、雇傭期間の定めあるときと雖も、勞務者、又は破産管財人は、解約の申入を爲すを得、但し各當事者は相手方に對し、解約に依りて生じたる損害の賠償を請求することを得ず、ヘ第三者をして勞務に服せしめたる場合、元來勞務者は、使用者の承諾を得るにあらざれば、第三者をして、自己に代り勞務に服せしむることを得ず、若し勞務者が使用者の承諾を得ることなく、第三者をして勞務に服せしめたるときは、使用者に於て直に契約の解除を爲すことを得。(民六二四條乃至六三一、四七四條)
雇傭契約
(こようけいやく)雇傭契約は、諾成、双務、有償の性質を有するものなり、諾成契約とは、當事者の合意のみに依りて成立する契約にして、法律上一定の條件を履行するを要せざるものなり、双務契約とは、契約當然の效果として、當事者双方が債務を負ひ、又債權を有する契約なり、有償契約とは、當事者が出捐を爲し、相互に利益を得、又は第三者をして之を得しむる契約なり、雇傭契約は、以上の性質を包有す、即ち當事者の一方が相手方に對して、勞務に服することを約し、相手方が之に其の報酬を與ふることを約するに依りて成立する契約なり。(民六三三條參照)
- 英
- Hiring contract
- 独
- Dienst-vertrag
- 仏
- Contrat du louage
妻
(さい)有夫の婦を稱して法律上妻と云ふ、妻たるには、正當なる婚姻ありたることを要し、正當なる婚姻は、法定の手續によりて、戸籍吏に屆出づることを要す、妻たる身分の取得は、婚姻によりて生じ、夫の死亡、もしくは離婚によりて消滅す、故に婚姻中に婦を妻と云ふと解するも敢て差支なし、現行民法は、妻を以て限定能力者とせり、元來人は其男性たると、女性たるとによりて、行爲能力に差異を生ぜずと雖も、女は男に比し、一般に智慮淺薄にして、情の爲めて制せられ易きは爭ふべからざる事實にして、一半は此理由に基き、他は一家の和合を保全せんが爲め、多少其能力に制限を加ふるは、各國の法制を通じて然る所とす、我民法も、其能力に多少の制限を加へたり、然れども我現行民法が、妻の能力に制限を加へたるは、禁治産者、準禁治者の場合の如く、其者を保護するの爲めにあらずして、夫の夫權の行使をして圓滿ならしむるが爲めに、之が能力を制限せるに外ならず、妻は夫に服從すべきものたるは無論にして、服從するによりて、夫婦の和合を保ち、一家の秩序を維持することを得るなり、茲に於てか夫婦間の平和を保つに必要なる程度に於て、妻は夫の許可を受けて、行爲を爲さざるべからずとし、卽ち獨斷にて事を爲すことが夫權を蹂躪するの嫌あるときは、其許可を受けしむべきものと定めたり、民法上妻が夫の許可を受くることを要する行爲は、□一元本を領收し、又はこれを利用すること、□二借財、又は保證を爲すこと、□三不動産、又は重要なる動産に關する權利の得喪を目的とする行爲を爲すこと、□四訴訟行爲を爲すこと、□五贈與、和解、又は仲裁契約を爲すこと、□六相續を承認し又はこれを抛棄すること、□七贈與、もしくは遣贈を受諾し、又はこれを拒絶すること、□八身體に覊絆を受くべき契約を爲すことの八種にして、若し夫の許可を受けずして之を爲したるときは、夫又は妻も之を取消すことを得るなり、然れども若し夫が妻に對し、一種又は數種の營業を許可したるときは、其營業の範圍内に於ては、妻は獨立人と同一の能力を有す、次に事實上に於て、夫の許可を受くることを得ざるが如き場合なきにしもあらず、即ち□一夫の生死不明なるとき、□二夫が妻を遣棄したるとき、□三夫が禁治産、又は準禁治産者なるとき、□四夫が瘋癩の爲め、病院又は私宅に監禁せられたるとき、□五夫が禁錮一年以上の刑に處せられ、其刑の執行中にあるとき、□六夫婦の利益相反するとき等の場合に於ては、如何なる行爲に關しても夫の許可を受くることを要せず、夫が若し未成年者たる場合に於ても、夫の許可を必要とするも、夫は其場合に於ては、法家代理人の同意を得たる上に於て、許可することを要するなり、以上は主として民法に關するものなれども、刑法上妻に關する規定としては、有夫の婦にして姦通したるものは、二年以下の懲役に處せらるべきものにして重婚したるものは、同じく二年以下の懲役に處せらるゝものとす。(民一四乃至一八條、刑一八三、一八四條)
- 英
- Wife
- 独
- Frau
- 仏
- Femme
在營期限
(ざいえいきげん)在營期限とは、主として現役軍人服務に關する語にして、兵營に在る期間、又は其終期を指稱す、陸軍現役兵にして常備役にあるものは、三年を以て在營期限とし、島嶼にある警備隊は、在營期限を一年以内とす。(〓兵令七、九條三項參照)
- 英
- Term in military camp
- 独
- Frist im Heerlager
- 仏
- Terme d'être dans le camp militaire
在役艦
(ざいえきかん)海軍艦船條例によれば、艦船の役務にあるや否やにより、之を三種に區別し、在役艦、豫備艦及び未成艦とす、即ち軍艦にして艦隊に編入せられ、警備、練習、測量、其他特別の役務に服するものを在役艦、又は在役軍艦と稱するなり。(海軍艦船條例第四條)
- 英
- War-ship in service
- 独
- Kriegs-schiff im Dienst
- 仏
- Vaisseau de guerre en service
在役軍艦
在役艇
在役艇、又は在役水雷艇とは、水雷艇にして、役務に服するものを云ふ、然らざるものを豫備艇、未成艦等と稱する也。(海軍艦船條例三四條)
- 英
- Torpedo-boat in service
- 独
- Torpedoboot im Dienst
- 仏
- Torpille en service
在役水雷艇
裁可
(さいか)裁可とは、法律の制定に關する一種の手續にして、國家の元首が、法律の制定として發表せしむるの意思を表示するの行爲を云ふ、即ち君主國に於ては、法律案に法律たる效力を附與し、之を以て法律を完成せしむるものにして、我國に於ては、天皇之を裁可すること、憲法の明定する所なり、或は法律たるの力を法律案に附與するは、裁可のみにあらずして、議會も其協贊權を以て、之を與ふるものなりと説くものあれども、斯くの如く云ふは、畢竟立法權は、君主、及び議會に於て、共同して行ふものなりとの説を認むるの結果に出づるなり、普國其他歐洲の憲法に於ける立法權は、國王及議會に於て、共同して之を行ふと明定するの例あるも、尚今日に於ては、此規定を不當なりとして、特別の意義を附して、他の解釋を試むるものあり、況んや我國の如き憲法上かかる事を定めざる國に於て、此説を唱ふるは甚だ失當の説と云はざるべからず。(憲法五條)
- 英
- Sanction
- 独
- Sanktion
- 仏
- Sanc-tion
裁可權
裁可の性質已に斯くの如し、故に裁可權とは、天皇に屬する裁可する事を得るの權たるや勿論なり、裁可の實行に關する原則としては、□一裁可を與ふるには、其目的物たる法律案が、眞に議會の議決の經たるものなりや、又其議決た錯誤なからりしやを見ざるべからず、□二裁可は之を與ふるか與へざるか、二者其一にありて、法律案を修正して裁可することを得ざるなり、何となれば法律案の内容は、議會の議決する所なれば也、□三裁可者は、裁可を與ふるの權を有すると共に、之に與へざるの自由を有するものなり、□四裁可を與ふると與へざるとは、全く自由にして、之を與へざる場合にも、其事由を説明するの必要なし。
- 英
- Power of sanction
- 独
- Sank-tionsrecht
- 仏
- Pouvoir de la sanction
裁可狀
裁可狀とは、裁可したることを明かにする文書にして、裁可は天皇の親署によりて之を與ふ、普通帝國議會の議決によりて、決定したる法律案の元本を作り、之に前文(上諭)を加へて淨書し、上奏を爲したる場合に於て、裁可すべきものと認めらるるときは、天皇御名を親署し、内大臣公式令によりて御璽を鈐し、之にて裁可は完成するものとす、斯くの如く裁可に就きては、積極的の手續ありと雖も、不裁可に就きては、何等の手續存せず、故に外部に於ては、裁可なきは不裁可と認むるの外なきなり。(四〇年一月勅六號公式令六條參照)
- 英
- Written sanction
- 独
- Sank-tionsschrift
- 仏
- Sanction
災害準備基金
(さいがいじゆんびききん)非常災害の爲めに、租税特免となりたる場合に於て生ずる歳入負擔の補充、及び各府縣災害土木費の補助に要する財源を補充する爲めに使用する目的に於て、明治二十七八年戰役償金特別會計資金の内、千萬圓を組入れて基金としたるものを災害準備基金とす。
- 英
- Reserve fund for calamity
- 独
- Reservefond für Unfall
- 仏
- Fonds réservé contre la calamité
災害準備基金特別會計法
災害準備基金特別會計法は、前項非常災害の場合に使用する基金に關する會計手續を定めたるものにして、明治三二年三月法律第八一號を以て公布せられたる規定なり。
- 英
- Law of special account of reserve fund for calamity
- 独
- Specialrechnungsgesetz des Reservefonds für Unfall
- 仏
- Règles des comptes spéci-als du fonds contre la calamité
災害土木費
(さいがいどぼくひ)災害によりて必要を生じたる土木工事にして、國庫より補助せらるものを災害土木費と稱す。
- 英
- Engineering expense of calamity
- 独
- Unfallsbauwerkekosten
- 仏
- Dépens de l'ingénieur contre la calamité
災害土木費國庫補助規定
災害土木費國庫補助規定は、明治三二年四月勅令第一六號を以つて公布せられたる規程にして、災害土木費の國庫補助に關する規則なり、此規定によれば、府縣の土木災害費にして、其地租年額の十分の三を超過するときは、國庫は其超過額の等しき額に達する迄、十分の四以内、地租額を超過するときは、十分の五以内を補助することを得るものとす。
- 英
- Rule of assist-ance from fiscus of the engineering ex-pense of calamity
- 独
- Unterstützungsregel der Unfallsbauwerkekosten
- 仏
- Règle de l'assistance du fis pour le dépens de l'ingérieur contre la calamité
最高價競買人
(さいかうかきやうばいにん)最高價競買人とは、競賣法によりて競賣ある場合に、他の者より最高價を以て、競買を申込み競落したる者を云ふ、故に之を競落人と稱するに同じ、最高價競落人は、競落によりて、競賣の目的たる權利を取得す、競落人は、其目的物に關して留置權者、競落人に對して、優先權を有する質權者、又は其質權者に優先する債權者あるときは、其債權を辨濟するにあらざれば、目的物を受取を得ず。(競賣法一、二條)
- 英
- Highest auctioneer
- 独
- Meistbietende
- 仏
- Commissaire-priseur au plus haut prix
最高價競賣申込人
最高價競賣申込人とは、競賣の目的物を、最高價格に買入れんことを申込みたる者を指稱す、而して競落の決定ありたる場合に於て、競落人となる者なり。(襲賣法二三條)
最高價入札人
最高價入札人とは、入札競賣ある場合に、最高價競買の入札を爲したるものを指稱す、同じく競落の決定を經て、初めて競落人となるものとす。(民訴七〇五條)
- 英
- Highest bidder
- 独
- Meistbieter
- 仏
- Enchérisseur au plus haut prix
最高機關
(さいこうきくわん)國家の機關にして、最高の權限を有するものを最高機關と稱す、國法學上に於ける一流の學者の唱導する所によれば、國家の元首を以て、國家の最高機關となすものの如し、其説の當否は、茲に詳論するの限りにあらざるも、其説の大樣を紹介すれば、曰く國家は、其目的を達するが爲めに、意思を發表するの機關を有せざるべからず、然れども國家の爲めに、意思を發表する所の機關は、或は上下の關係に立ち、主副の關係に立ちて、同等の地位を有するものにあらず、若し各機關が、互に同等の地位に立ち、之を統一するものなくんば、互に爭を生じ、之を決する能はざるに至らん、故に國家には、必ず最高機關の存在することを要す、所謂主推者なるものは、國家の最高機關にして、我帝國憲法第四條に「天皇は國の元首にして統治推を總攬す」とあるは、即ち天皇の國家最高の機關たることの地位を明かにしたものなりと、其意以て知るべし。
- 英
- Highest organ
- 独
- höchstes Organ
- 仏
- Organe la plus haute
最高裁判所
(さいかうさいばんしよ)裁判所中最高の地位にある裁判所にして、最早上訴の途なき終審の裁判所を、最高裁裁判と稱す、我裁判所構成法によれば、大審院を以て最高裁判所とす。(裁構法四三條)
- 英
- Highest court
- 独
- oberstes Gericht
- 仏
- Tribunal le plus haut
最高所有權
(さいかうしよいうけん)最高所有權は、現今の法律思想と相容れざるの名稱也と雖も、惟ふに其意義とする所と、一私人の所有權に比して、優等なる所有權を最高所有權と稱したるものの如し、彼の封建時代に於て、國家の領土に對する觀念は、最高權を以て、公法上に於ける物權とし、之を私人の所有權に對して最高所有權と命名したることあれども、これ公法私法の觀念の明かならざりし時代の謬想にして、現今の法律思想に於ては、國家の領土最高權は、統治權の發動にして、其外形に於ては、物權に類似する所あれども、其性質全く異り、所有權の目的として、之を支配するにあらず、公法的觀念に於ける統治權を行使するに外ならずとなす、又所有なるものは、總べて同等の權利にして、我民法上に於ては、更に上下の關係あるを認めず、故に最高所有權なるものは、現時の法律思想と相反するの語なりと云ふ所以なり。
- 英
- Highest ownership
- 独
- Höchstbesitztum
- 仏
- Droit de propriété le plus haut
在學兒童
(ざいがくじどう)現に小學校に在學する兒童を在學兒童と稱す、兒童にして滿六歳に達する翌日より、滿十四歳に至る迄を就學年齡と云ひ、此期間中現に在學するものは、即ち在學兒童に外ならず。(小學校令三二條、小學校令施行規則九〇條)
- 英
- Boy at school
- 独
- Kind in der Schule
- 仏
- Garçon à l'école
在監
(ざいかん)刑罰執行の爲め、國家の正當なる機關に依りて、適法に監獄署に拘禁せられ、適法に解放せらるる迄の身分を稱して、在監と云ひ、其個人を稱して在監人と云ふ、既決の囚徒にして、當該法令執行者の監督の下にあるものは、在監人なることは勿論なりと雖も、犯罪の嫌疑の爲め、獄舍に投ぜられ、適法に解放を受くる迄の者を、在監人と稱するや否やに就きては、學者間議論ある所也、監獄則を根基として論ずる時は、前者のみなりと云ふべく、刑法を根基として論ずるときは、兩者を包含せらるべし、されど單に在監者と稱するときは、監獄則上の在監者、即ち既決の囚徒にして、監獄内に起臥するものを指すものと解すべきなり、而して幼年者にして、懲治場に在るものは、之を在監者と稱するを避くるを可とせん、何となれば、懲治場は監獄にあらず、刑罰の執行を目的とする所にあらず、一種の教育所にして、不良少年の教育を目的とする所なればなり、又留置場處分、精神病者監置處分の爲め、一定の場所に拘禁せられたるものの如き、又は戰時捕虜の如き、刑罰の執行に屬せざるものは、茲に所謂在監者にあらず。(監獄則參照)
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Prisonier
在監人
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Prisonier
採掘權
(さいくつけん)採掘權は、所謂鑛業權の一種にして、國家の特許によりて附與せられるる所の權利なり、鑛業法によれば、鑛業者の出願によりて、農商務大臣之を特許し、其權利を有する者のみが、一定の鑛區内に於て、或鑛物の採掘及所有を爲すことを得るなり、地下の鑛物を採掘するは、古來各國皆之を以て、當然に土地所有權に屬する利益と見做さずして、之を國家の特權收入とすること、一般に通じて行れたり、我鑛業法も、亦鑛物の未だ採掘せざるものは、國家の所有なることを規定せり、即ち鑛物は、土地の一部にあらずして、之を採掘するは、土地所有權に屬する利益にあらず、故に土地所有者は、鑛物に對して、何等の權利を有することなしと爲すもの也、注意すべきは、鑛業法第三條に「未だ採取せざる鑛物は、國の所有」とあるは、國家に所有權ありとの意義にあらずして、寧る土地所有者の所有權の作用として、鑛物の上に何等の權利を行使することを得ざることの意義を定めたるものなり、即ち鑛業條例の意義は、鑛物は採掘によりて、始めて採掘者の所有權の目的となるものにして、其未だ採掘せざるものは、何人にも屬せざる無主物にして、之を採掘するの行爲は、先占によりて、之が所有權を取得する方法なりとするに在り、鑛業權は、官廳の特許によりて附與せらる、鑛業法に於ては、鑛物の採掘、試掘、及び之に附屬する事業を、廣く稱して鑛業と云へり、鑛物の採掘を爲す前に、試掘を爲すには、官廳の認可を要し、又採掘の特許を得んとするものは、書面を以て鑛區圖を添へ、其出願地に採掘せんとする鑛物の存在することを證明して之を爲す、特許は、出願日時の前後によりて、之を許否す、採掘の許可は、官廳が公益に害ありと認むるときは、之を拒否することを得べく、又之を取消すことを得るなり、特許を得たる鑛物採掘權は、純然たる私法上の權利にして、財産權の一種たるは勿論なるが故に、賣買、讓與、又は書入を爲すことを得、然れども賣買、讓與は特許證の書換を受くるを以て、法律上の效力を生ずる要件となす、又許可を受くる場合に當り、其出願にして詐僞、又は錯誤によりて、特許を與へられたる場合には、其採掘權を褫奪せらるるものとす、但し褫奪せられたるものは、行政訴訟を起して其權利を爭ふことを得べし。(三八年三月法四五號鑛業法參照)
- 英
- Mining right
- 独
- Bergrecht
- 仏
- Droit de l'exploitation des mines
財貨
(ざいくわ)單に財貨と云へば、普通に貨幣、及び財産を指稱するものにして、即ち廣く經濟的交換價値ある物件を指示するに用ふる語なり、尤も物件たることを要するが故に、彼の無形の權利の如きは、此中に包含せられざるは勿論なり、彼の有價物と云ふと、其意義を同うす。(監獄則八條)
- 英
- Wealth
- 独
- Reichtum
- 仏
- Richesse
在外海軍用地租税
(ざいぐわいかいぐんようちそぜい)在外國の我帝國海軍用地に對する地租税を指すなり。(二四年勅二四號在外海軍用地租税前金拂の件)
- 英
- Tax on the ground abroad used in navy
- 独
- Steuer des Grundes zum Marinedienst im Auslande
- 仏
- Impôt sur la terre à l'étranger em-ployée pour la marine
在外公館
(ざいくわいこうくわん)外國に在る帝國の公用建物を在外公館と稱す、例へば在外公使館、在外領事館の如し。在外公館經費とは、在外公館に要する經費を云ふ。(明治二三年勅三二號在外公館經費中前金拂の件參照)
- 英
- Legation abroad
- 独
- öffent-liches Gebäu im Auslande
- 仏
- Légation á l'étranger
在外公館經費
- 英
- Expense of the legation abroad
- 独
- Kosten des öffentlichen Ge- bäus im Auslande
- 仏
- Dépens de la légation à l'étranger
在外公使
(ざいぐわいこうし)帝國公使にして、外國に在勤中のものを稱して在外公使と云ふ、特命全權公使、辨理公使、代理公使を含むものなること勿論なり。(外交機關の部參照)
- 英
- Imperial minister resident abroad
- 独
- Gesandte im Auslande
- 仏
- Ministre résidant à l'étranger
在外帝國專管居留地
(ざいぐわいていこくくわんせんきよりうち)外國に於ける帝國專管に屬する居留地を、在外帝國專管居留地と云ひ、之に對する經費にして、特別會計に關する件を定めたる法律を同特別會計法と云ふ。(三三年法三三號、及び專管居留地の部參照)
- 英
- Settlement abroad for japanese only
- 独
- Platz im Ausland nur für japanische Völker
- 仏
- Colonie à l'étranger seulement pour le peuple japonais
在外帝國專管居留地特別會計
在外國帝國專管居留地特別會計法
- 英
- Law of special account of the japanese setlle-ment abroad
- 独
- Specialrechnungsgesetz der japanischen Niederlassung im Ausland
- 仏
- Règle des comptes spécials de la colonie à l'étranger pour le peuple japonais
在官
(ざいくわん)現に官吏の地位にある身分狀態を在官と云ひ、其者を稱して在官者と云ふ、官吏とは、無定量の國家事務を擔任すべき、公法上の特別服從義務を負ふ身分を稱す、官吏關係は、通常任命によりて發生し、辭職、免職によりて其關係消滅す、而して現に官吏たる以上は、未だ國家の事務を掌らずと雖も、在官者たるに缺くる所なし、例へば判事に任命せられたるときに、未だ何れの裁判所に於て、其職務に從ふべきやを命ぜられざる間と雖も、在官者として、官吏法上の責に任ずべきものなり、又休職官吏の如き、一定の職務を現に執らざるものと雖も、之又在官者たるに缺くる所なきなり、而して在官者と云ふと、他の公職を帶ぶる所謂公吏との區別につきては、學説數種ありと雖も、在官者と云ふには、□一其義務が公法上の服從義務にして、從つて君主又は上官の服務規律權に服從するものなること、□二其服從義務が、一般臣民の法律上の義務に基きて發するものにあらずして、本人の承諾に基くものなる事の三點を以て、區別の標準となすべし、例へば衆議院議員の如きは、此區別によれば在官者と云ふを得ず、何となれば、上官の服務規律權に暇す▲ふものにあらざればなり。(官吏恩給法二條等)
- 英
- Offiicer
- 独
- Beamte
- 仏
- Officier
在官者
- 英
- Offiicer
- 独
- Beamte
- 仏
- Officier
歳計
(さいけい)一會計年度間の收入支出の計算を稱して、歳計と云ふ。(大藏省官制四條參照)
- 英
- One fiscal year's account
- 独
- Hau-shalt
- 仏
- Comple d'une année fiscale
歳計剩餘
歳計剩餘とは、一會計年度に於て、歳計に剩餘を生じたる部分を云ふ、各年度に於て、歳計に剩餘あるときは、翌年度の歳計に組入るべきは、會計法の定むる所とす。(會計法二〇條)
- 英
- Surplus of the one year's ac-count
- 独
- Haushaltsüberrest
- 仏
- Sur-plus du compte d'une année fiscale
最惠國約款(最惠國條款)
(さいけいこくやくくわん)最惠國約款とは、相互に、又は片面的に或る他の第三國に對して與へたる、且つ將來に於て與ふる權利及利益を、條約締結國の他方にも亦與ふべしと定めたる條款なり、而して茲に所謂第三國を稱して最惠國と云ふ、例へば日英條約第一五條に於て「兩締盟國は、其一方の通商、及び航海を他の一方に於て、すべて最惠國の基礎に基く主意を有するにより、通商、及び航海に關する一切の事項に關し、其一方より別國の政府、船舶、或は臣民に現に許與し、或は將來供與すべき一切の特典、殊遇、若くは免除は、他の一方の政府、船舶、臣民にも之を許與す云々」とある如きは、其一例にして、同條項中に所謂別國と稱するは、即ち最惠國を云ふなり、此最惠國の有する權利及利益は、或は既往及現在に關するものあるべく、或は將來のみに關するものあるを妨げず、最惠國條款は、通商航海等の修交條約に關するのみに限り、政治上、軍事上の條約は、其性質上最惠國條款を許容すべきものにあらず、盖し政治上軍事上の條約に關しても、之を認むるものとせば、殆ど世界各國が一大同盟を形成するに至り、至極結構なるも、斯くの如きは、世界各國相對して降らざる今日、到底見るべからざる所とす、故に最惠國條款は、經濟上社交上の事のみに關するものなりと云ひ得べし、最惠國條款の適用範圍は、專ら其條款の解釋によりて定まる、一種の條約、例へば通商航海條約に最惠國條款を規定するときは、假令其適用範圍に關して制限なくとも、此條約の規定する事項以外に、其條款の效果を及ぼすことを得ず、又其權利利益にして、條約の示す所と同種なるときは、獨り條約に明示せるもののみに限らず、事實上第三國の享有する同種の利益にも、均霑し得べきものとす。
- 英
- Most favoured nation clause
- 独
- Meistbegünstigungsklausel
- 仏
- Clause de la nation la plus favorisée
最惠國
- 英
- Most favoured country
- 独
- Meistbegünstigungsreich
- 仏
- Nation la plus favorisée
裁決
(さいけつ)行政官廳の行政處分にして、私人の利益を侵害したる時は、其官廳を管轄する上級の官廳に對して、訴願を爲すことを得、訴願ありたる場合に、上級官廳が該行政處分を審査し、其處分にして不當なるときは、之を取消し、又は之を變更するの決定判斷を與ふるものにして、此判斷を指して裁決と云ふなり、其訴願の裁決は、之を實質に關して、四の場合に區別することを得、卽ち□一訴願の裁決は訴願を却下することあり、却下は、本案に立ち入りて、其當否を審査することなく、其訴願を以て、法律上の要件を缺くものとなし、審査を拒絶するものとす、□二裁決は、或は前の行政處分を是認することあり、此場合に於ては、係爭の行政處分は、恰も其訴願なかりしと同じく、其效力を繼續す、□三裁決は、或は前の處分を取消し、而して之に代るべき何等の定めを爲さざる場合あり、此場合に於ては、前の處分は、既往に遡りて其效力を失ひ、其處分に基きて爲したる事實上の效果は、及ぶべきだけ之を原狀に回復することを要す、□四裁決は、或は前の處分を取消し、而して直接に之に代ふべき處分を爲すことあり、これ即ち處分の變更の場合なりとす、此場合に於ては、前の處分がその效力を失ふの外、其裁決によりて與へられたる新なる處分が、其效力を生ずるものにして、此場合に於て、上級官廳の其の處分を、下級官廳は之に變更を加ふることを得ざるものとす。(訴願法一條)
- 英
- Verdict
- 独
- Bescheid
- 仏
- Ver-dict
裁決書
裁決書とは、前説明せる訴願裁決の場合に於て、官廳が其裁決を表示したる文書を裁決書と稱するなり、恰も普通裁判所に於ける判決書の如し、訴願の裁決は、總べて文書を以て爲すことを普通とし、其理由を附記するものとす、裁決書は、其處分を爲したる行政官廳を經由して訴願人に交付せらるるもの也。(訴願法一四條)
- 英
- Written Verdict
- 独
- Bescheid-schrift
- 仏
- Verdict écrit
裁決始末書
(さいけつしまつしよ)行政官廳が或る事件の裁決を爲したる場合に於て、其顚末を詳記したる記錄を稱して、裁決始末書と云ふ、訴願の場合に於ける裁決書とは、其意義を異にするものにして、司法裁判に於ける公判始末書の如きものなり、この點特に注意を要す。(海員懲戒法三八條)
債權
(さいけん)債權は、私法上の財産權の一種にして、特定の人をして、或る事を爲さしめ、又は或る事を爲さざらしむる權利なり、例へば他人に金錢を貸附けたる場合に於て、之が返濟を爲すことを命ずるの權利は、即ち債權なり、舊民法時代に於ては、人權なる文字を用ひて、債權の意義を表せり、然れども人權なる文字は、時として人間天賦の權を指し、時としては、憲法上各人の享有する自由を指し、互に混同するのある虞が故に、新民法に於ては、人權なる文字を避けて、債權なる文字を用ひたり、債權の觀念中には、其目的たる行爲を爲すの責任を包含し、法律上之に附するに債務の名稱を以てす、債權と云ひ、債務と云ふ、結局同一の法律關係を指示するものにして、唯觀察の方面を異にするよりして、其名稱に差異を生ずるのみ、債權の目的たる行爲を請求し得べき人は、即ち債權者にして、債權の目的たる行爲を履行すべき人は、即ち債務者也、債權者及債務者は、債權關係の當事者にして、目的と相俟つて債權を完成す、而して法律の以て債權を保護するは、其目的即當事者の一方たる債務者の行爲により、他の當事者、即ち債權者の享有すべき利益を全うせしむるにあり、凡そ債權債務の關係に於て、債權者をして現實の利益を享受せしむるは、其目的たる行爲を實行せしむるにあり、故に法律は、債務者に對して履行を強要し、且つ不履行により、債權者に生ずべき利益の喪失を賠償するの方法を定む、これ即債權の成立に伴ひ、當然當事者間に生ずべき效力にして、法律を以て債權を保護する所以のもの又實に茲に存す、而して從來よりの觀念によれば、債權の目的たることを得るものは、必ず金錢的價格あるもののみに限るとしたり、然れども吾人が生活上に於ける需用は、必ずしも金錢的價値あるもののみを以て、滿足せられ得るものにあらず、之我民法は金錢に見積ることを得ざるものと雖も、債權の目的となり得ることを規定したる所以なり。(民三九九條以下)
- 英
- Credit
- 独
- Forderung
- 仏
- Créance
債權者
- 英
- Creditor
- 独
- Gläubiger
- 仏
- Créancier
債務者
債券
(さいけん)債券は、所謂有價證券の一種に屬し、法律の條件に從ひ、商事會社若くは地方自治體の發行する證券にして、一定の劵面額を表示し、一定の形式を以てするものを云ふ、商事會社も、一の人格者なり、故に一私人と同じく、資金の缺乏を感じたるときは、他より之を借人るることを得るは、特に法律の規定を俟つの要なし、されば法律は、特に株式會社、及び株式合資會社に、簡便にして且つ有利なる方法の下に、金錢の借入れを爲すことを許せり、即ち債券なる有價證券を發行して、公衆より金錢の借八れを爲す所謂社債募集の場合これなり、蓋し債券なるものは、市場に轉輾賣買せらるる性質を有するが故に、濫に之が發行を爲すことを許すときは、却て經濟社會を攪亂するの原因となるを以て、株式會社の如く規模大なる事業を營み、之が爲めに大資金を要するものにありては、法律は、或制限の下に社債を發行して、金錢を借入るるの便宜を與へたり、債券を發行するには、法律上二個の制限あり、即ち、□一債券の總額は、拂込みたる株金額に越ゆることを得ず、□二最終の貸借對照表により、會社に現存する金額が、拂込株金に滿たざるときは、社債の總額は、其總額に越ゆることを得ざることこれなり、而して債券の額面は、二十圓を下ることを得ず、以上は專ら株式會社に關して、商法の認むる債券なりとす、日本勸業銀行の發行する勸業債券、貯蓄債券は、又別途の法系に屬するものにして、日本勸業銀行法によれば、日本勸業銀行は、資本金四分の一以上の拂込ありたるときは、拂込金額の十倍を限りて勸業債券を發行することを得、其券面額は二十圓以上とし、無記名利札附とす、又農工銀行法によれば、各府縣に於ける農工銀行は、資本金四分の一以上の拂込ありたるときは、拂込金額の五倍を限りて、農工債券を發行することを得、其券面額は、十圓以上とし、無記者利札附とす、以上は何れも特別なる理由により、特別なる法規を以て、其發行を認められたる場合にして、何れも勸業上に關する資金回收を以て、目的とするものとす。(商二〇五、二〇七條、日本勸業銀行法三四條、農工銀行法二六條等)
- 英
- Debenture
- 独
- Schuldschein
- 仏
- Débenture
債權額
(さいけんがく)金錢債權たる場合に於て、其金錢の總額を稱して債權額と云ふ、債權の目的は、必ずしも金錢のみにあらず、其他に於て人の行爲、不行爲をも目的とすること多し、然れども債權額と稱し得るには、必ず金錢的債權の場合に限るものなり。(民四三條)
- 英
- Amount of obligation
- 独
- For-derungssumme
- 仏
- Somme de créance
債權關係
(さいけんくわんけい)債權の當事者間に於て生ずる法律關係、換言すれば、債權者債務者の間に於ける、法律上の效力關係を稱して債權關係と云ふ、當事者間に於て生ずる關係は、債權の目的たる利益を全うする爲め、又は其利益の喪失を償ふため必要なる、當事者間の關係を包含す、債務の履行は、債權者をして其目的としたる利益を享受せしむるもの也、其不履行は債權者をして、其目的としたる利益を失はしむるものなり、若し債務者が債務の本旨に從ひ、履行を爲す時は、完全に債權を消滅せしめ、從つて債務關係を離脱せしむ、又債務者の責に歸すべからざる事由によりて、履行が不能となりたるときは、之を完全に履行したる場合と同じく、債權は消滅し、債權關係も消滅す、債務者が履行を爲さざる間は、債權が存立し、債權關係繼續す、債務者が今其債務の本旨によれる履行を爲し、又は其責に歸すべからざる事由により、履行が不能となるときは、當然債務を消滅せしめ、債權關係も消滅するを以て、別に問題を生ぜず、若し債務者が任意に履行を爲さざる場合には、之を救濟するの方法存せざるべからず、之を救濟するは、即ち債權の目的たる利益を全うせしめ、又其利益の喪失を償はしむるにあり、債權關係に於て債權に伴はしむべき救濟の方法は、之を大別して三とす、□一直接履行、即ち裁判所の保護によりて、債務者が任意に履行を爲さざる場合に於て、強ひて之を履行せしむる也、□二損害賠償、債務者が、債務の本旨に從ひて履行を爲さず、又は其責に歸すべき事由により、履行を不能に至らしめたるとき、債權者が債務者をして、其損害を償はしむる方法を云ふ、□三履行の確保、豫め履行を確保するにあらざれば、強制履行又は損害賠償訴權の目的を達する能はざることあり、故に完全に債務者の利益を保護する爲め、債權の效力として、履行の確保に關する規定を設けたり、其他債權關係の效力としては、履行の時期、遲滯等の問題あれども之を省略す、各項目の下に於て之を研究せられたし。
- 英
- Obligation
- 独
- Obligation
- 仏
- Obligation
債券元簿
(さいけんげんぼ)債券を發行することを、法律によりて認められたる會社が、債券を發行したる場合に、一の帳簿に之を記載して、其事項に關する件を明かにするを要す、其帳簿を稱して債券元簿と云ふ、商法上に於て、社債元簿と稱するものも、亦同意義なり。(非訴手續法一九四條、商二〇六條)
- 英
- Original list of debenture
- 独
- Schuldscheinshauptbuch
- 仏
- Liste originelle de la débenture
債權者集會
(さいけんじやしうくわい)破産の場合に於て、破産主任官の招集及指揮によりて行動する、破産債權者團體の決議機關にして、破産債權者が、其招集に應じて集會したるものを債權者集會と稱す、債權者集會は、破産主任官が、一定の場合に、必ず之を招集し、又管財人破産債權者等の申立により、必要ありと認めたる場合は、臨時に之を招集するものとす、債權者集會の會議は、裁判所の監督の下に行はるる利害關係人の辯論にして、判決裁判所に於ける辯論と異る、債權者集會は、管財人及債權の確定したる債權者を以て組織せらる、即ち集會の會議は之等の者によりて構成せらる、破産者も、亦債權者集會に加はる事あり、然れども這は集會を構成するに必要なるものにあらず、債權者集會の決議は、債權者の多數決を以て決す、而して債權者集會の目的は、各債權者が破産に關し、自己の債權を自衞するが爲めに認められたるものにして、此債權者團體の自衞に關する事項に就き、決議を爲すの權限を有するに止まる。(破産法一〇三五條以下)
- 英
- Meeting of creditors
- 独
- Gläubigersversammlung
- 仏
- Assemblée des créanciers
債權證書
(さいけんしようしよ)債權關係の當事者間に授受するものにして、債權の存在を證明するの用に供せらるる文書を、債權證書と稱す、例へば金錢の貸借に關して、借主より貸主に提供する借用證書の如きは、則ち債權證書の一例なりとす、債權の成立には、債權證書の存在を必要とせざるは原則にして、我民法は、當事者間の意思の合致を以て、債權成立の條件とするの原則を採用し、例外の場合として、手形行爲に關する如き場合に於ては、手形なる債權證書の作成を、手形に關する債權成立の要件とせり、此場合は、必ず其證書の作成あることを要するは論を俟たず、之等二三の例外を除きては、全く債權證書は債權成立の要素にあらざるなり、唯單に意思の合致のみにては、其債權に關して爭を生じたる場合、若くは其債權の内容にして複雜し居る場合等に於ては、債權證書は、有力なる證據文書となるものものなるが故に、當事者間に之れを作成し置くは、双方に取りて便宜甚だ少なからず、社會の狀態に於ては、之が作成を必要なる條件とするの觀念あるが如きも、亦故ある所なりとす。(民五〇三條二項)
- 英
- Document of obligation
- 独
- Obligationsurkunde
- 仏
- Document de créance
債權擔保
(さいけんたんぼ)債權の辨濟を確保するを以て目的とする擔保は、之を二種に大別することを得、物上擔保、及び對人擔保即ち是也、物上擔保とは、債權の辨濟を確保するが爲め、債務不履行の場合に、債權の辨濟に充つべき特定の物件を供するを云ふ、特定の動産、不動産の上に質權、抵當權を設定して、債權辨濟の保證に充つるが如し、對人擔保とは、債務不履行の場合に、債務者以外の第三者をして、債務の辨濟の責に任ぜしむるを云ふ、保證債務、連帶債務、當事者の意思による不可分債務は、即ち此債權の擔保に屬す、物上擔保を設定せる時は、債務者が、其債務を履行せざるに於ては、他の債權者を排斥して、目的物件を其債權の辨濟に供するの權利を有し、對人擔保によりては、債權者は債務者以外の第三者、即ち保證人をして、代りて債務の辨濟せしむる權利を有するを以て、何れの場合に於ても、債權者は債務者の資力如何に拘はらず、其債權の辨濟を受くることを得べきにより、債務者の資力缺乏より生ずる危險を豫防することを得て、其權利は一層鞏固となるべし、然れども物上擔保と云ひ、對人擔保と云ひ、絶對的に債務不履行の危險を消滅せしむるものにあらず、何となれば、擔保に供せられたる物件は、種々の事由によりて滅失毀損し、若くは其價格を減少することあるべく、又債債者に代りて、債務辨濟の資に任ずる所の保證人の如きも、何時無資力の狀況に陷るやを知るべからざれば也、然れども假令之等の擔保が、絶對的に債權者をして、債權の完全なる辨濟を受くること能はざるの危險を兔れしむること能はざるにもせよ、最も多くの場合に於て、債權者の爲めには、其危險を豫防し、至大の利便を與ふることは、爭ふべからざる所なりとす、今擔保の種類を、民法上認むる所に從ひて列擧すれば、物上の擔保としては、留置權、質權、抵當權とし、對人擔保としては、保證債務、連帶債務、連帶保證債務、當事者の意思による不可分債務とす、其效力、及び其擔保執行方法の如何は、今茲に之を説明するの限りにあらざるが故に、其項目の下に於て、詳細なることを研究せられんことを希望す。(民二九五、三四二、三五二、三五六、三六九、四二八、四三二、四四六條等參照)
- 英
- Security of right of elaim
- 独
- Forderungssicherheit
- 仏
- Nautisse-ment de créance
債權保險
(さいけんほけん)損害保險の一種にして、債權者が、自己の債權の辨濟を受くるべからざるに至りたる場合に、保險者をして、其損害を塡補せしむることを約し、之に報酬を支拂ふによりて、其效を生ずる所の保險契約を謂ふ、我國の現時に於ては、債險保險を於て業とするの保險會社あることを知らず。(商三八四條)
- 英
- Obligation insurance
- 独
- Obligationsversicherung
- 仏
- Assurance sur la créance
催告
(さいこく)法律上一定の效果を生ぜしめんが爲めに、相手方に對して爲す所の行爲、若くは不行爲を促がすの意思表示を云ふ、催告は、法律行爲中の單獨行爲に屬するものなるが故に、敢て相手方の承諾を待たずして、相手方に到達すると同時に、其效力を發生するものなり、例へば未成年者と、法律行爲を爲したる場合に於て、法定代理人に對して、其未成年者の行爲を追認するや否やを催告する場合の如し。(民一九條、民訴法八五條等)
- 英
- Summon
- 独
- Aufforderung
- 仏
- Assignation
催告債務
催告債務とは、債權者の催告を以て、其履行の條件とするの債務を云ふ、即ち期限を定めざる債務にして、債權者よりの催告を待つて、辨濟期に達するものなり、此點よりして、單純債務と相似たり、單純債務も、債權者の請求ありたるときを以て、辨濟期に達するものなれども、催告債務は、債務成立の時に於て、既に催告を條件とするものなれば、成立の時に於ては、かかる約款を帶ぶるものにあらざる點に於て、單純債務と區別あるものとす。
- 英
- Obligation of summon
- 独
- Mahnungsobligation
- 仏
- Obligation de l'assignation
催告裁判所
(さいこくさいばんしよ)民事訴訟法に、公示催告なる制度あり、即ち或る事件に關して、未定若くは不分明なる相手方に對し、或る請求、又は權利の屆出を爲さしむる裁判上の催告手續にして、此催告に應じて、何等の申出でを爲さざる時は、權利を失ふべきことの制裁を附し、裁判所の揭示板、及び官報に揭載せらるる催告なり、之を稱して裁判上の公示催告と云ふ、而して此催告を爲すは、區裁判所にして、此場合の區裁判所を稱して、催告裁判所とは云ふなり。(民訴七六四條、七七四條二項)
- 英
- Court of the public summon
- 独
- Aufgebotsgericht
- 仏
- Tribunal de l'assignation
再婚
(さいこん)一旦適法に婚姻を爲したるものが、其婚姻の解消又は取消のありたる後に於て、再ぴ他の者と婚姻を爲すことを再婚と云ふ、民法の規定する所によれば、女は前婚の解消、又は取消の日より六箇月を經過したる後にあらざれば、再婚を爲すことを得ず、若し前婚の解消、又は取消の前より懷胎したる場合に於ては、分娩の日以後より再婚を爲すことを得と定めたり、抑も女の再婚を爲す場合に在りては、往々前婚の解消、又は取消の以前より懷姙せることなきを保せず、若し前夫の子を懷胎したるや否や不明の儘、更に再婚を爲すことあらば、其分娩せる子の何人の子なるやを知ること能はず、隨つて血統を混亂し、一家の秩序を亂すの虞あり、此故に再婚の場合に限り、前婚の解消、又は取消後一定の期間を經過したる後にあらざれば、再婚することを得ざるものと定めたるなり、然れども茲に再婚と稱するは、前述したるが如く、前婚姻の相手方以外の第三者と、婚姻を爲す場合を指稱するものなるが故に、一旦離婚ありたる後、再び前同一の男女間に婚姻をなす場合を含まざるものとす、此場合には、女と雖も右の期間を經過せずとも、婚姻を爲すことを得べきは勿論なり、民法の明文に於ては、此區別を明記せずと雖も、規定の全般に亘りて、其主旨なることを推知するに難からず、次に前婚の解消又は取消の後、其懷胎せる子を分娩したる場合に於ては、民法が定めたる期間の經過を要する理由は、最早消滅したるを以つて、六箇月の期間を經過せずと雖も、自由に再婚する事を得るは又明なりとす、茲に再婚に關して、更に一の制限あるを注意するを要す、即ち姦通によりて離婚、又は刑の宣告を受けたるものは、相姦者と婚姻を爲すことを得ざることこれなり、姦通は、社會善良の風俗を害すること最も大なるものなれば、姦通によりて離婚の宣告を受けたる者をして、其姦通の相手方と婚姻を爲すことを許さば、偶々姦通を奬勵するの結果を見ることあるべく、又姦通によりて刑の宣告を受けたるものを、其相姦者と婚姻を許さざるは、姦通者に對する當然の制裁と云ふべし、然れども茲に謂ふ所の姦通による離婚とは、裁判上に於ける離婚を意味する事を注意せざるべからず、事實に於て、姦通の行爲ありとするも、之が爲めに刑の宣告を受けず、又裁判所に於て、離婚の宣告を受けざるものは、之を包含せず、即ち双方の示談上協議による離婚として、屆出でを爲したる場合の如きは、果して其然るや否や不明なるを以て、斯くの如き場合は、總べて含まざるものとせられたり、要するに有夫の婦が姦通を爲したるときは、其姦通によりて、刑の宣告を受け、併せて離婚せられたる場合は勿論、離婚の宣告を受けたるも、刑に處せられざりし場合、若くは刑の宣告を受け、然かも離婚せられず、其後他の理由に依りて離婚せられし場合に於ても、永久に其姦夫と婚姻を爲すことを得ざるものにて、先夫の許諾によりて、此制裁を兔がるることを得ざるは勿論なりとす。(民七六七、七六八條)
- 英
- Remarriage
- 独
- Wiederverheirath-ung
- 仏
- Remariage
再訴
(さいそ)再訴とは、民事訴訟に關する用語にして、適法に取下げたる訴を再び提起することを云ふなり、訴の取下げなるものは、訴にかかる請求權を抛棄するものにあらずして、通俗に謂へば、唯一時訴を止めたるまでの事なれば、實體上の請求には、何等の影響を及ぼさざるものとす、故に原告は同一事件につき、更に再び訴を起すことを得べし、然れども原告にして、此再訴を提起するには、前訴訟費用の辨濟を終へたる後ならざるべからず、若し原告が前訴訟費用の辨濟を爲さずして、再び訴を起せるに於ては、被告は之に對して、妨訴の抗辨を爲す事を得べし、即ち民事訴訟法に於て、取下げたる訴を再び起したるときは、被告は訴訟費用の辨濟を受くるまで、應訴を拒むことを得と規定したるは、此所以を明かにしたるもの也、此場合に前訴費用の辨濟と云ふは、訴を取下げたるものは、訴訟費用を全部負擔するは、我訴訟法の原則とする所なればなり。(民訴七二、二〇六條、一九八條の五項)
- 英
- Resuit
- 独
- Wiederklage
- 仏
- Re-procès
再送
(さいそう)再送とは、再送電報の場合に於ける用語にして、電報の發信人が、受信人の居所に異動ある場合に於ては、新居所へ、電報の再送せんことを指定するの事項を云ふ、電信規則によれば、再送の符號は、和文にては「ナチ」歐文にてはRFと記するにあり。(電報規則一三一條)
再送電報
再送電報とは、再送事項を指定せる電報を謂ふ。(電報規則一〇章六節)
細則
(さいそく)或る法規の執行に關し、其法規の定むる範圍内に於て、詳細の事項を規定せしものを細則と云ふ、多くは執行命令を以て發布せらるるものにして、何法施行細則と云ふ場合の如し。(地方官々制一二條)
- 英
- Regulations
- 独
- Regeln
- 仏
- Règlement
財團法人
(ざいだんはふじん)我法律上法人を或方面より分類して、社團法人と、財團法人との二種と爲す、社團法人は、數多の人の結合によるものにして、財團法人は、財産の集合を以て基礎とするもの也、共に一定の條件に從ひて、法律上人格を附與せられたる組織體を云ひ、其財産の集合を稱して財團と云ふ、社會萬般の目的は、單に人類の結合のみに依りて遂行せらるるものにあらず、個人又は社團に歸屬せざる營造物が、公共の用に供せらるることあり、例へば祭祀宗教に關する目的を有する寺院、教育を目的とする學校、慈惠を目的とする病院、養育院の如し、若し斯くの如き營造物が、一個人の所有に屬し、又は國家地方團體其他の社團の爲めに設立せられたるものなる時は、箇人又は社團の機關たるに過ぎざるが故に、獨立の主格として存在することなかるべし、然れども斯くの如き營造物が、現に存在する所の權利主體に從屬せずして、一定の目的に供せらるるときは、獨立の組織體として存在し、社會は之を以て、其目的を遂行する爲めに便宜なりとす、斯くの如くにして發生したる組織體は、即ち財團にして、財團法人の基礎を爲すもの也、此財團なる組織體が、法律の認むる條件に從ひ、一定の手續を經て、自然人と同じく人格を有するに至りたるものは、即ち財團法人也、法人の本質に關する議論は、區々に別れ、一致する所なしと雖も、法律が無形の組織體を以て、自然人と同じく存在するものと認め、之に法律上の人格を附與したるもの、即ち法律の擬制によりて、無形のものを實在する人の如く認めたるものと解するを、普通に了解し易かるべしと信ず、今少しく財團法人の設立に關する法律の規定の大要を説明せんに、財團法人は、私法上の法律行爲に依りて生ず、其法律行爲を稱して、寄附行爲と稱す、寄附行爲と云ふは、財團法人を設立せしむるの目的を以て、無償にて財産を提供するの行爲也、而して寄附行爲者は、其寄附行爲に依りて下の事項を定めざるべからず、即ち定款と稱するもの是也、其要件は、□一目的、□二名稱、□三事務所、□四理事の任免に關する規定、□五資産に關する規定の五項目を定むることを要す、寄附行爲は、生前に爲すことあり、又は遺言によりて爲すことあり、生前に爲す場合に於ては、民法の贈與に關する規定を準用し、遺言を以て爲す場合は、遺贈の規定によるものとす、右の如くして、寄附行爲が效力を生じたるときは、財團の本體は茲に成立す、而して財團の本體が人格を得るには、即ち主務官廳の許可を要す、此許可を請求すべきものは、寄附行爲者、其相續人、又は遺言執行者なり、主務官廳とは、法人の目的とする事業を管轄する官廳を云ふ、例へば學校の設立には文部省、病院の設立には内務省に許可を請求するが如し、許可ありたるときは、即ち法人が茲に存在するものにして、次に登記を爲すべきものとす、一定の手續に從ひ、登記を了し、初めて財團法人は法律上の人格者として、完全に社會に産出したるものとす。(民四〇條乃至五一條、五三條乃至五九條)
財團
裁定
(さいてい)裁定とは、或る事項を裁斷決定するの意にして、法律上に於ては、主として行政に關して用ひらる、即ち上級官廳が或る行政上の事に關して、判斷を與ふる場合に用ひられ、裁決は、多少裁判的の意味を含むを以て、之と稍其用法を異にす、例へば訴願を裁決すと云ふが如く、判決的の意あり、然れども裁定とは、決定して命令するの意にして、命令的の意を主とするものなり。(官吏恩給法一七條、砂鑛採取法二〇條)
- 英
- Judgment
- 独
- Urtheil
- 仏
- Jugement
裁定請求
裁定請求とは、官廳に對して、或る事項の判斷決定を請求するの意にして、主として行政法上の用語なり、例へば砂鑛採取に關して、土地所有者と採取人との間に、土地貸渡等の事に關し協議整はざる爲め、所轄鑛山監督所長の判決を得るも、猶不服あるが爲め、更に農商務大臣の裁定を請求と云ふ場合の如し。(砂鑛採取法二〇條)
- 英
- Demand for judgment
- 独
- Anspruch für Urtheil
- 仏
- Demande pour le jugement
在廷
(ざいてい)裁判所の法廷に在るを在廷と云ふ、然れども茲に在廷と云ふは、單に裁判所なる建築場内に在るの意味にあらずして、法律上裁判所に、適法に成立したる裁判の法廷にあるの意味なることを注意せざるべからず、而して法廷に云はんには、更に裁判期日の正當に開始せられたるときより、正當に終了したる迄の間なることを要す、故に例へば公判の開始前に、其法廷に入ることあるも、之を稱して在廷者と云ふことを得ず、期日の開始は、事件の呼上げを以て始まるものにして、通常廷丁之を爲す、されば裁判長に於て、豫め公判は何日何時に開くものと定めたる場合に、其時間が到來するも、事件の呼上げなき間は、開廷せられたるものと云ふを得ざるなり、而して期日の終了は、法律に明文なしと雖も、事件審理の終了時と共に、閉鎖せらるるものとす。(民訴一六三、一六一條)
- 英
- Presence
- 独
- Anwesenheit
- 仏
- Présence
最低競賣價格
(さいていきやうばいかかく)競賣によりて、賣拂ふべき標準とする所の最低價格を稱す、例へば不動産の競賣につきては、豫め鑑定人をして評價せしめ、其價格を以て最低競賣價額とし、それ以上にあらざれば、競落決定を爲さざる場合の如し。(競賣法二八條)
- 英
- Sum of the lowest auction
- 独
- Mindestauktionssumme
- 仏
- Prix de l'enchère la plus base
再調査
(さいてうさ)同一の事項に關して、再び調査手續を行ふことを云ふ、所得税法によれば「政府が所得税調査委員會の決議を不當と認むるときは、之を再調査に付す云々」と云ふ場合の用例の如し。(所得税法三一條)
- 英
- Reinvestigation
- 独
- Wieder-untersuchung
- 仏
- Investigation de nou-veau
妻登記薄
(さいとうきぼ)妻が商業を營むときは、商法の規定によりて登記を受けざるべからず、而して此場合に於て、各登記所に備へたる帳簿にして、妻に關する登記を爲すべき登記簿を妻登記簿と稱す。(非訴事件手續法一四〇條)
- 英
- Register of wife
- 独
- Weibs-register
- 仏
- Registre de la temme
再投票
(さいとうへう)或る委員、若くは代議員の選擧に關し、一度投票せるも其目的を達し能はざる時に、再び投票せしむることを云ふ、例へば、市制の規定する所によれば、市會に於て市吏員の選擧を行ふときは、其一名每に匿名投票を以て之を爲し、有效投票の過半數を得るものを以て當選とす、若し過半數を得るものなきときは、最多數を得しもの二名に就きて更に投票せしめ、若し最多數を得たるもの三名以上同數なるときは、議長自ら抽籖して、其二名を取り、更に投票せしむ、此再投票に於ても、猶過半數を得るものなきときは、抽籖を以て當選を定む云々との用例の如し。(市制四四條、町村制四六條)
- 英
- Re-vote
- 独
- Rückstimmzettel
- 仏
- Re-voter
再度證書
(さいどしようしよ)郵便爲替證書が、其有效期限を過經したるとき、又は其證書を亡失毀損したるとき、及び汚斑したるときに、其差出人又は受取人が、郵便局所に請求し、更に交附を受くる所の爲替證書を再度證書と云ふ。(郵便爲替法一二條)
再度證書請求書
再度證書請求書とは、郵便爲替證書の交附を請求する場合の書面を云ふ、郵便爲替の再度證書を請求せんとする者は、郵便局所より再度證書請求書用紙の交附を受けて、相當事項を記入し差出すものとす、有效期間經過の場合の請求書には、前證書を添付し、亡失毀損、若くは汚斑の爲めの再度證書請求の場合には、相當の保證人を立つることを要す。(郵便爲替規則五〇條)
再答辯書
(さいとうべんしよ)同一事項に關して、一度答辯書を差出したるも、其目的を達する能はざる場合に、再び提出するものを再答辯書と云ふ、民事訴訟に關する準備書面中には、答辯書を認むれども、再答辯書なる用語を認めず、再答辯書の用例としては、貴族院議員資格及選擧訴訟判決規則中に認めらるる所のものにして、選擧訴訟の場合に於て、資格審査委員は必要と認むるときは、原告、被告をして、更に再答辯書を差出さしむることを得る場合の如し。(同規則五條)
歳入
(さいにふ)國家、又は自治團體の會計に於て、其一會計年度内に收納する總べての收入を歳入と稱す、之に反對す。の語は、即ち歳出なり。(會計法二條)
- 英
- Annual income
- 独
- jährliches Einkommen
- 仏
- Revenu annuaire
歳入歳出現計書
(さいにふさいしつげんけいしよ)過去に於ける年度の歳入歳出を計上せる書面を、歳入歳出現計書と云ふ、會計法の示す所によれば、帝國議會に提出する總豫算には、帝國議會の參考の爲めに、其年の三月三十一日に終りたる、會計年度の歳入歳出現計書を添附すべきことを命ぜり。(會計法六條の二項)
- 英
- Actual accounts of annual revenues and expenditures
- 独
- Rechnungsschrift jährliches Einkommens und jährlicher Ausgabe
- 仏
- Comptes actuels de revenu et de dépens
歳入確定額計算書
歳入確定額計算書とは、書入確定額を表示せる計算書を謂ふ。(作業、及び鐵道會計規則九條二項)
再入札
(さいにふさつ)一旦入札を行ひたるも、或る理由の爲めに、其目的を達する能はざりしとき、再び入札を行ふ場合を再入札と云ふ、會計規則の定むる所によれば、政府の工事、請負物件の賣買等の場合に於ては、競爭入札を爲さしむ、其時に開札の上にて、各人の入札が、豫定價額の制限に達したるものなきときは、再度の入札を爲さしむることとなしたるが如きは、其適例なりとす。(會計規則七七條)
- 英
- Re-bidding
- 独
- Rückgebot
- 仏
- Enchère de nouveau
歳入出納槪算書
(さいにふしつのうがいさんしよ)大藏大臣が、各省大臣より提出したる歳出槪算書、及び歳入官廳より送致したるる歳入槪算書等を檢案して、歳出入を對照調理し、閣議に提出する爲めに調製したる文書を、歳入出總槪算書と稱するなり、此書類には、歳出入共に經常と臨時とに區分し、更に其上款項と分ち、或は目を設け、現年度に比較して、其增減せる理由を説明すべきものとす。(歳入歳出豫算槪定順序第六條)
歳入槪算書
歳入槪算書とは、歳入の事務を掌る官廳が、各年度每に其翌年度に於ける歳入を槪算して、大藏大臣に差出す書面を云ふ、明治二二年閣令一二號によれば、歳入の事務管理廳は、每年度歳入槪算書を作り、前年度五月三十一日迄に、大藏大臣に送附すべしと云へる如きは其例なり。(二二年閣令一二號歳入歳出豫算槪定順序一條)
歳入出豫算表
(さいにふしつよさんへう)歳入歳出の見積計算書等を指して、歳入歳出豫算表と云ふ、例へば市制の定むる所により、市參事會は、每會計年度收入支出の豫知し得べき金額を見積り、每年度前二箇月を限り、歳入出豫算表を調製すべきことを命ぜらるる場合の如し。(市制一〇七條)
歳入豫算
歳入槪算、國家、又は自治團體の會計に於て、其一會計年度内に於ける收入の豫算を、歳入豫算と云ふ、例へば會計規則に「歳入豫算は、經常、臨時共に款、項を區分して調製し、成るべく性質を明示すべし云々」との場合に於けるが如し。(會計規則五條)
- 英
- Budget of annual revenues
- 独
- Einkommensetat
- 仏
- Budget de revenu annuaire
再任
(さいにん)嘗て或る職務にありたることあるものが、再び就職することを再任と云ひ、法人の理事、官吏、公吏にも用ひらるる所なれども、主として官職に關して用ふる要語なり、(三〇年勅一九七號秘書官の他官に轉任、又は再任する場合の官等に關する件一條)
- 英
- Reappointment
- 独
- Wiederan-stellung
- 仏
- Rénomination
罪人
(ざいにん)法罪上の犯罪者と云ふと同意義にして、詳言すれば、刑法上裁判の宣告を受けて、有罪者と決定したる既決のものを云ふなり、而して罪人たるには、所罰せらるべき者なる事を要するが故に、假令犯罪行爲を爲したる者と雖も、犯人身上の特別理由によりて處罰せられざる者、例へば親族相盜の場合の如きは之を含まず、而して法律上罪人と稱するは、其如何なる犯罪たるを問はず、又正犯たると從犯たるとを區別せざるものとす。
- 英
- Offender
- 独
- Verbrecher
- 仏
- Criminel
罪人藏匿罪
(ざいにんざうとくざい)罪人藏匿罪とは、犯罪人、又は逃走の囚徒、監視に附せられたるものたることを知りて、之を藏匿したる罪を云ふ、本罪を犯したるものは、十一日以上一年以下の輕禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加せられ、若し重罪の刑に處せられたる囚徒なるときは、一等を加へらるるものとす、今本罪の成立要件を槪説すれば、□一藏匿の行爲あることを要す、藏匿とは、俗に所謂匿れ場所を與ふるの意義にして、犯人に對して隱避、若くは發見を避くる場所を給與する行爲を總稱す、而して其場所に關しては、刑法は何等の制限を設けざるが故に、家屋、倉庫、船舶、馬車等すべて之を包含するものとす、然れども本罪に於ては、必ず場所を給與せしむることを要件とするが故に、其衣服を變ぜしむるが爲めに衣服を給與するが如きは、他の犯罪を成立せるしむる事あるべきも、本罪を構成せず、□二其藏匿の目的たる人は、犯罪人又は逃走の囚徒、若くは監視に附せられたる者なる事を要す、犯罪人とは、犯罪行爲を爲したる爲め所罰せらるべきものを總稱し、逃走の囚徒とは、已決囚又は未決囚の逃走したる者を總稱す、また監視に附せられたる者とは、監視の執行を受けたるものを指示す、□三犯罪人又は逃走の囚徒、若くは監視に附せられたる者なることを知りて、之を藏匿するの意思あることを要す、茲に知るとあるは、犯罪行爲によりて、刑罰を科せられたる者たることを知るを以て足り、原犯人が現に行ひたる所の各犯罪に就きて、細密に之を知ることを要せず、以上の三條件を具備したる場合に、本罪を以て論ぜらるるものとす、注意すべきは、本罪の主とする所は、他人の犯罪を庇護するの罪にして、罪人自らが自己を庇護するも、刑罰を科せらるることなし、又犯人が他人を教唆して、自己を藏匿せしむるも、本罪の教唆を以て論ぜらるる事なし、然れども、其犯者の一人が、他の共犯者を藏匿するときは、本罪を構成するに缺くる所なし、何となれば、本罪は原犯に對する獨立の犯罪にして、共犯者の一人も又藏匿者より見れば、一の犯人たるに相違なければなり。(刑一〇三條)
- 英
- Crime of giving a place of refuge to the criminal
- 独
- Verbrechen, das den Zufluchtsort dem Verbrecher gibt
- 仏
- Crime de celer le condamné
再犯
(さいはん)汎く再犯と云ふときは、一度罪を犯して、其確定判決を受けたる後、再び罪を犯したる總べての場合を云ふ、故に縱令先に罪を犯したることあるも、刑を全免ぜられたるときは、其罪を以て再犯と爲すことを得ず、又刑の言渡確定する以前の罪は、再犯として之を論ずるを得ず、大赦、非常上告、再審によりて、刑の言渡消滅したるものなるときは、其後に罪を犯すことあるも、再犯と云ふを得ざるなり。(刑五六乃至五八條)
- 英
- Second crime
- 独
- Rückfall
- 仏
- Deuxième délit
再版
(さいはん)一度出版したる文書圖繪を更に復製して出版することを再版と云ふ、出版法に依れば、一度出版屆を爲しる文書、圖繪の再版は、更に出版屆を爲すを要せずと雖も、若し、改正增減し、又は注解、附錄、繪畫等を加へたる時は、初版の際に於けるが如く、製本二部を添へて、發行の日より三日前に、内務省に屆出づべきものとす、而して三回日以後と雖も、出版法に所謂再版中に包含せらるるものとす。(出版法一一條)
- 英
- Second Edition
- 独
- zweite Auf-lage
- 仏
- Deuxième édition
裁判
(さいばん)裁判所が、訴訟を以て、法律上の權利の保護を求められたる法律關係につき、其事實を審理し、法律を適用して權利の存否を認定し、之が宣言を爲す行爲を裁判と稱す、其裁判宣言の形式は、判決、命令、及び決定にして、外部に發表せらるるものなり、而して民事、刑事の訴訟に關する場合を司法裁判と云ひ、行政訴訟に關する場合を行政裁判と云ふ。(裁所構成法二條)
- 英
- Judgment
- 独
- Rechtsspruch
- 仏
- Jugement
裁判行爲
裁判行爲とは、裁判に關する國家行爲の全體を稱す。
- 英
- Juridical action
- 独
- Gerichts-handlung
- 仏
- Acte judiciaire
罪犯
(ざいはん)罪犯と云ふは、犯罪と云ふと同意義なり、然れども犯罪と云ふは、一般的に用ひられ、罪犯と云ふは、個々實在の場合に用ひらるること多し、例へば出版法第一六條に「罪犯を曲庇し云々」とある場合の用例の如し。(出版法一六條)
- 英
- Criminal
- 独
- Verbrecher
- 仏
- Criminel
裁判員
(さいばんゐん)皇室典範の明文によれば「皇族相互の民事の訴訟は、宮内省に於て、裁判員を命じて裁判せしめ、勅裁を經て之を執行す」とあり、即ち皇族間の民事訴訟を裁判する爲めの裁判係員を、裁判員と稱するなり、法律上裁判員なる語を用ひたるは、他に類例に見ず、裁判所職員と混合せざらんことを要す。(典範四九條)
- 英
- Judicial functionaries
- 独
- ge-richtlicher Beamte
- 仏
- Fonctionnaires judiciaires
裁判言渡
(さいばんいひわたし)裁判言渡とは、訴訟に關する裁判所の威力ある宣言を云ふ、其言渡の形式は、判決、命令、決定となりて發表せらるるもの也。(民訴三二九條、刑訴二五二條)
裁判確定
(さいばんかくてい)裁判確定して、最早上訴の途なきに至れるを裁判確定と云ふ、裁判の確定する期間を擧ぐれば、民事訴訟に關しては、第一審裁判の確定は、判決の送達ありたるときより一箇月、第二審裁判所の判決も、送達を受けたるときより一箇月、決定命令にして、抗告を爲し得べき場合には、即時抗告にありては七日間、此期間を經過すれば、最早其上訴期間を經過し、之に對して上訴するの途なく、又大審院の上告裁判は終審にして、上訴の途なきが故に、其判決の送達と同時に裁判確定するものとす、刑事裁判に關しては、第一審判決にありては五日間、控訴審にありては、判決言渡ありたるとき、三日間の期間を經過すれば、最早上訴を爲すを得さるが故に、確定するものとす、又大審院の判決は、終審なるが故に、裁判言渡と同時に確定するものとす、而して裁判確定の効力としては、控訴上告の方法を以てしては、不服を申立つることを得ず、民事裁判の確定力は、形式上の效力としては、訴訟關係人が判決に拘束せらるるものにして、實質上の效力は、關係人は判決の主旨に拘束せられ、權利義務の關係をして、將來變更せしむる能はざらしむるものなり、刑事に關する裁判確定の效力は、主として有罪の判決を受けたるものは、刑の執行を受け、無罪の宣告を受けたるものは、解放せらるるにあるものとす。(民訴四〇〇、四三七、四六六條、刑訴二五二條、二七一條)
- 英
- Fixed comdemnation
- 独
- Gerichtsentschiedenheit
- 仏
- Condamna-tion
再犯加重
(さいはんかぢゆう)再犯と云は、一度罪を犯して、其確定判決を受けたる後、再び他罪を犯したる總べての場合を云ふ、然れども現行刑法に於て、其刑一等を加重すべき再犯の場合は、□一先に重罪の刑に處せられたるものが、再犯重罪なるとき、□二先に重罪輕罪の刑に處せられたるものが、再犯輕罪なるとき、□三先に違警罪の刑に處せられたるものが、一年内再び其違警罪管轄裁判所區域内に於て、違警罪を犯したるときのみ再犯なりとす、初犯再犯の間に存すべき輕重の制限は、上に述ぶるが如し、然れども前後の罪、其種類を同うすることを必要せず、例へば前罪は盜犯にして、後罪は放火犯なりと雖も尚再犯なり、又前罪と後罪との間には、違警罪を除くの外は、其經過したる時間を問はず、現行法の制度は、違警罪を除くの外は、再犯の罪が、初犯の罪より輕きか、若くは之と同等なる場合にあらざれば、其刑を加重せざる原則を採れり、故に初犯輕罪にして、再犯重罪なるときは、加重せらるる限りにあらず、初犯の刑の執行中に、再犯を執行すべきときは、重きを先きに執行し、輕きを後に執行す、先きに軍衙に於て、刑を言渡されたるものは、其普通刑法を通用されたる場合に限り、再犯を以て論ず。(刑五六條乃至五九條、舊刑九三條參照)
- 英
- Aggravation resulting from repetition
- 独
- Erschwerung vom zwei-maligen Verbrechen
- 仏
- Aggravation résultant de la répétition
裁判區域
(さいはんくいき)我裁判權の及ぶべき範圍を稱して裁判區域と云ふ、詳言すれば我民事訴訟法、及び刑事訴訟法の實施せらるる地域内を指稱するものなり、裁判權は、即ち國權の一部なるが故に、國家の領土内に及ぶを原則とし、領土外に及ぼすことを得ず、領土内と雖も或は特別なる事由によりて、訴訟法の效力を及ぼさざる場合あり、例へば我新領土たる臺灣の如し、臺灣は我訴訟法は、其效力を及ぼすことを得ず、現在臺灣に於ては、其律令を以て我訴訟法と、同文の訴訟法が施行せらると雖ども、偶々其明文を同一にするのみにして、我訴訟法其ものは施行せらるるにあらず、故に臺灣は、裁判所區域外と云はざるべからず、此臺灣に關する裁判權區域に關しては、學者間議論の存する所なれども、以上の如く解するを、今日一般の多數を占むる通説なりとす。(民訴五二五條)
- 英
- Juridical district
- 独
- Gerichts-bezirk
- 仏
- Discrit juridique
裁判官
(さんばんくわん)裁判官は、即ち國家の裁判機關にして、法令の認むる所によりて、裁判所に於て裁判事務を行ふ官吏を指示す、即ち司法裁判所にありては、判事、檢事、裁判所書記を指し、行政裁判所にありては、評定官等を指示するものとす。(憲法五八條、刑法二七條)
- 英
- Judge
- 独
- Richter
- 仏
- Juge
裁判權
(さいばんけん)裁判權は、國家統治權の一部にして、法律を適用して權利を認定し、而して威力ある實行を爲す權力、即ち法律上の權利保護を爲す國權を稱するものなり、法律を適用して權利を認定すれば、必ずしも國家にあらざれば爲し得ざるにあらずと雖も、威力を具ふる權利の認定は、國家權力の作用にあらざれば、之を爲すこと能はず、故に法律上の權利保護を爲す裁判權は、必ず國家に屬せしめざるべからざるなり、國權の上より、國家に歸屬する裁判權の働を稱して、司法權と云ふ、司法とは、法律を適用して、權利を認定し、以て法律上の權利保護を爲すものなれば、其働は特に保護を請求するものありて始めて生ず、而して其之を行ふや、法律に準據すべく、以て法律を維持するにあるが故に、彼の行政處分の如く、法律の禁ぜざる範圍内に於て、進んで國家の必要なる行爲を爲すものとは、其行動に於て自ら差異あり、これ司法が他の國家事務と異りて、國法上特別の地位を有する所以とす、而して汎く裁判權と云ふときは、獨り私權保護及刑罰權の實行に關するのみならず、其他の公法上に關するもの、即ち行政訴訟、懲戒裁判等に就きても存在すること勿論なりとす。
- 英
- Juridical right
- 独
- Gerichts-herrlichkeit
- 仏
- Droit du jugement
裁判執行
(さいばんしつかう)裁判執行とは、裁判判定に對するの用語にして、裁判宣言を國家權力によりて、實行することを云ふなり、民事に關する執行と、刑事に關する執行とあり、其他公法上の關係、即ち行政訴法に關するものもあり、然れども裁判執行なる要語は、主として民刑事、即ち普通裁判に關して用ひらるる所のものなり、所謂民事裁判の執行とは、即ち強制執行を意味するものにして、私權實行の效果を發生せしむることを目的とする、國家強制力の適用なり、各個人にして、裁判によりて權利存在を判決せられたる場合に於て、義務者が、任意に履行せざるとき、之を保護するの手段方法なくんば、權利者は空虛の權利を懷くに均しく、何等の實益なし、故に國家は此場合に、其強力を用ひて、權利者の不滿足なる狀態を排除し、各個人をして、權利を實行したると同一の效果を發生せしむることを要す、之即ち強制執行なる手續の存在する所以にして、主に裁判所及執達吏によりて行はれ、債務者を強制して、債權者に滿足を與ふるものとす、次に刑事の裁判執行は、即ち刑の執行を意味するものにして、犯人を社會より隔離し、併せて遷善せしめんが爲めに、一定の期間一定の場所に拘禁して、其自由を剝奪し、若しくは一定の財産を沒收して苦痛を與ふるものなり、主として檢事の監督の下に、監獄官吏によりて行はるるものとす。
- 英
- Execution
- 独
- Ausführung
- 仏
- Exécution
裁判事務
(さいばんじむ)裁判に關する事務の全體を廣く裁判事務と稱す、裁判所構成法によれば、區裁判所の裁判事務分配は、每年地方裁判所長が、前以て之を定め、地方裁判所の事務は、司法大臣の定めたる通則に從ひ、之を分配す、控訴院の事務分配は、司法大臣の定めたる通則に從ひて之を爲すものとす。(裁構法一一、二一條)
- 英
- Court business
- 独
- Gerichts-geschäft
- 仏
- Affaires jndiciaires
裁判上の加重
(さいばんじやうのかぢゆう)刑法上刑の加重に關しては、我現行法は、裁判上の加重を認めずして、法律上の加重を認むるのみ、裁判上の加重と云へば、裁判を以て、法律に定むる刑以上の刑を科することを意味するものにして、我刑法は、裁判官に斯る職權を認めたる法文一も存在せず、故に最高度ある刑に就きては、其高度を超ゆべからず、最高度なき刑と雖も、其上級の刑に移ることを得ず、抑も裁判官の職權は、單に法令を適用するに止まり、法令を自ら定むる事を得ず、故に例へば法律が竊盜犯に對しては、二ケ月以上四年以下の重禁錮に處すと云へるに當り、其情重しとして、四年以上の刑を言渡すことを得ず、これ明文を俟つて後然るにあらず、裁判官は、法律を適用するものたる性質より來る、當然の結果と云ふべきなり、裁判上の加重は、之を認めざるも、法律上の加重は、我刑法の認むる所なり、即ち刑法自身に於て、或る事情の加はれるを理由として、刑を動かして重罰するは之を妨げず、即ち再犯加重、特別加重の如きは、皆法律上の加重に屬す。
- 英
- Juridical aggravation
- 独
- gerichtliche Verschwerung
- 仏
- Aggrava-tion juridique
裁判上の減輕
(さいばんじやうのげんけい)裁判上の減輕とは、法律の定むる範圍内に於て、其刑を酌量して減輕することを云ふ、我現行刑法によれば、重罪、輕罪、違警罪を別たず、其情狀にして、原諒すべきものあるときは、裁判官は一等、又は二等の減輕を與ふるの職權を有するものなり、裁判上の加重に就きては、斯かる明文存せざるが故に、裁判上の加重を爲すを得ずと雖も、輕減に就きては、右の如き明文の存するものあり、これ裁判官は、輕減することを得る職權ありと云ひ得べき所以とす、而して酌量減輕すべき情狀あるや否やは、事實の認定に屬するものなるが故に、之に對して上告を爲す能はず、法律上の加重、又は減輕ある場合と雖も、猶裁判官は、其情狀によりて、酌量減輕を與ふることを得べきなり、而して主刑に對して酌量減輕ありたるときは、附加の罰金に對しても、亦當然同等の減輕ありたるものとす。(刑六六條、六七條)
- 英
- Juridical extenuation
- 独
- gerichtliche Milderung
- 仏
- Attenuation juridique
裁判上の請求
(さいばんじやうのせいきう)訴訟行爲を以て、相手方に對して或る請求を爲すことを裁判上の請求と云ふ、例へば訴を起して、債務の履行を請求するが如し、而して其本訴たると附帶の訴たると、反訴たるとを問はず、又相手方の請求に對して、裁判所に於て相殺の主張を爲すも亦同じ、又司法裁判に於けると、行政裁判に於ける訴訟請求たるとを問はざるなり、我民法の規定によれば、請求は時效の進行を中斷するの效力あるものなれども、裁判上の請求にして、訴の却下、又は取下の場合に於ては、時效中斷の效力を生ぜずと定めたるが如きは其適例なり。(民一四九條)
- 英
- Juridical demand
- 独
- gesetzlicher Anspruch
- 仏
- Demande juridique
裁判上の代位
(さいばんじやうのだいゐ)債權者が、或る場合に特別なる理由により、債務者に屬する權利を行使するにあらざれば、自己の債權を保全すること能はず、之を保全するにつき、困難を生ずる虞ある場合に於て、裁判所の許可を經て、債務者に代りて債務者に屬する權利を行ふことを稱して、裁判上の代位と云ふなり、民法の規定する所によるに、法律學者の所謂間接訴權行使の場合、即ち債權者が自己の債權を保全する爲めに、債務者に屬する權利を行使するに當り、その債權にして、既に辨濟期に達し居るものなれば、何等の手續を要せずと雖も、若し期限の達せざる場合なる時は、債權者は、裁判上の代位に依るにあらざれば、其債務者に屬する權利を行使することを得ざるものにして、此場合に裁判上代位の必要を生ずるもの也、裁判上代位に關する手續は、非訴事件手續法の定むる所にして、其要點を擧ぐれば、□一裁判上の代位は、債權者が債務者の權利を行使するにあらざれば、其債權を保全すること能はず、又は之を保全するにつき、困難を生ずる虞ある場合に、申請することを得べきこと、□二申請者は、債務者が普通裁判籍を有する地の區裁判所に提出すべきこと、□三裁判所は、口頭辯論を經ずして、申請の許否を決すること、□四許可の決定は、職權を以て之を債務者に告知すべきこと、□五告知を受けたる債務者は、其權利に關して何等の處分を爲すを得ざること、□六申請を許否したる決定に對しては、債務者又は債務者に於て、抗告を爲し得べきこと等は、其要點なり。(民四二三條、非訴手續七二、七三條)
裁判上の命令
(さいばんじやうのめいれい)或る事項に關して、裁判所が國權の威力ある宣言として、關係者に發したる命禁を裁判上の命令と云ふ、例へば差押命令、執行命令、若くは法人の解散を命ずる場合の如きを云ふ、即ち判決、決定に對するの用語にして、宣言の形式に關する一種の名稱なり。(民一三八條)
- 英
- Juridical order
- 独
- gesetzlicher Befehl
- 仏
- Ordre juridique
裁判上の離婚
(さいばんじやうのりこん)裁判上の離婚とは、裁判所の力を籍りて婚姻を解除するを云ひ、法律の特定せる原因ある場合に於て、一方より訴法を提起し、裁判所の判決を受くることを要するものとす、裁判上の離婚を許すの原因は、制限的のものにして、下に揭ぐる場合の外にはこれを許さず、□一配偶者が重婚を爲したるとき、□二妻が姦通を爲したるとき、□三夫が姦淫罪により刑に處せられたるとき、□四配偶者が破廉恥罪を犯し、輕罪以上の刑に處せられ、又は其他の罪により、重禁錮三年以上の刑に處せられるとき、茲に破廉恥罪と云ふは、僞造、賄賂、猥褻、竊盜、強盜、詐欺取財等の犯罪を總稱するものとす、□五配偶者より、同居に堪へざる虐待、又は重大なる侮辱を受けたるとき□六配偶者より惡意を以て遺棄せられたるとき、□七配偶者の直系尊屬より、虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、□八配偶者が、自己の直系尊屬に對して、虐待を爲し又は重大なる侮辱を加へたるとき、□九配偶者の生死が、三年以上分明ならざるとき、□十婿養子緣組の場合に於て離緣せられたるとき、又は養子が家女と婚姻を爲したる場合に於て、離緣、もしくは緣組の取消ありたるとき等の場合に限るものとす、離婚の訴は、配偶者の一方が、前記原因の一に該る場合に於て、夫が普通裁判籍を有する地の地方裁判所に提起すべきものにして、此訴權は、配偶者の一方に專屬し、他人は代つて此訴權を行ふことを得ず、離婚の訴は、正當なる婚姻の成立したるものの間に於て爲すことを得るものにして、無效の婚姻又は取消されたる婚姻につきて、又は配偶者一方が死亡したる後に於ては、此訴を提起するとを得ず、又此訴を提起するには、下の原因の存せざることを必要とす、即ちイ同意、前示第一より第四迄の原因ある場合に於て、夫婦の一方が他の一方の行爲に同意したるときは、離婚の訴を提起するを得ず、ロ宥恕、前示第一乃至第七の原因ある場合に於て、夫婦の一方が、他の一方又は直系尊族の行爲を宥恕したるとき、ハ相殺、前示第四の原因による場合は、其訴を提起せんとする者に於て、自己も同一の原因の存せざることを必要とす、ニ期間の經過、前示第一乃至第八の事由に依る離婚の訴は、之を提起する權利を有するものが、其原因たる事實を知りたる時より、一年を經過したる後、又は其事實を知らざるも、十年を經過したる後は、訴を起すを得ず、又第十の原因に依る訴は、當事者が離緣、又は緣組の取消ありたることを知りたる後、三箇月を經過したる時は、之を提起するを得ず、ホ配偶者の生死分明なりし時、前示第九の事由による場合は、配偶者の生死が分明となりたる後は、之を提起するを得ず、ヘ權利の抛棄、前示第十の事由による離婚の訴は、當事者が離婚請求の權利を抛棄したる時は、之を提起するを得ず、總べて以上の事由の存するときは、如何なる場合に於ても、離婚の訴を起すことを得ざるものとす。(民八一三條乃至八一九條)
- 英
- Juridical divorce
- 独
- gesetzliche Ehescheidung
- 仏
- Divorce juridique
裁判所
(さいばんしよ)裁判所とは、裁判權を實施する國家機關を云ふ、裁判權なるものは、法律を適用して、權利を認定し、而して威力ある實行を爲す權力、即ち法律上の權利保護を爲す國權にして、憲法上、裁判所の權限に屬せらるる所のものなり、裁判所の構成は、法律を以て定められ、裁判官の資格も、亦法律を以て定めらる、裁判所を組織する職員は判事、檢事、裁判所書記、執達吏なり、裁判所の編制には、單獨制と、合議制とあり、區裁判所は單獨制にして、地方裁判所以上は合議制なり、裁判所には、普通裁判所と特別裁判所との二種あり、特別裁判所に屬すべきものは、軍法會議、及び領事裁判なり、普通裁判所は之を別ちて四種とす、□一區裁判所、□二地方裁判所、□三控訴院、□四大審院これ也、此種類を認めたるは、事件の種類、又は其輕重により、近接の裁判所に於て、簡易の手續によりて裁判するを要するものと、鄭重の手續によりて之を爲すを要するものとあり、これ第一審として、區裁判所と地方裁判所とを設けたる所以にして、而して完全なる司法制度に於て、覆審の制を設けて、裁判所の判決に對し不服なるものは、上訴を爲すの權利を與へ、上訴裁判所の裁判に就きても、法律上の問題は、尚高等裁判所に不服を申立つる事を許し、以て法律の解釋を歸一せしむるの法を採れり、これ上訴裁判所として控訴院を設け、高等裁判所として大審院を設けたる所以なり、事件の性質、及び審級につき、何れの裁判所に於て裁判すべきかは裁判管轄の問題なり。(憲法五七、判構法六、一九、三四、四三條等參照)
- 英
- Court
- 独
- Gericht
- 仏
- Tribunal
裁判所構成法
(さいばんしよこうせいはふ)裁判所構成法は、司法裁判所の編成組織、裁判所職員に關する事項、裁判事務の取扱、司法行政に關する職務、權限を定めたる法律にして、裁判所構成法施行條例とは、前示法律を施行するが爲めに、細密なる規定を爲したる法律也。(二三年法六號、同法二二號)
- 英
- Judiciary law
- 独
- Gerichtsverfassungsgesetz
- 仏
- Loi judic-iaire
裁判所構成法施行條例
- 英
- Regulations for the application to the judiciary law
- 独
- Ausführungsregel des Gerichtsverfassungs-gesetzes
- 仏
- Règles pour l'application de la loi judiciaire
裁判所職員
(さいばんしよしよくゐん)法律の定むる所により、司法裁判所を組織する職員を稱して裁判所職員と云ふ、裁判所職員は、判事、檢事、裁判所書記、執達吏の四種にして、(第一)判事は、他の補助機關に委ねざる一般の裁判權を實施するものにして、裁判權の働き中に在りて、最も要主なる判定權の如きは、一に此職員の實行する所なり、(第二)檢事は、民事訴訟にありては、裁判所の構成に必要なる職員にはあらざれども、公益上或種の訴訟につきて、辯論に立會ひ、公益の代表者として意見を述べ、刑事裁判にありては、公訴權を實行する職員也、(第三)裁判所書記は、一切書類の調製、其他法律に定めたる事務を行ふものにして、裁判權の行動中に於て、書類公證權の一部を實行するものとす、(第四)執達吏は、書類送達の實施、及び執行の一部を實行するものとす、以上のものは、即ち裁判所職員にして、其採用等に關しては、總べて法律の定むる所によらざるべからず。(裁構法)
- 英
- Officers of the court
- 独
- Ge-richtsbeamten
- 仏
- Officiers du tribunal
裁判所書記
裁判所書記とは、裁判所に於て、一切書類の調製其他法律に定めたる事務を行ふものにして、裁判權の行動中に於て、書類公證權の一部を實行する裁判所の職員を云ふ。(裁構法九一條)
- 英
- Clerk of the court
- 独
- Gerichtsschreiber
- 仏
- Employé du tri-bunal
裁判所の管轄
(さいばんしよのくわんかつ)裁判所の管轄とは、一定の標準に從ひ、訴訟事件を分擔し、之を裁判すべき裁判所の權限を云ふ、裁判所構成法は、裁判所を別ちて四種とせり、其之を別ちし所以は、事件の性質、輕重に依るの必要と、覆審の制度とを設けたる結果にして、此各種の裁判所の間には、或は事件の性質及輕重、審級につきて權限を定むるものあり、或は地域によりて、幾多の同種類の裁判所の間に、其權限を定むるものあり、之を以て、裁判所の管轄は、法律上大體に二種の區別を生ず、□一は事物の管轄にして、各種の裁判所の等級に從ひて、之が管轄を定むるものとす、即ち事件の性質は、輕重に依る管轄、審級に依る管轄は、之に屬し、□二は土地の管轄にして、同種類の裁判所に就き、地域によりて、地理的にその管轄を分つものなり、以上二個の管轄中、我法律は、前者を裁判所構成法に規定し、後者は訴訟法中に規定せり、今一々其管轄に關する事件を具體的に列擧するは、餘りに煩雜に失するを以て、之を省略すべしと雖も、裁判所構成法及民事訴訟法に於て之を觀取せらるべし。(裁判籍の部參照)
- 英
- Juridical control
- 独
- Gerichtsbarkeit
- 仏
- Juridiction
裁判籍
(さいばんせき)裁判所の土地の管轄を稱して裁判籍と云ふ、土地の管轄は、其訴を受くる者の位地より云へば、人又は物件の存する地の裁判所の管轄權に、從屬するの義務あることを意味するものにして、此意味に於て土地の管轄を稱して、裁判籍と云ふに外ならず、而して裁判籍に關するものは、之を訴訟法中に規定す、裁判籍に、普通裁判籍と特別裁判籍との二種を認む、今之を槪説すれば、□一普通裁判籍は、人の住所によりて定むるを原則とし、住所定まらざるときは、現在地により、現在地の知れざるときは、最後の住所を以て裁判籍とす、□二特別裁判籍とは、或種類の訴訟事件に限り、特に提起し得べき爲めに設けたる裁判所の管轄區域を云ふ、故に特別裁判籍の存ずる場合にも、原告は必ずしも、其裁判所にのみ訴を提起せざるべからずと云ふにあらず、他の管轄裁判所にも提起することを得べし。(民訴一一條乃至二五條)
裁判籍上の住所
裁判籍上の住所とは、或る人の裁判籍の所在地を云ふ、住所の意義は、民法の所謂其人の生活の本據を云ふものなれども、我民事訴訟法に於ては、此本然の住所によらずして、軍人軍屬は、其兵營地、又は軍艦定繫所を以て住所と見做し、外國にある我國の公使、及び公使館の官吏、幷に家族從者に就きては、我國に於ける本人の最後の住所地を以て住所と見做したり、之等の場合を指して裁判籍上の住所と云ふなり。(民訴一一條、一二條)
- 英
- Legal residence
- 独
- Gerichtsstandswohnung
- 仏
- Résidence légale
裁判宣告書
(さいばんせんこくしよ)裁判宣告書とは、裁判所が事件の審理判決をなし、其裁判の判定を表示したる文書を云ふ、例へば判決書、決定書、命令書の如きこれなり、然れども普通裁判に關しては、裁判宣告書と云はずして、單に判決書等と稱するを例とし、裁判宣告書と云ふ語を用ひるは、行政裁判に關して用ふるを例とせり。(行政裁判法四二條)
- 英
- Written sentence
- 独
- Recths-spruchsschrift
- 仏
- Sentence écrit
裁判長
(さいばんちやう)裁判長とは、合議裁判所に於ける機關の一として、裁判長の位地は、外部即ち當事者、及び第三者に對し、合議體を代表して裁判の言渡其他の作用を爲し、又合議體の内部に於ては、其作用を分配整理するにあり、故に裁判長は、合議體裁判の機關して、合議體より獨立したるものにあらず、即ち裁判長も、亦合議體の一員なりとす、裁判長の權限の主たるものは、訴訟原被告を訊問し、其他の證據調を爲すの權限、即ち公判審理の職權、及び訴訟指揮の權なりとす。(裁構法三二條)
- 英
- Chief judge
- 独
- Vorsitzende
- 仏
- Chef de juge
裁判手續
(さいばんてつづき)裁判所に於ける裁判行爲の開始より、終局に至る迄の一切の手續を總稱して、裁判手續と云ふ、民事訴訟にありては、訴狀の呈出ありたるときより、終局の確定判決あるに至る迄の裁判所の行爲の一切を云ひ、刑事裁判にありては、公訴の提起ありたるときより、判決の確定するに至る迄の一切の手續を指稱するものとす。(判事懲戒法一八條)
- 英
- Judical proceeding
- 独
- Gerichtsverfahren
- 仏
- Progrès de la procédure
裁判費用
(さいばんひよう)裁判費用とは、訴訟費用と多少其意義を異にし、裁判費用は、訴訟費用中の一種にして、裁判所の行爲に對して、國庫に納むべき訴訟用印紙、國庫立替金等を指稱するものなり。(民訴九七條、刑訴四五條、民事訴訟印紙法參照)
- 英
- Juridical expense
- 独
- Gerichts-kosten
- 仏
- Dépens juridique
裁判例
(さいばんれい)既住に起れる裁判の前例を稱して裁判例と云ふ、判決例と其意義相同じ。
- 英
- Example of judgment
- 独
- Urtheilsexempel
- 仏
- Exemple du juge-ment
歳費
(さいひ)汎く歳費と云へば、一箇年間に要する費用の意味なれども、法令上特に歳費の名稱を用ひたるは、主として議院法に關するものにして、貴族院、及び衆議院の議長は五千圓、副議長は四千圓、貴族院の被選及勅任議員は二千圓、衆議院議員は歳費として、各二千圓を受くるものとす、然れども官吏にして議員たる者、及び召集に應ぜざる議員は、歳費を受くることを得ず、議員に與ふる歳費は報酬にあらず、賃銀にあらず、官吏の俸給と同樣に、其公職に居る分限に對する、國家より支給する所の金錢也、議員に歳費を支給するは、性質上不適當也、蓋し議員は、官吏と異り一種の名譽職にして、議員の職を以て其生計の職業と爲すものにあらざるが故に、官吏の俸給と其性質を均ふする歳費を支給するは、議員の地位に適當する制度と云ふ事を得ず、獨逸諸國の衆議院議員は、多くは日當及旅費を受く、普國貴族院議員は日當旅費を受けず、獨逸帝國國會議員は日當を受けず、但し召集、及び開會の場合に、鐵道を無賃にて利用することを得とせり、議員の地位より論ずれば、日當、及び旅費を支給するを適當なりとす。
祭服
(さいふく)神官が職務執行の爲めに用ふる服裝を稱して祭服と云ふ、祭服は、國税〓收、又は民事差押の場合に於ては、差押禁制品として、其差押を免るるものなり。(國税〓收法一六條、民訴五七〇條)
- 英
- Holy garment
- 独
- heiliges Gewand
- 仏
- Vêtement saint
再服役
(さいふくえき)軍人にして一旦其服役終りたるものが、更に服役することを再服役と云ふ、例へば志願兵及現役兵が、志願して再服役を爲す場合の如し。(海軍下士卒手當金規則四條)
- 英
- Re-service
- 独
- Wiederdienst
- 仏
- Réservice
財物
(ざいぶつ)汎く財物と云へば、金錢其他の有價物、即ち經濟上の交換價値ある物件を總稱す、物件たることを要するが故に、有體物ならざるべからず、詳言すれば財物とは、物件の目的たることを得べき、總べて有體物を指すものにして、而して其動産たると不動産たるとは問ふ所にあらず、然れども有體物たることを要するが故に、債權、使用質權の如き、無體物を包含せざるものとす。(刑二六一、二六二條)
- 英
- Goods
- 独
- Waren
- 仏
- Biens
財物沒收
(ざいぶつぼつしう)財物沒收とは、國家が特定の場合に於て、私人の所有に係る物件を沒收することを意味す、沒收の性質に關しては、學者間議論の存する所なれども、沒收處分が、刑事法上の犯人の所有物件に對して行はるる場合は、刑罰の性質を有し、之に反して沒收處分が、何人の所有に屬するを問はず、行はれ得べき場合は、警察的豫防處分の性質を有すと解するを正當とす、刑法の規定する所によれば、沒收の目的物となすものは、法律に依りて禁制したる物件、犯罪の用に供したる物件、犯罪に依りて得たる物件の三種とし、沒收處分を行ふに要する條件としては、犯罪の用に供したる物件は、有意犯の場合に限り、他に制限的規定なし、法律上禁制品は、何人の所有を問はず、之を沒收すと雖も、犯罪の用に供したる物件、及犯罪に依りて得たる物件は、犯人の所者に屬するか、又は所有主なき時の外、之を沒收することを得ず、此他沒收に關するものは、間接國税違反の場合に、逋税物等を沒收する場合これなり。(刑法一九條)
- 英
- Confiscation of property
- 独
- Vermögenskonfiskation
- 仏
- Confiscation de la propriété
罪別
(ざいべつ)犯罪の類目種別を云ふ、舊刑法は、犯罪を別ちて、重罪、輕罪、違警罪の三種とせり、改正刑法に於ては、總べてこの種目を廢し、科すべき主刑の如何に依りて、其罪質を定めんとせり。(刑九條乃至二一條、舊刑一條參照)
- 英
- Class of punishment
- 独
- Ver-brechensklasse
- 仏
- Classe de la punition
彩票
(さいへう)富籖の部を見よ。
再保險
(さいほけん)或る保險の目的に關して、塡補の責に任じたる保險業者が、其責任即ち自己の蒙むることあるべき損害を、再び他の保險者に分配せしめんが爲めに、保險契約を爲すを再保險と稱す、故に再保險の目的は、其實は本來の被保險利益にあらずして(被保險利益と云ふは、損害保險の場合に、例せば其保險の目的物即ち家屋船舶に於ける利益等の如し)之を保險する爲めに失ふことあるべき自己の利益にして、此點は重複保險、及び共同保險と異る、實例を擧ぐれば、或保險業者が、或人に對しその所有の家屋を目的物として、金千圓の保險を契約したる場合に、損害の發生したる場合には、其金額を仕拂はざるべからず、故に此危險に對して、更に他の保險業者に對し、此金錢仕拂の損害を保險せしむるが如きは、即ち再保險なり、普通の保險に於ては、其目的が物件と人との關係、或は人と人との關係なる二個の場合あるにも拘はらず、再保險に於ける被保險利益は、常に債權關係なりとす、再保險の目的たる利益の内容は、必ずしもその保險と同一なるを要せず、例へば原保險の價額は千圓なるも、其中五百圓を再保險に附するが如き、保險金額の差異あることあり、又保險の一部を再保險に附することあり、例へば火災保險に於て、原保險は總べての種類の火災に對する損害塡補を約するも、再保險に於ては、單に類燒の危險を約し、又は單に自家の失火の危險を約するが如し、又生命保險に於て、原保險は養老保險なるも、再保險は、定期保險なる妨げざるが如し、再保險は、總べて原保險を基礎とするが故に、原保險にして無效なる場合は、再保險も亦無效となるなり、然れどもこれ原保險の效果が、再保險に影響するにあらず、原保險が無效となれば、再保險に於ける被保險利益が消滅して、其基礎を失ふが故に、再保險が無效となるのみ、再保險は、保險の進步したる外國に於ては、殆ど如何なる種類の保險にも應用せられ、最も盛なるは海上火災の保險の場合に、再保險會社ありて、單に再保險のみを引受くる者あり、再保險の保險料は、原保險と契約の内容を同一にする場合は、通常原保險に於ける保險料と同一なりとす、何となれば、再保險は、自己の得意を他に分與すと云ふ主旨よりは、自己の危險を他に分擔せしむるの趣旨に出でたる者にして、隨つて原保險料より、寧る高き保險料を拂ふ場合あるなり、然れども再保險は、通常保險者間の協力と德義とを基として行はるるものなるが故に、或場合には、原保險料より廉なる場合ありとす。
- 英
- Reinsurance
- 独
- Rückversicher-ung
- 仏
- Assurance de nouveau
債務
(さいむ)特定の人に對して、或る行爲を爲し、又は或る行爲を爲さざる義務を債務と稱し、此義務を負ふ人を債務者と云ふ、債務は債權の反面にして、債權債務は、其關係の觀察點を異にするより生ずる名稱の差異なり、義務者の方面より見る場合を債務と云ひ、權利者の方面より見て債權と稱するのみ、一例を擧ぐれば、甲者が乙者に對して金員を支拂ふ場合の如きは、即ち甲者は乙に對して、金錢支拂の行爲を爲すべき義務を負ふものにして、所謂民法上債務と稱するものなり、之を乙者の位地より觀察して、甲をして金錢支拂を爲さしむるの權利を稱して、債權と云ふのみ、斯くの如く債務と債權とは、其内容とする所全く同一行爲の反面に關するものにして、債權あれば必ず債務あり、債務あれば必ず債權あり、双方相對して債權關係を成立せしむる要素なり、詳細は債權、債務關係の項目を參照せられたし。(民七八條等)
- 英
- Obligation
- 独
- Obligation
- 仏
- Obligation
債務者
- 英
- Debtor
- 独
- Schuldner
- 仏
- Débiteur
財務行政
(ざいむぎやうせい)國家又は地方自治團體が、其收入、及び支出を經理し、其資産管理に關する諸般の行政事務を稱して、財務行政と云ふ、單に財政と云ふと其意義を同じうす。財務、國家又は自治團體の財政に關する事務を稱して、汎く財務と謂ふなり、故に財政事務と云ふと異らず。(大藏省官制一條、郡制五章、府縣制五章參照)
- 英
- Financial administration
- 独
- Finanzverwaltung
- 仏
- Administration financière
財務
- 英
- Financial business
- 独
- Finanz-geschäft
- 仏
- Affaires financières
債務額
(さいむがく)債務額とは、金錢債務に關する其金額面を指示するものにして、例へば甲が乙に金千圓の提給を爲すべき債務ある場合に、其千圓を指して債務額と云ふ也、債務者よりこれを見れば債權額なり、故に債權額と云ひ、債務額と云ふも、全く同一事項に關して、其觀察點を異にするより生ずる各稱の差異のみ、兩者全く其内容を同じくす。(民訴七〇七條)
- 英
- Amount of debt
- 独
- Schulden-betrag
- 仏
- Somme de la dette
債務關係
(さいむくわんけい)債權關係を義務本位の方面より觀察して、之を債務關係と云ふ、其名稱を異にすと雖も、其包容する所全く同一にして、其觀察の立脚點を異にするより生ずる名稱の差異のみ、詳細は債權關係の項目につきて知るべし。
債務名義
(さいむめいぎ)債務名義とは、強制執行を爲すに適したる、債務者の債務を確定したる公正證書を云ふ、其實質とする所は、強制執行の基本となるべき私權上の一定したる權利關係なり、私權に關する判決は、通常裁判所の民事の判決のみならず、公訴に附帶請求したる私訴の判決、其他軍法會議の私訴の判決の如きも、債務名義となる事を得、然れども其内容たる債權者の權利が、強制執行を爲すに適したるものならざるべからず、強制執行を爲すに適すとは、債務者の債務が、行爲もしくは不行爲に關するものならざるべからず、彼の債務者の履行を受けずして、其效力を全うする判決、例へば證書の眞否を確定せしむる判決の如きは、債務名義たるべからざるものとす、債務名義の存在することは、強制執行を爲すに必要なる條件にして、此債務名義の存在は、即ち強制執行に關する實體的必要條件なり、債務名義を別ちて二種となすことを得、一は裁判所の裁判にして、二は當事者の行爲によれる債務名義なりとす、即ち一に屬する裁判所の裁判には、判決と決定とあり、通常訴訟手續、爲替訴訟、證書訴訟、人事訴訟に於て爲す判決、及び假差押、もしくは假處分手續に於て爲す裁判所の裁判、幷に外國裁判所の判決、及び假差押、若くは仲裁判斷の執行を命ずる判決之なり、督促手續に於て爲す執行命令、假差押命令、假處分手續に於て爲す決定、抗告を以てのみ不服を申立つることを得る裁判、即ち決定にして債務名義たる事を得るものとす、二に屬するもの、即ち當事者の行爲によりて債務名義たるものは、公證人が其權限内に於て、金錢代替物、若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請求に就きて作りたる證書、受訴裁判所に於て訴の提起後に爲したる和解調書、及び區裁判所に於て爲したる和解調書等即ち是なり、而して彼の破産手續に於ける確定したる債權も、亦債務名義たる事を得べし、而して以上の債務名義に基きて、強制執行を爲す場合には、所謂強制執行法上の形式的條件として、執行文なるものを必要とす、執行文とは、即ち執行許可の命令にして、換言すれば、債務に對して、債務名義につきて強制執行の手續を實施する事を許可したる命令なり、抑も強制執行は、執行機關に依りて執行手續を實施するものなれば、執行機關たる執行裁判所又は執達吏は、前説明したる債務名義のみに依りては、果して其債務名義によりて、執行すべきや否やを知ることを得ず、何となれば、強制執行を爲すの權限を受訴裁判所より分離して、我法律は別種の機關に屬せしむるものなれば、強制執行の必要條件として、之等執行を掌るものに對し、其債務名義が執行し得るものなることを、明かにする手續を必要とするの理なり、茲を以て債務名義に對して執行文を附し、之を以て執行を爲すべきものとするなり、執行文の附與は、裁判所書記の司る所にして、當事者の申請によりて、之を附與せらるるものとす、債務名義に此執行文を附せられたるものを稱して、執行正本と云ふ、債權者が此手續を了したる後は、其執行正本に依りて、執行裁判所若くは執達吏に對して執行の申出でを爲し、執行機關は、其執行正本に基きて、強制執行を實行し、茲に初めて債權者に滿足を與ふるものとす、右の如く總べての債權名義には、執行文の附與を必要とするを原則とすれども、其例外として執行命令、及び假差押、假處分の命令を、それ自身に於て、執行文を包有するものなるが故に、更に執行文附與を要せずして、直に執行し得べきものとす、之原則に對する例外なり、裁判所が執行文を附與したるときは、強制執行前、又は同時に債務者に對して、債務名義を送達するを原則とす、これ債務者に對し、任意の履行を促がす主意に出でたるものに外ならず。(民訴五一六條)
- 英
- Title of debt
- 独
- Schulden-titel
- 仏
- Titre de dette
債務履行地
(さいむりかうち)債務辨濟の場合を稱して、債務履行地と云ふ、債務の履行は、何れの場所に於てすべきやの點に就きては、原則として當事者間の意思によるものとす、債務者の住所に於てするも、他の場所に於てするも、我民法は、當事者の約したる所によるを原則とす、然れども當事者が、債務履行地につき、何等の定めを爲さざりし場合の補充規定として、二三の規定を存したり、即ち特定物の引渡に就きては、債權發生の當時其の物の存在せし場所に於て引渡を爲し、其の他の辨濟につきては、債權者の現住所を以て債務の履行地と定めたり、故に債務者が當事者の意思、又は法律に定めたる場所以外に於て、辨濟を爲さんとするときは、債務者に於て其の受領を拒むことを得、然れども辨濟の場所は、債權の要素にあらず、故に債權者が他の場所に於て受領する時は、有效の辨濟となるは勿論なりとす、前示後段の場合、即ち特定物以外の辨濟につきては、債權者の現在の住所を以て、辨濟の場所と定むるにより、契約締結後に於て、債權者が幾回其の住所を移轉するも、債權者の自由にして、其の辨濟當時の住所を以て辨濟の場所となすなり、されども以上説明に對する例外あり、即ち民法第六六四條に關する寄託物返還の場合なりとす、此場合に關する辨濟の場所は、契約の當時物の現存せし場所にあらず、又債權者の住所にもあらず、即ち物件の保管せられたる場所なりとす、舊民法時代に於ては、賣買、又は使用貸借の場合等にも、債務者の住所以外に於て、辨濟をなすべきものと定めたることあれども、現行民法は、かかる場所を認めず。(民四八四、六六四條)
- 英
- Performing place of obliga-tion
- 独
- Erfüllungsort der Obligation
- 仏
- Lieu d'accomplir l'obligation
採用規則
(さいようきそく)人又は物の採用に關する規則の意にして、主として人の採用、例へば官吏の登用に關するが如き場合に用ふ、之等の規則を稱して、汎く採用規則と云ふなり。(陸軍監獄官特別任用令五條)採用試驗とは、主として人物を採用する場合に、該人物が採用するに足るの價値あるや否やを驗するを云ふ、例へばある人を學生又は生徒として採用するに足るや否を試むるが如し。(陸軍經理學校條例一九條等)
- 英
- Regulation of adoption
- 独
- Aufnahmsregel
- 仏
- Règlement de l'adop-tion
採用試驗
在留
(ざいりう)一時一定の土地に止まり住するを在留と云ひ、主として外國に滯留する場合に用ふる語なり、例へば我國民が英國に在留すと云ひ、英國人が我國に在留すと云ふ場合の如し。
- 英
- Staying abroad
- 独
- Verweilen im Auslande
- 仏
- Séjour à l'étranger
在留禁止
在留禁止とは、或る土地に住居することを禁止せらるることを稱するものにして、主として外國に在留するを禁止せらるる場合に用ふるものとす。
- 英
- Prohibition from staying abroad
- 独
- Verbot des Auslandesverweilens
- 仏
- Interdiction du séjour à l'étranger
在留臣民
在留臣民とは、或る土地に外國臣民の滯在することを稱するものにして、我國民にして英國に在留する場合を稱して、英國在留の日本臣民と云ふが如し。(清國及朝鮮國在留帝國臣民取締法等參照)
- 英
- Imperial subject abroad
- 独
- Volk im Auslande
- 仏
- Sujets impérials à l'étranger
材料主管官
(ざいりうしゆくわんくわん)材料主管官とは、陸軍に關する陸地測量部の職員の一にして、陸地測量部部長の命を受けて、器具材料、及び圖籍の整理に任ずるものを云ふ、材料主管官には、各兵科の大尉を以て之に充つ。(陸地測量部條例三條)
草案
(さうあん)草案とは、或る文書の案文をいふ、故に文書其物にあらず、文書の腹案といふに同じ、例へば民法草案理由書等といふ場合の如し。(案の説明參照)
- 英
- Draft
- 独
- Skizze
- 仏
- Tirage
臟額
(ざうかく)犯罪に依つて得たる物件の價額を指して、臟額と云ふ、即ち臟物の價格と云ふに同じ、故に其臟物は、必ずしも金錢に限らず、他の物件たるも、其交換價額を稱して贓額といふに差支なし。(二三年一〇月法九九號屋外竊盜に關する件一條乃至三條)
- 英
- Value of things stolen
- 独
- Summe der gestohlenen Dinge
- 仏
- Valeur des biens volés
相姦者
(さうかんしや)姦通行爲を爲したる相手方を相姦者と云ふ、刑法の定むる所によれば、有夫の婦にして、姦通したるものは、六月以上二年以下の重禁錮に處し、其相姦するもの又同じと規定せり、即ち姦通行爲の主體たるものは、有夫の婦たるべきものなるが故に、相姦者と云へば、主として其婦に對する男子を指すものとす、然れども例へば精神病者たる男子を縱容して、姦通行爲に協與せしめたるが如き場合は、其者は姦通の間接正犯たるべきものなりと雖も、これを相姦者と云ふことを得ず、相姦者たるには、必ず有夫の婦に對し、交接したる者なることを要するなり。(刑一八三條)
- 英
- Party to the adultery
- 独
- Ehebrücher
- 仏
- Partie de l'adultère
爭議
(さうぎ)或る官廳と官廳との間に於て、その主管事務に關して、双方に於て自己の管轄なりとし、若くは双方に於て自己の管轄にあらずと主張して、相衝突する場合を汎く爭議と稱す、即ち權限爭議の意なり、主とし此用語を用ふるは、行政裁判所と、司法裁判所との間に於て、其權限の範圍に爭ある場合にして、單に權限爭議と云へば、如上の場合を指稱するものとす、故に權限爭議とは、行政裁判所と、司法裁判所との權限の範圍に爭ある場合に於て、之を審査決定するの手續なりと解すべし、總べて官廳は、一定の權限を有し、互に相浸すことを得ず、然れども行政廳相互間に於ては、若し其權限範圍につき、爭ある場合に於ても、之に共通なる上級官廳に於て、これを決定するの權を有し、別に權限爭議の手續を要せず、これに反して司法裁判所と、行政裁判所との間に於ては、之に共通なる上級官廳なく、從つて權限爭議の必要を生ずるものとす。(行政裁判法參照)
- 英
- Dispute
- 独
- Streit
- 仏
- Dispute
相關的
(さうくわんてき)一の事物が他の事物と相關係する狀態をいひ現すの言葉として、相關的なる語を用ふ、双對的、關係的、比較的と云ふと略ぼ其意義を同うす、元來此現象界に於ける吾人の智識は、常に比較對照の結果、確定せられたるものに過ぎずして、一も絶對なるものあることなし、されど假りに吾人は、吾人の智識に於て、空前は勿論、以後に於ても猶反説あり得べからずと信ぜらるべき或るものを絶對的と稱し、之に對して、單に比較對照の關係に於ける或るものを、相關的と稱するを普通とす、實はこの説明夫れ自身も、全く相關的のものなりとす、其意以て知るべし。(相對の部參照)
- 英
- Relative
- 独
- beziehungsweise
- 仏
- Relatif
創業總會
(さうげふそうくわい)汎く創業總會、もしくは總立創會と稱するときは、或は事業の創業に關して招集する關係者の總會を云ふ、然ども創立總會は、主として商法上商事會社の創立の場合に關するものにして、從つてこの會社の創立につきては、少しく説明するの要あるを見る、株式會社創立の場合に於て、其募集せる株式に對して、引受人確定したるときは、發起人は遲滯なく、各株につき、第一回の拂込として、株金の四分の一以上を拂込ましめざるべからず、此拂込結了したるときは、發起人は遲滯なく、創立總會を招集することを要す、其招集の手續は、總べて株主總會に關する規定によるものとす、創立總會には、株式引受人の半數以上にして、資本の半額以上を引受けたる者出席し、其議決權の過半數を以て一切の決議を爲すものとす、創立總會に於て爲すべき事項は、□一發起人は、會社の創立に關する事項を創立總會に報告すること、□二取締役及監査役を選任すること、□三選任せられたる取締役及監査役は、株式總數の引受けありたるや否や、各株につき、第一回の拂込みありたるや否や等を調査し、之を創立總會に報告すること、□四創立總會は、監査役の報告を聽きたる後、發起人が受くべき特別の利益、及び之を受くべきものの氏名、金錢以外の財産を以て、出資の目的と爲す者の氏名、其財産の種類價格、及び之に對して與ふる株式の總數、會社の負擔に歸すべき設立費用、及び發起人が受くべき報酬の額に關する事項につき、不當と認むべきものあるときは、其決議を以て、之を變更する事を得、□五創立總會は、以上の事項を決議するのみならず、必要に應じて定款を變更し、又は設立廢止の決議をも爲すことを得、上述の如く創立總會は、各般の事項を決議するものなるが、もし會社設立廢止の決議を爲したるときは、會社は全然不成立に終るべく、會社設立事務も茲に終了すべし、然れども斯くの如き決議を爲さず、法律に定めたる他の事項を決議する時は、此創立總會の終決により、會社は株主間に成立するに至るべきなり、而して此創立總會終結の日より二週間内に、其本店、及び支店の所在地に於て、設立の登記を爲さざるべからず。(商一三一條乃至一四二條)
創立總會
倉庫營業
(さうこえいげふ)倉庫營業、もしくは倉庫業とは、倉庫を設備し、他人の爲めに、物品を倉庫に保管するの委託に應ずる業にして、其業を營むものを倉庫營業者と稱し、商法上商人の一なり、倉庫營業者たるには、一定の倉庫を設備し、之に向つて物品の寄託を受くるものたらざるべからず、倉庫とは、保管の爲めに設備せられたる場所の謂にして、必ずしも通俗の意義に於ける、倉庫なる建築物のみと限定するに及ばず、保管の寄託を受くるものにして、單に保管を行ふものたることを要し、保管以外に於て、一定の處分を目的とするものの如きは、商法上の倉庫營業にあらざるなり、倉庫營業の制度に就きては、各國立法例に於て二種の主義あり、□一特設營業の主義、之が營業を行ふものは、主務大臣の特許を必要とするものなり、□二自由營業主義、何等の特許を必要とせず、我法律は、この第二の主義に則り、何等の拘束を爲さざるものとす、今倉庫營業者が、物品の寄託を引受けたる場合の、その義務、及び權利を槪括して説明せんに、(甲)倉庫營業者の義務、この義務の主たるものは、委託事務を執行するの義務なり、その報酬を受けたると否とに關せず、善良なる管理者の注意を以て、委託事務を執行せざるべからず、その注意を怠りたるの結果、委託者に對して損害を生ぜしめたる場合には、之が賠償の責任あり、而して此賠償義務たるや、自己又は使用人の怠懈に及ぶべきこと、受寄物の保管に關する怠懈より生じたること、倉庫營業者に於て注意を怠らざりしことを證明し得ざるときは、常に之を免るることを得ず、其負擔すべき損害は、受寄せられたる物品の滅失、毀損によりて生じたる範圍に限らるるは勿論とす、つぎに倉庫營業者は、證券を交附するの義務あり、倉庫營業者の交附すべき證券は、之を倉庫證券と稱し、二種あり、其一を預證券、其二を質入證券と稱す、共に倉庫寄託契約の主旨を明かにすると同時に、流通の用に供せらるべき效用を有す、其一は之を以て寄託物讓渡の用に供し、二は質入の用に供す、之等證券の發行は、素より寄託契約成立の要件にあらずして、寄託者の請求ありたる場合に於て、之を交附する事を要するのみなり、倉庫證券には、法律上一定の形式を有し、下の事項を記載して番號を記入し、これに署名する事を要す、即ち□一受寄物の種類、品質、數量、及び其荷作の種類、個數、並に記號、□二寄託者の氏名、又は商號、□三保管の場所、□四保管料、□五保管の期間を定めたるときは其期間、□六受寄物を保險に附したるときは保險金額、保險期限、及び保險者の氏名又は商號、□七證券の作成地、及び其作成の年月日、の七事項之なり、この證券を寄託者に交附したるときは、其帳簿に前示、□一、□二、□四、□五、□六に揭げたる事項、證券の番號、及び其作成の年月日を記入し置くことを要す、次に倉庫營業者は、寄託者の請求により、寄託物の點檢、見本の摘出、保存處分を爲すことを申出でたるときは、必ず之に應ぜざるべからず、之等の處分は、寄託者に於て、寄託物を轉換し、其保全を計るにつきて、必要なる手段にして、從つて法律は特に寄託者に向ひて斯かる權利を認めたり、されど此權利は、倉庫營業者の營業時間内に限り、之を行ふを得べく、其範圍内に於ては、何時にても行使することを得べきものとす、蓋し此範圍は、倉庫營業者をして、其手數を煩雜に苦しめざるべき主旨に出づるなり、更に倉庫營業者は、寄託者の請求により、何時にても其寄託物を返還すべき義務を負擔す、證券を交附したる場合に於ては、返還は必ず之を引換に行ふべく、交附せざる場合には、唯契約の主旨によりて、之を返還するものとす、以上倉庫營業者の負擔すべき特殊の責任は、下の原因によりて消滅することあり、倉庫營業者に於て、惡意なき場合、□一寄託者が留保を爲さずして、寄託物を受取り、且つ保管料其他の費用を支拂ひたるときは消滅す、□二其場合に於て、受寄物に直に發見し得ざる毀損、又は一部の紛失ありたるときは、寄託者が引渡日より、二週間内に其旨の通知を發せざるときは消滅す、右は行爲に依る責任消滅の原因なれども、時效によりて、責任が消滅する場合あり、即ち寄託物の滅失、又は毀損により生じたる倉庫營業者の責任は、惡意なき場合に於ては、一ケ年の短期時效によりて其責任消滅するものとす、此時效の起算點は、受寄物の一部減失の場合は出庫の日より、又受寄物の全部滅失の場合は寄託者に對して、其滅失の通知を發したる日より起算すべき者とす、(乙)、倉庫營業者の權利、倉庫營業者に屬する權利の主なるものは、報酬、立替金其他受寄物に關する費用を請求するの權利也、倉庫營業者の受くべき報酬を保管料と稱し、營業税法に於て、倉敷科と稱するもの是也、保管料は、受寄物出庫の時に於て請求すべきものとす、其出庫の原因如何を問はず、受寄物の一部に行はるると、全部に行はるるとを問はざるなり、次に受寄物の受領を寄託者に對して請求するの權利あり、然れども倉庫營業者は、受寄物入庫の日より、六ケ月を經過したる後にあらされば之を返還することを得ず、其例外の場合として、當事者に保管期間の定めありしとき、其他已むことを得ざる事由あるときは、六ケ月以内と雖も、之を返還することを得べし、又寄託者が、或る場合に於て受寄物の受領を拒み、又は受領すること能はざるときなきにあらず、之等の場合には、倉庫業者は、法律の定むる特殊の手續によりて、其物品を競賣する事を得るものとす。(商三五七條乃至三八三條)
- 英
- Warehouse business
- 独
- Lagergeschäft
- 仏
- Affaires du magasin
倉庫業
- 英
- Warehouse business
- 独
- Lager-geschäft
- 仏
- Affaires du magasin
倉庫營業者
- 英
- Warehouse man
- 独
- Lagerhalter
- 仏
- Magasinier
造石税
(ざうこくぜい)酒造税法に依り、酒類を製造するものより、其造石數に應じて〓收する租税を稱して造石税と云ふ、造石税に三種あり、即ち(第一種)酒精分二十度以下の清酒、濁酒、白酒、味醂、及び甘藷を原料とし、精製したる燒酎にして、酒精分三十度以下なるものは一石に就き金拾五圓とす、(第二種)酒精分四十五度以下の燒耐にして、一石に就き金拾六圓、(第三種)酒精分二十度以上を超ゆる清酒、濁酒、白酒、味醂、及び酒精分四十五度を超ゆる燒耐にして、一石に就き酒精分一度每に七十五錢とす。(酒造税法四條)
- 英
- Tax on sake brewing
- 独
- Steuer auf Brauensumme
- 仏
- Impôt sur le bras-sage de saké
相互作用
(さうごさよう)相制とも謂ふ、二或は二以上の獨立せる事物が、相互に影響する其作用をいふ、例へば社會と個人とは相互作用をなすと謂へば、社會が個人に影響すると同時に、個人も亦社會に影響することを稱するが如し、但し相互作用は、一者受動となり、他者能動となりて影響するにあらずして、兩者同樣に響動の地位にありて、相影響し合ふを謂ふなり。
- 英
- Interaction
- 独
- Wechselwirk-ung
- 仏
- Interaction
相互主義
(さうごしゆぎ)國際法上主として用ひらるる語にして、例へば一國が他國の國民を優遇するも、他國が必ずしも自國の國民を優遇することを期すべからざるが故に、他國が自國臣民を優待する程度に應じて、その他國の臣民を優遇せんとするが如きは、即ち國際法上の相互主義なりとす、此相互主義を別ちて、外交上の相互主義と、立法上の相互主義とに區別す、外交上の相互主義とは、即ち條約上の相互主義を指稱するものにして、外國人の私權享有の條件を、條約上の擔保に繫らしむるが如く、外國人は、其本國が條約上自國人に許與する權利と、同一の權利を享有するものと規定するに在り、立法上の相互主義は、即ち法律上の相互主義を指稱するものにして、外國の法律が、自國臣民に許容する程度に於て、外國人に私權を許與するを以て原則とする諸國の法律を云ふなり。
- 英
- Mutual principle
- 独
- Theorie der Gegenseitigkeit
- 仏
- Principe de la mutualité
相互保險
(さうごほけん)相互保險とは、保險契約者が其契約を爲すと同時に、其資格を代へて、會社の社員となり、其相互者間の關係に於て、其間に生じたる損失の分配を目的とする保險契約を云ひ、其社員によりて、組織せられたる會社を、相互保險會社と稱す、此相互保險は、保險業法によりて、初めて認められたるものにして、普通の保險會社とは、種々の異る制限あり、今其重要なる點を槪説すれば、□一は社員數の制限也、相互會社の社員の數は、即ち保險契約者の數にして、保險事業は、多數の保險契約者によるにあらざれば、行はるべきものにあらざる故に、社員の最低數を定めて百人とせり、故に相互保險會社の設立に際しては、發起人は先づ百人の契約者、即ち社員を募集せざるべからず、而して此數に滿つれば創立總會を開き、社員が株式會社の創立總會と同樣に、假定款の議決、創業費の承認、發起人の報酬等を議し、茲に役員即ち取締役、及び監査役の選擧を行ひ、以て會社の設立を見るものとす、□二は社員の責任の種類に關するものなり、社員の責任と云ふは、保險契約者としての責任にあらず、社員即ち會社を構成する所の一員としての責任にして、尚株主の株式會社に對するが如し、彼等の權利は、社員總會に於て決議權を有すること、並に會社の利益配當に與る權利にして、其義務は會社の財産上の責任を分擔するに在り、而して我保險業法には、社員の責任を三種に區別し、イ無限の責任を負ふ者、ロ保險料を限度として責任を負ふ者、ハ保險料の外、一定の金額を限度として責任者を負ふ者の三種とせり、而して外國に於ては、一相互會社内に於ても、社員の或る者は無限の責任を負ひ、或る者は有限の責任を負ふを許すことあり、されども我國に於ては、全員皆一同の責任を有せざるべからずとせり、相互保險會社なりとて、利益あるのみならず、損失を蒙むることあるべきは、株式會社と異る點なし、株式會社にありては、此場合には株主の損失に歸すと雖も、相互會社にありては、社員たるもの之に當らざるべからざるは當然なり、故に社員には、一定の制限の下に責任を負はしめざるべからず、故に相互會社の社員、即ち保險契約者は、剩餘金あらば保險料の拂戾を受くると同時に、不足あらば保險料の追〓を強制せらるるものとす、又營業保險の保險契約者は、何時にても解約することを得れども、相互會社の保險契約者は、其社員なれば、會社と密著の關係を有し、重き責任を負ふものなるが故に、隨時に退社することを許さず、退社せんとするものは、六ケ月以前にこれを豫告し、營業年度の終に於てせざるべからざるものとす、□三は基金の償却方法に關するものにして、相互會社の基金は、社員の出資したるものにあらずして、他に出資主の存するものなれば、營業年度に剩餘金あるときは、漸々に之を償却せしめ、之を償却したるときは、其償却したる金額と同一の金額を積立つることを要するもの也、□四は剩餘金の分配方法なり、相互會社に於ける剩餘金とは、株式會社に於ける利益と同じく、其行ふ所の事業より生ずる純益を指すもの也、而して株式會社の利益は、之を株主に分配すると同じく、相互會社の剩餘金は、社員に分配するを原則とし、其分配は如何なる方法に爲すべきやは、相互會社に關する大問題にして、株式會社の利益配當は、株金額を標準とれば足れりと雖も、相互會社の剩餘金を社員に分配するは、何を標準とすべきやは、今日保險政策學者間に於ても、完全なる方法は未だ發見せられず、法律は又此點に關して、何等の規定を存せず、然れども不完全ながら、其拂込みたる保險料を標準とするは、比較的善良なる方法なるべし、此分配方法は、社員間の決議によりて定款に定め、主務大臣の特許を要する一事項に屬するなり。(保險業法二六條以下八六條)
- 英
- Mutual insurance
- 独
- gegen-seitige Assekuranz
- 仏
- Assurance mutuelle
相互保險會社
相互保險會社登記簿
(さうごほけんくわいしやとうきぼ)相互保險會社に關する事項を登記する爲めに、各登記所に備ふる登記簿を相互保險會社登記簿と云ふ。
- 英
- Register of the mutual insurance company
- 独
- Register der Gegenseitigkeitsversicherungsgesell-schaft
- 仏
- Registre de la companie de l'assurance mutuelle
搜査
(さうさ)搜査とは、犯罪者ある場合に、檢事が、起訴不起訴を定むるに必要なる材料を得るを目的とする起訴準備の手續を云ふ、檢事が犯罪あることを認知し、又は犯罪ありと思料するも、其犯罪の證憑にして之を認定するに足らざるときは、公訴を提起するも裁判所をして、之に對して相當の刑罰を加ふることを得ざらしむ、又犯罪たることのみ明確なりとするも、何人が其犯人なるかを確めざれば、求刑するに由なく、又犯人が何人なること判明するも、逃亡して其踪跡明かならざるに於ては、これに對して現實に行刑を爲すことを得ず、從つて犯罪人をして、故なく刑罰を免れしむるに至る、これ國家の刑罰權をして有名無實ならしむるものなり、故に此犯人を搜査し、其罪證を搜査することは、檢事に屬する重要なる職務也とす、刑事訴訟法の規定によれば、檢事は犯罪あることを認知し、又は犯罪ありと思料したるときは、其證憑及犯人を搜査すべきものとす、搜査の目的を擧示すれば、□一行爲は犯罪なりや、又は訴訟條件を具ふるや、□二何人が犯人なりや、□三湮滅の虞ある證據を公判の爲めに保存すること、□四嫌疑者を保全することこれなり、搜査の方法は、或る特別なる場合を除くの外は、強制力を用ふる事を得ず、搜査處分は大別して、現行犯の場合と、非現行犯の場合とに爲すことを得、現行犯の場合には、重罪なると輕罪なるとを問はず、豫審判事より先に之を知りたる場合に、其事件にして急速を要する時は、豫審判事に其旨を通知し、犯所に臨檢して豫審判事に屬する處分を爲すことを得べく、非現行犯の場合には、檢事の搜査權に就き、法律は、何等の明文を置かざるを以て、訴訟法は非現行犯の場合には、檢事に積極的職權の行動を認めざるものと云はざるべからず、畢竟非現行犯の場合には、檢事は各關係人の承諾に基き搜査するの外なしとす、故に關係人は、非現行犯の場合には、其取調べを拒む事を得べし、犯罪搜査の機關は、之を主たる機關と、從たる機關とに區別す、主たる機關とは、即ち檢事、警視總監、地方長官にして、從たる搜査機關とは、警視、警部、憲兵將校、同下士、島司、郡長、市町村長也、尚司法警察官の補助として、巡査、憲兵上等兵も犯罪搜査を爲す補助機關とす。(刑訴四六、四七條)
- 英
- Investigation
- 独
- Nachforschung
- 仏
- Investigation
搜査
(さうさ)搜査とは、刑事訴訟上の用語にして、檢事、及び司法警察官が、犯罪の有無、犯罪人の何人なるやを審査し、又は其證據物件を集取する手續を云ふものにして、其目的とする處は、則ち公訴提起の材料を準備するの手續に外ならず、而して相當官吏が、此犯罪の搜査を爲し得る權を搜査權と云ふ、次に刑事訴訟法上、犯罪搜査の機關たる者は、檢事、及び司法警察官の二者となす、茲に司法警察官と云ふは、□一警視總監、□二府縣知事、(但し東京府知事は此限にあらず)□三警視、警部長、及び警部、□四憲兵將校、及び下士、□五島司、□六郡長、□七林務官、□八市町村長、□九船長等にして、此内警視總監、及び府縣知事は司法警察官として、犯罪を搜査するに就きては、地方裁判所の檢事と同一の職權を有するものにして、其他の者は檢事の補佐として其指揮を受け、司法警察官として、犯罪の搜査に任ずる也、而して之等の官公吏又は船長等が、犯罪の搜査をなすに就きては、各其管轄の區域に制限あり、即ち檢事は其附置せられたる裁判所の管轄區域内に於てのみ、搜査權を有し、其他の官公吏は、其所屬官廳の管轄區域を出ることを得ざるは勿論のことにして、船長は、海船内の犯罪に就きてのみ、司法警察の職務を行ふことを得るものとす、次に之等犯罪搜査權を存する者が、搜査に著手する原因に二あり、即ち其一は搜査權を有する者が、自ら犯罪あることを認知思料する場合にして、例へば現行犯を認知したる如き、或は新聞の記事、又は風説等に依りて、犯罪あることを思料したる如きこれなり、其二は、他人に依りて犯罪あることを告知せらるる場合にして、例へば告訴、告發、又は自首に依りて犯罪ありたる事を認知思料するが如きこれ也、次に檢事、及び、司法警察官は、其管轄區域内に於て、犯罪の搜査を行ふに際し、如何なる權限を有するやと云ふに、現行犯に就きては、殆ど豫審判事と同樣の權限を有するも、ただ罰金、又は費用の賠償を言渡し、及び證人鑑定人に宣誓を命じ、また特に司法警察官は、被告人に對し、拘留狀を發する等のことを爲し得ざるのみ、之に反して非現行犯の場合に於て、檢事、及び司法警察官は、犯罪の搜査上、證人、被告人を訊問し、又は檢證物件差押、及び臨檢を爲し得る乎の問題に就きては、學者の間に議論あり、之に對し或る學者は、犯罪の搜査處分を以て、被告人を逮捕する等、公力を用ふる事を得ざるは勿論なるべきも、公力を用ひずして、被告人、證人を訊問し、臨檢、檢證又は物件差押を爲し、之等の調書を作るは決して不法にあらずと論定せり。(刑訴三編一章一、二節參照)
相殺
(さうさい)相殺とは、二人互に債權を有する場合に、其目的にして同種なるときは、雙方より之を履行せずして、同時に雙方の債權を消滅せしむるの方法を云ふ、二個の債權が相對立する時は、如何なる場合に於ても、當事者間の合意を以て、之を消滅せしめ得ることは勿論なれども、此合意による場合の外は、法律に定めたる相殺の條件に從はざるべからず、法律上相殺を爲すにつき、必要なる條件としては、□一二人互に同種の目的を有する債務を負擔することを要す、相殺は、元來履行により、債務を消滅せしむると同一の結果を來すものなり、故に雙方の債務の目的が、同種類なることを前提とするは當然の事なり、二個の目的が、同種類なれば甲を給附するも、或は甲を給附せずして、乙の給附を免るるも債務を創設したる目的を貫くことを得、故に法律は此場合に於て、履行を待たずして、雙方の債務を同時に消滅せしむることを許すなり、例へば甲者が金千圓を乙者に支拂ふ約束を爲し、乙者も亦甲者に千圓の債務を有するときに、甲が乙に千圓を支拂ひたる後、乙は其受けたる千圓を更に甲に支拂ふは、初めより雙方支拂を爲さざると同一なるを以て、雙方の債務を同時に消滅するを許すものとす、斯くの如く同種の目的たる事を要するが故に、雙方の債務、又は一方の債務が特定したる物件の引渡を目的となすときは、其間に相殺を爲すことを得ず、特定物件は、特別的に指定せられたるものなるを以て、其物の引渡によるにあらざれば、債權の本旨を達することを得ず、故に此場合は、法律上二個の物が同種と云ふを得ざれば也、不特定物件にして同種なる場合は、相殺の行はれ得べきを原則とす、物件の引渡以外の行爲を目的とする二個の債務ある場合に於て、その行爲が雙方ながら種類を以て指定せられ、且つ行爲者の人に著目せざるときは、同種類のものたることを得べし、然れども此場合に於ても、性質上相殺を許さざる場合多し、□二雙方の債務が辨濟期にあるを要す、相殺は履行に代るべきものなり、辨濟期以前に相殺を爲すは、一方をして期限の利益を失はしむると同一なり、故に相殺を許さず、□三雙方の債務が、相殺を許すべき性質のものたるを要す、□四當事者が、反對の意思を表示せざりし事を要す、相殺を許すは、公益に關する規定にあらず、故に當事者が之を禁ずるの意思を表示せば、其意思に效力を與へて相殺を許さず、然れども善意の第三者は、此特約の爲めに約束せらるるものにあらず、故に此特約ありし事を知らざる第三者は、當事者間の特約を無視することを得べし、□五相殺は以上の法律上の條件を具備したるとき、當事者の一方が相手方に其意思を表示するに依りて效力を生ず、故に相手方の承諾を必要とするものにあらず、債務の履行地が異る場合に、相殺によりてこれを消滅せしむるときは、履行と同樣なる效果を生ぜざる場合多し、故に履行地を異にせる債務は、相殺に適せざるものと云ふべし、然れども法律は明文を設けて、此場合にも相殺を爲し得べきものとす、又時效によりて消滅したる債權が、其消滅以前に相殺に適したるときは、相殺の意思を表示して、正當に之を消滅せしむることを得るなり、而して相殺を許さざる特例としては、不法行爲によりて、債務を負擔するものは、相殺を以て債權者に對抗するを得ず、又支拂の差止めを受けたる第三債務者は、後に取得したる債權により、相殺を以て差押債權者に對抗するを得ず。(民五〇五條乃至五一二條)
- 英
- Set-off
- 独
- Aufrechnung
- 仏
- Compensation
想像
(さうざう)現に吾人の精神を刺激する實際事物を感得する心意の作用以外に、過去の經驗によりて得たる觀念の再現、若くはその複合の上に成れる想念を、心思の上に思ひ浮ぶるを謂ふ、故に一般に感官は、想像と實感との審判者にして、心理學者によりては、感情も亦想像し得と説くものあり、かくして想像を二種に分ち、過去の經驗の單なる想起を再現的想像と稱し、記憶中の心像を種々に分解又は結合して、即ち變化を加へて再現するを、構成的想像と稱す、然れども前者には、特に記憶等の名稱を附するを以て、一般に想像と謂へば、後者を指すこととなる、構成的想像は、過去の經驗を自由に取捨して、新に創造するものなれば、其結果實際の事實と、契合するや否やによりて、其價値定まることとなるなり、かの吾人の智識作用に訴へて、專ら實際の事實と契合する事を主眼とする科學的想像、又は理性的想像と稱せらるるものの、一向に美の表現を目的とし、その想像の必ずしも事實と契合するを期せざる藝術的想像、又は感性的想像に優れりとせらるる所以ここにあり、然れども美的現象を構成する想像の價値、即ち藝術價値より謂へば、實際と契合せず云々と云ふことによりて、後者は決して前者に劣るものにあらざるなり、なほ兩者は、實際截然區別せらるべきものにあらずして、全く相制的に助勢しつつあるものなり、而して一般に想像なるものは、現在に滿足せざる吾人の欲望に基き、其度の強烈なるに從ひ、想像も一層其勢を逞しくするものなり、斯くして總べての發見發明と稱せらるるものも、亦この不滿足よりする想像の結果なる事多し、猶想像と空想とは、決して嚴密なる區別を有するものにあらず、唯一般に事實と契合することより、大ならじと認めらるる度合に名けられたる名稱に過ぎざるなり。
- 英
- Imagination
- 独
- Einbildung
- 仏
- Imagination
想像的數罪俱發
(さうざうてきすうざいぐはつ)刑法上に於て、一行爲にして數個の結果を生じ、數個の法條に觸れたる場合を稱して、學者は之を想像的數罪俱發と謂ふ、而して同種の結果を生じたる時、之を同種の想像的數罪俱發と云ひ、之に反する時は、異種の想像的數罪俱發と稱せり、例へば犯人が一發の彈丸を以て一人を斃し、更に他の人を傷け、尚彈丸の全力を以て、窓の硝子を打ち破りたるが如き場合は、謀殺、若くは、故殺罪と、毆打創傷罪と、器物毀棄罪との想像上數罪俱發と云ふなり、然れども之に反對する學者ありて、右の實例の如き場合を稱して、法規の競合なりと云へり、即ち殺人罪、創傷罪、器物毀棄罪との三法條の競合を來すものにして、其最も重き法條によりて罰せらるるものなりと云へり、何れの説を以て正當とするや否やは、容易に判斷を與ふることを得ざれども、單に用語に關する爭なるものの如く、之を何れに解するも、其場合を了解し置きて誤解することなければ、何れに從ふも可なるべし。
搜索調書
(さうさくてうしよ)豫審判事、又は受託判事の命によりて、令狀執行を爲す巡査、憲兵卒が、其令狀執行に關する搜索行爲の顚末を記述したるの文書を搜索調書と云ふ、刑事訴訟法の定むる所によれば、令狀執行の命を受けたる巡査、憲兵卒は、其行爲を爲すが爲めに、被告人其他の者の家宅を搜索することを得べく、此場合に於ては、市町村長、又は其差支あるときは、隣佑二人以上の立合を以て搜索を爲すことを得べく、其結果の如何に拘はらず、搜査調書を作り、立合人と共に、署名捺印すべきものとす。(刑訴法七八條)
- 英
- Document of searching
- 独
- Durchsuchungsprotokoll
- 仏
- Document de recherche
喪失者
(さうしつしや)法律上或る資格、權利、能力を失ひたるものを稱して喪失者と云ふ、例へば精神病によりて、意思を失ひたるものを意思能力の喪失者と云ひ、相續人が、廢除の原因により相續權を失ひたるものを相續權の喪失者と云ふ場合の如し。
造神宮使廳官制
(ざうじんぐうしちやうくわんせい)明治三一年勅令第一〇二號を以て公布せられたる所にして、造神宮使廳に關する規定を爲したるものなり、造神宮使廳とは、内務大臣の監督の下にありて、神宮造營、及び神寳、裝束調進の事を司る官廳なり。
創傷
(さうしやう)創傷なる語は、主として刑法上に用ひらるる所にして、通俗の意義に於ては、外部より人の身體を傷くる場合を指示するものなれども、刑法上の創傷は、人の身體に對して表見的に其外部を毀損すると、又不表見的に其内部の生活機能を毀損して、其健康を害するとを問はず、汎く人の身體上の生活機能を毀損する場合を總稱するものなり。(舊刑二九九條乃至三〇六條)
- 英
- Wound
- 独
- Verletzung
- 仏
- Blessure
爭訟
(さうしよう)權利の存否を裁判上に於て爭ふを稱して爭訴と云ふ、故に爭訟とは、訴訟の半面を指示するものなり。爭訟事件とは、權利の存否に關する爭に係る裁判上の事件を廣く稱し、又時としては、非訴事件に對して、民事刑事の爭訟に關する場合を指して、單に爭訟事件と云ふ場合あり。(爭の部參照)
- 英
- Legal action
- 独
- Rechtsstreit
- 仏
- Action légale
爭訟事件
- 英
- Case of legal action
- 独
- Rechtssache
- 仏
- Cause de l'action légale
創設
(さうせつ)創設とは、或る事物を創めて設定するの意にして、法律上設立行爲等と云ふに異る點なし、例へば商法上に於て、會社設立行爲を稱して、會社創設と云ふが如し。
- 英
- Creation
- 独
- Erschaffung
- 仏
- Création
造船規程
(ざうせんきてい)造船規程は、明治二九年遞信省令第一六號を以て公布せられたる法規して、造船に關する細則を定めたる命令なり。
- 英
- Rule of ship-building
- 独
- Regel des Schiffbaues
- 仏
- Règle de la construction des navires
造船造兵監督官條例
造船造兵監督官條例とは、造船造兵監督官の權限、任用、其他職務上準奉すべき規則にして、明治三一年勅令第六四號を以て公布せられたるものなり。
- 英
- Regulation of in-tendant of ship-building and arsenal
- 独
- Regulirung vom Oberaufseher des Schiff-baues und Arsenals
- 仏
- Règles des sur-veillants de la construction des navires et de l'arsénal
造船奬勵金
(ざうせんしやうれいきん)帝國臣民、又は帝國臣民のみを社員、若くは株主とする商事會社にして、遞信大臣の定むる資格を備ふる造船所を設け、船舶を製造するものに對し、造船業を奬勵するの目的を以て下附する金員を造船奬勵金と云ふ、造船奬勵金を受くべき船舶は、鐵製、又は鋼製にして、總噸數七百噸以上を有し、遞信大臣の定むる造船規定に從ひ、其監督を受けて製造したるものに限る、七百噸以上一千噸未滿の船舶には、一噸につき十二圓、一千噸以上の船舶に對しては、一噸につき二十圓を支給し、其機關を併せ製造したる場合には、一實馬力につき、金五圓を增給す、但し帝國内の他の工場に於て、機關を製造したるときと雖も、豫め遞信大臣の許可を經たる場合は、同樣の奬勵金を受くることを得るものとす、若し詐欺の所爲を以て、造船奬勵金を受けたるものは、一年以上五年以下の重禁錮に處し、二百圓以上五百圓以下の罰金を附加し、其依つて得たる奬勵金は、之を償還せしむ、造船奬勵法一條乃至三條)
- 英
- Bounty for ship-building
- 独
- Schiffbausprämie
- 仏
- Don pour la construction des navires
造船奬勵法
造船奬勵法は、明治二九年遞信省令第一六號を以て定められたる規定にして、我帝國に於ける造船業を奬勵せんが爲めに、奬勵法を設けて造船者を奬勵するの事に關し規定したる法規也。
- 英
- Encouragement law of ship-building
- 独
- Ermütigungsgesetz des Schiff-baues
- 仏
- Loi de l'encouragement de la construction dse navires
相續
(さうぞく)相續には、家督相續、遺産相續の二種あり、家督相續とは、戸主が缺けたる場合に、法律上の家督相續人が、前戸主の資格に於て有したる一切の權利義務を承繼する行爲を云ひ、遺産相續とは、家族が死亡したる場合に、法定の遺産相續人が、死者の有したる一切の權利義務を承繼する行爲を云ふ、故に家督相續は、戸主の缺けたる場合に生じ、遺産相續は、家族の死亡したる場合に限り生ずるものなりとす、今少しく此兩者につき槪説せんに、家督相續は、戸主の缺けたる場合に開始するが故に、戸主の缺けたる原因を名けて、家督相續開始の原因と云ふ、而して其原因は、事變即ち戸主の死亡したるが如き場合あり、又前戸主の行爲に依る場合、即ち隱居等の如き行爲に基く場合あり、家督相續は、前戸主の資格に於て、有したる一切の權利義務を承繼せしむ、即ち家督相續人は、前戸主に代りて其地位を襲ひ、獨り財産上の權利義務のみならず、戸主の家族に對する親族法上より生ずる權利義務をも繼承するものとす、然かも前戸主の一身に專屬したるものは、之を繼承することなし、家督相續を爲すものは、法律上の家督相續人ならざるべからず、其資格順位は、必ず法律の定むる所に依ることを要す、被相續人と雖も、法律の規定に反して、任意に之を他に定むることを得ず、遺産相續は家族の死亡したる場合に限り、開始せられたるものとして、單に財産上の權利義務を承繼するに止まり、其他の關係を生ぜず、從來遺産相續なるもは、歐米各國に於て專ら行はるる所なれども、我國維新前にありては、家族制度盛なりし爲め、片身分け等の慣習の外之なかりき、然れども親族法上の身分、地位よりも、財産が尊重せらるるの風漸く盛となり、家族にして財産を貯へ、義務を負ふもの日一日と夥多なるに至りしを以て、將來に於ては、家督相續よりも、遺産相績の開始せらるること多きに至るべし、家督相續と遺産相續との異る所を槪説すれば、家督相續にありては、被相續人たるものは戸主に限り、其相續開始の原因は、死亡のみに限らず、苟も戸主が戸主權を喪失したる時は相續開始す、之に反して遺産相續の被相續人たるものは、家族にして戸主にあらず、其相續開始の原因は、家族の死亡のみにして、隱居等の如きは、遺産相續開始の原因とならず、又家督相續人たるものは、一家一人に限る、之に反して遺産相續人は數人あるを妨げず、例へば家督相續の場合にありては、長男のみが相續人なりと雖も、遺産相續人は、其死亡者の有せし子女は、總べて相續人にして、死亡者の有せし遺産を分割相續するものなり、又家督相續にありては、前戸主の有せし一切の權利義務を以て、相續の目的とす、從ひて家督相續人は、財産上の權利義務のみならず、戸主の權利義務を相續するものなり、故に其身分に變更を來し、相續人は、家族より戸主に進む、之に反して遺産相續の目的は、單に被相續人の財産上の權利義務のみなるを以て、遺産相續人は、遺産相續によりて、身分に變更を來すことなし。(民九八六、一〇〇一條)
- 英
- Succession
- 独
- Nachfolge
- 仏
- Succession
相續開始
相續の開始は、家督相續にありては、戸主の缺けたる場合、遺産相續にありては、家族の死亡したる場合に於て、法律上の順位資格を有するものが、之を相續するを指示する者にして、家督相續開始の原因は、□一戸主の死亡、□二戸主の隱居、□三戸主の國籍喪失、□四戸主が婚姻の取消によりて其家を去りたるとき、□五戸主が養子緣組の取消によりて、其家を去りたるとき、□六女戸主の入夫婚姻、□七入夫の離婚の七場合也、又又産相續にありては、家族の死亡したるときに、遺産相續開始せらるるものとす。(民九六四條九九二條)
- 英
- Successional occurrence
- 独
- Erbfall
- 仏
- Commencement de la suc-cession
相續開始地
相續の開始地とは、相續の開始せらるる場所を指示するものにして、此場所は、家督相續たると、遺産相續たるとを問はず、被相續人の住所を以て、相續開始地とす。(民九六五、九九三條)
- 英
- Land of successional occur-rence
- 独
- Erbfallsland
- 仏
- Lien du commencement de la succession
相續權
(さうぞくけん)家督相續たると、遺産相續たるとを問はず、相續の開始せられたる場合に、相續を爲し得る權利を稱して、相續權と云ふ、相續權も、固より民法上の私權の一なるが故に、年の老幼を論ぜず、性の男女を問はず、總べての人は享有し得るを原則とす、然れども相續人となるには、法律上の資格、順位を有するものたらざるべからざるが故に、各人に於て、其相續權を享有し得べしと雖も、法定の制限によりて、相續人となり得ざる場合ありとす、元來相續權は、現實に權利として顯れ來る時期は、即ち相續開始の時にあるものにして、其相續開始の時に至る迄は、一種の希望たるに過ぎざるものの如し、されど一種の希望也と雖も、其希望が確實なる以上は、法律は之を權利として保護し、又之を權利と稱して差支なし、何となれば權利なるものは、法律を前提として始めて發生する者、即ち法律の保護によりて創設せらるる者なれば、相續權も、嚴格に研究し來れば一の希望也と雖も、之を權利と稱しるを得るは勿論とす、而して其權利の確定せらるるは、相續開始の時を以て定めらるる者なるは、前述の如し、例へば茲に一の戸主あり、二男子を有す、其長男も、次男も、戸主たる父に對して、相續の權利を有するを原則とす、然れども長男は、法律上の推定相續人として、最先の權利を有する者なるが故に、次男は何等の權利を有せざるものの如し、されば其長男の享有する權利と雖も、家督相續が開始せらるる迄は、權利として實現し來らず、唯一種の希望權のみ、此時に當りて、若し相續開始前迄に長男が死亡したる時は、次男は、當然相續人となるべし、此實例より鑑みれば、各人に於て相續するの權利を享有するを原則とする法律の制限によりて、或る者は之を有し、或る者は之を有せざるが如き外觀あるの理を知るを得べきなり、我民法は、總べて權利の享有は、人の出生に始まるを以て原則とするも、家督相續の場合にありては、胎兒と雖も、尚相續權を有し得るものとするの例外を認む。(民九六八)
- 英
- Right of succession
- 独
- Erb-recht
- 仏
- Droit de succession
相續人
相續人とは、法律上の資格順位を有し、相續開始の時に至りて、被相續人の權利義務を承繼するの地位に當る者を指稱す、家督相續人には、下の如き種類あり、□一法定の家督相續人、□二指定家督相續人、□三第一種選定家督相續人、□四尊族家督相續人、□五第二種選定家督相續人の五種これなり、遺産相續人は、選定、指定等の相續人を認めず、總べて法定の相續人のみ也、今以上の各種につき、其大要を擧ぐれば、□一法定の家督相續人とは、被相續人、即ち前戸主の家族たる直系卑屬(子又は孫等の如し)にして、法定の順位に從ひ、當然家督相續を爲すべき者を謂ふ、□二指定家督相續人とは、戸主が法定の推定家督相續人なき場合に、自己の相續人として指定したるものを云ふ、□三第一種選定家督相續人とは、法定又は指定の家督相續人なき場合に、被相續人即ち戸主の父、若くは母又は親族會が、前戸主の家族たる配偶者、兄弟、姉妹、若くは直系卑屬中より選定したる家督相續人を云ふ、□四尊屬家督相續人とは、以上の法定、指定、及び選定の家督相續人なき場合に、家督相續を爲す尊屬親を云ふ、□五第二種選定家督相續人とは、以上の相續人、及び尊族家督相續人もなき場合に、親族會の選定する家督相續人なりとす、而して其同資格者數人あるときは、法律上の順位によるを要するや勿論なりとす、遺産相續人は、すべて法定の相續にして、法律上一定せられたるものとす、即ち第一直系卑屬、第二配偶者、第三直系尊族、第四戸主なりとす。(民九二八、九七〇、九七九條乃至九八五條、九四九條)
- 英
- Heir
- 独
- Erbe
- 仏
- Héritier
相權人の廢除
(さうぞくにんはいじよ)相續人の廢除とは、法定の推定家督相續人、若くは遺産相續人に、法律上の或る原因の存する場合に、被相續人の意思を以て、裁判上の手續に基き、確定判決により、相續權を喪失せしむるを云ふ、新民法施行前は之を廢嫡と稱せり、されど相續人は、必ずしも嫡子に限らざるを以て、民法に於ては、廢除なる文字を用ひたり、相續人廢除も、亦家督相續人と遺産相續人とにより、多少其趣を異にす、法定の推定家督相續人は、被相續人、即ち戸主に限りて、之を廢除することを得べく、親族會又は其他の利害關係人と雖も、廢除を請求するの權なし、元來廢除は、法定の推定家督相續の資格を奪ふを以て目的となすものにして、指定家督相續人、及び選定家督相續人に就きては、廢除あることなし、廢除の原因となるものを擧ぐれば、□一被相續人に對して、虐待を爲し、又は重大なる侮辱を加へたること、□二推定家督相續人が、疾病其他精神又は身體の狀況により、家政を執るに堪へざるとき、□三推定家督相續人が、家名に汚辱を及ぼすべき罪によりて、刑に處せられたるとき、□四浪費者として、準禁治産の宣告を受け、改悛の望みなきとき、以上は法律に例示する排除の原因なり、而して廢除の方法は、訴を以て裁判所に請求すべきものとす、又遺産相續人の廢除には、□一廢除せらるべきものが、遺留分を有する遺産相續人たることを要す、遺留分を有するものとは、直系卑屬、配偶者、及び直系尊族なり、戸主も遺産相續人として、第四位にあるものなれども、遺留分を有せざるものなるが故に、廢除するを要せず、故に戸主に對して、法律は廢除を認めず、□二廢除せらるべきものが、被相續人に對して虐待を爲し、又は重大なる侮辱を加へたることを要す、此二要件あるときは、遺産相續人を廢除することを得べし、其手續は、家督相續人廢除の場合と同じく、訴を以て裁判所に請求すべきものとす。(民九七五、九八九條、人訴三三條)
- 英
- Deprivation of heir
- 独
- Enterbung
- 仏
- Déprivation de l'héritier
相續債權者
(さうぞくさいけんしや)相續開始の場合に當り、其相續財産に對して債權を有するもの、換言すれば、被相續人の債權者を稱して、相續が開始せられたる場合に、これを相續債權者と云ふ、相續債權者は、法律上一種の特權を附與せられ、相續の開始に當り、其相續財産を相續人固有の財産と分離せしめて、相續人の債權者に先立ち、債權の辨濟を受くるの權これなり、相續人が相續を承認するときは、家督相續の場合と、遺産相續の場合とを問はず、被相續人に移轉し、相續人固有の財産と混同す、故に被相續人の權利が、其義務に比して小額なるとき、即ち財産に比して負債の多きときは、相續人、及び相續人に對する債權者は、其相續によりて、損害を蒙むるべし、相續債權者は、之に反して利益を蒙むるべし、又被相續人の現有財産が、其負債よりも多額なるときは、相續人、及び其債權者は、利益を受け、相續債權者は、不利益を受くべし、故に法律は斯かる場合の不公平を救はんがために、一方に於て、相續の限定承認なるものを認め、以て相續人の權利を保護し、他方に於て、財産分離の制度を設けて、相續債權者、及び受遺者等を保護するもの也、財産の分離は、斯かる場合に生ずるものにて、相續財産と、相續人の固有財産とを分離し、相續債權者に對して、優先の辨濟を受けしむるものとす、相續權債者に對する財産分離の手續は、相續債權者より、之を裁判所に請求せざるべからず、而してこの請求は、相續開始の時より三箇月内、または相續財産が、相續人の固有財産と混同せざる間に於て爲すことを要す、財産分離の裁判上の判決ありたるときは、其請求を爲したる相續債權者は、五日内に他の相續債權者に對して、財産分離の命令ありたること、及び二箇月を下らざる一定の期間内に、配當加入の申出でを爲すべき旨を公告することを要す、此一定の期間内に申出でたる相續債權者に對して、相續人は、其債務の辨濟を爲すことを要す、然れども辨濟は、成るべく公平を期せざるべからざるが故に、其公告期間内には、辨濟を爲さざるを善しとし、若し其期間内に辨濟を爲し、他の相續債權者に損害を生ぜしめたるときは、これを賠償するの責に任ずるものとす。(民一〇四一條乃至一〇四九條)
- 英
- Creditor of the Estate
- 独
- Erbgläubiger
- 仏
- Créancier de propriété
相續財産
(さうぞくざいさん)相續財産とは、相續開始の當時に於て、被相續人に屬したる財産權に關する權利義務を稱するなり、即ち其當時に於て、現に存在する財産權、及び負債を包括的に相續財産と稱するものにして、負債をも財産と云ふは、俗解し難き感あれども、相續の場合は、權利も、義務も、相續人に移轉するものなれば、單に負債のみを財産と稱するは、少しく異に聞ゆるが如しと雖も、法律は其權利義務を包括一束して、等しく財産と稱するものと解すべきなり。(民一〇一七條二項)
- 英
- Heritage
- 独
- Erbschaft
- 仏
- Propriété de succession
相續裁判籍
(さうぞくさいばんせき)人事訴訟手續法によれば、相續に關する裁判管轄は、相續開始の場所を以て、之が標準となし、此管轄權を相續人に關する方面より立言して、相續裁判籍と稱す、推定家督相續人、若くは推定遺産相續人の廢除、又は其廢除の取消を目的とする訴は、被相續人が死亡當時裁判籍を有する地、又は普通の時に、之を有したる地の地方裁判所の管轄に專屬し、相續財産の管理、又は保存に關する事件、限定承認者の辨濟すべき、若くは遺留分に關する條件、家督相續人の選定の爲めに開くべき親族會に關する事件、家督相續人の單純、若くは限定承認、又は抛棄を爲すための期間を伸長する裁判、相續の限定承認、又は抛棄の申述、遺言執行者の選任、及び解任、遺言の確認等は、被相續人の住所の區裁判所也とす。(人訴三三條、民訴二四條、民一〇二一、一〇三二、一〇一七條、非訴手續六五、八五、九七、一〇三、一〇七、一〇一條)
- 英
- Forum of the successional action
- 独
- Forum des Nachfolgsprozeszes
- 仏
- Forum de l'action de la succession
相續税
(さうぞくぜい)相續税は、相續税法により、相續を開始したるとき、其開始地が、帝國内に在ると否とを問はず、又被相續人、若くは相續人が帝國臣民たると否とを問はず、本法施行地にある、相續財産に賦課せらるる租税を稱す、其大要を擧示すれば、課税價額が家督相續にありては千圓、遺産相續にありては五百圓に滿たざるときは、相續税を課せず、又軍人軍屬の戰死、又は戰爭の爲め受けたる傷痍病疾に起因したる死亡により、相續開始したるときは、相續税を課せず、但し傷痍者又は疾病者にして、負傷又は發病後一年を經過し死亡したるときは、この限りにあらず、次に相續税は、一時に納付するを以て原則とするも、税金額百圓以上なるときは、相續税に相當する擔保を提供し、三年以内の年賦延納を求むることを得るなり、左に家督相續の場合と、遺産相續の場合とに別ちて、相續税賦課の税率を示さん(三七年法一〇號相續税法參照)
第一家督相續の場合
課税價格
相續人ガ被相續人ノ家族タル直系卑屬ナル時
相續人ガ被相續人ノ指定シタル者、民九八二條ニヨリ選定セラレタル者、被相續人ノ家族タル直系尊屬又ハ入夫ナル時
相續人ガ民法九八五條ニ依リ選定セラレタル者ナル時
五千圓以下ノ金額
千分ノ十二
千分ノ十五
千分ノ二十
五千圓ヲ超ユル金額
千分ノ十五
千分ノ十七
千分ノ廿五
一萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ十七
千分ノ二十
千分ノ三十
二萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ二十
千分ノ廿五
千分ノ卅五
ニ萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ廿五
千分ノ三十
千分ノ四十
四萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ三十
千分ノ卅五
千分ノ四十五
五萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ卅五
千分ノ四十
千分ノ五十
七萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ四十
千分ノ四十五
千分ノ五十五
十五萬圓ヲ超ユル金額ハ其五萬圓每ニ百萬圓ニ至テ止ム
千分ノ五ヲ加フ
千分ノ五ヲ加フ
千分ノ五ヲ加フ
第二遺産相續ノ場合
課税價格
相續人ガ直系卑屬ルトキ
相續人ガ配偶者又ハ直系尊屬ナルトキ
相續人ガ其他ノ者ナルトキ
千圓以下ノ金額
千分ノ十五
千分ノ十七
千分ノ廿五
千圓ヲ超ユル金額
千分ノ十七
千分ノ二十
千分ノ三十
五千圓ヲ超ユル金額
千分ノ二十
千分ノ廿五
千分ノ卅五
一萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ廿五
千分ノ三十
千分ノ四十
二萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ三十
千分ノ卅五
千分ノ四十五
三萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ卅五
千分ノ四十
千分ノ五十
四萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ四十
千分ノ四十五
千分ノ五十五
五萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ四十五
千分ノ五十
千分ノ六十
七萬圓ヲ超ユル金額
千分ノ五十
千分ノ五十五
千分ノ六十五
十萬圓ヲ超ユル金額ハ其五萬圓每ニ百萬圓ニ至テ止ム
千分ノ五ヲ加フ
千分ノ五ヲ加フ
千分ノ五ヲ加フ
- 英
- Succession tax
- 独
- Erbschaft-steuer
- 仏
- Impôt sur la succession
相續分
(さうそくぶん)遺産相續の場合に於て各相續人の受くべき分け前を稱して相續分と云ふ、家督相續にありては、相續人は一人に限るを以て、相續分の生ずることなしと雖も、遺産相續人は、數人にて共同相續するを原則とする者なれば、實際に一人なればいざ知らず、數人ある場合には、茲に相續分に關する問題を生ずるものとす、遺産相續の各相續分は、各自に相均しきを以て、我民法上の原則とす、之被相續人が、相續人數人ある場合に、其間に於て愛憎の念を異にすべからざるを以て、普通の情態とすればなり、然れども直系卑屬にして、數人ある時、庶子、又は私生子ある時は、其相續分は嫡出子の相續分の二分の一とす、例へば遺産千圓を有する遺産相續に於て、嫡出なる兄弟二人ある時は、各五百圓宛を受け、若し嫡出子二人と、私生子一人とあるときは、嫡出子各自は四百圓宛、私生子は、二百圓を以て相續分と爲すべきが如し、若し其者の中、一人已に死亡せる者ある時は、其子即ち被相續人より云へば、孫の存在する場合に於ては、其孫は、父に代りて祖父の遺産を受くべく、其相續分は父の受くべかりし者に均しき者とす、以上の割合を以て、我民法は其原則とするものなれども、被相續人の意思によりて、之に異りたる相續分を定むる事を許し、又は他の者に托して、其相續分を定めしむることをも許したり、今これ等の場合を槪説せんに、□一被相續人が相續分を定むる場合、被相續人は、自由に其財産を處分し得ると同一の理由により、相續人の相續分を定むをことを得べし、然れども、一に其隨意處分に委するときは、種々の弊害を生すべきが故に、法律は二三の制限を附せり、即ち相續分を定むるには、必す遺言を以てせざるべからず、その遺言は、遺言の方式によるべきを勿論となす、被相續人が自ら其實際額を定めざるときは、これを關係なき他の人に委託することを要す、相續人中の一人、例へば兄弟中の兄をして、相續分を定めしむるが如きは、法律の許す所にあらず、又民法上の遺留分の規定に反することを得ず、若し之等の制限に反したるときは、法律の規定によりて、前示の原則に立戾り、又は制限の範圍内に切り下ぐるものとす、□二被相續人が、共同相續人中の一人、もしくは數人のみの相續分を定め、其他の者の相續分を定めざりし場合、例へば五人の共同相續人ある場合に、其中の二人のみを定め、他の三人に對して定めざるときは、其定めたる部分はこれに從ふべく、其定めざる部分に、前示の原則を適用して、平等に分割せらるるものとす、□三共同相續人中の一人が、被相續人より贈與、又は遺贈を受げ居りたる場合、例へば共同相續人中の一人に遺言を以て贈與を爲し、又は婚姻、養子緣組、分家等の場合に、生計の資本、又は嫁資として贈與を爲しある場合には、被相續人が、相續開始の時に於て有せし財産の價額に、其贈與の價額を加へたるものを以て、相續財産と看做し、之を基礎として相續分を割り當て、其中より遺贈、又は贈與の額を引去りたるものを以て、其者の相續分とするなり、而して遺贈、又は贈與の價格が、相續分の價格に均しきときは、其者は相續分を受くる事を得ず、例へば兄弟二人の共同相續人ある場合に、父たる被相續人が、其生前に於て弟の分家の爲め、其生計資本として金千圓を贈與しありたるに、其父が死亡して、遺産相續が開始せられたるときは、現在財産を千圓と假定せば、金千圓に弟の得たりし千圓を加へて、二千圓の遺産と見做し、各自の相續分は、千圓宛と定め、弟は茲に一錢も得ず、兄たる者は、金千圓悉皆を受くるが如く、若し弟が八百圓より贈與を受けあらずして、財産千圓なるときは、千八百圓の財産となるが故に、弟は其二分の一、即ち九百圓を相續分として、此内より前に受けたる八百圓を除き、殘額百圓を受くべきものとす。(民一〇〇四條乃至一〇〇九條)
- 英
- Portion
- 独
- Erbtheil
- 仏
- Part
相對
(さうたい)比較對照の關係を謂ふ、即ち二個、もしくは二個以上のものが、相互の關係によりて、各自の性質を規定し、存在を明かならしめ、意義を確定する其關係性を謂ふ、吾人の經驗的智識は、總べて一物と他物との比較性を確定したるに過ぎず、美と謂ひ、醜と謂ひ、靜と謂ひ、動と謂ひ、大と謂ひ、小と謂ひ、善と謂ひ、惡と謂ひ、廣と謂ひ、狹と謂ひ、眞と謂ひ、僞と謂ひ、總べて相對的關係の規定に外ならざるなり。
相對的
相對的とは、以上の如く双方より相對する關係狀態をいひ顯はす言葉として用ひらるるものなり、彼の關係的、比較的など云ふと畧同義なりとす。(相關的の部參照)
- 英
- Relative
- 独
- relativ
- 仏
- Rela-tif
相對的商行爲
(さうたいてきしやうかうゐ)商行爲の一種にして、其行爲夫れ自身を以ては、直に商行爲と認めず、これを營業とするの觀念と相待つて、茲に商行爲たる性質を有するに至るもの、即ち相對的商行爲なり、又之を主觀的商行爲とも稱す、之を個別的に行ふ場合には、商行爲たる性質を有せず、之を營業的に行ふによりて、始めて商行爲たる性質を保有するものにして、其商行爲となるや否やは、要するに之を行ふ主格の意思如何によりて、決定せらるるもの也、即ち行爲を客とし、行爲を爲すものを主として、其行爲を爲すものの側より觀察するにより、主觀的商行爲の名ある所以なり、商法の規定によるときは、之等の行爲を營業として爲すときは、之を商行爲なりと規定し、營業として爲すときと云へる一定の條件を加ふるを以て、相對的の名ある所以とす、商法の定むる所によれば、下に揭ぐる行爲を營業として爲すときは、これを商行爲とす、即ち相對的商行爲とするなり、但し專ら賃金を得る目的を以て、物を製造し、又は勞務に服する場合は、此限りにあらず、即ち、□一賃貸する意思を以てする動産、不動産の有償取得、若くは質貨、又は其取得、若くは賃借したるものの賃貸を目的とする行爲、□二他人の爲めに製造、又は加工に關する行爲、□三電氣、又は瓦斯の供給に關する行爲、□四運送に關する行爲、□五作業、又は勞務の請負、□六出版、印刷、又は撮影に關する行爲、□七客の來集を目的とする場屋の取引、□八兩替、其他の銀行取引、□九保險に關する行爲、□十寄託の引受、十一仲立、又は取次に關する行爲、十二商行爲の代理の引受、以上の十二種を以て相對的商行爲と爲すなり。(商二六四條、主觀的商行爲の部參照)
- 英
- Relative commercial act
- 独
- relatives Handelsgeschäft
- 仏
- Acte commerciale relative
双對的不能犯
(さうたいてきふのうはん)双對的不能犯とは、未遂犯の場合に、刑法學上用ひらるる語にして、之を目的に關する双對的不能犯、手段に關する双對的不能犯との二種に區別せらる、目的に關する双對的不能犯とは、其行爲者が、現在の目的物に對しては、普通に其目的を遂げ得るに拘らず、特別の事情の爲、其目的を遂げ得ざる場合、例へば銃殺されんとする人が、偶々堅固なる甲冑を装ひたるが爲に、銃殺せらるるを免れたる場合の如し、又手段に關する双對的不能犯とは、現に撰ばれたる手段は、普通に其目的を遂げ得る能力を有すと雖も、特別なる事情の爲め、其目的を遂げ得ざる場合、例へば殺人の爲に使用せられたる短銃が、發射の瞬間に於て、偶々破裂して其用を爲さざりし場合の如きを云ふ、而して右の如き不能犯に對して、所罰すべきや否やに關して、主觀説と客觀説とに分る、主觀主義を主張するものは、双對的不能犯の場合に於ては、既に外部に現れたる動作によりて、犯意の有る所を確認する事を得るが故に、法律は、總べて之を罰するものと解すべしと爲し、主觀主義を主張するものは、曰く、實害の生ずるを俟たずして、未遂の場合を罰する所以は、全く實害を生ずる虞あるを罰するものなり、故に從來不能犯と稱し來れる場合に就きても、この標準に依りて一の區別を立て、害の危險あるは之を罰し、害の危險なきは之を罰せずと謂へり、以上の二説に對して、又別の説を爲すものあり、曰く、解釋上無罪を主張するには、常に法定要素の欠缺を其根據とせざるべからず、故に法律が各罪の成立要素と爲したる目的物、又は手段存在せずと云ふことを得る場合は、無罪なりと云へり、右の三説を比較するに、主觀説によれば、結局犯意の證明さへ立たば、之を罰すべしと云ふに均しく、解釋論としては、極端に失す、加之我刑法の主義にも反す、客觀説は、既遂未遂は、程度の差別にあらず、性質の差也と認めたる嫌あり、故に解釋上の議論としては、最後の説を以て、穩當を得たるものと信ず、我刑法上の解釋としては、双對的不能犯の場合は、總べて犯罪の構成要素を具備せざる者として、之を無罪とせざるべからず、然れども各法條に於て、特に其豫備、又は特別に右の如き場合も、罰すべき規定の存する時は、所罰せらるる事あるべきは勿論とす。
- 英
- Relative unsuitable crime
- 独
- relativ untauglicher Versuch
- 仏
- In-fraction peu faite relative
相當金額
(さうたうきんがく)或る場合に於て、法令の定むる方法による一定したる金額を、其特定の場合に於ける相當金額と云ふ。
- 英
- Legal sum
- 独
- regelmässige Summe
- 仏
- Somme légale
相當區
(さうたうく)或る場合に於て、法令の定むる方法による一定の區域を、其特定の場合に於ける相當區と云ふ。
相當官吏
(さうたうくわんり)法令の定むる所により、或る事項に關する職務權限を有する官吏を、其特定したる事柄に關して相當官吏と云ふ、例へば犯罪者あることを知りたるときは、相當官吏に告發すべしと云ふが如き場合に於ては、犯罪搜査の職務權限を有する官吏を指すものなるが如し。
相當裁判所
(さうたうさいばんしよ)法律の定むる所により、或る事件につき、管轄を有すと定まれる裁判所を稱して、或る特定の事件に對して、相當裁判所と云ふ、例へば訴訟の目的物の價格が二百圓以内なれば區裁判所、これ以上なれば地方裁判所は、其各事件に關して、相當裁判所と云ふ場合の如し。
- 英
- Competent court
- 独
- gesetz-liches Gericht
- 仏
- Tribunal compétent
相當事項
(さうたうじかう)ある場合に、法令の定むる方法による一定せる事項を、其場合に於ける相當事項と云ふ、例へば政府に對する或出願を爲すべき場合に、法令に於て其書式を定め、相當事項を記入すべしと云ふ場合の如し。
- 英
- Legal affairs
- 独
- gesetzliche Thatsache
- 仏
- Affaires légales
相當證印
(さうたうしやういん)法令によりて、或る場合に押捺すべしと定められたる證印を、其場合に於ける相當證印と云ふ、例へば政府が、或る事項を許可するに當り、其許可狀には、何々の職印を以て證印すべしと、定まれる場合の如し。
- 英
- Legal seal
- 独
- gesetzliches Siegel
- 仏
- Sceau légal
相當代價
(さうたうだいか)法令に規定する方法によりて定る或る物、又は權利の對價を、其物又は權利の相當代價と云ふ、例へば政府が物件を拂下ぐるに當り、其拂受人に對して、相當代價を何日迄に納付すべきことを法令によりて定まれる場合の如し。
- 英
- Legal price
- 独
- fester Preis
- 仏
- Prix légal
藏置期限
(ざうちきげん)倉庫、又は其他の場所に或物を藏置する爲めに定めたる期限を云ふ、例へば倉庫營業者が、寄託物に關して、寄託者との間に於ける其保管期間を、何箇月間と定めたるが如き場合に、其期間を稱して藏置期限と云ふが如し。
- 英
- Term of deposit
- 独
- Frist des Unterpfands
- 仏
- Temps de dépôt
藏置貨物
(ざうちくわぶつ)倉庫其他の場所に藏置保管する貨物を指稱す、例へば倉庫營業者が、寄託者の委託によりて、保管する貨物の如し。(保税倉庫法參照)
- 英
- Goods in deposit
- 独
- anver-trautes Gut
- 仏
- Biens déposés
壯丁名簿
(さうていめいぼ)市町村長が、每年戸籍によりて徵兵適齡者を調べ、徵兵令第二五條による屆書と照合して作成する壯丁者の名簿也、徵兵事務條例によれば、市町村長は、每年戸籍簿により、前年十二月一日より、其年十一月三十一日迄の徵兵適齡者を取調べ、徵兵令第二五條の屆書に對照し、壯丁名簿を作り、二月十五日迄に島司、又は郡長に差出し、島司郡長は、點檢の後、之を一徵募區に取纏め、前年假決の諸名簿と共に、聯隊徵兵署、又は警備隊區徵兵署に提出すべきものとす。(徵兵事務取扱條例二一條)
- 英
- Conscription aged persons' list
- 独
- Liste der Wehrhaften
- 仏
- Liste des majeurs
藏匿
(ざうとく)藏匿とは、故意を以て或る人、又は物の所在を不明ならしむる行爲を總稱す、主として刑法上用ひらるる所のものにして、例へば罪人を藏匿したる場合、又は幼者を略取誘拐して、藏匿する場合の如し、以上の場合に於ける藏匿の意義は、俗に隱し場所を與へ、若くは他人の發見を妨ぐる行爲を稱するものにして、例へば船底、又は倉庫内に潜伏せしめ、或は隱れ場所を與へずとも、其服装容貎を變ぜしめて、發見を妨ぐる場合も、尚藏匿と云ふべきなり。(刑一〇三、二二七條)
- 英
- Concealment
- 独
- Einheimhaltung
- 仏
- Recèlement
雙方行爲
(さうはうかうゐ)法律行爲の分類に關する一種にして、當事者雙方の意思表示の關連合一によりて、效力を生ずる法律行爲を稱して、雙方行爲、又は雙面的行爲と云ふ、例へば契約、婚姻等の如し、單に意思表示のみは、未だ以て雙方行爲を爲さず、雙方行爲たるには、必ず、其雙方の表示したる意思が、或る一點に於て合致することを要す、例へば契約として成立んには、必ず申込者と承諾者と意思一致を要するが如し、然れども雙方行爲は、必ず契約のみなりと斷定すべからず、雙方行爲にして、所謂集合行爲なるものあり、此行爲は、數多當事者の意思表示が、關連合一するものなるも、其合一たる法定により、多數決によるものなり、彼の會社に於ける創立總會の決議の如きは、集合行爲の例なりと謂はる。
- 英
- Bilateral action
- 独
- zwei-seitige Handlnng
- 仏
- Acte bilatérale
雙方的商行爲
(さうはうてきしやうかうゐ)法律行爲にして、當事者雙方にとりて、商行爲となるものを雙方的商行爲と云ふ、商法は、商人たると非商人たるとを問はず、或る種の行爲は、すべて商行爲とすべきことを規定するものなるが故に、雙方的商行爲は、商人間のみの法律行爲と斷定すべからず、非商人間と雖も、雙方的商行爲を成立することあるべきは勿論なり、我商法の規定する所によれば、商法第二六三條に揭ぐる行爲は客觀的商行爲と稱して、商人たると、非商人たるとを問はず、商行爲と見做さるるが故に、該條に關するが如き場合は、雙方的商行爲を成立せしむること多し、換言すれば客觀的商行爲は、行爲夫れ自身に於て、商行爲たりと認めらるる者にして、其行爲の主格の商人たると、非商人たるとを問ふことなし、而して我商法の認めて、客觀的商行爲とするものは下の四種なり、□一利益を得て讓渡す意思を以てする動産、不動産、若くは有價證券の有償取得、又は其取得したるものの讓渡を目的とする行爲、□二他人より取得すべき動産、又は有價證券の供給▲約、及び其履行の爲めにする有償取得を目的とする行爲、□三取引所に於てする行爲、□四手形其他の商業證券に關する行爲即ち之なり。(商二六三條)
- 英
- Objective commercial act
- 独
- zweiseitiges Handelsgeschäft
- 仏
- Acte commerciale bilatéral
贓物
(ざうぶつ)犯罪に依りて獲たる物件を贓物と稱す、第一に物件と云ふが故に、物以外の權利の如きは之を包含せず、然れども物たる以上は、動産たると不動産たるとを問はず、又其物件は、直接に犯罪に依りて獲たることを要するが故に、例へば竊取したる物は贓物なりと雖も、其竊取したる目的物と、交換せられたる他の物件、又は其對價たる代金の如きもをの含まず、但し贓物の上に、工作を加へたる場合に於て、其加工の爲に、新なる所有權が發生せざる限りは、贓物たるを妨げず、第二に所罰行爲に依りて獲たる事を要するが故に、所罰行爲たる以上は、重罪、輕罪、違警罪の如何を問はず、第三に犯罪を直接の手段として得たる物件なる事を要するが故に、犯罪の構成要件たる犯意、又は責任能力を缺きたる者の所爲によりて得たる物件は、犯罪に依りて得たる物件と稱するを得ざるが故に、贓物にあらず、第四に犯罪に依りて得たる物件と稱するは、其物件の保有を得、又は之を繼續する事に依りて成立する罪の目的物に限る者にして、物の授受如何に拘はらず、行爲自體に依りて、直に成立する罪、換言すれば、犯人が犯罪と前後したる犯罪以外の行爲より完全なる所有權を收取し、之が返還の請求を受くることなき場合に於ては、其物は犯罪に依りて得られたる物件と稱する事を得ず、例へば賭博の賭錢、密淫者の賣春料の如きは、贓物と云ふ事を得ず、贓物の實例としては、強竊盜によりて得物件、詐欺取財罪、委託物費消罪等の目的物は、其重要なる者とす、贓物に關する罪の刑法上の制裁としては、強竊盜の贓物たる事を知りて之を受け、又は寄藏故買し、若くは牙保を爲したる者は、一月以下三年以下の重禁錮に處し、三圓以上三十圓以下の罰金を附加す、此罪を犯したる者は、六ケ月以上二年以下の監視に附せらるべし、詐欺取財、其他の犯罪に關したる物件なる事を知りて、之を受け又は寄藏故賣し、若くは牙保を爲したるときは、十一日以上一年以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加せらる。(舊刑三九九、四〇一條)
- 英
- Stolen goods
- 独
- gestohlener Artikel
- 仏
- Biens volés
造幣規則
(ざうへいきそく)明治三〇年勅令第一三八號を以て公布せられたる造幣の件に關する規定にして、此規則による時は、金貨幣の製造を請はんとするものは、造幣局に之を託することを得べく、貨幣製造の爲めに、造幣局に輸納する地金は、其量目一百匁以上とす、地金の品位及性質は、試驗の上之を定めらるべきものとす。
- 英
- Regulation of coinage
- 独
- Münzanordnung
- 仏
- Règlement de coinage
造幣局
(ざうへいきよく)造幣局は、大藏大臣の管理の下に、貨幣の鑄造、舊貨幣の鑄潰、賞牌の製造、地金銀の精製分析、及び諸鑛物の試驗に關する事務を掌る官署なり。造幣局官制は、明治二六年勅令第一三六號を以て公布せられたる、造幣局の組織、權限に關する件を定めたるものなり。
- 英
- Mint
- 独
- Münze
- 仏
- Mon-naie
造幣局官制
- 英
- Government organization of mint
- 独
- Behördeordnung der Münze
- 仏
- Organisation de la monnaie
造幣權
(ざうへいけん)造幣權とは、貨幣鑄造の權にして、現今我國に於ては、政府の獨占する權利なり、抑も貨幣の鑄造なるものは、必ずしも其性質上政府自らこれを爲すを要するものにあらず、之を他に委任し、又は外國の貨幣を採りて自國の貨幣と爲すも、必ずしも國家主權の性質に反するものにあらず、然れども貨幣の品質、數量は、國民經濟上最も重要なる關係あるものなるが故に、進步したる國家に於ては、槪ね國家自ら之を行ふを常とす、我國の貨幣法も、亦其第一條に於て、貨幣の鑄造及發行の權は、政府にのみ屬することを規定せり、私人が之を鑄造するは、刑法上の犯罪なり、但し私人より地金を輸納して、金貨幣の鑄造を乞ふものあるときは、政府ぱ一定の手數料を徵して、其鑄造の義務を負ふものなることは、造幣規則の定むる所なり。(造幣法一條)
- 英
- Right of coinage
- 独
- Münz-recht
- 仏
- Droit de coinage
造幣者
造幣者とは、造幣權を有するものを指稱す、我國に於ては、前説明の如く、造幣に關する權は、政府の占むる所なれば、政府は即ち造幣者なりとす。
- 英
- Coiner
- 独
- Münzer
- 仏
- Mon-nayeur
雙務契約
(さうむけいやく)契約なる法律行爲を或る觀察點より分類して、片務契約と、雙務契約の二種に區別す、双務契約とは、當事者雙方が、債務を負擔することを約する契約を云ふ、例へば賣買契約、交換契約の如きこれなり、契約の雙務なるや、將た片務なるやを決定するは、須らく契約締結の當時に於て、當事者雙方が、債務を負擔せるや否やの狀態に於てすべきものにして、後日變更したる狀態によるべきものにあらず、故に契約成立の當初に於て、單に一方のみが、義務を負ひるたるものなる場合には、假令他の一方が、後日附屬したる或る事實より、義務を負ふに至りたればとて、決して片務契約が變じて、双務契約とをるべき者にあらず、要するに契約成立と同時に、其效力の生じたる際に於て、双方が義務を負擔したるや否やを觀別し、義務を双方に負擔したる場合を双務契約と云ふ、此片務契約なるや、双務契約なるやの區別の實益は、危險負擔の問題、同時履行の抗辯、又は能力等の適用に關して差異を生ずるものとす。
- 英
- Bilateral contract
- 独
- synal-lagmatischer Vertrag
- 仏
- Contrat bilatéral
創立總會
(さうりつそうくわい)創立總會とは、株式會社、又は株式合資會社が、創立に際して開く株主總會を稱するものなり、其事項の詳細は、創業總會の條下に於て説明したるを以て、此項目を參看せらるべし。(商一三一條乃至一四一條)
- 英
- First general meeting
- 独
- erste Generalversammlung
- 仏
- Assemblée générale première
造林
(ざうりん)造林とは、或る土地に樹木を植付けて、森林と爲すことを云ふ、、我森林法によれば、森林にして森林法發布以前より無立木となり、又は荒廢に屬するものは、主務大臣に於て、期限を定め造林を命ずることを得べし、公有林及社寺林にして、其經濟の保續を存し、又は荒廢の恐れあるとき、又私有林にして、荒廢の虞れあるときは、主務大臣に於て、其營林に關する方法を指定することを得べく、右等の指定方法に背き、伐木を爲したるものには、主務大臣は、其伐採を停止し、伐木跡地に造林を命ずるものとす、此場合にも其造林を怠りたるときは、政府に於て其造林を行ひ、其費用を徵收し得るものとす。(森林法三、四、五、五五條)
- 英
- Forest establishment
- 独
- Forst-festsetzung
- 仏
- Etablissement du bois
造林者
森林法の規定を遵守して、森林事業を爲すものを造林者と云ふ、森林法によりて、政府より其荒廢地に造林を命ぜられたるものは、其部分に限り二十五箇年間以内、地租、及び公課を免ぜられんことを出願するの權を有す。(森林法五六條)
- 英
- Forest establisher
- 独
- Forst-stifter
- 仏
- Fondateur du bois
造林設計書
造林設計書とは、國有林野法施行規則第九號書式によりて作成する、造林事業に關する設計を詳記せるものを云ふ、而して其造林に關する豫定圖面を、造林豫定圖と云ふなり。
- 英
- Design of forest establish-ment
- 独
- Anschlagsschrift der Forst-festsetzung
- 仏
- Dessin de l'établissement du bois
造林豫定圖
- 英
- Proposed drawing of forest establishment
- 独
- Vorherbestimmte Zeichnung der Forstfestsetzung
- 仏
- Dessin de l'établissement du bois
爭論
(さうろん)二人もしくは二人以上の間に於て、意見の衝突ある狀態を稱す、意見の衝突ならざるべからざるが故に、各目の例斷力に關するものたるを要す、單に事實陳述の齟齬の如きは、未だ以て爭論と云ふを得ざるなり。(爭の部參照)
- 英
- Dispute
- 独
- Streit
- 仏
- Dispute
詐害行爲
(さがいかうゐ)事實を詐り、虚構し、隱蔽して、故意に他人の財産に損害を與ふるの行爲を指稱す、然れども民法上の詐害行爲と云ふは、稍其意義を狹くし、即ち債務者が債權者を害することを知りて、法律行爲を爲したることを稱して詐害行爲と云ふ、例へば乙債務者が甲債權者に對して、金千圓の債務を負ふ場合に於て、將に其辨濟期の迫らんとするに當り、債權者の裁判執行を避け、而して債權者の一般擔保を減少せしめんことを計り、故意に他人に向つて其財産の全部、又は一部を賣却契約する如き行爲は、茲に所謂詐害行爲と云ふなり、此場合に於て、害を受けたる債權者は、詐害行爲の取消を裁判所に訴を以て請求することを得、之を稱して詐害行爲の廢罷と云ひ、其取消を裁判所へ求むるの權利を稱して、詐害行爲廢罷訴權と云ふ。(詐害行爲廢罷訴權の部參照)
詐害行爲廢罷訴權
(さがいかうゐはいひそけん)債務者が、債權者を害する事を知りて、法律行爲を爲したる時は、債權者に於て、其法律行爲の取消を裁判所に請求する事を得、債務者が、債權者を害する事を知りて爲したる法律行爲を稱して、詐害行爲(參照を要す)と謂ひ、其取消を稱して、詐害行爲廢罷と云ひ、債權者が其取消を裁判所へ求むる權利を稱して、詐害行爲廢罷訴權と云ふ、此廢罷訴權を行ふは、下の如き要件を必要とす、□一取消すべき債務者の法律行爲の成立が債權者を害すること、詐害行爲は其成立により、債務の履行を不能に至らしめ、又は之を不確實ならしむるものたるを要す、例へば債務者が賣渡しを約したる家屋、若くは地所を、其賣買登記を爲す以前に、他人に贈與し、其贈與の登記を爲すときは、履行を不能ならしむ、又債務者が、自己の財産を減少すべき契約を取結び、其全債務を辨濟する資力を失ふときは、履行を不確實ならしむ、斯く履行を不能に至らしめ、または不確實ならしむるものは、其有償たると無償たるとを問はず、詐害行爲たることを得べきものなり、斯くの如き結果を生ぜざるときは、債權者を害することなきを以て、廢罷訴權の原因となることを得ざるや明かなり、□二債務者の故意に出でたる行爲なるを要す、債務者は、法律行爲を成立せしむるの結果、債務の履行を不能に至らしめ、又はこれを不確實ならしむることを知りて爲したることを要するなり、債務者は、右の如き故意あるや否やは、法律行爲を爲したるの一事を以て當然推測し得べきものにあらず、これ即ち法律行爲の性質と、之を爲す當時に於ける事情より推定すべきものにして、取消しを求むる者に於て、明確ならしむるを要す、例へば債務者が其動産を抛棄し、又は無償にて其不動産を他人に讓與し、債務を辨濟するに足るべき資産殘留せざることを明にせば、債務者に於て、其結果債權者を害することを知りたるものと認めて可なるも、若し之が爲め債務者をして、辨濟の資力を失ふに至らしむべき狀況の存することを、明かにすること能はざるときは、法律行爲が假令無償の贈與なりとするも、之を以て直に債務者に故意ありしものと推定するを得ず、□三相手方もしくは轉得者に詐害の故意あるを要す、法律行爲により直接、又は間接に利益を得たるものなきときは、其取消の結果を債務者以外の人に及ぼすことなし、故に債務者に故意あれば、直に其法律行爲を取消すことを得べし、然れども其法律行爲により、直接又は間接に利益を得たるもの有るときは、之に對しても取消の結果を及ぼすにあらざれば、債權を保全するの效を生ぜず、法律行爲により、直接に利益を受くべきものは相手方なり、間接に利益を受くる者とは、相手方より法律行爲の目的を移轉せられたるもの云ふ、轉得者即ちこれなり、而して相手方、もしくは轉得者に對して、取消の效力を及ぼすには、其相手方、又は轉得者に故意あるを要す、相手方は、即ち法律行爲の當時に於て、債權者を害するの結果を生ずることを知りたること、又轉得者は、其轉得の當時に於て、其事を知りたることを必要とす、若し相手方が之を知らず、轉得者も、其當時に於て之を知らざるときは、債權者は廢罷訴權を行ふを得ず、若し相手方がこれを知らずして、轉得者が轉得の當時に於て之を知りたるとき、如何なる結果を生ずべきや、此場合に相方手方は、廢罷訴權に遭遇することなきは當然なり、轉得者は如何、法律の明文には、相手方又は轉得者が云々とあり、相手方は知らざるも、轉得者に於て惡意あるときは、之に對して取消の結果を及ぼすことを得べきは明白なり、□四取消すべき法律行爲は、財産權に關するものなることを要す、此取消權は、總べての法律行爲に適用するを得るものにあらず、財産權以外の事項を目的とする法律行爲にして、債權者を詐害すべきものあるべし、親族權に關する法律行爲これ也、例へば養子緣組、隱居の承認、家督相續の承認により、債權の履行を不確定ならしむることあり、されど之等には、廢罷訴權を行ふを認められず、蓋し債權保全の目的を以て、親族關係に變更を及ぼすは不當なればなり、之等の場合に、債權者を保護するの規定は、親族編、及び相續編中に揭げられたり、故に債權編に關する詐害行爲廢罷訴權は、財産權に關する以外の法律行爲に及ぼすことを得ざるものとす、以上の四條件は、此訴權の行使に缺くべからざる必要なる條件なりとす、而して廢罷の效力としては、初めより其法律行爲を無效ならしむるの效果を生ず、然れども此效力は、廢罷訴權を實行したる債權者のみの利益の爲めに生ずるものにあらず、總べての債權者は、平等に其利益を受け、例へば一の不動産讓渡を取消せば、其不動産は原狀に回復せられ、債務者の財産中に戾り、總べての債權者は各自の有する債權の額に應じ、其不動産の賣得金よりして、辨濟を受る事を得、決して取消を爲したる債權者のみに、利益を享受せしむるものにあらず、此訴權行使の方法は、裁判所に訴を以て請求し、裁判を受くるにあらざれば、其效力を生ぜず、而して此訴權を行使し得る期間は二年にして、債權者が取消の原因を覺知したるときより二年間に、これを行ふにあらざれば、時效により訴權消滅するものとす、又行爲の時より二十年を經過するときは、取消の原因あるを覺知せざるときと雖も、時效によりて之を消滅せしむるものとす。(民四二四條乃至四三六條)
詐欺
(さぎ)詐欺とは、虚僞の事實を表白して、他人の錯誤(錯誤の條參照)を誘起し、又は之を持續せしむるを云ふ、其要件を槪説すれば、□一虚僞の事實を表白すること、虚僞の事實を捏造し、又は眞實の事實を隱蔽するを云ふ、故意に實在せざる事實を實在すと表白するこに外ならず、茲に故意と云ふは、確定したる故意、不確定なる故意を包含す、故に虚僞なることを確知して、虚僞の表白をなし、又は眞實なることを確知せずして、眞實に反する表白をなしたる場合を含む、事實の捏造、又は隱蔽は、單純なる意見、又は希望に就きての陳述と混同すべからず、意見、又は希望の表白は、全く無根なる時と雖も、詐欺を構成することなし、眞實に反して過去、もしくは現在の事實を陳述するは、常に事實の虚構にして、意見の陳述にあらず、未來の事實を豫言するは、意見の表白に過ぎず、然れども未來の事實を豫言するに當りて、他人をして之を信ぜしむる爲め、過去又は現在の事實を虚構するは、事實の虚構たること明白なり、□二他人の錯誤を誘起し、又は之を持續せしむること、虚僞の表白は、他人を錯誤に陷れ、又は他人をして既に存在する錯誤を持續せしむるの效果を生ぜざるべからず、虚僞の表白あるも、他人が之を信ぜざるとき、又は錯誤あるも、其錯誤が虚僞の表白に起因せざるときは、詐欺を成立せず、□三他人の錯誤を誘起し、又は之を持續せしむるの故意あることを要す、故意なくして爲したる虚僞の表白は、一の戯言に過ぎず、之が事實上他人を錯誤に陷入るるも、詐欺とならず、故意を以て錯誤を誘起し、又は之を持續せしむるを欺罔と云ふ、□四錯誤を利用して他人を害する意思あること、單純なる欺罔は、詐欺にあらず、詐欺に法律上の效果を結付くるは、虚僞の表白に依りて誘起し、又は持續せしめたる錯誤を利用して、他人を害するの意思あるによる、他人を害するの意思は、通常不正に自己、又は第三者を利益するの意思として現はるるものなり、以上は詐欺の成立に缺くべからざる要件とす、而して詐欺は、欺罔者の豫望したる結果の異るに依り、法律上の效果を異にす、刑法に於ては、欺罔に依りて不正に財産上の利益を得ること、殊に錯誤を利用して、他人の財産を騙取することを詐欺取財の罪と爲し、これに刑罰を科す、民法に於ては、欺罔に依りて法律行爲的意思表示を爲さしめたる時、其意思表示を瑕疵あるものと爲し、表意者をして之を取消すことを得しむ、刑法上に於て罰すべき詐欺と、民法に於て意思表示の取消原因となるべき詐欺は、敢て其本質を異にするものにあらず、兩者共に欺罔を要件とし、又欺罔の手段につき兩者の間に區別を爲すべきものにあらず、同一の行爲が、刑法に於て詐欺として論ぜらるると同時に、民法上に於ても、詐欺として論ぜらるることを得べきや勿論なり、刑法上の詐欺には、特別の條件を必要とし、民法上の詐欺は、之を除外すと論ずるが如きは、謬見と云はざるべからず、元來民法と刑法とが、其領域を異にするは、其規定する所の法律的效果の異るに依るものなり、故に同一の事實に對して、民法上の效力を連結すると同時に、刑法上の效力を連結することを妨げず、即ち詐欺による意思表示が、民法に於て取消し得べき法律行爲たると同時に、刑法上に於て罰すべき詐欺取財を構成ずることあるべきは當然なり、彼の刑法に於て詐欺取罪を構成するものは、民法上に於て法律行爲たるを得ずと論ずるは、獨斷的に空理を談ずるに外ならず、且つ夫れ意思表示が法律行爲として、成立すべきや否やの問題は、專ら民法に於て解決すべきものなり、刑法は、刑罰と云へる法律上の效力を定むるを以て其本領となし、意思表示の效力の有無は、其關する所にあらず、刑法上犯罪となるべきものは、法律行爲たることを得ずと論ずるが如きは、刑法に於て民法上の效力を定めんとするものにして、事を辨へざるの甚だしきものと云はざるべからず。(民九六條、刑二四六條)
詐僞
(さぎ)詐僞は、前項に於て説明したる詐欺とは、多少其意義用例を異にす、詐欺とは、主として意思表示を以てする虚僞の事實を表白するものなりと雖も、詐僞は、意思表示のみならず、事實行爲と雖も、人を詐るがためにせられたる行爲を包含せしむるに用ふるを例とす、例へば刑法に於ける往來妨害罪に關して、汽車、又は舶舶の住來を妨害する爲め、詐僞の標識を爲し、云々と用ひ、又は議員選擧法に於て、詐僞の方法を以て、投票をなし云々と用ふる場合の如し。(舊刑一六六條、衆議院議員選擧法八六條)
詐欺取財罪
(さぎしゆざいざい)舊刑第三九〇條の規定に曰く、「人を欺罔し、又は恐喝して、財物若くは證書類を騙取したるものは、詐僞取財の罰と爲し、三ケ月以上四年以下の重禁錮に處し、四圓以上四十圓以下の罰金を附加す」と、所謂詐欺取財とは、不法に自己又は第三者をして、財産上の利益を收得せしむる爲め、他人を欺罔、又は恐喝して、他人の財物證書類を自己、又は第三者の保有に移すことに依りて、他人の財産に損害を與ふることを意味す、今本罪の成立條件を槪説すれは、□一他人を欺罔、又は恐喝したることを要す、欺罔とは、他人を錯誤に陷らしめ、又は既に陷りたる他人の錯誤を、更に堅固にすることを云ひ、錯誤とは、眞實と相違する觀念を意味す、例へば贈與を賣買と誤解するが如き、無償の貸借を債貸借と誤解するが如きは錯誤なり、或る説に依れば、電車の車掌の目を掠め、無錢にて乘込みたるものあることを車掌が知らざるときは、單純なる事實の不知にして、詐欺を構成すべき錯誤にあらずと、?、詐欺の手段は、過去の事實の虚陳は勿論、將來の事實に係る場合に於ても、尚欺罔と云ふことを得べし、例へば將來に於て、必ず此土地の上に、鐵道の敷設あるべしと主張し、以て他人に不實の主張を信用せしめたるときは、同じく欺罔と云ふことを得べし、又人格を詐り、例へば、乙が甲の名を詐るが如き、又は財産上の資力を詐りたるが如き場合をも包含す、又希望、意見と雖も之を詐り、單純なる判定と同時に、認議し得べき事柄の主張を包含する場合は勿論、單純なる判定、即ち物の評價、又は物の品質に關する意見の表示、例へば物の價格、又は品質を過大に稱贊し、他人をして不實の主張を信ぜしめたるが如き場合も含まる、次に欺罔の手段は、必ずしも行爲によることを要せず、不行爲(沈默)に依りても亦行ふことを得べし、但し不行爲、即ち沈默は、其眞實を告ぐる法律上の義務ある場合に限る、恐喝とは、總べて數人をして、直接、又は間接に危害を蒙むるべきことを信ぜしむることに依りて、意思實行の自由を制限することを意味す、例へば或る物を余に異へざれば、他日衆人の面前にて汝に恥辱を與ふべしと云ふが如きを云ふ、而して前示の欺罔による騙取と、恐喝による騙取との異る點は、前の場合は、被騙取者に於て、自己の行爲の原因に關して錯誤ある事を要し、後の場合は之に反して、被騙取者に於て自己の行爲の原因に關し、錯誤ある事なく、自己の行爲が、他人の強制に基き、餘儀なくされたること認識するを要す、□二不法に自己、又は第三者をして、財産上の利益を取得せしむる目的に出でたることを要す、財産上の利益を取得するとは、財産の價値を增殖することを意味す、又不法の利益とは、總べて此利益に對し、法律上請求權なき場合を總稱す、然れども苟も既に法律上の請求權が存在する以上は、之が行使方法に於て、欺罔恐喝の手段あるも詐欺取財と云ふことを得ず、例へば債權者が、債務者に對して、債務の辨濟を爲さざれば、執達吏を以て差押を爲すべしと恐喝するも、斯がる場合は、權利行爲なるが故に、本罪の關係する所にあらず、茲に一の注意すべきは、假令法律上の請求權を有するも、其請求名義によらず、別途の請求名義によるときは、不法の利益と云ふを得べし、例へば貸金辨濟の請求權あるものが、其負債者より、賣買代金の前拂に託して、金員を請求するが如し、□三他人の財物又は證書類を騙取することに依りて、他人に財産上の損害を與ふることを要す、他人の財物とは、他人の所有に屬する有形物を指し、動産、又は不動産を包含す、又證書類とは、汎く財産上の利益の得喪、移轉、變更、消滅を證明する所の文書を總稱し、其材料の紙片木片たると、將た金屬その他の物件たるを問はず、財産上の損害とは、財産上の債値が減少することを云ふ、故に一面に於て財物を失ふも、被欺罔者に於て、同時にこれに相當する對價を得るときは、財産上の損害ありと云ふことを得ず、例へば欺罔により、甲會社の株券なりと誤認して、乙會社の株券を買取りたるも、若し甲乙何れの會社の株券も、市價同額なりしときの如きは、財産上の損害を來さず、故に詐欺取財にあらず、□四自己、又は第三者をして、物の保有を得しめたること、法文に所謂騙取とは、他人の保持より、自己、または第三者の保持に移すことを意味し、騙取と強取との區別は、他人が保持を移すことを承諾すると否とによりて別る、而して證書類の騙取とは、既に作成せられたる證書は勿論、新に他人をして證書を作成せしめて、自己に交付せしむる場合をも包含するものとす、後の場合は、被欺罔者に於て、證書の性質を知りて之を作製すると、または請願書なりと誤信して、借用證に署名捺印するが如き場合とを包含す、□五恐喝又は欺罔は、▲▲、及び證書類騙取の手段たることを必要とす、換言すれば、兩者の間に因果の關係なかるべからず、而して苟も此關係の存在する以上は、被欺罔者自身が、財産上の被害者たると、兩者其人を異にするとは問ふ所にあらず、要するに被欺罔者と、財産上の被害者とは、必ずしも一致することを要せず、但し此場合に於ては、▲欺▲▲は、被害者の財産を處分し得べき事實上、又は法律上の關係に於て在ることを必要とすべきのみ、次に欺罔と騙取との間に、因果の關係あることを要するが故に、例へば欺罔の結果、財物の贈與を受けたるときは、詐欺取財を以て論ずべきも、之に反し、假令欺罔の手段を用ふるも、贈與者に於て、單に請求拒絶の煩累を避くる爲め、或は乞食に對する單純なる慈善心より爲したる贈與を受くるは、詐欺取財にあらず、以上説示したる所は、詐欺取財罪の成立に缺くべからざる要件なり、而して之に準じて、刑法上準詐欺取財罪を規定せり。(刑二四六乃至二五一條、並に準詐僞取財の部參照)
遡及力
(さくきゆうりよく)法律命令の制定ありたる場合に、其法令の效力を制定以前の事前に連結せしめて、一定の效力を與ふる事を遡及力と稱す、法令は、既住に遡らざるを原則とす、若し法律が、總べて遡及力を有すものとする時は、人は皆其適從する所を知るを得ず、社會の平和を害する甚しと云はざるべからず、何となれば、吾人の行爲にして後日公布せられたる法令によりて、覊束せらるべきものとする時は、吾人は常に、不安未定の狀態にあるものと云はざるべからざれは也、然れども國家は、其政策の必要上、特別なる場合に方ては、法令に遡及力を有せしめて、其公布以前の行爲に效力を附せしむるの必要あることあり、例へば民法の親族編に規定せられたる家族の範圍を、民法制定前より事實上同一の戸主の下にあるものを、家族と看做すと定めらるる場合の如き之なり。
作業會計法
(さげふうくわいけいはふ)明治二三年法律第一七號を以て公布せられ、造幣局、印刷局、製鐵所、電信燈臺用品製造所、廳島鑛山專賣局等の、作業所の其事業を經營する爲めに、固定資本、据置運轉資本を置き、作業上の收入及其附屬雑收入は、作業の費用に充つること等に關して、特別の會計を立てしむる事を規定したるものなり。
錯誤
(さくご)當事者の觀念と、事實との不一致なる場合を稱して錯誤と云ふ、彼の心裡留保の場合の眞實の意思と、表示との不一致は、表意者の故意によりて生じたるものなれども、錯誤は、故意なくして不慮に生ずる眞意と事實との齟齬を云ふ、換言すれば、當事者の認識が、實際と符合せざるを指す、甲が一の家屋を賣らんとせるに、その家屋は他の家なりと誤信して、之▲買はんと云へる場合には、乙の意思表示に錯誤ありと云ふべき也、錯誤は、種々の方面に於て、法律上の效果に影響を及ぼすもの也、刑法の領域に於て、犯意を阻却するに依つて犯罪を不成立に至らしめ、私法の領域に於ては錯誤の有無により、法律行爲の效力に重大なる區別を生ずるが如き、最も重要なる事例あり、先づ民法の領域に關するものより説明せんに、民法上に於ける錯誤に、相手方の起因する場合と、否らざる場合とあり、詐欺に依らざる錯誤は、□一法律行爲の要素に、錯誤ある意思表示は無效也とは、民法の規定する所也、抑も法律の目的は、行爲者が法律行爲に依りて得んとする利益を保護するにあり、故に法律行爲の要素の如何は、行爲者の利益の如何によつて決せらるべき也、行爲者の利益は、法律行爲の性質、即ち法律行爲が贈與なるか、賣買なるか、遺言なるか等に依りて、之を知るを得べく、又取引の慣習により、或は各個の場合に存する特別の著眼點によりて、之を知ることを得べし、故に意思表示者の利益が、意思表示の或る點に密接の關係を有し、其點なき時は、其法律行爲を爲さざるべき事明白なる場合には、其點は法律行爲の要素をなすものなり、換言すれば、意思表示者が、其法律行爲に缺くべからざるものと爲したりと認むへき原素を、法▲行爲の要素と云ふ也、法律行爲の相手方たるべき人が、要素たることあり、否らざることあり、有償行爲は、通常相手方を選ぶものにあらず、然るに無償行爲の如きは、相手方の何人たるに著眼するものなりとす、例へば贈與の如きは、受贈者其人に著眼するが如し、又法律行爲の目的たる物の品質の錯誤は、法律行爲の要素の錯誤にあらず、物の品質如何は、行爲者の鑑定すべきものなり、行爲者が、鑑定を誤りたればとて、行爲に影響を及ぼすべき理なきなり、若し行爲者にして、一定の品質を欲せば、相手方をして、特別の保證を爲さしむるを可とすればなり、又錯誤に事實上の錯誤と、法律上の錯誤あり、例へば連帶債務とは、債務を分擔するものなりと信じて、連帶債務を負ふが如きは、法律上の錯誤なり、眞實は、連帶債務なるを單純なる共同債務と誤りて、債務を負ふが如きは、事實上の錯誤なり、錯誤が、法律行爲の要素に關するときは、其法律上たると、事實上たるとを區別するの要を見ず、故に我民法は、之を區別せざるなり、蓋し人は、法律を知らざるべからず、法律の不識を以て、其適用を免るる能はざるは論なしと雖も、實際に於ては、法律を知らざるもの多く、又法律の不識は、場合によりては、行爲者の過失なりと云ふことを得ればなり、錯誤によりて法律行爲の無效となるは、相手方にとりては迷惑なりといはざるべからず、その迷惑も、錯誤者に過失なきときは致し方なしと雖も、若し錯誤者に過失あらば、相手方を救擠するの方法なかるべからず、即ち錯誤者に過失あらば、錯誤者は相手方に對して、損害の賠償を爲さざるべからざる也、若し錯誤者の過失にして重大ならば、錯誤者は、錯誤の故を以て法律行爲の無效を主張することを得ざるものとす、□二詐欺による錯誤の場合を説明せんに、(詐欺の如何なるものなるやに就きての説明は、詐欺の部を參照せらるべし)前説明の如く單純なる錯誤は、法律行爲の要素に存するにあらざれば、意思表示の效力に影響を及ぼさずと雖も、詐欺によれる錯誤は、法律行爲を取消し得べきものとし、且つ錯誤が法律行爲の要素に關すると否らざるとを問はざるなり、故に詐欺による意思表示に就きては、法律は絶對的に取消し得べきものとする也、以上は民法に關する錯誤の場合なれども、なほ進みて刑法上の錯誤に關して説かんに、曰はく、「罪となるべき事實を知らずして犯したるものは、其罪を論ぜず」と、こは即ち犯罪成立に關する錯誤の影響を明かにしたるものにして、茲に所謂罪となるべき事實を知らずとは、犯罪構成又は刑罰加重の物的要素の存在するを知らざるを云ふ、即ち事實の錯誤にして、犯罪を構成すべき物的要素に係る場合は、犯罪の故意を阻却せしめて、之を不成立に終らしむ、例へば人を獸と信じて銃殺するが如きは、殺人の故意あることなし、之に反して單に刑を重くすべきに止まる物的要素に係る場合は、唯其部分の故意を缺くのみ、犯意全體を阻却する事なし、例へば親たるを知ずして、人を殺すが如き場合には、其親殺罪として、刑を加重せらるべき故意を缺くも、殺人罪たるの責を免るるを得ず、次に法律規則を知らざるを以て、罪を犯すの意なしと爲す事を得ずと、之即ち法律の錯誤に關する場合にして、法律の不知とは、一定の所爲を罪とする法律の有無、及び刑の輕重を知らざるを云ふ、例へば迷信の爲め親を殺すに當り、其罪となるや否やを知らず、又は死刑に處せらるるか、無期徒刑に處せらるるかを知らざるが如きは、法律の不知の通例とす、事實の錯誤と異り、法律の錯誤又は不知は、犯罪の犯意を阻却せざるを原則とす、刑罰法令の知不知は、犯意の存否に關係なし、故に或る所爲を罰する法令無しと誤信して、之を實行したる場合と雖も、責任なしとすることを得ず、或る所爲を罰する法令ありと誤信して、これを實行したる場合ありと雖も、責任ありとすることを得ず、刑罰法令以外の諸法令の錯誤は、刑法の關係に於ては、事實の不知となるなり、例へば民法上權利移轉の效力を生ぜざる他人の不動産を、既に自己に屬せりと誤解して、他人に賣却するも、冐認の犯意なし、何となれば、他人の不動産たる事實を知らざればなり。(民九五、九六條、刑七七條二項三項、及び四項)
削除
(さくじよ)削除とは、削滅、除去の意にして、例へば或る約款中の一條項を削去するが如き、または新法を以て舊法中の一條文を削除變更するが如きはこの用例なり。(刑訴二一條參照)
差押
(さしおさへ)差押とは、國家強制力の適用によりて、或る物件、又は權利に對し、法令の定むる方法により、其權利者をして、處分權を行ふ事を得ざらしむる總べての行爲を云ふ、民事訴訟法に關する場合あり、刑事訴訟法に關する場合あり、又行政法に關する場合あり、之等に共通なる差押の性質は、公力による處分權の制限に外ならず、□一民事訴訟上に關する差押は、債權者請求を保全する爲に、執行の目的につきて權務者の處分權を失はしむる行爲也、動産に對する強制の方法は、差押を以て爲すものにて、其差押は、執行正本(債務名義の部參照)に揭げたる請求を債權者に辨濟する爲、及び強制執行の實用を償ふ爲めに必要なるもの以外に及ぼすを許さず、然れども範圍外の差押と雖も、當然無效にあらず、其差押の不當なることを理由として、異議の申立を爲し、其差押の效力を失はしむるにあらざれば、自由に其差押物を處分するを得ず、差押が適法に實行せられたるときは、債務者は其財産につきて、爾後、處分權を行ふことを得ず、有體動産に對する強制執行に於て、差押の目的となり得るものは、債務者の占有中にある有體動産、若くは債務者の占有し、又は提出を拒まざる第三者の占有中にある有體動産のみなり、差押を禁じたる物件は、民訴法に列規する所にして、之等の物件は、個人の生活職業上の必要、一家の秩序を保ち事業の秘密を保つ等の必要に基くものなり、其他已に差押となりたるものは、更に差押の目的物とならず、即ち同一の物につきて、二重の差押を許さず、有體動産の差押の手續は、原則として執達吏が、其物を占有して之を爲す、即ち債務者の占有を奪ひ、自ら差押の目的物を占有するを原則とす、債權及び其他の財産權に對する強制執行に就きて、其差押の目的となり得るものは、債務者が、第三者に對して有する金錢の支拂を目的とする債權、及び金錢以外の有體物、又は有價證券の引渡、若くは給付を目的とする債權、右に記載する以外の財産權に及ぶ、以上各種の權利に對する差押は、執行裁判所の差押命令によりて之を爲す、(差押命令の部參照)金錢以外の物件の引渡、又は給付を目的とする債權に對する場合に、動産を目的とする請求に關する差押は、執行裁判所より、一面は債務者に其債權の處分を禁じ、他面に於て、第三債務者に對して、動産を執達吏に引渡し、若くは給付することを命令するを以て爲し、又不動産に關する場合は、差押債權者は先つ不動産を保管すべき保管人の選任方を、不動産所在地の區裁判所に申請したる後、執行裁判所に對し、其保管人に、不動産を引渡すことを、第三債務者に命ずべき引渡命令を受けんことを申立て、此命令によりて、差押の實行を爲すべきものとす、また船舶に對する差押は、不動産に對する強判執行の方法を準用すべきものとす、□二刑事訴訟に關する差押とは、裁判所が刑事に關する訴訟に於て、或る物件を保全し、若くは沒收の執行を爲さんが爲め、他人の所持内より、強制力を以て、證據物又は沒收物件を裁判所の所持に歸せしむる爲に爲す行爲を云ふ、此差押に關する刑事訴訟法の精神は、動産物に限るものにして、不動産に關するときは、檢證の方法に出でざるべからず、刑事差押の效力は、物件を所持者の占有より分離して、之を裁判所の占有に移すにあり、然れども其物件の上に、所有權其他の物件を有する者は、爲に其權利を奪はるることなきを原則とす、□三行政法上の差押は、主として税務行政に關するものにして、納税義務の強制方法として定むる所の滯納處分なり、納期を過ぎて租税を納付せざるものあるときは、督促令狀を發し、差押賣却等の手續を定む、差押の手續は、民事上の強制執行に做ふものとす。(民訴五六四條以下、刑訴九二條、國税滯納處分の部參照)
差押金錢
(さしおさへきんせん)強制執行によりて、執達吏の差押へたる金錢を稱して差押金錢と云ふ、執達吏が、債務者の金錢を差押へたる▲は、金錢債權の保護を充たす爲めに、之を直に債權者に引渡すべきものとす、而して執達吏が、債務者より金錢を差押へて、取立てたるときは、債權者に之を引渡すと否とを問はず、債務者は金錢債務の支拂を爲したるものと見做さる、故に執達吏の金錢占有によりて、其數額に相當する債務者の債務は、消滅するものとす、多數債權者の爲めに、金錢を差押へたる場合も亦同じ、執達吏金錢を取立てたるとき、其金錢につきては、他の有體物の差押の如く、他の債權者は、配當要求を爲すことを得ず、又要求を爲すの機會なし、何となれば執達吏は、直に差押債權者に引渡し、之に對する辨濟となり了るものなればなり。(民訴五七四條四項)
差押額
差押額とは、強制執行によりて、執達吏の差押へたみ金錢物件等の數量の額を謂ふ。(民訴六〇二條)
差押債權者
(さしおさへさいけしんや)強制執行法上に於て、債務名義に基き、執行機關に對して、強制執行手續を要求したる權利主體を差押債權者と云ふ、差押債權者は、必ずしも判決手續に於ける原告にあらず、被告と雖も、差押債權者たり得る場合あり、また判決以外の債務名義に基き、強制執行を要求する事あるべき故に、債權者債務者は、必ず原告被告と云ふの意義にあらず、また民法上に所謂債權者と、強制執行の場合に於ける差押債權者とは、同一權利者にあらざる事に注意するを要す、即ち差押債權者と云ふは、強制執行債權者と云ふの意義なり、而して此差押債權者の何人なるやは、債務名義、若くは執行名義によりて定まるものにして、其權利者は債務名義に明示せらるるを必要とするが故に、差押債權者は、必ず其執行正本によりて確定せらるべきものとす。(民訴五七五條)
差押調書
(さしおさへてうしよ)強制執行法により、執達吏が差押を實行したる場合に於て、そのことの顚末を記したる書面を差押調書と云ふ、差押調書を作成するは、執達吏の職務にしてまた權限なり、執達吏は、其執行行爲を爲したる時は、必ず調書を作成せざるべからず、調書には、其作成の場所、年月日、執行に參與したる人の表示、及び署名捺印、調書を執行に參與したる者に讀み間かせ、又は閲覽せしめたる事の表示、執達吏の署名捺印、其他執行行爲の目的物、及び執行行爲に關し、目擊したる重要なる事項を記載することを要す、之等の事項を調書に記載するは、執行行爲の狀況を明確にし、後日債權者、債務者其他の利害關係人が、執行の當否につき、爭ある場合の證據を保存するの目的に出でたるものとす、執行調書に、右述べたる要件の欠缺あるときは、其調書は公債證書たる效力を生ぜざるものとす、されど其調書の效力生ぜざればとて、そのなせる執行行爲自體までも、無效視するにあらざることを注意すべし、何となれば、執行調書は、執行行爲につきての唯一の證據方法にあらず、故に調書の要件の欠缺あるも、執行行爲の當否は、他の證據方法に於て、之を證明することを得るものなればなり。(民訴五四〇條)
差押命令
(さしおさへめいれい)債權者が、金錢債權の強制執行に際し、第三者に對して有する債權、もしくは其他の財産權に對し、差押を實行せんとする場合に、裁判所に申請をなし、債務者に對して、裁判所より發せらるる所の差押ふる旨の命令を、差押命令と云ひ、其債務者に送達せらるる命令を記載したる文書を、差押命令書と云ふ、差押命令の效力は、第三債務者に對し、債務者に金錢の支拂を爲すを禁ずること、債務者に對し、債權の處分、殊に其取立を爲すべからざることを禁ずるものとす、其他の財産權に對しても、此方法は準用せらる、差押命令は、裁判所の職權を以て、第三債務者、及び債務者に送達し、債權者には、送達の旨を通知すべく、差押の效力は、第三債務者に對する送達を以て其效を發生す、差押命令を申請する手續は、債權者より、其差押ふるべき債權の種類、數額を開示して、之が差押を求むる旨の申立に依りて爲すべく、其他は強制執行の總則の規定に從ふべきものとす。(民訴五九八、五九五、五九六條)
差押命令書
指圖債權
(さしづさいけん)指圖債權とは、必す證書によりて、一定の債權額を表示せられ、且つ其證書自體に債權者、若くは其指圖せる者に對し、支拂を爲すべき旨を、表示したる債權を云ふ、例へば爲替手形、約束手形、小切手は、商法の規定により、一定の形式上の條件に從ひ、作成せらるる證書にして、組織上當然指圖債權の一種に屬し、其他倉庫營業者の發する預證券、及び質入證券、又船長が發する船荷證券、運送營業者が荷受人に交附する貨物引換書等は、指圖式債權たるを普通とす、その他民事上の債權と雖も、反對の規定なき以上は、指圖式と爲すことを得るものなり、指圖債權は、必ず證券を必要とするなり、蓋し其指圖式なること、又は所特人拂なることは、證書に之を明記するにあらざれば知り難きを以て、當事者間に指圖債權と爲すべき確約存するも、若し證書にして之を明記せざるときは、法律上これを指圖債權と見做し、その效力を與ふるを得ざるなり、指圖債權の讓渡は、裏書の方法を以て、之を爲すべきものとす、民法の規定によれば、指圖債權の讓渡は、其證書に讓渡の裏書をなし、之を讓受人に交附するにあらざれば、之を以て債務者、及び其他の第三者に對抗するを得ざるものとせり。(民四六九、三六六條)
指圖證券
(さしづしやうけん)指圖證書を表示したる一定の證書を指圖證券と云ふ、指圖證券の存在には、必ず證書の存在を必要とするものなり、故に指圖證券は、常に指圖證券の存在を俟つて成立するものと云ふべし、この點彼の無記名債權と同じく、證書債權の一種に屬し、記名債權と異る點なりとす。(證書債權、記名債權の部比較參照)
詐稱
(さしよう)詐稱とは、眞實を詐るの謂にして、主として身分、職業、族籍等に關し詐る場合に用ひらる、刑法の身分を詐稱したる罪に關する制裁としては、官署に對し、文書又は言語を以て、其屬籍、身分、氏名、年齡、職業を詐稱したるものは、二圓以上二十圓以下の罰金に處せられ、又官職、位階を詐稱したる者は、十五日以上二ケ月以下の輕禁錮に處せられ、二圓以上二十圓以下の罰金を附加せらるべし、茲に官署とあるも、官署を代表する一人の官吏をも包含するものとす、又屬籍と云ふは、原籍寄留籍を意味し、身分とは、華、士族、平民の區別の外に、戸主、家族、夫妻、親子等人事上の位地を指稱す、其詐稱の手段として、法律に於ては、文書又は言語を以てと記載し、其方法を限定せるを以て、形容等により詐稱したる場合は、處罰することを得ず、茲に詐稱と云ふは、即ち其眞實に反したる屬籍、身分を詐り稱したる場合を指すものとす、次に人を殺す意に出で、詐稱誘導して危害に陷れ、死に致たしる者は、故殺又は謀殺を以て論ぜらるべし、この場合に於ける詐稱なる語も、眞質に反することを知りて、誘導の方法を以て詐り稱ふるの意なりとす。(刑二三一、二三二、二九七條)
雜居監房
(ざつきよかんぼう)監獄署に於て、多數の囚徒を同一室に雜居せしむる監房を稱す、我が監獄則によるときは、刑事被告人は、各罪質に從ひて、其監房を別異にし、其中に就き年齡に從ひて、左の如く區別せらるるものとす、□一滿十二歳以上十六歳未滿の者、□二滿十六歳以上二十歳未滿の者、□三滿二十歳以上の者の三段に別異す、故に同一監房内に雜居せらるるものは、例へば竊盜犯とか云ふが如く、同罪質にして、且つ年齡の或る範圍内に於けるものとす、雜居監房を開扉するには、相當官吏の立會を要し、雜居監房に下付する書籍は、一人同時に三冊を超ゆるを得ず、但し字書は、此限りにあらず、其監房内に在りては、各自の席次を定めらるる也、從來各國の制度に於て、囚徒を拘禁するの方法に二種あり、其一は所謂雑居制度にして、晝夜同一室に多數の囚徒を拘禁するものとす、此方法は、容易に惡習を傳播し、監獄をして、犯罪學校たらしむるの感を呈するの弊あれども、亦監獄經費を減ずるの利あり、これに正反對の方法を獨房制と云ひ、畫夜共に一室に一人を置くの制度なり、此方法は、惡習を傳播せしむるの機會なしと雖も、經費に於て非常の多額を要するの不利益あり、我國現今は、以上の折衷に出で、主として、雜居制度により、幾分か獨房制を加味し、特別に罪質の兇惡なるものに對して此方法を採り、力めて惡癖の傳播を避けたり(監獄則一三條、監獄則施行細則二六條、二八條)
册子
(さつし)通俗冊子と云ふときは、文書、圖畫等の印刷物を製本したる物件を指す、然れども法令の用例に於ては、單に文書を指す場合あり、例へば刑法に於て、風俗を害する冊子圖畫云々との場合に於て、其册子なる言語は、製本したるもののみならず、一枚の文書と雖もこれに包含せらる、又郵便規則に於て冊子と稱するは、單に製本したる文書類を指すが如し。(刑二五九條、郵便規則二一條)
殺傷
(さつしよう)人を死に致し、又は其肉體機能を損傷せしむることを稱して殺傷と云ふ、詳言すれば、殺害創傷の意味にして、殺害は、人を死に致したる場合、創傷は、人を篤疾、又は廢疾に致したる場合、疾病休業に至らしめたる場合等、即ち肉體を表見的、若くは、不表見的に損傷せしめたる場合を含むものとす。(刑二一三、二四一條)
殺人罪
(さつじんざい)汎く殺人罪と云ふときは、人を殺害することに依りて構成する犯罪を總稱す、刑法に於ては、謀殺、故殺、誤殺、過失殺等の種類を認む、各場合に關する特別の犯罪構成條件は、各項目の下に説明すれども、今汎く殺人罪に關する共通なる條件を擧げんに、□一所爲の目的體は、生命ある人たる事、生前に人なく死後に人なし、人の他の動物と形體上異る所は、吾人の常識を以て、大體之を識別することを得べし、唯茲に研究を要するは、出生の時、及び死の時なり、何となれば、この期間内に於けるものは、即ち生息せる人間なればなり、生出の時期に關しては、古來數説ありと雖も、胎兒が自己の肺を以て、母體より獨立して呼吸作用を爲し得るの狀態に達したるを、出生とするの説を正當とす、故に獨立呼吸を爲し得る前に、之を殺すと雖も、殺人罪として問はるることなし、而して苟も人間の母體より分娩せられたる嬰兒は、其形體の如何に拘はらず、等しく之を刑法上人問と稱すべく、彼の畸形兒と稱し、普通人間の形體に缺くる所あるも、等しく殺人罪の目的たることを得るものとす、且つ其分娩せられたる嬰兒が、果して自己の生命を繼續し得るや否やは、問ふ所にあらず、恰も老衰者の生命瞬間に迫るも、猶人間と稱し得る如く、生命を繼續し得る見込なき産兒も、亦人間と稱し得るなり、死の時期は、即ち人の呼吸機能の永久に息止したる時を稱するものにして、多く議論するの餘地なし、□二殺人の所爲あることを要す、謀故殺の場合には、殺害の故意あるを要し、過失殺の場合は、過失に基因して、人の生命を奪ひたるの行爲あるを要するは勿論とす、殺人とは、人間の生命を奪ふとの義にして、殺人の所爲は、作爲例へば人を銃殺、斬殺するが如き、又は不作爲、例へば食を與へずして、餓死せしめたるが如きによりて、犯すことを得、次に殺人の行爲は、必ずしも被害者の身體に對する有形的働作たる手段によるを要せず、被害者の精神に對する無形的手段によりても、之を行ふことを得べし、例へば畏怖の結果、或は睡眠障害の結果、其人に死を來さしむるが如き、總べて殺人の行爲ありと云ふことを得べし、精神的手段によりて、死を來さしめ得るや否やは、醫學上の説明を待たざるべからざるも、果して死を來し得るものとすれば、其手段を包含するや勿論とす。(刑一九九條乃至二〇三條)
査定石數
(さていこくすう)酒類、醤油の造石税に關して、收税官の査定したる石數を稱して、査定石數と云ふ、酒類の造石數は、容器の容量により、一容器每に其現在する酒類の總量につき、之を査定するものとす、其査定は、酒類製成の時に於て之を爲し、又滓引減量を控除する場合には、査定石數の百分の二を以て限度とす。(酒造税法八條、同施行細則八條乃至一四條)
差別
(さべつ)二個、若くは二個以上の事物を比較するときに、若し其一の性狀と、他の性狀とが、劃然區別せられ得る如きものなる時は、之等の事物は差別を有すといはる、差別的とは、總べて差別相、又は差別性を有するものに適せらるる形容詞なり、差別の反對は無差別、又は混同等と稱せらる。
- 英
- Difference
- 独
- Unterschied
- 仏
- Différence
參加
(さんか)參加とは、或る行爲に關して、主たる當事者以外の者が、其行爲に加はることを稱す、法律上主として用ひらるるは、民事訴訟に關する參加、商法上の手形に關する參加、行政法上耕地整理施行に關する土地所有者の參加等なりとす、民事訴訟法上の參加に、主參加、從參加、告知參加、指名參加等の別あり、主參加とは、他人間に權利拘束となりたる訴訟の目的物の全部、又は一部を自己の爲めに請求する第三者の訴、又は他人間に權利拘束となりたる訴訟に於て、其當事者が共謀して、債權者たる第三者の權利を害せんとする場合に、其詐害の行爲を除かんが爲めにする、第三者の爲す訴を云ふ、主參加は、當事者の訴訟を補助するが爲めにあらずして、全く自己の權利を保護する爲め、自ら當事者となり、獨立せる訴を起すものとす、從參加とは、他人の間に權利拘束となりたる訴訟に於て、其一方の勝訴により、法律上の利害關係を有するものが、これが勝訴を期する爲め、その訴訟に加入して補助するを云ふ、故に從參加は、主參加の如く、獨立の訴を起すものにあらずして、一方の補助者として、訴訟に參與加入する者なり、告知參加とは、本訴訟の當事者の一方より、其訴訟に關係せざる第三者に對し、訴訟を告知して、參加すべきことを催告し、之に應じて、第三者が訴訟に參加する場合を云ふ、此告知參加の場合には、本訴訟の當事者の一方、即ち告知者が、訴訟に於て敗訴したるときは、該被告知者に對して、擔保もしくは賠償の請求を爲し得べしと信じ、又は第三者より反對に、この請求を受くべき恐れある場合に限るものとす、指名參加とは、被告より第三者に催告し、本訴訟に參加せしむるものにして、前段の告知參加に稍近しと雖も、其指名を爲す場合の權利關係と、其目的とする所に差異あり、即ち指名參加なるものは、告知參加の如く、訴訟の補助を求めんとするにあらずして、其訴訟の結果は、自己の利害に關係する所少く、却て第三者の利害に關係多きを以て、之をして代つて其訴訟を爲さしめ、自己は其訴訟より脱退し、原告に對しては、義務を履行するの責を免れ、又第三者に對しては、勝訴すべき責を免れんとするを目的とするにあり、而して指名を爲す場合は、他人の名を以て物を占有する者が、訴を受けたる場合に限るものなれば、主參加とは、全く正反對の地位にあるものとす、商法上手形行爲に關する參加、及び行政法上耕地整理に關する參加は、其各項に於て説明すべし。(民訴五一、五三、六〇、六二條)
參加人
參加人とは、當事者間の關係に參與加入する者を云ふ、民事訴訟法に主參加人、從參加人とあるは其用例なり。(民訴五二、五四條等)
參加支拂
(さんかしはらい)參加支拂とは、爲替手形、約束手形に於ける支拂人以外の豫備支拂人、及びその他の者が手形の支拂を爲すことを云ふ、元來手形法上に於ける參加は、引受拒絶、又は引受人の破産の場合に於て、又は支拂拒絶の場合に於て、所持人が爲すことを得べき擔保請求、又は償還請求の權利を止め、之に依りて生ずる出費を避くると同時に、手形の信用を維持する爲め、當事者以外より入りて、手形上の法律關係に立つ行爲なり、而して參加支拂は、手形不拂の場合に於ける所持人の償還請求權の行使を止むる爲めに、また償還義務者の方面より云へば、その償還義務を免除する爲めに、手形當事者以外より入りて、その金額を支拂ひ、自己がその手形上の法律關係に立つものなり、外國に於ては、この參加支拂を名譽支拂と云ふ、蓋し手形不拂の場合に、當事者以外より入つて、手張上の債務を支拂ひ、その債務者の名譽を保護するの結果を生ずればなり。(商五〇八條乃至五一三條參照)
參加支拂人
參加支拂人とは、豫備支拂人、參加引受人、及び其他の者にして、參加支拂を爲せる者を云ふ、參加支拂人は、其支拂を爲したるときより引受人、被參加人、及び其前者に對する所持人の權利を取得するものとす。(商五一三條)
參加土地所有者
(さんかとちしよいうしや)參加土地所有者とは、耕地整理を行ふに當り、整理地區内に屬せる土地の所有者を云ふ、元來耕地整理とは、耕地の利用を增進するの目的を以て、其所有者が共同し、土地の交換、若くは分合、區劃、形狀の變更、及び道路、畦畔、溝渠の燮更、廢置を行ふを云ひ、耕地整理を施行する土地區域を整理地區と稱す、而して整理地區内に於て、御料地、國有地、及び官の用に供する土地以外の土地を所有せる者を、參加土地所有者と稱す、參加土地所有者は、整理施行の上は、從前の土地の面積、等位に準じて、換地を得べきものなり、されど參加土地所有者は、整理に關する費用を分擔する責あるものにして、其費用を完納せざるときは、市町村税の徵收に準じて收徵せらるることあるものとす。(三二年法八二號耕地整理法一七條)
參加土地原簿
參加土地原簿とは、整理施行の發起人の調製すべき帳簿にして、□一整理地區の總面積及地價總額、□二整理地區内に於ける土地の筆數、面積、及び地價の地目別合計並に一筆の平均面積、□三土地各筆の價格を評定したるときは、其價格、又は評價の標準、□四建物のある宅地、又は鐵道用地の如き、總べて特別の用途價値ある物の整理地區に編入せられあるときは、其用途價値、□五地區内に建物あるときは、其價格、及び表示、□六訴訟の目的となり居る土地あるときは、其訴訟の要領、□七官、公用に供する土地あるときは、其の用途等を記載すべきものなり。(耕地整理法施行規則三條)
參加引受
(さんかひきうけ)參加引受とは、爲替手形に於て、その支拂人以外の者、即ち豫備支拂人、及び其他の者が、手形の引受を爲すことを謂ふ、爲替手形の支拂人が、支拂を肯ぜず、又は引受けたるも、破産したる場合に、その手形の所持人は前者に對し、擔保の請求權を有するものなり、而して所持人が、此擔保請求權を行使せんとする場合に、豫備支拂人、及び支拂人以外の者が、好意を以て、引受人たるの地位に立つときは、茲に參加引受あるものとす、參加引受は、參加支拂と同じく、外國に於ては、或は之を名譽引受と云ふ、その意蓋し手形を振宛てたるに、支拂人に於て引受けを肯ぜざる如き場合に、振出人の名譽を保護する爲めに、なす行爲なればなり、所謂豫備支拂人とは、參加人として、豫め手形に記載せられたるものを云ふ。(商五〇〇條乃至五〇七條)
參加引受人
參加引受人とは、支拂人以外の者にして、參加引受を爲せる者を云ふ、參加引受人は、參加引受に依りて、支拂人が手形金額の支拂を爲さざる場合に、被參加人の後者に對し、手形金額、及び費用を支拂の義務を負ふ、而してこの義務を果したる參加引受人は、參加支拂人となり、被參加人、及び其前者に對する所持人の權利を取得するは勿論なりとす。(商五〇四條、參加支拂人の部參照)
三級選擧
(さんきうせんきよ)等級選擧の制度に於て、三級に位する選擧人が行ふ選擧を三級選擧と稱し、其選擧人を稱して、三級選擧人と云ふ、我市制の定むる所によれば、選擧人を別ちて三級とし、一級選擧人の外、直接市税の納額多きものを併せて、選擧人總員の納むる總額の三分の一に當るべきものを二級とし、爾餘の者を以て三級選擧人とす。(市制一三條一四條)
三級選擧人
産牛馬組合
(さんぎうばくみあひ)産牛馬組合は、同業組合の性質を有する公共組合にして、牛馬の改良、及び組合員共同の利益を計ることを以て其目的とし、郡市以上の區域によりて、その地域を定め、牛又は馬の生産に從事するものが、設置する所の組合なり。
産牛馬組合法
産牛馬組合法は、産牛馬組合に關する規定を爲したる法律にして、此法律によりて、組合を設置せんとするときは、其地區内に於て、組合員たるべき者の三分の二以上の同意を得、創立總會を開き、定款を規定し、地方長官の認可を受くべき者とす、但し牛の生産に從事するもの、及び馬の生産に從事する者、相合して組合を設置せんとするときは、各別に三分の二以上の同意を要するなり、又農商務大臣が必要と認むるときは、地方又は地區を指定して、組合の設置を命ずることを得べし、而して産牛馬組合は、半強制的組合なり、其組合の設置は、官廳より限制せらるる場合少しと雖も、同業者に於て、適法に其組合を設置したる以上は、他の同業者は、必ず組合員として加入せざるべからざる也。(三三年二月法二〇號參照)
産業組合
(さんげふくみあひ)産業組合とは、産業組合法によりて設置せられたる社團法人にして、信用組合、販賣組合、購賣組合、生産組合の四種に別る、産業組合は、組合員の産業、または其經濟の發達を企圖する爲めに設置せるものにして、今産業組合法によりて、其組織の大體を説明せんに、□一組合員は必要なる資金を貸附し、及び貯金の便宜を得しむることを目的とするものは、信用組合とし、□二組合員の生産したる者に加工し、又は加工せずして之を賣却する事を目的とするものを販賣組合とし、□三産業、又は生計に必要なる物を購賣して、之を組合員に賣却することを目的とするものを購賣組合とし、□四組合員の生産したる物に加工し、又は組合員をして、産業に必要なる物を使用せしむることを目的とするものを生産組合と云ふ、以上の四種は、即ち産業組合にして、其設立に關するもの、其他の規定は、總べて各種の組合に共通せらるるを原則とす、イ組合の設立に關する規定、産業組合は、七人以上にあらざれば之を設立することを得ず、組合の設立者は、定款を作りて地方長官に差出し、設立の許可を受くべきものとす、定款には下の事項を揭ぐるを要す、即ち□一目的、□二名稱、(名稱中には、其組織及目的を示めすべき文字を用ゆるを要す、□三組織、□四事務所、□五出資一口の金額及び其拂込の方法、□六第一回拂込の金額、□七剩餘金及び損失分配に關する規定、□八準備金の額及び積立の方法、□九組合員たる資格に關する規定、□十組合員の加入及び脱退に關する規定、十一組合の目的たる事業の執行に關する規定、十二存立時期、又は解散の事由を定めたるときは、時期、又は事由の十二項目は、必ず之を記載せざるべからず、組合の總數は、之を限定するを許さず、出資一口の金額には制限なしと雖も、必ず均一なるを要す、組合が設立の許可を受けたるときは、遲滯なく第一回の拂込みを爲さしむるを要す、この拂込ありたるときは、二週間内に設立の登記を爲すべし、ロ組合員の權利義務に關する規定、組合員は、必ず出資一口以上を有すべく、其有すべき總數は、十口を超ゆるを得ず、組合員は、組合の承諾あるにあらざれば、其持分を讓渡するを得ず、新に組合に加入したる組合員は、其加入前に生じたる組合の債務につきてもその責に任ず、ハ監理に關する規定、組合には理事、及び監事を置くを要す、理事、及び監事は、總會に於て組合員中より之を選任す、但し組合設立當時の理事、及び監事は、定款を以て定むることを得、理事の任期は三ケ年とす、監事の任期は一ケ年なり、理事、及び監事は總會の決議を以て、何時にても解任することを得、總會に關するものは、民法の法人の規定が、之に準用せらる、ニ加入、及び脱退に關する規定、無限責任組合に加入せんとするものは、總組合員の同意を得ることを要す、定款を以て組合の存立時期を定めたると否とを問はず、組合員は、事業年度の終(事業年度は一ケ年なり)に於て、脱退することを得、但し六ケ月前に豫告を爲すを要す、組合員は、組合員たる資格の喪失、死亡、破産、禁治産、除名によりて當然脱退す、除名に關する事由は、定款に揭ぐるにあらざれば其效無し、脱退したる組合員は、定款の定むる所により、其持分の全部又は一部の拂戾を請求することを得、持分の計算を爲すに當り、組合財産を以て、組合の債務を完濟するに足らざるときは、脱退したる組合員は、其負擔に歸すべき損失額を拂込むの義務あり、ホ解散に關する規定、組合は、定款に定めたる事由の發生、總會の決議、組合の合併、組合員が七人未滿に減じたるとき、組合の破産等によりて解散す、解散後の清算は、民法の法人に關する規定によるべきものとす。
産業組合法
産業組合法は、以上の産業組合に關して、規定せられたる法規なり。(三三年法三四號參照)
三權分立論
(さんけんぶんりつるん)三權分立説は、國權の作用に關する一派の議論にして、佛國のモンテスキューの唱導により、大に世上に傳播せられたるもの也、元來今日の立憲制は、英國に其源を發す、然るに英國人は、立憲制の原則を學理的に説明せざりき、獨り佛蘭西のモンテスキューは、英國の制度を學理的に研究して、立憲國一般の國法上の原則を立てん事を試みたり、其説明する所によれば、國權は立法、司法、執行の三權に分割せられて存するものなり、而して立法とは、法則を制定する權なり、司法とは、犯罪を罰し、個人の爭を決する權也、執行とは、和戰を決し、公使を派遣し、受理し、及び公共の安全を保持する權なりと云ふにあり、而してこの三權は、全く同等の位地にある對等獨立のものとなし、且つ獨立分離したる三個の權力は、全く異りたる自然人、又は法人之を掌握し、此自然人、又は法人は其作用につきて、各獨立不覊にして、他人の干渉を受くべきものにあらず、即ち立法の機關は、上下兩院より成りて、各拒絶權を有す、又執行機關も、立法權に對して拒絶權を有し、其意思に反する議決を拒むことを得るものなりとせり、以上はモンテスキュー氏が説の大要なれども、此三權分立説は、甚だ不完全なる點あり、此説によれば、三權は互に獨立の權にして、且つ其權力を執行する機關も、亦各獨立不覊にして、之を統一するものなきが故に、國家の權力は、單一なる性質を失ひ、國家は互に分別して、數多の人格となると云はざるべからず、且つ各國の實際に於て、國家の機關は、多少此作用を合せ行はざるものなし、故に三權分立説は、一方には國家の單一なる性質に屬し、他の一方には、事實に反するの説也とす、又此説の分類に依れば、現時に於ける行政なるものなし、されど數百年已に英國に行はれたる制度を學理的に研究し、以て現今の立憲國國法の一般原則を正當に理解する端緖を開きたるは、實にモンテスキュー氏の功績なれば、此功は決して沒すべきものにあらざるなり。(モンテスキュー著法律精神論十一卷第六章以下參照)
三后
(さんこう)三后とは、皇后、皇太后、太皇太后を奉稱す、所謂皇后とは、皇室典範第十六條の規定に基き、天皇の配偶者たる地位に立たせられたる御方を奉稱し、皇太后とは、先帝の皇后たりし御方を奉稱し、太皇太后とは、先々帝の皇后たりし御方を奉稱す、されば天皇の御母君、又は御祖母君は、必ずしも皇太后又は太皇太后たりと云ふ事を得ざる也。(刑一一六條)
三親等
(さんしんとう)親族關係の等級の一にして、三親等の實例としては、自己の曾祖父母、又は曾孫、自己の甥姪なりとす。(民七二五條、親等の部參照)
蠶種檢査法
(さんしゆけんさはふ)養蠶業の發達を保護する爲め、一般に不良蠶種の製造を禁止し、又は各場合につき、蠶種の檢査を行ふことに關する法律なり、本法に於て蠶種と稱するは、原種、及び製絲用種を指稱するものにして、原種は框製にせざるべからず、蠶種は、檢査に合格したる原種より産出したる蠶を用ふるにあらざれば、之を製造することを得ず、蠶種は、下に揭ぐる繭を以て、製造することを得ざるものとす、□一二蠶以上合同して作りたるもの、□二繭層片薄なるもの、及び形狀を失することの著しきもの、□三繭層の量、繭の全量百に對し一化性にありては十、二化性にありては七、多化性にありては六に達せざるもの、□四蠶兒の發育不良にして收繭の量著しく減少したるもの、□五蠶種製造者にあらざる者の飼養したる蠶兒より産出したるものの五種中よりは、元種を製造するを得ざるなり、蠶兒飼養者は、檢査に合格したる原種より産出したる蠶にあらざれば、飼養することを得ず、蠶種製造者は、收繭後、及び卵産後の二期に於て、原種にありては、繭、蛾及卵、越年する製絲用種にありては、繭及卵、越年せざるものにありては、繭の檢査を受けざるべからず、檢査に合格せざる蠶種は、蠶種檢査所に於て、直に之を燒棄せらる、自家用、又は學術研究の爲め、蠶種を製造するものは、本法の適用なし、而して檢査を受くべきものが檢査を受けず、又は檢査員の職務執行を拒み、若くは妨げたるものは、五十圓以下の罰金に處せらるべし。(三三年法四五號蠶種檢査法)
參政權
(さんせいけん)參政權とは、國民が自ら國家の機關たる地位を占め、國家の爲めに行動し得るの權利を云ふ、個人の參政權と、國家の機關としての行動とは、明かに區別せざるべからず、國家機關として、國家の權力を行ふは、個人の權利にあらずして、國家の權利なり、參政權の内容は、國家の權力を行使することを云ふにあらずして、國家の機關として、國家の爲めに行動し得べき地位を、國家に承認せらるることを要求し得るの權利を云ふなり、官吏が個人に命令し、租税を徵收し、刑罰を科するは、官吏たる個人の權利にあらずして、國家の權利を行ふなり、官吏の權利は、唯官吏たるの地位を、國家より認めらるるの權なり、國家に對して、地位の承認を要求し得べき權利が、參政權の内容を構成するなり、例へば選擧場裡に入りて投票を爲すは、個人が國家の選擧機關としての行動にして、自己の權利を行ふにあらず、其選擧すべき地位に立つことを、國家に對して要求するの權利は、即ち自己の權利として要求するものにして、これ即ち參政權の行使に外ならざるなり。(公權の部參照)
産婆規則
(さんばきそく)明治三二年勅令第三四五號を以て公布せられたる規則にして、其大要を摘記すれば、産婆は、産婆試驗に合格し、年齡滿二十歳以上の女子にして、産婆名簿に登錄を受けたるものにあらざれば、其業を營むことを得ず、産婆試驗は、地方長官に於て擧行す、一ケ年以上産婆の學術を修業したるものにあらざれば、産婆試驗を受くることを得ず、産婆は姙婦、産婦、褥婦、又は胎兒、生兒に異狀ありと認むるときは、醫師の診療を請はしむべし、産婆は、姙婦又は産兒に對して、外科施術を行ひ、産科器械を用ひ、薬品を投與し又は之が指示を爲すことを得ず、但し消毒を行ふが如きは此限にあらず、産婆にして堕胎の罪、其他業務に關する罪、又は禁錮以上の刑に處せらるべき罪を犯したるときは、地方長官は、産婆の業を禁止し、又は一年以内之を停止することを得。
産婆試驗
(さんばしけん)産婆試驗は、即ち産婆たるに相當する學術を有するや否やを試驗するものにして、地方長官は産婆試驗規則によりて、之を擧行するものとす、産婆試驗を受けんとするものは、滿二十歳以上の女子にして、一ケ年以上産婆の學術を修めたるものなることを要し、試驗の以前墮胎の罪、其他禁錮以上の刑に處せらるべき罪を犯したるもの、又は試驗に關する規則に違背したるものは、試驗を受くることを得ざるものとす、試驗願出の期日、擧行の期日、場所は、地方長官之を告示すべく、試驗科目は、學説試驗としては、第一正則の姙娠、分娩及其取扱法、第二正規姙褥の經過及褥婦、生兒の看護法、第三異常の姙娠、分娩及取扱法、第四姙婦、産婦、褥婦、生兒の疾病消毒の方法及婆産心得、實地試驗としては、實地試問、若くは模型評驗とす、學説試驗に合格したるものにあらざれば、實地試驗を受るを得ず、學説試驗に合格し、實地試驗に落第したるもの、又は實地試驗を受けざりしものは、次回以後の試驗に於て、實地試驗のみを受くることを得べし、産婆試驗を願出づるものは、收入印紙を以て試驗手數料金一圓を納むべし。(三二年内務省令四七號産婆試驗規則參照)
産婆名簿登錄規則
(さんばめいぼとうろくきそく)明治三二年内務省令第四八號を以て公布せられたる規定にして、産婆名簿の登錄に關する手續を定めたるものなり、産婆の業を營まんとするものは、其族籍、氏名、年齡、住所、産婆試驗に合格したる地方廳名、其年月日、開業地に關する事由を明記して願出で、産婆名簿に登錄を受くべきものとす。
産馬奬勵規程
(さんばしやうれいきてい)各府縣、又は北海道廳に於て、馬匹に關する聯合共進會、府縣廳共進會、又は之に準ずべきものを開催したる場合に於て、地方長官の請求に依り、必要と認むるときは、馬政長官は、審査長及審査官を命じて、出陳馬匹を審査せしむることあるべし、此場合に於て、其優等なるものには、褒賞を授くるものとす、褒賞は一等賞金牌、二等賞銀牌、三等牌銅牌、並に四等賞褒狀とし、賞牌を受けたるものには、併せて賞金を授與するものとす、又馬政長官は、下の一に該當する民有馬匹に、奬勵金を下附するものとす、□一馬政區管を通じて、有效の種牡馬證明書を得たるもの、□二官有種牡馬の種付檢査に合格したるもの、□三博覽會、共進會、又は品評會等に於て、褒賞を得たる馬匹これなり、其他馬政長官は、聯合共進會、廳府縣共進會、又はこれに準ずべきものの開設に際し、必要と認むるときは、其開設費の幾分を補助し、或は産馬改良上必要の場合には、團體又は個人に獎勵金を下附することあるべし。(産馬奬勵規程)
- 英
- Regulation of encourage-ment for horses-breeding
- 独
- Aufmunter-ungsregel der Pferdezucht
- 仏
- Règles de l'encouragement d'engendrer les chev-aux
蠶病豫防
(さんびやうよばう)蠶病豫防とは、蠶病豫防法により、蠶種製造者、養蠶者、生絲製造者、生繭の賣買若くは、殺蛹、乾繭に從事する者が、命令の定むる所により病蠶、蠁螟及其蛹を滅殺し、其他蠶病豫防の爲めに必要なる施設を爲すことを稱す、而して之が取締を爲す事務の費用は、府縣の負擔とす。(三八年二月法二二號蠶病豫防法)
- 英
- Precaution of the sickness of silkworms
- 独
- Prophylaxis der Seiden- wurmskrankheit
- 仏
- Précaution contre la maladie des vers à soie
殘餘財産
(ざんよざいさん)汎く殘餘財産と稱するときは、債權債務を計算して、差引殘額を指示するものなれども、主として法律上用ひらるるは、法人解散の場合に於て、現存する財産を以て、債務を償却したる殘餘の財産に對する場合なりとす、民法上の公益法人に關するものと、商法上の商事會社に關するものとあり、□一社團法人、又は財團法人にして、民法の規定によるべきもの、即ち公益に關する法人が解散したる場合には、其清算人は現務の結了、債權の取立及財務の辨濟を爲して、面して最後に殘餘財産を歸屬權利者に引渡さざるべからず、此場合に於ける殘餘財産の歸屬權利者は、何人なるや、民法の規定する所によれば、其財産は、定款又は寄附行爲(財團法人の部參照)を以て指定したる人に歸屬するものとす、定款及寄附行爲は、法人基本の規程にして、法人の存續する間は有效也と雖も、法人にして消滅せば、其基本たる規定は效力を失ふの理なれども、我民法は法人設立者の意思を重んじ、法人の殘餘財産處分に關しては、定款又は寄附行爲は、法人解散の後と雖も、其效力を有することを定めたり、次に定款又は寄附行爲を以て、歸屬權利者を定めざるときは、如何すべきやの問題を生ず、設立者若くは其相續人に歸すべきものとすれば、財産を取得せんが爲めに、濫りに法人の解散を行ひ、公益を害し私利を營むの虞あり、亦法人設立の趣旨にも反すべきなり、國家又は市町村に歸屬すべきものとせんか、公益を害することなきも、或る特別なる目的の爲の財産を、廣き公用の爲めにするものとなり、設立者の意思に合するを得ず、故に我民法は斯くの如き場合には、理事は解散したる法人の目的に類似する目的を有する者の爲に、其財産を處分することを得と定めたり、而して如何なる目的が解散したる法人の目的に類似するやは、困難なる問題にして、愼重なる判斷を要するを以て、理事は獨斷にてこれを爲すことを得ず、必ず主務官廳の許可を得ることを要す、且つ社團法人にありては、總會の決議を經ることを要するものとす、最後に、右の如く理事が類似せる目的の爲めに、財産を處分せざるときは、其殘餘財産は國庫に歸屬するものとす、□二商法上の商事會社に關する殘餘財産の處分方法は、合名會社たると、合資會社たると、株式會社たるとを問はず、清算人は、會社を組織したる社員、若くは株主に對して、其出資額に應じて分配すべきを原則とす、抑も會社解散の後殘餘財産として、社員、若くは株主に分配すべきものは、會社の總債權者に辨濟したる後、なほ殘剩する會社財産に限るべきは當然也、故に殘餘財産の有無、及び其總額は、總債權者に辨濟したる後に於てこれを知るを得べく、總べて殘餘財産の分配は、總債務を完濟したる後にあらざれば、分配するを得ざるは勿論のことなりとす、株式會社に於て優先株を發行したる場合に、定款に於て其優先權が、會社解散後の殘餘財産の分配に及ぶべきものと規定したるときは、其規定に從ふべきものとす。(民七二、七八條、商八五、二二九條)
市
(し)市とは、市制を以て設けられたる地方自治團體にして、自治團體中、最下級に位するものなり、市の生活目的は、その部内の行政事務を自治するにあり、自治とは、國家行政の一部を其團體が、自己の自存目的として遂行するを云ふ、(自治參照)市は、一定の地域を以て成立の要素とす、また同時に市の執行機關が、國の行政事務を執行するに就きては、行政區劃たり、市には一定の住民を有す、市住民なるものこれなり、(市住民參照)而して又市には、意思機關と執行機關との二ありて、市の行政を掌るものなり、(市行政參照)(二一年四日法一號市制)市有財産に屬するものにして、市が土地の所有權を有する場合に於て、之を市有地と云ふ、即ち市有地は、市の基本財産にして、之を維持する義務あるものとす、又市は斯かる財産其他市の收入を以て、市行政を行ふものとす。(市制八一條乃至八七條)
- 英
- City
- 独
- Stadt
- 仏
- Cité
市有地
- 英
- Municipal land
- 独
- Stadtsland
- 仏
- Terre municipale
私安警察
(しあんけいさつ)私安警察は、又尋常警察とも云ふ、即ち警察權の豫防する危害の性質が、國家其ものに關せず、主として私人の安寧に關するものを云ふ、例へば一個人が一個人に對し、身體、生命、或は財産の危害を加へ、又は加へんとするを防禦するが如き是なり。(警察及通常警察の部參照)私人警察は、私安警察と云ふに同じ、即ち高等警察、又は公安警察に對し、主として個人の身體、財産の安寧に對する危害を豫防する行政行爲なり、換言すれば、警察權の危害の豫防が、國家團體其ものに關するときは、高等警察にして、主として個人に對する危害の防壓にあるときは、私人警察なり。(公共警察の部比較參照)
- 英
- Police of private safety
- 独
- Privatsicherungspolizei
- 仏
- Police de la sûreté pirvée
私人警察
- 英
- Police for private safety
- 独
- Polizei für Privatsicherheit
- 仏
- Police pour les individus
自由
(じいう)由自とは、外的勢力に拘束せられず、自家固有の能力を正當に行使するを謂ふ、例へば或る物體が、自己以外の何等の力によりても妨礙せられずに、運動を營むときは、其運動を指して自由と稱す、又心意上に於ても、選擇の場合の如き、他より何等の覊束を蒙ることなく、隨意に其好む處を抽出するときは、彼れは選擇の自由を有すと稱せらる、政治上に於ても、一國民が他國民の支配を受けざるか、又は專制者の束縛を受けざるときは、該國民は自由を有すと稱せらる、又經濟學に於て自由といふは、個人が政府の干渉拘束を受くることなくして、經濟的行爲を營み得ることを指す、勞働の自由、保護貿易に對し、自由貿易と稱するが如き皆此例なり。哲學上自由意思の問題は、重要にして然も困難なる問題なり、即ち此自由てふことの意思に關する性質に就きての異論なり、意思の自由を論ずるものは曰く、吾人の意思は何等他の勢力に妨げらるることなし、自己は自己の好む所をなし得べく、即ち自己の行爲は、自己の意思の發動にして、他の發動にあらずと、然るに意思の非自由、即ち意思の必然説を採るものは曰く、各現象、又は事實は、其性質作用が物理的なると、生理的なると、將た心理的なるとを問はず、必ず何等かの原因によりて規定せられずといふことなし、吾人の現に有する心意も、吾人に先行する祖先より特殊的性質を遺傳し、吾人の屬する種屬より普通的特質を遺傳する外、現在外界の影響により規定せられ、宇宙間の他の現象の如く、その一定の先行事情を有し、必然に規定せられ居るものなりと、この兩者の説は、共に眞理なり、而して一見矛盾せるが如きも、哲學者其間に調和の存するを説きて曰く、意思は絶對に自由なるものにあらず、必然の範圍に於て許されたる自由こそ眞の自由なりと、尚自由と放縱とは、峻別せられざるべからず、自由は決して放縱を意味せず、法律上に於て自由と云ふも之と同じく、吾人が他より拘束制限を受けざる狀態を云ふものなり、而して人の自由は之を保護すること、文明國の通義にして、唯自由の拘束、若くは制限は、社會の安寧秩序を保維する爲め、法律を以て之を爲し得るのみ。(憲法二二條、民七一〇條)法律の範圍に於て自由意思と云へば、稍前説と異り、其發表の自由を云ふ、換言すれば、自由意思とは、吾人の意思に強制を受くることなくして、其欲するが儘に表示し得ることを云ふ、蓋し意思は内界の思索なり、之に對する制限あるべからず、唯之を發表する場合に於て、自由、不自由の限界を生ずるのみ。
- 英
- Liberty
- 独
- Freiheit
- 仏
- Liberté
自由意思
- 英
- Free-will
- 独
- freier Wille
- 仏
- Libre arbitre
自由營業
(じいふえいげふ)自由營業とは、國家、若くは公共團體の干渉を受くることなく、自由に行ひ得る業務を云ふ、例へば呉服商、米商と云ふが如し、之國家專賣、若くは國家の認可、又は許可を受け(例へば阿片の賣買の如し)て行ふ營業に對する語なり。(免許營業、及び營業の部參照)
- 英
- Free business
- 独
- Freiges-chäft
- 仏
- Affaires libres
自由刑
(じいうけい)自由刑とは、人の自由權を剝奪するの刑罰を云ふ、刑罰とは、刑事裁判官に依りて、犯罪を原因とし犯人に對して言渡されたる苦痛を云ふ、イ刑罰は、犯人が受くべき所の苦痛なり、苦痛とは、法益の傷害にして、詳言すれば、法律が保護する所の利益を、他の場合に於て保護を與ふる所の法規自身に依りて、傷害することを意味す、この點に於て、刑罰は損害賠償と異る、ロ刑罰は、犯人自身が享有する所の法益に對する傷害なり、故に犯人に對する傷害にあらざるか、又は傷害力、單に附屬的に犯人に關する場合に於ては、刑罰は存在せざる也、ハ刑罰は既往の法律違背に對して科せらるるものとす、而して刑罰は其目的上將來に及ぶと雖ども、常に既往に於ける違法の事實に對する法律上の結果として、科せらるるものたり、ニ刑罰は、國家が刑事裁判の機關に依りて科するものたらざるべからず、從つて行政官廳が爲す處分行爲の如きは、刑罰にあらざるなり、現行刑法に於ては、自由刑を左の如く分類せり、□一無期徒刑、□二有期徒刑、□三無期流刑、□四有期流刑、□五重懲役、□六輕懲役、□七重禁獄、□八輕禁獄、□九重禁錮、□十輕禁錮、十一拘留、十二監視之なり、而して無期徒刑、無期流刑は各終身、有期徒刑、有期流刑は各十二年以上十五年以下、重懲役、重禁獄は各九年以上十一年以下、輕懲役、輕禁獄は各六年以上八年以下、重禁錮、輕禁錮は各十一日以上五年以下、拘留は一日以上十日以下、監視は重罪の刑に處せられたる者は、別に宣告を用ひず、各本刑の短期三分の一に等しき時間を附せらるるものなり、輕罪の刑に附加する監視は之を宣告す、以上の無期流刑、有期流刑、重禁獄、輕禁獄はこれを國事犯者に科し、其他は常事犯者に科するものとす。(刑九條一〇條、一二條、一三條、一六條、一八條、二〇條舊刑六條乃至一〇條、六七條、六八條、四一年三月法二九號刑法施行法二條以下參照)
- 英
- Punishment of liberty
- 独
- Freiheitsstrafe
- 仏
- Peine de la liberté
自由權
(じいふけん)自由權は、分ちて數種となすことを得、身體、住所、及び文書の不可侵、身體的の動作の自由、經濟的動作の自由、精神的動作の自由等之也、(甲)身體、住所、及び文書の不可侵は、濫りに個人を逮捕處罰し、又は家宅に侵入搜索し、或は物體を差押ふることなからしめむが爲め、我憲法は個人の身體、住所、及び文書の不可侵を保護せり、□一身體の不可侵、茲に身體の不可侵とは、國家、及び國家が、法律に依るにあらずして、濫りに個人を逮捕、監禁、審問、處罰することなきを云ふ、近世の文明國に於ては、人の身體は濫りに國權の覊束を受くることなし、國民は國家に對し、其身體の自由を安全に保持する權利を有す、唯此自由は、法律に依り制限せらるる事あるべきのみ、凡そ逮捕其他の強制手段は、刑事の訴訟手段として犯罪の處罰、又は嫌疑の爲めに之を行ふことあり、又警察手段として、公共の安寧秩序、善良の風俗を維持せむが爲めに之を行ふ事あり、現今文明諸國の國法は、刑事訴訟、及び警察の手段として、逮捕、監禁、審問、處罰等を認むと雖も、又同時に法律を以て、之を行ふべき範圍と形式とを定め、官廳官吏の專恣に一任することなし、逮捕とは、運動往來の自由を束縛することを云ひ、監禁とは、一定の場所内に幽閉することを云ひ、審問とは、審理訊問することを云ふ、□二住所の不可侵、國民は法律に定めたる場合を除く外、其許諾なくして住所に侵入せられ、又は搜索せらるることなし、之を住所の不可侵と云ふ、住所とは、家宅、又は居宅を指示す、盖し住所は人の城壁なり、家宅の平和安全を保障せられざれば、人は一瞬たりとも其枕を高くする事を得ざるなり、敢て財産の損害を受けず、又は身體の自由を妨げられざるも、家宅の平和を害せられたるのみにて、人は非常の苦痛と損害とを感ず、之家宅の安寧を保護する所以にして、唯國家は其行政、事情の必要上、個人の家宅に侵入するの止むを得ざることあり、然も之が濫用なからしむるには、法律を以て其場合を限定し、其範圍と形式とを定むるにあり、□三信書の不可侵、個人は法律に定めたる場合を除く外、信書の秘密を侵さるることなし、之を信書の不可侵と云ふ、信書とは、郵便又は電信に依り、特定人間に意思を通ずることを云ふ、信書にして秘密を保つことを得ざらむか、當事者の不利損害は實に測られざるものあり、人は安心して意思を他人に通ずること能はざるに至らん、故に隔地者間交通の要具たる信書の秘密を保障し、他人殊に官廳官吏をして之を侵害せざらしむるは、頗る重要のことに屬す、唯夫れ必要あるときは、法律に依り例外を認むべきのみ、例へば犯罪の審問、其他の裁判上の必要に依る場合の如き之なり、(乙)身體的動作の自由、其主要なるものは、居住、及び移轉の自由之なり、□一居住の自由、國民は國家を組成する基礎なり、隨つて國民が構成する國家の版圖内に住居し得ることは、國民たる者の當然の權利にして、國家と雖も之を剝奪すること能はざるものとす、故に昔時に在りては、國家は國民を國外に放逐せしことありと雖も、今や國家は、自國の國民を國外に放逐することを爲さず、唯巳むを得ざるときは、國家に於て之を處刑するのみ、又外國より放逐せられたる自國の國民は、之を國内に收容せざるべからざると共に、自國の國民は犯罪を理由として、外國に引渡すことを避く、これに反して國家は一定の事由あるときは、外國人を自國より放逐することを得ると共に、其入國を拒絶し、又は犯罪を理由として、之を他國に引渡すことを得べきなり、之畢竟國民たる者は、其屬する國家の版圖内に居住する權利あるも、外國人は國家の認諾の下に居住し得るに過ぎざれば也、□二移轉の自由、移轉の自由には、イ脱籍の自由あり、即ち自國を棄てて他國の國籍を取得する事を得べし、但し一定の條件に從はざるを得ず、ロ外國居住の自由あり、蓋し國民は、從來の國籍を離脱し得る自由すら之を有するを以て、從來の國籍を保有する儘外國に居住するは固より、其自由なるべきは當然なり、ハ國内移轉の自由あり、即ち國民は、外國にすら移轉、移住するの自由を有す、其自國内に於て、彼所此所に移轉するの自由あるべきは當然なり、(丙)經濟的動作の自由、國民は、各自經濟的活動を爲し、其慾望を充たさむ爲に經營する自由を有することは、近世諸國の憲法の認むる處なり、營業の自申是也、然れども公益に關する職業、又は事業に至りては、國家は特に法規に依り、特許、許可等の條件を定むるものあるを見る、(丁)精神的動作の自由、之を類別すれば左の如し、□一信教の自由、我國に於ては安寧秩序を妨害せず、及び臣民たる義務に背かざる限りに於て、信教の自由を認めたり、□二出版の自由、印刷術の發明と共に、個人の精神的活動は出版によりて表はる、著作印行物是なり、我國に於ては自由に印刷物を公にすることを許し、唯危險、又は不法の印刷物を公にしたるときは、爾後に於て之を禁壓するものとす、□三言論、集會、及び結社の自由、言論、集會、及び、結社の文辭は、共に其意義漠然たるを免れずと雖も、大體に於て言論とは、口頭を以て思想を外部に發表することを云ひ、集會とは、多數人が共同の目的に依り、一時集會することを云ひ、結社とは、多數の人が其合意に依り、共同の目的の爲めに、多少永續すべき團體を組織することを云ふ、このものは共同的にして、善良なるときは、社會の進步發達に缺くべからざる手段たるに拘はらず、君權強大を極めたる時代に於ては、其專制を行ふ妨害と爲るものとし、極端に之を禁遏したる結果、其反動として、近世諸國の憲法はこの自由を保障し、法律に依りてのみ、之を制限することを得るものと爲すに至りたり、我憲法も亦然り、(丁)所有權の不可侵の自由、我憲法は、所有權の不可侵なる事を擔保をし、公益の爲め必要なる處分に就きては、一々法律の定むる處に依るものとしたり、即ち國家は、司法、又は行政の處分として、私人の財産を徵收し、或は沒收することの必要なることあり、刑法其他の刑罰法に定むる罰金、沒收の如き之なり、又公益行政の爲めに、私人の財産を徵收することの必要なることあり、徵税、公用徵收の如き之なり、然れども之皆法律の規定に俟つべきものたるや明なり。(憲法一八條乃至三二條)
- 英
- Power of liberty
- 独
- Freiheits-recht
- 仏
- Pouvoir de la liberté
私有財産
(しいうざいさん)私有財産とは、國有財産又は公有財産に相對するの語にして、個人に屬する一切の財産を云ふ、物權、債權、智能權の如き皆之なり。(國有財産、官有財産の部參照)
- 英
- Private property
- 独
- privat-vermögen
- 仏
- Propriété privée
自由設立主義
(じいうせつりつしゆぎ)自由設立主義とは、設立者が自由に法人を成立せしむることを得るを云ふ、此主義に從へば、社團又は財團の本體が成立するは、當然法人と爲ることを得るものにして、之が爲めに何等の條件を要せざるなり、而して法人とは、法律に依りて權利能力を賦與せられたる、實在の組織體を云ふ。(民三三條)
- 英
- Principle of free establish-ment
- 独
- Prinzip der Freianstalt
- 仏
- Principe de l'établissemeut libre
私有地
(しいうち)官有地、國有地其他公有地に對し、私人の所有權に屬する土地を私有地と云ふ、個人の有する宅地田畑の如き之なり。
- 英
- Private land
- 独
- Privatland
- 仏
- Terre privée
私有林
私有林とは、私人の所有に屬する森林を云ふ、私有林と雖も、其營林の法を誤り、水源、風致等を害するときは、國家にとりて不利少なからざるが故に、國家は其造林を命じ、之に從はざるときは、國家自ら之に造林して、其費用を取立つることを得べし。(森林法一條)
- 英
- Private forest
- 独
- Privatforst
- 仏
- Bois privé
自由立法事項
(じいうりつぱふじかう)憲法に依るに、法律の範圍に二個の制限あり、積極的に必ず法律を以て規定すべき事項、及び消極的に法律を以て規定することを許さざる事項これなり、消極的に法律を以て規定することを許さざる事項とは、憲法上の大權事項を云ふ、憲法上の大權事項は、命令を以て定むるを要する事項なるが故に、法律の範圍は、憲法上の大權事項に依りて、消極的に制限せられざるべからず、積極的に必ず法律を以て規定すべき事項とは、憲法に於て法律を以て之を定むと云ひ、又は法律に依り、或は法律に定めたる場合、若くは法律の範圍内に於てと云ふが如く、特に法律を以て之を規定すべきことを命令したる事項にして、學者之を立法事項と云ふ、立法事項は、憲法に於て必ず法律を以て規定すべき事を命ずるものなるが故に、法律に依りてのみ規定することを要し、假令法律の先占せざる場合なりと雖も、緊急勅令以外の命令に依りて之を補充することを許さず、然れども我憲法に於ける立法事項は、單に命令の規定を排斥するに過ぎずして、積極的に法律の範圍を規定したる者にあらざるが故に、立法事項以外の事項と雖も、憲法上の大權事項にあらざる以上は、凡て法律を以てこれを定め得ざるものなし、故に我憲法上法律には、積極的の制限なしと云ふことを得べし、立法事項以外に於て、法律を以て定め得べき事項は、立法事項、及び憲法上の大權事項と異り、憲法に於て法律を要し、又は命令を以て必ず之を定むべきを明言せざるが故に、社會の形勢に依り、法律を以て定むるも、命令を以て之を定むるも、憲法上の自由なり、從つて此種の事項は、之を自由立法事項と云ふ、(又法令共同事項とも云ふ)自由立法事項は、法律命令孰れの形式に依りて定むるは妨げなきも、命令は法律を變更するを得ざるが故に、一旦法律を以て定めたるときは、立法事項と均しく、法律に依りてのみ廢止變更することを得べく、その法律にして全く廢止に歸せざる以上は、命令を以て之と同一の事項を定むることを許さず、自由立法事項は、憲法上の大權事項、及び立法事項以外に於ける總べての事項を包括するが故に、其範圍は列擧することを得ず、社會の形勢に依りて隨時之を定むるものとす。(憲法五條)
- 英
- Articles of free legislation
- 独
- Gegenstand der Freigesetzgebung
- 仏
- Articles de la législation libre
私印僞造使用罪
(しいんぎざうしようざい)他人の印章を僞造して行使する罪を云ひ、本罪の構成要件は左の如し、處爲の目的物は、他人の私印たること、僞造して使用したること、僞造は、使用の目的に出でたること是なり、□一他人の私印とは、自己以外の者の私印と云ふの義なり、私印とは、私人が使用する處の印と云ふの義にして、其實印たると認印たると、仕切印たるとを問はざるなり、□二僞造とは、他人の眞印と誤認せしむべき影跡を現出するに足るの程度までに摸したる私印を新に作製するを云ふ、苟も普通他人をして、眞印と誤認せしむるに足るの程度に達したる以上は、その大小形狀等は、必ずしも眞物に酷似することを要せず、更に極言すれば、眞物の存在することをも要せず、又僞印に依りて代表せらるべき人が、虚無の者たると否とは問ふ處にあらず、蓋し印の僞造は、文書の僞造と同じく、文書の作製名義、又は印の所屬名義を僞るの行爲にして、苟も其印の所屬名義を僞る以上は、私印僞造の要件を完成すべきを以てなり、□三僞造して行使することを要するが故に、先きに私印の僞造に與からず、其僞造たる情を知りて之を行使したるものは、結局不問に附せざるべからず、之現行刑法の一大缺點也とす、本罪の處分は、他人の印を僞造して使用したるものは、六ケ月以上五年以下の重禁錮に處し、五圓以上五十圓以下の罰金を附加せらる。(刑一六七條)
- 英
- Crime of forgery and using of a private seal
- 独
- Fälschungs-und Übungsverbrechen des Privatsiegels
- 仏
- Infraction de forge et emploie le sceau privé
私印盜用罪
(しいんたうようざい)他人の印章を盜捺使用するの犯罪にして、本罪の構成要件は、所爲の目的物は他人の印影たること、盜用の所爲あること是なり、□一法律には印影とあるが故に、既に押捺しある印蹟を云ふ、而して他人とは、犯人以外のものを指す、□二盜用とは、權利なくして印影を使用する事を云ふの義なり、從つてイ眞正の印顆を盜取又は騙取して、これを押用すべからざる書類其他の物件に押捺するか、又は既に押捺したる白紙に記載すべからざる事項を記載し、又は既に押捺されたる印蹟を切り取りて、之を使用すべからざる書類、又は其他の物件に貼付するを意味し、之等の所爲は犯人自から之を爲すと、他人を機械として之等の行爲を行はしむるとは問ふ處にあらず、ロ使用(盜用)すとは、正當に押捺せられたるものの如くに行使するの意なり、故に不法に押捺したるのみにしては、本罪を構成せず、本罪を犯したるものは、私印僞造使用罪より一等を減じて(私印僞造使用罪參照)處罰すべきものとす。(刑一六七條二項及び追加、印章僞造罪の部參照)
- 英
- Crime of fraudulent use of another's seal
- 独
- Diebstahls-und Geb-rauchsverbrechen des Privatsiegels
- 仏
- Infraction de l'emploie fraudulante du sceau d'autrui
囚
(しう)有罪の確定判決を經て、監獄に拘禁中の犯罪人を槪して囚と云ふ、囚人と云ふに同じ。(舊刑一九條)
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefangene
- 仏
- Prison-nier
囚徒
囚徒とは、刑罰執行の爲め(已決囚)、又犯罪は審理の爲め(未決囚)國家の正當なる機關に依りて、拘禁せられたる處のものを總稱す、□一囚徒は、刑罰執行の爲め拘禁せられたる者たる事を要するが故に、彼の懲治場、留置處分又は精神病者監置處分の爲め、一定の場所に拘禁せられたるものの如き、又は戰時捕虜の如き、刑罰の執行に屬せざるものは、所謂囚徒にあらざるなり、□二獄舍に拘禁せられてより、適法に釋放せらるる迄(入監中)の身分あるものたることを要するが故に、苟も適法の手續により、一度獄舍の拘禁を釋かれたるものは、囚徒にあらざるなり。(刑九七條乃至一〇二條)囚人とは、法律により其自由を拘禁せられたるものにして、囚と云ふに同じ、法律に於て囚人と云へば、彼の囚徒よりも其義狹く、單に已決囚のみを指示するものとす(刑九七、九八條)囚人、及び刑事被告人押送規則參照)。
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefangene
- 仏
- Prisonnier
囚人
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefangene
- 仏
- Prisonnier
獸醫免許規則
(じういめんきよきそく)□一獸醫の開業は、農商務大臣より獸醫免狀を受けたるものに限る、□二獸醫免狀を受くることを得るもの左の如し、イ獸醫免許試驗に合格し、其證書を有するもの、ロ官立府縣立の獸醫學校、若くは農學校に於て、獸醫學を專修し、其卒業證書を有する者、ハ公立又は私立學校に於て、農商務大臣の認可したる學則によりて、獸醫學を專修し、其卒業證書を有する者、ニ外國に於て、官立府縣立の獸醫學校、若くは農學校と同等以上の學則に依りて、獸醫學を專修し、其卒業證書を有する者、□三右に示したる資格を有する者にして、獸醫免狀を受けんとするものは、試驗及第證書又は卒業證書の寫を添へ、地方廳を經由して農商務大臣に出願すべし、□四獸醫免狀を受けたる者の氏名本籍は、農商務省の獸醫籍に登錄して之を公告すべきものとす、□五獸醫免狀を受くる者は、其免狀の下付の際、手數料として金一圓を納むべし、□六獸醫免狀を毀損亡失し、若くは氏名本籍を變換したるときは、その事由を記し、地方廳を經由して、免狀の書換を農商務大臣に出願すべし、書換の免狀を受くる者は、免狀下付のとき手數料として、金五十錢を納むべし、□七獸醫業に關し犯罪、若くは不正の行爲ありたるときは、農商務大臣は情狀を參酌し、五日以上五十日以下の範圍内に於て、其業を停止し、情狀の重きものは、之を禁止することあるべし、禁止の處分を受けたる者は、十日以内に地方廳を經由して、獸醫免狀を農商務大臣へ返納すべし、但し禁止の處分を爲したるものと雖も、三年を經過したる後、情狀により其禁止を解くことあり。(二三年八月法七六號)
- 英
- Permit rule of veterinary surgeon
- 独
- Diplomreglement des Tier-arztes
- 仏
- Règle de certificat du chirur-gien
收益
(しうえき)收益とは、物の産出物を自己の所得となすを云ふ、今收益を所有權に就きて述べんに、所有者は其所有物より生ずる天然の果實、及び法定の果實を收取するの權利を有するは勿論、其所有地内に於て、狩獵、及び漁獵をなし、井泉を穿ちて其水を使用するの權利を有するが如き是なり。(民二〇六條)
- 英
- Revenue
- 独
- Nutzung
- 仏
- Revenu
獸疫檢疫
(じうえきけんえき)韓國、清國、西伯利亞、其他檢疫官に於て、有病地と認定したる諸港より、又はこれを經て、其屍體、及び皮骨類其他獸疫傳播の虞ある物品を輸入する船舶に對し、豫防上これが檢疫を行ふことを獸疫檢疫と云ふ。(三九年四月農商務省令一一號獸疫檢疫規則)
- 英
- Quarantine of diseases of ani-mals
- 独
- Quarantäne der Tierkrankheit
- 仏
- Quarantine de la maladie des animaux
收益財産
(しうえきざいさん)收益財産(又財政上の財産とも云ふ)とは、國家に收入を生ずる國有財産の總稱なり、土地、森林、鑛山、國有鐵道、及び工場、資金、郵便、電信等の設備は、之に屬す、此中又自ら二の種類あり、一は其目的中第一次に於て、移民の增進、國民の經濟、又は一般交通の用に供せられ、收入を得ることを主たる目的とせざるもの、他は專ら收入の目的に使用せらるるもの是なり、鐵道、郵便、電信、電話の如きは前者に屬し、土地、森林、鑛山、製造場の如きは後者に屬す、此目的を差異よりして財政上の財産中(收益財産)によりても、亦其管理者及び管理の方法を異にす、第一種の收益財産は、行政財産と同じく、其目的の差異に從ひて當該行政大臣之を管理し、又其管理は、其目的を達するに尤も適當なる方法に於て、之を使用するを要す、之に反し第二種の收益財産は、全く收利を目的とするが故に、其管理方法は、最も多く利益を生ずる樣、之を計營すべく、又其管理は、國家の資産を管理する行政大臣の權に屬するものなり。
- 英
- Revenue property
- 独
- Nutz-ungsvermögen
- 仏
- Propriété du revenu
獸疫豫防法
(じうえきよばうはふ)此法律に於て獸類と稱するは、牛、馬、羊、豕、犬を云ひ、獸疫とは左の十病を云ふ、□一牛疫、□二炭疽、□三氣腫疽、□四鼻疽及皮疽、□五傳染病性胸膜肺炎、□六流行性鵞口瘡、□七羊痘、□八豕虎列刺、□九豕羅斯疫、□十狂犬病、之なり、獸類疫病に罹りたる時は、所有者、管理人又は獸醫は、直に市町村長に屆出づべきものとす、地方長官は、獸疫豫防上必要と認むるときは、病症鑑定の爲め、檢剖を要する獸類を撲殺し、又は鼻疽、及び皮疽、傳染性胸膜肺炎、豕虎列刺、豕羅斯疫に罹りたる獸類の撲殺を命ずることを得、此場合に於て、地方長官は、獸類の所有者に對して相當の手當金を交付するものとす。(二九年三月法六〇號)
- 英
- Law of precaution of ani-mal's sickness
- 独
- Vorbauungsgesetz der Tierkrankheit
- 仏
- Loi de la précaution contre la maladie des animaux
醜行
(しうかう)醜行とは、不當の行爲、即ち不品行其他の善良ならざる行爲を指す、例へば官吏が賄賂を袖にするが如き、又有夫の婦を姦するが如き、苟も人道に適はざる凡ての惡事を云ふ。(舊刑三五八條)。
- 英
- Misconduct
- 独
- Miszverhalten
- 仏
- Inconduite
修交々通條約
(しうかうかうつうでうやく)國家間に於ける交際通商、及び航海の事項に關する條約を修交々通條約と云ふ。(日西修交々通條約參照)
- 英
- Treaty of friendship and commerce
- 独
- Friedens- und Umgangs-vertrag
- 仏
- Traité de l'amitié et du com-merce
就學義務
(しうがくぎむ)凡そ兒童滿六歳に達したる翌月より、滿十四歳に至る八箇年を以て學齡とす、兒童の學齡に達したる月以後に於ける最初の學年を以て就學の始期とし、尋常小學校の教科を修了したるときを以て、就學の終期とす、而して就學義務とは、學齡兒童の保護者、即ち學齡兒童に對して親權を行ふ者、又は親權を行ふものなきときは、其後見人がその兒童をして、小學校に就學せしむるの公法上の義務を云ふ、兒童の親權者、又は後見人は、必ず之を市町村立尋常小學校、或は之に代用する私立小學校に入學せしめざるべからざるものとす、但し市町村長の認可を受け、家庭其他に於て尋常小學校の教科を修めしむることを得、然れども學齡兒童が、瘋癲、白痴、不具、疾病等の爲め就學すること能はずと認めたるときは、市町村長は、監督官廳の認可を受け、兒童保護者の義務を免除することを得、又尋常小學校の教科を修めざる學齡兒童を雇傭するものは、其雇傭に依り、兒童の就學を妨ぐることを得ざるなり。(三三年八月勅三四四號小學校令三二條乃至三六條、民八七七、九〇〇條)
- 英
- Duty to educate one's son
- 独
- Schulpflicht
- 仏
- Devoir d'enseigner le fils
衆議院議員
(しうぎゐんぎゐん)衆議院は衆議院議員を以て構成し、貴族院と相對して帝國議會を組織し、統治主體の意思成立に有效なる條件として、參與する定期の憲法上の機關とす。(憲法三三、三五、四五、六五條、及び帝國議會の部參照)
- 英
- Member of the house of representatives
- 独
- Abgeordnete
- 仏
- Membre de la chambre des députés
衆議院
衆議院議員は、衆議院の構成員なり、議員は一定の資格を有するものの選擧に依る、(甲)選擧資格、選擧人に要する條件左の如し、A積極條件、□一帝國臣民たる男子にして、選擧人名簿調製の期日より起算し、年齡滿二十五年以上なること、□二選擧人名簿調製期日前滿一年以上、其選擧區内に住所を有し、なほ引續き有する者、□三選擧人名簿調製の期日前滿一箇年以上、地租十圓以上、又は滿二年以上地租以外の直接國税十圓以上、若くは地租と其他の直税國税とを通じて十間以上を納め、尚引續き納むる者なる事、但し家督相續に依りて財産を取得したる者は、其財産に就き、被相續人の爲したる納税を以て、その者の納税したるものと看做す、B消極條件、□一禁治産者、準禁治産者、身代限の處分を受け、債務の辨償を終へざる者、及び家資分散、若くは、破産の宣告を受け、其確定したるときより復權の決定するに至る迄の者、□二剝奪公權者、停止公權者、又は禁錮以上の刑の宣告を受たるときより、其裁判確定する迄の者、□三華族の戸主、□四陸海軍軍人にして現役中の者、及び戰時、若くは事變に際し召集中の者、□五官立公立私立學校の學生生徒、□六選擧に關する犯罪に依りて刑に處せられ、裁判所の宣告により、二年以上八年以下の範圍内に於て、選擧人、及び被選人たることを禁ぜられたる者是也、被選人たるの資格も、亦選擧資格と同一の消極條件を具備することを要す、積極條件に至りては、單に帝國臣民たる男子にして、選擧期日より起算し、年齡三十年以上たることを要する外、納税額、及び住所等の條件を要することなし、但し政府の爲め請負をなす者、又は政府の爲め請負をなす法人の役員、神官、神職、僧侶、其他諸宗教師、小學校教員は、選擧人たることを得るも、被選人たることを得ず、選擧事務に關係ある官吏々員の其選擧區内に於けるも亦同じ、殊に選擧事務に關係ある官吏々員、及び神官、神職、僧侶、その他諸宗教師、小學教員にありては、之を罷めたる後と雖も、三ケ月を經過せざるときは、同じく被選人たることを得ず、官吏は、其職務に妨げなき限りは議員と相兼ぬることを得るも、宮内官、判事、檢事、行政裁判所長官、行政裁判所評定官、會計檢査官、收税官吏及び警察官吏に至りては、單に選擧權あるに止まり、被選擧權なし、如何なる官吏は其職務に妨げなきや否やは、各長官に於て決すべきものなるも、選擧法には議員と相兼ぬることを得ずとありて、之等の官吏は單に、議員と相兼ぬることを得ざるに過ぎざるが故に、宮内官、判事、檢事等の如く被選擧資格なきものと異り、假令其職務に妨げある者と雖も、其職務を辭して議員を選擇するは、素より妨あることなし、彼の府縣會議員にして、衆議院議員に選擧せられたる場合も亦同じ、歸化人、歸化人の子にして、日本の國籍を取得したる者、及び日本人の養子、又は入夫となりたる外國人たりし者は、選擧人なることを得るも、被選擧人たることを得ず、但し日本に特別の功勞ある外國人にして、内務大臣が勅裁を經て歸化を許可したる者に就きては、國籍取得の時より五年の後、其他の者に就きては十年の後、内務大臣勅裁を經で、此制限を免除する事を得、(乙)選擧方法、議員の選擧を行ふには、先づ選擧區を定むることを要す、選擧區は、各府縣の▲域に依り、人口三萬以上の市を獨立の選擧區とし、其他は之を一の選擧區となし、全國を百九の選擧區に分ち、人口の數に依りて一選擧區より選出すべき議員の數を確定す、故に衆議院議員は、貴族院議員と異り、その數一定し、之を變更することを得ず、現時議員の總數は、三百八十一名とす、每選擧區には選擧長を置き、選擧に關する事務を統管せしめ、選擧長には地方長官を以て之に充つ、選擧に選擧區を設くる所以のものは、議員の選擧をして全國に普及ならしめ、且つ選擧の方法を便にするに外ならず、從つて何れの選擧區より選出せらるも、其權利義務の性質、分量に徑庭なく、又選擧は代理にあらざるが故に、議員たる者その所屬選擧區の爲に、一地方の委任者を以て任じ、一部局の利害を主張して、全局を達觀するの公務を忘るべからず、各選擧區は、之を投票區、開票區に分つ、開票區は郡市の區域に依り、投票區は、市町村の區域に依る、但し特別の事情ある市町村に於ては、勅令の定むる處に從ひ、二個以上の故票區を設け、又は數町村の區域に依り、一投票區を設くることを得、投票區を設くるの必要は、全國同一日に選擧を行はしむるに當り、各投票區をして、同日に投票を受取らしむるの便宜に出づるものとす、投票の方法に記名(一名公開と云ふ)と、無記名(一名秘密と云ふ)との別、單名と連名との別あり、單名投票とは、選擧區に數名の被選人あるも、單にその一人のみを投票せしむるを云ひ、連名投票とは、一票にて數人を投票せしむるを云ふ、又記名投票とは、或は口頭を以て帳簿に記入し、或は投票用紙に、被選人の氏名と共に選擧人の氏名を明記し、以て投票するを云ひ、秘密投票とは、投票用紙に依りてこれを行ひ、選擧人の氏名を其用紙に記載せず、且つ用紙は密封にて、其何人を選擧せしやを知らしめざるを云ふ、我選擧法は秘密にして且つ單名投票也、選擧人投票を行ふには、選擧人名簿に登錄せらるることを要す、選擧人名簿は、選擧人の氏名、官位、職業、身分、住所、生年月、納税、及び納税地等を記したる記錄にして、選擧資格を公認するの效力を有す、此故に選擧資格ある者と雖も、これ名簿に登錄せられざる者は投票するを得ず、されど投票の有效無效は、其實際の資格の有無に依りて定むべきものにして、人名簿は、單に其證明の具たるに過ぎざるが故に、人名簿に登錄せらるべき確定判決書を對し、選擧の當日投票所に至る者は、之をして投票せしむべく、又選擧權を有せざる者は、又名簿に登錄せらるるも、投票を爲すことを得ず、選擧人名簿は、市に在りては、市長が每年十月一日の現在に依り、その市内に住所をする者の選擧資格を調査し、十月三十一日迄に之を調製し、町村に在りては、町村長は、每年十月一日の現在に依り、その町村内に住所を有する者の選擧資格を調査し、十月十五日迄に正副二本を調製して郡長に送付し、郡長はこれを調査して、其修正を加ふべきものには修正を加へ、副本は十月三十一日迄に町村長に返附す、郡長、市町村長は、十一月五日より、十五日間其の廳、又は地方長官の許可を得たる場所に於て、選擧人名簿を縱覽に供す、若し選擧人、選擧人名簿に脱漏、又は誤載あることを發見したるときは、其理由書、及び證憑を具へ、縱覽期限内に郡市長に申立つべし、郡市長は其證憑を審査し、申立の日より二十日以内にこれを決定し、其申立正當なりと決定したるときは、直に人名簿を修正し、其由を申立人、及び關係人に通知し、殊に郡長は之を本人住所地の町村長に通知し、併せて其要領を告示し、若し其申立正當にあらずと決定したるときは、之を申立人に通知す、縱覽期限の經過したるときは、申立を爲すことを得ざるも、地方裁判所、若くは大審院に出訴し、其確定判決ありたるときは之を修正すべきものとす、選擧は投票に依り之を行ひ、一人一票に限る、投票は、市役所、町村役場、又は地方長官の許可を得て、投票管理者の指定したる場所にこれを設く、投票管理者は市町村長とす、選擧人は選擧の當日投票所に至り、選擧人名簿の對照を經、投票用紙に捺印して投票すべく、他の選擧人に投票を委託することを許さず、又被選人の氏名を書すること能はざる者は、投票を爲すことを得ず、投票は午前七時に開き午後六時に閉づ、投票所を閉づべき時刻に至りたるときは、投票管理者に其由を告げて投票所の入口を鎖し、投票所に在る選擧人の投票結了するを待ちて投票函を閉鎖し、其閉鎖後は投票することを得ず、但し天災其他避くべからざる事故によりて、投票を行ふこと能はざるとき、または更に投票を行ふの必要あるときは、投票管理者は其由を選擧長に屆出で、選擧長は更に期日を定めて投票を行はしめ、投票終りたるときは、投票管理者は投票錄に關する顚末を記載し、投票の翌日迄に投票函、投票錄及び、選擧人名簿を開票管理者に送致す、開票管理者は郡市長とす、開票管理者は郡に於ては、投票函は總べて到達したる翌日、市に於ては投票の翌日、開票立會人立會の上投票函を開き、投票を計算し、且つ其有效、無效を決定し、其結果を選擧長に通告す、選擧長其報告を受けたるときは、選擧會を開き報告書を調査す、選擧會を開くべき場所及目錄は、選擧長之を定む、投票點檢の結果、有效投票の多數を得たる者を當選人とす、但し其選擧區内の議員を以て、選擧人名簿に記載せられたる者の總數を除し、得たる數の五分の一以上の得票あることを要す、若し同選擧區内に於て二人以上の得票の數相同じき時は、年長者を取り、同年月なるときは、抽籖して其順位を定む、有效投票とは、左の條件に觸れざるものを云ふ、□一成規の用紙を用ひざる者、□二投票中二人以上の被選擧人を記載したる者、□三被選擧人の何人たるを確認し難き者、□四被選擧權なき者の氏名を記載したる者、□五被選擧權の氏名の外贅事を記載したる者、但し官位、職業、身分、住所、又は敬稱の類を記入したる者は此限りにあらず、被選擧人定まりたるときは、選擧長は直に之を當選人に告知し、當選人其告知を受けたるときは、其當選を承諾するや否やを選擧長に屆出づべく、若し其告知を受けたる日より、二十日以内に當選の屆出なき時は、其當選を辭したるものと看做す、當選人承諾したる時は、地方長官は直に當選證書を付與し、其氏名を管内に告示し、且つ内務大臣に報告す、(丙)議員の任期、議員の任期は、總選擧の期日より起算して四ケ年とす、但し議會開會中に任期終るも、閉會に至る迄は存在すべきものとす、(丁)議員資格の消滅、議員にして特定の任期を終りたるとき、又は衆議院の解散ありたるときは、一般議員の資格消滅す、之等の消滅原因を一般の原因と云ひ、議員各自より生ずる特別の原因に依り、その資格消滅する場合は之を特別の原因と云ふ、特別の消滅原因は左の場合とす、□一死亡、□二辭任、□三被選資格の喪失、□四貴族院議員に任ぜられ、又は法律に依り、議員を兼ぬる能はざる官職に任ぜられたるとき、□五除名これなり、議員にして特別の原因に依り、其資格消滅し、其選擧の日より未だ一ケ年を經ざるときは、同選擧區に於て當選人と爲らざる者の中に就き、多數得票の順位によりて之を補充し、若しこれ等の當選人なきとき、又は選擧の日より一ケ年を經たるときは、其缺員を補充する爲め、地方長官は内務大臣の命に依り、其命令を受けたるより二十日以内に選擧を行ふ、これを補缺選擧と云ひ、一般の消滅原因によりて、議員の資格消滅したる場合に行ふ選擧を總選擧と云ふ、總選擧の期日は勅命を以て定め、少くとも三十日前にこれを公告し、補缺選擧の期日は、他方長官豫め告示す、補缺選擧に依り當選したる議員は、前任者の地位を補缺する者なるが故に、其任期は前議員の殘任期間とす、(戊)議員の特權、衆議院議員は、其議員たるの地位に伴ひ、數多の特權を有す、之等の權利は、議員たるの地位に伴ふが故に、議員にして其地位を失ふときは、其權利も亦之と俱に消滅すべし、□一意見、及び表決の自由、議員は議會に於て發言したる意見、及び表決に就き、院外に於て責を負ふ事なし、故に議員は、議論の際述べたる意見、及び贊否に對しては、刑事上及び民事上の責任を負はざるは勿論、官吏にして議員を兼ねたる者に在りても、また懲戒上の責任を負ふ事なし、但し院内に於て議院の警察、又は懲戒權に服せざるを得さるは素より言を俟たず、□二身體の自由、議員は現行犯罪、又は内亂外患に關する罪を除く外、會期中其院の許諾なくして逮捕せらる事なし、會期中とは、開會の後閉會の前なりとす、故に議員は會期中にあらざるか、議院の許諾あるか、又は現行犯罪、若くは内亂外患に關る罪を犯したる者にあらざる以上は、其犯罪の開會前にありしと、開會中に在りしとを問はず、又議院外の犯罪たると院内の犯罪たるとを論せず、司法上若くは警察上逮捕せらるることなし、□三歳費、及び旅費の請求權、衆議院の議長は歳費として五千圓、副議長は三千圓、議員は二千圓を受け、又東京府外に在りて召集に應ずる者は、旅費を受く、繼續委員は、歳費の外議院の定むる處に依り、一日五圓より多からざる手當を受く、但し召集に應ぜさるもの、または官吏にして議員を兼ぬるものは、旅費を受くることを得るも、歳費を受くることを得ず。(三三年三月法七三號衆議院議員選擧法、三四年一〇月勅一八六號衆議院議員選擧法施行令、二二年二月法二號議院法一九條、七六條乃至八〇條、憲法五二、五七條、刑一二一條乃至一三五條、刑訴五六、五七條)
- 英
- House of Representatives
- 独
- Abgeordnetenhaus
- 仏
- Chambre des communes
衆議院選擧法
(しうぎゐんぎゐんせんきよはふ)本法は、衆議院議員の選擧に關する區域、選擧權、被選擧權、並に選擧方法に關する手續等を規定したるものなり。(三三年三月法七三號衆議院議員の部參照)
- 英
- Law of election for member of the house of representatives
- 独
- Wahlgesetz der Abgeordneten
- 仏
- Loi de l'élection des membres de la cham-bre des députés
衆議院事務局官制
(しうぎゐんじむきよくくわんせい)□一衆議院事務局に、右の議員を置く、イ書記官長一人、ロ書記官、專任、五人、ハ屬十二人、ニ速記技手二十五人、ホ守衞長一人、へ守衞番長三人、□二書記官長は、議長の指揮に依り、局中一切の事務を監督す、局中の分課及職員の配置は、書記官長之を定む、□三書記官は、書記官長の指揮監督を受け、議事記錄、筆記、印刷、庶務、會計等に關する事務を分掌す、□四書記官長故障あるときは、上席書記官其の議務を代理す、□五屬及び速記技手は、判任とす、書記官長の定むる處に依り、各其事務に從ふ、□六守衞長は、判任とす、守衞番長以下を監督し、院中の取締に任ず、□七守衞番長は判任とす、守衞長を助け守衞を指揮し、守衞長に故あるときは、其職務を代理す。(二三年七月勅一二二號)
- 英
- Government organiza-tion of business bureau of house of re-presentatives
- 独
- Amtsordnung der Abgeordnetenhaus Amtstube
- 仏
- Organisa-tion du bureau des affaires de la chambre des députés
習慣
(しうくわん)意識的、若くは無意識的に、同一の行爲を反復することによりて得られたる熟練を謂ふ也、即ち吾人の精神上、並に身體上に適應するに至りし、經驗の結果にして、俗に第二の天性なる語能く其意を表はす、例へば步行談話の如き之なり、習慣は獨り個人の心身の上に成るのみならずして、社會的現象に就きて見るも、冠婚、祭葬、辭讓、應對、贈答等の儀禮より、宗教道德の多くも、亦反復せられたる社會的意識の所産と見るべく、極言すれば吾人の日常生活は、多く此習慣的行爲の形を取り居るなり、而して斯かる習慣の成立に至る經過は、假令其初め有意的意識的にして、多大の努力と注意とを要せし行爲も、漸次半意識的となり、終に無意的に行はるるに至る也、步行談話の如きも、二三歳の小兒には困難なるものにして、多大の勞力を拂ひしも、後には何等故意ならずして、行はるるに至るが如し、斯かる習慣が人間性情の上に形成せらるる故に、性格なるものを生ず、無性格の人は、畢竟這の精神的習慣の成らざる人なり、即ち善行爲を反復して善習慣を得たる人は、其人の性格上惡事をなす事難し、惡習慣に就きても然り、唯無性格の人は、其人の一言一行變化ありて、時に善を行ひ、時に惡を行ひ、常に一定せる徑路を取る事なし、一般に性格は遽かに改め難し、之畢竟習慣の容易に形成せられざる代り、一旦形成せられたる習慣は、又容易に變革せられざる性質のものたるに依る、特に遺傳に經驗を加味して、確實なる習慣性をとりたる吾人の衝動的行爲、さらに本能の如きは、容易に變革若くは消滅し得べきものにあらず、例へば獵犬の禽獸を追ふ如き、又は猫の鼠を捕ふる如きを見て知るべし、然れども習慣も全く變革せられ得ざるものにあらずして、反復によりてこれを行ふ時は、尚漸次に最初に形成せられたると同樣に、變革せらるるものなり、更に本能の如きにありても、其遺傳は、疎漫なる神經纎維によりてなさるるを以て、これを放任し、若しは練習せざる時は、終に消滅するに至る事あるべし、之を要するに習慣は、個人にとりても亦社會にとりても、皆共に操り返されたる行爲、即ち同一の經驗の反復によりて生じたる、個人的心理現象又は社會的心理現象なり、習慣的てふ語は、叙上の如き意義を有する習慣を形容詞として用ひたるもの、物理的に消勢など云ふ如き意義を有し、或は衝動的、更には本能的などと同樣なる意義を有するものとして用ひらるることあるなり、而して習慣は、法律の一大淵源となるもの也、蓋し人類が年久しく行ひ來りたる習慣は、恰も人類本然の性の如き思ひを爲し、之に反する者あれば、直に其人を〓斥するが如き傾向を生ず、故に習慣中正確にして強行を委すべきものは、國家は之を法律として承認し、或は採りて以て成文に規定するに至るべきなり、抑も示會的習慣は或は、□一其行はるる處の廣狹により、一般習慣、及び局地習慣と爲す事あり、一般習慣とは、國内一般に行はるる習慣を云ひ、局地習慣とは、國の一部に行はるる習慣を云ふ、凡そ文通不便の時代に於ては、局地習慣行はること多く、一般習慣の行はるること少きは當然なり、例へば我國に於て、婚姻に關する習慣、用水に關する習慣の如き、古來各地方各相異りたるもの行はれ來りたり、その近來交通の便開くるに從ひ、漸次其習慣の統一に歸しつつあるが如きは、即ち局地慣習と一般慣習との區別、及び變遷を知るべきなり、□二或は其行はるる人の範圍に依り、普通習慣、及び特別習慣となす事あり、普通習慣とは、一國人民全般に行はる習慣を云ひ、特別習慣とは、或る特別の人民間に行はるる習慣を云ふ、例へば商業上、及び農業上の習慣の如きは、商人間若くは農民間に行はるるを以て、之を特別習慣と云ひ、養子に關する習慣の如きは、全般に行はるるを以て、之を普通習慣と云ふが如し、□三又或は其形式の如何に依り、成文習慣、及び不文習慣と爲すことあり、成文習慣とは、文書に集錄せられたる慣習を云ひ、不文習慣とは、文書に集錄せられざる習慣を云ふ、例へば我國の民事慣例集中に存ずる習慣は、成文習慣なるも、用水に關する習慣は、多くは文書に記載せられざるを以て、不文習慣なるが如し、然れども習慣は、其種類如何を問はず、其もの自身に於て、法律の效力を有するものにあらず、其法律たる效力を有するには、國家の承認又は規定を俟たざるべからず、而して習慣が、法律の材料と爲る方法に二あり、即ち左の如し、□一習慣を承認して、之に法律の效力を付與す、國家は習慣を承認して、之に法律の效力を付與すること多し、英國の普通法の如きは、即ち國家の承認に由りて、習慣が變じて習慣法と爲りたるものなり、我法例に於ても習慣を承認して、之に法律の效力を付與することを規定したり、□二習慣を採用して之を成文の法律に規定す、國家が新に法律を制定するに當り、習慣を採用して規定すること多し、即ち英國の賣買法、破産法の如き、我民法中親族編、相續編の如きは、主として習慣を採用して成文に規定したるものなり。(民九二條、商一條、三一年六月法一〇號法例二條)
- 英
- Custom
- 独
- Gewohnheit
- 仏
- Coutume
習慣法
凡そ古代の法律は、槪して習慣法也、唯世運進步し、社會複雜に赴くに從ひ、法律は多く成文法となるに至れり、而して習慣法とは、人民の永續慣行の標準にして、國家の承認に依りて法律たる效力を有するに至るものなれば、其成立條件として、文書に記載することを要せず、故に一に不文法の名あり、習慣法は不文法と稱するも、全然記載せざるものと誤解するすべからず、或は裁判所の記錄に於て、或は學者の著書に於て、習慣法の載錄せらるること稀ならざるべし、然れども其成立要件として記錄せらるることなきのみ、習慣法は、之を文書に作成し、公布せらるるに依りて成立するものにあらざるが故に、其果して何時より成立せるやは、大に疑しき所なり、爲めに習慣法成立の時期、即ち單純なる習慣が變じて、法律と爲る時期如何の問題に關しては、學説歸一せす、今其重なるものを左に示さむ、□一永續習慣説、此説に依れば、習慣が悠遠に人民間に遵奉せらるる時は、變じて法律と爲ると云ふにあり、□二國家默認説、此説によれば、習慣が永く人民間に行はるるときは、國家の默認に依りて法律と爲ると云ふにあり、□三人民確信説、此説によれば、法律は立法者の隨意に製作せるものにあらず、人民の法律觀念の凝成せるものにして、又人民の法律確信の表現せるものなり、而して人民の法律確信は、直接に發現して習慣法と爲り、間接に立法者の手を假りて發現せるものは、成文法と爲る、人民が久しく一定の慣行を維持し、法律として之を覊束せらるるものなりとの確信を有せし時は、茲に習慣法の成立せるものと云はざるべからずと、□四法廷承認説、此説によれば、法廷に於て習慣を適用し、判決を爲したる時に、化して法律となると云ふにあり、□五法定要件説、此説に依れば、習慣は主權者が、習慣法たるに必要なりと定めたる條件を具備したるとき、初めて變じて法律と爲ると云ふにあり、以上は從來習慣法發生の時期に關し行はれたる學説の重なるものなり、然れとも此諸説は、皆事物の一端のみを捉へて、全般を忘れたるの憾あり、蓋し習慣の習慣法たるには、左の如く云ふを正當とす、□一固より人民の永く同一慣行を繼續せるの事實なかるべからず、之習慣法成立の外形的要素なり、□二加之人民が法律として、之に遵由するの確信なかるべからず、之習慣法成立の精神的要素なり、此二要素によりて法律の内容定まる、□三然れども法律としての效力を有するには、國家がこれに覊束力を付與することなかるべからず、之習慣法が國家の承認を俟つて、初めて法律として成立する所以なり、而して人民が習慣を法律として確信したりと認むるには、通常左の條件を必要とするものとせり、イ其習慣上の行爲は、必要にして違背すべからざるものとし、遵行せられたる事を要す、即ち人民が、法規として覊束を要するの意思を以て、遵行し來りたる事を要す、若し然らずして、便宜、禮讓、或は友誼等より、單純に或る行爲を反覆するに過ぎざるときは、法律としての確認を得たるものと云ふべからざるが故に、單純なる習慣の成立するに止まり、習慣法の成立する事なし、例へば年末年始の回禮贈答の如き、二人相逢つて脱帽するが如き、長年月間人民の慣行する所なりと雖も、之が習慣法の成立を見る事なきが如し、又殊に習慣法と相似て然かも異るものは、一定の商人間一定の物品賣買に關して、直引を爲すが如き慣行是なり、例へば書籍の定價は、多く定價より直引するが如し、然れども此慣行は、行爲者に於て法律として之を遵由するにあらざるが故に、習慣法たることあらざるものとす、ロ其習慣は、長年月間、間斷なく遵行せられ來りたることを要す、即ち長年月間々斷なく遵行せられたるにあらざれは、慣習法と云ふを得ず、然れども果して何年何月間行はれたる事を要するやは、判然之を確言するを得ず、慣習法たるに十分なる時期間行はるるや否やは、裁判官の認定に一任すべきなり、而して其慣行は同樣なることを要す、慣行の相似て然も同樣ならざるものは、一定の慣行ありと云ふべからず、隨つて習慣法の基礎たるを得ざるなり、然れども其慣行が、必ずしも長年月間例外なく行はれたることを必要とせざるなり、又習慣法の基礎たるへき慣行は、全國一般に行はるることあり、又一地方の人民の間に行はるることあり、或は一定の階級、又は社會の間にのみ行はることあり、其何れの場合に於ても、各々其範圍内に於て習慣法の成立を見るを得べし、ハ其習慣は法律に違背せず、且つ公安を害する事なきを要す、蓋し習慣にして如何に久しく行はるるも、公安を阻害し、法律に違背するものなるに於ては、國家の意思に反するものなるが故に、國家の承認を得ること能はざるは當然なり、且つ近時法律思想の認むる所に於ては、習慣法は成文法に違背し、又は之を廢止すること能はずと爲すこと正當なり、現に我法例に於ても、此條件を明にせるを見る、其規定に依るに、(甲)其習慣が公の秩序、又は善良の風俗に反せざること、(乙)法令の規定に依りて認めたるもの、及び法令に規定なき事項に關するものたること是也、即ち我國に於ても、法令の規定に依りて、習慣が法令たる救力を有することあり、又法令に規定なき事項に關する習慣は、その要件を充たすに於ては習慣法たり、之に反して習慣法は、法令を廢止、變更する力なきを以て、已に法令に規定ある事項に關しては、其法令の規定に異る習慣法の存在を許すを得ず、之習慣法の基礎たる習慣を、法令に違背せざることを要すと云ふ所以なり。(法例二條、商一條、民九二、二一七、二一九、二二八、二三六、二六三、二九四條)
- 英
- Common law
- 独
- Gewohnheits-recht
- 仏
- Droit commun
囚人及刑事被告人押送規則
(しうじんおよびけいじひこくにんあふそうきそく)□一囚人、及び刑事被告人の押送は、警察署、又は警察分署の遞傳に付するものとす、但し十里以内の押送、汽車汽船の便ある地方間の押送、又は多數の囚人若くは刑事被告人の押送、其他特別の事情ある場合は、本法に依らざることを得、□二同一府縣内にある監獄間囚人の押送は、看守長、看守をして爲さしむ、但し以外の押送は、右□一に依り遞傳に付することを得、□三被押送者の所持する貨幣、物品にして、本人と同時に押送するものは、左の例に依りて取扱ふへし、イ物品は押送者に託して押送す、但し危險の虞ある物品、及び押送者の携帶に堪へざる物品は、此限りにあらず、ロ貨幣は押送者に託せず、保管金寄託替の手續に依りて送致す、但し五圓未滿の金額、若くは押送期間一日以上に亘らざる場合、及び刑事被告人に屬する貨幣にして、本人の請求ある場合は、押送者に託することを得、□四右に依る送致中の貨物物品は、押送者に託する場合に於ては、押送を爲す各官署の保管に屬し、押送者に屬せさる場合に於ては、發送官署の保管に屬す、□五押送者の旅費、囚人、及び刑事被告人の押送費用は、押送を爲す各官署の區別に從ひ、各其の經費を以て支辨す、但し他廳府縣より囚人の送還を求めたる場合に於ては、其押送費用は、送還を求めたる廳府縣の經費より支辨す、集治監に於て施行すべき刑の確定判決を受けたる囚人に係る押送費用は、在府縣獄囚徒費を以て之に充つ、□六押送者の宿泊費額は、警察署、又は警察分署に於ては、留置人の例に依り、其他に宿泊せしたる場合に於ては、内務大臣の定むる處に依る、□七刑事被告人遞傳遞送の場合に於て、警察署長、若くは警察分署長は、監獄の規定に從ひ、押送途中に必要なる物品、又は飮食物に限り、自費を以てこれを購求することを許し、又親屬故舊の之が差入を許すことを得、□八押送途中被押者送者死亡し、二十四時間内に死骸の引取人なきときは、警察署長、若くは警察分署長に於て假埋葬を爲すべし、□九本則は、軍衙間に於ける囚人、及び刑事被告人の押送に適用せず。(三〇年一一月勅四一五號)
- 英
- Rule of escort of criminals or the accused
- 独
- Begleitungsregel der Gefangenen oder der Strafangeklagten
- 仏
- Règles de l'escorte des prisonniers et des condamnés
修正
(しうせい)不備を整へ過誤を削るが如く、事物を、正格に修補することを云ふ、法案の修正、定款の修正と云ふが如し。(市制一八條、町村制一八條、議院法二九條)
- 英
- Amendment
- 独
- Besserung
- 仏
- Amendement
周旋
(しうせん)國際紛爭中、□一重大なる意見の衝突、又は紛爭に關して、周旋、及び居中調停あり、□二單に事實上の見解の異るより生じたる紛爭事件に就きては、國際審査委員に付するを便とすべく、□三法律問題就中條約の解釋適用事件に關しては、仲裁裁判を以て最も有效とす、而して周旋は紛爭國間意思の疏通を媒介し、直接談判の機會を與へ、談判の基礎たる地步を作り、忠告を提供することあり、然れども雙方の談判に參與せず、從つて主働的に紛爭を解決すの效なく、唯媒介行爲を爲すを普通とす、又周旋は、紛爭國の一方又は雙方より依賴することあり、第三國より發意することあり、而して特別の條約ある場合の外、之を依賴するの義務なく、又發意(提供)するの義務なし。
收容
(しうよう)人又は物を一定の場所に收むることを收容と云ふ、例へば難破せし船舶中にある人を他の船に收容するが如し。(關税法三章五節)
- 英
- Rescue
- 独
- Rettung
- 仏
- Secour
收用
(しうよう)收用とは、國家の命令權に依り、公益の爲め必要なる場合に、特定の物の所有權、又は其他の權利を徵收して、國家、又は第三者に附する處分なり、例へば土地收用法に依りて、土地を收用するが如き其著しきものとす。(三三年三月法二九號土地收用法一條)收用補償金とは、公用徵收の處分を受けたるものに對し、其被りたる損害を補償する金錢を云ふ、而して其金員は、收用せらるべき物件の相當の價額を標準とすべきものなり。(土地收用法四七條乃至五九條)
- 英
- Condemn
- 独
- Enteignung
- 仏
- Condamner
收用補償金
狩獵
(しうれふ)狩獵とは、銃器、網、黐繩、又は擌を以て鳥獸を捕獲するこるを云ふ。(狩獵法一條)
一等
{所得税、百圓以上、地租五百圓以上、若くは營業税百五十圓以上を納むる者又は其家族
}金二十圓
二等
{所得税三圓以上、地租三十圓以上、若くは營業税二十圓以上を納むる者又は其家族
}金十圓
三等
{一等、二等以外のもの
}金二圓
□四免狀の有效期限は、十月十五日より翌年四月十五日迄とす、但し北海道に於ては、九月十五日より翌年四月十五日までとす、此期間内にあらざれば狩獵をなすを得ず、□五免狀の使用は本人に限るものとす、□六獵者は、出獵の際免狀を携帶すべし、(丙)罰則、免狀を受けずして又は免狀の有效期限外に於て狩獵をなし、又は詐欺の處爲を以て狩獵免狀、若くは共同狩獵地の免許を受け、又は詐りて共同狩獵地を表示したる者は、百圓以下の罰金に處し、犯罪の用に供したる器具は沒收す。(三四年四月法三三號)
- 英
- Shooting
- 独
- Jagd
- 仏
- Tir
狩獵法
狩獵法は、鳥獸の捕獲方法等に關することを定めたる法律也、(甲)獵具及獵法、狩獵と稱するは、銃器、網、黐繩、又は擌を以て鳥獸を捕獲するを云ふ□一爆發物、劇薬、毒薬、据銃、又は危險なる罠、若くは陷穴を以て鳥獸を捕獲することを得ず、□二日出前、日沒後、市街、人家稠密の場所、衆人群集の場所、銃丸の達すべき虞ある建物、船舶若くは汽車に向つて銃獵をなすことを得ず、□三左に揚ぐる場所に於ては、狩獵をなすことを得ず、即ち御獵場、禁獵區、公道、公園、社寺境内、墓地これなり、□四欄、柵、圍障若くは作物植付ある他人の所有地に於ては、所有者、又は占有者、他人の共同狩獵法に於ては、免許を受けたる者の承諾を得るにあらざれば、狩獵をなすことを得ず、(乙)狩獵免許、□一狩獵は、地方長官に願出で、免許を受くるにあらざざれば、之を爲すことを得ず、但し欄、柵又は圍障ある宅内に於て、銃器を使用せずして狩獵をなすものは此限りにあらず、□二免狀を分つて甲、乙の二種とす、甲種免狀は、銃器を使用せずして狩獵をなすものに下付し、乙種免狀は、銃器を使用して狩獵を爲すものに下付するものとす、□三免狀を受くるものは、甲、乙各種に就き左の區別に從りて免許税を納むべし。
- 英
- Law of shooting
- 独
- Jagd-gesetz
- 仏
- Loi de tir
狩獵免許税徵收法
(しうれふめんきよぜいちようしうはふ)狩獵法に依りて政府に納むる免許税は、税額に相當する印紙を狩獵免許出願書に貼用して納むるものとす。(三〇年三月法七號)
- 英
- Law of permittance fee of shooting
- 独
- Einsammlungsgesetz der Jagdsteuer
- 仏
- Loi du dépens pour la permission de la chasse
市價
(しか)物、又は權利の公の市場に於ける價格を市價と云ふ、例へば取引所に於ける物品の公定相場の如し。(作業、及び鐵道會計法三七條)
- 英
- Market price
- 独
- Marktpreis
- 仏
- Cours du marché
時價
時價とは、時の相場を云ふ、從つて其時其物に應じて定むる價格なり、例へば千圓の寳物も、今賣却せんとするときは、僅に百圓の相場なりと云へば、即ち右寳物の時價なり。(民二六八條)
- 英
- Current price
- 独
- laufendes Preis
- 仏
- Prix courant
私家
(しか)私家とは、私人の所有に屬する家屋を云ふ、刑法等に於て、私家に監禁など云ふときは其意稍廣く、私人に屬する家屋其他の建造物にして、總べて監禁可能の性を有する物なり、民法等に於て私家と云ふときは、私宅と同義にして、私人の居住に供する家屋を▲ふ。(刑三二二、四一七、四一八條、民一七條)
- 英
- Private building
- 独
- Privathaus
- 仏
- Maison privée
自我
(じが)吾人が何等か思考しつつある時に、必ず吾人は其思考するものと、思考の對象となれるもの、即ち思考せられつつあるものとの兩者を意識す、換言すれば、吾人が何事かを思考する時は、其思考するものは自我に相違なきも、更に吾人の心内の奥には、その思考する所の自我をば更に意識する所の我存す、故に自我には、主たるものと、客たるものとの二方面ありといはざるべからず、即ち主觀としての自我と、客觀としての自我、換言すれば純粹自我と、被認自我との兩方面ありと謂はざるべからず、或は稱して主我、及び客我と謂ふ、古來主我客我に就きては、多くの哲學者心理學者又は倫理學者の議論喧きも、餘り理論的に亘るを以て畧す、されど一般には、自己てふ言辭を用ふ、自己と自我と殆ど同義なり、唯自己と謂へば稍廣義に、又一層通俗的なる如き感あるのみ。
- 英
- Self
- 独
- Selbst
- 仏
- Soi
私行
(しかう)私事に關する行爲を廣く私行と云ふ、私行は私人たる資格に於てなす行爲は勿論、官公吏が私的關係(例へば借財するが如し)に於てなす行爲は皆私人なり。(出版法三一條)
- 英
- Private act
- 独
- Privathandlung
- 仏
- Acte privé
施行
(しかう)施行とは、法律命令を實施することを云ふ、換言すれば、法行律が法として、初めて效力を發動することを云ふ。(刑訴法附則一條)施行期とは、法令を實施する時期を云ふ、例へば民法は明治三一年七月一六日より施行すと云へば、三一年七月一六日は、即ち民法の施行期なるが如し。(三一年勅一三三號)凡そ法律(命令も同じ)は、公布にありて臣民に對し、遵由の效力を生ずべきものなるが故に、憲法若くは法律に特別の規定なき以上は、法律は公布の日より直に施行せらるるものと認めざるべからず、然れども臣民をして普く之を知るの機會を得しめんが爲め、其公布より施行に至る迄の間に、一定の期限を置くを通例とす、之を法律の施行期限と云ふ、法律の施行期限に一般の法律に適用すべきものと、特別の法律にのみ適用すべきものとあり、一般の法律に適用すべき施行期限は、法律各自に於て、其施行期限を明定せざる場合に適用すべきものにして、各法律に特別の施行期限存する場合には、其期限に依らざるべからず、各法律の施行期限には、或は保安條例の如く、公布の即日を以て施行期限と爲すものあり、或は民法の如く、數年の後を期して施行せしむるものあり、或は議院法の如く、一定の事質生じたる時を以て施行期限と爲すものあり、或は其施行期限を定むるに、他の法律又は命令に委任する事ありて、立法者の任意に定むるを得べきものなれども、法律は公布に依りて、初めて執行力を生ずるものなるが故に、公布以前の時日を以て施行期限と爲すを得ず、何となれば、未だ施行の效力なき法律を臣民に施行せしむるは、立法者と雖も爲し得ざる處なればなり、然れども之を理由として、立法者は既往に遡るの法律を制定すること能はずと云ふべからず、既往に遡る法律とは、既往の事實に對して、效力を及ぼすべき新法を設くるの謂にして、遵由の效力なき法律を施行するものと同じからず、遵由の效力を有せざる法律を施行するは、其性質上當然不能なるべきも、法律の規定を既往の事實に適用するは、素より不能なりと云ふべからず、而して憲法に制定なき以上は、如何なる事項と雖も法律に依りて、之を定むるを得べきが故に、立法者に於て、既往に遡るの法律を制定するも、毫も妨あることなし、一般の法律に適用すべき施行期限を定むるに、同時施行主義、及び異時施行主義の別あり、同時施行主義とは、法律公布の日より、一定の期限を經過したる後、全國を通じて同時に施行するを云ひ、異時施行主義とは、土地の遠近に依り、其施行期限を異にするを云ふ、現行法例は、同時施行主義を採り、法律公布の日より起算し、滿二十日を經て、施行すへきものとせり、然れども絶對的に同時施行主義を採るときは、官報の到達に數月を要する島地に至りては、臣民をして未だ知ること能はざる法律を、遵由せざるべからざるが如き奇觀を呈し、殊更施行期限を設けたる趣旨に戾るを以て、臺灣、北海道、及び其他の島地に就きては、勅令を以て特制の期限を定むることを得べきものとせり。(三一年六月法一〇號法例一條)
- 英
- Exercise
- 独
- Ausführung
- 仏
- Exercice
施行期
施行期日とは、法律命令を實施する日を指す、例へば明治四一年一月一日より施行すと云ふが如し。(三二年法七〇號四條)
- 英
- Term of carrying out
- 独
- Aus-führungstermin
- 仏
- Délai de l'exercice
施行期限
- 英
- Term of carrying out
- 独
- Ansführungsfrist
- 仏
- Délai de l'exercice
施行期日
- 英
- Fixed day to be carried out
- 独
- Ausführungstag
- 仏
- Délai fixe de l'exercice
時效
(じかう)永續せる事實上の狀態に、法律的效果を連結するに依り、法律上の狀態を創成するを云ふ、民法に定めたる時效は、一定の期間繼續したる權利の行使、又は不行使による權利の取得又は喪失に外ならず、法律的效果の發生原因として、觀察せられたる時效は、事實上の狀態が永續する事に外ならず、即ち事實の觀念と、其繼續すべき時の觀念とを以て其基礎とす、時の觀念と分離せられたる事實、並に單純なる時の經過は時效にあらざる也、時效の要素となるべき事實は、權利の行使、又は不行使なり、權利の行使、又は不行使の狀態が持續して、或る期間を經過するときは、茲に時效は完成す、時效の法律的效果は、權利の取得、又は喪失なり、權利取得の原因となるべき時效を取得時效と稱し、權利喪失の原因と爲るべき時效を消滅時效と云ふ、時效は、權利の實體を取得せしめ、又は喪失せしむるる原因にして、抗辯方法又は證據方法にあらず、故に其利益を受くべき者の援用を俟たずして、效果を生ずべく、(裁判所に於て、時效の援用を必要とするは別問題なり)又反證を以て其效果を變更し、又は除却するの餘地を有せざるべし、時效は公益の爲めに設けたる制度なり、抑も事實上の狀態が永續するに依りて、生活關係の秩序を發生するは爭ふべらざるの社會現象にして、法律を以て永續の狀態に保護を與ふるは、生活關係の秩序を維持するの必要に基くものなり、今時效制度に於て保障せしめられたる事實上の狀熊は、永續せる權利の行使、又は不行使の狀態なり、永續せる權利の行使、又は不行使の狀態に何等の保護を與ふることなく、永遠に過去の事實を根權として權利を主張し、または否認することを得べきものと爲さんか、法律關係は紛雑を極め殆ど生活の安固を期する能はざるに至るべし、時效の制度を設けて、永續の事實上の狀態を變更し、法律狀態と爲すは、公益を維持する爲め巳むを得ざるに出づるもの也、時效を別ちて取得時效、及び消滅時效と爲す、□一取得時效とは、永續せる權利の行使に依りて、權利を取得せしむるを云ふ、從つて總べての財産權に取得時效を適用するものとす、即ち占有に依り、所有權を取得するの外、準占有(權利の行使)に依りて、所有權以外の財産權を取得し得べきものとす、而して所有權以外の財産權にして、取得時效の目的たり得べきものは物權に限らず、債權、智能權も亦其内に包含せらる、□二消滅時效は、永續せる權利の不行使に依る權利喪失の方法なり、我舊民法は、之を免責時效と稱し、債權のみを以て其目的と爲せしも、現行民法に於ては、之を他の財産權にも、適用し得べきものとす。(民一四四條乃至一七五條刑三一條以下)
- 英
- Prescription
- 独
- Verjährung
- 仏
- Prescription
時效期間
(じかうきかん)時效期間は、分ちて取得時效の期間、及び消滅時效の期間の二となす、□一取得時效期間、取得時效を完成する爲め繼續することを必要とする占有、又は準占有の法定期間を取得時效期間と云ふ、而して其期間は、十年なることあり、二十年なることあり、即ち物の占有者が所有の意思を以て、平穩且つ公然に又善意にして過失なかりし場合には、十年の期間經過によりて、物の所有權を取得す、又惡意の場合には、廿年の期間經過によりて、物の所有權を取得するものとす、□二消滅時效の期間は、十年なることあり、二十年なることあり、又五年、三年、二年、一年なることあり、債權は、十年間之を行はざるに依りて消滅し、債權、又は所有權にあらざる財産權は、二十年間行はざるによりて消滅す、但し年又は之より短き時期を以て定めたる金錢、其他の物の給付を目的とする債權は、五年間行はざるによりて消滅す、又左に揭げたる債權は、三年間行はざるによりて消滅す、イ醫師、産婆、及び薬劑師の治術、勤勞、及び調劑に關する債權、ロ技師、棟梁、及び請負人の工事に關する債權、但しこの時效は、其負擔したる工事終了の時より記算す、左に揭げたる債權は、二年間行はざるによりて消滅す、イ生産者、卸賣商、及び小賣商人が賣却したる産物、及び商品の代價、ロ居職人、及び製造人の仕事に關する債權、ハ生徒、及び習業者の教育、衣食、及び止宿の代料に關する校主、塾主、教師、及び師匠の債權、又左に揭げたる債權は、一年間行はざるにありて消滅す、イ月又は之より短き時期を以て定めたる雇人の給料、ロ勞力者、及び藝人の賃金、並に其供給したる物の代價、ハ運送賃、ニ旅店、料理店、貸席、及び娯遊場の宿泊料、飮食料、席料木戸錢、消費物代價並に立替金、ホ動産の損料之なり。(民一六二條乃至一七四條)
- 英
- Duration of prescription
- 独
- Verjährungsfrist
- 仏
- Délai de prescrip-tion
時效中斷
(じかうちゆうだん)時效の完成前に至りて、已に經過したる期間の利益を消滅せしむるを云ふ、時效を中斷する時は、中斷の事由存在する間時效を進行せしめずして、其止みたる時より其期間を更新す、而して中斷以前に經過したる期間は、更新すべき期間に合算する事を許さず、時效中斷の原因は、時效の要件たる事實を除却すべき事由に外ならず、換言すれば、時效の要素たる權利の行使、又は不行使と、牴牾すべき事實の發生に外ならざる也、時效中斷は、其原因の異るに從ひ、之を分別して自然中斷、及び法定中斷となす、(甲)自然中斷、自然中斷とは、占有の喪失に依る中斷を云ふ、自然中斷は、取得時效にのみ適用せらるべきものなり、自然中斷の原因たる占有の喪失は、占有者の任意に出づるものあり、其任意に出でざるものあり、占有者が任意に占有を失ふ時は、當然中斷の效力を生ず、凡そ占有は心素と體素より成る、若し占有者が自己の爲めにする意思を止むるときは、心素の消滅に依りて占有を喪失す、若し任意に所持を中止するときは、體素の消滅に依りて占有を喪失す、所有權の取得時效は、心素又は體素の消滅に依りて中斷せらるべきなり、この法則は、當然所有權以外の財産權の取得時效に準用すべきもの也、即ち準占有者が、自己の爲めにする意思、又は行使の事實を中止するときは、當然之を中斷すべきものとす、占有者の不任意の喪失とは、占有者が他人の爲めに占有を奪はるるを云ふ、此場合に於ては、占有の體素消滅するが故に、所有權の取得時效を中斷す、然れども占有者が、他人の爲に占有を奪はれたる場合に於て、一年内に占有回收の訴を提起するときは、占有を繼續するものと見るが故に、之がために時效を中斷すべきものにあらず、以上示したる法則は、所有權以外の財産權の取得時效に之を準用す、即ち權利の準占所有者が、他人の爲に權利の行使せられたる場合に於て、其取得時效を中斷す、自然中斷は、絶對的の效力を有す、即ち一切の人は、其中斷の效力を主張するるを得べきものにして、中斷に依り期間の利益を失ひたる當事者は、何人に對しても中斷以前に經過したる期間に基き、時效完成を主張することを得ず、(乙)法定中斷、法定中斷とは、當事者が法律に定めたる裁判上又は裁判外の行爲を以て、時效の要件を阻却するに依りて、中斷するを云ふ、法定中斷は、取得消滅兩時效に共通して、適用せらるべきものなり、□一請求、請求は、裁判上の請求たると、裁判外の請求たるとを問はず、時效を中斷する效力を有す、請求が時效を中斷するの理由は明白なり、即ち取得時效にありては、其要素たる平穩に物を占有し、又は權利を行使するの事實を阻却し、消滅時效に在りては、其要件たる權利不行使の狀態を止むるを以てなり、請求の主要なるものは、裁判上の請求、支拂命令、和解の爲めにする呼出、任意出頭、破産手續參加、及び催告なり、イ裁判上の請求、裁判上の請求は、訴を提起するに依りて爲す請求なり、裁判上の請求が、時效中斷の效力を生ずるには、訴の提起を以て足り、權利拘束を必要とせず、無效に歸したる裁判上の請求は、時效を中斷するの效力を有せず、訴の却下又は取下ありたるときは、其訴を無效ならしむ、隨つて之に時效中斷の效力を附することを得ざるなり、ロ支拂命令、一定の金額の支拂其他の代替物、若くは有價證務の一定の數量の給付を目的とする請求に就きては、督促手續に依り債務者に對して、支拂命令を發するの申請を爲すことを得べし、此場合に於て、この申請によりて時效を中斷す、債務者が支拂命令に對し異議を申立たる場合に於て、其請求に就きて起すべき訴が、區裁判所の管轄に屬する時は、其訴は支拂命令の送達と同時に、區裁判所に之を起したるものと看做す、然れども其訴が、地方裁判所の管轄に屬する場合に於て、若し債務者が異議の申立ありたることの通知書の送達ありたる時より、一ケ月内に管轄裁判所に訴を提起せざるときは、權利拘束の效力を失ふ、權利拘束の效力を失ふときは、支拂命令の申立は無效と爲るが故に、之によりて中斷の效を生ぜざるものと爲す、ハ和解の爲めにする呼出、及び任意出頭、訴を起さんと欲する者は、請求の日時を示して、和解の爲めに相手方の呼出を裁判所に申立つることを得、和解の爲めにする呼出も、亦時效中斷の效力を生ず、此場合に於て、若し相手方が出頭せず、又は和解が調はざるに拘はらず、一ケ月内に訴を起さざるときは、權利伸張の意見あるものと認むることを得ざるが故に、中斷の效力を生ぜざるものと爲す、任意出頭も、亦請求の一方法にして、時效を中斷す、任意出頭の場合に於て、和解が調はざるときは、呼出の場合に於けると同一の法則に從ふものとす、□二破産手續參加、破産財團の配當に加入するは、裁判上の請求と同じく、時效を中斷すべき請求方法なり、此場合に於て、參加を取消し、又は請求を却下せらるるときは、裁判上の訴の取下、又は却下ありたる場合と同じく、中斷の效力を生ぜず、ホ催告、催告は普通行はるる履行請求の方法なり、催告は執達吏に依りて爲す場合たると、他の場合たるとを問はず、時效中斷の效力を生ず、然れども六ケ月以内に裁判上の請求、和解の爲めにする呼出、任意出頭、破産手續參加、差押、假差押、又は、假處分を爲すにあらざれば、權利伸張の意思明確ならざるを以て、中斷の效力を生ぜざるものと爲す、□三差押、假差押及假處分、差押、假差押、又は假處分は、執行方法、又は執行保全の方法なり、執行方法又は執行保全の方法を實行するは、權利伸張の意見を明かにするものなれば、これを以て時效中斷の原因と爲すは當然なり、然れども之等の執行方法、若くは執行保全の方法が、權利者の請求に依り、若くは法律の規定に從はざるに依りて取消されたるときは、其手續は全く無效に歸するを以て、中斷の效力を生ぜず、差押、假差押、又は假處分は、時效の利益を受くべきものに對して爲す場合と、他の者に對して爲す場合とあり、例へば債務者の有する物を差押ふるは前の場合に屬し、第三者の供したる抵當物を差押へ、第三者の占有する物に對して假處分を爲すが如きは、後の場合に屬す、この場合に於ては、差押、假差押、假處分が、直に中斷の效力を生ずるは勿論なり、後の場合に於て差押、假差押、又は假處分の一事に由りて、直に中斷の效力を生ずべきときは、時效の利益を受くべき者過失なくして、事由の發生を知らざる間に期間の利益を失ふの虞あり、故に之を通知するにあらざれば、中斷の效力を生ぜざるものとす、尤も通知の手續を爲せば、單に夫れのみにて、完全に時效を中斷すべきものにして、通知を受けたる者が之を了知することを必要とせず、□四承認、承認は時效を中斷する效力を有す、承認とは、時效の利益を受くべき者が、相手方の權利を認むる一方的意思表示を云ふ、承認は、直接の意思表示又は間接の意思表示を以て之を爲すことを得、而して其中斷の效力に就きては、兩者の間に何等の差異をも存するものにあらず、例へば一部辨濟、果實の返還、擔保の供與、支拂猶豫の請求の如き、皆直接の意思表示を以て承認したる場合と同じく、中斷の效力を生ず、承認は權利の抛棄にあらず、また新に義務を負擔する行爲にもあらず、權利の自己に屬せざること、又は自己に義務あることを認むるに過ぎず、即ち承認が眞實に反せざるときは、有の儘のことを表明するに過ぎず、又承認が眞實に反するも、これが爲めに法律關係を發生するものにあらず、自己に不利益なる證據を作成するに過ぎず、孰れの場合に於ても、承認を以て權利の讓渡、又は新なる義務の負擔と爲すべからざるは明なり、果して然らば承認は、處分行爲にあらざるを以て、之を爲すに就き、處分の能力、又は權限あることを必要とせず、管理の能力、又は權限あるを以て足る、法定中斷は自然中斷と同じく、己に經過したる時效の期間を無效と爲し、中斷事由の終了まで其進行を止め、其終了の時より期間を更新す、中斷事由の終了時は、事實の判斷に依り決すべき問題なり、裁判上の請求に關しては、裁判言渡の日を以て終了時と爲すべきや、其他の日を以て終了時と爲すべきやに就き疑なき能はず、民法は裁判確定の日を以て、時效の進行を更新するものと爲せり、法定中斷は、相對的の效力を存す、即ち當事者、及び其承繼人の間に於てのみ效力を有し、他の者に對して效力を及ぼさず、之中斷の原因が、常に當事者の一方より他の一方に對して爲す行爲なるにより當然生ずる結果なり。(民一四七條乃至一五七條、民訴三八二三九一、三八一條、商一〇二三條)
- 英
- Interruption of prescription
- 独
- Unterbrechung der Verjährung
- 仏
- Intervention de la prescription
時故停止
(じかうていし)時效の停止は、已に經過したる期間の利益を留保して、一時時效の進行を止め、其完成時を遲延せしむるもの也、停止と中斷とは、明白なる差異あり、中斷は其事由の發生に依りて、其發生前に經過したる期間を無效ならしめ、其事由の終了と共に、期間を更新するものなるも、停止は之と異り、停止事由の發生に依りて、一時時效の進行を止むるも、已に經過したる期間を無效ならしむる事なく、隨つて其事由の終了と共に、期間を更新せずして、前の期間に引續き時效を進行せしむべきものなり、時效停止の事由は、時效の中斷すべき權利の行使を不能ならしむる狀態に外ならず、元來時效制度は、一般の生活の安固を維持する事を目的とするもにして、其效用を完了するが爲めに、或る程度迄其對抗を受くべき者の利益を犠牲に供するは、恂に止むを得ざるなり、然るに公益を虞るに急なるより、私權の保護を度外に置くが如き結果を生ずるの不當なることも亦明瞭なり、今時效の對抗を受くべき者の爲めに、中斷行爲を採るの不能なるに拘はらず、一般の場合と同じく時效を進行せしむる事とせば、極端に時效制度の趣旨を貫くと同時に、私權の享有を危うするに至り、爲に生活の安固を害するの結果を生ずる事なきを保せず、故に斯くの如き事由の存するとき、私權保護の見地より、一般の法則に對する例外を認め、時效の進行を停止するを相當とす、時效の完成が妨止せらるる期間は、個々の事由に就き、各別に之を定む、槪括して云へば、停止の事由と爲るべき故障の存續する間のみならず、其故障の止みたる後一定の期間を經過する迄、時效を完成すべからざるものと爲す、斯くの如く猶豫期間を與へたるは、時效を中斷すべき權利の行使を爲すに必要なる調査の暇を與ふるが爲めにして、法律の保護を全ふするの趣旨に外ならざる也、時效の停止は、時效の對抗を受くべき者の無能力に依るものあり、當事者間に存在する一定の身分上の關係に基くものあり、時效の適用を受くべき權利の性質に基くものあり、事變に依るものあり、之等の停止事由に就きて各別に説明すれば左の如し、□一時效の對抗を受くべき者の無能力に依る停止(身分に基く絶對的停止)、時效の對抗を受くべき者が無能力者なるとき、時效を停止するは、時效を中斷すべき權利の行使を妨げらるるに依るものにして、此事由の存する範圍に制限せらるべきものなり、時效を停止するの原因と爲るべき無能力は、未成年、及び禁治産に依るものに限らる、妻及準禁治産者の特定の行爲に就きては、無效を制限せらるるに止まり、自ら權利を行使することを妨げらるるものにあらず、又法人が執行機關を缺如するに依り、事實上行爲を爲す能はざるの點に於ては、無能力者と同一視すべきものなるも、法人の執行機關に就きては、直に補缺を爲すの規定あり、故に之等の者の爲めに停止の制を設くるの必要を見ず、未成年者、及び禁治産者の爲めに時效を停止するは、其法定代理人を缺く場合に限らるべきものなり、即ち未成年者、及び禁治産者は、自から權利を行使する能はざるも、法定代理人あるときは、其者が之に代りて行爲を爲すを以て、無能力に依り、時效の中斷を不能ならしむるの虞なきや明かなり、又法定代理人は、常に無能力者の利益の爲めに行動を採るべき重大の責任を有するものなれば、その怠慢の爲めに無能力者を不利に陷るること極めて稀なるべし、故に法定代理人あるときは、時效を停止すべきものにあらず、法定代理人の欠缺に依りて、未成年者又は禁治産者の爲めに時效を停止するは、時效の滿了前六ケ月内に於て、其欠缺ありたる場合に限る、其理由は、民法が時效の停止に關して採りたる主義より觀察せは、恂に明白なり、即ち民法は時效の停止を以て、或る事由の繼續する間、絶對に時效の進行を止むるものと爲さずして、時效の終りに接近して存在する事由に依り、その完成を停止するものと爲すが故に、時效期間の始または中途に於て、存在する原因の爲めに、時效を停止するの必要を認めざりしものなり、法定代理の欠缺により、無能力者の爲めに時效の完成を妨止する期間は、其故障の終了後、猶六ケ月間繼續すべきものなり、即ち時效の對抗を受くべき者が、能力者と爲り、又は法定代理人が就職したる時より六ケ月内は、時效を完成せしめざるものと爲す、之調査の暇を與ふるの必要を認めたるの結果にして、法律の保護を完全ならしむるの趣旨に出づるものなり、□二當事者間に存する身分上の關係に基く時效の停止、(身分に依る相對的停止)、當事者間に一定の身分上の關係を有するときは、時效を中斷すべき權利の行使を不能ならしむることを理由として、其時效を停止す、即ち無能力者が、其財産を管理する父母、後見人に對して權利を有し、又は妻が夫に對して權利を有する場合之なり、無能力者が、其財産を管理する父母又は後見人に對して權利を有する場合、または妻が夫に對して、權利を有する場合に於て、權利者は事實上相手方に對して、權利を行使する事を得ざるべし、故に孰れの場合に於ても、其關係の存續する間、及び其關係の停止したる後、六ケ月間時效の完成を妨止す、即ち前の場合に於て、無能力者が能力者と爲り、又は後任の法定代理人が就職したる時より六ケ月内後の場合に於ては、婚姻の解消の時より六ケ月内は、時效は完成せざるものとす、妻が夫に對して權利を有する場合に就きてのみ規定し、父母又は後見人が無能力者に對して權利を有し、または夫が妻に對して權利を有する場合に就きて規定を設けず、之後の場合に於て、保護の必要を認めざざりしによるものならん、□三權利の性質に基く時效の停止、權利の性質より生ずる時效の停止にして、民法に於て認められたるものは、相續財産に對する停止なり、相續が開始したる場合に於て、相續人が確定するまで、或る日時を要することあり、相續人のあること分明ならざるが爲め管理人を選任することあり、又相續財産を以て、被相續人の債務を完濟すること能はざるが爲めに權利を行使し、またはこれに對する權利の行使を受くる者なき狀態の存續する間、其相續財産に關して、時效の完成を妨止すべきは勿論なり、また相續人が確定し、管理人又は管財人が選任せらるるも、其確定又は選任後、直に又は短日月の間に時效完成すべきものとするときは、調査の暇なきが爲めに實際中斷の方法を執ること能はずして、期間を經過するの虞なしとせず、又相續財産に對して權利を有する者も、相續人の何人なるやを知らざるが爲めに、其權利を行使するを得ざることあるべし、故に相續人の確定し、管理人の選任せられ、又は破産の宣告ありたる時より六ケ月内は、時效を完成せざるものと爲す、□四事變に依る停止、時效期間の滿了の時に當りて、天災其他避くべからざる事變の爲めに、時效を中斷すべき權利の行使を爲す能はざるときは、其妨碍の止みたる時より二週間内は、時效は完成せざるものとす、例へば震災、若くは水災の爲めに交通閉塞し、戰亂若くは火災の爲めに裁判事務を停止せられたるが爲め、事實上權利の實行が不能と爲りたる場合の如し、民法は、事變に依る中斷不能の狀態が、時效期間滿了の當時に存在することを必要とす、此狀態が時效の滿了時に接近して存在するも、その時まで繼續せざる以上は、停止の原因と爲さざるなり、而して時效の完成を妨止すべき期間は、單に右の狀態の存續する間に限られずして、其止みたる後二週間繼續すべきものなり。(民一五八條乃至一六條)
- 英
- Suspension of prescription
- 独
- Aufhebung der Verjährung
- 仏
- Suspen-sion de la prescription
資格
(しかく)資格とは、社會に於ける人の身分地位を云ふ、例へば判事檢事登用試驗を受くることを得るものは、成年以上の男子にして、左に記載したるものに限る、□一官立學校、及び專門學校令に依る公立又は私立の學校(別科を除く)に於て、三學年以上法律學科を修め、卒業證書を有する者、□二司法大臣に於て指定したる公立又は私立の學校に於て、三學年以上法律學科を修め卒業證書を有する者、□三司法大臣に於て、相當と認めたる外國の大學校又は之と同等なる學校に於て、法律學科を修め卒業證書を有する者と定めたり、これ畢竟右受驗の資格に關し規定されたるものなるが如し、其他文武官に任ぜらるるには、皆夫れに相當する資格を要するが如き是なり。(憲法一九條、非訴手續一二二條、二四年五月司法省令三號五條)
- 英
- Qualification
- 独
- Qualifikation
- 仏
- Qualité
自家用醬油税法
(じかようしやうゆうぜいはふ)自家用醬油(溜を併稱す)として、一箇年五石以下を製造せんとするものは、本法に依り政府の免許を受くべし、其製造を廢止せんとするときは、免許の取消を求むべし、又免許を受けたる製造高を變更せむとするときは、更に政府の許可を受くべし、但し同年内に於ては、製造高の變更を許さず、□二自家用醬油製造免許は、一家一人に限る、□三自家用醬油製造人は、其製造見積高に依り、每年左の製造税を納むべし、イ第一種、二石未滿、金一圓、ロ第二種、三石未滿、金二圓、ハ第三種、四石未滿、金三圓、ニ第四種、五石以下、金四圓、□四製造税は之を二分し、其年十月及び翌年三月を以て納期とす、但し納期後免許を受くるときは即納とす、□五自家用醬油製造者、其製造したる醬油を販賣し、又は其居宅域外に於て自家用醬油を製造したる時は、五圓以上五十圓以下の罰金に處す、□六左に記載したる者には本法を適用せざるなり、イ自家用醬油製造者にして、一家一箇年の諸味仕込高又は溜製成高一石以下に止るもの、ロ醬油製造營業人、醬油請賣人、ハ料理店、飮食店、旅人宿營業者及び之等のものと同居する者、□七自家用醬油製造者免許制限を超過して醬油を製造したるときは、三圓以上三十圓以下の罰金に處し、なほ其超過石數に對し造石税を課す。(三三年三月法四三號)
- 英
- Law of tax on soy for one's own use
- 独
- Steuergesetz der Soja zum Sichselbstsgebrauch
- 仏
- Loi de l'impôt sur le souï consommé chez soi
自家用醬油税法施行規則
(じかようしやうゆうぜいはふしかうきそく)□一自家用醬油税法に依り、自家用として醬油の製造免許を受けんとする者は、其居所、氏名、種別(例へば一石未滿、五石以下と云ふが如し、自家用醬油税法參照)及び醬油製造方法を記し、税務署長に申請すべし、□二自家用醬油製造者其住所、氏名、又は製造方法を變更したるときは、直に税務署長に申告すべし、又種別を變更せんとするときは、前年中に變更の申請書を税務署長に差出すべし、□三自家用醬油の製造を廢止せんとするときは、其旨を税務署長に申請すべし、□四自家用醬油製造者死亡し、又は失踪の宣告を受けたるときは、相續人又は財産管理人より、其旨税務署長に報告すべし。(三三年三月勅六七號)
- 英
- Regulation for the application to the law of tax on soy for one's own use
- 独
- Ausführungsregel des Steuergesetzes der Soja zum Sichselbsts-gebrauch
- 仏
- Règles pour l'application de la loi de l'impôt sur le souï consommé chez soi
始期
(しき)始期とは、法律行爲の履行、及び其效力の發生を、未來の時期に繫らしむる條款也、故に例へば、甲者、乙者に對し、金圓を贈與すべき契約をなし、之に始期を付したりとせば、乙者は契約當時に於ては、甲者に對して債權(贈與)の請求をなすことを得ず、其始期の到來したる時、初めて之が請求權を有するに至る如し。(民一三五條)
- 英
- Time of commencement
- 独
- An-fangstermin
- 仏
- Temps du commence-ment
始期付權利
始期付權利とは、權利の發生、及び效力に始期を付したるを云ふ、右例に於ける乙者の甲者に對して有する權利の如きは、所謂始期付權利と云ふことを得べし。(民一六六條)
- 英
- Right with beginning term
- 独
- Recht mit Anfang
- 仏
- Droit avec le temps du commencement
始期附法律行爲
法律行爲に始期を付したる場合を始期付法律行爲と云ふ、法律行爲とは、私法的效果を發生せしめんとする意思の表示を云ふ、始期付法律行爲は、已に發生したる債務關係に就きては、其履行を停止し、其目的とする主たる效力(物權の設定、物權債權の移轉等)に關しては、其效力の發生を停止するものなり、始期が履行を停止すと云ふは、債權が已に發生したることを意味す、債權が已に發生して其履行が停止せらるるは、債權の存續する狀態なり、而して始期の到來を法律行爲の目的としたる效果を發生し、又法律行爲に依りて既に發生したる債權を行使し得べきものとす。(民一三五條)
- 英
- Judical act with beginn-ing term
- 独
- Rechtsgeschäft mit An-fang
- 仏
- Acte juridique avec le temps du commencement
敷金
(しききん)敷金は、賃貸借契約締結の際、借賃の辨濟を確保する爲め、豫め賃借人より賃貸人に交付する金錢にして、所謂契約保證金なるものの一種に屬し、賃貸借の場合に限りて、特に使用せらるる名稱なり、蓋し敷金は、賃貸借關係の存續する限りは、賃借人に於て其返還を賃貸人に要求することを得ざるものにして、賃貸人は何時にても、延滯借賃と敷金とを相殺する權利を有し、賃貸借終了の際、其殘額を賃借人に返還すべきものとす、此敷金其他一般保證金なるものの性質に就きては、議論の存する處なり、多數の説は、敷金の授與に關する當事者の意思は、債務者がその債務を履行せざる場合に就き、債權者をして其債權と敷金の債務とを相殺し、依つて以て其債權に付き滿足を得せしむるにありとなすものの如し、然れども敷金は、當事者の權利關係たるに止まらずして、物上擔保たるの性質を有するものとなすを至當とす。(民三一六條)
- 英
- Deposit money
- 独
- einlegendes Geld
- 仏
- Argent déposé
資金
(しきん)資金とは、特別の用途に充てられたる金錢を云ふ、彼の維持資金と云ひ、材料資金と云ふはこの用例なり。(會計法四條、商五三六條一號)
資金義務者
資金義務者とは、特定人に對して、一定の資金を給付する債務を負擔するものをいふ、例へば爲替手形に於ける振出人は、資金を支出し、以て手形の流通を圓滿ならしむるものなるが故に、所謂資金義務者なり、又他人の委託に依り手形を振出したるときは、委託者を以て資金義務者となすが如き是なり。
- 英
- Person bound to contribute
- 独
- Kapitaleinlageschuldner
- 仏
- Personne obligée de contribuer
支給
(しきう)支給は給與なり、雇人に對して給金を與へ、官吏に對して俸給を付與するが如き是なり。(執達吏規則一七條)支給額は、支拂高なり、金員の多寡は、契約其他の關係によるものなり、勳章年金支給細則第一九條に「支給額」とあるは此用例とす。
- 英
- Payment
- 独
- Zahlung
- 仏
- Paie-ment
支給額
- 英
- Amount of payment
- 独
- Zahl-ungssumme
- 仏
- Somme du paiement
市行政
(しぎやうせい)市行政とは、市が國家に對して、其委任せられたる事務を行ふことを云ふ、即ち自治是なり、市の行政は、意思機關と行政機關の二者を經て行ふものとす、市の意思機關とは、内部に於て市の意思を決議すべき機關にして、之を議事議關とも云ふ、市の執行機關とは、市が外部に對して其意思を行使するものにして、市參事會是なり、故に市の行政は、此兩者によりて行はる、市の意思機關は、之を市會の下に述べたり(市會參照)市の執行機關、即ち市參事會は、市長(一名)助役(東京は三名、京都、大阪は各二名、其他は一名)及び名譽職參事會員、(東京は十二名、京都、大阪は九名、其他は六名)を以て組織す、市長は、有給吏員とす、其任期は六年とし、内務大臣市會をして、候補者三名を推薦せしめ、上奏裁可を請ふべし、若し裁可を得ざれば、再び推薦をなさしめ、尚裁可を得ざれば、追つて推薦せしめ、裁可を得るに至る迄内務大臣は、臨時代理者を選任し、又は市費を以て官吏を派遣し、市長の職を管掌せしむ。
助役、及び名譽職參事會員は、市會之を選擧す、助役もまた有給吏員とし、其任期は六年とす、その選擧は府縣之を認可す、若し認可を得ざれば、再選を行ひ、なほ認可を得ざれば、追つて選擧を行ひ、認可を得るに至る迄、府縣知事は臨時代理者を選任し、又は市費を以て官吏を派遣し、助役の職を執らしむ、市長、及び助役は其市公民たる者に限らず、但し其任を受くる間は、其市公民たる權を取得す、名譽職參事會員は、其市公民中年齡滿三十歳以上にして、選擧權を有するものより之を選任す、其任期は四年とす、但し任期滿つるの後と雖も、後任者就職の日迄在職す、名譽職參事會員は、每二年其半數を改選す、若し二分し難き時は、初回に於て多數の一半を退任せしむ、初回の退任者は抽籖に依りて定む、但し退任者は再選せらるることを得、若し缺員あらば、直に補缺選擧を行ひ、殘任期丈け在職せしむ、名譽職參事會員の選擧に就きては、市參事會自ら其效力を議決す、當選者中其資格なきものを發見し、又は就職後其要件を失ふ者ある時は、其人の當選は無效とす、其要件の有無は、市參事會之を議決す、此議決に不服ある者は、府縣參事會に訴願し、其府縣參事會の裁決に不服ある者は、行政裁判所に出訴するを得。(市制五〇條、五三條乃至五八條)
- 英
- Municipal administration
- 独
- Stadtverwaltung
- 仏
- Administration municipale
市政
- 英
- Municipal administration
- 独
- Stadtverwaltung
- 仏
- Administration muni-cipale
市會
(しくわい)市の機關は、一般團體の機關と同じく、意思機關と執行機關との二あり、前者は、又議事機關とも云ふ、而して議事機關は、即ち市會なりとす、市の執行機關は、即ち市參事會なり、□一市會の組織、市會議會は、其市の選擧人、其被選擧權ある者より之を選擧す、其定員は、人口五萬未滿の市に在りては三十人とし、人口五萬以上十萬迄の市に於ては三十六人とす、人口十萬以上の市に於ては、人口五萬を加ふる每に議員三人を增し、人口二十萬以上の市に於ては、人口十萬を加ふる每に議員三人を增し、六十人を定限とす、但し議員定員は、市條例を以て、定限を超えざる範圍内に於て、特に之を增減することを得、市公民は凡て選擧權を有す、但し其公民權を停止せらるる者、又は公民たるの資格を失ふものは、此限りにあらず、市會議員の選擧は三級選擧なり、即ち選擧人を分ちて三級とし、選擧人中直接市税の納額最も多き者を合せて、選擧人總員の納むる總額の三分の一に當るべき者を一級とし、一級選擧人の外直接市税の納額多き者を合せて、選擧人總員の納むる總額の三分の一に當るべき者を二級とし、爾餘の選擧人を三級とす、選擧人每級各別に議員の三分一を選擧す、其被選擧人は、同級内の者に限らず、三級に通して選擧せらるることを得、一人にして數級又は數區の選擧に當りたるときは、五日以内に、何れの選擧に應ずべきかを市長に申立づべし、其期限内に之を申立てざる者は、總べて其選擧を辭するものとなし、且つ一定の制裁を加ふ、(例へば市費を增課するが如き)、選擧權を有する市公民は、同時に又被選擧權を有す、但し所屬府縣の官吏、有給の市吏員、檢察官、警察官吏、神官、僧侶、及び其他諸宗教師、小學校教員は、市會議員たる事を得ず、官吏にして議員に當選し、之に應ぜんとする時は、所屬長官の許可を受くべし、辯護士にあらずして、他人の爲めに裁判所、又は其他の官廳に對し、事を辨ずるを以て業となす者は、議員に選擧せらるることを得ず、父子兄弟たる者は、同時に市會議員たることを得ず、其同時に選擧せられたる時は、投票の數多き者一人を當選とし、若し同數なれば、年長者を當選とす、時を異にして選擧せられたる者は、後者議員たる事を得ず、市參事會員との間、父子兄弟たる緣故ある者は、之と同時に市會議員たる能はず、議員は名譽職とす、其任期は六年とし、三年每に各級に於て其半數を改選す、若し各級二分し難き時は、初回に於て多數の一半を解任せしむ、其解任者は、抽籖を以て之を定む、退任の職員は、再選せらるることを妨げず、議員中缺員あるときは、每三年定期改選の時に至り、同時に補缺選擧を行ふべし、若し定員三分の一以上缺員ある時、又は市會、市參事會、若くは府縣知事に於て、臨時補缺を必要と認むる時は、定期外と雖も、其補缺選擧を行ふべし、補缺議員は、前任者の殘任期間在職す、市長は、選擧每に其選擧前六十日迄に選擧原簿を製し、各選擧人の資格を記載し、之によりて更に選擧人名簿を調製すべきものとす、選擧人名簿は、七日間市役所、又は其他の場所に於て、關係者の縱覽に供す、若し關係者にして訴願せんとする時は、七日内に之を市に申立て、市長は之を市會の議に付し、其裁決に依り名簿を修正すべきときは、選擧前十日を限り、これに修正を加へて確定名簿と爲し、之に登錄せられざるものは、何人たりとも選擧權を行ふことを得ず、選擧を行ふときは、市長は選擧の場所、日時を定め、選擧すべき議員の數を各級に分ち、選擧前七日迄に公告すべし、各級に於て選擧を行ふの順序は、先づ三級選擧を行ひ、次に二級の選擧、次に一級選擧を行ふべきものとす、市長は選擧中より臨時に二名、若くは四名の選擧掛を選任し、市長若くは其代理者掛長となり、選擧會を開閉し、其會場の取締に任ず、選擧掛は名譽職とす、選擧開始中は、選擧人の外何人も選擧會場に入る事を得ず、選擧人は、選擧場に於て協議、又は勸誘をなす能はず、選擧は無記名投票の方法による、投票は、被選擧人の氏名を記し、封緘の上選擧人自ら掛長に差出すべし、其際投票者は、自己の氏名、及び住所を掛長に申立て、掛長は、名簿に照らして之を受け、封緘の儘投票凾に投入す、投票函は、投票を終る迄開くことを得ず、投票は自ら行ふべく、他人の代行を許さず、但し内國人にして公權を有し、直接市税を納むる者、其額市公民の最も多く納税する者三名の内の一人よりも多きものが、選擧權を有するときは、代人を以て選擧を行ふことを許す、其獨立の男子にあらざる者、又は法人に係るものは、公權を有する獨立の日本人の男子一名を代人として、選擧せしむる事を要す、投票に記載の人員定數に過ぎ、又は不足あるも、其投票を無效とせず、其定員に過ぐる者は、末尾の人名を順次に棄却す、イ人名を記載せず、又は人名の讀み難き者、ロ被選人の何人たるかを確認し難きもの、ハ被選擧權なき人名を記載するもの、ニ被選擧人氏名の外他事を記入したる投票は、無效とす、有效投票の多數を得たるものを以て當選者とす、投票の數同じき者は、年長者を取り、同年なるときは、掛長自ら抽籖して其當選を定む、同時に補缺議員數名を選擧する時は、投票數の最も多き者を以て、殘任期の最も長き前任者の補缺とし、其數同じき時は、抽籖を以て其順序を定む、選擧を終りたる時は、選擧掛長は、直に當選者に當選の旨を告知すべし、之を辭せんとする者は、五日以内に市長に申立つべし、一人にして數級、又は數區の選擧に當りたる時は、同期限内に何れの選擧に應ずべきかを申立つべし、其期限内に之を申立てざる者は、其選擧を辭する者となし、一定の制裁を加ふ、□二職務權限、市會は其市を代表し、市制に準據して市一切の事件、並に從前特に委任せられ、又は將來法令に依りて委任せらるる事件を議決す、爰に所謂代表の文字は、決して市を外部に代表する機關の意にあらず、市代議の機關として、其利益を代表する機關也とす、(甲)市會の議決すべき事件の槪目は下の如し、い市條例、及び規則を設け、並に改正すること、ろ市費を以て支辨すべき事業、は歳入出豫算を定め、豫算外の支出、及び豫算超過の支出を認定すること、に決算報告を認定すること、ほ法律勅令に定むるものを除くの外、使用料、手數料、市税、及び夫役、現品の賦課、徵收方法を定むること、へ市有不動産の賣買、交換、讓渡、並に質入書入を爲すこと、と基本財産の處分に關すること、ち歳入出豫算を以て定むるものを除くの外、新に義務を負擔し、權利の棄却を爲すこと、り市會の財産、及び營造物の管理方法を定むること、ぬ市吏員の身元保證金を徵し、並に其金額を定むること、る市に係る訴訟、及び和解に關すること、(乙)市會は、法律勅令に依り、其職權に屬する市吏員の選擧を行ふ、例へば助役、及び名譽職、參事會員、收入役等之也、(丙)市會は市の事務に關する書類、及び計算書を檢閲し、市長の報告を求め、事務の管理議決の施行、並に收入支出の正否を監督し、市の公益に關する事項に就き、意見書を監督官廳に差出すことを得、又官廳の諮問ある時は、意見を開述すべきものとす、(丁)市會は訴願の裁決をなす、凡そ訴願とは、行政官廳の處分に對し、監督權の發動を求むる爲に、處分を爲したる官廳に對し、上級の地位に在るものに提起するを云ふ、例へば選擧に關する爭議に就きてなしたる、選擧掛長の處分に對する訴願の如し、□三市會の議事方法、市會は、每曆年の初め、一週年を限り、議長、及び其代理者各一名を互選す、市會は會議の必要ある每に、議長之を召集す、若し議員四分の一以上の請求ある時、又は市長、若くは市參事會の請求ある時は、必ず之を召集することを要す、其召集、並に會議の事件を告知するは、急施を要する場合の外は、少くとも會議の三日前たるべし、但し市會の議決を以て、豫め會議日を定むるを妨げず、凡て議員は、選擧人の揭示、若くは委囑を受くべからず、市會は議員半數以上出席するにあらざれば、議決する事を得ず、但し同一の議事に就き、召集再度に及ぶも、議員猶半數に滿たざるときは此限りにあらず、其議決は、可否の多數に依りて定め、可否同數なるときは、再び議決すべし、若し尚同數なるときは、議長の決する處に依る、會議の可否、議長、及び其父母兄弟、若くは妻子の一身上に關することあるとき、議長は其職を行ふことを得ず、又議員としても表決權なし、議員は、自己、及び其父母兄弟、若くは妻子の一身上に關する事件に就きては、市會の議決に加はる能はず、若し此除名の爲め定數に滿たざるときは、府縣參事會、市會に代つて之を議決す、市會に於て、市吏員の選擧を行ふは、其一名每に匿名投票を以て、有效投票の過半數を得たるものを當選とす、市會の議事は公會す、但し議長の意見を以て傍聽を禁ずることを得。(市制一一條乃至四八條)
- 英
- City assembly
- 独
- Stadtversamm-lung
- 仏
- Assemblée de cité
刺戟
(しげき)刺戟とは、一言に興奮の料なりと謂ひ得べし、即ち何等かの作用を起さしむる一種の動因にして、その有形的なると、無形的なるとを問はざるなり、例令ば針の刺戟によりて痛みを感ずと謂はば、其刺戟たるや有形的なり、又侮辱の刺戟によりて、發奮興起すと謂はば、其刺戟たるや無形的なるが如し、而して最も屢使用せらるる心理學上の意義は、廣義の意識を生起し、若くは意識に變化を與ふる所以の動因を稱す、又吾人の神經に影響する刺戟は、物質的刺戟と、生理的刺戟とに區別することを得べし。
事業公債及び鐵道公債特別會計法
(じげふこうさいおよびてつだうこうさいとくべつくわいけいはふ)□一鐵道敷設法、事業公債條例、北海道鐵道敷設法、及び臺灣事業公債法に依る公債金の會計は、特別會計として、一般の歳入歳出と區別すべし、□二公債募集金を使用せんとするときは、その金額を一般の歳入に組入れ、一般の歳出として拂出すべし、但し償金特別會計資金の一時繰替金を返償する場合には、直に償金特別會計の資金の繰入れ、又臺灣事業公債法による一時借入金を償還する場合には、直に臺灣銀行に支拂ふべし、□三公債募集金の每年度内に使用せざるものは、翌年度へ繰越すべし、□四公債を以て支辨する事業完了の上、公債募集金に剩餘あるときは、一般の歳入に繰入るべし、□五政府は、每年公債特別合計の歳入歳出豫算を調製し、歳入歳出の總豫算と共に、帝國議會に提出すべきものなり。(三二年二月法一三號)
- 英
- Ordi-nance of special account of enterprise and railway loan
- 独
- Specialrechnungsgesetz der Unternehmungsschuld und Eisenbahns-schuld
- 仏
- Règles des comptes spécials du prêt d'entreprises et de chemin de fer
事業公債條例
(じげふこうさいでうれい)□一事業公債は、既設官線鐵道改良、北海道鐵道敷設、製鋼事業、電話擴張の費途、葉煙草專賣資金、及び國防事業の費に充つるが爲め、證書額面一億五千萬圓を限り、漸次之を募集す、□二本公債の利子は一箇年百分の五以下とし、募集の都度大藏大臣之を定む、□三本公債に關し、本條例に規定せざるものは、明治一九年勅令第六六號整理公債條例の各條項を適用す。(二九年三月法五九號)
- 英
- Regulation of enterprise loan
- 独
- Regulirung der Unternehmungs-schuld
- 仏
- Règles du prêt d'entreprises
事業年度
(じげふねんど)事業の數年に渉り經續する場合に於て、豫め每年六月十二月と云ふが如く、事業の清算年度を一定し置く其年度を事業年度と云ふ。(民五一條)
- 英
- Business year
- 独
- Geschäfts-jahr
- 仏
- Année des affaires
私權
(しけん)(甲)私權の意義、凡そ人類の生活は、需要を生ず、人類の生活に由りて生ずる需要の滿足を生活利益と云ひ、また生活に依りて生ずる需要を滿足すべき資料を活資と云ふ、生活利益を享有する爲めには、活資の上に支配力を及ぼさざるべからず、またその支配力と牴觸すべき外部の力を排除せざるべからず、活資の上にその支配力を及ぼし得べきことは、生活利益の享有者と、活資との間に存在する關係の内容を形成すべきものにして、その外部の力を排除し得べきことは、生活利益の享有者と、他人との間に存在すべき關係の實質なり、生活利益は、法律に於て保護せらるる範圍と、保護せられざる範圍とあり、法律に依りて保護せらるる所の生活利益を、法律利益(法益)と稱す、生活利益に對する法律上の保護を完全ならしむる爲めには、享有者をして活資の上に有する支配力を保障せざるべからず、此保障を完からしむる爲めには、享有者の爲めに之と牴觸する處の外部の力を排除せざるべからず、法律利益の種類は、各人の支配力を及ぼすべき活資の種類に依りて異同を有し、其範圍は、各人が活資の上に及ぼすことを得る支配力の範圍、幷に之が爲めに外部の力を排除し得べき程度に依りて定る、活資の上に有すべき支配力を認め、之と牴觸する外部の力を排除する爲めには、國家權力の強制を必要とす、國家權力の強制は、如何なる場合にも、法律利益の享有を完からしむる爲め、必要なる原素なり、權利は、法律利益の享有を完うする爲め、法律の保護に依りて、活資の上に有する支配力の範圍なり、前に法律利益に就きて説示したる所あり、之より推究せば權利に左の要素あることを知る、□一權利の主體、法律の保護に依りて、活資の下に支配力を有する者を權利の主體と爲す、活資の上に支配力を有する者は、槪して法律利益の享有者なり、然れども時としては、法律利益と之が享有とを完うする爲め有すべき支配力が、別異の人格に歸屬することあり、此場合に於ては、權利の名義人を法律利益の享有者と分別して、觀察せざるべからず、權利の名義人と、權利者に代りて權利を實行するものとを混交する事勿れ、前者は法律關係の當事者なり、後者は、法律關係の當事者にあらずして、他人に代りて爲すべき行爲の當事者たるに過ぎず、□二權利の客體(目的)、權利の客體は、權利主體が、此法律利益の享有を完うする爲め、支配力を及ぼすことを得べき活資なり、例へば物は所有權者の支配力を及ぼすべき活資にして、所有權の實體たり、債務者の作爲不作爲は、債權者の需要を滿足するの資料として、債權の客體たり、□三權利主體と權利客體との關係、權利主體は、權利の客體たる活資の上に支配力を有す、一方が他の一方を支配し、一方が他の一方に支配せらることが、權利の主體と客體との間に存する法律上の關係なり、此關係は、權利の正面なり、法律を以て權利を保護するは、この關係を維持するに在り、此關係を維持する爲には、他の妨害を排除せざるべからず、他の妨害を排除する爲には、強制を用ゐざるべからず、從ひて權利の反面として、次に揭ぐる兩個の元素を觀察するを要す、□四義務、權利主體は、法律に依りて保護せられたる支配力を完うする爲めには、之と牴觸すべき他人の力を排除せざるべからず、故に權利の觀念中には、當然主體と他人との關係を包含す、權利主體は、法律利益の享有を完うする爲め、一切の他人に向つて之と觸牴すべき行爲を爲さざることを要求し得べく、一切の他人は、權利主體の要求に應じ、之と背馳すべき行爲を避止せさるべからず、此關係が法律に依りて保護せらることは、權利の要件なり、法律が此關係を認めざれば、權利を成立せしむること能はず、法律に依りて、他人が權利主體の爲めに、權利の尊重を要求せらるる狀態を義務と云ひ、その義務を負擔せる人を義務者と云ふ、法律が義務を認めざれば、權利は、空想たるを免れず、權利の觀念あれば、必ず義務の觀念これに伴隨す、義務と云へば、結局權利の反面なり、□五強制、權利には、必ず強制の觀念を包含す、國家權力の強制なくんば、權利は空想たるに過ぎす、禮義上、又は道德上他人に對して行爲を要求し得べきこと、又他人が其要求に應ずべき本分あることは、法律以外の關係に於ては重要なれども、法律上之が爲めに權利を生ずることなし、權利を有するには、義務者が、權利主體の要求に應ぜざるときは、國家權力が發動して、其要求に應ずることを強制するの關係なかるべからず、之即ち法律上の權利が、天賦人權、又は道德上の權能と差異ある所以なり、權利の實質と爲るべき生活利益は、生活に依つて生ずるものにして、法律に基くものにあらず、然れども之を保護して、法律利益と爲すものは法律なり、故に法律の規定を離れて、權利を存在せしむることを得ず、即ち法律は、權利を創設するものにして、法律以前に存する權利を認めたるものにあらざるなり、之を要するに私權とは、私法上の規定に由りて生ずる權利也、(乙)私權の分類、私權は之を分ちて數種となすことを得べし、□一人格權、身分權、財産權の區別、私權は、其目的の異るに從ひ、之を人格權、身分權、及び財産權に分別することを得、人格權とは、人格と分離すべからざる活資を目的とする權利なり、人格權の目的は、人格と終始するものにして、須臾も之と離るべからざるものなり、故に人格を滅失するにあらざれば、之を消滅することを得ず、例へば生命身體の如きは、人格と分離することを得ざるものなり、其上に有する生命權、身體權の如きは、人格に屬す、人格權の目的は、人格と終始するものなるが故に、享有者が之を處分することを得ず、例へば人にして生命を放棄し、身體を讓渡するが如きは不能なり、人格權は、之を天賦の人權と混同すべからず、人類は、法律を離れて生存するを得れども、人格は、法の賦與するものなり、人格權は、當然人に伴ふものにあらずして、法律の創設物なる點に於ては、毫も他の權利と異ることなし、人格權は、公法上の規定によりて生ずる所の權利と混同すべからず、茲に人格權と稱するは、私法上の關係に於て存するものを云ふ、人格權は民法に於て、直接に規定せられず、即ち正面よりその存在を明かにせず、然れども之を侵害することが、私法上の不法行爲となることは明かなり、正面より規定せられざるを以て、私法上の權利にあらずと云ふは誤りなり、つぎに身分權は、一定の身分と分離すべからざる活資を目的とする權利なり、身分權の目的は、身分に附著してこれと離るべからず、恰も人格權の目的が、人格と共に終始すると同一なり、私法上の身分は、親族關係より生ず、例へば夫婦と云ひ、親子と云ふが如し、親權の目的、夫權の目的は、其親たる身分、夫たる身分に附著し、親たること、夫たることを失はざる以上は、享有者を離るること能はざるものなり、財産權は、人格又は身分と分離することを得べき活資を目的とする權利なり、一切の財産權は、固より人格なければ存在せず、又或る財産權は、一定の身分なければ存在せざることあり、然れどもその目的は、決して人格と終始するものにあらず、又身分と運命を共にするものにあらず、之を放棄するも、廢滅するも、人格、又は身分を消滅せしむることなし、以上述ぶる如く、財産權の目的は、人格身分と分離することを得、人格、若くは身分を滅せずして、之を喪失することを得、故に財産權の目的は、各人の處分を許すべきものなり、例へば所有權の目的は、人たることを失はずして、之を讓渡することを得、債權の目的は、父たることを失はずして、之を放棄することを得るが如し、財産權は、これを分ちて物權、智能權、及び債權の三種と爲す、イ物權とは、物即ち有體物を目的とする權利を云ふ、物は、權利者の需用を滿足すべき活資なり、故に物權者は、他人を排除して、物の上に直接に支配力を及ぼずことを得、物權は、其支配力の範圍、及び方面の異るに從ひて分別し、所有權、永代借地權、地上權、永小作權、地役權、留置權、先取特權、質權、抵當權と爲す、ロ智能權は、有體物を目的とせずして、自己の智能に由りて産出したる、無形の資料の上に有する支配力なり、著作權と稱し、特許權と云ふは、皆他人を排除して、智能の産出物を獨占する權利にして、智能權中に包含せらるべきもの也、ハ債權は、他人の行爲を目的とする財産權なり、此權利に在りては他人の行爲が、享有者の需要を滿足するの資料なり、他人の行爲を目的とする權利は、財産權中にも、親族權中にもあり、然れども債權と稱するば、財産權中に入るべきものに限る、□二絶對權、相對權の區別、この區別は、權利の目的に存す、若し權利の目的が、特定人の行爲ならば、之を相對權と稱し、權利の目的が、特定人の行爲以外のものならば之を絶對權と爲す、特定人の行爲が權利の目的と爲るときは、權利者は、特定人より、目的と爲りたる行爲を要求し得べく、特定人の行爲以外のものが目的たる場合に於ては、權利者が、特定人より行爲を要求するの問題を生ぜず、前の場合に於ては、權利者と特定人との間に、法律上の連鎖(法鎖)を生ずれども、後の場合に於ては之を生ぜず、權利者と特定人との間に、法律上の連鎖存すれば、相對權を生じ、之を有せざれば、絶對權を生ず、これ二者の間に存する區別の骨子也、人格權は、總べて絶對權なり、人格權中には、所謂相對權を存せず、財産權中には、絶對權と相對權との區別を爲すを得べし、即ち物權智能權に屬するものは、特定人權の行爲を目的とせざるが故に絶對權なり、債權は、特定人の行爲を目的とするが故に相對權なり、親族權中にも、絶對權に屬するものと、相對權に屬するものとあり、若し親族たる人を權利の目的とする場合には、その權利は絶對權にして、親族の行爲を目的とすれば、其權利は相對權なり、例へば子の上に存する權利、妻の上に存する權利は絶對權なり、子の行爲または妻の行爲を目的とする權利は、相對權なるが如し、□三原權(第一權)、救濟權(第二權)の區別、原權は、平和の狀態に於て、法律上吾人の當然享有すべき權利なり、救濟權は、原權の侵害に由りて生ずる處の權利なり、換言すれば、義務者の義務違背に基因して、原權の享有者に歸屬する權利なり、權利主體の要求に適應せざる義務者の行爲は、背法行爲なり、背法行爲に對しては、法律上の制裁あり、法律上の制裁中、刑事制裁に屬するものと、民事制裁に屬するものとあり、民事制裁は、國權の發動に依りて、權利主體に救濟を與ふることを以てその目的となし、權利主體が法律利益の享有を完うする爲め、違背者に向つて要求し得べき行爲の強制、又は其喪失し得べき法律利益の享有を完する爲め、違背者に向つて要求し得べき行爲の強制、又は其喪失したる法律利益を回復し、若くは之に對する補償を得る爲め、加害者に向つて要求し得べき行爲の強制を以て、其實質と爲す、原權を害せられたる者が、救濟を得る爲め、國權の關與を請求し得るは、公法上の規定に依りて、之と國家との間に存する法律の關係なり、然れども違反行爲に基き、被害者が加害者に向つて行爲を要求し得るは、兩者の間に存する私法的法律關係なり、此法律關係の内容たる權利を、原權に對して救濟權と稱す、所謂救濟權は、原權と獨立したる權利にして、違反行爲に由り、權利主體が、違反者に向つて要求し得べき行爲が、原權の内容を形作るときは、獨立の權利を發生せず、即ち此場合に於て、原權と分離したる救濟權を認むるは誤謬なり。(民一條)
- 英
- Private right
- 独
- Privatrecht
- 仏
- Droit privé
私權行爲
(しけんかうゐ)私權變更を目的とする法律行爲を云ふ、法律行爲とは、私法的效力を發生せしめんとする意思の表示なり、□一私法的效力を發生せしめんとする意思、私法的效力を發生せんとする意思は、一切の法律行爲の要素也、此意思を缺如する時は、他の法律事實を成定せしむる事あるべきも、法律行爲を成立せしむる事なし、法律が、法律行爲以外の事實に連結するに私權の得喪變更を以てするときは、各當事者が、私權の得喪變更を欲したることを必要とせず、然れども法律行爲に在りては、斯くの如き效力の發生を欲したることが、效力發生に必要なる前提なり、即ち當事者が、權利の取得を欲したるが故に、權利取得の效力を生じ、權利の喪失を欲したるが故に、權利喪失の效力を生じ、權利の變更を欲したるが故に、權利變更の效力を生ず、例へば贈與は法律行爲なり、贈與が法律行爲として財産權移轉の效力を生ずる所以は、贈與者、並に受贈者が、財産權移轉の意思を有するが故なり、之に反して、友人と會食するを約する場合の如きは、法律行爲にあらず、斯くの如き場合は、之に依つて法律關係を生じ、之に拘束せらるる意思を有せざればなり、□二私法的效力を發生せんとする意思の表示、内に法律行爲的意思を有するも、外に之を表示せざれば、法律行爲を成立せしむることを得ず、意思の表示は、他人をして認識せしむることを得べき形式を以て爲さざるべからず、就中相手方ある法律行爲に於ては、相手方をして、認識せしむることを得べき形式を以て爲さざるべからず、例へば甲者が、自己所有の土地を賣渡さんと欲し、乙者は之を買ひ受けんと欲するも、甲、乙の意思が表白せられざる間は、賣買の申込をも承諾をも存せず、從つて賣買契約を成立せしむることなし、又、甲、乙が其意思を表白するも、相手方が到底知ることを得ざる方法を以て爲すも同樣なり、例へば甲が賣買の申込書を認めて、之を手箱の内に納れ、人に示さざる場合の如し、之に反して、甲が乙の面前に於て、口頭を以て賣渡すことを申込み、乙がこれに對して承諾の旨を述べ、又は同一の趣旨を認めたる書面を、甲に送付するときは、完全に賣買を成立せしむることを得。
- 英
- Act of private right
- 独
- Privatrechtsgeschäft
- 仏
- Exécution du droit privé
私權關係
(しけんくわんけい)私權關係とは、主として私人相互間に於ける私法上の權利關係を云ふ、例へば債權關係に就きて云へば、甲は乙に對して千圓の貸金を爲し、乙は其金員を借入れたる場合に於ては、即ち甲は債權者にして、乙は債務者なり、從つて、甲は其債權の履行を乙に要求し、乙は其履行を爲さざるべからざるが如き、此債權關係は即ち私權關係の一種なり。
- 英
- Relation of private right
- 独
- Privatrechtsverhältnisz
- 仏
- Relation du droit privé
事件
(じけん)事件とは、事柄、又は出來事と云ふに同じく、物界に於ける變狀の一種なり、物界に於ける變狀は、意思に基きて發生するものと然らざるものとあり、意思に基く物界の變狀は行爲にして、行爲を客觀的に觀察したるものが、意思に基く物界の變狀とす、次に意思に基かざる物界の變狀を事爲と云ひ、通常此兩者相錯雜して、諸種の法律關係を生ずる場合のみを稱して事件と謂ふ、訴訟事件、非訟事件と云ふが如し。(民訴二二六條二項、非訟手續一、三、五、六條、憲法四〇條)
- 英
- Case
- 独
- Fall
- 仏
- Cause
時限
(じげん)時間の一定の限界を云ふ、例へば銀行營業時間は午後四時限りと云ふが如く、又金錢の授受は、其場(時)限りと云ふが如し。(刑法附則一條)
- 英
- Limit of hours
- 独
- Zeitgrenze
- 仏
- Limite des heures
事故
(じこ)事柄の基く故を指し、理由と云ふと略ぼ同義なり、例へば止むを得ざる事故に依りと云ひ、又は正當の事故なくしてと云ふが如し。(商三八四條、衆議院議員選擧法九五條)
- 英
- Cause
- 独
- Ursache
- 仏
- Cause
司獄官
(しごくくわん)司獄官とは、監獄の職員にして、監獄事務に從事する官吏を云ふ、例へば典獄、看守長の如きこれなり。(三六年三月勅三五號監獄官制)
- 英
- Officer of prison
- 独
- Kerker-beamte
- 仏
- Officier de la prison
司獄官吏
司獄官吏とは、單に司獄官と云ふに同じ。(臺灣總督府警察官、及び司獄官練習所官制)
- 英
- Officer of prison
- 独
- Ker-kerbeamte
- 仏
- Officier de la prison
事後承諾
(じごしようだく)帝國議會の職權中、最も重要なるは、協贊と承諾とにあり、承諾は貴衆兩議院の一致したる意思表示にして、上奏、及び建議の爲めになす所の一院の議決と異る、議會が、法律案、及び豫算案等に協贊するときは、之に依りてその議案確定するも、協贊なき時は、その議案は全く消滅に歸せざるべからず、之に反して承諾は、已に成立し、既に有效なる命令若くは處分に對するものにして、其承諾せざると否とは、既定行爲の有效無效に關係を有すものにあらず、換言すれば承諾は、承諾を經べき行爲の成立要素となることなし、然れども承諾を經べき行爲は、後日の承諾を留保して、其效力を有するものなるが故に、後日承諾あるときは、この留保は解除せられ、その行爲は無條件に行はれたると、同一の效力あるべきも、若し承諾なきときは、その將來に向つての效力を失ふべく、假令その行爲にして、一時に止まり、將來に繼續する效力なきものと雖も、議會は、上奏又は質問等憲法上の手段に依り、政府の貴任を問ふことを得べし、斯くの如く承諾は、已に有效なる行爲に對するものなるが故に、承諾は、事後にのみ與ふるものにして、事前の承諾あり得るの理なし、故に承諾を事後承諾と云ふ、承諾を要すべき事項は、□一天皇が公共の安全を保持し、又は其災厄を避くる爲め、緊急の必要に由り、帝國議會開會の場合に於て、法律に代るべき勅令を(緊急勅令)發したる場合、□二豫算の款項に超過し、又は豫算の外に生じたる支出ある場合、□三今其安全を保持する爲め、緊急の需用ある場合に於て、内外の情形に依り帝國議會を召集する事能はざる場合に、政府が勅令に依り、財政上必要の處分をなしたる場合等是なり。(憲法八、六四條二項、七〇條)
- 英
- After-consent
- 独
- Nachein-willigung
- 仏
- Après-consentement
自己の計算
(じこのけいさん)專ら利益損失の責任を、自己に負擔することを自己の計算と云ふ、例へば一商人が、自己の資金を以て商業を營むが如きは、所謂自己の計算を以て、本行爲に從事せるものの例なり。
- 英
- Account for himself
- 独
- Rechnung für Selbst
- 仏
- Compte pour soi-même
自己の爲めにする意思
(じこのためにするいし)自己の利益の爲めにするの意思を云ふ、官公吏の職務行爲は、國家、若くは公共團體の爲めにするものにして、直接に所謂自己の爲めにするものにあらず、然れども私人の行爲は、槪して自己の爲めにするの意思を以てするものなり、例へば物品賣買の如き、金錢貸借の如き、皆然らざることなし。(民一二八三條)
- 英
- Intention for himself
- 独
- Absicht für Selbst
- 仏
- In-tention pour soi-même
思想
(しさう)專ら知力作用の成果なりと雖も、亦情意の基礎、補助を要す、一言にして思想とは、種々の觀念が、全體的形態をとりて、聯絡又は統一せられ、何等か判斷的意義をなすものを謂ふ、故に苟も吾人の知識と稱せらるる一切の意識現象は、總べて思想と稱することを得べし、尚思惟と思想とは、全然別異のものにあらず、唯同一質のものを主として、一は判斷の作用、即ち知識進行の方面より見、他は其の結果、即ち決定の方面より見たる言辭の區別に過ぎざるなり。
- 英
- Thought
- 独
- Gedanke
- 仏
- Pensée
自殺
(じさつ)自殺とは、自己の意思に基きて、自己の生命を絶つことを意味す、換言すれば、生命を絶つの原因が、死亡者自らの意見に基くものを云ふ、即ち自己に對する殺人罪なり、其生命を絶つべき手段は、自殺者自身に依り行はるると、他人に託して行はしむるとは、問ふ處にあらざるなり、自殺の行爲は、之を罰すべきや否や、現行多數の制法に於てはこれを罰せずと雖も、古代の埃及、希臘時代に於ては、自殺は神の與へたる生命を私に絶つものにして、神に對する罪なりとし、自殺を遂げざりし者を罰するは勿論、自殺を遂げたる者に對しても、其遺骸を刑し、若くは其遺産を沒收せり、降つて羅馬法に於ては、兵士の自殺未遂に限り、之を處罰のすることし、更に獨逸の中世時代に於ては、自殺者に對する刑罰として、其遺骸を辱かしむる方法に於て埋葬し、又財産沒收の刑を免れんが爲めに、自殺したる者に對しては、其遺産を沒收することとし、十八世紀の後半に至りても、猶自殺者の遺骸を刑し、また自殺未遂者を拘禁するの制度を存したりしが、紀元一七九六年に至り、始めてプロイセン國王フリードリヒ第二世は、自殺未遂を罰せざることを宣言し、次て紀元一八一三年に至り、バイエルン刑法に於て、自殺を罰する規定を削除したる以來、各國も亦自殺を罰せざることとなりたり、獨りブラウンシュワイツヒ國に於ては、紀元一八二八年に至るまでも、猶自殺者の遺骸を刑するの制を存し、英、米、兩國に於ては、今日に至るも、猶自殺の既遂、及び未遂を處罰せり、而して我國に於ては、古今共に、甞て自殺を罰したることなし、之我武士道の然らしむる處か、斯くの如く自殺を處罰せざる立法上の理由は、要するに已に自ら死を決したる者に對しては、如何程嚴酷なる刑罰を科するも、到底刑罰の目的を達することを得ざるのみならず、若し自殺者にしてこの死を遂げざるときは、刑罰の辱しめを受けんことを恐るるの結果、徒に自殺者をして、其死を速かならしむるの弊を生ずべきを以てなり、然れども其自殺を教唆したるもの、又は自殺を幇助したる者は、之を處罰すべきものたること當然の事理なりとす。(刑二〇二、二〇三條)
- 英
- Suicide
- 独
- Selbstmord
- 仏
- Suicide
事實
(じじつ)事實とは、現象なり、雪降る、人死すと云ふが如し、凡そ權利の發生、消滅、變更は、法律が、一定の事實に連結する效力なり、法律が、權利の發生、消滅、變更の效果を連結する事實を法律事實と稱す、從つて法律上事實と云ふときは、常に法律事實を指すものとす、事實は知覺し得べき物界の現象なり、心界の現象は、法律上の效果を發生せず、物界の現象は、法律上の效果を發生するものと、之を發生せざるものとあり、所謂法律事實は、法律上の效果を發生する物界の現象に外ならず、法律事實は、其の内容の異同に從ひ、之を分別して、事件、及び行爲と爲す、事件とは、人類の意見に基かざる物界の現象なり、風雨、落雷、出生、死亡等の如し、行爲とは、人類の意見に基く物界の現象なり、行爲は、意思活動、及び之に伴隨する效果より成る、意思活動は、任意の動作(身體活動即ち筋肉の伸縮)又は靜止なり、意思活動に伴隨する結果は、任意の動作又は靜止に由て惹起せられ、若くは放任せられたる物界の現象なり。(法例一〇條二項)
- 英
- Fact
- 独
- Thatsache
- 仏
- Fait
事實參考
(じじつさんかう)事實參考とは、裁判所が訴訟事件に就き、證人として訊問することを得ざる場合に於て、(例へば被告人と、親族關係ある等)參考の爲めに、事實參考人の供述を聽くことを云ふ、故に事實參考も、亦裁判官の判定權を補助するものと云ふことを得べし、凡そ裁判所は、其職權に依り、訴訟事件を審理するか爲めに必要なる場合に於ては、誰人に對しても、證人として、證言をなさしむるの權能を有するものとす、然れども其訴訟事件にして、利害關係を有するもの、殊に被告人と親屬關係等あるものに就きては、情實上設人として、其眞正なる證言を聽くことを得ざるもの多し、依つて斯かる關係ある者に對しては、裁判所は、唯參考の爲めに、これ等の者の供述を廳くべきものとす、而して其參考人と爲り得べきものは下の如し、□一民事原告人、□二民事原告人、及び被告人の親族、但し姻族に就きては、婚姻の解除したるときと雖も亦同じ、□三民事原告人、及び被告人の後見人又はこれ等の者の後見を受くる者、□四民事原告人、及び被告人の雇人、又は同居人、□五十六歳未滿の幼者、□六知覺精神の不充分なる者、□七瘖啞者、□八公權を剝奪せられ、又は公權を停止せられたる者、□九重罪事件、又は重禁錮の刑に該るべき輕罪事件に就き、公判に付せられたる者、□十現に供述を爲すべき事件に就き、曾て訴を受け、其證憑充分ならざるに依り、免訴の言渡を受けたる者之なり。(刑訴一二二、一二四條)
- 英
- Reference of fact
- 独
- That-sacheverweisung
- 仏
- Référence du fait
事實參考人
事實參考人とは、事實參考の爲め、裁判所に對して供述をなすべきものを云ふ。(刑訴一二三、一二四條)
- 英
- Reference person of fact
- 独
- Thatsachereferent
- 仏
- Personne de référence du fait
始審
(ししん)始審とは、第一審を云ふ、即ち訴訟事件の初めて繫屬したる裁判所を云ふ、例へば、金額百圓の請求を區裁判所に提起したりと假定せば、其事件に對する始審は、即ち區裁判所なるが如し。
- 英
- First trial
- 独
- erste Untersuch-ung
- 仏
- Première instance
自信
(じしん)自己の能力と、判斷とに依據し、他に相異り、又は全く相反せる如き見解等あるも、然かも自己の所信に對しては、毫も疑義を挿む事なく、飽迄之を維持する決定的心意を謂ふ、自重の如き、自己の人格を高く評價することは、自信ある人に依りてよくせらる、然れども吾人の判斷と能力とは、常に確實にして、圓滿なるを期し難し、故に若し自信の性質にして、不當、又は不健全なるものなりせば、固陋頑迷等の惡性質のものとなるの懼れあり、然る時は、自重も變じて、因循または傲慢等となるべし。
- 英
- Self-confidence
- 独
- Selbstver-trauen
- 仏
- Confiance en soi-même
私償
(ししやう)私人が他人に損害を加へたる場合に、その損害を補償することを廣く私償と云ふ、例へば人を毆打したるが爲めに疾病を釀し、業務を休業するに至りたる場合に於て、その生じたる一切の損害を賠償するが如き是なり。(舊刑三八九條)
- 英
- Private indemnity
- 独
- Privatent-schädigung
- 仏
- Indemnité privé
自首
(じしゆ)自首とは、罪を犯したる犯人の何人たることが、未だ犯罪搜索の職權ある官吏(例へば檢事、司法警察官の如し)に發覺せざを以前に於て、自ら進んで犯罪事實を申告することを云ふ、財産に對する罪に就き、被害者に首服申告したるときも、亦自首と看做すべきものとす、犯人が自首を爲したるときは、犯罪の性質により、或は之を減輕し、或は之を全免することあり、之自首は、犯罪の搜索を容易ならしめ、從つて社會の平和を復せしむる效あるによるものとす。(刑八〇、一九八條二項、刑訴四七、四八條)
- 英
- Denouncing oneself to the autho-rities; spontaneous confession
- 独
- Sich-eslbstanklagen
- 仏
- Confession spontanée
自首減輕
(じしゆげんけい)自首減輕とは、自首を諒として、其犯したる罪を減少することを云ふ、例へば他人の所有物を竊取したるものが自首したる場合に於ては、竊盜の本刑より一等を減ずるが如し、然れども謀殺故殺を行ひたるものは、假令自首するも減輕するの限りにあらず、之罪質の危險且つ重きが爲ならん。(舊刑八五、三六六條)自首減等とは、自首減輕と云ふに同じ、刑罰の等級を減輕することを云ふ、例へば本刑より一等若くは二等を減ずると云ふが如し。(舊刑八六條)
- 英
- Mitigation of penalty on ac-count of voluntary denunciation
- 独
- Strafmilderung wegen des Zugeständniszes
- 仏
- Atténuation pour le comple de la dénonciation volontaire
自首減等
- 英
- Abatement of penalty by deg-rees on account of voluntary denunciation
- 独
- Grad der Strafmilderung wegen des Zugeständnisses
- 仏
- Abatement de la peine par degrès pour le compte de la dénonciation volontaire
自首減免
自首減免とは、自首によりて、刑罰を減輕、若くは全免することを云ふ。(刑八〇條、一九八條二項、舊刑法一九二、二二六、三五六條)
- 英
- Mitigation of penalty on ac-count of voluntary denunciation
- 独
- Strafmilderung oder Straffreiheit wegen der freiwilligen Angeberei
- 仏
- Attenuation pour le compte de la dénonciation volon-taire
自首全免
自首全免は、自首に依りて、刑罰を全く免除することを云ふ、例へば内亂の豫備、又は陰謀を爲すと雖も、未だ其事を行はざる前に於て、官に自首したる場合の如き、又貨幣を僞造し、變造し、及び輸入取受したる者、未だ行使せざる前に於て官に自首したる場合の如き、皆其刑を全免するものとせり、斯かる場合に於ては、社會に未だ危害を及ぼさず、從つて之を處罰するの必要なしとせるなり、なほ自首全免を許すときは、一般に社會の危害を未前に防止するの效あるを以てなり。(刑八〇條、一九八條、舊刑二二六、三五六條)
- 英
- Exemption from punishment on account of voluntary denunciation
- 独
- Straffreiheit wegen des Freiwilligangebens
- 仏
- Exemption de la peine pour le compte de la dénonciation volontaire
自主
(じしゆ)自家以外のものに、束〓制抑せらるることなく、自ら自己を律することを謂ふ、即ち法律、習慣、社會の毀譽、褒貶、其他教權、證碍等、總べて有形無形の外的制裁を蒙らず、自己を主宰として處理する狀態を謂ふ、自律的又は自主的とは、總べて自律自主の性質を有するものに適用せらるる形容詞なり。
- 英
- Autonomy
- 独
- Autonomie
- 仏
- Autonomie
自律
- 英
- Autonomy
- 独
- Autonomie
- 仏
- Autonomie
侍從武官々制
(じじゆうぶくわんくわんせい)天皇に常時奉仕し、軍事上に於ける奏上、奉答、又は命令の傳達を爲し、觀兵式、演習、行幸等に陪侍扈從する武官の職制を定めたるものにして、□一左の侍從武官を置く、イ侍從武官長、(侍從武官高級故參の者を以て之に補す)、ロ侍從武官、(陸軍將官、及び佐尉官五名、海軍將官、及び佐尉官三名)、□二侍從武官は、天皇に常時奉仕し、軍事に關する奏上、奉答、及び命令の傳達に任じ、又觀兵式、演習、行幸、其他祭儀、禮典、宴會、謁見等に陪侍扈從す、□三侍從武官は、演習其他軍事上の視察の爲め、差遣せらることあるべし、□四侍從武官は、宮中に在りては、宮内省の規定を遵奉すべきものとす、□五侍從武官長は、侍從武官の勤務を指定し、且つ之を監督す、□六侍從武官は、皆參謀官とす、□七右一に揭げたる人員の外、侍從武官に陸海軍屬各二名を附す。(二九年四月勅一二三號、三〇年勅二六四號)
- 英
- Government organization of army or naval aide-de-camp to the Em-peror
- 独
- Behördeordnung der Kam-meroffiziere
- 仏
- Organisation des aides-de-camp militaires et maritimes
自主權
(じしゆけん)自存目的に於て之を律するの權にして、彼の自治團體が、法令の範圍内に於ける自存の目的に於て、被治者に對して條例、規則を制定發布して、施行する權の如き之なり、換言すれば、自治團體等が、自己存在の目的に於ける範圍内にて、其隷屬員を律する爲め、覊束力ある法規を制定施行するの權なり。(市制一四條、町村制一〇條)
- 英
- Right of autonomy
- 独
- Ober-herrlichkeit
- 仏
- Droit de l'autonomie
諮詢
(しじゆん)諮詢とは、統治權者が、國家機關に對して、下問せらるることを云ふ、例へば天皇が國務を審議するに方りて、之を樞密院に諮詢せらるるが如し。(憲法五六條)
- 英
- Oonsultation by Emperor
- 独
- Kaisersberatung
- 仏
- Consultation de l'Em-pereur
私書
(ししよ)私書は、官公文書にあらざる私人が作製せる一切の證據文書を云ふ、例へば手形、金錢貸借證書の如き是也。(刑一五九條)
- 英
- Private writing
- 独
- Privatschrift
- 仏
- Lettre privée
私書僞造行使罪
(ししよざぞうかうしざい)私書僞造行使罪とは、行使の目的を以て、私文書を僞造行使するの罪を云ひ、其構成要件を擧ぐれば、所爲の目的物は、法律に列記せられたる私文書たること、僞造して行使したること、僞造は、行使の目的に出でたること之なり、以上の各要件を説明せんに、□一所爲の目的物は、法律に列記せられたる私文書たることを要す、即ち本罪の目的たるべき私文書には、流通證券、權利義務に關する證書、權利義務に關せざる證據文書之なり、(甲)流通證券、刑法に所謂爲替手形、其他裏書を以て賣買すべき證書、若くは金錢と交換すべき約定手形とは、即ち流通證券を列記したるものにして、各自に就き説明すれば下の如し、イ爲替手形は、商法に規定する所の一種の流通證券なり、ロ其他裏書を以て賣買すべき證書とは、例へば運送營業者が、荷送人の請求に依りて交付する所の貨物引換證、倉庫營業者が、寄託者の請求に依りて交付する處の預證券、及び質入證券、船長が、傭船者、または荷送人の請求に依りて交付する處の船荷證券の如き、商法上、裏書と云ふ形式に於て、移轉し得べきことを認められたる性質の證書と云ふの義なり、從つて預證券、及び質入證券の如き、其性質に於て裏書により讓渡し得べきものたる以上は、假令無記名式、即ち交付のみを以て、移轉することを得べき方式に依りたるものと雖も、所謂裏書を以て、賣買すべき證書として論ぜざるべからず、これに反して、假令無記名式を以て發行せられ、事實上單に交付のみを以て、權利を移轉せらるることありと雖も、法律上、裏書を以て移轉し得べきことを認められたる性質の證書にあらざる限りは、本罪の目的物とならざるものとす、故に例へば、汽車、汽船の切符、劇場、角力其他種々の興業入場券、酒、料理品の切手等は、之を包含せざるものとす、□三金錢と交換すべき約定手形とは、商法上の約束手形に同じ、法律は、小切手に關しては規定する處なきが如しと雖も、小切手も亦爲替手形、約束手形と共に、商法上一種の流通證券にして、然かも爲替手形の一種と見得べきを以て、小切手に關しては、爲替手形の一種として、本罪を適用せざるべからず、(乙)權利義務に關する證書、權利義務に關する證書とは、單獨に、若くは他の證據方法と結合することに依りて、法律的關係の發生、消滅、若くは變更するの效力ある事實を證明し得べき證據文書を云ふ、而して其種の證書は、右の三種の文書を包含す、イ直接に法律上の效力を生ずべき意思表示を包含する文書、此種の文書中には、法律上の效果の發生を目的とする處の、意思表示を記載する文書(例へば遺言書、貸借證書、受取證、手形、賣買申込書、承諾書、注文書、及び新聞紙上に揭載する會社の決算報告書の類は、之に屬す)其他債務者に對する債權讓渡の通知書、及び生命保險契約に關し、被保險者の年齡、及び既往に於ける病氣有無に就きての、意思表示も此種の文書に屬す、ロ法律上の效果を生ずべき事實を告知する處の文書、此種の文書中には、此種の事實を證明する爲めに作製せられたる文書、例へば株式會社の株主總會に於ける議事錄、商人の商業帳簿の類、及び此種の單に報告する文書、例へば兵役義務者が逃走したる旨の屆書もまたこの種の文書に屬す、私人に依つて作製せられたる證言、鑑定の文書もまた之に屬す、他人を誹毀する文書も、また之に屬すべし、ハ法律上の效果を生ずべき事實は、之を告知せずと雖も、直接に此事實を推斷せしむるに足るべき内容を有する文書、例へば有夫の婦より、他の男に宛てたる艶書は、姦通關係を立證し得べきが如し、之等の文書は、此種に屬す、注意すべきは、若し其證書に表示せられたる事實にして、法律上の效果を生じ得べからざることが、證書自體に於て明瞭なる場合は、權利義務に關する證書と云ふことを得ず、例へば秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする、意思表示は無效なるが故に、之等の意思表示を記載する文書は、權利義務に關する文書と云ふことを得ず、(丙)權利義務に關せざる證書、此種の證書に屬するものは、單純なる人事の往復文の如きものを云ふ、□二僞造して行使したること、僞造とは眞正なる文書を基礎とせずして、新に文書を作製することを云ひ、行使とは、證書を證書としての用に供せしむることを云ふ、故に例へば、金錢貸借證書を新に作製し、債務者(虛僞の)に貸金を請求するが如きを云ふ、□三僞造は、行使の目的に出でたることを要す、即ち僞造の遠因は、行使する爲めたることを要するものにして、單に僞造するのみにては、本罪を構成せざるものとす、以上の三要件を具備するに於ては、茲に文書僞造行使罪を成立せしむるに至る、本罪の處分は、□一爲替手形其他裏書を以て、移轉することを得べき性質の證書、若くは金額と交換すべき約束手形を僞造し、行使したる者は、輕懲役に處し、其手形證書の裏書を僞造して、行使したるもの亦同じ、□二權利義務に關する證書を僞造して行使したる者は、四ケ月以上四年以下の重禁錮に處し、四圓以上四十圓以下の罰金を附加す、□三其餘の私書を僞造して行使したるものは、一ケ月以上一年以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加せらるものなり。(刑一五九條、一六二條等)
自署
(じしよ)自ら自己の姓名を記載することを自署と云ふ、自署は署名なり、官公吏の作るべき書類には、必ず署名せざるべからず、他人をして署名せしむるときは、其書類の效なきに至るものなり、然れども私人のなすべき書類の自署(署名)は、之を記名調印を以て代ゆることを得べし。(刑訴二〇條、三三年二月法一七號)
- 英
- Autograph
- 独
- Autograph
- 仏
- Autographe
私署證書
(ししよしやうしよ)私人作製の證書を私署證書と云ふ、從つて官公文書以外のものは、凡て私署證書に屬す、私署證書は、素より證據力の上に於ては、官公文書より效力の薄弱なるものなれども、これに確定日附を押捺する時は、稍々證據力を補充するの效あるものとす。(民訴六四條、刑二〇九、二一〇條、三一年七月司法省令一一號私署證書確定日附の件)
- 英
- Private writing
- 独
- Privat-urkunde
- 仏
- Document privé
市制
(しせい)本法は、明治二一年四月法律第一號を以て公布せられたるものにして、市住民の權利義務、及び自治團體としての市の行政に關する事項を規定したるものなり、即ち市の意思機關たる市會の組織權限、又市の執行機關たる市參事會の組織權限等を定めたり。(市會、市行政、自主權の部參照)
- 英
- Municipal organization
- 独
- Stadt-organisation
- 仏
- Organisation municipale
私生子
(しせいじ)私生子とは、婚姻外の父母より生じたる子を云ふ、故に嚴正に解する時は、婚姻中に出生したる子と雖も、其懷胎中、婚姻に原因せざるときは、尚私生子たるを失はず、然れども法律は、努めて人の過失を修補せんが爲めに、婚姻外の懷胎に依るものと雖も、其婚姻中に出生したるものは、之を嫡出子となすべきことを規定せり、故に私生子とは、婚姻外の懷胎に依り、婚姻關係なき男女の間に出生したる子なりと云ふ事を得べし。(民八二七條乃至八三〇條)
- 英
- Natural child
- 独
- uneheliches Kind
- 仏
- Enfant naturel
私生子認知
私生子の認知とは、法定の方式を以て爲したる私生子の父、又は母たることの任意の自白なり、□一認知は、自白なり、故に單獨行爲たり、然れども成年の子に對して認知を爲すには、特に其子の認諾を要す、この場合は於て認知は合意たり、□二認知は、法定の方式を以て爲したる自白なり、故に要式行爲たり、其方式を備ふるにあらざれば、認知たる效を生せず、□三認知は、私生子の父又は母たることの自白なり、その父たることの自白は、之に依りて其父の庶子たる身分を確定し、其母たることの自白は、之に依りてその母の私生子たる身分を確定す、然れども認知は、子たる身分を發生せしむるものにあらず、子たる身分は、出生に依りて既に確定せり、認知は、即ち之を法律上に表明するに過ぎず、認知以前に於ては、親子の關係は、一の事實たるに止まり、法律は、其關係を認むることなし、認知に依りて始めて法律上其關係を確定し、出生の時に遡りてこれを發生せしむ、其法律上の性質に於て子たる身分は、恰も認知なる遡及效を有する停止條件に繫れるものと云ふを得べし、認知を爲し得べき人は、私生子の父又は母なり、私生子の母は、その出生屆書に於て、之を明にするを要するを以て、其子の出生に當りて、適法に戸籍吏に屆出を爲したるときは、母の知れざる場合なく、從つて母の認知を要すべき場合を生じ得べからずと雖も、或は母が、其分娩したる子を捨つることあるべく、或は其出生屆を爲さざることあるべし、斯くの如き場合に於ては、母の知れざる場合を生ぜざるを得ず、父又は母の認知は、其認知したる人に對してのみ認知の效力を生ず、故に父、及び母の同時に、認知を爲したるときは、父母の双方に對して親子の關係を生じ、また母の知れざる子に對しては、父が認知を爲したるときは、父に對してのみ親子の關係を生ず、その一方の認知を以て、他の一方に對して效力を生ぜしむることを得ざるなり、故に例へば、母が其子の認知を爲し、又は其子の出生屆を爲すに當りて、其父の名を指示してこれを屆出づるも、父に對して認知の效力を生ぜず、父が母の名を指示したる場合に於ても亦同じ、認知の利益を受くべき人は、凡ての私生子なり、故に婚姻中女が分娩したる子に對しても、若し其夫がその子の嫡出なることを否認し、又は否認の裁判確定したるときは、其實父が、之を認知することを妨げず、私生子を認知する權利は、その子の父又は母に於て自ら決すべく、その性質上法定代理人の同意を要すべき者にあらず、諸國の法律は、槪ね無能力者に關して、特に認知能力あることを明記するものなしと雖も、學者の多くは、槪ね其完全の能力あることを認むるものの如し、盖し未成年者と雖も、其已に子を生むの年齡に達したるものの如きは、相當の思慮あるものなるべく、禁治産者と雖も、また一時其心神を回復せるものは、認知を爲さしむるも弊害あらざるべく、殊に子たる身分は、成るべく速に確定するの必要あるを以てなり、(甲)認知の方法、民法は、身分に關する行爲は、凡て戸籍吏に其屆出を爲すを要するの主義を採用したるを以て、認知に關しても、亦戸籍吏に其屆出を爲すに依りて、其效力を生ずることとなし、其屆出書には、□一子の名、及び男女の別、□二出生の年月日、□三死亡したる子を認知する場合に於ては、死亡の年月日、□四父が認知を爲す場合に於ては、母の氏名、職業、及び本籍地、但し□四の場合に於て、母が家族なる時は、其戸主は、氏名、職業、本籍地、及び其戸主と、母との續柄を記載することを要す、而して認知は、遺言に依りて之を爲すことを得、盖し私生子の父又は母は、その生前に於て、其私生子たることを公にすることを欲せず、死後に於て、之を發表するを望むことあるべければなり、認知は、單獨行爲にして、然かも事實上已に定まりたる關係を法律上表白するに過ぎざるものなるを以て、其性質に於て、何人の承諾をも要せず、任意に爲し得べきものならざるべからず、然れども成年の子の認知をなすには、其子の目的を得ざるべからず、又父は胎兒に就きても、母の承諾を得て認知をなすことを得、其他死亡したる子に對しても、其子に直系の卑屬あるときに限り、父又は母は、之を認知することを得、イ死亡したる子が、直系卑屬を有する場合に於て、其子に對し、認知を爲すことを許すの必要なるは明瞭なり、盖し此場合に於てこれを認知するに依りて、其直系卑屬は、其認知を爲したる父、又は母、又は其親族に對して、相續權を取得することあるべければなり、ロ死亡したる子が、直系卑屬を遺さざりし場合に於ては、父又は母は之を認知することを得ず、この場合に於て、死亡したる子の認知を爲すは、專ら認知を爲すものが、自ら其子の相續權を取得するの目的を以てするの外、何等法律上の目的を認むる能はず、その子の生存中に於ては、父又は母たるより生ずる義務を免るる爲め、其親子たる事實を隱蔽し、其認知が自己の爲めに利益あるに及びて、俄にこれを表白するが如きは、法律の認許すべからざる所なり、ハ死亡したる子の遺せる直系卑屬が、成年者なるときは、其認知を爲すに、其卑屬の承諾を得ることを要す、之成年の子を認知する場合に於けると、同一の理に基く者とす、(乙)認知の效力、認知の效力は、認知者と被認知者との間に、親子の關係を確定するに在り、故に認知に依りて、認知者の血族と、被認知者との間に於てもまた親族關係を確定す、例へば認知者の父母は、認知せられたる子の祖父母たり、認知者の嫡出子、又他の私生子は、被認知者の兄弟姉妹となる、斯くの如く認知は、親子の關係を確定するものなるが故に、認知に依りて、其子は親子の關係より生ずる諸種の權利を取得し、其義務を負擔し、及び不能力を生ず、イ認知を爲したる父又は母の家に屬する氏を稱し、その父の家に入るを得たるときは、父の家の氏を稱す、ロ法律に定むる處に從ひ、認知者、及び其親族と、被認知者、及び直系卑屬との間に、相互に相續權を生ず、ハ法津の定る處に從ひ、右同一當事者間に、相互に扶養の義務を生ず、然れども私生子、又は庶子の子たる身分より生ずる權利義務は、嫡出子に於けると種類の差異あり、即ち嫡出子は、當然父又は母の家に入るものなりと雖も、私生子は、其父又は母が戸主ならざる時に於ては、その戸主が承諾を爲すにあらざれば、父又は母の家に入ることを得ず、また父、又は母が自ら戸主なる場合、または戸主が承諾を爲したる場合に於ては、その父又は母の家に入り、從つて其父又は母の親權に服し、及び其の父の妻に對しては、嫡母の關係を生じ、父又は母の承諾を得ずして婚姻、離婚、又は養子緣組、離緣等を爲すの不能力を來す、されど其父又は母が戸主たらずして、戸主が承諾を與へざりし場合に於ては、其父又は母の家に入ることを得ず、此場合に於て認知は、單に親族關係、及び親族關係より生ずる權利義務を發生するに止まり、家族關係、及び家族關係より生ずる權利義務は、之を發生することなし、從つて親族、婚姻、養子緣組の不能力等は其效を生ぜず、又相互の相續權に就きても、其嫡出子たると私生子たると、及び同一の家にあると否とに依り、差等あるものとす。(民八二七條乃至八三六條、一〇一六、一一二四、八七七、七七二、八四四、八六三、九七〇、九五五條、戸籍法八〇條、人訴二七、三九條)
- 英
- Acknowledgement of natural child
- 独
- Anerkennung des unehelichen Kindes
- 仏
- Légitimation de l'enfant naturel
私製葉書
(しせいはがき)私人の作製する葉書を私製葉書と云ふ、葉書は通信の具なり、通信事業は政府の經營する處なるが故に、葉書また政府發行のものに限られたるも、歐米の制に倣ひて、私人にも亦葉書の發行を許し、茲に私製葉書の發行を見るに至れり、即ち何人と雖も之を作制するを得、總べて政府の發行に係る通常葉書と、同一の寸法同一の紙質にして、之と同一の位置に、郵便葉書の文字を印刷し、相當額の郵便切手を貼付するときは、通常葉書と同一に取扱はるべきものなり。(郵便規則一八條)
- 英
- Private post-card
- 独
- Privat-postkarte
- 仏
- Carte postale privée
使節
(しせつ)一國の主權者(君主)より、外國の主權者に對する使臣を使節と云ふ、即ち此外國に使命を帶びて赴ける公使、全權委員の如きこれなり。(公使の部參照)
私設
(しせつ)私設とは私人が或る事業を設立經營することを云ふなり、例へば私設電話、私設鐵道と云ふが如し。(三三年九月遞信省令四八號私設電話規則、三三年三月法六四號私設鐵道法)
- 英
- Private
- 独
- Privat-
- 仏
- Privé
私設鐵道法
(しせつてつだうはふ)□一本法は、軌道條例、その他特別の法令に規定するものを除くの外、一般運送の用に供する私設鐵道に適用す、□二私道鐵道株式會社を發起せんとする者は、書類圖面を具し、主務大臣に假免許を申請すべし、イ起業目論見書、ロ假定欵、ハ起業が公共の利益たることを證明する調書、ニ線路豫測圖、及び説明書、ホ敷設費用槪算書、ヘ運送營業上の收支槪算書、及び證明書之なり、起業目論見書には、發起人各自署名捺印することを要す、□二主務大臣は、假免許の申請を審査し、起業の大體に於て不都合なしと認むるときは、假免許狀を下付すべし、□五發起人假免許狀の下付を受けたるときは、定欵を作り、起業目論見書を公告し、株主を募集することを得、□四發起人が、株式の總數を引受けたるとき、又は創立總會終結したるときは、取締役は、法定の書類圖面を具し、主務大臣に本免許を申請すべし、□六主務大臣は、取締役の提出したる書類圖面を審査し、妥當と認むるときは、本免許狀を下付すべし。(三三年三月法六四號)
- 英
- Law of private railway
- 独
- Privateisenbahnsgesetz
- 仏
- Loi du chemin de fer privé
私設電信規則
(しせつでんしんきそく)□一私設電信と稱するは、左に揭ぐる電信または電話を云ふ、イ一邸宅内、若くは一構内に於て、專用に供する爲め施設するもの、ロ鐵道業その他電信電話の專用を必要とするもの、ハ公共團體の事務執行の爲め、一市區町村内、若くは隣接市區町村間に於て、公署相互間、又は一郡市區内に於て、公署と第一次監督官廳との間に敷設するもの、ニ電報送受の目的を以て、一人の專用に供する爲めに電信官署との間に施設するもの、ホ一市區町村内、若くは隣接市區町村間に於て、又は電信電話の連絡なく、且つ二號に依るを不適當とする市區町村間に於て、一人又は一營業の專用に供する爲め施設するもの、□二右□一のイ等に依る私設電信は、左に列記する事業の專用に供するものに限る、イ私設鐵道法に依る鐵道、軌道條例、又は特別の法令に依り、一般運輸の用に供する鐵道又は軌道、及び一個人又は一會社に於て個人の專用に供する爲め、敷設する鐵道又は軌道の事業、ロ運河、水利、水防、火防、水道、水難救護、及び氣象觀測事業、ハ高壓、及び特別高壓の電氣を使用する電氣事業、ニ前各號の外、特に私設電信の施設を必要とする事業これなり、□三私設電信を施設せんとする者は、遞信大臣に願出で、許可を受くべし、但し私設鐵道法に依る鐵道事業の專用に供する爲め、鐵道線路に沿ひ、停車場、聯絡所、又は信號所等相互間に施設するものは此限りにあらず、□四右出願の許可を受けんとする者は、其願書に左の事項を記載したる書類を添付すべし、イ施設を必要とする事由、ロ電信、又は電話の別、及び其回線、ハ機械設置の場所(道、府縣、郡、市區町村、字、番地)及び線路經過地名、ニ落成期限、□五屋内に施設する私設電信の電線は、電燈、電力、又は電氣鐵道用電線と十分離隔し、且つ電氣の混觸を豫防すべし、□六私設電信の電柱には、施設者名、及び電柱の番號を表記すべし、□七私設電線を、他の電線とその上部に於て交又し、又は六尺以内の距離に接近して架設するときは、工事著手前に、その電線の所有者又は管理者へ通知すべし、其已に架設したるものを修理し、若くは撤去するとき又同じ。(三三年九月遞信省令四八號)
- 英
- Regulation of private telegraph
- 独
- Regel des Privattele-graphen
- 仏
- Règles de la télégramme privée
私設電信に依る公衆通信取扱規則
(しせつでんしんによるこうしうつうしんとりあつかひきそく)□一電信法に依り、私設したる電信又は電話を以て、公衆通信の取扱を爲すべき時は、其取扱所の名稱、位置、電報受付時間、及び電報の取扱に關する制限は、別にこれを告示すべし、但し時間を定めて通信取扱を爲す取扱所は、電報受付時間を告示するを要せず、□二私設の電話、又は電信を以て、公衆通信の取扱を爲さんとするときは、其專用の電報は、公衆電報中の私報、または至急私報と同一の順位を以て傳送すべし、但し鐵道業の專用に供する電信、又は電話なるときは、その專用の電報は、公衆電報に先ち、傳送することを得、□三私設の電信には、電話を以て、公衆通信の取扱をなさんとするときは、其私設者の請求に依り、電報取扱料を支給す、電報取扱料は、電報料の三分の一以内とす、□四前項の電報取扱料は、公衆通信取扱所の發信に就きては、其發信所の私設者に、郵便電信局、電話局の發信に就きては、其著信所の私設者に、之を支給す、□五公衆通信の取扱所に於て、別使配達、又は艀船配達を爲したるときは、其取扱料として、別に定むる金額を支給し、電報の受取證書、又は電報の正寫を交付したるときは、その取扱料として、電報規則に定むる受取證書料、又は正寫料の全額を支給す、□六電報送受の爲め、郵便電信局、又は電話局に連接する電信、又は電話を以て、公衆通信の取扱を爲さしむるときは、其期間電報の託送を爲すことを得ず。(三三年九月遞信省令五〇號)
自然(天然)自然主義
(しぜん)狹義にては地球上の山川草木の如き者の總稱なれども、廣義にては地球全體、及び其中に生息する有機物、無機物は勿論、地球以外の星體、又は之等星體の存在する無際無限なる空間をも指すなり、而して之等は、一として人間の所造にあらず、全く人力以外の力の所造なり、但し此力の何たるやに關しては、古來哲學者、宗教家、又は科學者間に異説多きも、物理的説明をなすものは、物質と「エネルギー」相互の關係に歸し、形而上學的説明をなすものは、自然は自然以外に存在する神の所造なりとし、或は自然は、宇宙の本體が、固有せる力の發現によりて、形成せられ變化せらるるものなりなど論ずるあるも、畢竟するに自然とは、人工の加はらざる又は人力の如何とも致し難き、夫れ自身固有の狀態を存するを謂ふなり、自然的とは、人爲的てふ語に對し、專ら自然が有する性質、又は狀態を具備するもの適用せらるる形容詞なり。自然主義とは、其用ゐらるる場合に應じ、稍異りたる意義を有し、用法甚だ廣汎なる言辭なり、哲學上に於ては、宇宙現象は、毫も純理哲學的解釋を要せず、自然科學と同樣の方法を以て、物理的に解釋することを得となす見解を謂ひ、文藝上に於ては、主として其題目を自然の狀態にとり、又其描寫は自然其儘たらしむるを主義となすものを謂ひ、教育上に於ては、人心自然の發達に應じて、教育を施すべしと云ふ主義、更に又かのルーソーに依りて主張せられたる、消極的教育を謂ふが如し。
自然科學
(しぜんくわがく)自然科學とは、狹義に於ては心理學、及び化學を指すも、廣義に於ては、心理學、倫理學、論理學等の精神諸科學と相對して、物理學、化學の外に、動物學、植物學、生物學、礦物學、地文學、天文學等の外界諸現象を攻究する諸科學を總稱す、而して自然科學の目的は、自然界の諸現象を系統的、將た組織的に攻究するにあり、然れども吾人は、差別的有限的なる諸現象を攻究するのみを以て滿足すること能はず、必ず其本體を發揮せんとするものなるを以て、自然科學は、其攻究の極度に於ては、形而上學を誘起し來るなり。
- 英
- Natural science
- 独
- Natur-wissenschaft
- 仏
- Science naturelle
自然哲學
(しぜんてつがく)哲學の一部門にして、狹義には精神哲學に對し、精神現象を除きて、獨り物質現象に限れる自然現象を攻究の對象とし、廣義には、精神物質の兩現象を含めたる自然現象を攻究の對象とするものなり。
- 英
- Natural philosophy
- 独
- Natur-philosophie
- 仏
- Phylosophie naturelle
自然人
(しぜんじん)自然人とは、法人に對するの語なり、自然人は、出生によりて生ず、出生とは、生きて母體より分離するの謂なり、從つて母體より分離することは、其一要件なり、換言すれば、出産行爲の完成せることを要す、出産行爲の完成とは、子が全然母より出でたるを云ふ、而して其人工に依りて出づると否とを問はざるなり、又生きて生まるることは、其要件の二なり、生きて生るとは、出産の時生命あるの謂にして、母體内に在るとき、已に死亡せるか、又は出産の際死亡せるものは、之法律上人にあらず、然れども苟も生命を保有して生じたる以上は、その生存期間の長短を問はず、法律上人たることを得べきなり、自然人は、權利の主體たり、(甲)自然人の權利能力、自然人の權利能力は分ちて、公權に關するものと、私權に關するものとの二種とす、(A)公權に關する權利能力、權利を現實に享有するには、權利能力なかるべからずと雖も、權利能力ある者は、必ず權利を享有するものにあらず、蓋し私權に於ける權利能力は、老若男女貴賤を問はず、皆平等なるのみならず、又内外人も平等なるを以て、文明國の通義となす、されど公權に於ける權利能力は、大にこれに異るものあり、即ち公權の享有は、多くの場合に於ては、國民籍を有するを以てその要件と爲す、換言すれば公權は、其國の國民に限りて之を享有し、外國人に之を許すは、條約又は法令に依りて之を認めたる場合に限るを通例と爲すなり、蓋し個人が、國家に對して有する公權即ち國民權は、國民たるの資格に基く權利なればなり、而して個人の公權中、自由權、例へば居住移轉の自由權、信教の自由權の如き、又國家行爲請求權、例へば國家に對し、行政行爲又は司法行爲を要求するの權利の如き、その前者は、私權と同じく出生に始まるを以て通則と爲す、而して外國人にも、之を享有せしめざるにあらずと雖も、外國人の之を享有するは、條約又は法令の認むる場合に限るものにして、其出生と同時に、これを享有するの能力を有するものにあらざるの差異あり、これに反して參政權、例へば各種の選擧權、及び被選擧の如きは、國民と雖も出生と同時に之を享有し得る能力あるものにあらずして、之を享有するには、年齡、住所、納税額等に關して、法令の資格要件を具備するを要す、從つて外國人には、條約又は法令に於ても、之が享有を許すことを認めざるを通例とす、蓋し此種の公權は、一方より見れば公義務にして、忠誠奉公の精神を必要とするのみならず、外國人をして、其國の政治に參與せしむるは、頗る危險なればなり、(B)私權に關する權利能力、私權は、公權と異り、老若男女貴賤を問はず、内外人を論せず、悉く其出生と共に之を享有することを得しむるを以て、文明國の通義とす、今左に之を説明せむ、□一私權の權利能力は、性の如何に依りて異らず、羅馬法に於ては、女子は權利能力を制限せられたるも、近世諸國の法制は、男女の間に之に關して、何等區別を設くることなし、唯女子が、男子と婚姻したるときは、其妻たるの地位よりして、行爲能力の制限を受くることあるのみ、□二私權の權利能力は、年齡の如何に依りて異らず、私權の權利能力は、年齡の如何に依りて異なることなしと雖も、行爲能力に至りては之と異り、年齡に依り、差異あるは勿論なり、例へば未成年者は、行爲能力なく、或は行爲能力に制限を受くるものなり、□三私權の權利能力は、家族たる身分に依りて異らず、羅馬法に在りては、家長は家族に對して、強大なる權力、例へば生殺與奪の權をも之を有したりしが、近世文明諸國の法律は、家族主義を棄てて、個人主義を採れるの結果、家族たるが爲めに、權利能力の制限を受くることなし、唯行爲能力に至りては、必ずしも然らざるものあり、□四私權の權利能力は、社會上の地位階級の如何に依りて異らず、貴賤貧富の別なく、華士族平民の別なく、僧侶俗人の別なく、私權の享有能力は平等なり、然れども現實に有する權利の多少と、權利能力の有無とは、之を混交することなきを要す、□五私權の權利能力は、宗教の如何に依りて異らず、異教徒を虐遇し、又は新教と舊教とに依り、著しく權利能力を異にせしは、往時の事に屬し、今や諸國殊に我國に在りては、宗教の異同は、私權の享有能力に何等の關係なきものと爲れり、□六私權の權利能力は、國民籍の如何によりて異らず、近世文明國の多數は、私權に關しては、内外人平等主義を採れり、然れどもこれに關しては、諸國の主義必ずしも一樣ならず、我民法に於ては、二箇の例外を設け、此場合に在りては、外國人は、内國人同樣の私權を享有し得ざるものとせり、即ち左の如し、イ條約に禁止あるとき、ロ法令に禁止あるとき、即ち外國人は、(1)土地所有權を獲得することを得ず、(2)日本銀行、橫濱正金銀行等の株主たることを得ず、(3)鑛業人、又は砂礦採掘人たることを得ず、(4)取引所の會員、株主、又は仲買人たることを得ず、(5)日本船舶の所有者たることを得ず、(6)訴訟に關し日本人と待遇を異にして、保證を立つることを要し、訴訟上の救助を求むることを得ざるが如き是なり、(乙)自然人の行爲能力、自然人の行爲能力は、之を分ちて、公權に關するものと、私權に關するものとの二とす、即ち、(A)公權に關する行爲能力、行爲能力とは、權利を行使する爲め、法律上の效力を生じ得べき行爲を爲し得る能力なり、蓋し權利者が、權利を行使するに當りては、事實上の行爲を爲すことあり、又法律上の效果を生ずべき行爲を爲すことあり、前者は、法律の問はざる處にして、法律上の行爲能力たるには、法律上の效果を生じ得べきものたらざるべからず、而して權利能力を有する者必ずしも權利を有せざると同じく、權利能力を有する者も亦必ずしも行爲能力を有するものにあらず、唯行爲能力ある者は、必ず權利能力なかるべからず、而して之を公權を以て云へば、自由權にありては、個人の出生と同時に之を享有し、且つ之を行使し得るものと云ふべし、唯入監中の囚徒は、居住移轉に關する自由權を行使することを得ざるべく、軍人、警察官、神官、僧侶、學校教員、學生、女子、未成年者、公權停剝者等は結社に加入することを得ず、又參政權に在りても、禁治産者、破産者、公權停剝者、神官、僧侶等は、選擧權、被選擧權を有せざる等、之皆公權に關して行爲能力なきもの、又は行爲能力の制限を受くる者と看做すべきのみ、然るに法律は、必ずしも之を以て公權に關する行爲無能力者と云はずして、例へば選擧權、被選擧權を有せず、又は結社に加入することを得ずと云ひて、選擧權、又は結社自由權其ものを有せず、隨つて權利能力自體を缺如する如く云ふを常とす、然れども其精神に於ては異ることなし、(B)私權に關する行爲能力、私權に關する行爲能力とは、私權の行使に關して必要なる法律行爲を爲す能力なり、權利能力ある者は、同時に行爲能力あるを通例とすと雖も、往々にして、之を有せざる場合あり、之を行爲無能力者と云ふ、行爲能力ある者は、一々之を列擧することを得ず、故に諸國の法律は、通常行爲無能力者を列擧限定し、爾餘の多數人が行爲能力者たる事を明示せり、故に茲にも唯行爲無能力者のみを説明すべし、其他は凡て行爲能力者と知るべし、民法に於て、無能力者と爲すもの左の如し、□一未成年者、我國に於ては、滿二十歳を以て成年と爲し、其以下を未成年と爲せり、未成年者が、法律行爲を爲すには、其法定代理人の同意を經ることを要す、其同意なきの行爲は、之を取消すことを得、而して未成年者と雖も、下の場合には、一定の範圍内に於て行爲能力を有す、イ法定代理人が、處分を許したる財産を處分する場合、例へば學校生徒が、父兄より與へられたる學資金を以て、必要品を購ふが如き之なり、ロ未成年者に、營業を許されたる場合之なり、□二禁治産者、心神喪失の狀況にある者に對し、裁判所が一定の人の請求に依り、禁治産者の宣告を爲したる時は、之を禁治産者と云ふ、故に禁治産者たるには、左の要件を具備する事を要す、イ心神喪失の狀況にあること、ロ裁判所に於て、禁治産の宣告あること是なり、然れども禁治産者と雖も、財産に關せざる行爲、例へば婚姻、養子緣組、私生子認知、隱居の如きは、苟も禁治産者に於て、意思能力を有する限りは、自ら之を爲し得べきものとす、□三準禁治産、法律は、心神耗弱者、聾者、啞者、盲者、及び浪費者を保護せんが爲め、準禁治産の制度を認めたり、イ心神耗弱者とは、老衰、疾病等に依り、精神作用の完全ならざるものを云ひ、ロ浪費者とは、自己の財産を蕩盡するの虞あるものを云ふ、これ等のものは、一定の人の請求に依り、裁判所に於て、準禁治産の宣告を爲したるとき、之を準禁治産者と云ふ、準禁治産者は、自ら法律行爲を爲し得ざるものにあらず、唯重大なる行爲に就きて、保佐人の同意を得て、之を行ふべきものとす、□四妻、女子は、單に女子たるの點に於ては、男子と何等行爲能力を異にせず、唯婚姻に依り、他人の妻と爲るときは、其權の下に立つに至るを以て、一定の行爲能力の制限を受け、特種の法律行爲を爲すには、夫の許可の受くることを要し、若し妻が夫の許可なくして、其行爲を爲したるときは、之を取消すことを得べきものとす、然れども其營業を許されたる場合には、其營業に關する一切の法律行爲を爲し得ること、獨立人と敢て異らざるなり。(民一條乃至二〇條、民訴八八、九三條、憲法一八條乃至三〇條)
- 英
- Natural person
- 独
- Natur-person
- 仏
- Personne naturelle
自然法
(しぜんはふ)人類天賦の特性に基く萬代不易の法則あり、この法則を自然法(又は性法と云ふ)と云ふ、自然法は、結局人性を根據として、一の理想的法則を假定し、之を基礎として、法律の本質を論ずるものなり、例へば人類自然の狀態に於ては、尊卑の區別なく、又毫末も束〓を受くることなし、故に平等自由は、自然法に適合するものと云へるが如し。
- 英
- Natural law
- 独
- Naturrecht
- 仏
- Droit naturel
私訴
(しそ)權訴とは、犯罪に依り生じたる損害の賠償、贓物の返還を目的とする民事訴訟を云ふ、□一損害の賠償、損害の賠償は、金錢を以てする者のみに限り、現物を以てする場合は、贓物返還の内に包含す、又損害は獨り財産權に對する者に止まらず、身體、自由、名譽に對する損害を含み、殊に名譽を毀損したる場合には、民法の規定により、新聞紙上に、謝罪文の廣告を爲さしむる事を妨げす、□二贓物の返還、贓物とは、犯罪に依りて得たる物件を云ふ、贓物な語るは、新律網領より來りたるものにして、舊律に於ては、冐認の土地、強竊盜、詐欺取財、委託物消費の贓の如き、犯罪に依りて得たる物件を贓物と稱したり、但し舊律給沒贓物の條に依り、官に沒收せらるる收賄の贓の加きは、刑法に於ては、贓物と稱すべきものなれども、訴訟法に於ては贓物と云ふ能はず、返還は有形の引渡のみを云ふにあらずして、登記抹消の請求をも包含す、例へば不動産を騙取せられたる場合に於ても、被害者は、加害者の所有權の登記を抹消し、其不動産の返還を受くることを得べし。(刑訴二條、民七一〇條)
- 英
- Private law-suit
- 独
- Privatprozesz
- 仏
- Poursuite naturelle
私訴關係人
私訴關係人とは、民事原告人、加害者(被告人)等、私訴權の行使に利害關係を有する一切の者を云ふ。(刑訴二二六條)
- 英
- Party in private law-suit
- 独
- Partei im Privatprozesz
- 仏
- Partie à la poursuite naturelle
時代精神
(じだいせいしん)或る一時の社會人心に共通の動力的精神の謂にして、其が社會の文物現象の各般に向つて現はれ、其時代の特色を劃するものなり、或は政治的傾向の中に、文學的思想の中に、或はまた哲學組織、繪画、音樂の中にも其時代文明の特質となりて、他時代と異る文明の姿態を形成する動力なり、而して人文の程度低く、社會生活の狀態單純なる未開時代にありては、其時代精神も單一なれども、今日吾人の棲息する如き社會にありては、文明の要素となるもの無數にして、一代の文運を統括する如き大精神の果して何たるかは、容易に斷言し得べき所にあらず、寧る多くの場合に於ては、諸種の思想傾向互に混融し、その歸著する所を明言すること難し、然れども苟も社會をなす所、必ず其處に時代の精神なるものなかるべからず、これ固より一代を組織經營する民衆の思想の欝結したるものに他ならざればなり、而して其最も能く時代精神を反映する者は、文學藝術等に於て見るべし、例へば德川時代の文學藝術の全盛たる元祿享保頃の作物によりて、當代精神の存する所を見るに、如何にその時代が元和偃武以來百年の太平に馴致せられて、眞率正義は虛儀虛飾と變じ、剛健朴實は淫靡蕩敗と化したるかを窺ふに足らん、又王政舊に復して、維新の大變革を見るに至りしも、幕末の諸論に依りて代表せらるる、時代精神の動きてなせる結果に外ならず、更に時代精神の例をとれば、彼の米國の如きは〓々として拜金の風行はれ、金これ權を以て金言とするが如し。
- 英
- Spirit of age
- 独
- Zeitgeist
- 仏
- Esprit de l'âge
私擅監禁罪
(しだんかんきんざい)私擅監禁罪とは、擅に人を監禁する罪を云ひ、私擅逮捕罪とは、擅に人を逮捕する罪を云ふ、何れも權利行爲にあらずして不法行爲なり、而して各本罪の構成要件に至りては、兩者大同小異なるを以て、之を併せて説述すべし、即ち本罪の構成要件を擧ぐれば、人を逮捕(逮捕罪の場合)又は監禁(監禁罪)したること、不法に爲したること、不法たるの實を知りたること之なり、□一人を逮捕又は監禁したること、逮捕監禁と云ふは、共に場所に關する人の肉體運動の自由を全く防止する(一時たると、永續的たるとを問はず)行爲、換言すれば、居所の選擇に關する自由なる意思の實行を、全く防止する行爲を指示するものにして、監禁とは、閉鎖せられたる一定の場所の内に、拘禁することを云ふ、而して其拘禁せられたる場所は、假令數箇の出口を有するときと雖も、被拘禁者に依りて覺知せられざるとき、又は拘禁する者、若くは其幇助者に依りて守備せられたるときは、閉鎖せられたりと云ふに於て、缺くる處なきなり、次に逮捕とは、監禁以外の方法を以て、他人の居所撰擇の自由を全く防止する行爲を總稱す、例へば人を柱に〓り附け、又は足駄を施し、又は二階に昇降する梯子を取外し、又は強直病、昏醉、催眠狀態に罹らしむるが如し、而して逮捕、監禁共に、其手段方法に就きては、法律に何等の制限を設けざるが故に、體力に依ると、無形の精神的作用に依ると否とは、問ふ處にあらざるなり、體力は、必ずしも直接に彼逮捕監禁者に對して、行使することを要せず、間接に即ち第三者、又は物に對して、行使するを妨げず、例へば盲人を逮捕、又は監禁する爲めに、其手引たる第三者に對して、腕力を用ふるか、或は窓戸を閉鎖し、又は鐵柵を設けて人を監禁するが如し、無形の精神的作用に依るとは、被逮捕監禁者の心裡に、居所撰擇の自由意思の實行を妨碍すべき觀念を惹起せしめ、又は之を利用することを云ふ、例へば畏怖、耻辱、錯誤(運動の自由を妨ぐべき障碍の存することを誤信せしむるが如し)の觀念を惹起せしめ、又は之を利用し、或は催眠の方法に依るが如し、(被害者又は第三者を僞罔することに依りて、人を監禁逮捕することを得べし)、つぎに逮捕監禁は、共に人の肉體運動の自由を防止する所爲たるが故に、其所爲の實體たるべき人は、所爲の當時に於て、自己又は他の力に依りて、肉體運動の自由を有する者ならざるべからず、從つて例へば卒倒、睡眠中の人、又は赤兒の如き、自己の力に依りて、運動する能はざる者は勿論、他の力を借るの手段をも有せざる者に對しては、之を逮捕、又は監禁すと云ふ事を得ず、之に反して不具者の如き、自ら步行する能はずと雖も、他の援助に依りて運動し得る者に對しては、之を逮捕監禁することを得るなり、□二不法に爲したること、擅にとは、權利なくして即ち不法にと云ふの義にして、私人が權利として、之を逮捕監禁し得る場合、例へば法律の規定により、重罪又は禁錮以上の刑に該るべき、輕罪の現行犯人を逮捕するが如き、又は精神病者監護法に基き、精神病者の後見人、配偶者、四等親内の親族、又は戸主が、行政廳の認可を得て、又は得ずして、假りに之を監置するが如き、其他親權者が、懲戒權の範圍内に於て、其子を監禁するの類之なり、法文に私家に監禁しとありて、監禁は、私人の家屋内に於て行はれたる場合に限れるが如きも、斯くの如く解するときは、家屋以外の建造物内に於て、人を監禁する場合は、總べて之を罰せざる事なり、立法者が、人の身體運動の自由を保護せんとする趣旨を貫くことを得ざるが故に、私家なる文字を用ひたるは、逮捕官吏、又は司獄官吏以外の者が、人を監禁する場合を指示する爲めに過ぎずして、以上の職責なき者が、不法に人を監禁したる場合は、其場合の如何を問はず、總べて之を包含するものと解せざるべからず、□三不法たるの事實を知りたること、犯意とは、罪となるべき事實を知ることを意味し、犯人に於て、その知得したる事實が、法律違反の行爲たるや否やを知ることは、敢て犯罪の成立に關係なきを原則とすと雖も、監禁逮捕罪の如く、行爲の違法たることを罪の構成要件として、特に記載したる場合に於ては、立法の趣旨は、犯人に於て罪となるべき事實(人を逮捕又は監禁するの事實)を知得するこのと外、更に其行爲の不法たることを知得したる場合に限り、罪を構成するものと解すべきなり、從つて假令人を逮捕、又は監禁するも、法律の誤解に基き、逮捕、又は監禁の權利あることを誤信してこれを爲したる場合は、本條件を缺くに至り、本罪を構成せざるものとす、以上逮捕監禁の所爲たるや、共に人の肉體運動の自由を防止するものなるが故に、其行爲の構成要件たる結果、即ち運動自由の防止と云ふ狀況は、多少の時間繼續せざるべからず、而して法律は、其繼續時間が、日數十日を過ぐる每に刑一等を加ふることとせり、蓋し法文には、監禁日數云々とありて、逮捕の日數が、十日以上繼續したる場合に就き、何等の規定を設けさるが如きも、立法の趣旨は、逮捕の繼續する場合をも、包含せしめたるものと解するを至當とす。(刑二二〇條、刑訴六〇條)
- 英
- Illegal detention
- 独
- rechtswidrige Detention
- 仏
- Détention illégale
私擅逮捕罪
- 英
- Illegal arrest
- 独
- rechts-widrige Verhaftung
- 仏
- Arrêt illégal
師團監督部條例
(しだんかんとくぶでうれい)師團監督部の職務、及び職員間に於ける事務の分配を定めたる法則なり、□一師團監督部は、師團司令部の所在地に置き、近衞、及び第一師團監督部にありては、陸軍糧餉部、其他の師團監督部にありては、陸軍糧餉部、及び陸軍經理部を管理し、軍隊の會計事務を監視し、總べて官金の收支、官有物の出納に關する計算、及び物件を檢査し、其他事務管區域内の軍吏部士官、及び下士の人事を掌る所とす、□二師團監督部長は、陸軍監督監、又は陸軍一二等監督を以て之に任じ、陸軍大臣に隷屬し、師團監督部の部務を總理し、管掌の事務に就き、其責に任ずるものとす。(二九年勅二四六號)
- 英
- Regulation of divisional paymaster's department
- 独
- Regulirung des Divisionszahldepartements
- 仏
- Règles du département des trésoriers de la divi-sion
師團司令部條例
(しだんしれいぶでうれい)□一師團長は、陸軍中將を以て親補し、天皇に直隷し、部下軍隊を統率し、又所管内の聯隊區司令部を管轄し、軍事に關する諸件を總理す、□二師團司令部は、左の各部より成る、參謀部、副官部、(參謀部、及び副官部を合して、特に幕僚と稱す)法官部、(近衞師團司令部に在りては、法官部を置かず)經理部、軍醫部、獸醫部、□三參謀長は、幕僚の事務を統監し、師團長に對し、事務整理の責に任ず、□四幕僚の各將校は、參謀長の監視を受け、各自擔任の事務を掌り、其師團長に具申すべきものに就きは、先づ參謀長の承認を得べきものとす、□五法官部長、軍醫部長、及び獸醫部長は、各其主任の事務に就き、事務整理の責に任ず、□六各部長、及び兵器支廠長より、師團長に具申すべき事に就きては、先づ參謀長に開陳すべきものとす。(二九年五月勅二〇五號、三四年勅一九五號、三五年勅一七一號)
- 英
- Regulation of the divi-sional headquarters
- 独
- Regulirung des Divisionscommandos
- 仏
- Règles de l'Etat-major de la division
自治
(じち)自治とは、被治に對する語なり、即ち自己以上の權力者に依りて、統治せらるべき地位にあるものに對し、その務を自ら處理するを云ふ、故に自治の要素としては、其上に優者の權力を戴くものなることを要す、從つて自己の上に、優者を戴がざる政治團體には、所謂自治なるものなし、例へば主權を有する國家は、決して自治團體にあらず、自治體と云へば、必ず主權者がこれを認むる事を要す、國權の認定に依らざる自治體あることなし、主權者の權力内に屬する行政事務の一部を移して、之を下級政團に附與するは、其結果に於ては、地方分權なり、此組織と、中央集權とを適當に配分して行施するは、國家生活の狀態なり、以上の説明よりして、右の結果を生ず、□一自治行政の主體は、主權を有せざる政治團體なり、而して行政の觀念は、公法上のものに屬するが故に、私法上の法人は、自治團體にあらず、自治なる事務は、本來被治の事務なるが故に、國家的公共事務にあらざれば、自治の目的とはならず、私人が相集まりて、法人を組織し、其内部の事務を如行に處理すればとて、本來個人の利益のみに關し、國家的の事務に屬せさざるが故に、私法人を自治體とは、云はざるなり、主權者が自治團體に對する干渉は、二個の方面を有す、一は其生活目的の範圍を縮少するもの、一は目的を達する動作に制限を加ふるものなり、後者の中には、監督權をも包含す、極端なる生活目的の制限は、遂に自治體を變じて、一個の行政區劃となすに至るべし、□二行政の目的は、行政すべき事務なり、故に自治行政の目的は、自治體が其目的を達するが爲めに執る所の固有の事務也、されば或る政團が自治體たるには、其固有の事務に就きて云ふのみ、自治體の吏員が、國家の委任を受け、其事務を行使するは、國家の行政に自治體を利用するに過ぎず、從つて委任事務の多きと少なきとは、自治團體の人權の消長に何等の關係なし、□三自治體の事務は、行政を以て本質となすと雖も、之を飜へして權力行爲にあらざれば、自治の範圍にあらずとなすは非なり、私法上の行爲も、自治行政の目的の爲めにするに外ならざるものは、又自治權限中に數ふべし、唯自治の要點が、公法上の行爲にありと云ふに過ぎず、□四行政は、立法、及び司法と區別すべき作用なり、故に自治團體も、亦法令の特別規定なき限り、立法司法の權を有せざるものなり、司法の自治は、我國には其例なし、立法行爲に就きては、之を自治團體に與へざれば、以て其目的を充分に達するとこ能はざること多し、之を以て、或は法律に依り、命令を以て、自治體に法規を定むるの權を與ふ、之自主權なり、自主權は主權に對する語なること、恰も自治が主權者に對する語なると同じ、或る團體、又は人の集會に對し、主權の作用を以て、法規を制定せらるることを得る場合に、主權者が法を定めずして、自から法規を定むるの力を、其團體又は人の集會に附與するに依りて、茲に初めて自主權を生ず。
- 英
- Self-government
- 独
- Selbstregier-ung
- 仏
- Indépendance
自治行政
自治行政とは、自治團體が、法律、又は命令により、委任せられたる事務を行ふことを云ふ、全く自治と云ふに同じ。
- 英
- Administration of self-govern-ment
- 独
- Selbstregierungsverwaltung
- 仏
- Administration de l'indépendance
質入
(しちいれ)質入とは、質契約に依りて、債務者より質物を債權者に差入るることを云ふ。(民三四二條質契約の部參照)
- 英
- Pledge
- 独
- Pfand
- 仏
- Gage
質入人
質入人とは、質契約に於ける質權設定者を云ふ、即ち債權者に對して質物を提供したる人これなり。(民三四二條)
- 英
- Pledger
- 独
- Verpfänder
- 仏
- Garant
質置人
質置人とは、質入人と云ふと同一義なり。(質屋取締法三、一〇條)
- 英
- Pledger
- 独
- Verpfänder
- 仏
- Garant
質入裏書
(しちいれうらがき)凡そ證券をして、裏書によりて、輾轉するを得しむるには、指圖式の發行、即ち指圖文句の記載を必要とす、然れども手形は、法定の指圖證券、當然の指圖證券、若くは推定的の指圖證券と稱するものにして、裏書を以て通有性とす、而して質入裏書なるものは、所持人が既存の債務を擔保する爲めに、質權を設定するの裏書なり、即ち被裏書人は、此裏書に依りて、債權者と爲るなり、此裏書には其目的を記載せざるときは、善意の取得者に對しては、所有權移轉の裏書たる、效果を生ずるものとす、故に質入裏書を爲すには、必ず其趣旨を明瞭に記載すべきものとす、而して質權の效力は至りては、民法權利質の規定に從ふものなり。(商四六三、四五五條、民三六二條乃至三六八條、三四二條)
- 英
- Indorsement of pledge
- 独
- pfandweise Indossierung
- 仏
- Endosse-ment du gage
質入證券
(しちいれしやうけん)倉庫營業者は(倉庫營業者とは、他人の爲めに物品を倉庫に保管するを業とする者を云ふ)奇託者の請求に依り、質入證券を交付すべき者とす、質入證券は、一種の有價證券也、而して質入證券には、左の事項、及び番號を記載し、倉庫營業者之に署名することを要す、□一寄託物の種類、品質、數量、及び其荷造の種類、個數並に記號、□二寄託者の氏名、又は商號、□三保管の場所、□四保管料、□五保管の期間を定めたるときは、其期間、□六受寄物を保險に付しあるときは、保險金額、保險期間、及び保險者の氏名、又は商號、□七證券の作成地、及び其作成の年月日是なり、質入證券を發行したるときは、倉庫營業者は、預り證券、及び質入證券と引換にあらざれば、寄託物の返還をなすことを得ざるものとす、故に此點に於て、質入證券は、貨物引換證の如く、物權的效力を有するものとす、□一質入證券に、第一の質入裏書を爲すには、債權額、其利息、及び辨濟期を記載することを要す、之第一の質入裏書の要件を定めたるものにして、第一の質入裏書は、質權を設定する所以の形式なるを以て、債權額、利息、及び辨濟期を記載せしめ、以て質權の範圍を明確にしたるものなり、然れども質入證券に、之等の記載を爲すを止むるときは、預證券の讓受人を害するを以て、第一の質權者は同一の事項を預證券(預證券も、亦質入證券と同じく、倉庫營業より、寄託者に交付すべき證券なり)に記載して、之に署名を爲すにあらざれば、其質權を以て、第三者に對抗することを得ざるものとせり、□二質入證券の所持人が、債權の辨濟期に至りて、其債務者に對し、支拂を求め、辨濟を得るか、又は前に述べたる預證券の所持人が、供託したる所の金額を得たるときは、債權は消滅するものなり、若し支拂を受けざるときは、手形に關する規定に從ひ、拒絶證書を作らしむることを要す、拒絶證書の作成は、支拂を受けざることの唯一の證明方法にして、法律は、其外の方法に依ることを許さざるなり、而して手形の規定に依れば、拒絶證書は、債務者の營業所、又は住所、若くは居所に於て、之を作成せしむることを要す、拒絶證書を作成せしめたるときは、一週間の後にあらざれば、寄託物の競賣を請求することを得ざるものとす、之競賣以前にありて、預證券の所持人をして、其債務を辨濟せしめ、競賣を免かるることを得るの餘裕を與ふる爲めに設けられたる規定なり、而して寄託物競賣ありたるときは、倉庫營業は、競賣の代金中より、競賣に關する費用、受託物に課すべき租税保管料、其他保管に關する費用、及び立替金を控除し、其殘額を質入證券と引換に、其所持人に支拂ふべきものとす、質入證券の所持人は、之によりて、其權利の實行を得、然れども競賣代金中より、以上に述べたる所の金額、及び質入證券所持人の債權額、利息、拒絶證書作成の費用を控除して、尚ほ剩餘あるときは、倉庫營業者は、預證券と引換に、之を其所持人に支拂ふことを要す、□三質入證券の所持人は、以上に述べたるが如く、競賣を請求することの外、競賣代金を以て、債權全部の辨濟を受くることを得ざりし場合に於ては、債務者其他の裏書人に對して、其不足額を請求するの權利を有す、之質入證券の裏書に擔保力を認めて、其確實なることを確保したるものなり。(商三五七條乃至三七三條、四四二條)
- 英
- Instrument of pledge
- 独
- Lagerpfandschein
- 仏
- Acte du gage
自治機關
(じちきくわん)自治機關とは、自治團體が、法律又は命令に依り、國家より委任せられたるの事務を執行するの機關を云ふ、而して自治機關は、自治團體の如何によりて多少異るべしと雖も、意思機關と執行機關との二者なりとす、之を市町村に就きて云へば、市町村の意思機關は、市にありては、市會、町村にありては町村會、又は町村民總會也、又執行機關は、市に在りては市參事會(或る場合に於ては市長)、町村にありては町村長なり。(市制一一條乃至七四條、町村制一一條乃至七四條)
- 英
- Organ of self-government
- 独
- Selbstregierungsorgan
- 仏
- Organe de l'in-dépendance
質契約
(しちけいやく)質權關係を成立せしむる契約、(契約とは、私法上の效力を生ぜしむることを目的とする、二人以上の意思表示の合致を云ふ)を質契約と云ふ、質契約は、一種の要物契約なり、何となれば、質契約の成立するには、必ず債務者、又は第三者が質物を提供して、債務者をして之を占有せしめざるを得ればなり、故に質契約を成立せしむるの意思表示をなすも、質物を供せざる場合は、完全に質契約の成立したるものにあらずして、唯單に質契約の豫約を爲したるに過ぎざるものとす。(民三四二條質屋取締法九條)
- 英
- Contract of pledge
- 独
- Pfand-vertrag
- 仏
- Contrat du gage
質權
(しちけん)質權とは、質權者が、其債權の擔保として、債務者又は第三者より受取りたる物を占有し、且つその物に就き、他の債權者に先ちて、自己の債權の辨濟を受くるの權利を云ふ、從つて質權は、左の性質を有するものなり、□一質權は、他物權なり、質權は、債權者、其債權の辨濟を確保する爲め、他人の所有物上に有する處の權利にして、所謂他物權の一種に屬す、民法に於て、債務者、又は第三者より受取りたる物とあるは之が爲めなり、故に質權者が其權利の目的たる物の所有權を取得したるときは、質權は混同によりて、消滅に歸すべきものとす、□二質權は、從たる物權なり、質權の成立するには質權によりて擔保せらるる主たる債權あることを必要とし、獨立して存在し得べからざるは、この權利の性質上明白なり、然れども質權の成立するには、主たる債權あるのみを以て足るものにして、其債權の種類は之を問ふの必要なし、從つて質權の附隨する債權は、留置權に於けるが如く、其目的物に關して生じたる債權なることを必要とせず、同時に先取特權に於けるが如き、特種の原因より生じたる債權に、限定せらるることなく、又其債權の作爲の給付を目的とすると、不作爲の給付を目的とすると、金錢の給付を目的とすると、其他の給付を目的とするとを區別することなし、右の如く債權は、其内容の如何に拘はらず、質權に依りて擔保せられ得るのみならず、其體樣も、亦質權の設置に何等の影響を及ぼさざるものとす、故に無期限、無條件の單純債務を初めとして、期限付債務、條件付債務は、悉く質權を以て、之を擔保することを得べし、但し條件付法律行爲の一般的效力に就きて、民法に特別規定あり、即ち條件の成否未定の間に於ける當事者の權利義務の一般の規定に從ひ、これを擔保することを得べきものとなせり、此規定によるときは、擔保せらるべき權利義務は、條件の成否未定の間に於ける當事者間の權利義務にして、條件の到來に依りて發生すべき、當事者の權利義務にあらざること明白なり、然れども其擔保は、之を要するに、他日に於ける條件を成就を豫想し、其場合に備ふるものに外ならざるを以て、條件の成就に當り、當事者間に於て、豫期の如く權利義務を發生したるときは、前に供したる擔保は、何等別段の行爲を要せずして、當然其權利義務の擔保となるものにして、條件の成就に依り、其效を失ふものにあらず、□三質權は、當事者の意思表示によりて生ずる權利なり、質權は、當事者間の契約を以て、之を設定するものとす、即ち質權を設定するには、債務者、または第三者が債權者に對し、其所屬に係る特定の有體物を、債權の擔保に供する旨の意思を表示し、債權者がこれに承諾の意思を表示することを必要とす、質契約、又は質權の設定行爲と稱するもの即ちこれなり、故に質權は此點に於て、留置權、及び先取特權と其性質を異にす、何となれば、後の二者は、法律の規定より當然發生し、當事者間の意思表示を以て、之を設定すること能はざればなり、□四質權は、目的物の占有を必要とする權利なり、質權の設定は、當事者間の意志表示のみに依りて、其效力を生ぜず、當事者間の意志表示の外、尚目的物の引渡を爲すにあらざれば、その效力を生ぜさるものなり、斯くの如く目的物の占有は、質權成立の要件たるのみならず、動産質權に關しては、又質權を第三者に對抗するが爲めの必要條件にして、動産物上の質權は、繼續して其動産を占有するにあらざれば、之を以て第三者に對抗することを得ざるものとす、但し不動産に關しては、質權者は、登記に依り、其權利を保存し得べきを以て、目的物を占有すると否とは、質權者の權利に、毫も影響を及ぼすことなし、蓋し質權は、他人を排斥して、質物を自己の債權の辨濟に供するの權利なるを以て、動産質權に關しては、質權者に於て目的物を占有するの必要あり、何となれば、質權者が、自ら目的物を占有することは、第三者をして、質相の設定ありたることを知らしむるが爲に、必要なるのみならず、質權者が、目的物を占有せざるに於ては、他人を排斥して、目的物上に、權利を行使すること能はざるべきを以てなり、然れども質權者は、自身に質物を占有することを必要とせず、第三者をして代りてこれを占有せしむるも、毫も妨げなし、即ち代理占有の場合にして、質權者の委託に依り、質物を占有する處の第三者は、自己の爲めに質物を占有するにあらずして、質權者の爲めに、之を占有するものなれば、質權者は、其意の欲する處に從ひ、質物上に權利を行ふことを得べきを以て、質權の行使は、之が爲め、毫も妨げらるることなしとす、質權者は、第三者をして代りて質物を占有せしむることを得るも、質物を供したる債務者、又は第三者をして、代りて占有を爲さしむることを得ず、換言すれは、質權の成立に要する目的物の引渡は、質權者と、質權設定者との間の占有の改定に依りて、之を補ふことを得ざるは勿論、第三者に對して、質權を對抗するが爲めに必要なる占有繼續の條件も、また質權設定者の代理占有に依りて、充たさるることを得ざるものなり、蓋し質權の設定は、質權者に於て、其權利を行ふことを得るが爲めに、且つ第三者をして、質權の設定ありたることを知らしむるが爲め、目的物の引渡に依り、始めて其效力を生ずるものとなしたることは、前已に説明せる處の如くなるを以て、質權を設定したる債務者、又第三者をして、依然として質物を占有せしむるは、質權の本質に反するものと云はざるを得ず、何となれは質權を設定したる債務者、又は第三者が、依然として目的物を占有するに於ては、法律が、質權の設定に就き、引渡を必要とする所以の目的は、貫徹せられざる者なればなり、故に質權者が、質權設定者以外の第三者をして、代りて之が占有を爲さしむるは格別、設立者をして、之を占有せしむることを得ざるものとす、□五質權は、目的物を占有し、且つ他の債權者に先ちて、目的物を債權の辨濟に供するの權利なり、質權は、債權の辨濟を確保するを以て目的となすものにして、物上擔保の一種に屬す、而して質權の物上擔保たる效用二あり、其一は、質權者は、其債權の完全なる辨濟を受くる迄質物を占有するの權利を有するにあり、他の一は、質權者は、目的物に就き、他の債權者に先ちて、自己の債權の辨濟を受くるの權利を有するにあり、□六質權は不可分の權利なり、質權者は、其債權の存する限りは、質物の全部に就き、其權利を行ふことを得、尚質物の存在する限りは、其債權の全額に就き、其權利を行使することを得るなり。(民三四二條乃至三六八條、一二九、二九五、三〇三條乃至三〇五條)
- 英
- Pledge
- 独
- Pfandrecht
- 仏
- Gage
質權者
質權者とは、質契約に於ける權利者を云ふ、例へば甲が乙に對し、其所有に係る時計を質物として占有し、乙に金圓を貸與したりと假定せば、甲は即ち質權者なるが如し。(民三四二條)
- 英
- Pledgee
- 独
- Pfandgläubiger
- 仏
- Créancier gagiste
自治權
(じちけん)自治權とは、自治團體が其目的を達する爲に、法律命令に依て與へられたる權限を云ひ、之によりて自治行政を行ふもの也、其廣義に於ては自主權をも包含す。(市制一〇條、町村制一〇條自主權の部參照)自治權能とは、自治團體が、自治行政を實施するの權限を云ふ、而して其權限の範圍は、法律、又は命令に依りて與へられたる範圍内とす、自治權と云ふと同義なり。
- 英
- Right of self-government
- 独
- Selbstregierungsrecht
- 仏
- Droit de l'in-dépendance
自治權能
- 英
- Capacity of self-governing
- 独
- Selbstregierungsfähigkeit
- 仏
- Capacité de l'indépendance
質權設定
(しちけんせつていじや)質權設定者とは、自己又は他人の債務を擔保する爲めに、或る物、又は權利に就き、質權を設定する者を云ふ、即ち右の例に於ける乙者は、質權設定者なり。(三四五、三四九條)
- 英
- Pledge-founder
- 独
- Pfand-bestellte
- 仏
- Auteur du gage
自治制
(じちせい)自治制とは、國家が自治團體なるものを認め、其團體をして、地方の行政を掌らしむるの制度を云ふ、即ち團體は、市町村制を設け、市町村なる公共團體をして、之に國家政務の一部を行はしむるが如し、國家が、自治團體を認めて、國家公共事件を處理せしむる所以は、□一人民をして、政務上の練習を得しむるにあり、即ち小より大に及ぼすの趣旨に基き、臣民をして、比較的細小なる事件と、直接に自己に利害關係を及ぼす事件とを處理せしむるときは、事身邊の事件に屬するより、これに慣熟すること易く、且つ利害關係切なるにより、熱心に之を練習し、遂に國家政務に從事するの慣習を漸次養成し得るによるものなり、□二公共的精神を養成せしむ、蓋し直接自己の意見の、公共事務の擧否に關係を有すればなり、□三社會各階級の利害衝突を和ぐるにあり、何となれば、各階級のもの均しく共同事務に從事せしめ、且つ各種階級のものをして、其資力に應じ、負擔を分任せしむるときは、相互の關係を親密ならしめ、且つ各種の平均調和を得ればなり、□四中央政府變動の影響を、なるべく地方に及ぼさしめざらしむるが爲なり、若し行政の組織、凡て官治組織なるときは、各官廳は、直に中央政府の變動の影響を受くるも、行政機關にして、法定の自治公共團體なるときは、中央政府も、團體の機關を漫りに任免すること難く、從つて中央政府變動の影響を受くること少なき也、且つ自治團體の廢止、又は區域變更を、法律を以て定むべしと規定したる國多き所以は、一に中央政府をして、其便宜に從ひ、漫りに廢止變更せしめざるが爲め也。(二一年四月法一號市制、町村制、三二年二月法六四號府縣制、三二年二月法六五號郡制)
- 英
- System of self-government
- 独
- Selbstregierungssystem
- 仏
- Système de l'indépendance
自治團體
(じちだんたい)自治團體とは、一定の土地と一定の住民とより成り、其區域内に於て、公共の事務を行ふ事を目的とし、且つ國家の立法權に依りて、無制限の拘束を受くる公法人を云ふ、□一自治團體は、一定の領土を成立の要件とす、自治團體が、其區域に對する關係は、國家が其領土に對する關係に類似す、自治團體の區域は、其支配の及ぶべき範圍なるが故に、其土地の上に來ること其者に依りて、其團體の支配を受くる事、恰も國家が、領士權の積極的作用として、其上に來る外國人に對しても、尚支配力を及ぼすが如く、又他の同等の團體力が、其上に行はるる事を排斥するは、國家の領土權の消極作用として、外國の國權の其領土に行はるるを排斥するが如し、而して自治團體の區域は、本來國家領土の一部なるが故に、團體の働は、國權の支配を受け、立法の方法に依らば、無制限に國家より支配せられ得べき地位にあり、之國家と自治團體との區別の存する要點なりとす、□二自治團體は、一定の住民を有す、一定の住民なければ、自治團體なし、住民たる關係は、臣民分限、即ち國籍と異るはいふ迄もなし、國籍とは、其所屬國の臣民たる分限を云ふ、此分限は、單純なる住居に依りて得たる者にあらずして、血統の關係に依り、または當該國の臣民と親族上の關係とに依り、または當該國に於て、出生したる關係に依り、或は本人の意思に依り、當該國より一定の條件の下に、其分限を附與せらるること(歸化)に依りて得べき者なり、換言すれば、國籍の得喪は、單純なる住居の事實に依りて生ずることなし、之に反して、自治團體の住民とは、自治圍體内に住居を占むるものを云ふ、住居とは、平常の居所とするの意思を以て、特定の土地に一身を定著するを云ふ、故に其條件として、ア平常の居所とするの意思と、イ特定の土地に一身を定著するの事實とを必要とす、從つて住居地と、民法に所謂住所とは、必ずしも同一にあらず、然れども多くの場合に於ては、住居地は、同時に其人の住所たるべし、自治團體は、之を普通自治團體と、特利自治團體との二者に分つことを得べし、前者は、府、縣、郡、市、町、村の六にして、自治團體に於ける普通法とも見らるべき、府縣制、郡制、市制、町村制に依りて成立せらるるものを云ひ、後者は、右六種の團體以外に於て、特別の法律に依り、又は特別の形體に於て成立するものを云ふ、公共組合、市町村内の獨立區、北海道一級町村、同二級町村、沖繩縣區、間切島等之なり。(二一年四月法一號市制、町村制、三二年三月法六四號府縣制、三二年三月法六五號郡制、三一年一二月勅三五二號沖繩縣間切島規程、二九年勅二九號沖繩縣區制)
- 英
- Self-government body
- 独
- Selbstregierungsgemeinde
- 仏
- Corps de l'indépendance
質物
(しちぶつ)質物とは、質權の目的物を云ふ、質權の目的たる物件は、左の性質を具備することを要す、□一質權の目的物は、特定の有體物たることを要す、質權は、一の物權なるを以て、物本來の性質に從ひ、其目的物は有體物にして、且つ特定物なる事を必要とし、無體物又は不特定物は、質權の目的たる事を得ざるを原則とす、但し權利質に就きては特別の明文あり、債權其他の財産權も、亦質權の目的たる事を得べしと雖も、之畢竟原則に對する例外に過ぎざるものとす、質權も亦物上擔保の一種にして、物上代位の特質を有し、目的物の賣却、賃貸、滅失又は缺損に依りて、債務者が受くべき、金錢其他の物に及ぶ者とす、□二質權の目的物は、讓渡する事を得べき物たる事を要す、質權者は、質物所有者に屬する處分權を行使し、之を賣却して、其代金に就き優先辨濟を受くるの權利を有するを以て、質權の目的物は常に讓渡し得べきものたる事を必要とす、何となれば、質權の目的たる物件が、其性質、又は法律の規定に依りて、讓渡し得べからざるものなるときは、質權者は之を賣却して、其代金を債權の辨濟に充つること能はざるを以て、質權は其效用を現はさざるべきを以てなり、故に人の身體の如き、性質上讓渡し得べからざるもの、阿片、華族の世襲財産、其他法律に於て、特に賣買讓與を禁じたる一切の物件は、質權の目的たることを得ず、養料の債權、恩給金の債權、其他性質上讓渡し得べからざる債權、當事者の意思を以て、特に讓渡を禁じたる債權も亦然りとす、□三質權の目的物は、質權設定者の所有物なるか若くは質權の設定に就き、特に所有者の承諾を得たる物件なることを要す、何人と雖も、自己の有せざる權利を、他人に讓渡すること能はざるを以て、物の所有者の承諾あるにあらざれば、其物の上に質權を設定することを得ざるべきは、敢て説明の要なきなり、但し動産質に就きては、質權の設定に就き、所有者の承諾なき場合と雖も、質權設定の當時、質權者に於て善意無過失にて、質物の引渡を受け、之を占有したるときは、質權者は質物上に質權を取得することを得べし、轉質の場合に於て、所有者にあらざる質權者に、質物上に新なる質權を設定するの權限を付與せられしは、何れも法律の特別規定より生ずる例外たるに過ぎざるものとす。(民三四二條乃至三五〇條、二九六條乃至三〇〇條、三〇四條、質屋取締法一〇條)
- 英
- Gage
- 独
- Pfand
- 仏
- Gage
質屋
(しちや)質屋とは、質物を擔保に取りて金錢を貸附け、以て利息を得るを營業とするを云ふ、質屋營業は即ち是なり。
- 英
- Pawn-broker
- 独
- Pfandleiher
- 仏
- Mont-de-piété
質屋取締法
質屋取締法とは、質屋營業を爲す者の取締に關する法規にして、□一質屋營業を爲さんとする者は、行政廳の免許を受くべし、支店を設けたるとき又同じ、廢業したるときは、行政廳に屆出づるを要す、□二質屋は、店舗の外に於て營業することを得ず、□三質屋が物品を質に取らんとするときは、質置主に於て、其物品を質入し得べき權利を有することを確認したる後、これをなすべし、若し不正品の疑ひあるときは、直に警察官に申告するを要す、□四住所又は氏名の詳かならざる者より、物品を質に取ることを得ず、□五質屋は、質契約、及び質物處分に關する事項を帳簿に記載すべし、□六質屋は、左の事項を見易き場所に揭示すべし、イ利子割合、ロ流質期限、ハ質物の災難に罹りたるときの處辨方、ニ質物出入時間、□七質屋は左に揭ぐる制限内の利子の外、何等の名義を以てするも、金錢を領收することを得ず、貸金二十五錢以下は一ケ月一錢、一圓以下は一ケ月百分の四、五圓以下は一ケ月百分の三、十圓以下は一ケ月百分の二半、此制限に違反したる質契約は、其違反せる部分に限り無效とす、□八質置主は、流質期限前は、何時たりとも元利金を辯濟して、其質物を受戾すことを得、□九質屋は流質期限經過の後、何時たりとも其質物を處分することを得べし。(二八年三月法一四號)
- 英
- Law of pawn-broker
- 独
- Gesetz von der Pfandleiher
- 仏
- Loi du mont-de-piété
市町村會議員選擧罰則
(しちやうそんくわいぎゐんせんきよばつそく)本則は、□一市町村會議員の選擧資格を詐稱して、選擧人名簿に記載せられたる者、□二議員たる事を得ざるの實を告げずして議員となりたる者、□三選擧人を脅迫し、若くは選擧會場を騷擾し、又は投票凾を抑留毀壞、若くは却奪するの目的を以て、多衆を嘯聚したる者、其他不正の行爲を爲す者を處罰する方法を規定したるものなり。(二三年五月法三九號)
- 英
- Election rule of the member of shi, cho and son assembly
- 独
- Wahlregel der Mitglieder der Shi-, Cho- und Son-versammlung
- 仏
- Règles de l'élection des membres de l'assemblée de shi, cho et son
市町村立小學校教員加俸令
(しちやうそんりつせうがくかうけうゐんかほうれい)沖繩縣を除く外、府縣は、市町村立小學校教育費國庫補助法による下付金を以て、市町村立小學校教員加俸資金とし、特別合計を設置すべき者なり、此資金は、府縣費を以て補充する事を得、□一市町村立小學校本科教員にして、五箇年以上同一府縣内の市町村立小學校に勤續し、地方長官に於て成績佳良也と認めたる者には、年功加俸を給す、年功加俸は、正教員に在りては、年額二十四圓とし、准教員にありては、年額十八圓とす、但し年功加俸を受けたる後、勤續年數五箇年を加ふる每に、正教員にありては、年額十八圓を加へ、准教員にありては、年額十二圓を加ふることを得、□二兵役に服する爲め其職を去りたる者、兵役を終りたる後九十日以内に、更に就職したるときは、前後の在職年數を勤續年敷に通算す、學校の廢止若くは學校編制の變更に依り退職したる者にして、六十日以内更に就職したるものも亦同じ、□三師範學校訓導に在職したる年數は、之を勤續年數に通算す、□四年功加俸をを受くる者、懲戒處分を受けたる時、又は地方長官に於て、成績佳良ならずと認めたるときは、年功加俸を給せず、□五市町村立尋常小學校本科正教員にして、單級學校に勤務する者には、年額二十四圓以下の特別加俸を給す、其僻陬の地にある多級學校に勤務する者には、地方長官に於て必要と認めたるときは、年額十八圓以下の特別加俸を給することを得。(三三年三月勅一三三號)
- 英
- Ordinance of increase of salary of the teachers of com-mon schools of Shi, Cho and Son、Law of assistance from fiscus for the increas-ed salary by years of the teachers of com-mon schools of Shi, Cho and Son by their merit
- 独
- Ver-ordnung von der Salärsmehrung der Ele-mentarschule Lehrer von Shi, Cho und Son、Gesetz des Beistandes vom Reichsfiskus für die Rente der Elementar-schule Lehrer von Shi, Cho und Son
- 仏
- Ordonnance de l'augumentation du salaire des maitres aux écoles primaires de Shi, Cho, Son、Loi de la protection du fisc pour la salaire augumentée par années des maîtres aux écoles primaires de Shi, Cho et Son
市町村立小學校教員退隱料及遺族扶助料法
(しちやうそんりつせうがくかうけうゐんたいいんれうおよびゐぞくふじよれうはふ)□一在職十五年以上のもの、左の各項の一に當るときは、終身退隱科を給す、イ年齡六十歳を超へ、退隱を命ぜられたるとき、ロ傷痍を取け、若くは疾病に罹り、其職務に堪へざるが爲め退職を命ぜられたるとき、ハ廢校に依り退職し、又は學校編制の變更に依り退職を命じたる時、ニ左の事項の一に當るときは、右一の年限に滿たざるも、終身退隱料を給し、なほ其最下金額十分の七までの增加退隱料を給す、イ職務に依りて傷痍を受け、一肢以上の用を失ひ、若くはこれに準ずべき者にして、其職務に堪へざるが爲め退職を命ぜられたるとき、ロ職務により健康に有害なる感動を受くるを顧みること能はずして、勤務に從事し爲めに疾病に罹り、一肢以上の用を失ひ、若くは之に準すべき者にして、其職務に堪へざるが爲め退職を命じたるとき、□三退隱料を受くる者左の事項の一に當るときは、其間退隱料の支給を停止す、イ公務に就き退職現時の給料額と、同額以上の給料を受くるとき、ロ五ケ年以上受領を怠りたるとき、ハ公權を停止せられたるとき、□四市町村立小學校の淮教員は、職務の爲め傷痍を受け、若くは疾病に罹り、右二號に該當する者に限り、退職現時の給料四分の一の退隱料を終身給與す、□五在職滿一年以上にして、退職したる市町村立小學校正教員には、退職當時の給料半ケ年分を以て、在職年數の一ケ年に當て、其年數に應ずる金員を一時給與す、但し休職、滿期に依り退職したる者は、其本職最終の給料額に依り之を給す、□六市町村立の小學校正教員、左の事項の一に該當するときは、其遺族は扶助料を受くるの權を有す、イ在職十五年以上の者在職中死亡したるとき、ロ在職十五年未滿のもの職務の爲め死亡したるとき、ハ退隱料を受くるもの死亡したるとき、□七在職十五年未滿の市町村立小學校正教員、在職中職務の故にあらずして死亡したるときは、其遺族に一時扶助金を給す、此扶助金は在職三年未滿の者にありては、在職最終の給料一ケ月分に當る金額を給し、二年以後滿一ク年每に、給料額百分の二に當る金員を加ふ。(二三年一〇月法九〇號)
市町村立小學校教育費國庫補助法
(しちやうそんりつせうがくかうけういくひこくこほじよはふ)□一市町村立小學校教育費を補助する爲め、國庫は每年豫定を以て定むる所の金額を支出す、□二前項の補助金は、市町村立小學校教員の年功加俸、及び市町村立尋常小學校教員の特別加俸に充つ、その加俸に關する方法は、勅令を以て定む、□三右□一に記したる補助金は、學齡兒童、及び就學兒童數の和に比例して、之を北海道廳、及び府縣に配賦す、此海道廳及沖繩縣の配賦金は、文部大臣之を管理し、其他は府縣に下付すべし。(三三年三月法六三號)
- 英
- Law of assistance from fiscus for the teachers expences of the common schools of Shi, Cho and Son
- 独
- Gesetz des Beistandes vom Reichsfiskus für die Kosten der Ele-mentarschule Lehrer von Shi, Cho und Son
- 仏
- Règles de la protection du fisc pour le dépens des maitres aux écoles primaires de Shi, Cho et Son
市町村立小學校教員俸給令
(しちやうそんりつせうがくかうけうゐんほうきふれい)□一市町村立小學校教員の俸給は、地方長官に於て定むるもとす、□二市町村立尋常小學校本科正教員月俸の平均額は、人口十萬以上の市に在りては十六圓、其他の市にありては十四圓とし、町村にありては十二圓とす、□三市町村立高等小學校本科正教員月俸の平均額は、人口十萬以上の市に在りては二十圓、その他の市にありては十八圓とし、町村に在りては十六圓とす、□四本科正教員に代り、一時教授する淮教員の俸給額に關しては、地方長官に於て之を定む、□五小學校本科教員の月俸は左表の金額を下すことを得ず。
學校
正教員
淮教員
高等小學校
男
十圓
七圓
女
八圓
五圓
尋常小學校
男
八圓
五圓
女
六圓
四圓
(三一年一月勅二號)
- 英
- Ordinance of salary of the teachers of the common schools of Shi, Cho and Son
- 独
- Salärver-ordnung der Elementarschule Lehrer von Shi, Cho und Son
- 仏
- Ordonnance du salaire des écoles primaires de Shi, Cho et Son
市住民
(しぢゆうみん)凡そ市内に住居を占むるものは、總べて其市住民とす、住民は總べて市制に從ひて、公共の營造物、並に市有財産を共用するの權利を有し、及び市負擔を分任するの義務を負ふ、市住民には、普通の住民と公民とあり、すべて□一帝國臣民にして、□二公權剝奪、または停止中にあらざる者、□三滿二十五歳以上にして、一戸を構へ、且つ禁治産者にあらざる男子、□四二年以來市の住民となり、□五其市の負擔を分任し、及び、□六其市内に於て地租を納め、若くは直接國税年額二圓以上を納むる者は、其市公民とす、其公費を以て、援助を受けたる後二年を經ざる者は此限りにあらず、但し場合に依り市會の議決を以て、此年限を特免する事を得、市公民は、市の選擧に參與し、市の名譽職に選擧せらるる權利と義務とを有す、イ疾病に罹り公務に堪へざる者、ロ營業の爲め常に市内に居る能はざる者、ハ六十歳以上の者、ニ官職の爲め市の公務を執る能はざる者、ホ四年間無給にて市吏員の職に任じ、爾後四年を經過せざる者、及び六年間市會議員の職に居り、爾後六年を經過せざる者、ヘ其他市會の議決に於て、正當の理由ありと認むる者にあらざれば、名譽職を拒絶し、又は任期中退職する事を得ず、之等の理由なくして名譽職を拒絶し、又は任期中退職し、若くは無任期の職を少くとも三年間擔當せず、又は其職務を實際に執行せざる者は、市會の議決を以て、三年以上六年以下、其市公民たる權を停止し、且つ同年期間其負擔すべき市費の八分の一乃至四分の一を增課することを得、此場合に、市會の議決に不服ある者は、府縣參事會に訴願し、其裁決に不服ある者は、行政裁判所に出訴することを得、但し一人にて二個の名譽職に選ばれたる時、兼任の爲め何れの職務をも充分に盡す能はざるに至る時は、一を拒絶することを妨げず、此場合には、右の制限を加ふる能はざるは勿論なり、市公民は、其資格の一を失へば公民權を失ふ、右權停止中、及び租税滯納處分中は、公民權を停止す、家資分散者、破産者が復權の決定を受くる迄の間も亦同じ、公權剝奪又は停止を附加すべき犯罪の爲め、公判に付せられたるときは、其裁判の確定に至る迄亦た公民權を停止す、陸海軍の現役に服する者、及び召集中の者は、市の公務を負擔する義務なし。(市制六條乃至九條)
- 英
- Citizen
- 独
- Stadtbürger
- 仏
- Citoyen
實印
(じついん)印とは、或物體の一面に存在する一定の形狀を他の物件に押捺して、常に一定の印蹟(印影)を永久的に現出せしめ、以て或る事實を證明する用に供せらるるもの(印顆)にして、一私人が證明の用に供するものを私印と云ふ、私印には認印あり、仕切印あり、又實印あり、實印とは私人が主として權利義務の重大なる事項に係る場合に使用する印顆を指すものとす、例へば金錢の場合に使用する印章の如き、或は官衙に提出する願書に使用する印章の如き之に屬す。(關税法一六條三號)
- 英
- Principal seal
- 独
- Hauptsiegel
- 仏
- Sceau principal
實家
(じつか)自己の出生したる家籍を實家と云ふ、即ち實家とは生家(事實上)と云ふに同じく、實家は養家に對する語なり、所謂家とは、戸主の統轄せる事實的又は相像的の家族團體を云ふ。(民七三九條乃至七四一號)
- 英
- Family in which one was born
- 独
- Haus, in dem man geboren ist
- 仏
- Famille natale
失效
(しつかう)凡て法律上の效力を失ふことを失效と云ふ、例へば債權者が十年間債務者に對して債權の取立をなさざりしが爲め、消滅時效に係かりて其債權を喪失するが如き是なり。(民一六七條乃至一七五條、私設鐵道法八二條)
- 英
- Losing effect
- 独
- Ungültigkeit
- 仏
- Perdre l'effet
執行
(しつかう)廣く執行と云へば、國權行使の或る作用を指す、例へば法規を實施するが如き、又は國家が犯罪人に對して刑罰を執行するが如き、或は執達吏が債務者に對して強制執行を爲すが如き之なり、等しく之を實現する點に於て一致し、又國家機關に依りて行はるる點に於て相等しとす。(憲法九條、刑一三九條、民訴四五三條等)
- 英
- Application
- 独
- Vollstreckung
- 仏
- Application
執行機關
(しつかうきくわん)主として執行の任に當たる國家機關を總稱して執行機關と云ふ、執行機關は、其執行すべき事務の如何により、多くの分類を生ぜん、今その重なるものを擧ぐれば、□一命令又は處分を執行する機關は、即ち行政官廳にして、其主管の事務により、或は軍務機關、外交機關、警察機關等に分類す、□二判決を執行する機關、刑罰執行の檢事、司獄官、強制執行に於ける執行裁判所、執達吏の如きこれなり、□三自治體の意思を執行する機關、例へば市町村に於ける市町村長、市參事會の如き是なり。
- 英
- Organ of execution
- 独
- Vollziehungsorgan
- 仏
- Organe de l'exé-cution
執行官
執行官とは、官吏にして執行機關たるを云ふ、例へば刑罰の執行を指揮する檢事の如き、強制執行を實施する執達吏の如き是なり。
- 英
- Executor
- 独
- Vollstreckungs-beamte
- 仏
- Exécuteur
執行委任
(しつかういにん)或る命令又は處分の執行を委任することを執行委任と云ふ、されど民事訴訟法に於て、執行委任と云へば、債權者が執達吏に、強制執行を爲さんことを委任するを云ふ。(民訴五四四條)
- 英
- Execution instruction
- 独
- Vollziehungsauftrag
- 仏
- Confiance de l'exécution
執行規則
(しつこうきそく)法律、又は命令を以て、國權を執行する爲めに發する規則を執行規則と云ふ、例へば強制執行法(民訴六編)は、債權者の爲めに執達吏をして、債務者より其財産權を差押、其他競賣等に關することを定めたる法律なるが故に、執行規則と云ふことを得べきが如し、其他行政執行法の如きも亦之に屬す。(民訴三二一條)
- 英
- Execution law
- 独
- Einführ-ungsregel
- 仏
- Loi de l'exécution
實行中止犯
(じつかうちうしはん)單に中止犯とは、犯人が任意に罪の實行を中止し、又は罪となる結果の發生を防止することを云ひ、實行中止犯とは、犯罪の實行中に於てこれを中止することを云ふ、實行の中止は一時的たると、將た永久的に犯罪の決意を消減するとを問はざるなり、(再擧を謀る爲め、一時中止したる場合に於ても、中止犯の成立を妨げざるなり)、然れども實行の一部に依りて生じたる狀況を、犯人が更に實行の繼續に利用することを欲したるときに於ては、實行の中止を以て論ずることを得ざるなり、例へば決水の目的を以て、數日間每夜堤防を毀壞するが如き、又は數回少量の毒物施用に依り、漸次に他人を毒殺する目的を以て、數日に亘り毒物を服用せしめたるときは、實行の繼續にして中止と云ふことを得ず、此場合に於ては、常に實行の繼續にして、實行の反覆にあらざるが故に、中途にして利用の意思を廢止し、毒物の施用を止め、又は提防の毀壤を止めたるときは、實行の中止を以て論ずることを得、次に他人を利用して(機械として)間接に罪を實行する場合に於ては、其機械となるべき人に對し、獨立なる行爲の動機となりたるときを以て、間接實行を終りたるときと云ふべきなり、例へば精神病者が他人の使役に依り、行爲を現實したるときを以て、間接實行犯人の實行を終るものとす、又教唆者、及び從犯の實行は、正犯に犯罪を決意せしめ、又は實行に便宜を與へたるときを以て終るが故に、其以後に於ては實行中止の問題を生ぜざるなり、中止犯は之を處罰せざるを原則とす、唯法の規定ある場合にのみ之を處罰するものなり。(刑四三條但書)
- 英
- Infraction
- 独
- Rücktritt vom Verbrechen
- 仏
- Suspendue volon-taire
執行登記
(しつかうとうき)執達吏が強制執行を實施するに當り、之に關する一切の顚末を記載することを云ふ、執行記錄は即ち之なり。(民訴五三八三、六四三條)
- 英
- Execution register
- 独
- Vollstreckungseintragung
- 仏
- Enregistre-ment de l'exécution
執行罰
(しつかうばつ)執行罰は、行政上の強制手段の一種にして、官廳の發したる下命に對する遵由を強制するの目的を以て、官廳が臣民に對して課する所の罰なり、故に又強制罰とも稱す、行政執行法第五條第一項に、行政處分を強制するが爲めに、當該行政官廳は二十五圓以下の過料に處することを得べきことを規定せり、執行罰は即ち之を謂ふものなり、執行罰は、官廳の下命處分に對する遵由を強制する目的の爲めにする處罰なるの點に於て、刑罰と其性質を異にす、刑罰は不法行爲に對する制裁として科するものなるに反して、執行罰は、純然たる強制手段なり、從ひて執行罰は刑罰の如く、法規により一定の所爲に對し、豫め之に相當すべき處罰規定の定めらるるものにあらず、各個の場合につきて、官廳が執行罰を科すべきや否や、及び如何なる程度の罰を科すべきかを隨時に決定するものなり、官廳の下命に遵由せざる者あるも、刑罰の如く夫必ず科することを要するものにあらず、之を科すると否とは、官廳が各個の場合につき、其目的を達するに便宜なるや否やを標準として、自由に決すべきなり、執行罰を科するの手續は、第一に豫告を以て始まる、豫告は一定の履行期間を定め、作爲の義務につきては、其期間内に之を履行せざるとき、又不作爲の義務につきては、其期間を過ぐるも猶其作爲を繼續するときは、一定の程度の執行罰を科すべき事を、文書を以て戒告するものなり、此豫告は執行罰を科するに缺くべからざる要件にして、彼の代執行の如く(代執行と云ふは、行政官廳の下命を受けたるものが、下命ぜられたる作爲を爲さざる場合に於て、官廳が自ら執行し、又は他人をして執行せしめ、其費用を義務者より徵收する方法を云ふ)急迫の事情あるときと雖も、これを省略することを得ず、豫告なくして科したる執行罰は、違法たるを免れず、豫告ある迄は、義務者は條件附を以て所罰せらるるの狀態にある者にして、義務者が作爲の義務につきては、官廳の豫告したる期間内に其作爲を爲さず、又不作爲の義務につきては、其作爲を繼續するときは、其條件が成就して、官廳は其豫告したる所罰を科するの權能を得、然れども此場合に於ても、官廳は必ずしも其豫告したる罰を科する事を要するにあらず、官廳は自己の意見を以て、或は全く之を科せず、或は豫告したる罰より輕き罰を科することを妨げず、一方に於ては、其強制すべき目的にして、罰を科する以前に消滅したるときは、假令義務違背の事實ありたるも、最早之を科することを得ず、例へば官廳の指定したる履行期間の經過後に至り、其命じたる作爲を爲したる場合に於て、若し刑罰の性質を有するものならば、既に一度犯罪がありしものなるが故に、等しく之を科することを得れども、執行罰は最早これを科するを得ず、何となれば、斯かる場合には、最早強制すべき目的を存せざるを以てなり、然れども他方に於て、執行罰は刑罰の如く、同一の所爲に對して、二回以上の所罰を科することを得ざるものにあらず、既に一度執行罰を科したる後に於て、尚義務者が引續き其命ぜられたる作爲を爲さず、又は其命ぜられたる作爲を繼續するときは、官廳は尚何回にても、繰返して之を科することを得るなり、彼の訴訟法上の一事不再理の原則は、執行罰に適用せらるることなきなり、次に執行罰の手段は過料なり、官廳の科し得べき過料金額は、行政執行法施行令に一定の制限あり、其金額は、官廳によりて同じからず、大臣は二十五圓、警視總監、及地方長官は十圓、其他の行政官廳は、二圓を超ゆることを得ず、此最高限度は官廳の科し得べき一回の執行罰の最高限度にあらずして、同一の義務を強制するが爲めにする、總執行罰の最高限度なりと認めざるべからず、故に官廳が、同一義務に對して、數回繰返して科するの必要あるときは、其數回の罰を併せて、此最高限度に達したるときは、最早夫れ以上の執行罰を科することを得ざるものとす、最後に同一の所爲に對して、執行罰と刑罰とを併せ科することを得べきや否やの問題を決せん、これに就きては、學者間多少の議論あり、然れども之を併科するを得ざるものと認むるを妥當とす、素より前示したるが如く、執行罰と刑罰とは、其性質を異にするものなりと雖も、其不法行爲に對して、國家權力の科する苦痛なるの點に於ては同一なり、法律が、既に刑罰を定めたる以上は、此特定の所爲に對して、國權の科する所の苦痛は、夫れ以上に及ぶべからざることを認めたるものなり、若し之に對して、更に執行罰を科することを得べしとせば、同一の所爲に對して、國權が二重の罰を科する結果となり、官廳が任意の決定により、法律の定めたる以上の苦痛を科する事と爲るべきなり、此故に、法規に依りて已に犯罪行爲たる作爲、又は不作爲を制止するが爲めには、執行罰は之を科することを得ざるものなりと論定すべるを可とす。(行政執行法五條)
- 英
- Compulsory punishment
- 独
- zwingende Strafe
- 仏
- Punition compul-soire
執行判決
(しつかうはんけつ)仲裁判斷若くは外國裁判所の判決に基き、我國の裁判所が其強制執行を適法なりと言渡して、執行を許す判決を云ふ、各場合を分説すれば、□一仲裁判斷に基く執行判決、仲裁判斷なるものは、當事者間に於ては、裁判所の確定判決と同一の效力を有するものなりと雖も、之に基きて強制執行を爲すことを得ず、爰を以て、管轄裁判所に執行判決を求むる訴を起すことを得しめ、仲裁判斷によりて定りたる法律關係につき、強制執行を許すの制度を認めたるものとす、執行判決は、單に執行許可を宣言するに止まるが故に、他の債務名義と同じく、執行文の附與ありたるときに限り、強制執行を開始する事を得べきものとす、□二外國裁判所の判決に基く執行判決、強制執行は、日本の裁判所に於て認められたる權利の實行を得しむるを目的とするものなれば、外國裁判所の判決は、當然日本に於て、其判決の内容を執行せしむべきにあらず、然れども國際上の關係より、外國裁判所の判決と雖も、日本に於て執行するを得せしむるにあらざれば、權利者をして權利の實を見る能はざる場合あるべし、故に法律は、外國裁判所の判決を、日本に於て執行する事を許す制度を認めたるもの也、然れども日本裁判所は、外國裁判所の判決を内國に於て執行するも、公の秩序に反することなきや否やを審査し、執行の許否を決すべきものとす、即ち外國裁判所の判決は、日本裁判所が、執行判決を以て、執行の許可を言渡したるときに限り、執行を許すべきものとす、抑も執行判決なるものは、形式上の裁判にして、當事者の實體法上の權利につき、當否の判斷を爲すにあらず、又外國裁判所の裁判の當否を審査するものにもあらず、唯外國裁判所の判決を日本に於て執行するも、其執行が日本の法律に從ひて、適法なるや否や、若くは公の秩序に反する事なき否やを審査するに止まる、而して執行判決によりて、原告は外國裁判所の判決を執行する權利を取得するものなれば、其判決は創設的の判決なりとす、□三執行判決に關する手續、執行判決を求むる訴は、通常訴訟手續に依り、事物の管轄よりすれば、區裁判所若くは地方裁判所に屬し、土地の管轄よりすれば、債務者の普通裁判籍を有する地の裁判所管轄權を有す、而して其裁判の手續は、外國裁判所の判決の當否を審査せずしてこれを爲す、即ち其判決に包含する實體上の權利につきては、當否を審査せずして、唯日本の秩序に害なきものと認むるときは、執行判決を許さざるべからず、然れども左の場合に於ては、執行判決を求むる訴は、これを却下すべき者とす、イ原告が、外國裁判所の判決が確定となりたることを證明せざるとき、判決確定の時期は、國によりてこれを異にす、從つて外國管轄官廳の證明あるか、若くは當事者が外國の規定に依りて、之を證明するを要す、ロ日本の法律に依て、強制的に實行せしむるを得ざる行爲を、外國裁判所の判決が債務者に命じたるものなる時、執行判決は、外國裁判所の判決の執行を許可するものなりと雖も、その執行許可の判決は、日本の判決なり、故に我法律の下に於て許さざる行爲の實行を命じ、若くは我裁判執行の手續に於て、規定なき事項を命じたる外國裁判所の判決なるときは、日本裁判所は、之が執行を許可することを得ざるものとす、ハ日本の法律に從へば、外國裁判所が管轄權を有せざるとき、國際法上の法理に從ひ、外國裁判所の判決が、其管轄權ある事項につき爲されたるものならざるべからず、事物、及び土地の管轄につき、外國裁判所が其權限なきときは、執行の判決を爲すを得ざる者とす、ニ敗訴の債務者が、日本人にして應訴せざりしとき其判決は、適式に言渡されたるものにあらざるを以て、斯くの如き判決に對し、執行判決を求むる訴を起したるときは、これを却下せざるべからず、但し應訴せざりし日本人が、訴訟を開始する爲めに呼出し、若くは命令を受訴裁判所屬國に於て受けたるか、若くは國際間の法律上の共助によりて、之を受領したるに拘はらず應訴せざりしときは、日本人の懈怠に出でたるものなれば、之等の場合には、執行判決を求むる訴を却下するを得ざるものなり、ホ國際條約によりて相互を保せざるとき、日本の判決を、外國に於て執行することを許す國の判決にあらざれば、日本に於ても執行判決を求むることを得ざるものとす、これ外國裁判所との關係に於て、我民事訴訟法が相互主義を採りたる所以なりとす、以上に陳べたる五個の場合に限りて、執行判決を求むる訴を却下すべく、其他の場合に於ては、常に執行許可の判決を爲さざるべからず、執行判決は、日本裁判所の判決として獨立したる債務名義たるものにして、外國裁判の判決が認めたる權利の實行を爲さしむるものなりと雖も、執行の基本たる債務名義なるものは、執行判決にして、外國裁判所の判決にあらざることを注意すべし。(民訴五一四、五一五、八〇一、八〇二、八〇三條)
- 英
- Judgment of execution
- 独
- Exekutionsurtheil
- 仏
- Jugement de l'ex-écution
執行文
(しつかうぶん)執行文とは、民事訴訟法上に於ける強制執行を爲す事を許可するの裁判所の命令なり、換言すれば、債權者に對し、債務名義(さの部參照)につきて、強制執行の手續を實施することを許可したるの命令なりとす、此執行文なきときは、獨り債務名義のみ存すれども、強制執行を爲すことを得ざるを原則とす、唯債務名義中、執行命令、假差押命令、假處分命令、並に破産手續に於て承諾を經たる債權證書は、執行文なくして執行を爲すことを得べきなり、之等のものは、其命令自體が執行許可の命令を包含するものなるが故に、特に執行文を要せずして、其命令の正本を、執行正本と見做すべきものとす、又破産手續に於ける債權證書は、特別の明文なきを以て、執行文なくして執行を許可すべきものと解すべし、其他の債務名義は、執行文を附して始めて強制執行を爲すことを得べきものにして、此執行文を附與せられたる債務名義を稱して、執行正本と云ふ、民事訴訟法上の關係を左に分説すべし、□一執行文附與に關する手續、執行文は、當事者の申立によりて、裁判所書記之を附與するものなり、執行文は訴訟記錄に基き、之を附與すべきや否やを決すべきものなれば、常に訴訟記錄を保存する第一審の裁判所書記こを附與するを通常とす、若し訴訟記錄が上級審にあるときは、其上級審の裁判所書記これを附與するもとす、和解、抗告のみを以て、不服を申立つることを得べキ裁判が、債務名義たるとき亦同じ、而して公正證書は、公證人が其原本を保存するものなるを以て、公證人執行文を附與す、右説示したるが如く、執行文附與は書記がこれをす爲ものなれども、つぎに述ぶる場合に於ては、裁判所長の命令を受けて爲さるべからず、イ債務名義の執行が、其主旨に從つて保證を立つること以外の條件に係る時、即ち債權者が債務者に反對給付を爲し、其他執行につき停止條件存するときは、債權者は其條件の到來を、證明書を以て證明するにあらざれば、執行文の附與を求むることを得ざるものにして、此場合に、條件到來の事實を判斷するは、法律上の判斷を必要とするを以て、其判斷はこれを裁判長の職權とせるなり、故に裁判長の條件の成否を調査し、執行文附與につき許可する命令を裁判所書記に對して爲すにあらざれば、書記は、執行文を附與することを得ざるものとす、但し強制執行が、保證を立つることの條件にかかるか、又は或る期限の到來するにあらざれば、執行を爲すを得ざる者なるときは、之れが調査は執行機關に於て之を爲すを得るを以て、執行文の附與につき、裁判の命令を必要せず、ロ債務名義に表示したる債權者の承繼人に執行文を附與し、又は一債務者の一般承繼人に對して、これを附與するときは、書記は裁判長の命令あるにあらされば、執行文を附與するを得ず、何となれば、承繼ありたるときは、承繼人に執行文を附與すべきや否やは、承繼の事實を判斷するの必要を生ず、その判斷は、法律上の智識を必要とするを以て、裁判長に於て承繼の如何を判斷するを要するものとしたるなり、唯強制執行を開始したる後に承繼ありたるときは、特別の執行文を要せず、執行手續を進行することを得るなり、ハ債權者が同時に執行正本の數通を求め、又は一度附與せられたる正本を返還せずして、同一執行正本を求むる時は、裁判長の命令あるにあらざれば書記は之を附與することを得ず、□二執行文の文式、執行文は、判決の正本の末尾に「前記の正本は被告某、若くは原告某に對し、強制執行の爲め某に附與す」と記載し、裁判所書記署名捺印し、且つ裁判所の印を押捺すべきものとす、□三執行文附與に關する不服申立、債權者が、裁判所書記、若くは公證人に對して、執行文の附與を求めたるときに、執行文を附與し、若くは附與せざる場合に於ては、債權者若くは債務者より、不服の申立を爲すことを得べし、その場合を分ちて述ぶれば、イ裁判所書記若くは公證人が、執行文の附與を拒みたるときは、其拒絶の原因が、裁判長の命令によりたると、其他の場合たるとを問はず、債權者は執行正本附與拒絶の處分に對し、不服の申立を爲す事を得べし、裁判所書記の處分なるときは、其所屬の裁判所の裁判を求め、公證人の拒絶したる場合なるときは、明治一九年司法省告示第三號抗告手續によりて、公證人を監督する地方裁判所に對し、不服の申立を爲すべし、ロ裁判所書記、又は公證人が、執行文を附與したるときに、債務者が不服なるときは、異議の申立を爲すことを得べし、其執行文の附與が、裁判長の命令によりたる場合なると、其他一般の場合なるとを問はず、債務者は異議の方法により不服申立を爲すべきものなり、其異議につきては、執行正本を附與したる、裁判所書記の屬する裁判所其裁判を爲すべく、又その裁判所の裁判に不服なるときは、即時抗告の形式を以て、債權者若くは債務者より不服を申立つるを得、又公證人の執行正本附與に對しては、債務者が異議を主張するには、公證人職務上の住所地を管轄する區裁判所に申立を爲すべきものなり、其區裁判所の裁判に對して不服なる當事者は、即時抗告を以て不服を主張する事を得るなり、□四執行文附與の訴、執行文は、裁判所書記、若くは公證人が、債權者の申出でに依りて附與すべきものなりと雖も、債權者が證明を爲すを要する場合に、其證明を爲すこと能はざるときは、債權者は、申請のみにより執行文の附與を求むることを得ず、此場合に於て、法律は債權者を保護するが爲め、訴を以て執行文の附與を求むる手續を設けたり、即ち債權者は、債務者を被告とし、訴を起し、裁判所の判決により、執行文附與の許可を求むることを得べし、此訴は債務名義が、判決若しくは和解調書其他の裁判なるときは、第一審の受訴裁判所に提起すべく、又債務名義が公正證書なるときは、債務者の普通裁判籍を有する地の裁判所に、訴を提起するものとす、而して原告即ち債權者の訴を正當と認めたるときは、裁判所は執行文を附與する旨の判權を言渡し、其判決確定したる後、債權者が執行文を附與する職務を要する吏員に、其判決を提出して、執行正本の附與を求むることを得べきなり。(民訴五一六條乃至五二五條五六〇、五六二條)
- 英
- Execution clause
- 独
- Voll-streckungsklausel
- 仏
- Clause de l'exécu-tion
執行命令
(しつかうめいれい)□一憲法第九條に「天皇は法律を執行する爲めに、必要なる命令を發し、又は發せしむ」とあり、此條文によりて、法律を執行する爲めに發する命令を、執行命令と云ふ、執行命令は、法律を執行する爲めのものなるが故に、其法律の範圍外に亘り、若くは其法律の原則に反する規定を設くる事を得ず、必ず其法律を執行するの細則ならざるべからず、且つ命令は、總べて法律を變更するを得ざるを以て、執行命令も亦其他の法律に抵觸する規定を設くることを得ざるや勿論とす、抑も執行機關は、法律を執行する義務を有するを以て、執行命令を發するは、執行機關當然の權限にして、特別の法律の委任あるを必要とせざるものとす、執行の責任を有するものは、上述の制限内に於て、自由に執行命令を發することを得るも、唯法律には特に執行命令を發すべしとの規定を揭ぐることあり、斯かる場合には、執行者は必ず、其執行細則を設けざるべからざるなり、之に反して、斯かる法律の明文なければ、其細則を如何に設くるやは執行者の自由なりとす、而して執行命令を以て、法規を規定し得るやは、少しく議論のある所なり、然れども、執行命令の本質より論ずれば、法規を規定し得ざるものと云はざるべからず、何となれば、執行命令は、既に存在せる法規を執行する爲めの命令にして、新に法規を立つるものにあらず、新に法規を立つることは、既に執行にあらざればなり、また君主が法律を執行するに當り、法律の意義を一定するにあらざれば、各種の行政官廳の間に、法律執行の結果區々となるの虞あり、故に君主は、法律の疑義に關し、各行政官廳に訓令することを得べし、斯くの如き訓令は、行政の監督者としての訓令なるが故に、各行政官廳を拘束すべし、然れども斯かる訓令に出でたる解釋は、裁判官を拘束するものにあらず、裁判官は獨立して法律を解釋するを得るなり、彼の司法權の獨立、又は行政官の干渉を受けずと云ふは、此意義に於て云ふ也、執行命令はかくの如く、法律を執行するの目的に出づるを以て、若し其法律が廢止に歸したる場合には、其執行命令も、亦其目的の消滅したる爲め自ら廢止に歸すべし。(憲法九條)□二民事訴訟法に於ける執行命令とは、支拂命令に假執行の宣言の附せられたるものを云ふ、抑も財産權上の請求にして、一定の金額の支拂其他代替物若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請求につきては、債務者は債務を負擔することを認むるも、任意にこれを履行せず、または無資力等の理由によりて、其義務履行を怠ることあるべし、此場合に於て、債權者が訴を以て通常の手續により判決を求むるも、口頭辯論に於て、債務者は其債務を認むるの外なく、從つて債權者は訴を以て其權利の有無を確定する必要なし、唯債權者の欲する所は、債務者に對する強制執行の名義を得て、自己の債權を實行せんとするに外ならず、故に通常の訴訟手續によるときは、唯手數と費用とを要するに過ぎざるを以て、特に簡易なる方法を設けて、債權者に債務名義を得しむるの必要あり、督促手續はこの必要に基く簡易手續にして、金錢の支拂、其他代替物、若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請求につき、債權者の申請により、書面審理に基き、債務者に對して條件附命令、即ち支拂命令を發す、債務者が支拂命令に對し法定の期間内に、異議申立を爲さざるときは、債權者の申請により、支拂命令に假執行の宣言を附す、此支拂命令に假執行の宣言を附せられたるもの、即ち執行命令なり、而して此執行命令は、其命令自體に於て、執行力を有するものなるが故に、他の一般なる債務名義の如く、特に執行文の附與を要せずして、執行を爲すことを得べきものとす。(民訴五六一、五五九、三八二條乃至三九五條、及び督促手續、支拂命令の部參照)
- 英
- Fxecutory order
- 独
- Voll-streckungsbefehl
- 仏
- Ordre exécutoire
執行力
(しつかうりよく)民事訴訟法上に於ける用語にして、強制執行を行ひ得べき力を稱して、執行力と云ふ、執行力の形式的條件は、即ち執行文の附與せられたる債務名義の存在な必要とす。(民訴五一六條二項、執行文の部參照)
- 英
- Executory power
- 独
- Voll-streckbarkeit
- 仏
- Pouvoir exécutoire
實方
(じつかた)婚姻若くは養子緣組によりて他家に入りたるるのが、其婚家又は養家に對して、其前に屬したる實家を實方と云ふ、俗に里方と云ふに同じ、而して離婚又は婚姻の取消、養子緣組の取消又は離緣ありたるときは、其者は實方に復歸するものとす。(民七三〇條一項、實家、養方の部參照)
- 英
- Original family
- 独
- originelle Familie
- 仏
- Famille originelle
失火罪
(しつくわざい)過失によりて火を失し、其結果他人の所有に屬する家屋、其他の物件を燒燬したるの罪にして、刑第法四〇九條に規定す、曰はく「火を失して人の家屋財産を燒燬したる者は、二圓以上二十圓以下の罰金に處す」と、所謂過失と云ふは、自己が注意の欠缺に基きたる場合を云ふものにして、人の家屋財産と云ふは、家屋、及び其他の物件を指示するものとす、而して失火の當時に於て、其場所に居合せたる人が、出火の爲めに死傷したるときは、過失殺傷と失火とを比較し、其重きに從つて處斷せらるるものとす、例へば家人か火災を免るるが爲め、窓より飛び降りたる爲め死傷し又は逃道を失ひて死傷したる場合の如し、然れども之に反して、火災を救ふ爲めに外より入り來りたる者、又は荷物を取出す爲めに、更に家内へ歸り來りたるによりて燒死するも、失火の結果と云ふことを得ず、從つて犯人は之に對する責任なし。(刑一七〇條)
實業教育費國庫補助法
(じつげふけういくひこくこほじよはふ)明治二七年法律第二一號を以て發布せられたる所に係る、其大要を擧ぐれば、公立の工業、農業、商業、商船學校、徒弟學校、及び實業補習學校にして、實業に利益ありと認むるときは、文部大臣は其學校に補助金を交附す、又私立と雖も、監督官廳の許可を經たる農工商組合に於て設立したる實業學校は、文部大臣の特別なる認定により、補助金を受くることを得、而して各學校に交附する補助金は、其設立者の負擔額と同額以内を限度とす、又此法律により、補助を受くる學校の設立者は、補助年期間其學校經費を繼續支出するの義務を負ふものなり、各學校に補助金を交附するは、五箇年を以て一期とし、滿期の後必要に依り、猶之を繼續交附せらるることを得、又以上に述べたる、各種學校の教員を養成するの必要あるときは、文部大臣は實業教育費國庫補助金豫算額の八分の一以内を支出して、其費用に充つることを得るものとす。
- 英
- Law of assistance from fiscus for the educational expenses of the industrial school
- 独
- Gesetz des Beistandes vom Reichsfiskus für die Ge-werbeerziehungskosten
- 仏
- Loi de la protection du fisc pour le dépens des écoles industrielles
實業擧校教員養成規程
(じつげふがくかうけうゐんやうせいきてい)本規程は、實業教育費國庫補助法第七條に關する執行命令なり、其大要は、東京帝國大學農科大學本科、若くは實科、東京高等商業學校、東京高等工業學校、東京美術學校、商船學校、及び水産講習所の學生生徒にして、卒業の後實業學校の教職に從事すべきもの、並に東京帝國大學農科大學附屬農業教員試驗所、東京商業學校附屬商業教員養成所、及び東京商業工業學校附屬教員養成所の生徒には、學資を給與せらるることあるものとす、其補給せらるべき金額は、一箇月六圓以内とし、但し、東京工業學校附屬工業教員養成所研究生に給する學資は、六圓を超過することを得るものとす、此學資金の補給を受くるものは、卒業の日より、學資の補給を受けたる年限に、一箇年を加へたる期間、文部大臣の指定により、實業の學校の教職に從事すべき義務を負ふものなり、但し必要の場各に於ては、文部大臣は他の教職に從事するの義務を負はしむることあるものとす、又右の學資金の補給を受くる者、半途にて退學し、又は教職となるの義務を盡さざるときは、補給せられたる學資總額を償還すべきものとす、但し文部大臣は事情を酌量して、其全部、又は一部の償還を免除することを得るものなり。(三五年文部省令九號)
- 英
- Rule of education of the teachers of the industrial schools
- 独
- Erziehungsregel der Gewerbeschulen Lehrer
- 仏
- Loi de l'enseignement des maîtres des éooles industrielles
實系
(じつけい)人の天然的血緣關係を稱して實系と云ふ、實系は自然の系統によりて、二種に區別せらる、一は直系にして、二は傍系なり、直系と云ふは、共同の始祖より一直線に下降せる血族にして、其自己の出づる所の血族は、之を尊屬親と云ひ、自己より出づる所の血族は、之を卑屬親と云ふ、卑屬親の最も近親なるものは子なり、適法の婚姻に基く子は、之を嫡出子と云ひ、婚姻以外の私通によるものは、父より之に對するときは庶子と云ひ、母より之に對するときは私生子と云ふ、つぎに傍系親と云ふは、共同の祖先より出づるも、直線に連結せざるものを云ふ、此傍系親中最も近親なるものを兄弟姉妹とす。(典範五八條)
- 英
- Natural blood
- 独
- Naturgeblüt
- 仏
- Sang naturel
實業學校設置廢止規程
(じつげふがくかうせつちはいしきてい)實業學校令第七條に基き發せられたる命令にして、本規則の示めす所によれば、工業學校、農業學校、商業學校、及び商船學校を設置せんとするときは、公立學校に在りては其管理者、又私立學校にありては其設立者に於て、右の事項を具し、文部大臣に稟告すべきものとす、其具申すべき事項は、□一名稱、□二位置、□三學則、□四生徒定員、□五開校年月、□六敷地物建の圖面、並に其所有の區別、□七收入支出豫算表、□八職員數及俸給額の豫定、□九設置區域内に於ける當該實業の情況、□十設立者の履歷、法人、又は組合の設立にかかるものは其定款、寄附行爲、又は組合契約、及び其沿革、組合定款、又は寄附行爲にして、文部大臣の認可を受けたるものは、其添附を要せず、以上の十事項は、必ず具申することを要するものとす、又右により設立したる學校を廢止せんとするときは、其事由並に生徒の處分方法を具して、文部大臣に稟告せざるべからず、地方長官に於て、實業補習學校を府縣立學校に附設したるとき、又は其設置を認可したるときは、名稱、位置、教科目、其每週時間數、生徒入學資格等を具して、文部大臣に開申すべきものとす。(三三年文部省令一二號)
- 英
- Rule of establish-ment or abolishment of industrial schools
- 独
- Errichtungs- oder Abschaffungs-regel der Gewerbeschule
- 仏
- Règles de l'éta-blissement ou de l'abolissement des indust-rielles
實業學校令
(じつげうがくかうれい)明治三二年勅令第二九號を以て、發布せられたる所にかかり、本令の規定する所によれば、實業學校は農工商等の實業に從事する者に、須要なる教育を爲す事を目的とするものにして、其種類は工業學校、農業學校、商業學校、商船學校、及び實業補習學校とす、而して蠶業學校、山林學校、獸醫學校、及び水産學校等は、農業學校と見做るるものにして、徒弟學校は工業學校と同種に屬するものとす、實業學校にして、高等の教育を爲すものを實業專門學校とし、專門學校令の定むる所によらしむ、北海道及府縣に於ては、實業學校を設置することを得べく、又文部大臣は必要と認むる場合には、其設立を命ずるものとす、郡、市、町村、又は町村組合は、土地の情況に須要にして、其區域内の小學校教育施設上妨なき場合に限り、實業學校を設置することを得べく、又商業會議所も實業學校を設置することを得べし、一私人も本令の規定によりて、實業學校を設置することを得、公立、又は私立の實業學校の設置廢止は、文部大臣の認可を受くるを要し、又實業學校の修業年限及學科目は、文部大臣の定むる處に從はざるべからず、而して教科用書は、公立學校にありては學校長に於て、私立學校に於ては設立者に於て、地方長官の認可を經て定むるものとす、實業學校の公私立共に、其教員の資格に關する規定は、文部大臣に於て別に定めらる、公立實業學校職員の旅費其他諸給與に關する規則は、文部大臣の認可を經て、地方長官之を定むるものとす等は、其主要なる點なり。
- 英
- Ordinance of industrial school
- 独
- Verordnung von der Gewerbe-schule
- 仏
- Ordonnance de l'école indust-rielle
實業補習學校規程
(じつげふほしうがくかうきてい)明治三五年文部省令第一號を以て改正發布せられたる所にして、實業補習學校に於ける、教科目の修業時間、及び教授時數は、土地の狀況によりてこれを定め、又職業の種類繁閑等に鑑み、生徒の修業に最も便宜なる時間、及び季節を選びて教授すべきものとす、其教科目は、修身、國語、算術、及び實業に關する科目とす、實業補習學校に入學するものの資格は、年齡十歳以上にして、學業は尋常小學校卒業以上に於て定め、尋常小學を卒業せざるも、學齡を過ぎたる者に限り、特に入學せしむることを得るものとす、又學則を以て定むべき事項は、凡そ左の如し、□一學校の目的、□二修業時期に關する事項、□三教授の季節に關する事項、□四休業日に關する事項、□五教科目、及び其程度に關する事項、□六教科目の教授時間、及び時數に關する事項、□七入退學に關する事項、□八授業料等に關する事項の八項目とす。(二六年文部省令一六號參照)
失權
(しつけん)權利を失ふことを汎く稱して失權と云ふ、失權の原因たるべきものは、法規の規定によることあるべく、權利主體の抛棄によることあるべく、又其他の行政處分によることもあるべし、其他刑罰、時效等によりて失權の結果を生ずることあるものなり。(民訴法七六四、八九八條)
- 英
- Losing right
- 独
- Verlust des Rechtes
- 仏
- Perdre le droit
實子
(じつし)自然の血緣によりて生じたる子を實子と云ふ、實子を分ちて嫡出子、庶子、及び私生子とす、嫡出子とは、正當の婚姻によりて生じ、庶子と私生子とは、これに反して、二者共に婚姻以外に生じたるものを云ふ、其所謂庶子とは、夫婦にあらざる男女の間に生じ、法律上父の分明なるものを云ひ、私生子とは、夫婦にあらざる男女の間に生れたるも、法律上父の知れざる所の者を云ふ、然れども法律は、婚姻中に懷胎し、婚姻解消後に出生したる子を嫡出子と推定し、又庶子を後の婚姻によりて嫡出子と爲すことを許したり。(民四編四章一節)
- 英
- Child by birth
- 独
- rechtes Kind
- 仏
- Enfant par naissance
實施
(じつし)國家の法律命令、行政上の處分等を實際に施行することを實施と云ふ。(裁構法施行條例七條、民訴五三四條、法典調査會規則一條)
- 英
- Procession
- 独
- Ausführung
- 仏
- Exécution
實質
(じつしつ)場合に應じて稍異る意義を有す、今其最も普通に使用せらるる二三を列記すれば、事物の形式に對し其事物の内容を意味す、更に狹限せられては、事物の眞價、若くは要點てふ意義をなすことあり、また物體を構成する所の物質、或は事物を構成する所の素地を指意す、即ちその者なくば成立することを得ざる、そのものの構成素を指すことあり、或は又宇宙の現象に對して其本質を指示することあり、其他抽象的觀念に對して物體を指意する等、尚多くの場合あれど、大樣叙上の意義を有すと知るべし。
- 英
- Material
- 独
- Material
- 仏
- Matière; Étoffe
實質法
(じつしつはふ)法學上法律を區別して、實質法(又は實體法)と手續法となす、實質法なるものは、法律關係の實質を定むるものにして、法律關係の實質は、人格相互の間に存する權利義務の關係に外ならず、故に實質法は權利義務の限界を規定する法律なりと云ふことを得べし、これに對する手續法なるものは、實質法を運用するの手續を定むるの法律なり、實質法によりて定まりたる權利は、これを實行することを得しめざるべがらず、實質法によりて定りたる義務は、これを履行することを怠らしむるべからず、また權利の實行を保障し、義務の履行を確保する爲めには、強制の必要を生ず手續法なるものは、權利義務の實行履行幷に之を保證確保する爲めに、實質法に關聯の關係を有するものなりとす、斯くの如く權質法なるものは、各人の犯すべからざる準則を示すものにして、共同生活の維持及び發達の爲めに必要なるものなり、然れども實質法が、其效用を全うするには、手續法の存するによるものにして、實質法に於て權利義務の實體を確定するも、それが運用に關する手續を定めざれば、其實質法なるものは空文たるを免れず、故に實質法の傍に、手續法の存することは當然なりとす、實體法手續法の例を示せば、納税の義務を定むる法律、兵役の義務を定むる法律は實質法にして、租税徵收の手續を定むる法律、徵兵の手續を定むる法律は手續法なりとす、刑法は、國家刑罰權の實質を定むるものにして、實質法なり、刑事訴訟法は刑罰權を行ふ手續を定むるものにして、刑法に對する手續法なり、民法商法等は私法的法律關係の實質に關するものにして、實質法なり、民事訴訟法、非訴事件手續法は、其運用に關するものにして、手續法なりとす、而して右の實質法、手續法の區別は、規定の實質を根據とするものにして、法令の形式を根據とするものにあらず、一の法典、又は特別法令は、必ずしも全部實質法、又は手續法なりと云ふを得ず、多くの場合に於て、同一の法典、又は特別法令中に、實質規程と手續規定とを包含するものとす、其區別は宜しく各法文につきて之を識別するを要するものとす。(主法の部參照)
- 英
- Substancial law
- 独
- Haupt-recht
- 仏
- Droit substanciel
失踪
(しつそう)人が從來の居所、又は住所を去つて、其生死の不明なるの狀態を失踪と云ひ、一定の期間生死不明にして、裁判所の宣言によりて、死亡者と見做されたるものを失踪者と云ふ、失踪、及び失踪者に關する法律規定は、次項の失踪宣告を見て知るべし。(民一編一章四節三二條)
- 英
- Disappearance
- 独
- Verschollen-heit
- 仏
- Disparition
失踪者
- 英
- Disappeared person
- 独
- Ver-schwundene
- 仏
- Personne disparne
失踪の宣告
(しつそうのせんこく)法定の期間生死不明なる不在者を、死亡者と見做す判決を失踪宣告と云ふ、故に不在者の生死が不明なるも、直にこれを失踪者と謂ふを得ず、死亡を推測する所の判決を受くるによりて、初めてこれを失踪者と稱するを得るなり、不在者にして生存の確實なるものあり、また生存の不分明なるものあり、生存の確實なるものに就きては、これが爲めに我民法は、財産管理の制度を設けて、其財産の散逸を保護せり、然れども生死の不分明なるものに就きては、失踪宣告の制度を設けたり、抑も人の生死が不明なることは、其人に牽連する一切の法律關係を不明ならしむるものなり、若し其不確定の狀態が永く繼續するときは、利害關係人を不利益の地位に陷れ、遂に國家經濟上の利益を害するに至るべし、故に何れの國の法制に於ても、不在者の生死不明なる狀態が永續するときは、特別の法則によりて法律關係を確定するの方法を設く、所謂失踪の制度は、不在者の生死不明なる場合に於て、不在者に牽連する法律關係を確定するの目的を以て設けられたるものなり、□一失踪宣告の手續、及び時期、裁判所は不在者に對して失踪の宣告を爲す、不在者は裁判所の宣告あるにあらざれば、失踪者と爲るべきものにあらず、換言すれば、單純に時が經過したりとて、其一事のみを以てこれを失踪者と爲すことを得ず、必ず裁判所の宣告なるものを要するなり、此失踪宣告を爲すべき裁判所は、不在者の住所地の區裁判所なり、宣告は判決を以てこれを爲し、而して判決前に公示催告を爲すことを要し、其公示催告には下の事項を記載せざるべからず、即ちイ不在者は、公示催告の期日迄に其生存の屆出でを爲すべく、其屆出でを爲さざるときは失踪の宣告を受くべきこと、ロ不在者の生死を知るものは、公示催告の期日迄に其屆出でを爲すべきこと、ハ公示催告の期間は六ケ月以上なること、但し不在者が百歳以上なるときは二ケ月を以て足る、而して裁判所は其職權を以て失踪宣告を爲すべきものにあらずして、法律關係につき利害を有する者の請求ある事を要す、例へば不在者の妻、相續人、債權者より請求を爲すべきが如し、次に失踪宣告には、不在者が一定の期間、生死不明なることを必要なる條件とするものにして、茲に不在者の生死不明と云ふは、一切の世人に對して不明なるを要するにあらず、請求者幷に裁判所に對して不明なれば足れり、請求者が之を明かにしながら、これを請求するを得ざるは勿論、裁判所も亦これを知りながら失踪宣告を爲すことを得る也、尚失踪の宣告には、前示したる公示催告の手續を履まざるからず、これ不在者の生死を確むる爲めに爲す手續にして、此手續を完了するも、尚ほこれを知ること能はざるときに於て、始めて失踪宣告を爲すことを得るなり、而して此宣告を爲すには、生死不明の狀態が一定の期間繼續をすることを必要とするものにして、一般の場合と特別の場合との區別あり、イ一般の場合に於ては前上の期間を七年とす、即ち不在者の生死が七年間不明なるとき、初めて失踪の宣告を爲すことを得るものなり、此期間は生存の確實なりし時より起算す、ロ特別の場合とは、戰地に臨みたる者、沈沒したる船舶中に在りたる者、其他地震、洪水、火災等死亡の原因たるべき危難に遭遇したる者にして、三年間生死分明ならざる場合とす、此期間は戰爭の止みたる後、船舶沈沒したる後、其他危難が去りたる時より起算するものとす、□二失踪宣告の效力、失踪宣告を受けたる者は、之を法律上死亡と見做し、相續人は其者が死亡したる時と同じく之を相續し、其他親族上財産上の關係は、總べて確定するなり、而して失踪宣告の效力發生の時期如何、即ち失踪宣告を受けたる者は、何時を以て死亡したる者と見做すやと云ふに、凡そ三種の答を爲す事を得べし、一は失踪宣告の時なり、二は不在者の最後の音信ありたる時なり、三は法定期間滿了の時なり、失踪宣告の時を以て不在者の死亡の時となせば、最も適當なるが如きも、失踪宣告なるものは前に述べたする如く、六ケ月以上の期間を以て、公示催告を爲したる後、之を爲すものなる以上は、裁判所の都合により、或は尚遲延することあるべく、且つ不在者の死亡の時が、利害關係人の左右する所となるの虞あり、何となれば、裁判所は進むで失踪宣告を爲し得るものにあらずして、常に利害關係人の申立を待ちて之れを爲すものなれば、利害關係人の申立の遲速によりて、失踪宣告の時期を遲延せしめ得ればなり、我民法は、諸種の弊害を防がんが爲めに、右に述べたる三の主義を採り、失踪宣告は法定期間の滿了、即ち一般の場合は七年、特別の場合は三年を經過したる時に遡りて、其死亡の推定の效力を生ずるものとせり、換言すれば、失踪宣告を受けたるものは、右の七年又は三年の期間滿了の時を以て、死亡したるものと見做せり、葢し斯くの如くなるに於ては、利害關係人これを左右することを得ず、又多くは事實にも背かざるべければなり、□三失踪宣告の取消、失踪宣告を受けたる者が、法定期間滿了の時死亡したりと見做すは、一の推定に過ぎざれども、此推定は所謂完全なる推定にして、單に反對の事實が證明せられたるによりて其效力を失ふものにあらず、されど反對の事實が明確なるに拘はらず、尚其效力を存續せしむべき理由なし、故に失踪者の生存せること、又は七年、三年の法定期間の滿了に先だち、若くは後れて死亡したることの證明あらば、本人又は利害關係人の請求によりて、裁判所は失踪宣告を取消すべきなり、蓋し死亡の推定たる失踪の宣告を爲すは裁判所なれば、死亡推定の效力を失はしむるも、亦裁判所の宣告を以てするは穩當なればなり、而して失踪宣告が裁判所の宣告によりて取消されたる以上は、失踪宣告に基き爲したる行爲は其基本を失ふを以て、純理より云へば、總べて其效力を失ふ筈也、例へば、失踪宣告を受けたるものの妻が、再婚を爲し又は失踪宣告によりて相續人が、相續したる後に至り、失踪宣告を受けたる者は、其實生存せることが證明せられ、失踪宣告が取消されたるものとせば、再婚も相續も其效力を失ひ、若し相續人が其間に他人に財産を贈與せば、其贈與も從つて其效力を失ふの理なれども、斯くの如く失踪宣告の效力を既往に遡らしめ、失踪宣告より其取消に至る迄の行爲を全然無效に歸せしむる時には、不在者の利害關係人を保護する爲めに設けたる失踪宣告の制度は、反つて不虞の損失を蒙むらしめ、極めて困難なる情況に陷らしむるに至り本旨を失ふが故に、失踪宣告取消は、斯くの如き效力を生ぜざることとし、我民法は下の如く規定したり、即ち失踪宣告の後、取消前に善意を以て爲したる行爲は、失踪宣告の取消の爲めに其效力を失はず、善意を以て爲したる行爲と云ふは、失踪宣告を受けたるものが其實生存し、又は法律の定めたる時期と異りたる時期に於て死亡せるを知らずして、失踪宣告に基きて爲したる行爲を云ふなり、又失踪宣告によりて財産を取得したる者が、宣告の取消によりて權利を失ふは、已むを得ずと雖も、得たる財産は、悉皆之を返還せざるべがらずとせば、宣告取消前に其財産を毀損し、又は滅失したる場合に於ては、財産を得たるものは不慮の損害を蒙むるべし、故に之等のものは、現に利益を受くる限度に於てのみ、其財産を返還する義務を負擔し、其他を返還する義務を負はざるものとせられたり。(民三〇、三一、三二條)
- 英
- Adjudication of disappear-ance
- 独
- Todeserklärung
- 仏
- Décision de la disparition
實體
(じつたい)法律上事物の實質を稱して實體と云ふ、所謂實質とは、或る事柄の形式に對し、その内容を指示するものにして、故に實體とは、その形式は主權者の命令なる法規も、其實體に於ては、共同生存の規則なりと云ふが如し。(實質法の部參照)
- 英
- Substance
- 独
- Substanz
- 仏
- Subtsance
實體的俱發
(じつたいてきぐはつ)刑法上の數罪俱發にして、彼の想像上の數罪俱發(其部參照)に對して、有形の俱發を實體的數罪俱發と云ふ、即ち同一の犯人につきて確定判決を受けざる二個の罪の發覺したるものを云ふ。
- 英
- Substancial co-occurrence
- 独
- Realkonkurrenz
- 仏
- Co-occurence substanciel
實體法
(じつたいはふ)各人格間の權利義務の實質を定めたるものを實體法と云ふ、又之を實質法とも稱す。(實質法の部參照)
- 英
- Substancial law
- 独
- Hauptrecht
- 仏
- Droit substanciel
執達吏
(しつたつり)執達吏は、書類の送達、及び強制執行の實行を掌る官吏なり、而して執達吏となる資格は、裁判所構成法、及び執達吏規則(次項參照)の規定に於て定めらる、今執達吏に關する民訴法上の一般の規定を説明せんに、□一執達吏の權限、執達吏の職務實行に關する土地の區域は、執達吏の屬する區裁判所を管轄する地方裁判所の管轄區域内に限る、而して執達吏の事物の管轄に就きては、書類の送達、強制執行を實行する權限を有し、殊に民事訴訟法上に別段の定めなきときに限り、凡べての執行を實施するものとす、□二執達吏の執行行爲を實施するは、執行裁判所の命令若くは債權者の委任に基くものとす、債權者が執達吏に執行を委任する方式は、執行力ある正本を執達吏に交附して之を爲す、此委任は執達吏に對して直接に之を爲し、若くは裁判所書記を介して之を爲す事を得べし、執達吏が委託を受けたるときは、其職務範圍に屬する限りは、其執行を實施するの、權を有す、而して其委託を受けたる執行行爲にして、土地及び事物の管轄の範圍内なるときは、正當の理由なくして之を拒絶することを得ず、而して適式の委任、即ち執行正本の交附により、執行の請求を受けたる場合には、債務者、及び第三者に對して強制執行を實施するの權を有し、且つ特別の委任を受けざるときと雖も、支拂其他の給付を受取るの權限を有するものとす、□三執達吏の執行實施に關する職權、イ執達吏の權利、執達吏は、前述せる如く官吏なるを以て、他の官吏と同じく、他人をしてその職務を取扱はしむることを得ず、然れども我現行法の下にありては、執達吏自身をして常に凡ての執行行爲を行ふを得ざるを以て、執達吏の責任を以て、臨時其職務を實行する代理者を任設することを許す、但し裁判所の命令、若くは當事者より特別の委任を受けたるときは、代理者を用ふるを得ず、且つ代理者を使用し得べき場合と雖も、その代人は法律に定めたる資格を具へたるものならざるべからず、又執達吏は強制執行を實施するに際し、債務者に對して強力使用權、及び財産捜索權を有す、強力使用權は、即ち強制執行の實施に際し、抵抗を受くる場合に於ては、威力を行ひ、或は警察上の援助を受け、若くは兵力を要するときは、執行裁判所に申立てて、兵力を籍ることを得べし、財産捜索權は、即ち執行の爲め必要なるときは、債務者の住居、倉庫、筐匣を捜索し、また閉鎖したる戸扉、及び筐匣を披かしむる權利を有するもの也、ロ證人の立會、執達吏が執行に際し、抵抗を受くるとき、又は債務者の住居に於て執行行爲を爲すに際し、債務者、又は成長せる家族雇人に出會せざるときは、成年者二人、若くは市町村、又は警察の吏員の立會を求むるを得、ハ執行許可、執達吏は夜間、日曜日、及び一般の祝祭日には、執行裁判所の許可ありたる場合に限りて執行を爲すを得、二記錄の閲覽、及び書類の付與、強制執行につき利害の關係を有するものが、執達吏に對し執行記錄の閲覽を求め、又は記錄中に存する書類の謄本の付與を求めたるときは、之を許さざるべからず、是執行行爲の狀態を保存する爲めに、執達吏の作成したる記錄を、利害關係人が必要とする場合あるを以てなり、ホ執行正本、若くは受取證書の交付、執達吏が執行を爲し、債務者がその債務を辨濟したるときは、債權者より交附せられたる執行正本、及び辨濟の證として受取證を交附し、又債務者が一部辨濟を爲したるときは、執行正本に其辨濟を爲したることを記載し、且つ受領證を交附せざるべからず、へ調書の作成、執達吏が執行行爲を爲したるときは、其調書を作成せざるべからず、調書には調書作成の場所、年月日、執行に參與したる人の表示、其執行に參與したるものの署名捺印、調書を之等の者に讀み聞かせ、又は閲覽せしめたること、其承諾を爲したることの表示、執達吏の署名捺印、若くは執行行爲の目的物、及び執行行爲に關し目擊したる重要なる事項を記載することを要す、之等の事項を調書に記載するは、執行行爲の狀況を明確にし、後日債權者、債務者其他の利害關係人が、執行の當否につき、爭ある場合の證據を保存するの目的に出でたるものとす、ト催告、及び通知、執達吏が執行行爲を爲すに際し、債務者其他の利害關係人に對し、催告若くは通知を必要とすることあり、催告とは、執行關係人に對し、或る事項を知らしめ、以て或爲行を要求することを云ひ、通知とは、執行關係人に對し、或る事項を知らしむることを云ふ、催告、又び通知は、執達吏口頭を以てこれを爲し、且つ調書にこれを記載すべく、若し口頭を以て爲し能はざるときは、送達に關する規定を準用して、調書の謄本を利害關係人に送達し、若し送達證書を作成せざるときは、調書に送達を爲したることを記載すべきものとす、□四執行に關する執達吏の責任、執達吏は官吏なるを以て、其職務上の義務につきては、一般官吏と同じく責任を負ふべきものとす、其他執達吏は、職務上の義務の違背よりして、債權者其他強制執行の關係人に損害を與へ、又債權者の委任に依るべき執行行爲を實行せず、域は完全に實行せざるに依つて、損害を生ぜしめたるときは、其賠償の責に任ずべきものとす、以上は主として民訴上に關して、執達吏に關係ある規定を説明したり、此他は次項に於て説明せん。(民訴五三一、六〇三、六〇六、七二〇、七三一、七四八、七五六、五三三、五三四、五七一、五三四、五三七、五四二、五三二條等)
- 英
- Sheriff
- 独
- Gerichtsvollzieher
- 仏
- Shérif
執達吏規則
(しつたつりきそく)明治二三年七月法律第五一號を以て公布せられたる所にして、執達吏に關する職務權限を規定したるものなり、同法の示す所によれば、執達吏は區裁判所に屬するものにして、法律の認むる所に從ひ、訴訟に關する書類を送達し、裁判の執行を掌るものにして、又當事者の委任によりて、告知又は催告、動産、不動産の任意競賣、拒絶證書の作成事務を取扱ひ、又法律規則に定めたる職務の外、裁判所及び檢事局の命令によりて、書類物品の送附を爲すこと、罰金科料を徵收し、沒收物品を取上げ、若くは賣却し、令狀の執行を爲すの義務あるものとす、執達吏は所屬區裁判所の一人の判事、若くは監督判事の監督を受くるものにして、他の判事又は檢事にして、職務上事務を命じたるときは、其事務に限りては監督權を有するものとす、執達吏は所屬區裁判所所在地に役場を設けざるべからず、一區裁判所に數名の執達吏あるときは、裁判所及檢事局の命令による事務と、裁判所書記を經て委任すべき事務とを、各執達吏に分配するものなり、此分配は成るべく土地の區域に依るものにして、每司法年度の終に於て、區裁判所の監督判事之を定むるものとす、而して執達吏が次の事項の一に該當するときは、職務の執行より除斥せらるるものとす、即ち□一自己又は其婦が、當事者若くは被害者たるとき、又は當事者の一方若くは双方、又は被害者と共同權利者若くは償還義務者たるとき、□二自己又は其婦が當事者の一方若くは双方、又は被害者、又は其配偶者と親族なるとき、但し姻族につきては、姻族の解消したる後も同樣とす、□三自己が一方の事件につき、證人若くは鑑定人となりて訊問を受くるとき、又は法律上代理人と爲るの權利を有し又は有したるとき、以上の事項あるときは、除斥せらるるものにして、其職務に關係することを得ざるものとす、執達吏は特別の命令、又は委任を受くるときは、正當の理由なくして之を拒絶するを得ず、又代理人を使用するときは、其代理人が下に揭ぐる資格を有するものならざるべからず、□一執達吏の登用試驗に及第したる者、□二執達吏の職務修習者にして、三ケ月以上其修習を爲したる者、□三裁判所書記の登用試驗に及第したる者、□四裁判所の一人の判事若くは監督判事に於て、臨時執達吏の職務を行ふに適當と認めたる者ならざるべからず、然れども、特別の命令、又は特別の委任ありたるときは、此代人を使用するを得ざるの義務あるものとす、正當の理由ありて、執達吏が其職務を行ふを得ざるときは、命令を爲したる、裁判所、又は檢事局、若くは委任を爲したる本人に、速にその旨を通知せざるべからず、若し委任を爲したる本人に、右の通知を爲すこと能はざるとき、又は急速の所分を爲すを要するときは、其旨を一人の判事、若くは監督判事に申立てざるべからず、右の場合に於て、及び其他執達吏が差支あるときは、區裁判所の一人の判事又は監督判事の申立により、其職權を以て、前示したる執達吏の代人たることを得る資格を有するものをして、執達吏の職務を行はしむるものとす、次ぎに執達吏は、一定の制服を著用し、又臨時に職務執行の委任を受けたるものは、鑑札を携帶せざるべからず、執達吏は其職務に關して、一定の手數料、及び立替金の辨濟を請求するの權利あるものにして、一年間に收入せし手數料が、若し百八十圓に充たざるときは、國庫より其不足額を支給さるるものとす。
- 英
- Regulation for process-server
- 独
- Regel des Gerichtsvollziehers
- 仏
- Règles du shérif
執達吏手數料規則
(しつたりてすうれうきそく)明治二三年法律第五二號を以て公布せられたる所にして、執達吏が職務の執行に關して、受くべき手數料に關する規定を爲したるものなり、同法の示めす所によれば、執達吏は此規則によるにあらざれば、手數料を受くることを得ざるものにして、其手數料額は、書類の送達は一通每に五錢にして、有體動産、及び土地より離れざる果實、幷に爲替證券其他裏書を以て移轉することを得る證書の差押、假差押につきては左の區別に從ふものとす、
執行すべき債權額手數料
金額貳拾圓迄參拾錢
同五拾圓迄五拾錢
同百圓迄七拾五錢
同貳百五拾圓迄壹圓
同五百圓迄壹圓廿五錢
同千圓迄壹圓五拾錢
同千圓以上貳圓
されど右の外、若し執務時間が三時間以上に渉るときは、右の手數料の十分の三を加ふべきもの也、又執達吏が差押、假差押を爲すべき場所に臨みたる場合に、差押ふべきもの無きとき、又は差押ふべき物を換價するも、強制執行の費用を償ひて剩餘を得るの見込なきときは、右の手數料の半額を受くべきもの也、又特定の動産又は代替物の一定の數量を債務者より取り上げ、之を債權者に引渡す場合に於ては、其手數料を五十錢とす、但し執務一時間以上に渉るときは、一時間每に十五錢を加へ右の場合に差押ふべきものなきときは其半額とす、動産、不動産、船舶の競賣に就ての手數料は、左の區別に從ふものとす、
執行すべき金額手數料
金額貳拾圓迄六拾錢
同五拾圓迄壹圓
同百圓迄壹圓五拾錢
同貳百五拾圓迄貳圓
同五百圓迄貳圓五拾錢
同千圓迄四圓
以上千圓每に一圓を加ふ
執達吏の立替金に就きては、左の費用の辨濟を受くるものとす、□一書記料、□二郵便電信料、□三公告料、□四證人鑑定人の手當、□五職工役夫の手當、□六有價證券の記名書換、及び流通を止めたる證券の流通を回復する爲めの費用、□七人及び物の送致費用、□八物の保存幷に監視の費用、□九果實收穫の費用、□十旅費、(旅費は自己の役場より一里以上の地に至り、職務を行ふときは、一里每に十錢以下とす)右の立替金、及び手數料は、委任の終了したる時に於て、辨濟を受くるものとす、又執達吏は、總べての事務を擔任するに當りては、手數料、及び立替金を豫納せしむることを得るものにして、若し委任者が之を豫納せざるときは、其委任に應ぜざる事を得るもの也、但し裁判所及檢事局の命令による時、又は訴訟上の救助を受けたる者の爲めに、事務を擔任するときは此限りにあらず、裁判所、及び檢事局の命令によりて、其職務を行ふ爲めに要したる立替金は、三ケ月每に確定して、國庫より支給せらる、又訴訟法上の救助を許與したる場合に於ては、執達吏の立替金は、國庫より支辨せらるるものとす、執達吏は、すべて其職務執行につきて作りたる書類の正本、又は謄本に、立替金、及び手數料の額を附記すべきもの也。
- 英
- Rule of fee of sheriff
- 独
- Gebührsregel des Gerichtsvollziehers
- 仏
- Règles de l'honoraire du shérif
執達吏登用規則
(しつたつりとうようきそく)執達吏登用に關する細則を定めたる省令にして、即ち執達吏に任せらるる者には、次の諸件を具備せざるべからず、□一年齡滿二十五歳以上なること、□二陸海軍の現役を終へ、又は免ぜられたること、□三身體健全なること、□四家計の整理したること、□五品行方正なること、□六試驗に及第したることの六資格を有するものならざるべからず、而して重罪、又は定役に服する輕罪を犯し、若くは身代限りの處分を受け、又は懲戒處分によりて免官せられたる者は、如何なる場合と雖も、執達吏たることを得ざるなり、又次に揭ぐる者は、試驗を要せずして執達吏に任ぜらるることを得る者とす、□一官立、府縣立中學校、又はこれと同等なる官立、縣立學校、司法省舊法學校、又は帝國大學の監督を受けたる舊私立法學校、及び文部大臣の認可を受けたる學則により、法律學を教授する私立學校の卒業證書を有する者、□二裁判所書記登用試驗に及第したる者、□三判任官以上の職を現に奉じ、又は曾て奉じたることある者、□四陸軍下士にして、文官奉職を請願するを得る者これなり、右以外の者にして、執達吏の職を得んとするものは、少くとも六ケ月間區裁判所に於て、主として執達吏の職務を修習したるものたることを要し、而して登用試驗は、其出願者に對して、每年一回地方裁判所に於て行はるるものとす、試驗は筆記口述の二種とし、其科目は、第一民事訴訟法、刑事訴訟法の書類送達、及び執行に關する規程、第二執達吏に關する諸規則、第三算術(加減乘除分數比例)、第四讀書筆寫とす、試驗及第者、及び前記試驗を要せざる者にして、職務修習を了りたるものに對し、幷に裁判所書記より轉任するものの任補は、執達吏の缺員あるを待ちて控訴院長之を攝行するものなり、執達吏に任ぜられたるものは、任補の日より三十日以内に、保證金を地方裁判所に納めざるべからず、保證金は五百圓以下にして、控訴院長は土地の狀況によりて定むるものとす、保證金は現金のみに限らず、相當價格ある公債證書、又は銀行債券、又は日本銀行券を以て之に代ふるを得。(三二年八月司法省令二號)
- 英
- Adoption rule of sheriff
- 独
- Aufnahmsregel des Gerichtsvoll-ziehers
- 仏
- Règles de l'adoption du shérif
實定契約
(じつていけいやく)實定契約は、有償契約の一種にして、契約締結の始めに於て、其契約上より生ずる損益を確定的に評量し得る契約を云ふ、例へば、賣買契約、交換契約の如きこれなり、此實定契約に正反對なるものは、所謂射倖契約にして、射倖契約とは、當事者の受くべき契約上より生ずる損益の分量が、契約締結の當時に於ては、未確定にして、後日發生すべき事實の發現に依りて、損益の定まる契約を云ふ、例へば終身定期金契約、保險契約の如きこれなり、右二者の區別は、契約の當時に於て、損益の運命が確定せるや否やを根據として、區別せざるべからず、而して契約事項夫れ自身に於て、運命を確定するや否やを識別するを要し、他の事件によるが如きは、此區別を爲すの根據となるものにあらざるなり。(射倖契約の部參照)
實用新案
(じつようしんあん)實用新案は、明治三八年二月發布せちれたる實用新案法の支配する所にして、工業上の物品に關し、其形狀、構造、又は組合せに係り、實用ある新規の考案を爲したる者、又はこれを承繼したる者は、本法に依り、實用新案の登錄を受くることを得るものとす、而して其考案の新規なるには、左の條項に該當せざることを要す、□一登錄出願前、同一又は類似の物品に關し、帝國内に於て公けに用ひられたる者、又はこれに類似する者、□二登錄出願前、同一又は類似の物品に關し、容易に應用することを得べき程度に於て、公刊物に記載せられたるもの又は之に類似するものたらざることを要し、□三更にその考案にして、菊花御紋章又は之に類似するもの、□四秩序又は風俗を紊り、衞生を害するの虞あるものは、登錄を受くることを得ざるものとす、今同法の認むる所によりて、その大要を説明せんに(甲)實用新案權、實用新案權は、其登錄によりて發生するものして、其登錄を受けたる權利者は、其物品を製作、販賣、擴布、又は使用するの權利を專有するものとし、此存續期間は之を三ケ年とす、此期間は向ふ三ケ年延長することを得る者なり、實用新案權は、純然たる私權の一種に屬すべきものなるが故に、私法上の手續によりて之を移轉、質入れすることを得るものとす、然れども其移轉、及び質入れは、之を特許局長に請求して、登錄を受くるあらざにれば、第三者に對抗することを得ざるなり、(乙)出願、審査、及び登錄、實用新案の登錄を受けんとするものは、一實用新案に就き、一物品每に願書に圖面を添へ、特許局長に差出すべきものにして、特許局長は、必要と認むるときは、出願人に解説書、圖面、見本、又は雛形の提出を命ずることあるべし、同一又は類似の實用新案に就きては、最先に出願を爲したるものにあらざれば、登錄を受くるの權利を有せず、但し同日の出願に該るときは、各出願者協議して其權利者を定むべく、若し其協議整はざるときは、雙方共登錄を受くるを得ざるものとす、登錄の出願ありたるときは、特許局長は審査官をして之を審査せしめ、審査官に於て審査を爲したるときは、特許局長は其査定書を出願人に送附すべく、若し登錄拒絶を受けたる場合に於て、之に不服なるときは、其査定の送附を受けたるときより三十日内に、再審査の請求を爲すことを得、右の請求ありたるときは、特許局長は前審査に關與せざる審査官をして、審査せしむるものとす、登錄すべしとの査定を受けたるものは、其送附を受けたる日より三十日以内に、登錄を請求せざるべからず、此請求ありたるときは、特許局長は其實用新案を登錄し、登錄證を下附すべきなり、右の登錄を請求するものは、一實用新案につき、一物品每に登錄料十五圓を納むべく、其繼續期間の延長を請求する場合は、一物品每に金三十圓を納むべきものとす、特許局は實用新案公報を發行し、實用新案に就き重要なる事項を揭載す、(丙)審判、及び出訴、實用新案が本法の規定に違ふものなることを發見したる者は、特許局に無效の審判を請求することを得、又登錄實用新案が互に撞著するや否や、又は登錄を受けざる物品と撞著するや否やに就き、利害關係を有する者は、特許局に撞著の審判を請求することを得、審判の請求は、審判請求書を差出してこれを爲すべく、其請求書には一定の申立、及び理由を記載することを要するなり、右請求ありたるときは、其副本を被請求者に送附して相當の期間を指定し、答辯書を差出さしむ、審判は審判官三人、または五人の合議によりてこれを行ふ、審決ありたるときは、特許局長はこれを當事者に送附すべし、(丁)罰則、實用新案の登錄を受けたる物品を僞造、摸造し、又は僞造品、模造品を販賣、擴布、若くは使用したる者は、十五日以上一ケ年以下の重禁錮、又は十圓以上二百圓以下の罰金に處せらる、外國より類似の物品を輸入したる者又同じ、此犯罪は被害者の告訴を待つて其罪を論ずるものとす、詐僞の所爲を以て實用新案の登錄を受けたる者、又は登錄を受けざる物品、又は其包裝上に、實用新案登錄標記を附し、若くは之に紛はしき表示を爲したる者、及び其情を知りて其物品を販賣したる者は、十五日以上六ケ月以下の重禁錮、又は十圓以上百圓以下の罰金に處せらる、實用新案の登錄を受けざる物品を販賣、又は權布する爲め、廣告の看板、引札等に於て、實用新案登錄品たるに紛はしき表示を爲したる者も、前同樣の處分を受く。(實用新案法參照)
- 英
- Industrial new design
- 独
- industrielle neue Absicht
- 仏
- Dessin nouveau industriel
實利
(じつり)社會の生々發達てふ吾人人類の大なる目的の實現を助長する所の手段によりて、吾人に供給せらるる利便の謂なり、されば廣義に解釋すれば、文學美術宗教等の如き精神的文物も、亦實利を與ふる手段なりと云ふを得べし、然ども從來習慣に依れば、實利を以て單に政治、實業、若くは衞生の如き一層具體的手段によりて、吾人に供給せらるる所の利便なりとする方、適當なるが如し。實利主義とは、總べて實利を以て自己又は社會の終局目的となす見解にして、上述の如く實利とは、狹義にては吾人の經濟的欲望の滿足を意味するを以て、此點より實利主義なる語は、經濟主義てふ名稱を以て代用するも敢て妨げなきなり。
- 英
- Utility
- 独
- Nützlichkeit
- 仏
- Utilité
指定家督相續人
(していかとくぞうぞくにん)指定家督相續人とは、被相續人に推定家督相續人なき場合に、其家督相續人に選定したるものを云ふ、法定の推定家督相續人ある場合には、此者が當然家督相續を爲すべきが故に、被相續人は、相續人を指定するの要なく、又之を指定するも其效なし、而して法定の推定家督相續人なき原因は、敢て之を問はず、故に初めよりなき場合のみならず、一旦これ有りたるも、死亡、缺格、廢除、離籍、本家相續等によりて、其相續權消滅したる場合にも、被相續人は家督相續人を指定することを得るものとす、此指定せられたる家督相續人たるべきものは、親族なるを要せず、他人にても被相續人の意思によりこれを指定する事を得、法律は此點に關して何等の制限を附せざるは、親族と雖も必ずしも家を維持するに適當なりと謂ふを得ず、他人と雖も能くその家風に適するものあるべければ、被相續人に其選任を一任するに如かずとなしたるなり、右の指定家督相續人は、何時にても被相續人に於て取消すことを得、指定家督相續人たるべき者が、其指定を承諾したる後と雖も、猶これを取消すことを得るなり、蓋し指定家督相續人は、法定の推定家督相續人とは異にして、被相續人に於て任意に選定したるものなれば、被相續人に於て、その者をして相續人たらしむることを欲せざるに至るときは、又任意にこれが取消しを爲さしむることを得しむるを穩當とするが故なり、指定家督相續人の指定、及び取消は、死亡又は隱居による家督相續の場合にのみ之を許すものにして、他の原因によりて相續を開始すべき場合には、被相續人に此權利は認められず、右以外の家督相續開始の場合と云へば、第一に國籍喪失による相續開始の場合にして、斯くの如き者は固より日本の家を重んじ、適當なる家督相續人を選定する事なかるべく、第二の場合は、女戸主が入夫婚姻によりて戸主權を喪失する場合にして、此場合には、其相續開始は素と相續の規定による故に、女戸主に相續人の指定、及び取消を認むるの必要なし、其他戸主が婚姻、又は養子緣組の取消によりて其家を去りたる場合、又は入夫が離婚の場合の如きは、固より其者をして家督相續人を指定し、又は取消さしむるに適せざればなり、故に我民法は死亡、及び隱居の場合に限り、家督相續人の指定、及び取消權を認めたるものなりとす、而して指定家督相續人の指定、若くは取消の方法は、被相續人が其生前に於てこれを爲すことを得るものなるのみならず、遺言を以てもこれを爲すことを得、家督相續人の指定、及び取消は、家族の關係に重大なる影響を生じ、利害關係人の權利義務に消長を來たさしむること少からざるが故に、戸籍吏に屆出づるにあらざれば、その效力を生ぜずとしたり、然も遺言は、被相續人の死亡によりて、其效力を生ずるものなれば、遺言を以て爲したる場合には、被相續人に於て自ら其家督相續人の指定、又は取消を屆出づることを得ず、從つて此場合には、遺言執行者に於て、其遺言が效力を生じたる後、遺言が無條件なるときは、被相續人の死亡したる後、又停止條件附なるときは、其條件成就したる時に、遲滯なく之を戸籍吏に屆出づることを要す、此場合に於て、其效力は、被相續人の死亡の時に遡りて生ずるものとす。(民九七九條乃至九八一條)
- 英
- Named heir to a house
- 独
- benannter Erbe
- 仏
- Héritier désigné
指定後見人
(していこうけんにん)指定後見人とは、未成年者に對して最後に親權を行ふ者が遺言を以て指定したる後見人を云ふ、□一指定權を有する者、原則として最後に親權を行ふものなり、最後に親權を行ふ者に、後見人指定の權利を與へたるは、後見は親權の延長に外ならざるを以て、最後に親權を行へる者は、自己の死亡の後、親權に代るべき職務を行ふ者を指定する權利を有するは當然なるによる、茲に最後に親權を行ふものと云ふは、父母の一方が死亡し、又は其家を去りたる後、其殘存せる一方が親權を行へる場合を云ふ、父母共に生存し、且つ其家に在るときは、父が親權を行ふを原則とす、此場合に於ては、父死亡するときは、母之に代りて親權を行ふべきを以て、豫め後見人を指定する必要なし、母の死亡したる後にまで豫め後見人となるべきものを指定置しくが如きは、母の死亡は幾年の後に在るべきかを知るべからず、隨つて其間に指定せられたる後見人の身上に如何なる變動を生ずべきを計るべからずして、弊害少なからざるべきを以て、我民法は之を許さず、父母共に生存し、且つ共に其家に在るときは、其一方が無能力其他の事由により現に親權を行ふ能力を有せざる場合に於ても、親權を行へる他の一方は、指定を爲す權利を有せざるものとす、從つて父又は母が未成年なるにより、之に代りて親權を行ふ者(未成年者の父又は母又は後見人)は、何れの場合に於ても、後見人を指定する權利を有せざるものとす、つぎに、最後に親權を行ふ者に限り、後見人指定の權利を有し、又最後に親權を行ふ者は、何人と雖も、指定の權利を有するの原則に對しては二の例外あり、其一は最後に親權を行ふ者と雖も、管理權を有せざるときは、後見人を指定することを得ざることこれなり、親權を行ふと雖も、其一部を行ふに過ぎざることあり、其實例は、親權を行ふ母が、財産の管理を辭したるとき、及び親權を行ふ父、又は母が、管理の失當により親權の喪失を宣告せられたる時之なり、抑も後見の事務は、親權と同じく、身上、及び財産の保護の二を含む、自ら財産管理を爲す事を得ざるものは、又何人が財産を管理するに適當なるやを指定するに充分の能力あるものと見做すを得ず、加之後見人を指定する權利あるは、親權の全部を行ふものなるを要し、其一部のみを行ふものは、完全に親權を行ふ者にあらず、從つて後見人を指定し能はざるは當然とす、又例外の其二は、親權を行ふ父の生前に於て、母が豫め財産の管理な辭したるときは、其父は母あらざる場合と同じく、後見人を指定する事を得るものとす、蓋し此場合に於ては、母は財産管理に關して既に死したるに等しく、即ち財産管理に關しては、父は最後に親權を行ふものと見做して不可なければなり、□二指定の方式及其效力、後見人の指定は、必ず遺言を以て爲す事を要す、之を遺言に限りたるは、元來後見人の指定は、自己の死亡の後の爲めにするにあらざれば爲すことを得ざれば也、又遺言指定は、遺言者が遺言の當時に於て、指定の權利を有するものなることを要す、故に遺言を爲す當時に於て、其資格を有せざるものなるときは、其遺言は全く無效なり、且つ死亡の當時に於て、指定の權利を有するものならざるべからず、故に例へば、遺言を以て指定を爲したる後に、後妻を迎へ、遺言者の死亡當時に於て、其後妻が現に親權を行ふ能力あるとき、又は遺言者死亡前に財産管理權を喪失し、其死亡の當時にこれを行ひ居らざりし時は、其遺言は效力を生ぜず、然れども遺言の當時より、其死亡に至る迄、間斷なく指定の權利を有するものなることを要せず、例へば遺言指定を爲した後に後妻を迎へたる場合に於ても、後妻が遺言者の死亡前に其家を去り、又は死亡し、又は管理權を辭したる場合等に於ては、其遺言は效力を生ずるものとす、而して右の遺言の效力は、遺言者の死亡の時より其效力を發生し、其指定せられたるものは、後見人として其職務を行ふべきものとす、又此指定後見人は、遺言者に於て、指定と同樣の方式を以て取消す事を得べきものとす。(民九〇一條)
- 英
- Designated guardian
- 独
- bestimmter Vormund
- 仏
- Tuteur désigné
支配人
(しはいにん)支配人とは、商業主人に代りて、支配人たる名稱を以て、營業に關する一切の行爲を爲す權限を有する商業使用人を云ふ、即ち支配人は、商人にあらざれば選任することを得ざるものにして、選任せられたるときは、支配人なる名稱にて、商人の本店若くは支店に於て、商業主人に代り營業上一切の行爲を爲すことを得るものとす、□一支配人の選任、支配人は商業主人が、本店又は支店に於て、商業を營ましむる爲めに選任するものにして、其選任につきては、商業主人は支配人たることを明示して爲さざるべからず、支配人に屬する權限を附與することあるも、明かに支配人たることを表示して選任するにあらざれば、支配人と稱する事を得ざるものとす、舊商法に於ては、支配人たる事を明示して選任することを要すとの明文存したれども、現行商法に於ては、其選任に關して支配人たる明示を必要とする明文なし、然れども商法全體幷に施行法より推究するに、支配人として明示して選任したる場合にあらざれば、其效力なきものと解釋するを正當とす、一個人たる商人が支配人を選任するには、支配人との契約を以て爲すを得べしと雖も、會社にありては社員の過半數、取締役の過半數可決を以て選任する事を要す、之支配人の權限は重大なるを以て、之を丁寧にしたる理由とす、支配人を選任したる時は、本店又は支店の所在地に於て、營業主人より之を登記するを要するものとす、主人と支配人との法律關係は雇傭關係なり、或は單純なる雇傭關係にあらずして、支配人が代理權を有するよりして、雇傭契約と委任契約との二者の混合なりと云ふ者あれども非なり、唯雇傭契約は、代理權を發生せざれども、支配人の選任は其效果として、支配人に業務の執行を爲すに必要なる代理權を發生せしむるもの也、故に主人と支配人との間には、民法の雇傭に關する規定が適用せらると解すべきのみ、□二支配人の權限、支配人の權限は、商業主人の商號を用ひ、其營業に關する一切の裁判上又は裁判外の行爲を爲す權限を有す、支配人の選任につきては、其代理權の範圍は主人と支配人との間にありては、其契約によりて定むるを得べしと雖も、第三者に對しては其制限を對抗することを得ざるものとす、故に支配人は商業主人の如何に重大なる債務と雖も、自己の意思を以て主人に代りて負擔することを得、而して支配人は、主人の營業を補助する機關なれば、主人の營業に就き必要にして、且つ有益なる行爲に就きては、常に代理權を有するものなり、支配人は主人の營業に關して一切の代表權ありと雖も、支配人を選任することは、現存せし商人の營業を爲す目的を以て選任するものなれば、支配人は營業主人の商號を讓渡し、若くは之を變更廢止し、或は營業を讓渡することは、共に之を爲すを得ず、又營業に關せざる行爲に就きては、何等の代理權なきものとす、支配人は、商業に關する一切の代理權を有するものなるを以て、商業主人の承諾を得るの必要なく、又已むことを得ざる事由なきときと雖も、番頭、手代、其他の商業使用人を選任することを得べし、或は之を解任することを得べし、斯くの如き權限を與へたるは、實際上の便宜に基き、且つ商業主人が支配人を選任したる意思に適するものと法律が見做したるに依るなり、右の如く支配人は、商業に關し一切の權限を有し、裁判外の行爲は勿論、必要なる場合には、主人に代りて訴訟を爲し、和解、仲裁契約等を爲すことを得べし、又刑事の告訴を爲すの權もあり、之等の法律上の權限は、前述したるが如く商業主人は制限することを得れども、其制限は之を以て善意の第三者に對抗することを得ざるもの也、次ぎに商業主人が數人の支配人を選任し、共同して代理すべき旨を定めたるときと雖も、我商法の下に於ては、各支配人は獨立して善意の第三者に對しては、商業主人を代表するの權限あるものとなさざるべからず、舊商法に於ては、數人が其同時に委任を受けたる代務は、總員共同にあらざれば、之を行ふ事を得ずと規定したれども、現行商法は斯の如き明文なきを以て、各支配人は獨立して營業に關する行爲を爲すことを得るものと解すべし、次に支配人は法定代理人にあらず、元來法定代理人と委任代理人との區別は議論ありと雖も、支配人の權限は、當事者間の契約によりて發生するものなれば、法定代理と云ふ事を得ざるものとす、□三支配人の義務、支配人と商業主人との法律關係は、雇傭關係なるを以て、民法の雇傭に關する規定が適用せらる、且つ支配人は代理人なるを以て、民法の代理の規定も亦適用せらるるものとす、其他支配人は、商業主人の營業の秘密を知り、而して一切の代理權を有するものなれば、或は支配人が白己又は第三者の爲めに商行爲を爲し、或は會社の無限責任社員と爲り、重大なる責任を負ふときは、結局營業主人の利益と衝突を來たし、主人に損害を與ふることなしとせず、故に支配人は、自己又は第三者の爲めに、商行爲を爲し、又は會社の無限責任社員と爲ることを得ざるものとす、然れども此規定は、商業主人の利益を保護するを目的とするものなれば、主人の承諾を經たるときは、妨げなきものとす、若し支配人が主人の許諾を得ずして、自己又は第三者の爲めに商行爲を爲し、或は會社の無限責任社員となりたるときは、商業主人は支配人を解任し、又は損害賠償の要求を爲すことを得るは勿論なりと雖も、尚主人は此場合に特種の權利を有す、即ち主人は支配人の爲したる行爲を以て、自己の爲めに爲したるものと見做し、これより生ずる利益を受くることを得、此權利を行使する場合には、支配人の爲したる行爲が未だ終了せざる場合に於ては、これより生じたる結果を主人に移轉せしむることを得べく、又其行爲が已に終了したる場合に於ては、支配人が之より得たる利益を、主人は自己に移轉せしむることを得るものとす、然れども此權利は、支配人に對して有する商業主人の權利にして、支配人と取引を爲したる相手方に對するものにあらず、故に商業主人は、支配人と取引を爲したる相手方に對して、物の引渡其他の請求を爲すことを得ず、相手方も亦支配人に對し、債務の履行を爲すべきものにして、主人に對してこれが履行を爲し、其責を免るる事を得ざる也、主人の此權利は、支配人の義務違反の事實を知りたるときより、二週間内に之を行はざるときは消滅し、又は行爲の時より、一年間を經過するときは消滅するものとす、□四支配人の終任、支配人は、任期の定めある時は、其終了により、又は雇儒契約を解除するによりて解任せらる、會社によりては、其解任は選任と同一の方法による、其他主人又は支配人の破産、支配人の死亡又は禁治産の宣告によりて終了す、支配人の任務が終了するときは、其代理權も亦消滅す、而して代理權の消滅は、之を本店又は支店の所在地に於て、登記することを要するもの也。(商二九、三〇、三二、三一條、民六五三、一二七、一三五、六五一、六二〇、六五二、一一一條、非訟手續二七二、一七四、一四九條參照)
- 英
- Manager
- 独
- Procurist
- 仏
- Directeur
支配人登記簿
(しはいにんとうきぼ)支配人の選任を爲したるものは、其本店又は支店の所在地に於て登記せざるべからず、其代理權の消滅したる場合も亦同じ、右の登錄を爲す爲めに、各登記所に備附けたる商業登記簿中の一種にして、支配人に關する登記を爲す帳簿を支配人登記簿と云ふ。(非訟手續一四〇條五號)
- 英
- Register of manager
- 独
- Register des Procuristen
- 仏
- Registre du directeur
死亡保險
(しばうほけん)死亡保險は、生命保險の一種にして、保險者が死亡に關して、一定の保險金額を支拂ふ事を約する保險なりとす、其詳細の研究は、生命保險の條下に讓る。(三二年農商務省令一一號)
- 英
- Death insurance
- 独
- Todver-sicherung
- 仏
- Assurance sur la mort
自白
(じはく)俗に白狀と云ふに同じ、即ち事狀の認白を云ふ也、而して法律上の自白に關しては、民事訴訟の場合と、刑事訴訟の場合とにより、大に其意義、及び法律の效果を殊にす、之を左に分説すべし、□一民事訴訟法に於ける自白、訴訟上に於ける相手方の主張する事實を認むる事を自白と云ふ、自白は訴訟外に於ても之が陳述を爲すことあるべしと雖も、斯かる裁判外の自白は一の事實たるに止まり、訴訟上の自白の效力なし、訴訟上の效力を生ずるには、唯裁判上の自白に限るものとす、而して裁判上の自白なるものは、口頭辯論に於て、一方の主張したる事實を相手方が認むる意思の表示也、此自白あるときは、相手方に對して事實上の抗辨權を抛棄したるものと見傚し、其事實にして眞正の事實なると否とを問はず、これを以て爭なき事實と確定すべきものたり、盖し民事訴訟法は、不干渉主義により、形式上に事實を審究するに過ぎざれば、當事者に爭なくば、實際其事實の眞實なると否とは、職權を以て討究すべきものにあらざればなり、而して此自白は、本案に關する事實は勿論、訴訟の形式上に係る事實に就きても、亦これを爲す事を得、但し訴訟の形式上に關する事實にして、裁判所の職權調査を爲すべき事項に係り、當事者の有效に抛棄することを得ざるものは例外として、その自白によりて之を眞正の事實と爲すを得ず、例へば無訴權の場合、又は訴訟能力の有無、若くは法定代理の適否の如きは、相手方が之を正當と認むるも、其自白を以て確定の事實と爲すを得ず、必ずや職權を以て、其眞正なるや否やの事實を調査し、之が判定を爲さざるべからず、故に此場合には、其自白は自白たる效力なし、イ裁判上の自白の意思表示、裁判上の自白の意思表示は、必ず口頭辯論に於てこれを爲さざるべからず、而してその方法には、明示、及び默示の二者あり、(甲)明示の自白は、受訴裁判所の口頭辯論、又は受命判事若くは受託判事の面前に於て、相手方の主張せる事實を明かに認むるを云ふ、その辯論期日に相手方が出頭せざるときと雖も、自白を爲すことを得べし、(乙)默示の自白は、相手方の主張せる事實に對し、明かに爭はず、又は他の陳述より之を推究するも、爭はんとする意思の現はれざるときは、自白したる者と見做すにより、又法律上の規定により、訴訟上の懈怠よりして、事實上の自白なりと看做し、默示の自白と推定すべき場合もあり、ロ裁判上の自白の效果、裁判上の自白ありたるときは、左の如き效果を生ずるものとす、(甲)適法なる自白ありたるときは、之に依りて認めたる相手方の主張せる事實は、爭なき事實として、確定すべきものたり、然れども訴訟行爲の懈怠によりて、自白と推定せられたるものは、其懈怠の結果を回復したるときは、其自白なきものに歸すべし、例へば被告が缺席により、原告の事實上の供述は、これを被告の自白したるものと推定し、缺席判決を爲したる後に、適法なる故障の申立に依り、缺席前の程度に復したるときは、其自白の推定は效力を失ふ如き之れ也、(乙)裁判所は、自白により確定したる事實に基き、判決を爲さざるべからず、(丙)相手方は、其事實に就きて擧證の責任を免れ、(丁)自白は其眞實を認めたる者に對してのみ效力あり、故に一人の自白は、他の共同訴訟人に效力を及ぼさざるものとす、(戊)自白は其訴に於てのみ完全の效力を有し、他の訴訟に於ては、同一の當事者間の訴訟にして、其自白を證據に引用したるときと雖も、事實を證する迄に止まり、自白たるの效なきなり、然れども苟くも其訴訟の權利拘束中にありては、第一審に於て爲したる自白も、之を第二審に於て引用すれば、尚自白たるの效ある也、(己)自白は錯誤を理由とする場合にあらざれば、取消すを得ざるものとす、自白の效果は以上の如し、而して其自白の範圍に就きては、或國に於ては自白不可分を原則とする法則あれども、我國に於ては之を認めず、即ち大審院の判決例も、自白不可分の原則は之を認めずして、其範圍は、裁判官の自由判斷に屬すべきものとせり、□二刑事訴訟上に於ける自白、刑事に關する自白は、所謂通俗の意義に於ける白狀に該當す、然れども現行刑事訴訟法は、職權行動主義により、自由心證によりて裁判するを得るものなるが故に、被告が自白を爲したる場合と雖も、其自白を採用すると否とは全く裁判官の自由にして、其自白を顧みずして、自由に他の證據調を爲し得可きもの也、故に刑訴訟上に於ける自白なるものは、法律上に於ては全く何等の價値なきものとす、此點は前示の民訴に關する場合と正反對なるに注意せざるべからず、唯刑事に關する自白は、事實上に於て事件の審理を進行せしむるに便宜なるのみ。(民訴一一一、二四八、二六九、刑一七〇條)
- 英
- Admission of fact
- 独
- Bekenut-nisz
- 仏
- Confession
子法
(しはふ)子法と云ふは、母法に對するの語にして、繼受法を指すもの也、例へば我國の或る法律が、獨乙の法律の主義を繼受して、制定せられたる場合に於ては、其獨乙法を母法と稱し、之に對して我法律を子法と云ふ場合の如し。(繼受法の部參照)
- 英
- Accepted law
- 独
- Annahmsrecht
- 仏
- Droit accepté
私法
(しはふ)私法とは、一個人相互の間に於ける權利義務の關係を規定したる法規を云ふ元來公法、私法の限界につきては、古來より學者の論爭する所にして、紛々として其揆を一にせずと雖も、要は其區別の標準を法律關係に於ける當事者の地位によりて、識別するを正當と信ず、即ち其法律關係の一方又は雙方が、權力の主體たる性格(國家)に於て、法律關係の當事者たるときは、其關係を支配すべき法律を公法と云ひ、其雙方が權力の主體たる性格を離れて法律關係の當事者(一個人)たるときは、其關係を支配すべき法律は私法と云ふなり、斯くの如く無權力者の間に存する法律關係は、總べて私法上の法律關係也、其大部分は個人と個人との間に存する關係なり、然れども無權力者は個人に限らず、法律によりて人格を有する無權力團體(法人)あり、之等の無權力團體相互の間に存する關係、又はこれと個人の間に存する關係も、亦私法の領域に屬す、即ち民法商法等は、實質上私法に屬するものなり。(公法の部參照)
- 英
- Private law
- 独
- Privatrecht
- 仏
- Droit privé
司法
(しはふ)民事刑事に關して法規を維持し、其適用を定むることを目的とする國家行爲を稱して司法と云ふ、而して此司法を行ふ國權を司法權と云ふ也、即ち司法權なるものは、天皇の名に於て裁判所が、裁判を爲す統治權の一作用にして、其本來の性質は、法規の適用維持を目的とするものなれば、民事、刑事の裁判は勿論、其他行政裁判の如き、權限裁判の如き、皆司法の作用に屬するものと云はざるべからず、されど古來の沿革上、民事刑事の裁判は、夙に發達して行政と對立せるのみならず、民事刑事の裁判は、個人に對して法規を適用するに止まるも、他の裁判は、國家の機關に對して法規を適用するものなるが故に、司法裁判所をして之が裁判を爲さしむるは、司法權を以て行政權を侵犯するものなりとの觀念に基き、司法の範圍は獨り民事刑事に止まるを以て、近世に於ける立憲制の通義とせり、而して民事と云ふは、個人相互の間に於ける私法的法律關係を云ひ、刑事とは、個人の國家に對する犯罪行爲を云ふ、之に由つて之を觀れば、司法權は必ず裁判所に於て行ふものにして、裁判所以外の官府に於て行ふことを得ざるものとす。(憲法五七條)
- 英
- Judicature
- 独
- Justiz
- 仏
- Judi-cature
司法機關
(しはふきかん)國家の司法權を行ふ所の國家機關を稱して司法機關と云ふ、我憲法は明文を以て、裁判所は天皇の名に於て司法權を行ふことを規定せり、之によれば、司法機關は即ち裁判所なることを知るべし、裁判所の如何なるものなるやは、裁判所の部に於て詳細に説明したるが故に、茲に再説せず。(憲法五七條)
- 英
- Judicial organ
- 独
- Justiz-organ
- 仏
- Organe judiciaire
司法行政
(しはふぎやうせい)司法行政とは、主として司法大臣の職權に屬する行政にして、司法權行使の補助を目的となす行政を云ふ、司法大臣は、各裁判所、及び檢事局を監督し、檢察事務、身分、職務の監督、及び刑の執行等を指揮し、恩赦、及び復權に關しては、大權の行使を輔弼して之が執行を命ずる等、諸般の事務を管理す、司法行政は其職務執行に當り、法律により各裁判長及檢事の首坐を以て、其行政の機關となす、此場合に於ける判檢事は、行政上の官府として、其職務の行使に就きては、司法大臣の監督訓令の下にあり、又其相互の關係は、各級行政官廳の監督權の原則により、其職務を行ふものにして、獨立して司法權を行使する場合とは、其地位を異にするものたるを注意せざるべからず、之を司法行政と云ふ。(戸籍法五條)
- 英
- Judicial administration
- 独
- Justizverwaltung
- 仏
- Administration judiciaire
司法區域
(しはふくいき)司法事務の取扱に關して定められたる土地の區域を司法區域と稱す、彼の司法の範圍なる語と混同せざらんを要す。(二三年勅七一號)
- 英
- Judicial district
- 独
- Justiz-bezirk
- 仏
- District judiciaire
司法警察
(しはふけいさつ)司法警察とは、刑事裁判の補助たる警察を云ふ、即ち刑事上の犯罪の既に發生したる後に於て、犯罪者を捜査し及び之を逮捕するの作用を爲す行政を云ふ也、司法警察は、司法裁判の區域に應じ、刑事訴訟法によりて支配せらるべきものたり、而して現今は、行政警察と司法警察とは、同一の機關に屬するが故に、其意義も時として混同せらるるの虞ありと雖も、司法警察につきては、行政官廳の監督の下に立つにあらずして、司法裁判所の指揮監督に屬し、其準據すべき所のものは、刑事訴訟法也とす、現行刑事訴訟法に於て、司法警察の機關とての司法警察官は、第一に警視總監及地方長官にして、第二に警部長、警視、警部、憲兵將校、下士、島司、郡長、林務官、市町村長なりとす。(刑訴法四八條)
- 英
- Judicial police
- 独
- Justiz-polizei
- 仏
- Police judiciaire
司法警察官
(しはふけいさつわん)司法警察を行ふの職務權限を有する官公吏を稱して司法警察官と云ふ、現行刑事訴訟法に於て、司法警察官と定められたるものは、第一に警視總監、及び地方長官にして、犯罪捜査につき、地方裁判所檢事と同一の權利を有する者とす、之治罪法以來よりの規定にして、恐くは國事犯等一般公安に關する犯罪ある場合を慮り規定したるものなるべし、第二は警部長、警視、憲兵將校、島司、郡長、林務官、市町村長とす、之等のものは檢事の補助として、犯罪捜査に從事するものとす、司法警察官の刑事訴訟法上の權利は捜査權なり、而して之を行ふや、檢事の指揮命令を待たざれば捜査に著手することを得ざるにあらず、常に自ら進むで捜査に從事することを要するもの也、其權利の範圍は、□一司法警察官は、第一著に捜査に著手するの權利を有すべし、即ち檢事が其被告事件を知らざる場合と雖も、犯罪あれば之を捜査して、其記錄を檢事に迭致すべきものとす、刑事訴訟法に於て、司法警察官は檢事の指揮を受け云々とあるを以て、常に其指揮を受くるを要し、檢事の指揮命令あるにあらざれば、決して捜査に著手すべらずと解すべきにあらず、其指揮を受けしむるは、一般に指揮命令に從ふべしとの意に外ならず、又司法警察官は、檢事が既に捜査して、特に司法警察官に其捜査を命ぜられたる時に於ては、素より捜査を爲すの義務あるは勿論也、而して其捜査は、檢事に被告事件を送致する迄、又は檢事が起訴する迄に限らずして、起訴後と雖も尚捜査の必要ある以上は、進むで之を爲さざるべからず、特に訴訟の落著後と雖も、再審の原因あるや否やに就き疑を生じたる時は、尚進むで捜査せざるべからざるものとす、□二現行犯の場合は、司法警察官は強制處分を爲すことを得、但し拘留狀は之を發する事を得ず、非現行犯の場合は、檢事が此場合に有する權利よりも多くの權利を有するものにあらず、從つて關係人の出頭、及び供述を強ゆること得ざるなり、□三司法警察官の事務の管轄につきては制限なし、地方裁判所又は區裁判所の管轄に屬する事件なると、大審院の特別權限に屬する事件なるとを問はず、凡べて捜査を爲すべし、然れども其土地の管轄につきては、主管事務行政區劃を出ること能はざるものとす。(刑訴四七條)
- 英
- Zudicial police officers
- 独
- Justizpolizeibeamten
- 仏
- Officier de la police judiciaire
司法警察補助官
(しはふけいさつほじよくわん)司法警察に關する事務の執行につき、司法警察官を補助する官公吏を云ふ、即ち警部、巡査又は憲兵下士、憲兵上等兵は其補助官なりとす、されど時には、林務官、市町村長の如きを司法警察の補助官と云ふことあり。(市制七四條一號)
- 英
- Assistant officers of judicial police
- 独
- Justizunterpolizei-beamten
- 仏
- Officier assistant de la police judiciaire
司法裁判所
(しはふさいばんしよ)司法裁判所とは、國家統治機關の一にして、天皇の名に於て司法權を行ふ所の官府を云ふ、天皇の名に於てと云ふは、司法權は固より統治權の一部にして、君主に歸することを明かにすると同時に、君主が大權として自ら行ふにあらず、必ず裁判所をして行はしむることを意味するなり、而して裁判所の行使する司法權とは、民事刑事の爭訟を審判するの國家權力を指すものにして、司法權本來の性質よりすれば、民刑事裁判の外、行政裁判の如き、皆司法權の作用に屬するものなれども、古來の沿革上、司法の範圍は、民事刑事に止まるを以て、立憲制の通義となせり、而して茲に民事と云ふは、私人相互の間に於ける私權的法律關係を云ひ、刑事とは、個人の國家に對する犯罪事件を云ふものとす、而して司法裁判所の組織權限は、裁判所構成法によりて一定せらるる所とす。(憲六一條)
- 英
- Court of law
- 独
- Gerichts-hof
- 仏
- Tribunal juridique
司法事務
(しはふじむ)民事刑事の爭訟を審判し、又は司法行政に關する事務の全體を總稱して司法事務と云ふ。(裁構法六〇條及司法、司法行政の部參照)
- 英
- Judicial business
- 独
- Justiz-dienst
- 仏
- Affaires judiciaires
司法省官制
(しはふしようくわんせい)司法大臣、及び其補助機關の職務權限に就きて規定せられたる勅令なり、其大意を示めせば、司法大臣は裁判所、及び檢事局を監督し、檢察事務を指揮し、民事、刑事、非訟事件、戸籍、監獄、及出獄人保護に關する事項、其他諸般の司法行政事務を管理する者とす、又大臣官房に於ては、通則に定むるもの外、裁判所附屬吏員、及辯護士の身分に關する事務を掌る、司法省には民刑局及び監獄局を置き、民刑局に於て掌る事務は、□一裁判所の設立、廢止並に管轄區域及其變更に關する事項、□二民事、刑事、及び非訟事件に關する事項、□三裁判及び檢察の事務に關する事項、□四恩赦復權、及び死刑執行に關する事項、□五戸籍に關する事項の五とす、次ぎに監獄局に於て掌る事務は、□一監獄に關する事項、□二假出獄、免幽閉、監視假免及び出獄人保護に關する事項とす、司法省專任參事官は三人、專任書記官は二人を以て定員とし、又司法省は專任監獄事務官二人を置き奏任とし、監獄局に屬し、監獄の事務を司るものとす、司法省屬八十一人を以て定員とし、又專任技師二人、技手五人を置くものとす。(二三年勅一四三號)
- 英
- Imperial ordinance for the Judicial Department
- 独
- Behördeordnung des Justizministeriums
- 仏
- Ordonnance impériale du ministère de la justice
司法上の解釋
(しはふじようのかいしやく)司法裁判所の裁判官が、裁判を爲すに當りて其適用すべき法令を審査し、其法令の意義を解釋するを司法上の解釋と云ふ、此司法上の解釋なる意義を明かにせんとせば、須らく裁判所の法令審査權につきて少しく説明せざるべからず、而して此審査權は、これを法令の形式と其實質と分ち、之を論究するを便とす、苟も法令にして、其效力を惹起すべき君主の裁可、大臣の副署、公布の方式等、正當なる形式を具備せざるものは、これを稱して法律又は命令と云ふこと能はず、從つて之れを適用するは裁判所の職分にあらず、故に裁判所は、法令の形式を審査する權限を有せざるべからず、然れども其實質に至りては、一槪に爾か論斷することを得ず、或は曰く、凡そ裁判所は、法令の解釋權を有するも、憲法の解釋權を有するものにあらず、裁判所の解釋權は、一に法律によりて束縛せらるるものにして、法律以上に逸出する事能はざるなり、爰を以て法律の制定が、議會の協贊を經たるや否や、法律の規定が、憲法の條規に牴觸することなきや否やは、君主の解釋權に存するものにして、裁判所は法律の實質にして、憲法に違反するの疑あるも、之を違憲なりと云ふ理由を以て、その法律の適用を拒むことを得ず、從つて裁判所は、法律の實質を審査する權なきものとすと、然れども裁判所は、法令をのみ適用するの職權と職務とを有するものなるが故に、法令の實質を審査するの權なしと云ふは誤りなり、何となれば、法令にして違憲のものたらんか、これ眞の法令にあらざる也、眞の法令にあらざるものを適用するは、裁判所の職務違反に屬す、故に裁判所は、その形式と實質とに渉りて、眞正の法令なりや否やを審査し、憲法に依りて與へられたる職權の範圍内に於て、之を適用すべきは當然の事理なればなり、法規の審査に關しては右述ぶる如く、而して其審査權牴觸せざる限りは、法規を自由に解釋することを得べきものにして、此法律の解釋は、上級官廳、若くは君主によりて制肘せらるべきものにあらず、これ所謂司法權獨立より來る結果にして、裁判所は行政上の命令訓令に拘泥せず、獨立の判斷不羈の解釋をなして、敢て他の國家機關の關渉を受くるを要せざるものなり、即ち司法權は獨立すと云ふは、此意義を明かにしたるものとす。
- 英
- Judicial interpretation
- 独
- rochtliche Auslegung
- 仏
- Interpréta-tion judiciaire
私法人
(しはふじん)私法の規定、主として民法商法の規定によりて認められたる法人を私法人と云ふ、法人の本質に關しては、學者の議論區々に分れて一定せず、されど現今に於ては、法人は、法律によりて權利能力を附與せらたる實在の組織體にして、換言すれば、本體は自然人と同じく實在する者にして、其實在する本體が、法律によりて權利能力を附與せらるものと解する説は優勢なりとす、これ所謂法人實在説也、私法上の法人に、社團法人、及び財團法人の別あり、社團法人は、共同の目的の爲めに集りたる人の集合體にして、財團法人は財産の集合體なりとす、例へば各種の會社の如きは社團法人にして、學校、病院の如き多くは財團法人也、又公益法人、私益法人の別あり、公益を計るを目的とするものと、私の營利を計るを目的とするによりて此區別を生ず、例へば學術、技藝の進步を目的とする學校の如きは、公益法人にして、會社の如きは私益法人なりとす、而して法人の設立、機關等の規定は、各次其項目の下に於ける説明に讓る。(法人の部參照)
事犯
(じはん)處罰規定を以て其制裁となしたる法令に違反したる行爲を汎く事犯と稱す、例へば、臺灣銀行法第二六條に「左の事犯あるとき云々」とあるが如き、議院法第九八條第二項に「懲罰の動議は事犯ありし後云々」とあるが如き皆此用例とす。
- 英
- Crime
- 独
- Verbrechen
- 仏
- Crime
師範教育令
(しはんけういくれい)明治三〇年十月勅令第三四六號を以て公布せられたる所にして、同令の示す所によれば、高等師範學校、は、尋常中學校、及び高等女學校の教員たるべき者を養成する所とし、女子高等師範學校は、師範學校女子部、及び高等女學校の教員たるべき者を養成する所とし、尋常師範學校は、小學校の教員たるべきものを養成する所とす、前示三學校は、順良、信愛、威重の德性を涵養することを勉むるものにして、高等師範學校、及び女子高等師範學校は、文部大臣の管理に屬し、師範學校は地方長官の管理に屬するもの也、而して師範學校の經費は、府縣税又は地方税の負擔とす、高等師範學校、及び女子高等師範學校、師範學校の生徒の募集、及び卒業後の服務に關する規則は、文部大臣に於て之を定め、又右三學校の生徒の學費は、文部大臣の定むる所によりて、其學校より支給するものとす、尚此定むる外に、私費生を置くことを得るものにして、總べて其學科目、程度、及び教科書は、文部大臣の定むる所によらざるべからず、本令の施行に依りて、一九年勅令第一三號を以て發布せられたる、彼の師範學校令は廢止せられたり。
- 英
- Ordinance of normal educa-tion
- 独
- Verordnung der Normalerzieh-ung
- 仏
- Ordonnance de l'enseignement normale
支拂
(しはらい)賣買契約によりて、買主が賣主に對して其買受けたる財産の對價として、金錢を給付する行爲、及び手形上の債務の辨濟行爲を稱して支拂と云ふ、この他の辨濟即ち一般の債務の辨濟にも、支拂なる文字を用ふることありと雖も、法律上に於ける支拂なる意義は、賣買契約による場合と、手形行爲の場合とに、主として用ふる語なることを注意せざるべからず、□一賣買による代金仕拂、買主は代金を支拂はざるべからざるは、言を俟たずと雖も、研究すべきことは、支拂の時期、及び場所なりとす、先づ支拂時期より説明せんに、其時期は當事者の同意によりて、定むるべきものなれども、若しこれに就きて特約なきときは、賣主は債權總則の規定に從ひ、何時にても代金支拂の請求を爲し得るものの如し、然れども、賣買に就きては、同時履行の原則を適用すべきを至當とす、爰を以て、若し目的物の引渡に就きて、期限の定めある場合は、代金の支拂に就きても亦同一の期限あるものと推定すべきものとす、即ち代金支拂の期限は、目的物の引渡と同一の時なりと推定すべきもの也、然れども之に反して、代金支拂の時期の定めありたるときは、目的物の引渡も、又其期日に於て爲すべきものと推定することを得ず、換言すれば、代金支拂に關する特定時期は、目的物引渡の時期なりと推定することを得ざるなり、斯くの如く、法律が此二者の間に區別を立てたる所以は、賣主は物を引渡したる後と雖も、尚其物の上に代金の債權に就きて先取特權を主張し、優先辨濟を得るも、買主が代金を支拂ひたる後は、其代金に對して何等の權利を有するものにあらざるを以て、危險の程度同一なりとすることを得ざる也、右を以て代金支拂の時期に關する一般の原則とするも、尚法律は、之に對して二個の特例を認めたり、イ第三者が、賣買の目的につき權利を主張し、その權利の全部若くは一部を失ふ危險の虞あるとき、斯る場合に於ては、假令物の引渡を受くるも、買主は其危險の程度に於て、代金の一部若くは全部の支拂を拒むの權利を有す、これ其受けんとする危險を豫防するの方法上、最も必要の事なりとす、されど此場合に於て、賣主が之に適應する相當の擔保を供したる時は、買主は其危險の除去せられたるものなるを以て、代金支拂を拒むことを得ず、又賣主に於て、擔保責任を負擔せざるの特約ありたるときは、買主は支拂を拒むことを得ざるものとす、ロ買受たる不動産上に登記せられたる、先取特權、質權、抵當權ありたるとき、この場合に於ても、買主は之等權利者の爲めに、自己の買受けたる所有權を失ふの虞あるが故に、自己の有する滌除權を實行し終る迄は、代金の支拂を拒絶することをを得るものとす、最も滌除を行ふを口實とし、漫然時日を經過せらるるときは、賣主の損害大なるを以て、賣主は買主が遲滯なく、滌除を行ふべきことを促すことを得るものとす、而して買主が債權者に對し、辨濟を爲すか又は滌除を行ひたるときは、其辨濟を爲したる限度に於て、賣主に對する代金支拂の義務を免がるものとす、次ぎに、支拂の場所につきては、其特約ありたるときは、其特約に從ふは勿論なれども、若し特約なきときに於ては、物品引渡と同時に支拂ふべきものなりとせば、其引渡の場所に於て之を爲すものと定めたり、これ便宜なるのみならず、當事者の眞意に適するものなればなり、若し物の引渡と同時ならざるときは、債權者たる賣主の住所に於て支拂ふべきものとす、□二手形法上の支拂、手形の支拂なるものは、手形振出人若くは、引受人が、其滿期日に於て、手形所持人に對して其券面額の金額を給付するの行爲を云ふものにして、其支拂は手形と引換へにあらざれば之を爲すことを要せず、手形所持者より支拂要求の呈示を受けて、それと引換へに爲すべきものとす、其支拂時期及び、支拂地は其項目の下に於て説明すべきが故に、茲に之を省略す。(民五七三條、商四八六條)
- 英
- Payment
- 独
- Zahlung
- 仏
- paie-ment
支拂猶豫
(しはらひいうよ)支拂猶豫とは、破産法上に於ける一制度にして、即ち商行爲によりて生じたる債務に就き、自己に過失なくして支拂を中止するの已むを得ざるに至りたる、商人なる債務者と、債權者全體との間に成立したる、一ケ年以内支拂の猶豫を爲し、且つ裁判所の認可を得たる契約を云ふ、此支拂猶豫が契約たる事は、破産法の明文に徵して明かにして、その成立には恊諧契約と同じく、濫用を豫防する爲めに、裁判所の干渉と認め、其認可を受くるを要するものとなしたるなり、而して支拂猶豫は、破産宣告を避くるの契約なるが故に、商行爲に基く債務に就き、支拂を中止、即ち一時支拂を停止せざるを得ざるに至りたる商人なる債務者、即ち破産者たる債務者、及び破産債權者たるべき債權者全體が當事者となるなり、且つ支拂猶豫は、不幸なる債務者の爲めに設けたる制度なり、故に自己の過失なくして支拂を中止するの已むを得ざるに立ち至りたる債務者たるを要し、又債權者は、共同利益の爲めに、多數決に服從すべき義務を負ふ、債權者全體は、多數決によりて其意思を表示し、支拂猶豫の相手方となるものとす、而し其猶豫の期間は、一ケ年を超過することを得ざるなり、蓋し期間なければ、支拂猶豫の目的を達せざる場合に、債權者に多大の損害を蒙むらしむるに至るを以てなり、今此支拂猶豫の契約成立幷に效力、其消滅に關する法律の規定を説明せん、□一成立、前述したるが如く、支拂猶豫は一の契約なるが故に、其成立に關しては、債務者の申込と、債權者の承諾とを必要とするは勿論也、又支拂猶豫は、法定要件を具備する場合にあらざれば、之を認めざるものなるを以て、其成立に關しては裁判所の認可を必要とす、A申込、債務者は、支拂猶豫申込の準備手續として、管轄裁判所に支拂猶豫の申立を爲し、且つ支拂猶豫の申込を爲す要件を備へ、猶豫契約を履行するに十分なる資力ある旨を明瞭ならしむる爲に、一、支拂中止の事由の完全なる明示、二、貸借對照表、財産目錄、及び住所と債權額とを明示したる債權者名簿、三、債權者に主たるもの、及び從たるものの完全なる辨償を爲し得る方法、期間、及びこれが爲めに供することを得る擔保の證明等に關する申立を添付せざるべからず、管轄裁判所に於て、前示申立を適當と認めたるときは、一面に於ては申立、及び添附書類を裁判所書記課に備へ置きて、公衆の展覽に供し、且つ支拂猶豫の諾否を定むるが爲めにする、債權者の集合期日を定めて、之と共に申立、及び添附書類を備へ置きたる旨を公示するものとす、又他の一面に於ては、申立書に添附せる債權者名簿に基き、集會の爲めに債權者を各別に召集す、これ債權者を保護し、支拂猶豫に關する議決權行使につき、遺憾なからしむるを期するにあり、又管轄裁判所は、支拂猶豫の假許可を與ふる事を得るものとす、蓋し斯かる方法なきときは、一方に於ては支拂猶豫の申立あるに拘はらず、他の一方に於て、支拂停止の故を以て、破産宣告を爲さざるを得ざるの、缺點あるを以てなり、而して債務者は、債權者の集會期日に出席して、支拂猶豫の申込を爲し、債權者は之に對し、多數決を以て諾否の意思を表示するものなり、B承諾、裁判所内にて開く集會の期日に於ては、裁判所より任ぜられたる主任判事が議長となり、集會を整理し、裁判所書記をして、債務者と債權者との辯論の大要、及び議決に就きて調書を作成せしむ、之れ債權者の資格、又決議の結果、其他集會の方式等に就き、議論なからしむるの注意に出づ、出席したる債權者は、債務者の申込みに對し當否を議す、而して其承諾は、過半數を得るによりて成るものとす、C認可、裁判所は、主任判事の演述を聽き、事情を詳知したる後、決定の形式を以て、承諾を得たる支拂猶豫が法定要件に適したりと認めたるときは、認可を爲し、然らざるときは、認可を爲さず、前者の決定に對しては、利害關係ある少數反對の債權者より、後者の決定に對しては、債務者又は贊成したる債權者より、即時抗告を以て不服を申立つる事を得る也、□二效力、支拂猶豫は左の效力を生ずるものとす、A支拂猶豫は、債權者全體が債務者に對し、一年以内の特定期間、債務の履行の延期を認むるものに外ならざるを以て、債務者は、猶豫期間中支拂猶豫契約成立以前に、取結びたる商取引より生じたる債權の爲めに、強制執行、及び破産宣告を受くることなし、又猶豫期間は、當事者の利益の爲めに一回に限り、前示の法定手續を履みて之を延長することを得、但し其期間は一年を越ゆることを得ず、B支拂猶豫の履行、及び其履行に、因果の關係ある業務の執行に關しては、主任判事の監督を受くるものとす、C支拂猶豫は、不幸なる債務者の爲に、成立したる破産契約なるを以て、共同義務者の義務に變更を生ぜざること、協議契約の場合に同じ、□三支拂猶豫の無效失效、及び破産の宣告、A支拂猶豫は一の契約にして、且つ裁判所の認可を要件と爲すを以て、債權者の承諾を得ず、若くは裁判所の認可を得ざるときは無效なり、B支拂猶豫の成立に關し、債務者が詐欺其他不正行爲を爲したるか、若くは法律上の條件に缺く所あるが爲めに、裁判所が、利害關係人の申立により、又は職權を以て、立法上の目的に伴はざる支拂猶豫を廢止したる時は、其支拂猶豫は效力を失ふC債務者の不履行の爲めに、支拂猶豫を解除したるときは、其猶豫契約は效力を失ふ、D債務者に對し、債權を取消したる債權者、即ち他の債權者が、債務者の財産に對し、支拂猶豫期間中、強制執行を爲すに至りたる時は、其猶豫契約は效力を失ふ、蓋し猶效力あるものとせば、強制執行後、財産の減損を來し、支拂猶豫契約の履行不能となり、これが契約の當事者たる債權者を害するを以てなり、而して支拂猶豫契約が、或は無效となり、或は效力を失ひたるときは、裁判所は申立によりて、破産手續を開始せざるべからず、何となれば、債務者に對しては、破産宣告の要件存すればなり、此場合に於ては、支拂猶豫申立の日附を以て、支拂停止の日と定め、以て支拂停止の日時に關する紛爭を防止す、猶豫期間中有效に債權を取得したる者は、破産債權者として配當に加入することを得るや勿論なり。(破産法一〇五九條乃至一〇六四條)
- 英
- Grace for payment
- 独
- Zahlungsstundung
- 仏
- Grâce du paie-ment
支拂期日
(しはらひきじつ)支拂期日と稱するは、賣買契約による買主が、賣主に對して辨濟すべき支拂の期日、若くは手形の滿期日を指示するの語なり、支拂の部、及び滿期日の部を參照せらるべし。(民訴五七七條二項)
- 英
- Due date
- 独
- Zahlungs-termin
- 仏
- Date du paiement
支拂拒絶
(しはらひきよぜつ)支拂拒絶と云ふは、金錢債務を支拂ふべき期日に達し、或る事情の存する爲めに、其辨濟を拒むことを云ふ、其拒絶し得べき場合の如何は、支拂の部、及び手形に關する部目を參照せらるべし。
- 英
- Rejection of payment
- 独
- Zahlungsverweigerung
- 仏
- Rejêt du paie-ment
支拂拒絶證書
(しはらいきよぜつしやうしよ)手形の所持人が、一定の滿期間に於て、手形を支拂人又は支拂擔當者に呈示して、支拂を求めたるも、其支拂を得ざる場合に、所特人の請求によりて、公證人又は執達吏が作成する所の書面を支拂拒絶證書と云ふ、抑も爲替手形の振出人、裏書人、約束手形の裏書人、支拂擔當者の記載ある爲替手形の引受人、及び約束手形の振出人は、所持人が引受、支拂、參加引受若くは參加支拂を求むる爲めに、其手形を支拂人、引受人、支拂擔當者、約束手形の振出人、豫備支拂人等に呈示して、之が支拂を得ざる場合に於ては、擔保を供し又は償還を爲すの義務あり、最も一覽後定期拂手形、及び一覽拂手形にありては、呈示期間を遵守せざるときは、所持人は前者に對する手形上の權利を失ふ、以上の拒絶の事實は、支拂拒絶證書によりて、正當の手續を履行したることを明確にぜざるべからず、此拒絶證書の作成ありて、初めて前者其他の債務者に對して、權利を保全することを得るものとす、□一支拂拒絶證書の性質、支拂拒絶證書は、手形上の權利の行使、若くは保全に必要なる行爲を爲したること、及び其行爲の結果を證する唯一の要式證券なり、即ち唯一の要式證據證券なるが故に、他の證書を以て之に代へ、其足らざるを補ひ、若くは訴の提起を以てこれに代ふることを得ざるなり、又要式證券なるが故に、拒絶證書の形式は法律の定むる所にして、これに記載すべき法定の要件は、命令的の性質を有し、手形が手形上の權利に缺くべからざる基礎たると同じく、拒絶證書は遡求權行使に對する基礎となるものとす、法定の要式を具備せざるものは、其效力なきなり、然れども此形式の不備は、必ずしも其效力を害するにあらず、苟も拒絶證書の本體に反せず、其記載する所に基き、其記載の相互の關係より、法律の要求する事項の存在を認むるを得べきときは、之を以て足れりとし、なほ微細なる不正確若くは推知し得べき書き損じの如きは妨なきなり、□二支拂拒絶證書の作成者、此作成の機關としては、我商法の認むる所は、公證人、及び執達吏なり、蓋し拒絶證書は、法定の行爲、及び其結果を證する唯一の證據なれば、公證人、又は執達吏が、支拂拒絶證書を作りたる時は、其帳簿に、其證書の全文を記載するを要し、利害關係人は、公證人、又は執達吏に對して、其謄本の交付を求めたるときは、之を交付すべきものとす、□三支拂拒絶證書の方式、拒絶證書に記載すべき事項は、(1)手形其謄本、及び補箋に記載されたる事項、(2)拒絶者、及び被拒絶者の氏名、又は商號、(3)拒絶者に對して爲したる請求の趣旨、及び其拒絶者が其請求に應せざりしこと、又は拒絶者に面會すること能はざりし理由、(4)前號の請求を爲し、又は之を爲すこと能はざりし地、及び年月日、(5)拒絶者の營業所、住所、又は居所が知れざる場合に於ては、其地の官署、又は公署に問合せを爲したること、(6)法定の場所外に於て、拒絶證書を作る時は、拒絶者が之を承諾したること、(7)參加支拂人あるときは、其參加の種類、及び參加人、幷被參加人の氏名、又は商號を記載し、公證人、又は執達吏が其拒絶證書に署名することを必要とす、後に注意すべきは、同一の手形に就き、相次で數人に對し手形上の請求を爲すべきときと雖も、一通の拒絶證書を作らしむるを以て足ること是也。(商五一四條乃至五一七條)
- 英
- Protest for non-payment
- 独
- Protestmangels Zahlung
- 仏
- protêt du non-paiement
支拂擔當者
(しはらひたんたうしや)手形の支拂地が、支拂人の住所地と異るとき、或る他人を記載して、之に仕拂行爲を擔當せしむる場合に、この他人を稱して支拂擔當者と云ふ、この支拂擔當者の記載ある場合に於ては、其手形の所持人は、償還の請求を爲さんと欲するときは、支拂擔常者に、其手形を呈示するを要し、支拂を爲さざるときは、支拂拒絶證書を作成せしめざるべからす、右の手續を履行せざるときは、前者に對しても、引受人に對しても、手形上の權利を失ふものとす。(商四九〇條)
- 英
- Person being designated on the bill to pay
- 独
- Domiziliat
- 仏
- payeur
支拂地
(しはらびち)支拂地とは、一般に金錢支拂の義務あるものが、其支拂を爲すべき地を指示するものとす、一般債務に關しては、金錢支拂は、當事者の特約によりて其場所を定め、否らざるときは、債權者の住所を以て支拂地となすを通則とす、然れども法律上特に支拂地なる語を用ふるは、所謂手形に關する場合にして、手形の支拂地につきては少しく説明を要す、支拂地は手形に記載すべき事項にして、茲に支拂地と云ふは、手形金額の支拂あるべき地なり、地の意義は、大審院の約束手形の振出地に就きて判例あり、即ち最少獨立の行政區劃たる地域を指すものとせり、例へば市、町、村と云ふが如し、而して爲替手形に就きては、支拂地は手形に、必ず記載すべき要件にして、約束手形にこれを缺く場合は、振出地を以て支拂地と見なさるるものとす。(商四四三條)
- 英
- Place of payment
- 独
- Domizil
- 仏
- Lieu du paiement
支拂命令
(しはらいめいれい)支拂命令と云ふは、一定の金額の支拂、其他の代替物、若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請求に就きて、民訴法に所謂督促手續により、債權者の申請によりて、債務者に對して區裁判所が發する所の裁判上の命令を云ふ、元來督促手續なるものは、最も簡易なる申請の方法を以て事件を完結し、其執行を爲すことを得せしむべきを目的とする簡易手續にして、特別訴訟法手續の一種に屬す、而して此手續は、判然たる請求、換言すれば爭なき請求に係るも、債務者がこれを履行せざるが爲め、債權者は鄭重なる訴訟手續を以て、訴の方式によらんよりは、寧ろ單純なる申請の方法により、支拂命令を受けて執行を爲さんとする如き場合に、適用すべき方法なりとす、今支拂命令に就き、法律の規定を分説せん、□一支拂命令申請に就きての條件、支拂命令は如何なる請求に就きても、廣く之を爲し得べき限りにあらず、下の事項の一を目的とする請求なることを要す、(1)一定の金錢の支拂を目的とする請求なること、(2)其他の代替物若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請求なること、以上二個中の一に該當せざる請求は、此手續を以てするを許さず、殊に申請の趣旨によれば、申請者が反對給付を爲すを要すべき時、又は支拂命令の送達を外國に於て爲すべきとき、若くは公示送達を爲すべきときは、これを許さざるものとす、□二管轄裁判所、支拂命令は、事物の管轄如何に拘はらず、常に區裁判所の管轄に屬し、區裁判所のみ支拂命令を發すべきものとす、□三支拂命令の申請、支拂命令を申請するには、書面を以てこれを爲し、又は口頭を以てこれを爲すも、申請者の自由とす、然れども其申請には、左の諸件を明かにすることを要す、(1)當事者、及び裁判所の表示、(2)請求の一定の數額、目的物、及び原因の表示、若し數個の請求なるときは、其各個の一定の數量、目的物、及び原因の表示、(3)支拂命令を發せんことの申立、以上の三個中、特に一及び二の事項は、支拂命令中にも記載すべき要件にして、此三個の要件を缺くときは、其申請は不適法にして、之を却下せらるべきなり、□四支拂命令の申請に就きての裁判、支拂命令の申請あるときは、其管轄區裁判所は、職權を以てこれを調査し、前述の一乃至三の規定に適合せざる申請は、之を却下すべきは勿論、又之に適當するも、其申請の趣旨に於て、請求の理由なく、又は現時其理由なきことの現はるるときは、例へば期限の未だ來らざる請求の如きは、其申請を却下すべく、亦一個の請求中、或る一部のみ理由なきときと雖も、其全部を却下すべきものとす、然れども數個の請求の併合に係り、或一個の請求が理由なくして、其他の部分は請求の理由ありとするときは、其理由ある部分に限り、其申請を許容し、其他の理由なき請求に係る一部の申請を却下すべきものとす、右の申請却下の裁判に對しては、不服を申立つることを得ず、故に抗告は勿論、異議の申立等凡べて不服を主張することを許さざるもの也、然れども通常訴訟手續によりて、訴を提起するの妨げとなるものにあらず、而して右申請が、適法にして且つ理由なきにあらざるときは、裁判所は豫め債務者を審訊せずして、條件付の支拂命令を發するものなり、即ち前述したる□三の一、及び二の要件を記載し、且つ即時の強制執行を避けんと欲せば、此命令送達の日より、十四日の期間内に、請求を滿足せしめ、及び其手續の費用に就き定むる數額を債權者に辨濟すべく、若し否らざれば、裁判所に異議を申立つべき旨の債務者に對する條件附の命令を記載して、之を發すべきものなり、尤も右の十四日の期間は、爲替より生ずる請求に就ては、二十四時間とすべく、其他の請求に就きては、債權者の申立により、三日迄に之を短縮することを得るものとす、右の支拂命令を債務者に送達するときは、茲に權利拘束の效力は發生す、裁判所は此送達を爲したるときは、之を債權者に通知すべきもの也、□五債務者の異議、債務者は、支拂命令に對し、書面又は口頭を以て、異議の申立を爲すことを得、而して請求の全部、又は一部に對し、適當なる時間に於て、異議の申立てあるときは、支拂命令の全部は其效力を失ふべきものとす、右は請求の一部に對して異議を申立たるも、支拂命令の全部其效力を失ふべきものとしたる理由は、抑も支拂命令なるものは、請求の一部につき理由なきときと雖も、これを發することを得ざるの原則に基きたるものとす、然れども數個の請求につき、支拂命令を發したる場合にありては、或る一個の請求につき異議の申立あるも、他の異議なき請求は獨立すべきものなるを以て、其效力に影響を及ぼさざるものとす。(民訴三八二條以下及督促手續の部參照)
- 英
- Order for payment
- 独
- Zahlungs-anweisung
- 仏
- Ordre du paiement
支拂停止
(しはらいていし)支拂停止とは、破産法上の用語にして、破産成立の實質的條件として必要なるもの也、即ち此場合に於ける支拂停止の意義は、商事債務を支拂期日に支拂ふこと能はざるが爲めに、支拂を爲さざりし事實を云ふ、故に第一に、支拂停止は證明の容易なる支拂を爲さざりし表見事實にして、資産の有無に關する實際的要件にあらず、支拂を爲さざりし表見事實は、容易にこれを認知する事を得るも、資産の有無に關する實際的狀態は、多くの時間を費し、精密なる精算を得たる後にあらざれば知るを得ず、從つて若し無資力を破産の原因たらしめば、其調査に多くの時間を要する結果、終に破産の目的を達する時機を失ふ故に、破産の原因は支拂の停止にして、無資力は原因にあらず、換言すれば、破産者の無資力なりや否やは、破産の原因に關係なし、之支拂停止を以て其原因とすと云ふ所以なり、第二に、支拂を爲さざるは、支拂を爲すこと能はざる爲めなるを要す、債務者が請求の數額、若くは支拂の方法に爭ある爲めに、支拂を拒絶したる場合に於て、其拒絶が仕拂不能の爲めに支拂はざる事實を隱蔽するの手段にあらざるときは其當否に拘はらず、相手方の請求に對する適當の防禦方法にして、相手方は訴訟の手續によりて支拂を爲さしむることを得るを以て、殊更に破産手續によるの必要なしと雖も、債務者がその過失、若くは天災其他の不可抗力による支拂資金の缺乏に基き、債務の支拂を爲すこと能はざる爲めに、一時若くは永久支拂を爲さざる場合にありては、破産手續を開始し、各債權者に損失を分擔せしむる事を必要とす、蓋し破産には其原因につきて、債務者に責任あることを法律上必要とせず、又債務者の資力の有無は之を確定すること能はざるを以て、許すに短期間を以てせば、債務者に於て、支拂資金を調達することを得べき債務者の主張に信賴するを得ざれば也、換言すれば、支拂の中止即ち債務者の資産は、其負債額より多しと雖も、資産の換價困難なりしが爲めに、支拂を爲さざりし事實は、債務者の資産が其負債額より少きが爲め、其支拂を爲さざりし事實と區別し、前者のみを支拂停止中より除外することを得ず、蓋し支拂期日に支拂を爲さざりし事實は、永久に支拂なき事實と同樣に、取引の發達を害するによる、但し前者は、支拂猶豫の原因となり得ざる事は言を俟たず、然れども債務者は、支拂を爲さざりし事實が存せざりし以上は、假令其者が無資力にして、金圓の借受、支拂の延期、債務の更新等の如き窮策によりて、支拂を避くるものなりと雖も、支拂の停止にあらず、蓋し現實に支拂を爲さざりし事實存せざれば、支拂停止と云ふを得ざればなり。(破産法九七九條)
- 英
- Suspension of payment
- 独
- Zahlungssperre
- 仏
- Suspension du paie-ment
支拂命令委任規程
(しはらひめいれいいにんきてい)明治二二年勅令第八九號を以て公布せられたる所にして、各省大臣は、他の官吏に委任して、其所管定額の支拂命令を發せしむる時は、會計規則により、支拂豫算額を定めて之を委任し、而して其委任を受けたる支拂命令官は、其發したる命令につきて委任を有するものなることを規定せられたるものなり。(會計規則一一條、會計法一三條、參照)
- 英
- Rule of trust of order of payment
- 独
- Auftragsregel des Be-zahlung befehls
- 仏
- Règles de la con-fiance de l'ordre du paiement
集合物
(しふがふぶつ)集合物とは、法律上物の種別に關する一名稱にて、單一物に對するものとす、物が單一なりや集合なりやは、其獨立の存在を有する物體が、一なりや或は多數なりやによりて定まる、單一物が權利の目的たる事あり、又は多數の物の合計が、權利の目的たることあり、即ち單一物集合物の區別を生ず、集合物は多數の物の集合にして、其集合を組成するものは各獨立の物なり、正確に云へば、集合物は物にあらずして、物の集合したる狀態なり、然れども當事者の意思又は法律の規定に依り、物の集合を取引の目的となし、其集合を一個の物と同一に取扱ふ事あり、之によりて法律學上集合物と云ふ名稱を見るに至りたる也、集合物は別ちて、事實上の集合物と、法律上の集合となす、事實上の集合物は、當事者の意思によりて、多數の物の合計を取引の目的となす場合に於て存在す、例へば群羊、書庫の如し、群羊を組織する所の個々の羊は、獨立の存在を有する物なり、又書庫を組織する所の書籍は、各獨立の一體として存在す、群羊と云ひ、書庫といふも、多數が物の物質的に結合して生じたる獨立の一體にあらずして、獨立の物體の合計に外ならず、又法律上の集合物とは、物の集合と云ふよりも、寧ろ權利義務の集合、所謂包括財産と稱するもの是也、包括財産と稱するものと、法律の規定により權利義務の合計を一の無形體となし、之を取引の目的となす場合に存在するもの也、判へば相續財産の如し、茲に注意すべきは、單一物と物の集合とは、明に之を區別するを要することこれ也、又單一物の一部と物の集合を組織する單一物とは、之を混合せざるを要す、單一物の組織分子は、他の組織分子と離れて獨立の運命に從ふことを得ず、物の集合組織分子は、之を他の組織分子と分離して、之を處分することを妨げす、左の區別は理論に於ては甚だ明白なり、然れども實際問題として解決に苦む場合多し、例へば家屋を土地の一部と爲すや、之を獨立の物と爲すやに就きて、外國の立法例に規定する所は、我法制の定むる所と同一ならず、之國民經濟上觀念の同一ならざりしに起因するもの也、一國内に於ても、地方慣行の異るに依り、斯くの如き差異を生ずることなきを保せず、最も注意を要すべき事項なりとす。
- 英
- Collect thing
- 独
- Kollektiv-dinge
- 仏
- Choses collectives
集會
(しふくわい)集會とは、或事項を論議決定する共同の目的を有して、一時限り公衆の集合したるものを稱す、故に永續的の性質を帶ぶるか、又は共同の目的を有せざるものは集會と云ふ事を得ず、集會は其集會者により區別すれば、公衆の會合する集會と、特定せる人のみ會合する集會とに區別するを得べく、其集會の場所より區別すれば、屋内集會と屋外集會とに區別するを得べく、其目的より區別すれば、政治上の集會と政治に關せざる集會とに區別することを得、集會にして殊に法律上の取締を要するは、主として政治上の集會なり、特に屋外の集會、及び公衆の會合する集會なりとす、□一政治に關し公衆を會同する集會、及び屋外に於て公衆を會同する集會は、之を屆出ずる義務あり、政治に關せざるものと雖も、安寧の秩序を維持する爲め、屆出でを必要とするものあるときは、命令を以て屆出での義務を課することを得、□二警察官廳は、總べての集會に對し、これに解散を命ずるの權を有す、殊に屋外の集會に對して、豫め之を禁止し、又は之を制限する權を有す、政治に關し公衆の會同する集會に對しては、警察官廳は警察官を臨檢せしむるを得べく、其集會にして政治に關せざるものと雖も、安寧秩序を防害すると認むるとき又同じ、□三警察官は集會に於ける講談論議の安寧秩序を害し、又は風俗を害するの虞あるものと認むる場合に於ては、其人の講談論議を中止することを得、□四集會には武器を携帶することを得ざるものとす、而して以上各種の干渉に對しては、法律は全く訴願訴訟等の救濟手段を認むることなし。(治安警察法參照)
- 英
- Public meeting
- 独
- öffentliche Versammlung
- 仏
- Assemblée publique
市部會
(しぶくわい)市部會なるものは、明治三二年勅令第二八五號を以て發布せられたる、市部會、郡部會等の特例に關する件を以て定められたる所に係り、從來市部郡部の經濟を分別したる府縣に於て、内務大臣は其區域により、市部郡部の經濟を分別して、市部會、及び市部參事會を設けしむる事を得るものにして、市部會は其府縣の各市より選出せられたる府縣會議員を以て組織せられ、其定員を十二名とす、府縣會の權限に屬する事件にして、府縣會の議決を經べき事件と、市部會郡部會の議決を經べき事件との分別は、府縣會の決議を經て、内務大臣の許可を受け、府縣知事之を定むるものとす、此以外に關するものは、府縣制の規定に從ふべきものとす、而して現時に於て市部會を設けられたる地は、東京府、京都府、大阪府、神奈川縣、兵庫縣、愛知縣、廣島縣の三府四縣とす。(郡部會の部參照)
集權
(しふけん)國家權力を一點に集注する狀態を稱して集權と云ふ、所謂中央集權なるもの是也。(中央集權の部參照)
- 英
- Centralization
- 独
- Zentralisation
- 仏
- Centralisation
集治監假留監官制
(しふぢかんかりうかんくわんせい)明治二八年勅令第九八號を以て發布せしも、現行の監獄官制が、明治三六年發布せらるるに當りて發止せられたり。
- 英
- Government organiza-tion of shūjikan and karyūkan
- 独
- Behörde-ordnung von Shūjikan und Karyūkan
- 仏
- Organisation de shūjikan ou karyū-kan
集治監典獄
(しふぢかんてんごくちやうふけんてんごくしふぢぶんかんちやうとくべつにんようれい)明治三二年勅令第三五號を以て發布せられたる所なれども、現時は廢せられたり。
- 英
- Ordinance of special appointment of prison governor of shūjikan, local prison governor and governor of detatched prison
- 独
- Specialanstellungsordnung des Kerker-meisters von Shūjikan, des Cho-, Fu-und Ken-Kerkermeisters und des Zweigkerker-meisters von Shūjikan
- 仏
- Ordonnance de la nomination spéciale du gouvenreur de la prison de Fu et Ken et du gouver-neur de la prison détâchée
廳府縣典獄
集治分監長特別任用例
事物
(じぶつ)事件、及び物件を總稱して法律上事物と云ふ、例へば裁判所の事物の管轄と云へば、或る事件、及び其事件に關聯する物に對する管轄の意を表すべき場合の如し。(民訴六六、刑訴六六條)
- 英
- Things
- 独
- Sachen
- 仏
- Chose
事物の管轄
(じぶつのかんかつ)事物の管轄とは、事件の性質、輕重、又は審級により、各種の裁判所の權限を定むる事を稱す、換言すれば、第一審として區裁判所管轄に屬すべきや、將た地方裁判所の管轄に屬すべきや、又第二審として地方裁判所の管轄に屬すべきや、將た控訴院の管轄に屬すべきや、其上告審として控訴院の管轄に屬すべきや、將た大審院の管轄に屬すべきやを定むるものなり、而して裁判所の事物の管轄は、主として裁判所構成法の定むる所、先づ民事事件より順次刑事事件に及ばん、(甲)民事、□一區裁判所の事物の管轄、區裁判所は、單に第一審の管轄として、之れ屬すべきものは、ア二百圓を超過せざる金額、又は價額二百圓を超過せざるものに關する訴訟、イ其價額に拘らず區裁判所の事物の管轄に屬すべき訴訟、即ちA住家其他の建物、若くは或部分の受取、明渡、使用、占據、若くは修繕に關り、又は賃借人の家具、或は所持品を賃貸人の差押へたることに關り、賃借人と賃貸人との間に起りたる訴訟、B不動産の境界のみに關する訴訟、C占有のみに關する訴訟、D雇主と雇人との間に、雇傭期間一箇年未滿の契約に關り起りたる訴訟、E次ぎの事項につき旅人と旅店、又は飮食店の主人との間に、又は旅人と水陸運送人との間に起りたる訴訟、賄料、宿料、運送料、若くは之に伴ふ手荷物の運送料、旅店若くは飮食店、又は運送人に、旅人より保護の爲め預けたる手荷物、金錢、及び其他の有價物、以上は裁判所構成法に定むる所なり、其他の法律の規定により、(人事訴訟法等)區裁判所の管轄に屬せしめたるものを擧ぐれば、ウ左の人事訴訟、A禁治産、準禁治産の申立、及び取消事件、B失踪宣告、及び其取消申立事件、ヱ價格に拘はらず左の特別訴訟は區裁判所の管轄に屬するものとす、督促手續、公示催告手續、訴訟提起前の和解、訴訟提起前の證據保全の申立、其他一の訴訟事件、又は執行事件に關し、相牽連する爲めに區裁判所の事物の管轄に屬せしめたるもの少からず、□二地方裁判所の管轄、地方裁判所は、第一審及び第二審として管轄權を有す、第一審としては區裁判所、及び控訴院の第一審に屬せざる總べての請求即ち下の事件、イ財産上の請求にして二百圓を超過する金額、又は價格二百圓以上の物に關する訴訟、ロ人事訴訟の婚姻事件、緣組事件、親子關係事件、相續人廢除事件、隱居、及び禁治産に關する申立之なり、第二審としては下の事件イ區裁判所の判決に對する控訴、ロ區裁判所の決定命令對する抗告とす、□三控訴院の事物の管轄、控訴院は普通第二審裁判所にして、下の事件につき管轄權を有す、A第二審として地方裁判所の第一審裁判に對する控訴、及び地方裁判所の決定命令に對する抗告、B上告審として區裁判所の判決に對する控訴につき爲したる地方裁判所の判決に對する上告事件、東京控訴院に限り、皇族に對する民事の訴訟につき、第一審第二審の管轄權を有するものとす、□四大審院の事物の管轄、大審院は上告裁判所にして終審の裁判を爲すべきものとす即ち、A控訴院が控訴事件につき爲したる判決に對する上告、B控訴院の決定命令に對する抗告、其他大審院に於ては、特別として、特許局の審判に對する上告につき裁判權を有するものとす(乙)、刑事事件、□一區裁判所の事物の管轄、A違警罪に關する事件、B竊盜罪C二百圓を超過する罰金を併科又は附加せざる本刑六月以下の禁錮に該る罪、D本刑二百圓を超過せざる罰金に該る罪の四種にして、何れも豫審を經ざるものたるを要す、即ち右に該當すと雖も、豫審を經べき事件のときは、地方裁判所の管轄とす、□二地方裁判所の事物の管轄、A第一審としては、區裁判所の權限、幷に大審院の特別權限に屬せざる刑事訴訟、第二審としては、イ區裁判所の判決に對する控訴、ロ區裁判所の決定命令に對する抗告とす、□三控訴院の事物の管轄、A地方裁判所の第一審判決に對する控訴事件、B區裁判所の判決に對する控訴につき爲したる地方裁判所の判決に對する上告事件、C地方裁判所の決定及命令に對する抗告、□四大審院の事物の管轄としては、終審としては控訴院の第二審判決に對する上告、及び控訴院の決定命令に對する抗告事件、B第一審としては刑法第二編第一章に揭げたる重罪、幷に皇族の犯したる罪にして、禁錮又は更に重き刑に處せらるべきものの、豫審及び裁判なりとす。(裁構法一四條乃至一七條、二六乃至二八、三七、三八、五〇條、民訴法一條)
- 英
- Material competency
- 独
- sachliche Gerichtsbarkeit
- 仏
- Compétence matérielle
支分權
(しぶんけん)或る物權の一部が、其權利者以外の他人に屬する場合に、此他人の有する權利を其權利の支分權と云ふ、例へば土地の所有權は、法令の範圍に於て之を使用收益處分するの權利なるも、この上に地上權又は永小作權を設定したるときは、土地所有者の使用の權利は、茲に制限さるるに至る、故に地上權、永小作權の如きは、所有權の支分權なりと、其説の是非は免に角、斯くの如く一の權利の内容を、他の權利をして有せしめ、原權利それが爲めに制限せらるるときは、其の他の權利を支分權なりと云ふなり、其の意蓋し支派分岐の權利と云ふ意なりとす。
紙幣
(しへい)紙幣には、法律上に於ける紙幣と、經濟上に於ける紙幣との區別あり、法律上に於ける紙幣と云ふは、法規の力によりて、貨幣として強制通用力を認められたる辨濟の具を云ふ、貨幣の觀念には、其材料の如何に關係なし、法律上の要點は法規によりて貨幣として公認するにあり、故に紙片と雖も、法規により強制通用力を認むるときは、法律上の意義に於ては貨幣たる事を得べし、而して經濟上の紙幣とは、一定の價格を以て事實上に貨幣として通用する、總べての無利子、無期限、無記名債券を包含す、法律上の紙幣は、債券にはあらしずて、其一定價格が、信用によりて維持せらるるにあらず、唯法規の力によりて維持せるるのみ、貨幣の所有者は、債權者に非ず、之れを發行する國家は債務者にあらず、之に反して經濟上の意義に於ける貨幣は、純然たる債權證書にして、其債券は一定の辨濟期を有せざるもの也、唯所持者の請求により、發行者が何時にても之を其額面金額と交換することを約するものなり、此約束に對する信用に基き、其證券が事實上貨幣の如くに通用するのみ、其價格の維持せらるる所以は法規の力にあらずして、債務者に對する信用にあるなり、法律上の紙幣は進步したる社會には存在すべからず、我國法も全く之を認めざるなり、紙幣の國法上に於て認めらるるものは、唯經濟上の意味に於ける紙幣のみ、之を兌換銀行券とす、兌換銀行券は、銀行より發行する無利子無記名の債權證書にして、其所持者の請求により、何時にても其額面金額と交換するを要するものを云ふ、兌換銀行券の發行は日本銀行の特權に屬す。
- 英
- Paper money
- 独
- Papiergeld
- 仏
- Papier-monnaie
紙幣交換基金特別會計法
(しへいかうくわんききんとくべつくわいけいはふ)明治二三年法律第二四號を以て定められたる所にして、從來政府に於て發行せられたる紙幣を廢止する爲に、紙幣交換基金を置き、漸次之を交換せしむるものとし、政府所有の準備金一千萬圓を以て其基金に組入れ、之に政府は、日本銀行より貳千貳百萬圖を限りて借入し、交換基金に組入るるものとす、此交換基金の會計は特別として、一般の歳入歳出と區分すべきもの也、而して每年度に於て、交換基金の交換未濟となりたるものは、漸次之を翌年度へ繰越すべきものと定められたり。
- 英
- Law of special account of fund of exchange of govern-ment currency
- 独
- Specialrechnungsgesetz vom Tauschfonds des Papiergeldes
- 仏
- Règles des comptes spécials du fonds du change des papier-monnaies
事變
(じへん)廣く事變と稱するときは、天變又は事爲にして、其事件重大なるものを意味す、各種の法律に於て「天災其他避くべからざる事變により云々」又は「天災又は意外の事變の爲め云々」とあるは此用例にして、共に不可抗力の例示なり、次に戰爭に相對するの語として事變と稱するときは、未だ戰爭に至らざる重大なる爭亂を意味するものにして、此意味に於ては、彼の天災は之を含まざるもの也、戒嚴令に「戰時若くは事變に際し云々」とある此用例とす。(民訴一七四條、徵兵令七條、戒嚴令一條)
- 英
- Unavoidable event
- 独
- Zufall
- 仏
- Accident
自辨
(じべん)或る事物に對する經費の支出を、自ら負擔することを稱して自辨と云ふ、例へば族費を自辨すと云へば、其旅費を自己に負擔するの意に用ふる場合の如し、海軍主計官練習所條例一條に「學生の日用品は自辨とす」とあるは此用例とす。
- 英
- One's own expense
- 独
- eigene Kosten
- 仏
- Dépens de soi-même
鹽專賣
(しほせんばい)鹽專賣は、我政府が一定の收入を得るの目的を以て、專賣法により政府自ら鹽專賣權を有し、其專賣を爲すものにして、明治三八年六月より實施せられたる所也、鹽專賣法の示す所によれば、政府は鹽の專賣權を獨占するものにして、便宜の地に鹽取扱所を設置し、鹽の收納及び賣渡の事務を取扱ふものとす、鹽は政府又は政府の命を受けたる者にあらざれば、之を外國より輸入し、又は本法を施行せざる地より移入する事を得ざる者とす、又政府の許可を受けたるものにあらざれば、之を製造することを得ず、而して政府より賣下げたる鹽にあらざれば之を所有し、讓渡し、質入し、又は消費する事を得ず、但し納付期日前若くは正當の事由により納付を遲延したる場合に於て、又は製造者の自家用にするものは此限にあらず、政府は製鹽地の區域又は鹽の製造期間、若くは生産高を制限する事を得るものとす、鹽製造者の製造したる鹽は、政府に之を收納し、其賠償價格は政府に於て定め豫め告示すべきものとす、鹽を製造せむとする者は、製鹽の方法、採鹹地名、地番、製鹽段別、製鹽場、貯藏場及び一年の製産見込高を定め政府に申請して許可を受くべし、之を變更したるときも同樣とす、鹽の製造業と、鹽の賣買業とは、同一の場所に於て之を相兼ぬることを得ず、相續によりて鹽の製造業を承繼したるときは、其旨を政府に屆出で、又其他の事由によりて鹽製造業を承繼せんとするときは、政府の許可を受くるにあらざれば之を爲す事を得ず、製造者が其鹽の製造を廢止せんとする時は、少くとも一ケ月前に、政府に申告すべきものとす、鹽製造者が鹽の製造を爲したるときは、總べて之れを政府に納入せざるべからず、此場合に於ては、政府は鑑定人をして、其品質を鑑定せしめ、相當の賠償金を交付する者なり、前項の鑑定に對して不服あるものは、再鑑定を求むる事を得、鹽の賣渡定價は、政府に於て之を定む、此定價は、賠償金を交附して收納したる鹽に付きては、賣渡當時の品質に相當する賠償金に、一石に付き貳圓五十錢、又は百斤に付き一圓四拾八錢の割合の金額を加算したるものを越へて定むる事を得ざるものとす、然れども外國に輸出するもの、及び命令を以て指定する用途に使用する鹽に對しては、前示に拘はらず特別の定價を以て之を賣渡すことを得るものとす、政府は、別に命令を以て定めたる數量以上にあらざれば、鹽の賣渡を爲さず、鹽賣買業者は鹽に他物を混和して販賣する事を得ず、又賣買業者は帳簿を調製し、政府の指示に從ひ、營業に關する要件を記載せざるべからず、鹽專賣に關する當該官吏は、採鹹地、鹽製場、其他鹽の所在と認むる場所に立入り、總べての鹽に關する事項を檢責する事を得べし、監督上必要と認むるときは、右の物件に封印を施すことを得べし。(三八年一月法一一號)
- 英
- Salt monopoly
- 独
- Salzmonopol
- 仏
- Monopole de sel
鹽の賠償價格
(しほのばいしやうかかく)鹽專賣法の定むる所により、鹽製造者より政府に納入する鹽に對して交付せらる所の賠償價格を、鹽の賠償價格と云ふ、其價額は豫め政府に於て告示すべきものにして、製鹽者が納入するときに、政府は鑑定人をして其價格を鑑定せしむるものとす、其鑑定に對して不服あるものは、再鑑定を請求することを得るもの也。(鹽專賣法參照)
- 英
- Value of indemnity of salt
- 独
- Ersatzwerth des Salzes
- 仏
- Valeur de l'indemnité de sel
始末書
(しまつしよう)或る行爲の始めより終りに至る迄の、一切の始末結果を記載して作成する文書を始末書と云ふ、例へば公判結末書の如し。(刑法附則三條)
審案
(しんあん)或る事物に對して之を審理し、且つ考案することを審案と云ふ、例へば刑法第八〇條に於て「罪を犯すとき十二歳以上十六歳に滿たざる者は、其所爲の是非を辨別したると否とを審案し云々」と云ふ場合の如し。
人格
(しんかく)法律上完全なる意思活動の能力を稱して人格と云ふ、法律が各人の意思の侵犯を禁ずる範圍内に於て、各自が自己の生存目的の發達を遂ぐる爲めに、意思活動の能力を有す、是即ち人格也、故に人格の第一義としては、法律が各人の意思の侵犯を禁ずる範圍に於て、人に存する意思活動の能力なりと云ふべし、國家は素より法律を變更して、その意思活動の範圍を增減、又は縮滅することを得るも、現時文明國の通義としては、人格を縮滅して、人を奴隷となすことを敢てせざるなり、從つて國家又は個人が、其意思の範圍を超えて、他人の意思範圍を侵犯するを禁ずるもの也、否進んで各自をして、意思を主張せしむる權利を與ふること多きものとす、茲に於て乎知る、人格は權利を伴ふべき主體たるものなるを、されど意思範圍の全部に渉りて、常に之を主張し得べき權利を伴ふものにあらず、法律は、單に他人の意思が、各自の意思範圍を侵犯するを禁ずるのみにて、敢て各自に自己の意思を主張し、他人の侵犯を攻擊するを許さざる事あるもの也、次に人格の第二義としては、人格は自存の目的の爲に、法律が之を認めて、保護する意思活動の能力なりと云ふべし、夫れ人格は自存の目的に於ける發達を期して、此法律生活の一主體として存在す、自存の目的なくんば人格あらず、機關が機關としてその人格を有せざるは素よりその所なり、茲に注意すべきは、人格を意思活動の能力なりと云ふも、意思そのもの又は意思活動其ものと混同せざらんこと是なり、抑も意思は内界に於ける精神作用たり、されど法律上に於ては其れが認識せらべく、非物的過程として現はれたる時に於て、之を意思とし、過程として認識せらるべく發動せられずんば、之を論ずる用なき也、偖此意思なるものは、常に人格に伴ふべきものかと云ふに、法律上に於ては必ずしも然らざるものの如し、人格の存する所、必ずや修養ある意思の存するは、他の學理に於ては眞理なるも、法律上に於ては爾く斷言すべきにあらず、彼の財團の如きは、自然人に於けるが如き意思なき也、又意思なき未成年者又然り、されど法律上之を補充するの方法を備へて、斯くの如き者も尚人格者たるを妨げず、さらば人格は必ず意思ある者に限らず、意思の補充の途ある者、即ち意思活動の能力ある所に人格存すと云ふを得べけん、之を要するに、人格は法によりて全部者と認められたる意思活動の能力なりと云ふべし、現今法制の下に於ては、人格の賦與を一切の人類に限り、或る限定せられたる範圍内に於て、之を人類にあらざる者に賦與す、法律によりて人格を有する人類を自然人と云ひ、現行民法に於ては單に之を人と稱す、人類以外にして、人格を有するものは即ち法人とす、右の理由により、人格者は之を自然人、及び法人の二種となすことを得べき也。
- 英
- Personality
- 独
- Persönlichkeit
- 仏
- Personnalité
人格權
(じんかくけん)人格權は、人格と分離することを得ざるものを目的とする權利なり、人格權の目的は、人格と終始するものにして、須叟も之と離るることを得ず、故に人格を滅失するにあらざれば、之を消滅することを得ず、例へば生命身體の如きは、人格と分離することを得ざるもの也、其上に有する生命權、身體權の如きは、人格權に屬するものとす、右の如く人格權の目的は、人格と終始するものなるが故に、享有者が之を處分する事を得ず、例へば人にして生命を抛棄し、身體を讓渡するが如きは不能の事なりとす、人格權は之を天賦の人權と混同すべからず、人類は法律を離れて生存するを得れども、人格權は法の賦與するもの也、人格權は當然人に件ふものにあらずして、法律の創設物なる點に於て、毫も他の權利と異るなき也、又人格權は公法上の規定によりて生ずる所の公權と混同せざらんを要す、茲に人格權と稱するは、私法の關係に於て存するを云ふものにして、同一の法律利益が、公法上の關係に於て保護せらるると同時に、私法上の關係に於て保護せらるる事ありと雖も、公法上の關係に於て、其上に存する權利は、茲に所謂人格權にあらざる也、我現行民法は、其法條の正面に於て、明に人格權なる文字を認めず、然れども之を侵害することが、私法上の不法行爲と爲ることは明なり、正面より規定せられざるが故に、私法上の權利の範圍外なりと云ふは誤なり。(權利の部參照)
- 英
- Personal right
- 独
- Persönlich-keitsrecht
- 仏
- Droit de la personnalité
新株
(しんかぶ)株式會社又は株式合資會社に於て、株金金額拂込後に、其資本を增加する爲め、新に發行する株式を新株と稱す、□一新株發行の場合、新株の發行は、會社が其前株式の全額拂込を終り、而して資本を增加する必要ある場合に發行する事を得るものにして、前株の拂込みなき場合、及び資本を增加する爲にせるに非ざる場合は、之を發行することを得ざるものとす、□二新株發行に關する手續、新株發行の手續は、大體に於て會社創立の場合と異らず、新株總數の引受けありたる時は、取締役は、遲滯なく各株につき、第一回の拂込みを爲さしめ、其拂込みありたる時は、取締役は株主總會を招集し、之に對して新株發行に關する事項を報告せざるべからず、其總會に於て、監査役は第一に新株總數の引受けありたるや否や、第二に第一回の拂込みを終りたる否や、第三に金錢以外の財産を以て、出資の目的と爲したるものありたるときは、其財産に對して與ふる株式の數が正當なるや否やの三事項を調査し、之を總會に報告せざるべからず、又株主總會も、前項の調査を爲さしむる爲めに、特に檢査役を選任して、其調査報告を爲さしむることを得るものとす、而して其總會終結の日より二週間内に、本店及び支店の所在地に於て、□一增加したる資本の總額、□二資本增加の決議の年月日、□三各新株につき拂込みたる株金額の三事項を、必ず登記せざるべからず、且つ其登記を了する迄は、其新株券の發行、及新株の讓渡又は其豫約を爲すことを得ざるもの也、其他は會社設立の場合に準ずべきものとす、新株發行の場合に於ては、會社は優先株を發行するを得るものとす、(優先株の部參照)つぎに新株發行の際に生ずる一問題は、新株發行の場合に於て、株主總會が從來の株式を有する株主に、新株を舊株數に應じて引受けしむべきことを決議せるときは、其效力如何のこと之なり、此場合は、二個に觀察することを得べし、即ち會社の利益多大なる場合、及び會社の損失のみ多き場合これなり、前者の場合に於ては、舊株主も喜びて新株を引受くべく、寧ろ之を引受くるを以て、一の優先權と見做すべきが故に、何等の問題をも生せずして止むべしと雖も、これに反して後者の場合に於ては、之に同意せざるの株主あるや必せり、此場合に總會の決議は、同意せざる株主に對して如何なる效力を有すべきや、抑も總會の決議は、會社内部の意思の決定也、故に適法の手續に於て爲されたるに於ては、内部に關しては勿論有效なりと云はざるべからず、然れども外部に對しては、全く其效力を及ぼす事なし、何となれば、株主は其引受け又は讓受けたる金額を限度として、會社に對し拂込の責任を負擔するものにして、其他に何等の義務を負擔するものにあらざれば也、之を要するに、同意したる株主に對しては、斯くの如き決議を實行するを得べしと雖も、之に不同意を與へたる株主に對しては、之を強制するの途なく、畢竟實行することを得ざるに了はるべきものとす。(商二一〇條乃至二一八條)
- 英
- New shares
- 独
- neue Aktien
- 仏
- Action nouvelle
新株券
(しんかぶけん)會社が資本增加の場合に發行したる、新株に對する株券を新株券と云ふ。(商二一七條二項)
- 英
- Certificates for new shares
- 独
- Aktienscheine zur neuen Aktien
- 仏
- Certificat de l'action nouvelle
新舊比照例
(しんきうひせうれい)明治一四年第八一號布告を以て公布せられたる所にして、現行刑法と舊刑法との適用上の關係を定めたる法規とす、されど現今は、最早其時代の事件存せず、然らざれば時效に係りて、新舊比照の問題は生ぜざるが故に、殆ど廢法に歸したるものと云ふべし。
- 英
- Contrast of new and old laws
- 独
- Kontrast zwischen neuem Gesetze und altem Gesetze
- 仏
- Contraste du droit nouveau et du droit vieux
事務規程
(じむきてい)國家事務の取扱手續等を定めたる規則を事務規程と云ふ、例へば樞密院官制及事務規程に「事務規程」とあるが如し。
- 英
- Business rule
- 独
- Geschäfts-ordnung
- 仏
- Règles des affaires
審級
(しんきふ)裁判所に於て或る事件の審理を爲すべき訴訟上の一階級を審級と云ふ、例へは第一審級、第二審級等と云ふが如し、而して一審級と云ふは、訴の起されたるときより、其審級に於ける終局判決ある迄の間の手續を總稱するものとす。(民訴八九條)
- 英
- Stages of trial
- 独
- Instanz
- 仏
- Etage du jugement
神宮司廳官制
(じんぐうしちやうくわんせい)明治二九年勅令第三七一號を以て公布せられし所に係り、其規定によれば、神宮司廳には、祭主一人、大宮司一人、少宮司一人、禰宜十人、權禰宜二十人、宮掌四十人を以て其職員となし、祭主は之を親任官とし、皇族を以て之に任じ、大御手代として奉齋し、祭事を管理するものとす、但し公爵を以て之に補せらるることあるものとす、大宮司は、勅任又は奏任とし、祭主の命を受けて祭祀に奉仕し、諄辭を奏讀し、内務大臣の指揮監督を受けて、所部の職員を統督し、廳中の事務を管理す、又廳中に事務を分掌する爲めに、課を置き、及び庶務の細則を設くることを得るものとす、少宮司は之を奏任とし、大宮司を佐けて祭祀に奉仕し、廳中の事務を整理す、且大宮司事故あるときは、其事務を代理するもの也、禰宜は之を奏任とし、大宮司又は少宮司の命を受けて神前に祇候し、神膳を供徹し、殿内一切の事を辨じ、廳中の庶務に從事するものとす、權禰宜は之を判任とし、上官の指揮を受けて神饌を調理し、其の他祭事、及び庶務に從事す、宮掌は之を判任とし、上官の指揮を受けて祭事、及び庶務に從事するものなり。
- 英
- Government organization of shrines office
- 独
- Amtsordnung der Shinto-Behörde
- 仏
- Organisation du bureau de la châsse
神官神職服制
(しんくわんしんしよくふくせい)明治二七年勅令第六號を以て定められたる所にして、神官神職の服制は、別表圖の如く定む(圖は略す)、而して其制服は、正服、畧服、及び齊服の三種とし、正服は大禮の場合に著用する者にして、大禮とは天皇、三后、皇太子、皇太孫、御參拜、勅使奉幤、大祭、朝拜、參賀及び謁見を云ふ、略服は、小禮の場合に著用するものにして、小禮とは每月恒例小祭、月拜等を云ふ、齊服は公式の祭祀に著用するものにして、朝拜、參賀、及び謁見を除くの外、正服に換用することを得るもの也。
- 英
- Uniform system of Shin-to officers
- 独
- Amtstrachtordnung der Shin-to-Beamten
- 仏
- Système de la coutume des officiers de Shintô
事務管理
(じむくわんり)事務管理とは、他人の爲めに他人の事務を管理するの行爲にして、所謂好意上他人の事務を管掌するを云ふ、管理するものを指して管理者と云ひ、管理せらるる他人を指して本人と云ふ、事務管理なるものは、我民法上契約以外の原因より生ずる債權の發生原因にして、從來の立法例によるときは、事務管理は、獨立なる債權の發生原因と認められずして、不當利得、又は不法行爲中に包含せられたるもの也、これ義務なくして他人の事に干渉するは一の過失なり、又一の不法なりとの觀念に出でたるが故とす、然れども今日の如く交通頻繁となり、複雜を極むるに至りては、委任なくして他人の事務に干渉する事あるも、啻に不法なりと認めざるのみならず、反つて管理せらるる本人の爲めには便宜なるべきを以て、不法行爲なりとなすべきにあらず、又不當利得の債權者よりは、一層事務管理者を保護せざるべからざるものなるを以て、不當利得、不法行爲と別立せしめて、一の債權發生の原因となしたるものとす、而して事務管理の意義は、前示したる所にして、之を一層分析して説明すれば、□一他人の爲めに他人の事務を管理するもの也、自己の爲めにする意見を以て爲したる行爲の結果が、偶々他人のすべき事務に對して利益を及ぼすことありとするも、そは事務管理を以て論ずることを得ざるなり、□二事務管理は、本人の事務を管理することを必要とするものにして、縱令其意思は本人の爲めにするものと雖も、實際に其事務は管理者の事務にして、其本人の爲めとならざるときは、事務管理とならざるものとす、然れど事務管理は、本人の何某たることを知ると知らざるとに關係なく、又其本人に錯誤ある場合、例へば本人が甲なりと思ひしに、偶々乙なりし場合と雖も、事務管理を成立するを妨げざるものとす、□三事務管理は義務なくして、他人の事務の管理を始むることを要す、故に契約上、法律上、又は職務上他人の事務を管理する義務ある者が、其事務を管理するが如きは、事務管理にあらざるなり、何等の義務なくして、他人の事務の管理を始めたる場合のみ、事務管理は成立するものとす、尤も事務管理は一の債務關係發生の原因なれば、終始法律上の義務なきものとするにあらず、後に説明するが如く、管理を繼續する義務を生ずるは勿論なり、唯管理に著手する始めに於て、義務なしと云ふに過ぎざるものなり、次に事務管理に關する法律上の效力は、主として管理者と本人との間に於て生ずる權利義務の關係也、(甲)管理者の義務、第一に管理を爲すの義務なり、舊民法に於ては、管理者の第一の義務を利得の返還、管理の繼續と爲せるも、之等の義務は、寧ろ第二次に位する義務にして、之によりて生ずる義務は、第一の管理を適當になすの義務なりと謂はざるべからず、故に新民法は、事務管理より生ずる本來の義務は、本人の爲めに本人の事務を適當に處理すべき義務なりと定めたり、而して其適當なる方法とは、如何なる方法を指すやは事實問題なれども、最も本人の利益に適すべき方法は、即ち適當なる方法と云ふことを得べし、故に若し管理者が明かに本人の意思を知りたるか、又本人の意思を容易に知り得べかりし時は、其意思に從ひて管理を爲すべきものとす、蓋し本人の意思に從ふは、最も本人の利益に適すべき良法なりといふべきが故なり、故に假令他に於て、本人の多くの利益となるべき方法ありとするも、其方法を執ることを要せず、本人の意思に從ふて遂行して可なるものとす、爰を以て、若し事務管理者が、之等の義務に背き管理したるが爲めに、本人に損害を及ぼしたるときは、其損害を賠償せさざるべからず、れど本人の身體、名譽、若くは財産に對する急迫なる危害の存する時に於て、之を免れんが爲めに事務を管理する場合に於ては、惡意、又は重大なる過失によりて生じたる損害を賠償するの責任あるのみ、何等此他に責任なきものとす、これ一の例外なり、第二には、通知の義務なりとす、管理者は本人の意思に從ひて、管理を爲すべきものなることは前に述べたる所の如し、既に然りとせば、管理者は、管理を初めたることを遲滯なく本人に通知して、其意思の存する所を管理者に知らしむるの方法を採らしむるは、自然の順序なり、是管理者をして本人の知れたるときは、本人に通知を爲さしむるの義務を負はしめたる所以とす、尤も本人が既に其事實を知りたる場合は、之を知らしむるの必要なきを以て、通知するに及ばず、第三には管理繼續の義務なりとす、他人の事務を管理する義務なきに拘はらず、管理を始めたる以上は、之を繼續せざるべからざるの義務を生ずるは、當然の事なりとす、何となれば中途にして管理を廢するは、寧ろ管理を爲さざるが爲め蒙むるべき不利益より一層過大なる損害を生ずることあり、又或は管理者が管理を始めざれば、他の管理者ありて、管理を爲したるやも測り難く、結局中途に事を廢するは、本人の爲め不利益を及ぼすこと大なるを以て也、これ我民法が、本人、相續人又は法定代理人が、管理を爲す事を得るに至る迄、管理を繼續せざるべからざるものと規定したる所以也、尤も其管理を繼續することが本人の意思に反し、若くは本人の爲め、不利益なること明瞭なるときは、管理を繼續すべきものにあらず、何となれば、斯かる場合にも猶管理を繼續すべきものとすれば、事務管理の本質を沒却するに至るを以て也、第四には物の引渡、權利の移轉、賠償の義務也とす、事務管理は委任の鑄型とも謂ふべき者なるを以て、委任の規定を適用すべきものにして、即ち事務管理の狀況を報告し、管理するによりて受取りたる金品を引渡し、又得たる權利を移付せざるべからず、又之等の引渡移轉を爲さざりしが爲め、本人に損害を及ぼしたるときは、其賠償を爲さざるべからざるもの也、(乙)管理者の權利、管理者の權利は、其一面に於て本人の義務たるべきものなり、管理者が本人の意思に反せずして、本人の爲めに事務を管理し、これが爲めに有益なる費用を費したるときは、本人に對して其償還を請求することを得るは當然なりとす、又本人の爲め、事務管理上有益なる債務を負擔したるときは、本人をして返濟を爲さしむるか、若し又其債務が返濟期にあらざるときは、本人をして相當の擔保を供せしむることを得るものとす、これを要するに、管理行爲の爲め有益なる費用、及び債務は、皆これ本人の爲めに必要なるを以て、本人に於て支辨するは至當の事なり、然れども有益ならざるものは、假令管理の爲めに支出したるものなりと雖も、本人に於て支辨するを要せず、又管理者は委任と異り、利息の請求、賠償の請求は爲す事を得ざるなり、斯くの如く本人の意思に反せずして、適當に事務を管理したるときに於ては、其管理の爲めに事實上必要なる費用の償還を求むることを得れども、これに反して管理者が、本人の意思に反して管理を爲したるときは、これ適當なる管理と云ふことを得ざるを以て、假令管理者は有益なる費用を支出し、有益なる債務を負擔するも、其全部を請求する事を得ざるなり、唯本人が請求を受けたる當時に於て、現實受くる所の利益の限度に於て、償還を請求するの權利あるに過ぎざるなり。(民六九七條乃至七〇一條)
- 英
- Business management
- 独
- Geschäftsführung ohne Auftrag
- 仏
- Direc-tion des affaires
進化論
(しんくわろん)進化論は、元來生物學上の一原理なるが、進化は宇宙の一大事實なりと呼號せられて以來、人間の思想、學問、宗教、道德の上に迄大變革を與へ、近來の大發見として政治學、社會學、文學、地質學、天文學は云ふに及ばず、凡百の社會現象、殆ど此學説に律せられざるものなきに至れり、此學説はかく近來の發見なりと雖ども、進化の事實は幾十萬年の昔より既に行はれたるものなり、即ち進化の事實とは、地球上の動物、植物共に其種類を問はず、總べて年々歳々發達變化するものにして、其如何なる點が、如何なる風に然るかは、昔時の事情に依り、もとより確定せず、かくして同一の根元若くは祖先より發生したる子孫も、長き間相異れる方面に向つて變化する時は、其末次第に相遠ざかり、終には何等關係なき如き、全く異れる種類を分出派生すと云ふにあり、こは進化論の發見を俟たず、既に生物界に太初より實際行はれ來りし事實なるが、之を學理上より唱ひ出だせるは實にダーウインなり、尤も氏以前(傾向は既に希臘時代に現はれたり)若くは同代の人にして、此思想を懷くに至りしもの尠からず、佛のラマルク、獨のゲーテ、就中英のスペンサーの如き、諸種の方面より此思想學説を被陳若くは懷抱したりき、ダーウインは生物學上の諸種の事實を蒐集し、之より歸納して全體に通ずる進化の理由を確實に證據立てたり、即ち其生種の起原は、進化の理論を載して詳なり、彼は淘汰の説をなして、人間が飼育する動植物には遺傳性、及び變化性の上に、人間が干渉して一種の淘汰を行ひたる結果、今日見る如き著しき變種を生じたりと、之即ち人爲淘汰にしてかの馬匹改良の如きはその好適例なり、然らば野生の動植物は如何と云ふに、種々の事實よりこれ等にも飼育する動植物と同樣に、遺傳及び變化性を見出すことを得べく、從つてこれに一種の淘汰加はらば、恰も飼育動植物に於ける人爲淘汰と同樣なる結果を來たすべし、然るに實際に就て觀察するに、野生動植物の間には、實は人爲淘汰よりも、更に一層劇烈なる淘汰の斷えず行れ居るを見る、之れ即ち自然淘汰なるものにして、此處には生活に適せる者生存を全うするより、代々多數のもの中最も生存に適したる者のみが繁殖することとなる、即ちスペンサーの所謂適者生存てふ事實なり、之等の事實は解剖學、發生學、分布學、又は古生物學等の能く證明する所なりとて、多くの例證を揭げたり。
信教
(しんけう)宗教上の教義を信ずる事を信教と云ふ、信教の自由は、我憲法の明文を以て保障する所にして、歐洲中世時代に於ては、宗教と政治とは相混同せられ、臣民をして強いて或る一定の宗教を信奉せしめ、又臣民にして依然異教を信ずるときは、之を極刑に處したるの例少なからず、一八四八年のウェストファりヤ條約以後、信教の自由は少しく認められ、佛の革命、並に北米の獨立に及び、公然信教の自由を宣言する事となり、遂に今日各國の憲法に於て、其規定を見ざるものなきに至れり、我憲法が如上の明文を認めたるも、亦之等の影響に外ならざる也、而して信教の自由とは、左の五個のものを包含するものとす、イ何人にても己れの信ずる所の宗教を自由に信奉し得ること、即ち宗教撰擇の自由、ロ己れの信ずる所に從ひ、自由に他教に改宗し得ること、ハ何宗教をも信奉せざるの自由を有すること、二己れの信ずる所の宗教の禮拜を家内に於て爲すも、又公の場所に於て爲すも自由なること、ホ他宗の宗教行爲を爲し、又は他宗の神佛を禮拜することを強制せられざることの五目これなり、而して直接間接に此自由を制限するは、憲法に規定したる場合に限るものにして、これ以外に法令を以て制限することは、憲法に違反するもの也、然れども茲に注意すべきは、臣民の義務に反せざる範圍内に於て、信教の自由を認められたる點之なり、例へば人を殺すの宗教、兵役に應ぜざるの宗教等は、之を奉ずるを得ざるものとす。(憲法二八條參照)
- 英
- Religious belief
- 独
- religiöser Glauben
- 仏
- Croyance religieuse
親權
(しんけん)親權は、後見と同じく、我民法が家族權として、無能力者を保護せしめんが爲に認めたる一の制度にして、其性質たるや、未成年者又は獨立の生計を立てざる子に對し、其身上又は財産に關して、法律が父母に對し附與する權利の集合に外ならず、其目的とする所は、主として父母をして其子に對し、負擔せる撫育の義務を盡さしむるに在りとす、抑も親子の情愛は天倫に出づ、法律は此天倫の厚情を利用し、子の年齡未だ自ら自己を管理し、又自己の利益に著眼するに至らざる時、其父母をして子の身上及び財産を管理せしむ、是寧る父母たる者の義務にして、其權利にあらさるなり、父母たる者は、須らく其恩愛に長じ、無形の權力を養ふべく、徒に壓制是事とするが如きを許さず、親權は、決して無限の權力を父母に附與するものにあらざる也、親權を行ふべき者は、父又は母にして、其繼父たると繼母たると、將た嫡母なるとは之を區別せず、然れども後夫が前夫の子に對するとき、母が庶子に對するとき、後妻が前妻の子に對するときにありては、其實子に對すると、寬嚴、輕重の差あるべきは人情の兔れざる所、之に基き、繼父、繼母又は嫡母が親權を行ふ場合に於ては、後見の規定を準用するものとす、次ぎに親權は、其家に在る親の權利にして、法律は、先づ父をして之を行はしめ、父が實際上又は法律上親權を行ふこと能はざる時に限り、母をして之を行はしむ、而して其父又は母が、戸主たると非戸主たるとを問はざるなり、從つて親權は、戸主權と兩立し、父又は母が他家に入りたるときの如き親權を行ふを得ざる也、□一親權の效力、親權の效力は、これを子の身上に對する權と、財産に對する權とに分たざるべからず、(1)子の身上に對する權としては、第一に守護監督の權也、親權を行ふ父又は母は、未成年の子の監護、及び教育を爲す權利を有し、義務を負ふ、之を未成年の子に限りしは、成年の子は、父母の援助を待たずして、自活し得るに依る、而して親權を行ふ者に右の權利あるよりして、下の結果を來す、イ居所指定權、親權を行ふ父又は母が其子を監督守護せんには、自己の便宜により、或は之を左右に置き、或は適當の場所に其居所を定め、父母の允許を受くるにあらずんば、其場所を去ることを得ざらしめざるべからず、隨意に各所に流浪し、所在を暗ますが如き事を許さず、これ即ち未成年の子は、父又は母の指定したる場所に其居所を定むることを要すとせる所以なりとす、ロ兵役出願許否の權、男子十七歳以上となれば、兵役を出願する事を得れども、子の兵役に服すると否とは、其監督、及び教育に關して親の利害に影響する所大なるを以て、未成年の子が兵役を出願するには、父又は母の許可を得ることを必要とす、ハ職業許否の權、子が商工業其他の營業を營まんとするには、未成年の子は親權を行ふ父又は母の許可を受くるにあらざれば職業を營むことを得ず、但し父又は母は未成年の子に職業を營むこを許すとも、後に至り、子が其職業に堪へざるを發見したるときは、其許可を取消し、之を制限することを得るものとす、二次ぎに親權者の有する子の身上に對ずる以上に附隨する權利としては、所謂懲戒權なり、法律は此懲戒權を附與する所以のものは、子の改過遷善を圖り、忠良なる國民を養成せしむるにあり、從つて子の未成年者たると成年者たるとを問はず、必要なる場合に於ては之れを懲戒することを得しむ、而して法律は素より必要なる範圍を越えて子を懲戒することを許すものにあらず、之を懲戒場に入るる必要あるときは、裁判所の許可を得ざるべからず、□二右の外親權を行ふ父又は母は、未成年の子が他家の家族となり、又は他家を相續し、又は婚姻、緣組、離婚、離緣等と爲すに同意を爲すの權利を有するもの也、□二子の財産に對する權、第一に子の財産を管理するの權、親權を行ふ父又は母は、未成年の子の財産を管理するの權利を有し、其之を管理するに當りては、自己の爲めにすると同一の注意を以てする事を要す、而して父母の管理權内に屬すべきは、獨り未成年の子の財産のみならず、未成年の子が其配偶者の財産を管理すべき場合に於ては、其子に代りて、其配偶者の財産をも管理せざるべがらず、親權を行ふ父又は母は、右の如く子の財産を管理するの權利あれども、無償にて子の財産を與ふる第三者が、親權者をして之を管理せしめざる意思を表示したるときは、其財産は、親權者の管理に屬せざるものとす、親權者の有する財産管理權は、親權者の死亡、去家、親權の喪失、母の辭任、子の死亡、又は未成年に達したる等の事由によりて消滅すべし、然れども此場合に於て、急迫の事情ある時は、親權者の子、其相續人、法定代理人が、管理事務を處理する事を得るに至る迄、必要なる處分を爲すことを要し、又管理權の消滅は、其原因親權者に出でたると、其子に出でたるとを問はず、之を相手方に通知し、又は相手方が之を知りたるときにあらざれば、之を以て相手方に對抗することを得ず、又管理消滅の場合に於ては、親權者は遲滯なく、其管理の計算を爲す事を要す、管理の計算とは、財産の收入支出を明かにし、其殘餘を子に引渡すを云ふ、又財産の管理につきて、親權者又は親族會員と、其子との間に生じたる債權は、其管理權消滅の時より、五年間これを行はざるときは、時效によりて消滅す、若し子が未だ成年に達せざる間に、管理權消滅したるときは、其期間は、其子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職したるときより、之を起算するものとす、第二に親權者は、財産に關する法律行爲につき、子を代表するの權を有す、財産に關する法律行爲と云ふは、財産上の權利の得喪に關する一切の行爲を指し、之等の行爲につきては、未成年の子は、常に父又は母により代表せらるるものと云ふを得ず、父母は其子を代表することあり、或は子の自らする行爲に同意を與ふることあり、唯親權者は其子の行爲を目的とする債務を生ずべき場合に於ては、其子の同意を得ることを要するものとす、而して親權者の有する代表權に就きては、父は無制限の權利を有し、其子を代表するを得べしと雖も、母が未成年の子に代りて、左に揭ぐる行爲を爲し、又は其子の之を爲すに同意を與ふるには、親族會の同意を經たる上ならざるべからず、即ち、イ營業を爲すこと、ロ借財又は保證を爲すこと、ハ不動産又は重要なる動産に關する權利の得喪を目的とする行爲を爲すこと、ニ不動産又は重要なる動産に關する和解又は仲裁契約を爲すこと、ホ相續を抛棄すること、へ贈與又は遺贈を拒絶すること、右の如き制限を母に加ふる所以のものは、畢竟男女兩性間に存する特性の然らしむる所なるのみ、我民法は之と同一の理由により、親權を行ふ母は、財産の管理を辭する事を得るものとせり、親權を行ふ母が、右の六項目の行爲を爲すに當り、若し親族會の同意を得ざりしときは、子又は其法定代理人に於て之を取消すことを得、而して母は、假令其親族會の同意を得て、爲したる行爲と雖も、其責を免るることを得ざるなり、第三に子の財産を收益するの權あり、即ち親權を行ふ父又は母は、其管理中にある子の財産より生じたる利益に就きて、之を收益するの權利あり、而して此權利は、親權の喪失と共に消滅し、又此收益は、子の養育、及び財産管理の費用と相殺したる者と見做さる、故に收益と費用との間に過不足ありとも、其差額に就きては互に之を請求するを得ざるなり、蓋し親が子の財産を管理するは一の義務とも云ふべく、報酬を受くる理なかるべきは當然なるが如しと雖も、法律が斯くの如く相殺の推定を下せる所以のもの、畢竟親子間の情誼をして圓滿ならしめんが爲めのみ、右述べたる親權者の有する收益權は、子の全財産の上に存するものにして、其性質の如何を問はず、又其原因の如何を論ぜざるものとす、次ぎに親權の效力として、親權を行ふ父又は母は、其未成年の子に代りて、戸主權、及び親權を代り行ふものなり、戸主は一家の主宰者として、家族に對し、重大なると權利義務とを有す、未成年の子にして一家の戸主たらんか、如何にして、此重責を負ふに足るべきか、且つ其未成年の子は、其家に在る父又は母の親權に服しながら、その家族たる父又は母に對して、戸主權を有せんこと、事實上、及び法律上奇怪なる結果を生ずるに至らん、又未成年の子は、婚姻するも親權を脱することを得ず、從つて自ら子を有して、なほ親權に服するものあり、未成年者にして、自ら親權に服しながら、一方に於ては、親權を行ふを得ること又甚だ不都合なるべし、故に之等の場合に於ては、法律は父又は母をして、戸主權、及び親權の代理行使を爲さしむるものとす、□三親權の喪失、親權消滅の原因に種々あることは前に示せり、今又その親權喪失の宣告による場合を示さん、(1)全部喪失、親權を行ふ父又は母が、親權を濫用し、または著しく不行跡なる時に於ては、裁判所は、子の親族又は檢事の請求により、其親權を剝奪することを得、所謂親權の濫用とは、親權を過度に行ふを云ひ、不行跡とは、操行の紊亂を指稱す、子を毆打拷責し又は制縛し、必要なる給養を與へず、又は職業若くは學問に從事するを得ざらしむるが如きは、前者に屬し、禮義廉耻の何たるを辨ぜず、子に對して淫行を勸誘するが如きは後者に屬す、斯くの如き行爲ある者は、其子を魔道に導き易く、又其子の不利益を釀すべきものなれば、失權の宣告を爲すことを許せり、勿論如何なる場合に親權の濫用ありや、又は著しき不行跡ありやは、一々事實裁判官の査定に俟たざるべからず、而して父が失權の宣告を受けたるときは、母が親權を行ひ、母あらざるときは、又は父と同じく失權の宣告を受けたるときは、茲に後見開始を見るに至るものとす、(2)一部喪失、親權を行ふ父又は母が、管理の失當によりて其子の財産を危くしたるときは、裁判所は子の親族又は檢事の請求により、其管理權を剝奪することを得、以上何れの場合たるとを問はず、親權喪失の原因止みたるときは、裁判所は本人又は其親族の請求により、失權の宣告を取消す事を得るものとす、右の親權の喪失又は失權の取消を裁判所に求むるには、訴の形式を以てすべく、其訴は、親權を行ふ者が、普通裁判籍を有する地の地方裁判所の專屬管轄なりとす、而して之等の請求は、其子をして爲さしめざる所以のものは、親子の名分上許さざる所なるを以てなり。(民八七七條乃至八九九條、人訴三一條參照)
- 英
- Parental power
- 独
- elterliche Gewalt
- 仏
- Pouvoir de parenté
神權
(しんけん)專ら君主の統治權の起原を説明する爲めの一種の見解にして、君主の臣民を統治する權利は、神の委任によりて、當然君主に屬するものなりとなすを謂ひ、近世の政治學、國家學、又は國法學、其他科學的法律學等に於て説明する君主の統治權と其性質を異にし、全く古代若くは中世に行はれたる宗教的感想に基くものなり。
- 英
- Divine right
- 独
- gottliches Recht
- 仏
- Droit divin
人權
(じんけん)人權は、舊民法に於て用ひられたる語にして、人の行爲不行爲を要求するの權利を稱して人權と謂ひたり、然れどもこの用語は、彼の親族法上の權利又は人格權、天賦の人權等と云ふ義と誤らるる虞れあるを以て、新民法は、此語を改めて、債權なる文字を用ひたり、故に現民法の債權と舊民法の人權とは、其内容を同一にするものなり。(民訴二三條二項)
- 英
- Personal right
- 独
- persönliches Recht
- 仏
- Droit personnel
信仰
(しんこう)普通には疑ふ事なく或事を信じて動ぜざる心の有樣を謂ふ、然れども最も多く宗教上に用ひらる、此場合に於ては、吾人人類は、自ら省みて己の力の甚だ微弱なることを感じ、人力以上の或る存在、例へば神の如きに向つて絶對に體任し、一身を委ねて以て自己心内の平和と慰籍とを求むるを謂ふ、但し各人の對象とする絶對者は、人により各其内容と意義とを異にし、動物を以てするものあり、偶像を以てするものあり、唯一神を以てするものの中にても、其唯一神を人格的に見るものと、理體と考ふるものある等、決して同樣なるものにあらず、次に信仰と智識との關係は、後者の理性を根據として、飽迄究理的に何等の神秘てふ如き事實を許さざるに對し、前者は情意の經驗の上に、神秘てふ如き事實の認めて、之を智識の範圍以上となし、一に體任を以て生命となすの差あり、されど宗教上の信仰は、智識の進步と共に深遠高尚を致すものにして、眞正なる智識と眞正なる信仰とは、常にしかく矛盾するものにあらず、信仰は、眞正なる智識の指導によりて、能く迷信たるを免るべく、智識は又堅き信仰を持するによりて、始めて其眞に智識たるの用を達する事を得べし、かく兩者は相互作用をなすと雖ども、兩者の本領は、確實に其處を異にして、相互に侵されざるの領分を分有すと謂はざるべからず、即ち學者宗教家は、各自其本分を超えて、他を全く貶し去るは、甚だ其當を得ざる者と謂ふべき也、吾人は學理によりて、終に得べからざりし或る者を信仰によりて得たる多くの人を見たり、有名なるゴェーテのフェウストの如き最後の安心立命は、終に宗教の信仰によりて、求むるの外なしとするを何等無意義の囈言となすを得ざるなり、これ確かに人生の眞面目なる一大事實なればなり。
- 英
- Belief
- 独
- Glaube
- 仏
- Foi
申告
(しんこく)一私人が或る事實を官廳に告知することを稱して申告と云ふ、如何なる場合に限るやは一槪にいふことを得ず、例へば所得額を申告するが如き、又囚人が司獄官吏の處置に對し、苦情を訴へんとするときに、その事情を封書又は口述を以て、巡閲官吏に申告するが如きこの例なり。(所得税法五〇條、關税法六三條、監獄則五〇條)
- 英
- Complaint
- 独
- Meldung
- 仏
- Plainte
清國韓國在勤警部特別任用令
(しんこくかんこくざいきんけいぶとくべつにんようれい)明治二九年勅令第二七號を以て定められたる所にして、同令によれば、公使館書記生又は領事館書記生たるの資格を有する者は、清國又は朝鮮國在勸警部に任用することを得べく、其任用せられたる警部にして、在職滿二年以上の者は、外務省判任官に任用せらるるを得、清國韓國に在勤の巡査にして、滿三年以上奉職し、現に在職中のものは、文官普通試驗委員の詮衡を經て、同國在勤の警部に任用することを得るものなり。
- 英
- Ordinance of special appointment of police inspector resident in China and Korea
- 独
- Special-anstellungsordnung der Polizeioffiziere in China und Korea
- 仏
- Ordonnance de la nomination spéciale des inspecteurs de police eu Chine et Corée
清國韓國在留帝國臣民取締法
(しんこくかんこくざいりうていこくしんみんとりしまりはふ)明治二九年四月法律第八〇號を以て公にせられたる所にして、其規定する所によれば、清國及び韓國在留の領事は、在留の帝國臣民にして、該地方の安寧秩序を防害せんとし、又は該地の風俗を壊亂せんとする者あるとき、一年以上三年以下在留を禁示すべきものとし、其在留禁止の命を受けたるものは、十五日以内に退去せざるべがらず、若し右の期間内に退去し難き正當の理由ありて、其旨を申立つるときは、領事は相當の猶豫期間を與ふることを得るものとす、在留禁止の命令を受けたるものが、其命令に對して不服あるときは、命令を受けたる日より三日以内に領事を經て、外務大臣若くは駐劄帝國公使に、該命令取消の申請を爲すこととを得るものなり、此申請を爲したる場合と雖も、在留禁止命令の執行を停止する效力なきものとす、而して前條の申請ありたるときは、外務大臣若くは帝國公使は、其事實を審査し、領事の命令を認可し、若くは取消すべき命令を爲すべきものにして、此命令は即時に確定の效力を有するものとす、在留を禁止せられたる者が、營業上若くは其他の關係に於て、その地を去り難き事情ありと認むるときは、領事は其期限間相當の保證金を出さしめて、在留を許すことを得るものなり、右の保金證を出して在留の許可を得たるものが、其期間内再び在留禁止の理由となるべき(前示せり)擧動ありと認定せられたるときは、其保證金を沒收し、直に退去を命ずるものとす、何れの場合たるを問はず、在留禁止の命令を受けたるものにして、改悛の狀あるときは、領事は、何時にても其職權を以て、又は所轄地方長官の證明により、該命令を取消すことを得るものとす、退去期間又は猶豫期間に退去せざるもの、及び禁止期限を犯したるものは、十一日以上一月以下の重禁錮に處し、二圓以上百圓以下の罰金を附加せらるるものとす。
- 英
- Law of superintendence of japanese resident in China and Korea
- 独
- Beaufsichtigungs-verordnung der Japanischen in China und Korea
- 仏
- Loi de la surveillance des japonais résidant eu Chine et Corée
親告罪
(しんこくざい)親告罪とは、檢事が公訴を提起するに就き、被害者又は其他の有權者の告訴ありたることを必要とする犯罪をいふ、刑法第一三章祕密を侵すの罪、一七六條乃至一七九條猥褻姦淫の罪、有婦姦罪、暴行罪、過失傷害罪、略取及誘拐の罪、名譽に對する罪等は其例なり、元來公訴なるものは犯罪を證明し、刑を適用することを目的とするものにてし、國家の權力に屬し、其機關たる檢事が、之を提起實行すべき性質のものなり、故に被害者其他一私人の告訴あると否とを問はざるを原則とす、然るに刑法に於て、特に親告罪なるものを認めたる所以のものは、次の如き三箇の理由あるが故なり、第一に、或種類の犯罪は、猥りにこれを世上に公にするが爲め、却て被害者に迷惑を感ぜしむるものあり、例へば姦淫罪若くは誘拐罪の如し、故に先づ被害者の意向に一任し、其反對なき場合に限り、公訴を提起實行することとなりたるもの、第二に、犯罪の成立を認むるに就き、被害者の感情如何は大なる參考となるべきもの也、例へば誹毀罪の如し、固より此種の犯罪と雖も、被害者の廉耻心が其成立の要素となるものにあらず、然れども其感情を聞くと云ふことが、此種の犯罪を審判するにつき、大なる參考となるべきを以て、其告訴を俟つて公訴を受理すべき者となしたる也、第三に、固と公益を害すべき性質のものと雖も、被害者の感情如何によりては、刑事裁例に附することを要せずと認むる事件は、これが爲めに告訴あることを必要となしたり、親告罪に關する法律上要點を説明せんに□一告訴の權利者、親告罪に對する告訴の權利を有するものは、第一に犯罪の被害者なりとす、犯罪の被害者とは、直接に犯罪の要素たるべき損害を受けたる者を指し、即ち犯罪攻擊の目的物たる利益を有する者なりとす、爰を以て、各親告罪の構成要素を明かにしたる後にあらざれば、被害者なるものを定むる能はず、被害者は、親告罪たる罪の性質によりて、必ずしも犯罪當時に於て權利を侵害せられたるものに限らず、例へば特許權侵害の罪の如きは、犯罪後に特許權を讓受けたる者も、亦被害者なり、蓋し特許權の如きは、專用權なるが故に、讓受人も亦現に侵害を受けつつある權利者なればなり、次に告訴の權を有するものは、被害者の外に脅迫罪、略取誘拐者、猥褻姦淫罪に就きても、被害者の親屬なりとす、□二告訴は訴追を求むるの意思表示なり、此表示に就きて、代理人を以てすることを得るは勿論なり、この場合には、代理人は表示のみを代理したるものなれば、代理人の告訴を爲す前に被害者死亡したるときは、告訴は其效なきに至るものとす、何となれば、被害者の死亡と共に、告訴の意思消滅したれば也、□三親告罪の告訴に條件又は制限を附したるときは、告訴は有效なりや否やに就きては數説あれども、此問題は告訴の性質に於て例斷すべきものとす、即ち告訴なるものは、犯罪の訴追を求むる意思なく、故にこれに附加したる條件、又は制限にして、訴追を求むるの意なきものと見做するに至れば、告訴は全く無效なりとす、□四親告罪の告訴は、不可分なり、此不可分の原則は、告訴の目的物が、犯罪行爲たることより生ずるものなり、而して不可分の原則の適用は、告訴を以て申立てたる犯罪行爲と、告訴せられたる人との關係に存せずして、告訴を以て指名せられたるものと、告訴に係る所爲との關係に就きて行はるるものなり、故に告訴せられたるものが、罪責なき事明かなるに至りても、夫れに關係したる者を訴追するに充分なり、又此原則の結果として、一人に對して告訴を爲せば、被告人の總體に對し、訴訟手續を始むることを得るものにして、被害者が、犯罪に加效したる共犯人あるや否やを知り居ることを必要とせざる也、而して又告訴は犯罪に加效したる正犯、從犯、教唆者に及ぶと同じく、其犯罪行爲につきても、同一所爲の全體に及ぶものとす、即ち告訴以後の所爲も同一所爲なりせば、告訴に係るものとす、□五親告罪に於ける告訴の抛棄、告訴の抛棄とは、告訴を爲すの權を有する者が、訴追を欲せずとの意思表示なり、彼の告訴を爲さずして、單に默過するが如きは、抛棄にあらざるなり、而して抛棄の方式は、取下の外、告訴前と雖も、有效にこれを爲すを得べく、又犯人と和解の方法を以てすると、被害者一方のみにてこれを爲すとを問はず、又被告人に對してこれを爲すと、裁判所、又は檢事に對してこれを爲すとに區別なき也、茲に一の問題となるは、被害者が一旦告訴を爲し、公訴提起せられたる後は、告訴を取下ぐることを得るやこれ也、或は告訴は訴追の條件なれば、一旦提起あれば、これと同時に告訴權は消滅して、これを取下ぐるを得ずと云ふものあり、然れども告訴は、起訴の條件のみに止まらず、告訴なければ公訴の實行をも、亦爲すを得ずして、刑訴法第六條の公訴を爲す權云々と云ふ内には、公訴の提起、及び實行を含むものなるが故に、告訴は、訴訟の條件たると同時に判決の條件なりと云はざるべからず、之を以て判決確定する迄は、何時にても告訴を取下ぐる事を得べくして、之刑事訴訟法に於ても、抛棄の時期を制限せざる所以なり、而して告訴抛棄の效力は普通説によれば、其者の有する告訴權を消滅せしむるに止まり、他の告訴權者に影響を及ぼさずと爲す、故に下の如き結果を生ず、(甲)積極の結果としては、告訴權消滅するが故に、公訴權も其條件を失ひて消滅し、科刑權は實行する能はざるに至りて消滅す、裁判所は、免訴を言渡さざるべからず、被害者其他告訴權利者數人ある場合に、其一人の告訴抛棄は、其者のみの告訴權を消滅せしめ、他の被害者の告訴權は消滅せざるが故に、公訴權科刑權は消滅せず、更に他の者より告訴を爲すを得べく、現に繫屬したる訴訟の關係を消滅せしむるに止まるものとす、(乙)消極の結果として、被害者が一旦抛棄したる以上は、再び告訴を爲すことを得ざるもの也、(丙)其他の結果は、共犯の一人に對し、既に確定判決ありたるときは、他の共犯に對して、告訴を取下ぐるを得ざるものとす、これ告訴不可分の原則より來たる當然の結果なりとす。
清國勞働者取締規則
(しんとくらうどうしやとりしまりきそく)明治三二年臺灣總督府令第七四號を以て發布せられたる所にして、同島内に於ける清國勞働者の取締方法を定めたる規則なりとす。
- 英
- Law of superinten-dence of Chinese workmen
- 独
- Beauf-sichtigungsregel der chinesischen Werk-leute
- 仏
- Loi de la surveillance des ouvriers Chinois
審査
(しんさ)或る事物に對して、審理し、調査することを審査と云ふ、例へば特許局に於て、發明品の審査を爲すと云ふ如き、又人の資格を審査すと云ふが如き、この例なり。(議院法二〇條四項、小學校令一六、二六條)
- 英
- Examination
- 独
- Prüfung
- 仏
- Examen
親裁
(しんさい)天皇が自ら法律、勅令、其他の事項を裁可決定せらるることを親裁と云ふ。
- 英
- Imperial sanction
- 独
- kaiserliche Genehmigung
- 仏
- Sanction impériale
震災豫防調査會官制
(しんさいよばうてうさくわいくわんせい)明治二五年勅令第五五號を以て定められたる所にして、同令に示めす所によれば、震災豫防調査會は、文部大臣の監督の下に、震災豫防に關する事項を攻究し、其施行方法を審議するを目的とす、其會には職員として、會長一人、幹事一人、委員二十五人を置き、會長は勅任官を以てこれに充て、委員は理學、及び工學專門の者より、文部大臣の奏請によりて、内閣に於てこれを命ずるものとす、幹事は委員中より、文部大臣の奏請を以て、内閣これを命ず、調査上に臨時必要あるときは、臨時委員を設くることを得べく、臨時委員も前同樣の手續によりて命ずるものとす、會長は一切の事務を總理し、幹事は會長の指導を受けて事務を所理す、右の職員には一年三百圓以内の手當を給することを得べく、特別調査を擔任し勤勞著るしきものあるときは、制限以外の手當をも給することを得るものとす。
- 英
- Government or-ganization of the investigation committee of the precaution for the calamities caused by earthquakes
- 独
- Behördeordnung der Erforschungsgesellschaft von der Vorbau-ung gegen das Elend des Erdbebens
- 仏
- Organisation du comité de l'investigation de la précaution contre la calamité résul-tant du tremblement de terre
親子
(しんし)親子の關係は、或は自然の血緣によりて生じ、或は養子緣組によりて生じ、之等の關係を稱して親子と云ふ、親子の關係は、婚姻に次て一家の構成上之が基本たるべきものにして、此關係は、親族間に於ける最も重大なる事項に屬す、親子間の關係は之を二大別して、實子と養子との二種と爲すことを得、實子は造化自然の妙造にかかり、養子は法律擬制の結果に出づ、即ち實子とは養子に對し、自然の血統に基く子を云ひ、養子とは他人の子を收養して、己れの子となしたるものを云ふ、兩者何れも一等親の親族なりとす。(民七二八條、及び實子、養子緣組の部參照)
- 英
- Parent and children
- 独
- Eltern und Kinder
- 仏
- Parent et enfants
人事
(じんじ)人の身分能力に關する事項を總括して人事と云ふ、例へば人事訴訟と云へば、親族關係に基く人の身分に關する訴訟なるが如し。(陸軍省官制五條三號)
- 英
- Personal affair
- 独
- persönliches Geschäft
- 仏
- Affaires personnelles
人事行政
人事行政とは、人の身分能力に關する行政を總稱す、人事行政は、主として内務行政中に包含せらるる者なれども、其他司法行政中にも、軍事行政中にも散存するものにして、一局部を限りて定義を下すを得ざるものとす。
- 英
- Personal administration
- 独
- persönliche Verwaltung
- 仏
- Administra-tion personnelle
人事訴訟事件
(じんじそしようじけん)人事訴訟事件は、人事訴訟法の支配する所にして、人の身分能力に關する訴訟事件を、總稱するの語なり、例へば婚姻、緣組に關する事件、親子關係事件、相續廢除事件、隱居事件等を總括したるの語なり。
- 英
- Case of personal process
- 独
- persönliche Rechtssache
- 仏
- Cause du procès personnel
人事訴訟手續法
(じんじそしようてつづきはふ)本法は、明治三一年法律第一三號を以て發布せられたる所にして、人の身分能力に關する訴訟の手續を規定したる者とす、今其主要なる點を略記せんに、□一婚姻事件、及び養子緣組事件に關する手續、婚姻の無效若くは取消、離婚、又は夫婦の同居を目的とする訴は、夫が普通裁判籍を有する地、又は其死亡したる時に之を有したる、地方裁判所の管轄に專屬するもの也、但し緣組事件に附帶して、婚姻の取消又は離婚の請求を爲す場合は此限にあらず、夫婦の一方が提起する婚姻の無效、又は取消の訴に於ては、其配偶者を以て相手方とし、若し第三者が提起すべき場合は、夫婦を以て相手方となし、夫婦の一方が死亡したるときは、其生存者のみを以て相手方とす、右によりて其相手方とすべきものが死亡したる後は、檢事を以て相手方とす、次に婚姻事件に就きては、檢事は辯論に立會ひ、て意見を述ぶる事を要するものとす、婚姻の無效の訴、其取消の訴、離婚の訴及び同居の訴は、之を併合し、又は反訴として之を提起することを得るものなり、婚姻事件は第一番、又は控訴審に於ける辯論の終結に至る迄、訴若くはその事由を變更し、之を併合し、又は反訴を提起することを得、養子緣組の無效、若くは、取消、又は離婚を目的とする訴は、養親が普通裁判籍を有する地、又は其死亡の時に於てこれを有したる地の地方裁判所の管轄に專屬す、其他は婚姻に關する事件の場合と大差なし、□二親子關係事件、子の否認、認知、其認知の無效若くは取消、又は民法の規定により、父を定むる事を目的とする訴は、子が普通裁判籍を有する地、又は其死亡の時に之を有したる地の地方裁判所の管轄に專屬す、夫が若し禁治産者なるときは、其後見人は親族會の同意を得て否認の訴を提起することを得、夫が子の出生前又は否認の訴を提起せずして、民法第八二五條(否認の訴は、夫は子の出生を知りたるときより一年内に提起することを要す)の期問内に死亡したるときは、其子の爲めに相續權を害せらるべき者、其他夫の三等親内の血族に限り、否認の訴を提起することを得るなり、次に父を定むることを目的とする訴は、子、母、母の配偶者、又其前配偶者よりこれを提起することを得べく、親權若くは財産管理權の喪失、又は失權の取消を目的とする訴は、親權を行ふものが普通裁判籍を有する地の地方裁判所に提起することを要す、□三相續の廢除、又は取消に關する事件、推定家督相續人若くは推定遺産相續人の廢除、又は其廢除の取消しを目的とする訴は、被相續人が普通裁判籍を有する地、又は其死亡の時に之これ有したる地の地方裁判所に提起するを要す、又廢除の取消を目的とする訴に就きては、廢除によりて推定家督相續人、又は推定遺産相續人となりたるものを以て相手方とす、□四隱居事件、隱居の無效、又は取消を目的とする訴は、隱居者が普通裁判籍を有する地、又は死亡の時に之を有したる地の地方裁判所に提起すべし、此場合に於て、隱居者より提起する時は、家督相續人を以て、又家督相續人が提起するときは、隱居者を以て其相手方となす、第三者が提起するときは右の兩者を以て相手方と爲す也、□五禁治産に關する事件、禁治産の申立は禁治産の宣告を受くべきものが、普通裁判籍を有する地の區裁判所に提起すべきものにして、其申立は、書面又は口頭を以て爲すことを得、裁判所は此申立によりて、手續の開始前に診斷書の提出を命することを得るものにして、凡て禁治産に關する手續は之を公行せざるものとす、右の禁治産事件には、檢事は之に立合ひ、意見を述ぶることを得るものとす、裁判所は申立に表示したる事實、及び證據方法を斟酌し、職權を以て心神の狀況に關する探知、及び必要と認むる證據調べを爲すべきものとす、其宣告は心神の狀況につきて、鑑定人を訊問したる後にあらざれば之を爲すを得ざるなり、禁治産を宣告したる決定は、其法定代理人、又は後見人と爲るべきものに送達を爲すものにして、其送達を受けたる日より效力を生ずるものとし、且つ裁判所は、其宣告を爲したるときは、直に之に公告すべきものとす、次ぎに禁治産の原因已みたることを理由として、其取消を求むる申請は、其宣告請求の場合と同じく、區裁判所に申立つるものなり、□六準禁治産事件に關しては、大體に於て前示したる禁治産事件の規定と大差なし、□七失踪に關する手續、失踪の宣告、又は其取消の申請は、不在者の住所地の區裁判所の管轄に屬し、此申立ありたるときは、裁判所は公示催告を爲すべき者にして、其催告には、不在者は公示催告期日迄に、其生存の屆出でを爲すべく、其屆出を爲ざざるときは、失踪の宣告を爲すべきこと、及び不在者の生死を知る者は、其屆出でを爲すべきことを附記し、其期間は六箇月以上なりとす、檢事は失踪の宣告、または其取消の申立に就き、意思を述べ、且つ審問を爲す場合に、意見を述ぶることを得るものとす、不在者が其生存の屆出でを爲したる場合に於て、申立人が其事實を認めざる時は、判決の確定に至る迄、公示催告手續を中止せざるべからず、失踪宣告ありたる場合に、利害關係人は、之に對して不服を申立つる事を得るものとす、又失踪宣告取消は、其判決に對する不服の訴を以て、之を請求することを得るものなり。
- 英
- Law of personal pro-cess
- 独
- Gesetz vom persönlichen Ver-fahren
- 仏
- Procès personnel
賑恤金
(じんじつきん)不幸の狀況に在るものを救擠慰籍する爲めに、之に惠與する金錢を賑恤金と云ふ、罹災救助金の如き其一例なり、又陸海軍人に給はる恩給の一種に賑恤金なる者あり、即ち陸海軍下士以下の軍人にして、下の事項の一に當るも、輕症にして免除恩給を受けざる者に給與せらるる恩給の一種也、□一戰鬪、戰務の爲め傷痍を受けたる者、又は之に準ずべき原因に基き疾病に罹り、現役を離れたる者、□二戰時平時を問はず公務に依り、又は之に準ずべき原因によりて、疾病に罹り現役を離れたるとき即ち是なり。(軍人恩給法二條)
- 英
- Relief fund
- 独
- Beitrag
- 仏
- Fonds du secours
人事法
(じんじはふ)人の身分能力に關する法規を人事法と云ふ、然れども現時に於て人事法と稱する法典存するにあらず、民法、商法等の人の身分能力に關する規定を凡稱して、人事法とは云ふなり。
- 英
- Personal law
- 独
- persönliches Gesetz
- 仏
- Loi personnelle
人身權
(じんしんけん)人身權は、人格權中に包含せらるる一種の權利の種別にして、生命、身體、榮譽の權利の如く、人の固有の性格より生ずる權利を云ふ、而して人身權は、常に社會一般の人に對する權利にして、特定人に對することなし、此點よりすれば、絶對權に屬すものとす。
- 英
- Personal right
- 独
- persönliches Recht
- 仏
- Droit de la personalité
心神耗弱者
(しんしんこうじやくしや)心神耗弱者とは、未だ全く心神を喪失するに至らずと雖も、精神衰弱して、行爲の利害を辨識する力に乏しき者を云ふ、例へば老衰者、又は病餘の人の如し、換言すれば心論の喪失に至らざる智能の缺損にして、法律的效力を認識するの能力を有するも、智慮淺薄なるが爲めに、充分に利害得失を考慮する力を有せず、故に一定の法律行爲に就きては、之は無能者として保護するの必要あり、我民法は心神耗弱を以て、準禁治産宣告の原因となすことを規定せり、心神耗弱に先天的の者あり、後天的のものあり、其智能生れながらにして普通人に著るしく懸隔せるものあり、斯くの如きは先天的の心神耗弱者也、疾病若くは老衰の爲め智能を減少して、痴狂の範圍に達せざる者あり、斯くの如きは後天的心神耗弱者とす、又心神耗弱に一時的のものあり、持續的の者あり、疾病其他の原因の爲めに、一時智力を缺損するは前者に屬し、原因の如何を問はず、永く通常の狀態を回復するを得ざるものは、後者に屬す、我民法の準禁治産の原因たるべきものは、持續性のものに限り、一時的のものは包含せざるもの也。(民一一條)
- 英
- Weakminded person
- 独
- schwachsinnige Person
- 仏
- Faibles d'esprit
心證
(しんしやう)心證とは訴訟法上に於ける用語にして、裁判官が事件の審理の結果、其心裡に確信を得たる事を稱す、而して訴訟上の判定を爲すにつき、其證據の取捨、及び之が判斷を裁判官の自由に一任するを所謂自由心證主義と云ひ、之に反對するものを心證制限主義と云ふ、我訴訟法は、自由心證主義に則る、されど自由心證主義と雖も、全く無制限に裁判官の自由に一任すべきものにあらず、更言すれば、絶對的無制限のものにあらず、多少制限を受くる所あるに注意せざるべからず、其制限は、即ち下の如し、□一實體上證據と爲す得べきものなるや否やに就いては、實體法の規定に反することを得ず、例へば公證人の作成したる公正證書は、完全證據なることは公證人規則に明言する所なれば、公正證書は、必ず其成立に於ては、確定のものと爲さざるを得ざるが如き場合之也、□二心證は、必ず其訴訟の辯論、及び證據調の結果たることを要す、□三心證は判決を爲すに就き、之が説明を爲すを本則とし、其説明は所謂判決の理由なり。(民訴三〇、二一七、二三六條)
- 英
- Intention
- 独
- Absicht
- 仏
- In-tention
人證
(じんしやう)人證とは、裁判所に於て事件の審理を爲すに當り、人を以て證明の用に供する證據方法を指し、其用に供せられたるものを證人と云ふ、證人に關する法律上の事項は、證人の條の説明に讓る。(民二八九條以下)
- 英
- Testimony of witness
- 独
- Zeugen-beweis
- 仏
- Témoignage personnel
尋常警察
(じんじやうけいさつ)尋常警察は所謂非常警察に對するものにして、平常の事情の下に於て適用せらるる所の警察を云ふ、平常の關係に於て、一般に公共の安寧秩序に對する障害を防止するが爲めにする作用は、尋常警察なり、而して尋常警察は、保安警察に包含せらるるもの也。(保安警察の部參照)
- 英
- Common police
- 独
- gemeine Polizei
- 仏
- Police commune
尋常中學校
(じんじやうちうがくかう)尋常中學校は、男子に須要なる高等普通教育を爲すを目的とする學校にして、中學校令の支配する所とす、同令に規定する所によれば、北海道及各府縣に於ては、土地の情況に應じ、一個以上の中學校を設置せざるべかなず、又文部大臣に於て必要と認むるときは、其設置を命ずることを得るもの也、中學校に關する經費は、北海道、及冲繩縣を除くの外は、各府縣の負擔とす、郡市町村、又は町村學校組合は、土地の情況により須要にして、其區域内の小學教育の施設上に妨なきときに限り、中學校を設置することを得べし、又一私人も中學校令の規定によりて、中學校を設置することを得、何れの場合たるを問はず、中學校の設置廢止は、文部大臣の認可を受くるにあらざれば、之を爲す事を得ず、總べて中學校の修業年限は五年とし、一ケ年以内の補習科を設くることを得、中學校に入學することを得るものは、年齡十二歳以上にして、高等小學校二學年の課程を卒たる者、又は之と同等の學力を有するものならざるべからず、教科書は文部大臣の檢定を經たるものに就きて、地方長官の認可を經て學校長之を定む、但し文部大臣の檢定を經ざる教科書を使用する必要あるときは、地方長官は文部大臣の認可を經て、一時其使用を認可する者とす、中學校の教員は、文部大臣の授與したる教員免許狀を有するものたらざるべからず、但し文部大臣の別に定むる規定によりて、此免許狀を有せざるものを以て之に充つることを得べし。(三二年勅二八號中學校令參照)
- 英
- Ordinary middle school
- 独
- gemeine Mittelschule
- 仏
- École secondaire ordinaire
信書
(しんしよ)或人が特定の人に對して其意思を傳達するの書面を信書と云ふ、信書の秘密は、憲法の明文を以て保障せらるる所にして、法律の特別なる規定に依るにあらざれば、之が秘密を侵さるることなき也、而して信書の秘密が保護せらるるは、發信者が自ら之を秘密にするの意思ある事を推測し得る場合ならざるべからず、葉書の場合の如きは、信書秘密の範圍に包含せらるるものあらず、郵便官吏が他人に洩らすを得ざるは、職務事項に就きは、總べて秘密を守るべき官吏義務によりて生ずる結果に外ならざるなり、信書の秘密は、唯發信人の發信したる時より、受信人の受領に至る迄に負ふのみにして、受信人が已に之を受領の後は、最早信書の性質を失ひ、普通の文書となるなり、故に受信人が受信後之を公にするも、決して信書の秘密を侵したりと云ふ事を得ざるものなり。(憲二六條)
- 英
- Letter
- 独
- Brief
- 仏
- Lettre
親署
(しんしよ)天皇が國家意思決定の方法として、法律命令となるべきものに、親ら御名を署せらることを親署と云ふ、或は其の他の國署勅書に署名せらるることをも親署と云ふ場合あり、等しく國家意思決定の方法たらば親署なりと云ふべし。(公式令一條以下、高等官官等令二條)
- 英
- Majesty's signature
- 独
- kaiser-liche Unterschrift
- 仏
- Signation im-périale
申請
(しんせい)私人が國家又は官廳に對して、或行爲を要求する事を申請と云ふ、例へば裁判所に對して支拂命令の申請を爲し、忌避の申請を爲すが如き、登記所に登記を申請するが如き皆此用例とす。(民訴法三八二條、不動産登記法三五條、刑訴法四二條、私設鐵道法六條)
- 英
- Demand
- 独
- Gesuch
- 仏
- De-mande
人生觀
(じんせいくわん)一言にして人類か此世に生存する其意義、目的、價値に關して下す各人の見解を謂ふ、即ち吾人が此世に生れ出でて、死に到る迄の生活は、萬人種々に其趣を異にすることなるが、吾人これに對して種々の疑問を發せざるを得ず、特に其死に對しば古來人類の最も不可思議とせる處なり、吾人果して何せんが爲めに此世に生じ來たりしや、抑も亦吾人の死は何をか意味する、單に物質の法則を以て甘んずべきものにや、善者榮え、惡人滅ぶてふ事實の強ちに信ぜらるべからざる如きは如何にや、又吾人の生存する宇宙と云ふも泡〓に等しき現象に過ぎずして、吾人は何等の價値なき者、唯單に昏迷して去るべきものにや、夫れ斯くの如く吾人は吾人の生活に關し、生死に關して種々の疑團を起し、何等か其意義、目的、價値に向つて滿足なる解釋を下さずんば止まざらんとす、即かの樂天觀、厭世觀、快樂主義、人道主義、運命觀、本能滿足主義等は、かかる人生の解釋を試みんとして提出せられたる見解也、然れども人生觀は、宇宙觀と共に容易に吾人の氷解を許すべきものにあらず、唯吾人は各人の懷く人生觀の如何によりて、其人の生存の意義行動に深き影響を及ぼすものなるを思ひ、常に健全なる人生觀を抱持するの切要なるを深く感ぜずんばあらざるなり。
- 英
- Life-view
- 独
- Lebensanscha-ung
- 仏
- Vue de la vie
神政府
(しんせいふ)宗教的信仰に依りて國家を組織する政府を云ふ、即ち其政府を神の直轄となすものなれども、神は無形の絶對力なれば、有形的に國家の統治に身を委するを得ず、されば神が直轄すといふも、要するに神の權威を代表せしめたる或者をして、國家を統治せしむといふに過ぎず、而して其代表者たるものは宗教の首長、即ち教首にして、教主は神權を代表し神の資格を以て統治をなす、此政治組織を神政府と稱し、古代に於ける猶太の政體、回々教の政體、更に法王領の政體等の如き皆神政府の好適例なり。
- 英
- Theocracy
- 独
- Theokratie
- 仏
- Théocratie
臣籍
(しんせき)臣民が國家に對して絶對服從の關係にある狀態を臣籍と云ふ、臣民籍又は民籍と云ふに同じ。(皇室典範四四條)
- 英
- Nationality
- 独
- Nationalität
- 仏
- Nationalité
親戚
(しんせき)親戚とは嚴格なる法律語にあらず、法律上親族の關係を稱して俗に親戚と云ふのみ。(外國勳章佩用願規則三條、及び親族の部參照)
- 英
- Kindred
- 独
- Verwandtschaft
- 仏
- Parenté
親族
(しんぞく)親族なる語に二樣の意義あり、狹義に之を解すれば、血統の相連結せる者のみを云ひ、廣義に之を解するときは、單に血統の相連結せる者のみに限らず、婚姻又は養子緣組によりて、血統の連結せる者と均しき關係を有し、且つ法律の認むる範圍内にある者を云ふ、我民法は、彼の廣き意義に於て親族なる語を使用せり、即ち曰く、□一六等親内の血族、□二配偶者、□三三等親内の姻族これ也、是に由りて之を觀れば、親族には血族、配偶者、及び姻族の區別あるを知るべし、今之に就きて簡略に説明せん、□一血族、血族とは血統の連結より生ずるものにして、共同の祖先より出でたる所のものを云ふ、此血族に二種あり、一を直系と云ひ、二を傍系と云ふ、直系とは彼より之に下す所の直線的結合にして、祖父母、父母、子孫の如き是也、傍系とは、共同の祖先より降誕せる人々の間に係る關係にして、例之ば兄弟姉妹の如し、其共同の祖先は即ち父なり、又從兄弟の如し、其共同の祖先は祖父母なればなり、自然の血族は、事實上血統の連結あるものを云ふも、法律は六等親内の血族に限り之を親族と稱せり、蓋し親族の範圍に就きては諸國の法律一ならず、或は無制限に親族關係を認め、或は之に限界を設く、我國に於ても古來親等によりて親族と親族にあらざるものとの區別を認めたること明なるを以て、民法に於ても從來の慣習と便宜とに應じ、六親等内の親族に限り親族となせり、□二配偶者、配偶者とは正當の婚姻によりて生じたる夫婦の關係を云ふ、故に夫婦の一方は互に他の一方の配偶者なりとす、而して此關係は、法律上の要件を充たしたる婚姻によるにあらざれば決して生ずる事なく、設令親族近隣の者が夫婦と認め、實際其實ありとするも、法律上有效の婚姻ならざる以上は、配偶者として親族關係を生ずる事なき也、我國從來蓄妾の風あり、然れども現行民法上かかるものは、決して配偶者と見るべき者にあらざる也、配偶者は、親族關係の源泉と云ふべく、我習慣の上に於ても夫を一等親とし、妻を二等親とせり、且つ配遇者は生涯の侶伴として、最も親密に愛情最も深かき者なれば、之を親族とするは國情に照らし必要なりと云はざるべからず、□三姻族、姻族關係は婚姻によりて、夫婦の一方と其配偶者の血族との間に生ずる關係也、此關係を有するものを姻族と云ふ、血族關係は自然にして、姻族關係に人爲的なり、何となれば、血族の連絡は、造化自然の妙用にかかるも、姻族關係は、婚姻なる人的作用に基けば也、故に婚姻は、姻族關係の本源にして、各結婚者は婚姻により、其配偶者の親族となる、例へば妻の父母兄弟は夫の姻族にして、夫の祖父母、父母、姉妹は妻の姻族たり、唯茲に注意すべきは、姻族關係は、夫婦の一方と、其配偶者の血族との間にのみ存在するものにして、各結婚者の血族間に存するものにあらざる事之也、故に夫の父母と、妻の父母の間には姻族關係なきなり、而して右の姻族は、三等親内に於てのみ之を親族とす、故に妻の高祖父母、又は從兄弟は親族にあらず、斯くの如く法律が親族に就きて、三等親を以て限界としたるは、血族に比し其範圍を減縮したるに外ならざる也、□四準血族、準血族は、本來血統の連絡なきものなれども、或原因の發生したるが爲め、法律上の擬制を以て、血族間に於けると同一の親族關係を生ずる者を云ふものにして、第一に述べたる血族に準ぜらるるもの也、此準血族に三種あり、即ち養子と養親、及び其血族、繼父母と繼子、嫡母と庶子との三是なり、何れも血族者の間に於けると同一の法律上の取扱を受くるものなり、□五親族關係の效果、親族關係は、法律上或は權利を與へ、義務を生じ、又或無能力を來たす、所謂權利を與ふと云ふは、例へば相續の權、扶養を受くるの權、禁治産、準禁治産宣告の請求の權の如し、所謂義務を生ずと云ふは、例へば後見人又は親族會員たるの義務、扶養の義務の如し、所謂無能力を來たすと云ふは、例へば婚姻の障害の如き、又官吏が其親族の爲め、其職務を行ふを得ざるの不能力を來す場合の如し、斯くの如く其效果種々ありと雖も、其詳細は茲に之を述べず、各項目の下に於て之を知られよ、□六親族關係の消滅、血統の相連結せ者の關係即ち血族關係は、固と造化自然の作用に出でたるものなれば、如何なる場合ありと雖も、決して消滅する事なし、假令其者が他家に入るとも、又死亡するとも、一度生じたる關係は永違に存在するものとす、之に反して人爲によりて生じたる親族關係は、又人爲によりて之を消滅せしむるを得、從つて配偶者、姻族、及び準血族の關係は、次に擧ぐる原因によりて消滅す、(1)離婚、配偶者は婚姻によりて親族關係を生じたるものなれば、離婚によりて其關係消滅し、之と同時に配偶者の一方と他の一方の血族との間に於ける姻族關係も、亦消滅すべし、繼父母と繼母と、嫡母と庶子との關係も、もと其父母の婚姻によりて生じたるものなるが故に、父母の離婚によりて消滅するは當然なり、されど婚姻が親族關係を生じたる直接の原因にあらざる時は、離婚によりて親族關係を消滅せしむることなし、例へば夫婦が婚姻前より從兄弟の關係を有するときは、離婚後と雖も亦其以前の關係を有するが如し、(2)離緣、養子は養子緣組によりて、養親、及び其血族との間に親族關係を生じたる者なるが故に、養子の離緣によりて其關係消滅す、勿論養子が離緣せらるるも、若し養家の子女と結婚したるものにして、其結婚が繼續する以上は、配偶者との關係尚存在し、從つて養親との姻族關係尚繼續せらるべし、又養子が離緣と共に離婚したる時と雖も、養家に於ける自己の子女は、依然として自己と血族關係を保有するものとす、(3)去家、去家には三種あり、イ夫婦の一方が死亡したる場合に於て、其生存配偶者が其家を去りたる時、□養親が養家を去りたる時、ハ養子の離緣により養子の配偶者、直系卑屬又は其配偶者が養子と共に、其養家を去りたるときの三場合には、親族關係を消滅せしむ、尤も右イ□の效果は、本家相續、分家、及び廢絶家再興の場合には、親族關係消滅せざるものとす。(民法親族編參照)
- 英
- Family
- 独
- Familie
- 仏
- Famille
親族會
(しんぞくくわい)親族會は、親族又は緣故者を以て組織する團體機關にして、家の爲め、又は親族の要めに重要なる事項を議決するを目的とす、我國從來の慣習上、所謂親族會議なるものあり、未成年者其他の無能力の監督保護に就きて、獻策せる事往々之ありしも、法律上の制度として、親族會を公認せるは、現民法に始まる、親族會は後見の最高機關也、尚夫れのみならず、戸主權を行ふ能はざる戸主に代りて、戸主權を行ひ、或は家督相續人を選定し、或は法定の推定家督相續人の廢除に同意を與へ、又は子の婚姻、緣組、若くは離婚、離緣に同意を爲し、或は又未成年者と親權者と利益相反する行爲に就きて、特別代理人を選任し、母が未成年者に代りて重要なる行爲を爲し、又は未成年者の之を爲すに同意するとき、又は準禁治産者の保證人、及び臨時保證人を選任する等、無能力者又は其以外の事に關しても、家の爲め恰も一の裁判所の如き重大なる權限を有す、從つて法律は、親族會の招集、議決の方法、又は親族會員の選任等に就き種々の規定を設けたり、□一親族會の組織、イ親族會員の選定、親族會を組織するには三人以上の會員を要し、裁判所若くは指定後見人を指定するの權ある者、之を選定す、而して後見人を指定することを得るものが(指定後見人の部參照)親族會員を選定するには、必ず遺言を以てすることを要し、裁判所が之を選定するには、親族其他本人、または其家に緣故ある者の中より選任すべく、其適否は一に裁判所の自由なる意見に一任し、裁判所は或は申請者をして、親族會員たるに適當なる者を指名せしむることを得べし、其他親族會の組織、及び招集に關する手續は、すべて非訟事件手續法の規定によらざるべからず、親族會は、必要の事項を生じたるとき組織するを普通とするを以て、選定の效力は一回每にして、親族會員たるの資格も亦消滅すべし、然れども無能力者の爲めに設けたる親族會は、其者の無能力の止む迄繼續す、而して親族會員に缺員を生じたるときは、親族會は其決義を爲すを得ざるを以て、會員は其補缺員の選定を裁判所に請求せざるべからず、次に親族會員は、三人以上たることを要し、其最高限に就きは、法律上別に制限ある所なし、故に奇數なるも偶數なるも可なるべく、其議事は、會員の過半數を以て之を決するも、若し會員の意見正半數に分れ、決議を爲す能はざるが如き場合には、裁判所に申請して、裁判を以て決議を定むべきものとす、親族會は、右の如く選定會員を以て組織するものなれども、本人、戸主、家に在る父母、又は配偶者、本家並に分家の戸主、後見人、後見監督人、及び保佐人は、親族會に出席して其意見を述ぶることを得る也、これ等の者は、何れも親族會の議事に利害の關係を有するものなれば也、□親族會員の辭任、及び缺格、親族會員は、遠隔の地に住居し、事實上親族會員として事務を執る能はざる時、又は病氣の爲め、繁劇なる公務に從事する等、苟も正當の事由あるにあらざれば、之を辭することを得ず、其正當の事由あるや否やは、一に裁判所の認定によるべきものとす、親族會員たる事を得ざるものに二種あり、一は後見人、後見監督人、及び保佐人にして、一は未成年者、禁治産者、準禁治産者、剝奪公權者、停止公權者、破産者、裁判所に於て免黜せられたる法定代理人、又は保佐人、被後見人に對して訴訟を爲し、又は爲したる者、及び其配偶者、並に直系血族、行方の知れざるもの、及び裁判所に於て後見の任務に堪へざる事跡、不正の行爲、又は著き不行跡ありと認めたる者等、苟も其智能、地位、身分、又は道德上親族會員たらしむるに不適當と認めたる者とす、ハ親族會員の責任、親族會員たるものは、善良なる管理者の注意を以て、其任務を處理することを要す、何となれば、親族會員は、公益上他人の爲に事務を執るものなれば、愼重事に從ふべく、後見人、後見監督人と、其趣を異にするものにあらざればなり、□二親族會の招集及議事、イ親族會の招集、親族會は、之を開くべき必要なる事項の生じたるときに招集す、而して之を招集するは、裁判所の決定によるものにして、裁判所は自己の職權を以て之を招集するにあらず、必ずや其會議を要する事件の本人、戸主、親族、後見人、後見監督人、保佐人、檢事、又は利害關係人の請求によるものとす、例へば家督相續人の廢除に同意を求むるが爲めにする親族會に就きては、被相續人より、又後見人の免黜の爲めにする場合には、後見監督人より之を請求するものなるが如し、次に無能力者の爲めにする親族會と雖も、常設のものに非ずして、隨時成立すべきものとす、唯此場合には、親族會員たるの資格は、其者の無能力の止むまで繼續するものなれば、最初の招集の外は裁判所の決定によらずして、本人、其法定代理人、後見監督人、保佐人、又は會員に於て之を招集するものとす、而して親族會招集の場所に就きては、法律上之を一定せず、裁判所の見込により、或は裁判所内に於てし、或は其他の場所を指定し、若くは會員の協議を以て之を定むることを得べし、唯親族會の招集は、必ず本人、戸主、家に在る父母、配偶者、本家、並に分家の戸主、後見人、後見監督人、及び保佐人に通知せざるべがらず、□親族會の議事、親族會は、會員の決議を以て其意思を外部に發表す、會員各自の意思は、未だ以て親族會の意思を形成するに足らず、而して其決議は、會員の過半數を以て決す、故に親族會の意思は、會員の相對的多數の決議より、形成せらるるものと謂ふべく、若し其相對的多數を得る能はざる場合に於ては、會員は、其決議に代はるべき裁判を爲すことを裁判所に請求するを得、親族會の議事にして、自己の利害に關するものなるときは、會員は表決の數に加はることを得ず、之會議の公平を保たんが爲めなり、親族會の決議に對して不服あるものは、裁判所に訴ふることを得、但し此訴權を有するものは、決議ありたる日より、一ケ月以内に之を行使せざるべからず。(民九七四條乃至九五三條)
- 英
- Family conference
- 独
- Familien-rath
- 仏
- Conseil de famille
親族結婚
(しんぞくけつこん)互に親族關係を有する所の男女の婚姻を稱して、親族結婚、若くは親族婚と云ふ、近親者間の結婚なるものは、人倫に背き、且つ其間に生じたる子の身體、精神の上に害ある事一般に認むる所なるを以て、人倫を維持するの本旨に基き、我民法は親族婚姻に關して、二三の制限を設けたり、即ち□一直系血族、直系の血族者間にありては、婚姻は絶對に禁止せらる、故に其尊卑屬親間の間によりては、其嫡出たると庶出たるとを問はず、婚姻する事を得ず、□二傍系血族、傍系の血族間にありては、三親等に限り婚姻を爲すことを禁ず、故に兄弟姉妹、及び伯叔父母と甥姪との間にありては、婚姻を爲すことを得ざるも、從兄弟、從姉妹は、婚姻を爲すことを得、□三姻族、直系の姻族間にありては絶對に婚姻するを得ず、夫婦の一方が死亡したる場合に於て、生存配偶者が其家を去りたるが爲め、姻族關係の消滅したる後と雖も、亦同じ、之に反し、傍系の姻族に就きては、婚姻は禁止せらるることなし、故に妻の死亡後に其妹を娶るが如き、又は亡兄の遺妻を自己の妻と爲すが如きは、毫も妨げなし、□四準血族、養子及び其配偶者、直系卑屬又は其配偶者と、養親又は其直系尊族との間に於ては、其親族關係が止みたる後と雖も、婚姻を爲すことを得ず、之唯親子に準ずべき者の間に婚姻を爲すことを禁じたるに過ぎざれば、養親の子と養子との間、又は養子相互の間に於ては、婚姻を爲すこと妨げなし。(民七六九、七七〇、七七一條參照)
- 英
- Marriage between family
- 独
- Familienehe
- 仏
- Mariage entre famille
親族婚
- 英
- Marriage between family
- 独
- Familienheirat
- 仏
- Mariage entre famille
親族相盜
(しんぞくさうたう)親族相盜に關する刑法の規定に曰はく、「祖父母、父母、夫妻、子孫、及び其配偶者又は同居の兄弟姉妹、互に其財産を〓取したる者は、〓盜を以て論ずるの限りにあらず」と、即ち是親族相盜の場合にして、本條は、〓取の犯人と其被害者が、祖父母、父母、子孫又は其配偶者若くは夫妻、同居の兄弟姉妹の關係を有するときに於ては、假令其罪は構成するも、其身分にあるものに對しては、其刑を科せざることを規定するものにして、之畢竟親族間の平和を維持する爲めに過ぎず、從つて此身分なき共犯者は、其刑を免るることを得ざるや勿論なりとす、同條に又曰く、「若し他人と共に犯して財物を分ちたる者は、〓盜を以て論ず」と、この明文を設けたるは、畢竟注意的規定に過ぎずして、此身分なき共犯者は、假令其財物を分たざる場合に於ても、當然普通の〓盜罪として、其處罰を受くべきものとす、而して前示の規定は、人的刑罰排除の原因を規定したるに過ぎずして、〓盜罪の構成に關係なきが故に、此條件を理由として、其刑を免ぜらるるには、犯人の意思如何に拘らず、客觀的事實に基きて、之を決せざるべからず、而して法文に所謂同居とは、住居を同うするものと解すべく、必ずしも戸籍法上に於ける同居の意義にあらざるなり、茲に注意すべきは、〓盜の被害者は、所有者、及び保有者双方を包含すと解するものなるが故に、犯人は此兩者に對して、本條に規定の親族關係あることを必要とする也、故に子が父の所有物を、親族關係なき第三者の保有より〓取するときは、親族相盜にあらず、〓盜罪を構成するものとす、次に此實例の場合に於て、子が其〓取に就き、父の承諾あるものと誤認したるときは、不法の認識なきの理由によりて、〓盜罪を構成せず。(舊刑三七七條、二四四條)
- 英
- Robberies among family
- 独
- Familiendiebstahl
- 仏
- Vol parmi la famille
親族法
(しんぞくはふ)親族法は、民法の一部にして、親族關係又は家族關係より生ずる諸種の權利義務を規定したるの法規を云ひ、一にこれを親族編とも稱す、親族關係とは、人の血族たり、姻族たり、將た配偶者たるの關係を云ふ、父母、子孫、兄弟、姉妹、伯叔父、相互の關係は即ち血族關係にして、夫たり妻たるの關係あれば、即ち配偶者としての關係を生じ、既に配偶者あれば、其一方の血族と互に姻族關係を生ず、又家族關係と云ふは、戸主と家族との關係を云ふ、戸主とは一家の長を云ひ、戸主の親族にして、其家に在る者及び其配偶者を家族と云ふ、我親族法の上に於ては、未だ個人を以て、社會の單位とするに至らず、一國の單位は、一家に在りとの主義を襲用するを以て、何人と雖も、家族關係なきを許さず、一家は實に親族構成の一基本と見做すべき者なく、蓋し社會進步と、個人が社會の單位を形成するに至らば、親族關係より生ずる諸種の權利義務を規定するに止まるべきも、我親族法は、啻に親族關係のみに止らず、家族關係をも定るに至れるは、畢竟過渡時代の法制として、又已むを得ざるものあれば也、親族關係、及び家族關係の發生、及び消滅の原因は、人の出生、婚姻、緣組、離婚、離緣、入籍、轉籍、隱居、廢絶家再興、及び國籍喪失等に基くものにして、之等の原因たる事實は、戸主、親子、夫婦、其他各人の權利義務の異同生滅の動機たるべし、從つて親族法は、總べて之等の事項に關して特別なる規定を包含す、彼の物權法と云ひ、債權法と云ひ、固より人の權利義務の關係を定むるに外ならずと雖も、之等の法規ば、主として直接に財産上の關係を眼目とす、親族法は之に反し、主として人の親族上又は家族上の身分關係を規定するものなれば、此意味に於て親族法は、人の身分に關する特別法也と云ふを得べし、又親族法は、親族上家族上の關係に基く必然の結果として、財産權に關係ある規定をも包含す、例へば夫婦財産制の如き、扶養の義務の如き、親族又は後見權の子又は被後見人の財産に對する權利の如き之也、之等の事項は、純然たる親族法の範圍に入るべきにあらざるが如しと雖も、親族關係と極めて密接にして、其關係以外に特立し得べからざるによる、故に學者は或は親族法を別ちて、統正親族法と、親族財産法とに區別するものあり、又廣義の親族法は、親族上家族上に關する一切の法規を含むも、我親族法は、單に主法的規定を爲すに止まり、助法的規定、即ち手續に關するものは、悉く特別法に讓れり、之法典編纂の主義自ら然らしむるに依る、親族法の規定は、助法的規定と相俟ちて、其實用を見るべきものなれば、戸籍法、人事訴訟手續法、及び非訟事件手續法等は、親族法に甚だ密接の關係を有するもの也、我現行の親族法は、民法第四編として、明治三一年法律第九號を以て、第五編たる相續法と共に公布せられ、明治三一年七月一六日より施行せられたるものに係る、今其編制を見るに、通編を別ちて八章と爲し、第一章總則、第二章戸主、及び家族、第三章婚姻、第四章親子、第五章親權、第六章後見、第七章親族會、第八章扶養の義務とせり、此編制には、學理と實際とを斟酌し、條文排列の當を得たるものと云ふべきなり。
- 英
- Law of family
- 独
- Familien-recht
- 仏
- Loi de la famille
親族編
- 英
- Law of family
- 独
- Familien-recht
- 仏
- Loi de la famille
親族例
(しんぞくれい)親族例なる文字は、刑法に於て用ふる語にして、其親族の範圍を定むる通規の意たり、而して刑法の親族例は、民法上の親族となるべきものを規定したるにあらずして、親族又は姻族の關係よりして、刑法上特別に處分すべきものを列擧したるものとす、從つて其範圍民法と同じからず、又民法の制定改廢によりて、刑法の親族例に影響を及ぼすものにあらざるなり、刑法上に於ける親族と稱するは、□一祖父母、父母、夫妻、□二子孫及其配偶者、□三兄弟姉妹、及び其配偶者、□四兄弟姉妹の子、及び其配偶者、□五父母の兄弟姉妹、及び其配偶者、□六父母の兄弟姉妹の子、□七配偶者の祖父母、父母、□八配偶者の兄弟、姉妹、及び其配偶者、□九配偶者の兄弟姉妹の子、□十配偶者の父母の兄弟姉妹、以上の十項に擧げたる者を以て、其範圍とす、茲に祖父母と稱するは、高曾父母、外祖父母を包含し、父母と稱するは、繼父母、嫡母を舍み、子孫と稱するは、庶子、曾玄孫、外孫を含み、兄弟姉妹と稱するは、異父異母の兄弟姉妹を含むものとす。(舊刑一一四條、一一五條)
- 英
- Relationship and alliance
- 独
- Verwandtschaft und Allianz
- 仏
- Relation et alliance
身體刑
(しんたいけい)身體刑とは、刑事法上の犯人に對し、身體に苦痛を與ふべき刑罰を總稱するの語なり、身體刑はこれを別ちて生命刑と自由刑との二種とす、□一生命刑、生命刑は即ち死刑にして、重罪の主刑中最も重き刑とし、現行刑法は既往の刑法に比して、其適用の場合を減少せり、死刑の執行は、絞首の方法により、規則に定むる所の官吏臨檢し、獄内に於てこれを行ふ、死刑は生命を奪ふの刑なるが故に、受刑者の生命を奪ふことによりて、其執行を終るものとす、□二自由刑、自由刑は犯罪の制裁として、一私人の自由を剝奪する刑罰の謂なり、徒刑、流刑、懲役、禁獄、禁錮の七種とす、而して茲に自由と稱するは、不覊獨立何等の拘束をも受けざる狀態を謂ふにあらず、法の認むる範圍内に於て、普通國民の有する隨意行動の意義なり、犯罪の制裁として之に多く、或は僅の制限を加ふるを名けて自由剝奪の刑と云ふ、此點注意せざるべからず、自由刑の主刑に、無期と有期との別あり、無期自由刑は、無期徒刑、及び無期流刑の二種にして、他は盡く有期のものとす、有期自由刑の中にて有期徒刑、有期流刑の期間は、十二年以上十五年以下とし、重懲役、重禁獄の期間は九年以上十一年以下、輕懲役、輕禁獄の期間は六年以上八年以下、重禁錮、輕禁錮の期間は十一日以上五年以下とす。(刑九條乃至一四條等參照)
- 英
- Bodily punishment
- 独
- kör-perliche Strafe
- 仏
- Peine du corps
身體權
(しんたいけん)身體權は、人格權中の一種別にして、人が其生命、身體、名譽等を目的とする權利の總稱なり。
- 英
- Personal right
- 独
- Körperrecht
- 仏
- Droit personnel
人道
(じんどう)儒教の仁、基督教の博愛、釋迦の慈悲は、最も能く人道の意義を表明す、即ち人道とは人種、國家、宗教の異同、老幼、貧富、責賤、強弱の差別等に毫も關係なく、苟も人類に對しては、一切無差別平等に行はるべき一大德義を謂ふ、換言すれば、全人類を遍く同胞として、寬宏、仁慈、博愛を以て遇すること、即ち全人類の人格を尊重し、其平等絶對性を保護すること、而して人のは、、及び也道觀念交通交通機關の發達、科學的智識の發達、及び其應用の進步、博愛家、及び宗教家の指導を俟ちて、漸次發達するものなる事明白也と雖も、他方に於て又人道觀念の發達を障害する事實の存する事も明白なり、其主なる事實を擧ぐれば、國際間の利害の衝突、人種の差異、宗教の差異、其他國語、風俗、習慣の差異之なり、斯く一方に於ては人道の發揮を助くる事情あると共に、他方に於ては、人道の發揮を障くる事情ありて、絶えず軋轢するも、人類の歷史上より見る時は、確に人道の次第に發揮せられたるを認むることを得べし、特に今日人道問題の高く叫ばるるは、恂に喜ぶべき現象と謂はざるべからず。
人道主義とは、專ら歐洲中世紀特に文藝復興時代たる十五六世紀頃に於ける、主として獨乙民族が從來の教會制度、厭世主義等に倦みて、專ら自由活動を尚び、かの希臘羅甸の優美高尚なる文學藝術を復興し、以て教化文明の中心となさんとせる一種の復古主義の謂なり。
- 英
- Humanity
- 独
- Humanität
- 仏
- Humanité
人定權
(じんていけん)人定權とは、哲學上の所謂天賦の人權なるの語に對するものにして、人爲の法律によりて、吾人が認められたる權利を總稱して人定權と云ふ、我法律學上の研究の題目となるべきものは、此人定權に關するもののみなりとす。
- 英
- Artificial right
- 独
- künstliches Recht
- 仏
- Droit artificiel
人定法
(じんていはふ)哲學者の所謂自然法に對するの語にして、人爲によりて制定せられたるの法則を人定法と云ふ、凡そ法律を解説する者に二派あり、□一はオースチンを代表者とする、所謂法律は下命なりとの説にして、曰く、法と稱すべき法は、其種の如何を問はず、總て下命にして、有權者より下されたるもの也、法律より此有權者、及び下命なる觀念を取り去るときは、法律は單に理論又は道德に過ぎざるに至ると、此説は、總べて法律は其材料を何れより採るを問はず、人爲に依りて造られたるもの、即ち人定法のみ法律也と云ふの説也、□二は上記オースチンの説に反對する、メイン等に依りて主唱せられたる者にして、元來法律は因果の觀念即ち規則てふ觀念を措ては求むべからず、彼の下命即法律など云ふは、獨り帝權の盛なる王朝時代に於てのみ眞理にして、古昔の如く習慣を以て法となす時代には、其理を説明し得ざるにあらずや、蓋し習慣法は、下命にあらざれば也と、以上兩説ともに眞理にして、法律は下命せられたる規則也、下命を離れて法律なく、規則の觀念を離るれば、法律は意味をなさざる也、慣習法と雖も下命に依て認められ、下命の内容を爲すに至りて法となるものなれば(慣習法の部參照)苟くも法は皆人定法なりと云ふを得んか、若し云ひ得べくんば、其全部を文字を以て示したるものを人定法となし、慣習を認めて法となしたる所謂慣習法を之に對するものと區別せん。
- 英
- Artificial law
- 独
- künstliches Gesetz
- 仏
- Droit artificiel
人的信用
(じんてきしんよう)信用に二あり、即ち物的信用、及び人的信用是也、人的信用とは其人の社會上の地位、身分、資格等より生ずる無形の價値にして、例へば價値、債務の如き、若くは會社に於ける信用出資の如き、皆人的信用に基くものなりとす、蓋し質權、抵當權の如きは、其信用の基礎擔保物件に存す、故に物的信用なり、之に反して保證債務の如きは、保證人の身上に信用の基礎を置くが故に、人的信用と稱する所以なり。
- 英
- Personal credit
- 独
- persön-licher Glaube
- 仏
- Foi personnelle
人的地役
(じんてきちえき)羅馬法以來認められたる物權に、役權なるものあり、他人の所有物の使用收益を目的とす、之を二種に區別して、人的地役、及び地的地役とせり、人的地役と云ふは、特定の人の爲めに存する役權にして、特定の人が、他人の所有物の使用收益を爲すの物權を指稱せり、然れども我民法は、人的地役なるものは之を認めず、單に地的地役のみを認めたり、之歐洲の立法と其趣を異にする所にして、民法が此點に就き、歐洲諸國の立法に倣はざりしは、畢意此種の權利は、全く我國情に適せざるが爲めにして、舊民法に於て、之を認めたるに反し、新民法に於て全然之を排斥したるは、其當を得たるものと云ふべきなり。(屬人地役の部參照)
- 英
- Personal servitude
- 独
- per-sönliche Servitut
- 仏
- Servitude personnel
申牒
(しんてふ)或る事頃を通告するを申牒と云ふ、主として官廳間の通告に用ひらるる所にして、私人間に用ひらるる所にあらず。(宮内省官制一七條)
- 英
- Information
- 独
- Bericht
- 仏
- Nouvelle
親等
(しんとう)親等とは、親族法上の用語にして、人の世代即ち二人の親族間に存在する隔離を云ふ、而して此隔離を計算するには、世代數を以てし、一代即ち一世を以て一親等とす、直系に於ては世數に應じて親等を定むるが故に、其計算は甚だ容易なり、例へば父は一親等にして、祖父、及び孫は二親等なるが如し、傍系にありては、其計算少しく混雜にして、血族の一人より共同始祖に遡り、又其共同始祖より他の一人に降る世數に準じて、親等を定めざるべからず、故に兄弟間の親等を算するには、其共同の始祖たる父に遡りて一等とし、父より其子、即ち兄弟に降るを一等とするを以て、兄弟は二親等なることを知るべし、要するに傍系親間の親等を知らんとせば、其共同始祖に遡るの世數に加ふるに、共同始祖より降る所の世數を以てせば可なり、又姻族の親等を計算するの方法は、血族と同一にして、一方の血族は其血族たる親系、及び親等に於て、其配偶者の爲め姻族たり、故に夫の兄弟姉妹は、妻の爲め傍系の二親等姻族なるが如し、尚(い)の部一親等と題する項目に於て其圖解を示したれば參照せらるべし。(民七二六條)
- 英
- Degree of relationship
- 独
- Grad der Verwandtschaft
- 仏
- Degrès de la relation
新法
(しんはふ)新に制定せられたる法規を新法と云ふ、狹義に於ては、同一の事項に關し、既存の法規を廢止變更し、これに代るべき法規を新法と稱す、例へば舊民法に代る新民法は、舊民法に對して新法なるが如し、而して茲に新舊の二法ありと假定せよ、假令新法は其之と矛盾する舊法を廢止、または變更する意思を明示せざるときと雖も、新しき國家意思は、舊き國家意思を廢止、又は變更するの理に基き、常に矛盾する程度に於て、舊法は廢止せらるるものとなるなり、之を默示の廢止と云ふ。
- 英
- New law
- 独
- neues Gesetz
- 仏
- Droit nouveau
新聞紙條例
(しんぶんしでうれい)明治二〇年勅令第七五號を以て公布せられたる、新聞紙取締に關する法規にして、其示す所によれば、新聞紙を發行せんとする者は、其二週日以前に發行地の管轄廳(東京府は警視廳)を經由して、内務省に屆出でざるべからず、その屆書に記載すべき事項は、其題號、記載の種類、發行の時期、發行所、及び印刷所、發行人、編輯人、及び印刷人の氏名年齡の五事項とす、面して屆出でを爲したる後に、右の事項を變更せんとする時は、二週日以前に屆出を爲さざるべからず、發行の屆書を爲したる日、又は發行休止の日より五十日を過ぎて發行せざるときは、前の屆出は、その效力を失ふものとす、故に右の場合には、新なる屆出の手續を爲さざるべからず、發行人、編輯人、印刷人たるものは、帝國内に居住するものにして、滿二十歳以上の者ならざるべからず、公權剝奪者、公權停止者は、右の者となるの資格なきものとす、發行人は、保證金として、東京に於ては一千圓、京都、大阪、兵庫、神戸、橫濱、長崎に於ては七百圓、其他の地方に於ては三百五十圓を屆書と共に納付せざるべからず、但し一ケ月三回以下發行するものは、前記の半額とし、保證金は時價に準じたる公債證書、又は國立銀行の預手形を以て納付することを得るもの也、學術技藝、統計、官令、又は物價報告に關する事項のみ記載するものは、右の保證金を要せず、保證金は、新聞紙の發行を廢止し、又は其發行を禁止せられたるときは、還付せらるる也、新聞紙は、其發行每號に、發行人、編輯人、印刷人の氏名、發行所を記載すべく、發行人、印刷人の外、何等の名義を以てするに拘はらず、新聞紙又は記載の條項に署名するものは、總べて編輯人と共に其責に任ずるものとす、新聞紙は其發行每に、先づ内務省に二部、管轄廳、及び管轄始審裁判所檢事局に各一部を納めざるべからず、新聞紙に記載したる事故の錯誤につきて、其事項に關する當人又は關係者より正誤又は正誤書、辯駁書の揭載を求めたるときは、其求めを受けたる後、次回又は第三回の發行に於て正誤を爲し、又は其全文を揭げざるべからず、然れども正誤辯駁の文章、若くは主旨が法律に觸るるとき、又は之を求める者が、其氏名住所を明記せざるときは、揭載するを要せず、新聞紙に記載したる事項に就き裁判を受けたるときは、其新聞紙の次回發行に於て、宣告の全文を揭載せざるべからず、重罪輕罪の豫審に關する事項にして、公判に附せざる以前に於ては、これに關する事件を記載することを得ず、又傍聽を禁じたる訴訟に關する事項又同じ、刑律に觸れたる犯罪を曲庇するの論説を記載するを得ず、公にせざる官の文書、及び建白請願書は、當該官廳の許可を得るにあらざれば之を記載するを得ず、外務大臣、陸軍大臣、海軍大臣は特に命令を發して、外交又は軍事に關する事項の記載を禁ずることを得るものとす。
- 英
- Paper's act
- 独
- Zeitungs-gesetz
- 仏
- Loi des journaux
臣民
(しんみん)臣民とは、絶對且つ無限に國權に服從し、完全なる權能を享有する資格を有する者を云ふ、絶對と云ふは、一定の範圍と限度なく、又無條件なることを意味するもの也、無限とは、制限なきを意味す、臣民の國家に對する服從は、其本質に於て無限なり、法律は唯其服從の程度と形式とを示すに過ぎず、臣民の權利義務は、法律によりて生じたる自由の限度と服從の程度とを示すものなり、人民の國家に對する關係は、服從にして、且つ絶對無限なり、若し服從にして一定の程度あらんか、既に臣民關係にあらずして、平等關係に於ける法律上の義務者なり、義務は、法律、又は契約より生ずるものにして、人民が法律によりて權利を有し義務を負ふは、法律其者に服從するにあらずして、國權に服するものなり、即ち國權に服從するが故に、國權の制定したる法律に抵抗する力なくして之に服從す、法律が服從の原因にあらず、國權が其原因なり、故に法律の外に服從なしと云ふことを得ず、絶對にして無限なりとは、右の意義をいひ表したるものとす、臣民は國權に對し、絶對無限の服從義務を有す、然れども之國家の法律以上の關係にして、國法上の關係にあらず、國法上に於ける臣民の服從義務は、法規によりて定まるもの也、憲法に於ける臣民服從の義務は、國權に對する服從義務に基くものなるも、絶對無限の服從義務にあらずして、法規を以て定められたる範圍ある義務を謂ふなり、國權は、固より自由に法規を廢止變更する權力ありと雖も、之を廢止變更せざる間は、其法規を遵行せざるべからず、若し國權にして法規を遵行するを要せずとせば、國權と臣民との關係は、事實上の關係となり、國法の關する所にあらざるに至る、故に法規の存する間は、國權は活動する事を得ず、臣民は一定の範圍内に於ては、猥りに自由の關渉を蒙むらざることを要求するを得べし、之即ち臣民の權利と云ふべきものとす、憲法第二章に、臣民の權利義務と題するは、國家が臣民の自由を認むる結果として、立法の方針を示し、行政の專橫を妨ぐに出でたるものにして、臣民の權利義務の實質を規定し盡したるものにあらず、其多くは他の法令によりて、規定せらるるもの也、之等の事項に關する自由權利の限度、及び服從の程度は、總べて法令を以て規定すべく、命令を以て規定するを得ざる事を明にしたるに過ぎざるなり、故に憲法第二章を以て、直に臣民の權利義務を規定したるものと謂ふこと能はざるなり。
- 英
- Subject
- 独
- Subjekt
- 仏
- Sujet
臣民主權
(しんみんしゆけん)一國の臣民が、何れの地に在住するも、其國の權力に服從せしむべき統治權の作用を稱して臣民主權と云ふ、元來統治權は、單一不可分の權にして、決して臣民主權、領土主權と分割し得べきものにあらず、唯主として臣民に關する國權の作用を稱して臣民主權と云ひ、領土に來るものは、其自國人たると外國人たるを問はず、等しく其國權に服從せざるべからざる作用を稱して領土主權と云ふに過ぎず、決して臣民主權なる獨立の國權あるにあらず、又國民主權は統治權の支分權にもあらざるなり。
- 英
- Sovereignty over subjects
- 独
- Souveränität über den Leuten
- 仏
- Souver-aineté sur le sujet
臣民籍
(しんみんせき)臣民籍とは、臣民たる資格にして、國家に絶對無限に服從する地位を云ふ、臣民は國家に對し、絶對無限の服從義務を有す、是臣民籍にあるを以て也、外國人は、内國居住其他の事實に基きて、服從義務を有する場合ありと雖も、絶對無限の義務を負ふものにあらず、是臣民籍を有せざればなり、人或は臣民籍を以て、國内に於て公私の權利を享有するの資格なりと説明するものあれども、是少しく了解に苦しむ所なり、何となれば、外國人と雖も、内國にありて私權を享有するの結果、これに伴ふ公權の一たる訴權をも享有するは常なり、故に此場合に於ては、外國人も亦臣民籍にあるものと謂はざるべからず、斯くの如くんば、臣民と臣民にあらざるものとを區別するに、臣民籍あると否とを以てする能はざるに至るべし、又或人は軍に國權に服從するの有無を以てし、又は特權を有し、兵役に服するの有無を以てするものあるも、外國人と雖も領土内に於ては、其領土主權に服從するものにして、敢て國權の作用を受けざるものにあらず、又特權を有し兵役に服する義務の如きは、其國立法の便宜に基き、權利義務の性質上當然外國人にも及ばざるものにもあらず、若し此等の權利義務を以て臣民に限るものとせば、臣民たる資格ありて後、之等の特權を有し特務を負ふにして、之等の權利義務は、臣民籍に伴ひて生ずるものと云はざるべからず、然らば則ち臣民籍は本にして、之等の權利義務は末也、此末を採りて、直に臣民籍の内容と爲すは大なる誤りなりと云ふべし、臣民籍の取得、及び喪失に關する法律の規定を擧ぐれば、□一臣民籍取得の原因、イ出生、出生を以て、臣民籍取得の原因と爲すは、何れの國も同樣なりと雖も、之に關して二個の異りたる制度あり、其一を血統主義と云ひ、一を出生地主義と云ふ、我國は原則として血統主義を採り、之に出生地主義を加味したり、即ち、第一に出生の時父が日本人なるときは、其子は日本人なり、出生の前に父日本人にして死亡したる時又同じ、若し出生前に、父が離婚若くは離緣によりて日本の國籍を失ひたる時は、懷胎の初めに遡りて、其子の國籍を定むるものとす、第二に父不明なるとき、又は父が無籍なる時は、母にして日本人なれば其子を日本人とす、第三に父母共に不明なるとき、又は共に無籍なるときは、日本の領土内に於て生じたる子を日本人とす、□認知、日本人たる父又は母によりて認知せられたる者は、我臣民籍を有することとなるなり、然れども認知によりて我臣民籍を取得するには、次ぎの條件を具ふることを必要とす、第一に其子が本國法によりて未成者なる事、第二に外國人の妻にあらざる事、第三に父母の中先きに認知したるものが日本人たる事、第四に父母同時に認知したる場合には、父が日本人たることの四條件を備ふるときに限るものとす、ハ婚姻、及び綠組、即ち外國の婦人が日本の男子に嫁したるとき、外國の男子が日本の婦人の入夫となりたるとき、外國人が日本人の養子となりたるときに於ては、日本人としての臣民籍を取得するものとす、□二歸化、歸化とは、行政處分によりて、我臣民籍を取得するの方法にして、其歸化によりて日本の臣民籍を取得するには、第一に引續き五年以上日本に住所を有したること、第二に滿二十歳以上にして、其本國法に依り能力を有すること、第三に品行方正なること、第四に獨立の生計を營むに足るべき資産又は技能を有すること、第五に現に何れの國籍をも有せず、又は國籍を有するも、我國籍を取得することによりて、其現在の國籍を失ふべきこと、以上の五要件を充たるものにあらざれば、歸化を許可せられざるものとす、然れども日本人たる父若くは母を有する者にして、現に我國に住所を有する者に限りては、右に擧げたる第一、第二、及び第四の要件を具ふるを要せずして、歸化を爲す事を得るものとす、歸化を許可したるときは、通常之を官報に告示すと雖も、歸化の效力發生の時期は、官報に告示したる時にあらずして、歸化の許可を與へたる時に存す、而して我國に於て許可を與ふるの權限を有するものは、内務大臣也とす、ホ臣民籍の回復、生來の日本人たりしものが、其臣民籍を失ひたる後、再び我臣民籍を取得するには、歸化と同じく内務大臣の許可を要す、されど兩者の間に、其要件に關して大に輕重の別あり、即ち回復は其要件甚だ簡易にして、例へば外國人に嫁したるが爲め外國人と爲りたる者、我臣民籍を回復せんとするときは、婚姻解消後日本に住所を有することを以て唯一の要件と爲し、其他外國に歸化したるが爲め、我臣民籍を失ひたる者、再び我臣民籍を回復せんとするときは、單に其要件として、日本の領土内に於て、住所を有する事を以て要件とするのみ、□三臣民籍の喪失、イ認知、日本人にして外國人たる父又は母によりて認知せられ、且つ其認知によりて父又は母の國籍を得たるときは、我臣民籍を失ふものとす、然れどと日本の妻又は入夫と爲りたる者、或は養子と爲りたる者は、妻、入夫、養子たる身分によりて、我臣民籍を取得したる者なるにより、外國人の認知あるも、我臣民籍を喪失することなき也、□婚姻、離婚、及び離緣、外國人と婚姻したる女は、我臣民籍を失ふ、又外國人にして我國臣民の妻、養子又は入夫となりたるときは、我臣民籍を得るも、其者にして離婚ありたるときは、我臣民籍を有するの理由消滅したるにより、我臣民籍を失ふものとす、然れども此場合には、無國籍人を生ずることを避くるが爲め、外國の國籍を再び得るときに限り、我臣民籍を喪ふものとせり、若し外國人が一旦我國民に嫁して、我臣民籍を得るも、其婚姻無效なるときは、我臣民籍を脱する事勿論なり、ハ他國の臣民籍を得たること、一人にして二國以上に對して臣民籍を有することは、其本質に反するが故に避げざるべからず、故に他國の臣民籍を得たる者に對しては、我國の臣民籍を喪はしむるものとす、二夫若くは父母が他國の臣民籍を得たるとき、妻、及び子たるものは、夫、及び父母と共に他國の臣民籍を得たるときは、我臣民籍を失ふものとす。(憲法一八條、國籍法參照)
- 英
- Nationality
- 独
- Nationalität
- 仏
- Nationalité
審問
(しんもん)審理する爲めに問を發することを審問と云ふ、主として裁判上又は他の國家官廳の臣民に對する場合に用ひらるる語なり、例へば證人、鑑定人を審問すと云ふが如き此用例なり。(行政裁判三八條、民訴二一六條二項)
- 英
- Trial
- 独
- Verhandlung
- 仏
- Juge-ment
訊問
(じんもん)職權ある國家機關が、特定人に對し、其知れる事實又は意見の供述を爲すべきことを命ずることを訊問と云ふ、例へば裁判所が、公判に於て、證人若くは鑑定人を訊問すと云ふが如し。(民訴三一一條)
- 英
- Examination
- 独
- Prüfung
- 仏
- Examen
訊問期日
(じんもんきじつ)裁判所に於て、或事項を特定人に訊問する爲めに定めたる期日を訊問期日と云ふ、例へば證人に出頭を命じたる場合に定めたる期日の如きは其一例なり。(民訴三二一條二項)
- 英
- Fixed day of hearing
- 独
- Verhörstermin
- 仏
- Jour fixe de l'examen
信用組合
(しんようくみあひ)信用組合は、明治三三年法律第三四號を以て公布せられたる、産業組合法によりて設立すべき社團法人にして、組合員に、産業に必要なる資金を貸付し、及び貯金の便宜を得しむることを以て其目的とするものなり、組合の組織、設立に關する手續等は、産業組合の條下に於て説明したるを以て之を省略す。(産業組合の部參照)
- 英
- Credit guild
- 独
- Kreditver-bindung
- 仏
- Corporation du crédit
信用出資
(しんようしゆつし)信用を以て會社に對する出資の目的と爲すことを信用出資と云ふ、我商法は、合名會社員、及び合資會社の無限責任社員は、信用を以て出資を爲すことを認められたるものにして、信用を以て出資と爲す方法は、社員が單に自己の氏名を社員中に列するの外、何物をも會社に差入れざるものにして、斯くの如き何物をも會社に差入れざるものを、社員に列するの必要那邊に存するやと云ふに、合名會社の社員の如きは、會社財産の不足なる場合に於ては、會社の債權者に對して、連帶無限の責任を負ふものなるが故に、社員中に名資家又は豪家の氏名を列する時は、現に會社が使用し得る何等のものをも會社に差入るることなしと雖も、世人の安心を買ひ、會社の經營する事業をして隆盛ならしむるを得ればなり、舊商法時代に於ては、信用を以て出資の目的と爲すことを許さざりしが、會社が何物をも會社に差入れざるも、其人の信用を利用し得る場合あることは、舊商法第一一三條に於て、社名に其氏を加ふる事を承認したるものも、社員と同一の責任を負はしむるの明文を揭げて、之を承認せるものの如し、既に或る人の信用を利用する事を認めたるに於ては、其社員にあらずとなし、而して社員と同一の責任を負はしむると、又社員なりとして、其責任を負はしむると、實際の結果に於て何等の差異あるを見ず、故に寧る其者に社員たるの資格を認めて、法律上他の社員と同一の責任を負はしむるに如かざるなり、これ現行商法が、信用を以て出資の目的と爲すことを認許したるの一理由なりとす、茲に注意を要するは、民法の組合に於ては、信用を以て出資の目的と爲すことを許さざることこれなり、蓋し民事上に於ては、或人の信用を利用して、事業を營むが如き必要多からずとなしたるに依るなり、次に信用出資に就き、一の問題となるは、信用を以て出資の目的となしたる社員が、中途退社したる場合に於ける計算方法なりとす、之は勞務出資の場合と同樣にして、勞務出資の條に於て説明したるを以て宜しく參照せらるべし。(商七一條)
- 英
- Fiduciary contribution
- 独
- Kreditmitwirkung
- 仏
- Contribution fidu-ciaire
眞理
(しんり)通俗的には常識に合し、科學的には科學智識に合し、又哲學的には哲學的智識に合する所の智識の究極目的を眞理と稱し、或は又宗教的には、宗教上の信仰に合するを眞理と稱することあり、然れども常識の眞理とする所、科學に於ては之を非眞理とし、哲學に於て眞理とする所は、宗教の否む所となる如き場合極めて多く、又一般の認めて、眞理と考へし所も實は眞理にあらざるが如きことも影しく、實際眞理の標準を定むる事は、甚だ困難なりとず、況んや吾人の智識槪念なるものは、常に進步的にして、昨の智識槪念は今の槪念と同じからず、從つて眞理てふものも、畢竟吾人の智識の許容する範圍に於て、眞理と稱せらるるものにして、眞理を以て吾人の智識以外に獨立的又超絶的存在を有するものの如く思惟するは、大なる誤なり、最後に前述の如く、眞理は智識の最高目的なれども、然かも眞理が眞に眞理として吾人に認めらるる爲めには、こは眞理なりてふ吾人の感情の許容なかるべからず、即ち信念の伴はざるものは眞理とせらるる事なきなり。
- 英
- Truth
- 独
- Wahrheit
- 仏
- Vérité
森林行政
(しんりんぎやうせい)森林の保護、及び營林に關する行政の全體を總稱して、森林行政と云ふ、森林の經營は、水害の豫防、其他公共の安全の爲めに、極めて必要なるものなるが故に、法律は之を任意に放任する事なく、公有林及び社寺林にして、荒發の虞あるときは、主務大臣は營林の方法を指定するを要する旨を規定し、私有林が荒廢の虞あるときは、主務大臣は營林の方法を指定する事を得べき事をも規定せり、森林の經營に關して、特に重大なる制限を設けたるものは保安林なり、保安林の編入及び解除は、地方森林會の決議を經て、主務大臣之を決定す、保安林に於ては、伐採、及び開墾を爲すことを得ず、必要ある場合に於ては、主務大臣は保安林の伐木を禁止し、又は制限することを得、其他尚重要なる制限あり、保安林の編入には、斯くの如く重大なる制限を生ずるが故に、其編入に對しては、所有者より異議の申立を爲すことを得しめ、又行政訴訟を提起するの權を認めたり。
- 英
- Forest administration
- 独
- Waldverwaltung
- 仏
- Administration for-estière
森林官
(しんりんくわん)森林の保管、經營、利用及び監督に就き、直接に從事する官吏を總稱して森林官と云ふ、例へば林區署長、林務官、林務官補、林務技師等其例なり。(森林法三二條、狩獵法一二條)
- 英
- Forest officer
- 独
- Waldbeamte
- 仏
- Offlcier forestier
森林官吏
- 英
- Forest officer
- 独
- Waldbeamte
- 仏
- Offlcier forestier
森林警察
(しんりんけいさつ)森林に關し特種の危害を豫防排除する爲にする警察行政を森林行政と稱す、森林行政は、主として森林法の支配する所にして、伐木、造林又は木材賣買を業とするものは、林産物に使用する記號、又は印章を所轄警察署に屆け置く義務あり、警察署は、他人の記號又は印章に類似するものの使用を禁止することを得るものとす、伐木造林を業とするもの、手板、帳簿、器具等に對し、森林官吏又は警察官吏の檢査あるときは、之れを拒むことを得ず、森林官吏又は警察官吏の許可を得ずして、森林内に火入れを爲すことを得ず、又森林に接續する原野に火入れを爲すときは、森林に對して、豫め防火の設備を爲さざるべからず、森林又は其近傍に於て、火災又は蟲害あるを發見したる者、及び植林に關する罪を犯さむとするものあるを覺知したる者は、直に森林官吏、警察官吏又は市町村長に申告すべきものとす。(森林法三一條乃至三六條)
- 英
- Forest police
- 独
- Waldpolizei
- 仏
- Police forestière
森林資金特別會計法
(しんりんしきんとくべつくわいけいはふ)明治三三年法律第八六號を以て公布せられたる所にして、同法によれば、國有林野の處分、國有林の實測、施業案編制、造林及森林買上げに依る特別經營の爲め、森林資金を置き、其歳入歳出は、一般會計と區分し、特別會計を設置するものなり、森林資金は、國有として存置の必要なき林野賣拂代金を以て之に充つ、森林資金を使用せんとするときは、其金額を一般の歳入に組入れ、一般の歳出として拂出すべき者とす、森林資金にして每年度に使用せざるものは、翌年へ繰越すべきもの也、又前示したる特別經營の事業が完了したるときに於て、森林資金に剩餘あるときは、一般の歳入に組入るべきものとす。
- 英
- Law of special ac-count of fund of forest
- 独
- Specialrechn-ungsgesetz des Forstsfonds
- 仏
- Loi des comptes spécials du fonds du bois
森林〓盜
(しんりんせつとう)森林に於て其主副産物を〓取するを森林竊盜として、二圓以上該價額二倍以下の罰金、又は十一日以上二年以下の重禁錮に處せらる、森林〓盜にして、特に次に擧ぐる所爲ある時は、二圓以上價額二倍以下の罰金、及び二月以上二年以下の重禁錮に處せらるものとす、即ち□一根株を毀壞若くは隱蔽して罪跡の湮滅を計りたるとき、□二贓物を原料として木炭、樟腦、椎茸、松根油其他の物品を製したるとき、□三贓物を燃料として鑛物の採取精製、若くは石灰、煉瓦石、瓦其他の物品の製造に使用したるとき、□四犯罪を容易ならしむる爲め船舶を使用したるとき、□五保安林に於て盜伐を爲したるとき、□六林産物採取の權利を行使するに際し其罪を犯したるとき、□七三人以上共謀し、又は五人以上を雇使して其罪を犯したるとき、□八契約により森林保護の義務を有する者が其罪を犯したるとき、□九差押の贓物を隱蔽して消費したるとき、以上の九項目に該當するものは、特に前示の如く重く罰せらるものとす、次に森林〓盜の贓物なることを知て之を受け、又は寄藏故買し、若くは牙保を爲したるものは、二圓以上贓額二倍以下の罰金、及び一箇月以上三年以下の重禁錮に處せらる。(舊森林法三七條三八條)
- 英
- Robbery in forest
- 独
- Forst-diebstahl
- 仏
- Vol dans le bois
森林法
(しんりんはふ)明治三〇年四月法律第四六號を以て公布せられたる所にして、此法律に於て森林と云ふは、御料林、國有林、部分林、公有林、社寺林、及び私有林を總稱するものとす、今其大要を擧示すべし、□一森林の監督、公有林及び社寺林にして、其經濟の保續を損し又は荒癈するの虞あるときは、主務大臣に於て、營林の方法を指定せざるべからず、又私有林にして荒廢の虞あるときは、主務大臣に於て、營林の方法を指定することを得るものとす、右の指定方法に背きて伐木を爲したるものには、主務大臣は其伐採を停止し、伐木跡地に造林を命ずる事を得るなり、森林を開墾せむとする者は、必ず府縣知事の許可を受けざるべからず、又國土保安に危害の虞ありと認むるときは、主務大臣は豫め其箇所を指定し、森林の開墾を禁止することを得る也、□二保安林、森林にして公有たると私有たるとを問はず、左に列記する箇所にあるものは、保安林に編入することを得るものとす、(1)土砂崩壞流出の防備に必要なる箇所、(2)飛砂の防備に必要なる箇所、(3)水害、風害、潮害の防備に必要なる箇所、(4)頽雪、墜石の危險を防止するに必要なる箇所、(5)水源の滋養に必要なる箇所、(6)魚附に必要なる箇所、(7)航行の目標に必要なる個所、(8)公衆の衞生に必要なる個所、(9)社寺名所、又は舊跡の風致に必要なる個所の九項目とす、而して其編入の原因消滅し、又は公益上特別の事由生じたるときは、之を解除することを得るものにして、保安林の編入解除は、府縣、郡、市町村、其他直接の利害を有するものより、府縣知事に申請することを得るものとす、府縣知事が其編入解除を必要と認め、又は右の申請を受けたる場合には、之を地方森林會の會議に付すべきものにして、其決議を經べきものとす、而して保安林の編入解除に直接の利害を有するものは、一定の期日迄に府縣知事を經て、其意見書を地方森林會に提出することを得るなり、地方森林會に於て其決議ありたるときは、府縣知事は其決議書に意見書を添へて、主務大臣に申告すべく、主務大臣に於て編入解除を決定すべきものとす、直接利害關係あるものにして、主務大臣の編入解除處分に不服あるときは、其決定の告示ありたる日より、九十日以内に行政訴訟を提起するな得るなり、保安林の制限として主要なるものは、皆伐、及び開墾を爲すことを得ざるの點にして、土砂、切芝の採取、樹根の採掘、又半馬の放牧を爲す場合に於ても、必ず府縣知事の許可を受けざるべからず、右等の場合に拘はらず、主務大臣必要なりと認めたるときは、保安林の伐木を禁止し、又は制限することを得るものとす、又其森林の所有者に、營林及び保護の方法を指定し、且つ其利用收益を制限することを得るものとす、政府に於て保安林を買上げんとするときは、之を拒むことを得ず、次に保安林に編入せられたる爲めに、損害を蒙りたる所有者は、其伐木を禁止せられたる場合に於ける直接の損害に限りて、補償を求むることを得るなり、保安林に編入せられたる森林は、地租、及び公課を免ぜらる、□三森林警察、森林警察、及び森林〓盜に關する件は、其題目の下に於て詳細に説明以て茲に之を略す。(森林法改正の部參照)
人爲的
(じんゐてき)人爲的てふ語は、普通に自然的てふ語の反對の意義を有す、即ち人爲的とは、人間の意思活動の加はれる事物に適用せらる、天地産物は自然的事物なれども、家屋時計の如き製作物は、人爲的産物と稱せらるるが如し、又人爲的を惡しき意味に取りて、假裝又は虛僞と云ふ意義を表はす事あり、之人の天然自然なるべきを、強ひて修飾し紛裝するを貶したるより來れる意味なるが、更に反對に善意義を有せしむる事あり、此場合には、生來若くは粗野など云ふに對し、修養と云ふ意味に取りたるなり、尚吾人人類の精神活動、就中意思活動の加はりて營む義を有すること、前の場合と異る事なきなり。
- 英
- Artificial
- 独
- künstlich
- 仏
- Artificiel
人爲法
(じんゐはふ)哲學上の所謂自然の法則に對し、人爲によりても判定せられたる法規を人爲法と云ふ、法律學の範圍に於て研究すべきものは、人爲法に限るなり。(人定法の部參照)
- 英
- Artificial law
- 独
- künstliches Gesetz
- 仏
- Loi artificielle
指名債權
(しめいさいけん)指名債權とは、債權者の何人たることが確定せる債權を云ふ、之指圖債權、及び無記名債權等に對して付したる名稱にして、一般の債權は、凡べて指名債權なりとす、指名債權に關して法律上注意すべき事は、其讓渡に關する手續なりとす、而して其手續、及び效力は、讓渡と題する項目に於て、詳説したるを以て參照せらるべし。(民四六七條)
社員總會
(しやいんそうくわい)社員總會とは、社員全部の會合を謂ふ、彼の株式會社の株主總會の如きは、社員總會の一例なり、普通の場合に於て、社團の社員全部の會合は、其社團の意思を發表するの機關と見做さるるものなり。保險業法第四二條に「社員總會」とあるは其用例なり。(民六〇條乃至六六條參照)
- 英
- General meeting of members
- 独
- Generalversammlung der Mitglieder
- 仏
- Assemblée générale des associés
商
(しやう)商を經濟上より觀察すれば、商とは生産者と消費者との間に在りて、貨物の轉換及分配を爲すを謂ふ、法律上の意義に於て、商とは射利の目的を以て財産權の轉換を媒介し、及び轉換を爲すを謂ふもの、左に分説せん、イ商は射利の目的に出づることを要す、射利とは利益を得るを目的とすると同義にして、凡て商をなす商人なるものは、利益を得るを目的として諸般の行動をなすものなり、人誰か射利の意なからんや、さりながら官吏の物を買ふは、直接射利の意にあらずして、自ら夫れを消費せんとするものなり、此點に於て官吏の物を買ふは商にあらざるなり、苟も商と云はんには、財産權の取得又は移轉が、常に利を得るの目的に出づるを要す、唯其目的が射利にあれば、實際に損失を爲すと否とは商の意義に關係なし、□財産權の轉換を媒介し、或は轉換をなすの行爲たることを要す、所謂轉換の媒介とは、財産權の移轉、即ち轉換を容易ならしむるべき種類の行動の意味にして、例へば運送をなして轉換を容易にし、倉庫を設けて轉貨物を保管し、其他銀行を營みて財産權の反對給付を融通し、之を容易にするが如きをいふ、轉換行爲とは、財産權を生産者より消費者に分配するの謂ひにして、例へば賣買交換の如き是なり、以上前揭の定義は、洽く商とは何ぞやに答へたるものにして、實際各國の法制に規定せる商とは大同なるも小異あり、爰に於てか學者一國法制の上より商の槪念を與へんと欲し、或は商とは利益を得て他に轉ずべき意思を以てする財産權の有償取得、及びその移轉に關する行爲なりと謂ひ、或は法定の資格ある商人の行爲を商なりと謂ふ、前説は所謂客觀説にして、商を一の事實となし、其本質を發表せんと務むるもの也、後説は主觀説にして、商人の側より商人の意義を確定せんとす、案ずるに一國法典にして、商人の誰なるやを定め、其行爲を商なりとなす時は、素より明瞭にして一點の疑議なきも、古に存したりしが如き商人を以て、社會の一階級となしたる商人主義を採用せざる我法制に於ては、斯くの如き主觀説は正解と云ふべからず、又客觀説は一般商の説明としては完全なるも、我法の如く商行爲の何なるやを定たる法制に於て、果して完全に全部を含むかといふに、彼の製造の如きは、財産權の移轉に關する行爲と云ふを得ざるものにして、又財産權の有償取得には相違なきも、製造は取得のみにあらずして加工なるが故に、前上の定義は、全部を包含せる完全のものといふべからず、從つて本説も亦正解なりといふを得ざるものなり、要するに一國法制の上より商の意義を定めとするは、頗る難事に屬し、或は到底不可能に終らん、故に茲には商を洽く定義するに滿足し、若し法制の上より商は何ぞやといはば、我國に於ては、商法第二六三條乃至二六五條所規のものなりと答へん、終りに商事の何たる事に就きて一言せんに、商事とは、商に關する行爲即ち商行爲、及び商に關する不法行爲をいふ者なり、故に商法に規定せらるる所は勿論、公法的の部面までをも含み、商なる槪念よりも餘程廣きものなりとす。(商一條以下參照)
- 英
- Commerce
- 独
- Handel
- 仏
- Com-merce
情
(じよう)情とは、感覺につれて心中に意識せらる快又は不快の心狀を謂ふ、法律上の用語としては、事情とか、情狀とか云ひ、或機會又は狀態に於ける主觀的快不快を指すを普通とす、刑法第六六條第一項に「重罪輕罪違警罪を分たず、所犯情狀原諒すべきものは酌量して本刑を滅輕することを得」とある、情狀とは、犯罪の狀態が審判官に憫むべき感覺を起さしむるを謂ふものにして、憫むべき感覺を起さしむることを客觀視して犯情と云ふなり。(刑六六條)
或は單に事情といふ如き意に過ぎざる用法あり、例へば舊刑第一九〇條に「僞造變造の情を知りて云々」とあるが如きは、僞變造の事情を知ることにして、此場合に於ける情は、主觀的快不快の心狀にあらずして、此心狀を起すことあるべき事實の知覺を意味するものなり。(舊刑一二七、一九〇、二二八條
- 英
- Circumstances
- 独
- Umstand
- 仏
- Circonstance
障礙
(しやうがい)障礙とは、俗に故障の義にして、或る行爲を遂行するに當り、故障の爲め其ことを遂げざる場合の故障を障礙と云ふ、障碍と云ふも亦同じとす、犯罪にして之を例ふれば、障碍の場合は著手未遂也、彼の舛錯(失策)の場合の缺效犯に對す、再言すれば障礙は、學者の所謂相對的不能事由にして、左の場合に發生す、イ人に關する障礙、例へば或る行爲を遂行するに當り、他人の爲め妨げられたるが如きを謂ふ、犯罪行爲にして之を例ふれば、人を殺さんとせる場合に、第三者の故障又は妨害に依りて妨げられたるを云ふもの也、□物に關する障礙、例之ば甲が乙を殺さんとし、刀を揮つて之を斬らんとする際、其刀身の折れたることの如き是なり、次に單に障礙といへば、意思に基く故障も亦一種の障礙なるも、刑法の未遂犯の場合の如く、意外の障礙といへば、此場合は除外せらるるものなり。(舊刑一一二條)
- 英
- Obstruction
- 独
- Hindernisz
- 仏
- Obstacle
障碍
商號
(しやうがう)商號とは、商人が自己を表示する爲めに使用する名稱也、商人とは、商業を營む自然人及法人にして、舊商法草案に屋號といへるは、現行法の所謂商號のこと也、獨乙商法は、商號の定義を揭げて曰く「商號とは、商人が之に依り、商に關し其行爲を爲し、署名を爲す名稱なり」と、今前揭の定義を分説すれば、イ商號は名稱なり、商法第一六條に依れば、「商人は其氏名其他の名稱を以て商號となす事を得」と定めたり、故に如何なる名稱も皆商號となす事を得といはざるべからず、之に反して名稱にあらざるもの、例へば□十■の如きものは、商號といふべからざる也、□商號は、自己を表示する爲めに用ゆる名稱也、故に自已の製造品に附したる名稱の如きは、商號にあらざるなり、ハ商號は、商人の名稱なり、故に彼の役者が有する屋號の如きは商號にあらず、或は商號は營業夫れ自身の名稱なりとなす者あり、然れども營業を客觀視して、權利義務の主體となし、商號を其營業の名稱なりといふは正當ならず、又營業所の名稱なりと爲す説あり、然れども營業、若くは營業所を法人となし、之が名稱を有することを得る旨を規定したる法文存せず、故に茲には此説を採用せず。(商一六條)
- 英
- Trade name
- 独
- Handelsfirma
- 仏
- Nom commercial
商行爲
(しやうかうゐ)商行爲とは、商に關する行爲也、舊商法は商行爲を定義して「取捌きの方法に依り物の轉換を以て利益を得、又は生計の爲めにする目的を以て爲す行爲なり」とせり、現行法は、此定義にては、商行爲を網羅する能はずとなし、左の如く例記せり、□一利益を得て讓渡するの意思を以てする動産、不動産若くは有價證券の有償取得、又は其取得したるものの讓渡を目的とする行爲、□二他人より取得すべき動産、又は有價證券の供給契約、及び其履行の爲めにする有償取得を目的とする行爲、□三取引所に於てする取引、□四手形其他の商業證券に關する行爲、以上は講學上所謂絶對商行爲也、□五仕事を爲し又は勞務を加ふる行爲、例へば製造、加工、運送、出版、印刷、撮影、仲立、取次、代理、作業又は勞務の請負等也、□六動産不動産に關する行爲、例へば動産、不動産の取得、賃貸借、場屋の取引、寄托等之なり、□七專ら金錢に關する行爲、例へば銀行取引、及び保險等是なり、□八其他電氣瓦斯の供給に關する行爲、以上は講學上所謂相對的商行爲と唱ふるものにして、人と目的とを條件として商行爲となるものなり、則ち營業として之を爲すときは商行爲となり、專ら賃金を得るを目的とし、又單に勞務に服する者の行爲は商行爲とならざるなり、以上例記の外商人の爲す行爲は、一と先づ商行爲と推定せらるべきものにして、商人が營業の爲めにする行爲は總べて商行爲なり、學者の所謂附屬的商行爲とは即ち是なり。(商二六三、二六四、二六七條)
- 英
- Commercial transaction
- 独
- Handelsgeschäft
- 仏
- Acte commercial
商行爲法
(しやうかうゐはふ)商行爲法とは、商行爲に關する法規を謂ふ、由來商法の一編なる手形篇を手形法と云ふが如く、又海商に關する商法の一篇を海商法と云ふが如く、商法の一編なる商爲行編を商行爲法と謂ふ、或は商人主義の商法に對し商行爲主義の商法を商行爲法と云ふことあり、然れども此用法は一般に用ひらるるものにあらず。(商二六三條以下參照)
- 英
- Law of commercial transac-tion
- 独
- Handelsgeschäftsrecht
- 仏
- Loi de l'acte commercial
上級機關
(じやうきふきくわん)一國政務の統一上、必ず指揮監督ある官廳ありて、以て統治者に隷屬す、其指揮監督權ある者を被監督機關に對して上級と云ふ、即ち指揮監督權ある機關を被監督機關に對して、上級機關と云ふなり。
- 英
- Upper organ
- 独
- höheres Organ
- 仏
- Organe supérieure
上級官府
(じやうきふくわんぷ)上級官府とは、一の官廳に對し、指揮監督權ある官署又は政府をいふ、元來官府といふは、官廳及政府の略にして、其の司法、行政の何れに屬するを問はず、等しく之を官府といふ也。
- 英
- Upper government
- 独
- höhere Behörde
- 仏
- Gouvernement supérieur
上級行政官府
上級行政官府とは、上説の上級官府の一にして、下級官廳又は下級團體に對し、指揮監督の權ある官廳又は政府をいふ。(下級官府の部參照)
- 英
- Upper administrative government
- 独
- Oberverwaltungsbehörde
- 仏
- Gouvernement administratif supérieur
上級官廳
(じやうきふくわんちやふ)上級官廳とは、一の官廳に對し、指揮監督權ある他の官廳をいふ、即ち被監督官廳に對し、指揮及監督の權ある官廳をいふ者とす。上級行政廳とは、行政の任に當る官廳にして、他の官廳に對し、指揮監督ある官廳を指す。(行政裁判法一七條)
- 英
- Upper government
- 独
- höhere Behörde
- 仏
- Gouvernement supérieur
上級行政廳
- 英
- Upper administrative office
- 独
- höhere Verwaltungsbehörde
- 仏
- Bureau de l'administration supérieure
上級地方政廳
上級地方政廳とは、行政務に關する地方政廳にして、他の官廳又は公共團體に對し、指揮監督權ある他の地方官廳をいふ。
上級地方行政廳
上級地方行政廳とは、地方行政廳にして、上級にあある行政官廳又は行政官署をいふ、即ち指揮監督の權を有する行政官廳又は行政官署を、其下級官廳又は下級團體に對して、上級地方行政廳といふ也。
- 英
- Upper provincial ad-ministrative government
- 独
- Oberlokal-verwaltungsbehörde
- 仏
- Administration locale supérieure
上級地方行政官廳
上級地方行政官廳とは、上級地方行政■の一にして、行政官廳たるものをいふ、例へば郡なる地方行政廳に對し、指揮監督權ある府縣の如きこれ也。
- 英
- Upper provincial govern-ment
- 独
- Oberlokalbehörde
- 仏
- Gouverne-ment local supérieur
上級團體
(じやうきふだんたい)上級團體とは、一の團體に對し、指揮監督權ある他の團體をいひ、其團體が公法人たる地方自治公共團體たると、私法上の團體たるとを問ふことなし、所謂團體とは、人の結合にして、一定の目的遂行の爲めに集まれるものを云ふ。
- 英
- Upper body
- 独
- höhere Gemeinde
- 仏
- Corps supérieur
上級地方自治體
上級地方自治體とは、地方自治體として、上級團體たるものをいふ、例へば郡の市町村に於けるが如し。
- 英
- Upper provincial self-governmentsl body
- 独
- Oberlokalselbst-regieruugskommune
- 仏
- Corps indépen-dant local supérieur
上級地方自治團體
上級地方自治團體とは、上級地方自治體と云ふに同じく、郡の市町村に於けるが如き、地方自治體たる縣の郡に於けるが如きこれ也、茲に注意すべきことは、本來より云へば、地方自治團體、又は地方自治公共團體といふを正當の用語例とし、地方自治體といふは之が略例とす。
- 英
- Upper provincial self-governmentsl body
- 独
- Oberlokalselbst-regieruugskommune
- 仏
- Corps indépen-dant local supérieur
償金
(しやうきん)償金とは、損害の賠償金を謂ふ、戰費賠償金等も償金の一種なり、彼の國際事件に於ける要償金も亦償金の一種なり、之を要するに償金とは、國家が他國家に對し、種々の場合に要求する損害の賠償の謂ひにして、個人が個人に對し要求する損害の賠償金の如きは、通常の意義に於ては之を償金といはずして損害賠償金と言ふ。
- 英
- Indemnity
- 独
- Ersatzgeld
- 仏
- Indemnté
償金特別會計法
償金特別會計法とは、償金及び其利子は、一般の國家の歳出歳入と區分し、特別の會計を立つる旨を規定せる法律にして、本法規定する所に依れば、償金は金銀地金及び有價證券を以て之を保有することを得べく、此場合に於ては、日本銀行をして其交換を取扱はしむるもの也、又償金は、國庫内現金融通の爲め、國庫より償金の地金を以て、日本銀行よりは之に相當する兌換銀行券を以て、相互間に貸借勘定を組成することを得るもの也、而して前項の金地金は、日本銀行に於て、兌換銀行券の準備に供すべきものとす、尚政府は、每年償金の特別會計の歳入歳出豫算を調製し、歳出歳入の總豫算と共に帝國議會に提出すべきものなり。(二九年三月法六號、三二年二月法八號參照)
- 英
- Law of special accounts of indemnity
- 独
- Specialrechnungsgesetz der Entschädigung
- 仏
- Loi des comptes spécials de l'indemnité
常況
(じやうきやう)常況とは、狀態と云ふに同じ、例へば民法第七條に「心神喪失の常況にあるもの云々」とは、間斷なく心神喪失し居るを指すに在らずして、原則として其の狀態に在ることを意味するなり。(民七條以下參照)
- 英
- State
- 独
- Umstand
- 仏
- État
賞勳局官制
(しやうくんきよくくわんせい)賞勳局官制とは、賞勳局の組織權限に關する法令なり、左に略述せん、イ權限、賞勳局は、内閣に隷し左の事務を掌る、即ち勳位、勳章及年金に關する事項、記章、褒章其他賞件に關する事項、外國の勳章、記章の受領及佩用に關する事項等なり、□職員、賞勳局には左の職員を置くものとす、即ち總裁一人(勅任)書記官專任二人(奏任)屬六人(判任)の九人とす、總裁は局中一切の事務を管理し、所部の官吏を監督するものにして、書記官は、總裁の命を承け、局中の事務を掌理するものなり、而して屬は、上官の指揮を承け庶務に從事するものにして、總裁は局内奏任官の進退を内閣總理大臣に具狀し、局内判任以以下の進退は之を專行するものとす。(二六年一〇月勅一一六號賞勳官制)
- 英
- Imperial ordinance of Bureau of Decorations
- 独
- Behördeordnung des Dekoration-Bureaus
- 仏
- Ordonnance im-périale du bureau de la décoration
賞勳會議規程
(しやうくんくわいぎきてい)賞勳會議規程とは、賞勳局内なる賞勳會議の議事則ともいふべき法規にして、イ賞勳會議は、勳位、勳章及年金の敍賜又は褫奪の當否を議定するものなり、□賞勳會議は、賞動局總裁及議定官を以て組織す、而して議定官は十五人以内とし、勅任官にして勳一等以上の者の中より之を補するものとず、但し以上の者の外、特に皇族を以て議定官に補せらるる事あるべきもの也、ハ勳位、勳章、及び年金の敍賜又は其の褫奪は、議定官八人以上の議を經るにあらざれば、之が上奏裁可を乞ふことを得ざるもの也、二議事の方法は、多數決に依り之を決すべき者にして、可否同數なるときは、議長の決する所に依るべきものとす、ホ賞勳會議の事務一切は、賞勳局總裁之を管掌するもの也。(二六年一〇月勅一一七號參照)
- 英
- Rule for Council of De-corations
- 独
- Reglement der Dekora-tion-Versammlung
- 仏
- Règle du con-seil de la décoration
償還
(しやうくわん)償還とは、債權の目的たる給付を行ふに依りて、債務を消滅せしむるの行爲にして、彼の辨濟と云ふに異らず、或は償還といひ、辨濟といひ、履行といふ、皆同意義の語にして、唯請求者の方面より觀察して、或は償還の請求と云ひ、被請求者を稱して償還義務者と謂ふ、又債權の效力の方面より觀察して之を履行と云ひ、債務消滅の方面より觀察して之を辨濟と謂ふなり。(民一二一條)
- 英
- Repayment
- 独
- Rückgriff
- 仏
- Remboursement
償還義務者
償還義務者とは、指圖債權に於ける償還をなすべき義務ある者を云ふ、所謂指圖債權とは、債務者が、其證書に指定せる債權者又は其指圖人に辨濟を爲すべき證書債權を謂ふものにして、債務者が、裏書によりて讓渡を得たる指圖人より、又は其證書に指定せち債權者より、辨濟の請求を受けたる場合に、之を支拂はざるときは、通常指圖證券の裏書に伴ふ所謂遡求權なるものに依りて、裏書人は其後者に對して、償還及擔保の義務を負ふものなり、斯かる擔保及償還の義務ある者を稱して、擔保義務者及償還義務者と謂ふ。(民一二一條、商四八六條以下參照)
- 英
- Obligor of quittance
- 独
- Regreszschuldner
- 仏
- Obligé du rem-boursement
償還計算書
(しやうくわんけいさんしよ)廣く償還計算書とは、償還金額の計算書を云ふ、然し普通は、手形不拂の時に於て、手形所持人が其の前者に請求する事を得べき償還金額の計算書を謂ふものにして、其前者は不拂手形と支拂拒絶證書、及び償還計算書と引換にあらざれば、償還をなす事を要せざるもの也、今商法の規定に從ひて償還金額を示せば、イ支拂あらざりし手形金額、若し支拂人が一部の支拂を爲したるときは、其殘額、及び滿期日以後の法定利息、□拒絶證書作成の手數料其他の費用等にして、此金額は、償還の請求を受くる者の住所地が、支拂地と異る場合に於ては、支拂地より償還の請求を受くる者の住所地に宛てて振出したる、一覽拂の爲替手形の相場に依りて之を計算すべきものなり、但し若し支拂地に於て、其相場なきときは、償還の請求を受くる者の住所地に最も近き地に宛て、振出したる一覽拂の爲替手形の相場に依るものとす、而して以上の計算の方法により、其償還金額の記載をなしたるものが、即ち償還金額計算書なり。(商四九五及四九一條參照)
- 英
- Recourse account
- 独
- Rückgriffsrechenschaft
- 仏
- Compte du remboursement
商慣習
(しやうくわんしう)商慣習とは、商事に關する慣習をいふものにして、慣習とは、慣行に依りて生じたる法則を謂ふ、其法則例規が商事に關するときは、之即ち商慣習なり、されど商慣習は、法律上より見れば、一の事實に過ぎざるものとす。(民訴二、一九條)
- 英
- Commercial custom
- 独
- Handels-gebrauch
- 仏
- Coutume commerciale
商慣習法
商慣習法とは、商慣習にして國家に認められ、法律たるの效力を有するに至りたるものをいふ、如何にして慣習が法律たるに至れるかは、古來より法學者の論諍せる所にして、□一或學者は慣習久しく行はるるときは、人民の默認にて法律たるの效力を生ずるに至ると(默認説)、□二或學者は、主權者の默許に依りて法律たるの效力を生ずと(默許説)、□三或は慣習が慣習法となるには、人民が其慣習より得る利益を自己の權利なりと確信する時に在りと(權利確信説)、□四或は慣習が始めて裁判所の保護を受けし時に於て、法律たるの效力を生ずるに至るものなりと(法定承認説)、以上諸説ありと雖も、我が法は明示を以て法律に其條件を設けたり、次に商慣習法は民法に先ちて適用せらるるものにして、商事に關しては、先づ商法を適用し、商法に規定なきときは商慣習を適用し、以上のものなき時に於て始めて民法を適用するものなり。(商一條)
- 英
- Customary commercial law
- 独
- Handelsgewohnheitsrecht
- 仏
- Droit coutumier commercial
償還請求權
(しやうくわんせいきうけん)償還請求權とは、支拂人が手形金額の支拂を爲さざりし場合に於て、前者に對して有する所持人の權利なり、又此請求に應じて支拂を爲したる前者は、又自己の前者に對して、更に償還の請求を爲すことを得て、漸次に遡りて振出人に請求するに至て終る、此遡求して償還を請求する各人の權利を償還請求權と云ふ、元來償還請求權は、手形の不拂なる事實より生ずるものなるが故に、其發生の條件として支拂の爲めの請求が必要なり、而して支拂の請求は、手形を呈示して爲すべきものにして、不拂の時は拒絶證書を以て、請求の爲の呈示及び不拂の旨を證明せざるべからず、所謂拒絶證書とは、支拂人が手形金額を支拂はざる事、其他一定の事項を證明する法定の證書なり、次に支拂の請求は、滿期日に於てせらるべきものにして、不拂の時は滿期日又は其後の二日内に、前述の拒絶證書を作成し、且つ償還義務者に償還請求の通知を發すべきものとす、以上の條件を履行せざるときは、手形所持人は、前者に對する償還請求權を失ふものとす。(商四八七條)
- 英
- Right of recourse
- 独
- Regreszrecht
- 仏
- Droit du recours
商業
(しやうげふ)商業とは、商行爲を行ふことを營業とするを謂ふ、所謂商行爲とは、射利の目的を以て爲す物の轉換及媒介にして、業とは、絶えざる收入の目的を以てなす繼續法律行爲の謂ひなり、從つて商業とは、射利的物の轉換、及び媒介を絶えざる收入の源となす目的を以て行ふ、私法的の法律行爲なりと謂ふべし。(商七條等參照)
- 英
- Commerce
- 独
- Handelsgewerbe
- 仏
- Commerce
常業
(じやうげふ)業とは、絶えざる收入の目的を以て爲す職業の謂ひにして、常業とは、所謂業を常にするを謂ふなり、常とは繼續してと云ふ程の意味にして、平常といふが如きはその用例なり、常業と云ふも亦之と同じく、絶えざる收入の目的を以て、或る業務を繼續して行ふを謂ふものとす。
- 英
- Constant business
- 独
- beständiges Geschäft
- 仏
- Affaires ordinaires
商業學校規程
(しやうげふがくかうきてい)商業學校規程とは、商業學校の組織、種類、授業科目、入學資格等に就て規定したる法規にして、分説すれば左の如し、イ種類、商業學校を別ちて甲、乙、及び高等の三となす、甲種商業學校の修業年限は、三ケ年にして、稍程度高き者、乙種商業學校も同じく三ケ年なれど程度稍低し、高等商業學校は、土地の情況に依り、甲種商業學校の程度より更に高等なるものとす、□授學科目、甲種商業學校は、修身、讀書、習字、作文、數學、地理、歷史、外國語、經濟、法規、簿記、商品、商事要項、商事實踐、體操等となす、乙種商業學校の學科目は、修身、讀書、習字、作文、算術、地理、簿記、商事要項、體操等とす、高等商業學校も甲種商業學校と同じきも、稍高等なるものとす、ハ入學資格、甲種商業學校は高等小學梭卒業以上、乙種商業學校は尋常小學校卒業以上のもの、高等商業學校は中學卒業程度以上とす、□二組織要項は、商業學校に於ては、學科目、授業時數、學級數に應じ、相當の教員を置くこと、及び通常教室、特別教室、商業實踐室、其他相當の教授用及參考用圖書、器具、標本、商品見本、體操場に充つべき相當の場所、及體操用器具を備ふることを要するものなり。(三二年二月文部省令一〇號)
- 英
- Rule of commercial school
- 独
- Regel der Handelschule
- 仏
- Règles de l'école commerciale
商業會議所
(しやうげふくわいぎしよ)商業會議所とは、商業會議所法に基つき市の區域に依り、商業會議所議員の被選擧權を有すべき者三十名以上の發起申請に對し、農商務大臣の認可を得て設立せる公共團體なり、之を設置する乎續は、商業會議所發起の認可を受けたる者定款を作り、其區域内に於て、議員の資格を有するものの三分の二以上の同意を得て、農商務大臣の許可を得て設置すべきものとす、商業會議所の機關は、會頭一人其他副會頭、及び必要なる役員、事務員にして、其議決機關は會議所の團體員の選擧に係る議員を以て組織するもの也、但し其選出に係る議員の外、定數五分の一の範圍内に於て特別議員を置く事を得、特別議員は、年齡三十歳以上の帝國男子中、商工に關する學術、技藝、又は經驗あるものにして、地方長官より任命せらるるものとす、商業會議所の權限の重なるものは、イ商工業に關する調査をなし、商工業に關する法規の制定、改廢、施行に關し意見を述ぶること、□行政廳の諮問に答ふこと、ハ商工業に關する紛議を仲裁すること、二農商務大臣の認可を受け、商工業に關する營造物を設立管理し、其他商工等の發達に關する施設をなすこと、ホ商工業の狀況、及び統計、調査の爲めに必要なる材料の提出を、商工業者に請求するを得ること等是なり、前説の如く商業會議所は、公共團體なるにより、其職務を怠り、不正の行爲をなしたる議員に對し、過怠金を科し、又は之を除名するの權を有し、又其經費、及び過怠金を滯納せるものあるときは、國税滯納處分の例によりて之を徵收することを得るなり、終りに注意すべきは、營造物の使用科、手數料を公法上の強制手段によりて、其徵收を強制せずして、民事訴訟として起訴することを得るものとせり、茲は畢竟便宜上の規定なりといふべし。商業會議所條例とは、商業會議所の組織權限其他に就きて定めたる法規なりしも、現行商業會議所法發布と共に廢止せられたり。(二三年法八一號)
- 英
- Chamber of commerce
- 独
- Kaufmannschaft
- 仏
- Chambre du com-merce
商業會議所條例
- 英
- Rule of chamber of commerce
- 独
- Regulirung der Kauf-mannschaft
- 仏
- Loi de la chambre du commerce
商業會議所法
商業會議所法とは、前設せる商業會議所の設立議員の選出法、組織、權限等に就きて規定せられたる法規にして、其内容は前説商業會議所の説明に明かなり。(三五年三月法三一號)
- 英
- Law of chamber of oom-merce
- 独
- Gesetz der Kaufmannschaft
- 仏
- Loi de la chambre du commerce
商業使用人
(しやうげふしようにん)商業使用人とは、商人が其營業の爲めに使用する機關にして、其商人に專屬するものなり、イ商業使人は、商人に專屬する者也、從つて一人にして數多の商人に所屬するは、商業使用人と謂ふべからず、□商業使用人は、商人が其營業を行ふ爲めに使用するもの也、故に商業以外の行爲を行ふ爲めに、使用するものは商業使用人にあらざるなり、ハ商業使用人には種々あり、營業の全部に就き、種々の行爲をなさしむる者を支配人といひ、又或る種類若くは特定の事項に就き種々の行爲を爲さしむる者を番頭、又は手代と謂ふ、毫も法律行爲をなさしむるに爲めに、使用するにあらずして、單に勞務をなさしむる爲めに使用する者を其他の使用人と謂ふなり、二商業使用人と、其主人との間に存する法律關係如何は、由來異論の存する所にして、或は雇傭關係なりと謂ひ、又は委任關係なりと謂ひ、或は此の二者を混用せる關係なりとも謂ふ、按ずるに、こを委任關係なりとせば、使用人が勞務に從事する場合を説明することを得ず、又雇傭關係なりと云へば、使用人が法律行爲をなす場合を説明することを得ざるなり、爰を以て、通説は、之を委任と雇傭の混合したる契約となすなり。(商二九條以下)
- 英
- Trade assistant
- 独
- Handl-ungsdiener
- 仏
- Employé commercial
商業帳簿
(しやうげふちやうぼ)商業帳簿とは、商人が一定の事項を記載する爲め、設備する義務ある一定の帳簿を謂ふ、イ商業帳簿は帳簿なり、帳簿とは、書面の義にして、彼の通俗いふが如き數枚を束ねて作りたる冊子のみを謂ふにあらず、單に一片の紙葉にても足れりとす、□設備の義務ある帳簿也、廣義に於ては、商人の設備する商業の爲の帳簿は、一切商業帳簿といひ得べ可きも、法律上所謂商業帳簿は、斯く廣汎ならず、單に法定の日記帳、財産目錄簿、貸借對照表の三に限るものとす、所謂日記帳とは日々の取引其他財産に影響を及ぼすべき一切の事項を整然、且つ明瞭に記載すべきものにして、財産目錄とは商人の總財産、即ち積極財産、例へば動産、不動産、債權、著作權、版權、鑛業權の如きと、消極財産例へば債務等を時價に見積り、一年一回以上特定の事期に於て調製するもの、貸借對照表とは、貸方、借方を對照記入し、一見債權債務の關係に於ける商人の地位を明かならしむる帳簿なり、元來商業帳簿なるものは、商人が自ら其商業を整理且つ監督する爲め、使用せる任意的の慣習に起り、遂に一般強制的のものとなりし也、現今の商業帳簿に關する立法主義を大別すれば、□一干渉主義は、帳簿の設備及種類、記入方法に就て詳細なる規定を設け、官廳をして一々之を監督せしむるの主義なり、佛法系は之に屬す、□二放任主義は、商人に何等の帳簿設備の義務を定めず、從つて種類記入の方法に就きても、全く商人の德義に放任するの主義なり、此主義は比較的良主義なりと見え、世界に於て最も商業盛なる英米の立法例は之に屬せり、□三折衷主義とは、干渉と放任の折衷にして、商人に商業帳簿設備の義務を認むるも、其記入方法を制限せず、又官廳の監督を要せざるものとするの主義なり、我現行法は略ぼ本主義に依りたるものといふべし。(商二五條乃至二八條參照)
- 英
- Trade book
- 独
- Handelsbuch
- 仏
- Registre commercial
商業登記
(しやうげふとうき)商業登記とは、裁判所に設備したる帳簿に、商人が一定の事項を記入するの手續にして、商人の信用公示を以て目的とす、イ裁判所に設備したる帳簿に登載するものなり、從つて裁判所以外の官廳に備へたる帳簿、例へば意匠、商標の登錄は、之を農商務省に備へたる帳簿に行ふが故に、商業登記と云ふべからず、□商人が其帳簿記入を申請するものなり、故に商人以外のものが申請せるものは、商業登記にあらず、ハ商業登記は、特定の事項を記入するものなり、登記すべき事項は、國と時代によりて異るも、其重なるものを揭ぐれば、商號、未成年者、妻、後見人、支配人、會社等に關する諸種の事項にして、全體より之を謂ふときは、登記事項は個人には尠くして、會社に多しとす、ニ商業登記は、商人の信用の公示を目的とす、從て登記は説明的にして、設權的の效力あるは例外なり、又登記に因りて不適法なる行爲が適法となるものにあらざるも、唯善良なる信用が、登記に依りて保護せらるる意味に外ならざるなり。(商九條以下參照)
- 英
- Commercial registration
- 独
- Handelseintragung
- 仏
- Enregistrement commercial
商業登記所
(しやうげふとうきしよ)商業登記所とは、商業登記を管轄する役所の謂にして、商法の規定する所に依れば、商人の營業所の在る地を管轄する區裁判を以て、商業登記の裁判所とし、判事を主任とし、書記を補助として之を掌らしむるものなり、尤も區裁判所は區裁判所自身のみならず、其出張所を以ても商業登記を取扱ふものにして、所謂商業登記は、一の非訟事件として裁判所の管轄權に屬するものとす、本店の所在地に於て登記すべき事項は、其支店が管轄區裁判所を異にする場合に於ては、支店の所在地に於ても亦之を登記することを必要とするものなり。(非訟手續一三五條の二)
- 英
- Commercial registration office
- 独
- Handelsregistratur
- 仏
- Bureau de l'enregistrement commercial
商業登記簿
商業登記簿とは、各商業登記所たる區裁判所に備へて、當事者の請求により商業登記を登記する帳簿を云ふ、各登記所に備ふべき商業登記簿は、□一商號登記簿、□二未成年者登記簿、□三妻登記簿、□四後見人登記簿、□五支配人登記簿、□六合名會社登記簿、□七合資會社登記簿、□八株式會社登記簿、□九株式合資會社登記簿、□十外國會社登記簿等にして、尚各登記所に各商業登記簿の見出帳を備ふべきもの也、尚登記簿に就きて一言すべきは、元來登記は公示にあり、故に登記所は、登記簿の閲覽を許し、又手數料を納付するときは之に謄本若くは抄本を交付すべきもの也、登記所は、登記上利害の關係を疏明して申請を爲したる者には、其關係ある部分に限り、登記簿の附屬書類の閲覽を許すべきものとす、或る場合に郵送料を納付して、登記簿の謄本又は抄本を請ふときは、登記所は之を送付するの義務ありとす。(三一年六月法一四號非訟事件手續法一三九條以下及三二年五月司法省令一四號參照)
- 英
- Commercial register
- 独
- Handelsregister
- 仏
- Registre commercial
證券
(しやうけん)證券とは、一の權利證書のことにして、依つて以て權利の存在を證明するものをいふ也、凡そ債權其他の權利の存在を證明するの方法は數多けれども、最も普通なるは書面に依て證據立つるにあり、斯く後日の爲め書面を以て證據を保存するを證書と謂ひ、權利の存在するを證明する證書を證券と謂ふ。(民訴五八三條)
- 英
- Document
- 独
- Papier
- 仏
- Docu-ment
證書
證書とは、前述の如く、或る事實の存在を證明する爲に後日に供ふる書面にして、之を分ちて公正證書、及び私署證書となす、所謂公正證書とは、官吏、又は公吏が法律に定めたる形式に於て、其職權により作制したる證書を謂ふ、例へば戸籍謄本の如き、又公證人が作りたる金錢の貸借證書の如きは、何れも其職權内に於て、法定の形式を踐み作られたるものなるが故に、公正證書と稱すべきなり、私署證書とは、一私人の作りたる書類にして、其作制の目的形式は種々ありと雖も、個人に依て作られたるものなるが故に、一般に之を私署證書と稱すべきなり。(民訴五八三條、及び三三七條乃至三五五條參照)
- 英
- Written testimony
- 独
- Urkunde
- 仏
- Document écrit
證券的債權
(しやうけんてきさいけん)證券的債權とは、債權の存在及び範圍が、專ら證書のみに依りて定まる債權也、從つて證書上の權利の利用には、必ず私法上其證書の占有を條件とするものなり、權利の成立、及び存續に證券の作成を心要とする證券、即ち證券的債權は、一に之を設權的證券と云ひ、又權利の利用に其の證券の占有を必要とする點より觀察して、證書證券といふことあり、されど證券が權利を負擔し、權利が證券に化體せるが如き有樣を呈する證券は債權證券に限らず、彼の物權證券たる貨物引換證、預り證券、船荷證券等も包含するものといふべし、故に證券的債權を證券たる方面より觀察して區分すれば、債權證券(手形の如き)と、物權證券の二となすを得べし。
- 英
- Documental credit
- 独
- urkundliche Forderung
- 仏
- Créance justi-ficative
證券的債務
證券的債務とは、證券的債權の對抗を受くる債務を謂ふ、元來債權と云ひ、債務と云ふは、債務關係を權利の方面より觀察したると、義務の方面より觀察したるとの名稱の區別にして、權利者の方面に立ちて債權と云ひ、義務者の方面に於て債務と云ふなり。
- 英
- Documental obligation
- 独
- urkundliche Obligation
- 仏
- Obligation justificative
證據
(しやうこ)證據と云ふ語には二箇の意味あり、□一は訴訟上或る事實の眞實を確定すべき資料を指し、學者は之を證據資料又は證據方法といふ、□二は證據方法が眞實の確定に及ぼす效果を指し、學者は之を證明とも稱す、舊民法證據編於にては、證據は判事の考證、直接證據、及び間接證據より成立するものとなし、自白、法律上の指定、世評も、亦證據の意義中に包含するものとせり、此意義に於ては、前述の一及二の兩義を含む、されど此舊民法は實施に至らずして廢止せられたり、所謂證據方法は、民事及刑事訴訟法に依れば、人證、鑑定、書證、檢證、當事者本人の訊問の五となす、次に證明とは前述の如く、爭若くは疑ある事實に就き、其事實の眞否を、裁判官をして、確信せしむる行爲を謂ふものにして、彼の疏明とは區別すべきものなり、所謂疏明とは、爭の有無を問はず、單に裁判官にして其主張事實を、眞實なるべしとの、信用を置かしむるを以て足るものなり、之疏明と異にして、即ち證明は必ず爭あり、又は疑ある事實に關することを要し、然も其事實の眞否に就きて裁判官をして、確信せしむる行爲ならざるべからざるものとす。(民訴二七三條以下、刑訴九〇條以下參照)
- 英
- Evidence
- 独
- Beweis
- 仏
- Évi-dence
證據抗辯
(しやうこかうべん)證據抗辯とは、一方の當事者が、擧證の申立を爲せる場合に、この擧證の申立に對し、擧證の方式、其必要條件、證據方法の效力、又は其申立が許容すべからざること等に就きてなす相手方の攻擊を謂ふ、證據抗辯は、判決に接著する口頭辯論の終結に至る迄、之を主張することを得るものにして、時期に後れて提出されたる證據抗辯は、裁判所が若し之を許すに於ては、訴訟を遲延すべく、且つ訴訟を遲延せしめんとする故意を以て、又は甚しき怠慢に依り、早く之を提出せざりしことの心證を得たりしときは、申立に依り之を却下ることを得べし。(民訴二一四條一項及二六八條三號)
- 英
- Plea to the means of proof
- 独
- Beweiseinrede
- 仏
- Plaid pour l'évi-dence
上告
(じやうこく)上告とは、第二審の判決に對し、法律違背あることを理由として、更審を求むる爲めになす上訴を云ふ、我訴訟法に於ては、訴訟當事者をして同一の訴訟事件に付き、二回の辯論を爲さしめ、二個の裁判所が之を審理判決するときは、國家は當事者を保護するの途十分と認め、復た第二審の判決に對し、事實の復審を許すの必要なきものとしたり、然れども一國法律の適用を統一ならしむる事は、國家の生存上必要なる所なり、爰に於て乎最高唯一の裁判所を設け、下級裁判所の訴訟事件に關する法律適用の當否を審査せしむることとせり、之獨り一國の法律適用を統一ならしむる國家の利益あるのみならず、訴訟當事者に對しても亦利益ありとす、上告なる制度は、此目的の爲めに設けられたるものにして、即ち下級裁判所の訴訟事件に關する法律適用の當否を審査するを目的とす。(民訴四三二條以下、刑訴二六七條以下參照)
- 英
- Revision
- 独
- Revision
- 仏
- Revi-sion
上告裁判所
(じやうこくさいばんしよ)上告は、第二審の終局判決に對する不服の申立なるを以て、上告裁判所とは、第二審裁判所が從屬的關係を有する上級裁判所を云ふなり、即ち控訴院の終局判決に對しては、大審院、地方裁判所が第二審として爲したる判決に對しては、大審院、地方裁判所が、第二審として爲したる判決に對しては、之を管轄する控訴院を以て上告裁判所となすなり。(刑訴二七七條)
- 英
- Court of revision
- 独
- Revi-sionsgericht
- 仏
- Tribunal de revision
上告審
上告審とは、上告裁判所に於ける手續を謂ふ、上告審は先づ上告の適法なるか否やを調査し、其適法なる場合に於て、更に上告の理由あるや否やを調査すべきものなり、而して上告の理由ありや否やは、第二審判決の當否に關するものなるを以て、上告審は、原告の訴に依りて成立したる訴訟手續の一部にして、獨立の訴訟手續にあらざるものと謂ふべし、則ち上告審に於ては、第二審判決の馮據となりたる事實に就き、何等の調査を爲すべからざるものなるを以て、上告審の辯論は、畢竟第二審に於て判決を爲す際に於ける辯論の續行なりと云ふべし。(民訴四三二條以下、刑訴二六七條以下參照)
- 英
- Trial of the court of revision
- 独
- Revisionsinstanz
- 仏
- Jugement du tribunal de revision
上告趣意書
(じやうこくしゆいしよ)上告趣意書とは、上告申立の理由及範圍を示す爲め、申立の日より五日内に差出すべき書面を謂ふ、凡そ上告は、二審判決が法律に違反したる事を理由とするものにして、故に上告趣意書には、原判決が訴訟法に違背したるや、又は其他の法律に違背したるやを明にせざるべからず、上告は、判決の一部に對しても爲すことを得るものなれば、上告趣意書は、此點をも明にせざるべからず、(一九年勅四六號參照)上告申立書とは、民事に於ける上告狀と同じく刑事訴訟に於ける上告申立の書狀とす、上告申立書に記載すべき條件は、□一上告せらるる判決の表示、□二此判決に對して上告を爲す旨の陳述を揭ぐべきものなり、上告を爲すには、其申立書を原裁判所に差出し、且つ其申立を爲したる日より五日内に、上告趣意書を差出すべきものにして、裁判所は、上告申立書及趣意書を受取りたる時より二十四時間内に、之を相手方に送達すべきものなり。(刑訴二七三、二七四條)
- 英
- Writing of contents of revision
- 独
- Revisionsinhaltschrift
- 仏
- Lettre du contenu de la revision
上告申立書
- 英
- Petition of revision
- 独
- Revisionsschrift
- 仏
- Petition de la revi-sion
上告人
(じやうこくにん)上告人とは、民事訴訟法の規定に從ひ、民事訴訟に就き、上告をなす者を謂ふ、民事訴訟に於て、上告をなし得る權利者は、即ら訴訟の當事者なりとす。(民訴四三九、四四二、四四三條)
- 英
- Demandant
- 独
- Revisionskläger
- 仏
- Demandeur
上告申立人
上告申立人とは、刑事訴訟の規定に從ひ、刑事判決に對し、上告を申立て得る權利者をいひ、民事訴訟の所謂上告人よりも、廣汎なる意義を有す、即ち□一檢事及被告人、檢事は、公益の代表者なるが故に、無罪の言渡に對して尚上告人をなす事を得るも、被告人は、利益なる裁判を自己の不利益に破毀變更せしむるが爲め、上告を爲すを得ざるなり、□二辯護人、上訴權は、被告人に屬するを原則とす、唯辯護人は、上告人に代りて上告を爲すことを得る者なり、□三法律上代理人、被告人の法律代理人は、辯護人と異り、獨立して被告人の爲めに上告を爲すことを得べし、□四私訴に就きては、民事原告人、民事被告人、民事擔當人、民事參加人より上訴を爲す事を得るものとす。(刑訴二四二條乃至二四四條、四條)
- 英
- Demandant
- 独
- Revisions-kläger
- 仏
- Demandeur
證據決定
(しやうこけつてい)證據決定とは、當事者の辯論と分離し、特別の手續を以て證據調を命ずる訴訟指揮上の命令也、證據決定をなすには、次の條件ある場合に之を爲すものとす、□一證據を必要とする事實存在する事、證據を必要とする事實とは、當事者の主張する事實の眞否が、訴訟に就きての裁判に影響を及ぼすべきものにして、且つ其事實が訴に係るものを謂ふ、從つて訴訟に就きての裁判に影響を及ぼさざる事實に就きては、縱令訴に係りて、當事者より證據の申出を爲すも、裁判所は證據決定を爲すべきものにあらざるなり、□二證據方法の申出であること、證據方法の申出であるを要するが故に、申出でたる證據の價値が、立證事項を證明するに足るものなるを要し、又其申出が訴訟法の方式に違背せざることを要するものとす、又裁判所が其職權を以て、檢證、鑑定を命ずる場合に於ては、證據決定を爲すべきものあらざるなり、次に證據決定には、左記の事項を揭ずるを必要とするものなり、A證すべき係爭事實の表示、此表示は、係爭事實を當事者及び訊問すべき證人若くは鑑定人に、疑を生ぜざる程度に於て表示するを必要とす、B證據方法の表示、殊に證人、鑑定人を訊問すべきときは、此表示をなすべきものなり、C證據方法を申立てたる原告、若くは被告の表示等にして、證據決定は、口頭辯論に基づく裁判所の決定なるが故に、之を言渡すことを必要とす、證據決定を言渡されたるときは、此決定に依りて、特別の證據調を命ぜらるるものなるを以て、當事者の口頭辯論は、證據決定に基づく證據調の手續の完結に至るまで、中止せらるるものとす、終りに證據決定の施行、即ち證據調は、裁判所が職權を以て爲すべきものにして、裁判所は其決定の施行前に於ては、一旦爲したる證據決定の變更をなすことを得べく、又は全く之を爲さざるを得べきものなり、蓋し證據決定は、訴訟指揮上の命令なるを以て、此命令は、裁判所が自由に變更を爲す事を得べき性質のものなればなり。(民訴二七六條乃至二七八條參照)
證據書類
(しやうこしよるゐ)證據書類とは、證據となるべき書面を云ふ、普通所謂證據書類とは、一の記錄にし或事實を證明するものを謂ふ、彼の單に證書といふと同一とす、唯證據方法として證書が用ひらるとき、其れを證據書類と云ふのみ、而して證書なるものは、單にある事實が證明せらるに止まらず、之に就きて爭又は疑の生じたるときは、其事實の證據に供する目的を以て、豫め之を作製せるものにして、訴訟上の用語を以てすれば、必要事實又は徵憑を證明するを得べきものならざるべからざるなり、故に注意すべきは、訴訟に於て證據となりたる書面は、必ずしも證書又は證據書類と云ふべかざる場合あること之なり、例へば文書毀棄罪を以て訴追せられたる者ある場合に、其毀棄せられたる證書が、證據として裁判所に提出せられたりとせよ、此場合の證書は、單に物件を毀棄したると同じく、判事は、其性質を觀察し、毀棄なる所爲の心證を得んとするものにして、決して書類の書類たる所以の記錄が、證據とせらるるにあらず、故に此場合は、假令書面が證據とせらるるも、證據書類と云ふべからざるなり、故に證據書類とは、書面が書面として證據に供せらるべきものをいふと謂ふべし。
- 英
- Documentary evidence
- 独
- Beweisstück
- 仏
- Document de l'evidence
證據調
(しやうこしらべ)證據調とは、裁判官が當事者の提出したる證據方法に包含し居る事項を調査するを謂ふ、而して其證據調を爲すには、受訴裁判所に於て爲すを通例とす、唯法律に於て特定したる場合に在りては、受訴裁判所の部員一名に命じて、又は他の區裁判所に法律上の共助の法則に從つて、囑託して爲すべきものなり、證人の場合を以て之を例へば、證人が受訴裁判所に出頭するを得ざる場合、又は皇族等に就きては、其所在に於て爲すべきが如き之なり。(民訴二七三、二七七、二七九、二八六條)
- 英
- Taking of evidence
- 独
- Beweis-aufnahme
- 仏
- Investigation de l'evidence
證據調手續
證據調手續とは、證據調に關する訴訟上の手續にして、當事者が證據方法を申立てたる場合に、當事の演述より分離して爲すときは、證據決定を爲すが如き、其他取調に關する手續を謂ふものなり。(民訴二一五條參照)
- 英
- Procedure for taking evidence
- 独
- Beweisaufnahmsverfahren
- 仏
- Progrès de l'investigation de l'evidence
證據方法
(しやうこはうはふ)證據方法とは、裁判官が證據原因を取調ぶべき方法にして、例へば證言は證據原因にして、證人は其證據原因なる證言を取調ぶべき方法なるが故に、證據方法なるが如き之也、我訴訟法は、證據方法を人證、鑑定、書證、檢證、當事者本人訊問の五とす、所謂人證とは、係爭事實に就き實驗を爲し、且つ其報告を爲し得べき者として、裁判所より其報告を要求せらるる第三者の訊問の謂ひ也、鑑定とは、裁判官の指示したる材料に就き、裁判官を補助する第三者の特別なる智識に基く供述を云ふ、又書證とは、之を見る者に或事實の存在を體明する書類にして、檢證とは、裁判官が自己の五官の感能に依り、係爭の事實を實驗する事を謂ふものなり、次に當事者本人の訊問とは、法律上代理人若くは訴訟代理人に依り、訴訟を爲す場合に於て、其申立たる總べての證據を取調べたる結果、尚係爭事實の眞否に就て、裁判所が心證を得ざる場合に爲す原告、若くは被告の訊問を謂ふなり。(民訴二七六條)
- 英
- Means of proof
- 独
- Beweis-mittel
- 仏
- Moyen de l'evidence
證據物件
證據物件とは、或る事實の證據となるべき物件を謂ふ、例へば犯罪の證據となるべき、所謂供用物件の如き之なり。(刑九〇條參照)
- 英
- Evidence
- 独
- Zeugnisz
- 仏
- Fvidence
證據保全
(しやうこほぜん)證據保全とは、訴訟上に於て、當事者が利用せんと欲する證據の紛失、又は之を使用し難き虞ある場合に於て、證據調を爲して證據を保存し置くを謂ふ、故に訴訟の繫屬前、又は訴訟が證據調の程度に達せざる以前に於て爲す證據調を云ふものなりとす、而して訴訟の繫屬前又は訴訟が證據調の程度に達せざる以前に於ては、證據の必要なりや否やは末定の問題に屬するものなるも、然も必要不必要が未定なりとの故を以て、其證據調を許さざるときは、他日證據調の必要を生じたる場合に於て、既に其證據を失ひ、之を利用することを得ざるに至る場合なきを保せず、故に訴訟法は、此不便を防がん爲めに、其消滅の虞ある體據に就きては、豫め證據調を爲して、其證據を保存するの方法を講ぜり、證據保全の要件は、□一證據を紛失するの虞あるとき、若くは其證據を使用し難きに至るの虞ある場合なること、□二證據調保全の方法は、證人若くは鑑力人の訊問、又は檢證の方法に依るときに限る、例へば、證人が病氣危篤に迫まれるときに際して、訊問を爲すが如き、又は檢證物が日時の經過に依りて、其形狀に變更を來すべきときの如き之なり。(民訴三六五條乃至三七二條)
- 英
- Perpetuating evidence
- 独
- Beweissicherung
- 仏
- Evidence perpétuelle
證據力
(しようこりよく)證據方法が、裁判に證據を供することを得べき力を證據力と稱す、而して、證據力は裁判所の自由の判斷に依りて定むべきものにして、之現行法が採用せる自由心證主義の命ずる所なり、所謂自由心證主義とは、證據の取調に就き、其得たる結果の判斷に就きては、裁判所の自由也とする主義にして、凡そ裁判所が心證を得たりといふは、證明の目的物たる或る事實に關する觀念を確信し得るを云ひ、或る證據方法が、其事實の觀念に確信の度を加へしむると否とが、裁判官の自由に任せらるるの主義を指すなり、偖其或事實の觀念に、確信の度を加へしむる證據方法の力が、即ち所謂證據力にして、例へば貨幣僞造罪に於て、貨幣僞造なる事實の觀念を裁判官に得しむるが爲めに、僞造貨幣が證據物件として提出せられたりと假定せよ、此場合に於て、判事が僞造貨幣に依りて、貨幣僞造の犯罪事實の觀念を得たるときに、僞造貨幣が判事の心證に供せし力を證據力といふなり。(民訴三四九條二項參照)
- 英
- Probative force
- 独
- Beweis-kraft
- 仏
- Force de l'evidence
上裁
(じやうさい)上裁とは、上奏裁可の略語にして、所謂上奏とは、至尊に上つる奏聞をいひ、裁可とは、奉れる案文若くは事實を國家の正當の意思とする天皇の行爲にして、普通親署の形式に依りて行はるるもの也、所謂上奏に二あり、一は議式上の上奏にして、祝賀吊傷の表詞を奉り、或は勅語に對して奉答文を爲すが如きをいひ、二は政治上の上奏にして、立法行政等に關して其意見を奏問するを謂ふなり。(理事分限令七條、陸軍兵備品會計規則四條)
- 英
- Report to the Emperor and his sanction
- 独
- an den Kaiser zu berichten und sein Erlaubnis zu bitten
- 仏
- Sanction de l'Empereur
商事
(しやうじ)商事とは、商に關する一切の事項を云ひ、所謂商行爲を初め、商不法行爲、商に關する公法上の行爲の全部を包含す、されど普通商事と云へば、此の意義より少しく狹く、商に關する私法的の一切の事項を指すものの如し、商法第一條に「商事に關し云々」とあるは此用例なり。
商事會社
商事會社とは、商行爲を爲すを業とする目的を以て設立したる社團法人を云ひ、商法は、單に會社と稱し、別ちて合名會社、合資會社、株式會社、株式合資會社の四となす、されど民法は、其起草の當時組合を會社と稱したりしを以て、夫れと區別せんが爲めに、社團法人を別ちて、民事會社、及び商事會社となせり、確定法文も亦之に從ひ、唯會社と云ひたりし組合を、組合と改めたるの外修正を試みざりき。(民三五條二項參照)
商事株式會社
(しやうじかぶしきくわいしや)商事株式會社とは、商事會社にして、株式組織に依るものを云ふ、株式組織とは、資本を株式に分割し、社員は其有する所の株式の金額を限度として、責任を負擔する會社組織を云ふものなり、左に分説すれば、イ資本は一定の株式に分割せらるるもの也、通俗所謂株式とは、會社資本の一部分にして、金額を以て表彰せらるるものなり、即ち株式は會社資本分割の一單位にして、株式會社の資本は常に數箇の單位に分割せられ、此單位を有するものを株主と云ひ、株主が會社に對して有する權利義務の範圍は、皆株式を標準とし之を定むるものとす、これ株式會社の名の依て生ぜし所以なり、□株主は、自由に株式を讓渡し得るを原則とす、合名會社、及び合資會社に於て、社員が其持分を讓渡するには、他の社員の同意を必要とするも、株式會社にありては斯くの如き事なし、之株式會社が純然たる資本團體にして、社員の人的信用を重んぜる當然の結果なり、ハ我商法は、所謂會社は常に商業を目的とする事を必要とするも、獨乙の商法に依れば、株式會社は必ずしも商業を目的とすることを要せず、苟も株式組織の團體は、總べて之を株式會社となすものなり、然るが故に、商事を目的とする株式會社と、然らざる株式會社とを區別せんが爲めに、特に商事を目的とする株式會社を商事株式會社といふなり、□二株式會社は、純然たる資本團體なり、故に各株主は、單に其有する株式の金額を限度として責を負ひ、如何なる場合に於ても、其金額を超えて損失を受くることなしとす。(商一一九條乃至二三四條參照)
- 英
- Commercial joint stock company
- 独
- Handelsaktiengeseilschaft
- 仏
- Société eu commandite commerciale
常識
(じやうしき)常識とは、學理又は專門的智識に對し、苟も普通の(病的ならぬ限りは)人ならんには、當然有すべき程の智識感情に、包括的に漠然名けたる名稱なり、即ち總べて人として甚しく不健全ならぬ限り、有すべき程度の理智道念の謂にして、自然生得の上に、普通の經驗を加へて成れる判斷、或は評價の能力なり、然れども元來包括的の言語なれば、其程度若くは範圍を確定し、其内容を明示すること不可能なりとす。
商事行政
(しやうじぎやうせい)商事行政とは、商事に關する保護取締を目的とする行政を云ふ、例へば商號、商標、商業登記、商事會社、海運業、鐵道業、倉庫業、保險業、銀行業等に關する保護取締を目的とする行政を言ふなり。(三二年三月法三七號意匠法、三二年三月法三八號商標法、二三年八月法七二號銀行條例、二六年三月法五號取引所法、三三年三月法六九號保險業法、三三年三月法六五號鐵道業法、三二年三月法四六號船舶法、二五年六月法五號海上衝突豫防法等參照)
- 英
- Commercial administration
- 独
- Handelsverwaltung
- 仏
- Administra-tion commerciale
商事契約法
(しやうじけいやくはふ)商事契約法とは、商事に關する諸契約の權利關係を規定したる法規を云ふものにして、例へば商事賣買契約、交互計算契約、匿名組合契約、仲立契約、問屋契約、運送取扱契約、運送契約、商事寄託契約、手形契約等に關する法規をいふものなり。(商三編以下參照)
- 英
- Law of commercial contract
- 独
- Handelsvertragsrecht
- 仏
- Doi du contrat commercial
常時公法
(じやうじこうはふ)常時公法とは、平時國際公法と云ふと同じく、彼の戰時に對する平時に於ける國際間の各國交通、其他國家間の諸權利義務に關する例規慣習を謂ふものなり、換言すれば國際法とは、各國相互の關係、及び各國と其國籍以外の私人との關係に關し、文明諸國の承認せる行爲の規則なり、而して此國際法の平時に於ける場合の規則は、常時公法なりとす。(國際法の部參照)
- 英
- Pacific international law
- 独
- friedsames Völkerrecht
- 仏
- Droit inter-national pacifique
商事事件
(しやうじじけん)商事に關する訴訟事件を謂ひ、彼の商事非訟事件なる語に對す、元來訴訟なるものは、私權の保護に關し、國家の司法機關たる裁判所に請求するものにして、訴訟上の保護を求むる事件を訴訟事件と云ひ、之が商事に關するときは、商事訴訟事件と云ふ也、或る國の法制に於ては、或は商事裁判所を設け、或は裁判所に商事部を設けて、商事に關する訴訟事件を普通商事以外の民事事件と區別し、以て之が權限を定むるあり、然れども我法は、特に商事裁判所、若くは裁判所に商事部なるものを設けず、從つて狹義の民事事件に對する區別として、商事事件を論ずるの必要大ならず、唯彼の商事非訟事件と商事事件との區別は、訴訟事件と非訟事件の區別と等しく、重要なる問題に屬す、元來非訟事件なるものは、其民事たると商事たるとを問はず、彼の訴訟の如く判斷を伴ふものにあらず、單に認定の上或權利の發生變更消滅をなさしむるものとす、之其區別の要點なりとす。(商事非訟事件の部參照)
- 英
- Commercial case
- 独
- Handels-fall
- 仏
- Cause commerciale
常事犯
(じやうじはん)常事犯とは、彼の所謂國事犯に對し、國事犯にあらざる總べての犯罪を槪稱するの語にして、非國事犯といふも同義也とす、所謂國事犯とは、國家内部の政治的秩序、並に對外的國家の秩序侵害の犯罪を總稱する者にして、之以外の犯罪は、總べて常事犯也、例へば殺人罪も〓盜罪も、官權抗拒の罪も、皇室に對する罪も、苟も國事犯ならざる以上は皆常事犯なりとす、單に國事犯ならざるといふ消極的觀念に依る此區別は、國事犯と常事犯との異同をして、一見明瞭何等の疑を存せしめざるが如きも、一の犯罪を採り來りて、果して之が國事犯なりや、常事犯なりやを究めんは、頗る難事に屬す、何となれば國事犯も、其内容中には殺人もあるべく、強盜もあるべく、其他暴行強迫なかるべからざればなり、故に學者は、國事犯と常事犯との區別を其目的に求め、手段の相等しきと否とは、此區別をなすに足らざるものとせり、例へば人を殺すも、朝憲紊亂の目的に出でたるときは國事犯にして、然らざるときは之を單純なる殺人罪となすが如し。(刑九五條以下、家祿賞典祿處分法一條二項參照)
商事非訟事件
(しやうじひしやうじけん)商事非訟事件とは、商事に關する非訟事件をいふものにして、所謂非訟事件とは、權利の發生、消滅、變更に關する裁判所の爲す行政處分の一種なり、元來非訟事件は、私權の發生、消滅、變更に關する行政處分の一種なるが故に、必ずしも裁判所の權限に屬せしむるを要せず、唯裁判所は、私權の保護に關し、常に保障せられたる地位に於て、公平なる判斷を爲す官署なるが故に、私權の發消に關する事務も、便宜上裁判所の權限となし、以て發生、消滅、變更を公平に取扱はしめんが爲め也、而して商事非訟事件の主なるものを擧ぐれば、イ會社及競賣に關する件、□商業登記、ハ商號の登記、二未成年者妻及後見人の商業上の登記、支配人、會社清算人の登記等なり。(三一年六月法一四號非訴手續法三編參照)
商事非訟事件印紙法
商事非訟事件印紙法とは、商法中登記に關する場合を除く外、非訟事件に就き、裁判所の命令、其他處分を求むる者が差出す書類に手數料として、印紙を貼用すべき旨を規定したる法律にして、重なる場合左の如し、イ抗告又は假差押の申立、債權者よりなす破産宣告の申立、支拂猶豫の申立、此場合は五十錢の收入印紙を貼用すべきものなり、□抗告に對する答辯、裁判所の命令、其他の處分の申立にして、本法に於て特に規定せざる非訟事件に係るもの、此場合は二十錢印紙貼用、ハ破産手續に就きては、破産財團中の貸方金額に應じ、財團の價格五圓まで四十錢、十圓まで六十錢、二十圓まで一圓二十錢、五十圓まで三圓、七十五圓まで四圓四十錢、百圓まで六圓、二百五十圓まで十三圓、五百圓まで二十圓、七百五十圓まで二十六圓、千圓まで三十圓、二千五百圓まで四十圓、五千圓まで五十圓、五千圓以上は、千圓に達する每に四圓を加へて印紙を貼用すべきものとす、但し財團管理費用其他破産手續上の費用、及び財團の爲め負擔したる債務、竝に別除の辨濟に供する金額は、貸方金額より控除して計算すべきものとす、□二以上の印紙代價の負擔に就きては、民事訴訟法の規定する所に從ひて、敗訴者之を負擔すべきものなり。(二三年八月六六號商事非訟事件印紙法)
情狀
(じやうじやう)情狀とは、主觀的快不快の狀態にして、刑法にて之を例へば、犯罪の狀態憫むべしと原諒すべき場合に、之を「犯罪の情狀憫べし」と云ふが如きこれなり、故に情狀とは其憫むべしとか、僧むべしとか云ふが如き、心裡の狀態を指すものに外ならず、再言すれば、判官が被告事件の眞相を見聞し、其意識内に起る情的心裡狀態を謂ひ、其憫むべきものは輕減して酌量するものなり。(刑六六、六七條參照)
- 英
- Circumstance
- 独
- Umstand
- 仏
- Circonstance
商品
(しやうひん)商品とは、商行爲の目的物となる物品にして、昔時に於てはマーシヤンヂーズといひて、單に容易に動かし得る物品に限りしが、現時に於ては、漸々他の動産をも含むに至り、尚無形物たる權利を代表する有價證券にも及ぼし、遂に不動産をも商品の一種たらんとするに至れり、由來佛國法學者の中にも、不動産を商品の内に容れんとする者あるも、大審院及多數は之を認ざるを以て、今や佛國に於ては、盛に土地家屋の賣買をなして利益を得るも、民事行爲として、民法の規定に從はしめ居れり、獨逸も亦之と同じ、蓋し有價物の内にて、不動産のみが商品となり得ざる所以は、性質上其所在を變ずる事を得ざるのみならず、占有の移轉も動産の如く、明かに之を表示し難く、加ふるに沿革上の理由に基き、法理上臣民に土地の所有權を與へざる英國の如きあり、旁以て普通商品の如き迅速容易の轉換をなし得ざるによる、然れども今や一方に於ては、不動産も容易に轉輾して、其方法、及び之を確定するの手續も亦簡易明瞭となりしを以て、我國に於はて他國に率先して、不動産をも商品の一種なる事を得る場合を認めたり。(商二六三條一號、民一七三條一號參照)
- 英
- Goods
- 独
- Waren
- 仏
- Biens
證書訴訟
(しやうしようそしよう)證書訴訟とは、證書に依り自己の權利を證明し得べき債權者をして、容易に且つ迅速に債務名義を得しむるを目的とする、一の特別訴訟手續をいふ、元來一定の金額の支拂其他の代替物、若くは有價證券の一定の數量の給付を受くる權利者にして、其の債權を證明する證書を有する者に對しては、債務者は、其證書の返還を受くるか、若くは受取證の交附を受けざるときは、一應其債務を履行せざるものと見る事を得べし、從つて債權者が證書を所持し、且つ債務者が自己の手に存する證書を以て、其債權の消滅を立證する能はざる場合に於ては、債權者なりと主張する者の債權は依然として存在し、債務者が其請求の既に消減したりと主張する抗辯は、自己の債務履行を遷延せんとする故意に出づるものと推定するを普通とせん、故に斯くの如き場合に於て、反對の事實を即時に立證せざる債務者の抗辯を排斥し、債權者をして其權利の實行を速ならしむるの途を設くるは、私權の保護上極めて必要なる事に屬す、證書訴訟は、此目的の爲めに生ぜるものなり。(民訴四八四條以下參照)
- 英
- Suit on document
- 独
- Urkundenprozesz
- 仏
- Poursuite eu docu-ment
證書面
(しやうしよめん)證書面とは、證書の文面を謂ふ、元來證書なるものは、或事實の存在を證明せんが爲めに作成せる記錄の謂ひにして、依て以て後日の爭又は疑の存せん時の爲めに備ふるものなり、所謂文面とは、此記錄の内容の謂ひにして、證書存在の目的は、此文面が或事實の存在不存在を證明するにあるものとす。(印紙税法二條二項及び證書の部參照)
- 英
- Wording of Certificate
- 独
- Ur-kundengesicht
- 仏
- Rédaction du cer-tificat
常設國際裁判所
(じやうせつこくさいさいばんしよ)宇内各國獨立の結果として、國際間に爭議を釀せる場合に、多くは暴力に訴へ、自助の方法に出で、干戈相見ゆるを例とす、僅に少數の場合に於て、國家自ら讓步をなし、妥協の方法を採り、或は第三國の中介に依りて終局を告ぐることなきにあらずと雖も、之等は多く卑風なるものとして排斥せらるの傾向ありたり、然れども近時交通開け商業發達し、人種及び宗教混同を來し、法律道德の觀念益進步するに迨び、漸く戰爭を避け、平和の手段に依り、國際爭議の終局を努むるの正理なるを悟り、種々の平和手段考究せらるるに至れり、常設國際裁判所の制度も亦此考念より案出せられたるものにして、由來平和論を鼓吹する哲學者、法律家に依りて、理想的に計畫せられたるものなりき、然して此考案は、彼の一八九九年五月二六日海牙會議あるまでは實現せられざりしも、海牙會議に於て、初めて理想に過ぎざりし常設仲裁裁判所は、現出構成を見るに至れり、槪説すれば、常設國際裁判所を海牙に置き、紛爭當事國は、豫め選定せられある仲裁判官中より二名宛を指定し、被指定者は、更に一名の上級判官を選定し、都合五人にて合議裁判するものとす。(海牙會議々議定書參照)
- 英
- Permanent international court
- 独
- ewiges Völkergericht
- 仏
- Tribunal international perpétuel
商船
(しやうせん)商船とは、商行爲を爲す目的を以て航海の用に供する船舶を謂ふ、分説すれば、イ船舶なり、水を航行するの用に供する建設物には、船舶、舟艇、筏等ありて、水上、水中、水底を航するによりて其名稱を異にするも、其の重なるものは船舶也、船舶とは、水上航行の用に供する一種の建設物にして、其如何なる種類の建設物が船舶なるかは、造船學等に依る常職に依りて判斷するの外なし、□商船は、航行の用に供する船舶を云ふ、商船は、航行の用に供するものなるが故に、船體の移動する事を必要とす、從つて動産なりと云ふべし、或は國際法に於て、學者住々之を領土の延長なりとなし、船舶を土地と同一視するが如き、又は陸上の建設物なる家屋と比較して、船舶を不動産なりと爲すの説あり、登記の方法に於ても亦不動産に類似する所少からず、斯かる事よりして、其誤を生ぜん事を恐れ、佛法系の諸國は、船舶の動産なる事を明言せり、ハ商船は商行爲を爲すを目的とするものなり、從つて漁業を目的とする漁船、戰鬪を目的とする軍艦、其他浚渫船、病院船の如きは、航行する船舶なるも所謂商船にあらざるなり。(民訴七一七條、商五三八條以下參照)
- 英
- Merchant ship
- 独
- Handelsschiff
- 仏
- Navire marchand
上訴
(じやうそ)上訴とは、上級裁判所に對して、當事者が未確定の裁判を攻繫する訴訟上の救濟方法なり、左に分説すれば、イ上訴は、上級裁判所に對してなす攻擊方法なり、凡そ判決、決定、命令に對する不服申立の方法は、上級裁判所に對して申立つることを要するものと、否らざるものとあり、上級裁判所に對して、廢棄若くは變更を求むるものは即ち上訴にして、彼の故障の申立、再審、若くは非常上告の申立、原狀回復の申立、除權判決に對する不服の申立、判決の補充更正の申立の如きは、上級裁判所に對して申立つるものにあらざるを以て上訴にあらざるなり、要するに裁判官の裁判に對し、上級裁判所に不服申立を爲す方法、即ち控訴、上告、抗告の三を上訴と稱するものなりとす、□上訴は、未確定の裁判に對する攻擊方法なり、裁判とは、所謂判決、決定、命令の三を包含し、未確定とは、上訴の許さるべき裁判と雖も、一定の時期を經過すれば確定して、最早攻擊する事を得ざるに至るものなるが、此程度に達せざるを謂ふものなり、故に確定の判決に對する、攻擊方法たる再審非常上告の如きは、上訴にあらざるものとす。(民訴三九六條乃至四六六條、刑訴二四二條乃至三〇〇條)
- 英
- Appeal
- 独
- Rechtsmittel
- 仏
- Appel
上奏
(じやうそう)上奏とは、天皇に或る事實の意見を開陳するを謂ふ、例へば議會が天皇に對し、政府の處置に異議を唱へて其取消を請求し、又は國務大臣の進退に關することを奏問するか如きこれなり。(憲法四九條參照)
- 英
- Presenting address to Emperor
- 独
- an den Kaiser berichten
- 仏
- Addresse à l'Empereur
上訴期限
(じやうそきげん)上訴期限とは、控訴、上告又は抗告をなすことを得べき期間を謂ひ、民刑事に依て差異あり、民事訴訟に於ては、控訴、上告の期間は一箇月、即時抗告に於ては、七日の不變期間、普通抗告は、一定の期間あらず、又刑事訴訟に於ては、控訴は五日、上告は三日、抗告は裁判の送達ありたる日より三日とす。(民四〇〇、四三七、四六六條、刑二五二、二七一、二九五條)
- 英
- Term for appeal
- 独
- An-klagefrist
- 仏
- Délai d'appel
上訴權
(じやうそけん)上訴權とは、上訴をなすの權にして、學者は通常之を分ちて左の二種とす、□一形式的上訴權とは、上級裁判所に對し、原裁判の當否に關する調査、及び裁判を求むる事を得る權利にして、□二實質的上訴權とは、當事者が上訴によりて、實際原裁判の取消又は變更を得べき權利をいふ、此實質的上訴權を有せんには、上訴が適法なる事、及び原裁判が不當にして、且つ當事者に不利益を及ぼしたることを必要とするもの也。(民訴三九九條二項)
- 英
- Right of appeal
- 独
- Anklage-recht
- 仏
- Droit d'appel
上訴裁判所
(じやうそさいばんしよ)上訴裁判所とは、下級裁判所の裁判に對する控訴、上告又は抗告を審判する裁判所を謂ふ、例へば第一審たる區裁判所の控訴に對しては地方裁判所、第一審たる地方裁判所の控訴に對しては控訴院が、上訴裁判所たるが如し。(刑訴二一一條)
- 英
- Court of appeal
- 独
- An-klagegericht
- 仏
- Tribunal d'appel
上訴審
上訴審とは、上訴裁判所に於ける控訴、上告又は抗告の審理を上訴審と稱す、即ち控訴裁判所、上告裁判所又は抗告裁判所の審理手續を總稱して、上訴審と謂ふなり。
- 英
- Trial of court of appeal
- 独
- Anklagsverhandlung
- 仏
- Jugement du tribunal d'appel
上訴費用
(じやうそひよう)上訴費用とは、上訴に關する訴訟費用を謂ひ、裁判費用と裁判外の費用とを包含す、例へば訴訟用印紙料、證人鑑定人及び通事等の爲めに要する旅費日當等、又は書類認料等を謂ふ者とす。(民訴三九九、七八條、刑訴二一一、二四九條)
- 英
- Cost of appeal
- 独
- Anklage-kosten
- 仏
- Dépens de l'appel
上地處分
(じやうちしよぶん)上地處分とは、國家が土地に對する私人の支配權を消滅せしめ、此上に改めて國家の所有權を設定する處分を謂ふなり、例へば明治四年正月太政官第四號達に「諸國社寺由緖の有無に不拘、朱印地、除地等從前の通り被下置候處、各藩版籍奉還の末、社寺のみ土地人民私有の姿に相成、不相當の事に付き、今度社寺領現在の境内を除くの外一般上地被仰付、追て相當祿制被相定云々」とあるは其用例なり。(四年七月太政官達三三四號、七年一一月内務省乙七二號社寺領上地跡處分規則、九年七月内務省乙八七號、七年六月内務大藏兩省乙四三號、一〇年一〇月大藏省乙三四號、九年三月内務省乙三八號、三四年内務省訓令一八號參照)
- 英
- Measures of extinction of right of private possession of ground
- 独
- Ent-eignungsverfügung
- 仏
- Mesure de l'ex-tinction du droit de la possession privée de la terre
證人
(しやうにん)證人とは、過去に於て爲したる事實の觀察の結果を、訴訟に於て裁判所に報告すべき第三者をいふ、其證人は、過去に於てなしたる事實の觀察の結果を、現に報告する者のみを謂ふにあらずして、裁判所より報告を爲し得べき者として要求せられたる者を云ふなり、又證人は、當事者なることを得ざるを以て、證人は當事者以外の第三者なる事を要するを知るべし、次に證人の證據力に關して、自由心證主義を採らざる立法例に於ては、證人たる事を得る能力に制限を設くるの必要ありしと雖も、自由心證主義に依れる我法の如きは、斯かる必要なしとして、何等制限する所なし、蓋し裁判所は、證人の陳述を聞きたる後に至り、自由の判斷を以て、其陳述を信ずべきや否やを決するを得べきを以てなり、從つて幼者瘋癲者と雖も亦證人たる事を得べく、唯此等の者の證言が、裁判所の心證を惹起するに不充分なるべきは素より其所なりと雖も、之單に其證言の證據力に關する問題にして、證人たることを得る能力の有無に關せざるものとす。(民訴二八九條乃至至三二一條、刑訴一一五條、一三四條)
- 英
- Witness
- 独
- Zeuge
- 仏
- Témoin
商人
(しやうにん)商人とは、自己の名を以て商行爲を爲すを業とする者を謂ふ、分説すればイ商人は、自己の名に於て商行爲を業とするものなり、自己の名に於てと謂ふは、自己の名義を以て爲すと等しく、取引に依りて自己が權利を得、義務を負ふ事に外ならず、例へば後見人が被後見人の爲めに、支配人が主人の爲めに商行爲を業とするも、自ら之に依りて權利を得、義務を有せざるが故に商人にあらず、却て被後見人、主人等が商人なり、又自己の名を以て爲すとは、自己の計算に於て爲すと云ふの意に解すべからず、彼の問屋の如き他人の計算に於て爲すも亦商人なり、唯商人なるが故に射利の目的を有し、他人の計算に於て爲す問屋も亦常に報酬を受くるを本則となすものなり、ロ商人は商行爲を業とする者なり、商行爲とは、商に關する法律行爲にして、此商行爲を業となす者が商人なり、所謂業とは、營業と云ふと同語にして、不斷の收入と爲す目的を以て、繼續して私法的行爲を爲すを云ふ、ハ商人には大商人と小商人とあり、所謂小商人とは、資本金額五百圓に滿たざる者をいふ、此小商人は、商法の規定を適用せられざるものなり、次に小商人にあらざる商人を大商人と云ふ。(商四條八、三二年六月勅二七一號)
- 英
- Merchant
- 独
- Kaufmann
- 仏
- Marchand
商法
(しやうはふ)單に商法といふときは、一國の主權者が明に商法なる名稱を附して、國民に發布したる規則を指すことあり、之を形式的意義の商法と云ひ、我國にては、三二年法律第八四號を指すものなり、或は學者が講學の便宜を計り、或る種類の法律規定を綜合して、之に商法の名を附することあり、尚時としては、此規則に貫通する原理原則を蒐集して、商法と謂ふこともあり、これを實質的若しくは學理的商法と稱す、學者が槪ね商法は、商事に關する特別私法なりと定義するは即ち是なり、左に此意義に從つて分説すれば、イ商法は商事に關する法規なり、所謂法規とは、法律規則のことにして、或る原因に對する結果、則ち因果關係の謂ひなり、次に商事とは、商行爲に關する事項にして、商行爲とは、射利の目的を以てなす物品の轉換及び媒介行爲を謂ふ、即ち此の轉換、及媒介に伴ひて生ずる一切の事項が、取りも直さず商事なりとす、ロ商法は特別私法なり、廣く私法といへば、私權關係に關する法規にして、商法は彼の民法に對し特別法なりと謂ふ、蓋し民法は、一般人民の行爲に關して規定せる法則なるも、商法は、單に商事に關して規定せらるべきものなるが故に、之を特別法とは云ふなり、ハ商法の編纂上に種々あり、或は商人の何たるを定め、此商人の行爲に就て規定する商人法主義あり、或は商業の何たるを定め、商業に關する行爲に就て、規定する商業法主義あり、或は商行爲の何たるを定め、商行爲を業とする者を商人となし、以て商行爲を本位として規定する商行爲法主義あり、我現行法は、此最後の主義に從ふ。商人法とは、商人の誰なるやを定め、其商人を基礎として、商事關係を定むる商法を謂ふものなり。
- 英
- Commercial law
- 独
- Handels-recht
- 仏
- Droit commercial
商人法
- 英
- Law of merchant
- 独
- Händ-lersrecht
- 仏
- Loi des marchands
商法施行法
商法施行法とは、商法施行の經過的規定、及び商法の補則となるべき規定ある法律を謂ふ。(三二年法四九號參照)
商法施行條例
商法施行條例とは、商法施行法と同じく、商法施行の經過的規定、及び補助則なるも、舊商法に關して發布せられたるものにして、現時は破産に關する部分の外、總べて廢止せらるるに至れり。(三二年法四九號商法施行法四七條、及び二三年八月法五九號參照)
- 英
- Regulation for the ap-plication to the commercial law
- 独
- Aus-führungsregel des Handelsrechtes
- 仏
- Règles de l'application du droit com-mercial
證憑書
(しやうひやうしよ)證憑書とは、或る事實の證憑となるべき書類を謂ふ、所謂證憑とは、證據及び徵憑の略語にして、彼の證徵といふも同義なりとす、所謂證據とは、或る事實の存在を證明すべきものにて、徵憑とは、或る他の事實の證明に依りて、必要事實の存在に就き、判事の心證を起さしむる事實を云ふものなり、而して書類にして證據となり、徵憑となる者あるものは之を證憑書とは謂ふなり。(三一年八月内務省令二四號參照)
- 英
- Written testimony
- 独
- Beweis-urkunde
- 仏
- Témoignage écrite
證憑物件
證憑物件とは、或る事實の證憑となるべき物件を謂ふ、例へば犯罪に供したる物件に依りて、犯罪が證明さるるときは、其物件が證憑物件なりとす。(刑訴一九八條二項)
- 英
- Evidence
- 独
- Zeugnisz
- 仏
- Évidence
證票
(しやうへう)證票とは、或る事實の存在例へば或る者の資格等を證明せんが爲めに作成せる票章を云ふ、所謂票章とは、或る記號に依りて書かれたるものにして、彼の書面と異り一の略記物なるを普通とし、普通官吏の資格を證明する證票の如き之なり、彼の專賣局官吏、税關官吏が、檢査又は取締の際常に證票を携帶して、其資格を證明すべきが如き其用例なりとす。(二六年一二月内務省訓令二九號、二二年九月内務省訓令三八號、三二年五月大藏省令二〇號、三二年七月同三六號、三二年五月海軍省令一二號海軍下士旅行規則等參照)
- 英
- Certificate
- 独
- Certifikat
- 仏
- Certificat
商標
(しやうへう)商標とは、自己の商品を表彰する爲めに之に對する票章を謂ふ、商標は、普通文字、圖形又は記號より成り、之を專用せんとする者は、登錄を爲さざるべがらず、一定の文字、圖形、記號は、商標として登錄を受くる事を禁ぜらるるものあり、例へば菊花御紋章と同一又は類似の圖形を有するもの、國旗、軍旗又は外國の國旗と同一、若くは類似の者、風俗秩序を紊り、若くは世人を欺瞞する虞あるもの、特別に著名なる外觀なきもの、商品の普通の名稱、産地等は、商標として登錄を受くることを得ざるものなり、又他の商標と同一又は類似のものは、同一商品に用ふる爲めに登錄を受くることを得ず、次に商標の登錄を受けんとするものは、一商標每に其商標を附すべき商品を明記し、見本を添へ、農商務省特許局長に出願すべきものにして、若し二人以上同一、又は類似したる商標を同一商品に使用する爲め、登錄を出願する者あるときは、先に出願したるものに之を許すべきものなり、商標專用の年限は二十年とし、原簿登錄のときより起算するも、左の場合に於ては其登錄を無效とし、又は取消すことを得るなり、イ登錄を禁ぜられたるものの登錄、□登錄商標主、登錄後其商標を使用する商品の産地、品質等に關し、不實の事項を附記したるとき、ハ登錄商標主正當の事故なくして、六箇月以上代理人を置かざるとき、但し此場合は商標主外國在住の者なりしときに限る、次に商標專用權は、商標主其商標を使用する營業の廢止に依て、消滅するものなり、最も營業を讓渡する場合には、商標を共に讓渡する事を得、商標の登錄料は、一商標に就き商品一類每に金三十圓とす、其專用年限經過の場合の續用に就きても亦同じとす。
- 英
- Trade mark
- 独
- Waarenzeichen
- 仏
- Marque du commerce
商標法
商標法とは、前記商標に關する登錄、及び商標專用、制限及讓渡竝に違反者に科する罰則に就て規定せられたる法律なりとす。(三二年三月法三八號參照)
- 英
- Law of trade mark
- 独
- Gesetz von der Handelsmarke
- 仏
- Loi de la marque du commerce
商標法施行細則
商標法施行細則とは、商標の施行に關する細則にして、登錄を受けんとする商品の類別、出願書式、其他の手續に關して詳細なる規定あり。(三二年六月農商務省令一五號參照)
證明
(しやうめい)證明とは、疑、若くは爭ある事實の眞否に關し、裁判官をして確信せしむるの行爲を謂ふ、再言すれば、爭又は疑ある事實に關し、其爭又は疑を除去する行爲をいふなり、證明は彼の疏明と區別すべきものとす、凡そ裁判所が證明の目的物たる或事物に關して、鞏固なる觀念を懷き、一般の經驗に照して、通常其反對を認むべからざるものと爲したる時は、之を證明と云ふべきものにして、之に反して裁判所が證明の目的物たる或事物に關して、薄弱なる觀念を懷き、幾分か其反對の餘地あるものとなしたるときは、之を名けて疏明と稱す、故に疏明と證明との區別は、裁判所に與ふる心證に、強弱の差あるに過ぎざるなり、而して裁判所は、通常の場合に於ては、所謂證明の結果に基きて裁判すべき者なれども、或特定の場合に限り、疏明の結果に基き裁判を爲すことを得るなり。(民訴一〇五、一一二條參照)
- 英
- Certification
- 独
- Beglaubigung
- 仏
- Certificat
常律
(しやうりつ)常律とは、一般普通の法則の意也、舊刑第九二條に「陸海軍裁判所に於て判決を經たる者、再び重罪輕罪を犯したる時は、初犯の罪常律に從ひ所斷したるものにあらざれば、再犯を以て論ずる事を得ず」とあるは其用例なり、此場合に於ける常律とは、陸海軍刑法、同治罪法等に依りて處斷せらるるの意にして、時適々戰時に當りしが故に、特種の手續に於て、陸海軍刑法等に所規せられざる特種の行爲を罰せられたる場合は、所謂常律に依りて處斷せられたるものと云ふを得ざるなり。
- 英
- Ordinary law
- 独
- allgemeines Recht
- 仏
- Loi ordinaire
省令權
(しやうれいけん)憲法第九條に依れば、「天皇は、法律を執行する爲めに、又は公共の安寧秩序を保持し、及び臣民の幸福を增進する爲めに必要なる命令を發し、又は發せしむ云々」とあり、此規定に基きて各省大臣に與へし命令を發せしむるの權限を省令權と謂ふ、即ち各省大臣は、主任の事務に就き、法律を執行する爲め、其他の場合に於て、職權として、或は特別の委任により、命令を發する事を得るものにして、各省の發する命令なるが故に、之を省令と謂ひ、省令を發するの權限を省令權と稱す、所謂各省とは、外務、内務、大藏、陸軍、海軍、司法、文部、農商務、遞信の九省を云ひ、各省大臣は、法律を以て特に規定したる場合を除くの外、其發する所の省令に、二十五圓以内の罰金、三十五日以下の禁錮の罰則を附することを得る旨を委任せられたり。(二六年一〇月勅一二二號各省官制通則四條、二三年法八四號、同年勅令二〇八號參照)
- 英
- Ordinance right
- 独
- Verordn-ungsrecht
- 仏
- Droit de l'ordonnance
射倖契約
(しやからけいやく)射倖契約とは、當事者の損益が、契約締結の當時に於ては未確定にして、當事者の知らざる事實發生に依て損益の定まる契約を云ふ、射倖契約は、彼の實定契約に對し、一に委運契約と稱せらるるものにして、佛蘭西民法第一九六四條は之を定義して「委運契約とは、總べての契約者の爲め、若くは其中の一人又は數人の爲めに、契約の效果たる損益が、未確定の事故に關する相互の合意を云ふ」となし、其例を揭げて、□一保險契約、□二冐險貸借、□三遊戯及賭博、□四終身定期金契約等となせり、射倖契約に似て非なる一の契約あり、即ち條件付契約なり、此契約は射倖契約と異り、契約の效力の發生、若くは消滅が不確定なるものにして、損益が常に不確定なるは其結果に過きざるなり。(舊民法三〇一條、佛蘭西民法一九六四條乃至一九八三條、一一〇四、一一三三條、佛蘭西商法三一一條及び三三二條參照)
- 英
- Chance contract
- 独
- Zufalls-vertrag
- 仏
- Contrat aléaotoire
借區人
(しやくくにん)普通借區人とは、鑛物採堀の許可を得たる者を、其許可鑛區の借區人と呼ぶ、元來鑛業權は物權にして、又地下の鑛物は國の所有物なり、借區人は、此物權を有して、此國の所有たる鑛物を自己の所有となす事を得るものなり、但し鑛區税及鑛産税を納付すべきは素より其所なりとす。(鑛業法三、四條及一五條以下參照)
- 英
- Renter
- 独
- Miether
- 仏
- Bailleur
借貸
(しやくちん)借貸とは、賃貸借契約により、或者の賃借人が、其貸借物の使用收益を爲す報酬として、賃借人に支拂ふ法定果實を謂ふ、例へば家屋の賃借人が支拂ふ家賃の如き之なり。
借地料
借地料とは、其性質は借賃の一種に屬す、則ち地上權者、永小作權者、土地の賃借人等が、土地の所有者に支拂ふ報酬にして、彼の小作料、地代など云ふは、借地料の一種なりとす。(民六〇九、六一〇、二六六、二六八、二七〇條、二七四條乃至二七七條參照)
- 英
- Rent
- 独
- Zins
- 仏
- Fermage
釋放
(しやくはう)釋放とは、犯罪人又は刑事被告人の拘禁を免ずることを云ふ、刑事訴訟法第一六六條に「被告事件違警罪なりと思料したるときは、區裁判所に移す言渡を爲し、且つ被告人拘留を受けたるときは、釋放の言渡を爲すべし」とあるは其用例なり。(刑訴一六七條二項、七三條等參照)
- 英
- Emancipation
- 独
- Freilassung
- 仏
- Émancipation
社會
(しやくわい)廣く常識に從ひて社會といふは、二人以上の人類協同生活の體を謂ふ、抑社會といへば、一個人のみにては社會を成さざるなり、苟も社會は人の聯合を前提とせざるべからず、されど二個以上の衆人存在するも、各自相離隔して、相互に何等の相因相緣の關係なきときは、亦以て社會を爲したりといふべからず、少くとも衆人相互の間に、意思の聯絡ある集合體ならざるべからざるなり、茲に於て乎知るべし、社會は、個人の數學的總和にもあらず、さりとて必ずしも有機的揮一體なることを必要とせざるものなることを、蓋し彼の華族社會といひ、平民社會と云ふも、華族階級若くは平民階級の個人の總和を指せるにあらずして、此等階級の人士の間に意思の融合存し、集團して以て一の體制を爲すときに於て、之を華族乃至平民社會と呼ぶなり、以上を要するに、社會とは人類協同生活の體をいふと。
- 英
- Society
- 独
- Gesellschaft
- 仏
- Société
社會主義
社會主義とは、個人を中心として立論する個人主義の見地に反し、總べて社會協同の發達、共益より立論するものなり。社會主義を分ちて、イ國家の力によりて貧者弱者を扶助し、無職者を授産する等を國家的社會主義といひ、□財産共有(即ち私有財産制度の廢止)或は共同經濟(自由競爭の廢止)を主張するを共産主義と云ひ、ハ基督教の信條によりて、貧者弱者強者の間を精神的に調和せんとするものを、基督教社會主義と謂ふ。
- 英
- Socialism
- 独
- Socialismus
- 仏
- Socialisme
社會學
社會學とは、社會に關する學問なり、凡そ學問なるものは、人生の進步の爲めに實理的示命を供するものにして、亦實に斯くあらんが爲めに究理す、其究理するや、常に綜合的にして、個々の知識を統一し、以て其眞理を發見せんことを勉む、而して社會學は、社會は實在するものなるか即ち社會實在の理法、社會は如何にあるか即ち社會現象の如何にあるべきか、又あらしむべきか、即ち社會の命運如何等に就きて研究する科學にして、之を研究せんが爲めには、社會は如何なる歷程を有せしかを知らざるべからず、又以上に依りて研究せし眞理は、如何にして實地社會に施行すべきかをも、研究するものは社會學にして、其研究の科目が、以上の一なるか他なるかに依りて、諸種の名稱を有す、儒學、國家學等も、畢竟は社會學の先驅たりしなり。
砂鑛採取法
(しやくわうさいしゆはふ)砂鑛採取法とは、砂金、砂錫、及び砂鐵採取に關する法律にして、其取締許可、並に他人の所有地上に於ける採取等に關して規定せられたり、イ鑛業法上に於ける鑛物は、國の所有に屬するも、砂鑛の所有權は國家に屬せず、隨つて自己の所有地内に於ける砂鑛を採取する場合に於ては、之土地の所有權の作用なりといはざるべからず、□然れども砂鑛の採取は、土地所有者の自由にあらず、則ち砂鑛の採取をなさんとする者、及び採取の事業を讓渡せんとする者は、其旨を所轄鑛山監督署長を經て、農商務大臣の許可を經ざる可らず、採取の事業公益を害すると認むるときは、大臣は其許可を與へず、又は既に與へたる許可を取消すことを得るものなり、又許可を得たる者が、正當の理由なくして、許可後一年内に採取に著手せざるときは、之を取消すことを得べし、ハ採取人となり得る者は、帝國臣民にして、一定の官職を帶びざる者なることを要す、二採取の爲めに又は採取に要する建築物の爲めに、採取人が他人の土地を使用せんとするときは、土地所有者又は其關係人は、其貸渡を拒むことを得ず、但し採取人は、相當の借地料を支拂はざるべからざるは言を要ぜず。(二年三月法一〇號參照)
奢移税
(しやしぜい)著移税とは、著移物に課する租税にして、或は消費税を奢移物製造者に課し、以て奢移物消費者に轉嫁せしむるが如き、又は著移物所有者に賦課する物件税の如き是なり、所謂著移物とは、各國の經濟程度に依りて異るも、絹物、香水、香油の如き、主として贅澤物を意味す。(日獨領事職務條約三條參照)
- 英
- Tax on luxuries
- 独
- Uppig-keitssteuer
- 仏
- Impôt sur le luxe
社寺上地
(しやじじやうち)社寺上地とは、維新大政以前に於て、社及寺が領有せし土地及人民を奉還し、上知せしむることの謂ひにして、明治四年廢藩置縣と同時に仰出されたるものなり。
社寺上地處分
社寺上地處分とは、社寺領奉還を受納せられ、相當錄制を定めて、廩米を以て下賜せらるべきことをいふものにして、各石高に依りて、現米を以て地方官より支給せられし所なり。
社寺上地跡處分規則
社寺上地跡處分規則とは、舊社寺上知の結果、誤りて神官僧侶に屬す可き私有の産をも、區別不明よりして奉還せしを聞召され、憫然との思召を以て發布せられたるものにて、神官、僧侶、自己の資金にて買得の地所舊慣に泥み、神社寺院の名請となり居たる土地、又神官の祖先寺院の先住が、自己の資金を以て開拓し、或は出金買得したる田畑宅地の、其社寺へ寄附の姿になり居る分等は、無代還付せらるものと定められたり。(四年正月太政官四號達、四年六月布告、四年七月太政官三三四號達、七年一一月内務省乙七二號達、社寺上地跡處分規則參照)
社寺保管林規則
(しやじほくわんりんきそく)社寺保管林規則とは、社寺が、上地の森林保管を願出で許可を受けたる場合に依るべき規則にして、許可する者も、亦本規則に依るべきものとす。□一保管林の區域は、農商務大臣の定むべきものにして、保管期間は十五年を超ゆることを許さざるもの也、但し之を更新することを得るは勿論なりとす、□二社寺は、保管林の保管に任ずべきはいふ迄もなく、尚火災の防止、盜代の防止、有害動植物の驅除、稚樹の保存等に就きて義務を負ふ者なり、次に社寺にして、祭典法用の爲めにあらずして、保管林地を使用せんとするときは、大林區署長の許可を受くべきものなり、□三社寺は、保管の報酬として、代採量の二分の一に相當する主産物、及び林地の資質を爲さざる副産物を採取することを得るものとす、而して社寺が以上の採取をなしたるときは、大林區署長の指定したる期間内に、之が搬出を終るを要し、然らざるときは、其産物を採取する權利を失ふものとす。(三二年八月勅三六一號參照)
寫眞著作權
(しやしんちよさくけん)寫眞著作權とは、著作權法に依りて保護を受くる寫眞複製の權利を謂ふ、元來寫眞は、文書、圖画、彫刻、摸型、其他文藝、學術、若くは美術に屬する著作物と同じく、其著作物を複製する權利を專有するを得るものにて、此寫眞の著作權は、十年間繼續するもの也、此期間は、其著作物を始て發行したる年の翌年より起算すべきもの也、若し發行せざるときは、種板を製作したる年の翌年より起算するものとす、次に寫眞術に依り適法に美術上の著作物を複製したる者は、原著作物の著作權と同一の期間内、本法の保護を享有することを得べく、又文藝、學術の著作物中に挿入したる寫眞にして、特に其著作物の爲めに著作し、又は著作せしめたるものなるときは、其著作權は、文藝、學術の著作物の著作者に屬し、其の著作權と同一の期間内繼續するものなり、以上寫眞に關する説明は、寫眞術と類似の方法に依り製作したる著作物に準用せらるべきものとす。(著作權法二三條乃至二六條參照)
- 英
- Right of re-photography
- 独
- Wiederphotographirungsrecht
- 仏
- Droit du la photographie
社團
(しやだん)社團とは、或る一定の目的を以て集合せる人の團體を謂ふなり、而して單に社團といへば、其目的の如何は問はざるも、常に二人以上の結合あるを要す、故に人の結合にあらざる財團は、社團にあらざるなり。(商四二條)
- 英
- Association
- 独
- Personenverein
- 仏
- Association
社團法人
社團法人とは、社團より成る法人を謂ひ、則ち法律が或る社團を認めて權利能力を附與するときは、其所に社團法人成立するものなり、而して社團を組織する團體員は之を社員と稱す、社團法人は、通常之を二に區別す、□一公益法人とは、財産上の行爲に關せざる事項を目的とする法人にして、即ち祭祀、宗教、慈善、學術等を目的とする法人を謂ふなり、□二營利法人とは、財産上の行爲に關する事項を目的とする法人を云ひ、其直接營利を目的とする法人は、之を營利法人と謂ふなり、營利法人は、其目的商事にあると否とに依りて、民事會社、及び商事會社の二となす、所謂商事會社とは、商法の所謂會社にして、商行爲を爲すを目的とする社團法人を云ふ、次に營利法人にして、然も商事會社にあらざるものとは、例へば專ら賃銀を得るを目的として、或る製造を爲す所の法人の如き是なり。(民三四條以下、商四二條以下參照)
- 英
- Juridical person of associa-tion
- 独
- Verein
- 仏
- Personne morale de l'association
砂防法
(しやばうはう)砂防法とは、砂防設備、土地の制限、砂防に關する費用の負擔等に關して規定せられたる法規にして、□一砂防設備とは、治水上砂防の爲になす施設にして、地方行政廳は、主務大臣の指定したる土地に於て、治水上砂防の爲、一定の行爲を禁止若くは制限する事を得るもの也、又地方行政廳は、其管内に於ける砂防設備を管理し、其工事を施行し、其維持をなす義務あるものとす、□二砂防設備及其管理の費用は、府縣の負擔に屬するものにして、國庫は、工費豫算の三分の二を超過せざる範圍に於て、其費用を補助することを得べく、又公共團體は砂防工事、若くは砂防に關する費用の爲めに寄附を爲すことを得る也、□三砂防工事の爲必要なるときは、地方行政廳は、管内の土地、若くは森林の所有者に命じ、補償金として時價相當の金額を下附して、其所有に係る土石、砂礫、芝草、竹木及運搬具を供給せしむることを得べし、但し時價に關して協議整はざるとき、又は所有者不明なるときは、相當と認むる金額を供託することを得べし、(三〇年三月法二九號參照)
- 英
- Sand precaution law
- 独
- Sand-vorsichtsgesetz
- 仏
- Loi de la précaution de sable
砂防法施行規程
砂防法施行規程とは、前上砂防に關する法規の施行細則なり。(三〇年一〇月勅三八二號參照)
從價税
(じゆうかぜい)從價税とは、彼の從量税に對し、物の價額を標準とし、一定の税率に從ひて賦課する租税を謂ふ也、元來租税賦課の方法に、課税物件の重量に比例して税額を定むるもの(則ち從量税)と、課税物件の價額に比例して税額を定むるものとの二あり、後者は即ち從價にして、此方法に依りて計上せられ賦課せらるる租税を從價税と稱す、彼の關税の如きは、原則として從價税によるものにして、或る例外の場合に限り、從量税に從ふ。(三二年三月關税法、及び三〇年三月法一四號關税定率法參照)
- 英
- Ad-valorem duty
- 独
- Werth-zoll
- 仏
- Impôt d'ad-valorem
從價税率
從價税率とは、從價税に於ける税率の意にして、彼の從量税に於ける從量税率と相對する名稱なり、所謂税率とは、課税單位に對する租税の步合にして、相續税に於て之を例へば、課税價格五千圓以下なる時は、法定の直系卑屬なる相續人は、税率千分の十二、其他の相續人なるときは、税率千分の十五又は二十なるるが如き之なり。(相續税法七條參照)
- 英
- Advalorem Tariff
- 独
- Werth-tarif
- 仏
- Tarif d'ad volorem
戎器警察
(じゆうきけいさつ)戎器警察とは、刀劍銃砲其他使用によりて、公安を害すべき器具機械の取締に關する警察を謂ふ、元來警察の働は、人の自由を制限するものなれば、戎器に關して取締を爲すとは、即ち戎器に關する人の行爲に就きて制限を加ふる意に外ならず、□一行政官廳は、安寧秩序を保持する爲めに必要と認むるときは、戎器、爆發物又は戎器を仕込みし物件の携帶を禁ずることを得るものなり、□二内務大臣は、公の安寧秩序を保持する爲めに必要と認むるときは、或る期間及特定の地域を限りて、銃砲類の運搬又は携帶を禁じ又は之を制限することを得べし、□三軍用の銃砲類は、官廳の委任を受けたる者にあらざれば、之を製造し、輸入することを得ず、又非軍用の銃砲の製造修繕を營業とする者を銃砲製造營業者と云ひ、之を營むには、地方長官の許可を受くるを要す、次に非軍用の銃砲類の輸入賣買を營業とする者は、之を銃砲商と名づけ、同じく地方長官の許可を要するものとす。(治安警察法八條、三二年法一〇六號銃砲火藥取締法參照)
- 英
- Arm-police
- 独
- Gewehrpolizei
- 仏
- Police des armes
終期附權利
(しゆうきづきけんり)終期附權利とは、期限の到來と共に效力を消滅すべき權利を云ふ、例へば余汝に此の物を賃貸すれども、來る何月何日には之を返還すべしと約束せる場合の賃借權は、所謂終期附權利なり、元來期限とは、當事者が一定の法律行爲の履行又は其消滅を繫らしめたる將來の事實にして、其到來することの確實なるものを稱し、其法律行爲の履行を其到來まで停止する期限は、所謂始期にして、其法律行爲の效力を消滅せしむべき期限は所謂終期也、故に叙上の終期の附しある權利は終期附權利と云ふべく、此權利は、期限の到來するに依て消滅するものなり、次に期限は債務者の利益の爲めに定められたるものと推定せらるが故に、特別の定なき場合に於ては、債務者が其期限の利益を抛棄したるときは、終期附權利は終期なしの權利、即ち普通の權利となるものなり。(民一三五條二、同一三六條參照)
- 英
- Right with expired term
- 独
- Recht mit Endtermin
- 仏
- Droit avec la terme expiré
終局判決
(しゆうきよくはんけつ)終局判決とは、訴又は反訴の請求に就きて、其全部又は一分に就き下したる判決にして、其裁判したる部分に就ては、訴訟事件を其審級に於て完結するものを謂ふ、即ち訴訟事件の全部又は一分の其審級に於ける審理を完結する判決にして、其裁判せられたる事項が、實體上の請求に關するものなると、訴訟上の原因に基くものなるとを問はざるもの也、例へば妨訴抗辯を理由ありとして訴訟を却下する判決の如き、又は故障、控訴若くは上告を訴訟法上の原因に基きて棄却するものなると、又は實體上の請求中の一部分に就て其當否を判斷せしむるものなると、或は其全部に就て判斷したるものなるとを問はず、苟も其審級に於ける審理を完結するものなる以上は終局判決なり、次に終局判決には、全部の終局判決、則ち訴訟事件の全部を完結する判決と、一部の終局判決、即ち訴訟事件の一分を完結せしむるものとの二種あり、而して一部の終局判決ありたる時は、其部分は其審級より離脱すれども、他の部分に就ては、依然と其審級に繫屬し、訴訟手續は進行するもの也、此一分判決に對しては、獨立して上訴し得べく、又獨立して確定力を生ずる事を得るもの也。(民訴二二五條乃至二四四條、刑訴三〇三條等參照)
- 英
- Final judgment
- 独
- letztes Urtheil
- 仏
- Jugement final
宗教
(しゆうけう)主觀的に解すれば、或る超絶的なる絶對存存と、吾人の意識との關係より生起し來たる一種不可思議なる經驗なり、之を客觀的に解すれば、斯かる經驗より生起し來たる信仰、及び斯かる信仰に基ける實行にして、之等は教義、教條、寺院、教會の組織の如き客觀的表現たる制度によりて維持せらるる事多し、而して宗教てふことに關しての最も重要なる問題は、其起源、發達、人類、比較研究等甚だ多く、古來其論爭激烈にして、持に異宗教の間に於ける爭鬪は、天下を擧げて數世紀に亘るものすらありき、尤も斯の如くなるに至りては、宗教の本旨を滅却して、唯其制度の末に係らふに過ぎずと雖も、如何に宗教の人心に響き、人生に根ざす事の深く且つ大なるかを知るに足らん、素と宗教は、人類の自ら省みて甚だ微弱なるを感ずる菩痛と、絶對者の不可思議にして、其力の遍在無盡絶大なるに對する驚〓畏敬の念とに芽ざせる感情の發作に基くものにして、知識の以て思議すべからざる神秘の鍵を握り、衷心の慰安を絶對存在と合致する事によりて、獲得することを以て本領となすもの也、されば宗教心は、如何なる未開の人心にも、亦如何なる開明人の心内にも在らざる事なく、又消する事なかるべし、古今東西に亘り、如何なる民族にも斯かる宗教心あると共に、又そが客觀現象と見るべき上述の如き制度の存せざる社會なし、從つて宗教の種類は、其數極めて多しと雖も、大なる組織系統を有し、哲理を含むものに至りては、又甚だ尠し、宗教は理智以上なりと云ふも、然かも理智によりて明に承認すべからざることを主張する宗教は迷信なり、斯くの如くして現今世界の大宗教と目せらるるものは、佛教、基督教、回々教等なり、之を要するに宗教は、情意的經驗の極致にして、主觀的には止み難き感情の痛苦の解脱と慰藉とを與へ、客觀的には吾人の生活を規律する制度となりて、秩序と平和とを與ふ。
- 英
- Religion
- 独
- Religion
- 仏
- Reli-gion
從參加
(じゆうさんか)從參加とは、他人の間に權利拘束となりたる訴訟に於て、其一方の勝訴に依り法律上の利害關係を有する者が、之が勝訴を期する爲め、其訴訟に加入して補助するを云ふ、從參加人は、一方の補助者として、單に訴訟に參加するものにて、敢て獨立の訴を起すものにあらず、從て從參加は、唯從參加申請書を提出して之を爲すを得るものとす、從參加の要件は、□一從參加は、他人間の權利拘束中に之を爲すことを要するものにして、之蓋し參加は、他人の訴に介入するものなるが故なり、□二從參加は、本訴の當事者一方の勝訴に因り、法律上の利害關係を有するものなる事を要す、如何なる場合が法律上の利害關係なるやは、實體上の關係に依りて定むべきものなれども、例へば債權者より保證人に對する訴に於て、債權者勝訴に歸すれば、保證人は主たる債務者に對し、求償權を生ずるが如き場合、又は賣買の目的物に付き、第三者より其買主に對し訴を提出したる場合に、之を收受せらるるに於ては、賣主は之が擔保の請求を受くべきときの如きは、其適例なりとす。
- 英
- Accessory intervention
- 独
- Nebenintervention
- 仏
- Intervention ac-cessoire
從參加人
從參加人とは、從參加をなし他人間の訴訟を補助する者を云ふ。(民訴五三條乃至五八條)
- 英
- Accessory interventor
- 独
- Nebenintervenient
- 仏
- Intervenant ac-cessoire
終身定期金
(しゆうしんていききん)終身定期金とは、終身定期金契約の目的たる金錢をいふことあり、或は終身定期金契約と同意義に用ふることあり。(民六九〇條)
- 英
- Life annuity
- 独
- Leib-rente
- 仏
- Rente viagère
終身定期金契約
終身定期金契約とは、當事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に相手方又は第三者に金錢其他の物を給付することを約する契約なり、分説すれば、□一此契約は、定期に給付を爲すことを約するもの也、例へば年、半年、月と謂ふが如く、一定の期間に依て給付を約するものなり、□二給付すべき目的物は、金錢其他の物たる事を要す、終身定期金といへる如く、金錢を給付するを普通とするも、特に金錢に限るの理由なきを以て、民法は、金錢若くは其他の物と定めたり、從つて物にあらざる權利は此契約の目的と爲す事を得ず、□三自己又は他人の生命を限度として、給付義務を負ふもの也、槪ね此契約に於ては、定期金權利者の終身を限度とするを以て常となすも、自己若くは第三者の生命を限度として之を定むるも、定期金契約の成立を妨ぐるものにあらず、□四此契約の實用を按ずるに、生涯の生活の資本に不足を告ぐる者が、一時に元本を提供して此契約を爲し、以て老後の安全を計るが爲め長も恰當になる契約也、蓋し此契約に於ける債權者は、元本を提出したるときと雖も、其元本の返還を請求する事を得ざるものなれども、彼の貸金關係と異り、制限利子の額に超過する年金の給付を約する事を得るが故に、小額の資金を以て、永久に利益を受くるの得ありて、老後の計營をなす爲めには、最も必要なる制度也とす、唯一利一害は數の免れざる處、則ち本契約は、爲めに人を怠慢に陷らしむるの弊なき能はず、斯く如く自己の安逸のみを貪り、一家子孫の爲めに計畫を爲さざるが如き弊害伴ふが故に、立法者は最も此點に注意せざるべからず、□五終身定期金契約の法律上の構造は、一種の委運契約なり、何となれば契約當事者の損益が、契約締結の當時に於て未確定のものなればなり、又此契約は、有償なることあり、無償なることあり、所謂無償なる場合とは、何等の報酬を受くることなく、此給付を負ふ場合にして、有償なる場合とは、債務者が相手方より報酬を受けて、定期金債務を負ふをいふなり、此報酬を名けて講學上定期金元本と呼ぶ。(民六八九條乃至六九三條參照)
- 英
- Contract of life annui-ty
- 独
- Leibrentevertrag
- 仏
- Contrat de la rente viagère
從たる契約
(じゆうたるけいやく)從たる契約とは、主たる契約に附隨の契約を謂ふ、彼の金錢の貸借契約に附隨して爲さるる利息給付の契約は、從たる契約なり、元來、主若くは從と云ふは、或る一のものが他のものに對して附隨的關係を有する場合を謂ひ、如何なる程度に於て、附隨的關係あるを要するやは疑問の存する所なり、然れども此疑問は、到底各場合に依りて異り、普遍的にはいふ能はざるものとす、民法も、例へば主物從物に於ける主從の關係は、其物の常用に供する爲め、附屬せしめられたるものと、否とに依りて區別するが如き、各場合に依り其説明を異にせり、之を要するに從たる契約とは、主たる契約に附隨して爲されたる契約を意味し、主たる契約の成立消滅に從ひて成立消滅し、又は主たる契約の取消に依りて同じく效を生ぜざるものなり、終りに一言すべきは、從たる契約に依りて生じたる利息給付の如きものと雖も、其從たる契約成立の效果として一旦發生せる以上は、主たる契約の給付なる貸金關係消滅するも、尚存在し得べきものななり、尤も我民法は、制度上此關係不明なり。(民四〇四、四〇五、一六八、一六九條參照)
- 英
- Accessory contract
- 独
- accessorischer Vertrag
- 仏
- Contrat ac-cessoire
從たる債權
(じゆうたるさいけん)從たる債權とは、主たる債權、其他の權利に附隨する債權を云ふ、而して我民法上不明なるも、多くは從たる債權は、主たる權利の運命に從ふものと解すべきが如し、從たる債權を縱へば、從たる契約に依りて發生せる利息債權、賃貸借に於ける借賃請求權の如き之なり。
- 英
- Accessory obligation
- 独
- accessorische Forderung
- 仏
- Créance accessoire
從たる債務
從たる債務とは、主たる債務に對し附隨する債務を謂ふ、彼の保證債務の如きは、普通從たる債務と稱せらるるところのものにして、又主たる債權に附隨する從たる債權者の義務は、槪ね從たる債務といひ得べきものなりとす。
- 英
- Accessory obligation
- 独
- accessorische Obligation
- 仏
- Obligation accessoire
從たる債務者
從たる債務者とは、從たる債務を負擔する者を謂ひ、例へば主たる債務者の債務を辨濟するの債務を負擔する、彼の保證人の如きは、其顯著なる一例なり。(民四四六條乃至四六五條參照)
- 英
- Accessory debtor
- 独
- accessorischer Schuldner
- 仏
- Débiteur accessoire
從たる物權
(じゆうたるぶつけん)從たる物權とは、他の權利の存在に附從して存する物權を謂ふ、地役權、留置權、先取特權、質權、抵當權等之なり、之等の權利は、皆他の權利の存在するにあらざれば成立するを得ざるものにして、今少しく説明を爲さんに、地役權なるものは、要役地の利益の爲めに、承役地に對して行ふ權利なれば、要役地の所有權に附隨して存在するものとす、即ち地役權は、要役地の所有權に從たる物權なり、又留置權、先取特權、質權、抵當權なるものは、畢竟するに債權の辨濟擔保のものなれば、債權存せざれば之等の權利存在せざるは言を要せず、之以上の權利が債權に從たる物權なる所以とす、茲に注意すべきは、主たる物權、從たる物權の區別は、主物上の物權、從物上の物權の區別と混同すること勿れ、蓋し主物、從物上の物權は、共に主たる物權にして、唯二物の性質上主從の關係あるに過ぎず、決して物權夫れ自身の區別にあらざるなり。(民二〇八條乃至三九八條參照)
- 英
- Accessory real right
- 独
- accessorisches Sachenrecht
- 仏
- Droit réel accessoire
銃砲火藥類取締法
(じゆうほうくわやくるゐとりしまりはふ)銃砲火藥類取締法とは、軍用銃砲非軍用銃砲、火藥雷管、導火線其他の爆發物品の輸入、製造、販賣、貯藏、運搬に關する取締の事を規定せるものにして、□一輸入、製造、販賣は、夫れ夫れ主務官廳の許可を得べく、銃砲火藥商が法律命令に違背したるとき、又は銃砲火藥類を危險の用に供するの虞あるときは、主務官廳は營業の許可を取消し、若くは之を停止することを得るものなり、□二内務大臣は、公共の安寧を保持するに必要と認むるときは、或る期間及區域を限り、銃砲火藥類の授受、運搬、及び携帶を禁じ、又は之を領置することを得べし、尚其他貯藏運搬に關し倉庫、運搬經過路等に就きては、命令の定むる所に從ひ、所轄警察官の許可を受くべきことを定めたり。(三二年八月法一〇六號、同年八月勅三六六號銃砲火藥取締法施行規則參照)
- 英
- Law of superinten-dence of musket, gun and powder
- 独
- Beaufsichtigungsgesetz der Gewehre, Kan-onen und des Pulvers
- 仏
- Loi de la surveillance des canons et de poudre à canon
銃砲火藥類取締法施行細則
銃砲火藥類取締法施行細則とは、以上銃砲火藥類取締法の施行に關する詳細の規定にして、火藥銃砲の讓受の許可並に許可證に就きて、細密なる手續規定をなしたり。(三二年八月内務省令四三號參照)
從犯
(じゆうはん)從犯とは、故意を以て正犯を幇助するをいふ、イ從犯の客觀的方面、從犯を成立せしむるには、他人の犯罪を幇助する事を要す、如何なる行動が幇助なるか、又如何なる點に於て正犯と區別あるかといふに、正犯の行動は著手行爲ならざるべからず、換言すれば實行に入るべき行動なるを要するに、從犯の行動は著手に至らざる行動也、若し正犯が爲したりとせば、單に豫備に止まるべき行動に限る、若し一步を超へて著手と云ひ得べきに至らば、是犯罪の實行の爲に加工するものにして、共同實行正犯也、所謂從犯と云ふべからず、次に從犯の要件たる幇助行爲は、正犯の犯罪實行を容易ならしむべき一切の行動を包含す、法律は此點に於て何等の制限する所あらず、舊刑第一〇九條に「器具を給與し、又は誘導指示し、其他豫備の所爲を以て云々」とあるは此例示なりといふべし、ロ從犯の主觀的方面、從犯を成立せしむるには、他人の犯罪を幇助するの故意あるを要す、此故意を存するには、先づ實行正犯の犯罪に就ての觀念と、自己の行動に依り、其犯罪の實行を容易ならしむるの觀念あることを要す、從つて偶然又は過失に依り、他人の犯罪を容易ならしむるも從犯といふべからず、終りに從犯に關する二三の疑問を揭げん、□一消極的行爲による幇助ありや、例へば看守者が其保管せる物を他人が〓み去るを知りて之を妨げざるときは、此看守者を〓盜罪の從犯に問擬すべきか(?)現時有力なる説は此を積極に解す、□二故意に依り過失犯を幇助するときは、從犯成立するや(?)此の場合は從犯といふべからずして、間接正犯なり、蓋し是他人の過失を利用して自ら罪を犯すものと謂はざるべからざればなり、□三正犯者は已の犯罪を幇助するものあることを知らざるも、猶從犯存すべきや(?)普通の解釋に依れば、從犯の方面より觀察せば意思の連結を要するも、反對に正犯の方面より論ずれば、意思の連結を必要とすることなしと、果して然らば間接の從犯も亦從犯なりと云ふを得ん、□四言語上の幇助、例へば正犯者に向つてヤレヤレと奬勵するが如き行爲も、尚從犯を成立せしめ得べきや(?)元來幇助には、有形の幇助と無形の幇助とあり得べく、他人の實行を補ふは、有形の幇助に屬し、他人の思慮を補ふは、無形の幇助に屬すと謂ひ得べくんば、本場合は積極に解するを至當とせん。(刑六二、六三條參照)
- 英
- Accessoriness
- 独
- Gehülfe
- 仏
- Infraction accessoire
從物
(じゆうぶつ)物の所有者が、其物の常用に供する爲、自己の所有に屬する他の物を以て之に附屬せしめたるときは、其附屬せしめたる物を從物と謂ふ、分説すれば、□一從物の存するには、先づ主物あることを要す、主ありて後に從あり、故に主物なくして、從物獨り存するの理あらんや、□二從物は、主物の所有者に屬する事を要す、獨乙民法の如きは、二者の所有者必しも同一なることを要せざるも、從は主の運命に從ふ原則の適用上、面到なる關係生ずべきを以て、我法は主從ともに同一所有者に屬するものたるを要すとせり、□三從物は主物の用に供せらるることを要す、從物たるには、一物が他の物の經濟上の目的を達するが爲めに、其補助を爲すの關係ある事を要す、從て二個の物が共同の目的の爲めに使用せらるるも、一物が他物の爲めに使用せらるるの關係なきときは從物にあらず、之を例へば、一對の花瓶は各次從物といふべからざるが如し、□四從物は主物其ものの常用に供せらるることを要す、單に所有者一身の便宜の爲めに存する物、即ち火鉢、掛物、額面の如きは家屋の從物といふべきにあらず、之に反し時計の鎖、簞笥の鍵等は、時計、簟笥の爲めに存し、且つ其常用に供せらるるが故に從物たり、□五從物は、主物の常用に供する目的を以て、主物に附屬せしめられたるものなることを要す、從物は、法律上獨立の物なるも、所有者が主物に附屬せしむるに依り、之と主從の關係を有するに至るもの也、所謂附屬とは、物質的に主物に附著せしむるを謂ふにあらず、單に主物の常用に供するに適當なる狀態に於て、主物と場所的關係に立たしむるをいふ也、之を例へば寳石を容るるの目的を以て買ひ入れたる箱は、唯之を買ひ入れたるのみにては、寳石の從物といふべからざるも、寳石を其中に收容するに及びて、始めて從物となるが如き之なり、□六主物が動産にして、從物が不動産なることありや(?)獨乙民法は從物は動産に限れるも、新民法は何等の制限を設けざるを見れば、不動産も亦動産の從物たること理論上あり得べし、例へば馬の常用に供せらるる目的を以て建設せる厩は、馬の從物たるが如し、□七民法の規定する所によれば、從物は主物の法律上の處分に從ふものなり、例へば權利の移轉、變更の場合に於て、特別の規定なき限りは、主物に就きて爲したる約束は、從物にも其效果を及ぼすものなり。(民八七條)
- 英
- Accessory thing
- 独
- Nebensache
- 仏
- Chose accessoire
充用
(じうよう)充用とは、彼の充當と同じく、或る物を特定の場合に充て用ふるの義なり、砂防法第三七條に「保證金を過料に充用することを得」とあるが如きは其一例なり。
- 英
- Special using
- 独
- besondere Übung
- 仏
- Emploie spéciale
從量税
(じうりやうぜい)從量税とは、物の數量を標準として、一定の税率に從ひ賦課する租税を謂ふ、元來課税標準に價額を以て表示せらるるものと、度量衡を以て表示せらるるものと、其他ものとあり、價額を以て表示せらるる課税標準に從ひて賦課せらるる租税は、所謂從價税と唱へ、度量又は衡を以て表示せらるる課税標準に從ひて賦課せらるる租税は、即ち從量税なり、例へば絹一尺に就き、五厘の租税を課せらるるときは、絹一尺なる度を以て課税單位を表示するが故に、從量税なりとす。(三五年九月勅二一九號、輸入物品從量税目等參照)
- 英
- Specific duty
- 独
- specifischer Zoil
- 仏
- Impôt spécific
受益者
(じゆえきしや)洽く受益者と云へば、利益を受けたる者を指す、民法は之を分ちて三となす、□一は善意の受益者にして、何等の情を知らず利益を受けたる者を云ひ、□二惡意の受益者とは、利益を受くるに就きて、當該關係の情を知れる者を云ひ、□三不法の受益者とは、不法の原因に基きて利益を得たる者を謂ふ、凡そ受益者にして法律上の原因なく、他人の損失に於て利益を得たるときは、其利益の存する限度に於て、之を返還するの義務を負ふを原則とするもの也、素より法律上の原因、即ち正當名義によりて利益を得たる者が、この義務を負ふことなきは言明を要せず、次に惡意の受益者は、其受けたる利益に利息を附して、之を返還するの義務を負ひ、尚損害ありたるときは、其賠償の責に任ずべきものとす、是其情を知るが故に、其この事あるは豫め覺悟すべき所なればなり、不法の受益者も亦同じ、但し此場合に於て、給付者にも不法の原因あるときは、返還賠償に就きて、法律は之を保護することなし。(民七〇三、七〇四、七〇八條參照)
- 英
- Person enriched
- 独
- Nutznieszer
- 仏
- Enrichi
主格
(しゆかく)主格とは、彼の主體と云ふと同じく、主人公の意なり、人格あるものにして、或る事に就きて主人公となる場合には、之を主格と云ひ、主格ある團體を主體と云ふ、彼の自然人、若くは法人を權人の主體、若くは主格なりと云ふが如きはこの用例なり。
- 英
- Subject
- 独
- Subjekt
- 仏
- Sujet
主幹者
(しゆかんしや)主幹者とは、庶務の總理者を云ふ、所謂社團に於て萬般の機務を總理する者は、即ち主幹者なり、政治上又は公事上の團體に於ける幹事の如きは、主幹者を指すに外ならず。(治安警察法一條)
- 英
- Chief of section of general af-fairs
- 独
- Vorsteher
- 仏
- Chef des af-faires générales
手記
(しゆき)手記とは、或る一定の文字を自ら記載するの謂ひにして、彼の自署と云ふも手記に依る署名のことなり、法典上の用語としては、檢眞の手續の場合に對照すべき手跡なきとき、裁判所より一定の語辭を記すべきことを命ぜらる場合に用ひらる。(民訴三五三條三項參照)
- 英
- Autograph
- 独
- Handschrift
- 仏
- Autographe
主義
(しゆぎ)或る問題に對する纏りたる見解の謂にして、説若くは觀などと大差なき用語なり、然れども強ひて其異同を辯ずれば、主義と謂へば實行てふ意義をも伴ひ、單に纏りたる見解といふことに止まらずして、其見解を行動の規律目的となし、以て實行に現すてふ意味を有す、説は理智の判斷の上に重り置き、敢て實行の如何に關せず、專ら纏りたる見解其ものを意味す、又觀と謂へば、前二者に比して見解に對する態度一層緩に、感情の分子を含むことあり、今例を以て示せば例へば、厭世主義、厭世説、厭世觀と謂ふ場合に、第一の者は社會生存に對する見解が厭世的にして、その行爲の目的又は規律として實行することを主眼とし、第二者は其見解の厭世的なることを專ら意味し、第三者は其社會生活に對する態度の厭世的なることを旨意するが如し、然れども以上の如き區別は、唯習慣的に然も考へらるといふに過ぎずして、固より嚴密なる學理上の差別を有するものにあらざること言を俟たず。
受寄
(じゆき)受寄とは、寄託を受くることを云ふ、所謂寄託とは、當事者の一方が相手方の爲めに保管を爲すことを約し、或る物を受取るに依りて成立する契約にして、此保管をなすことを受寄と計ふ。(民六五條、舊刑三九五號)
- 英
- Entrusted
- 独
- Anvertraut
- 仏
- Déposition
受寄財物
受寄財物とは、以上の寄託に基き保管する所の財物を云ふ、之を抽象的にいへば、特定の法律行爲に基き、返還すべき義務を以て、自己の保管に移されたる他人の財産、或は所有物を指すなり。(舊刑三九五條)
- 英
- Trust
- 独
- anvertrautes Gut
- 仏
- Dépôt
受寄者
受寄者とは、寄託契約に於て物の保管を約する者を云ふ、即ち寄託者の爲めに、物の保管を爲すことを約するものにして、其保管の義務を負ひ、保管物を受取る者を受寄者とはいふなり。(民六五八、六六〇、六六三、六六四、六六六條參照)
- 英
- Depositary
- 独
- Depositar
- 仏
- Déposit aire
受寄物
受寄物とは、寄託契契約の目的物、則ち保營の爲めに受授する物を謂ふ。(民六五八條六五九條)
- 英
- Thing deposited
- 独
- hinter-legte Sache
- 仏
- Dépôt
受寄物費消罪
(じゆきぶつせうひざい)受寄物費消罪とは、受寄の財物、借用物、又は典物其他委託を受けたる金額物件を費消したる罪にして、其要件を揭ぐれば、□一委託を受けたる金額物件なることを要す、法文に受寄の財物とは、民法上寄託に基き保管する財物を云ひ、借用物とは、賃貸借、使用貸借に依りて使用の權を得たる物品を指し、典物とは、質物を意味し、其他委託を受けたる物件とは、委任、事務管理等の爲めに受取りたる金額物件をいふ也、之を要するに本罪の目的物は、法律行爲に基き、返還又は特定の目的方法に於て、使用する義務を以て自己の保管に移されたる他人の所有物を總稱するもの也、□二費消したることを要す、所謂費消とは、權利者を排斥して物を處分し、物自體、又は物に伴ふ經濟上の利益を喪失せしめ、又は他に移す事を意味す、例へば物を讓渡し、又は金額を消費するが如き之なり、以上の要件を具備するに依りて、受寄物消費罪は成立するものにして、若し騙取、拐帶、其他詐欺の所爲ある者は、詐欺取財を以て論ぜざるべきものとす。(舊刑三九五條參照)
熟慮
(じゆくりよ)熟慮とは、多數の觀念が互に競爭する狀態を云ふものにて、一の觀念が反對の觀念と競爭の結果、之を排除して決意を形成するときは、決意に豫謀あるものと云ふ、即ち〓慮は、豫謀ある決意の前提也、抑も諸種の觀念が心裡に競爭するは、吾人が平常に於ける經驗に基き、或は修養の結果、品性の傾向を形成し、或る事を爲さんとするに當りて、一時の激怒に乘じて事を爲すにあらざる限は、常に是非善惡、快不快を判斷して、取捨を決定するものなり、茲に於て乎決意成り、意思はやがて外部に向つて發動するに至る、行爲と稱するは此外的擧動を指し、外的擧動が物界に與ふる影響を結果となす、斯くの如き行爲の諸種の階段に於て、沈思默考する心裡の狀態を熟慮と名づくべく、之に反して感憤激怒の餘り、一氣呵成的に決意したる場合は熟慮にあらず、從つて斯かる場合の意思發動は豫謀ある行爲と云はざるなり。
- 英
- Meditation
- 独
- Betrachtung
- 仏
- Méditation
主管
(しゆくわん)主管とは、管轄を主どると云ふの意義にして、又管理を主どる場合に用ふることなきにあらず、例へば主管官廳と云ふは前者の用例にして、主管義務者と云ふは後者の用例なるが如きこれなり。(民訴六四三條二項、海軍軍令部條例一六條)
- 英
- Administration
- 独
- Verwaltung
- 仏
- Administration
主管者
主管者とは、主として管理をなす者を云ふ、換言すれば、主管に就きて責を負ふ權利者又は義務者を云ふなり。(會計檢査院事務章程三四條)
- 英
- Administrator
- 独
- Verwalter
- 仏
- Administrateur
主觀
(しゆくわん)主觀てふ語は、客觀と常に相對して用ひらる、即ち知らる方に對し其知る方を意味す、更に心理學上の用語を藉りて謂へば、吾人の意識過程に於て、其認識せらるるもの、即ち認識の客となるものに對し、其認識する所のもの、即ち認識の主となるものを旨意するなり。
主觀的
主觀的とは、上述の意義を有する形客詞なるも其轉用の場合極めて多し、例へば文學美術等に於て、某の作物は主觀的なりなど稱する時は、其作物は、作者の特質を表具し居ることを意味し、某の意見は主觀的なりと謂へば、彼の見解は、彼れ特有の個人的立脚地より下されたる事を意味するが如し、尤も普通の用例は、主觀的とは、自己を標準として、凡ての事物を觀察を爲すことを云ふ、既に自己を標準としてと云ふが故に、他人が他人を標準として觀察せられたる事も亦主觀的なり、畢竟我を標準として觀察せられたる主我的觀察が、取りも直さず主觀的也、之を要するに主觀的とは、我てふ立脚地に立ちて、字宙の森羅方象を觀察したる場合を指すものにして、我なる觀念の異る從ひて、主觀も或は客觀と一致すと云ふことを得べし、例へば我の理想たる絶對我の立脚地に立ち得る場合は、其觀察の對象たる客觀は、軈て主觀に一致し、主觀的と云ふも、客觀的と云ふも、畢竟する所別異のものにあらざるに至らん、斯かるが故に主觀的客觀的と云ふは、此現象界に於ける相對的の名稱にして、娑婆即寂光の見地に於ては、主觀即客觀の妙諦を現し、渾一無二のものなりと云ふべし、此所には暫く現象界の術語として、主我的觀察を主觀的と云ふ通説に從はん。
- 英
- Subjective
- 独
- subjektiv
- 仏
- Subjectif
主管爭議
(しゆくわんそうぎ)所謂廣義に於ける權限爭議の一種にして、主管行政廳相互に生ずる權限の爭を云ふ、元來權限爭議は、國家各機關の間に於ける主管の爭にして、此點より云へば、等しく之を主管又は權限爭議と云ひ得べきも、用語の慣例に從へば、廣義に於ける權限爭議を分ちて、□一狹義の權限爭議、即ち司法裁判所と他の行政機關との權限の爭を云ひ、□二主管爭議とは、行政官廳間の主管の爭を云ふ、内閣官制第五條第四號に「主管の爭議」とあるは此用語例なりとす。
- 英
- Dispute of competency of ad-ministration office
- 独
- Kompetenzkonflikt
- 仏
- Dispute de la compétence de l'ad-ministration
主觀的商行爲
(しゆくわんてきしやうかうゐ)主觀的商行爲とは、相對的又は關係的の商行爲を謂ひ、他の或る事物と關聯せざれば商行爲とならざるものなり、而して條件には種々ありて、□一或は營業として爲すに依りて、商行爲となるものあり、其重なるものを擧ぐれば、イ仕事をなし又は勞務を加ふる行爲にして、例へば製造、加工、運送、出版、印刷、撮影、仲立、取次、代理、作業又は勞務の請負等これなり、ロ動産不動産に關する行爲にして、例へば動産不動産の取得、賃貸借、場屋の取引、寄託等これなり、ハ專ら賃金に關する行爲、例へば銀行取引及保險等これなり、二電氣及瓦斯に關する行爲、以上は營業として之を爲すに依りて商行爲となる、但し專ら賃金を得る目的を以て物を製造し、又は勞務に服する者の行爲は、此限にあらざるなり、□二或は之を爲す身分に依りて商行爲たることあり、即ち人と目的とを條件として商行爲となるものにして、商人が其の營業の爲めにする行爲は商行爲たり、換言すれば其行爲の目的が營業の爲めなれば、如何なる性質の行爲たるを問はず商行爲と爲すなり。(商二六四、二六五條)
- 英
- Subjective commercial transaction
- 独
- subjektives Handels-geschäft
- 仏
- Acte commercial subjectif
受刑
(じゆけい)受刑とは、刑罰の執行を受くることを云ふ、舊刑第四十九條第二項に「受刑の初日は、時間を論ぜず一日に算入し云々」とあるは、即ち刑罰を執行せられたる初日は時間を論ぜず、一日と計算するの意味なり。(刑二四條參照)
- 英
- Penalty
- 独
- Strafe
- 仏
- Peine
受刑者
受刑者とは、通俗に所謂刑餘の人と云ひたらんが如き意味にして、刑罰の執行を受けたる者を謂ふ。(監獄則施行細則二四條)
- 英
- Person executed
- 独
- Bestrafte
- 仏
- Condamné
主刑處分
(しゆけいしよぶん)主刑處分とは、主刑執行の處分を謂ひ、即ち主刑たる死刑、徒刑、流刑、懲役、禁獄、禁錮等を執行するの處分を云ふなり、例へば死刑は絞首して執行するが如き、又徒刑は島地に發遣して定役に服せしむるが如きをいふ、左に分説すれば□一死刑は其執行を爲す裁判所の檢察官、書記、及び獄司執行場に立會ひ、獄司より囚人に死刑を執行すべき事を告示したる後、獄丁をして之を決行せしむるもの也、但し死刑の宣告を受けたる婦女懷胎せる時は、其執行を停め、分娩後一百日を經たる後命令を受けて決行すべきものとす、□二徒流の刑は、島地に發遣し、徒刑は定役を課し、流刑は幽閉して定役に服せしめざるものとす、但し徒刑の婦女は、島地に發遣せず、内地の懲役場に於て、定役に服せしむ、□三懲役は、内地の懲役場に入れて定役を課するものなり、□四禁獄は、内地の獄に入れ定役を課せず、□五禁錮は、禁錮場に留置し、重禁錮は定役を科し、輕禁錮は定役に服せしめず、□六罰金は、一圓以上とし、科料は五錢以上とし、金錢を以て納入せしむ、□七拘留は、拘留所に留置して定役を科ぜざるものとす。(舊刑第一篇二章二節)
- 英
- Principal penalty
- 独
- Haupt-strafe
- 仏
- Peine principale
主權
(しゆけん)主權とは、國家の權力の最高且つ獨立なるを謂ふ、(故に主權とは國家權力の屬性を指すものと謂ふべし)所謂最高とは、國家の内部に於て、國家の領土内に存在する總ての個人又は團體が、等しく國家の權力に服從するを要するを云ひ、又獨立とは外部に對して、自己以外の他の權力より制限せられざるを云ふ、主權の性質は、以上の二を以て盡く、舊來の主權説に於ては、此外に尚主權萬能性を擧ぐるを例とす、曰く「主權は、法律にも制限せらるることなき全く無制限のものにして、自己の欲する所により、如何なる事をも爲し得べき力なり、唯制限を受くるとは、そは事實上の制限に止まり、法律上の制限たる能はずと爲す」と、されど斯くの如く、主權を以て無制限なりと云ふは、國家を説くに非立憲的無政府主義を以てするものなり、唯左の意味に於てのみ正當と云ふべし、即ら單に自己以外の他の權力に於て、制限せらるることなしとの意味に於ていふべく、自己の意思に基く憲法其他條約及法律に制限せらるるは、素より其所なりとす、終りに注意すべきは、主權と云ふ語が、歷史上の誤謬よりして、統治權と混用せらるること之なり。(此ことに就きては法制史に就きて研究せよ)
- 英
- Sovereignty
- 独
- Souveränität
- 仏
- Souveraineté
授權
(じゆけん)治く授權とは、權利授與を謂ふ、然れども普通は、代理權授與を指すものとす、元來代理權は、法律行爲に依て發生し又は法律規定當然の結果として發生す、前者は任意代理にして、後者は所謂法定代理なりとす、此任意代理の場合に於て、本人が代理人に代理權を與ふるを授權と云ふ、(民訴法四五條一項)
- 英
- Authorization
- 独
- Bevollmächtig-ung
- 仏
- Autorisation
授權行爲
授權行爲とは、法律行爲に依りて、代理權を與ふる場合に、其法律行爲を云ふ、授權行爲の性質に就きては異論あり、□一代理權の授與は、一方的の意思表示によりて之を授與するを得べし、何となれば、元來代理權なるものは、一人の爲したる意思表示、又は受けたる意思表示の法律上の效力を、直接に本人に及ぼさしむる法律上の力なるが故に、代理權其ものは、決して代理人に義務を負はしむべき性質のものにあらず、從つて代理人に於て、其權利を行使すると否とは自由也、故を以て一方的の意思表示に依りて、他人に代理權を授與するも、代理人となるべき者に損害を及ぼす事なきなり、加之私法上の效力を生すべき意思表示は、苟も公の秩序、又は善良の風俗に反せざる限りは、其法律上の效果を發生せしむべきこと、近世各國法制の認むる所たればなり、何人と雖も他人の一方的の意思表示を以て、自己の知らざる間に權利を取得することなしとの一片の空想を以て、此理論を抛棄するは、當を得たるものにあらざるおやと、□二代理權授與は、委任其他の契約によるにあらざれば授與することを得ず、故に權授行爲は契約なりと、我民法を按ずるに、民法は委任に依る代理なるものを認む、若し授權行爲單獨説に從へば、此場合は委任契約に依る代理にあらずして、委任契約を結合し、然も之と異りたる單獨行爲に依り、授權せられたる代理なりといはざるべからず、又「第三者に對して、他人に代理權を與へたる旨を表示したる者は、其代理權の範圍内に於て、其他人と第三者との間に爲したる行爲に就き、其責に任ず」とある民法の規定は、眞に授權の場合の規定にあらずして、授權したる旨を表示したる場合の規定なるが故に、以上の諸點より觀察するも、我民法は單獨行爲授權説を認めたりといふことを得ず、寧ろ代理權契約授權説を採用したるものの如し。(民九九乃至一一八條、特に民一〇四條及一〇九條參照)
- 英
- Authorization
- 独
- Bevoll-mächtigung
- 仏
- Acte de l'autorisation
主權者
(しゆけんじや)主權者とは、統治權の歸屬者を謂ふ、元來主權なる語は、統治權の屬性をいひ顯す最高獨立の意味なるも、歷史上の誤慣よりして、國家權力を指す統治權と同一視するに至れり、加ふるに佛英の國語に於ては、統治權と區別して、主權を指すべき特種の言語なり、ゾベレンなる語を兩用に供し居れり。故に主權者と云ふも、統治權者と云ふも全く同一の意義にして、二者特異のものにあらずとなす、されど學理上よりいへば、主權者なる語は語義を爲さざるものにして、常に統治權者と云はざるべからず、何となれば主權なる語は、統治權の屬性を指す語にして、夫れ自身に於ては、最高獨立の語義の外何等の意味あるものにあらざるなり。これ佛の學者ジヤン、ボーダンが廣く權力を意味する語なるゾベレンに與へたる觀念にして、由未此意義に從ひて主權を解するを普通とせり。(主權の部參照)
- 英
- Sovereign
- 独
- Herrscher
- 仏
- Souverain
主權者默認説
(しゆけんじやもくにんせつ)主權者默認説とは、慣習が慣習法となる理由を説明するが爲に、主として英國のベンザム、佛國のエシュバック氏等に依て唱導せられたるものなり、其大要に曰く、慣習法とは、立法者の默認したる俗習若くは慣行より成りたる法律規則の全體を指すものにして、元來一國人民にして久しく或行爲の規則を守り、立法者にして之を默許し、或は直接間接に之を拒止せざるときは、一方に於ては人民の意思に基き、他方に於ては立法者の默認に依て、慣習は慣習法となるものといはざるべからず、換言すれば、慣習が永く人民間に行はるるときは、主權者の默認によりて、法律となると云ふに在り、按ずるに本説素より多くの眞項を含むも、慣習が何れの時に於て、主權者の默認を得たるものとなすべきやは、以上の説明によりては、到底不明なるを免れず、唯法律は、其源を總べて主權者に發すべきは眞理なりといふべし。
受贓
(じゆさう)受贓とは、贓物なるの情を知り、之を收受する事をいふ、所謂贓物とは、犯罪に依りて得たる物體を味意し、收受とは、汎く贓物の保有を得る事を謂ふなり、元來贓なる語は、彼の唐書に所謂凡非理所得賄皆曰贓とあるが如く、犯罪に依りて占有を收得したる有體物(例之強盜、〓盜、詐欺取財等によりて、〓取若くは騙取したる財物の如き)又は犯罪によりて之を保持したる有體物(例へば拾得物の隱祕の如き)を云ふものなり。(舊刑三九九條)
- 英
- Receiving object stolen
- 独
- Gestohlenes empfangen
- 仏
- Recevoir la chose volée
酒造組合
(しゆざうくみあひ)酒造組合とは、酒類製造者が、税務管内を一區域として設立する法人を謂ふ、所謂酒類製造者とは、清酒、濁酒、白酒、味醂、又は燒酎を製造する者を云ひ、之等の者が恊同一致して營業上の弊害を矯正し、その信用を保持するの目的を以て設立するものが酒造組合なり、□一酒造組合を設立せんとするときは、其區域内に於ける酒類製造者三分の二以上の同意を得て、創立總會を開き、定款を議定し政府の許可を受くべきものなり、□二酒造組合設置の認可ありたるときは、其區域内に於ける同種の酒類製造者は、當然其組合の組合員となるべきものとす、□三政府は、酒造組合の決議又は其行僞が法令、若くは定款に違背し、乃至公益を害すると認むるときは、其決議を取消し其行爲を制限し、役員の改選を命じ又は組合の解散を命ずることを得べし、□四酒造組合は、組合相互の氣脈を通じ、其目的を達する爲め、酒造組合聯合會を設置することを得べし、此聯合會も法人にして、設立には政府の認可を經べきものなり。(三八年一月法八號)
- 英
- Guild of sake brewing
- 独
- Sakebrauensverband
- 仏
- Corporation de la brassage de saké
酒造組合規則
酒造組合規則とは、酒造税法に基き、酒造組合を設立すべき手續に關する準則なりしが、前記酒造組合法の發布によりて廢止せられたり。(三二年七月勅三四〇號)
酒造税法
(しゆざうぜいはふ)酒造税法とは、酒類の製造及税金に關する法律にして、併せて本法違背者の罰則を定たり、□一酒類とは、清酒、濁酒、白酒、味醂、燒酎の五種にして、之を製造せんとする者は、製造所一箇所每に、政府の免許を受くべし、酒母又は醪を製造せんとする者も亦同じ、政府は一酒造年間に、清酒は百石、濁酒は五十石、燒酎は五石以上を製造する者にあらざれば、之を免許せざるものとす、□二一酒造年度は、其年十月一日に始まり翌年九月三十日迄とし、造石税は左の割合を以て課せらるるものとす、第一種、酒精分二十度以下の清濁、白酒及味醂並に甘藷を原料として製造する燒酎にして、酒精分三十度以上なるもの、一石に付金十五圓、第二種、酒精分四十五度以下の燒酎、一石に付金十六圓、第三種、酒精分二十度を超ゆる清濁白酒、味醂及酒精分四十五度を超ゆる燒酎、一石に付酒精分一度每に金七拾五錢、但し目下は非常特別税の結果、第一、及び第二種は二圓、第三種は十錢を增加せられたるものとす、□三酒類の造石數は、製成の時之を査定すべきものにして、其査定は、普通容器の容量に依る、犯則其の他の事項により以上の方法に依り難きときは、現在の酒類又は證據物件に就き、之を査定することを得べし、□四酒類を製造する者は、納税保證として、一酒造年度見込造石數一石に就き、金四圓の割合を以て算出したる金額に相當する保證物を豫め提出すべきものにして、相當の納税保證人を供したるとき、納税保證として造石税額に相當する酒類を保存するとき、造告税を前納したるとき、及び該酒造者の屬する酒造組合に於て納税を擔保したるときは、納税保證物提供を免るるものなり、□五收税官吏は、酒類を製造する者、又は之を販賣する者の所持に係る酒類、其製造出入に關する一切の帳簿、書類及酒類製造又は販賣上必要なる建築物、材料器械其他の物件を檢査し、又は監督上必要なる處分を爲すことを得べきものなりとす、□六酒類を製造する者詐僞其他不正の所爲を以て、造石數の査定を免かれ、又は免れんとしたるときは、其石數の造石税五倍に相當する罰金に處せらるべきものなり。(二九年三月法二八號)
- 英
- Law of sake tax
- 独
- Gesetz der Sakebrauenssteuer
- 仏
- Règle de l'impôt sur saké
酒造税法施行規則
酒造税法施行規則とは、以上酒造税法施行に關する細則にして、免許の手續造石方法等に關して詳細に規定せられたり。(二九年八月勅二八七號參照)
主參加
(しゆさんか)主參加とは、他人間に權利拘束と爲たる訴訟の目的物の全部、又は一部を自己の爲めに請求する第三者の訴、及び他人の間に權利拘束と爲りたる訴訟に於て、當事者が共謀して第三者の權利を害せんとする場合に、其詐害の行爲を除かんとする爲め、第三者の爲す獨立の訴を云ふ、故に主參加は彼の從參加の如く、訴訟の當事者を補助するものに非ずして、全く自己の權利を保護する爲め、自ら當事者と爲り獨立の訴を起すもの也、唯法律は本訴訟と相關連して訴ふる事を許すが故に、之を參加の一種に加へたるに過ぎざる也、主參加は、本訴訟が第一審に繫屬中たると、上級審に繫屬中たるとを問はず、總べて本訴訟が第一審として、繫屬したる裁判所の、特別裁判管轄に屬するものなり、是主參加は獨立の訴なるも、尚本訴訟と關連して訴訟を起さしむる所以は、參加の一種となしたるが故なり、從つて主參加は、勢ひ本訴の原被兩造を共同被告となさざるべからざるは明なり、次に主參加は、參加の一種と同時に獨立の訴なるが故に、特別の規定なき限りは獨立して進行し、判決し、執行し得べきものとす。(民訴五一、五二條)
- 英
- Principal intervention
- 独
- Hauptintervention
- 仏
- Intervention
取受
(しゆじゆ)取受なる語の解釋に就きては二説あり、□一取受とは俗に受取なる文字を轉置したるに過ぎず、故に盜取又は拾取したるが如き、他より引渡されず、犯人に於て自ら之を取得したる場合等は之を包含せずと、□二取受とは、取り又は受くるの意にして、他に之を引渡す者なく、犯人自ら之を取得したると、他人の引渡に依りて之を受領したると否とを問はず、苟も自己の所持に移したる時は、取受と云はざるべからずと、依つて按ずるに、成法の解釋としては、後説を當を得たるものと信ず、例せば刑法第一九〇條に「僞造變造の情を知て其貨幣を取受し、之を行使したる者は云々」とあり、此場合に僞造變造に與からざるものが、其情を知りて不正貨幣を他より受領すると、自ら進んで之を盜取拾取するとは、其危險の程度に於て、敢て優劣なく、從つて一方を取受となし、他方を受取るにあらずと區別する根據なきのみならず、文理上取受とは、取り又は受けと、解し得べければなり。(舊刑一九〇、一九二、一九三條參照)
- 英
- Receipt
- 独
- Empfang
- 仏
- Reçu
主從
(しゆじゆう)主從とは、主たる資格と從たる資格とを併合して云ふ稱呼也、所謂主とは、汎く從屬的關係を有せらるる或るものをいひ、人なるときは、之を主人と云ひ、物なるときは主物、契約なるときは主たる契約と謂ふ、次に從とは、主に從屬的關係を有する或るものにして、ものの異るに從て、或は從僕、從物、從たる契約などと稱す、而して主從とは、此二資格の併稱なり、民法第二四四條に「附合したる動産に就き、主從の區別を爲すこと能はざるときは、各動産の所有者は、其附合の當時に於ける價格の割合に應じて、合成物を共有す」とあるが如き其用例なり。
- 英
- Principal and accessory
- 独
- Haupt- und Neben-
- 仏
- Principal et ac-cessoire
手署
(しゆしよ)手署とは、自ら記名することにして、彼の自署と云ふと同義也、元來署名とは、記名を自らする事にして、普通に名前を書するには、手を以てするが故に手署たり、法律が單に記名と云ふは、何人に名前を書かしむるも、自由なる場合に用ひ、署名と云ふときは、必ず自署すべき場合を指す。(三三年二月法一七號、三二年三月法五〇號)
- 英
- Autograph
- 独
- Handschrift
- 仏
- Autographe
受贈者
(じゆぞうしや)受贈者は、贈與を受けたる者を云ふ、民法上所謂贈與とは、當事者の一方が相手方の財産を增加するの意思を以て、自己の財産を減少し、之を無償にて相手方に供與するを謂ひ、而して財産を減少する者を贈與者と云ひ、依つて財産の積極的增加を得る者を受贈者と呼ぶなり。(民五五一、五五二條)
- 英
- Donee
- 独
- Beliehene
- 仏
- Donataire
受訴裁判所
(じゆそさいばんしよ)受訴裁判所とは、訴の提起を受理したる裁判所を云ふ、或は曰く受訴裁判所とは、或る事件に就き訴を受理したる管轄裁判所を云ふと、或は曰く單に訴を提起せられたる裁判所は、受訴裁判所なりと、此後の解釋の不當なるは、受訴なる名稱に依るも明にして、又民事訴訟法第一九一條に「受訴裁判所が管轄權を有し云々」とあるより見るも、反對に管轄權を有せざる受訴裁判所あるを知るべく、從つて第一説も正當と云ふべからず、之を要するに受訴裁判所とは、訴を受理したる裁判所の意味に外ならずして、他意あるにあらざるなり、所謂訴を受理したるとは、檢事が國家刑罰權行使の爲めに公訴を提起せる時、又は私權保護の爲め私人が一定の形式に從ひて請求をなしたる場合に、之を受理審判することを謂ふなり。(民訴九七條二項、一四三、一入四一八五、一八七、一九一條等參照)
- 英
- Court of suit
- 独
- Prozesz-gericht
- 仏
- Tribunal de la poursuite
受託裁判所
(じゆたくさいばんしよ)受託裁判所とは、他の裁判所の囑託を受けて、證據調、訊問、送達、其他の訴訟行爲を爲す裁判所を謂ふ、元來裁判所が職務を行ふことを得るは、其管轄區域内に限り、或る訴訟行爲を其管轄區域外に爲すべき必要の生じたる時は、他の裁判所に、法律上の共助を求めざるべからず、此場合に於て、訴訟行爲を爲すべきことの囑託を受けたる裁判所は、所謂受託裁判所なりとす。(裁構法一三一條、民訴三一八條)
- 英
- Court of requisition
- 独
- ersuchtes Gericht
- 仏
- Tribunal de la requisition
受託判事
受託判事とは、或る裁判所又は判事より訴訟行爲を爲すことを屬託せられたる判事を云ふ、彼の受命判事と、受託判事とは、異るものにして、所謂受命判事とは、或る訴訟行爲をなすに就き、指命せられたる合議裁判所の部員を云ふ、從つて合議裁判所にあらざれば、受命判事なるものなく、之に反して受託判事は、或る裁判所、又は判事より、訴訟行爲を爲すことを屬託せられたる、他の裁判所の判事なりとす。(民訴四六條三項、一三三、一五〇條三項、刑訴七四、一九一條等參照)
- 英
- Requisited judge
- 独
- ersuchter Richter
- 仏
- Juge requis
主たる契約
(しゆたるけいやく)主たる契約とは、他の契約に關係なく、獨立して存在する契約を彼の從たる契約に對して云ふ語なり、例へば元本の貸借契約は利息契約に對して、主たる契約といふが如し。(舊民法財産編三〇二條二項參照〕
- 英
- Principal contract
- 独
- Hauptvertrag
- 仏
- Contrat principal
主たる債務
主たる債務とは、從たる債務に對し、基本の債務を云ふ、例へば從たる保證債務に對して、基本の債務を主たる債務と云ふが如し。(民四六五條〕
- 英
- Principal obligation
- 独
- Hauptschuld
- 仏
- Obligation principal
主たる債務者
主たる債務者とは、主たる債務の負擔者を云ふ、彼の保證人に對して、基本たる債務の義務者を主たる債務者と云ふが如きはこの例なり。(民四四六條乃至四六三條參照)
- 英
- Principal debtor
- 独
- Hauptschuldner
- 仏
- Debiteur principal
主たる物權
主たる物權とは、講學上彼の從たる物權の附隨せる基本の物權を云ふものにして、地役權なる從たる物權の附隨せる要役地の所有權は、主たる物權といふべきが如きこれなり。(民二八一條參照)
- 英
- Principal real right
- 独
- Hauptsachenrecht
- 仏
- Droit réel princi-pal
主張
(しゆちやう)主張とは、自己の發表せる意見の維持を指す、或は自己の意見を表示すると同時に之を維持することを云ふことあり、民事訴訟法第六二條第一項、第二項及第三項に「主張云々」とあるは此用例なり。(尚民訴八〇條二項、一一二條二項參照)
- 英
- Insistence
- 独
- Bestehen
- 仏
- Insistance
出願
(しゆつがん)出願とは、特定の國家行爲を要求する爲め、私人より國家機關に向つて爲す行爲にして、例へば特許を得ん爲めに農商務省に願ひ出づるが如き、營業免許を得んために警察官署に願出づるが如きこれなり。(民八八一條參照)
出捐
(しゆつえん)出損とは、代償、若くは給與によりて、自己の利益を減殺することを謂ふ、例へば連帶債務者の一人が、自己の利益を減殺するの方法に於て、共同の免責を得たるときは、其債務者は出捐せりと云ふが如き其用例なり。(民四四二、四四三、四四六條二項)
出港免許
(しゆつかうめんきよ)出港免許とは、船舶貨物等の出港を許可する行政處分を云ふ、元來貨物及船舶等の出港は、税關に申告し、其檢査を經て其免許を受くべきものにして、各仕出港は、出港免狀、若くは出港免狀に代るべき書類を下附すべきものなり、此仕出港より下附せらるべき出港免狀其他の書類は、輸入港に於て、貨物の正當なること等を證明すべき最も有力なる證類なるが故に、出港港に於ては、出港免許なる行爲處分を以て、査定の上許可すべきものなりとす。(關税法三條參照)
- 英
- Clearance
- 独
- Befreiung
- 仏
- Congé
出資
(しゆつし)出資とは、事業の資本を提供することの意味なり、例へば組合員が共同の事業經營の爲めに出資を爲すが如き、會社の社員が、會社財産を組織する爲めに資本を提出するが如きこれなり、或は出資を解して、供出せる所の資本となす者あり、此意味に於て出資は、事業經營の爲め、各自が供出せし組合若くは會社財産の一部にして、前義に於ていへば出資の目的物なり、或る法は此兩義を混用せり、所謂出資の目的物となり得るものは、□一財産とは、狹義に於ては所謂財産權を指し、之を例へば動産、不動産、特許權、債權等を指す、□二勞務を出資とするとは、組合、若くは會社の爲に、精神上、及ひ肉體上の活動を爲すを云ふ、從つて精神、若くは身體の衰弱に依り、活動する能はざるに至れば、之出資の不能といはざるべがらざるなり、□三信用を出資の目的となすとは、信用其ものは人に專屬するものなれども、此の信用を利用せしむるときは、之信用の出資なりといふべし。(民六六七條乃至六六九條、商五一、五五、七一條參照)
- 英
- Contribution
- 独
- Beitrag
- 仏
- Contribution
出資義務
出資義務とは出資を爲すの義務を云ふ。
- 英
- Duty of contribution
- 独
- Beitragspflicht
- 仏
- Devoir de la con-tribution
出生
(しゆつしやう)出生とは、胎兒が母體を離れて、獨立の生活を始むる事を云ふ、故に流産は出生にあらずと雖も、著しき不具者の分娩は、尚出生たるを妨げず、近世醫學の進步は、彼の鬼形兒の存在を認めず、從つて其條件を出生の要件となす必要なし、又出生は胎兒が母體より分離せられて、獨立なる生活を始むるをいふと雖も、必しも生存能力を有することは必要にあらず、羅馬法は、懷胎後六ケ月を經過せずして出生したる者は、之をアボルツスと稱し、出生せざると同一に看做せり、又佛蘭西民法の如きも、生存能力なき者は出生にあらずとなし、生存能力を有することを出生の要件とせり、然れども我法は此説を認めず、尚出生の要件として泣叫、瞬瞼を擧ぐるも、之等のものは唯普通出生の場合に、生兒が生命を有して母體を分離したる證據となるに過ぎざるなり。(民一條參照)
- 英
- Birth
- 独
- Geburt
- 仏
- Naissance
出生地主義
(しゆつしやうちしゆぎ)出生地主義とは、凡て法律關係を定むる場合に於て、其人の出生せる地を基準として決定すべしとなす一個の學説を謂ふ、例ば國籍の決定の場合に於て、父母の國籍如何に關せず、出生地に依りて國籍を定むるが如きは、所謂出生地主義也、中世封建制度の行はれしときに當りて、國民を國土の附屬物と見做し、其他百般の法律關係が皆土地を基とし、嚴正なる屬地主義行はるるに隨ひ、國籍も其出生地に依りて之を定め、敢て父母の國籍如何に關せず、子は其出生地の國籍を取得するものとなしたり、之現今に於ける出生地主義の初めなり、其説の正否は免に角、我成法に於ても「日本に於て生じたる子の父母共に知れざるとき、又は國籍を有せざるときは、其子は之を日本人とす」と規定し、出生地主義を認めたり。(三二年三月法六六號國籍法四條參照)
- 英
- Birth place theory
- 独
- Geburtsland Theorie
- 仏
- Théorie du leiu de naissance
出訴
(しゆつそ)出訴とは、訴の申出のことにして、民事訴訟法の用語に從へば、訴の提起といふと同一なり。(二三年六月法四八號行政裁判法一五條、二三年一〇月法一〇六號參照)
- 英
- To bring suit
- 独
- Anklagen
- 仏
- Poursuivre
出廷
(しゆつてい)出廷とは、法廷に出席する事を謂ふ、行政裁判法第三八條に「原告、被告、及び第三者に出廷を命じ云々」とあるが如き其用語例なり。
- 英
- Appearance
- 独
- Anwesenheit
- 仏
- Comparution
出版
(しゆつばん)出版とは、文書圖画を印刷して領布するを云ふ、分説すれば、□一出版の目的は文書圖画なることを要す、所謂文書圖画とは、或る方法に依り、人の思想を他人に傳達するもの也、而して其果して如何なるものが文書圖画なるかは、各場合に於て決定すべき事實問題にして、之を例へば文字圖樣を織出せる「ハンカチーフ」の如きは、文書圖画と云ふべからず、故に到底常識を以て判斷するの外なし、□二出版は印刷を必要とす、印刷の方法は、或は活版等の印刷機械に依るも、又は機械的化學的の作用によるも可なり、例へば復寫器に依りて印刷するも出版なり、□三出版は頒布を伴ふを要す、頒布とは、不特定の人をして文書圖画を見る事を得しむるの行爲を云び、發賣の如く必しも營業的に爲すを要せず、彼の無料分頒も頒布の一種なりとす、要するに出版とは、成法上の用語を以てすれば、凡そ機械、舍密、其他何等の方法を以てするを問はず、文書圖画を印刷して、之を發賣し又は頒布するを謂ふなり。(出版法一條)
- 英
- Publication
- 独
- Verlag
- 仏
- Publication
出版警察
出版警察とは、文書圖画の出版に關する取締を目的とする警察行政を云ふ、凡そ出版は、人の思想を交通する手段中最も迅速にして、且つ最も容易なる方法なり、隨つて多數人士の上に勢力を及ぼすには、最も有力なるものなれば、之を利用するときは、公の幸福を增進するの具となると雖も、同時に國家の安寧秩序を害し、民人の福利を害すべき危險も、亦隨つて多しといはざるべからず、爰に於てか國家は、出版より生ずる利益を收めて、同時に之より生ずる弊害を豫防するの手段を講ぜざるべからず、憲法第二十九條に依り、臣民は法律の範圍内に於て印行の自由を有するものなれば、弊害豫防の爲め出版の自由を制限するには、法律に依らざるべからず、而して法律の規定に基き、出版の自由に關する人の行爲を制限する行政行爲は、所謂出版警察なりとす。(出版法の部參照)
- 英
- Publication police
- 独
- Presz-polizei
- 仏
- Police de la publication
出版法
出版法とは、出版並に出版警察に關して規定せられたる法律なり、其規定の重なるものを擧ぐれば、□一文書圖画を出版せんとする者は、發行の日より到達すべき日數を除き、三日前に製本二部を添へ、内務省に屆出でざるべからず、但し一度出版を爲したる後再版を爲す時は、改正增減し註釋附錄等を加へたる場合にあらざれば、更に出版の屆出を爲すを要せざるものとす、□二文書圖画の出版者、發行者は、自己の氏名、住所及發行、印刷の年月日を出版物の末尾に記載するを要するものとす、□三凡そ出版物の内容に犯罪を曲庇し、又は犯罪者を救護すること、重輕罪の豫審に關せる事項は、公判に付せられざる前に記載公刊する事を得ざるものとす、又傍聽を禁ぜられたる訴訟事項、及び公會の議事、並に官廳の機密に關する公にせざる文書、軍事の機密に關する文書圖画は、許可なくして之を出版することを得ざるものとす、□四出版物が安寧秩序を妨害し、又は風俗を壞亂すと認めたるときは、内務大臣に於て之が發賣頒布を禁じ、刻板印本を差押ふることを得べし。(二六年四月法一五號出版法參照)
- 英
- Publication law
- 独
- Presz-gesetz
- 仏
- Loi de la publlcation
受動
(じゆどう)受動とは、能動の反語にして、他の勢力の下に或作用を營むを謂ふ、即ち自己のみにては何等の活動をもなすことなく、又は活動の意志をも有せざるものが、他の活動又は活動の意志に支配せられて、其なさるる儘に働くことを謂ふ、例へば某氏は受動的に働くと謂はば、某氏の行動は、彼れ自らの意志に出づるにあらずして、他者より餘儀なくせられて、唯流れの上の木の葉の如く、先力のなすが儘に身を處置するを謂ふが如し。
取得
(しゆとく)取得とは、物又は權利其他地位、資格、身分等の取受獲得を云ふ、民法第五六〇條に「其權利を取得して云々」とあるは某一例なり。(民五六一、五六二、一六二、一六三條等參照)
- 英
- Acquisition
- 独
- Erwerbung
- 仏
- Acquisition
取得時效
取得時效とは、時の經過に依りて權利取得の原因となる時效制度を云ふ、所謂時效とは、障害なき時の經過と、其他の法定要件とを法律事實となす、權利の取得又は消滅の原因也、以下取得時效の構成要件を分説すれば、□一一定の權利行使の事實、元來時效は、永續せる事實を尊重し、以て法律的生活の安全を維持保安せんとするの思想に基くが故に、取得せんとする權利を行使するの事實が、取得時效構成分子として必要なるは論を俟たざるなり、此處に權利の行使と云ふは、權利ありて其權利を行使するを指すにあらずして、若し行使者に一定の權利あらば、其權利の行使と爲るべき行爲を爲すを云ふ、□二平穩且つ公然に權利行使を爲すを要す、平穩とは、強暴の反對名辭にして、暴力に依らざらことを云ひ、公然とは、不定多數の人に認知し得べき狀態を意味す、取得時效に此要件を要するは、法律は以上の如き方法に依る不正の權利行使の事實を尊重せざるに基く、□三或る一定の年限權利行使の事實が繼續することを要す、法律は、取得時效なる法律事實の構成分子として、必要なる一定の期間に長短の區別を設く、即ちイ普通は二十箇年にして之を長期時效と云ふ、二十年間所有の意思を以て他人の物を占有したる者は、前上の條件に從ひて其所有權を獲得する者なり、ロ占有の始め無過失善意なりしときは、十年にして其所有權を獲得す、此場合は所謂短期時效なり、以上二箇の場合に於て、所有權以外の財産權を自己の爲めにするの意思を以て、平穩且つ公然に行使するものは、之に準じて權利を取得し得べきものなり、□四取得時效は權利者にあらざるものが、他人の物を占有して其權利を行使することを要す、以上を要するに取得時效なるものは、人が永年の間ある權利を行使し、世人も之を疑はざる時に當りて、其權利行使者が、其物又は權利に就きて爲したる錯雜の關係を、一朝眞正の權利者現出して、尚其行使を許すとなさば、訴訟濫出、錯雜の關係、得て解決すべからざるのみならず、法律上の安全を害することも尠少にあらざるなり、故に法律は此點に著眼して、斯く何等の障害なく永續して權利を行使せる者に、其權利を與へたるものとす。(民一六二條乃至一六五條參照)
- 英
- Acquisitive prescription
- 独
- Erwerbungsverjährung
- 仏
- Prescription acquisitive
主任官吏
(しゆにんくわんり)主任官吏とは、主として或る事務を握掌し、其責に任ずる官吏を謂ふ、彼の分任收納官吏に對して、主任收納官吏といふが如きは其用例なり。(一八年一二月閣令八一號達參照)
- 英
- Chief officer
- 独
- Haupt-beamte
- 仏
- Chef d'officier
受任者
(じゆにんしや)受任者とは、委任の本旨に從ひ、ある法律行爲を爲すべきことを委託せられ、之を受諾したる者を謂ふ、元來委任契約なるものは、當事者の一方が法律行爲をなす事を委託し、相手方が之を承諾するに依りて成立する契約にして、所謂受任者なる者は、委任の本旨に從ひ、善良なる管理者の注意を以て、委任事務を處理するの義務を負ふものなり、然れども受任者は特約あるにあらざれば、委任者に對して報酬を請求することを得ざるものにして、從つて委任は、各當事者は何時にても之を解除することを得るものなり。(民六四三條以下、商二六七條以下參照)
- 英
- Mandatary
- 独
- Mandatar
- 仏
- Mandataire
主法
(しゆはふ)主法とは、權利義務の實體を規定する法規を云ふ、主法なる語は、之を運用する手續法規なる助法と、相對照せる場合の術語なり、抑も法律は一定の關係を創定し、且つ之を保護するを目的となすものにして、主法は其が本體規定也、助法は之を現實するの規定にして、主法、助法相待つて始て法律の用を完うするを得べき也、例へば憲法、行政法、刑法及民法、商法の如きは、主として法律關係自身を規定するが故に主法なりと云ふべく、又議院法、行政裁判所法、訴願法、及び刑事訴訟法、民事訴訟法、人事訴訟手續法の如きは、上記の主法たる憲法、刑法、民法等を運用するの手續法なるが故に、助法たるが如し、茲に注意すべきは憲法、民法等を主法なりと云ふも、全然手續に關する規定なしと云ふにあらず、ただ其の大體より見て、憲法は、國家機關及其權限を規定するものなるが故に主法なり、民法は、主として人及人の行爲、其目的物、並に法律關係自體に就きて規定するが故に主法なりと云ふ也、助法の例に就きても亦然りとす。
- 英
- Substancial law
- 独
- Hauptrecht
- 仏
- Loi substancielle
首服
(しゆふく)首服とは、犯人自ら進んで罪に服するを云ひ、一般に自首と云ふと同義なり、唯自首と云ふときは、犯人より進んで官廳に犯罪を申告するものにして、首服は普通其被害育に自首するを謂ふなり、舊刑第八七條に「被害者に首服したる者云々」とあるは其用語例とす。
主物
(しゆぶつ)主物とは、他物が之に對して附隨の關係を有する物を謂ひ、隨從するものは即ち從物なり、主物、及び從物の區別は、古來より認めらるる物の區別の一にして、之を區別するの實益は、從物は主物の法律上の運命に從ふべきものなるにあり、民法の規定する所に依れば、「物の所有者が、其物の常用に供する爲め、自己の所有に屬する他の物を以て、之に附屬せしめたるときは、其附屬せしめたる物を從物とす」とあり、此要件を備へたる從物を附屬とする或物は、即ち主物なりと云ふべし。(民八七條參照)
- 英
- Principal thing
- 独
- Hauptsache
- 仏
- Chose principale
主文
(しゆぶん)普通に主文と云へば、彼の判決主文などの用例と同じく、文書に於ける主要なる一文、又は數文を云ふ、民事訴訟法第二三四條に「闕席判決の言渡は、其主文を作らざる前と雖も之を爲すことを得」とあるは其用例なり。(判決の部參照)
酒母
(しゆぼもろみおよびかふじとりしまりはふ)酒母、醪及び麴取締法とは、酒類の製造免許を受けずして、酒母、醪又は麴を製造する者及請賣を爲す者の取締に關する法規にして、□一酒母(酒造業者のモトと稱する者)醪又は麴を製造せんとする者は、製造所一箇所每に、政府の免許を受くべきものにして、□二酒母、醪又は麴の製造者、及び麴の請賣者は帳簿を調製し、酒母、醪又は麴の製造出入に關する事實を詳細明瞭に記載すべき義務あるものとす、□三收税官吏は、酒母、〓若くは麴の製造場、又は麴の販賣所に臨み、酒母、醪又は麴、其原料製造用容器、器具、器械、建築物若くは帳簿書類を檢査するを得べく、又運搬中に在る酒母等を檢査し、其出所又は到達先を質問することを得べし、□四酒母は、政府の交付したる買入認許證を所持する者に讓渡すの外、讓渡し又は質入することを得ざるものなり。(三八年一月法七號、三八年一月勅七號參照)
- 英
- Intendence of material for sake brewing
- 独
- Beaufsichtigung des Sakebrauensmaterials
- 仏
- Intendance des matières pour la brassage de saké
醪及麴取締法
趣味
(しゆみ)情の鑑賞の上に起こる好愛、若くは快美の感にして、例へば音樂に趣味を有すと謂はば、音樂に對し、好愛快美の情を感ずるを謂ふが如し、斯く趣味は、感情の上に成るを以て、特に感情の發表たる文學藝術に於て之を感ずること多し、然れども美の艦賞に當りて與かる智の力大なる事よりは、更に又感情の修練は、知識の發達に依らざるべからざる事情より、知識の趣味の修養に與ふる大なる力ある事を認めざるべからず、人間を問はず高等なる動物は、稍趣味を覺ゆるものの如し、然れども夫れ等は眞の趣味とは正當に謂ひ得ざるは、彼等に知識の判斷を缺けばなり、人間は知識感情共に圓滿なる發達を遂げざれば、完全なる人格と云ひ得ざる如く、趣味の修養も大切なることなり、然れども趣味の修養に就きては、當今學理上の定説なし、唯實際に感情を美的に練磨することによりて、趣味の高尚を致すを期すべきのみ。
- 英
- Taste
- 独
- Geschmack
- 仏
- Goût
純益
(じゆんえき)純益とは、財産の額が資本の額に超過せるときに其差額を云ふ也、此純益は、事業の好成積に依りて生ずることあり、又は經濟上の狀況の變動に伴ひ、財産の價額の騰貴したるに依り、自然に生ずることあるものとす、茲に所謂資本とは、其事業に投下せられたる元手にして、財産とは、現に存する財物を指す、通俗の解釋に依れば、ある事業年度に於ける支出と收入とを比較して、收入が支出に超過せる部分を純益と説くも、這は純益なる語の正確なる用例にあらず、蓋し利益は支出と收入との差額にして、收入が支出に超過せる部分をいふべきも、純益は此意義に於ける利益の中より損失を塡補して、其額を控除したる殘額ならざるべからざればなり、要するに純益とは、財産の額が資本の額に超過せるときに存在するものにして、正確の意味に於ては、損失を塡補したる後にあらざれは、純益なるものなきなり。(商一九五條比較參照)
- 英
- Net profit
- 独
- Reinvorteil
- 仏
- Bénéfice net
準強姦罪
(じゆんがうかんざい)準強姦罪とは、強姦罪に準ぜらるべき犯罪にして、所謂強姦罪とは、婦女に對して暴行脅迫の手段を以て、姦淫するの罪を云ふ、而して此強姦罪に準ぜらるべき犯罪は、現行法に於ては、藥酒等を用ひて人を昏睡せしめ又は精神を錯亂せしめて、婦女を姦淫するの罪を云ふ、名詮白稱の如く、此犯罪は、強姦罪に準じて處罰せらるべきものなり、以下分説すれば、□一婦女を姦淫したることを要す、婦女を姦淫したる事を要するが故に、婦女が男子を姦淫したる時は、本罪を構成すべきものにあらず、所謂婦女とは、女性の人類を意味し、姦淫とは、相手方の承諾を得ずして、又は承諾を與ふるの知覺なき者の承諾の下に、之と交接を爲すことを云ふなり、□二精神を錯亂せしめて姦淫したることを要す、法文に藥酒等を用ひて人を昏睡せしめとあるは、婦女の精神を錯亂せしむる一の手段を例示したるものに過ぎずして、故に催眠術に依り婦女を昏睡せしむるも精神錯亂の一手段なり、之を要するに犯人に於て、婦女を昏睡せしむるの手段に依りて、精神錯亂の狀況に陷らしむるの原因を與へ、其拒抗不能又は承諾の能力を缺きたる者を姦淫したるときに於て、本罪は成立するものとす。(刑一七八條參照)
- 英
- Quasi-violation of woman
- 独
- Quasinotzucht
- 仏
- Infraction de quasi-violence
瞬間時效
(しゆんかんじかう)瞬間時效とは、民法に「平穩且つ公然に動産の占有を始めたる者が、善意にして且つ過失なきときは、即時に動産の上に行使する權利を取得す」とあるものを指す名稱にして、本來よりいへば、瞬間時效は時效にあらずして占有の一種の效力に過ぎざる也、而してそは、瞬間時效は、別に之を即時時效と呼び、前記の如く動産の占有を始めたる者、が善意にして無過失なるときは、平穩且公然に其占有を持續する限は、動産の上に行使する權利を即時に取得するものにして、講學の便宜上此效果を名けて、假りに即時々效、又は瞬間時效と云ふ也、何故に法律は斯かる效果を占有の效力として認めたるかと云ふに、元來動産なるものは名詮自稱の如く、移動轉輾極りなきものにして、所有權の所在も、他に公示の方法なきが故に、世人は其現在の占有者を所有權利者と見るべく、又爾かく見るを便宜、且つ正當とするを以て、法律は常に占有者即本權者となしたるなり、但し惡意又は不正の占有を保護せざらんが爲めに、平穩且つ公然と、善意、無過失とを條件とせるは、素より至當なる所なりとす。(民一九二條參照)
- 英
- Immediate prescription
- 独
- unmittelbare Verjährung
- 仏
- Prescrip-tion immédiate
準據
(じゆんきよ)準據とは、依據準用の意にして、普通則ると云ふは、恰當せる解釋なるに似たり、元來準とは「なぞらふ」の意にして、據とは、「よる」の意なれば、或る事項に關して、他の事項に準ひ據るときは、これ即ち準據なり、彼の準據法など云ふは此用例なり。(日本帝國領事規則一條二項)
- 英
- Application
- 独
- Anwendung
- 仏
- Application
準禁治産者
(じゆんきんちさんしや)準禁治産者とは、精神上又は身體上の一定の不具者に對して、裁判所の爲したる裁判に依りて生ずる所の、無能力なる法律上の狀態にある者を云ふ、準禁治産者となすに必要なる不具の狀況は、各國の法制によりて一樣ならず、獨逸民法は、心神耗弱者、浪費者、好酒家を我民法の所謂準禁治産者たらしむ、我法は、心神耗弱者、聾者、啞者、盲者及び浪費者の五者を準禁治産者となせり、然れども單に好酒家なるの故を以て、準禁治産者となすことなし、所謂心神耗弱者とは、心神の不完全なるものを云ひ、聾者とは聽力を缺くもの、啞者とは語能を缺く者、盲者とは視力を失ひた者、浪費者とは財産を濫費する性癖ある者を云ふ、以上の者に對して、申立てに依り、裁判所が準禁治者の宣告を下すときは、準禁治産者となるものなり、此の申立を爲すものは、法律上に於て、準禁治産者の利益を保護すべき地位に在る者、即ち本人、配偶者、四等親内の親族、戸主、後見人及び檢事にして、裁判所は、之等の者の申立に基き準禁治産の旨を宣告す、而して宣告を受けたる準禁治産者が、或る特定の法律行爲を爲すには、保佐人の同意を要すべきものにして、之準禁治の效力なりとす。(民一一條乃至一三條)
- 英
- Quasi-incompetent person
- 独
- Quasientmündiger
- 仏
- Quasi-interdit
準契約
(じゆんけいやく)準契約とは、羅馬、佛蘭西、伊太利等の屬する所謂羅馬式編制法の民法に認むる債權發生の一原因にして、之を我民法に例ふれば、事務管理の如き之に類應するもの也、佛蘭西民法第一三七一條に依れば、「準契約とは、人の好意の所爲よりして、第三者に或る義務を生ぜしめ、又は相互に義務を生ずるを云ふ」と、この意義に依れば準契約なるものは、好意に人の事務の管理を始めたるときは、其管理を繼續し、旦つ之を成就すべき默認の義務を負擔し、又被管理者に於ても、自己の義務を善良に管理せられたるときは、管理者に對して管理費を賠償し、或は總べて有益なる又は必要なる費額を償還するの義務を生ずるが如きものと云はざるべからず。(一八〇四年二月九日決定同月十九日發布佛國民法四卷一章一三七一條乃至一三八一條、我民法六九七條乃至七〇七條比較參照)
- 英
- Quasi-contract
- 独
- Quasikon-trakt
- 仏
- Quasi-contrat
準血族
(じゆんけつぞく)準血族とは、法律の擬制に依る血族の意味にして、學者が講學上の便宜よりして之を準血族と云ひ、或は法定血族と云ふもの之なり、然らば法律の擬制に依る血族とは何ぞや、曰く、法律が或る關係者を血族と見做したるを云ふものにして、□一養子關係に於て、法律は養子と養親及其血族との間に於ては、養子緣組の日より、血族間に於けると同一の親族關係を生するものとなせり、所謂養子とは、養男養女を云ひ、養親とは、養父養母を包含するものにして、又養親の血族とは、養親の父母、子孫等を指す、養子は、養子緣組の日より、之等の者に對して父母、兄弟との關係を生ずるものなり、□二繼子關係に於て法律は、繼父母と繼子、又嫡母と庶子との間に在ては、親子間に於けると同一の親族關係を生ずるものとせり、所謂繼父母とは、配偶者の家に入りたる夫又は妻を、其配偶者の前婚の子に對して云ふものにして、又嫡母とは、庶子に對し私生系統に屬せざる母を云ふ、庶子とは、婚姻外の子にして、父の認知したる者を指す、之等の者は本來より云ふときは血族にあらざるも、法律は之を血族と見做したり、故に之等の者の間には、實親子と同じき關係生ずるものなり。(民七二七、七二八條參照)
- 英
- Legal blood
- 独
- gesetzliches Geblüt
- 仏
- Sang légal
準現行犯
(じゆんげんかうはん)準現行犯とは、刑事訴訟手續上現行犯に準ぜらるべき犯罪にして、茲に現行犯、準現行犯とは、犯罪自體の性質の區別にあらずして、犯罪發覺の狀態に依り、強制處分を爲すを得べき搜査手續の標準となる區別なりとす、成法の規定する所に依れば、準現行犯とは、□一犯人として、一人又は數人に追呼せらるるとき、追呼せらるるときは、必しも叫ぶことを要せず、單に追跡せらるるのみにても可なり、其犯人として追呼せらるるは、犯人なりとの風評に依りて追跡せらるるにあらずして、犯行を目擊したるより起れるものなる事を要するものとす、□二兇器、贓物、其他の物件を携帶し、又は身禮被服に顯著なる犯罪の痕跡ありて犯人と思料すべきとき、但し此場合に於て、縱令身體に痕跡あるも、犯行後數ケ月を經過したるときは、到底準現行犯なりと云ふことを得ざるべし、□三家宅内に於て犯したる罪を檢證する爲め、又は其犯人と思料すべき者を逮捕する爲め、戸主より官吏に其處分を求めたるとき、以上は我刑事訴訟法に定めたる所の準現行犯の場合なりとす。(刑訴五七條乃至六〇條、及び現行犯の部參照)
- 英
- Quasi-fragrant deiict
- 独
- Quasifrischthat
- 仏
- Quasi-délit flagrant
遵守
(じゆんしゆ)遵守とは、遵奉守據の意にして、舊刑第三一七條に「疎虞懈怠又は規則慣習を遵守せず、過失に依りて人を死に致したる者は云々」とあるが如きは其用例なり。(二〇年勅三九號第二條、舊刑四二五條一號二號參照)
- 英
- Observance
- 独
- Achtsamkeit
- 仏
- Observance
純收益
(じゆんしうえき)純收益とは、收入による純益を謂ふ、所謂純益とは、財産が資本に超過せる場合に、其差額を云ふものにして、其差額を生ずるには二の場合あり、一は財産の價格の騰貴によりて、差額を生ずる場合にして、二は或事業に於ける好成績により、總收入が總支出より超過せる場合にして、此二の場合の利益を收益云ひ、收入より以前の損失を控除したるものが純收益なりとす。(華族世襲財産法四條純益の部參照)
- 英
- Net gain
- 独
- Reinvortheil
- 仏
- Bénéfice net
純粹
(じゆんすい)純粹と謂へば、其中に混り氣なき正味のみと謂ふ事にして、塵埃なき眞水の如し、而して更に學術上の用語としては、稍々異る數樣の意義を有す、□一應用に反對して、夫れ自らの外には、何等の目的をも有せずと云ふ意にて、例へば應用心理學と謂へば、心理學上の事實を、教育上等の實際問題に應用するを目的とするに對し、純粹心理學と謂へば、單に心理學上の研究を以て夫れ自身の目的とし、他に何等の目的をも有せざることを謂ふが如し、□二實際の經驗に俟つことに對し、全然理性の推理のみによることを旨意す、□三後天的てふ意思に對し、先天的てふ意義を有して使用せらる、例へばカントの時間空間を以て、認識の先天的形式とし、之を純粹直觀の形式と呼べるが如し。
準占有
(じゆんせんいう)準占有とは、自己の爲めにする意思を以て、財産權を行使するを云ふ、元來占有は、有體物を現實に所持する事にして、この現實の支配を法律が認めて占有權となしたるものなり、故に占有に關する規定は、吾人が或權利の行使として、物を現實に支配する場合、即ち物の現實の支配が、吾人の權利行使を組成する場合に適用せらるべきもの也、然るに今吾人が物を所持することなくして、單に吾人の權利を行使するに過ぎざるときは、此權利の行使は占有にあらず、されど權利の目的たる事實を現實に支配するの點に於て、占有と毫も異る所なきのみならず、反て之を保護すべきの必要存するものとす、之民法が物の現實の支配を保護すると等しく、準占有の名稱を以て、現實の財産權の行使を保護する所以なり、而して民法は、これに占有に關する規定を準用すべきものとせり、準占有を組成すべき權利の行使は、財産權の行使なることを要し、親權、夫權等の行使は、準占有を以て保護せらるべきにあらず、所謂財産權とは、普通物權、債權、著作權、工業上の所有權、鑛業權等を指すものなり。(民二〇五條參照)
- 英
- Quasi-possession
- 独
- Quasi-besitz
- 仏
- Quasi-possession
準占有者
準占有者とは、準占有の權利者を云ふ。(民四七八條)
- 英
- Quasi-possessor
- 独
- Quasi-besitzer
- 仏
- Quasi-possesseur
準則
(じゆんそく)準則とは、準據すべき法則の意なり、所謂準據すべき法則とは、或る行爲を爲すに當り、當該法則に從ふことを便宜とし、且つ從はざるべからざる法律命令を意味するなり、彼の準則行政など云ふ熟語は此用例なり。(私設鐵道法五九條)
準則主義
準則主義とは、豫め一定せる原則を設け、各個の行動を爲すに當りて、常に之に準據するを要する主義を云ふ、彼の法人に關して準則主義等云ふは、豫め法人設立に關する原則を規定し、一定の要件を定め、各個の場合に於て之に合するときは、官廳の特許其他何等の手續を要せずして、法人の設立ありとなす立法主義の如し。
- 英
- Principle's theory
- 独
- Princip Theorie
- 仏
- Théorie du principe
準犯罪
(じゆんはんざい)準犯罪とは、犯罪に準ぜらるべき有責不法の行爲にして、民事上の責任を生ずるもの也、彼の準私犯といふも同一をのこと指すものにして、我民法は、民事上の責任を生ずべき犯罪及準犯罪を不法行爲なる題目の下に一括し、債權發生原因の一として規定せられたり、元來有責不法の行爲にして、刑事上の責任を負ふものあり、之を犯罪と云ひ、又刑事上の責任を負はざるも、故意又は過失に依りて、他人の權利を侵害したる者は、之に依りて生じたる損害を賠償するの責あるものとす、此場合の有責不法の行爲を、準犯罪又は準私犯と云ふ、其意蓋し犯罪として、刑事法上の責を負はざるも、犯罪と等しく有責不法の行爲にして、然も民事上の責を負ふものなるが故に、準じて犯罪と唱ふべしなり。(民七〇九條乃と至七二四條佛蘭西民法一三八二條乃至一三八、六條參照)
- 英
- Quasi-offence
- 独
- Quasidelikt
- 仏
- Quasi-délit
準備書面
(じゆんびしよめん)準備書面とは、口頭辯論を準備する爲めに作成する書面を謂ふ、元來民事訴訟に於ける當事者の辯論は、口頭を原則とす、之を口頭辯論主義と唱ふ、されど此主義に從ふも、當事者は相手方が如何なる主張をなすべきやを知らずとせんか、之に對し攻擊防禦、及び其他の證據方法を豫め用意する能はず、此用意なくしては、如何にして秩序ある辯論を爲すことを得けべんや、この故を以て法律は、訴狀中に辯論準備の事項を記載すべきことを命じ、又被告よりは答辯書を差出さしめ、及び上訴審に至りても控訴狀、上告狀等に、辨論準備の事項の記載を命じ、相手方よりは答辯書を提出し、其書面の交換を爲し、以て口頭辯論を準備すべきものとせり、凡そ此の書狀の準備事項を記載せるを稱して、準備書面と云ふ、而ち準備書面なるものは、當事者が互に攻擊、防禦、證據方法等の準備を爲し、又裁判官が訴訟上の指揮を適當に爲すの便宜を與ふる目的に出づるものなるが故に、口頭辯論主義の我法に於て、準備書面を判決の基本となすべきものにあらざるや明なり、從つて準備書面を提出せざるも、直に失權の效果を生ずることなしと雖も、當事者が口頭辯論に至り、突然新なる攻擊防禦の方法等を提出せるに於ては、相手方が豫め穿鑿するにあらざれば、之に對して陳述を爲し能はざるときは、辯論の續行を命ぜられ、相手方の取調に必要なる期間を定め、補充の準備書面を提出して、其準備をなすの止むを得ざるに至ることあるべし、又相手方が缺席の場合に於て、缺席判決を求めんとするも、其準備書面不提出のときは、此申立を却下せらるべきものとす、總べて斯かる事情により生じたる費用は、假令勝訴に歸するも、其準備をなさざりし當事著の負擔に歸せざるべからざるの不利益ある者とす、準備書面に揭ぐべき事項は左の如し、□一當事者、及び其法定代理人の氏名、身分、職業、住所、裁判所、訴訟物、及び附屬書類の表示、□二當事者が口頭辯論に於て爲さんとする申立、□三申立の原因たる事實上の關係、□四證據方法の開示及相手方の證據方法に對する陳述、□五原告、若くは被告又は其訴訟代理人の署名及捺印、□六年月月、準備書面は、元來辯論準備の爲めなれば、事實上の關係は簡明に記載すべく、此他事實上の關係の説明並に法律上の討論は、之を揭ぐることを得ざるものなり、(民訴一〇三條乃至一〇六條)
- 英
- Preparatory pleading
- 独
- vorbereitender Schriftsatz
- 仏
- Plainte préparatoire
遵由
(じゆんゆう)遵由とは、循行率由の意味にして、憲法第七六條に「法律、規則、命令又は何等の名稱を用ひたるに拘らず、此憲法に矛盾せざる現行の法令は、總べて遵由の效力を有す」とあるは其用例なり。
- 英
- To be in force
- 独
- In der Gewalt sein
- 仏
- Etre en force
準用
(じゆんよう)準用とは、類推的に適用することを云ふ、元來法典の用語として準用といへば、彼の適用に對して用ひらるるもの也、所謂適用とは、或る事項を其儘適はめ用ふるの義にして、準用は之に反して、類推的に其の事項を適はむるをいふなり、例へば民法第六五六條に「本節の規定は、(即ち委任に關する規定を指す)法律行爲にあらざる事務の委託に之を準用す」とあるが如き此用例なり。(民一三條、三五條二項、九九條二項、一〇〇條但書、一一〇、一六五條、一七九條二項、一九〇條二項、二〇一條二項但書、二〇五條、一一二條三項、二四五條、商二三條、七三條二項、八五條二項、九一條四項、一〇五條、一三一條三項、一八九、二〇七條、二一二條二項、二一五條、二二〇條二項、二二五條、二二七條二項、二三〇條二項、二三四條、二三六、二四三條、二四四條二項、二四七條二項、二四九條二項、二五〇、二五三條二項、二五五條三項、二五九條等參照)
- 英
- Corresponded application
- 独
- entsprechende Anwendung
- 仏
- Applica-tion correspondue
準率
(じゆんりつ)準率とは、標準割率の意にして、凡そ或る一定の率にして、之が據るべき標準割合あるときは、其の標準割合を稱して準率と云ふ、市制第一〇一條に「夫役現品は、直接市税を準率となし賦課す」とあるは此用語例とす。
- 英
- Standard rate
- 独
- Normalrate
- 仏
- Taux d'étendard
受命裁判官
(じゆめいさいばんくわん)受命裁判官とは、證據調其他に關し、其の屬する部より指命せられたる部員の裁判官を云ふ、彼の受命判事と云ふは、其ことなり、所謂受命判事は、彼の受託判事と同じく、委任せられたる事項に關し、訴訟を進行するものにして、凡そ受命判事の爲したる訴訟行爲は、部員全部に對して其效力を生じ、部即ち刑事部若くは民事部が、其訴訟行爲をなしたると同一の效果を現はすものなり。(民訴二六六、二七三條二項、二七八、二八〇、二八二、二八三條、刑訴二三七、二四一條二項及三項、二六四、二八〇、二八三條、海員審判所事務章程七條二項等參照)
- 英
- Commissioned judge
- 独
- aufgetragter Richter
- 仏
- Juge commis-sioné
種目
(しゆもく)種目とは、種類項目を云ふ、所謂種類とは、同類の性質のものを類別蒐集することにして、項目とは、類別蒐集に依て作られたる目錄の一項又は一目を指すものとす。
- 英
- Class
- 独
- Klasse
- 仏
- Classe
受遺財産
(じゆゐざいさん)受遺財産とは、遺贈の目的物たる財産を云ふ、遺贈とは、通俗に所謂遺言贈與にして、人の死亡に依りて效力を生ずる財産贈與の一方的行爲なりとす、遺贈は、遺言者の死後に於て、財産を與ふる一方的行爲なるが故に、贈與と異なるものなるは明にして、此與ふる財産を受遺者の方面より觀察して受遺財産と稱す。(民一〇八八條以下參照)
- 英
- Property of legacy
- 独
- Ver-mächtnisz
- 仏
- Propriété du legs
庶
(しよ)法律上より庶と云へば、庶出とか庶子とか云ひて、私生系統に於ける子又は其出なるを云ふ、所謂私生系統とは、婚姻外の意義にして、妾所生謂是庶と言ふが如きは此用例なり。(典範八條)
- 英
- Illegitimate child
- 独
- uneheliches Kind
- 仏
- Infant ilégitime
所有
(しよいう)所有とは、物又は權利の所有權を有するの狀態を謂ふ、但し民法の用語に於ては、所有とは物の所有權を有する狀態を指す場合に限り、權利を所有するとはいはざるものとす、最も民法以外の法律上の用語として、例へば工業所有權など云ひ、權利の所有權を認むる用例なきにあらず、故に茲には前記の廣義に於ける定義を揭げたり。(民二〇八條、三二年七月勅萬國工業所有權保護同盟加入の件等參照)
- 英
- Possession
- 独
- Besitz
- 仏
- Pos-session
所有權
所有權とは、物に關する一般の支配權にして、所謂一般の支配權とは、總べて關係に於て、物の使用、收益及處分を爲す事を指す、所有權は、以上の如く絶對無限の性質を有すと雖も、此權利の行使は公益を害すること能はざるを以て、法令の規定に從ふべきは素より其所なりとす。(民二〇六條以下)
- 英
- Ownership
- 独
- Eigentum
- 仏
- Propriété
所有主
所有主とは、所有者と云ふに同じく、物を所有するの權利者を云ふ(舊刑四四條)
- 英
- Owner
- 独
- Eigentümer
- 仏
- Posseesseur
所有物
所有物とは、所有權の目的物を指す、例へば家屋の所有權に就きては家屋、土地の所有者に就きては土地は、其者の所有物なりといはんが如し。(舊刑三六六、三七一條等)
- 英
- Possessory thing
- 独
- Besitztum
- 仏
- Propriété
私傭
(しよう)私傭とは、私人間に於ける雇傭契約關係を云ふ、元來雇傭契約とは、當事者の一方が、相手方に對し、勞務に服する事を約し、相手方が、之に報酬を與ふることを約するものにして、此關係に於ける當事者相方が私人なるときは、之を私傭と云ひ、彼の公署官署などに於ける「雇」なる契約關係の如き、公傭に對するものとす。(褒章條例取扱手續三條參照)
- 英
- Private hiring of service
- 独
- Privatanstellung
- 仏
- Louage privé
承役地
(しようえきち)承役地とは、地役權の目的として、他人の土地の便益に供せらるる土地を謂ふものにして、所謂地役權とは、土地の所有者が、他人の土地を其所有地の便益に供する物權を指し、地役權の附著せる土地を要役地と云ひ、地役權を負擔する土地を稱して承役地と謂ふ、蓋し此名稱は、土地を以て權利義務の主體とし、其相互の間に、恰も服從の關係あるが如く見做して、之を名けたるものなりとす。(民二八六條乃至二八九條參照)
- 英
- Servient land
- 独
- dienendes Grundstück
- 仏
- Terre de la servitude
承繼人
(しようけいにん)承繼人とは、他人に屬せし權利義務を繼承して、從來其人の有せし地位と同一の地位に代るべき者を云ふ、元來承繼とは、或る權利若くば義務が、前主より後者に誘導せらるることを云ふものにして、承繼に二種あり、□一は特定的の承繼にして、或る特定の權利若くは義務を繼承することを云ひ、此特定承繼をなすものを特定承繼人と稱す、□二は包括的の承繼にして、個々の權利若くは義務を包括的に一體として繼承することを云ひ、此包括的承繼を爲すものを一般承繼人と稱するなり、現時の法制に於て包括的承繼は、相續、及び包括遺贈、會社の合併等の場合に於て之を見るに過ぎず、特定承繼は、普通讓渡の場合に伴ふものにして、我法にては、債務に限り特定承繼を認めず、終に承繼人に關する一般原則を述べんに、(甲)何人と雖も、自己の有するよりも多くの權利を他人に移轉することを得ざるものにして、從て(イ)承繼人は前者の有せざりし權利を承繼すること能はず、(ロ)前者の權利と、承繼人の權利とは、其性質及内容に於て同一ならざるべからず(ハ)承繼人の權利は、前主の權利より善良なること能はざるもの也、(乙)前者の權利を承繼したる者が、其權利を主張せんには、其前者の權利の存在を證明せざるべからざるものとす。(民一二〇、一八七、二〇〇條二項參照)
- 英
- Successor
- 独
- Nachfolger
- 仏
- Successeur
勝訴
(しようそ)勝訴とは、當事者が訴訟に依りて救濟を求めたる事件に就き、滿足なる判決を得たるを云ふ、元來訴訟に於て相爭ふ當事者は、其實際の如何に論なく、攻擊妨禦の方法を施用して、以て究極に於ける勝利を期す、而して最後の判決に於て、滿足なる判決を得たるときは、之該訴訟の勝利者にして、勝利に取りては、其判決を勝訴と謂ふなり。(民訴五三條)
勝訴者
勝訴者とは、勝訴せる原告又は被告を云ふ、或訴訟に於て、原告の請求を理由ありと判決せるときは、原告は勝訴者にして、原告の請求相立たずと判決せるときは、被告は即ち勝訴者なりとす。(民訴一八條二項)
使用貸借
(しようたいしやく)使用貸借とは、當事者の一方が、無償にて使用收益をなしたる後返還することを約し、相手方より或る物を受取るに依りて成立する契約也、以下分説すれば、□一使用貸借は要物契約なり、羅馬法は、此契約の性質を要物契約となしたりしが、近世に至り之を諾成契約の一種となす立法例あるに至れり、我民法は、使用貸借の目的は、物を使用するに在り、物の使用を爲すには、物の引渡なければ到底其目的を達するを得ざる故に、之を羅馬法と同じく要物契約の一種となしたり、尚此契約は、貸借關係成立と同時に、借主は返還の義務を負ふものなるに、之を諾成契約とせば、未だ物を受領せざるに、然も返還の義務を負ふと云ふに至り、道理に於てあるべからず、之我法が之を要物契約の一種となしたる所以なり、□二使用貸借は、目的物件の使用收益をなさしむる事を目的とす、此點消費貸借と異る所にして、消費貸借の借主は借用物を消費する事を得るも、使用貸借に於ては、借用したる物件を毀損せずして使用收益するに止まる、又或國の法律によれば、消費物を本契約の目的物件となすことを得ずとなすものあるも、我法に於ては、苟も當事者が消費せざることを約束せる以上は、消費物なるの故を以て、本契約を成立せずとなすことなし、□三使用貸借は、借主に於て借受けにる元物を返還するの義務を負ふもの也、使用貸借は、借主に於て借受けたる元物を返還するものにして、消費貸借と異り、物を處分して使用するの權利を有せざる也、□四使用貸借は、無償を要素とす、故に有償なるときは、使用貸借の名を以てするも實は賃貸借となり、或は其他の契約となるもの也、□五使用貸借は、片務契約なり、所謂片務契約とは、契約當事者の一方のみが義務を負ふの契約にして、使用貸借は、借主獨り義務を負ひ、其貸主に於ては、契約により生ずる義務としては何等の責任を負擔するものにあらず、故に使用貸借は片務契約なりと云ふべし、次に使用貸借はア契約の解除、イ期間の滿了、ウ借主の死亡の三原因に基き消滅するものにして、貸主は借主が、契約又は目的物の性質に反して使用を爲したる場合、及び承諾せざるに第三者に借用物を轉貸したるときは、契約の解除を爲すことを得るものとす。(民五九三、六〇〇條參照)
- 英
- Loans for use
- 独
- Ge-brauchsleihe
- 仏
- Prêt à l'emploie
承諾
(しようだく)承諾とは、申込者に對して爲す申込と同趣旨なる意思表示にして、之あるや直に契約を成立せしむるものを云ふ、元來契約とは、當事者間に法律上の效果を生ぜしめんとする、同趣旨の相牽連する二箇以上の意思表示にして、同趣旨なるが故に、目的とする所一に歸し、合して一の法律行爲を組成するもの也、凡そ契約の成立するには、當事者の一方が、自己の意思表示の趣旨と同一なる相手方の意思表示を知りてなすを要するものにて、斯かる同趣旨なるを知りてなす意思表示を名けて承諾と云ふ、而して承諾の基礎となり、其發生を促すものは即ち申込也、故に申込と承諾とは、相牽連する意思表示にして、其單獨なるに於ては、之を申込とも承諾といもふべからざるを知るべし。(民五二一條乃至五二八條)承諾書とは、承諾の意思を表示する爲に作成する一の書面を云ふ、古代に於ては、形式主義を重じたる結果、承諾の意思表示は書面に依る事を要したりしも、現時に於ては、特種の場合の外此要件を必要とせず。(民五五〇條、不動産登記法三一條)
- 英
- Consent
- 独
- Einwilligung
- 仏
- Consentement
承諾書
- 英
- Written consent
- 独
- Einwillig-ungsschrift
- 仏
- Lettre du consentement
訟廷
(しようてい)訟廷とは、法廷、又は訴廷と云ふと同じく、裁判所、及び當事者が、合同して訴訟行爲を爲す所を云ふ、普通は、裁判所又は裁判所支部に於て開かるべきものにして、司法大臣が事情に依り必要なりと認むるときは、區裁判所をして、其管轄區域内の一定の場所に於て職務を行はしむる事あり、皇室典範第五〇條但書に「皇族は、代人を以て訴訟に當らしめ、自ら訴庭に出づるを要せず」とあるは其用例なり。(裁構法一〇三條以下)
- 英
- Court
- 独
- Gericht
- 仏
- Cour
乘變〓盜
(じようへんせつたう)乘變〓盜とは、水火震災其他の變に乘じて〓盜をなしたるを云ひ、講學上、又之を際變〓盜と稱す、以下分説すれば、□一水火震災其他の變に乘じて〓盜をなしたる事を要す、謂ふ所の其他の變とは、總べて被難者が物の保持を確實にする事の注意を爲すこと能はざる狀況を總稱し、水火震災は其例示に過ぎず、□二變に乘じて〓盜をなしたることを要す、乘じてとは、水火震災等の機會を利用してと謂ふの意にして、故に犯人に於て、此機會を利用するの意思あるを要するや素よりなりとす、□三〓盜をなしたることを要す、〓盜とは、不法に他人の所有物を自己の物として處分するの意思を以て、他人の保持より自己の保持に移すことを云ふ、乘變〓盜とは、以上の條件を具備するに依りて構成せらるる罪にして、普通の〓盜より重く罰せらるべきものなり、其之を重く罰する理由は、盖し犯すに易く、防ぐに難きが故なりとす。(舊刑三六七條)
- 英
- Theft by the aid of accidence
- 独
- Diebstahl von der Zufallshülfe
- 仏
- Vol par l'aide de l'accident
所轄
(しよかつ)所轄とは、或る役所の管轄と云ふの略語にして、彼の所轄警察署と云ふが如きは其用例なり。(刑法附則二七條一項一號、四四條一項一號參照)
- 英
- Jurisdiction
- 独
- Gerichtsbarkeit
- 仏
- Juridiction
職業的陰私
(しよくげふてきいんし)職業的陰私とは、職業職務に關係せる事項に就き、他人の委託を受けたる事に依りて知得したる私の秘密を謂ふ、所謂私の秘密又は陰私とは、私の關係に於ける或る事實にして、然かも之を他人に知らざらしむる事が、其事實を負ふ者の爲めに利益なる總べての事實を指すものなり。(刑一三四條陰私漏告罪の部參照)
- 英
- Business on secret
- 独
- Geschäftsgeheimnisz
- 仏
- Secret des af-faires
職權處分
(しよくけんしよぶん)職權處分とは、職權の範圍内に於ける自由裁量處分を謂ふものにして、元來官廳は、法令の範圍内に於て委託せられたる事務を施行するの權限を有し、其權限の範圍に於ては、公共の福利增進の爲めに、自由裁量の處分を爲すを得るものなり、此自由裁量處分を職權處分と云ふ。
- 英
- Dealing by official right
- 独
- Amtsverfügung
- 仏
- Disposition par la prérogative
職權法
職權法とは、國家機關の職務權限の分配を定めたる法規を云ふ、所謂職務とは、國家機關が職として委託せられたる事務を云ひ、權限とは、國家機關が職務執行に當りて、國家の權力を行使するを得る範圍を云ふ、而して職權法とは、此職務權限の分配を定むる法規を云ふなり。
- 英
- Law of official right
- 独
- Amts-ordnung
- 仏
- Loi de la prérogative
囑託員
(しよくたくいん)囑託を受けて、或る事務を處理する人を其事務に關して囑託員と云ふ。(三二年二月法二四號不動産登記法二九條乃至三四、一〇二條二項及三項、一〇三條等參照)
- 英
- Person given in charge
- 独
- Kommissionär, ersuchende Person
- 仏
- Commissioné
囑託裁判所
囑託裁判所とは、或る事件の裁判、及び其他の訴訟行爲を囑託せられたる裁判所を謂ひ、例へば證據調、訊問、送達等を囑託せられたる裁判所の如き即ち之なり。(民訴二七九條一項、刑訴一一二條等)
- 英
- Court given in charge
- 独
- ersuchtes Gericht
- 仏
- Tribunal commis-sioné
殖民
(しよくみん)殖民とは、同一民族の多數が永住の目的を以て、母國以外の一定の土地に占居し、然も本國の法律命令を遵奉する多人數を謂ふ、故に殖民の意義には、左の根本觀念を要す、□一移住すべき一定の土地あること、□二母國を離れて他に永住するの目的あること、□三移住人民は、被移住地に於て土著人種以外の民族なること、□四比較的多數の同民族の移住を要すること、□五母國と同一國性を有する團體なること。
- 英
- Colony
- 独
- Kolonisation
- 仏
- Colonie
殖民地
殖民地とは、殖民が移轉永住する土地を云ひ、其自治を許さると否とを問はず、常に母國の統治權の支配の下にあるものとす。
- 英
- Plantation
- 独
- Kolonie
- 仏
- Plantation
所管
(しよくわん)所轄とは、所轄と同じく、或る役所の管轄を云ふ、彼の所管行政廳など云ふは此用例なり。(專賣局作業會計規則一條)
- 英
- Competency
- 独
- Gerichtsbarkeit
- 仏
- Compétence
處刑
(しよけい)處刑とは、行刑と云ふに同じく、刑罰執行を意味す、元來刑罰なるものは、主義としては、畏嚇及感化にして、目的は犯罪の防止禁壓にあり、故に刑刑の態樣の如きも亦一定の原則ある也、苟も刑罰の目的に適應して、犯人を畏嚇し感化するに足らんか、直に之を採用して、其生命刑なると、體刑なると、自由刑なると、財産刑なると、果た又名譽刑なるとを區別せず、されど慘忍を避け、成るべく寬和を主とするは人の情、故を以て現世紀に至りては、主として自由刑を採用し、之に財産刑、名譽刑を參酌し、絞又は斬を以て生命、體刑の唯一の片見となせり、而して刑罰執行即ち處刑は、各刑罰の如何に依て、其方法を異にするもの也、前説の如く生命刑は、絞又は斬(但し斬は現時に於ては戰線に於けるより外之を採用せず)を以て、體刑は笞、(臺▲に於て行はる)自由刑は自由剝奪(例へば囚獄に拘禁するが如き)の方法を以て、財産刑は財産の取り上げに依り、名譽刑は名譽の基本たる能力の剝奪、又は停止によりて之を執行するものなり、之を處刑と云ふ。(主刑處分及附加刑處分の部參照)
- 英
- Execution of punishment
- 独
- Exekution
- 仏
- Punition
庶子
(しよし)庶子とは、父の認知したる私生子を云ふ、元來私生子とは、婚姻懷胎に依り、夫婦の關係なき男女の間に出生したる子を謂ひ、此私生子の中父の認知を得たる者は、庶子なり、所謂認知とは、私生子の父又は母が法定の方式を以てする私生子の父又は母たりとの任意の自自也、抑も私生子、及庶子なる者は、共に婚姻外の子にして、其子に何等の過失なきも、父母の罪惡よりして、其法律上の權利義務は、嫡出の子に比して大なる差等あるものとす、之等は誠に憐むべき者にして、親の過を子に嫁するものなり、夫れ斯くの如きは實に社會風教の維持上考一考を價すべき問題にして、尚我法の如く、庶子なる者を認むるに至りては、我が國の舊慣に依ると雖も、或は蓄妾制度を公認するが如き觀を呈し、實に憂ふべき結果を生ずるに至らん。(民八二七條以下參照)
- 英
- Illegitimate child
- 独
- uneheliches Kind
- 仏
- Enfant illégitime
書證
(しよしやう)書證とは、書類を以て證明の用に供する證據方法を云ふ、所謂書類とは、或る事實を證明する記錄にして、普通は後日此の用あらん事を恐れて、之に備ふる爲め作製せるものなり、而して書類に官文書と私文書の區別あり、公正證書と私署證書との別あり、之等は其類日に從ひて參照せよ、唯茲に説明すべきは、謄本、原本、正本、抄本の區別に就きて也、イ原本とは、各人が或る事實を證明せんが爲めに、作製せる證書自身を云ひ、ロ謄本とは、原本に包含せられたる内容を再度以上傳達するの目的を以て、原本に傚ひて作製せられたる證書を云ふ、ハ正本とは、法律界に於て原本に代へ、原本と同一效用を爲すことを法律上定められたる謄本を指し、二抄本とは、原本の一部分を拔萃したる謄本にして、以上の書類は皆事實證明の用に供せらるべく、從つて書證となることを得べきものとす。(民訴三三四條乃至三五五條)
- 英
- Documentary evidence
- 独
- Ur-kundenbeweis
- 仏
- Document de l'evidence
處斷
(しよだん)處斷とは、處分裁斷の意義にして、普通刑罰執行等の處分は、法律の明定せる範圍内に於て、裁判官之を裁定するものなり、此裁定に依りて處分する事を處斷と謂ふ。(刑四八條二項、五〇條、五二條、五四條、五五條等)
- 英
- Judgment
- 独
- Urtheil
- 仏
- Juge-ment
所持
(しよぢ)所持とは、汎く物に對して自己の支配力あるを云ふ、故に必ずしも現に物を握持することを要せず、唯何時に於ても、自己の使用、收益、處分等をなし得べき狀況に存するをいふなり。(民一八〇條等參照)
- 英
- Possession
- 独
- Besitz
- 仏
- Pos-session
所持人
所持人とは、或る物件に對し支配することを得べき實力の所持者を云ふ、故に必しも所有權利者なることを要せず、唯之を所持し、若し要するあらば如何樣にも之を爲し得べき情況に在れば之所持人なり、從つて不法不當の所持人も亦所持人たるを妨げざるものとす。(民四七〇條等)
- 英
- Possessor
- 独
- Besitzer
- 仏
- Possesseur
所持人拂
(しよぢにんばらひ)講學上所持人拂又は持參人拂とは、證書に於ける其所持人に對し、券面額を支拂ふ事を云ふものなり、例へば記名式所持人拂の證券に於ては、其證券は、記名の宛名人に向つて券面額を支拂ふべきは勿論なるも、所持人にして其支拂を請求する者あるときは、債務者は之に支拂をなして、其義務を免る事を得べきもの也、但し此場合に於て、債務者に重大なる過失又は惡意なき限りは、其證書の所持人が果して權利者なるや否や、及び其署名捺印の眞僞を調査するの權利を有するも、之が義務を負はざるものとす、これ所持人拂の特色にして、斯かる所持人拂記名式の證券は、日本銀行より發行する支拂命令の如き此種に屬す、又無記名の債權も一種の所持人拂なり、蓋し無記名は所持人のみに支拂ふことを約する債權にして、證券面上に權利者の記名なきものなり、法律上に於ては、此種の債券は、權利が證券其物に化體するが如きを以て、動産と見做せり。(民四七一、四七三、八六條三項)
- 英
- Payable to holder
- 独
- In-haberzahlung
- 仏
- Payable au porteur
助長事務
(じよちやうじむ)助長事務とは、國民の身體上、精神上又は經濟上の發達を進捗すべき施設を爲すを目的とする行政事務なり、凡そ國家の政務は其終局の結果より見れば、皆國民の利益を保護進捗せしめざるものなしと雖も、假へば軍事行政は、軍事の設備維持にあるが如き、又外務行政は主として國の交通にあるが如き、其直接の目的としては異るを見るべし、獨り直接に國民の身體上、精神上、及び經濟上の利益を保護增進するを以て目的とするものは内務行政なり、近時の法治國家に於ける内務行政の作用は、之を分ちて二となすことを得べし、□一社會の安寧秩序、及び國民の身體上精神上、又は經濟上の發達に妨碍を來すべき危害を防止する事務、□二進んで國民の身體上精神上、又は經濟上の發達を保護進捗すべき設備をなす事務之也、第一の目的に出づる行政は、即ち警察にして、第二の目的に出づるものは、講學上之を助長事務と云ふ也、助長事務は、大略左の事務を含む、イ人事行政、例へば身分戸籍登記事務、ロ衞生行政、例へば醫師藥品の公許、ハ教化行政、例へば學校宗教に關する行政事務、ニ經濟行政、例へば度量衡を定め、其他工業、商業、鑛業に關する行政事務等の如き之也。
- 英
- Business increasing the people's happiness
- 独
- Geschäft, das den allge-meinen Wohlstand betrifft
- 仏
- Affaires d'augumenter du bien-être du peuple
所得
(しよとく)個人經濟收入の一にして、繼續的に生ずる各人の收入を謂ふ、之を例へば土地を有するに依り生ずる地代、資本を運用するに依りて生ずる利潤の如き之なり。所得税とは、人の所得を課税物件となし、之に賦課する租税を云ふ、所得税法に依れば、帝國内此法律の施行地に住所を有し、又一箇年以上居所を有する者は、所得税を納むる義務あるものにして、假令住所、居所、なきも、本法施行地に資産、營業又は職業を有し、若くは公債、社債の利子支拂を受くる時は、其の所得に就きては所得税納村の義務あるものなり、所得税は之を分ちて、第一種、法人の所得、第二種、所得税法施行の地に於て支拂を爲す公債社債の利子、第三種、前各種に屬せざる所得の三種となす、但し以下の所得に限り、所得税を課せざるものなり、□一軍人從軍中の俸給、□二扶助料、及び傷痍疾病者の恩給、□三旅費、學資金、及び法定扶養料、□四營利を目的とせざる法人の所得、□五外國又は此法律を施行せざる地に於ける資産、營業又は職業に依る所得、□六營利の事業に屬せざる一時の所得、□七所得税法に依り、所得税を課せられたる法人より受くる配當金、及び割賦賞與金等にして、此他第三種の所得に在りては、三百圓に滿たざるときは、所得税を課せられざるものなり。(所得税法一條乃至八條參照)
- 英
- Income
- 独
- Einkommen
- 仏
- Revenu
所得税
- 英
- Income tax
- 独
- Einkommen-steuer
- 仏
- Impôt sur le revenu
所得税法
(しよとくせいはふ)所得税法とは、所得税の種類、課税物件及税率、並に所得税調査委員會、所得税法違背の罰、則に就て規定せられたる法律也、(所得税に就きては、前説を參照せよ)所得税調査委會員とは、所得税調査決定の爲め、各税務管内を限り設けらるるものにして、イ調査委員は調査委員選擧人の選擧に依りて就職し、調査委員會を組織す、ロ調査委員會は、申出でられたる所得を調査確定するものにして、税務署長又は其代理官は調査委員會に出席して、意見を陳述する事を得るもの也、ハ政府は、調査委員會の決議を不當と認めたるときは、之を再調査に付することを得べく、又所得金額の決定に對し不服ある者は、訴願又は行政訴訟を爲すことを得るものとす、二調査委員會決議の方法は、定員の過半數に當る委員出席し、出席議員の多數に依りて之を決するものなり、若し可否同數なるときは、會長の決する所に依る。(三二年二月法一七號所得税法)
- 英
- Law of income tax
- 独
- Einkommensteuersgesetz
- 仏
- Loi de l'-impôt sur le revenu
所得税法施行細則
所得税施行細則とは、所得税施行に關する手續細則にして、納税義務等に關して詳細なる規定をなせり。(三二年三月勅七八號參照)
助法
(じよはふ)助法とは、彼の主法に對し、講學上手續法を謂ふものにして、所謂主法とは、權利義務の實體を規定する法の謂ひなり、而して助法は、之を運用する手續に關する法規を指し、依りて以て法律の施行を全うするものとす、例へば刑法、民法は主法にして、刑事訴訟法、民事訴訟法等は即ち助法なりと云ふべし。(主法の部參照)
- 英
- Auxiliary law
- 独
- Hülfsgesetz
- 仏
- Droit auxiliaire
所犯
(しよはん)所犯とは、單に犯罪と謂ふに同じく、其犯せる所行を指すに外ならず、凡そ犯罪といへば、有責違法の行爲にして、刑法其他の罰則に依り、刑罰なる制裁を科せらるるもの也、舊刑第八九條に「所犯情狀原諒すへき者云々」とあるは此用例にして、此場合には、犯罪を其行爲の方面より觀察して附したる名稱なりとす。(舊刑八九條一項)
- 英
- Crime
- 独
- Verbrechen
- 仏
- Infraction
初犯
(しよはん)初犯とは、未だ一回も有罪の確定判決を受けたる事なき者が犯したる罪を云ひ、彼の再犯又は累犯相に對す、元來初犯の場合に於ては、其犯罪の情狀彼の累犯と異る所あるを見る、或は衝動の爲め、或は一時の激怒の爲め、或は止むを得ざる事情に迫られて、何等の覺悟する所なく、之を犯すを普通とす、之に反して再犯者は、一度犯罪を犯し、有罪の確定判決を與へられたる經驗あり、且つや行刑を受けたる者なるに拘らず、尚犯罪遂行を敢て爲すものなれば、よしや多少恕すべきの事情ありとするも、大に初犯の場合と異らざるを得ざるなり、これ法律に於て再犯以上の者の刑罰を加重する所以にして、又其加重が、至當たる所以なりとす、我法に於ても此理由に基き、初犯の場合には、或は其情狀に艦み、之が刑の執行を猶豫し、又は大に之を酌量するも、再犯は常に假借する所なく、一等又は二等を加重するものとせられたり。(舊刑九一條、改刑五六條)
- 英
- First crime
- 独
- erstes Verbrechen
- 仏
- Première infraction
處分
(しよぶん)處分なる語の用例に就きては、□一犯罪に對する行刑其他を職權者の方面より見て、處分と云ふ事あり、例へば刑法に主刑處分、附加刑處分、徵償處分とあるが如きこの用例なり、□二特定の場合に於て、特定の人に對する國家の行政命令を處分と云ふことあり、例へば警察處分、徵收處分、免許、認可等の行政處分は此用例なり、□三或る物、又は事に對ずる私人の實際上の所置を處分と云ふことあり、例へば民法に「所有權は、法令の範圍内に於て物を使用、收益處分するの權利也」と云ふが如きはこの用例なり、以上の如く處分なる語は、種々の方面に使用せらるると雖も、畢竟するに或る物又は事に對する實際上の所置を意味し、前例の如く、行刑官が死刑を執行するは、即ち死刑の處分を了したるものにて、行政官吏が公用徵收を命じたる時は、是徵收なる處分を命じたるものなり、私人が物を破壞讓渡するが如きも、亦等しく物の處分行爲なり。(民二〇六條等)處分要求書とは、或る處分を要求する書面にして、□一國家に對する要求書なるときは、或は之を願書、屆書、請願書と云ひ、□二私人が私人に對するときは之を請求書、要求書又は願書などと云ふ。(公用徵收法、特許法等參照)
- 英
- Disposition
- 独
- Verfügung
- 仏
- Disposition
處分要求書
- 英
- Writing of demand for measures
- 独
- Anspruchsschrift für die Verfügung
- 仏
- Lettre de demande de desposition
處分權
(しよぶんけん)處分權とは、處分を行ふ權利又は權限を云ふ、民法に於て、所有權者が有する其物を處分する權利を、或る方面より見て處分權と云ふが如き又公法上に於て處分を行ふ、國家機關の權限を處分權と云ふが如き是なり。
- 英
- Right of disposition
- 独
- Verfüg-ungsrecht
- 仏
- Droit de la disposition
處分能力
處分能力とは、物又は權利の處分權を行使するの法律上の能力を云ふ、法學講究上吾人は人の能力を別ちて、權利の主體たるの能力、權利行使能力、意思發表の能力、造意の能力等となす、所謂權利の主體たるの能力とは、權利能力にして、造意の能力とは、意思能力、意思發表の能力とは、行爲能力、權利行使能力とは、單に或は行使能力と云ふなり、處分能力は、此權利行使能力の一種にして、法律上權利を行使するには所謂意思能力、及び行爲能力を有する者たることを要するなり。
- 英
- Capacity of management
- 独
- Verfügungsfähigkeit
- 仏
- Capacité de la disposition
處分令
(しよぶんれい)處分令とは、處分を命じ、又は禁ずる國家の命令なり、再言すれば特定の場合に特定の人に對し、特定の行爲を爲し又は爲さしめざる國家の命令を講學上處分令と云ふものとす。
- 英
- Order of disposition
- 独
- Ver-fügungsordnung
- 仏
- Ordre de la disposi-tion
處辨
(しよべん)或事抦を處分辨理するを云ふ、單に處理と云ふも同義なり、所謂處分辨理とは、事に當て其務を處分し、理非を辨別する意にして、俗に「事をしわける」といはんが如し。
- 英
- Management
- 独
- Handhabung
- 仏
- Gestion
庶務
(しよむ)庶務とは、一般的の事務と云ふに同じく、俗に「もろもろの事務」といふは此ことなり、皇族職員親則に「家從は諸王家又は親王家の庶務に從事す」とあるが如きは、この用例なり。(皇族職員職制一條及二條參照)
- 英
- General affairs
- 独
- allgemeines Geschäft
- 仏
- Affaires générales
處務細則
(しよむさいそく)處務細則とは、處理すべき事務に關する手續方法等を規定せる準則にして、例へば各省に於ける處務規定、會社に於ける社員の處務規定等この種に屬す。
- 英
- Business rule
- 独
- Geschäfts-anweisung
- 仏
- Règles des affaires
署名
(しよめい)署名とは、氏名を自署することを云ふ、所謂氏名とは、氏及名にして、氏は性又は「かばね」と異なり「生ぶ地」の意味なりといひ傳ふ、されど現時の法制に於ては、或は之を性と云ひ、或は之を氏と云ひ、殆ど同義に用ひらるるが如し、即ち等しく苗字の意に用ひらる、名とは通俗に謂ふ所の「なまへ」にして、例へば島津と云ふは氏にして、一郞と云ふは名なるが如し、されど雅號又は法名等は、茲に所謂氏名といふべからず、例へば不白山人とか、愛山居士とか、天籟學人、槻園散史、日蓮上人、弘法大師とか云ふが如きは、所謂氏名にあらざるものとす、次に自署とは、自ら氏名を署する事を云ふものにして、例へば島津一郞といふ人が、自ら其名を證書面等に記名するは所謂自署也、從來我國に於て、他人に自己の名を署せしめ調印し、又は自ら記名調印するの慣例ありしが故に、單行法を以て法律は、民法、商法等に署名すべき場合に記名調印するを以て足ると定めたり。(商四四五條、三三年二月法一七號參照)
- 英
- Signature
- 独
- Signatur
- 仏
- Signature
書面
(しよめん)證書の文面と同じく、或書類にして後日の爲に備ふる記錄を云ふ、元來書面といへば、廣く書類と同一に解し、苟も文字を以て記されたる物なる以上は、等しく之を書類又は書面といひ得ざるにあらざるも、法律上に於ては、少なくとも彼の證書の如く、或る事實の存在を後日に證する爲めに、作成せられたるものにあらざれば、法律に於て之を云爲し、論つらうの必要なきなり、故に記せよ、法律上に於て書面とは、其信書たると證書たるとを問はず、事實の存在を後日に證する爲めに作成せられたる記錄なりと。
書面契約
(しよめんけいやく)書面契約とは、書面上にて又は書面に依りて爲す契此書面契約の一種たるに過ぎず、所謂書面上に約を云ふ下説の書面委任契約の如きは畢竟、、て爲す契約とは、契約に必要なる意思の表示を書面に託して傳達し、以て合致したる場合を指し、書面に依りて爲す契約とは、契約の成立に書面を作成するを必要とする契約を云ふ、古來形式主義の盛になりし時は、契約其他重要なる法律行爲は、常に或る一定の形式に標據するを要し、而して其形式の一として、書面を用ひられたる事少からず、現時に於ては斯くの如く書面を用ふるの例多からずと雖も、彼の手形其他の商業證券には、一定の文句を記載せる書面の作成を必要とし、又彼の遺言の如きは、自筆又は其他の書面に依るを要すとなすが如き例少からず、而して彼の手形振出等の行爲が契約なりとの説に從へば、之等は所謂書面契約の適例とすべし、民法第五五〇條に「書面に依らざる贈與は、各當事者之を取消すことを得云々」とあるが如きは、暗に贈與契約は書面契約なるを要し、然らざれば其效力薄弱なりとなしたるものと云ふべく、從つて書面契約たれとの好適例と云ふべし。
- 英
- Writing contract
- 独
- schrift-licher Vertrag
- 仏
- Contrat par docu-ment
書面委任
書面委任とは、書面上にて又は書面に依りて爲す委任契約を云ふ、書面上にて或る事項を委任するも一種の書面委任にして、又委任を證するの目的を以て書面を作成し爲す委任契約も、亦一種の書面委任なり、民事訴訟法第六四條に「書面委任云々」とあるは、此後者の場合の用例なりとす。
- 英
- Written authority
- 独
- Auf-trag von der Schrift
- 仏
- Mandat par document
書面審理
(しよめんしんり)書面審理とは、訴訟に於て、或る事件の審理をなすに、專ら書面に依る審理方法を云ひ、彼の直接審理主義の反對なる間接審理主義の一種とす、書面審理を間接審理主義の一種なりと云ふは、一切の證據方法を直接に審理せずして、之を書面の上に表示せしめ、其書面の上に表示せられたるものに依りて得たる心證に依り、判斷するものなるが故にして、啻に書面をも見ずして、間接に之を審理するにあらざるなり、此書面審理なる方法は、舊時に於ては刑事、民事の訴訟を問はず、其證據調の方法として採用せられたりしと雖も、現時に於ては、間接の審理は、實體の眞實を發見する上に於て、往々誤謬を來すの虞あるを以て、採用せられざるに至り、現時は專ら直接審理主義を採用するに至れり、唯特殊の訴訟に於て、其迅速と簡便を欲し、且つ救濟方法存する場合に限り、尚書面審理の方法を採用す、彼の證書訴訟、爲替訴訟の如き之なり、之等の訴訟に於ては名詮自稱の如く、證書又は爲替券に限り、證據方法として提出を許し、所謂書面審理の方法に依りて、裁斷判決するものなり、蓋し之等の訴訟は、迅速簡便を旨として設けられたる特別訴訟手續にして、且つ異議申立の方法により、其缺點を救濟することを得べく、即ち異議の申立に依りて、其權利拘束は、繼續して本訴提起と同一の效果を生じ、何等眞實發見の上に不都合を來さざればなり。(民訴四八四條乃至四九六條、證書訴訟、爲替訴訟の部參照)
- 英
- Writing trial
- 独
- schriftliche Untersuchung
- 仏
- Jugement écrit
所爲
(しよゐ)所爲なる語は、所行と云ふと同じく、學者及法典上種々の意義に用ひらる、或は作爲不作爲と云ひ、又は單に行爲と云ひ、所行と云ひ、所爲と云ひ、擧動と云ひ、意思表示と云ふ、其間多少の異る所なきにあらずと雖も、等しく人の行動云爲たり、左に最も穩當と認むべき説に依りて其一般を陳べん、凡そ宇宙の森羅萬象は、吾人の耳目を驚かすに足るものありと雖も、冷々たる哲理眼を以てすれば、畢竟するに、物、事の二を出でず、爛熳たる櫻花を見ては、詩人之が爲めに醉ひ、文學者之が爲めに狂するも、法學上より見れば櫻花畢竟是一の物たるに過ぎず、彼の巧妙なる鳥の聲を聞いては詩を作り、飛ぶを見ては歌を詠むも、法學上の見解に於て、鳥の鳴く又は飛ぶは一種の事に過ぎざるなり、此の如く宇宙の森羅萬象を分ちて、事及び物となし、又物を別ちて有體物、無體物となし、有體物を別ちて動産、不動産等となす、事も亦之を別ちて行爲及事件の二とし、法律の效果を發生する事件を別ちて期限、期間、人の出生、死亡等となす、(之等に就ては本題の範圍を超越するを以て茲に之を述べず)次に行爲とは、人の或る現象を遮斷して或る現象を呈するものを云ひ、斯かる現象を呈するには、夫れ夫れの過程存す、人が或る動機に觸れて決斷發意し、以て物界に或る現象を呈すれば、これ行爲の存するものにして、故に行爲は人の意思發動なりと云ふべし、意思發動して行爲となり、行爲は每に物界の現象を伴ふ、之を結果と名づく、通常學者は、此結果と行爲とを總稱して、之を所行と云ひ、所行に加ふるに、結果に依りて及ぼされたる外界の狀態を合せて之を所爲と云ふ、單に意思發動は、所謂行爲にして一の意思表示也、而して其意思表示の現るるや、或は積極的に、或は消極的に、各其の向き向きを有するを常とす、此積極的に現はれたる意思發動は、所謂作爲にして、其消極的に現はれたる意思の發動を稱して不作爲と云ふ、故に作爲は動作にして、不作爲は任意に爲されざるの靜止なりと云ふべし、左に圖解すれば、意識作用の一種=意思×決意=意思發動=行爲。行爲+結果=所行。所行+結果に依て惹起せられたる結果以外の物界の狀態=所爲。所爲=作爲+不作爲=擧動+依りて惹起せられたる物界の總べての狀態。
- 英
- Act
- 独
- Handlung
- 仏
- Acte
私立學校令
(しりつがくかうれい)私立學校令とは、私人に於て設立維持する學校に關する規則にして、□一私人が學校を設立、廢止、變更せんとする者は、監督官廳に開申して其認可を受くべきものとす、監督官廳は、別段の規定を除く外地方長官とし、地方長官は本令に基き、私立學校の設立の認可、廢止、變更の認可及び閉鎖を命ずることを得るもの也、□二私立學校を設立せんとする者は、校長又は學校を代表して校務を管理する者を定め、監督官廳の認可を受くべきものとす、左に揭ぐるものは、私立學校の校長又は教員となることを得ず、あ重罪を犯したる者、但し國事犯にして復權したる者は此限りにあらず、い定役を科せらるべき輕罪を犯したる者、う破産、家資分散又は身代限りの處分を受け復權せざる者、え懲戒處分を受け免職後二箇年を經過せず、又は其懲戒を免除せられざる者、を教員免許狀褫奪の處分を受け二箇年を經過せざる者、か其他性行不良の者等にして、尚これ以外の者にても不適當と認むるときは、監督官廳は其與へたる認可を取消することを得るものなり、□三私立學校の設備、授業及其他の事項にして、教育上有害なりと認めたる時は、監督官廳は之が變更を命する事を得べし、□四監督官廳は左の場合に於て、私立學校の閉鎖を命ずるの職權あり、い私立學校法令の規定に違反したるとき、ろ安寧秩序を紊亂し、又は風俗を壞亂するの虞あるとき、は六箇月以上規定の授業を爲さざるとき、に監督官廳の命じたる設備、其他の變更を奉せざるとき、以上説明したる監督官廳の處分に對しては、訴願法の規定により行政訴願を提起することを得るものなり。(三二年八月勅三五九號私立學校令參照)
- 英
- Ordinance of private school
- 独
- Verordnung von den Privatschulen
- 仏
- Ordonnance des écoles privées
私立學校令施行規則
私立學校施行規則とは、上記の私立學校令實施に關する細則規定にして、□一私立學校設立の認可を得んとする者は、目的、名稱、位置、學則、經費及維持方法等を記載したる書面に、校地校舍及びありとすれば其寄宿舍の圖面を添へ、監督官廳に申請すべきものなり、□二學則に定むべき事項は學年、學期、終業年限、學科目、授業時間、入學及學期試驗、授學料、入學金、賞罰幷に職員の職務に關する事項等を記入すべきものなり、□三其他設立申請者は、私立學校の校長又は學校代表者の履歷書を添え、監督官廳に申請すべきこと等に就きて規定せられたり。(三二年八月文部省令三八號參照)
司令權
(しれいけん)司令權とは、天皇が有する兵馬統帥權の委任に依り、陸海軍の司令官が有する軍隊、艦船を統率するの權限を謂ふ、明治一五年に軍人に給はりたる所謂五箇の勅諭に曰く「我が國の軍隊は世々天皇の統率し給ふ所にぞある・・・・夫れ兵馬の權は朕が統ぶる所なれば、其司令をこそ臣下には任すなれ、其大綱は朕親ら之を攬りて肯えて臣下に委ぬべきものにあらず云々」と、斯くの如く天皇統ぶる所の陸海軍統帥權の委任によりて、軍事行動を司令する權限を所謂司令權と云ふなり、今以上の如き司令權を委任せらるる者を揭ぐれば、□一陸軍參謀本部及海軍々令部、□二師團長、□三鎭守府司令長官、□四艦隊司令長官等にして、尤も戰時に於ては之が例外なりと知るべし。(三一年勅五號元帥府條例、二六年勅三五號軍事議會條例、陸軍參謀本部官制、海軍軍令部官制等參照)
- 英
- Right of command
- 独
- Befehls-recht
- 仏
- Droit de la commande
思惟
(しゐ)吾人の精神現象を、智力的方面と情意的方面とに便宜上分類する時は、思惟は即ち此智力的方面に屬する心的過程なり、吾人經驗を積むに從ひ、思惟の原始的なる判別的意識も知覺、記臆、想像の如き心的過程の發達に伴ふて發達し、漸次抽象的觀念若くは槪念の比較分析、綜合等によりて、判斷推理推究を營むに至る、思惟の過程にして、而して其成果は即ち思想と名けらるものなり、茲に思惟を回らすに當り、吾人の必ず從はざるべからざる二原理あり、一を異同原理と云ひ、其内に同一律、矛盾律及び不容中位律の三律を含み、他を充足原理と云ふ。
- 英
- Thinking
- 独
- Denken
- 仏
- Pensée
自衞權
(じゑいけん)自衞權とは、自力救濟の權利を云ふものにして、凡そ大古草創の世にありては、權利保護の道未だ備らず、從て各人自ら其權利を維持するの必要存したりしなり、斯くの如く各人自ら其權利を維持するの手段を採るを名けて、自力防衞又は自己救濟と稱す、然るに世は進み、社會の文化益々進步するに伴ひ、權利保護の制度も從つて備り、漸々自力防衞の手段を制限するに至れり、盖し自力防衞なるものは、弱者をして其目的を達せしむる事能はざるのみならず、往々適當の範圍を超越し、又は名を之に藉りて暴行を逞うする事を得るが故に、各人の間に絶えず爭鬪を惹起し、社會の秩序を亂るの弊なしとせざればなり、されど權利保護の道如何に備はると雖も、尚隱微に於て犯罪行はるるが如き場合には、人は袖手傍觀して其爲すが儘に放任すとせんか、之又社會の利益各人の權利を保護するの所以にあらず、茲に於て乎法律は一般に自力救濟を禁じ、唯特種の場合に於てのみ之を認む、一國内の法律に於ていへば、刑法、民法等の認むる正當防衞權の如き是なり、又國際法に於て云へば、學者の所謂クリーグスレーゾン(或は之を戰數と譯す)の場合の如きこの一例なり、所謂正當防衞とは、急迫不正の侵害に對し、自己の權利の防衞上止むを得ずして加へたる、其侵害除却行爲にして、刑法に於ても、此場合は無罪とし、民法に於ても、賠償の責に任ぜざるを原則とす、之等は所謂自衞權の一種なり、次に國家の有する國際法上自衞權は、平時に於ける復仇干渉の權の如き、又戰時に於ける所謂戰時復仇、及びクリーグスレーゾン等其例なり、干渉、復仇に就ては茲に論ぜず、所謂クリーグスレーゾンとは、戰規、國際法規か遵守せられざる例外の場合にして、非常緊急の場合に於て、或戰規を遵守せざるときを指すものなり、クリーグスレーゾンの正當なるや否やに就きては、國際法上所謂大陸學派と(主として獨、佛の學者)英米學派との間に議論あり、其論の可否は兎に角、實際に於てクリーグスレーゾンは實現せられつつあるものの如し、吾人は日露の戰爭に於ても尚之あるを聞けり、されど茲には實例を揭ぐるを敢てせざるべし、唯國家自衞權の一種として、クリーグスレーゾンなるものあるを知れば足れりとせん。(正當防衞、緊急狀態の部參照)
- 英
- Right of self-defence
- 独
- Selbsterhaltungsrecht
- 仏
- Droit de la défence par soi-même
數罪俱發
(すうざいぐはつ)數罪俱發とは、同一犯罪行爲者に於て、未だ確定判決を經ざる二罪以上俱に發覺したることを云ふ、數罪俱發たるには、左の條件を具備する事を要す、□一同一犯罪行爲者に於て、二個以上の罪を犯したることを要す、即ち犯人同一なること及び二箇以上の罪發覺せることは、再犯と同一也、如何なる場合に、二箇以上の罪ありと云ふべきかに關しては、時に困難なる問題を惹起す事なきにしもあらず、而して其所謂二箇以上の罪は、之を犯せる時を異にせると同うせるとを問ふことなし、□二二箇以上の罪が何れも未だ確定判決を受けざることを要す、即ち數罪俱發の再犯と異る點實に此所に存す、若し初犯確定判決を經て後犯發覺せる時は再犯也、然れども數罪中一罪は、確定判決を經たるも、未だ確定判決を經ざる自餘の數罪を數罪俱發の例に照して、處斷するは敢て妨なし、數罪俱發の處分に關しては、(甲)各罪に相當する刑罰を併せ科すべしと爲す主義、即ち併科主義と、(乙)數罪に對する刑罰中最も重き者を以て處斷すべしと爲す主義、即ち隨重主義と、(丙)或る制限の下に併科すべしとの主義、即ち制限併科主義、とありて、立法例に依り、又同一立法例に於ても場合に依り、其採れる主義一ならざるを見る、然れども財産刑、及び輕き自由刑に就きては、併科主義を可とし、重き自由刑に就きては、制限併科主義を可とす、而して隨重主義は各行爲と刑罰との均一を害するのみならず、已に一罪を犯したるものに對して同等以下の犯行を促し、又は同等以下の罪に就き、他人に代りて罪を引受くることを促すの弊害あり、我刑法に於ては、左の場合には隨重主義を採れり、□一重罪が重罪又は輕罪と俱發したる場合、□二輕罪が輕罪又は重罪と俱發したる場合、□三違警罪が重罪又は輕罪と俱發したる場合、又左の場合に於ては併科主義を採れり、□一違警罪のみ俱發したる場合。(刑法四五條乃至五三條)
- 英
- Concurrence of several offences
- 独
- Zusammentreffen mehrerer strafbarer Handlungen
- 仏
- Concours de plusieure infraction
數人一罪
(すうにんいちざい)犯罪は、刑罰を制裁としたる法律違犯の有責行爲なり、即ち犯罪は行爲たる事を要す、行爲とは、人類の意思に牽連する外界の變狀なり、斯く如く犯罪は行爲なるが故に、罪の個數も、亦行爲の個數に依りて定まるものと云はざるべからず、從つて單一なる行爲は單一なる罪を構成するに止まる、所謂數人一罪とは、二人以上合同して一個の罪を犯したる場合を云ふものにして、例へば、二人共謀して殺人行爲を爲したるが如き場合には、其被害は唯一個の殺人罪に外ならざるを以て、犯罪は即ち一個なり、唯之を犯したる者が二人なるを以て、即ち數人一罪となるものとす。(數人共犯參照)
- 英
- One offence committed by several persons
- 独
- ein Verbrechen von mehrerer Personen
- 仏
- Une infraction commise par plusieures personnes
數人共犯
(すうにんきようはん)共犯とは、數人共同して一罪を犯すことを云ふ、換言せば一罪に就きて犯罪の主體數人を見る場合也、共犯は其犯行に加擔する程度方法に依りて、之を正犯、教唆犯及從犯に區別す、即ち左の如し、(甲)正犯、正犯(即ち實行犯)とは、加擔即ち教唆又は從犯と異り、刑法上規定せられたる結果を直接若くは間接に惹起し、又は其結果の發生を防止せざる事を云ふ、正犯は之を直接正犯及び間接正犯に區別する事を得べし、□一直接正犯、直接正犯とは、罪となるべき行爲の全部を單獨にて實行するもの、換言すれば犯罪の構成要件を單獨にて發現せしめたる所の者を云ふ、例へば強姦罪に於て、強制と姦淫とを一人にて實行し、強盜罪に於て、強制と物の奪取とを一人にて實行せる者の如き之に屬す、而して其結果が專ら實行者自體の肉體上の働作に依ると、又は自然か、機具若くは動物を利用して之を發生せしむると否とは問ふ所にあらざるなり、故に例へば犬を使用して牛肉店より肉片を咬へ來らしめ、又は犬を嗾して人を咬ましむる者は、自ら肉片を〓取し又は拳を以て、若くは銃を以て人を傷くると等しく、罪の直接實行を以て論ずべきなり、□二間接正犯、間接正犯は左の場合に存在することを得べし、イ實行者に依て利用せられたる者が責任無能力者なるとき、例へば瘋癲者に刀劔を與へて他人を刺殺さしめたる者は、殺人を以て論ずべく、刑事未成年者(滿二十歳以下)又は瘖啞者を利用したるとき又同じ、何となれば此場合に利用せられたる者の行爲は、無責任行爲にして、罪を構成せざるものなるが故に、之を利用したる者は、罪の實行者として責を負はざるべからざれば也、催眠術に掛りたる者を利用して、罪となるべき行爲を行はしめたるとき又同じ、ロ實行者に依て利用せられたる者が意思の自由を缺きたるとき、換言すれば他人を強制して、罪となるべき行爲を行はしめたるとき、此場合に於ても利用せられたる者の行爲は、責任を負ふべきにあらず、從つて利用者は他人の犯罪に從として加擔したるにあらずして、獨立したる罪の實行者として論ぜらるべきものとす、ハ實行者に依て利用せられたる者が犯意を缺きたるとき、換言すれば被利用者に於て、自己の行爲より生ずべき結果を豫見せざりしとき、例へば看護婦を欺罔し、看護婦が醫師より患者に服藥せしむべき事を命ぜられたる藥品を、毒藥とすり代へ、之を患者に服藥せしめたる場合に於ては、看護婦の行爲は殺人の犯意を缺きたる無責任行爲にして、利用者自ら殺人の罪を實行したるもの也、若し犯意の外に、違法の認識が罪の構成要件たる場合に於ては、被利用者の行爲は罪を構成せず、從つて此場合に於ては、違法を認織したる利用者は、獨立して罪を實行したる者と云はざるべからず、二若し犯意の外に特別の目的(希望)が、罪の特別構成要件たる場合に於て(例へば國事犯の成立條件に紊憲の目的あることを要するが如し)被利用者が此特別なる目的を缺き、利用者に於て此特別の目的を有するときは、被利用者の行爲は罪を構成せず、從つて利用者は、罪の教唆にあらずして、間接に罪を實行したる者と云ばざるべからず、ホ職務又は法規に基き、或る行爲を行ふべき義務を有する者を利用して、罪となるべき事實を發生せしめたる時は、被利用者の行爲は罪を構成せず、從つて利用者は、罪の教唆にあらずして間接に罪を實行したる者と云はざるべからず、以上四個の場合に於て、利用者は間接に犯罪を實行したる者として、正犯と同じき責任を負ふべきものとす、(乙)教唆、教唆とは、故意に他人をして犯罪行爲を爲す事を決意せしむるを謂ふ、□一現行刑法は、重罪輕罪の教唆に限り、之を處罰する事とせり、教唆の手段方法に就きては制限を設けざるが故に、贈與、契約、強迫、威權の濫用、錯誤を誘起し又は增長する等の行爲は勿論、賭事の申込、勸告、懇諭、嘆願、及び宣誓、疑惑を誘起し、表に犯罪行爲を諫止する體を裝ひ、暗に之を勸誘するが如き、何れも教唆の手段たる事を得る也、但し強迫、威權の濫用は強制の程度に達せざる事を要し、錯誤の誘起は、相手方を錯誤の爲め犯意を缺くに至らしめざる事を要す、何となれば若し強制の爲め、其犯意を缺くに至らしめたる時は、假令犯罪行爲を爲したる時と雖も、其行爲者に對して犯罪は成立せず、此場合は、他人の罪を教唆したるにあらずして、間接に罪を實行したるものと云はざるべからざればなり、他人に罪の實行を決意せしむる事は、數人の作用に依ることを得べし、而して其作用は、共同の作用に依り又は互に獨立したる作用に依りて生ずる事を得べし、例へば甲は千圓を賭して、丙に丁を殺害せん事を申込み、乙は五百圓を賭して、丙に丁を殺害せしめん事を申込みたるに、丙は合計千五百圓を收得せんが爲めに、丁を殺害する事を決意するが如し、□二教唆は、故意に他人をして、罪を行ふことを決意せしむることを要す、教唆は、罪の實行者に、實行の決意を惹起する事に依りて實行者に原因を與ふるもの也、從つて罪の實行に就き單に機會を與ふるが如きは教唆にあらず、例へば已に僞證を決意したる人の爲めに、證人として喚問する事を裁判所に申請するが如し、故に他人をして犯意あるの犯罪行爲を實行する事を、故意に決意せしめたる場合に限り、刑法上の教唆を以て論ずるを得るなり、然れども法律に犯罪全部の計畫が、教唆者に依りて與へらるるを必要とせざるが故に、已に犯罪の觀念を發したる者の爲めに、犯罪の決意を妨ぐる所の消極的觀念の情を知りつつ排除したる者は、教唆者として論ずべきなり、例へば甲が乙に對して、報酬の爲めに一定の罪を犯すことを申込み、乙が其報酬を承認し、又は贈與したるときは、乙は其罪の教唆を以て論ずべき也、□三現行刑法の規定に依れば、教唆は、間接正犯にあらずして、他人の犯罪に附屬して加擔したる者也、從つて教唆は自己の行爲の爲めに處罰さるるにあらずして、正犯の犯罪の爲めに處罰の責を引くものと云はざるべからず、從つて教唆に基く第一の結果は、正犯の犯罪行爲の決意を惹起するにあり、然れども教唆は、單に此結果に依りて處罰せらるべきにあちず、被教唆者たる正犯の行爲が、處罰の程度に達したることを條件として處罰せらるべきなり、而して被教唆者の行爲は、苟も處罰の程度に達したるを以て足れりとし、必ずしも已遂たることを要せず、處罰すべき未遂、豫備、陰謀に止まる場合に於ても、之が教唆を處罰すべきなり、□四教唆者の犯意は、自己の意思實行に依りて、被教唆者に特定の犯罪行爲を行ふ事の決意を惹起せしむる事の認識なり、即ち教唆者の認識したる犯罪は、被教唆者が決意したる犯罪と一致する事を要し、若し被教唆者の犯罪行爲が、教唆者に依て認識せられたる犯罪行爲と、其主要なる點に於て異る時は、其程度に於て、教唆者の犯意は實行を遂げたりと云ふ事を得る也、□五教唆者の刑罰は、教唆者が認識して教唆したる、被教唆者の犯罪に適用せらるる所の處罰規定に依り定まる、舊刑第一〇五條に「人を教唆して重罪輕罪を犯さしめたる者は亦正犯と爲す」とあるは此意を示すもの也、(丙)從犯、從犯とは、他人の重罪輕罪を故意に幇助するを云ふ、舊刑法は違警罪の幇助は之を處罰せず、從犯の觀念に就きて詳言すれば、□一犯罪を幇助したりと云ふには、刑法上の結果に對して、事實上一の條件を與へたる事を要す、即ち從犯の行爲は、法益は實害又は危險の發生に對して、事實上の因果關係を保つ事を必要とす、然らざれば從犯は未だ處罰すべからざる未遂の程度にあるものと云はざるを得ず、されど幇助の手段は、物理的(例へば器具を給與するの類)たると、精神的(誘導指示の類)たるとは問ふ處にあらず、故に犯罪成立後に於て、犯罪を庇護すべき事を犯罪成立前に約し、依て正犯の實行を幇助したる時は、從犯を以て論ずべき也、例へば〓盜の犯人に對して、豫め贓物牙保、寄贓、故買するが如し、然れども犯意若くは罪の特別成立條件たる法定の目的を有したる者が、罪の實行行爲に關與したる時は正犯にして、從犯を以て論ずる事を得ざる也、次に從犯の行爲は、又積極的たると消極的たるとを問ず、消極的從犯とは、義務に違反したる不作爲の爲に、犯罪の發生を防止せざるを云ふ、例へば金庫の番人が、財物を〓取する事を豫知し、金庫に錠を施さざりしが如し、□二從犯は、他人の犯意ある犯罪に對し、故意に幇助を與ふる場合に限り成立す、法律は、時として過失に依り、他人の犯罪を幇助する場合を特別罪として規定することあり、□三從犯の犯意は、イ從犯者自己の行爲に就ての認識、ロ正犯の犯罪行爲の認識、ハ正犯の犯罪行爲が、自己の行爲に依りて幇助せらるることの認識より成立す、而して共同正犯の場合と異り、正犯が從犯の幇助を認識したると否とは、問ふ處にあらざるなり、□四從犯は、他人の犯罪に附屬したる加擔なるが故に、幇助を受くる者(正犯)の行爲は、犯罪行爲たる事を要す、但し正犯の行爲は、苟も處罰の程度に達したる以上は、已遂たると未遂たるとを問はざる也、從犯に依りて與へらるる所の幇助は、正犯が犯罪に著手する以前、又は著手したる後に於ても之を與ふる事を得べし、然れども連續犯(連續犯とは同一の犯意に依り、同一の方法を以て、同一の結果を數回惹起せる場合の犯行を云ふ、例へは傭僕が發見を恐れて、數回に主人の葉卷一本づつを盜むが如し)にあらざる限りは、犯罪の己遂後に於て、從犯は幇助を與ふるを得ざるなり、□五從犯の刑は、正犯の犯罪に適用せらるる處罰規定の刑より一等を減じたるものとす、即ち正犯の行爲が已遂なるときは、已遂の刑より一等を減じたるものを科し、若し正犯の行爲が未遂なるときは、未遂の刑より更に一等を減じたるものを科す、然れども正犯の行爲が處罰すべき豫備に止まるときは、從犯も正犯と等しく、同一の刑を以て處罰せらるるものとす、何となれば此場合に於ては、正犯の行爲も從犯の行爲も、共に犯罪の豫備に屬するを以て也、□六從犯に依りて與へらるる所の幇助は、特定の人に對して與ふる事を要するや否や、現行刑法上之が制限を設けざるが故に、不特定の人に對しても、之を與ふるを得るものと云はざるべからず、現行刑法の規定に依れば、犯意ある他人の犯罪を故意(犯意)に教唆し、又は幇助したる場合に限り、附屬したる加擔として之を處罰せり、從つて右の場合に於ては、教唆又は從犯は成立せざるなり、イ過失に基く他人の行爲を故意に教唆し、又は幇助したる時、此場合に於ては、教唆者幇助者は、間接正犯を以て論すべきなり、ロ過失に基く他人の行爲を過失に依て教唆し又は幇助したるとき、此場合に於ては、各自の過失に依り、共同の結果に對して條件を與へたる各過失者は、過失罪の副共同正犯(副共同正犯とは、數人が共謀せずして、同一なる結果の發生又は不防止に關與したることを云ふ、例へば數人の大工が共に通行人に注意することなくして、取毀ち中の建物の棟梁を往來に落下し、其不注意なる共同働作に依りて通行人を撲殺したるが如し)として處罰すべきなり、ハ犯意ある他人の行爲を過失に依りて教唆し、又は幇助したるとき、此場合に於て教唆又は從犯を以て論ずることを得ず。(刑六〇條乃至六五條、二〇七條、舊刑一〇四條乃至一一〇條、七八條及至八〇條等、尚共犯の部參照)
- 英
- Co-operation of several persons in the same offence
- 独
- Teilnahme von mehreren Personen
樞密顧問
(すうみつこもん)樞密顧問は、天皇の諮詢に應へ、重要の國務を審議する憲法上の機關也、□一樞密顧問は、天皇の諮詢に應ふる憲法上の機關也、樞密顧問は、諮詢に應ふる憲法上の機關なるが故に、單に天皇の諮詢を受けて其意見を奏上するに止まり、帝國議會の如く、、自ら進みで一定の事項を議決し又は國務大臣の如く、外部に對して政務を施行するものと同じからず、即ち樞密院は、行政及立法の事に關し、天皇の最高顧問たりと雖も、施政に關與する事なく、唯勅命に依り會議に下付せられたる事項に就き、意見を述ぶるに過ぎざるなり、□二樞密顧問は、天皇の諮詢に應へ、重要の國務を審議する憲法上の機關なり、樞密顧問は、重要の國務を審議するものなり、宮中顧問も、亦樞密顧問と同じく、天皇の諮詢に應ふるものなるも、宮中顧問は帝室の典範儀式の如き、單に宮廷の内事に係る事件に就きてのみ諮詢に奉答し、意見を具上するに止まり、國務に參與することなし、然るに樞密顧問は、戒嚴の宣告勅令及列國交渉の條約等、國家重要の政務に就き審査熟議し、聖聰を啓沃するものなれば、之を宮中顧問と同一視するを得ざるや論を俟たず、樞密顧問を以て審法上の機關とし、之を憲法に規定するは、歐州諸國中二三の國に過ぎず、蓋し歐洲諸國に於ては、立法は勿論、行政、司法に關し、國會の議決を經べき範圍廣汎なるを以て、更に樞密顧問の諮詢を經べきの必要なきも、我が憲法は之と異り、例へば列國間の條約及び戒嚴の宣告の如き、國家重要の事項にして、帝國議會の恊贊を要せず、天皇の親裁に出づる事項少からず、從つて之等重要の國務に對し聖聰を啓沃するの必要あり、之元勳及び練達の人を選び、樞密院を組織し、以て帝國議會の及ばざる所を補充せしむる所以なり、然れども樞密顧問は、單に諮詢に應へ、國務を審議するに止まり、其意見は、帝國議會の議決の如く、天皇を拘束するの效力なきは勿論、又内閣及び各省大臣と、公務上の交渉を有するの外、他の官署、帝國議會又は臣民との間に文書を往復し、又は其他の交渉を爲し、或は之等の者より請願上書其他通知を受領することを得ざるなり。(憲法五六條)
- 英
- Privy councillor
- 独
- Geheim-rath
- 仏
- Conseiller privé
樞密院官制
樞密院官制は、樞密院の組織、職掌、會議、及び事務執行に關する事を定めたる勅令なり、□一組織、樞密院は、議長一人、副議長一人、顧問官二十五人、書記官長一人、書記官三人を以て組織す、樞密院の議長、副議長、顧問官は親任、書記官長は勅任、書記官は奏任とす、□二職掌、樞密院は、左の事項に就き、諮詢を待つて會議を開き、意見を上奏す、イ皇室典範に於て其權限に屬せしめたる事項、ロ憲法の條項又は憲法に附屬する法律勅令に關する草案、及び疑義、ハ戒嚴の宣告、財政上に關する勅令、及び其他罰則の規定ある勅令、二列國交渉の條約、及び約束、ホ樞密院の官制、及び事務規程の改正に關する事項、へ前諸項に揭ぐるものの外、臨時に諮詢せられたる事項、□三會議、及び事務、樞密院の會議は、顧問官十名以上出席するにあらざれば、會議を開く事を得ず、會議は議長を首席とし、議長事故あるときは、副議長之に首席す、議長、副議長、あらざるときは、顧問官其の席次により首席す、樞密院の議事は多數に依りて決す、可否同數の場合に於ては、會議首席者の決する所による、議長は樞密院に屬する一切の事務を總管し、樞密院より發する一初の公文に署名す、副議長は議長の職務を輔佐す、書記官長は、議長の監督を受け、樞密院の事務を管理し、一切の公文に副署し、會議に付すべき事項を審査して報告書を調製し、會議に列し、辯明の任に當る、書記官は、議場に於て議事を筆記するものなり。(二一年四月勅二二號)
- 英
- Government organization of privy council
- 独
- Behördeordnung des geheimen Cabinets
- 仏
- Organisation d'Etat du conseil privé
樞密院事務規程
樞密院事務規程は、樞密院の事務取扱に關する事項を規定したる勅令なり。(二一年四月勅二二號)
- 英
- Rule for privy council affairs
- 独
- Geschäftsordnung des Geheim-kabinets
- 仏
- Règles des affaires du conseil privé
數理的
(すうりてき)數理的とは、總べて數學的性質を有する事を指示する形容詞にして、通俗には、事物の條理正しく一絲亂れず、首尾相償ひて、過不及なく整ひ居るを謂ふ、之を別言すれば、思想の發展又は事物の構成狀態が、數學の原理に基づき、又は其の原理を應用し、或は應用せる如くなるものに對して用ひらるる言辭なり。
水害地方田畑地租免除法
(すゐがいちはうたはたちそめんじよはふ)田畑所有者は、地租、即ち租税を國家に納付すべき義務を負ふ者なれども、田畑の所有者は其收穫によりて生活を爲すものなるを以て、若し水害等によりて、其年に於て、常年の如く收穫を得ざる不幸に遭遇する場合は、尚常年の如く地租を納付せざるべからざるものとするときは、農民の苦痛に堪へざるなり處とす、即ち本法は斯かる水害の場合に於ける、地租納付の義務の免除する方法を規定したるもの也、即ち左の如し、□一一府縣又は數府縣の全部、若くは一部に亘れる水害に依り、收穫皆無に歸したる田畑の地租は、其年分に限り、之を免除す、□二前項に依り免除の處分を受けんとする者は、罹災後三十日内に主務官廳に申出づべし、此期間内に申出ざるものは、免租の處分を受くることを得ず。(三四年四月法二七號)
- 英
- Special execu-tion law of the land tax of the territory where flood occurred
- 独
- Specialverwalt-ungsgesetz der Grundsteuer in der Wasser-schadensgegend
- 仏
- Loi de l'exécution spéciale de l'impôt sur la terre inondée
水害豫防組合
(すいがいよばうくみあひ)水害豫防組合とは、水害豫防の爲めにする堤防、浚渫、砂防等の工事にして、普通水利組合の事業に屬せざるものを目的とする組合也、水害豫防組合は、府縣知事に於て、組合設置の必要ありと認めたる時、關係ある郡市參事會の意見を聽きて、其區域を定め、其事業に關係ある土地の郡長、又は市町村長の一人、若くは數人に創立委員を命じ、組合規約案を調製せしめ、組合總會の議に付し、更に之を認可して、其設置を了るものとす、又其廢止に就いては、府縣知事に於て、唯組合の意見を聽きて之を決行す、水害豫防組合の意思機關は組合會なり、而して之を組織する議員は、組合員に於て選擧す、其數、資格、任期、選擧の方法等に至りては、皆組合規定の定むる所に依る。(水利組合の部參照)
- 英
- Precaution guild for damage caused by flood
- 独
- Vorbauungs-genossenschaft gegen den Wasserschaden
- 仏
- Corporation pour la précaution contre l'inondation
水産講習所
(すゐさんかうしゆうじよ)水産講習所は、農商務大臣の管理に屬し、水産の傳習、及び試驗に關する事務を掌る處となす、□一傳習、水産講習所の修業年限は三ケ年とし、學理、及び技術を併習せしめ、現業科の修業年限は一ケ年以内とし、專ら枝術を習得せしむ、(A)本科の學科課程は左の如し、(甲)漁撈科、漁具の構成、漁船の構造、漁撈の方法、其他漁撈に必要なる學科を授け、なほ製造、及び養殖の大要を授く、(乙)製造科、水産物の製造、及び製鹽法、其他製造に必要なる學科を授け、なほ漁撈、及び養殖の大要を授く、(丙)養殖科、淡鹹水動植物の養殖、及び其養殖保護法、其他養殖に必要なる學科を授け、なほ漁撈、及び製造の大要を授く、(B)現業科の課程は漁撈、製造、養殖の三科に分ち、其各範圍内に於て、種目を限り之を授く、但し其種目は、水産講習所長之を定む、尚此外卒業生の爲めに、硏究及び遠洋漁業に從事する者を養成する爲め違洋漁業練習科を置く、水産講習所は、授業料を徵收せざるものとす、□二試驗、生徒の募集は本科は每年六月、研究科は九月、現業科は四月十月の二期とす、入學志願者は、左の資格を有する者たるべし、イ本科に於ては年齡十七年以上にして、中學校卒業者、若くは之に相當する學力を有し、品行方正、身體強健にして、在學中家事の係累なきもの、ロ現業科に於ては、年齡二十年以上三十五年以下にして、二ケ年以上水産の業に從事したる者、若くは其の子弟にして、品行方正、身體強健、在學中家事の係累なき者、本科生、現業科生の進級、及び卒業は、學科、及び技術の試驗を施して之を決し、本科には卒業證書を、現業科には修業證書を授與す、研究科生は、研究を完了したる時は、其專攻に係る證明書を授與す、本科の生徒中、學術優等、品行方正にして、生徒の模範となるべき者は、特待生とし學費を補給することあるべし。(三〇年三月勅四七號水産講習所官制一條、三三年一月農商務省告示七號、水産講習所傳習規則一條乃至一九條)
- 英
- Fishery school
- 独
- Fischerei-schule
- 仏
- Ecole de la pêche
水産講習所監事
水産講習所監事は、水産講習所の一職員にして、所長の指揮を受け、所務を處理す者也、其定員は專任一人とす。(水産講習所官制二條)
- 英
- Manager of the fshery school
- 独
- Aufsichtsrath der Fischerei-schule
- 仏
- Directeur de l'école de la pêche
水産講習所官制
水産講習所官制は、其職員及び職務執行に關する事項を定む、□一職員、水産講習所には、左の職員を置く、イ所長一人、ロ監事專任一人、ハ技師專任四人、二教授專任三人、ホ技手專任九人、へ助教專任四人、ト書記專任五人、□二職務、イ所長は水産局長を以て之に充つ、所長は農商務大臣の指揮監督を承け、所中全般の事務を掌理す、ロ監事は奏任とす、所長の指揮を受け所務を處理す、ハ技師は上官の指揮を承け所務を分掌す、ニ教授は奏任とす、上官の指揮を承け、教授を掌る、ホ技手は上官の指揮を承け、所務に從事す、へ助教は判任とす、上官の指揮を承け、教授の職務を助く、ト書記は判任とす、上官の指揮を承け、庶務に從事す。(三〇年三月勅令四七號)
水産局
(すゐさんきよく)水産局は、農商務省内の一局所にして、水産に關する事務を掌るものとす。(三一年一〇月勅二八號農商務官制四、條一〇條)
- 英
- Marinebureau
- 独
- Wasser-productsbureau
- 仏
- Bureau de la marine
水産税
(すゐさんせい)水産税は、北海道地方税の一種目にして、水産物の採取又は製造を營業とする者に賦課するものとす。(三四年三月法三號北海道地方費法二、四條)
- 英
- Tax of marine products
- 独
- Wasserproduktssteuer
- 仏
- Impôt sur le produit maritime
水産物營業人
(すゐさんぶつえいげふにん)水産物營業人とは、營利の目的を以て、水産動植物の採捕、養殖又は販賣に從事するものを云ふ。
水産物營業人組合
水産物營業人組合は、水産組合規則に依り、同業組合員の協同一致を以て、營業上の弊害を矯正し、其利益を增進するを以て目的となす者にして、水産物の殖産、製造または販賣に關する營業を爲す者を以て、組織する公共團體を云ふ。(三五年五月農商務省令九號水産組合規則水産物營業人組合會は、水産營業人組合の機關にして、組合に關する事務を處理するものを云ふ。
- 英
- Guild of marine pro-ducts dealers
- 独
- Genossenschaft der Wasserproduktshändler
- 仏
- Corporation des marchands du produit maritime
水産物營業人組合會
水上警察署
(すゐじやうけいさつしよ)警察とは、社會の危害を防止せむが爲めに、人の自由を制限するを云ふ、而して水上警察署とは、水上に於ける警察事務を掌る官署を云ふ。(警察の部參照)
- 英
- Water police
- 独
- See-polizei
- 仏
- Police de l'eau
水道條例
(すゐだうでうれい)水道條例は、水道(水道とは、市町村の住民の需要に應じ、給水の目的を以て敷設する水路、其他の附屬物を云ふ)の敷設、給水に關する事項を定めたる法律を云ふ、□一市町付に於て水道を敷設せんとする時は、其目論見書に左の事項を詳記し、地方長官を經て、内務大臣の認可を受くべし、イ水道事務所の所在地、ロ水源の位置及其水量の槪算、但し圖面及水質の分析表を添附すべきもの也、ハ水道線路に沿ひたる地名、貯水地、濾水場、喞水場の位置、但し圖面を添付すべきものとす、□二給水の區域、其人口及び其一人一日に對する平均給水量、ホ人口增殖及び多量の水を用ふる製造場等に對する給水量增加の見込、へ水壓の槪算、ト工事方法、チ起工並に竣工期限、リ工費の總額其收入支出の方法及び其豫算、ヌ水料の等級、價格、水料徵收の方法及び經常收支の槪算、□二給水、水道の給水を受くるものは、水質水量の檢査を市町長に請求することを得べし、家屋内の給水用具及び本支水管より之に接續する細管は、市町村の所定に從ひて之を設置し、其費用は、水道の給水を受くる家屋の負擔とす、又水道の給水を受くるものは、市町村の定むる處に依り、一定の税金を納付すべきは當然なり。(二三年二月法九號)
- 英
- Regulation of waterworks
- 独
- Wasserleitungsregel
- 仏
- Règles de l'ouvrage hydraulique
水道用地
水道用地とは、水源地、貯水地、喞水場及び水道線路に要する地を云ふ、而して水道用地は、國税、地方税の免除を受くるものなり。(水道條例一、五條)
- 英
- Soil for aqueduct
- 独
- Grund für die Wasserleitung
- 仏
- Terre pour l'ouvrage hydraulique
推定
(すゐてい)推定とは、推測想定の意にして、ある法律關係に就き、法律が一應、推測推量することを云ふ、推定は看做すと異り、當事者は、其反對證據を以て、法律の測を覆すことを得るもの也、例へば法律占有者は、所有の意思を以て、善意、平穩且つ公然に占有をなすものと推定すとある場合に、當事者は之が反證を擧げて、占有者は惡意、隱密且つ他人の爲めに所有する者なりと云ふを得べきが如き是なり。(民一八六、二〇八、三二九、二五〇、四四九、六七四條等)
- 英
- Expectance
- 独
- Vermuthung
- 仏
- Présomption
推定家督相續人
(すゐていかとくさうぞくにん)抑も相續の主體は相續人也、而して相續人は相續開始の時、又は相續開始後に確定するものなりと雖も、相續開始後に確定する場合に於ても、其確定の原因たる承認の效力は、開始の時に遡るを以て、相續の主體は常に相續開始の時に確定するものたり、而して相續開始の時に於て、相續人たるべき者を其開始以前に在りては、之を推定相續人と稱す、即ち推定家督相續人とは、其者と被相續人との關係が、相續開始の時に至る迄、現狀の儘にて繼續する時は、相續人たるべき位地に在る者を云ふ、家督相續人は、唯一人に限るが故に、被相續人の家族たる直系卑族一人のみありて、他人なきときは、其者が推定家督相續人たる事は論を俟たず、然るに被相續人の家族たる直系卑族數人あるときは、之が順位を定めて、唯一人の推定家督相續人を定めざるべからず、而して民法に於て定むる所の推定督家相續人順位の通則は、家族たる直系卑屬中親等に於て、最近の者を先にし、年長者を先にし、男子を先にし、嫡出子を先にし、嫡出子に次ぎで庶子を先にし、父母の婚姻に依りて嫡出子たる身分を取得したる者、又は養子に就きては、其嫡出子たる身分を取得したる日に於て、生れたる者と看做す、其以前に嫡出子として生れ又は嫡出子となりたる者に先むせらるべきものとす、なほ此通則を分解すれば左の如し、□一親等の異りたる者の間に在りては近き者を先にす、被相續人の直系卑屬中、親等の異りたる者の間に在りては、近き者を以て、先順位に於て家督相續人たらしむるは、こと獨り我國古來の慣習たるのみならず、實に古今萬國に通ずる相續の原則と云ふも不可なし、盖し親等近ければ、被相續人の情愛も從つて深きは、自然の狀態なるを以て、古今の相續制は、即ち此自然の狀態を視て以て、相續人を推定するの標準と爲したるなり、故に子は孫に先ち、孫は曾孫に先ち、曾孫は玄孫に先ちて、推定家督相續人たるべき也、□二親等の同じき者の間に在りては、男を先にす、單に被相續人の愛情の程度如何に就きてのみ視るときは、直系卑屬中親等の同じき者は、男たると女たるとを問はず、愛情に深淺なきものと推定すべきは當然なり、然れども家督相續にては、相續は唯一人に限り、然かも成るべく男子をして、相續人たらしむる事を家族制の本旨に適ふものと爲すが故に、親等の同じき直系卑屬中男女共に在るときは、男子をして先順位に於て、推定家督相續人たらしむ、殊に我國に於ては、古來庶子の制度を認むるの結果、庶子にして男子なきときは、なほ嫡出の女子に先ちて推定家督相續人たることを得しむ、例へば被相續人の家族たる直系卑屬中、親等の同しき男女二人あり、女子は嫡出にして、男子は庶出なりとせむか、其男子は庶出たるに拘はらず、推定家督相續人たるが如し、□三親等の同じき男又は女の間に在りては、嫡出子を先にす、親等の同じき者の間に在りては、庶子とても、なほ男子たるときは、嫡出の女子に先ちて、推定家督相續人たるべしと雖も、親等の同じき直系卑屬にして、男子のみなるか又は女子のみなるときは、嫡出の者は常に私出の者に先ちて、推定家督相續人たるべし、之正當の婚姻を重ずる上に於て、當然のことに屬す、例へば被相續人の家族にして、二男あり、長男は庶子又は私生子にして、次男は嫡出子なるとき、或は二女あり、長女は庶子又は私生子にして、次女は嫡出子なりとせむか、推定家督相續人は、前場合に於ては次男にして、後の場合に於ては次女なるが如し、□四親等の同じき嫡出子び私生子の間に在りては、嫡出子及び庶子は、女と雖も之を私生子より先にす、被相續人の家族にして、親等の同じき直系卑屬數人ありて、其所生に就き嫡出子、庶子、及び私生子の身分ある者併存するの場合に於ては、嫡出子、及び庶子は女と雖も、私生子たる男女子より先順位に於て、推定家督相續人たるべし、之畢竟私生子は父の知れざる子なるを以て、縱令男子たるも、之を嫡出子及び庶子に先ちて、推定家督相續人たらしむるは、男系を重ずる家族制の本旨に適はざればなり、一戸主の下に、庶子と私生子と併存する場合なきが如しと雖も、女戸主に認知したる私生子ありて、其の女戸主が入夫婚姻を爲し、其入夫にも亦認知したる私生子即ち庶子ありて家を同じくし、他に嫡出なき場合の如し、此場合に於て、嫡母と庶子との間に於ては、即ち親子間に於けると同一の親族關係を生じ、法定の血族たるを以て、女戸主死亡したるときは、之れと自然的血族關係あらざる入夫の庶子が、自然的血族關係ある私生子に先ちて推定家督相續人となるべし、之稍々奇異の結果を生ずるものの如しと雖も、戸主權を重じ、又夫權を重ずるの結果茲に至るものなるべし、□五前四號に揭げたる事項に就き、相同じき者の間に在りては、年長者を先にす、即ち前四號に揭げたる標準に基き、順位を定むるに當り、同一事情あるときは、年長者をして年少者に先ちて、推定家督相續人たらしむ。(民九六四條、九七〇條乃至九七四條)
- 英
- Expectant heir
- 独
- erwartender Erbe
- 仏
- Heritier présumé
推定遺産相續人
(すゐていいさんさうぞくにん)推定遺産相續人とは、其者と被相續人との關係が、相續開始の時に至る迄、現狀の儘にて繼續するときは、相續人たるべき位地にある者を云ふ、□一直系卑族にして遺産相續人たるべき者、被相續人の直系卑屬は、法律に定むる順位に從ひ、遺産相續人となる事は、諸國の法制槪ね一致する處なり、我民法に於ても亦之と同じく、被相續人の直系卑屬を以て、第一順位の推定遺産相續人となせり、但し我民法に於ては、被相續人は或る家族たる身分を有する者に限れるのみ、推定遺産續人は、被相續人の直系卑屬たる以上は、家の戸主たると家族たるとを問はず、又被相續人と、家を同じくすると否とに拘はることなし、從つて例へば隱居者が被相續人なるときは、其子にして戸主たる者推定遺産相續人となるべく、又父被相續人たるときは、其子にして家に在るも、婚姻又は養子緣組に依り、他家に在るも將又外國人たりとも、總べて遺産相續人たる事を妨げず、即ち家督相續に於けるが如く、男女に依りて區別ある事なし、親等の異りたる直系卑族數人あるときは、其親等近き者を先にす、即ち被相續人に子と孫とあるときは、子を先にするが如し、又親等同じきもの數人あるときは、同順位に於て相續人たるべし、即ち被相續人に子數人あるときは、數人の子は之が共同相續人となる、之れ家督相續と大に異る所なり、直系卑屬たる推定遺産相續人が、相續開始前に死亡し、又は相續權を失ひたるときは、此者の現在の直系卑屬が前者と同順位に於て、遺産相續人となる、□二直系卑屬なき場合に於て、推定遺産相續人たるべき者、直系卑屬なき場合に於て、推定遺産相續人たるべき者は、諸國國情の異るに從ひ、其軌を一にせず、我民法に於ては被相續人の直系卑屬にして、推定遺産相續人たるべき者なきときは、イ配偶者、配偶者なきときは、ロ直系尊族、直系尊屬なきときは、ハ戸主、を以て推定遺産相續人とし、其他に及ぶことなし、而して直系尊屬間に於ける順位は、親等異りたる者の間に在りては、親等の近き者を先にし、親等同じき者は、同順位に在るものとす、殊に男女兩系を對等に置くの主義を採る以上は、父方母方の祖父母等を共に包含するものと知るべし、抑も推定遺産相續人たるべき直系卑屬なき場合に於て、第一に配偶者を以て推定遺産相續人と爲したるは、夫婦の愛情上應に然るのみならず、夫婦財産制と、多少密接の關係を有すべし、即ち夫婦の一方死亡したるときは、夫婦財産關係消滅し、之に實子あるときは、其者に於て其特有財産を承繼するのみならず、共通財産あるときは、之を其配偶者と子とに分離せざるべからず、財産の分離は、多少煩雜なる關係を生ずるものにして、其實子の爲めに、此煩累を厭はざるは、人情に於て尚易しとするも、親子以外の者の爲めに此煩累を生ずるは、人情の難しとする所なり、故に其全財産を擧げて之を配偶者に相續せしむるは、蓋し便法にして、夫婦たる共同生活の結了を圓滿ならしむるものと云はざるべからず、次に直系尊屬を第二順位の推定遺産相續人と爲し、兄弟姉妹に相續權を與へざりしは、家督相續の場合と異ると雖も、老少の順序に依り、直系尊屬の遺産は、異日兄弟姉妹に於て相續し得べき傾向あるものなるを以て、直系尊屬あるときは、之に相續權を與ふるを以て足れりとせるに依るなるべし、然れども直系尊屬あらざる場合に、直に戸主を以て、第三順位の推定遺産相續人と爲したるに至りては、多少武斷的の誹あるを免れざるに拘はらず、我國情に於ては、戸主に歸屬せしむるを適當としたるに依るなるべし、然かも實際多數の場合に於て、戸主は、被相續人の最近親たる場合多かるべく、戸主たる兄弟姉妹は、實際に於て遺産の相續權を得ることとなるべし。(民九九四條乃至九九七條)
- 英
- Expectant heir to pro-perty
- 独
- einer, der Anwartschaft auf ein Erbe hat
- 仏
- Heritier présumé de la propriété
推定的商行爲
(すゐていてきしやうかうゐ)商行爲とは、商に關する法律行爲なり、法律行爲とは、私法上の效力を生ぜしめんとする意思表示を云ふ、而して法律は、商人の行爲は其營業の爲めになすものと推定し、之を推定的商行爲と云ふ、而して其果して營業の爲めにせるや否やを決するは甚だ困難なるも、法律は、又一般に商人の行爲は、其營業の爲めにするものと推定したり、此推定は、其商人の爲めにも、亦は其相手方、其他の第三者の爲めにも、同一の效力を有するを以て、何人と雖も之を援用するを得べし、然れどもこれ一の推定に過ぎざるを以て、反證を擧げて其然らざる事を主張し得べきや言を俟たず、商人が爲したる行爲は、其營業の爲めにせるものと推定し、其營業の爲めにするものと推定するに依りて、商行爲となるを以て、此種の行爲を推定的商行爲と云ふ、例へば呉服商人が平素自己の買出をなす反物屋に行きて、商品を買求むる場合の如きを云ふ、即ち此場合には、其買求めと云ふ行爲は、普通營業の爲めにしたるものと推定せらるるものなり。(商四、二六五條二項)
- 英
- Expectant commercial transaction
- 独
- konkludentes Handels-geschäft
- 仏
- Acte commercial présumé
水難救護法
(すゐなんきうごはふ)水難救護法は、專ら遭難船舶救護に關して規定せられたる法律にして、□一遭難船舶あることを發見したるときは、其地の市町村長は之が主任となり、救護に必要なる處分をなすべきものとす、市町村長は救護の爲め人を招集し、船舶車馬其他の物件を徵用し、又は他人の所有地を使用する事を得べし、□二救護を受けたる船舶の船長は、遭難後遲滯なく遭難報告書を作り、市町村長に差出すべし、市町村長は、報告書の事實を審査し、相當と認むる時は、船長の請求により、認證を與ふるを得べし、□三救護に關する費用は、一時市町村之を支辨し、船舶所有者又は船長より徵收すべきもの也、但し救護其效を奏せざるときは、救護費用は國庫之を支給す、□四漂流物及び沈沒品に就きては、其拾得したる者は、遲滯なく之を市町就長に引渡すべきものなり、市町村長はその所有主分明なるときは之を引渡し、不明なるときは公告を以て、告知を爲したる日より一年以内に限り相當の費用を納付して、物件の引渡を得べきことを告知すべし、□五遭難船舶救護の場合に、本法に違反する者は五十圓以下の罰金、漂流の物件に關するものは二十圓以下の罰金に處せらるることあるべし。(三二年三月法九五條參照)
- 英
- Law of relief of sihpwreck
- 独
- Bergungsgesetz des Schiffbruches
- 仏
- Loi du naufrage
水難救護法施行細則
水難救護法施行細則は、遭難船舶、漂流物及び沈沒品の屆出方法、及び漂流物及び沈沒品の公賣方法に關する事項を定めたる遞信省令なり、(甲)遭難船舶、船長は遭難後遲滯なく遭難報告書を作り、市町村長に差出すべきものにして、其遭難報告書には、左の事項を記載し船長之に署名捺印すべし、□一船舶の種類、及び名稱、□二總噸數又は積石數、□三船籍港、□四船舶所有者の氏名又は名稱、□五發航港、寄航港、到達地、及び遭難の場所、□六遭難、及び救護の顚未、□七船舶の損害、□八死傷者の氏名、□九滅失若くは毀損したる積荷の種類、重量若くは容積其荷造の種類、箇數、記號、及び傭船、若くは荷造人の氏名、若くは名稱、(乙)漂流物、及び沈沒品、漂流物又は沈沒品を拾得したる者は、遲滯なく拾得地の市町村長、又航海中に拾得したるものは、其航海後最初に到著したる地の市町村長に引渡すべきものとす、市町村長は、右の物件を受け取りたるときは、其物件の所有者に引渡すべき事を新聞又は揭示して之を公告すべきものとす、(丙)公賣、漂流品、沈沒品、及び救護に依りて殘存せる物は、永難者が救護費用等を納付せざる場合等に於ては、其物件を公賣すべき者とす、公賣は入札拂の方法を以てすべく、市町村長に於て、公賣を爲さんとするときは、豫め左の事項を公告すべきものとす、一物件の種類數量、及び品質、ニ公賣の場所、及び年月日、公賣を爲す場合に於ては、遭難船長又は所有者は、公賣に立會ふことを得るものとす。(三二年七月遞信省令三五號)
推理
(すゐり)推理とは、或る斷定より他の斷定を推知すること、換言すれば既知の事實より、未知の事實を推知する一種の認識作用にして、この認識作用を命題によりて取扱ふを推論と稱す、故に推論とは、推理を言語に表はしたるものに外ならざるなり、通例推理を分ちて演繹推理、及び歸納推理の二とす、演繹推理とは或一般の場合より或る特殊の場合を推する事にして「例へば總べての人は動物なり」てふ一般命題より「某は動物なり」てふ特殊の斷案を推知するが如し、之に反して歸納推理とは、個々特殊の場合より、一般の斷案を推究し行ふことにして、例へば個々の人間が動物なる事實より推究して「總べての人は動物なり」といふ斷案に到達するが如し、斯く演繹推理と歸納推理とは、推理の順序轉倒し居るに過ぎずとなし、歸納推理を以て正當の推理法とし、大に演繹推理を非難したる學者も多かりしが、精密に考察する時は、實に歸納推理も畢竟演繹推理の一種なることを知る、即ち演繹推理にありては、大前提なるものありて、既に推理せらるべき斷案を其中に包含するを以て、引き出されたる斷案は、新發見と稱することを得ずと云ふにあるも、實は歸納推理に於ても、演繹推理と同じく、自然法の一致てふ大なる槪念を大前提として豫想し、此の假定の上に推理をなすを以てなり、又「總べての人は動物なり」てふことより「或る動物は人なり」てふ斷案を得るは、之直接推理にして、又一般の場合より特殊の場合に推理したるものなるを以て、實は演繹推理の一種なりと見るを得べし、三段論法の如き間接推理固より演繹推理の一種なるを以て、推理とは、畢竟意義の演繹推理の事なりといふを得べし、されど演繹推理と歸納推理とを分ち、前者を更に間接推理と直接推理とに分ちて論ずること、實際の便宜上甚しき不都合あるを見ざるなり。
水利組合
(すゐりくみあい)水利組合は、府縣税又は郡費の支辨に屬せざる水利土功に關する事業にして、市町村若くは町村組合が其經理を爲さざる場合に於て、設置せらる、之を目的の上より區別すれば二とす、即ち一は積極的の目的を有するものにして、之を普通水利組合と稱し、他は消極的の目的を有するものにして、之を水害豫防組合と稱す、前者は用惡水等專ら土地の保護に關する事業を目的とし、後者は水害豫防の爲めにする隄防、浚渫、砂防等の工事にして、普通水利組合の事業に屬せざるものを目的とす、□一水利組合の組織、水利組合は、組合事業の爲めに利益を受くる者(土地若くは土地家屋を有する者)を以て組織し、一定の地劃を以て其領域とし、官の監督を受けて、其領域内に於ける組合事業を處理する公法人なり、水利組合の設置、及び廢止は、普通水利組合と水害豫防組合とに依り同一ならず、前者は比較的自由設立の性質を有すと雖も、後者は稍々強制的性質を帶びたり、これ其目的たる事業の性質上生ずべき、自然の事理なりと云ふべし、即ち普通水利組合は、組合員たる事を得る者五名以上の請願ありたるとき、又は組合事業に關係ある土地の郡長、又は市町村長の具狀ありたるときは、府縣知事に於て公益上設置すべきものと認むるときに於ては、假りに組合關係の區域を指定し、其土地の郡長又は市町村長の一人、又は數人に創立委員を命じ、組合規約案を調製せしめ、關係者三分の二以上出席せる總會の議に付し、其過半數を以て可決せるに及びて、府縣知事は、其設置を認可し、組合の成立を見るに至るものとす、又其廢止は組合會の議決に依り、府縣知事の認可を經べきものとす、□二水利組合の機關、水利組合の意思機關は組合會なり、而して之を組織する議員は、組合員に於て選擧す、其數、資格、任期、選擧の方法等に至りては、皆組合契約の定むる所に依る、組合會の權限は其目的の範圍内に於て、市町村會の權限に相當す、又執行機關は、關係ある市町村長又は郡長にして、其權限は、恰も町村長に相當す、其他別に收人役の設けあり、收入役は關係市町村又は郡の收入役、或は會計吏をして之を兼掌せしむ、□三水利組合の自治、水利組合は豫算の定むる所に從ひ、其事業を執行す、其事業を執行するが爲め、或は處分を行ひ又は事實上の行爲等をなすものとす、而して其行政行爲中の主要なるものは、費用の徵收にして、費用は主として土地、若くは土地及家屋に賦課す、其滯納を爲したる者は、強制徵收を爲す、其他組合は規約の定むる所に從ひて夫役、現品を賦課することを得べし、□四水利組合の監督、水利組合は、郡長(郡長、市長、管理者たる場合は、此限りにあらず)知事、内務大臣に於て之が監督を爲すものなり。
水利組合條例
水利組合條例は、水利組合の設置廢止、組合の會議、及び會計等に關する事項を規定したる法律なり。(二三年六月法四六號)
- 英
- Regulation of water-power association
- 独
- Regulirung von der Wasser-genossenschaft
- 仏
- Règles de la corpora-tion de la force hydraulique
水路測量標條例
(すゐろそくりやうへうでうれい)水路の測量、及び其測量標に關する法規にして、□一測量官に於て、民有地に測量標を設置せんとするときは、所有者と評議の上之を使用し得べく、官有地に於ては、之を所管廳に通知するを以る足る、□二本條例に於て測量標と稱するは基點測量標の事にして、別ちて二となす、第一は基點標にして、測量撤去の後と雖も永遠保存の爲め設置するもの也、第二は測量標にして、單に測量中設置し、測量終れば撤去する者とす、□三基點標を移轉し、又は破壞したる者は一月以上一年以下の重禁錮、五圓以上五十錢以下の罰金に處せらるべきものにして、若し測標なるときは、單に二圓以上二十圓以下の罰金に處せらる、又過誤に依り測量標を毀壞し、又之に瓦礫其他の雜物を擲ち、獸を繫ぎ、繩索の類を懸け、或は貼紙し、或は戯書し、其他惡戯をなしたる者は、五錢以上一圓九十五錢以下の科料に處せらるべきものとす。(二三年五月法三八)
- 英
- Regulation of the hy-drographical surveying mark
- 独
- Regulir-ung von den hydrographischen Mesz-zeichen
- 仏
- Règles du signal de l'arpen-tage hydraulique
水路部條例
(すゐろぶでうれい)水路部條例は、水路の交通往來の安全を計る爲めに設けられたる勅令なり、□一水路部は之を東京に置く、□二水路の測量、水路圖誌の調製、航海の保安、測器、水路官の勤務及教育を掌る所とす、□三水路部に部長を置き、海軍大臣に隷し部務を總理せしむ、□四水路部長は、水路告示を發し、及び外國水路部と直接通信することを得。(三二年五月勅二二五號)
- 英
- Regulation for the hydro-graphical office
- 独
- Reguliruug des Hydrographieamtes
- 仏
- Règles du bureau hydraulique
制壓警察
(ぜいあつけいさづ)制壓警察は、一に禁壓警察、又は鎭壓警察と稱する警察行政中の一類別にして、豫防警察に對するものとす、豫防警察とは、社會に對する危害が發せんとするを、事前に防止するを目的とする警察にして、制壓警察は、既に發生せる危害を除去することを目的とする警察を謂ふ、例へば暴行者の取り鎭め、犯罪人の搜索逮捕の如き是也、元來警察は危害防止を目的とする行政なりてふ、近世學者の定説よりするときは、未發の危害にのみ對し警察ありて、已發危害に對しては警察なく、從つて前陳の如く、已發の危害除去を前提とする、所謂制壓警察なるものなしとの説生せざるにあらされども、こは非常に淺薄の論議なり、何となれば、已に發したる危害と雖も、之に關聯して將來の危害を發生すべき■ある以上は、其已發危害の原因たるものは、即ち未發危害の原因と同一體なるを以て、之を防止するは即ち警察行政に屬し、名義の防止たると除去たるとを問はす、國家爲政の上に於ける警察なる制度の目的は、同樣に達せらるもと云ふべし、且つや或一事實(物及人、事件をも含む)が危害の性質を帶ぶると云ふ事は、一時的の事もあるべく、繼續的のこともあるなるべく、從つて單純に一現象の未發、若くは已發が、危害防止と云ふ目的の分界を爲すべきものにあらざればなり。(豫防警察の部參照)
- 英
- Prohibition police
- 独
- Ver-botspolizei
- 仏
- Police de l'interdiction
性向
(せいかう)又性癖とも謂ふ、吾人の精神の働く傾向に影響する生具的、又は過去の境遇經驗より得たる心素を謂ふ、元來吾人の智情意の活動方向は、多く後天的の經驗(廣義の)に依りて形成せらると雖も、然かも吾人の心意は、悉く經驗に依り、根本的に構成せらるるものに非ず、心的活動の根本要素は、事實上各人の體質遺傳と共に、先天的に規定せられ、本來生具的なる事を承認せざるを得ず、如何となれば、吾人が同一境遇の下に同一經驗を重ぬるも、各人其特質に於て異る所あるは、到底否定すべからざる事實なればなり、之を生活的意義に於ける性向と稱す、然れどもかかる先天的性向が、以下述べんとする後天的經驗によりて得られたる性向によりて緩和せられ、或は一層強大なるものとせられ、或は消滅せしめらるる事あるも事實にして、之廣義に於ける教育の可能なる所以なり、然らば後天的性向とは何ぞ、即ち狹義に於ける習慣的心意の傾向の謂にして、人が其生れ出でたる以來の自己の經驗に依りて馴致せられたる習慣、又は廣義の癖を指す、之人間の心意は、同樣なる經驗を反覆することによりて、漸次其活動する一定の樣式を取り、終に拔くべからざる心意の傾向を構成するに至るてふ心理上、及び生理上の事實を根據とするものににして、而してかかる後天的性向、若くは性癖の勢力や、殆ど生得的のそれと選ぶ所なし、されば習慣は第二の天性なりと、訓練は此理により惡しき性向を變じて、所謂後天的に之を善良なるものとなさんとし、又善良なる性向は、益之を發達せめんことを期するものなり。
性格
(せいかく)性格なる名辭は、品性と謂ふに同じ、普通に人の性質など謂ふも、亦殆ど同意義なり、然れば各人其面相の相異る如くに、其性格も亦異るを知るべし、偖人間の精神を假りに、情意、及び智識の二側面に分離して考ふるときは、情意は人間活動の動力となる一層中心發動的の作用にして、知識の光りは、能く其の嚮導の任を全うし、兩者相統一齊合して、行爲の樣式殆ど一定して、容易に變ずる事なきに至りたる個人の心性を性格とは謂ふ、無性格とは、其人の行爲の樣式常に變動して、其大體の方向すら知るに由なく、一旦善事をなすかと見れば、他日は變じて惡事をなして顧みざる如きを謂ふ、抑も性格の成立を心理學的に見るに、感情の努力たる意思が感情より發達して、意思其ものの本性を發揮せんとするや、固より感情の修養も、間接には意思の發達に資する事勿論なりと雖ども、意思は夫れ自身の鍛練を要求す、斯くして感情と意思と、其發達の道途に於て、時に或は衝突する事なきを保する能はず、寧ろ常に衝突を反覆するといふを以て、其正當なるを見る程なれば、古來の學者偉人も、此處に大なる困難と苦痛とを感じ、多くは強力なる意思によりて、劣等なる感情の發作を制壓せんと煩問せる歷史を繰り返へしぬ、之意思の感情より發展せるものなるが、其發達の或程度に至れば、意志の本性として、制約的に感情を支配するに至る、即ち努力的なる意思は、放縱ならんとする感情を統御せんとす、此際感情徒に強く、意志の之を抑壓する力を有せざる如き性格は、感情と意思との爭關を惹起して、煩悶苦惱を生じ、意思の弱き人、又は感情の人と謂はる、然るに若し此際感情を適度に抑えて、意思の働く方向に之を服從せしめ、時に或は全く感情を強制して、意思の欲する儘に行動するが如き性格を有する人を、意思の人、禁慾の人、嚴肅の人と稱す、然るに、又此際感情の赴く處、之意思の欲する所、敢て意思を以て感情を興奮、若くは制抑するに及ばずして、兩者常に圓滿に相提携し、然かも其行爲の樣式が、常に一定の方向を取る如き性格を有する人こそ、眞に性格の人と謂ふを得べし、即ち眞の善人は曾て惡事をなすこと能はざる如く、善の一方に行爲の樣式が定まりたる結果にして、若し常に善事をのみなして、曾て惡事をなし得ざる如き、行爲の一定の樣式を得たるものにあらば、尚之強き性格の人と呼ぶことを得べし、之に反し一擧一投足其行爲の趣を變じ、善をなし、惡をなし、常に一定せし所なく、矛盾の行動多きものを吾人は、無性格の人と稱す、尤も一定の樣式を得たる人にありても、時々新に發作する感情と意思との不調和を招きて、其間の調停を計る必要あり、斯くして人間の心性は、不斷に活動し發展するものなり、即ち人間の性格は、一行爲の終る每に、新しき面目を呈し來る、斯くの如き性恪を論ぜざる性格學なるものは、未だ研究の初步にありて見るに足るものなし、從て理論的に性格の強固なる統一を計り、劣等なる品性を改めて、高尚なるものとなす方法の如きは、今説くことを得ず、唯感情の修養と意思の鍛練と相俟ちて、兩者の調和を實際の修練の上に期し、以て性格の統一改善、及び發展を計る外、今日の處其道なきものの如し、而して之を良效に指導する知識の發達も、同時に企圖せられざるべからざる事勿論なり、然れども體質遺傳の個人性格に拔くべからざる根底を有し居ることも事實にして、之等は、先天的に個人性格の差異を來たす所以なるも、亦後天的の訓練教養に依りて、幾分づつ漸次に改善を計ることを得べし、最後に品性と性格との同意義なること、前述の通りなスも、我國にて品性と謂へば、價値の觀念を伴ふ性格を意味する習慣あることを注意し置くべし。
成規
(せいき)成規とは、法規の意にして、嚴確なる法律上の解釋、若くは文字上の區別を求むれは、微細なる差別なきにあらざるも、一般に兩者は、同一義に使用せられ、斷然たる別個の意義を有するものにあらず、然れども或る場合に於ては、成規とは不文法に對する成文法と云ふ意義に使用せらるる場合あり、素より成規と稱するも、亦此意義に於て、成文法則を呼び得ざるにあらず、例へば成規の手續、成規文案、從來の成規など云ふは其用例なり。(北海道土人保護法六號、選與法五八條一號)
- 英
- Rule
- 独
- Regelmäszigkeit
- 仏
- Règlement
制規
制規とは、制度乃至法規の意なり、元來成規と云ひ制規と云ふ、其意義略ぼ同じく、混用せらるる場合少なからす、されど二者の差別は、前者は單に成文の法規を意味し、後者は夫れに加ふるに、制度の意を加味するものの如し。(治安警察法一三條、帝國大學令八條三號)
- 英
- Rule
- 独
- Regel
- 仏
- Règle
請求
(せいきう)廣く請求と云ふときは、單に要求と云ふに同じく、他人の行爲即ち爲不爲の行爲を求むるの意なり、敢て請ひ求むるの意にあらず、例へば訴訟に於て、原告が爲す請求の申立の如き、國家が己人に對して爲す一定の請求等皆要求の意なりとす。(民訴一九一條、民一四七、一五五條、戸籍法一三條)
- 英
- Request
- 独
- Anspruch
- 仏
- Requête
請求權
請求權とは、他人に向つて請求を爲す權利を云ふ、例へば他人に向つて損害賠償を請求するを得るは、不履行又は不法行爲に基く其請求の權を有するが故にして、又債權者が債務者に對して給付を請求し得るも、債權の内容が一種の請求權なるを知るべし、其他民法上一定の原因に基き、配偶者の一方が、離婚の請求を爲し得るが如き、亦一個の請求權なりと云ふべし、總べて人が法律上の保護を受くるや、自己の意思を主張して、他人の意思範圍を制限すべく、其主張を請求すること、即ち此請求權の行使を俟ちて、初めて完全なるものなり、故に請求權たるや、總べての權利の内容を爲す一の屬性と云ふを得べきなり。(民七二四條)
- 英
- Right of claim
- 独
- Anspruchs-recht
- 仏
- Droit de la réclamation
請求金額
(せいきうきんがく)金錢の給付を請求する場合に、請求の目的たる金錢の一定の額を謂ふ、例へば預金取戻請求事件に於て、原告が要求するところ金壹萬圓ならば、其訴訟に於ける請求金額は、取りも直さず其壹萬圓にして、貸金の場合に於ても、之と同一の貸金返濟の請求が金壹百圓なるとき、壹百圓は即ち請求額たり、而して日常訴訟の上に於ては、利子は此請求金額の外に記載して、所謂請求額は、元本のみの如く取扱ふ者あれども、本來より云へば、請求金額は、其廣義に於ては、常に利子を含み、場合によりては、費用及損害金をも含ましむること能はざるにあらざるものとす、要するに、被請求人に對し要求する金額の全體は、總べて皆請求額即ち請求金額たるや疑なき處なり、終りに請求金額は、即ち請求行爲、請求物件の區別に對象せらるるものたるに注意するを要す。(破産法一〇二二條)
- 英
- Sum of claim
- 独
- Anspruchs-geldsumme
- 仏
- Somme de la réclama-tion
請求債權者
(せいきうさいけんうや)債權者は、彼の債務者に對し、行爲不行爲を要求する權利者を指し、茲に請求債權者と云ふは、等しく請求を爲すの權利を有する債權者なるに拘はらず、或る場合に於て、其權利の實行を要求せざる債權者に對し、現に之を請求せる債權者を請求債權者と云ふ、元來債權なるものは、債務者に對して給付を請求するの權利なれば、之を請求せざるべからざる義務を伴ふものにあらず、故に之を請求すると否とは隨意なり、例へば甲なる債務者に對し、債權者、乙、丙、丁の三名ありとせんに、債權者中の乙丁は、債務者甲の不動産に對し、強制競賣開始決定の請求を爲し、丙は之を爲さざる場合に於て、右の乙丁は謂ふ所の請求債權者にして、丙は請求せざる債權者なるが如し。(競賣法四一條)
- 英
- Creditor of claim
- 独
- Anspruchsgläubiger
- 仏
- Crediteur de la réclamation
税金
(ぜいきん)税金とは、即ち租税として納付する金錢を謂ひ、租税とは、政務の費用を支辨するが爲めに、強制且つ無償に徵收する資産也、租税は、政務の費用に充つるが爲めに、何等の反對給付を爲す事なくして、獨り臣民のみならず、外國人たりと雖も、苟も國權に服從する者より徵收するものなり、而して租税は、斯くの如き性質を有するにも拘はらず、或は之を以て政府の保護に對する報酬なりと論じ、或は身體財産に對する保險料なりと解する者なきにあらず、此等の説、一時大に行はれたるものなれども、之統治の行爲を總て私法的觀念を以て説明せんとしたる時代に於て生じたるものとす、されば此説に從ふときは、最も多く政府の救助を受くる貧民の如きは、理論上最も多額の租税を負擔すべく、又他人に傷害せられ、又は他人より財産を奪はれたる者に對しては、政府は免税すべき義務ありと結論せざるを得ざるに至るべし、斯くの如きは、獨り現行法の觀念と相容れざるのみならず、統治の觀念に於て、業に既に誤謬に陷れるものなり、又租税の性質に就きて注意を要すべきは、租税は法律上の義務たること是なり、近世の國家は、種々なる沿革上の理由に依り、租税を賦課するには、最も愼重なる手續を要するとなし、以て公正を得むことを勗む、我が帝國憲法に於ても亦其第二一條に於て「日本臣民は、法律の定むる所に從ひ、納税の義務を有す」と規定し、納税義務の範圍は、總て法律の規定する所に準據すべく、行政官の隨意に變更することを得ざるものとなしたり、而して此義務に基き納入すべき金錢を税金と云ふ。(府縣税徵收法八條)
- 英
- Charge
- 独
- Stenergeld
- 仏
- Charge
税金納入義務
税金納入義務とは、一見納税義務の如くなれども、納税義務と納入義務とは、明瞭なる區別あり、即ち納税義務とは、國家若くは公共團體に對し、租税負擔の義務あるを意味し、納入義務とは、國家又は地方自治體に税金を納入する義務の謂にして、例へば市町村が、其市町村内の府縣税を徵收して、之を府縣に納入するが如き場合の名稱なり、明治三三勅令第八一號府縣税徵收に關する件第二條に「税金納入義務の免除を府縣知事に申渡す云々」とあるは其用例也、然れどはこは、唯嚴正なる解釋に於ての意味にして、一般に於ては、租税納付に關する場合を謂ひ顯はさんとならば、奈れをも混用せらるるものの如し。
- 英
- Duty of paying in of charge
- 独
- Steuerpflicht
- 仏
- Devoir de payer le charge
税金拂戻
(ぜいきんはらひもどし)税金拂戻とは、一度納付したる租税の全部、若くは一部を或る事由に基き、納税者に返戻することにして、例へば課税の方法に於て、重複の租税を取立てたる中、又は他の租税と均等を保たしめんとする必要上、之を拂戻すが如き之也、日英通商航海條約第七條に於て「税金拂戻等の事項に就きては、内國臣民と均等の取扱を受くべし」とあるは其用例の一也。
- 英
- Paying back of tax
- 独
- Rückzahlung des Steuergeldes
- 仏
- Rem-boursement de l'impôt
税金拂戻證書
税金拂戻證書とは、前述の如き場合に於て、政府若くは公共團體が、拂戻を受くべきものに對し、何時にても其證書と引換に、現金の下戻を爲すべき旨を記載して交付する書面を云ふ。(日清通商航海條約一三條)
- 英
- Document of paying back of tax
- 独
- Rückzahlungsschein des Zoll-geldes
- 仏
- Document du remboursement de l'impôt
請願
(せいぐわん)人民より國家の立法機關に對して、希望を陳述するを請願と云ふ、されば議會より政府に對し、又は立法機關以外の國家機關に對し希望を陳述するは、上奏又は建議、訴額等となるも、所謂請願となることなきものなり。(憲法三〇條)
- 英
- Petition
- 独
- Petition
- 仏
- Péti-tion
請願委員
(せいぐわんいいん)帝國議會即ち貴族院又は衆議院に向つて、人民が請願を提出したる場合に、之を審査する爲めに委員を選任することあり、之即ち請願委員なり、或は人民が請願を爲す場合に、其代表者を定むる事あり、之を請願委員と云ふ事あり、斯くの如く請願委員なる語は、二樣に使用せらるる故に、各場合を案して、其如何なる意味に使用せられたるものなるを決定せざるべからず。(議院法六三條)
- 英
- Petition commitiee
- 独
- Peti-tionscomité
- 仏
- Comité de la pétition
税關假置場法
(ぜいくわんかりおきばはふ)明治三三年法律第八二號を以て公布したるものにて、□一税關に假置場を置き、陸場したる外國貨物を假に藏置する事を許す、□二大藏大臣は、假置場に藏置すべき貨物の種類を制限することを得、□三置場に藏置の貨物は、輸入せざるものと看做す、□四藏置貨物は、假置場内に於て、改裝、仕分其他の手入を爲すすことを得、□五貨物藏置の期間は滿三箇月以内とす、但し税關長は申請に依り、必要と認むるときは之を延長することを得、□六税關長は假置場の秩序、若くは取締又は貨物の整理に關し、必要と認むる時は、貨物の移出を命し、其他必要の處分をなすことを得、□七藏置貨物藏置の期間を經過したるとき、又は前六に依り、藏置貨物の移出を命ぜられたる者、税關長の指定期日内に移出せざるときは、關税法により之を收容することを得、□八税關官吏は、假置場に出入する者の身體及之に屬する物件に就き、搜索することを得、□九政府は、藏置貨物の損害に就き賠償の責に任ぜず、□十假置場に貨物を移入せんとする者は、税關に申告べし、十一藏置貨物は輸入、積戻、回漕又は保税倉庫庫入の免許を受け、又は税關長の許可を受けたる後にあらざれば、之を移出することを得ずとの規定をなしたるものなり。
- 英
- Law of temporary ware-house of custom
- 独
- Gesetz vom zeit-weiligen Warenlager des Zollamtes
- 仏
- Loi du magasin temporaire de la douane
税關假置場法施行細則
(ぜいくわんかりおきばはふしかうさいそく)明治三三年勅令第一三九號を以て公布せられたるものにて、橫濱、神戸及長崎税關管轄域内に、税關個置場を置く、□一税關假置場の地區は、大藏大臣之を指定す、□三貨物の移入申告は、積載船舶の名稱、國籍、貨物の記號、番號、品名、箇數、數量、及價格を記載したる文書を以て之を爲すべし、□四税關假置場法の規定に依り、貨物藏置期間の延長を申請せんとする者は、其貨物の記號、審號、品名、箇數、數量、延長期間及理由を記載したる文書を税關に提出し、特許を受くべし、□五税關假置場は、日沒より日出までの間、及び税關の休日には之を閉鎖す、但し税關長は臨時開場の特許を與ふる事を得、□六日沒より日出までの間、又は税關の休日に於て、臨時開場の特許を受けんとする者は、必要の事由及期間を記載したる申請書を税關に提出すべし、□七以上の特許を受けたる者は、手數料を納むべし又税關假置場を使用する者は、其使用料を納むべきものなり、□八使用料及手數料は、大藏大臣之を定む、□九使用料及手數料は、收入印紙を以て之を納むることを得、收入印紙を以て、使用料又は手數料を納付せむとする者は、納付書に貼付して之を提出すべし。
税關監吏賞罰規則
(ぜいくわんくわんりしやうばつきそく)明治二三年勅令第二一八號を以て公布したるものにして、□一監吏、其職務上勤勞ある者は、事の大小難易に由り、每事五圓以下の賞を與ふ、□一監吏其職務上怠慢過失ある者は、情況に由り、下の懲罰に處す、イ譴責、ロ罰俸、ハ免職、□三罰俸は月俸額百分の一以上一箇月以下とす、□四罰俸は每月俸給を以て納付せしむ、但し月俸額三分の一を超る事を得ず、□五罰俸に處せられたる者、罰俸完納前退官免職又は死去するときは之を追徵せず、□六大藏大臣は、本規則の執行を税關長に委任することを得、之其大要なり。
- 英
- Rule of reward and punishment of custom officers
- 独
- Regel von der Belohnung und Strafe der Zoll-beamten
- 仏
- Règles de la récompense et de la punition des officier de la douane
税關管轄區域
(ぜいくわんくわんかつくゐき)各税關の管轄區域を定むること左の如し。□一橫濵税關管轄區域、陸前、磐城、常陸、下總、上總、安房、武藏、相模、伊豆、駿河、遠江、越後、羽前、佐渡、以上の十四箇國及小笠原島、□二大阪税關管轄區域、參河、尾張、伊勢、志摩、紀伊、和泉、攝津、(西成郡以東)山城、若狹、越前、加賀、能登、越中、以上の十三箇國、□三神戸税關管轄區域、攝津(川邊郡以西)、播磨、備前、備中、備後、安藝、石見、出雲、伯耆、因幡、但馬、丹後、隱岐、伊豫、土佐、阿波、讃岐、淡路、以上十八箇國、□四長崎税關管轄區域、周防、長門、肥前、肥後、筑前、筑後、豐前、豐後、日向、大隅、薩摩、壹岐、對島、琉球、以上十四箇國、□五凾館税關管轄區域、陸奥、陸中、羽後、渡島、後志、石狩、天鹽、北見、根室、千島、釧路、十勝、日高、膽振、以上十四箇國。(三三年勅二〇四號税關管轄區域の件)
- 英
- District under governing of custom
- 独
- Regierungsbezirk des Zollamtes
- 仏
- District de la compétence de la douane
税關支署名稱位置及管轄規則
(ぜいくわんししよめいしよういちおよびくわんかつきそく)明治三二年勅令第一六九號を以て公布せられたるものにして、税關支署の名稱、位置、及税び管轄區域を別表の通り定められたるものなり。
名稱位置管轄區域
東京武藏國東京武藏國東京市、南葛飾郡、南足立郡、北豐島郡、豐多摩郡、荏原郡、
新潟越後國新潟越後國、羽前國、
清水駿河國清水駿河國、遠江國、
武豐尾張國武豐三河國、尾張國、
四日市伊勢國四日市伊勢國、志摩國、
絲崎備後國絲崎備後國、安藝國、
濱田石見國濱田石見國、
境伯耆國境出雲國、伯耆國、
宮津丹後國宮津因幡國、但馬國、丹後國
門司豐前國門司周防國、長門下、豐前國、豐後國、日向國
博多筑前國博多筑前國、
唐津肥前國唐津肥前國、東松浦郡、西松浦郡、北松浦郡、小城郡口ノ津肥前國口ノ津肥前國南高來郡、北高來郡、
三角肥後國三角大隅國、薩摩國、肥後國、筑後國、
嚴原對島國責原對島國下縣郡、
佐須奈對島國佐須奈對島國上縣郡、(琴村、舟志村、佐護川以北)
鹿見對島國鹿見對島國上縣郡、(蘆見村中原村、佐護川以南)
那覇琉球國那覇琉球國、
釧路釧路國釧路限室國、釧路國、十勝國、千勝國、
小樽後志國小樽後志國、石狩國、天鹽國、北見國、
室蘭膽振國室蘭日高國、膽振國、
敦賀越前國敦賀若狹國、越前國、
七尾能登國七尾加賀、能登、
伏木越中國伏木越中國、
夷港佐渡國夷佐渡國、
- 英
- Name of detached station of custom and its situa-tion and the district under its government
- 独
- Name, Stelle und Regierungsbezirk des Zweigzollamtes
- 仏
- Nom de la place détachée de la douane et son district de compétence
税關事務官補
(ぜいくわんじむくわんぼ、かんしをよびかんりとくべつにんようれい)明治三二年勅令第二〇四號を以て公布せられたるものにして、□一税關監吏は、税關監吏試驗に合格したる者より任用することを得、税關監吏試驗規則は、大藏大臣之を定む、□二下に揭ぐ者にして、體幹五尺以上、身體強壯年齡滿二十歳以上、滿三五歳以下の者は、關監吏試驗規則に依り、外國語の試驗に合格したるときは、税關監吏に任用する事を得、イ陸海軍服役滿期下士、憲兵科上等兵又は下士適任證書を有する步、騎、砲、工、輜重兵科の上等兵、ロ公立小學校の正教員、ハ滿二年以上税關雇員を勤續したる者、ニ滿二年以上巡査を奉職したる者、ホ司法大臣指定學校卒業の者、□三官公立中學校又は文部大臣の認可したる中學校三學以上の課程を履修したる者にて、驅幹五尺以上、身體強壯年齡滿二十歳以上滿三十五歳以下の者は、別に試驗を要せず、税關監吏に任用する事を得、□四税關監吏は、別に試驗を要せず、文官普通試驗委員の詮衡を經て、税關事務官補又は税關監視に任用することを得、前項に依り、税關事務官補に任用せられたる者は、税關監視に、税關監視に任用せられたる者は、税關事務官補に任用することを得、□五税關官吏は、就職後二年間は、自己の便宜に依り辭職することを得す、□六陸海車服役滿期下士、憲兵科上等兵又は下士適任證書を有する步、騎、砲、工、輜重兵科の上等兵は、當分の内税關監吏試驗委員の詮衡を經て、監吏に任用することを得るものとす。
監視及び監吏特別任用令
政權
(せいけん)臣民が其國の政治に參與するの權利を稱して政權と云ふ、參政權と其義即ち同じ、元來國家の意思は、自然人の意思を以て組成す、國家は自然人によりて代表せらるるにあらざれば、其意思能力を有する事を得ず、國家を代表する自然人は、即ち國家の機關なり、國家が其機關を得るには、或は國民に其義務を課するに依りて之を爲し得べく、或は國民に其權利を認むるに依りて之を爲す事を得、義務を課するに依りて國家機關たらしむるは、例へば兵役義務の如し、之が權利を認むるによりて、國家の機關たらしむる場合に於ては、個人は之に依て所謂參政權を得るものなり、參政權と機關としての行動とは、嚴に之を區別せざるべらず、機關の行動は、國家自身の行動なり、個人の權利にあらず、參政權の本體は、國家機關たる地位を承認せらるる權利なり、而して其主なるものは、議員の當選者が議員たるの地位に即くの權、官吏が其地位に對する權利、選擧人の權利の如き即ち之なり。(參政權、公權の部參照)
- 英
- Political power
- 独
- politische Gewalt
- 仏
- Pouvoir politic
制限
(せいげん)制限とは、制定せられたる限界を意味し、單に範圍と云ふも略ぼ同義なり、例へば土地の所有權は法令の制限内に於て、其上下に及ふが如き之なり、或は制限を動詞として使用し、或るものに範圍を定むること、或は限界を附することを指すことあり、法規を以て人の行爲を制限するが如き之なり。(民六條、北海道舊土人保護法二條等)
- 英
- Limit
- 独
- Beschränkung
- 仏
- Limite
制限額
制限額とは、數額にして制限せられたるものを云ふ、即ち或る數額に極量の定めある場合に、其數額を制限額と云ふ、例へば華族世襲財産にして、一定の數額を下ることを得ざる場合に、其數額は制限額なり、又酒類製造者が酒類を製造せんとする場合に、法律が清酒は百石、濁酒は五十石、燒酊類は五石以上と定む、この範圍内を超ざる額は、即ち制限額に足らざるものなるが如し。(華族世襲財産法九條、酒造税法五條)
- 英
- Limited amount
- 独
- beschränk-ter Werth
- 仏
- Somme limitée
正權限
(せいけんげん)正權限は一に之を正權源なる文字を以て代用す、即ち或權利を享有する原因の適法なることの意にして、例へば所有權を得たる事が、法律上の先占に依るか、又は賣買の結果得たるものなるとき、若くは他人より贈與を受けたるものなる時は、茲に謂ふ正權限なり、之に反し、不法に他人の物を奪取したる原因に基くものは、假令其物の使用收益を爲す狀態にありとするも、正權限に依る取得とは云ひ難し、要するに權利を享有する源泉の適法なることを謂ふものにして、啻に所有權の取得に限らず、權利たる以上は、占有權、永小作權は固より、其他の債權たると物權たると、又は兩者に屬せざる權利たるとを問はず、苟も權利たるに於て、其權利獲得が不法にあらず、適法なる狀態ならんか、常に正權限に依る取得と稱し得べきなり。
- 英
- Legal source of right
- 独
- gesetzlicher Rechtsgrund
- 仏
- Préroga-tive légale
制裁
(せいさい)法規違背に對して與ふる應報を廣く制裁と云ふ、抑も法律若くは命令なるものの效用を見んと欲せば、確實なる實行を以てせざるべからず、然るに社會の民衆は、故意若くは惡意を以て、其の禁制命令を冐すことあるべし、此の場合に於て、法は一の威力を以て、其冐したるものに對し、相當の應報を與へ、爾後該法令の遵守を強いざるべからず、この威力の應報を稱して制裁と謂ふ、されば制裁とは、或は國家が法令に違反したる者に加ふる法の效果なりと云ひ得べし、從來の所説によれば、制裁に對しては害惡なる觀念を加味し、即ち制裁とは、國家が法令の違反者に加ふる惡報なりと稱道したるも、今日に於ては、必ずしも制裁は刑罰の如きものに限らず、從つて害惡が必要條件たりとの思想は、已に陳套に屬したるものなり、而して如何なるものが制裁なりやを具體的に示せば、彼の人を殺したる者は死刑に處せらるるが如き、不法行爲者が其損害賠償の債務を負ふに至るが如き、皆茲に謂ふ制裁の一種なり、其の他刑法、民法、民事訴訟法、刑事訴訟法は固より、行政法等總べての法規に違背したる者が、種々なる名義の下に於て、例へば刑罰と云ひ、賠償と稱し、若くは直接履行との名目を以てし、斯くの如く違背に對する應報は、總べて制裁なりとす、一般の用語として制裁と云ふも、前陳の性質と同じく、例へば道德の制裁に於ける因果應報の如き、又は其他の道德律に反したるが爲め、社界的の德義上の排斥を受くるが如き、人類生理の法則に於て、不攝生が病疾の結果を招くが如き、其應報は之を制裁と謂ひ得べきもの也、法律上の制裁が、之等のものと同樣なるにはあらざるも、亦全然相違せるものにあざるは自明の理にして、要するに法律上に於ける制裁は、法令の強行手段の威力に依る應報と説明して誤なからん。
- 英
- Restraint
- 独
- Einschränkung
- 仏
- Restriction
清算行爲
(せいさんかうゐ)會社解散したるときは、事實的に其會社の法律關係を消滅せしむる方法を採らさるべからす、此會社財産を處分する手續を稱して、清算、清算行爲、又は清算手續と云ふ、猶之を詳説すれば、□一現務の終了、會社解散の當時に於て、未だ結了せざる事項に就きは、會社の履行せざるものなると、相手方の履行せざるものなると、双方の履行せざるものなるとを問はず、又一方的の行爲なると、双方的の行爲なるとを問はず、訴訟が會社の爲めに繼續すると、會社に對して繼續するとを問はず、皆之を完結せざるべからず、然れども履行の時期、未だ到來せざるものに就ても、直に之を結了せしむるの謂にあらず、斯くの如き場合には、第三者之を請求する事を得ざるや明かなり、□二債權の取立、債權の取立とは、會社の債權を行使するの謂にして、皇として第三者に對ずる債權を指す、されど會社の社員に對する債權も、亦之を行使すべきものにして、社員が會社に對して、損害の賠償を爲すべき義務を負擔したる場合に於て、之が履行を求め、社員が其出資を滯納せる場合に於て、之が拂込を催告するは、均しく債權の取立に屬す、出資は會社の營業の用に供するものなりと雖も、亦會社の債務の辨濟に充つる目的をも併有する也、辨濟期の未だ到來せざる出資義務に就きても、其復行を請求する事を得、然れども出資義務の履行は、清算の目的の範圍内に限定せらるるを以て、債務の辨濟に必要ならざるに、之を強ひ、又は債務辨濟の材料として、現金なきの故を以て之を命ずることを得ず、社員の出資義務は、清算の爲めに影響を受くべからず、故に豫定の額を超えて、出資を供せしむること能はざるは勿論、會社財産を以て、其債務を完濟するに不足なる事分明なるに至りたるときは、清算人は破産宣告の請求を爲さざるべからず、□三債務の辨濟、會社の負擔する債務履行の謂にして、其債務の第三者に對するものなると、社員に對するものなるとを問はず、從つて社員が消費貸借、賣買其他社員たる格資と相關聯せざる原因により、會社に對して債權を有するときは、其地位毫も第三者と異らず、退社員に對する持分の拂戻も、亦辨濟すべき會社の債務なり、其他會社が社員たる資格に基き有する債權、配當利益を請求する權、會社の爲めに立替を爲したる場合に、其補償を求むるの權利等も亦然り、□四殘餘財産の分配、會社の債務を履行したる後、殘存せる財産あるときは、之を社員に分配するは、清算の最終行爲なり、獨乙商法に於ては、社員の清算に必要ならざる金錢あることを證明したるときは、所謂假位分配を請求することを得とし、必ずしも會社債務の履行後たるを要せず、之に反して我商法は、絶對に會社の債務を辨濟したる後にあらざれば、社員に分配することを得ずとの嚴格なる規定を認め、之に違反したるときは、過料の制裁を定む、已に履行時期の到來せる債務は、之を辨濟し、未だ到來せざるもの、若くは爭あるものに就きては、之が辨濟を爲すに必要なる金錢を留保して、純財産を算出すべきものとす、而して其財産の分配標準に就きては、我商法は何等の規定を設けず、民法は「殘餘財産は、各組合員の出資の價格に應じて之を分配す」と規定す、而して殘餘財産の分配は、所謂對内關係なるが故に、此規定は、自ら商法の會社にも適用せらるべきものならん、而して積極的持分に就きては、分配を爲し、消極的持分に就きては、社員相互の關係に讓るべき也、即ち積極的特分に就ては、社員は清算者に對して之を請求するの權利を有し、消極的持分あるときは、積極的持分の額に應じて之を各社員に割當つ、其積極的持分を有する社員が、消極的持分を有する社員に對する請求は、清算の範圍に屬するものにあらざるが故に、社員間に於て、之が處置を爲さざるへからず、蓋し清算は殘餘財産として、現存するものを社員に分配するに止まり、不足額の分配若くは相互の求償を措置するは、清算人の職務と稱すべからざるなり、故に社員の持分が、悉く積極的なるときは、清算によりて社員相互の關係自ら消滅すべしと雖も、消極的持分あるときは、清算後に於て、尚社員間に終局の決算を爲さざべからず、殘餘財産の分配は、金錢を以てするは清算行爲、實行當然の結果なり、社員の供したる財産出資は、其目的の如何を問はず、皆會社の財産に歸し、其價格は、唯各社員の持分を計算する基礎たるのみ、然れども使用、若くは收益を以て、出資の目的としたる場合に於ては、之が自然的の返還を爲さざるべからず、以上商事會社、殊に合名會社に就てきの説明なりと雖も、其理に至りては其他の商事會社、民事會社及び組合に就ても大なる差異なし、從て特に詳述するの要あらざるべし。(商九一、九二、九四、九五、二六二條、民八一、六八八條)
- 英
- Act of balancing an account; Act of liquidation
- 独
- Liquidationshandl-ung
- 仏
- Acte de la liquidation
政策
(せいさく)狹義に於ては、國家の繁榮に關する目的に對し、其目的の遂行の爲めに採る手段計劃を謂ふ、例へば國家が、其利益の爲めに劃策する内治的、或は對外的商業政策、保護政策、工業政策、或は農業政策、其他政治上の各種の政策等の如し、更に廣義に於て政策と謂へば、人々が其各種の目的を達せんが爲めに採る實行的手段を謂ふ、抑も吾人が或る實行的問題を解決せんとするに當り、唯單に理論上其の問題を十分に解釋したるのみにては、未だ實行として現はすに足らず、自然之を實行に現はさんとならば、更に其の解釋をして、實行的行動其者たらしむる秩序的變更を要す、之即ち一問題の解釋とは、別に更に政策なる實行的手段の要せらるる所以なり、斯く政策は、其目的を達せんが爲めに採るべき實行的手段なるが故に、其事情の如何に應じ、種々の處置計劃を要す、而して往々自己の目的の遂行の爲めに、其手段の善惡正邪曲直、若くは、信不信を問はざる事あるより、政策てふ語に惡意義を附することあるも、政策は實行及問題の解釋より、其の遂行に至る吾人行爲の過程に於て必須の手段なれば、其存在を排拒し得べきものにあらず、要は唯善美なる目的に伴ふを、常に正義と正理の觀念に依つて、其手段の正善合理的ならん事を力めて計るにあるのみ。
清算人
(せいさんにん)破産以外の事由により、社團又は財團若くは組合團體が解散したる場合に於て、其清算を爲す者を指して清算人と云ふ、而して裁判上清算人を選任、及び解任する場合の書式は左の如し。
清算人選任申請書(其一)
住所身分職業
利害關係人
申請人氏名
何縣郡市町村番地
事件本人何々會社
申請
事件本人ノ清算人選定アランコトヲ望ム事實
一本會社ハ社員三名ヲ以テ設立シ明治何年何月何日ヨリ事業ニ著手ノ處社員某ハ本年何月何日死亡シ社員某ハ本年何月何日退社シ殘存ノ社員ハ某一人トナリタル爲メ商法第七十四條ニ因リ當然解散シタルモノナリ
一申請人ハ會社ニ對シ何々ノ取引關係アルモノナリ
一申請人ハ左ノ者ヲ清算人適任者ト認ム
住所身分職業
何々株式會社取締役
氏名
附屬書類
一會社登記簿登本一通
一何々(取引關係ヲ證スル書面)何通
一證明書{村長の爲したる非訟事件手續法一三八條に牴觸せざる旨の}一通
右申請候也
年月日右
氏名印
何區裁判所
監督判事氏名殿
(備考)
一申請は、利害關係人より爲すべきものとす。(商八八、八九、一〇〇、二三二、二三四條)
一管轄は、會社本店所在地の區裁判所とす。(非訴手續一三六條)
一清算人たるを得ざる者下の如し、イ未成年者、ロ禁治産者及び準禁治産者、ハ剝奪公權者、及び停止公權者、ニ裁判所に於て免黜せられたる清算人、ホ破産者。
清算人選任申請書(其二)
住所身分職業
利害關係人
申請人氏名
何縣何郡市町村番地
事件本人何々株式會社
申立
事件本人ノ清算人選任アランコトヲ求ム
事實
一本會社ハ明治何年何月以來事業ニ著手ノ所今回別紙決定書謄本ノ如ク解散ヲ命ゼラレタリ
一申請人ハ會社ニ對シ何々ノ取引關係アルモノナリ
一本社ノ業務ハ隨分錯雜セルニ付清算人ハ少クトモ三名以上ノ選任アルニアラザレバ容易ニ結了セザルベシト思考ス而シテ申請人ハ左ノ者ヲ其適任者ト認メ推薦ス
住所身分職業
何々株式會社支配人
氏名
住所身分職業
何々合名會社社員
氏名
住所身分職業
氏名
附屬書類
一決定書謄本壹通
一何々(取引關係ヲ證スル書面)何通
一證明書{村長の爲したる非訟手續法一三八條に牴觸せざる旨の}壹通
右申請候也
年月日右
氏名印
何區裁判所
監督判事氏名殿
清算人解任申請書
住所身分職業
利害關係人
申請人氏名
住所身分職業
清算人氏名
申立
右清算人ノ解任アランコトヲ求ム
事實
一氏名ハ別紙謄本ノ如ク何々會社ノ清算人ニ選任ゼラレタルモノナリ
一申請人ハ會社ニ對シ何々ノ取引關係アルモノナリ
一清算人ハ明治何年何月就職シ爾來會社財産ノ調査ニ著手シタル模樣ハアルモ兎角他行勝ニテ未ダ貸借對照表ヲ作ラズ從テ申請人ヨリ屢々請求スルモ請算ノ狀況ヲ一箇月ダモ報告シタルコトナシ
附屬書類
一會社登記簿謄本壹通
一何々(取引關係を證する書面)何通
一保證書(職務の嚝廢を證する爲め)
何通
右申請候也
年月日右
氏名印
何區裁判所
監督判事氏名殿
(備考)
一申請は、合名、合資會社にありては、利害關係人より、株式、株式合資會社にありては、監査役又は資本の十分の一以上に當る株主より爲すべきものとす。(商九六條二項、二二八條二項)
一管轄は、會社本店所在地の區裁判所とす。(非訴手續一三六條)
- 英
- Liquidator
- 独
- Liquidator
- 仏
- Liquidateur
生産費
(せいさんひ)經濟上に於て、生産費の如何なる者かを説明せんとならば、先づ其初に於て、生産の何物たるやを揭出せざるべからず、所謂生産とは、貨物の生産にして、物の效用を作出するを云ふ、詳言すれば、人類が其心力及體力の勞働を已に自然に存在する外物に加え、以て自己の欲望を充たすに適するの性質を作出するを云ふ、夫れ人類は、物體の一分子だも創造すること能はず、唯已に存在せる外物の位置、形狀及性質を變更し、以て自己の用途に供せしむるに過ぎず、例へば海中より魚介を漁獲し、土中より鑛物を採掘し、以て其位置を變じ、次に之を割烹し、冶金し、以て形狀性質を更め、遂に之を食用に供し、或は之を使用し、吾人の欲望を滿たすが如き、即ち之生産に外ならず、而して生産費は、其生産に關する費用の謂にして、廣義に於ては、所謂經濟上の資本は、固より生産に關し要する總費用を包含するものたり、資本に關しては、經濟學上一の部門として、非常の重要なる説明を見る處なるも、茲に之を略す、要するに前例に於ける魚介、漁獲、鑛物の採掘に於て、其始めに要する費用は素より、終局に至る迄、換言すれば生産の終始間に於て之に要し、支出すべきものの全體は、之を稱して生産費と爲すを得ん。
- 英
- Productive expenses
- 独
- Erzeugniszkosten
- 仏
- Dépens productif
正式裁判
(せいしきさいばん)違警罪即決例に依り、警察署長、及び分署長、又は其代理たる官吏が、其管轄地内に於て犯したる違警罪に對し、即決判決を爲したる場合に、其即決の言渡に對し、違警罪裁判所に、正式裁判の請求をなしたる場合に於て、其裁判所の爲す裁判を正式裁判と云ふ、元來裁判所に於ける裁判は、特例なき限は、常に正式の裁判にして、之に對し、一の行政處分たる違警罪の即決は、變式のものなりと云ふべし、蓋し民事刑事に係る裁判は、常に司法裁判所に於て爲すべきは、我憲法の明定する所にして、又臣民は、民刑の訴訟に就きて、司法裁判所の裁判を受くるの權を奪はるる事なきもの也、然るに違警罪は、純然たる刑事事件なるに拘はらず、之を行政官廳たる警察署長等をして、即決せしむるものなれば、司法に屬すべきものを行政權に委するもにして、之變式たる所以なりとす、而して此變式なる行政分(即ち即決處分)に對し、裁判所の爲す裁判を正式裁判と云ふ。(違警罪即決例五條)
- 英
- Formal judgment
- 独
- Formal-urteil
- 仏
- Jugement formel
正式謄本
(せいしきとうほん)公證人其他國家の機關が、權利者の請求により、證書即ち原本の全部を寫して作成せる書面を正式謄本と云ふ、正式謄本は、法定の要件を具備すべきは勿論、之を作成したる場合は、其權利者の氏名幷に之を作りたる年月日及場所を記入し、作制機關、及び義務者共に署名捺印することを要す、正式謄本の效力は、原本と同一の效力あるものにして、常に原本を代理するの效あるもの也。(公證人規則一四條)
- 英
- Formal copy
- 独
- Formal-abschrift
- 仏
- Copie formel
性質
(せいしつ)普通に性質とは、人の氣質又は性格など稱すると殆ど同意義にして、其他論理上、修辭上にも用ふることあるも、要するに何事にもあれ、其ものの意義及内容を制限又は限定する所のもの也、尚詳言すれば、性質てふ語は、第一、事物に適用せられて事物の固有性を指し、第二、論理若くは修辭上の用法に於ては、之を集合することによりて、其内容を形成し得る底のもの、從つて槪念を制約或は制限する所の其ものに關しての立言なりと謂ふことを得べし。
性質上の不可分債務
(せいしつじやうのふかぶんさいむ)債務の目的物が性質上不可分なるときは、之を性質上の不可分債務と云ふ、假令ば馬一頭、又は一定の時間音樂を奏せざる債務の如し、之に反して金一萬圓の給付、米一萬石の給付と云ふ場合は、可分債務なりとす、而して債務者一人なる場合は、可分債務なると否とを區別するの實益なし、蓋し此場合には、假令其目的が別ち得べきものなるときと雖も、債務者は全部を履行すべき責任を負へばなり、故に此區別の實益は、主として債務者の多數なるの場合にあり、即ち此場合に其目的物が可分なるときは、原則として連合債務に過ぎず、例へば五人にて五百圓を返濟せざるべかずとせば、各自百圓づつを給付せば足るも、之に反して五百圓の馬一頭を給付するの義務ある場合には、全員にて馬一頭を給付せざるべからざるものとす、而して若し債務者の過失により、其馬にして斃死としたりしとせんか、原則により各自百圓づつ給付せば足るに至らん。(民四二八條乃至四三一條)
精神
(せいしん)智情意の主體にして心意と云ふに同じ、物的作用に對し、思惟、情、努力等の作用を營む、抑も精神を智、情、意と分ち三分説を取るはカント等の主張にして、從來長く、又廣く採用せられたる見解なりしが、近來の大なる心理學者、例へばヴントの如きは、專ら智識と情意との二作用に分類せしより、現今は此二分説勢力を得るに至れり、然れども精神は、斯かる二作用を營む別個の存在を有すといふ事にあらず、心意は一の全體にして、決して劃然三分若くは二分せらるるものにあらず、唯學者便宜の爲に分離して考へたるのみ、但し心意の作用に於て、此智情意の働く趣き、自ら特殊のものあるは疑ふべからず、智識は向内的感受的にして、情主は向外的感動的也、而して一方が働く際は、地方必ず伴膸して動く、即ち吾人何事かを認め、同時に之に關聯して感情意思を動すが如し、唯其感動に強弱あるのみ、かかる精神といふものの實體如何の問題は、哲學上の大疑問にして、今日猶十分なる説明を見ず、然れども精神の作用は物質の作用とは、因果の關係は勿論何等の交渉なく、刺戟を受けて痛みを感ずと云ふことは、心理學上よりは實に云ひ得ざることにして、物理學よりもエネルギー不滅則の存する限り、許すべからざること也、唯刺戟を緣とし、條件として精神作用起り來れりと云ひ得べきのみ、刺戟は固より物的作用なれば、直接に心的作用を惹起すること不可能なればなり、從て吾人精神の所在を説きて、腦神經にありと謂ふも、腦神經の物的作用が、即ち精神なりといふことを容さず、唯腦神經の物的變化が條件となりて、心意の作用を惹起すと謂ふべきのみ。
- 英
- Spirit; mind
- 独
- Seele; Geist
- 仏
- Espirit; Souffle
精神病者監護法
(せいしんびやうしやかんごはふ)明治三三年法律第三八號を以て公布せらるたる所に係り、其内容は、□一精神病者は、其後見人、配偶者、四親等内の親族又は戸主に於て、之を監護するの義務を負ふ、但し民法の規定に依り後見人たる事を得ざる者は、此限にあらず、監護義務者數人ある場合に於て、其義務を履行すべき者の順位は下の如し、但し監護義務者相互の同意を以て順位を變更することを得、イ後見人、ロ配偶者、ハ親權を行ふ父又は母、ニ戸主、ホ以上に揭げたる者にあらざる四親等内の親族中より親族會の選任したる者、□二監護義務者にあらざれば、精神病者を監置するを得ず、□三精神病者を監置せんとするときは、行政廳の許可を受くべし、但し急迫の事情あるときは、假りに之を監置することを得、此場合に於ては、二十四時間内に行政廳に屆出づべし、右假監置の期間は、七日を超ゆることを得ず、行政廳の許可を受けて、監置したる精神者の監置を廢止したる後、三ケ年内に更に之を監置せんとするとき、又は民法の規定に依り禁治産者を監置せんとするときは、行政廳に屆出づべし、□四精神病者監置の方法又は場所を變更したるときは、二十四時間内に行政廳に屆出づべし、□五監置したる精神病者の治癒し、死亡し、若くは行方不明となりたる時、又は其監置を廢止したるときは、七日内に行政廳に屆出づべし、□六精神病者を監置する必要あるも、監護義務者なき場合、又は監護義務者其職務を履行すること能はざる事由あるときは、精神病者の住所地、住所地なきと、又は不明なるときは、其所在地内市區町村長は、勅令の定むる所に從ひ之を監護すべし、□七行政廳は、精神病者の監護に關し必要と認むる時は監置の許可を取消し、監置の廢止を命じ、又は監置の方法若くは場所の變更を命ずることを得、監置の許可を取消され、又は其廢止を命ぜられたる者、監置を廢止せざるときは、行政廳は、直接に監置を廢止することを得、□八監護に要したる費用は、被監護者の負擔とし、被監護者より辨償を得ざるときは、其扶養義務者の負擔とす、市區町村長に於て監護する場合は、之が爲めに要する費用の支辨方法、及び其追徵力法は、行路病人及行路死亡人取扱法の規定を準用するものなり。
- 英
- Law of protecting of persons of hypochondria
- 独
- Wartungs-gesetz der Geisteskranken
- 仏
- Loi de la protection des malades hypochondriaque
政社
(せいしや)結社の一種にして、國家の政治に影響を及ぶすことを目的とするものを云ふ、政社は、政治に影響を及ぼすことを目的とするものなるが故に、政治に關する學理を研究するを目的とする結社、其他の公事を目的とする結社と異るは明也、例へば所謂政黨、其他政治に影響を及ぼさんとする期成同盟會の如きは政社の例なり。(舊集會及政社法一條、結社の部參照)
- 英
- Political association
- 独
- polit-ischer Verein
- 仏
- Association politique
正出
(せいしゆつ)正出とは、法律上適法なる婚姻に依りて生れたるを謂ひ、嫡出と云ふに同じとす、正出は、彼の私出に對し、私生系統に屬せざるを意味するものなり。
- 英
- Legitimate child
- 独
- eheliches Kind
- 仏
- Enfant légitime
正出子
正出子とは、適法なる婚姻に依りて生れたる子を謂ひ、嫡出子と云ふに同じ、正出子に對する者は、庶子、私生子にして、之等の子は、婚姻外に生れたる野合の子を意味するものとす。(嫡出子、庶子、私生子の部參照)
- 英
- Legitimate child
- 独
- eheliches Kind
- 仏
- Enfant légitime
生前行爲
(せいぜんかうゐ)生前行爲とは、其效力の發生が、當事者の死亡に關係せざる法律行爲を云ふ、死後行爲にあらざる行爲は皆之に屬す、例へば賣買、交換、賃貸借等の如き之なり、法律行爲の大多數は生前行爲なり、生前行爲が財産權の處分に關するときは、之を生前處分と云ふ。(生前處分部參照)
生前處分
(せいぜんしよぶん)法律行爲は、其死後に效力を生ずると、生前に效力を生ずるとに依り、之を別ちて生前行爲、死後行爲の二とす、普通の行爲は、多く生前行爲にして、遺言、死因贈與等は死後行爲とす、法律行爲は又之を別ちて、處分行爲と、然らざるものとになすことを得、生前行爲にして、然も處分行爲なるときは、即ち生前處分なり、之に對するものを死後處分となす、例へば等しく金錢無償の給付なるも、生前處分なるときは贈與となり、死後處分なるときは遺贈となるが如き是なり。(民四一條、及び生前行爲の部參照)
税則
(ぜいそく)租税の賦課、税率、及び徵收の手續等を定めたる法則を稱して税則と云ふ、地租條例、營業税法、所得税法、制茶税則の如き皆税則の一種なりとす。
- 英
- Law of tax
- 独
- Steuergesetz
- 仏
- Droit de l'impôt
生存競爭
(せいそんきやうさう)生存競爭とは、元來生物學上の用語にして、英のダーウイン始めて生物の進化を説くに當り、此生存競爭の理をも説きたり、其意義は讀んで字の如く、生物が各自其生存を全する爲めに餘儀なくせられて、又は無意識的に異種族間、又は同種族間に行ふ競爭を謂ふ、詳言すれば一般動植物が、其子孫の繁殖せんとして生出する其數は非常なるも、實際自然界を見るに其生存を全うし居るものは、之に比して增加の趣きなく、常に自ら一種の均衡を保つは何故ぞと云ふに、其多くは寒暑風雨の如き、氣候上の影響によりて死滅するか、或は他の生物の爲めに、直接間接に其生命を奪はるるか、食物の不足に依るか、其死狀は千態萬樣なれども、要するに生存の競爭に打ち負けて死滅するに依るなり、斯かる競爭の起る所以は、生物の繁殖力盛なるに、其繁殖生存する空間に限りありて、無限の生活の要求に應ずる能はず、從つて優勢なるものは、多數の他生物を其餌として、又は餌を獲られざらん爲めに殺害し、僅に殘存するものの間に於ても、尚此理由より甚しく、相爭はざるを得ざるによるなり、而して生物界の競爭は、單に故意の競爭のみに限らず、寧ろ偶然の競爭、無意識の競爭の方、遙に重大なる結果を來たすものなり、而して之に與るものは異種屬間なることあり、同種屬間なることあり、個體間なることあり、團體間なることあり、尤も意識的の競爭は、唯若干の高等動物間に行はるるのみにして、下等動物の大半と植物の全部とには、常に無意識的競爭行はれ、且つ高等動物といへども、無意識的に劇甚なる競爭をなしつつある也、而して異種屬間の競爭には、一方が直接に他方の食餌となる關係より行はるると、相互に其需要品を同じうするより行はるると、或は單に間接に行はるると、其他風土に關して行はるる等、其原因枚擧に遑あらざるも、槪して需要品を異にし、習性を異にするものは、接近して生殖するも、相犯すこと稀れなるのみならず、却て相補助し、繁殖を容易にし、盛ならしむることあり、是自然界の平均にして、要するに異種間の競爭は、甚しく劇烈ならざるのみならず、勝敗の數も、長時間に亘りて漸く決するものなり、又同種屬間の競爭も甚だ劇烈なるが、要するに形狀性質共に生存上優勝なるものが、競爭に打ち勝ちて自ら殘存し、而してこの生存に好適せる性質形狀は、遺傳によりて一代は一代より、其好適の度を增加し、代を重ぬるに從つて、終には非常の發達を遂ぐるに至る、尚同種屬間の生存競爭が、必ずしも個體間にのみ限らず、團體間にも行はる、然らば如何なる性質を帶びたる團體が勝利を得るかといふに、相當に多數なる個體間の間係親密にして、よく和衷協同し、共同の事業を分擔して、而して其各自の職分を盡くすもの、能く勝利を得べし、之に反し如何に個體の數多くとも、其間相互の關係疎遠にして、常に衝突し易く、互に其勞力を消し去る如き團體は、終に敗滅に歸すること之自ら明なる道理なり。
政體
(せいたい)政體とは、統治執行の形式を云ふ、即ち國家統治權の活動が、必ず一定の形式に依るが故に生ずる所の區別也、例へば獨裁君主は、其統治權を執行するに、常に自家の意思に依り、又立憲君主は、其統治權を執行するに、常に憲法に遵據す、前者は獨裁專制政體にして、後者は立憲政體なり。(新聞紙條例三二條、國體の部參照)
- 英
- System of Government
- 独
- Regier-ungssystem
- 仏
- Système du gouverne-ment
政黨
(せいたう)政黨とは、合同的政治運動により、政治上の目的又は策略を成就せんが爲め有意的に結合せる公民の團體を謂ふ、政黨は、總べての民主政體又は立憲政體の國家には、必ず存在するものにして、庶民政治に取りては、缺くべからざる要素なり、然れども政黨は、其成立上一定の意見を代表するものなるに、個々人の意見や、其全部に於て、常に必しも相一致せざるを以て、政黨は屢々小黨派に分裂するを免れず、然れども亦かかる黨派の分裂には、自ら一の自然的境界あり、即ち保守黨及急進黨の系脈之にして、其起原は國家社會の成立と殆ど同時にあり、而して政治上其目的の完全なる遂行に關しては、此兩傾向、即ち保守的精神、及び進取的精神の代表たる黨派の對立の間に、良好なる均衡の存在すること、最も望ましきことにして、又國家社會發達上、此兩派の公平なる對立は缺く可らざるものなるべし、斯く保守主義と進取主義とを代表する、保守黨と進步黨との兩派は、黨派を區別する上の最も普通的方法なるが、兩派の主張する政見は、常に必しも其字義の如くならず、時と所との事情により、問題の利害により、或は黨派の消長に關する上より旗幟常に鮮明を缺き、政黨の分界の分線混亂して、時に或は反對の現象を呈する事あるべし、英國の政黨の如きは、國會政治の高度に發達せし結果必須の機關として、確固たる黨派の組織をなし、之等は黨派自身政府の機關の一部をなし、而して其各黨派へ政略を提供し、其黨の指導する所の選擧に於て、推薦の上官吏的資格を承認せられたる首領を戴く等、特殊の性質を有す。要するに國民の有する意見の異同より、夫を代表する政黨の數個の黨派の分立を見るは免れざる所なるが、今大黨併立と小黨分立との其性質上、又價値上國家政治の上に如何なる利害を有するか、固より精密には特定の境遇を斟酌する必要ありと雖も、槪括的に論ずれば、意見の發表は、小黨群立を優れりとするも、意見の實行は、大黨併立を勝れたりとせざるべからず、實行は多數の團結の勢力に依らざるべからず、小黨分立は、政黨をして理論に奔り、責任を以て國政を辨ずるを疎んずるに至る弊あるを以て、大同を良とすと雖も、然かも其の數の單一なるは望ましきことにあらず、要は主として二個の堂々たる政黨あるを求むべし、固より其他に多少の小政黨の存在するを妨げざるのみならず、國民の重要なる部分が全く政黨以外に超然して、然かも國事に注意するは、強大政黨の弊を矯むるに於て最も必要なり、之二個の強大なる政黨の併存は、其利の大なるものあると共に、又其弊の恐るべきものあるによりてなり、又政黨其者より見るも、政黨は、政治上甚だ要用なる公民の團體として、其勢力運用は、一國の完全なる施政に、必須缺くべからざるものなるも、時に却て其運用の失當或は其勢力の誤用等より、國家施政の目的の上に大なる禍害を來たすこと往々にして之あり、啻に政治の上のみならず、一國風教の上に大なる害毒を流すことあるを以て、政黨の主張は、常に堂々たるものあるを要す。
正當防衞
(せいたうばうゑい)□一意義、正當防衞とは、急迫不正の攻擊行爲に對し、法律利益を防衞する爲め、已むことを得ずして害を攻擊者に加ふる行爲也、正當防衞は權利の實行なり、故に攻擊者の生活利益を害するも、之を以て違法となすこと能はず、從つて之が爲め犯罪を成立せしむる事なし、□二要件、正當防衞は、攻擊行爲を原因とし、之に對する防衞行爲を以て其實質とす、(甲)正當防衞の原因となるべき攻擊は、下の條件を具備せざるべからず、イ攻擊行爲は人類の行爲たることを要す、ロ攻擊行爲は不正なる事を要す、正當行爲に對して正當防衞なし、攻擊行爲は、客觀的に觀察したる違法の元素を具ふるを以て足り、其有責行爲たること、法の制裁を受くべき行爲たることを要せず、ハ攻擊行爲は、現在ならざるべからず、從つて未來に起るべき危害、擊攻行爲の已に終りたる後等は、正當防衞を行ふ事を得ず、ニ攻擊行爲は、刑法に於ては身體生命に對する危害、財産に對して放火其他暴行、盜犯防止、盜贓取還、夜間に於ける家宅侵入、又は門戸牆壁の踰越損壞等に對するものならざるべからず、之に反し民法に於ては斯る制限なく、一般に之を許す、(乙)正當防衞の實質となるべき防衞行爲は、下の條件を要す、イ防衞行爲は、攻擊者に對して行ふ事を要す、換言すれば防衞行爲は、攻擊者に對する攻擊なり、ロ防衞行爲は、自己又は他人の法律利益を完うするを以て目的とす、ハ防衞行爲は、止むを得ざるに出でたるを要す、換言すれば必要の程度を超越することを許さず、若し必要の程度を超えたるときは、情狀により減刑せらるる事あり、ニ防衞行爲は、刑法に於ては、暴行に對して、身體生命を防衞すること、放火其他の暴行若くは盜犯に對して、財産を防衞すること、夜間の家宅侵入若くは門戸牆壁を踰越損壞する行爲に對して、家宅の安全を保持する目的に出たることを要す、之に反し民法に於ては斯る制限なく、一般の不正行爲に對して之を行ふことを得。(刑三六、舊刑三一四條、民七二〇條)
- 英
- Legal defence
- 独
- Notwehr
- 仏
- Défence légitime
正當防衞權
(せいたうばうゑいけん)正當防衞は、之を客觀的に觀察すれば、不法行爲に似たるものなれども、何等法律上の制裁を受けず、即ち無罰行爲也、而して其法律上の根據如何、或は自然法に基くものとし、或は不法の侵害者は、自ら法律保護の範圍を脱するが爲なりと爲し、其他種々の説あるも、其説明不充分にして採用するに足らず、惟ふに正當防衞權は、權利の本質に基くもの也、抑も權利を有する者は、法律の範圍内に於て其不可侵を主張し、侵害を受くるに當りては、救濟の手段を有せざるべからず、保護することを得べきは、權利の本質也、而して法律は、一般の場合には、公力に訴へて其保護を全うせしむれば、一私人の腕力によりて自ら保護するを禁止す、されど危害急迫にして、公力の保護を俟つの遑なき場合に於ては、徒に手を空うして、害の至るを俟つことなく、違法なる侵害に對して防衞する所なかるべからず、是即ち正當防衞權を認めたる所以なり。
- 英
- Right of legal defence
- 独
- Notwehrrecht
- 仏
- Droit de la défence légitime
政治學
(せいぢがく)國家の起源、組織、性質及其生活に關する、一般問題を講究する社會に關する學の一部門也、即ち憲法上の形體、政治的活力、國家行政法等を研究し、健全なる法律又は政治的行動の標準を闡明するを以て其目的とす、換言すれば國家生活の一般法則を講究し現代の政治的生活力、形式實際等を理解して政治的行動の根底標準を作るを目的とす、故に政治學は應用科學といふ事を得べく、別言すれば規範的科學なり、即ち可成的最も完全なる科學的智識の基礎の上に、最も善良なる政治的行動の方法を制定せんとするものなり、而して政治學の他の社會科學と異なる所は、一定の機能を有する有機的個體が、其權威を以て、其命令を強ふる其現在の事實を研究するにあり、即ち有機的團體が有する權威を如何にすべきか、如何にして其權威を維持運用すべきか、秩序ある政府を立てんには、如何にして權力を統御すべきか、一般公衆の意見を如何にして整理すべきか、統御の中心は如何にして制定すべきか、國家の内部及び外部より起る禍に對しては、如何にして國家の成立を守るべきか等の如き、政治的事實を討究問題とす、而して國家生活の動的方面を論究する場合には、外交即ち國際政治政黨問題、其他政府の所有創生的活動を以て其研究事項とす、即ち代議士を選擧し、政黨を作り、行政官の候補者を選定し、法律を制定、變更し、外國と條約を締結する等は、國家の動的方面なり、之に反し國家生活を靜的として見る事を得、即ち國家は、一定の永久的形式によりて成立し、一定の法律に從て統轄せらるるもの也、此場合に於ては、國家は單に市民の安寧幸福を企圖する所の共和政體として見らる、國際法、憲法、行政法、法理學等は重なる研究問題にして、此場合に於ける國家生活は其狀態一定し、唯圓熟せる權威に依て圓滿なる運轉をなし、政權の紛爭等の爲に、直接に其圓滑なる運用を阻碍せらるることなし、然れども現今に於ては政治學の實際問題中、公民の代表者即ち國會が如何なる程度まで、行政の上に容喙するを以て利とするかてふ問題を以て最も重要なるものとす、如上の動的政治と靜的政治との兩面を包括して、完全なる政治學の原理、即ち政治哲學を立する事を得、是即ち國家の性質に就きて、全般の問題を論究する所のもの也、又政治學と密接なる關係を有するものに政治的倫理學あり、之は國家の組織、及び政治的行動の理想極致とする所を討究するものなり、左に政治學の一般分類を記すべし、動的政治學、□一外交政策即ち國際政治、□二政黨政治、□三比較法制、□四内治及び行政政策、靜的政治學、□一憲法、□二國際法、□三行政法及び政治技術、□四制度の比較研究、□五法理學、一般的及び規範的政治學、□一政治原論、□二政治的倫理學これ也。
製茶税
(せいちやぜい)廣く茶製造業者に附加する租税を製茶税と云ふ、現時に於ては臺灣に於て製茶の營業者に課するのみ、即ち製茶百斤に付き、二圓四十錢の税率にて之を賦課せり。(製茶税則一條)
製茶税則
製茶税則は、製茶税賦課及徵收手續並其税率を定めたる法則なり。(二九年臺灣律令九號)
- 英
- Rule of tax of tea-curing
- 独
- Theesteuersordnung
- 仏
- Regle de l'impôt sur le thé
制定
(せいてい)新に法規を設くることを制定と謂ふ、例へば法律、命令等を新に規定して定むるが如き之なり、然れども法令は、制定に依りて效を發するにあらず、其公布實施に依りて效を生ずるものとす。(法制局官制一條二項)
- 英
- Enactment
- 独
- Erhebung zum Gesetze
- 仏
- Etablissement de loi
成丁者
(せいていしや)成年に達したる者を謂ひ、之に反するものを未丁年者と謂ふ、比較的新しき立法に於ては、成丁者、未丁年者に代ふるに、成年者、未成年者の語を以てせり、成丁者なる語は、民事訴訟法に用例存す。(民訴五三七條)
- 英
- Adult
- 独
- Erwachsene
- 仏
- Adulte
制定法
(せいていはふ)自然法又は性法に對する語にして、一に之を人定法とも云ふ、制定法、自然法の區別は、自然法學派の認むる所也、其説に曰く、自然法とは、天理人性に基きて自然に定まりたる法を云ひ、制定法とは、主權者が社會の生存に必要なりとして、直接間接に制定し、承認したる法を云ふ、即ち自然法は、天理人性に基きて定まりたるものなるが故に、人々不知不識の間に於て其支配を受け、遠く原始の時代より既に行はれたるものなり、然れども制定法の如く、明確に定まりたるものあらざるを以て、裁判官が之を適用するに當りても、必ずしも一途に出づることを保し難し、彼の明治八年の布告、裁判事務心得に「明文なき場合には慣習に依り、慣習なき場合には條理に依るべし」と云へる、所謂條理とは、此自然法を意味するに外ならず、而して如何なるものが條理即ち自然法なるかは、一に裁判官の認定によるの外なし、之を以て社會の進步するに從ひ、自然法の部分漸く減じて、制定法之に代るの傾向あり、自然法制定法の區別を認めざる、歷史法學派は之に反對して、法は歷史上の産物とし、各時代の必要に應じて發生するものにて、萬世不易なる自然法なるものは、存在するものにあらずと、自然法派に優ること勿論也、然れども自然法派も絶對に排斥する事を得ざるが如し、歷史法學派は、法は時代の必要に應じて發生するものなりと云ふも、其必要なるものが何れの國、他れの時代を問はず、常に同一樣に認めらるることあり、例へば人を殺すべからず、他人の物を盜むべからず、人と約したることは之を守らざるべからず、此等の原則は單純に歷史上の産物とのみ見るべからず、人類の創生と共に認められ以て今日に至り、尚將來永却萬年の後迄も變ることなきものと云はざるべかず、換言せば天理人性に基きて、自然に生じたるものなりと云ふも不可なければなり、私かに思ふに、自然法なるものは、其名稱に於て頗る當を失するに似たるも、其精神に至りては決して消滅する事なかるべし、自然法が認められて制定法となるも、其精神に至りては、則ち依然として存在なするものなりと云はざるべからずと信ず。
- 英
- Artificial law
- 独
- positives Recht
- 仏
- Droit artificiel
製鐵所官制
(せいてつじよくわんせい)明治三二年勅令第三〇七號を以て公布せられたる處にして、□一製鐵所は農商務大臣の管理に屬し、鋼鐵製造の事を掌る、□二製鐵所に下の職員を置く、イ長官一人勅任、ロ書記官專任二人奏任、ハ事務官專任三人奏任、ニ技師專任三〇人内一人は勅任とす、ホ書記專任六四人判任、ヘ技手專任百人、□三長官は農商務大臣の指揮監督を承け、所中一切の事務を總理し、部下の職員を指揮監督す、長官は奏任官の進退は之を農商務大臣に具狀し、判任官以下の進退は之を專行す、□四書記官は長官の命を承け所務を掌る、事務官は上官の命を承け、庶務に關する事務を掌る、技師は上官の命を承け、技術に關する事務を掌る、書記は上官の指揮を承け庶務に從事す、技手は上官の指揮を承け、技術に關する事務に從事す□五、製鐵所に下の諸部を置く、イ工務部、ロ製銃部、ハ製鋼部、ニ製品部、ホ經理部、各部に於ける事務の分掌は、農商務大臣之を定む、□六農商務大臣は所中に課を置く事を得、□七製鐵所に技師長を置き、勅任技師を以て之に充つ、技師長は長官の命を承け、技術官を指揮監督し、技術に關する事務を掌理す、□八各部に部長を置き、工務部、製鐵部、製鋼部、製品部に在りては技師、經理部に在りては書記を以て之に充つ、部長は上官の命を承け、部下の官吏を監督し、所部の事務を掌理す、□九農商務大臣は、製鐵所豫算定額内に於て、製鐵所出張所を設置することを得、出張所所管の事務は、農商務大臣之を定むるものなり。
正條
(せいでふ)制定法に於ける條項を云ふ、所謂明文と云ふに同じ、明定せられたる法規の條項を意味する語なりとす、抑も條項は、或事柄に就きて規定せられたるものなれば、茲に正條と云へば、明かに明文を以て規定せられたる事柄と云ふべし。(舊刑二條)
- 英
- Express provision
- 独
- Anordn-ung
- 仏
- Disposition
成典
(せいてん)成文の法典を意味し、彼の不文法典又は慣習法に對するの語とす、成文法典は、現時に於ては其多數を占む、現行民法、刑法、憲法等之に屬す、之に反して彼の國際法の如きは不文法にして、成典にあらざるが如し。(不文法の部參照)
- 英
- Code of written law
- 独
- Gesetz-buch
- 仏
- Code des droits écrits
世傳御料
(せいでんごりやう)皇室に屬する財産にして、世々傳へさせ給ふべき土地其他の物件を謂ふ、世傳御料に編入さるべき土地物件は、樞密顧問に諮詢し、勅書を以て定めらるべきものにして、分割讓與することを得ざるものなり。(典範四六條)
青銅貨幣
(せいどうくわへい)貨幣の成分が青銅なるものを青銅貨幣と云ふ、而して其成分は、銅九百五十分、錫四十分、亞鉛十分の割合なり、青銅貨幣には一錢と二錢と五厘との三種あり、されど現時は一錢と五厘とに限り之を鑄造す、而して一錢は量目一匁九分〇〇八にして、五厘は九分五厘〇四とす、青銅貨は一種の補助貨幣として、一圓を限り強制適用の力を有するものなり。(貨幣法五條)
- 英
- Bronze coin
- 独
- Bronze-münze
- 仏
- Monnaie du bronze
成年者
(せいねんしや)成年者とは、成年に達したる者を云ふ、元來年齡未だ至らざる幼者は、其智識身體と共に發達不完全にして、自己の利害、善惡の判斷を充分に辨別する能はざるが故に、之を完全なる者と共に一律にして斷ずべからざるもの也、之各國法制の成年なる制度を設くる所以にして、所謂成年とは、一定の年齡を定めて、其年齡に達せざる者は行爲に關する利害、善惡の辨識力なきものとし、之に達せるものを辨識力の完全なるものと見做す制度なり、我國に於ては、此年齡を滿二十歳とし、唯天皇、皇太子、皇孫に限り滿十八年を以て成年とせり。(民四條、典範一三條)
- 英
- Adult
- 独
- Erwachsene
- 仏
- Adulte
税法
(ぜいはふ)租税の賦課徵收は法律を以てすべきものにして、其賦課の義務、税率、徵收の手續を規定したる法律を税法と云ふ、税則と云ふも略同義とす、例へば所得税法、營業税法、酒造税法、相續税法の如し。
- 英
- Law of tax
- 独
- Steuerrecht
- 仏
- Droit de l'impôt
靜謐
(せいひつ)公の秩序を意味し、即ち國家の秩序靜にして謐なるを云ふ、之を害するは一種の犯罪にして、現行刑法は、靜謐を害するの罪を左の數種となす、□一兇徒聚衆の罪、□二官吏の職務を行ふを妨害するの罪、□三囚徒逃走の罪、□四罪人藏匿の罪、□五附加刑の執行を遁るるの罪、□六私に軍用の銃礮彈藥を製造し及び所有するの罪、□七從來通信を妨害するの罪、□八人の住所を侵すの罪、□九官の封印を破棄するの罪、□十公務を行ふを拒むの罪之也(舊刑二編三章)
- 英
- Public peace
- 独
- öffentliche Sicherheit
- 仏
- Sûreté publique
政府
(せいふ)政府とは、政治の府を謂ふ、元來國家の行爲は之を別ちて、立法司法行政となすを普通とす、而して之を統ぶる國家行爲は即ち政府作用也、我が國に於て大權作用と云ひ、西歐の國に於て政府行爲と云ふものは是なり、斯かる政治を掌る府は即ち政府也、彼の條約に於て、大日本帝國皇帝陛下の政府と云ひ、北米合衆國政府と云ふが如きはこの意味にして、これ政府の正當の用法なりとす、此意味に於ては、天皇の補弼の責に任ずる國務大臣、天皇の諮詢に應ずる、樞密顧問の如きは此機關なり、然るに現時の法令に於て、又は俗用に於て、政府を解して最高行政府となし、或は一般行政に關する機關となす、是行政官廳と政府とを混同するもの也、酒造税法、煙草專賣法等に於て政府と云ふは、即ち行政官廳を指すものにして、正當の用法にあらざる也、憲法に政府と云ひ、刑法に政府と云へるは、此意義にあらずして、即ち政治の府を指すもの也。(憲法八條二項、七二條、舊刑一二一條、日米通商條約附屬、議定書第二、酒造税法二條、一三條、醬油税法一條、葉煙草專賣法一條等)
- 英
- Government
- 独
- Regierung
- 仏
- Gouvernement
政府委員
政府委員とは、議會に於て、國務を審議する場合に、政府の代表者として議場に列席し、政府案の説明答辯を爲し、又議會の提出したる議案に對して、政府を代表して贊否を表する等の職務を採るものを云ふ。(憲五四條)
- 英
- Government committee
- 独
- Vertreter von der Regierung
- 仏
- Comités du gouvernement
政府紙幣の交換基金
(せいふしへいかうくわんききん)紙幣交換基金特別會計法に基き、政府紙幣の償還、及之を廢止するの目的を以て設定せられたる交換基金にして、即ち當時政府所有の準備金一千萬圓を以て之に充て、尚二千二百萬圓を限り、日本銀行より借入れ、交換基金に組入るべきことを定む。(二三年法二四號、二三年法五六號、二三年勅六八號參照)
- 英
- Fund of exchange of government currency
- 独
- Tauschfond des Staatspapiergeldes
- 仏
- Fonds du change des papier-monnaies du gouverne-ment
成文法
(せいぶんはふ)成文法と云ひ、成文律と云ふ、等しく制定せられたる法律を意味し、彼の不文法、不文律たる慣習法に相對す、制定法と云ふも同義也。(習慣法の部參照)成文法典とは、文書を以て公布せられたる法典を云ふ、現行の民法典、商法典の如きは之也。成文律、(成文法)につきて見られよ。
- 英
- Positive law
- 独
- Statut
- 仏
- Droit positif
成文法典
- 英
- Code of written law
- 独
- Statutenbuch
- 仏
- Code des lois écrites
成文律
- 英
- Statute law
- 独
- Statut
- 仏
- Statute
正本
(せいほん)正本とは、謄本の一種にして、法律界に於ては、原本に代えて、原本と同一效用を爲すべき事を法律上定められたる謄本にして、法律に定めたる者が法律に定めたる方式に準據して作製するものを云ふ、例へば判決の正本の如し、或は文書の正副の二通を作製せる場合に、一の副本に對して正本と唱ふることあり。(刑訴二一條、戸籍法一一條)
- 英
- Authentic writing
- 独
- authent-ische Schr ift
- 仏
- Ecriture authentique
税務
(ぜいむ)租税の賦課、徵收に關する行政事務を稱して税務と云ふ、元來租税の賦課は、必ず法律に基くを要するものにして、收税官吏は法律に基き賦課徵收すべき税額を決定し、之に基きて徵税令書を發するものとす、或は地租の如きは、市町村に委任して之を徵收す、此手續に關する一切の事務は税務也。(國税徵收法二六條、大藏省官制五條)
- 英
- Tax business
- 独
- Steuergeschäft
- 仏
- Affaires de l'impôt
税務監督局官制
(ぜいむかんとくきよくくわんせい)税務監督局の組織權限を定めたる命令にして、□一税務監督局は、大藏大臣の管理に屬し、内國税に關する事務を監督する官府とす、□二各税務監督局を通じ左の職員を置く、イ局長一八人、奏任、ロ事務官專任五九人、奏任、ハ税務屬專任四〇〇人、判任、ニ技手專任一〇〇人、□三局長は大藏大臣の指揮の下に、其管轄内に於ける内國税の事務を管理し、税務署長を指揮監督するもの也、而して局長は税務署長の處分法律命令に違犯すと認むるときは、之を取消すの權を有し、又部下の官吏を監督し、其判任官の任免を大藏大臣に具狀するものとす、□四事務官は、各局に分屬して局務を掌る、□五税務局は、上官の指揮を受け庶務に從事し、□六技手は、上官の指揮を受けて技術に關する事務に從事す、□七現時税務監督署の所在名稱及管轄區域を擧ぐれば左の如し。
名稱位置管轄區域
札幌税務監督局札幌北海道
東京同東京東京府、埼玉縣、千葉縣、山梨縣、
京都同京都京都府、滋賀縣、
大阪同大阪大阪府、奈良縣、和歌山縣、
橫濵同橫濵神奈川縣、靜岡縣、
神戸同神戸兵庫縣、岡山縣、
長崎同長崎長崎縣、佐賀縣、
長野同長野新潟縣、長野縣、
宇都宮同宇都宮栃木縣、茨城縣、群馬縣、
名古屋同名古屋愛知縣、三重縣、岐阜縣、
仙臺同仙臺宮城縣、巖手縣、福島縣、
秋田同秋田青森縣、秋田縣、山形縣、
金澤同金澤石川縣、福井縣、富山縣、
松江同松江島根縣、鳥取縣、
廣島同廣島廣鳥縣、山口縣、
丸龜同丸龜香川縣、德島縣、高知縣、愛媛縣、
熊本同熊本熊本縣、福岡縣、大分縣、
鹿兒島同鹿兒島鹿兒島縣、宮崎縣、沖繩縣
(三五年一〇月勅二四一號)
- 英
- Government organi-zation of overseer bureau of tax
- 独
- Behördeordnung des Steuerverwaltungs-bureaus
- 仏
- Organisation du bureau de la surveillance de l'impôt
税務署官制
(ぜいむしよくわんせい)税務署の組織、權限を定めたる命令にして、□一税務署は、大藏大臣の管理に屬し、内國税に關する事務を執行する官府とす、□二各税務署は全國を通じて五百十三とし、各税務署を通じて左の職員を置く、税務官七十五人、奏任とす、税務官吏四五一四人、判任とす、技手專任二百人、□三税務官は、署長となる、但し税務官を置かざる署にありては、税務屬を以て之を代用す、而して署長は、税務監督局長の指揮監督を受け、内國税に關する法律命令を執行し、其管内の事務を管理し、部下の官吏を監督す、□四税務屬は其署長たる者を除く外、署長の指揮を承け、庶務及び檢査に從事し、技手は署長の指揮を承け技術に關する事務に從事す。(三五年一〇月勅二四二號)
税務屬特別任用令
(ぜいむぞくとくべつにんようれい)明治二九年勅令第三四五號を以て公布せられたる命令にして、税務屬の特別任用に關する事項を規定したる者なりしが、三五年一〇月勅二四九年を以て廢止せられたり、依て茲には三五年勅令第二四九號税務屬特別任用に關する件を説明せん、□一二九年勅令第三四五號に依りて税務屬に任用せられたる者は、現時に於ても尚税務屬に任用する事を得、□二税務管理局(現今は税務監督局なるものあるも、税務管理局なるものなし)の雇たりし者にして、三五年現在税務監督屬又は税務署の屬となる者は、續勤者として文官任用令に依り、特別任用を爲す事を得るなり。(三五年一〇月勅二四九號)
- 英
- Ordinance of special appointment of petty officers of tax office
- 独
- Anordnung der Specialanstellung der Untersteuerbeamten
- 仏
- Ordonnance de la nomination spéciale des officiers du bureau de l'impôt
生命刑
(せいめいけい)生命刑は、即ち死刑にして、犯人の生命を奪ふの刑罰を云ひ、國事犯、非國事犯の重罪に科すべき極刑なり、□一普通刑法に於て、死刑に處すべき場合下の如し、イ天皇、三后、皇太子に對し、危害を加へ、又は加へんとしたる罪、ロ皇族に對して危害を加へたる罪、ハ内亂罪の首魁、教唆者、ニ敵國に與して本國に抗敵し、文は軍用に供する物件を敵國に交付する罪、ホ兇徒多衆暴動の際、人を殺し、又は家屋、船舶倉庫等を燒棄する罪、ヘ謀殺既遂罪、ト慘酷の所爲を以て犯したる故殺既遂罪、チ重輕罪を犯すに便利なる爲め、又は犯したる罪を免るる爲め犯したる故殺既遂罪、リ直系の尊族に對する殺人既遂、及び毆打致死罪、ヌ強盜人を死に致したる罪、ル人の住居したる家屋、人を乘載したる船舶、汽車に對する放火既遂罪、ヲ人を乘載したる船舶覆沒し人を死に致したる罪、ワ治安を妨げ、又は人の身體財産を害せんとする目的を以て、爆發物を使用し又は使用せしめたる罪、□二死刑は、獄内に於て絞首して之を執行す、若し一度絞首せるも蘇生するときは、再び絞首して之が生命を絶つ、而して司法大臣の命令あるにあらざれば、之を行ふことを得ざるものとす。(刑一一條)
- 英
- Capital punishment
- 独
- Todesstrafe
- 仏
- Peine capitale
生命權
(せいめいけん)生命權は、人格權の一種にして、自己の生命を保全するの權利なり、法律は、正面より人に其生命を保全するの權あることを規定せず、されど人に其生命を保全するの權は自明の理にして、法律も他人の身體生命を害したる者は、之が損害賠償の責あること、並に刑罰を科することを規完せるを見るも、人に生命權あるや明なりとす、(民七〇九條乃至七一一條、刑一九九條乃至二〇三條及人格權の部參照)
- 英
- Right of life
- 独
- Lebensrecht
- 仏
- Droit de la vie
生命保險
(せいめいほけん)當事者の一方が相手方、又は第三者の生死に關し、一定の金額を支拂ふべきことを約し、相手方が之に報酬を與ふることを約する契約也、而して生命保險の法律上の構造に就きては、學説區々として未だ其揆を一にせす、之を大別するときは二となる、□一保險説、生命保險を一種の保險なりとするの説にして、分れて、イ損害保險なりとする説、ロ貯金と保險と混合せるものなりとの説、ハ特種の保險なりとの説となる、我商法此の特種の保險説を採れるものの如し、□二非保險説、生命保險は嚴格に云へば、危險の觀念なく、從つて損害分擔の問題あるべきにあらず、故に保險の一種にあらざるもの也となす説にして、別てば、イ金額支拂の契約に過ぎずとなすの説、ロ金額仕拂買入説、ハ射倖的貸借説、ニ貯金契約説、ホ信用契約説、ヘ備蓄契約説、ト投資契約説等となる、知るべし、生命保險の性質に就いては、未だ定説として見るべきものあらざるを、而して我商法は、前説の如く、生命保險を以て、損害保險と相幷びて保險の一種となしたること明なり。(商四二七條及び保險の部參照)
- 英
- Life insurance
- 独
- Lebensver-sicherung
- 仏
- Assurance sur la vie
生命保險會社
(せいめいほけんくわいしや)生命保險の保險者たるべき會社を生命保險會社と云ふ、保險業法に依れば、保險事業は、株式會社又は相互會社にあらざれば、之を營むことを得ざるを以て、保險契約の當事者たる保險者と云へば、常に保險會社にして、生命保險に於ては生命保險會社とす、保險會社は、其株式會社たると相互保險會社たるとを問はず、損害保險と生命保險との兩保險業を兼ぬることを得ざるものなり。(保險業法二條以下、三三年臺灣總督府令二三號)
- 英
- Life insurance company
- 独
- Lebensassekuranzgesellschaft
- 仏
- Compagnie de l'assurance sur la vie
生命保險證券
(せいめいほけんしやうけん)生命保險證券は、生命保險の保險者が、保險契約者の請求に因り交付すべき證券を云ひ、特に當事者の意思表示を以て定めたるときは格別、然らざるの場合は有價證券にあらず、生命保險證券は左の事項を記載して、保險者之に署名するを要す、□一保險の目的、□二保險者の負擔したる危險、□三保險金額、□四保險料、及び其支拂方法□五保險期間を定めたるときは、其始期及び終期□六保險の契約者の氏名、又は商號、□七保險契約の年月日、□八保險證券の作成地及び其作成の年月日、□九保險契約の種類、□十被保險者の氏名、十一保險金額を受取るべき者を定めたるときは、其者の氏名、及び其者と被保險者との親族關係事項之也、以上の記載は、要するに最少限度に外ならざるを以て、其以外別段の事項を定め、之を記載するも其性質を害するものあらず、實例に於ては此他保險契約に關して、詳細なる事項を記載するを例とす。(商四〇三、四三〇條)
- 英
- Policy of life insurance
- 独
- Lebenspolice
- 仏
- Police d'assurance sur la vie
税目
(ぜいもく)租税の種目を稱して税目と云ふ、營業税と云ひ、所得税と云ひ、酒造税と云ひ、地租と云ひ、各租税の一目を爲すなり。(市制九〇條、町村制九〇條)
- 英
- Class of taxes
- 独
- Steuersklasse
- 仏
- Classe des impôts
整理公債
(せいりこうさい)整理公債條例に準據して、從來發行の六分利附以上の内國債を償還整理するが爲めに募集したる公債を稱して、整理公債と云ふ。(整理公債條例一條)
- 英
- Redemption loan bond
- 独
- Tilgungsanleihe
- 仏
- Bon de la rédemp-tion
整理公債條例
(せいりこうさいでうれい)明治一九年勅令第六六號を以て、公布せられたる命令にして、□一整理公債は從前發行の六分以上利附の内國債を償還整理するが爲めに、募集するものとす、□二整理公債は、一億七千五百萬圓を限り、大藏大臣財政の便宜を計り、漸次之を募集するもの也、□三整理公債利子の割合は、一ケ年百分の五とす、□四整理公債に對し發行する證書は、無記名利息附にして、五千圓、千圓、五百圓、百圓、五十圓の五種とす、但し應募者又は所有者の望により、記名とする事を得、□五整理公債元金は募集の年より五ケ年据置き、其翌年より向五十ケ年間抽籖法を以て償還するものとす、但し償還金額は其時々大藏大臣之を定め、豫め告示すべし、□六整理公債元金償還の爲め抽籖を爲すときは、日本銀行本店に於て、大藏省官吏三名以上、會計檢査院官吏二名以上、日本銀行役員二名立會の上之を執行す、但し整理公債證書三十萬圓以上を有する者は、抽籖に臨席する事を得、抽籖の後は日本銀行をして、當籖證書の記號、番號、種類及金額を廣告せしむるもの也、□七整理公債の利子は、每年六月一二日に於て支拂ふものとす、□八整理公債證書の利札は、利子請取の時其所有者各自之を裁斷して、日本銀行本支店又は代理店に持參すべし、九無記名證書を記名に變換せんとするものは、其請求書に戸長の奥書を受け、證書を添へ、日本銀行本支店又は代理店を經由して大藏省に申出つべし、□十記名證書の賣買讓渡を爲したるものは、双方連署の請求書を、日本銀行本支店又は代理店に差出し、名前書換を請ふべし、十一整理公債證書を汚染又は毀損したるときは、日本銀行本支店又は代理店を經由して、其證書を大藏省に差出し、代證書の交付を請求することを得、大藏省に於て其眞正を鑑別し得べきものには、代證書を交付し、鑑別し難きものには、其取扱總べて紛失證書の例に準ぜしむるもの也。
- 英
- Regulation of redemption loan bond
- 独
- Anordnung der Tilgungs-anleihe
- 仏
- Règles du bon de la ré-demption
税率
(ぜいりつ)租税單位に對する税額の步合を税率と云ふ、例へば地價百分の五、從價二割と云ふが如し。(營業税法一二條)
- 英
- Rate of tax
- 独
- Tarif
- 仏
- Tarif
成立要件
(せいりつえうけん)成立要件と云ひ、成立要素と云ひ、義に於ては即ち一也、或事頂の成立に缺くべからざるものを謂ふ、例へば婚姻には當事者双方に婚姻の意なかるべからず、之即ち婚姻成立要件の一なり、犯罪には故意過失を要す、之即ち犯罪成立の一要素なるが如き是也。
- 英
- Condition of consistence
- 独
- Bestandteil
- 仏
- Element de la consistence
成立要素
- 英
- Condition of consistence
- 独
- Bestandteil
- 仏
- Element de la consistence
整理地登記規則
(せいりちとうききそく)明治三三年勅令第二號を以て公布せられたる命令にして、□一耕地整理法により整理地區に編入したる土地の登記に就きては、本令に別段の定あるものを除く外、不動産登記法の規定による、□二整理を施行したる從前の土地既登記なるときは、整理委員は、耕地整理法により、其認可ありたることの公告及通知をし爲たる後、遲滯なく登記を申請することを要す、從前の土地數個に對し、一個の換地を交付したる場合に於て、其數個の土地中に既登記のものあるとき、又は從前の土地未登記なるも、整理施行の後、換地の上に既登記の地役權存續するとき又同じ、□三以上の登記を申請するには、下の書面を提出する事を要す、イ申請書、ロ耕地整理法の規定による、農商務大臣の認可證又は認證ある認可の謄本、ハ整理確定圖、ニ代理人により登記を申請するときは、其權利を證する書面、□四申請書には下の事項を記載し、整理委員又は其代理人之に署名捺印する事を要す、イ從前の土地及換地の所在の部、市、區、町、村及土地の番號、ロ從前の土地及換地の地目段別又は坪數、ハ從前の土地に割當てたる換地の處分、段別又は坪數及び其部分の符號、ニ換地の交付を受けたる者の氏名及住所、若し法人なるときは其名稱及事務所、ホ耕地整理に由り登記を申請する旨、ヘ登記所の表示、ト年月日、□五從前の土地既登記なると未登記なるとを問はず、換地の上に既登記の地役權存續する場合に於ては、申請書に前上に揭げたる事項の外、下の事項を記載する事を要す、但し地役換地の一部のみに存するときは、其部分を表示したる圖面を添付することを要す、イ整理施行前に於ける換地の所在の郡、市、町村、字及土地の番號、ロ整理施行前に於ける換地の地目、段別又は坪數、ハ整理施行前に於ける換地の所有者の氏名及住所、若し法人なるときは其名稱及事務所、ニ地役權の存する換地の部分及其部分の符號、□六換地の一部所有權以外の權利(地役權を除く)の目的たる場合に於ては、申請書に第四に揭げたる事項の外、權利の目的たる換地の部分、及び其符號を記載することを要す、以上本規則の大要なり。
- 英
- Rule of registration of the ground to be cultivated
- 独
- Regist-rirungsregel des Landgutes
- 仏
- Règles de l'enregistrement de la terre cultivée
整理地登記取扱手續
(せいりちとうきとりあつかひてつづき)明治三三年司法省令第九號を以て公布せられたるものにして、□一整理地登記規則に依る登記に就きては、本令に別段の定あるものを除く外、不動産登記法施行細則の規定に依る、□二整理地の登記に就ては、別に整理地登記見出帳を備ふべし、整理地登記見出帳は、別記雛形に依り調製すべし、□三整理地登記見出帳には、豫め一の部より九の部迄を設け置き、整理地登記規則に依る登記をなす每に、換地の番號の頭字に依り、相當の部(十百千の數を冠するものは、一の部に記入するの類)に、換地の番號、從前の土地の番號、登記用紙を編綴せる登記簿の冊數、丁數及び登記番號を記入すべし、前項の記入を爲したるときは、土地登記見出帳又は土地分合登記見出帳の備考欄に、從前の土地に對する換地の番號を記入し、其見出を朱抹すべし、□四整理確定圖及び整理地登記規則により提出したる圖面には、申請書受付の年月日、受付番號、及び登記番號を記載すべし、前上の圖面には、番號を附し、便宜之を整理し、申請書受附の日より十年間之を保存すべし、□五整理確定圖の番號は、登記用紙中表示欄に爲したる登記の末尾に之を記載し、整理地登記規則に依り提出したる圖面の番號は、丙區事項欄に爲したる登記の末尾に之を記載すへし、□六整理地登記規則に依り提出すべき圖面には、換地の所在の郡、市、區町村、字、土地の番號、方位及び地役權の存する換地の部分の段別又は坪數に、其部分の符號を記載して整理委員署名捺印すべし、□七整理地登記による通知事項、通知を受くる者及び通知を發する年月日は、不動産登記法施行細則所定の通知簿に之を記入し、通知書と契印すべし、□八耕地整理法の規定に依る登記簿、其他附屬書類の謄寫を求むるときは、登記官吏の面前に於て之を爲さしむべし。
整理地登記見出帳
區裁判所
換地ノ番號
換地ノ符號
從前ノ土地ノ番號
登簿記ノ冊數
登記簿ノ丁數
登記番號
土地異動通知書ノ冊數丁數
備考
一ノ部
以上の規定をなしたるものなり。
- 英
- Process of treat-ment of the registration of the ground to be cultivated
- 独
- Behandlungsverfahren der Landgutsregistrirung
- 仏
- Progrès du traitement de l'enregistrement de la terre cultivée
精力主義
(せいりよくしゆぎ)又勢力主義、活動主義、生々主義ともいふ、道德の最高標準たる至善を以て社會の安寧にありとし、之を實現せん爲めに、人類一般身體的能力と、精神的能力とを圓滿に活動せしむる事を期す、倫理學史上此精力主義は、獨逸のパウルゼン教授に至りて大成せらる、倫理思想の二大系統に屬する快樂説に對し、絶對理想に據りて説を立したるもの也、蓋し快樂説は、其究極する所、性欲を滿し、徒食するを以て至善とするに至らん、然れども、之人間生活の眞相を穿てるものにあらず、所詮快樂は、吾人の心身の圓滿に調和せる活動に伴生する結果にして、かかる活動こそ吾人の至善とすべきものならめと、即ち社會の安寧といふも、一言にして云へば、吾人の生活機能を正當に營むと云ふことにあり、吾人の精神が動物欲に阻碍せられず、自由に、十分に、自家の發展を遂ぐるが如きも其一なり、而して精力主義より見たる個人と國民と全世界との關係、及び之より生ずる道德的價値の問題に就ては、又前述の意義を敷衍したるのみ、即ら圓滿なる個人生活は自家目的なり、されど之と同時に又國民的生活、全般社會生活の一員として、從つて其等の手段となると、茲に於て國民の一員としての個人の道德的生活を向上するは、個人が國民生活に對して盡くす所以にして、更に一層廣濶なる見解より、國民各個がまた一層高等なる統一を期する爲めの一員として、將た世界の人類の一員として、仁慈の觀念より、社會及び人類全般の安寧を計るは、軈て吾人々生の最終目的たる至善其ものを企圖するに他ならず、茲に於て國民の目的とすべき最高道德の標準は、基督の所謂地上に天國を敷くにあり、個人の目的とすべき最高道德の標準は、彼等が人類として仁慈の觀念を何程まで發展し、表象せるかによりて決せらる、然れども文明が、假令如何なる程度にまで進むも、仁慈の觀念は竟に人類の理想に止まりて、之を具象的に實現せんこと、到底覺束なし、蓋し理想は其の本來の價値ある特質として、實現せらるると共に從つて進むを以て、竟に之を實現すること能はざればなり、故に人生の理想は、唯吾人の不斷の精進により、活動的生活の上に、普遍的槪念的に其輪廓を描き得べきのみ、此理想、或は神と稱すべし、吾人の活動精進の最高理想にして、且つ彼れ自ら最大活動を表象せるものなり、故に神即ち至善の生活内容は、唯宗教と藝術とによりて、譬喩的に感得せらるるのみ、要するに精力主義は、吾人の一切の道德的材能を、圓滿に調和的に活動運用することに依りて、個人國家及び全社會の安寧幸福を企圖する一種の倫理主義なり。
小學校令
(せうがくかうれい)明治三三年勅令第三四四號を以て公布せられたるものにして、□一小學校は兒童身體の發達に留意して、道德教育及國民教育の基礎竝に其生活に必要なる、普通の知識技能を授くるを以て本旨とす、□二小學校を分ちて尋常小學校及高等小學校とす、尋常小學校の教科と、高等小學校の教科とを一校に併置するものを、尋常高等小學校となす、市町村、町村學校組合、又は其區の負擔を以て設置するものを市町村立小學校とし、私人の費用を以て設置するものを私立小學校とす、□三尋常高等小學校に於て、尋常小學校の教科を授くべき部分に對しては、尋常小學校の規定を準用し、高等小學校の教科を授くべき部分に對しては、高等小學校の規定を準用す、但し文部大臣に於て別段の規定を設けたる場合は此限にあらず、□四町村組合にして、其町村一切の事務を共同處分するものは、之を一町村と同視す、□五幼稚園、盲啞學校其他小學校に類する各種學校の規程に關しては、本令中別段の規定あるものを除くの外、文務大臣之を定む、□六小學校の設置、教科及編制、設備、就學、職員、費用負擔、授業科、管理及監督に關することをも規定せられたり。
- 英
- Ordinance of the primary school
- 独
- Ordnung von der Elementar-schule
- 仏
- Ordonnance de l'école pri-maire
小學校令施行規則
小學校令施行規則は、明治三三年文部省令第一四號を以て公布せられたるものにして、□一教科及編制、即ち教則、學年、休業日及式日、編制、補習科、圖書の審査、及採定に關する事項、及設備準則、□三就學、□四教員檢定及免狀、□五職員、即ち學校長及教員の進退、學校長及教員の職務、懲戒處分、業務停止及免許狀褫奪、俸給、旅費及諸給與準則、代用教員、□六授業料、□七學務委員、□八代用私立小學校、□九幼稚園及小學校に類する各種學校、等に關することを規定したるものなり。
消極
(せうきよく)消極は積極の反對にして、總べて進んで事を爲すに對し、退いて事を守ると云ふ如き場合の用語也、されば發展に對する制抑、正に對する負、肯定に對する否定を指意す、例へば其行動は消極的なりと謂ふは、當方より進んで事を處理する積極的行動に對して、唯其事の破れざらん樣に退守するを謂ふが如く、又自己を提げて他人の急に趣く如き積極的善行に對し、唯自己を制して、他人を害せざらんと愼むを消極的なる善行と謂ふが如し、尚例を擧ぐれば、常に增加を示す符號+は積極的記號にして、常に減却を意味する符號一は消極的記號なるが如き、又「總べて人は動物也」と謂へば、其肯定たるや積極的命題となり、「總べての動物は人にあらず」と謂へば、其否定たるや消極的命題となるが如し、斯く消極的てふ言辭は、多く否定的言辭によりて表はさるる意義の用語なり、之を要するに、總べて事物又は事件の陰的狀態は消極なり、換言すれば、否定の觀念、不在の觀念、非的の觀念の如きは消極的なりとす、即ち事物又は事件の狀態が、進取の形勢を呈し、變化の態度をとり、又は形熊の改造、勢力の增進に對し、之に反する非進取、非變化、非改造、非增進は即ち消極なり、肯定の觀念に對する否定、實在の觀念に對する不存在、作爲に對す不作爲等、皆消極の一例とす。(積極の部參照)
- 英
- Negative
- 独
- negativ
- 仏
- Négative
消極行爲
(せうきよくかうゐ)消極的意思の發動を云ふ、元來行爲は意思の發動にして、其の發動たるや積極的なるときは即ち作爲なり、作爲は任意の動作として現はれ、彼の物を賣るが如き、人を毆打するが如き之なり、意思の發動にして消極的なるものあり、之を消極行爲又は不作爲と云ふ、不作爲は自然の進行に放任する任意の靜止なり、汎ねく消極行爲と云ふときは任意靜止の總てを意味し、敢て何等の條件の伴ふを要せざるも、法律上の動果を生ずべき消極行爲は、爲さざるべからざる法律上の義務あるに拘らず、任意に之を爲さざるときに生じ、彼の幼者を扶養すべき義務ある者が、任意に傍觀して扶養せざりし結果、之を死に致したるが如きは此の例なり、其の他爲すべき義務あるものが之を怠りたるは、總て消極行爲とす。(不作爲の部參照)
- 英
- negative act
- 独
- negative Handlung
- 仏
- Acte négatif
消極義務
(せうきよくぎむ)爲すべからざるの義務を稱して消極義務と云ふ、殺人を爲すべからざる義務親が、子を棄つべからざる義務は消極義務なり、尚例へば一定の期間音樂を奏せざる義務の如し。(積極義務の部參照)
- 英
- Negative obligation
- 独
- nega-tive Verpflichtung
- 仏
- Obligation néga-tive
消極手段
(せうきよくしゆだん)手段が消極的に出たるを稱して消極手段と云ふ、或目的を達するの手段は、之を人類社會に於ては行爲に依る、故に消極手段と云ふも、積極行爲と云ふも實質に於て異なる所なし、唯手段を達する爲めに採れる行爲たるのみ。(消極行爲の部參照)
- 英
- Negative means
- 独
- nega-tives Mittel
- 仏
- Moyen négatif
消極地役權
(せうきよくちえきけん)地役權の一種にして、一定の地土の便益の爲めに他人の土地を使用するの權利を地役權と云ひ、承役地に對して、或事項を禁ずるに依りて權利を行使する地役權、例へば眺望權の如きを極地役權と云ふ、元來眺望權なるものは、承役地に要役地の眺望を害するが如き、建築其他の行爲を爲さしめざる權利なれば、これ不作爲を内容とする權利なり、故に之を消極地役權と云ふ也。(地役權の部參照)
- 英
- Negative right of servitude
- 独
- negative Servitut
- 仏
- Droit negatif de la servitude
消極的
(せうきよくてき)消極的とは、消極と云ふに同じく、唯形容の詞として的なる文字を附加するに過ぎず、即ち非的、不存在、否定等を現はす語なり、例へば消極的立論と云へば、發動的、肯定的の立論に反し、退守的、否定的の立論を意味し、消極的善と云へば、進んで善事を爲すにあらず、されども惡事をも行はざるを云ふ。(積極的の部參照)
- 英
- Negative
- 独
- negativ
- 仏
- Négatif
消極的權限爭義
(せうきよくてきけんげんさうぎ)二個の官廳が、何れも自己の權限に屬せずと主張するを消極的權限爭議と云ひ、積極的權限爭議と相對す、眞正の意味に於ては權限爭議にあらず、蓋し之を提起するものは、官廳に非ずして訴訟當事者也、法律は斯る場合に許すに、權限裁判所に訴願を提起し、其何れの官廳の權限に屬すべきかの裁決を抑ぐの權利を以てすることあり、消極的權限爭議とは、此訴權を指すに外ならず。(權限爭議の部參照)
- 英
- Dispute of negative limit of right
- 独
- negativer Kompetenz-streit
- 仏
- Dispute de la limite negative du droit
消極的犯罪
(せうきよくてきはんざい)消極行爲に依りて成立する犯罪を云ふ、所謂不作爲犯之也、不作爲犯には、□一純正不作爲犯、即ち或る行爲を爲さざることに依りて命令を犯せる罪、例へば證言を爲す義務ある者が、裁判所より出頭を命ぜられたる場合に、何等の理由なくして出頭せざる罪の如し、□二不純正不作爲犯、即ち行爲を爲さざることに依りて禁令を犯せる罪にして、例へば母が兒に乳を與へず、依て死に致したるが如き罪を云ふ。(不作爲犯の部參照)
召喚
(せうくわん)なほ呼出と云ふに同じ、即ち人を一定の場所に出頭せしむる命令を云ふ、例へば豫審に於て、被告人の出廷を促がす裁判所の命令の如き、又は行政裁判所が其の事件に就き、原告、被告、第三者又は證人等を一定の日時に、行政裁判所に出頭せしむる命令の如し、召喚の爲めに發する令狀は即ち召喚狀なり、召喚狀は呼出狀と同じく、唯之を發する者が、現行刑訴法に於ては、主として豫審判事たるの點にあり。(刑訴六九、七六、二一四條、議員法七三條、行政裁判所法三八條及び呼出狀の部參照)、
- 英
- Summons
- 独
- Ladung
- 仏
- Assignation
照査手續
(せうさてつづき)照査手續とは、執達吏が、債務者の財産中未だ差押に係らざるものありや否やを調査し、既に差押を爲したる執達吏に對し、總債權者の爲めに競賣を爲す事を求むるの手續を云ふ、蓋し執達吏が債務者の財産中、未だ差押に係らざるものありや否やを調査する理由は、過度の差押を許さざる結果として、差押額は、通常之を必要と爲す債權額より多からざるを以て、差押を爲さざりし債權者をして、他に差押ふべき財産あるに拘らず、濫りに配當に加入することを得とせば、差押債權者の利益を故なく害するに至るべきを以て也、照査手續は、債權者より執行委任を受けたる執達吏が、已に差押を爲したる執達吏に、差押調書の閲覽を求め、差押に係らざる物の有無を調査し、差押に係らざるものあるときは之を差押へ、其調書を作り、之を已に差押へたる執達吏に交付し、且つ總差押物を競賣に付すべき事を求め、差押ふ可き物あらざるときは、照査調書を作り、既に差押を爲したる執達吏に之を交付して爲すものなり、照査手續ありたるときは、執行に關する債權者の委任は、已に差押を爲したる執達吏に法律上當然移轉す、而して此執達吏は、總債權者の爲に競賣を爲すべきものとす、之れ費用と勞力とを節略するの目的より生ずる當然の結果なり、□一故に已に差押を爲したる執達吏にあらざる者は、債權者の爲めに執行々爲を爲す事能はず、□二執行に必要なる書類は、已に差押を爲したる執達吏に交附すべく、□三債權者の同意を要する執行處分は、爾後照査手續を爲したる債權者、及び差押債權者の同意あるにあらざれば之を行ふ事能はず、但し照査を爲したる債權者及差押債權者と、其同意を以て既に差押を爲したる執達吏以外の執達吏を選擇したるときは、執行委任は該執達吏に移轉す、債務者は之が爲め異義を述ぶることを得ず、而して照査手續の效力は、(甲)配當要求の效力を生じ、(乙)已に爲したる差押が取消されたるときは、其取消の原因が差押の不適法にあると、辨濟にあるとを問はず、代りて差押の效力を生ずるものとす。(民訴五八六、五八七條)
- 英
- Procedure for the comparison
- 独
- Anschluszpfändung
- 仏
- Progrès de la comparaison
詔書毀棄罪
(せうしよききざい)詔書毀棄罪たるには、□一行爲の目的は詔書たること(詔書僞造罪の説明參照)□二毀棄したること、毀棄とは、文書の内容を增減變換することにより、文書の有する證據力の全部、又は一部を滅却するを云ふ、而して其方法に二あり、一は文書の記載しある物體を有形的に害するもの、即ち破壞にして、一は文書の記載しある物件は之を存し、其文字のみを抹消するを云ふ、例へば文書を引裂き、燒却するが如きは前者に屬し、其記載文字の一部若くは全部を抹消するが如きは、後者に屬す、其處分は無期徒刑なり。(刑一五四條二項)
- 英
- Crime of destruction of imperial document
- 独
- Vernichtungs-verbrechen des kaiserlichen Documentes
- 仏
- Infraction de détruire les documents impérials
詔書僞造罪
(せうしよぎざうざい)詔書僞造罪たるには、下の要件を具備せざる可らず、□一斤爲の目的物は詔書たる事を要す、詔書とは天皇の名を以て作製せらるる所の文書を總稱し、其の内容、名稱の如何、即ち勅書、勅諭、詔書、宸翰たると否とを問はず、換言すれば天皇が國家の元首として、統治作用により作製せらるる文書たると、單に社文的關係に於て天皇より友邦の君主、又は皇族、其他貴顯諸公へ發せらるる社交的文書たととを問はず、等しく之を包含せらるるものとす、蓋し天皇は終始國家の元首にして、官署の上に位し、官署其ものにあらず、又臣民に對しては治者の位置にあり、從つて私人と云ふことを得ざれば也、□二僞造したることを要す、僞造とは眞正ならざる證據文書の證據形式を作製するを云ふ、其内容が偶々眞實と一致するも、依然として僞造なり、□三僞造は行使の目的に出でたることを要す、故に行使の目的に出でざる場合には本罪を構成せず、處分は無期徒刑とす。(刑一五四條一項)
- 英
- Crime of forgery of imperial document
- 独
- Fälschungsverbrechen der kaiserlichen Schrift
- 仏
- Infraction de la forge des documents impérials
詔書變造罪
(せうしよへんざうざい)詔書變造罪たるには、□一行爲の目的は詔書たること、(詔書僞造罪の説明參照)、□二變造すること、變造とは、眞正文書の内容を增減又は變換することに依りて、最初文書が有したる證明力を增減し、又は變更することを云ひ、其變造後の文書の内容が、眞實に適合すると否とは問はず、□三行使の目的を以て變造すること、(詔書變僞造罪の場合と同じ、該説明參照)、處分は無期徒刑に處せらるるものとす。(刑二〇二條一項)
- 英
- Crime of counterfeiting of imperial document
- 独
- Fälschungsver-brechen des kaiserlichen Documentes
- 仏
- Infraction de la contrefaçon des docu-ments impérials
詔勅
(せうちよく)法律命令以外に於て、天皇の國民に對する意思表示を詔勅と云ふ。其名稱の何たるを問はず、例へば勅諭、勅語、勅命勅書、又詔書と云ふが如き皆之に屬す、彼の明治一四年一〇月一二日に發布せられたる國會開設の詔勅、二二年二月發布せられたる憲法發布の詔勅の如きは之也。(憲法五條二項)
- 英
- Imperial rescript
- 独
- kaiserliche Verordnung
- 仏
- Rescrit impérial
消防組規則
(せうばうぐみきそく)明治二七年勅令一五號を以て公布せられたるものにして、□一府縣知事は、職權又は市町村の申請に依り、火災の警戒防禦の爲め、消防組を設置する事を得、□二消防組の設置區域は、市町村の區域に依るべし、但し土地の狀況に依り、市町村内に於て適宜區域を定むる事を得、□三消防組は組頭一人、小頭若干人及消防手若干人を以て組織す、組頭及小頭は、警部長、若くは其委任を受けたる警察署長之を命免す、□四組頭は警察官の命を承け、部下の指揮取締に任じ、庶務に從事す、小頭は組頭を助け、組頭差支あるときは、之に代理するものとす、□五府縣知事は市町村會に諮問し、消防組を數部に分つことを得、□六消防組は、府縣知事に於て指定したる警察署長之を指揮監督す、消防組は警察官の指揮に從ひ進退すべし、但火災に際し警察官の臨場する迄、町村長又は組頭若は小頭之が指揮す事を得、□七消防組は其區域外の火災と雖も、警察官の指揮に從ひ、其警防に應援すべし、危急の場合に於て、警察署長前項の指揮を爲すの暇なきときは、他の警察官、警察署長代て其指揮をなすことを得、□八警部長は府縣知事の命を承けて、其地方全體の消防組を指揮監督す、消防組は火災警防の爲めにあらざれば、集合若くは運動することを得ず、但し警部長若くは其委任を受けたる警察署長に於て、儀式訓練及び他の防害の爲めに集合運動を命じたる場合は此限りにあらず、□九消防組の服務規律、及び懲戒に關する規程は、府縣知事之を定む、□十消防組の擧動治安に妨害ありと認むるときは、府縣知事は之を解くことを得、十一消防組員の手當並に被服等は市町村會に諮問し、府縣知事之を定む、十二消防組に必要なる器具、及び建物は府縣知事市町村會に諮問しこれを定む、前上の器具、及び建物は、市町村に於てこれを設備すべし、十三消防組に關する費用は其市町村の負擔とす、十四此規則を施行する爲めに必要なる細則は、府縣知事之を定む、十五府縣知事は地方の狀況により、この規則の全部若くは一部を準用し、水災警戒防禦の爲め水防組を設け、又は消防組をして水災警防の事務を兼ねしむることを得、十六此規則は沖繩縣及び東京市には之を適用せず、十七北海道に於ては、府縣知事の職務は北海道廳長官之を行ふ、東京府郡部に於ては、府縣知事の職務は警視總監之を行ひ、警部長の職務は警察署長之を行ふ、十八此規則中市町村に係る規定は、北海道の區、及び町村制に依れる町村組合に準用するものなり。
- 英
- Regulation for fire-brigade
- 独
- Regel des Feuerlöschungsverbandes
- 仏
- Règles de la bride de feu
消費寄託
(せうひきたく)凡そ寄託は其普通の性質として、目的物件の消費を許さずと雖も、金錢米穀等の寄託によりては、當事者の特約を以て、受寄者に之が消費を許すこと稀なりとせず、別言すれば、代替物の寄託せらるるに當り、之を受けたる者と、其の物件を返還することを要せずして、同種類の物件を同一數量だけ返還すべきことを約することあり、是即ち消費寄託(不寄則寄託、變例寄託とも云ふ)なりとす、羅馬法は、斯くの如き場合に於て、物の受取人は之が所有者となり、物の危險は之に移轉するも、其他の關係に就きては寄託契約に關する規定に從ふべきもの也とし、假令變則なるにもせよ、寄託契約の存することを妨げざるものとせり、佛國民法は、斯の如き契約に就き、何等規定を設けず、されど學者の解釋として、寄託の原則を適用すべきものと爲すが如し、端西債務法は右の場合に就き、其四八四條に於て、大體羅馬法の原則に從ひ、寄託せられたる代替物の利用と危險とは、物を受取りたる者に移轉し、此者に同一種類の物件を返還するを以て足るも、契約は寄託にして、之に關する原則に從ふべきものと定む、然れども近世多數の法制は、消費寄託なるものは、消費貸借の一態樣とするものの如し、墺國民法に於ても、第九五九條に於て、斯くの如き契約に關し物が消費物なるときは、消費貸借となり、消費物にあらざるときは、使用貸借なりと規定すること、前に述べたる如くにして、獨乙民法も亦消費貸借と認むるの主義に從ひ、其第七〇〇條に於て、物の所有權が保管者に移轉し、此者が種類、性質、數量を同うする他の物件を返還するの義務を負ふこととして、代替物が託さるるときは、消費貸借の規定を適用し、唯物の返還の時期と場所とに關し疑あるときは、寄託契約に關する規定に從ひて決すべきものと定む、消費貸借説の要旨を知らんと欲せば、獨乙民法の根據とする所を知るに如くはなし、其槪略に曰く、金錢其他の代替物を寄託するに方り、之を受けたる者が、同一物を返還することを要せずして、同一種類性質數量を返還すべきことを、明示又は默示に合意したるときは、同一物件の返還を必要とする寄託契約の要件を缺くが故に、寄託なりと認むること能はずして、寧ろ消費貸借なりと認めざるべからず、然れども當事者は、之を保管又は寄託契約と名くる事あるに由て見れば、當事者は、單純に消費貸借に就き、存在する規定に從はんとの意思を有したりと觀察し難くして、寧ろ寄託を特有なる、然も消費貸借の觀念と矛盾するに至らざる規定には、從ふの意思ありたるものと認めざるべからず、換言すれば、此種の契約にありては、慥かに當事者は物の返還の時期並に場所に關して、消費貸借の規定に從はずして、寄託契約の規定に從ふの意思ありたりと認むる事を得へく、其他の點に關しては、如何なる程度迄寄託の規定に準據するの意思ありたるやは、各場合の事情に依りて判斷するを相當とす、隨つて瑞西債務法に於ける如く、右の如き契約をして、常に寄託に關する法則に從はしめ、尚之を寄託契約なりとして法律に揭ぐるは、寄託契約の本質に適合せざるのみならず、却て種々の疑義を生ずることを免れず、之其當を得ざる所以に非ざるかと、寄託説は曰く、此種の契約は、物件を受くる者が物の所有者となり、從つて物の危險を負擔することあり、又其利息を支拂ふことあるの點に於て、消費貸借と相類似する所あるは勿論なるも、其之と異る所は、專ら當事者の意思に在りて存し、消費寄託に於て物を受取れる者は、例へば主人が僕婢の金錢を自己の金庫に收むるが如き、又銀行が預金を受くるが如き、其目的は保管を約するにありて、使用貸借を約するにあらず、換言すれば、消費寄託は、物又は其價格の保管を眼目とするものにして、消費貸借に於けるが如く、物の使用消費を目的とするものにあらず、唯法律の規定の適用に就きては、二者同一なる事多かるべきを以て、消費貸借の規定に從ふも、其之に從ふは準用に止まるべく、又消費寄託が寄託たるの性質を失はざるより、契約に返還の時期を定めざる時は、寄託者は、何時にても其返還を請求し、以て消費貸借が主として之を受くる者の利益に於て成立するに反し、消費寄託は一般寄託と同じく、主として引渡す者の利益に於て生ずるの精神を明にすべしと、而して民法は、此説即ち寄託説に從ふ、從つて返還の時期に關しては寄託の規定に從ひ、唯契約に返還の時期を定めたるときは、普通の寄託と異り、寄託者は、期限の到來前、其返還を求むることを得ざることとせり、惟ふに消費寄託が、消費貸借と相類す、ことあるは勿論なりと雖も、消費寄託と雖も當事者の意思は、慥かに保管に重きを置くものなるのみならず、我民法は、羅馬法並に獨乙民法に於けるが如く、物を受取りたる者が其當時に物の所有權を取得するを必要とせざるを以て、寄託説に從ふを可なりとす、消費寄託の成立要件は、□一其目的物件は代替物にして、且つ消費物なる事を要す、蓋し代替物に非ざれば、同一種類、性質、數量の物を以て、原物に代へて返還すること能はざる事、消費物即ち使用により消費せらるる物なるにあらざれば、原物を返還することを得べく、特に消費貸借の規定を準用するの制を設くるの必要なければなり、然れども苟も右の如き物件なるに於ては、金錢又は其他の物件たると有價證券たるとは、問ふことなし、□二消費寄託の成立には、特別の合意を要す、故に假令金錢に封緘を加へずして寄託せらるるも、之により直に消費寄託の成立ありと云ふこと能はず、されど我民法の如く、消費寄託の成立方法に關し、別段の規定なき制度にありては、其合意は、默示に成立することを得るは一般の法理なるが故に、獨乙民法に於けるが如く、有價證券が目的たる場合に於て、特に明示の意思表示あることを要することなく、又瑞西債務法に於けるが如く、寄託者の明示の承諾を要するものにあらず、尚特定物、非消費物に就き、寄託者が受寄者に使用を許するときは、契約は、直に使用貸借となるの規定を爲したる法制あるも、其性質は當事者の意思に從つて定むるを妥當とす。(民六六六條)
消費税
(せうひぜい)國家が物の消費者に、其の租税を負擔せしめんとするの目的を以て、賦課徵收する租税を云ふ、彼の直接税に對する間接税は、多くは此の消費税にして、即ち立法の目的上納税者をして負擔者たらしめず、其の税金を第三者に移轉せしむるを期する租税は、即ち間接税にして、其税金を移轉せしめらるる第三者が、物の消費者にあるときは、之即ち消費税とす、尤も此等の租税と雖も、時の經濟狀況によりて、立法の目的に反し、消費者に轉嫁せられずして、却て納税者たる製造家に於て、自ら負擔するに終ることあるべし、消費税は、之を別ちて左の三種とす、□一直接消費税とも云ふべきものにして(直接消費税は間接税の一種にあらず)例へば馬車、僕婢、蓄犬税の如きを云ふ、□二内國消費税にして、例へば飮食品に課する酒税、煙草税(現時は之なし)茶税、砂糖税の如き之なり、□三國境消費税にして、關税の如き之なり。(間接税の部參照)
- 英
- Excise
- 独
- Verbrauchssteuer
- 仏
- Accise
消費貸借
(せうひたいしやく)消費貸借とは、當事者の一方が、種類品等及び數量の同じき物を以て返還を爲す事を約し、相手方より金錢其他の物を受取るによりて、其效力を生ずる契約なり、□一消費貸借は、當事者が相手方より金錢其他の物を受取るに依りて成立する、所謂要物契約なり、故に金錢其他の物の授受なき間は、消費貸借の豫約は之を成立せしめ得べしと雖も、消費貸借其ものの成立は之を見る事なし、但し其引渡は法律が代理占有を認むるの結果、現實に物の授受あることを必要とせず、然れども消費貸借が、目的物の引渡に依り始めて成立する事に關し、民法は專ら取引上の必要に基き一の除外例を設けたり、即ち賣買其他の契約に基き、消費貸借に依らずして、金錢其他の物を給付する義務を負ふ者ある場合に於て、當事者が其物を以て、消費貸借の目的物となす事を約する場合にして、法律は斯る場合に於ては、消費貸借は右の合意のみにて成立したるものと看做す、從つて前債務は當事者の意思により消滅し、債權者は之に依りて時效の經過を中斷し、債務者は先取特權の行使を免るる事を得べし、□二消費貸借は、相手方より受取りたる物に對し、種類品等及び數量の同じき物件を返還することを約するもの也、此點に於て使用貸借並に賃貸借と異なる、蓋し賃貸借並に使用貸借は、共に一定の時期の經過したる後に於て、先に引渡しを受けたる原物を返還することを要するも、消費貸借に於ては、同價額、同種類、同數量を有する物件を返還するを以て足れりとすればなり、然れども交換にはあらず、交換は常に有償の諾成契約にして、消費貸借は要物契約にして、有償若くは無償の契約なればなり、消費貸借は又消費寄託と異なふる、蓋し目的物件の消費を許すの點に於ては、二者相異なる事なきも、消費寄託に於ては、受寄者が保管行爲を爲すを主たる目的とし、消費を主たる目的とするものに非ざれば也、□三借主は、其受けたる物と同一の種類品等及び數量の物を返還せざるべからず、□四消費貸借は、貸主が借主に目的物の所有權を移轉することを要す、蓋し消費貸借は借主が自由に物を處分し、之を消費することを得るが爲めにするものなれば也、從つて貸主は借主に對し、目的物に就き、追奪並に瑕疵擔保の責に任ず、右の如く、消費貸借は所有權の移轉を必要とするの結果、或は當事者の一方が、所有權を他の一方に移轉するによりて成立すと爲すものなきにあらずと雖も、若し斯くの如くんば、貸主は物の引渡を爲したることを主張せずして、直に返還の請求を爲すことを得るに至るが如き、不都合なる結果を生ずるに至らん、茲を以て我民法は、消費貸借は物の引渡を待つて、始めて成立すべきものと定む、其結果、イ所有權は當事者の意思表示により、物の引渡を待たずして、既に貸主より借主に移轉したる場合と雖も、物の引渡以前に於ては消費貸借の成立を見る事なく、ロ之に反して、借主にして目的物を受取りたる場合に於ては、貸主にして當時之に就き所有權を有せず、唯借主が動産即時取得の規定により所有權を取得したるとき、又は物の引渡以前に於て、原所有者と貸主との合意により、所有權を借主に移轉したるとを問はず、消費貸借は、物の引渡によりて成立する事を妨けす、斯くの如く消費貸借は、物の引渡を俟つて始めて成立する契約なれは、物の引渡前に於て、當事者間に該契約を結ぶべきことの豫約の存すること稀なりとせず、豫約の效力は、契約一般の規定によりて定まる事勿論なりと雖も、我民法は實際上の便宜を圖り、消費貸借の豫約は、爾後當事者の一方が破産の宣告を受けたるときは、其效力を失ふものと定む、蓋し契約にして一度成立したる以上は、爾後當事者の地位の變動により、其效力を消長すべきの理なきが如し、從て貸主は其豫約を履行せざるべからがるもの也と雖も、消費貸借の豫約は、其引渡を爲すべき時に於て、借主並に貸主が其資力を有することを、默示の條件と爲すものと見るべければなり、詳言すれば、借主が破産の宣告を受けたる場合に於ては、後日其返還の義務を履行し難きことの豫知し得べきに拘らず、尚貸付を爲さざるべからずとするは、貸主の利益を無視するの嫌なき能はず、且つ借主は、破産の宣告により期限の利益を失ふを以て、貸主は一度貸付を爲すも、即時に返還を求め得べきものなれば、初めより貸借關係を成立せしめざるを便宜とす、次に貸主が破産の宣告を受けたる場合に於ては、義務を完濟すること多くは不能に屬し、多數の場合に於て、物の全部を受取らんとする借主の意思に合せざるを以て、初めより貸借關係を成立せしめざるに若かざればなり。(民五八七、五九二條)
- 英
- Loan for consumption
- 独
- Darlehen
- 仏
- Prêt de consomption
抄本
(せうほん)原本の一部分を拔萃したるものを抄本と云ふ、而して之を別ちて二とす、認證抄本、單純抄本是なり、官公吏其權内に於て、原本と同じきことを證明したるときは認證抄本にして、否らざるときは單純抄本なり。(刑訴二〇六條)
- 英
- Epitome
- 独
- Auszug
- 仏
- Épi-tomé
抄錄正式謄本
(せうろくせいしきとうほん)抄本、即ち原本の一部分を拔萃したる一種の謄本にして、官公吏其權内に於て原本と同じきことを證明したるものを云ひ、一名之を認證謄本と云ふ、單純の抄本と相對するの語なり、此の種の謄本は、原本に代用し得べきものにして、法定の方式に依るべきものとす。(公證人規則四三條二項)
- 英
- Formal copy of epitome
- 独
- Formalabschrift des Inbegriffes
- 仏
- Copie formelle de l'épitomé
世界
(せかい)地理學的には、吾人の棲息する地球を指すも、一層之を擴充して、所謂宇宙を指すことあり、又全體として見たる或同一の階級、若くは彙類等に槪括せらるる所の範圍、又は區域、總じて所謂社會てふことに適用せらるることあり、例へば人類世界、藝術世界、物質世界等の如く、略しては唯界と稱し、婦人界、精神界、政治界、經濟界など謂ふが如し、世界的とは、世界てふ語を形容的として用ゐたるものなるも、全く同意義と謂ふことを得ず、槪して廣汎、又は博大等の意義となる、例へば世界的識見といへば、遍く世界の大勢に通じ居ることを意味するが如し、又世界主義といふは、學術上、政治上、商業上、教育上其他あらゆる社會現象の上に於て、一國土、一地方、又は一個人といふが如き、遍在的の觀念を脱却し、普遍共通、一視同仁、世界を以て家とし、世界の民たるを以て主義とするないふ、佛のオーギスト、コムトの世界同胞主義の如き其の一種なり、世界同胞主義は、後に反動として國民主義を惹起し、全歐を風靡するに至りしが、苟も人道の進步を計り、世界的平和を期するは、軈て人類全體の進步發達を目的として、世界の繁榮、人類の幸福を企圖する所以なれば、此の主義も亦軈て窮極の理想を表明するものと謂ふべし。
積極行爲
(せききよくかうゐ)人類の意思發動して物界の狀態を惹起すを積極行爲と云ふ、之に對するものは、消極行爲にして不爲也、積極行爲は一に之を作爲と云ひ、作爲の内容は動作にして、任意に或る行動を採るは即ち積極行爲也、法律上犯罪たる行爲は、多くは積極行爲にして、刀を振つて人を殺すが如き、手を擧げて人を毆打するが如き、或は〓盜を爲すも、貨幣を僞造するも、主として作爲に依る、而して消極義務に違背する行爲は常に積極行爲にして、例へ一定の時間音樂を奏せざる義務に違反して、之を奏したるが如きは積極行爲なり、之を要するに、積極行爲は靜止に對し、任意に爲す動作即ち動作を内容とする意思の發動なりと云ふべし。(消極行爲の部參照)
- 英
- Positive act
- 独
- positive Handlung
- 仏
- Acte positif
積極義務
(せききよくぎむ)或事項を爲すべき義務を稱して積極義務と云ふ、夫婦は互に扶養の義務を負ふ、即ち相互に積極義務を負ふ也、戸主は家族を扶養せざるべからず、これ亦積極的義務を負ふものなり、之に對する義務は消極義務とす、即ち爲さざるの義務を云ふ、爲さざると爲すとは、共に任意に然るを云ふものにして、偶然爲す又は爲さざるは、積極義務にも消極義務にもあらず。(消極義務の部參照)
- 英
- Positive obligation
- 独
- posi-tive Verpflichtung
- 仏
- Obligation posi-tive
積極手段
(せききよくしゆだん)積極手段とは、消極手段と相對するの語なり、先つ手段の何たるやを究明せざるべからず、法學の用語として、行爲と手段とを區別すること甚だ多く、而も手段の何たるやに至ては、之を論じたるもの極めて稀なるに似たり、汎く行爲と云ふときは、任意の動靜を云ふに外ならず、之に限界を付して一定の名稱を與ふるは法令なり、某々の條件を具ふる行爲を賣買と云ひ、贈與と云ひ、〓盜と云ひ、強盜と云ふ類、皆名の基礎は即ち民法刑法の條規に外ならず、法令が名を付したる行爲は單一のものあり、複合のものあり、刑法の例に於て〓取は單一行爲なり、強取は強行又は脅迫と奪取とより成れる複合行爲なり、而して賣買と云ひ、贈與と云ひ、〓取と云ひ、強取と云ふは、行爲の法令的類別なり、手段とは、其行爲の實現方法を指稱す、即ち彼は法令を準則として、此は事實を標準とす、別言すれば、彼は絶對的抽象的なり、此は相對的具體的なり、例へば他人の生命を斷つべき任意的働作は、殺人行爲なり、絶對的抽象的の觀念なり、然れども實際に現はるる各場合を見るに、斬るあり、突くあり、打つあり、燒くあり、斯くの如き實現的、相對的、具體的の行爲を其目的に對して、手段と云ふ、賣買贈與に就ても其理は則ち同じ、複合行爲に就ても亦然り、即ち複合行爲に就て、甲乙の二行爲を合して一類名を付するは法令の作用なり、更に其實際に現實する方法即ち手段あり得るは言を俟たず、複合行爲に似て非なるは、本人の同一目的に出づるに以上の別行爲即ち是なり、多數の行爲を併合して、一類名を與ふるは法令の作用なるが故に、複合行爲は法令上に於ける一分類なりと雖も、唯本人の同一目的の發展たるに止まり、法的別種の行爲に屬するものは、眞の複合行爲にあらず、例へば、室内〓盜に於ける家宅侵入と〓取との二行爲は、法の併合したるものなるが故に、前述の所謂複合行爲に相當す、之れに反して貨幣を僞造する目的にて、金銀塊を〓取し、以て僞造を遂げたるが如きは、複合行爲に似て非なるものなり、〓盜と僞造と連貫するは、啻に本人の主觀的目的の上にあるのみ、之を併合したる法規の存するにあらず、本人の主觀的に云へば、同一意思の發展たる二個の働作に外ならざるも、客觀的に云へば、法令が分離したる別種の二行爲なり、世人動もすれば、後の行爲を完うする目的に出でたる前の別行爲を指稱し、複合行爲となす、されどこれは手段と行爲を同一視したるより生ずる笑ふべき論法なりと云ふべし、蓋し行爲の限界は法令によりて定まり、本人の意思を以て此限界を左右するを得ず、前例金銀塊の〓取は、已に刑法が明文を設けて、一行爲として一定の刑を科す、僞造も亦明文を以て之を罰す、假令本人の目的に於て、彼此相連貫する所あるも、法令は其連貫を無視す、即ち客觀的には、本人の目的の彼此相連貫することを阻止す、從て〓取は僞造の手段にあらず、常に獨立の一行爲也、以上略述の結果として、手段なるものは行爲の外にあるものにあらざることを知るべし、若し或行爲の外にあるときは、是別箇の行爲なり、爰を以て積極手段とは、即ち積極行爲なりと云ふに異なることなし、唯觀察の方面を異にするが故に、別箇の名稱を有するのみ。(消極手段の部參照)
- 英
- Positive means
- 独
- positives Mittel
- 仏
- Moyen positif
積極説
(せききよくせつ)總て否定の結論を採る立論を消極説と云ひ、之に對して肯定的の結論を採る立論を積極説と稱す、例へば姦通罪に於て、姦通は其事實を認識して之を敢てせるにあらざれば、之を無罪なりと論決するは消極説にして、否何れの場合を問はず有罪なりとするは積極説なるが如き、又手形の要件として、相當印紙の貼付を要するや否やに就き、印紙の貼用は要件にあらずとなすは消極説にして、之を必要なる條件となす説は積極説なるが如し、
- 英
- Positive opinion
- 独
- positive Ansicht
- 仏
- Opinion positive
積極地役權
(せききよくちえきけん)他物權の一種にして、一定の土地の便益の爲めに、他人の土地を使用するの權利を地役權と云ひ、承役地に對して、直接に行爲を加ふることによりて權利を行使する地役權を積極地役權と云ふ、例へば他人の土地を通行する地役權、引水の地役權の如き之に屬す。(地役權の部參照)
積極的
(せききよくてき)消極的の反對にして、總べて事物事件の發現狀態か、進取の形勢を呈し、變化の態度を取り、形態を改造し、勢力を增進するが如き方面を稱し、之れに反する總べて他よりの變化以上に出でずして、其狀態を保守するを消極的と稱す、故に積極的の發現狀態は、進取、變化、改新、活動、繼續、增加、進步等にして、消極的なる退守、靜止、不變、拒否、減却、休止、等に對す、一例を取れば、自ら進んで善事をなすは積極的善にして、若し善事をなさずとも、敢て惡事を行はざらば、其人は先づは消極的に善人なりといふことを得べきが如し、尚二三特殊の場合を陳れば、或る標準以上のものを積極的といひ、其標準以下のものを消極的といふことあり、自然的變化に對し、人爲的所爲を積極的といふことあり、否定の觀念狀態に對し、肯定のそれをいふことあり、其他論理學上に於ては、斷定、及び名辭に冠して、肯定又は充實を表はし、哲學上に於ては、思辯的に對して實驗的てふ事を意味する等其用法甚だ廣し。
積極的意思表示
(せききよくてきいしへうじ)意思表示の發動的、外發的なるを云ひ、暗默の意思表示の或るものに對するの語とす、例へば言語又は擧動に依りて意思を表示するは、積極的意思表示にして、暗默の意思表示の或るものの如き、相手方の問ひに對して何等の答辯を爲さざりしが故に、否定の意思表示と見るが如き、意思表示と相對す。(暗默の意思表示の部參照)
積極的根限爭議
(せききよくてきけんげんさうぎ)二個の官廳が、各自己に權限ありと主張するを積極的權限爭議と云ひ、消極的爭議と相對す、例へば行政裁判所は、民刑事上にあらずとして、事件を受理したる場合に、司法裁判所は、自己の權限に屬すとして、事件を受理したる場合の如し。(權限爭議、主管爭議の部參照)
- 英
- Positive dispute of the limit of right
- 独
- positiver Kompetenz-streit
- 仏
- Dispute de la limite positive du droit
赤十字條約
(せきじふじでうやく)一八六四年瑞西外十一個國間に締結せられたる條約にして、我國も明治一九年之に加盟せり、其内容は□一戰地假病院及陸軍病院は中立と看做し、該病院に患者若くは負傷者の入院する間は、交戰者之を保護し、且つ之を侵すことなかるべきもの也、但し戰地假病院及陸軍病院は、兵力を以て之を守るときは、其中立たる事を失ふべし、□二戰地假病院及陸軍病院に於て使用する人員、即ち監督員、醫員、事務員、負傷者運搬員幷に説教者は、各其本務に從事し、且つ負傷者の入院すべく、若くは救助すべき者たる間は、中立の利益を享有す、□三以上に揭示せる人員、其敵軍の占領する所となりし時と雖も、依然各員の從事せる戰地假病院若くは陸軍病院に於て、其本務を行ふ事を得べく、又各員の附屬せる隊に、再び加はる爲め退去する事を得べし、前項の場合に於て、各員其職を罷る時は、占領軍隊より敵軍の前哨に之を送致すべし、□四陸軍病院の器具、什器等は、交戰條規に從つて處置すべきものなるが故に、該病院附屬の各員は、其退去の際、各自の私有品を除くの外、爾餘の物品を携帶するを得ず、但し戰地假病院は、前項の場合に於ては、其器具、什物等を保有すべし、□五負傷者を救助する土地の住民は、之を侵す事を得ざる也、且つ之をして其自由を得せしめざる可らず、交戰國の將官は、住民に慈善の學を慫慂し、且つ慈善の擧に依りて中立たる事を豫告するの責あるものとす、家屋内に負傷者を接受し、之を看護するときは、其家屋を侵すことを得ず、又自己の家屋に負傷者を接受する住民は、戰時課税の一部を免れ、其家屋を軍隊の宿舍に供用する事を免るべし、□六負傷し又は疾病に罹りたる軍人は、何國の屬籍たるを論せず、之を接受し、看護すべし、司令長官は戰爭中に負傷したる兵士を敵軍の前哨に送致する事を得、但し其時の狀勢に於て、之を法致することを得、且つ兩軍の協議を經たる場合に限るものとす、治療後兵役に堪えずと認めたる者は、其本國に送還すべし、又其他の者と雖も、戰爭中再び兵器を帶びざる要約ある者は其本國に送還すべし、患者、負傷者退去するときは、之を率ふる人員と共に、完全なる中立の取扱を受くべし、□七陸軍病院、戰地假病院幷に患者負傷者の退去するときは、知れ易き一樣の旗を建て、且つ其傍に必ず國旗を揭ぐべし、中立たる人員に臂章を裝▲する事を許す、但し其の交附方は陸軍官衙に於て之を爲すべし、旗及臂章は、白地に赤十字形を画けるものたるべし、□八此條約の實施に關する細目は、交戰軍の司令長官に於て、其本國政府の訓令に從ひ、且つ其條約に明示したる綱領に準據して、之を規定すべし、□九此締盟各國は、ジェネヴア會議に全權委員を派遣せざりし政府に、此條約を示し、其加盟を請ふことを約諾せり、依て之が爲め議事錄中餘白を存す、□十此條約は批准を受くべきものとす、而して其批准書ベルヌに於て四月以内、成るべくは其以前に交換すべし。(一九年一〇月勅赤十字條約參照)
- 英
- Red cross treaty
- 独
- Roth-kreuz Vertrag
- 仏
- Traité de la croix-rouge
責任
(せきにん)現行の法令を案ずるに、不法行爲に對する法律上の制裁を負擔することを責に任ずると云ひ、責に任ずるの前提として、其行爲を主觀的に本人に連結するを責に歸すと稱す、即ち責に歸することは、責に任ずることの原因にして、責に任ずることは、責に歸することの結果也、然れども責任なる文字の用例は一ならず、義務と同樣に使用せらることもあり、制裁と同樣に使用せらるるもあり、されど之を要するに、義務と云ひ、制裁と云ふも、義務あるが故に制裁を負ふものなれば、法律上に於ては原因と結果との差こそあれ、略ぼ同義なるものとす、例へば自己の責任を以て行爲せざるべからずと云へば、即ち自己の義務に歸すべき地位に立ちて行爲すべぎことを云ふものにして、又罪を犯したる者は、刑法上責任を負ふと云へば、一種の制裁を科せらるべきものなるが如し。(民九三二條、町村制六〇條等)
- 英
- Liability
- 独
- Verantwortlichkeit
- 仏
- Responsabilité
責任解除
(せきにんかいぢよ)責任を除去せらるるを責任解除と云ふ、例へば會計檢査院に於て、出納官吏が計算書及證憑書類を檢査して、不正の事跡なしと判定したる場合に、該出納官吏に向つて認可狀を與へ、有責未定の狀態にあるを除去解放するを責任解除と云ふが如し、之を要するに、自己の行爲に依らざる法律上の義務を負ふべき狀態にある場合に、其行爲に就きて制裁を負ふことなしとか、其義務を免除すとか云ふは、即ち責任解除なり。(會計規則一一〇條、會計檢査院法一六條)
- 英
- Dissolution of responsibility
- 独
- Entlastung
- 仏
- Dissolution de la responsabilité
責任者
(せきにんしや)責任の負擔者を云ふ、即ち或る事柄に就き、法律上の效果を負ふべき者之なり、彼の行爲を爲したるが故に責を負ふ者、又は行爲を爲すべきに就き責を負ふ者等しく責任者なり、例へば官吏は國務執行の責任者にして、又國務を執行して其行爲に對する責任者なるが如し。(民訴二〇條)
- 英
- Responsible person
- 独
- Schuld-ner
- 仏
- Personne responsable
責任保險
(せきにんほけん)保險契約上の危險が、法律上の強制に基き、被保險者の被るべき財産上の負擔たる場合あり、而して此法律上の強制は、或は直接に法律の規定に依る事あり、或は法律行爲に依る場合ありて、前者を法定責任と稱し、後者を契約責任と稱す、此孰れの責任たるを問はず、そを實現したる場合には、責任者に財産上の損害を來すを以て、此責任を危險として取結びたる保險は、之を責任保險と云ふ、例へば法人が、理事其他の加害行爲に就き、賠償の責任あるが如き、又無能力者の法定監督者が、其無能力者の加害行爲に就き賠償の責任あが如き、又商法其他法律の規定により、此種の責任ある場合の如き、皆所謂法定責任にして、斯かる責任を保險契約上の危險として取結びたる損害保險は、總べて責任保險なりとす。
責付
(せきふ)責付は、古來より存在せる刑事訴訟法上の制度にして、蓋し古昔の五人組預り又は村預りの制度より胚胎したるものの如し、而して此責付なるものは、被告人の請求を待たず、裁判所の職權を以て之を言渡すものにして、被告人の親屬故舊に、被告人を引渡し、被告人をして呼出に應じ、出頭せしむるの義務を負擔せしむるの制度を云ふ、而して裁判所は、何時にても職權を以て之を取消すことを得。(刑訴法一五九、一六〇條)
責務
(せきむ)責任義務のことにして、單に責任、義務と云ふに同じ、即ち法律上に於ける結果なり、行爲者が法律上負ふべき結果は即ち責任にして、權利の對抗により、義務者の負ふべき法律上の結果は義務なり、責務と云ふは、此二者の各次に相當し、二者は法律上に於ては略ぼ同義とす、例へば各競賣人は競買價額の申入れに依りて、其價額にて之を買入るるの責務を負ひ、夫れ以上の價額にて買入るる者の申入れある場合に、其告知に依りて競賣の責務を免るるが如し。(民訴六六六條、鐵道營業法六條)
- 英
- Duty
- 独
- Schuldpflicht
- 仏
- Devoir
石油取締規則
(せきゆうとりしまりきそく)明治一六年布告第六號を以て公布せられたるもにして、□一石油を分ちて二となす、閉塞發焰試驗法を用ひ、攝氏驗溫器三〇度(華氏八〇六度)以上の溫度に達せざれば發焰せさるものを第一種とし、三〇度に達せずして發焰するものを第二種とす、□二點燈用に供するは、第一種の石油に限り、第二種の石油は醫療、製藥、調劑及び物理學、化學、工藝上に於て、業務用に供する外之を用ふるを許さず、□三石油營業者を分ち、擴業者、精製者、問屋及び小賣商の四類とす、其の營業者は、都て管轄廳(東京府下は警視廳)の許可を受くべし、但二類以上を兼ぬるときは、別に其許可を受くべきもの也、□四石油の種類は、内務卿の必要とする地方に於て、檢査員をして之を檢査せしむべし、石油は調査濟の證あるものにあらざれば、之を販賣するを許さず、但し擴業者より精製者に販賣するは此限りにあらず、□五檢査濟の石油を家屋内に貯藏するを得るは、第一種の石油五石以内、第二種の石油は五斗以内とし、容器は漏出の虞なき不燃質物に限るべし、□六石油營業者、前項制限外の石油並に檢査未濟の石油を貯藏する場所、建物及精製所の構造法は、都て管轄廳(東京府下は警視廳)の認可を受くべし、□七第二種の石油は、精製者問屋より直に需用者に販賣し、小賣商は第一種の石油に限り販賣するを得るものとす、□八第二種の石油を販賣する者は、購買者より其數量及び需用の趣意、年月日、住所、氏名を詳記したる書付を取り置き、一年間保存すべし、但し販賣時限は、日出より日沒迄とす、□九石油を運搬するときは、其石油たることを表記すべし、但し其積卸に必要なる時間の外、物揚場又は路傍に置くべからず、□十此規則を犯したる者は、二圓以上二百圓以下の罰金に處す。
- 英
- Rule of superintendence of oil
- 独
- Beaufsichtigungsregel des Stein-öles
- 仏
- Règles de la surveillance d'huile
世襲
(せしう)地位、身分、財産等を子々孫々相承けて、享有維持するの狀態を稱して世襲と云ふ、例へば族稱、爵の世襲の如き、世襲財産の如き之なり。(華族世襲財産法五條)
- 英
- Inheritance
- 独
- Erbschaft
- 仏
- Héritage
世襲財産
(せしうざいさん)世襲の目的たるべき財産を世襲財産と云ふ、世傳御料の如き、華族世襲財産の如き之なり。(典範及び華族世襲財産法參照)
- 英
- Hereditary property
- 独
- erbliches Vermögen
- 仏
- Propriété hérédi-taire
絶家
(ぜつか)戸主を失ひたる家に、家督相續人なきときは之を絶家と云ふ、元來戸主を失ひたる家は、其當時に於て家督相續人たるべき者なきに依り、直に絶家となるにあらず、戸主が遺言によりて、家督相續人を指定したるときは、遺言が效力を生じたる後、遺言執行者は其指定を戸籍吏に屆出づることを要し、其屆出によりて家督相續人を生ず、其屆出を爲す迄の間に於ては、家督相續人なしと雖も、絶家を生ずるにあらざること明白なり、其指定相續人が相續人たる資格を有せざるか、若くは相續を抛棄したるか、又は戸主が全く相續人を指定せざりしが爲め、家督相續人なきときと雖も、亦絶家とならず、法定の順序に從ひ、家督相續人を選定することを得べく、其相續人なきか、又は直系尊族たる指定相續人なきときは、親族會は他人の中より、家督相續人を選定することを得べし、其選定に至る迄の間に於て、一旦絶家を生じ、家督相續人あるに至りたるときは、其效力既往に遡るの結果、絶家を生ぜざるものとなるにあらず、故に戸主を失ひたる當時に於て、法犯の推定家督相續人なきときと雖も、法律上未だ家督相續人なきにあらず、唯其當時に於ては、家督相續人ある事分明ならざるに過ぎす、從つて相續人の曠缺に關する民法の定規適用を受けざるべからず、何となれば、其規定は唯遺産相續人の曠缺のみに關する者にあらざるが故也、即ち本問の場合に於ても、其相續財産は法人となり、管理人を選任し、其公告を爲し、後二ケ月を經るも、尚相續人なきときは、管理人は二ケ月を下らざる期間を定め、一切の相續債權者及び受遺者に對して、其請求の申出を爲すべき旨を公告すべし、其期間を經過し、尚相續人を生ぜざるときは、此時に於て法律上家督相續人なきこと分明となり、其相續財産は國庫に歸屬すべきなり、故に期間の經過は、家督相續人なきことの確定、即ち絶家の時期なり、從て民法に所謂「家督相續人なし」と云ふは、此時なりと云はざるべからず、蓋し家督相續は戸主權の相續なり、家督相續による財産の相續は、戸主權相續の結果なりとせば、其財産に就き相續人なきこと確定するの時期は、即ち戸主權の相續人なきこと、確定するの時期ならざるべからず、而して若し絶家したる家に家族あるときは、各一家を創立するか、又は他家に入うざるべからず、一家創立の場合の屆出を爲すには、左の書式に依るを要す。
絶家及一家創立屆
佳所身分職業
絶家最終の戸主亡氏名
年月日生
住所身分職業
一家創立者氏名
年月日生
右妻
年月日生
右某家督相續人ナキニ因リ何年何月何日絶家候ニ付一家創立候間此段及御屆候也
年月日
氏名□印
何々戸籍吏何某殿
他家に入籍すべきの場合の書式は左の如し。
入籍屆
住所身分職業
入籍スベキ家の戸主氏名
年月日生
住所身分職業
絶家に付入籍氏名
(右戸主トノ續柄)年月日生
右入籍候間別紙何々同意證書相添此段及御届候也
年月日
氏名□印
何々戸籍吏何某殿
而して絶家は之を再興することを得、其場合の屆出の書式は左の如し。
絶家再興屆
住所身分職業
絶家最終ノ戸主亡氏名
住所身分職業
絶家再興人(絶家最終の戸主との續柄)
氏名
年月日生
右某家督相續人ナキニ由リ明治元年九月六日絶家候處今般同家ヲ再興候間別紙戸主ノ同意證書相添へ此段及御屆候也
年月日
氏名
何々戸籍吏何某殿
(民七六四、七三一條)
- 英
- House which loses its head
- 独
- hauptloses Haus
- 仏
- Maison qui a perdu son chef
設權證券
(せつけんしやうけん)證券の作成及び其存在が、或る法律行爲の成立要件及び存立要件なるときは、之を設權證券と云ふ、普通の證券は、權利の存在を證明するものに過ぎずして、法律行爲の成立又は存立を證據立つるに過ぎず、之に反して設權證券は、權利の存續に缺くべからざるものにして、從つて其法律行爲の成立は、常に證券に依るを要するものとす、例へば手形の如き、其他無記名の權利を證明する無記名證券の如き之なり、之等の權利は、之を證書債權と云ひ、證書債權は常に證券の作成を俟て發生し、此の權利の存續は、常に證券に伴ひ、從て證券の所有者は、每に其權利者たるの觀を呈し、恰も權利が證書に化體せるが如き實を現するものなり、されば證書債權の如きは、常に其證券のみを以て之を證明し得べく、他の證據方法に依ることを得ざる也、設權證券は斯くの如く、權利を創設するの證券にして、有價證券の多くは此種に屬し、商業上至大なる效果を與ふるものなり。(手形、有價證券、無記名證券、證書債權の部參照)
折算
(せつさん)換算と云ふに同じく、例へば罰金一圓を禁錮一日に折算すと云ふは、一圓を一日として換算するの意なるが如し。(刑二七條)
- 英
- Conversion
- 独
- Umwandelung
- 仏
- Convertion
〓取
(せししゆ)不法に自己の物とするの意を以て、他人の保持にあるものを脅迫、暴行又は欺罔恐喝の手段に依らずして、自己の保持に移すを云ふ、〓取は、〓盜罪を構成するの一要件にして、強盜罪を構成すべき強取(即ち暴行、脅迫に依る握取)許僞取財を構成すべき騙取(即ち欺罔、恐喝に依る握取)に相對するの名稱なり。(刑二三五條)
- 英
- Theft
- 独
- Diebstahl
- 仏
- Lar-cin
攝政
(せつせい)攝政とは、天皇の名に於て其大權を行ふ憲法上の機關にして、天皇未だ成年に達せざるか、又は久しきに亘る故障に依り、大政を親らする能はざる場合に置くものとす、□一攝政は君主の名に於て、君主の大權を行ふ機關なり、換言すれば、君主の代表機關にして、其代表權の範圍は、君主の一切の權限に及ぶものなり、國務は、一日も休止する事を得ざるが故に、君主にして或は幼年なるにより、或は疾病其他の故障により、大權を親らする能はざる場合に於て、之に代るべき機關なかるべからず、此の如き故障ある場合に、君主の地位を動すは君主の性質と相容れず、故に君主は其故障あるによりて、尚君主たる地位を失ふことなく、而して君主の名に於て攝政が大權を行ふもの也、攝政は後見人にあらず、國家思想の尚明ならざる時代には、往々攝政と天皇の後見人たる太傳とを混同したることあれども、今日に於ては、攝政は人の普通國家の機關と認むる所にして、攝政と後見人との區別は、明瞭に認めらるるに至れり、攝政を設くるは國家の利益の爲めにして、後見人の如く被後見人の利益の爲めにするにあらず、攝政を要する場合は、必しも後見人を要する場合と同一ならず、攝政と後見人とは、斯くの如く性質を異にするものなる故に、我國の皇室典範に依れば、攝政と後見人とは、同一の人を以て之を兼ぬることを得ず、後見の任に當る者は即ち太傳にして、天皇の成年に達せざるときは太傳を置く、大傳は天皇の保育を掌るものにして、大政に與ることを得ざる也、攝政は大權を行ふの機關にして、天皇の私事に關渉せず、攝政及び其子孫は太傳たることを得ざるものとせり、□二攝政が後見に非ずして國家の機關なりと云ふは、斯くの如く明なるも、攝政が國家機關として、如何なる地位を有するかに就ては、學者の説明區々たるを免れず、代表機關の觀念は、未だ學者の普く認むる所とならざるが故に、君主と攝政とが如何なる關係を有するか、攝政を置くの間は大權を行ふ者は攝政にして、君主は之を行ふことを得ざるに拘らず、何故に攝政が君主にあらずして、君主は自ら如何なる權力をも有せざるに拘らず、何故に尚君主たるやの理由に至りては、學者の説明に苦しむ所なり、若し現に統治權を總攬する者を以て君主なりとせば、攝政在位中は即ち攝政君主ならざるべからず、舊時の學者或は統治權の體と用とを區別し、攝政を置く間は君主は統治權の體を有し、攝政は其用を有するものなりと説くも、體と用との區別は全く假想にして、毫も其根據あるものにあらず、攝政在位中は、君主は全く統治權を行ふ能はざるものにて、其用を有せざるのみならず、其體をも有せず、全く統治權に關係せざるものなり、君主と攝政との關係は、又民法上の代理間係を以て之を説明する事を得ず、代理は一の權利主體と他の權利主體との間に存する關係なり、從て其當を得ざるや勿論なり、惟ふに君主と攝政との關係は、唯代表機關の觀念を明にするこによりてのみ、法理的説明を與ふることを得、攝政は君主の名に於て大權を行ふものなり、攝政の意思は即ち君主の意思と看做され、攝政の大權を行ふは、法律上の觀念に於ては、君主が大權を行ふものと看做さる、法律上の意義に於て、君主が自ら統治權を行はざるに拘らず、尚君主たる地位を失はざる所以は、唯此理由あるが爲めのみ、□三攝政は君主の一切の大權を行ふものなり、從て原則としては、君主の行ふことを得べき統治權は、總べて攝政に於て之を行ふことを得べきもの也、故に憲法に別段の規定なきときは、攝政は唯君主の大權に對すると同一の制限を受くるに止まり、君主に關する憲法の規定は、均しく攝政に適用せらるべきを原則とす、然れども我憲法は、憲法及び皇室典範の改正は、攝政を置くの間之を爲す能はざる旨を規定せり、之君主の大權に對する制限の外、特に攝政に對してのみ加へられる唯一の制限也、攝政を置くの間は、憲法及皇室典範を變更するの權は全く停止せられ、何人も之を行ふこと能はざる所なりとす、□四攝政は君主に代りて統治權を行ふものなり、從て統治權の執行に直接の關係なき榮譽權、財産權は、攝政を置く間と雖も、猶依然として君主に屬し、攝政に屬することなし、攝政は特別の規定に依るの外は、他の皇族と同一の權利を有するに止まる、獨り攝政の權利に對して疑はしきは、君主の不可侵權が攝政に適用せらるるや否やの問題也、攝政が攝政たる間は、其行爲に就きて責任を負ふ事なきは、始ど凡ての學者の認むる所なり、其の理由に至りては、若し多くの學者の如く、君主無責任の理由を以て、君主が統治權の總攬者なるが故に、何人も責任を審判するの權利を有することを得ずと云ふにあらば、甚だ明瞭なり、攝政も亦君主に代りて統治權を總攬するものにして、自己以上の權力を有する機關を有せざるが故に、其責任を審判するに途なしとなすを得ん、然れども此理由は採るに足らず、蓋し君主と雖も民事の判決に覊束せらることは、一般に認めらるる所なればなり、要するに、攝政の不可侵權も、亦法律上當然の事理にあらずして、政治上の理由に出づるもの也、攝政は、君主に代る國家の機關なるが故に、君主の無責任が政治上に必要なると同一の理由は、又攝政に對ししても適用することを得、攝政は攝政たるの間、其行爲に就きて如何なる責任をも負はざる事は、此理由に依るもの也、然らば其無責任は、在任中に止まるか、退任後にも及ぶものなるやは議論の岐るる所也、多くの學者は、攝政は其解任後に於ては、在任中に行ひたる行爲に就て責に任ぜざるべからずとせり、然れども行爲を爲したる當時に於て、責任なき者に對し、後に至りて其當時に遡りて責任を生するは、唯特別の明文ある場合に於てのみ云ふを得べく、明文なき以上は、行爲の當時に責任なき者は、永久に無責任の行爲たりと云はざるべからず、無責任の性質は統治權の執行と離るべからざるものにして、攝政も亦君主と均しく、其權利を有すと認むべきを至當とす、□五終りに攝政たるべき人を擧げんに、昔は臣民にして攝政たりしものあり、藤原氏の如きは攝政を世襲したるの觀ありき、されど現時に於ては、攝政は常に皇族に限り、特に左の順序に依り、攝政たるべき地位を襲ふものとす、イ成年に達したる皇太子又は皇太孫、ロ親王及び王、ハ皇后、ニ皇太后、ホ太皇太后、ヘ内親王及び女王これなり。(憲法一七條、典範一九條乃至二五條)
- 英
- Regent
- 独
- Regent
- 仏
- Régent
絶對的
(ぜつたいてき)絶對とは、相對に對し、何者にも制限せられず、又制約せられず、自己自身に圓滿なる獨立の存在を有せることを旨意す、吾人の可感的世界の現象は、總べて相對的にして一も絶對存立を有するものなし、されば實際に於ては絶對なるものは、唯吾人の觀念として存在するのみなれども、通俗には類を絶して拔んでたる或事物事件に適用せらる、絶對的とは、前述の意義を有する絶對を形容詞としたるものにして、相對的と反對に、他に依存せず、制約せられず、獨立の存在を有するを指す、例へば絶對的命令といへば、無制限、無制約にして、毫末も背命令的なることを許さざる命令を意味し、絶對的眞理といへば、何等の矛盾を有せず、又何等の證明をも要せざる公理又は自己原因的原理を意味し、絶對的價値といへば、相對的に附せられたる價値にあらずして、他とは無關係に、夫れ自身に具はる價値を意味するが如し。
絶對的商行爲
(ぜつたいてきしやうかうゐ)商行爲は、其の觀察の方面によりて種々に分類せらる、主觀主義、客觀主義、及び折衷主義の如き即ち其一也、□一主觀主義、商の主體たる商人を基礎として商行爲を定むるもの、之を主觀主義と云ふ、例へば獨商法の如きは「本法に於て商人とは、商業を營む者を云ふ、商業とは、次に列擧する行爲を目的とする營業を云ふと規定し、其の第三四三條には、「商行爲とは、商人の商業に屬する凡ての行爲を云ふ」と規定せり、此主義によれば、先づ商人の何たるやを定め、次で其商人が營業として爲し、又は營業の爲めに爲す行爲を以て商行爲とするもの也、□二客觀主義、商行的を其本質より定めんとするの主義なり、即ち其行爲をなす者が商人たると非商人たるとを問はず、營業として之を爲すと然らざるとを問はず、行爲の實質により、商行爲と然らざる行爲とを分たんとするもの也、然れども商人にあらざる者により個々になさるる時は、未だ商行爲たるの特色を發揮せず、商人が營業として之を行ふに因りて、始めて商行爲となるべき行爲あるを以て、其爲す所の人の誰たるを問はず、行爲の性質より商行爲を定めんとするは、商の觀念に反するものにして、實際に於て全然此主義を採用せる立法例なし、□三折衷主義、以上の二主義を併用したる主義にして、同時に二種の商行爲を認め、一種の行爲は、之を爲す者の商人たると、非商人たるとを問はず、營業として、之を爲すと否らざるとを問はず、之を商行爲となし、他の一種の行爲は、營業として之を爲す場合に於てのみ、之を商行爲とするもの也、我舊商法、獨逸舊商法、及び之に傚へる歐洲各國の商法は、多く此主義を採用せり、我商法亦舊商法と同じく此折衷主義を採れり、斯くの如く我商法は、商行爲の意義を定むるに就き、折衷主義を採れるを以て、其商行爲たるべきものに二種あり、一は行爲の本質より商行爲たるもの、即ち其行爲の主體が商人なると非商人なるとを問はず、商行爲たるものにして、一は商人が之を爲すによりて、商行爲たるものなり、後者を相對的商行爲と云ひ、前者を絶對的商行爲と云ふ、其の基本的商行爲たるに至ては相同じ、而して我商法に絶對的商行爲として規定せるものは左の如し、□一利益を得て讓渡す意思を以てする動産、不動産若くは有價證券の有償取得、又は其取得したるものの讓渡を目的する行爲、イ土地、及び其定著物は不動産にして、其以外の有體物は動産なり、但し無記名債は有體物にあらざるも動産と看做さる、ロ有價證券とは、證券に表彰せられたる私法上の權利の利用と、證券の所持とが法律上分離すべからざる證券なり、手形、株券、公債證書の如き其主なるものなり、ハ有償取得とは、無償取得に相對するものにして、其取得の報酬として出捐を爲す行爲なり、□二他人より取得すべき動産、又は有價證券の供給契約、及び其履行の爲めにする有償取得を目的とする行爲、イ供給契約とは、契約締結の後、特定の時期に於て所有權を移轉すべき旨を約する有償取得を云ふ、□三取引所に於てする取引、イ取引所とは、政府の免許を受けて設立するものにして、一定の地區を有し、一定の時に於て、一定の場所に一定の人を會して、一定の方式に從ひ、一種又は數種の物件の賣買を爲さしむるもの也、ロ取引所に於てする取引とは、取引所が一定の時間に、開閉する市場に於て、法令並に取引所の定款、營業細則其他の規則、及び取引所に行はるる商慣習の定むる所の法式に從ひ、之を爲し、市場掛りに依りて取引所の帳簿に登錄せらるる賣買取引を云ふ、取引所の場屋内に於て行はれたる凡ての行爲を指すにあらず、□四手形其の他の商業證券に關する行爲イ手形とは、其文言に從ひ無條件に支拂ふ事を記載したる形式的有價證券なり、ロ商業證券とは、有價證券中、商業上商品として取引せらるを常とするものを指す、從て有價證券より狹し、貨物引換證、預り證券、質入證券、船荷證券の如き之也、從て此等商業證券の發行、交付、表書等は勿論、非商人が其所有の公債證書を賣却するが如きも、亦絶對的商行爲なり。(商二六三條)
- 英
- Absolute commercial act
- 独
- absolutes Handelsgeschäft
- 仏
- Acte commercial absolu
絶對的必要事項
(ぜつたいてきひつえうじかう)或事項の成立及び存立に必要缺くべからざる事項は、之を絶對的必要事項と稱し、彼の相對的必要事項と相對す、例へば株式會社の定款に記載せざるべからざる、目的、商號、資本の總額、一株の金額、發起人氏名住所の如き、手形上の權利の成立に必要なる、手形の作成、及び一定の記載事項の如きは、即ら其行爲に關する絶對的必要事項なり、之を要するに、當該事項の成立又は存立には、常に必要にして缺くべからざる事項は絶對的必要事項なりと云ふべきが如し。(商一二〇、一二一條等)
- 英
- Absolutely necessary articles
- 独
- absolute Wichtigartikel
- 仏
- Articles absoluement nécessaires
絶對的不能犯
(ぜつたいてきふのうはん)行動と結果との間に、客觀的の連絡を缺く場合を別ちて二とす、(甲)本人の爲したる行動が初めより結果を完成するに適せざる場合、(乙)本人の行爲が後に生じたる障礙の爲めに、結果を完成する事能はざるに至りたる場合之なり、而して前者を不能犯と云ひ、之を種々に區別して罰すべき者なるや否やを論ずるを常とす、即ち先づ絶對的不能犯と相對的不能犯となし、更に目的物に就きての不能、手段に就きての不能となす、□一目的物、及び手段に就きての絶對不能とは、本人の意中に存する目的物、又は本人の採りたる手段が、其性質上如何なる場合に於ても結果を生ずるに適せざるものを云ふ、例へば殺人の意思を以て死屍を斬り、又は石地藏を打ちたるが如きは、目的物に關する絶對の不能にして、人を殺さんとして、糖汁を與へたるが如きは手段に關する絶對的不能也、□二目的物、及び手段に就きての相對不能とは、本人の意中に存する目的物又は本人の採りたる手段が、其性質上結果を生じ得べからざるにあらざるも、偶々實在したる特別の事情の爲めに、之を生ずるに適せざるものを云ふ、例へば殺人の意思を以て發砲したるに、適々何人も其所に居らざりしが如きは、目的物に關する相對不能にして、殺人の意思を以て毒藥を與へたるも、分量不足の爲め、死に至らざりし場合の如きは、手段に關する相對不能なり、而して以上の中何れのものを罰するGを得べきやに就きて見解岐る、A絶對不能の場合は、目的物に關すると、手段に關することを問はず、罰すべき不能犯即ち未遂犯を成立せしめざるも、相對不能の場合に於ては、其目的物に關すると、手段に關するとを問はず、罰すべき不能犯を成立せしむ、B手段に關する不能の場合は、絶對と相對とを問はず、凡て之を罰し、目的物に關する不能の場合は、絶對と相對とを問はず、凡て之を罰せず、C手段に關する相對不能の場合のみを罰すべきものとし、其以外のものは罰すべからずと爲す、以上の如く數説あるも、されども斯る區別は、其根據頗る曖眛なり、茲に於てか斯る區別を爲さざる學説を生ずるに至れり、其一は危險説なり、危險説に曰く、夫れ未遂を罰するの根本觀念は、歸する所具體的の危險にあり、即ち結果を完成する虞ある行爲は未遂として之を罪し、其虞なき行爲は未遂として之を罰することを得ず、不能犯を罰すべきや否やの問題も、亦同一理由に依らざるべからずと、動作が完成したる否やは、行動の前後に於ける、一切の狀態を觀察してこれを決す、行動の前後に於ける四圍の狀態を觀察して、行動と結果との間に連絡を缺くときは、行動が結果を完成せずと解す、されば動作が結果を完成することを得るや否やは、動作の當時に於ける四圍の狀態に依りて決すべきものにして、既に生じたる狀態によりて決すべきものにあらず、動作の當時に於ける四圍の狀態を觀察して、物理上全く結果を完成するに適せざるものは不能の行爲なり、然れども、動作の結果を完成するの虞あると否とは、物理上可能なりや否やの問題と異り、物理上結果を生じ得べきや否やの問題は、動作に隨伴する一切の事情によりて之を判斷す、然るに結果を生ずる虞ありや否やの問題は、動作の當時に於ける一般の認識し得べき事情、又は行爲者本人の認識したる事情に基きて判斷すべきものにして、後に發見したる事情を斟酌して決すべきものにあらず、若し動作の當時に於て一般に認識し得べき事情又は行爲者本人に知られたる事情より觀察して、結果を完成すること能はずと云ひ得べきときは、動作により結果を生ずるの虞なしと論斷す、換言すれば此場合に於ては、具體的の危險を存せず、他の場合に於ては物理上動作が結果を完成するに足らざるも、之を生ずる虞ありとす、即ち具體の危險を存すと、其二は主觀説なり、主觀説に曰く、未遂は客觀的の方面を缺如せる犯意の表彰也、未遂の實質は結果を生ずるに適せざる行爲を以て、結果を生ずるに適するものと錯覺するにあり、結果を惹起すべしとの錯覺を以て爲したる動作あるときは、常に未遂を生ず、結局問題の歸する所は、行爲が目的を達する手段として適當なりしや否やに存す、行爲は、豫見したる結果を完成するに適するものと否らさるものの二者を出でず、錯覺の程度又は種類によりて、未遂に屬するものと否らざるものとを區別するは不可なり、所謂不能犯は、絶對と相對とを問はず、結果を惹起すべしとの錯覺を以て爲したる行爲に外ならず、從て凡ての不能犯は未遂犯たり、目的物又は手段に就きての絶對不能、相對不能と區別する如きは事理に適せずと、其三は法定要件説なり、法定要件説に曰く、犯罪たる以上は既遂と未遂とを問はず、法律の要求する要件を具備せざるべからず、殺人罪に於て、客體が人なることは其要件なり、故に松根を人なりと誤解して發砲するも殺人未遂とならず、毒殺罪に於ける毒は其要件なり、從て砂糖を以て人を殺さんとするも、毒殺罪の未遂となることなしと、以上は所謂新説の梗槪なり、尚此外に不能の行爲は、實行の著手たる事を得ずとの點より未遂犯と區別せんとする説、及び未遂犯は、犯意の一部を完成するものなるが故に、不能犯は、未遂犯中に包含せらるるべきものにあらずとの説あり、之を要するに、絶對的不能犯なる觀念は、以上の略述によりて明白なるが如く、相對的不能犯とともに、正確のものにあらずと解するを以て、正鵠を得たりとするを近事法曹界の趨勢とするものの如し。(不能犯の部參照)
竊盜
(せつたう)竊盜とは、他人の所有權を侵害する犯罪の一種也、今之が定義を下せば、不法に他人の所有物を自己の物として處分するの意思を以て、暴行、脅迫又は欺罔、恐喝の手段によらず、他人の監督内より自己の保持に移すことを竊盜と云ふ、即ち他人の保持より移すの點に於て、委託物費消、遣失物隱匿と異なり、其手段方法が暴行、脅迫、欺罔及び恐喝に出でざるの點に於て、強盜、詐僞取財等と異なる、以上の定義を分解して略述すれば、□一他人の所有物なること、從て何人にも屬せざる物に對しては、竊盜の問題を起らず、自己に屬する物に就きても亦同じ、但しイ共有物に就きては、他の一人即ち共有者に對して竊盜するを妨げず、ロ自己の物と雖も、典物として他人に交付し、又は官署の命令に因り、他人の看守したる時は之を竊取したるときは竊盜となる、□二他人の保持に屬するG、保持とは、現實に物を支配する事を意味し、物に對する純然たる事實關係を云ふ、而して此事實關係の存否は、吾人日常の慣習によりて定むるの外なし、例へば吾人が現實に物を握手する場合のみならず、縱令之を握手せず、且つ家人の不在中にも、吾人の邸宅内に存在する物は、凡て保持すと云ひ得るが如し、之と同一理由に依り、馭者が馬車を戸外に留め置く場合の如き、又は百姓が耕作地に農具を置去るが如き、旅客が手荷物を從者に擔はせて隨行せしむるが如き、商人が店舖に於て客人に物を點檢せしむる爲め商品を手渡する場合の如き、家畜が自由に戸外を逍遙し、若し歸宅の慣習を失はざる限りは、何れも前者の保持は依然として繼續するものとす、要するに保持は、吾人日常の慣習に適當する方法に於て、其物の上に支配力の存することを認め得べき場合にして、此支配力を有する者が、其物を保持すと云ふべき也、尚保持に就ては、此事實關係の外に、更に之を保持するの意思あることを要す、即ち現實に物を支配するの事實と、意思とある事とを要す、故に客人が玄關の間に脱捨てたる外套は、客人の保持に屬するものにして、主人の保持する所に非ず、次に物を保持すと云ふには、保持者に於て、目的物の何れにある事を知覺するを必要とすと雖も、總括的に保持せられたる物の中に、存在する各個の目的物に就きては、更に其何物たることを知覺することを必要とせず、之を例へば郵便受箱の内に投入せられたる總ての郵便物、其他打網の内に入りたる總ての魚類、書庫内に貯藏する書物の如き之なり、□三他人の保持より自己の保持に移すこと、即ち他人の保持を失はしめて、自己の保持に移すことを意味す、イ保持の喪失、日常の慣習に適當する所の方法によりて、物を支配する意思を實行することの、不能なる狀況に達したることを意味す、遺留物は即ちかかる狀態にあるものなり、飼養の家畜が逸走したる場合も亦然り、之に反して自已の居室内に於て、物の置場を忘れたるが如き場合は、未だ其物の保持を失ひたりと云ふ事を得ず、然れども、公衆が知覺し得べき場所に物を置き忘れたる場合に於ては、普通に保持を失ひたりと云ふことを得べし、注意すべきは、他人が保持する場所の内に物を置き忘れたるが爲め、其物の保持を失ひたる場合は、其物の保持は、其場所の保持者に歸すること之也、若し此の場合に、此の場所が、私の場屋に係る場合は勿論、公の場所に於ても亦然り、之を例へば、旅館の如き場所の保持者が、其物を支配する意思を生じたるときに於て、其物を保持すと云ふ事を得る也、故に旅館内に於て、主人が客の置忘れたる荷物たることを知覺し、且つ之を現に管理するときは、保持は其人に歸したりと云ふことを得べく、他人が之を持去れば、竊盜となり、主人之を消費すれば遺失物法違反となるべし、ロ自己の保持に移すこと、其前の保持が正當に保持すると、不當に保持するときは之を問ふことなし、其保持者の何人たることを犯人が知覺したることを必要とせず、又他人に知らしめずして、其保持を移す事を必要とせず、但し暴行、脅迫又は欺罔、恐喝の手段に因らざることを要す、而して如何なる場合に、物を自己の保持に移し終りたりと云ふことを得るやと云ふに、單に物を握りたりと云ふのみを以て、常に必ずしも保持を移したりと云ふことを得ず、要するに犯人が、物上に支配力を實行し得る狀況に置きたるときを以て既遂となるものとす、此程度に達したるや否やは、各場合に就きて決すべき事實問題なり、之を例へば、他人の犬を連鎖より切放し、然る後之を竊取するの目的を以て、其連鎖を切りたるときは、竊盜の未遂にして、更に犬を捕へたるときを以て既遂となる、又後刻運び去るの目的を以て、他の倉庫内に於て其貯藏物の一部を同一場所に匿したるときは、竊盜の未遂なり、之に反して下女が、主家に於て洗濯物を自己の荷物の内に匿したるときは、竊盜の既遂なるべし、蓋し後の場合に於ては、犯人は普通に其物の上に支配力を行ふことを得、從て再び其保持を回復せらるべき著大の狀況存在せざるを以て也、犯人が一時と永久とを問はず、安全に物を支配する狀況に達すたるときは既遂なりとす、ハ被害者の承諾なきことを要す、□四竊盜を爲すの意思あること、即ち、イ他人の所有物なるを知ること、ロ自己の物とするの意思あること、故に債權者が正式の手續を履行せず、債權金額を債務者より竊取したる場合と雖も、竊盜たるに妨げなきとともに、代人の物を單に質入、又は抵當と爲し、後日之を受戾し返還するの意思を以て竊取するときは、之が爲め所有者は、其物に對する經濟上の價値を奪はれたりと云ふことを得ざるを以て、竊盜となることなしと云はざるべからず、ハ不法に自己の物とする意思あることを要すと解すべきを以て、所有者の承諾あり、又は法律に於て權利行爲と認めらるる場合なりと誤解したる場合は、竊盜とならず、而して舊刑法によれば、竊盜には、普通竊盜(之を屋内竊盜と、屋外竊盜とに別つ)加重竊盜、準竊盜の三あり。(刑二三五條)
- 英
- Theft
- 独
- Diebstahl
- 仏
- Lar-cin
竊盜罪
(せつたうざい)竊盜を爲したるに因り、處罰する犯罪を竊盜罪と云ひ、之を別ちて三種とす、普通竊盜罪、加重〓盜罪、準竊盜罪之也、□一普通竊盜罪の處分は、二箇月以上四年以下の重禁錮、附加刑として六箇月以上二年以下の監視を附せらるを原則とし、田野に於て、穀類、菜菓其他の産物を竊取したる者、山林に於て、竹木、礦物其他の産物を竊盜し又は川澤、池沼、湖海に於て、人の生養し若くは營業に關する産物を竊盜したる者は、何れも一箇月以上一年以下の重禁錮に處せらる、又牧場に於て、牧畜の獸類を竊盜したる者は、二箇月以上二年以下の重禁錮に處せらる、附加刑たる監視に就きては、何れも同じ、□二加重竊盜罪、イ水火震災其他の變に乘じて竊盜を犯したる者は、六箇月以上五年以下の重禁錮に處せらる、茲に水火震災とは、必しも之に限定したるにあらず、唯其例示に過ぎざる事に注意すべし、ロ門戸牆壁を踰越損壞し、若くは鎖鑰を開き、邸宅倉庫に入り竊盜を犯したる者、ハ二人以上共に窃盜の罪を犯したるとき、以上は刑各一等を加ふ、一等は刑期の四分の一を云ふ、□三兇器を携帶して人の住居したる邸宅に入り、竊盜を犯したる者は輕懲役に處せらる、□四準竊盜、準強盜とは、自己の所有物なりと雖も、典物として他人に交付し、又は官署の命令により他人の看守したる時、之を竊取する犯罪行爲なり、即ち竊盜は、原則として他人の物なることを要するも、下の要件を具備するときは、竊盜に準して之を處罰するもの也、イ犯罪の目的物は、自己の所有物たること、ロ典物として他人に交付し、又は官署の命令に依り、他人の看守したる物なること、ハ竊取即ち他人の保持を排除して、自己の保持に移すこと、ニ犯意に就きては以上の要件を知ることの外、不法に他人の質權を害し、又は官署の命令を無視する意思あることを要す、準竊盜と雖も、竊盜として論ずるものなるが故に、竊盜罪の規定の適用あるは勿論なり。(舊刑三六六條乃至三七七條)
- 英
- Theft
- 独
- Diebstahl
- 仏
- Lar-cin
折衷
(せつちう)折衷とは、其性質形式に於て、或は相反し、或は相異なる二つ以上のものを、其相異なり相反する底の部分を變化又は改訂し、以て第三者たる一つの異なれる性質形狀を有するものに、調和整合せしむるを謂ふ、例へば令日本固有の特色を有する建築法と西洋傳來の建築法とを加味して建てられたる家屋を和洋折衷の建築物と稱するが如く、之は具體に例を取りたるものなるも、日本固有の思想と、西洋思想との調和に成れる思想を稱して、和洋折衷の思想と謂ふことを得べし、折衷的又は折衷主義とは、斯かる意義の形容詞又は主張にして、哲學、神學其他如何なる學に於ても、大抵此の主義を唱ふるものありて、之等は特に折衷學派と名づけらるることあり、折衷主義を唱ふる學派は、多くは兩極端に奔れる獨斷説の後に出で來り、夫れ等の思想學説の有する短所偏見を棄て、夫れ等の長所優秀なる點を結合し、穩當なる學説を打立てんとする者也、例へば社會學に於て、極端なる個人主義と、極端なる社會主義とを結合して、有機體主義を主張するが如し、勿論折衷主義が、學説として果して眞理なりや否やは、是自ら別問題とす、但し折衷と謂ふも、通俗に考ふる如く、器械的の寄せ合せと取るべからず、眞正の折衷とは、差別の有機的綜合といふことなり。
折衷主義
- 英
- Principle of combination
- 独
- Kombinationslehre
- 仏
- Principe de la combination
設定行爲
(せつていかうゐ)廣く設定行爲と云ふときは、或關係を設定するの法律行爲を謂ふ、茲に設定と云ふは、創設確定の意味にして、或は哲學上の意味に於ては、人は鳥の毛一片をだに創設し得ざるべしと雖も、法律の範圍に於ては、法律は各人の行爲目的に從て、諸種の效果を發生せしめ、種々なる關係を創設確定せしむるものとす、而して設定行爲は、主として權利關係を創設確定する場合に用ひられ、例へば抵當權の設定行爲と云へば、抵當權の設定に對し、契約又は遺言を以て法定の行動を爲すを云ひ、法律は此行動に對して、抵當權の發生を認む、即ち權利關係發生の基礎たる、然も之を欲して爲したる各人の行爲は、これ即ち設定行爲なりと云ふべし。(民二六八條)
- 英
- Act by which superficies are created
- 独
- Stiftung
- 仏
- Acte de l'établissement
設定者
(せつていしや)設定行爲を爲すものを設定者と云ふ、例へば地上權、永小作權、質權、抵當權等を設定する人之なり、即ち自己の所有地上に地上權を又は永小作權を設定する者、自己の所有物を提供して、債權擔保の爲めに質權抵當權を設立する者の如し。(民三八九條)
- 英
- Founder
- 独
- Urheber
- 仏
- Fondateur
設定取得
(せつていしゆとく)彼の原始取得に對し、繼承取得の一種として認めらるる、財産權取得の一方法なり、茲に所謂繼承取得とは、他人の權利を承繼して取得するを云ひ、即ち他人の權利に基きて、新なる一の權利を取得すると、他人の權利を其儘受け繼ぐとの二方法あり、前者を設定取得と云ひ、後者を狹義の承繼取得と云ふ、二者何れも原始取得たる彼の先占などと異る、而して設定取得は、常に他人の權利に基き、設定行爲に依て取得するものなれば、設定行爲なくして設定取得なし、例へば抵當權の設定取得は、相手方が其の有する所有權に基き、設定行爲を以て債權擔保に供する場合に、始めて取得するもの也、故に設定取得と云へば、其の權利の何たるに論なく、常に他人の權利に因り、設定行爲を以て設定せられたる場合に、之を取得するものなりと云ふべし。(民一七六條)
設備
(せつび)設備とは、設立及準備を意味し、學校を設備するが如き、其他營造物を設備するが如し。(小學校令三一條)
設備義務
設備義務とは、法令によりて或物を設備するの義務なり、例へば市町村が、其の住民の爲めに小學校を設備するの公法上の義務の如し。(小學校令參照)
- 英
- Duty bound to furnish
- 独
- Veranstaltungspflicht
- 仏
- Devoir de fournir
説明
(せつめい)説き明しの意なれば、普通に或事物、事件の性質、内容等、總べて意義を陳辯し、能く其本質本性を知らしむることを謂ふ、尚學理上に於ける説明の位置は、頗る重要なるものにして、殆ど其生命をなす趣きあり、即ち學理上説明の任務は、一定の眞理を組織的に明瞭ならめしん爲めに、其根本槪念の性質範圍を明にし、他の槪念との關係を區別せんとす、而して槪念の要領を説明せるものを定義と謂ふ。
設立免許書
(せつりつめんきよしよ)國家が、人又は事業の設立經營を爲すことを免許する書面をいふ、例へば法人の設立を免許する主務官廳の免許書の如し、此他自然人又は法人が認立經營せんとする事業を免許する書面の如きも、亦之を設立免許書といふことを得べし、非訟事件手續法に「設立免許書」とあるは此の用例とす。(非訟事件手續法一九四の二、四號參照)
- 英
- Certificate of establishment
- 独
- Errichtungscertifikat
- 仏
- Certificat de l'établissement
狹き推測
(せまきずゐそく)法令を解釋して適用するに當り、其法令を狹き意味に解釋するを至當とする場合に、斯かる推測を狹き推測といふ、元來法律は、其如何に依りて或は之を廣く解釋し、或は狹き解釋を要することあり、例へば原則法は之を廣く解釋し、「例外法は之を狹く解釋すべし」との原則の如し、即ち例外法は狹き推測を受くるものにして、蓋し原則法は一般の場合に行はるるものなるが故に、特別の例外なき限りは、常にこれを適用すべきものにして、之に反して例外法は、其例外を規定したるものなれば、其場合に恰當する場合に限り之を適用し、之に類似する他の場合に類推す可らざるは當然なり、此の如く狹義に解するを至當となす推測は、即ち狹き推測なりといふべし。
- 英
- Narrow supposition
- 独
- schmale Voraussetzung
- 仏
- Supposition étroite
善意
(ぜんい)甲あり、自己の不動産を乙に賣りたるも、未だ登記なきを奇貨措くべしと爲し、更に丙に賣渡せり、此の場合に、丙が甲と乙との間に賣買ありたる事を知りたるときは、惡意にして、知らざるときは善意なり、即ち善意とは、或事情を知らずと云ふと同じ、而して其知らざることが、自己の過失に出たると然らざるとは、固より之を問はざるものとす、法律上に於て善意、惡意の語は、至る所に使用せらるると雖も、必しも倫理學上に於ける如き、軌範的なる善惡の標準に基くものにあらずして、單に或關係又は情を知れるや、又は之を知らざるやに依る區別にして、之を知る場合は惡意なり、其の所動的たると、能動的たるとを問はざる也、而して之を知らざる場合は善意とす、故に善意は、其意思が善なるにあると否とを問はず、唯或法律上に影響を及ぼすべき事實の存在を知らざると云ふ一事に存す。(民九四、一六條、商七、一二條及び惡意の部參照)
- 英
- Good faith
- 独
- guter Glaube
- 仏
- Bonne foi
專有
(せんいう)專ら所有するの意にして、彼の共有に對するの語とす、換言すれば、一人に權利を獨有することにして、權利の數人に屬する彼の共有の場合の正反對とす。(民二三一條二項末段)
- 英
- Sole ownership
- 独
- einziger Be-sitz
- 仏
- Propriété
占有
(せんいう)占有とは、法律上に於て、一般に物に關する現實の支配を云ふ、詳言すれば、占有は、有體物が事實上吾人の實力に服從する法律上の狀態を意味し、吾人が他人を排斥して有體物の上に有形的行爲を施すことを得る狀態を云ふ也、而して或人が、有體物を事實上自己實力の範圍に保持するときは、此狀態を指して物の握有又は物の所持と云ふ、物の所持人が自己の爲めにする意思を以て、法律上物を保持するときは、其保有は所謂占有にして、占有權は此種の占有より生ずるものなり、此占有(ボツゼシヲ)と握有(デテンチヲ)との區別は、古來より一定せる學説なき所にして、從つて占有に關する定説もなきものとす、今其重なる立法主義を擧ぐれば、□一占有は、所有の意思を以て、有體物を自己の實力範圍内に入れざるべからずとなす主義、□二占有たるには、占有者に自己の爲めにする意思あるのみを以て足るとなす主義、□三占有者が物を自己の實力範圍内に保持するに於ては、意思の有無に拘らざるものとすとの數主義あり、佛國民法及び我舊民法は、此一の主義を採り、獨逸民法は、三の主義を採り、我現行民法は、二の主義を採る、而して法律の保護を受くべき占有の範圍に就きては、二説は一より廣く、三説は二説より廣し、而して一の主義は羅馬法以來行れしものに係り、種々の變遷を經て、三の主義を生ずるに至りたり、蓋し法律が占有を保護する所以のものは、主として或人が物を自己の實力範圍内に保持するときは、他人をして、私力を以て猥りに此實力關係を動すことを得ざらしむるにあり、故に此點より觀察するときは、苟も人との物との間に於て實力關係の存する限りは、其人が物を所持する所以の意思如何に拘らず、之を保護し、敢て他人をして之を侵害せしめざるの必要あるものの如し、然れども我現行民法に於ては、自己の爲めにする意思なくして、物を所持する者は、物の所持に就き何等の利害を感ぜざるものなれば、之を保護するの必要なきものと認め、此意思を以て、法律の保護を受くべき必要條件と爲したるもの也、民法に依れば、法律上の占有には、自己の爲めにする意思を以て、物を所持することを必要としたるが故に、唯或權利の行使として、物を所持する場合に於てのみ、法律上の占有あること明なり、何となれば、自己の爲めにする意思を以て物を占有するには、常に必ず物に關する或權利の行使として、物を占有することを要し、此場合を除き、他に自己の爲めにする意思を以て、占有を爲すの場合なければなり。(民一八三條乃至二〇二條)
- 英
- Possession
- 独
- Besitz
- 仏
- Pos-session
占有回收の訴
(せんいうくわいしゆうのうつたへ)占有者が、占有を奪はれたる場合に、占有物の返還、及び損害の賠償を目的とする訴を占有回收の訴と云ふ、此訴は、占有者が占有を抛棄する意思なくして、第三者の所爲により、物の上に實力を喪失したる凡ての場合に之を提起するを得、即ち占有者が意思なくして、占有物の所持を失ひたること、其所持の喪失は、第三者の侵害行爲に基因したるものなることを要す、占有の侵奪なるものは即ち是也、之を例へば強盜、竊盜の爲めに占有物を奪はれたる場合の如し、其占有の妨害と異なる要點は、占有の妨害にありては、未だ其目的物の所持を失はざるも、占有の侵奪にありては、占有物の所持を失ひたるにあり、而して占有者が、第三者の侵害行爲によりて占有を失ひたるときは、侵奪者及其一般承繼人に對して、占有物の返還及び損害の賠償を求むることを得べし、侵害者の特定承繼人に就きては、一の區別を要す、即ち承繼人が侵奪の事實を知れるときは、占有者は之に對し、回收の訴を提起するを得べし、之に反して承繼人が侵奪の事實を知らざるときは、占有者は之に對して、占有回收の訴を提起することを得ず、何となれば、占有回收の訴は、侵奪者の不法行爲に基因するを以て、不法行爲者たる侵奪者及び其一般の承繼人に對してのみ、之を提起し得べきを原則とす、然れども侵奪者より占有物を讓受けたる特定承繼人が、侵奪の事實を知るときは、占有者より回收の請求を受くべきことは、其豫め期する所なりと云はざるべからず、從て之を保護するの要を見ざれば也、而して承繼人の善意、惡意は、承繼人が占有を爲したる當時に遡りて、之を定むることを要す、故に占有の當時にして善意なるときは、其後に至り侵奪の事實を知るも、占有者に對して、義務を負ふ事なきものとす、而して此訴は、占有侵奪の時より一ケ年の期間内に之を提起せざるべからず、故に占有者が、第三者の爲めに占有を侵奪せられたる場合に、侵奪の時より一ケ年内に占有回收の訴を提起して、占有物を取戾さざるときは、占有者は最早占有物を回收すること能はざるを以て、確定的に其占有を失ふと同時に、其占有權は、茲に全く救濟の途を消滅するものとす、蓋し以上の如き期限を置きたる理由は、占有訴權なるものは、元來實際上の必要より、現狀維持の爲め、別言すれば、社會の平和を保つの目的を以て與へたるものなるが故に、占有物の侵奪を受けたるに拘らず、直に回收を爲さずして、其狀態を確定せしめたるときは、社會の平和を保つが爲め、却て新に生じたる狀態を保持せざるべらざることとなる、從て占有者が、其占有に就き、法律の保護を受くる所以の理由は、取も直さず又占有者をして、其保護を失はしむる理由となるもの也、之何れの國に於ても、占有權行使の期間を比較的に短縮し、此期間經過後は、絶對に新なる占有を保護し、舊占有者をして、占有權を失はしむる所以とす、我民法亦同一理由に基き、回收訴權の行使期間を一年とせり。(民法二〇〇、二〇一條)
- 英
- Action for the recovery of possession
- 独
- Klage des Wieder-besitzes
- 仏
- Action pour recouvrer la possession
占有權
(せんいうけん)占有は一個の事實に過きざるも、更に一個の權利なるかは、學界多年の宿題也、惟ふに、占有は一の事實に過ぎざるは勿論なれども、此事實より重要なる效果を生ず、即ち占有者は、占有物に關して、法律上種々の利益を享受し得ると同時に、法律は其占有を保護し、第三者が之を妨害し、若くは之を侵奪したる時は、占有訴權の方法によりて、其占有を保護し、之を回收するの權利を占有者に付與し、占有者をして占有より生ずる利益の占有を完うせしむ、此利益を占有するを得るの權利は即ち占有權なり、此權利たるや、所有權、地上權等と同じく、物の上に行はるるものなるを以て、物權の一種たるべく、されど占有權は、他の物權と頗る異なる、即ち單純に占有なる事實のみに基因し、實體上の權利の如く、物を支配する事を得べき權利者本來の能力に基因するにあらず、旦つ占有權は、人と物との實力關係を保護するを目的とし、其效果は主として、私力を以て、物の上に行はるる實力關係を侵害せしめざるの範圍内に制限せらるるものなれば、占有實が、實體上の權利と競合したる時は、實體上の權利に一著を輸せざるべからず、例へば甲は時計の占有者にして、乙は權利なくして之を占有するものとせんが、甲は占有權を有するが故に、乙の承諾なくして、私力を以て之を取戾す事を得るも、乙は單に占有權を有するに過ぎざるが故に、之を返還せざるべからざるの義務あるものとす、故に占有權は、要するに自己の爲めにする意思を以て物を占有する人が、法律に定めたる方法に依るに非ざれば、其意思に反して占有を迫害せられざる權なりと解して可なり。(民一八〇條以下)
- 英
- Possessory right
- 独
- Besitz-recht
- 仏
- Droit de la possession
占有訴權
(せんいうそけん)占有訴權とは、法律が占有を保護する爲めに、占有者に對して附與する所の訴權なり、元來占有は、一の事實に外ならずと雖も、法律は之に付するに重要なる效果を以てし、且つ之を侵害するものあるに於ては、他の權利侵害の場合と同じく、占有者をして訴權の方法に依り、其救濟を裁判所に求むる事を得しむ、我民法が占有を以て單純なる事實上の狀態と爲さずして、占有權なる名稱の下に之を一の權利としたる所以は、實に此點に在て存す、然れども占有は、物に關する現實の支配にして、實體上の權利の行使に外ならず、占有權は即ち占有の事實に伴ふ權利にして、其根原に於て、物を支配する能力たる實體上の權利と其本質を異にするはいふ迄もなし、爰を以て、實體上の權利とは、其效力を異にし、含有訴權と本權訴權とは、其效用を異にするの結果を生ずるものとす、而して占有訴權を行使し得べき者は、自己の爲めに物を占有する法律上の占有者が、此權利を行使し得べきは論なし、蓋し占有訴權は、占有の保護を目的として、占有權の爲めに設定せられたるものなれば也、之に反し他人の爲めに占有を爲す者は、純然たる本來の占有者と云ふこと能はざるを以て、此權利を行使する事能はざるが如しと雖も、占有訴權なるものは、占有權保護の爲めに、特に與へられたるものにして、占有者の外、之を行使するを得ざるものとせんか、急速を要する占有の保護は、充分に其目的を貫徹すること能はざるの虞あるに至らん、茲に於て乎、他人の爲めに現に占有を爲す者は、速に占有の訴を提起することを得るの地位を與ふるのみならず、物の占有に關しては、本人たる占有者に對し、責任を負擔するを以て、斯る者にも、亦占有訴權を行使し得る權能を與ふるに非ざれば、占有權保護の完全を望むこと能はず、之民法に於て、明文を以て、他人の爲めに現に占有を爲す者にも、占有權行使の權能を與へたる所以也、然れども之を以て、直に自己固有の權利なりと解するは、早計たるを免れず、本人たる占有權者に代りて、此權利を行ふに外ならず、從て本人に於て、占有權の行使を禁じたる場合には、之を行使することを得ざるは論を俟たざる也。(民一九七條)
占有の訴
(せんいうのうつたへ)占有の訴とは、占有權に基き起す訴にして、其内容に依て占有保全の訴、占有保持の訴、占有回收の訴の三種とす、而して占有權は、本權と離れて獨立の存在を有する權利なるが故に、本權の訴とは其關係を異にす、茲に兩者の關係を畧述せん、占有の訴は、占有に基因し、物に關する現實の實力關係の保護を求むるを目的とし、本權の訴は、實體上の權利に基因し、物に關する實體上の權利關係を定むるを以て其目的とす、從て□一占有の訴と本權の訴とは訴訟手續を異にす、占有の訴は、要するに現在の狀態を維持するを目的とし、且つ迅速に結了する事を欲するものなるが故に、訴訟物の價額如何に拘らす、常に區裁判所の管轄に屬し、訴訟手續は、簡易を以て旨とす、之に反して本權の訴は、目的物の價格に從ひ、區裁判所若くは地方裁判所の管轄に屬し、其訴訟手續比載的鄭重也、且つ占有の訴にありては、當事者は、單に占有の事實を證明するのみを以て足れりとするも、本權の訴に於ては、實體上の權利を證明する必要あり、而して占有の事實は、之を證明する事易々たるも、實體上の權利は之を證明する事難きを以て、訴訟の目的を達するの點に於て、其難易を異にするの結果を生ず、爰を以て物の占有者が、同時に其所有者なるときは、占有の侵害に對し、急速に救濟を求めんと欲せば、占有の訴を行使するに利あり、占有の侵害が、物に關する實體上の權利の主張に基因し、其權利關係を確定する必要ある時は、本權の訴によるを利益なりとす、□二本權の訴と占有の訴とは、相兩立し得べきもの也、蓋し本權と占有權とが、各其内容を異にするものなれば、兩立し得べきは勿論なり、仍て物の所有者が、同時に物の占有者なるときは、所有者は、所有權と占有權とを併せて有するものとす、其他物の占有を必要とする物權に就ても亦然り、而して本權の訴と占有の訴とは其目的を異にし、其效用を異にするを以て、權利者は、此二個の訴權を併せて行使し得べく、其一を行ふに因りて、他の一を失ふ事なし、故に占有者が其占有に基き、占有回收の訴を提起し、其訴に於て敗訴したる時と雖も、更に所有權に基き、所有權回復の訴、即ち本權の訴を提起するを得べく、又本權の訴に於て敗訴するも、占有の訴に於て勝訴者となることを妨げざるものとす、□三占有の訴は、本權に關する理由に基きて之を裁判する事を得ず、占有訴權は、占有の保護を目的とするものにして、占有が正當の權利に基くや否やは、占有權の訴に毫末の影警を及ぼすものにあらず、從て占有の訴を提起せられたる場合に、被告は物に關する實體上の權利が、自己に屬するを理由として、原告の請求を排斥するを得ず、蓋し占有訴權は、實體上の權利の如何に拘らず、物に關する現狀を維持する事を目的とする者なれば也、故を以て被告が、實體上の權利を以て抗辯としたる場合に、直に其權利を證明し得べき時と雖も、其抗辯は、占有の訴に於て許すべきものにあらず、之即ち占有の訴と、本權の訴とを併合することを得ずてふ格言の存する所以也、從て本權の訴と占有の訴とは、併合審理を許さざるは勿論、本權の訴の落著迄、占有の訴を中止することを得ざるものとす、本權の訴が、前に提起せられたる場合亦同じ、要するに占有の訴は、迅速に終了する事を必要とするものにして、其終結が遲延するときは、占有權の效力は、大半沒却せらるるの結果を生ずべきものとす。(民二〇二條及占有回收、保持、保全の訴の部參照)
- 英
- Possessory action
- 独
- Pos-sessiorienklage
- 仏
- Action de la posses-sion
占有保持の訴
(せんいうほじのうつたへ)占有者が、其占有を妨害せられたる場合に起す所の訴にして、妨害の停止、及び妨害によりて生じたる損害の賠償を目的とする訴を占有保持の訴と云ふ、妨害とは、占有者をして、物上に實力を施すことを得ざらしむべき有形的の障害を云ふ、例へば占有者の承諾なくして、其邸宅内に立入り、占有者の地面に建物を突出せしめ又は液體を流下せしむるが如し、占有者が第三者の所爲により、占有を妨害せられたるときは、妨害者に對して、將來に向ひて其妨害を止むべきことを請求すると同時に、既住に於て其妨害より生じたる損害の賠償を求め得べし、而して此の二個の請求權中、要償の請求權は、妨害者に對してのみ行ふを得べく、妨害停止の請求權は、妨害者たると否とを論せず、之を行ふを得べし、例へば甲者が乙者の所有地内に、其家屋の屋根を突出せしめ、乙者の占有を妨害したりと假定せよ、甲者、其家屋を丙者に賣渡したるときは、屋根の突出によりて既に生じたる損害は、甲者に對してのみ請求し得べく、讓受人たる丙者に對して請求するを得ず、之に反して、屋根の突出より生ずる妨害の排除に就きては、丙者に對しても請求し得べし、其行使の期間は、□一占有者は、妨害の存する間は、常に占有保持の訴を起す事を得べし、而して其妨害が何時始まり、又幾何の期間を經過したるやは之を問はず、□二妨害止みたる時は、妨害の止みたるときより一年内に之を提起することを要す、故に此期間を經過したるときは、最早此訴權を行使することを得ず、蓋し一ケ年の久しき妨害を爲さざるときは、最早妨害を爲す意思なきものと見るを得べく、從つて占有物は、其本然の狀態に復したるものなれば、之に對して救濟を求むるの必要なければ也、但し以上の場合に、次の例外あり、占有の妨害が工事に基因する時は、占有保持の訴は、特別の期間に從ふものとす、所謂工事とは、家屋、其他の建物の建築、提防、溝渠の築造等其一なり、而して占有妨害の問題は、主として此工事の隣接せる二個の不動産の境界に接近して、起工せらるる場合に於て生ずるものとす、例へば家屋の屋根を隣地に突出せしめ、又は建物の建築に就き、法定の距離を存せざる場合等の如し、占有の妨害が工事に基因するときは、下の期間に依らざるべらず、イ占有者は、工事著手より一ケ年内に、占有保持の訴を提起する事を要す、民法は、工事著手の時を以て、一ケ年の期間の起算點としたるが故に、妨害の事實が、工事著手の時に生じたると、其後に生じたるとは、訴權行使の期間に影響する所なし、之舊民法と異る點なり、舊民法に於ては、妨害の生じたるときを以て、期間の起算點と爲したり、而して實際に於ては、妨害の事實が工事著手後に於て生ずることあるは、住々にして是あり、實際に於て妨害を生ずるの時は、最早訴權を行使すること能はざる場合あるべし、ロ工事竣成したるときは、占有保持の訴を起すことを得ず、占有者が新工事の爲めに、其占有を妨害せられたるときは、占有者は、妨害排除の目的を達する爲めに、工事の取拂、若くは其變更を求むることを得べし、されど工事竣成後、若くは工事が著しく進步したる後に於て、其取拂、變更を爲すに於ては、經濟上不利なる結果を生ずるを以て、占有者をして、其權利を行使せしむるは、公益に害あれば也、而して其工事は新工事に限るものなるが故に、工事の不完全なるを修繕せんが爲め、占有を妨害したるが如き場合には、以上の法則によるの限にあらずして、占有者は、常に占有保持の訴を以て、妨害排除及損害賠償を求むることを得べし、然も之が爲め、毫も經濟上不利なる結果を生ぜず、之新工事の場合と其趣きを異にすれば也。(民一九八、二〇一條)
占有保全の訴
(せんいうほぜんのうつたへ)占有者が、其占有を妨害せらるる虞ある場合に、妨害の豫防、又は損害賠償の擔保を求むるが爲めに、提起する所の訴を占有保全の訴と云ふ、妨害の虞ある場合とは、例へば占有者が土地又は家屋を所有する場合に、隣地の建物が今や將に崩壞せんとし、又は隣地の大木が將さに倒れんとして、占有者の土地家屋に危害を及ぼす虞あるが如きを云ふ、斯かる場合には、占有は未だ妨害せられず、且つ損害は未だ生ぜざるも、其妨害並に損害は、將來に於て生ずべき虞あり、故に占有者は其選擇に從ひ、相當の豫防方法を設くるか、然らざれば他日生ずべき損害に對し、相當の擔保を供すべきことを隣地の所有者に請求することを得、例へば建物を修繕し、若くは崩壞に先ち之を毀ちて危險を豫防し、又は損害の賠償を保證する爲め、特に保證債務を設定し、又は物上擔保を設定せしむるが如し、而して占有保全の訴は、物上的の性質を有し、占有物に對して危害を生ぜしめたる者は勿論、此危害の存する限りは、其承繼人に對しても、之を行使する事を得べし、其行使期間は、妨害の危險の存する間なり、但し新工事に因り占有物に損害を生するの虞あるときは、占有者は工事著手の時より一ケ年を經過し、又は其工事竣成せるときは、之を提起することを得ず、然し妨害の危險は、家屋、限防其他の建築物が、傾斜若くは崩壞せんとする場合に於ても、亦生ずるものなるを以て、之等の場合に於ては、家屋、堤防其他の建築物が、新に築造せられたると否とに拘らす、損害豫防の爲めに、常に占有訴權を行使し得べきものとす。(民一九九、二〇一條)
- 英
- Action for the protection of possession
- 独
- Besitznehmungsanklage
- 仏
- Action pour la protection de la pos-session
船員
(せんいん)船長及び海員を總稱して船員と云ふ、而して海員とは、船長以下の船舶乘組員を云ひ、船長とは、航海の用に供する船舶の指揮者を云ふ、海員を分ちて、一甲板部員、即ち一等運轉士以下水夫まで、ニ機關部員、即ち機關長以下火夫まで、三事務部員、即ち事務長、醫員、厨夫までの三となす、茲に水先人が海員なりや否やに就きては疑問あり、我法の解釋としては、海員にあらずとなすを通説とするが如し。(商五編二等、及び船員法參照)
- 英
- Crew
- 独
- Schiffmannschaft
- 仏
- Équipage
全員
(ぜんいん)全員なる語は、各員なる語に對して總員を意味す、例へば委員の全員、會員の全員、會社員の全員と云ふが如し、即ち關係人員の總體を云ふ也、全員の一致など云ふは此の用例とす。(民五四四條等)
- 英
- All of members
- 独
- alle Mit-glieder
- 仏
- Tous les membres
船員手帖
(せんいんてちやう)船員が管海官廳に申請して交附を受くる手帖を船員手帳と云ふ、而して其表面には、船員手帖なる文字及び交附の年月日、番號を記載して、之を交附せられ管海官廳記名捺印せるものとす、其内部には本人の氏名、本籍地、身分、出生の年月日、官廳記事、船種、船名、積量、船籍港、航路、又は航路定限、船長氏名、職務、雇入期間、給料、雇入地、雇入年月日、公認年月日、及び右雇入公認ありたることを認證すと云へる文字、管海官廳の名稱捺印、雇入契約の變更又は更新、雇止事由、雇止地、雇止年月日、公認年月日及び右雇止公認ありたることを認證すと云へる文字、管海官廳の名稱捺印、履歷等を記載せるもの也、而して船員手帖の交附を受けんと欲せば、左の申請書を以て申請せざるべからず、
船員手帖交附申請書
私儀船員手帖受有致度左ニ氏名其他ノ事項ヲ具シ交附申請致也
(住所)
明治年月日氏名
(管海官廳)
御中
一氏名(片假名を以て傍訓を附すべし)
二本籍地
三身分(戸主家族の別、家族なるときは、戸主の氏名及び戸主との續柄)
四出生の年月日
船員手帖の表面左の如し
明治年月日交附
船員手帖
(管海官廳名印)
- 英
- Book of crew
- 独
- Hand-buch der Schiffmannschaft
- 仏
- Cahier de l'équipage
船員法
(せんいんはふ)明治三二年法律第四七號を以て公布せられたる法律にして、□一本法は日本船舶の船員に之を適用す、但し湖川、港灣のみを航行する船舶、又は總噸數十二噸未滿、積石數二百石未滿の船舶、端舟其他櫓櫂のみを以て運轉し、又は主として櫓擢のみを以て運轉する船舶の船員に就きては、此を適用せず、□二本法に於て船員とは、船長及び海員を謂ひ、海員とは、船長以外の一切の乘組員を云ふ、□三船長は海員を指揮監督し及び船中に在る者に對し、其職務を行ふに必要なる命令を爲すことを得、□四海員の雇入若くは雇止を爲し、又は雇入契約の更新若くは變更を爲したるときは、管海官廳に海員名簿を提出して、公認を申請することを要す、□五管海官廳が公認を爲すには、海員名簿に記載したる事項を、當事者双方に讀聞かせたる後、之に署名、捺印せしむるを要す、但し海員の雇止を爲したる場合に於て、正當の理由あるときは、當事者の一方が出頭せざるときと雖も、公認を爲すことを得、當事者が印を有せざるときは、署名するを以て足る、署名すること能はざるときは、氏名を代署せしめ捺印するを以て足る、若し署名する事能はず、且つ印を有せざるときは、氏名を代署せしめ拇印するを以て足る、捺印せず、又は氏名を代署せしめ、若くは拇印したる場合に於ては、海員名簿に其事由を附記することを要す、□六海員の雇止に關して爭あるときは、當事者の一方は管海官廳に其事由を申立て、雇止の公認を申請することを得、管海官廳が其申請を正當なりと認めたるときは、當事者双方を呼出し、海員名簿及船員手帖を提出せしめて、雇止の公認を爲すことを要す、當事者の一方が出頭せざるときは、管海官廳は相手方の申立によりて、雇止の公認を爲すことを得、此場合に於ては、海員名簿、及び船員手帖に、其事由を記載することを要す、以上の場合に於て、管海官廳は、海員名簿、又は船員手帖の提出を強制することを得、□七船長は海員の雇入期間中、其船員手帖を保管することを要す、□八海員が雇入期間中脱船したるときは、船長は遲滯なく管海官廳に、其海員の船員手帖を返還することを要す、□九海員は雇止ありたる場合に於ては、船長に對し其職務の執行又は品行に關する證明書の交附を請求することを得るもの也。
- 英
- Law of crew
- 独
- Schiffmann-schaftsgesetz
- 仏
- Loi de l'équipage
船員法施行細則
(せんいんはふしかうさいそく)明治三二年遞信省令第二五號を以て公布せられたる命令にして、□一船員法又は本則の規定による申請は、特に明文を揭ぐる場合を除く外、書面又は口頭を以て之を爲すことを得、□二代理人によりて以上の申請を爲すときは、代理人は其權限を證する書面を管海官廳に差出すべし、□三船員法及び本則中、最初に到著したる港の管海官廳と稱するは、最初に到著したる管海官廳ある港の管海官廳を云ふ、□四船員手帖、海員に關する事務は、管海官廳に於て、當事者の申請により理由ありと認むるときは、休暇日と雖も之を行ふことあるべし、□五海員雇入の公認を申請せんとするときは、雇者は、海員名簿に法定の事項を記載し、下の書面を添へて、雇入港の管海官廳、其港に管海官廳なきときは、其後最初に到著したる港の管海官廳に差出すべし、イ第三號書式の申請書、ロ被雇者海技免狀を有するときは其免狀、□六海員雇止の公認を申請せんとするとは、雇者は海員名簿に法定の事項を記載し、下の書類を添へて、其事由の發生したる港の管海官廳、其港に管海官廳なきとき、又は航行中其事實發生したるときは、其後最初に到著したる港の管海官廳に之を提出すべし、イ第四號書式の申請書、ロ被雇者に關し記載を爲したる舶海日誌、□七員雇入契約更新の公認を申請せんとする時は雇者は、海員名簿に法定の事項を記載し、下の書類を添へて、更新を爲したる港の管海官廳、其港に管海官廳なきとき、又は航行中更新を爲したるときは、其の後最初に到著したる港の管海官廳に提出すべし、イ第五號書式の申請書、ロ被雇者海技免狀を有するときは其免狀、ハ被雇者に對し記載を爲したる航海日誌、□八海員雇入契約變更の公認を申請せんとする時は、雇者は、海員名簿に法定の事項を記載し、下の書類を添へて、變更を爲したる港の管海官廳、其港に管海官廳なきとき又は航行中變更を爲したるときは、其の後最初に到著したる港の管海官廳に提出すべし、イ第六號書式の申請書、ロ契約の變更が被雇者の職務に係る場合に於て、被雇者海技免狀を有するときは其免狀、□九海員名簿滅失又は毀損により公認を申請せんとするときは、下の書類を添へ、海員名簿を作りたる港の管海官廳、其港に管海官廳なきとき又は航行中これを作りたるときは、其の後最初に到著したる港の管海官廳に提出すべし、イ第七號書式の申請書、ロ被雇者海技免狀を有するときは其免狀、ハ被雇者の海員手帖存するときは其手續、□十手數料の額は左の如し
(1)船員手帖の交付又は書換一部に付き二十錢
(2)船員手帖の訂正事項一個に付き五十錢
(3)報告書の認證一通に付き一圓
(4(船長就職又は退職の認證一件に付き五十錢
(5)公認被雇者一人に付き十錢
(0)公認の認證一件に付き五錢
外國に於て手數料を納付すべきときは、其額は左の規定に依る
(1)報告書の認證一通に付き二圓
(2)船長就職又は退職の認證一通に付き四十錢
(3)公認被雇者一人に付き二十錢
但船員法第三五條の場合に於ては
被雇者一人に付十錢
(4)公認の認識一件に付き十錢
前二項の手數料は、休暇日及管轄官廳外の場所に於て之を行ふ場合に於ては、前項に定むる所の二倍とす。
(第三號書式)
海員雇入公認申請書
船種船名番號船籍港航路又ハ航路定限船舶所有者ノ氏名又ハ名稱船丸第號番號被雇者ノ氏名船員手帖ノ番號職務雇入期問給料第號第號第號第號第號右明治年月日ニ於テ雇入
候ニ付公認相成度此段申請候也
明治年月日
雇者(氏名印)
(管海官聽名)
御中
(第四號書式)
海員雇止公認申請書
船種船名番號船籍港船舶有ノ氏名又ハ名稱船丸第號番號被雇者ノ氏名船員手帖ノ番號職務雇止ノ事由第號第號第號第號第號右明治年月日ニ於テ雇止候ニ付公認相成度此段申請候也
明治年月日
雇主(氏名印)
(管海官廳名)
御中
(第五號書式)
海員雇入契約更新公認申請書
船種船名番號船籍港船舶所有者ノ氏名又ハ名稱船丸第號番號被雇者ノ氏名船員手帖ノ番號職務更新ノ要旨第號第號第號第號第號右明治年月日雇入期間滿了ノ處明治年月日ニ於テ右ノ通契約更新候ニ付公認相成度此段申請候也
明治年月日
雇者(氏名印)
(管海官廳名)
御中
(第六號書式)
海員雇入契約變更公認申請書
船種船名番號船籍港船舶所有者ノ氏名又ハ名稱船丸第號番號被雇者ノ氏名船員手帖ノ番號職務變更ノ要旨第號第號第號第號第號右明治年月日ニ於テ右ノ通雇入契約變更候ニ付公認相成度此段申請候也
明治年月日
雇者(氏名印)
(管海官廳名)
御中
(第七號書式)
海員名簿滅失(毀損)ニ付公認申請
船種船名番號船籍港航路又ハ航路定限船舶所有者ノ氏名又ハ名稱船丸第號番號被雇者雇氏名船員手帖ノ番號職務ノ入期問給料第號第號第號第號第號右雇入ノ儀明治年月日ニ於テ公認相受候處海員名簿滅失(毀損)候ニ付公認相成度此段申請候也
明治年月日
雇者(氏名印)
(管海官廳名)
御中
(備考)船員手帖滅失又は毀損したる場合には、當該被雇者の氏名の上に○を附すべし
(第八號書式)
手數料納付書
私儀申請候ニ付右手數料金圓錢ニ相當スル收入印紙帖用納付候也
印紙
明治年月日(氏名印)
(管海官廳名)
御中
(備考)船員手帖の訂正を申請する場合には、訂正事項何個、報告書の認證を申請する場合には、報告書何通、公認を申請する場合には、被雇者何人と、印紙の下に記載すべし、以上を以て本令大要の説明とす。
專行
(せんかう)專斷執行と云ふに同じ、例へば某々の事項は、社長の專行に屬すと云ふが如し、又判任官以下の進退は、長官の專行する所に係ると云ふが如き之なり。(賞勳局官制五條)
- 英
- Dogmatic excution
- 独
- dogma-tische Exekution
- 仏
- Exécution dogma-tique
銓衡
(せんかう)銓衡とは、ハカリのことにして、軈てはかることを意味するも、法律上に於て用語の慣例に從へば、所謂試驗の方法に依らず、或事項の當否を審査するを云ふ、例へば銓衡して特別任用を爲すが如き、必ずしも其の人のオ學識量を審査するに、法定の方法なる筆記又は口述の方法によりて試驗せず、學歷等に依て、其人を知り用ふるの方法を云ふが如き是也。
銓衡委員
銓衡委員とは、斯かる銓衡を爲さしめんが爲めに選任せられたる委員を云ふ。(海軍大學校條例一九條等)
- 英
- Inspection committee
- 独
- Aufsichtscomite
- 仏
- Comité de l'inspec-tion
全額保險
(ぜんがくほけん)一に之を全部保險と云ひ、保險價額と保險金額と等しき保險を云ふ、全部保險は、彼の一部保險又は追加保險に對するものにて、被保險物即ち被保險利益、例へば五百圓の家屋を火災保險に附したるときは、家屋は、被保險物にして、被保險物の價額五百圓と、其の家屋を五百圓の保險に付したる場合に、其の五百圓なる保險金額と相同じき、本例の如き保險は全額保險なり、此の場合に於て、家屋が火災に罹りたるときは、保險者は保險金額を支拂ふの義務あるもの也、されど生命保險に於ては、此の如く一部保險、全額保險、追加保險の別はあり得ざるものとす、蓋し生命保險に於ては、損害保險に於けるが如き、物質的の被保險物なれば也。(商三八九條)
船艦札規則
(せんかんさつきそく)明治二九年遞信省令第二五號を以て公布せられたる命令にして、□一登簿船免狀を受有するに及ばざる船舶は、下に記載するものを除く外、船鑑札を受有すべし、イ航行の用に供せざる船舶、ロ登簿噸數五噸未滿若くは積石數五十石未滿の帆船、ハ櫓櫂のみを以て運航し、若くは主として櫓櫂を以て運航する船舶、□二船鑑札を受有せんとする時は、下の事項を記載したる件名書を添附し、本船定繫所を管轄する地方官廳に其下附を申請すべし、イ船名、ロ定繫所、ハ船の種類(汽船又は帆船等)ニ船質(鐵、鋼若くは木)ホ檣數、へ製造地名、ト製造年月、チ造船工長氏名、り船の原名(若しあらば)ヌ所有者の氏名、住所、ル尺度(量噸甲板上最大の長、最大の幅、艙室に於て、量噸甲板より船底中央の内板に至る深)オ總噸數、ワ登簿噸數、カ公稱馬力(汽船に在ては)但日本形船舶の件名書にはル以下の事項を除き、積石數を記載すべし、□三地方官廳に於て、上記の申請書を受けたるときは、件名書に記載したる事項を審査し、法定の書式に依る船鑑札を下附すべし、□四船鑑札は船舶に備へ置き、本船管理者之を保管し、當該官吏に於て檢閲を要するときは、之を提供すべし、□四船鑑札に記載したる事項に變更を生じたるときは、其事由を疏明し、三十日以内に船鑑札の書換を申請すべし、但し所有者を變更したる場合には、其申請書に之に關する證明を具備すべし、定繫所を移轉し、本船管轄官廳を變更するに至りたるときは、三十日以内に、舊管轄官廳に船鑑札を返納し、且つ件名簿を添付して、其證明を申請し、舊管轄官廳に於て、件名簿の證明を附與してより、三十日以内に之を添附し、新管轄官廳に船鑑札の下附を申請すべし、□六船鑑札を亡失又は毀損したるときは、管轄官廳に其再授を申請すべし、□七船舶破壞、喪失、失踪、解撒に歸したるとき、又は日本船舶たる資格を失ひたるとき、登簿船免狀を受有す可き船舶となりたるときは、其事由を疏明し、三十日以内に管轄官廳に船鑑札を返納すべし、□八以上に違背したる者は、二圓以上二十圓以下の罰金に處す、□九此規則は明治三一年一月一日より施行す、□十此規則施行の際、現在の船舶は船税規則により、從來受有したる船鑑札を以て、此規則に定むる船鑑札に代用することを得るもの也。
船鑑札規則施行手續
(せんかんさつきそくしつかうてつづき)明治二九年遞信省訓令第四號を以て公布せられたるものにして、□一地方官廳は、船艦札臺帳を備置き、船鑑札規則により、船鑑札を受有する船舶の件名、船鑑札の番號及其下附、書換、再授又は返納の年月日、並に事由を記載すべし、□二地方官廳に於て、船鑑札規則に據り件名書を受理したるときは、其船舶に就き尺度及積量は、船舶積量測度規則に從ひ、公稱馬力ば公稱馬力算定方法に從ひ、之を審査すべし、船鑑札に記載したる尺度、積量、又は公稱馬力に變更を生じ、其書換を申請したるときは、地方官廳は之を審査し、必要と認むる場合には其船舶に臨檢すべし、□三船鑑札に記載する長、幅、深、總噸數、登簿噸數及公稱馬力は、單位以下二位を以て限とす、但し長、幅及深は尺を以て單位とす、□四船鑑札規則に據り件名書の證明を申請したるときは、地方官廳は船鑑札臺帳に照覈し、誤謬なしと認むる場合には、件名書に廳印を捺して交付すべし、□五地方官廳は、每年一月三十一日、七月三十一日迄に、前六月間の船舶の異動を遞信省に報告すべきものとす。
選擧
(せんきよ)選擧とは、法令の定むる形式及び場合に於て、特定人を選擇指定するを云ふ、例へば國會議員、府縣會議員、市町村會議員を定むるが如き、皆此選擧なる方法に依りて定むるもの也、元來選擧は多數人中より自己の最も適當の者を指定する方法にして、一方的行爲たり、而して選擧は、敢て議員其者を選定する效果を生ずるものに非ず、選擧せられたる者も、之に依りて直に議員となるものに非ず、選擧者は、唯自己の指定せる者を適任者と認め、選定せられたる者は、之に依りて、自己を選定の地位に爲すべき請求權を得るもの也、選擧は、普通投票の形式に依りて行はるるを普通とす、されど選擊に投票の觀念は、必ずしも必要にあらず、他の方法に依て選擧を爲し得べきは勿論とす。(衆議院議員選擧法參照)
- 英
- Election
- 独
- Wahl
- 仏
- Élec-tion
占據
(せんきよ)占據とは、一定の場所を占領して之に據るを云ふ、國際法上の用語としては、占領と同義に用ふるもの也。(民訴五〇二條一號、占領の部參照)
占據者
占據者とは、一定の場所を占領して之に占據する者を云ひ、國際法上の用語としては、單に占領者を云ふ。(占領の部參照)
- 英
- Occupant
- 独
- Besitzer
- 仏
- Occupant
選擧期
(せんきよき)選擧を爲す期日を選擧期と云ふ、例へば衆議院議員の總選擧期日は、勅令を以て定め、少くとも三十日前に之を公布し、缺員を生じ、補缺選擧の必要ある場合には、地方長官は内務大臣の命により、其命を受けたる日より二十日以内に、補缺選擧を行ふ期日を豫め告示するが如き、斯くの如く選擧を行ふの期日は、總べて選擧期なりとす。(衆議院議員選擧法二八、七八條參照)
- 英
- Time of election
- 独
- Wahl-termin
- 仏
- Temps de l'élection
選擧區
(せんきよく)選擧を行ふ便宜の爲めに全國を數區劃に分ちて、各定數の議員を選出せしむ、此の區劃を選擧區と云ふ、元來議員は、全國民の代表者にして、地方的の利益を代表する者にあらざるが故に、理想に於ては、全國を通じて一選擧區と爲し、別に選擧區劃を設けざるを可とす、然れども選擧は國民の行ふものなるが故に、國民の實行に適する良法に依るを可とす、而して全國を通じて一選擧區となすときは、地域極めて狹小なる國に於ては實行し得べしと雖も、稍大なる地域を有する國家に在りては、其實行に不便なること云ふ迄もなし、之選擧區を設くる所以にして、要するに選擧の爲めにする區劃を稱して選擧區とは謂ふ也、而して選擧區と其選擧區より選出せられたる議員との間には、毫も代表又は代理の關係なし、凡ての議員は、何れの選擧區より選出せられたるを問はず、均しく全國民を代表するものにして、其選出せられたる選擧區を代表するものにあらず、選擧區と議員との關係は、選擧の終ると共に全く絶へ、其間何等の關係を存せず、從て其後選擧區の變更併合等あるも、特別の明文あれば格別、一般には其區より選出せられたる議員の資格に毫も影響する所なき也。(衆議院議員選擧法一條、市制二〇條)
- 英
- Election district
- 独
- Wahl-bezirk
- 仏
- District de l'élection
選擧會
(せんきよくわい)選擧長の指定したる場所及び日時に開くものにして、開票管理者が投票の點檢を終了し、選擧長に報告したる其報告書を調査するの會合なり、□一選擧の一部無效となり、更に選擧を行ひたる場合に於て、開票管理者より投票の點檢を終り、其結果の報告を爲したるときは、選擧長は選擧會を開き、他の開票管理者の報告と共に之を調査すべし、□二選擧長は、豫め選擧會の場所及日時を告示すべし、□三選擧長は、各選擧區内の選擧人中より、三名以上七名以下の選擧立會人を選任し、選擧會開會の期日より少なくとも三日前に、之を本人に通知し、選擧會の當日選擧會に參會せしむべし、選擧立會人は、正當の事故なくして其職を辭するを得ず、□四選擧長は、選擧錄を作り、選擧會に關す顚末を記載し、選擧立會人と共に署名し、開票管理者の報告書と併せて、議員の任期間これを保存すべし、□五選擧人は、其選擧會に參觀を求むることを得。(衆議院議員選擧法六四條、府縣會規則一六條、市制二〇條)
選擧權
(せんきよけん)國民參政權の一種にして、選擧を行ふの權利也、換言せば國家の選擧機關を組織するの權利也、選擧權は、立憲政體の骨髓を爲すものにして、若し國民にして選擧權を有せざらんか、是即ち專制國家となる、今諸國の制度を一瞥するに、各國の制度は、之を大別すれば三となる、普通選擧、制限選擧、等級選擧之なり、□一普通選擧は、精神喪失者、一定の年齡に達せざる者、女子、公權剝奪又は停止中の者、禁治産者、破産宣告を受け、未だ債務の辨濟を終らざる者、官の救助を受け一定の限年を經過せざる者等、特別例外に屬する者の外は、凡ての國民平等に選擧權を與ふるの制度也、或は此他一定の年限間其選擧區に定住することを以て要件とする國あり、然れども此等の例外及び要件は、固より普通選擧たるに妨げなし、要するに普通選擧の特色は、財産資格を以て選擧權の要件と爲さず、財産資格の如何に拘らず平等に選擧權を附與することに在り、普通選擧の初めて採用せられたるは佛國にして、一八四八年の革命に依る、之より後勞働者の社會上、及び經濟上の勢力增加に隨ひて、漸次各國に行はるるに至れる所にして、今日普通選擧制度を採る國家は、佛蘭西、獨逸帝國、瑞西、西班牙、諾威、希臘及び北米合衆國中の大部分之なり、□二制限選擧とは、以上の如き特別の理由に依るの外、廣く一般に或資格を有することを選擧權の要件とするものを云ふ、其要件たる特別の資格の主なるものは、財産、納税資格又は教育資格等なり、而して其資格要件は、國に依り異同あり、匈牙利、リヱクサンブール、瑞典、セルヴイア等にては、財産資格を要件とし、獨逸諸國の一部には、直接國税を納付することを要件とするものあり、英國の制度は複雜を極むるも、槪して一戸を構ふることを、選擧權の要件とするに傾けり、荷蘭も稍之に類す、葡萄牙及び伊多利に於ては、普通教育を以て要件とす、されど伊太利にては、一定の財産資格ある者は教育の要件を要せず、葡萄牙にては、戸主に限り選擧權を有す、□三等級選擧とは、前二種の中間にある者にして、普通選擧と同じく、特別例外の外は全國民に選擧權を與ふるものなるも、其選擧權は、普通選擧の如く各人平等にあらず、選擧人中の一部分には、他の選擧人よりも大なる選擧權を與ふるものを云ふ、而して或は納税額に比例して選擧人を數級に區別するものあり、例へば孛漏西、其他獨逸聯邦中の數國及びルーマニア等の如し、或は身分等の階級により、選擧人に區別を設るものあり、例へば墺太利の如し、或は選擧人は通常は一票の投票權を有するを原則とし、一部の選擧人には、特は二個の選擧權即ち複數投票權を與ふるものあり、例へば白耳義の如し、而して選擧の理想は、いふ迄もなく普通選擧にあり、然らすんば教育資格を財産資格と同一の制限となすにあらん。(衆議院議員選擧法八條及び公權の部參照)
- 英
- Electior's right
- 独
- Wahlrecht
- 仏
- Droit de l'élection
選擧資格
(せんきよしかく)吾國の選擧法は制限選擧を取り、選擧資格即ち選擧權の要件を定む、今衆議院議員の選擧資格を擧げん、□一財産資格、直接國税即ち地租、所得税又は營業税を年額十圓以上納付することを要す、而して地租なるときは、選擧人名簿調製の期日前滿一年以上、其他の國租又は地租と其他の國税とを通じて十圓に滿つる場合に於ては、滿二年以上引續き納むる者なることを要す、□二年齡、滿二十五歳以上なること、□三性、男子たること、□四國籍、日本臣民たること、□五住所、選擧人名簿調製の期日前滿一年以上其選擧區に住所を有し、尚引續き有すること、但し下の者は之を有せず、(甲)華族の戸主、即ち貴族院議員の選擧權を有せば也、(乙)現役中又は戰時事變に際し、召集中の陸海軍々人、(丙)官立、公立、私立學校の學生、生徒、(丁)禁治産者、準禁治産者、(戊)破産宣告を受け未だ復權せざる者、(己)剝奪公權及停止公權者、(庚)禁錮以上の刑の宣告を受けたるときより其裁判所の確定に至る迄の者、(辛)選擧に關する犯罪により刑に處せられ、裁判所の宣告により、選擧權を禁止せられたる者是なり。(衆議院議員選擧法八、一一、一二條)
- 英
- Quality to elect
- 独
- Wahl-qualifikation
- 仏
- Qualification des élec-teurs
選擧訴訟
(せんきよそしよう)選擧の效力に關して、異議ある場合に提起する訴訟を選擧訴訟と云ふ、衆議院議員の選擧に於ては、□一異議を主張する選擧人は、選擧長を被告とし、選擧の日より三十日以内に控訴院に出訴することを要す、□二若し控訴院の判決に對し不服あるときは、更に大審院に上告することを得、□三裁判所は、選擧の規定に違背することある時は、當選の結果に異動を及ぼすの虞ある場合に限り、其選擧の全部又は一部の無效を判決す、□四裁判所は、選擧訴訟を裁判するに當り、檢事をして口頭辯論に立會はしむべし、□五裁判所に於て選擧訴訟を判決したる時は、其の判決書の謄本を内務大臣に送付すべし、若し帝國議會開會中なる時は、併せて之を衆議院議長に送付すべし、□六選擧訴訟を提起する者即ち原告人は、訴狀を提出すると同時に、保證金として三百圓又は之に相當する額面の公債證書を供託すべし、原告敗訴の場合に於て、裁判確定の日より七日以内に裁判費用を完納せざるときは、保證金を以て之に充當し、仍ほ足らざときは、追徵せらるることあるものとす。(衆議院議員選擧法八〇條乃至八五條)
- 英
- Suit of Election
- 独
- Wahl-prozesz
- 仏
- Poursuite de l'élection
選擧長
(せんきよちやう)選擧に關する事務を統轄する者を選擧長と云ひ、衆議院議員選擧に於ては、地方長官を以て之に先つ、其權限は、□一開票管理者が投票の點檢終りたる場合に、報告する所の報告書の調査、□二選擧會の場所、日時の告示、□三當選人の確定及び其旨を直に當選人に告知すること、□四選擧の效力に關して異議の訴、即ち選擧訴訟の提起ありたる場合に、其被告となること、□五各選擧區内の選擧人中より三名以上七名以下の選擧立會人を選任し、選擧會開會の期日より少くとも三日前に、之を本人に通知し、選擧會の當日選擧會に參會せしむること、□六選擧錄を作り、選擧會に關する顚末を記載し、選擧立會人と、開票管理者の報告と共に、之を議員の任期間保存すること、□七選擧場の秩序を保持し、必要なる場合に於ては、警察官吏の處分を請求することを得るもの也。(衆議院議員選擧法六、四七、四九、六四條乃至六七條、八〇條)
- 英
- Chairman of election
- 独
- Wahl-vorstand
- 仏
- Président de l'élection
選擧場
(せんきよぢやう)選擧場とは、現行衆議院議員選擧法に於ては投票所と云ふに同じ、□一投票所は、市役所、町村役場又は地方長官の許可を得て、投票管理者の指定したる場所に設く、□二投票管理者は、選擧の期日より少くとも五日前に投票所を其投票區内に告示すべし、□三郡市長は、各投票區内に於ける選擧人中より、三名以上五名以下の投票立會人を選任し、選擧の期日より少くとも三日前に本人に通知し、選擧の當日投票所に參會せしむべし、投票立會人は正當の事故なくして其職を辭することを得ず、□四投票所は午前七時に開き、午後六時に閉づ、□五選擧人は、選擧の當日自ら投票所に到り、選擧人名簿の對照を經て、投票簿に捺印し投票すべし、投票管理者は、投票を爲さんとする選擧人の本人なるや否やを確聞する事能はざるときは、其本人なる旨を宣誓せしむべし、其宣言を爲さざる者は投票を爲すことを得ず、以上は選擧場、即ち投票所に關聯する規定の主なるもの也。(衆議院議員選擧法三〇條乃至三四條)
- 英
- Voting place
- 独
- Wahlkammer
- 仏
- Lieu de scrutin
選擧等級
(せんきよとうきう)選擧等級は、又等級選擧と云ひ、普通選擧と制限選擧との中間に位するものにして、普通選擧と同じく、特別の例外の外は、全國民に選擧權を與ふるものなれども、其選擧權は、普通選擧の如く、各人平等に非ずして、選擧人中の一部分には、他の選擧人よりも大なる選擧權を與ふるものを云ふ、而して等級選擧にも種々の方法あり、一は納税額に比例して、選擧權を數級に區別するものにして、孛漏西、其他獨逸聯邦中の數國及ルーマニアに行はる、他の一は身分等の階級に依り選擧人に區別するものにして、墺太利は今日に於ても依然此制度を採る、他の一は原則として、選擧人は一票の投票權を有するものなるも、特に或特定の者に、二個以上の複數投票權を與ふるもの也、現今に於ても、主として白耳義に行はる、而して我市町村制に於て採る所の等級選擧は、納税額一定の額に達するを以て、公民權の資格要件となすに止まらず、均しく公民權を有する者の中に就て、更に二級又は三級の區別を爲し、二級公民には、三級公民より多くの選擧權を與へ、一級公民には二級公民より多くの選擧權を與へんとするもの也、惟ふに專ら貧富の程度のみを選擧權有無の唯一の標準と爲すことは、果して適當なるや否やは一個の問題なるも、余輩は寧ろ其不當なるを信ぜんとす、然りと雖も必ずしも其理由なきにはあらず、恒の産なき者は恒の心なき者、何ぞ選擧權の如き重要なる公務を行はしむるを得んやとの理由も、一槪に排斥し去ること能はざる也、然れども均しく選擧權者の中に就き、特に納税の多少によりてのみ之に數個の階級を付せんとするは、舊時の等族特權の遣想に基くの外、其根據を知るに苦しむ、元來納税資格を以て選擧權の資格要件となすものは、畢竟するに公の政務に參與せしむるに、危險なる無資産の徒を排除せんとする理由に出つること前述の如くなるも、等級選擧は全く之と其趣意を異にす、等級選擧は、唯資産多き者をして、資産少なき者より多くの參政權を行はしめんとするに在り、資産少なき者と雖も、尚參政權を行ふ資格ありと認めらる、即ち選擧に參與する恒心は之ありと認らる、然るに何事ぞ、資産多き者と同じく參政權を行使する能はざるは、惟ふに斯の如き制度は、歸する所唯政治上の識見が、富の程度と相正比例することを前提とするに依りてのみ、之を解するを得べし、然れども此の如き前提の誤れることは、深く論ぜずして明白なり、多くの納税義務を負擔する者は、多くの參政權利を有すべしと云ふは、又等級選擧を辯護するの一理由なり、政府の公示したる市町村制理由書も亦之を明言す、曰く「專ら自治の義務を負擔する者に、相當の權力を有せしむるは、固より當然の理なり」と、之豈公民權を以て、納税の報酬たらしめんとするものにあらずして何ぞや、夫れ納税なるものは、資産に比例して凡ての國民の均一負擔すべき義務たり、之に對して報酬を要求し得べきものにあらず、理由書の言ふ所果して當を得たるものとせば、一國内の最多額納税者に以て、一國の總理大臣たらしめざるべからずと云はざるべからるざに至らん、天下豈に此種の法理を容れんや、然かも等級選擧の制度を市町村に於てのみ採り、國會、府縣會及び郡會に採らざるに於ては、蓋し其の非理なるを悟れるに非らざるか。(市制一七一條三項、町村制七條)
- 英
- Classes of electors
- 独
- Klasse der Wahlleute
- 仏
- Classes des électeurs
選擧人
(せんきよにん)選擧を爲す者を選擧人と云ふ、即ち選擧權利者にして、現に選擧を爲す者を云ふ、制限選擧を採用する國に於ては、選擧資格として一定の制限を定められ、此等の者にあらざれば選擧權なく、從て選擧人たるを得ざるものなり。(衆議院選擧法一九條及び選擧資格、選擧の部參照)
- 英
- Elector
- 独
- Wahlmann
- 仏
- Électeur
選擧人名簿
(せんきよにんめいぼ)選擧の存在を公に證明するの手段たるものを選擧人名簿と云ふ、投票は、選擧權を有する者に非ざれば行ふことを得ざるは勿論なりと雖も、選擧人が果して選擧權の要件を具備するや否やは、投票の時期に於て、即時に之を審査することを得べきにあらず、故に選擧を行はしむるには、選擧の以前に於て、選擧人の資格を審査決定せざるべらず、選擧人名簿は、即ち此目的の爲めに設備するものにして、選擧人名簿に記載せらるるにあらざれば、假令實際選擧權を有するも、尚選擧に參與することを得ざる效力を有するものなり、而して選擧人名簿は、一定の期日に於て之を調製し、之を公衆の從覽に供す、若し人名簿に脱漏又は誤載を發見したる場合には、之が訂正の申立つることを得、訂正の申立は、啻に選擧權の行使を保護する爲めのみならず、又適法の名簿を得るの目的を有す、從て何人も其申立の權利を有するを原則とするも、現行法は其申立を爲し得べき者を選擧人に限れり、故に選擧權者にあらざれば、申立を爲し得ざることは明白也、然れども、必ずしも名簿中に脱漏せられたる選擧人に限るにはあらず、正當に名簿に記載せられたる者と雖も、尚他の誤載又は脱漏に對して訂正を申立つるを得る也、縱覽期限内に必要なる修正を終りたる後、選擧人名簿は確定す、確定後は、知何なる誤脱あるも裁判所の裁決に依るもの外、絶對に修正を許さざるもの也、而して名簿は、唯選擧を公證するに止まり、選擧權を付與するの效力を生せず、從て誤て名簿中に記載せらるるも、實際選擧權を有せざる者は、選擧を行ふことを得べきにあらず、名簿確定後、選擧權を失ひたる者亦同じ、要するに選擧人名簿は、選擧權公證の手段たるが故に、其本來の性質より云へば、選擧の度每に之を新に調製するを以て正當なりとするも、臨時補缺選擧の如き場合にも、一一之を調製するものとせば、頗る煩雜なるが故に、各國の法律、殆ど一定の期間内繼續的の效力を與ふ、我現行法も亦一ケ年間其效力を有すとし、次年度の確定時期に至る迄は、前年度の名簿尚其效力を繼續するものとせり。(衆議院議員選擧法一八條乃至二七條)
- 英
- Elector's list
- 独
- Wahl-mannsliste
- 仏
- Liste des électeurs
選擧法
(せんきよはふ)選擧に關して規定せられたる法律を選擧法と云ふ、例へば衆議院議員擧選法、貴族院伯子男爵議員選擧規則及び府縣制、郡制、市町村制内の議員選擧に關する部面の如き之也、然れども單に選擧法と云へば、衆議院議員の選擧に關する法規を指すものなり。(憲法三五條)
- 英
- Election law
- 独
- Wahlgesetz
- 仏
- Loi de l'élection
選擧領事
(せんきよりようじ)駐在國にある本國の人が、其駐在國にある本國の人民より選擧せられて、領事となりたる者を選擧領事と云ふ、故に選擧領事は本國の官吏にあらず、且つ一定の俸給を受けずして、唯一定の手當金を受くるのみ、從て領事の職務と他の職務とを併せて兼ぬることを妨げず、但し現今の制度に於ては、選擧領事なるもの是無し。
專管
(せんくわん)專屬管轄と云ふに同じ、例へば專管居留地とは、即ち一國領事の專屬管轄に屬する居留地を指すが如し。(抗州日本居留地取極書追加取極書一條)
- 英
- Exclusive competency
- 独
- aus-schlieszliche Gerichtsbarkeit
- 仏
- Compé-tence exclusive
專管居留地
(せんくわんきよりうち)一國領事の專屬管轄に屬する居留地を指して、專屬居留地と云ふ、我橫濱、神戸等の居留地は、專管居留地にあらず、甞て我國は朝鮮國に對して專管居留地を有したりき、而して專管居留地と否とは條約を以て之を定む。
- 英
- Exclusive settlement
- 独
- ausschlieszlicher Niederlasz
- 仏
- Colonie exclusive
專決
(せんけつ)專斷決定の略語なり、專行と云ふと大差なし、唯專決と云ふときは、靜的方面より見、專行と云ふときは動的方面より觀察したるに依り、其用語を異にしたるものの如し。(市制六八條)
- 英
- Arbitrary judgment
- 独
- willkür-liches Urtheil
- 仏
- Jugement arbitraire
專業
(せんげふ)專業とは、尚獨占業と云ふと同じ、法律上一定の企業を、特定の自然人又は法人に歸せしめ、他人の自由競爭を禁止制限し、其企業より生ずる利益を獨占するを云ふ、而して之を種々に別つことを得、先づ主體の異るによりて、公專業と私專業とに別つ、□一私專業は、其目的より分ちてイ國民經濟の保護奬勵の目的の爲めにする專業、例へば工業上の發明を爲したる者に專賣持許權を與へて、其製造販賣を獨占せしむるが如し、ロ公益に對する危害を防止する警察上の目的の爲めにする專業、□二公專業も亦目的より區別して三種とす、イ公益に對する危害を防制する警察上の目的の爲めにする公專業、ロ國民經濟上の利益を保護奬勵するが爲めにする公專業、ハ國家又は公共團體が收入を得る目的の爲めにする公專業之なり。(專賣の部參照)
- 英
- Monopoly
- 独
- Monopol
- 仏
- Monopole
專業保險
(せんげふほけん)保險は、保險者の業務より立論して、專業保險とと附隨保險の二種とす、元來保險事業は、株式會社又は相互會社に非ざれば營むことを得ざるものにして、保險會社は、其相互たると株式たるとを問はず、他の事業を營むことを得ず、旦つ生命保險と損害保險とを併せて其目的となすことを得ず、故に株式會社又は相互會社が保險を業とする場合に、專業保險なるもの存す、然れども之が爲め、保險以外の事業を目的とする營業者が、其營業の附屬として保險を爲すことを得ざるにあらず、而して此場合には、其營業者が商人なるときは、保險は附隨的商行爲として商行爲の一種に屬す、之に反して其營業者が商人にあらざるときは、保險は商行爲たる性質を有せず、此二個の場合を包含して、廣義の附隨的保險と稱し、其附屬的商行爲たる場合を狹義に於ける附隨的保險と稱す、要するに附隨的場合には、其保險者等に就き、法律は大體に於て、之に干渉せざるも、專業的保險の場合にありては然らざるものとす。(商二六五條、保險業法參照)
宣言
(せんげん)多少命令的の意を含む意思の發表を宣言と云ふ、而して其特定の人に對すると否とは問ふ所にあらざるも、例へば判決は裁判所の宣言なりと云ふときは、特定の訴訟關係人に對する、裁判所の命令的意思の發表を意味す、又「巴里宣言」などは、一般的になされたる命令的意思の發表にして、國際法上に於ける宣言は、多く一般的の特質を有す。(衆議院議員選擧法三四條、宣告の部參照)
- 英
- Declaration
- 独
- Deklaration
- 仏
- Déclaration
前件
(ぜんけん)前件とは、空間に於て、或は時間に於て、前に立つてふ義也、從つて前件てふことは根源若くは原因等の義に解せらるることあり、又論理學上に於て用ひらるる前件てふことは、假言命題に於ける假説的前提を指す、例へば「若し暴食せば胃を害すべし」或は「若し雨降らば外出せざるべし」などいふ假言命題に於て「若し暴食せば」或は「若し雨降らば」などいふは即ち前件也、又或る判斷命題に於て賓辭を導き出す所の主辭を指して、前件と稱することあり。
全權公使
(ぜんけんこうし)一名之を特命全權公使とも云ふ、從來三個の種類ありしも、今は一となれり、全權公使も全權大使の如く、本國君主の任命する所にして、外國に派遣するもの也、而して全權大使と異なる點は、全權大使は本國を代表するのみならず、其本國君主をも代表するものなりと雖も、全權公使は、唯本國を代表するに過ぎず、從て全權公使は全權大使の如き幾多の特權を有せず。
全權大使
(ぜんけんたいし)一名之を特命全權大使と稱す、大使を大別して二とす、一は羅馬法王の派遣する大使、二は一般の全權大使なり、羅馬法王の派遣する大使は、之をノンスと稱す、羅馬法王より其代表者として、カトリツク教國に派遣す、時としてカトリツク教國以外の國家にも派遣することあり、一般の全權公使と他の外交官と異なる要點は、其本國の政治的機關たるに止まらずして、本國君主の一身をも代表するの點にあり、(有力なる反對説なきにあらず)從て大使の駐在する場合に於ては、其國家に外國の君主自身駐在すると同一なり、故に大使の享有する特權は頗る特色を有す、□一變質的特權、即ち其駐在國の外務省と直接談判を開始するの權利あり、他の一般外交官は、直接に元首と談判することを得ざるに反して、全權大使は、本國君主の代表者なるを以て、直接に駐在國元首と談判するGを得るものとす、□二形式的特權、イ閣下の稱號を受るの權、ロ駐在國の元首、又は配偶者に向て、自ら本國より持參せる信任狀を捧呈する場合に於て、特別なる待遇を受くるの權、ハ始めて元首に謁見する場合に頭を蔽ふの權、ニ普通の公使は新に駐在國に著任したる場合に、當時其國に駐在せる他の公使を訪問せざるべからず、然るに全權大使は之を訪問するを要せざるのみならず、却て他の公使より訪問せざるべからず、即ち既に駐在せる公使より訪問を受くるの權、ホ大使の應接室内には、皇帝の著席する事を得べき椅子を備へ置くことを得る權、ヘ儀式等のある場合に於ては、六頭馬車を使用することを得、又馬の頭上に赤色の絹布を掛くることを得るの權等なり、又全權大使の妻も、之に準じて殊遇を受く、即ち、イ職務を執行する者にあらざるも、全權大使と同一待遇を受くる權、ロ特命全權大使夫人閣下の稱を受くるの權、ハ始めて元首に謁見する場合に於ても、大使と同一待遇を受け、又は他の公使より前きに謁見するを得るの權、ニ宮廷に於ける著席順次に就ても、全權大使の次席に著席し、公使より上座に著席するの權、ホ倚り凭りある椅子に座する權等是也。
前項
(ぜんこう)直く前の項を目指して前項と云ふ、例へば民法第九四條二項に「前項の意思表示の無效は、之を以て善意の第三者に對抗することを得ず」とある如き即ち是なり。
宣告
(せんこく)裁判所又は判事の意思表示を宣告と云ふ、即ち裁判所又は判事が當事者間の係爭事實に就きて、自己の信ずる判斷を發表するの謂なり、而して判決として現はるる場合あり、決定として現はるる場合あり、命令として現るる場合あり、判決とは必要的口頭辯論に基きて爲す裁判所の宣告也、其内容が當事者の實體上の權利義務に關すると、訴訟上の權利義務に關するとは措て問はず、決定とは裁判所が書面により、又は任意的の口頭辨論に基き爲す宣告なり、命令とは、裁判官の爲す宣告也、其の書面審理なると任意的口頭辯論に基くとは措て問はず、然り而して其宣告、即ち裁判所又は裁判官の意思表示は、口頭を以て爲すことあり、書面の送達を以て爲すことあり、判決は主文の期讀に依りて爲し、決定、命令は、口頭を以て言渡すことあり、書面の送達を以て爲すことあり。(民三〇條、逃亡犯罪人引渡條例一條三項)
- 英
- Sentence
- 独
- Rechtssprechung
- 仏
- Sentence
宣告書
(せんこく)裁判所の爲したる宣告の主旨を記載したる書面を指して宣告書と云ふ、即ち裁判所が、係爭事件に關して發表したる意思の主旨を記載したる書面を云ふもの也。(監獄則六條)
- 英
- Written sentence
- 独
- Rechts-sprechungsschrift
- 仏
- Sentence
前婚
(ぜんこん)乙女、甲男と結婚したるも、故ありて離婚せり、而して更に丙男と結婚せり、此場合に甲男との結婚を指して前婚と云ふ、然れども、斯かる場合にのみ限るものにあらず、要するに一度婚姻し、其取消解消即ち離婚又は當事者の死亡、失踪の宣告等により、婚姻關係消滅、若くは取消ありたる後、更に婚姻したる場合に、前の婚姻を指して前婚と云ふ、男子は前婚の解消又は取消後直に婚姻を爲す事を得るも、女子は大なる制限を受く、民法に曰く「女は前婚の解消、又は取消の日より、六ケ月を經過したる後に非ざれば再婚を爲すことを得ず、女が前婚の解消、又は取消の前より懷胎したる場合に於ては、其分娩の日より前項の規定を適用せず」と、即ち女は前婚中に懷胎し、而して其婚姻の解消、又は取消ありたる後分娩したる場合には、直に再婚するに妨げなきも、其以外には必ず六ケ月を經過せざるべからず、假令其女が生殖器に障礙あり、事實上交接を爲す能はずと雖も亦然り、唯疑となるべきは、當事者同一なるとき、例へば甲男乙女故ありて離婚したるも、思ふ所あり、更に婚姻を爲さんとする場合に、此六ケ月を嚴守せざるべからざるや否や之なり、民法は、明に斯る場合を除外する規定を設けざるも、精神解釋上六ケ月を經過せずに再婚するも可なりと信ず、蓋し斯かる制限の因て生じたる根本觀念は、女が再婚を爲す場合にありては、往々前婚の解消又は取消の以前より懷胎せることを保すべからず、若し前夫の子を懷胎したる儘、更に再婚を爲すことあらば、其分娩せる子の何人の子なるやを知る能はず、從て血統を混亂し、一家の秩序を紊すの虞あればなり、然らば則ち前夫との再婚は、毫も妨げなしと云はざるべからず、依りて反對説を是なりとせんか、頗る人情に遠ざかるの謗りを免れ得ざらん。(民七六七條)
- 英
- Former marriage
- 独
- frühere Ehe
- 仏
- Mariage précédent
戰爭
(せんさう)戰爭とは何ぞ、學者多くは之が定義を與へて曰く、國家間又は國家と交戰團體との間に爲す、兵力を以てする爭鬪なりと、然れども此定義は、通俗の觀念としては兔も角、國際法上の現象を説明するに足らず、蓋し□一國際法上に於ける戰爭の觀念其ものの主要屬性に適せず、惟ふに國際法上戰爭の觀念に、動かすべからざる主要屬性は、單數的觀念にして、其開始より終局に至る迄間斷あることなく、連續的の觀念たること即ち之なり、而して此の如き單數的連續的の觀念は、之を間斷的に行はるる複數なる實戰鬪、其他の戰鬪行爲、又は其集合に求むる能はず、戰爭を以て國家間の兵力の爭鬪と爲す觀念は、實に實戰鬪其他の戰爭行爲を一團として之を思考し、以て國際法上の觀念とせんとするものなるも、凡そ戰爭なるものは、法理上其開始より終局に至る迄、時々刻々毫末の間斷なく、連續せるの觀念たらざるべからざるを以て、間斷的に行はるる行爲の集合といふ如き觀念にあらざるは勿論なり、而して單數的、連續的の觀念は、之を國家の狀態に求むるの外なし、□二戰爭に關する他の現象を説明することを得ずして、法理の紛雜を招致す、案ずるに戰爭を以て、兵力の爭鬪なりと爲すの思想は、實戰鬪と混同する通俗の思想に胚胎したるものにして、極めて幼稚の觀念なり、然れども斯る觀念は、少くとも今日の國法法規の現象と相悖ること瞭遠なり、蓋し國際法上實戰鬪、即ち砲火相見えざるも、戰爭あり得べければ也、例へば宣戰を爲し、未だ實戰鬪に入らざる前に媾和を爲すときは、宣戰より媾和迄、假令一回も實戰鬪なきも、亦國際法上戰爭に妨げなしと云はざるべらず、若し然らずとせんか、宣戰より媾和迄に行はれたる實戰以外の戰爭行爲、例へば海上捕獲、禁制品輸送、封鎖衝破に對する處分は不法となるべし、是豈國際法の許容する所ならんや、戰爭の開始が已に宣戰によりて生ずるものと解せば、實戰なくも尚戰爭ありと云ふに妨げなきは、論理上必然の論結なりと云はざるべらず、故に茲には數國家が、各其意思を他に強行する爲め、國際平時の關係に於て用ふること能はざるも、爾かも他國より支障を受くることなく、相互の間に行ふことを得べき、之等數國間に成立する法規上の非常狀態なりとの定義を採らんと欲す。
戰爭行爲
(せんざうかうゐ)兵力を以てする國家間又は國家と、交戰團體との爭鬪を戰爭行爲と云ふ、□一戰爭は爭鬪なり、從て双方よりする暴力の行使ならざるべからず、一方より暴力を行使するは戰爭にあらず、例へば復仇、平時封鎖の如し、□二戰爭は兵力に依る爭鬪なり、兵力とは、陸海軍の戰鬪力を云ふ、此戰鬪力は正當なる憲法上の統帥者の指揮命令に依りて動く事を要す、其命令を待たずして私に軍隊が行動するは、戰爭にあらず、こは内亂のみ、暴動のみ□三戰爭は國家間又は國家と交戰團體との爭鬪なり、戰爭行爲を爲す主體は、國家なるを常とするも、其一方が交戰團體たる場合もあり、假令内亂たり、暴動たりと雖も、交戰團體の承認あるときは戰爭と云ふを妨げす、以上は所謂手段説に據りたるものなり、別説として目的説なるものあり、即ち定義中に權利の爭を決するものなり、意思の衝突を決するものなりとの語、即ち目的を挿入するものなり、然れども目的の如何に依て、戰爭と否とを區別せんとするは、近世學者の採らざる所也、而して戰爭行爲は、種々に分類するを得、一正戰と不正戰、國家の目的の爲めにする戰爭は正戰にして、然らざるものは不正戰なりと云ふにあり、戰爭行爲の定義として、既に目的説の不可なることを悟らば、此説の不可なるは勿論なり、況んや各交戰國は各自正義に合することを主張し、然も多くの場合には、斯く確信するものなれば也、ニ守戰爭と攻戰、或は守戰は正當なるも、攻戰は不當なりと云ふも採るに足らず、或場合には攻戰の態度を採るも、其實權利を侵害せられたる者即ち被害者たることあれば也、而して這は區別の實益あり、イ同盟の場合、同盟には、往々守戰の場合にのみ援助すべしと約することあればなり、ロ永世中立國の場合、永世中立國は、獨り守戰を行ふを得るに過ぎざればなり、其區別の標準は、戰爭を故意に惹起したる者を攻戰者とす、多くは宣戰の前後によりて之を定むるものとす、攻戰守戰と云ふも、軍事上の通語とは一致せざることに注意せざるべからす、三内戰と外戰、此區別は寧ろ不必要也、外戰は即ち國と國との間に行はるる戰爭なり、内戰即ち國内戰爭は内亂暴動のみ、故に交戰團體として承認せられざる間は、戰爭と云ふこと能はざるものなり、四公戰と私戰、私人は、交戰權を行使することを得ざるが故に、私かに外國に對して戰端を開くもの、即ち私戰は國際法上の戰爭にあらず、却て一國々法、例へば刑法の支配を受け、重刑を科せらる、從て往昔は免に角、今日に於ては其實益なし、五陸戰と海戰、此區別は大に實益あり、私有財産の沒收、害敵手段等に於て殊に然り、而して其區別の標準は、戰爭が陸上に於て行はるると、海上に於て行はるるとの點にあり、尚之を具體的に説明せば、イ陸軍の人員材料と雖も、海上にあるときは海戰例規に則り、陸軍々隊たるの故を以て、陸戰例規に則らず、ロ海軍の人員材料たりと雖も、陸上に在るときは陸戰例規に從ふべきものにして、海軍例規に從はず、例へば海軍病院船の救護員が、臨時上陸したるときと雖も、陸戰に鬪するヂュネーヴ條約の支配を受け、海軍々人と雖も、陸上に於ては凡て陸戰例規に支配せらる、ハ陸軍が海上にありて、本來海軍の戰鬪行爲に屬することを行ふときは、海戰例規に依る、例へば敵の商船を捕獲するは、海軍例規の認むる所なれば、陸軍々隊と雖も、海上に在りては之を行ふ事を得、ニ海軍々隊が陸上に在るときは、陸軍の例規に遵ふ、ホ陸軍にも海軍にも固有する戰鬪行爲に就ては、各其例規に從ふ、尚一方は陸上にあり、一方は海上にありて戰鬪を爲すときは、果して陸戰なるや海戰なるや、從來明確なる學者の説明なし。
- 英
- Hostile act
- 独
- feindliche Handlung
- 仏
- Acte hostile
戰爭機關
(せんさうきくわん)□一陸戰に於ては、戰鬪員非戰鬪員是なり、而して其區別に二説あり、(甲)戰鬪員とは、戰鬪に從事すべき者にして、非戰鬪員とは、軍隊中にある從軍記者、僧侶、酒保用達人及一般人民中兵役に服せざる者、幼者、婦女等を云ふ、(乙)戰鬪員とは、軍隊中戰鬪に從事すべき人にして、非戰鬪員とは、軍隊中にあるも戰鬪に從事せざる從軍記者、僧侶の如きを云ふ、幼者、婦女の如きは之を含まずと、後説を可とすべきに似たり、戰鬪員を細則せば下の如し、イ正規兵、一國の編成する正式の兵を云ふ、ロ民兵、平素は軍隊を組織せざるも、緩急あれば人民を召集して、兵器を取り敵に當る者を云ふ、ハ義勇兵、有志の徒團結を作り、自國の爲なると外國の爲なるとを問はず、戰鬪に從事する者を云ふ、國に正規兵あると否とは之を問はず、ニ地方防禦兵、敵の接近するに當り、急に之に對抗する一地方の團結を云ふ、□二海戰に於ては軍艦のみなり、此所に所謂軍艦には勿論水雷艇を含む。(軍艦の部參照)
戰爭權
(せんさうけん)國際法上の戰爭を行ひ得るの權、別言すれば國際法上相手國(敵國)及第三國(中立國)よりして、交戰當事者と認められ、且つ取扱はるるの權利を稱して戰爭權と云ふ、戰爭權なくして行ふ兵力の爭鬪は、所謂國際法上の戰爭にあらず、戰爭權は交戰者として行使し得る一切の權利を包含す、即ち作戰動作は勿論、封鎖、臨檢、搜索、捕獲、取立權、徵發等皆戰爭權の實行に屬す、而して戰爭權を有する者、即ち戰爭權の主體は、國家又は交戰團體のみ也、故に□一私人間の爭關は、喧嘩暴動のみ、戰爭にあらず、□二私人に對して暴力を行使するは、海賊又は強盜の所爲のみ、□三内亂も亦戰爭にあらず、但し内亂に於て、暴徒が交戰團體として承認せられたるときは此限にあらず、然り而して國家にして然も尚戰爭權を有せざるものあり、一合衆國、物合物は戰爭を爲し得るも、之を組成する各州には戰爭權なし、從て各洲間の爭鬪は内亂なり、中央權力に對する爭鬪は内亂なり、ニ一部主權國は原則として戰爭權を有せず、唯條約により之を有する事を妨げず、ブルガリア、埃及は共に土耳古の上長權の下にあり、而してブルガりアは戰爭權なきも、埃及は是あり、實例としても、屢々亞弗利加の民族に對して戰爭を爲せり、三被保護國には戰爭權なし、但し反對説あり、四永世中立國は、守戰に就ては戰爭權あるも、攻戰に就ては之なし、攻戰に就て戰爭權なしと云ふも、前の□一乃至□三とは異なる、條約違反を敢て爲せば、戰爭を爲し得ざるにあらず、戰爭團體に就ては別に略述せん。
戰爭根據地
(せんさうこんきよち)一八七一年の華盛頓條約中、所謂「華盛頓三法則」の第二則に於て、交戰國の軍艦が中立國の領土、領水を戰爭根據地と爲し、又は戰鬪力を增大する事を禁ぜり、然れども戰爭根據地の何物たるやに就きては、同規則中説明を與へず、戰爭根據地とは何ぞや、ホールは曰く、交戰國の陸海軍が、食料、石炭其他軍需品の供給を受け、兵員の供給を得、又は交戰國の爲めに敵征隊が出發し、或は必要なれば交戰國の陸海軍が隱匿し、敵の攻擊を避くるの場所なりと、ウォーカーは曰く、敵對手段の準備の爲め、交戰國の兵力が出入往來するの地は、戰爭根據地と認むべしと、之に由て觀れば、石炭貯藏所の如き其一例にして、其他繼續的に交戰國の軍隊又は軍艦が、需要品の供給を受け、又は敵の攻擊を避くる爲め使用するに於ては、交戰國は其地を戰爭根據地と爲すものなりと、以て戰爭根據地の何たるやを想見すべきなり。
戰爭手段
(せんさうしゆだん)二義あり、□一廣義に於ては、交戰國が戰爭を行ふ爲め、敵國及其臣民、財産、領土に對して施す所の總ての手段を指す、例へば作戰動作は勿論、封鎖、臨檢、搜索、捕獲、課金、徵發等皆之に屬す、□二狹義にありては、敵の戰鬪力及び戰鬪設備(城塞等)に對して行ふ手段と處置とを指す、元來戰爭の最大目的は、歸する所、敵をして屈服せしめ、自國の要求を容れしむるにあり、卽ち戰爭に於ては、此目的を達するが爲めには、其戰鬪力を弱むれば則ち足る、無益の苦痛を與ふるか、又は苦痛の割合に實效の大ならざるものは、須らく之を禁止せざる可らず、要するに交戰者は、如何に暴力を行使する所の戰爭とは云へ、無限の自由を有するものにあらず、戰爭の目的は、博愛、人道の本旨より大なる制限を受く、爰を以て、海牙條約に於ては、戰爭の手段に就て大に制限せり、然れども如何に博愛の爲め、人道の爲めとは云へ、戰爭の目的と相反撥するものは、到底實行するに由なきものとす。
戰爭團體
(せんさうだんたい)戰爭團體とは、縱令公使を派遣し、又は條約を締結する事を得ざるも、戰爭行爲に關してのみ獨立國と均しき權能を有する團體にして、通常反亂者が、本國より獨立せんとするに當り、第三國又母國の承認により成立するものとす、此承認は、大要左の三條件を具備する場合に、第三國より得らるべきものとす、□一其戰爭の繼續し又は繼續する有樣に於て、容易に鎭壓す可らざるもの、□二文明獨立國間の戰爭と認め得べき程度に、達し居る事、□三第三國の利害關係上交戰者と認むる必要ある事、若し夫れ母國即ち反亂者の本國が、承認を與ふるに就ては、別に上記の條件を具備するを竣たず、母國が反亂者の行爲に就き、第三國に對する責任を免るる爲めに、何時にても交戰國體と認むる事を得べし、而して其承認は明示たると默示たるを論ぜず、ローレンス博士曰く、第三國にして、一度交戰國體の承認を與ふるときは、反亂者は、爲めに作戰に關する諸般の權能を得るを以て、反亂者は此の承認を得ん事を勉め、之に反して、母國は、承認を得ざらしめん事を勉む、先例によるに、一八九一年四月智利の反黨が、米國の承認を得んと欲し、要求したるも之を得ざりき、之に依て見るも、如何に交戰國體の承認の愼重の態度を取る可きかを知るべし、若し第三國にして、他國の反亂に對して、干渉的行爲をなさんと欲せば、固より反亂者に交戰團體の承認を與へ、且つ獨立の承認をも與ふる事を得べし、然れども漫に斯の如き干渉を爲すときは、其結果として、母國の爲めに敵視せらるる事あるべし、例へば一七七八年佛國は、北米殖民の暴動者と條約を締結せんとせるに依り、英國と開戰せんとし、一七八〇年和蘭は、北米議會の代表者と、秘密條約を爲したること發露して、英國と開戰せしことありき。
戰爭法
(せんさうはふ)戰爭法なる語に二義あり、□一は戰時國際法又は戰時國際公法と同義に用ひられ、□二は巴里宣言の如き、海牙の陸戰の法規慣例に關する規則の如きものを指す、而して寧ろ後者の意義に解するを妥當とすべし、元來戰爭起るときは、其交戰國間の交通は絶止するを常とす、果して然らば、交戰國間に戰爭起る時、如何なる法則にも支配せらるることなしと解するを正當とすべきにあらずや、然るに尚且つ之を拘束せんとするは、如何なる理由に基くや、或學者は、國際法規を大別して二とし、□一は自然法に基くものにして、自然的國際法と云ひ、□二は各國の任意に設定したるものを云ふ、而して此後者は、戰爭に依りて效力を失ふも、前者は、決して其效方を失ふことなしと云ふ、又或學者は、假令戰鬪に從事すると雖も、本來廣濶なる大團體に屬し、其共通團體の一員たる以上は、敵に對しても、義務を負ふことを自覺するに因るものなりと、近時或學者の説によれば、各國は、戰爭は先づ條約によりて、戰時に遵奉すべき交戰の條規を定め置く、從て此合意に基くものに外ならずと、例へば巴里宣言の如き、各國は平時に於て、戰時に守るべきことを約したるが故に、交戰條規即ち戰爭法として、各國を拘束するものなりと、今日自然法を根據とする説の採るに足らざるはいふ迄もなし、第二説、第三説は、各一理あり、一見第三説は正當なるが如きも、結局第二説を正當とすべし、蓋し戰爭法なる條約を遵守せざるべからざる根本思想は、要するに廣濶なる國際團體を組成するが故に外ならざれば也、然れども第三説と雖も、誤謬と云ふにはあらず、未だ堂に上らざる嫌あるのみ。(戰數の部參照)
舛錯
(せんさく)舛錯とは、失策の義なり、舊刑に「罪を犯さんとして已に其事を行ふと雖も、犯人意外の障礙若くは舛錯に依り未だ遂げざる時は、已に遂げたる者の刑に一等又は二等を減ず」とあるは其用例なり、學者は、此の所謂障礙を故障と解釋し、舛錯を失策と説き、障礙に依りて遂げざる場合を著手未遂犯となし、舛錯に依りて遂げざるを缺效犯なりとなす、其是非に就きては異論あるも、暫く本説明に從ふ。(舊刑一一ニ條參照)
- 英
- Unexpected reason
- 独
- Versehen
- 仏
- Erreur
戰時合意
(せんじがう)戰爭は、交通の絶止を意味す、從て戰爭中に於ては、合意約束なるものなきが如しと雖も、實は大に然らずして、休戰、降伏等已に昔時と雖も、慣例の存する所なり、而して近時戰爭法の發達と共に、休戰及び降伏條約に關しては、詳細なる規定を生じ、又休戰旗、通商特許狀、通行券、安全嚮導券、及びカルテル等に關しても、一定の慣例を生ずるに至れり、戰時合意は、又平時と異なることなき故に、平時と均しく信義を旨とし、誠實誠意其約束を遵奉することを要するは勿論なり、然れども若し一方が其合意を無視せる時は、他方は之を遵奉せざるべからざるものにあらず、即ち尾生の信は、國際法に於ては之を要求せざるものとす、一方に於て已に違反あらば、何等の通知を要せず、直に砲火を以て之に酬ゆるも些の妨げなし、然り而して、此合意は、如何にして之を締結するやは、各當事者の隨意に從ふ。
戰時禁制事業
(せんじきんせいじけふ)戰時禁制人、戰時禁制書及び戰時禁制品の輸送に從事するを戰時禁制事業と云ふ、而して其輸送の用に供する船舶は、交戰國の爲めに其役務を執るものなるときは、之を沒收するも、然らざるときは沒收せず、而して役務に服すると否とは、傭入契約の有無を問はず、其事實を知りて、之が爲めに爲したると否とによりて、其區別を爲すものなり。(戰時禁制品、同禁制人の部參照)
戰時禁制人
(せんじきんせいじん)敵兵其他の者にして、敵の軍事に從ふ爲め輸送せらるる者を云ふ、而して敵の軍事に從ふとは、不明瞭の嫌なきにあらざるも、要するに軍人以外の者にして、交戰國の公の役務に服し、戰爭の上に有益なる援助を與へ、之を抑留すれば敵の軍事上の勢力に殺ぐ效ある者、換言すれば、其存否が敵國の勢力の上に增減ある所の者を云ふ、其文官たると武官たると、官吏にあらざると、現に交戰國の役務に服すると、敵國に上陸したる後其役務に從事するとは、之を問はざるものとす彼の日清戰爭中、米人ワイルド及びカメロンの二人が、清國の軍事に盡瘁せん爲め、ゲーリツク號に乘じて、桑港より橫濱、神戸を經て、支那に行かんとせしを、神戸に於て抑留せられし如き、其目的は僅の勞費を於て、日本軍を粉碎するの材料を清國に賣付けんとするにありしを以て、實に戰時禁制人の好箇の適例とす。
戰時禁制書
(せんじきんせいしよ)敵國政府の官吏が、其公務上往復する一切の公文書をと云ふ、然れども敵國の公使、領事が、本國と往復する公文書は此限にあらず、凡そ禁制書は、交戰國の官廳より發せるか、又之に宛てられたるか、或は交戰國の本土より殖民地へ宛てたるものなるを普通とす、而して之を知て輸送するものは、即ち戰時禁制事業として、其船舶を沒收せらる、船舶所有者又は船長は、其果して然るやを文書の外見上に知り、又は知り得べかりしとき、船舶の沒故を免れず、アタランタ號事件に於ては、一船員が佛國殖民地太守より、其本國官廳に宛てたる公文書を隱し所持したる廉により、船舶は、其船員の所有貨物と共に沒收せられ、ラビツト號は、實は敵國殖民地の太守(バタビアの太守)より、敵國即ち和蘭政府への公文書を載せたるも、外見は私人間の往復文書の如く、廢送人宛名人共に假裝せられたるものなるを以て、船長は頑として其公信たるを知らずと主張し、船舶は放免せられたる事ありき。
戰時禁制品
(せんじきんせいひん)一般に戰時禁制品とは何ぞやと云はば、戰爭の用に供せらべき物件にして、敵地に向はんとして公海上又は交戰國領海内、然かも船舶中にあるものを云ふと解して可也、□一戰爭の用に供せらるる物件たること、□二敵地に向ひつつあるものなること、□三公海上又は交戰國領海内にあること、然も船舶中にあることを要す、勿論其船舶が中立國の船舶なると、交戰國何れの船舶なるやは措て問はず、從て中立國の領域及交戰國の領土に於ては、戰時禁制品なし、然れども多くは、各國が戰時禁制品とは何々を云ふと規定するが故に、國際法上の觀念は、單に各國規定の標準となるに過ぎずと解するも太過なし、日露戰爭中我國の定めたる戰時禁制品は左の如し、第一、左に揭ぐる物品は、敵地を經由し若くは之に到達すべき場合、又は敵の陸海軍に到達すべき場合に於て之を戰時禁制品とす、即ち兵器、彈藥、爆發物、竝に其材科(硝石、硫黃等を包含す)及製造機械「セメント」陸海軍々人制服及武裝具、甲鐵板艦艇の製造及び艤裝の材料竝に以上の物品に屬せずと雖も、單に戰爭の用に供すべき一切の物品、第二左に揭ぐる物品は、敵の陸海軍に到達すべき場合、又は敵地に到達したるものにして、其到達の如何により、敵の陸海軍用に供するものと認むべき場合に限り、之を戰時禁制品とす、即ち糧食、飮用品、馬匹、馬具、馬糧、車駕、石炭、木材、通貨、金銀塊竝電信、電話及び鐵道建設の材料、第三、前二項に揭げたる物品中、其分量及び性質により、特に當該船舶の自用に供すること明なりと認むべきものは、之を戰時禁制品と爲すの限にあらず、卽ち第一は所謂絶對的戰時禁制品にして、第二は所謂相對的戰時禁制品なりとす。
- 英
- Contraband of wartime
- 独
- Kriegskontrebande
- 仏
- Contrebande pendant la guerre
戰時公法
(せんじこうはふ)尚戰時國際法と云ふと同じ、此語は、未だ戰時國際法又は戰時國際法なる語ほど廣く用ひられざるが如し。
- 英
- Hostile international law
- 独
- Kriegsvölkerrecht
- 仏
- Droit inter-national hostile
戰時國際公法
(せんじこくさいこうはふ)學者或は國際法を大別して、國際公法と國際私法とし、國際公法を更に細別して、平時國際公法と戰時國際公法と爲す、故に結局戰時國際法と云ふも其意に於ては即ち同じ。
- 英
- Hostile international law
- 独
- Kriegsvölkerrecht
- 仏
- Droit inter-national hostile
戰時國際法
(せんじこくさいはふ)凡そ國際法は、文明國團體に屬する各國間の法律關係、即ち權利義務を律する法規を云ふ、而して其内容、即ち法律關係の實質により、之を大別して二とす、平時國際法、戰時國際法之なり、平時國際法は、平時に於ける國際間の法律關係の標準にして、戰時國際法は、戰時狀態に於ける國際間の標準、即ち交戰國間、及び交戰國と中立國との間の法律關係の標準なり、蓋し往古蒙昧の世は姑らく措き、世運進步して文明となるに及びては、平和關係絶止し、暴力に依る戰爭を事とするに至るも、戰爭に影響を及ぼさざる無益の殺傷は、成るべく避け、人道に背戾せざらん事を期するは、蓋し倫理道德の要求する所なれば也、而して交戰國と第三國との交通は、戰爭の爲め斷絶せらるるものにあらず、唯戰爭の爲め、其交通關係に影響を受くるに過ぎす、戰時國際法を分ちて二とす、□一交戰條規、即ち交戰主體たる國家又は戰爭團體が戰鬪行爲、又は作戰計劃に就て守るべき法規にして、□二中立法規、即ち交戰主體の一方又は双方と戰爭に關係なき、所謂中立國との關係を規定せる法規之也。
- 英
- Hostile international law
- 独
- Kriegsvölkerrecht
- 仏
- Droit inter-national hostile
戰時税
(せんじせい)戰時税とは、臨時税、又は特別税の一種にして、戰時に於て、其戰爭に關する經費を支辨せんが爲に、賦課徵收せらるるものを云ふ、左に參考の爲め、日露戰役に於ける、戰時税、即ち非常税の大要を揭げせん、□一增税、從來賦課しつつある租税の率を高めたるものにして、其種類、税率の步合左の如し、イ地租、郡村宅地、其他の土地の區別に從ひ地價百分の一七、ロ營業税、營業税法による税額十五割、ハ所得税、第一種、第三種のみ增加することとし、第一種にありては所得税法による税額八割乃至四十割、第三種に在りては同税額の十割乃至二十七割、ニ酒税、酒造説法による酒類、即ち日本酒に就きては、第一種乃至第四種は一石に付各三圓、第五種は一石に付、酒精分一度每に十錢、麥酒に就きては、一石に付一圓、酒精又は酒精含有飮料に就きては、含有酒精の多寡に從ひ、一石に付二圓以上、沖繩縣酒類出港税に付ては、日本酒に對すると同一の税率、ホ砂糖消費税、品種に應じ、百斤に付一圓乃至四圓七十錢、ヘ醬油税、醬油、溜共に品種に應じ、一石に付き五十錢、又は二十五錢、ト登錄税、不動産、船舶に關する登記料、鑛業に關する登錄税等其種目甚だ多く增率又各同じからず、チ取引所税、取引の目的物の商品、有價證券なると國債及地方債證券なるとにより、賣買各約定代金高萬分の六又は萬分の二、リ狩獵免許税、一等、二等、三辱の等級に應じ、五圓乃至二十圓、ヌ鑛區税、試掘採掘とも、鑛區千坪每に一箇年二十錢、ル賣藥營業税、每方劑一箇年の製造高に對する定價總額の多寡に從ひ一圓乃至百圓、ヲ印紙税、判取帳に就ては五錢、約束手形に付ては其金額に應じ一錢乃至四圓九十八錢、其他の印紙税法に揭げたる證書帳簿に就ては一錢、ワ輸入税、品種に應じ從價五分乃至十割、□二新税、從來賦課せざりし租税を新に設けたるものにして、種類税率左の知し、イ小切手印紙税、一通每に一錢、ロ砂金採取地税、採取地の河床なると否とにより、採取區域一町每、又は一千坪に每に一箇年三十錢、ハ通行税、里程と等級とに應じ一錢乃至五十錢、ニ織物消費税、毛織物に就ては價格百分の十五、其他の織物に就ては同百分の十、ホ繭輸入税、各種とも從價一割、ヘ米及籾輸入税、從價一割五分、□三印紙の加貼、民事訴訟法、及商事非訟事件に關する書類に印紙を增貼せしむるものにして、其增貼す可き額左の如し、イ民事訴訟に關する訴狀其他の申立又は申請に關する書面には、各一通每に五錢以上五圓以下、但し訴狀にして記載金高五千圓以上のものに就ては、其金高に應じて增率し、最高限なし、ロ破産手續に就ては、財團の價格に應じ、十錢以上十圓以下、但し其價格五千圓以上なるときは、其金高に應じて最增率し、上限なし、破産手續以外の商事非訟事件に關する申立又は申請書に就ては、各一通每に五錢又は五十錢、□四印紙の新貼、從來貼用することを要せざりし行政訴訟の書類に、新たに印紙を貼用せしむるものにして、其額は書類の種類に應じ一通に付き七錢乃至二十五錢とす。
漸次設立
(ぜんじせつりつ)株式會社に於て漸次設立は、又之を募集設立とも云ひ、同時設立又は發起設立と相對するの語なり、即ち發起人が株式の總數を引受けざるときは、他に引受人を求め、以て資本の總額に對する確定的債務の成立を圖らざるべからず、株主の募集之なり、而して所謂募集は、固より公告の方法によるを必要とせず、廻狀を以てし、又は口頭に依るも可也、廣く公衆に對して、株式の募集を勸誘するを必要とせず、我商法は獨、墺、瑞、佛、伊國と同じく、目論見書の公告を強制せず、然れども實際に於ては、將に設立せんとする會社の組織に關する大綱を公告して、公衆を勸誘するを例とす、我商法に於ては、株式申込證制度を採れり、即ち株式の申込を爲すには、法定の形式を履踐せしめ、會社は其證券によりて資本の總額に對する確定的の債務者あるを知ることを得るなり、而して株式の募集による設立、即ち漸次設立は、創立總會の終結によりて、會社は成立するものとす。(商一二五、一三九條)
- 英
- Gradual establishment
- 独
- allmälige Errichtung
- 仏
- Etablissement graduel
戰時占領
(せんじせんりやう)凡そ一國軍隊にして、敵國版圖内に攻入る時は、其土地人民との間に、一定の法律關係を生ず、古代に於ては、此法律關係を以て、直に其地方を獲得したるものとしたるも、近世に於ては即ち然らず、占領軍は、一時的且つ必要的の範圍内に於てのみ、其土地人民財産に對して權力を行ふものに過ぎずとせらるるに至りたり、從て當然の結果として、戰時占領は征服、侵略と異り、又條約とに依る割讓と、全く其性質を異にす、要するに戰爭中交戰國の軍隊が、他方の交戰國の一地方に事實上の權力を樹立するを謂ふ、而して其權力の成立、且つ行使せらるべき限り、戰時占領ありたるものとす、從て□一交戰國軍隊が他方の交戰國の土地を占領せる事、□二其地方に於て、事實上の權力を樹立せる事、即ち事實的占領ありたる事を要す、單に一片の宣言を以て占領したる旨を發表するも、古代は兎も角、今日は其效力なし。
- 英
- Occupation in war
- 独
- Kriegs-okkupation
- 仏
- Occupation dans la guerre
戰時徵發
(せんじちようはつ)戰時徵發は、又戰時徵用と云ひ、其權利を戰時徵用權又は之をアンガリー權と稱す、交戰國が交戰國の領土領海内に在る中立國臣民の財産を、強制的に徵用して、戰爭の用に供するの權利なり、故に、□一中立國人民の財産たること、□二其財産は交戰國の域内に在るものなること、□三強制的に徵用すること、□四戰爭の用に供することの四條件を要す、從來各國は、慣例上以上の戰時徵用權、即ち交戰國が、敵國にある中立臣民、及び其財産を、戰爭の必要上、敵國の臣民及其財差と同じく之を取扱ひ、之に對して或種の制限、又は不利益を加ふることを得るものと認むと雖も、其可否に關しては、學者間議論頗る岐る、多くは之を容認す、殊に大陸學派に於て然りとす、されど之に對して、損害の補償を爲さざる可らずとするを通常とす、ゲフゲンの如きは、二個の場合を區別し、一戰爭の必要上、交戰國が敵國にある中立國臣民の財産を被壞せる場合に於ては、損害を賠償するを要せず、普佛戰爭中獨軍が、セイン河に於て、英國の商船を擊沈せしは、之畢竟戰爭の必要上、中立國の臣民の財産を徵用して破壞せるものなれば、獨逸は之に對して、損害を塡補するの必要なかりし、唯恩惠上之を與へたるに過ぎす、ニ交戰國が、自國の使用の爲め、中立國臣民の財産を差押へたる場合に於ては、之に對して損害の補償を爲さざる可らず、例へば船舶、鐵道、軍需品、食糧等を、軍隊の生活の維持、及び運送の爲めに使用したりとせば、之に對して損害の補償を爲さざる可らざるものなりと、然れども斯る區別が、果して正當のものなるや否や、正當のものとするも、果して明確に區別し得るや否やは、疑の存ずる所なり、一八七〇年七一年の普佛戰爭中、獨逸の軍隊は、瑞西の鐵道會社の車輛列車凡六七百輛を徵用せしのみならず、獨逸の司令官は、セイン河のデュークレール附近に於て、佛の砲艦がセイン河を遡り、獨軍の聯絡を遮斷するを妨げんが爲め、其所に居合せたる英の商船數隻を擊沈せんとし、之を英船の船長に謀りたるに、船長は之を拒絶したりき、仍て獨軍の司令官は、應急の手段として、其船員が未だ十分船舶を去らざる以前、其船舶を擊沈するに至れり、然るに英國に於ては、獨國に對して、其行爲を以て、國際法違反なりと云はざりしも、被害者に損害を補償せん事を要求せり、ビスマークは、之に對して曰く、非常緊急の場合に於ける應急の處分として、他に執るべき途なき場合には、斯る行爲は決して違法にあらず、然れども損害は、補償する義務ありとして、其要求に應じたり、ビスマークは、國際法上に於ける義務として、補償金を支拂ひたるものなるや、單に恩惠として支拂ひたるものなるや、今猶確ならずと雖も、英國學者は義務として支拂ひたるものと解し、獨學者は恩惠として支拂ひたるものと解せり。
- 英
- Levy in war
- 独
- Kriegskontri-bution
- 仏
- Levée pendant la guerre
戰時萬國公法
(せんじばんこくこうはふ)尚戰時國際公法と云ふに同じ、往時は、國際公法を萬國公法と云ひし事ありしも、今は此名稱を採らず、一般に國際公法又は國際法と云ふに至りたり、されど其内容は、固より異なるなし。
- 英
- Hostile international law
- 独
- Kriegsvölkerrecht
- 仏
- Droit inter-national hostile
戰時復仇
(せんじふくきう)復仇に二あり、平時復仇、戰時復仇是なり、戰時復仇とは、相手國の戰規違反の行爲に對して、之に酬ひんが爲めに、自國も亦敢て戰規違反の非常手段に出づるを云ふ、其目的は、畢竟戰規を維持せんとするに在り、而して交戰國か復仇を爲し得べき權利あるに就ては、何人も異議なき所なれども、之を斷行するに當りては、正義に遵ひ、寬大の處置を守らざるべからざるものとす、凡そ復仇は、之を行ふ必要あるにあらざれば、之を行ふを得ず、其標準程度は軍の安全を得、及び目的を達するに要用なる範圍に止むべし、又人道を無視すべからざるは當然なり、一八七四年ブルキセル會議に於ける露國の提案に依れば、復仇は、□一公然戰規に重大なる違反ありたるときに限り、又人道の許す程度に於てすべく、□二相手の不法行爲と權衡を保つべく、□三最高司令官の許可ある事を要すとすべしと、然れども斯る提案は之を採用せられざりき、蓋し戰時復仇を全廢するものならば、斯る提案も亦可なるも、苟も其存在を保つ以上は、斯る制限は事實行はれ得べからざることなれば也、學者の普く認むる所によれば、戰規に違反したる者、後日捕はれたるときは、軍法に照して處斷し、刑罰を科すべく、戰規違反者不明なるとき、(例へ井水に毒を投じたるの嫌疑あるも、事實不明なるとき)又は之を罰する事能はざるときは、敵軍又は其司令官に對して復仇の擧に出づべく、下士卒等多數を屠殺するは不可也、勿論平和なる人民に害を加ふるは、人道上甚だ不可なりと難も、往々にして害を加へたる實例あり、一八七〇年一八七一年の普佛戰爭に於ける、船員抑留事件は、復仇の有名なる實例也、佛國は獨國の商船を捕へて其船員を抑留するや、獨國は之を違法なりとして大に其非をならせり、而して復仇に出づべしと宣言して曰く、船員抑留の目的は、私裝捕拿船に服從するを妨ぐるにあらんも、私裝捕拿船は業に已に巴里宣言の禁ずる所のものなれば、佛國の主張は一の杞憂のみと、佛國の外務大臣は之に應へて曰く、商船の船員たるものは、啻に獨り私拿船の用に供せらるる恐あるのみならず、獨國に於ては、海員を以て海軍の役務に就かしむるにあらずや、船員の抑留茲に於てか必要なりと、而して獨國は、之が復仇手段として、デイジヨン、グレー、ヴズールより四十名の名士を捕へ來りて、之をプレーメンに送り、此處に之を拘禁せり、佛國の船員抑留の手段に對しては學者の贊否一ならず、議論頗る岐る、若し之を戰規に悖るものとせば、獨國の復仇は正當たるを失はず、而してテイジョン等の地方の名士を捕へたるは、即ち復仇を一私人に加へたるは、果して復仇の原則に反する事なきや、或は刑法の緊急行爲を拉し來り、刑法に於ける緊急行爲は、加害者以外の者に對する侵害も、緊急の狀態、法益の對立を理由として、無罪無罰なりとせらるる如く、國際法上戰時復仇が、戰規違反者以外の第三者(殊に私人)にも及ぶは、緊急已むを得ざる事として、不適法にあらずと辯ずるも、大に疑はしきことなり、ウエストレーキは更に不可解の言を爲して曰く、政府の不法行爲に對する復仇として、害を一私人に加ふるは不當なりといふを得ず、蓋し戰爭に於ては個人は、國家と合體するものなればなりと、何が故に個人は國家と合體するや、論理の徑路を疑はざるを得ず。
前審
(ぜんしん)控訴審に於て審理する場合に、第一審の審理を指して前審と云ひ、上告審に於て審理する場合に、控訴審の審理を指して前審と云ふ、要する直接前きの審理を指して前審と云ふなり。(刑訴四四條四號)
- 英
- Antecedent trial
- 独
- vorher-gehende Untersuchung
- 仏
- Jugement précélant
前者
(せんしや)證券の所持者以前の裏書人を前者と云ふ、即ち手形其他裏書を以て讓渡することを得る證券の、現在の所持人以前に於ける裏書人は、其所持人に對して、前者なるが如し、手形にて之を例へば、甲、手形を乙に讓渡し、乙更に之を丙に讓渡し、丙更に之を丁に讓渡せり、斯る場合に丁より見れば甲、乙、丙の三人は皆前者なり、丙より見れば甲、乙の二人は前者なり、乙より見れば甲は前者なり、而して甲は前者を有せず、要するに後者と、相對するの語にして、手形所持者より見て、其以前に手形を所持したることある者を指して云ふの語なり。(商四八七條等)
先取特權
(せんしゆとくけん)民法其他の法律の規定に依て、或種類の債權を有する者が、其債務者の一般又は特定の財産に就き、他の債務者に優先して、辨濟を受くる權利を先取特權と云ふ、從て先取特權は、債權の性質に基く優先權にして、特約を要せず、法律上、當然或債權者に屬する權利也、即ち共同擔保の原則に對する一の變則なり、故に特に法律に定めたる債權者のみ之を有し、且つ其適用の範圍も、法律に定むる所に超ゆることを得ざるものとす、元來先取特權なる制度を設けたる所以のものは、法律に依て、特に或債權者を保護する必要ありと認めたるに由るもの也、而して其效力は第三者の權利に影響する事極めて大なるものなるが故に、公益に基く制度にして、一般に強行的規定とする當然の結果として、當事者間に於て、隨意に先取特權を設定する事を得ざるは勿論、質權、抵當權の如く、本來の債權と分離して、先取特權のみを擔保の目的とするを得ずと解せざるべからず、先取特權は、其性質上當然或債權者に屬するものにして、其目的物の占有を必要とせざるも、一の物權に外ならざる故に、第三取得者に對して追及權を生ず、且つ先取特權の目的物が滅失したる場合には、先取特權は當然消滅するが如きも決して然らず、若し其目的物が金錢又之を目的とする債權に變じたる場合には、便宜上先取特權を消滅せしめずして、其對價の上に存在するものと規定せり、即ち民法は、先取特權の目的物の範圍を、特定の場合に擴張したるもの也、例へば先取特權の目的物を毀損したる者が、債務者に拂ふべき損害賠償金の上に存在する事となる、茲に疑となるは、先取特權の目的物が、火災に罹り消滅したる場合に、保險金の上にも尚行はるるや否や是なり、學者多くは、民法の規定が汎博なるの故を以て、保險金の上にも行はるるものなりと云ふ、されど斯る解釋にして、果して正鵠を得たるものとせんか、□一保險の法理に悖る、蓋し保險者が保險金を支拂ふ所以は、其對價たる保險の報酬として支拂ふものにして、保險の目的物の滅失毀損は、單に保險金支拂の債務發生の一原因に過ぎず、從て保險金は、保險の目的物の變形にあらず、□二偶然の事情により、債權者は意外の利益を受く、蓋し若し債權者にして保險に付せられざらんか、泣寢入となるべきに、債務者が保險に付し、其保險料を支拂たるが故に、意外にも利益を得るが如き結果を生ずれば也。(民三〇四條)
- 英
- Preferential right
- 独
- Pri-orität
- 仏
- Droit de préference
先取特權者
(せんしゆとくけんじや)先取特權を有する者を云ふ。(先取特權、一般の先取特權特別先取特權の部參照)
- 英
- Holder of a preferential right
- 独
- Besitzer der Priorität
- 仏
- Créancier de préférence
戰數
(せんすう)獨のりユイデル教授曰く、戰數とは、戰規が遵由せられざる例外の場合を云ふと、戰數なる觀念を認むべきや否やに就きては學説岐る、或は之を非認し、或は之を容認す、されど國内の法律にも緊急狀態ある如く、國際法にも戰數ありと解するは、蓋し能く實際に適合す、原則には必ず例外あり、萬已むを得ざる場合に於て、臨機の處置を採るは、決して不當なりと云ふを得ず、國家興亡の岐るる軍の安危を犠牲に供して迄も、尚且つ戰規の遵守を強ゆるは、宋襄の仁、尾生の信を強ゆるもの也、已に然らば、戰數を認むることは止むを得ざるなり、英國學派は、戰數の觀念を認むるは、戰規の效力を薄弱ならしむるとの理由に出でて反對するが如きも、思ふに交戰手段に絶對的禁止あることなし、ブルクセルの決議、オクスフォードの決議、及び海牙條約にも亦條件附規定少からず、從て戰數を認むるも、決して戰規の威嚴を損するものにあらず。
宣誓
(せんせい)虛僞の陳述を爲さす、直實に陳述を爲すべき旨の誓ひを云ふ、例へば證人が判事の面前に於て、證據の陳述を爲すべき場合に、良心に從ひ眞實を述べ、何事をも默秘せず、又何事をも附加せざる旨、又は良心に從ひて眞實を述べ、何事をも默秘せず、又何事をも附加せざりし旨の誓を宣ふるを云ふ也。(民訴三〇七條、刑訴一二二條)
踐成契約
(せんせいけいやく)踐成契約は、諾成契約と相對するものにして、踐成によりて生ずる契約を云ふ、即ち諾成契約は、當事者の意思の合致あれば直に成立するも、踐成契約にありては、當事者の一方が、或事を踐行するによりて成立するもの也、例へば賣買、賃貸借、委任等は、凡て諾成契約にして、當事者双方の意思の合致あれば直に成立す、之に反し、使用貸借消費貸借、寄託契約、質契約等は、皆踐成契約なり、例へば金錢の消費貸借は、貸主が其金錢を借主に引渡したる時に於て、始めて成立するものなり、尤も借主が其占有を得るのみにては、契約は未だ完全に成立し得ずして、權利をも併せて、之に移轉せざるべからずと雖も、畢竟消費貸借は、金錢を借主に引渡すによりて成立するもの也、使用貸借の場合も亦之と同じく、其未だ目的物を引渡さるる間は、貸借の豫約は之ありと雖も、未だ使用貸借は成立せず、質契約も亦然り、即ち引渡すによりて質契約は成立するもの也、此區別は、羅馬法以來存するものにて、今日猶歐洲一般に認むるのみならず、能く我邦の慣習にも適合するものとす、而して此區別の實益は諾成契約にありては、當事者双方の意思の合致と共に、法律の定めたる凡ての效力を生ずるに拘らず、踐成契約にありては、目的物の引渡ありて始めて效力を生ずるものとす、而して消費貸借、使用貸借、寄託契約、及質契約が、此種に屬すること前に述べたるが如し、此等の契約に於て、未だ目的物の引渡なき間は、或は他の效力を生ずべしと雖も、契約本然の效力は生ずることなし。(要物契約の部參照)
宣誓者
(せんせいしや)宣誓を爲して證言又は鑑定を爲す者を云ふ。(民訴法三〇八條)
- 英
- Person who swore
- 独
- Vereidi-gende
- 仏
- Personne qui fait le serment
宣誓書
(せんせいしよ)良心に從ひて眞實を述べ、何事をも默秘せず、又何事をも附加せざる旨を記載したる書面にして、證人は之に署名捺印するもの、又は公平且つ正實に艦定すべき旨を記載したる書面にして、鑑定人が之に署名捺印するものを云ふ。(刑訴一二二、一三七條、民訴三二九條)
- 英
- Affidavit
- 独
- Eidesschrift
- 仏
- Déclaration écrite
專制政體
(せんせいせいたい)凡そ國家は、國家機關の組織に基き、其種類を分て、君主國と共和國となす、而して更に君主國を細別すれば、□一世襲君主國と選擧君主國、君主國の常態は世襲君主國也、世襲君主國とは、君主の位に卽くべき者が、同一王統に屬する者に限り、其王統中より、豫じめ定めたる王位繼承の順位に從ひ、特別の特定行爲を俟たず、當然に王位に卽くべきものを云ふ、今日存在する凡ての君主國は皆世襲君主國也、然れども歷史上の事實に於ては、選擧君主國も全然其例なきにあらず、選擧君主國とは、君主を選擧すべき特定の機關ありて、其機關の選擧により、君主の位に即くものを云ふ、其顯著なるは、中世の獨逸帝國也、獨逸皇帝は、選擧候の選擧に因りて、帝位に即くを得たるものにて、一定の順位により、當然其位に即きたるにあらず、而して選擧君主國は寧ろ君主國の異例に屬し、或は漸次同一王統中よりのみ選擧せられ、遂に世襲君主國となるの傾向を有するか、然らざれば遂に變じて、純然たる共和國となる傾向を有するものの如し、□二君主專制國と制限的君主國、君主專制國とは、君主が啻に國家の最高機關たるのみならず、唯一の直接機關にして、毫も他の制限を受くる事なく、自己の任意に統治權の全部を行使するものを云ふ、君主專制國は、國家組織の最も單純なるもの也、制限君主國とは、之に反して、君主が其統治權を行使するに當り、君主の命令の下に立ざる、他の獨立機關の制限を受くるものを云ひ、之を別ちて中世の等族國家と、近世の立憲國とす、專制政體とは、即ち君主專制國に於ける統治權發動の形式を云ふなり、露西亞、清國は、即ち專制政體の著明なるものなり。
- 英
- Despotic government
- 独
- despotische Regierung
- 仏
- Gouvernement despotic
船積期問
(せんせききかん)船舶が積荷を積載せんが爲には、多少の時日間、滯留碇泊せざるべからず、而して其碇泊期間に、碇泊料を受取らずして碇泊すべき期間と、一定の碇泊料を受取りて碇泊すべき期間とあり、前者は所謂碇泊期間にして、後者は所謂超過碇泊期間なり、而して船積期間とは、即ち碇泊期間と、超過碇泊期間とを相包括するの語なりとす。(商六〇九條)
僣竊
(せんせつ)僣竊なる語は、現行刑法に於て用ひらる、即ち邦土を僣竊す等云ひ、佛文草案第一三四條の「日本又は屬國の一部を天皇の管轄より押領し」とあるに該當するものにして、要するに日本領土の一部を押領し、日本帝國主權の命令を排斥することを云ふに外ならず。(刑七七條)
- 英
- Dispossession
- 独
- Entsetzung
- 仏
- Dépossession
宣戰
(せんせん)戰爭開始の宣言之を宣戰と云ふ、即ち國家が戰爭を開始するに當り、之を開始する旨の宣言なり、凡そ戰爭を開始するには、豫じめ宣戰を爲さざるべからざるものなるや、□一上古希臘、羅馬の時代に於ては、戰爭の宣言を以て戰爭開始の必要條件とせり、而して之には一定の方式ありたり、即ち不可侵權を有する軍使をして、宣言せしめたることあり、フェシァール僧をして、槍を敵地に投じて其方式としたることあり、□二中古に至ても、羅馬の慣行は其隋力を有し、宣戰なくして戰を開始するは卑怯なりとの中古の武士道と相合して、一層戰爭宣言の必要を認むるに至れり、□三第十七世紀以後に至りても、未だ宣戰の不必要なりと云ふに至らざるも、頗る宣戰は其勢力を失墜するに至りたり、即ち一八八三年、英國の陸軍大佐「モーリス」の著に係る、「無宣戰の敵對」なる書に依れば、一七〇〇年より一八七〇年迄、七一年間の歐洲戰爭中、宣戰を爲せるものは十回を出でず、實戰を以て戰爭開始となりたる場合は、實に一〇七回の多きに及びたりしと、交通機關の發達今日の如きに、尚宣戰の必要なるを公言するは、實に妄も亦太甚しと云はざるべからず、然れども宣戰は、何等の效力を生ぜざるものにはあらず、實戰に先ちて宣戰あれば、直に戰爭となるに足るもの也、或學者の如きは、宣戰の不必要を唱道するの餘り、更に一步を進めて、宣戰のみによりては完全に戰爭と云ふべからず、更に實戰あることを要すと、されど現下の通説としては、此の如く極端にあらざるもの也。
- 英
- Declaration of war
- 独
- Kriegs-erklärung
- 仏
- Déclaration de la guerre
先占
(せんせん)先占に二種あり、國際法上に於ける先占、民法上に於ける先占是也、□一民法上先占とは、自己の所有と爲す意思を以て、他人に先つて無主の動産を占有するを云ふ、イ自己の所有と爲すの意思を以て、他人に先ち目的物上に實力を占領すること、例へば鹿に向て發砲し、命中したりと雖も、急所を外れ、未だ自己の實力内に入れざるに先ち、他人が更に發砲して急所に命中し、自己の實力内に入れたるときは、即ち後者の先占に歸するもの也、ロ先占の目的たる物件は動産たること、不動産は、決して先占の目的とならず、無主物なるときは國庫に歸屬す、ハ先占の目的物たる物件は無主なること、而して初めより無主なると、一旦他人の所有に歸したるも、其手を税し無主物となりたるとは、固より之を問はず、ニ目的物の先占は適法なることの四條件を具備せざるべからず、□二國際法上先占とは、領土獲得の一原因にして其條件は、イ先占の主體は國家たること、從て一私人は、決して先占により領土を獲得することなし、ロ先占の客體は無主の土地なり、他國の領土は、絶對に先占の目的物となることなし、ハ先占は一定の地域に對して領土主權を設定するの意思を有することを要し、且つ其意思は表示せらるることを要す、ニ先占は實力的に爲すことを要す、ホ先占の地域は實力の及ぶ範圍に限らる、單に名義上の先占なるものは、一般に排斥せらる、而して國際法上の先占は、民法の先占と異なる點少なからずと雖も、其根本觀念に至ては則ち一なり。(民二三九條)
- 英
- Occupation
- 独
- Okkupation
- 仏
- Occupation
先占取得
(せんせんしゆとく)單に先占と云ふと同じ、先占も一の權利、即ち所有權又は領土主權の取得原因なり、從て先占取得と云ふも、先占と離れて別箇の内容を有するの語にあらず。
- 英
- Possession by occupation
- 独
- Aneignung
- 仏
- Possession par occupa-tion
踐祚
(せんそ)皇嗣が天皇の御位に即かせ給ふことを稱して踐祚と云ふ、皇室典範第一〇條に「天皇の崩ずるときは、皇嗣即ち踐祚し、祖宗の神器を承り」、同第一二條に「踐祚の後元號を建て、一世の間に再び改めざること、明治元年の定制に從ふ」とあるは即ち其用例なり。
- 英
- Ascension to the throne
- 独
- Re-gierungsantritt
- 仏
- Ascension à la trône
專屬管轄
(せんぞくくわんくわつ)專屬裁判籍なるものは、或格段なる法律關係に付ては、或一定の裁判所のみ之を管轄するを云ふ、不動産上の專屬管轄に就きて云へば、不動産上の直接なる權利關係、即ち本權、占有、分割、境界の訴及び、地役に關する訴に就き、專ら或裁判所に屬し、合意を以て他の裁判所に管轄を定むる事能はざるものとす、而して我國に於て、專屬管轄と定めたるものは、前述の不動産に關するもの、人事訴訟、強制執行に關する管轄等なりとす、而して專屬管轄ある場合に、他の裁判所に訴を提起したるときは、全然無效なりと云ふにあらず、假令管轄權を有せざる裁判所が爲したる裁判と雖も、一度確定するときは、最早動かす事を得ず、例へば不動産に關する訴訟に就き、管轄權を有せざる裁判所に裁判を爲したるときと雖も、其裁判にして確定したるときは、不服の申立を許さざるものとす。(民訴二二、三一、五六三條)
- 英
- Exclusive competency
- 独
- ausschlieszliche Gerichtsbarkeit
- 仏
- Com-pétence exclusive
先訴の抗辯
(せんそのかうべん)債務者が保證人に對し、債務の履行を請求したるときに、保證人は、先づ主たる債務者に催告を爲すべき旨を請求することを得、此請求權を稱して先訴の抗辯と云ふ、即ち先づ債務者より辨濟を受くべしとの抗辯也、但し主たる債務者が、破産の宣告を受け、又は行方が知れざる時は此限にあらず、而して保證人が斯る抗辯を爲したるに拘らず、債權者が催告又は執行を爲す事を怠に至るり、其後主たる債務者より全部の辨濟を得ざるときは、保證人は、債權者が債務者に對し、直に催告、又は執行を爲せば、辨濟を得べかりし限度に於て、其義務を免るるものとす、例へば債權者が保證人の抗辯に應じて、債務者に對して請求せば、全部の辨濟、例へば一萬圓を得ることを得たるに拘らず、催告を爲すことを怠りたる爲め、漸くにして三千圓の辨濟を受けたるに止まりしとすれば、七千圓に付ては、最早保證人に對して其履行を求むることを得ざるものとす、但し連帶保證人は此先訴の抗辯を有せざるもの也。(民四五二、四五四、四五五條)
選擇權
(せんたくけん)或る數多の事物中より其一を選擇するの權利にして、選擇債務例へば米百俵又は大豆百石の中一を給付すべき債務に於て、米又は大豆の一を選む權利が選擇權なりとす、□一性質、選擇權は、擇一の權利として、法律上に於ては選擇債務の要素をなす、されど債務者又は債權者等の一身に專屬する權利にあらざるが故に、選擇權は、其承繼人に移轉する事を得べく、又代理人をして之を行使せしむることを得る也、□二選擇權を有する者、選擇權は、債務者、債權者又は第三者に屬せしむる事を得、果して何人に屬するやは、各場合に於ける當事者の意思を解して之を定むるの外なし、即ち當事者の明示又は默示の意思表示、若くは行爲の性質によりて定まる、若し反對の意思を認むること能はざる以上は、法律は、債務者に屬するものとなす、茲に債務者と云ふは、選擇給付を負擔する者を云ふ、双務契約の場合には、何れが選擇給付を負擔するかによりて、何れに選擇權ありやを決すべし、若し雙方の債務が、共に選擇的なるときは、何人に選擇權あるや、或は雙方共に選擇權を有するやは、各場合の事情に從ひ、當事者の意思を解釋して之を定むべし、□三選擇權の行使、選擇は、之に關して特別の定めなき以上は、受領を要する無式の單獨意思表示にして、相手方に對して之を爲すべく、其方法及時期の如何を問はず、又其意思表示は、明示たると默示たるとを問はず、然れども選擇は、常に不可分にして、債權者又は債務者は、甲給付の一部と乙給付の一部とを選擇することを得ず、一旦選擇の意思表示を爲すときは、債權の客體特定し、當事者双方を拘束し、相手方の承諾あるに非ざれば之を取消すことを得ず、然れども此選擇は、一の意思表示なるが故に、一般意思表示の原則は適用せらる、殊に選擇權者が選擇債權なる事を知らず、又は選擇權の己れに屬することを知らずして、或給付を請求し、又は之を履行したるときは、錯誤を理由として他の給付を請求し、又は履行するを妨げず、選擇權を有する當事者が數人ある場合には、特別の定めなき以上は、全員一致を以て、選擇を爲すことを要す、反對當事者數人あるときは、其全員に對し選擇の意思表示を爲すことを要す、第三者が選擇を爲す場合には、其選擇は、債權者又は債務者に對する意思表示によりて、之を爲す、□四選擇權行使の遲延、選擇權は、其文字の表彰する如く、權利にして義務にあらず、故に選擇權の行使を請求することを得ず、然れども相手方は、選擇債權の不定なる有樣を免るるに就き、正當の利益を要す、法律は、此利益を保護する爲め、若し選擇權を行使せざるときは、下の三條件を以て其選擇權は相手方に移轉するものとす、イ債權が辨濟期にあるに拘らず、選擇權者に於て選擇を爲さざること、ロ相手方より相當の期間を定め、其期間内に選擇すべきことを催告すること、ハ其期間内に選擇を爲さざりし事、以上の條件あるときは、選擇權は、當然相手方に移轉し、相手方債權者なるときは、自ら選擇して或給付を請求することを得、若し債務者ならば、自ら選擇して或給付を履行し、又は供託して其債務を免るることを得、第三者が選擇を爲すべき場合に、選擇を爲す能はざるか、又は之を欲せざるときは、特約なき限り、第三者は選擇を爲すべき義務なきが故に、選擇を強制すること能はず、故に選擇權に關し、何等の定めなかりし場合と同視して、選擇權は債務者に屬するものとす、□五選擇權行使の效果、選擇ありたるときは、如何なる選擇なるを問はず、之により債權の客體は特定す、且つ既往に遡りて效力を生じ、恰も其選擇せられたる物が、初より唯一の客體をなしたると同樣に看做さる、故にイ債權の性質、例へば可分、不可分の如きは選擇によりて定まり、且つ初より、此性質を有したるものと看做さる、ロ特定物に關する債權の設定移轉を目的とする債權なる時は、債權者は選擇により物權を取得し、且つ此物權は、債權發生當時に於て取得したるものと看做さる、故に選擇前に生じたる果實は債權者の利益に歸す、ハ選擇權は、凡て單純なる債權に關する原則適用せらる、從て選擇によりて特定債權となる時は、其後に於て選擇せられたる給付不能となるも、他の給付を求むる事を得ず、されど選擇の結果既往に遡る原則には、二個の例外あり、あ給付が定期に辨濟すべきものなるときは、一期の選擇は特別の定めある以上は、他期の選擇に影響を及ぼさず、い第三者の權利を害することを得ず、蓋し選擇あるまでは、債務者は正當なる權利者なる故に、其權利に基きて得たる第三者の權利は、後に起りたる選擇の爲に、害せらるる理由なし、例へば一の不動産又は金千圓を給付すべき場合に、選擇權者が其不動産を他人に讓渡し、又は之に物權を設定したる後、其不動産を選擇するときは、第三者の權利は毫も影響を受くることなし、但し第三者が取得せる權利は、選擇債權の債權者に對抗し得べき性質を有し、且つ之を對抗するに必要なる條件を具備することを要す、例へば不動産を目的とする物權なれば、登記することを要す、廣く權利とあるを見て、斯の如き制限を付せざるは、皮想の見解に過ぎず。(民法四〇六條乃至四一一條)
- 英
- Right of selection
- 独
- Aus-wahlrecht
- 仏
- Droit de la selection
選擇債務
(せんたくさいむ)債權の客體が數個の給付を包含し、選擇を以て之を確定すべき債務關係を選擇債務と云ふ、□一選擇債權の客體は、必ず數個の給付を包含す、此給付は、通常甲又は乙を給付すべしと云ふが如く、二個の給付なれども、二個以上なるときは、其數に限りなし、又通常は家屋或は時計を給付すべしと云ふが如く、物を客體とする數個の異なりたる給付より成立すれども、又給付は行爲より成立することを得べく、各其態樣を異にするも妨げなし、例へば此家屋を四月一日又は十月一日より借ると云ふが如し、又其給付は通常特定給付なるも、其一又は全體が種類給付たることを得、□二數個の給付は、皆選擇債權の客體を爲す、選擇債務の性質に關しては、古來より議論多し、或は此債權に於ては、各給付は皆債權の客體を爲す、然れども債務者は其一を給付するに依て債務を免るることを得べし、故に選擇債權にありては、債權の客體不定なるにあらず、單に履行の其の客體が不定なるものと爲す、之を確定説と云ふ、或は各給付は皆債權の客體を爲すと雖も、此間に條件の關係ありとし、或者は甲を與へざれば、乙を與ふべしと云ふ二個の停止條件と爲し、他の者は甲を與ふるときは、乙を與へざるべしと云ふ二個の解除條件あるものとす、之を條件説と云ひ、或は此債權に於ては、各給付が債權の客體たるにあらず、唯其一のみが客體を爲す、而して其何れなるやは、選擇に依て定まるべきものとす、之を不定説と云ふ、以上三説中確定説は、羅馬法に於ては正當の見解た)を失はざるべし、蓋し羅馬法に於ては、選擇の單純なる意思表示は拘束力なく、之を變更することを得、實際上債權の客體の確定せらるるは履行に依る、故に選擇なるものは、殆ど何等の效果なく、選擇債權とは、債務者が一給付を履行するにより、債務を免るることを得る債權たりしに過ぎず、然れども近世の法理に於ては、選擇は其性質を一變し、一旦選擇あるときは、債權の客體は確定し、之を變更することを得ず、且つ其選擇は既往に遡るものとす、從て確定説は、今日に於て正當の觀念に非ず、條件説は、如何なる形に於ても、即ち停止にても、解除にても、選擇債權と種々の點に於て異る、條件は之が成就を強制するを得ず、選擇は之を催告する事を得、條件成就の效力は、既往に遡らず、選擇は既往に遡る、條件成就前には、債權者に請求權なし、選擇前には請求權あり、以て其異る所以を知るべき也、又不定説も其效果に於て選擇債權と趣きを異にするのみならず、選擇により初めて客體を生ずるものとせば、或は選擇迄は、客體なき債權を認めざるべからず、或は選擇前には未だ債權關係なく、從て請求權なしとせざるべからず、要するに近世の選擇債權は、羅馬法主義の選擇債權とは、其性質を異にするを以て、同一の法理を以て之を説明するを得ず、今日の選擇債權にありては、各給付は皆債權の客體を爲し、且つ甲又は乙と云ふが如く、擇一的に其物體を爲すもの也、即ち擇一的内容を有する一種特別の債權にして、選擇により甲又は乙の内、何れか現實に給付せらるるやを確定するものとす、從て此債權は初めより完全に成立し、條件附債權の如く、選擇によりて始めて成立するものと異る、□三選擇を以て、何れの給付が現實の客體たるやを定む、債權は之に由りて債權の客體を作成するものにあらず、選擇せられたる給付は、初めより債權の客體を爲したるもの也、唯選擇は其の一を採用し、他を排斥するに過ぎず、是選擇は既往に遡り、且つ之を變更する能はざる所以也。(民四〇六、四一一條)
- 英
- Selected obligation
- 独
- ge-wählte Schuld
- 仏
- Obligation selectée
船長
(せんちやう)船長の意義に二あり、廣義に於ては船舶の指導者也、狹義に於ては商行爲を爲す目的を以て、航海の用に供する船舶の指導者たり、而して其地位は、公法、私法の兩方面に渉る、□一船長の公法上の地位、即ち船長の國家に對する關係なり、其關係も亦二方面に岐る、イ船長の公法上の職務權限、船長法、其他の行政法規に依りて定まる、蓋し船舶は陸地を離れて、遠く外洋に航行するものなる故に、船舶内の平和秩序を維持せしめんが爲めには、之に指導者たる船長に、多少の行政竝に司法警察的の職務權限を有せしむべきは當然とす、故に船内に犯罪者ありたるときは、船長は、司法警察官の職務を行ひ、又船長は海員を指揮監督し、且つ船中に在る者に對して、其職務を行ふに必要なる命令を爲すことを得、船内の規律を維持する爲めには、海員並に旅客に對して、懲戒權を行ふ事を得、若し其命令に服從せざる者ありて、必要なる場合に於ては、軍艦、地方官廳又は管海官廳に其援助を求むることを得べし、ロ船長自身の資格、取締、海員懲戒法、船舶職員法等に詳細の規定あり、即ち船長は、船舶の指導者にして、許多の生命財産は擧げて彼の一身に委ねらるるが故に、船長たるには、一定の試驗に及第し、海技堪能の者ならざる可らず、現行法に定められたる船長免狀の種類には、甲種船長、乙種船長、丙種船長の三種あり、又船長が其職務を行ふに當り、不法の行爲ありたるときは、其輕重によりて懲戒せらる、□二船長の私法上の地位、之を別ちて、イ船長の一般利害關係人に對する關係、ロ船長の船舶所有者に對する關係、ハ船長の積荷の利害關係人に對ずる關係の三に分る、(商五五八條、船員法一三條)
千住製絨所官制
(せんぢゆせいじゆしうよくわんせい)明治二六年勅令第一四一號を以て公布せられ、其内容は、□一千住製絨所は、陸軍大臣の管理に屬し、陸軍所用の絨布製造の事を掌る、官廳又は人民より、絨布の製造を依賴するときは、陸軍所用の絨布製造事業に妨げなき限りは、之に應ずることを得、□二千住製絨所に下の職員を置く、所長一人、事務官一人、技師二人、屬八人、技手十二人、□三所長は奏任とす、陸軍大臣の指揮監督を受け、所中一切の事務を掌理す、□四事務官は奏任とす、上官の命を承け、所務を掌る、□五技師は所長の指揮監督を承け、製絨の事を監理す、□六屬は判任とす、上官の指揮を承け庶務に從事す、□七技手は上官の指揮を承け、製絨の事に從ふ、ハ本令は明治二六年一一月一〇日より施行する所に係る。
千住製絨所長特別任用令
(せんぢゆせいじゆうしよちやうとくべつにんようれい)明治二九年勅令第二九七號を以て、公布せられたる命令にして、「千住製絨所長は、文官任用令の規定に依らず、陸軍監督及豫備役、後備役、陸軍監督、又は技師の中より、文官高等委員の銓衡を經て、之に任用することを得」との規定を爲したり。
前提
(ぜんてい)最も通俗には「前置き」など稱すると殆ど同義に用ひらる、然れども本來は、論理學上の推理式に於て用ゐらるる命題の謂なり、即ち推理式に於て、其斷案を導き來らしむる所の命題にして、例へば「總ての人は死すべし」「るーずべえると氏は人なり」故に「る氏は死すべし」といふ推理式に於て、「る氏は死すべし」てふ斷案は、「總て人は死すべし」てふ命題と、「る氏は人なり」てふ命題とより導き出されたるものなるを以て、此二個の命題は、即ち前提と稱せらる、而して「總ての人は死すべし」てふ命題の如く、大名辭と中名辭(媒辭)とを有する所の命題を大前提と稱し、「る氏は人なり」の如く、小名辭と中名辭とを比較する所の命題をば小前提と稱する也、但し普通の場合に於ては、推理をなすに當り、明白に二個の前提を立せず、斷案を引き出すこと頗る多し、此場合に前提なくして、斷案を得たりと思ふは誤にして、此處にては、前提を省略したるものと認めざるべからず、而して省略せらるべき前提は、殊更に之れを立せざるも、一般に承認せらるる如き命題ならざるべからず、最も直接推理に於ては、前提となるべき命題は一個なるを常とす。
選定家督相續人
(せんていかとくさうぞくにん)選定家督相續人に二あり、第一次の選定家督相續人、第二次の選定家督相續人之也、第一次の選定家督相續人は、法定又は指定の家督相續人なき場合に於て、其家に父あるときは父、父あらざるとき又は父が其意思を表示する事能はざるときは、親族會下の順序に從ひ、家族中より家督相續人を選定す、イ配偶者、但し家女なるとき、故に婚姻により他家より入りたる者は不可とす、ロ兄弟、ハ姉妹、ニ家女にあらざる配偶者、但し正當の事由あるときは、裁判所の許可を得て、以上の順序を變更する事妨げず、□二第二次の選定家督相續人、第一次の選定家督相續人及び被相續人の直系尊族なき場合に、選定する家督相續人にして、親族會に於て被相續人の親族、家族、分家の戸主又は本家若くは分家の家族中より、家督相續人を選定す、若し以上の者なきときは、親族會は他人の中より之を選定す、但し親族會は正當の事由あるときは、以上の者あるときと雖も、裁判所の許可を得て、他人を家督相續人に選定する事を妨げず、又相當の事由あるときは、其選定を爲ざることを得、左に參考の爲め必要なる書式を附記せん。
家督相續人順序變更許可申請書
本籍身分職業
母
申請人氏名
最後ノ住所
同番地
被相續人亡氏名
申立
右被相續人ノ家督相續順序位者
一弟某ヲ措キ
二姉某ニ變更ノ許可アランコトヲ求ム事實
一被相續人ハ法定又ハ指定ノ家督相續人ナクシテ本月何日死亡セリ
一家督相續人ニ選定セラルベキモノハ前記二名アルノミ
一弟某ハ放蕩無賴且ツ明治何年何月何日無斷家出シ又ハ所在不明ナルヲ以テ同人ヲ選定スルハ適當ニアラズ
一姉某ハ年齡三十一年ニシテ家事上ノ經驗モ少ナカラズ家督相續人ニ適當ナリ
附屬書類
一戸籍謄本壹通
一保證書又ハ何々(弟の放蕩及不在等を證する書面)何通
右申請候也
年月日
右
氏名□印
何區裁判所
監督判事氏名殿
「備考」一、申請人は、第一被相續人の父、第二母、第三親族會より爲すべきものとす。(民九八三條)
一、管轄は、相續開始地の區裁判所とす。(非訟手續九四條)
家督相續人ニ他人ヲ選定スルノ許可申請書
本籍身分職業
親族會員
申請人氏名
本籍身分職業
親族會員
申請人氏名
本籍身分職業
親族會員
申請人氏名
最後ノ住所
同郡何村何番地
被相續人亡氏名
申立
右被相續人ノ家督相續人ニ他人ヲ選定スルノ許可アランコトヲ求ム
事實
一被相續人ハ指定又ハ指定ノ家督相續人ナクシテ本月何日死亡シタリ
一被相續人ニハ民法第九八二條同第九八四條ニ該當スル親族ナシ
一民法第九八五條第一項ニヨリ選定セラルベキモノハ左ノ二名ノミニシテ此他ニ親族ナシ
被相續人ノ家族伯母名
本籍身分職業
本家ノ家族(被相續人との續柄なし)氏名
一然ルニ伯母ハ已ニ八十一歳ノ老年ニシテ到底家政ヲ執ル能ハズ又本家ノ家族ハ何々ノ事由ニヨリ家督相續ノ選定ニ當ルコトヲ豫メ辭退セルニ付キ他人ヲ選定スルノ止ムラ得ザルニ至レリ
一申請人共ハ別紙決定謄本ノ如ク親族會員選定セラレタルモノナリ
附屬書類
一戸籍謄本(被相續人の)一通
一家督相續人辭退書一通
一親族會員選定及ビ親族會招集決定書謄本一通
右申請候也
年月日
右
氏名印
氏名印
氏名印
何區裁判所
監督判事氏名殿
「備考」一、親族會より爲すべきものとす。(民九八五條三項)
一、管轄は、相續開始地の區裁判所とす。(非訟手續五四條)
- 英
- Appointed heir
- 独
- bestimmter Erbe
- 仏
- Heritier indiqué
選定後見人
(せんていこうけんにん)後見人に二種あり、□一未成年者に對する後見人、□二禁治産者に對する後見人是也、而して前者に指定後見人、法定後見人及び選定後見人の三種り、指定後見人とは、未成年者に對し、最後に親權を行ふ者が、管理權を有する場合に、遺言を以て定めたる者也、(但し親權を行ふ父の生前に於て、母が豫め管理を辭したる時は、父は未成年の子に對する後見人の指定を爲すことを得、即ち指定後見人を定むることを得)法定後見人とは、指定後見人なき場合に、法律上當然後見人となるものにして、其未成年者の家の戸主なり、選定後見人とは、指定後見人、法定後見人なき場合、又は母が財産の管理を辭し、後見人が其任務を辭し、親權を行ひたる父、若くは母が其の家を去り、及戸主が隱居を爲したる場合に、親族會に於て選任する所の後見人なり、次に後者に法定後見人、選定後見人の二種あり、法定後見人とは、禁治産の宣告あると同時に、法律上當然後見人となる者にして、原則としては、禁治産者に對して親權を行ふ父又は母也、唯妻が禁治産の宣告を受けたるときは、夫其後見人となり、夫が後見人たらざるときは、妻の親權者たる父又は母が後見人となり、夫が禁治産の宣告を受けたるときは、妻其後見人となる、妻が後見人たらざるとき、又夫が未成年者たるときは、夫の親權者たる父又は母が其後見人となる、若し以上の者なき場合には、禁治産者の家の戸主、當然其後見人となるものとす、選定後見人とは、以上の法定後見人あらざるとき、又は母が財産の管理を辭し、後見人其任務を辭し、後見人たる父又は母が其家を去り、後見人たる戸主が隱居を爲したる場合に、親族會に於て選任する後見人を云ふ、而して其數は一人なり、何れの場合を問はず、婦女を除く外、下の事由あるに非ざれば、後見人に選定せられたる者は、其任務を辭する事を得ず、イ軍人として現役に服すること、ロ被後見人の住所の市又は郡以外に於て公務に從事すること、ハ自己より先に後見人たるべき者が辭任し、又は或事由の爲め、後見人と爲り得ざる場合に、斯る事情消滅したるとき、ニ禁治産者に就きては十年以上後見を爲したる事、但配偶者直系血族及戸主は此限にあらず、ホ其他正當の理由、下に揭ぐる者は、絶對に後見人たる事を得ざる故に、親族會に於て、後見人に選定することを得ず、イ未成年者、ロ禁治産者、準禁治産者、ハ剝奪公權及停止公權者、ニ裁判所に於て免黜せられたる法定代理人又は保佐人、ホ破産者、ヘ被後見人に對して訴訟を爲し又は爲したる者、及び其配偶者、幷に直系血族、ト行方の知れざる者、チ裁判所に於て後見の任務に堪へざる事跡、不正の行爲又は著しき不行跡ありと認めたる者、其他後見監督人の監督に服すること、後見事務、其終了原因等は一般後見人と異なることなし。(民九〇一條乃至九四三條)
- 英
- Appointed guardian
- 独
- bestimmter Vormund
- 仏
- Tuteur indiqué
前條
(ぜんでう)直ぐ前の條文を指して前條と云ふ、例へば民法第八〇條に「前條の期間後に申出でたる債權者は、法人の債務完濟の後、未だ歸屬權利者に引渡さざる財産に對してのみ、請求を爲すことを得」とある知き即ち是也。
- 英
- Preceding article
- 独
- vorher-gehender Artikel
- 仏
- Disposition précé-dante
先天的
(せんてんてき)後天的に對して用ひられ「經驗に先立つこと」「經驗に基礎を有せざること」或は「經驗に俟たず經驗の無關係なること」等、總べて吾人の經驗より得來たることに對し、經驗に先立ちて、之に關係なく存在すとなす所のものを旨意す、特に此語は、觀念又は槪念の由來を表明するに用ひらる、即ち吾人心意の内容は、多く經驗に依り後天的に得來たるものなれども、亦一面吾人は、經驗に基かざる直觀的認識又は判斷を有するものなり、此の直觀的作用、即ち先天的と稱する所のもの也、例へば歸納的推理を後天的なりといへば、これに對して演繹的推理を先天的なりといふが如き、又カントが、時間空間及び十二の範疇を以て、先天的認識の形式と稱せんが如し、之等は經驗より得來る槪念にあらずして、却て吾人が經驗的事物を認識する根本形式として、既に經驗に先立ちて吾人の心意に存すとなせばなり、然れども通俗には、吾人が「生れながらに有する」「生前に於て與へられたる」或は「遺傳的」等謂はん如き意義に使用す、例へば先天的狂人又は惡人など謂ふは、尚生れながらの狂者惡人と謂はんが如し、尚廣義に先天的と謂へば、其主題の何たるに關せず、總べて其ものの發現又は存在の性質が、先天的なりと主張する見解を謂ふ、更に特殊的には、吾人の知識は、總て後天的經驗より得來たるものなりとなす見解に反し、其智識の一定の要素が、總べての人の心意に、普遍的に本來具備せる或性質に基きて起こるものなりとなす見解を謂ふ。
戰鬪員
(せんとういん)交戰者の一種にして、敵國に對して戰鬪行爲を爲す者を戰鬪員と云ふ、而して步兵なると、騎兵なると、砲兵なると、輜重兵なると、工兵なると、現役に服すると、豫備役に服すると、後備役に服すると、士官たると、下士卒たるとは問ふことなし。(海牙陸戰例規三條)
船燈信號器及救命具試驗檢定監査手續
(せんとうしんがうきおよびきうめいぐしけんけんていかんさてつづき)明治三三年遞信省訓令第五號を以て公布したるものにして、□一試驗官吏が、船燈信號旗、救命具取締規則の規定に依り、船燈、信號器、救命具を試驗したるときは、試驗成蹟報告書を作り、之を遞信大臣に差出すべし、□二管海官廳は、船燈信號器、救命具取締規則の規定により、免許製造人又は免許販賣人より差出したる標本を保管し、同則による申請ありたる場合に於て、之を標準として製造品又は販賣品の檢査を爲すべし、檢査官吏修繕を加へたる船燈、信號器、救命具を檢査し、之に檢印を附す時は、試驗成蹟書の寫若くは檢定明細書の裏面に修繕を加へたる年月、箇所及其方法を詳記し、且つ之に署名捺印すべし、□三檢定官吏が、船燈、信號器、救命具取締規則に規定する所により、申請を受け、船燈、信號器、救命具を檢査し、船燈、信號器救命具試驗檢定規程に適合せずと認めたるときは、之に標印を押捺すべし、□四監査官吏が、船燈、信號器、救命具取締規則の規定により、取消す場合に於ては、其印面へ掛け、消印を押捺すべし、□五管海官廳は一年間に於て、檢定したる船燈、信號器、救命具に關し、法定書式の檢定報告書及手數料收入報告書を作り、翌年一月之を遞信大臣に差出すべし、□六監査官吏が、船燈、信號器、救命具の製造所、販賣所、請賣所又は船舶に臨檢したるときは、法定の書式により、臨檢報告書を作り、之を遞信大臣に差出すべきものとす。
- 英
- Inspection of the signal by lamps of ships and life-saving articles
- 独
- Prüfungsver-fahren der Schifflampen, der Signale und der Errettungsartikel
- 仏
- Progrès de l'inspection et de la surveillance du signal de la lampe et des articles pour sauver la vie
船燈信號器及救命具取締規則
(せんとうしんがうきおよびきうめいぐとりしまりきそく)明治三三年遞信省令第九二號を以て、公布したる命令にして、□一本則に於て船燈と稱するは、電氣力を以て點火する船燈を除く外、海上衝突豫防法に記載する各種の船燈を謂ひ、信號器と稱するは、同法に記載する信號器中、機械製霧中號角、星火を發する榴彈、火箭及び船舶檢査規定に依り、船舶に備付くべき信號焰管を謂ひ、救命具と稱するは、同規定に依り船舶に備附くべき救命浮器、及び救命焰を謂ふ、□二船舶檢査法に揭げたる外國船舶を除く外、法律命令より、船燈、信號器、救命具を船舶に備附くべき者は、本則の規定により、檢印を附したる船燈、信號器、救命具を使用し、且つ其試驗成蹟書の寫又は檢定明細書を船内に保管すべし、□三船燈、信號器、救命具を販賣せんとする者は、遞信省の免許を受くべし、□四以上の免許を受けんとする者は、申請書に仕樣書、圖面及び標本を添付して差出すべし、其標本は製造又は販賣所每に一個、其所在地を管轄する管轄廳每に、一個の割合を以て添付すべし、□五免許製造人又は免許販賣人より、船燈、信號器、救命具を購買せんとする者は、遞信省の認可を受くべし、□六以上の認可を受けんとする者は、下に揭ぐる事項を記載し、署名捺印したる申請書を差出すべし、イ請賣品の名稱、及種類、ロ免許製造又は免許販賣人の住所、氏名若くは名稱、ハ請賣所の位置並に請賣人の住所、□七申請人認可證書の交付を受くるときは、認可證書手數料一圓を納付すべし、其手數料は、相當收入印紙を納付書に貼用して納付すべし、右の規定により納付書に貼用したる收入印紙は、當該官廳に於て消印すべきものとす、但申請人に於て自己の便宜上消印を爲すは妨なし、□八請賣人は、其販賣所に看板を揭ぐべし□九請賣人船燈、信號器、救命具を販賣せんとするときは、法定の試驗成績書の寫を之に添附すべし、□十免許製造又は免許販賣人が、船燈、信號器、救命具を販賣せんとするときは、其製造所又は販賣所の所在を管轄する管海官廳に之を差出し、檢定を申請するを要す、之本令の大要とす。
- 英
- Rules of signal by lamps of ships and life-saving articles
- 独
- Beaufsichtigungsregel der Schifflampe, des Signals und der Erret-tungsartikel
- 仏
- Règles du signal de la lampe et des articles pour sauver la vie
前納
(ぜんなふ)事前に納付するもの之を前納と云ふ、例へば手數料の前納、登錄税の前納と云ふが如し。(郵便規則三一條)
- 英
- Advance
- 独
- Vorschusz
- 仏
- Avance
船難報告
(せんなんはうこく)船舶水難に罹りたる場合に、當該船長が遭難後、其狀況に關し、水難救護の任ある官廳に差出す報告を云ふ。(日本帝國領軍規則七條二項)船難報告者とは、以上の報告を記載したる書面にして、遭難後遲滯なく市町村長に差出すべきもの也、而して下記の事項を詳記して署名捺印するを要す、一船舶の種類及名稱、□二總噸數又は積石數、□三船積港、□四船舶所有者の氏名又は名稱、□五發航港、寄航港、到達港及遭難の場所、□六遭難及救護の顚末、□七船舶の損害、□八死傷者の氏名、□九滅失若くは毀損したる積荷の種類、重量若くは容積、其荷造の種類、個數、記號及傭船者若くは荷造人の氏名、若くは稱號之なり、而して若し船難報告書を記載するに當り、文字を訂正、挿入又は削除したるときは、文字の前後に括弧を附し、船長之に認印し、訂正又は削除したる文字は、之を讀み得べき樣、字體を存すべし、又船長、船難報告書に認證を受けんとするときは、該報告書二通を差出さざるべからず。(水難救護法施行細則一條乃至三條)
- 英
- Report of shipwreck
- 独
- Bericht des Schiffbruches
- 仏
- Rapport du naufrage
船難報告書
- 英
- Report of shipwreck
- 独
- Schiffbruchsanzeige
- 仏
- Rapport du nau-frage
專任
(せんにん)兼任に相對する語にして、他の職務を兼ねざるを云ふ、即ち專ら一の任務に從事すること也、諸種の官制に於て、何官專任何人などあるは此の用例とす。(裁構法八條三項、内閣所屬職員官制一條四號等)
專賣
(せんばい)專賣に二義あり、法律上の觀念、經濟上の觀念是なり、茲には、法律上の觀念に就てのみ論述せんとす、專賣とは、經濟的企業を獨占し、其企業より生ずる利益を獲得するを云ふ、主體の異なるによりて二とす、公專賣、私專賣之なり、□一私專賣、私專賣とは、私人が其主體たるものを云ふ、私人に經濟的企業を獨占するの權利を與へ、他人の同種の經濟的企業を定むを禁止するときは、其私人は、專賣權を有するもの也、此權利は、國家又は公共團體の附與(特許)によりて、私人に屬するものにして、其效力は、消極的に他人の同一の經濟企業を營むを禁止するにあり、而して其目的の異るに從ひ、細別して二とす、イ國民經濟の保護奬勵の爲めにする私專賣、國民經濟の保護奬勵は、近世の國家の主要なる職分の一也、此目的の爲めに國家は種々の行動を爲すものにして、私人に專賣權を附與する事によりても、亦此目的を達するを得るものとす、例へば人の利用に供すべき新なる物品を發明又は發見し、若くは一の物品の新なる利用を發見したるものあるときは、其發見者又は發明者をして、其物品の製造、販賣、使用に依りて利益を獲得することを獨占せしめ、他人の之を爲すを禁止するは、販賣、又は發明を奬勵するが爲めに必要なる處分にして、之あらずんば、或は發見、又は發明の世に出つるもの跡を絶つに至らん、されば發明又は發見者に、其專賣の權制を附與するは、近世各國の法制に普ねく見る所なり、吾國に於ても、特許法を以て工業上の物品及び方法に關し、最先の發明を爲したる者は、特許を受け、其發明の物品の製作、使用、販賣、若くは擴布を獨占するの權利を有するものとせり、其他意匠の專用、著作權、興行權の專用の如き、皆此私專賣に屬す、ロ公益に對する危害を防制し、警察上の目的の爲めにする私專賣、其例甚だ多からず、銃砲火藥類取締法、阿片法に於て之を見る、銃砲火藥類取締法は、内務大臣に於て定めたる定員の火藥商、銃砲商にあらざれば、火藥、銃砲の販賣を爲し得ざる旨を規定し、阿片法も亦地方長官に於て、人員を限り阿片の卸賣を爲さしむる旨を規定す、之等の規定により、定員を定め、人員を限りて指定する行爲官廳の處分は、即ち私人に專賣權を與ふるもの也、然れども其目的は、前の場合の如く、助長奬勵にあるにあらず、銃砲、火藥、阿片の如きは、身體財産に危害を及ぼすの虞ある物品なるを以て、之が販賣を公益上監督し、取締る處なかるべからず、之を取締る爲めには、一般の營業の如く、私人の自由に委するは、不便なるの理由に依り、一定人員に、其專賣權を附與するもの也、即ち此種の專賣は、警察上の目的に出づるものにして、公共の危害を防制せんとする取締の手段也、□二公專賣、國家、公共團體が、專賣の主體たるものを公專賣とす、國家、公共團體は、命令權の主體として、其有する命令權の作用によりて、自ら一定の經濟的企業を經營獨占し、一般私人の同種の經濟的企業を營むことを禁ずることを得、即ち之に依りて公專賣なるものを生ず、私專賣權は、國家の特許なる行爲處分に依て發生す、之に反して公專賣權は、法規に依て生ず、公專賣權は、一般私人の企業を禁止する事によりて消極的に生ず、法規が特に國家、公共團體に對して、積極的に專賣權を與ふるにあらず、公專賣も亦其目的の異るにより、之を三種とす、イ公益に對する危害を制する爲めにする公專賣、國家、公共團體は、公益を保護する警察上の目的の爲めに、一定の經濟企業を私人の專賣と爲すことあるが如く、國家自ら一定の企業を獨占することあり、現行法に於て、種痘用の痘苗は、政府之を專賣するものとするが如きは、此の種に屬す、國家當然の職分に屬する事業は、私人之を行ふことを得ず、而して國家が之に對して、私人より費用、又は代價(手數料)を徵收するときは、之を專賣すべきや、例へば權利の登記、營業許可、意匠の登錄の如き、司法、行政事務は、國家の權内に屬するものにして、之が爲め費用を支拂はしめて、國家之を行ふも專賣とは云はず、其性質も亦然り、或は行政上の專賣と稱するものあるも誤れること勿論也、手數料は、之を強制して徵收する所のものなり、國家と私人とが相互に提供するの點に於ては、則ち賣買に似たりと雖も、強制して徵收するの點に於ては之と異り、却て税と同じ、いふ迄もなく專賣權を國家の手に收むるは、權力の發動なりと雖も、專賣其のものは賣買なり、任意による財産權の得喪なり、痘苗の賣下の如きは、其目的は行政の理想を達するにあり、然れども、其形式が賣買なるが故に、專賣の一なり、ロ國民經濟上の利益を保護奬勵するが爲めにする公專賣、凡ての企業を私人の自由競爭に放任するときは、其弊害を生ずるは勿論也、從つて之を防制し、國民經濟上の利益を保護奬勵せんとするには、國家公共團體獨占の事業と爲すを以て、適當なりとすることあり、貨幣の鑄造發行は、政府に專ら屬するの事業なり、兌換銀行券條例は、紙幣を發行するに、日本銀行をして獨占せしめたり、一般金融の具たる通貨をして、通貨たる效用を有せしめんこと、國家が其發行を獨占することを要するは勿論也、又郵便事業をして、政府の獨占に歸すことを規定し、電信法は電信、電話事業の政府に專屬することを規定し、近時鐵道事業の大部分も、亦國家の獨占に歸せしむ、元來此等交通に關する事業は、國民經濟上重大なる關係を有すると共に、其の性質上より見るも、獨占的のものなるが故に、之を自由競爭に委すること能はず、のみならず、若し然るときは、從業者或は不當に高額の賃金を要求し、一般經濟上に及ぼす影響尠少なりとせず、又巨額の資本を投じて、偏僻の地に於ける交通を便せんとするが如きは、公益を主とする國家の獨り爲し能ふ所なり、其他社會政策上の目的、管理の統一を得る目的の爲め、之等の事業を國家又は、公共團體の獨占と爲すは、近時の趨勢なりとす、ハ國家、又は公共團體が收入を得るが爲めにする公專賣、即ち學者の所謂財政上の專賣なりとす、專賣による收入租税にあらざることは、強制して徵收せらるることなきに依て明白也、國家、公共團體が專賣權を得るには、其權力發動に基くことは、前に一言したり、然れど。▲に私人の企業經營を禁止するに止まり、▲入を強制するものにあらず、假令國家の專賣と雖も、收入を獲得するは、私法上の收入として也、其形式は飽く迄私法上の取引なり、賣買なり、毫も命令強制の痕跡なし、專賣と雖も、其性質は民法上の賣買也、代價は強制せらるるものにあらず、從つて租税にあらず、殊に專賣の收入の租税にあらざることは、租税は無償なるも、專賣は有償なるの點に於ても明白也、然れども有償的の手數料も亦異なる、蓋し前述の如く手數料は、強制的に徵收せらるるも、專賣の收入は然らざれば也、然り專賣は租税にあらず、然れども專賣の假面を被り、租税を徵收せんとする事なきにあらず、之學者の所謂被蔽なりとす、其意味は、專賣の實質は租税なり、然れども或一定の貨物に課税する代りに、自由なる代價の仕拂を爲さしめ、其實其貨物に、消賣税を課すると同一の效果を收めんとするもの也、即ち表面上租税と云はず、強制徵收せず、然も之と同一效果を奏せんとするものなれば、爾か云ふものとす、國家、公共團體が、收入を得る爲に爲す所の公專賣は、實に財政々策上此義に於てす、其貨物に課して、收人を得るに非ず、之を專賣として、更に多くの收入を得んとするもの也、即ち多額の收入を得る方策として、租税たる名稱を附せず、之を被蔽して、而して以て租税以上の收入を得んとするもの也、或は曰く、專賣は間接税を變じて、直接税とするものなりと、形容語としては則ち當れり、消費税に於ける納税者は其貨物の製造人、販賣人なるに、之を專賣と爲さんか、需要者直に租税を納むると同しき内容を爲すに至れば也、されどこは實際上、又は政治上に於てのみ爾か云ふべく、法律上の見地に於ては、專賣は常に買賣の一種にして、其の目的、又は内容こそ租税徵收の代用方法なれ、形式は絶對に賣買なりと云はざるべからず。(專賣局官制一條)
- 英
- Monopoly
- 独
- Monopol
- 仏
- Monopole
專賣局
(せいばいきよく)東京に本局を設け、各地方に支局を置かるる一の官署にして、大藏大臣の管理に屬し、目下は葉煙草耕作、檢査、査定、輸入、輸出、保管、賣渡、煙草營業及專賣取締に關する事務を掌るを目的とするもの也。(專賣局官制一條)
- 英
- Monopoly Rureau
- 独
- Mono-polbureau
- 仏
- Bureau de monopole
專賣局官制
(せんばいきよくくわんせい)明治三五年勅令第二三七號を以て、公布せられたるものにして、□一專賣局は、大藏大臣の管理に屬し、葉煙草の耕作、檢査、査定、收納、輸入、輸出、保管、賣渡、煙草の營業及び專賣取締に關する事務を掌る、□二專賣局は之を、東京に置く、各地方に專賣支局を置き、專賣局の事務を分掌せしむ、□三專賣局に下の職員を置く、イ局長一人、勅任、ロ書記官專任二人、奏任、ハ事務官專任二十三人、奏任、ニ技師專任四人、ホ事務官補十三人、奏任、ヘ屬千二百二十九人、判任、ト技手專任二百五十三人、□四局長は大藏大臣の指揮監督を受け、局中一切の事務を掌理す、□五書記官は局長の指揮を受け、局務を掌る、□六事務官は局長の指揮を受け、專賣の監督に關する事務又は專賣支局の事務を掌る、□七技師は局長の指揮を受け、葉煙草の鑑定、保存、耕作及煙草の試驗に關する事務を掌る、□八各專賣支局に、支局長一人を置く、事務官を以て之に充つ、□九專賣支局長は、局長の指揮を受け、支局一切の事務を掌理す、□十事務官補は、專賣支局に分屬し、支局長の指揮を受け、局務を掌る、十一屬は上官の指揮を受け、庶務に從事す、十二技手は上官の指揮を受け、葉煙草の鑑定、保存、耕作及煙草の試驗又は營繕工事に從事す、十三大藏大臣は必要と認むる地に、專賣支局出張所を設くることを得、十四專賣支局の名稱、位置及管轄區域は別表による、十五本令は、明治三五年十一月五日より之を施行す、及其別表を以て專賣支局の名稱位置等を定めたるものなり。
專賣局作業會計規則
(せんばいきよくさげふくわいけいきそく)明治三三年勅令第二〇號を以て公布せられたる勅令にして、□一專賣に係る歳入歳出の豫定計算書は、所管大臣之を調製し、前年度八月三十一日迄に、各省經費要求書と共に、大藏大臣に送付すべし、□二所管大臣は、其年三月三十一日に終りたる會計年度の受拂勘定表及固定資本價格表を調製し、歳入歳出の豫定計算書に添付すべし、□三歳入歳出の決定計算書は、所管大臣之を調製し、翌年度十一月三十日迄に之を大藏大臣に送付すべし、專賣局長又は專賣支局長は、會計檢査院に證明の爲め、每年度歳入徵收額計算書を調製し、證憑書類を添へ、其歳入事務管理廳に送付し、歳入事務管理廳は之を會計檢査院に送付すべし、專賣局又は專賣支局長は、會計檢査院に證明の爲め、每月支出の計算書を調製し、證憑書類を添へ、其所管大臣に送付し、所管大臣は之を會計檢査院に送付すべし、計算書は特に所管大臣より委任を受けたる官吏より、直に會計檢査院に送付せしむる事を得、□四歳入歳出の豫算は、決定の後、所管大臣之を專賣局長及專賣支局長に命じて執行せしむ、□五專賣局長又は專賣支局長は、歳出を支出する爲め、倉庫に向て仕拂請求書を發すべし、□六仕拂請求書を發する官吏は、葉煙草の賠償及購買費、外國に於て支拂を爲す經費、及支部局の經費に限り、專賣局又は專賣支局の出納官吏に、現金の前渡を爲す事を得、□七金庫出納役は、每月支拂請求書、受領濟報告書を調製し、其翌月中に大藏省に送付すべし、□八每年度の終に於て現在する葉煙草にして、毀損又は變質により、其價格減少する時は、當時の價格又は購買價格に比準し改定すべし、□九專賣局は、日記簿、原簿、補助簿を備へ、其事業に關する一切の計算を登記すべし、□十歳入を徵收する官吏は、徵收簿を備へ、歳入の種類を區分し、確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額を登記すべし、十一專賣局は歳入簿を備へ、歳入の種類を區分し、歳入の豫算額、確定額、收入濟額、不納缺損額、收入未濟額を登記すべし、十二金庫出納役は、支出簿を備へ、歳出の豫算額、仕拂請求書受領濟額を登記すべし、十三此規則に規定せざるものは、凡て會計規則の各條項を適用す。
- 英
- Rule of account of construction of monopoly bureau
- 独
- Rechnungsregel von der Bauarbeit des Monopolbureaus
- 仏
- Règles des comptes du bureau de monopole
專賣局職員特別任用令
(ぜんばいきよくしよくいんとくべつにんようれい)明治三五年勅令第二四七號を以て公布せられたる命令にして、□一滿三年以上高等行政官として、葉煙草專賣の事務に從事し、現に其職に在る者、及在りたる者は、當分の内、文官高等試驗委員の銓衡を經て、專賣局事務官に任用することを得、□二下に揭ぐるものは、當分の内、文官高等試驗委員の銓衡を經て、專賣局事務官補に任用することを得、イ三年以上葉煙草專賣の事務に從事し、判任官四級俸以上の俸給を受け、現に其職に在る者、ロ帝國大學分科大學を卒業したる者、□三葉煙草專賣所屬、專賣局監視、税務屬、警部、税關監視、税關監吏の職に在る者及び在りたる者は、專賣局屬に任用することを得、□四葉煙草專賣所の雇にして、明治三二年勅令第一七〇號專賣局官制施行の際、專賣局雇となりたる者は、文官任用令所定の勤續者とす、但し明治三〇年勅令第一七九號に依れる者は、尚其前勤續年數を通算す、□五本令は、明治三五年一一月五日より之を施行す。
- 英
- Ordinance of special appointment of the officers of the bureau of monopoly
- 独
- Specialanstell-ungsordnung der Monopolbeamten
- 仏
- Ordonnance de la nomination spéciales des officiers du bureau de monopole
專賣權
(せんばいけん)專賣を爲すの權利、即ち法律上一定の經濟的企業に就き、他人の自由競爭を、禁止又は制限し、其企業より生ずる利益を收むるの權利を云ふ、而して國家が之を有することあり、例へば煙草專賣の如し、私人が之を有することあり、例へば私人が專賣特許權を有するが如し。(專賣の部參照)
- 英
- Monopoly
- 独
- Monopol
- 仏
- Monopole
先買權
(せんばいけん)他人に先んじて、物、若くは權利を買ひ取るの特權を云ふ、例へば遺族相續に於ける共有者の一人が、其持分を讓渡する場合に、他の共有者が之を先買する權利の如き、相續人が限定承認をなし、又は財産分離の請求ありたるが爲めに、相續財産が賣却せらるべき場合に、相當の代價を呈供して、相續財産に屬する或權利を取得するを得るが如き之なり、茲に公用徵收の場合に於ける先買權に就きて、參考の爲め法理の一般を述べん、案ずるに、公用徵收の目的となりたる土地にして、不用となりたる場合に、其土地を買收するの權利は、公用徵收開始後、恊議によりて移轉したる土地に對しては、之を行ふ事を得ず、されば先買權を有する者は、公用徵用の目的物となりたる土地の所有者又は其相續人のみにして、然も徵收せられたる土地が、不要に歸したるときは、權利者は常に先買權を有するものにあらず、不要となりたる土地を、更に公用に供するの必要生じたるときは、最早先買權を行ふことを得ざる場合あり、即ち軍機に關する事項に就ては、主務大臣の決定により、其他の事業に就ては、内閣の認定により、他の公用に供することを定められたるときは、先買權を行ふを得ず、而して先買權を行使する場合には、其當初に受取りたる賠償金額と、同一の金額を支拂ふにより、他人に先つて其土地を買得するを得、從て年數を經過するに從ひ、土地の騰貴と共に、先買權者は、益々不當の利益を受くることあるが故に、其權利の行使時期を定めて二十箇年とす、故に二十箇年を經過するときは、其土地が假令不要に歸し、他の公用に供せらるる場合なしと雖も、絶對に其權利消滅す、且つ此先買權の行使時期として定められたる二十箇年は、時效にあらざるが故に、中斷、中止に罹ることなし、而して茲に多少疑あるは、此先買權は公權なるや、之なり、若し私權なりとせば、擔保に供することを得べく、差押を爲し得べし、然れども、土地收用法なる公法により生じたる公權なりと解するを以て、妥當なるものとすべきに似たり。(民一〇〇九、一〇三四條等)
- 英
- Right of monopoly
- 独
- Vor-kaufsrecht
- 仏
- Droit de monopole
專賣品
(せんばいひん)專賣の目的物を專賣品と云ふ、例へば專賣特許に依り販賣する物品の如し、今日に於ては、食鹽も煙草も政府の專賣品也、要するに普通の商品と異なり、販賣權を制限せられたる場合に、其販賣權を有する者が、販賣する物品を指して云ふに外ならず、而して之を大別して二とす、公專賣品、私專賣品即ち之也。(關税定率法五條一二號)
- 英
- Monopolized things
- 独
- Mo-nopolsachen
- 仏
- Choses monopolisées
船舶
(せんぱく)船舶とは、廣義に於ては水上航行の用に供する建設物なり、故にイ浚渫船の如き、自力に依らず、挽船の力によりて進行するものにありても、普通觀念に從て船舶たることを妨げず、但し我船舶法施行細則に依れは、船舶の種類は、汽船及帆船の二種とし、浚渫船は、推進器を有せざれば、船舶と看做さず、ロ凹形的狀態を具へざる平面板、又は筏等は之を船舶と云ふを得ず、ハ船舶たるには、必ず航行の用に供せざるべからざる故に、浮標、浮橋、燈臺船、沈重箱等は船舶にあらず、而して此を種々に別つ、□一其使用の目的によりて區別すれば、營利の目的に供するものと然らざるもの、軍艦、軍用船、遞信省にて海底電線架設、其他類似の目的に使用する幾多の船舶、學術研究若くは北極探險の目的に使用する船舶、航海術練習船、娯遊船等は、營利を目的とせざる船舶也、營利を目的とする船舶は、商行爲を目的とすると、然らざるとに別つ、後者の主なるものは、漁獵船とす、□二海商法の適用又は準用を受くる船舶と然らざるもの、海商法の適用を受くる船舶には、商行爲を爲すの目的を以て、航海の用に供するものの中、端舟其他櫓櫂のみを以て運轉し、又は主として櫓櫂を以て運轉する船舶を除く、海商法の準用を受くる船舶とは、航海の用に供する船舶の中、官廳又は公署の所有に屬する船舶を除く、□三其國籍に依て之を區別せば、日本船舶と外國船舶、□四製造地の如何により、外國製造の船舶と内地製造の船舶、□五構造の如何により、西洋形船舶と日本形船舶、□六其運轉力に因りて汽船、帆船、櫓櫂船の三種と爲すことを得。(商五三七條、船舶法附則三五條)
- 英
- Ship
- 独
- Schiff
- 仏
- Navire
船舶運送業者
(せんぱくうんそうげふしや)船舶によりて、運送營業を爲す者を云ふ、而して船主なると、賃借人たるとは之を問はず、されど傭船者は、船舶運送業者に非ず、所謂傭船者とは、運送を爲さしむる爲めに、船舶の全部又は一部を借り入るる者にして、理論上は一種の荷送人に屬するもの也。(鐵道船舶郵便法一條)
- 英
- Ship's transit-trader
- 独
- Frachtfuhrmann
- 仏
- Transporteur des navires
船舶管理人
(せんぱくくわんりにん)船舶共有者に代りて、特定の制限の外、凡て船舶の利用に關する一切の裁判上又は裁判外の行爲を爲す權限を有する者は、所謂船舶管理人也、而して其制限は、イ船舶の讓渡、委付若しくは賃貸を爲し、又は之を抵當と爲す事、ロ船舶を保險に付すること、ハ新に航海を爲すこと、ニ船舶の大修繕を爲すこと、ホ借財を爲すこと之なり、蓋し以上の行爲たる、極めて重要にして、船舶共有者に取りては、利害の關係を有すること最も大なれば也、故に之を船舶管理人の權限に屬せしむるは、危險なりと看て、此等の行爲を除外し、其れ以外の船舶の利用に關する一切の行爲を爲し得るものと爲したる所以とす、而して以上の外、船舶管理人の代理權に加へたる制限は、之を以て善意の第三者に對抗すること能はず、又管理人の選任及其代理權の消滅は、之を登記せざるべからざるものとす。(商五五二條乃至五五四條)
- 英
- Ship's husband
- 独
- Schiffs-verwalter
- 仏
- Propriétaire du navire
船舶原簿
(せんぱくげんぼ)船舶の國籍を證明する爲めに、管海官廳に設備する所の帳簿を船舶原簿と云ふ。(船舶法施行細則一七條)
- 英
- Ship's book
- 独
- Schiffsbuch
- 仏
- Livre du navire
船舶檢疫手續
(せんぱくけんえきてつづき)明治三二年内務省訓令第二六號を以て公布せられたるものにして、□一檢疫を施行する港に向て來港する船舶あるときは、萬國船舶信號を以て著船及見張所に接近せしめ、一時停止を命し、船長又は乘組員に就き、下の事項を訊問すべし、イ發航地名、ロ寄航地名、ハ現に傳染病患者、死者の有無、ニ航海中及寄港中、傳染病患者、死者の有無、ホ傳染病ありたる船舶又は傳染病流行地より來りたる船舶と交通の有無、内國沿海航行の船舶なる事明暸なるものは、右停止尋問の限にあらず、□二海上不穩にして、來港の船舶に至る能はざるときは、萬國船舶信號を以て以上の尋問を爲し、其船舶若し檢査を要するものなるときは、港外碇泊を命じ、風浪鎭靜の後、檢査を行ふべし、港外停船の命令に從はず、又は信號に應ぜずして進航する船舶ある時は、回航せしめ、尋問若くは檢査を行ふべし、日沒後來航の船舶は、郵便船又は火急の場合を除くの外、港外碇泊を命じ、翌朝日出後尋問檢査を行ふべし、□三以上の船舶にして、海外諸港及臺灣より來れる者は、船長若くは乘組員に、所定の明告書用紙を交付し、各項に記入せしめ、之と同時に、船客乘組員の全部、若くは一部を甲板に集合せしむべき事を命ずべし、明告書を領收したる後、總員及船室の檢査を行ひ、異狀なしと認むる時は、許可證を船長若は其代理者に附與すべし、□四上記三の船舶に對しては、下の處置を爲すべし、イ現に傳染病患者、死者ありたるもの、及航海中又は寄航中傳染病患者、死者ありたるものは、消毒法を行ひ、痘瘡、猩紅〓の外は、停船を命ずべし、ロ傳染病流行地を發し、又は其地を經過し、若くは傳染病に汚染したる船舶と交通し、又は其疑ある船舶にして必要と認むるときは、消毒法を行ひ、尚痘瘡、猩紅〓の外、停船を命ずべし、尚以上の場合に於ては、税關及郵便局に通報すべし、□五ペスト虎列刺、黃〓、若くは其疑ある患者、死者に接觸したるか、又は其疑ある船客及乘組員は、檢疫所に移轉せしむべし、□六船客及び乘組員の停留中は、時々巡回し、其健全を視察し、必要と認むるときは、健康診斷を施行すべきものとす。
船舶健康證書
(せんぱくけんかうしやうしよ)船舶の健康なることを證明したる證書を云ふ、例へば我船舶が、一港より他の一港に航行せんとする場合に、其船舶が不健康地即檢疫を要すべき病毒の流行地に立寄らざりしこと、又は檢疫を要すべき病毒を感染せる者なきこと等の如何に依て、其船舶が不健康にあらざる旨を證明し、領事若しくは當該官廳より交付を受くるもの也。(日本帝國領事規則一三條)
- 英
- Ship's bill of health
- 独
- Schiffswohlseinsschein
- 仏
- Note de la santé du navire
船舶檢査規定
(せんぱくけんさきてい)明治三三年遞信省令第八八號を以て、公布せられたる命令にして、□一定期檢査に於ては、船體、機關及び屬具、現狀、旅容室及船員用室、旅客及船員に關する設備を檢査すべし、□二特別檢査に於ては、以上に揭ぐるものの外、船體、機關及び屬具の構造並に定期檢査に於て檢査せざる部分の現狀を檢査すべし、□三檢査官吏船舶の特別檢査を執行したるときは、下の種別に從ひ、該船舶の資格を定むべし、即ちイ第一級船、ロ第二級船ハ第三級船、ニ第四級船之也、檢査官吏に於て、定期檢査若くは臨時檢査執行の際、船舶の資格に變更を生じたりと認むるときは、更に資格を定むべし、□四船體の要部が鐵鋼船檢査又は本船檢査規定に合格する船舶に於ては、左の標準に依り該船舶の資格を定むべし。
(1)第一級船
汽船、上甲板下噸數
五百噸以上
最強速力
八節以上
帆船、上甲板下噸數
五十噸以上
(2)第二級船
汽船、上甲板下噸數
百噸以上
最強速力
八節以上
帆船、上甲板下噸數
二十噸以上
(3)第三級船
汽船、上甲板下噸數
二十噸以上
最強速力
六節以上
帆船、上甲板下噸數
無制限
(4)第四級船
汽船、上甲板下噸數
同
最強速力
同
明治三五年一月一日以前に製造したるものにして、船體要部の或部分が、鐵鋼船檢査規程又は本船檢査規定に合格せざる船舶に於ては、檢査官吏が航行に差支なしと認むるときは、檢査官吏の相當と認むる資格を定むべし、木鐵交造船、及び石數を以て積量を表示する船舶に於ては、第一項の標準に準じ、檢査官吏の相當と認むる資格を定むべし、甲板を有せず又は項部を水密に爲し得ざる船舶に於ては、第一級船又は第二級船となすとこを得ず、但し石數にて、積量を表示する船舶に於ては、此規定施行後五年間は此限にあらず。
- 英
- Rule of ship's inspection
- 独
- Schiffshesichtigungsregel
- 仏
- Règle de l'inspection du navire
船舶檢査施行細則
(せんぱくけんさしかうさいそく)明治三〇年遞信省令第六號を以て、公布せられたる命令にして、□一船舶の檢査を分ちて、下の四種とす、イ特別檢査、ロ定期檢査、ハ臨時檢査、ニ移民船檢査、□二初めて特別檢査を受くべき場合は、イ日本船舶が始めて航行の用に供せんとするとき、ロ船舶檢査法に揭げたる外國船舶を航路に使用せんとするとき、ハ船舶檢査法の船舶が、同法の規定に因り、檢査を受くべきものとなりたる時、船舶檢査法により申請ありたるときは、同上の場合に於ける特別檢査の一部を行ふ、□五進水後一箇年を經過せざる船舶にして、管海官廳に於て、特別檢査を行ふの必要なしと認むるものは、進水後一箇年に達する迄、特別檢査を猶豫することを得、船舶檢査法に揭げたる外國船舶にして、前項に該當せざるものと雖も、其所屬國政府又は相當の技能を有する者の、特別檢査を行ひたる事を證する書類を受有するときは、管海官廳に於て、特に必要なりと認むる場合に限り、本船借入の日より起算し、六箇月に達する迄特別檢査を猶豫する事を得、□六第二回以後の特別檢査は、前回特別檢査を受けたる時より起算し、二年乃至六年の範圍に於て、船舶檢査法の規定により、檢査官吏の定めたる時期に之を行ふ、□七特別檢査は以上の規定により、檢査官吏に於て定めたる期間内と雖も、船舶所有者、船舶管理人又は船舶借入人より申請あるときは、管海官廳に於て相當の事由ありと認むる場合に限り、其期間を繰上げ、之を行ふことを得、□八定期檢査は、船舶の航行期間を定めんとするときに行ふ、上記七の場合は、船舶が其航行期間内に、定期檢査を受けんとする場合に準用す、定期檢査の繰上げを認許したるときは、船舶の航行期間は、其滿了前と雖も、滿了したるものと看做す、臨時檢査を行ふべき場合は、イ船舶檢査法の規定により、檢査官吏に於て檢査を爲すの必要ありと認めたるとき、ロ船舶檢査法により、申請又は屆出ありたる場合に於て、管海官廳が檢査を爲すの必要ありと認めたるとき之れなり。
船舶檢査法
(せんぱくけんさはふ)明治二八年法律第六七號を以て公布せられたるものにして、□一日本船舶は、下に記載するものを除くの外、此法律の規程に依り檢査を受くべし、イ總噸數二〇噸未滿又は積石二〇〇噸未滿の帆船、ロ端舟其他櫓櫂のみを以て運轉し、又は主として櫓櫂を以て運轉する舟、ハ倉庫船、繫留船、ニ平水航略のみを航行する帆船、□二船舶の檢査は、船舶を日本船舶として、初めて航行の用に供するとき、其航行期間滿了のとき、及び航行期間内特に必要あるとき之を行ふ、日本の國籍を取得する目的を以て、日本に於て製造する船舶の所有者は、其製造中と雖も、一部の檢査を申請することを得、□三船舶の航行期間は、汽船に在ては三箇月以上一箇年以内、帆船に在ては六箇月以上三箇年以内とす、□四船舶の檢査は、其所在地を管轄する管海官廳之を行ふ、遞信大臣は必要と認むる場合に限り、以上の官廳に依らず、特に檢査官吏を指定して、船舶の檢査を行はしむる事を得、□五檢査官吏船舶を檢査し、遞信大臣の定むる檢査規程に適合するものと認むるときは、本船の航路定限、旅客定員、汽壓制限及航行期間を定め、管轄官廳より船舶檢査證書を交付すべし、□六檢査を受けたる船舶の所有者、又は船長に於て、船舶檢査證書の受有前に、船舶を航行の用に供せんとするときは、檢査官吏は、其請求に依り、假證書を交付して、之を許可する事を得、□七檢査官吏は何時にても船舶に臨視し、若し特に檢査を爲す必要ありと認むるときは、其航行を停止する事を得、□八船舶の檢査に對し不服ある者は、其事由を具し、遞信大臣に再檢査を申請する事を得、再檢査を申請したる者は、其決定前船舶の原狀を變更する事を得ず、□九遞信大臣は特に定むる場合を除く外、船舶檢査證書若くは假證書を受有せずして、船舶を航行の用に供し、又は船舶檢査證書若くは假證書に記載する船舶の航路定限、航行期間若くは汽壓制限を超えて航行し、又は檢査官吏の臨視を拒み、若くは航行停止の命に違背し、又は屬具の整備を爲さずして、船舶を航行の用に供するときは、船長を三十圓以上三百圓以下の罰金に處す、詐僞の所爲を以て、船舶檢査證書若くは假證書を受けたる者の罰、亦同じとす、船舶檢査證書、若くは假證書に、旅客定員の記載なき船舶に、族客を搭載し、又は該證書に、記載したる旅客定員を超て、旅客を搭載したるときは、船長を十圓以上百圓以下の罰金に處す、□十前上の罪を犯したる者には、刑法の數罪俱發の例を用ひず、而して以上の罰則は、商事會社に在ては、其所爲を爲したる事務擔當の任ある社員、取締役若くは使用人に之を適用す、又船長に代て其職務を行ふ者にも之を適用す、十一船舶の航路定限、航行期間、旅客定員及汽壓制限に關する規程、其他此の法律の施行に必要なる細則は、遞信大臣之を定むるものとす。
船舶國籍證書
(せんぱくこくせきしやうしよ)船舶の國籍を表彰する證書を船舶國籍證書云ふ、詳言すれば、日本船舶の所有者が、船舶法の規定に基き、船舶原簿に登記を爲して、管海官廳より交附を受くるものにて、船舶の國籍が日本に屬することを證明するものを云ふ、原則として、船舶國籍證書又は假船舶國籍證書を得たる後にあらざれば、日本の國旗を揭場することを得す。(船舶法一一條)
- 英
- Ship's certificate of nationality
- 独
- Schiffscertifikat von der Nationalität
- 仏
- Certificat de la nation-alité du navire
船舶債權者
(せんぱくさいけんしや)船舶に關して債權を有する者、例へば水先料、挽船料、艤裝、海損に關する債權、製造費等の債權を有する者を船舶債權者と云ふ、而して船舶債權者は、船舶、其運賃等に對して諸種の特權を有するものとす。(商六八〇、六八九條)
- 英
- Ship's creditor
- 独
- Schifls-gläubiger
- 仏
- Créancier du navire
船舶職員
(せんぱくしよくいん)海技免狀を有する者を船舶職員と云ふ、即ち甲種船長、甲種一等運轉士、甲種二等運轉士、乙種船長、乙種一等運轉士、乙種二等運轉士、丙種船長、丙種運轉士、機關長、一等機關士、二等機關士、三等機關士の十二種也。(船舶職員法二條)
- 英
- Mariner
- 独
- Seemann
- 仏
- Marin
船舶職員法
(せんぱくしよくいんはふ)明治二九年法律第六八號を以て、公布せられたるものにして、□一日本船舶は、此法律の規定に依り、船舶職員を乘組ましむべし、船舶職員と稱するは、船長、一等運轉士、二等運轉士、機關長及一等機關士を云ふ、□二海技免狀を有する者にあらされば船舶職員たる事を得ず、□三海技免狀は、下の十二種とす、イ甲種船長、ロ甲種一等運轉士、ハ甲種二等運轉士、ニ乙種船長、ホ乙種一等運轉士、ヘ乙種二等運轉士、ト丙種船長、チ丙種運轉士、リ機關長、ヌ一等機關士、ル二等機關士、ヲ三等機關士、□四各船舶に乘組ましむべき、船舶職員の定員及其免狀の種類は、別に定むる所に依るもの也、□五海技免狀は、遞信大臣の定むる試驗規程に依り、試驗を受け合格し、且つ海員名簿に登錄を受けたる者に授與す、海軍艦船艇に乘組み、運航又は機關運轉に從事し、又は商船學校全科卒業證書を有し、遞信大臣に於て海員試驗規程に合格すと認むる者には、試驗を用ひずして相當の免狀を授與する事を得、□六下に記載する事項に該る者は、海員試驗を受くることを得ず、又船舶職員たることを得ず、イ公權を剝奪せられ復權せざる者、及公權停止中の者、ロ家資分散又は破産の宣告を受け復權せざる者、及身代限りの處分を受け債務の辨償を終へざる者、ハ瘋癲白痴者若くは身體不具にして、執職に不適當なる者、ニ海技免狀の行使を禁止せられ及其行使停止中の者、□七高等の免狀は、下等の免狀に代用することを得、甲種船長の免狀は、他の船長及運轉士の免狀に對し、甲種一等運轉士の免狀は、他の運轉士の免狀に對し、甲種二等運轉士の免狀は、乙種各運轉士及丙種各運轉士の免狀に對し、乙種船長の免狀は、乙種各運轉士の免狀に對し、乙種一等運轉士の免狀は、乙種二等運轉士の免狀に對し、丙種船長の免狀は、丙種運轉士の免狀に對し、各高等の免狀とす、機關長の免狀は、一等機關士以下の免狀に對し、一等機關士の免狀は、二等機關士以下の免狀に對し、二等機關土の免狀は、三等機關士の免狀に對し、各高等の免狀とす、□八下の項に該る者は、二十圓以上二百五十圓以下の罰金に處す、イ相當の船舶職員を乘組ましめざる者、ロ相當の海技免狀を受有せずして船舶職員と爲りたる者、ハ法定の缺格者にして、船舶職員と爲りたる者、ニ海技免狀を貸付し之を行使せしめたる者、ホ海技免狀行使の假停止若くは差押を受け、其職務を執りたる者、□九上記の罪を犯したる者には、刑法の數罪俱發の例を用ひず。
- 英
- Law of mariner
- 独
- See-mannsgesetz
- 仏
- Loi du marin
船舶積量測度規則
(ぜんぱくせきりやうそくどきそく)明治一七年太政官第一〇號布告にして、□一凡そ船舶(海軍艦船を除く)の積量は、此規則により測度するものとす、□二船舶の積量を測度するは、凡て曲尺を用ひ、尺位を以て單位とし、其尺度は分位に止べむし、□三西洋形船の積量は、百立方尺を以て一噸とし、日本形船の積量は、十立方尺を以て一石とす、□四西洋形船にして、甲板一層のものは、其甲板を以て量噸甲板とし、二層のものは、其上層を以て量噸甲板とし、三層以上のものは、其最下より第二層にあるものを以て量噸甲板とす、□五西洋形船にして、甲板一層若くは二層のものは、量噸甲板下の噸數に、量噸甲板上諸室の噸數を合せて、之を該船の總噸數とし、又甲板三層以上のものは、量噸甲板下の噸數に、量噸甲板上各甲板間の噸數及び最上甲板上諸室の噸數を合せて、之を該船の總噸數とす、甲板なきものは、舷端以下の噸數を以て該船の總噸數とし、又舷端以上に船室あれば、其噸數を合せて之を該船の總噸數とす、□六汽船の登簿噸數は、總噸數より乘組人常用室及び機關室の噸數▲除きたるものとす、帆船の登簿噸數は、總噸數より乘組人常用室の噸數を除きたるものとす、□七乘組人常用室として除くべき噸數は、總噸數の百分の六とす、□八機關室として除くべき噸數の割合は左の如し、外車汽船機關室の噸數、該船總噸數の百分の二十より三十までは、總噸數の百分の三七、暗車汽船機關室の噸數は、該船總噸數の百分の一三より二十までは、總噸數の百分の三二、機關室の廣狹により前上の割合に適せざるものは、該室の噸數に外車汽船なれば其二分の一を加へ、暗車汽船なれば其四分の三を加へたるものとす、□九日本形回漕船は、船渠上下船艙の石數を以て該船の積石とし、又其構造回漕船と異なるものは、舷端以下の石數を以て、該船の積石とす、□十船舶の噸數及び積石測度の方法は、布達を以て別に之を定むべきものなり。
船舶積量測度方法
(せんぱくせきりやうそくどはうはふ)一西洋形船の噸數を測定するは、左の方法に據るべし、イ量噸甲板上にて、船首の内側より船尾の内側に至る長を測り、之より甲板の厚に準ひ、船首船尾の傾度に對する甲板の長及終尾、船渠の矢(船渠の弧形をなす高)の三分一下にて、船尾の傾度に對する甲板の長を減して、量噸甲板下の長とし、之を左の等級に準ひ等分すべし、第一級量噸甲板下の長五十尺迄の船は四個、第二級同五十尺以上百二十尺迄の船は六個、第三級同百二十尺以上百八十尺迄の船は入個、第四級同百八十尺以上二百二十五尺迄の船は十個、第五級同二百二十五尺以上の船は十二個、量噸甲板下の長を等分したる後、其各分長點に於て、該甲板の下面より船底内板の上面に至る深を測り、之より船渠の矢三分の一を滅じ、之を各分長點に於ける量噸甲板下の深とす、而して中央分長點に於ける、深十六尺迄は四個、十六尺以上なるときは六個に、各深を等分すべし、各深を等分したる後、其各分深點及上下兩端に於て、艙内の幅を測定すべし、各分深點に於て、幅を測りたる後、之を上端より數へ、偶數に當る幅は四倍し、奇數に當る幅(上下兩端を除く)は二倍し、此合數に上下兩端の幅を加へ、之に分深點の間隔三分の一を乘じ、其得數を各分長點に於ける橫截面積とす、各分長點の橫截面積を測りたる後、之を船首より數へ、偶數に當る面積は四倍し、奇數に當る面積(船首船尾の兩端を除く)は二倍し、此合數に上下兩端の幅を加へ、之に分深點の間隔三分の一を乘じ、其得數を各分長點に於ける橫截面積とす、各分長點の橫截面積を測りたる後、之を船首より數へ、偶數に當る面積は四倍し、奇數に當る面積(船首、船尾の兩端を除く)は二倍し、此の合數に船首船尾の面積(若しあれば)を加へ、之に分長點の間隔三分の一を乘じて、其得數を百にて除し、之を量噸甲板下の噸數とす、ロ最上甲板上諸室の噸數を測定するには、該室内の平均の長と高を測り、其高の中央に於て、該室の前後と中央の幅を測り、而して中央の幅の四倍に前後の幅を加へ、之に平均の長の六分の一を乘じ、又之に平均の高を乘じて其得數を百にて除すべし、ハ甲板三層以上の船に於て、量噸甲板上各甲板間の噸數を測定するには、甲板間の平均の高を測り、其高の中央に於て、船首の内側より船尾の内側に至る長を測りて、之を量噸甲板下の長と同一に等分し、而して高の中央に於て、其各分長點及前後兩端の幅を測り、之を船首より數へ、偶數に至る幅は四倍し、奇數に當る幅(船首船尾の兩端を除く)は二倍し、此合數に船首及船尾の幅(若しあれば)を加へ、之に分長點の間隔三分の一を乘じ、又之に平均の高を乘じて其得數を百にて除すべし、□二機關室の噸數を測定するは、左の方法に依る、イ機關室内の平均の長、幅、深を測り、之を相乘じて其得點を百にて除し、之を機關室の噸數とす、ロ機關室の上端に、機關運轉又は空氣流通等の爲め圍ひたる場所あるときは、其長、幅、深を測り、之を相乘じて、其得點を百にて除し、之を機關室の噸數に加ふべし、ハ暗車汽船に於ては、軸室平均の長幅高を測り、之を相乘じて、其得數を百にて除し、之を機關室の噸數に加ふべし、□三甲板なき西洋形船の噸數を測定するは、左の方法に據るべし、イ船首上端の内側より、船尾上端の内側に至る長を測り、之を一のイに揭ぐる等級に準ひ等分し、其各分長點に於て、船舷の上端を境線とし、之より船底に至る深を測り、上説の計算法によりて噸數を求め、之を該船の總噸數とす、ロ船舷上端の境線を超え、船室の設あるものは、境線上に於ける船室平均の長、幅、高を測りて之を相乘じ、其得數を百にして除し、之を該線下の噸數に加ふべし、□四日本形回漕船の石數を測定するは、左の方法によるべし、イ船舶の上端を境線とし、之より船梁の上面に至る平均の高を測り、又船首室の境界より、船尾室の境界に至る長を測り、又船舷の内側より、内側に至る平均の幅を測りて、此長、幅、高を相乘じ、其得數を十にて除し、之を船梁上船艙の石數とす、ロ船首室の境界より、船尾の内側に至る船底の長を測り、之を四個に等分し、其各長點及前後両端に於て深を測り、又各深の中央及び上下に於て、平均の幅を測りて其深、幅を平均し、而して此平均の深、幅、長とを相乘じ、其得數を十にて除し、之を船梁下船艙の石數とす、□五日本形にして、其構造回漕船に異る船の石數を測定するには、左の方法によるべし、即ち船首の内側より、船尾の内側に至る船底の長を測りて四個に等分し、其各分長點に於て、船舷上端を境線とし、之より船底に至る深さを測り、其深の中央及上下にて平均の幅を測りて、其深幅を平均し、而して此平均の深、幅と長を相乘じ、其得數を十にて除し、之を該船の石數とす、以上本令の大要なり。(一七年大政官一〇號布達)
- 英
- Method of weighing the capacity of tonnage of ship
- 独
- Meszmittel des Schiffstonnengehaltes
- 仏
- Moyeu de peser la capacité du tonnage du navire
船舶賃借人
(せんぱくちんしやくにん)船舶を貸貸借の目的物としたる場合に於ける借主を、船舶賃借人と云ふ、從て民法に於ける賃借人と、大體に於て其法律關係同一なるも、少しく異る點なきにあらず、即ち、一船舶の賃貸借は、之を登記したるときは、爾後其船舶に付き、物權を取得したる者に對しても其效力を生ず、即ち一般原則の上よりいふときは、船舶は動産に外ならざるが故に、其賃貸借契約を以て第三者に對抗する事能はずと雖も、船舶に付ては、之が例外を認め、登記を爲したるときは、第三者に對しても對抗するを得るものとす、但し商行爲を爲す目的を以て、其船舶を航海の用に供したるときに限る、□二賃借人と相手方との關係、商行爲を爲す目的を以て、其船舶を航海の用に供するときは、賃借人と其相手方たる第三者との關係は、之を例へば、賃借人が船舶を運送營業に利用し、汎く第三者と運送契約を締結せし場合に於ては、該運送契約の當事者は、船舶所有者に非ずして、船舶賃借人たり、故に之等の場合に於ては、船舶賃借人は第三者に對して、船舶所有者と同一の權利義務を有す、船舶賃借人と、其相手方たる第三者との關係此の如し、茲に於乎一の疑問を生ず、船舶賃借人も亦商法の條現により委付の權利を有するや否や之也、由來本問題たるや、航海業の發達乃至國家の盛衰に大關係を有す、故に左にの要點を聊か略述せん、而して本問題たるや、二箇の方面を有す、一は、船舶賃借人と第三者との法律關係、他の一は船舶賃借人と貸主即ち船舶所有者との關係是なり、然り而して商法の委付の條規たるや、船舶賃借人と第三者との關係を規定したるものにしては、即ち此の一方面に於ては委付を爲し、其責任を免るるに似たり、蓋し法文は明かに利用に關する事項に就きては、第三者に對して船舶所有者と同一の權利義務を有すと規定したれば也、而して船舶の委付が、船舶の利用に關する事項たる事あるは、疑を容るるの餘地なし、然れども他の一面を顧みれば大に疑はざるを得ず、船舶即ち賃借物の利用に就きては、無論賃借人に此權能ありと雖も、其物を處分するの權利は、特別の契約あれば格別、然らざれば之を有せず、從て所有者の承諾を得ざれば之を爲し得ざるが如し、要するに我商法の規定は、賃借人と第三者との間の規定を定めたるに過ぎずして、所有者と賃借人との間に就きては、毫も規定せざるの結果、或は商法の委付の規定に列記する所の船舶、運送賃及び船舶所有者が、其船舶に付き有する損害賠償又は報酬の請求權等は、必ずしも全部委付せざるも可にして、船舶が沈沒したるの結果、運送賃を受取ること能はざる場合には、運送賃は之を委付するを要せず、夫れ然り然らば、賃借人は舶を處分するの權限を有せざるが故に、運送賃のみ委付するを得べく、船舶を委するを要せずと論ずる者あり、稍見るに足るべき點なきにあらずと雖も、少くとも立法の精神を無視するに似たり。(商五四四、五五六、七五五條參照)
船舶登記規則
(せんぱくとうききそく)明治三二年勅令第二七〇號を以て、公布せられたる命令にして、□一此規則に別段の定ある場合の外、船籍港を管轄する區裁判所、又は其出張所を以て管轄登記所とす、船籍港が數個の登記所の管轄地に跨がるときは、司法大臣管轄登記所を定む、□二登記所は、船舶所有權移轉の登記、又は其の抹消の登記を爲したるときは、遲滯なく其旨を船籍港を管轄する管海官廳に通知することを要す、管海官廳は、法定の事項、又は船籍港の變更ありたるときは、遲滯なく其旨を登記所に通知することを要す、□三登記を申請するには、始めて船舶所有權の登記を申請する場合を除く外、申請書に登記證書を添付することを要す、□四申請書には左の事項を記載し、申請人之に署名捺印することを要す、イ船舶の種類、名稱、及び積量、ロ船籍港、ハ不動産登記法所定の事項、□五登記官吏が登記を完了したる時は、登記證書に申請書受附の年月日、受附番號、順位番號、登記權利者の氏名、住所、登記原因、其日附登記の目的及登記濟の旨を記載し、登記所の印を押捺して、之を所有權の登記名義人に還附することを要す、□六登記證書を滅失したるときは、船舶が船籍港に碇泊する場合に限り、所有權の登記名義人は、其登記を爲したる登記所の所在地を管轄する區裁判所の許可を得て、更に登記證書の交付を申請することを得、此場合に於ては、區裁判所は裁判を爲す前、船長を訊問することを要す、□七所有權の登記名義人は、登記證書を提出せずして、登記を申請することを得、此場合に於ては、登記は特別登記簿に之を爲すことを要す、前項の場合に於て、登記證書を提出することを得るに至りたるときは、之を提出して更に登記を申請することを要す、□八始めて所有權の登記を爲す場合に於ては、書面により、自己が所有者たることを證する者より、其登記を申請することを要す、始めて所有權の登記を申請する場合に於ては、申請書に管海官廳より交付したる件名書の謄本、其の他法定の事項を證する書面を添付することを要す、日本に於て製造したる船舶に付き、始めて所有權の登記を申請する場合に於ては、申請書に、其船舶の製造地を管轄する登記所の特別登記簿の謄本、又は特別登記簿に其船舶に關する登記なきことを證する書面を添付することを要す、□九船舶管理人の更迭の登記は、所有權の登記名義人より之を申請することを要す、□十所有權の移轉の登記を爲したる場合に於て、其移轉の結果により、共有が消滅すべきときは、船舶管理人の登記を抹消することを要す、十一下の場合に於て、所有權の登記名義人は、申請書に其事由を記載して、登記の抹消を記載する事を要す、イ船舶が滅失、又は沈沒したるとき、ロ船舶解廢せられたるとき、ハ船舶の存否が六箇月間分明ならざるとき、ニ船舶が日本の國籍を喪失したるとき、以上の場合に於ては、其事實を證する官吏、又は公吏の書面を添付することを要す、十二製造中の船舶の抵當權の登記は、製造地を管轄する登記所に之を爲すことを要す、十三製造中の船舶の抵當權の登記は、特別登記簿に之を爲すことを要するものとす。
船舶登記取扱手續
(せんぱくとうきとりあつかいてつづき)明治三二年司法省令三五號を以て公布せられたる命令にして、□一船舶登記簿、及び船舶共同人名簿は、法定の雛形に依り、地方裁判所に於て之を調製すべし、□二船舶特別登記簿、及船舶特別共同人名簿は以上の帳簿に準じ、同じく地方裁判所に於て之を調製す可し、□三船舶登記名出帳は、法定の雛形に依りて調製すべし、□四船舶登記見出帳には、イロハ順により、豫めイの部よりスの部迄を設け置き、登記用紙に登記番號を記載する每に、其船名の頭字により相當の部に船舶の名稱、登記用紙を編綴せる登記簿の冊數、丁數、及登記番號を記入すべし、□五受附帳は、法定の雛形により每年調製すべし、□六登記證書は、法定の雛形の用紙を以て作るべし、□七船舶所有者は、其本籍地又は所在地の市、區、町村長(市、區、町村長なき地に於ては、其職務を行ふ吏員)の證明を得たる印鑑を、船籍港を管轄する登記所に提出す可し、改印を爲したるとき亦同じ、但不動産の登記に關し、其登記所に印鑑を提出したる者は此限にあらず、船舶を所有する法人の代表者は、法人の登記に關し、印鑑を提出したる登記所の證明を得たる印鑑を、船籍港を管轄する登記所に提出すべし、但し法人の登記に關し、印鑑を提出したる登記所と、船籍港を管轄する登記所と、同一なるときは此限にあらず、□八印鑑は法定の雛形により、之を調製すべし、□九登記簿謄本の交付、又は登記簿若くは附屬書類の閲覽を請求する場合に於ては、其申請書に下の事項を記載し、申請人署名捺印すべし、但し閲覽を請求する申請書には、利害の關係ある事由を記載したる書面を添付すべし、イ船舶の種類、及名稱、ロ船籍港、ハ手數料の金額、ニ登記所の表示、ホ年月日、□十登記簿抄本の交付を請求する場合に於ては、其申請書に以上揭げたる事項の外、抄本の交付を請求する部分を記載し、申請人署名捺印すべし、十一印鑑簿は、永久に保存すべし、受附帳、登記立會調書綴込帳、登記簿謄本綴込帳及び船舶異動通知書綴込帳は、十年間之を保存すべし、決定原本綴込帳、抗告書類綴込帳、及び印鑑證明書綴込帳は、五年間之を保存すべし、謄本抄本交付帳、登記證書交付帳、受領原符元帳、各種通知書、船舶登記濟通知書、本登記濟證交付帳及び還納受領綴込帳は、三年間之を保存すべし、右帳簿の保存期間は當該年度の翌年より之を起算す、十二登記を申請するには、申請書に其登記を申請するに必要なる事項の外、登錄税額を記載す可し、但し登錄税法所定の登記に就きては、課税標準の價格をも記載すべきものなり。
- 英
- Process of treatment of registration of ship
- 独
- Verfahren der Schiffsregistrirung
- 仏
- Progrès de l'en-registrement du navire
船舶登記簿
(せんぱくとうきぼ)船舶に關し、一定の事項を登記せしむる爲め、裁判所たる登記所に備ふる帳簿を云ふ。(民訴七二〇條二號)
船舶登錄簿
(せんぱくとうろくぼ)船舶に關し一定の事項を登錄せしむる帳簿にして、保護取締の爲めに行政官廳に備ふるものなり。(三一年法六八號二條四號)
- 英
- Register of ship
- 独
- Schiffs-register
- 仏
- Registre du navire
船舶法
(せんはくはふ)明治三二年法律第四六號を以て公布せられたる法律にして、□一下の船舶を以て日本船舶とす、イ日本の官廳又は公署の所有に屬する船舶、ロ日本臣民の所有に屬する船舶、ハ日本に本店を有する商事會社にして、合名會社にありては、社員の全員、合資會社及株式合資會社にありては、無限責任社員の全員、株式會社にありては、取締役の全員が日本臣民なる者の所有に屬する船舶、二日本に主たる事務所を有する法人にして、其代表者の全員が日本臣民なる者の所有に屬する船舶、舊商法の規定に從ひて、設立したる合資會社にありては、業務擔當社員の全員が、日本臣民なるものの所有に屬する船舶を以て日本船舶とす、□二日本船舶に非ざれば、日本の國旗を揭ぐる事を得ず、□三日本船舶に非ざれば不開港に寄港し、又は日本各港の間に於て物品又は旅客の運送を爲すことを得ず、但し法律若くは條約に別段の定めあるとき、海難若くは捕獲を避けんとするとき、又は主務大臣の特許を得たるときは此限にあらず、□四日本船舶の所有者は、日本に船籍港を定め、其船籍港を管轄する管海官廳に、船舶の積量の測度を申請することを要す、船籍港を管轄する管海官廳は、他の管海官廳に船舶の積量の測度を囑託することを得、外國に於て取得したる船舶を、外國各航路の間に於て航行せんとするときは、船舶所有者は、日本の領事又は貿易事務官に、其船舶の積量の測度を申請する事を得、□五日本船舶の所有者は、登記を爲したる後、船籍港を管轄する管海官廳に備へたる船舶原簿に、登錄を爲すことを要す、登錄を爲したるときは、管海官廳は船舶國籍證書を交付する事を要す、□六日本船舶は、法令に別段の定めある場合を除く外、船船國籍證書又は假舶舶國籍證書を請受けたる後に非ざれば、日本の國旗を揭げ又は航行せしむる事を得ず、□七日本船舶は法令の定むる所に從ひ、日本の國旗を揭げ、且つ其名稱、船籍港、番號、積量、喫水の尺度、其他の事項を標示する事を要す、□八日本船舶の名稱は、船籍港を官轄する管海官廳の許可を得るにあらざれば、之を變更することを得ざるものなり
- 英
- Law of ship
- 独
- Schiffsgesetz
- 仏
- Loi du navire
船舶法施行細則
(せんぱくはふしかうさいそく)明治三二年遞信省令第二四號を以て公布せられたる命令にして、□一本則に於て船舶の種類と稱するは、滊船、帆船の別を云ふ、機械力を以て運航する裝置を有する船舶は、蒸汽を用ふると否とに拘らず、之を汽船と看做す、主として帆を以て運航する船舶は、機關を有するものと雖も之を帆船と看做す、□二浚渫船は、推進器を有せざれば帆船と看做さず、□三船籍港は、各市町村の名稱に依る、但し市制、町村制を施行せざる地方に在ては、市町村に準ずべき區劃の名稱による、□四下の場合に於ては、船舶國籍證書又は假船舶國籍證書の交付前と雖も、最寄管海官廳の認可を受け、船舶を航行せしむることを得、イ試運轉のとき、ロ船籍の測度を受けんとするとき、ハ正當の事由あるとき、□五下の場合に於ては、船舶國籍證書又は假船舶國籍證書の交付前と雖も、船舶に國旗を揭ぐることを得、イ祝日、大祭日、但し外國の祝祭日に就ては、其國の港に碇泊する場合に限る、ロ以上の外、祝意又は敬意を表するとき、ハ進水のとき、ニ上説の四に依り船舶を航行せしむるとき、□六船舶の積量、若くは登錄に關する事項、又は其標示を照査する爲め必要ありと認むるときは、檢査官吏は何時にても、船舶に臨檢する事を得、□七本則の規定により管海官廳に書類を差出すべき場合に於て、代理人を使用するときは、其權限を證する書面を添附す可し、□八船舶は、下の場合に於て國旗を後部に揭ぐべし、イ帝國軍艦より要求せられたるとき、ロ帝國の燈臺又は海岸望樓より要求せられたるとき、ハ外國の港を出入するとき、ニ外國貿易船帝國の港を出入するとき、ホ法令に別段の定めあるとき、□九登錄税法の規定に從ひ、登錄税を納付するには、相當の收入印紙を貼用したる登錄税納付書を、登錄の申請書に添へて差出すべし。
船舶抑留
(せんぱくよくりゆう)船舶抑留に種々あり、ブルメリンクの分類に依れば、□一アンガリー權及びアンド、プランス、船舶抑留は、自國領海内に碇繫する船舶を差押へ、抑留するを云ふ、之を沒收するにあらず、船舶を差押ふる目的は種々あり、之を或用途に供し、又は破壞するときは之をアンガリー權と云ふ、從て狹義の船舶抑留は、アンガリー權と異り、アンド、プランスは、或學者の説によれば、政治上、軍事上の秘密を外國に漏すを恐れて、自國領海内に在る船舶の解纜出發を停止するを云ふ、然れども今日の如く、電信、新聞紙等の通信機關發達するの時に當りては、斯る處置は全く無益なり、□二警察的停船及び國内停舶、警察上及裁判上の訊問、臨檢等をなす爲め、外國船を抑留するを云ふ、或はアンド、プランスも國内停船の一に數ふる者もあり、□三國際停船、所謂眞の船舶抑留とは此場合のみなり、イ復仇行爲として爲す事あり、普通なる例は、自國領海内に碇泊する船舶差押也、公海上に於ては、他國船舶を差押ふるは、茲に所謂船舶抑留に非ず、單純なる復仇行爲に過ぎず、本來の船舶抑留は、單に船舶を差押ふるに止まり之を沒收せず、二國間の關係平穩に歸せんか之を解放し、戰爭を開始せんか、始めて之を沒收す、船舶抑留の例は、一八三九年英國が兩シシリーに對して行ひたる其一也、シシリーは、一八一六年の英國の通商條約に違反して、其硫黃專賣權を佛國に認容したり、茲に於て英國は、其特許の取消を求めたるに、シシリーは拒絶せり、仍て英國は、復仇行爲として、地中海艦隊に命を下し、ネープルス及シシリーの海上に於て、シシリーの國旗を揭場する船舶に出會せば、之を抑留すべしと命じたりしも、遂に佛國の調停に依り落著し、英國は、其差押たる船舶を原所有者に返還したることあり、ロ開戰前後の船舶抑留、往昔の慣例に依れば、將さに開戰すんとするや、各開戰を豫想して、相手國即ち將來の敵國の船舶を差押たり、而して戰爭開始後は勿論、自國領海内に碇泊する敵國船舶を拿捕し沒收せり、然るに近時戰爭法の漸く緩和せらるると共に、斯る慣例は漸次消滅じ、開戰を豫想して爲す船舶差押は勿論、開戰後も之を差押ふることなく、一定の期間を與へて退去せしむるに至りたり。
全部判決
(ぜんぶはんけつ)必要的口頭辯論に基きて爲す裁判所の宣告を判決とは云ふ、而して判決を種々に分類するを常とす、□一當事者雙方の口頭辯論に基きて爲したると、一方の懈怠に基き爲したるとにより、對席判決と缺席判決とし、□二訴訟を求め保護を要したる實體上の權利に關すると、訴訟上に於て生じたる爭、即ち訴訟上の權利に關すると否とにより、實體上の判決と訴訟上の判決とし、□三訴を以て要求したる法律關係、又は請求に付て爲したる判決にて、其審級を離脱すると、斯る判決を爲すの準備として、訴訟の爭點に付て爲したると否とにより、終局判決と中間判決とし、□四當事者が訴訟を以て保護を要求したる法律關係、又は請求の全部に付て爲したると、其一部に付て爲したるとにより全部判決と一部判決とす、而して一部判決と雖も、終局判決の一種に外ならざるが故に、其部分に付ては、訴訟事件を其審級に於て完結す、從て獨立して上訴を爲し得べく、獨立して確定力を生ず、一部判決を爲すべき場合は、□一主觀的訴の併合、即ち共同訴訟の場合に於て、原告中の一人と又は被告中の一人との間に於ける關係に付き判決を爲したる時、□二客觀的訴の併合、即ち原告が同一の被告に對し、數個の請求を爲したる場合に、其中の一部に付き判決を爲したる時、□三反訴ありたる場合に、本訴又は反訴のみの判決を爲したるとき、□四本訴又は反訴の請求中の一個に付て判決を爲したるとき、□五本訴又は反訴として主張したる一個の請求中の一部が、裁判を爲すに熟したるときに於て、其請求が實體法の規定に依れば、可分なるとき之なり、而して以上の外は、一部判決を爲すべき場合殆どなし、故に其の以外に於て、判決を爲すに熟したるときは、即ち全部判決を爲さざる可らず、又一部判決に就きては、請求の抛棄又は認諾ありたる場合の外は、之を爲すと否とは裁判所の任意なりと雖も、全部判決は、判決を爲すに熟するときは、必ず之を爲さざる可らざるものとす。(民訴二二五、二二六條)
- 英
- Judgment in general
- 独
- Ganzurtheil
- 仏
- Jugement général
專用鐵道規則
(せんようてつどうきそく)明治三三年遞信省令第二八號を以て、公布せられたる命令にして、□一個人又は一會社に於て、個人の專用に供する爲め、鐵道を敷設せんとする時は、地方長官を經由して免許を申請すべし、□二申請書には、使用の目的を記載し、下の書類圖面を添附すべし、イ實測圖面、ロ工事方法書、ハ工費豫算書、□三以上の書類圖面の外、審査に必要と認むる書類圖面の提出を命ずることあるべし、□四免許及び認可には、必要と認むる條件を附すことあるべし、□五免許失效の場合に於ては、一固月以内に地方長官を經由して、免許狀を返納すべし、□六起業者は運轉に關する規程を定め、認可を受くべし、之を變更するとき又同じ、□七起業者が運轉の管理を他に委託せんとするときは、認可を受くべし、□八專用鐵道を讓受け、自己の使用に供せんとする者は、讓渡人と連署し、地方長官を經由して免許を申請すべし、□九工事方法の變更及假設の工事は、認可を受くべし、□十私設鐵道法の規定のあるものは、專用鐵道に之を準用す、十一專用鐵道は、特に認可を受くるに非ざれば、使用の目的に屬せざる物品運送の用に供することを得ず、十二公安に害ありと認むるときは、專用鐵道の全部又は一部の撤去を命ずることあるべし、十三本則の規定に違反したる者は、二十圓以下の罰金に處す。
占領
(せんりやう)占領に二種あり、戰時占領、平時占領之なり、平時占領とは、更に之を細別して二とす、□一他國主權の下にある土地を、條約の結果により之を占有するを云ふ、學者によりては、租借も亦此平時占領の一種なりと云ふ、されど此等は、期限付にて爲す所の領土割讓と解するを以て正當とすべきか、□二無人島の如き、無主の土壤を占有する場合にして、之を先占と名く、而して之を更に小別して二とす、イ無人島又は妨棄せられ土壤を先占する場合、ロ未開人民により占有せられ居る土地を占領する場合之なり、而して此後者は、果して先占なるや否やに就きては疑なき能はず。(戰時占領の部參照)
- 英
- Occupation
- 独
- Okkupation
- 仏
- Occupation
善良なる管理者の注意
(ぜんりようなるくわんりしやのちうい)茲に所謂善良なる管理者とは、舊民法に所謂善良なる管理人なる語より來りたるものにして、更に遡りて其源を推窮すれば、羅馬法、及佛國民法の所謂良家父より由來せるもの也、而して自己の財産に於けると同一の注意と相對するものにして、即ち世間一般善良人の通常盡すべき注意と云ふの義也、此注意は、假令、注意責任者に斯る注意能力なき場合と雖も、輕減せらるることなし、之即ち具體的輕過失、又は自己の物に於けると同一の注意と相對するものなれば也。(民四〇〇條等)
善良の風俗
(ぜんりようのふうぞく)國民の善良なる道德上の慣習を、善良の風俗と云ふ、普通に所謂良風美俗と云ふが如し、即ち或事柄が善良の風俗に反するや否やは、主として其國民多數の道義上の觀念を基として決すべきものにして、一國の公益上より觀察したる公の秩序とは、其觀察點を異にす、善良の風俗に反する事項を目的とする法律行爲とは、猥褻、野卑、不倫、不敬等の事柄を其目的とする法律行爲を指すものとす。(民九〇條、法例三〇條)
戰域
(せんゐき)凡そ戰爭には、主體あり、客體あり、手段あり、更に場所あり、其場所即ち交戰權活動の場所的區域之を戰域と云ふ、而して戰域には、事實上法律上の二種あり、事實上の戰域は、俗に戰場と稱するものと同じ、事實戰爭の行はるる地域にして、通常交戰國の領域、及び公海とす、然れども中立國に於ては、事實戰爭行はれたるときは、之又事實上の戰域なりとす、正確の意義に於ける戰域とは、戰爭を國際法上行ひ得るの地域を指す、別言すれば、戰爭法の支配を受くべき地域を指して云ふ、即ち交戰國の領域、及び公海なり、而して本來は、戰域となり得と雖も、之を戰域より除外することあり、之を中立地域又は不可侵地域と云ふ、而して之を別ちて、□一合意上の不可侵地域、之一定の地域を限り、交戰國が其地に於て、戰爭を爲さざることを約するを云ふ、例へは日清戰爭中、日本は上海に於て戰爭を爲さざることを約したるが如し、□二政治上の不可侵地域、列國の均勢を維持する爲め、干渉の必要上往々之を設くることあるもの也。
責
(せめ)行爲の結果として生ぜし法律上の效果を、行爲者本人に歸するを責に任ずと云ひ、法律上の效果を歸せしむる自己の義務を責と云ふ、責任と云ふに略ぼ同義とす、而して責と云ひ、責任と云ふも、必ずしも歸すべき惡報即ち制裁なることを要せず、唯普通に制裁を歸せらるべき場合のみを責と云ふに過ぎず、彼の國務大臣は天皇を補弼して其責に任ずと云ふは、即ち補弼の效果の擧がると否らざるとに依て、其效果を自己が引き受くるを云ひ、又或る行爲を爲したる場合に於て、依て生ぜし損害を賠償するの責に任ずと云ふは、行爲者は常に其依て生ずることあるべき損害を、自己の危險として引き受くるを意味するが如し。(憲法五五、七〇九條、責任の部參照)
- 英
- Responsibility
- 独
- Verantwortlich-keit
- 仏
- Responsabilité
增加恩給
(ぞうかおんきふ)增加恩給とは、官吏又は軍人にして、公務に關し、疾病若くは傷痍を受けたる者が、法令に規定せる事項に該當するとき、普通の恩給以外に受くる恩給を云ふ、一官吏の增加恩給、官吏にして公務に因り、傷痍を受け、一肢以上の用を失ひ、若くは之に準ずべき者にして、其職務に堪へず退官したるとき、公務に因り健康に有害なる傷害を受くることを顧る能はずして、勤務に從事し、ために疾病に罹り、一肢以上の用を失ひ、若くは之に準ずべき者にして、其職に堪へず退官したるときは、其奉職期間法定の恩給年限に滿たざるも、修身恩給を受くるの外、尚ほ最下恩給金額十分の七までの增加恩給を受くることを得べし、□二軍人の增加恩給、即ち軍人にして戰鬪、及び戰時、平時に拘らず、公務のため傷痍を受け、若くは疾病に罹りたる者は、退職、恩給、及び免除恩給の外、增加恩給を受くことを得べし。(官吏恩給法第三條、及び軍人恩給法第九條參照)
- 英
- Increased pension
- 独
- ver-mehrende Pension
- 仏
- Pension augu-mentée
增加額
(ぞうかがく)單に增價額と云ふときは、凡て或物の價格の增加したる量額を意味す、例へば占有者が、其占有せる物の上に施したる改良のため、其物の價格が改良前の價格より增加したるときは、其增加せる價格を增價額と云ふの類之れなり。(民法一九六條の二參照)
- 英
- Amount of increased value
- 独
- vermehrte Summe
- 仏
- Somme du valeur augumenté
增價競賣
(ぞうかきやうばい)抵當不動産の第三取得者が、抵當權を滌除せんとする場合に於て、債權者が滌除者の提供金額を以て、不動産の相當價額より低廉なりとし、其提供金額より一割以上の高價にて競賣をなし、買主なきときは、自ら之を買取るべき責任を以て、請求する一種の競賣を云ふ、增價競賣なるものは、債權者に與ふるに、第三取得者の滌除を拒否するの權利を以てすると同時に、其債權者をして、無責任に滌除を妨害することなからしめんが爲め、一割以上の高價にて買取るべき責任を負擔せしめたるものとす、增價競賣を請求せんとする債權者は、唯に競賣の結果、滌除金額より一割增の高價にて買受くべきを約するのみならず、其代價及び競賣費用に付き、相當の擔保を供せざるべがらず、之一に債權者をして、其責任を全うせしめんとの旨意に出るものにして、其擔保の相當なるや否や、固より裁判所の決定する處に委する外なく、隨つて裁判所が其擔保に付き認許を與へざるときは、增價競賣の請求は、當然其效を失ふべきものとす、增價競賣の請求は、第三取得者より滌除の送達を受けたる日より、一箇月内に於て之をなすべきものにて、債權者は、第三取得者に對し、此請求をなしたるときは、抵當不動産所在地の裁判所に、三日内に競賣の申立をなすと同時に、其供せんとする擔保の認許を求むる手續をなすに非ざれば、競賣の請求は無效となるべきものとす、而して一方に於ては、其利害關係人たる債務者、及抵當不動産の讓渡人に對し、增價競賣の通知を發すべきものとす、次に增價競賣の請求は、登記をなしたる他の債權者の承諾を得るときは、何時にても之を取消す事を得べし、此承諾を必要とするは、他の債權者中滌除者の提供金額を不當と認むる者あるも、既に增價競賣の請求あるときは、各別に之をなすを要せざるを以て、其權利を行はざるに拘らず、突然其請求者が請求を取消したるに因り、直に滌除の效を生ずるものとなさんが爲に、他の債權者は意外の損失を招く事なきを保せず、故に此請求の取消をなさんとするには、他の債權者の承諾を必要とせる所以なり、競賣法の規定に依れば、增加競賣の申立は、□一債務者の氏名、住所、□二抵當不動産の表示、□三取消者、及び讓渡人の氏名、住所、□四擔保の表示、□五第三取得者が提供したる金額、□六請求者が定めたる增加金額、□七年月日、□八裁判所等の事項を記載したる申立書に、必要の書類を添へて之を申請すべきものにして、若し裁判所が請求者の提供せる擔保に對し、不認許の裁判をなしたるときは、第三取得者に對して、前記法定期間に、增價競賣の請求をなしたる他の債權者は、此裁判のありたる日より三日内に、更に裁判所へ增價競賣の申立をなすを得るものとす、裁判所が擔保を認許したるときは、直に競賣手續開始の決定をなし、競賣期日及び競落期日の公告をなすと同時に、利害關係人に其期日を通知すべきこと、其他の手續は、不動産競賣の場合と異ることなし、競賣期日に請求債權者が定めたる、增價金額に達する競賣の申込なきときは、請求債權者は其定めたる增價金額を以て、其抵當不動産を買受くべきものとす、競賣請求者は、競賣に代つて入札拂の申立をなすことを得るは、普通の不動産競賣の場合と同じ。(民三八四乃至三八六條、競賣法四〇乃至四九條)
- 英
- Sale by auction for the sake of obtaining higher price
- 独
- Versteiger-ung
- 仏
- Vente par l'enchère pour ob-tenir le plus haut prix
增價競賣法
(ぞうかきやうばいはふ)本法は、明治二十三年法律第九十二號を以て公布せられ、增加競賣に關する手續を規定したるものなりしも、明治三十一年六月法律第十五號競賣法の發布と同時に廢止せられたり。
- 英
- Law of sale by auction for the sake of obtaining higher price
- 独
- Versteigerungsgesetz
- 仏
- Loi de l'enchère pour obtenir le plus haut prix
增加退隱料
(ぞうかたいいんれう)增加退隱料とは、或る公職を奉ずる者が退隱したる場合に於て、法令の規定に該當する事故あるときは、普通の退隱料を受くる外に、給與せらるる退隱料を云ふ、例へば府縣立師範學校及び公立中學の學校長、正教員、舍監及び書記等にして、□一職務に依りて傷痍を受け一肢以上の用を失ひ、若くは之に準ずべき者にして、其職務に堪へざるがため退隱を命ぜられたる者、□二職務に依り健康に有害なる傷害を受くるを顧る事能はずして、勤務に從事し、ために疾病に罹り、一肢以上の用を失ひ、若くは之に準ずべき者にして、其職務に堪へざるため、退隱を命ぜられたる者等は、明治二十三年法律第九十一號第四條の規定に因り、退隱料を受くべき法定年限に達せざる者と雖も、終身退隱料を受くるの外、尚ほ其最下金額十分の七までの、增加退隱料を給せらるるが如きこれなり。(二三年法九一號)
- 英
- Accessory retirement fee
- 独
- vermehrender Zurückgezogenheitslohn
- 仏
- Pension additionelle de la retraite
綜合
(そうがふ)普通に綜合と謂へば、種々の事物を一體に、或は個々の觀念を一つの思想判斷に合成するを謂ふ、更にけ個々別なる實體又は要素、又は各部分を一つの新しき形體に結合することを謂ふ、論理學に於ては、思想の分析に相對し、特殊を一般に、個々の命題を一系の槪念に合成することを謂ふ、即ち思想の要素材料たるものを一命題に結合すること也、智識の發達、思想の該博は、この槪念の分析と綜合との交互作用によりて致さるるものなり。
- 英
- Synthesis
- 独
- Synthese
- 仏
- Synthèse
總監査役
(そうかんさやく)或る株式會社又は株式合資會社に於ける總ての監査役を云ふ、株式會社設立の登記申請は、總取締役、及び總監査役の名を以てするを要し、株式合資會社の設立登記、及び其組織を變更して、株式會社となしたる場合に於ける登記は、無限責任社員の全員、及び總監査役、又は變更後の株式會社の總取締役、及び總監査役より其申請をなすことを要するものとす。(非訟事件手續法一八七、一九六及び二〇一條參照)
- 英
- All inspectors
- 独
- alle Auf-sichtsräthe
- 仏
- Chef d'inspecteurs
送金手形
(ぞうきんてがた)人が金錢輸送の爲め、銀行等に委託して振出さしむる爲替手形を送金手形と云ふ、元來手形は最初現金輸送の危險と不便を避けんが爲め、兩替商に委託して爲したる送金の證に始まりたることは、洋の東西ともに等しき所也、彼の唐の世に於ける飛錢の如きは、手形として送金の内容を現はす名稱なりと云ふべし、明治三十二年二月法律第一五號供託法五條に「銀行の送金手形云々」とあるは其用例に屬す。
- 英
- Remittance bill
- 独
- Geld-sendungswechsel
- 仏
- Billet à remise
總組合員
(そうくみあひいん)或組合に於ける總ての組合員と云ふの義なり、民法の規定に依れば、各組合員の出資、其他の組合財産は、總組合員の共有に屬し、組合契約に特別の定めなき場合には、組合の業務執行は、總組合員の過半數を以て決するを原則とす、而して組合が解散したる場合に於ける清算は、總組合員共同にて之をなすか、又は總組合員過半數の同意を以て選任したる清算人をして、其清算をなさしむるものとす。(民六六八、六七〇條一項及六八五條一項、及び二項參照)
- 英
- All Members of association
- 独
- alle Mitglieder der Gesellschaft
- 仏
- Tous les membres de l'association
總會
(そうくわい)或機關又は團體等の關係者全員の會合を云ふ、例へば株式會社の總會と云ふときは、其會社の株主全員の會合を指すが如し、總會は通常其機關又は團體に關する重要なる事項に付き、機關又は團體の意思を決定する場合に開くべきものとす、總會は、其機關又は團體に關する法令の規定に依り、之を開くべき場合を明定せるものと、否らざるものとあり、又總會は關係者全員の會合なりと云ふも、法令に別段の規定ある場合の外、必しも悉く會合するを要せず、唯其全體の過半數以上の出席あるにあらざれば、總會と云ふを得ざるのみ、總會の議決方法に關しても法令に別段の規定ある場合の外、通例出席員又は議決權の過半數を以て之を決するものとす、尤も私法上機關又は團體にして規約其他の方法に依り、總會の開期、出席員の數、及び其議決方法等に關し、特別の規則等を設けたるものある場合には、之に依るべきこと勿論の事とす。(商一二一、一三一條乃至一四〇條、一五六條乃至一六三條等)
- 英
- General meeting
- 独
- General-versammlung
- 仏
- Assemblée générale
總會議
(そうくわいぎ)總會に於ける會議を總會議と云ふ、所謂會議とは、或機關又は團體の構成員の決議を謂ひ、總會とは會議に出席する構成員が、其數に於て總てと云ひ得べき場合を云ふ、行政裁判所處務規程第六條に「行政裁判所の總會議は、評定官三分二以上出席するにあらざれば、議決をなすことを得ず」とあるは用例なり。
- 英
- General conferrence
- 独
- General-konferenz
- 仏
- Conférence génerale
總括
(そうくわつ)普通に總括と謂へば、個々に散在するものを其關係の點、或は類似の點の下に纏め、或は又敷衍せられたる廣き範圍の思想中より、其要點となるものを摘出し、之を狹き範圍に統ぶることを謂ふ、總括的とは、以上の意義を有する形容詞なり。
- 英
- Recapitulation
- 独
- Zusammen-faszung
- 仏
- Recapitulation
總括遺贈
(そうくわつゐぞう)一に包括遺贈と稱し、彼の特定遺贈に對する名稱にして、受遺者が、遺贈義務者の「身に專屬するものを除き、一切の權利義務を合せて承繼する一種の遺贈也、包括遺贈は、其法律上の性質、恰も遺産相續と同じく、民法も之を遺産相續と同一の權利義務を有するものとせり。(民一九二條、包括遺贈の部參照)
- 英
- Simple legacy
- 独
- besonderes Vermächtnisz
- 仏
- Legs simple
總決算
(そうけつさん)廣く總決算といへば、收入、及び支出の全部を實際に計上算出せるを謂ふ、彼の政府より帝國議會に提出すべき總決算は、總豫算と同一の樣式を用ひ、第一歳入の部には、歳入豫算額、調定濟歳入額▲收入濟歳入額、及び收入未濟歳入額、第二歳出の部には歳出豫算額、豫算決定後增加歳出額、仕拂命令濟歳出額、及び翌年度繰越額等の事項を明記し、會計檢査院の檢査を經て▲其檢査報告及び各省決算報告書、國債計算書、特別會計書等の文書を添へて提出すべきものとせり。(會計法一六、一七條參照)
- 英
- General final accounts
- 独
- allgemeine letzte Rechnung
- 仏
- Compte final général
總債權者
(そうさいけんじや)總債權者とは、債權者の全員と云ふ義に外ならずと雖も、單に總債權者と云ふときは、漠として意義をなさざるを以て、或一個の債務關係に就きて、數人の債權者ある場合か、又或一人の債務者に對して、數人の債權者ある場合の如く、債權者の數を限定すべき一定の關係あることを要し、即ち一定の關係に立つ數人の債權者あるとき、其全員を指して總債權者とは云ふなり、民法第四二八條に「各債權者は總債權者の爲に云々」とあるは其用例なりとす。
- 英
- All creditors
- 独
- alle Gläu-biger
- 仏
- Tous les créanciers
總債務
(そうさいむ)總債務とは、債務の全部と云ふの義なり、即ち或一定の關係に在る債務の總計を云ふものとす、蓋し單に總債務と云ふも、漠として、其意義を捕促するを得ず、之を以て總債務と云ふに就きては、如何なる債務の總計、即ち全部なるやを示すべき、一定の關係を前提とするを要すべし、民法第四八九條第一號に「總債務中云々」とあるはこれ其用例なり。
- 英
- All obligations
- 独
- alle Obliga-tionen
- 仏
- Toutes les obligations
總債務者
總債務者とは、ある一定の關係に在る債務者の總計、即ち全員と云ふの義なり、民法第四三二條に「總債務者に對して云々」とあるはこの用例なり。
- 英
- All debtors
- 独
- alle Schuld-ner
- 仏
- Tous les debiteurs
總社員
(そうしやいん)各社員に對して、會社又は其他の團體の社員全部を總社員と云ふ、茲に總社員と云ふは、比較的多數の社員總會に於ける「總」と異り、絶對的全部の社員、即ち社員の總計を云ふの義とす、商法第六一條に「定款又は總社員の同意を得て云々」とあるが如きはこの用例にして、即ち社員全部の同意を得るの義に外ならず。(商五八、六一、六九條二號)
- 英
- All members of company
- 独
- alle Mitglieder der Gesellschaft
- 仏
- Tous les associés
奏上
(そうじやう)奏上とは、なほ上奏と云ふが如く、國務大臣又は其他の官府、若くは私人が、文書又は口頭を以て或事を天皇に具上し、又は天皇の御下問に係る事項を奉答するを云ふ、侍從武官々制第二條に「侍從武官は、天皇に常時奉仕し、軍事に關する奏上、奉答及び命令の傳達に任じ云々」とあるは之其用例なり。
- 英
- Stating to the Emperor
- 独
- zum kaiserlichen Gehör zu bringen
- 仏
- Ad-dresse à l'Empereur
奏請
(そうせい)奏請とは、奏聞裁請の義にして、天皇直隷の官府が、國務又は皇室に關する或事項に付き、天皇の御裁可を請ひ、又は奏聞することを云ふ也、文官試驗委員官制第二條に「文官高等試驗委員は委員長、、常任委員及び臨時委員を以て組織し、各官廳高等官の中より、内閣總理大臣の奏請に依り之を命ず」とある是其用例とす。
- 英
- Submit to the throne
- 独
- kaiser-liche Erlaubnisz zu bitten
- 仏
- Plainte à l'Empereur
奏薦
(そうせん)奏薦とは、官吏公吏を任命し又は叙位すべき場合に於て、勅令の規定に依り當該官府より、其本人を天皇に奏聞推〓することを云ふなり、高等官官等俸給令第四條に「奏任官の任官、及び叙等は、内閣總理大臣之を奏〓し、其各者及び各省所屬の官廳に屬する者は、内閣總理大臣を經由して主任大臣之れを奏薦す」とあるは其用例に屬す。
- 英
- Recommendation to the Emperor
- 独
- zum Kaiser empfehlen
- 仏
- Recom-mendation à l'Empereur
奏宣
(そうせん)奏宣とは、奏上宣達の意にして、即ち内閣總理大臣又ば其他の官府が、天皇に拜謁して國務に關する事項等を具上し、又は其旨を宣達するを云ふ、内閣官制第二條に「内閣總理大臣は、各省大臣の首班として機務を奏宣し云々」とあるは其用例なり。
- 英
- Submit to the Emperor
- 独
- zum kaiserlichen Gehör zu bringen
- 仏
- Plainte à l'Empereur
總選擧
(そうせんきよ)總選擧とは、會議機關の組織者を選擧の方法に依て定むべき場合に、其全員の選擧を一時に執行することを云ふ、通例總選擧と云ふときは、衆議院議員の選擧を指すものの如し、衆議院議員の總選擧には二種あり、即ち其一は、各議員の法定の任期滿限の場合に於て行ふ總選擧にして、其二は、衆議院が解散を命ぜられたる場合に於て行ふ總選擧之なり、衆議院議員選擧法の規定に依れば、前者は七月一日に於て選擧の投票を行ふを原則となし、後者は臨時勅令を以て其選擧の期日を定むるもの也。(衆議院議員選擧法三〇條參照)
- 英
- General election
- 独
- allgemeine Wahl
- 仏
- Election générale
總則
(そうそく)總則とは、ある法典の編纂上其規定を分類したる場合に於て、各場合の規定事項に共通する原則の集錄を云ふなり、例へば民法總則又は刑法總則と云ふときは、民法々典又は刑法々典の全體に共通する、原則を蒐集採錄せる部分を指すが如し。(民法一編、商法一編、刑法一編)
- 英
- General rules
- 独
- allgemeine Regeln
- 仏
- Règles générales
送達
(そうだつ)普通の意義に於ては、或書類の送附又は交附と云ふ義に外ならず、例へば抵當權を滌除せんとする第三取得者が、登記をなしたる各債權者に、必要の書面を送達するが如き之なり、然れども訴訟法上に於ける送達なる語は、或る訴訟事件に關し告知すべき事項を記載せる書類を當事者、又は其他の者に交附する手續を意味するものにして、就中民事訴訟法上送達の手續及送達の種類、其他送達の效力等に關しては、多少説明を要するものあり、民事訴訟法の規定に依れば、凡て送達は、裁判所の書記が其職權を以て事に任ずるを原則となす、然れども裁判所又は裁判長の命を受けて、之を取扱ふ場合なきにあらず、而して書記が送達の手續をなす場合に於て之が機關となるものは、執達吏及郵便配達人とす、即ち書記は送達の施行を執達更に委任し、若くは送達を施行すべき地を管轄する區裁判所の書記に、送達の施行を執達吏に委任すべきことを屬託す、然らざるときは、郵便に付して之が施行をなすべきものとす、唯之れに例外をなすものは、外國に於て送達を施行すべき場合、出陣の軍隊又は役務に服したる軍艦の乘組員に對して、送達をなす場合之なり、かかる場合には、官廳又は官吏に囑託して送達を施行すべきものとす、次に送達を受くべき者は、原告及被告、若くは證人鑑定人等にして、原被告に送達すべき書類は、告知の必要ある訴訟記錄、又は判決等の謄本を送達するを通例となす、尤も正本又は認證したる謄本を送達すべき特別の規定ある場合には、其規定に從ふべきは勿論の事なり、而して證人、鑑定人に送達する書類は出廷を命ずる令狀也、茲に注意を要するは、送達を受くべき本人と、送達の受領者とは、法律の規定に因り往々其人を異にすること之也、蓋し送達は通常之を受くべき本人に、其書類を交附するを以て有效方法となすも、其本人の能力、身分又は其他の事情に因り、送達受領に就き多少の制限を加ふる必要あり、即ち□一訴訟能力を有せざる者、例へば未成年者又は其他の無能力者、若くは法人の如き者が、原告又は被告たる場合には、其法律上の代理人に送達するにあらざれば送達の效力なく、□二豫備後備の軍籍に在らざる、下士以下の軍人軍屬に就ては、其所屬長官又は隊長に送達するを要し、囚人に對する送達は、之を監獄署の首長になすことを要するものとす、此外送達を受くべき本人にあらずして、法律の規定に因り、受領者たることを得べき者は、原告又は被告の代理をなすべき權限を有する訴訟代理人、及び財産權上の訴訟に就ては、其總理代人、商業に關する訴訟に就ては、其代務人とす、即ち此等の者になす送達は、法律上其本人になしたると同一の效力を有するもの也、次に通常の送達方法に依りて、送達をなす能はざる場合、又は通常の送達方法に依るも、其效なき事を豫知する場合には、其送達すべき書類を裁判所の揭示板に貼附し、之を以て法律上有效なる送達と看做す場合あり、之を公示送達と稱す、此公示送達は、相手方の申立あるにあらざれば、之を爲すべからざるものにして、通常送達すべき書類を貼附したる日より、十四日を經由したるときは、其送達を完了したるものと看做さるるもの也、若し裁判所が、此より長き期間を必要と認定するときは、相當の期間を定むる事を得るものとす、執達吏の爲すべき送達は、日曜日又は一般の祝祭日、若くは其他の日に於ても夜間には施行すべからざるものにして、若しこれ等の日又は夜間に施行せんと欲するときは、受訴裁判所の裁判長、又は送達をなすべき地を管轄する區裁判所の判事、若くは受命判事又は受托判事の完結すべき事件に就ては、其判事より許可を受けざる可ず、而して許可の命令は、認證したる謄本送達の際交附するを要す、上記の手續を經ざる送達は、之を受取りたるときに限り、其效力を有するも、之を受領する者に於て、其受取を拒むときは固より無效也、之に反して執達吏が法律の規定に從ひ、正當に送達を施行せんとする場合に於て、之を受領すべき者が法律上の理由なくして、送達の受取を拒むときは、交附すべき書類を送達の場所に差置くも、其送達は有效に完了したるものと認めらる、法律上有效に送達の手續を完了するときは、之に依て當事者の權利關係に諸種の效果を及ぼすものとす、即ち一呼出の效を生ず、□二權利拘束の效果を生ず、□三故障期間の經過を始む、□四上訴期間の經過を始むる等之なり。(民訴一三六條乃至一五八條、刑訴一八、一九條、裁構法九八條)
- 英
- Delivery
- 独
- Zustellung
- 仏
- Délivérance
送達告知書
(そうだつこくちしよ)送達告知書とは、民事訴訟上執達吏に依りて送達をなす場合に、執達吏が、通常の方法に依り送達を施行する能はざるとき、交附すべき書類を其地の市町村長に預置き、其送達を受くべき者の住所又は事務所の戸に貼附して、送達のありたる事を告知する爲に作製する書面を云ふ、民事訴訟法の規定に依れば、執達吏が送達告知書を作製して、送達を施行する場合は、□一住所に於て、送達を受くべき人に出會はず、又は住所に於て成長したる同居の親族、若くは雇人等にも出會はざるとき、□二辯護士其他住所の外に事務所を有する人に送達をなす場合に、住所に於て送達をなす能はず、又事務所に於ても其人に出會はず、事務所に在る營業使用人、若くは筆生等にも送達する能はざるとき、□三會社又は社團等に送達をなす場合に、其住所又は事務所に於て法律上代理人、首長、若くは事務擔當人に出會はず、又其他の役員及び雇人に送達する能はざる時の三場合とす。(民訴一四五條乃至一四八條參照)
- 英
- Written notice of service
- 独
- Zustellungsurkunde
- 仏
- Notice de la délivérance
送達證
(そうだつしやう)送達證とは、民事訴訟法上逸達吏が、其送達の手續を適法に完了したる事を證するために、民事訴訟法の規定に從ひ作製する證書を云ふ、送達は之に因り、法律上當事者の權利關係に、各種の效果を生ずるものなるを以て、最も確實に之が施行を爲さざるは勿論の事とす、然るに實際送達の任に當る者は送達吏なるが故に、裁判所に於ては、送達吏が正當に送達の手續を完了したるや否やを知る能はず、之を以て送達吏をして、正當の方法に依り送達を證せしむる必要あり、送達證とは、即ち斯かる必要に基きて、送達吏が作製する證書なり、然れども送達すべき書類を郵便に付したる如き場合に在りては、其郵便に付したる吏員の報告書を以て、送達の證となすことを得るものとす、民事訴訟法第一五一條第三項に「送達の證」とあるは其用例なり。
- 英
- Certificate of delivery
- 独
- Einlieferungsschein
- 仏
- Document de la délivérance
送達證書
送達證書とは、即ち送達を證する書面也、民事訴訟法の規定に依れば、送達證書は、送達を施行する吏員の作製すべきものにして、其證書には、送達の場所、年月日時、送達の方法を記載し、送達吏自ら之に署名捺印したる上、受取人をして受取證を作らしめ、之を其送達證書に添ゆる事を要し、若し受取人が受取を拒みたるとき、若くは受取證を作る能はざる旨を述べたるときは、其事由を證書に記載せざるべからず、現今各裁判所にては、通常印刷したる送達證書の用紙を用ひ、之に送達吏及び受取人をして、必要の事項を記入せしむるの便法を取るものの如し。(民訴一五一條一項二項)
- 英
- Certificate of delivery
- 独
- Einlieferungsschein
- 仏
- Document de la délivérance
送致
(そうち)送附致達の意にして、元來、致なる文字は、彼の引致に於けるが如く、物の送附又は送達と異なり、人の送附又は送達を意味するものの如し、例へば刑事訴訟法六四條に「檢事は、被告事件其裁判所の管轄に屬せざるものと思料したるときは、之を管轄裁判所の檢事に送致すべし」とあるが如き場合に、所謂送致は、事件の引渡しと同時に、被告人の送致を意味するが如し、但し同六六條に「證憑及び事實參考と爲るべき事物を送致し云々」とあれば、爾かく一定せる用法なきものとす。
總取締役
(そうとりしまりやく)總取締役とは、株式會社に於ける取締役の全員と云ふ義なり、非訟事件手續法の規定に依れば、株式會社設立の登記は、總取締役及び總監査役より、又支店の設立、本店又は支店の移轉、其他變更の登記は、總取締役より之を申請するを要し、株式合資會社の組織を變更して、株式會社としたる場合に於ける設立登記は、新に設立したる株式會社の總取締役、及び總監査役より之を申請することを要するものとす。(非訴事件手續法一八七條及び二〇一條參照)
- 英
- All directors
- 独
- alle Aufseher
- 仏
- Chef de directeurs
贈與
(ぞうよ)廣く贈與とは、當事者の一方が、他の一方に自己の財産を無償にて移轉する契約を云ふ、贈與は、一種の契約にして、當事者の一方が、自己の財産を無償にて他の一方に與ふる意思を表示し、之に對して他の一方が承諾の意思を表示するときは、茲に贈與の契約は完成するものとす、贈與の要件とする處は、自己の財産を無償にて相手方に與ふるに在り、然れども其與へんとする財産は、必しも契約の當時贈與者の所有に屬することを要せず、將來他人より或財産を讓受けて與へん事を約するも妨げなし、次に贈與は我民法上原則として、諾成契約に屬すべきものなるを以て、當事者の意思表示と同時に成立し、何等の方式を必要とせざるも、書面に依らざる贈與にして、未だ其履行をなさざるものは、當事者に於て、何時にても之を取消す事を得べきが故に、贈與をして完全なる效力を生ぜしめんと欲せぼ、書面を作製するか、若くは其履行の手續を完了することを要す、さればとて、贈與は決して書面を要する契約即ち要式書面契約となるにあらず、又贈與の目的物たる財産を引渡す事を要する、所謂要物契約ともなるに非ず、即ち贈與は、唯書面に依らざる場合には、其履行前なるときは自由に之を取消す事を得るに止るのみ、隨つて書面に依らざる贈與と雖も、若し當事者が之を取消さざるときは、依然として其效力を存續するは勿論の事とす、當事者が贈與の當時其權利移轉の時期に就き、特別の意思を表示せざるときは、之を普通の原則に從ひて解釋し、特定物に就ては契約と同時に其權利を移轉し、不特定物に就ては、之を特定したる時に於て、移轉するものとす、次に定期の給付を目的とする贈與、例へば子が親に對し、月々其養料を與ふる如き贈與は、何時まで其效力を存續すべきやといふに、當事者間に反對の意思表示なき場合に於ては、通常此種の贈與は、各自の終身を期して贈與をなし、又は受くることを約するものと認むるを至當とす、故に法律は、此種の贈與は、贈與者又は受贈者の死亡に因り、其力を失ふべきことを規定せり、次に或る義務の附著せる物件を贈與の目的となす事あり、法律上之を負擔附贈與と云ふ、此種の贈與は、純然たる贈與にあらざるを以て、贈與に關する規定を適用すると同時に、賣買契約の如き雙務契約に關する規定を適用せらるるものとす、贈與者の死亡に因りて、其效力を生ずべき贈與、即ち死因贈與は、所謂遺贈の權利關係と異ならざるを以て、之等の贈與に關しては、遺贈の規定を適用せらるるものとす。(民五四九條乃至五五四條參照)
- 英
- Gift
- 独
- Schenkung
- 仏
- Don
總豫算
(そうよさん)總豫算とは、各省に於ける豫算に對し、會計上收入豫算、及び支出豫算の全部を合したるものを云ふ、會計法第二條に「租税及び其他一切の收納を歳入とし、一歳の經費を歳出とし、歳入歳出は總豫算に編入すべし」とある、これ其用例にして、國家の總豫算は、前年の帝國議會開會の始に於て、之を政府より先づ衆議院に提出するものとす。
- 英
- General budget
- 独
- allgemeiner Finanzplan
- 仏
- Budget général
贈與者
(ぞうよしや)贈與者とは、或財産の贈與をなさんとする者を云ふ、贈與契約一方の當事者にして、或財産を、無償にて其の相手方に與へんとの意思を表示する者にして、其贈與を受くる相手方を受贈者と云ひ、受贈者に對して贈與者とは云ふ也、凡て契約の申込は、承諾の期間を定めて爲したる場合には、其期間内、又承諾の期間を定めずして、隔地者に爲したる場合には、相當の期間内之を取消すことを得ざるを、我民法上の原則となす、然るに贈與なる契約は、書面に依らざる場合には、其履行前に於て自由に之を取消す事を得べきを以て、贈與者は贈與の契約をなすと同時に、其目的物を相手方に引渡すべき義務を負擔すれども、其履行前に於ては、何時にても之を取消す事を得べく、又贈與の申込も、何時にても自由に之を取消す事を得べきが故に、書面に依らざる贈與にして其履行前に於ける贈與者の義務は、極めて心易きものと云ふを得べし、次に其履行後に於ける贈與者の義務如何と云ふに、贈與なるものは、贈與者が、自己の財産を無償にて與ふるものにて▲其厚意に出る場合多く、隨つて賣買其他の有償契約の如く、其目的物に就き充分の責任を負はしむるは、甚だ酷に失するの嫌あり、然れども如何なる財産を贈與するも、全然其責に任ぜしめざるときは、時に相手方をして、意外の損害を受けしむるの虞なしとせず、爰を以て法律は、贈與者をして贈與の目的たる物又は權利の瑕疵又は欠缺に就き、其責に任ぜしめざるを原則とし、唯だ贈與者が其瑕疵、又は欠缺を知りながら、之を受贈者に告知せざりし場合にのみ、其責に任ぜしむるものと定めたり、但し所謂負擔附贈與の如きは、其性質、無償契約なると同時に、有償契約に屬するを以て、其負擔即ち義務の限度に於て、賣主と同じく、擔保の責に任ずべきものとせり。(民五五一條及び贈與の部參照)
- 英
- Donor
- 独
- Schenker
- 仏
- Donateur
總領事
(そうりやうじ)總領事とは、最上級に位する領事を云ふ、領事は、其權限の廣狹に從ひて通常之を四種の楷級に分つ、總領事、領事、副領事及領事代理これなり、而して總領事は、この領事の最上級に位するものにして、其掌理する處の事務は、普通の領事に異なることなしと雖も、普通の領事は、一貿易地に於ける事務を管掌するに反し、總領事は、一國の領土内に於ける各貿易地、又は數個の貿易地に關する事務を管掌し、且つ同一任國に在勤する領事以下を監督するものとす、外交官及領事館官制第三條一號に「總領事」とあるは一例なり。
- 英
- Consul-general
- 独
- General-konsul
- 仏
- Consul-général
贈遺
(ぞうゐ)汎ねく贈遺と云へば、或は贈與、及び遺贈の二を意味し、或は單に所謂遺贈の義に用ひられ、或は遺贈の目的物たる財産の義を意味することあり、故に此語の用例殆ど一定せざるものと云ふべし、要するに贈遺なる語は、多くは贈與遺贈の略語として使用せられ、又は遺贈に關する行爲自體、又は之に關連する各種の場合を意味するものと云ふべし。(舊刑二一○條參照)
- 英
- Gift
- 独
- Geschenk
- 仏
- Legs
疎虞
(そぐ)疎虞とは、刑法上の用語として、或程度の不注意に基く過失を意味す、例へば或人が或所爲を實行せんとするに際し、其の所爲に原因する意外の結果を生ずる事あるべきを、全然覺知せざるにあらざるも、多分斯かる結果を生ぜざるべしと輕信して、其の所爲を實行せんに、意外の結果を生ずるときは、之を疎虞に基く過失の所爲と云ふが如し、若し其時全然注意を缺きたるが爲め、意外の結果を生じたる場合には、所謂懈怠に基く過失の所爲に屬すべきを以て、要するに疎虞は充分の注意を拂はざりしがため、生じたる過失と云ふことを得べし、疎虞と懈怠と異なる處は、全然注意を缺くと否なとに依りて分るるものとするを通説とし、疎虞又は懈怠の所爲に基き、生じたる意外の結果は、共に避け得べきものなりしを、不注意に因り生ぜしめたるものにして、全く犯罪の意思を欠缺すと雖も、刑法上過失の罪として其責任を問はるるなり。(舊刑法三一七條、及び過失、懈怠の部參照)
- 英
- Negligence
- 独
- Nachlässigkeit
- 仏
- Négligence
即決
(そくけつ)警察署長、及び分署長又は其代理たる官吏が、其管轄地内に於て犯したる違警罪に付き、裁判の正式を用ひず、被告人の陳述を聽き、證憑を取調べ、被告人現在せざるときは、之を呼出すことなく、若くは呼出すとも出頭せざるときは、其訊問をなす事無く、直に刑を言渡す行政處分也、被告人は、此即決言渡に對し、出席したる場合には、言渡の日より三日内に、缺席したる場合には、言渡の送達ありたる日より五日内に、其言渡をなしたる警察署を經て、相當裁判所の正式裁判を請求することを得、違警罪の即決は、上記の如く行政處分にして、然も司法の行爲に屬するが故に、或ば憲法上之が違憲にあらざるやの疑問生ず、即ち憲法第二四條に「日本臣民は法律に定めたる裁判官の裁判を受くるの權を奪はるることなし」とあり、然るに違警罪の即決の如きは、行政官吏たる警察署長が爲すものなれば、彼等は所謂法律に定めたる裁判官にあらざるや明也、從て違憲にあらざるなきかの疑問を生ず、されど現時の通説としては、即決に對して正式裁判を仰ぐを得べしとの理由に基き、僅に此違憲問題を誤魔化すを例とす。(違警罪即決例一、二、五條)
- 英
- Summary judgment
- 独
- sofortige Entscheidung
- 仏
- Jugement précis
即時
(そくじ)即時とは、なほ即刻と云ふが如し、即ち或事實に對し、現在の時を云ふものとす、例へば期間計算の場合に於て、或事實の發生したる時より、即時に起算するものとせば、即時とは、即ち其標準となるべき事實に對し、現在の時を指すが如き之なり、民法第一三九條、及び刑事訴訟法第一五條等に「即時」とあるは其用例なり。
- 英
- Immediateness
- 独
- Unmittelbar-keit
- 仏
- Immédiate
即時抗告
(そくじかうこく)民事訴訟法上に於ける抗告の一種にして、法律が、明文を以て特に許るせる場合に、七日の不變期間内に於て申立る抗告を云ふ、其普通の抗告と異なる點は、即ち即時抗告は、七日の不變期間内に申立る事を要するものなるに反して、普通の抗告に就ては、訴訟法上抗告期間に關し、特別の規定なきことの一事のみ、其他の點に就ては、兩者殆ど異なることなし。(民訴三八條、五二條四項、五七條三項、八五條三項參照)
- 英
- Immediate complaint
- 独
- sofortige Beschwerde
- 仏
- Plainte im-médiate
即時設立
(そくじせつりつ)株式會社の設立に當りて、講學上彼の漸時設立に對し、其發起人が株式の總數を引受けて、直に設立の手續を了するを即時設立と云ふ、商法は、株式會社の發起人が、株式の總數を引受けたるときは、會社は之に因りて成立するものとし、發起人が株式の總數を引受けざるときは、株主を募集し、株式總數の引受ありたるときは、各株に就き第一回の拂込をなさしめ、創立總會を召集して、其創立を決す、此の場合に前者を稱して即時設立と云ひ、後者の場合を漸時設立と稱す。(商一二三、一二四條)
- 英
- Immediate establishment
- 独
- unmittelbare Errichtung
- 仏
- Etablisse-ment immédiate
即時犯
(そくじはん)即時犯とは、犯罪成立の態樣による區別にして、彼の繼續犯又は連續犯に對して、單に一所爲を完成すると同時に、一罪を構成すべき犯罪を云ふ、即ち犯罪たる所爲を完成するや、直に一罪を構成完結して、犯罪狀態の即時に止るものを即時犯と云ふ也、例へば人を殺し物を盜む所爲の如し、人を殺すの所爲を完成すれば、直に殺人罪を構成し、物を盜むの所爲を完成すれば、直に竊盜罪を構成すべく、而して其犯罪狀態は、其所爲の完結と同時に終はる、固より犯罪の準備、及び其所爲を行ふ時間は、如何に長きも問ふ處にあらず、此即時犯に對するものを所謂連續犯とす、連續犯とは、一罪の成立して、後猶犯罪狀態の繼續するものを云ふ、例へば人を監禁する罪の如し、即ち監禁の所爲を完成し、人の自由を拘束すると同時に、監禁罪を成立すべきも、其犯罪狀態は即時に完結することなく、何時までも監禁を解くまでは、同一の狀態に於て繼續するなり、即ち知るべし、此兩者の區別は、犯罪成立上の狀態に基くものなるを。(繼續犯の部參照)
屬人主義
(ぞくじんしゆぎ)人の到る處法之に從ふの主義を屬人主義と云ふ、即ち人を基本として、或法律關係を定むる法制なり、例へば外國人の私法上の關係を定むる場合に於て、其外國人の本國の法律規定に依らしむるが如きは、即ち屬人主義の法制なり、抑も屬人主義と云ひ屬地主義と云ふも、皆外國人の私法的關係を定むる法制に關する主義を云ふものにして、其公法的關係は、一に其在留國の法律に從ふべきを原則とす、此屬人主義の準據法を定むるに、また幾多の主義あり、英米の法制は其の所屬國の如何を問はず、其本人の現に住所を有する國家の法律に因るべきものとし、大陸諸國は、槪して其所屬國の法律に從はしむるの主義を採れり、我國の法制は、本國法主義を原則となし、其國籍の知れざる場合には、例外として住所地法及び現在地法に據るべきものとす、此屬人主義の起源は、遠く羅馬の末葉に在り、蓋し當時領土なる觀念の未だ確立せざりしがため、或種族に屬する者は、何處に到るも、其種屬の法律に從ふものとの思想に基きしなり、此主義に次で起りたるものを屬地主義となす。(屬地主義の部參照)
- 英
- Personal theory
- 独
- Per-sonalitätsprinzip
- 仏
- Théorie territoriale
屬人法説
屬人法説とは屬人生義に關する學説を云ふ。(前項參照)
屬人地役
(ぞくじんちえき)學理の上に於て地役と云へば、之を廣義に於ては、他人の土地を自己の用に供する物權の總稱にして、別ちて屬人地役、屬地地役の二となす、屬人地役は、一に之を人的地役と稱し、人の利益又は便宜の爲めに他人の土地を使用するを謂ひ、彼の用役權、使用權等之也(羅馬法に於ては地上權、永小作權も此一種なりき)、屬地々役は、之を地的地役と云ひ、我民法は、之のみを地役權となす、即ち土地の利益の爲めに他人の土地を使用する權利にして、例へば通行權、汲水權の如し、我民法は此の屬人地役を認めず。(地役權、人的地役の部參照)
- 英
- Personal servitude
- 独
- per-sönliche Servitut
- 仏
- Servitude person-nelle
族稱
(ぞくしよう)族籍の稱呼を族稱と云ふ、即ち華族、士族、平民の稱を云ふ、戸籍法第四四條第三號に族稱とあるは、此用例の一とす、所謂華族の稱は、明治二年六月の御沙汰に「自今公卿諸侯の稱を廢して華族と稱す」とあり、士族の稱は、明治三年一〇月の布告に、非藏人、北面舊官人、執次使番仕丁等を廢し士族卒と改め、宮華族三代相恩の家士を士族の中に加ふ」とあり、平民の稱は、明治五年五月第二九號布告に「二代以上の卒を士族に加へ、一代抱の卒を平民に復す」とあり、明治八年三月第四四號を布告し「人民署名肩書は何(府縣)華族、士族、平民と記載可致此旨布告候事、」とあるは是なり。(戸籍法一六四條乃至一六六條)
- 英
- Rank
- 独
- Reihe
- 仏
- Rang
屬籍
(ぞくせき)籍とは個人と、其存在する地との關係を云ふものにして、屬籍とは即ち這個の關係の屬する地を云ふ、換言すれば人が何れかの國籍、本籍、寄留籍等に屬するやの關係を云ふものにして、或學者は屬籍なる語を解して、「人類自然の存在に免るべからざる、所爲若くは人爲に係る適法の所爲(入籍の許可)に依り、人々の屬する地及び生存の途を計劃する地(住所地)を云ふ」と説明せり。(刑二三一條)
族籍
(ぞくせき)族籍とは、族稱屬籍と云ふの義なり、例へば何府又は縣華族、又は士族、若くは平民と云ふが如し、明治七年七月布告第七四號に「族籍」とあるは之其用例なり。
- 英
- One's citizenship
- 独
- Eigenschaft eines Bürgers
測地學委員會官制
(そくちがくいいんくわいくわんせい)本官制は、明治三一年四月勅令第八四號を以て公布せられたるものにして、其規定事項の槪要を摘記すれば、測地學委員會は、委員長一人、幹事一人、委員十人以内を以て組織し、委員長及び委員は、測地學に關係ある官廳の高等官中より、幹事は委員中より、文部大臣の奏請に依り、内閣に於て之てを任命す、又臨時必要ある場合には臨時委員を置く事ありとす、此外文部屬より選任せられたる二人の書記ありて、上官の指揮を承け議事を筆記し、庶務の整理に任ず、測地委員會は、文部大臣の監督の下に、萬國測地學協會に關する事務を掌理し、及び測地學に關する事項を攷究し、又測地學に關し各省大臣の諮詢に應じて、意見を開申すべきものにして、尚各省大臣に測地學に關する建議をなす事を得るものとす、而して委員長は、測地學委員會一切の事務を總理し、萬國測地學協會に對し帝國委員を代表するものなり。
- 英
- Government organiza-tion of the committee of land-servey
- 独
- Behördeordnung der Messkunstscomités
- 仏
- Organisation du comité de l'arpentage de la terre
屬地主義
(ぞくちしゆぎ)屬地主義とは、國家の法制上個人の私法的關係を定むる場合に於て、其在留せる國家の法律に依らしむる主義を云ふ、即ち土地に基きて法律關係を定むる主義なり、例へば外國人の私法上に於ける關係を定むるに、全然其所屬國の法律を認むることなく、總て在留國の法律規定に依らしむるは、之即ち屬地主義の法制なりとす、抑も此屬地主義の法制は、中世、羅馬の末葉に其濫觴を發したるもの也、蓋し當時所謂屬人主義に依る法制の不便甚だしき事を經驗し、且つ漸く領土的觀念の發達したるが爲め、茲に初て屬地主義の法制を見るに至れり、即ち屬地主義は、屬人主義に代て行はれたるものなるも、全然此主義に依る法制を實行するときは、個人の法律上の地位は變動常なく、其在留地を轉ずるに從て權利の消長を來すのみならず、實際上に於ても極めて不便を免れず、例へば一國に於て成年者なる者も、一步其領土を越ゆれば忽ち未成年者となり、或は一國に於ては有效の行爲も、一たび國外に出れば無效となるが如く、其不便實にいふべからざるものあるべし、爰を以て此主義の法制も終に衰運に趣き、所謂法性主義なる、法制の之に代て採用せらるるに至れり。(屬人主義の部參照)屬地法説とは、屬地主義に關する法學上の學説を云ふ。(前項參照)
- 英
- Territorial principle
- 独
- Terriotrialprinzip
- 仏
- Principe territor-ial
屬地法説
- 英
- Territorial theory
- 独
- Ter-ritorialtheorie
- 仏
- Théorie territoriale
即納
(そくなふ)即納とは、即時納附と云ふの義にして、私人が官廳に對し、税金又は物件の賣下代金等を、或事實の發生したる際即時に納入するを云ふ、營業税法第二〇條但書に「但し廢業するときは、未納の税金は即納とす」とある是其用例なり。
- 英
- Ready pay in
- 独
- sofortige Zahl-ung
- 仏
- Paiement immédiate
續柄
(ぞくへい)續柄とは、なほ間柄と云ふに同じ、即ち或人と他の人の間に於ける親族上の關係と云ふの義なり、戸籍法第四五條第一項及び二項に「續柄」とあるは其用例なりとす。
- 英
- Relation
- 独
- Beziehung
- 仏
- Relation
屬領地
(ぞくりやうち)或國家の附屬領地と云ふの義なり、抑も領土なる語を廣義に解するときは、苟も所謂領域高權の及ぶべき地は、之を其本圍領土と云ふことを得、隨て附屬領土なる名稱を用ふる必要なし、然れども之を狹義に解するときは、領土とは、其本國の領域を指稱し、領地又は屬領地とは、其本國の領域より隔離したる領土を指稱す、例へば臺灣及樺太の如きは、之を廣義に解すれば日本の領土にして、之を狹義に解すれば日本の屬領地なりとす、又夫の殖民地の如きは、之を屬領地と云ふことを得べく、所謂勢力圏の如きは之を屬領地と云ふことを得ざるべし、要するに或土地が或國家の屬領地なるや否やは、其國家の領域高權の下にあるや否や、其土地との關係は、國内法の關係なるや否やに依りて之を決すべきものとす。
- 英
- Dependent domain
- 独
- Neben-land
- 仏
- Domaine dépendant
測量認可證
(そくりやうにんかしやう)鑛物の採掘を出願するため、他人の土地を測量する必要ある場合に、所轄鑛山監督署より受くる測量の認可證を測量認可證と云ふ、此認可證を受くるときは、他人の所有地と雖も、自由に測量をなすことを得べく、又土地の所有者は之を拒むことを得ざるものにして、尤も測量せし爲に損害を生じたるときは、測量者に於て、其賠償の責に任ずべきは勿論也。(鑛業法施行細則六一條、鑛業法五二條乃至四五條參照)
- 英
- Survey license
- 独
- Ver-messungserlaubnisschein
- 仏
- Certificat de l'arpentage
訴願
(そぐわん)訴願を廣義に解するときは、憲法上の請願及所謂行政訴願を包含すべし、然れども通常之を狹義に解して、單に行政訴願のみを指稱す、行政訴願とは、行政官廳の不當處分に因りて利益を毀損せられたる私人が、其處分の取消又は變更を其上級官廳に求むることを云ふものにして、一方に於て請願に對し、他方に於て行政訴訟に對するものとす。(行政訴願の部參照)
訴願期限
(そぐわんきげん)訴願期限とは、行政官廳の違法處分に對し、訴願をなし得る期間の終期を云ふ、行政官廳の處分に對し、何時にても訴願に依り、之が取消又は變更を請求し得るものとせば、殆ど確定の期なく、隨て之が爲に動もすれば公益を害するの虞なしとせず、且つ行政上の不便實に少々ななりとせず、爰を以て一定の期間を定め、如何に不當の處分と雖も、法定の期間を經過するときは、確定して動すべからざるものとするは、固より至當の法制と云はざるべからず、現行訴願法の規定に依るときは、此の期間は、行爲處分を受けたる後六十日間にして、訴願に對する行政官廳の裁決に對し、更に其上級官廳に對し訴願する場合は、其裁決を受けたる後三十日間とす、されど行政官廳に於て、宥恕すべき事由ありと認むるときは、期限經過後に於ても、尚之を受理することを得とあり、即ち訴願期限とは此訴願をなし得る法定期間の終期を云ふものとす。(二三年法一〇五號訴願法八、一〇條)
訴願書
(そぐわんしよ)訴願の趣旨を記載したる書面を云ふ、現行訴願法の規定に依れば、訴願は書面を以てすべきものにして、行政處分に對する不服の要點、理由、要求及訴願人の身分、職業、住所、年齡を記載し、訴願人之に署名捺印することを要す、多數の人員共同して訴願せんとする場合には、其訴願書に、各訴願人の身分、職業、住所、年齡を記載し、各訴願人之に署名捺印し、其中より三名以上の總代を選びて之に委任し、其總代委任の正當なることを證明する事を要す、此訴願書は、之に必要なる證據書類を添へ、若し一たび裁決を經たるものなる時は、其裁決書を添へ、其處分又は裁決をなしたる行政官廳を經て、其直近上級官廳に提出すべきものとす、尤も郵便に付して差出すも妨げざるものなり、之を受取たる行政官廳は、處分に對する訴願なるときは十日内に、裁決に對する訴願なるときは三日内に、辯明書及び必要文書を添へて、其上級官廳に差出すものとす、要するに訴願は、書面審理を原則とするを以て、訴願書は最も重要なるものの一なりとす。(訴願法五條乃至七條、九條乃至一二條)
訴願人
(そぐわんにん)訴願人とは、行政官廳の不當處分に因り、利益を毀損せられたる者にして、訴願法の規定に從ひ、訴願を提起する人を云ふ、多數の人員共同して訴願する場合には、其中より三名以上の總代を選びて訴願する事を要し、訴願せんとする者が法人なる時は、法人の名を以て訴願を提起する事を得るものとす、訴願を代理人に委任する事は、訴願法の禁ずる處にあらざるを以て、代理人に依て訴願するを妨ずと雖も、他の法令の規定に基き、訴願する場合にして、其法令に特別規定あるものは、固より其規定に從はざべるからず、訴願は、原則として書面審理なるを以て、訴願人は自ら出頭するを要せずと雖も、行政官廳に於て口頭審問を必要とする場合には、其呼出に應ぜざるべからず、訴願は、法律勅令に別段の規定ある場合を除き、訴願に係る處分の執行を停止せざるを本則とするも、訴願人は、事件の性質に依り、其停止を必要とするときは、執行停止を申立る事を得るものとす。(訴願法七、一二條乃至七一三條參照)
- 英
- Demandant
- 独
- Forderer
- 仏
- Demandeur
訴願法
(そぐわんはふ)訴願法は、明治二三年十月法律第百五號を以て公布せられたるものにして、訴願をなし得る事件、訴願を提起すべき官廳、訴願書、訴願期限、訴願の效力及び其他訴願等手續を規定せり。(行政訴願、訴願期限、訴願書、訴願人の部參照)
訴權
(そけん)訴權なる語の意義に就ては、學者間に議論あり、一言にして盡さば、原告が被告の域不正に對し、裁判上の保護を求むる權利に外ならすと雖も、訴權なる權利に對する義務者の何人なるやは、容易に決しがたき問題也、蓋し訴權を以て、裁判所に對する原告の權利なりとするときは、訴權は公權の一種なりと云ふべく、若し被告に對する原告の權利なりとするときは、訴權は私權の一種なりと云はざるべからず、即ち訴權の何人に對する權利なるやの問題は、訴權の性質の因て岐るる論點なりとす、現今多數の學者は、訴權を以て一種の公權なりと論定せり、然るに或學者は、訴權の性質を分析して、訴權には、公法的訴權と私法的訴權との二性質ありとなし、即ち公法的訴權とは、裁判所に對し訴訟的供述の承認及び請求したる私法的給付に關する宣言の實行に於て、被告を強制せしめんが爲に成立せる原告の權利にして、訴訟法の認むる所也、而して私法的訴權とは、原告が被告に對し、裁判所に於て自己に利益ある判決を受くる權利にして、民法の認むる所なり云々と論ぜり。
- 英
- Litigious right
- 独
- Actio
- 仏
- Action
組織
(そしき)組織、組織的は、夫れ々々體系、體系的と云ふに同じ、同條を見られよ。
- 英
- System
- 独
- System
- 仏
- Système
租借
(そしやく)租借とは、國際間に於ける一種の土地貸借の關係を云ふ、例へば往年獨乙の清國膠洲灣を租借せるが如き、或は露國の清國に於ける租借地たる、旅順口及び大連灣を我戰捷の結果、露國より承繼したるが如き之也、抑も此租借なる貸借關係の實例は、一八九四年英國とコンゴー國との間に締結せし條約を以て、〓矢となし、次て清國問題に於て之を見るに至れり、而して其名義は租借と稱し、土地貸借の一種に外ならずと雖も、其期限永遠に亘り、且つ貸借の性質と相容れざる各種の權利を、借用國が行ふを常とするを以て、其實際の性質に關しては、學者の間に議論少しとせず、或學者は之に對し、縱令表面上貸與國の領土たる名を存すと雖も、事實上に於ては、借用國が全然其土地を占領し、且つ所謂領域高權より生ずる諸種の權利を行ふものなるを以て、租借の性質は、貸借關係にあらずして、即ち一種の條件附土地割讓なりと論ぜり、要するに清國に於ける租借の如き、其條約に「中國の帝權は、稍損礙あることを得ず」との規定を存すと雖も、其期限何れも九十九年の長きに亘り、殆ど割讓と區別する處なきなり。
訴訟
(そしよう)訴訟とは、裁判所に對し、裁判を要求する行爲を云ふ、裁判とは、或實在の事件に對し、法規の適用をなすことを云ふ、現行法上訴訟は之を大別して、民事訴訟、刑事訴訟及び行政訴訟の三種となす、此三種の訴訟の異同を槪言すれば、或實在の事件に對し、法規の適用を定むる國家の行爲を要求するの點に於ては、三者各異なること無しと雖も、其性質に於て、相異なるものとす、即ち□一民刑訴訟は、司法裁判所の管轄に屬すれども、行政訴訟は、行政裁判所の管轄に屬す、□二刑事訴訟は、刑事法を適用し、民事訴訟は民事法を適用し、行政訴訟は、行政法規を適用す、□三刑事訴訟は、干渉主義の訴訟なるに反して、民事訴訟及び行政訴訟は、不干渉主義の訴訟なり、斯くの如く三者の間には劃然たる差別あり、隨つて各其訴訟の手續法を異にす、即ち刑事訴訟は、刑事訴訟法の規定に依るべく、民事訴訟は、民事訴訟法の規定に依るべく、行政訴訟は、行政裁判法の規定に依るべきものとす。
- 英
- Action
- 独
- Prozesz
- 仏
- Procès
訴狀
(そじやう)提起すべき訴の趣旨を記載したる書面を訴狀と云ふ、民事訴訟法の規定に依れば、訴狀には、□一當事者及び裁判所の表示、□二起したる請求の一定の目的物及び其請求の一定の原因、□三一定の申立なる三要件を具備するを要し、其他準備書面に關する一般の規定に從ひ之を作り、且つ裁判所の管轄が、訴訟物の價額に依て定る場合に於て、訴訟物が一定の金額にあらざる時は、其價額を揭ぐるものとす、茲に請求の一定の原因とは、原告より被告に對する實體法上の請求權を發生する權利關係を云ふものにして、其歷史的事實を開示するを要せず、次に一定の申立とは、判決の請求の義にして、此申立は、主として如何なる判決を求むるものなるやを明示するに在り、原告が此訴狀を裁判所に差出すときは、茲に訴の提起ありたるものにして、裁判所は、口頭辯論の期日を定め、其訴狀を被告に送達するものとす、然れども若し其訴狀、上述の要件に缺くる處あるときは、裁判長は相當の期間を定めて、其期間内に欠缺の補正を命ずるものとす、原告若し此命令に從はざるときは、其期間の滿了後に於て、其不完全なる訴狀は差戻さる、此差戻の命令に對しては、原告即時抗告を爲すことを得べし。(民訴九〇條及び九二條參照)
- 英
- Petition
- 独
- Klageschrift
- 仏
- Pétition
訴訟委任
(そしよういにん)訴訟代理の委任を訴訟委任と云ふ、民事訴訟法の規定に依れば、訴訟は、本人自らなすを原則となし、本人自ら之を爲さざる時は、辯護士を以て代理人となすべきものとす、然れども辯護士のあらざる場合には、訴訟能力者たる同居の親族、若くは雇人を以て代理となし、若し此等の者あらざる場合には、其他の訴訟能力者に委任して、代理をなさしむる事を得、但し區裁判所の管轄に屬する事件に付ては、辯護士の在る場合と雖も、同居の親族、又は雇人に委任する事を許せり、蓋し區裁判所の管轄に屬する事件は、凡て輕易のものなるに依るなり、茲に辯護士あらざる時と云ふは、必ずしも其管轄内に辯護士の無き場合のみを云ふにはあらずして、辯護士あると雖も、其辯護士が事故ありて、訴訟委任を受くる能はざる場合をも包含するのものとす、即ち法律上及事實上に於て、辯護士の無きときと解すべきものとす、而して訴訟委任は、口頭辯論の期日、又は受命判事若くは受託判事の面前に於てなす場合には、口頭を以て委任をなす事を得べきも、其他の場合に於ては、書面即ち委任狀を以てなすべきものとす、之裁判所をして、委任の有無及び其權限の範圍を調査するの便宜を得しめんがために外ならず、普通の場合に於て訴訟委任の範圍は、特別の明約なくとも、當然反訴、主參加、故障、假差押、若くは假處分、又は強制執行に因り生ずる訴訟行爲を併せて、訴訟に關する總ての訴訟行爲をなし、及び相手方より辨濟する費用の領收をなす權限を授與せしものと看倣さるるものにして、之を訴訟委任に關する法律上の範圍と云ふ、蓋し此種の行爲は、委任事項を仕遂ぐるに必要の權限なるを以て、當然委任したるものと推測し得べければなり、然れども控訴、若くは上告をなし、再審を求め、代人を任じ、和解をなし、訴訟物を抛棄し、又は相手方より主張したる請求を認諾する如きは、當然委任したりと推測しがたきを以て、訴訟代理人が此等の事をなすに就ては、特別の委任を要するものとす、元來委任は一個の契約なるを以て、當事者の意思により、其權限の範圍を伸縮するは固より其自由なるも、此法律上の範圍を制限するも、相手方に對し、其效力なきものとす、但しこは辯護士に依れる代理の場合のみに限るものにして、其他の者に委任する場合には、各個の訴訟行爲に就き、委任をなすを妨げず、訴訟委任に欠缺あるときは、原告、又は被告のため、其代理人なきものと看倣ざるべく、隨て委任に欠缺ある代理人を差出したる原告、若くは被告は懈怠の結果を受くることを免れざるべし、而して裁判所は、何時にても委任の欠缺を調査し、若し欠缺ありたる場合には、其既になしたる訴訟行爲は無效に屬すべきを以て、其訴訟を却下すべきものなり、然れども、裁判所は、調査の結果委任なく、又適式の委任なきことを發見するも、其代理人として出頭する者に、事情に從ひ、其欠缺を補正し得べきものと認むるときは、費用及損害の保證を立てしめ、又は之を立てしめずして、假りに訴訟を繼續することを許すことあり、此場合には、裁判所の定めたる期間内に於て、其欠缺を補正するを要し、若し此期間以後に於て、口頭辯論を開く事あるときは、其判決に接著する口頭辯論の終結まで、之れを補正することを得べきものとす、之れに反して適式の委任ある場合には、其訴訟代理人が、委任の範圍内に於てなしたる訴訟上の行爲及び不行爲は、原告若くは被告に對しては、其本人の行爲、又は不行爲と同一の效力を有すべく、但し其代理人の事實上の陳述は、共に出廷したる原告若くは被告より、即時に之を取消し、又は更正したるとに限り、其效力を失ふものとす、委任者の死亡、訴訟能力の喪失、若くは法律上代理の變更、委任の廢罷及代理の謝絶に因る委任の消滅は、其消滅を通知するまで相手方に對し其效力なく、此通知書は、原告若くは被告より之を受訴裁判所に差出し、裁判所は之を相手方に送達するものとす、代理の謝絶ありたる場合に於て、代理人は、其委任者が他の方法を以て、自己の權利の防衞をなさざる間は、其委任者のために必要なる行爲をなすことを得べし、委任狀の書式は、明治六年第二一五號布告の規定に基きて調製すべきものにして、同布告第七條に依れば其書式左の如し。
拙者(拙者共)儀某ノ事件に付キ何ノ誰ヲ以テ總理代人(部理代人)ト定メ拙者ノ名義ニテ左ノ權限ノ事ヲ代理爲致候事
一何々ノ事(但し權限の次第を分條記載すべし)
右代理ノ委任狀仍テ如件
年號年月日
住所身分姓名□印
後見人等は住所身分何の誰の後見人何の誰と記すべし
次に刑事訴訟は、被告人自ら出廷するを要するを以て、原則としては、訴訟委任なるものなし、唯例外として、罰金以下の刑に當るべき犯罪及上告事件に就てのみ代理人を用ふるを得べし。(民訴六三乃至七一條、刑訴二一三二七九條)
- 英
- Authority to conduct a suit
- 独
- Prozeszvollmcaht
- 仏
- Autorisation du procès
訴訟行爲
(そしようかうゐ)ある訴訟事件に關し、裁判所及訴訟當事者の爲す行爲を訴訟行爲と云ふ、裁判所のなす訴訟行爲の重なるものは、訊問、證據調及び判決等の行爲にして、當事者に於ては、訴の提起に始まり、判決ある迄の間に於ける各種の攻擊及防禦に關する行爲等とす、元來訴訟は、其提起に始まり、判決あるに至りて終るものにして、其間に於ける裁判所及び各當事者の爲す數多の行爲にして、苟しくも當該訴訟事件に關するものならんには、皆之を訴訟行爲と云ふべきなり、民事訴訟に於て、訴訟行爲を怠りたる原告若くは被告人、其行爲を爲すの權利を失ふものにして、蓋し數多の訴訟行爲は、之を順序よくなし、以て訴訟の錯雜と迅速とを欲するものなれば、訴訟行爲をなすべき一定順序を怠りたる原告被告は、其の行爲をなす能はざる失權の效果を來すべきは素より其の所なり、但し法律は此懈怠の結果に對し例外を設けて、天災其他避くべかざる事變の爲めに、不變期間其他訴訟行爲を爲す能はざりし者の爲め、原狀回復を許すものとせり。(民訴一七三、乃至一七七條、及び原狀回復の部參照)
- 英
- Procedure act
- 独
- Prozesz-betrieb
- 仏
- Acte de la procédure
訴訟關係人
(そしようくわんけいにん)民事刑事の訴訟又は行爲訴訟に於て、其判決に就き利害の關係を有する者を訴訟關係人と云ふ、民事訴訟に於て之を例へば、原告被告を初め、主參加人、從參加人の如き何れも訴訟關係人と云ふべし、刑事訴訟法第一八條に「訴訟關係人」とあるは此の用例なり。
- 英
- Litigant
- 独
- Prozesz-beteiligte
- 仏
- Plaideur
訴訟參加
(そしようさんか)第三者が他人間に起りたる訴訟に參與することを云ふ、訴訟參加は、之を大別して主參加及び從參加となす、主參加とは、他人の間に權利拘束となりたる訴訟物の全部、又は一部を自己の爲に請求する目的を以て、其原被告を共同被告として爲す獨立の訴を云ふ、主參加人たることを得べき者は、其參加せんとする訴、即ち本訴訟の係爭物上に、請求權を有する者なる事を要す、主參加人の請求は本訴の請求と同一性質に屬することを要せずと雖も、其請求せんとする處の目的物は、本訴訟の目的物自體に關することを要す、而して主參加の訴訟を管轄する裁判所は、本訴の既に繫屬したる第一審の裁判所なりとす、抑も此主參加訴訟は一個獨立の訴なるを以て、訴訟上に於ける主參加人の地位は、普通訴訟の原告と異なることなく、隨つて普通訴訟の原告がなし得べき總ての行爲は、主參加人も亦之をなし得るのみならず、主參加訴訟をなす手續は、普通の訴訟手續に依るべきものとす、主參加訴訟にして、原告、及被告の共謀に因り、自己の償權を害せんとする場合に、其原被告を共同被告として訴ふるものは、講學上之を特別主參加と稱し、其他の主參加を一般主參加と稱す、此二者は共に主參加の訴訟に屬すと雖も、其間には劃然たる差違あるものとす、即ち一般主參加の場合に於ては、其目的とする所は、直に本訴の目的物を請求するに在れども、特別主參加の場合に於て、其目的とする所は、直に本訴の目的物を請求するにあらずして、唯自己の債權を保護せんとするに在る也、主參加は上述の如く、主參加の請求せんと欲する目的物が、既に他人の間に起りたる訴訟に於て、權利拘束となりたる場合に、本訴訟が第一審に於て繫屬したる裁判所に、其權利拘束の終りに至るまで、何時にても之をなすことを得るものにして、主參加の訴あるときは、本訴が其一審に繫屬すると、上級審に繫屬するとを問はず、原告、被告若くは主參加人の申立に因り、又は職權を以て、主參加に付ての權利拘束の終に至る迄、裁判所は、本訴訟の進行を中止する事を得べきものとす、此中止の申請は、書面又は口頭を以て本訴の繫屬する裁判所になすものとす、次に從參加とは他人の間に權利拘束となりたる訴訟に於て、第三者が自己の利益を保護する爲め、其訴訟に參加して、原告若くは被否の一方を補助するを云ふ、從參加は他人の間に權利拘束となりたる訴訟に於て、其一方の勝訴に因り、利害の關係を有する者が、原告若くは被告を補助するため、其訴訟に附隨するものにして、權利拘束の繼續する間は、訴訟の如何なる程度にあるを問はず、之をなす事を得べきものとす、從參加は分て普通從參加及び告知參加となす、□一普通の從參加とは、即ち原告若くは被告より、告知あると否とに關せず、自ら進んで參加するを云ふものにして、從參加人は、自己の利益を保護するために、原告若くは被告を補助する者なるを以て、其補助する原告若くは被告の利益のために、攻擊及防禦の方法を施用し、其他總ての訴訟行爲をなす權利を有す、されど獨立せる主なる訴訟人にあらざるが故に、其主たる原告若くは被告に附隨する者にして、從參加人の爲にし得べき訴訟行爲の範圍は制限せらるるものとす、尚其爲したる陳述及び行爲は、主たる原告若くは被告の陳述及び行爲に牴觸せざる範圍に於てのみ、其效力を有するに過ぎす、隨つて本訴訟の裁判は、直接從參加人に其效力を及す事なし、唯從參加人は主たる訴訟人の如く、自ら是認する攻擊及び防禦の方法を施用し、且つ其他の訴訟行爲を爲したるものにあらざるが故に、其補助したる原告若くは被告との關係に於ては、間接に其裁判の影響を受くるに過ぎずとす、即ちイ從參加人が、附隨の時に於ける訴訟の程度に依り、攻擊及び防禦の方法を施用し能はざりしとき、ロ主たる原告若くは被告の所爲に依り、攻擊及び防禦の方法を施用する事を妨げられたるとき、ハ主たる原告若くは被告が從參加人の當時知らざりし攻擊及び防禦の方法を、故意又は重過失に依り、施用せざりしときの三場合に於ては、其裁判の效力は從參加人に影響を及ぼさざるものにして、從參加人は、其主たる原告若くは、被告が訴訟を不充分になしたりと主張する事を得るものとす、從參加は、本訴訟の繫屬する裁判所に、申請を以て爲すべきものにして、此申請は書面を以てすることを要し、其書面には、(甲)原被告の氏名、及び訴訟事件の標目、(乙)從參加人が有する一定の利害關係(丙)參加せんとする旨の陳述等の要件を開示せざるべからず、此申請に關する書面は、之を當事者に送達すべきものにして、原告若くは被告は、從參加に付き異議の申立をなし得べく、若し異議の申立あるときは、裁判所は當事者及び從參加人を審訊したる後、參加の許否を裁判するものとす、從參加人は、又當事者双方の承諾を得て、其附隨したる原告若くは被告に代り訴訟を擔任する事を得、此場合に於ては、其原告若くは被告の申立に因り、判決を以て訴訟より其原告若くは被告を脱退せしむるものとす、□二告知參加とは、他人の間に權利拘束となりたる訴訟に於て、第三者が自己の利益を保護する必要より、原告若くは被告を保護する爲、其原告若くは被告の告知に依りて、其訴訟に附隨するを云ふ、此告知は原告若くは被告が、若し敗訴するときは、第三者に對し擔保又は賠償を請求し得べしと信じ、又は第三者より請求を受くべき事を恐るる場合に於て、訴訟の權利拘束の間、之を其第三者に告知するに依る、此告知をなし得る者は、獨り原被告のみに限らず、從參加人も亦之を爲し得るものとす、告知參加は、訴訟の現に繫屬する裁判所に、書面を提出して之を爲すものにして、其書面に訴訟告知の理由及び訴訟の程度を記載すべきものとす、又此の告知參加を分て、一般告知參加及び本人告知參加となす、一般告知參加とは、以上述ぶる處のものにて、本人告知參加とは、第三者の名を以て物を占有する事を主張する者が、其物の占有者として被告となりたるとき、本案の辯論前第三者を指名し、之に陳述をなさしむるため其呼出を請求したる場合に、其第三者が參加するを云、本人告知參加は、一に之を指名參加と云ひ、此參加人たるを得べき者は、自己の名を以て他人が占有する物に關し、其の訴訟の起りたることの告知を受けたる者にして、之を本人告知參加人と云ふ、斯くの如く第三者の呼出を請求したる被告は、第三者の陳述をなし又は之をなすべき期日まで、本案の辯論を拒むことを得べく、又第三者が被告の主張を爭ふとき、又は陳述をなさざるときは、被告は原告の申立に應ずることを得べし、而して第三者が被告の主張を正當と認むるときは、被告の承認を得て之に代り、其訴訟を引受くる事を得るものとす、此場合には裁判所は、被告の申立に依り、其被告を訴訟より脱退せしむるものなり、然れども其目的物に就ての裁判は、被告に對しても效力を有し、且つ之を執行するを得べきものとす。(民訴一編二章三節參照)
- 英
- Intervention
- 独
- Interven-tion
- 仏
- Intervention
訴訟上の救助
(そしようじやうのきうじよ)民事訴訟法上、訴訟費用を支辨せずして、訴訟を爲すことを得しむるを訴訟上の救助と云ふ、即ち貧究にして、訴訟費用を支辨する能力なきが爲め、權利を伸張すること能はざる者を救助する目的に出でたる制度なり、此訴訟上の救助を受んとする者は、法律に規定する條件に該當する者ならざるべからず、民事訴訟法上、訴訟上の救助の條件として規定する處のものを擧ぐれば、一裁判費用を支辨するときは、爲に自己及其家族の必要なる生活を害すること、□二目的とする權利の伸張、又は防禦の輕忽ならず、又は目的を達する見込なきにあらざること、□三國際條約又は其屬する國の法律に依り、日本人が同一の場合に於て、訴訟上の救助を求むるを得ることの三條件なり、以上の條件に該當する場合には、内外國人を問はず、訴訟上の救助を受くることを得べし、而して此訴訟上の救助に因て生ずべき效力を擧ぐれば、第一裁判費用(國庫の立換金を包含す)を清濟することの假免除、第二訴訟費用の保證を立ることの免除、第三送達及び執行々爲を爲さしむるため、一時無報酬にて執達吏の附添を求むるの權利等とす、此外受訴裁判所は、必要なる場合に於て、訴訟上の救助を受けたる原告、若くは被告の申立に因り又は職權を以て、一時無報酬にて辯護士の附添を命ずることを得るものとす、此訴訟上の救助は、各審級に於て之を附與するものなるが故に、第一審に於て附與せられたるものは、其の審級に限り效力を有し、第二審に於ては其效力を有せざるが故に、若し第二審に於ても、訴訟上の救助を得んと欲すときは、更に其手續を爲すべきものにして、救助を求むる手續は、各審級に於ける訴訟に就ての管轄裁判所に、書面又は口頭を以て其申請をなすべきものとす、此申請ありたるときは、裁判所は、檢事の意見を聽きたる後、決定を以て其許否を裁判するもの也、申請者は、其申請に訴訟の關係を表明し、且つ證據方法を開示することを要し、同時に、管轄市町村長より發したる證書を提出せざるべからず、此證書は即ち□一の條件を證明するものなるが故に、申請者の身分、職業、財産幷に家族の實況及其納むべき直税の額を開示し、訟訴費用支拂の無資力を證するものならざるべからず、最も前審に於て救助を受けたるときは、其上級審に於ては、更に其無資力を證するを要せす、此救助の許可は、上述の如き效力を生ずべきも、當事者双互の關係に於て生ずる訟訴費用に就ては、何等の關係を有せざるが故に、相手方に對する辨濟の義務を免るることを得ざるは勿論、假免除を受けたる金額は、申請者が、救助を受くべき條件を失ふに至りたるときは之を辨濟せざるべからず、訟訴法上之を金額追拂の義務と稱す、次に訟訴上の救助の消滅原因は、一申請者の死亡、蓋し此救助なるものは、當事者の一身に止るものなるが故に、申請者の死亡に因りて其效力を失ひ、其承繼人に及ぶことなし、□二救助の取消、即ち最初より救助を受くべき者にあらずして救助を受けたるとき、又は訟訴中救助を受くる條件の消滅せんがため、裁判所に於て之れを取消したる場合、□三訟訴上の救助の終了、□四訟訴上の救助の抛棄、此抛棄は、裁判上明示にて抛棄したるものなることを要す、尚此他訟訴上の救助は、其之を受けたる者の資格の變更、又は國際條約の變更等に因り消滅すべきは言を俟たざる所とす、而して救助を受けたる原告、若くは被告の爲、假に清濟を免除したる裁判所費用は、訴訟費用に就き、確定裁判を受けたる相手方又は訴、若くは上訴の取下、抛棄、認諾、若くは和解に因り、訴訟費用を負擔すべき相手方より之を取立つるものにして、救助を受けたる原告、若くは被告に附添ひたる執達吏又は辯護士は、同一の條件あるときは、自己の權利に依り費用確定の方法を以て、其手數料及び立替金を取立ることを得るものとす、後に訴訟上の救助の付與幷に辯護士附添の命令に就ての申請、訴訟上救助の取消及び數額追拂の義務に就ての裁判は、口頭辯論を經ずして之をなすことを得るものにして、訴訟上の救助を付與し又は其取消を拒み、若くは費用追拂を命ずることを拒む決定に對しては、檢事に限り抗告をなすことを得べく、辯護士の附添を命ずる決定に對しては、檢事と雖も上訴をなすことを得ず、又訴訟上の救助を拒み、若くは取消し、又は辯護士の附添を拒み、及び費用の追拂を命ずる決定に對しては、原告若くは被告は抗告をなすことを得べし。(民訴一編二章七節及び追拂の部參照)
- 英
- Succor in litigation
- 独
- Unterstützung an Prozesz
- 仏
- Secoursen procès
訴訟上の保證
(そしようじやうのほしやう)民事訴訟法上、當然爲すことを得べからざる行爲を、特に其行爲者のために爲すことを許したる場合に於て、其相手力に被らしむることあるべき損害を補償する必要より、豫め其行爲者に命じて立てしむる保證を云ふ、訴訟上の保證は、法律上當然爲すことを得べからざる行爲を、特に許したる場合、例へば適式の委任なき訴訟代理人に、其委任の欠缺補正を條件として、訴訟行爲を許すが如さ場合に於て、相手方が被ることあるべき損害に對し、豫め立てしむる保證を云ふ也、然れども外國人が、原告又は原告の從參加人たる場合に於ては、特別の場合の外、被告に對し、其求に依り、被告の訴を受けたるが爲、各審級に於て支出すべき訴訟費用の額を標準として、裁判所の確定したる數額の保證を立ることを要するのみならず、訴訟中に不足を生じ、且つ追增保證を立つ可きことを被告が求むるときは、爭なき請求の部分が、擔保に十分なるときの外、其追增保證を立てざるべからず、其特別なる場合とは、民事訴訟法の規定に依れば、□一國際條約又は原告の屬する國の法律に依り、本邦人が同一の場合に於て保證を立る義務なきとき、□二反訴の場合、□三證書訴訟及び爲替訴訟の場合、□四公示催告に基き起したる訴の場合等是なり、但し外國人が被告の求に依り保證を立るは、本邦人の負擔せざる特別の義務なるを以て、以上特別の場合に保證を立る義務を免ると雖も、本邦人が保證を立つべき義務を有する場合には、之を免るる事を得ざるは勿論の事とす、訴訟上の保證は、當事者が其保證の數額に付き、別設の合意をなす場合、又は民事訴訟法の規定に依り、保證を定むる事を裁判所の自由なる意見に任する場合の外は、裁判所の意見に於て充分なりと認むる現金、又は有價證券を供託して之をなすべきものなり、次に裁判所は保證を立つべき期間を定めて、之を命ずるものなるを以て、此期間の經過後裁判あるまでに、其保證を立てざる場合に於ては、被告の申立に因り判決を以て訴を取下げたりと宣言し、又原告が上訴をなしたるときは、其上訴を取下げたりとの宣言をなすものとす、即ち保證期間懈怠の結果は、當然生ずるものにあらずして、被告の申立に因るべく、而して判決を以て宣言すべきものなるが故に、口頭辯論を開くべきものとす。(民訴一編二章六節及增額擔保の參照部)
- 英
- Security in litigation
- 独
- Prozeszpfand
- 仏
- Garantie en procès
訴訟代人名簿
(そしようだいにんめいぼ)明治三十六年一月法律第五號臺灣辯護士規則の制定施行以前、臺灣に於て訴訟の代理業を營める者の氏名を登錄せる名簿を云ふ、此訴訟代人名簿なるものは、臺灣の各地方法院に備へ置きたるものとし、、訴訟代人にして、之に新規登錄を願ふ者は、二十圓、登錄替を願ふ者は十圓、登錄の取消を請求する者は一圓の登錄手數料を納附するを要するものとせり。(三一年一月臺灣總督府令二號訴代人規則)
- 英
- List of process attorney
- 独
- Liste der Prozeszanwalte
- 仏
- Liste des avoués
訴訟代理
(そしようだいり)訴訟代理とは、民事訴訟法上、原告若くは被告に代て訴訟行爲をなす事を云ふ、抑も民事訴訟に關する法制には、當事者訴訟主義及び辯護士訴訟主義の二種ありて、當事者訴訟主義の法制に在ては、當事者は自ら出廷して訴訟行爲をなすことを要し、又辯護士訴訟主義に在ては、必ず辯護士に委任して、訴訟をなすことを要するものなり、我民事訴訟法は、此二主義を折衷し、當事者自らなすにあらざれば、辯護士をして代理せしむる事を原則とし、例外として區裁判所の管轄に屬するが如き輕易なる事件、及び辯護士の在らざる場合に限り、其他の者に代理せしむる事を許せり、而して當事者が、他人をして訴訟代理をなさしたる場合には、其代理人のなしたる行爲は、被代理人の爲に效力を生じ、被代理人は代理人の行爲に因り或は權利を得、或は義務を負ふべきものなるが故に、訴訟代理人として他人のために訴訟行爲をなす者は、要するに訴訟行爲の主體となるに止り、其行爲の實質に就ての主體は、全く當事者本人なりとす。(訴訟委任の部及び次項參照)訴訟代理人とは、訴訟當事者の委任に因り、當事者に代て訴訟行爲をなす者を云ふ、訴訟代理人なる者は、原告若くは被告、參加人又は法律上の代理人の委任を受け、訴訟をなす者にして、抑も訴訟委任は一種の契約也、隨つて代理人となるべき人及び其代理權の範圍は、當事者が自由意思を以て隨意に之を定むることを得ざるべからず、然れども民事訴訟法上、訴訟代理人及其代理權の範圍に關しては、大に其制限を受くるもの也、□一即ち訴設代理人に就ては、辯護士を以て代理せしむるを原則となし、辯護士在らざる場合には、同居の親族又は雇人を以て訴訟代理人となすを要し、若し之等の者在らざる場合にのみ、其他の訴訟能力者を以て、訴訟代理人となす事を得、唯訴訟事件として區裁判所の管轄に屬するときは、辯護士在るときと雖も、同居の親族又は雇人を以て、訴訟代理人となす事を得と定めたり、□二訴訟代理人の代理權の範圍に關しては、辯護士を以て其代理人となしたる場合には特別の委任なきも、當然反訴、主參加、故障、假差押若くは假處分又は強制執行に因りて生ずる訴訟行爲を併せ、訴訟に關する總ての訴訟行爲を爲し、及び相手方より辨濟する費用の領收を爲す權限を授與したるものと看做さる、これを訴訟代理に關する法定の範圍となす、蓋し委任に係る事項を仕遂ぐるには必要の範圍にして、且つ普通なるを以てなり、而して此法定の範圍に關して加へたる制限は、相手方に對し對抗するを得ざるものとす、最も代理人が控訴をなし、若くは上告をなし、再審を求め、代人を任じ、和解をなし、訴訟物を抛棄し、又は相手方より主張したる請求を認諾するが如き行爲は、通常委任者の意思に因り委任したるものと推測すべからざるものなるを以て、代理人が此等の行爲をなすに就て、特別の委任を必要とす、次に委任者が數人の代理人に同一の訴訟事件を委任したる場合には、其數人の代理人は、法律上共同又は各別に訴訟行爲をなすことを得るものとす、此共同又は各別に訴訟行爲をなすことを得るものとなせるは、委任者と訴訟の相手方との關係に就て規定したるものなるが故に、縱令委任者が訴訟代理人に對して、常に共同してのみ訴訟行爲をなすことを得との契約をなしたりとするも、其制限は、相手方に對して何等の效力を有するものにあらず、されど委任者と受任者との間に於ては、委任者の加へたる制限の有效なるは勿論の事なりとす。(民訴一編二章四節及び訴訟委任の項參照)
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- Legal representation
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- Prozeszvertretung
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訴訟代理人
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- Legal representative
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- Prozeszvertreter
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訴訟手續
(そしようてつづき)訴訟事件に關し、裁判所職員及訴訟當事者、又は訴訟代理人が、法律の規定に從て行ふ必要の手續を訴訟手續と云ふ、訴訟手續は、其訴訟手續法即各種の訴訟法の規定に從て適法に爲さざるべからず、若し不適法なる訴訟手續の無效に屬すべきは勿論のこととす、例へば刑事訴訟に關する手續は、刑事訴訟法の規定に從ふを要し、民事訴訟に關する手續は、民事訴訟法の規定に從ふを要し、行政訴訟に關する手續は、行政訴訟法の規定に從ふを要するが如し。
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- Process
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- Verfahren
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- Procès
訴訟能力
(そしようのうりよく)訴訟能力とは、訴訟法上の用語にして、訴訟法上獨立して訴訟行爲をなし得る資格を云ふ、此訴訟能力は、訴訟法上所謂當事者能力なるものとは別異の觀念也、即ち當事者能力とは、訴訟法上訴訟の當事者、例へば原告若くは被告たり又は參加人たることを得るの能力を云ふものとす、隨て訴訟能力を有する者は、必ず當事者能力を有する者と云ふを得べきも、當事者能力を有する者は、必しも當事者能力を有する者と云ふことを得ず、蓋し當事者能力は、訴訟法上權利義務の主體たる能力を云ふものにして、多くは私法上權利義務の主體たる能力を有する者が、訴訟上其權利を伸張し、其防衞をなし得る能力を有するものなりとす、然れども私法上權利義務の主體たる能力を有する者は、必ずしも法律行爲をなし得る能力を有せざるが如く、訴訟法上當事者たることを得る能力を有する者は、必ずしも訴訟行爲をなし得る能力を有せざるなり、法律行爲をなし得る能力と訴訟行爲をなし得る能力とは、相一致するものなりと雖も、必ずしも之れを區別し得ざるにあらず、則ち訴訟行爲をなすことを得る能力は、法律行爲をなすことを得る能力の必然の結果と云ふを得ざるも、民事訴訟法第四三條の如く「原告若くは被告が自ら訴訟をなし、又は訴訟代理人をして之をなさしむる能力は、民法の規定に從ふ」とあるに依て、同一範圍となるものとす、即ち民法上、法律行爲をなし得る能力は、訴訟法上、訴訟行爲をなし得る能力と一致するものにして、其一致するは、當然一致するにあらず、訴訟法の規定を前提として一致するものなるを知るべし。
訴訟能力者
訴訟能力者とは、訴訟法上獨立して訴訟行爲をなし得る能力を有する者を云ふ、彼の訴訟無能力者に對するの語なり、民法上所謂能力者即ち丁年以上にして、禁治産者又は準禁治産にあらず、且つ健全なる意思能力を有する者は、訴訟法の規定に依り、訴訟能力者となす。(訴訟能力及び訴訟無能力者參照)
訴訟無能力者
訴訟無能力者とは、訴訟法上訴訟能力なき者を云ふ、訴訟法の規定に依れば、訴訟能力の如何は民法の規定に依るべきものとなせり、即ち民法上法律行爲をなすべき能力を欠缺する者は、訴訟法上又訴訟無能力者と云はざる可らず、民法上の無能力者には、一般無能力者と限定無能力者との二種あり、一般無能力者とは、一般に自己の利害を判斷するに足る意思能力を欠缺するものと認められたる者を云ふ、例へば未成年者及び禁治産者の如き之なり、限定無能力者とは、或法律行爲を限定して、其行爲能力に制限を加へられたる者を云ふ、例へば準禁治産者及び妻の如き之なり、而して此外一般に行爲能力を有せざる者あり、即ち法人とす、此等訴訟無能力者が訴訟をなさんとするは、法律上代理人に依るか、否らざれば保佐人又は夫の同意を得ざるべからず、裁判所は訴訟無能力者が法律上の代理人に依らず、又は保佐人若くは夫の同意を得ずしてなしたる訴訟行爲は、當然無效に屬すべきを以て、訴訟の如何なる程度に在るを問はず、職權を以て當事者の訴訟能力を調査すべきものとす、訴訟能力の欠缺は、所謂隨意に抛棄する事を得ざる防訴抗辯の理由となるべきものにして、當事者に於ても訴訟の程度を問はず、相手方の訴訟能力に欠缺あることを申立るを得べし、若し夫れ裁判所の調査若くは當事者の申立に依り、訴訟能力に欠缺ある事を發見したるときは、其者のなしたる訴訟行爲は、全然無效となるべし、然れども裁判所は、或事情の下に欠缺補正の條件を以て、一時訴訟行爲をなすことを許すことあり、或事情とは、訴訟能力に欠缺ある當事者が、其欠缺を補正し更に訴を起すときは、遲滯のため危害を生ずるの虞あり、且つ其欠缺にして相當の期間内に補正を爲し得るものと認めたるときを云ふ、此場合に於て裁判所は、相當の期間を定めて欠缺の補正を命ずるものにして、欠缺ある當事者は、其期間内は勿論、判決に接著する口頭辯論の終結迄欠缺の補正を追完することを得べし、次に訴訟無能力者に對し訴を起さんとするには如何にすべきやと云ふに、其者の法律上代理人あるときは、勿論其法律上代理人を相手取ることを得べきも、若し其者に法律上代理人無きときは、其法律上代理人の定まるを待たざるべからず、然れども之が爲めに訴訟を遲滯し、危害の恐ある場合には、裁判所に對し、所謂特別代理人なる者の任命を申請する事を得べし、此申請は書面又は口頭を以て之をなすことを得るものにして、其裁判は口頭辯論を經ずして之をなし、裁判の結果は之を申請人に送達し、又申請を認許したるときは、其任ぜられたる特別代理人にも亦之を送達するものとす、此特別代理人は、裁判長の任命するものにして、法律上代理人の出頭する迄、其行訴訟爲に就き、法律上代理人の權利及義務を有するものとす、即ち特別代理人の任命は、遲滯のため危害を生ずる■あることを法定の條件となす、最も其被告たる無能力者の特別裁判籍に訴を起さんとする場合にして、其法律上代理人が其地に居らざるときは、此條件を缺くと雖も、原告は特別代理人の任命を申請する事を得べきものとす、而して前の場合に於て、申請を却下する裁判に對しては、申請者は抗告をなすことを得べきも、此場合に特別代理人を命ずると否とは、一に裁判長の職權に屬すべきが故に、其申請却下の裁判に對しては、抗告をなす事を得ざるなり、外國人の訴訟能力に就ては、自國の法律に從ひ、訴訟能力を有せざるも、我邦の法律に從ひ訴訟能力を有する者なるときは、之を有する者と看做さるるものとす。(民訴一編二章一節參照)
訴訟法
(そしようはう)訴訟法とは、各種の訴訟手續を規定したる法規を云ふ、之を廣義に解するときは、凡て訴訟の手續を規定したる法規は之を訴訟法と云ふを得べきも、狹義に解するときは、即ち訴訟法なる名を以て制定せられたる法規を云ふものとす、例へば刑事訴訟法及び民事訴訟法の如き之也、現行刑事訴訟法は、明治二三年十月法律第九六號を以て公布せられ、同年一月一日より施行せられたるものにして、同三二年三月多少の改正を施されたり、而して現行民事訴訟法は、明治二三年三月法律二九號を以て公布せられ、同二四年一月一日より施行せられたるものとす。
訴訟費用
(そしようひよう)民刑訴訟又は行政訴訟事件に關し、其提起より終結に至る迄の間に於て生ずる一切の費用を云ふ、訴訟費用は、之を狹義の訴訟費用と裁判費用とに分つ事を得、即ち裁判費用とは、訴訟上國と當事者との關係より生ずる費用を云ふものにして、狹義の訴訟費用とは、訴訟上當事者相互の關係に於て生ずる費用を云ふ、隨て刑事訴訟及行政訴訟に於て生ずる費用は、多く裁判費用に屬し、之に反して民事訴訟に於ては、此兩種の費用を生ずるものとす、訴訟費用に就て、實際上最も議論の生じ易きは民事訴訟の場合也、以下聊か民事訴訟の費用に關し説明せん、上述の如く訴訟費用なる語を廣義に解するときは、民事訴訟の提起より其終結に至るまでの間に於て生ずる一切の費用を云ふ、而して通常單に訴訟費用と云ふ時は、之を廣義に用ふ、而して民事訴訟に於て議論を生ずるは、訴訟費用の性質又は其範圍に關する問題にあらずして、其負擔に就ての問題也、抑も訴訟法上、訴訟費用は、其費用を生じたる原因を作爲したる者をして負擔せしむるを原則となす、然らば其原因を作爲したる者は、原告なるや將た被告なるやと云ふに、即ち訴訟の原因を作爲したる者は被告なるを以て、訴訟費用の負擔者は被告なりと云ふ事を得、されど原告にして理由なき訴訟を提起したるときは、訴訟費用の負擔者は原告なりと云はざるべからず、我民事訴訟法に於ては、訴訟費用は敗訴者の負擔すべきことを原則となし、勝訴者の負擔すべき場合を例外となせり、蓋し敗訴者をして其費用を負擔せしむるは、其敗訴者の原告たると被告たるとを問はず、畢竟訴訟費用の原因を作爲したるがためならずんばあらず、即ち上記の原則を採用したるものと云ふことを得べし、然らば勝訴者をして訴訟費用を負擔せしむるは、這般の原則に例外をなすものなるやと云ふに、勝訴者が訴訟費用を負擔せしめらるるは、要するに訴訟上不必要なる行爲をなしたる場合に於て生じたる費用なり、即ち斯かる費用の原因を作爲したる者は敗訴者にあらずして、勝訴者の過失に基くものなるを以て、訴訟上攻擊防禦に不必要なる費用に就き、勝訴者をして之を負擔せしむるも、決して原因の作爲者を負擔者となすてふ原則に例外をなすものにあらざるを知るべし、勝訴者が訴訟費用を負擔すべき場合は、□一或は攻擊若くは防禦の方法を提出したるも其目的を達せざりしとき、□二第二審に於て新に提出したる事實又は攻擊、若くは防禦の方法に依り勝訴者となりたる場合に於て、裁判所が其事實又は攻擊若くは防禦の力法は、既に第一審に於て之を提出し得たるものと認めたるときの二場合にして、尤も被告の作爲に因りて訴を起すに至りたるにあらざる場合に、被告が直に原告の請求を認諾したるときは、原告が勝訴となりたるに拘らず、其訴訟費用全部を負擔せざるべからざるは勿論のことたるべし、而して訴訟中に訴の取下をなし、又は請求を抛棄し若くは相手方の請求を認諾したる者は、法律上敗訴者と看做さるるものとす、裁判の結果當事者の双方が一部は勝訴となり、一部は敗訴となりたる場合には、裁判所は其意見に依り或は當事者をして其訴訟費用を相消せしめ、或は割合を以て之を分擔せしむるものとす、當事者が訴訟物に就き和解をなしたるときは、其和解の費用は、訴訟費用と共に相消したるものと看做さるれども、若し當事者間に於て費用の負擔に就き合意をなしたるときは、其合意に依りて負擔を定むるを得べきは固より隨意とす、次に共同訴訟人は、相手方に對し、平等に之を分擔せざる可らず、然れども共同訴訟人の各自が、訴訟に關して有する利害關係著しく懸絶する場合には、裁判所は、其關係の割合に比例して、費用の負擔をなさしむることを得るものとす、裁判所書記、法定代理人、訴訟代理人又は執達吏の過失若くは懈怠に依りて生じたる費用は、申立に依り、或は職權を以て、此等の者に其費用を負擔せしむる事を得、後に此訴訟費用の負擔に附ての裁判は、其訴訟に就き、最終の裁判をなす場合にあらざれば之を言渡す事を得ざるものにして、若し上訴裁判所が下級審の裁判を變更したるときは、其審級に於て生じたる費用は勿論、下級審に於て生じたる費用負擔に就ても亦裁判をなすべく、下級裁判所に事件を差戻し若くは移送したる場合に於ては、其下級裁判所は上訴の費用をも併せ、總ての費用に付き裁判をなすべきものとす、而して訴訟費用の負擔を定むる裁判は、單に負擔のみを定むるものにして、其數額に就て、何等の裁判をなすものにあらず、故に訴訟費用の負擔を命ぜられたる者に對して其辨濟を求むるに就ては、先づ其數額を定めざるべからず、此數額に就て爭あるときは、當事者は裁判所に向て更に訴訟費用の確定を求め、此決定に依り相手方に對し執行をなさざるべからざるものとす。(民訴一編二章五節參照)
租税
(そぜい)國家又は公共團體が、法律の規定に因り、其收入として、強制的に人民一般より徵收する處の貨資を租税と云ふ、租税は、國家又は公共團體が、法律の規定に基き、強制的に賦課徵收する貨財にして、一般人民が法律上の義務として負擔する處のもの也、財政學上租税の基礎、即ち人民は、抑も如何なる理由に因り、納税の義務を有するかに就ては議論少しとせず、然れども法律上より之を見るときは、極めて簡單也、即ち納税の義務なるものは、國民が國家の統治權に服從する結果、當然生ずる處の義務なり、夫れ國家は、統治を特權として立つ處の人格也、然れども國家が其統治權を實行するは、其目的にあらずして其手段なり、國家の目的とする處は共同の生存也、國民が一致結合して一個の有機的團體を組織するは、實に這般の目的を達せんがために外ならず、而して國家は、其目的を達する手段として統治權を實行するなり、即ち知るべし國民が國家の統治權に服從するは、國家の目的を達する所以にして、國家の統治權は、國民の服從義務に該當するものなるを以て、隨て國家が統治權を有するだけ、國民に服從の義務あるべきが故に、國民の服從義務は、憲法を外にしては絶對無限なりと云ふことを得べし、納税の義務又實に此服從義務に胚胎するものにして、憲法の規定に依り、法律上の義務として、一般國民の負擔する處のものとす、國民の納税義務は、法律上の義務なるを以て、法律に依るにあらざれば之を賦課徵收することを得ざるもの也、而して外國人と雖も、また日本の領土に居留する間は、日本の統治權に服從せざるを得ず、隨て納税の義務を免るべがらざる固はより其處なり、租税は、種々に之を分類することを得べし、其最も重要なるものを擧ぐれは、□一直接税及び間接税、□二對人税及び對物税、□三配賦税及定率税とす、直接税とは、法律の目的上租税を負擔すべき者をして、自ら直接に納附せしむる處の租税を云ひ、間接税とは、國家が直接に納税義務者に就て租税を徵收せず、先づ他人に之を賦課して徵收し、而して後法律上目的とせる負擔者に、轉嫁せしむる租税を云ふ、次に對人税とは、主觀的に人を看、單に人を人とし、又財産を有し所得を得る經濟上の主體として、賦課する處の租税を云ひ、對物税とは人を離れ、土地家屋と云ふが如き、一定の物體に基きて課せらるる所の租税を云ふ、次に配賦税とは、國家が徵收せんとする租税の總額を定め、課税物件に就きて之を各納税者に配賦するものを云ひ、定率税とは、單に課税物體に對して賦課する税額をのみ確定し、租税の徵收を終りたる後に非ざれば、租税の總額の分明ならざるものを云ふなり、而して尚租税の性質上より觀察して之を分類するときは、一收入税(又は特別所得税)□二人税、□三財産税、□四財産移轉税、□五消費税となす、即ち收入税とは地租、家屋税、營業税、資本利子税又は賃金税等の如く、財産の利用に因り、又は營業に從事するに因り、若くは肉體的精神的勞力に因りて得る各種の收入に課する處の租税を云ひ、人税とは、各納税義務者に同額の税を課する處の人類税、或は納税義務者の中に等級を設け、每等級税率を異にする處の等級税、幷に各人が一ケ年間に得る處の所得全體を調査し、之に基きて賦課する處の一般所得税の如き之なり、財産税即ち財産所得税とは、凡て財産の所有者に其所有財産に應じて課する處の租税を云ひ、財産移轉税とは、凡て動産不動産の移轉に課する處のものにして、消費税とは、各種の消費物に課する處の租税を云ふものとす、又租税を納税物件に依りて分類するときは、物納税、金納税及び夫役税となす事を得べし、尚課税の區域を標準とするときは、内國税及び關税となす、内國税は、之を分て國税、府縣税及び市町村税となす、所謂關税なるものは、即ち國境を出入する物品に對して賦課徵收する處のものにして、之が分課の税率より分ちて、從量税及び從價税となす、從量税とは、賦課物品の數量に從ひて賦課するものをを云ひ、從價税とは、賦課物品の價額に應じて賦課するものを云ふ、租税は法律上一定の税率に基き、一定の課税物體に付き、納税の主體たるべき人民より徵收するものにして、茲に税率と云ふは、課税の物體の單位に對し、租税を賦課するの比準を云ふものにして、納税主體及び課税物體は、既に確定すと雖も、之に對する賦課の比準にして確定せざるときは、納税の義務は、未だ確立せざるものとす、普通租税の徵收方法は、收税官吏が直接に之を行ふ場合と、市町村に對して徵税の義務を負擔せしむる場合との別あり、此場合に於ける市町村は、國家に對する義務團體たる點に於て、徵收の費用を負擔すべきのみならず、其徵收したる税金は直に之を國庫に送付するの責任あるものとし、若し避くべからざる災害に依り、之を失ひたる場合には、其事實を證明し、大藏大臣に對して責任の解除を請はざるべからず、後に徵税の手續は、先づ徵税官吏より法律を執行せんが爲に納税義務者に對し納税告知書を發す、又は市町村に對して、其市町村に於て徵收すべき國税金額を通知す、此通知を受けたる市町村は、更に納税義務者に對し、納税告知書を發すべきもにのして、納税告知書には、納税金額、期日及納税の場所を記載すべきものとす、府縣税の場合に於ては、府縣知事又は委任を受けたる官吏は、納税義務者又ば市町村に對し徵税令書を發す、而して徵税令書を受けたる市町村は、徵税令書に基き、更に納税義務者に對して徵税傳令書を發す可ものとす、此納税告知書と稱し、或は納税令書又は傳令書と稱するも、畢竟皆名稱の差違に止り、其實質に於ては、法律の執行のために發する納税の告知書たるに外ならず。(國税徵收及び同施行細則參照)
租税滯納處分
(そぜいたいのふしよぶん)租税の滯納者に對し、強制的に租税を徵收する行政處分をいふ、租税滯納處分は、行政處分なるが故に、必ず法律の規定に依て之を執行せざる可らず、此滯納處分に關する手續を定めたるものは、即ち國税徵取法及び同施行細則也、而して滯納處分は刑罰にあらずして、徴税の方法なるが故に、滯納者の財産の價額にして、滯納處分の費用を償ふ外、國家に對して、優先の權利を有する債務を控除し、殘餘を得る見込なきときは、滯納處分の執行を止むべきものとす、此滯納處分は、納税義務者が納税を怠りたる場合に執行すべきものなるも、納税期限を過ぎて之を完納せず、收税官吏より督促を受けて、猶其納税をなさざる者に對して、初て此處分を行ふべきものとす、滯納處分は滯納者の財産を差押へ之を公賣に附し、其賣得金より、税額を徵收するものにして、此差押は、裁判上の假差押の爲に其執行を妨げらるる事なし、租税は、元來財政上の收入のために徵收するものなるを以て、夫の徵發の如く他の方法に依りて之を調達し、本人をして後に之を辨償せしむる事能はざるものにして、總ての場合に、納税義務者に對し、直接に其財産の徴收を強要するものたり、若し滯納者が會社なるときは、其無限責任社員は、國家に對して、殆ど連帶に等しき義務を有す、國税の徵收は、原則として凡ての公課及び債權に優先して、之を徵收するを得べきものにして、斯くの如く嚴重の方法を以て、之を執行するものなりと雖も、又納税人及其家族の生活、風教、若くは智育に關し、必要なる物體に對しては自ら其方針を緩ふすべき要ありて、此の方針に基き、法律に於て差押を禁じたる物體を擧ぐれば、□一滯納者、及び其同居家族に必要なる一ケ月間の食料及び薪炭、□二滯納者及び其同居の家族の生活上缺くべからざる衣服、寢具、家具及び厨具、□三實印其他職業上必要なる印、□四祭祀禮拜に必要なりと認むる物及び石碑基地、□五系譜其他滯納者の家に必要なる日記書冊類、□六職業上必要なる制服、祭服、法衣、□七勳章其他名譽の章票、□八滯納者及び其同居家族の修業上必要なる書籍、器具、□九發明又は著作に係る物にして、未だ公にせざるものとす、此他に滯納處分費及び税金を償ふに足るべき物體を提供して、滯納者が其差押を選擇することを得る物體あり、即ち、□一農業に必要なる器具、種子、肥料、及び牛馬幷に其飼料、□二職業に必要なる器具及び材料とす、而して此處分に依り差押へたる物件は、公賣に付すべきを原則とするも、若し公賣に付するも買受人なきか、又は相當見積價額に達せざるときは、其見積價額を以て、之を政府に買上ぐることを得べく、且つ見積價額僅少にして、其公賣費用を償ふに足らざる物體は、隨意契約を以て之を賣却することを得るものとす、直接國税滯納者の納税義務は、滯納處分の結了したるとき、及び其處分を中止したるときを以て終るべきも、間接國税に就ては滯納處分を結了するも、又之を中止したる場合に於ても、滯納處分費及び税金の完納に至らざるときは、納税期限後一ケ年間は、隨時其處分を執行し、其不足額を徵收することを得るものとす、滯納處分執行の場合に於て、滯納者又は滯納者の財産を占有する者が、其財産を藏匿脱漏し又は虛僞の契約をなして、其處分を免れんとしたるとき、又は差押物件の保管者が、其保管に係る物件を藏匿、脱漏、費消、若くは故意に毀損したるときは、何れも一ケ月以上二年以下の重禁錮に處せられ、情を知て以上の處爲を幇助し又は虛僞の契約を承諾したる者は、上記の刑より一等を減ぜられたるものを科せらるるものとす。(國税徵收及び同施行細則參照)
租税特免
(そぜいとくめん)法律の規定に基き特別の場合に、特定の人に對し租税を免除する處分を云ふ、租税を免除するは、法律を要するか、或は普通の命令を以てするも、之をなす事を得べきかに關しては議論あり、多數學者の唱道する處は、法律を要すとなすものの如し、盖し租税は法律上の義務なるを以て、之を免除する揚合に於ても、法律を以てせざるべからず、否らざれば命令を以て、法律を變更する結果を生ずとの理由に基くなり、明治三二年二月法律第三號水害地方地租特別處分法第八條に「此に律より特免したる地租云々」とあるは此語の用例なりとす。
訴追
(そつゐ)或事件の裁判中、其被告に對し、更に檢事より他の罪名に付き起訴するを云ふ、刑事訴訟法第二四一條に「裁判所に於て、輕罪として受理したる事件を重罪なりとするとき、又は檢事より更に其事件を重罪として、訴追することを申立てたるとき」云々とあるは其用例なりとす。
添抵當
(そへていたう)抵當權設定の揚合に於て、主たる抵當に添附したる抵當を添抵當と云ふ、抵當權者が、抵當權實行の場合に、主たる抵當物件の賣却代金を以て、債務の辨濟をなすに不足なるとき、添抵當の物件賣却代金より其辨濟を得る權利を有するものとす。
村
(そん)一定の區域及び一定の人民とより成立する最下級の地方自治團體を村と云ふ、村は最下級の自治團體にして、村より下級の自治團體あることなし、村には一定の區域あり、此區域は、從來の區域即ち明治十一年十七號布告郡區町村編制法に依りて定りたるものにして、村が其區域に對する關係は、恰も國家の領土に對する關係と異ることなし、村は、其區域内の住民に對し命令權を有するものにして、町村の區域は、此命令權の發動する土地的限界たるものとす、而して村は自治權を有すと雖も、村の區域は、同時に國の行政區畫たるべきものなるを以て、自由に此區域を變更する權能を有せず、故に此區域を變更せんとするには、第一次に郡參事會の意見を聞き、第二次に府縣參事會に於て之を議決し、更に内務大臣の許可を受けざる可らず、次に村は、一定の人民の集合體よりなる團體にして、其區域内に在住する人民を住民と云ふ、住民たる資格に伴ふ權利は、村の營造物、幷に住民の共用に供する財産を共同する事を得、又同時に住民として村費を分擔する義務を有す、住民にして一定の條件を具備するものを公民と云ふ、公民の資格を有する者は、村の選擧に參與し、其名譽職に選擧せらるるの權利を有すると同時に、其名譽職を擔任するの義務を有するものとす、村には二種の機關あり、一は村の意思を決定するの機關にして、他は之を執行するの機關之なり、前者は之を村會と云ひ、後者を村長とす、但し小村にありては、郡參事會の議決を以て、條例を設け、公民の總會を以て村會に代ゆる事あり、村會は、村の公民中より公選せられたる村會議員を以て組織し、村會議員の任期は六年にして、三年毎に其半數を改選す、村會の權限は、村の自治團體に關する一切の事件及特に委任せられたる事件を議決し、村の行政の監督、村吏員の選擧、訴願の裁決等をなし、又村の公益に關する事件に付き、監督官廳に意見書を差出し、官廳の諮詢に應じて意見を述ぶる事を得、但し議案を提出する權は、原則として執行機關の有する處とす、村の執行機關たる村長は單獨制の機關にして、村會の選擧する處とす、而して村長の權限は、村會の議決を執行し、國の行政事務を擔任し、外部に對しては村を代表す、此外、村會の議決が權限を越え、法令に違反し又は公益を害すと認むるときは、其執行を停止し之を再議に付する職權を有す、村のに吏員は、有給職と名譽職とあり、名譽職の吏員は法律に定めたる一定の事由又は村會が正當と認めたる事由あるにあらざれば、任期中退職する事を得ざるものとす、村の事務を分ちて、固有事務及び委任事務となす、委任事務とは、他の法規に依り特に委任せられたる事務を云ひ、固有事務とは、村の公共の事務を云ふ、村の固有事務とは、□一村の公共の利益に關するものなること、□二村の區域限り執行し得べきものなること、□三村の費用を以て支辨し得べきものなることの三條件を必要とす、村は、其區域内に執行する條例及規則を制定するの權利を有す、之を村の自主權と云ふ、條例とは、村の公共の事務、及住民の權利義務に關する規定にして、郡參事會の許可を受け、内務大臣、又は内務大藏兩大臣の許可を受くるを要し、規則とは、村の營造物に關する規定にして、郡參事會の許可を受くることを要す、村の財産は之を分ちて、公共の用に供する財産及び住民中特に使用權を有する財産とす、村の公共の用に供する財産は、之を村自身の用に供する財産と、住民一般の利益のために供する財産とに分つ、村の收入には、公法上の收入と私法上の收入との二種あり、即ち公法上の收入は、國庫又は上級地方團體の補助金と村自身の收入とに區別す、村自身の收入とは、□一使用料加入金及び手數料、□二雜收入(過怠金、過料、寄附等の類)□四村税、及び夫役現品等とす、村の支出を大別して、隨意支出及び必要支出の二者となす、必要支出とは、必要の費用なることが法律命令に依りて定れるものを云ふ、此種の支出に就ては、村に於て若し之を豫算中に載せず、又は豫算中に載するも臨時之を承認せず、又は實際に之を支出せざるときは、國家は之を強制して其豫算中に加へ、又は臨時之を支出せしむるの權を有するものなり、隨意支出とは、村の支出中必要支出以外の費用にして、公共の事務に關する支出なりとす、村の會計は之を豫算の調製收入支出の實行及決算の報告とに區別す、豫算は、村長之れを調製し、村會の議決を經て確定するものとす、村の收入支出の實行に就て注意を要するは、收入支出の命令をなす者と、實際の出納をなすものと、其機關を異にすること之なり、即ち收入支出の命令をなすものは、村長又は場合に依りては監督官廳の權限に屬し、實際の出納をなすものは、收入役の職務に屬するものとす、終に村は第一次に郡長、第二次に府縣知事、第三次に内務大臣の監督を受くべきものなり。(町村制參照)
損益計算書
(そんえきけいさんしよ)廣く損益計算書とは、或る事業經營に關する損失及び利益の計算を記載せる書面を云ふ、株式會社の取締役は、定時總會の一週間前に、其會社事業に關する損益計算書を調製して、之を監督役に提出すべき義務を有するなり、商法第一九〇條第四號に「損益計算書」とある其用例なり。
- 英
- Statement of loss and gain
- 独
- Rechnungsschrift des Verlustes und Gewinns
- 仏
- Balance
損害賠償
(そんがいばいしやう)廣く損害賠償といへば、他人の權利を毀損したる者が、之に因りて生じたる損害を補償することを云ふ、民事上に於ける、損害賠償の原因を大別して二種となす、即ち債務の不履行及ひ不法行爲とす、民法第四一五條に「債務者が其債務の本旨に從ひたる履行をなさざるときは、債權者は其損害の賠償を請求する事を得、債務者の責に歸すべき事由に因り履行をなす能はざるに至りたるとき亦同じ」及第七〇九條に「故意又は過失に因りて、他人の權利を侵害したる者は、之に因りて生じたる損害賠償の責に任ず」とある之なり、損害の賠償は、其如何なる原因に基きたるを問はず、其原狀に回復するを以て、理論上其當を得たるものと云はざる可らず、然れども實際原狀に回復する事を得る場合は、極めて少きのみならず、被害者も亦此方法に依て、完全なる賠償を得ること能はざるを通常とす、故を以て法律は、金錢を以て賠償をなさしむるを原則とせり、蓋し金錢は吾人が權利の實行に依りて受くべき利益を測定するに最も適當なるのみならす、自由に他物と交換することを得べくして、吾人の被りたる損害を補償するに、金錢以上の手段無きを以て也、尤も名譽權を毀損せられたるが如き場合に在りては、被害者が唯金錢の賠償を得るのみにては、到底滿足する能はざることなきにあらず、法律は斯かる場合に於ける被害者の意思を酌量し、金錢以外の方法を以て、之を賠償せしむることを許せり、これを損害賠償の特別處分と云ふ、特別處分は、被害者の請求を待て裁判所の定むる迄にして、其事情に從ひ適當の處分を命ずるものとす、例へば新聞紙上に、加害者をして謝罪廣告を揭げしむるが如きは其一方法なるべし、要するに損害を賠償するは、即ち債務の履行に外ならず、而して債務不履行に因る損害賠償は、既に成立せる債務を履行せざるの所爲が原因となりて、茲にまた從たる一種の債務を生ずるものにして、不法行爲の場合は、新に一種の債務を生ずるものとす、損害賠償の請求權は他の權利と同じく、法律上人格を有する者にあらざれば之れを享有するを得ざるは勿論のこととす、然れども不法行爲の場合に在りては、往々其母が殺害せられたるが如き事實に原因して、胎兒の被害者たる事なきにあらず、斯かる場合に、例外として法律は胎兒の利益を保護する目的より、既に生れたる者、即ち私權享有の能力あるものと認むる事ありとす、損害賠償の請求權も他の權利と同じく、多數の年月を經過するときは、諸般の證據湮滅して、其權利義務の關係次第に明瞭を缺くに至るを以て、法律は時效の制を設け、一定の期間を過ぐるときは、其の請求權を行使することを得ざるものとせり、即ち債務不履行の場合に於ける損害賠償の請求權は、普通の債權に同じく十年間、不法行爲の場合には、被害者又は其法定代理人が損害及加害者を知りたる時より、三年間損害賠償の請求權を行はざるときは時效に因りて消滅し、不法行爲の時より二十年を經過したる時又消滅時效に罹るべきもとの定めたり。(民四一五、四一七條及び三編五章參照)
- 英
- Compensation for damage
- 独
- Schadensersatz
- 仏
- Compensation du dommage
損害保險
(そんがいほけん)損害保險は所謂保險の一種にして、各種の損害を保險するものを云ふ、火災保險及び運送保險の如きこれに屬す。(次項參照)損害保險契約とは、當事者の一方が一定の事故に因りて生ずることあるべき損害を塡補する事を約し、相手方が之れに報酬を與ふることを約するに因りて、其效力を生ずる契約を云ふ、損害保險契約は當事者の一方が、偶然なる一定の事故に因りて生ずることあるべき損害を塡補することを約するものにして、一種の射倖契約なり、茲を以て若し契約期間に其損害の生ぜざる時は、損害塡補の義務を免るるものとす、而して生じたる損害を塡補する契約なるが故に、其損害以上の利益を與ふることを約するを得ず、若し夫れ保險を以て利益取得の方法なりとせんか、保險は決して商業社會の利益と云ふを得ざるのみならず、斯かる契約は、保險の性質を脱して一種の賭博に屬するに至る、蓋し保險が一種の射倖契約なるに拘らず、其賭博と異り、商業界の利益として、尊重せらるるの理由は、實に茲に存するもの也、即ち賭博は、其契約に因り、進んで或は損害を被り、或は利益を得るの關係を成立せしむるものなるに反し、保險は、既に存在する所の利益の上に起生する損失を塡補するを目的とするものなり、此故よりして、保險金額が保險契約の目的の價額に超過したる場合には、其超過したる部分に就ての保險契約は、法律上の效力を有せざるに至るものとす、次に此契約に因て保險せらるる利益を被保險利益と云ふ、被保險利益には、法律上一定の制限あるを以て、當事者は、自由に被保險利益を定むるを得ざるものとす、即ち被保險利益は必ず金錢に見積り得べき利益なる事を要す、如何なる利益と雖も、苟も金錢に見積り得べきものは、之を被保險利益となすを妨げずと雖も、若し金錢に見積ることを得ざる利益を以て契約の目的となしたる場合には、其契約は、無效に屬すべし、即ち金錢に見積り得可き限りは之を以て被保險利益となすを得、敢て其利益の自己に屬すると、第三者の利益に屬するとを問はず、されど其利益は偶然の事故に因り、損害を生じ得べき危險のある事を要す、此危險は、必ず偶然の事故に原因するものならざる可らず、隨て被保險利益に生じたる危險にして、保險契約者被保險者若くは保險金額を受取るべき者の故意又は重大なる過失に基くときは、一方の當▲者は保險金額を支拂ふべき義務を免るるを得べきものとす、次に一方の當事者が損害の塡補を約する相手方に支拂ふべき報酬を保險料と云ふ、保險料は即ち危險擔保に對する代價なりと云ふことを得べし、然れども此代價は、賣買に於ける代價と異り、必ずしも金錢たるを必要とせず、故に金錢以外の物と雖ども仍ほ之を保險料となすことを得、例へば社員相互に保險をなすことを、目的として會社を設立したる揚合の如きは、一社員に於て、他の社員の危險を擔保することが即ち此保險料となるが如し、要は唯保險料を支拂ふことは、契約の一要素をなすものなるが故に、契約の當時必ず常事者に於て明示若くは默示の方法に依り、其の數額を決定すべきこと之なり、次に保險契約を記載せる書面を保險證券と云ふ、保險契約には、必ずしも保險證券を作製するを要せずと雖も、通常保險證券を作製するのみならず、保險契約者の請求あるときは、保險者に於てこれを交付するの義務を有す、而して保險證券を作製したるときは、保險者は、□一保險の目的、□二保險者の負擔したる危險、□三保險價額を定めたるときは其價額、□四保險金額、□五保險料及び其支拂の方法、□六保險期間を定めたるときは、其始期及び終期、□七保險契約者の氏名又は商號、□八保險契約の年月日、□九保險證券の作成及び其作製の年月日を記載し、之に署名することを要するものとす、保險契約は、被保險者自ら之を締結することあり、又第三者が被保險者のために、其委任を受けずして、之を取結ぶことあり、此場合には其第三者を保險契約者と云ひ、被保險者と區別す、被保險者及び保險契約者は此契約に因り、如何なる義務を負擔すべきやと云ふに、今其最も主なるものを擧ぐれば、□一保險料支拂の義務、□二被保險利益の損害防止の義務、□三危險の狀況を通知するの義務、□四損害發生を通知するの義務等にして、保險者の負擔すのる義務は、一保險證券交附の義務、二危險擔保の義務とす、後に此保險契約に於て最も重要なる事項は、保險契約者の被保險利益に關する虛陳及び默秘とす、後者は之を開陳の責任と云ひ、前者は之を告知の義務と云ふ、蓋し保險契約は、最上の信用を基礎とする契約なり、これ畢竟此の契約の性質上自ら然らしむる所のものにして、即ち保險契約の目的たる被保險利益に關する各種の事情は、當事者に於て、契約の當時可成的充分之を明かにせざる可らず、然るに此等の事實及び狀況を最も能く知悉せる者は、被保險者又は保險契約者にして、保險者は通常之れを知悉せざるなり、而して保險者は此種の事情を調査するには少なからざる手數と時日を拂ふも、到底其眞相を確知しがたきを以て、一に被保險者及び保險契約者の陳述を信用し、これを基本として契約を取結ぶを普通とし、總て被保險者、又は保險契約は、些の惡意を挾むことなく、最も正直に其事實を開陳し、苟も事の重要なるものは、決してこれを默秘すべからざる責任を有す可きものとす、これ實に保險契約上最も緊要の事なるを以て、法律は嚴重の規定を設け、若し被保險者又は保險契約者が、契約の當時惡意又は重大なる過失に因り、重要なる事實を告げず、又は重要なる事項に付き不實の事を告げたるときは、其契約は全然無效のものと定めたり。(商法第三編第十章第一節參照)
- 英
- Insurance for damage
- 独
- Assekuranz gegen den Schaden
- 仏
- As-surance sur le dommage
損害保險契約
- 英
- Contract of insurance against loss
- 独
- Assekuranzkontrakt gesen den Schaden
- 仏
- Contrat de l'assurance sur le dommage
村税
(そんぜい)村なる地方自治團體が、公共の費用を支辨するがために、賦課徵收する所の租税を村税と云ふ、村が村税を賦課するには、町村制の規定に從ふべきものにして、村税を納むべき義務を有する者は、□一村住民、□二三箇月以上其村内に滯在する者、□三村内に於て土地家屋を所有し、又は店舖を定めて營業をなす個人又は法人とす、村は其費用を私法上の收入、手數料、使用料、補助金及び其他の雜收入を以て支辨するを原則となすが故に、村税を賦課するは、此等の收入を以て支辨するも、猶不足なる場合に限るものとす、村税は之を別て二種となす、即ち附加税及び特別税是なり、附加税は、直接國税及び間接國税の府縣税に附加するを原則となす、附加の税率は村會の議決を經べきものにして、府縣税に附加する場合には何等の制限なきも、直接國税に對する附加の税率には、一定の制限あるを以て、此制限を超過する附加税を賦課するには、監督官廳の許可を受けざる可らず、而して間接國税に附加する場合は、常に監督官廳の許可を要するものとす、尚附加税は全納税者に對し、均一の税率を以て、平等に賦課するを原則となすも、數個人又は村内の一部に於て使用する營造物に關し、其修築保存のためにする費用に限り、其數個人又は其一部に於ける納税者をして、專ら負擔せしむることを得べし、斯かる徵收方法を議決するには、監督官廳の許可を要す、特別税は附加税を補充するために、村に於て特に税目を起して徵收する租税にして、之を分て直接税及び間接税の二種となす、其税目に就ては、營業税法其他の法律に於て制限あるものの外、如何なる税目を起すも妨げずと雖も、特別税を新設し又は變更するときは、監督官廳の許可を經ざる可らず、特別税なるものは、元來附加税を賦課したる外、尚必要ある揚合に於て課税す可きものなるが故に、全く附加税を賦課することなくして、特別税のみを賦課するは違法なりとす。(町村制參照)
- 英
- Village tax
- 独
- Dorfssteuer
- 仏
- Taxe du village
尊屬
(そんぞく)尊屬とは、父母と同列以上にある血族を云ふ、本人を標準として親等の上なる親族の義なり、俗に曰ふ目上(メウエ)の親族と云ふに同じ、尊屬は之を分て直系尊屬及傍系尊屬となす、直系尊屬とは、本人より直上親系にある者、例へば父母、祖父母又は曾祖父母の如き之也、傍系尊屬とは、傍系親族の尊屬、例へば伯叔父母の如き之也、民法第七七一條に「其直系尊屬云々」とある其用例とす。
- 英
- Ascendant
- 独
- Aszendent
- 仏
- Ascendant
尊屬親
尊屬親とは、即ち尊屬なる親族を指す、單に尊屬と云ふも同義なりとす。(前項參照)
- 英
- Ascendants-family
- 独
- Aszendent in aufsteigender Linie
- 仏
- Famille as-cendante
存續期間
(そんぞくきかん)廣く存續期間と云へば、或權利關係の存在繼續する期間と云ふの義なり、民法第八九條に「法定果實は之を取收する權利の存續期間日割を以て之を取得す」とあるは、其用例とす。
- 英
- Duration
- 独
- Zeitdauer
- 仏
- Durée
村道
(そんだう)公道の一種にして、村なる地方自治團體が、其區域内に於ける交通のため設備せる道路を云ふ、即ち村道は、村の營造物の一種なるを以て、其管理及び維持は其村の負擔に屬するものとす。(國道の部參照)
- 英
- Village road
- 独
- Dorfsweg
- 仏
- Rue du village
村立
(そんりつ)村なる地方自治體に於て、或設備を設立維持することを云ふ、例へば小學校又は其他の營造物を村費にて設立維持するときは、村立小學校又は村立何々と云ふが如し、小學校令第九條第二項に「町村立小學校云々」とあるは、其用例なり。
- 英
- Established by a village
- 独
- Errichtung von eiem Dorfe
- 仏
- Etabli par le village
疏明
(そめい)疏明とは、訴訟法上當事者が或る事實の眞實なることを明確にして、或然的に之を信ぜしむるの行爲を云ふ、疏明は廣義に於ける證明の一種にして、彼の狹義に於ける證明と相對す、疏明も證明も等しく裁判所をして、或事實の眞實を確信せしむるものなるも、證明は、裁判所をして反證を抱く能はざる程度に於て之を確信せしむるものなるに反し、疏明は一應之を確信せしめ、或然的に若し反證ある迄は、然らずと信ぜしむるを云ふ、元來疏明は事の判斷に當て、或然的の確信を惹起せしむるものなるが故に、係爭事實の判斷材料としては採用されざる所にして、單に訴訟手續上に於ける、或行爲を確信するときにのみ、この方法を許す、例へば故障の申立、原狀回復の申立等の揚合に、其の懈怠したりりしことが自己の故意にあらずして、實は天災其他避く可らざりし事變の爲なりしことを疏明さするが如し、民事訴訟法第五七條第二項に「利害關係の在否に付き爭あるときは、從參加人其關係を疏明す云々」とある如きこの用例なり。
- 英
- Statement
- 独
- Glaubhaftmachung
- 仏
- Exposé
疏明方法
疏明方法とは、疏明を爲すの方法を云ふ、或事實を主張する當事者が、或然的に其の眞實なることを信ぜしむる方法は、之を疏明方法と云ふべし。(民訴一七六條二項の二號及び證明、證據方法の部參照)
- 英
- Statement of the means
- 独
- Glaubhaftmachung
- 仏
- Moyen de l'exposé
對價
(たいか)對價なる語は、必ずしも一定したる意義を有するものにあらず、廣き意義に於ては、或財産、又は行爲の代償を云ひ、其代償は財産なると行爲なるとを問はず、例へば賣買に於ける代金も對價なり、交換に於て相亙に提供する財産も對價なり、請負に於ける報酬も對價なり、雇傭契約に於ける報酬も對價なり、買主の受取る財産も對價なり、注文者の受領する仕事の完成も對價なり、使用者が勞務者をして勞務に服せしむるも對價也、されど狹義に於て、殊に民法第三〇四條に於ける對價なる語は、地上權、永小作權、地役權を設定して、相手方より受取るべき財産即ち地代、永小作料を指稱したるもの也、故に其意義頗る狹し、されど之を一般の用例とす可らず、寧ろ廣く相手方より受取るべき財産又は行爲と解して、多くの場合に誤りなし、唯注意すべきは、英國法に於ける對價なる觀念なり、恰も佛國法に於ける、契約の原因に彷彿たるものにして、此英國法の對價なる觀念は、特殊のものなれば、我法律上に所謂對價の觀念と混同せざるを要す。
- 英
- Consideration
- 独
- Belohnung
- 仏
- Considération
大綱
(たいかう)洽ねく大綱とは、根本原理、又は原則の謂ひにして、例へば統治の大綱と云へば、國家統治の根本原則の謂ひにして、主權者が之に依りて、政治の方針を定むべき法則を云ふ、立憲國に於ける憲法(成文法、不文法を含む)の如き即ちこの例なり。
- 英
- Constitution
- 独
- Verfassungsrecht
- 仏
- Constitution
對抗
(たいかう)對抗とは、能動的の意義に於ては、主張することを得とやふの義也、例へば會社の設立は、その本店の所在地に於て登記を爲したるときより、第三者に對抗するを得るが如し、受動的の意義に於て對抗と云へば、主張することを得ざるとやふの意味にして、例へば、隱居又は入夫婚姻に依る戸主權の喪失は、前戸主、又は家督相續人より、前戸主の債權者、及び債務者に其通知を爲すにあらざれば、之を以て其債權者、及び債務者に對抗することを得ざるが如し、之を要するに、對抗なるものは、或權利の内容、若くは事實をある者をして、承認、若くは屈服せしむべく主張し得、又は主張し得ざることにして、即ち或者に對し抵抗するの意なりとす。(民一一二、一一三條二項、一一七、七六一條、商一二、二一、三〇條三項、四六絛等)
- 英
- Setting up against
- 独
- Widerstand
對抗力
對抗力とは、或る者に對し、抵抗し得る效力を云ふ、例へば、物權の設定、移轉、變更は、登記の時より、第三者に對抗し得る效果を生ずる場合に、此の對抗し得る效力を對抗力とは云ふ也。
- 英
- Setting up against
- 独
- Widerstand
代議士
(だいぎし)通俗衆議院議員を代議士と謂ふ、蓋し國民の代表者なる思想に由來するものなり、政治上に於て議會は、國民思想の反映する所、議員は、國民の代表者なりとの説は眞理にして、選擧の眼目は又實に茲に存す、されど此の説を法律學上に移して、法理の解説をなさんは、少しく穩當を缺くの嫌なきにあらず、何となれば、國民は國家構成の分子として、權利主體に非ず、法律上に於ては人格なし、從て權利を委任し、代表者を通じて、意思を發表すべき能力を有するものに非ず、故に法律上に於ては、議員は何人の代表者にもあらずして、其權限は、直接憲法に基て取得し、以て憲法上の機關なる議會を構成するものなり、彼の選擧の如きも、國民が國家の或機關として、一部の國家事務を採るものにして、敢て委任若しくは代理の權限行爲にあらざるものとす、されど、議員を代議士と云ひ、國民の代表者なりとなすは、多くの眞理を含むものにして、議會制度なるものは、實に此の理論に依て起り、選擧も亦この眼目を實際上の基礎となす。(尚議員の部參照)
- 英
- Member of the house of represen-tatives
- 独
- Abgeordnete
- 仏
- Membres de la chambre des députés
對外
(たいぐわい)國家が自己の國内に對するを對内と云ひ、外國に對するを對外と云ふ、例へば對外硬、對外軟と云ふ如し、又國家主權を其發動する方面に依て、對外主權と對内主權と爲す如き皆其用例なり。
- 英
- International
- 独
- International
- 仏
- International
體系
(たいけい)組織系統など云ふに同じ、其構成素が、方法的に統一結合せられたる一全體を謂ふ、即ち一全體を組織する各部分、若しくは各成素が、秩序整然たる排列と次序とを有して、其間には規則正しき聯絡を保つ結構體を謂ふ、從つて唯個々のものを順序もなく、相互間には聯絡もなく、單に寄せ合せ、寄せ集めて成れるものに過ぎざる集合、或は結合とは、大に其趣きを異にす、又體系とは、有機體、又は渾一體など云ふものと其意を異にし、主として吾人の思想上の結構を指し、有機體渾一體等の意味する、必然的結合の意義とは稍異なる、體系的とは、系統的組織的と謂ふに同じく、以上の意義を有する形容詞なり、又事物の結構上に轉用して、其事物の組み立ての次序排列の整然として連絡の存することを旨意す。
- 英
- System
- 独
- System
- 仏
- Système
大權
(たいけん)大權に廣狹の二義あり、□一廣義に於ては、天皇の有する凡ての統治權を指す、法律命令を制定する權利、文武の諸官を任免する權利より、豫算を制定する權利等是也、□二狹義に於ては、他の國家機關の參與を俟たず、親ら行使する統治權のみを指す、宣戰、媾和、條約の締結、戒嚴の宣告、爵位、勳章、榮典の授與、大赦、特赦、減刑、復權を命ずるが如き即ちこれなり、元來統治權の行使は、一定の機關の補助により、之を行使するを以て、立憲政體の本義とす、然れども統治權の全部を擧げて、之を補助機關に委するは、民主政體に於て見る所なりと雖も、君主政體に於ては必ずしも然らず、多少の範圍内に於て、他の補助機關に委せざる統治權を天皇に留保す、これ君主立憲國に於て、他の機關に委せざる統治權、即ち大權を認むる所以なり、我憲法第一七條にある大權なる文字は、廣義に用ひられたるものにして、統治權の全體を指し、第三一條、第六七絛の大權なる文字は、狹義に用ひられたるものなり。
- 英
- Powers appertaining to the Em-peror
- 独
- Kronrecht
- 仏
- Pouvoir de l'Empereur
大元帥
(だいげんすい)天皇は、陸海軍統帥の大元たるを意味する尊稱にして、明治十五年軍人に給はりたる詔敕に「朕は汝等軍人の大元帥なるぞ、されば朕は汝等軍人を股肱と賴み、汝等は朕を頭首と仰ぎてぞ、其親は特に深かるべき云々」とあるが如く、陸海軍統帥の頭首たる至尊の奉稱也、換言すれば、天皇が憲法第一一條の條規に依り、陸海軍統帥、即ち兵馬の統一帷幄の大令を爲し給ふ、其統帥者の地位に立たせ給ふ至尊を、自ら又は奉稱して大元帥と云ふなり、大元帥は、幄帷の顧問として、宮中に元帥府及び軍事參議會を置くものにして、以て兵馬の大權を統べ行はせ給ふものとす。(元帥府、及軍議參議會の部參照)
- 英
- Generalissimo
- 独
- General-feldmarschall
- 仏
- Généralissime
第三債務者
(だいさんさいむしや)自己の債務者の債務者を、第三債務者と云ふ、例へば、甲者は乙者に對して債權者にして、乙者は丙者に對して債權者なる揚合に、甲者より丙者を指して、第三債務者と云ふなり、元來債權、債務は、直接には當事者間に於てのみ、效力を有するに過ぎずして、第三者に主張することを得ざるものなるが故に、相手方たる債務者が、更に債權を有し、債務者ありと雖も、一般には債務者の債務者、即ら第三債務者との間に、法律關係を生ずるものにあらず、されど或特別の場合に限り、法律關係を生ずることあり、例へば債權を質に取りたる者が、相當の手續を盡したるとき、債權の目的物が金錢なるときは、質權者は、自己の債權の存する部分、例へば債權額一萬圓なる場合に、其擔保として、一萬二千圓の借用證書を質入したる場合には、質權者は一萬圓を直に第三債務者より取立つることを得るか如し。(民三六七、四八一條參照)
- 英
- Third debtor
- 独
- Dritt-schuldner
- 仏
- Troisième débiteur
第三者
(だいさんしや)當事者以外の者を、廣く第三者と云ふ、例へば甲者、乙者と賣買契約を爲せり、甲者、乙者以外の者は、凡て第三者なり、然れども若し丙者、甲者を相續したりとせば、丙者も當事者となり、この場合には第三者にあらず、蓋し甲者の地位を襲ふたるは、法律上に於ては當事者なればなり、而して當事者と、第三者とを區別するは、極めて必要なる事にして、何とれなば、當事者間に於ける法律關係にして、往々第三者に對抗することを得ざることあればなり、要するに第二者とは、前例に於ける甲者を第一者とし、乙者を第三者とし、其他凡て世上の者を槪括して第三者と云ふなり、法律上に於ては、他人と第三者とを、多くの場合に書き分けたり、其區別したる所以は、要するに第三者なる文字を使用する場合には、第一者、第二者以外に、或者あるを想像するを得る場合にてし、他人なる文字を使用する場合には、例へば自己は第一者なるも、特定の相手方、即ち第二者なく、世上一般の者が第二者なる場合なり、例へば民法第一九五條に「他人が飼養せし家畜外の動物云々」とあるが如き其一例なり。(民九五、九六條參照)
- 英
- Third person
- 独
- Dritte
- 仏
- Tiers
大使
(たいし)外交使節は、其階級により大使、公使、辨理公使、及代理公使と區別す、而して大使は其最高級に位するものにして、維納決議第二條は、大使及法王の使者は、其主權者をも代表するものとせり、茲に於て乎、大使(特命全權大使とも云ふ)は、單に其本國の政治機關たるに止まらずして、本國君主の一身を代表す、從つて大使の駐在する場合に於ては、其國家は外國の君主自身駐在すると同一なり、故に大使の享有する特權は、他の外交使節の享有する特權と大差あり、□一實質的特權、即ち其駐在國の外務省と、直接談判を開始するの權利を有す、他の外交使節は、直接に元首と談判することを得ざるに反して、大使は本國元首を代表する者なるを以て、直接に駐在國元首と談判することを得るものとす、然れども本國君主は、其談判の結果たる權利義務を直に有するに至るものにあらざるが故に、立憲國なる場合に於ては、他の國家機關を經るに非ざれば、直に其談判の結果を受くるものにあらず、專制國なる場合に於ては、其國家は、直に其談判の結果たる權利義務を有するに至る事あるべし、□二形式的特權、(1)閣下の稱號を受け、(2)駐在國の元首、又は元首の配偶者者に向て、自ら本國より持參せる信任狀を捧呈する場合に於て、特別なる待遇を受く、(3)始めて元首に謁見する場合に、頭を蔽ふ權あり、(4)普通の公使は新に駐在國に着任したる場合に、當時其國家に駐在する他の公使を訪問せざるべからざるものなるも、大使は之を訪問することを要せざるのみならず、却て他の公使よりして訪問せざる可らず、即ち大使は既に駐在せる公使より訪問を受くる權利あり、大使の應接室内には、皇帝の着席することを得べき椅子を備へ置くことを得、儀式等ある場合には、六頭馬車を使用することを得、又其馬の頭上に赤色の絹布を掛くることを得る等之なり、大使に附從して大使の妻も亦之と同一の優待を受くるものとす、即ち大使の妻は、職務を執行する者にあらざるも、恰も職務を執行する者と同一の待遇を受け、全權大使夫人閣下の稱號を受け、又始めて元首に謁見する場合に於ても、大使の受くると同一なる待遇を受く、他の公使より前に謁見することを得、次に宮廷に於ける著席順次に付ても、大使の次席に著席することを得るものにして、公使等は其次に著席するものなり、又倚り凭りある椅子に座するの權を有するものとす。
- 英
- Ambassador
- 独
- Botschafter
- 仏
- Ambassade
大祀
(たいし)凡そ如何なる國も、慶事、及び祝祭なるものなきはあらず、大祀とは、この慶事、又は祝祭日を云ふ、されど定期の祝祭日、例へば三大節の如きにあらずして、國家に一定の瑞事ありたるとき、特に祝すべき日を指す、舊刑第一四條に「大祀、令節、國祭の日は、死刑を行ふことを禁ず」とあるは其用例なり。
- 英
- National fete day
- 独
- National-feierstag
- 仏
- Fête nationale
胎兒
(たいじ)胎兒とは、未だ母體より分離せられざる兒、又は胎胚を云ふ、即ち未だ權利の主體たるを得るの資格なき者にして、母胎の一部なりとす、從つて如何なる場合に於ても、權利を有するを得ず、義務を負ふこと能はざるなり、唯法律は胎兒を保護する爲め、種々の規定を爲せり、即ち□一民事上に於ては、家督相續、遺産相續、遺贈受領に關して、及び不法行爲の請求權に付ては、生れたるものと看做さる、例へば戸主死亡の場合に、女子のみありて男子なきも、妻が懐胎せる場合に、其後生れたる胎兒が、男子なる場合に於ては、女子が相續人とならずして、胎兒たりし男子が、相續人となるが如し、又不法行爲の場合の例を示せば、胎兒が母體中にある場合に、父が他人の爲めに、殺害せられたるときには、本來は父の死亡當時に、胎兒は未だ人と云ふ能はざるが故に、損害賠償の請求權者たること能はざるも(法律は之を保護して、損害賠償請求權者となる事を許せり、)□二刑事上に於ては、胎兒を自然の分娩期前に墮胎し、又は之を殺したるときは、墮胎罪として處罰することを規定せり、又一面に於て胎兒を保護したるものなり。(民七二一、九六八、九九三、一〇六五條刑、二一四條乃至二一六條、墮胎罪參照
- 英
- Child in the womb
- 独
- Leibes-frucht
- 仏
- Enfant dans l'utérus
對質
(たいしつ)我刑事訴訟法は、被告と證人、又は多數の證人は、之を別々に審問するを原則とす、然れども或場合には、之を同一に審問し、反て眞證を得る場合あり、對質とは、即ち多數の證人、被告人と證人等とを、同時に訊問することを云ふに外ならず、刑訴九八絛に「豫審判事は被告人の共犯なること、人違なきこと、其他事實を發見すべき一切の模樣を證する爲め、必要なりとするときは、被告人と他の被告人、證人、又は其他の者と對質せしむることを得」とあるは其用例なり。(刑訴九八條乃至一〇〇條)
大臣
(だいしん)大臣なる語は、古來に於ては大臣、大連など併稱せられて、一種の官階上の名稱たりき、降て太政大臣、右大臣、左大臣など云へるは、專制國家に於ける一種の補弼機關の官稱也き、現時に於ても、或は内大臣、宮内大臣など云ひて、宮中の役員の官稱なることあり、或は國務大臣、文部大臣、司法大臣など云ひて、專ら憲法上天皇の補弼機關、又は行政長官を稱する事あり、此最後の用例を以て普通とす、□一一國憲法上の補弼機關たる大臣、憲法第五五條に「國務各大臣は、天皇を補弼して其責に任ず」とあるば、其の用例にして、この意味に於ける大臣は國務に關し、天皇補弼の職責を有する憲法上の機關にして、凡そ法律、敕令、其他國務に關する詔敕に副署して、補弼の形式となすものなり、□二行政首長としての大臣、この意義に於ける大臣は、行政長官としての内務、外務、大藏、司法、文部、海軍、陸軍、遞信、農商務大臣にして、通俗に於ては、行政長官としての大臣と、國務大臣としての大臣を、實際一人をして兼ねしむる現行法制の下にては、普通混同して稱するが如し。(内閣官制、各省官制通則參照)
- 英
- Minister of the state
- 独
- Staats-minister
- 仏
- Ministre d'État
對人擔保
(たいじんたんほ)凡そ擔保とは、債務者が、債務を辨濟せざる場合に、特に債權の履行を確保するものなり、今之を分類して示せば次表の如し。
即ち對人擔保に法律より生ずるものと、意思表示より生ずるものとの二種あるを知るべし、合名會社社員の如きは、法律上、等然に會社債務を完濟すること能はざる場合に、連帶無限の貴任を負ふ者にして、保證人の如きは、主たる債務者が債務を完濟せざる場合に、債權者に對して其債務の目的を履行する責任を負ふ旨を約するによりて生ずるものなり、對人擔保は物上擔保に比較し、其效力薄弱なりとす、蓋し物上擔保は、他の債權者に先つて辨濟を受くることを得るも、對人擔保は、一般債權者と共同して辨濟を受けざる可らざるを原則とすればなり。(商六三條乃至六五條、民四四六、四六五絛參照)
- 英
- Security against person
- 独
- persönliche Verpfändung
- 仏
- Garantie contre la personne
大審院
(だいしんゐん)現行法上に於て最高級の裁判所を大審院と云ふ、凡そ裁判所の階級は、之を別つて區裁判所、地方裁判所、控訴院及大審院とす、大審院の上には、最早上級裁判所なし、而して大審院には、一若くは二以上の民事部及刑事部を置く、民事部は、民事事件を審理する所にして、刑事部は、刑事事件を審理する處也、其管轄に屬するものは、終審として、□一控訴審、即ち第二審裁判所として爲したる判決に對する上告、□二控訴院の決定及命令に對する法律に定めたる控告、第一審とししかも終審として皇室に對する犯罪、國事に關する犯罪及皇族の犯したる罪にして、禁錮又は更に重き刑に處すべきものの、豫審及裁判之なり、其構成は、七人の判事を以て組織す、然れども大審院の或部に於て、上告を審問したる後、法律の同一の點に付き、曾て一若くは二以上の部に於て爲したる判決と相反する意見あるときは、其部は之を大審院長に報告し、大審院長は、其の報告により、事件の性質に從ひ、民事の總部、若くは刑事の總部、又は民刑兩部を聯合して、再び審問し及裁判することを命ずるが故に、十四人、又は二十八人を以て構成することもありとす。(裁構法四三絛乃至五六條參照)
- 英
- Supreme court
- 独
- Reichs-gericht
- 仏
- Cour suprême
大赦
(たいしや)犯罪人に對する恩典を別ちて四とす、□一大赦、□二特赦、□三減刑、□四復權、れなり、大赦とは、大權命令を以て犯罪に對する法律上の效力を全滅せしむるを云ふ、其效力はイ確定判決前の犯罪に對しては、求刑權を廢滅し、ロ確定判決を經たる犯罪に對しては、行刑の效力を全滅す、ハ尚將來に向つて、嘗て有罪判決を受けざりしと同一の效力を生ず、從つて大赦の恩典に浴したる者は、刑の執行を免除せらるると共に復權を得、又其罪を再犯の事由として數へらるることなし。(憲法一六條、舊刑六四九七條參照)
- 英
- Amnesty
- 独
- Amnestie
- 仏
- am-nestie
代署
(だいしよ)本人自ら署名すること能はざる場合に、他人が代りて爲す署名を代署と云ふ、刑事訴訟法第二二條に「官吏、公吏に非ざる者の署名、捺印すべき場合に於て、捺印する事能はざるときは署名のみを爲し、署名すること能はざるときは、立會人を代署せしめ、捺印のみを爲し、署名捺印すること能はざるときは、立會人をして代署せしむべし」とあるは其用例なり。(自署、手署の部參照)
- 英
- Substitution sign
- 独
- Siegelung von Substitut
- 仏
- Signe de la substitu-tion
大政
(たいせい)天皇の總覽給しふ所の一切の統治作用を稱して大政と云ふ、從て其範圍廣汎なり、法律、命令の制定、豫算の制定、官制の制定、文武官の任免、陸海軍の統帥、海陸軍の編制、宣戰、媾和、條約の締結、戒嚴の宣告、爵位、勳章、其他榮典の授與、大赦、特赦、減刑、及復權を命ずること、皆大政發動の結果なり、皇室典範第一九條に「天皇久しきに亘る故障により、大玫を親らすること能はざる時」とあるは其用例なり。
- 英
- Governing
- 独
- Regierung
- 仏
- Gouvernement
對照
(たいせう)對照とは、對比照合の意味にして、相反對せる性質、狀態若しくは分量、即ち大小、長短、黑白、明暗、貧富、正邪、苦樂等が同時に、或は同所に相接近して存在し、比較觀念により、相互に其特質を一層顯著とならしむるを云ふ。(相對の部參照)
- 英
- Contrast
- 独
- Kontrast
- 仏
- Con-traste
對照表
(たいせうへう)積極財産、消極財産の全部を揭げ、二者の比較を表したる書面を對照表と云ふ、商法第二六條に「動産、不動産、債權、債務其他の財産の總目錄、及び貸借の對照表は、商人の開業の時、又は會社の設立登記の時及び毎年一回一定の時期に於て之を作り、特に設けたる帳簿に之を記載することを要す」とあるは其用例なり。
- 英
- Balance-Sheet
- 独
- Bilanz
- 仏
- Bilan
對席判決
(たいせきはんけつ)必要的口頭辯論に基きて爲したる、裁判所の宣言を對席判決と云ふ、判決は之を種々分類するを例とす、一方に於ては、中間判決と終局判決とに別ち、他方に於ては、實體上の判決と、訴訟上の判決とに別ち、更に全部判決と、一部判決、對席判決と缺席判決とに別つ、而して對席判決と、缺席判決との區別は、判決其もの區別にあらず、一の判決にして、原告より見れば對席判決にして、被告より見れば缺席判決なることあるも、判決其ものの性質が絶對に缺席判決なる場合なし、要するに缺席判決にあらざる判決が、對席判決なり、從て當事者双方の出頭を俟たざれば、對席判決を爲すことを得ざるにあらず、例へば口頭辯論期日に於て、被告が缺席したるも、原告の提起したる訴が、裁判所の管轄に違反したるが如き場合に、裁判所が職權に基き、訴却下の判決を爲す場合の如きは、被告の缺席あるも對席判決なり、又被告が缺席したる爲め、原告の事實上の口頭供述を自白したるものと看做し、判決を爲したる場合に於ても被告に對しては、缺席判決なるも、原告に對しては對席判決なり、終に缺席判決と、對席判決とを區別するの實益は、其判決に對し故障を爲し得ると否と、同一審に於て同一の原告、若しくは被告に對し、本案に付き言渡したる第二、又は其後の缺席判決に對し、職權を以て假執行の宣告を附すると否とに在り。(民訴二五五、五〇一條、刑訴二〇七條等)
大纛
(たいとう)大元帥陛下の軍旗を指して大纛と云ふ、例へば戰時に天皇自ら大本營に向はせ給ふ場合に於て、大纛を某地に進め給ふと云ふが如し。
- 英
- Imperial headquarters
- 独
- gros-zes Hauptquartier
- 仏
- Etat-major im-périal
大統領
(だいとうりやう)大統領の何たるやは頗る解するに困難なり、國により、時により、必ずしも其意義を同一にせず、漫然君主國の元首と相對照して、民主國の元首なりと云ふを常とするも、其當を得ざるものなるや疑はし、君主國の元首は、凡ての統治權を總攬するを常とするも、多くの大統領は、必ずしも然らず、單に行政權のみを總攬するの例少からず、即ち立法權は議會に屬し、司法權は裁判所に屬し、行政權は大統領に屬するが如し、從て君主國の元首と共和國の大統領とは多少性質を異にす、獨乙の或學者は、君主國に於ては、君主は最高機關にして、民主國に於ては人民は最高機關なりと論ぜり、即ち君主と人民とを同じく最高機關とし、大統領を之に入れず、從て法律上、政治上、其性質頗る不明なりと云ふべし、實際に於て佛國大統領と云ひ、北米合衆國太統領など云ふは、其の實例なり。
- 英
- President
- 独
- Präsident
- 仏
- Président
滯納
(たいなふ)租税を所定の期日に納付せざるを滯納と云ふ、即ち納税の義務を怠るを云ふなり「租税滯納處分」と云ふが如き其用例とす。
- 英
- Neglecting to pay tax
- 独
- Rück-stand
- 仏
- Negligence du paiement de l'impôt
太傅
(たいふ)太傅とは、天皇未成年なる場合に、其保育を掌る者を云ふ、彼の攝政とは、其性質を異にし、攝政も天皇未成年なる場合に之を置くものなれど、天皇の名に於て大權を行ふものにして、太傅の如く、其保育を掌るものにあらず、又攝政は、天皇久しきに亘るの故障に由り、大政を親らする能はざるときに於ても、尚皇族會議及樞密顧問の議を經て之を置くも、大傅は、天皇未成年なるときに限る、且つ攝政に任ずる者、及び其順位は一定して動かす可らずと雖も、太傅は然らず、先帝の遺命を以て之を任ぜられざるときは、攝政より皇族會議及樞密顧問に諮詢して之を選任す、太傅の任に就く者に付ては、唯攝政及其子孫はなることを得ざるも、其の他何等の制限なし、又之を退職せしむるには、攝政より皇族會議及び樞密顧問に諮詢したる後にあらざれば、退職せしむることを得ざるものとす。(典範二六條乃至二九絛參照)
- 英
- Imperial governor
- 独
- kaiser-licher Herrscher
- 仏
- Gouverneur im-périal
對物擔保
(たいぶつたんぽ)對物擔保とは、或財産を以て、債務の履行を確保するを云ふ、例へば金圓借用の擔保として、質權を設定するが如し、之を大別して二とす、□一は意思表示、例へば契約より生ずるものにして、質權、抵當權の如き其著しきものなり、□二は法律の規定より當然生ずるものにして、留置權、先取特權の如き即ち其主なるものなり、而して物上擔保は、特定の財産に對する場合あり、留置權、特別の先取特權、質權及抵當權の如き是なり、一般の財産に對する場合あり、一般の先取特權の如き即ち之なり、何れも他の債權者に對して、優先するを得る權利にして、即ち他の債權者は、留置權者、先取特權者、質權及抵當權者が辨濟を受けたる後に非ざれば、其債權を其擔保財産に對して行使することを得ざるものなり、槪していへば、對物擔保は、對人擔保より強力なりとす、蓋し人の財産は、朝夕を計らざるものなるも、物は天災、地變等に依て滅せざる限りは、其存在を失ふことなく、從て擔保權も亦消滅せざればなり。(民二九五條乃至三九八條、對人擔保の部參照)
- 英
- Security against thing
- 独
- Kaution gegen Ding
- 仏
- Garantie contre la chose
代物辨濟
(だいぶつべんさい)債權の目的以外の物を以て辨濟するを云ふ、元來債務者は、債權の目的たる給付を爲すに非ざれば、其責を免るる能はざるを原則とす、然れども債權者が、他の給付を受領して滿足するときは、辨濟によらざるも、有效に債務を消滅す、斯の如く債務者が、債權者の承諾により、其負擔したる給付に代へ、他の給付を爲し、債權を消滅するを代物辨濟と云ふ、斯の如く代物辨濟は、債權の目的以外の給付を爲して、債權を消滅するものなれば、嚴格の意味に於ては所謂辨濟にあらず、唯其效力が辨濟と同一なるに過ぎざるのみ、又代物辨濟は更改にもあらず、更改は債務の消滅と共に、新なる債務を發生せしむるものなり、從つて當事者間に斯る意思あるを要す、然るに代物辨濟の場合には、債務の目的たる給付を他の給付を以て代へ、債權を消滅するに過ぎず、故に更改と異なる、要するに代物辨濟なるものは、特種の債權消滅の原因なりと云ふべし。(民四八二條參照)
- 英
- Performance with other presta-tion
- 独
- Leistung an Erfüllungsstatt
- 仏
- Représentation avec une autre presta-tion
人代表
(だいへう)格者(團體、法人)の全部に對する部分の關係に於て、其機關が人格者の法律意思を外部に向て發表する法律關係を代表と云ふ、代表は、彼の代理と異なるものなり、代理は、甲人格者が、乙人格者に代りて、法律行爲を爲し、その效果が本人に及ぶ法律關係なるも、代表關係には、二個の人格としては竝存せず、一個の人格は、他の人格の意思を構成發表するが故に、其關係に於ては、獨立の人的存在を有せざるを常とす、代理は之と異なり、一の人格者が他の人格者に代りて、法律行爲を爲すものにして、法律が其の效果を本人に歸するに過ぎず、即ち被代理人の意思もあり、代理人の意思もあり、此の場合に被代理人(本人)に代つて、代理人自身の意思を以て、法律行爲をなすが代理なり、從て代理に於ける意思表示は、代理人の意思表示なるも、法律が其效果を本人に歸するに過ぎず、例へば俗間見る所の委任代理の場合に於て、即ち二個の人格者竝在す、之に反して市町村長は、市町村の代理人にあらず、市町村長の意思は、市町村の意思なり、其行動は市町村の行動なり、即ち代表機關なり、市町村長の地位にある者は、元より人格者なり、然れども適法に市町村長として行動を爲すときは、個人の人格は、法律上沒滅して、市町村の構成分子となるものなり、終に代表と代理とは、往々にして同一視せらるるも、理論上に於ては固より大なる徑庭あることに注意すべし。(商六一、六二、一一四、一一五、一七〇條等及び機關の部參照)
- 英
- Representation
- 独
- Vertretung
- 仏
- Représentation
逮捕
(たいほ)監禁と相並びで場所に關する人の肉體運動の自由を阻止するを逮捕と云ふ、監禁とは、閉鎖せられたる一定の場所に拘禁するを云ひ、逮捕は、監禁以外の方法を以て、他人の居所選擇の自由を阻止するを云ふ也、其手段方法に就きては何等の制限なし、或は體力に依ると又は無形の精神作用に依るとを問はず、體力は必ずしも、直接に被逮捕者に對して行使すると、第三者、又は物に對して行使し、間接に被逮捕者に對するとを問はざるものとす、例へば盲人を逮捕する爲め、其手引たる第三者に對して、暴力を加ふるが如し、逮捕の例は、現實に人を捕〓するが如きは、其顯著なるものなれども、捕〓は、逮捕の唯一の手段に非ず、舊刑第三二二條に「擅に人を逮捕し、又は私家に監禁したる者は、十一日以上二月以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加す」刑事訴訟法第五八條に「司法警察官及び巡査、憲兵卒其職務を行ふに當り、重罪、又は禁錮の刑に該るべき輕罪の現行犯あることを知りたるときは、令狀を待たずして、被告人を逮捕すべし」とあるは其用例なり。
- 英
- Arrest
- 独
- Festnahme
- 仏
- Ar-restation
大洋
(たいよう)何れの國家にも屬せざる公海を大洋と云ふ、元來各國家は、各其領域を有し、領土及び領海を占有して、國家主權の場所的限界となす、所謂領土とは、一定の土地にして、其國主權の行はるる範圍を云ひ、領海とは、領土に沿る海洋とす、其廣さに就きては、國際法上種々の議論あるも、妥當なる説は、干潮の時陸地より三海里以内の海洋、及び自國領土を以て鎖されたる海灣とす、これ以外に屬する海洋は、所謂大洋なり、大洋には、何國の主權も及ばざるが故に、其交通は各國の隨意なり、即ち開かれたる萬國の通路とす、昔時は大洋占有論なるものを主張せし者ありしも、國際法學者の始祖グロチアス氏に依て道破せられし以來、世の容るる所とならず。(領海の部參照)
- 英
- Ocean
- 独
- Weltmeer
- 仏
- Océan
代理
(だいり)法律行爲は、本人自ら爲すことあり、他人が之を爲して其效果を本人に及すことあり、他人の行爲に依て本人に效果を及ぼす場合に二あり、□一は本人が他人を以て自己が法律行爲を爲すの機械とする場合なり、例へば使者をして買物を爲さしむるが如し、此場合には、本人の意思を傳達するに過ぎず、□二は本人自ら意思を決定せずして、他人が本人の爲めに自ら意思を決定し、本人の名に於て、之を表示し、其效果を本人に及ぼす、例へば番頭が、仕入物を爲す場合に、番頭が主人の名に於て、仕入其他の法律行爲を爲し、敢て一々主人の指揮を受けず、其效果が本人たる主人に效果を生ずるときの如し、此場合は即ち代理なり、要するに代理は、代理人が本人の名に於て、自ら意思表示を爲し、又は之を受け、其效果を直接に本人に及ぼすを云ふなり、即ち代理人は、自ら法律行爲、(例へば賣買)を爲すも、其效果(例へば代金支拂の義務、又は品物引渡の義務)は、本人に於て之を生ずるものなり、次に代理を別ちて、法定代理と、任意代理(俗に委任代理)、特定代理、(俗に部理代理)と、一般代理、(俗に總理代理)となす、所謂法定代理とは、親權者が未成年の子を代理する場合の如く、法律の規定に基き代理權生ずる場合を云ひ、任意代理とは、本人が代理權を授與したるに因る代理權の生ずる場合なり、多くは、委任契約に依て、代理權を授與す、然れども委任契約を結ぶも、代理權を與へざることあり、故に代理とは、代理人と相手方との關係が、本人に效果を及ぼす場合にして、委任とは、本人と受任者との關係に過ぎず、例へば、甲者、乙者をして、丙者より田畑を買入れしめんとす、甲者と乙者との關係は、多くの場合に委任あり、從つて委任の關係を生ずるも、若しありとすれば、乙者が丙者に對する關係に於て、甲者に對し代理の關係は生ずるものとす、終に代理の效力は、代理人が代理權の範圍内に於て爲したる效果が、直接に本人に及ぶにあり、例へば乙者、甲者より某水田の買入を依託せられ、同時に代理權を與へられたる場合に於て、乙者が甲者の名義に於て、其水田を買入れたるときは、該水田の所有權は甲者に歸し、乙者は自己の物也と云ふを得ず、然れども若し甲者が、委託を受けたるも代理權、即ち甲者の名義を以て買入るることの權利を有せざるときは、直に甲者の所有とならずして、乙者が委任契約の結果として、甲者に所有權を移轉するの義務あるに過ぎざるなり。(民九九條乃至一一八條、商二二六條參照)
- 英
- Representation
- 独
- Vertretung
- 仏
- Représentation
代理權
(だいりけん)或者が爲したる法律行爲の效果を、直接に本人に及ぼさしむる權能を代理權と云ふ、代理權は二個の原因より發生ず、即ち本人が代理權を與ふるによりて生ずる事あり、之を任意代理と云ひ、法律の規定に依り、一定の資格ある者に代理權を連結するによりて生ずる事あり、之を法定代理と云ふ、代理權の範圍は、法定代理權に就きては、財産の管理行爲の全部に及ぶを原則とするも、任意代理の場合には、本人が與へたる代理權の範圍によりて定まる、授權行爲を以て權限を定めざるときは、□一保存行爲、□二代理の目的たる物、又は權利の性質を變ぜざる範圍内に於て、其利用又は改良を目的とする行爲に限り之を爲すことを得、從つて處分行爲は之を爲すことを得ず、代理權の消滅原因は、□一本人の死亡、□二代理人の死亡、禁治産、又は破産、□三委任による代理權は、委任の終了即ち之なり、代理權の消滅は、之を以て善意の第三者に對抗するを得ず、但し第三者が過失によりて、其代理權の消滅したることを知らざるときは此限にあらず。(民一〇三、一一一條、代理及授權の部參照)
- 英
- Right of representation
- 独
- Vertretungsmacht
- 仏
- Droit de représen-tation
代理商
(だいりしやう)使用人にあらずして、一定の商人の爲めに、平常其營業の部類に屬する商行爲の代理、又は媒介を爲す者を代理商と云ふ、例へば營利保險會社の代理店の如き是なり、□一商人の爲めに商行爲の代理、又は媒介を爲すことを要す、故に相互保險會社又鑛業會社の機關となりて、代理、又は媒介を爲すも代理商にあらず、□二一定の商人の爲めにせざる可らず、此點に於て仲立人、問屋等と異なる、仲立人は、商行爲の媒介を爲すものなるも、一定の商人に隷屬せず、問屋は商行爲の代理を爲すも、亦一定の商人に隷屬せず、□三平常代理、又は媒介を爲さざる可らず、故に臨時に個々の商行爲の代理、又は媒介を爲すも代理商とならず、本人との間の關係は、契約の定むる所による、此契約を代理商契約と云ふ、其性質は一槪に論ずることを得ざるも、商行爲の代理の委託は、法律行爲の委託にして、商行爲の媒介の委託は、事務の委託なり、故に委任及準委任契約の一種なりと解して可なるべし、「代理商と本人との權利義務」□一代理商が商行爲の代理、又は媒介を爲したるときは、遲滯なく本人に對して通知を發せざる可らず、□二代理商は本人の許諾を得るに非ざれば、自己又は第三者の爲め、本人の營業の部類に屬する商行爲を爲し、又は同種の營業を目的とする會社の無限責任社員となることを得ず、若し之に反して、自己の爲めに商行爲を爲したるときは、本人は之を以て自己の爲めに爲したるものと看做すことを得、然れども本人が其行爲を知りたるときより、一週間を經過したるときは、最早之を自己の爲めに爲したるものと看做すことを得ず、行爲の時より一年を經過したるとき亦同じ、□三物品販賣の委託を受けたる代理商は、賣買の目的物の瑕疵、又は其數量の不足、其他賣買の履行に關する通知を受くる權限を有す、□四代理商が、商行爲の代理、又は媒介を爲したるに因りて生じたる債權に付ては、本人の爲めに占有する物を留置するの權を有す、「代理商契約の期間」別段に之を定めざるときは、各當事者は二ケ月前に豫告を爲して、其契約の解除を爲すことを得、已むを得ざる事由あるときは、期間を定めたると否とを問はず、各當事者は、何時にても其契約の解除を來むる事を得、以上の權利義務及期間に就きては、法律の規定する所なるも、之と異なる規定を爲すことを得るは勿論也。(商三六條乃至四一絛參照)
- 英
- Commercial agent
- 独
- Handels-geschäftsträger
- 仏
- Agent commercial
代位
(だいゐ)代位に法律上の代位あり、當事者の意思による代位あり、例へば家屋の差配人が、家主に家屋賃貸料の全部を拂渡したる場合に、家主に代位して、賃借人より賃貸料の請求を爲し得るが如きは、法律上の代位なり、保證人が其保證債務を履行し、債權者の承諾を得て代位するが如きは、當事者の意思による代位なり、後者は、代位辨濟として其部に於て説明を爲すが故に、茲には前者の代位のみに就きて一言せん、債權者が損害賠償として、其債權の目的たる物、又は權利の價額の全部を受けたるときは、債務者は其物又は權利に付き、當然債權者に代位するを原則とす、例へば甲者が乙者の馬を保管中、其奔放に任せたるが爲め、損害賠償として馬の代價を乙者に仕拂たるとき、後日其馬が發見せられたる場合には、甲の所有に歸し、乙は損害賠償に依て馬の代價全部を得たるが故に、最早馬の所有權を主張することを得ざるが如し、家屋の差配人が家主に對し、賃貸料を仕拂ひたる場合にも、亦賃貸借人に對して賃借料を請求することを得るが如き其一例たり。(民四二二絛參照)
- 英
- Subrogation
- 独
- Stellvertretung
- 仏
- Subrogation
代位辨濟
(だいゐべんさい)債務者の爲めに辨濟したる者が、自己の爲めに債權者に代りて其權利を行使するを代位辨濟と云ふ、代位は代て行ふべき權利の存在を以て前提とす、第三者が債務者の爲めに辨濟したる場合に於ては、辨濟と同時に債權は消滅す、故に債權者は、辨濟を受けたる以後、自己の爲め債權を行使することを得ず、辨濟したる第三者も、債權者に代て之を行使する事を得ず、然れども法律は、辨濟者の求償權を保護する爲め、債權者の權利を債務者に移轉せしむ、(但し代位辨濟によりて、債權は辨濟者に移轉せず、辨濟者は債權者の權利を代て行ふに過ぎずとの説もあり)代位の原因二あり、□一は任意の代位にして、辨濟と同時に債權者の承諾を得ることを要す、承諾を得ざれば代位するを得ず、承諾を得るも、辨濟と同時に得ざれば不可也、辨濟後承諾を得るも、最早代位するを得ず、而して代位を以て債務者に對抗するには、代位の旨を債務者に通知し、又は其承諾を經ざる可からず、債務者以外の第三者に對抗するには、更に確定日附ある證書を以てせざる可からず、□二は法定の代位にして、何等の手續を要せず、當然に債權者に代位す、而して、法定代位の生ずる場合は、辨濟を爲すに正當の利益あることを要するものなり、次に代位辨濟の效力は、自己の權利に基き、求償を爲し得べき範圍内に於て、債權の效力及び擔保として、其債權者が有せし一切の權利を行ふことを得るにあり、即ち債權者が質權を有せしときは、質權の實行を爲し得べく、先取特權ある場合には、先取特權を行使するを得べし、然れども債權者の有せし權利の範圍を、悉く行使し得るに非ず、自己の有する求償權の範圍に制限せらる、例へば債權の總額一萬圓なる場合に、其債權を五千圓に減少せしめ、殘五千圓を抛棄せしめたるが如き場合には、自己の辨濟したる五千圓を限度として、代位を行ふことを得るのみ、若し債權の一部に付き、代位辨濟ありたるとき、例へば一萬圓の債權に對して、五千圓を辨濟し、尚殘五千圓の債權あるが如き場合には、代位辨濟者は、其辨濟したる價格に應じて、債權者と共に其權利を行ふ、但し債權の不履行に依る契約の解除は、債權者のみ之を請求するを得べし、斯る場合には、代位者に其辨濟したる價額、及び其利息を償還せざる可からず。(民四九九條乃至五〇四條參照)
- 英
- Subrogated performance
- 独
- stellvertretende Erfüllung
盜罪
(たうざい)竊盜、強盜が盜罪たるは爭なし、唯異論あるは、詐僞取財が盜罪の内に入るべきものなるや否やにあり、然れども詐僞取財は、被害者が進んで物を引渡したるものにして、竊盜、強盜と大に面目を異にす、故に盜罪の一種にあらずと解するを以て妥當となすべし、所謂竊盜罪とは、不法に他人の所有物を自己の物として處分するの意思を以て、暴行脅迫、又は欺罔恐喝の手段によらず、他人の保持より自己の保持に移すことを云ふ、他人の保持より移すと云ふ點に於て、委託物費消罪、遺失物隱匿罪等と異なり、其手段方法が、暴行脅迫、欺罔恐喝に出でざる點に於て、強盜、及び詐欺取財と異なる、強盜罪とは、不法に他人の所有物を自己の物として處分するの意思を以て、暴行脅迫を手段として、他人の保持より自己の保持に移すを云ふ、暴行脅迫を手段とする點に於て、竊盜、詐僞取財と異なり、他人の保持を侵して自己の保持とするの點に於て、竊盜罪と同じく、委託物費消罪、遺失物隱匿罪と異なる。(刑二三五條乃至二五五條、竊盜、強盜の部參照)
- 英
- Theft
- 独
- Diebstahl
- 仏
- Vol
盜贓
(たうざう)竊盜、強盜に依て得たる財物を盜贓と云ふ、故に竊盜、又は強盜が、其犯罪に著手し、其目的物を不法に保持せんとしたる時より以後は、假令第三者の手に轉輾するも、依然として盜贓たるを失はず、或者は竊盜、強盜が既遂に至らざれば、盜贓と云ふを得ずと云ふも、少くとも、我刑法の解釋としては不可なり、舊刑第三一五條に「盜犯を防止し、又は盜贓を取還するに出たるとき」とあり、此場合に、竊盜が既遂に至らざれば、盜贓にあらずとの意にあらざるは、極めて明ならん。(刑三一五、三九九條參照)
- 英
- Stolen property
- 独
- gestohlener Artikel
- 仏
- Chose volée
當座組合
(たうざくみあひ)當座組合とは、二人以上の者が、各出資を爲して、一時共同の事業を營むことを云ふ、其性質は一般の組合と異なることなし、唯一時之を爲すの點に於て異なる所あるのみ、從つて一方が出資を爲し、他方が出資を爲さざるは、當座組合にあらず、然れども其出資は、必ずしも財産に限らず、勞務を以て爲すも可なり、當座組合は、共同の事業を營むことを要す、故に一方が事業を爲し、他の一方は之に出資し、其損害の配當、召擔を爲すは當座組合にあらず、然れども或場合には、商法の所謂匿名組合を指すことあるが故に、斯る場合には、共同の事業を營まざるも不可なかるべし。
- 英
- Temporary association
- 独
- Gelegenheitsgesellschaft
- 仏
- Corporation temporaire
當座組合契約
當座組合契約、當座組合を爲さんことを約する契約を云ふ、其契約の要件は、一般契約の要件と大差なし、唯組合の性質に悖ることを得ざるのみ、故に一方が出資を爲し、他方は之を爲さず、單に利益の配當にのみ與るが如きは、當産組合契約にあらず。(民六六七條乃至六六八絛參照)
- 英
- Contract of temporary association
- 独
- Vertrag des vorüber-gehenden Vereins
- 仏
- Contrat de la cor-poration temporaire
島司
(たうし)島司とは、一島の行政を掌る行政官廳を云ふ、其地位は殆ど行政官廳としての郡長に同じ、郡長は、行政官廳としての外、自治團體の機關たるの地位を有するも、島は自治團體にあらざるが故に、島司が自治團體の機關にあらざるは勿論なり、其權限は、島廳令を發すること、島廳の吏員を監督すること等其主なるものなり、而して島司は、郡長と同じく、府縣知事が其主管事務に就き、一般的に命令を發し得ると異なり、法律命令により、若しくは府縣知事より委任せられたる事項に就てきのみ、島令を發し得るに過ぎず、要するに大體に於て、行政機關としての郡長と大差なきなり。(刑訴四七條、四號)
- 英
- Governor of Island
- 独
- Insels-herrscher
- 仏
- Gouverneur de l'êle
當事者
(たうじしや)當事者なる用語は、之を二義に用ひらる、□一は法律行爲を爲す者の意義に用ひられ、□二は法律關係者の意義に用ひらる、例へば代理人は、法律行爲の當事者にして、代理人に依て法律關係を結びたる者は、法律關係の當事者なるが如し、次に當事者なる語は、第三者なる語と相對して用ひらる、例へば當事者間の意思表示によりて、所有權は移轉するも、登記、又は引渡あるにあらざれば、第三者に對抗することを得ずと云ふ場合の如し、法律行爲を爲す者の意義に用ひられたるや、法律關係者の意義に用ひられたるや、双方の意義に用ひられたるやは、各場合に依て、前後を照應して解釋せざる可からず、然れども之を明かにするは、大に實益あり、例へば甲者、乙者の代理人として、丙者に不動産を賣渡したるも、未だ登記せず、前例に於て當事者なる文字を、法律行爲を爲す者と解せば、丙者は乙者に對して、不動産の所有權を主張するを得ず、蓋し乙者は法律行爲の當事者にあらざればなり、當事者なる文字を法律關係者なりと解せば、乙者に對抗し得るも、甲者に對して主張することを得ず、蓋し甲者は法律關係者にあらざればなり、多くの場合は双方を含むと解するを可とす。(民一三〇、一四八、一七八、四二〇、五一三、六六七條、商九、二九三、二九四、三〇六條等)
- 英
- Party concerned
- 独
- betreffende Partei
- 仏
- Partie
當籖
(たうせん)抽籖、其他の方法により、其の選に當り、豫定の財物を得るの資格を取得するを云ふ、例へば彩票、勸業債權の割增金等の抽籖に於て、其選に當り、既定の金錢其他の財物を受取るべき資格を取得したるときは、之れ當籖なり。(勸業銀行法、農工銀行法、彩票に關する件等參照)
當選訴訟
(たうせんそしよう)當選を失ひたる者が、當選の效力に關し、當選人、又は選擧長を被告として、控訴院に出訴するを當選訴訟と云ふ、當選訴訟は、彼の選擧訴訟とは區別せざる可からず、選擧訴訟は、當選を失ひたる者たるを要せず、又選擧の效力に關し、異議あるときは、凡ての選擧人は選擧訴訟を起すことを得、其他は當選人を相手方とすることなく、如何なる場合にても、選擧長を相手方とす、然るに當選訴訟は當選人を被告として、地方長官が當選人の氏名を、管内に告示したる日より三十日内に出訴し、又選擧區内の議員定數を以て、選擧人名簿に記載せられたる者の總數を除して得たる數の、五分の一以上の得票を得たりとの理由により、出訴する場合に於ては、地方長官が當選の數に達せず、其他當選人なしとして、選擧の期日を定めて告示したる日より三十日内に、選擧長を相手方とし出訴するものなり、當選訴訟を爲す者は、出訴と共に保證金として三百圓、又は之に相當する額面の公債證書を供託せざる可からず、尚控訴院の判決に不服ある者は、大審院に上告するを得るものとす。(衆議院選擧法七〇、七四、七五、八〇條乃至八五絛參照)
- 英
- Law suit about returning
- 独
- Anklage gegen den Ausgewählten
- 仏
- Procès de l'élection
當選人
(たうせんにん)選擧に於て、有效投票の既定以上の最多數を得たる者を云ふ、衆議院議員選擧法の規定に依れば、其選擧區内の議員定數を以て、選擧人名簿に記載せられたる總數を除し得たる數の五分の一以上の得票ある者たるを要し、以上の者にして當選證書附與前に於て、其當選を辭し、若くは死亡したるとき、又は當選證書附與の前後を問はず、選擧に關する罰則により、處罰せられたる結果、當選無效となりたるとき、又は被選擧權を有せざる爲め、當選無效となりたるときは、前項の得票者にして當選人とならざりし者の中に就き、得票の順位によりて、之を補充するものなり、但し選擧訴訟若くは當選訴訟の結果により、當選人失效したるときは、以上の例により、更に當選人を定むべきものにして、若し得票の數相均しき者あるときは、年長者を採り、同年月なるときは、抽籖して之を定むべきものなり。(衆議院議員選擧法、七〇條)
- 英
- Elected person
- 独
- Aus-gewählter
- 仏
- Elu
道路警察
(だうろけいさつ)道路交通の安全、及び便宜を保持する爲め、直接に人の自由を制限することを目的とする行政なり、元來道路の使用は、各人の自由に委し、國家が之を禁ぜざるを通則とす、從つて吾人は步行するは勿論、祝祭日に旗を立て、夏夕に凉臺を出し、凉風を迎ふるは皆其任意なり、然れども他の妨害、又は安寧を害するに至りては、之を防止せざるべからず、例へば道路に夜見世を出し、家屋建造の爲め道路の使用を妨ぐる場合には、許可を受けざる可らざるが如き、皆道路の取締より生ずるものなり、從つて道路警察の範圍は、頗る廣汎なりと雖も、其主なるものは下の如し、□一道路に對して特別に損害を加ふる虞ある使用は、之を禁止す、例へば非常に大なる車を以て道路を使用するが如し、□二道路の使用方法は、凡て同一の價値を有する者にあらず、均しく使用する者と雖も、或ものは公益上特に重要と看做すべきものあり、比較的重要ならざるものは、重要なるものに讓らざる可からず、故に之を制限するを得、□三揚合により、一時全く道路の使用を禁止するを得、例へば道路の修繕の爲め通行を禁止するが如き、鐵道踏切に於て、汽車通行の間人民の通行を禁ずるが如し、其他電車、自動車、自轉車の取締の如き、軒先を道路に突出するを禁ずるが如き、家屋築造等の爲め道路を使用する場合に、許可を必要とするが如き、左側通行の如き、人道と車道とを別ち、之を犯す者に制裁を加ふるが如き、一時車場の通行を禁ずるが如き、其主なるものなり。(街路取締規則參照)
- 英
- Road police
- 独
- Wegepolizei
- 仏
- Police de la rue
兌換券
(だくわんけん)廣く兌換券とは、發行者の何人たるを問はず、其の證券所持人の請求に應じて、券面金額を現金と引換る一覧拂の無記名證券なり、彼の韓國に於て流用せる第一銀行發行の銀行券の如き、私人の發行せる例なり、されど普通は、一國の中央銀行に於て發行する兌換券を指すを例とし、我が國の日本銀行が發行する、一圓、五圓、拾圓等の兌換券は、此の例なり、元來中央銀行は何れの國に於ても、一國金融機關の中樞として、兌換券發行の特權を有し、國庫金の取扱の任に當りて、自在に金融を左右し得べき地位に立つものにして、常に内亂外患の際、又は金融市場に恐慌を來さんとする如き場合には、自ら利害を睹して國家の爲めに盡すべき責務を負ひ、其他政府貸上、地方銀行貸出等をも行ふものなりとす。(日本銀行條例一四絛、三二年大藏省令九號日本銀行兌換券發行税賦課額算出方參照)
- 英
- Convertible paper money
- 独
- bekehrbares Papiergeld
- 仏
- Papier-mon-naie convertible
多數決
(たすうけつ)多數の人が集合して、一定の事項を定むるに當り、其認否を定むるに、其頭數持分等を算して、多數の方に決するを多數決と云ふ、例へば一千人相集合して、事を議するに當り、甲を可とする者六百人、否とする者四百人なる場合に、甲を可也と決議するが如し、斯る場合には、事實六百人の意思の投合あるに過ぎざるも、尚此六百人の意思を以て、一千人を以て組織する團體の意思なりと決す、故に法律上に於ては、全員一の反對なく、滿場一致を以て決議するも、僅に一人の差を以て決議するも、其效力に至ては彼れ此れ軒輕なきものとす、これ一般會議法の通則なり、多數決に二種あり、一を絶對的多數決と云ふ、例へば一千人にて或事項を決議するに當り、五百一人以上の賛成ある場合の如し、二を比較的多數決と云ふ、甲、乙、丙何れか一に決する場合に、甲を可とする者四百五十人、乙を可とする者三百人、丙を可とする者二百五十人なる場合に、甲と可決するが如し、即ち全體の上より見れば、甲を可とする者は過半數に滿たざるも、甲、乙、丙に賛成する者を比較せば、甲を可とする者多數なる場合の如し。
- 英
- Decision by majority
- 独
- Mehrheitsbeschlusz
- 仏
- Décision par la majorité
墮胎
(だたい)墮胎とは、自然の分娩期前に、胎兒を母體より分離し、又は分離せるに依て之を死に致すを云ふ、或は分娩期に先つて胎兒を産出せしむるも、胎兒が生存するときは、墮胎にあらずと云ふ説あるも妥當なるものにあらず、墮胎の罪は、其主體、手段の如何に依て其責任を一にせず、懷胎の婦女又は胎墮、藥物、其他の方法を以て墮胎せしめたる者は、一月以上六月以下の重錮禁に處せらる、但し□一依て婦女を死に致したる者は、一年以上三年以下の重禁錮に處せられ、□二醫師、産婆、藥劑師なる時は、更に一等を加へて處罰せらる、□三懷胎の婦女を威逼し(例へば墮胎せざれば交情を絶たんと云ふが如き)又は〓騙して(例へば、私生子を産みたる者は一定の刑に處せらると云ふが如き、僞計を用ひ)墮胎せしめたる者は、一年以上四年以下の重禁錮に處せらる、□四懷胎の婦女なることを知て毆打其他暴行を加へ、依て墮胎に至らしめたる者は、二年以上五年以下の重禁錮に處せられ、初めより胎墮せしむるの意に出たるときは、輕懲役に處せらる、以上の罪を犯し、依て婦女を發疾、篤疾、又は死に致したる者は、毆打創傷の各本絛に照し、重きに從て處斷せらるべきものなり。(刑二一二條乃至二一六條參照)
- 英
- Abortion
- 独
- Abtreibung
- 仏
- abortion
脱税
(だつぜい)脱税とは、納税義務を有する者が、其義務者たることを發表せず、(所轄官署に對し)以て其納税を免るるを云ふ、國家は脱税を禦がんが爲め、種々の制裁を科す、其主なるものは罰金にして、多くは脱税額の二倍、例へば百圓を脱税したる場合には、罰金として二百圓を科するが如し、然れども五十圓以上百圓以下と云ふが如き範圍内に於て、罰金を科することなきにあらず。(酒造税法二四條乃至二六條、印紙税法一一條參照)
- 英
- Neglecting of tax paying
- 独
- Steuersauslassung
- 仏
- Negligence du paie-ment de l'impôt
脱退
(だつたい)脱退とは、法律關係の羈束を脱するを云ふ、即ち當事者、又は利害關係人なるの地位を脱するが如きを云ふ、民法第六七八絛に「組合契約を以て、組合の存續期間を定めざりしとき、又は或組合員の終身組合の存續すべきことを定めたるときは、各組合員は、何時にても脱退を爲すことを得、但し已むことを得ざる事由ある場合を除く外、組合の爲め不利なる時期に於て、之を爲すことを得ず、組合の存續期間を定めたるときと雖も、各組合員は已むことを得ざる事由あるときは、脱退を爲すことを得」民事訴訟法第五八條に「從參加人は、當事者双方の承諾を得て、其附隨したる原告、若くは被告に代り、訴訟を擔任することを得、此場合に於ては、其原告、若くは被告の申立により、判決を以て訴訟より原告若くは被告を脱退せしむべし「とあるは其用例なり。
- 英
- Retirement (from the suit)
- 独
- Ausscheiden
- 仏
- Retraite
脱漏
(だつろう)一定のものに記載せらるべきを記入せず、又は一定の區域、若くは範圍、團結等より脱出、漏去せるを云ふ、例へば商法第二九四條に「當事者が、債權、債務の各項目を記載したる計算書の承認を爲したる時は、其各項目に就き異議を述ぶるを得ず、但し錯誤、又は脱漏ありたるときは此限にあらず」とあるが如き、其の用例に屬す、之を要するに、脱漏なるものは、脱出、漏去を意味し、上例の交亙計算に於ける各項目の承認の場合には、普通S.E.&.O.(サルビウス、エロリーブス、エツト、オミツシヨニーブス)なる記號を以て表示するを常とす。
- 英
- Omission
- 独
- Auslassung
- 仏
- Omission
立替
(たてかへ)他人に代り一時金錢其他の物の支拂を爲すを立替と云ふ民法第一七四條第一項第四號に「旅店、料理店、貸席及娯遊場の宿泊料、飮食料、席料、木戸錢、消費物代價並に立替金」とあるは其用例なり。
- 英
- Charge
- 独
- Auswechselung
- 仏
- Charge
煙草專賣
(たばこせんばい)煙草專賣とは、政府が經濟上の收入として、一般に煙草の賣買を禁じ、獨占して其の業を經營するを云ふ、現時に於ては、煙草の耕作區域、種類、耕作、段別、賠償價格は政府之を定め、其製造は政府に專屬するものにして、又政府の許可を受くるにあらざれば、之を輸入するを禁じ、煙草元賣捌人及小賣人は、煙草專賣局長之を指定すべきものとせり。(煙草專賣法、煙草賣捌規則參照)
- 英
- Tobacco monopoly
- 独
- Tabaks-monopol
- 仏
- Monopole du tabac
斷案
(だんあん)普通に斷案とは、或る問題辯論に於て、終結の判斷を稱す、爾かするには、其前提として多くの辯論を要する事あり、或は二三の前提にて事足ることありと雖も、斷案に到達する爲めには、正格に論理の法則に從ふべき必要あり、然らざれば詭辯となる虞れあり、但し論理の法則に隨ふと謂ふも、一々に推理式を設くる必要なく、通常は省略に附して多くの人に承認せらるる如き命題は、之を單に豫想して推理を行ひ、以て斷案を引き出すなり、論理學に於ける三段論法の例を取れば「總ての人は死すべし」「る氏は人なり」故に「る氏は死すべし」てふ推理式に於て、前の二つの前提より、論理の手續を經て、必然に引き出されたる斷定、「る氏は死すべし」と謂ふ結論は、即ち斷案なるが如し、故に斷案とは、結論又は歸結など稱すると同一意義なり。
- 英
- Conclusion
- 独
- Schlusz
- 仏
- Conclusion
單一合力
(たんいつがふりよく)單一分勞に對するの語にして、同一の事業に對し、多數の力を同時に供給するを單一合力と云ふなり。
- 英
- Single Supply of many forces
- 独
- einziger Beitrag der vielen Kräfte
- 仏
- Co-opération
單記無記名投票
(たんきむきめいとうへう)我國に於て、衆議院議員選擧の方法として採用せらるるものにして、一枚の投票用紙に被選人一名を限り之を記載し、選擧人の姓名を記載せざるの制度なり、凡そ選擧に關する問題は一選擧資格
{イ普通選擧
ロ制限選擧(我國の制度
)二選擧區域
{イ大選擧區(我國の制度)
ロ小選擧區
三選擧の方法
{イ{(1)單記投票(我國の制度)
(2)連名投票
ロ{(1)無記名投票(我國の制度)
(2)記名投票
ハ{(1)直接選擧(我國の制度)
(2)間接選擧
二{(1)少數代表(我國の制度)
(2)多數代表
尚選擧の方法に關しては積聚投票法、順位遞減法、比例分配投票法、等あり。
普通選擧とは、凡ての臣民に均一に選擧權を與ふるの制度(年齢、男女、住所等の制限はある可きも)にして、制限選擧とは、納税又は教育等を選擧權享有の要件と爲すものなり、之には等級選擧、復選投票、通常制限選擧等あり、大選擧區とは、一區より數人の議員を出すものにして、小選擧區とは、一區より一人、若しくは三人の議員を出すものなり(市に於ては我國に於ても此制度を採る所あり)單記投票とは、選擧人一人にて、被選擧人一人を選擧するものにして、連名投票とは、選擧人一人にて、被選擧人數人を選擧するもの也、無記名投票とは、選擧人の氏名を投票に明記せざるものにして、記名投票とは之を明記するものなり、直接選擧とは、選擧人直接に被選擧人を選擧するものにして、間接選擧とは、先づ選擧人を選擧し、更に被選擧人を選擧する制度なり、小數代表とは、小黨派、又は無所屬派の意見も議會に現出せしむる方法にして、例へば區内定數の議員を五人とすれば、中三人又は四人を除き、殘り二人、又は一人に對し投票するの方法なり、多數代表とは、斯る制限なく、全部五人を選擧する方法なり。
單純承認
(たんじゆんしようにん)單純承認は承認の一種なり、承認なる語を廣く解せば、承了認諾の總ての場合を包含するも單純承認なる語は、單に相續の場合に用ひらるる承認の一種と解するを普通とす、相續が開始せられたる場合に、相續人が之に對する法律的處置は三に區別するを得、□一は抛棄にして、絶對に相續を爲さざるを指し、□二は限定承認にして、相續を拒絶するにあらざるも、一定の條件を附し、即ち被相續人の財産の限度に於て、被相續人の義務を相續することこれなり、□三は被相續人の權利義務を無限に相續するものにして、茲に所謂單純承認なり、我國從來の慣例は、殆ど單純承認のみにして、限定承認は個人主義の國に於て發達せし外國法より承繼したる所とす、抛棄の如き亦然らん、單獨承認は、前記の如く、被相續人(家督相續に就きて云へば戸主)の權利義務に就き、無限責任を以て確認する單獨、無式の意思表示なり、彼の限定承認、抛棄と異り、何等の方式をも要する者にあらず、承認としては又屆出をも要する事なし、法律は下の場合に限定承認、又は抛棄を爲したる者に對し、單純承認を爲したるものと看做せり、即ち相續すべき順位にある者が、□一相續財産の全部、又は一部を處分したるとき、例へば相續財産を私かに賣却、交換するが如し、然れども相續財産中に腐敗するの虞あるものある場合に、腐敗前に之を賣却し、多額の損失を免るるが如き手段を採るも、單純承認と看做さるる事なし、□二自己の爲めに相續の開始ありたることを知りたる時より、三ケ月内に限定承認、又は抛棄を爲さざること、但し此三ケ月は相續すべき順位にある者、又は被相續人の債權等の利害關係人、又は檢事の請求により、裁判所に於て之を伸長し、例へば六ケ月、又は一年と云ふが如くするを得、此期間を經過すれば、假令相續するの意思なかりしことを證明するも、單純承認を爲したるものとして取扱はる、即ち被相續人の義務を無限に相續せざるべからず、□三限定承認、又は抛棄を爲したる後と雖も、相續財産を隱匿し、私かに之を消費し、又は惡意を以て之を財産目錄中に記載せざりしとき、但し抛棄したる場合に、他人が承認を爲して相續を爲したるときは、單純承認と看做さるることなし、限定承認を爲したる者は、以上の行爲あれば、何年の後と雖も、單純承認と看做され、無限に責任を負はざるべからざる事となるべきものとす。(民一〇二三、一〇二四條參照)
- 英
- Absolute acceptance
- 独
- absolute Anerkennung
- 仏
- Acceptance absolue
單獨行爲
(たんどくかうゐ)凡そ吾人が法律行爲、即ち私法上の效果を生ぜしむの目的を以て爲す行爲に、双方行爲、單獨行爲の別あり、前者は所謂契約及集合行爲にして、相手方との意思の合致、若しくは集合によりて成立す、例へば賣買契約、家屋の賃貸を目的とする契約、會社の定款作成の行爲等の如き是なり、後者は相手方との間に意思の合致を要せずして成立する行爲にして、之を別ちて相手方の受領を要する單獨行爲、相手方の受領を要せざる單獨行爲と爲す、前者の例は遺贈、辨濟(辨濟を契約なりとなす奇説あり)等に於て之を見る、後者の例は、私生子認知、寄附行爲等に於て之を見るべし、終に注意すべきは、單獨行爲と雖も、一種の法律行爲たる以上は、法律上の效果發生の目的を有せざるべからざるは明かなり、從つて客觀的の存在なき行爲や、壁に向つて發表されたる意思表示は、法律行爲たる能はざるは勿論とす、要するに相手方なき單獨行爲と雖も、之が意思表示を不特定の人に知らるる如き、相當の手段を採らざれば成立するもにあらず、契約と異なり、單獨行爲は原則として他人を拘束することを得ざるものとす。
- 英
- Unilateral act
- 独
- einseitiges Rechtsgeschäft
- 仏
- Acte unilatéral
單獨國
(たんどくこく)國家の構成は、種々の態樣に依て成る、之を列擧すれば左の如し、□一單純主權國、國内法上に於ても、國際法に於ても、一國として獨立に生存するの國家なり、日本、英國、佛國、露國等の如し、□二複雜國、イ人合國、二個以上の國家が同一の君主を奉戴する國家なり、例へば白耳義と金剛國との如し、ロ物合國、或事項を以て結合せる國家なり、例へば内務と外務とを結合するが如し、而して二國が國内法上は組織を異にするも、國際法上は、物合國自身が一の國家なり、瑞典、諾威の如き、墺多利、匈牙利の如し、ハ聯邦、數國が或點に關してのみ、自ら意思を制限し、共同して主權を行ひ、他點に關しては依然自ら國權を行使する國家なり、各國も國際法上の權利を有し、聯邦も亦之を有するの點於て合衆國と異なる、議論あるも既往の獨乙國の如し、二合衆國、國際法上は、合衆國のみ國權を有するも、國内法上に於ては各國各獨立して存在する國家なり、例へば北亞米利加合衆國の如し、□三納貢國、一國が他國に對して納貢を爲す國なり、□四從國、他國の宗主權)又長上權とも云ふ)の下にある國家を云ふ、一時的の現象にして、多くは他國より自立せんとするのときに於て見る所のものなり、□五被保護國、他國の保護權の下にある國家なり、多くは他國に併呑せらんれんとするときに於て見る所の者にして、一時的現象なり、以上□一即ち單純主權國を單獨國と云ひ、或學者は□三、□四、□五の國家をも單獨國の中に入る、されど此等の國家は所謂一部主權にて、他國の拘束を受くるものなれば、之に入れざるを妥當と信ず、永世中立國は、其存在と獨立とを利害關係國により擔保せらるるも、一國を組織する場合に於ては、單獨國たるに妨げなし。
- 英
- Single state
- 独
- einfacher Staat
- 仏
- Etat singulier
單獨制
(たんどくせい)單獨制なる語は、國家、又は自治團體其他の法人等の機關を構成する場合に、合議制に相對して用ひられ、一人を以て組織する場合を指すものなり、其の體種々なれども、組織の人數に依て之を大別すれば、單獨制と合議制との二となすを得べし、帝國議會を首め、行政裁判所、府縣、郡、市町村會、府縣、郡、市參事會は合議制にして、大臣、府縣知事、郡長、市町村長は單獨制なり、司法裁判所は、或は單獨制、或は合議制なり、大審院以下地方裁判所は合議制にして、區裁判所、豫審判事は單獨制なりとす。
- 英
- Single system
- 独
- Einzelsystem
- 仏
- Système singulier
擔任
(たんにん)一定の事項の執行を引受くるを擔任と云ふ、例へば民法講坐を擔任すと云ふが如き、又賣捌方を擔任すと云ふ如き、總て或職務、又は事務の執行の衡に當るを擔任とは云ふなり。
- 英
- Charge
- 独
- Geschäftstragen
- 仏
- Charge
擔保附社債信托
(たんぽづきしやさいしんたく)我國のドラスドは、擔保附社債に關する信托事業を營む會社にして、米國のドラストに比すれば、頗る狹義のものなり、社債に附し得べき物上擔保は、□一動産質、□二證書ある債權質、□三不動産抵當、□四船舶抵當、□五鐵道抵當、□六工場抵當、□七鑛業抵當等にして、社債は之を發行する會社と、信托會社との信托契約に從つて發行す可し、而して擔保社債に關する信托事業は、主務官廳の免許を受くるに非ざれば、營むことを得ず。(擔保附社債信托法參照)
- 英
- Trust of company's loan with security
- 独
- Vertrauen der Gesellschaftsanleihe mit der Sicherheit
- 仏
- Fidéicommis du prêt de la compagnie avec le gage
單本位制
(たんほんゐせい)本位制とは、貨幤本位に關する一種の制度なり、凡そ貨幤制度は左の如く類別するを普通とす、□一秤量貨幣制、秤量貨幤制とは、國家が單に秤量の制を定むる止まるの制度なり、從て人民は、貨幣を授受するに當り、他の商品を取扱ふ如く、各自貨幤の純分を鑑定し、重量を秤りて、取引するの外なし、此制度は、鑄造貨幤制度發達の初期に行はれたるものにして、今日に於ては、唯國際貸借の殘額を決濟するが爲めに用ひらるるに過ぎず、單本位制、單本位制とは、國家が唯一種の鑄造貨幣のみを發行し、之を以て法貨と定め、法律上支拂の用具として、其額に制限なく使用せしむるの制度なり、スパルタの鐵錢、支那の青銅錢、前紀迄行はれたる瑞典の銅板の如き之なり、鑄造貨幤の初期に於て行はれしのみ、今日に於ては行はれず、□三複本位制、二種、又は二以上の金屬貨幤、又は紙幤を鑄造し、孰れも之を法貨とするの制度を複本位制と云ふ、而して各種の貨幤の比價を法律を以て規定せず、市價の變動に任ずるものを平行本位制と云ひ、法律上に於ては複本位制を採るも、或種類の金屬の鑄造を中止し、他の一種の金屬のみを鑄造することあり、之を跛行的本位制と云ふ、多くは金銀の兩貨幣を以て本位とす、紙幤を本位とするは一時的の現象に過ぎず、□四複雜單本位制、或一種の金屬貨幣を造り、之を以て本位貨と爲し、支拂上無限に使用し得ると共に、小取引を便にする爲め、他の金屬貨幤を鑄造し、制限せられたる範圍内に於て、法貨として用ひらるるの制度を複雜單本位制と云ふ、而して金を以て本位とするを金貨本位と云ひ、銀を以て本位するを貨本銀位と云ふ、我國に於ては、本金貨位を取り、銀、白銅、銅貨を以て補助貨とす、我國は即ち金貨を本位とする複雜單本位制なり、□五複雜複本位制、例へば金銀兩貨を以て本位とし、更に補助貨を用ふるの制度なり、要するに單本位制とは金、銀兩貨の中一を法貨として無限に使用せしめ、絶對に補助貨を用ひざるの貨幤制度なり、理論上に於ては、紙幤の單本位も想像するを得ざるにあらずと雖も、今日に於ては實際上行はるるものにあらず、單法貨は單本位制の意義によりて異なる、絶對に一種の貨幤の流通のみを法律上認むる制度を單本位と解すれば、斯かる制度の下に於て流通を保證せらるる法定貨幤を云ひ、複雜的單本位制をも單本位制と解すれば、斯かる制度の下に於て流通を保證せらるる貨幣を單法貨とす、從つて我國に於て流通を保證せらるる凡ての貨幤は、單法貨となる、更に複雜的單本位制に於て、無限に流通を保證せらるる貨幣のみを以て、單法貨と云ふことあり、此意義を以てすれば、我國に於ては金貨のみ單法貨なりと云はざるべからざるに至る、此の最後の意義を普通とす。
- 英
- Monometallism
- 独
- Mono-metallismus
- 仏
- Monométallisme
單法貨
- 英
- Single legal tender
- 独
- einzige gesetzliche Münze
- 仏
- Monnaie légale singulière
單利
(たんり)重利、又は複利に對し、元本のみに利息を附するを單利と云ふ、之に反して重利とは、或はある期間の利息を元本に組み入れて、併せて之に利息を附し、又は單に延滯せる利息に又利息を附するが如きを云ふ、要するに單利なるものは、元本にのみ利息を附するも、利息に又利息を附するが如きことなく、尚利息を更に元本に組入れ、之に利息を附するが如きことなきを云ふ。(利息債務の部參照)
- 英
- Simple interest
- 独
- Einzel-interesse
- 仏
- Intérêt simple
彈力
(だんりよく)一時他の勢力により收縮したるものが、其勢力の除滅により、再び元の狀態に復活するの力を彈力と云ふ、例へば貨幣の價額の如き、物價下落すれば騰貴し、物價騰貴すれば下落するが如き、所有者が地上權等を設定すれば、其空權を擁するに過ぎざるも、地上權の消滅により、完全に其權利を行使し得る狀態に至るかき如き即ち是なり。
- 英
- Elasticity
- 独
- Elasticität
- 仏
- Elasticité
治安
(ちあん)保安と謂ふに同じく、公共の安寧、國家の秩序を維持するを云ふ、茲に安寧、又は秩序と云ふも、同一の狀態を積極及び消極の兩面より觀察したるものにして、所謂國家の秩序とは、各人が社會に於ける共同生活の上に於て、他人に對し一定の境域を守り、互に相侵さるの狀態を云ひ、公共の安寧とは、この秩序に對し危險なき狀態を稱すに外ならず、學者が警察を分ちて、治安警察、行政警察、司法警察となすが如きは此の用例なり。
- 英
- Public Safety
- 独
- öffentliche Ruhe
- 仏
- Sûreté publique
地域
(ちいき)土地の區域、又は一定の土地の境堺を地域と云ふ、例へば行政法人たる府縣、郡、市町村が、行政區劃たる府縣、郡、市町村の地域に依りて其領域を定むるが如し。(府縣制、郡制、市制、町村制參照)
- 英
- District
- 独
- Gebiet, Bezirk
- 仏
- District
鑄貨
(ちうくわ)鑄造したる貨鑄を鑄貨と云ふ、今日に於ては、不換紙幤を除くの外、鑄貨にあらざるはなし、然れども昔時は、今日の如く鑄貨を用ひたるものにあらず、獸皮の貨幤時代もあい、蓋し人文未だ發達せず、狩獵を事としたる時代に於ては、普ねく貴重せらるるものは、獲獲せる野獸なるも、其肉は之を蓄ふるに由なし、茲に於て乎獸皮は、蓄藏し得べく、且つ衣服の料となるを以て、草眛の民族が、獸皮を以て貨幣としたるなり、次で少しく進步するや、家畜の貨幣▲代ありき、社會の進步に伴ひ、狩獵時代より牧畜時代に進むや、牛、羊等の家畜は其最も尊重せらるる所となり、且つ讓渡に便なるのみならず、多年保存し得べきを以て、貨幤として通用するに至りたり、之に次で農産物、更に服飾物、製造品の貨幤、例へば布帛の如き、貨幤として通用せられ、漸々に今日の如き鑄造したる金銀、銅貨を用ふるに至りしなり、蓋し貨幤の條件として、□一携帶運搬に便なること、□二毀滅せざること、□三品質に精粗なきこと、□四分割し得べきこと、□五認識し易きこと、□六價格の變動少きことの條件を具ふるものを最も便宜とし、今日の貨幤を措ては他に優さるものあらざればなり。
- 英
- Coinage
- 独
- Münze
- 仏
- Mon-naie
鑄造
(ちうざう)鑄造とは、貨幤を製造するを云ふと解して可なり、廣く解せば、貨幤を製造するのみを指すにあらずと雖も、法律上の用語として用ひらるる揚合は、多く貨幤を製造することに用ひらる。鑄造權とは、貨幤を製造するの權利を云ふ、今日の實際に於ては、國家之を獨占するを例とす、若し私人が之を製造せば、即ち貨幣僞造として之を罰せらる。(貨幣法一條)
- 英
- Coinage
- 独
- Münzen
- 仏
- Mon-naie
鑄造權
- 英
- Right of coinage
- 独
- Münz-recht
- 仏
- Droit de la monnaie
抽象
(ちうしやう)具體と謂ふに對す、吾人の精神現象中理想と謂ひ、想像と謂ひ、推理と謂ひ、其精粗の差別こそあれ、總べて皆その起源を直接間接に自然界の經驗に負はざるものなし、然れどもこの時間及び空間に現はれたる自然現象をば、吾人は唯之を映寫するに止まりて、感官に觸るるままの自然物を、單に記臆するのみならば、萬人の智識の内容は、等しく各人の經驗の範圍に限られ同じかるべし、然るに實際に於て、吾人の智識に差等あるは、吾人の經驗の多少にも依るべきことなるが、多くは各人が先天的に固有する抽象作用なるものの鋭鈍に依ると見ざるべからず、農夫は農事に就きて多大の經驗を有するも、然かも農學者の一論に如かざることあるはこの故なり、然らば抽象作用とは如何、吾人自然現象を經驗する時に、唯感官に觸るる儘に記憶するにあらずして、一切の自然現象より、色聲、香味、性質、形狀、數量、關係等の屬性を抽き出だし來たりて、其等を其自身丈けにて或は過去の經驗に依りて得たる者との間に綜合分析を行ひ、以て自然現象に類似せる、或はそれ以上、若しくは以外の種々樣々なる想念を構成す、これに由りて是を觀れば、吾人は一方に自然現象に材料を得て、吾人の智識を啓發する者なるが、一方には之等の材料を分析統一する根本的精神作用が、吾人に固有し以て、知識を構成するなり、即ち吾人には、先天的に自然現象の屬性を抽出する精神の作用ありて、自然界に存在する種々の物象より、其性質、形狀、色聲、香味等を抽出し、自然現象としては、分離せざる、又分離することを許さざる、否分離し得ざる屬性を精神界のみに想念することを抽象と稱する也、隨つて抽象せられたる事抦は、唯精神現象として思惟し得べきのみにして、之を實際物として單獨に自然界に現はし、或は求むることを得ず、之を以て極端なる抽象作用は、唯精神上の茫漠たるものを生ずるに至るべし、然れども全く抽象作用なきときは、吾人の智識は、到底自然現象の單なる感覺以外に、一步も自由なることを得ず、唯抽象する能力の吾人に固有するが爲めに、事物の統一綜合より、法則原理の如きものも攻究せられ得るなり、故に吾人の學問の骨子は、抽象作用なりと極言することを得べし、然らばかくの如き偉大なる働きを有する抽象作用は、抑も如何なる精神作用なるか、その根本的説明は、哲學上の大問題にして、今解決することを得ず、唯吾人は吾人精神の先天能力として、これを認めて滿足すべきのみ、抽象的とは、具象的、又は具體的てふ形容詞に對し、即ち吾人の感官に觸るる時間と、空間とに規定せらるる客觀的物象にあらずして、吾人の思惟を以て、其等物象より其屬性を抽出したる的てふ意義を有す、又餘りに俗と遠ざかれる言論を抽象的と謂ふことあり。
- 英
- Abstract
- 独
- abstract
- 仏
- Ab-strait
抽籖
(ちうせん)同一の權利に就き、多數人が之を有する希望狀態にある場合に於て、之が最後の歸屬權利者を定むべき方法を抽籖と云ふ、俗間謂ふ所の籖を抽くと大差なし、民法第五六一條に「廣告に定めたる行爲を爲したる者數人あるときは、最初に其行爲を爲したる者のみ報酬を受くる權利を有す、數人が同時に右の行爲を爲したる場合に於ては、各平等の割合を以て報酬を受くる權利を有す、但し報酬が其性質上分割に不便なるとき、又は廣告に於て一人のみ之を受くべきものとしたるときは、抽籖を以て之を定む」衆議院議員選擧法第七〇條末項に、「本條に依り當選人を定むるに當り、投票の數相同じきときは、年長者を取り、同年月なるときは、抽籖して其順位を定む」とあるは其用例なり。
- 英
- Drawing
- 独
- Ausloosung
- 仏
- Tirage
地役
(ちえき)地役とは、設定行爲を以て定めたる目的に從ひ、他人の土地を自己の土地の便益に供するを云ふ、即ち自己の土地の便宜の爲め、他人の土地の所有權を制限するを云ふに外ならず。(民二八〇條乃至二九四條參照)地役權とは、設定行爲を以て定めたる目的に從ひ、他人の土地を自己の土地の便益に供する權利なり、□一他人の土地の上に行はれざれば、地役權にあらず、□二土地の所有者が、他人の土地の上に有する權利にあらざれば地役權にあらず、□三一の土地を他の土地の便益に供するにあらざれば地役權にあらず、故に所有者の便益に供するを主眼とするものは地役にあらず、而して地役權の附著せる土地を要役地と云ひ、地役權を負擔する土地を承役地と云ふ、此要役、承役の兩地は離る可らざる關係を有し、地役權は要役地の所有權と共に移轉するを普通とす、故に地役權のみを移轉し、所有權を殘留するを得ず、何等特約なきとは、地役權は要役地の上に存する權利の目的となる、地役權は之を別ちて、□一積極地役と消極地役、前者は地役權者の積極行爲よりなり、例へば他人の土地の上を自己の土地の爲めに通行する地役權の如し、後者は承役地の所有者に對し、或行爲を爲すことを禁ず、例へば高き建築を爲さず、北面に窓を開かずと爲地役の如し、□二繼續地役と不繼續地役、例へば引水地役の如きは繼續地役にして、隣地を朝夕通行するが如きは不繼續地役なり、□三表現地役と不表現地役、其行使が外形に現はるると否とによる區別なり、土中に水道を引くが如きは不表現地役にして、隣地を通行するが如きは表現地役なり、次に地役權の取得原因は、(甲)設定行爲、即ち契約、遺言、(乙)時效等にして、その消滅原因は、(1)承役地の所有權と、要役地の所有權とが、同一人に歸したるとき、(2)消滅時效に罹りたるとき、即ち地役權者が、其權利を二十年行使せざるとき、(3)承役地、又は要役地が公用徵收に遇ひたるとき地役權を抛棄したるとき等其主なるものなり。(民二八〇條乃至二九四條參照)地役權者とは、地役權を有する者を謂ふ、即ち要役地の所有權を有する者なり、地役權は土地の所有者にあらざれば、之を有する能はざるものにして、地上權者、家屋所有者等には、地役權者たる場合なし。(民二八〇一條參照)
- 英
- Servitude
- 独
- Servitut
- 仏
- Servitude
地役權
- 英
- Servitude
- 独
- Grunddienst-barkeit, Servitut
- 仏
- Servitude
地役權者
- 英
- Holder of servitude
- 独
- Lehnsmann
- 仏
- Détenteur du servitude
地價
(ちか)地價の用例一ならず、□一地租條例に云ふ地價を指すことあり、此場合に於ては、土地臺帳に揭げたる所の土地の定價を云ひ、敢て現時の賣買價格と一致すると否とを問はず、地租條例第一條に「地價」とあるは此用例也、□二土地の眞價を地價と云ふことあり、即ち地租條例に定めたる地價如何を問ふことなく、其生産力の如何により、需要供給の原則に基き、決定されたる其當時の實價を指して云ふものなり。地價据置年期とは、地價を變動せざる恩惠期間を云ふ(元來地租條例に所謂地價は、總收入より生産費を控除し、其殘額を純收入となし、其の純收入を附近の市場に於ける利息と見積り、其の利率に依りて元本を算定し、依て得たる元本を土地の代價と見做し、之を地價として土地臺帳に記載し、永く課税の標準とし、政府に保存せるものなり、故を以て此法定地價は、土地の實價と異なり、時々變動すべきものにあらざるものとす、されど始終之を變更せざるときは、或は其の均等を害するものあるを以て、ある場合には之を變動すべきものなるは明かなり、されど耕地の區劃、若しくは形狀を燮更する爲め、又は地目を變換する爲め、開墾に等しき勞費を要したる場合にも、地價の變更をなさんか、斯る行爲を爲したる土地所有者は、意外の損害を蒙むることとなり、或は斯る行爲を爲さざるに至るべし、是國家經濟上嘉みすべき事にあらざるが故に、政府は以上の如き行爲を爲したる者の出願により、三十年以内の期間從來の地價を修正せず、其儘据置くことを許す、此期間を地價据置期間と云ふなり。(地租條例一六條參照)
- 英
- Price of Land
- 独
- Landespreis
- 仏
- Prix
地價据置年期
- 英
- Terms of fixed price of land
- 独
- Termin des festgesetzten Preisses des Landes
- 仏
- Terme du prix fixe de la terre
知覺精神
(ちかくせいしん)事物を正當に認識し得べき人の意識を知覺精神と云ふ、彼の辨識力と云ふも亦同じ舊刑法第七八條に依れば、「罪を犯す時知覺精神の喪失に依て是非を辨別せざる者は、其罪を論せず」と、民法第七一二條には「未成年者が他人に損害を加へたる場合に於て、其行爲の責任を辨識するに足るべき知能を具えざるときは、其行爲に付き賠償の責に任ぜず」同法七一三絛に、「心神喪失の間に他人に損害を加へたる者は、賠償の責に任ぜず、但し故意、又は過失に依りて、一時の心神喪失を招きたるときは、此限にあらず」と、以上の法條に或は「其行爲の責任を辨識するに足るべき智能を具えざる時」と云ひ、「心神喪失」と云ひ、「知覺精神の喪失に依て、是非を辨別せざる」と云ひ、辭を異にするも、意は即ち一なり、要するに是非を辨識する意識なく、感覺知力の能力を具せざるを云ふものとす、この辨識力は、普通行爲の結果を本人に歸し、其責に任ぜしむる、所謂責任の心的一條件となすものなり。
- 英
- Reason
- 独
- Vernunft
- 仏
- Raison
直取引
(ぢきとりひき)直取引とは、取引所に於てする取引の一種にして、延取引、定期取引に相對し、即時履行の賣買契約を意味す、直取引の契約履行期限は、契約成立の當時より起算す、而して法律が五日以内に、賣買双方約定の日限に引取るべきことを規定せるは、五日の猶豫期間を與へたるに過ぎずして、直取引を以て期限附の賣買契約となしたりと解釋せざるを要す、蓋し之を沿革に徵するに、株式取引條例、株式取引所條例、及び米商取引所絛例に照合して考察するに、今日の直取引は、恰も所謂現場勘定、又は現場取引なるものに該當するものたればなり、直取引の方法は、之を別ちて相對賣買、糶賣買、入札賣買の三種とす、相對賣買とは、當事者双方の申合に依る普通の賣買を謂ひ、糶賣買とは、當事者一方の申出に依り、取引所に於て契約の條項を市場に揭示し、競爭糶上の方法に依りて相手方を定めしむるものを謂ひ、入札賣買とは、▲賣買と同樣の揭示を爲し、記名入札に依りて相手方を定めしむるを云ふ、實際に於て最も多く行はるるは糶賣買なり、而して糶賣買は、定期取引に於てのみ之を認め、直取引には之を認めず。(取引所法參照)
- 英
- Transaction for money, imme-diate account
- 独
- Lokogeschäft
- 仏
- Comte immédiate
持兇器強盜
(ぢきようきがうたう)兇器を携帶して犯したる強盜を持兇器強盜と云ふ、兇器の何たるやに就きては二説あり、□一所謂兇器とは狹義の兇器、即ち凡て攻擊防禦の方法として、器械作用により人の生命、身體を毀損する爲めに作られ、且つ此目的を達するに可能なる者を云ふ、例へば銃砲、刀劍、槍、木刀の如し、而して苟も兇器たる以上は、犯人が之を携帶するの事實を知るを以て足り、之を以て生命、身體を毀損する爲めに携帶するの意思あるを要せず、蓋し特に刑を加重する所以は、犯人が兇器を携帶するときは、携帶夫れ自身に於て既に他人の身體生命を毀損するの機會に利用せらるるの危險あれば也、又犯人以外の者に於て、兇器を携帶することを覺知するを要せざるは言を俟たず、□二凡そ兇器とは、危險なる器具と云ふ意味にして、其器具が生命身體を毀損するの危險ありや否やは、絶對的に之を定むる能はず、各場合に於て所持者が之を使用すんとする手段方法に依て決せざる可らず、別言すれば、其便用方法に從て著しく生命、身體を毀損するの懸念を惹起するに足るべきことに依て決すべし、例へば一本の針にても、人の心臟を剌せば以て生命を絶つに容易なるべく、ピストルと雖も之を以て單に人を突くに止まらんか、身體毀損の虞なし、從つて如何なる物ガ兇器なるやは、普通其物の用法に從て決定すべきものなりと、此の説に從ふときは、兇器を携帶する犯人は、其器具を生命身體毀損の方法に用ふるの意思あることを要すといはざる可らず、我大審院は、曾て此の説を採りたることありき、本罪の處分は、重懲役に處せるものなり。(舊刑三七八、三七九條及強盜の部參照)
- 英
- Robbery with arm
- 独
- bewaffneter Raub
- 仏
- Vol avec l'aide de l'arme
持兇器竊盜
(ぢきようきせつたう)持兇器竊盜とは、兇器を携帶して竊盜を爲すを云ふ、竊盜、窃盜罪、持兇器強盜の部を參照せよ。(舊刑三七〇條)
持兇器竊盜罪
持兇器竊盜罪とは、持兇器竊盜と云ふと大差なし、唯刑罰を科せられたる方面より斯く名けたるに過ぎず、持兇器竊盜罪としての所罰は、所謂屋内竊盜の場合にして、輕懲役に處せらるるものとす。舊刑三七〇條、及び屋内竊盜罪の部參照)
- 英
- Crime of thief with dan-gerous arms
- 独
- bewaffineter Diebstahl
- 仏
- Vol avec l'aide de l'arme
治外法權
(ちぐわいはふけん)治外法權なる文字は、學者により種々に用ひらるるも、比較的正確なるは、或人が他國の版圖内にあるに拘らず、其國權に服從することを免るる國際法上の權利なりと云ふにあり、即ち在住國の國權より除外せらる特權と云ふに止まり、他國にあるも、尚且つ本國に在るものと看做さるるものにあらず、之を受くる者は、□一君主、□二外交官、□三軍隊、□四軍艦是なり、茲に注意すべきは、領事裁判權とは、大に差異あること之なり、世人住々にして領事裁判權と混同し「我國も條約改正の結果治外法權を撤去せしむるに至りたり云々」と誇稱する者あるも、治外法權なるものは如何なる場合に於ても、撤去せらるべき性質のものにあらず、兩者の間には、即ち左の差異あり、□一治外法權は、通常其在留國の法律に拘束せられざることを意味するも、領事裁判權は、唯裁判に關してのみ在留國の司法權に服せずと云ふに過ぎす、□二治外法權は、通常消極的且つ受動的に、在留國の法律に拘束せられざる事を意味するに止まるも、領事裁判權は、法律關係に就きては、其地在留の自國臣民に對して、積極的且つ自動的に司法權を行ふ事を意味す、□三治外法權は、國際禮讓、便宜に其の基を發し、現時に於ては必要的に當然に享有するものなるも、領事裁判權は、文明と非文明との差異に基き、條約に依て獲るものなり、□四治外法權を有する者は、君主、外交官、軍隊及軍艦に過ぎざるも、領事裁判權の適用を受くる者は一般人民に及ぶ、即ち普通人民も、領事裁判權なる特別權の支配の下に立つ、以て治外法權の内容知るべきなり。
- 英
- Exterritoriality
- 独
- Exter-ritorialität
- 仏
- Exterritorialité
地券
(ちけん)□一舊法時代に於て、土地所有權の所在を明かにせんが爲め、一般の民有地に對し、政府より其所有權利者に交付せる證券を地券と云ひたりき、然れども今日に於ては、不動産登記の制度、土地臺帳の制度等具備せるを以て、明治二二年已に之を廢止せられたり、□二外國人又は外國法人が、我國に於て有する永代借地權に對し、政府より下附する永代借地券を單に地券と稱することあり、この地券は、永代借地券を移轉したる場合に、其土地の所在地を管轄する地▲廳に於て、其旨を記載するにあらざれば、之を以て第三者に對抗することを得ざるものなり、明治三四年法三九號第一條に、「永代借地券」とあるは其用例にして、地券とは其略語なり、永代借地權の性質は、所有權の變體なるが故に、此地券も亦舊法に於ける地券と其性質を一にするものと云はざるべからず。(土地臺帳規則五條、三四年法三九號參照)
- 英
- Title deeds
- 独
- Urkunde
- 仏
- Titre
治罪
(ちざい)治罪とは、猶刑事訴訟と云ふが如し、罪の有無、輕重を治斷するの手續なり、現行刑事訴訟法制定以前には、治罪法なるものありて、刑事訴訟に關する手續を規定したり、目下猶陸軍治罪法、海軍治罪法あるはその用例なり。
治産
(ちさん)治産とは、自ら所有する財産的法律行爲を統治することを謂ふ、例へば自ら自己の財産を管理、處分することを得るか如き之れなり、人は原則として治産の能力あり、治産の能力なきは、例外なり、民法上の無能力者は、即ち治産の能力なき者の例なり、皇室典範第五三條に「皇族蕩産の所行あるときは、勅旨を以て治産の禁を宣告し、其管財者を任ずべし」とはこの用例に屬す。
- 英
- Administering of property
- 独
- Eigentumsverwaltung
- 仏
- Administration de la propriété
治産の禁
治産の禁とは、治産を禁ぜられたるを云ふ、民法上の禁治産者、準禁治産者は即ち治産を禁ぜられたる者の例なり、裁判所構成法第一五條に「未成年者、瘋癲者、白痴者、失踪者其他法律、若くば判決により治産の禁を受けたる者の後見人、若くは管財人を監督すること」とあるは其用例なり、但し現時の法律は、餘り治産なる文字を使用せずして、一般に權利能力、又は權利行使能力を制限、若しくは剝奪するを例とす、從て必ずしも治産の禁あるものと、現行民法に所謂禁治産者なる者の無能力の範圍は、一致するものにあらざるなり。
- 英
- Incompetency, Prohibition from administering of property
- 独
- Ent-mündigung
- 仏
- Interdiction
持參人拂
(ぢさんにんばらひ)債權者の特定せるか否かに依り、債權を別ちて四となす、□一記名債權、債權者の誰たるか特定し居る債權を云ふ、□二指圖債權、債權者の誰たるか判明せるは、記名債權に近きも、その債權者は、他の者を指圖して債權者たらしむることを得る債權を云ふ、□三持參人拂債權、即ち債權證書の持參人が、常に債權者たる債權を云ふ、彼の所持人拂債權、又は無記名債權と云ふはこのことなり、□四指名所持人拂債權、債權者の特定せるは記名債權と同じく、其所持人拂たる點は、持參人拂債權に類似せる債權を云ふ、總て指圖式及び持參人拂式の債權は、證書の存在を要し、證書なしには之を想像し得ざるものとす、さて持參人拂とは、即ち無記名債權、又は指名所持人拂債權に於て、その持參人に支拂ふとの意にして、若し其の債權が確定日拂なるときは其の日に、日附後確定▲拂なるときは、其の特定の日後確定期日に、一覧拂なるときは一覽の日に、支拂はるべきことは普通の債權と異なることなし、唯記名債權、指圖債權と異なり、何人たりとも其所持人に支拂ひて債務を免るるものとす、これ無記名債權、及び記名持參人拂債權の性質より然る所なり。(民四七一四七二條參照)
- 英
- Payable to bearer
- 独
- In-haberzahlung
- 仏
- Payable au porteur
知事
(ちじ)知事とは、府縣知事を云ふ、府縣知事は、□一行政官廳として府縣行政事務を統轄し、及び之を代表し、□二府縣なる自治團體に於ける執行機關として、其執行事務を掌り、之を代表す、府縣知事は、單獨制にして、其補助機關として書記官、警部長、參事官、技師、屬官等を有す、府縣知事は、通常内務大臣に隷屬し、各省主管の事務に付ては、各省大臣の指揮監督を受け、下の職務を行ふ、イ法律命令を執行し、部下の行政事務を管理すること、ロ府縣令を發すること、此府縣令には、十圓以内の罰金、十日以下の拘留の罰則を附加することを得、ハ非常事變の場合及警護を要する場合に、師團長、旅團長に通知して出兵を請求し得ること、二下級官廳を監督し、郡長、島司の處分命令にして、違法、又は公益を害するものと認むるときは、其處分、命令を取消し、又は停止し得ることと、ホ部下の官吏を監督し、府縣に於ける判任官以下の進退を專行すること、へ廳中の庶務細則を定むること、ト市郡の監督を爲すこと、チ其他委任を受けたる事務を處理すること、次に知事故障ありて其事務を執る能はざるときは、書記官當然其職務を代理し、書記官事故あるときは、内務大臣に於て府縣高等官の一人を指定し、其職務を代理せしむるを得るものとす、又知事は府縣の官吏をして、臨時其職務を代理せしむるを得べし、前の場合を全部代理と云ひ、後の場合を一部代理と云ふ、尚知事は其職務に屬する事務の一部を郡長、又は島司に委任することを得べし。(府縣制參照)
- 英
- Governor
- 独
- Statthalter
- 仏
- Gouverneur
治者
(ぢしや)上下の關係に於て、之を統治するものを治者と云ふ、即ち被治者に對するの語なり、純然たる上下權力服從の關係は國家なり、國家に於て治者と云ふは、一國の元首にして、我國に於ては萬世一系の天皇なり、大日本帝國は、萬世一系の天皇之を統治する所にして、治者に對すべき被治者は、我が國に於ては日本臣民なり、若し國家にして治者を缺かんか、最早其生存を保つべからず、然れども特定の治者は、其要件にあらず、自然人たる治者の更迭あるも、其地位を充し得る者あれば、則ち國家は依然として其國家たり。(憲法一、四條)
- 英
- Ruler
- 独
- Regierer
- 仏
- Gouver-neur
地上權
(ちじやうけん)地上權とは他人の土地に於て、工作物、又は竹木を所有する爲め、其土地を使用する權利なり、例へば他人の土地に家屋を建築する爲め、其土地を使用するの權利の如し、されど賃借權とは、之を區別せざるべからず、賃借權も同一目的を有する事ありと雖も、これ一種の債權に過ぎず、即ち他人をして自己が使用收益を爲すことを妨げざらしむるに過ぎず、又彼の永小作權とも異なる、永小作權は、小作料を拂ひて、他人の土地に耕作、又は牧畜を爲すの權利なり、故に其目的に於て差異あり、地上權の期間に就ては何等の制限なし、五年を以てするも、百年を以てするも、千年を以てするも、當事者間の任意也、若し其期間を定めざるときは、別段の慣習あれば、其慣習に從はざるべからざるも、これ無きに於ては、地上權者は、何時にても之を抛棄することを得、但し地代を拂ふときは、一年前に豫告を爲し、然れざれば未だ期限の至らざる一年分の地代を拂ふことを要す、若し地上權者が其權利を抛棄せざる場合には、裁判所は當事者の請求により、二十年以上五十年以下の範圍内に於て、工作物、又は竹木の種類、及び狀況、其他地上權設定の當時の事情を斟酌し、其存續期間を定むるものとす。(民二六五條乃至二六九條參照)
- 英
- Superficies
- 独
- Erdbaurecht
- 仏
- Superficie
地租
(ちそ)地租とは、地租條例により、土地を課税物件として、其所有者(土地臺帳に記載せられた者)より徵收する租税なり、其税率左の如し。
(1)、市街宅地地價
定率既增徵戰時特別税
百分の二、五百分の五、五百分の一二、〇
計百分の二〇、〇
(2)、郡村宅地同
百分の二、五百分の三、五百分の二、〇
計百分の八、〇
(3)、其他の土地同
百分の二、五百分の一、八百分の一、二
計百分の五、五
- 英
- Land tax
- 独
- Grundsteuer
- 仏
- Impôt sur la terre
遲滯
(ちたい)遲滯は、債務者に就きて生ずる事あり、債權者に就きて生ずる事あり、而して各性質を異にす、債務者の遲滯とは、適當の時期に履行を爲さざるものにして、義務の不履行なり、債權者の遲滯は、履行を受くるの權利あるに拘らず、之を受けざるものにして權利の不行使也、先づ債務者の遲滯に就きて述べんに、□一有效に成立せる債權あること、□二債權が辨濟期にあること、□三債權に對抗せらるべき抗辨なきこと、□四以上▲要件存するに拘はらず、債務者が履行を爲さざることの四要件存するときに於て、債務者は遲滯に附せらるるものなり、其效果は(甲)債權者は強制履行を請求すをる得、(乙)損害を生じたる時は、債權者其賠償を求むる事を得、(丙)債權者は契約の解除を求むる事を得、次に債權者の遲滯消滅の原因は、□一債務者が債務の本旨に從ひたる履行の提供を爲したる時、□二當事者間に合意ありたる時、□三債權消滅したるとき即ち之なり、次に債務者の遲滯に就きては下の要件を要す、(1)適法なる履行の提供ある事、(2)債權者が履行の提供を受領せざること、其效果は、□一債務者は、債權者の遲滯の時より債務の不履行により生ずべき一切の責任を免る、□二債權者は其遲滯の爲めに、債務者に生じたる一切の損害を賠償せざるべからず、□三債務者は供託等によりて、其債務を免るるを得、債權者遲滯の消滅原因は、イ債權者が、債權關係に從ひ、受領の爲必要なる行爲を爲したるとき、但し債務者の請求あるときは、債務者は其遲滯の爲めに生じたる費用其他の賠償を提供せざるべからず、ロ當事者間に合意あるときは、ハ債務消滅したるとき是なり。(民四一二條乃至四二一、五四一、五四二條參照)
- 英
- Delay
- 独
- Verzug
- 仏
- Délai
地代
(ちだい)地代なる語は、□一土地の代價を指して云ふ事あり、□二土地所有者が、地上權を設定したる報酬として、地上權者より受取るべき者を指して云ふ事あり、民法第二六六絛に、「地上權者が土地の所有者に、定期の地代を拂ふべきとき云々」とあるは其用例也、□三更に經濟學上に於て地代とは、普通の意義より一層狹く、單に自然としての土地に對する報酬のみを意味するものとす、元來土地は勞力と資本を加へて始めて吾人に收穫を與ふ、然れども若し此收穫にして、單に勞力と資本に對する普通の報酬を償ふに足らざるときは、地代なるものは未だ存せず、故に凡ての土地は、皆地代を生ずるものにあらず、土地にして地代を與へざるもの必ずしも少しとせず、所謂耕界地の如きは、地代を與へざる適例也、而して地代を生ずる原因は、イ土地の生産力に自然的差異あること、ロ位置に便否の差異あること等なりとす。
- 英
- Ground rent
- 独
- Grundzins
- 仏
- Redevance
褫奪
(ちだつ)褫奪とは、一種の懲戒として國家が勳章の所持、又は年金受領の權利等を奪ふを謂ふ。(一六年大政官布告二二號參照)
- 英
- Deprivation
- 独
- Plünderei
- 仏
- Privation
智能權
(ちのうけん)智能權とは、文學、美術、發明等、人の智識、才能、技藝に關する權利を、物權債權等に對して、與へたる權利の名稱にして、一種の財産權なりとす、智能權が物權と異なる點は、物權は物の上に行はれ、且つ一般人に對抗するの權利なるも、智能權は物の上に行はれず、債權と異なる點は、債權は特定人に對して、行爲不行爲を要求するの權利なるも、智能權は一般人に對抗するの權利なり、智能權の主なるものは著作權、特許權等なり。
- 英
- Right of talent
- 独
- Talents-recht
- 仏
- Droit du talent
地方行政
(ちはうぎやうせい)一般國の行政に對して、其の地方限りの行政を地方行政と云ふ、地方行政に、官治行政あり、自治行政あり、官治行政とは、國家の官廳を以て地方行政を行ふにあり、自治行政とは、自治團體を以て地方行政を行ふにあり、要するに地方行政は、地方分權に伴ふ、地方分權あれば、茲に地方行政あり、地方分權の範圍廣ければ、地方行政の事務從て繁多なり、中央集權の範圍廣ければ、地方行政の事務閑散なり、我國の制度によれば、地方行政を行ふ機關は、府縣、郡、市町村及臺灣、北海道なり、臺灣に於ては、專ら官治による地方行政にして、北海道は、自治による地方行政を僅に認むるの外、槪ね官治による地方行政なり、其他内地は官治による地方行政と、自治による地方行政と交々行はる、即ち府縣、郡に於ては官治、自治地方行政並存し、市町村に於ては、自治による地方行政のみ存す。
- 英
- Local administration
- 独
- Kommunalverwaltung
- 仏
- Administra-tion locale
地方官廳
(ちはうくわんちやう)國家の官廳にして、其權限が領土内の一區域に限られたるを地方官廳と云ふ、之を分ちて、□一臺灣總督、□二北海道長官、府縣知事、警視總監、郡長、島司等となす、或は市町村長も地方官廳の一種として揭ぐる學者あるも、多くの學者は之に反す、而して之等の地方官廳は、各其地位權限を異にす、最も廣き權限を有するは、臺灣總督にして府縣知事の權限は稍廣く、郡長、島司の權限は狹し、地方官廳は、各省大臣に隷屬するの地位はありて、更に上下の關係あり、其上級地方官廳を第一次の地方官廳と云ひ、其下級官廳を第二次の地方官廳と云ふ、臺灣總督、府縣知事、警視總監及北海道長官は、第一次の地方官廳にして、郡長、島司、支廳長等は、第二次の地方官廳なり、地方官廳は更に二種に別つ、□一は普通地方官廳にして以上の地方官廳は皆之なり、□二は特別地方官廳にして、税務管理局長、鑛山監督署長、大林區署長等即ち之なり。
- 英
- Local government
- 独
- Lokal-regierung
- 仏
- Gouvernement locale
地方裁判所
(ちはうさいばんしよ)區裁判所の最近上位の通常裁判所を云ふ、地方裁判所は第一審として、區裁判所の權限、又は控訴院の權限に屬するものを除き、一切の民事刑事を裁判すると共に、第二審として、區裁判所の判決に對する控訴、區裁判所の決定命令に對する控告、並に破産事件に關する一般の裁判權、及び非訴事件に關する區裁判所の決定、命令に對する抗告を審理裁判する權限あるもの也、地方裁判所の構成は、三人の判事を以てするものにして、宣言は三人の判事の合議を以て成る、地方裁判所には、一若しくは二以上の民事部及刑事部を置く、地方裁判所長は、裁判所の一般の事務を指揮し、其の行政事務を監督す、然れども裁判事務は固より關渉することを得ず、蓋し裁判官は、法律の解釋に就き、不覊獨立の地位にあればなり、部長も亦行政事務に就き部の事務を監督するものなり。(裁構法一九條乃至三三條參照)
- 英
- Local court
- 独
- Landes-gericht
- 仏
- Tribunal d'arrondissement
地方税
(ちはうぜい)地方税とは、國税に相對する名稱にして、其區別に就ては二説あり、□一租税徵收の目的より之を區別する説、國税とは國家の政費に充つるの目的より徵收せらるるものを謂ひ、地方税とは、地方の政費を支辨する爲めに徵收するもの也、□二租税徵收の主體によりて區別する説、國税とは、國家が徵收するものを謂ひ、地方税とは、地方團體が國家より賦與せられたる權限により、其管轄區域内より徵收するものなりと、我國に於ける地方税は、以上兩説を併せたる意義を有す、即ち國家の政費を支辨する爲め、國家が直接に徵收する租税を國税と云ひ、其地方に關する政費を支辨する爲、地方團體が徵收する租税は、地方税なるが如し、何れも關税に對する内國税の一種にして、大體に於て異なる所なし、唯徵收の範圍、徵收手續等に於て異なる所あるのみ。(地方税規則參照
- 英
- Local tax
- 独
- Kommunalsteuer
- 仏
- Taxe locale
地方團體
(ちはうだんたい)地方團體とは、一定の土地區域内に住する人民の團體を云ひ、地方自治團體、又は地方公共團體と云ふときは、以上の團體にして、自治行政を行ふ公法人也、其の如何を問はず、地方團體は、一定の土地と其住民とを以て構成要素とす、これ公共組合と異なる點なり、而して現時に於ける地方團體には、府、縣、郡、市、町、村の六種あり、町村は最下級の地方團體にして、郡は其上に位し、市は郡より獨立して縣に直接隷屬し、府、縣は郡市の上に位す、即ち郡は町村の聯合より成り、府縣は郡市の聯合より成る、故に町村の住民は同時に郡、又は府縣の住民なり、市の住民は同時に府縣の住民なり、如斯數段の階級を認むる所以は、蓋し歷史上の事由と行政整理の必要とに出づ、以上の外尚特殊の地方團體なきにあらず、町村内の自治區、町村組合、北海道の己、沖繩縣の區、及び間切の如き即ち之なり、要するに地方團體たるには、一定の土地と住民とを要し、此要件を具えざれば地方團體と云ふ可らず。
- 英
- Local self-government body
- 独
- Kommunalverband
- 仏
- Indépendance locale
地方長官
(ちはうちやうくわん)地方官廳に長たるものを地方長官と云ふ、府縣知事、警視總監及び北海道長官即ち之なり。(知事、警視總監、北海道長官の部參照)
- 英
- Local governor
- 独
- Lokal-herrscher
- 仏
- Gouverneur
地方分權
(ちはうぶんけん)凡そ行政權分配に就き二の主義あり、□一中央集權、凡て統治權の行動を爲す作用の全部を中央官廳に於て處理するの主義なり、□二地方分權、凡て國家の事務を或範圍内に於て、一地域限りの權限を有する官廳、又は團體をして處理せしむるの主義なり、今日に於て其可否の事は、主義の爭にあらずして報度と分量との爭となれり、地方分權は更に之を別ちて、自治行政によるものと、所謂行政の地方分權、即ち官治行政によるものとの二あり、地方分權の極端なる者は、所謂分立的地方分權にして、地方官廳をして同時に國家の最高行政官廳たらしむるものなり、此の制度は新に領土を獲得したるか、或は隔離するとき、人種又は風俗等全く異なるが如き場合には適するも、通常の場合に於ては、之を採用す可からず、所謂統一的地方分權の制を適當とす、此制度は凡ての地方官廳をして、中央官廳の監督の下に立たしむるものなり、地方官廳は、啻に中央官廳の命令の執行者たるに止まらず、多少の範圍内に於て決定權を有す、然れども其決定にして違法、又は不當なるときは、中央官廳は之を取消し、又は其變更を命ずることを得べく、以て行政の統一を維持するものなり、我國に於ける地方分權制度は、此の統一的地▲分權の制度に從ふ、初め臺灣は分立的地方分權の制度なりしも、今日は則ち然らず、然れども他の府縣に比すれば、多少分立的地方分權の臭味を帶びざるにあらず、各府縣に於ける地方分權は、毫も分立的地方分權の臭味なし。(中央集權の部參照)
- 英
- Local division of power
- 独
- Lokalteilung der Gewalt
- 仏
- Division locale du pouvoir
地表
(ちへう)地表とは、土地の表面と云ふに同じ、元來所有權は土地の上下に及ぶものなれば、地表も亦土地所有權に屬すべきものなりとす。(民二〇七條)
- 英
- Surface of the earth
- 独
- Ober-fläche der Erde
- 仏
- Surface de la terre
賃金
(ちんきん)汎ねく勞動者の受くべき勞力の報酬を賃金と云ふ、賃銀と云ふも亦同じ、要するに勞務者が勞務に服したる報酬として受くべき金錢、其他のものを云ふなり。
- 英
- Wages
- 独
- Lohn
- 仏
- Salaire; prix de bail
鎭守府
(ちんじゆふ)陸軍に於ける師團に匹敵するものにして、各要港に之を置き、海兵團を設置して外敵に備ふべき所とす、橫須賀鎭守府、呉鎭守府等即ちこれなり。
地目
(ちもく)土地を其利用上より分類せる種目を地目と云ふ、例へば田と云ひ、畑と云ひ、宅地と云ひ、牧場と云ひ、原野と云ひ、鹽田と云ひ、鑛山と云ふ如し、之に依りて即ち其種類性質を類別す、不動産登記法第九〇絛に「土地の分合、滅失、段別若くは坪數の增減、又は地目、字若くは番號の燮更云々」とあるは其の用例なり。(北海道區制七六條にも亦「地目」とあり)
- 英
- Classification of land
- 独
- Klas-sen-Ordnung der Erde
- 仏
- Classification de le terre
賃貸借
(ちんたいしやく)賃貸借とは、當事者の一方が、相手方に或物の使用、收益を爲さしむることを約し、他の一方が之に其報酬を拂ふことを約するを云ふ、例へば甲が乙をして自己の家屋を使用せしめ、其報酬として乙より毎月十五圓づつを受取るが如き、世に行はるる所謂「小作」「下作」の如き、皆賃貸借の例なり、而して報酬は、必ずしも金錢なることを要せず、其他の物にても妨なし、俗に分果小作と稱する、即ち田畑より生ずる、例へば米麥等の一部を以て借賃とするが如き、亦賃貸借の一種なり、賃貸借は當事者の意思表示のみによりて成立し、消費貸借、使用貸借の如く、物を現實に引渡すことを要せず、又賃金を支拂ふ點に於ても、之等の契約と異なる、消費貸借に於て消費に對する報酬として、利息を拂ふも賃金を支拂はず、使用貸借は借主より何等報酬を爲さざるを以て特質とす、賃貸借の期間は、二十年を超ゆる事を得ざるものとす、故に更に長期を望むに於ては、地上權、又は永小作權を設定するを可とす、若し二十年以上を約したるときは、二十年迄は有效なるも、其以上は何等の效力を生ぜざるものなり、又賃貸借は之を登記したるときは、第三者に對抗するを得るものなり、即ち假令所有者に移動を生じ、新所有者が賃貸借契約ありしことを知らざるときと雖も、賃借人は、賃貸借契約の存在を主張して契約期限内使用、收益することを得べし、之に反して登記を爲さざるときは、新所有者に對抗することを得ず、即ち新所有者は、假令其土地を目的とする賃貸借契約あることを知るも、或は自ら使用收益し、又は之を第三者に賃貸することを得べし。(民六〇一條乃至六二二絛參照)
- 英
- Hiring
- 独
- Miethe
- 仏
- Louage
賃貸人
賃貸人とは、賃貸借に於ける貸主を云ふ、若し他人より賃借したる物を自己が貸主となり、更に賃貸する場合は、賃貸人との關係上之を轉貸人と云ふ、唯名解の差あるのみにして、其權利義務は、大體に於て異なる所なし。(民六〇六、六〇七條)
- 英
- Lessor
- 独
- Vermiether
- 仏
- Bailleur
賃借人
賃借人とは、賃貸借契約に於ける借主を云ふ、賃貸人が轉貸人なる場合には、第一次の賃貸人との關係上、轉借人と云ふ、其權利義務は、大體に於て異なる事なし、唯第一次の賃貸人に對して、直接に義務を負ひ、其義務は自己の賃貸人、即ち轉貸人に對し、借賃を前拂したるの故を以て、其支拂を拒むことを得ざるものとす。(民六〇八絛乃至六一三絛)
- 英
- Hirer
- 独
- Miether
- 仏
- Per-sonne qui loue
聽許
(ちやうきよ)聽納許容することを云ひ、官廳が人民の願ひを許容するが如き、官吏人の賄遺を許容するが如きこれなり、舊刑に「官吏人の囑託を受け賄賂を收受し、又は之を聽許したる者は、一箇月以上一年以下の重禁錮に處し云々」とあるは此の用例なり。(舊刑二八四條乃至二八七條)
- 英
- Permission
- 独
- Erlaubnisz
- 仏
- Permission
町村
(ちやうそん)町村は、最下級の地方自治團體にして、郡の監督の下に立つ者を云ふ、町村は市と同時に最下級の地方自治團體なるも、其自治權の範圍は、最も廣汎にして且完全なるもの也、而て町と村とは法律上に於ては名稱の差に過ぎずして、性質上に於ては、何等異なる所なきもの也、唯實際に於て、町は比較的人民の輻輳せる部落にして、村は農家、漁家の處々に散在せる部落たるのみ、若し町を村とし、村を町となさんとするときは、關係ある町村會、郡參事會の意見を聞き、府縣參事會之を議決し、内務大臣の許可を以て定まるものとす。(二三年八月法七七號參照)
- 英
- Town or village
- 独
- Land-gemeinde
- 仏
- Cité ou village
町村制
町村制とは、地方自治團體たる町村の區域、住民、其權利義務、町村會、町村行政、町村有財産の管理、町村内各部の行政、町村組合、町村行政の監督及其附則を定めたる法律なり、元來現時の町村制は、明治四年四月郡町村を區劃して、大小區となし、同五年四月庄屋の名を改めて戸長とし、次で同一一年七月郡區町村編制法發布せらるるに及び、區に區長、町村に戸長を置かれ、同一三年四月區町村法を制定して區町村會を設け、區町村費を以て支辨すべき事業、及び其經濟の方法を議定せしめたり、これ現行自治制の萠芽にして、後獨乙人モッセ氏を招きて、市町村制を起草せしめ、元老院に於て討審討議の上、明治二一年四月現行の市町村制として公布せられたるもの之なり。(二一年四月法一號町村制參照)
- 英
- Cho and Son system
- 独
- Land-gemeindeverfassung
- 仏
- Système de Cho et Son
町村會
(ちやうそんくわい)町村人民の選擧に依り、組織せられたる合議體の機關也、即ち其町村を代表し、町村制に準據して町村一切の事件、並に町村制施行前特に委任せられ、又は法律命令に依りて、委任せらるる事件を議決するの機關なり、其權限は左の如し、□一町村一切の事務を議決すること、□二特別に委任せられたる事件を議決すること、□三町村吏員の選擧を行ふこと、□四町村行政の執行を監督すること、□五町村の公益に關する事件に付き、監督者に意見を提出し、及び官廳の諮詢に應じて意見を陳述すること、□六訴願の裁決を爲すこと、□七會議の細則を設け、及び會議の内部に關する事項を議決すること、而して議案を提出する權は原則として町村行政の執行者に屬し、町村會に屬せざるものとす。(町村制三二絛乃至五一條參照)
- 英
- Council of city or village
- 独
- Gemeindevertretung
- 仏
- Conseil de la cité et de la village
町村長
(ちやうそんちやう)地方自治公共團體たる町村の行政事務を執行するの機關を町村長と云ふ、即ち町村會に於ては議長となり、町村行政に於ては其執行者となり、町村を代表す、□一選任、町村會に於て、其町村公民中年齢滿三十歳以上にして、選擧權を有する者より之を選擧す、□二任期四年とす、□三俸給、町村長は、名譽職たるを原則とするも、町村の情況に依り町村條例の規定を以て給料を給することを得、□四選擧、町村長の選擧は、府縣知事の認可を受くる事を要す、若し府縣知事其認可を與へんとするときは、府縣參事會の意見を聞くことを要す、若し府縣參事會同意するも、府縣知事に於て認可す可からずと爲すときは、自己の責任を以て之に許可を與へざることを得、府縣知事の不認可に對し、町村長、又は町村會に於て不服あるときは、内務大臣に具申して認可を請ふことを得、又然らざるときは、再選擧を爲すべし、再び選擧せるも猶認可を得ざるときは、追て選擧を行ひ、認可を得るに至る間、認可の權ある監督官廳は、同時に代理者を選任し、又は町村費を以て官吏を派遣し、町村長の職務を管掌せしむべきものなり。(町村制五二條乃至六一條參照)
- 英
- Town and village headman
- 独
- Bürgermeister
- 仏
- Chef de la cité et de la village
帳簿
(ちやうぼ)廣く帳簿と云ふときは、官廳の設備するものなると、私人の設備するものたるとを問はず、記錄を爲す爲めに造られたる文書を云ふ、彼の商業帳簿の如き之なり、而して商業帳簿に二の種類あり、□一は廣き意義の商業帳簿にして、即ち商人が其營業に關して記錄を爲すものは、皆此意義に於て商業帳簿なり、□二は狹き意義の帳簿なり、即ち商法の要求する日記帳、財産目錄、及び貸借對照表を記載したる帳簿、即ち之なり、商人は、營業に關する信書と共に、此帳簿を▲▲間保存する義務を負ふものとす。(商二五條乃至二八條)
- 英
- Books
- 独
- Rechnungsbuch
- 仏
- Livre
帳簿閉鎖
帳簿閉鎖、帳簿に記載を止むるを帳簿閉鎖と云ふ、假令餘白ありと雖も、爾後記載することなきの狀態に至らしむるを云ふなり、商業帳簿は多く一年毎に作製し、一年間の出來事を記載し、以て其年の取引關係を決濟するに依りて、爾後記載を閉止するを普通とす、之即ち帳簿閉鎖也、商人が商業帳簿を保存する期間の起算點は、其帳簿閉鎖の時よりするものとす。(商二八條參照)
- 英
- Stop of booking
- 独
- Schliesz-ung des Registers
- 仏
- Cesser l'enregistre-ment
嫡出子
(ちやくしゆつし)嫡出子に二あり、生來の嫡出子及法定の嫡出子是なり、前者は生れ乍らにして當然の嫡出子たるもの、俗に所謂嫡子と同じく、婚姻に依りて結合せる男女、即ち正當の夫婦の間に生れたる子を云ふ、而して如何なる者が正當の夫婦の間に生れたるやは、更に説明せざるべからず、□一夫婦の關係ある内に懷胎し、其關係中に生れたる子は、勿論嫡出子なり、□二夫婦關係中に懷胎し、婚姻の解消、又は取消後に於て生れたる子も嫡出子なり、□三婚姻成立前に懷胎し、婚姻成立後に於て生れなる子は多少疑なきにあらず、民法施行前に於ては嫡出子たる事に判例略一定せるものの如し、茲に於て乎民法が、此點に就き何等の規定を設けざるは、施行前の趣意に反せざるが爲めなり、從て嫡出子なりと云ふ者あるも、俄に信ず可らず、寧ろ私生子にあらざるか、後者即ち生來の嫡出子にあらずして、嫡出子となる者は、□一庶子の父母が婚姻したるときは、庶子は其時より嫡出子となる、□二父母の婚姻前母が認知を爲し婚姻中に父が認知したる子は、父の認知の時より嫡出子となる、□三父母の何れよりも認知を受けざる子は、父母婚姻中之を認知するに依て、其の時より嫡出子となるものなり。(民八二〇、八三六條)
嫡母
(ちやくぼ)庶子より父の配偶者を指して嫡母と云ふ、例へば春郞、夏子の夫婦あり、而して春郞は更に秋子なる妾を有し、其間に冬郞なる男子を生めり、而して春郞は之を認知したり(即ち庶子となれり)此場合に冬郞より夏子を指して嫡母と云ふなり。(民七二八條參照)
中央行政
(ちゆうあうぎやうせい)地方行政に相對して、中央官廳の行ふ行政を中央行政と云ふ▲現今何れの國家と雖も、地方分權を認め、之に伴ふ地方行政を認めざるものなし、然れども地方分權も限度あり、極端に之を認むるに於ては、遂に國家の統一を害するに至らん、茲を以て地方行政も亦各地方に依て事情を異にし、全國統一の施設を爲すを適當とせざる範圍内に於て之を認め、其他は全國統一的に行政を行ふ、是即ち中央行政なり、以上は第一義なり、或は更に地方自治行政に對し、國家が其官廳によりて自ら行ふ行政を中央行政と云ふこともあり、例へば各省大臣、府縣知事、郡長又は税務局長の行ふ行爲は、皆中央行政なりと、これ第二義なり、必ずしも誤れる用語にあらざるべしと雖も、用語の慣例に於ては、第一義を正確とす、要するに國家行政を官治行政と自治行政とに別ち、官治行政を更に中央行政と地方行政とに別つの説を可なりと信ず、故に自治行政は無論地方行政にして、官治行政にも地方行政あり、之と相對する中央行政ありと解す。
- 英
- Central administration
- 独
- Zentralverwaltung
- 仏
- Administration centrale
中央官廳一
(ちゆうあうくわんちやう)中央官廳には、各省大臣と内閣總理大臣とあり、□一各省大臣は、一面國務大臣として憲法上の機關たると共に、他の一面に於ては、各省の長官として、行政機關たるもの也、□一其權限は、主任の事務に就きて省令を發する事、□二主任の事務に就きて地方長官に對し訓令を發すること、□三所轄の官吏を監督し、判任以下を任免する事即ち之也、□二内閣總理大臣とは、國務大臣中内閣の首班にある者を云ふ、各省大臣は直接に元首に隷屬し互に平等の地位にあるを原則とするも、獨り内閣總理大臣は、一の點に於て特に大なる職權を有す、即ち必要と認むるときは、各省大臣の處分又は命令を停止せしむるを得ること之れなり、此點に就きては或意味に於て、各省大臣の廳督するものと云ふも可なり、然れども上級官上に立て之を監が下級官廳に對する如く、直に處分、又は命令を取消すべき最終決定權を有するにあらず、一時中止して勅裁を仰ぐを得るものなり、されば或學者は、内閣をも中央官廳の中に加ふると雖も、内閣が中央官廳にあらずとする普通學者の説を可とすべきか、今は暫く上從記の説にふ。
- 英
- Central authorities
- 独
- Zent-ralbehörden
- 仏
- Authorités centrales
中央警察
(ちゆうあうけいさつ)中央警察とは、地方警察に相對するの語なり、從つて此兩者を區別すれば、兩者の性質は自ら判明するに至らん、□一或は兩者の區別を性質の區別にあらずして、機關の區別なりと云ふ者あり、□二或は地方警察とは、要するに市町村の區域内に於ける警察なりと云ふ者あり、□三更に地方警察の意義は、確定なる義を有すとなさず、各場合に依て決すべしとし、曰く市町村制に所謂地方警察は、警察作用の及ぼす所の利益が、單に市町村の區域に限ること明かなり、蓋し市町村長の職權は、市町村の區域以外に及ぶことを得ざればなり、若し區域以外に迄其權限を有し得べしとせば、これ明に市町村長の性質に反す、之に反して訴願法に所謂地方警察は、全國に對するものにして、其利害關係が國家全體に及ぶものは、中央警察にして、一地方のみの利害に係るものは、地方警察なりと、此の説を可とす、而して此問題は實益あり、蓋し地方警察は、市町村制に於て、市町村長に委任することを許せると、訴願法により地方警察事務に就きては訴願の提起を許せば也(市制七四條、▲村制六條九訴願法一條六號)
- 英
- Central police
- 独
- Zentral-polizei
- 仏
- Police centrale
地方警察
- 英
- Local police
- 独
- Landes-polizei
- 仏
- Police locale
中央集權
(ちゆうあうしうけん)中央集權とは、地方分權に相對するの語にして、統治權の行動に關する作用の全部を中央官廳に於て處理する制度なり、或は官治行政のみを認めて自治行政を認めざるの制度を中央集權と稱する者もありと雖も、其不可なることは、地方分權の部に於て略述したり。(地方分權の部參照)
- 英
- Centralization
- 独
- Zentrali-sation
- 仏
- Centralisation
重要物産同業組合法
(ぢゆうえうぶつさんどうげふくみあひはふ)重要物産同業組合法は、明治三三年法律第五三號を以て公布せられたる法律なり、□一重要物産同業組合は、組合員の協同一致を以て營業上の弊害を除去し、其利益を增進するを目的と爲すものにして、重要物産の生産、製造、又は販賣に關する營業を爲す者、及び之に對して密接なる關係を有する營業者を以て組織する公共組合也、□二設立は、相對的に強制せらるる場合と絶對的強制なる場合とあり、相對的の場合は、同業者三分の二以上同意したる場合に行はるるものにして、絶對的強制の場合は、農商務大臣に於て設立の必要を認めたる場合に行はるるものなり、□三其業務の最も主要なる點は、營業上の弊害を矯正せんが爲め、規約を設け、重要物産の生産、製造、販賣等に關して、各種の不正行爲を爲さざることを約し、或は一步を進めて進步、改良を圖る方法を採るべきことを定め、此規約の遵奉せらるるや否やを監視する爲め、檢査を行ふこと即ち是なり、□三同業組合は聯合して聯合會を組織することを得、其性質は大體に於て以上の説明したる所と異なる所なし。重要物産同業組合法施行細則は、明治三三年農商務省令三號を以て公布したる命令にして、□一重要物産同業組合法により設置する組合、又は聯合會の名稱には、同業組合、又は同業組合聯合會なる文字を附すべし、□二組合の地區は、郡市以上の區域によるべし、但し特別の事情あるときは此限にあらず、□三組合を設置せんとするときは、五名以上の營業者に於て、其組合の地區及び營業の種類を定め、發起の認可を地方長官に受くべし、□四發起の認可ありたる時は、發起人は組合員たるべき者に左の事項を通知し、組合設置の同意を求むべし、イ組合の地區及營業の種類、ロ組合員たるべき者の數、但し各種營業毎に之を區別すべしハ組合の目的及業務の槪目、二創立費及經費の槪算、ホ同意表示の形式及期間、□五法定の同意者ありたるときは、發起人は定欵を作り、遲滯なく創立總會を招集すべし、之を招集するには少くとも二週間前に、會議の目的、日時及場所を會員たるべき者に通知し、且つ之を公告すべし、此通知には定欵を添ゆべし、□六定欵は、組合員たるべき者の三分の二以上の同意あるに非ざれば、之を議定するを得ず、但し二種以上の營業者組合員たるべき場合に於ては、各營業毎に三分の二以上の同意あることを要す、□七農商務大臣に差出すべき書類は、地方長官を經由すべきものとす。
- 英
- Guild of the mer-chant of important products
- 独
- Berufs-genossenschaftsgesetz der wichtigen Pro-ducte
- 仏
- Corporation des marchands du produit important
重要物産同業組合法施行細則
- 英
- Regulation for the application to the rule of guild of merchant of important products
- 独
- Ausführungsregel des Innungsgesetzes der wichtigen Producte
中間訴訟
(ちゆうかんそしよう)本案は實體上の爭に係る裁判にして、其本案の爭を判定するの前提となるべき者の裁定を中間訴訟と云ふ、即ち各個の獨立なる攻擊若くは防禦の方法、又は中間の爭なり、例へば被告が妨訴抗辯を提出したる場合の如し、妨訴抗辯ありや否やは、本案訴訟に密接なる關係あり、若し妨訴抗辯の事由、例へば管轄違の抗辯、又は無訴權の抗辯を提出したる時は、先づ以て其中間訴訟に就き裁判せざる可らず、蓋し本案訴訟に影響を及ぼせば也、以上は廣き意義に於ての中間訴訟なり、更に狹き意義に用ひられ、單に中間の爭の裁定のみを意味する場合あり、民事訴訟法第二二七條に「各個の獨立なる攻擊若くは防禦の方法、又は中間は爭」とあるにより、中間訴訟とは、各個の獨立なる攻擊、防禦を除外したる其他の爭にして、本案判决に影響を及ぼすものを指すが如し、此意味に於ては、訴訟手續上の爭に限定せらる、例へば被告が權利拘束の抗辯、訴訟能力の欠缺、又は法律上代理の欠缺の抗辯を提出したる場合の如し。(民訴二二七條參照)
- 英
- Internal lawsuit
- 独
- Inzident-klage
- 仏
- Poursuite internale
中間判決
(ちゆうかんはんけつ)判決は之を爲したる場合に、其審級を離脱すると否とにより終局判決と中間判決とに別つ、即ち裁判の結果事件が絶對に終局する事を要せず、單に其審級を離脱したるや否やによりて、其區別の標準となす、例へば控訴院が第一審に差戻を爲したる判決の如きは、未だ事件落著せず、更に第一審に於て審理すべきものなるも、終局判決なり、又防訴抗辯に基き、原告の訴却下の判決を爲したるときは、終局判決なり、其審級に於て事件は、離脱すればなり、之に反して原告の防訴抗辯棄却の判決を爲したる場合は、中間判決なり、事件は依然繼續し、單に被告の抗辯を理由なしと云ふに過ぎざればなり、同一妨訴抗辯に基き判決を爲したる場合に於ても、其妨訴抗辯を理由ありとする場合と、理由なしとする場合とに依て、判決に終局、中間の差異を生ず、其所以は、其審級を離脱する場合とせざる場合とあればなり、或は事件の終局する判決が、終局判決にして、終局せざる判決は、假令其審級を離脱するも中間判決なりと解する者もあり、嘗て大審院は、差戻判決を中間判決なりと、判決したることあり、之或は事件終局説を採用したるが爲めにあらざるなきか、されど多くの學者はこの事件終局説を斥く。(民訴二二七條參照)
- 英
- Interlocution
- 独
- Zwischen-urteil
- 仏
- Interlocution
重金學派
(ぢゆうきんがくは)在昔フリジア國の農民バカス神の師シレナスを虜にし、之を國王ミダスの前に引致せしに、ミダス許してバカス神の所に歸らしむ、バカス大に之を德とし、ミダスに約するに何物を問はず、其欲する所のものを與へんことを以てす、乃ち請ひて曰く、冀くは身の觸るる所をして悉く黃金と化せしめよと、而してミダス其新たに得る力を試みんと欲し、樹枝を折れば其樹枝黃金となり、石を拾へば其石黃金となり、土地に觸るれば其土地黃金となり、其僕食饌を供すれば麺包及び肉臠は立ち所に黃金となり、手づから酒に水を和すれば黃金水忽ちに湧出す、されど、黃金は以てミダスの飢渴を救ふに足らず、彼れ將さに死せんとす、因て手を擧げ痛哭して曰く、嗚呼吾れ過てり、バカス神よ冀くは慈悲を垂れて其賜を取戻し給へと、神再び其請を允し▲命じてバクトラス河に浴せしむ、茲に於て乎ミダス始めて其昏迷より生じたる禍を免れ、自ら奮て農、獵の二業に從ひ、終に富強を致すを得たりと、之は即ち詩人世を嘲るの寓言なり、金銀身を圍むと雖も、尚且つ餓死することありとは、アリストートルの既に説きし所也、然るに十六世紀より十七世紀に亘り、歐洲一般の學者、政治家、一國を富榮ならしむるは、成るべく金銀を内地に蓄積するにありと爲し、甚しきに至ては、金銀獨り富なりと唱ふるに至れり、而して當時の學者政治家其論ずる所、施す所、必しも同一なりと云ふ能はざるも、富國の秘訣は、即ち一に金銀を蓄積するにありとし、外國貿易の利益は、一に金銀を輸入するにありと爲すに至ては、其精神大抵同一轍に歸せざるはなし、茲に於て乎、各國吾れ勝ちにミダスたらんを競ひ、西、葡▲佛、及び英の諸國、亙に法律を以て金銀の輸出を嚴禁したり、これ即ち後世の學者の所謂黃金説と稱し、而して此説に基きて施したる貿易上の政略を商制と稱せり、所謂この學派が重金學派也、抑も金銀は、貿易の媒介及び價値の尺度として用ひられ、之を有すれば、如何なる物品と雖も購買し得ざるはなく、而して人の身代を算するには、凡て金銀を以てす、故に金銀を多大に有する者は、即ち富豪なり、國に於ても亦然りとの思想は容易に發すべき所なりと雖も、富と金銀とは同一範圍を有するにあらず、金銀の外富あるを知らば、此説の採るに足らざるは已に明なりと云はざる可らず、今日に於て貴金説は、學者の等しく排斥する所なるはいふ迄もなし。
重禁錮
(ぢゆうきんこ)重禁錮とは、輕罪を科すべき刑罰の一種にして、禁錮場に留置し、定役に服せしむる一種の自由刑なり、刑期の範圍は十一日以上五年以下にして、各種の犯罪により、其範圍内に於て之に適用すべき刑期を定めたり。(舊刑八二四條參照)
- 英
- Major imprisonment
- 独
- gröszere Verhaftung
- 仏
- Emprisonnement majeur
重禁獄
重禁獄とは、重罪たる國事犯に科すべき刑罰にして、内地の監獄に収容し、定役に服せざる自由刑なり、而して刑期は九年以上十一年以下とす。(舊刑二三條參照)
- 英
- Major detention
- 独
- gröszerer Verhaft
- 仏
- Détention majeur
重懲役
重懲役とは、普通の重罪、即ち國事犯にあらざる重罪に科すべき刑罰にして、内地の懲役場に於て定役に服すべき自由刑なり、而して刑期は九年以上十一年以下とす。(舊刑七二二參照)
- 英
- Major confinement
- 独
- gröszere Haft
- 仏
- Confinement majeur
住居
(ぢゆうきよ)住所及び居所を略して住居と云ふ、所謂住所とは、生活の本據を云ひ、居所とは、歸來すべき意思を以て、特定の場所に定住するを謂ふ、或は吾人が漫然一定の場所に生活するを稱して、某は何所に住居すと云ふが如き場合あり、これ等と雖も必ずしも住居と云ひ得可らざるにあらず、要は何れの場合を指すものなるかは、法令の性質、條文の前後等を案じて、各場合に依て決定するの外なし。(憲法二二絛、民二一條乃至二四絛參照)
- 英
- Residence
- 独
- Wohnsitz
- 仏
- Résidence
住居權
住居權とは、法律の範圍内に於て、他より妨害せらるることなく住居し得るの自由を謂ふ、學者が憲法第二二條に「日本臣民は法律の範圍内に於て、居住の自由を有す」とあるを解して、自由を法律が認て變更せざるときは、之權利なりとし、之を住居權、又は居住權と呼ぶ也、或學者は斯る自由は、憲法が行政官廳の權限を限制せる爲めに規定せるものにして、權利と見ゆるは法の反射に過ぎず、所謂公權なるものにあらざるなりと、實際果して權利なるや、將た法の反射に過ぎざるやは問題なり、されど法の反射にもせよ、國家が認めて以て私人の意思自由の範圍として保護する以上は、之を權利なりとするを可とす。
- 英
- Power of residence
- 独
- Wohn-sitzrecht
- 仏
- Droit de la résidence
重過失
(ぢゆうくわしつ)廣く過失と云へば、認識すべき事實を認識せざるを云ふ、即ち有責不知の狀態なり、過失は事實の不知を以て前提とす、不知は注意の足らざりしに基く、其注意の足らざりし程度より之を分ち、□一抽象的に普通人を標準として要求せられたる注意、即ち善良なる管理者の注意を缺きたるに依て生じたる過失、學者は普通此過失を輕過失と稱す、□二具體的に其人を標準として、要求せられたる注意を欠缺するに依て生ずる過失、學者は之を重過失と稱す、或は過失を重過失と、輕過失とに別ち、更に之を上記の如く二分する者あり、此説に依る重過失は、寧ろ故意に等しき重且つ大なる過失にして、注意の欠缺が著しきものを謂ふなり、なにが著しきものなるかは、其場合に依りて決すべき問題にして、畢竟は各場合に於て、裁判官の決定を竢つべき事實問題とす、唯民法に於て過失と云へば、上記の□一及び□二を指し、重大なる過失と云ふときは、後説の重過失を指すものの如し。(民九五、四七〇條但書)
- 羅
- Culpa-lata
重大なる過失
- 英
- Gross negligence
- 独
- wichtiger Irrtum
- 仏
- Culpa levis
重婚
(ぢゆうこん)配偶者ある者が、重ねて婚姻するを重婚と云ふ、重婚には下の條件を具備せざる可らず、□一重ねて婚姻を爲したること、元來重婚罪は姦通罪と等しく、身分關係を侵害する行爲の一種にして、重婚とは既に成立したる婚姻により發生したる夫婦關係が、死亡、離婚、婚姻の取消等に依て消滅する以前に、更に新なる婚姻を爲すことを意味す、彼の姦通罪は、夫婦以外の交接に▲りて、夫婦たる身分關係を破り、重婚罪は、更に婚姻するに依て、前の夫婦關係を侵害する所爲なり、而して重婚の成立に必要なるは、前後の婚姻は有效なる婚姻なることを要するを以て、人違其他の事由に依り、當事者間に婚姻を爲すの意思を缺き、婚姻の屆出を爲さざるときは重婚となることなし、□二犯罪の主体は、前の婚姻に於ける夫婦の一方たること、姦通罪に就きては、夫は他の婦人と通ずるも、其婦人が夫を有せざる時は犯罪を構成せずと雖も、重婚罪は然らず、其妻たると夫たるとを問はず成立す、又姦通罪に就きては、姦通者双方處罰せらるるも、重婚罪に就きては然らず、前婚者のみ罰せらるに止まり、其相手方は重婚罪の正犯となることなし、已遂の時期は婚姻屆を戸籍吏に差出し、戸籍吏が之を受理したる瞬間にあり、敢て必しも同棲又は交接を要せず。重婚罪とは、重婚に依て構成せらる犯罪を云ひ其處分は、六月以上二年以下の重禁錮に處し、五圓以上五十圓以下の罰金を附加せらるる、茲に注意を要すべきは、重婚罪は姦通罪と異なり、親告罪、即ち被害者の告訴を待て其罪を論ずるものにあらざること之なり、重婚あるときは、檢事は當事者の意思に反すると否とを問はず、之を訴追するの職權を有す、何故に姦通罪と斯く區別したるや、其是非は一個の問題なり。(刑一八四條舊刑三五四條參照)
- 英
- Bigamy、Second marriage
- 独
- Doppelehe、zweite Ehe
- 仏
- Bigamie
重婚罪
駐在
(ちゆうざい)官吏其職務の爲めに、比較的永久に一定の場所に滯在するを駐在と云ふ、例へば、巡査の駐在の如し。
- 英
- Staying
- 独
- Bleiben
- 仏
- Séjour
重罪
(ぢゆうざい)重罪とは、□一死刑、□二無期徒刑、□三有期徒刑、□四無期流刑、□五有期流刑、□六重懲役、□七輕懲役、□八重禁獄□九輕禁獄に當るべき犯罪を云ふ、我國に於ては、重罪の外輕罪、違警罪の二種を認む。(舊刑七條乃至九條參照)重罪犯、重罪と云ふも、重罪犯と云ふも、大差なし、唯犯行行爲の方面より觀察して、輕罪犯、違警罪犯と區別する爲め重罪犯と云ふに過ぎず。重罪事件とは、重罪に當るべきものとして訴追せられたる刑事被告事件を云ふ、故に終には豫審終結の結果、又は公判審理の結果、輕罪公判に移送せられ、又は輕罪となるも、重罪事件たるに妨ぐる所なし、重罪事件には、必ず辯護人を用ひざる可らざる等、其他輕罪事件と區別するの實益あり。(刑訴二三七條參照)重罪公判とは、重罪事件の公判審理を云ふ、其手續は、其他の公判と大體に於て異る事なし、唯開廷前裁判長又は受命判事は、裁判所書記の立會に依り、一應被告人を訊問し、且つ辯護人を選定したるや否やを問ふべし、若し辯護人を選任せざるときは、裁判長の職權を以て、其裁判所所屬の辯護士中より之を選任すべし、被告人及び辯護士に異議なきときは、辯護士一名をして被告人數名の辯護を爲さしむることを得、書記は以上の訊問に就き特に調書を作ることを要す、以上は輕罪事件の公判審理と異なるの點なり、蓋し重罪事件なるが故に特に愼重の手續を爲すべきことを命じたるの法意に外ならず。(刑訴二三七條參照)
- 英
- Grave crime
- 独
- Verbrechen
- 仏
- Crime
重罪犯
- 英
- Felony
- 独
- Verbrechen
- 仏
- Crime
重罪事件
- 英
- Felony case
- 独
- Verbrechen-Fall
- 仏
- Cause de la crime
重罪公判
- 英
- Public trial of major crimes
- 独
- Hauptverhandlung des Verbrechens
- 仏
- Jugement
仲裁裁判
(ちゆうさいさいばん)紛爭國の選定せる裁判官をして、其爭議を裁定せしむるを仲裁裁判と云ふ、而して其爭議は法律問題に限る、蓋し利益の衝突、政治上の不和は其性質に於て、仲裁裁判に依て解決せらるべきものに非ざればなり、仲裁裁判は直接談判を無視せんとするの目的を有するものにあらず、唯外觀上の手段に依り處理し得ざる紛爭に就きてのみ、適用せらるべきもの也、又居中調停をも廢止せんとするものにあらず、居中調停は、亙讓並に和解を基礎とするものなるが故に、仲裁裁判に存せざる便宜協商の餘地存するものとす、仲裁裁判の效力は、當事國を拘束して、其裁判の趣旨を遵奉せしむるに在り、國家は何故に斯る判斷に拘束せらるるや、個人が裁判所の判決に拘束せらるるは、國法ありて之を強制するが故なり、然るに仲裁裁判は、之を執行し強制する上長權者あることなし、國家は之を遵奉するの義務なきにあらずやと云ふ者あるべしと雖も、斯は條約の拘束力と同じく、國際團體の一員たる以上は、當然にして言を俟たざる所とす。(國際常設裁判所の部參照)
仲裁判斷
(ちゆうさいはんだん)當事者間の合意により、其間に生じたる財産權上の爭を判定するを仲裁判斷と云ふ、仲裁判斷の宣言は、法律の適用にあらず、されど當事者間には確定したる裁判所の判決と同一の效力生ず、但し強制執行を爲すには、裁判所の執行判决を要するものとす、□一仲裁判斷の條件、イ私法上より生ずる權利關係たること、ロ爭に係る權利關係たること、ハ將來の▲に係るときは、一定の權利關係より生ずるものなること、□三仲裁人の權利、イ任意に出頭する證人、鑑定人の訊問、ロ當事者が仲裁手續を許す可らざることを主張し、特に其契約が法律上有效に成立せざること、仲裁を以て判斷すべき爭にあらざること、仲裁人が其職務を施行するの權なきことを主張するときと雖も、仲裁手續を續行し、且つ仲裁判斷を爲すの權あり、□三仲裁人の義務、イ仲裁判斷は契約に別段の定めなきときは、過半數の意見を以て之を定めざる可らず、ロ仲裁判斷には之を作りたる年月日を記載して、仲裁人之に署名捺印すること、ハ判斷の正本は之を當事者に送達すること、二原本は之に送達書を添へ、管轄裁判所の書記課へ預け置くこと、□四仲裁判斷の效力、裁判所の判決と同じく當事者間に在りては、確定の效力を生ず、然れども強制執行を爲すには、裁判所の執行判決を受けざる可らず、而して執行判決は、仲裁判斷の取消を申立つることを得べき理由の存する時は、之を爲すことを得ず、茲に問題となるは、當事者間に於て、一定の權利關係より生じたる爭に就き、仲裁判斷に付すべき事を約せるに拘らず、裁判所に出訴したる場合には、裁判所は相手方の申立により、訴を受理せずとの判決を爲すことを得るや否や即ち是なり、大審院は積極に解し、原告の訴を排斥したることあり。(民訴七八六條乃至八〇五條參照)
- 英
- Arbitration court
- 独
- Schiedsvertrag
- 仏
- Tribunal arbitr-aire
駐劄
(ちゆうさつ)駐在と云ふも、駐劄と云ふも、其の意略同じ、唯駐劄なる語は、其の用語の慣例に從へば、主として或職務の爲めに外國に在留する狀態を指すが如し、例へば英國駐劄全權大使と云へば、我全權大使の職務の爲め英國に在留するものを指すが如く、又韓國駐劄軍と云へば、我が軍隊にして職務の爲め韓國に在留する者の如し。(駐在の部參照)
住所
(ちゆうしよ)各人生活の本據を住所と云ふ、各人が生活の中心點とし、活動の本據とする所即ち住所なり、凡そ一定の場所が生活の本據たる爲めには、人が其場所に常住するの事實あること、及其場所に常住するの意思を有することを必要とす、常住の事實ありとは、繼續して滯留するの意なり、されば常住の事實あると云ふも、間斷なく滯留することを必要とするにあらず、一時其場所を去ることあるも、常に其場所に歸來するの狀況にあれば可なり、常住の意思とは繼續して其場所に滯留するの意なり、故に一時他の場所に滯留するも、其場所に歸來するの意思を有すれば、常住の意思ありと云ふに妨げなし、例へば茲に人あり、東京に邸宅を有して商業を營み、商用の爲め毎年大坂、橫濱又は神戸に行くを以て、此等の場所に別宅を有す、又夏に至れば避暑の爲め鎌倉又は伊香保に行き、此等の地にも亦別莊を有す、其人は事實上別宅、別莊に在る間長きも、常に此等の場所より東京の邸宅に歸來し、又之に歸來するの意思を有す、故に其人の生活の本據は東京に在り、別言すれば東京を以て其人の住所とす、終に注意すべきは、住所は本籍と異なること之れなり、本籍は戸籍の在る地なり、從て必ずしも生活の本據にあらざればなり。(民二一條參照)
- 英
- Domicile
- 独
- Domicil
- 仏
- Domicile
住所地法
(ぢゆうしよちはふ)住所地を支配する法律を住所地法と云ふ、凡そ國際私法上準據法に、□一本國法あり、□二住所地法あり、□三居所地法あり、□四法律行爲地法あり、□五法廷地法あり、□六事實發生地法あり、皆夫れ夫れ法律關係の準據法となる、而して國際私法的規定たる我法例に於て、住所地法を以て準據地法と定めたる場合は、□一債權讓渡の第三者に對する效力に對し、例へば日本に住所を有する米國人が、英國人より借金せり、而して日本人が其英國人より其債權を讓受けたり、此場合に日本人が米國人たる債務者、其他の者に對して、自己が米國人の債權者たることを主張するには、日本の民法に從て第三者に對する對抗條件を具へざる可らず、米國人たるの故を以て、米國法に基き之が手續を盡すも、米國人及其他の三者に自己が債權なりと主張することを得ず、□二國籍を有せざる者に就きては、住所地法を以て本國法と看做し、諸種の法律關係を定むるものとせり、□三法律行爲の成立及び效力は、當事者が任意に定むることを得るを原則とするが故に、當事者間の意思表示を以てせる以上は、此の場合の外尚準據法となる場合あるものとす。(法例一二、二七條參照)
中斷
(ちゆうだん)廣く中斷と云へば、或繼續を中止するを云ふ、□一時效の中斷と云ふが如き場合あり、□二訴訟手續の中斷と云ふが如き場合あり、前の場合に於ては、中斷原因の發生したる時迄經過したる期間をして失效せしむるにあり、例へば民法第一五七條に「中斷したる時效は、其中斷の事由の終了したる時より更に進行を始む、裁判上の請求に依り中斷したる時效は、裁判の確定したる時より更に其進行を始む」とあるが如き、刑事訴訟法第一一條に「時效は起訴、豫審又公判の手續ありたるに依り、其期間のは經過を中斷す、其未だ發覺せざる正犯、從犯及民事擔當人に就ても亦同じ、時效の經過を中斷したるときは、起訴、豫審又公判の手續を止めたる日より更に其期間を起算す」とあるが如し、後の用例は、民事訴訴法第一八六條に「訴訟手續の中斷及中止は、各期間の進行を止め及中斷又は中止の終りたる後、更に全期間の進行を始むる效力を有す、中斷及び中止の間本案に就き爲したる原告、若くは被告の訴訟行爲は、他の一方に對し其效力なし、口頭辯論の終結後に生じたる中斷は、其の辯論に基きて爲すべき裁判の言渡を妨ぐることなし」とあるが如き即ち是れなり。
- 英
- Interruption
- 独
- Unterbrechung
- 仏
- Interruption
懲戒
(ちようくわい)懲戒とは、官吏關係等主として特別服從關係に立つ者が、其の關係に於て科せらるる制裁を云ふ、抑も懲戒罰なるものは、特別服從關係に立つ者、例へば官吏公吏等の義務強制の一手段にして、□一其の特別關係に立つが故に科せらるる點と、義務強制の點とに於て、刑罰と異なる、蓋し刑罰は、一般普通の關係に於て、犯罪淘汰の目的に出づるものなれば也、□二義務強制の手段たる點に於て、彼の行政罰(一に執行罰と云ふ)に類似するも、特別服從の關係に於ける強制なる點に於て、之とも異なる、即ち行政罰は普通統治の關係に於て、其義務を強制するものなればなり、懲戒罰は之を別ちて、免官、減俸、譴責の三とす、獨乙、普魯西の官吏法に於ては、身體の自由を拘束することを認むるも、我國に於ては之を認めず、唯軍人に關して營倉の如き例を見るのみ、其減俸の程度は、一ケ月以上一年以下の年俸月割額にして、免官の處分を受けたるときは、其官職を失ひたるよ時り二年間、再び官職に就くことを得ず、殊に情狀重き者は位記返上を申付らる。(三二年三月敕六三號文官懲戒令、三二年敕三五四號、三二年法二一號參照)
- 英
- Discipline; correct
- 独
- Disziplinar-strafe; Züchtigung
- 仏
- Peine dis-ciplinaire; correction
懲戒裁判所
懲戒裁判所は、未だ我國になし、要するに裁判所の組織に依て、懲戒の有無輕重を定むる機關也、我國に於ては、懲戒委員會ありて、同一職責を有す、而して之を別ちて文官高等懲戒委員會、文官普通懲戒委員會とす。
- 英
- Court of discipline
- 独
- Disziplinargericht
- 仏
- Tribunal discipli-naire
懲戒委員
懲戒委員とは、懲戒委員會を構成するものにして、高等官及び普通官中より之を任命するものとす。(文官懲戒令參照)
- 英
- Committee on disciplinary punishment
- 独
- Disziplinarcomité
- 仏
- Comité disciplinaire
徵收
(ちようしう)國家、又は自治團體が、命令權に依りて私人(自然人と法人とを問はず)より金錢、權利、又は物品を收納したる行政處分を云ふ、例へば租税の徵收、公用徵收、罰金過料の徵收と云ふが如き其用例なり。
- 英
- Collection
- 独
- Einziehung
- 仏
- Recouvrement
懲償處分
(ちよやしやうしよぶん)刑法に於て、刑事々件の裁判費用の負擔、又は贓物の還給處分、損害の賠償處分を命ずるを稱して懲償處分と云ふ、刑法第二章第四節に「懲償」とあるは其用例なり。
- 英
- Punishment of compensation
- 独
- Ersatzstrafe
- 仏
- Punition de la com-pensation
徵税傳令書
(ちようぜいでんれいしよ)徵税傳令書とは、府縣税に就き、市町村長が、府縣知事、又は其委任を受けたる官吏、吏員が、市町村に向て發したる徵税令書により調製し、納税人に交付し納税義務の履行を命ずる書面なり、明治三三年勅令五四條に「徵税傳令書」とあるは其用例なり。
- 英
- Pressing note of collection of tax
- 独
- dringendes Briefchen der Besteuerung
- 仏
- Note de la collection de l'impôt
徵税令書
徵税令書、□一府縣税の徵收に就き、府縣知事、又は其委任を受けたる官吏、吏員が、市町村に向て發する文書にして、其效力は、負擔する府縣税徵收義務の履行を命ずるにあり、明治二三年勅令第八一號第第四條、一項に徵税令書とあるは其用例なり、□二府縣知事、又は其委任を受けたる官吏、吏員は、又直に納税人に對して徵税令書を發することもあり、而して此場合に於ける徵收令書の效力は、納税人に對し其納税義務の履行を命ずるの點にあり、明治三三年勅令第八一第號四條第三項に徵税令書とあるは其用例也。
- 英
- Order of Taxation
- 独
- Besteuerungsverordnung
- 仏
- Ordre de la taxation
懲治場
(ちようぢば)刑事責任能力なき幼者の犯罪行爲に對し、遷善感化を目的とする留置場にして、一種の行政上の設備なり、然れども我監獄則に依れば之を監獄の一種となす。(監獄の部參照)
- 英
- Reformatory prison
- 独
- Besser-ungsanstalt
- 仏
- Prison de réformer
徵發
(ちようはつ)權力行動に依て必要なる軍需を徵收するを徵發と云ふ、命令權の作用に依て、軍事上の需要を滿足する點に於ては、兵役と異なる所なし、然れども□一兵役は身體上の義務なるも、徵發は財産上の義務なるの點に於て差異あり、蓋し兵役は金錢に見積り得ざるも、徵發は無論金錢に見積ることを得、□二兵役の義務は、身を命捧げて國家に奉ずる義務なるが故に内國人に限るも、徵發は財産上の義務なるを以て外故國人と雖も免るることを得ず、□三兵役は一般的なるも徵發は特殊的なり、又徵發は租税とも異なる國家の命令權の活動に基く、公法上の義務而かも財産上の義務なる點に於ては、彼れ此れ差異なしと雖も、徵發に對しては賠償を與ふるに抅らず、租税に於ては、何等賠償を與へざる點に於て著しく異なる、更に公用徵收とも異なる▲徵發したる物件を其儘直接公用に供するの點及び賠償を與ふる點に於て同じきも、□一公用徵收は、特定の物件を強制して徵收するに反し、徵發は、通常一定の税類の物件を提出せしむる義務を負はしむるのみにして、必しも特定の物件を徵收するの要なし、□二公用徵收は、主として不動産に限るも、徵發は多く動産にして、或場合には勞力なり。
- 英
- Levy
- 独
- Requisition
- 仏
- Requisition
徵憑
(ちようひやう)證據を區別して直接證據と間接證據となす、所謂間接證據とは、即ちこの徵憑を指すものにして、直接證據とは、懲憑以外の事實を指すものなり、詳言すれば、徵憑とは證明せらるべき事實と、論理上の牽聯を保つが爲め、證明を必要とする事實の存在に推理論結せしむる事實なり、故に徵憑より證明事實を認むるには、三段論法によらざる可らず、其大命題たるものは、經驗に依り定まる常則なり、其小命題は確定の事實なり、此事實が即ち徵憑なり、而して此事實を大命題に適用し、以て推論の方法によりて證明の結果に達するのなり、從て徵憑は確定したる一個の事實なり、徵憑にして未だ確定のものと認められざるときは、此事實が證據方法を以て證明せらるることを要す、故に徵憑は證據方法にあらず、唯自由心證主義を採りたる現行刑事訴訟法に於ては、徵憑より證明事實を認むるに就ても、之を判事の判斷に任せり、即ち大命題たる經驗上の常則を認むべきや、又確定したる徵憑事實を之に適用し得べきやは判事の自由なり、制限證據主義に於ては又之を法律に規定せり、之を法律に規定すれば、即ち法律上の確定たる形體に於て表はる、徵憑の區別としては直接、間接及び積極、消極の二あり、□一直接間接の區別は、徵憑が直に證明事實に推論せしむると、先づ他の徵憑事實に推論し、更に其れより證明事實は論結せしむるとあり、間接徵憑の主なるものは、傳聞の證言の如きものなり、積極、消極の區別は、證明事實の存在に推論せしむると、其不存在に推論せしむるとにあり、而して消極徵憑の主なるものは、犯罪の當時其場所に在らざりしことを證する場合なり。(刑訴九〇九一條參照)
- 英
- Circumstantial proof
- 独
- Probe
- 仏
- Indice
徵兵
(ちようへい)法令により強制して兵役義務者を徵集し、之に一定の服役を命ずる行政處分を徵兵と云ふ、徵兵は募兵と異なる、募兵は國家が人民の合意を前提として兵役に就かしむるもの也、徵兵は之に反して、法令により強制して行はるるものなり、今日に於ては各國槪ね徵兵制度を採る、蓋し募兵制度は、國民皆兵主義に背反するものなればなり。(徵兵令參照)
- 英
- Conscription
- 独
- Aushebung
- 仏
- Recrutement
徵用
(ちようよう)徵用とは、公用徵收の別名也、公用徵收とは、公共の利益の爲めに、賠償を與へて財産權を徵收し、之を國家の手に回收し、若しくは更に第三者の爲めに所有權を創設する權力作用なり、例へば線路の敷地に充つる爲め、私人の所有權を徵收して鐵道會社に與ふるが如き之なり、廣き意味に於ては、行政處分に依らず、法規により一定の條件に箝當する場合に、一般臣民の財産權を徵收する場合をも、若し之に賠償を給與するに由りて之を徵收するときは、公用徵收と云ふも妨なし、然れども我現行法に於ては、斯くの如く廣義ならざるものとす、公用徵收の要件は□一財産權を移轉するに對し賠償を與ふることを要す、之租税と異なる一點なり、□二權利の移轉あることを要す、若し單純に所有權を剝奪するに過ぎざるときは、假令賠償を與ふるも公用徵收にあらず、例へば衛生警察の爲め、獸疫に罹れる、牛馬を撲殺するが如きは公用徵收にあらざるが如し。(土地收用法參照)
- 英
- Public collection
- 独
- Einziehung
- 仏
- Collection publique
女監
(ぢよかん)女子なる囚徒、刑事被告人、又は懲治人、即ち不論罪に係る幼老瘖啞者を收容する監房を女監と云ふ、凡そ監房は之を大別して二とす、□一男監、即ち男子たる囚徒、刑事被告人、又は懲治人を收容する所なり、□二は即ち女監なり、從つて男監に對して之を女監と云ふに過ぎず、監獄則第一五條に「凡そ監獄は男監女監の別を嚴隔すべし」とあるは其用例なり。
- 英
- Women's prison
- 独
- Frauen-gefängnisz
直近
(ちよくきん)直近とは直接、且つ近接と云ふの意に外ならず、裁判所の管轄上、直近上級と稱するは即ち其例なり、例へば東京地方裁判所は、東京區裁判所に對して直近上級裁判所なり、東京控訴院は、東京地方裁判所の直近上級裁判所なるが如し。
- 英
- Immediately superior
- 独
- Höhere
- 仏
- Supérieur immédiatement
勅許
(ちよくきよ)皇室の重大事項の實行に關し、機關に依らず、天皇の親裁に基く許可を勅許と稱す、例へば皇室典範第四〇條に「皇族の婚嫁は勅許に由る」と云ふ如し。
- 英
- Imperial permission
- 独
- kaiser-liche Erlaubnisz
- 仏
- Permission im-périale
直系
(ちよくけい)直系とは、傍系に相對するの語にして、彼れよりこれに直下する親系を云ふ、例へば父と子、孫、曾孫、玄孫との間の血統は順次に直下して連絡せるが故に、此等の間の關係は即ち直糸なり、又曾祖父母と祖父母、父母子との間の血統も、亦順次に直下して連結せるが故に、此等の者の間の關係も亦直系なり、而して自己と直系にある者を直系親と云ふ、蓋し直系親とは、直系の關係ある親族の謂ひなり、子、孫、父母、祖父母の如きは自己の直系親なり、直系親は之を別ちて尊屬と卑屬とす、父母、祖父母の如きは尊屬にして、子、孫の如きは卑屬なり。(民法親族編參照)
- 英
- Direct line
- 独
- gerade Linie
- 仏
- Ligne directe
勅語
(ちよくご)天皇が機關の參與を俟たず親ら臣民に對して、發表せらるる意思表示にして、勅令の形式を具へざをものを敕語と云ふ、憲法發布の勅語、教育勅語の如し。
- 英
- Imperial rescript
- 独
- kaiserliches Edikt
- 仏
- Rescript impérial
勅裁
(ちよくさい)天皇が機關の參與を俟たず、親ら裁斷せらるるを稱して勅裁と云ふ、例へば皇室典範第四九條に「勅裁を經て之を執行す」とあるは其用例なり。
- 英
- Imperial sanction
- 独
- kaiserliche Sanktion
- 仏
- Sanction impériale
敕旨
(ちよくし)勅旨とは、天皇が機關の參與を俟たず、親ら臣民に對して表示せらるる意志表示にして、敕令及び敕語と其性質を同うし、形式と其の語を異にするに過ぎず、華族令第一條に「爵を授くるは敕旨を以てし」とあるは其用例なり。
- 英
- Imperial order
- 独
- kaiserlicher Befehl
- 仏
- Ordre impériale
敕諭
敕諭とは、要するに敕語、敕旨と大差なく、唯多少諭示的の意味を含む、議院法第一條に「帝國議會召集の敕諭と」あるは其用例なり。
- 英
- Imperial proclamation
- 独
- kaiser-liche Proklamation
- 仏
- Proclamation impériale
敕命
敕命とは、敕語、敕旨と殆ど同じきも、唯一般的の性質を有するの點に於て異なるのみ、憲法第四二條に「必要ある場合に於ては、敕命を以て之を延長することあるべし」とあるは其用例なり。
- 英
- Imperial order
- 独
- kaiserliche Verordnung
- 仏
- Ordre impériale
直接税
(ちよくせつぜい)重農學派の見解によれば、地租は唯一の直接税なりとなすものなりと雖も、此説の非なることはアダムスミス以來正統學派によりて打破せられたり、現今通説として見るべきものは、租税の負擔の歸する所によりて二者を區別するものとす、即ち其納税者と擔税者と同一なるものを云ふとなすを得べし、別言すれば、法律上の納税人と、經濟上の納税人との相一致するものが直接税にして、然らざるものが間接税なり。(間接税の部參照)
- 英
- Direct tax
- 独
- direkte Steuer
- 仏
- Contribution directé; impôt direct
敕選
(ちよくせん)敕選とは、機關の作用に依らずして、天皇親ら或人又は事物を選定せらるることを云ふ、例へば貴族院議員の勅選と云ふが如し、皇室典範第三七條に「敕選」とあるは其用例なり。
- 英
- Imperial nomination
- 独
- kaiser-liche Ernennung
- 仏
- Nomination im-périale
敕任
敕任とは、□一は陛下の御名御璽に於て親任する官吏任命の手■を云ひ、□二は天皇親ら或人を職務に任ずることを指すことあり、例へば憲法第三四條に「敕任せられたる議員」とあるは其用例なり。(高等官官等令參照)
- 英
- Imperial appointment
- 独
- kaiser-liche Anstellung
- 仏
- Nomination im-périale
直輸入
(ちよくゆにふ)直輸入とは、外國商人より直接に輸入するを云ふ、即ち媒介商の手を經ずして貨物を内國に輸入するの謂なり。(關税法參照)
- 英
- Direct import
- 独
- direkter Import
- 仏
- Importance direct
直隷
(ちよくれい)直接に天皇の指揮監督に服するを直隷と云ふ、例へば各省大臣は天皇に直隷し、會計檢査院長は、大臣の監督に屬せずして天皇に直隷すと云ふが如し、而して天皇以外の者に隷屬する場合には、之を直隷と云はず、例へば市は郡長の監督に屬せずして、直に府縣知事の監督に服するも、直隷と云はざるが如し。
- 英
- Immediate subjection
- 独
- un-mittelbare Abhängigkeit
- 仏
- Subjection immédiate
敕令
(ちよくれい)帝國議會の協贊を經ずして天皇が制定發布せらるる國民行爲の凖規を敕令と云ふ、帝國議會の協贊を經ざる點に於て法律と異り、天皇の發せらるる點に於て他の閣令、省令、又は府縣令と異なる、敕令の種類は左の如し、□一緊急敕令、公共の安全を保持し、又は其災厄を避くる爲め、緊急の必要ありと認めたる場合に天皇の發する命令にして、法律を改廢するの效力を有するものなり、但し帝國議會閉會中にあらざれば之を發する事を得ず、又此勅令は次の會期に於て、帝國議會に提出し、其承諾を請はざる可らず、若し議會に於て承諾せざるときは、政府は將來に向て其效力を夫ふ旨を公布するものとす、□二執行命令、法律を執行する爲めに發する命令なり、例へば其施行細則を定むるが如し、□三獨立命令、公共の安寧秩序を保持し、及臣民の幸福を增進する爲めに發する命令なり、□四其他委任命令を認むるや否やに就きて議論あり、されど實際勅令の形式に於て、委任命令の發布せられしことあり、所謂委任命令とは、法律の委任により、立法事項に就きて規定する勅令其他の命令を云ふ。(憲法八九條)
- 英
- Imperial edict
- 独
- kaiserliche Verordnung
- 仏
- Ordonnance
除外法
(ぢよぐわいはふ)法規は之を大別して二とす、原則法、例外法即ち是なり、例外法は一名之を除外法と云ふ、要するに一般法規に對し、或特段なる場合を律せんが爲め、其一般法規を除外せんとする法規なり、例へば民法、刑法は一般法にして、商法の如きは民法に對する除外法の一なり、陸海軍刑法の如き亦普通刑法に對する除外法の一なり、而して此を區別するの實益は、□一除外法に規定なき事項に就きては一般法に則り、□二除外法に關する規定は之を狹く解するの點にあり。
- 英
- Exeption law
- 独
- Ausnahms-gesetz
- 仏
- Loi exceptée
除權判決
(ぢよけんはんけつ)公示催告をなしたる場合に請求、又は權利の屆出を爲さざるときは、失權を生ずる效力を有せしむる判決をなすを得、之れを除權判決と云ふ、除權判決に對しては不服を申立つることを得ざるを原則とし、以下の場合に限り不服を申立つることを得、□一法律に於て公示催告手續を許す場合にあらざるとき、□二公示催告に就きての公告を爲さず、又は法律に定めたる方法を以て公告を爲さざるとき、□三公示催告の期間を遵守せざるとき、□四判決を爲す判事が、法律により職務の執行より除斥せられたるとき、□五請求、又は權利の屆出ありたるに拘らず、判決に於て其屆出を法律に從ひ顧みざるとき、□六刑法に揭げたる職務上の義務に違背したる罪を、訴訟に關し犯したる判事が、裁判に參與したりしとき、□七原告若くは被告の法律上代理人、若くは訴訟代理人、又は相手方若くは其法律上代理人、若くは訴訟代理人が、罰せらるべき行爲を訴訟に關して爲したりしとき、□八判決の憑據となりたる證書が僞造、又は變造なりしとき、□九證人若くは鑑定人が供述に因り、又は通事が判決の憑據となりたる通譯に依り僞證の罪を犯したりしとき、□十判決の憑據となりたる刑事上の判決が、他の確定となりたる刑事上の判決を以て、廢棄若くは破毀せられたりしとき之なり、公示催告及び其權利の屆出、除權判申立の書式は左の如し。
公示催告申立
住所、身分、職業
申立人氏名
一軍事公債證書額面百圓利札附
別紙寫ノ通リ
右公債證書ハ明治何年何月何日盜難(又は紛失等)ニ罷リ候條公示催告被成下度民事訴訟法第七六四條、七六五條ニ依リ申立候也
年月日右
氏名□印
何々區裁判所御中
權利屆出
御廳何年第何號何月何日公示催告有之候處該記載ノ公債證書ハ自分ニ於テ有效ニ所有致シ居候條此段及屆出候也
年月日
屆出人氏名□印
何々區裁判所、判事何某殿
除權判決申立
住所身分職業
申立人氏名
御廳何年何號公債證書盜難ニ罹リタル旨ヲ以テ公示催告相成候處期日迄ニ權利ヲ屆出ヅルモノ無之ニ付除權判決被下度申立候也
年月日右
氏名□印
何々區裁判所判事何某殿
除權判決ニ對スル不服申立
住所身分職業
申立人氏名
住所身分職業
被申立人氏名
何々區裁判所何年第何號公示催告ニ依リ何々ニ對スル權利ノ除權判決有之候處何々判決ノ民事訴訟法第七七四條第何號ニ該當スル違法ノ判決ニ付不服申立候也
年月日右
何々區裁判所判事何某殿
氏名□印
- 英
- Judgment of exclusion
- 独
- Ausnahmsurtheil
女戸主
(ぢよこしゆ)戸主が女子なるときは、之を女戸主と云ふ、所謂戸主とは一家を統率する者を云ひ、家族の上に於て其の統轄の權ある者を云ふ、俗間或は營業を爲す者が女子なるときは、之を女戸主と云ふことあるも、法律上に於ては誤謬なる用法とす、蓋し家族と雖も一般に各種の營業を爲し得べく、唯未成年其他の無能力者たる者に限り、法定の者の同意を用するに過ぎず、從つて營業者が女子たるも、決して女戸主となるものにあらざる也、戸主は營業を爲さざるも素より戸主たるを妨げざるものとす。(民七三六、七五五、九六四條三號等)
- 英
- Woman's householder
- 独
- Hausfrau
- 仏
- Chef féminine de la famille
著作
(ちよさく)著作とは、精神的勞力即ち智能の作用に依るものを現出するを謂ふ、例へば人の智能に基きて文書、圖画、演述、彫刻、摸型、寫眞等を作出するを云ふ、而して著作に依りて現出したるものは即ち著作物なり。著作權とは、文藝學術又は美術の範圍に屬する著作物を複製するの權利を謂ふ、所謂複制とは著作物を摸出するの義にして、例へば文藝學術に關する著作物の著作權は、之を出版し飜譯するの權利を包含し、脚本樂譜に就きては其の著作權は之を出版し、又は興行するの權利を包含する者とす、謂ふ所の飜譯とは、異なりたる國語を以て同一の思想を表彰するを云ひ、興行とは汎ねく公衆の面前に於て、之を演技するを云ふもの也、元來著作權は一種の私權にして、所謂精神的所有權の一種とす、從て之を讓渡し、又は之を相續ずる事を得るなり、著作權を登錄したるときは、著作者の生存間及び死後三十年間此の權利を獨占することを得べし、但し眞寫の著作權は十年とす。(三二年法二九號著作權法參照)
- 英
- Work
- 独
- Werk
- 仏
- Ouvrage
著作權
- 英
- Copy-right
- 独
- Verlagsrecht
- 仏
- Droit d'auteur
女子高等師範學校
(ぢよしかうとうしはんがくかう)文部大臣の直轄學校にして、尋常師範學校、同女子部、高等女學校等の女教員を養成する營造物なり、其入學資格は高等女學校卒業程度なり、現時は東京本郷御茶の水に一箇あるのみ。(三〇年勅三四六號師範教育令參照)
- 英
- Girls' higher nor-mal school
- 独
- höhere Mädchennormal-schule
- 仏
- Ecole normale de la femme
除籍
(ぢよせき)廣く除籍と云へば、一定の戸籍より離脱するを指し、女子が婚姻によりて夫の家に入るも、養子緣組に依りて養家に入るも、分家を爲すも、戸主が一定の原因に基き家族を離籍するも、苟も一家の戸籍より脱する場合は、總て之を除籍と云ひ得べし、されど或は之を狹く解し、戸主が家族を離籍する場合のみを指す事あり、此の意義に於ては、單に戸主が其權利により家族を離籍する場合のみ、例へば戸主の同意を得ずして、養子を爲したる家族を其の家より排除する場合の如し。(離籍の部參照)
- 英
- To strike of one's name from registry
- 独
- Ausschlieszung vom Register
除斥
(ぢよせき)一定の場合に判事又は裁判所書記が、當然に其職務の執行より排斥せらるるを云ふ、□一刑事訴訟に於て、判事、書記が除斥せらるる場合は、イ判事書記被害者なる時、ロ判事書記、又は其配偶者と被告人、被害者、又は之等の者の配偶者と親屬なるとき、但し姻族に就きては婚姻の解除したる時と雖も亦同じ、ハ判事書記其事件に就き證人、鑑定人となりたるとき、又は被告人若くは被害者の法律上代理人なるとき、ニ判事其事件の豫審終結に關與し、又は不服を申出でられたる裁判の前審に關與したるとき之也、□二民事訴訟に於て判事、又は書記除斥せらるる場合も略ぼ之と同じく、あ判事、書記又は其婦が原告若くは被告たるとき、又は訴訟に係る請求に付き當事者の一方、又は双方と共同權利者、共同義務者若くは償還義務者たる關係を有するとき、い判事、書記、又は其婦が當事者の一方若くは双方、又は其配偶者と親族なるとき、但し姻族に就きては婚姻の解除したるときと雖も亦同じ、う判事、又は書記が、同一事件に就き證人、若くは鑑定人となりて訊問を受くるとき、又は訴訟代理人たる委任を受くるとき、若くは受けたるとき、又は法律上代理人となる權利を有する時、若くは之を有したるとき、え判事が不服の申立ある裁判の前審、又は仲裁に於て、判事又は仲裁人として關與したる時、但し受命判事、受託判事たるには妨げなし、除斥の申立を爲す書式は左の如し。
忌避の申立
住所、身分、職業
申立人氏名
御廳何年(何)第何號申立人ヨリ被告某ニ係ル何々訴訟事係判事何某ハ原告ト親族關係有之候コトハ別紙戸籍寫ニ依リ明瞭ニ有之候條判事某ハ法律ニヨリ當然職務ノ執行ヨり除斥セヲルルモノニ有之候間忌避申立候也
疏明方法
一戸籍謄本ヲ以テ疏明仕候
附屬書類
一戸籍謄本一通
一訴訟委任狀一通
右申立代理人
年月日氏名□印
何々裁判所判事何某殿
- 英
- Exclusion
- 独
- Ausschlieszung
- 仏
- Exclusion
除名
(ぢよめい)除名とは、或團體より、其の團體員を團體外に驅逐するを云ふ、例へば合名社々員を除名し、組合員を除名し、衆議員議員を除名すると云ふが如き其用例なり。(商六八九條六號、七〇條等)
- 英
- Expulsion
- 独
- Ausschlieszung
- 仏
- Expulsion
知慮
(ちりよ)知慮とは、智力、熟慮の意義なり、刑法第二八四條に「幼者の知慮淺薄、又は人の精神錯亂したるに乘じて、其財産若くは證書類を授與せしめたる者は、詐僞取財を以て論ず」とあるは其用例なり。(誘惑罪參照)
- 英
- Prudence
- 独
- Klugheit
- 仏
- Prudence
知力
(ちりよく)通俗に知力と謂へば、事物を知る所の能を意味す、故に認識てふ語は、最もよく知力てふ事の過程を示す、心理學上にては、吾人の精神作用を便宜上二分して、一方面を知力とし、他方面を情意とす、情意は發動的にして、何等か知力の作用あれば、必ず伴ふて情意の發動あるを法とす、知力は、認識の能なれども亦情意の作用、例へば趣味注意の如き作用を俟ちて、初めて其作用を全うす、感覺、知感、記憶、想像、判斷、推理、推究等は總て知力の作用也、尚詳言すれば、知力とは事物を認識し、實行上、の意思に對しては、指導の役をなし、感覺に對しては、其補助を與へ、材料を經驗に取り、精神固有の認識能力を以て、之れを消化して智識となす作用を謂ふ、故に若し之れを智識と區別すれば、知力は作用にして、智識は其結果、即ち前者は理會判斷等をなす知的作用にして、後者は此の作用によりて得られたる知的産物と謂ふことを得べし。
- 英
- Intellect
- 独
- Verstand
- 仏
- In-télligence
地力遞減
(ちりよくていげん)地力遞減とは、耕地の生産力が或一定の程度に達するときは、假令其の上勞力に資本を加へて其收獲多額なるを得るも、純益が益々減少するを云ふ、元來農業に關する土地の生産力は三種の條件に基く、□一土地の機械的性質、即ち土地は柔軟其當を得て、植物の根をして自由に地中に蟠延せしむると同時に、之を保存するに足るの硬度を有せざる可からず、□二土地の化學的性質、土地は植物に缺くべからざる無機的元素を備へざる可らず、何となれば植物は、其成分に必要なる諸元素を空氣及水より吸收すと雖も、鑛物質の元素は之が供給を土壤に仰げばなり、□三は土地の表面に於ける日光、溫〓、空氣、及び瀑氣等之也、而して以上の要件中、□三は人力を以て變更すること頗る困難なりと雖も、□一□二は之變更すること得ざるものにあらず、即ち田畝に鋤犁を用ふるは、土地の機械的性質をして硬柔其の宜しきを得しむるに在り、肥料を投ずるは土地の鑛物質元素を豐富ならしむるにあり、從つて勞動と資本とを以て、土地の性質を變更し、其生産力を增加する事を得るものとす、されど爾かするも、無限に土地の生産力は增加するものにあらず、或一定の限度に達すれば、生産力は漸々に遞下す、即ち勞動、資本に應じて增加せず、是實に動かす可らざる自然の法則にして、之を地力遞減法、又は報酬漸減理法と云ふ、例へば十町の田に農夫二十人を使用し、一年に米二百俵を得る者とせば、一農夫每に十俵を生産する割合なり、若し農夫を增加して三十人と爲す時は、生産する米も亦增加すべしと雖も、其生産の增加は前述の加く、一人十俵の割を得る能はず、此三十人の産する總額、或は二百六十俵に過ぎざることあらん、然らば則ち其增加せる農夫十人の勞動に當る、生産の總計は六十俵にして、一農夫六俵の生産する割合なり、更に農夫を增加して三十五人とすれば、其總額亦增加すべきも、其增加の割合は更に遞下せん、即ち三十五人の收穫する所、或は二百八十五俵なるべく、依て增加せる農夫の勞動に依る産出額は二十五俵にして、一人五俵の割合となるべし、之を以て增加したる農夫の勞動に對する報酬は漸次減却せるものと云ふべきなり、資本に就きても亦同じ、本年施すに昨年に二倍する肥料を以てするも、收穫は昨年に二倍せず、然れども地力遞滅は必しも資本、勞力を用ふるの初めより行はるるものには非ず、地力の漸次增加する場合あるや論なし、例へば未開國に於て、肥沃なる土地を始めて耕作に用ふる如き場合には勞動、資本を投ずるに從ひ地力益々增加すべきなり、然れども之等の土地も一定の程度に達するときは、地力は遞下するに至る者とす。
地力遞減の理法
地力遞減の理法とは、上記の如き地力遞減の原理を謂ふものなり、此法則は自然界の法則にして、人類は到底之に逆行することを得す、只抵抗して其力を緩ふすることを得るのみ、而して其主たるものは農業の進步なり、例へば極めて有效なる肥料發明せらるるときは、之を投じて大に收益を增加することを得べく、善良なる機械の使用も亦同一效果を奏すべきなり、若し此法則なからんか、即ち一定の土地にして其収益常に勞動、資本の增加に比例するものとせば、何ぞ敢て移住するの要あらんや、然るに各國大に移住を奬勵する所以のものは、一定の程度に達するときは其收差次第に減ずるを以て、新國に移住し、同一の勞動資本を以て比較的多額の收益を得んとするにあること、實に其の重要なる一原因とす。
追拂
(ついはらい)民事訴訟法の規定に從ひて救助を受けたる原告、若くは被告は、自己及び其家族の必要なる生活を害せずして、費用の清濟を爲し得るに至るときは、假免除を得たる數額を直に追拂ひする義務あるものなり、所謂假免除は、訴訟上の救助を得たる原告、被告の爲に左の效方を生ずるもの也、□一裁判費用、(國庫の立替金を包含す)を清濟することの假免除、□二訴訟費用の保證を立つることの免除、□三送達及執行を爲さしむる爲め、一時無報酬にて執達吏の附添を求むる權利之なり、國家は何故にかかる事を爲すかと云ふに、元來實際社會の人の内には十分なる權利あり、且つ理由あり、然かも立派なる證據を備へながら、赤貧にして訴訟費用を支出する資力なく、從つて他人の爲に財産權を侵害せられ、又は其他の權利を侵害せられて非常の損害を受けたるにも拘らす、其回復救濟を裁判所に求むる事能はざる人ある時は個人の權利は勿論、延ひて國家の安寧、法律保護の平等とを攪亂するに至るを以て、斯る者に對し國家は、其訴訟費用を一時豫猶するなり、かくして一度其法律の恩惠によりて、權利の伸張を爲したる結果、又は其後生活資力の回復に依りて、一家の生活に困難を感ぜざる場合とならば、法律が取つて以て費用救助の理由と認めたる狀態を經過したるが故に、國家は其立替たる數額取立を命ず、之を稱して追拂と謂ふ、念の爲め、訴訟の救助に關する手續と要件とを述ぶれば、□一證據十分にて勝訴となり得る見込のあること、□二實際赤貧なることの、村長の證明書を救助願書に添付すること、以上の二要件を具備して裁判所に請求し、決定を求むるにあり。(民訴九一乃至一〇二條)
- 英
- After-payment
- 独
- Nachzahlung
- 仏
- Apris-paiement
通行權
(つうかうけん)通行權とは、土地の所有者が他人の土地を通行するの權利を云ふ、左の場合に於て、人は他人の士地を通行するの權を有す、甲士地が他の土地に圍繞せられて公路に通ぜざるとき、乙土地が池沼、河渠、若くは海洋に依るにあらざれば、他に通ずること能はず、又は崖岸ありて土地と公路と著しき高低あるとき之れなり、之れ所謂袋地と稱するものにして、甲の場合に於ては、所有者は、全く其土地を利用すること能はざるべし、乙の場合に於ては、所有者は其土地を利用し得べきも、之が爲め非常なる不便を感ずべく、何れの場合に於ても、經濟上頗る不利なる結果を生ずるものとす、之れ法律が袋地の所有者をして、公路に達するまで、其圍繞せる土地を通行することを得しむる所以にして、隣地が公路に接するのときは、所有者は、一隣地を通過して、直に公路に達することを得べし、又隣地が公路に接せざるときは、所有者は、其所有地と公路との間に介在する總ての所有地を通行するの權利を有するものとす、元來袋地は、或は天災地變より生じ、或は公路の廢止より生じ、或は又袋地の共有者が共有の土地を分割し、又は土地の所有者が、其土地の一部を他人に讀渡すに依りて生ずる事あり、此後の場合の袋地に關しては、所有者は分割者、又は讓渡の當事者の地所のみを通行することを要し、他の地所に對しては、通行權を行ふことを得ず、之れ他なし、此場合に於て袋地を生じたるは、分割、又は讓渡に基因するものにして、之が爲めに必要となりたる通路は、其所爲を以て、袋地を生ぜしめたる當事者に於て之を供することを要し、他人をして之に供せしむべからざるは、理の當然なるを以てなり、通行權の行使は、左の條件に從ふ事を要す、(甲)通行の場所及び方法は、通行權を有する者の爲めに必要にして、且つ圍繞地の爲めに損害少きものを擇ぶことを要す、袋地の所有者は、隨意に隣地を通行することを得ず、通行の場所及び方法は、袋地の必要を以て標準とし、此必要を超過することを得ず、例へば收獲の少き田畑に往來するが爲めには、徒步にて通行するを以て十分とし、敢て車馬にて通行することを必要とせざるが如し、又他方に於て通行權は、圍繞地の所有者の權利を害するものなるが故に、通行權の行使は、成るべく圍繞地の所有者に損害を及ぼさざることを必要とす、例へば圍繞地に通路、又は空地あれば之を利用し、畑地を先にして庭園を後にし、萬已むを得ざる場合にあらざれば、家屋其他の建物を變更して路通を供せしむる事を得ず、通行權の行使は、袋地の必要を以て標準とすること前述の如し、而して袋地の所有者が他人の土地を通行するのみにては、未だ充分に其需要を充すことを得ずして、其一家の需要の爲め、又は土地の利用の爲め、特別に通路を有するの必要を感ずること往々にして之れあり、此場合に於ては、袋地の所有者は、特に其固有の通路を開設することを得、例へば收獲物、又は荷物運搬の爲め、若くは住居人の出入の爲めに、人馬車輛の往來を必要とする場合の如し、乙通行權者は、其撰擇に從ひ、通行地の損害に對し、一時に賠償金の全額を支拂ひ、若くは一定の年金を支拂ふことを要す、圍繞地の所有者は、通行權の行使に依り多少の損害を受くべきを以て、其損害は、通行權者に於て之を賠償するの義務あるは勿論也、而して賠償金は、他人の土地を使用するの對價なりと見る事を得べきに依り、通行權者は、其撰擇に從ひ、一時に其全額を支拂ひ、若くは年々一定の金額を支拂ふことを得、然れども通路開設の爲めに生じたる損害は、一時に生ずるものにして、其償金は土へ使用の對價に非ざるを以て、通行權者は直に其の全部を支拂ふことを要す、袋地が土地の分割、又は讓渡より生じたるときは、通行權者は償金を支拂ふことを要せずして、圍繞地を通行することを得べし、蓋し上記の分割讓渡の場合に袋地を生じたるは、全く當事者の行爲に基因するものにして、當事者が既に其行爲に依り袋地を生ぜしめたる以上は、之が爲めに必要となりたる通路を供するは、其當然の義務に屬するものなればなり、但し當事者間に反對の特約ありしときは、通行權者は其特約に基き、償金を支拂ふことを要するは論を俟たず、之を要するに、通行の場所、方法及び賠償金額に就き、當事者間に協議調ひたるときは、之れに依るべく、協議調はざるときは、當事者間の爭は、受訴裁判所に於て之を決定すべきものとす。(民二一〇條乃至二一三條)
通貨
(つうくわ)通貨とは、法律の力に依り、強制通用の效力を有する貨常及び紙幣を云ふ、(甲)は貨幣、貨幣法の定むる處にして、金、銀、白銅及び青銅の四種なりとす、現今我國にては、金貨本位を採用せるものにして、右四種の内金貨は本位貨幣にして、銀以下の三種は所謂補助貨幣なりとす、金貨の種類は二十圓、十圓、五圓、補助貨幣たる銀貨は、五十錢、二十錢、十錢、白銅貨幣は五錢、青銅貨幣は一錢及び五厘の數種なり、貨幣の品質は左の如し、□一金貨幣、純金九百分參和銅一百分、□二銀貨幣、純銀八百分參和銅二百分、□三白銅貨幣、「ニツケル」二百五十分參和銅七百五十分、□四青銅貨幣、銅九百五十分錫四十分、亞鉛十分、又貨幣の量目は左の如し、イ二十圓金貨幣、四匁四分四厘四毛四、(十六「グラム」六六六五)、ロ十圓金貨幣、二匁二分二厘二毛二、(八「ガラム」三三三三)、ハ五圓金貨幣、一匁一分一厘一毛、(四「グラム」一六六六)、二五十錢銀貨幣、三匁五分九厘四毛二、(十三「グラム」四七八三)、ホ二十錢銀貨幣、一匁四分三厘七毛七、(五「グラム」三九一四、ヘ十錢銀貨幣、七分一厘八毛八、(二「グラム」六九五五)、ト白銅貨幣、一匁二分四厘四毛一、(四「グラム」六六五四)、チ一錢青銅貨幣、一匁九分零厘零毛八、(七「グラム」一二八〇)、リ五厘青銅貨幣、九分五厘零毛四、(三「グラム」五六四〇)、金貨幣は、其の額に制限なく、法貨として通用す、銀貨幣は十圓まで、白銅貨幣及び青銅貨幣は一圓迄を限り、法貨として通用す、(乙)紙幣は、現時之なく、之と略ぼ等しきは兌換券にして、兌換券は、兌換銀行券條例に基き、日本銀行にて發行し、一般世上に流通するもの也、而して兌換券は、何時たりとも、之を貨幣と交換する事を得るものとす、其種類に一圓、五圓、十圓、百圓等あり、又其額に制限なく使用せらるるものとす、(民四〇二、四〇三條、三〇年三月法一六號貨幣法、一七年五月一八號布告兌換銀行券條例)
- 英
- Currency
- 独
- Umlaufsmünze
- 仏
- Monnaie courante
通算
(つうさん)通算とは、合算と異なり差引計算と云ふが如し、例へば犯罪人に對し刑を言渡す場合に、本刑を言渡す以前に於て、拘留十日の所分を受けたりと假定せば、本刑期一年、(假定せば)の内十日の拘留日數を通算し、已に十日服役したるものと看做すが如きこれなり。(舊刑一〇二條)
- 英
- Counting
- 独
- Rechnung
- 仏
- Compte
通常警察
(つうじやうけいさつ)通常警察の何たるやを述べんには、先づ警察の何たるやを説明するを要す、警察とは、社會の危害を防止せむが爲めに人の自由を制限することを云ふ、□一警察は、社會の危害を防止するを目的とする行爲なり、換言せば社會の安寧秩序を維持するを以て、目的とする行爲なり、蓋し安察秩序とは、社會の生存條件に對する危害を排除せられたる狀態を云ふものにして、其危害を防止するは即ち安寧秩序を維持する所以なればなり、然れども社會の危害を防止するの行爲、必ずしも悉く警察にあらず、□二之が爲めに人の自由を制限するに及びて初めて警察たる也、例へば街衢に燈を點じ、堤防を築くが如き行爲は、危害を防止する行爲たるも、警察にあらずして、巡査が通行往來、又は防火、防水等に關し、人の自由を制限する時、初めて警察と爲るが如し、而して自由の制限は、直接に人の身體に對することあり、又は財産に對するに依り間接に然ることあり、例へば巡査が、道路左側の通行を命ずるが如きは、前者に屬し、自轉車に點燈及び呼鈴を附することを命ずるが如きは、後者に屬す、之れと反對に、人の自由を制限する行爲必ずしも警察にあらず、例へば徵税行爲、徵兵行爲の如きは、人の自由を制限する行爲たるも、其目的財政の收入を得、又は國家の戰鬪力を組織するにありて、危害を防止することにあらざるを以て、警察にあらざるが如し、之を要するに、警察は危害の防止を以て之が目的となし、人の自由の制限を以て、之が手段と爲す場合に於てのみ存するものなり、而して通常警察とは、個人より生ずる危險を防止するを目的とする警察なり、例へば豫戒、監視の如き之れなり、此名稱は高等警察、例へば集會、結社警察に對するものなり。
- 英
- Common police
- 独
- ordent-liche Polizei
- 仏
- Police ordinaire
通常裁判所
(つうじやうさいばんしよ)裁判所とは裁判を行ふ機關を云ふ、裁判所を分ちて司法裁判所、行政裁判所及び權限裁判所の三種とす、(あ)司法裁判所とは、司法權を行ふ裁判所を云ひ、(い)行政裁判所とは、行政訴訟を裁判する裁判所を云ひ、(う)權限裁判所とは權限爭議を裁判する裁判所を云ふ、而して司法裁判所を分ちて、通常裁判所及び特別裁判所の二種とす、(甲)通常裁判所とは、普通一般民事刑事を裁判する裁判所を云ひ(乙)特別裁判所とは、特種の事項又は特別の人に關して裁判を行ふ裁判所にして、例へば商事の爲めに特に設くる商事裁判所の如き、或は陸海軍人の刑事に關して設くる軍法會議の如き之れなり、□一通常裁判所の種類、通常裁判所は之を分ちて區裁判所、地方裁判所、控訴院、大審院の四種とす、區裁判所は、最下級の通常裁判所にして、單獨の判事其裁判權を行ひ、其の他は皆合議制にして、地方裁判所は三人、控訴院は五人、大審院は七人の判事を以て組織したる部に於て、總ての事件を審問裁判す、□二通常裁判所の職權、通常裁判所は、司法權を行ふ裁判所なるが故に、其職權とする處の民事刑事の裁判にあるは勿論なるも、通常裁判所には區裁判所、地方裁判所、控訴院及大審院の如く、其種類を異にしたる裁判所あり、又は多數の同種裁判所全國各地に散在するを以て、一定の訴訟に對し同種の裁判所中、何れの地の裁判所之を裁判すべきや、又は異種の裁判所中何れの種の裁判所に屬するやを定むるを要す、前者は土地の區域に依り定まるを以て、之を士地の管轄と云ひ、後者は訴訟事件の性質に依り定まるを以て、之を事物の管轄と云ふ、(A)事物の管轄、事物の管轄は左の如し、(甲)區裁判所、民事訴訟に就き區裁判所の管轄すべき事物は左の如し、□一二百圓を超過せざる金額、又は價格二百圓を超過せざる物に關する請求、□二價額に拘らず左の訴訟、イ住家其他の建物、又は其の或部分の受取明渡、使用、占據若くは修繕に關り、又は賃借人の家具若くは所持品を賃貸人の差押へたるに關し、賃貸人と賃借人との間に起りたる訴訟、ロ不動産の經界のみに係る訴訟、ハ占有のみに係る訴訟、ニ雇主と雇人との間に雇期限一年以下の契約に關し起りたる訴訟、ホ左に揭げたる事項に就き、旅人と旅店、若くは飮食店の主人との間に、又は旅人と水陸運送人との間に起りたる訴訟、即ち賄料、宿料、又は旅人の運送料、又は之に伴ふ手荷物の運送料、旅店若くは飮食店の主人、又は運送人に旅人より保護の爲め預けたる手荷物、金錢又は有價物に係る訴訟之なり、刑事訴訟に就き、區裁判所の管轄すべき事物左の如し、□一違警罪、□二竊盜、及び竊盜の臟物に關する罪、□三二百圓を超過する罰金を併科、又は附加せざる本刑六箇月以下の禁錮に該る罪、□四本刑二百圓を超過せざる罰金に該る罪、(乙地方裁判所、民事訴訟に就き地方裁判所の管轄すべき事項左の如し、□一第一審として、區裁判所の權限又は皇族に對する民事訴訟を除き、其他の請求、□二第二審として、區裁判所の判決に對する定めたる抗告、刑事訴及び命令に對する法律に控訴、區裁判所の決定訟に就き地方裁判所の管轄すべき事項左の如し、□一第一審として、區裁判所の權限、並に大審院の特別權限に屬せざる刑事訴訟、□二第二審として、區裁判所の判決に對する控訴、區裁判所の決定及び命令に對する法律に定めたる抗告、(丙)控訴院、控訴院の管轄すべき事項左の如し、□一地方裁判所の第一審判決に對する控訴、□二區裁判所の判決に對する區訴に就き爲したる地方裁判所の判決に對する上告、□三地方裁判所の決定及び命令に對する法律に定めたる抗告、□四皇族に對する民事訴訟に就き第一及第二審の審判(但し之は東京控訴院に屬す)(丁)大審院、大審院の管轄すべき事項左の如し、□一終審として、イ地方裁判所の判決に對する上訴に就き控訴院が爲したる判決、及び皇族に對する民事訴訟第一審の判決にあらざる控訴院の判決に對する上告、ロ控訴院の決定及び命令に對する法律に定めたる控告、□二第一審とし又終審として、刑法第二編第一章及び第二章に揭げたる重罪(皇室に對する罪及國事犯罪)、竝に皇族の犯したる罪にして禁錮、又は更に重き處刑にすべき者の豫審及び裁判これ也、(B)土地の管轄、土地の管轄は、刑事訴訟法及び民事訴訟法の規定する處にして、同種裁判所の管轄の由りて定まる所也、□一刑事訴訟法に依れば、刑事訴訟に關する土地の管轄は、普通の管轄と特別の管轄との二種あり、犯罪の地又は被告人所在の地を以て其管轄を定むるを普通とし、外國に於ける犯罪に在りては、内地に於て之を逮捕したる時は、逮捕の後外國より送致したる時は、送致の地の裁判所を以て其管轄とし、海船内に於ける犯罪に就きては、定繫港、又は犯罪後最初に著船したる地の裁判所を以て其管轄とす、□二民事訴訟關する土地の管轄も亦民事訴訟法の規定に從ひ、之を普通管轄と特別管轄とに分つを得、普通管轄は之を普通裁判籍と云ひ、特別管轄は、之を特別裁判籍と云ふ、普通裁判轄は、法律を以て專ら一の裁判所の管轄に屬せしめたる場合を除くの外、訴訟人若くは訴訟物が一定の裁判所の支配を受くる關係にして、主として訴訟人の住所に依り之を定め、其の住所にして不定なるときは、法定の住所に從ひ、國又は法人に在りては、國は訴訟に就き國を代表する官廳の所在地を、法人は其團體の所在地を以て裁判籍とす、特別裁判籍とは、寓居の裁判籍、財産の裁判籍、店舖の裁判籍、不動産の裁判籍、契約履行の裁判籍、社團の裁判籍、不正損害の裁判籍、反訴の裁判籍、牽連事件の裁判籍等法律の定むる所に從ひ、一定の訴訟を特定の裁判所の管轄に屬せしむるを云ふ。(憲法五七條乃至六一條、裁構法一一條、一四條乃至一六條の一、一九、二〇、二六條乃至二八條、三四、三五、三七、三八、四三、五〇條、民訴一條、一〇條乃至條二四、刑訴二五條乃至三〇條)
- 英
- Ordinary court
- 独
- ordent-liches Gericht
- 仏
- Tribunal ordinaire
通常司法裁判所
通常司法裁判所とは、所謂通常裁判所を云ふ。(通常裁判所參照)
- 英
- Ordinary court
- 独
- ordent-liches Gericht
- 仏
- Tribunal ordinaire
通常總會
(つうじやうそうくわい)社團法人は社員の結合に由る組織體にして、社團共同の目的を遂行する爲め設立したるものなるが故に、社員の意思が、法人の意思を作成するの基本と爲るべきは當然也、依つて社員總會なる機關を設け、之を最高の意思機關と爲す、社員總會に、通常總會、臨時總會の二種あり、所謂通常總會は、法律の定むる所に依りて每年定期に開くものとす、通常總會は、理事之を招集す、即ち理事は、少なくとも毎年一回總會を招集するの義務を有す、招集の手續は、會議の日より前五日に、會議の目的たる事項を示して招集する事を要す、これ熟考期間を與ふるが爲めなり、其他定欵に定めたる方法あれば之に從ふ、例へば定欵に於て廣告を爲すことを必要とするときは、其手續を履行せざるべからず、法律、又は定欵に違背して爲したる招集は無效なり、通常總會の決議は、個々の社員の意思表示にあらず、個々の社員の意思表示に由り成立する新なる意思表示なり、而して其意思表示は、法人の意思を作成するの效力を有するものにして、列席したる個々の社員を覊束するに止まらず、總て全社員に對して拘束力を生ず、之を意思表示の合致に依て、表意者の間にのみ拘束力を生ずる契約と混同すべからず、總會は、會議の目的として、豫め指示したる事項に就きてのみ決議する事を得、此以外の事項に關する決議は無效なり、之れ總會を招集するに就き、豫め會議の事項を明示する事を要件と爲すより生ずる當然の結果なり、然れども定欵に別段の規定あるときは、右の制限に從ふの必要なし、時として緊急の事項に就て、豫め通知を爲す暇なき場合あらん、又事態輕微にして考慮を要せざる場合あらん、此の如き場合に於ては、豫め通知を爲さずして決議するも、啻に差支なきのみならず、却て大に便宜を得ん、故に定欵に特別の規定を設けて一般法則を變更する事を許す、決議を成立せしむる爲め同意することを要する社員の數は、法律を以て定めずして定欵の定むる所に一任す、若し定欵を以て之を定めざるときは、出席員の多數決に依るべきものと解するを正當とす、定欵の變更並に法人の解散を決議するに就ぎては、定欵に別段の規定ある場合の外、總社員の四分の三以上の同意を要すべき者とす、社團法人の各社員は、法人の事務に就きては通常總會に於て其意見を表示するの權利を有す、これを表決權と云ふ、各社員の表決權は平等なり、即ち一人一票なり、然れども此事たる、定欵を以て之を變更することを得、例へば社員中に特權を有するものを設け、其表決權に差等を設くることを妨げず、社員が表決を爲すには、會議に列するを原則とすれども、住所の遠隔なるが爲め、又は疾病其他の事故の爲め出席すること能はざるときは、書面を以て表決權を行ひ、又は代理人を以て議事に與らしむることを得。(民六〇條乃至六六條)
- 英
- Ordinary general meeting
- 独
- ordentliche Representativsversammlung
- 仏
- Assemblée générale ordinaire
通商條約
(つうしやうでうやぐ)條約とは、國際法上の效果を生ずる國家間の合意なり、國に條約あるは猶個人に契約あるが如し、條約の成立要素としては、□一當事者として二個以上の國家あることを要し、然かも其當事國は、國際行爲能力を有せざるべからず、從つて半主權國は、自ら他國と條約を結ぶことを得ずして、宗主國、又は保護國に於て之に代りて條約を締結するものとす、□二一定の目的を有することを要す、例へば領土割讓に關して結約せむとするが如し、而して其目的は、適法且つ可能なることを要す、即ち國際法の原則に違反する事項を目的とする條約を結ぶことを得ざるなり、□三合意ある事を要す、條約は双方行爲なれば、當事國間意思の合致を要するや勿論なり、其合意は任意にして且つ自由なることを要す、故に詐欺、強迫、錯誤等あるべからず、而して通商條約とは、締約國が其人民間の商業に關する合意をなし、其生産物及び製造物の交換、賣買に關する便益を圖るものにして、其輸出入及び運送に關する方法、課税及び免除等を明かにし、其有效期間をも規定し、各國の交通通商上に缺くべからざる要件を約定せる條約を云ふ。
- 英
- Commercial treaty
- 独
- Handelsvertrag
- 仏
- Traité commercial
通則
(つうそく)通則とは、一般に通ずる原則とやうの意にして、例へば法律の全編、又は一編を通じて其の全意を摘示するが如き法則を云ふ、例へば公判通則、上訴通則、強制執行通則の類之れなり。(民訴六編二章一節一欵、刑訴四編一章、五編一章)
- 英
- General rules
- 独
- allgemeine Regeln
- 仏
- Règles générales
通論
通論とは、槪論又は汎論と云ふに同じく、理論全般に通ずべき大體を云ふ、例へば法學通論と云へば、法學の大體を簡單に論じ、其大體の觀念を得せしむるとを目的とせるものなるが如し。
- 英
- Encyclopaedia
- 独
- Encyklopädie
- 仏
- Encyclopédie
通俗
(つうぞく)通俗とは、一般人に共通なる習俗の謂にして、何事にても目慣れ耳慣れたる事物事件を指し、特殊の用法に反對す、更に狹義に解すれば、人間一般が共有する判斷力感情等を指す、即ち鍛鍊せられ進步したる、例へば學者專門家總じて識者の特殊の階級に存する智識感想に對し、何等の硏究的修養なき心意作用を意味す、常識と謂はん程にして猶一般的なり、通俗的は其の形容詞なり。
- 英
- Popularity
- 独
- Volksmäszigkeit
- 仏
- Popularité
通辯
(つうべん)通辯、通事は、共に外國の言語を内國の國語に飜譯する者を云ふ。(民訴一二九條二號、刑法二二四、二二五條)通譯とは、外國の言語文章と同一内容に、内國の言語を以ていひ顯すを云ふ、而して通譯官は通譯をなす爲めに國の任命したる官吏なり。(三二年六月勅令二八〇號、外交官及領事官官制、八、九條)
- 英
- Interpreter
- 独
- Ausleger
- 仏
- Interprète
通事
- 英
- Interpreter
- 独
- Ausleger
- 仏
- Interprète
通譯
- 英
- Interpretation
- 独
- Auslegung
- 仏
- Interpréta-tion
通譯官
- 英
- Interpreter
- 独
- Ausleger
- 仏
- Interprète
通謀
(つうぼう)通謀は、共謀と云ふと同意義にして、二人以上共同してある行爲をなすことを謀るを云ふ、即ち意思氣脈を通じて行爲をなすを云ふ、例へば刑法上數人共犯の場合に於ける正犯の如く、二人以上協力して、第三者を殺害するが如き之れなり。(刑六〇條參照)
- 英
- Conspiration
- 独
- Mitwirkung
- 仏
- Conspiration
罪
(つみ)罪とは、國家が刑罰を制裁としたる不法行爲なり、不法行爲とは、法律違犯の有責行爲にして、之に刑罰と云ふ制裁を科するものは刑事上の不法行爲即ち犯罪なり、單に損害賠償と云ふ制裁を科するものは、私法上の不法行爲(私犯)なり、犯罪も私法上の不法行爲も共に不法行爲なる點に於ては同一にして、其異る要點は一は刑罰を制裁とし、他は損害賠償を制裁とするにあり、而して犯罪に依て私法上の權利を侵害したるときは、刑罰と同時に損害賠償の制裁を負ふべきことありとす、此の如く罪は、□一行爲にして(任意に外界の變狀を惹起し、又は外界の變狀の發生を防止せざることを意味す)□二法律に違犯したること(法規の命令、又は禁止に違犯することを意味す)、□三有責行爲たること(責任能力者の故意、又は過失に出たる行爲を意味す)、□四國家が刑罰を制裁としたる不法行爲たることを要す、從つて以上四箇の條件は、總ての犯罪に具備すべき條件にして、若し其一を缺く時は、犯罪は存在せざるものとす、罪は、種々の觀察點より之を數多の種類に區別することを得べし、□一法益を傷害したる罪、及び之に危險を生ぜしめたる罪、罪には現に法益を傷害したる罪、及び法益を傷害すべき狀况を呈せしめたる罪の區別あり、現に法益を傷害したる罪の罪たる事實は、傷害を生じたる事實にして、法益を傷害すべき狀况を呈せしめたる罪の罪たる事實は、危險を生じたる事實なり、□二公罪、私罪、公罪とは、國家に對する罪、私罪とは、私人に對する罪にして、罪を其の目的物より觀察したる區別なり、罪を公私に分つは、羅馬法以來の法制にして、或は公罪、私罪の外に、なほ團體に對する罪、即ち一般の利益に對する罪を認むる者ありと雖も、罪は其性質上之を國家にのみ對する罪、又は團體のみに對する罪、又は私人のみに對する罪に區別し得べきものにあらず、故に此區別は重要のものにあらざるものとす、□三重罪、輕罪、違警罪、我國の舊刑法は、一般に犯罪を分ちて重罪、輕罪、違警罪の三者と爲す、蓋し主刑の如何に依りて區別するものなり、即ち此三者は犯罪行爲の性質よりする區別にあらずして、科罰の輕重に依る區別なるにより、此類別を不當として之に反對する學説あり、我改正刑法典は、此學説に從へるものの如く、重罪、輕罪を分たず、單に罪とのみ稱せり、□四國事犯、非國事犯、國事犯とは、國家の自斷權を侵害し、其存在又は對外關係を危うするものにして、内亂外患に關する犯罪行爲即ち是也、一に政治犯の稱あり、國事犯にあらざる通常の犯罪を非國事犯、又は常事犯と云ふ、國事犯と非國事犯とは科すべき刑罰を異にし、又外國に犯罪人を引渡すに關しても、著しく異るものとす、然れども學者往々國事犯の待遇を常事犯より異にする必要なしとして、之に反對するもの少からず、□五作爲犯、不作爲犯、積極行爲に依り禁令を侵害するものを作爲犯と爲し、消極行爲により命令を侵害すものを不作爲犯と云ひ、消極的行爲に依り禁令を侵すものを準不作爲犯と云ふ、凖不作爲犯を認むべきや、即ち作爲犯同樣に處分すべきや否やに關しては、議論の存する所とす、□六繼續犯、連續犯、慣行犯、繼續犯とは、行爲者が不法行爲に依り惹起したる犯罪行爲の狀態を維持する場合の犯行を云ふ、例へば不法監禁罪の如し、連續犯とは、同一の犯意に依り同一の方法を以て、同一の結果を數回惹起せる場合の犯行を云ふ、例へば傭僕が發見を恐れて數回に主人の葉卷一本づつを盜むが如し、慣行犯とは、數回同一の行爲を爲さざれば成立せざる場合の犯行を云ふ、例へば私營醫業罪の如し、□七親告罪、非親告罪、親告罪とは、檢事が被害者、又は其親族の告訴を俟つて公訴を起すべき犯行を云ひ、その之を俟たずして、直に公訴を提起し得る犯行は、即ち非親告罪なり、□八現行犯罪、非現行犯罪、現行犯罪とは、現に行ひ又は現に行ひ終りたる際に發覺したる罪を云ひ、現に行ひ、又は現に行ひ終りたる以外の場合に於て發覺したる罪は、之を非現行犯罪と云ふ。(刑法二篇以下各章刑訴五六條)
- 英
- Crime
- 独
- Vergehen
- 仏
- Crime
追及權
(つゐきふけん)吾人の有する所の權利が物權なるときは、權利の目的たる物が輾轉して何人の手裡に歸するも、其物に追隨して權利を行ふことを得べし、之を稱して追及權と云ふ、例へば甲一の家屋を所有する場合に、乙其家屋を冐認し、自己の所有家屋なりとして、之を丙に賣却し、丙更に之を丁に賣却し、丁も亦之を戊に賣却し、戊之を占有する者と假定せんに、家屋の眞正の所有者たる甲は、追及權の作用に依り、戍に對して直接に其權利を主張し、其返還を請求することを得べし、なほ他の一例を擧ぐれば、甲乙に對して金一萬圓の債權を有し、其債權の擔保として乙の所有に係る地所の上に抵當權を設定したる後、乙其土地を丙に賣却したるときは、甲は地所の所有者の更迭に拘はらず、其權利を主張し、該地所の上に抵當權を行ふ事を得べし、之れに反して、吾人の有する權利が債權なるときは、相手人たる債務者に對してのみ其權利を行ふことを得べく、債務者以外の人に對して之を行ふことを得ず、例へば甲乙に對して、越後米百俵を賣渡すことを約したるときは、乙は甲に對して其引渡を要求するの債權を有するや明なり、此場合に於て、甲其現に所持する所の越後米を丙に讓渡し、其引渡を完了したるときは、乙は丙に對して其引渡を求むることを得ず、何となれば、乙は債權者として債務者たる甲に對して、米の引渡を爲さしむるの權利を有するに止まり、債務者にあらざる丙に對しては、何等の請求權を有せず、又米其物に付き何等の權利を有せざるを以てなり、即ち追及權なきが爲めなり、之を要するに追及權るなものは、物權及び其他の對世權に固有なる一種の屬性にして、第三者にも追及して其の權利を行使し得るの作用なりと云ふべし。(對世權の部參照)
- 英
- Right of pursuit
- 独
- Ver-folgungsrecht
- 仏
- Droit de la poursuite
追完
(つゐくわん)訴訟能力の欠缺、又は法定代理、若くは其必要なる授權に欠缺あるときは、是等の者の關與したる訴訟行爲は、全然無効に歸す、故に其欠缺は當事者の同意を以てするも、之を補充することを得ず、裁判所も職權を以て之が欠缺の有無を調査せざるべからず、而して斯る欠缺ある者が、訴を提起し、又は申立を爲したる時は、有效なる訴、又は申立にあらざるを以て之を却下すべきものなり、其提起の際には、缺くる所なきも、後日に至り其缺欠を生するときは、其訴訟手續は中斷せらるるに至ることありとす、然れども裁判所は、左の二要件を具備するときは、其欠缺補正を條件として一時訴訟を許す事を得、□一缺欠補正を爲し得べきものと認むるとき、例へば實際代理權を有するも、其證明を爲さざる場合に於て、之を爲し得るものと認むるが如きこれなり、而して其補正をし爲得べきものと認むるや否やは、裁判所の意見に任ずべきものなり、□二原告、被告にこれを許さざるときは、危害の生ずる虞あるとき、例へば請求權が時效に迫り若くは不變期間に迫るか、又は其目的物が腐敗物、或は季節物に關するか如き場合を云ふなり、尤も其危害の有無も裁判所の自由なる意見を以て之を認定するものとす、而して追完とは、右の加き訴訟行爲の欠缺ある場合に於て、後日其缺欠を補正することを云ふ、例へば代理權の證明を後に至りて爲すか如さ、又訴狀の不完全なる點あるを後日に至りて訂正するが如きこれなり。(民訴四五條二項)
追增保證
(つゐぞうほしよう)訴訟上の保證とは、當事者一方の訴訟行爲に依り、相手方に生じたる損害を賠償せしむる爲め、之が擔保を供せしむるものにして、要するに不當の主張を爲したるにより生じたる損害に就き、直者を保護せんとする目的に出づるものなり、然れども一般の訴訟を爲す者に對し、常に保證を立てしむる如きは、伸權の途を完うせしむる爲めに、其當を得たるものに非ず、故に斯る保證を立てしむるは、特別なる事情に依り、損害を生ずべき危險ある事項に限り、法律の保證を立てしむるものとせり、而して訴訟上の保證には、事件の性質に依り、一般に其保證を命ぜらるべき場合と、當事者が外國人たる故を以て、保證を立てざるべからざる場合とあり、□一事件性質により保證を命ぜらるべき場合、(甲)適式の委任なく、訴訟代理人として出頭する者に訴訟費用及び損害の保證を立てしむる場合、(乙)強制執行に關し、其費用及び其執行より生ずる損害の爲め保證を立てしむる場合、(丙)假差押、假處分に關し之が爲生ずる損害の保證を立てしむる場合、□二當事者が外國人たる爲め、保證を立つべき場合、外國人の原告たる時、其相手方たる被告より訴訟費用に付て、保證を立てん事の申立ありたる時之れ也、此等の場合に於て、保證を立つる方法は、法律に於て當事者の合意を以て、其保證とすべき物を定め得べき場合、又は裁判所の自由なる意見に任ずる場合にあり、所謂物上保證を以てするも對人保證(保證人)を以てするも、之を定むる者の任意に爲さしむるを得、而して裁判所の自由なる意見に依り保證を立てしむる場合は、單に假差押の場合のみと知るべし、而して所謂追增保證とは、一度保證を立てたる後、訴訟の進行上其保證額の不足を生じたる場合に於て、其相手方に對して再び保證を立てしむることを云ふ、例へば最初百圓の保證金を供託せしめたるも、訴訟の程度の非常に復雜なるに至り、其費用が到底右百圓にては償ふべからざる狀態に立ち至りたる場合に於て、相手方に對し再び百圓の保證金を供託せしむるが如きを云ふ。(民訴八七條乃至九〇條、七〇、五、〇〇、五〇三、五〇五、五一三、五二二、五四七五四九、五七四、六五六、七四一、七四五、七五九條等)
- 英
- Further security
- 独
- fernere Sicherheit
- 仏
- Garantée ultérieure
追奪
(つゐだつ)追奪とは、讓渡したる物、又は權利の全部又は一部が、第三者の權利に依り、讓受人の手より奪はれたることを云ふ、例へば共同相續人が其相續分たる財産を、眞正の所有者より回收せられたるが如き之れなり。
- 英
- Eviction
- 独
- Eviktion
- 仏
- Réclamation
追奪擔保の責任
追奪擔保の責任とは、例へば賣買の物品が、眞正の所有者より回收せられたる場合に於て、物品の賣主が買主に對して、依りて生じたる損害を補償する事を云ふ、換言すれば、賣主が買主をして損害を被らざらしむるを云ふ、追奪擔保の責任に、全部追奪の場合と、一部追奪の場合とあり、(甲)全部追奪の場合、□一賣主が或財産物とを買主に賣渡したる場合に於て、其財産權が他人に屬するときは、賣主は其權利を取得して之を買主に移轉すべき義務を負ふ、故に若し買主が其權利を取得する事能はざるときは、買主に於て、賣買の當時其目的たる財産權の他人に屬することを知りたる場合を除き、之に對して損害の賠償を爲さざるべからず、加之買主は、賣買の目的たる權利が、他人に屬するが爲め、之を取得する事能はざる場合に於ては、直に契約を解除することを得るものなり、賣主の擔保の責任は、賣買の目的たる財産權が、第三者に屬する爲め、買主に於て之を取得す事と能はざる場合に生ずるものなるが故に、其第三者が買主に對して、賣買の目的たる權利の自己に屬する旨を主張すると否とは、敢て賣主の擔保の責任に影響を及ぼさざるものとす、□二賣買の目的たる不動産の上に存する先取特權、又は抵當權の行使に依りて、買主が其の所有權を失ひたる場合に於ける賣主の擔保の責任に就きては、從來數多の學説あり、我民法に於ては、賣買の目的たる不動産の上に存する先取特權、又は抵當權の行使に依りて、買主が其所有權を失ひたるときは、其權利が賣主に出でたると否とを問はず、又賣主が其權利の存することを買主に告げたると否と、將た買主が之を知りたると否とを問はず、賣主をして擔保の責に任ぜしめたり、其理由とする所は、畢竟此等の權利は、何人が債務の辨濟を爲すも、之に依りて消滅に歸するものなるが故に、買主は假令自ら此等の權利の存することを知りて買受けたるときと雖も、賣主に於て、此等の債務を辨濟し、以て其負擔を免れしむべきものと信じて、賣買を爲したるものと認めたるに外ならざる也、(乙)一部追奪の場合、□一賣買の目的たる權利の一部が、他人に屬するが爲め、賣主が之を取得して買主に移轉すること能はざるときは、買主は其事實を知りたると否とを問はず、其足らざる部分の割合に應じて、代金の減額を請求することを知るものなり、然れども其足らざる部分の現時の價額を、代金より控除することを得るものにあらず、若し買主にして其足らざる部分の現時の價額を代金より控除することを得るものとせば、買主は、時として不當の利益を得るの結果を生ずる場合あるべし、例へば買主が千圓の代金を以て、一の不動産を買受けたるに、其不動産の一半の所有權が、第三者に屬したるが爲め、買主に於て、其一半を取得することを得ざる場合に於て、買主が其取得することを得ざりし部分の現時の價額を、代金より控除することを得るものとせば、若し不動産の現時の價額が、或事情に依りて賣買代金の二倍に騰貴し、二千圓の價額を有するに至りたるときは、買主は取得することを得ざりし部分、即ち不動産の一半の價額一千圓を代金より控除することを得る至り、買主は一錢の支拂を爲さずして、不動産の他の一半即ち一千圓の價額ある不動産を取得するの不都合を生ずるに至るべきなり、故に買主が已に代金の全部を完濟したるときは、其の足らざる部分の割合に應じて、代金の一部の返還を請求し、若し未だ金額の支拂を爲さざるときは、其一部の支拂を爲す義務を免るるものと定めたり、賣買の目的たる權利の一部が、他人に屬する爲め、賣主が之を取得して買主に移轉することを得ざる場合に於て、買主が契約の當時其の事實を知らざりしときは、其取得することを得ざりし部分の多少を問はず、若し買主が殘存する部分のみなれば、買受けざるべかりしときは、直に契約を解除することを得べし、而して其果して買受けざる可りしや否やは、買主に於て證明せざるべからず、賣買の目的たる財産權の一部が、他人に屬する事を理由として、買主より賣主に對し、代金の減少を請求するに當りては、買主に於て其事實を證明せざるべからざるものなるや、抑も買主が賣買の目的たる財産權の一部が、他人に屬することを主張するは、これ即ち賣主に於て、其義務を履行せざる事を主張するものに外ならず、而して債權者は債務者の不履行を證明することを要せざるものにして、債權者自ら其債務を履行したることを證明し、以て債權者の請求を斥くべきものなれば、右の場合に於ても、買主は自ら其事實を證明するの必要なきものと云ふべし、□二賣買の的物目が、地上權、永小作權、地役權、留置權、又は質權の目的たる場合に於ては、買主は完全に其權利を行使すること能はざるのみならず、賣買の目的物の上に質權の存在するときは、買主は後日質權の行使に依りて、所有權を失ふ危險をも負擔するものと云ふべし、然れども買主が此等の權利の存在を知りたるときは、自ら甘じて此の如き權利の取得をなしたるものと認むべきが故に、賣主に對して何等の請求を爲すこと能はざるものと爲すを至當とす、然れども買主が此等の權利の存することを知らざりしときは、完全なる所有權を取得するの意思を有したるものと認むべきのみならず、代金の如きも完全なる所有權に應じて、之を定めたるものと認むべきが故に、買主が右に述べたる權利の存在することを知らざりしときは、賣主をして擔保の責任を負擔せしむるを至當とす、從つて賣買の目的物が、地上權、永小作權、地役權、留置權又は質權の目的たる場合に於て、買主は契約の當時、此等の權利の存在することを知らざりしときは、之が爲めに契約を爲したる目的を達することを得ざりし場合に於て、契約の解除を爲すことを得るものなり、例へば買主が自ら耕作を爲すの目的を以て土地を買受けたる場合に、豫期せざる永小作權の存在したるが如き、又は買主が或物を使用ぜんが爲めに之を買受けたるに、其物が債權者の占有中に在りて、留置權の目的と爲れる場合、又は何等の負擔なきものと信じて、或物を買受けたるに、其物が質權の目的物たりしが爲め、質權の行使に依りて其所有權を失ひたる場合の如し。(民五六二條乃至五六七條〕
追認
(つゐにん)追認とは、取消權を抛棄するに依りて、法律行爲を有效ならしむるの一方的意思表示也、取消し得べき行爲の追認は、無效行爲の追認と異る、無效行爲の追認は、新なる行爲にして、此行爲を有效ならしむる者にあらず、取消し得べき行爲の追認は、新なる法律行爲を成立せしむるにあらずして、この行爲の效力を完全ならしむるものなり、追認は取消權の抛棄なるを以て、取消權を有する者にあらざれば、之を爲すことを得ず、追認は取消權者に於て、取消の原因を知りて之を爲すことを要件とす、取消の原因を知らずして、之を抛棄することはあり得べからざることなればなり、追認は取消の原因たる情況の止みたる後に於て、之を爲すことを要す、即ち其前に爲したる追認は無效なり、單に取消し得べき行爲たるに止まらざるなり、此故に無能力者は其能力を取得し、又は回復したる後にあらざれば、追認を爲すを得ず、未成年者は成年と爲りたる後、禁治産者、凖禁治産者は宣言を取消されたる後、妻は婚姻關係の消滅したる後、又詐欺に依り意思表示を爲したる者は、錯誤を發見したる後、強迫に依り意思表示を爲したる者は、畏怖の念の止みたる後に於て爲するにあらざれば、追認の效力を生ぜざるもの也、禁治産者に就きては、法律は單に能力を回復したる事を以て足れりとせず、其能力を回復したる後、其行爲を了知するにあらざれば、追認を爲すことを得ざるものとす、無能力者が能力を取得し、又は回復せざる以前に於ては、法定代理人、保佐人、又は夫の同意、又は許可を得て追認する事を得るやに就きては、議論の存する處なれども、之を爲し得るものと解するを妥當とす、追認の效果は取消權を消滅せしむるに依りて、法律行爲を有效ならしむるに在り、元來取消し得べき法律行爲は、成立條件を缺如するものにあらずして、取消行爲ある▲依て始めて無效と爲。もの也、而して取消權が消滅せば、最早之を無效ならしむるの事由なきに至るを以て、其法律行爲が有效と爲るや明なり、追認は遡及力を有す、即ち意思表示の當時より有效なりしものと爲す、此效果は、追認の性質に基くものにして當然なり、此效果に關しては一の制限あり、即ち之に依りて第三者の權利を害することを得ざるものとす、即ち追對が效力を生ずるに依り、取消し得べき行爲が有效と爲るも、第三者の利益の爲めには、取消權か抛棄せられざりしと同一に取扱はるる也、例へば甲なる無能力者が、乙に物を讓渡し、其能力者と爲りたる後、更に之を丙に讓渡し、然る後乙に對して爲したる讓渡の行爲を追認したりとせよ、若し追認の效力が、甲に對して生ずるものとせば、丙は物の上に得たる權利を失はざるべからず、此の如きは第三者を不當に害するものなり、甲が乙に對して爲したる讓渡を追認する意思を有しながら、甲に讓渡を爲すは、權利を附與しながら後に至り之を奪ふに同じ、論理を貫徹するが爲めに、斯の如き效果を生ずることは、無論之を避けざるべからず、仍て斯の如き場合に於て、乙に對して追認の意思表示を爲すも、其効果を丙に及ぼすべからざるものとす、追認の意思表示は、之を撤回することを得ず、即ち一旦追認を爲せば、法律行爲の效力確定し、再び之を原狀に復することを得ざるなり、追認の意思表示は、直接の意思表示たることあり、又間接の意思表示たることを得べきは勿論也、直接の意思表示に就きては、別に方式を定めざるを以て、如何なる方法に依るも可とす、間接の意思表示は、素より種々の方法を以て爲すを得へきものにして、法律を以て之に制限を加へず、但し左の場合に於ては、法律は當然追認を爲したるものと看做す、□一全部又は一部の履行、取消權を有する者が、債務者たるとき其負擔する債務を履行するを云ふ、□二履行の請求、取消權を有する者が、債權者たる場合に於て、其相手方たる債務者に對して履行を求むるを云ふ、□三更改契約、取消權を有する債權者、又は債務者が、取得し得べき行爲に因て生じたる債務關係を消滅し、其消滅を前提として他の債務關係を創設するを云ふ、□四擔保の供與、取消權を有する債務者が、自己の債務に對して物上擔保を設定し、又は對人擔保保證人)を立つることを云ふ、□五權利の讓渡、取消權者が取消し得べき法律行爲に因り取得したる權利の全部、又は一部を他人に讓渡するを云ふ、□六強制執行、取消權を有する債權者が、相手方に對して強制執行を爲し、又は取消權を有する債務者が、相手方より強制執行を受くるを云ふ、以上の行爲は取消權を抛棄するの意思を有するが故に、之を爲すを通常とす、故に法律は、此等の行爲は、間接に取消權抛棄の意思を表示したるものと見るものなり。(民一一九條乃至一二六條)
- 英
- Ratification
- 独
- Genehmigung
- 仏
- Ratification
提案權
(ていあんけん)廣く提案權と云へば、議案を會議に提出するの權利を云ふ、例へば株主總會へ議案を提出する少數株主の權利の如き、帝國議會へ議案を提出する貴衆兩院の權利の如き之なり、されど普通狹義に於ては、貴衆兩院の議會に、議案提出の權を提案權と云ふが如し。(二二年二月法二號議院法二六條乃至三二條)
- 英
- Proposal right
- 独
- Antrags-recht
- 仏
- Droit de la proposition
定役
(ていえき)定役とは、犯罪の爲め刑罰に處せられたるものに對し、監獄内に於て、一定の作業に從事せしむることを云ふ、從て凡ての既決囚は定役に服するものと云ふ可らず、□一定役に服すべきもの左の如し、イ無期徒刑、ロ有期徒刑、ハ重懲役、ニ輕懲役、ホ重禁錮、ヘ懲治場に於て監視の執行を受けたる場合、□二定役に服せざるもの左の如し、イ無期流刑、ロ有期流刑、ハ重禁獄、ニ輕禁獄、ホ輕禁錮、ヘ拘留、之なり、定役に服せざるは、槪ね國事犯によりて處刑せられたるものにして、他は常事犯を犯して處刑せられたるもの也、然れども右の中拘留を除くの外は、何れの場合に於ても、囚人自ら工業を爲さんと請ふ者は、之を許さざるべからず、定役に服する者は、其作業の割合に應じ、法律によりて定めたる工錢を給與するものなり。(刑一二條二項、舊刑一七條等、刑法附則三三條、一一條乃至一七條、三二年七月内務省令三)八號監獄則施行細則三六條乃至五〇條)
- 英
- Obligatory work
- 独
- verpflichtetes Werk
- 仏
- Oeuvre obligatoire
提起
(ていき)提告起訴の意にして、裁判所に向つて訴を提起するが如き此用例なり、刑事訴訟に於ては普通之を起訴と云ひ、民事訴訟に於ける訴の提起と同義とす、例へば檢事のなす公訴提起、私人の爲す民事の訴の提起の如きこれなり。(民訴一九〇條、刑訴一條等)
- 英
- Presenting
- 独
- Darsteilung
- 仏
- Présentation
定規
(ていき)定規とは、法令に依りて定められたる規程を指し、又は働詞として規定せられたることを指す、例へば定期慣例など續用するは前義にして、何々の事項は何條に定規せられたる所なりなぞ云ふは、後義に從へるものなり。(條項の部參照)
定義
(ていぎ)定義とは、其説明し、又は論證せんとする事項の如何なるものなるかを明にし、其範圍を規定し、併せて其事項と他の事項との關係差別を明確ならしむるものなり、故に定義を與ふる爲めには、其與へんとする事項と他の事項との差別を知り、其事項の組織内容に就きて十分知悉する所なかるべからず、而して定義は、一事項に關する明確なる槪念を與へんとするものなるを以て、其の斷定は必ず定言的判斷の形式を取り、判斷の主語の有する特質を完全に客語に於て表明する如くならざるべからず、例へば經濟學は、財の交換、分配、交易、消費に就きて硏究する所の學なりてふ定義に於て、其判斷の形式は、何等の假定疑義を置かざる定言的判斷にして、而して經濟學なる主語の有する特質、即ち財の交換、分配、交易、消費に就きて、硏究する學てふことが、各之に相當する客語に依りて指示せられ居るが如し、而して正確なる定義を下さんが爲めに、注意すべき要件少なからず、其主なるものは、□一定義は積極的ならざるべからず、□二定義は循環的なるべからず、□三定義は不必要なる言語の混入を避くべし、□四定義は比喩的なるべからず、□五定義は複説的ならざるべからず、□六定義は廣きに過ぐべからず、又狹きに過ぐべからず、妥當なるを要す等也、要するに定義は、判然明瞭にして、的確單簡に其事項を妥當に規定せるものならざる可らず。
- 英
- Definition
- 独
- Definition
- 仏
- Définition
定期預
(ていきあづかり)豫め預入及拂戻期間を定めたる寄託にして、例へば定期預金の如き預入期間を豫定せるものにて、銀行に取りては其豫定の期間内安心して之を融通運用し、以て十分の利殖を計ることを得べき最有益の預金なるが故に、之に對する利率は他の預金よりも高く、彼の當座預金に對し、多少の差異を付する事一般の慣例なりとす、而して定期預りは其の名の如く、一定の期間は拂戻しを許さざるは勿論なりとす。
- 英
- Fixed deposit
- 独
- zeitbestimmte Geldeinlage
- 仏
- Dépôt fixe
定期刊行物
(ていきかんかうぶつ)一定の時期每に出版する文書、圖画の類を云ふ、例へば東京博文舘發行の雜誌「太陽」は、每月一日に刊行するものなるが故に、所謂定期刊行物なり。(出版法、新聞紙條例、著作權法一一條參照)
- 英
- Periodical
- 独
- Journal
- 仏
- Ouvrage periodique
定期金
(でいききん)定期金とは、定期金契約によりて、債權者が務債者に支拂ふ金錢其他の物を云ふ、定期金は必しも金錢のみに限らず、其他の物を共同的となすことを得べし、普通の場合に金錢を以て、其目的となすこと多きが故に、定期金なる名稱の由りて生じたるもの也、而して定期金は、物ならざるべからざるが故に、或人の勞務に服することを約し、又は或物の使用及び收益を爲さしむることを約する契約の如きは、定期金にあらざるなり。(民六八九條)
定期金債務者
定期金債務者とは、定期金契約により其相手方に對して、一定の時期に金錢其の他の物を給付する義務を負擔するものを云ふ、定期金債務には、無償なる場合と有償なる場合とあり、例へば或人の功勞に酬いんが爲めに、一定期間に一定の金錢を與ふる債務を負擔するが如きは前者に屬し、又當事者の一方が金一千圓を取受りて、相手方に對し一定の期間、一定の金錢を給付するが如きは後者に屬するものなり。(民六八九條)
定期拂
(ていきばらひ)定期拂とは、一定の時期に金錢其他のものを支拂ふことを云ふ、例へば爲替手形の支拂に於て「確定せる日」と規定せるが如きは、所謂定期拂の一例を示したるものなり。(商四五〇、四四五條)
- 英
- Payment on term
- 独
- zeitpunkt-liche Zahlung
- 仏
- Paiement en terme fixe
提供
(ていきよう)提供とは、提用供出の意にして、通常債務者が其債權者に對して、債務の擔保物件を差出し、又は債務辨濟の爲めに金錢を差出すことを云ふ。(民三八四條)
停會
(ていくわい)停會とは、帝國議會の作用を停止せしむるの行爲を云ふ、帝國議會は兩院制なるが故に、停會の命ある時は、貴衆兩議院は共に其職務を行ふの自由を妨げられ、各議院の議事は勿論、委員會と雖も之を開くことを得ざる也、從つて停會中各議院に於て議決又は審査を爲す事ありとするも、法理上其の效なし、但し停會は閉會と異り、單に帝國議會の作用を停止するに過ぎずして、開會の效力を失はしむるものにあらざるが故に、停會の期日經過後は、更に召集及開會の手續を要することなくして、再び會議を開き前會の議事を繼續するを得べく、前に議了せられざる議案も、亦新に提出するの手續を要する事なし、停會は天皇の命ずべき所にして、我が憲法及び議院法は其回數に制限を加へざるを以て、同會期中幾回停會を命ずるも天皇の任意なり、然れども停會は、十五日以内に於て之を爲すべく、十五日以上に至ることを許さず、停會は、如何なる場合に於て行ふもの也や、我國に於ては、天皇が任意に之を決するを得べきもの也、而して停會は議會の作用を停止するものなるが故に、之を命ずるは必ず會期中ならざるべからず、何となれば開會前には、帝國議會は、其の職務を行ふの權なく、又閉會後に至りては、帝國議會存在せざるに依り其の作用を停止するに由なければ也、停會の日數は之を會期中に算入すべきや否や、之學者間の疑問とする所にして、未だ定説なし、然れども停會とは、帝國議會の作用を停止するものにして、開會の效力を失はしむるものに非ず、而して會期とは、開會より閉會に至る迄の期間を指すに依り、停會は即ち會期中にして之を會期の日數に算入すべきや疑を容るべらかず、但し衆議院解散の場合に於ける貴族兩院停會日數は、之を會期中に算入する事を得ず、何となれば衆議院の解散あるときは、帝國議會は其の存在を失ふを以て、此場合に於ける貴族院の停會は、所謂停會と其性質全く異なれば也、故に此場合に於ける貴族院の停會を解して閉會と云ふものあり。(憲法七、三三、四四條、二二年二月法二號議院法三三條)
- 英
- Prorogation
- 独
- Vertagung
- 仏
- Prorogation
定款
(ていくわん)社團法人を成立せしむべき私法上の法律行爲は、設立者の關聯したる意思表示なり、之を設立行爲と稱す、設立行爲は、社團の組織並に其に活動に關する重要事項を規定するものにして、法人の基本となるべき事なり、法人の基本規定は、設立者一致の意思を以て定めざる可らず、此の如く設立者一致の意思に依りて生じ、然かも社團の基本となるべき規定を定款と云ふ、定款は社團の設立に必要なる形式にして、之には左に揭ぐる事項を定むることを要す、□一目的、目的は社團の精神なり、之を定めざれば社團成立せず、設立行爲に於て之を確定せざるざるべからざることは勿論なり、□二名稱、名稱は社團本體の成立要素にあらず、恰も姓名なき人類の存在し得るが如く、名稱なき社團の存在することを妨げず、然れども名稱なければ、其の獨立の存在を明にすることを得ざるが故に、法律は法人成立の要件として定款を以て之を定むべきものとす、□三事務所、事務所は、業務の中心點にして、人の住所に該當す、人に住所あるが如く、法人にも亦住所あり、素より事實土住所なき自然人が存在し得る如く、住所なき社團も存立するを得ざるにあらず、然れども無形の組織體に住所なき時は、其存立を確むるの方法なし、故に法律は法人の名稱と同じく、住所を定むることを以て法人成立の要件とす、□四資産に關する規定、資産は素より社團の要素に非ず、然れども社團の目的を達するには資産を要す、資産なき社團は存立するも、實際に於て活動する能はず、即ち資産は事實に於て社團の生存に必要なる資料也、其增減並に管理方法の適否が、社團の生命に關係を有すること極めて重大なるべし、故に定款を以て之に關する規定を設くることを要件とす、□五理事の任免に關する規定、理事は法人の執行機關なり、法人は、理事の活動に依りて其目的を達す、故に法人は理事を常設することを要す、而して理事の選任並に解任は、法律に依りて爲すべきものに非ざるを以て、設立行爲を以て之に關する凖則を定むることを強要す、□六社員たる資格の得喪に關する規定、社團は社員の結合なり、社員なき社團は存立することを得ず、而して社員が特定人たることは、社團存立の要件にあらざるを以て、其變更を許すは勿論也、されど社員は社團の意思を作成するの要素となるものなるが故に、其の社員の變更が社團に影響を及ぼす事論を俟たず、從て社員たる資格の得喪は、社團に關する重要事項の一なり、茲に於てか法律は之に關する規定を以て定款の要件と爲す、以上列擧したる一乃至六の事項は、何れも定款の要件なり、其一を缺くときは定款として成立せず、定款なき社團は法人として存立することを得ず、故に設立者が右に示したる事項を豫め規定するは、法人成立に必要なる前提也、設立者は右に示したる外、必要とする事項を定欵中に加ふることを得、但し法律の規定に存する事項にして、所謂強行的法規に屬するものは、之に違背することを得ざるが故に、定款を以て之と異りたる規定を設くることを得ず、其任意的の規定に屬するものは、定款に別段の規定を設くるに依り、其適用を免るることを得るは勿論也、又全く法律に規定なき事項に關しては、定款を以て隨意に之を規定することを妨げず、定款は社團成立前に存立することを要す、然れども成立の後に於て之を變更することを得、定款は總社員の四分の三以上の同意あるときは、之を變更することを得、但し定款に別段の規定あるときは此の限りにあらず、理論上より云へば定款は、設立者の一致して作成するものなるが故に、之を變更するにも亦一致の意思を要すとなすは當然なるが如し、然れども此の如くするときは、變更は到底之を行ふ事を得ず、故に法律は、四分の三以上の多數決を以て之を許すもの也、定款を變更するには、決議の外主務官廳(主務官廳とは、社團の目的とする事業を主管する所の行政官廳なり、例へば教育を目的とする社團は、文部大臣の認可を經べく、慈善、社交を目的とするものは、内務大臣の認可を經べきが如し)の許可を要す、元來社團は、主務官廳の許可に由りて成立するものなるが故に、其重要事項を變更するに際し、其許可を要するは當然なり、茲に定款の變更に就き一問題あり、法人の目的は之を變更することを許すや否やこれ也、これに就きては二説あり、(甲説)別に目的の變更を禁ずるの明文なし、而して目的は定款に記載すべき項事也、法律は、社員の四分の三の同意を以て定款の變更を許したるを以上は、當然此趣旨に依り目的の變更を許すべきもの也、但し民法の規定によりて成立する社團は、公益を目的とせざるべからず、故に公益なる目的を廢して、營利に屬する目的を以て之に換ふることを得ずと、(乙説)法人は、其目的の範圍内に於て存在す、目的は法入の生命なり、目的變更せらるれば、前の法人消滅して新なる法人發生す、故に目的の變更は當然之を許すべからざるもの也と、乙説を可とす、商法の規定によりて設立する法人、即ち商事會社に就きても、定款の作成を必要とするは勿論也、合名會社の定款には左の事項を記載するものとす、其他合資會社、株式會社に就きても大同小異也、□一目的、□二商號、□三社員の氏名住所、□四本店及び支店の所在地、□五各社員の出資の種類及び價格、又は評價の標凖之れなり、株式會社の定款には、□一目的、□二商號、□三資本の總額、□四一株の金額、□五取締役が有すべき株式の數、□六本店及び支店の所在地、□七會社が公告を爲す方法、□八發起人の氏名、住所之なり、尚株式會社に於ては、左に揭げたる事項を定めたるときは、之を定款に記載するにあらざれば其效なし、□一存立時期又は解散の事由、□二株式の額面以上の發行、□三發起人が受くべき特別の利益及び之を受くべき者の氏名、□四金錢以外の財産を以て出資の目的と爲す者の氏名、其財産の種類、價格及び之に對して與ふる株式の數、□五社員の負擔に歸すべき設立費用、及び發起人が受くべき報酬の額これ也。(民三三、三四、三七、三八條、商五〇、一〇六、一〇七條、一二〇條乃至一二二條、二三五條乃至二三七條)
- 英
- Article
- 独
- Statut
- 仏
- Article
碇繫場
(ていけいじやう)碇繫場とば、商船、軍鑑等が一定の港灣に繫留する場所を云ふ、普通は船籍のある港なり、故に遭難の爲めに、一時船舶軍艦が或港に碇泊するも、之れを碇繫場とは云ふを得ざるものとす。(刑訴三〇條、民訴一五條)
- 英
- Berth
- 独
- Ankelplatz
- 仏
- Poste
締結
(ていけつ)締結とは、條約又は契約を取結ぶことを云ふ。(憲法一三條、民五二一條乃至五三二條〕
- 英
- Conclusion
- 独
- Schlusz
- 仏
- Conclusion
定限利息
(ていげんりそく)定限利息とは、法律に依り一定の制限ある利率を云ふ、利息とは金錢其他不特定物の消賣に對し、其消費の期間に應じ、一定の率に依り支拂ふべき報償にして、之を換言せば、金錢、其他不特定物の消費の期間に應じ元本より生ずる收益なり、民法に所謂法定果實は即ち利息也、定限利息は、元金百圓以下は年二割、百圓以上千圓以下は年一割五分、千圓以上は總て年一割二分とす、故に若し此制限を超過したるときは、其超過したる部分は裁判上無效にして、債權者は、訴訟に依り之を請求する事能はざるものとす、但し當事者が任意上之を授受したるときは固より有效なり、從つて乙債務者は、一旦支拂ひたるものを取戻すこと能はざるものとす、以上は當事者が亙に契約の當時取定めたる利率(定限)なり、然れども當事者が豫め之れを定めざる場合に於ても、法律は、民事に付きては年五分、商事に付きては年六分の利息を定めたり。(民四〇四條、商二七六條、一〇年九月六六號、布告利息制限法一條乃至五條)
- 英
- Legal interest
- 独
- gesetzliche Interesse
- 仏
- Intérêt légal
帝國
(ていこく)帝國は、皇帝の主權の下に統治せらるる國家を云ふ、即ち大日本帝國、獨逸帝國と云ふが如し。
- 英
- Empire
- 独
- Reich
- 仏
- Empire
帝國主義
帝國主義とは、適者生存の進化論に由來し、又道義的觀念は國家至上説に出づるものにして、如何なる手段方法を用ふるも、自國の勢力と機會の許す限りは、世界に於て成るべく多くの領土を割取し、或は勢力範圍を作る主義を云ふ。
- 英
- Imperialism
- 独
- Imperial-ismus
- 仏
- Impérialisme
帝國學士院
(ていこくがくしゐん)束京學士會院の組織を變更したるものにして、文部大臣の管理に屬し、學術の發達を圖り、教化を裨監するを以て目的とす、其會員は學士院自ら推選し、勅旨を以て命ずるものにして、定員を六十名とす、其組織は、第一部、文學及社會的諸學科、第二部、理學及其應用諸科學の二部に分ち、院長一人、幹事一人、及び部長二人を置く、なほ同院は、萬國聯合學士會院に加盟したり。(三九年六月勅一四九號)
- 英
- Imperial academy
- 独
- kaiserliche Akademie
- 仏
- Académie im-périale
帝國議會
(ていこくぎくわい)帝國議會は、天皇が統治の意思成立に有效なる條件として、參與する定期の憲法上の機關也、□一帝國議會は、定期に於て發動する憲法上の機關也、定期に在於て發動するとは、一定の時期間に於てのみ行動するを云ふ、帝國議會は、每年召集開會し、必要ある場合に勅命を以て延長するの外、三ケ月を以て會期と爲すが故に、帝國議會は定期の機關にして、他の憲法上の機關の如く、常に存在して政務を行ふものと同じからず、□二帝國議會は、天皇の統治の意思成立に有效なる條件として參與する憲法上の機關也、帝國議會の重要なる職務は、協贊及承諾にあり、共に内部に於て天皇の統治上に於ける意思成立に參與するを云ふ、帝國議會は、樞密顧問と同じく、單に内部に於て天皇の統治作用に關與するに止り、國務大臣の如く、外部に對して天皇大權の行使を輔弼し、又裁判所の如く天皇に代つて人民に命令し得るものと異なる、但し樞密顧問は、天皇の諮詢を待ちて其意見を奏上し得るに止まり、其の意見は天皇を拘束する事を得ざるに反し、帝國議會は、自ら進んで其の意見を發表し得るは勿論、其意見は、天皇の統治上に於ける或意思成立に有效なる條件なるが故に、天皇は、其意見と異なる意思を外部に發表し、又は之に反する意思を將來に繼續せしむることを得ざる也、議會の制は其の基く所、國民をして統治權行使に參與せしむる所以の途にして、立憲政體の一大要素なり、國民の意向之に依りて表彰せられ、社會の利益之に依りて代表せらる、中古に於ては、人民の間に貴族、地主、武士、僧侶等の諸階級ありて、各團體を組織し、其團體は各種の特權を有し、議會は各團體の代表者の會合にして、其代表者は團體の代理人として、議場に於て自己の團體の特權と利益とを代表し之を擁護するものなりき、然るに近世に至りては階級的團體亡びて、議會は國民一般の代表會と爲り、議員は人民の代表者となれり、即ち沿革的政治的に云へば、議會は國民を代表するものなること爭ふべからず、學者或は議會を以て民情を縮寫し、各階級の狀態を反影せしむるものなりと爲し、或は議會を以て社會民情の地圖なりと爲すは、皆實際の勢を顯して緊肯を得たるもの也、而して帝國議會の構成は、貴衆兩院より成る、即ち二院制なり、現今一院制を採る國は極めて稀にして、僅に歐洲の一二小國に其例を見るのみ、是蓋し諸國多年經驗の結果、二院制を以て事宜に適する者たる事を認めたるに依る、其二院制の長所とする所は、□一二院制は、一方に於ては門閥、學識、財産等の點より、社會の上層を占むる者の利益を代表せしめ、他方に於ては國民各層の利益を代表せしめ、以て彼此の權衡を得しむ、□二一院制に於ては、往々一時の感情に激し、雷同附和し、輕擧妄動することあり、二院制は相亙に牽制して此弊を避け事の愼重を保つことを得、□三二院制は二重の議決に依りて鄭重に利害得失を考慮し、遺漏なからしむることを得るに在り、其二院制を採れる場合に於て單に議會と云ふときは、即ち兩院を總稱す、故に議會の議決と云ふときは、兩院の議決を經ることを要し、一院可決するも、他院之を否決したるときは議會の議決なき也、隨つて兩院は同時に召集、開會、停會及び閉會せらる、我憲法に依れば、衆議院解散せらるるときは、貴族院は停會せらる、而して兩院の權限は原則として對等なるのみならず、建議、上奏等亦各之を爲すことを得べきものとす。(憲法三二條乃至五三條、二二年二月法二號議院法一條乃至九九條)
- 英
- Imperial Diet
- 独
- Reichs-versammlung
- 仏
- Parlement impérial
帝國憲法
(ていこくけんぱふ)憲法には二種の意義あり、形式的及び實質的の意義是也、□一形式的憲法とは、其規定事項の如何に論なく、最高の效力を有し、他の法律規則等に依り變更する事を得ざる國家の根本法を指すものにして、通例憲法なる名義を以て、一部の成文法典として發布せらるるものとす、□二實質的憲法とは、其效力及名目表題の如何に論なく、又成文法典の存否に拘らず、或一定の事項に關する規定を指して之を憲法と云ふ、彼の英國の如き形式的憲法存在せざるも、實質的憲法の存在するは、何人も容を容れざる處也、而して我帝國憲法とは、實に明治二十二年二月十一日を以て發布せられたる法を云ひ、所謂形式的憲法なり、帝國憲法は、所謂憲法機關の組織、權限及び其作用の形式、實質に關する事項を規定したるものなり、故に憲法は、他の法律命令の源泉たるの地位を有するものにして、又其效力も他の法令の上に存するものとす、從つて普通法律を以て憲法の條項を廢止することを得ざるや勿論なり。(二二年二月發布憲法)
- 英
- Imperial constitution、Constitution of Japan
- 独
- Reichsverfassung、japanische Verfassungsurkunde
- 仏
- Constitution im-périale、Con-stitution du Japon
帝國鐵道會計法
(ていこぐてつだうくわいけいはふ)鐵道の事業を經營する爲め、特別の會計を立てて收支する方法を規定したるもの也、□一帝國鐵道の事業を經營する爲め從來出資する金額を以て資本となし、特別の會計を定めしむ、此資本は本會計の負債とし、一般會計に對し漸次還遣するものとす、但し官設鐵道會計法に依り、純益として從來一般會計の歳入に編入したる金額は、利子に相當する金額を擔保したる殘額を負債の償還に充つるものと看做す、□二本會計は之を資本勘定び收益勘定に區分す、□三資本勘定は帝國鐵道建設改良の爲め、一般會計より支出する資金、及び附屬財産の賣拂代金を以て其の歳入とし、帝國鐵道の建設改良に要する費用を以て其の歳出とす、□四收益勘定は營業上の諸收入、及び資本所屬物件の貸付料並に帝國鐵道用品、資金合計の過剩金を以て其の歳入とし、營業上の諸費用及び資本所屬の物件の維時、修理並に補充費を以て其の歳出とす、□五故益勘定に於て、歳入總額より歳出總額を擔保したる金額を益金とし、負債の利子と負債消却金とに區分して一般會計に納付すべし、□六政府は帝國鐵道資本勘定及び收益勘定の歳入歳出豫算を調査し、歳入歳出の總豫算と共に帝國議會に提出すべし、□七資本勘定に關する每年度豫算殘額は、事業の完成に至る迄、順次之を翌年度に繰越し使用することを得、□八收益勘定の歳出額は、豫算定額内に於て實際の歳入及び一般會計より借入れたる借入金の合計額を超過する事を得ず、□九收益勘定の歳出豫算は、災害事變其の他豫期せざる歳出の不足に應ずる爲め、豫備費を設くる事を得、□十收益勘定の歳出を支辨するに當り、歳入金不足の場合に於ては、一時一般會計より五十萬圓を限り、借入を爲す事を得、此借入金は、當該年度内に之れを返還すべし、十一資本勘定及び收益勘定は、帝國鐵道用品資金より物品を購入する時は、前金拂をなすことを得、十二明治二十三年三月法律第二十號官設鐵道會計法は之れを廢止す。(三九年四月法三七號)
- 英
- Accounting law of im-perial railway
- 独
- Rechnungsgesetz der kaiserlichen Eisenbahn
- 仏
- Loi des comptes du chemin de fer d'Etat
呈示
(ていし)呈示とは、手形其他の物件を相手方に呈出する事を云ふ、手形法に於ては、呈示の用語を用ふ、所謂呈示には二樣の意義あり、即ち引受の爲めにする示及支拂の爲めにする呈示是也、□一引受の爲めにする呈示、爲替手形の支拂人は、其支拂人たる資格に於て手形上の債務を負擔せざるは論なく、引受と稱する手形行爲を爲し、引受人として始めて債務者となるなり、而して支拂人をして其行爲を爲さしめんと欲せば、所持人は手形を呈示せざるべからず、之を稱して引受を求むる爲めにする呈示と云ふ、手形の呈示は、所持人の權利にして義務にあらざる也、從つて所持人は手形を呈示すると否との自由を有するものにして、他人は之を制限し若くは禁止するを得ざるなり、但し此原則には例外あり、即ち一覽後定期拂手形及び他地拂手形、即ち支拂人の住所地にあらざる地を以て、支拂地としたる手形に於ては、手形の所持人は、進んで之れを呈示するを要するものとす、□二支拂を求むるが爲めにする呈示、爲替手形は、支拂人若くは引受人が、其手形に記載したる住所地に於て支拂はるべきを通則をし、他地拂手形に在りては、手形の支拂地に於て支拂はるべき也、約束手形に在りては、支拂地の記載なき時は振出地に於て、又他地拂手形なる時は、支拂地として指定せられなる場所に於て支拂はるべき也、而して他地拂爲替手形の支拂を爲すべき者は、引受人又は支拂擔當者として振出人、若くは引受人により指定せられたるものにして、他地拂約束手形に在りては、振出人若くは其指定せる支拂擔當者は、支拂を爲すの地位に在り、此等手形の支拂をなすべき者は、或は債務者たり、或は債務者たらずと雖も、所持人は法定又は手形に記載したる支拂地に於て、支拂を受くるの權利を有するものとす、而して所持人が其支拂を得んと欲すれば、自ら支拂を爲すべき者に對し、手形と交換に支拂を求むるの目的を以て、手形を呈示せざるべからず、之を支拂を求むるが爲めにする呈示と稱するなり。(商四六五、四六六、四七二、四八二條)
- 英
- Presentation
- 独
- Vorzeigung
- 仏
- Présentation
呈示期間
呈示期間とは、一定の期間内に手形其他の物件を相手方に呈示するの時期を云ふ、手形に依て呈示期間を説明すれば、一覽後定期拂の手形に於ては、所持人は、其日附より一年内に引受を求めざるべからず、又一覽拂の爲替手形にありては、所持人は、其日附より一年内に爲替手形を呈示して、其支拂を求むる事を要す、斯る場合に於ける期間を稱して呈示期間と云ふ、故に手形の所持人が、右の呈示期間内に手形の呈示をなさざるときは、前者に對する手形止の權利を失ふの結果を釀生するに至るものとす。(商四六六、四八二條)
- 英
- Time limited for presentation
- 独
- Presentationsfrist
- 仏
- Temps limité pour la présentation
停止
(ていし)停止には二つの意義あり、□一訴訟事件の進行を中途にて他動的に止むる場合あり、□二靜的狀態にある公權行使の停止、年金授與の停止の如き、刑罰及び懲戒の意にひ用らるることあり、第一の例は、例へば口頭辯論の停止、強制執行の停止の如きこれなり。(民訴一二一、一二二、五五〇條)停止公權は、禁錮に處せられし者が、現任の官職を失ひ、及び其期問内公權享有の能力を停止する處分なり、停止公權は、別に裁判所の宣告を用ひず、處刑せられたる禁錮の期限間當然附加し、監視の期限内公權享有の能力を停止す、又選擧に關する犯罪に依り、刑に處せられたる者は、裁判所の宣告を以て刑期後仍ほ二年以上八年以下、選擧者及び被選擧者たることを禁ぜらるべし。(選擧に關する權利は公權の一種なり)(舊刑法三三條、三三年三月法七三號衆議院證員選擧法一〇二條)
- 英
- Suspension
- 独
- Suspension
- 仏
- Suspension
停止公權
- 英
- Suspension of civic right
- 独
- Ehrenrechtssuspension
- 仏
- Suspension du droit civic
帝室
(ていしつ)帝室とは、皇室と云ふと同じく、天皇が統治者たる關係以外に於て私務を行ふ宮廷を云ふなり。(二二年二月典範四七條、四八條)
- 英
- Imperial household
- 独
- kaiser-liche Haushaltung
- 仏
- Famille impé-riale
停止條件
(ていしでうけん)停止條件とは、未だ效力を生ぜざる法律行爲を、將來に於て效力を生ずべきや否やを不確定の狀態に在らしむるものなり、停止條件が債權關係を發生すべき法律行爲に附せられ時は、之れに依りて債權の發生を停止すべきものなりや、將又債務の履行を停止すべきものなりやに就きては議論あれども、其發生を停止するものなること疑を容れず、何となれば、民法は客觀的不確實なる事實を以て、總べて法律的效力に關するものと爲し、履行を停止すべき條件を認めざること明白なれば也、例へば汝が高等官に任用せられたるときは、禮服の費用として金百圓を贈與すべしと云ふときは、金圓贈與の債務は、法律行爲の當時に發生せずして、被贈與者が高等官に任用せられたるとき發生するものとなし、其事實の到來に因りて、既に發生したる債務を履行すべきものと爲すには非ざれば也、停止條件附法律行爲は、一個の法律行爲なることを注意せざるべからず、之れを以て一定の效力を有する無條件の法律行爲と、其効力を停止し、又は其效力を消滅すべき別箇の意思表示より成るものと爲すは不當なり、停止條件が、法律行爲の效力を債務者の隨意に左右し得べき事實に繫らしむるときは、其の法律行爲は無效とす、例へば余が欲するならば汝に金を與へん、余が今大聲を發せば云々と云ふが如きは、有效なる法律行爲に非ず、此の如き行爲は眞面目なる意思表示にあらずして、法律行爲的意思を缺如せるものと見るを至當とすれば也、停止條件が、法律行爲の効果を、債權者の隨意に左右し得べき事實に繫らしむるは、其法律行爲を無效となすべきものにあらず、此場合に於ては、當事者が拘束力を生ぜんとする眞面目の意思を缺如するものと云ふを得ざる也、又此の如き法律行爲は、其効力の發生を債權者の意思に繫らしむるも、債權者は時として、之に依りて拘束力を發生することを欲せざる事あり、又其意思を表示する能はざるに至る事あり、故に債權者の隨意に左右し得べきものなるを以て、無條件なりと云ふは不當たるを免れず、此場合に屬する適例は試味賣買也(試味賣買とは、甞味の上買主の意に適すれば買受くべしとの賣買也)(民ー二七條乃至一三四條、條件の部參照)
停止條件付行爲
停止條件付行爲とは、法律行爲に停止條件を付したる行爲を云ふ、例へば汝が某女と婚姻すれば、田畑を贈與すべしと云ふが如き行爲之れなり。(條件付法律行爲の部參照)
停止條件附權利義務
(ていしでうけんつきけんりぎむ)停止條件付權利及び義務とは、條件の成就に依りて債務者に請求するを得べき債權及び債權者に辨濟すべき債務を云ふ、即ち前例に就きて云へば、田畑を贈與すべしと云ふは停止條件付義務にして、其相手方の有する債權は停止條件付權利なるが如し。(條件付權利、條件付債務、條件付法律行爲參照)
呈出
(ていしゆつ)兩者共に、畧ぼ同意義に用ひらるるものにして、例へば書類を官廳に差出すが如く、又債務者が金員を其債權者の眼前に差出すが加きを云ふ。(民訴四七八、六〇條、憲法五〇條)
- 英
- Presentation
- 独
- Presentation
- 仏
- Présentation
提出
抵觸
(ていしよく)抵觸とは、法律の規定の相齟齬する事を云ふ、例へば法律中同一事態のものに對し、甲法律は之を是とせるにも拘はらず、乙法律は之を非と規定せるが如き是なり、斯かる場合に於ては、裁判所は其制定の前後、原則と例外の關係等、法律の精神を探究して判定を與ふるものなり。(憲法三二條)
- 英
- Contradiction
- 独
- Kollision
- 仏
- Contraction
停職
(ていしよく)停職とは、犯罪其他不正行爲の爲め、懲戒の一種として、官職若くは公職等、主として其の職務の執行を一時停止せらるることを云ふ。(判事懲戒令二條、陸軍將校分限令四條)
- 英
- Suspending one from office
- 独
- Suspension vom Amte
- 仏
- Démission
抵當權
(ていたうけん)抵當權者が、債務者又は第三者に占有を移さずして、債務の擔保に供したる不動産に就き、他の債權者に先ちて自己の債權の辨濟を受くる權利を云ふ、□一抵當權は他物權にして從たる物權なり、抵當權は、債權の辨濟を確保するを目的とする所の物權にして、物上擔保の一種に屬す、從つて此權利は、他人の所有物を目的とすると同時に、其存立には此權利の附隨する主たる債權あることを必要とし、他物權たると同時に從たる物權たるの性質を有するものなり、故に此點に關しては、抵當權は留置權等と其性質を同うするものとす、□二抵當權は不動産の上に行はるる權利なり、之れ抵當權の特質にして、此權利は常に不動産を目的とすることを要し、動産の上に行はるることなし、□三抵當權は當事者の意思表示より生ずる權利なり、抵當權者は、債務者又は第三者が債務の擔保として供したる不動産に付き、優先辨濟を受くる權利を有するものなるを以て、抵當權の設定に就きては、常に債權者と目的物の所有者たる債務者、又は第三者との間の意思表示を必要とし、此意思表示なきときは、抵當權は發生せざるものとす、□四抵當權は目的物の占有を必要とせざる權利なり、之れ留置權、質權と大に其性質を異にする所なり、蓋し留置權は、其權利の性質上目的物の占有を必要とし留置權と占有とは、分離すべからざる關係を有するものとす、之に反して抵當權は、不動産上の權利として、之を第三者に對抗する爲め登記するのみを以て足れりとし、其發生に就き、目的物の占有を必要とせざるのみならず、目的物の占有は、抵當權の内容を組成せざるものなり、故に抵當權は、槪して質權よりも便利なりとす、何となれば、設定者は、目的物の占有を債權者に移すことを要せざるを以て、抵當權の設定に拘はらず、其使用及び收益を繼續することを得べく、抵當權者も亦自身に目的物を保管するの煩累を免がれ得べければ也、□五抵當權は目的物に付き、他の債權者に先んじて辨濟を受くるの權利也、抵當權者は、債務者が其債務を辨濟せざる場合に、目的物を賣却し、其賣却代金を以て、其債權の優先辨濟を受くるの權利を有するものにして、此權利は即ち抵當權の實質を組成するものとす、□六抵當權は不可分の權利也、抵當權者は、目的物の存する限りは、其債權の全部に付き目的物上に權利を行ふ事を得べく、其債權の存する限りは、目的物の全部に付き其權利を行ふ事を得べし、抵當權の目的物は、左の性質を具有することを要す、□一抵當權の目的物は不動産たることを要す、故に其性質に於て不動産たる土地は、抵當權の目的たることを得べきは勿論、土地に定著する所の家屋其他の建物も亦不動産として、抵當權の目的たることを得べし、蓋し建物は土地に定著して之と一體をなすものなれば、理論上より云ふ時は、建物は土地と分離して、抵當權の目的たることを得ざるものと論ずることを得べしと雖も、我法制にありては、土地と建物とは各獨立の不動産を組成し、建物を以て土地の從物と看做さざるが故に、建物は土地と分離し、之を讓渡し又は擔保に供する事を得べし、樹木も亦土地に定著して之と一體をなすものなれば、土地に定著する間は、不動産の性質を有するものなり、然れども我法制にありては、樹木を獨立したる不動産と看做さざるを以て、樹木は土地と共にするにあらざれば、之を以て抵當權の目的となす事を得ざるものとす、抵當權は、不動産を目的とするも、此原則には例外あり、即ち左の如し、(甲)地上權及永小作權、地上權及永小作權は、所有權と共に不動産上の強大なる物權にして、其所有權と異るは、不動産上の所有權は、總ての關係に於て、不動産を支配するの權利なれども、地上權及永小作權は、單にある關係に於てのみ不動産を支配する權利たるの點にありとす、而して抵當權は抵當權者をして、設定者に屬する不動産の處分權を行はしむるを目的とし、不動産其ものを目的とするよりも、寧ろ不動産の所有權を目的とするものなるを以て、不動産上の完全なる權利を目的とする所の抵當權は、又不動産上の比較的に不完全なる權利たる永小作權及地上權を目的とすることを得べきものと論ぜざるを得ず、之法律が此等の物權も亦抵當權の目的たる事を得べきものとなしたる所以なり、(乙)代表物、抵當權は、目的物の賣却、賃貸、滅失又は毀損に依りて、設定者の受くべき金錢其他の物に對して之を行ふことを得べく、抵當權設定者が、目的上に設定したる物權の對價に付きても亦然りとす、但し抵當權者が此等の金錢又は物件に付き其權利を行ふには、其拂渡又は引渡前に差押をなすことを要し、第三債務者が其拂渡又は引渡を了したる後は、最早其權利を行ふを得ず、□二抵當權の目的物は讓渡し得べきものたる事を要す、抵當權は抵當權者をして、權利の目的たる不動産の所有權、地上權、永小作權を競賣に付し、其代金を以て優先辨濟を受くることを得しむるを目的とするを以て、抵當權の目的たる此等の權利の讓渡し得べきものなることを要するは必然にして、讓渡し得ざる物は抵當權の目的たることを得ざるや明なり、故に私人の所有を許さざる公有の道路、建物其他の公有物は、其公用を廢止したる後にあらざれは、之を以て抵當權の目的となすことを得ざるは勿論、縱令私人の所有を許すも法律に其賣買讓渡を禁じたる不動産、例へば華族の世襲財産の如きものは、抵當權の目的たることを得ざるものとす、□三抵當權の目的物は抵當權設定者の所有なる事を要す、何人と雖も、自己の有せざる權利を他人に讓渡すことを得ざるは、法律上の原則也、而して抵當權は、目的物たる不動産上の權利の處分權を、抵當權者に歸屬せしむるものなれば、其權利を所有する者にあらざれば、其上に抵當權を設定することを得ざるや明なり、故に自己の有せざる不動産の所有權、地上權、永小作權を目的とする抵當權設定の行爲は、抵當權を發生する事なし、然れども抵當權設定者が、後に至り其權利を取得したる時は、設定行爲は茲に初めて其效力を生じ、相手方をして、抵當權を取得せしむるものなり。(民三六九、三九八、二九五、三四二條)
- 英
- Mortgage
- 独
- Hypothek
- 仏
- Hypothèque
定著物
(ていちやくぶつ)定著物とは、土地と別個の存在を有する者にして、其用方に從ひ繼續して土地に連結せらるる物を云ふ、□一定著物は、土地の構成分子にあとずして、土地と全く別個の存在を有するもの也、土地の一部と爲るもの、例へば溝渠の如きものは定著物にあらず、又家屋を土地の一部と看做す法制の下に於ては、家屋は定著物にあらず、□二定著物は、土地に附著せられたるもの也、土地に附著せらるるとは、土地に連結せらるるの謂にして、單純に接觸するの義にあらず、連結は自然的なるものあり、人工的なるものあり、例へば人工的に土地に連結せらるる所の家屋、橋梁、障壁、自然に地上に發生する所の樹木、又は地下に埋沒する所の鑛物の如き皆定著物なり、□三定著物は、繼續して土地に連結せらるるもの也、一時の用に供する爲め、土地に連結せらるるものは定著物にあらず、例へば野獸の害を防ぐ爲め一時建設したる小屋、建築の爲め一時設けられたる足場の如きは定著物にあらず、繼續的の性質を有すること、一時的の性質を有することとは性質上の區別なり、之れを時の長短に依る區別と混同す可らず、□四定著物は、物の用方に從ひ、土地と連結せられたることを要す、物の用法に從はずして土地と連結せられたるものは、定著物にあらず、例へば竊盜が金品を地中に埋藏し、數十年を經過するも定著物とならざるが如し。(民八六條一項)
程度
(ていど)程態度合を意味する用語にして、例へば物の數量、度合を云ふことあり、又訴訟事件の進行の狀態を云ふことあり。(民訴二六〇條)
- 英
- State
- 独
- Grad
- 仏
- État
締盟國
(ていめいこく)締盟國とは、國際條約を締結したる相互の國家を云ふものなり、日英條約に於ける日英兩國、又日獨條約に於ける日獨兩國は、共に締盟國也、而して締盟國は、條約の趣旨に從ひ、亙に相方の利益を計り、又危害を防壓するの權利義務を有するものとす。(條約の部參照)
- 英
- Alliance
- 独
- Bundesstaat
- 仏
- Alliance
條項
(でうかう)條項は、法律命令の條文、項目を云ふ、例へば民法第何條と云ふが如く、又民法第一編第一章第一節第一款第一項と云ふが如し。條規は法律命令の規定を云ふ、例へば天皇は憲法の條規に依り云々と云ふ如し。(憲法四條)條文は、法令の規定其もの又は法規の各本條を云ふものにして、法文、明文、正文又は第何條と云ふが如きこれなり。
- 英
- Provision
- 独
- Anordnung
- 仏
- Disposition
條規
- 英
- Regulations
- 独
- Regel
- 仏
- Règlement
條文
- 英
- Provision
- 独
- Anordnung
- 仏
- Disposition
朝憲
(てうけん)朝憲とは、國家統治權の主體及び國家統治權活動の大本に關する憲法上の制度(成文法たると不文法たるとを問はず)を意味するものなり、抑も憲法上に於ける國家の制度たる千態萬狀にして、茲に揭記するの限りにあらざるも、我國に於ては統治權總攬者たる元首、其補弼機關たる政府、帝國議會、司法裁判所、樞密院、會計檢査院等の組織權限、臣民の自由保障等、苟も國家の政治的秩序は、皆朝憲と云ふべし、刑法が國事犯に關して所謂朝憲紊亂とは、以上の國家の政治的秩序の破壞を意味するものにして、刑法例示の如く、政府の顚覆も、邦土の僣竊も其他現行皇位の順序を變更せんとするが如き、代議制を廢止して專制せんとするが如き、信教の自由を廢止し、信書を公開して其の秘密の保障を破らんとする如きは、總べべて朝憲紊亂の行爲と云ふべし。(刑七七條)
- 英
- Order of state
- 独
- Staatsordnung
- 仏
- Ordre de l'Etat
條件
(でうけん)因緣など謂ふ緣に當るべし、總べて事理、事物、事件の存在、又は發現を制限し、支配し、色附け又は變化せしむる所緣となる事情又は要件を謂ふ、例へば金錢あらば吾れは飽迄勉強すべしと謂はんに、金錢は敢て勉強の原因をなすものにあらず、然れども少くとも勉強を制限し色附くる必須の要件として、勉強の所緣をなすべし、かくして金錢は、勉強する爲めの一條件と謂はるるが如し、法律上に於ても之と同じく、或法律行爲の效力の發生又は消減を繫らしめたる不確定なる未來の事實を云ふ、(條件なる文字に二個の用例あり、或は當事者の意思表示に依り、法律行爲の效力を發生し又は消滅すべき不確定なる未來の事實を指して條件と云ひ、或は事實に依り法律行爲上の效力を發生し、又は消滅すべきことを定めたる意思表示を指して條件と云ふ、條件は事實なり、事實の發生が、法律行爲の效果の發生又は消滅を繫らしめたる場合に於て、其事實は、法律行爲の條件となるものとす、而して此條件が、法律行爲に附するの意思表示、即ち附款は法律行爲の内容を組成する一條項なり、附款を主たる意思表示と、分離せられたる附隨の意思表示と爲すは誤なり、條件は、任意附款に依るものにして、任意附款は、當事者の意思表示の内容を組成する事項也、法律の規定に依り、或事實が法律行爲上の效力を發生し、又ば消滅するの原因と爲ることあるも、之を條件となすべからざるものとす、法律行爲上の效力を繫がらしむべき事實は不確定なることを要す、事實の不確定は、其性質上確實なるものにあらざることを要件と爲す、事實の性質上、其發生したるや否や、又發生すべきや否やが確定せるときは、如何なる場合に於ても、之を不確定事實と爲すことを得ず、性質上不確定なる事實は、客觀的に觀察して不確定なるものあり、主觀的に觀察して不確定なるものあり、主觀的に不確定なる事實は、當事者が發生したるや否やを認識せざる事實にして、過去、現在、未來に通ずべきもの也、客觀的不確定の事實は、當事者の認識せざるを以て足れりとせず、實際に於て發生すべきや否や不確實なることを要す、故に當然未來なることを要し、過去、現在の事實を包含せず、未來の事實が客觀的に確定なりや、不確定なりやは、現今の知識の程度を標凖として、之を決せざる可らず、因果の法則に依り探究せば、未來に於ける一切の事實を豫見する事を得べきを以て、客觀的不確定なる事實なしと云ふが如きは、現今の智識の程度を離れたる觀察なり、現時の人類を支配する爲め設けたる法律を論ずるに當りて、此の如き説明を爲すは一種の空論たることを免れず、民法は條件と爲るべき事實が▲主觀的に不確定なることを以て足れりとするや、又は客觀的に不確定なることを要すや、表面より之を明にしたる規定なきも、法律の裏面より見れば、其客觀的不確定なることを要件と爲すこと明白なり、即ち此要件を缺くものは假裝條件にして、或關係に於て、條件と同一の效力を有するに過ぎず、例へば人の死亡は不確定なる事實にあらず、何となれば、吾人は經驗上不死の藥なきことを知れば也、然れども一定の人が、五十年に達せざる前死することは、不確定なる事實なり、何となれば、今日の知識の程度に於ては、未だ人の死すべき時を豫見する事を得ざれば也、故に前の事實は條件たる事を得ざるも後の事實は條件たることを得べし、事實は積極に指定せらるることあり、消極に指定せらるる事あり、何れの場合に於ても客觀的に不確定なれば、之を條件と爲す事を得べし、法律行爲の効力を不確定の事實に繫らしめたる場合に條件存す、意思を不確定なる事實に繫らしむるものと爲すは誤謬の見解也、法律行爲の效力を不確定の事實に繫がらしむるに二個の方法あり、一は、其事實の發生を以て、法律行爲の效力を發生するの前提と爲し、一は其事實の發生を以て、法律行爲の效力を消滅せしむるの前提と爲すにあり、前の場合に於ては、條件の成就に依りて法律行爲の效力を始まらしめ、後の場合に於ては、之れに依りて法律行爲の效力を失はしむるもの也、法律行爲の效力を不確定なる未來の事實の到來に依り發生すべきものと爲す條件を停止條件と稱し、法律行爲の效力を不確定なる未來の事實の到來に依りて消滅すべきものと爲す條件を解除條件と稱す、條件は停止條件と解除條件の外に出でざるなり。(民一二七條乃至一三四條)
- 英
- Condition
- 独
- Bedingung
- 仏
- Condition
條件附法律行爲
(でうけんづきはふりつかうゐ)法律行爲とは、私法上の效力を發生せしめんことを目的とする意思の表示を云ひ、而して條件附法律行爲とは、法律行爲の發生及び效果を一定の條件に繫らしむることを云ふ、條件附法律行爲は、二個の時代に分別して、之を觀察するを得べし、第一の時代は、條件の成否未定の時代にして、第二の時代は、其成否確定の時代也、條件の成否未定の時代に於ては、條件に繫る處の法律行爲上の效力の發生、若くは消滅すべきや否や不確定なる狀態に在り、此狀態は條件附行爲の成立したる時より、條件の成否確定の時まで繼續す、條件の成否は效力の繫るべき事實が發生し、又は其發生せざることが明確と爲りたる時確定す、即ち其事實が發生せば、條件を成就となるものとなし、其事實の發生せざること明確となるときは、條件を成就せざるものと爲す、條件の成就又は不成就を確定する時は、條件に繫がる法律行爲上の效力が發生し、若くは發生せざること、又は消滅し或は消滅せざることが確定する時なり、即ち不確定の時代去りて確定の時代來る也、條件が成就したりや否やは、法律行爲的意思表示を解釋して之を決す、法律行爲上の效力を發生し、又は消滅する爲め其前提と爲るべき事實が、一定の時期に發生する事を要件とする場合あり、又其發生すべき時期を定めざる場合あり、前の場合に於ては指定せられたる時期に於て、前提と爲りたる事實が到來するに非ざれば、條件を成就したるものと云ふを得ず、後の場合に於ては其事實が何時發生せしやに依りて、條件を成就したる者と爲す事を得、尤も條件の成就すべき時期は、必しも直接の意思表示に依て指定せらるべきものにあらざるを以て、條件となりたる事實が果して正當の時期に發生したりや否やの問題ば、各場合に於ける事情を斟酌したる上、當事者の意思の在る所を探究して之を決せざるべからず、直接に表示せられざるが爲めに、當事者の目的と相容れざる決定を爲すが如きことあるべからず、右の外法律の規定に依り、當事者が條件を成就したるものと看做す事を得る場合あり、即ち條件の成就に依りて不利益を受くべき當事者が、故意に其條件の成就を妨げたるときは、相手方は、其條件を成就したるものと看做す事を得、條件の成否未定の間に於ては、其成就に依りて利益を受くべき者が、他人の故意又は過失に依り其成就を妨害せられたるときは、之れより生ずる損害の賠償を求むることを得べし、然るに損害賠償のみにては、之れに完全なる保護を與ふることを得ざるの虞なしとせず、乃て如上の如く、一定の前提を具備する時は、相手方の妨害に依りて成就せざりし條件を、成就したるものと同一視することを得しむ、此方法に依りて救濟を與ふるには、先づ條件の成就に依りて不利益を受くべき者が、故意に其成就を妨害したることを要件と爲す、故に第三者が妨害を加へたる場合、又は相手方が過失に依り妨害を加へたる場合は、單に損害要償の途に出づるの外なかるべし、次に右の前提を具備する場合に條件を成就したるものと爲すは、法律當然の效果にあらずして、相手方の意思に依るべきもの也、故に救濟方法を利用せんと欲する者は、其意思を認識せしむるに足るべき表白を爲さざる可らず、條件附法律行爲は、其效力を客觀的不確定の事實に繫らしむるものなるを以て、條件の成否未定の間に於ては、法律關係を不確定の狀態に在らしむるものなり、停止條件附法律行爲は、其效力の發生を不確定の事實に繫らしむるものにして、條件の成否未定の間に於ては、其目的とする法律關係は成立せしめず、之に依りて發生すべき權利は、未だ權利者に歸屬せざる也、物權の設定を目的とする法律行爲に就きて云へば、設定せらるべき權利は未だ成立せず、物權若くは債權の移轉又は抛棄を目的とする法律行爲に就きて云へば、其權利は在來の狀態を變更せずして、在來の權利者に屬して、權利の承繼又は消滅を生ぜず、債權の發生を目的とする場合に就きて云へば、債權は未だ創設せられざるを以て、債權者と爲るべき人は、債務者と爲るべき人に對して、履行の請求を爲すを得ず、故に錯誤に依りて給付したる物は總べてを返還せざる可らず、解除條件付法律行爲は、既に發生したる效力の消滅を不確定の事實に繫らしむるものなるを以て、條件の成否未定の間に於ては、これに依りて創設せられたる法律關係は存續す、即ち設定せられたる權利は既に發生し、移轉せられたる權利は既に被承繼人を離れて承繼者に歸屬す、以上何れの條件たるを問はず、條件が成就せざる時は、條件に繫るべき法律上の效果は發生せず、即ち停止條件が成就せざるときは、停止せられたる效力の發生せざることが確定し、全く法律行爲を爲さざりしと同一の狀態に復歸す、解除條件が成就せざるときは、既に發生したる效力確定し、撤回することを得ざるものと爲り、無條件の法律を爲したると同一の狀態を生ずる也、孰れの場合に於ても、之れに依りて利益を受くべき當事者の希望は廢滅せらるるを以て、條件附權利義務は當然消滅すべし、條件成就せざるときは、條件の成就に依り發生すべき利益を保全するの問題を生ぜず、故に條件の成否未定の間に於て、當事者の一方が條件の成就に依り、相手方の取得し、又は回復すべき權利に就き爲したる處分行爲は確定的に效力を有するに至るべく、又條件附權利の爲に締約したる擔保は總べて消滅す、條件が成就するときは、其條件に繫るべき法律上の效力を確定す、即ち停止條件が成就するときは、其成否未定の間に於て、未だ發生せざりし法律關係を成立せしめ、解除條件が成就すれば其成否未定の間に於て、存續する法律關係は消滅す、條件の成就は當然法律行爲上の效力を發生し、又は消滅すべきものにて、當事者が更に意思表示を爲すに依り之を發生し、又は消滅するものに非ず、條件の成就は、何時より法律行爲の效力を發生し又は消滅すべきや、凡そ法律上の效果は、其原因の完成したる時より將來に向つて發生するものあり、又其完成以前に遡及して發生するものあり、法律行爲の效力は、原因の完成したる時より、將來に向て效力を發生するを原則とす、之をして遡及效を有せしむるは、當事者が特に意思を表示したる時、又は發生すべき效力の性質より觀察して、之を當然と爲す場合に限る、條件成就の效果は、條件成就の時より將來に向つて發生するものなりや、又は法律行爲の成立したる時に遡及すべきものなりやといふに、其效果は、當然遡及效を有すべき性質のものにあらざるや明なり、故に當事者が別段の意思を表示せざる以上は、條件の成就したる時より發生するものと論ずるを至當とす、之法律が明に規定する處にして、成就する條件が、停止條件なると解除條件なるとに依りて、區別を存すべきものにあらざるなり。(民一二七條乃至一三四條)
- 英
- Conditional juristic act
- 独
- bedingtes Rechtsgeschäft
- 仏
- Acte juridique avec la condition
條件附權利
(でうけんつきけんり)條件附權利とは、權利の發生、及び效力を一定の條件に繫らしむることを云ふ、停止條件に付き、例へば乙が甲に對して明日橫濱港に某船舶が入港せば、汝に金一萬圓を贈與すべしといふ契約をなしるたときは、甲の有する權利、即ち一萬圓を乙に對して請求することを得る權利は、所謂條件附權利也、條件附權利は、契約の當時に於て直に請求することを得ざるものにして、其條件の成就したる時に於て、初めて之を請求することを得るものなり。
- 英
- Conditional right
- 独
- be-dingtes Recht
- 仏
- Droit conditionelle
條件附債權
條件附債權とは、條件の成就により請求することを得る債權にして、所謂條件附權利の一種なり。
- 英
- Conditional obligation
- 独
- bedingte Forderung
- 仏
- Obligation con-ditionelle
條件附債務
條件附債務とは、條件の成就によりて其債權者に對して、債務を履行すべき義務を負ふ事を云ふ、故に前例に於ける甲者は、即ち條件附債務負をふものなり。(條件の部參照)
- 英
- Conditional obligation
- 独
- bedingte Obligation
- 仏
- Obligation con-ditionelle
調書
(てうしよ)廣く調書とは、官廳の取調に關する記錄を云ふ、例へば裁判所の口頭辯論調書、豫審調書、訊問調書といふ如し、口頭辯論調書には、左の諸件を揭ぐべきものとす、□一辯論の場所、年月日、□二判事、裁判所書記及び立會ひたる檢事若くは通事の氏名、□三訴訟物及び當事者の氏名、□四出頭したる當事者、法律上代理人、訴訟代理人及び輔佐人の氏名、若くは原告若くは被告、缺席したるときは其缺席したること、□五公に辯論を爲し又は公開を禁じたること、又辨濟の進行に就きでは、其要領のみを調書に記載すべきもの也、而して調書に記載して明確にすべき諸件は左の如し、□一自白、認諾、抛棄及び和解、□二明確にすべき規定ある申立、及び陳述、□三證人及び鑑定人の供述、但し其供述は以前聽かざるものなるとき、又は以前の供述に異なるときに限る、□四檢證の結果、□五書面に作り調書に添付せざる裁判(判決、決定及び命令)□六裁判の言渡等これなり、調書は、凡て裁判所書記が之を作成するものとす。(民訴一二九、一三〇、一三五條、裁構法九一條)
調度
(てうど)調度とは、物品の取揃及凖備をなす事を云ふ、調度の用例としては、例へば宮内省調度局の如し、即ち宮内省調度局は、御服、御物、及び宮中、省中の需用物品、被服購買、修補、運搬に關する事務を掌るもの也。(二二年七月宮内省達一〇號宮内官省制二八、四四條)
- 英
- Utensils
- 独
- Geschirr
- 仏
- Utensiles
條約
(でうやく)條約とは、國家相互間の合意を云ふ。(通商條約參照)條約權とは、條約を締結し得る權能を云ふ、條約を締結し得べき者の誰なりやは、憲法の差異に依り、各國同一なる事を得ざるも、歐洲立憲君主政體諸國の憲法に於ては、君主は一般の條約を締結するの權を有し、或事項に關する條約殊に通啇條約、國庫の負擔を生ずべき條約及び國民の權利義務に關する條約は、議會の協贊を經て其效力を有すと爲すを通例とす、我憲法に於ては、天皇は、諸般の條約を締結すとありて、條約の締結を以て憲法上の大權事項とし、別に例外を認めざるが故に、條約の内容如何に論なく、天皇は任意に之を締結するを得べく、帝國議會は之に容啄する事を得ざるもの也、之を稱して天皇の條約權と謂ふ、條約權即ち條約締結の權能は天皇にあれども、天皇自ら此權能を行使することは稀にして、普通は全權委員を選定し、之に全權書即ち委任狀を交付し、全權委員の會合に於て先づ其委任狀を相互に交換し、互に其委任狀の良好妥當なるを認めたる後、甫めて談判に從事するものなり、若し委任狀にして正當ならざるときは、相手國は之を正當なる全權委員とすべからざるに依り、これと談判すること能はず、明治二八年日清兩國の媾和談判に際し、清國委員なる張䕃桓が携帶したる全權書は、其委任の權限に缺くる所ありたるを以て、我國全權委員は、之と談判を拒絶したるは其一例なり、隨つて委任狀中には其携帶者が相手國に對し、自國を代表して協議し得べき權限を明にし、主權者が之に自署し、國璽を鈐し、外務大臣の副書ある書類なるを要し、條約の談判及調印には、此書類を有する者に依て行はれざる可らず、今其書式の一例を示せば左の如し。
全權御委任狀
天佑ヲ保有シ萬世一系ノ帝祚ヲ踐ミタル日本皇帝(御名)此書ヲ見ル有衆ニ宣示ス
朕茲ニ帝國ト何國トノ交際ヲ永ク親睦ナラシメンコトヲ欲シ何國政府ノ全權委員ト會同商議シ條約ヲ締結シ其約書ニ記名調印スルノ全權ヲ何某ニ附與ス其議定スル各條目ノ如キハ朕親シク閲覽ヲ加へ其善良ナルヲ認メテ後チ之ヲ批准スベシ
神武天皇即位紀元二千何百何年明治何年何月何日東京宮城ニ於テ親ラ名ヲ署シ璽ヲ鈐セシム
御名御璽外務大臣何某□印
- 英
- Treaty
- 独
- Vertrag
- 仏
- Traité
條約權
- 英
- Treaty right
- 独
- Vertragsrecht
- 仏
- Droit du traité
條約國
條約國とは、條約を締結したる國家を云ふ、國家には種々の階段あるを以て何れの國に於ても、完全に條約を締結することを得るものといふを得ず、從つて又條約國と稱するを得ざるものあるは當然也、而して主權國は互に條約を締結することを得れども、半主權國、屬國の如きは、自ら條約を締結することを得ざるものとす、主權國、半主權國及び屬國の何たるやは、國家の説明に明也(國家の部參照)之等の國家は、宗主國又ば保護國に於て、之が爲めに代りて條約を締結するものとす。(憲法一三條)
- 英
- Treaty powers
- 独
- Vertrags-reiche
- 仏
- Puissance du traité
條理
(でうり)條理の何たるかは、善惡の何たるかと等しく哲學上の大疑問也、何人も孝の善たる盜の惡たるを知らざるは非ざるも、何故かと問はば答ふる所曖昧たり、茲に條理といふも亦之と同じく倫理上の條規との意にして、學者の所謂自然法なるものも實は條理に外ならず、然らば條理なるものは、明且つ瞭たるが如しと雖も、吾人は何故に君に忠ならざる可らざるか、又何故に親に孝ならざる可らざるか、其理由を明確にすること能はず、されど法律の範圍に於ては此等は總べて倫理學者の硏究に委し、吾人は單に之を條理として信じ、一國一家一社會の秩序上最も必要なるものとなすに止む、條理が法律の材料となる方法に三あり、即ち左の如し、□一條理を以て法律制定の基礎と爲す、昔時にありては、條理即ち法律なりとの觀念の存在するものありしと雖も、法律は條理より狹隘のものたることを知るに至りて、兩者の間區別を爲せり、即ち法律は、通常條理に依るべきものなりと雖も、又必しも條理に依らざるべからざるものにあらず、惡法も亦法なり、秦の始が儒を坑にするの法を作りたるが如き、不條理の極なれども、然かも一種の法律たるを妨げざる也、然れども斯くの如きは寧ろ例外にして、古今の法律、槪ね條理を以て法律制定の基礎となさざるはなし、□二條理を採用して成文の法律に規定す、昔時の法律は、槪ね條理の集合なり、近世の法律に在りても親族關係に關するものの如き、多くは條理をその儘採用して法律と爲せるものなり、□三條理に法律の効力を付與す、條理に法律の效力を付與するは、主として法律の不備なる場合に在り、明治八年の布告に係る裁判事務心得に「民事裁判に於て成文あるものは成文に依り、成文なきものは慣習に依り、成文、慣習共に存せざるときは條理を推して裁判を爲すべし」と命じたるが如き是なり。(八年布告裁判事務心得)
- 英
- Principle
- 独
- Gerechtigkeit
- 仏
- Principe
手形
(てがた)手形は一定の時期一定の地に於て一定の金額を債權者に支拂ひ、或は第三者をして支拂はしむべき不要因の債券にして、其記載事項のみが債權の實質に就き、唯一の決定力を有する要式的有價證券也、□一手形は設權證券也、設權證券とは、證券の作成が權利の設定に必要なるものの總稱也、此種の證券にありては、證券の作成は即ち權利發生の形式にして、證券の作成なくんば、縱令當事者の權利を設定せんとする意思明瞭なるも、法律關係の成立を證明し若くは主張することを許さず、此設權證券は單純なる證據證券に對する名稱にして、設權證券にありては、權利と證券との關係は、機關的にして且つ本質的なり、之に反して證據證券にありては權利と證券とは器械的にして、且つ外形的の關係を有するに過ぎず、前者にありては法律關係は證券に依りて始めて完成し、後者にありては既に成立せる法律關係を證明するに過ぎず、故に權利の成立を證明するに證券を以てせざるべがらざると、他の證據を以て權利の成立を主張するを得との差異を生ず、之を要するに一は法律關係の私法上の原素たるの作用あり、一は訴訟法の範圍に屬するものといふべし、手形の設權證券たるは、手形上の法律關係は手形の作成に依るにあらずんば發生せざるに依て明なり、而して等しく有價證券にして設權證券ならざるものは、株券、社債券、倉庫證券の類これなり、□二手形は所謂絶對的有價證券也、絶對的有價證券とは、權利を作用するの方法如何を問はず、常に證券の占有を條件とするものを稱す、學者或は之に完全なる有價證券の名稱を附す、絶對的有價證券に對するものは、相對的有價證券にして、權利の讓渡に證券の占有を必要とするに止まり、權利の執行には之を必要とせざるものの如きは此種に屬す、株式の讓受人が、會社其他第三者に對して讓受に對抗せんと欲せば、株主名簿に之を登錄し、且つ株券書換への手續を爲さざるべからず、即ち會社に對し、株主權取得を對抗し以て株主たるの權利を利用せんと欲せば、株券の占有を取得せざるべからずと雖も、一旦此手續を完了したる時は、株主權の行使は株主名簿の登錄に依り敢て株券の占有を必要とせず、然れども手形にありては、手形上の權利の移轉は手形の占有と離るべからず、其行使は、常に手形の占有と相伴ふ手形なくんば裏書をなすを得ず、手形と交換的にあらずんば支拂を請求するを得ざるが如し、□三手形は要式的有價證券也、要式的とは、法律に定めたる形式の履行を必要とするの意にして、凡そ手形に記載すべき事項は皆法律の明定する所なり、其要件として揭ぐるものを缺くときは手形として成立せず、手形以外の事實又は意思表示を以て要件の欠缺を補充するを得ず、當事者は如何なる場合に於ても、手形として效力を生ぜしむべき旨を手形に附記するも、手形の效力に何等益する處なし、又手形に顯さざる事實を以て要件の存在を證するを許さず、之を稱して手形の要式的性質と云ひ、要式的證券、形式的證券の名稱を付するも其趣意に於て異る處なきなり、□四手形は當然の指圖證券也、手形は其記名式なるときと雖も、指圖式を以て發行したると同じく、裏書に依りて之を移轉するを得、裏書は手形の通性なるを以て、學者手形を法律上の指圖券證、若くは推定的の指圖證券と稱す、倉庫證券、船荷證券も之を當然の指圖證券とす、□五手形は呈示證券也、證券の呈示を以て履行請求の條件とするもの之を呈示證券と謂ふ、呈示證券の觀念に就きて其特質を擧ぐれば、イ債務者遲滯の責に任ずるは、證書に記載せれたる滿期日の到來に在らずして、其期日到來の後證券を呈示したる時にありとす、滿期日は法律上の效果を生ずべき呈示の始期たるのみ、故に債權者に於て遲延利息を請求するは、滿期日を基礎とせず、其到來の後證券の呈示を爲して其效を奏せざる時にあり、ロ呈示證券の債務の履行は、當事者が特に其場所を定めざるときは、債務者の營業所若くは住所に於てす、之を法律上の履行の場所となす、所謂取立債務にして持參債務にあらざるなり、ハ實效を奏せざる呈示は、擔保義務者に對する權利行使の條件たり、而して其呈示は、債務の履行を求むるの目的を以て之を爲さざるべからず、履行を求むるに當りては、證券と交換的になすべきものは呈示證券なり、無記名證券は呈示證券なり、指圖證券は呈示證券なるを通例とす、然れども指圖證券は必ずしも呈示證券なるに非ず、手形にありては、所持人が支拂人、引受人に支拂を求むるときは、其支拂と引換に手形を交付せざるべからず、是呈示證券たる所以なり、茲に注意すべきは、手形の持所人は、手形の支拂地に於て支拂を求むる爲めにする呈示を爲すべく、債務者現時の營業所、又は住所の何れの地にあるを問はざるなり、□六手形は債權證券なり、有價證券は之に表する權利を標準として、物權的有價證券、債權的有價證券及び團體的有價證券に區分することを得、物權的有價證券とは、物權的效力を有する有價證券にして、我商法は三種を認む、陸上運送に於ける貨物引換證、海上運送に於ける船荷證券、倉庫營業に於ける預證券是也、此等證券の裏書は、其證券に記載せる商品の讓渡と同一の效力を有するものなり、團體的有價證券とは、社員權を以て内容とする證券にして、株券は即ち是なり、而して債權的有價證券は債權を表するものにして、手形の此種類に屬するは説明を須ゐず、手形上の債權の目的は金錢に限るが故に、之を金錢債權と稱するを得べし、我商法は、商品の給付を目的とする手形(商品手形)を認めず、而して手形上の權利者が手形の所有者として、他人に對して有する權利は即ち債權なり、□七手形は不要因的有價證券なり、不要因的とは、債務が其原因を以て成立の要素とせざるの意也、凡そ人の債務を負擔するは、必ず之を負擔するの理由なかるべからず、不要因的債務と稱するものに於ても其理由を缺くものに非ず、唯其理由と分離して債務成立し、從つて原因の存在、若くは原因の適法と債務の成立と法律上相牽連せざる也、普通の債權債務は、其原因と相拘合して始めて其存在を認むべく、其原因に依りて各特質を表すが故に、之に基きて他の債務債權と異る所以を知るべきものとす、爰を以て一個の債權債務の特別の性質を明にせんと欲せば、獨り債務者が債務を負擔するの意思を表すること、若くは其債務の目的物の何たるを證するを以て足れりとせず、進んで何が故に債務を負擔するに至りたるやを究めざるべからず、金百圓を支拂ふの債務は、其外形に於ては常に一なりと雖も、其理由其成立の履歷に依りて各固有の性質を有す、債權者其權利を主張し、之が執行を求めんと欲せば、單に債務者が金百圓を支拂ふべしと約したるの事實を證するを以て足れりとすることを得ざるを原則とす、不要因的と稱するものにありては債權債務は原因と分離し、獨立して發生存在し又執行するを得べく、何が故に債務を負擔するに至れるかを問はざる也、債權者は其權利の由て生じたる所以を證明せずして、其權利を主張することを得、手形上の債權債務を以て不要因なりといふは此意なり、手形に於ける直接の當事者にありては、債務者は原因の欠缺又は不法の抗辯を事由とするを得べしと雖も、其抗辯を事由とするとは、債務を免るるを得るの謂にあらずして、又債權者に於て其債務の成立を證するの責任を負擔せざるの意を包含す、若し夫れ所謂間接の當事者間に在りては、原因に關する抗辯を認めざるが故に、所持人は一に手形所載の文言に從ひて其權利を取得し、又執行するを得る也、手形上の債權債務を以て、不要因的とするの效益蓋し少しとせず、權利を確定鞏固にし、權利の執行を圓滑迅速ならしめ、以て手形の流通を增進するの利あり、若し手形行爲の理由如何を探究し、所持人をして之が證明を爲さしめ、若くは行爲者常に原因の如何を證明して其債務を否認するを得るものとせば、手形は、畢竟流通證券たるの作用を發揮するを得ざるなり、□八手形は證券的權利を表する證券也、證券的權利と稱するは、證券に記載せる文言が、善意に證券を取得したる者の權利の效力を定むるを云ふ也、換言すれば、債權債務の範圍一に證券の文言に率由して之を決定し、善意の取得者に對しては之が反證を許さざるなり、我商法に於て手形行爲をなしたる者は、其手形の文言に從ひ、責任を負擔すと定めたるは即ち此の意を明にしたるものといふべし、手形の文言は終局的にして、且つ確定力を有するは、手形の流通に利する所頗る多大なり、即ち自己の前者に對する抗辯を杜絶し、又前者が證券の正當の所有者ならざるときと雖も、證券の所有權を取得することを得て、完全なる債權者の資格を得るが如きは其最も著しきものなり、我商法に於ては、三種の手形を認めたり、即ち爲替手形、約束手形及び小切手之なり、(甲)爲替手形には、左の事項を記載することを要件とす、□一爲替手形たることを示すべき文字、是手形文句と稱するものにして、之を必要としたる所以は、他の證券と識別し、其授受に當り爲替手形たるを知り易からしめんとするにあり、□二手形金額手形金額は、手形上の債權債務の目的にして、債務者は其支拂ふべき金額如何を知り、手形の取得者をして其請求するを得べき金額如何を知らしむ、(手形金額參照)□三支拂人の氏名又は商號、支拂人は手形に記載したる振出人の委託に應じて手形金額の支拂を爲すべきものにして、其氏名又は商號を手形に記載せざる可らざるは言を俟たず、而して其記載は或は氏名たる事を得べく、又は商號たることを得べきものとす、法律の求むる所は、支拂人として氏名又は商號の記載のみ、振出人が支拂人として指定せんと期したる者の氏名又は商號たるを要せず、又手形に記載したる氏名、又は商號が事實に於て存在するを要せず、又商號に就きては固より登記したる商號なることを必要とせず、唯氏名又は商號としてあり得べきものの記載あるを以て足る、□四受取人の氏名又は商號、受取人は、第一の受者也、無記名式を以て發行せざる手形に於て之を記載すべきは當然也、而して其氏名又は商號の記載に就きては、支拂人の氏名又は商號に就きて述べたる所を應用する事を得べし、茲に注意すべきは、事實受取人として指定せんとしたる者の氏名又は商號を記載せざる場合に於ては、其者は受取人たる權利を取得する得ざるとこれ也、□五單純なる支拂の委託、爲替手形にありては、支拂の委託を記載せざるべからず、且つ其支拂の委託は單純なるべく條件を附するを得ず、又支拂の原因を定め、支拂金額の淵源を指定するが如きは之を許さず、□六振出の年月日、振出人が手形發行の當時能力者なりしや否や、代理人たるの資格猶消滅せざりしや否や、破産に瀕して爲したる行爲なるや否や等を知るの便あり、振出の年月日も事實と符合するを必要とせざるは、外觀的解釋の原則の一適用なり、振出の年月日は、手形の滿期日を確定するに必要なる事あり、日附後確定したる期間を經過したる日を以て、滿期日としたる手形に於て、其日附とは、振出の年月日を云ふ、又一覽拂の手形にありて、支拂を求むる爲にする呈示期間及び一覽後定期拂の手形にありて、引受を求むるが爲めにする呈示期間は、振出の年月日に依りて定まる、□七滿期日、滿期日とは、手形金額の支拂あるべき日也、債權者は、此時期に於て支拂を請求するを得、債務者も亦此時期に於て支拂を爲すを得る也、滿期日に關する一般の原則を擧ぐれば、イ不能なるべからず、不能なる滿期日とは、振出の日附以前の時期を指定し又は二月三十日とするが如し、ロ不定なる可らず、滿期日の到來するや否やは未定なる可らざるのみならず、其到來の時期も亦未定なるべからず、換言すれば滿期日は、必然到來し、其到來すべき時期確定するを要す、到來の未定とは結婚後八日とし、成年に達したる時とするが如し、到來する事必然なるも、其時期の未定なるとは、甲の死亡後五日とし、甲死亡の日と定むるが如きを云ふ、ハ滿期日は手形金額の全部に付き一定せざる可らず、其一部に付て或日を滿期日とし、他の一部に付き他の日を滿期日と定め、一月一日以後每月金百圓を支拂ふべしとするは不可也、又滿期日の重複的記載若くは分離的記載は、手形をして無效たらしむ、即ち手形金額の全部に付き、滿期日の單一確定を要する也、二年の記載を缺くは、必ずしも手形を無效たらしめず、滿期日發行の年に在るとき、例せば四〇年六月一日に振出したる手形に、一月三十日とするは可なり、滿期日を定むるの方法に依り手形を四種に分つことを得、A定期拂手形、確定の日を以て滿期日としたる手形を云ふ、而して其日とは、一日より長かる可らず又短かるべからず、又其日は、手形に記載するは當然なるも、必ずしも曆日なるを要せず、四〇年の天長節とし、明年の紀元節とするが如し、B日附後確定期拂手形、日附後確定せる期間を經過せる日を以て滿期日としたる手形なり、滿期日を振出の年月日に依りて確定するなり、振出の年月日を基礎として算定する點に於て、定期拂手形と異なれり、C一覽拂手形、一覽拂の手形とは、呈示の時に於て支拂はるべき手形を云ふ、其支拂を求むる爲めにする呈示期間は、法律上一年を以て最長期とす、其期間内に於て債權者の行爲に依りて滿期日定る也、D一覽後定期拂手形、一覽後確定なる期間を經過したる日を以て滿期日としたる手形なり、其一覽と稱するは、法律上單純なる一覽の意なるか、又引受を求むる爲めにする呈示を指すかに付きては學説同じからず、後説を可とす、□八支拂地、支拂地とは手形金額の支拂はるべき地也、商法は同地手形を認め、振出地と支拂地との相異るを必要とせず、而して支拂は、支拂人の住所所在地に於てするを通例とするが故に、特に支拂地を揭げざる時は、手形に記載したる支拂人の住所所在地を以て支拂地とす、若し手形に住所地の記載なきときは、其手形支拂地なきの故を以て無效なり、□九振出人の署名、爲替手形は、其發行の當時に於て主たる債務者なり、手形は振出人の擔保義務に基きて流通す、從つて振出人の手形行爲者として署名すべきは當然なり、會社振出人たる場合には、其會社を代表せる者、會社の商號を記載し、且つ自己の氏名を署せざるべからず、又手形には印紙を貼用すべきもの也、以上述べたる事項は手形の必要事項なるを以て、其一を脱するときは、手形は當然無效たるべきもの也、又約束手形、小切手に付きても、其記載要件は爲替手形に於けると大同小異なり、即ち約束手形には左の事項を記載し、振出人之に署名することを要す、□一其約束手形たることを示すべき文字、□二一定の金額、□三受取人の氏名又は商號、□四單純なる支拂の約束、□五振出の年月日、□六一定の滿期日、□七振出地是なり、又小切手には、左の事項を記載し、振出人之に署名することを要す、□一其小切手たることを示すべき文字、□二一定の金額、□三支拂人の氏名又は商號、□四受取人の氏名若くは商號又は所持人に支拂ふべきこと、□五單純なる支拂の委託、□七支拂地是なり。(商四四五條乃至四五四條、五二五、五三〇、四八二、四六六、二七九、二七八、四八三、三三五、三六五、六二九條、民四一二條
- 英
- Bill
- 独
- Wechsel
- 仏
- Note
手形交換
(てがたかうくわん)互に他の銀行の債務たるべき手形を有する銀行が、代金取立の手數と費用とを簡略せんが爲に、一定の日時一定の場所に會合し、彼我の受拂をなすべき手形を交換して互に相殺を行ひ、其勘定尻は、現金にて又は帳簿上の貸借關係に振替ふる事を手形交換といひ、一定の日時に、銀行家が此手形交換の爲め參集する場所を手形交換所と謂ふ、我國に於ては、上説の手形交換の勘定尻振替は、日本銀行に於ける各銀行の當座預金勘定に依りて決濟するを慣例とせるが如し、元來手形交換所は、數多銀行の契約より成り、此同盟各銀行の代理者は定刻に出頭し、他行の代理者に對する自己の貸方に屬する要求書と、之が手形を一抱したるものとを交付し、各行も亦爾か爲して、自行が各行に對して有する權利義務を明らめ、茲に於て各其權務を相殺し、其殘務は前説の如く、或は現金にて決濟し又は帳簿上の貸借關係を以て之を振替ふるものとす、斯くの如き交換所の組織は、一七七五年倫敦に起りたるものを嚆失とす、次で各國其有用なるを知りて之を採用するに至りたるものなり。
- 英
- Exchange of bill
- 独
- Tauschung des Wechsels
- 仏
- Echange du billet
手形行爲
(てがたかうゐ)手形行爲とは、手形法に規定したる特定の行爲にして、手形上の法律關係の唯一の基礎たるものを云ふ、手形行爲に關する要領を擧ぐれば、□一手形行爲は特定の形式を必要とす、例へば振出の形式、裏書の形式、引受の形式、保證の形式、參加引受の形式といふが如し、而して其各行爲に共通なる形式は署名にして、署名なくんば手形行爲なく、署名は手形行爲に缺くべからざる形式なり、茲に區別すべきは、單に署名のみを以て、手形行爲の形式となすあり、又署名の外、一定の形式の履行を必要とするものあること是なり、無記名式裏書、保證、引受は前者に屬し、其他は皆後者に屬す、手形行爲は、手形に爲すを必要とす、然れども手形自體に爲さずして可なる事あり、裏書保證は謄本又は補箋に爲すことを得、其各手形の複本に爲すを得べきは、複本の性質上當然なり、署名は自署の意なり、然れども法律は、記名捺印を以て署名に代ふることを許されしを以て、手形行爲も亦自署を必要とせざるに至れり、□二手形行爲者は、手形上の債務を負擔す、手形行爲を爲したる者は、之に依りて手形上の債務を負擔すといふは、其者の眞正の行爲を包含す、故に手形に振出人、裏書人、引受人、其他手形行爲者として署名の形式存するも、手形行爲を爲さざれば、善意の取得者に對して手形上の債務を負擔せず、代理權を有せざる者が他人の代理人として手形行爲を爲すも、其他人は固より手形上の債務者たる事なし、手形僞造の場合亦同一の理に從ふ、手形上の債務の成立するには、少くとも外形に於て、行爲者の手形に表せし意思表示あることを必要とし、其欠缺は之を補充するを許さず、手形變造の場合に於て、その變造前の手形行爲者の負擔を增大ならしめざるは當然なり、□三手形行爲は代理人をして之を爲さしむることを得、手形行爲は法律行爲なり、其代理は、民法の代理に關する一般の原則に從ふべきは論を俟たず、手形行爲代理の場合に於て、本人を手形行爲者と看做すには、イ本人の爲にすることを記載することを要す、商行爲の代理に就きては、代理人が本人の爲めにすることを示さざるときと雖も、第三者は本人に對して其權利を主張することを得るも、手形の行爲に就きては、必ず手形上何人が本人なるかを明にせざるべからず、ロ代理人の署名を要す、本人の氏名を記載するのみにては不可也、又本人の氏名を手形に記載して、代理關係あるを示すのみにては未だ不可也、本人の氏名を記したるのみにては本人は行爲者にあらず、代理人も署名なきの故を以て責任を負はず、代理人獨り署名して本人の氏名を記載せざるときは自ら責任者也、□四手形行爲は、獨立して其效力を生ず、形式上完全なる手形の存するは、各手形行爲の效力上缺くべからざる條件をり、故に基本的手形行爲が形式を缺くが爲めに無效なるに於ては、他の手形行爲も亦無效たらざるを得ざるなり、然れども他の手形行爲の無效なるや否やを決するには、外觀上手形たる形式を具備したるや否やを以て、之が標準となさざるべからず、故に手形行爲が其外觀に於て缺くる所なくんば、縱令其行爲は、法律上無效たるべき場合に於ても、他の手形行爲の成立效力に影響を及ぼさざるものとす、之を要するに個々の手形行爲は、全然相獨立して其效力を生じ、他の手形行爲が、果して手形上の債務を設定するの效力を有するや否やを問はざる也、苟も形式を備ふる時は、手形行爲の效力は其各行爲自體に就きて之を觀察すべきものとす、手形行爲は其各行爲自體に於て、手形上の債務を設定するの效力を有するや否やを決定す、手形行爲者は、各自己の手形行爲によりて債務を負擔するものにして、果して他の手形行爲が其行爲に因りて債務を負擔するや否やと相牽連する事なし、故に一手形行爲が無效なるか、若くは取消されたりとするも、其無效取消は、唯其原因の存する手形行爲の債務の無效取消たるに止まり、他の手形行爲に何等の影響を及ぼすものにあらず、故に無能力者其行爲を取消したる場合に於ては、其者は手形上の債務を負擔せざるの效果を生ずるのみ、□五無能力、商法は、手形能力に關し何等特別の規定を設けず、即ち民法の原則に從はざるべからず、民法上の無能力者(未成年者、禁治産者等)が手形行爲を爲したるときは、其手形行爲に附著する瑕疵は、行爲者其人に關するものにして、其無能力なるは固より手形の外形に於て之を窺ふ可らず、而して其瑕疵は人的性質を有し、獨り其無能力者に就きてのみ手形行爲の效力を論ずべく、他の眞正をる手形行爲者には何等の影響を及ぼさざる也、然れども無能力者は特に法律の保護を受くる者にして、其無能力は絶對の對抗力を有し、善意の取得者に對しても之を對抗するを得、無能力に基く瑕疵は、手形行爲の本質に附著するを以て、手形取得者の善意を以て之を補充するを得ざる也、無能力及び手形行爲の僞造は、共に手形自體に於て之を知るを得ず、而して手形の取得者は、其所載の文言に信賴して、權利を取得するを得べきが故に、僞造手形行爲が眞正の手形行爲の效力を害せざると同じく、無能力者の手形行爲の效力は、能力者の手形行爲の效力を傷くる事なしとす、□六詐欺、脅迫、錯誤、商法が手形行爲の取消に關して明文を揭げたるは、無能力の場合のみ、然れども詐欺又は脅迫は、又法律行爲取消の原因として、手形行爲に付き、同じく之を認めざるを得ず、從て詐欺に依る場合は、善意の手形取得者に對しては、取消の效果を主張するを得ざるも、惡意の取得者には、對抗する事を得と云はざるべからず。(商四四五、五二五、五三〇、四五七、四六八、四九七、五〇三、四五七、四九七、二六六、四三八、四三七條、民九六、一一七、一一八條、三三年二月法一七號商法中署名すべき場合に關する件)
- 英
- Bill act
- 独
- Wechselhandl-ung
- 仏
- Acte de la note
手形金額
(てがたきんがく)手形金額は、手形上の債權債務の目的にして、債務者は其支拂ふべき金額如何を知り、手形の取得者をして、其請求するを得べき金額如何を知らしむ、□一手形金額は、一種の貨幣を以て示さざるべがらず、然れども特種の貨幣を以て支拂ふべきを記載し、若くは外國の貨幣を以てするは妨なし、□二手形金額記載の場所は之を問はず、手形金額たるを推知するを得ば可なり、□三手形金額は、一定して且つ確定ならざるべからず、百圓を下らざる金額を支拂ふべし、滿期日に於て、百馬克に相當する金額を支拂ふべし、百圓以上の金額を支拂ふべし、又は百圓或は二百圓を支拂ふべしとするが如きは、ともに手形金額の記載としては不完全なり、□四手形の主たる部分に記載したる金額を以て手形金額と定む。(商四四五、四四六、五二五、五三〇條)
- 英
- Sum of bill
- 独
- Wechsels-geldsumme
- 仏
- Somme du billet
手形關係
(でがたくわんけい)手形行爲に依りて生ずる、法律上の債權債務の關係を稱して手形關係と謂ふ、例へば手形を振出したる者、引受を爲したる者、裏書をなしたる者、手形を所持する者等の間に存する手形法上の諸種なる債權債務の關係は、所謂手形關係なり。(手形の部參照)
- 英
- Bill relation
- 独
- Wechsel-verhältnisz
- 仏
- Relation du billet
手形契約
(てがたけいくや)手形契約なる語は、手形豫約といふと同じ、即ち手形發行に關する普通の契約を云ふなり。(手形豫約の部參照)
- 英
- Contract of bill
- 独
- Wechsel-vertrag
- 仏
- Contrat du billet
手形上の債權債務
(てがたじようのさいけんさいむ)手形上の債權債務とは、手形行爲の直接の目的として發生する關係を云ふ、故に手形行爲の直接の目的として發生せざるものは、手形上の債權債務といふを得ざる也、例へば爲替手形の所持人は、振出人に對して複本の發行交付を請求する權利を有し、振出人は、其請求に應ぜざるべからざるの義務を有す、而して此義務は、振出の行爲なくんば生ぜずと雖も、振出の直接の結果として生ずるものにあらずして、法律が振出人に命じたる負擔たるが故に、之を手形上の債權債務といふを得ざる也、所謂手形上の債權債務とは、例へば手形の引受をなしたるもの、又は手形の保證を爲したるものは、手形行爲の直接の目的として、引受人は手形金額を支拂はざるべからず、又保證人は、其保證の趣旨に從ひて手形金額を支拂はざるべからざるが故に、これ等は手形上の債務なり、而して債權債務は、表裏の關係なるが故に、一方に債權を有すれば一方は債務を負ふは當然也、右設例の場合に於て、手形の引受人が手形金額を支拂ふは即ち手形上の債務にして、これが支拂を請求するは、手形上の債權なり。手形上の債權者とは、手形債權の取得者を云ふものにして、即ち手形の所持人也、手形債權者の主要なる權利を擧ぐれば、□一引受人に對する支拂請求權、□二償還請求權、□三保證人に對する權利、□四參加引受人に對する請求權等の如し。(商四七〇、四八二、四九六、五〇條乃至五〇七條、四九七條乃至四九九條)
- 英
- Credit on bill、Obligation on bill
- 独
- Wechselforderung、Wechselobligation
- 仏
- Créance sur le billet、Obligation sur le billet
手形上の債權者
- 英
- Creditors on bill
- 独
- Wechselgläubiger
- 仏
- Créancier sur le billet
手形上の保證
(てがたじようのほしやう)手形上の保證人とは、手形行爲の保證をなしたる人を云ひ、主たる手形行爲ありて、之に依りて生じたる債務を擔保するの目的を以て、從たる手形行爲をなしたる時は、其行爲を稱して手形上の保證と謂ふ、保證は手形上の債務者を增加し手形の擔保力を增進し、從つて手形の權利を確實ならしむる利ありと雖も、從たる債務の存する事實は、主たる債務者の不信用を公表し、手形の流通力を減殺するの嫌あり、故に實際に於ては、手形の保證を表示するを避け、他の手形行爲の形式を選み以て其目的を達するを常とす、其方法を例擧せば、甲手形を發行し、之を乙に交付せんとするに當り、乙若し甲一人の手形行爲を以て滿足せざる時は、丙をして甲を支拂人として手形を發行せしめ、甲引受を爲したる後之を乙に交付す、此場合に於ては、丙は振出人として擔保義務を負擔す、又丙をして丁を支拂人とし、甲を受取人として手形を發行せしめ、甲裏書を爲してこれを乙に交付するときは、丙は又振出人として乙の權利を確實ならしむ、又甲振出人と爲り、丙を受取人として指定し、之に裏書を爲さしめ、丙を支拂人としてこれに引受を爲さしめ、其他丙をして手形を發行せしむる等皆保證の目的を達するの方法たらざるはなし、凡そ是等の場合に於ては、保證を爲さんとする者は引受、裏書、振出の行爲を爲し、以て手形上の債務を負擔す、保證は從たる手形行爲なり、故に數人か振出人となり、裏書人となり、若くは支拂人として引受を爲したる場合と區別せざるべからず、是等の場合に於ては、數人皆主たる手形行爲者にして、各自其手形行爲に依りて振出人、裏書人若くは引受人として獨立して債務を負擔す、其一人の行爲が無效なるときと雖も、他は依然として振出人たり、裏書人たり引受人たり、之に反して保證の場合に在りては一は主たる手形行爲にして、一は從たる手形行爲なり、故に主たる手形行爲なく主たる債務なきときは、保證は又其效力を生ぜざるなり、然れども保證が從たる行爲として、主たる行爲の在在を前提とするは、手形の外觀に於て之を云ふのみ、即ち形式に於て完全なる行爲あれば、其僞造なるとき若くは無能力者の行爲にして取消されたるときと雖も、保證の效力を傷くることなき也、保證は、主たる手形行爲の實質的效力を前提とせざるは前述せるが如し、而して其從たる性質を有すといふは、イ主たる手形行爲なきとき、又は主たる債務存在せざるときは、保證は其效力を生ぜず、數人が唯保證人として、署名したるは前者の例也、裏書人、手形上の責任を負擔せざるを記載し、裏書に間斷ある場合に於て、其間斷後の裏書人を保證するとして署名するは後者の例なり、ロ所持人が主たる債務者に對して、其手形上の權利を保全するの行爲を爲したるときは、其行爲の效果は當然保證人に及ぶ、又所持人其行爲をなさざるときは、保證人に對する權利をも合せて失ふものとす、ハ主たる債務者に對する時效の中斷は、保證人に對して其效力を生ず、ニ主たる債務者其債務を履行し、其他債務消滅の原因生じたるとき保證人の證務は、自ら消滅するものとす、ホ保證人は、主たる債務者に屬する抗辨を利用する事を得、以下保證の方式、保證の效力、保證人の權利等を述ぶべし、□一保證の方式、保證は手形行爲として手形に署名するを必要とす、然れども保證は、必ずしも手形其ものに之をなすを要せず、主たる手形行爲の傍に署名するを通例とするも、主たる署名手形の表面に在りて、保證は其裏面に爲し、若くは謄本、補箋に爲すを妨げず、要は保證たる意を明にすれば足る、□二保證の效力、保證人は、主たる債務者と同一の責任を負擔す、保證債務は、其成立に於て主たる債務と相關せざるも、保證人の債務は、主たる債務と其效力を一にす、振出人の保證人は後者全員に對し、裏書人の保證人は、被裏書人及其後者の全員に對し、振出人、裏書人と同一の債務を負擔す、引受人の保證人は、振出人に對しても債務者たり、又引受人は拒絶證書の作成なしと雖も、其義務を免るる事なく、其債務は、三年の時效に依りて消滅すべく、裏書人の保證人は、裏書人が拒絶證書の作成を免除したる場合の外、其作成なきに依りて義務を免る、保證人が分別の利益、檢索の利益若くは先訴の利益を有せざるは當然なり、然れども保證人は連帶債務者にはあらざるものとす、□三主たる債務者、保證人は、何人の爲めに保證をなすかを手形に記載するは固より普通の事例也、其之を明示せざる場合に於ては、引受ある爲替手形にありては、引受人の爲めになしたるものと看做し、未だ引受あらざる時は、振出人の爲めになしたるものと看做す、□四保證人の權利、保證人其債務を履行したるときは、手形の所持人が主たる債務者に對して有せし權利、及び主たる債務者が其前者に對して有すべき權利を取得す、從つて保證人は、主たる債務者に對して有したる所持人の權利を取得するが故に、亦手形上の債權者なりと云はざる可らず、唯主たる債務者は實質上の關係に基きて、直接の請求者たる保證人に對して有する抗辨を利用するを得べきのみ。(商四九七條乃至四九九條、二七三、二五九、四四〇條、民四五七條)
- 英
- Guarantee on bill
- 独
- Wechselbürge
- 仏
- Garant sur le billet
手形法
(てがたはふ)汎く之を解すれば、手形の取引に關する法律關係を定むる法規の總稱なり、然れども學者槪ね之を狹義に解し、所謂固有の手形法及び民事手形法の區別を説き、手形に特別なる規定を一括して、之に手形法なる名稱を付す、手形法は、單に必要なる特別法規を揭ぐるのみ、敢て一般私法と干渉せざるにあらず、又一般私法の原則の適用を排斥するにあらず、其關係恰も商法の民法に對するが如し、手形法は即ち一種の特別法たり、故に手形の取引も、特別法に規定なきに於ては、一般私法に從はざるべからず、手形豫約、原因關係、資金關係、債務負擔の能力等に付ては、手形法中何等の規定なく、手形行爲の代理、債務消滅の原因に至りては、全く其規定を缺けるにあらざるも、極めて悉さざる所あり、此等の場合に在ては、皆私法の原則を適用すべき也、手形法が私法の一部たることは異論なき處とす、然れども私法中如何なる地位を占むべきかに付きては、所説一ならず、手形を一種の契約とし、賣買、賃貸借、委任、消費貸借等と列すべきものとする者あり、支拂若くは代物辨濟中に説明し、或は更改、債權の讓渡、多數當事者の債權等と共に論じたるものあり、又信用行爲、支拂行爲の一種とするものあり、然れどもこれ皆妥當ならざるものなり、而して手形行爲に依りて生ずる手形債務の關係は、實に手形法の大部分を占め、從つて手形法の私法上の位地は、債權の編に屬せしむべきものなり、我商法は、手形行爲を以て物的商行爲とし、手形法を以て、商法法典の一部に規定したり、即ち商法の第四編はこれなり。(商四編)
- 英
- Law of bill
- 独
- Wechselordn-ung
- 仏
- Loi du billet
手形豫約
(てがたよやく)手形豫約は、千形上の法律關係の設定を目的とする契約なり、手形法上の法律關係の設定は、手形行爲を以て唯一の基礎とし、手形行爲なくんば、手形上の法律關係を發生せしむるを得ず、其之が設定を目的とする契約が、手形上の法律關係の原因たらざるは明なり、手形豫約の履行は、手形行爲にして、手形行爲ありたるときは豫約は其目的を達したるものにて、自から消滅せざるべからず、凡そ手形行爲を爲すに當りては、當事者豫め其行爲の内容に關する事項を約定することあり、例せば手形の振出に關し、何人を支拂人とすべきか、これをして先づ引受を爲さしむべきか、其形式に於て無記名式とすべきか、將た指圖式とすべきか、支拂人の住所地にあらざる地を以て特に支拂地と定むべきか、手形金額、滿期日、豫備支拂人、保證人は如何、振出人の受くべき對價、複本の數如何等は、振出人、受取人間に於て約すべき事項なり、其契約は或は手形の授受を以て直接の目的となすことあり、或は他の主たる法律關係の結果(例へば賣買、消費貸借、委任、組合、賃貸借の關係存する場合に於て、債務者、手形を以て債權者に支拂をなさんとするに當り、支拂に代へ、若くは支拂の爲めにする事あり)として之を爲す事あり、總べて此等の場合に於て、其契約の成立效果に至りては、手形法中何等の規定なく、皆一般私法の原則に依らざるべからず、又手形の裏書を爲さんとするに當りても、裏書人、被裏書人間に於て、其授受に關し記名式とすべきか、將た無記名式とすべきか、拒絶證書の作成を免除するか、無擔保の裏書を爲すか等の諸點は、皆當事者の豫約に依りて定まることあるものとす、手形豫約は手形行爲を爲すの契約なるを以て、其履行として手形行爲ありたるときは、將來に於て存するは獨り手形上の法律關係のみなりとす。
- 英
- Previous contract of bill
- 独
- Wechselvorvertrag
- 仏
- Contrat préalable du billet
手形割引
(てがたわりびき)手形金額は、一定の滿期日に於て支拂はるべきものなり、然れども手形の所持人は、其滿期日前に於て現金を要することあるは屢なり、斯かる場合に於て、滿期日に達せざる手形を銀行に裏書讓渡し、其手形金額より滿期日迄の利子、即ち割引き殘額を銀行より拂受くることを手形割引と謂ふ、銀行者の方面より見れば、手形割引は一種の貸附にして、唯割引料として滿期日迄の利子を前取りするに同じ、手形割引は之を別ちて、割引及再割引となすことを得、所謂割引とは、手形所特人が、銀行に對して手形を裏書讓渡し、割引料を支拂ひて手形金額を受取るを云ひ、再割引とは、一の銀行が一旦割引したる手形を更に他の銀行に裏書讓渡して、再び割引を爲すを云ふ、多くは小銀行が大銀行、若くは中央銀行に向つて爲すものにして、自己の領收せる割引料と、再割引の爲め支拂ふべき割引料との差額を利得するものなり。
- 英
- Discount of bill
- 独
- Wechsel-rabatt
- 仏
- Escompte du billet
滌除
(てきぢよ)滌除とは、第三取得者が抵當權者に提供して、其承諾を得たる金額を拂渡し、又は之を供託して、抵當權を消滅せしむるを云ふ、滌除は、第三取得者に於て、進んで抵當權の消滅に必要なる金額の提供を爲す事を得べく、敢て抵當權者の請求を必要とせず、然れども其金額は、第三取得者に於て隨意に之を定むることを得ず、常に必ず抵當權者に滿足を與へ、其承諾を受くることを得べきものたることを要す、抑も抵當權者が、抵當物に關して、最も利害を感ずるものは其價額如何に在り、何となれば抵當權者は結局抵當物を賣却して、其代金を自己の債權の辨濟に充つるの權を有するに過ぎざるを以てなり、果して然らば抵當權者が、抵當物の相當代價を領收して、之を其債權の辨濟に充つることを得るに於ては、強て抵當權を實行し、抵當物を競賣に付するの必要なきなり、又他方に於て、抵當物に關して、所有權其他重要なる權利を取得したる者は、其權利の目的たる不動産の負擔する抵當權を消減せしめ、其權利を保存するに於て、緊切の利害を感ずることは、敢て説明を要せざる處なり、是法律が、第三取得者に許すに抵當權者の承諾したる金額を之に辨濟し、抵當權を滌除するの權利を以てする所以にして、此方法たる第三取得者の爲めに頗る有益なるのみならず、亳も抵當權者の利益を害せざるものなり、何となれば、抵當權者は、其正當に領收することを得べき金額の辨濟を受くるを得べければなり抵當不動産の擔保する債權が、不動産の價額よりも少額なるとき、例へば一千圓の債權に對し、二千圓の價額ある不動産を抵當となしたるが如き場合に於ては、第三取得者は其債權の單純なる辨濟に依りて、不動産の負擔する抵當權を消滅せしむることを得べく、滌除の方法によりて、抵當權を消滅せしむるの必要を見ず、之に反して抵當不動産の擔保する債權額が、不動産の擔保に超過するとき、例へば四千圓の債權に對し、二千圓の價額ある不動産を擔保に供したるが如き場合に於ては、第三取得者が其債權の全額を辨濟して、抵當權を消滅せしむる普通の方法に依るときは、莫大の損失を受けざるべからず、然るに此場合に於て、滌除の方法に依る時は、第三取得者は、不動産の代價二千圓を辨濟して抵當權を消減せしむることを得るを以て、第三取得者の爲めには頗る便利なりとす、滌除の實益は、實に此點にあり、□一滌除を爲し得べき人、抵當權を滌除し得べき者は、抵當權設定後、抵當不動産に付き所有權、地上權又は永小作權を取得したる第三者とし、其他の權利を取得したる第三者は、滌除權を行ふことを得ず、蓋し所有權、地上權及永小作權は、不動産に關する最も強大なる權利にして、此等の權利を取得したる者が、抵當權實行の結果其權利を失ふに於ては、爲めに大に損害を被るに至るべきは勿論、權利の目的たる不動産が、抵當權を負擔するときは、其地位頗る不安なるべきを以て、不動産の利用改良に關しても亦大に不便を感ずべし、此の如きは、權利者其人の爲めに不利なるのみならず、又公益の爲めに害あり、旁以て此等の第三取得者をして、滌除權を行ふことを得しむるは、極めて必要なりといはざるべからず、之に反して留置權者、占有權者の如きは、抵當權の有無に付き利害の關係を有せず、地役權も亦地上權、永小作權の如く、極めて重要のものに非ざるを以て、抵當權の實行に依り、重大の損害を生ずるの虞なし、從つて此等の第三者をして、滌除權を行ふことを得しむるの必要なきものとす、□二滌除の期間、抵當權者は、其抵當權を實行せんとするに臨み、先づ其旨を第三取得者に通知することを要す、之第三取得者をして、法律に依りて附與せし滌除權を行ふことを得しむるが爲め也、蓋し第三取得者は、法律により附與せられたる權能に基き、抵當權を滌除して其權利を保存することを得べしと雖も、抵當權者が、豫め第三取得者に通知をなすことを要せずして、抵當權の實行に著手し得べきものとするときは、第三取得者は、不知の間に其權利を失ふの虞あり、是法律が抵當權の實行を第三取得者に通知するの義務を負はしむる所以にして、第三取得者は、抵當權者の通知に依りて、其權利の消滅に歸すべき競賣手續の、將さに開始せられんとすることを豫知するにより、滌除權を行使して之を豫防することを得べし、抵當權者より抵當權實行の通知を受けたるときは、其通知を受けたるより、一ケ月内に滌除の手續に著手することを要し、この期間を經過するときは、最早滌除權を行ふことを得ず、是他なし、通知を受けたる第三取得者をして、際限なく此權利を行ふことを得しむるに於ては、抵當權者は、往々にしてその抵當權の實行を妨げらるるに至り、抵當權者に不利なる結果を生ずべし、故に法律は、抵當權の實行を妨げざるが爲め、滌除著手の期間を通知後一ケ月に限定し、第三取得者をして、此期間内に滌除の手續をなさしむるものとせり、□三滌除の手續、第三取得者が、抵當權を滌除せんとするには、登記を爲したる各債權者に、左の書面を送達することを要す、(甲)權利取得に關する要領を揭げたる書面、此書面には左の事項を記載する事を要す、イ權利取得の原因、例へば賣買、讓與、交換其他の原因により、抵當物上に所有權、地上權、又は永小作權を取得したる事實關係等、即ち第三取得者の權利が、適法の原因に基くことを知らしむるに必要なる故也、ロ權利取得の年月日、當事者の能力、法律行爲の效力を審査するに付き必要なればなり、ハ讓渡人及び取得者の氏名、權利の設定、移轉の當事者の何人たるやを知るが爲めなり、二抵當不動産の性質及び所在、目的物の表示に關する記載にして、田畑、宅地、山林の如き地目、土藏、住宅、平家、二階建の如き建物の種類、並に土地建物所在の國郡市町村番地の類也、ホ代價及び其他取得者の負擔、代價とは、抵當不動産の買受代金を云ひ、其他の負擔とは、第三取得者の支拂ふべき地代、小作料又は第三取得者の引受け支拂ふべき債務の類にして、第三取得者の義務を明にするが爲めに必要なる記載なり、(乙)登記の謄本、抵當不動産の登記の謄本は、各債權者に於て、抵當不動産に關する權利の狀態、登記を爲したる債權者、相互の關係を知るが爲に必要なるを以て、法律は第三取得者をして、各債權者に其謄本を送付するの義務を負はしむるものなり、但し既に消滅したる權利に關する登記は、當事者の利害に影響を及ぼさざるを以て、謄本中に之を揭ぐるの必要なし、(丙)債權者に對する意思表示を揭げたる書面、此書面には、債權者が、書面の送達を受けたるより一ケ月内に法律の規定に從ひ、增價競賣を請求せざる時は、第三取得者に於て、甲に揭げたる不動産の代價、若くは特に指定したる金額を、債權の順位に從ひ辨濟又は供託すべき旨を記載することを要す、滌除を爲さんとする第三取得者は、此書面を以て抵當權を消滅せしむべき金額を債權者に提供し、其承諾を求むるものにして、抵當不動産の買受け代金が、其眞正の價額を代表する時は、第三取得者は、其代金を其儘債權者に提供すべく、其代金が抵當不動産の價額に比して過不足ある場合、又は第三取得者が受贈者、受遺者又は永小作權者にして代金支拂ひの義務を負擔せざる場合に於ては、新に抵當不動産の價額に相當する金額を指定して之を債權者に提供すべく、要は提供したる金額が不動産の價額を正當に代表するにあり、何となれば、提供金額多きに過ぐれば債權者の承諾を得べきも、第三取得者の損害となるべく、其金額少なきときは、第三取得者は利あるも、債權者は之を承諾せざるべければなり、而して第三取得者は、右の金額を提供すると同時に債權者に對し、該金額に付き不服あるに於ては、制規の手續に從ひ增價競賣を請求すべく、若し此手續を爲さざるに於ては、其金額には異議なきものと看做し、辨濟又は供託をなすべき旨の意思を表示するものなり。(民三七八條乃至三八三條)
- 英
- Remove
- 独
- Wegschaffung
滌除權
滌除權とは、滌除を爲すことを得るの權利を云ふ、而して滌除の何たるや、又滌除權者の何人なるやは滌除に於て説明したり。(滌除の部參照)
- 英
- Rigght to remove
- 独
- Wegschaff-ungsrecht
適式
(てきしき)適式とは、法令に定めたる一定の方式に合一するを云ふ、故に法の命ずる方式に從はざるものは、其效力を生ぜざるものなり、例へば民事訴訟を提起する場合には訴狀を裁判所に差出してなすべく、其訴狀には、□一當事者及び裁判所の表示、□二請求の一定の目的物及び其請求の一定の原因、□三一定の申立を記載すべきものとす、これ法律が命ずる方式なり、故に此方式に依らざる訴狀は、無效にして完全なる民事訴訟の提起の效なきものなり。(民訴七〇條二項)適法とは、法の定めたる事項に適合することを云ふ、換言すれば法令に違反せざることを云ふ、例へば金錢貸借に於て、其利息を元金千圓に付き年一割五分と定むるは適法にして、是以上の利息を定むるは不適法なるが如し。(民訴一九八、四八九、四九〇條、一〇年九月六六號布告利息制限法二條)
- 英
- Form
- 独
- Gesetzmäszigkeit
- 仏
- Forme
適法
- 英
- Lawfulness
- 独
- Regelmäszigkeit
- 仏
- Légalité
適用
(てきよう)適用とは、法律關係に付きて、法律を應用接合して其事件を解釋處斷することを云ふ、例へば何々事件に關し民法何條を適用すといふが如き是なり、所謂法律の類用にあらずして體用を云ふ。(民四二四、四五六、四五八、四六六、四九八六、五二五、五三四、五三五條)
- 英
- Application
- 独
- Anwendung
- 仏
- Application
摘發
(てきはつ)摘發とは、自己の知覺する所を他人に主張するか、或は事實に付きて未だ知らざる所を他人に傳播することを意味す、例へば彼れは竊盜を爲したりと主張し、又彼れは何日何所に於て何人の財物を強盜したりと主張するが如きを云ふ。(舊刑三五八)
- 英
- To make public
- 独
- öffnen
- 仏
- Publier
適齡
(てきれい)法令に特定せられたる一定の年齡に適應することを適齡と云ふ、譬へば兵役に召集せらるべき相當年齡の如き、婚姻を爲し得べき相當年齡に達したるが如き適齡の一例なり。(二五年三月勅一一二號徵兵事務條例二一條、民七八一條等)
- 英
- Conscription age
- 独
- Wehrhaftig-keit
- 仏
- Age de la conscription
手數料
(てすうれう)私人の利益の爲めに國家が或る爲を爲したる場合に於て、又は營造物の使用に對して、其行爲又は使用の報償として徵收するものを手數料と云ふ、手數料は、國家が其收入を得る一の淵源たるの點、私人より強制して徵收するの點及臣民たる身分を必要となさず、國權の服從者より徵收するの點に於て租税に酷似せり、然れども兩者には、差異あるものとす、今其主要なる點を摘示すれば左の如し、□一手數料と租税とは、其新設及變更の手續に於て差異あり、即ち第憲法六十二條第一項は「新に租税を課し及び税率を變更するは、法律を以て之を定むべし」と規定せるに拘はらず、同條二項が「報償に屬する行政上の手數料其他の收納金は前項の限りにあらず」と定めたるに依りて明也、之を形式上の差異とす、□二更に手數料と租税の實質上の差異は、手數料は憲法に所謂報償の性質を有せざるべからざるに反し、租税は此性質を具備せざるなり、□三斯くの如く兩者は其形式及び實質に於て差異あり、從て手數料を定むる標準も亦租税と同一たるを得ず、即ち手數料を定むるには、國家の行爲若くは營造物使用の費用に充當するを以て目的となし、同時に其行爲又は使用に依りて、私人が受くる利益に相當することを顧みざるべからず、されば單に一般の收入を得るの目的を以て、或手續に依りて資産を徵收するは、手數料にあらずして一種の租税たるのみ、又私人の資力の有無を量り、之に依りて手數料を定めんとせば、手數料は、其性質變じ財産税の一種となるべし、手數料の徵集は、特定人を目的とする結果、其徵集方法も亦租税の一般的徵集法に反して、限定的徵集法に依るべきもの也、詳言すれば、租税は一般の人民に對して課税物件、税率等を一定して普く賦課するを原則とするも、手數料は、國家の行爲、又は營造物の使用を求むる特定の人に限りて之を負擔せしむる也、左に手數料の區別を説明すべし、イ公法上の手數料及び私法上の手數料、公法上の手數料とは、私人が國家の行爲を求め、又は營造物を使用する場合に於て、其報償として徵收する手數料にして、私法上の手數料とは、人民に於て財産權の主體たる國家の行爲を要求し、又は財産權の主體たる國家の收益財産を使用するに依りて支拂ふ對價なり、故に後者は純然たる契約に依りて成立するものにして、行政上の手數料に屬せず、ロ狹義の手數料及び使用料、單に手數料と云ふときは一般に使用料を包含せしむるも、更に之を區別するときは、狹義の手數料及び使用料となすことを得べし、前者は國家の行爲に對する報償にして、更に行政上の手數料及び司法上の手數料の二に分つ、行政上の手數料とは、行政の範圍に存在する手數料にして、司法上の手數料とは、司法の範圍に存在する手數料なり、又使用料とは、營造物使用に對する報償なること前に述べたるが如し、手數料の徵收方法は、之を大別して直接徵收法、及び間接徵收法の二となすことを得、直接徵收法とは、當該官廳をして、人民より直接に金錢を以て徵收する方法にして、間接徵收法とは印紙を貼用せしめ、以て間接に徵收する方法也、我現行法は主として第二の方法を採用せり。(憲法六二條)
- 英
- Fee
- 独
- Gebühr
- 仏
- Honoraire
手代
(てだい)商業使用人の一種にして、商人の商業に關する或種類の事項、又は特定の事項の委任を受けたるものを手代と謂ふ、商業使用人とは、商人と雇傭關係に立ち、之に隷屬して商業上の勞務に服する者を云ふ、故に手代は商人に雇傭せらるる者たることを要す、縱令手代の名稱を有するものと雖も、其主人が商人にあらざるときは商業使用人にあらず、從て又法律上所謂手代にあらざるなり、手代はある種類又は、特定の事項の委任を受け之を執行するものにして、其代理權は、支配人の如く廣汎なる法定の範圍を有するものにあらず、一に主人の委任する所に依るものなりと雖も、手代は其委任を受けたる事項に關し、一切の行爲を爲す權限を有するものとす、此代理權は、法律が當然存在するものと規定せる所なれども、主人は之を制限することを得べく、又其制限を以て善意の第三者に對抗することを得べし、唯第三者が、其權限ありと信ずべき正當の事由を有するときは、主人は其爲したる行爲に付き責に任ずべきのみ。(商三三條乃至三五條、民一〇一條、六二三條乃至六三一條)
- 英
- Clerk
- 独
- Institor
- 仏
- Clerc
手附
(てつけ)手附とは、契約取結の際に授受する金錢其他の有價物也、手附の授受は、賣買の場合に於て最も多く行はるるものにして、我民法に於ては、賣買に關する規定の一として之が規定を設けたり、當事者が手附を授受したる時は如何なる效果を生ずるものなるか、此問題を解するには、須らく當事者が手附を授受する所以を探究せざるべからず、當事者が手附を授受するに當りては、或は之を以て單に契約成立の證據と爲すに過ぎざることあるべく、或は當事者の一方が、契約解除の權利を留保する一の方法と爲すことあるべく、或は之を以て代金の内拂と爲すことあるべし、新民法に於ては手附を以て契約解除の方法なりとし、買主は手附を抛棄し、又賣主は其倍額を償還して契約を解除することを得るものと定めたり、故に手附は契約解除の方法なりと雖も、若し當事者が手附の授受を以て單に契約成立の證據と爲し、又は代金の内拂と爲したるときは、契約解除の効果を生ぜざるは勿論なり、當事者は手附の授受を以て契約成立の證據と爲すと同時に、契約解除の方法となすことを得るものとす、之に反して當事者は、手附の授受を以て契約解除の方法と爲すと同時に、代金の内拂と爲すことを得ざるは論を俟たず、何となれば、買主が手附を抛棄し、又賣主が其倍額を償還し、賣買契約を解除することを得るは、當事者の一方が未だ契約の履行に著手せざる間に限るものなれば、買主が代金の内拂をなして契約の一部を履行したる後は、最早や買主は手附を抛棄し、又賣主は、其倍額を償還して賣買の解除を爲すことを得ざるに至るを以て也、我民法に於ては、手附を以て契約解除の方法と爲し、且つ一方に於ては其解除權の行使は、當事者の一方が契約の履行に著手する迄に限るものと規定したる理由は他なし、當事者の一方が、契約の履行に著手したる後に至りても、尚ほ解除をなすことを得るものとせば、履行に著手したる一方は、爲めに不測の損害を受くることあるのみならず、若し此の如くする時は、當事者は解除の請求を受くることあらんを恐れて、容易に履行せざるの結果を生ずるを以て也、賣主又は買主が解除權を行使したるときは、互に相手方を原狀に復せしむるの義務を負ふものとす、然れども第三者の權利は之を害するを得ざるなり、買主が手附を抛棄し、賣主が其倍額を償還するは、即ち相手方の損害を賠償するの趣旨に出でたるものにして、解除權を行使するも、別に損害賠償をなすことを要せざるもの也、買主が手附を交付したる場合に於て、其當事者の一方が賣買の履行に著手する迄に、解除權を行使せずして、其消滅を來したるときは、賣主は依然其手附を留保する理由なきを以て、直に之を買主に返還せざるべからず、然れども此場合に於て、手附が金錢なるときは、賣主は相殺の原則に依り、代金の一部として之を差引くことを得べし、しかのみならず、當事者が新なる契約を以て前の賣買を解除したるとき、又は賣買の取消されたるときは、亦解除權の消滅を來すが故に、賣主は手附を返還せざるべからざるに至るものとす。(民五五七、五四五條三項、五五九、五五五、五〇五條乃至五一二條、四八八條乃至四九一條)
- 英
- Earnest
- 独
- Handgeld
- 仏
- Arrhes
鐵道會議規則
(てつだうくわいぎきそく)鐵道會議は、遞信大臣の監督に屬し、鐵道工事著手の順序、鐵道公債募集に關する事項を審議し及鐵道に關する事項に就き、遞信大臣の諮詢に應じ意見を開申するものとす、□一鐵道會議は鐵道に關する事項に付き、主任各省大臣に建議することを得、□二鐵道會議は議長一人、議員二十一人以内を以て組織す、遞信省高等官四人、陸軍省及び參謀本部高等官二人、海軍省及び海軍軍令部高等官二人、内務省、大藏省、農商務省高等官各一人は議員に加ふべきものとす、但し特別の事件を審議する爲めに、臨時必要の場合に於ては、定員の外臨時議員を命ずることを得、□三議長は勅任官を以てこれに充つ、高等官の内より命ずべき議員は、所屬大臣の奏請に依り其他の議員及び臨時議員は遞信大臣の奏請に依り、内閣に於て之を命ず、□四鐵道會議に幹事一人及び書記を置く、幹事は議長の指揮を受け庶務を整理し、書記は議長及幹事の指揮を受け庶務に從事す。(二七年八月勅一五三號)
- 英
- Rule of railway conference
- 独
- Eisenbahnrathsreglement
- 仏
- Règles de la conférence du chemin de fer
鐵道國有調査會規則
(てつだうこくいうてうさくわいきそく)鐵道國有調査會規則は、國家が私設鐵道株式會社を買收し、政府自から鐵道事業を經營せんが爲めに、其買收手續方法等を講ずべき該調査會の設置、及び權限等に關する事項を定めたるものなり。(三二年勅四三號)
- 英
- Rules of the investigation association of nationalization of railways
- 独
- Untersuchungsgesellschafts-reglement der Eisenbahnsnationalisierung
- 仏
- Règles du comité de l'investigation de la nationalisation du chemin de fer
鐵道國有法
國家の經濟政策上、從來存立せる私設鐵道株式會社を買收し、政府自から鐵道事業を經營せん爲め、其手續方法を規定したる法律を鐵道國有法とす、今其大要を擧ぐれば、□一一般運送の用に供する鐵道は總て國の所有とす、但し一地方の交通を目的とする鐵道は此限りに非ず、□二政府は、明治三十九年より明治四十八年迄の間に於て、左に揭ぐる私設鐵道株式會社所屬の鐵道を買收すべし、イ北海道炭鑛鐵道株式會社、ロ北海道鐵道株式會社、ハ日本鐵道株式會社、二岩越鐵道株式會社、ホ甲武鐵道株式會社、ヘ總武鐵道株式會社、ト七尾鐵道株式會社、チ關西鐵道株式會社、リ參宮鐵道株式會社、ヌ京都鐵道株式會社、ル西成鐵道株式會社、ヲ阪鶴鐵道株式會社、ワ山陽鐵道株式會社、カ德島鐵道株式會社、ヨ九州鐵道株式會社、タ北越鐵道株式會社、レ房總鐵道株式會社、右に揭げたる各會社は、他の私設鐵道株式會社と合併し、又は他の私設鐵道會社の鐵道を買收する事を得ず、□三以上に揭げたる各鐵道買收の期日は、政府に於てこれを規定す、□四買收價額は左に揭ぐるものとす、イ會社の明治三十五年後半期乃至三十八年前半期の六營業年度間に於ける建設費に對する益金の平均割合を、買收の日に於ける建設費に乘じたる額を二十倍したる金額、ロ貯藏物品の實質を、時價に依り公債券面金額に換算したる金額、但し借入金を以て購入したるものを除く、右イ號に於て益金と稱するは、營業收入より營業費、賞與金及收益勘定以外の諸勘定より生じたる利息を控除したるものを云ひ、平均割合と稱するは、明治三十五年後半期乃至三十八年前半期の每營業年度に於ける建設費合計を以て、同期間に於ける益金の合計を除したるものの二倍を云ふ、□五借入金は建設費に使用したるものに限り、時價に依り公債券面金額に換算して買收價額より控除す、□六買收代價は、買收の日より五ケ年以内に於て、券面額に五分利付公債證書を以てこれを交付す、但し五十圓未滿の端數はこれを五十圓とす、□七政府は買收の日より公債證書交付の日に至るまで、買收價額に對し、一ケ年百分の五の割合に相當する金額を從前の決算期每に會社に交付すべし、□八政府は鐵道買收の執行に必要なる金額を限度とし、公債を發行す、此場合に於て利率、募集の方法、規約、据置年限及び償還年限は、命令を以てこれを定む。(三九年三月法一七號)
- 英
- Law of railway nationalza-tion
- 独
- Eisenbahnsnationalisierungs-gesetz
- 仏
- Loi du chemin de fer
鐵道作業局官制
(てつだうさげふきよくくわんせい)鐵道作業局は、遞信大臣の管理に屬し、官設鐵道▲建設、保存、運輸の業務を掌る、鐵道作業局に左の五部を置く、建築部、工務部、汽車部運輸部、計理部、而して各部の分掌は、遞信大臣之を定む、(甲)鐵道作業局に左の職員を置く、長官、部長、鐵道事務官、鐵道事務官補、鐵道技師、鐵道書記、鐵道技師、鐵道書記補是なり、(乙)各職員の職務左の如し、イ長官は一人勅任とす、遞信大臣の命を承け局中一切の事務を掌理す、ロ部長は定員五人奏任とし、長官の命を承け各部の事務を分掌す、ハ鐵道事務官は專任十九人奏任とす、各部に分屬し部務を掌る、二鐵道事務官補は專任十四人奏任とす、各部に分屬して部務を掌る、ホ鐵道技師は專任八十七人を以て定員とし、内三人以内勅任とす、ヘ鐵道書記は九百八十人判任とす、上官の指揮を受け庶務に從事す、ト鐵道技師は三百六十八人を以て定員とす、鐵道書記補は五百二十五人判任とす、上官の指揮を承け書記の事務を助く。(三〇年八月勅二六八號)
- 英
- Government organiza-tion of railway construction and traffic bureau
- 独
- Behördeordnung des Eisen-bahn Erbauen und Verkehr Bureaus
- 仏
- Organisation du bureau de la construction du chemin de fer
鐵道書記補
(てつだうしよきほ、つうしんしよきほとくべつにんようれい)□一鐵道書記補、通信書記補は、遞信大臣の定むる所の試驗規則に依り任用することを得、本令(鐵道書記補、通信書記補特別任用令)施行の際、遞信省鐵道書記、郵便電信書記補、郵便爲替貯金記補の職にある者は、試驗に拘はらず、通信書記補、鐵道書記補に任用することを得、□二右に依り任用したる判任官にして、滿二十年以上其の職にありたる者は、文官普通試驗を要せず、遞信部内の判任官に任用することを得、其遞信省鐵道書記補、郵便電信書記補、郵便爲替貯金書記補より任用せられたるものは、その前官在職年數を通算す、□三本令施行の際、遞信省鐵道書記補、郵便電信書記補、郵便爲替貯金書記補たるものにして、二ケ年以上其職にある者は、文官普通試驗を要せず、遞信部内の判任官に任用することを得。(三〇年八月勅二八二號)
- 英
- Or-dinance of special appointment of sub-clerk of railway and communication
- 独
- Specialanstellungsordnung der Eisenbahn-und Correspondenzunterschreiber
- 仏
- Or-donnance de la nomination spéciale des sub-clercs du chemin de fer et de la com-munication
通信書記補特別任用令
鐵道整理公債
(てつだうせいりこうさい)政府が私設鐵道株式會社を買收したる結果、其會社より繼承したる債務を整理償還せんが爲めに、鐵道整理公債發行規程により發行する公債を云ふ、□一政府は私設鐵道株式會社より承繼したる債務を整理償還する爲め、鐵道國有法により公債を發行す、□二此公債の利率は一ケ年百分の五とす、□三此公債の證券は大日本帝國政府五分利公債證書とし、隨時これを發行して日本銀行に交付す、□四此公債の元金は發行の年より五ケ年据置き、其翌年より向ふ五十ケ年以内に償還す、□五此公債の利子は、每年、三月、九月に於て、其月の以前六ケ月間に屬するものを仕拂ふ、□六此公債の利子は、其發行が月の十五日以前に在るものは下半月分より、月の十六日以後にあるものは翌月分より之を交付し、元金償還のときは、其償還の時迄之を交付す。(三九年一二月大藏省令四九號、鐵道整理公債發行規程)
- 英
- Consolidated bonds of rail-roads
- 独
- fundirende Staatsschuld der Eisenbahnen
鐵道船舶郵便規則
(てつだうせんぱくいうびんきそく)鐵道船舶郵便法は、鐵道又は船舶に依り、郵便物を運送する方法を定めたるもの也、本法に於て鐵道運送業者と稱するは、私設鐵道條例▲依り鐵道を以て運送營業を爲す者を云ひ、船舶運送業者と稱するは、商法に依り船舶を以て運送業を營む者を云ふ、□一鐵道運送業者は、郵便取扱の爲め郵便官署の要求あるときは、鐵道用地及び停車場建物の一部を供し、又は建物の建築若くは改築を爲すべきもの也、此場合に於ては土地建物の使用料及び建築改築の費用は、郵便官署之を支給す、□二鐵道運送業者は、郵便官署の要求あるときは、定期列車每に郵便車として列車定數の總容積の五分の一迄は其列車の一部を供給し、又は郵便官署の交付に係る同一容積以内の郵便車を聯結すべきものなり、船舶運送業者は、郵便官署の要求あるときは、其の船舶に相當の郵便船室を供給すべきものとす、□三鐵道運送業者列車の發著時刻を變更するときは、七日以前に之を郵便官署に報告すべきものなり、但し天災其の他避くべからざる事故の爲め、發著時刻の變更を決定したるときは、直に之を報告すべきものとす、□四船舶運送業者は、船舶に搭載したる郵便物をその目的地に於て、他の貨物に先だち陸揚げすべきものとす、天災の爲め航海の途中に於て、積替若くは陸揚するとき又同じ、□五郵便物搭載列車、天災事變の爲め其の進行を停止したるとき、又は郵便物搭載船舶航行中天災事變に依り、郵便物を陸揚げしたる鐵道運送業者又は船舶運送業者は、郵便取扱員のあらざる場合に限り、直に該郵便物を附近郵便官署に送達すべきものなり、その送達に依り要する費用は、郵便官署より支給す、□六鐵道船舶運送業者には、運送料金を支給す、(鐵道船舶郵便規則參照)□七過失に依り運送中に係る郵便物を亡失し、又は之を毀損したるときは、鐵道運送業者、又は船舶運送業者を十圓以上百圓以下の罰金に處す。(三三年三月法五六號)
- 英
- Regulation of the post by railway and ship
- 独
- Postregel der Eisenbahn und des Schiffes
- 仏
- Règles de la poste du chemin de fer
鐵道船舶郵便法
鐵道船舶郵便法に依り運送すべき郵便物には、現に郵便物運送の用に供する必要物件を包含す、□一運送業者の郵便物運送及び授受に關する取扱方法、並に運送業に交付すべき金額の支拂法は、郵便官署の指定する所に依る、□二郵便物の運送すべき區域、度數、時刻、列車並に郵便車室の容積、及び郵便物の受渡局は、郵便官署の指定する所に依る、□三郵便物を運送する船舶にして、發著日時を定めたるもの其の日時を變更するときは、船舶運送業者は、五日以前にこれを當該郵便官署に報告すべきものとす、但し天災其他避くべからざる事故の爲め、發著日時の變更を決定したるときは、直に報告すべきものなり、□四一列車若くは一船舶に於ける郵便車室又は郵便船室は、郵便官署の許可を得るにあらざれば、二ケ所以上に分離すること得ず、□五船舶運送業者に交付すべき運送料金は、其の供給する容積に應じ左の割合に依る、イ百立方尺まで、一浬每に金二錢五厘以内、ロ二百立方尺まで、一浬每に金三錢五厘以内、ハ三百立方尺まで、一浬每に、金四錢五厘以内、二四百立方尺まで、一浬每に、金五錢八厘以内、ホ五百立方尺まで、一浬每に、金七錢一厘以内、ヘ六百立方尺まで、一浬每に、金八錢五厘以内、ト七百立方尺まで、一浬每に、金十錢以内、チ八百立方尺まで、一浬每に、金十一錢六厘以内、り九百立方尺まで、一浬每に、十三錢三厘以内、ヌ千立方尺まで、一浬每に、金十五錢一厘以内、ル千立方尺を超過したる場合には其全容積に對し、百立方尺まで、一浬每に、金一錢五厘以内、但し郵便官署に於て特別の條件を付したるときは、前上の料金率を增加する事あるべし、□六郵便車の使用料金は左の割合に依る、イ三百立方尺まで、一哩每に、金一錢八厘以内、ロ五百立方尺まで、一哩每に、金三錢五厘以内、ハ七百立方尺まで、一哩每に、金五錢六厘以内、二千立方尺まで、一哩每に、金九錢以内、ホ千立方尺を超過したるときは、其の全容積に對し百立方尺迄、一浬每に、金一錢以内とす、□七鐵道運送業者又は船舶運送業者は、郵便物を搭載したる鐵道列車又は船舶にして、天災事變に遭遇するときは、郵便官署又は郵便事務員の要求に依り列車又は船舶に郵便物を搭載の儘保管し、又は他の貨物に先ち、其の指定の地に送達すべき義務あるものなり、其送達に要する費用は郵便官署より之を支給す。(三三年九月遞信省令四四號)
- 英
- Law of railway post and ship post
- 独
- Postgesetz der Eisen-bahn und des Schiffes
- 仏
- Loi de la poste du chemin de fer
鐵道抵當
(てつだうていとう)鐵道抵當とは、鐵道抵當法に依り、私設鐵道株式會社社債擔保の目的と爲す爲め、鐵道の全部又は一部に付き鐵道財團を設く事を云ふ、該財團は、抵當權の消滅に依りて消滅す、鐵道抵當は、固より私設鐵道株式會社の存立を前提として設定することを得るものなれども、政府は明治三十九年三月法律第十號を以て、鐵道國有法を發布したるを以て、我國に於ては最早私設鐵道株式會社の存立を認めざるものとす、從て其當然の結果として、鐵道抵當の設定は不必要のものとなれり。(三八年三月法五三號鐵道抵當法)
- 英
- Railway pledge
- 独
- Eisen-bahnspfand
- 仏
- Gage du chemin de fer
鐵道犯罪罰例
(てつだうはんざいばつれい)鐵道犯罪罰例は、明治六年第百〇一號布告に係り、鐵道に對して危害を加へ又は妨害をなさんとしたるもの、又は鐵道掛員を妨害したる等の場合に、これを所罰すべき方法を定めたるものなりしが、明治三十三年三月法律第六十五號鐵道營業法の發布と共に、廢止せられたり。(鐵道營業法四五條)
- 英
- Penal regulations of offence of railway
- 独
- Strafregulierung des Eisenbahnverbrechens
- 仏
- Règles pénale du chemin de fer
鐵道費補充公債條例
(てつだうひほじうこうさいでうれい)□一鐵道費補充公債は、神奈川縣下戸塚、橫須賀間、滋賀縣下大津、長濱間の鐵道布設資金を補充するが爲め、證書額面二百萬圓を限り募集するものとす、□二鐵道費補充公債を募集する時は、其總額價格、應募申込日限、應募金拂込寺は、大藏大臣之を定め告示するものとす、□三鐵道費補充公債元金は、募集の年より五ケ年据置き、其翌年より向ふ五十ケ年間抽籖法を以て償還するものとす、但し償還金額は、其時々大藏大臣之を定め、豫め告示すべきものとす、□四鐵道補充費公債利子の割合は、一ケ年百分の五なり、利子は每年六月、十二月に於て支拂ふものとす、公債の利子は、その元金拂込の時、月の十五日以前にあるものは下半月分より支拂ひ、月の十六日以後にあるものは翌月分より支拂ひ、元金償還の月まで月割を以て支拂ふものとなす。(二二年一月勅六號、一九年一〇月勅六六號整理公債條例三、六、九、一一、一二條)
- 英
- Regulation of railway expense supplement bond
- 独
- Ergänzunganleiheregel der Eisenbahns-kosten
- 仏
- Règles du dépens du bon du chemin de fer
鐵道敷設法
(てつだうふせつはふ)政府は帝國に必要なる鐵道を完成する爲め、漸次豫定線路を調査し及び敷設するものとす、此の敷設豫定及其資金募集の法則を定めたるものが鐵道敷設法なり、鐵道敷設に要する費用は、公債を募集して之に充つ、其利子は一ケ年百分の五以下とす、而して鐵道敷設は、緩急に應じて之が工事を進行するものとす。(二五年六月法四號)
- 英
- Law of railway construction
- 独
- Gesetz der Eisenbahnerbauung
- 仏
- Loi de la construction du chemin de fer
手續法
(てつづきはふ)法律を分ちて實體法及び手續法の二者となす、此區別は、法律關係の實體に關すると否とに據り生ず、實體法(又原則法、主法とも云ふ)は、法律關係の實體を定むる法律也、手續法(又助法とも云ふ)は實體法を運用するの手續を定むる法律なり、實體法に依り定りたる權利は、之を實行することを得しめざるべからず、實體法によりて定まりたる義務は、之を履行することを怠らしむべからず、又權利の實行を保障し、義務の履行を確保する爲めには強制の必要を生ず、手續法は、權利の實行、義務の履行幷に保障確保する爲めに爲すべき強制に關する手續を示すものなり、蓋し實體法が其效用を全うするは、手續法の存するに由る、實體法に於て、權利義務の實體を確定するも之が運用に關する手續を定めざれば、空文徒法たるを免れず、故に實體法の傍に手續法の存するは當然也、實體法の例を示せば、納税の義務を定むる法律、兵役の義務を定むる法律は實體法にして、租税徵收の手續を定むる法律徵兵の手續を定むる法律は、前記の法律に對する手續法也、刑法は、國家刑罰權の實體を定むるものにして實體法なり、刑事訴訟法は刑罰權を行ふ手續を定むるものにして、刑法に對する手續法なり、物權法、債權法、親族法、相續法、商法は法律關係の實體に關するものにして、實體法なり、民事訴訟法、非訟事件手續法は、其運用に關するものにして、此等の諸法に對する手續法なり。
- 英
- Auxiliary law
- 独
- Hülfsgesetz
- 仏
- Loi auxiliaire
手荷物
(てにもつ)旅客が身邊に携帶する物品を手荷物と謂ふ、縱令旅客の物品なりと雖も、運送人に委託し、自己が直接に携帶せざるものは手荷物にあらず、而して手荷物たる以上は、其品質を問はざるは勿論なれども、通常生活上の狀態として、金錢有價證券の類は之を手荷物と稱せざるものとす。(民三一七條、商三五一條)
- 英
- Baggage
- 独
- Gepäck
- 仏
- Bagage
貼用
(てふよう)貼用とは、ある物を貼著して使用するを云ひ、例へば印紙、郵便切手を證書又は繪葉書に貼用するが如し、而して貼用は、一旦其使用によりて效用を遂ぐる事を指すものなるが故に、其使用を遂げたる以上は、偶々之か消印を脱したる場合と雖も、最早印紙、郵便切手の效用を完うしたるものなるが故に、之を再び貼用することを得ず、これを再貼用したる場合に於ては罰せらる、又貼付と云ふも物にあるものを貼著することを云ふものなれば、貼用と同意義を有ずるものなり。(舊刑一九九)
貼付
典獄
(てんごく)典獄は、監獄の長となり、司法大臣の指揮監督を承け、監獄の事務を掌理し、所部の職員を指揮監督す、典獄は全國各監獄を通じて五十六人奏任)を置く、又典獄は判任待遇職員の任免を專行す。(三六年三月勅三五號監獄官制)
- 英
- Prison governor
- 独
- Herrscher des Gefängniszes
- 仏
- Gouverneur de la prison
轉質
(てんしち)質權とは、債權の擔保として債務者又は第三者より受取りたる物を占有し、且つ其物に付き他の債權者に先ちて、自己の債權の辨濟を受くるの權利を云ふ、而して轉質とは、質權者が更に自己の債權者に對し、其債務の擔保として質物を交付するを云ふ、轉質は新なる質權の設定に外ならず、蓋し質權は、一の物權なるを以て、物權の本質に從ひ設定者の意思如何に拘はらず、之を讓渡することを得べきは論を俟たずと雖も、質權は主たる債權に附隨する從たる物權なるを以て、主たる債權と共にするにあらざれば、之を讓渡すことを得ざるは勿論、新に質權を設定することは、所有者の承諾を得るにあらざれば爲し得べからざるや明也、然るに我民法は、主たる債權と共に質權を移轉することなく、別に質物上に質權を設定することを得べきものとなせるは、全く從來の慣習と、實際上の便宜とに基きたるもの也、右の如く質權者は、設定者の承諾なくして質權を其債務の擔保に供するの權利を有すと雖も、絶對無條件にて此權利を行ふを得ず、即ち質權者が轉質を爲すには、左の條件の具備することを必要とす、□一其權利の存續期間内に於て轉質を爲すこと、質權者が轉質を爲すには、其權利の存續期間内に於て爲すことを必要とす、これ他なし、何人と雖も自己の有するよりも大なる權利を他人に讓渡する能はざるは、法理上の原則にして、法律は唯質權者の有する權利の範圍内に於て、轉質を爲すことを之に認許するに過ぎざるを以て也、故に質權が、存續期間の滿了に依りて消滅したるときは、轉質も亦當然其效を失ふべきものとす、民法は單に質權の存續期間に關してのみ轉質の制限を規定し、其他の點即ち質權の範圍體樣に關しては、別に規定する處なし、然れども新質權は舊質權の範圍體樣に從ふこのを要し、之よりも廣き範圍、重き體樣を有することを得ざるは、轉質の性質上自ら明確なり、又不動産質には存續期間の定めあるも、動産質には通則期限の定めなく、之あるは極めて稀有の事に屬するを以て、轉質に關する期間の制限は、專ら不動産質權者が轉質を爲す場合に適用せらるべきものとす、□二轉質より生ずる損害に付き貴に任ずること、法律は、實際の便宜上轉質を爲すことを質權者に許すと雖も、之が爲め質權設定者をして、損害を被らしむるは不公平なるを以て、轉質より生じたる損害に付ては轉質を爲せる質權者に於て其責に任ずべく、設定者をして之を負擔せしむることを得ず、質物が轉質權者の過失に依りて、滅失毀損したる場合は勿論、其滅失、毀損が不可抗力に依りたる場合と雖も、轉質を爲さざりしならば生ぜざるべきものなるに於ては、質權者は之に對して責任を負ふべきものとす、何となれは此場合に於ては、質物の滅失、毀損は、結局轉質に基因するものと云ふを得べければなり、然れども質物の滅失、毀損が轉質を爲さざるも、尚免がれ得べからざりしときは、質權者に其責任なしとす、例へば質物が轉質後、轉質權者の家屋と共に火災に依り燒失したる場合に、質權者の家屋も亦火災に罹り、質物は、質權者の手に在るも、等しく燒失の難を免がれ得べからざりしときは、質權者は賠償の責任を負はざるものとす、轉質の性質に付ては、學者間に議論ある所にして、或は之を以て、質權付債權の停止條件付讓渡なりとし、或は之を以て、質權付債權の質入れとし、或は之を以て一種の權利質なりと論ずる者あれども、我民法の解釋としては、質物の再度の質人、即ち新なる質權の設定なりとするを正當とす。(民三四八、三四二條)
- 英
- Re-pledge
- 独
- Weiterpfand
- 仏
- Garantie
電信法
(でんしんはふ)電信、電話の施設、及使用に關し、行政法の上に於ける各種の制限、私法上に於ける特別法規、即ち電話電信の使用に關する國家と私人との契約條項に關して、規定せられたる法規也、電信及び電話は政府之を管掌す、左に揭ぐる電信又は電話は之を私設することを得、□一一邸宅内若くは一構内に於て專用に供する爲め施設するもの、□二鐵道業其他電信電話の專用を必要とする事業の爲め施設するもの、□三公共團體の事務執行の爲め、一市區町村内若くは隣接市區町村間に於て、公署相互間又は一郡市區内に於て、公署と第一次監督官廳との間に施設するもの、□四電報送受の目的を以て、一人の專用に供する爲め電信官署との間に施設するもの、□五一市區町村内若くは隣接市區町村間に於て、又は電信電話の連絡なく、且つ四號に依るを不適當とする市區町村間に於て、一人、又は一營業の專用に供する爲め施設するもの是なり、主務大臣は、公安の爲め必要と認むるときは、區域を定め、電信又は電話に依る通信を停止若くは制限することを得、電信又は電話に依る通信にして、公安を妨害し又は風俗を壞亂するものと認むるときは、主務大臣の指定したる電信官署、又は電話官署に於てこれを停止することを得、電信若くは電話專用の物件又は現に其用に供する物件は、之を差押ふることを得ず、電報は命令を以て定むる場合を除くの外其の宛所に配達す、但し發信人の請求に依り其の送達を停止することを得、宛所に配達し又は受信人に交付し得ざる電報は、これを公示し、其の公示の日より三十日間に交付の請求なきときは之を棄却す、電信又は電話に關する料金は命令を以て定むる場合の外、郵便切手を以て納付すべきものとす、電信又は電話に關する料金納付の義務は、其の納付すべき日より六ケ月内に納付の告知を受けざるに依りて消滅す、權利なくして電信若くは電話を施設したる者、又は權利を失ひたる後主務官廳の指定したる期内間に、私設の電信若くは電話を撤去せざる者は、五圓以上百圓以下の罰金に處し、其の電信線又は電話線又は電信電話の機器を沒收す、前上の場合に於て、其の電信又は電話を他人の用に供し、依りて金錢物品を取得したるときは之を沒收す、既に消費又は讓渡したるきは其の金額又は代價を追徵す、但し其電信又は電話を使用したる者は五十圓以下の罰金に處す。(三三年三月法五九號)
- 英
- Law of telegraph
- 独
- Tele-graphengesetz
- 仏
- Loi de la télégraphe
傳染病豫防法
(でんせんびやうよばふはふ)傳染病豫防法は、傳染病豫防方法を規定したる法律なり、本法に於て傳染病とは左の八病を云ふ、虎列剌、赤痢、膓窒扶斯、痘瘡、發疹窒扶斯、猩紅熱、實布垤利亞(格魯布を含む)ペスト、是なり、傳染病を豫防する爲めには、清潔方法及び消毒方法を勵行し、又傳染病流行地の往來を遮斷し、其他傳染病患者を傳染病院又は隔離病舍に入らしめ、其治療を行ふものとす、地方長官は傳染病豫防上必要あるときは、左の事項の一部又は全部を施行することを得、□一傳染病患者の有無を檢査せしむること、□二市街村落の全部又は一部の交通を遮斷すること、□三祭禮、供養、興行▲集會等の爲め人民の群集することを制限し又は禁止すること、□四古著、襤褸、古綿、其の他病毒傳播の虞ある物件の出入を制限し、若くは停止し又は其の物件を廢棄すること、□五傳染病傳播の媒介となるべき飮食物の販賣、授受を禁止し、又はこれを廢棄すること、□六船舶▲醫師の雇入を命じ、又は汽車、船舶若くは多數人民の集合する場所に豫防上必要の設備を爲さしむること、□七清潔方法、消毒方法の施行を命じ、及び井戸、上水、下水、溝渠、芥溜、厠圊の新設、改築、變更、若くは廢止を命じ、又は其の使用を使止すること、□八一定の場所の漁撈、游泳又は其の水の使用を必要なる日時間制限し、若くは停止すること。(三〇年三月法三六條)
- 英
- Precaution law of epide-mics
- 独
- Vorsichtsgesetz für die epide-mische Krankheit
- 仏
- Loi de la précau-tion de la maladie de hypochondriaque
傳染病豫防法施行規則
傳染病豫防法施行規則は、傳染病豫防方法に關する手續を定めたるものなり、例へば患者の取扱に關する事項、或は交通遮斷方法の如し、市町村長、區長又は豫防委員は、傳染病の屆出、又は通報を受け、又は傳染病あることを知りたるときは、直に其家に臨み清潔方法、消毒方法を施行せしむべく、又警察官吏若くは檢疫委員は、傳染病に付き左の日時間交通を遮斷することを得、□一虎列剌、赤痢、此場合に於ては、患者又は死體ある間及患者を入院、若くは入舍せしめ、又は患者治癒若くは死亡したる後消毒方法の施行を了りたる時より起算し滿五日間、□二發疹窒扶斯、ペスト、此場合に於ては、患者、又は死體ある間及び患者を入院若くは入舍せしめ、又は患者治癒若くは死亡したる後、消毒方法の施行を了りたる時より起算し滿十日間、但し市街村落の全部、又は一部交通を遮斷する場合に於ては、尚十日以内繼續することを得。(三〇年五月内務省令一一號)
- 英
- Regulation for the application te the precaut on law of epidemics
- 独
- Ausführungsregel des Vorsichtsgesetzes für die epidemische Krankheit
- 仏
- Règles de l'application de la précaution contre hypochondriaque
轉貸
(てんたい)轉貸とは、賃貸借契約に於て、借主が其賃借物を賃貸人の承諾を得て更に第三者に賃貸することを云ふ、賃借人が賃貸人の承諾を得て、適法に轉貸を爲したるときは、理論上より云へば、轉借人は賃借人のみに對して義務を負擔し、賃貸人に對しては何等の義務を負擔せざるものと云はざるべからず、蓋し轉借人は、賃貸人と契約を爲したるものにあらざるを以て也、然れども法律は、賃貸人を保護するの主旨を以て、轉借人をして賃貸人に對し直接に義務を負擔せしめたり、唯轉借人の賃貸人に對する義務は、其賃借人に對して負擔する義務の範圍を超ゆることを得ざるものとす、何となれば、轉借人の義務は其賃借人と取結びたる賃貸借に依りて生ずるものなれば也、此の如く轉借人は、賃貸人に對して義務を負擔するが故に、其支拂ふべき借賃は、之を賃貸人に支拂はざるべからず、唯賃借人に對して負擔する借賃の額を超えて、其支拂をなすことを要せざるのみ、又轉借人は、賃借人に返還を爲すべき時期に於て、之を賃貸人に返還すべきものにして、決して貨借人となしたる契約上の時期の到來前に返還をなすことを要せざるものなり、右の如く轉借人は、賃借人と爲したる賃貸借契約に基き、賃貸人に對して義務を負擔するものなりと雖も、賃借人に對して既に契約上の義務を履行したるときは、賃貸人に對して更に其義務を履行するを要せざるなり、從つて轉借人が既に賃借人に對して、既に借賃の支拂をなしたるときは、再び賃貸人に支拂を爲すことを要せざる也、然れども轉借人は、賃借人に借賃の前拂を爲したるの故を以て、賃貸人に對抗する事を得ず、蓋し轉借人が借賃の前拂を以て、賃貸人に對抗することを得るものとせば、轉借人と賃借人との通謀に依り、容易に賃貸人を害することを得るに至るべきを以てなり、賃貸借の終了したるときは、轉貸借も亦當然終了するものなるや、今若し賃借人の權利は物權にして、轉貸借は賃借人が賃借物の上に存する物權に基き、第三者をして、之が使用及び收益を爲さしむるものなりとせば、賃貸借の終了は、當然轉貸借の終了を來すものと云はざるべからず、然るに我民法は賃借人の權利を以て債權となし、轉貸借は賃借人が轉借人をして、賃借物の使用及び收益をなさしむる義務を負擔する契約なりとなしたるが故に、假令賃貸借が終了するも、賃借人と轉借人との間に存する債務關係は、之が爲め何等の影響を被ることなきもの也。(民六一二條乃至六一六條、六〇一條)
- 英
- Sub-let
- 独
- Untermiethe
- 仏
- Sous-louer
轉貸人
- 英
- Sub-lessor
- 独
- Untermiether
- 仏
- Sous-bailleur
轉得
(てんとく)轉得とは、他人が取得したる物又は權利を轉輾して取得するを云ひ、例へば賣買に於て、乙買主が、甲賣主より或財産權を買得したる場合に、乙買主が、其財産權を更に丙者に賣却したる場合に於ては、其の丙者は即ち轉得したる者なり、而して轉得者とは轉買を得たる者にして、前例に於ける丙者は即ち轉得者なりとす。(民四二四條)
- 英
- Acquisition
- 独
- Erwerbung
- 仏
- Acquisition
轉得者
- 英
- Acquirer
- 独
- Erwerber
- 仏
- Acquéreur
天然果實
(てんねんくわじつ)物の用方に從ひて收取する所の産出物を天然果實と謂ふ、□一天然果實は産出物なり、産出物は元物より分出する物なり、元物より分出する物なるが故に、元物の組織の一部を爲す物にあらず、之と獨立したる一體を爲す物なり、分出は自然の作用に由るものあり、人爲の作用に由るものあり、有機的の作用に由るものあり、物理的の作用に由るものあり、例ヘば牛の兒、山林の木材、鑛山の鑛物、土地の砂利の如き皆産出物なり、如何なる作用に由るを問はず、産出物は直接に分出したることを要す、製作の手續に由りて初めて生ずる物は産出物に非ず、例へば木炭樟腦は山林の産出物に非ず、牛酪は牛の産出物に非ず、□二天然果實は物の用方に從ひ收取したる物也、物の用方に從ひ收取するとは、物の經濟的性質に適應して收取することを云ふ、經濟的に定りたる性質に從ひて分出する物にあらざれば、決して果實にあらず、即ち原物を所有する目的が、産出物を收取するに非ずして、他の經濟上の需要を充すにあれば、假令是より産出物を出すも之を果實と云ふを得ず、例へば田畑は、穀物、野菜を收取する經濟的目的の爲めに所有す、故に此性質に從ひ收取せられたる穀物、野菜は果實なり、乳牛の乳汁、山林の樹木も亦同じ、之に反して庭園の樹木、荷牛より生ずる乳汁は果實に非ず、天然果實は、未だ元物より分離せざる間は元物の一部にして、之と別個の成立を有するものにあらず、故に勿論元物の所有者に屬して他人に屬すべき謂れなし、天然果實は、原物より分離するに由て初めて獨立の一體を爲し、原物と別々の運命に從ふことを得、天然果實が原物より分離するときは何人に屬するか、法律の定むる處に從へば、果實を收取する權利ある人に歸屬す、何人が果實を收取する權利を有するや、法律の定むる處に從へば、通常所有者は收益の權能を有するが故に、果實を收取すべきもの也、然れども所有者が收益權を他人に與へたるときは、此權利を與へられたる者が果實を收取する權利を有す、例へば永小作人、質權者の如し、若し果實を收取する權利を有するものが永久不變なるときは、果實の歸屬する所に付き疑を生ずることなし、然れども果實を取得する權利を有する者に變更を生じたるときは、前權利者に歸屬すべきや、後の權利者に歸屬すべきやに付き問題を生ず、例へば姙みたる牛を甲より乙に賣却し、穀物の成長したる田を丙より丁に質入するが如き場合に於て生じたる犢牛は、甲に歸すべきや乙に歸すべきや、刈り取られたる穀物は丙丁何れの有に歸すべきか、法律は規定し曰く、天然果實は其元物より分離したる時に於て、之を收取する權利を有する者に歸屬すと、故に天然果實が元物の一部を形成する時に於ける權利者の何人なるやは措て問はず、原物より分離して、獨立の存在を有するに至る瞬間に權利者たる者が其所有者と爲る也、民法の規定には、分離の時に於ける權利者が取得すとありて、分離の方法に付ては何等の規定なし、故に自然に分離したる場合と、人工的に分離したる場合とに區別なく、權利者自身が分離したると他人が分離したるとを問はず、又分離の時期に付ても何等の規定なきが故に、分離の時期が適當なりしや否やに依りても、何等の差異をも生ずべきものにあらず。(民八八、八九條、果實の部參照)
- 英
- Natural fruit
- 独
- Natur-frucht
- 仏
- Fruit naturel
天賦
(てんぷ)天賦とは、人が生れながらに具有する又は遺傳に依りて得たる心的狀態をいふ、これを神の特に各人に授けたる才能と見る如きは、心理學上の許容する能はざる所なるは勿論なれど、其發現に際しては、特殊の體質心質は固より遺傳、機會、其他其者に因果となり、或は條件となる所の優秀なる點を綜合して、具有する事を承認せざるべからず、而して其が絶へず環象の剌戟に依りて、外部に向つて發現せんとするに當り、各人の受くる遺傳と及び各人の接觸する環象は總べて異なるを以て、天賦の發現も亦各人に於て同一なる能はざる理なり、又此遺傳と云ふも、爾後の經驗教育を俟たざる時は、單に粗なる神經の遺傳に過ぎざるを以て、終に消滅し去ることあり、夫れ天賦の才能も磨かざれば光りを發せずといふ俚言の眞なる所以也、天賦的とは、後天的經驗により收得することに反對し、人々が生れながらに具有する一切の性質を指示する形容詞なり。
- 英
- Innate
- 独
- Angeboren
- 仏
- Inné
添付
(てんぷ)添付とは、一物が他物の從として之に合するを云ふ、二個の別異のものが併合したる場合に、各物件が同一の所有者に屬するときは、合成物も亦其所有者に屬すべきは論を俟たず、又各物件が所有者を異にする場合と雖も、併合したる各物件が、事實上及法律上更に分離して舊體に復し得べきときは、各所有者は依然として、各物件の上に所有權を保有することを得べし、然るに所有者を異にする物件が一旦併合せし後、之を分離して舊態に復することの有形的に不能なることあり、又分離は可能なるも、法律が公益上其分離を許さざる事あり、添附が所有權取得の原因となるは、即ち此場合に限るものにして、原則として合成物上に所有權を取得する者は主たる物の所有者にして、主たる物の所有者は添附に依り、新に從たる物の上に所有權を取得す、然れども時ありて、各所有者が合成物の上に共有權を取得する事あり、此場合に於ては、各所有者は合成物中自己の所有に屬せざりし部分に付ては、新に所有權を取得したるものとなるべし、「添附の種類」、添附は之を三種に區別することを得、附合、混和、加工これなり、右の中附合は動産、不動産に共通し、混和及び加工は單に動産のみに關するものなり、□一附合、附合とは、二個以上の有形物が互に相接合して一物を成すを云ふ、例へば數個の木片を結合して一枚の板を作るが如し、附合にありては、二個以上の物件が重疊又は並列して結合するを常とし、結合後各物件の存在を認識すること容易なりとす、而して附合は不動産に關すると動産に關するとに從ひ、之を區別することを得べし、(甲)不動産の附合、不動産の所有者は、其不動産の從として附合したる從たる物の所有權を取得す、例へば河流沿岸の所有者が其土地に合體したる寄洲の所有權を取得し、土地の所有者が、其土地に植付けたる草木の所有權を取得し、家屋の所有者が、家屋の兩庇、樋、其他家屋の附屬として、之に結合したる物の所有權を取得するが如し、但し附合したる從物が何人の所有に係るや、又之を附合せしめたる者の何人なるやはいふを要せず、蓋し此場合に於て一般の原則に從ひ、從物の所有者の請求に基き、不動産より從物を分離して之を引渡す事を要するものとするときは、分離の爲め不動産と從物とを併せて毀損し、經濟上頗る不利なる結果を生ずるを以て、法律は公益を保護するが爲め、不動産の所有者をして從たる物の所有權を取得せしめ、其不動産を完全なる狀態として、之を維持することを得しむ、不産産の所有者が之に附合したる物の所有權を取得するには、左の要件を具へざるべからず、イ分離が不動産又は附加物を毀損すること、附加物の分離にして何等の損害を生ずることなきときは、分離を禁ずるの要なく、不動産の所有者をして附加物の所有權を取得せしむるの理由なし、例へば一時土地家屋に取付けたる足代の如し、草木の未だ地中に根を生ぜざるもの、又は假りに植付▲たるもの又同じ、ロ不産産と附加物の間に主從の關係あること、不動産の所有者をして其附加物の所有權を取得せしむるは、其附加物が不動産の從たるか爲めに外ならず、故に兩者間に此關係なきときは、不動産の所有者は、附加物の所有權を取得することを得ざるや明なり、例へば家屋は土地に附合するも、我法制上獨立の不動産を成し、土地の從物にあらざるを以て、土地の所有者は、他人の建築したる家屋の所有權を取得することを得ず、ハ附加物は不動産上の權利者が、不動産に附著せしめたるにあらざること、不動産に關して權利を有する者即ち地上權者、永小作人、賃借人が、其權利の行使として權利の目的たる不動産に、他物を附屬せしめたる場合に於て、其附屬物は不動産の所有者の所有に歸せざるものとす、例へば地上權者が權利の目的たる土地の上に、竹木を栽植し、永小作人、賃借人が田畑に草木の植付を爲すが如し、總て此等の場合に於ては、附屬物は不動産上權利者の所有に屬す、蓋し此等不動産上の權利者は、何れも皆其權利の作用に依りて、他人の所有地内に、竹木工作物を所有する事を得るものにして、此等權利者が其權限内に於て附屬せしめたる物も、亦附合に依り不動産所有者の有に歸するものとするに於ては、其權利は何等の效用を爲さざるに至り、之を設定したる所以の目的に反するの結果を生ずべければなり、故に此等の權利者は附合に拘はらず、附屬物の所有權を保有し、任意に之を賣却し、又は之を收去することを得べし、(乙)動産の附合、動産の附合が所有權取得の原因となるは、附合したる動産が毀損するにあらざれば、分離すること能はざる場合及び分離の爲めに、過分の費用を要する場合にありとす、蓋し分離の爲めに動産を毀損し、又は過分の費用を要する場合に其分離を許すときは、經濟上頗る不利なる結果を生ずるを以て、合成物は一物として之を存置するの必要あり、而して動産の附合に基く所有權の取得は左の原則に從ふべきとものとす、イ分離が動産を毀損し、又は過分の費用を要するきは、各所有者は其分離を請求することを得ず、而して分離を許すや否やは、毀損の有無、費用の多寡に依りて定まるべきもの也、ロ附合したる動産に付き主從の區別を爲し得べきときは、主たる動産の所有者は、合成物の所有權を取得す、之主は從を合すと云へる原則の適用に外ならず、但し如何なる物件を主とし、如何なる物件を從とするやは事實上の問題なりご雖も、一般に合成物の基礎を形成する所の動産は主物にして、此性質を有せざる動産は、從物なりと云ふことを得べし、例へば指環に寳石を鏤めたる場合に、指環は通常主にして寳石は從なり、又書籍の内容は主にして表紙は從なるが如し、ハ附合したる動産に付き、主從の區別を爲すこと能はざるときは、各動産の所有者は其附合當時に於ける價額の割合に應じて、合成物の上に共有權を取得す、附合したる動産に付き主從の區別を定め得べきとは、前項説明する所の如く主物の所有者合成物の所有權を取得すべしと雖も、實際に於て此區別を爲し得可らざる場合なきを保せず、此場合に於ては、附合當時に於ける動産の價格の割合に應じ、各動産の所有者をして合成物を共有せしむるを以て最も公平也とす、例へば甲其所有の槻の板に、乙の所有に屬する槻の板を接合して一枚の板を造りたりと假定せんに、接合したる二枚の板は其性質效用に依り、主從の區別を爲すこと能はざるものなれば、接合當時甲の板は其價一圓にして、乙の板は一圓五十錢なるときは、板の全部は甲乙の共有に屬し、甲は四分の權を有し、乙は六分の權利を有するものとなるべし、□二混和、混和は二種の併合を包含す、混合及び融和即ちこれなり、混合とは、米穀其他微細の固形物、又は糸其他纎維質の物件の混同して一となりたるを云ひ、融和とは、同種又は別種の液體、又は金屬が溶解して一となりたるを云ふ、□三加工、加工とは、動産に工作を加ふるを云ふ、例へば金屬に彫刻又は鍍金を爲し、紙類又は布類に彩色を施し、又は字を書し若くは画を描くが如し、加工は動産の形體を變じて新に一物を成すと同時に、物の價格を增加するの效用を成すもの也、而して加工に依り新に形成せられたる物件は、材料の所有者と加工者との中、何れが所有に屬するやに付ては議論一定せず、我民法に於ては材料の所有者をして加工物の所有權を取得せしむるものとなせり、(甲)加工物▲所有權は、材料の所有者に屬す、之材料は、加工物の基礎を成すものなれば、加工物との關係上、通常主物と看做し得べきを以て也、故に加工者が他人の木片に彫刻を爲して、一の佛像を製作したりと假定するときは、木片の所有者は、其佛像の所有權を取得するものとす、加工者が自己の動産と他人の動産とを附合し、又は混和し其合成物又は混和物の上に工作を施したる場合に、二個の動産に付き主從の區別を爲し得べき時は、主たる動産の所有者は、加工物の所有權を取得す若し二個の動産に付き主從の區別を爲すこと能はざるときは、動産の價格の割合に應じて加工物を共有す、此點に付ては、附合及び混和に關する原則を適用するものとす、(乙)工作に依りて生じたる價格が、著しく材料の價格に超過したるときは、加工者が加工物の所有權を取得す、工作に依りて生じたる價格が著しく材料の價格に超過する時は、加工物との關係上、工作者は主にして材料は從となるを以て、此場合に於ては、加工者をして加工物の所有權を取得せしむるを公平とす、前例に於て木片の價は一圓なるに、佛像の價は十圓なるが如し、加工者が加工物の所有權を取得するには、其工作に因りて生じたる價格が、單に材料の價格に超過するのみを以て足れりとせず、其價格の差異が顯著なることを必要とす、加工者が、自己の所有に屬する材料と他人の材料とを附合し又は混和して、其合成物又は混和物上に工作を加ふることあり、此場合に加工者の供したる材料の價格と、工作に因りて生じたる價格とを合算したる額が、他人の材料の額に超ゆるときは、加工物の所有權は、加工者に屬す、蓋し加工者が已に加工物の基礎たる材料を供し、且つ其供したる材料と工作との價格が他人の供したる材料の價格に超過する以上は、加工者と加工物の産出に付き、主要の地位を占むるものなれば、之をして其所有權を取得せしむるを公平なりとするを以てなり、例へば、甲、乙の所有に係る純金を以て一の指環を作り、之に其所有の寳石を樓めたる場合に、金の價を二十圓、寶石の價を十圓とし、全部三十五圓とする時は、工作の爲めに生じたる價格は五圓にして、之を寶石の價に加ふるも、純金の價に及ばざるを以て、指環は、乙の所有に屬するものとす、「添附の效果」、添附の效果は左の如し、□一舊所有者の權利は消滅す、同一物の上に同時に二種の所有權の存立し得べからざるは、所有權の本質なるを以て、新所有者が添付によりて物の上に所有權を取得するときは、舊所有者の權利は消滅す、例へば甲乙に銀塊を質入したる場合に、乙其銀塊を丙の金塊に混和し、丙其所有權を取得したりと假定するときは、甲は其銀塊の所有權を喪失すると同時に、乙も亦銀塊上に有せし質權を失ふものとす、□二物の所有者が合成物、混和物又は加工物の單獨の所有者となりたるときは、物の上に存せし權利は、爾後合成物、混和物、又は加工物の上に存し、其共有者となりたるときは其持分の上に存す、□三添附に因りて損失を受けたる者は、償金を請求することを得、添附は、一方に於て、新所有者をして物の所有權を取得せしむると同時に、他方に於ては舊所有者をして、物の所有權を喪失せしむるの結果を生ずるを以て、所有權を喪失したる舊所有者は、爲めに損害を被り、新に所有權を取得したる者は、利得するの結果を生ずること明也、故に損失を受けたる舊所有者は、不當利得の原則に依り、利得を爲したる新所有者に對し、其利得の返還を求むるの權あるや論なし、即ち利得を爲したる新所有者が善意なる時は、其利益の現存する程度に於て返還の義務を負ひ、新所有者が惡意なる時は、其利益の現存すると否とに拘はらず、利得を爲したる當時其受けたる利益に、利息を付して之を返還し、且つなほ損害あるときは、之を舊所有者に賠償することを要す、新所有者が他人の物件なることを知りて、附合、混和、加工を爲したる時は、惡意の受益者にして、此事實を知らざりし時は、善意の受益者なりとす、又添附が他人の所爲に出でたる場合と雖も、新所有者が其當時他人の物件なることを知りたるときは、惡意の受益者たることを免れざるものとす。(民二四二條乃至二四八條、七〇三、七〇四條)
- 英
- Accession
- 独
- Beitritt
- 仏
- ac-cession
轉付
(てんぷ)轉付とは、轉付命令に依りて、債務者より債權者に對して支拂を爲すに代へ、債務者が第三債權者に對して有する債權を、券面額にて其債權者の者に歸せしむることを云ふ、券面額とは、眞實の價額の如何に拘はらず、表面上の命價に從ひ、債權者の債權額と同一若くは之より以下の額を移付するを云ふ、故に債權者の要求額を超過する債權に付ては、其額を制限し、全額の轉付を命ずることを得ざるや勿論也、從て此場合には、債權の一部を轉付するに至ることあるべし、若し債權にして不可分のもの、例へば手形債權の如きものなるときは、其全額を轉付し得べき場合は格別、債權額より多額にして其債權を分割せざるを得ざるときは、其性質上轉付命令を發することを得ざる場合あるべく、又轉付の命令は券面額即ち其命價を以て移付するものなれば、債權に命價なきものは之を爲すことを得ず。(民訴六〇〇、六〇一、七三二條)
- 英
- Assignment
- 独
- Überweisung
- 仏
- Transport
典物
(てんぶつ)典物とは、質入れとなせる物品を云ふ、即ち質權の目的たるものを云ふ、質物即ち質權の目的たる物件は、左の性質を具備することを要す、□一質權の目的物は特定の有體物たることを要す、質權は、物權なるを以て、物權本來の性質に從ひ、其目的物は有體物にして且つ特定物なることを要す、無體物又は不特定物は質權の目的たることを得ず、即ち典物たることを得ず、但し權利質に付ては債權其他の財産權も亦目的たることを得、然れども、是畢竟質權本來の原則に對する例外たるに過ぎざるものとす、□二質權の目的物は讓渡することを得べき物たることを要す、質權者は質物所有者に屬する處分權を行使し、之を賣却し、其代金に付き優先して辨濟を受くるの權利なるを以て、質權の目的物▲典物)は、常に讓渡し得べきものなることを必要とす、何とれば、質權の目的たる物件が、其性質又は法律の規定に依りて讓渡し得べからざるものなるときは、質權者は之を賣却して、其代金を質權の辨濟に充つること能はざるを以て、質權は、其效用を爲さざるべきを以て也、故に人の身體の如き性質上讓渡し得べからざるもの、又は華族の世襲財産其他法律に於て特に賣買讓渡を禁じたる一切の物件は、質權の目的(典物)たることを得ず、養料の債權、恩給金の債權、其他性質上讓渡し得べからざる債權は又質物たることを得ず、□三質權の目的物は、質權設定者の所有物なるか、若くは質權の設定に付き、特に所有者の承諾を得たる物件なることを要す、何人と雖も自己の有せざる權利を、他人に讓渡すること能はざるを以て、物の所有者の承諾あるに非ざれば、其物の上に質權を設定することを得ざるべきは、言ふを俟たさざる所也、然れども轉質(轉質參照)の場合に於ては、所有者にあらざる質權者に於て、質物の上に新なる質權を設定するの權限を付與せらるるものなり、是法律が特に許したるが爲めにして、素より例外の場合に屬するものなり。(民三四二條乃至四八條、三五二、三五六、三六二、三六三條、刑四七一、三九三、三九五條)
- 英
- Pawn
- 独
- Pfand
- 仏
- Gage
塡補
(てんほ)塡補とは、物の欠缺したる場合に於て、之を補充することを云ふ、例へば會社は損失を塡補したる後にあらざれば、利益の配當をなすことを得ずと規定せるが如きこれなり、故に塡補は法律上主として損害を補失する場合に用ひらる。(商六七、三八四條)
- 英
- Indemnity
- 独
- Deckung
- 仏
- Indemnité
天皇
(てんのう)統治權を總攬する者を天皇といふ、統治權の總攬とは、統治權を總括して之を掌握するを云ふ、憲法に「天皇は統治權を總攬し」とあり、又憲法の前文には「國家統治の大權は、朕が之を祖宗に承けて之を子孫に傳ふる所なり」とあり、而して我が三千年來の國史も亦明に天皇の統治權の總攬者たることを示す、或は統治權總攬と云ふことを解して、統治權を總攬しとは、天皇を以て統治權の主體と爲すことなりとなすものあり、又は統治の主體は、國家なることは統治權の觀念に依りて明なり、而して統治權を行ふ機關は一にあらざるも、是等の機關は、皆統治權を總攬する者と云ふを得ざる也、統治權の總攬者は、統治權を行ふ最高機關、即ち國家の機關中自ら自己の權限を無限に伸縮するの權を有する者なり、最高機關は、假令自ら一切の統治權を行はずと雖も、必要と認むる場合には、何時にても他の機關の權限を奪ひ之を自身に集むることを得べし、要するに統治機關及び其の方法の如何は、全く其の定むる所に依るを以て、統治權は、此の機關の總ぶる者と云ふことを得と、以上二説は總て極端説にして、寧る其の眞理は中間に存す、夫れ總とは皆なり、合なり、聚なり、一なり、凡なり、聚束なり、攬とは歛なり、釆なり、提持なり、故に總攬とは、聚束合一して提持するの義也、從て之を解して、統治權を行ふ最高機關なりと爲す文學上牽強附合たるは勿論、若し總攬なる文字にして果して總括して統治權を行ふの意義也とせば、單に天皇は國の元首にして、此憲法の條規に依り、統治權を行ふと規定するを以て足るべく、總攬なる文字は蛇足を添ゆるものと云ふべし、然るに憲法が總攬して之を行ふと云ひ、總攬と施行とを區別するを見れば、此説の非なるや明白なり、又さればとて天皇を統治權の主體となすは誤り也、この理由は上説機關説の所論當を得たるにものして、故に天皇は國の元首にしては、國家の首腦なりと解するに止めん、□一天皇の大權、天皇は、統治權を總攬する者也、天皇が其統治權を施行するには、憲法の條規に依らざるべからず、憲法の條規に依るとは例へば、立法權を行ふには帝國議會の協贊を要し、司法權を行ふには裁判所に依るを要し▲又法律勅令其他國務に關する詔勅には、總て國務大臣の副署を要するが如き、其の行爲に一定の形式及び制限あるを云ふ、是等の形式及び制限に適はざる行爲は、天皇の行爲として、人民に對し效力を有する事を得ず、統治權にして憲法條規の範圍内に活動する場合は、之を天皇の大權と謂ふ、故に大權と統治權とは、其實質全く相同じく、單に憲法の範圍内に行動すると否との形式上の差異あるに止まる、天皇の大權の事項は、廣くして及ばざる所なし、今大權に屬すべき事項を揭ぐれば左の如し、□一法律の裁可及び公布、□二帝國議會の召集、開會、閉會、停會、及び衆議院の解散、□三緊急命令、執行命令、及び獨立命令の發布、□四官制の制定、官吏の任免、及び俸給を定むるの權即ち官制權、□五陸海軍の統帥及編制即ち兵馬權、□六宣戰、媾和、及び條約の締結即ち外交權、□七戒嚴宣告の權、□八榮典授與の權、□九大赦、特赦、減刑及び復權即ち恩赦權、□二天皇の地位に隨伴するの權、天皇は統治の總攬者にして臣民にあらざるが故に、大權行使の外又其の地位に伴ふて國法上特權を有す、神聖不可侵權、榮譽權及び財産權是也、(A)神聖不可侵權、憲法に「天皇は神聖にして侵すべからず」とあるはこれなり、神聖にして侵すべからずとは、天皇は法に對して責任を負ふことなきを云ふ、天皇は、統治權の總攬者にして、法は一に天皇に淵源するが故に、天皇の責任を問ふは、是即ち天皇自ら自己を處罰するものとなるべし、故に天皇の神聖にして侵すべからざるは、其性質上當然の結果也、(B)榮譽權、榮譽權とは、天皇の地位を表彰し、其の尊嚴を保つが爲めに特別の尊稱及び徽章を用ひ、又は宮廷を組織するの權を云ふ、□一特別の尊稱及び徽章を用ふるの權、尊稱及徽章は、天皇の地位を表彰するものなるが故に、天皇に對し尊稱を用ひざるの不敬たると同時に、其位に在らずして其尊稱若くは徵章を用ふるときは、國法上處罰せらるべし、特別の尊稱とは、詔書に天皇、天子の稱號を付し、外國との條約に「天祐を保有し萬世一系の帝祚を踐みたる大日本國皇帝陛下」の稱號を用ひ、陛下なる敬稱を享け自ら稱して朕と云ふが如きを云ひ、徽章とは、三種の神器、國璽又は菊花桐葉の紋章等を有し、又は之を使用するを云ふ、□二宮廷を組織するの權、宮廷を組織するとは、統治の機關以外に於て、天皇の私務を行ふ爲めに一定の事務を掌る官吏を置くを云ふ、宮内省是也、宮内省の官吏は一般官吏と異り、單に天皇の私事に關與するに過ぎざるも、之を保護するに官爵、位階を以てするは、又一般官吏と異る事なし、(C)財産權、天皇は、宮廷を組織するを以て其費用を支辨し、又は其尊嚴を保つが爲めに、財産を所有せざるべからず、之等は皇室經費、世傳御料及び私有財産の三種より組成せらる、□一皇室經費、憲法制定當時の定額に依り、每年國庫より之を支出し、將來增額を要する場合の外、帝國議會の協賛を經るを要せず、又皇室經費の豫算、決算、檢査及び其他の規則は皇室會計法の定むる所にして、會計檢査院の檢査及帝國議會の參與を要することなし、□二世傳御料、世傳御料は、皇室財産中に於て分割讓與することを得ざる財産にして、皇位の繼承と共に當然後の天皇に移るべきものとす、世傳料に編入すべき土地物件は、樞密顧問に諮詢し、敕書を以て之を定め宮内大臣之を公告す、□三私有財産、私有財産は天皇未だ即位せざる以前已に所有せし財産、皇室經費每年の剩餘金、其の他世傳御料に屬せざる財産等より成立し、天皇の御任意に處分するを得べき財産也、此財産の權利關係は、前の世傳料と異り、一般民法の制限を受くべきものなるも、慣例上地租及び其の他の租税を課せざることとなれり。(憲法一條乃至一七條、六六條、二二年二月典範一條乃至二五條、四五條乃至四八條)
- 英
- Emperor
- 独
- Kaiser
- 仏
- Em-pereur
電話交換規則
(でんわかうくわんきそく)電話交換に關する加入の手續及通信の手續、其料金等に就て規定せれたる法則にして、電話交換規則に於て電話交換局と稱するは電話交換支局を包含す、電話加入區域は、普通加入區域及特別加入區域の二種とす、□一電話加入、電話交換に加入せむとする者は、一加入每に加入申込書を電話交換局に差出すべし、加入申込書の書式は左の如し。
加入申込書
私儀電話交換規則ニ遵ヒ何地電話交換ニ加入致度仍テ左ニ電話械設置ノ場所ヲ記載シ此段申込候也
住所職業
年月日何某□印
何電話交換局御中
一電話機設置場所
何市(郡區)何郡(村)何番地何々家屋
但シ家屋所有者ハ何某ニ有之候
又他人の所有に係る家屋に、電話機を設置せむとするときは、其家屋所有者の承諾書を加入申込書に添付すべし、其承諾書の書式は、左の如し。
承諾書
今般貴殿ニ於テ何地電話交換ニ加入ノ爲メ私所有ノ何市(郡區)何町(村)何番地何々家屋ニ電話機設置ノ趣ハ私ニ於テ故障無之候也
住所
年月日家屋所有者何某□印
何某殿
電話加入は、二人以上共同して之を爲すことを得、長距離電話又は卓上電話を設けんとする時は、其旨を申込むべきもの也、雹話開通の順序は、加入申込の順番に依る、但し官廳、公署及び公共事業の用に供するものにして、必要あるときは、順番を變更する事あるべし、□二電話通信、加入者は、其使用に供する電話機に依り、左の通話を爲すことを得、但し特に指定する長距離の通話は、其通話を爲し得る加入者相互の間に限る、イ同一電話交換局に屬する加入者との通話、ロ他の通話交換局に屬する加入者との通話、ハ電話所に來り通話する者との通話、電話所に來る者は、電話通信心得書に據り、同一電話交換局に屬する加入者、又は他の電話交換局に屬する加入者と通話を爲す事を得、但し特に指定する長距離の通話は、加入者が其通話を爲し得るときに限るもの也、左の通話は、每五分時間までを以て一通話時とす、□一通話所に來る者と加入者との通話、□二所屬電話交換局を異にする加入者相互の通話、此通話は一通話時を超えて繼續することを得、尤も他に通話請求者なきときは此の限りにあらず、□三料金、加入申込者は加人登記料を納むべし、又加入者は電話使用料を納むべし、電話使用料は年額を四分し、左に揭ぐる四期の別に從ひ、每一期分を其の期の初月一日より十日までに、電話交換局に納付すべきものとす、第一期四月一日より六月三十日まで、第二期七月一日より九月三十日まで、第三期十月一日より十二月三十一日まで、第四期一月一日より三月三十一日まで、加入初期の電話使用料及び附加使用料は、電話開通の日より其期の末日に至るまでの日數に應じ、年額金の日割を以て、開通の日より十五日以内に電話交換局に納付すべし、其加入後新に附加使用料を納むべき者又同じ、電話料は左の區別に從ひ之を納付すべし、□一電話所に來る者は、一通話時の料金を其電話所に前納し、二通話時以上に渉りたるときは、通話を終りたる後、其未納料を納むべきものとす、□二加入者は、一月分取纒め翌月二十日までに電話交換局に納付すべきものとす。(三〇年一二月遞信省令三一號)
電話交換局は、遞信大臣の管轄に屬し、電話交換の業務を執行する所とす、電話交換局の職員及び職務は左の如し、(甲)職員、電話交換局に左の職員を置く、□一局長、□二通信技師、□三通信書記、□四通信技手これなり、但し通信技師は、遞信大臣に於て必要なしと認むる場合には、これを置かざることを得、(乙)職務、□一局長は通信技師又は通信技手を以てこれに充つ、遞信大臣の命を承け局中一切の事務を掌る、□二通信技師は局長の指揮を承け局中の事務を分掌す、□三通信書記は判任とす、上官の指揮を承け庶務に從事ず、□四通信技手は上官の指揮を承け電話交換の工事に從事す、尚電話交換局の名稱及び位置は、遞信大臣之を定む。(三〇年八月勅二七四就電話交換局官制)
- 英
- Rule of the telephone exchange office
- 独
- Gesetz des Stadt-fernsprachvermittelungsamtes
- 仏
- Loi de l'échange de la téléphone
電話交換局官制
- 英
- Government organiza-tion of the telephone exchange office
- 独
- Behördeordnung des Telephoniever-wechselungsbureaus
- 仏
- Organisation du bureau de l'échange de la téléphone
統一
(とういつ)統一とは、單に個々物々を集合して全體を成すものと異なり、其間に一定の連絡次第あり、各部分は總べて相關的に全體によりて、一系統を保ち居ることを云ふ、萬象は、一見獨立の存在を有する如くなるも、其の實或は因果の關係に立ち、或は共通聯絡の位置を保つ等、必ず何等かの交渉あるものなり、この交渉が、系統を立てて一全體を構成する狀態を統一を保つとは謂ふなり、例へば軍隊は、統一を保つと謂へば、上下相互に軍隊なるものが聯絡を有し、而かも其▲絡が系統立ち、一の大なる團體を構成し居るをいふが如し、統一的とは、其のものの存在の性質が、連絡的組織によりて一體に形造られ居ること、又は種々雜多のものが系統を立てて、一の全體に包括せられ居ることを云ふ。
- 英
- Unity
- 独
- Einheit
- 仏
- Unité
動員
(どういん)動員とは、平時編制より戰時編制に軍隊の編制を移動するを云ふ、動員は、□一平時部隊を戰時編制に改むると、□二充員召集に依りて、新に戰時部隊を編制するの二方法に依て之を爲す、所謂充員召集とは、動員に當り諸部團體の要員を充足する爲、在郷軍人を召集するを云ひ、師團長は、先づ召集要員を定めて各聯隊區に配當す、聯隊區司令官は之に基き、各部の充員召集名簿、待命名簿及充員召集令狀を作り、之を郡長に送付すべし、郡長は、動員令の達を受けたる時は、充員召集令狀を町村長に送付すべきもの也、町村長令狀を受けたる時は、之を應召員又は召集通報人に交付し、其受領證を受取るを要す、而して應召員令狀を受けたるときは、令狀を携へ、指定の日時に到著地に到著し、召集事務所に屆出づべし、應召員傷痍疾病の爲、又は其の他の事故の爲應召する能はざるときは、令狀受領後二十四時間内に聯隊區司令長官に屆出づべし、充員召集の解除は、復員令に依り之を實施すべきものとす。(陸軍召集條例一五條乃至五〇條、三二年一〇月陸軍省令一條乃至五一條)動員令とは、動員を行ふ命令を云ふ、師團長は、動員令に依り、動員召集、補充召集、國民兵召集を實施すべきものにして、其形式左の如し。
動第號
何師團何動員ヲ令ゼラル動員第一日ハ何月何日ナリ
明治年月日午前(後)時
師團長(地方長官)(憲兵隊長)
(聯隊區司令官)
氏名□印
(三二年一〇月敕三九八號陸軍召集條例一條乃至三條、一五條乃至五〇條、同年同月陸軍省令二九號、同條例施行細則一條乃至五一條)
- 英
- Moblization
- 独
- Mobilmachung
- 仏
- Mobilisation
動員令
動員令
- 英
- Mobilization order
- 独
- Mobilmach-ungsbefehl
- 仏
- Mobilisation
同家
(どうか)同一の家より分離したる各個の分家の相互間に於ける關係を稱して、同家と謂ふ、即ち本家との關係に於てはこれを分家と稱し、分家相互間の關係に於てこれを同家と稱するものとす、家族にして戸主の同意を得たるときは、廢絶したる同家を再興して、其戸主となることを得るものとす。(民四七三條)
同格
(どうかく)汎く同格といふ時は、其事物の性質を異にすると否とを問はず、其地位、階級若くは權利の性質の同等なる事を意味す、例へば甲家の戸主と乙家の戸主とは、其實質に關して權利義務の現額を異にするも、同格の戸主と云ふが如し、又官吏關係に於て其奉職する官署を異にすると雖も、同じく高等官一等なる時は、彼れと是れと同格なりと云ふ場合の如し。
- 英
- Co-ordination
- 独
- Co-ordination
- 仏
- Co-ordination
統監
(とうかん)韓國に駐劄する親任官にして、天皇に直隷し、外交に關しては、外務大臣により内閣總理大臣を經、其他の事務に關しては内閣總理大臣を經て上奏を爲し、及び裁可を受け、韓國に於て帝國政府を代表し、帝國駐剳外國代表者を經由するものを除くの外、韓國に於ける外國領事舘及外國人に關する事務を統轄し、併せて韓國の施政事務にして外國人に關係あるものを監督す、又統監は韓國に於て、帝國官憲及公署の施行すべき諸般の政務を監督し、其他從來帝國官憲に屬したる一切の監督事務を施行す、而して統監は、韓國の安寧秩序を保持する必要ありと認むる時は、韓國守備軍の司令官に對し、兵力の使用を命ずるの權限を有するものとす、又帝國官吏其他の者にして韓國政府の傭聘に係るものを監督するの職務あり、又其所屬官廳の命令又は處分にして、條約法令に違ひ、公益を害し又は權限を侵すものありと認むるときは、其命令又は處分を停止し、之を取消すことを得。(統監府及理事廳官制一條乃至四條)
- 英
- Resident-general
- 独
- Süzeränität
- 仏
- Résident-général
統監府
(とうかんふ)統監府は、韓國京城に置かるる所の帝國官衙にして、統監府には、統監及總務長官、農商工務總長、警務總長、秘書官、書記官等を置き、韓國に對する帝國官憲の事務を執行す、統監の職務權限は、前項目の下に於て列擧せし所の如し、總務長官は統監を佐け府務を總理す、統監にして事故ある時は統監の定むる所により、韓國守備軍の司令官又は總務長官に於て統監の職務を代理す、農商工務總長は上官の命を受けて、農商工其他産業に關する事務を管掌し、警務總長は上官の命を受けて警務事務を管掌す、秘書官も上官の命を受けて機密に關する事務を掌り、書記官は府務を司るものとす、而して統監は、所屬の官吏を統督し、奏任官の進退は、内閣總理大臣を經て之を上奏し、判任官以下の進退は、之を專行するものとす。(統監府及理事廳官制)
- 英
- Resident-general office (Regency's office)
- 独
- Regentschaftsbehörde
- 仏
- Résidence-général
投機
(とうき)物の價額騰貴の機會に乘じて利益を得ることの考案に基きて爲す所の行爲を投機と稱す、例へば商法第二六三條に規定する商行爲の一種たる、利益を得て讓渡す意思を以てする動産不動産、又は有價證券の有價取得を目的とする行爲の如きは、即ち投機的觀念を具へたるものにして、獨乙法學者はこれを投機購賣と謂ひ、佛法學者は之を騰貴投機と稱す、蓋し其購賣に向つて一定の投機的觀念を備へ、購賣せし物の價格騰貴するによりて利益を得るの考案に基き投機を行ふものなるが故とす。(商二六三條)
- 英
- Speculation
- 独
- Spekulation
- 仏
- Speculation
登記
(とうき)廣く登記と云へば、身分登記、不動産登記、商業登記等ありて、汎く人の身分、權利の所在に關する事項等を、法律の規定に依り公の帳簿に登載することを云ふ、元來登記は、人の身分又は權利の移動を明にし、以て公私の法律關係を明確にするを其の趣旨とし、登記事項の異なるに依りて、□一身分登記、即ち人の出生、死亡、婚姻、養子緣組、離緣、隱居、相續等の事項を登記するもの、□二戸籍登記、即ち一家の存在、戸主家族の何人たるか等に關する事項の登記、□三不動産登記、即ち不動産に關する權利の設定、移轉、保存、變更等の事項の登記、□四船舶登記、即ち船舶に關する權利義務の登記、□五商業登記、即ち妻の商業、未成年、後見人、會社、支配人等に關する事項の登記、□六鑛業登記等數種となすことを得、其の詳細は各部に就き參照せらるべし。
動機
(どうき)動機とは、行爲を促がす心的動因を云ふ、吾人の行爲の原動力は、其行爲に就きての目的の觀念、及び此の目的を達せんための手段の觀念と、是等を實現せんとする欲求の明に伴へる意志活動とにして、是れ即ち動機なり、隨つて動機は意向と稱する者と甚だ密接なる關係を有す、然れども是等は決して同義と見るべからず、動機は、執意の決定即ち吾人の活動的意志を動したる觀念に、感情の伴ひしものとも謂ふべきものなれど、意向は、明に意思の活動の向けらるる目的たるものを旨意するなり、特に倫理學上動機と謂へば、吾人をして意思活動をなさしむる意識的目的其ものを意味し、此場合に於ては、目的即ち動機と謂ふ事となる、蓋し吾人の意識的倫理上の行爲は、其行爲に對し、必ず一定の目的を有するものにして、此目的たる觀念は、取りも直さず吾人の倫理的行爲を促がす所のもの、即ち動機に外ならざるなり、然るに意向も亦活動の向けらるる目的なりとすれば、此の意義に於て動機と意向とは殆ど同義なり、然れども大體の區別上動機は、意向中最も自己の直接に目的とする部分を意味し、意向は目的全體を意味するなり。
- 英
- Motive
- 独
- Motiv
- 仏
- Motif
登記原因
(とうきげんいん)登記を爲すべき法律關係を登記原因と謂ふ、登記原因は、登記の理由たる事實に依て發生せる法律關係にして、例へば相續、賣買、時効、公用徵收、判決の如きは不動産登記の原因なるが如き、人の出生、死亡、婚姻、養子緣組、隱居の如きは身分登記の原因なるが如し。(不動産登記法二九條)登記事項とは、法律が登記を命じ、又は之を許したる事項を云ひ、登記原因發生せる場合に、或は之を登記するを要し、又は登記することを得るものなり、例へば合名會社の登記事項は、□一目的、□二商號、□三社員の氏名、住所、□四本店及支店、□五設立の年月日等にして、此の事項が合名會社に於ける必要的登記事項なるが如し。
登記事項
登記所
(とうきしよ)登記事務を行ふ官署を廣く稱して登記所と謂ふ、不動産登記に於ける區裁判所、同出張所の如き、身分登記に於ける戸籍役場の如き是なり。(不動産登記法一一條)
登記官吏
登記官吏とは、職として登記事務を行ふ官吏を云ふ、不動産登記に於ける區裁判所の判事及書記の如き、身分登記に於ける戸籍吏の如き是なり。(不動産登記法一二條)
同居
(どうきよ)汎く同居と云へば、居を同うするの意なれども、法律上に於ける同居とは、單純なる事實關係のみを指稱するものに非ず、法律上適法なる手續によりて、同一家族となることを意味す、換言すれば、其戸籍を同うし、而して同一の家に住居することを云ふ、此同居に關して最も問題の多く生ずるは、親族法上の夫婦關係の效果として、互に同居する義務を負ふ場合に關するものなりとす、我民法の規定する所によれば、妻は夫と同居する義務を負ひ、夫は妻をして、同居を爲さしむることを要するものとす、即ち夫婦が事實上生活の場所を同じくすべきことを規定す、此規定によれば、妻は夫の居所に隨從することを要す、故に夫の意思に反して自ら居所を他に選定することを得ず、夫が外國に住居する場合に於ても、亦之に從ふを拒むことを得ず、然れども右の規定は、夫が自己の居所を定めたる場合に於てのみ其適用を受くるものにして、若し夫が定まりたる居所を有せずして浮浪漂泊せしときは、妻は同居の義務を負ふことなし、又此他法令により禁制せられたる場合、例へば夫が兵營中にあるとき、又は監獄に拘禁せらるるときの如きは勿論、夫が移住を禁制せられたるとき、外國に移住したる時の如きは、妻をして同居を爲さしむる事を得ず、夫は通常婚姻による夫たると、入夫又は婿養子なるとを問はず、妻を自己の居所に引取るの義務を質ふものにして、妻の意に反して獨居し又は妻をして別居せしむる事を得ず、然れども夫婦の同意あるに於ては、互に獨居することは固より妨げなし、然しながら夫が妻をして同居せしめざるとき、又は妻が夫と同居することを肯ぜざるときに於て、其法律上制裁如何は稍疑ある所なり、妻が夫と同居することを肯ぜざるときは、其夫は之に對して、扶養を爲すことを要せざるは疑を容れず、又之を理由として、裁判上離婚の請求を爲すことを得るは又疑なし、夫が其義務に反して妻を居所に引取ることを肯ぜざるときは、妻は自己の需要に應じて、夫の身分資力に相應したる生計の資料を請求するを得べく、又之を理由として離婚の訴を起す事を得べし、右は專ら夫婦同居に關して説明したる所なるが、此他民法に於て、同居の親族等の語を用ふる場合二三の例あり、何れも戸籍を同うし、事實上の居所を同うすとの意義に解すべきものとす、然れども法律上家を同うすと云ふ場合と、同居とは多少其意義を異にするものあるを注意せざるべからず、家を同うすとは戸籍を同一にするの意にして、必ずしも事實上の居所を同ふするの意にあらざるなり。(民七八九條)
- 英
- Living in the same house
- 独
- Zusammenwohnen
- 仏
- Demeurer à la même maison
同化
(どうくわ)普通に同化と謂へば、異なる性質のものを同性質のものに化成する作用を云ふ、元來生理學上の用語にして、營養物を生活體と同一物質に化成する作用を稱する也、例へば吾人の膓胃が、其消化作用によりて食物を吾人の體質の一部に化成するが如し、而して植物學上に於ては、無機物質を有機物質と化し、更に之を植物の組織と同一の物質に化成することを云ふ、心理學上の同化作用とは、種々異説あるも、先づ意識中の諸要素の類化結合を云ふ、而して此の同化の理を教育學上に應用せるものは、かの有名なるヘルバルトなり、氏は教授の目的は、統覺の十全なる活動によりて期待せらるとし、此の統覺作用を同化の理によりて説明せり、即ちへルバルトの統覺とは、或新來の表象が、既に心裡に存する表象の一團に迎合せられて其處に新舊表象の同化を遂げ、吾人が食物の同化によりて營養を取る如く、表象の同化によりて智識の豊富を致すと。
- 英
- Assimilation
- 独
- Assimilation
- 仏
- Assimilation
統計
(とうけい)或事物に關して、其回數、員數を數理的に合計せしめたるものを統計と云ふ、例へば死亡統計、火災統計、地震統計等と謂ふ場合の如し、總べて國家の經營は其統計によりて其方針を定むべきものなるが故に、國家のあらゆる事業、若くは政策に關して、最も有用なるものなり。
- 英
- Statistics
- 独
- Statistik
- 仏
- Statistique
統計局
(とうけいきよく)統計局は、内閣所屬の官廳にして、下に擧ぐる所の事務を司るものとす、□一行政各部統計の統一に關する事項、□二行政各部に專屬せざる統計に關する事項、□三統計に關する報告の刊行に關する事項、□四内外統計表の交換に關する事項、□五各廳官の統計主任者の招集、會議に關する事項の五事務を管掌す。(内閣所屬職員官制五條)
- 英
- Bureau of statistics
- 独
- Statistiks-bureau
- 仏
- Bureau de statistique
同業組合
(どうげふくみあひ)同業組合とは、同種の營業者が、共用して其營業上の利益を增進するが爲めに組織する組合を云ふ、同業組合は、明治三三年法律第三五號重要物産同業組合法の支配する所なり、然れども此以外に於ても均しく同業組合の性質を有するものにして、特別の法規の支配を受くるものあり、茶業組合、産牛馬組合、漁業組合等これなり、同業組合は、原則としては半強制的組合也、即ち其設立は、是を強制することなく、組合員たるべきものの一部の決議により、官廳の許可を得て設立するものなり、然れども其設立したる後に於ては其協議に與らず、又は之に同意せざりし同業者の他の一部分も、之に加入するの義務を負ふなり、然れども官廳は、必要と認むるときは強制して同業組合の設立を命ずることを得べく、此場合に於ては同業組合は純然たる強制的組合とす、同業組合を組織する組合員は、組合地域内に於ける同種の營業を爲す者とす、同業組合は、共同の營業上の弊害を矯正し其利益を增進するを目的とし、此目的の爲めに、組合は組合員の營業品を檢査する權を有し、違約者に對して過滯金を徵收し、違約物品を沒收するの權あり、組合は又其事務に關して、官廳に建議する權を有す、組合の事務及會計は、定款を以て之を定め、定款は官廳の許可を受くるを要す、又同業組合は組合相互の氣脈を通じ、共同の目的を達する爲め、同業組合連合會を設置することを得、官廳は又必要と認むる場合に於ては、連合會を設けしむるの權を有す、同業組合連合會も同業組合と同じく、公共組合にして又均しく法人なりとす。(三三年法五號重要物産同業組合法)
- 英
- Guild
- 独
- Innung
- 仏
- Corporation
動作
(どうさ)動作は、尚擧動と云ふに同じく人の身體の運動を云ふ、動作は、必ずしも意思の任意に出づることを要せず、機械的又は生理的強制に出づると雖も、人の筯肉の伸縮による外界の變狀ある場合は、動作ありたりと謂ふ事を得べし、されば動作は、刑法上の行爲と相一致するものに非ず、其動作にして意思實行の結果たる場合、即ち意思に基く動作はこれ行爲なり、故に意思の條件を必要とせざる單純なる人の身體の擧動と解すべし、例へば人が痙攣發作の爲めに、他人の物を毀損し、又は卒倒して義務の履行を妨げられ、若くは抵抗すべからざる強制による擧動と雖も、動作たることを得べし、然れども以上の實例の如き場合は、意思の實行にあらざるが故に、刑法上の行爲と稱し得べからざるは勿論とす。
- 英
- Motion
- 独
- Thätigkeit
- 仏
- Mouvement
動産
(どうさん)動産は物の一種にして、我民法は、土地及定著物以外の物を動産とす、物の種類なるが故に有形物たらざる可らず、無形の權利の如きは、此内に包含せざるや勿論也、土地の定著物は、固より自然的又は人工的に土地と分離せらるる事を得、若し定著物が、土地との連絡を失へば動産となる、例へば立木を引き拔くときは、土地との連絡を失ひて一の動産となる、定著物が土地と固著する間は、如何なる關係に於ても不動産なる事を忘るべからず、故に當事者の意思を以て、定著物を動産と爲すことを得ず、例へば堀取る意思を以て立木を賣買し、破壞する目的を以て家屋を賣買する場合に於ても、其立木又は建物は未だ堀取られず、破壞せられざる間は不動産としての賣買也、前示の如く、動産は物にして權利に非ず、然るに我民法は、無記名債權を以て、之を動産と看做すと規定せり、無記名債權は、其性質に於て一の債權なることは疑なし、即ち債權者が債務者に對して、或行爲を請求し得ることを以て其内容とす、此の如く無記名債權は物に非ずして權利なること明なり、然れども無記名債權には、必ず證書ありて、其證書には、債權者の氏名を記載せず、證書の所持人をして、債權を實行することを得しむ、約言すれば、債權は證書と分離することを得ず、證書即債權の如き觀あり、故に實際これを動産と同一に取扱ひて、亳も差支なきのみならず、却て此の如く爲すを便利とす、隨て動産に關して設けたる規定は、總べて之を無記名債權に適用せらるるなり、古來より動産不動産の區別を設けたるは、適用せらるる法則を異にするを以て也、適用すべき法則の異るは古今相同じ、然れども其理由に至りては大なる差異を存す、古代にありては不動産を動産よりも貴重なるものとし、其結果、適用すべき法則に差異を生ずるに至れる也、然し今日に於ては、不動産を動産に比して貴重なりと爲すの觀念は、漸次薄弱となり、特別の法則に從ふ必要なきに至りたりと雖も、其適用法則を異にする理由は、物の性質の異なるより來る結果なりとす。(民八五條、八六條)
- 英
- Movables
- 独
- bewegiiche Sache
- 仏
- Meuble
動産質
(どうさんしち)動産質とは、質權の目的が特定の有體動産上に存するものを云ふ、質權とは、債權者が債權の擔保として、債務者若くは第三者より受取りたる物につき、他の債權者に優先して、辨濟を受くるの權利を指すものとす、動産質の目的となり得るものは、債務者若くは、第三者の所有物にして、不融通物(例へば人の身體死體若くば勳章の如き)ならざる事を要す、換言すれば、他人に讓渡し得るものに非れば、動産質の目的と爲すを得ざるものとす、動産質權につき特別效力を少しく説明すべし、□一動産質權者は、繼續して質物を占有するに非ざれば第三者に對抗するを得ず、目的物の占有は質權成立の要件たるのみならず、必ず繼續して之を占有せざる可らず、然れども質物の占有は、動産質權存續の必要條件に非ず、質權者が動産の占有を失ふも、之が爲め絶體的に其權利を失ふものに非ず、質權者は、唯第三者に對して其權利を主張する事を得ざるに止まり、債務者、又は質權設定者に對しては、依然として其權利を保有し、此等の者の手に存する質物の引渡を要求し、又は之を競賣に附し、其代金につき辨濟を受くるの權利を有するもの也、質權は、目的物を占有するの權能を包含し、質權者は法律上質物を占有するの權利を有す、故に理論上より云ふ時は、質權者が、其現に占有する所の質物を侵奪せられたるときは、質權者は何人と雖も質物を占有するものに對して、質權を基礎とする本權の訴を提起し、質物の回復を請求し、或は占有回收の訴を提起して質物の返選を要求するの權を有せざるべからず、然れども質權と質物の占有とは密接の關係を有し、質物の占有を失ひたる質權者は、最早第三者に對して、其權利を主張することを得ざるものなるは、民法の規定する所なり、□二動産質權者は、質物を以て、直に其債權の辨濟に充つることを得、質權者は、質物を棄却して、其代金を以て債權の辨濟を受くることを要し、質物を以て直に辨濟を充つることを得ざるは、質權一般の效力なり、然れども動産賣にありては、目的物の種類により、時日と費用とを要す、競賣の手續によるよりも、寧ろ直にこれを債權の辨濟に充つるを有益なりとすることあり、即ち我民法は、債權者に許すに債務者の意思如何に拘はらず、質物を以て直に其債權の辨濟に供するの權利を以てし、動産質の爲めに一の例外を設けたり、然れども此權利を行ふには、下の如き條件を守らざるべからず、即ちイ正當の理由あること、例へば質物が其價格に比して過分の競賣費用を要し、制規の手續によりて競賣に附するには、債權者債務者双方に不利益なること等の理由あるを要するなり、ロ裁判所に請求すること、卽ち其質物を債權の辨濟に供せんとするには、裁判所に請求して其許可を受くる事を要す、何となれば、裁判所の干渉は、債權者の專斷を豫防し、當事者間に於て生ずべき一切の紛議を避くるが爲めに必要なれば也、ハ鑑定人の評價に從ふこと、質權者は、任意に質物の價格を見積り、之を債權の辨濟に充つることを得ず、必ずや裁判所の選任したる鑑定人の評價に從ひ、質物を引受けざるべからず、ニ豫め債務者に通知すること、質權者は、裁判所に其請求を提出する前、豫め其請求を債務者に通知せざる可らず、□三數個の債權を擔保する爲め同一の動産につき質權を設定したるときは、其質權のの順位は設定の前後によるものとす、以上は專ら動産質に關する特別なる規定のみの説明なり、一般質權に關するものは、質權の條に於て研究せらるべし。(民三五三條乃至三五五條)
- 英
- Pledge of movables
- 独
- Faust-pfand
- 仏
- Gage du meuble
動産の先取特權
(どうさんのせんしゆとくけん)動産の先取特權とは、債權者が或債權につきて債務者の所有に係る特定の動産に付き、他の債權者に先んじて辨濟を受くる權利を云ふ、此部類に屬する先取特權は總て八種あり、□一不動産の賃貸借より生ずる債權、即ち不動産賃貸借契約より生ずる債權にして、地代家賃の如きは勿論、賃借人が債借物件に加へたる損害の賠償債權の如きをも包含す、又地上權、永小作權の地代、永小作料及び損害賠償の如き債權につきても亦此特權あるは勿論也、以上の債權全部は、債務の或特定動産の上に全部の先取特權を行ふことを得るも、債借人の財産總清算の場合に於ては、多少債權の範圍に付きて、制限を受るものとす、清算と云ふは、破産の場合、法人の解散による清算の場合、若くは相續限定承認の場合等にあるものとして、是等の場合に、多くは債務者の財産乏しきを告ぐるの時なるを以て此債權のみを優待するときは、其結果他の債權者の分配を減少せしむるに至り、大に不公平を來すべきを以て、制限を加へられたるもの也、而して其制限とは、總請算の場合に於ては前期、當期、次期の借賃其他の債務(租税公課の如き)及び前期、當期に於ける損害賠償債權のみに止めたるものとす、此等の債權の特權を行使し得る特定動産は、土地の賃貸借の場合と、建物の賃貸借の場合とにより其目的を異にす、即ち土地の賃貸借より生じたる債權が、優先辨濟を受くる事を得る特定動産は、賃借地に備付けたる動産、賃借地の利用の爲めに設けたる建物の内に備付けたる動産、賃借地利用の爲めに供したる動産賃借地より生じたる果實にして、賃借人の占有中にあるものの四種なりとす、又家屋の賃貸借より生じたる債權の目的となるべき動産は、即ち賃借人が賃借家屋内に備付けたる動産なりとす、以上の場合に所謂備付けたると云ふは、土地又は建物の上に、一時的に存置する事を意味するものに非ずして、一定の時間其處に於て使用するが爲めに、附置したるものを云ふなり、而して債權者が敷金を受取りある場合に於ては、貸主は、其敷金を以て、先づ債權の辨濟に充當し、不足を生じたる場合に非ずんば先取特權を行使することを得ざるものとす、□二旅店の宿泊料、是動産に於ける先取特權の第二項に位する債權にして、旅客を宿泊せしめたるより生じたる債權を云ふ、即ち此債權にして先取特權を享有せんには、旅客自身及び其從者幷に牛馬の爲めに要したる宿泊料、及飮食料なりとす、而して目的とする動産は、其者の所有物にして、且つ旅店に現存する手荷物に限るものとす、之を保護するの理由は、旅客の爲めに宿泊を要するは、恰も吾人が家に在りて、日常の必要品を要すると同じく、人の生活上最大必要のものに屬すればなり、□三旅客又は荷物の運輸、こは旅客又は荷物を運送するにつきて生じたる債權を云ふものにして、即ち運賃若くは荷作賃保險料關税の如きものを云ふ、此債權の先取特權を行使し得る特定動産は、運送人の手中に存する荷物なりとす、これを保護する理由は、容易に交通運輸の利便を得しむると、又運送人の手中に存する間は、運送費用の擔保と見做し得べければ也、□四公吏の職務上の過失、公吏が職務を行ふに當り、過失懈怠より生ぜしめたる損害の賠償債權を云ふものにして、其目的とするものは、其公吏の納付したる身元保證金なりとす、此保證金の性質たるや、畢竟斯かる場合の損失を塡補せしめんが爲め、徵收し置くものなれば也、□五動産の保存、動産其物を保存するが爲めに要したる費用、若くは動産に關する權利を保存する爲追認せしむるか、又は實行するに付て生じたる費用を云ふ、而して其目的とする動産は、其保存したる動産に限るものとす、これ其保存の勞力に酬ゆるの趣旨にして、一般の經濟發達を誘掖せんが爲めに外ならず、□六動産賣買、乃ち動産賣買に於て、買主が賣主に支拂ふべき賣買代金、及び其利息を云ふものにして、其目的物は賣買したる動産其物なりとす、これを保護するの理由は、債務者たる買主の財産となりたるの所以は、賣主これを賣りたるによるものなれば也、換言すれば、動産の對價は代金なれば、其代金に對して此特權を附與するは當然の事理なりとす、□七種苗又は肥料の供給、即ち種代、苗代、肥料代金及其利息を云ふものにして、其目的とする動産は、此種苗、又は肥料を施したる後、一ケ年内に之を用ひたる土地より生じたる果實の上に及ぼすものとす、又蠶種及桑葉の代金も、其れより生じたる蠶、又は繭生糸の上に先取特權を行使するを得るものとす、蓋し世諺にも云へるが如く元手ありての收獲なれば、これを保護するも亦此理に基くなり、□八農工業の勞役、これは農業、工業の爲めに使役せられたる者の賃金債權を云ふものなり、而して此等の者の賃料債權と雖も、其全部に對して此特權を與ふるものとするときは、或は巨大の額に上り、他の債權者を害するの虞あるべきが故に、農業者の爲めには最後の一ケ年の賃金、工業者の爲めには最後の三ケ月の給料ならずば此特權なきものとす、此の債權の先取特權を行使すべき目的物は、其勞務の結果として生じたる果實、若くは製作物とす、之を保護するの主旨は、勞力者を勵奬せしむるの旨趣にあり。(民三一一條乃至三二四條)
- 英
- Preferential right in movables
- 独
- Priorität des Bewegliches
- 仏
- Droit de préférence an meuble
同情
(どうじやう)同情とは、他人の境遇を意識的又は無意識的に、自己の境遇若くは經驗と對比し、或は想像聯想を加へて、其の場合に伴ふ感情就中憐憫の情を覺ゆるを云ふ、故に同情の特質は、感情にして仁慈の基本ともなるべき人類特有の尊重すべき心的現象也、而して同情の未だ發達せざる狀態にありては、殆ど感情のみに止まり、其範圍、連續、及び同感の度合共に狹少淺薄なれども、最も發達したる狀態にありては、他人の境遇を全く自己の境遇として感ずるが故に、自他一視同仁の高尚なる道義心宗教心となり、或は人類以外の禽獸にも等しく及ぶに至る、偖斯かる同情の起原如何は、心理學上異論の存する所にして、大體二樣に分ち、一は同情を以て自愛心利己心より分化發展せるものなりとし、他は全く利己の感情とは、別に自愛と相並んで人心に固有なるものとす、されど今日の學者多くは後説を採り、他愛心と自愛心とは、人心に本具のものなりと論ず、而して男女智愚長幼の差によりて、同情を感ずるに深淺厚薄あるものの如く、槪して冷淡なる人物よりも、感情的人物想像の盛になるもの、經驗に豊かなるもの、又一般に幼者より長者、愚者より智者、男子より女子の方遙に同情の心に富むものの加し。
- 英
- Sympathy
- 独
- Sympathie
- 仏
- Sympathie
統帥
(とうすい)天皇が、陸海軍を總べ給ふを統帥と謂ふ、憲法第一一條に「天皇は、陸海軍を統帥す」と規定せるは即ち是なり、統帥權とは、天皇の大權に屬するものとして、陸海軍編制其他指揮命令せらるるを統帥權と稱す。(憲法十一條、司令權、大元帥の部參照)
- 英
- Supreme Commander
- 独
- Ober-befehlshaber
- 仏
- Commandant supérieur
統帥權
- 英
- Right of supreme command
- 独
- Oberbefehlsrecht über Landheer und Flotte
- 仏
- Droit du eommandant supérieur
統治
(とうち)統治とは、一國の主權者が國家を支配するの狀態を云ふものにして、約言すれば、統治者が、被治者を支配するを統治と謂ふ也、而して之を支配するの權力を稱して統治權と謂ふ、抑も國家とは、一定の土地の上に組織せられたる團體を云ふものにして、其組織體に對して支配權を及ぼすものは、即ち統治權の主體なりとす、故に統治權の内容は被治者を支配し、命令を下し、命令に服從せざるものあるときは、これを奉ずることを強制するの力なりとす、或はこれを主權と混同するものあれども、主權と統治權とは、其性質を異にするものにして、同一のものと考ふ可らず、所謂統治權は、支配するの權力なれども、主權は最高最上の權力を指すものなり、故に統治權にして最高なるときは、これを主權と名くるは誤なしと雖も、統治權にして最高ならざる場合にこれを主權と名け、其國の統治者を主權者と名くるが如きは大なる誤りと云はざるべからず、例へば我國の統治權は、内外に對し最高なるより、之を主權と稱するも誤なしと雖も、白耳義若くは普漏西に於て、統治權を主權と稱するは誤れるが如し、尚統治權の性質に關して少しく注意すべき點を擧ぐれば、□一統治權は分割するを得ざるもの也、日清間に於ける馬關條約に於て、主權、即ち統治權の割讓なる文字存在すと雖も、これ或時代の舊思想に基くものにして、今日の定説によれば、領土の割讓と統治權の割讓とは相伴ふものに非ざるなり、□二統治權は固有のものなり、此點に於て地方自治體の有する自治權とは、其性質を異にするもの也、自治權なるものは其團體が固有する權力に非ずして、統治者の委任によりて與へられたる權力なり、これに反して統治權は固有のものにして、他よりこれを與へられたるものに非ざるなり、□三統治權は不對當者間に存する權力なり、統治權は前述にべたるが如く、支配するの權力なるにより、命令者と服從者との間に存し得るものとす、此點に於て、對等者間に存立する民法上の債權の如ぎものと異るなり、債權を有する債權者も債務者と素とより同等にして、假に債權者が債務者を強制し得るも、其強制權は自己固有のものに非ずして、司法權の補助によるものなり、統治權を有する所の統治者は、自己の權力を以て其臣民に命令し、これに服從を強制し得るものとす。(憲法第一條)
- 英
- Reign
- 独
- Herrschen
- 仏
- Règne
統治權
- 英
- Right of sovereignty
- 独
- Staats-gewalt
- 仏
- Droit de la souveraineté
統治權の主體
(とうちけんのしゆたい)主體なる語は、彼の客體なる語に對し、或權利者、若くは權力者を意味することあり、又は權利の握有者、又は權力の總攬者を稱して主體と謂ふことあり、茲に所謂統治權の主體なる語も、此の二義に混用せられ、或學者は、國家を統治權の主體とし、或學者は、天皇を統治權の主體とす、而して此國家主體説を採る學者は、前義に於て統治權の主體を解するものにして、天皇主體説を採るものは、主體を後義に解するものとす、故兩説決して、矛盾するものにあらざるを見るべし、抑も統治權なるものは、治者被治者間に於ける意思制限即ち命令強制の強力にして、此對内關係に於て統治權の主體と云はば、何人も其總攬者たる天皇を指すことに一致すべし、されど今對外關係に就て之を見るに、國家は常に統治の主體として、外國家に對するを知るべし、何となれば、國と國との交通なる國際外交の關係に於て、單に一私人たる天皇を以て統治權の主體となし、其當事者となさば、所謂國際法は國家間に於ける法にあらずして、各國元首間に於ける法なりと云ふに至らん、現時の法理豈この種のことを容れんや、これ茲に兩説何れも矛盾のものにあらざるも、ともに眞理の一半に過ぎずといはんと欲する所以なり。(憲法一條以下、國際法參照)
統治の客體
(とらちのきやくたい)憲法第一條に曰く「大日本帝國は、萬世一系の天皇之を統治す」とあり、故に統治權の客體は、即ち我帝國たることは憲法上明なり、尤も帝國とは、如何なる意義を有するやに付きては、憲法上何等の規定を有せず、然れども國家は權力者及び土地人民より成立するものなることと考ふるときは、此帝國の土地及び人民を併稱するものなること明なりとす、而して此の統治權の客體たる土地を稱して領土と謂ふ、或は統治權の客體は人民のみにして、領土は統治權の客體に非ずと唱ふるの論者あり、此説によるときは、外國人が、何故に統治權によりて拘束せらるるかを解釋することを得ざるなり、統治權に特別の服從關係を有する者は臣民にして、其服從關係の下にあるが故に、服從せざるべからざるは明なりと雖も、外國人は、斯くの如き關係を統治者に對して有することなし、然るに外國人が其領土内に來りたるとき、其國の統治者の命令に服從せざるべからざるは、其服從の根據を何れかに求めざるべからず、且つ外國人が領土を去りたるときは、最早其國の命令に服從することなき也、故に外國人の統治權に服從するは、領土の關係より來るものなることを推定し得べし。
- 英
- Object of sovereignty
- 独
- Souveränitätsobjekt
- 仏
- Objet de la sou-veraineté
投票
(とうへう)汎く投票とは、議員の選擧又は議事の採决をなす場合に於て、選擧權利者又は採決權利者が、特定の人名又は事故を、文字其の他の方法に依て顯はし、之を一定の場所に差出すを云ふものにして、市町村會議員の選擧府縣郡會議員の選擧、衆議院議員の選擧等は、槪れ此方法に依るものとす、衆議院議員選擧法に「選擧は、投票に依り之を行ふ、投票は一人一票に限る」と規定せらされたるが如きは此の用例とす。(選擧法二九條)
投票管理者
(とうへうくわんりしや)議員選擧の場合に於ける投票に關する事務を擔保するものを云ふ、衆議院議員選擧法によれば、市町村長は投票管理者となり、投票に關する事務を擔任するものとす。(選擧法四條、四六條)
- 英
- Voting overseer
- 独
- Stimm-verwalter
- 仏
- Surveillant de la vote
投票立會人
(とうへうたちあひにん)投票立會人は、選擧の公平正實なるを保障する爲め議員選擧法に於て認むる制度にして、郡市長は各選擧區内に於ける選擧人中より、三名以上五名以下の投票立會人を選任し、選擧の期日より少くも三日前に之を本人に通知し、選擧の當日投票所に參會せしむべきものとす、投票立會人は、正當の事故なくして其職を辭することを得ざるものなり。(選擧法三二條)
- 英
- Voting witnesses
- 独
- Bal-lotierenzeugen
- 仏
- Témoin de la vote
投票用紙
(とうへうようし)投票に用ふる特定の形式を有する用紙なり、例へば衆議院議員選擧人が、被選任の姓名を記載して投票すべき一定の形式を有する用紙にして、選擧の當日投票所に於て、これを選擧人に交附すべきものの如し、選擧人は投票所に於て、投票用紙に自ら被選擧人一名の氏名を記載して投凾すべきものとす。(選擧法三五、三六條)
- 英
- Voting papers
- 独
- Stimm-zettel
- 仏
- Papier de la vote
投票錄
(とうへうろく)投票管理者に於て作成し、投票に關する顚末を記載し、投票立會人共とに署名したる調書を云ふ。(選擧法四一條)
- 英
- Minutes of the voting
- 独
- Stimmprotokoll
- 仏
- Note de la vote
謄本
(とうほん)官公署の作成したる文書にして、正本の全部を寫し、之に其正本と相違なきことの證認を與へたるものを謄本と稱し、正本と同一の效力を有するものとす、或は私人の作成するものにても、一定の形式證券を謄寫せるものの如きは、法定の形式を備ふる限り之を謄本と云ふことあり、前者の例は判決の謄本戸籍の謄本等にして、後者の例は手形の謄本の如き是なり。(民訴二三九條、戸籍法一三條、商五二二條乃至五二四條)
- 英
- Copy
- 独
- Abschrift
- 仏
- Copie
同盟國
(どうめいこく)同盟國とは、二國若くは二國以上が同一の敵に對し、相對して交戰せんとするより起る國家間の關係にして、國際法上、これを二の方面より觀察することを得べきものなり、第一に於て同盟者相互の關係は、同盟國の各一方より他の一方に對する權利義務を包含するものにして、平時國際の部類に屬し、守戰同盟及び攻戰同盟の區別、幷に一方に於て之を廢棄するを得るや等の事は、總べて條約に關する原則によりて支配せらるるものとす、即ち此間の關係は其條約の定むる所によりて種々あるべしと雖も、其權利義務の内容は、總べて條約によりて定まるべきもの也、第二に於て、同盟者と對する第三國との關係に於ては戰時公法の部類に屬するものにして、二國以上が同盟して同一の戰爭に與る場合に於て、其各一國が、主戰國即ち眞意の同盟國たる地位に立ち、事實に於て共に戰爭行爲を爲す場合は、何れも反對の國家より見れば、純粹の敵たる地位にあるものにして、同盟の攻擊同盟なると守戰同盟なると何等の體裁に出づるとにより、其關係を異にすることなし。
- 英
- Alliance
- 独
- Allianz
- 仏
- Alliance
同盟罷業
(どうめいひげふ)多數の者が、共同的に爲す勞務の停廢を稱して同盟罷業と謂ふ、故に多數のものが、一時に休業するに至ると雖も、偶々流行病に傅染したるが如き結果に出づる場合を含まず、多數が共同の意思に基きて爲したる休業なるを要す、而して其原因の何たるは問ふ所にあらざるなり、同盟罷業は、商工經濟上好箇の研究題目なりと雖も、我法學上は、之を詳説するの必要なきものとす、唯法律上に於て説くべきは、即ち同盟罷業に對する制裁の點なりとす、若し同盟罷業にして、其勞務者たる雇人が、其雇賃を增さしめ又は農工業の景況を變ぜしむるの意思を以て、雇主に對して僞計威力を逞うし、其農工業を妨害したるの行爲なる時は、刑法上の犯罪者として、各犯人は一箇月以上六ケ月以上の重錮禁に處し、三圓以上三十圓以下の罰金を附加せしむる事あるべし。(刑二三四條、治安警察法一七條乃至三〇條)
- 英
- Strike
- 独
- Schlag
- 仏
- Grève
登錄
(とうろく)登錄とは、法令の定むる所により一定の事業、又は法律行爲を主管官廳の帳簿に登載し、公の力を以てこれを證明するの行爲なり、例へば選擧人名簿に登錄せらるることによりて、選擧人たる資格あることを證明せられ、辯護士として其職務に從事し得ることを證明せらるるが如し、又意匠、商標等の登錄によりて意丘專用權、商標專用權の存在を證せらるる場合の如し、其登錄の效果は各場合によりて同じからず、若し法規に於て特別の規定なき時は、公の證明力は、唯其證明せられたる事實、又は法律行爲に證據力を與ふるの效果あるに止まる、例へば選擧人名簿に登錄せられたる者のみ、選擧權を行ふことを得るの效果を生ずるが如く、特別に法規に於て認めらるる場合にのみ特別の效果を生ずるものとす、又其權限を有する官廳のみが、其法規の定むる所によりて此證明力を與へ得べきものとす、然れども登錄は、唯既に成立せる事實、又は行爲の眞正なるを證明するに止まり、新に事實又は行爲を作成するものに非ず、故に若し實際に於て、其事實又は行爲が眞正ならざりし場合に於ては、其登錄によりてこれを眞正ならしむる事を得ず、例へば實際選擧權なき者が、誤つて選擧人名簿に登錄せらるるとも選擧權を行ふを得ず、又詐僞の行爲を以て、意匠商標等の登錄を受けたりとするも、其專用權を有し得るものならず、是登錄なるものは、事實又は行爲の存在を前提としてこれを證明するの方法なれば、若し其要件たる事實にして存在せざる以上は、其登錄も有效なるを得ずとする所以なり。
- 英
- Registration
- 独
- Registrierung
- 仏
- Enregistrement
登錄税法
(とうろくぜいはふ)明治二九年法律第二七號を以て公布せられたる所にして、不動産、船舶、其他法人、海員、鑛業等に關して登記登錄を受くべき場合に於ける納税額につき、規定せられたるものなり、今これを表別して左に揭ぐべし。
△第一、不動産に關する登記を受くるとき、
一、法定の家督相續による所有權の取得
不動産價格
千分の七
二、第一號以外の家督相續又は遺産相續による所有權の取得
同
千分の十五
三、遺言贈與其他無償名義による所有權の取得
同
千分の六十
四、第一號乃至第三號以外の所有權の取得
同
千分の三十五
五、從來保有する所有權の保存
同
千分の五
六、共有物の分割
分割によりて受たる價格の千分の五
七、永代の地上權の取得
不動産價格の千分の廿五
八、地上權永小作の取得
{存續期間十年未滿
同
千分の二
同二十年未滿
同
千分の三
同三十年未滿
同
千分の四
同三十年以上
同
千分の五
存續期間の定めなき者
同
同
九、賃借權の取得
{存續期間十年未滿
不動産價格
千分の一
同十年以上
同
千分の二
存續期間の定めなきもの
同
千分の一
十、地役權の取得
要役地價格の千分の一
十一、華族世襲財産の創設
不動産價格千分の廿五
十二、先取特權の保存又は取得
債權金額の千分の六
十三、抵當權の取得
同千分の六
十四、竸賣強制管理の申立
同同
十五、假差押、假處分
同千分の四
十六、抵當ある債權の差押
同千分の六
十七、相續財産の分離
{所有權につきては不動産價格の千分の六
所有權以外の權利につきては同千分の一
十八、請求又は申立により抹消せられたる登記の回復
不動産每一個
二十錢
十九、假登記
同
二十錢
廿、豫告登記
同
二十錢
廿一、附記登記
同
十錢
廿二、登記變更、更正、抹消
同十錢
△第二、船舶に關する登記を受くるとき、
一、法定の家督相續による所有權取得
船舶價格
千分の三
二、右以外の家督遺産相續によるもの
同千分の六
三、遺言遺贈其他無償の所有權取得
同千分の五十
四、一乃至三以外の原因による所有權取得
同千分の廿五
五、從來保有せる所有權の保存
同千分の三
六、賃借權の取得
{存續期間十年未滿
同
千分の一
同十年以上
同
千分の二
存續期間の定めなき者
同
千分の一
七、質權抵當權の取得
債權金額千分の六
八、竸賣の申立
同千分の六
九、假差押處分
同千分の四
十、抵當ある債權の差押
同千分の六
十一、請求又は申立に依り〓消せられたる登記の回復
船舶每一個
二十錢
十二、假登記
同
二十錢
十三、豫告登記
同
二十錢
十四、附記登記
同
十錢
十五、登記の更正、變更、〓消
同
十錢
△第三、船籍の登錄
一、新規登錄
每十噸金
五十錢
二、轉籍
同
十錢
三、除籍
同
五錢
四、登錄變更
船舶一箇每
十錢
(注意)船舶の噸數は總噸數によるべし、十噸未滿の端數は十噸とし、石積量を表示するときは百石を十噸として計算す。
△第四、土地臺帳に登錄するとき、
一、新規登錄
地價
千分の二十
二、地價設定
同
千分の十
三、地價の修正
同
同
四、開墾
同
同
五、開墾鍬下年期附與
同
同
六、地價据置年期附與
同
同
七、新開免租年期の延長同
同
八、鍬下年期地價据置の延長
同
同
九、抵價年期の附與
同
千分の一
十、地租條例二二條の地價の修正
同
千分の一
十一、地價の復舊
同
千分の一
(但し地價未設定の土地は近傍敷地の比準による)
△第五、商事會社其他營利を目的とする法人の登錄
一、合名會社、合資會社、
財産を目的とする出資の價千分の四
二、右の出資增加
同
千分の四
三、株式會社
拂込總金額
千分の五
四、株式會社資本增加
增加拂込金額
千分の五
五、株式會社第二囘以後の株金拂込
每回拂込金額
千分の五
六、株式合資會社設立
拂込金額、株金以外の出資金額
千分の五
七、同資本增加
同
千分の五
八、同第二回以後の拂込每拂込金額
千分の五
九、合併組織變更による會社設立
拂込金額、株金以外の出資金額
千分の二
十、合併による會社の資本增加
同
千分の二
十一、債券發行
債券總金額
千分の二
十二、支店の設置
每一ケ所
拾五圓
十三、本店支店の移轉
每一件
七圓
十四、支配人選任代理權消滅
同
七圓
十五、登記事項の變更、消滅廢止、
每一件
七圓
但し商法施行法により新に登記すべき事項は登記事項の變更と看做す
十六、登記の更正、〓消
同
七圓
十七、解散
同
五圓
十八、清算人の退任、解任、變更
同
一圓五十錢
十九、清算の結了
同
同
(注意)右一、二、三、六、九の場合は、税金十五圓未滿なるときは十五圓とす、又支店所在地に於て前項の登記を受くるときは、各號につき每一件一圓五十錢とす。
△第六、財團法人又は營利を目的とせざる社團法人の登錄
一、法人の設立(民法施行法により法人と認められたるものの新に受くる登記とも)
每一件
金七圓
二、法人設立後の事務所設置
同
金五圓
三、事務所移轉
同
金三圓
四、登記事項の變更、消滅、又は廢止
同
金壹圓半
五、登記の更正、〓消、
同
同
六、解散
同
七十錢
七、清算人の選任、解任、變更、
同
七十錢
八、清算の終了
同
七十錢
(注意)主ならざる事務所所在地は、前項各號につき每一件金七十錢とす。
△第七、商號其他の登錄、
一、商號の新設、取得
每一件
金七圓
二、支配人の選任、解任、
同
金七圓
三、船舶管理人の選任、解任、
同
金七圓
四、商法五條七條に依る登記
同
金三圓
五、民法七九四、七九五、七九七條に依る登記
同
金三圓
六、登記事項の變更、消滅、廢止
同
金壹圓半
七、登記の更正、〓消、
同
金壹圓半
△第八、海員の登錄
一、新規登錄
{甲種船長
金十五圓
同一等運轉士
同十圓
同二等運轉士
同六圓
乙種船長
同十圓
同一等運轉士
同四圓
同二等運轉士
同三圓
丙種船長
金六圓
同運轉士
同二圓
機關長
金拾五圓
一等機關士
金拾圓
二等同
金六圓
三等同
金參圓
水先人
金貳十圓
二、登記事項の變更
每一件
五十錢
△第九、著作權の登錄
一、文藝、學術、美術の著作物(但し演劇脚本、寫眞を除く)
每一種一回
金拾圓
二、新聞紙は定期刊行物
每一號
五十錢
三、演劇脚本
每一種一回
五十錢
四、寫眞
每一版
金五圓
五、著作權の讓渡又は質入
每一件
金五圓
六、無名又は變名著作者の實名登錄
同
金五圓
△第十、特許に關し登錄を受くる者、
一、讓渡又は共有
每一件
金拾圓
二、質入同
金五圓
△第十、一意匠に關し登錄を受くるもの、
一、讓渡又は共有
物品一類每に
金貳圓
二、質入
同
金一圓
△第十二、商標に關し登錄を受くるもの、
一、讓渡又は共有
商品一類每に
金拾圓
△第十三、鑛業の登錄、
一、試掘
金百圓
二、採掘
金百五十圓
三、試掘增區、增減區の訂正
金三十圓
四、採掘增區、增減區の訂正
金七十五圓
五、買受、讓受
金七十五圓
六、採掘權書入、試掘延期
金貳十圓
七、減區の訂正
金五圓
八、鑛區合併、分割
金拾五圓
九、廢業
金五圓
第十四、課税免除、
一、政府自己の登記、
二、府縣郡市町村其他公共團體に於て公用に供する不動産の登記、
三、公園、社寺、堂宇の敷地、墳墓に係る登記
四、明治一六年一八號布告、地所質入書入規則、同八年一四八號布告建物書入質入規則の公證を經たる證書面の權利につきて債權者より申請する登記、
- 英
- Law of registration tax
- 独
- Gesetz der Eintragensteuer
- 仏
- Loi de la taxe enregistrée
時
(とき)時とは何ぞやの解釋は、法學以外に之を求めざるべからざるも、時の觀念は一切の事物に隨伴するものにして、法律現象を考察するに當つても、これを度外に置くことを得ざるものとす、所謂時の觀念は、直線的に連續して經過的に測定するを得べき量の一種にして、過去、現在、未來を通じて、これを連續的に理解するを得べきものなり、而して法律上に於て其法律上の效果の内容が、時によつて限定せらるることあり、權利の始期、終期又は存續期間が、法律又は意思表示を以て指定せらるる場合の如し、又事實が、法律上の效力を發生するにつき、これに隨伴すべき時が、必要なる要素となることあり、此場合に於ては、時夫れ自身は法律事實にあらざるも、法律事實の内容を形成するものたるや明なり、即ち一定の法律上の效果を釀生する爲め、或事が、一定時、若くは一定の期間内に起りたること、又は或狀態が、一定の時間繼續することを必要とする場合の如し、現行民法の定むる時の計算方法を説明せんに、法令の規定裁判所の命令又は法律行爲の條款によりて、期間の定めある場合には、其方法によるべき事勿論なれども、若し別段の定めなき場合に於ては、、下の如き方法によるべきものとす、即ち時を以て期間を定めたる場合には即時より起算す、蓋し期間を定むる時を以てする場合には、最少の時間に重きを置くものなるが故に、即刻より起算する事と爲したるなり、例へば午前六時に十時間と期間を定むれば、午前六時を起算點として、十時間を計算に午後四時を以て滿了するなり。(民一三九條)
- 英
- Time
- 独
- Zeit
- 仏
- Temps
特有財産
(とくいうざいさん)廣く特有財産と云へば、沿革上より一般に財産所有の權能なかりし者が、特別に所有する財産の意なり、而して現時に於ては、其の思想を異にするも意義は同一なり、例へば戸主の所有する財産に對して、家族の特にこれと分離して所有する財産を家族の特有財産と稱するが如し、我民法の定むる所によれば、家族が自己の名に於て得たる財産は、其特有財産とすと規定したり、家族が自己の名に於てとは、家族が自ら職業を爲すによりて得たる財産、遺産相續又は遺贈贈與を受くるによりて得たる財産等、其他何等の名義を問はず、自ら有償無償に取得したる財産の凡べてを含む、これを家族の特有財産と稱するは、他の家族の債務につき、辨濟を爲すの義務を負はず、戸主又は他の家族が破産宣告を受くるも、これが影響を受くることなきを意味するものなり、家族の財産に就ては、我邦の慣習は、古くより已に戸主より獨立して財産を有するの能力を認めたり、蓋し極端の家族制度によりては、家に屬する財産ありて、人に屬する財産なし、箇人の權利思想の稍發達するに及びては、此極端なる慣習は夙に其跡を絶ち、我邦に於ては、大寳令時代に於ても已に家族の特有財産を認めたるの證あり、我民法が此制を用ひたるも當然とす。(民七四八、八〇七條)
- 英
- Separate property
- 独
- Sonder-gut
- 仏
- Propriété spéciale
特許
(とくきよ)汎ねく特許と云ふは、一般に禁ぜられたる行爲を特別の場合に許す行政行爲即ち許可の一種なるも、普通謂ふ所の特許はこれより尚狹義にして、特定の個人に對して營業の目的の爲めに、發明を專用するの權利を附與する所の行政行爲を云ふ、此行政行爲によりて許與せらるる所の權利を稱して、發明專用權と稱す、特許は、權利を附與する所の行爲なり、特許によりて新なる權利が設定せらるるものにして、既に成立せる權利が、單に認證せらるるに止まるものに非ず、發明者は、發明の事實によりて、當然其發明を專用するの權利を有し、此權利が唯特許によりて承認せらるるものには非ず、特許行爲によりて初めて此專用權を設定せらるるものなり、然れども特許以前に於ても、發明者は何等の權利を有せざるものに非ず、發明專用權は、特許によりて初めて附與せらるるものなる事は疑を容れずと雖も、特許以前に於ける發明者は、國家に對して特許を要求するの權利を有するものとす、□一特許の目的物、特許の目的物たるものは、工業上の物品及方法に關する最先の發明なり、即ち特許を受くる第一の要件として發明あることを要す、如何程の範圍にまで、これを發明と云ふことを得るやにつきては特許法は何等の定義を與へず、專ら普通思想の解釋に任ぜり、蓋し發明とは、未だ知られざりし新なる物品を製作し、又は既に知らられたる物品を未だ知られざりし新なる方法を以て製作すべき考案を云ふなり、故に發明と稱することを得るは、其製作せる所の物品又は方法が、從來既に知られたる物品又は方法の一體樣と見做すべき程度に非ずして、これと異りたる物品又は方法と見做すべき程度に達したるものならざるべからず、此程度に達せざる新規の考案は、實用新案として保護の目的となることを得るも、發明として保護を受くるを得ず、つぎに發明が特許の目的物たることを得るには、商工業上の發明に限るものとす、工業上の發明と云ふは、實際の營業に應用することを得べものたることを意味す、茲に工業上と云ふは、普通の意味に於ける工業と其意義同じからず、唯飮食物、嗜好物、醫藥又は其調合方法を以て特許の目的物となり得ざる點よりすれば、之等のものを除外したる營業上の應用品と解すべきなり、更に其發明は、最先なることを要す、最先とは、必ずしも絶對的の最先を意味するに非ず、特許法に於ける最先とは、唯特許を與ふるには、出願の前後によらずして、發明の前後によるべきものとし、先きに發明したるものが、特許を受るの權利を有する意を示したるものとす。(特許法四條、一二條參照)
- 英
- Patent
- 独
- Patent
- 仏
- Brevet d'invention
特許權
- 英
- Patent
- 独
- Patent
- 仏
- Brevet d'invention
特許代理業者試驗規則
(とくきよだいりげふしやしけんきそく)明治三三年農商務省令第二九號を以て公布せられたるものにして、特許代理業者の試驗に關する詳細なる規則を定めたるもの也、此大要を摘記すれば、特許代理業者たらんとするには、一定の試驗を經て合格證書を有するものたらざる可らず、其試驗は、試驗委員之を行ひ、期日及び場所は、豫め官報紙上に於て公告せらる、此試驗を受けんとするものは、其公告に定められたる期日迄に、試驗願書に履歷書を添へて、手數料は收入印紙を以て金四圓を貼付し、試驗委員に差出す事を要す、試驗を受けんとするものに關しては、別段なる身分資格を要せずと雖も、下に揭ぐる者は試驗を受くることを得ざるものとす、□一特許法、意匠法、商標法に定めたる罪を犯したる者及び登錄を受けずして、特許代理業を營み若くは特許代理業者と公稱したる爲め、又は詐僞の所爲を以て登錄を受け罸に附せらられたるもの、及び特許代理業を停止せられたる者は、此試驗を受るを得ず、□二重罪の刑に處せられたる者、但し國事犯にして復權したるものは此限りに非ず、□三禁錮に處せられ、滿期又は特赦の後三年を經ざる者、□四公權停止中の者、□五破産、又は家資分産の宣告を受け復權せざる者、又は身代限りの處分を受け債務の辨濟を終へざる者、以上の五事項に關係するものは、試驗を受くることを許さず、此關係を秘して試驗を受くると雖も、特許代理業者として登錄を受くるを得ざるのみならず、其合格は無效となるべし、試驗は下の科目につきて之を行ふ、□一特許意匠及商標に關する法令、□二民法、刑法、民訴訟、刑訴訟、□三數學、物理及び化學、右の内二三に揭げたる科目は、試驗を受くるものに於て、其一を撰擇するを得るものとす、試驗は、之を筆記とし、委員に於て必要と認むるときは、筆記試驗に合格したる者に對して口述試驗を行はるること有るべし、合格者を定むる方法は、試驗委員の議定する所による、合格者の氏名は官報に公告し、合格證書を授與せらる、而して高等文官試驗、判檢事登用試驗に合格したる者、帝國大學分科大學、又は之と學科程度同等と認むる内外國の學校に於て定規の課業を卒へたる者、辯護士たる資格を有する者、特許局の高等官たりし者又は二年以上特許審査官補たりしものは、試驗を經ずして特許代業者として登錄を受くることを得べし。
特許代理業者登錄規則
(とくきよだいりげふしやとうろくきそく)明治三二年六月勅令第二三號を以て公布せられたるものにして、本法に於て特許代理業者と稱する者は、特許、意匠、又は商標に關する代理を營業とする者を云ふ、特許代理業の登錄を受けんとするものは、能力者にして、且つ許特代理業者試驗に合格したる者なるを要す、高等文官、判檢事登用試驗に合格したる者、帝國大學、分科大學、又はれと學科程度同等と認むる内外國の學校に於て、定規の課業を卒へたる者、辯護士たる資格を有する者、特許局の高等官、若くは二年以上特許局審査官補たりし者は、試驗を受くるを要せずして、特許代理業者として登錄することを得るなり、前示のものにして一旦登錄したるものと雖も、右の資格を失ふ時は、登錄は其效を失ふなり、又下に揭ぐるものは登錄を受くることを得ず、□一特許法、意匠法又は登錄を受けずして特許代理業を營み、若くは代理業者と公稱したる者、及び曾つて詐僞の所爲を以て登錄を受けたるもの等、□二重罪の刑に處せられたる者、□三禁錮に處せられ滿期、又は特赦の後三年を經ざる者、□四公權停止中の者、□五破産若くは家資分産の宣告を受け復權せざる者、又は身代限りの處分を受け債務の辨濟を終へざるもの、登錄を受けんとするものは、手數料として收入印紙を以て金拾圓を上納すべく、登錄願書には、履歷書及び試驗合格證書、試驗を要せざる資格あるものは其證明書を添付すべきものとす、登錄を經たるときは官報特許公報を以て公告す、特許代理業者は、相手方の代理人として取扱ひたる事件、又は特許局在職中取扱ひたる事件につき其業務を行ふことを得ざものとす。
特許法
(とくきよはふ)特許法は、發明專用權に關する特許の手續、特許を受けたるものの權利等に關する定めを爲したるもの也、特許の目的物となり得るものは、工業上の物品、方法に關し、最先の發明を爲したるもの若くは其承繼人は、此法律の定むる所によりて特許を受けることを得るものとす、而して物品の發明に係る特許は、特許を受けたるものに限り、其發明物品の製作、使用、販賣、若くは擴布するの權利を有し、方法の發明に係る特許は、特許を受けたる者に限り、之を使用若くは擴布するの權利を有せしむ、然れども其例外として飮食物、嗜好物、醫藥又は其調合法、秩序又は風俗を紊るの虞れあるもの、特許出願前に公に知られ、又は公に用ひられたるもの、(但し試驗の爲め二年以内公に知られたるものは、此限に非ず)は特許の目的と爲すことを得ざるものとす、特許年限は、十五年とし、原簿登錄の日より起算するものなり、今其手續の大要を示さんに、□一出願の手續、特許を受けんとするものは、一發明每に發明の明細書、及び必要の圖を添へて特許局長に差出すべく、特許局長は、其必要ありと認むるときは、雛形若くは見本の提出を命ずることあり、特許願書には、每一件に就き收入印紙五圓を貼付するを要し、願書に添付すべき明細書には、發明の名稱、發明の性質及び目的の要領、圖面の略解、發明の詳細なる説明、特許の請求範圍を明記せざるべからず、□二特許の手續、特許を與ふるの手續に關しては各國制度に二種の主義あり、一はこれを通告主義といひ、一はこれを審査主義といふ、我國は純然たる審査主義によりたるものにして、特許を與ふるの權を有するものは、即ち特許局に特許の出願ありたるときは、特許局審査官は其發明を審査し、審査官に於て特許を與ふべきものと査定したるときは、特許局長は特許名簿に登錄し、出願者に對して特許證書を下附するものとす、之に反し特許を與ふべからずと査定したる時は、査定書を出願人に送付す、出願人にして此査定に不服なるときは、理由書を差出し、再審査を請求することを得、再審査は前審査に關與せざりし審判官が之を爲す、再審査によりて不服理由を不當なりとしたるときは、其査定書を不服者に送附すべきものとす、□三發明專用權の審判、二個以上の特許發明が亙に撞著し、又は特許發明と特許を受けざる物品、若くは方法と撞著することを發見したるときは、利害關係人は、權利を確認する爲め、特許局に審判を請求することを得べきものとす、右の爭ある場合に於て其爭を決定し、特許法の適用を確定するの行爲を稱して審判と謂ふ、審判なるものは法律の適用を以て目的とする行爲にして、元來は司法行爲に屬するものなり、然れども發明專用權に關する審判は、司法裁判所に屬せずして、特許局審判官に屬するもの也、唯審判官の裁決に對して、法律の適用に不服ある場合に限り、大審院に上告することを許す、審判は、査定の審判、無效の審判、撞著の審判の三種あり、査定の審判は前示する如く、無效の審判は、既に與へられたる特許を無效なりと主張する審判也、撞著の審判は、二個の特許發明の相撞著し、又は特許發明と特許を受けざる物品、方法と相撞著する場合に於ける權利の確認を求むる方法なりとす、□四特許の無效、取消及制限、特許を受けたる發明にして、特許の要件を具備せざるものなるとき、及び必要なる事項を故意に記載せず、又は必要ならざる事項を故意に記載して特許を受けたるものなるときは、其特許は無效とす、又既に與へられたる特許を以て無效なりと認むるものは、何人にても特許局の審判を求むることを得、然れども特許の無效は、必ずしも特許局の審判を以て初めて決定するものに非ず、無效の裁決なき場合に於ても、以上の條件に該當するものは當然無效なり、故に其特許に係かる物品、又は方法を營業の目的に利用するものあるも、賠償の問題又は刑罰の問題は生ずることなし、何となれば、既に其特許は無效のものなればなり、特許が初めより無效なる場合の外、下の原因によりて消滅す、イ特許年限の經過、即ち特許原簿登錄の日より起算して滿十五年、ロ取消、特許を受けたる者、一定の期間其發明を實施公行せず、且つ他人の讓受又は使用の請求を拒絶したるとき、一定の期間特許料を納付せざるとき、又出願人にして帝國内に住所を有せざるものにて、一定の期間代理人を置かざるときに於ては、特許局長は、其許可を取消すことを得、取消は無效と異り、取消しによりて初めて效力を失ふものにして、其れ以前に於ける權利の侵害は、賠償責任又は所罰の原因たること勿論とす、ハ公益の爲めにする收用、特許を受けたる發明が、公益上普及を要するもの、軍事上必要なるもの又は秘密を要するものなるときは、特許局長は自己の認定により、又は主務官廳の請求により之を制限し、又は取消すことを得、此場合には、國庫より相當の賠償金を給與せらるるものとす、賠償金額につき爭あるときは、司法裁判所に於て之を決定す、公益の爲めにする收用は、啻に既に與へたる特許に對して行ふを得るのみならず、特許の出願ありたる場合に於て、初めより特許を與へず、又は之を制限して與ふることを得べきものとす。(三二年法三六號)
- 英
- Law of patent
- 独
- Patentgesetz
- 仏
- Loi de la brevet
特許法施行細則
- 英
- Regulation for the application to the law of patent
- 独
- Aus-führungsregel des Patentgesetzes
- 仏
- Règ-les de l'application de la loi de brevet
特權
(とくけん)特權なるる文字は、其用例區々にして、槪括的の意義を一定するを得ずと雖も、法律上ある特別なる身分、資格、其他特定の地位によりて、享有することを得べき特種の權利を指示するものにして、民法上先取特權と云へば、之を享有するものは他の債權者を排斥して、其特權の目的物につき、優先して辨濟を受くるを意味し、相續人の特權と云へば、其家に屬する系譜、祭具、墳墓の所有權を指すが知し、其他特許法に於て發明を專用する權利、商標法に於ける商標專用權等の如きも、亦一種の特權と云ふことを得べし。
- 英
- Privilege
- 独
- Privilegium
- 仏
- Privilège
毒殺罪
(どくさつざい)毒物を施用して人を殺すの罪にして、刑法は曰く、「毒物を使用して人を殺したる者は、謀殺を以て論じ死刑に處す」とあり、即ち毒物施用と謂ふ特別の手段に依る殺人行爲にして、豫謀の有無を問はず、謀殺と同じく死刑に處せらるるもの也、故に刑法に於て單に謀殺云々と規定したる場合には、常に毒殺罪を包含するものと解せざるべからず、今その意義を説明すれば、□一毒物とは、比較的少量を用ひて、化學的に人の生命を絶つに至る所の能力ある物質を總稱し、其物質の動物質たると植物質たると鑛質物たるとを問はざるなり、例へばペスト菌、コレラ菌、モルヒネ、酸素の如き是なり、毒物の意義は刑法の明文に於てこれを定めず、一般常識の解譯に從はざるべからず、然れども其分量の上より見て、其多量なるが爲めに人を害するもの、即ち分量が害を起すの原因たるものは毒物と云ふを得ず、彼の人の嗜好する酒類と雖も、非常の分量を用ふるときは生命を損ずることあり得べき也、されどこれを毒物と云ふを得ず、又其物質の上より見て化學的作用を起すものに非ざれば、毒物と云ふを得ず、例へばモルヒネを飮用せしめて、化學上化合の作用によりて、人の生命に害を及ぼすものならざるべからず、故に硝子の粉未を食物に混じ人の消化機關を損せしむるも、是機械的作用を生ずるものなれば、硝子の細末の如きは毒物に非ず、□二施用と云ふは、人の肉體組織内に侵入せしむることを謂ふ、換言すれば體内に於ける血液と混和せしむるの方法は、呼吸機によるもの、例へば鼻より其毒氣をかがしむると、消化機によるもの即ち食用せしむると、若くは皮下注射等の方法によるを區別せず、總べてこれを包含するものとす、而して右の如き方法は、暴行によりて之を行ふと、被害者の錯誤に陷らしめて之を行ふとは敢て問ふ所に非ず。(舊刑二九三條)
- 英
- Murder with poison
- 独
- Ver-giftung
- 仏
- Homicide par l'aide du poison
篤疾
(とくしつ)篤疾とは、身體傷害に關して刑法上其傷害の程度をいひ表はすに用ひらるる語にして、身體の内部外部を問はず、永久的徵候ある傷害の場合を指すもの也、刑法によれば、人を毆打創傷し、其兩目を瞎し、兩耳を聾し兩肢を折り、及び舌を斷ち、陰陽を毀損し、又は知覺精神を喪失せしめ、篤疾に致したるもの云々とあり、故に篤疾とは以上の六種場合を指すものにして、法文に兩目を瞎しとは、目的物を識別すべき視覺作用を永久に不能ならしむる事を意味し、耳を聾しとは音響を聞き分くる作用を永久に不能ならしむる事を意味し、肢を折りとは、手足を有形的に折り取るのみならず、其筋肉の紳縮作用を永久に不隨ならしむる事を意味す、又舌を切りとは、舌を有形的に切り取るのみならず。言葉により思想をいひ表はすの作用を永久に不能ならしむることを意味し、陰陽を毀損しとあるは、交接作用を不能ならしむるは勿論、生殖作用を不能ならしむることを指示すると解するを正當とす、知覺精神を喪失せしめんとは、白痴又は瘋癲等に致すを云ふ、右の如く六種の機能を永久的に不能ならしむる場合を稱して、刑法は特に篤疾なる名稱を附したるなり。(舊刑三〇〇、三〇一條)
- 英
- Infirmity
- 独
- Krankkeit
- 仏
- Infirmité
特赦
(とくしや)天皇の大權命令を以て或一定の犯人に對し、確定したる刑罰の全部を取消すを特赦と謂ふ、特赦は、刑の言渡確定したる後に於て、即ち刑罰執行權の生じたる後に大權命令を以て刑を免除することを云ふものにして、憲法上天皇の大權に屬し、彼の裁判官の認定により減刑せらるるが如き、所謂酌量減輕と稱する裁判宣告前に爲す減輕とは、全く其性質を異にするものなり、彼の大赦とも大に異なる、大赦も亦同じく、天皇の大權命令に出づるものなれども、大赦の場合は、或犯罪の種類範圍を定め、其種類の犯罪者を全免するものにして、其範圍に屬するものは、誰れ彼れの別なく刑を免除せらる、特赦は、單に或特定の何某にのみ對して、刑罸の執行を免除せらるるなり、又大赦は、當該官吏の上奏を俟たずして天皇の發せらるる命令なりと雖も、特赦は當該官吏の上奏によりて裁可せらるるものなり、特赦に關する手續は、犯人に對して刑の言渡確定したる後、何時にても刑の言渡を爲したる裁判所檢事、又は監獄署長より、犯人の情狀を具して司法大臣に申立て、天皇の裁可を得るものにして、如何なる情狀を特赦の原因と認むべきや否やは各場合に於て大に異るべしと雖も、主として犯人に於て、改俊の情の著しき場合に特赦の原因を生ずること多し、若し監獄署長より右の情狀を具して特赦の申立を爲すときには、其刑の言渡を爲したる裁判所の檢事を經由すべく、此場合には、檢事は意見書を添付して司法大臣に送致すべきものとす、右の申立ありたる時は、司法大臣は、其の書類に意見書を添へて上奏すべきものなり、又司法大臣は、刑の言渡し確定したる犯人に對しては、檢事、監獄署長等の申立を俟たずして、何時にても特赦の申立を爲すを得べし、何れの場合なるを問はず特赦の申立ありたるときは、死刑の執行を一時停止し、それが特赦の裁可あるや否やを俟たざるべからず、されど其他の刑の執行は、これを停止せざるものとす、若し特赦の申立にして却下せられたるときは、司法大臣より其刑を言渡したる裁判所の檢事に、其旨を通知すべく、之に反して特赦の裁可ありたるときは、司法大臣より其刑を言渡したる裁判所檢事に特赦狀を送致し、檢事に於て相當の手續を經たる後、犯人は刑の執行を免ぜられ放免せらるるものなり。(憲法一六條)
- 英
- Release from punishment
- 独
- Begnadigung
- 仏
- Grâce
特殊
(とくしゆ)特殊は、普遍又は一般に對し、共通てふことの以外に他と異なる所あるを謂ふ、即ち或一事物に限られて、他事物とは獨立せる性質を有するものなり、特殊的とは、其形容詞也、然れば此形容詞の對象たる事物は、有制限的なる單一性のものにして、例へば科學と一般に謂へば總ての學問に共通なるも、物理學生理學、動物學などと稱すれば、其等は相互に獨立して特別の性質を有す、故に是等を特殊科學と稱するが如し、又花てふ名辭に於ても然り、花といへば普遍性を有するも、梅櫻或は桃の花といへば、相互に他と異なる固有性を有して、花としては特殊の存在を有するが如し、斯くの如く、此現象界の一切は、其が個々の事物なる限り、皆夫れ々々に他と區別せらるべき特殊の性質狀態を有す、尚論理學上普通命題に對して特殊令命なるものあり、之は或又は二三の等の形容詞を、其主辭が有する命題にして、例へば或動物は人なり、二三の動物は人にあらずといふの類を稱す。
- 英
- Particularity
- 独
- Einzelheit
- 仏
- Particularité
瀆職罪
(とくしよくざい)官吏たる身分を有するものが、其官吏たる資格に於て犯したるある犯罪を瀆職罪と稱するものにして、刑法上これを三種に大別せらる、即ち官吏公益を害する罪、官吏人民に對する罪、官吏財産に對する罪是なり、何れも官吏たる身分を有する事を以て其成立要素の一とし、且つ我刑法上の官吏に關する條項は、總べて公吏に適用せらるる者なるを以て、(明治二三年法律第一〇〇號に依り)公吏も亦瀆職罪の主體と爲り得るものとす、官吏の意義に關しては數説ありと雖も、要するに任命の手續によりて、官制の定むる國家の政務を執行すべき義務を負擔したる身分をいひ、其俸給の有無、現に執る職務の有無を問はざる也、公吏の意義も數説ありと雖も、公吏とは、任命により地方自治體(府縣郡區市町村)等の機關を組織し、階級的所屬にある官吏以外の者を指稱すと解するを正當とす、本罪に關する刑法の重要なる點を列擧せんに、□一官吏公益を害する罪とは、官吏が其管掌に係る法律規則を公布施行せず、又は他の官吏の公布施行を妨害したる場合、兵隊を要求し及びこれを使用する權ある官吏が、自己の管轄區域内に於て、騷擾其他兵隊を以て鎭撫ずべき必要ある場合生じたるに拘らず、兵隊派出の要求及び之を使用する等相當の處分を爲さざりし場合、官吏が官吏法上の規則に違反して商業を爲しだる場合等なりとす、□二官吏人民に對する罪とは、官吏が擅に威權を用ひ人をして其權利なきことを行はしめ、又は其爲すべき權利を妨害したる場合、人の身體財産を妨害するの犯人あるに當り、豫審判事、檢事、警察官吏たる身分あるに拘はらず、其報告を受けながら、遂に保護の處置を爲さざる場合、逮捕の職責ある官吏が、法律に定めたる程式、規則を遵守せずして人を逮捕し又は不正に人を監禁したる場合、司獄官吏にして規則を遵守せず、囚人を監禁し、若くは囚人を出獄せしむべきの時に當り之を放免せざる場合、又右の逮捕官吏、及び司獄官吏が囚人に對して飮食衣服を屏居し、其他苛刻の所爲ありたる場合、水火震災ある際に、囚人の監禁を解くことを怠り、依つて死傷者を生ぜしめたる場合、其他裁判官、檢事、警察官等が、被告人に對して罪狀を陳説せしむる爲めに暴行を加へたる場合、官吏をして其職務に關し、人の囑託を受け賄賂を収受し、又は賄路を聽許したる場合等なりとす、□三官吏財産に對する罪とは、官吏が自己の職務上監守する所の物件金錢を窃取したる場合、租税其他諸般の金額を徵收する官吏が、正數外のものを徵收したる場合等なりとす。(刑一九三條乃至一九八條官吏瀆職罪の部參照)
獨斷
(どくだん)精確なる批判穿鑿を經すして直に眞實なりと解す所の判斷、或は單に槪念を基礎とし、直接に、即ち直覺的に提出する綜合命題を云ふ、獨斷論とは、ある根本原理を假定し、これより一切の證明を導き來たるものを云ふ、而して其出發點として假定せられたる原理の眞理不眞理は初めより敢て問ふ所にあらず、哲學の多く學説は、大抵此獨斷説なりと謂ふを得べし、獨斷的とは、總べて獨斷論の性質を有する事物に適用せらるる形容詞にして、批評的又は批判的といふことと反對の意義を有す、例へば、獨斷的論法と謂へば、其論法が、毫も批判的態度なく、直ちにある事實の眞實を假定し、其假定より種々の推論をなすことを云ふが如き、或は又裁判官が、犯罪人を獨斷的に裁判すと謂へば、仔細に罪人の行爲を穿鑿することなく、或は自己の主觀的意見より、或は自己の粗漫なる見解に任せ、妄りに其犯罪を解決するを云ふが如し、要するに獨斷的と謂へば、考察、推論等の眞實なる手續を缺如せる結果、批判的精神に乏しく、或は論理的精確を缺き、或は感情的等、多くは惡意義を帶ぶるものとして考へらるる傾向あり。
督促
(とくそく)或債務の存在する場合に、其辨濟期限に達したるに拘はらず、債務者之が履行を爲さざるに當り、債權者より履行の請求を爲すことを督促と謂ふ、督促には、單純なる請求即ち履行の催告の如きと、裁判上の手續による督促即ち督促手續の如きとあり、單に督促と云ふときは、履行の請求を爲す單純なる催告を意味する場合多し、又公法上に於ても、租税滯納者に對して爲す督促手續もあり、是又督促の一種なりとす、何れの場合なるを問はず、督促は時效の進行を中斷するの效力を有するものにして、例へば或者が、債權を有する場合に、將に時效によりて其債權が消滅せんとするに當り、履行の請求即ち督促を爲すときは、其れ迄過ぎ來れる時效は廢滅せらはて、新らたに其督促ありたる後に於て進行するものとなるが故に、債務履行の督促なるものは、大なる效力を有するものと言はざるべからず。(市制一〇二條、國税滯納處分法等參照)
- 英
- Exhortation
- 独
- Mahnung
- 仏
- Exhortation
督促手續
(とくそくてつづぎ)督促手續とは、訴訟手續の一種にして、ある一定の金額の仕拂其他の代替物、若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請求に關し、最も簡易なる申請の方法を以て其の事件を完結し、其執行を爲すことを得しむるを目的とする手續にして、所謂民訴法上の特別訴訟手續に屬するものなり、此手續は、判然たる請求、換言すれば、爭なき請求に係るも、債務者が、之を履行せざるが爲め、債權者が煩雜なる訴訟手續によらんよりは、寧ろ單純なる申請の形式によりて支拂命令を受け、執行を爲さんとするが如き場合に適用すべき方法なり、故に此手續の基礎は、其性質爭ひなき請求たる場合に之を適用するを常とす、今此督促手續に關して重要なる點を説明せんに、□一支拂命令申請につきての條件、督促手續によりて支拂命令を發せんことを申立つるには、下の事項を目的とする場合なるを要す、即ちイ一定の金錢の支拂を目的とする請永なること、ロ其の他の代替物、若くは有價證券の一定の數量の給付を目的とする請永なること、以上二個中の一に該當せざる請求は、此督促手續に依るを許さず、殊に申請の主旨によれば、申請者が反對給付を爲すことを要すべきとき、又は支拂命令の送達を外國に於て爲すべきとき、若くは公示送達を爲すべきときはこれを許さず、□二管轄裁判所、支拂命令は、區裁判所の管轄に屬し、其訴訟物の名寡に拘はらず、區裁判所の專屬なりとす、故に申請權者は、金高の如何に拘らはずすべて區裁判所に申請すべきなり、□三支拂命令の申請、支拂命令を申請するには、書面を以て之を爲し、又は口頭を以て之を爲すも申請者の自由なり、然れども申請には下の諸件を備するを要す、即ちイ當事者及び裁判所の表示、ロ請求の一定の數額、目的物及び原因の表示、若し數個の請求なるときは、其各個の目的物及原因の表示、ハ支拂命令を發せられん事の申立の三要件を必要とす、此三要件の一を缺く場合は、其申請は不適法として却下せらるべし、□四支拂命令申請につきての裁判、支拂命令の申請あるときは、其管轄區裁判所は、其職權を以て之を調査し、前説の要件に適合せざる申請は、之を却下すべきは勿論、適合するも、其申請の主旨に於て請求の理由とすべきものなき時は、其申請を却下すべきものとす、例へば期限の未だ到來せざる請求の如き場合なり、右の申請却下の裁判に對しては、不服の申立てを爲すことを得ず、抗告は勿論、異議の申立等を許さざるものとす、然れども通常の訴訟手續を起提するを妨げず、申請が適法にして且つ請求の理由ありと認めたるときは、裁判所は債務者を審訊せずして條件附の支拂命令を發するものなり、即ち前述したる當事者及び請求の目的物を記載し、且つ即時の強制執行を避けんと欲せば、其命令送達の日より十四日の期間内に、債權者の請求を滿足せしめ、及び其手續の費用につき定むる數額を債權者に辨濟べすく、否らざれば裁判所に異議の申立を爲すべき旨の債務者に對する條付の命令を記載して、其命令書を發すべきものとす、尤も右十四日の期間は、爲替より生ずる請求につきては二十四時間に短縮するを得べく、其他の請求にききては、債權者の申立によりて、三日に短縮するを得るものとす、而して右支拂命令を債務者に送達するときは、權利約束の效力を生ず、而して裁判所は之を債權者に通知すべきものとす、□五債務者の異議、債務者は支拂命令に對し、書面又は口頭を以て異議の申立を爲すことを得、而して其請求の全部又は一部に對して、適當なる時間内に異議の申立ありたるときは、其支拂命令は全部效力を失ふべきものとす、其一部に對して異議の申立ある場合も全部其效を失ふなり、之に反して數個の請求につき、支拂命令を發したる場合にありては、其中の一個の請求のみにつき異議の申立あるも、他の異議なき請求は獨立すべきものなるが故に、其效力に影響を及ぼさざるものとす、而して適法なる異議の申立ありたる場合は、債權者は通常の訴訟手續によらざるべからず、然どれも債權者は、新に訴を提起するを要せず、其請求の目的物が區裁判所の管轄に屬し居るときは、其訴は支拂命令の送達ありたる時を以て、區裁判所に提起されたるものと見做され、裁判所の指定によりて、口頭辯論の期日に出頭して、其權利の存否に關し裁判を受くべきものとす、之に反して其請求の目的物が、地方裁判所の管轄に屬すべき場合に於ては、裁判所は異議の申立ありたることを債權者に通知し、債權者は通知ありたる▲きより、一ケ月の期間内に管轄地方裁判所に訴を起して、其權利の存否を爭はざるべからず、若し一ケ月間内に地方裁判所へ訴を起さざるときは、前の支拂命令は、權利拘束の效力を失するものなるが故に、此の期間を徒過したる後は、新なる通常訴訟手續を以て請求せざるべからざるなり、□六執行命令、支拂命令に記載したる期間内に、債務者が異議の申立を爲さずして期間を經過したる時は、債權者は、該支拂命令を假に強制執行し得べき宣言を申請することを得、此申請には手續の費用即ち支拂命令に關する費用のみならず、執行命令宣言に關する費用全部の計算書を添付すべきものとす、斯かる申請あるときは、裁判所は假執行宣言の要件の存するや否やを審査せざる可らず、而して正當の申請と認めたるときは、裁判所は、其支拂命令に假執行の宣言を付すべきものなり、この支拂命令に假執行の宣告を付したるものを稱して執行命令と謂ふ、執行命令を得たる債權者は、執達吏又は他の執行機關に之を提出して、強制執行を爲し、債權の滿足を得べきもの也、然れども此場合と雖も、債務者は其執行命令を發したる區裁判所に向つて、故障の申立を爲すことを得るものなり、此異議の申立てありたるときは、區裁判所は其故障の許否を定むべきものにして、債權者は、一定の手續によりて訴を進行せしめて、自己の權利の伸長を計らざるべからざるものとす。(民訴三八二條乃至三九五條)
- 英
- Summary procedure
- 独
- Mahnverfahren
- 仏
- Progrès précis
特定
(とくてい)特定とは、具體的に一定したる事物又は行爲を指示する場合に用ひらるる語にして、彼の一般に槪括して指示する場合に對す、例へば特定物と云へば、當事者間に於て特に指示したる物件を云ひ、他の物を以て代ゆべからざるを意味し、特定承繼人と云へば、或一定したる權利の承繼人を指示するが如し。(民訴一七〇條二項、民四〇〇條)
- 英
- Particular
- 独
- besonder
- 仏
- Particularité
特定承繼人
(とくていしようけいにん)特定したる權利を讓受け、又は特定したる義務を引受けたるもの、若くは特定したる權利義務を承繼したるものを稱して、特定承繼人と謂ふ、例へば物件の買主は、賣主の特定承繼人にして、受贈者は贈與者に對し、讓受人は讓渡人に對して共に特定承繼人なりとす、何れの場合たるを問はず、特定承繼人は、被承繼者の權利義務を承繼するものなるが故に、前者に屬する權利を行使し得べく、又義務を負擔すべきものとす、然れども特別なる意思表示を以て、之を左右し得べきは勿論とす。(民一二〇、二〇〇條二項)
- 英
- Particular successor
- 独
- besonderer Rechtsnachfolger
- 仏
- Succes-seur particulier
特定物
(とくていぶつ)當事者間に於て特殊的に指定せられたる物を特定物と謂ふ、例へば此時計、此指輪と云ふが如く、特に指定したるものにして、他物を以て代ゆるを得ざる場合に用ふるの語也、特定物の引渡しが債權の目的たるときは、其指定せられたる物の引渡しを爲すの責任を生じ、他の物を以て、之に代ゆることを許さざるなり、債務者は、此場合には必ず、其指定したる物のみの給付を以て履行するを得べく、假令同種類、同價格の物を引渡すと雖も、未だ以て債務の履行を爲したるものと云ふを得ざる也、此特定物に關する法律行爲につき、法律上重要なる問題あり、即ち權利の移轉、目的物の滅失、危險の負擔、及び目的物の保管に關する原則なりとす、□一特定物に關する物權の設定移轉は、當事者の意思表示のみによりて其效を生ずるものとす、是れ即ち權利移轉に關し原則とする所にして、これを例へば、甲が乙に對して、其所有の家屋を賣渡すことを約したるときは、目的物の所有權は賣買契約成立と同時に甲より乙に移轉するが如し、是不特定物の給付を目的とする債權と異る點にして、不特定物の場合には、斯かる效力を生ぜざるものとす、特定物の引渡を目的とする契約は、債權關係を發生するや否やにつき從來議論ある所なりと雖も、此場合にも、尚債權關係發生するものとなすを至當とす、何となれば、當事者の一方が、契約の目的たる權利の全部、又は一部を取得すること能はざる場合には、當事者間の關係は、債權關係を基礎として、之を定めざるべからざるものなればなり、又直ちに目的物を引渡したる後と雖も、其目的物に關して問題の生じ來る場合に於ても、債權關係を基礎として之を解決せざるべからず、故に特定物に關する契約は、債權關係を創設するものと云はざる可らず、□三特定物の滅失は給付を不能ならしむ、特定物の給付が債權の目的たるときは、前示せるが如く債權者よりの履行は、必ず其物を以て爲すことを要するものなるが故に、他物を以て引渡しを完了することを得ず、されば債權の目的が若し契約成立の當時に於て、既に滅失せしものとなるときは、其契約は給付不能の爲めに成立することなく、又契約の成立後に於ても、其目的物が、天災若くは不可抗力によりて滅失したるときは、給付不能の爲めに、債權債務の關係は根本より消滅し、債務者は、引渡しの義務を免るることを得べく、目的物が若し債務者の過失によりて滅失したる場合には、債務者は不能となりたる目的物の給付に代へて損害の賠償を爲すことを要するものとす、是又特定物の債權の本質より生ずる結果にして、不特定物の債權と異る所なり、□三目的物に關する危險は、債權者之を負擔す、前述せるが如く、債權が特定物の引渡を目的とする場合に、其目的物が債權者の過失なくして滅失したるときは、給付の不能によりて、債權が消滅することは一般の原則也、然れども此損失は、何人の負擔に屬すべきや、例へば甲が乙に其所有の家屋を賣却せしに、其引渡前に於て天災若くは意外の事變によりて、其家屋が滅失したるときは、甲は乙に對して其家屋の引渡を爲すの義務を免るべし、然れども甲は、此場合にも其代價を請求するの權ありや否や、換言すれば甲は家屋を引渡すべき義務を免れたるに拘はらず、乙に於て其代金を支拂はざる可らざるや、若し乙に此義務ありとせば、家屋の滅失は乙の損失となるべし、吾民法は、斯かる場合を規定し曰く、特定物に關する物權の設定、又は移轉を以て双務契約の目的と爲したる場合に於て、其物が債務者の責に歸すべからざる事由によりて滅失又は毀損したるとは、其滅失又は毀損は、債權者の負擔に歸すものと定めたり、故に前例に就きて言はば、家屋の滅失は債權者たる乙の損失に歸し、甲は家屋引渡の義務を免るべく、然も引渡しを爲したる場合と同じく、其代金の支拂を請求するの權を有するものとす、右の原則を法律上危險負擔の問題と稱するなり、□四特定物の給付を目的とする場合に於ては、債務者たるものは、善良なる管理者の注意を以て目的物を保管せざる可らず、換言すれば、第一に目的物件を保管し、第二には、其保管につきて善良なる管理者の爲すべき注意を爲すの義務を負ふものなり、茲に善良なる注意と云ふは、用意周到なる人が其事務の管理上に於て用ふる注意の義也、故に此注意を缺きたるが爲めに、其目的物を滅失毀損せしめたる場合に於ては、債權者に對して相當の賠償を爲さざるべからざるや勿論なりとす。(民一七六、四〇〇、五三四條)
- 英
- Special thing
- 独
- bestimmte Sache
- 仏
- Chose particulière
特別加重
(とくべつかぢゆう)或特別なる場合に法律は、其刑罰を加重すべきことを定む、即ち特別加重是れなり、一般の加重即ち累犯の場合に加重せらるるものに對するの語にして、現行刑法上特別加重の原因とせらるるものは、數人共同して罪を犯したる場合、兇器を持して罪を犯したる場合、祖父母父母に對して罪を犯したる場合、天災に乘じて罪を犯す場合、暴行脅迫を加て罪を犯す場合等なり。(舊刑一四五、一七一、三六九、三七九、三六二、三六七、三六七、三六八條等)
- 英
- Special aggravation
- 独
- be-sondere Erschwerung
- 仏
- Aggravation spéciale
特別裁判所
(とくべつさいばんしよ)普通裁判所に對する語にして、民事訴訟法、刑事訴訟法及び裁判所構成法の規定に依らざるものを云ふ、例へば軍法會議、領事裁判所は、即ち特別裁判所なりとす。
- 英
- Special court
- 独
- Ausnahme-gericht
- 仏
- Tribunal spécial
特別擔保
(とくべつたんぼ)法律行爲當事者間の合意を以て、特に設定したる擔保を稱して一般に特別擔保と謂ふ、素より債務者の總財産は總債權者の共同擔保なり、然れども我民法は、債權同等の原則により、債權者數人ある場合に誰れ彼れの別なく、同等の權利を有するものとし、優先等の法則を認めず、故に數人ある債權者が、各自に辨濟を十分に受くる能はざる場合なきにしもあらず、例へば千圓の財産を有する債務者に對して、甲乙債權者あり、各自に千圓の債權を有する場合に於ては、各自其半額づつ即ち五百圓より得る能はずして、債權發生の前後等によりて其優劣を認めざる也、斯かる場合に初めて特別擔保の必要を生ずるものにして、債權者と債務者との合意により、債權者の特定財産を以て其債權の擔保に供せしめ、其擔保を以て債權の辨濟に充つるものとす、前例に於て若し甲が千圓の財産上に特別擔保を設定しありたる場合には、乙を排して其千圓の特別擔保を以て自己の債權の辨濟を受く、其結果乙は、一物をも得る能はざるに至るべきなり、我民法上特別擔保の制度は種々あり、抵當權、質權、留置權等は最も重要なるものなりとす。
- 英
- Special right of security
- 独
- besonderes Pfandrecht
- 仏
- Droit spécial du gage
特別の先取特權
(とくべつのさきどりとくけん)特別の先取特權とは、債務者の財産中或る特定の物を以て其目的とするものにして、動産の先取特權及び不動産の先取特權の二種を包含す、□一動産の先取特權とは、其特權の目的物が特定動産に限らるるものにして總べて八種あり、即ち不動産の賃貸借より生じたる債權、旅店宿泊料、旅客又は貨物の運送により生じたる債權、公吏又は職務上の過失より生じたるもの、動産の保存に關して生じたるもの、動産の賣買より生じたるもの、種苗又は肥料の供給より生じたるもの、農工業の勞役より生じたる債權是也。(動産の先取特權參照)□二不動産の先取特權と云ふは、特定の不動産のみを以て目的とする先取特權にして、これに依て保護せらるる特權に三種あり、即ちイ不動産の保存、之は不動産其物を保存し、若くは其權利を保存し、追認し、又は實行するに付て生じたる債權に關するものにして、之が目的となるものは其保存、追認、實行等をなしたる不動産其物なりとす、而してこれを保護する理由は、保存を受けたるものは、其財産を減少せざるのみならず、時に或は利殖することあるべく、利益は單に其者の爲めのみならず、延きて他の債權者を利益せしむるものなるを以てなり、ロ不動産の工事、是れ不動産にある工事を加へたるが爲めに生じたる債權を云ふものにして、即ち工匠、技師又は請負人が其工事費用として要求する所の債權を云ふ、此債權が、先取特權を實行し得べき目的物は、其工事を施したる不動産なり、尤も其不動産價額の全部の上に及ぼすことを得さるものにして、單に其工事によりて生じたる增加價額にして、現存するものに限るものとす、これを保護するの理由は、畢竟するに增價額だけは其工事施行者の爲め製出せられたるものにして、其增價額だけ債務者及び他の債權者に於て利得したる次第なればなり、□三不動産の賣買、是れ不動産賣買によりて得る所の代金及び其利子債權を云ふものにして、其目的とする所のものは其賣買したる不動産其物なりとす、蓋し法律がこれを保護する理由は、賣買を保護する同時履行の主旨と同樣なるものとす。(民三一條乃至三二八條)
- 英
- Special preferential right
- 独
- besondere Priorität
- 仏
- Droit de préférence spécial
特別法
(とくべつはふ)特別法とは、普通法に對するの語にして、此二者の區別は、主として其法律の效力を及ぼすべき範圍の廣狹によるもの也、法律を適用すべき範圍の廣狹は場所につきて存することあり、人に付て存することあり、事物につきて存することあり、茲に於てか特別法、普通法に三個の意義ありと云ふことを得、□一適用すべき場所の範圍を標準として二者を分別す、法律を適用すべき場所の範圍は法境なり、故に普通法、特別法は、法境の廣狹によりて生ずる名稱なりと云ふことを得、此意義に於ては我國の法律の多數は普通法也、唯特別法と云ふべきは、臺灣のみに行はるる律令、一府縣のみに效力を有する警視廳令、府縣令なりとす、□二法律を適用せらるべき人によりて二者を分別す此意義に於ては、國民が一般に遵奉すべき法律を普通法と稱し、特種の人のみに適用すべき法律を特別法と稱す、例へば民法刑法の如きは普通法にして、軍人のみに適用すべき軍律、商人のみに適用すべき破産法は特別法なりとす、□三法律を適用すべき事物の範圍によりて二者を分別す、元來法律は、總べて事物に對して效力を定む、而して法律中一定の種類に屬すべき事物の全般を支配すべきものと、其内特別なる部分を限りて除外的に適用さるるものとあり、前者を普通法と稱し、後者を特別法と稱す、此意義に依るときは、結局普通法、特別法の區別は相對的のものとなるなり、即ち同一種の事項につき適用の範圍廣きものは、其範圍の狹きものに對して普通法となり、其狹きものは廣きものに對して、特別法たるの地位に立つものとす、例へば一般の商事に適用せらるる商法の規定は、特別の商事に適用せらるる取引所法等に對しては、普通法たる地位に立ち、取引所法は商法に對して特別法たる地位にあるものと云ふことを得べし、而して法律上の大原則として、特別法は總べて普通法に先立ちて適用せらるべきものとす、例へば民法に對して、商法は商事に關する特別法として、民法に先立ちて適用せらるる場合の如し。
- 英
- Special law
- 独
- singulares Recht
- 仏
- Droit spécial
特命全權公使
(とくめいぜんけんこうし)特命全權公使は、天皇の任命によりて信任狀を受け外國に派遣せらるるものにして、駐在國に於て本國政府を代表して、外交上の行動を爲すの官吏なりとす、公使たるの資格は、我國法上に於ては天皇より公使として、任命せられたるときを以て始まり、外國派遣に際して、信任狀を受け、駐在國に於て其信任狀を外國君主又は大統領に提出するときを以て、國際上公使として行動し得るものとす、公使は我國法上及び國際法上種々の權利義務を有するものにして、一々列擧するに遑あらずと雖も、その重要なるものを擧ぐれば、□一本國政府に對しては下の如き義務あり、イ訓令を遵奉するの義務、公使任命の際に、信任狀及び全權委任狀の外に訓令を受け、就任後も時々本國政府より訓令を受け、之を遵奉すべきものとす、然れども緊急の場合にして訓令を待つの遑なきときは、便宜事を處するを得るものとす、ロ秘密を守るの義務、官吏が秘密を守るの義務は、一般官吏の義務なれども、公使は外交官として一層の必要を見るなり、ハ通信の任務、駐在國の現象にして、本國の利害に影響を及ぼすべき一切の事件を觀察して、これを本國に通信するを要す、ニ駐在國政府との商議、此の商議の方法に數種あり、即ち直接商議と云ふは、主權者と直接に爲す場合を云ふ、間接商議とは、外務大臣と爲す商議を云ふ、現時は主として此方法による、其他書面商議、口頭商議等あり、ホ條約監視の義務、駐在國と自國との條約が適當に履行せられつつあるか、又は最惠國條款につき、及び他國との新條約につき常に注意するを要するなり、□二公使の行動し得る範圍、公使の行動の範圍につきては、公使派遣の目的が儀式の爲めなる場合と、外交事務の執行なる場合とによりて別あり、儀式の爲めに趣く場合に於ては、其の儀式に關する事項に限る、外交事務執行の爲めに派遣せられたる場合には、外交上諸般の事項に關して本國政府を代表して、行動し得るは勿論なりとす、□三公使の特權は、公使の不可侵權、即ち駐在國より重んぜられたる特別の保護を受くるの權、治外法權即ち駐在國の裁判權に服せざるの權、裁判權、即ち公使舘員に對する民事上の裁判を爲すの權、信教自由權即ち信教の自由を認むる國に於ては勿論、此自由を認めざる國に於ても信教に關して自由なることを得る權等とす、□四公使の職務の終了、公使の任を解除されたるとき、駐在國と本國との間に戰爭の開始したるとき、本國より召還されたる場合、公使が死亡したる場合は、其の職務の終了を來すものとす。
- 英
- Envoy extraordinary and minister plempotentiary
- 独
- auszer-ordentlicher und bevollmächtiger Gesandte
- 仏
- Envoi extraordinaire et ministre plé-nipotentiaire
特約
(とくやく)當事者間に於て或事項に關する特別の約を云ふ、苟も約束を爲したる場合に人が、或契約を爲すに當り、公の秩序、善良の風俗に反せざる以上は、何事と雖も特約を爲すことを得べきなり、然れども特約は、何れの場合と雖も債權關係を基礎とするものにして、從つて債權の内容とならざるものは、特約の目的となる事を得ず、又公益に關係ある場合も、特約の目的となす能はざるや勿論なりとす、法律の明文ある場合と雖も、公益の關係なき規定なるときは、當事者は其規定に異りたる特約を爲すことをも得べき也、斯くの如く總べて特約と稱し得る場合は、特殊約の約束の存在を云ふものなるが故に、例へば單に家屋の賃貸借契約を爲すときは、普通の約束即ち契約たるに過ざるものにして、其場合の當事者の債權關係は、法律の規定によるべき也、然るに我民法の規定によれば、賃貸人は賃貸物の使用及び收益に必要なる修繕を爲すの義務を負ふものなれども、當事者は特約を以て其義務を免るることを得べく、使用收益の爲めに必要なる處分は、賃借人に於てこれを爲すと約するが如きは即ち特約なりとす、何となれば、此賃貸借に關する賃貸人の負擔する義務を免ずるとするも、何等公益を害することなく、公序良俗に反することなければなり、又抵當權の如きは、其效力を左右するの特約を爲すを得ず、何となれば、抵當權に關する規定は公益に關係ある場合多く、法律の規定以外の效力を特約することを許すときは、他の取引を害するの患ひあればなり、茲に於てか如何なる規定に關しては、特約を爲し得べく、又は爲し得べからざるやの限界を明かにせざるべからず、一言以てこれを掩へば、公益に關する規定、即ち學者の所謂強行法は、特約を以て左右するを得ず、之に反して公益に關せざる所謂任意法は、特約を以てこれを左右することを得るを原則とす、然らば如何なるものは、公益規定なるや否やの疑問を生ず、これは各條文につきて識別せざるべからずと雖も、主として利害關係を當事者間のみに及ぼし、他の者に及ぼさざる場合は、任意法に含まるものにして、之に反し、利害關係を當事者以外に及ぼすべき場合は公益規定に屬すと云ふことを得べし、前例に於ける賃貸借に關する契約は、當事者のみに其利害を及ぼし、他の第三者は何の影響する所なきものなるが故に、任意規定と云ふべく、抵當權の如きは、當事者の特約は第三者に利害關係を及ぼす事少なからず、故に公益規定と云はざるべからず、一々枚擧して判別するに遑あらずと雖も、公法に關するものは、強行規定たるは勿論なるべく、民法、商法中に於ても、強行規定少なからず、主として任意法とも云ひ得べく、特約を容るるを得るは債權篇に關する規定なりとす。
- 英
- Special contract
- 独
- hesonderer Vertrag
- 仏
- Contrat spécial
毒藥
(どくやく)僅少なる分量を以て、化學的に人の生命を害すべき物質を毒藥、若くは毒物と謂ふ、分量の上より見て、多量なるが爲めに人を害するもの、即ち分量が害を起すの原因たるものは毒物と云ふことを得ず、彼の人の嗜好する酒類と雖も、非常の分量を用ふるときは、人の生命を損ぜしむることあれども毒物と云ふを得ず、又働きの方面より見て、化學的の作用を起すものに非ざれば毒物と云ふことを得ざるなり、化學的作用と云ふは、人の血液に混合して、化合的の働きを以て人の生命を損するものを指すものとす。(舊刑二九三條)
- 英
- Poison
- 独
- Giftarzenei
- 仏
- Poison
毒物
- 英
- Poison
- 独
- Giftarzenei
- 仏
- Poison
特例
(とくれい)或法律上の定則に對して、例外の存する場合を特例と稱す、人類社會の出來事たる甚だ複雜にして、法理の原則のみを以てこれを處理し得べきに非ず、時に應じ、機に臨みて特例を設くるの必要あり、例へば民法の規定に於て、私權の享有は人の出生に初まる、即ち人間の存在するを以て、私權享有の定則とするものなれども、家督相續等の場合には、胎兒と雖も相續權を享有すべきものとして、特例を定めたる場合の如し、其他法律の至る所に、特例の存在することを認むるを得べし、然れども特例といふは、普通一般の原定則に對しての相對的名稱なれば、特例なるや否やは各法律につきてこれを定めざるべからず、抽象的に槪言するを得べきものに非ず、一の法律を通じて主たる原則ありと雖も、例外の規定多くして何れが例外なるや、原則なるやを識別し得べからざる場合も少なからず、法律思想の發達したるものに非ればこれを定め得べからざるもの多しとす。
- 英
- Exceptions especially provided for
- 独
- Ausnahme von der allgemeinen Regeln
- 仏
- Exception spéciale
徒刑
(とけい)重罪犯人に科する主刑の一にして、定役あるものなり、定役とは、獄内に於て作業に從事するを云ふ、徒刑に無期徒刑及び有期徒刑の二種あり、無期は、終身の徒刑を意味し、有期は、或年限を限りて科せらる、現行法上有期徒刑は、十二年以上十五年以下の期間内に於て科せらるるものとす。(舊刑一七、一八條等)
- 英
- Penal servitude
- 独
- Zuchthaus-strafe
- 仏
- Servitude pénale
賭場
(とじやう)賭博に充つべき場所を開き、一定の設備を爲し、賭者をして之を利用せしむる場所を賭場と謂ふ、單に賭博をなしたる場所との意義にあらず、彼の刑法上に所謂、賭博の情を知り、房屋を給與したる場合の房屋とも大に其意義を異にするもの也、現行刑法によれば、賭場を開張して利を圖りたる者は、犯罪人として三ケ月以上一年以下の重禁錮に處せられ、十圓以上百圓以下の罰金を附加せらる、此場合の賭場は、即ち前示の賭場の意義にして、本犯の罪人たるべきものは、即ち賭博場の興業主にして、入場料若くは器具使用料等を徵收して利益を計りたるものは犯人となるなり。(刑一八八條、舊刑二六〇條)
- 英
- Premisses for gamblers
- 独
- Spielhölle
- 仏
- Premises des joueurs
屠場法
(とじやうはふ)明治三九年四月法律第三二號を以て公布せられたる所に係り、本法に於て屠場と云ふは、食用に供する目的を以て牛羊豚馬を屠殺する場所を稱し、其設備及獸畜は總べて屠畜檢査員の檢査を經ることを要するものとす。
- 英
- Law of slaughter house
- 独
- Gesetz des schlachtenden Hauses
- 仏
- Loi de la tuerié
土地收用
(とちしうよう)土地收用は、土地收用法の支配する所にして、公共の利益の爲めに或土地に對する所有權、又は其他の物權を徵收し、國家又は第三者の利益の爲めに其土地の上に所有權、其他の物權を設定する行政法上の處分なり、土地收用は國家權力を以て爲す所の作用にして、之に對する代價を給與さるべしと雖も、賣買行爲に非ず、賣買は、常に當事者の意思の合致あることを必要とするも、土地收用は國家の一方的意思に基く財産權の徵收にして、之を賣買と比較することを得べきものに非ず、土地收用は行政處分に出づることを必要とするが故に、土地收用權の主體は常に國家なりとす、土地收用は、啻に國家自身の利益の爲めに行はるるのみならず、國家以外の團體又は一私人が、公益の事業の主體たる場合に於て、此等の團體、又は一私人の利益の爲めにも行ふ事を得べく、此場合に於て、土地收用によりて所有權を取得するものは、國家に非ずして團體若くは一私人なるが故に、往々にして誤解し、團體又は一私人と雖も、土地收用の主體たり得べしと云ふものあり、然れども土地收用とは、土地收用を行ひ得べき權を云ふものにして、起業者は國家に對して、土地收用法によりて土地收用を行ふことを請求し、國家の行政行爲によりて所有權を取得するに止まり、自ら土地收用を行ひ得べきものにあらざる也。(土地收用法參照)
- 英
- Expropriation of land
- 独
- Expropriation des Grundstücks
- 仏
- Ex-propriation de terrain
土地收用法
(とちしうようはふ)土地收用法は、土地收用に關する規定を、土地收用法施行令は、其施行に關する細則を定めたるものなり、其大要を摘抄せんに、□一土地收用を爲し得べき塲合、土地收用を爲し得べき事業は總べて公共的事業にして、下の如きものならざるべからず、イ國防又は其他軍事に關する事業、ロ官廳又は公署建築に關する事業、ハ鐵道、軌道、道路、橋梁、河川、堤防、運河、用惡水路、下水、水道、電氣、瓦斯燈、又は火葬場に關する事業、ニ衞生、測候、航路、標識、防風、防火、水害豫防、其他公用の目的を以て公共團體に於て施設する事業等ならざるべからず、□二土地收用に關する手續、此手續は三段に區別せらる、即ち土地收用を行ふべき場合の決定、收用せらるべき土地の決定、賠償金額の決定これなり、前段に列擧する事業を施設する場合には、必ずしも土地收用の爲し得るの權ありと云ふにあらずして、其各場合に於ても收用を爲すことを要するや否やの認定を經ざるべからず、此認定權は内閣に屬するものにして、軍機に關する事業の外は、總べて内閣の認定を受くるを要するなり、起業者として内閣の認定を受けんとするときは、事業計企書及び圖面を添へ、地方長官を經由して内務大臣に申請すべきものとす、宮内省又は國家の起業に係るときは、宮内大臣又は主務大臣は、事業計畫及び圖面を添へて内務大臣に協議を爲し、これを内閣に提出するものとす、内閣に於て右の申請又は提出ありたるときに、必要ありと認めて認定を爲したる場合は、起業者及び事業の種類、起業地を公告するものとす、右の手續を經たるときは、第二段の手續として收用土地に關する決定手續なり、内閣の認定の公告の後に於て、起業者は其認定ありたることを地方長官に申出で、地方長官は此申出でによりて收用又は使用すべき土地の細目を公告し、これを土地所有者及び關係人に通知するものとす、此公告及び通知ありたる後は、起業者は、自由に其土地に立入り土地物件を調査する事を得るものとす、而して起業者は右の公告通知後に於て、土地に關する所有權を取得する爲め、所有者及び關係人に協議することを要す、其協議整ひたるときは、起業者は、其土地の權利を讓受け、相當代價を支拂ひ、賣買讓渡の手續によりて滿足するを得べしと雖も、之に反して其協議の整はざりし場合に於ては、起業者は、地方長官に申請して收用審査會の裁決を仰がざるべからず、收用審査會は、地方長官を以て會長となし、内務大臣の任命に係る高等官三名及府縣の名譽職參事會員中より互選したる者三名を以て其委員となすなり、若し收用の目的物にして二府縣に渉る事業なるときは、關係地方長官は、勅令によりて別に定むる手續を經て合同して審査會を開らくべきものとす、審査會に於ては、收用すべき土地の區域、損失の補償、收用の時期等を定め、其裁決を關係者に通知するものとす、此審査會に於ては、開會の日より一週間内に、又必要の場合には、二週間内に必ず裁決を與ふべきものとす、次に來るべき手續は賠償金額に關するものなり、土地收用は、土地を其現狀のままにて收用するを目的とするものにして、金錢上の價値を徵收するを目的とするにあらず、故に被徵收者に對して金錢上の價値に於ける損害を與ふることなく、又起業者をして、金錢上の利益を得しむるなからんことを期せざるべからず、從つて起業者は、被徵收者に對して收用によりて生じたる一切の損害を賠償せざるべからず、賠償金は諸種の代價を含む、イ收用せらるべき土地及び附屬物の價格、ロ殘地の損失、ハ建物の移轉料、ニ土地收用完了以前に土地に立入りたるによりて生じたる損害、ホ以上の外に通常土地所有者の受くべき損害等を包含するものとす、賠償義務の主體は、公用收用によりて、土地所有權其他の物權を取得すべき起業者也、其權利者は即ち被徵收者也、此賠償義務の法律上の性質は、公法上の行爲より直接に生ずる結果なれども、私人相互間に存する關係にして、從つて純然たる私法上の債務なり、國家自身が起業者となり、國家に於て此義務を負ふ場合と雖も、其性質異る所あらず、□三土地收用の效果、收用の效果は、被徵收者の土地所有權其他の物權が消滅し、而して起業者の利益の爲めに、其物の上に所有權其他の物權が設定せらるるにあり、此效果は、若し反對の規定あるに非ざれば、公用徵收の裁決と同時に完成するを當然とす、然れども法律は、特別の明文を以て此裁決によりては未だ權利の得喪を來さず、權利の得喪は、尚後の時期に豫猶せらるべきものとせり、裁決によりて直接に生ずる所の效果は、唯土地の上に於ける危險負擔の責任が起業者に移轉すること、被徵收者は、土地の占有を起業者に引渡し及び土地の上に建物あるときは、建物を移轉すべき義務を負ふこと、起業者は賠償金額を被徵收者に支拂ふべき義務を負ふこと等に過ぎず、而して所有權其他の權利の取得は、裁決に於て豫め定めたる時期に於て生ず、此時期迄に起業者は、代償金額を被徵收者に支拂ふことを要す、其支拂又は支拂を爲す能はざる場合に於ては、供託を爲すにあらざれば、起業者は其權利を取得すべき權を失ふものなり、公用收用の結果として生ずる權利の得喪は、賣買の效果たる權利の得喪とは同じからず、賣買は、繼承的取得の原因にして、買主は賣主の權利を承繼し、從つて賣主の權利に瑕疵あるときは、又買主に瑕疵も移轉するものなり、其他賣主は、追奪擔保の責任あり、これに反して土地收用の場合に於ては、原始的取得にして、起業者は、被徵收者の權利を承繼するにあらず、公用徵收によりて被徵收者の權利は消滅し、起業者は、新に權利を取得するものなり、故に被徵收者い權利に瑕疵あるも、起業者は其瑕疵を承繼するものに非ず、其本然の所有權が被徵收者に屬せざりし場合と雖も、起業者はこれを追奪せらるることなし、從つて土地收用の場合には、瑕疵擔保、追奪擔保等の問題を生ずることなしとす。(二三年法二九號土地收用法、三三年勅九九號土地收用法施行令、公用徵收の部參照)
- 英
- Law of expropriation of land
- 独
- Expropriationgesetz des Landes
- 仏
- Loi de l'expropriation de la terre
土地收用法施行令
- 英
- Regulations for the application to the law of expropriation of land
- 独
- Ausführungsregulierung des Expropriationgesetzes des Grundstücks
- 仏
- Règles de l'application de la loi de l'expropriation de la terre
土地の管轄
(とちのかんかつ)民事刑事の訴訟に關して、法律上土地の區域を設け、其區域内にある人に對する訴訟は、其土地を管轄する裁判所の裁判權に服從すべきことを定む、これを稱して土地の管轄と謂ふ、土地の管轄とは、裁判所が人に關して及ぼす裁判權の範圍に外ならざるものにして、この權限を訴訟當事者より觀察すれば、其裁判に關する屬籍と云ふことを得べし、故に法律上之れを稱して裁判籍とも云ふなり、先づ民訴上の土地の管轄より述べんに、土地の管轄には普通の裁判籍及び特別裁判籍の二者の區別あり、□一普通裁判籍とは、其人に對する總べての訴訟を提起し得べき裁判所の土地の管轄區域を云ふものにして、其場合を擧ぐれば、イ本然の住所によるもの、即ち自然人に付きては、其住所地の裁判所に訴訟を起すべく、本然の住所とは各人生活の本據を云ふなり、ロ訴訟上の決定住所によるもの、即ち公私の法人、又は其資格に於て訴へらるることを得る社團、財團に付きては、其所在地によりて其管轄を定む、若し所在地の定めなきときは事務所所在地により、一定の事務所所在地なきときは、首長又は事務擔當者の住所を以て事務所と看做し、これを以て法定住所とし、普通裁判籍を定むるものとす、又國庫に付きての訴訟は、國家を代表する官廳所在地を以て、訴訟上の法定住所とし、これにより管轄を定む、軍人軍屬に付きては、其兵營地若しくは軍艦定繫地を以て訴訟上の法定住所とし、これによりて管轄を定むるなり、ハ現在地によりて定むるもの、即ち日本に住所を有せざる者の普通裁判籍は、外國人たると内國人たるとを問はず、日本に於ける現在地に依るべきものとす。ニ最後の住所地によるべきもの、即ち外國に於て治外法權を有する帝國官吏其家族及從者に付きては、是等の者が最後に有せし住所によるものとす、若し此住所なきときは、司法大臣の命令を以て、豫め定むる東京内の區を以て住所とす、又日本に住所を有せざるものにして、現在地の知れざるもの又は外國に在る者は、日本に於て最後に有せし住所によりて管轄を定むるなり、□二特別裁判籍、法律は普通裁判籍の外に尚他の土地に於ても訴を起すことを得べき規定を設けたり、之を特別裁判籍と謂ふ、其之を設くるに付きては、或は事件の種類により便宜に基くものあり、或は事件の關係に基き、特定の裁判所に於て必ず裁判せしむるの目的に出づるものあり、從つて種々に區別して擧げざるべからず、イ當事者の狀態に基く特別裁判籍、永寓者たる性質を有するもの即ち生徒、雇人、商業使用人、商工見習人其他性質上一定の地に永住すべきものに對する財産上の訴は、其現在地の裁判所に訴ふることを得、兵役義務履行の爲め服役する軍人、軍屬に關する財産上の訴は、其兵營地又は軍艦定繫地の在る裁判所に訴ふることを得、内國に住所を有せざる者に對する財産上の訴は、請求にかかる財産の所在地の裁判所に訴ふることを得、商工業者に付き、直接に取引を爲し、且つ店舗を有する者に對する營業上の請求は、店舗所在地の裁判所に訴ふることを得、又住家及び農業用建物ある土地を利用する所有者、又は賃借人に對する其地所利用上に關する請求の訴は、物上訴訟たると對人訴訟たるとを問はず、其建物所在地の裁判所に訴ふることを得、會社若くは社團より社員に對し、又は社員相互間に於ける其社員たる資格に基く請求の訴は、會社又は社團の所在地の裁判所に訴ふることを得る也ロ訴訟の目的又は性質に基く特別裁判籍、即ち契約の成立若くは不成立の確認及其取消、解除或は義務不履行に關する賠償の訴は、其訴訟に係る債務履行地の裁判所に訴ふることを得、不法行爲に基く損害賣償の訴は、其行爲地の裁判所に訴ふることを得、以上の民事訴訟に關する重要なる場合なるか、□三刑事訴訟に關する土地の管轄は、イ内國に於ける犯罪の裁判籍は、犯罪の地又は被告人所在地の裁判所を以て、豫審及公判の管轄とし、ロ外國に於ける犯罪の裁判籍としては、犯人を内國に於て逮捕したるときは、其逮捕の地、外國より被告人の送致を受けたるときは、其送致を受けたる土地の裁判所の管轄とす、ハ海船内の犯罪の裁判籍は、定繫港の裁判所、又は犯罪後最初の著船地の裁判所を以て其管轄とす、ニ刑訴上の土地管轄を併合し得る場合、即ち同一被告人にして土地管轄を異にする數罪が其犯罪地を異にするときは、最初豫審、又は公判に著手したる裁判所は、土地の管轄を併合す、正犯數人ありて土地の管轄を異にする時、即ち犯罪地は同一なれども、各正犯の所在地同一ならざるとき、又は犯罪地が數個の土地の管轄に跨るときは、前同樣に最初著手したる裁判所を以て土地の管轄裁判所とする也、又從犯の土地の管轄は常に正犯の管轄裁判所に於て、併合管轄するものとす。(民訴一〇條乃至二五條、刑訴二六條乃至三〇條)
- 英
- Competencp of locality
- 独
- Gerichtsbarkeit der Grundstücke
- 仏
- Compétence de la localité
富籖
(とみくじ)富籖とは、關係者の一方より豫め一定の財物(通常は金錢なり)を提出し、抽籖方法を以て、當籖者に限り他の一方より豫定の利益(通常は金錢又は他の有價物なり)を與ふる所の射倖的契約の一種なり、富義の性質として、賭博と異る點を擧ぐれば、富籤は抽籖によりて勝負を決し、且つ法律上の一種の雙務契約にして、一定の條件成就の下に(即ち當籖といふ條件)一定の金額の仕拂又は物件の給付の義務を負擔し、之を相手方即ち富籖購買者は、富籤興行者に對して無條件にて一定の金額の支拂義務を負ふを約するものなるも、之に反し賭博は、一定の條件成就の下に、賭博者の一方が、他方に對して一定の金額の仕拂を負擔する事を約するに過ぎざるものなれば、二者の間に差異あるを注意せざるべからず、(此點は賭博の部を參照すべし)富籤の興行及び賣買は、我國法の嚴禁する所にして、其理由とする所は、萬一の僥倖を期して國民の懶怠に赴くを妨止するの政策に出でたるものとす、即ち刑法に依れば、財物を醵集し富籖を以て利益を僥倖する業を興行したる者は、一ケ月以上六ケ月以下の重禁錮に處し、五圓以上五十圓以下の罸金附加せらる、其他富籖に關しては、明治二五年布告二五號富籖賣買者處分に於て、富籖賣買の牙保若くは幇助を爲したる者は、一月以上六月以下の重禁錮に處し、五圓以上五十圓以下の罰金に處せられ、又富籖の購買したる者は、其價を拂ひたると未だ拂はざるとを問はず、二十日以上四月以下の重禁錮に處し、四圓以上四十圓以下の罰金を附加せらる、他人の名を借りて購賣したる者、及び他人より讓受けたる者前同斷とす、然れども右の罪を犯したるも、未だ官に發見せざる前に於て、官に自首したる者は其罪を免ずるものとす。(刑一八七條舊刑二六二條)彩票は、明治三九年六月臺灣總督府律令第七號により、臺灣總督府より發行せらるる一種の富籤にして、一定の價格を以て公に發賣せられ、抽籖方法によりて當籖を決定し、其當籖番號の彩票所持者に、豫定金額を拂渡すことを約束したる無記債權なり、現今に至りて彩票に關する各種の法律關係に就き、議論紛々として法律家の硏究を要する點少なからず、吾人は參考の爲めに左に其大略の説明を試むべし、□一彩票發行の主旨、元來富籖の發行賣買は、我國法の禁止する所なれども、世界各國中には、これを公許し、或は政府自らこれを發行するの實例に乏しからざる也、而して殊に支那人種は、金錢を愛するの念深きより、自然射倖心に富みたる爲め流行盛んにして、富籤興行の如きは最も其嗜好に投ずる所なるが、臺灣が我國の版圖となりて以來、間もなく内地刑法と同一の條項を施行せられたるを以て、島内に於ては富籖を發行し、若くは公然外國の富籖の賣買、取次を爲す者なきが如しと雖も、數十年來斯くの如き射倖的行爲に慣れたる輩に於ては、一朝俄かにこれを禁止するは頗る困難にして、これを島内に嚴禁すれば、對岸其他の各地に於て發行する富籖を購賣するに至り、之が爲め國資金の海外に逸出するもの年々巨額に達する狀况なるより、當局に於ては、夙に此弊を匡濟せんとの議ありて種々画策する所ありしか、目下の臺灣は文化の程度今尚低く、依て公共的事業の設備を要するもの少なからざるが故に、一面には資金の島外に逸出するを防遏し、他面には公共事業設備を要する幾分に充てんが爲めに、斷然彩票を發行することに決定し、遂に明治三九年六月一三日臺灣彩票に關する件は、勅裁を經て律令第七號を以て發布せらるるに至れり、これに基きて臺灣總督府に於ては、慈善、衛生、廟社保存を目的とする事業の爲め、彩票を發行することを得る本則を定め、此彩票に關する必要なる規定は總督これを定むるものとし、之と同時に臺灣總督は、本令により發行したるものにあらざる以外の彩票の取次、及び買取を禁止することを得る旨を規定せられたる也、□二彩票の發行者、前段に説明したるが如く、彩票なるものは島内資金の國外の流出するを防止し、併せて公共事業に要する費用の一端に供する目的なるを以て、徒に政府の收入を增すの手段とせず、常に民業の發達と經濟社會の狀態、並に安寧秩序の保維に鑑み、其機宜に適して幷行するものなれば、彼の外國の例に於けるが如く特許主義、公許主義によらずして、臺灣總督府自らこれが發行者となれり、是れ臺灣彩票が確實なる保障と信用とを有する所以なりとす、臺灣總督府は、彩票に關する一切の事務を掌理せしむる爲めに、特に彩票局を設置し、營業課、會計課、庶務課の分課を設け事務の分掌を命ぜり、□三彩票の樣式、價格、發行數、當籤數、彩金額、抽籤の日時等は、每回發行の都度之を公示する規定なるを以て、豫めこれを明示するに由なしと雖も、彩票の樣式としては、彼の國債證券、國庫債券等と均しく、美麗鮮明なる印刷物にして、臺灣總督府の發行なる事、價格、番號、彩金額、其他の要件を明記し、一見して臺灣彩票なることを識別し得るものなり、□四彩票の元賣捌人、彩票は、彩票局長の指定したる彩票元賣捌人をして、これを賣捌かしむる規定なるにより、彩票元賣捌人たらんと欲する者は、必ず彩票局の指定を受けたる者ならざるべからす、□五彩票の小賣人、前記したる彩票元賣捌人は、又小賣人をして賣捌を爲さしむることを得べし、此小賣人は、彩票局長の指定を要せず、何人にても小賣人たらんと欲する者は、元賣捌人との契約によりて小賣人たることを得べし、□六彩票の買受方法、彩票も價格を定めて發行したる上は、他の普通賣品と均しく、これが取扱を爲せる元賣捌人、又は小賣人に就きて買受くることを得るのみならず、其他の者より讓受け、或は贈與を受け、若くはこれを相續して所持することを得べし、其買受方法の如きは、買捌人との信用上、豫約により、或は現金取引により、或は郵便電信を利用し、或は代理人による等あらゆる方法によりて買受くることを得べきは、他の一般賣品と寸毫も異なる點なし、故に之が買受を爲さんとする者は、全島各地に於ける二十六名の元賣捌人、並に各地に置かれたる小賣人に就きて、隨意に買受くるを得べく、又元賣捌人、小賣人は、買手の希望によりて或は一本を賣り、又は之を十條に截切したるものの一條、幾枚にても賣捌くもの也、□七内地に於ける彩票の法律關係、彩票は前示せしが如く、臺灣總督府が律令の規定に基き公に發行したるものなれば、臺灣島内に於ては、土著の本島人たると寄留の内地人たると、將た又支那人其他の外國人たるとを問はず、これを購買するは各人の勝手にして、其寄留籍のあると否との如きは毫も問ふ所にあらず、專ら彩票を買ふ爲めに來れる一時の旅行者と雖も、これを買入るるに差支なし、又臺灣島内に限らず、彩票の費買を禁止せざる國に於ては、何人が之を買入るるも自由なれども、少しく考ふべきは臺灣も日本の版圖なれば、日本領土内に公行せらるる臺灣彩票は、日本内地に於ても買受くるは禁令に觸るることなしと思ふ人あれども、日本内地に於ては、明治元年布告にて、富籤興行を禁じ、刑法第二六二條に於て富籖興行の罰則を定め、更に明治一五年布告を以て、富籤賣買の牙保幇助を爲し、及び富籖を購買し、又は他人より讓受けたるものの罸則あり、此等の諸規則は何れも法律の力を有するものにして、法律を以てすれば改廢を爲すを得れども、臺灣彩票にのみ關する律令により發行せらるるものなれば、其律令の發布は、内地の諸規則に何等の關係もなく、何の變更もなく、内地に於ては依然として前記の禁令存する故に、現行法上の表面に於ては、臺灣彩票を日本内地にて買入るるは、規則違反なりと解するを穩當とすべく、今日迄世間に現はれたる重なる意見も、之を罸すべしとなせり、之を細別すれば、(甲)内地に於て彩票を賣買したる者、臺灣彩票を内地に持ち行き賣りたる者、及び買ひたる者は、明治一五年布告によりて罰せらるべく、内地に於て牙保幇助、(周旋手傳)したるものと雖も亦同じ、(乙)臺灣に於て買入れ之を内地に特歸りたる場合、此場合は内地の禁令に觸るる所なし、故に罰せらるることなき也、又此場合にありては、當籖の場合には、當籖金を沒收せらるの虞なし、何となれば、内地に於ても臺灣に於ても、規則違反にあらざれば也、(丙)内地人が、郵便又は電信にて買受の申込を臺灣在住者に爲したる場合、此場合には、富籖賣買の成立は勿論臺灣なるも、賣買行爲の一部たる申込が、禁令の存する内地に於て發せられたるものなれば、これを罰すべきものとする意見を有するものあれど、法律上の解釋としては、罰すべきものにあらずとするを穩當とするもの多し、されど此等の解釋に就きては、當局の意見すら一定せざれば、尚讀者自らの研究を望む。
- 英
- Lottery
- 独
- Lotterie
- 仏
- Loterie
彩票
- 英
- Lottery
- 独
- Lotterie
- 仏
- Loterie
賭博
(とばく)賭博とは、博奕を爲したる罪にして、賭博を以て罪とする所以のものは、偶然の出來事によりて財産上の利益を得喪し、以て國民の僥倖心を增進せしめ、其結果怠惰の氣風を養ひ、遂には一國の産業を害するに至る虞あるを以てなり、賭博を分ちて賭事及び博戯と爲すこと一般法學者の説明する所なれども、其兩者の區別につき異説あり、□一客觀主義によれば、關係者より發する動作によりて、利益を得喪する場合にはこれを博戯といひ、然らざる場合を賭事といふ、故に競馬によりて利益を賭するが如きは即ち賭事となるなり、□二主觀主義によれば、關係者の意思の遠因を以て區別の標準と爲し、單に利益を得るを以て目的とするときは博戯といひ、自己の所信を強むる目的に出づるときは賭事といふ、斯くの如く學者は、賭事、博戯の區別を認むと雖も、這般の區別を爲す必要なしと信ずるもの也、抑も賭博とは如何なる場合たるを問はず、關係者の確知せざる事實により利益を得喪するものなれば、賭事、博戯共に之を區別するの必要なしといふ所以也、今刑法の規定によりて賭博に關する罪の成立要件を擧ぐれば、□一博奕を爲したることを要す、博奕とは、專ら偶然の出來事によりて勝負の決せらるる場合を總稱す、從つて力量、技量、計算の如く、偶然にあらざるものによりて決せらるる場合は博奕と云ふを得ず、又博戯賭事の區別は前示の如し、□二財物を賭したることを要す、財物とは、法律に別段の規定なきを以て動産たると不産たるとを問はず、賭するとは偶然の勝敗によりて財産を得喪する意思表示を云ふ、故に現實に財物を提供するを要せず、又賭財なければ罪とならざるなり、但し些少の飮食物を賭すれば、單に遊戯と看做すが故に罪とならず、□三現場に於て發覺したることを要す、所謂現行犯の場合に非ざれば罪とならざる也、されど此の理由は不當なるものにして、故に或學者は、法文に「現に」とあるを解して、手を下しと云ふ意となすと雖も、立法の理由は、本罪は罪證煙滅し易きを以て、其現行が官に發覺することを必要とするに基く、從つて其の理由の正否は兎に角、現行法に於ては、斯く解する能はざるものとす。(刑一八七條)
- 英
- Gambling
- 独
- Glücksspiel
- 仏
- Jeu de hasard
問屋
(とひや)問屋とは、自己の名を以て、他人の爲めに物品の販賣又は買入れを爲すを業とするを云ひ、其營業主を稱して問屋營業者と謂ふなり、商業取引は、總べて第三者の手を經て行はるる事頗る多く、問屋營業も此場合に於ける必要なる制度として、古來より認められたる所にして、我商法に於ても此制度を襲用したり、問屋の行ふ行爲は、所謂取次に關するものにして、これを營業とするによりて商行爲となり、商法上特別なる權義を有するものとす、其行ふ所の物品販賣、買入れに關する行爲は、所謂商法學者の取次行爲として觀察せらるる所のものにして、當事者の一方が其相手方たる問屋に對し、其問屋の名を以て販賣、買入れを爲すべきことを委託し、之に對して報酬を支拂ふことを約するによりて效を生ずる契約也、故に民法上の委任及び代理其他契約に關する規定は總べて適用せらるるものとす、今問屋に關する商法上特殊なる權利義務を説明せんに、□一問屋の義務、問屋は、委託者の爲めに爲したる行爲につき、相手方に於て其債務を履行せざる場合に於ては、自ら其履行を爲すべき責に任ぜざる可らず、例へば販賣の取次を爲したるときは、其代價支拂の義務を負擔し、販賣したる相手方より其代金の受領ありたると否とは、以て支拂を猶豫するの原因とする能はざる也、蓋し問屋をして斯かる義務を負はしむることは、相手方の撰擇に注意せしめ、取引の確實を保全し、問屋の信用を維持せしむるの方法に出でたるものとす、□二問屋の權利、イ報酬を請求するの權利、問屋が其取次行爲を完了したる場合に於て、其委託者に對して報酬の請求を爲し得べきは勿論のこと也、報酬の金額は、當事者間の約定する所によらざるべからず、通常は取次たる行爲に對する總高によりて分合を定むるものとす、例へば賣買價格の何割何分と云ふが如し、ロ留置權、問屋營業者は、所謂目的物と關聯を要せざる留置權を有することを得、即ち相手方との其商行爲によりて生じたる債權を有する場合に於ては、委託者又は相手方の爲めに占有する物品を留置して、債權の辨濟を受くるまでこれを維持することを得るものとす、ハ取引進入の權利、問屋が自己自らが委託行爲の相手方となりて、委托者と取引を爲すことを得、之を稱して法律上問屋の進入權と謂ふ、例へば委託者より物の販賣を託されたる場合に、自己が直に買手となる場合の如きを云ふ、民法上の委任の原則としては、一の取引に關して自他の利益を同時に計るの不可能を認め、斯かる權利を認めざる也、さりながら商法は、特定の場合に當事者の利害を審酌し、斯かる特例を設くるを妥當として此進入權を認め、以て民法の原則を覆したるなり、此の進入權を認むべき範圍は、取引所の相場ある物品の販賣、又は買入れの委託を受けたる場合に限るものとす、蓋し此範圍に於ては、委託者を害するの虞なしとの見解に基くものとす、而して進入權の行使の結果として支拂ふべき、もしくは支拂を受くべき代金は、問屋が買主又は賣主となりたることの通知を發したるときに於ける取引所の相場によりて定むべきものとし、此場合に於ても法律は特に報酬を請求し得ることを明にしたり、□二競賣の權利、買入れの委託を受けたる問屋は、委託者に於て買入物品の受取りを拒み、若くは受取る事を得ざるときは、供託に代ゆるにこれを競賣に附して、債權の辨濟に充つることを得、此競賣を行ふには、相當の期間を定めて、催告を爲したる後に於て競賣に附することを要す、若し損敗し易き物品なるときは、此催告を爲さずして直に競賣することを得るものとす、問屋が右の競賣を爲したるときは、其の價額を供託せざるべからず、但し之を以て報酬立替金又は費用に充當することを妨げず、問屋に競賣權を認めたるの理由は、問屋は手數料を請求するの權を有するも、其手數料の請求は、買入物品を委託者に引渡したる後に非ざれば、之を行ふことを得ざるが故に、其物品を供託に附するも問屋の利害は其物品の上に懸り、供託は問屋の利害關係を不確定ならしむべく、從つて法律は、問屋に向つて供託、競賣の二方法を爲すを許すと雖も、競賣するに非ざれば報酬立替金等の辨濟を受くる能はざるの理由に出でたるものとす。(商三一三條乃至三二〇條)
- 英
- Commission agent
- 独
- Kommissionär
- 仏
- Commissionaire
問屋營業者
- 英
- Com-mission agency
- 独
- Kom-missionsgeschäft
- 仏
- Commission
取消
(とりけし)一旦有效に成立したる法律行爲が、或法律上の瑕疵を帶べる爲めに、取消權者の意思表示によりて、其法律行爲を根底より消滅せしむる事を取消と謂ふ、□一取消し得べき行爲、無能力者の行爲、詐欺、脅迫による爲行は、取消し得べきものにして、これ等取消し得べき行爲は、全く成立せざるに非ず、唯取消權を有するものより取消さるるの危險あるのみ、取消さるる迄は行爲として存することを得るものとす、取消し得べき行爲はなほ重病者の如し、何時死するやも計られざれども、今は現に生存するのみならず、追認に依つて健康を回復するの望みなきに非ざる也、□二取消し得べき人、行爲を取消し得べき者は、無能力者、即ち未成年者、禁治産者、準禁治産者及び妻、若くは瑕疵ある意思表示を爲したる者、即ち詐欺脅迫に逢ひたる者にして、なほ無能力者若くは瑕疵ある意思表示を爲したるものの法定代理人、委任代理人又は承繼人も取消權を有す、承繼人は、相續人の如く包括的に權利義務を承繼する所謂一般の承繼人、及び特別なる權利讓受け及び特別なる義務を引受けたるものの如き、所謂特別承繼人をも包含す、代理人は全く本人又は被承繼人の地位に立つものなれば、取消權を有すること當然なり、又無能力者は、取消權を有すること前述の如しと雖も、其取消權を行はんには、一般の行爲の原則によることを得るは論を俟たずと雖も、未だ無能力者たる間に取消を爲さんには、取消すべき行爲の性質に從ひ、法定代理人、保佐人の同意、夫の許可を要するなり、何となれば、法律行爲の取消も亦一の法律行爲に外ならざれば也、妻の爲したる行爲は、夫もこれを取消すことを得、蓋し妻を無能力者と爲したるは、夫權を保護せんが爲めなれば也、無能力者又は瑕疵ある意思表示を爲したる者の相手方は、取消權を有することなく其行爲に拘束せらる、蓋し無能力者の相手方は不注意たるを免れず、又瑕疵ある意思表示の相手方は、詐欺者若くは脅迫者なれば、此等の者に取消權を與ふるの理なき也、但し當事者双方無能力者ならば、双方共に取消權を有すること論を俟たず、□三取消の效力、取消し得べき法律行爲は、取消しなければ有效に存すと雖も、若し取消さるる時は、初めより全く無きものと見做され、取消されたる行爲の爲めに移轉したる權利は原權利者に復歸し、免除したる債權は其效力を囘復し、第三者にも亦其效を生ずるものなり、故に行爲に依りて得たる物件は之を返退せざる可らず、轉得者も亦同じ、例へば賣買が取消されたりとせば、賣主は受取りたる代價を買主に返戻せざるべからず、買主は受取りたる物件を返戻せざるべからず、買主より物件を讓受けたる第三者も亦返戻せざるべからざるが如し、抑も法律が無能力の行爲を取消し得べきものと爲したるは、無能力を保護せんが爲め也、故に無能力者をして、取消しに依つて損害を蒙むる事なからしめんを要す、然るを無能力者も亦原則に從ひ、取消したる行爲によりて得たる利益を返還せざるべからずとせば、無能力者は、是非の辨別なき者なれば、行爲に依つて得たるものは、無益に之を消費すること多かるべく、斯る場合に、自己の囊中より更に償還する事となさんには、却て損害を蒙むるに至るべし、故に無能力者は、依て得たる利益の悉皆を返戻する義務なく、唯現在に利益を受くる限度に於て償還するの義務を負ふのみとす、即ち返還を爲すべき時に於て、行爲に依て得たる現物を有せば之を返還すべく、既に之を費消し、これに代へて得たる代金、若くは物件を存せば、其ものを返戻すべく、悉皆無益に消費したりとせば、毫も償還するに及ばざる也、□四取消の方法、取消は、單純なる意思表示を以てこれを爲すことを得べきものとす、口頭たると、書面たると、使者たるとを問はざる也、相手方にさへ達し得べき方法を以てせば足れり、然れども相手方なき行爲、例へば財團法人成立に關する寄附行爲の如き場合は、其意思表示は何人に對して之を爲すも可なり、相手方の確定せる行爲につきては、相手方に對して爲すべきは勿論とす、取消は民法上單獨行爲なるが故に、相手方の承諾を俟たずして效力を發するものとす、□五取消しを爲すことを得る時、取消權を有するものは、何時にても其行爲の取消を爲すことを得べし、然れども無能力者が取消權を行ふには、法定代理人、又は保佐人の同意を經て行はざるべからざることは前示せるが如し、法律は此取消の行使に關して、追認を爲すことを得る時、即ち無能力者が能力者となり、妻が獨身者となり、詐欺脅迫による意思表示者は、其詐欺脅迫の去りたる後より、五年間之を行はざるときは時效によりて消滅するものとす、行爲のありたるときより二十年を經過せる場合又同じ、而して法律は又一の制限を加へ、取消し得べき法律行爲に對して、追認を爲すことを得る時より、後に於て取消し得べき行爲に關して下に列擧する事實あるときは、追認を爲したるものと看做し、最早其行爲を取消す事を得ざるものとせり、即ちイ債權關係なれば全部又は一部の履行、ロ履行の請求、ハ更改、ニ擔保の供與、ホ取消し得べき行爲に因りて取得したる權利の全部又は一部の讓渡、へ強制執行、以上の六事實ある場合は、取消權は喪失するものとす、但し右の如き事實ありと雖も、別段なる異議を留めて爲したるときは此限りに非ざるなり。(民一一九條乃至一二六條)
- 英
- Rescission
- 独
- Anfechtung
- 仏
- Annulment
取消權
- 英
- Right of rescission
- 独
- Anfecht-ungsrecht
- 仏
- Droit de l'annulation
取消の訴
(とりけしのうつたへ)民事訴訟法上の手續に背戻して爲したる確定判決に對し、再審の方法によりて、前の確定判決の取消を求むるの訴を取消の訴と稱す、取消の訴は、下に擧ぐる所の原因に基く事を要するものとす、□一規定に從ひ判決裁判所を構成せざりし時、□二法律により、職務の執行より除斥せられたる判事が裁判に參與したる時、但し忌避の申請、又は上訴を以て除斥の理由を主張したるも、其效なかりし時は此限りに非ず、□三判事が忌避せられ且つ忌避の申請が理由ありと認めたるに拘はらず裁判に參與したる時、□四訴訟手續に於て、原告若くは被告が、法律の規定に從ひ代理せられざりしとき、右の四個の理由中の一若くば二以上を理由とする時に限り、取消の訴を以て原判決を攻擊することを得、而して右の内一及び三の場合に於ては、當事者が上訴又は故障を以て取消を主張し得べかりし時は、取消の訴を許さず、即ち取消しの訴の原因ある判決に對し、當事者が、上訴又は故障を提起し得べきものなること、並に當事者が取消の原因あることを知り得べかりしときは、取消の訴を許さざるものとす、これ當事者が、上訴又は故障を以て不服を申立つることを得べきに拘はらず、其申立を爲さざるは、これを主張する權利を抛棄したるものと認めたるによるなり。(民訴四六七、四六八條)
- 英
- Action for nullity
- 独
- Nichtig-keitsklage
- 仏
- Action de la nullité
取下
(とりさげ)訴の取下は、民事訴訟に關するものと、刑事訴訟に關するものととありて稍其意義を異にす、□一民事訴訟に關する訴の取下、原告が一旦訴を提起したるときは、其訴は一定の裁判所に繫屬し、これに依つて訴訟關係を生じ、其訴につき裁判所の裁判を受くるの權を生ずる事勿論なれども、原告は、必ずしも訴訟を進行して、其裁判を受けざるを得ざるの義務あるに非ず、其訴の全部又は一部につき、一定の時期に於て、一定の方式により其起訴の效力を抛棄することを得、これを稱して訴の取下といふなり、訴の取下は、單に形式上の起訴の效果を抛棄するに過ぎずして、之のみにては、實體上の請求を抛棄するものに非ず、而して此訴の取下も亦一の訴訟行爲にして、訴訟法上の規定に從ひこれを爲すべきものなり、單に當事者間に於て訴の取下を爲すべき合意をなし、若くは訴を抛棄するの意思を表示するも、民法上の效力はとにかくも、訴訟法上に於ける訴の取下と云ふを得ざるなり、イ訴の取下を爲すことを得べき時期、訴の提起後、被告が本案につきての第一口頭辯論を始むる迄は、被告の承諾を要せず、原告一個の任意を以て取下ぐることを得、若し被告が本案の口頭辯論を爲したるときは、其口頭辯論の終結に至る迄の間に於て、被告の承諾を得てこれを取下ぐることを得、盖し既に本案の辯論を開始したる以上は、被告は其應訴によりて、裁判を受くるの權を得るものなれば、原告のみの意思にては之を處分することを許さず、若し之を許すに於ては、原告は常に被告の抗辯により、自己の不利益なりと認むるときは之を取下げ、更に訴旨を變更して、新訴を起すが如き弊を生ずれば也、而して第一審の口頭辯論終結後は、絶對に訴の取下げを爲すを得ざるものとす、一旦判決ありたるときは、訴の取下を爲して、其判決を全然存在せざるものと爲すが如きは、法律の認むる所に非ず、故に一度判決あれば、之に對し故障又は上訴を爲し、其故障又は上訴を取下ぐることを得べきも、判決後に於ては訴の取下を爲すを得ざるものとす、判決後のみならず、第一審の口頭辯論を終結したる後は、又取下を許さざるなり、ロ訴の取下の方式、訴の取下の意思表示は、訴訟法に從ふべき一個の訴訟行爲なれば、當事者の合意あるも、未だ以て訴の取下ありとするを得ざるは、前示する所の如し、而して取下を爲す方法は下の如し、即ち口頭辯論以外に於て爲す取下は、書面を裁判所に提出して之を爲すべく、若し訴狀の相手方に送達せらるる以前なるときは、取其下書を提出するのみを以て足る、口頭辯論中に於ける取下は、口頭の演述を以て之を爲すべく、被告が出頭せず、欠席のまま辯論を爲す場合に於て取下を爲すも同樣なり、右の取下を爲したる外に法律上に於て、訴の取下を爲したりと看做さるる場合あり、即ち訴訟休止の後一ケ年内に、口頭辯論期日の指定を申請せざるとき、及び原告が訴訟費用の保證を立つべき場合に於て之を怠りたるときは、被告の申立により、判決を以て訴の取下ありたるものとの宣言を爲したる場合これなり、ハ取下の效力、訴の取下は、單に形式上訴の效力を抛棄するに止まり、之が爲めに實體上請求權を喪失すべきに非ず、故に同一の請求につき再び訴を起すことを妨げず、而して取下の效力として生ずべき事項は、權利拘束の凡ての效力を消滅せしめ、取下たる訴につきての訴訟費用は、被告の承諾を得て取下げたる場合なると否とを問はず、原告の負擔とす、訴を取下たる後其訴訟費用を支拂はずして、原告が同一の請求權につき再び訴を起したるときは、被告は之に對し、其訴訟費用未濟の爲め應辯を拒むことを得、即ち訴訟費用未濟の抗辯を提出することを得るなり、□二刑事訴訟に於ける訴の取下、私人が、一旦提起したる告訴を取下ぐることを訴の取下と謂ふ、イ告訴取下の時期、告訴權は、被害者に歸屬する權利なれば、これを抛棄して行使せざることを得べく、但し何時迄これを取下げ得るやに至りては法律上一の規定なし、之に關して二説あり、第一説によれば、告訴を以て訴訟上の條件となすの主旨を前提とし、告訴は檢事が起訴する迄の條件なるが故に、檢事は之を起訴したる以上は、之を取下ぐるも何等の效果を生ぜずとなす、第二説によれば、告訴は實體法上の條件なるが故に、告訴を以て處罸條件とし、確定判決に至る迄は、被害者の告訴の存在するを必要とす、故に何時にても取下ぐる事を得べしとす、今日の實際の取扱は第二説に依る也、吾人も亦確定判決に至る迄は、何時にても有效に告訴を取下ぐることを得べきものと解す、ロ取下の效力、告訴取下が告訴の不存在の結果を生ずることは疑なきも、茲に、あ告訴人數人中一人が取下げたるときは、其取下が事件の上に及ぼす效力如何と、い被告人數人あるとき、其中の一人に對して告訴を取下げたるとき、之が他の被告人に及ぼす效力如何を説明せざるべからず、第一の場合に於ては、告訴人は幾人あるも差支なしとせば、其中の一人が取下ぐるも、他の告訴人の告訴には何の影響なかるべし、但し被害者本人が取下を爲し、其親族が取下を爲さざる場合には、被害者本人の意に反して其事件を維持する必要あるや否やは、學者の硏究を要する點とす、第二の場合に於ては、告訴不可分の原則により、被告人全體に對して取下を爲すに非ざれば其効なく、一部の者に對する告訴の取下は、當然他の者に對して、取下の效力を生ずるものにあらざるなり、又告訴の取下は、親告罪の場合を除き、他の場合には、檢事の搜査處分又は起訴に何等の影響を及ぼすことなし、然れども告訴者は、其告訴を取下げたるときは、告訴人たるの責任を免るることを得るは勿論なりとす。(民訴一九八條、刑訴五五條)
- 英
- Withdrawl
- 独
- Zurücknahme
- 仏
- Désistment
取締役
(とりしまりやく)取締役とは、株式會社の常設機關にして、業務執行の任に當る者を謂ふ、蓋し株式會社は、合名、合資會社等と異り株主の數多數なるを普通とするが故に、各自其業務執行の任に當るが如きは、實際行はるべきことに非ず、又固より期すべき所に非ざるを以て、總べての株主を代表し、會社業務の執行に當る者を要するは當然也、故に法律は、株主中より必ず三人以上の取締役を置かざる可らざるものとせり、取締役に關する法律上重要なる點は、□一取締役の選任、取締役は、必ず三名以上たることを要す、盖しこれより少なきときは、一方に於ては注意周到なるを得ずして、業務執行上失策を生ずること多かるべく、他方に於ては私曲に陷るの弊を生じ易きが故なり、取締役は、會社創立の際にありては、發起人が株式の總數を引受けたるときは、發起人に於て之を選任すべく、否らざる場合即ち發起人以外に株主を募集したるときは、創立總會に於て選任すべく、又會社設立後に於ては、株主總會に於て選任するものとす、取締役たる事を得る資格は、法律上に於ては株主たるを以て足れりとし、他に條件を一定せずと雖も、定款の所定事項として、取締役が有すべき株數を定むるを得べきものとせり、是れ各種の會社によりて其事情を異にすべきが故に、取締役の資格に必要なる株式の員數は、會社をして自由にこれを定めしむるものとせる所以なり、而して取締役が有すべき株數を定款を以て定むることを要するものとしたる所以は、元來取締役は業務執行の任に當るが故に、會社の盛衰に利害關係を有すること多きものたるにあらざれば、其職務に不〓心なることあるを免れざれば也、加之法律は、取締役の職に就きたる後は、其定數の株券を監査役に供託すべきものと定めたり、つぎに取締役の任期は三年以上を超ゆることを得ず、是れ取締役なるものは、會社の業務を執行する重要の地位にあるが故に、長日月間同一の地位にあるときは、私曲を敢てするの機會を與ふるの弊害を生じ易きが爲めなり、然れどもこれが改選の時期に際し、株主總會が更に其適任なる事を認めて之を再選せんとするときは、これを許さざるの必要なきが故に、別に制限せざるものとす、又取締役は、何時たりとも株主總會の決議を以て之を解任することを得べし、然れども、若し任期滿了前なるときは、相當の損害を會社より賠償せざるべからず、取締役よりも其任期の如何に拘はらず、何時にても辭任することを得るものなり、然れども自己の意思のみを以て辭任し得べきにあらず、必ず會社の承諾を必要とするものとす、□二取締役の權限、會社の内部に對する權限としては、定款に別段の定めなきときは其過半數の決議を以て會社の業務を執行し、支配人の選任又は解任の如き、其他所謂會社の常務の總べてを執行するものとす、外部に對する權限としては、各自會社を代表する權限あるものにして、即ち會社の營業に關する一切の裁判上、又は裁判外の行爲を爲す權限を有するものとす、然れども此權限も、定款又は總會の決議によりて制限するを得べし、唯其制限を知らざる善意の第三者に對しては、其效力を有せざるが故に、取締役の越權行爲に對しても、此場合には會社は其責に任ぜざるべからず、右の如く會社の内部に於て業務を執行し、外部に對して會社を代表するものなるを以て、總べての事項は、取締役の意見によりて實行せらるべき也、故に自由に自己又は第三者の爲めに、會社と取引を爲すが如きは、取締役たる職務を全うするの途に於て缺くる所あるを免れず、何となれば、一身にて雙方の利益を計ることは、到底不能のことなればなり、故に我商法は、明文を以て、取締役は、自己又は第三者の爲め、會社と取引を爲す事を得ざる旨を規定し、唯監査役に於て承認したる時に限り、自己又は第三者の爲めに、會社と取引を爲す事を許せり、□三取締役の責任、取締役が法令又は定款に反する行爲を爲したる時は、株主總會の決議によりたる場合と雖も、第三者に對して損害を與へたる場合には其賠償の責を免るる事を得ざる也、然れども素と取締役は、株主總會の決議を執行せざるべからざる義務を有するものなるが故に、其行爲に對し株主總會に於て異議を唱へ、且つ監査役に其旨を通知したる取締役に、之を適用するは甚だ酷に失するが故に、斯くの如き場合に於ては取締役は其責に任ずるときなきなり、□四取締役に對する訴訟、取締役と會社との間に於て爲したる取引より、又は取締役の業務執行の結果、責任問題を惹起し、會社と取締役との間に訴訟を爲す場合に於て、會社の訴訟行爲を取締役の意思に一任するときは、到底好結果を得る能はざるは明なるを以て、商法は特に規定を設け、會社が取締役に對し又は取締役が會社に對し、訴を提起する場合に於ては、其訴訟につきては、監査役をして會社を代表せしむることとなせり、尤も總會に於て他人を選任して會社を代表せしむることをも得べし、右の外總會に於て、取締役に對して訴訟を提起することを否決したる場合と雖も、資本の十分の一以上に當る株主が、之を監査役に請求したるときは、會社は訴を提起せざるべからず、此場合も亦前段に示したるが如く、會社を代表するものは、監査役若くは總會に於て選任したる代表者なりとす。(商一六四條乃至一七九條)
- 英
- Director
- 独
- Vorstand
- 仏
- Administrateur
取立命令
(とりたてめいれい)取立命令とは、強制執行の場合に於て、債務者が有する金錢債權を差押へたる場合に生ずる所のものにして即ち債務者が、第三債務者に對して有する債權を代位の手續を要せず、債權者に於て債務者に代り請求するの權利を、債權者に附與する所の裁判上の命令なり、換言すれば裁判上代位の手續に依るを要せずして、差押債權者が、債務者に代りて、直接に第三債務者に對する債權を取立て得るものなり、然れども其差押債權は、依然として債務者の債權なるを以て、其債權に對する危險負擔は債權者に在り、故に差押債權者の過失あるに非ざれば、其債權の取立不能に歸するも、之が爲め差押債權者の權利に影響を來すべきものに非ずして、差押債權者は、第三債務者と免除又は和解を爲し、代物辨濟を約する事を得ず、又第三債務者は差押前に於て、債務者に對して有する債權を以て、差押の債權に對抗し相殺の抗辯を爲すことを得べし、取立命令の效力は、通則として其差押へたる債權全部の及ぶべきものとす、然れども其債權全部より差押債權者の債權を差引きたる剩餘の部分は、固より債權者に歸屬するは勿論とす。(民訴六〇〇條)
- 英
- Order for collection
- 独
- Überweisung zur Einziehung
- 仏
- Ordre de l'annulation
取次
(とりつぎ)取次とは、契約の一種にして、當事者の一方が、自己の爲めに相手方の名を以て、法律行爲を爲すことを相手方に委託する所の契約なり、取次契約は、代理權の授與を伴はざる委任契約の一種なりと云ふことを得べし、取次契約の目的たる法律行爲は、之を取次行爲と稱ふ、其取次行爲は、受託者の名を以て之を爲すことを要し、受託者の代理人として之を爲すことを得ず、而して受託者が取次行爲を爲したるときは、委託者に其效果を歸せしむることを要し、自己の利害に歸せしむることを得ず、此結果として、取次行爲は一方於て他人をして爲さしむる事を得るものに限らず、他方に於ては、其效果を他人に歸せしむることを得るものに限るものとす、此の如く委託者の方面より觀れば、他人をして爲さしむることを得る法律行爲に非ざれば、取次契約の目的と爲すことを得ず、又受託者の方面より觀れば、法律行爲の效力を、他人に歸せしむることを得るものに非ざれば、取次契約の目的と爲すことを得ずと雖も、此二個の要件を具備する以上は、如何なる法律行爲と雖も、取次契約の目的と爲すことを得べく、敢て制限さるることなし、而して取次も前示の如く契約に外ならざるものなれば、原則として、民法の契約に關する規定によりて當事者間の關係を定むべきことは勿論なれども、若し其行爲にして、商行爲たるべき場合に於ては、商法の規定を適用せらるべきものとす、商法の規定の適用を受くべき取次は、即ち問屋營業及び運送取扱營業者に關する場合なりとす。(商二六四條一一號)
- 英
- Commission
- 独
- Kommission
- 仏
- Commission
取引
(とりひき)汎く取引と云ふときは、賣買、交換、貸借等の如き主として有償契約の實行を稱す、然れども法律は、時として其用例を狹き意義に用ふることあり、例へば會社編の規定に於て、會社の取引時間内に於て云々等の如き場合には、其會社の業務に關する商行爲の實行を意味し、又取引所に於てする取引等と云ふ場合には、其取引所に於て行はるる賣買契約を指示するが如し。(商二四六條)
- 英
- Transaction
- 独
- Geschäft
- 仏
- acte
取引所
取引所とは、一定の賣買を爲す目的を以て、一定の地域内に設立せられたるものにして、其設立には、政府の免許を必要とする社團なり、取引所の設立は、農商務大臣の特定せる地域に限り、其設立の目的たる賣買の範圍は、法令又は慣習によりて定まれる特定の物件を、特定の時期に於て、特定の人に限り特定の方式によりて行はるべきものに限る、而して社團を組織するには株式組織なる場合あり、又會員組織なる場合あり、其詳細は、取引所法の項目の下に説明すべし。(取引所法參照)
- 英
- Exchange
- 独
- Börse
- 仏
- Bourse
取引所税法
(とりひきじよぜいはふ)明治二六年法律第六號を以て公布せられたるものにして、其大要を擧ぐれば、取引所は、定期賣買につきては、下の割合に從ひ税金を納むべきものなり、商品有價證券の定期賣買は、各約定金高の一萬分の六、但し國債及び地方債證券は萬分の三とす、取引所は、每一ケ月分賣買取引を爲したる各約定代金高を、翌月五日迄に管廳轄に屆出づべきものとす、取引所税額は此屆出によりて、地方長官に於て之を定むるなり、其税金は每一ケ月分を翌月廿日迄に納むべく、若し前示の屆出を詐り、脱税を計り、又は脱税したるときは、取引所理事長を百圓以上千圓以下の罰金に處し、尚取引所より其脱税にかかる金額を徵收するものとす、又屆出でを怠りたる場合には、理事長は一圓以上一圓九十九錢以下の科料に處せらるべし、而して定期内に於ける轉賣人の賣高、及び買戻人の買高に係る税金は免除せらるべきものとす。
- 英
- Tax of exchange
- 独
- Börsentaxe
- 仏
- Impot de la bourse
取引所法
(とりひきじよはふ)取引所法は、取引に關する組織、其取引、其他監督方法を定めたるものなり、大要を摘記せんに、□一取引所の設立、賣買取引の繁盛なる地域内の商人は、政府の免許を受けて、一種若くは數種の物件の取引所を設立することを得、而して同種の物件を賣買取引する取引所は、一地區内一ケ所に限りてこれを設立することを得べし、其一地區内と稱するは、後段の説明によりて明かにすべし、取引所の免許年限はこれを十ケ年とし、土地の情況によりて、更に繼續の出願を爲すことを得るものとす、株式會社の取引所は、營業保證金を政府に納むる義務あり、□二取引所の組織、取引所は、土地の商業の狀況及び賣買取引すべき物件の種類により、會員組織又は株式會社組織と爲すことを得べし、株式會社の組織による場合は、商法の會社法の規定を準用せらるべきものにして、會員組織の場合は、取引所に於ては其仲買人及び會員に限りて取引を爲すことを得るのみとし、其設立に關することは、後段に説明する施行法によるべきものとす、株式會社組織たる場合は勿論、會員組織の場合と雖も、法律上當然法人と看做され、財産を所有し、及び之を處分することを得るものとす、而して何れの場合に於ても、取引所の定款は政府の認可を受けざるべからず、□三會員、株主、仲買人、會員組織の取引所の會員となるには、一ケ年以上取引所の營業部類に屬する商業に從事し、且つ定欵の規程に從ふ事を要すべく、取引所仲買人となるには、二年以上其取引所の營業部類に屬する商業に從事したる商人にして、年齡二十五歳以上者にして特に政府の免許を受くることを要す、以上は何れも帝國臣民に非ざれば、會員、仲買人と爲ることを得ざるなり、即ち外國人はこれを許さざるものとす、又日本人たりと雖も、婦女、未成年者、公權剝奪及停止中の者、復權せざる破産者及び家資分産者幷に取引所に於て、除名處分を受けたるものは會員となることを得ず、又重禁錮一年以上の刑に處せられ、信用を害する罪、財産に對する罪、商業及び農工業を妨害する罪を犯して刑に處せられ、其滿期若くは赦免後二ケ年を經ざる者及前示の會員となる能はざるものに該當すするものは、仲買人となるを得ざるものなり、□四取引所の役員、取引所の役員は、理事長一人、理事二人以上、監査役若干人とし、取引所の定欵の定むる所により、會員又は株主中より二ケ年以下の任期を以て選擧し、且つ政府の認可を受くべきものとす、理事長及び理事は會員組織の取引所にありては、會員外のものを選擧するを妨げず、取引所の仲買人と爲る資格無き者、即ち前段に示せる者は、取引所の役員となるを得ざるものとす、而して取引所の役員及び雇人は、取引所に於て賣買取引を爲すことを得ざる者とす、但し監査役は此限りに非ず、□五取引所の賣買取引、取引所の賣買取引には、直取引、延引取、定期取引の三種あり、即ち取引日より、五日内に於ける當事者指定の期日に履行すべきものを直取引と稱し、百五十日内に於ける當事者指定の期日に履行すべきものを延取引と稱し、三ケ月内に於ける取引所指定の期日に履行すべきものを定期取引と稱するなり、取引所は、定欵の定むる所によりて賣買取引につき證據金を納めしむる事を得べく、若し期日に至るも其責任を履行せざるものあるときは、證據金を以て損害賠償の用に供せらるるものとす、取引所以外に於ては、取引所の定期取引と同一又は類似の方法を以て、賣買取引を爲すを禁ぜらる、而して取引所に於て賣買取引を爲したる物件の相場は、公定相場たる效力を有するものとす、□六取引所に對する政府の監督、農商務大臣は、取引所の行爲にして法令に違反し、又は公益を害し若くは公衆の安寧に妨害ありと認むるときは、取引所の解散、取引の停止、一部の取引の停止又は禁止、役員の解職、會員又は仲買人の營業停止、若くは除名等の處分を爲すことを得るものとす、又必要ありと認むるときは、官吏をして取引所の業務、帳簿財産、其他一切の物件、會員又は仲買人の帳簿を檢査することをも得べし、又主務大臣に於て必要ありと認めたるときは、命令を以て定欵を改正せしめ、其總會の決議又は處分を停止し、禁止し、又は取消すことをも得るものとす、取引所が、任意解散を爲すべき場合は、總べて政府の認可を經ざるべからず。(二六年三月法五號)
- 英
- Law of exchange
- 独
- Börsen-gesetz
- 仏
- Loi de la bourse
取引所法施行條例
取引所法施行規則は、明治三二年七月農商務省令第一八號を以て發布せられたるものにして、取引所法の施行に關する細目を定めたるもの也、此規則によるときは、會員組織の取引所を設立せんとするものは、發起人に於て認可申請書に定欵及び發起人の履歷書を添へて、地方長官を經由し農商務大臣に差出すべく、株式組織の取引所を設立せんとするものは、發起人に於て前同樣の申請を爲すを要するものなり、何れの場合たるを問はず、發起人は賣買取引すべき物件の種類每に、一ケ年以上其種類の商業に從事したる商人三十人以上たるを要す、又會員組織の取引所は、賣買取引すべき物件の種類每に、五十人以上の會員あるにあらざればこれを設立するを得ざるなり、取引所設立の免許を得たる後、一年以内に開業せざるときは、免許は其效力を失ふもの也、仲買人の免許を受けんとするものは、其願書に履歷書を添へ、取引所を經由して之を農商務大臣に差出すべく、此場合に取引所は、其願書に對して意見書を添付すべきものとす、農商務大臣に於て仲買人の免許を與へたるときは、免許狀を取引所に交附すべく、取引所はこの交附を受けしときは、其旨を本人に通知し、免許料金額(百圓)に相當する收入印紙を貼用したる請書及身元保證金を差出さしめたる後、其免許狀を本人に交附するものとす、仲買人たるべきものにして、前示の通知を受けたる日より十四日以内に、請書又は身元保證金を差出さざるときは、免許は、其效力を失す、取引所は、會員及仲買人簿帳の種類、記載事項及び樣式を定め主務大臣に屆出ずるを要す、取引所に於て米の格付を定むる場合に於ては、一種又は一種以上の標準物を定め、格付表を調製して、認可を申請すべきものとす、取引所は、其市場に於て、賣買取引する物件の公定相場を公示すべきものとす、取引所は一定の報告書を調製して農商務大臣に差出さざるべからず、其書類は、每日公定相場表、每月賣買高表、每月商品の集散及び、商況に關する報告書、(以上翌月十五日限り發送)收支豫算表(議定後十五日限り發送)每半年度に於ける財産目錄、貸借對照表、損益勘定表、事業報告書、現在會員、仲買人其使用人の氏名表等を差出すべきものとす、取引所より農商務大臣に差出すべき書類は、別段の規定ある場合の外は地方長官を經由すべきものなり、
- 英
- Regulations for the application to the law of exchange
- 独
- Ausübungsregel des Börsengesetzes
- 仏
- Règles de l'application de la loi de la bourse
度量衡法
(どりやうかうはふ)度衡法は、明治二四年法律第三號を以て公布せられたる所にして、度量衡法は、第一に度量衡制度を定む、即ち取引に於て使用せらるべき度量衡の標準を規定す、個人が自己の單獨の目的の爲めに使用する度量衡は、如何なる標準を以てするも國家法律の關する所に非ず、法令の干渉する所は、唯商取引に於て使用する度量衡のみに關するもの也。
度は長短を計るが爲めにすると、地積を計るが爲めにするものとの二種あり、長さを計るが爲めにする度の單位はこれを尺とす、尺の十分の一を寸、百分の一を分とし、十尺を丈とし、六尺を間とす、地積の單位は六尺一平方にしてこれを步とす、三十步を畝とし十畝を反とし、十反を町とす。
量の單位は升にして、十升を斗とし、十斗を石とす。
衡の單位は貫とし、貫の千分の一を匁とし、百六十匁を以て斤とす。
度量衡制度は、我國に於ては強制的性質を有するに非ざるも、法律によりて度量衡制度を定めたる法律上の效果は、唯商取引に於て若し特別の意思表示により、他の度量衡制度によるの意思を表示せられざる場合には、常に此制度によるものと推測せらるべきものなる點にあり、又度量衡法は、啻に度量衡制度を定むるのみならず、其度量衡器に關する規定を設けたり、度量衡器の製作及販賣は貨幣の如く、國家が自らこれを爲すことなく、これを私人の事業に任せたり、(貫、地方原器の部參照)
- 英
- Law of weight and measure
- 独
- Masz- und Gewichtsordnung
- 仏
- Loi du poids et du mesure
内閣
(ないかく)内閣は、國務大臣を以て組織し、國務を審議する所の官廳にして、一二の特別なる場合を除くの外は(特別なる場合とは、土地收用法に依る事業の認定、各省間の主管爭議の裁決)行政上の職務なく、明治一八年以前の舊制度に、太政官が各省の上に立ちて、其行政を監督したるものとは大に其赴を異にす、各省大臣は、一定の事項に就き閣議を經べき義務ある事は、官制に依て明なるも、其議決に拘束せらるべき法律上の義務あるにあらず、要するに現行官制の精神は、内閣を以て各省の上級官廳とするにはあらず、各省大臣は行政の最高機關にして、天皇に對し直接に責任を負ひ、敢て内閣の指揮監督を受け、其行政を處理するものにあらざるものとす、現行制度上内閣の職務は左の如し、即ち閣議を經べき事務にして、□一法律案及豫算決算案、□二外國條約及重要なる國際條件、□三官制、規則及法律施行に係る勅令、□四諸省の間主管權限の爭議、□五天皇より下付せられ又は帝國議會より送致する人民の請願、□六豫算の支出、□七勅任官及地方長官の任命及進退、其の他各省主任の事務に就き、高等行政に關係し事體稍重きものは、總べて閣議を經べきものとす。(二二年勅三五號内閣官制參照)
- 英
- Cabinet
- 独
- Kabinett
- 仏
- Cab-inet
内閣官制
(ないかくくわんせい)内閣の組權織限等を定めたる規則にして、大要下の如し、□一内閣は、國務各大臣を以て組織す、□二内閣總理大臣は、各大臣の首班として機務を奏宣し、旨を承て行政各部の統一を保持す、□三内閣總理大臣須要と認むるときは、行政各部の處分、又は命令を中止せしめ、勅裁を待つ事を得、□四凡そ法律及一般の行政に係る勅令は、内閣總理大臣及主任大臣之に副署すべし、勅令の各省專任の行政事務に屬する者は、主任の各省大臣之に副署すべし、□五左の各件は閣議を經べし、(内閣の部參照)□六主任大臣は、其所見に依り何等の件を問はず、内閣總理大臣に提出して閣議を求むることを得、□七事の軍機、軍令に係り、奏上するものは、天皇の旨に依り、之を内閣に下付せらるるの件を除く外、陸軍大臣、海軍大臣より内閣總理大臣に報告すべし、□八總理大臣故障ある時は、他の大臣臨時命を承け其事務を代理すべし、□九各省大臣故障あるときは、他の大臣臨時攝任し、又は命を承け其事務を管理すべし、□十各省大臣の外特旨に依り、國務大臣として内閣員に列せしめらるることあるべし。(二二年一二月勅一三五號)
- 英
- Government organization of the cabinet
- 独
- Behördeordnung des Kabinetts
- 仏
- Organisation du cabinet
内閣所屬職員官制
(ないかくしよぞくしよくいんくわんせい)内閤所屬の職員及び其事務分配を規定したる法規なり、其の職員は下の如し、書記官長、統計局長、恩給局長、(法制局長官をして兼ねしむ)書記官、内閣總理大臣秘書官、統計局審査官、恩給局審査官及其屬等なり。(三一年一〇月勅二五五號)
- 英
- Government organiza-tion of the officials belonging to the cabinet
- 独
- Beamtenverodnung zum Kabinett
- 仏
- Organisation des officiers appartenant au cabinet
内閣總理大臣
(ないかくそうりだいじん)内閣總理大臣は、國務大臣にして、各省大臣の如く主任の專務なけれども、亦單獨機關として行政上の職權を有する事あり、例へば内閣總理大臣が各省大臣の主班として、機務を奏宣し、勅旨を受けて行政各部を統一し、又必要の場合には、行政各部の命令處分を中止して、勅裁を待つことを得るが如き是なり、然れども内閣總理大臣に此職權あるが爲めに、各省大臣の上級官廳として、監督權を行ふものとする事を得ず、葢し此職權は、天皇直接の監督が、内閣總理大臣を經て行はるる形式に過ぎず、各省大臣は、國務大臣として内閣の一員となり、行政の最高機關として天皇に對し、直接の責任を有するものなれば也、尚内閣總理大臣が行政官廳として行ふ處の職權は極めて狹く、官制によりて内閣所屬の各部局を統督すること、公式令により其職務に關し、閣令を發すること、官吏の恩給及び遺族扶助料の支給に關し、裁決を爲すこと等其最も著しきものなり、要するに内閣總理大臣は、憲法上の大權補弼の大任を負ふ者にして、主務大臣と共に、副署の義務を負ふものとす。(内閣官制二三)
- 英
- Premier
- 独
- Minister-präsident
- 仏
- Premier ministre
内外人平等主義
(ないぐわいじんびやうどうしゆぎ)特種の權利利益を除く外、原則として外國人に對し、内國人と同等の權利利益を得しむる立法上の一主義なり、凡ての權利に渉りて、一般に内外人平等主義を採る國は未だ之あらず、殊に公權の如きは、國民の特權として、外國人に之が享有行使を許さざるを通例となす、私權に至りては、現今の文明諸國何れも平等主義を採り、我民法の如きも、外國人は、日本に於て當然日本人と同等の權利利益を有するものとなせり、されど我現行法上左の數個の權利は、外國人の享有を禁ずるもの也、□一土地所有權、□二船舶所有權、□三漁業權、□四鑛業權、□五辯護士、醫師、藥劑師等となるの權、□六國立銀行、日本銀行、正金銀行、觀業銀行、臺灣銀行、農工銀行、其他之に類する銀行の設立者となるの權等之なり、平等主義は、古來幾多の變遷を經て今日に至れるものにして、古代敵視主義の時代に於ては、四圍の外人を皆敵とし、之を視ること野獸の如く、外國人斬捨御免を以て法とせり、之より社會稍進化し、賤外主義に至りては、敵視主義の時代の如くならずと雖も、いたく外國人を卑賤し、彼等と交を結ぶを欲せざりし也、次に排外主義の時代は、外國人を以て必ずしも劣等動物視せずと雖も、國民的利己主義の思想益熾にして、外國人に特別の利益を付與することを拒絶し、外國人の取得せる財産を沒收し、以て君主又は國民の私欲を逞ふせるものなり、人類社會の文化益々開發し、通商貿易の途漸く進步するに從ひ、排外主義は廢れて、諸國の立法者、各々自國の公益を害せざる範圍に於て、外國人との交通を開き、他國が自國臣民に與ふる利益は、自國に於ても外國人に之を付與することとし、所謂相互主義を各國の主義とするに至れり、されど此主義も、尚内外の國人間に、其權利利益を與ふるに區別を設け、現今文明の思想に反するを以て、遂に各國内外人平等の主義を採るに至れるものとす、(民二條及三條)
- 英
- Principle of impartiali-ty over foreigner
- 独
- Princip der Um-parteilichkeit für die Fremden
- 仏
- Principe de l'impartialité pour les étran-gers
内國法人
(ないこくはふじん)内國法人とは、我國の法律に遵據して設立せられたる法人にして、其事務所又は營業地の内國にあると、外國にあるとを問はざるものとす、京釜鐵道會社の如きは、營業所は外國にありとは雖も、我國の法律に從ひて設立したる法人なれば、内國法人と云ふことを得るが如し。(外國法人の部參照)
- 英
- National juridical person
- 独
- nationale juristische Person
- 仏
- Personne morale nationale
内國旅費規則
(ないこくりよひきそく)官吏、公務に關し、日本内地を旅行する場合に支給する旅行費用、日當の支給額及方法を規定したる規則なり、官吏は俸給を受くると雖も、俸給は官吏の生計の費用に過ぎずして、公用の爲め出張する旅費に至る迄も、支辨すべき性質のものにあらず、故に旅行に付き費用を要する場合は、左に示す等級により一定の金額を給與せらるるものとす。
等綴
一等
二等
三等
四等
親任官
勅任官
奏任官
判任官
汽車賃一哩に付
銭
七
六
五
四
船賃一海里に付
銭
七
六
五
四
車馬賃一里に付
銭
三五
三〇
二〇
一五
宿泊料一夜に付
円
三〇
二〇
一五
一〇
日料一日に付
円
二五
一五
一〇
五
食卓料一度に付
円
一七
一五
一二
九
- 英
- Regulation of home travelling expense
- 独
- Regel von Bin-nenland-Reisegeld
- 仏
- Règles du voyage dans l'Etat
内省
(ないせい)内省とは、自ら考察的注意を自己の心的過程、或は心意狀態に向けて親しく自己心内の情況意義を觀察する作用を謂ふ、而して其作用は、心理學上等の材料又は法則を發見せる爲めの如き、組織的觀察態度を採るを常とす、ロックは反省を以て内省と同義に用ひしが、實際其間に判別を立つること難し、時には又學者によりて、内部感覺又は内部知覺を内省と同義に使用するものあり、内省法とは、科學研究の目的の爲めに、叙上の内省作用を組織的に使用するを稱す、此法は、素と希臘時代以後心理學研究の唯一の方法にして、近時實驗法著しく發達し來たりしと雖も、尚吾人の心意作用は、之を十分に實驗の對象なすこと能はず、實驗法の適用せらるる範圍、極めて狹少なるを以て、從つて此内省法は、依然として心理學研究の重要なる方法と稱せらる、又内省的とは、吾人の心意作用若くは心意狀態を觀察するに、内省法に據ることを指示する形容詞として、内省心理學と謂へば、其心理上の説明が、實驗法又は經驗法に依らず、專ら内省の手段に依りたることを指示するが如し。
- 英
- Introspection
- 独
- Introspection
- 仏
- Introspection
内大臣
(ないだいじん)天皇宮中の職員にして、定員一人、之を親任とし、御璽、國璽を尚藏し、尚天皇に奉侍して輔佐するものなり。(一八年六六號達内大臣、官中顧問官及内大臣秘書官々制參照)
内的
(ないてき)内部又は内方と謂ふと同義にして、專ら外部若くは外方を旨意する外的なる形容詞の相對語として用ひらる、從つて此語使用の場合極めて廣汎多樣なれど、二三の場合を列記すれば、□一總べて物體の表面に對し、之に圍まれたる方面を謂ふ、又境界以内を其以外に對して稱ふることあり、□二吾人の身體に對して、總べて吾人の精神方面を旨意す、又吾人の身體の表面に現はれたる感覺機關の感覺(五感)を外部感覺と稱するに對し、身體内部の諸機關に起る感覺を、内部感覺又は内的感覺と稱することあり。
- 英
- Internal
- 独
- inner
- 仏
- Intéri-eur
内務行政
(ないむぎやうせい)單に内政とも云ふ、抑も内務行政は、國民の身體上、精神上及び經濟上の利益を保護增進するを以て、其直接の目的とす、國家の政務は、其終局の結果より之を見れば、皆國民の利益を保護進捗せしむるものにあらざるはなし、されど軍事行政の如き、財務行政の如き、皆結局國民の利益を增進するの手段と爲るべきものなれども、其直接の目的は、或は國の軍備を整へ、戰鬪力を組織し、國家の資財を收支管理し、以て國權を維持し、國の獨立を全ふするにあり、國民の利益を保護增進するは、其直接の目的にあらずして、寧ろ其間接の結果たるに過ぎず、然るに内務行政は、國民の利益を保護增進するを以て、其直接の目的と爲す點に於て、他の行政事務と異る、而して内務行政の作用は、或は社會の安寧秩序及び國民の身體上、精神上又は經濟上の發達に妨碍を來すべき危害を防止するを目的とし、或は國民の身體上、精神上又は經濟上の發達を進捗すべき施設を爲すを目的とするものなり、前者は警察事務に屬し、後者は助長事務と稱ふ、助長事務に關する行政は、凡そ之を下の四種に分類する事を得、□一人事行政、一私人が法律上有する所の地位を定むる行政事務なり、□二衞生行政、臣民の身體上の利益を進捗する行政事務を云ふ、□三教化行政、臣民の精神上の利益を進捗する行政事務なり、□四經濟行政、臣民の經濟上の利益を進捗する行政事務なり、現行の官制上内務行政の機關たる中央行政官廳の主たるものは、内務大臣、農商務大臣、遞信大臣、文部大臣とす、内務大臣は保安警察、衞生行政、教化に關する行政中の宗教事務を司り、農商務大臣は經濟に關する行政中農業、牧畜、森林、漁業、鑛業、商業、工業等の事務を管轄す、遞信大臣は經濟に關する行政事務中、郵便、電信、鐵道、船舶等の事を掌り、文部大臣は教化に關する行政中教育の事を掌る、尚人事行政事務は、主として戸籍吏の管轄に屬するものとす。(警察、助長事務の部參照)
- 英
- Special administration
- 独
- besondere Verwaltung
- 仏
- Administra-tion spéciale
内務省
(ないむしやう)内務省は、内務大臣の司掌する處にして、大臣及び其補助者を總括したる名稱也、故に内務省と云ふ官廳あるにあらずして、官廳は職權ある内務大臣を指して云ふものとす、されと斯かる嚴格なる説明は、法學上之を用ふるを必要とするも、通常内務省は、官廳として大臣と同一意義に用ふ、されば内務省は、内務省なる建物を指すにあらざる事を注意せよ、蓋し建物の存否は敢て内務省の存否を伴はざれば也、内務省には、地方局、警保局、衞生局、宗教局、神社局等の數局あり。(三一年勅二五九號内務省官制參照)
- 英
- Department of Home Affairs
- 独
- Ministerium des Innern
- 仏
- Minis-tère des affaires étrangères
内務大臣
(ないむだいじん)内務行政を統轄する上級官廳なり、現行法に於て内務大臣は、各省大臣と同じく、國務大臣としては、天皇補弼の責に任じ、内務行政の上級官廳としては、天皇に直隷し、此等の行政事務に關し、國家に對して施政の責に任ずべきものとす。(内務省官制一條)
- 英
- Minister of the Home Affairs
- 独
- Minister des Innern
- 仏
- Ministre des affaires étrangères
内亂罪
(ないらんぎい)内亂罪に廣狹二義あり、狹義の内亂罪は、國土の橫領又は憲法の變更を目的とする暴動罪を謂ふ、所謂暴動とは、多衆共同したる不法の腕力又は脅迫を謂ひ、多數の人員共同して腕力を用ひ、又は脅迫を加ふる等其例極めて多しと雖も、之を稱して暴動と云はんには、不法のものたるを缺くべからず、共同不法の腕力脅迫極めて其例多し、其内亂と成る成らざるは、一に暴動の目的如何に存す、國土を橫領し又は憲法を變更する目的に出でたるは即ち内亂也、其共同に關しては、別に明文なきも、事情に照し内亂と云ふに相當したる數に達せざるべからず、抗敵の狀態は、敢て國際慣例に所謂内國戰爭の程度に達したると否とは、刑法の問ふ所にあらざる也、暴動を起す目的國土を橫領し又は憲法を變更するに存するときは即ち内亂となるべく、國土の橫領は、法文の所謂邦土の潜竊に相當し、法文の政府顚覆と云へるは、政體の變更乃至皇統の廢換に相當す、皆一の憲法變更也、朝憲を紊亂するとは、不法に憲法を變更するを謂ふに外ならずと雖も、其暴動を手段となすにあらざれば、内亂の罪となる事なし、舊刑法第一二一條に「政府を顚覆し又は邦士を潜竊し、其他朝憲を紊亂する事を目的と爲し、内亂を起したるもの云々」とは即ち狹義の内亂罪に相當すべきもの也、又廣義の内亂罪は、舊刑第二編第二章第一節に規定する罪を總稱するものにして、狹義の内亂罪及び内亂の目的に出づる軍備品刧掠罪、政府變亂の目的に出づる謀殺罪、内亂に乘じたる非内亂罪等を併せ稱す。(刑二編二章
内容
(ないよう)内容とは、一事物の含有する其の内部の容量實質を指し、之を包圍表象する外殼を指す形式てふ語と相對照せられて用ひらる、例へば貨物の外裝包紙の類は形式と稱すべく、其内に在る品物は之を内容と稱するが如き、思想に就て謂へば、思想を表はす言語文章、更に修辭の類は形式にして、之等の形式に依て表はさるる思想其ものの意義は内容なるが如し、故に内容と形式とは、一事物の兩面を表白する名辭にして、兩者相俟ちて初めて完全なる事物を成す、然るに形式を重んずる形式主義に對して、一重に内容を重んずる内容主義なるものあり、總べて事物の外形法則又は慣習傳習等を輕視し、專ら其内意義を重んずる者にして、多く文藝の上に存する傾向なり、彼の十八世紀代の文學を形式主義に偏したりとして起りし十九世紀代のローマンチスズムに表現せられたる思想傾向の如き是なり。
- 英
- Content
- 独
- Inhalt
- 仏
- Con-tentement
仲立
(なかたて)仲立とは、他人間の商行爲の媒介を爲すを業とする行爲也、媒介行爲とは、他人間の法律行爲の締結を來すべき働を云ふものとす、而して締結せらるべき法律行爲は、商行爲に限るべきものにして、凡ての法律行爲に渉るべきものに非ず、婚姻の媒介の如き、又は自己の所有物に加工して賣買を爲すの媒介行爲の如き、商行爲に非ざる行爲の媒介は、茲に所謂仲立にあらざる也、媒介に依り締結する商行爲は、他人間の行爲ならざるべからず、自己の行爲を自ら媒介を成すとは、殆ど意味を成さざること説明を俟たず、又仲立は、一定の商人の爲めにのみ之をなすときは、所謂代理商の行爲となりて、仲立行爲とならざる也、仲立は、一時商行爲の媒介をなしたるものにして、多少永續的の意味を有せざるとき、換言すれば營業となすの觀念を缺くときは、法律上の仲立行爲たる性質に背くものとす。(商行爲の部、仲立業の部參照)
- 英
- Brokerage
- 独
- Mäkelei
- 仏
- Courtage
仲立營業
(なかたてえいげふ)仲立營業とは、他人間の商行爲の媒介を爲すを業とする營業を云ふ、仲立業を營む者を仲立人と稱す、仲立人は、其媒介したる行爲に就き、當事者の爲めに費用其他の支拂及び給付せらるべき物を受取る事を得ざるを原則となすも、習慣に依り又は依賴者の別段の約束ある時は例外とす、又仲立人が其媒介する行爲に就き、見本を受取りたるときは、其行爲の完了する迄保存せざるべからず、次に媒介に依りて當事者間に商行爲の成立したるときは、仲立人は各當事者の氏名又は商號、行爲の年月日及び其要領を記載したる書面を作り、署名の後當事者に交付するものとす。(仲立の部、商三〇五條乃至三一二條、營業税法一條二三號參照)
- 英
- Brokerage business
- 独
- Mäklergeschäft
- 仏
- Affaires du courtage
捺印
(なついん)捺印とは、一定の文書に押印する事を云ふ、押印は我國古來の慣習にして、文書に顯はれたる意味に證據力を附するの作用として廣く行はるる所也、法律上捺印すべき場合は、實に枚擧に逞あらず、捺印の前提として記名或は署名を要する事多し、記名は、名を記す事にして、署名とは名を自署する意なり、外國殊に歐米に於ては捺印の制なく、自署を以て尤も確實なる證據力を有するものとせり、我國に於ても、手形の作成者は署名するを要すと規定せられたりしも、其不便に堪へず、遂に單行法を以て署名すべき場合に、記名捺印を以て之に代ふることを得るものとせられたり。(三三年二月法一七號及び署名、自署の部參照)
- 英
- Seal
- 独
- Siegeln
- 仏
- Sceau
納期日
(なふきじつ)國家又は自治體等に金錢其他の物を納付すべき期日を云ふ、國税徵收法に依れば、國税を徵收せんとするときは、收税官吏又は市町村は、納税人に對し、其納金額及び納付場所と共に、納期日を指定し、之を告知せざるべからず、納期日は、必しも一日たるを要せず、普通は數日に渉るものとす、又租税に關する納期日を指して納税期とも云ふ。
納税期限
(なぶぜいきげん)納税をなすべき期日の終期を云ふ、國税徵收法に依れば、國税の納期限を過ぐるも、其の税金を完納せざる者あるときは、更に期限を指して之を督促し、其指定の期限内に、督促手數料及税金を完納せざるときは、其財産を差押ふべきものとす、臺灣租税滯納處分規則第一條に「租税の納期限を過ぎ完納せざるものあるときは、其財産を差押へ、賣却して之を徵收す」とあるは其用例とす。
- 英
- Period of tax
- 独
- Steuers-frist
- 仏
- Terme de la taxe
納税義務
(なふぜいぎむ)臣民が國家に對し、租税を收むべき公法上の義務を納税義務と云ふものとす、凡そ我國に居住する臣民及び外國人は、特別の場合(免租、公使館等)を除く外、國家に對し納税の義務を負擔するもの也、納税義務は憲法上の國民の義務にして、國家の資財を保ち、其活動の費に充てらるるものとして、決して一國君主の私有財産をなすべきものにあらず、之君主は、領土を私有し國民に貸與するの報酬として、租税を徵收するの觀念とは大に異なる所以也、然らば租税は、何故に國民が支拂ひの義務を負擔するや、抑も國家は、其領土に於ける臣民を保護する必要上、幾多の機關を設けて生活の安固を計る、此等國家機關の設備は、勢ひ費用の必要を生ず、此の費用は、費用を要する源因となす吾人の生活に求めざるべからず、之各國政體の如何に關せず、國體の何たるを問はず、國民として納税義務を負擔せしむる所以なり、外國人は、本國の臣民にあらざるも、本國に於て保護せらるるを以て、均しく納税義務を負はしむるものとす。(憲法二一條及租税の部參照)
- 英
- Obligation of tax
- 独
- Steuer-pflicht
- 仏
- Obligation de la tax
納税義務者
(なふぜいぎむしや)租税を納付すべき法律上の義務を有する者を納税義務者と云ふ、間接税の場合は、實際納税の負擔者は、納付義務者にあらず、例へば酒造税の負擔者は、納付義務者としては酒造者なるも、事實上の負擔者は酒類の消費者なるが如し、されど茲に納税義務者とは、事實上の負擔者たると否とを問はず、納税義務者として指定せられたる酒造者の如きを指すものとす。
- 英
- Obligor of tax-paying
- 独
- Steuerschuldner
- 仏
- Obligé de la tax
納税告知書
(なふぜいこくちしよ)納税義務の履行を命ずる書面なり、租税徵收の手續は、國家が直接に徵收する租税に於ては、收税官吏が納税告知書を納税者に發するを要す、但し或場合には、口頭にても可なり、納税告知書には、税金額納付期日及び其場所を記載せざる可らず、納税の告知は、納税義務發生の原因にあらずして、納税義務は、法律の條件備はる時に於て、既に發生す、又納税の告知は法律によりて生じたる納税義務の履行を催告するものにあらず、納税の告知を受るるも、必ずしも即時納付を命ずるものにあらずして、却て納税期は其後にあればなり。(國税徵收法一條以下參照)
- 英
- Notice of tax-paying
- 独
- Steuersnachricht
- 仏
- Notice du paie-ment de la taxe
納税地
(なふぜいち)税金を收納する官公署所在の市區町村を納税地と云ふ、特定の場合に、特定の租税に付き、何れの地を以て其納税地とせるかは、各税法に依て異なる所也、例へば所得税法第四四條に「第三種の所得に係る所得税は、本人住所の地を以て納税地とし、住所なきときは、居所の地を以て納税地とす、但し納税者は申告して、住所又は居所以外の地に於て、所得税を納むる事を得、此法律施行地に、住所又は居所なき者は、納税地を定め、政府に申告すべし、申告なきときは、政府其納税地を指定す」と定めらるるが如き是なり。
- 英
- Land of tax
- 独
- Steuerland
- 仏
- Terre imposée
納税保證
(なふぜいほしよう)法律の規定に依り、納税義務者が其納税義務履行の擔保として、政府に提供すべき物上の保證を云ふ、例へば酒造税法に依り、酒類製造人が豫め其納税保證として、一酒造年度見込造石數一石に對し、金四圓の割合を以て算出せる金額相當の保證物を、政府に提供すべきが如し、納税保證は、納税人若し租税を納めざる場合に於て、通常之を公賣に付し、之に依りて税金を徵收するものなり。(酒造税法一三條一項)
- 英
- Certificate of tax-paying
- 独
- Bürgschaft der Steuerung
- 仏
- Certi-ficat du paiement de la taxe
納税保證人
納税保證人とは、政府に對し、納税義務者の爲に、其納税義務の履行を保證する人を云ふ、元來納税保證人は、納税義務者にして、若し納税を爲さざるに於ては、之に代りて自ら納税を爲すべき義務を負ふものにして、此義務の性質は、私法上の保證債務に非ず、從て之に關する私法の規定は、當然納税保證人に適用せらるべきものにあらざるなり、酒造税法施行規則第二七條に「税務管理局長は、納税保證人の資力、納税保證に堪へざるに至りたりと認むるときは、之を變換せしむる事を得」とあるは其用例なり。
- 英
- Guarantee of tax-paying
- 独
- Bürge der Steuerung
- 仏
- Garant du paiement de la taxe
納人
(なふにん)租税、手數料、其他を國家又は地方公共團體に對して、現に納入する者を納人と謂ふ、納人は、本來納入の義務ある者、例へば納税義務者に於て、之を納入するを普通とするも、敢て必ずしも本人たることを必要とせず、代理人に於て、本人の爲めに納入の事を代理するも、其效果は、本人に於て生ずべきは當然とす、會計規則第二五條に「收税官吏現金を以て、租税其他の收入を領收するときは、其領收證を納人に交附すべし」とあるが如きはこの一例とす。
- 英
- Payer
- 独
- Zahler
- 仏
- Payeur
納付
(なふふ)廣く納付といへば、金錢其他の物件受領の權限あるものに、其のものを納入付與するを謂ふ、租税納入の義務ある者が、特定の時特定の場所に於て、納税告知書に依り特定したる金額を、國家機關又は自治團體の正權限ある機關に納入付與するが如きこの例なり。(電報規則九二條、郵便規則八條、葉煙草專賣法三條)
- 英
- Paying in
- 独
- Einzahlen
- 仏
- Paiement
荷受人
(にうけにん)吾人が運送人、船舶所有者、傭船者等と物品運送契約を締結して、或物品を甲地より乙地へ運送する場合に、乙地に於て其物品を受取るものとして、運送狀に記載せられたるものを荷受人と謂ふ、此荷受人は、陸上積送の場合に於ては、運送品が到達地に達したる後は、運送契約に因りて生じたる荷送人の權利を取得するも、運送品を受取りたるときは、運送人に對し、運賃其他の費用を支拂ふ義務あり、海上運送の場合に於ては、運送品を陸揚するに必要なる準備の整ひたる旨を、船長より通知あるに依て、運送品を受取るの權利を生ずるも、運送品を受取りたる時は、運賃、附隨の費用、立替金及び運送品の價格に應じて、共同海損、救援又は救助の爲め負擔すべき金額を支拂ふの義務を負ふ、要するに荷受人とは、運送狀に依り其名に於て、物品の引渡を受くべきものを云ふなり。(商三編及五編三章)
- 英
- Consignee
- 独
- Empfänger
- 仏
- Consignataire
荷送人
(におくりにん)運送人、船舶所有者、傭船者等に對して、物品の輸送を委託するものを荷送人と謂ふ、而して陸上運送の場合に於ける荷送人は、義務として運送人の請求ありたるときは、運送狀を交附せざるべからず、次に權利として運送人に對し、貨物引換證の交附を求むる事を得べし、又荷送人は運送人に對して、運送の中止、運送品の返還其他の處分を請求し得べし、されど既に爲したる運送の割合に應ずる運賃、立替金及其處分に因り生じたる費用を辨濟せざるべからざるなり、此中止、返還の請求權は、運送品が到達地に著し、荷受人が其引渡を請求したる時は消滅すべきものとす、海上運送の場合には、荷送人は義務として、船舶所有者又は傭船者の請求に依り運送狀を交附し、又船長の指圖に從ひ船積をなし、其他運送に必要なる一切の書類を、船長に交附せざるべからず、權利としては、船長に對して船荷證券の交附を求むること、及び發航前に於ては、契約の解除をなし得べし、但し發航後の解除は、運送の割合に應じて運賃を支拂ふべきものなり、終りに海上運送の場合に限り、船舶所有者、傭船者、荷送人は、相互に各相手方の請求あるときは、運送契約書を交附せざるべからざるなり。(商法三編八章、五編三章參照)
- 英
- Consignor
- 独
- Warenabsender
- 仏
- onsignateur
荷爲替
(にがはせ)荷爲替と云ふ特別の爲替手形あるにあらずして、普通の爲替手形と其性質に於て異なる處なし、故に手形振出の要件、引受及裏書等は、總て一般爲替手形と同一也、唯手形振出人が運送品を擔保として、爲替手形を振出したる場合に、荷爲替或は荷爲替手形と云ふに過ぎず、斯くの如く運送貨物を以て、手形債務の擔保と爲す故に、手形の滿期日に至りて、手形所持人が支拂を受くること能はざるときは、運送品を處分して手形金額の支拂に代ふることを得る也、而して此運送品の處分が、手形上の權利行使にあらざるは明なり、今一例を擧げて荷爲替の何たるやを説明せんに、東京紡績會社が、上海の紡績問屋に一萬圓の紡績を販賣したるとき、其の物品の到著後金錢を受取るべきものなるに、會社財政の必要上代金の受取を急ぐ場合に於て、運送中の紡績を擔保に供して、上海に在る貿易問屋を支拂人とし、東京の安田銀行を受取人とせる爲替手形を振出し、以て安田銀行より代金壹萬圓を受取る場合の斯る手形を云ふなり、要するに普通の爲替手形の擔保に、運送貨物を付せるものを荷爲替と云ふに過ぎず。(橫濱正金銀行條例七條一號)
- 英
- Documentary bills
- 独
- urkund-liches Billet
- 仏
- Billet de document
二級選擧法
(にきふせんきよはふ)二級に分てる等級選擧の制度を云ふ、元來選擧の一方法として、等級選擧なるものあり、即ち選擧權利者を納税額の如何に依て等級を設け、其各級より同數の議員を選出せしむるの方法にして、其の理由とする所は、貧者が富者を壓するを防ぐと、納税額多きは、國に盡す所多きと見るべく、故に多くの權利を與ふ等に基く、之等級選擧の内、選擧人を二級に分ち、例へば選擧人中納税額多き者を合せて、選擧人全員の納むる總額の半に當るものを一級選擧人とし、爾餘の者を二級選擧人となすが如き選擧制度は、即ち二級選擧法なりとす、(町村制一三條參照)
- 英
- Two classes system
- 独
- Zweiklassensystem
- 仏
- Système de deux classes
荷却免狀
(にきやくめんじやう)日本帝國の商船が、朝鮮の開港場に於て、積荷を陸揚げせんとするに當り、船主又は荷主より、積荷の品名並に元價、斤量、個數を記載して、朝鮮官廳へ屆出で、同國官廳より得る貨物の陸揚免狀を荷却免狀と云ふなり。(九年日韓通商章程第二則)
二親等
(にしんとう)親等は親族の等級にして、其遠近親疎を定むる標準なり、而して親等は世數則ち代數を以て定め、一世即ち一代を一親等となす、今直系親と傍系親に別ちて説明すれば、直系に於ける親等は、其直系親間の世數を計算して之を定む、例へば當人より父母又は子に對しては一親等にして、祖父母又は孫に對しては二親等なり、又傍系に於ける親等は、其親等を知らんと欲する親族の一人より、當人と共同の始祖に遡り、更に其始祖より他の親族に下りたる、其間の世數を計算して之を定む、例へば當人より兄弟姉妹と共同始祖たる父母に遡り、更に父母より兄弟姉妹に至るものなれば、兄弟姉妹は二親等なり、茲に注意すべきは、傍系には一親等なきことなり、蓋し傍系の場合には、常に其共同始祖に遡るを要すれば也、次に姻族間の親等は、其配偶者との間に於ける親等に依りて定む、例へば妻の父母は其夫に對して一親等にして、妻の祖父母は二親等なり、又妻の兄弟姉妹は夫に對して、二親等となるが如し。
- 英
- Family of second degree
- 独
- Zweitegradsfamilie
- 仏
- Famille du second degrès
日伊通商航海條約
(にちいつうしやうかうかいでうやく)帝國と伊太利國との商業上の交通に關する條納なり、明治二七年十二月一日伊太利國羅馬府に於て、伊國駐劄帝國全權公使從四位勳四等高平小五郞と、伊國外務大臣セント、モーリス、エンド、ラーサル外二名の委員との間に於て締結せられたるものとす、其條約の定むる處に依れば、締盟國の臣民は其一方の版圖内に於て□一身體財産の保護を受け、訴權を享有し、住居、旅行、動産所有權幷に信教の自由を受く、□二兵役及び軍事上の賦役、徵發を命ぜらるることなし、□三自由に商業を營み及び開港場へ船舶貨物を以て自由に到ることを得、□四輸出入税賦課の方法及び其價格等は、兩國相互に同一に賦課すること、幷に最惠國約款に依り、本條約以外の國家の臣民に課するものと同一なること、□五船舶の碇泊、船積、船卸に關しては、相互同一の保護を與ふること、□六軍艦、船舶が暴風其他の危難に遭ひ、避難の爲め寄港するも、特別の入港税を拂ふ事なく、内國船舶の納付すると同一の税金を拂へば足る、又淺瀨に乘上げ或は難破したる時は、領事へ通知して、其國の法律勅令及び規則に從ひて、救助すること、又投貨及賣得金は船主又は荷主に還付すること□七兩國は、相互に總領事、領事、副領事を其一方の版圖内に駐在せしむる事を得、□八專賣特許、商標及び意匠に關し、内國人と同一保護を受くること、□九我國に在る外國人居留地の撤廢、及び從來居留地公共の爲めに、無借料にて貸與したる土地は、永代借地となすこと、□十本條約は從來兩國間に締結したる條約に代はること等也、以上の條約は、二八年二月批准、同八月羅馬府に於て交換を爲し、三二年七月十七日より實施せられたるものとす、實に此日に於て、我國司法權の侵害とも見るべき領事裁判權は消滅し、之れと同時に世界對等國の班に列したるなり、所謂條約改正内地雜居なるものこれなり、終りに、此條約は十二箇年間效力を有するものにして、十一箇年を經過したる時は、條約國の一方は何時にても、本條約の終了を請求するの權利を有し、其通知後十二箇月を經ば、本條約は當然消滅すべきものなり。
- 英
- Treaty of commerce and navigation between Japan and Italy
- 独
- Handels-und Seefahrtsvertrag zwischen Japan und Italien
- 仏
- Traité du com-merce et de la navigation entre le Japon et Pltalie
日英協約
(にちえいけふやく)三九年八月十二日大日本帝國及び大不列顚國は、東亞及印度の地域に於ける全上の平和を確立する爲め、千九百二年の日英同盟が即ち極東に限りたるを、本條約に依り擴張したるものにして、調印の日より十箇年の效力を有するものなり。
日英通商航海條約
(にちえいつうしやうかうかいでうやく)我國と英國との間に於ける商業上の交通に關する條約也、二七年七月二十六日大不列顚國倫敦に於て、英國駐劄帝國特命全權公使子爵青木周藏と、英國外務大臣ガーター勳章の「ナイト」ゼー、ライト、オノレーブルジョン、キンバーレー伯爵との間に於て締結せられたるものとす、本條約の内容及效力等は、日伊通商航海條約に同じ、唯本條約は、其施行區域に制限あり、即ち印度、加奈太領地、ニューフワランドランド、喜望蜂殖民地、ナタル、ニューサウスウェールス、ヴ井クトリヤ、クヰンスランド、タスマニヤ、南濠太利、西濠太利、ニュージーランド、には適用なし、然れども本條約批准交換後二箇年内に、右地域へ適用すべきことを英國より我國へ通知し來るときは、右地區に效力を有すとせり、之れに依りて二八年十一月二六日ニューフワウンドランドに、無條件にて、本條約實施方英國より通知し來る、又三〇年三月十六日ク井ンスランドに、條件附にて本條約實施方を、東京に於て兩國全權委員相合して協約す、終りに本條約は、二七年八月二四日批准、同二五日東京に於て交換、三二年七月一七日より實施せられたり。
- 英
- Anglo-Japanese com-mercial and navigation treaty
- 独
- Handels- und Seefahrtsvertrag zwischen Japan und England
- 仏
- Traité du com-merce et de la navigation entre le Japon et l'Angleterre
日英難破船費用償還約定
(にちえいなんぱせんひやうしやうくわんやくぢやう)難破船救助の費用償還方法に關して定めたる、日英兩國間の條約なり、十一年十二月東京に於て交換せらる、本約定に依れば、兩國の船舶が、互に他の一方の海岸に於て難破せる場合に、救助の爲め衣類、食料、旅費を給し、或は溺流人の救援又は病者、負傷者の治療、其他死亡人の埋葬等に就き、支出せる諸費用は、兩國政府に於て償還すべし、但し其内貨物の回復或は其保護の爲めに要したる費用は、難を免れたる貨物を以て償還すべきものにして、兩國政府の償還すべき限にあらずとし、又兩國政府は右難破の場所に出張したる官吏の旅費、其他の費用は支拂はざるものとせり。
- 英
- Anglo-Japanese convention of repayment of the relief of ship-wreck
- 独
- Anglo-japanischer Ver-trag von Rückzahlung der Schiffbruchs-bergung
- 仏
- Convention entre le Japon et l'Angleterre du remboursement du secours de la naufrage
日墺通商航海條約
(にちおうつうしやうかうかいでうやく)我國と墺太利匈牙利國とが、商業交通に關して約定せる條約にして、三〇年一二月五日墺太利國維也納に於て、維也納駐劄帝國特命全權公使正四位勳二等高平小五郞と、同國外務大臣外二名の委員間に於て締結せるものにして、三一年三月二十二日批准、同年九月九日公布、三二年七月十七日より實施せられたるもの也、本條約の内容、效力等は、日伊通商航海條約に同じ。
- 英
- Treaty of commerce and navigation between Japan and Austria
- 独
- 墺 Australien
- 仏
- Traité du com-merce et de la navigation entre le Japon et l'Autoriche
日獨通商航海條約
(にちどくつうしやうかうかいでうやく)我國と獨逸帝國との商業交通に關する條約にして、二九年四月四日獨逸國伯林に於て、獨逸國駐劄帝國特命全權公使子爵青木周藏と、獨逸國々務大臣外務大臣男爵アドルフ、マルシャル、フォン、ビーベルスタインとの間に於て締結し、二九年八月二六日批准、同十一月十八日伯林に於て交換、同十九日公布、三二年七月十七日より實施せらる、本條約の内容、效力等は、日伊通商航海條約と略相同じ。
- 英
- Treaty of commerce and navigation between Japan and Germany
- 独
- 獨 Deutschland
- 仏
- Traité du com-merce et de la navigation entre le Japon et l'Allemagne
日獨領事職務條約
(にちどくりやうじしよくむでうやく)兩國の版圖内に駐在する、兩國領事官の職務執行に關し、日獨通商航海條約と同時に、批准、交換、公布せられたる、帝國と獨逸國との條約なり、本條約の内容を述ぶれば、□一兩國は互に、其版圖内、各港、各都市、及各地に領事館を置くことを得、但其駐在を便宜ならずとする場所には、領事館を置く事を得ざる也、此制限は、本條約以外の外國に對しても適用する場合に限る、而して領事館は、最惠國の同等官吏に與へたる一切の權利免除、及び特權を享有すべし、此權利の發生時期は、領事官が本國に於て定むる形式に依り委任狀を差出し、駐在國政府の認可狀を得たるときより初まる、領事館は、其管轄區域、其變更等を駐在國政府に通知せざるべからず、若し駐在國に於て、認可狀を取消すの至當なる事を認めたるときは、之を取消すの權あり、□二領事館が任命國の臣民なるときは、民事々件に付き、引致留置せらるることなく、刑事々件に付ても、重罪事件にあらざる限は拘留せらるることなし、納税義務に付ては、關税、内國消費税、地方消費税、若くは駐在國に於て取得したるもの、又は占有する土地の賦課金及び商業に從事する領事官が、營業に關して徵收せらるるものを除く外、總べて納税の義務を免る、□三事務所の門戸に事務所たることを表示する文字を記し、又は本國の徽章を揭げ、其他本國の國旗を揭揚するの權あり、又領事の職務上の記錄は不可侵權あるを以て、駐在國の官廳は、如何なる口實を以てするも、之を檢閲差押等を爲すを得ず、又領事館にして商業に從事せざる限は、居宅の不可侵權をも有す、□四領事官は、條約又は國際法に違反する事件あるときは、駐在國の官廳に問合せを爲し、自國臣民の權利利益を保護する爲め、申立を爲すを得、若し本國代表者不在の場合には、直接駐在國政府に申出づる事を得、□五領事は本國法に於て許す限りは、イ事務所、其所在地、當事者の住所、本國船舶内に於て本國の船長、船員、乘客其他本國臣民の陳述を聽く事を得、ロ本國臣民の單獨法律行爲、遺言竝に本國臣民相互間及び外國人との間に結びたる契約、又は領事官の任命國の版圖内に在る地所に關し、及び右版圖内に於て處辨すべき法律行爲に關し、駐在國臣民又は駐在國在留外國人の取結びたる契約を登錄し、之を證明すること、ハ本國官廳より發する總べての文書を翻譯し、及び之を證明すること、ニ本國法に依りて本國臣民の婚姻、出生、死亡を登錄證明し、或は後見人保佐人を任命し、之を監督す、又死亡者の遺産を管理し處分す、□六領事官は、本國船舶内に於て海員の訊問をなし、或は駐在國官吏が本國臣民を訊問するに立會ひ、其他海員の間に起りたる雇入料及び相互の義務履行に關する紛議を仲裁す、又本國軍艦、商船の乘組員にして、脱艦、脱船せるものあるときは、駐在國官廳に對して其逮捕を求むることを得べし、□七航海中本國船舶の受けたる損害は、任意に寄港したると、避難の爲め寄港したるとを問はず、總べて其港の領事官に於て決定するを原則とす、これを本條約の大要となす。
- 英
- Convention about con-suls' service between Japan and Germany
- 独
- 日白間參照
- 仏
- Convention de la service du consul entre le Japon et l'Alle-magne
日伯修好通商航海條約
(にちはくしうかうつうしやうかうかいでうやく)我國と伯剌西爾合衆國との親交を結び、併せて商業上の交通を圓滿ならしむる爲めの條約にして、二八年十一月五日、佛國巴里に於て、佛蘭西國駐劄帝國特命全權公使曾禰荒助と、佛蘭西國駐劄の伯剌西爾合衆國特命全權公使ドクトル、ガブリヱール、ド、トレドヲ、ビザア、アメルダアとの間に締結せられ、二九年四月七日批准、三十年二月十二日巴里に於て交換せらる、而して本條約は、批准交換後直に實施せられたるもの也、其内容は殆ど日伊通商航海條約に同じ。
- 英
- Friendly and com-mercial treaty between Japan and Brazil
- 独
- Freundschafts-,Handels- und Seefahrts-vertrag zwischen Japan und Brazil
- 仏
- Traité de l'amitié et du commerce entre le Japon et le Brésil
日白通商航海條約
(にちはくつうしやうかうかいでうやく)我國と白耳義國との商業交通に關する條約なり、二九年六月二二日白耳義國ブルクセルに於て、同國駐劄帝國特命全權公使子爵青木周藏と、同國外務大臣衆議院議員「ナイト」ヲフ、ゼ、ヲルダー、ヲフ、レヲポルドとの間に締結せられたるものにして、二九年十月二六日批准、同年二月一八日ブルクセルに於て交換、三二年七月十七日より實施せらる、本條約の内容、效力等は日伊通商航海條約に同じ。
- 英
- Commerce and naviga-tion treaty between Japan and Belgium
- 仏
- Traité du commerce de la navigation entre le Japon et la Belgique
日白領事職務條約
(にちはくりやうじしよくむでうやく)我國と白耳義國との間に於て、領事官の接受をなし、及び其職務執行上享有すべき權利義務を定めたる條約なり、二九年一二月二二日白耳義の首府ブルクセルに於て、兩國の代表者に依りて締結せられたるものにて、日白通商航海條約と同時に、實施せられたるものなり、其内容、效力等は、日獨領事職務條約に同じ。
- 英
- Convention of the service of consuls between Japan and Belgium
- 独
- Vertrag von Konsulsdienst zwischen Japan und Belgien
- 仏
- Con-vention de la service du consul entre le Japon et la Belgique
日米通商航海條約
(にちべいつうしやうかうかいでうやく)我國と亞米利加合衆國との間に於ける商業上の交通に關する條約にして、二七年十一月二二日亞米利加合衆國華盛頓に於て、米國駐劄帝國全權公使栗野愼一郞と、同國外務大臣ウオルター、キユー、グレシヤムとの間に締結せらる、二八年二月二十七日批准、同三月二一日交換、三二年七月十七日より實施せらる、而して條約の内容、效力は日伊通商航海條約に同じ。
日米難破船費用償還約定
(にちべいなんぱせんひようしやうくわんやくじやう)難破船救助の費用償還方法に關し、一三年五月一七日東京に於て、日米兩國全權委員の協定したるものにして、一三年六月五日批准、一四年六月十六日盛華頓に於て交換、同九月二八日公布實施せられたるものなり、本條約の内容は日英難破船費用償還約定に同じ。
日米犯罪人引渡條約
(にちべいはんぎいにんひきわたしでうやく)日米兩國に於て、相互に司法事務を益々周到ならしめ、犯罪を防止せん爲めに、有罪の宣告若くは告訴告發を受け、未だ處分を經ずして逃走し、他の一方の版圖内に在る者は、互に其犯人を引渡すべきことを協定したる條約也、一九年四月二十九日東京に於て、兩國全權委員協定し、同年九月廿五日批准、同月二七日交換せられたるものなり、而して本條約に基き引渡すべき犯人は、□一殺人罪、□二貨幣其他有價證券及び文書の僞造變造行使罪、□三監守盜、強盜、五十弗以上の竊盜、□四重刑に當る罪を犯す目的にて家屋を破壞し、若くは侵入したる罪、□五僞證罪及び其教唆罪、□六強姦罪、□七放火、海賊、交通機關、家屋、公用建造物を破壞し、之れに依り人命に危險を生ずべきもの、□八銀行營業者、受託人銀行若くは財産管理會社の頭取役員の詐僞にして、現行法律に依り罪となるべきもの等とす、然れども引渡請求に係る者、政治上の犯罪に就て審判處罰せんとするの目的なる時は、其引渡を拒むことを得べし、假令其犯人を引渡すとも、其引渡前の政治犯に就ては、審問處罰することを得ず、又請求に係る人が、既に引渡を請求せられたる國に於て審判中なるときは、之れを引渡すと審判を續くるとは此國の自由とす、之等引渡の請求は、外交官又は高等領事官を經て、其國の當該官廳になすべきものなり、而して被告人の逮捕、監禁、訊問及び押送費用等は、引渡を請求したる政府に於て之れを支辨すべきを原則とす。
- 英
- Convention of ex-tradition between Japan and America
- 独
- Auslieferungsvertrag zwischen Japan und Amerika
- 仏
- Convention de l'extradion entre le Japon et l'Amérique
日墨修好通商條約
(にちぼくしうかうつうしやうでうやく)我國と墨西哥國との間に於て、永久の親睦を維持し、併せて商業上の交通を圓滿ならしむる目的にて、二一年十月三日、米國華盛頓に於て、亞米利加合衆國駐劄の兩國特命全權公使陸奥宗光及マチアス、ロメロとに依りて締結せられたる條約也、二二年一月二十九日批准、六月六日交換直に實施せられたるものとす、而して本條約は、兩締盟國の一方より廢棄の意思を通知したる日より六箇月間效力を有し、其期限を經過したるときは、直に效力を失ふべし。
- 英
- Friendly and com-mercial treaty between Japan and Mexico
- 仏
- Traité de l'amitié et du commerce entre le Japon et la Mexique
日葡通商航海條約
(にちほつうしやうかうかいでうやく)我國と葡萄牙國との商業交通に關する條約にして、三年一月二十六日葡萄牙國リスポンヌに於て、葡萄牙國駐劄帝國特命全權公使從四位勳三等曾禰荒助と、同國外務大臣クリスー章大授章、英國サン、ミシエル、エ、サン、ジヨルジユ章大授章、サクス、コーブール、ゴタ國エルネスト、ビー章大授章、ル、コンセイエー、ルイズ、マリア、ヒント、ド、ソヴエラルとの間に締結せられたるものなり、本條約は、三十年五月二十二日批准、同年八月三十日交換、三二年七月十七日より實施せられたるものにして、其内容、效力等は日伊商航海條約に同じ。
日蘭通商航海條約
(にちらんつうしやうかうかいでうやく)我國と和蘭との商業交通に關する條約にして、二九年九月八日和蘭國へーグに於て、和蘭國駐劄帝國辨理公使正四位勳五等赤羽四郞と、同國外務大臣ネザーランド、ライヲン勳章のナイト、ヨンクへールゼ、ルヱル外四名の全權委員との間に締結せらる、而しし三〇年六月十七日批准、同年八月十日東京に於て交換、三二年七月十七日より實施せらる、本條約の内容、效力等は、日伊通商航海條約に同じ。
日露間の媾和條約
(にちろかんのかうわでうやく)我國と露國間に於ける、三十七八年戰役を終結して平和を恢復する爲めの條約なり、三八年九月五日北米合衆國ニユー、ハムプシヤ州ポーツマスに於て、日本帝國全權委員外務大臣小村壽太郞、米國駐劄特命全權公使高平小五郞と、露國全權委員ウ井ツテ及ローゼンとに依り議定せられたるものにして、三八年十月十四日批准を得、同十六日公布せられたるものなり、本條約に依りて、露國は我國の韓國に於ける宗主權を認め、遼東半島の租借權を讓り、サガレン島の半部を割讓し、露國の經營にかかる長春(寬城子)旅順口間の鐵道の財産及び之に附隨する總ての特權を我國に移轉し、滿洲より撤兵することを協約したり。
- 英
- Peace treaty between Japan and Russia
- 独
- Friedensvertrag zwischen Japan und Ruszland
- 仏
- Traité de la paix entre le Japon et la Russie
日露通商航海條約
(にちろつうしやうかうかいでうやく)我國と露西亞國との商業交通に關する條約にして、二八年六月八日露西亞國聖彼得斯堡に於て、露國駐劄帝國特命全權公使從三位西德二郞と、露國全權委員との間に締結せられ、二八年九月九日批准、同月十日東京に於て交換、三二年七月十七日より實施せらる、而して本條約の内容、效力等は日伊通商航海條約に同じ。
日韓間に於ける條約
(につかんかんにおけるでうやく)日韓兩國を結合する利害共通の主義を鞏固ならしむることを欲し▲韓國富強の實を認むる迄、韓國は我國に外交上の一切の權限を移し、且つ韓國は我國の仲介に依らずして、國際的性質を有する何等の條約をも締結する事を得ず、又日本國政府は韓國京城に統監を駐在せしめて、專ら外交に關する事項を管理せしむ韓國の各開港場には理事を置き、從來日本領事に屬したる一切の職權を執行し、且本條約を完全に實行する爲め、一切の事務を行ふ事を約す、本條約は、三八年十一月十七日京城に於て、韓國駐劄帝國特命全權公使林權助と、韓國外部大臣朴齊純とに依り締結せられ、三八年十一月二十日批准、同二三日公布せられたるものなり。
- 英
- Treaty between Japan and Korea
- 独
- Vertrag zwischen Japan und Korea
- 仏
- Traité entre le Japon et le Corée
日清媾和條約
(につしんかうわでうやく)我國と清國間に於ける二十七八年役を終結し、平和を回復する爲めの條約にして、二八年四月十七日下の關に於て、帝國全權辨理大臣内閣總理大臣伯爵伊藤博文、外務大臣子爵陸奥宗光と、清國欽差頭等全權大臣太子太傅文華殿大學士北洋大臣直隷總督一等肅毅伯李鴻章、欽差全權大臣二品頂戴前出使大臣李經方との間に於て締結し、二八年四月二〇日批准、五月八日芝罘に於て交換、同十月公布せられたるもの也、本條約に依りて、清國は朝鮮國の獨立を確認し、遼東半島臺灣全島及附屬の諸島嶼、澎湖列島を我國に割讓し、又軍費賠償金として庫銀億平貳兩を支拂ひ、相互に捕虜を還附し、又現に外國に向て開き居る各市港の外に、湖北省荊州府沙市、四川省重慶府、江蘇省蘇州府、浙江省抗州府を日本臣民の商業、住居、工業及製造業の爲めに開放すべく、又日本船舶の爲めに航路を擴張すべきものとせり、然るに本條約批准交換後、露國、獨逸國、佛國が合同して、遼東半島割讓は東洋の平和を害するものなれば、清國に還附すべしと干渉したるを以て、我國之を容れて、遼東半島は清國に還附したり、所謂三國干渉之なり。
- 英
- Peace treaty between China and Japan
- 独
- Friedensvertragz Japan und China
- 仏
- Traité de la paix entre la Chine et le Japon
日清間に於ける滿洲に關する條約
(につしんかんにおけるまんしうにくわんするでうやく)三八年九月五日締結の日露媾和條約より生ずる共同關係の事項を決定する爲、三八年十二月二十二日清國北京に於て、帝國特派全權大使外務大臣男爵小村壽太郞、北京駐劄帝國特命全權公使内田康哉と、清國欽差全權大臣軍機大臣總理外務部事務慶親王殿下外二氏との間に於て議定し、三九年一月二九日批准、一月三一日公布せうる、本條約に依りて、清國は露國が我國に讓渡したる租借地及鐵道の財産、之に附隨する總ての特權を承認し、且つ之に關する日露媾和條約は努めて遵行すべきことを約せり。
日清通商航海條約
(につしんつうしやうかうかいでうやく)我國と清國との間に於ける商業上の交通に關する條約也、二九年七月二十一日清國北京に於て、北京駐箚特命全權公使男爵林董と、欽差全權大臣總理各國事務大臣尚書衡戸部左侍郞張䕃桓とが締結せるものにて、二九年九月二十九日批准、十月二十日東京に於て交換せらる、而して本條約の内容は、殆ど日津通商航海條約に同じきも、其施行期限に於て異る所あり、即ち締盟國の一方は、本條約批准、交換の日より十箇年の終に於て、税目及本條約の通商に關する條款の改正を請求する事を得、然れども若し最初十箇年の終より起算し六箇月以内に、兩締盟國の何れよりも右請求を爲さず、改正を行はざるときは、本條約竝に税目は前十箇年の終より起算し、更に十箇年間此儘效力を有すべし、而して其後各十箇年の終に於けるも亦同樣たるべし。
日清難破船費用償還約定
(につしんなんぱせんひようしやうくわんやくじやう)難破船救助の費用償還方法に關して定めたる日清兩國間の條約なり、三一年九月四日北京に於て締結し、同十月公布せらる、本條約の内容は、日英難破船費用償還約定に同じ。
日瑞修好居住通商條約
(につすいしうかうきよぢゆうつうしやうでうやく)我國と瑞西國との間に於ける商業上の交通に關する條約にして、二九年十一月十日瑞西國ベルンに於て、同國駐劄特命全權公使高平小五郞と、同國農工商務省長官聯邦政府副統領アドルフ、ドウシェーとに依り締結せられ、三十年四月十六日批准、七月九日ベルンに於て交換、三二年七月十七日實施せらる、本條約の内容效力等は、日伊通商航海條約に同じ。
- 英
- Treaty of friend-ship, settlement and commerce between Japan and Sweden
- 独
- Freundschafts-, Nieder-lassungs- und Handelsvertrag zwischen Japan und Schweden
- 仏
- Traité de l'amitié, de la colonie et du commerce entre le Japon et la Swisse
日瑞諾通商航海條約
(につすいだくつうしやうかうかいでうやく)我國と瑞典諾威國との間に於ける商業上の交通に關する條約にして、二九年五月二日瑞典國ストツクホルムに於て、同國駐劄帝國特命全權公使西德二郞と、同國外務大臣伯爵ルウイ、ギーヨーム、オーギユスト、ドウグラーとに依り締結せられ、三〇年四月十六日批准、同年五月一日東京及聖彼得堡に於て交換、三二年七月より實施せらる、本條約は、實施後七箇年效力を有するものにして、六箇年經過したるときは、何時たりとも本條約の終了を通知するの權を有す、此通知ありたる後十二箇月を經たるときは、當然消滅すべきものとす、本條約の内容は日伊通商航海條約に同じ。
日西修好交通條約
(につせいしうかうかうつうでうやく)我國と西班牙國との間に於ける商業上の交通に關する條約なり、三〇年一月二日西班牙國マドリツドに於て、伊太利國駐箚帝國特命全權公使栗野愼一郞と、西班牙國全權委員とに依りて締結せられたるものにして、三十年六月十七日批准、同年九月九日東京に於て交換、三二年七月十七日より實施せらる、本條約の内容、效力は、日伊通商航海條約に同じ。
日暹修好通商航海條約
(につせんしうかうつうしやうかうかいでうやく)我國と暹羅國との間に於ける商業上の交通に關する條約なり、三一年二月二五日暹羅國盤谷に於て、同國駐劄辨理公使稻垣滿次郞と、同國外務大臣勳一等チヤクラクリ勳章のナイト、クロム、ルアン、デブァウオレグセ、ヴアロプラカー親王殿下との間に締結せられたるものにして、三一年四月三十日批准、同五月三十日盤谷にて交換、直に實施せられたるものとす、本條約は、十箇年間效力を有し、其後兩締盟國の一方が、之を廢棄する旨を通知したる日より一箇年を經る迄有效のものなり、本條約の内容は日伊通商航海條約に同じ。
日當
(につたう)日當とは、訴訟事件に關し、證人鑑定又は通事として裁判所に出頭し、又は受命判事、受託判事の面前に出頭したる場合に於て、其者が日時消費を爲したる賠償として受くべき金錢を云ふ、民事事件の證人は五十錢(但滯在費を受くる場合は日當を給せず)鑑定人、通事の日當は一度の出頭に付き、五十錢乃至五圓の範圍に於て裁判所之を定む、刑事々件の證人は二十錢乃至五十錢の範圍内に於て、定鑑人、通事の日當は三十錢乃至五圓の範圍内に於て、裁判所又は豫審判事の定むる處に依て請求し得べし、但し民事々件の場合にも、證人のみは、止宿料を受くる時は、日當を請求し得ざるものとす、刑事々件の當事者は、總じて日當を請求する權利なきも、民事々件の當事者は、敗訴したる相手方に對して、日當の辨濟を請求し得る也、其額は民事の證人と同じく、出頭一度に付き五十錢とす、但滯在費を受くるときは二十五錢に減ぜらる、之等の日當請求權は、證言鑑定若くは通譯の終りたる後、直に請求し得べきものなり、終りに附言すべきは、行政法上官吏は、旅費の一部として日當を給せらるることあり、官吏の資格旅行の區域に依りて其額を異にす、此點は旅費の部に明なり。(民訴七二、三二一條、三二二條、民訴費用法九條乃至一一條、刑訴一三四、一四一、一九〇、一〇一條、刑附四九、四九條の乙丙丁參照)
- 英
- Daily allowance
- 独
- Diäten
- 仏
- Journée
日丁通商航海條約
(につていつうしやうかうかいでうやく)我國と丁抹國との間に於ける商業上の交通に關する條約なり、二八年十月十九日丁抹國コペンハーゲンに於て、丁抹國駐劄帝國辨理公使赤羽四郞と、同國全權委員とに依りて締結せられ、二九年二月二二日批准、同五月六日交換、三二年七月十七日より實施せらる、本條約の内容、效力等は日伊通商航海條約に同じ。
日秘通商航海條約
(につぴつうしやうかうかいでうやく)我國と秘露國との間に於ける商業上の交通に關する條約なり、二八年三月二十日亞米利加合衆國華盛頓に於て、米國駐劄帝國特命全權公使栗野愼一郞と、秘露國米國代理公使ホセー、ヱメ、メリゴイエンとに依りて締結せられ、二九年十月三十日批准、十二月二四日華盛頓に於て交換、三二年七月一六日より實施せられたるものにして、其日より七箇年間效力を有し、六箇年を經たる後は、兩國は、何時たりとも本條約の終了を、他の一方へ通知するの權利あり、其通知後十二筒月を經過せば、本條約は當然效力を失ふものとす、本條約の内容は、日伊通商航海條約に同じ。
日佛通商航海條約
(につふつつうしやうかうかいでうやく)我國と佛蘭西國との間に於ける商業上の交通に關する條約なり、二九年八月四日佛國巴里に於て、同國駐劄帝國特命全權公使曾禰荒助と、同國外務大臣ガブリエル、アノトーとに依りて締結せられ、三一年二月一日批准、三月十六日東京に於て交換、三二年八月四日より實施せらる、本條約の内容、效力等は、日伊通商航海條約に同じ、唯茲に注目すべきは、關税は、他諸國との條約と異り、最惠國の約款に依らざる事とせり、然れども此點は、佛蘭西政府より何時にても消滅を請求し得べきものとなし、其通知後當然此制限は消滅すべし。(本條約七條參照)
入港屆
(にふかうとどけ)外國貿易船舶が、開港場に入港したる時は、船長は入港の時より二十四時以内に、税關に其旨屆出でざるべからず、其屆出を指して入港屆と云ふ也。(關税法十條)
- 英
- Inwards notice
- 独
- Einfahrens-nachricht
- 仏
- Notice des viscères
入監者
(にふかんしや)刑事被告人なると囚人なるとを問はず、監獄に拘禁せられたるものを入監と云ふ、されど監獄則は新に入監したるもののみを指して入監者と云へり。(監獄則施行細則二條)
- 英
- Prisoner
- 独
- Gefangene
- 仏
- Prisonnier
入會權
(にふくわいけん)入會權とは、一定の人が一定の山林原野に於て、樹木の伐採又は落葉、枯木を採收し、或は下草を刈取り若くは牧畜を爲すを云ふ、此權利は、古來より我國に於てのみ存在するものにして、外國に於てはかかる舊慣なし、彼の一村の住民が一定の山林原野に於て、自由に枯枝等を採收するが如きは何人も知る處なるべし、而して其山林原野が、數人の共有にかかるときは、共有權の規定に從ひ、若し他人の所有にかかるときは、地役權の規定に依る、然れども此入會權は、地方に依りて慣習を異にするが故に、民法に於て、一定の規定を適用し得ざるを以て、共有及地役權の規定に反する慣習あるときは之に從ふものとせり。(民二六三、二九四條)
入獄
(にふごく)確定判決に依りて、自由刑の宣告を受けたる犯罪人にして、刑罰執行の爲め監獄に拘禁することを入獄と云ふ。(刑法附則三八條)
- 英
- Putting in prison
- 独
- Einker-kerung
- 仏
- Emprisonnement
入札
(にふさつ)一般に入札と云へば、工事の請負又は物件の賣買、貸借を契約せんとする場合に、契約の相手方たらんとする者が、請負の場合に於ては其得んとする報酬、賣買の場合に於ては、代金、貸借の場合に於ては、貸借料の額を定め、其價格に於て請負、賣買又は貸借の契約を締結せんとするの申込を云ふ、此入札は、主として民事訴訟法と會計法とに存するものなるに依り、之を別ちて説明せん、(甲)民事訴訟法に於ては、不動産の公賣は競賣に依るを原則とするも、入札を以て公賣する事は我國の慣習なれば、入札拂の制度をも認む、之を爲す場合は、裁判所が不動産競賣期日の公告前に、利害關係人の申立に因り、又は裁判所の職權を以て、競賣に代へて入札拂を命じたる場合也、此入札拂と競賣と異る點は、最高價を定むるに就き口頭競賣の申出に依らずして、書面競賣の申出に依ること之也、入札拂手續は、通則としては、競賣の規定に依るものなれども、特則としては、イ入札には第一入札人の氏名及び住所、第二不動産の表示、第三入札價格は、一定の金額を以て入札價格を表示すべきものにして、他の入札價格に對する比例を以て、價格を表示する事を得ず、ロ入札は、入札期日に封緘して、執達吏に差出すべきもの也、ハ執達吏は入札人の面前に於て入札を開封して期讀す、之蓋し公平を維持するの注意に出でたるものとす、ニ執達吏の開封期讀の結果、最高價入札人として呼上げられたるものは、利害關係人の求に依り保證を立つる義務を負ふ、若し之を拒むときは、次位の入札人最高價入札人となり、保證を拒みたる者は、入札價格の差額を支拂ふ義務を負ふ、而して二人以上同價格入札者あるときは、執達吏は增價の爲め追加入札を爲さしめ、以て最高價入札人を定む、以上不動産の入札に就きて述べたるも、其外商船其他の海船に對する強制執行は、不動産競賣の規定に從ふが故に、斯かる入札拂に附する場合あるべきものとなす、又不動産又は船舶の任意競賣に於ても、競賣申立人の申立あるときは、裁判所は、競賣期日の公告を爲す以前に在りては、競賣に代て入札拂を爲す事を得べきものとす、(乙)會計法に於ては、政府の工事又は物件の賣買、貸借は公告して競爭に附することとし、競爭の方法は入札を以て行ふを原則とせり、(イ)入札の方法を以て、工事の請負又は物件の賣買、貸借を契約せんとするときは、入札期日前少くも十五日前より、廣く其旨を公告すべきものとす、但し此期間は急を要する場合には七日迄短縮する事を得るものとす、而して其公告には、□一競爭入札に附する事項、□二契約書案を示す場所、及び其契約の取結びを擔任する官吏の官氏名、□三競爭執行の場所、日限及び時刻、□四入札の保證を記載することを要す、次に入札者は、其工事又は物品の供給に二年以上從事することを證明し、且つ一定の保證金を納むる事を要す、其保證金の額は、見積代金百分の五以上に於て各省大臣之を定む、若しも競爭の落者に於て、政府と契約を締結せざるときは、其保證金を失ふものとす、故に入札保證金は、其入札價格を以て、政府と契約を結ぶの債務を履行せざる場合に、入札者が負擔する豫定賠償額たるの性質を有するもの也、ロ政府が工事又は物件の賣買、貸借を競爭入札に付したるときは、各省大臣又は其委任を受けたる官吏に於て、豫定價格を定めたる上之を封書となし、開札の時期を待つべきものとす、而して開札は公告に揭げたる場所、日限、時刻に、入札人の面前に於て行ふものとし、若しも入札人中出席せざるものあるときは、入札に關係なき官吏をして、之に立會はしめ、其の開札を行ひ、落札の公平を期せしむ、開札の結果、一も豫定價格の制限に達せざるときは、出席入札人をして再度の入札を爲さしむる事を得、次に落札者を定むる方法は、工事の請負及び物品購賣の場合に於て、豫定價格以上の價格を入札する者數人あるときは、最低價を入札するものを落札とし、又物品賣却の場合に於て、豫定價格以上の價格を入札するもの數名あるときは、最高價を入札するものを以て落札者とす、若し落札となるべき同價の入札を爲したるもの數名あるときは、直に抽籤を以て落札者を定むるものとす、ハ入札の效果は、政府の工事を請負ふもの又は物品の賣買、貸借の相手方たるべきものを政府の爲めに確定するに在れば、落札人が其入札したる價格に從ひ、政府と契約を締結せんとするときに於て、初めて政府の契約締結の自由消滅するもの也、故に若し政府にして、落札人以外の者と契約したるとき、又は落札價格以外の價格に於て契約を爲したるときは、會計法規違反の責任あり、之に反して、落札者は落札當然の效果として、契約上の義務を負ふものに非ざれば、政府物品公賣の場合に於ける落札者の地位は、民事訴訟法に依る競落人とは全然其手續を異にするもの也、會計規則第七一條七九條に於て、落札者が契約を結ばざる場合を豫見するを以て見るも、落札者が入札價格を以て政府と契約を結ぶ債務は、強制せられざる一種特別の債務なりと信ず、要するに入札は、工事の請負又は物品の賣買、貸借に關する政府の契約準備行爲にして、契約行爲自體にはあらざるものとす、因に本文中入札價格とは、入札人が入札に依りて申込に應ぜんとする價格を云ひ、入札期日とは入札を行ふべき期日を云ふ、又入札人とは、入札をなす人を指し、入札拂とは、入札の方法に依りて物件を賣拂ふことなり、尚本文には見えざるも、入札函なる語あり、之國有林野物産賣拂規定第十六條に存在するものにして、入札を差入るべき函を云ふ。(民訴七〇二條、乃至七〇五候、七一七條、競賣法三四、三九條、二〇年勅六〇號會計規則七〇條以下參照)
入社
(にふしや)社團の社員となることを入社と云ふ、設立當時に入社する場合あり、又設立後に加入することもあり、或は社員權を讓受けて入社することもあり。
- 英
- Entering to an association
- 独
- Eintritt in eine Gesellschaft
- 仏
- Entrer à l'association
入籍
(にふせき)或家の家族が他家の家族となることを入籍と云ふ、如何なる場合に於て入籍するや、幷に其手續等は如何にすべきや、□一家族の庶子及び私生兒が、其家族たる父母の家に入らんと欲するときは、戸主の同意あることを必要とす、□二戸主の親族にして他家に在るものは、其戸主の同意を得て家族となることを得べく、其者が既に他家の家族たる身分を有するときは、其家の戸主の同意をも得る事を要す、若しも入籍せんとするものが未成年者(即ち二十歳未滿)なるときは、戸主の同意に加ふるに親權を行ふ父若くは母、又は後見人の同意をも得ざるべからず、□三婚姻又は養子緣組に因りて他家に入りたるものが、其配偶者又は養親の親族に非ざる自己の親族を、婚家又は養家の家族になさんと欲するとき、例へば連れ子をなすが如き場合には、戸主、親權を行ふ父若くは母、又は後見人の同意を以て足れりとせず、尚自己の配偶者又は養親の同意をも得ることを要す、又離婚若くは離緣に因りて婚家又は養家を去る場合に於て、其家に在る自己の直系卑屬を自家の家族となさんとするときも、以上述べたる同意を得るを要す、以上三箇の場合に於て、戸主、配偶者、養親、親權を行ふ者又は後見人の同意を要する場合には、同意の證書を入籍屆に添へ、又は同意を爲したる者をして屆書に同意の旨を附記せしめ、これに署名捺印せしめたる上、戸籍役場に屆出づることを要す、其屆出づべき要件は、□一入籍すべき家の戸主の氏名、出生の年月日、職業及び本籍地、□二入籍すべき家の戸主又は家族と入籍すべき者との親族關係、□三入籍すべき者が廢家して他家に入るときは其旨、□四入籍すべき者が家族なるときは、其去るべき家の戸主の氏名、出生の年月日、職業、本籍地及び其戸主と入籍すべき者との關係等を屆書に揭ぐべきものとす、左に屆出書式の一二を示さむ。
(一)入籍屆(民七三五條一項戸一四
六、一四七條)
東京市神田區猿樂町拾參番地平民戸主
下宿業
入籍スベキ家ノ戸主
海野要一
弘化元年壹月四日生
東京市趨町區下六番町五番地士族
無職業
廢家ノ上入籍
要一妹マン
私生子
佐藤平六
明治五年拾月拾日生
右入籍致候間同意證書相添へ此段及御屆候也
明治參拾九年八月五日
佐藤平六□印
東京市神田區戸籍吏何某殿
(二)入籍屆(民七三八條戸一四六、一四七條)
東京市神田區北神保町四番地平民
戸主官吏
入籍スべキ家ノ戸主
重藤道樹
弘化貳年參月參日生
東京市神田區錦町壹丁目貳番地平民
戸主無職業
道樹弟
廢家の上入籍
父某
中谷鐵吉
母某
明治八年六月七日生
右入籍候間別紙何々同意書相添へ此段及御屆候也
明治參拾九年八月五日
中谷鐵吉□印
東京市神田區戸籍吏何某殿
(三)入籍屆(民七三八條、戸一四六、一四七條)
東京市神田區表神保町拾番地士族
戸主
印刷業
金子久次郞
明治參年壹月五日生
妻
無職業
トキ
明治拾年參月貳日生
右トキ兄東京市牛込區宮比町四番地戸主官吏青木鎌次郞(天保元年參月七日生)參女
入籍スベキ者
松代
明治參拾年壹月壹日生
右入籍候間別紙何々同意證書相添此段及御屆候也
明治參拾九年八月五日
金子トキ□印
東京市神田區戸籍吏何某殿
- 英
- Being registered
- 独
- Einschreib-ung
- 仏
- Enregistré
入夫婚姻
(にふふこんいん)女戸主と婚姻したる男子を入夫と云ひ、其婚姻を入夫婚姻と云ふ、婚姻の要件及び效力等は、普通一般の場合と異ならざるも、唯入夫婚姻の場合には、妻が夫の家に入らずして、夫が妻の家に入る點に於て異るものとす、而して婚姻の當時に於て、當事者が入夫を以て戸主となさざる意思を表示せざる限りは、入夫は當然其家の戸主となるもの也、次に外國人と婚姻したる場合に於ては、其條件は各當事者の本國法に依り、又方式は婚姻擧行地の法律に依るべくして、效力及び夫婦財産契約等は、夫の本國の法律に依りて定むるを原則とす、然れども入夫婚姻の場合に於て、入夫が外國人なるときは、妻の本國法に依りて婚姻の效力及び夫婦財産關係を定むべきものとす、例へば日本人たる女戸主が、外國人と入夫婚姻を爲したるときは、其入夫たる外國人は、日本の法律に從ひ、日本の國籍を取得して、其妻の家に入るべきなり、而して夫婦財産制等も日本の法律に從ふべきものにして、入夫たる外國人の本國法に依るべきものにあらず、左に入夫婚姻屆の書式を示さむ。(民七三六、七八八條、法例一四、一五條、國籍法五條等)
入夫婚姻屆(民七七五條戸一〇二條)
東京市神田區猿樂町四番地戸主平民
小學校教員
妻
西村サク
明治拾六年參月六日生
神奈川縣足柄下縣湯本村塔ノ澤無職業
右父
西村善吉
右母亡
ヒサ
大阪市北區老松町貳番屋敷戸主無職業
千松叔父平民會社員
夫
近江繁吉
明治拾年六月六日生
右父亡
近江太平
右母無職業
ハル
右入夫婚姻候間此段別紙何々同意證書相添及御屆候也
明治四拾年參月壹日
四村サク
近江繁吉
東京市本郷區眞砂町八番地官吏
證人
小松錦八
明治八年四月貳日生
東京市本郷區本郷新花町五番地無職業
證人
光田松造
明治元年壹月壹日生
東京市神田區戸籍吏何某殿
- 英
- Marriage of woman who is the head of house
- 独
- Heirat von Haus-meisterin
- 仏
- Mariage de la femme qui est le chef de la famille
日本印度間の通商に關する日英條約
(にほんいんどかんのつうしやうにくわんするにちえいでうやく)我國と大不列顚國との間に於て日本印度間の通商に關して締結したる條約なり、明治三七年八月二九日東京に於て、外務大臣小村壽太郞と、日本駐劄英國特命全權公使マグドナルドとに依り議定せられ、翌三八年三月十四日批准を經、同十六日公布せらる、本條約の定むる處に依れば、我國又は印度に於て、生産或は製造したる物品は、日本より印度へ又は印度より日本へ輸送する場合に於ては、別國の製造に係る同種の物品に適用せらるる最低率の關税を賦課すべきものとす、而して本條約は、兩締盟國が終了を通知したる日より六箇月を經過する迄は、有效に存在すべきものとす。
日本銀行
(にほんぎんかう)一五年三二號布告日本銀行條例に依り、一五年より三十箇年の存續期間を以て設立せられたる株式組織の銀行なり、三千萬圓の資本金を有し、其總裁、副總裁は共に政府より任命せられ、政府監督の下に業務を營む、(甲)銀行取引の範圍は、日本銀行條例に依り以下列擧するものに制限せらる、□一政府發行の手形、爲替手形、其他商業手形の割引又は買入を爲すこと、□二地金銀の賣買、□三金銀貨又は地金銀を抵當として貸金をなすこと、□四豫て取引約定ある諸會社、銀行又は商人の爲めに、手形金の取立を爲すこと、□五諸預り勘定を、爲し又は金銀貨、貴金屬並に諸證券類の保護預りを爲すこと、□六公債證書、政府發行の手形、其他政府の保證に係る各種の證券を抵當として、當座勘定貸又は定期貸をなすこと、但し其金額及び利子の割合は、總裁、副總裁、理事、監事に於て時々決議し、大藏大臣の許可を受くべし、(乙)兌換銀行券の發行は、現時臺灣銀行に於て臺灣銀行券を發行するの外、内地にては日本銀行の獨占する事業なり、即ち引換準備として有する金銀貨及び地金銀の總額に對して、兌換銀行券を發行し得るのみならず、政府發行の證券又は確實なる證券、若くは商業手形を擔保として、一億二千圓迄發行し得べく、尚市場の景況に依り、其需要に應じて、大藏大臣の許可を經、前記の擔保を供して、右制限外の發行をも爲し得、本行が商況の繁閑に應じて流通貨幣を伸縮し、以て金銀を調和し圓滑ならしむるの作用力を有するは、偏に之れが爲めなり、(丙)國庫事務、國庫に於て、保管、出納する現金の取扱を爲すものは金庫にして、金庫の出納、保管に就き、現實に其取扱の任に當るものは日本銀行なり、(丁)公債事務、總て公債の募集、償還、利子の拂渡、證書の書換等に關する事務は、一切本行に於て取扱はる、又大藏省證券に關する事務も、本行の取扱ふとこるに屬す。
- 英
- Bank of Japan
- 独
- Bank von Japan
- 仏
- Banque du Japon
日本居留地
(にほんきよりうち)外國の領土内に於て、自由に日本人の住居し得べき地を云ふ、我國は、條約改正前迄は、外國に對して居留地を附與し置きたるも、内地雜居と同時に之を撤發せり、現時我國の有する居留地は、韓國仁川港、鎭南浦、木浦、其他、清國蘇州、杭州、天津、漢口等とす、而して此等居留地に於て、居留地取締の爲め、日本領事又は居留民が條約に基き、其國官吏と協議の上、制定したる現則を日本居留地規則といふ。
- 英
- Japanese settlement in foreign country
- 独
- japanischer Nieder-lasz im Auslande
- 仏
- Colonie japonaise à l'étranger
日本觀業銀行法
(にほんくわんげふぎんかうはふ)二九年四月法律第八二號を以て公布せらる、本行は、農工業の改良發達の爲め、資本を貸付くるを以て目的とする株式會社にして、其本店は東京に在り、而して同行の資本金は壹千萬圓とす、其存立時期は、免許の日より百箇年とし、尚株主總會の決議に依り、政府の許可を得て、存立時期を延長し得るものとす、次に其營業は、□一五十箇年以内に於て年賦償還の方法に依り、不動産を抵當として貸付を爲すものとす、又年賦償還貸付金總高の十分の一に相當する金額を限り、不動産を抵當とし、五箇年以内の定期償還貸付を爲す事を得べし、されど府縣市町村其他法律を以て組織せる公共團體の貸付を爲す場合に於ては、抵當を呈せざる事を得べし、□二農工銀行法に依り設立したる各農工銀行の發行する農工債券を引受くることを得べし、□三地金銀又は有價證券の保護預りを爲すことを得、□四營業上餘裕金あるときは、一時各種の國債證券、地方債證券を買入れ、又は大藏大臣の認可を受け、確實なる銀行に預金を爲すことを得べし、而して之に依るの外、營業の餘裕金を使用することを得ざる也、次に勸業債券を發行し得、イ資本金四分の一以上の拂込ありたるときは、拂込金額の十倍を限り、觀業債券を發行することを得、但し年賦償還貸付金及其引受けたる農工債券の現在高を超過することを得ず、ロ勸業債券は、券面額二十圓以上とし、其記名利札附とす、但應募者又は所有者の請求に依り記名と爲すことを得、ハ少くとも年賦償還貸付金及其引受けたる農工債券の償還高に應じ、每年二回以上抽籤を以て、勸業債券を償還すべきものとす、其償還の場合に於ては、割增金を附することを得べし、最も其方法及金額は、大藏大臣の認可を要すべきものとす、斯く一般銀行に異る營業をなし又種々の特權を有するを以て、勸業銀行は、大藏大臣の監督の下に立つ、從て定款の變更及配當金の分配等は、大藏大臣の認可を經べきものなり、又大藏大臣の必要と認むるときは、貸付金額及方法を制限することを得べきものとす。
日本臣民
(にほんしんみん)我國籍を有する者を云ふ、通俗に日本人と云ふときは、日本語を話し、我風俗慣習に從ひ生活するものを指すも、法律上日本人といへば、必ずしも日本語を話し得るの要なく、又風俗慣習を異にするも、或は骨格容貌を同ふせざるも可なりとす、要するに日本臣民たると否とは、一に日本の國籍を有するか否かに依る。(憲法一八條、三二年法六六號國籍法、法例二七條)
- 英
- Japanese subject
- 独
- japan-ischer Unterthan
- 仏
- Sujet japonais
日本船舶
(にほんせんぱく)□一日本の官廳又は公署の所有に屬する船舶、□二日本臣民の所有に屬する船舶、□三日本に商店を有する商事會社にして、合名會社に在りては、社員の全員、合資會社及び株式合資會社にありては、無限責任社員の全員、株式會社にありては、取締役の全員が日本臣民なるものの所有に屬する船舶、□四日本に主たる事務所を有する法人にして、其代表者の全員が、日本臣民なるものの所有に屬する船舶、□五舊商法の規定に從ひて設立したる合資會社に在りては、業務擔當社員の全員が日本臣民なるものの所有に屬する船舶、以上五種のものを日本船舶と云ふ也、日本船舶は、日本の國旗を揭ぐるの權利を有す、然れども此權利は、法令に別段の定ある場合を除く外、船舶國籍證書又は假船舶國籍證明書を請受けたる後に非ざれば行使する事を得ず、又此手續後にあらざれば航行する事も得ざる也、日本船舶は、國旗揭揚權の外、尚一の特權あり、即ち不開港場に寄港し、又は日本各港の間に於て、物品又は旅客の運送を爲し得べし、但し外國船舶と雖も、法律又は條約に依り別段の定あるとき、海難若くは捕虜を免れんとするとき、又は主務大臣の許可を得たる時は此限にあらず、次に日本船舶の所有者は、日本に船籍港を定め、其船籍港を管轄する管海官廳に、船舶の積量測度を申請する事を要す、若し外國に於て取得したる船舶を、外國各港の間に於て航行せしむるときは、船舶所有者は日本の領事又は貿易事務官に其船舶の積量測度を申請する事を得、而して船舶所有者は登記をなしたる後、船籍港を管轄する管海官廳に備へたる船舶原簿に登錄をなし、國籍證書を受くべきもの也、又日本船舶には國旗を擧げ、且其名稱、船籍港、番號、積量、喫水の尺度其他の事項を記載して所持する事を要す、國旗揭揚に關して一の制裁あり、即ち日本船舶にあらずして、國籍を詐る目的にて日本の國旗を揭げたるときは、船長を百圓以上千圓以下の罰金に處し、情狀重きときは船舶を沒收す、但し捕獲を免れんとする目的を以て、日本の國旗を揭げたる時は此制裁なし、又日本船舶が國籍を詐る目的を以て、日本國旗に非ざる旗章を揭げたるときも、同一の制裁を受くべきものとす。(三二年三月法四六號船舶法)
- 英
- Japanese vessel
- 独
- japan-isches Schiff
- 仏
- Navire japonaise
日本帝國
(にほんていこく)我帝國の名稱にして、或は我國家の統治權に屬する地球上の一部を云ふ、抑も大日本帝國は二樣の意義を有す、一は無形的意義にして、我國家を意味す、例へば國際法上外國に對して、大日本帝國と云ふが如し、他の一は有形的意義にして、我國權の及ぶべき領土を指す、而して現今我國の領土と云ふは、五畿、八道、琉球、臺灣其他の附屬諸島嶼幷に樺太南部及其領海を指す也、憲法第一條に規定せる、大日本帝國とは、有形的意義即ち國土の意義なれども、我憲法は、諸外國の憲法の如く現在の版圖を限定せず、且つ國境の變更は法律を以て定むる事を要せざるが故に、宣戰、媾和の大權に依り我領土を取得するときは、帝國の地理的限界は直に變じ、新領土地は、憲法上當然我國の一部を成すものとす、即ち大日本帝國の有形的意義は、憲法制定當時の國土を指すにあらずして、國運の伸張するに從ひて發展し、取得するものをも包含するものなり。
- 英
- Japanese Empire
- 独
- japan-isches Reich
- 仏
- Empire du Japon
日本帝國領事
(にほんていこくりやうじ)日本帝國領事とは、外國に駐在する我國の官吏にして、日本帝國の利益、殊に貿易交通及航海の利益を保護奬勵し、日本と駐在國との間に締結せる條約の施行を視察し、日本臣民幷に日本と友好ある外國の臣民より倚賴あるときは、之に相當の勸告、若くは保護を與ふるものなり、領事が駐在國に於て、日本臣民の居住、婚姻、出生、死亡の屆出を受けたるときは、名簿に登錄し、死亡者の遺産を保護し、軍艦乘組員を幇助し、又は其乘組員脱走したるときは、其逮捕を駐在國官廳に照合するの職權あり、其他船舶に揭げたる國旗の監視、海員の雇入、雇止の公認、船舶の賣却擔當の公認をなし、出入港屆を徵し、又は旅券の付與及其調査をなし、場合に依りては領事裁判權を行使し、民事上の爭論を和解すること、手數料を徵して種々の證明を爲すこと等の職務を有す。(二三年五月勅八〇號日本領事規則)
- 英
- Consul of Japanese Empire
- 独
- Konsul des japanischen Reiches
- 仏
- Consul de l'Empire du Japon
任
(にん)責に任ずなどの如く、或行爲の結果を主觀的に本人に歸することを指すことあり、或は任用、任命、任官等の如く、職務を命じ併せて其の責に任ずることを意味することあり(委任、解任、責任、辭任の部及び民六九八、七〇四、七一二條、七一四條二項參照)
- 英
- Service
- 独
- Dienst
- 仏
- Service
任意
(にんい)自己の本意通りに、自由に意思を決定するを任意と謂ふ、茲に自由といふも、宇宙の大則たる因果律に支配せられざる、所謂絶對的自由を指すにあらずして、因果に律せられつつ其範圍に於て、隨意に意思を決定するを指すものとす、任意競賣と云ひ、任意債務と云ひ、任意法など謂ふはこの用例なり。
- 英
- Voluntary
- 独
- Freiwiliigkeit
- 仏
- Libre
任意競賣
(にんいきやうばい)動産又は不動産の留置權者、先取特權者、質權者、抵當權者、其他民法商法の規定に依りて、競賣をなさんとする者の委任に依り、執達吏が爲す競賣を任意競賣と云ふ、強制競賣は常に債務名義を要するも、任意競賣は之を要せざるものとす。(三一年法一五號競賣法及強制競賣の部參照)
- 英
- Voluntary auction
- 独
- frei-willige Auktion
- 仏
- Enchère volontaire
任意債務
(にんいさいむ)一の給付を目的とする債務にして、債務者は其給付に代へ、他の給付を爲し、以て其債務を免かるることを得べき權利を有する債務を任意債務と云ふ、例へば甲債務者が債權者と約し、馬一頭を與ふべき債務を負擔したり、然るに甲債務者は、其馬の給付に代へ、金百圓を支拂ふに依りて、其債務を免かる事を得べき權利を有する場合の如き是也、任意債務の場合に於ては、債務者は唯一の給付を爲すの義務を負ふに過ぎず、其一給付につき債務を成立するのみ、債務者が爲し得べき他の給付については、債務關係成立せざるものとす、從て其一が不能となりたるときは、債務者は全く其債務を免るる事を得べし、則ち前例の債務者は、馬についてのみ債務を負ふに過ぎずして、金百圓については債務關係を成立せざるなり、從て馬の引渡が不能となりたるときは、債務者は全く債務を免れ、金百圓の給付を爲すの義務なし、任意債務に似て非なるものあり、選擇債務之なり、選擇債務は、初めより數個の目的物について、債務關係成立する數個の債務にして、(此點學説上大なる疑問とせらる)其一を給付するに依りて、全債務の消滅するものを云ふ、前例について云へば、馬、及び金百圓の上に各々債務關係成立し、其何れかを給付するに依りて全債務は消滅すべきものなり、此の如く選擇債務は數個の債務が成立するに依り、任意債務に異りて、縱令他の一方の給付が不能となるも、全債務は消滅すべきものにあらずして、殘存せる他の債務を給付するの義務あるものとす。
- 英
- Voluntary obligation
- 独
- freiwillige Schuld
- 仏
- Obligation volon-taire
任意上の代位辨濟
(にんいじやうのだいゐべんさい)代位辨濟に二種あり、任意上の代位辨濟と法律上の代位辨濟是なり、任意上の代位辨濟とは、他人の債務を辨濟するものが、其辨濟と同時に債權者と代位の契約を爲し、以て債權者が債務者に對して有する權利を代はりて行ふを云ふ、此の如く任意上の代位辨濟は、債權の移轉を生ずるが故に、債權の讓渡との區別を一言せん、□一任意上の代位辯濟は、債權移轉と辨濟とが、併存するものなることを必要となせども、債權の讓渡の場合に於ては、單に債權移轉の契約のみあれば足る、例へば任意上の代位辨濟の場合には、債務者に代りて辨濟せんとする第三者は、債權者に對して、債務者の債務を辨濟すると同時に、債權者より其者に代りて、債務者に求債權を行使するの承諾を得ざるべからず、之に反して債權讓渡の場合に於ては、債權者に對して辨濟するの要なく、單に債權者たる地位の移轉を約すれば足るものとす、□二任意上の代位辨濟に依る債權の移轉は、辨濟に因りて、辨濟者が債務者に對して有する求債權の保全の爲めに生ずるものなれば、債權の移轉も亦辨濟者が有する求債權の限度に於て決せらるべきなり、例へば百圓の債務に對して五十圓を辨濟したるに止まるときは、辨濟者の求債權は五十圓に止まる、從て債權の移轉も亦五十圓に付きて生ずるのみ、之に反して債權の讓渡の場合は、當事者が、殊に其讓渡すべき債權の額を定むる事を要す、若し全部の債權を讓渡したる場合には、讓受人が之に對して支拂ひたる出捐の額如何に關せず、債權の全部移轉すべし、例へば百圓の債權を五十圓にて讓受くるも、其讓渡契約が債權全部を移轉するにあるときは、讓受人は、百圓の債權を取得するもの也、□三任意上の代位辨濟者は、二個の權利を行ふことを得、一は辨濟者自己固有の權利則ち求債權にして、二は其求債權の限度に於て移轉せられたる債權なり、之に反して債權の讓受人は、固より自己に移轉したる債權のみ行ふ事を得べし、以上の如く任意の代位辨濟と、債權讓渡との間には區別ありと雖も、債權移轉の事實は、二者共に相同じ、されば債權の讓渡を第三者に對抗するには、債權者より代位辨濟あることを債務者に通知し、又は債務者が之を承諾したることを要す、此通知又は承諾は、確定日附ある證書を以てするに非ざれば、之を債務者以外の第三者に對抗し得ざるもの也。(民四九九、四六七條、民施四條以下、代位辨濟の部參照)
- 英
- Subrogated perfor-mance by the third
- 独
- freiwillige Zahl-ung von Vertretung
- 仏
- Représentation volontaire par le tier
任意出頭
(にんいしゆつとう)區裁判所の訴訟事件は槪ね單純にして、然かも其の訴訟手續は簡易迅速を貴ぶ、從て當事者は、通常の裁判日に於て、豫め期日の指定なくして裁判所に出頭し、訴訟に就きて口頭辯論を爲すことを得るなり、此場合に於て訴の提起は、口頭の演述を以て爲すものとす、民事訴訟法に云ふ任意出頭は之を指すなり。(民訴一五三、三七八條)
- 英
- Voluntary appearance
- 独
- freiwillige Anwesenheit
- 仏
- Apparition volontaire
任意準備金
(にんいじゆんびきん)法律の規定に依る準備金以外に、會社等が任意に定款の規定に基きて積立つる金錢を任意準備金と云ふ、我商法の規定に依れば、株式會社は、其資本金の四分の一に達する迄は、利益を配當する每に、準備金として其利益の二十分の一以上を積立つる事を要す、又額面以上の資格を以て株式を發行したるときは、其額面を超ゆる金額は、會社資本金の四分の一に達する迄、之を準備金に組入ることを要するものなり、法定準備金なるもの之なり、勸業銀行法及其他の特別法に於ても、此の如き規定の存在することあり、何れも法定準備金の性質を有す、收益多き會社は以上の法定準備金のみにて滿足せず、會社財産の鞏固を計らんが爲めに、收益金配當の際其幾部を積立つることあり、任意準備金即ち是なり、要するに法定準備金を控除し、株主に一定の利益を配當したる後、尚剩除財産ある時に之を積立てたるものを任意準備金となす。
- 英
- Free reserved fund
- 独
- freiwilliger Reservefonds
- 仏
- Fonds réservé volontaire
任意法
(にんいはふ)法律が一定の事實に對して一定の效果を定むるも、其規定が絶對の效力を有せずして、當事者の意思を以て之を變更することを許すときは、之を任意法と云ふ、任意法は、當事者が反對の意思を表示せざりしとき適用せらるべき法規也、此任意法は多く私法中に其例を見る、債權に關する法則は、殆ど之に屬す、任意法と雖も、一の法律たることは明白也、故に裁判官は、之を適用せざるべからず、當事者が反對の意思を表示したるとき之を適用せざるは、法律が自ら其效力を制限したるに依るなり、之を誤解して當事者の反對意思は、法律より強きが故に、法律が其の效を讓るものと解する事勿れ、又同一の理由に依り、當事者が反對の意思を表示せざるとき之を適用するは、法律なるが故然るものにして、當事者の意思として之を適用するものにあらず、任意法の效用は、□一補充力を有す、即ち豫め法律關係につき一般的規定を設け、特に意思表示を爲さざる時之に從はしむるに在り、若し法律に一般の規定を置かざるときは、常に當事者自ら法律關係の内容を定めざるべからず、若し之を定めざれば法律上の效力を生ずること能はずとせば、甚だしき煩勞と時日とを要するが故に、一般の例規を設けて、當事者の意思の不備を補充す、之即ち補充力也、此の如く任意法は補充法なるが故に、當事者の意思明白なるときは、之を適用せざるものとす、□二解釋力を有す、當事者自から法律關係の内容を定むる場合に、其表示が不充分又は不明瞭にして、其欲する所を確認する能はざるとき、之を解釋するに任意法を以てす、一名解釋法と稱するは此所以なり、故に若し當事者の意思が明瞭なるときは、之を適用すべきものにあらざるは當然なり。(聽許法の部參照)
- 英
- Law of voluntariness
- 独
- Gesetz der Freiwilligkeit
- 仏
- Loi de la sponta-neité
認可
(にんか)公私人の行爲に對して、法律上の效力を生ぜしむる國家の處分を云ふ、認可せらるべき行爲は、法律上一般に禁止せられたるものに非ずして、唯認可を爲すに非ざれば、法律上有效なる行爲となることを得ざるに過ぎず、即ち此點に於て免許と異る、盖し免許は、禁止を解くの處分なれば也、認可なる語は用例一定せず、認可と同一性質のものに對して許可と云ひ、或は免許の性質を有するものを認可と稱する事あり、又認許は場合に依りて其意義を同うせず、されど認可又は免許と略ぼ同義とす、因に認可營業とは、國家の認可處分に依りて、法律上の效力を生じたる營業を云ふ、認可申請書は、國家に對し、認可を要求する書面也、認可狀又は認可書とは、國家の認可處分を證明する爲め、國家機關の附與する書面也、認許證又は認許書と云ふも之に同じ。(日本帝國領事規則八條二號、臺灣鑛業規則一八條二項、水道條例四條、重要物産同業組合法施行規則一二條、非訟手續一三二、一九四條、關税法二〇條等)
- 英
- Official sanction
- 独
- officielle Bestätigung
- 仏
- Sanction officielle
認許
(にんきよ)- 英
- Approval
- 独
- Billigung
- 仏
- Homologation
任期
(にんき)ある職務に在任する期間を任期と云ふ、官吏には通常任期の定まりたるものなきも、時として任期の定まれるものあり、例へば陸海軍々人の如し、國會議員、府縣會議員及び市町村會議員等は、一定の期間其職にあるものにして、即ち豫め任期の定まれるものなり。(中央衞生會官制七條二項)
- 英
- Term of public service
- 独
- Amts-führungsfrist
- 仏
- Terme du service publie
任官
(にんくわん)- 英
- Appointment to an office
- 独
- Anstellung zum Amte
- 仏
- Nomination officielle
任命
(にんめい)任命は、官吏たる身分の發生原因也、即ち任命とは、事務を處理せしむる目的を以て、特定の人に官職を授くる國家の意思表示を謂ひ、此意思表示は、辭令書の交付を以て行ふ、官吏の任命の法律上の性質に關しては、公法上の契約なりとの説と、國家の處分行爲なりとの説とありて、學説上一定せざるも、我國の通説は、公法上の契約を否認するものの如し、官吏の任命には、普通任用と特別任用とあり、前者は、官吏の任用資格を定むる原則的規程に依り任用せらるる場合を云ひ、後者は、例外として設けられたる任用規程に依り任用せらるる場合を云ふ、辭令書の形式は官吏の種類に依り異る、元首が直接に任免大權を行使するの官を高等官とし、官廳に委任して任免權を行使せしむるの官を判官とす、高等官中元首の發意に依りて任免するものを勅任官と云ひ、本屬長官の奏薦に基きて任免するものを奏任官と云ふ、勅任官中親任式を以て叙任する官を親任官と稱し、他の勅任官と區別せり、親任官の辭令書は、親署の後御璽を鈐し、内閣總理大臣又は首座の大臣之に副署す、他の勅任官の辭令書は、御爾を璽し、内閣總理大臣之を奉行す、奏任官の辭令書は、内閣の印を鈴し、内閣總理大臣之を宣行す、判任官の辭令書に就きては法定の形式なし、槪ね所屬官廳の印を鈴して、任命の意思を明にするのみ。(公式令一四、一五條、高等官々等令及び官吏關係の部參照)
- 英
- Appointment
- 独
- Anstellung
- 仏
- Nomination
人相書
(にんさうがき)人の容貌、體格等を明示して、他人と識別し得る特點を記載したる書面也、刑事訴訟法上令狀には、被告事件及び被告人の氏名、職業、住所を記載すべきもの也、但し召換狀を除く外、氏名不明なるときは、單に此人相書を以て其者を明示すれば足る、即ち拘引狀、拘留狀等を發する場合に、其氏名不分明なるときは、人相言を以て之を代用し得る也、又豫審判事は、被告人所在地を覺知する事能はざるときは、被告人の人相書を送致して、搜査及び逮捕を爲すべきことを各檢事長に請求するを得、次に檢事は、體刑の言渡を受け、其執行を遁れたるものに對して、逮捕狀を發することを得、此場合に於ても、逮捕狀に人相書を添付す、其缺席判決に係る場合に發したるときも、亦之れと同一手續に依るものなり。(刑訴八〇條一項)
- 英
- Description of person
- 独
- Beschreibung der Person
- 仏
- Description de la personne
認議
(にんしき)普通に認識と謂へば、總べて事物現象を其の在るが儘に吾人の知力作用に訴へて、心裡に會得するを謂ふ、然れども之れが起原發達より、其範圍價値に關する見解に至りては、古來最も多く哲學者を惱ましたる問題にして、カント出づるに及び、大なる革命を哲學界に惹起したりと雖も、實は、認識に關する解決は氏によりて幾何も進められたるにあらず、今尚依然大なる難問題として殘留し居るなり、之吾人の研究せんとして使用する精神作用其ものが、即ち研究の對象たる現象其ものにして、隨つて把持せんとすれば、隨つて遁竄する等諸種の困難ある故なり、而して一般に吾人と關係の減少なるものが、早く研究の對象となり、其解釋も亦見るべきもの多きに反し、吾人と親密なる關係を有するものは、其研究甚だ不充分なるを免れざるを例とす、特に況んや、吾人の認識作用の如き、吾人の精神活動其のものを對象とする研究の殆ど不可能なるは、亦止むを得ざる次第なるをや、唯一言以て葢へば、認識に於ては先づ認識の主體たる心意と、認識の客體たる客觀現象とを要す、而して認識は、此兩者の一致の上に成るも、而かもこの經驗を進んで説明せんとすれば、勢ひ認識論に入らざるべからざるを以て姑く措く。
- 英
- Cognition
- 独
- Erkenntnisz
- 仏
- Cognition
認證謄本
(にんしようとうほん)官吏又は公吏が、法律の定むる方式に從ひ、謄本の證據力を維持するに足るべき事實の存在を證明したる場合に、其謄本を認證謄本と云ふ、例へば證書に附したる署名、捺印を認證したるときは、其署名捺印が、署名者として表示せられたるものの眞意に出でたることを證明するもの也、又證書の謄本に認證を付したるときは、其謄本の旨趣と原本の旨趣との符合することを證明するものなり、要するに認證謄本とは、原本と符合する旨の認證を付したる謄本にして、彼の裁判所書記が判決の謄本を造り、之に認證を附したる時は、之れ即ち判決の認證謄本なりとす。(民四三一條二項)
- 英
- Certified copy
- 独
- Beglaubig-ungsabschrift
- 仏
- Copie certifiée
認諾
(にんだく)民事訴訟に於て、被告が原告の主張したる請求の全部若くは一部を爭はざる旨の意思表示、即ち原告の請求の全部若くは一部を理由ありと認むる意思表示を認諾と謂ふ、裁判上のものと裁判外のものとあり、裁判外のものは、實體法上の效力を生ずるに止まるものにして、訴訟上何等の效果あらず、裁判上の認諾の要件は、□一訴又は反訴を以て主張したる請求に關すること、□二被告が口頭辯論に於て認諾の意思を表示すること、□三請求を認むる能力を有するものの意思表示なる事等とす、而して此認諾は、訴訟法に於ては、被告は、原告の請求に對する總べての防禦方法及裁判所の調査を抛棄したるものと看做さる、從つて原告は、特に請求の基く事實上及法律上の説明を爲し、幷に證據を呈出するの要なきに至り、當然被告に對して敗訴の判決を求むる事を得るものとす、然れども此場合に於ても、裁判所の職權調査に屬すべき訴訟條件の如きは、裁判所は、尚調査する義務あり、又人事訴訟の如き公益に關する訴訟に就きては、當事者は、訴訟の材料を自由に處分する事を得ざるものなるが故に、被告の認諾に拘はらず、裁判所は、事件の審査を爲すべき也、次に認諾に基き判決を爲すに當りては、必ず職權を以て之に假執行の宣言を附すべきものとす、故に其確定せざる前と雖も、強制執行を爲すことを得べし、認諾は彼の自白と區別するを要す、蓋し自白は、當事者が自己に不利益なる事實上の陳述を爲すを云ひ、訴權其ものの存在には直接の關係なきものなり、故に被告は、原告が請求の原因として主張したる事實を自白することあるも、尚其訴訟については爭ふことを得べし、例へば被告が原告の主張する賣買の事實は認むるも、既に引渡又は代金仕拂濟なるに依り、原告には訴權なしと主張し得るが如し。(民二二九、五〇一條一號)
- 英
- Admission
- 独
- Anerkenntniz
- 仏
- Acquiescement
任地
(にんち)官公吏其他或職務にあるものが、其の職務上在住する地を任地と云ひ、其特定の場所を任所と謂ふ。(外交官及領事官々制八條、公使館領事館費用條例八條三項)
- 英
- Place of appointment
- 独
- Amts-führungsort
- 仏
- Place de la nomination
任所
任所替
官公吏の職にある者が、其の在任の場所を變更するを任所替と謂ふ、例へば朝鮮在勤の警部が滿洲へ轉任せる場合の如し。(遞信省部内官吏外國在勤者妻携帶旅費規則一條)
- 英
- Change of place of official ap-pointment
- 独
- Änderung des Amtsführ-ungsortes
- 仏
- Change de la poste officielle
認知
(にんち)私生子の父又は母が、法律に定めたる方式に依りて、私生子を自己の子なりと確認することを私生子の認知と云ふ、此の認知は通常父又は母が任意に爲すものあれども、父又は母が任意になさざるときは、子、其直系卑族又は此等の者の法定代理人は、父又は母に對して訴を以て認知を求むることを得るなり、母は、通常子の出生屆に自己の子なることを記すが故に、特に認知するの要なきが如しと雖も、棄兒の場合には、尚母が認知する事あり、認知は、何時にても爲すことを得べし、故に胎内に在る子と雖も母の承諾あれば認知し得べし、而して成年の子を認知する場合には、其子の承諾を要す、死亡したる子は其直系卑族ある場合に限り之を認知する事を得べく、且つ之を認知する場合に、其直系卑族が成年者なるときは承諾を經るを要す、次に認知は、普通の意思に依ると、判決に依るとを問はず、戸籍吏に屆出づるにあらざれば其效を生ぜず、唯遺言を以て認知したる場合には、屆出でざるも可也、尤も遺言執行者は其屆出をなさざるべからずと雖も、之が屆出をなさざればとて、認知其者の效力を害する事なき也、父が私生子を認知したる時は、私生子は庶子となるも、母が認知したるときは、單に親子關係を定むるに過ぎずして、庶子たる身分を取得せず、認知の效力は、將來に於て生ずるのみならず、出生の時に遡りて其效を生ず、然れども其屆出前に取得したる第三者の權利を害することを得ず、又父の認知に依り庶子となりたるものは、其父母の婚姻に依りて、嫡出子たる身分を取得し、婚姻中父母が認知したる私生子は、其認知の時より嫡出子たる身分を取得するものなり。(民八三〇條乃至八三二條八三五條、人訴二七條、戸六八條四號)
私生子認知屆(戸籍法八〇條乃至八四條)
東京市神田區錦町壹丁目壹番地戸主
無職業(又は戸主何某妹)
母
山木クマ
私生子男(又は女)勉(又は胎兒)
(死亡したるときは明治何年何月何日死亡)明治四十年貳月參日生
右私生子(又は胎兒)認知致候間(別紙母の承諾書相添)此段及御屆候也
明治四十年參月參日
東京市神田區錦町貳丁目五番地戸主
無職業(又は何某弟)
認知者
小林太□印
明治元年六月壹日生
東京市神田區戸籍吏何某殿
以上私生子認知の外、廣く認知といへば、單に諸種の事情を認識するを指すことあり、例へば犯狀を認知するが如し。(刑訴四六條)
- 英
- Recognition
- 独
- Anerkennung
- 仏
- Reconnaissance
認定
(にんてい)廣く認定といへば、認可決定の意にして、其方法は、□一合議體の議決に依る事あり、例へば市町村に於て、豫算外の支出又は豫算起加の支出を爲さんとする場合に、市町村會の決議に依て其認定を得ざるべからずと云ふが如し、□二或は官廳の處分に依る事あり、例へば土地收用法に依り、企業者が特定の場合に、收用又は使用の處分の利益を受けんが爲めに、軍機に關する事業の場合の外内閣に申請して、其事業の認定を受けざるべからず、唯天災事變に際し、急施を要する事業の爲め、土地を使用するときに限り、郡市長に申請して事業の認定を受くる事を得と云ふが如し、□三單に事實的の行政行爲なる事あり、例へば河川法を適用すべき河川は、主務大臣に於て、公共の利害に重大の關係ありと認定したるものを云ひ、其河川の區域並に附屬物は、地方行政廳の認定する處に依る、又河川法を準用すべき河川は、地方行政廳に於て、河川の支川若くは派川と認定したるものを云ふといふが如し。(土地收用法一二條、市制町村制各一〇九條、河川法及逃亡犯罪人引渡條例一五條)
- 英
- Official recognition
- 独
- officielle Anerkennung
- 仏
- Recognition officielle
任務
(にんむ)汎ねく職務に從事する者が、執務し且つ其責に任ずるの事務を謂ふ、例へば官吏、公吏が從事する事務に對し、其執務に付きて責に任ずべき職務は之即ち任務なり。(民九〇七、九〇八條八號)
任免
(にんめん)特定の地位、又は職務に任用し、及び其の地位又は職務を罷免するを云ふ。(憲法一〇條、民三七條、任官、免官の部參照)
- 英
- Dismissal
- 独
- Entlassung
- 仏
- Renvoi
年額
(ねんがく)計數上の語にして、一箇年を單位とせる量額を云ふ、而して日、或は月を以て計算せし量の累積か、又は累積せる總額の年割額を指すなり。(府縣制六條一項三項、郡制六條一項二項、市制七條一項、町村制七條一項)
- 英
- Yearly quantity
- 独
- Jahrquantität
- 仏
- Somme annuaire
年功加俸
(ねんかうかぼう)官公吏の勤續年數により、俸給以外に給與する定額の金錢也、例へば、市町村立尋常小學校、高等小學校の正教員及準教員にして、五箇年以上同一學校に勤續する者には年功加俸を給與するものにて、其額は、五箇年勤續したるものには本俸の百分の十五を給し、其後五箇年を加ふる每に更に百分の十を加へ、百分の三十五に至りて止むものとす、又學校の廢止若くは學校編制の變更に因り、他の學校に轉任し、又は同一の事由に因り退職したる後、六十日以内に他の學校に就職したる者は、仍勤續の例に依るものとす、兵役に服する爲其の職を去りたる者、兵役を終りたる後九十日以内に更に就職したる時は、前後の在職年數を勤續年數に通算すべきなり、此年功加俸は、每月下旬に當月分を支給する事を得るものとす。(二九條法一四號、二九年七月勅二六五號)
- 英
- Increase of salary by merit
- 独
- Jahrgehaltszunahme nach Verdienst
- 仏
- Augumentation de la salaire par le mérit
年期明
(ねんきあけ)年期明とは、坊間に行はるる慣用語にして、例へば娼妓及び年期奉公をなすものの年期明と云へば、最初契約したる年期間の終了したることを意味するものとす、法律上に於ても亦之と同じく、年を以て定めたる期間の滿了を指す、例へば或被害地に於て、何年かの免租を得たる場合に、其年期間の滿了を年期明けと謂ふが如し。(地租條例二〇條)
- 英
- Expiration of years
- 独
- Ver-lauf einer bestimmten Zeit
- 仏
- Expira-tion des années
年金
(ねんきん)一定の年期間に給與せらるる定額の金錢を云ふ、例へば勳章年金と云へば、國家に對する勳功又は功勞により、勳章と共に之に附隨して一定の金額を終生間給與せらるるが如し、所謂年金に二種あり、終身年金、定時年金之なり、終身年金とは、人の終身間給與せらるる年金にして、例へば殊勳を樹てて金鵄勳章と共に、國家より給與せらるる年金の如きは此種に屬す、而して定時年金とは、特定の年間給與せらるるものを謂ふ。(二七年一一月勅一九三號金鵄勳章年金令一條乃至五條、二七年一二月閣令勳章年金支給規則四條、七條等參照)
- 英
- Annuity
- 独
- Leibrente
- 仏
- Annité
年金證書
(ねんきんしようしよ)年金受領の權利あることを證明する爲めに作製し、年金給與者より年金受領者に交付する證書を云ふ、年金受取の際は、此證書を以て受領者たることを證すべきを普通とす、年金證書は一名年金票とも云ふ。(勳章年金支給規則一條、二、二〇、二一條、一九年七月閣令一九號七條)
- 英
- Document of annuity
- 独
- Rentecertifikat
- 仏
- Document de l'annité
年限祿
(ねんげんろく)舊制に於て、一定の年期を限り給與せられたる家祿又は賞典祿を云ふ、明治三〇年十月法律第五〇號を以て、其處分法を定む、其第一條に「明治三年九月十日太政官布告藩制施行以後家祿賞典祿を有したる者及其家名承繼人にして、明治九年八月太政官第百〇八號布告、及同年一二月太政官第一五二號布告施行の際、其祿高に對する全部の給與を受けざる者、相當額の給與に不足ある者、明治四年七月二十四日祿高に關する太政官布告に依り調査したる以後の祿高、及其の調査以前に係る藩制施行以後の祿高に錯誤あるときは、本法施行の日に於て、其本人又は其家名承繼人に限り、其の給與未濟額を明治九年八月太政官第一五二號布告の率に據り換算し、其元金額を祿高整理の爲發行する公債證書を以て給與す云々」とあり、以て其一般を窺ふに足るべし。(三〇年一〇月法五〇號)
年代
(ねんだい)萬物は、總べて變化の相に於て吾人に現はれ、一物として止住の相にあるものなし、此變化の連續こそ吾人に時間の觀念を與ふるものなれ、年代とは、此時間の連續中に於て統一ある事象を單位として、此無限の時間を區劃測定せん爲めに設けられたる標準なり、而して其變化中最も統一あり規律あるものは何ぞと謂ふに、天體の運行に如くものなし、即ち地球の自轉と其軌道によりてする太陽の周圍の廻轉とによりて、晝夜及び年期等の自然的單位を得、更に人爲的に時分秒と細別し、世紀等と大別して以て時間の測定に便す、其他地球生物等の進化發達の時期、人文歷史上の時代を以て年代を劃するも、自然的又は文明史的に事物現象の時間的進行の上に自ら存する殊異の相に基きたるものなり。
- 英
- Chronological
- 独
- Chronologisch
- 仏
- Chronologique
年長者繼承法
(ねんちようしやけいしようはふ)君位繼承の順序を定むる者方法にして、君位繼承の資格を有する者の中に就き、最年長者が君位を繼承するを云ふ。(年長者主義の部參照)
- 英
- Law of succession by older
- 独
- Thronfolgerecht von dem Ältern; Seniorat
- 仏
- Loi de la succession par le plus vieux
年長者主義
(ねんちやうしやしゆぎ)相續及び君位繼承法に關する一種の立法主義にして、君位繼承或は相續に就き、其順位にあるものの中に於て、最年長者を以て君位繼承者或は相續人と爲す主義を云ふ、我國皇位繼承法に依れば、始祖の後胤にして男系の男子たるものに限り、皇位を繼承し得べきものにして、其繼承順序は、□一直系より最近親の傍系に及び、□二同等親の間に於ては年長者主義を採る、家督相續人に就きては、□一親等の異なるものの間にありては其近き者、□二親等の同じき者の間にありては男を先にし、□三同親等の男又は女の間にありては嫡出子を先にし、□四同親等の嫡出子及び私生子の間にありては嫡出子及び庶子は女と雖も、之を私生子より先にす、□五而して以上に揭げたる事項に就き、相同じき者の間に在りては、所謂年長者主義を採るものとす。(典範一條乃至九條、民五編一章二節)
年賦金
(ねんぷきん)貸金返濟の方法に關する一制度なり、即ち一定の金額に對する債務の辨濟に當り、一定の年限を定め、其間每年一定の金額を辨濟すべき方法にして、其返濟すべき金額を年賦金と云ふ、而して其年賦金の返濟を稱して年賦償還と云ふなり。(日本勸業銀行法一九、二三條參照)
- 英
- Yearly instalment
- 独
- jährliche Einsetzung
- 仏
- Acompte annuaire
年賦償還
- 英
- Yearly payment
- 独
- durch jährliche Abtragung bezahlen
- 仏
- Paie-ment annuaire
年俸
(ねんぼう)一年を單位として定めたる俸給を云ふ、俸給は官吏の生計を維持するが爲め給與する定額の金錢にして、年俸と月俸とに分つことを得、年俸は、現行の制度上高等官以上の者に給與する額を定むる標準となり、月俸は、判任官以下の官吏に給與する額の標準となる、年俸は必ずしも一箇年の後に給與するものにあらず、每月、日を定めて分給するを例とす。(高等官々等俸給令一四條)
- 英
- Yearly salary
- 独
- Jahrgehalt
- 仏
- Salaire annuaire
農會
(のふくわい)農會は、農事の改良發達を圖る爲め、農會法によりて設立する公共團體にして、分て市町村農會、郡農會、北海道府縣農會の三種とす、農會の區域は、市町村郡府縣の區域に依るを原則とす、市町村農會は其區域に於て、耕地、牧場を有する者及び農業を營む者を以て組織するものとす、而して會員の數が、以上の資格を有するものの二分の一以上にして、且つ其區域内に於て會員の所有する耕地、牧場の面積が、私用に供する耕地牧場の總面積の二分の一以上に非ざれば設立するを得ず、郡農會は、其區域内の町村農會を以て組織し、之を設立するには、之を組織する町村農會の數が、其區域内の町村總數の二分の一以上ならざる可らず、府縣農會は、其區域内の郡農會及び市農會を以て組織するものにして、之を組織する農會の數、郡市の數の二分の一以上に非ざれば設立する事を得ず、農商務大臣又は地方長官が必要と認めたるときは、農會に加入せざる者に對し、強制して加入を命ずる事を得、農會の設立者は、會則を定めて行政廳に差出し、其設立の認可を請はざるべからず、農會のなすべき事業は、會則の中に之を規定すべきものとす、農會の經費は、市町村農會にては其會員之を負擔し、其他の農會に於ては、之を組織する處の農會之を負擔す、而して北海道農會、府縣農會には、國庫は補助を與ふることを得るものなり。(三二年六月法一〇三號農會法、三八年一一月勅二二五號農會令)
- 英
- Agricultural association
- 独
- land-wirtschaftliche Gemeinde
- 仏
- Associa-tion agrioole
農會法
農會法とは、農事の改良發達を計る爲めに、市町村、郡、府縣等、各地に農會を設立するを得ること、之に交附することを得べき補助金額に就き規定したる原則法なり。(三二年六月公布法一〇三號農會法)
農會補助金交付規則
(のふくわいほじよきんかうふきそく)農會補助金交付規則とは、農會法に基き、北海道農會、府縣農會に、國庫より補助することあるべき、補助金の交付手續を定めたる農商務省令なり。(三三三月省令二號)
農會令
(のふくわいれい)農會令とは、農會の設立、組織、種類、役員選任の方法及び其の職務、經費の負擔方法並に監督に就きて規定せらたたる、農會法の詳細規定にして、去る三三年七月勅令第三〇號を以て公布せられしも改正せられたり。(三八年一一月勅二二五號改正農會令)
- 英
- Rules of agricultural association
- 独
- Regel der landwirtschaftlichen Ge-meinde
- 仏
- Règles de l'association agri-cole
農會令施行規則
農會令施行規則とは、農會令施行に關する細則にして、舊農會令に定むる事項の一部に就き、其施行細則を定められたる農商務省令なり、(三三年三月省令三號)
- 英
- Regulations for the ap-plication to the rule of agricultural as-sociation
- 独
- Ausführungsregel der ordn-ung von der landwirtschaftlichen Gesell-schaft
- 仏
- Règles de l'application de la loi de l'association agricole
農業學校規程
(のうげふがくかうきてい)農業學校に關する規則にして、同規程によれば、農業學校には甲乙の二種あり、甲種農業學校は修業年限を三年とし、其學科目は、修身、讀書、作文、數學、物理、化學、博物、經濟、體操幷に實業に關する科目及實習とす、但し本科目の外、地理、歷史、外國語、法規、簿記、圖畫及其他の科目を便宜加設する事を得べし、實業に關する科目は土壞、肥料、作物、園藝、農産、製造、畜産、養蠶病蟲害、氣候、林學大意、獸醫學大意、水産學大意より選擇し、又便宜分合して之を定むべきものとす、而して其入學資格は、年齡十四年以上、學力修業年限四年の高等小學校卒業又は之と同等以上とす、但し外國語を試驗科目に加ふる事あるべし、次に乙種農業學校は、修業年限三年にして、其學科目は、修身、讀書、習字、作文、算術、理科、體操幷に實業に關する科目及び實習とす、但し本科目の外、地理、歷史、經濟、圖畫及び其他の科目を便宜加設し、又土地の情況に依り、短期の教授を必要とする場合には、修身實業に關する科目の外、一科目若くは教科目を缺くことを得、賣業に關する科目は、土壤、肥料、作物、農産製造、家畜、養蠶、病蟲害、氣候等より選擇し、又は便宜分合して之を定むべきものあり、其入學資格は、年齡十二年以上、學力修業年限四年の尋常小學校卒業以上に於て之を定む。(三二年二月文部省令九號)
- 英
- Rule of agricultural school
- 独
- Ordnung der Ackerbauschule
- 仏
- Règlement de l'école agricole
農業行政
(のふげふぎやうせい)農業に關する行政には、農業に對する危害を豫防するを目的と爲すものと、農業の改良を圖るを目的とするものとあり、第一の目的に出づる重なるものは、害蟲驅除豫防にして、第二の目的に出づる重なるものは、肥料取締、農會、耕地整理之也。(二九年法一七號害蟲驅除法、三二年法九七號肥料檢査法、三三年法四五號蠶種檢査法、三二年法一〇三號農會法、三八年勅二二號農會令、三二年法八二號參照)
- 英
- Agriculture administration
- 独
- Landwirtschaftverwaltung
- 仏
- Ad-ministration agricole
農工銀行
(のふこうぎんかう)農工銀行は、農業工業の改良發達の爲め、資本を貸付するを以て目的とする株式會社なり、農工銀行は、其資本金を二十萬圓以上となさざるべからず、而して農工銀行は、下の事業を營むものとす、□一三十ケ年以内に於て、年賦償還の方法に依り、不動産を抵當として貸付を爲す事、□二年賦償還貸付金總高の五分の一に相當する金額を限り、不動産を抵當として、五年以内の定期償還貸付を爲すこと、□三市町村又は法律を以て組織せる公共團體に對し、無抵當にて以上の貸付を爲すこと、□四二十人以上の農業者又は工業者申合せ、連帶責任を以て借用を申出でたるときは、其信用の確實なるものに限り、五ケ年以内に於て、定期償還の方法に依り無抵當貸付を爲すこと、以上の貸付をなすは、下の事項に使用するを目的とするものならざるべからず、イ開墾、排水、灌漑及耕地土質の改良ロ耕作道路の築造又は改良、ハ殖林事業、ニ種苗、肥料其他農工業用原料の購入、ホ農工業用の器具、機械、舟車、獸畜の購入、へ農工業用建物の築造又は改良、ト其他農業の改良等とす、終りに農工銀行は、彼の勸業銀行、興業銀行と異なり、北海道又は一府縣を以て一營業區域となす、一營業區内に一行を設立することを得るものなり、尤も土地の情況に依り、勅令を以て、北海道又は一府縣を二以上の營業區域に分割することを得るものとす。(興業銀行法參照)
- 英
- Agriculture and industry bank
- 独
- Agrikultur und Gewerbe Bank
- 仏
- Banque agricole et industrielle
農工銀行法
農工銀行法とは、農行銀行の設立、及び營業、農工債券の發行、監督方法及び補助方法の原則を定めたる法律なり、(設立及び營業に就きては前項參照)農工銀行は、資本金四分の一以上の拂込ありたるときは、拂込金額の五倍を限り農工債券を發行する事を得、但し年賦償還貸付金總高を超過するを得ざるものとす、農工債券は券面額十圓以上にして、無記名利札付とす、尤も應募者若くは所有者の請求に依り、之を記名式となすことを得べし。(二九年四月法八四號)
- 英
- Law of agriculture and in-dustry bank
- 独
- Gesetz der Agrikultur und Gewerbe Bank
- 仏
- Loi de la banque agricole et industrielle
農工銀行補助法
(のふこうぎんかうほじよはふ)農工銀行補助法とは、農工銀行法に依りて設立せる銀行の營業を、政府に於て補助することを定めたる法律なり、即ち政府は農工銀行補助の爲め、其の營業區域を管轄する府縣に株式引受資金を交付するものにして、農工銀行は、此の府縣の引受けたる株式に對しては、創立初季より十年間は、利益配當を爲すを要せざるものなり。(二九年四月法八四號)
農事試驗場官制
(のふじしけんばくわんせい)農事試驗場の設置、職務及び其職員幷に定員に就て規定せられたる規則也、重要なる點を抄錄すれば下の如し、□一農事試驗場は農商務大臣の管理に屬し、下の事務を掌る、イ農産の增殖改良に關する試驗、ロ土壤、肥料、農産物、農産製造品、其の他農業上に關係ある物料の分析、鑑定及調査、ハ種苗配布、ニ巡回講話、□二農事試驗場に左の職員を置く、場長、技師、技手、書記、□三場長は技師を以て之に充つ、農商務大臣の指揮監督を承け場中全般の事務を掌理す、□四技師は上官の指揮を承け場務を掌る、專任技師は三十四人を以て定員とす、□五技手は上官の指揮を承け場務に從事す、專任技手は四十二人を以て定員とす、□六書記は判任とす、上官の指揮を承け庶務に從事す、專任書記は八人を以て定員とす、□七農商務大臣は必要と認むる地に農事試驗場支場を置き、農事試驗場職員を派し、本場の事務を分掌せしむることを得、□八農事試驗場及び支場の位置及名稱は、農商務大臣之を定む。(明治二六年四月勅一八號)
- 英
- Government organization for experimental farm
- 独
- Behördeordn-ung des praktischen Meierhofes
- 仏
- Or-ganisation de la ferme expérimentaire
農商工高等會議規則
(のうしやうこうかうとうくわいぎきそく)農商工高等會議は、農商務大臣の監督に屬し、農商工業に關する重要の事項に就き農商務大臣の諮問に應じ、意見を開申する補助機關なり、而して此農商工高等會議の遵則を、農商工高等會議規則と稱す、該規則によれば、該會は、議長、副議長各一人及議員三十人以内を以て組織するものにして、議長、副議長、議員及び臨時議員は、官吏又は農商工に關する學識若くは經驗ある者の中に就き、農商務大臣の奏請に依り之を命ずるものとす。(三〇年勅一八八號)
農商務省官制
(のうしやうむしやうくわんせい)農商務省に於ける其司掌する事務、及び分配職員等を規定したる勅令にして、大要下の如し、□一農商務大臣は、農、商、工、水産、林野、鑛山及地質に關する事務を管理す、□二大臣官房に於ては通則に揭ぐるものの外、内外博覽會に關する事務を掌る、□三農商務省專任參事官は四人、專任書記官は四人を以て定員とす、□四農商務省に專任技師四十一人、專任技手六十六人を置く、□四農商務屬は九十八人を以て定員とす。(三一年一〇月勅二八二號)
- 英
- Government organization of the Agricultural and Commercial Depart-ment
- 独
- Behördeordnung des Minis-teriums für Landschaft und Handel
- 仏
- Organisation du ministère de l'agriculture et du commerce
農商務省特許局
(のうしやうむしやうとつきよきよく)特許局は發明、實用新案、意匠及商標に關する事務を掌る處にして、農商務大臣の管理に屬す、特許局には圖書館を置き、審判及審査に關する圖書見本及雛形を保管せしむ。(三六年一二月勅二三四號特許局官制)
- 英
- Patent Bureau attached to the Agricultural and Commercial Depart-ment
- 独
- Patentamt zum Ministerium für Landschaft und Handel
- 仏
- Bureaudu brevet du ministère de l'agriculture et du commerce
能力
(のうりよく)通常能力と稱するものに二種あり、一を權利能力と云ひ、他を行爲能力と稱す、權利能力とは、私權を享有するの適格にして、日本臣民は貴賤の區別なく、老弱男女を問はず、すべて私權享有の能力を有するものとす、我民法は私權の享有は出生に始まると明定す、即吾人が母體を分離せられたる瞬間より、財産を所有し、權利の主體となる事を得るの能力を有する也、而して此能力の終期は、死亡の時期にあること敢て言を俟たざる所とす、次に行爲能力とは、私權を實行するの適格なり、即ち享有したる私權を法律上有效に移轉し、變更し、若くは消滅せしむることを爲し得るの能力を謂ふ、私權の享有は、何人も之をなし得と雖も、私權の行使は必ずしも然らず、法律上の成年者にあらざれば、獨斷にて之をなすことを得ざるものとす、未成年者が私權を行使するには、法定代理人の同意を要するものにして、法律上行爲能力を有せざるものを無能力者と云ふ、以上の外、意思能力、物の取引能力等の用法あり、されど此等は、以上の權利能力行爲能力の設明に依りて類推し得べし。(主體、主格の部參照)
- 英
- Capacity; Faculty
- 独
- Fähigkeit; Facultät
- 仏
- Capacité; Faculté
能力刑
(のうりよくけい)能力刑は一に名譽刑とも稱す、法律上吾人の享有する資格を剝奪する刑なり、舊刑法上、能力刑に左の二種あり、剝奪公權、停止公權是なり、剝奪公權は、重罪の附加刑にして、停止公權は、輕罪の附加刑なり、剝奪公權は、吾人の享有する左の資格を終身喪失せしむるものとす、□一國民の特權(國民の特權とは、日本國臣民として特に有する權利即ち外國人の享有することを得ざる權利なり、假へば參政權、兵籍に入るの權等之に屬す)、□二官吏となるの權、□三勳章、年金、位記、貴號、恩給を有するの權、□四外國の勳章を佩用するの權、□五兵籍に入るの權、□六裁判所に於て證人となるの權、但し參考人として事實を陳述するは此の限にあらず、□七後見人となるの權、但し親族の許可を得て子孫の爲めにするは此限にあらず、□八分散者の管理人となり、又は會社及び共用財産を管理するの權等是也、停止公權は、一定の期間(刑法の各本條に定む)前上の資格を停止するの刑とす。(舊刑三一條乃至三四條)
- 英
- Punishment to capacity
- 独
- Fähigkeitsstrafe
- 仏
- Peine à la capacité
能力者
(のうりよくしや)ある種の法律上の行爲を爲すことを得るものを能力者と云ふ、一般法律行爲の能力を有するものは、勿論能力者にして、我民法は、滿二十年を以て成年とし、成年者を以て能力者とせり、能力者は、法律行爲を獨立してなすこと得るものにして、二十年以下の未成年者は、法律行爲を爲すには、原則として法定代理人の同意を得ることを要するもの也、我民法は、無能力者を年齡により區別するのみならず、尚年齡に拘はらず、神心喪失の狀況にある禁治産者、神心耗弱者、聾者、啞者、盲者、及び浪費者たる準禁治産者、妻等も無能力者とせり、又婚姻能力の如きは、男は十七歳、女は十五歳にして、遺言能力の如きは滿十五歳なりとす。(無能力者の部參照)
- 英
- Capable person
- 独
- Handlungs-fähiger
- 仏
- Capable
延取引
(のべとりひき)凡そ賣買取引を分ちて三種となすことを得、□一直取引、賣買契約成立と同時に、取引行爲を完了するものを直取引と云ひ、尤も慣習其の他の規定に依り、其間數日あるも固より差支なし、我取引所法が、此期日を六日間とし、此の期間に取引を了したるときに之を直取引とするが如きこの例なり、□二定期取引、賣買完了後一定の時期に於て、其取引を了するものを定期取引と謂ひ、彼の通俗に謂ふ處の株式取引所等に於ける取引は、普通この方法に從ふ、□三延取引、賣買雙方の約定に依り、取引を後日に延す取引を延取引と云ひ、理論上に於ては、定期取引もこの一種なれど、普通は之を除外して其意義を定む、我取引所法に於ては、賣買契約履行の期限が、取引當日より百五十日以内に於て、賣買雙方の約定の日限に依りて定まるものを謂ふ。(取引所法一八條及び定期取引、直取引、空取引の部參照)
賣淫
(ばいいん)女子が報酬を得て男子と同衾するを賣淫と云ふ、通俗に淫賣とは、法律上の正確なる意味に於ての密賣淫を指していふ處の語にして、茲に所謂賣淫は、廣く淫賣及び娼妓の客に對する醜行をも意味するものとす、淫賣は、もとより風俗上の取締を要する行爲にして、刑法上の制裁を設く、娼妓は國家の許可を得て之を營業となすものなれば、一定の規律の下に其行爲を認許せらるるものとす、國家が賣淫に對して採る處の主義は、之を大別して三と爲すことを得、一は防壓主義、二は放任主義、三は許容主義之なり、□一防壓主義は古代の猶太國に於て行はれ、又▲〇ゲルマン人種の間には、淫賣婦を死刑に處せしことあり、此主義は、賣淫を根本より除去する事を目的とす、然れども現今の社會の狀態に於ては、賣淫を全滅するは殆ど不能に屬するが故に、賣淫に對しては放任主義を採るか、許容主義を採るの外なし、□二放任主義は英吉利、那威、和蘭等に行はる、此主義を維持する者の説によれば、賣淫は女子自身に對する罪惡なるべきも、爲めに男子の權利を侵害する事なきものなれば、法律が關係すべき所にあらず、隨つて國家は之に干渉すべき權利なしと云ふにあり、然れども賣淫が社會の風紀、公衆の衞生に關係すること頗る大なるを以て、國家が之に對して、相當の處置を爲すは決して不當にあらず、□三許容主義は賣淫を以て、根治す可らざる社會の一弊害なりと認め、然も之より生ずる害を成るべく減少せんが爲め、相當の制限を設くるものにして、現今の多數の文明國の採る處也、我邦も亦此主義を採る、而して現今の傾向は風俗上並に衞生上より制限を設け、而も衞生上の制限に重きを置く傾あり、風俗上の制限の重なるものは、イ淫賣婦をして外部を誘惑する機會を少からしむるにあり、例へば道路に於て客を誘ふことを禁じ、又は賣淫婦をして一定の場所に住居せしむるが如き之なり、賣淫婦をして、一定の場所に限りて住居せしむる制度は、公衆と賣淫婦とが相接觸する機會を少くする利あれども、賣淫婦をして悉く此制限に服せしむること頗る困難にして、却て私の賣淫婦を增加せしむるの弊あり、ロ賣淫婦をして生業に就く機會を得しむるにあり、例へば其廢業を自由にするが如きこれなり、衞生上の制限の重なるものは檢黴制度なり、此制度は、病毒の傳播を拒ぐには有效なれども、之を勵行すること困難にして、又動もすれば道德上の要求と衝突するの虞あり、次に密に賣淫を爲し、又は其媒合、容止を爲したる者は、三日以上十日以下の拘留に、又は一圓以上一圓九十五錢以下の科料に處せらるべきものなり。(舊刑四二)五條一〇號、娼妓取締規則參照)
- 英
- Secret prostitution
- 独
- Prostitu-tion
- 仏
- Prostitution secrète
廢家
(はいか)一家の戸主が其家を廢絶せしむる意思を以て、任意に戸主權を抛棄する事を廢家と云ふ、一家の離散廢滅する場合は一にして足らず、戸主の任意なる行爲に因ることあり、又自然的に消滅することあり、前者は廢家にして、後者は絶家なり、新に家を立てたるものは、其家を廢して他家に入ることを得るは、我民法の認むる處なり、新に家を立てたるものは、相續によりて、戸主となりたる者にあらざる者を云ふ、故に一家新立者の相續人は、新に家を立てたるものにあらざるを以て、廢家をなすことを得ざるものとす、又廢家若くは絶家を再興したるものは、固より相續にあらず、又新立にもあらず、故に廢家の途なし、家督相續によりて戸主となりたる者は、其家を廢することを得ざるは原則にして、之家族制度の精神にして、成るべく家の廢滅を欲せざるより來るものなり、然れども一家の存續より重大なる事情あるときは、相續に因る戸主と雖も廢家をなすことを許さる、即ち本家の相續の爲めか、若くは再興、其他正當なる事由に因り、裁判所の許可を得たる場合は之に屬す、注意すべきは本家の相續再興の爲め發家するは、當然正當の理由なれば、裁判所の許可を要せざるものとす、次に廢家と絶家とは同一にあらず、廢家は戸主の意思によりてなすものなるも、絶家は自然に生ずるものにして、戸主を失ひたる家に家督相續人なき場合の如きを云ふ、又廢家は戸主權の喪失なる點に於て隱居と同一なるも、亦同一のものにあらず、□一隱居は豫め相續人の承諾を要するも廢家は否らず、□二隱居者は隱居によりて家督相續人の家族となるも、廢家をなしたるものは廢家によりて、他家の家族となり又は戸主となるにあり、廢家を爲さんとするものは、下の書面を添へて戸籍吏に屆出でざるべからず、家督相續に因りて、戸主となりたるものにあらざることの證明書、又は廢家の許可に關する裁判の謄本を添へて之を屆出づることを要す、廢家屆には□一廢家したる者が入るべき家の戸主の氏名、出生の年月日、職業及び本籍地、□二廢家したる者に隨ひて他家に入る者の氏名、出生の年月日及び職業等を記載せざるべからず。(民七六二條乃至七六四條、戸籍法一五二條)
- 英
- Abolishment of house
- 独
- Abschaff-ung des Hauses
- 仏
- Abolition de la maison
媒合
(ばいがふ)媒合とは、意思の投合を媒賣することを云ふことにして、我舊刑法に「介淫の媒合云々」の字句あり、密賣淫の媒合とは、密かに淫賣せんとする者と、其の相手方との意思の投合を媒介する意にして、一の幇助行爲なり、密淫賣の媒合をなしたる者は、三日以上十日以内の拘留を受くるか、又は一圓以上一圓九十五錢以下の科料に處せらるるものとす。(舊刑四二五條一〇號)
廢刊
(はいかん)發行を廢止するの意なり、新聞紙又は雜誌等の刊行物の發行の廢止を謂ふ、廢刊は任意に出づる事あり、又法律の制裁に因ることあり、外務大臣、陸海軍大臣に於て、記載を禁じたる事項を揭載し、又は皇室の尊嚴を害し、朝憲を紊亂する事項を記載し、議會の秩序又は風俗を壞るべき事項を記載せるときは、内務大臣は新聞紙、雜誌の發賣頒布を禁ずる事を得るものとす、廢刊と休刊とは異なるものにして、廢刊は永久的消滅にして、休刊は一時發行を停止するに過ぎざるなり。(新聞紙條例二三條、非訟手續一四五條二項)
- 英
- Cease to publish
- 独
- Abschaff-ung der Herausgabe
- 仏
- Cesser de publier
廢棄
(はいき)訴訟法上の用語にして、原判決又は原訴訟手續を取消すをいふ、控訴裁判所が控訴を理由ありとする時は、原裁判或は其手續を取消すべきものにして、之を廢棄と稱す、上告裁判所に於ては、原裁判を取消す場合を破毀と稱して、この廢棄と區別す。(民訴四二三、四四七條)
- 英
- Abatement
- 独
- Aufhebung
- 仏
- Annulation
賣却金
(ばいきやくきん)或物又は權利を賣却して得る代金を賣却金と稱す、彼の公賣處分に於て、家屋、貨物を賣却して得たる代金の如き即ち是なり。(執達吏手數料規則一二條四項)
- 英
- Money for sale
- 独
- Verkaufs-geld
- 仏
- Argent pour la vente
賣却條件
(ばいきやくでうけん)ある物又は權利を賣却するに就き定めたる條件なり、賣却條件は、一私人間の賣買に於ては、賣買契約を爲すに當り、隨意に之を定むることを得るものにして、例へば或土地を賣買する一方の賣主は、買主に於て土地の負擔(例へば賣却すべき土地は、抵當權の目的となり居る場合の如き)を引受るを條件として、賣却を約するが如し、次に公賣即ち強制競賣の場合に於ては、法律に於て其賣却條件を定む、之を法律上の賣却條件と稱す、即ち下の如し、□一最低競賣價格の設定、□二賣却代金を以て不動上の總ての負擔を辨濟し、剩餘ある見込あるにあらざれば、競賣を許さざる制限、□三競買人の保證を立つべき義務及び其方法、□四競買人が其申出たる競買價格に就きて覊束せらるる責任及び其免除、□五競買人が事變に依り生ずる競買取消の權利、□六不動産上の負擔の免除及び引受、□七競落人の不動産所有權の取得、□八不動産引渡は代金支拂の後にあらざれは之を許さざる制限、□九賣却代金徵收の時期、以上の賣却條件中一乃至五に於ける事項は、競賣に關する條件に係り、又六乃至九に於ける事項は、競落に關する條件に係る、而して右條件中、一の最低競賣價格を除く外、二以下の條件は、利害關係人が一致の合意を以て之が變更を爲す事を得べし、而して法律上の賣却條件を變更したるときは、民事訴訟法に於て之を特別の賣却條件と稱す、此特別の賣却條件の設けあるときは、競賣期日を開きたる際各人に之を告知せざる可らざるが故に、賣却條件を變更する合意の申立は、競賣期日前に之を爲さざるべがらず、而して一に於ける最低競賣價格に限り、利害關係人の一致の合意を以ても、之を變更することを許さざる理由は、蓋し之を隨意に變更することを得しむるときは、如何なる低價に賣却を爲すも量り難く、元來公益を保護するために、法律が此最低競賣價額を設定することを命じたる目的に背反するに至ればなり、以上の賣却條件に背きて競落を爲したるときは、利害關係人は異議の申立を爲すことを得るものとす。(民訴六四九、六五五、六五六、六六三條乃至六六五條、六七八、六八六、六八七、六九三、七〇五條、民施五一條)
- 英
- Condition of sale
- 独
- Ver-kaufsbedingung
- 仏
- Condition de la vente
配偶者
(はいぐうしや)法律上有效なる婚姻を爲したる男女は、各自配偶をなしたる者にして、其者の一方は、他方に對して配偶者と謂ふ、例へば夫婦は配偶にして、夫婦の一方は他の一方に對して配偶者なり、妻は夫に對して配偶者にして、夫は妻に對して配偶者なり。(民七二五、七二六、七二九、七三〇、七三八、七六六、七七一條)
- 英
- Consort
- 独
- Gatte und Gattin
- 仏
- Conjoint
徘徊
(はいくわい)特定の住居なく、平常營生の産業なくして、諸方何處ともなくさまよふことを謂ふ、多くは浮浪、乞食の徒なるべきが故に、斯かる類の徒は得て不正なる所業を爲すの危險あるを以て、刑法は三日以上十日以下の拘留、一圓九十五錢以下一圓以上の科料に處すべきものとせり。(舊刑四二五條一二號)
- 英
- Wandering about
- 独
- Herum-ziehen
- 仏
- Errer
廢業
(はいげふ)業務を廢止することを廢業と云ふ、廢業とは、商業の廢止及び商業以外の業務を併稱す、商事會社が解散により業務を廢するが如き、其他の店舖又は商人等が業務を廢するが如し、又商業以外の業務の廢止とは、娼妓の廢業、其他大工、左官等の職業廢止を指稱するものとす。(營業税法一三條)
- 英
- Giving up business
- 独
- Abschaff-ung des Geschäftes
- 仏
- Abandonnement des affaires
廢止
(はいし)既存の事物を將來に於て消滅せしむる作用を廢止と云ふ、法律命令等の廢止及び其他物の廢止を包含す、法律命令の廢止とは既存の法令を、將來に於て消滅せしむることを謂ひ、明示の廢止、默止の廢止となすことを得、命令を以て法律を廢止するを得ず、法律を以て憲法を廢止するを得ざるは、我憲法の明規する處なり、之れに反して憲法を以て法令を廢止し、法律を以て命令を廢止することを得るは明かなり、明示の廢止とは、既存の法令を法律を以て廢止することを明定するを謂ふ、默示の廢止とは、既存の法令と矛盾せる法令を發布して、彼の「新法は舊法を廢す」との格言により、舊法は暗に廢せらるるに至るが如きを謂ふ、次に物の廢止例へば建築の廢止と云ふが如きは、建物の築造を將來に爲さざるを云ふ、又商號の廢止と云ふが如きは、既に使用し來れる商號を將來に於て廢棄するを云ふが如し、廢止は變更と異なる、變更は一の消滅に代へて他の事物の成立を意味するも、廢止は一物の消滅して、他に何物をも代はることなき狀態にある事を云ふものとす。(民二三四條、商二四條、憲法九條)
- 英
- Abolishment
- 独
- Abschaffung
- 仏
- Abolition
癈疾
(はいしつ)不具とも云ふ、刑法上の癈疾とは、一目の視能喪失、一耳の聽能喪失、一肢の實體又は作用喪失、及其他身體を殘虧するを謂ふ、身體の殘虧は、耳鼻を殺き、唇を斷ち又は指を失はしむる等、外見を變更すべき程度の傷害也、之を切斷したる後、人工的に修補する事を得ると否とに論なし、(例、造鼻術)衣服に蔽はるべき個處を除外すべきや否やに就きては議論あり、何れも永久的たるを要す、先に一目の明を失ひ又は一手の用を缺ける者の、殘れる一目一手を失はしむるは奈何、現行法の解釋としては、癈疾に致したるものとする外なし、同一人に對し、異種の癈疾的傷害二以上を併發したる場合は奈何、同じく癈疾に致したるものとするの外なし、著しく視力又は聽力若くは四肢の用を減衰せしめたるときは奈何、身體の殘虧に伴はざる以上は、二十日以上の疾病に致したるものとする外なからん。(篤疾及舊刑三〇〇條參照)
- 英
- Maim
- 独
- Verkürzung
- 仏
- In-firmité
賠償額
(ばいしやうがく)損害を賠償すべき數額を賠償額と云ふ、損害を賠償するに、金錢を以てなすものと、實物を以てなすものとあり、前者を金錢賠償と云ひ、賠償すべき金錢を賠償金と謂ふ、我法典は、損害賠償は當事者に反對の意思なき限は、金錢を以て其額を定むるものとせり、損害賠償の原因には、債務不履行に因るものと、不法行爲に因るものとあり、兩者は賠償額に付て多少の差あり、先づ債務不履行に因る賠償額より説明せんに、不履行に因りて通常生ずべき損害を賠償せしむるを以て原則となす、例へば米商人が買入れたる米の引渡を得ざるため、之を轉賣して利益を得ること能はざりし損害は、通常生ずべき損害にして、賣主は、其損害を賠償せざるべからざるが如し、されど特別の事情に因りて生じたる損害と雖も、當事者が豫見し又は豫見し得べかりしときは、賠償の義務あるものとせり、特別の事情に依るものとは、例へば債權者が、賣買の目的物を第三者に賣渡す契約に附隨して、一定の時期迄に引渡さざるときは、幾何の違約金を支拂ふべき契約をなしたる場合の如き、當事者が此契約を知り又は知る事を得べきに拘らす、知らずして一定の期日に其引渡をなさざるときは、買主たる債權者に對し、賣主は違約金賠償の責任あるが如き之なり、金錢を目的とする債務不履行の賠償額は、法定利率(即ち年五分、商事取引は年六分)に依りてこれを定むるものにして、債權者は損害の證明を要せず、且つ不可抗力を以て其賠償責任を免るるの理由となす事を得ざるものとす、蓋し金錢の用途は甚だ多くして、豫め測るべからざればなり、但し約定利率が法定利率に超ゆるときは、約定利率に依るものとす、此場合にも、法定利率により計算するものとせば、履行遲滯により、債務者却て利益を得るの結果を來せば也、次に當事者は、債務の不履行に就き、損害賠償の額を豫定することを得るものとす、之を豫定賠償と稱す、豫定賠償は、裁判所其額を增減することを得ざるものとす、されど利息制限法により、豫定賠償は、實際受けたる損害に超過するときは、裁判所は正當の減少をなすことを得るもの也、尤も此の規定は、商事には適用なし、又違約金は豫定賠償と其性質を異にす、豫定賠償は其の名の如く、損害賠償額の豫定に過ぎず、これにより權利者の利益の程度も確定し、損害賠償の計算の困離と危險とを避くるの目的を有す、故に若し一定の賠償の意思表示にして、此の目的なく、又は此目的と共に義務者を強制し、義務の履行を確保する目的を有するときは、これを違約金と云ふ、ただ意思表示が如何なる性質を有するかは、之を確定すること往々困難なるが故に、我國法は違約金もまた賠償額の豫定と同一視せり、不法行爲に因る損害賠償は、債務違反の一般原則を適用し、唯被害者に過失あるときは、裁判所は損害賠償の額を定むるに就き、之を斟酌することを得となし、債務違反の場合は損害賠償の責任を全然免除する事あるに拘はらず、不法行爲の場合は、單に其賠償額に付てのみ斟酌するに過ぎず、又債務違反の場合は、必ず斟酌をなさざるべからざるも、不法行爲の場合は、斟酌をなすと否とは、裁判官の隨意なるの點に於て異るもの也。(民四一六條乃至四二〇條、七二二條)
- 英
- Amount of compensation
- 独
- Ersatzsumme
- 仏
- Somme de l'indemnité
賠償義務
(ばいしやうぎむ)損害を塡補する法律上の義務を賠償義務と稱す、損害賠償の義務は、契約より生ずるときは、其發生の條件は契約により定まる、(損害保險の如き)其法律の規定に基く場合には下の條件を要す、□一責任原因の存在すること、即ち法律が損害賠償の責任の原因として定めたる事實あることを要す、例へば債務の違反、不法行爲等是也、一定の人の行爲の結果として損害を生ずるも、責任原因なきときは損害賠償の義務を生ぜず、例へば家屋建築の結果として、隣家の眺望を妨ぐるも、損害賠償の責任なきが如し、責任原因は、通常故意又は過失による他人の權利の侵害に基く、□二損害あること、責任原因あれば害之に伴ふを常損とす、されど必ずしも然るにあらず、茲に於てか損害賠償に實害の存在を要するや否やに就き見解を異にし、英國の主義にては、苟も責任原因あれば必ず損害あるものと推定す、他は大陸主義にして、必ず實害あることを要すとなす、英國の主義は、權利を重ずるの點より出でたるものなれども、損害なきに之を賠償せしむはる目的に適せず、又權利侵犯の制裁は、必ずしも損害賠償を以てするの必要なく、他の制裁を加ふる事を得るを以て、我國法もまた實害を要するの主義を採用せり、□三損害は義務者に基因すること、私權上の損害の責任は、刑法の犯罪の責任と同じく二ケの條件に基く、即ち責任者と損害との客觀的及び主觀的の連絡之なり、責任者と損害との客觀的の連絡は、因果關係により生ず、損害が義務者により生じたるにあらざれば之を義務者に歸することを得ず、責任者と損害との主觀的連絡は過失によりて生ず、損害が義務者の過失に基くにあらざれば、これを義務者に歸することを得ず、損害が義務者に基因し、即ち義務者の行爲と損害との間に因果關係ありと云ふには、其行爲が其損害を惹起すに適當なる條件たることを要す、適當なる條件とは、偶然ならざる條件と云ふの意味にして、其行爲より其損害を生ずべき行爲の當時に於て、客觀的に豫見することを得るときは、其行爲は其損害の適用條件なり、故に義務者の行爲を損害の原因となすには、其行爲が其損害を生ずるの條件たりしを以て足れりとせず、適當條件なることを要す、條件の關係あるときは、直に因果關係ありと云ふの説は刑法上に於ては通説なりと雖も、私法上に於ては採用すべからず、□四損害は義務者の責任に歸すべきこと、此の點に關しては二箇の主義あり、一は苟も損害にして義務者に基因するときは、之を義務者に歸すべしとなし、一は損害を義務者に歸するには、單に義務者に基因するを以て足れりとせず、尚義務者の過失に出でたることを要す、法律觀念の發達せざる古代の法律は、原因主義を採れりと雖も、近世の法律は、皆過失主義を採れり、我國法もまた之れに從ふ、過失と因果關係とは全く獨立せる觀念にして、又獨立せる損害賠償の條件也、過失あるも必ずしも因果關係あるにあらず、因果關係あるも必ずしも過失あるにあらず、故に過失あるや否やの法律的判斷と、因果關係あるや否やの事實的の決定とは、別々に之を判定すべく、相混同するを許さず、茲に過失とは故意及び過失を包含す、即ち其結果を豫見し又は豫見し得べかりしに拘はらず、其行爲を爲したることを云ふ、我國法は過失主義を採ること上述の如きも、而かも又此の原則に對し例外を認め、過失なくして賠償の責に任ぜしむることあり、其重なる場合は左の如し、イ債務に付ては、履行遲延の場合其重なるものにして、旅店、飮食店、浴場等の主人の責任等これなり、ロ不法行爲に付ては共同行爲者中何人が加害なるか不明なる場合の如き之れなり、ハ特別なる法律の規定より生ずる場合は、無權代理行爲等これに屬す。(民四一五、七〇九條)
- 英
- Obligation of compensation
- 独
- Pflicht des Ersatzes
- 仏
- Obligation de l'indemnité
廢職
(はいしよく)事務の消滅又は事務の併合の爲め、或官又は公の職を廢滅するを廢職と謂ふ、而して廢職の内單に官職の廢滅せる場合を廢官と云ふものとす、廢官又は廢職は、官吏又は公吏關係の消滅原因となるものにして、其免官又は免職の辭令を待たず、當然其分限を失ふに至る。(文官分限令四條、陸軍將校分限令四條)
- 英
- Abolishment of official position
- 独
- Aufhebung des Amtes
- 仏
- Abolition de la poste officielle
廢官
陪席判事
(ばいせきはんじ)合議裁判を構成する一員にして、裁判長以外の凡ての判事を陪席判事と云ふ、裁判所の訊問は、裁判長のなす處なれども、陪席判事も亦裁判長に告げて被告人(民事訴訟に於ては當事者)證人、鑑定人等を訊問することを得、陪席判事の訊問は、裁判長の許可を受けてなすべきものにあらず、唯訊問する旨を告ぐるを以て足れりとす、陪席判事は、合議裁判所にあるものなれば、區裁判所には之なし、蓋し區裁判所に多數の判事在職するも、所謂裁判をなす機關は、各一人の單獨判事にして、在職者の多少により、影響を來さざるものなればなり。(民訴一〇九、一一二、三一五、三二二條、刑訴一九四條二項)
- 英
- Assessor
- 独
- Beisitzer
- 仏
- Assesseur
廢絶家
(はいぜつか)廢家及び絶家を併稱する語なり、廢家及び絶家の部參照すべし。(民七三一條等)
- 英
- Abolishment of house
- 独
- Abschaffung des Hauses
- 仏
- Abolition de la maison
敗訴
(はいそ)敗訴とは、民事訴訟に於て使用する文字にして、刑事訴訟に於ては使用せず、即ち被告に不利益なる判決を與へらる場合を指して被告の敗訴と云ひ、原告の不利益なる判決を受けたるときは、原告の敗訴と稱す、然れども裁判の形式に於ては原告の敗訴の場合は、訴或は請求の却下若くは棄却にして、被告の敗訴の場合は原告の請求する何々を支拂ふべしと云ふが如き判決ある場合を謂ふ。(民訴五九條及び勝訴の部參照)
配當
(はいたう)金錢又は物件を多數の者に分配することを配當と謂ふ、或事業に依りて得たる利益を各出資者に分配するが如き、例へば組合又は會社が、其事業に依りて得たる利益を組合員又は社員、株主等に分配するを指し、或は強制執行又は破産等の場合に於て、其の債權者に、債務者の差押財産の賣得金又は破産財團に屬する換價金を分配するが如きこれなり、尤も配當を、以上の分配に依りて、各人に歸屬したる部分を指すこともあり、されどこは適當の用例にあらざるは素よりなりとす。(民訴六三八、六三九條、破産法八章、商六七條一項)
- 英
- Distribution
- 独
- Vertheilung
- 仏
- Distribution
配當案
(はいたうあん)破産者の財産を配當する場合に用ふる書面にして、普通債權調査會が終りたる後、配當に足るべき財團の生ずる每に、破産管財人の調製して、破産主任官の認可を受くるものとす、即ち破産財團の配當は、此配當案によりてなすべきものとす。(破産法一〇四六條)
- 英
- Bill of dividend
- 独
- Vertheil-ungsbill
- 仏
- Note du dividende
配當額支拂證
(はいたうがくしはらひしやう)民事訴訟法による配當手續に於て、配當を受くべき債權者に交付すべき書面也、債權者は、之により配當額手領の權利を實行するものとす、民事訴訟法に、裁判所は配當表に依りて左の手續を實施すべし、債權全部の配當を受くべき債權者には、執行力ある正本又は債權の證書を差出さしめ、之に配當を記入して返還し、且つ配當額支拂證を交付すると同時に、右債權者より金額を證記したる受取證を差出さしめ、之を債者に交付すべしとあるは即ち是なり。(民訴六三九條)
配當期
(はいたうき)利益の配當をなすべさ時期を云ふ、會社は年一回又は二回の配當期を定む、然れども此配當期を定めたるの故を以て、必ず配當の之に伴ふべきものにあらず、利益を生ぜざる場合には、配當することを得ざればなり、財産目錄、貸借對照表等は、年一回必ず之を調成せざるべからず、加ふるに年二回以上利益の配當をなす會社に於ては、每配當期に之を作成せざるべからざるものとす。(商二六、二七條)
配當裁判所
(はいたうさいばんしよ)配當手續に關する訴訟を管轄する裁判所を云ふ、配當は執行裁判所のなすべき行爲にして、強制執行機關としての執行裁判所は、配當手續にまで進みて配當裁判所となる、通常執行裁判所即ち配當裁判所は區裁判所にして、土地の管轄に就きては各個の場合に於て、執行手續をなす地又は之を爲したる地の區裁判所の管轄に專屬するものとす、又不動産に就きては不動産所在地の區裁判所配當裁判所たり。(民訴六四、五九三條)
- 英
- Court of distribution
- 独
- Vertheilungsgericht
- 仏
- Tribunal du di-vidende
配當手續
(はいたうてつづき)廣く配當手續と云へば配當に關する總べての手續なり、動産に對する配當手續は、競賣期日又は金錢差押の日より十四日の期間内に、債權者間の協議調はざる爲め、金額を供託したるとき爲すべきすのとす、又破産法に於ける配當手續とは、破産財團より生ずる訴訟費用及び管理費用、其他の手數料及び諸税、又は破産管財人が財團の爲めに負ひたる義務より生ずる債權、其他優先權を有する債權者に債務を支拂ひ、殘餘の配當を各破産債權者に分配する訴訟手續を云ふ。(民訴六二六、六三九條、破産法一〇四五條乃至一〇四九條)
- 英
- Distribution procedure
- 独
- Vertheilungsverfahren
- 仏
- Progrès du dividende
配當表
(はいたうへう)強制執行に於て、各債權者の元金、利息、諸費用其他附帶の債權に就き差出したる計算書に基き調製する書類を配當表と謂ひ、動産に對する強制就行に於ける配當に於ては、各債權の元金、利息、費用其他附帶の債權に就き差出したる計算等、執達吏又は第三債務者より提出したる屆書其他憑證書類に依り調製し、不動産及船舶に對する強制執行に於ては、各債權者の元金、利息、費用其他附帶の債權に就き、差出したる計算に依り調製すべきものにして、之に依りて其配當を實施するものなり。(民訴六二九、七一七、七二八條)
- 英
- List of distribution
- 独
- Ver-theilungsplan
- 仏
- Liste du dividende
配達郵便局
(はいだついうびんきよく)凡そ郵便局は、郵便局所を通じて受取人に交附せらるべきものとす、今或郵便物が、特定の郵便局所に依り、指定の受取人に交附せられしときは、其の郵便局所は其の郵便物に對して、所謂配達郵便局となるなり、恰も配當を實施する裁判所を配當裁判所といふに同じく、配當を實施する郵便局は即ち配達郵便局なりとす。(郵便規則四三條)
- 英
- Delivery post office
- 独
- Verteilungspostamt
- 仏
- Bureau de poste de la délivrance
配達先登記料
(はいだつさきとうきれう)電報を受くる者其配達場所を指定せんとするには、通信局に請求して配達先の登記を受くべし、而して其登記料金を配達先登記料と云ふ、配達先登記料は、一箇每に年額十二圓とす、局渡料は證票一箇每に年額金六圓とし、之等の料金は、年額を二分し、一期分每に登記又は交附を受くる電信局所に前納すべきものにして、一二等局及在外電信局所にありては、通貨を以て納付すべきものとす、(第一期は四月一日より九月三十日迄にして、第二期は十月一日より三月三一日迄とす)其他一期の途中に於て、配達先の登記を受けたるときと雖も、其期の料金を全納すべきものとす。(三三年九月遞信省令四七號)
配達證明
(はいだつしやうめい)郵便物の特殊取扱の一種にして、差出人の請求に基き、書留又は價額表記の通常郵便物、及び小包郵便物の配達を終りたる場合に、配達郵便局所より、其配達の證明書を差出人に送付する取扱方法を云ふ、配達證明なる特殊取扱を受けんとする者は、郵便物一箇に付き金三錢を納むべし、之を配達證明料と云ふ。(郵便規則四二、三五條)
- 英
- Delivery certificate
- 独
- Rückschein
- 仏
- Certificat de la délivr-ance
廢置
(はいち)官廳、自治公共團體等の消滅或は其併合により廢滅するを廢と云ひ、新に設けらる方を置と云ふ、例へば府縣町村の廢置分合と云へば、或甲町村と乙町村と合併して、新に一の町村を作るが如き、其併合せられたる町村は消滅に歸し、更に別種の新しき町村を生ずるを併稱して廢置と云ふが如し。(市町村制、府縣制、郡制參照)
- 英
- Abolishment and establishment
- 独
- Abschaffung und Gründung
- 仏
- Aboli-tion et établissement
廢除
(はいぢよ)舊法にいへる廢嫡のことにして、相續順位に在る法定の推定家督相續人が、其の地位より排斥せらるるを廢除と云ふ、相續人の廢除は、被相續人より裁判所に請求せざるべからず、廢除は、下の如き理由に因るを要す、イ被相續人に對して、推定相續人が虐待を爲し又は重大なる侮辱を加へたること、ロ推定相續人が疾病其他自體又は精神の狀況に因り、家政を執るに堪へざるべきこと、ハ推定相續人が家名に汚辱を及ぼすべき罪によりて、刑に處せられたること、ニ推定相續人が浪費者として準禁治産の宣告を受け、改悛の望なきこと等にして、以上の中其一の理由を有すれば足る、其他正當なる理由の存する場合は、廢除をなす事を得るものとす、謂ふ所の正當なる理由なるや否やは、裁判官の認定によるべきものにして、例へば極めて貧困なる家の推定の法定家督相續人を、他家に收養して之を教育せんと欲する場合の如き、廢嫡の上本人をして他家に入ることを得しむるなどは、實際有益且つ必要にして、從來の慣例も、亦普通に斯の如きを廢嫡の理由と認めたり、被廢除者は廢除により法定の相續人たる地位を失ふも、相續人に選定せらるるは毫も妨なき處たり、之相續の缺格者と異なる處にして、被廢除者は、全然相續人たる地位を剝奪せられたるものにあらずして、唯法定の推定相續人たることを拒まれたるに過ぎざるものとす。(民九七五、九六九、九八二、九八四條)
- 英
- Disinheritance
- 独
- Enterbung
- 仏
- Exhérédation
賣得金
(ばいとくきん)廣く賣得金といふときは、其賣買に依りて得たる金錢たると、強制賣買に依りて得たる金錢とを包含すべきも、普通は、任意の賣買に依りて收得すべき代金を、此賣得金なる意義中より除外し、單に強制賣買即ち強制競賣等に依りて得たる代金のみを指す、例へば民事訴訟法の規定に依りて差押へられたる物又は權利を、同法の規定に從ひ賣却して得たる代金の如き是なり。(民訴五六五條)
- 英
- Proceeds
- 独
- Einkommen
- 仏
- Produit
賣買
(ばいばい)賣買とは、當事者の一方が、或財産權を相手方に移轉することを約し、相手方が之に其代金を拂ふことを約するに因りて、其效力を生ずるもの也、賣買は一の契約にして、賣主と買主とが相互に義務を負ふに止まり、必ずしも直ちに權利移轉の效果を生ずるものにあらず、尤も物權的賣買契約の如きは、直に權利移轉の效果を伴ふが如しと雖も、正確なる法理上の解釋としては、賣生、買主相互に義務を負ふことと、分離して觀察することを得べきものとす、即ち賣主は、財産權移轉の義務を負ひ、目的物を引渡さざるべからず、又其引渡以前は、善良なる注意を以て保管せざるべからず、且つ其引渡したる賣買の目的物に瑕疵あるとき、例へば物が賣主の所有物にあらざるときの如き、或は隱れたる瑕疵ある等の場合は、元來完全なる物を目的として、賣買の契約を爲したるものなれば、賣主は其責を負はざるべからず、次に買主は、代金を支拂はざるべからず、代金を支拂ふことなくして財産權を取得するは、賣買にあらずして贈與なり、又一定の支拂期限後は、其利息を支拂はざるべからず、且つ賣主より引渡すべき目的物を受取るの義務を負ふものとす、賣買は之を分ちて、□一現金賣買、掛け賣買、前拂賣買、荷爲替賣買、此區別は代金支拂の時期方法に依りて區別せるものなり、□二卽時賣買、定期賣買、延賣買、此區別は取引の即時に完了せると否とに依て區別せるものとす、□三見本賣買、現物賣買、□四試驗賣買、試味賣買、試驗の上買受くるを試驗賣買と謂ひ、甞味の上買ひ受くるを試味賣買と謂ふ、□五賣買、賣却、賣主の任意に出づる賣買を單に賣買といひ、強制買賣を賣却と謂ふ。(民五五五、五六〇條乃至五七八條)
- 英
- Sale
- 独
- Kauf
- 仏
- Vente
廢罷訴權
(はいひそけん)債務者の財産は、各債權者の共同擔保也、卽ち債務者の財産は、其債務を辨濟せざる場合に於ては、之を賣却して其債權の辨濟に充つべきものとす、故に若し債務者が到底分散の免るべからざるを悟り、茲に奸〓を弄して債務者を害せんと企て、其有する處の財産を第三者に賣渡するときは、債權者は爲めに債權の辨濟を得るに由なく、之を袖手傍觀するは、誠に法律保護の精神に背くものに非ずして何ぞ、故に法律は債權者を保護して、債務者の惡意に出づる法律行爲の取消權を與ふ、これ之を廢罷訴權とは云ふ也、此訴權を行使するには、□一債務者の法律行爲は、債權者を害するものならざるべからず、故に債務者の財産は總債權の辨濟に不足なる場合に於て、債務者は其財産を第三者に賣渡するが如きは債權者を害するものにして、此訴權を行ふことを得べしと雖ども、若し債務者の財産寡多にして、總債務を辨濟して尚餘りあるときの如き、其餘剩を賣渡するは、毫も債權者を害することなく、從つて此訴權を行ふことを得ざるものとす、然れども無資力なる債務者が、如何に財産を減少するも、法律行爲に非ざれば之を取消すに由なきなり、例へば債務者が自已財産を廢棄するが如きは、法律行爲にあらざれば、此訴權を行ふことを得ざるものとす、□二債務者が、自己のなしたる行爲が、債權者を害する事を知らざるべからず、□三受益者、轉得者が其行爲又は轉得の當時、債權者を害する行爲なる事を知らざるべからず、受益者とは、債務者と取引をなしたる相手方にして、轉得者とは、受益者より其目的物を讓受けたるものを云ふ、受益者、轉得者あるときは、此等の者も債權者を害することを知りたるを要す、且つ數多の受益者、轉得者あるときは、何れも惡意なるを要すべきなり、而して債務者の惡意なることは、債權者に於て之を證明するを要するも、受益者、轉得者の惡意なることは、却て受益者又は轉得者より惡意ならざるを證明せさるべからず、□四廢罷訴權は、裁判所に請求せざるべからず、蓋し債權者隨意に之を取消すことを得るものとせば、債權者、債務者、受益者、轉得者等が、往々通牒して第三者を害することあるべければ也、此訴權行使の結果は、其訴權行使者のみならず、凡ての債權者の利益となるべきものにして、行使者獨り其利益を壟斷することを得ざるものとす、而して此訴權行使の期間は、債權者取消の原因を知りたるときより二年、行爲のときより二十年とす、之を經過するときは、時效によりて消滅すべきものとす。(民四二四條乃至四二六條、及び訴害行爲の廢罷訴權の部參照)
- 英
- Right of vexation
- 独
- An-fechtungsrecht
- 仏
- Action de l'affliction
配賦
(はいふ)配とは、割り當つるとやうの義にして、賦とは、之より徵集するの意とす、即ち配賦は賦課を配當するの謂ひにして、通常徵税令書等を配賦すといふが如きは此の用例なり。(國税徵收法參照)
廢兵院法
(はいへいゐんはふ)戰鬪の爲めに傷痍を受け、軍人恩給法に依り增加恩給を受くる者にして、救護を要する者は、命令の定むる所により廢兵院に收容し、國費を以て終身之を扶養するものとす、此等廢兵を收容する事務に關する規則を廢兵院法と云ふ。(三九年四月法二九號)
賣藥
(ぱいやく)賣藥とは、丸藥、膏藥、練藥、水藥、浴藥、散藥、煎藥等を調製し、效能書を附して販賣するを云ふ、賣藥は、使用の方法如何に拘らず、何人にも之を販賣するものなれども、彼の藥劑師の調製する藥劑は、一定の人の爲めに、醫師の處方箋によりて製藥するもの也、賣藥には定價一割の印紙税を徵收す、賣藥販賣者は、印紙を貼用して以て納税す、之を規定せる法律は賣藥印紙税法也、此法律に依れば、若し脱税したるものは、脱税高二十倍の罰金に處せらるべきものとす。(三八年五月法七一號、同勅令一五五號)
- 英
- Patent medicine
- 独
- Patent Med-icin
- 仏
- Médecine brevetée
賣與
(ばいよ)賣與とは、賣却贈與を略したるものにして、即ち賣却し、又は贈與をなす義なり、賣却及び贈與の性質は、共に契約に屬すべきを以て、其法律の關係は孰れも私法の支配を受くべきものとす。(三九三條二項)
- 英
- Sale or present
- 独
- Verkauf oder Geschenk
- 仏
- Vente ou don
佩用
(はいよう)刀劍を携帶し、勳章を著くることを佩用と云ふ、即ち佩き用ふるの義なり。(外國勳章佩用出願規則一條)
- 英
- Wear
- 独
- Tragen
- 仏
- Mettre
暴行
(ばうかう)人又は物に對して行はるる不正の腕力なり、法令により、警察署が被告人を捕〓するは、假令腕力を要することあるも、不正にあらざるを以て暴行と云ふべからず、刑法に於て暴行、脅迫と云ふことあり、此の場合に於ける暴行とは、有形的に腕力を使用することを意味し、脅迫は無形的心裡の作用を束〓する事を意味するものとす、又刑法に於ては暴行とあるも、單に身體に對する不法の腕力をのみ意味する事あり、彼の官吏抗拒罪、囚徒逃走罪、猥褻罪、強姦罪、強盜罪の場合これなり、又或は物に對する腕力のみを意味することあり、物及び人に對する意味に用ふることあり、暴行は、暴行者自身の腕力たること多しと雖も、必ずしも然るを要せす、彼の飼犬を使嗾して人を嚙ましむるが如き、乘馬を斃すが如き、間接の暴行と雖も、暴行者自身の不正腕力たる以上は、等しく暴行とす。(刑九〇、九五、一〇〇條二項一七七、一九五、二〇八條舊刑二八二條一項、三〇九、三一四、三二六條二項、三三四、三一五條一項、一七一條三項、三四八條二項、三八三條)
- 英
- Violence
- 独
- Gewalt
- 仏
- Violence
抛棄
(はうき)自己に屬する權利又は利益を棄つることを抛棄と云ふ、□一民法に於て、債權の抛棄を免除と云ふ、免除は單獨行爲にして、債權者より債務者に對する意思表示によりて之をなす、債權の抛棄即ち免除は、債權の消滅を來すべきものにして、債權者は其債權を主張することを得ず、從て債務者は其義務を免るべきものとす、而して抛棄することを得る權利利益は、原則として權利者に對してのみ利益を與ふるものならざるべからず、之に反して權利者に利益を與ふると同時に、義務を負擔せしむるものは、通常之を抛棄する事を得ざるものとす、故に財産權は、原則として之を抛棄する事を得れども、人身權、親族權等は之を抛棄するを得ざるを原則とす、されど此原則にも、例外の伴ふは素より其所なりとす、□二民事訴訟法に於て抛棄とは、當事者の一方が其主張せる請求の存在せざる旨を陳述するを云ふ、口頭辯論の際原告其訴へたる請求を抛棄するときは、裁判所は申立に依り、判決を以て却下又は敗訴の言渡を爲すべきものとす、故に請求の抛棄あるも、裁判所は直に判決を爲す事ことを得ずして、申立あるときに限り判決をなし、判決の申立あらざるときは、訴訟は茲に休止するに至るものとす、又控訴の抛棄とは、第一審判決の言渡後、控訴提起前に於ける裁判上の控訴權を行使せざることを云ふものにして、控訴提起後に於ける裁判上の控訴權の抛棄は之を取下と稱す、□三刑事訴訟法に於て抛棄と云ふは、實體法上又は刑訴法上の權利を行使せざる意思表示にして、權利の行使を始めたる後の抛棄は、特に取下と稱す、告訴の抛棄は、通常何等の效力を生ぜざるも、親告罪の場合に於ては、訴訟條件として、公訴權消滅の一原因とす、尚刑訴法上の抛棄としては、上訴の抛棄あり。(民五九一、一三六條二項、四六、二〇三、二〇四條一號、二六八、二七五、一〇三八條乃至一三〇條、商三八九條二號、三九〇、四〇六條但書、民訴二二九、四〇五條刑訴六、七、二四六、三五三條、三二年法八七號遺失物法七、八、一三條)
- 英
- Renouncement
- 独
- Verzicht
- 仏
- Renonciation
報仇
(はうきゆう)一に復仇と謂ふ、即ち一國の不法行爲に依り、他國が事實上又は權利上の損害を被りたる場合に、更に不法の行爲を爲したる國に對し、之れに報ゆる處置を採るを報仇と云ふ、報復は、事實上の損害を受けたるときに限り行ふことを得るものなるも、報仇は、啻に事實上の損害のみならず、權利上の損害を受けたる場合にも行ふことを得るの差あり。(復仇の部參照)
防禦方法
(ばうぎよはうはふ)訴若くは反訴の被告が、勝訴の結果を得んが爲め、原告の主張に對して爲す一切の訴訟行爲を防禦方法と云ふ、例へば判決を受くべき事項の申立、事實の主張及び否認、證據方法の申出幷に證據抗辯等、苟も被告が攻擊に對して之を爲す場合に於て、何れも防禦方法となるものとす、防禦方法は、口頭辯論の終結に至る迄、何時にても之を提出することを得べく、又口頭辯論を再開したる場合に於ては、前に提出せざりし防禦方法の提出を爲すを得るに至るものなり、加之控訴審に於て口頭辯論の始まりたるときは、第一審に於て提出せざりし防禦方法も、之を提出することを得、上告審に於ては、第二審に於て確定したる事實を基礎として判決を爲すものなるが故に、防禦方法の提出には自ら制限あり、防禦方法の一種たる妨訴抗辯は、例外として通常本案の辯論前、同時に之を提出せざるべからず、又被告が時機に後れて防禦方法を提出したる場合に於て、裁判所が若し其提出を許さば訴訟を遲延すべく、且つ被告に於て故意に訴訟を遲延せしめんが爲め、又は甚しき怠慢により早く之を提出せざりし事の心證を得たるときは、原告の申立により之を却下し、其防禦方法を顧みずして判決を爲すことを得べし、唯控訴審に於て、以上所述により被告の防禦を却下するときは、被告に不利益なる判決を爲す場合に於ては、其防禦方法の行使を被告の爲めに、留保する旨を判決に揭ぐべきものとす、然る時は、訴訟は留保せられたる防禦方法に關して尚繫屬し、被告の防禦方法に依り、原告の請求の不當なることを明にしたるときは、前判決を廢棄して更に判決を爲すべきものなり、防禦方法の中、獨立なる防禦方法なるものあり、所謂獨立なる防禦方法とは、他の防禦方法と分離して、辯論の目的と爲すことを得るものと、又他の防禦方法の存否の如何に拘はらず、獨立して判決の基本と爲ることを得るものとの二種之なり。(民訴、一一九、二二七、五〇、五四、二〇六、二一〇、四二六、四二七條)
- 英
- Mean of defence
- 独
- Ver-theidigungsmittel
- 仏
- Moyen de défense
放火罪
(はうくわざい)火を放て故意に家屋其他法定の物件を燒毀する犯罪を謂ふ、□一性質、一度火を放つときは、其害啻に一定の物件を燒失するに止まらず、他人の財産、生命、身體等に迄危害を及ぼすの虞あり、故に特種の物件の毀損又は身體、生命に對する危害と異なり、一般豫防の性質を有する犯罪とす、□二目的物は家屋、建造物、廢屋、柴草、肥料等を貯ふる屋舍、船舶、汽車、山林の竹木、其他の物件是也、□三行爲は、火を放て燒燬するを要す、所謂燒燬とは、各目的物の性質に從ひ、其用を失ふに至れるときは既遂なり、イ説、目的物に火を傳ふべき媒介物にまで燃出したるときは既遂なり、ロ説、目的物燃出したるときは既遂なり、ハ説、目的物が危險なる有樣に陷りたるとき、即ち目的物の燃出したる火力が、爾後自然の勢に依て燃廣がるべき狀況に至れるときは既遂なりとの反對説あり、□四犯意としては、目的物の種類の燒燬の結果を認證するのみにて足る、□五處分、人の住居したる家屋を燒燬したるときは死刑、人の住居せざる家屋建造物を燒燬したるときは無期徒刑、廢屋、柴草肥料等を貯ふる屋舍を燒燬したるときは重懲役、人を乘載したる船舶汽車を燒燬したるときは死刑、人を乘載せざるものなる時は重懲役、山林の竹木田野の穀麥又は露積したる柴草、竹木其他の物件なるときは輕懲役、自己の家屋を燒燬したる者は二箇月以上二年以下の重禁錮、火藥其他激發すべき物品又は煤氣井、蒸氣鑵を破裂せしめて人の家屋財産を燒燬したる者、故意に出るときは、前上の各例により處斷すべきものとす。(刑一〇八條乃至一一五條)
包括財産
(はうくわつざいさん)或者に處する資産の全部又は一部を指す語にして、特定財産に對する用語とす、資産の全部又は一部とは、其の利益の部分に於てのみならず、不利益の部分をも包含す、即ち權利義務を包括したる意味なり、彼の相續人の如き、其相續財産に就き權利を有すると同時に、之に附著する義務をも併せ繼承すべきものなるが故に、此承繼せらるべき全部又は一部の財産を稱して包括財産と云ふなり、而して資産の全部を包括財産とすれば、其財産上に權利を有すると同時に、之れに伴ふ義務をも負擔すべく、其一部が包括財産なりとせば、例へば數多の不動産中、或一の不動産を包括的に承繼したるものは、不動産の所有權を有すると同時に、其不動産が負擔せる抵當權、質權等をも承繼せざるべからざるが如き之なり。(民九二〇條)
- 英
- Universal property
- 独
- Sachgesammtheit
- 仏
- Universalité de bien
包括遺贈
(はうくわつゐそう)死後に效力を生ずべき意思表示を遺言と云ひ、遺言によりて、財産上の利益を他人に與ふるを遺贈と稱へ、遺言者が特定の財産を與ふる遺言は特定名義の處分と云ひ、包括的財産を與ふる遺言を包括遺贈と稱す、包括遺贈は、或財産の全部又は一部の遺贈にして、其財産に關する權利のみを取得するものに非ずして、其義務即ち負擔をも引受けざる可らず、之單純なる特定名義の遺贈と異なる處とす、包括遺贈者は、遺産相續人と同一の權利義務を有するものにして、其の包括遺贈により財産を受くるものを包括受遺者と云ふ。(民一〇六四、一〇九二條及び遺言遺贈の部參照)
- 英
- Universal legacy
- 独
- Univer-salvermächtnisz
- 仏
- Legs universaire
包括受遺者
- 英
- Universal successor
- 独
- Universalnachfolger
- 仏
- Successeur un-iversaire
傍系親
(ばうけいしん)親族關係は、直系親と傍系親との二に分つ事を得、祖先を同うして直下するものの親族關係は直系親にして、其直下せざるものを傍系親と云ふ、又親族關係は、血族と姻族とに分つ事を得るものにして、血族とは、父、子、孫の如く、祖先より直下さるものと否らざるとを問はず、血統を引くものを云ひ、姻族とは配偶者の血族を指して云ふ、而して傍系血族とは、祖先より直下するものにあらずして、親族關係を有するものを云ふ、伯叔父母、兄弟姉妹、從兄弟、再從兄弟、甥姪の如き之なり、傍系姻族とは、配偶者の傍系血族との關係を指すものにして、夫と妻の兄弟姉妹、伯叔父母、甥姪との姻族關係の如き然り。(民七〇六、七六九條)
- 英
- Collateral relative
- 独
- Seitenverwandter
- 仏
- Parent collatéral
傍系血族
- 英
- Collateral relatives by blood
- 独
- Seitenverwandter
- 仏
- Relation coll-atérale par sang
傍系姻族
- 英
- Collateral relation
- 独
- Seiten-verwandter
- 仏
- Relation collatérale
榜示
(ばうし)一定の事項を特定の方法に依り揭示することを榜示と謂ふ、刑法附則第八條に「死刑を執行したるときは、犯人の原籍、氏名、年齡、職業、住所及び其罪狀、刑名を記載して傍示公告すべし」とあるは此用例なり。
- 英
- Notice
- 独
- Bericht
- 仏
- Avis
方式
(はうしき)或行爲の形式上の手續を方式と云ふ、例を擧げて之を説明せんに、婚姻の方式と云へば、其の屆出等を意味するものにして、若し此屆出を爲さざる時は、婚姻は無效にして成立せず、此屆出は、當事者双方及び成年の證人二人以上より、口頭又は署名したる書面を以て之を爲すことを要するものとす、又外國に在る日本人間に於て婚姻を爲さんとするときは、其國に駐在する日本の公使、又は領事に其屆出を爲すことを得るものなり、次に贈與は如何なる契約を以ても、之を爲すことを得と雖も、書面なる方式によりてなしたるものは、當事者双方其履行前には、之を取消す事を得ざるものとす、其他未成年者が法律行爲を爲すに就き、法定代理人の許可を得るが如き、又妻が法律行爲を爲すに就き夫の許可を受くるが如き、不動産に關する法律行爲に就き、登記を以て第三者に對する對抗の方式とするが如き、遺言は其方式として、自筆證書、秘密證書、公正證書によるが如き、裁判所に於て設人、鑑定人等を呼出すには、呼出狀に罰則を揭げ、其訊問を爲すには一定の規則あるが如き、凡て謂ふ所の方式なるものとす。(民七七五條乃至七七七條、一〇六七、五五〇、四一四、一七七條、民訴二九二、三一二、三二二條、刑訴一一五、一二一、一二二、一三六條)
- 英
- Form
- 独
- Form
- 仏
- Forme
褒章
(はうしやう)自己の危險を顧みず人命を救助したる者、孝子、順孫、節婦、義僕の類にして、德行卓絶なる者、實業に精勵し衆民の摸範たるべき者、學術、技藝上の發明改良著述、教育、衞生、慈善、防疫の事業、學校病院の建設、道路、河渠、堤防橋梁の修築、田野の墾闢、森林の栽培、水産の繁殖、農商工業の發達に關し、公衆の利益を興し成績著明なる者、又は公同の事務に勤勉し勞效顯著なる者、及び私財を獻納し、防海の事業を賛成する者を表彰する爲め、賞勳局總裁の認定に依り、奏請、裁可を經て授けらる徽章を褒章と云ふ、褒章に四種あり、□一紅綬褒章、自己の危險を顧みず人命を救助したる者に授與す、□二綠綬褒章、孝子、順孫、節婦、義僕の類にして、德行卓絶なる者又は實業に精勵し、衆民の摸範たるべきものに之を授與す、□三藍授褒章、學術、技藝上の發明、改良、著述、教育、衞生、慈善、防疫の事業、學校病院の建設、道路、河渠、堤防、橋梁の修築、田野の墾闢、森林の栽培、水産の繁殖、農商工業の發達に關し、公衆の利益を興し成績著明なる者、又は公同事業に勤勉し勞效顯著なる者に之を授與す、□四黃綬褒章、私財を獻納し、防海の事業を贊成する者に之を授與す、これ等の褒章は、官吏職務上の功勞に對しては之を授與せざるもの也、褒章は、本人に限り修身之を佩用し、及び徽號となすことを得、褒章を受けたる者重罪の刑に處せられたるときは、之を沒收し、其授與前に於て同一の罰に處せられたるときは、之を授與せず、奇特の實行ありと雖も褒章を賜ふべき場合に至らざる者には、賞勳局總裁又は地方長官に於て、褒狀を授與するものとす、其他褒章又は褒章に準ずべき褒賞の種類頗る多し、何れも官廳に於て、勅令の委任に依てを授與するものにして、憲法に依る大權の發動に外ならず、其官廳に於て授與するものは、大權の委任を受けたるものと見るべし。(一四年布告六三號褒章條例、二〇年勅令一六號)
- 英
- Medal
- 独
- Medaille
- 仏
- Méd-aille
褒章條例
褒賞條例は上説の公私德上に於ける善行者に、褒賞又は褒狀を授與することを定めたるの法規なり。(一四年布告六三號)
褒賞條例取扱規則
褒賞條例取扱規則とは、褒賞、褒狀を授與すべき場合の準則として、取扱手續を規定したる閣令なり。(二七年閣令一號)
- 英
- Procedure of the treatment of the regulation of medal
- 独
- Behandlungsverfahren des Medaille-Ge-setzes
- 仏
- Progrès du traitement du règlement de la médaille
法制局官制
(はうせいきよくくわんせい)法制局官制は、明治二六年十月勅令第一〇八號を以て公布し、同年十月十日より施行せられたり、其内容は、□一法制局は、内閣に隷し、内閣總理大臣の命に依り、法律命令案を起草し、理由を具して上申する事、□二法律命令の制定、發止、改正に就き意見あるときは、案を具して内閣に上申する事、□三各省大臣より閣議に提出する處の法律命令案を審査し、意見を具し又は修正を加へて内閣に上申する事、□四前諸項に揭ぐるものの外、内閣總理大臣より諮詢あるときは、意見を具して上申すること等の事務に任ずるものにして、同局には勅任長官一人、專任の勅任參事官二人及び專任の奏任參事官八人、奏任書記官二人(參事官をして之を兼ねしむ)及び專任の判任屬十一人を置き、而して同局を分ちて、第一部第二部の兩部となし、各部の部長は參事官を以て之に任じ、長官は局中一切の事務を管理し、所部の官吏を監督す、但し奏任官の進退は、長官より之を内閣總理大臣に具狀し、判任官以下の進退は、之を專行するを得べく、長官故障あるときは、上席參事官之を代理す、參事官は長官の命を承けて、審議立案の事を掌り、書記官は長官の命を承けて、局中に於ける事務の掌理に任じ、屬は上官の指揮を承けて、庶務に從事するものとす。
- 英
- Government organization of Legislation Bureau
- 独
- Behördeordnung des Gesetzgebungsbureaus
- 仏
- Organisa-tion du bureau de la législation
妨訴抗辯
(ばうそかうべん)訴訟關係の有效に成立するには、訴訟條件の具はるを要す、當事者能力、訴訟能力、裁判所の管轄及び訴の適法なること等は之に屬す、訴訟條件の缺けたる場合は、裁判所は、本案の判決をなすことなく、原告の訴を却下すべきものとす、而して訴訟條件中其欠缺を理由として、本案の辯論を拒むことを得るものを妨訴抗辯と名つく、此場合下の如し、□一無訴權の抗辯、即ち司法裁判所の管轄にあらざる場合を云ふ、□二裁判所管轄違の抗辯、□三權利拘束の抗辯、□四訴訟能力又は法律上代理欠缺の抗辯、□五訴訟費用保證欠缺の抗辯、□六再訴に付き前訴訟費用未濟の抗辯これ也、妨訴の抗辯は、本案に就きて被告の辯論を始むる前に提出せざるべからず、本案に就き被告の口頭辯論の始まりたる後は、被告の有效に抛棄することを得ざるものなるとき、又は被告の過失にあらずして、本案の辯論前に其抗辯を主張する能はざりしことを疏明するときに限り、之を主張することを得べし、被告の有效に抛棄することを得ざる抗辯とは、前示第一、第二の專屬管轄、第四の抗辯を云ふ、被告が妨訴抗辯に就き、本案の辯論を拒むとき、又は裁判所が申立に因り若くは職權を以て別に辯論を命ずるときは、其抗辯に就き、別に辯論を爲し、及び判決を以て裁判を爲すべきものとす、妨訴の抗辯を棄却する判決は、上訴に關しては終局判決と看做すべきものにして、唯裁判所は申立に因り、本案に就き辯論を爲すべきを命ずることを得るものとす。(民訴二〇六條乃至二〇七條)
- 英
- Plea in abatement
- 独
- pro-zeszhindernde Einrede
- 仏
- Procès du rabais
傍聽
(ばうちよう)各種の言論を聽聞するを傍聽と云ふ、裁判所の對審判決は之を公開するを原則とす、但し安寧秩序又は風俗を害するの虞あるときは、法律に依り又は裁判所の決議を以て、對審の公開を停むることを得るものにして、公開は即ち訴訟無關係者の聽聞を許すの意にして、若し裁判所が前上但書の理由により、傍聽を禁ずるの決議を爲したるときは、其決議の理由と共に公衆を退かしむる前、之を言渡さざるべからず、然れども其判決を言渡す場合に於ては、再び之を入込ませざるべからず、又裁判長は、公開を禁じたる時と雖も、入廷の許可を與ふるを至當と認むるものに對しては、入廷せしむることを得べき也、尤も如何なる場合を問はず、婦女、兒童及相當なる衣服を著用せざる者は、之を法廷より退廷を命ずることを得べく、且つ審問を妨ぐる者、不當の行狀を爲す者を退廷せしめ、其秩序違反者の行狀に因りては、之を拘引し、閉廷のとき迄拘留することを得べく、閉廷のときは、裁判所之を釋放し、又は五圓以下の罰金若くは五日以内の拘留を命ずることを得るもの也、此處罰に對しては、上告を許し、控訴を許さず、且つ其所爲、輕罪、若くは重罪に該るべきものなるときは、之に對して刑事訴追を爲すことを得るもの也、他の傍聽には、議會の傍聽等のことあり、略ぼ之に等しとす。(憲法九、四八條、裁構法一〇五條乃至一〇九條、一一二條)
邦土
(はうど)邦土とは、國土或は領土と云ふに同じ、我刑法に邦土僭竊なる語あり、即ち領土の橫領を意味する辭にして、領土の上に行はるる一國の統治權を排斥して、他の權力を行ふを云ふ、即ち朝憲紊亂の一種にして、内亂罪に屬す。七七條)
- 英
- Dominion
- 独
- Gebiet
- 仏
- Domina-tion
暴動罪
(ばうどうざい)舊刑法は之を兇徒聚衆罪と云ふ、則ち兇徒多衆を嘯聚して、官廳に喧鬧し、又は村市を騷擾し、其他暴動を爲したるの所爲を兇徒聚衆罪或は一名暴動罪とも稱す、茲に暴動とは、多人數の共同したる暴行又は脅迫なり、故に一人にて本罪を犯すこと能はざるものとす、若し暴動の目的、邦土の橫領乃至憲法變更に在るときは、所謂内亂罪にして本罪にあらず、其他の目的に出づる場合と雖も、財物奪取の手段として暴動を爲すが如きは、強盜罪と本罪の數罪俱發なるべく、其他の目的に出づる場合は、目的の政治分子を含むと否とに論なく暴動罪なり、官廳に喧鬧し又は官吏に脅迫し、若くは村市を騷擾すとあるは暴動の例示にして、其他一箇人の家を襲はんとしたる場合の如きも、本罪となるべきなり、暴動罪は、官吏の説諭により、解散するときは罪なく、若し解散せざるときは、三月以上三年以下の重禁錮に處せられ、其附和隨行したるものは、二圓以上五圓以下の罰金に處せらる、暴動をなし遂げたるものの首魁及び教唆者は重懲役、幇助者は輕懲役、附和隨行したるものは二圓以上二十圓以下の罰金に處せらるべきものとす。(舊刑一三六條乃至一三八條)
- 英
- Crime of riot
- 独
- Aufruhrs-verbrechen
- 仏
- Émeute
暴動殺人罪
暴動殺人罪とは、暴動によりて故意に人を死に致したる罪にして、即ち暴動罪を犯すに際し、其暴動行爲として人を殺すを謂ふ、敢て暴動を好機會として利用し、人を殺すの罪を謂ふに非ざる也、本罪の處分は、現に手を下したる者、情を知りて制止せざる首魁及教唆者を死刑に處するものとす。舊刑一三八條)
- 英
- Crime of riot and murder
- 独
- Aufruhrs- und Mordsverbrechen
- 仏
- Infraction de l'émeute et de l'incendiaire
暴動放火罪
暴動放火罪とは、暴動として家屋、船舶、倉庫等を燒燬せる罪を云ふ、暴動を機會として本罪を犯すことを得ざるは、暴動殺人罪と同じ、處分も亦之に同じ。舊刑一三八條)
- 英
- Crime of riot and incendiar-ism
- 独
- Aufruhrs- und Brandstiftungs-verbrechen
- 仏
- Infraction de l'émeute et de l'incendiaire
冐認冐認罪
(ばうにん)他人に所有權あるものを、自己に屬するが如く處分するを冐認と云ふ、而して他人の所有物なるに拘はらず、不法に之を自己の所有物なりとして販賣、交換し、抵當典物となしたる行爲は、刑法に謂ふ所の冐認罪とす、尚廣義に解すれば、自己の所有物と雖も、已に抵當典物と爲したるものを欺隱して、他人に賣與し又は重ねて抵當、典物となしたる行爲をも含む、以上の行爲を爲したるものは、二月以上四年以下の重禁錮、四圓以上四十圓以下の附加罰金に處せらるるものなり。(舊刑三九〇、三九三條)
方法
(はうはふ)方法とは、或目的を達せん爲めに依據する手段を云ふ、總て吾人の行爲は、常に或方法によりて營まれ居るものなり、唯其意識的なると無意識的なると、又其精巧なると粗雜なるとの差あるのみ、之を學問上に於て見る時は、吾人が眞理を探求する爲め、若しくは一旦究明し得たる眞理を他に傳ふる爲め、採る一定の秩序ある手續を云ふ、即ち論理的方法と云へば、眞理究明の目的の爲めに、一定の方則に遵ひて思惟の正しき運用をなすことを謂ふがごとし、而して學理研究上最も重要なる方法を分折的並に綜合的方法とす、前者は複合せる全體を一々其構成元素に分折するを謂ひ、後者は一々の元素を複合的全體に綜合するを謂ふ、但し實際の有效なる運用をなすには、兩者個々に分離して作用すべからず、常に兩者相俟ちて交互的に其の作用を營むにより、始めて完全なる方法の效果を擧ぐるを得るものなり。
- 英
- Method
- 独
- Methode
- 仏
- Moyen
報復
(はうふく)報復とは、甲國が乙國に對し、不法の行爲を爲し以て損害を被らしめたるとき、乙國が之と同一なる不法行爲を以て之に報ゆる處置を謂ふ、例へば甲國が其國内に在留する甲國人を、正當なる理由なくして追放せるが如き場合に、乙國は之に報ゆるため、其國に在留する甲國人を追放するが如き、或は關税戰爭、即ち甲國が乙國より輸入する物品に法外の重税を課するに依り、乙國が甲國より輸入する物品に等しく法外の重税を課するが如きを云ふ、報復を爲すの目的は、不法の行爲を爲す國家をして之を止めしめんとするに在り、而して報復は、一國の不法行爲に依り、他國が事實上の損害を受くる場合に爲すことを得る方法にして、權利上の損害を受くる場合に用ふることを得ざるなり。(報復又は復仇の部參照)
- 英
- Retortion
- 独
- Retorsion
- 仏
- Rétorsion
砲兵工廠條例
(はうへいこうしやうでうれい)砲兵工廠は、陸軍大臣の管理に屬し、陸軍所要兵器、彈藥、器具、材料を製造修理し、及ひ海軍所要の火藥を製造する所也、砲兵工廠に關する職員及び事務の分配を定めたる規則を砲兵工廠條例となす、現今砲兵工廠は東京、大阪及び臺北に設置せらる。(三〇年五月勅三〇五號砲兵工廠條例)
- 英
- Rule of the arsenal
- 独
- Militärarsenalsreglement
- 仏
- Règles de l'arsénal militaire
方便
(はうべん)方便とは、目的に對して其爲めに利用せらるる一時的方法を云ふ、吾人が或目的を達せんとして講ずる方法中には、直接其目的の爲めならざる間接の小方法あり、之を方便と云ふなり、最も其間接の小目的を達する爲めてふ上よりは、猶方法と稱すべきものなり、然るに或大目的を達するをのみ主眼として、其小目的を達することに重きを置かず、特に其小目的を達する方便の如きは、大目的にして善良なる限り、敢て問ふ所にあらず、目的は其手段を善良ならしむと謂ふ如き見解より、方便には重きを置かず、常に輕視の態度を取ることあるより、方便とは遁辭の如き惡意義を有するものの如く目せらるる傾あれど、本來の意義は決して然るものにあらず、佛教の用語より轉用せられて、ある目的の爲めに臨機の處置を採ると云ふ如き輕き意義を有するものと見るべし、方便的とは、直接關係せる事柄が究極の目的のものにあらずして、暫らく其目的の爲めに使用せらるてふ意義を表はす形容詞なり。
- 英
- Expedience
- 独
- Schicklichkeit
- 仏
- Convenance
防務條例
(ばうむでうれい)本條例は、陸海軍協同作戰の指揮及其任務を規定したるもの也、其規定に依れば、首府及永久の目的を以て、海岸に建設したる防禦地點の作戰は、陸海軍協同して之に任ずべきものにして、之を下の四に分つ、□一東京防禦、東京防禦總督をして、要塞司令官、師團長(若くは野戰指揮官)及橫須賀鎭守府司令長官を統へ、東京防禦に關する全般のことを計畫指揮せしむ、□二呉、佐世保防禦、此防禦は鎭守府司令長官をして、要塞司令官及海軍各部を統へ、軍港防禦に關する全般のことを計畫指揮せしむ、□三紀淡、鳴門、藝豫、下の關、海峽の防禦は、要塞司令官をして、海上防禦司令官及守備諸兵を統へしめ、海峽防禦に關する全般のことを計畫指揮せしむ、□四對馬防禦は、警備隊司令官及要港司令官中高級古參の者をして、對馬防禦司令官を兼任せしめ、其所屬部隊及他の司令官を統へ、防禦に關する全般のことを計畫指揮せしむるものとす。(二八年一月勅八號防務條例)
- 英
- Regulation of defence
- 独
- Verteidigungsregulirung
- 仏
- Règlement de la défense
放免
(はうめん)拘留消滅の宣告を放免と云ふ、豫審判事は、免訴の言渡を爲す場合に於て、被告人拘留を受け居るときは、放免の言渡をもなさざるべからず、之被告人は、免訴の宣告により犯罪の嫌疑を免れたるものなれば、從つて被告人の拘禁を要せざるに至れば也、又被告事件裁判所の管轄違なるの故を以て、管轄違の判決を言渡す場合に於ても、同時に放免の宣告を爲すべく、尚拘留の必要ありとせば、前拘留狀を存し、又は新に拘留狀を發することを得るものなり。(刑訴一六五、一二二條)
- 英
- Liberation
- 独
- Freilassung
- 仏
- Libération
報勞金
(はうらうきん)報勞金とは、遣失物の遺失者又は所有者、其他物權回復の請求權を有する者が、遺失物件を受取りたる場合に、拾得者に對し、其報酬として與ふべき金錢を云ふ、此報勞金は、遺失物件の價額百分の五より少なからず、百分の二十より多からざる範圍内に於て、定むべきものとす、而して拾得者は、遺失物に關し、法定の手續を怠り、又は遺失物に關して處罰を受けたるときは、報勞金の請求權を失ふべく、又此請求權は、遺失物件を返還したる後、一ケ月内に行ふ事を要するものにして、若し此經期間を過したるときは、之を失ふもの也、次に遺失物件の返還を受くべき者は、其權利を抛棄して、報勞金辨償の義務を免るるを得べく、此場合には、拾得者は、其所有權を得るものとす、然れども拾得者之を欲せざるときは、其拾得權を抛棄するるを得べし、次に埋藏物の發見者も、或特別なる場合を除き、遺失物法の規定に依り、其報勞金を請求するを得。(三二年三月法八七號遺失物法參照)
- 英
- Fee
- 独
- Honorar
- 仏
- Honor-aire
望樓長望樓手任用試驗規則
(ばうろうちやうばうろうしゆにんようしけんきそく)望樓長、望樓手を志願する者は、海軍大臣の告示に從ひ、願書に履歷書(書式後に示す)を添へ、海軍省に差出すべきものとす、試驗を分つて、身體檢査及學術試驗の二とす、學術試驗は、身體檢査に合格したるものにあらざれば行はず、望樓長の學術試驗科目は、讀書(漢字交り文)、作文(通俗文)、算術(四則より比例迄)、電信術、各國の國旗幷軍艦旗の識別等にして、望樓手の試驗科目も之に準ずべきものなれど、自ら難易の別あり、願書及び履歷書々式左の如し。
望樓長(望樓手)任用試驗願
(用紙美濃紙二つ折一通)
氏名
何年何月何日生
年號月何年何箇月
私儀望樓長(望樓手)任用試驗相受度履歷書相
添此段奉願候也
本籍
現住所
年月日氐名印
海軍省御中
履歷書(用紙願書と同じ)
何府縣華士族平民
戸主(或は何某男又は兄弟伯叔甥附籍)
氏名
何年何月何日生
年號月何年何箇月
一本籍國(國郡市區町村番地を詳記し寄留の者は寄留地の住所をも記すべし)
一現住地(右に同じ)
一修學
一職業技藝等
一官廳會社等ノ職務ニ從事シタル事(豫備、後備、海軍准士官及下士卒は其の奉職中の事歷を詳記すべし)
一賞罰
一破産若クハ家資分散ノ宣告又ハ身代限ノ處分ヲ受ケズ(身代限又は家資分散の處分を受けしと雖も辯償を完了せり)
前書相違無之候也
何府縣何國何郡市區何町村
市區町村長(本籍の市區町村長)
年月日氏名印
(二九三海軍省令三號)
破棄
(はき)物を毀損することを破棄と謂ひ、刑法に於て封印破棄とは、其種類に應じ、物の用を失ふ程度の物質的毀損と謂ふ、從つて封印を施したる儘に使用すべからざる物件を使用するは、封印破棄にあらず。(舊刑一七四條乃至一七六條刑九六條)
- 英
- Breaking up
- 独
- Vernichtung
- 仏
- Cassation
破毀
(はき)民事訴訟法上に於ける上告裁判所に於て、原判決を取消すを云ふ、即ち上告の理由ある時は、原判決を破毀すべきものにして、其訴訟手續に關する規定に違背したるに因り、判決を取消すときは、其訴訟手續も毀棄すべきなり、判決を破棄するときは、更に辯論裁判を爲さしむる爲め事件を控訴裁判所に差戻し、又は之を同等なる他の裁判所に移送すべく、差戻移送を受けたる裁判所は、新辯論に基き、裁判を爲さざるべからず、但し事件が已に審理を了へ、唯單に法律の適用を誤りたる場合、其他再び審理の必要なきときは差戻移送の要なし、次に刑事訴訟法上に於ける上告裁判所が、上告の理由ありとするときは原判決を破毀すべく、同時に他の裁判所に移す言渡を爲すべきものとす、但し擬律の錯誤、又は法律に背き公訴を受理したるに因り判決を破毀したるときは、其事件を他の裁判所に移す必要なきものとす、又非常上告を理由ありとするときは、原判決を破毀し、直に其事件に就き判決を爲すべきなり、上告裁判所は再審を受理したる場合に、其理由ありと認めたるときは、原▲決を破毀し、公訴及私訴に就き再審を爲すべきことを言渡し、其事件を原裁判所と同等なる他の裁判所に移すべきものとす、而して其送付を受けたる裁判所に於ては、通常の手續により裁判をなすべきなり。(民訴四四七、四四八條、刑訴二八六、二八七、二九二、三〇七條)
- 英
- Cassation
- 独
- Kassierung
- 仏
- Cassation
博愛主義
(はくあいしゆぎ)國の内外を問はず、人種の異同を論ぜず、血統、階級、貧富、交友、仇敵の別なく、利害得失の念を離れて博く愛し、又此の主義に從つて行動するを主張する基督教の倫理主義、又はストイツク學派のそれの如き、此主義により行動せんことを慫慂するものなり、然れども此博愛主義なるものは、元來吾人の宗教心道德心に訴ふる理想なるを以て、之を實際に施すに及びで、矛盾弊害を釀し、十分貫徹の效果を擧げ難きものあり、之博愛てふことの非なるにあらず、却て人類の偉大なる德義として、萬人の等しく尊敬する處なるにも拘はらず、之を實踐に移すに及んで、一視同仁平等汎愛といふこの時に矛盾を生じ、又實行の不可能なる場合多く、勢ひ博愛の程度、方法、範圍其他實踐的條件等を大略規定する必要を生ず、然るに之を規定することは、軈て博愛生義の理想に適はざる所なるを以ての故なり。
- 英
- Philanthropism
- 独
- Philan-thropismus
- 仏
- Philanthropisme
博奕
(ばくえき)財物を賭して、關係者の確知せざる偶然の事實に因りて勝敗を決し、利益を得喪する事を博奕又は賭博と稱す、關係者の確知せざる事實は、必ずしも其未來に係ることを要せず、要は唯當時に於て、關係者が勝敗の根據となる事實を知らざるを以て足る、例へば昨日橫濵に米船來航せしや否やを、金若干を賭して、其的中せしものに與ふと云ふが如し、博奕は、財物を賭するを其要素となす、但し些少なる賭財あるに過きざる場合、例へば飮食物を賭するが如きは博奕として罰せず、又本罪は偶然なる事實により、勝敗の決せらるるものらざなる可らず、必然の事實に依りて勝敗を決するは、博奕にあらず、故に骨子を以てする丁半の如きは博奕なるも、論理上必然來るべき結果に對して賭財するは博奕に非ず、博奕には、偶然の事故により勝敗を決し、勝者に一定の財物を與ふるものと、多少判斷を要する碁、將碁等の勝者に賭財を與ふるものとの二種あり、現今に於ては、何れも博奕たるを失はず。
- 英
- Gambling
- 独
- Spielen
- 仏
- Jeu
博奕罪
博奕罪とは、財物を賭して現に博奕をなしたる罪を云ひ、本罪を犯したる者は、一箇月以上六箇月以下の重禁錮、五圓以上五十圓以下の罰金に處せらるるものにして、賭博の器具財物にして、現場にあるものは沒收せらるるものとす。(刑一八五條舊刑二六一條)
剝官
(はくくわん)陸海軍刑法に於ける刑罰の一種にして、將校、同相當武官等の官等を剝奪するを謂ふ、例へば少尉の官等を剝奪して、同兵科の一等卒となすが如し、剝官は一種の刑罰なるが故に、之を宣告して科するを原則とし、多くは附加の刑罰とせらる。(陸軍將校分限令二條四號)
- 英
- Dismission
- 独
- Dienstentlassung
- 仏
- Destitution
白紙委任狀
(はくしいにんじやう)法律行爲を委託する場合、例へば貸金の催促、辨濟の受領等を、債權者が他人に委任する場合に於て、其委任を證する書面を委任狀と云ふ、而して委任狀に受任者の姓名を記載せざるものを白紙委任狀と稱す、白紙委任狀は、取引の需要に應ずるが爲めにして、手數を省略する趣旨に出でたるもの也、例へば甲が乙より一萬圓を受取るべき債權を有すると同時に、丙より同額の債務を負ふものと假定せん、甲は丙に對し、乙に對して有する債權を讓渡して、其債務の履行に代ふるか、或は乙に對する債權の取立を丙に委託する普通の委任狀を交付せざるべからず、然れども若し丙が更に自己の債權者たる丁に、此の償權(甲の)を以て辨濟せんと欲せば、更に丁に讓渡の手續をなすか、或は甲の承諾を得て之が取立を丁に委任せざるべからず、此の如き手數を省くが爲め、白紙委任狀なるものを作成し、債權の證書と共に辨濟せんと欲するものに交付せば、手數を要せずして、債權讓渡と同一の效果を收むることを得るものとす。
- 英
- Blank credential
- 独
- Blank-beglaubigung
- 仏
- Lettre de créance blanche
剝奪
(はくだつ)廣く剝奪といへば、何事に限らず之を剝ぎ奪ふことにして、官位其他公權等を剝ぎ奪ふを剝官、剝奪公權などいふが如し、を舊刑法は、剝奪公權を附加刑の一種とし、諸種の法律上の能力を修身間剝奪するものとせり。(刑三一條及び能力刑の部參照)
- 英
- Deprivation
- 独
- Aberkennung
- 仏
- Privation
白癡
(はくち)智慮薄弱にして辨識力なき者を白癡と謂ふ、瘋癲は、精神に異常を來したる者にして、白癡は之に反して、智慮至りて薄弱、共に辨識力を缺くに至りては相同じとす、從つて二者共に、心神喪失の常況にあるものといふべく、民法の規定に從つて禁治者産となり得べきものなり、元來法醫學の上に於て、白癡と瘋癲との區別明ならず、等しく辨識力を缺き、常軌を逸したる行動を爲すものなり、我裁判所構成法は、區裁判所の訴訟事件の權限として、未成年、瘋癲者、白癡者等の判決に依りて、治産の禁を受けたる者の後見人の監督に就きて、規定せらるる所ありと雖も、新民法は、特に白癡者の取扱に關し、規定するとこるあらず。(裁構法一五條一號、民七條)
- 英
- Idiocy
- 独
- Blödsinn
- 仏
- Idiotie
白銅貨幣
(はくどうくわへい)貨幣は、價格の尺度にして、人類の經濟的活動に於て重要なる物件なり、現今貨幣の種類は種々ありと雖ども、之を本位貨幣、補助貨幣に大別することを得、本位貨幣は、價額に制限なく之を使用することを得るも、補助貨幣は、一定の額迄に制限せらる、白銅貨幣は即ち補助貨幣の一種にして、現今制度上五錢の一種あるのみ、而して白銅貨幣は、ニツケル二百五十分參、和銅七百五十分の化合に成るものにして、一圓迄を限り法貨として通用することな得、此制限を超えて取引の用に供するときは、受領者之が受取を拒むことを得べし、然れども異議なく之を受領せば、勿論辨濟として有效なり。(三〇年三月法一六號貨幣法三、五、七條)
- 英
- Nickel coin
- 独
- Nickelmünze
- 仏
- Coin de nickel
博覽會
(はくらんくわい)廣く凡ての製造物品を募集し、以て衆人の展覽に供するものを博覽會と云ふ、内國勸業博覽會、萬國聯合博覽會、共進會、水産博覽會の如き之也、内國勸業博覽會は、政府に於て開設するものにして、五年目每に開設し、場所、日限、規則等は三箇年前に布告するものとし、開設地は勅令を以て指定し之を公布す、共進會は各府縣道廳に於て開設し、或は郡、町、村に於て開くことあり、開期等特別の規定なきを以て、便宜に從ひて之を開設すべし、以上述べたる博覽會、共進會等は、農商務大臣の管理に屬す。(一〇年八八號)
- 英
- Exhibition
- 独
- Ausstellung
- 仏
- Exposition
幕僚
(ばくれう)幕僚とは、軍務に關する國家機關の職務中に於ける事務の一部局なり、師團司令部幕僚、鎭守府幕僚、臺灣總督府幕僚等の如し。(師團司令部條例一三條)
- 英
- Staff
- 独
- Generalstab
- 仏
- État-major
破壞
(はくわい)有意的なると、將た無意的なると、人爲的なると、將た自然的なるとを問はず、既に存在する有形無形の秩序形態、若くは組織等を無統一なる亂離の狀態に歸せしむることを謂ふ、而して若し其作用にして有意的なる時は、之を其動機より二大別することを得べし、即ち建設の爲めの破壞と、單に破壞の爲めの破壞として、前者は現在の形態組織秩序を其等の目的理想に對して、不完全又は不合理又は却て有害なりと認め、他に有效適切にして又善良完美なる見解意圖を懷抱標傍し、其が發現實施を期する爲め、之を破壞斷滅するを謂ふ、然るに後者は、單に此の破壞の後に來たるべき積極的建設の見解企圖なく、現在の狀態秩序を唯不滿足なりとして之れを壞滅せんとするものなり、故に前者は主として思慮的にして、後者は槪して感情的なり、然れども一旦習慣性となれる形態組織は、幾多の時間勞力の結果にして、之を破壞することは、往々不測の困難を生來する虞あるを以て、之が改善を期することあるも破壞的態度に出づるは、萬止むことを得ざる際に採るべきのみ、既存の形體秩序を部分的に變化して、改善を計る漸變的態度によりて、改革を期するの優れるに如かざるなり、破壞的とは、其動作が破壞の態度を採ることに適用せらるる形容詞にして、單に破壞的と云ふ時は、單に破壞と云ふと同じく、主に建設を伴はざる破壞其ものを主眼とすることを指し、建設の意義を有するを例とす。
- 英
- Destruction
- 独
- Zerstörung
- 仏
- Destruction
破産
(はさん)支拂を停止したる商人の總財産を以て、總債權者に、公平なる滿足を得しむる爲めに爲す訴訟手續を破産と云ふ、現行破産法によれば、破産は、商人の支拂停止を原因とし、非商人は、破産法の支配に屬せざるものとす、之商人破産主義を採り、破産を商人に限り必要なりと認めたるに因るものとす、破産は民事訴訟手續にして、非訟事件にあらず、何となれば、破産は民事訴訟と同じく、私權の確定及び強制執行の爲めに國家の權力を行使するものなれば也、破産は公平なる損失分擔の主義に依るものにして、即ち總債權者を滿足せしむる資力なき場合に、其不足額を各債權者が分擔する手續なれば也、但し他の法律に於て、家資分散を含めて破産と稱することあるを注意すべし、例へば民法に於て破産と稱するは、常に商人、非商人に通じて行はるべき破産を前提とするが如し。(破産法九七八條、民訴一七九條、民施三條)
- 英
- Bankruptcy
- 独
- Bankerott
- 仏
- Faillite
破産管財人
(はさんくわんざいにん)破産裁判所の選定に依り、破産主任官の指揮監督の下に、破産財團の管理、換價配當をなす公の機關を破産管財人と云ふ、破産管財人は、公の機關にして、決して債權者又は破産者の代理人にあらず、又破産財團の代表者にもあらざる也、然れども官吏と云ふこと能はず、何となれば官吏は、任命なる公法上の手續により採用せらるるも、管財人は、裁判所の選任に因るものなれば也、破産裁判所は、破産の宣告ある每に、其作成しある司法大臣の任命に係る破産管財人名簿中より之を選定するものにして、事件の模樣により一人又は數人を選定することを得、且つ管財人は報酬を受くるものにして、財團より第一に之を支拂ひ、其額は破産裁判所之を定むるものとす、裁判所は、何時にても管財人を易へ、他の管財人を加ふる事を得べし、又管財人は、其行爲に就きては代理人と同一の責任を負ふものにして、若し管財人二人以上ある時は、共同にあらざれば行爲を爲すことを得ざるものとす、但し破産主任官が或行爲に就き、各箇に特別の委任を與へたる時は否らざるは素よりなり。(破産一〇〇七條乃至一〇一三條、一〇一七、一〇一九、一〇二一條)
- 英
- Bankruptcy administrator
- 独
- Konkursverwalter
- 仏
- Administra-teur de la faillite
破産決定書
(はさんけつていしよ)破産宣告は、破産の本人又は其債權者の申立により、決定を以て裁判所之を宣告するものとす、破産の申立が正當にして、破産宣告をなすべさものとせるときは、裁判所は破産決定書を作り、裁判所の揭示場幷に破産者の營業場に貼附し、及其他の新聞紙に載せて之を公告すべきものとす、此破産決定書には、下の事項を包含するもの也、□一支拂停止の日時、但し日時は後日裁判所の決定を以て之を定むる事を得、□二破産主任官及一人又は二人以上の破産管財人の選定、□三破産財團の保全に必要なる處分に付ての命令、□四破産者の債務者、又は財團に屬する物の占有者に對する拂渡差押の命令、□五破産者の總債權者に對し、其請求權を短くとも三ケ月、長くとも六ケ月の期間に破産主任官に屆出づべき旨の催告、□六調査會の期日及び債權者集會の期日の指定、□七破産宣告の日時これなり、而して破産決定書は、之を檢事に送附すべきものとす。(破産法九七八、九八〇條)
破産債權者
(はさんさいけんしや)破産者に對し、破産宣告前に生じたる財産上の請求權を有するものを破産債權者と謂ふ、彼の取戻權者の如く、破産財團に屬せざる財産の取戻を主張する權利を有するもの、又は別除權者の如く、破産財團に屬する財産に付き、特種の執行を許さるる權利者の如きは所謂破産債權者にあらず、又破産者は破産宣告により、財産上の處分能力を喪ふものたるを以て、破産宣告後は財産上の取引をなす事を得ず、故に破産債權者となるものは、其宣告前に發生したるものたらざるべからず、次に破産債權にして、破産の當時未だ期限の至らざるものは、破産により辨濟期限の到來したる效力を附與せらるるものとす、故に直に破産債權として、破産財團に向つて主張する事を得るものとす、且つ破産財團に對しては、破産の日より利息の發生することを止むるものなれども、抵當權、質權、其他の優先權を以て擔保せられたる債權は、其擔保物の賣拂代金に滿つる迄を限とし、利息を生ずることを得るものなり、多數當事者の債權即ち主たる債權者、破産に於て屆出でたる債權は、保證人其他の共同義務者に對し、其金額に付き之を主張することを得、且つ二人以上の共同義務者が破産したるときは、其の各義務者の破産に於て、債權の全額を屆出づることを得るものなり、破産者の總債權者は、破産決定の公告により、債權屆出の期間に、其債權を破産主任官に屆出づべき旨の催告を受けたるものとす、其屆出には、各債權の合法の原因及び請求金額、若し他所に住する債權者は、裁判所所在地に代人を置かざるべがらず、債權者及び代人任置の屆出は、書面を以て又は調書に筆記せしめて之を爲すことを得、書面を以てする場合に在りては、二通を差出すことを要す、所在の知れたる債權者は、右の外特に裁判所より書面を以て、其債權屆出の催告を受く、然れども其書面が債權者に達せざるも、此が爲め損害賠償の請求を爲すことを得ざるなり。(破産法九八八、九八九、一〇二三、一〇三〇、一〇三一條)
- 英
- Creditor of bankrupt
- 独
- Konkursgläubiger
- 仏
- Créancier de la faillite
破産財團
(はさんざいだん)破産債權者の平等分配の目的たる財産にして、破産手續の終結に至る迄は破産者に屬し、且つ強制執行の目的たることを得る財産を破産財團と云ふ、我破産法に於ては、成るべく破産債權者に完全なる辨濟を得しむるの主義により、破産者が破産手續の終結に至る迄に取得したる財産を以て、破産財團に屬するものとせり、破産財團は破産債權者に平等の滿足を得せしむるを以て目的とするものなれば、破産手續の終結によりて消滅するは當然なり。(民訴一七九條)
- 英
- Bankrupt's estate
- 独
- Kon-kursmasse
- 仏
- Masse de failli
破産裁判所
(はさんさいばんしよ)破産裁判所とは、破産事件を管轄すべき裁判所の謂にして、即ち破産者の營業所又は住所の地を管轄する地方裁判所なり、此裁判所は、明文の見るべきものなしと雖も、一種の強制執行なれば、專屬管轄なりと云はざるべからず、故に當事者の合意に依り變更することを得ざる也、然れども債務者が數個の營業所と一の住所を有するときは、民事訴訟法の理論により撰擇する事を得るものとせざるべがらず、又破産裁判所は破産宣告申告當時に依りて定まるものにして、申立後住所を變更するも、管轄に影響を來さざるものとす、破産裁判所は、破産手續の開始、其終結及停止に就き必要なる裁判をなし、破産手續を指揮し、且つ之を監督するにあり、破産裁判所は破産主任官及破産管財人を選定し、破産手續に關する事情を明白ならしむるが爲めに必要なる證據調を爲し、必要なる報告を爲すべき旨を破産者に命ず、且つ必要なる場合に破産者の引致又は監守を命じ、債權著集會の決護に對し、認可權を有し、未決定債權者の債權者集會に加はるべき權利の有無に就き裁判を爲し、他の裁判所に法律上の補助を求め、其他官廳に對し必要なる通知を爲す、又異議ある債權に就き判決を爲し、又取戻の訴に就き判決を爲すにあり。(裁構法二八條、破産法九七九、九七八、九八二、一〇四八、一〇〇八條乃至一〇一〇條舊商法施一四一條商施一三八條非訟一五二條等)
- 英
- Court of bankruptcy
- 独
- Kon-kursgericht
- 仏
- Tribunal de la faillite
破産者
(はさんしや)自己の財産上に破産手續を開始せられたる債務者を云ふ、破産者は一の債務者にして、債權の辨濟を爲すこと能はず、爲めに破産の悲境に陷りたるものなり、畢竟するに自己の過失によらざるはなし、故に裁判所は破産の目的を達するが爲め、債務者たる、破者に對して種々の義務を命ず、破産者は破産主産任官の求により、破産手續に關し、眞實なる説明を爲きざるべからず、殊に破産管財人の執務を補助し、屆出債權に就き意見を述ぶ、又破産者は、其利益防禦の爲めに破産手續に參與するの權利を有す、故に債權者集會に於て、會議事項に就きて意見を述べ、協諧契約を提供し、其他破産管財人の終局計算等に就き、異議を申立つることを得るものとす。(破産法一〇二二、一〇一四、一〇二五、一〇一七、一〇三五、一〇三七、一〇三八、一〇四八條)
- 英
- Bankrupt
- 独
- Bankrottier
- 仏
- Failli
破産主任官
(はさんしゆにんくわん)破産主任官は、裁判所が判事の中より選定するものにして、破産手續の指揮監督を爲すべき機關なり、破産主任官の職務は、破産手續の指揮監督にあり、且つ破産者及び其家族に財團より給養の扶助料を與ふることを得べく、又破産管財人に報酬を與へ、被産者其家族の訊問等を爲すことを得、破産主任官の命令は、假執行行爲を爲すことを得、又此命令に對しては、破産裁判所に即時報告を爲すことを得る也、破産主任官は、右の外尚營業續行の申立、及び破産手續終結決定の申立をなすことを得るものとす。(破産法九八三、一〇〇七、一〇一二、一〇二二、一〇二七、一〇四〇、一〇四八條)
破産手續
(はさんてつづき)破産者の財産を以て、各債權者に平等なる分配をなすの手續を稱す、商人が支拂を停止したるときは、裁判所は、破産の本人又は債權者の申立により、破産を宣す告べきものとす、此私權に就きては國家濫りに干渉を爲すことを止め、其申立を待つて始めて手續を進行するものとなせば也、破産の條件具備すれば其宣告を爲すべきは當然なれども、若し破産者の財産を以て、破産手續の費用を償ふに足らざるときは、唯破産宣告をなして、其決定書を公告するの手續のみを爲し、其後の手續を停止すべきものとす、然れども破産手續の費用を償ふに足る破産者の財産あることを證明するときは、申立に因り又は裁判所の職權を以て、即時其手續を開施すべきものとす、破産者の總債權者は、破産決定の公告に因り債權屆出の期間内に、其債權を破産主任官に屆出づべき旨の催告を受けたるものとせらるるを以て、其公告に從ひ、各債權の合法の原因及び請求金額、若し優先權あるものは其權利を明記し、且つ證據書類又は其謄本を添へて屆出づべきものとす、破産者の財産は管財人之を管理す、即ち管財人は破産宣告後即時に財産を占有し、且つ其管理及び換價に著手せさるべからず、此管財人は、其執務の爲め破産者の補助を求むる事を得る也、破産手續は協諧契約又に配當によりて終結す、協諧契約とは、債權者と破産者との間に締結したる破産手續を消滅せしむる契約なれば、之によりて破産手續の終結するは當然也、次に破産者の財産を各債權者に配當するの手續が終はれば、已に破産の目的を達したるものなるを以て、其手續の終結するや又明也、以上は破産手續に關する一般とす。(破産法九七八、九八二條、一〇〇八條乃至一〇二二條、一〇二三、一〇三八條、一〇四五條乃至一〇四九條)
- 英
- Procedure of bankruptcy
- 独
- Konkursverfahren
- 仏
- Procédure de faillite
破産法
(はさんはふ)破産の開始原因、破産手續、破産機關、破産債權者及び債務者其他破産の效果に就きて定めたる法規也、現在に於ては特に破産法なる名稱を以て發布せられたる法規なし、唯舊商法第三編が、破産に關する手續及效力を規定したるを以て、實際に於て之を破産法と謂ふ、恰も商法第二編の會社に關する規定を會社法と呼び、民法第二編の物權に關する規定を物權法と呼ぶが如し。(二三年法三二號商法第三篇)
場所的分業
(ばしよてきぶんげふ)場所的分業とは、經濟上の用語にして、生産の場所を標準として觀察したる分業を云ふ、蓋し經濟上所謂生産の自然的條件なるものは、地方に依りて其存在分布を異にするもの也、隨つて經濟上自ら其生産に場所的分業を生ずるを常とす、されど政治及び經濟歷史に基因する分業も少なからず、場所的分業は、之を大別して國際的分業及び國内的分業となすを得べし、□一圖際的分業、世界の各國が其生産業に、各其特色を有するは之即ち國際的分業なり、例へば佛國及び伊太利の美術に於ける、英米兩國の商業に於けるが如し、□二國内的分業は之を分て、都鄙分業、都會分業及び市區分業等となすことを得べし、(甲)都鄙分業とは、都會は主として商工業に從事し、田舍は主として農耕牧畜に從事するが如きを云ひ、(乙)都會分業とは、甲の都會が主として工業に從事するに反して、乙の都會が主として商業に從事するが如きを云ふ、例へば京都は美術工藝を以て立ち、大阪は商工業を以て、市民の主なる産業となすが如きは、之即ち都會的分業に外ならず、(丙)市區分業とは、市區内に於ける場所的分業を云ふものにして、各種同性質の生産業が、各市區内の一處に局在する如き之なり、例へば青物市場、魚市場、其他同種の營業者が、自然一處に集るに依りて生ずる分業の如き之也。
- 英
- Division of labour according to situation
- 独
- Arbeitsteilung nach dem Platze
- 仏
- Division du travail à l'égard du la situation
馬制局官制
(ばせいきよくくわんせい)明治三九年勅令第一二一號を以て公布せられたる官制にて、□一馬政局は、内閣總理大臣の管理に屬し、馬匹の改良蕃殖其他馬制に關する一切の事務を掌る、□二馬政局に下の職員を置く、イ馬政長官(勅任)、ロ馬政次官(勅任又は奏任)、ハ馬政官、專任、十人(奏任)、ニ書記官、專任一人(奏人)、ホ種馬牧場長、專任三人(奏任)、ヘ種馬育成所長、專任一人(奏任)、ト種馬所長、專任十五任(奏任)チ技師、專任八人、リ屬、專任二六人(判任)、ヌ書記、專任二一人(判任)ル技手、專任一〇三人、□三馬政局は東京に置き、地方に種馬牧場、種馬育成所及種馬所を置き、馬政局の事務を分掌せしむ、□四馬政長官は局務を總理し、職員を監督す、□五馬政長官は奏任官の進退を内閣總理大臣に具狀し、判任以下の進退を專行す、□六馬政次官は馬政長官を佐け、局務を整理す、□七馬政官は上官の指揮を受け、局務を掌る、□八種馬牧場長は上官の指揮を受け、種馬の蕃殖及び飼料の耕作に關する事務を掌理す、□九種馬育成所長は上官の指揮を受け、幼種馬の育成及び調教竝飼料の耕作に關する事執を掌理す、□十種馬所長は上官の指揮を受け、種馬の飼養管理及種付に關する事務を掌理す、十一技師は上官の指揮を受け、技術を掌る、十二屬は上官の指揮を受け、庶務に從事す、十三書記は種馬牧場、種馬育成所及び種馬所に分屬し、上官の指揮を受けて庶務に從事す、十四技手は上官の指揮を受け、技術に從事す、十五種馬牧場は三個所、種馬育成所は一個所、種馬所は十五個所とす、十六種馬牧場、種馬育成所及種馬所の名稱位置、竝種馬所の管轄區域は、内閣總理大臣之を定む、以上本官制の大要とす。
- 英
- Stud Administration Bureau
- 独
- Pferdeministerium Bureau
- 仏
- Bureau de l'administration des chevaux
發
(はつ)發とは、發案公布の意義にして、廣く或行爲を發案し、之を公布實施し得るを謂ふ、憲法第九條に「天皇は命令を發し又は發せしむ」とあるは、或條件の下に天皇は、命令を發案實施し得ること、及び他の者をして發案公布し得しむることを意味するものとす。
- 英
- Issue
- 独
- Verkündigung
- 仏
- Dis-tribution
罰
(ばつ)廣く法律上の制裁を罰と云ふ、茲に制裁とは、有責違法の行爲に對して科する惡報なり、惡報は、其原因たる行爲如何によりて、諸種の方面より諸種の形式として現はる、刑罰と云ひ、警察罰と云ひ、懲戒罰、規律罰、執行罰等之なり、各項に就きて參照せられよ。
- 英
- Punishment
- 独
- Strafe
- 仏
- Peine
發案權
(はつあんけん)又提案權とも稱す、法律案又は豫算案を議會に提出するの權能を云ふ、法律案は、貴衆各院及政府に於て發案權を有するものなれども、議院は、憲法變更の法律案を提出することを得ず、憲法變更の提出權は政府にあるのみ、又法律案は一の會期に於て否決せられたるものは、其會期に再び提出することを得ざるものにして、且つ法律案は、兩院の何れに提出するも隨意なれども、政府は、同時に同一の議案を兩院へ提出することを得ざる也、豫算案は政府のみ提出權を有するものにして、先づ衆議院に提出することを要すべきものとす。(憲法三八、七三、三九、六五條)
- 英
- Right of initiative
- 独
- Recht der Initiative
- 仏
- Droit de l'initiative
發航
(はつかう)船舶が航海を爲すの目的を以て、港を發することを發航と云ふ、發航は、海商法上に於て種々なる法律關係を生ず、船長は、航海の準備が終りたるときは、遲滯なく發航を爲すの義務あり、又傭船者は船積期間を經過せば、運送品の全部を積込まざるときと雖も、船長に對して發航を請求するの權利を有す、且つ船積期間經過の後は、傭船者が運送品の全部を船積せざるときと雖も、船長は直に發航を爲すことを得べきなり、個々の運送品の荷送人が船積を怠るときは、船長は直に發航することを得べく、然れども其運賃は、全部徵收し、唯其荷物の代りに他の荷物を得たるときは、他の荷物によりて得たる運送賃を控除するのみ、船長は發航に關する義務として、發航前船舶の航海に支障なきや否や、其他航海に必要なる準備の整頓せるや否やを檢査することを要す、且つ發航前海員が、其職務に不適任なりと認めたるときは雇止めざるべからず、又船舶所有者は、傭船者又は荷送人に對し、發航の當時船舶が航海に堪ふることを擔保するの責任を負ふものにして、縱令此點に就き、責任を負はざる旨を特約するも、自己の過失、船員其他の使用人の惡意若くは重大なる過失によりて生じたる損害を、賠償するの責に任ぜざるべからざるものとす。(商五六四、五九六、五九七、六〇二、六六三、五六一、五八一、五九一、五九二條)
- 英
- Commencement of voyage
- 独
- Antritt der Schiffsreise
- 仏
- Embarque-ment
發行
(はつかう)汎く發行と云へば、一切の文書圖畫を公にすることを謂ふ、著作物としての發行は、著作權法、出版法及び新聞紙條例に於て之を規定し、文書、圖畫を特定の效力を有する證書として發行することは特別法に規定せり、即ち會社株券の發行、社債券の發行は商法に、官立銀行の銀行券、債券は銀行法に、政府の紙幣又は公債證書の發行は、紙幣に關する法令及び公債條例に之を規定せり。(刑一八四條)
- 英
- Publication
- 独
- Veröffentlichung
- 仏
- Publication
發航港
(はつかうこう)船舶が航海を爲すに當り、其航海を始むる港を發航港と云ふ、未だ出航すること能はざる船舶と雖も、碇泊する港を發航港と云ふを妨げず、船舶を保險に附したる場合に於ては、其保險證券に發航港を記載せざるべからざるものとす。(商六五二、六六一條)
發行者
(はつかうしや)文書、圖畫等を發行するものを發行者と稱す、即ち會社株券の發行者は、會社なる法人にして、政府の紙幣等は、國家が發行者なり、新聞雜誌の發行者は、其文書を公にする任を負ふものなるが如し。
- 英
- Publisher
- 独
- Verausgeber
- 仏
- Publicateur
發行人
發行人といふも發行者と云ふも、文字の差異あるに過ぎずして、同一の者を二樣にいひ顯せるに過ぎず、即ち發行の責任者は是發行人也。(新聞紙條例二條五號、刑訴七七九條)
發行所
(はつかうしよ)發行をなす場所を發行所と謂ふ、發行者の住所居所は、必ずしも發行所にあらず、會社銀行等の法人發行所は、大方事務所なるべしと雖も、必ずしも然るにあらずして、別に獨立の發行所を設くることあるべし、新聞雜誌の發行所は、多く獨立の設備を存す。(新聞紙條例二條四號)
- 英
- Publication office
- 独
- Veröffent-lichungsamt
- 仏
- Bureau de la publica-tion
發航地
(はつかうち)船舶が其航海の爲めに出發せる地を發航地と謂ふ、發航地名は、船舶が入港出港に際し爲す屆出、航海奬勵金を受くる爲めに要する手續に於て其必要あり。(發航港の部參照)
發行餘力
(はつかうよりく)發行餘力とは、兌換券發行制度に於て、引換準備資金の定額と、其實際の發行高との内入差額を云ふ、即ら其内入差額だけは、仍ほ兌換券を發行し得る餘力を存するとの意味なり、然れども通常日本銀行の發行餘力と云ふときは、日本銀行は、正貨準備の外、政府發行の公債證書、大藏省證券、其他確實なる證券、又は商業手形を保證となし、特に一億二千萬圓を限り、兌換券を發行するの權利あり、然るに兌換券の發行高は、金融の緩急に伴ふものなるを以て、其の實際の發行高が、一億二千萬圓以内なるときは、其の差額を稱して發行餘力と云ふ、即ら發行餘力の多寡は、以て財界の消長をトするを得べし。(兌換券發行條例三條參照)
發覺
(はつかく)露見することを發覺と云ふ、犯人の自首する場合に於ては、犯罪事件の發覺を伴ふ、即ち犯罪事實及び犯人の搜査權ある官署(例へば檢事、司法警察官、船長、收税吏等)に露見することを指す、現行犯の場合に於ては、犯罪事實が、官署又は私人に露見することを發覺と云ふ、此場合に於ては、犯人の誰なるや不明なるときと雖も、發覺たるべく、又自首と異なり、他人に知れたるときと雖も、發覺と云ふを得べし、茲に他人とは犯人以外の一私人を稱す。(刑訴五、五六條)
- 英
- Revelation
- 独
- Entdeckung
- 仏
- Révélation
發議
(はつぎ)議員より議院に對し、一定の事項に就き、議事を開かんことを請求することを發議と云ふ、議院法に議案を發議し及議院の會議に於て議案に對し、修正の動議を發するものは、二十人以上の賛成あるに非ざれば、議題となすことを得ずとあるが如きはその一例なり。(議院法二九、四一、五二、三七、三八、二七、九八條等)
- 英
- Motion
- 独
- Antrag
- 仏
- Motion
罰金
(ばつきん)犯罪に因り國家が犯人より徵收する刑罰也、罰金は刑罰なるが故に、犯罪に連結せらる、故に過料と稱する特別の性質を有する制裁とは、自ら其赴を異にするものとす、且つ罰金は、刑罰なるが故に「刑は一身に止まる」との格言によるも、其他人の代納及び相續人より徵收すべき性質のものにあらず、唯國家は、犯人の親屬其他の者に代納を許せり、蓋し代納の禁は、到底有名無實に終はること多ければ也、罰金には、主刑罰金と附加罰金の二種あり、主刑罰金とは、單純に罰金のみを科する刑罰にして、附加罰金は主刑たる體刑と共に罰金を科する場合に生ず、例へば單に「何圓の罰金に處す」と云ふが如きは主刑罰金にして、酒造税法違反に見る處也、「何月の禁錮に處す、罰金何圓を附加す」とあるが如きは、附加罰金にして、通常の犯罪に多し、罰金は、其最少額を二圓となし、以て科料と區別す、其最高限度を示さざるは、前項酒造税法の如きは、造石高によりて徵收さるるものなれば也、罰金は、檢事の命令により、裁判確定の日より一月内に完納せしむ、若し完納する事を能はざる時は、一圓を一日に換算し、輕禁錮に代ふるものとす、然れども換刑禁錮の刑は如何に罰金額の多きときと雖も、二年を超ゆるを許さず、之れ罰金の體刑と異なるより生ずる所以なり。(▲九條、一五條、一八條、三〇條二項刑訴二〇、三二〇條)
- 英
- Fine
- 独
- Geldstrafe
- 仏
- Amende
發狂
(はつきやう)精神病者として心神の中正を失ひたるものを謂ふ、瘋癲といふも、發狂者といふも同一にして、發狂したるが故に瘋癲者なりとす。(心神喪失の部參照)
- 英
- Madman
- 独
- Thollheit
- 仏
- In-sensé
發堀
(はつくつ)或物を地中より堀り發くことを謂ふものにして、例へば刑法に、墳墓發堀の罪と云へば、墳墓を堀り出して屍體を顯さしむるが如きを云ふ。(刑一八九條)
- 英
- Digging
- 独
- Graben
- 仏
- Fouille
發見
(はつけん)未だ人の知らざるものを最先に見出す事を發見と謂ふ、我民法に、埋藏物の發見と云ふ詞あり、他物中に埋藏せるものを見出すこを指稱するの文字にして、又此外大陸發見と云ふが如き場合にも用ふ、埋藏物は、特別法の定むる處に從ひ公告を爲したる後、六ケ月内に其所有者の知れざるときは、發見者其所有權を取得す、但し他人の物の中に於て發見したる埋藏物は、發見者及び其所有者折半して、其所有權を取得するものとす。(民二四一條及び埋藏物の部參照)
- 英
- Discovery
- 独
- Entdeckung
- 仏
- Déconverte
發言
(はつげん)言語を以て、自己の意思を發表することを發言と謂ふ、國務大臣及び政府委員は、何時にても各議院に出席して發言を爲す事を得るものとす、又帝國議會の議員は、議院に於て發言したる意見及び表決に就き、院外に於て其責を負はざるを原則とす、意見は、事務に對する自己の見解にして、事實とは異なり、事實に對する自己の思考也、議員が議會に於てなしたる自己の意見及び表決に就きて、刑事上、民事上の責任を負はざるは、議員をして忌憚なく、自己の見解を主張せしめんが爲めなり、之を言論の自由又は發言の自由と云ふ、然れども若し刑事上又は民事上の責任を負はざるべからざるが如き言論を(普通の場合に)院外に於て演説し、刊行筆記又は其他の方法を以て公布したるときは、一般の法律に依り處分せらるべきものとす。(憲法五二、五四條)
- 英
- Speaking
- 独
- Stimmung
- 仏
- Parole
發言の自由
- 英
- Liberty of opinion
- 独
- Meinungsfreiheit
- 仏
- Liberté de la parole
發信主義
(はつしんしゆぎ)隔地者に對する意思表示が、其意思を發したるときに效力を生ずとなす主義を發信主義と謂ふ、意思表示の效力は何時に發生すべきか、換言すれば賣買の申込をなしたる場合に、申込の效力は、申込の書面を認めたるときなるか、郵便に付したるときなるか、或は之を申込の相手方即ち本例に於ける買主の受取りたるときなるか、書面を披見したるときなるかは、主義の分るる處にして、申込の意思を表示したる書面を郵便に附したるときを以て、其效力を生ずるとなす主義は、即ち發信主義にて、被申込人の書面を受取りたるときに、效力を生ずと爲す主義を受信主義と稱へ、相手方が其書面を披見したる時を以て、效力を生ずとなすの主義を了知主義と云ひ、申込の意思を書面に認めたる時を以て、效力を生ずとなす主義を表白主義と稱す、凡そ意思表示は、何れも相手方に了知せしむるを以て、其目的となさざるはなし、故に此點より云へば、了知主義を以て最も合理の主義となさざるべからず、然れども若し意思表示の相手方が、自儘に受取りたる書面を披見せざる等の事あらば、怠慢なる相手方の爲め、空しく時日を空過し、現今頻繁なる取引の實際に適合せざるの憂あり、又表白主義は、唯意思を發表したる人にのみ了知せらるるも、相手方に了知せしむる機會だも與へず、全く意思表示の趣意を沒了するものなり、發信主義は、尚表白主義と大同小異にして、唯取引の迅速を尚ぶことを考へ、相手方を無視するものなれば、善良なる主義にあらず、獨り受信主義は、右等數者の弊害を避け、即ち中庸を得たるものとすべきか、而して我民法は、一般意思表示の效力發生時期に關しては、受信主義を採り、隔地者間の契約に就きては、承諾の通知を發したるときに成立するものとせり、之單獨行爲と異なり、契約は、曩に申込ありて始めて承諾の意思を表示するものなれば、必ずしも受信主義を貫く必要なきものと認め、茲に例外を設けたるものなりとす。(民九七、五二六條)
發生期
(はつせいき)廣く或事實の生ずる時期を發生期と謂ふ、意思表示の效力發生期と云へば、意思表示が效力を發生するの時期を云ふものにして、受信主義によれば、意思表示の相手方に到達したる時期とし、發信主義に依れば、意思表示の本人の手を離れたる時を云ふ、又利息の發生期と云へば、利息の生ずべき時期にして、當事者の特約に依り、必ずしも契約と同時に利息を發生せしむることを要せず、假へば第一回の辨濟期に辨濟を怠りたるときより利息を附すと云へば、其辨濟を怠りたる時即ち利息の發生を期するが如し、發生期に對するものは消滅期也、消滅期は、發生したるものの消滅する時期を云ふ、前例の利息は、主たる債權の辨濟により消滅するが如し。(登記法一一七條參照)
罰則
(ばつそく)或所爲と之に對する罰の關係を定めたる法規を云ふ、例へば何々の行爲を爲す者には、何圓の罰金若くは過料に處すと定むるが如き法則を云ふなり。(民一編二條四節、二三年法八四號、舊刑四三〇條)
- 英
- Penal regulation
- 独
- Strafgesetz
- 仏
- Règlement pénal
發賣
(はつばい)物品を賣出することを發賣と云ふ、出版せる書籍を發賣するが如き、新に物を賣出すが如きは凡べて發賣なりとす。(出版法一九、二〇條及び賣買の部參照)
- 英
- Selling
- 独
- Verkauf
- 仏
- Vendre
發布
(はつぷ)公布と同義なり、法律、命令又は詔勅等を人民に布告するを云ふ、例へば憲法發布と云ふが如し、現行の議員法に「帝國議會召集の勅諭は、集會の期日を定め、少くとも四十日前に之を發布すべし」とあるが如きは其用例なり。(議員法一條)
- 英
- Promulgation
- 独
- Bekanntmach-ung
- 仏
- Promulgation
發明
(はつめい)發明とは、未だ知られざる物品を製作し、又は已に知られたる物品に新なる實用を與へ、或は已に知られたる物品を新なる方法を於て製作せしむることを得る人の行爲也、已に知られたる物品の外形を變ずるは、意匠として法律上の保護を受くるを得るものな也、而して發明は、特許を得て之を專用するを得るものにて、特許を受くべき發明を分ちて、物品に關する發明、方法に關する發明の二となす、總ての物品、方法に關する發明が、特許の目的となり得るに非ずして、法律上一定の制限あり、例へば秩序風俗を紊る虞ある發明は特許を受くるを得ず、又特許を受くる發明は最先の發明ならざるべからず、發明は、啻に發明者に知られざるのみならず、一般公衆に知られざるものなる事を必要とす、特許の出願前に於て、公に知られ又は公に用ひられたるものは特許を受くるを得ず、又發明は、工業上の發明ならざるべからず、農業即ち粗製品の生産に關する發明は特許を受くるを得ず、又學術上の著作物は著作權の目的となるも、特許の目的とならざるなり、其他法律が特に特許を受くるを得ずと規定せるものあり、飮食物、醫藥及び其調合法に關する發明の如き是なり。(特許法參照)
- 英
- Invention
- 独
- Erfindung
- 仏
- Invention
發問
(はつもん)問を發する事を謂ふ、訊問、審問、質問等の問を發すは之に屬す、民事訴訟法第二五一條に「各箇の事實、證書又は發問に就き陳述をなさず云々」とあるは此の用例なり。
- 英
- Question
- 独
- Frage
- 仏
- Ques-tion
花莚檢査
(はなむしろけんさ)花莚を輸出するには、明治三八年勅令第一六一號を公布せられたる、花莚檢査規則に基き、其檢査を受けざるべからず、但し重要物産同業組合法により設置したる組合、及び聯合會の定款に從ひ、明治三八年六月一日以前に檢査を受け、其證ある花莚に就きては檢査を要せず、左に花莚檢査規則施行細則に依り其大要を略述せん、□一花莚の檢査を受けんと欲せば、左の請求書を花莚檢査所に差出し、其指定の場所に花莚を搬入すべし。
花莚檢査請求書
收入印紙
手數料何程
花莚ノ種別及數量
花莚ノ製造地及ビ原料ノ生産地
荷送人ノ氏名又ハ名稱及ビ住所
前記ノ花莚檢査相成度候也
年月日住所
荷受人(荷送人又は荷送人代理人)氏名印
(法人なるときは名稱及代表者の氏名)
花莚檢査所長宛
□二花莚檢査請求者より納むべき檢査手數料左の如し、イ普通花莚(長十二丈一尺「英尺なるときは四十碼」以上のもの以下同じ)一枚に付き金二錢但し長十二丈一尺(英尺なるときは四十碼)未滿のものと雖も、普通花莚と認め得べきものも亦同じ、ロ廣幅花莚一枚に付き金五厘ハ短尺花莚一枚に付き金五厘、□三試驗又は研究の目的を以て花莚を製造したる者は、其花莚の鑑査を請求することを得、而して製造の目的、方法其他鑑査を要する事項を詳記したる請求書に、花莚を添附し、之を花莚檢査所に差出すべし、□四花莚檢査所に於て、花莚を受理したるときは、左の預り證を檢査請求者に交付すべし。
預リ證
檢査請求者氏名(名稱)
一花莚ノ種別及數量
右檢査ノ爲メ預リ置候也
年月日花莚檢査所印
而して右の預り證は、檢査請求者に於て、花莚の檢査を引渡を受けたる時、之を花莚檢査所に返納すべし、□五花莚檢査所に於ては、下の項目に就き花莚を檢査す、イ原料、ロ染色、ハ模樣、ニ地合、ホ耳組、ヘ長幅、ト量目、但し廣幅花莚、短尺及ひ七島藺製各種花莚に就きては、量目の檢査を行はず、□六花莚檢査の標準左の如し。
檢査
項目
原料
染色
模樣
地合
合格
一等
原料藺齊一なるもの
枯藺なきもの
著色鮮明なるもの
濃淡齊一なるもの
飛形のものにして著色區畫の判明せるもの
錯誤なきもの
形狀配置整正なるもの
厚薄齊一なるもの
織込み厚きもの
經絲の弛張なきもの
二等
原料藺甚しく不齊ならざるもの
枯藺の少しく現はるるもの
著色甚しく鮮明を缺かざるもの
濃淡甚しく不齊ならざるもの
飛形のものにして著色區畫甚しく判明を缺かざるもの
錯誤の甚しからざるもの
形狀配置甚しく不整ならざるもの
厚薄甚しく不齊ならざるもの
織込み甚しく薄からざるもの
經絲の弛張甚しからざるもの
不合格
原料藺甚しく不齊なるもの
枯藺其他不良の原料を用ひたるもの
著色甚しく鮮明を缺くもの
濃淡甚しく不齊なるもの
飛形のものにして、著色區畫甚しく判明を缺くもの
錯誤甚しきもの
形狀配置甚しく不整なるもの
原薄甚しく不整なるもの
織込甚薄く經絲を各所に現はすもの
經絲の弛張甚しきもの
耳組
長幅
敷延して彎曲狀を爲さざるもの
耳組完全にして原料藺直線狀を爲すもの
組藺の數齊一なるもの
(普通花莚)幅員二尺九寸五分以上三尺五分
未滿廣狹なきもの
敷莚して稍彎曲するも實用上支障なきもの
耳組稍不完全にして原料藺甚しく彎曲せざるもの
組藺の數甚しく不齊ならざるもの
同上
廣狹甚しからざるもの
敷延ばして甚しき彎曲狀を爲すもの
耳組不完全にして原料藺甚しく彎曲せるもの
組藺の數甚しく不齊なるもの
(普通花莚)幅員二尺九寸五分未滿又は三尺五分以上
廣狹甚しきもの
普通花莚の種別(製造地に於て生産したる原料を以て製造したるもの)
量目
綾地織
平地織
機械織
目迫百八十經以上
同百五十經以上
同百二十經以上
目迫八十經
苧經八分目竝五分目
絲經八分目竝五分目
平地飛込
機械織飛込
目迫飛込
諸目二百四十經
百二十經引通
袋織
紋花莚及錦芫莚三百經以上
紋花莚及錦莞莚三百經以下
合格(一等及二等)
製造地
岡山縣
五貫九百匁以上
五貫二百匁以上
五貫匁以上
四貫八百匁以上
五貫匁以上
同
四貫七百匁以上
五貰五百匁以上
五貰三百匁以上
五貫匁以上
五貫百匁以上
五貫八百匁以上
四貫四百匁以上
四貫七百匁以上
廣島縣
六貫匁以上
五貫三百匁以上
五貫百匁以上
四貫九百匁以上
五貫百匁以上
同
四貫八百匁以上
五貫二百匁以上
五貫匁以上
五貫六百匁以上
五貫四百匁以上
五貫百匁以上
五貫二百匁以上
六貫匁以上
石川縣
五貫五百匁以上
五貰三百匁以上
五貫百匁以上
同
五貫七百匁以上
五貫五百匁以上
五貫三百匁以上
五貫五百匁以上
六貫二百匁以上
福岡縣
五貫六百匁以上
五貫百匁以上
五貫匁以上
四貫七百匁以上
四貫八百匁以上
同
四貫五百匁以上
五貫匁以上
四貫八百匁以上
五貫三百匁以上
五貫百匁以上
四貫八百匁以上
五貫匁以上
不合格
上揭各地
上揭量目
未滿
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
同
□七花莚の製造地外に於て、生産したる原料を以て製造したる花莚は、其原料生産地に於て製造したる花莚の量目を斟酌して、花莚檢査所適宜其の量目を定む、□八花莚檢査標準に列記したる種別外の普通花筵の量目、以上列記したる製造地外に於て製造したる花莚の量目、又は同上に依り難き花莚の量目は、其最も類似したる花莚に準して花莚檢査所之を定む、□九花莚檢査請求者檢査の結了を爲したること、及び成績の通知を受けたるとき、其翌日より起算し、五日以内に搬出せざるときは、庫敷料を納めざるべからず、庫敷料は左の範圍内に於て檢査所長之を定む、イ普通花莚、一ケ月間一本に付き二錢五厘乃至四錢、但し長十二丈一尺(英尺なるときは四十碼)未滿のものと雖も、普通花莚と認め得べきもの亦同じ、ロ廣幅花莚、一ケ月間一枚に付き一錢乃至二錢五厘、ハ短尺花莚、一ケ月問一枚に付き五厘乃至一錢五厘、□十檢査請求者花莚檢査所の爲したる不合格の決定に對し不服あるときは、檢査の成績に就き、通知を受けたる翌日より起算し、五日以内に花莚檢査所に再檢査を請求することを得、此場合に於ては、檢査請求者は、更に檢査手數料を納むべし、十一再檢査を行ふ場合に於ては、前檢査に關與せざりし檢査員をして之を檢査せしめ、且つ檢査所長に於て花莚に關し、學識又は經驗を有すと認むる當事者の中に就き、一名以上を指定して其意見を徵したる後、檢査所長其成績を決定すべし。
- 英
- Inspection of fancy matting
- 独
- Aufsicht der Hana-Strohmatte
- 仏
- Inspection du paillasson artistique
母
(はは)自己の法律上の親たる女を母と云ふ、自己を分娩せし母を實母と云ひ、自己が他人の養子となりたる場合に、其の養家の母を養母と云ひ、自己の實母其家を去り又は死亡して、後妻に入りたる女あるとき、其の女を繼母と云ふ、父の認知によりて庶子となりたるものが、其父の正妻を指して嫡母と云ふ、以上數者を何れも母と云ふことを得。(民七三四條二項但書、八二七、八三三、八三五、八七九、八八九條等)
- 英
- Mother
- 独
- Mutter
- 仏
- Mère
法
(はふ)法律語として法と云へば、實質上の法律と云ふも大差なし、法は人類行爲の規則なり、人類の生活に就き據るべきの途を示したるもの也、法律上に於ける法は、大略左の語義を包含す、□一形式上の法律、議會の協贊を經たる人類行爲の規則を謂ふ、□二命令、有權者の下せる命禁にして、一般的なるものを謂ふ、廣義に於ては形式上の法律をも包含するも、普通は之を除外して稱す、命令には勅令、閣令、省令、府縣令、郡令等の別あるなり、□三慣習法、慣習なる例規に法の力を與へたるものなり、□四條例及び規則、市町村其他の自治體の制定發布したるものにして、條例は、主として權務に關し、規則は營造物等の手續に關するものなり。(尚法律の部參照)
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
法規
(はふき)法律規則の略稱にして、其意義法令と同じき事あり、殊に法規と云へば、廣義に於ける法を以て定めたる事項の意にして、單獨の規定よりも規定の集合したるものを意味すること多し。(法律及法令の部參照)
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
法規命令
(はふきめいれい)命令は其の規定内容如何に依り、之を別ちて二種となすことを得べし、執行命令、法規命令之なり、凡そ或法律命令を執行し、之が實施を爲すが爲めに、法令の解釋、事務の取扱方法等を定むるを執行命令と稱し、彼の法律に相對して、因果の法則を定むる命令を法規命令と謂ふ、法規命令を別ちて、委任命令、獨立命令となすことを得、所謂委任命令とは法律の委任に依り、法定事項たる因果法則を規定する命令を謂ふ、獨立命令とは、法律に基くことなく、憲法上當然命令にて因果法則を定むるを謂ひ、我憲法に於て獨立命令は、公共の安寧を保持し及臣民の幸福を增進する爲めに、之を發布することを得るものとす。(憲法九條、獨立命令、執行命令の部參照)
法貨
(はふくわ)法定貨幣又は法定通貨と云ふと同義なり、法律上有效に金錢債務の辨濟に供することを得る貨幣を云ふものにして、債權者其辨濟を拒むことを得ざるものなり、貨幣を分ちて本位貨幣及び補助貨幣となす、共に金錢債務辨濟の用に供せらるると雖も、補助貨幣は、一定の制限を超えて、辨濟の受領を強ゆることを得ざるものとす、本位貨幣は其額に制限なく通用することを得るものにして、現今我國に於ては金貨を以て本位貨幣となす、補助貨幣は五十錢、二十錢、十錢の各銀貨及び五錢の白銅貨、二錢、一錢、五厘等の各銅貨にして、我貨幣法によれば、銀貨幣は十圓まで、白銅貨及青銅貨は一圓までを限り、法貨として通用する事を得る旨を定めたり、故に債權者は右の額迄は、其受領を拒む權能を有せず、然れども其額を超えて辨濟の提供を爲したる場合に於ても、債權者之を拒まざるときは、辨濟の效果を維持するものとす。(貨幣法七條、民四〇二條)
- 英
- Legal tender
- 独
- gesetzliche Münze
- 仏
- Monnaie
法系
(はふけい)一國の法典を分ちて、固有法と繼受法となすことを得、法律を制定するに當りて、立法者は唯其國固有の國情民俗のみを參酌し、他國の法典を度外して制定することあり、これを固有法と云ふ、我民法親族相續編の如きこれなり、之に反して或外國の法典を摸倣し、專ら其精神を外國法に採るの立法は、之を繼受法と稱す、古くより繼承せられて、諸國立法の基礎を爲し、此の間に於て分派を生ずるものなり、之法系の依りて起る所以とす、源を支那に發するものを支那法系と云ひ、羅馬に發するものを羅馬法系と呼び、英國に發するものを英法系と稱へ、佛蘭西國に發するものを佛國法系と名つくるが如し。
- 英
- Genealogy of law
- 独
- Rechts-institut
- 仏
- Généalogie du droit
法源
(はふげん)法規の因て來れる淵源を法源と云ふ、即ち一の法規を制定するに當りて、其法規の性質上含まるべき他の法規を指す、例へば行政法の法源として、憲法、皇室典範、法律、命令、豫算、條約、地方團體の自治法規等を擧ぐるが如き之れなり。
- 英
- Source of law
- 独
- Rechtsgrund
- 仏
- Source du droit
法人
(はふじん)自然人にあらずして權利義務主の體たるものを法人と云ふ、法人は固より形體を存するものにあらず、故に自然人の如く、親族の關係を生ずることなし、會社或は私立學校、寺院、國家等は一の法人なり、之等を支配する會社の重役、支配人、法人たる私立學校の管理者、寺院の僧侶、國家に於ける君主等は、茲に所謂法人にあらず、又其建物を指して法人と云ふにもあらず、會社、學校、寺院、國家等夫れ自身を指して法人と解すべきなり、之等の無形體が權利義務の主體となりて活動す、無形體夫れ自體は活動の能力を缺く、茲に於て乎法人に理事あり、能く法人の目的に從ひ、法人を代表して活動す、これ理事の行爲が、理事其者の行爲とならずして、理事が法人なる人格者の手足となり、換言すれば機關となりて行動を爲すなり、又法人は、其目的を達するが爲めに、各種の意思決定をなさざるべからず、即ち社團法人に於ては、社員總會なるものを置きて意思機關と爲す、これ社員の意思にあらず、又社員總體の意思にあらずして、法人の意思となる、此の理は曩きに説示したるが如く、社員總會も亦法人の機關即ち手足として存在するものなればなり、前上説述の如く、法人は無形體なるが故に、或學説に於ては、之れを以て、法律の擬制によりて人格を附與せられたるものとなし、即ち法人は、元來實在するものにあらざるも、法律を以て自然人と同一なる一種擬へ物を作出せるものとなすにあり、然れども此擬制説は論據薄弱にして、且つ現今學説の趨勢は、これに反對せる實在説に傾くものの如し、實在説とは、法人は假裝の擬制物にあらずして、實在の團體なりと云ふにあり、即ち法人は、法律に依りて創設せらるるに非ず、社團は現在の人の集合體にして、此集合體は、共同智覺と共同意思を有す、即ち自然人と同じく意思能力を有するもの也、法律は此意思能力を有するものに人格を認むるに過ぎずして、其關係は、法律が自然人に對して人格を認むると異なる事なしと謂ふにあり、故に法人は不法行爲能力を有し、刑事上の責任能力を有するものとす、現今の法規に於て法人の刑事責任を定むるもの多し、最も體刑に就きては、執行不能の場合多きを以て特に規定せる法規なきは當然なりとす、我國判例に於ても、此實在説を認む、即ち現今の通説なり、法人には、公法人と私法人とあり、公法人とは、公法の規定によりて設立せられたるものにして、國、府、縣、市、町、村、水利組合等之に屬す、私法人とは、私法の規定によりて成立するものにして、更に之を社團法人、財團法人の二に區別することを得、社團法人とは、社員の結合より成るものにして、財團法人とは、無主財産の衆合より成るものとす、財團法人は財産を以てのみ成立し、社員を其成立要素となさざると雖も、其事務を司る所の理事を置かざるべからず、之を社員と同視せざるを要す、社團法人を分ちて、營利法人と營利を目的とせざる法人となすことを得、營利法人とは、利益を目的として設立せる法人にして、商事會社の如き之に屬し、公益を目的とするもの即ち公益法人、例へば祭祀、學術、宗教、技藝其他の公益を目的とする法人の如きは營利會社にあらず、財團法人には營利法人なし、社員なくして、殊に財團を持て人格を附與し、且つ營利をなすよりは、直接に營利の目的を有する者の行爲に任ずれば可なるを以てなり、我法典は、商事會社及び營利を目的とするの社團の設立に關しては、原則として準則主義により、即ち法定の條件を具ふるを以て、直に法人格を與ふるものとせり、公益法人に就きては許可主義を採り、官廳の許可を要するものとなす、之公益法人は、其國の公益に大なる影響を及ぼすものなるを以てなり。(民三三條乃至八四條、社團法人、財團法人の部參照)
- 英
- Juridical person
- 独
- juristische person
- 仏
- Personne morale
法人格
(はふじんかく)法上の人格と云ふに同じ、自然人及法人の兩者に通じて用ふるものにして、單に人格といふに同じ、夫れ人格なるものは、人たるの適格又は資格を指し、人たるの資格は、權利又は權力の主體たるに依り、主體は常に意思の存する所に伴ふ意思即ち思考し、決意し、發動し得るは、所謂自然人に存する所にして、自然人か、若しくは自然人を機關とする所のものにあらざれば人格あらず、國家にまれ、府縣にまれ、乃至は社團、財團の私法人にまれ、等しく自然人を機關とするものにして、此等の法人は、元來自然人のある目的を達する爲めに現れたる制度なり、凡そ社會の生存は、單獨孤存の人のみを以ては、到底其の目的を現實し得べきにあらず、茲に於てか協力の方法現出す、社團は之に屬し、總て此等のものも、自然人と等しく權利の歸屬者となす、財團に於ても亦然り、蓋し社會百般の行動云爲は、常に財産の呈出者を要とす、慈善等に就きては殊に然り、これ特定の財産を權利の歸屬者とし、而して財産の呈出を充實せしむる所以なり。(人格の部參照)
法制
(はふせい)法律制度と法律制定との二樣の意味を有す、□一法律制定とは、所謂立法のことにして、立法の準備として、其の案を記草し、之を調査する如きを法制と云ふことあり、即ち此等の事項を司る所を法制局、法制調査會などいふは此の用例なり、□二法律制度とは、法律に依りて定められたる各種の制度、又は法律其者の編制、主義に關する制度を謂ふ、所謂制度とは、或事項に關する形式にして、一種の傾きを呈せる狀態なり、然も其の傾きにして人爲に出でたることを要するものとす。(立法、法律の部參照)
- 英
- Legislation
- 独
- Gesetzgebung
- 仏
- Législation
法制史
(はふせいし)法律及び其の制度に關する歷史を法制史と謂ふ、抑も法的現象に關する變遷は、普通の出來事と同じく、社會百般の事爲に依るものなれど、特に法典の編纂はこれに一時期を劃するものにして、我邦に於ては、大略左の時期をなすものなり。
(1)上古(神武帝より欽明帝迄)固有法時代
(2)中古(孝德帝より清和帝迄)唐法制繼受時代
(3)近古(鎌倉法制、室町法制、德川法制)固有法唐法制混和時代、
(4)維新(明治當初より現今迄)西洋法制繼受時代
- 英
- History of law
- 独
- Rechts-geschicht
- 仏
- Histoire de droit
法則
(はふそく)法規と略ぼ同義にして、殊に訴訟法に於て、法則なる文字を使用せる場合を見るに、法令と同意味なるが如し、即ち上告は法律違背を理由とせざるべからず、法則を適用せず又は法則を不當に違用したるときは、法律に違背したるものとなし、以て上告の理由たるべきを明規す、故に法律のみならず、命令に違背したる判決と雖も上告の理由となるが如し、(民訴四三五條、刑訴二六八條)
- 英
- Provision of law
- 独
- Rechtsnorm
- 仏
- Règlement
法定家督相續人
(はふていかとくそうぞくにん)法律の規定上當然家督相續人たるべきものの謂にして、選定又は指定による家督相續人に對する名稱とす。(家督相續人の部參照)
- 英
- Legal heir
- 独
- gesetz-licher Erbe
- 仏
- Héritier légal
法定期間
(はふていきかん)法律上定められたる一定の時間を法定期間と稱す、例へば控訴、上告、抗告期間の如し。(民訴四〇〇、四三七、四六六條、刑訴二五二、二七一條、二九五條、期間の部參照)
- 英
- Legal time
- 独
- gesetzliche Frist
- 仏
- Temps légal
法定果實
(はふていくわじつ)物の使用の對價として受くべき金錢其他の物を法定果實と謂ふ、例へば家賃の如き、利息の如き、凡て法定果實也、果實の生ずべき元物を元本とも云ふ、此の元本は物ならざるべからず、物は我民法上の解釋に於ては有形物ならざるべからず、故に物にあらざる勞力は元本とならず、從て果實を生ずべき元物たるを得ざるなり、勞力の報酬たる賃金の如き、法定果實にあらざるは明瞭なり、物の使用の對價にあらざるれば果實にあらず、故に物の賣却代金は法定果實にあらず、果實は金錢のみならず、其他の物品にても可なり、法定果實は、之を收取する期間、權利の存續期間、日割を以て計算す、例へば三月一日に家屋を賃貸せる場合に、家主が其月の十六日之れを賃貸人以外の者に賣却し、尚賃貸在存續せりとせば、舊家主と新家主と各半月宛の家其、即ち法定果實を取得するが如し。(民八八、八九條果實の部參照)
- 英
- Legal fruit
- 独
- gesetzliche Frucht
- 仏
- Fruit légal
法定後見人
(はふていこうけんにん)法律の定に依り、當然後見人となるべきものを法定後見人と謂ふ、指定後見人又は選定後見人と相對する語也、我民法の規定に從ひ、法定後見人の例を示せば、□一親權を行ふ父又は母は禁治産者の後見人となる、□二妻が禁治産の宣告を受けたるときは夫其後見人と爲る、然れども其夫が未成年なるか、或は禁治産者なるか、剝奪公權又停止公權なるか、若くは破産者、裁判所に免黜せられたる法定代理人又は保佐人、其他被後見人に對して訴訟を爲し又は爲したる者、行方の知れざる者、裁判所に於て後見の任務に堪へざる事跡、不正の行爲又は著しき不行跡ありと認めたる者等は、如何なる場合にも後見人たるを得ざるものにして、獨り此の場合に限らざるなり、故に斯くの如き事由により、夫が後見人たる能はざるときは、再び一に從ひ親權を行ふべき父又は母が後見人たるべきものとす、□三夫が禁治産の宣告を受けたるときは妻後見人となる、妻も後見人たる資格を有せざるときは、親權を行ふ父又は母が後見人たるべきものとす。(民九〇二、九〇八條)
- 英
- Legal guardian
- 独
- gesetz-licher Vormund
- 仏
- Tuteur légal
法定財産制
(はふていざいさんせい)夫婦財産制の一にして、夫婦が婚姻の屆出前に、其財産に就き、別段の契約をなさざりし場合に適用する制度を法定財産制と謂ふ、此制度に依れば、□一夫は婚姻より生ずる一切の費用を負擔するものとす、但し妻が戸主たるときは、妻之を負擔すべき也、茲に婚姻より生ずる費用とは、夫婦か共同生活の利益のために要する費用を云ふ也、然れども夫婦は、互に扶養の義務を負ふものなれば、以上の費用は、其負擔者に於て、自己の生活上到底負擔に堪へざる場合には、他の一方に於て負擔すべきものとす、□二夫又は女戸主は用方に從ひ、其配偶者の財産の使用及び收益を爲す權利を有するものとす、而して夫又は女戸主は、其配偶者の財産の果實中より其債務の利息を支拂はざるべからず、□三夫は妻の財産を管理すべきものなり、夫が妻の財産を管理すること能はざるときは、妻自ら之を管理するもの也、□四夫が妻の爲めに借財を爲し、妻の財産を讓渡し、之を擔保に供し、又は短期賃貸借の期間を超へて賃貸借を爲すには、妻の承諾を得ることを要す、但し管理の目的を以て果實を處分するが如きは、妻の承諾を要せざるなり、夫が妻の財産を管理する場合に於て必要ありと認むるときは、裁判所は、妻の請求に依り、夫をして其財産の管理及び返還に就き、相當の擔保を供せしむることを得るものとす、□五日常の家事に就きては、妻は夫の代理人と看做され、夫は其代理權の全部又は一部を否認することを得、但し之を以て、その制限を知らざる第三者に對抗するを得ざるなり、□六妻又は入夫が、婚姻前より有せる財産、及び婚姻中自己の名に於て得たる財産は、其特有財産とす、夫婦の何れに屬するか分明ならざるものは、夫又は女戸主の財産と推定す、故に反證を擧げて之を取戾すことを得べし、(民七九九條乃至八〇七、六〇二條)
法定準備金
(はふていじゆんびきん)會社が法律上の義務として、其利益の幾部を積立てざるべからざるものを法定準備金と謂ふ、主として財産のみを以て成立し、餘り人的信用に重きを置かざる株式會社の如きが、利益の全部を配當するものとせば、往々にして會社の基礎危うく、爲めに社會の者をして誤らしむる結果を來すことなしとせず、これ法定準備金の制を設けし所以也、會社は、其資本の四分の一に達する迄は、其利益を配當する每に、準備金として利益の二十分の一以上を積立てざるべからず、且つ額面以上の價額を以て株式を發行したるときは、其額面を超ゆる金額は、資本の四分の一に達する迄之を準備金に組入るることを要す、而して會社資本の四分の一以上の積立は、法律上の義務として爲すものにあらざれば、之を積立つると否とは會社の隨意なり。(商一九四條及び任意準備金の部參照〕
法定承認説
(はふていしようにんせつ)慣習が慣習法となるべき理由及び時期を説明する學説の一にして、慣習は法廷に於て、之を法なりと承認し、實際の事件に適用するによりて慣習法となるとなす見解なり。(慣習法の部參照)
法定の推定家督相續人
(はふていのすいていかとくそうぞくにん)法律の規定により、家督相續人たるべき推定を受くるものを謂ふ、法定家督相續人の中にて、相續開始せば、直に相續人となるべき資格を有する一人を指していふ。(民九七九條、家督相續人の部參照)
法定代理
(はふていだいり)代理とは、本人の名に於て、本人の爲に、本人に直接效果を生ずべき樣法律行爲をなすを云ふ、代理を分ちて法定代理、任意代理となす、法定代理とは、代理權の淵源が法律の規定に因るものを指し、任意代理とは、委任其他の法律行爲に基くものを云ふ、法律により當然代理權を有するものを法定代理人又は法律上代理人とも稱す、例へば未成年の子又は禁治産者に對して親權を行ふ父又は母、未成年者又は禁治産者の後見人たる夫、或は妻又は戸主、合名會社の社員、合資會社の無限責任社員の如きは、法律の規定に依りて直接に代理權を有するを以て、法定代理人なり、法定代理人の權限は法律の規定に依りて定まり、代理人の種類に依りて其範圍に差異ありと雖も、理事、取締役、合名會社又は合資會社を代表すべき社員、清算人の如きは、皆總括的權限を有し、其事務に關する一切の裁判上、裁判外の行爲を爲す權限を有す、且つ其代理權に加へたる制限は、善意の第三者に對抗するを得ざるなり、訴訟法に於ては、法定代理人を法律上代人と稱す。(民五三、五四、七八、八八四、九〇二、九〇三條、商六一、六二、九一、一〇五、一一四、一七〇、二三四條及び代理の部參照)
- 英
- Legal representation
- 独
- gesetzliche Vertretung
- 仏
- Représenta-tion légale
法定代理人
- 英
- Legal representative
- 独
- gesetzlicher Vertreter
- 仏
- Représentant légal
法定利率
(はふていりりつ)利息の高は、其元本に對する割合と、支拂時期とに依りて之を定むるを通常とす、而して一定の期間に支拂はるべき利息が、元本に對する割合を利率と云ふ、通常元本の百分を以て之を計り、何割何分と云ひ、而して我國に於ては、通常一年を以て利率を定む、然れども特別の取引又は小取引には、月又は日を以て利息を定むる場合少からず、利率は法律行爲により、或は法律の規定によりて定まる、故に利率を分ちて約定利率及び法定利率の二種となす、法定利率とは、法律が定めたる利率なり、利息を生ずべき債務關係成立せる場合に、當事者又は法律が、其利率を定めざりしときは、債務の原因如何を問はず、凡て法定利率による、故に我國法に於て法定利率は、必らずしも法定利息の利率にあらずして、契約より生ずる利息債務たりと雖も、其利率の定めなきときは、尚法定利率によるべきものとす、民事に於ける法定利率は年五分なり、即ち元本の百分の五とす、而して商事上の債務に就きては、特に其營利の目的あるよりして、年六分即ち年額百分の六とす。(民四〇四條、商二七六條及び利息債務の部)
- 英
- Legal rate of interest
- 独
- gesetzlicher Zinssatz
- 仏
- Taux légal d'intérêt
法條
(はふでう)法令の條項を法條と謂ふ、夫れ法令なるものは、社會百般の出來事を律する爲めに制定せらるるものなれば、其の主旨題目に依り、其内容の如何に依り、幾多の法典をなし、又幾多の條項を分つは素より其所なり、而して現時法典編纂の慣習に依れば、其主旨に依りて編を分ち、幾多の題目に區別して之を章となし、章を分ちて節となし、節を分ちて款となし、款を分ちて項とし、而して項を數條に別ち、各條或は其内容に依り、第一項より數項となすことあり、又數號となすことあるものとす、茲に法條といふは、此分類中の條を指し、法令の條なるが故に之を法條と呼ぶものとす。(法令の部參照)
- 英
- Articles of law
- 独
- Gesetzartikel
- 仏
- Dispositions
法典
(はふてん)廣義に於ては、一定の範圍内の法規を網羅して一冊と爲したるものを法典と謂ひ、狹義に於ては、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法等の如く、各範圍の法規を網羅し、之を一册の公文として發布したるものを指す、凡そ法規は、其法律たると命令たるとを問はず、主旨題目に從ひて之を便宜分類し、大分しては法典となし、法典中尚之を分ちて編、章、節、款、項、條、號等となすものなり、而して其如何なる分類を法典となすべきかは、之を形式の上に求むるの外なし、一冊の法令として發布せられたるものは之を法典といひ、其單行法たると否とを問はず、されど如何に大部たりとも、一法典は常に一法典にして、改正に至らずんば二法典となるべきにあらざるなり。(法典調査會規則一條)
- 英
- Code
- 独
- Gesetzbuch
- 仏
- Code
法典調査會規則
(はふてんてうさくあいきそく)法典調査會の組織及び其職務を規定したる法規なり、法典調査會は、内閣總理大臣の監督に屬し、法典及附屬法令の改正又は制定に關する事項を起案審議し、幷に條約の實施に必要なる事項を調査する所とし、總裁、副總裁、各一人及委員三十五人以内を以て組織せらるるものとす。(二七年三月勅三〇號)
- 英
- Regulation of the Inspection Assembly of Codes
- 独
- Regel der Gesetzbuchsuntersuchungsgesellschaft
- 仏
- Règles de l'assemblée de l'investiga-tion du Code
法の擬制
(はふのぎせい)論理上當然來るべき結果にあらざる事柄を、法の力によりて之を認むることを法の擬制と謂ふ、例へば法人擬制説の如き、其論據を所謂法の擬制に採る、其説の是非は兔に角、法人は實在のものにあらず、實在せざるものに人格を附與するは法律上の理論に合せず、然かも尚且つ自然人と同じく權利義務の主體となすは、虛無の事實を假想して、之を法律萬能の力により、人格を付與するものにあらずやなど云ふが如し。(法人の部參照)
- 英
- Fiction of law
- 独
- Rechts-erdichtung
- 仏
- Fiction légale
法文
(はふぶん)法令の成文を法文と謂ふ、成文とは、法令の内容を示す文章也、凡そ法令は、人類行爲の規則として國家の命じたるものなり、而して此國家の意思は、文字の記號を採つて現はる、成文法是なり、成文法に於ける其内容を示す文章を法文と謂ふ、故に法文は、成文法にのみありて、慣習法に之なき所とす、法律解釋の原則に二義あり、徒に法文の字句に拘泥すべからずと教ふる論理解釋と、亡しく理論に走せ、法の明文を無視すること勿れと教ふる文理的解釋と之也、然り法律の解釋は立法者の意思を肘度し、理論に訴へ法文に徵して始めて其完きを得るものなれば、殊に嚴正解釋を要すべき刑罰法に於ては、每に論理解釋を必要とするも、法文を嚴格に釋明するは、最も肝要なる蓋し言を俟たざる所とす。
- 英
- Text of law
- 独
- Gesetzestext
- 仏
- Texte de loi
法理
(はふり)法に關する哲理を謂ふ、法的現象に通ずる原理は即ち法に關する哲理にして、やがて之を法理と呼ぶこと得るなり、其法的現象たるや、永き經過に於ける法の過程と、廣き範圍に通ずる法の哲理と、此の二者の研究に依りて明にせらるるを得べく、過程の研究は、法制史學の攻究に依り、哲理の研究は、法律學即ち法理學に依るものとす。(法制史及び法理學の部參照)
法理學
(はふりがく)法に關する科學なり、法理學の何たるかを知らんには、法の何たると、科學の何たるとを知らざるべからず、法の何たるは説の岐るる所なりと雖も、歸する所は因果の則と有權力との二に一致す、所謂因果の則とは、或原因に對する結果の關係が變る所なくせらるる其則を指し、此因果の則が、有權者に依りて人類に實施せらるるものは法なり、命令と云ひ、法律と云ひ、條例と云ひ、規則と的ふ、其法律學上の意義に於ては、等しく上説の法の一分類たるに過ぎざるなり、次に謂ふ所の科學とは、組織せられたる知識の謂にして、上説の法的現象に關する總てに通ずる眞理を總合、彙類して原理を研究するをいひ、やがて組織立てる一種の知識たるに至らば、これ法理學なりとす、彼の法律哲學と云ふも亦同じ、されど用語の慣例に依れば、此意義の法理學より彼の法制史學を除外するを例とす。(法理の部參照)而して法理學は、彼の法律學に對するの點は特に注意を要す、法律學は、各科の法律に對して原理を研究するものなれば、法律の種類だけ例へば憲法學、行政法學、民法學、商法學、刑法學などあり得べしと雖も、法理學は、總べての法的現象に通ずるものなれば、此等を包有して唯一存するのみとす。
- 英
- Jurisprudence
- 独
- Rechts-wissenschaft
- 仏
- Jurisprudenoe
法律
(はふりつ)二義あり、形式上に其意義を求むれば、法律は議會の協贊を經たる國家の意思にして、其之を經ざる命令、條例などと相對す、實質上に其の意義をし求むれば、因果則にて、有權者に依り施行せらるるものを謂ふ、□一法律は因果則なり、普通法律は、人類行爲の規則として現はれ、所謂道德は心意を支配し、法律は行爲を支配すなる諺の出でたる所以なり、されど人事の複雜なる、常に法律は行爲のみを支配して心意を顧みざらんか、社會の秩序得て保つべからず、茲に於てか法律は、場合に依りては心意の支配をまでなすに至れり、之蓋し心と事とは爾く別異すべきものに非らざるよりして然る也、斯くの如くして法律は行爲の規則なる言葉を以て網羅するを得ざるに至り、學者は單に法律は因果則なりといふに至れり、所謂因果とは原因結果の關係にして、或原因に對する一定の結果の關係は即ち規則なり、法律は此規則の一種として、彼の道德律に對し人類を支配するものとす、□二法律は有權者に依りて行使せらるるものなり、道德律も人類を支配する規則の一なり、等しく人類の行爲及び心意を支配す、唯異なる所は、法律は有權者(例へば主權)に依りて行使せられ、道德律は良心又は神の如きものに依りて維持せらるるにあり、或學者は、國際法には之を維持する主權者なく、然も尚其の確信に依て法律たるを辯護せんが爲めに、法律には有權者の觀念を要とせず、有權者を觀念の要素とするが如きは、帝權の盛なる時をのみ見たる妄見なりと、何ぞ其誤てるの甚しき、國際法は、有權者の觀念を有するも尚法律たり、敢て法の觀念より有權者の一要素を除き、法律と道德律とを混同し、以て國際法を法律なりと證明するの要あらんや、之を要するに、法律は其の實質的の意義に於ては、彼の道德律と相對し、等しく人類を支配する規則なり、或點に於ては、二者全く一致すべし、されども其觀念に於て相背致する所あるが故に、理想に於ては一致せざるべからざるに拘はらず、往々相反するものなきにしもあらず、彼の惡法も亦法なりとの法諺生ぜる所以なるべきか、遮莫、法律は、常に人類共同生存の規則として、有權者よりの命禁なり、唯實際に於て因果則ならざるものをも猶法律と云ふことあり、之歐洲の慣例として、權利義務に關する律則は、常に議會の協贊を經べしとなし、此反對に議會の協贊を經たるものは、之を法律なりと信じたるより出づ、蓋し法律を其形式に依りて定義するものなり。(憲法八、九、六二、六四條)
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
法律案
(はふりつあん)法律の原案を法律案と云ふ、法律の草案と云ふも同義なり、法律案は、未だ法律にあらず、從て覊束力を生ぜず、法律案の提出は政府及兩議院の權能にして、議會が法律案を受領したる時は、三讀會を經て之を議決すべきもの也、但し政府の要求若くは議員十人以上の要求に由り、議院に於て出席議員三分の二以上の多數を以て可決したるときは、三讀會の順序を省略する事を得るものとす、所謂三讀會とは、同一議案を三度反覆して審査、討議するを云ふ、第一讀會に於ては、法律案の大體に就き討論したる後、第二讀會を開くべきや否やを決するものにして、第二讀會を開くべからずと議決したるときは、其議案を廢棄したるものとす、第二讀會は、法律案の各條に就きて逐條審議を爲すことを目的とす、而して第三讀會に於ては、法律案全體の可否を決するを目的とするものなり、甲議院に於て政府の議案を可決し又は修正して議決したるときは、乙議院に之を移送すべく、乙議院に於て甲議院の議決に同意し又は否決したるときは、之を奏上すると同時に甲議院に通知すべきものとす、乙議院に於て甲議院より移したる議案に對し、之を修正したるときは、之を議院に回附すべく、甲議院に於て乙議院の修正に同意したるときは、之を奏上すると同時に、乙議院にこの旨を通知すべし、若し之に同意せざるときは、兩院協議會を開くことを求むるを要す、而して甲議院より協議會を開くことを求むるときは、乙議院は之を拒むことを得ざるなり、次に凡て議案は最後に議決したる議院の議長より、國務大臣を經由して之を奏上せざるべかちず。(憲法三八條、議院法二五、二七條乃至三一條、五四條乃至五六條及發案の部參照)
- 英
- Bill of law
- 独
- Gesetzesent-wurf
- 仏
- Note du droit
法律行爲
(はふりつかうゐ)法律行爲とは、私法上の效力を生ぜしむることを目的とする意思表示なり、公法上の效力を生ずる行爲は、茲に所謂法律行爲に非ず、私法上の效力とは、例へば賣買の如き、贈與の如き、凡て私權の發生變更、移轉、消滅を目的とする意思表示を云ふ、又法律行爲は、私法上の效力を生ずることを目的とせざるべからず、故に之を目的として意思表示をなしたるに非ざるも、私法上の效果を生じたるものの如きは、法律行爲にあらざる也、故に不法行爲は法律行爲にあらず、何となれば、不法行爲の效果は、不法行爲者が之を欲したるが故に、其效果を附するものに非ず、行爲者の意思如何に拘らず法律之を附與す、例を示せば、前例賣買の如きは、當事者に權利移轉の意思ありたるが故に其效果を附するも、若し當事者が唯だ賣買なる名稱を附して權利移轉を欲せざるが如き場合に於ては、法律は之に賣買の效力を附せず、無效となること多し、然れども不法行爲、例へば他人の物品を毀損して損害を生ぜしめたる者が、其損害を豫想せず、賠償義務の觀念を缺きたる場合に於ても、法律上其行爲者に賠償義務を命ず、若し行爲者が賠償せんとする意思にて物品を毀損するは、因より不法行爲の責任を負ふべきは勿論なり、要は不法行爲に於ては、行爲者に賠償即ち責任の意思あると否とを問はざれども、法律行爲には必ず法律上の效果に就き、觀念を存せざる可らざるの差あるものとす、次に法律行爲は、不法の事項を目的とせざるものならざるべからず、且つ不能の事を目的とせざるものなるを要す、法律行爲は意思表示即ち心理の作用を外部に發表するものなるを要す、凡そ吾人の心裡狀態は他人の得て窺ひ知るべからざると同時に、單に其意思のみを洞察して之に法律上の效力を附著せしむることを得ざるなり、即ち法律は、吾人の發表せざる意思に效力を附すること能はざれば也、又意思を發表するには、完全の能力と、發表の自由とを有すべきや明なり、無能力者のなしたる行爲、詐僞又は強迫に依る法律行爲の取消、又は無效なることあるは、此の理に基くものとす。(民九〇條乃至九八條、七〇九條、意思表示の部參照)
- 英
- Legal act
- 独
- Rechtshandl-ung
- 仏
- Acte juridique
法律管轄
(はふりつくわんかつ)法規の效力を及ぼすことを得べき範圍を法律管轄と稱す、一般に法の管轄を説明すれば、人に關する法律管轄、處に關する法律管轄、時に關する法律管轄となすことを得、□一人に關する法規の效力の範圍とは、如何なる人に對して法が適用せらるべきかを云ふものにして、特別なる小數の法規を除く外、凡そ法の效力は其國に存在する凡ての人民を支配するを原則となす、故に外國人と雖も一般國法に支配せらへきは固よりなり、一國の元首は法の下に立つべきものにあらず、之即ち最上權力者なるが故なり、治外法權を有するもの、例へば外國公使、外國君主、外國軍艦、軍隊等、夫れ夫れ特權の理由を以て、他國の主權に服せざるものに至りては、自國の法力を及ぼす能はざるなり、又法の力は、外國にある外國人を支配するを得ざるも、外國に在る本國人を支配するの力を有することありとす、□二處に關する法律管轄とは、一國の法令は何れの土地に迄行はるるやを示すにあり、特に或地方に必要なるが爲め、又は施行區域を限りたる法規の如きは、固より其區域外に效力なきは勿論なりと雖も、一般に法の場所的效力としては「法は國境を超えず」との格言により、其領土の外に效力を及ぼさざるものとす、領土とは領地領海を云ふ、領海は、干潮の時沿岸を去る三海里の距離迄を限りとなす、□三時に關する法律管轄とは、何時より行はるるか又は何時に行はれたる行爲を支配するかを指すものにして、一般の法規は、其法規の發布以後に行はれたる行爲を支配するを以て原則とす、其以前の行爲を支配すべきにあらざるなり、之を法の不遡已往と云ふ、又法は必ずしも公布と同時に施行せらるるものにあらず、特に其施行期限を定めたるときの如き之なり、然れども或法律、例へば刑法に於ては不遡已往を原則とするも、所犯法の頒布以前に在りて未だ判決を經ざるものは、新舊の法を比照し其輕きに從つて處斷すべきものとせり、故に犯罪行爲の當時の法律が、其判決前改正公布せられたる場合には、若し新法輕ければ此新法を適用し、茲に新法は已往に遡ることとなるべきなり、殊に或手續法の如きは、原則として已往に遡るべきものとせり、之手續を規定せる法規は、實體法の如く直接權利に影響すること少なければなり。(管轄の部參照)
- 英
- Control of law
- 独
- Rechts-zuständigkeit
- 仏
- Contrôle du droit
法律關係
(はふりつくあんけい)法律によりて定まりたる人と人との關係を法律關係と謂ふ、債權は、一定の人が特定の人に對して行爲、不行爲を要求する權利なるが故に、人と人との給付、被給付の關係にして、法律上の保護を受くるものなれば法律關係なり、而して債權者と債務者とは、法律關係は、或は之を債權關係といひ、或は債務關係とも云ふ、異名同物とす、次に物權は物に對する支配權にして、物權者は、債權の如く人を目的とせず、直接に物を支配するの力を有す、法律は此支配の狀態を保護し、此物權者と物との連結を第三者に對抗せしむ、此人と人との關係も所謂法律關係なり、斯くの如く法律的生存に於て、權利義務の關係又は權力服從の關係を稱して法律關係と稱す。(法例六、二〇條、民訴一三、二六、二九、五〇、七三六、七六〇條、裁構法一五條)
- 英
- Legal relation
- 独
- Rechts-verhältnisz
- 仏
- Rapport de droit
法律上の加重
(はふりつじやうのかぢゆう)或犯罪に就き、特別の事情ある場合に、法律の規定に依り當然普通の刑罰を如重するを法律上の加重と謂ふ、法律上の加重に、再犯加重、特別加重の二あり、再犯加重は、重罪、輕罪、違警罪に通じて一等を加重せらるべきものにして、再犯たる身分に基く法律上當然の加重なり、特則の加重は、刑法各本條に示したる特種の犯罪に限り加重せらるるものにして、或は犯人の身分に基き、或は其他の客現觀的事實に基く法律上當然の加重なりとす。(刑七二條二號、舊刑九一條乃至九八條等及び再犯加重の部參照)
- 英
- Legal aggravation
- 独
- gesetzliche Erschwerung
- 仏
- Aggrava-tion légale
法律上の共助
(はふりつじやうのきようじよ)全國各地に同一階級の裁判所を設け、以て自己の管轄區域内に起れる訴訟を審理裁判し、執法官の職務及び訴訟人の利便を計る、然るに一地方に起れる事件は、凡ての關係悉く其區域に於てのみ處辨せらるべきにあらず、或は證人、鑑定人の他管内に在ることあるべく、或は證據物件の他管内に散在すること稀なりとせず、之を一々管轄地の執法官をして所理せしむるは、徒に冗費を多からしむるのみならず、寔に不便少からず、故に茲に法律上の共助たる制度を設け、他管轄裁判所の事件と雖も、法定の範圍に於て互に之を補助すべきものとなす、所謂法律上の共助は、刑事訴訟に於ては、被告人の訊問、拘留及護送、證人の訊問、鑑定、臨檢及び搜索、物件の差押にして、民事訴訟に於ては、證據調、和解を試むること、本人訊問及送達等とし、此等の行爲に就きて各裁判所、檢事局、裁判所書記間相互に補助すを云ふ、換言すれば、囑託を受けて以上の訴訟行爲をなす相互の法律上の義務を指すものとす。(裁構法三編六章、民三一八、三二二、三五九、五五七條、刑訴一一二、一三二條等)
- 英
- Legal help
- 独
- Rechts-hilfe
- 仏
- Secours légal
法律上の減輕
(はふりつじやうのげんけい)法律の規定により或事情の爲め、必ず普通の刑より一等乃至數等の減刑を爲すを法律上の減輕と謂ひ、之に對するものを裁判上の減輕とす、裁判上の減輕は、我刑法に於て酌量減輕の一あるのみ、法律上の減輕には、宥恕輕減、特別減輕、自首減輕、未遂犯の減輕、從犯の減輕の五種あり、宥怒減輕は年齡に基き、一等又は二等の減輕を與ふる場合と、挑發宥恕の場合にして、殺傷罪のみに關し、二等又は三等の減輕を與ふ、特別減輕は、各本條に於て、法律が一定の犯罪に限り、刑を減ずるは等しく特別減輕なりと雖も、現行刑法に謂ふ所の特別減輕は、其中特に宥恕又は自首の名あるもの、即ち挑發宥恕及び特別の自首減刑を除かざる可らず、自首減輕或は免刑は、犯人進みで相當の官吏又は官署若くは被害者に首服し、未發覺の犯罪を告知したるを理由として、法律が其刑の全部又は一部を免ずる制度なり、未遂犯の減輕は既遂の罪に照し一等又は二等を減ず、從犯は正犯に對し一等を減ずるものとす。(刑六八條乃至七〇條、刑八〇條等及び宥恕減輕、自首減輕、未遂犯、從犯の部參照)
- 英
- Legal extenuation
- 独
- gesetzliche Milderung
- 仏
- Atténuance légale
法律上の代位辨濟
(はふりつじやうのだいゐべんさい)主たる債務者にあらざるものが、債權者に辨濟を爲して、其債權者の地位を承繼する事を代位辨濟と稱す、代位辨濟に任意の代位辨濟と、法律上の代位辨濟とあり、前者は債務者の爲めに辨濟を爲すも、當然債權者に代位するものにあらず、即ち債權者の承諾を要件とするものなり、後者は之に反し、當然債權者の承諾を得ずして代位するものなり、故に其辨濟を爲すに就き正當の利益を有するもの、即ち債務者の保證人、物上保證人等の如き者にして、其の辨濟をなさざる可らざるものに限る、此等の者は主たる債務者の辨濟せざる場合に、自己が代りて辨濟を爲さざるべからざるものなれば、法律が其の辨濟に對して代位せしむるは、債權者の地位を繼承するの必要は、主たる債務者に對して求償權を實行するの便宜に出づ、辨濟を爲したる第三者は固より普通の求償者として、債務者より辨濟せしむることを得ると雖も、其擔保に乏しく無資産なる場合に於ては、結局求償權の實行を爲す能はざることあるべし、然るに代位辨濟に於ては、全然債權者の地位を繼承するものなるを以て、辨濟を爲したる代位者は自己の權利に基き、求償を爲すことを得べき範圍内に於て、債權の效力及び擔保として、其債權者の有せし一切の權利を行ふことを得べきの利益あれば也、債權者の地位を繼承するの方法に、債權の讓渡なる法律行爲あり、代位辨濟と甚相似たりと雖も、其間自ら差異ありて存す、即ち債權の讓渡は、讓受人が債權全額を請來するを得るも、代位は辨濟額を限として償還を請求し得るに過ぎざるものとす。(民五〇〇、四九九、五〇一、四六六條、及び任意代位の部參照)
- 英
- Legal subrogation pay-ment
- 独
- gesetzliche Vertretungserfüll-ung
- 仏
- Paiement subrogatif légal
法律上の養料
(はふりつじやうのやうれう)法定扶養料とも謂ふ、法律の規定により、扶養の義務あるものが扶養權利者に與ふる扶養料也、扶養の義務ある者とは、民法の規定によれば、直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養の義務を負ふものとす、故に之等の者は其家を同うすると否とは扶養義務に何等の影響なし、茲に直系血族とは法定血族をも含む、法定血族とは俗語に所謂「血を分けたるもの」にあらざるも、血族と同一の關係あるもの、例へば養子と養父との關係の如し、又繼父母と繼子、嫡母と庶子との間も扶養の義務あるものとす、且つ夫婦の一方と他の一方の直系尊屬にして、其家に在る者との間に於ても扶養義務ありとす、次に扶養の義務は扶養を受くべき者が、自己の資産又は勞務に依りて生活を爲すこと能はざるときにのみ存在するものにして、同一の理由により教育を受くる事能はざるときも亦同じ、されと兄弟姉妹間に在りては、扶養の義務は扶養を受くる必要が、之を受くべき者の過失に因らずして生じたるときにのみ存在す、但し扶養義務者が戸主なるときは、此條件を俟たずして扶養義務を負ふものなり、次に扶養の程度は、扶養權利者の需要と、扶養義務者の身分及び資力とに依りて定むべきものにして、扶養義務者は、其選擇に從ひ、扶養權利者を引取りて之を養ひ、又は之を引取らずして生活の資料を給與することを得、但し正當の事由あるときは、裁判所は扶養權利者の請求に因り、扶養の方法を定むることを得、扶養義務者は往々にして數人あることあり、此場合に於て、其義務を履行すべき者の順序下の如し、□一配偶者、□二直系卑屬、□三直系尊屬、□四戸主、□五姻族關係に基く義務者、□六兄弟姉妹、直系卑屬又は直系尊屬の間及五に揭げたるものの間に於ては、其親等の最も近き者を先にす、又は同順位の扶養義務者數人ある時は、各其資力に應じて其義務を分擔すべく、但し其家にあるものと否らざるものの間にありては、先づ其家にある者、扶養の義務を負ふものとす、次に扶養を受くるもの數人ある場合に於て、扶養義務者の資力が唯全員を扶養するに足らざるときは、扶養義務者は下の順序に從ひ扶養を爲すことを要す、イ直系尊屬、ロ直系卑屬、ハ配偶者、ニ前述□五に記載せる權利者、ホ兄弟姉妹、ヘ以上に揭げたる以外の家族、同順位の扶養權利者數人あるときは、各需要に應じて扶養を受くることを得べし。(民四編八條參照)
- 英
- Legal aliment
- 独
- gesetz-liches Nahrungsgeld
- 仏
- Aliment légal
法律哲學
(はふりつてつがく)法的現象に關する原理を研究する學問なり、法の何たると、學の何たるとは法理學の部參照せられよ、而して原理とはこれに共通する最高の法理にして、之れを批評總合し、分析演釋して研究するの一科の學は即ち法律哲學なり。(法理學の部參照)
- 英
- Law philosophy
- 独
- Rechts-philosophie
- 仏
- Philosophie du droit
法律に代はる勅令
(はふりつにかはるちよくれい)緊急命令又は緊急勅令之れなり、即ち法律の效力を有する勅令にして、公共の安全を保持し又は其災厄を避くる爲め、緊急の必要に由り帝國議會閉會の場合に於て發する命令をいふ、此勅令は次の會期に於て、帝國議會に提出し其承諾を得べきものとす、若し議會不承諾のときは、政府は其勅令の將來に向つて效力を失ふことを宣言すべきなり、又我憲法は右の外、公共の安全を保持する爲め緊急の必要ある場合に於て、内外の情況に因り、政府は帝國議會を召集すること能はざるべきときは、勅令に依り財政上必要の處分を爲すことを認む、此の場合に於ても、次の議會に提出して其承諾を求めざるべからず、然れども此の勅令は一の處分なるが故に、議會に於て不承諾なるも、其處分に就き何等の效果を生ぜざるなり、緊急勅令は、法律と同一の效力を有するものなるを以て、法律を廢止變更するの力を有す。(憲法八、七〇條及び緊急勅令の部參照)
- 英
- Imperial ordinance in place of law
- 独
- kaiserliche Verordn-ung in der Stelle des Gesetzes
- 仏
- Ordonnance impériale au lieu du droit
法律の停止
(はふりつのていし)一定の期間、法律の執行を停止するを法律の停止と謂ふ、例へば戒嚴令により、戰時に於て普通の司法裁判所の事務は陸海軍司令官に移り、警察法の如き其執行を停止せらるるが如し、法律の停止は憲法又は其他の法律の規定によらざるべからざるものなりとす。(戒嚴の部參照)
- 英
- Legal suspension
- 独
- gesetzliche Suspension
- 仏
- Suspension légale
法律名義
(はふりつめいぎ)法律關係に於ける正當名義を云ふ、彼の權利名義と云ひ、債務名義と云ふは此の一種にして、法律上或行動を採る場合には、正當なる法律上の名義あることを要す、所謂名義とは、實際上の關係に對し、形式上の關係を意味すると同時に、方便又は原因とやふの義を包含するものなり。
- 英
- Legal title
- 独
- Rechtstitel
- 仏
- Titre légal
法律免除
(はふりつめんぢよ)特定の關係に或法律の適用をなさざるを法律の免除と謂ふ、法律の免除と、施行區域を限られたる法令とは其性質を異にす、施行區域を限られたるものは、其法令發布の日より、一定地域間の爲めに存するものなれども、法律免際は其法律自體は全般に行はるる性質を有し、唯特定の場合に特定の人に對し、其適用を免除するに過ぎず、故に施行區域を限らるる法令の中にも、法律免除を爲すことあるは勿論なり、法律免除の適例は、水害地方地租特別處分法に因り、荒地に至らざるも、收〓皆無となりたる土地の地租を免除せるが如き、即ち是なり。(三二年法一號參照)
- 英
- Legal release
- 独
- gesetzlicher Erlasz
- 仏
- Abandon légal
法力
(はふりよく)法規の效力を法力と稱す、法規の效力は分て、實質的效力と形式的效力との二となす、實質的效力とは、人類の意思に關する法の覊束力を云ふ、形式的效方とは、一の法規が他の法規に對する廢止變更力を意味す。(法律の部參照)
- 英
- Legal effect
- 独
- gesetzliche Ge-walt
- 仏
- Effet de la loi
法令
(はふれい)法律及び命令を總稱して法令と謂ふ、法律とは人類共同生存の規則にして、有權力に依り維持せらるるものをいひ、形式上に於ては、會議の協賛を經たる國家の意思也、命令とは國家意思にして法律以外のものを云ひ、廣義に於ては、其處分令たると否とを問はず、命令は之を機關の差異に依り、勅令、閣令、省令、府縣令、郡令等あり、之を總稱して法令と稱す。(法例二條、民二、四三、九一、九二、一三八、八四九、八六五、九四四條、商二、一六二、一六三、六一四條等)
- 英
- Law and ordinance
- 独
- Gesetz und Ordnung
- 仏
- Lois et règlement
法例
(はふれい)法例と云へば、各種法律の通則たる意味に於ける法例と、特に法例と稱する獨立の法典を指す場合とあり、前者は刑法總則法例、商法總則法例と云ふが如く、各其法典の通則を意味し、後者は一般法律の適用に關する法典を指稱するものとす、此の後義に於ける法例は、所謂國際私法的規定を定める法典にして、我國の法律が、人、場所、事物、時に關し、如何に發動するか、又如何なる範圍に於て外國法を認め、之を適用すべきやを定めたるものとす。(三一年法一〇號法例、刑一篇一章、商一篇一章參照)
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- loi
反
(はん)背くと云ふと同義に用ふ、即ち法律規則の命ずる處を行はず、禁ずる處を行ふことを意味す、但し必ずしも懲罰の制裁を伴ふ行爲に限るにあらず、例へば民法に「公の秩序善良の風俗に反する行爲は無效とす」と云ふが如し。(民九〇、一二條)
- 英
- Violation
- 独
- Verletzung
- 仏
- Violatian
犯意
(はんい)行爲を違法たらしむべき事實の認識を犯意と謂ふ、犯罪の故意と云ふの義にして、犯罪構成の重要なる要件なり、即ち犯罪は、單に擧動のみを以て成立するものにあらず、例へば殺人罪に於て、殺人なる擧動は或は發狂の爲め、或は熟睡中に生ずることあるべし、されば犯意を缺くときは、茲に犯罪要素の一を缺くを以て、殺人罪成立せず、殺人罪を成立するには人を殺すの意を以て、殺人なる擧動により死の效果を生じたることを要するものなり、又他人の所有物なるを知らずして、人の物品を橫領するも、これ竊盜の罪にあらず、蓋し竊盜の犯意を缺くを以てなり、之を要するに犯罪の故意とは、犯罪の事實を知り、犯罪行爲に志すを云ふ、犯罪事實を知りしとは、犯罪構成の物的條件、即ち罪となるべき事實及び刑罰加重の物的條件、即ち罪本重かるべき事實を知るを云ふなり。(刑三八條及び故意の部參照)
- 英
- Guilty intention
- 独
- Vorgatz
- 仏
- Intention coupable
判官
(はんくわん)判官とは、臺灣總督府法院に於て、裁判事務を掌る官職を云ふ、臺灣總督府法院條例に依れば、判官は勅任又は奏任の官等を有し、裁判所構成法に於て、判事たる資格を有する者の中より、臺灣總督府之れを補職するものにして、判官任職中は、司直の官吏たるの威嚴を維特する必要あるべきを以て、第一、公然政治に關係し、第二、政黨政派に加入し第三、俸給ある又は金錢の利益を目的とする公務に就き、第四、商業を營むが如き、該官職の性質と相容れざる行爲を禁ぜらるると同時に、在職者をして忠實に其職務を奉ぜしめ、以て裁判事務の公正を期せんがため、判官の地位に保障を與へ、刑法の宣告又は懲戒の處分に由るにあらざれば、其意に反して免官又は轉職せらるることなき旨を明定せり、されど判官にして、身體又は精神の衰弱に因り、職務を執る能はざるに至りたるときは、臺灣總督は、覆審法院の總會の議決を經て、之れに退職を命ずる事を得、斯くして退職せられたる者は、官吏恩給法に依り、制規の恩給を受くる權利を有するものとす、而して臺灣總督は、必要と認むるとは、判官に休職を命ずるの權限を有するものにして、休職者は職務を執行せざる外、在職者と異なることなく、俸給は本俸の四分の一を受くることを得べし。(臺灣總督府法院條例五、一四條乃至一七條)
- 英
- Judge
- 独
- Richter
- 仏
- Juge
判決
(はんけつ)判決とは、或訴訟事件に就き、裁判所が法の適用を決定發表するを云ふ、刑事訴訟法の規定に依れば、刑事訴訟事件に對する判決を分て二種となす、主たる判決及び從たる刑決これなり、(第一)主たる判決とは、事件其ものに對する判決にして、又之を分ちて四種となす、卽ち管轄に付きての判決、有罪の判決、無罪又は免訴の判決及び闕席判決これ也、□一管轄に付きての判決とは、被告事件が其裁判所の管轄に屬せざる場合に言渡す管轄違の判決を云ふ、□二有罪の判決とは、被告事件が其裁判所の管轄に屬し、且つ犯罪の證憑充分なるときは、法律に從ひ、刑の言渡をなす判決を云ふ、□三無罪又は免訴の判決とは、犯罪の證憑十分ならず、又は被告事件罪とならざるときに、無罪を言渡し、被告事件が公訴の時效に罹りたるとき、既に確定判決を經たるものとをるとき、大赦ありたるとき及法律に於て其の罪を全免するとき等に於て、免訴を言渡す判決を云ふ、□四闕席判決とは、呼出を受けたる被告人又は罰金以下の刑に罹るべき事件に、其の代人が公判の期日に出頭せざるときに於て、檢事の請求する處を廳き、其事件に對する法の適用を言渡す判決及び私訴關係人出頭せざるとき、民事訴訟法の規定に從ひ、言渡す私訴の判決を云ふ、(第二)從たる判決とは、主たる判決に係かる事件に附隨する事項に付き言渡す判決にして、又之れを分ちて訴訟費用の言渡、沒收の言渡及び還付の言渡となす、□一訴訟費用の言渡は、被告人有罪となりたるとき、裁判所が其職權を以て、公訴に關する訴訟費用の全部又は一部を負擔すべき旨を言渡すものにして、□二沒收の言渡は、法律に於て禁制したる物件、犯罪の用に供したる物件及び犯罪に因て得たる物件等に對する沒收の宣告を云ひ、□三還附の言渡とは、被告事件有罪となりたると否とを問はず、沒收に係らざる差押物に付き、所有者の請求の有無に關せず、其還附を言渡すものこれなり、總べて判決には、犯罪の事實、證據、法律の適用及び其理由等を記載すべきは勿論、其裁判をなしたる裁判所、年月日、其の事件に關與したる檢事の官氏名を記載し、判事書記共に署名捺印することを要するものにして、被告人は、對席判決、即ち自己の出廷して言渡を受けたる判決に對し、不服なるときは、五日内に上訴をなすを得べく、前記闕席判決に對しては、三日内に其裁判所に故障の申立をなし、又は上訴をなすを得べし、檢事に對しては、闕席判決なるものなきを以て故障の申立をなすを得ず、唯凡ての場合に於て、上訴をなすことを得るのみ、而して判決の原本は、公判始末書と共に、訴訟記錄に添錄し、其裁判所に保存することを要し、若し上訴ありたるときは、之を上訴裁判所に送附すべきものとす、又訴訟關係人は、其の費用を以て、判決の正本、謄本又は抄本の下附を請求するを得べし、次に民事訴訟法に於ける判決は、これを大別して二種となす、即ち對審判決及び闕席判決これ也、(第一)、對審判決は、原被兩造出廷したる場合に言渡す判決を云ふものにして、又之を分ちて二種となす、終局判決及び中間判決是也、□一終局判決とは、本案に對して法律の適用を言渡す判決にして、之に因て其判決に係かる爭議は、當該審級に於ける終局を告ぐるものとす、隨つて此終局判決に對しては、上訴の方法に依り不服を申立ることを得べし、但し例外として、訴訟費用のみに付きての判決に對しては、上訴をなすを得ず、而して此終局判決を分ちて、全部判決及一部判決の二種となす、全部判決とは、本案全部に對する判決にして、一部判決とは、併合したる數個の訴訟中の一、又は一の訴を以て提起したる數個の請求中の一、又は一個の請求中の一部又は反訴あるとき、本訴若くは反訴のみに對し言渡す判決を云ふ、□二中間判決とは、終局判決の如く、訴訟に於ける請求其ものの全部、若くは一部を判決するものにあらずして、此終局判決に達する必要の準備として、各個の爭點に就て爲す所の判決を云ふ、即ち本案の終局に至らずして、本案判決の準備として爲したる判決なるを以て、所謂確定力を有するものにあらす、然れども其審級に於ては、確定すと云ふも妨げざるべし、而して此中間判決に對しては、法律に明文ある場合に限り、抗告をなすを得べきも、獨立して控訴をなすを得ざるを原則となす、唯此例外として、妨訴の抗辯を棄却する判決、請求の原因及び數額に付き、爭ある場合に於て、其請求の原因を正當なりとする判決に對しては、特に控訴をなすことを得、而して終局判決に對しては、一箇月内に、中間判決に對する即時抗告は、七日内に其上級裁判所に不服を申立ることを得べし、この期間は、所謂不變期間に屬するを以て、裁判所の命令又は當事者の合意を以て、之れを變更若くは短縮することを得ざるものなり、而して判決には、□一當事者及び其法律上代理人の氏名、身分、職業及び住所、□二事實及び爭點の摘示、但し其摘示は、當事者の口頭演述に基き、殊に其提出したる申立を表示して之れをなす、□三裁判の理由、□四判決主文、□五裁判所の名稱、裁判をなしたる判事の官氏名等を記載し、裁判をなしたる判事之に署名捺印し、書記は判事より七日内に之を受取り、言渡の日及び其領收の日を附記し、且つ其附記に署名捺印をなし、各當事者より判決の送達を申立てたるときは、其正本を交附するものとす(第二)闕席判決は、原告若くは被告の口頭辯論の期日に出頭せざる場合、又は出頭するも辯論をなさざるとき、又は辯論をなさずして任意に退廷したるとき、又は辯論をなすも各個の事實、證書又は發問に付き陳述をなさず、又は任意に退廷したるとき等に於て、其相手方を出頭せざるものと看做し、相手方の申立に因り、原告に對する却下の判決、又は被告に對する敗訴の判決を云ふ、即ち出頭せざる一方が原告なるときは、裁判所は訴の却下を言渡し、被告なるときは、被告が原告の事實上の口頭供述を自白したるものと看做し、原告の請求を正當となすときは、被告の敗訴を言渡し、又正當と認めざるときは、其訴の却下を言渡すべきものとす、此闕席判決に對しては、當事者は十四日の不變期間内に、其裁判所に對し故障の申立を爲すを得べく、裁判所に於て故障の申立を適法となすときは、訴訟は更に缺席前の程度に復する也、刑事訴訟法に於ては、故障期間内に於て被告は其撰ぶ處に從ひ、或は上訴をなし、又は故障をなすを得べきも、民事訴訟に於ては、唯故障をなすの一途を有するのみ、以上は民刑訴訟法上に於ける判決に就きての規定の大體を説明したるに過ぎず、其詳細は各部に就きて參照すべし。(刑訴二〇〇條乃至二〇七條、二二二條乃至二三〇條等、民訴二二五條乃至二六四條)
- 英
- Judgment
- 独
- Urtheil
- 仏
- Juge-ment
判決の言渡
(はんけついひわたし)判決の言渡とは、或訴訟事件に對し、裁判所が法の適用に就きての決定を宣言するを云ふ、而して訴訟法の異なるに從ひ、其手續同じからざるを以て、民事刑事兩裁判の各場合に別て説明するを便宜とす、□一刑事裁判の場合に於ては、辯論を終りたる後、即日又は次の開廷日に之を言渡すべきものにして、言渡の方法は、判決主文の朗讀を以て之をなすものとす、而して判決の理由は、判決の言渡と同時に朗讀し、又は口頭にて其要領を告げざるべからず、而して對席判決に因り刑の言渡ありたるときは、裁判長より其言渡を受けたる者に、其判決に對し五日の法定期間内に、上訴をなし得べきこと及び各自の費用を以て、判決の正本、謄本又は抄本の下附を請求し得べきことを告知し、闕席判決に因り、刑を言渡したる場合には、判決書に三日の法定期間内に其判決に對し、故障又は上訴の申立をなし得べきことを記載するを要す、若し此告知又は記載なきときは、更に其通知をなすまで、上訴及び故障期間の經過を停止するものとす、□二民事裁判に於ける判決の言渡は、口頭辯論の終結する期日、又は直に指定する期日に於て、之を言渡すべきものにして、此の期日は七日を過ぐることを得ざるものとす、而して言渡の方法は、判決主文の朗讀に因りて之をなすものにして、闕席裁判の言渡は、其主文を作らざる前と雖も之をなすを得べく、裁判の理由は、之を言渡すことを至當と認めたるときは、判決の言渡と同時に、其理由を朗讀し又は口頭を以て、其要領のみを告ぐべきものとす、而して判決の言渡は、當事者又は其一方の在廷すると否とに拘はらず、當然其の效力を有すべきもの也、因に判決は、其基本たる口頭辯論に臨席したる判事に限り之をなすを得べきものにして、若し他の判事が之をなしたるときは、法律上の效力なきものとす、茲に基本たる辯論と云ふは、判決の根據たるべき材料に付きての辯論を云ふものにして、詳言すれば、主要なる事實の爭點に關する辯論、又は證據調の結果に付きての辯論の如き是也、而して裁判所は、其言渡したる判決に付き、當事者の申立に因り、又は職權を以て、何時にても其判決中の違算、書損及び之に類する著しき誤謬を更正するを得べきも、此種の例外を除きては、其言渡したる終局判決及び中間判決の中に、包含せられたる裁判に覊束せらるるものとす。(刑訴二〇四、二〇七條、民訴二三二條乃至二三五條の一項、二四〇、二四一條及び判決の部參照)
- 英
- To pronounce sentence
- 独
- Urtheilverkündung
- 仏
- Prononcer la sentence
判決裁判所
(はんけつさいばんしよ)判決裁判所とは、判決を爲したる裁判所を、其繫屬事件に關し判決裁判所と謂ふものにして、別に判決裁判所なるものあるにあらず、民事訴訟法第百四條に「判決裁判所に於ける訴訟に付きての當事辯論は口頭なりとす云々」あるは其用例にして、即ち判決を與ふることを要する事件の裁判は、口頭辯論主義に依るとの原則を示したるものとす。
- 英
- Judicial court
- 独
- erken-nendes Gericht
- 仏
- Tribunal judiciaire
判決主文
(はんけつしゆぶん)判決主文とは、裁判所がある訴訟事件に付き、法を解釋適用せし論理上の斷定を云ふ、即ち判決なるものは、事實、理由及び主文の三要件を具備すべきものにして、主文は其一要件なるのみならず、實に判決主要の部分をなすものとす、蓋し裁判なるものは、裁判官が判決の前提たる事實を審査し、之を法の規定に照らして、論理的推理の結果たる斷定、即ち判決主文を得んことを目的となすものなれば、要するに、裁判の最終の目的たるものは判決の主文と云ふべし。(刑訴二〇四條、民訴二三四、三三六條)
- 英
- Judicial form
- 独
- Urtheils-formel
- 仏
- Forme judiciaire
版權
(はんけん)版權とは、版權法に依りて認められたる一種の財産權を云ふ、詳言すれば、圖書の出版に關する利益を專有する權利なり、從來版權法は、我邦が萬國版權同盟に加入したるため、新に明治三二年三月法律第三九號著作權法を制定して之を廢し、其の結果版權は之を同法の著作權に包含せしめたり、所謂此著作權とは、文書、演述、圖書、彫刻、模型、寫眞、其他文藝、學術若くは美術の範圍に屬する著作物の複製をなす權利を云ふものにして、文藝學術の著作物の著作權は、翻譯權を包含し、各種の脚本及び樂譜の著作權は、興行權をも包含するものとす、而して著作權の性質は、一種の財産權に外ならざるを以て、之を讓渡の目的となすを妨げず、此權利は、原則としては、著作者の死後三十ケ年間存續するものにして、其存續期間の起算點は、各場合に依りて異なるものとす、次に僞作をなして著作權を侵害したるときは、同法の規定に依り、一定の處罰を受くべし、但し僞作に關する罪は、被害者の告訴あるにあらざれば、處罰せらるることなきなり。(著作權法及び僞作の部參照)
- 英
- Copyright
- 独
- Autorrecht
- 仏
- Droit d'auteur
反語
(はんご)反語とは、修辭學上の用語にして、其言語の表面の意義と、全然相反對したる意義を表示する爲めに使用せらるる一種の轉義の語法なり、例へば「無意義の愚論なり」と謂ふ意義を表はさんが爲めに、却て其反對なる表面上の意義を有する「意味深長なる名論なり」と謂ふ言語を使用するが如し、反語に誹譏諷剌の性質を有するものと、否らずして多く滑稽諧謔に於て顯はるるものとあり、而して反語は一般に正語法によるものよりも、一層強烈なる感動を與ふるものなれど、其亂用は却て嫌惡の念を起さしむべし、尚其の理解に困難を感ずる如き反語は、往々誤解を惹起し、然らざるも其效力を減ず、反語の最も有名なるは希臘の哲人ソクラテスの辯證法に於て用ゐたるものにして、相手の言論を借りて、其不知不識の間に自家撞著に陷らしめ、結局自己の無知なることを自覺せしめて、前きに知れりと思ひしことの誤りなりしを悟り、爾後共に研究の途に上るべきを思はしむるに至る唯一の武器なりき、反語的とは、批評言論の旨意が、言語通りの意義と反對の意味を含むことを指示する形容詞なり。
- 英
- Irony
- 独
- Spötterei
- 仏
- Ironie
反坐
(はんざ)反坐とは、刑法上被告人をして、被害者と同一程度の苦痛を伴ふ刑罰に處するを云ふ、所謂復讎主義の制裁の義なり、舊刑法二二一條に「僞證のため被告人刑に處せられたる後に於て、僞證の罪發覺したるときは、僞證者を其刑に反坐す、若し反坐の刑前に記載したる僞證の刑より輕きときは、前條の例に照して處斷す」とあるは是其用例なり。
- 英
- Retaliation
- 独
- Wiedervergelt-ung
- 仏
- Talion
犯罪
(はんざい)犯罪なる語の意義に就きては、刑法學者の間に議論少しとせず、蓋し啻に其採る處の主義を異にするのみならず、又各其觀察點を同うせざるが爲ならずんば非ず、隨つて如何なる學者の説明に對しても、多少の批難を避くべからざるは、實に巳むを得ざる結果也、爰を以て、今は唯或知名の學者に依りて與へられたる定義を假りて、大體の觀念を説明するに止めん、即ち曰く、犯罪とは、刑罰の制裁ある法律に依り、禁制又は命令したる事項に違反する所爲を云ふ、(第一)刑罰の制裁ある法律たる事を要す、抑も犯罪は、所謂刑罰法の存在を前提となす、刑罰法にして存在せずんば、犯罪なるものあることなし、之と同時に、犯罪ありと云ふときは、刑罰の制裁を伴ふ法律の存在を意味するものとす、(第二)禁令又は命令の事項あることを要す、禁令とは、不行爲を命ずることを云ひ、命令とは、行爲を命ずることを云ふ、國家が私人の或行爲、不行爲を犯罪として、之に加ふるに刑罰の制裁を以て臨まんには、必ずや豫め或行爲、不行爲の違反たることを鑑別するの標準を示さざるべをらず、若し此標準を示さずして、漫に刑罰の制裁を施さんが、人は夫れ竟に其適從する處を知る能はざるに至らん、即ち此標準を示すものは、禁令又は命令の事項なりとす、(第三)禁令又は命令の事項に違反の所爲ある事を要す、法律は、意思を罰せざるを原則とす、隨つて如何なる禍心害念を包藏するも、未だ心理に隱慝して、之を外部に現はさざるものは罰するを得ず、所爲は、犯者の意思を外部に表現したるものにして、所爲自體が禁令命令の事項に違反する場合に於て、茲に初めて犯罪の構成を見るものとす、即ち叙上の三條件は、犯罪の成立上缺くべからざる要素をなすものにして、三者其一を欠缺するときは、未だ之を以て犯罪と云ふを得ざるものとす、次に吾刑法上、犯罪を分ちて、重罪、輕罪及び違警罪の三種となす、此區別は犯罪の本質より觀察したるものに非ずして、其所爲の結果より區別したるもの也、從て此三者の異同を學理的に説明するを得ず、唯重罪とは、重罪の刑を科する罪を云ひ、輕罪とは、輕罪の刑を科する罪を云ふものにして、違警罪とは、違警罪の刑を科する罪を云ふと解するの外なきものとす。(刑法參照)
- 英
- Offence
- 独
- Verbrechen
- 仏
- Infraction
犯罪人引渡
(はんざいにんひきわたし)犯罪人引渡とは、或犯罪人の所在國が、其の犯罪に關する被害國の請求を受けて、犯罪人を引渡すことを云ふ也、例へば甲國に於て、或犯罪を行ひたる者が、乙國の領土内に逃亡し來りたる場合に、乙國が甲國の請求に應じ、其犯罪人を捕へて引渡すか如き之れなり、蓋し國家の主權なるものは、其領域を以て限界となすもの也、故に他國家の領域内に於て、自國に對する犯罪を行ひ、又は自國の領域内に於て罪を犯し、後他國家の領域内に逃走したる如き場合に於ては、自國の主權は、最早之れを追求する能はず、然れども若し斯かる犯罪人に對しては、到底何等の制裁をも加ふる能はざるものとなさんか、各國は互に其國内に於ける安寧秩序を維持する上に於て、少なからざる危險を免れざるべし、茲に於て乎、國際上互に犯罪人の引渡をなす必要を生ず、偖此の犯罪人引渡なるものは、國家當然の義務なるや否やに關しては、學説一定せざるのみならず、各國各其の執る處の主義を異にし、現に英米兩國の如きは、條約に因るにあらずんば、決して犯罪人を引渡さざるの主義を固持す、要するに各國互に犯罪人を引渡すは、彼我の便利なると同時に、國際上の交誼を全うする上に於て、適當なる處分たるべきを以て、實際上に於ては之れを行ふと雖も、國際法上未だ犯罪人引渡の義務を認めたる法則、又は慣例なきが故に、多數の學者は、條約に由りて此の義務を負擔する場合は之れを措き、國家當然の義務にあらずと論ぜり、次に如何なる犯罪人は、互に之れを引渡すべきかは、固より各其條約の規定に因て定るべきも、一般の原則として、學者の説明する處のものを擧ぐれば、□一請求國及び被請求國に於て、共に犯罪と爲すものなること、但し國事犯は之れを例外となす、□二其犯罪は、請求國の國境内に於て行はれたるものなるか、若くは其主權の及ぶべき土地に於て行はれたるものなること、□三其犯罪が被請求國の法律に從ひ、未だ時效に罹りたるものにあらざることの三條件とす、我現行法に依れば、逃亡犯罪人と稱するは、締約國の管轄内に於て犯したる引渡犯罪に就き、告訴告發を受け、若くは有罪の宣告を受けたる帝國臣民外の人にして、帝國の管轄内に逃避したる者、又は逃避したるの嫌疑若くは逃避せんとする嫌疑ある者を云ふと規定せり、而して自國の臣民に就きては、罪種の何たるを問はず、一般に引渡の請求に應ぜざるを原則となす、尤も特別の條約を以て之れが引渡を約するは、固より其の自由に屬すべし、我現行法は、原則上我臣民の引渡に就きては、他國の請求に應ぜざるものとなし、例外として、第一、帝國と請求國との犯罪人引渡條約に、交互其の臣民の引渡をなすべき條款ある時、第二、犯罪人引渡條約に、交互の任意を以て、其の臣民の引渡請求に應ずる事あるべき旨の條款あり、且つ請求國に於て、同樣の場合には、自國の臣民を引渡すべき旨を申出でたときに於て、之れを引渡すものと規定せり、而して或國家が、數箇國より同一の犯罪人引渡の請求を受けたる場合には、孰れの國家に對し、之れを引渡すべき乎に就きては、又學者の間に議論あり、A數箇の請求國の請求原因となす犯罪、相異なる場合に關しては、或は最も早き犯罪を原因となして請求する國家に引渡すべしとなすもの、或は最も重大なる犯罪を原因として、請求する國家に引渡すべしとなすもの、或は被請求國と最も距離の近き請求國に引渡すべしとなすもの、或は最も早く請求をなしたる請求國に引渡すべしとなすものとの數説あり、我逃亡犯罪人引渡條例の規定に依れば、一逃亡犯罪人を、二國以上の締約國より、各其本國に於て犯したる罪の爲め、引渡請求をなしたる時は、最初請求なしたる國に引渡すべしとあり、B數個の請求國の請求原因となす犯罪の同一なる場合に就きては、數個の請求國中、犯罪行爲のありたる國家に引渡すべきものとなす、蓋し犯罪行爲ありたる國家は、犯罪に因て損害を受たる事最も多く、且つ犯罪人との關係最も深きを常とするが故に、此場合に關しては、學説略ほ一定せるものの如し、次に自國に於て、現に處刑を受け、服役中なる犯罪人、又は刑事被告人として、現に裁判所に於て審理中なる犯罪人に對し、引渡の請求を受けたる場合には、被請求國は、其放免を爲すまで引渡を拒絶するを得るも、被請求國が、任意に之を引渡すは固より妨げざるべし、又請求國は、其請求に因り犯罪人の引渡を受けたるときは、必ず其請求の原因となしたる犯罪に付きてのみ處刑すべきものにして、其以外の犯罪に付きては、處刑するを得ざるもとす、尤も此場合に於ても、被請求國が請求原因以外の犯罪に付き、處刑することを承諾したるとき及び引渡を受けたる後、其犯罪人が請求國に於て、更に新なる罪を犯したるときの如きは、此限にあらざるなり、終りに引渡手續に關する我規定は、外務大臣引渡請求書に接し、犯罪人引渡條約の條款に適合したると思量するときは、該請求書に、關係書類を添へ、之れを司法大臣に送附し、司法大臣は、本條の請求に接し、妥當の事由ある請求と思量するときは、逃亡犯罪人の所在又は到著すべしと認むる地の檢事に命じて、逮捕狀を發せしめ、司法大臣該檢事の具申に接したるときは、引渡狀を發し、一件書類に執行手續及び理由を付し、之れを外務大臣に返付す、此引渡狀を發したる後、一箇月内に之れを帝國外に引取らざるときは、請求國相當官吏に於て、正當の事由を示すにあらざれば、之を釋放するものとせり。(明治二〇年八月勅四二號、同一九年日米犯罪人引渡條約)
- 英
- Extradition
- 独
- Aus-lieferung
- 仏
- Extradition
判事
(はんじ)判事とは、司法裁判所を構成し、裁判事務を司掌する官職を云ふ、從ひて□一判事は司法裁判所を構成するものならざる可らず、夫の行政裁判所又は懲戒裁判所を構成するものは、之れを判事といはず、□二裁判事務を司掌するものなることを要す、蓋し夫の檢事及び書記の如きは、司法裁判所を構成するものなるも、裁判事務を司掌するものにあらざる也、□三判事の官職に任ぜらるるには、一定の資格を必要とす、其一はイ重罪を犯したる者にあらざる事、但し國事犯にして復權したる者は此限りにあらず、ロ定役に服すべき輕罪を犯したる者にあらざること、ハ身代限の處分を受け、負債の義務を負ふ者にあらざることの三條件とす、其二は、前後二回の競爭試驗に合格したる者にあらざれば、三年以上帝國大學法科教授、若くは辯護士たる者なることを要す、但し帝國大學法科卒業生は、第一回の競爭試驗を要せず、□四大審院判事及び控訴院判事たるには、更に一定の資格を要す、即ち控訴院判事たるには、五年以上判事たる者、又は五年以上檢事、帝國大學法科教授、若くは辯護士にして、判事に任ぜられたる者なることを要し、大審院判事たるには、十年以上判事たる者、又は十年以上檢事帝國大學法科教授、若くは辯護士にして、判事に任ぜられたる者なることを要す、抑も判事は、國家司直の府に參し、民庶の是非曲直を糾斷すべき重職に任ずる者なるを以て、職務の内外を問はず、依然として其官職に相當する、威嚴と品位とを保たざるべからず、故に法律は、其在職中判事に一定の行爲をなす事を禁ぜり、即ち判事は、□一公然政事に關係する事、□二政黨の黨員又は政社の社員となり、又は府縣郡市町村の議會の議員となる事、□三俸給ある又は金錢の利益を目的とする公務に就く事、□四商業を營み又は其他行政上の命令を以て禁じたる業務を營む事を得ざるものとす、次に判事の官職には、憲法上の保障あり、これ他の行政官と異なる處なりとす、茲に所謂憲法上の保障とは、即ち判事の官職に在る者は、刑法上刑罰の宣告、又は懲戒の處分に由るにあらざれば、其意に反し轉官、轉所、停職、免職又は減俸せらるること無きを云ふ、蓋し判事をして、進退其他の事を顧慮すること無く嚴正に其職務を執行せしめ、以て裁判の公正と其信用とを維持せんとの目的に出でたるものとす、然れども判事が身體又は精神の衰弱に因り、職務を執ること能はざるに至りたるときの如きは、事實上已むを得ざることに屬すべきを以て、之れを退職せしめざるべからず、されど法律は、斯かる場合に於ても、其の退職を輕くするを許さず、即ち司法大臣をして、控訴院又は大審院の總會の決議を俟つて、之れに退職を命ぜしむるものとせり、而して退職を命ぜられたる判事は、恩給法に依り恩給を受くることを得へく、又懲戒取調若くは刑事訴追のため停職せられたる場合に於ても、判事は引續き俸給を受くることを得べし、要するに判事の官職は、所謂終身官に屬す、而して判事の官等は、勅任又は奏任にして、大審院長は、勅任判事の中より天皇之れを補し、各控訴院長及び大審院の部長は、司法大臣の上奏に因り、勅任判事の中より之れを補し、其他の判事の職は、司法大臣之れを補す。(憲法五八條、裁構法二編一章及二章參照)
- 英
- Judge
- 独
- Richter
- 仏
- Juge
班次
(はんじ)班次とは、なほ席次と云ふが如し、例へば内閣總理大臣は各大臣の首班なりと云ふときは、其席次の首なることを意味するなり。(内閣官制二條)
- 英
- Order of seat
- 独
- Stuhlordnung
- 仏
- Ordre du banc
反證
(はんしやう)反證とは、反對の證據と云ふ義なり、即ち訴訟上原告又は被告の一方が、自己の主張する事實を證明するの材料として、或證據を提出したる場合に於て、其事實の眞實ならざることを爭ふ他の一方が、相手方の證據を無效ならしむる反對の證據を提出したるとき、前者の證據に對し、後者の證據を反證と云ふ也。
- 英
- Contrary evidence
- 独
- Gegen-beweis
- 仏
- Preuve contraire
犯狀
(はんじやう)犯狀とは、犯罪行爲の情狀と謂ふの義なり、即ち犯罪人が犯罪を行ふ當時に於ける狀態を云ふ、犯罪人は其犯狀の如何に因り、刑法上酌量減刑の例に從ひ、其刑一等又は二等を減ぜらるることを得るものとす、司法警察訓令第一一二條に「犯狀云々」とあるは此語の用例なり。
- 英
- Culpable act
- 独
- strafbare Hand-lung
- 仏
- Acte coupable
繁冗
(はんじやう)繁冗とは、繁忙冗雜の義にして、無用の雜事に付き煩はしき狀態を云ふ。
犯所
(はんしよ)犯所とは、犯人が犯罪の處爲を行ひたる現場を云ふ、刑事訴訟法第一二條に「豫審判事は、事實發見のため必要なりとずるときは、犯所又は其他の場所に臨み、檢證を爲すべし」とある是其用例なり。
- 英
- Place of crime
- 独
- Begehungsort
- 仏
- Lieu de crime
蕃殖
(はんしよく)蕃殖とは、各種の生物が、生殖、分殖又は其他の生理的作用に因りて、系統的に增加する現象を云ふ、狩獵法施行細則第二條第二項に「前項の鳥獸にして蕃殖云々」とあるは、之其用例なり。
- 英
- Thrive
- 独
- Wachsen
- 仏
- Ag-randissement
反省
(はんせい)反省とは、自己の行動觀念に對し、注意を拂ひて顧慮する精神作用をいふ、自識よりも一層大なる注意を以て、自己の行動、觀念を認知し或は批判的態度を取ることあり、内省は又一層大なる注意を以て、自己の心主作用に關する體系的智識を得んとす、即ち心理學研究の方法として用ひらるる如く、最も秩序ある研究的態度を取る心意狀態なれば、此等は其態度自ら相異れり、槪して謂へば、内省は全く知識作用なるに、反省には時に感情分子の加はり居る如き特色の相異あるを見る、從つて内省は又組織的學理的にして、反省は道義的實踐的なる意義を含有する事多し。
- 英
- Reflection
- 独
- Reflexion
- 仏
- Réflexion
藩制
(はんせい)藩制とは、我維新以前の制度を云ふものにして、其實質は對建制度に外ならず、所謂對建制度とは、中央政府の下に多數の諸侯ありて、諸侯は、國内の各地に一定の領域を劃し、其國家の統治權を分割保有して、各其領内の人民に對し、統治權を行ふ制度なり、而して諸侯は、又各々一個の政府を有するものにして、我幕政時代に於ては、之を藩と稱したりき、即ち藩制とは、中央政府なる幕府が、地方政府なる諸藩に令して、國政を統轄する制度を云ふものとす。
- 英
- Feudal system
- 独
- Lehenssystem
- 仏
- Système de feudalisme
萬世一系
(ばんせいいつけい)萬世一系とは、我皇統の全甌無缺にして、萬世に亘るも一系連綿として之を分つべからず、皇詐の旺なる天壤と共に無窮なるを云ふ、憲法第一條に、「大日本帝國は、萬世一系の天皇之を統治す」とあるは其用例にして、憲法義解は此規定を解して、「本章初に、立國の大義を揭げ、我が日本帝國は、一系の皇統と相依て終始し、古今永遠に亘り、一ありて二なく、常ありて變なきことを示し、以て君民の關係を萬世に昭にす」と云へり。
反訴
(はんそ)反訴とは、既に裁判所に於て、原告の訴に因り權利拘束となりたる事物に付き、被告が防禦方法として、反對に原告に對し提起する處の訴を云ふ、而して此場合に於ける原告の訴を本訴と稱し、本訴に對して被告の訴を反訴と稱す、反訴は、本訴に對して提起するものなるを以て、本訴の繫屬する裁判所に提起すべきものとす、隨つて財産上の請求に非ざる請求に係る反訴、又は目的物に付き專屬管轄の規定ある反訴は、若し其反訴が本訴なるとき、其裁判所に於て管轄權を有すべき場合を除き、其他の場合に於ては提起するを得ざる也、而して反訴に對しては、更に反訴を爲すを得ざるものとす、反訴の提起は、答辯書、若くは特別の書面を以て、又は口頭辯論中相手方の面前に於て、口頭を以て之を爲すことを得べきも、答辯書差出の期間内に差出したる書面を以て起さざる反訴は、被告の請求の全部又は一部と相殺をなすべき場合に於て、同時に被告が自己の過失に因らずして、其以前に反訴を起すを得ざりしことを疏明するにあらざれば、之を爲すことを得ざるものとす、元來反訴は、其性質上また一個の訴に外ならざるを以て、反訴に關する手續は特別なる場合を除き、本訴に關する法律の規定に從ふべきものとす。(人訴八、九、一條、民訴二〇〇、二〇一條)
- 英
- Cross action
- 独
- Widerklage
- 仏
- Demande reconventionnel
犯則
(はんそく)犯則とは、凡て法律命令又は其他の規定事頂に違犯することを云ふ、明治二三年九月法律第八六號に「間接國税犯則處分法」とあるは之其用例なり。
- 英
- Violation of regulation
- 独
- Ver-letzung der Regel
- 仏
- Violation de la règle
蠻族
(ばんぞく)蠻族とは、野蠻の民族と謂ふ義なり、換言すれば、非文明の人類と謂ふに同じ、抑も世界に棲息する人類は、其知識發達の程度を標準として之を區別とするときは三種となす、第一文明、第二半開、第三野蠻之なり、蠻族とは、即ち此野蠻に屬する民族を云ふものとす。
- 英
- Barbarian
- 独
- Barbar
- 仏
- Bar-bare
反對給付
(はんたいきうふ)反對給付とは、双務契約の場合に於て、一方の債務履行に對し、他方が其對價として爲すべき給付を云ふ、例へば賣買契約に於て、賣主の物品給付に對し、買主の支拂ふ代價は、即ち反對給付也、蓋し双務契約なるものは、當事者が相互に其相手方に對し、ある給付をなすべき義務を負擔するものなり、爰を以て、一方の給付は、他方に對して反對給付となるものとす、即ち自己より見るときは、他方の給付は反對の給付なるを以て、畢竟反對給付なるものは、主觀的の觀念と云ふを妨げざるべし、抑も双務契約の當事者は、其債務の履行時期に付き、特別の意思表示なきときは、双方同時に之を履行すべきを原則となす、故に一方が、其債務たる或給付を爲さざる間は、他方は之に對し、反對給付をなすを拒むことを得べし、而してある特別なる場合を除く外、當事者双方の責に歸すべからざる事由に因りて、債務を履行する能はざるに至りたるとき、例へば法律に因り、履行力不能となりたる如き場合、或は事實上履行力不能となりたる如き場合には、債務者は反對給付を受くる權利を失ふものとす、之に反して債權者の責に歸すべき事由に依りて、履行をなす能はざるに至りたるときに於ては、債務者は反對給付を受くべき權利を失ふことなしと雖も、若し自己の債務を免れたるに因りて、利益を得たるときは、之を債權者に償還することを要すものとす。(民五三三條乃至五三六條)
判斷
(はんだん)判斷とは、或眞否不明の事項あるに方り、其事項に付きて知り得たる凡てを、自己の理性に訴へて解決する智力的作用を云ふ、刑事訴訟法第九條に「被告人の自白、官吏の檢證調書、證據物件、證人及び鑑定人の供述、其他諸般の徵憑は判事の判斷に任す」とあり、民事訴訟法第二一七條に「裁判所は民法又は此法律の規定に反せざる限りは、辯論の全旨趣及び或證據調の結果を酙酌し、事實上の主張を眞實なりと認むべきや否やを、自由なる心證を以て判斷すべし」とあるは其用例とす。
- 英
- Judgment
- 独
- Urtheil
- 仏
- Juge-ment
版圖
(はんと)版圖とは、一國主權の及ぶべき範圍内に於ける土地又は水面等を云ふものにして、即ち領域の義なり、版圖はこれを分て、領土、内水、沿岸、及び沿海となす、彼の公の船艦及び公海に在る私船は、又之を其本國版圖の一部をなすものと認めらる、古來船舶は、其本國領土の浮動する部分なりとの説廣く行はれたり、されど船舶を版圖の一部と認むるに就き、近世學者の理由とする處は、船舶は、其性質上、土地と同一なりとの假想的議論に基くに非ずして、其本國主權の其上に行はるるを以ての故也、隨つて私船が其本國版圖の一部をなすものと認めらるるは、公海上に在る間に限るものにして、他國の領海に入ると同時に、本國の主權はこれに及ばざるが故に、其船舶は本國領土たるの性質を失ふものとす、次に領土に似て非なるものは、所謂勢力區域なり、抑も此勢力區域なるものは、亞非利加問題に於て初めて發生し、爾來一般に國際法學者の認むる處となりたるも、然かも其性質に至りては頗る不明にして、未だ之が觀念に對し、正確なる説明を與へたる者なし、唯今日學者の通常説明する處は、□一勢力區域なるものは、他の勢力を排して自ら先占を爲すの權利なり、□二他の勢力を排除するの權利を獨占するの地域なり、而して此關係は、條約に由りて認めらるる處にして、條約當事者間に於てのみ效力を有するものなりと雖も、時に或は第三國に對しても其效力をぼ及すこと無きにあらずと云ふに止るのみ、嚴正的確の觀念を主とする法學の範圍に於て、斯かる説明を聽くときは、何人も捕風促影の感なきを得ざるべし、吾人は茲に至りて、或學者が其性質の不明なる事こそ、實に勢力區域が、國際關係に於て價値ある所以なりといひしを想起せずんばあらず、蓋し此言こそ能く現代國際關係の消息を語り、同時にまた能く勢力區域の性質を説明したるものと云ふを得べけん歟、次に殖民地なるものは、之を廣義に於ける領土と看るを得べく、隨つて本國の版圖の一部たるは言を俟たざるべし、然れども、未だ其基礎の確定せざるものは固より例外とす、終りに、所謂中立地帶なるものあり、這は其性質上何れの領土にも屬せざるものなるを以て、國際法上版圖外の土地として認めらるるなり。
- 英
- Territory
- 独
- Territorium
- 仏
- Territoire
反動
(はんどう)反動とは、元來物理學上の用語にして、彼の有名なるニュートンの發見せる運動の原則の一に於て規定せらるる所也、其意は、一物體の力他に及べば、其力を受けたる物體は與へられたる力と同一の力を以て、必然に反撥し來たるを稱す、之を更に人事界精神界の現象に應用し、總べて其行爲若くは現象の發現の性質が自然的に出づるにあらずして、反撥的態度を取りて起り來たるを又反動と稱す、例へば、歐化主義が極端に達したる場合に、國民の自覺に連れて時代の風潮一變し、國粹保存主義の勃興を見るに至れるを時代思潮の反動的現象と稱するが如き、或は十八世紀時代の形式主義に疲れたる場合に、十九世紀にかけてローマンチックの運動文藝の上に、一時に湧起し來れるを文藝上の反動的現象と稱するが如き、要するに一般に或現象の進行に伴ふことを避け、脇に外れ、或は後に反きて運動することを謂ふ、反動的とは運動若くは行爲が反撥的に生起し來たることを指示する形容詞なり。
- 英
- Reaction
- 独
- Rückwirkung
- 仏
- Réaction
番頭
(ばんとう)番頭とは、商業使用人の一種にして、主人より其營業に關する或種類又は特定の事項の委任を受けて、營業上に勞務を給付する者を云ふ、抑も商業使用人を分つて、主人の代理權を有する者と、これを有せざる者との二種となす、而して前者を分つて、其代理權の範圍に制限あるものと、制限なき者との二種となす、則ち其代理權に制限なき使用人は支配人にして、其代理權に制限ある者は番頭及手代なりとす、番頭は其委任を受けたる事項に關しては、法律上一切の行爲をなす權限を有す、而して主人が此番頭なる商業使用人を選任し、又はこれを解任し得るは固より論を俟たざるも、支配人も亦これを爲し得る權限を有するものとす、次に主人と商業使用人との間に生ずる雇傭關係は、民法の規定に從ふべきものなるを以て、番頭と主人との關係も、亦類推して之を知るを得べし。(商三〇、三三、三四條及び民三編二八節參照)
- 英
- Clerk
- 独
- Handelsdiener
- 仏
- Clerc
犯人
(はんにん)犯人とは、現に犯罪行爲をなしたる人を云ふ、而して既に其犯人に對し、起訴の手續をなしたるときは、これを刑事被告人と稱し、次で刑の宣告を受けたるときは、之を罪人と稱し、而して監獄に收容せられたるときは、之を囚人と稱す、舊刑第一一二條に「罪を犯さんとして已に其事を行ふと雖も、犯人意外の障礙云々」とあるは此語の用例なり。
- 英
- Culprit
- 独
- Verbrecher
- 仏
- Coupable
判任官
(はんにんくわん)判任官とは、官等の最下級の階級を云ふ、即ち官等は之を分て、□一親任官、□二勅任官、□三奏任官、□四判任官となす、而して判任官の官等は、又之を分て一等より五等に至る、次に判任官の月俸は、之を分つて十級とし、最下級たる十級を十五圓となし、夫れより三級に至るまで遞次五圓宛を增加し、以上二級は六十圓、一級は七十五圓までとす、次に判任文官の任用は、所謂官廳の長官これを任命するものにして、其資格は明治三二年三月勅令第六一號文官任用令の規定に依るべきものとす。(二七年四月勅三三號文武判任官等級表及び二四年七月勅八三號判任官俸級令參照)
- 英
- Junior officer
- 独
- Subaltern-beamte
- 仏
- Officier subaltern
繁文
(はんぶん)繁文とは、行政事務上徒に形式を重んじ、無益なる書面を作製することの冗繁なることを云ふ、明治三一年一月二二日、時の内閣總理大臣伯爵大隈重信の各省大臣に示せし官治の標準なる公文中「事務を敏活にする事」なる項の文章中に「明治十八年内閣改正の時、繁文を省くの綱要を提擧し云々」とあるは、其用例とす。
- 英
- Superfluous writing
- 独
- über-flüssige Schrift
- 仏
- Lettres superflueuses
判例
(はんれい)判例とは、判決例と云ふに同じ、即ち或訴訟事件に付き、裁判所が判決を與へたる先例と云ふの義なり、前の判例は、後に起りたる同一の訴訟事件に對し、最も有力なる記錄たるを失はずと雖も、裁判官が、判例に從ふべき義務ありや否やに關しては議論あり、之れに對し、或學者は、同一事實にして、判例を異にするときは、裁判の統一を缺くに至るべきを以て、下級裁判所の裁判官は、上級裁判所の判例に從ふの義務ありと論じ、或學者は、此の説を駁して、裁判官は、法律ある場合には、法律に從ふべく、法律なき場合には、慣習に從ふべく、慣習なき場合には、條理に從ふべき義務あると同時に、法律なくんば慣習に從ひ、慣習なくんば條理に從ふの權利を有するもの也、然るに、若し強ひて前判決に從はざるべからざるものとなさんか、裁判官は、這般の權利を失ひ、從つて裁判官は、其獨立の性質を失ふに至るべきを以て、斯かる義務を有するものにあらずと論ぜり。
- 英
- Instance ofjudgment
- 独
- Urtheits-exempel
- 仏
- Pércédantes du jugement
拂下
(はらひさげ)拂下は、權利移轉の方法にして、國家が一私人或は公共團體に物件を賣却することを指稱す、私人間の賣却行爲は賣買と稱へ、國家が賣渡人となるときは拂下と稱す、例へば、山林の拂下、官有地の拂下と云ふが如し。(水道例條六條、官有物拂下規則參照)
- 英
- Sale
- 独
- Verkauf
- 仏
- Vente
拂戾
(はらひもどし)或人が一旦受取りたる物を返却するを拂戾と謂ふ、一定の原因により(例へば債務の履行として)受取りたる物が、受取人の所有に歸したる後、曩きの權刑者に再び其權利を移轉するは、必ずしも拂戾にあらず、拂戾は、一旦受取りたる金錢其他の物件を受取るべき理由なくして受取りたるか、又は受取の原因消滅したるの故を以て、再び原の權利者に返還するを云ふものなれば、正當の原因に因りて受領したるものを、他の原因(例へば贈與)により偶々原權利者に復歸するも、茲に所謂拂戾となるものにあらざるなり、例へば保證金の拂戾は、即ち保證の原因消滅したるを以て、預金の拂戾、其他取消されたる賣買に於ける代金の拂戾、錯誤により受取りたる過收又は收納せるものの拂戾等皆然りとす。(會計規則二條、郵便條例三條)
- 英
- Paying back
- 独
- Rückzahlung
- 仏
- Remboursement
拂戾證書
(はらひもどししやうしよ)拂戾請求權者が、其權利を證明するが爲め拂戾義務者より受くる證書なり、例へば郵便貯金拂戾證書の如し。(郵便貯金條例三條)
拂戾請求權
(はらひもどしせいきうけん)拂戾を請求する權利を拂戾請求權と謂ふ、商法に持分の拂戾を受くる權利を有する場合を規定す、即ち「合名會社の退社員は、勞務又は信用を以て出資の目的と爲したるときと雖も、其持分の拂戾を受くることを得」とあり、又保險業法に於て「會社の退社員は、定欵又は保險約款の定むる所に從ひ、其法利に屬する金額の拂戾を請求することを得」「退社員の權利に屬する金額の拂戾は、事業年度の終より六ケ月内にこれを爲すことを要す」「退社員の拂戾請求權は、前項の期間經過の後二年間之を行はざるときは時效に因りて消滅す」と規定したるが如きは其適例也。(商七」條、保險業法六七、六八條參照)
拂渡
(はらひわたし)金錢其他の物品を支拂ふことを拂渡と謂ふ。(郵便爲替規則一九條)
- 英
- Payment
- 独
- Bezahiung
- 仏
- Paiement
拂渡證書
拂渡を證する爲め作製する證書を拂渡證書と謂ふ、二種あり、一は拂渡を受くる權利を證する書面にして、二は拂渡を爲したることを證する書面これなり、例へば公債利子の拂渡證書の如きは、前者の例にして、郵便爲替の拂渡濟を通知する書面の如きは、後書の一例なり。(整理公債條例三二條、郵便爲替規則五八條)
罵訔
(ばり)言語を以て人を罵ることを罵詈と謂ふ、大聲を發して人を馬鹿野郞と呼ぶが如し、罵詈は嘲弄と其意同じからず、嘲弄は嘲けると云ふ意にして、罵るとは少しくその意味を異にす、然れども法律上の效果に於て殆ど異なるを見ず、又侮辱なる語は尊敬を缺くの意にして、必ずしも言語を以て爲すを要せず、形容を以てもこれを爲すことを得、此點に於て罵詈と異なる、又誹毀は、社會公衆に向つて、耻辱となるべき或人の行爲又は身上に關する事柄を吹聽するの意にして、必ずしも罵ることを要せざるの點に於て、罵詈と異なる、而して官吏公吏職務を行ふに方り、直接に其耳目に觸るべき場所に於て、之が威信を害すべき言語、擧動あるときは、單純なる罵詈嘲笑の類によるときと雖も、侮辱罪となることあり、單純なる罵詈と雖も獨立せる犯罪となるも、輕微なる違警罪となるに過ぎず、即ち二日以上五日以下の拘留に處し、又は五十錢以上一圓五十錢以下の科料に處せらるものなり。(刑二三一條、舊刑四二六條、侮辱、誹毀、嘲弄の部參照)
被裏書人
(ひうらがきにん)手形其他裏書を以て讓渡することを得る證券を讓渡せる場合に、裏書に依りて讓渡せられたる者を被裏書人と謂ふ、而して之に對し、讓渡したる者は裏書人なり、唯裏書に依りて讓渡を爲すが故に、讓渡人を裏書人と云ひ、讓受人を被裏書人と云ふに過ぎず、例へば甲者の振出せる手形を受取人乙が、丙なる者に裏書に依りて讓渡したりとせば、讓渡人なる乙は裏書人にして、丙は被裏書人なり、丙更に之を丁に讓渡せば、丙は裏書人となり、丁は被裏書人となる、他は之に準ず、要するに裏書讓渡に於ける讓受人は、總べて被裏書人なりと知るべし。(商四五七條)
被害者
(ひがいしや)被害者とは、他人の犯罪行爲又は不法行爲に原因して、權利の傷害を被りたる者を云ふ、即ち此等不正の行爲に因り、他人の權利に傷害を加へたる者を加害者と稱し、加害者に對して、被害者と云ふ、此結果として被害者と云ふには、必ず一方に加害者あることを要し、加害者と云ふには、必ず其行爲の不正なることを要す、他人の不正ならざる行爲に原因して、吾人が權利の損害を受けたる如き場合に在りては、法律上其他人を加害者と謂ふを得ざると同時に、又被害を被りたる人を被害者と謂はざる也、例へば他人が吾人の動産を平穩且つ公然に、善意にして且つ過失なく占有を始めたる場合の如きこれなり、而して吾人は、苟も他人の不正行爲に基きて、權利の傷を害受け其被害者となりたる時は、其權利の或は身體權たり、財産權たり、或は名譽權たり、自由權たるを問はず、由りて生じたる損害に付き、之を法律に訴へて、其救濟を求むる事を得べし、例へば犯罪に原因して損害を被りたるときは、之を相當官署に告訴し、同時に裁判所へ其被告事件に付き、第二審の判決あるまでは、何時にても公訴に附帶して、私訴を起し、以て損害の賠償を求め、又は贓物の返選を請求するを得べく、又不法行爲に原因して損害を被りたるときは、獨立したる民事の訴を起して、損害賠償の請求をなすを得べきが如し、要するに犯罪行爲に原因して、被害者となりたる者の告訴權を除き、被害者の損害賠償請求權は、其性質一種の債權に外ならざるを以て、被害者はまた一種の債權者なりと云ふを得べし、次に被害者の損害賠償請求權の時效は、私訴の場合に在りては、公訴の時效と其期間を同うするを以て、違警罪に原因するものは六箇月、輕罪に原因するものは三年、重罪に原因するものは十年間之を行はざるに因りて消滅す、然れども公訴に付き、既に刑の言渡ありたるときは、民法に定めたる時效の例に從ふものとす、而して民事の訴を以てする場合には、民法上不法行爲の規定に依るべきものにして、此規定に依れば、被害者又は其法定代理人が、損害及び加害者を知りたる時より、三年間之を行はざるとき及び不法行爲の時より二十年間を經過するときは、消滅時效に罹るものとす。(刑法施行法六一條、舊刑四六條、四八條、民七〇九條乃至七二四條參照)
- 英
- Injured person
- 独
- verletzte Person
- 仏
- Blessé
比較的
(ひかくてき)比較して論ずる場合の形容詞とす、則ち絶對的に對する語にして、相對的と云ふに略ぼ同義なり、之を對照する場合の形容詞は相對的にして、此對照を比較することに依りて得る觀念の形容詞は、比較的と云ふべし、例へば甲は乙より比較的大なりと云へば、乙は甲と比較しては大なるも、他により大なる或物の存在せることを想像し得べく、又甲は乙より比載的必要なりと云へば、乙と甲とが或ものに對する必要の程度の比較が、乙の方をより多しと認むる場合を意味するが如し。(相對の部參照)
比較法學
(ひかくはふがく)比較法學とは、世界各國に於ける法律現象を比較研究する學問を云ふ、即ち數箇國の法制又は法學者の學説等を彼是比較して、其の通素を發見せんとするもの也、此の學派の始祖とも云ふべきは、以太利のビコーにして、ビコーに次で著名なる學者を佛國のモンテスキユーとなす、此の研究方法は、學者の最も尚ぶ處のものにして、今や一般に行はるるに至りしと雖も、然かも其發達は極めて近代のことに屬す、蓋し此研究方法に依りて、充分の效果を收めんと欲せば、可成的多數國家の法律的現象を知悉するを要すべきも、時代の遡るに從ひ、交通の不便其他の原因より、法學者をして研究の手を擴ぐる機會を與ふること益々少く、隨つて其發達を遲々たらしめしは、恂に已むを得ざる結果と云ふべし、次に比較法學は之を大別して三種となす、法系別比較法學、國別比較法學及び人種別比較法學之なり、第一、法系別比較法學とは、例へば羅馬法系の法律と、支那法系の法律とを比較し、其異同を研究するが如く、各種の法律系統を比較研究する方法を云ふ、第二、國別比較法學とは、世界各國に於ける各時代の法律現象を比較研究するものにして、夫の有名なるモンテスキューの萬法精理の如きは、即ち之なり、第三、人種別比較法學は、人種を標準として、世界の各人種の間に行はるる法律現象を比較研究するを云ふ。
比較法制史
(ひかくはふせいし)比較法制史は、比較法學の一種にして、二國以上の國家に於ける法制の起原、變遷及び其發達等を沿革的に比較研究する學問を云ふ、抑も數個の國家に於ける古今の法制を彼是相對照して、其利害得失を研究し、法律制度發達の傾向を推考するは、法學上の智識を增進するに極めて重要の研究方法として、一般學者の認むる處なるも、昔時に於ては、交通の不便、政治上の關係、其他の事情より、學者をして多數國家の法制を知得せしむるの機會に乏しく、自然此種の研究方法の進步を妨げしめしと雖も、近世に及びて、一般文化の發展に伴ひ、漸く整頓せる一個の學問として、其完成を見るに至れり。(比較法學の部參照)
誹毀
(ひき)事實の有無に拘はらず、他人の惡事醜行を摘發するの處爲を云ふ、□一惡事醜行を摘發すること、惡事とは、不正の事と謂ふ意味なれども、必しも法律上の制裁を伴ふものなるを要せず、單に社會に画かれたる善惡常識に基き、其惡なる觀念に屬する行動云爲を意味す、次に醜行とは、人の行動にして、發表せらるるを忌むべきものを指す、其何々なるやは、同じく常識にて判斷すべきものとす、□二摘發したること、摘發とは、單に發表を意味し、唯發表せらるべき事實が、人の名譽を毀損すべき性質のものなるを要し、此等の事實の發表を摘發と稱す、敢て摘して發表するの意に非ざるものとす、而して誹毀罪に於ける摘發は、法定の方法に依ることを要するも、そは誹毀罪の説明に讓る、□三死者に對する場合は誣罔に出づること、其他は事實の有無を問ははざるもの也、茲に誣罔とは、不實のことを以て人を誣ふるを云ふ、何れも他人の名譽を毀損するの虞あるが故に、刑法は以上の行爲を罪として罰するものなるも、單に誹毀たるには、必ずしも損害の發生を要件とせず、又其の動機が人の改悛を欲するに出でたると否とは問はざる也、唯新聞其他出版物に依りて之を發表せる場合に、動機善なるときは其證明を許し、之が事實なるときは其の罪を免ずるものとす。(新聞紙條例參照)
引受
(ひきうけ)廣く引受と謂ふときは、引繼ぎを受くることを云ふ、例へば手形を呈示して、債務の引受けを求むる場合に、支拂人が支拂ふ旨を記載し、之に署名して、債務の引繼ぎを受諾するが如き(最も此場合の引受なる手形行爲を單獨行爲なりと解し、拂出人の債務を引繼ぎたるものにあらずとなす説を有力とするも、實際上の現象として觀察するときは、尚引繼ぎと見る事を得ざるにあらず)又或物の占有者が其占有に關して被告となりたる場合に、其被告が、該占有は第三者の名に於てせるものなるを主張し、本案の辯論前第三者を指名して、之に陳述を爲さしむるが爲め呼出を求め、而して本人が其指名參加に應じて訴訟に參加し、被告の承諾を得て代りて被告となり、其訴訟を引繼ぐが如き之也、斯る場合は、何れも之を引受けと云ふ、要するに引受とは、引繼ぎを受諾することか、さもなくば擔保若くは支拂を受諾することを云ふものとす。(商四六五條、民訴六二條四項)
引受拒絶
(ひきうけきよぜつ)引受拒絶とは、手形法上の用語にして、爲替手形の所持人が支拂人に對し、其手形金額の支拂引受を要求したる場合に、支拂人が其要求に應ぜざることを云ふ、而して支拂人が全然其要求に應ぜざる場合は、純然たる引受拒絶なるべきも、此外法律の規定を以て引受拒絶したるものと看做さるる場合あり、即ち其一は、縱令支拂人が其要求を承諾するも、其引受に條件を附したる場合にして、其二は、一覽後定期拂の手形を引受くるに當り、其手形面に引受の日附を記載せざりし場合之なり、抑も支拂人は振出人に依り、支拂人として手形面に指名せられたるに過ぎざるが故に、之に因て法律上當然支拂の義務を負ふべきものにあらず、支拂人が支拂の義務を負擔するは、此引受に因りて其支拂を承諾するに基くものとす、即ち手形の引受なるものは、支拂人を確定義務者となすの方法なり、然れども引受は、必ずしも手形に必要なるものにあらず、引受なきも、手形は手形として完全なる效力を有するもの也、從つて引受の有無如何は、法律上決して手形の效力に何等影響を及ぼすものにあらず、然れども所持人に取りては、此引受をなさしむるときは、啻に實際上之を流通せしむるに容易なるの利あるのみならず、又手形上の義務を確實ならしむるの利ありとす、爰を以て法律は、所持人をして、何時にても其手形を支拂人に呈示して、引受を求むることを得しめたる也、然るに支拂人が其引受を拒絶したる場合には、其手形上の義務を負はざる旨を告白したると同一なるが故に、其所持人は、手形の滿期日に於て、其前者に對して償還の請求をなさざるべからず、而して此請求を受けたる前者は、更に其前者たる讓渡人に其償還を請求し、順次斯くの如くにして、最後に其手形の振出人に至るものとす、斯くの如く引受拒絶の結果は、多數の人の利害に影響を及ぼすものなるを以て、其引受は須らく單純なる承諾を與ふる事を必要とす、若し其引受に條件を付するが如きときは、其條件の成熟如何に因り、支拂義務の存否を來すべく、其結果として、多數の手形義務者の間に、少なからぬ困難を生ずるに至るべきが故に、法律は單純ならざる引受を以て、拒絶と同一に看做すとの規定を設けたるものなるを知るべし、次に支拂人が一覽後定期拂の手形を引受くるに當り、引受の日附を記載せざるときに於て、之を引受の拒絶と看做さるる理由如何と謂ふに、凡て爲替手形の所持人が支拂人に對し、其の手形の引受を求むると否とは、原則として所持人の自由に屬するのみならず、上述の如く引受の有無は手形の效力に何等の關係なし、從つて所持人は、必ずしも引受を求むることを要せずと雖も、唯一覽後定期拂の爲替手形に限り、例外として所持人は振出人の定めたる呈示期間、若くは此呈示期間を定めざる場合には、振出の日附より一箇年内に其手形を呈示して、支拂人に對し其引受を請求することを要するものとす、蓋し一覽後定期拂の手形に在りては、引受ありたる日より滿期日を起算するものなるが故に、其引受を求むるは、即ち其起算日を確定する必要に出つる也、然るに支拂人が縱令單純なる引受を與ふると雖も、其滿期日の起算日を確定するに必要なる、引受日の日附を記載せざりしときは、啻に滿期日を知るを得ざるのみならず、手形金額の支拂義務、極めて不確實となるべきを以て、支拂人が其日附を記載せざりし場合には、之を拒絶と同一に看倣し、所持人をして、拒絶證書を作製するの義務を負はしめ、若し之を作製せざるときは、其前者に對する手形上の權利を失ふものと定めたり。(商四六五條乃至四六九條)
- 英
- Non-acceptance
- 独
- Ver-weigerung der Annahme
- 仏
- Non-ac-ceptation
引受拒絶證書
(ひきうけきよぜつしやうしよ)引受拒絶證書とは、爲替手形の所持人が、支拂人の引受を拒絶したる事實を證するがため、執達吏又は公證人をして作製せしむる所の證書を云ふ、此引受拒絶證書なるものは、所持人に於て必ず之を作製せざるべからざる義務あるものにあらざるも、其前者に對して手形金額及び費用に付き、擔保を請求せんと欲する時は、必ず之を作製することを要するなり、殊に一覽後定期拂の爲替手形に在りては、所持人は引受拒絶證書に依りて、引受のため呈示したることを設明するにあらざれば、其前者に對する手形上の權利を失ふの不利益ありとす、而して此拒絶證書は、必ず公證人又は執達吏をして之を作製せしむることを要するものにして、拒絶證書には、□一爲替手形、其謄本及び補箋に記載したる事項、□二拒絶者及び被拒絶者の氏名又は商號、□三拒絶者に對してなしたる請求の趣旨、及び拒絶者が其請求に應ぜざりしこと、又は拒絶者に面會すること能はざりし理由、□四前號の請求をなし、又は之をなすこと能はざりし地及び年月日、□五拒絶者の營業所、住所又は居所が知れざる場合に於て、其地の官署又は公署に問合を爲したること、□六法定の場所外に於て拒絶證書を作るときは、拒絶者が之を承諾したること、□七參加引受又は參加支拂あるときは、參加の種類及び參加人、幷に被參加人の氏名又は稱號等を記載し、之を作製したる公證人又は執達吏は、之に署名することを要するものとす。(商五一四條)
- 英
- Protest for non-acceptance
- 独
- Protest mangels Annahme
- 仏
- Protêt de la non-acceptation
引受の爲めにする呈示
(ひきうけのためにするていし)爲替手形の所持人が、手形の引受を求むるため、支拂人に其手形を示すことを云ふ、爲替手形の所持人は、何時にても、支拂人に呈示して其引受を求むることを得べきも、之を呈示するは、必すしも所持人の義務にあらざるが故に、此呈示をなすと否とは、固より所持人の自由に屬す、然れども獨り一覽後定期拂の爲替手形の所持人に限り、其日附より一ケ年内、若くは振出人が之より短き呈示期間を定めたる場合には、其期間内に其手形を支拂人に呈示して、引受を求むることを要するものとす、盖し一覽後定期拂の爲替手形は、之を支拂人に呈示したる日より滿期日を起算するものなるが故に、相當の期間内に呈示せしめて、滿期日を確定するの必要あるものとす、從つて此種の手形所持人が、法定の呈示期間又は振出人の定めたる呈示期間内に、呈示したる事を拒絶證書に依り證明せざるときは、其前者に對する手形上の權利を失ふものとす、尤も引受人が適法の引受を爲したる場合には、其日附に依りて之を證することを得るが故に、拒絶證書を作製するの必要なきも、若し單純の引受をなすも、其日附を記載やざりし場合には、拒絶證書を作製して之を證明することを要する也。(商四六五條乃至四六七條。
誹毀罪
(ひきざい)誹毀罪は、名譽に對する罪にして、即ち公然の演説を爲し、又は書類圖畫を公布し、若くは偶像雜劇を作爲し、惡事醜行を摘發して、人を誹毀するの處爲を云ふ也、誹毀とは、名譽を毀傷するの所爲を云ふものなるが故に、此犯罪の被害者たることを得るものは、獨り自然人に限るべく、法人又は其他の團體は決して其被害者たることを得ず、されど法人又は其他團體に對する誹毀にして、同時に其法人の機關たる自然人又は團體を組織する個人の名譽を毀損したるときは、此罪を構成すべきは勿論なりと説くを通説とす、而して誹毀罪は、之を口頭誹毀及び實物誹毀、通常誹毀及び誣罔誹毀の四種に分て説明するを便宜とす、□一口頭誹毀とは、即ち口頭を以て誹毀するを云ふ、刑法に公然の演説を以て人を誹毀する云々とあるは之なり、公然の演説とは、公衆の聞知し得べき性質を有する演設、又は場所に於てする事を意味す、□二實物誹毀とは、文書圖画を公布し、又は偶像雜劇を作爲して、人を誹毀するの所爲を云ふ、□三通常誹毀とは、生存せる人に對する誹毀を云ふものにして、其誹毀に係る事實の有無を問はざるものとす、□四誣罔誹毀とは、死者に對する誹毀を云ふものにして、其誹毀に係る事實の誣罔なるときに限り、此罪を構成するものとす、而して此誹毀の所爲は、何種の誹毀たるを問はず、惡事醜行に關する事實を摘發することを要するが故に、犯者が其信認を告白するが如き所爲は、本罪を構成すること無かるべきは勿論、縱令事實の摘發に係る場合なるも、惡事醜行に關せざるものなるときは、誹毀の所爲と云ふことを得ざるなり、之に反して、苟も惡事醜行に關する事實の摘發なるときは、其の事實の有無は犯罪の成立に影響することなきものとす、茲に摘發と云ふは、必しも或事實を初めて搜出する場合のみを意味するにあらずして、他人の搜出せし事實を繰返す如き場合をも包含するものと解釋せざるべからず、次に誹毀罪は、所請親告罪の一種に屬するが故に、被害者の告訴あるにあらずんば、其罪を論ぜらるること無し、蓋し檢事又は司法警察官が、他の犯罪に於けるが如く、進んで之を搜査し起訴するときは、益々被害者の名譽を毀傷するの結果を來すべく、從つて名譽を保護するの趣旨に出でたる刑法の規定をして、却て其實を空ふせしむるに至るべければ也、偖て誹毀罪に對する刑罪は、□一口頭誹毀の場合に在りては、十一日以上三箇月以下の重禁錮に處し、三圓以上三十圓以下の罰金を附加し、□二實物誹毀の場合に在りては十五日以上六月以下の重禁錮に處し、五圓以上五十圓以下の罰金を附加すものとす、次に醫師、藥商穩婆又は代言人、辯護人、代書人若くは神官、僧侶が、其身分職業に於て委託を受けたる事に因り、知得たる陰私を漏告したるときは、誹毀の罪として十一日以上三箇月以下の重禁錮に處し、三圓以上三十圓以下の罰金を附加するものとす、最も此等の者にして、裁判所の呼出を受け、事實を陳述するときの如きは、此罪を構成すること無し。(刑二三〇條、舊刑三五八條乃至三六一條(
引渡
(ひきわたし)引渡とは、自己の占有せる物を他人に移轉し、又は自己の實力を以て拘束せる人を他人に交附する行爲を云ふ、即ち引渡とは、事實上自己の手に在る人又は物を、他人の手に交附する行爲を云ふものにして、權利を他人に移轉する場合には引渡と云はざるなり、民法に「占有權の讓渡は占有物の引渡に依りて之を爲す」とあるは、即ち物の引渡に關する用例にして、刑事訴訟法に「之を巡査、憲兵卒に引渡すことを得」とあるは即ち人の引渡に關する用例なり。(民一八二條、刑訴六一條)
- 英
- Transfer
- 独
- Übergabe
- 仏
- Transfert
引渡狀
(ひきわたししじや)引渡狀なるものは、一國政府が外國政府より逃亡犯罪人引渡の請求を受けたる場合に於て、其犯罪人を引渡すに方り、被請求國の司法大臣又は其他の官廳の發する公の書面を云ふ、我が逃亡犯罪人引渡條例の規定に依れは、此引渡狀は司法大臣の發すべきものにして、司法大臣は左の二場合に限り、之を發することを得、即ち□一引渡犯罪に付き告訴告發を受けたる者なる場合に於て、若し其告訴告發を受けたる罪を帝國内に於て犯したるものとせば、帝國の法律に依り被告人を審判するに充分なる犯罪の證據ありと認めたるとき、□二有罪の宣告を受けたる者なる場合に於ては、相當裁判所に於て、其宣告を爲したることを認めたるとき之なり、而して闕席裁判に由り有罪の宣告を受けたる者は、其引渡を請求したる締盟國との間に、特別の約款あるにあらざれば、此條例に於ては之を告訴告發を受けたる者と爲し、有罪の宣告を受けたる者とは認めざるものとす。(二〇年八月勅四二號參照)
- 英
- Written transfer,
- 独
- Liefer-schrift
- 仏
- Transfer écrit
引渡請求書
(ひきわたしせいきうしよ)引渡請求書なるものは、一國の政府が外國政府に對し、其兩國家間に締結せる逃亡犯罪人引渡條約の規定に基き、逃亡犯罪人の引渡を請求する書面を云ふ、我が逃亡犯罪人引渡條例の規定に依れは、外務大臣が外國政府より引渡請求書に接したるときに於て、該請求書の犯罪人引渡條約書の約款に適合したるものと思量したるときは、其係關書類を添へて之れを司法大臣に送付することを要し、司法大臣に於て妥當の事由ある請求と思量するときは、逃亡犯罪人の所在地又は其到著すべしと認むる地の上席檢事に命じて、逮捕狀を發せしむるものとす、而して司法大臣は、上席檢事より犯罪人を逮捕し且つ訊問したる場合に於ける訊問書に、其處分方法に關する意見書を添へて具申ありたるときは、犯罪人を釋放し若くは引渡狀を發して、最初受取りたる引渡請求書及び附屬書類に其執行したる手續及び理由の略記を添へ、之れを外務大臣に返付するものとす。(逃亡犯罪人引渡條例一五條)
- 英
- Demandant of extradition
- 独
- Lieferanspruchsschrift
- 仏
- Demande du transfert
引渡犯罪
(ひきわたしはんざい)引渡犯罪とは、或國家間に締結せる犯罪人引渡條約に規定せる犯罪を云ふ、我が逃亡犯罪人引渡條例に「引渡犯罪と稱するは、外國と締結したる犯罪人引渡條約に揭くる犯罪を謂ふ」とあるは其用例なり、即ち引渡犯罪なるものは、犯罪の性質上又は國際法上定りたるものにあらずして、一に締約國間の條約に因て定るものとす、然れども通常國際法學者の引渡犯罪に關する一般の條件として説明する處は、即ち□一請求國及び被請求國に於て共に犯罪と認むるものに限ること、但し法律制度を同ふする合衆國諸洲間の如き場合の外、國事犯は、之れを引渡さるを原則とす、□二其犯罪は請求國の領土内に於て行はれたるものなるか、又は請求國の管轄權の及ぶべき地に於て行はれたるものなること、□三其犯罪は被請求國の法律に依るも、未だ時效に罹らざるものなることの三條件之れなり。(一九年日米犯罪人引渡條約參照)
- 英
- Crime of extradition
- 独
- Lieferverbrechen
- 仏
- Infraction de l'ex-tradition
被教唆者
(ひけうさしや)被教唆者とは、刑法學上の用語にして、犯罪に關する他人の誘導的指示に動念を發して、其指導に係る罪を犯したる者を云ふ、即ち犯罪の誘導的指示を爲したる者を教唆者と稱し、教唆者に對して被教唆者と謂ふ也、抑も被教唆者が罪を犯せし動念は、必ず教唆者の誘導的指示に原因したるものなることを要す、蓋し被教唆者なるものは、教唆者の意思を繼承して之れを現實に決行し、教唆者の誘導的指示に原因したるにあらざるときは、獨立の犯罪人にして被教唆者と謂ふを得ざるものとす、要するに、教唆者の意思と、被教唆者の犯罪行爲との間には、常に系統的關係を保たざるべからず、此結果として被教唆者が現に犯せる罪にして、教唆者の誘導指示せしものと、全然別異の性質を有するものあるときは、此系統的關係は、全く斷絶せるを以て、其一方を教唆者と云ふ能はざると同時に、他方を指して被教唆者と謂ふを得ざるものとす。(司法警察訓則五四條)
- 英
- Person indicated
- 独
- An-gestiftete Person
- 仏
- Personne indiquée
否決
(ひけつ)否決とは、合議機關の會議に於て、或議案に對し否認の議決をなすことを云ふなり、即ち或議案に對し、承認の議決をなしたるときは之れを可稱し、可決に對して否決
と稱するものとす、帝國憲法に「兩議院の一に於て否決したる法律案は、同會期中に於て再び提出することを得ず」とあるは其用例なり。(憲法三九條)
- 英
- Rejection
- 独
- Unterwerfung
- 仏
- Rejet
非現行犯
(ひげんかうはん)非現行犯とは、現行犯人にあらざる犯罪を云ふ、刑事訴訟法上犯罪行爲を分ちて、現行犯及び非現行犯となす、現行犯とは、或人が現に罪を行ひ、又は現に罪を行ひ終はりたる際に發覺したる場合を云ひ、之れに次で、或は人が犯人として一人又は數人に追呼せらるるとき、又は兇器贓物其他の物件を携帶し、又は身體、被服に顯著なる犯罪の痕跡ありて犯人と思料すべきとき、若くは家宅内に於て犯したる罪を檢證するため、又は其犯人と思料すべき者を逮捕するため、戸主より官吏に其處分を求めたるときの三場合を準現行犯となし、現行犯及び準現行犯と認むべからざるものを非現行犯と稱す、要するに非現行犯とは、被告人と犯罪事質との關係の不明暸なる場合を云ふものなり、非現行犯人とは、即ち此非現行犯に關する被告人を云ふ、(現行犯、準現行犯の部參照)
非現行犯人
- 英
- Non-flagrant delictor
- 独
- nichtfrischer Thäter
- 仏
- Coupable non-flagrant
非權限爭議
(ひけんげんさうぎ)非權限爭議とは、二個以上の官廳が其の孰れかに於て掌理することを要する事務に付き、互に其權限に屬せざることを主張するを云ふ、抑も權限爭議は之れを分ちて二となす、其一は二個以上の官廳が、或特定の事務に付き、互に其の權限に屬する事を主張する場合にして、其二は互に其權限に屬せざることを主張する場合これなり、前者を積極的權限爭議と稱し、後者を消極的權限爭議と稱す、非權限爭議は即ち消極的權限爭議を云ふもの也。(權限爭議參照)
- 英
- Dispute of negative limit of right
- 独
- Negativkompetenzkonflikt
- 仏
- Dispute de la limite negative du droit
庇護
(ひご)庇護とは、その意義なほ保護と云ふに異ならず、例へば行政警察官が、ある人民に對する兇惡を除去するが如きは即ち庇護なり。
- 英
- Protection
- 独
- Begünstigung
- 仏
- Protection
被後見人
(ひこうけんにん)被後見人とは、後見に付せられたる者を云ふ、民法の規定に依れば、後見を受くべき者は、未成年者及び禁治産者の二者なりとす、此等被後見人は、所謂無能力者なるか故に、其法律行爲をなすに就きては、後見人の同意を得るか若くは後見人に依りて之をなす事を要す、然かも必しも後見人の同意を得るか、若くは後見人に依るにあらざれば、法律上有效の行爲をなし得ざるにあらず、唯後見人の同意を得ざる行爲、又は後見人に依りなざさる行爲は、此等の者の利益のために、之れを取消す事を得るに止まる而己、從つて後見人に依らず且つ其同意を得ずして如何なる行爲をなすも、其相手方に於て之を拒まざる限り、そは固より自由に屬す、然れども此等の者が官廳に對し或行爲をなすには、特別なる場合を除き、原則として、必ず後見人に依りて之をなすか、若くは後見人の同意を得てなすことを必要とす、後見人に依りてなさざる場合には、必ず其同意を得たることを證明せざるべからず、茲に特別の場合と云ふは、これ等の者が、人事訴訟手續法の規定に從ひ、婚姻の無效者くは取消、離婚若くは同居に關する訴訟行爲をなすが如き場合を云ふ、民法に「後見人又は其代表する者と被後見人との利益、相反する行爲に付き云々」とあるは即ち此語の用例とす。(民九一五條)
- 英
- Ward
- 独
- Mündel
- 仏
- Pupille
被控訴人
(ひこうそにん)被控訴人とは、控訴裁判所に繫屬中の訴訟事件に付き、被告の地位に立つ者を云ふ、即ち原告の地位に立つ者を控訴人と云ひ、控訴人に對して被控訴人と云ふなり。(民訴四二九條)
被告
(ひこく)被告とは、訴訟當事者の一人にして、事件に付き受働的地位に立つ者を云ふ、即ち訴訟當事者中、其事件に付き主働的地位に立つ者を原告と稱し、原告に對し受働的地位に立つ者を被告と稱するなり、民事訴訟法及び行政裁判法等に「原告若くは被告」とあるは此語の用例とす。(民訴六三、一九一條、行政裁判法二六條)
- 英
- Defendant
- 独
- Angeklagte
- 仏
- Défendeur
被告事件
(ひこくじけん)被告事件とは、檢事又は司法警察官の手にて搜査中の犯罪事件、及び豫審又は公判にて審理中の犯罪事件を云ふ、即ち檢事又は司法警察官が、搜査の手續に著手以後、裁判確定に至るまでの間に於ける犯罪事件を指して被告事件とは稱するなり。(刑訴六四條)
- 英
- Case of defendant
- 独
- An-klagefall
- 仏
- Cause du défendeur
非國事犯
(ひこくじはん)非國事犯とは、國事犯に非ざる犯罪と云ふに同じく、所謂常事犯の義なり、我が刑法上に於て非國事犯と謂ふときは、即ち内亂及び外患に關する兩種の犯罪を除き、其他一切の犯罪を云ふ、抑も非國事犯の何たるやは、須らく先づ國事犯の何たるやを研究するを以て捷徑となす、國事犯の性質に就き通常學者の説明する處に依れば、之を廣義に解するものと、狹義に解するものとの二説あり、其廣義に解する者は、在位の天皇に對する罪、朝憲紊亂及び邦土僣竊の罪、外國に對する罪、幷に公權の施行に關する罪を合せて國事犯と稱し、次に其狹義に解するものは、單に在位の天皇に對する罪、朝憲紊亂及び邦土僣竊の罪の兩罪のみを國事犯と稱せり、爰を以て國事犯を廣義に解すると狹義に解するとの差違は、又隨つて非國事犯の範圍に廣狹の差異を生ずべし、要するに一般學者の通説としては、之を狹義に解するものの如し、蓋し君主、邦土及び憲法の三者は國家の要素なるべきを以て、此三者に對稱する犯罪を指して國事犯となす、即ち狹義の説に從ふときは、非國事犯は、君主、邦土及び憲法の三者に對する罪を除き、其の他一切の犯罪を指するものと云ふことを得べし。(常事犯の部參照)
- 英
- Non-national crime
- 独
- nichtpolitisches Verbrechen
- 仏
- Crime non-nationale
被相續人
(ひさうぞくにん)被相續人とは、民法上家督相續又は遺産相續開始の場合に於て、家督又は遺産を讓渡す者を云ふ、即ち家督又は遺産を讓受くる一方の當事者を相續人と稱し、此相續人に對して家督又は遺産を讓渡す一方の當事者を被相續人と謂ふなり、民法に「家督相續は被相續人の住所に於て開始す」とある其用例なり。(民九六五、九九四條)
- 英
- Ancestor
- 独
- Erblasser
- 仏
- Ancêtre
非人格的
(ひじんかくてき)非人格的なる語は、人格的てふ語に對して用ゐらるる形容詞にして、人格的てふ語は人間の性格を有すと假定せられたる事物、現象に適用せらるるに對し、非人格的てふ語は、人間の性格を有せずと假定せられたる所の事物、現象に適用せらる、例へば基督教の神を人格的に考ふるに對して、宇宙の本體を論理的に考ふるへーグルの神を、非人格的と謂ふが如し。
被審人
(ひしんにん)被審人とは、凡て或特定の懲罰事犯に就き、當該官廳の審問又は審判を受くる者を云ふ、明治二九年四月法律第六九號海員懲戒法に「開始決定は、理事官及び被審人に之れを通知すべし」とあるは其用例なり。(同法一九條二項)
- 英
- Person to be tried
- 独
- Person zu versuchend
- 仏
- Personne jugée
被上告人
(ひじやうこくにん)被上告人とは、訴訟法上上告事件に就き、被告の地位に立つ者を云ふ、即ち上告裁判所に於て、原告の地位に立つ者を上告人と稱し、上告人に對して被告の地位に立つ者を被上告人とは云ふなり、民事訴訟法に「被法上告人は、附帶上告をなすことを得」とあるは即ち其の用例なりとす。(民訴四四二條)
非常上告
(ひじやうじやうこく)非常上告とは、刑事裁判上の一制度にして、第一審裁判所と第二審裁判所とを問はず、法律に於て罰せざる處爲に對して刑を言渡し、または相當の刑より重き刑を言渡したる場合に、期間内に上訴する者なくして其判決確定したるときに於て、其事件に付き、上告を受くる權ある裁判所の檢事が、司法大臣の命に因り、又は職權を以て、其裁判所に提起する訴を云ふ、即ち非常上告なるものは、裁判官が法律の解釋を誤りたる場合に於て、之れが救濟の方法として認められたる制度にして、其事件に付き、上告を受くる權ある裁判所の檢事に限り、之を提起することを得べく、且つ非常上告を許すは、其裁判が被告の不利益に確定したるときに限り、被告の利益に確定したるときは之を許すことなし、而して非常上告は、上述法定の條件に適合する事件に付きては、何時にても之を提起する事を得るものにして、即ち確定裁判の效力を破るものなるが故に、所謂一事不再理の原則に例外をなすの制度なり、次に非常上告裁判所の訴訟手續は、口頭辯論を用ふることなく、書面に依りてのみ審理をなし、其上告を理由ありとするときは、原裁判を破毀し、直に其事件に付き判決をなすものとす。(刑訴二九二條)
非常線
(ひじやうせん)非常線とは、警察上の用語にして、重大なる犯罪事件又は非常なる事件の發生したる場合に、一定の土地の區域を限り、警察權を以て警戒をなすを云ふ、例へば容易ならぬ犯罪事件の發生したる場合に於て、犯人逮捕のため多數の巡査を配置して、犯人の潜惹せる場所の周圍を警戒するが如きは即ち之れなり。
- 英
- Cordon
- 独
- Kordon
- 仏
- Cordon
非常通信
(ひじやうつうしん)非常通信とは、臺灣總督府管轄區域内に於ける非常事變に關する通信を云ふ、明治二九年七月律令第三號臺灣總督府非常通信規則第一條に「非常通信は、臺灣總督府管轄區域内に於て、非常急變の場合に際し、其事變發生地に通信所を設け、郵便又は電信電話に依り通信するものとす」とあるはこれ也、此規則に依れば、臺灣總督府、同所屬官廳幷に其官吏、軍隊、軍艦、軍衙、軍人、軍屬及び以上の各官廳官吏、軍隊、軍艦、軍衙幷に軍人、軍屬に於て、發信方を特許したる者等より、非常通信所に差出す郵便物及び電報は、其郵便税及び電報料とも之を免除せらるる事を得べし、但し郵便税及び電報料の免除を得る郵便物幷に電報は、事變發生地より臺灣總督府管轄區域内に達するものに限り、事變發生地外より、事變發生地に送達すべき郵便物幷に電報は、料金免除の特典を受くることを得ざるが故に、必ず之を完納せざるべからず、若し郵便税及び電報料未納又は不足の場合に於ては、郵便物は差出人に之を還付せらるるのみならず、其未納又は不足額の二倍を徵收せらるべく、電報は之を受信人に配達し、其不足額は發信人より徵收せらるるもの也。
- 英
- Extraordinary communication
- 独
- Extrakorrespondenz
- 仏
- Communica-tion extraordinaire
非訟事件
(ひしやうじけん)非訟事件とは、司法裁判所が、其職權として行ふ處の私權に關する處分を云ふ、即ち非訟事件は、私權に關する裁判所の處分也、茲に私權に關する處分といふは、私權を確定するために、又は私權に關する爭を未前に防がんがために行ふ處の處分を云ふもの也、而して非訟事件は、通常司法裁判所が其職權として行ふ所のものなるも、元來私權に關する處分に外ならずして、訴訟事件とは、全く其性質を異にするものなるが故に、必ずしも特に司法裁判所の職權に屬するものといふを得ず、加之實際上に於ても、普通行政官廳に於て之を行ふことなきにあらず、而して其裁判所の職權に屬するものと、行政官廳の職權に屬するものとの間には、事件の性質上また何等の差異あることなし、其何れの機關をして、如何なる非訟事件を掌理せしむべきは、一に立法上の考案に出るのみ、爰を以て、今嚴格なる意義に於て云ふときは、非訟事件とは、即ち裁判所又は行政官廳の行ふ所の私權に關する處分なりと定義するを妥當なりとす、次に非訟事件は、之を別つて民事非訟事件及び商事訟非事件の二種となす、而して我現行法に於ては、裁判所の管轄に屬する非訟事件に關する手續は、凡て明治三一年六月法律第一四號非訟事件手續法の規定に依るべきものとせられたり。
非訟事件手續法
(ひしやうじけんてつづきはふ)非訟事件手續法は、明治三一年六月法律第一四號を以て發布せられたるものにて、即ち裁判所の管轄に屬する非訟事件の手續を定めたる法律也、其内容は、全編を三編に分ち、第一編には總則に關する規定を置き、第二編には民事非訟事件に關する規定を置き、第三編には商事非訟事件に關する規定を置き、而して第二編民事非訟事件を八章に分ち、第一章法人に關する事件第二章財産の管理に關する事件、第三章裁判上の代位に關する事件、第四章保存、供託、保管及び鑑定に關する事件、第五章隱居、廢家、子の懲戒、家督相續人及び親族會議に關する事件、第六章相續の承認及び抛棄に關する事件、第七章遺言の確認及び執行、第八章法人及び夫婦財産契約の登記等に關する詳細の手續を規定せり、次に第三編商事非訟事件を分ちて三章となし、第一章會社及び競賣に關する事件、第二章會社清算人の選任及び解任、第三章商事登記等に關する詳細の手續を規定せり、而して其詳細の説明は之を各部に就きて參照せよ。
非商人
(ひしやうにん)非商人とは、商人に非ざる者を云ふ、即ち商法上自己の名を以て商行爲をなすを業とする者を商人と稱し、商人に對して商人以外の者を非商人と稱する也、或は非商人を解して、商人にあらざるものにして商行爲を爲すものを云ふと、此解説に依れば、商人に非ずして手形を振出し又は裏書し、其の取引所に於ける取引を爲す者等は非商人なりと謂ふべし。
- 英
- No-trader
- 独
- Nichtkaufmann
- 仏
- Non-marchand
備恤資金
(びじゆつしきん)備恤資金とは、明治三二年七月臺灣總督府令第七四號、清國勞働者取締規則の規定に基き、我が勞働者請負人が、其雇傭に係る清國勞働者の病災救恤の目的を以て常備する資金を云ふ、同規則に依れば、勞働者請負人は□一備恤資金の設置方法、□二備恤資金保管又は利殖の方法、□三備恤資金支出の方法、□四備恤資金精算の方法の四箇の事項を規定せし、備恤規程なるものを設け、臺灣總督の認可を受くるものなり。(同則六條)
- 英
- Fund of blessing
- 独
- Segn-ungsfond
- 仏
- Fonds de la bénédiction
批准
(ひじゆん)批准とは、條約に關する用語にして、此語の意義に關しては、廣狹二樣の學説あり、即ち之を廣義に解するものは、廣く條約當事國の主權者が、全權委員の協定調印せし條約文に對し、明示又は默示の方法を以て認可を與ふることを批准と稱し、之を狹義に解するものは、條約當事國の主權者が、全權委員の協定調印せし條約文に、一定の方式を履みて認可を與ふことを批准と稱せり、然れども現今實際の慣例は、全權委任狀又は條約の本文中に、特に批准を俟ちて條約の效力を生ずべき旨を定め、而して各國各自に一定の方法を以て、批准をなすものの如し、明治四〇年一月勅六號公式令に依れば、條約批准書には、親署の後國璽を鈐し、主任の國務大臣之に副署すべき旨を規定せられたり、要するに批准なるものは、全權委員の恊定調印したる條約に對し、主權者が承認の意思を表示する事を意味するものにして、茲に初めて條約は其覊束力を生ずるものとす、從つて其批准の方式の如きは、學理上に於ても、實際上に於ても、條約の覊束力に影響を及ぼすものにあらず、之と同時に、條約が其覊束力を生ずるには、必ず主權者の承認即ち批准あるを必要とするなり、時に或種の條約文中、批准を待たずして、其效力を發生すべき旨を明言したる實例なきにしも非ず、されど此種の條約は、即ち主權者の不認可を解除條件として假に實施し、後に至り、主權者の默認を得んとするの意思に出でたるもの多しとす、次に主權者は、全權委員が既に協定調印せし條約に對し、其批准を拒む事を得るや否やに關しては、國際法學者の間に議論あり、此の問題に對し或學者は、抑も條約は、調印に依りて覊束力を發生するものにして、唯其覊束力たるや、批准なる事實を條件として、其成就に因りて確定するものなり、即ち批准に依て始めて覊束力を確定するものなれども、批准以前に於ても、調印後は既に覊束力を發生せるが故に、國際法が批准を拒むことを得るの理由を限定すればとて、毫も條理に反するの患なきなり、然らば則ち如何なる場合に批准を拒むことを得るやと云ふに、固より正當なる理由あるにあらざれば、之を拒むこと能はずと論じ、其所謂正當となすに足るべき事項として、□一條約締結の任に當りし者が、委任權限を超越して調印をなしたる場合、□二既に存在せる條約上の義務に牴觸するが如き條項ある場合、□三締結したる國家の國法に違反する條項ある場合、□四國際法上の法規に違反する條項ある場合、□五調印以後事情の變更ありて條約を適用するに能はざるに至りし場合、□六條約に就きて重大なる錯誤詐欺若くは締結の任に當りし者に強迫ありし場合、□七國法上條約の批准を與ふるには、議會の協贊を必要とする場合に於て、議會の協贊人を經ざりし場合等を列擧せり。(公式令一三條)
- 英
- Ratification
- 独
- Ratifikation
- 仏
- Ratification
批准交換
(ひじゆんかうくわん)批准交換とは、條約締結の任に當りし條約當事國の兩全權委員が、双方各自に、其の主權者の批准を得たる條約文を交換することを云ふ、抑も或條約に對する當事國の意思は、其批准に因りて確定し、且つ批准あると同時に、其條約は、事實上成立するものなりと雖も、條約の完全に成立する時期は、實に此批准交換の手續を完了したる時に在るものとす、蓋し其條約に對する當事國双方の意思が表示せらるるは、双互の全權委員が其批准を交換したる時にあるべきを以て也、即ち條約の覊束力の如きも、當事國双方に對して、同時に確定することを要すべきものなるが故に、此批准交換の手續を完了せし時を以て、完全に成立し、當事國双方は茲に初めて其條約覊束を受くべきものとなすを妥當なりとす。
- 英
- Change of ratification
- 独
- Umtausch der Ratifikation
- 仏
- Echange de la ratification
非職
(ひしよく)非職とは、なほ休職の如く、官吏が或特定の場合に、現任の官職に伴ふ職務より一時離脱することを云ふものにして、官吏非職條例及び明治二三年勅令第二八六號等に依りて規定せられたる制度なるも、同三二年三月勅令第六二號文官分限令の規定を以て、廢止せられたるが故に、現行法に於ては非職なるものあることなし。
- 英
- Suspension of office
- 独
- Amts-suspension
- 仏
- Suspension de la poste
比照
(ひせう)比照とは、比較對照と謂ふの意義なり、例へば甲法の規定と、乙法の規定とを比較對照し、其規定事項の異同を研究するが如きは、即ち兩法の規定を比照するものなり。(刑三條二項、一四年一二月布告八一號新舊法比照例)
- 英
- Contrast
- 独
- Gegensatz
- 仏
- Contraste
費消罪
(ひせうざい)費消罪とは、受寄物費消罪の謂なり、受寄物費消罪とは、自己の占有内に在る他人の有形動産を不正に費消する罪を云ふ、即ち本罪の構成要件は、□一自己の占有内に在る動産なること、□二他人の所有に屬する動産なること、□三其動産は有形動産なること、□四不正に費消することの四要件となす、刑法に「受寄の財物、借用物又は典物、其他委託を受けたる金額物件を費消したる者云々」とあるこれ也、刑法の條文には、受寄、典物、委託等の文字あれども、必ずしも此等の物に限るにあらず、苟も犯罪行爲に原因せずして、自己の占有内に存する他人の所有物なるときは、本罪の物體たることを得るものとす、次に上記定義中、不正に費消すると云へるは、犯者が其占有する動産の他人の所有に屬することを知り、且つ其所有主の承諾を得る事無く、恣に費消するを云ふなり、次に本罪に對する刑罰は、一箇月以上二年以下の重禁錮、若し騙取、拐帶、其他詐欺の處爲あるときは、詐欺取財を以て論ぜらるべし、但し本罪の犯者にして、刑法上の親屬に係るときは處罰を受ること無し。(舊刑三九五條受寄物費消罪の部參照)
- 英
- Crime of squander of money, bills or any movable effects
- 独
- Ver-schwendungsverbrechen
- 仏
- Infraction de la dissipation de l'argent, du billet oudes meubles
被選議員
(ひせんぎいん)被選議員とは、選擧に依りて當選したる議員と謂ふの義にして、即ち選擧の方法に依らずして議員となりたる者に對し、選擧の方法に依りて當選したる議員を被選議員と謂ふ也、例へば貴族院議員の如きは、身分又は爵位若くは勅命に因りて議員となりたる者と、選擧に因りて議員となりたる者との數種あり、斯かる場合に於て、身分又は爵位若くは勅命等に因り議員となりたる者と、選擧に因りて議員となりたる者とを區別して、後者を被選議員と謂ふが如し、貴族院令に「被選議員にして云々」とあるは其用例なり。(同令一一條二項)
- 英
- Eligible member
- 独
- wähl-bares Mitglied
- 仏
- Membre éligible
被選權
(ひせんけん)被選權とは、帝國議會及び其他合議機關の議員に選擧せらることを得べき法律上の資格を云ふ、即ち或議員を選擧することを得べき法律上の資格を選擧權と稱し、此選擧權に對して選擧せらるることを得べき法律上の資格を被選權とは稱するものとす、明治二年二月法律第三號衆議院議員選擧法に「選擧に關する犯罪に由り、選擧權及び被選權云々」とあるは其用例とす。(同法一四條七號)
- 英
- Right of being elected
- 独
- Wählbarkeit
- 仏
- Droit d'être élu
被選資格
(ひせんしかく)被選資格とは、帝國議會又は其他の合議機關の議員に選擧せらるることを得べき資格を云ふ、即ち或議員を選擧することを得べき資格を選擧資格と稱し、此選擧資格に對して選擧せらるることを得べき資格を被選資格とはいふなり、要するに被選人たることを得べき資格といふに同じ。(被選權の部參照)
- 英
- Quality of person elected
- 独
- wählbare Qualität
- 仏
- Qualification de la personne élue
被選人
(ひせんにん)被選人とは帝國議會又は其他合議機關の議員に選擧せらるることを得べき法律上の資格ある人を云ふ、即ち或議員を選擧することを得べき法律上の資格ある人を選擧人と稱し、此の選擧人に對して選擧せらるることを得べき法律上の資格ある人を被選人とは稱するなり、衆議院議員選擧法の規定に依れば、衆議院議員の被選人たることを得る者は、日本帝國臣民の男子にして、滿三十歳に達し、且つ選擧人名簿調製の期日より、前滿一年以上其の選擧府縣内に於て直接國税拾圓以上を納め、猶ほ引續き納むる者、若くは該名簿調製の期日より前、滿三年以上同額の所得税を納め、猶ほ引續き之を納むる者に限るものとす、而して宮内官、裁判官、會計檢査官、收税宮、警察官は被選人たることを得ざるも、其の他の官吏は其職務を妨げざる限りは、議員と相兼ぬる事を得べく、神官及び諸宗の僧侶又は教師は、全然被選人たる事を得ざるものにして、府縣及び郡の官吏は、其管轄内に於て、選擧の管理に關係する市町村の吏員は、其選擧區内に於て、共に被選人たることを得ず、次に府縣會の議員にして、衆議員の議員に選擧せられ、當選を承諾したるときは、其前職を辭するにあらざれば被選人たることを得ざるもの也。(衆議院議員選擧法第三章參照)
- 英
- Person to be elected
- 独
- wählbare Person
- 仏
- Personne élue
卑屬
(ひぞく)卑屬とは、親族法上の用語にして、其就いて標準となさんとする本人より、血族系統上親等の下位に在る者を云ふ、例へば子孫の如き之なり、即ち關係的の語詞にして、其就て標準となさんとする本人より、血族系統上親等の上位に在る者を尊屬と稱し、此尊屬に對して、血族系統上親等の下位に在る者を卑屬と稱す、而して卑屬を分ちて二種となす、即ち直系卑屬及び傍系卑屬之なり、要するに俗に所謂目下(めした)の者と謂ふの義とす。(民九五七條二號)
- 英
- Descendant
- 独
- Deszendent
- 仏
- Descendant
被治者
(ひぢしや)被治者とは、國法學上の用語にして、所謂統治權の客體といふに同じく、國家の統治權の下に統治せられるる者、換言すれば、其國家の臣民及び其國家の領土に在住する人民を指稱するものとす、即ち統治權の主體たる可き者を治者といひ、此治者に對して統治權の客體たるべき者を被治者とは云ふなり。
- 英
- Subject
- 独
- Unterthan
- 仏
- Sujet
必要機關
(ひつえうきくわん)必要機關とは、國家又は一般法人の存在に必要欠く可らざる機關を云ふ、茲に必要機關といふは、不必要機關に對して云ふものにあらず、盖し政治上に於て必要又は不必要機關といふも、意味を爲さざるにあらざるべきも、法律上に於ては殆ど意味を爲さざれば、法律上に於て必要機關といふは、必要又は不必要の意味に於て云ふにあらずして、即ち其機關の主體たるものの存在のために缺く可らざる機關といふの義とす、若し此種の機關の無き場合には、其主體たるものは存在する能はざるものを云ふ也、例へば立憲國に於ける議會の如きは必要機關なり、若し議會を廢するときは、其國家は立憲國として存在の理由を欠くに至るべければ也。
- 英
- Necessary organ
- 独
- wichtiges Organ
- 仏
- Organe nécessaire
必要費
(ひつえうひ)必要費とは、或物を保存し、又は或物の生存を維持し、若くは或事務を成し遂ぐるに必要なる費用を云ふ、抑も法律上、吾人が或物又は或事務のために支出する費用を大別して、通常必要費及び有益費の二種となす、蓋し此區別は、或人が他人の同意を得ずして、他人の物又は其事務のために支出したる費用を償還せしむる場合に於て、其償還義務の程度を定むるに必要なりとす、例へば占有者が其占有物を返還する場合に於て、其物の保存のために費したる金額其他の必要費用は、之を回復者より償還せしむることを得べきも、之に反して、占有者が其占有物の改良のために費したる金額其他の有益費に就きては、其價格の增加が現存する場合に限り、回復者に對して其償還を請求することを得べく、且つ此場合に於て、占有者が實際支出したる金額を償還すると、現存の增價額を償還するとは、一は回復者の自由選擇に屬するものとす、即ち此兩種の費用の間には、法律上極めて重要の差異あるを知るべし。(民一九六條一項及び二項)
- 英
- Necessary Expense
- 独
- wichtige Kosten
- 仏
- Dépens nécessaire
日附
(ひづけ)日附とは、文書又は其他の物に、或事實の發生したる日に於ける曆日を記載することを云ふ、即ち日附は、單に日のみを記載することを云ふにあらずして、曆日即ち或事實の發生したる當日の何年何月何日なるかを記載するものとす、而して此日附なるものは、吾人が權利を實行し、又は義務を履行したる事實を後日に證明するため、若くは權利を實行し、又は義務を履行し得べき時期を確定する等の爲めに、法律上極めて重要の關係を有するものとす。(商四六七條三項)
- 英
- Date
- 独
- Datum
- 仏
- Date
日附後定期拂の手形
(ひづけごていきばらひのてがた)日附後定期拂の手形とは、振出の日附後確定せる期間を經過したる日を以て、滿期日となしたる手形を云ふ、例へば振出人が手形面に「日附後何日目に御支拂被下度候」といふが如き文言を記載したる手形にして、商法が確定日として「日附後確定せる期間を經過したる日」と規定せるもの之なり、即ち此種の手形は、振出人の定めたる振出後確定せる期間の經過したる日に於て、其支拂を請求すべきものとす。(商四五〇條二號)
- 英
- Bill payable at a fixed period after date
- 独
- Datowechsel nach Datum
- 仏
- Bill payable à la pér-iode fixe après le date
非手形關係
(ひてがたくわんけい)非手形關係とは、直接間接に手形行爲に關聯する權利義務の關係にして、手形關係にあらざるものを云ふ、即ち手形關係とは、手形本來の性質より生じたる權利義務の關係を云ふものにして、必ず手形法の規定を以て之を明定することを要するものとす、然るに非手形關係は、此手形關係以外に於て、當事者間に存在する權利義務なれば、唯直接間接に手形行爲に關聯するに止るもの也、從つて此非手形關係に伴ふ權利義務は、一般法に規定する原則に從て、之を定むることを得べきものなるが故に、必ずしも特に手形法の規定を要せざるものとす、然れども立法の便宜上、又は疑義を防ぐがため、手形法上に之を規定する事なきにあらず、元來手形法なるものは、手形の文言に因り如何なる效果を生ずべき乎、或は常事者が手形に關して如何なる權利を得、若くは義務を負ふべき乎、即ち手形關係を規定するを以て主旨となすものなるが故に、手形法上に非手形關係の事項を規定するは、學者の非雖する所なり、今非手形關係の主もなるものに就き一例を擧ぐれば、爲替手形の所持人が手形の複本の發行を請求するが如き、其他資金等の如き關係是なり。
- 英
- Non-bill relation
- 独
- Kein-Wechsel-Verhältnisz
- 仏
- Relation non-billet
人
(ひと)人とは、法律上權利の主格たる自然人を云ふ、抑も法律上に於て人と云ふときは、單に生理的機能を有する自然人なりといふを以て足れりとせず、盖し生理的機能を有する自然人にして、法律上、人といふ能はざるものあり、例へば昔時の奴隷の如きは、生理的機能を有する自然人なりと雖も、權利の主格となる能はざるものなるが故に、法律上に於ける人にあらざるが如し、之と同時に、法律が認めて以て權利享有の主格となすものにして、自然人にあらざるものあり、之を法人と云ふ、法人は、法律に因り一定の範圍内に於て、權利義務の主體たるものにして、其本體は固より人にあらず、隨つて事實上に於て法人と自然人との區別は、言を俟たざるも、法律上に於ては、共に等しく權利主格にして、唯其異なる處は、一に其人格の範圍に廣狹の差あるを認むるのみ、尚自然人は自然人なるが故に法律上當然人として、權利の主格たることを得るものにあらずして、實は法律が認めて以て權利の主格となすが故なり、爰を以て縱令自然人なりと雖も、法律が其の人格を認めずんば、法律上に於ては他の自然界に於ける物と異なること無かるべし、近世文化の進步と共に、何れの國に於ても、或は立法の根本に於て、或は特に法律の明文を以て、苟も自然人たる者は、權利の主格たることを認むるに至りしが故に、吾人は押して以て人といふときは、特に法律の規定を俟たずして當然權利義務の主體たる者の如く思惟するを常とすと雖も、古代は勿論、近き世紀に至るまで、未だ全然自然人を以て權利の主格たる者と認むることなく、恰も牛馬其他の物の如く、單に權利の目的物として、法律上公然賣買贈與の行はれたる事實は、誰人も史を讀む者の知る所なり、所謂惡法また法なりとの諺の如く、法律にして自然人と雖も、其の人格を認めずんば、當然法律上の人と云ふ能はず、斯くの如きは人道に反することの甚しきものなるが故に、現今文明諸國に於ては、一般自然人たる者の人格を認むるに至れるものにして、吾が法律制度に於ても、立法の基本に於て、自然人の人格を認め、唯民法の規定を以て、自然人の私權享有の時期を明確にせるのみ、要するに法律上に於て人と云ふときは、權利の主格たるべき者を皆稱するに外ならず、而して權利の主格たるべき者には、自然人と法人との二種あることを知るべし。(民一條及自然人、法人の部參照)
- 英
- Person
- 独
- Person
- 仏
- Personne
費途
(ひと)費途とは、費消の用途と謂ふの義にして、通常金錢費消の用途を費途と謂ふ、明治二二年四月勅令第六〇號會計規則第七條に「豫備を以て補充し得べき費途云々」と謂へるは其用例とす。
- 英
- Way of expenses
- 独
- Kostenweg
- 仏
- Moyen de dépens
匪徒
(ひと)匪徒とは、我臺灣總督府管轄區域内に棲息する一種の蠻民の稱にして、未だ天皇の恩澤に浴することを知らず、常に暴行殺戮を事とする頑冥不靈の民衆也、明治三一年一一月律令第二四號に「匪徒刑罰令」とあるは其用例とす。
- 英
- Bandit
- 独
- Straszenräuber
- 仏
- Bandit
被登記者
(ひとうきしや)被登記者とは、戸籍法上の用語にして、戸籍役場に於て、身分登記簿に身分の登記を受けたる人を云ふ、明治三一年五月法律第一二號戸籍法に「被登記者の本籍」云々とあるは其用例なり。(同法二〇、三三條一項)
- 英
- Person registered
- 独
- ein-getragene Person
- 仏
- Enregistré
匪徒刑罰令
(ひとけいばつれい)匪徒刑罰令は、明治二九年法律第六三號第三條に依り、明治三一年一一月律令第二四號を以て、臺灣總督の發したる命令にして、臺灣總督府管轄區域内に於ける匪徒の刑罰を規定せるもの也、其内容は、總督府管轄區域内に於て、何等の目的を問はず、暴行又は脅迫を以て其目的を達する爲め、多數結合するときは之を匪徒の罪となし、其首魁、教唆者及び其謀議に參與し、又は指揮を爲したる者は死刑に處し、其附和隨行し、又は雜役に服したる者は、有期徒刑又は重懲役に處せらるべく、若し此等の者にして、□一官吏又は軍隊に抗敵したるとき、□二火を放つて建造物、汽車、船舶、橋梁を燒燬し、若くは毀壞したるとき、□三火を故つて山林田野の竹木、殻麥又は露積したる柴草其他の物件を燒燬したるとき、□四鐵道又は其標識、燈臺又は浮標を毀壞し、汽車、船舶の往來危險を生ぜしめたるとき、□五郵便、電信及び電話の用に供する物件を毀壞し、又は其他の方法を以て、其交通の妨害を生ぜしめたるとき、□六人を殺戮し又は婦女を強姦したるとき、□七人を略取し又は財物を掠奪したるとき、以上の處爲あるときは、其未遂、既遂を問はず、死刑に處せられ、又兵器、彈藥、船舶、金穀其他の物件を貸給し、若くは會合の場所を給與し、又は其他の行爲を以て匪徒を幇助したる者は、死刑又は無期徒刑に、また匪徒を藏匿し又は隱避せしめ、又は匪徒の罪を免れんことを圖りたる者は、有期徒刑又は重懲役に處せらるべし、而して此の刑罰令に違反したる者、官に自首したるときは、其刑を輕減し又は之を全免し五年以下の監視に附せらる、本令は發布の日より施行せられたるものにして、其施行以前に係る處爲と雖も、本令に於て罰すべき性實のものなるときは、本令の規定に依り處斷せらるるものとす。
- 英
- Law of bandit punishment
- 独
- Strafgesetz der Stadträuber
- 仏
- Loi de la punition du bandit
否認
(ひにん)否認とは、他人の爲せる意思表示に對して不同意の意思を表示し、又は或事實の歸著に關する法律上、若くは裁判上の推定又は斷案に對して、反對の意思を表示する事を云ふ、蓋し上述の場合に於て、同意の意思を表示することを承認と云ひ、此承認に對して否認と謂ふ也、民法に「……■夫は子の嫡出なることを否認することを得」とあるは其用例にして、即ち此場合は、法律の推定に對し反對の意思を表示するものなり。(民八二二條、人訴手續二八條)
- 英
- Contest
- 独
- Unerkenntnisz
- 仏
- Contestation
否認權
(ひにんけん)否認權とは、凡て法律上或事實上を否認することを許されたる權利を云ふ、民法第八二三條に「否認權」とあるは其の用例にして、即ち此場合は、妻が其の婚姻中に懷胎したる子は夫の子なりとの推定ある事實に對し、夫が之れを否認する權利を云ふものとす、茲に所謂夫の否認權なるものは、夫が子又は其法定代理人に對する訴に依りて之を行ふべきものにして、其の法定代理人に對する訴に依りて之れを行ふべき場合に、若し其夫が子の法定代理人なるときは、裁判所に於て其特別代理人を選任するものとす、而して此否認の訴は、夫が子の生出を知りたる時より一年内に之を提起することを要するも、此期限は夫が未成年者なるときは、其成年に達したる時より、又夫が禁治産者なるときは、禁治産の取消ありたる後、夫が子の出生を知りたる時より之れを起算するものとす、但し夫が成年に達したる後に於て、初めて子の出生を知りたるときは、固より其時より起算すべきものとす、而して此期間内は、何時にても否認の訴をなすを得べきも、若し夫が子の出生後に於て、一たび其嫡出なることを承認したるときは、此否認權を失ふもの也。(民八二二條乃至八二六條)
- 英
- Right of contest
- 独
- Kampfs-recht
- 仏
- Droit de la contestation
否認の訴
(ひにんのうたへ)否認の訴とは、夫が否認權の行使により、子の嫡出なることを否認する訴を云ふ、此否認の訴は、子が普通裁判籍を有する地、又は死亡の時に之を有したる地の地方裁判所の管轄に專屬するが故に、其他の裁判所には出訴する事を得ざるものとす、而して此訴は、子又は其法定代理人に對して之を爲すべきものにして、若し夫が法定代理人なる場合には、裁判所は、子のために特別代理人を命すべきものとす、而して若し夫が、禁治産者なるときは、其後見人は親族會の同意を得て此訴を提起することを得べし、次に此出訴期限は、夫が子の出生を知りたる時より一ケ年間とす、故に此期間を經過するときは、否認訴權を失ふべし、然るに夫が子の出生前、又は否認の訴を提起せずして出訴期限内に死亡したる時は、其子の爲めに相續權を害せらるべき者、其他夫の三等親内の血族に限り、此訴を提起することを得るものにして、此場合には、夫の死亡の日より前記の出訴期限を起算するものとす、若し夫が否認の訴を提起したる後死亡したるときは、前記夫に代りて、否認の訴を提起する事を得る者は、夫の提起せし訴訟手續を受繼ぐことを得べし。(三一年六月法一三號人訴手續二七條乃至二九條、及び否認權の部參照)
- 英
- Appeal of contest
- 独
- Streits-klage
- 仏
- Appel de la contestation
被罰者
(ひばつしや)被罰者とは、凡て刑罰又は懲罰に處られたる者を云ふ、例へば刑事裁判所に於て、刑罰の宣告を受けたる犯罪人、又は懲戒裁判所に於て、懲戒處分を受けたる官吏の如きは、即ち被罰者と云ふことを得べし。(監獄則四五條三項)
- 英
- Person punished
- 独
- bestra te Person
- 仏
- Coupable
批評
(ひひやう)批評とは、總べて或事物に對し、正當合理なる判斷を加へ、或は之を評價することなり、故に批評に於ては、先づ批評せらるべき即ち批評の對象となるべき何等かの事物なかるべからず、其は或は知識上の産物なる事あり、或は又感情上の産物なる事あり、即ち哲學、科學、文學、藝術等總べて對象となり得べし、然れども其對象異なるに從ひ、自ら又批評の態度を異にせざるべからず、即ち知的作物に對しては專ら知識の判斷を應用し、情的作物に對しては專ら感情の評價に訴ふるが如し、而して知識の産物に對ずる判斷に於ては、其が標準法則とも謂はるべきものを幾分制定することを得べけんも、感情の作物に對する評價に於ては、かくの如きものを豫め制定する能はず、主として作者の境遇、傾向、時代の風潮、情況等を參酌して、充分其作物に對する感受性と、同情とを有せざるべからず、但し其評價の大綱を提ぐることは敢て能はざるにあらず、要するに苟も批評の位置に立たんとするには、其事物に對する同情と〓心とは勿論、廣き學識と趣味とを有するにあらずんば、決して滿足なる批評を下し得るものにあらざるなり、例へば或文學の作品に對して批評を加ふるにも、其の作品を精讀したることのみを以て充分なる批評を下し得るものにあらず、評者先づ親しく人生其ものを味ひ、深く人生を解するにあらざれば、其批評は唯單に技巧の末に奔りて、眞に文學の作物に對する批評としては取るに足らざるものとなるべし、これ文學批評家も亦創作的識見を有せざるべからずと唱ふるものある所以也、而して法律上批評と云ふも、上説の意と異なることなく、他人の行爲、言論、其他著作物等に對し、合理なる判定を與へ、之を評價することを云ふ。(三二年三月法三九號著作權法一九條)
- 英
- Criticism
- 独
- Kritik
- 仏
- Cri-tique
避病院
(ひびやうゐん)避病院とは、明治三〇年三月法律第三六號傳染病豫防法の規定に依り、市町村が其市町村民の傳染病患者を收容治療するため、其市町村の費用を以て、地方長官の指示に從ひ、設立する傳染病院を云ふ、即ち避病院は、公衆衞生上傳染病の病毒傳播を豫防するため設置するものにして、當該吏員は其豫防上必要と認むるときは、強制的に患者を收容するべきものとす、而して此種の事務は衞生行政中所謂保健行政に屬するもの也。(同法一七條參照)
- 英
- Epidemic hospital
- 独
- epide-misches Spital
- 仏
- Hôpital épidémique
日步
(ひぶ)日步とは、金利一日の步合を云ふ、即ち銀行等に於ける貸金預金に對する利息の割合にして、日々の步合勘定を云ふものとす。
- 英
- Daily interest
- 独
- tägliche In-teresse
- 仏
- Intérêt journalier
被保險者
(ひほけんしや)被保險者とは、保險契約當事者の一人にして、損害保險の場合に在りては、被保險利益を有する者を云ふ、即ち保險契約に於て、相手方の有する被保險利益に關して、生ずることあるべき損害を塡補することを約する當事者の一方を保險者と云ひ、此保險者に對して、自己の被保險利益を擔保せらるる報酬として、保險料を支拂ふことを約する當事者の一方を被保險者と云ふ也、抑も保險契約の當事者は、此の保險者及び被保險者の二人なるを常とす、されど時としては、第三者が被保險者のために、契約締結の任に當ることあり、此の實際契約締結の任に當りし第三者を法律上被保險者と區別して、保險契約者と云ふ、斯かる場合に於ては、保險契約の當事者は保險者被保險者及び保險契約者の三人なりとす、爰を以て保險契約當事者の一方は、常に保險者なりと雖も、其相手方は或は一人なる事あるべく、或は二人なる事あるべし、隨つて被保險者とは、單に保險契約一方の當事者なりと云ふのみにては、未だ充分なる説明と謂ふを得ず、茲に於て乎被保險者とは、保險契約當事者の一人にして、被保險利益を有する者なりと定義するの必要あり、蓋し保險契約者と被保險者とは、共に等しく契約當事者の一人なりと雖も、被保險利益を有する者は、獨り被保險者あるのみなれば也、被保險者の權利は、即ち其保險利益に關し、實際危險の發生したる場合に於て、保險者をして其損害を塡補せしむる事を得る一事にして、別に説明を要せずと雖も、其義務に就きては少しく説明するの要あり、今重要なるものを擧ぐれば、□一保險料を支拂ふべき義務を有す、此保險料なるものは、保險契約成立上の一要件にして、保險者の危險擔保に對する代價ともいふべきものなるが故に、必ずや當事者に於て明示又は默示の方法を於て、其數額を確定することを要す、隨つて若し當事者に於て之れを確定せざるときは、其保險契約は未だ成立せざるものといふべし、而して此保險料は、必ずしも金錢なることを要せざるが故に、金錢以外の物を以て保險料となすを妨げず、例へば相互保險契約の場合の如きは、一社員に於て他の社員の危險を擔保することが即ち保險と爲るものなりとす、□二被保險利益に關する損害防止の義務を有す、蓋し保險契約なるものは、本來被保險者が、現に有する所の利益を保全するを以て目的となすものなるが故に、被保險者が一に保險者の擔保に依賴して、被保險利益の上に發生する損害を傍觀するは、法律の許さざる所也、爰を以て法律は、被保險者に命ずるに此義務を以てすると同時に、之れが爲めに必要又は有益なりし費用及び塡補額は、保險者をして之れを負擔せしむるものとせり、而して其額が保險金額に超過するときと雖も、保險者は之れを負擔せさる可らず、□三危險の狀況を通知するの義務、被保險利益に關する危險の變更又は增加の如きは、保險者の擔保義務に至大の關係あるべきを以て、保險者は常に這般の注意を怠る事なしと雖も、之れを知る事の甚だ困難なるに反して、被保險者は容易に之れを知ることを得る地位に在るを以て、法律は、保險期間中危險が保險契約者又は被保險者の責に歸す可からざる事由に、著しく變更又は增加したることを知りたるときは、遲滯なく之れを保險者に通知すべき義務を負はしめ、若し此通知を怠りたるときは、保險者は危險の變更又は增加の時より、保險契約は其效力を失ひたるものと看做すことを得べき制裁を以てせり、□四損害を通知するの義務あり、損害の原因、其性質等は、時に保險者の擔保義務の存否に影響を及ぼす事なきにあらず、保險者は、損害の生ずるときは、直に之れを調査するの必要あり、故に法律は、保險者の負擔すたる危險の發生に因りて、損害が生じたるときは、被保險者をして其損害の生じたることを知ると同時に、之れを保險者に通知すべき義務を以てせる也、以上を被保險者の主なる義務となす、次に生命保險契約の場合に在りて、被保險者とは、保險に付したる生命を有する者を云ふ、蓋し損害保險は、保險者が、相手方の有する財産上の危險を擔保するものなるが故に、損害保險の被保險者は、保險の目的となせし財産上の利益、即ち被保險利益を有するものなるも、之れに反して生命保險は、保險者が其契約の相手方又は第三者の生命に關する危險を擔保するものなるを以て、契約の相手方たると第三者たるとを問はず、契約に付したる生命を有する者を以て被保險者といふべきものとす、而して生命保險の被保險者の義務の主なるものは、被保險者にして同時に保險契約者たる場合には、上述損害保險の場合に於ける第一の義務、即ち保險料支拂の義務を有するは勿論、第三の義務として説明せし危險の狀況通知の義務等にして、此外契約締結の當時に於ける義務の最も重要なるものは、所謂告知及び開陳の義務なりとす、此義務に就きては便宜上保險契約者の項に於て説明すべし。(商三編一〇章一、二節參照)
- 英
- Insured
- 独
- Versicherte
- 仏
- Assuré
被保險利益
(ひほけんりえき)被保險利益とは、損害保險契約の目的となせし被保險者の有する財産上の利益を云ふ、抑も保險契約なるものは、當事者の一方が偶然なる一定の事故に因りて生ずることあるべき損害を塡補することを約するもの也、此結果として、其相手方たる者は、必ずや損害の生じたる場合に塡補せらるべき現存の或利益を有せざるべからず、此利益は即ち保險契約の目的となるものにして、實に保險者の擔保する處のものなり、然るに若し被保險者の地位に在るものが、現に何等の利益を有せさるに拘はらず、保險契約を締結したりとせんか、斯かる契約は目的を欠缺するものなるが故に、全然無效のものと云はざる可らず、蓋し法律が保險なるものを認むるに至りたる理由は、其當事者が損害塡補を約する目的物上に於ける危險共同、損害分配の主旨に依りたるものなり、然るに被保險者が、現に何等の利益を有せずして保險契約を結び、一朝偶然の事爲を期して、保險者よりある利益を得んとするが如きは、其形を異にして其實を同うする一種の賭博に外ならず、斯くの如きは法律の決して許さざる所とす、要するに被保險利益なるものは、保險契約の要素をなすものにして、保險者に依りて擔保せらる被保險者の利益とす、而して其の利益は、須らく現存のものたるべきを要す、又利益の保全を目的となし、且つ其の損害の塡補を要件となすは、保險本來の性質より推して以て之れを知り得べし、然り被保險利益は現存のものたるべきを原則となすと雖も、或偶然なる危險の發生するにあらざれば、將來獲取し得ることの確實なる利益を以て、保險の目的となすは必ずしも保險本來の性質と相反するものにあらず、而して將來獲取し得べき利益を以て保險の目的となすにつきては、現行法に於て何等の明文を設くることなしと雖も、法律の明かに禁ぜざる行爲は之れを爲し得べきものと解するは、決して不當の見解にあらざるべし、果して然らば將來獲得し得べき利益を以て、保險の目的となすにつき、何等の條件を必要となすやは、須らく之れを學者の解釋に依らざる可らず、此に關し或學者は説明して曰く、□一將來利益を生ずべき物の上に現實利害の關係を有することを要す、例へば將來收〓すべき農産物を保險に附する場合の如きは、被保險者は必ず農産物を生ずべき田畑の上に所有權を有するか、小作權を有するか、若くは其農産物を賣却して手數料を得るの權利を有する等、將來利益を生ずべき物即ち田畑に對して、或利害の關係を有せざるべからず、故に或は第三者の所有に係る田畑につき、將來之れを買取るの意思あるも、斯くの如きは、單一なる希望に外ならざるを以て、未だ現實利害の關係を有するものと云ふことを得ざるなり、□二危險の發生するにあらざれば當然利益を取得し得べきこと、前例農産物保險の場合に於て、單に田畑を所有するのみにては、未だ被保險利益を有するものと云ふべからず、其田畑に穀菜を植付け、暴風雨、洪水若くは旱魃の如き天災又は其他人爲の災害の發生するにあらざれば、當然收〓を得べき狀況あるに至り、始めて被保險利益を有するものとすべし蓋既に田畑に穀菜を植付けたるときは、天然の力に因りて自然に成長し、季節に至りて收〓を爲す事を得べく、唯其收〓を防害するものは、暴風雨、洪水、旱魃等の天災其他人爲の災害あるのみなればなりと、兔に角將來に屬する利益を以て保險の目的となすにつきては、須らく單純なる希望と異なり、現實其物に利害の關係を有し、且つ偶然なる危險の發生せざる限り、確實に豫期の利益を收め得べぎ性質のものたる事を要するものとす、次に現行法は、被保險利益は必ず金錢に見積ることを得るものに限るべき旨を明定せるが故に、金錢に見積ることを得ざるものは、之れを以て被保險利益となすを得ざるは言を俟たざる所とす、若し此金錢に見積ることを得べき利益は、之れを廣義に解すると狹義に解するは、其間に非常の徑庭を生ず、例へば名譽權の如きは、之れを狹義に解する場合には、被保險利益となすことを得ざるに反して、之れを廣義に解する場合には、被保險利益となすを妨げざるべし、之れに關し一般學者の定説とも見るべき見解は、苟も其の利益たるべきものにして、不適法のものにあらざる限り、之れを廣義に解して、當事者の行爲を自由ならしむるを妥當なりとなすものの如し、次に被保險利益たるべきものは、須らく將來ある偶然なる危險の發生に原因して、直接に損害を受くることあるべき性質のものならざる可らず、若し夫れ何等此の種の虞なきものに對しては、素より之れを保險に附すべき必要あるを見ず、苟も保險が危險擔保、損害塡補の目的に出でたるものたることを以て其要件となす以上は、其被保險利益たるものに關し、將來必ず或偶然の事爲に原因して、何等かの損害を生ずべきものたることを要すべきは自明の理なりとず。(商三八四條及び三八五條)
- 英
- Interest of assured
- 独
- versicherte Interesse
- 仏
- Intérêt de l'as-suré
非本籍人
(ひほんせきにん)非本籍人とは、或特定の戸籍吏の管轄地を基本として、其地に本籍を有せざる人を云ふ、即ち本籍人に對して、非本籍人と云ふなり、明治三一年五月法律第一二號戸籍法に「登記は本籍人、非本籍人及び登記をなすべき事件の區別に從ひ、相當の帳簿になすことを要す」とあるは此用例なり。(戸籍法一九條)
非本籍人身分登記簿
(ひほんせきにんみぶんとうきぼ)非本籍人身分登記簿は、各戸籍役場に於て、戸籍吏が明治三一年五月法律第一二號戸籍法の規定に基き、其管轄地内に在住する非本籍人の身分に關する事項を登記するため、調製する身分登記簿の一種也、同法に「一箇の登記にして、本籍人及び非本籍人に關するときは、同時に本籍人身分登記簿及び非本籍人身分登記簿に登記し、各登記の欄外に、交互參着の符號を附記することを要す」とあるは此例也。(同法二〇條二項)
秘密證書
(ひみつしやうしよ)秘密證書とは、ある事項を證明すべき時期の到達するまで、利害關係人に知らしむる事を避けて作製したる證書を云ふ、元來證書なるものは、其の記載事項に關し後日之れを利害關係人に證明する場合に於て、其證據品として豫備するものなるが故に、早晩之を發表せざる可らず、從つて無期限に秘密に付することは、固より事情の許さざる處也、民法に「遺言は、自筆證書、公正證書又は秘密證書に依りて之れを爲す事を要す」とあるは此例にして、同條に所謂秘密證書は、遺言を記載するものなるが故に、法定の條件を充實せざるときは、或は秘密證書たる效力を失ひ、或は遺言の全然無效に歸する場合あるべし、即ち法定の條件とは、□一遺言者が其證書に署名捺印すること、□二遺言者が其證書を封じ、證書に用ひたる印章を以て之れを封印すること、□三遺言者が一人及び證人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言なる旨及び其筆者の氏名、住所を申述すること、□四公證人が其の證書提出の日附及び遺言の申述を封紙に記載したる後、遺言及び證人と共に之れに署名捺印することを要し、若し又言語を發する事能はざるものが秘密證書に依りて遺言を爲す場合には、遺言者が公證人及び證人の前に於て、其證書は自己の遺言書なる旨、並に其筆者の氏名、住所を封紙に自書することを要す、尤も何れの場合に於ても、證書中の挿入削除其他の變更は、遺言者其場所を指示しこれを變更したる旨を附記し、特にこれに署名し、且つ其變更の場所に捺印するにあらざれば其效なし、以上の條件を缺くときは、全然無效に屬すべきも、若し秘密證書たるの條伴を缺くも、自筆證書たるの條件にして缺くることなきときは、自筆證書に依る遺言として其效力を有するものとす。(民一〇六七、ー〇六八、一〇七〇、一〇七一條、及び一〇七二條參照)
- 英
- Secret document
- 独
- Ge-heimurkunde
- 仏
- Document secret
秘密選擧
(ひみつせんきよ)秘密選擧とは、選擧關係人をして、選擧人の氏名を知らしむることを避けたる選擧方法を云ふ、通常此種の選擧は、無記名投票の方法を以てこれを行ふ。(選擧の部參照)
- 英
- Secret election
- 独
- Ge-heimwahl
- 仏
- Election secrète
品性
(ひんせい)品性とは、個人の心身の上に成り、倫理的判斷の對象となる特殊の傾向性にして、身體は其の條件をなし、主として心意の比較的不變性となれる吾人行爲の動因なり、而してかかる性情傾向は、決して一朝にして形成せらるるものにあらず、心身の先天性境遇より來る一切の剌戟教育によりての涵養等が綜合して作用し、智情意活動の一般方向か同常同線なる行爲をなすことによりて習慣性となり、特に意志その中心となりて、その人に特有の性向を賦與し、智情はこれに關係的將た交渉的に影響し、愈々強固なる傾向を形成するに及び、品性は、其人唯一の動力素となりて、又容易に動かすべからず、然れども品性は、各人皆其趣きを異にすると共に、同一の人にありても、各行爲の終結每にその質を異にし來るを法とす、これ各行爲は品性の發現衝動なりと雖も、そが一度行爲として現はるるや、必ず反りて初めのべ性を變性陶冶するを以てなり、かくの如く時々に起こる衝動が、行爲として反覆せらるる所に習慣性を得、そは軈て品性そのものを形成る所より、品性を以て意志の習慣性なりと説くもあり、然れども品性の形成に於ては、心身の先天性、身體の發達具合等も亦大なる條件となることを忘るべからず、然かも習慣性が軈て品性そのものと認めらるる程に重要なる位置を占むる事實より、教育又は境遇を利用し、常に外部より善的教訓を垂れ、善的剌戟を與ふる事によりて、良習慣を涵養することに力むるときは、自ら品性を高尚にし、善良ならしむるを得ることを知るべし、是即ち品性の道德的陶冶なり。
貧民警察
(ひんみんけいさつ)貧民警察とは、各都市に於ける貧民の困窮を救助し、又は其地位を改善し、若くは所謂貧民窟の衞生取締等のために、貧民の自由を強制する一種の警察行政を云ふ、例へば貧民を強制して勞役に就かしめ、又は不良の少年に懲治處分を行ふが如き之なり。
- 英
- Police for the poor
- 独
- Armenpolizei
- 仏
- Police pour ie pauvre
品位證明
(ひんゐしやうめい)品位證明とは、明治三〇年四月勅令第一三七號金銀地金精製及品位證明規則に依り、造幣局が個人の請求を受け、金銀地金の品位を試驗し、これを證明することを云ふ、同規則に依れば、精製又は品位證明の爲め輸納することを得る地金は、品一位千分中金銀七五〇以上、量目一〇〇匁以上のものに限るものとす、但し金銀混合地金なるときは、金銀合して七五〇以上とす、而して輸納地金の品位證明を得たるときは、其請求人は、手數料として、金は四貫匁又は其端數每に金二圓、銀八八貫匁又は其端數每に、同額の手數料を納付せざる可らず、若し輸納したる精金試驗の後、品位證明を爲さすして送附を請ふときは、地金一塊每に手數料として金二圓を納附するものとす、而して何れの場合に於ても、輸納地金の熔解減は、輸納人に於てもこれを負擔せざる可らず、又輸納人は其輸納地金の金分を以て、貨幣の鑄造を請ふことを得べし。
- 英
- Certificate of quality
- 独
- Qualitätsbescheinigung
- 仏
- Certificat de la qualité
費目流用
(ひもくりうよう)費目流用とは、會計上の用語にして、豫算の各款項に定めたる費目の經費として備へたる金額を、便宜上彼是流用する事を云ふ、政府の會計は憲法の規定に依り、財政上非常處分を爲す場合の外、豫算の各款項に定めたる金額を彼是流用するを得ざるを原則とす、而して其總額に於ても亦各款項に於ても、之れを超過すること能はざると同時に、一の款項に剩餘あるもこれを以て、他の款項の不足に充當することを得ざるものとす。(會計法一二條、府縣制一二五條)
- 英
- Appropriation of other ex-penses decided in budget
- 独
- zeitweise die ordentliche Ausgabe zu gebrauchen
- 仏
- Appropiation des autres dépens décidés au Budget
評價
(ひやうか)評價とは、或物體の代價借賃其他賠償金等に付き、利害の關係なき第三者が、局外公平の見地より評定したる價額を云ふ、即ち或物件に付き、當事者に於て相當價額を知る能はざる場合、若くは利害關係上これを定むる能はざる場合に於て、鑑定人の評定を待て其價額を定むるが如きを云ふ、明治三一年六月法律第一五號競賣法に「高價品の競賣は鑑定人をして其評價をなさしめたる後云々」とあるは其用例とす。(同法一〇條)
- 英
- Appraisal
- 独
- Einschätzung
- 仏
- Appréciation
評議會
(ひやうぎくわい)評議會とは、其主體のために或事項に付き、意見を表白することを職責とする合議機關の一種なり、即ち衆智を集めて其主體たる自然人又は法人の事務に付き、利定得失を攻究せしむる目的に出でたるものなりとす、例へば東京帝國大學評議會の如き是れなり、而して此種の機關には、公法上の性質を有するものあるべく、又私人の設置せるものもあるべく、隨つて各其設立規程に因り、組織其他權限等を異にすべきが故に、之を槪括して説明することを得ず。(一九年六月文部大臣訓令東京帝國評議會規程參照)
- 英
- Conference
- 独
- Berathungs-gesellschaft
- 仏
- Conférence
憑據書類
(ひやうこしよるい)憑據書類とは、或事實の眞確なることを證明する所の材料たる書類を云ふ、蓋し此の憑據なる語の用例は、現行法上一定せざるものの如し、或學者は裁判上或事實の眞確なることを直接に證明する材料を證據と稱し、これに反して間接に其眞確なることを證明するものを憑據といふと説明せり、此の意義に從ふときは、憑據書類なるものは、即ち裁判上或事實の眞確なることを間接に證明する處の材料たる書類を云ふと定義せざるべからず、然れども時に裁判外に於ける公の手續上、或事實の眞確なることを證明すべき材料として、當事者の提出する書類を指して憑據書類と稱することあり、民事訴訟法に「右期間を遵守せざる債權者の債權は、配當表を作るに際し、配當要求幷に屆出の旨趣及び其の憑據書類に依り之れを計算す云々」とあるは其用例なり。(民訴六二條二項)
- 英
- Evidential document
- 独
- Beweisstück
- 仏
- Document de l'évidence
評決
(ひやうけつ)評決とは、合議機關又は二人以上の人が各自に其意見を發表して、或特定の事項を評議決定することを云ふ、明治三〇年四月法律第四六條森林法に「買上價額補償金額に付き協議整はざるるときは、地方森林會をして同可決せしむべし云々」とあるは其用例なり。(法二七條、地方森林會規則一條二號)
- 英
- To value
- 独
- Schätzen
- 仏
- Valoir
平等關係
(びやうどうくわんけい)平等關係とは、或特定の關係に就き、法律上吾人の地位の同等にして優劣なきことを云ふ、例へば吾人は事實上に於ては、官等、勳位、爵位等社會的の異なるより、同一なること能はずと雖も、或訴訟事件に付き、當事者たる關係に於て法廷に立つ場合には、法律上同等の地位を占め、決して其官等、勳位、名譽、財力等の異なるより、權利義務に優劣を生ずることなきが如し。
- 英
- Relation of equality
- 独
- Gleichheitsverhältnisz
- 仏
- Relation de l'écuilibre
被用者
(ひようしや)被用者とは、雇傭契約に因り、他人に勞務を給付する者を云ふ、即ち勞務の給付を受くる相手方を使用者と云ひ、使用者に對して勞務を給付する相手方を被用者とは云ふ也、民法に「或る事業のために他人を使用する者は、被用者が其事業の執行に付き、第三者に加へたる損害を賠償する責に任ず」とあるは其用例なり。(民七一五條)
夫
(ふ)夫とは、男女の婚姻によりて生ずる身分關係にして、婦の配偶者を云ふ。(民七九五條等)
- 英
- Husband
- 独
- Ehemann
- 仏
- Mari
夫婦
夫婦とは、婚姻即ち法律を以て公認せる一男一女の共諾に因り、生存間の共同生活を目的とする法律行爲によりて生ずる身分關係を云ふ、即ち夫の配偶者は婦なり、婦の配偶者は夫なり、夫婦は法律上種々なる權利義務の關係を生ずるものにして、一々列擧するを得ざるに依り、左に其主なるものを畧記すべし、□一同居の權利義務、夫婦の同居すべきものたることは、婚姻の性質上當然生ずる所の效果にして、我國に於ては別居制を許さざるものとす、然れども其住所を選定するの權利は、獨り夫に屬し、妻の住居は、夫の住居に混同せらるべしとの原則は、諸國の法制の皆認むる所に屬す、即ち夫の住所は妻の住居にして、妻は苟も夫に惡意又は詐欺の意思あらざる以上は、其孰れの場所たるを問はず、夫の定むる住所に隨伴するの義務あるものとす、但し假住所又は一時の居所に關しては此限にあらざること勿論なり、故に若し婚姻前に當り、其夫たるべき者が、妻たるべき者若くは自己の友人等と婚姻の上は、其妻をして、兩親住居の近傍を離れしむることを爲さざるべしと約する如きは、法律上全く無效の契約なり、而して妻にして、若し夫に隨伴することを拒むときは、夫は妻に對して扶養の義務を負ふことなかるべし、□二扶養の權利義務、婚姻は、男女の共同生活を以て目的とす、故に夫婦間に扶助の權利義務あるべきは、婚姻の性質上當然の事に屬す、所謂扶助とは、財産を出して扶養する事、及び心力を勞して相助くることを合せて指示すと雖も、心力上の扶助は其性質上法律に依りて之を強制することを得ざるにより、苦樂を共にし疾病相助くることの如きは、之を一に道義に任ずることとし、法律を以て規定せざるものとす、從つて法律は唯扶養の權利義務のみを規定せり、即ち自己の資産又は勞役に依りて生活をなす能はざる者等に對し、生活の資料を給し、又は之を養ふことを要するものとす、□三守信の權利義務、夫婦は互に信實なることも、婚姻より生ずる當然の義務なり、換言せば、夫婦は配偶者の外、他人と疎絶せざるべからざるの義務あるなり、但し此義務は、妻に重くして、夫に寬なるの傾向なき能はず、極言すれば、現時各國の法制は、妻は貞操を守るの義務あるも、夫には其義務なしと云ふも過言にあらざるが如し、即ち夫の姦を責むるに薄くして、妻の姦を處するに嚴なるが如し、これ蓋し妻の姦は、他性の胤を容るることあるを以て、其害少なからざるに基因するものなるべし、其他妻は夫の爲めに行爲上の無能力者となり、重要なる法律行爲に付きては凡て夫の許可を受けざるべからざるものとす。(民七八八條乃至七九二條、一四條乃至一七條)
- 英
- Husband and wife
- 独
- Ehemann und Ehefrau
- 仏
- Mari et femme
部
(ぶ)事物を區別せる一部分を部と云ふ、例へば各地方裁判所に一若くは二以上の民事部、及び刑事部を設くと云ふが如し。(裁構法一九、三四、四三條)
- 英
- Department
- 独
- Departement
- 仏
- Département
步
(ぶ)步は或は坪と云ひ、度量衡法上、度の名稱にして、地積六尺平方を步と謂ふ。(二四年三月法三號度量衡法三條)
分
(ぶ)分とは、度量衡法上度の名稱にして、尺の百分の一を分と謂ふ。(二四年三月法三號度量衡法三條)
府有財産
(ふいふざいさん)府なる地方自治團體に屬する一切の財産を謂ふ。(三二年法六四號參照)
- 英
- Property of local selfgovernment body
- 独
- Hauptstadtsvermögen
- 仏
- Propriété du gouvernement local
封印破棄罪
(ふういんはきざい)凡そ國家が法律規則若くは司法行政官署の命令を執行するに當り、人民の家屋物件を保管し、家屋、倉庫の内に人の出入することを禁止し、書類其他物件の使用、錯亂、紛失、盜奪等を豫防するの必要を生ずべし、此時に當りて、一々之に看守者を付し、現實に之を保管することは、到底其手續と費用とに耐へざるを以て、近來文明の諸國に於ては、普く之を封印といふ方法に依賴し、法律上特別の制裁を付して其破棄を禁止し、以て簡易なる物品保管の方法を採るに至れり、現行刑法に於ても封印を破棄したる者は、二箇月以上二年以下の重禁錮に處す、封印破棄罪の構成要件を擧ぐれば左の如し、□一家屋、倉庫、其他の物件に施したる封印を破棄する所爲あることを要す、破棄とは、所謂破解又は除棄したる場合を總稱したるものにして、封印を破解する場合と、封印を取除する場合とを包含するものと解せざるべからず、此の如く刑法は、單に破棄とのみ規定し、封印を破棄することなくして、封印を施されたる效力を無效ならしむる場合を規定せざるが故に、例へば門戸に封印を施して其出入を禁止したるに拘はらす、封印の施されざる他の裏口より家内に侵入するが如き、或は漁船に封印を施して其使用を禁じたるにも拘はらず、封印の儘之を使用出漁したるが如きは現行刑法の解釋としては、何れも不問に附せざるべからず、又刑法には、單に封印とのみありて、彼の財産差押方法として附する所の差押公示標目等に付きては、何等の規定を設けざるを以て、假令差押の公示標目を破棄又は無效ならしむるも、本罪を構成せず、(他罪を構成するは格別也)要するに、現行刑法に於て本罪を構成するには、封印を破棄するの事實あれば足るが故に、封印を施されたる物件を破壞又は轉匿脱漏するに至らずと雖も、苟も封印破棄の事實あれば爰に本罪を構成するものとす、之に反して假令其物件を破壞又は轉匿脱漏するも、封印を破棄せざる以上は本罪を構成せざるもの也、□二其封印は、官署の處分に依り特別に施されたるものなることを要す、イ法文には官署の處分とあるも、刑法中官署に關する規定は、公署にも適用すべきを以て、公署の處分に依り施されたる封印も、等しく本條の保護を受くるものなり、從つて之を破棄すれば本罪を構成す、ロ官署公署の處分に依り特別に施されたるものとは、官署公署の特別處分に依りといふ義にして、例へば執達吏が差押の爲めに施す所の封印、又は税務官吏が酒造税法違犯の場合に於て、酒類に施す封印の如きを云ふ、此の如く特別處分に依り施されたる封印たる事を要するが故に、單に一の官署より他の官署に發する書狀に施されたる封印、又は封緘、單に便宜の爲め官署の倉庫に施されたる封印の如きは、一私人が自己の私信又は財産に封印を施すと一般、敢て官署公署の特別處分といふことを得ざるを以て、此等の封印は本條の保護を受けず、從つて之を破棄するも本罪を構成せず、次に注意すべきは、右官署公署の特別處分は、之れを法律上認許せられたるものならざるべからず、從つて假令官署公署が特別處分として施したる封印なりと雖も、其特別處分にして官署公署の權限に屬せざるものなるときは、之を破棄するも罪とならず、之に反して一旦適法に施されたる封印は、更に解除せられざる限りは、假令差押の理由消滅したる後と雖も、之を破棄すれば本罪を構成す、□三官署公署の正當なる權限に依りて施されたる封印なることを知りたること、故に犯人が法律の誤解に基き、正當の權限に依り施されたるものにあらずと誤信して、之が封印を破棄するも、本罪を構成せず、蓋し本罪は、公權に基く處分を無視するの性質を有するものなれば、犯人に於て適法なる公權の處分を侵害するの意思あることを要すべきを以て也。(刑九六條、舊刑一七四條乃至一七六條、民訴五六六條、二三年一〇月法一〇〇號公署公吏並に公署の印、文書及免狀鑑札に關する件)
- 英
- Crime of breaking seal
- 独
- Siegelvernichtungsverbrechen
- 仏
- Infrac-tion de casser le sceau
封港
(ふうかう)封港とは、所謂封鎖を云ふものなり、封鎖に二種あり、戰時封鎖及び平時封鎖之なり、(甲)戰時封鎖、□一封鎖の本質、交戰國の軍艦に依り、反對交戰國の港、河口、其他の海岸を繼續的に封鎖し、其外界との交通を遮斷するもの之を封鎖と云ふ、封鎖は主として中立商船の出入を防ぐにあり、交戰國の商船は封鎖なきも、海上何れの處に於ても(中立領域の外)之を捕獲ずるを得るを以て、之に對して別に封鎖の設定あるの必要なきも、中立商業は自由なるを原則とし、中立國商船は戰爭中と雖も、自由に交戰國の双方と通商貿易に從事するを得、(但し禁制品の商業は制限を受く)然れども交戰國は敵國の外界との交通々商を遮斷し、因て以て敵國より其資源を斷つの必要あり、茲に於て乎封鎖あり、封鎖は、要するに中立國人の交通々商權の上に大なる制限を加ふるものなれば、一定の條件を具備するにあらざれば、中立國は之を尊重するを要せざるものとす、即ち戰爭ありて封鎖あり、戰爭狀態開始以前に封鎖あるべからず、休戰中は新に、封鎖を設定するを得ず、已存のものは之を維持すべし、此等は皆休戰現狀維持の原則の結果なり、商船は休戰中にも封鎖港に入るを得ず、(反對の明言なきときは)媾和あると共に封鎖は當然解止す、□二封鎖の要件、封鎖は戰爭の必然の效果にあらず、特に設定を須ち、又中立國人に對する自由交通權の重大なる制限なるを以て、其中立國を拘束するには一定の條件を具備せざるべからず、A封鎖は正當の權限ある者の設定するを要す、(設定權利者)、B封鎖は之を宣言し、且つ通知するを要す、(封鎖の意思表示)、C封鎖は實力的なることを要す、即ち當該港に接近せんとする船舶が、捕獲せらるる現實なる危險あるを要す、(封鎖の實力)以上の三條件の具備ありて初めて封鎖は有效なり、中立國人を拘束す、イ封鎖設定權利者、封鎖の效力の影響は重大なり、封鎖の設定は主權的行動なり、故に交戰國政府の明示又は點示の命令の下に行はるるものとす、實際に於ては、交戰國軍艦の艦長は命を受けて封鎖を宣言す、交戰國の提督は必ずしも常に其專斷を以て封鎖を設定するの權限を有するものと推定せられず、然れども其本國を距ること遠隔なる地にあるときは、此權限を委任せられたるものと推定すべし、縱令權限なかりし場合と雖も、苟も十分なる實力ありし場合には、後日國家の追認あらば遡及して有效となり、捕獲物を沒收するを得、ロ封鎖の通知、封鎖の有效なるには之が宣言通知あるを要し、或船舶が封鎖犯たるには、其封鎖の事實を知れることを要す、通知は封鎖の事實を知らしむる方法なり、封鎖は戰爭狀態の必然の效果にあらざるを以て、中立國を拘束せんには宣言通知を要す、封鎖は宣言し茲に通知せざるべからず、封鎖の宣言は封鎖者の意思の決定也、經緯度を示し、封鎖の限界を確定し、又封鎖の始期を指定し、其當時港内にある商船には、出港の猶豫期間を告示するを例とす、封鎖指令官は更に右の宣言を爲すの外、其宣言を其地方官廳及び領事に通知すべきものとす、凡そ中立國は、自ら封鎖の有無を知るの義務なく、否な之を知るを得ざるべし、故に之を設定する交戰國より通知するの要あり、且つや封鎖の效果は重大也、故に單に之を宣言するに止まらず、中立國政府へ之を通知するの義務あるものとす、而して中立國政府は、更に其臣民に告示するものとす、ハ封鎖の實力、封鎖は實力を以て之を設定すべく、又之を維持すべし、實力の伴はざるは如何なる場合に於ても、封鎖として中立國を拘束するを得ず、封鎖の存廢は、實力の消長に伴ふ事、巴里宣言の明に定むる處にして、奈翁戰爭時代の紙上封鎖、即ち宣言のみありて實力の伴はざる封鎖は無效とす、而して其所謂實力の如何に就きては主義一ならず、我法制によれは、一隻又は數隻の軍艦を以て封鎖し、捕獲せらるるの危險を冐すに非ざれば、船艦が出入し得ざる場合を實力ありとせり、國際法協會の規程には、充分の軍艦を置き、出入せんとする船舶に對し、現實の危險あらしむることを必要とせり、又巴里宣言は、封港に近く船舶を防止するに充分なる兵力といへり、而して危險(封鎖を破らんとする船舶の感ずべき)の程度に至りては、之が標準を建つること頗る難く、唯其各場合に應じて、捕獲審檢所は果して實力の封鎖ありしや、從つて有效の捕獲ありやを判斷するの外なし、天候の模樣、暴風、怒濤、濃霧等又は封鎖犯者追擊の爲め、一時封鎖船隊が其場所を退散するも、直に同地位に復するときは、封鎖の實力は中斷せずして繼續するものと見做さる、然れども、封鎖艦隊にして、敵國艦隊より逐ひ散らさるるか、又は任意に其地を去る(他の役務を辨ぜしが爲め)の場合には、封鎖は解止せるものと看做す、又封鎖は岩石、艦體、水雷其他の障礙物を封鎖港の入口に沈むるに依り、實力を補充することあり、沈石封鎖と云ふもの是也、尚ほ封鎖は凡ての船舶に對して、平等の待遇を爲すにあらざれば無效とす、□三封鎖の目的地、如何なる場所、土地に對して、封鎖を設定し得るや、封鎖は敵國の海岸何れの部分に對しても之を設定するを得、但し自國軍隊の占領せる敵國海岸の部分は此限りにあらず、又自國の海岸なりとも、敵軍の占領地なるときは、之に對して封鎖を數く固より可也、實例としては、一八七一年普佛戰爭中、佛艦は獨軍の占領せるルーアンデイーベを封鎖せり、敵國の河口も亦之を封鎖するを得ること疑なし、□四封鎖侵破に對する處分、封鎖の侵破あれば、船舶貨物共に之か沒收するを原則とす、船舶は封鎖を侵破せる主犯者として、沒收するは當然なれども、貨物は、其所有者が船舶所有者と別人なるときは、(同人なるときは當然沒收す)舶が封鎖港に向ふの事實を知りたるときに限り之を沒收す、其之を知らざるの反證は、貨物所有者より之を擧ぐるを要するものにして、貨物所有者は惡意の推定を受く、(貨物を載するの船舶は封鎖港に向ふことを知れるものと推定せらる)、船員は昔時にありては之を俘虜とし、又死刑に處せしが、近世の原則は之に異り、中立商船の乘組員は之を俘虜となすを得ず、單に必要なる場合には之を抑留するのみ、封鎖を侵破せんとする船を捕拿すれば、艦長は始末書(供述書)を作り、捕獲の顚末を明記し、士官をして船舶を審檢所に引致せしめ、審檢所の審判に付す、臨檢搜索の手續は、封鎖侵破の場合に適用なきは當然なり、臨檢搜索を要せずして、現行中拿捕せられたる船舶は、直に引致して審檢に付す、(乙)平時封鎖、平時の封鎖とは、國家が他國よりして非常なる權利の侵害又は不法の損害を受けたる場合に於て、其救濟賠償を加害國に請求するも之に應ぜざるに際し、加害國をして其行爲を廢止せしめ、自國に對して救濟賠償を爲さしむるが爲め、加害國の港灣其他一定の海岸に對し、兵力を以て交通を遮斷するを云ひ、其封鎖の場所に對して、海上に於ける一切の交通、通商を爲さしめずして、同國を窮迫するを目的とす、國際紛議に於て、平時の封鎖の行はるるに至りたるは、實に近世に在りて、一八二七年以前に於ては、封鎖は戰時にのみ行はれ、交戰國の權利に限りたるものなれども、同年英、佛、露三國が土國の領地たりし希臘叛亂者を援助し、土國を窮迫する爲め、之と平和關係を繼續するものと聲言しながら、軍艦を以て其海岸に封鎖を行ひ、三國の要求を強行したるを平時封鎖の濫觴とす、其後各國に於て行はるる所となり、平時封鎖は、國際公法上未だ一定の慣例なし、從て種々議論の存する所にしては、或は之を以て不當不法なる行爲となし、或は正當適正の行爲なりとするもあり、然ども一八八七年七月七日ハイデルべルヒ府に開會せし、萬國國際法協會に於ては、左の如く決議したり、□一外國國旗を揭ぐる船舶は、其封鎖に拘はらず自由に入港し得べし、□二平時の封鎖は、正式に其宣言及通知を爲すべく、且つ十分なる兵力を以て之を維持せざる可らず、□三被封鎖國の船舶にして、同封鎖を破るときは拘留せらるべし、然れども其封鎖を終りたるとき此等船舶は、其搭載品と共に所有者に返還せらるべし、但し其拿捕の爲め何等の權利侵害に對する賠償をも之を爲すことなし、此決議は未だ以て法則と認むることを得ざるものにして、實際上の問題に關しては、各國の採るべき方針の同一に出づる能はざるは、當然のことと謂はざるべからず、換言すれば右の決議は、畢竟法學者の意見に過ぎざるものとす。
- 英
- Blockade
- 独
- Blockade
- 仏
- Blocus
封鎖
- 英
- Blockade
- 独
- Blockade
- 仏
- Blocus
風紀
(ふうき)軍紀風紀なぞと續用して、善良の風俗に對し、現社界に畫かれたる紀律の意とす、換言すれば、良俗として遵奉せらるべく形成せられたる社會心理の傾向を云ふ也。(三二年七月文部省訓令一〇號改正條約實施に付き學校の風紀規律に關する件、陸軍省官制九條四號)
- 英
- Public morality
- 独
- öffentliche Sittlichkeit
- 仏
- Moralité publique
風俗警察
(ふうぞくけいさつ)警察とは、社會の危害を防止せむが爲めに、人の自由を制限することを云ふ、而して風俗警察は、主として風俗取締に關することを直接の目的とする警察也、例へば淫賣、博奕の徒を取締る警察の如し。
- 英
- Custom police
- 独
- Sittlich-keitspolizei
- 仏
- Police de la moeurs
夫婦財産契約
(ふうふざいさんけいやく)夫婦財産契約とは、婚姻をなさんとする男女の間に於て、其婚姻中の相互の財産關係を定むるが爲めの契約なり、故に夫婦財産契約は、從たる契約にして、婚姻に付隨して其效力を有す、即ち婚姻の效力を生ずると共に、財産契約も亦其效力を生じ、婚姻無效と爲り、若くは解消せらるるときは、財産契約も亦當然無效となり、又は取消され若くは解除せらるべし、而して婚姻の繼續中に於ては、契約のみ獨立して解除することを許さざるなり、又夫婦財産契約は、婚姻せむとする男女間に締結する契約なるを以て、其契約の當事者は必ず婚姻せむとする男女二人なることを要すべきは勿論たり、但し當事者にして無能力者なるときに、法定代理人の同意を得ざるべからず、民法に於ては夫婦財産契約に關し、二種の要件を認めたり、其一は契約を結ぶ時に關する要件にして、即ち財産契約は、婚姻屆出前に於て之を爲すべきこと是也、盖し婚姻中に在りては、夫婦は相互の愛情の爲め、若くは夫に威壓せらるる爲め、完全なる意思の自由を有すること能はざると、債權者の利益を害する虞あるとを以て也、其二は、財産契約を第三者及び夫婦の承繼人に對抗するが爲めの要件なり、蓋し夫婦財産契約は、夫婦婚姻中の財産關係を支配するものにして、夫婦の一方又は双方に對して、債權債務の關係を有する第三者の利害に、大なる影響を及ぼすものなるを以て、其契約の條項に就きては、之を凡ての第三者に公示す方法なかるべからず、而して公示方法としては、登記を以て之をなすべきものとす、登記は啻に第三者に對抗する爲めに必要なるのみならず、夫婦の承繼人に對抗する爲めにも亦之を必要とす、第三者とは、夫婦其代理人及其承繼人を除きたる總べての者を云ふ、故に夫婦の承繼人は第三者にあらず、特に夫婦の承繼人を加へたるは、夫婦の死亡せるとき、其遺産を整理すべきものにして夫婦の財産に重大なる利害關係を有するものなれば、豫め財産契約の條項を知らしむるの必要あるを以て也、而して其登記は、婚姻前に之を爲すことを要するは、財産契約を爲すに婚姻前なるを要すると同一の理由に因るものとす、夫婦の財産契約は、其婚姻の屆出前に在りては其效力未だ確定せざるものなるを以て、已に登記を爲したる場合なると、登記を爲さざる場合とを限らず、當事者の任意に之を變更することを妨げざるも、婚姻の屆出後に於ては、夫婦の任意を以て之に變更を加ふることを許さず、從て或は婚姻の屆出の後、其契約を解除し、法定の財産制と同内容を有する契約に依り、財産を共通としたる後、更に所得共通に之を變更するが如きは、之を爲し能はざるものとす、斯の如く夫婦の財産契約は、婚姻成立の後之を變更することを得ざるを以て、其の結果として、婚姻中其財産關係を變更し得るの權利を留保せる契約は無效とす、例へば、夫婦の一方又は雙方に契約を解除すべき權利を與へ、又は夫に所有權を移轉したる財産を、何時にても再び妻の所有に復し得べきことの契約を爲すが如き、其他夫婦の任意に依り、其契約を變更し得べきことの契約を爲すが如きは皆違法なり、但し婚姻中に財産の管理者を變更し、又は夫婦の共有財産を分割することあるべきことの契約、例へば女戸主に、夫の特有財産の管理權を與ふることの契約を爲すと同時に、一定の事由あるときは、夫が其管理者となるべきことの契約の如き、又は夫婦共有の財産を設定すると同時に、一定の事由あるときは、之を分割する契約の如き、嚴格にいふときは、婚姻中に夫婦の財産關係を變更するものなりと雖も、民法は斯くの如き契約を以て、有效と看做すの精神なることは明なり、而して契約に之を定めざりし場合と雖も、夫婦の一方が他の一方の特有財産を管理する場合に於て、其財産を以て投機業を試み、或は放蕩の資に供するが如き、其管理の方法を誤り、爲めに其財産を危することあるときは、其財産の所有者たる他の一方は、自ら其財産の管理權を回復し、共有財産たるときは、之が分割を求め、以て其財産の安全を圖るの途なかるべからず、蓋し法定の財産制に依りたるときは、夫は妻の財産の管理權を有するを原則とし、又別段の契約を定めたるときに在りても、妻の財産は夫之を管理することを定むることあるべく、或は時としては、妻をして夫の財産を管理せしむることあるべし、其何れの場合に於ても、夫婦の一方が他の一方の財産を管理する場合にして、其管理に係る財産を危くしたるときは、他の一方は此權利を有すべし。(民七九三條乃至七九七條)
- 英
- Contract of marriage
- 独
- Ehevertrag
- 仏
- Contrat de mariage
夫婦財産契約書
夫婦財産契約書とは、夫婦の財産契約を記載したる書面を云ふ。(非訟手續法一二三條)
- 英
- Agreement of the pro-perty of the husband and wife
- 独
- Ehe-vertragsurhunde
- 仏
- Contrat de la pro-priété du mari et de la femme
夫婦財産契約登記簿
(ふうふざいさんけいやくとうきぼ)夫婦財産契約登記簿は、夫婦財産契約を登記すべき公簿にして、各登記所(區裁判所又は其出張所)に備ふるものとす、而して此登記簿は、何人と雖も之が閲覽を請求することを得べく、又一定の手數料を納付して、其謄本若くは抄本の交付を請求することを得べきものとす。(非訟手續法一一九、一四二條)
- 英
- Register of the agreement of the property of husband and wife
- 独
- eherechtliches Register
- 仏
- Registre du contrat de la propriété du mari et de la femme
夫婦財産制
(ふうふざいさんせい)夫婦財産制には、法定の財産制と、契約財産制との二あり、契約財産制は、夫婦財産契約の下に述べたるが故に(夫婦財産契約參照)これを略し、茲には法定財産制をのみ説明すべし、民法に於ける法定財産制は、夫婦の財産は凡て之を各自の特有財産とし、別に法律上の共有財産を認めず、妻又は入夫が婚姻前より有せる財産、及び婚姻中自己の名に於て財たる財産は、其特有財産とし、其何れに屬するか明ならざるものは、夫又は女戸主の財産と推定し、夫又は女戸主は、妻又は夫の特有財産に付き、使用收益の權利を有す、從て婚姻中の費用は、夫又は女戸主之を負擔する事を要し、妻の財産は、夫之を管理するものとす、但し其管理權は、法律上多少の制限を受くべし、而して日常の家事に付ては、妻は夫の代理人となる等のことを骨子とせり、□一婚姻中に係る費用負擔の義務、夫又は戸主たる妻は、配偶者の財産に付き、其果實を取得するの權利を有し、又財産權の推定を受くるの權利を有す、而して法律は之等の權利と相關聯して、婚姻より生ずる一切の費用を負擔する義務を、夫又は戸主たる妻に負はしむ、婚姻より生ずる費用とは、夫婦共同生活の利益の爲めに要する費用を云ふ、故に妻又は女戸主の夫が、自己の單獨の利益のために要したる費用は、夫又は女戸主の負擔に歸することなし、如何なるものが共同生活の利益の爲めに要したる費用なるかは、事實問題なり、妻が其費用を負擔するは、其戸主たる場合に限る、夫婦共に家族なるときは、夫が壻養子なる場合に於てもなほ其負擔とす、然れども妻又は女戸主の夫は、其夫又は女戸主若くは其他の近親が、自ら生活を扶持すること能はざるに至れるときは、婚姻中の費用が、夫又女戸主の負擔たるの故を以て、其扶養を拒む事を得ざるもの也、□二夫又は女戸主が其配偶者の財産に付き有する使用及び收益の權利、夫婦の財産は、凡て之を各自の特有とし、其財産より生ずる果實は、之を夫婦の共有と爲す事なしと雖も、夫婦は共同生活を爲すものにして、其之より生ずる費用を以て、夫婦各自の負擔と爲すは、事實上行ふべからざることに屬するが故に、一方には其費用は一切之を夫又は女戸主の負擔とし、他方には、夫又は女戸主は其配偶者の財産上に特別の利益を有すべきものとす、其利益とは、即ち夫又は女戸主は、用方に從ひて其配偶者の財産の使用、及び收益を爲すの權利を有することとしたり、故に妻の財産より生ずる果實は、凡て夫の特有財産となり、夫は婚姻中の費用は勿論、自己の單獨利益の爲めにも、亦隨意に之を費消することを得べし、然れども、元來は代替物と雖も、夫に於て費消することを得ざるは勿論、終身定期金の如きは果實にあらざるが故に、純然たる妻の特有財産となるべきものにして、夫は之を取得することを得ざるなり、斯の如く夫又は女戸主は、其配偶者の財産より生ずる一切の果實を取得すと雖も、若し其配偶者にして自己の債務を負擔せるときは、其利息は、自己の財産より生ずる果實中より辨濟する事を許さざる可らず、故に妻又は女戸主の夫は、其財産の果實を夫又は女戸主に提供する前に、先づ其中より自己の債務の利息を排除する事を得べし、□三妻の財産に對する夫の管理權、財産の使用及び收益を爲す權利は、夫又は女戸主に屬せしめたるに反して、財産の管理權は妻が戸主たると否とを問はず、常に夫に屬せしむ、蓋し婚姻中の費用は、夫又は戸主たる妻の負擔に歸するものなるを以て、妻が戸主たる場合に於ては、夫の財産より生ずる利益は妻の所有に歸せしむること至當なりと雖も、財産の保存、改良、利用等の行爲に至りては、必ずしも戸主權に隨伴するを要せず、是等の行爲は其性質上男子の之を爲すこと適當なるのみならず、夫は夫權の結果として、其妻を保護するの權利義務あるものなれば、妻が戸主たる場合に於ても、其財産を管理する權利は夫に屬せしめたり、而して財産の管理とは、財産の保存、利用、改良を含む、故に夫は妻の財産に付き、妻の意思に反して其保存、改良、利用の爲めに諸種の行爲を爲す事を得べし、然れども管理行爲の重大なるものに付ても、妻の同意を要せずとするは、妻の利益を保護する所以に非ず、從て樹木の栽培又は伐採を目的とする山林に付ては十年、其他の土地に付きては五年、建物に付きては三年、動産に付きては、六ケ月を超えて、妻の財産の賃貸を爲す場合に限り、其管理行爲たるに拘らず、妻の同意を得るにあらざれば爲すことを得ざるものとせり、而して其同意を得たるときは、夫は其名義を以て、是等の行爲を爲す事を得べし、□四管理權を有する夫の擔保提供の義務、夫は妻の財産を管理するものなるを以て、其管理方法を誤れるが爲めに、往々其財産を危くするの虞ある場合なしとせず、故に斯くの如き場合に於ては、妻の利益を保護する爲めに、適當なる救濟の方法として、自ら其財産の管理をなさむことを、請求することを妻に許したりと雖も、なほ夫の管理の失當未だ甚しきに至らず、若くは妻が自ら管理を爲すに不適當なるが如き場合に於て、夫の管理權を剝奪するに至らずして、別に救濟の方法を設くるの必要を認め、其財産の管理及び返還に付き、夫をして相當の擔保を供せしむることを請求することを許し、其擔保の種類、數額等は、皆裁判所の適當と認むる處に從ふものとせり、□五日常の家事に關する妻の代理權、妻は夫の財産に付き、何等の處分權又は管理權を有せざるが故に、妻は夫の爲めに借財を爲し、又は夫の財産を處分すること能はざるは勿論、夫の財産の保存、利用等に關しても、何等の行爲を爲すこと能はざるものなりと雖も、妻は日常の家事を管理するを常態となすを以て、これに關しては、夫の爲めに權利を得、義務を負ふことを得しむるを至當とすべし、蓋し夫は、事每に妻に其代理權を與ふることを得べしと雖も、事每に之を與ふるは實際に於て爲し得べからざるのみならず、第三者の利益を保護するに於ても、亦甚だ充分ならざるを以て、法律は日常の家事に關しては、妻は法律上當然夫の代理權を有するものとしたり、日常家事とは、例へば平常の飮食品の購買、家具、通常の衣服の購買、住屋の小修繕の如きを云ふ、而して妻は家事に付ては代理權を有するを以て、妻が負ひたる債務は、夫之を辨濟するの義務を▲ふべし、此代理權は、夫に於て制限することを得べしと雖も、善意の第三者に對しては、之を對抗することを得ざるものとす、□六管理人又は代理人の義務、普通の代理人又は管理人に在りては、善良なる管理人の注意を以てするを要することを原則とすと雖も、夫婦の間に在て善良なる管理者の注意を以て之を責むるは、人情に適せざるの嫌ひあるを以て、此場合に於ては、自己の爲めにすると同一の注意を以てするの義務を負はしめたり、而して夫の管理權又は妻の代理權が消滅したる場合に於て、急迫の事情あるときは、夫又は妻、其相續人若くは法定代理人は、配偶者、其相續人若くは法定代理人が、其事務を管理し得るに至るまで、必要なる處分を爲すことを要すること、及び夫の管理權又は妻の代理權の消滅は、之を相手方に通知し又は相手方が之を知りたるにあらざれば、之を以て其相手方に對抗することを得ざるものとし、斯くの如きは、縱令夫婦間の代理權が委任に基きたるものにあらざるも、委任に關する規定を適用すべきものとせり、□七財産權の推定、夫婦の財産は、即ち各自の財産なりと雖も、之れを分離せるものにあらざるを以て、夫婦の何れに屬するか分明ならざる財産は、之を夫又は女戸主に屬するものと推定したり、夫又は女戸主の財産たる推定を受くるものは、夫婦の何れかに屬すべきものたる事明瞭なるも、其何れに屬するか、現在に於て明瞭ならざるものに限るべきは當然にして、妻又は女戸主の夫の特有財産にあらざるものは、凡て此推定を受くるものにあらず。(民七九八條乃至八〇七條)
- 英
- Legal arrangement as to the property of the husband and wife
- 独
- eheliches Güterrecht
- 仏
- Arrangement légale des propriété du mari et de la femme
不要因債權
(ふえういんさいけん)凡そ人の債務を負擔するは、必す之を負擔するの理由なかるべからず、即ち普通の債權債務は、其原因と相抱合して始めて其存在を認むべく、其原因に依りて各特質を表すが故に、之れに基きて他の債權債務と異なる所以を知るべき也、爰を以て、一個の債權債務の特別の性質を明にせんと欲せば、獨り債務者が債務を負ふの意見を表示したること、若くは其債務の目的物の何たるを證するを以て足れりとせず、進んで何が故に債務を負擔するに至りたるやを窮めざるべからず、金千圓を支拂ふの債務は、其外形に於ては、常に一なりと雖も、其理由其成立の履歷に依りて、各固有の性質を有す、而して債務者其權利を主張し、これが執行を求めんと欲せば、單に債務者が金千圓を支拂ふべしと約したるの事實を證するを以て足れりとせざるは明瞭なり、所謂不要因債權債務と稱するものに於ても、固より其債務を負ふの理由を缺くものにあらず、其理由と分離して債務成立し、從つて原因の存在又は原因の適法と、債務の成立と法律上相牽連せざるものを云ふに過ぎず、即ち不要因債權債務は其原因と分離し、獨立して發生存在し、又執行するを得べく、何故に債務を負擔するに至れるかを問はざるもの也、即ち債權者は、其權利の由つて生じたる所以を證明せすして、其權利を主張する事を得、而して之に屬する債權債務は、例へば手形上の債權債務の如き是也、手形上の行爲を爲したるものは、絶對に手形上の債務を負擔し、其原因の存否を問はず、又其原因の不法なると否とを論ぜず、手形所載の文言に從ひて、其權利を取得し、又執行するを得べく、(債權者の場合)又其文言に從ひて、其債務を負ひ、又其執行を受く(債務者の場合)べきを以て、之等は所謂不要因債權債務に屬するものに外ならず。
- 英
- Obligation without its material cause
- 独
- Forderung ohne ihre materielle Ursache
- 仏
- Créance sans la cause matérielle
不要因債務
- 英
- Obligation without its material cause
- 独
- Obligation ohne ihre mate-rielle Ursache
- 仏
- Obligation sans la cause matérielle
不要式契約
(ふえうしきけいやく)契約とは、私法上の效力を生ぜしむることを目的とする二人以上の意思表示の合致を云ふ、而して不要式契約とは、契約の成立に一定の方式を必要とせざるものを云ふ、之に反して要式契約とは、契約の成立に、法定の方式を履踐せざれば成立せざる契約にして、例へば遺言、商事會社設立行爲、手形行爲の如き是也、凡そ法律行爲(契約)が不要式なりとは、全く形式を缺如するの謂にあらず、法律の示したる一定の方式に從ふことを必要とせざる謂なり、例へば物品賣買契約の如し、現今の法制に從へば、法律行爲は、不要式なることを原則と爲す、之れ取引の敏活を計らんが爲めに外ならず、不要式契約に於ける意思表示は、單に他人をして表意者の意思(法律行爲的意思)を認識せしむることを得べき方法を以て、之を爲すに依り有效なることを得べし。(民一〇六七條乃至一〇八六條、商四四五、五二五、五三〇條等)
- 英
- Contract which does not need any form
- 独
- formloser Vertrag
- 仏
- Contrat sans la forme
不要存置國有林野賣拂規則
(ふえうそんちこくいうりんやうりはらひきそく)□一不要存置林野を賣拂はんとするときは、左の事項を其林野の屬する大小林區署、郡市役場及び町村役場に揭示すべし、イ林野の所在、字及び實測面積、ロ産物の種類及び材積又は轉量、ハ特賣願書差出の期間及び場所、ニ林野に附帶義務あるときは其の義務の要領、ホ保安林なるときは其種類、ヘ其他必要と認むる事項、□二左の不要存置林野を賣拂はんとするのときは、上記の手續に依らず、直に相當の者に右一號に揭げたる各事項を通知して、特賣を出願せしむることを得、此の場合に於ては、特賣願書の差出期間は二十日以内に於て之を定むべし、(一般の特賣願書の差出期間は三十日以上六十日以内なり)、イ社寺上地の森林にありては其社寺、ロ部分林に在りては其分收の權利を有する者、ハ宮地民木の森林にありては其樹木の所有者、ニ國有林野法施行以前に、開墾、牧畜又は植樹の爲め貸付したる林野にありては、其業を成功したる者、ホ公用又は公益事業の爲め貸付しある、林野に在りては、其借地者、同一林野に對し二以上の出願者あるときは、農商務大臣は各出願者に對する特賣の順位及び區域を定む、□三右二號の場合に於て、左の各號の一に該當したるときは、直に上説一號に依りて特賣を行ふべし、イ願書の差出期間内に特賣を出願する者なきとき、ロ特賣の出願を許可せざるとき、ハ契約の解除を爲したるとき、ニ契約の效力を失ひたるとき之也。(三二年八月農商務省令二七號)
- 英
- Rule of sale of the state-forest which is unnecessary
- 独
- Verkaufsregel des unnötigen Staats-forstes
- 仏
- Loi de la vente du bois d'Etat inutile
夫役
(ふえき)市町村は、市町村有財産より生する收入、手數料、過怠金、過料、其他法令に依り市町村に屬する收入を以て、其事務を處辨するを原則とす、而して此等の收入の不足なるに及びて、始めて夫役現品等の收入を以て事務を處辨するに充つることを得べし、夫役とは、學術、技藝、手工に關する勞務等、特種の人にのみ專屬する勞務を除き、其他一般の勞務を徵收するを云ふ。(市制八八條、町村制八八條)
- 英
- Charge
- 独
- Last
- 仏
- Charge
不開港
(ふかいかう)外國と通商貿易を許さざる港灣を不開港と云ふ、これ内國の沿岸貿易を保護するが爲めの政策上より起れるもの也、例へば我國に於ける五港(橫濱、神戸、長崎、凾館、新潟)其他條約を以て、通商を許したる以外の港灣は凡て不開港なりとす。(三二年三月法四六號船舶法三條)
- 英
- Non-open port
- 独
- Uneröffn-ungshandelshafen
- 仏
- Port non-ouvert
不行犯
(ふかうはん)不作爲に依りて犯したる犯罪を云ふ、刑法の規定中には、或行爲を命ずるもの(或結果の發生を要求するもの)と、禁止するもの(或結果の發生を禁止するもの)とあり、而して此の命令に違背する犯罪は、常に不作爲(法律が要求する結果を發生ぜしむる爲めに身體を發動せざる行爲)に依らざれば之を構成することを得ず、之を稱して純正不作爲犯と謂ふ、然して禁止に違背する犯罪は、必ずしも作爲に依ることを要せず、不作爲も亦一定の條件の下に此罪を構成することを得、此種の犯罪(不作爲犯)を稱して不純正不作爲犯と云ふ、不純正不作爲に付きて責任を負ふには、其不作爲の違法たる場合に限るべきものにして、不作爲が違法なりといふには、或結果の發生を防止すべき法律上の義務を負ふに拘はらず、此の義務に違背したる場合ならざるべからず、而してある結果を防止すべき法律上の義務を負ふ場合は左の如し、□一法規の特別なる命令に依て發生す、而して其命令は、刑法の規定に基くもの、及び刑法以外の法令に依り明示又は暗默に要求せらるるものを包含す、イ刑法の規定に基くものとは、例へば自己の所有地又は看守すべき地内に遺棄せられたる幼者、老疾者あることを知り、又は疾病に罹り昏倒するものあることを知りたるときは、これを扶助し又は官署に申出づるの義務を負ふが如き、又子孫は其祖父母父母に對して衣食を給與し、必要なる奉養を爲すべきの義務を負ふの類これ也、ロ刑法以外の規定に基くものとは、法律上特別なる地位より發生する所の諸般の義務、例へば行政警察規則により、行政警察官吏が人の身體財産に對する危難を防衞する爲め、必要なる處分を爲すべき義務、又は監獄則により、典獄、看守が、風火、震災、其他非常の急變に際し、必要なる場合に於て囚徒を解放するの義務を負ふの類これ也、□二曩きに自己が行ひたる作爲の結果として、發生する處の或現▲を防止せざることが、普通の法律的觀念に於て、法律上の義務違反なりと目せらるべき場合、例へば捨兒を拾ひ、一旦これを養育する以上は、更に引續きこれを養育するの義務を生ずるが如き、又は最初自動車の進行に原因を與へたるものは、其進行に依り生ずべき法益侵害の結果を防止すべき義務を生ずるが如し、其他外科醫が手術を行ふに當り、其手術を過りたる爲めに、患者が危篤に陷りたる場合に於て、應急治療方法を施すべき義務あるが如き、又は過て洋燈を轉覆したる爲め、火の漫延せんとするに當り、これを防止すべき義務あるが如き、又過りて人を監禁したる後、其害を覺りたる以上は、これが監禁を解くの義務あるが如し。(刑二一八、舊刑三六四條、▲八七九、七一四條▲
- 英
- Negative offence
- 独
- Unterlass-ungsdelikt
- 仏
- Infraction négative
不行爲
(ふかうゐ)人が其心的過程に於て、意思發動するや、爲、不爲の二態となる、爲は即ち行爲にして、不爲即不行爲也、不行爲は、任意に爲されたる靜止にして、即ち外界の觀察に於ては何事をも爲さざるなり、而して爲さざることに依りては、其物界の現象は無なるも、防止する義務あるに拘はらず、自然の進行に放任したるが爲め生じたる物界の現象を、或一定の條件の下に於て、法律は其の爲さざる靜止に歸し、主觀的に之を靜止者に歸す、此場合は即不行犯等の生ずる場合なり。(不行犯、不作爲の部參照)
- 英
- Negative act
- 独
- Unterlassung
- 仏
- Acte négative
不可抗力
(ふかかうりよく)不可抗力とは、人力を以て防止すべからざる外界の事變、例へば震災、火災、水災、戰爭、其他天災事變を云ふ、元來不可抗力の意義に就きて二説あり、□一客觀主義、即ち事實其ものの性質より觀察して、不可抗力と否とを決定する説にして、或は不可抗力とは、吾人に損害を及ぼすべき外界の事變の内、何人と雖も、豫見し得べからざるものなりと云ひ、或は抗拒すべからざる事實なりといふ、□二主觀主義、即ち當事者の實際に於ける各場合に依て異るものとなす説にして、不可抗力とは、當事者の故意又は過失に因らずして生じたる損害の原因にして、或は善良なる管理者の注意を加へたるに拘はらず、生じたる損害の原因なりとなし、或は意外又は偶然の事變に因りて生じたる損害の原因が、自己の故意過失に因らざるを云ふとなす、而して説の良否は、讀者の判斷に委せん。(民三四八、七四條)
- 英
- Accidental force
- 独
- höhere Gewalt
- 仏
- Force majeure
不確定期限
(ふかくていきげん)期限は、法律行爲の效力を繫らしめたる、到來することの確實なる未來の時期なり、□一期限は時期なり、到來すべきことの確定せる未來の時期は期限なり、而して其到來すべき時期が、法律行爲上の效力に繫ることを要す、始期なるときは、其發生、終期なるときは、其消滅の效果に繫るものたるを要するものとす、□二期限は法律行爲の效力を未來に繫らしむ、而して其時期は必ず到來すべきものなり、即ち之を豫定することを得ると得ざるとの差あるも、決して到來せざるものにあらざることは、生活の經驗上明白なるものたるを要す、期限の到來が已に確實なる以上は、之に繫らしめたる法律狀態も、必ず發生すべきものなること言を俟たず、□三期限は直接に日時を以て之を定むることあり、事實に依りて之を指定することあり、事實を以て指定するときは、其事實の到來が必すべきものなることを要す、之を必すべからざるときは、法律行爲上の效力を繫らしむる事實は、期限にあらずして條件なり、例へば、單に法律行爲の效力を人の死亡に繫らしむるは期限也、然れども一定の年齡に於て死亡することを效力の發生又は消滅の前提と爲すは、條件にして期限にあらず、而して不確定期限とは、豫定し得べからざる期限を云ふ、換言すれば、必ず到來すべきものなるも、何時到來するや前以て知ることを得ざるもの也、例へば人の死亡を以て、履行の時期と爲すが如きは其適例とす。(民一三五條乃至一三七條)
不確定推測
(ふかくていすゐそく)反證を擧げて事實の推定を覆すことを不確定推測と謂ふ、即ち法律がある事實を推定し、(例へば人は死亡せりと云ふが如し)其反證なきときは之を以て事實と看做すも、若し反對の證據を以て(例へば人は生存せりと云ふが如し)其の推定の誤ることを證明するときは、法律は此推定を棄てて事實の示す所に從ふものとす、この場合に於ける法律上の推測を稱して不確定推測と謂ふ。(確定推測の部參照)
- 英
- Indefinite suppositio
- 独
- unsichere Voraussetzung
- 仏
- Présomp-tion indéfinite
附加刑
(ふかけい)附加刑には三種あり、□一自由上の附加刑、□二權利上の附加刑、□三財産上の附加刑これ也、監視は自由上の附加刑、剝奪公權及び停止公權は、權利上の附加刑、罰金、沒收、追徵は財産上の附加刑とす、元來附加刑は、其目的再犯の發生を豫防し、主刑の不備を補充するを以て、其目的とするものなり、□一自由上の附加刑(監視)は、其目的再犯を防遏し、社會を保護するにあり、蓋し一旦自由刑に處せられたる者は、再び社會に現出するも、其信用已に地に墮ち、容易に生活の途を得る能はず、之れが爲めに直に再犯を企つる者尠なからず、故を以て出獄者は、出獄後に於て、之れを其の自由に放任すべからずして、常に其一擧一動に注目し、特にこれを監視するの必要あり、是れ監視を付する所以なり、□二權利上の附加刑、權利上の附加刑に二種あり、剝奪公權及び停止公權これ也、剝奪公權は重罪の附加刑にして、停止公權は輕罪の附加刑とす、剝奪と停止との區別は、單に其の期間の長短に依りてこれを設くるものたるに過ぎずと雖も、剝奪公權は永遠無窮にして終身刑なり、公權停止は刑期内に止まるものとす、故に剝奪すと云ふも停止と云ふも、其權利の效果に至りては、毫も差異あるを見ざるものとす、所謂公權とは左の權を云ふ、イ國民の特權、ロ官吏となるの權、ハ勳章年金、位記、貴號、恩給を有するの權、ニ外國勳章を佩用するの權、ホ兵籍に入るの權、ヘ裁判所に於て證人と爲るの權、但し單に事實を陳述するは此限りにあらず、ト後見人と爲るの權、但し親權の許可を得て子孫の爲めにするは、此限りにあらず、チ分散者の管財人と爲るの權、リ學校長及び教師、學監と爲るの權これ也、□三財産上の附加刑に二種あり、罰金及び沒取之也、イ罰金は、政府に對して金額を辨償するの義務を負擔するに於て成立する所の刑罰にして、此刑罰は必ず二性質を有す、A罰金は、禁制命令の違犯に付て科する所のもの也、故に民法又は契約に於て定むる過怠金と混同すべからず、B罰金は、犯罪事實の審判後に於て宣告する所のもの也、ロ沒取、沒收とは、法律の定むる所に從ひ、物件を官に取上ぐることを云ふ、而して沒取の目的物は左の如し、A法律に於て禁制したる物件、刑法が一般に其製造、變造若くは所持を禁ずる物件を總稱す、例へば僞造若くは變造したる貨幣は、刑法が其僞造變造を禁止したる物件にして、定規を增減したる度量衡は、刑法が其所持を禁止したる物件なり、B犯罪の用に供したる物件、即ち犯罪に使用したる物件を云ふ、例へば持兇器竊盜の場合に於ける刀劍(兇器)の如し、C犯罪に依りて得たる物件、即ち犯罪の原因として直接に得たる物件を指示す、例へば睹博に依りて勝者の得たる睹金、密賣淫に依りて得たる財價、狩獵法違犯に依りて得たる獲物等の如し。(舊刑三一乃至四四條、憲法一九、二〇條)
- 英
- Additional punishment
- 独
- Nebenstrafe
- 仏
- Peine additionnelle
附加刑處分
附加刑處分とは、以上述べたる附加刑を科する事を云ふ、即ち剝奪公權は重罪の刑に處せられたる者に科し、停止公權は輕罪の刑に處せられたる者に科し、監視は重罪の刑に處せられたる者には、宣告を用ひずしてこれを科し、輕罪に處せられたる者には宣告してこれを科す、又罰金はこれを宣告して科するものにして、其場合は犯罪の性質により各異なるものとす、又沒取は禁制物件、犯罪供用の物件及び犯罪に因りて得たる物件を、官に取上ぐるものにして、其場合は犯罪性質により定まるもの也。舊刑三二條乃至四四條)
- 英
- Accessory penalty
- 独
- Nebenstrafverfügung
- 仏
- Peine accessoire
附加税
(ふかぜい)或租税に附加して徵收する租税を附加税と云ふ、例へば市町村が、直接國税又は直接府縣税に附加し、均一なる税率を以て、市町村全部より徵收する租税の如し、此種の租税の其本税に對する率は、國税に付きては地租七分の一、其他の税に付きては、二分の一を超過す可らざる事を原則とす、而して附加税は均一税率を以て、市町村全部より徵收するを常例とすと雖も、數個人には市町村内の一部に於て、專ら使用する營造物あるときは、其修築保存の費用は、此等營造物より利益を受くる者をして、負擔せしむるが爲め、監督官廳の許可を經て、數個人又は市町村の一部に課税することを得べきものとす。(市制九〇、一〇三條、町村制九〇、一〇三條)
- 英
- Additional tax
- 独
- hinzugesetzte Steuer
- 仏
- Impôt supplémentaire
附合
(ふがふ)附合とは、二個以上の有形物が互に相接合して一物を成すを云ふ、例へば、數個の木片を結合して、一枚の板を作るが如し、蓋し附合にありては、二個以上の物件が、重量又は並列して結合するを常とし、結合後各物件の存在を認識すること容易なりとす、而して附合は、不動産に關すると、動産に關するとに從ひ、之を區別することを得べし、(甲)不動産の附合、不動産の所有者は、其不動産の從として附合したる從物の所有權を取得す、例へば□一河流沿岸の所有者が、其土地に合體したる寄洲の所有權を取得し、□二土地の所有者が、其土地に植付けたる草木の所有權を取得し、□三家屋の所有者が、家屋の雨庇、樋其他家屋の附屬として之に結合したる物の所有權を取得するが如し、但し、附合したる從物が、何人の所有に係るや、又之を附合せしめたる者の何人なるやは、問ふことを要せず、蓋し此場合に於て、一般の原則に從ひ、從物の所有者の請求に基き、不動産より從物を分離して、之を引渡すことを要するものとするときは、分離の爲め不動産と從物とを併せて毀損し、經濟上頗る不利なる結果を生ずるを以て、法律は、公益を保護するが爲め、不動産の所有者をして、從物の所有權を取得せしめ、其不動産の完全なる狀態として、之を維持することを得しめたるものとす、(乙)動産の附合、動産の附合が、所有權取得の原因となるは、附合したる動産が毀損するにあらざれば、分離すること能はざる場合、及び分離の爲めに過分の費用を要する場合にありとす、蓋し分離の爲めに、動産を毀損し、又は過分の費用を要する場合に其分離を許すときは、經濟上頗る不利なる結果を生ずるを以て、合成物は一物として之を存置するの必要あり、之れ民法が動産の附合を規定したる所以也、要するに、附合は我民法上に於ける所有權取得の一方法に外ならざるものとす。(民二四三、二四四條)
- 英
- Unit
- 独
- Vermischung
- 仏
- Unite
不合規
(ふがふき)不合規とは、不適法と云ふと同じく、法令の禁止、命令の規定に適合せざることを云ふ。(會計檢査院事務章程三八條一號)
- 英
- Unlawful
- 独
- ungesetzlich
- 仏
- Illégal
不可分債權者
(ふかぶんさいけんしや)不可分債務關係に於ける債權者を云ふ、所謂不可分債務とは、債務の目的が不可分なるものを云ひ、此の不可分債務に對する債權者は、即ち不可分債權者也。(民四二九條)
- 英
- Indivisible creditor
- 独
- untheilbarer Gläubiger
- 仏
- Créancier in-divisible
不可分債務
(ふかぶんさいむ)不可分債務と稱すれども、平等分擔主義よりいふときは、債務は元來個々別々に存在するものにして、債權者の多數なると、債務者の多數なるとを問はず、其債權は各當事者を包有して、個々に存在するもの也、決して不可分的のものにあらず、唯其債權の目的が不可分なると、可分なるとの別を生ずるのみ、故に不可分債務とは、其債務の目的が不可分なるを云ふのみ、(甲)不可分債務の性質、民法に於ては多數當事者債權の一として、不可分債務を規定せり、然れども不可分債務の成立するには、必しも當事者の多數なることを要するものにあらず、不可分債務は、單一なる債權者又は債務者中にも、亦存在するを得るは勿論なり、然れども凡そ當事者の單一なる場合に於ては、其債權の可分なると不可分なるとを問はず、苟も反對の意見表示なき限りは、總べての債務は同時に全部の履行を請求し、又全部の履行を爲すべきものなるが故に、特に可分債務と不可分債務とを區別して、特種の規定を設くるの要なきのみならず、縱令多少の別ありとするも、債務一般の規則に依り、之を解釋することを得べく、別段困難なる問題を生ずることなし、されど不可分債務にして、當事者が多數なるときは、種々の效果を生ずるものなるが故に、法律は此場合に付きてのみ、多數當事者の債權として特に規定を設けたり、不可分債務には二種あり、一は給付が其性質上不可分なるものにして、他は當事者の意思に依りて不可分となしたるもの之也、□一性質上の不可分債務、債權の目的たる給付には、性質上可分のものと不可分のものとあり、其可分の給付を目的とする債權は、之を可分債務といひ、不可分の給付を目的とする債權は、之を不可分債務と稱す、而して此二者の著しき區別は、可分給付は給付の性質を變ぜずして、之を分割することを得るも、換言すれば、分割したる給付と、之を併合したる給付とは、更に其性質を變ずることなく、唯其分量を異にするのみ、之に反して、不可分給付は、性質を變ぜすして之を分割すること能はざるものなり、例へば甲乙丙の三人が、一匹の馬を賣渡すべき契約を爲す場合の如し、此の場合に、馬を分割したるときは、其性質を一變するは勿論とす、又不作爲の義務は、多くの場合に於て不可分給付たるべし、例へば他人に對し、秘密を守るべき債務を負擔する場合に、之を新聞紙、若くは公開の演説に於て暴露したるが如し、此場合には、決して社會の全般に對して之を暴露したるにあらずして、其新聞の購讀者、又は演説の傍廳者に對してのみ其秘密を知らしめたるものなりと雖も、之を以て分割して義務を破りたるものといふこと能はずして、秘密を固守すべき義務の全部を破りたるものと云はざるべからず、□二當事者の意見に因る不可分債務、當事者の意見に因る不可分債務とは、其給付は性質上可分なりと雖も、當事者の意思を以て其履行を不可分となしたるを云ふ、即ち分割して履行せしむるときは、債權設定の目的を達する事能はざるが如き場合に、當事者が特約を以て之を不可分債務となすにあり、例へば甲乙丙の三人が、或者より金一萬圓を借受け、以て或事業を企てんとするが如き、又は地所一千坪を借受けて、之に家屋を建築せんとするが如し、此場合に於て、金員又は地所は、其性質上分割すること能はざるものにあらざれども、之を分割して借受くるに於ては、遂に其企業又は家屋建築の目的を達すること能はざるに因り、當事者は、明示又は默示の意思を以て不可分債務を設定し、從つて債務者は其一部に付き履行を爲すこと能はず、又債權者も一部の履行を拒絶するを得るものとなす也、(乙)不可分債務の效力、A債權者の多數を有する不可分債務、□一不可分債務の債權者が多數なるときは、各債權者は總債權者の爲めに履行を請求する事を得、又債務者は總債權者の爲めに各債權者に對して、債務の履行を爲す事を得るものとす、不可分債務の債權者多數なるときは、如何なる方法を以て債務者に履行の請求を爲し、又債權者に履行を爲すべきやに付きては從來三箇の主義あり、イ總債權者は共同して債務者に對し履行の請求を爲すべく、又債務者も總債權者に對して履行を爲すべしとの主義、ロ各債權者は獨立して全部の履行を請求することを得るも、其債務者の履行は總債權者に對して之を爲す事を要すとの主義、ハ各債權者は、總債權者の爲め、獨立して履行の請求を爲すことを得、又債務者は、各債權者に對して總債務者の爲めに履行することを得とするの主義是也、我民法に於ては、此の最後の主義を採用したり、從つて不可分債權者の中の一人が履行を受けたるときは、其履行は總債權者の爲めに履行となり、不可分債務は消滅に歸すべく、又各債權者の爲したる履行の請求は、總債權者の爲めに效力を生じ、從つて履行の請求より生ずる遲滯の責任、時效の中斷の如きは、總債權者に效力を及ぼすものとす、□二不可分債權者の一人の行爲、又は其一人に對して生じたる事項は、他の債權者に對して效力を生ぜず、此の規定も亦不可分債務の性質より當然生するものとす、例へば債權者の一人と、債務者との間に相殺、更改若くは時效等の事項が生ずるも、其當事者に效力あるのみにして、他の債權者に何等效力を及ぼす事なし、從つて債權者の一人と、債務者の間に更改又は免除あるも、他の債權者は全部の履行を請求することを得、されど全部の履行を受けたる債權者は、他の債權者に對して、各其持分に應じて利益の分與を爲さざるべからざるものなるが故に、更改若くは免除を爲したる債權者に對しても、亦其分與を爲すべきを當然なりとなさざるべからざるが如し、果して然らば、非常に不公平なる結果を生ずるに至る、今更改の場合に就きて見るに、債權者の一人は、更改に因りて、債務者に對し、新に義務を負はしめたるに拘はらず、尚他方に於て、自己の持分に對する利益の分與を受くるに至り、即ち二重の利益を取得するに至るべく、又債務者は其債權者の一人に對し、新たなる義務を負ひながら、他の債權者の請求に對し、全部の履行を爲さざるべからざることとなり、二重の損害を被らざるべからず、又危險の場合に於ても然り、爰を以て、民法は一の便法を設け、債權者の一人と債務者との間に、更改又は免除ありたる場合は、他の債權者は全部の履行を受くることは固より妨げなきも、其更改又は免除したる債權者に分與すべき利益は、之れを其債務者に對して償還すべきものとせり、例へば甲乙丙の三人が、ある者に對して九千圓の價格を有する家屋を建築せしむる債權を有する場合に、甲が自己の持分に對する權利を免除したるときは、乙丙より其全部の履行を請求することを得るも、曩きに甲の受くべかりし利益、即ち三千圓は、甲が債務者に對して免除したるものなるが故に、此の部分は甲に分與せずして、直に債務者に償還せしむるが如し、右の如く、不可分債權者の一人と、債務者との間に更改又は免除ありたるときは、多少の影響を他の債權者に及ぼすべしと雖も、是決して其更改及び免除の效力を他の債權者に及ぼすとの意味にあらず、唯法律が便宜上の方法を認めたるに過ぎず、債權者の地位は常に全く互に獨立せるもの也、從つて債權者間に代理關係の存在することなく、其一人が自己の持分を超へて、債務全部の履行を請求するは、決して他債權者の持分に代理するものにあらず、唯自己の權利を行使するに外ならす、唯不可分債務の性質上、自己の持分のみを請求すること能はざるが故に、全部の履行を請求するに過ぎず、但し一人の爲したる履行の請求、及一人に對して爲したる履行は、特に總債權者に效力を及ぼすべきものとす、B債務者の多數を有する不可分債務、數人が不可分債務を負擔する場合は、如何なる法則を適用すべきやといふに、不可分債權者が多數なる場合に關する以上の説明と、連帶債務に關する規定とを併せ準用すべきものとす、故に債權者は、債務者の一人又は數人に對して、全部の履行を請求することを得、又各債務者は、獨立の債務を有するものなるが故に、各全部の履行を爲さざるべからす、然れども、不可分債務なるが故に、其性質上連帶債務の如く、一部の履行を請求し、又は其履行を爲すこと能はざるは勿論とす、又不可分債務者の一人が履行を爲したるときは、他の債務者の爲めに債務の消滅を來すものとす、然れども履行以外に於ては、不可分債務者の一人に付て生じたる事項は、他の債務者に何等の效力を及ぼさざるが故に、不可分債務者の一人に付き、法律行爲の無效又は取消の原因存在するも、他の債務者に影響を及ぼす事なし其他不可分債務者の一人と、債權者との間に、履行の請求、更改、相殺、免除、混同若くは時效完成等の事項生ずるも、總て他の債務者に何等の影響を及ぼさざるを原則とす、然れども更改及び免除に付ては、債權者が他の不可分債務者より、全部の履行を受けたるとき、更改若くは免除ありたる債務者の負擔效分に對する利益をも、債權者に於て取得するは、不當の利得なるが故に、其效分は其辨濟を爲したる債權者に返還せざるべからず、以上述べたる所の外、尚不可分債務者の全員又は數人が、破産の宣告を受けたるときは、債權者は其債權の全額に付き、各財團に加入することを得べく、又不可分債務者の一人が、辨濟を爲したるときは、他の債務者に對して求償權を生ずるものとす、不可分債務が可分債務に變じたるときは、各債權者は自己の持分に付きてのみ、履行の請求を爲し、又各債務者は自己の負擔部分に付きのみ、履行を爲すべきものとす、元來不可分債務は、其目的物を分割すること能はざるが故に、已むを得ず全部に付き履行の請求を爲し、又は履行を爲すに過ぎず、故に其目的物にして、分割することを得るに至るときは、原則に戾りて分割すること明なり、その如何なる場合に、可分債務に變ずるやは、事實問題に屬すれども、例へば甲乙丙の三人が、一棟の家屋を引渡すべき債務を有する場合に、債務者の過失に因りて、其家屋を燒失したる場合の如し、斯る場合に於ては、債務者は其損害賠償を爲さざるべからず、然るに、損害賠償は、當事者の意見表示なき限りは、金錢を以て之を爲すべきものにして、金錢は分割することを得るものなるが故に、各債務者は各自の負擔部分に應じ、之を賠償すべきもの也。(民四二八條、乃至四三一條、四三四條乃至四四〇條、四一五條乃至四一八條、五一三條乃至五一九條)
- 英
- Indivisible obligation
- 独
- untheilbare Obligation
- 仏
- Obligation in-divisible
不可分物
(ふかぶんぶつ)物理上一切の物は之を分割することを得、然れども物理上の分割は、法律上の分割と其意義を異にす、物理上の分割が、物の本質を失はしめずして、分割に因て獨立體となるべき各部分をして、在來の效用を保有せしむる時は、其物は性質上を分割し得べき物、即ち性質上の可分物と稱す、之に反して、若し物理上の分割が、物の本質を變更し、其各部分をして、在來の效用を保有せしめざるときは、其物を性質上分割し得べからざる物、即ち性質上の不可分物と稱す、例へば一頭の牛、一脚の机の如き物は、物理上之を分割し得べきも、之を分割するときは、在來の本質及び效用を失ふ、牛を分割すれば牛肉と爲り、机を分割すれば木片と爲り、從來存在せる牛又は机は消滅に歸す、而して分割して生じたる牛肉又は木片は、從來存在せる牛又は机の一部たる效用を爲さず、故に此等は不可分物也、家屋も亦不可分物とす、何となれば、一の家屋を分割すれば、本來の家屋は破壞せらるれば也、性質上可分なる物は、當事者の意見に依りて之を不可分物と爲すことを得、例へば土地は可分物なりと雖も、或工場を建設せんが爲めに一萬坪を要し、其内一坪たりと雖も缺くるときは、其目的を達せざるものと假定せんか、今甲乙が其土地の賣買契約を締結したりとせば、其土地は即ち當事者の意思に依りて不可分物となりたるものとす。
- 英
- Indivisible thing
- 独
- untheil-bares Ding
- 仏
- Chose indivisible
附記登記
(ふきとうき)不動産の登記をなしたる場合に於て、其登記事項に變更を生じたるとき、例へば登記名義人の變更したる場合等に於て、更らに原登記に附記して爲す登記を附記登記と云ふ。(三二年二月法二四號不動産登記法七、五三條、五六條乃至五八條、民法三九三條)
- 英
- Additional registration
- 独
- hinzugesetztes Eintragen
- 仏
- Enregistre-ment additionnel
複委任
(ふくいにん)□一複委任は、或は之を重複委任命令とも稱し、(甲)法律の委任を受けたる命令(例へば省令)が、更に下級の命令(例へば縣令)に讓りて、之れが規定を設けしむる場合及び、(乙)法律の委任を受けたる官廳が、其法律に依りて得たる所の權限を、更に下級官廳に委任し、其官廳が此委任に依りて發する所の委任命令を云ふ、我國の實例にては、明治二三年法律八四號が、命令に罰則の規定を委任したるに、更に同年勅令第二〇八號が、省令其他の命令に複委任を爲したり、□二或は私法の關係に於て、一度委任されたる事項を、委任者が更に委任するを複委任といふことあり、委任に依りて代理權を授與されたる者が、更に複代理人を選任して、之れに代理權を委任するが如きは此の例とす。
- 英
- Re-mandate
- 独
- Rückauftrag
- 仏
- Re-mandat
復仇
(ふくきう)復仇とは、他國が自國若くは自國人民に對し、國際法上不法なる行爲を爲したる場合に於て、自國も亦其の加害國若くは加害人に對し、不法なる行爲を加ふるを云ふ、復仇を分ちて平時復仇及び戰時復仇の二となす、□一平時復仇、平時復仇は國際紛議に際し、被害國が、加害國の不法なる行爲を戰爭に訴ふることなく、加害國をして之を救濟せしむるの目的を以て、平時に於て行ふ強制的の一手段也、他國が自國若くは自國人民に不法の損害を加へたるときに方り、自國は之を賠償せしむる爲め、又は其損害に宛つる爲め、加害國政府若くは加害國人民に屬する財産を押收又は攻擊し、若くは自國に於て加害國又は其人民に、國際公法上若くは條約上當然與ふべき利益又は待遇を停止するが如き此例也、而して凡て復仇は、暴力の行使にして、自ら國際公法を侵犯するものなるが故に、平時に於けると戰時に於けるとを問はず、濫に之を行ふ事能はずして、加害國が明に國際公法上重大なる違反を爲しながら、其救濟を拒絶し、若くは其救濟を甚しく猶豫するが如き場合に於て、已むを得ず復讎の行爲を行ふものにあらざる以上は、總べて不法なるものなりとす、之を行ふに於ても、對手國をして其背法の行爲を停止せしめ、自ら之を救濟せしむるに必要なる範圍を超過すること能はず、殊に戰時の復仇に就きては、若し敵國の背法なる行爲ある每に、自國は復仇として戰爭の法則に違反の行爲を爲し、之に對し敵國も、亦復仇の名義を以て、一層の不法を爲すに於ては、遂に國際公法の實行を見るべからざるに至るべきを以てなり、□二戰時復仇、戰時復仇は、相手國の戰爭法規違反の行爲に酬いん爲め、自國も戰規違反の行爲に出づるを云ふ、其目的戰爭法を維持せんとするにあり、刑罰權の行使とは稍異るも相似たり、凡そ交戰國は復仇行爲に出づるの權利あるは、何人も爭はざる處なり、然れども其之を行ふに當りては、正義に從ひ寬大の趣旨に出づべく、復仇は之を行ふ必要あるにあらざれば之を行ふを得ず、復仇行爲の標準程度は、軍の安全を得及び戰の目的を達するに要用なる範圍に止むべし、又人道に反すべからざるは勿論なり、一八七四年ブルキセル會議に於ける露國の提案に依れば、復仇行爲は、□一公然戰規に重大なる違反ありたる時に限り、又人道の許す程度に於てすべく、□二相手國の不法行爲と權衡を保つべく、□三最高司令官の許可あることを要すとせり、然れざも此提案は、採用せられざりき、蓋し戰時復仇を全廢するならば兎に角、苟も其存在を認むる以上は、斯かる制限は無益なればなり、又獨逸學者の一般に認むる所に依れば、戰爭法規に違反したる者、後日捕はれたるときは、軍法に照して處斷し刑罰を課すべく、戰爭法規違反不明なるとき、(例へば井戸の水に毒を流したるもの不明なるときの如し)又は之を罰すること能はざるときは、敵軍又は其司令官に對して、復仇の擧に出つべきものとせり、下士卒の多數を屠殺すべからず、又復仇行爲として平和なる人民に害を加ふるは、人道上忍ぶべからざることに屬すと雖も、實例は往々之に反するものあり、之を要するに復仇は、國際公法上確的に規定したるものにあらざるを以て、國家は時と場合とに依り、人道に違反せざる限りは、之を行使することを得べきものとす。
- 英
- Reprisal
- 独
- Repressalie
- 仏
- Représailles
復權
(ふくけん)復權とは、一旦喪失したる公權私權を再び回復することを云ふ、復權には、民事上の復權と、刑事上の復權との二者あり、(甲)民事上の復權、民事上の復權とは、破産者が破産宣告によりて、一旦喪失したる權利を回復する事を云ふ、而して復權を得んとする破産者は、左の要件を具備せざるべからす、□一總債權を辨償したること、未だ總債務を辨償せざる破産者に、復權を得せしむべからざるは論を俟たず、之に反して、破産者が總債務を辨償したるときは、其一身上に不利益を被らしむるの事由茲に消滅したるものなれば、之れをして權利を回復せしむるを相當且つ當然とす、辨償とは、總債權者に遺漏なく辨償することを云ふものにして、元本、利息及び費用の總てを包含す、而して元本は、協諧契約の調ひたるときと雖も、之に依りて支拂はざりし殘額全部を辨償すべく、利息は、破産財團に對して請求することを得ざりしものをも包含し、又費用は、債權者の破産手續上の費用をも包含す、破産者は、此等總べての債務を辨償したる後に非ざれは、復權を得ざるものとす、破産者が總債務の辨償を爲さんとするに當り、債權者中之を拒み若くは債權者の所在知れざる爲め、辨濟を爲すことを得ざるときは如何、債權者が之を拒むときは、通常の規定に從ひ、辨濟金の供託を爲して債務を免るることを得べしと雖も、所在の知れざる債權者に對しては、斯る手續を爲すの必要なし、故に斯る場合に於ては、破産者は債權者に辨濟を爲す資力あり、且つ準備を爲したることを證明するを以て足れりとす、□二破産者は刑事上の公權剝奪又は停止中にあらざること、刑事上公權を剝奪せられ、又は停止中にある者は、其期間内に債務悉皆を辨償するも、破産上の復權を得ることなし、蓋し已に公の權利は之を奪ひたるに拘はらず、私の權利のみ之を回復するを許すは、彼此權衡を得ざれば也、然れども、此點に就き多少の疑なき能はず、何となれば、破産法の此規定にして、唯破産に依る犯罪、即ち詐欺破産若くは過怠破産の刑に處せられたる者のみに適用すべきものならしめば、或は破産を爲したる者に對する制裁として、復權を禁ずるの理由あるべしと雖も、其他の犯罪に因りて公權を奪はれ、若くは停止せられたる者に對して、なほ復權を禁ずるの必要あるか、刑事上の公權剝奪若くは停止と、破産上の權利の喪失とは、第一其原因を異にし、第二喪失すべき權利の性質を異にす、從つて刑事上の復權を得るも、破産上の權利喪失は依然たるべく、又破産法上の復權あるも、刑事上の公權喪失には何等の影響あるものにあらず、要するに其二者の間には、存否を共にすべき何等の關係あらざるなり、詐欺破産は當然公權を剝奪せられ、又過怠破産は、刑期間公權を停止せらるるものにして、此等の期間中は破産上の復權を得ざるものとす、復權を得んとする者は、其申立書を提出せざるべからず、此申立書には、總債務を辨濟したることを證するが爲め、債權者の領收證書及び受領を拒みたる債權者あるときは、辨濟金の供託を爲したること、若くは辨濟を爲すこと能はざる債權者あるときは、辨濟を爲すの資力あり、且つ準備を爲したること等の證明書を添付すべきものとす、此申立書は、破産裁判所に爲すべきものなり、從つて破産手續終結の後、破産者が其住居を轉じたるときと雖も、尚先きに破産を管轄したる裁判所に、之れを提出せざるべからず、盖し破産裁判所は、破産手續の情況を知悉すれば也、復權の申立は、破産者の死亡後と雖も之を許すものとす、其理由とする處は、死亡者の復權は、其相續人若くは死亡者の榮譽の爲め、之を許さざるを得ず、況んや死者の榮譽は、刑法を以て之れを保護するに於てをや、殊に緊要なるは屋號の榮譽を回復するにあり、縱令其屋號が已に他人に移轉したるときと雖も、亦同じといふにあり、死亡したる破産者の復權は何人か之を申立つることを得るか、即ち其者と相續人に限るや、又は相續人以外の親族より之を申立つることを得るやに就きては、法律上何等の明文なし、然れども普通の狀態上より觀察して、相續人及び親族は共に之を申立つるの權あるものと解す、何となれば、復權の榮譽は、獨り相續人及び親族のみならず、其屋號にすら及べは也、(乙)刑事上の復權、復權は天皇の大權により、刑罰に依りて剝奪せられたる資格を、舊に復せしむることを云ふ、資格は、權利を享有すべき能力にして、權利其者と異るが故に、公權剝奪の刑に依り、先きに喪失したる議員、官吏、學校長等の地位、又は年金、位記、勳章の如きは、復權に依りて當然舊に回復し得べきものにあらずして、選擧、任命、下賜等新に之れを得るに必要なる條件及び手續を經ることを要す、復權の願は、公權を剝奪せられたる者は、主刑の終りたり日より五年を經過し、又主刑の期滿免除を得たる者は、監視に付したる日より五年を經過したる後、刑の言渡を受けたるものより司法大臣に之れを爲すべきものとす、而して復權の願書には左の書類を添ふるを要す、□一判決の正本、□二主刑の滿期、又は時效の成就したることを證明する書類、□三假出獄及び假りに監視を免ぜられたる證書、□四賠償及び訴訟費用を辨濟し、又は其義務を免れたる證書、□五過去、現在の住所及び生計を記載する書類是なり。(憲法一六條、舊刑六三條乃至六五條、刑訴三二四條乃至三三〇條、破産法一〇五四條乃至一〇五八條)
- 英
- Rehabilitation
- 独
- Rückeinsetz-ung
- 仏
- Réhabilitation
服從
(ふくじゆう)他人の權力に依りて、自己の勢力を強制せらるる狀態を服從と謂ふ、故に強制者より見れば一種の命令なり、例へば臣民は統治主體たる國家に絶對服從するが如き是なり、
- 英
- Submission
- 独
- Unterwerfung
- 仏
- Soumettre
服從關係
人が權力者の命令に依り、服從する關係を服從關係と謂ふ、故に服從の狀態が人と人との間に存するとき、此兩者の關係を服從者の例より見て之を服從關係といひ、權力者(命令權)の例より見れば、權力關係又は命令關係となるべき也、
- 英
- Relation of submission
- 独
- Unterwerfungsverhältnis
- 仏
- Relation de la soumission
服從者
服從の狀態にある者を云ふ、即ち臣民は天皇に服從するものなるが故に、所謂服從者なり。
- 英
- Submitter
- 独
- Gewaltunter-gebene
- 仏
- Soumis
副署
(ふくしよ)副署は、國家意思發表に關する一形式にして、國務大臣が君主の命令處分に副へて署名することを稱するもの也、故に書面上の命令處分に非ざれば、之に副書することを得ざるものとす、或は國務大臣の副署は、國務大臣の副署したる君主の行爲に就き、補弼の任務を盡したることを公證するものなりと唱ふる人ありと雖も、補弼と副書とは、必しも同一の國務大臣に伴ふべきものにあらざるに由り、此説を認むることを得ず、蓋し副書とは、君主の行爲たることを示す爲めに爲さるる法律、勅令、其他詔勅に必要なる形式に過ぎざれば也、固より補弼したる國務大臣にして、其補弼したる行爲に對し副署することありと雖も、我法制の下に於ては、寧ろ偶然の結果にして、必しも然るものにあらず、□一副書の形式、理論上より云へば、國家大臣の一人の副署あれば、法律、勅令、其他國務に關する詔勅に必要なる形式を充たすものにして、必しも總國務大臣の副書を要するものにあらず、普漏西其他二三の國に於ては、緊急勅令は、總國務大臣の副書を以て發すべしと定めたるも、我憲法には此の如き規定なきに由り、緊急勅令に就ても、總國務大臣の副書を要するものにあらざるものとす、□二副書事項、我憲法には、凡て法律、勅令、其他國務に關する詔勅は副書を要すとあるが故に、原則としては國務に關する法律、勅令及び詔勅は、凡て副書を要すべき事項たるも、國務大臣の任命に就ては、實際副書を具ふる能はざる場合あることを注意すべき也、明治二五年勅令第九六號高等官官等俸給令第二條には、親任の辭令書には、必ず總理大臣又は主任大臣の副書を要すと定むと雖も、此副書を爲すべき大臣にして悉く死亡し、若くは懲戒處分を侵して副書を拒みたるときは、新に大臣を任命するに、副署を具ふること能はざることを生ず、若し此場合にも、其任命に副署なきときは、絶對に君主の行爲としての效力なしと論ずるときは、遂に大臣を任命すること能はざるの結果に陷るもの也、故に此場合には、副署を具へざるも、任命として效力あるものなりと論定せざるを得ず、□三副署の拒絶、國務大臣は、副署を拒むことを得るや否やは一の疑問に屬す、之れを拒むことを得と唱ふる者は曰く、違憲若くは違法なる君主の行爲は、眞の君主の行爲と之を認むることを得ず、故に違憲若くは違法なる場合には、國務大臣は、副署を拒むことを得るものと謂ふべし、蓋し國務大臣は、君主を補弼し、其過失を矯正するの職責を有するものなればなりと、然れども國務大臣が、君主の行爲を君主に對して、違憲若くは違法なりと主張し得るものに非ず、何となれば、憲法若くは法律に關し、最高の解釋權は君主に屬するものなれば也、故に國務大臣は、違憲若くは違法を理由として、副書を拒むことを得と論ずるは誤謬也、又一步を進めて、國務大臣が君主の命に反して副署を拒むことを得と論ずるときは、君主の實權は、國務大臣に移るの結果を生ず、之れ許すべき事にあらざる也、爰に於て國務大臣の副書と議會の恊贊とは、法律上の關係異なるを知る事を得べし、議會の協贊は、之れを與ふると否とは、全く議會の自由に屬するものにして、君主は、法律を發せんと欲する、も、之を制定する能はざるの結果を生ずと雖も、國務大臣の副署は、君主の命に默從して之を爲すべきものなるに由り、國務大臣の意思を以て、法律、勅令、若くは詔勅の發布を妨ぐることを得るものにあらざるなり、されど國務大臣は、懲戒又は危職の危險を負ふに於ては、素より副署を拒むことを得べきは當然也、然らずんば補弼の責は純然たる責任の代理となるべく、此點は違憲若くは、違法を理由として副署を拒むと異なるものなりとす。(憲法五五條)
- 英
- Counter-signature
- 独
- Gegen-zeichnung
- 仏
- Contre-signature
復籍
(ふくせき)復籍とは、一たび我家の籍を離れ、他家の家族となりたる者が、ある事情の存するとき、原家に復歸することを云ふ、即ち婚姻又は養子緣組に因りて他家に入りたる者が、離婚又は離緣となりたるとき復籍するが如き是なり、蓋し離婚又は離緣となりたるときは、其婚家又は養家に止まることを得ざるにより、元家に復歸することを許さざるべからざるの必要に基く。(民七五〇條)
- 英
- Re-registration
- 独
- Rückeintragen
- 仏
- Re-registration
復籍拒絶
(ふくせききよぜつ)復籍拒絶とは、婚姻又は養子緣組に因りて他家に入りたる家族が、離婚又は離緣となりたるときは、實家に復歸することを得べきは當然なるも、其婚姻又は養子緣組を爲したる當時、法律の定むる條件を履行せざりし爲め、戸主が其の者の復籍を拒むことを云ふ、而して戸主が復籍拒絶をなすことを得る場合は、□一婚姻又は養子緣組によりて他家に入りたる者が、實家の戸主の同意を得ずして更に他家に入りたるとき、婚姻又は養子緣組に因りて他家に入らむとするときは、實家の戸主の同意を得るを要するは、離婚又は離緣となれる場合に、當然實家に復歸するが故に外ならず、然るに更に他家に入りたる者が、實家の戸主の同意を得ざりしに拘はらず、離婚又は離緣となりたる場合に、なほ當然實家に復歸することを得るものと爲すときは、戸主權は全く其效力を失ふに至るべし、故に斯かる場合に於ては、其家族の復籍を拒絶するの權利を有するものとす、□二家族が戸主の同意を得ずして婚姻又は養子緣組に因りて他家に入りたるとき、此場合に於ても、亦以上の場合と同一の理由によりて、戸主は婚姻又は養子緣組の日より一年内に復籍を拒むことを得べき也、唯茲に疑問となるは、養子となるべき者が、十五年未滿なるときは、其家にある父母之れに代りて緣組の承諾を爲すべきものなるに、其家にある父母が戸主の同意を得ずして、十五年未滿の者を他家の養子と爲すことを承諾し、而して其後養子が離緣となりたる場合にも、戸主はなほ復籍を拒むことを得べきや否や是なり、蓋し法律の精神は、養子緣組に關しては十五年未滿の子に對し、法律上の代理權を父母に與へたるものなれば、父母の意思は即ち子の意思と同一の效力を生ずるものと爲し、離緣のときは、戸主に其養子の實家に復歸することを拒むを得せしむるものならん。(民七五〇、八四三條)
- 英
- Rejection of re-registration
- 独
- Verweigerung des Rückeintragens
- 仏
- Rejet de la ré-registration
復選
(ふくせん)再び選出せらるることにして、再選と謂ふと同義也、唯復選なる語は、二重の選擧を要する選出を意味することあれば、此點特に注意を要す。(橫濵正金銀行條例一五條)
- 英
- Re-election
- 独
- Wiederwahl
- 仏
- Réélection
復選法
(ふくせんはふ)單選法に對し、選出に二重の選擧ある方法を意味す、即ち間接選擧とも云ひ、例へば或議員を選擧するに當り、其選擧人を選擧し、選出せられたる選擧人が更に選擧して議員を定むるが如き方法を云ふ。(間接選擧の部參照)
- 英
- Law of re-election
- 独
- Gesetz der Wiederwahl
- 仏
- Loi de la réélec-tion
復代理人
(ふくだいりにん)復代理人は、代理人が自己の代理權の範圍内に屬する事項に就き、選任したる本人の代理人也、即ち復代理人は、左に揭ぐる性質を具有すべきものとす、□一復代理人は、代理人の選任したるもの也、法律の規定又は授權行爲に依て代理權を有する者は復代理人にあらず、□二復代理人は、直接に本人の代理人と爲るべき者也、代理人の代理と爲るべき者は、復代理人にあらず、即ち復代理人は、代理人が其地位を離脱せすして、自己の代理權を他人に移すに外ならず、代理人が本人に關係なく、自己の責任に於て、他人をして或事を爲さしめ、又は自己の爲すべき事務を補助せしむること同一視すべきものにあらず、如上の理由なるを以て、復代理人の權限内に於て爲したる意思表示は、直接に本人に對して效力を生ずべきものとす、□三復代理人の權限は、代理人の權限中、代理人の指定したる範圍に限定せらる、即ち全部に就き指定せらるるときは全部に渉り、一局部に制限せらるるときは其制限に從ふ、□四復代理人は、代理人が其地位を離脱せずして、選任したるもの也、若し代理人が其地位を離脱して、他人を其地位に代らしむるは、代理の交替也、代理の交替は本人の承諾に依りて生ずるものにして、其實在來の代理人を免じて、新なる代理人を選定するに外ならず、之を復代理と區別すべきものとす、復代理人の選任に關して、法定代理の場合と、任意代理の場合とを區別して述ふべし、(甲)任意代理の場合、委任したる代理人は、復代理人を選任することを得ざるを原則とす、抑も委任契約に伴隨する代理權は、受任者たる人に著眼して授與するもの也、故に受任者は、次に其代理權を他人に移すは、授權の本旨に違ふものといふべし、然れども本人の許諾を得たるとき、又は已むを得ざる事由あるときは、復代理人を選任する事を得、代理人は、復代理人の選任及び監督に就てのみ其責に任ず、即ち復代理人の選任及び監督に就き、代理人に過失あるときは、代理人が本人に對して其責に任じ、之より生ずる損害を賠償せざるべからず、之に就き過失なきときは、復代理人の行爲より、如何なる不利益を本人に釀成するも、其責任を代理人に歸することを得ず、代理人が本人の指名したる復代理人を選任したる場合に於ては、一般の場合の如く、其選任及び監督に就て責に任すべき理由なし、唯代理人が、復代理人の不適任又は不誠實なることを知りながら、之を本人に通知することなく、又は其復代理人を解任することを怠りたる場合に限り、代理人をして責任を負擔せしむるに過ぎざるものとす、(乙)法定代理の場合、法定代理人は、復代理人を選任するの權限を有するを原則とす、法定代理人は、授權代理人に比し、其權限廣汎なるを以て、自ら一切の事務を處理すること頗る困難なり、而して授權代理人の如く、本人の許諾を得て復代理人を選任するの便宜を有せず、故に法律の規定に依り、持に禁止せられざる場合の外、何等の前提をも要せずして、復代理人を選任する事を得、法律は、法定代理人に復代理人を選任するの自由を與ふると同時に、其責任を重大ならしむ、即ち法定代理人は、復代理人の爲したる一切の行爲に就き、自ら之を爲したると同じく、其責任に任ずべきものにして、授權代理人の如く、其選任及び監督に就き過失なかりし事を理由として、責を免るることを得ず、唯法定唯理人が、已むを得ざるの事由に依り、復代理人を選任したる場合に於ては、之を授權代理人と區別するの理由なきを以て、其選任及び監督に就てのみ其責に任ずべきもの也。(民一〇四條、乃至一〇七條、五五條)
- 英
- Substitute of representative
- 独
- Rückstellvertreter
- 仏
- Substitut du représentant
副本
(ふくほん)正本に對し、豫備又は事務整理の爲め、正本と同一の事項を記載したる書面を副本と謂ふ、例へば民事訴訟を提起するには正副二通の訴狀を裁判所に差出して爲すべく、其訴狀の正本は裁判所に存し、其副本は、相手方(被告)に送達せらるるが如き、又戸籍簿は正副二本を設け、其正本は之を戸籍役場に備へ、其副本は監督區裁判所を管轄する地方裁判所に保存するが如し。(戸籍法一七二條、民訴一九〇條、競賣法一六條)
複本
(ふくほん)爲替手形複本の制度は、一は手形喪失の危險に備へ、呈示の時期を愆らざるの便に供し、以て債權者の權利をして安固ならしめ、一は手形の流通を助長し、以て利用を敏活ならしむるにあり、手形上の權利は、須叟も手形と離るべかざる關係を有し、手形を喪失したるときは、手形上の權利を利用するを得ざるに至るべしと雖も、數通を發行するときは、其一通滅失するも、他の一通を以て裏書を爲し、引受、支拂を求むる等、總べて手形上の權利を保全し、之れを行使する便を缺くの虞なく、殊に海外に手形を送付するに當たり、相次ぎて船舶を異にし、若くは航路を異にして、各別に數通を郵送するを一般の慣例となす、又所持人引受を求めんとするに當り、呈示地たる支拂人の住所地遠隔し、手形の往復に、許多の日數を要するときは、支拂其他の目的に手形を利用するの時機を失するの虞あり、此場合に於て、一通は引受を求むる爲めに、支拂人の住所地に送付し、他の一通を以て裏書を爲すの便利に供するは、又複本の與ふる利益なり、殊に一覽拂及び一覽後定期拂の手形に至りては、呈示期間を過まるの危險を豫防するを以て、一通は呈示を爲すが爲めに、之れを支拂地若くは支拂人の住所地に送付するの便利ありとす、(甲)複本の性質、□一複本は原本の複製にして、手形の代物にあらず、各通相合して手形たるの作用を發場するにあらず、又一個の手形の構成部分を成すにあらず、共に原本として、均等の活動力を備ふ、一通を得たる者は之れに依りて、引受若くは支拂を求むるを得べく、特定の一通を呈示するを要せず、他の各通を示し又はその所在を告ぐるの義務なき也、債務者は、一通の呈示を受けたるときは、其義務を履行するの責任あり、他の各通の返還なきを理由として、履行を拒む事を得ず、又裏書人は、自己の前者に對して、權利を行ふを得るの擔保を要求するを得ず、支拂人は、呈示せられたる一通に對して、引受又は支拂を爲し、以て其責任を全うするを得べく、一通の裏書を受けたる者は、完全なる手形上の債權者となる、□二複本は、單一の手形也、手形上の債權も一なり、手形上の債務も一也、外觀に於ては、複數の手形形式ありと雖も、客觀的且つ實性的に、唯一個の手形上の法律關係存するのみ、債務者は、反覆數通に同一の手形行爲を爲せるに過ぎず、故に手形の取得者數通を有するも、之に一度引受、支拂を求むるを得るのみ、一通の引受は即ち手形の引受にして、所持人は、他の一通を以て擔保請求を爲す能はず、一通の支拂ありたる時は、手形の支拂として他の各通をして其效力を失はしめ、債務者は皆其債務を免がれ、擔保義務者は唯一度擔保を供し償還を爲すのみ、一通に依りて拒絶證書を作らしめたるときは、他の一通を以て遡及權を行使するを得、これを要するに、引受、擔保の供與、支拂、時效、保全行爲を爲さざるに因りて手形上の權利を消滅せしむる等、皆手形に就きて其效力を生ずるを以て、或は其效果は同時に一切の複本に及ぶと説明するものなり、(乙)複本の方式、複本は其外觀に於て單一の手形なるを表せざるべからず、然らずんば其果して一個の手形關係なるや否やを識別するに困難なるを以て、自ら人其所載に信賴すべがらざるに至るべき也、□一複本は、其所載の事項を同うせざるべからず、其事項の手形行爲の要件たると否とを問はず、相符合するを必要とす、其實體に於て單一の手形行爲たり、其形式に於ても亦同形たるを以て足る、其相符合せざる場合に於ては、手形行爲者は、善意の取得者に對して、債務の單一を主張するを得ざるなり、然れども其符合とは、單一の手形たるを推知するを得るを以て足る、複本相互の間に、些微の差異あるを許さざるの意にあらざるなり、□二複本には、其各通に複本たるを示さざるべからず、之を示すの文字は法律の定めざる處なりと雖も、例へば第一通、第二通、第三通と記するを便利とすべし、而して提出人是等の記載を爲さざる時は、各通は獨立の手形として其效力を有し、手形行爲者は各通に就て、其責任を負擔せざるべからず、(丙)複本の發行交付、□一爲替手形の所持人は、振出人に對して複本の交付を請求するを得、所持人受取人に非ざるときは、順次其前者を經由して其請求を爲す也、此請求權は、法律の規定に因るものにして、當事者間の契約に基くものに非ず、又手形上の權利に非ず、所持人複本を得んとするには、其直接の前者に其請求を申出で、前者は又其直接の前者を經由して、遂に振出人に至る、請求は斯くの如しと雖も請求權の主體は所持人也、被裏書人が其裏書人に對して權利を有するに非ず、□二複本の發行交付の義務を負ふ者は振出人也、裏書人は、他人の發行したる手形に裏書を爲したるに過ぎず、其被裏書人に對して、自ら手形を發行すべからざるは論なし、されど裏書人は、各其前者を經由して振出人をして複本を發行せしめ、且つ各通に同一の手形行爲を爲すの義務を負擔す、無擔保裏書を爲したるものも亦然り、振出人は發行者として複本に署名し、之が受取人に交付し、受取人は、其複本の果して符合するや否やを調査し、裏書を爲して之を被裏書人に交付し、順次同一の手續を爲して、終に所持人の手裡に歸す、而して裏書人にして死亡し、若くは禁治産の宣告を受けたる者あるときは、其相續人若くは法定代理人に於て、裏書を爲すべきものとす、□三複本の數に就ては、法律上何等の制限なし、故に理に於ては、所持人は、理由を開始せずして、其欲する數多の複本を請求するを得べけん。(商五一八條乃至五二一條)
- 英
- Substitute of draft
- 独
- Ersatz-tratte
- 仏
- Substitut du tirage
複本籍
(ふくほんせき)戸籍に關する屆出の疎漏又は其他の事由に依り、同一人が同時に二個以上の戸籍に、各本籍人として登記せらるることあり、此の場合に於ける正當ならざる本籍を稱して複本籍と謂ふ、從つて斯の如く、一人に對して二個以上の本籍ある場合に於ては、本人其一方の除籍を戸籍吏に屆出づることを得、其屆出を爲さんには、除籍許可の裁判が確定したる日より十日以内に、左の諸件を具し、裁判の謄本を添へて、除籍すべき地の戸籍吏に之を爲すことを要す、□一除籍すべき者の氏名、族稱、本籍地及び複本籍地、□二複本籍を有せる原因、□三除籍すべき者が、本籍と複本籍とに於て身分を異にするときは、本籍並に複本籍に於ける身分及び其身分の異なる原因これ也。(戸籍法一九七、一九九條)
- 英
- Wrong original domicile
- 独
- schlechte Ortsangehörigkeit
- 仏
- Domicile original
複本籍地
複本籍を有する地を複本籍地といふ。(戸籍法一九九條二號)
- 英
- Place of re-registration
- 独
- Rückregistrirungsplatz
- 仏
- Lieu de la re-registration
服務規則
(ふぐむきそく)廣く職務に服する者の服務上の義務を定めたる法則を云ふ、例へば官吏服務規律と稱するが如し。(二〇年七月勅三九號官吏服務規律)
- 英
- Rule of the official duty
- 独
- Instruktion
- 仏
- Loi du devoir officiel
副領事
(ふくりやうじ)領事官は、其階級に依りて、總領事、副領事及び領事官補とす、されど其職務は大差なきもの也、副領事は、外國に駐在して日本臣民を保護し、帝國の通商航海に關する利益を維持增進するの職務を負ふ、副領事は、命令的の職務を行ふ事なきに非ずと雖も、其主たる職務は、臣民の保護者として其利益を注意し、且つ駐在國の法律、官制、言語、風俗、習慣其他の生活上の關係を知りて、在留臣民の補助をなす者也、其他副領事なるものは、國際條約の實行を監視し、必要に應じて人民を援助し、及び商業航海、交通其他本國の利益に關する事項に就き、報告を帝國政府になすべきものとす、今副領事官の權限に屬するものを列擧すれば、□一日本臣民の居住及び身分に關する登錄を行ふこと、副領事は、其管轄區域内にある日本臣民の名簿を具へ、居住及び身分に關する屆出を受理し、屆出又は其他の事實によりて確知したる日本臣民の居住、及び身分に關する事實を該名簿に登錄すべきものとす、□二船舶及び船員に對する保護及び取締をなすこと、副領事は其駐在國にある日本の船艦及び其船員に對して、必要なる保護及び取締をなすべきものとす、即ち原簿に登錄をなしたる船舶に對し、船舶國籍證書を交付し、又日本船舶が外國の港に碇泊するとき、船舶國籍證書紛失毀損の場合に、假船舶國籍證書を付與すること、並に船舶名稱の變更を認可し、又船員手怙の交帳をなす事、書類の呈出を船長に命ずる事等をなすべきものとす、□三警察權を行ふこと、其主たるものはイ旅券の證明及び交付に關する事務、ロ在留臣民の退去を命ずる事務、□四遺産、財産の保護及び管理をなす事務、副領事は、帝國臣民の財産及び遺産の管理上必要なる處分、例へば遺産の中に腐敗又は減損し易き物品を包含するとき、或は管理に困難なる物品あるときは、之を公賣に付し、若し死亡者が負債を有したるときは、其償却を爲すことを得るものなり、又副領事は、相續者不明なるときは、之を本國に通じ、其相續者分明したるときは、其遺産を本籍地の官廳に送付すべきものとす、□五公證事務、副領事は、在留國は於て生したる事實及び法律行爲に就き、内地の官廳に對し、證明の力を有する公證をなす事を得るのみならず、法律行爲の有效條件たる公證を爲すことを得るものとす、□六條約實施の監視、即ち駐在國か條約上の義務を執行せずと認むる場合に於ては、或は條約若くは國際法に違反して、本國の利益を害すと認むるときは、本國政府に通じて相當の處置を採るべきものとす、□七日本臣民相互間、及び内外人間の民事上の爭論に關し、和解をなし又は仲裁すること、□八本國の商業、航海、交通の事業に關する保護に盡力すること、之れが爲めに、駐在國の商業航海交通の實況を本國に報告すべきものなり、□九本國各官に對し補助をなすこと、例へば軍艦入港したるとき、副領事駐在國の慣習を知らずと認むるときは、之れに對して注意を與へ、或は軍艦の乘組員逃亡したるときは、其逮捕に盡力するが如し。(三二年法七〇號領事職務規別に關する件、三二年勅一五三號領事官職務規別、戸籍法六、五九、六〇條、民七七七條、三二年法四六號航海法五、六、八、二二條、三二年法四七號船員法三、一三、一六、一七、二六、三〇、四五條、商五六二、五四一、五七條、三三年外務省令三號外國族券規則一、八條)
- 英
- Vice-consul
- 独
- Vizekonsul
- 仏
- Vice-consul
賦課
(ふくわ)賦課とは、國費其他公共團體の經費を、國民に對して負擔せせしむることを云ふ、例へば租税の賦課、市町村附加税の賦課といふが如し。(市制八八、九〇、九三條、町村制八八、九〇、九三條)
- 英
- Charge
- 独
- Last
- 仏
- Charge
賦課金
賦課せられたる金錢を賦課金と謂ふ、例へば府縣税の附加税金五圓納付すべしといふが如し。(市制九〇條、町村制九〇條)
- 英
- Charges
- 独
- Kosten
- 仏
- Charge
賦課令狀
賦課を命ずる書面を賦課令狀と謂ふ。(市制一〇四條、町村制一〇四條)
- 英
- Charge order
- 独
- Lastver-ordnung
- 仏
- Ordre de charge
不敬罪
(ふけいざい)不敬罪とは、皇室に對する不敬行爲を爲す罪を云ふ、本罪の特別構成要件を擧ぐれば、(甲)犯罪の實體は、天皇、三后、皇太子又は皇陵若くは皇族たること、イ天皇とは、皇室與範の規定に基き、皇位を繼承し、大日本帝國を統治し給ふ御方を奉稱す、隨つて外國君主、大統領を包含せざるは勿論也、又我國古來の慣習に依れば、萬世一系の皇位を踐まれたる御方にして、御在世中一たび位を去り給ふときは、太上天皇と稱したることあるも、現行皇室與範の規定に依れば、天皇は、御在世中皇位を去り賜ふことなきを以て、太上天皇の制は廢せられたるものといはざるべからず、ロ三后とは、皇后、皇太后、太皇太后を奉稱す、而して(A)皇后とは、天皇の配偶者たる地位に立たせられたる御方を奉稱す、(B)皇太后とは、先帝の皇后たりし御方を奉稱す、(C)太皇太后とは、先々帝の皇后たりし御方を奉稱す、ハ皇太子とは、儲嗣たる地位に立たせられたる御方を奉稱す、ニ皇族とは、前記の皇后、皇太后、太皇太后、皇太子を除きたる以外の御方を總稱す、即ち皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王を云ふ、ホ皇陵とは、御歷代の天皇の墳墓を總稱す、蓋し國語「ミササギ」即ち陵と稱するは、專ら天皇の墳墓のみを指すのみなり、字義に依りて案ずるも、皇と云ふは皇太子、皇后、皇族、皇室と云ふが如く、常に「オホキミ」又は「スメラギ」即ち天皇のといふ形容詞なり、故に皇陵とは「オホギミ」即ち天皇の御墳墓と解するを至當とす、(乙)犯罪の内容は、不敬の所爲たることを要す、不敬の處爲とは、皇室に對する尊敬を汚瀆し、又は汚するの虞れある性質の行爲を總稱す、而して其不敬の程度方法等に就きては、法律は何等の制限を設けざるを以て、□一天皇、三后、皇太子、皇族に對しては、誹毀、侮辱、(名譽毀損)を含む、而して天皇を誹毀する場合に於て、天皇の施政上の行爲(天皇の命令に大臣の副署ある場合に於ても亦同じ)に關すると、私行に關するとは、本罪の成立に影響なし、又天皇の即位前に於ける行爲に關すると否とは問ふ處にあらず、皇陵に對しては之を汚穢し、これを毀損し、これを發掘するの類は勿論、其他の所爲と雖も、不敬の所爲と認むるべきもの夥多あるべし、□二不敬の所爲は、言語、文章、形容何れを以てするも、本罪の成立するに缺くる所なし、□三法文不敬の所爲は、其積極的たると消極的たるとを區別せず、從つて積極的に罵詈嘲笑したるが如き場合は勿論、唯敬禮を行はざりしといふが如き、消極的の行爲と雖も、苟も義務に違犯したる不作爲なる以上は、不敬の行爲といふ事を得べく、□四不敬の所爲は、公然たると否とを問はず、苟くも犯人以外の者に依りて、不敬の結果が認識せられたるときを以て既遂となる、而して不敬罪に就きても未遂の狀態あり得べきも、法律は之を處罰せず、茲に注意すべきは、本罪の成立に就きては、必ず犯意、即ち天皇、三后、皇太子、皇陵、皇族に對して不敬を行ふの意思あることを要す、故に假令不敬の結果を生ずべき所爲あるも、不敬なる結果の發生を豫見するにあらざれば本罪を構成せず、例へば田舍の朴翁禮に傚はず、鹵簿を拜して感動の餘り、養錢を投じたるが如きは、偶々過つて不敬の結果を生ずることあるも、行爲者に於て毫末も不敬を加へんとの意思なきものなるが故に、當然無罪たることは明なりとす、(甲)天皇、三后、皇太子に對し又は皇陵に對して不敬の處爲ある者は、三箇月以上五年以下の重禁錮に處し、二十圓以上二百圓以下の罰金を附加す、(乙)皇族に對し不敬の所爲あるものは、二箇月以上四年以下の重錮に處し、十圓以上百圓以下の罰金を附加す。(刑七四、七六、舊刑一一七、一一九條)
- 仏
- Lése-majesté
不繼續地役權
(ふけいぞくちえきけん)地役權とは、設定行爲を以て定めたる目的に從ひ、他人の土地を自己の便益に供する權利を云ふ、□一地役權は他人の土地に行はるる物權也、□二地役權は土地の所有者が、他人の土地の上に有する權利也、□三地役權は土地の所有者が、他人の土地を自己の土地の便益に供するの權利也、□四地役權は不可分の權利也、(地役權の部參照)而して不繼續地役とは、繼續地役に對するの語にして、地役權の行使に就き、其都度地役權者の行爲を必要とするものを云ふ、例へば汲水權、通行權等は不繼續地役に屬す、何となれば、地役權者が汲水通行の爲めに通路を開設するも、地役權は當然行はるるにあらずして、之を行使するに就きては、特に地役相當の行爲を要すべければ也。(民二九一條)
- 英
- Uncontinual servitude
- 独
- unfortdauernde Servitut
- 仏
- Servitude non-continué
府縣
(ふけん)府縣は、多數の郡市を包有する地方自治體たると同時に、其國家の官廳たる知事が、官治行政機關として其行政を行ふ行政區劃なり、府縣は、府縣制實施以前、府縣令規則及び地方税規則に依りて地方獨立の經營を爲す事を認められ、人格を有したりしが、府縣制の施行によりて、法律は其明文を於て法人格を許與したり。(三三年三月法六四號府縣制二條)
府縣委員
(ふけんいいん)府縣が、府縣令の議決を經、内務大臣の許可を得て設くる所の名譽職にして、府縣知事の指揮監督を受け、府縣の財産營造物の管理、及び行政事務の一部を調査し、又は其委託事務を處理する者なり。(府縣制七七條)
- 英
- Commitee of Fu or Ken
- 独
- Comité von Fu oder Ken
- 仏
- Comité de Fu ou Ken
府縣監獄署
(ふけんかんごくしよ)府縣監獄署は、府縣に於ける地方行政廳の事務の一部局にして、監獄に關する事務を掌る所なり。
- 英
- Police prison office of Fu or Ken
- 独
- Fu- oder Ken-kerkeramt
- 仏
- Bureau de la prison de Fu ou Ken
府縣監獄支署
府縣監獄支署は、府縣に於ける監獄に關する事務を分掌する官署にて、府縣知事が内務大臣の認可を經て、府縣内必要の場所に置く者とす。
- 英
- Branch police prison office of Fu or Ken
- 独
- Fu- oder Ken-ker-kerzweigamt
- 仏
- Bureau de la prison détâché de Fu ou Ken
府縣金庫
(ふけんきんこ)府縣に屬する現金の出納及び保管を爲すを云ふ、府縣金庫を分ちて、府縣本金庫、府縣支金庫とす、本金庫は、府縣所在地に之を置き、支金庫は、府縣知事に於て必要と認むる地に之を置く、府縣本金庫事務の取扱を爲さしむる銀行は、府縣知事之を定む。(三三年三月内務省令七號府縣制郡制に依る費目流用並に財務に關する件一八條乃至二三條)
- 英
- Prefectural safe
- 独
- Präfectur-geldkiste
- 仏
- Coffre-fort de la pré-fecture
府縣會
(ふけんくわい)府縣會は、府縣内の市町村公民にして、市町村公民の選擧權を有し、且つその府縣に於て、一年以來直接國税を年額三圓以上を納むる者を以て選擧人となし、同上の條件にして、一年以來直接國税年額十圓以上を納むるものを選擧人となし、郡市の區域に依りて定まれる選擧區に於て、選擧せる議員を以て組織する、府縣の意思機關なり、各選擧區に於て選擧すべき府縣會議員の數は、府縣會の議決を經、内務大臣の許可を得て知事これを定む、其の議員の數は、府縣の人口七十萬未滿は、三十人を定員とし、七十萬以上百萬未滿は、五萬を加ふる每に一人を增し、百萬以上は、七萬を加ふる每に一人を增す、府縣會の議決すべき事項左の如し、□一歳入歳出の豫算の議定及び決算報告に關する事項、□二法律命令に定むるものを除く外、使用料、手數料、府縣税及び夫役現品の賦課徵收、□三不動産の處分並に買受、讓受、積立金穀等の設置及び處分に關する事項、□四歳入出豫算を以て定むるものを除く外、新に義務を負擔し權利を抛葉する事項、□五財産及營造物の管理方法を定むる事項、但し法令に別段の規定あるものは此限りにあらず、□六其他法律命令に依り、其の權利に屬する事項是也、尚以上議決の外、府縣令は左の權限を有す、イ其權限に屬する事項を府縣參事會に委任することを得、ロ法令に依り選擧を行ふこと、ハ府縣の公益に關する事件に就き、意見書を知事若くは内務大臣に呈出すること、□八官廳の諮問あるときは其意見を答申すること是也。(府縣制四條乃至六條、四一條乃至四五條)
- 英
- Prefectural assembly
- 独
- Präfecturversammlung
- 仏
- Assemblée de la préfecture
府縣會議員
(ふけんくわいぎいん)府縣會議員は、府縣會の構成員也、選擧によりて其資格を得るものとす、府縣會議員は、府縣内の市町村公民にして、市町村會議員の選擧權を有し且つ其府縣内に於て、一年以來直接國税年額十圓以上を納むる者を被選人とし、郡市の區域に依りて定れる選擧區に於て之を選擧す、選擧は無記名、單記投票の制を採る、即ち各選擧區に於て、選擧人は一人を選擧することを得るに止まり、又自己の氏名を投票に記載することを得ず、次に揭ぐる者は府縣會議員の被選擧權を有せず、之を罷めたる後一ケ月を經過せざるもの又同じ、□一其所屬府縣の官吏及び有給吏員、□二檢事警察官吏及び收税官吏、□三神官、僧侶、其他諸宗教の教師、□四小學校教員、□五選擧事務に關係ある官吏、□六府縣の爲め請負を爲す者又は府縣の爲め請負をなす法人の役員、(但し之を罷めたるものは直に被選擧權を取得す)等是なり、府縣會議員は、衆議院議員と相兼ぬることを得ず、府縣會議員は、名譽職とし、其任期は四年也。(府縣制四條乃至六條、九條乃至四〇條)
- 英
- Member of prefectural as-sembly
- 独
- Mitglied der Präfecturver-sammlung
- 仏
- Membre de l'assemblée de la préfecture
府縣會議長
府縣會議長は一名とし、議員中より選擧し、定期改選每に之を改選す、議長は、會議を總理し、會議の順序を定め、其日の會議を開閉し、議場の秩序を保持す、又議長は、議事の可否同數なるときは、其自ら決する處に依るの權を有す。(府縣制四七、四八、五七條、五一條乃至五三條)府縣會書記は府縣吏員にして、府縣知事之を任命す、書記は府縣會の會議錄を調製し、其他庶務を執行する者なり。(府縣制七三、七五條)
- 英
- Chairman of prefectural assembly
- 独
- Vorsitzender der Präfectur-versammlung
- 仏
- Président de l'assem-blée de la préfecture
府縣會書記
- 英
- Clerk of prefectural council
- 独
- Schreiber der Präfecturversammlung
- 仏
- Clerc du conseil de la préfecture
府縣會副議長
府縣會副議長は一名とし、議員中より之を選擧す、副議長は、議長の故障あるとき、議長に代りて其職務を行ふものとす、副議長は、定期改選每に之を改選す。(府縣制四七、五三條)
- 英
- Vice-president of prefect-ural assembly
- 独
- Vice-Präsident der Präfecturversammlung
- 仏
- Vice-président de l'assemblée de la préfecture
府縣會議員選擧規別
(ふけんくわいぎいんせんきよきそく)本規則は、明治二二年法律第六號を以て公布せられたるものなりしが、府縣制第一四六條に依り殆ど失效に歸したり。(府縣制一四六條)
- 英
- Rule of election for the members of prefectural assembly
- 独
- Wahlregel der Präfecturversamml-ungsmitglieder
- 仏
- Loi de l'élection des membres de l'assemblée de la préfecture
府縣會規則
(ふけんくわいきそく)此規則は明治一三年一五號布告を以て公布せられたるものなりしが、府縣制第一四六條により殆ど失效に歸したり。(府縣制一四六條)
- 英
- Rules of prefectural as-sembly
- 独
- Regel der Präfecturversamml-ung
- 仏
- Règles de l'assemblée de la pré-fecture
府縣官吏
(ふけんくわんり)府縣の職員也、即□一知事、□二事務官、□三警視、□四技師、□五屬、□六視學、□七警部、□八技手、□九通譯等之也、イ知事は勅任とす、内務大臣の指揮監督を受け、各省の主管の事務に就きては各省大臣の指揮監督を受け法律命令を執行し、郡内の行政事務を管理す、ロ事務官は四人奏任とす、但し内務大臣の指定する府縣に於ては、五人を置く事を得、知事の命を受け府縣事務を處理す、ハ警視は奏任とす、府縣の第四部に屬し、又は内務大臣の指定したる警察署の署長と爲り、上官の指揮を受け、其部署の事務を掌理す、ニ屬、視學、警部及び通譯は判任とす、屬及び警部は、各府縣を通じて四千八百一人を以て定員とし、其每府縣の定員は、内務大臣之を定め、其各官の定員は、内務大臣の認可を經て知事之を定む、視學は各府縣を通じ千九十二人を以て定員とし、其每府縣の定員は内務大臣之を定む、屬は上官の指揮を受け庶務に從事す、視學は上官の指揮を受け學事の視察其他學事に關する庶務に從事す、警部は上官の指揮を受け、警察事務を分掌し、部下の巡査を指揮監督す、通譯は上官の指揮を受け、翻譯、通辨に從事す、ホ技師、技手、警視及び通譯は、府縣の須要に依りて、俸給豫算定額内に於て之を置くことを得。(三八年四月勅令一四〇號地方官々制一條乃至三一條)
- 英
- Prefectural officials
- 独
- Präfecturbeamten
- 仏
- Officers de la pré-fecture
府縣債
(ふけんさい)府縣は、其負債を償還する爲め、又は府縣の永久の利益と爲るべき支出に要する爲め、又は天災事變等の爲め、必要ある場合に限り、府縣會の議決を經て、府縣債を起すことを得、府縣債は即ち府縣の公債也、府縣債を起すに就き、府縣會の議決を經るときは、併せて起債の方法、利息及び償還の方法に就ても、議決を經べきものなりとす。(府縣制一一七條)
- 英
- Prefectural loan
- 独
- Präfectur-schuld
- 仏
- Prêt de la préffecture
府縣參事會
(ふけんさんじくわい)府縣參事會は、府縣の第二議事機關なり、其目的は、府縣會の議決を補充するに存す、府縣參事會は府縣知事、府縣高等官二名及び名譽職參事會員を以て之を組織す、高等官にして參事會員たるものは、内務大臣之を命じ、名譽職參事會員は、府に在りては八名、縣に在りては六名とし、府縣に於て議員中より之を選擧す、參事會の職務權限左の如し、□一府縣會の權限に屬する事件にして、委任を受けたるものを議決するこも□二府縣會の權限に屢する事件にして、臨時急施を要し、知事に於て之を招集するの暇なしと認むるとき、府縣會に代りて議決すること、□三知事より府縣會に提出する議案に就き、知事に對し意見を述ぶること、□四府縣會の議決せる範圍に於て、財産及び營造物の管理に關し、重要なる事項を議決すること、□五府縣費を以て支辨すべき工事の執行に關する規定を議決すること、但し法令に別段の規定あるものは此限りにあらず、□六府縣會に係る訴願、訴訟及び和解に關する事項を議決すること、□七其他法令に依り其權限に屬する事項之也、府縣參事會は知事之を招集す、若し名譽職參事會員半數以上の請求ある場合に於て、相當の理由ありと認むるときは、知事は府縣參事會を招集すべし、參事會の會期は知事之を定む、參事會の會議は、傍聽を許さず、會議は、議長又は其代理者及び名譽職參事會員定員の半數以上出席するにあらざれば開會するを得ず、其議事は、過半數を以て之を決す、可否同數なるときは、議長の決する處に依るものとす。(府縣制六五條乃至七三條)
- 英
- Aldermen's committee of prefecture
- 独
- Präfecturausschusz
- 仏
- Comité d'alderman de la préfecture
府縣參事會議長
府縣參事會は知事を以て議長とす、議長は會議を總理し、其順序を定め、議場の秩序を保特す、議長故障あるときは、高等官參事會員議長を代理す。(府縣制六七條)
- 英
- Chairman of prefecturai executive committee
- 独
- Vorsitzender des Präfecturausschuszes
- 仏
- Président de la comité d'alderman de la préfecture
府縣制
(ふけんせい)自治團體たる府縣の行政に關する事項を規定したるものにして、府縣會の組織、權限、府縣參事會の組織、權限、其他府縣自治に關する權限を定めたるものなり。(三二年三月法六四號)
- 英
- Prefectural system
- 独
- Prä-fectursystem
- 仏
- Système de la préfec-ture
府縣税
(ふけんぜい)市町村に於ては、基本財産を積立つるの義務を有し、其收入を以て市町村費を支辨するを原則とすれども、府縣に於ては、財産を積立て之を維持するの義務なく、從つて、府縣費即ち其必要なる費用及び法律勅令又は從來の慣例に依り、府縣の負擔する費用をば、府縣税を以て支辨するを原則と爲すもの也、府縣税の納税義務者は住家を有するもの、三ケ月以上府縣に滯在する者、及び府縣内に於て土地家屋物件を所有し若くは使用し、又は營業所を定めて營業し、又は府縣内に於て特定の行爲を爲すものとす、而して所有者及財産營業者行爲に對し課税せらるる者は、常に一個人のみならず、法人と雖も其納税義務を免るるを得ず、課税物件は、營業、土地、家屋、物件、收入及び持定の行爲也。(府縣制一〇二條乃至一一六〇條)
- 英
- Prefectural tax
- 独
- Präfectur-steuer
- 仏
- l'impôt de la préfecture
府縣税徵收法
(ふけんぜいちようしうはふ)□一府縣税を徵收せんとするときは、府縣知事又は其委任を受けたる官吏、吏員は、市町村に對し、徵税令書を發し、市町村長は徵税令書に依り、徵税傳令書を調製し、之れを納税人に交付すべし、府縣知事又は其委任を受けたる官吏、吏員は、直に納税人に對し、徵税令書を發することを得、□二徵税傳令書を受けたる納税人は、其税金を市町村の收入役に拂込み、其領收書を得て納税の義務を了す、徵税令書を受けたる納税人は、其税金を府縣金庫に拂込み、其領收書を得て納税の義務を了す、市町村は其徵收したる府縣税を府縣金庫に拂込み、其領收書を得て税金納入の義務を了す、□三徵税傳令書を受けたる納税人、納期内に税金を完納せざるときは、市町村長は、其滯納の税目、金額及び滯納人の住所、氏名其他必要なる事項を記載し、之を徵税令書を發したる官吏、吏員に報告すべし、徵税令書を發したる官吏、吏員、前項の報告を受けたるときは、直に督促狀を發すべし、徵税令書を受けたる納税人、納期内に税金を完納せざるときも亦同じ、督促狀には、府縣知事の定めたる期間内に於て相當の期限を指定すべし、□四督促狀を發したるときは、手數料を徵收す、手數料額は、内務大臣の許可を得て、府縣知事之を定むに、市町村長をして督促狀を發せしめたるときは、手數料は之を其の市町村に交付すべし、□五納税人左の場合に該當するときは、徵税令書又は徵税傳令書を交付したる府縣税に限り、納期前と雖も之を徵收することを得、イ國税徵收法に依る滯納處分を受くるとき、ロ強制執行を受くるとき、ハ破産の宣告を受けたるとき、ニ競賣の開始ありたるとき、ホ法人が解散を爲したるとき、ヘ納税人脱税又は逋税を謀るの處爲ありと認むるとき是也、□六納税義務者、納税地に住所又は居所を有せざるときは、納税に關する事項を處理せしむる爲め、納税管理人を定め、郡長又は市長に申出づべし、其納税管理人を變更したるとき亦同じ。(三三年三月法八一號)
- 英
- Law of collection of pre-fectural tax
- 独
- Sammlungsgesetz der Präfectursteuer
- 仏
- Loi de la collection de l'impôt de la préfecture
府縣知事
(ふけんちじ)知事は、各省大臣の監督を受け、府又は縣と稱する行政區劃を以て其管轄とする獨任制の地方上級官廳なり、府縣は、一方に於ては地方自治團體なり、然れども其區域は、又知事が官治行政の機關として、其職權を行ふ行政區劃なり、知事の有する權限の重なるものは、□一内務大臣の指揮を受け、各省の主務に就きては各省大臣の指揮監督を承け、法律命令を執行し、部内の行政事務を管理す、□二部内の行政事務に就き、其職權若くは特別の委任に依り、管内一般又は其一部に府令若くは縣令を發すること、□三其發する命令に拘留、科料を附加し、又は拾圓以内の罰金を附加し、又は其命ずる處分を強制する爲め、十圓の過料を宣告すること、□四郡長又は島司に對し、監督權を行ふこと、□五非常急變の場合に臨み、兵力を要求し、又は警護の爲め、兵備を要するときは、師團長又は旅團長に移牒して、出兵を要求すること、□六所部官吏の進退賞罰に關する事務を掌ること。(刑四三〇條、三八年四月勅一四〇號地方官々制六條乃至一〇條、行政執行法四條)
- 英
- Local governor
- 独
- Statt-halter, Präfect
- 仏
- Préfêt
府縣廳
(ふけんちやう)府縣知事が其職務を執行する設營を云ふ、即ち府知事が其職務を執行する設營は府廳にして、縣知事が其職務を行ふ設營は縣廳なり。(三三年内務省令七號一九條二項)
- 英
- Prefectural office
- 独
- Präfectur-behörde
- 仏
- Bureau de la préfecture
府縣名譽職參事會員
(ふけんめいよしよくさんじくわいいん)名譽職參事會員は、府縣參事會の構成員なり、府に在りては八名、縣にありては六名とし、府縣會に於て議員中より之を選擧す、名譽職は、府縣議員定期改選每に之を改選す、但し名譽職參事會員は、後任者就任の日迄存在す、名譽職參事會員半數以上の請求ある場合に於て、相當の理由ありと認むるときは、議長(知事)は參事會を招集すべきものとす。(府縣制六五條乃至六八條)
- 英
- Honoraly members of executive committee of prefecture
- 独
- Ehrenmitglieder des Präfecturausschuszes
- 仏
- Membres honoraires du comité ex-écutif de la préfecture
府縣令
(ふけんれい)府縣知事が、部内の行政事務に就き、其職權又は特別の委任に依り、管内(管轄區域内)一般又は其一部に發する命令を云ふ。(三八年四月勅令一四〇號地方官々制七條)
- 英
- Prefectural order
- 独
- Präfectur-verordnung
- 仏
- Ordre de la préfecture
布告
(ふこく)布告には、右の二樣の意義あり、□一明治一九年二月勅令第一號公文式の制定以前に於て、國家が發する命令を布告と云ふことあり、例へば大政官布告と云ふが如し、即ち場合に於ては、布告は國家命令の一種の格式也、□二又法律命令を廣く官報又は其他の方法に依りて、國民に周知せしむる方法の意に用ひらるることあり、例へば法律命令は官報を以て布告すと云ふが如し。
- 英
- Government notice
- 独
- Regier-ungskunde
- 仏
- Notice du gouvernement
誣告
(ふこく)誣告とは、犯罪の事實に關し、不實の事を官に申告することを云ふ。(刑一七二條
- 英
- False charge
- 独
- falsche Anschuldig-ung
- 仏
- Calomnie
誣告罪
誣告罪の構成要件を擧ぐれば左の如し、□一人を誣告したること、本罪の客體は犯者なりやの問題に就きては、下の如き三説あり、ア本罪は誹毀の一種にして、其容體は誣告せられたる各個人なりと、イ本罪は司法權を侵害するの所爲にして、其容體は國家なりと、ウ本罪は個人の利益と國家の司法權とに對する侵害行爲にして、其容體は、誣告せられたる個人と國家也、以上三説の中最後の説の至當なること明也、即ち刑法には、人を誣告したる者は云々と規定するが故也、斯くの如く本罪の容體は、他人たる被誣告者と國家となるが故に、右の如き結果を生ず、あ自己を誣告するも本罪を構成せず、(他人を誣告したりといふことを得ざればなり)、い被誣告者は現に生活するものにして、且つ特定の人たることを要す、已に死亡したる人又は架空の人を誣告するも本罪を構成せず、然れども被誣告者に關し、其氏名を明にすることは必要にあらず、特に揭示せられたる狀況に依りて、其何人たることを確定し得ることを以て足れりとす、而して誣告とは、犯罪の事實に關し、不實の事を官に申告することを云ふ、更に此定義を分析れば、(A)申告すること、申告とは自ら發意したる報告を意味す、從つて證人、參考人又は被告人として、官署の訊問を受くるに際し、他人に關する不實の陳述を爲すも誣告といふことを得ず、然れども、例へば司法警察官又は檢事の取調を受くるに當り、其取調を受くる事項と全然關係なき事項に就き、不實の陳述を爲すときは誣告たることを得べし、而して申告の形式は、法律に限定せられざるが故に、必ずしも告訴告發の形式に依ることを要せず、匿名の投書又は密告に依るも、亦誣告たることを得、蓋し誣告の罪たる、告訴告發といふ法定の形式を侵害するものとして、之を處罰するに非ず、他人に關する不實の事項を申告して、事情を誤らしむる虞ある原因を與ふるの處爲を罰するにあれば也、但し申告の事實を證明すべき證憑を準備し、又は免罪の基本となるべき事實を證明すべき證憑を隱蔽する事を必要とせず、(B)官に申告すること、官とは、犯罪搜査の職責ある者を意味す、例へば檢事、警視總監、地方長官、司法警察官の如き是也、而して此等の官吏に申告するには、直接たると間接たるとを問はざるが故に、例へば巡査、憲兵卒の如き、犯罪搜査の職責なき官吏に申告するも、此等の官吏を介して、檢事又は司法警察官に申告の事項を覺知せしめたるときは、誣告と云ふことを得べく、其他の官吏又は普通人を利用して、犯罪搜査の職責ある官吏に申告するときも亦同じ、而して誣告は、申告の事項が犯罪搜査の職責ある官吏に覺知せられたるときを以て既遂となる、(C)申告の内容は犯罪事實たる事を要す、法文には、舊刑第二二〇條の「被告人を陷害する爲め僞證を爲したる者は、左の例に照して處斷す、□一重罪に陷らしむる爲め僞證したる者は、二年以上五年以下の重禁錮に處し、十圓以上五十圓以下の罰金を附加す、□二輕罪に陷らしむる爲め僞證したる者は、六箇月以上二年以下の重禁錮に處し、四圓以上四十圓以下の罰金を附加す、□三違警罪に陷らしむる爲め僞證した者は、一箇月以上三月以下の重禁錮に處し、二圓以上十圓以下の罰金を附加す」と記載したる僞證の例に照して處罰すとありて、舊刑二二〇條には、重罪、輕罪、違警罪に關する僞證に就きてのみ規定しあるを以て、本條に所謂誣告事實も、亦重罪、輕罪、違警罪に限らるるものと解せざる可らず、而して其申告事項は、特定の事項たることを要し、漫然非行あるが如く申告するも誣告といふことを得ず、次に申告の内容自體に於て、犯罪の構成要件、處罰條件又は訴訟條件の欠缺せること、又は公訴權消滅の原因たる事實、又は刑罰免除の原因たる事實の具備する事を明示せる場合に於ては、其申告は、法律上刑事の裁判手續を喚起するの原因と爲り得ざるが故に、本罪を構成せざるものとす、例へば被誣告者の責任無能力者たること、或は正當防衞權の行使として、他人を殺傷したることを申告するが如き、有罪破産に就きては、被申告者が、破産の宣告を受けたることを申告せざるが如き、犯罪が公訴時效に係ること、或は親屬間の相盜たることを申告するが如き、親告罪に就き、被害者其他告訴權者の名義を以て、告訴を爲さざりしが如き場合是也、(D)不實の事實たる事、此點は次に説明すべし、□二申告の内容は、客觀的に不實なること、誣告罪の構成條件としては、申告の内容が容觀的に事實に反することを要す、即ち犯罪に關する主要なる事實に就きて、詐りの主張又は隱蔽あること、而して假令申告の一部は眞實を包含するも、若し其事實が犯罪の構成條件の一を欠缺せること、又は公訴權の消滅したること、若くは訴訟條件欠缺の事實あるに拘はらず、之を默秘したるか、或は其刑を加重するの情況を僞り主張する場合に於ては、不實の申告として論ずることを得べし、(全く實存せざる風説を存在するが如く申告する場合をも包含す)、而して客觀的不實たる事を要するが故に、假令誣告の意思を以て官に申告するも、審理の結果其事實の存在したるときは本罪を構成せず、□三申告は、主觀的に不實なること、申告は客觀的に不實なるのみならず、主觀的にも不實なること、即ち犯人に於て、其申告の事項が、明に事實に違反せることを知覺したることを要す、而して申告者がその申告の内容に就き、眞僞を疑ひつつあるも、未だ明に事實に反することを知覺もざるときは、本罪を成立せしむることなし、以上の三要件を以て本罪を構成するものとなす、終りになほ本罪の犯者に就きて一言すれば、犯人に於て不實の申告たることを知りたることの外、更に左の事實を知りたることを要す、□一申告の事項は、處罰せらるべきものたることを知りたること、但し苟も處罰せらるべき所爲たることを知りたる以上は、其處爲は果して何々の罪を構成するや否やを識別したることを必要とせざるなり、□二其申告は、刑事に關する訴訟手續を惹起するの結果を生すべきことを豫想したることを要す、然れども犯罪決意の遠因如何は、本罪の構成に必要なきが故に、誣告者が自己又は第三者に對する犯罪の訴追を防ぐ爲め、又は刑の執行を免るる目的を以て、他人を誣告したる場合に於ても本罪を構成す、而して本罪は、申告の事項を官に知覺せしめたるときを以て既遂となるが故に、最初は善意を以て申告し、後に其不實たることを知りたるに拘はらず、猶申告の事實を眞實と主張するも、本罪を構成せず、但し僞證罪を構成することあるべし、而して誣告罪は僞證の例に照して處斷するものとす。(刑一七二條、一七三條、舊刑三五五條乃至三五七條)
不裁可
(ふさいか)法律の裁可とは、法律案に命令たるの效力を付與し、以て法律を完成する形式にして、我國に於ては、天皇之を裁可する事を憲法に明定せり、即ち裁可は、法律案を法律となすの行爲也、裁可者が裁可權を行ふには左の原則に從ふ、□一裁可を與ふるには、其目的物たる法律が、眞に議會の議決を經たるものなるや、又其議決に錯誤なかりしや否やを見ざるべからず、□二裁可は、之を與ふるか、與へざるかの二者其一にありて、法律案を修正して裁可するを得ず、何となれば、法律の内容は帝國議會の恊贊を經べきものなれば也、□三裁可者は、裁可を與ふるの權を有すると共に、之を與へざるの自由を有するも也、殊に裁可は、政府の原案を變更することなく、議會に於て恊贊を與へたる場合に於ても、なほ其法律案に對し裁可を與ふるを拒むことを得べし、□四裁可を與ふると與へざるとは全く自由にして、之を與へざる場合にも、裁可者は其事由を説明するの必要なし、而して不裁可とは、裁可者(天皇)が、其自由意思に依り、法律案を變じて法律となさざるの行爲なり。(憲法六條)
- 英
- Veto
- 独
- Veto
- 仏
- Veto
不在者
(ふざいしや)不在者とは、從來の住所又は居所を去り、その所在の不明なる者を云ふ、不在者には、生存の確實なるものあり、又生死不明の狀態にあるものあり、然れども、單に不在者といふ時は、失踪の宣告に依りて死亡を推測せられたる者、即ち失踪者を包含せず、(死亡の確實なるものを包含せざるは勿論也)不在者が其住所又は居所に、財産を殘したる場合に於て、之を管理する者なきとき、又は管理する者あるも、其管理宜しきを得ざるときは、其財産を滅失、又は毀損に至らしむるの虞あり、斯の如き結果を生ずる事は、本人の爲に不利益なること論を俟たず、又本人の財産の消長に利害の關係を有する者に、不利益を生ずるの虞なき能はず、例へば本人の債權者は、之が爲に共同擔保を減少し、本人の相續人は、相續財産を失ふに至る、又社會全體の經濟上より考察するも、一個人の財産が正當に保存せられ、又利用せらるることに留意すべきは至當なり、故に結局本人を保護する爲め、利害關係人を保護する爲め、併せて國家全體の利益を保持する爲め、不在者の財産に就き相當なる管理を爲すの必要を見る、之れ裁判所が財産管理人を任命して、其管理行爲を掌らしむ所以とす。(民二五條乃至二九條)
- 英
- Absentee
- 独
- Abwesende
- 仏
- Absent
負債主
(ふさいしゆ)負債主とは、金錢其他の債務を負擔する者即ち負債者を云ふ。(利息制限法五條〕
- 英
- Debtor
- 独
- Schuldner
- 仏
- Déhiteur
不作爲
(ふさくい)不作爲とは、或る結果の發生に對し、任意に之を防止せざるを云ふ、此場合に於ては、行爲の一要件たる意見の實行なるものは、身體の動作にあらずして、結果の發生を防止し得べき身體の動作を行はざること、即ち靜止を意味す、而して不作爲も、亦行爲に屬するが故に、機械的又は生理的強制に依らず、任意なる觀念に依りて定められたる行爲者の擧動なり、故に例へば倉庫の看守者が、強盜の爲に脅迫せられ、(毆打等の手段に依り)又は卒倒したるに依り、強盜を防ぐ爲に警鐘を報ずることを爲さざるときは、看守者の意思實行なるものは存在せず、從て此場合に於て、看守者の行爲ありといふことを得ず、之を要するに不作爲の觀念には、行爲者が或作爲を行ふの能力を有し、且つ吾人が要求する行爲にして行はれしならば、此結果の發生を防止し得るにも拘はらず之れを行はざりしことを要す、即ち作爲が結果の原因たる如く、不作爲は、或結果の發生を防止せざりしときに存す。(民四一四條等)
- 英
- Negative act
- 独
- verneinende Handlung
- 仏
- Acte négatif
扶助金
(ふじよきん)人を扶助する爲め與ふる金錢を云ふ、例へば陸海軍人の遺族其他官公吏の遺族に對し、官吏扶助料又は軍人恩給法により給與する金錢の如き之也、軍人左の各號の一に當りたるときは、其寡婦は扶助料を受くるの權利あるものとす、□一戰死し又は戰關に因る負傷の爲め死歿したるとき、□二公務の爲め傷痍を受け、若くは疾病に罹り、又ば戰地に於て、若くは公務施行中流行病に罹り死歿したるとき、□三退職恩給若くは免除恩給を受け、又は之を受くべき權利を有して死殁したるとき、又文官判任以上の者、左に揭ぐる事項の一に當るときは、其遺族は扶助料を受くるの權利を有す、□一在職十五年以上の者、在官中死亡したるとき、□二在官十五年未滿の者、公務の爲め死亡したるとき、□三恩給を受くるもの死亡したるとき。(二三年六月法四四號官吏遺族扶助法一條、二三年六月法四五號軍人恩給法二七條)
- 英
- Support
- 独
- Unterstützungsgeld
- 仏
- Gratification
扶助料
扶助料は、扶助金といふに同じ、唯扶助金といふときは、多くは一時的の性質を有し、例へば一時扶助金の如し、之に反して扶助料といふときは、修身間又は或年期間(例へば孤兒の成年に達すまでの如き)每年給與せらるるものなるが如し。(官吏遺族扶助法一七條二項、同法一條比較參照)
- 英
- Allowance
- 独
- Unterhalt
- 仏
- Allocation
不正
(ふせい)正義に違反することを廣く不正と云ふ、正は眞なり、誠なり、實なり、故に背德、詐欺、其他犯罪行爲は皆不正なりと謂ふべし。(舊刑三〇九條)
- 英
- Wrong
- 独
- unrecht
- 仏
- Injuste
不正品
正當なる權利に依りて得たるものにあらざる物品を不正品と謂ふ、例へば竊盜又は詐欺に依りて得たる金品物件は不正品なり。(二八年三月法一四號質屋取締法三條)
- 英
- Unfair thing
- 独
- unrichtiges Ding
- 仏
- Chose injuste
艀船配達
(ふせんはいだつ)艀船の乘組員等に宛てて電報を發したる場合に於て、之を艀船によりて配達することを云ふ、艀船による電報の配達を受けたるものは、配達の時より五分以内に、其電報配達人に依託して、更に電報を差出すことを得、電報の艀船配達の指定略符號は、歐文にてはBDと記し、和文にてはハホと記す。(三三年九月遞信省令四六號電報規則九、四七、五七、七〇、七二條)
- 英
- Delivery by ship
- 独
- Abliefer-ung vom Schiff
- 仏
- Délivrance par lenavire
附則
(ふそく)附則とは、主たる法則規定に對し、附屬的、補足的に設けられたる法規をいふ、刑法附則、刑事訴訟法附則、競賣法附則といふが如し、即ち刑法附則は、(刑法に對して)刑法に規定したる刑罰の執行方法等を定め、刑訴訟法附則は、刑事訴訟法執行以前に受理したる豫審の故障及び其故障の判決に對する上告の處斷方法等を定め、又競賣法附則は、競賣法施行の期日に關する事項を定めたるが如き是也。(一四年一二月太政官布告六七號刑法附則、二三年一〇月法九六號刑訴法附則、三一年六月法一五號競賣法附則)
- 英
- Supplementary rule
- 独
- ergän-zende Regel
- 仏
- Règle supplémentaire
附屬官職
(ふぞくくわんしよく)補助的機關を組織する一官吏が分掌する職務を云ふ、例へば各省の次官は、大臣の職務を補助する補助機關なるを以て、其職務は附屬官職なるが如し。
- 英
- Attached government position
- 独
- Nebenamtsgeschäft
- 仏
- Poste of-ficielle attachée
附屬的商行爲
(ふぞくてきしやうかうゐ)商行爲を分つて四種とす、絶對的商行爲、(例へば手形行爲の如し)相對的商行爲(例へば仲立營業の如し)附屬的商行爲及び推定的商行爲是也、絶對的商行爲とは、行爲夫れ自身に於て已に商行爲たるものを云ふ、相對的商行爲とは、行爲夫れ自身に於ては、、商行爲たるに不充分なるも、これを營業として爲すと云ふ事を附加するを要するもの也、即ち前者は、法定せる或一種の行爲に限り、後者は、營業といふ觀念を附加せる行爲を云ふものとす、而して所謂附屬的商行爲とは、其行爲の何たるを問はず、凡そ商人が營業の爲めにするといふ觀念伴ふときは、之を商行爲となす場合の商行爲也、換言すれば、商人が營業とする商行爲に附屬すべき行爲なるが故に、此名稱の存するものとす、例へば呉服商人が其營業の爲めに他店より物品を買入るるが如き場合に於ては、其買入れたるや自己の呉服營業の爲に行ふものに外ならざるを以て、斯かる場合を附屬的商行爲といふもの也、附屬的商行爲たるには、主觀的要素と、客觀的要素の二を備ふる事を要す、□一主觀的要素(商人)主觀的要素とは、商人が爲すといふ、觀念也、商人とは、自己の名を以て商行爲をなすを業とするものを云ふ、自己の名を以てといふは、自己の名義の意なりといふに外ならざるべく、業とするとは、營業とするとの意義を云ふ、故に商人以外のものが、如何に其營業に附屬する行爲をなすも、附屬的商行爲とはならざるものとす、□二客觀的要素(營業)、客觀的要素とは、營業の爲めにするといふ觀念也、營業とは、收入を得る斷へざる淵源となすの目的により、連續して行ふ多數の私法的行爲の意義にして、斯かる行爲の爲にするといふに過ぎず、附屬的商行爲は、營業の爲にするといふが故に、營業となすといふとは異り、其行爲は連續して行ふにあらずして、個々別々の行爲也、又營業の爲にすといふ意義は、已に存在せる營業の爲にすといふが如き狹隘なるものにあらずして、方に始めんとするものに就きても、其爲に爲す行爲は營業の爲にする行爲とす、此點に就きては、議論の存する處なれざも、之を一の商行爲なりと解するを正當とす、例へば方に從事せんとする營業を爲すに必要なる器具、家屋を購買し、又は使用人に就きて雇傭の契約をなすが如きも、皆附屬的商行爲たるに妨げなかるべく、又營業の爲にするといふが故に、商人が自己の營業の爲にするを必要とすべし、從つて他人の營業の爲にする行爲は、必ずしも商行爲にあらざる也。(商二六五條一項、四條、二六三、二六四條、民六二三條)
- 英
- Attached commercial act
- 独
- accessorisches Handelsgeschäft
- 仏
- Acte commercial accessoire
附屬法律
(ふぞくはふりつ)法律とは、法律案に對し帝國議會の協贊を經て、天皇の裁可公布したるものを云ふ、而して附屬法律とは、主たる法律に對し、附屬的關係を有するものを云ふ、例へば民法施行法は民法に對し、又商法施行法は、商法に對して何れも附屬法律なるが如し。(三一年六月法一一號民法施行法、三二年三月法四九號商法施行法)
- 英
- Accessory law
- 独
- Neben-gesetz
- 仏
- Droit accessoire
附帶
(ふたい)ある事項に對し、他の事項を附隨せしむることを附帶と云ふ、例へば控訴に對する附帶控訴、上告に對する附帶上告、公訴に對する附帶私訴と云ふが如し。(刑訴法二五九、二七八、四條、民訴四〇五條乃至四〇七條)
- 英
- Incident
- 独
- Anschlieszung
- 仏
- Incident
附帶控訴
(ふたいこうそ)附帶控訴とは、當事者の一方の私訴に附隨して、其相手方より提起する控訴を云ふ、第一審の終局判決に對しては、各當事者は、相手方に於て控訴を爲したると否とに拘らず、獨立の控訴を爲すことを得るは勿論なれども、必ずしも獨立の控訴を爲すことを要せず、附帶の控訴の方法によりても、不服を申立つることを得、而して獨立の控訴は、控訴期間經過後に於ては、提起することを得ざるのみならず、訴訟費用のみに就ての判決に對しては、獨立の上訴を許さざるものとす、然れども附帶控訴は、縱令控訴期間を經過したる後と雖も、口頭辯論の終結に至らざる間は、之を提起することを得べく、又訴訟費用のみに就ての裁判に對しても、亦之を提起することを得べし、尚一且自己の控訴を取下げたるときと雖も、之を提起することを得べきもの也、右の如く、附帶控訴は獨立の控訴を許さざるときと雖も、これを許す場合あれども、裁判の性質上、控訴によりて不服の申立を爲す事を得ざるものに對しては、附帶控訴をも提起することを得ざるや勿論なり、故に例へば、第一審に於て被告が缺席し、原告の申立に依りて缺席判決ありたるも、其缺席判決が原告の請求の一部を理由なしとして棄却したる爲め、原告が之に對して控訴を申立たる場合には、被告は他の敗訴の判決の部分に對し、附帶控訴を爲すことを得ず、蓋し此部分の判決に對しては、單に故障を以てのみ不服を申立つべきものなれば也、附帶控訴は、獨立の控訴と同じく、相手方の控訴の不服申立の範圍内に限らずして、其他の判決の部分に對しても爲すことを得べし、即ち相手方は、第一審判決の一部に對してのみ不服ありて、其部分の變更を求めたる場合と雖も、附帶控訴により他の部分の變更を求むることを得べし、何となれば、元來第一審判決に對する不服の程度を定むるは、控訴の要件にあらずして、苟も判決に對し、控訴を爲したる以上は、不服の程度の全部に屬すると、一部に限れるとを問はず、其事件全體が控訴申立の效力によりて、第二審裁判所に繫屬するに至るものなればなり、例へば控訴狀に、不服の程度を揭ぐるも、是唯準備事項に過ぎざるものにして、控訴人は、一旦此控訴狀に揭載したる不服の程度を變更して、口頭辯論に於て、其他の部分に對し變更を求むることを得べく、其他一旦口頭辯論に於てなしたる不服の程度を變更擴張することを得、故に附帶控訴に於ても、決して相手方の不服の程度内に限定せらるるものにあらざるは勿論、相手方の從參加人の起したる控訴にも、附帶控訴を爲し得ること勿論也、附帶控訴は、其附隨たる性質上の結果として、左の場合は其效力を失ふ、□一主たる控訴が、判決を以て不適法として棄却せられたるとき、即ち控訴の要件を缺くが爲めに、許すべからざるものとして棄却せられたるときは、控訴は不成立に歸するを以て、之に附帶すること能はざるなり、然れども控訴が、實體上理由なしとして棄却せらるる場合には、控訴は完全に成立せる場合なるを以て、附帶控訴は其成立を失ふべきものにあらず、缺席判決を以て、控訴を棄却したる場合も亦同じ、□二主たる控訴の取下ありたるとき、有效なる控訴の取下ありたるときは、恰も控訴なかりしと同一の狀態に復するを以て、附帶控訴は其效力を失ふは當然なり、故に相手方の承諾を得て取下を爲すべき時期に、相手方が之に同意したるときは、即ち自己の附帶控訴を抛棄するの結果を生ず、右の例外として、被控訴人が其控訴期間内に、附帶控訴を爲したるときは、爾後主たる控訴が、適法として棄却せられ、若くは有效に取下げられたるときと雖も、獨立の控訴と見做され、其效を失はざるものとす、隨つて此場合には、之に控訴の規定を總て適用すべく、即ち初め控訴人は控訴を棄却せられ、又は取下たるに拘はらず、被控訴人として、附帶控訴をなすことを得るに至る、但し此の場合に於ても、附帶控訴人が、元來獨立の控訴を爲すこと能はざる場合には、右法律上の推定を生ぜざるは勿論とす、例へば訴訟費用の點のみに就き控訴期間内に附帶控訴を爲したるとき、又は一旦主たる控訴を起し、之を取下げたる後なるときは、獨立の上訴權を喪失したるものなるを以て、右の推定を受くること能はざるものとす、右の如く附帶控訴が獨立の控訴と見做さるると否とは、其提起の時期が、控訴期間内にありや否やによりて決すべきものなり、附帶控訴の申立は、通常答辯書中に之を揭ぐるものとす、附帶控訴の申立が、答辯書中に揭げらるる時は、其答辯書は、準備書面たる性質を有するに止らず、控訴狀と同じく、訴訟を第二審に繫屬せしめ、且つ訴訟關係の控訴審に於ける範圍を一定するの性質を有す、又附帶控訴は、答辯書以外の他の書面を以て之を申立つることを得べし、而して附帶控訴の申立を揭げたる答辯書中、其他の書面は、之れを控訴人に送達すべきものなり、而して此送達によりて、初めて附帶控訴なるものが、訴控人に對して有效に成立し、訴訟の範圍を一定するものとす、控訴に對し、被控訴人より附帶控訴を爲したる場合と雖も、其控訴は元來一箇にして、二箇の訴訟相立對するものにあらず、從つて控訴及び附帶控訴に就きての辯論は、其形式は固より、性質に就ても一箇の辯論なりとす、故に裁判所は、附帶控訴のある場合と雖も、判決は、一箇の判決を以て之を裁判せざるべからず、而て此場合は、辯論及び裁判の併合と同視すべきものにあらずして、元來一の訴たるものなり、以上は民事訴訟に於ける附帶に就て述べたるが、刑事訴訟に於ける附帶控訴に就ても、略ぼ同一なりとす。(民訴四〇五條乃至四〇八條、刑訴二五九條)
- 英
- Incidental appeal
- 独
- An-schluszberufung
- 仏
- Appel incident
附帶私訴
(ふたいしそ)犯罪に依りて生じたる損害の賠償、贓物の返還を目的とする請求を云ふ、(私訴の部參照)故に其性質は、純然たる民事上の請求也、從つて之を民事裁判所に提起することを得べしと雖も、元來私訴は犯罪の爲めに生じたるものに外ならざるが故に、犯罪を處斷する刑事裁判所に、之が請求を爲す事を許すときは、裁判一途に出で、諸多の關係上便宜多きを以て、刑事裁判所に之が請求を許すものとせり、附帶私訴とは即ち此謂也、公訴と附帶私訴との相互の訴訟上の性質を見るに、公訴は主たるものにして、附帶私訴は從たるものなり、此性質よりして、刑事の訴訟手續を以て、蒐集したる訴訟材料を以ては、私訴の請求の成立及び範圍を定むるに足らざるときにも、公訴の裁判を爲すに熟すれば、公訴の取調を終了し、公訴の裁判を爲す、此場合に於て、私訴は之を民事裁判所に移すを至當とすと雖も、刑訴法に於ては、之に就き規定を設けざるに依り、附帶の原因を失ふに至るにも拘はらず、私訴の裁判を爲さざるべからず、又之と同じく、附帶の性質として、被告人無罪又は免訴となりたるときは、私訴を民事裁判所に移すを當然とするも、亦私訴に就き、本案判決を爲ずべきものとせり、右に述べたる處の場合に在りては、私訴は、其附帶の原因を失ひたる時と雖も、本案の判決を爲すべきもの也、之に反して、公訴に就き、管轄違又は公訴不受理の言渡ありたる時は、私訴に就ても同一趣旨の裁判を爲すべきものとす、是附帶私訴の性質より來る當然の結果なり、私訴は控訴に就き、第二審の判決あるまでは、何時にても附帶して提起する事を得べし、又豫審中に於ても、私訴を申立つるは妨げなきものとす、私訴を公訴に附帶せしむるときは、其金額の如何又は土地の管轄如何に拘はらす、公訴裁判所の管轄に屬するものせり、私訴を公訴に附帶せしむるには、書面を提出するを要せず、通常の文書を以て之を提起するを得べく、又口頭を以て爲すことを得べし、又印紙の貼付を要せざるものとす、私訴を爲すの權は、左の事項に因りて消滅す、□一抛棄又は和解、□二確定判決、□三時效、時效は公訴の時效と其期間を同うするを以て、違警罪に對する私訴時效は六箇月、輕罪に對する私訴時效は三年、重罪に對する私訴時效は十年によりて消滅するものとす。(刑訴二條乃至五條、七、八條)
- 英
- Incidental private appeal
- 独
- Anschluszprivatberufung
- 仏
- Appel privé incident
附帶上告
(ふたいじやうこく)上告は、第二審裁判所の終局判決に對し、法律の適用の點に就き、其確定以前に法定の方式に從ひ、上告裁判所になすべき不服申立の方法也、而して附帶上告は、上告に附隨してなすべき不服申立にして其内容は、附帶控訴と略ぼ同一也、即ち自己が上告の取下をなしたるとき、又は上告期間の經過したる後と雖も、未だ上告判決の終結せざる間に於ては、何時にても之を爲すことを得べく、又主たる上告が、不適法によりて棄却せられたる場合に於ても、附帶上告が、苟も上告期間内に提起せられたるものなるときは、主たる上告の取下如何に拘はらず、獨立の上告として其審理を受くることを得べし、又上告と附帶上告とが併存する場合に於ても、上告は一なるが故に、裁判所は、唯一個の判決を爲すべく、其他附帶控訴に於て述べたる處と同一なり。(民訴四四二、四四三條、刑訴二七八條及附帶控訴の部參照)
- 英
- Incidental revision
- 独
- An-schluszrevision
- 仏
- Revision incidente
附帶請求
(ふたいせいきう)附帶請求とは、前に請求したる事件に對し、其後附屬的に請求することを云ふ、例へば原告が、被告に對する貸金の請求を裁判所に提起したる場合に於て、其後其金員の利息を請求するが如きは、所謂附帶請求に屬するものとす、從つて被告は、之に對して異議を主張することを得ざるものとす。(民訴一九六條)
不當
(ふたう)道義に悖り、又は法に違反し、其他正當ならざることを不當と謂ふ。(民訴三八條)
- 英
- Unlawful
- 独
- nnrichtig
- 仏
- Illégal
不當處分
凡そ處分とは、國家機關が、法規の範圍内に於て、特定の事件を規律するの目的を以て發する意思表示なり、而して不當處分とは、法に背反するの處分なり、例へば人が正當なる權利を有するにも拘はらず、行政官廳が其權利を無視するが如き之れに屬す、官廳の不當處分に對しては、救濟の道を開けり、即ち訴願、行政訴訟の如し。
- 英
- Illegal measures
- 独
- un-gesetzliche Verfügung
- 仏
- Dispositon illégale
不當辨濟
(ふたうべんさい)債務辨濟の名義を以て、給付を爲したる場合に、事實辨濟を爲すべき債務の存せざりし場合は、不當利得の原則に依り、給付者は、其給付の取戾を爲すことを得、之れを名けて不當辨濟の取戾若くは非債取戾と稱す、所謂不當辨濟の場合に、之を次の如く分別するを便とす、□一債權者にあらざる者が辨濟を受けたる場合、此場合には、始めより全く債務關係の存せざりし場合なるも、一旦債務關係は存在せしも、後に至りて消滅したる場合なるとを論ぜず、又債務者が其債權者にあらざる者に辨濟したる場合なると、全く債務を負擔せざる者が、債權者にあらざる者に辨濟したる場合なるとを問はず、皆之れを包含す、而して此等の場合に於て、債務の辨濟として、或給付を爲したる者は、辨濟を受けたる者に對して、不當利得の返還を請求することを得るは論を俟たず、然れども、給付者が其給付を爲すの當時、債務の存せざることを知りたる場合に於ては、其受領者の意思の善惡を問はず、之れに對して其返還を請求する事を得ず、蓋し法律は、任意の行爲に干渉せざるを原則とし、唯これに干渉するは、其行爲が公の秩序又は善良の風俗に反するときに限る、今債務の存せざる事を知りながら、故らに債務の辨濟として、或給付を爲したりとせんか、これ自ら損失を甘受したるものに外ならず、而して斯くの如き行爲は、固より公の秩序又は善良の風俗に反するものにあらざるが故に、法律は濫にこれを干渉して、其給付を取戾さしむべき理由なし、若し夫れ給付者の自ら損失を被むることを甘諾したるにあらずとせば、これ全く心神を喪失せるものにして、意思能力を缺けるものと云はざるべからず、此の如き場合は、其行爲の全く無效にして、不當辨濟の問題を生ずることなく、不當利得一般の原則に從て、之れが取戾を爲すことを得べきのみ、不當辨濟者が、不當利得の返還を請求せんとするには、債務の存在せざりしことを證明せざるべからざることは言を俟たず、然れども、右の事實を證明したる以上は、債務の存在せざりしことを知らずして辨濟したる事實は之を證明する事を要せず、蓋し辨濟者は、債務の辨濟として給付を爲したるものなるを以て、既に債務の存在せざることが證明せられたる以上は、其辨濟の錯誤に基因することは、一應證明せられたるものと云はざる可らざれば也、從つて受領者に於て、不當利得返還の請求を斥けんとせば、自ら辨濟の錯誤に基かざりしことを證明せざるべからず、□二債權者が、債務者にあらざる者より債務の辨濟を受けたる場合、債務者にあらざる者と雖も、他人の負擔せる債務の辨濟を爲すことを得るを以て原則とす、從て、他人の債務を辨濟する意思を以て、之が辨濟を爲したる時は、之を以て不當利得と稱すべきにあらざるが故に、不當利得返還の問題を生ずることなし、然れども、他人の債務を自己の債務と誤認し、若くは甲に對する債務を、乙に對する債務なりと誤認して、辨濟を爲したるときは、所謂法律上の原因なくして、辨濟をなしたるものに外ならざるを以て、不當利得一般の原則に依り、之が返還を請求することを得べきは勿論とす、然れども、已に債權者が、善意を以て債權の證書を毀滅し、擔保を抛棄し、又は時效に因りて其債權を失ひたる場合に於ては、辨濟者は受領者に對し、辨濟として給付したるものの返還を請求することを得ず、蓋し債權者は、其債務者にあらざる者の爲したる辨濟を、有效に受領することを得るが故に、債權者が其辨濟の錯誤に因ることを知らずして、之を受領し、其結果證書を毀滅し、擔保を抛棄し、又は一時效期間を經過することあるも、債權者に於ては毫も咎むべき點なし、若し此場合に於ても、なほ辨濟をして無效ならしめんか、善意の債權者は、之れが爲めに、意外の損害を被むるに至らん、尤も債權者は、辨濟者に對して、損害賠償を請求し得ざるにあらずと雖も、損害賠償の訴權なるものは、實際に於て往々滿足なる結果を收む可らざるが故に、民法は、受領者を保護せんが爲め、上述の如き便法を設けたり、□三債權者が、債務者より辨濟期に至らざる債務の辨濟を受けたる場合、此場合は、更に之を細別して左の二となすを得、ア債務者が辨濟期に至らざる事を知りつつ辨濟を爲したる場合、之債務者自ら期限の利益を抛棄したるものと認むべきものなるを以て、債權者に對し、其返還を請求するを得ざるは論を俟たず、イ債務者が辨濟期に到りたるものと誤信して辨濟したる場合、此場合は、債權者の善意なると惡意なるとを問はず、債務者は辨濟として給付したるものの返還を請求する事を得ずと雖も、債權者の善意なると惡意なるとの區別に從ひ、不當利得一般の原則に依り、辨濟に因りて受けたる利益の返還を請求することを得、換言すれば、辨濟其のものは有效なりと雖も、其辨濟の爲めに債權者の得たる利益は、之れを返還せざるべからず、例へば金錢債務の債權者が、其債務の辨濟到來前一ケ年前に其辨濟を受けたるときは、之が爲めに一ケ年分の利息を取得したるものなるが故に、之が返還を爲さざるべからざるが如し、蓋し純理上より論ずるときは、右の場合の辨濟は、債務の本旨に從ひて爲したるものにあらざるが故に、眞の辨濟と云ふを得ざるのみならず、殆ど非債の辨濟と同一視し得ざるにあらず、從つて辨濟者は、不當利得の原則に依り、其返還を請求し得るものと云はざるべからざるが如し、然れども退いて考ふれば、債務關係は現に存在し、これが辨濟期限は早晩到來すべきものなり、然るに、若し其辨濟を以て全然無效となし、これを取戾さしめ、更に又辨濟を爲さしむるが如きは、徒に煩雜を加ふるに過ぎず、之れ民法が、實際の便宜に基き右の如き規定を設けたる所以也。(民七〇五、七〇七、四七四、九〇、一三六、七〇、六四〇四條)
- 英
- Illegal payment
- 独
- ungesetz-liche Zahlung
- 仏
- Paiement illégal
不當利得
(ふたうりとく)不當利得とは、法律上の原因なくして、他人の財産又は勞務に因り、利益を受け、これが爲めに他人に損失を及ぼすことを云ふ、故に權利發生の一原因とす、蓋し權利の發生、移轉又は消滅は、必ずや法律上一定の原因に由る事を必要とす、故に法律上の原因なくして、他人より利益を取得し、以て其他人に損失を及ぼすことを得べきものに非ず、之れ不當利得の原則の由つて起る所以也、以下分説すれば、□一法律上の原因なきことを要す、法律上の原因に基き、他人の財産又は勞務に因りて、利得を受くることの不當利得にあらざるは、多言を要せず、不當利得たるには、必ずや法律上有效なる原因なくして、利益を受けたる場合ならざるべからず、而して法律上有效なる原因なき場合に、尚初より全く原因の存せざる場合、無效の原因の存する場合及び有效なる原因存在せしも、後日遡及的に無效に屬したる場合をも包含す、□二他人の財産又は勞務に因りて利益を受けたることを要す、自己の得たる利益が、他人の財産又は勞務に原因せざるときは、從令之れが爲めに他人に不利を及ぼすことありとするも、決して不當利得を生ずることなし、例へば自己の商業大に繁盛に赴きて、巨利を占むるに至り、其結果、他の同業者は其得意減じ、これが爲めに損失を受くるに至るも、其受益者を以て、不當利得を爲したるものと稱すべきにあらず、これに異なり、事實債權者にあらざる者が、債權の辨濟として他人より金錢を受けたるときは、即ち他人の財産に因りて利益を受けたるに外ならざるが故に、其受益者は即ち不當利得者なり、而してここに所謂利益とは、財産上の利益を云ふ、苟も財産上の利益ならんか、啻に積極的に自己の財産を增加する場合のみならず、なほ消極的に財産の減少することを免れたる場合も、亦利益を受けたるものといふべし、□三他人に損失を及ぼすことを要す、從令法律上の原因なくして利益を受くるも、これが爲めに毫も他人に損失を及ぼざざるときは、これを以て不當利得と稱すべきにあらず、何となれば、縱令自ら利得するも、他人に損失を及ぼさざる以上は、不當に利得を爲したるものといふべからざれば也、例へば、余の宅地の近傍に、停車場の設けられたるが爲めに、余の宅地は、大に價格を增加するに至るとするも、何人もこれが爲めに損失を被らざるが故に、余を以て不當利得者と爲すべからざるが如し、茲に所謂損失とは、積極的に他人の財産に減少を來したる場合は勿論、消極的に財産の增加を妨げたる場合を包含するものとす、以上三個の要件を具備するに於ては、不當利得を構成し、受益者は被損者に對して、其利得を返還するの義務を負ふべきものとす。(民七〇三條乃至七〇八條)
- 英
- Unjust enrichment
- 独
- un-gerechtfertigte Bereicherung
- 仏
- Enriche-ment injuste
負擔
(ふたん)法律上人が、他人に對して義務を有することを負擔と謂ふ、例へば甲が乙より一萬圓の金員を借用したりと假定せば、甲は乙に對して、右金圓の債務を負擔すといふが如し。(民二五三、四三二、四三六、四三八、四四二條、憲法六二條、刑訴法二。一條)
- 英
- Responsibility
- 独
- Last, Belast-ung
- 仏
- Responsabilité
負擔付贈與
(ふたんつきぞうよ)贈與は當事者の一方が、自己の財産を無償にて相手方に與ふる意思を表示し、相手方がこれが受諾をなすに因りて效力を生ずる契約なり、□一贈與は無償行爲なり、無償行爲とは、當事者の一方が、相手方より對價得ずして、これに給付を爲すを云ふ、所謂對價とは、當事者の一方が、反對給付と同一の價格を有するものとして、取扱ひたる給付を云ふ、斯の如く對價は、當事者雙方が、反對給付と同一の價格を有するものとして、取扱ひたるものなりと雖も、實際之と同一の價格を有する事を必要とせず、換言すれば、何人も反對給付と同一の價格ありと認むるを得べき事を必要とせざるなり、故に當事者の一方が、急迫の事情に依り、高價の物を僅少の金錢と換へて之を相手方に交付したる場合に於ては、其代價は物の價格と相當せずと雖も、當事者雙方が、之を物の價格に相當するものとして取扱ひたるものなるが故に、此場合に於ては、贈與の存するものにあらずして、賣買の成立するものに外ならず、□二贈與は財産權の授受を目的とするもの也、贈與は當事者の一方が、自己に屬する財産權を、無償にて相手方に與ふるを以て其目的となすが故に、當事者の一方が、自己の資産を減少し、以て相手方の資産を增加するときと雖も、若し當事者雙方の間に於て、財産權の移轉を來たさざるときは、贈與の成立を來すことなし、故に無償にて他人の債務を辨濟し、又は債務者に對して其債務を免除するが如きは、以て贈與と爲すべからざるものとす、斯の如く、贈與を以て財産權の移轉を目的とする契約となせるは、贈與を最も狹き主義に解したるものにして、我民法に於ける贈與は、無償行爲の一小部分を爲すものに外ならず、□三贈與は契約也、贈與は契約なるが故に、受贈者の意思に反して贈與を爲すことを得ざるは勿論とす、又贈與は、契約として、法律行爲の一種なるが故に、時效の完成を妨げずして、他人をして財産權を取得せしむるは、贈與たるを得ず、贈與は財産權の移轉を目的とするものとせば、故らに時效の完成を妨げざるは、決して贈與にあらざること明なり、而して負擔付贈與とは、受贈者が贈與者又は第三者に對し、給付を負擔する場合に於ける贈與を云ふ、贈與に付したる負擔は、贈與の對價にあらざることを必要とす、何となれば、若し受贈者の負擔にして對價なるときは、契約をして贈與の性質を失はしめ、これをして有償契約たらしむるに至るべきを以て也、故に負擔付贈與の場合に於ては、受贈者の負擔する給付は、當事者雙方が、これを以て贈與者の負擔する給付と同一の價格を有するものとして、取扱ひたるものにあらざることを必要とす、負擔付贈與の場合に於ては、雙務契約の規定を適用すべきものとす、故に當事者の一方が、履行を爲さざる場合に於ては、相手方は、其債務の履行を拒むことを得べく、又其契約の解除をなすことを得べし、贈與者は、單純の贈與の場合に於ては、本則として物又は權利の瑕疵又は欠缺に就き、擔保の責に任ぜずと雖も、負擔付贈與の場合に於ては、受贈者の負擔する對價の限度に於て、擔保の責に任ずるものとす、負擔付贈與は、右に述べたる外、贈與に關する契約に從ふものとす、故に書面に依らずしてこれを取結びたる場合に於ては、其取消をなすことを得る也。(民五四九條乃至五五三條)
- 英
- Gift with obligation
- 独
- Schenkung mit Last
- 仏
- Donation avec l'obligation
負擔付遺贈
(ふたんつきゐぞう)凡そ相續人は、遺留分(遺留分とは、被相續人が無償に處分する事を得ざる財産の部分を云ふ)を害せざる範圍内に於て、其財産を處分する自由を有するを以て、遺言に依り、其財産の全部又は一部を他人に與ふることあるべし、これを稱して遺贈と謂ふ、而して負擔付遺贈とは、遺贈の目的の價格を超えざる限度に於て、其負擔したる義務履行の責に任ずるものを云ひ、從つて其以外に於ける義務履行の責任あるものにあらず、是當事者の意思に適合するものといふべし、負擔付の遺贈を受けたる受遺者、これが承認を爲さずして、遺贈を抛棄したるときは、負擔の利益を受くべき者に於て、自ら受遺者と爲ることを得べし、これ負擔の利益を受くべき者が、永く不確定の地位にあることを防ぐの必要あるを以てなり、又負擔付遺贈の目的の價格が、相續の限定承認又は遺留分回復の訴に依りて減少したるときは、受遺者は、其減少の割合に應じて、負擔したる義務を免るるものとす、但し遺言者が其遺言に別段の意思を表示したるときは、其旨に從ふべきは勿論とす。(民一一〇四、一一〇五條)
- 英
- Legacy with obligation
- 独
- Vermächtnisz mit Last
- 仏
- Legs avec l'obligation
附置
(ふち)附置とは、附屬、設置の略語なり、即ち一物に對して他の一物を具ふることを云ふ、例へば各裁判所に檢事局を附置すといふが如し。(三三年二月法六號裁構法六條)
- 英
- Accessory
- 独
- aocessorisch
- 仏
- Accessoire
附遲滯
(ふちたい)遲滯の責に任ぜしむること、即ち債務の辨濟を怠り、又は辨濟期に辨濟を受くるを拒む場合に生ず、從て附遲滯には債務者の場合と、債權者の場合との二あり、(甲)債務者の附遲滯、債務者が履行すべき時期の到來したるに拘らず、履行せずして其時期を經過したる時は、之を稱して遲滯にあるものと謂ふ、履行すべき時期とは、債務者に履行の責任を生ずる時期を云ふ、(不履行の部參照)債務者の履行すべき時期は、確定期限の債務に在りては、其期限の到來したる時、又不確定期限付の債務に在りては、債務者に於て其期限の到來したる事を知りたる時、又期限を定めざる債務に就きては、債權者の請求を爲したる時とす、若し債務者が履行せずして、此等の時期を經過したるときは、其時期の到來したる時より、遲滯の責に任ず、(即ち附遲滯也)不履行は、不法に債權者をして、當然享有すべき利益を完うするを得ざらしめ、又は全くこれを喪失せしむるものなり、法律を以て債權を保護する所以のものは、此利益を完ふする爲め、又此喪失を償ふ爲め必要なる制裁を設くるにあり、債務者の不履行より生ずる第一の制裁は、債權者をして、裁判所に強制履行を求むることを得せしむるにあり、第二の制裁は、債務者をして不履行より生ずる損害の賠償を爲さしむるにあり、尚注意すべきは、凡そ債務者の責に歸すべからざる原因の爲に、債權の目的物たる特定物が滅失又は毀損せるときは、債務者は之に對して何等の責任を負ふことなし、然れども、債務者が遲滯にあるときは、此原則を適用すること能はず、其損害負擔の責任は一變して、債務者に歸するものとす、例へば京都の商人甲が、生絲を汽車便に依りて、三月一日迄に東京に送付すべき債務を負擔せる場合に、若し其確定期限たる三月一日を經過したるときは、甲は、直に遲滯の責にありて、而して其後汽車に積込みたるに、不幸にして汽車が不可抗力の爲めに顚覆し、其生絲の全部が滅失したるが如き場合に於ては、債務者が遲滯の責あるものなるが故に、其損害は債務者たる甲に歸し、生絲滅失の損害を負擔せざるべかざるに至る、尤も縱令遲滯なくして適當なる時期に履行するも、尚同一の損害を免かるる能はざる事を證明することを得ば、債務者は、其遲滯の責を免かるることを得る也、故に前例に於て、三月一日以前より不可抗力の繼續して、縱令期限内に荷積を爲すも、目的物の滅失すべかりしことを證明せば、債務者は其損失負擔の責任を免かるるものとす、債務者の遲滯の責任は、左の場合に於て消滅するものとす、□一債務の履行又は復行の提供、□二遲滯に對する債權者の承認、即ち債權者は其利益を抛棄して、新に期限の猶豫を與ふるときは、期限は之が爲に更改せられ、其新なる期限の到來までは、更に遲滯の責任を生ずることなし、□三債權其ものの消滅、(乙)債權者の遲滯、債權者が、若し適當なる時期に於て、債務者の爲したる履行若くは履行の提供を受くることを拒み、又は之を受くること能はざるときは、債務者は、此履行若くは履行の提供ありたるときより、遲滯の責に任ずべきものとす、而して債務者の適當なる覆行の提供とは、要するに債務の本旨に從ひて適當なる場所、時期及び方法に於て、現實にこれを爲すべきものにして、債務者が此の適當なる履行の提供を爲したるに拘はらず、債權者が其受領を拒み、又は受領不能の事實あるときは、債務者は不履行の責を免がるるのみならず、債權者は遲滯の地位に立ちて、債務者に被らしめたる損害の賠償を爲さざるべからず、抑も債務者の遲滯と、債權者の遲滯とは、其性質に於て大に異る所あり、即ち債務者の遲滯の效果として、其最も重要なるものは、強制履行及び履行に代るべき損害賠償なるも、之に反して債權者は、債務者に對して其履行を受けざるべからざる義務あるに非ず、即ち義務者の地位にあらずして、權利者の地位に在るもの也、從つて其遲滯の效果としても、履行の受領を強制せらるべきものにあらず、其債務者に於て、其責任に係る一切の行爲を完了して、自己の債務の免脱を得んとするに、債權者自ら其受領を拒みながら、債務者に對して不履行者と認め、加重の義務を負はしむるは頗る失當なるを以て、法律は此の正當なる履行の提供ありたるより、債務者をして、不履行に因りて生ずべき一切の責任を免かれしめ、且つ債務者が受領せざりしが爲め、債務者に被らしめたる損害の賠償を請求することを得せしめたり、之れ債權者の遲滯と異る要點なりとす、而して其遲滯は、債權者の故意又は過失に出でたると否とを問はず、又病氣其他、天災、事變等の爲めに、債權者が履行の場合に立會ふこと能はざるが爲め、其提供を受くること能はざる場合なると否とを問はず、等しく遲滯の效力を生ずるものとす、何となれば、債務者に於て爲し能ひ、又は爲さざるべからさる總べての行爲を完了したるに、尚之に對して不履行の責任を負はしむるは、遲滯の制度を設けたる主旨に反するのみならず、其履行を受くること能はざりしは、全く債權者の側に存在したる事由の爲に原因したるものなるが故に、債權者の過失の有無を問はず、之より生ずる責任は、債權者に於て自ら負擔すべきや理の當然なれば也、債權者の遲滯の效果の重要なるものを擧ぐれば左の如し、□一債務者は、債務の不履行より生ずる一切の責任を免除せらるものとす、故に金錢の給付を爲すべき債務者が、履行を遲滯する時は、遲延利息を支拂はざる可らざるも、債權者が遲滯に在るときは、債務者は、此義務を免るるが如し、□二債權者が受領せざりし爲め生じたる債務者の損害は、之を賠償せざるべからず、即ち債權者が受領せざりしが爲め、遂に無益に歸したる提供の費用、又は其後債務の目的物を保存貯藏するに付き、當然要すべき費用の如きは、債權者に於て、之れを負擔せざるべからざるが如し、□三債權の目的が、特定物の引渡なるときは、債務者は、其引渡を了する迄は、善良なる管理者の注意をして其物を保管せざるべからず、然れども債權者が遲滯に在るときは、債務者は斯かる嚴格なる義務を負ふ事なし、蓋し債務者は、自己の債務を履行するに付き、必要なる行爲を完了したるにも拘はらず、債權者が故意に其履行を受けざるが爲め、物の引渡を爲す能はざるものなれば、此場合に於ても、なほ債務者に同一の義務を負はしむるの理なければ也、故に此場合には、債務者は、自己の財産に於けると同一の注意を以て其物を保管するにて足るものとす、次に債務者の遲滯の效果は左の場合に消滅するものとす、□一債務の消滅、□二債務者の利益の抛棄、例へば債務者より新に履行の申込を爲し、債權者之を受領したるとき、又は當事者の同意を以て更に期限を延長したるが如し、□三債權者が、債務の履行を受領する意思表示を爲したるとき、この場合に於ては、債權者が履行を受領するの意思表示を爲したる時より、其消滅に於て遲滯の責を免かるるものとす、然れども其以前に於て、巳に發生したる遲滯の責任は、決して免脱せらるべきものにあらず、而して此場合に、債務者が債權者の催告に應じて履行を爲さざるときは如何といふに、遲滯の責任は、一轉して債務者に歸すべきものとす。(民四一二條乃至四二一條、四〇〇條)
- 英
- Responsibility for delay
- 独
- Aufschubsverantwortlichkeit
- 仏
- Rés-ponsabilité pour le délais
不知の陳述
(ふちのちんじゆつ)裁判所に於てなす審問に對し、其事實を知らざることを陳述することを不知の陳述と謂ふ、不知の陳述は、原告若くは被告の自己の行爲にあらず、又自己の實驗したるものにあらざる事實に限り、之を許すものとす、而して此場合に、不知の陳述を爲したるものは、其係爭事實を爭ひたるものと見做さる。(民訴一一一條)
- 英
- Statement of ignorance of fact
- 独
- Unwissenheitsaussage
- 仏
- As-sertion de l'ignorance du fait
普通刑法
(ふつうけいはう)刑法とは、犯罪といふ事實に對し、刑罪といふ法律上の結果を結付くる國家の法規を總稱す、而して普通刑法は、之を一般刑法ともいひ、一般の人に適用することを目的とする刑罰法にして、特別刑法即ち陸海軍刑法に對する法規なり、明治四〇年四月二一日法律第四十五號を以て發布せられ、同四一年十月一日より施行せらるべき現行刑法は即ち此普通刑法なりとす。
- 英
- Ordinary criminal law
- 独
- allgemeines Strafrecht
- 仏
- Droit criminel ordinaire
普通裁判所
(ふつうさいばんしよ)普通裁判所とは、特別裁判所に對する名稱にして、又通常裁判所ともいふ、司法權の行使、即ち裁判をなす權限を有する機關を云ふ、□一裁判とは、法規を適用する行爲なり、□二裁判は、特定の事項に對して、法規を適用する行爲なり、□三裁判は、利害關係者の參加に依り、特定の事項に對して法規を適用する行爲なり。普通司法裁判所とは、所謂司法裁判所なり、之等の事項に就きては通常裁判所の部に詳かなり。(一八年第一二號布告一絛及び通常裁判所の部參照)
- 英
- Ordinary court
- 独
- all-gemeiner Gerichtshof
- 仏
- Tribunal or-dinaire
普通司法裁判所
- 英
- Ordinary court
- 独
- allgemeiner Gerichtshof
- 仏
- Tribunal judiciaire ordinaire
普通辭
(ふつうじ)普通辭とは、和文電報に於ては日本語、歐文電報に於ては羅甸語、又は歐洲國語にして、意味の通解し易きものを云ふ(三三年九月遞信省令四六號電報規則一〇、二五條)
- 英
- Ordinary words
- 独
- gemeine Wörter
- 仏
- Mots ordinaires
普通試驗
(ふつうしけん)文官普通試驗の略稱なり、文官普通試驗は、各官廳のの須要に應じ、其廳の文官普通試驗委員之を行ふ、文官普通試驗の科目は、尋常中學校の科程を標準とし、各官廳所掌の事務を斟酌して、文官普通試驗委員之を定め、文官高等試驗委員の承諾を經べし、年齡滿二十歳以上の男子にして、左の諸項の一該當せざる者は、文官試驗を受くることを得、□一重罪を犯したる者、但し國事犯にして復權したる者は此の限りにあらず、□二定役に服すべき輕罪を犯したる者、□三破産若くは家資分散の宣告を受け復權せざる者、又は身代限の處分を受け債務の辨償を終へざる者、文官試驗を受けて合格したるものには、合格證書を付與す、合格者は判任官たるの資格を有す。(二六年一〇月勅一九七號文官試驗規則三條乃至七條、一八條乃至二〇條)
- 英
- Ordinary civil service exami-nation
- 独
- gemeine Civilbeamtenprüfung
- 仏
- Examen du service civil ordinaire
普通職務犯罪
(ふつうしよくむはんざい)官吏の職務に關する犯罪にして、其性質たるや、職務犯罪中、一般官吏の犯す事あり得べき犯罪を云ふ、例へは官吏收賄罪の如し、又特別職務犯罪とは、官吏中ある特定の職務を有する者が、犯すことあり得べき犯罪なり、例へば看守盜罪の如し。(刑一九三、一九四、一九五、一九七、一九八條等)
- 英
- Ordinary offence of oficers
- 独
- allgemeines Amtsdelikt
- 仏
- Infraction ordinaire de l'officier
普通水利組合
(ふつうすゐりくみあひ)普通水利組合は、府縣税又は郡費の支辨に屬せざる用惡水等、專ら土地の保存に關する事業にして、市町村若くは町村組合が、其經理を爲さざる場合に於て設置せらるる公共團體なり。(水利組合の部參照)
- 英
- Ordinary guild for mak-ing good use of water
- 独
- allgemeine Wassergenossenschaft
- 仏
- Corporation ordinaire de l'emploie de l'eau
普通選擧
(ふつうせんきよ)制限選擧に對し、選擧制度に關する一種別にして、學識、税額、階級等を選擧資格の要件とせざる選擧制度を云ふ、即ち一般臣民は、汎く選擧權を有し、唯選擧の何物たるを解せざる幼者、禁治産者の如き、又は選擧を解するに充分なる智識を有せざる準禁治者、婦女子の如き、及び選擧に利害關係少なき無住所の者、無財産の者、其他特定の理由に基き選擧人たることを禁止せられたる者(例へば選擧に立會ふべき吏員の如き、刑事上の犯罪の爲めに公權を停止せられたる者の如き)を除くの外、總べて選擧の權利を有せしめ、彼の制限選擧の如く、一定の納税額に逹する納税人に限り、選擧人たる事を得となす制度に反對するもの也、選擧制度に於ける究極の理想は、即ち此普通選擧なり、されど一般に選擧の何物たるかを解する者少なき現時に於ては、寧ろ一定の教育一定の納税の兩資格を以て、要件とする制限選擧を可なりとす、但し一定の納税額のみを以て、選擧資格とするが如きは、全然不當なる法制なり。(選擧の部參照)
普通登記簿
(ふつうとうきぼ)一般の登記簿、例へば商業登記簿、未成年者登記簿、土地登記簿等を普通登記簿と謂ふ、各登記所(區裁判所又は其出張所)に具ふる公簿なり、普通登記簿は、特別登記簿、例へば外國會社登記簿等に對するの名稱なり。(非訴事件手續法一四〇條、三二年司法省令四一號一二條)
- 英
- Ordinary register
- 独
- Gemeinregister
- 仏
- Registre ordinaire
普通任用
(ふつうにんよう)特別任用に對し普通の任用にして、文官任用令に依りて任用するを云ふ、例へば普通文官試驗に及第したるものを判任官に任ずるが如し。(特別任用の部參照)
- 英
- Ordinary appointment
- 独
- allgemeine Anstellung
- 仏
- Nomination ordinaire
物價
(ぶつか)貨幣を以てする物の購買價格を物價と謂ふ、物價に二義あり、單に物に對する主觀的價は之を物の價値と云ひ、之に反して、物の交換價値即ち價格は之を市價と謂ふ、通常物價と云へば、此市價を意味するものとす。
- 英
- Price
- 独
- Preis
- 仏
- Prix
物格
(ぶつかく)物格とは、主格に對する講學上の用語にして、目的格即ち客體を意味す。(主格又は主體の部參照)
- 英
- Object
- 独
- Objekt
- 仏
- Objet
物權
(ぶつけん)(甲)物權の性質、物權の何たるやに就きては、學者間に議論ある處にして、或は物の上に直接に行はるる權利なりとし、或は物を目的とする權利なりとし、或は物に就き利益を受くる權利なりとし、或は何人にも對抗し得べき絶對的權利なりとせり、然れども物權に就きては、次の如く定義するを穩當とす、即ち物權は物を支配する權利なりと、凡そ權利とは、法律利益の享有を完する爲め、法律の保護に依て、保護の上に有する支配力の範圍を云ふ、而して權利あれば、常に必ず主體あることを要するは勿論、其權利の内容なかるべからず、物權は、物の支配を以て其權利の内容となすものにして、物權は、一般權利中に於て、特別の種類を形成するは、實に此點に在りて存するもの也、所謂物の支配とは、物を人の意思に服從せしむることを意味するを以て、物權者は其權利の目的たる物に就き自己の意思を行ひ、之を其生活上の需要を充たすの用に供する法律上の能力を享有す、蓋し物權は、其最も完全なる所有權より、其最も薄弱なる占有權に至るまで、其種類一にして足らず、其内容も亦從つて區々なりと雖も、何れも皆物を目的とし、之を支配するの權利たるは一にして、唯支配の方法範圍に於て、多少の差異あるに過ぎざるものとす、權利の成立には、權利の主體及び權利の内容の外、尚其權利の對抗を受くべき客體なかるべからず、蓋し權利は、吾人が他人に對して享有する所の法律上の能力にして、他人をして、權利の目的たる事項に干渉せしめざるに依りて成立するものなれば、常に必ず對手人あることを要し、對手人なき權利は、之を想像することを得ず、故に一般權利は、總べて人を以て其客體となすと同時に、物權も亦人を以て其客體となすものなることを知り得べし、然れども物權は、權利者と物との關係は直接にして、權利の目的たる物の支配に付き、他人の介入を要せざるを以て、物權に關しては特定の對手人なく、唯一般の人を以て其客體となすものとす、換言すれば、物權にありては、權利者は任意に權利の目的たる物を支配することを得べく、其物を支配するに就き、敢て他人の協力を要求するの必要なし、其一般權利に於ける如く、權利者以外の人は、其何人たるを問はず、權利者と權利の目的たる物との間に在する支配關係を尊重し、物に對する權利者の行爲に干渉して、之を妨ぐることなきを要するのみ、故に物權は特定の人をして、特定の行爲を爲すの義務を負はしむるものにあらずして、一般の人をして、物に對する權利者の支配關係を侵害せざる消極的義務を負はしむるに止まるものとす、物權は、一種の財産權也、抑も吾人の享有する所の私權は、之を二箇に大別することを得、身分權及び財産權これなり、所謂身分權とは、人の身分上の地位より生ずる私權にして、之を人格權及び親族權の二となすことを得、人格權とは、人類固有の性格より生ずる私權にして、吾人の生命、身體、名譽、自由、姓名、尊稱等に關する權利を總稱し、親族權とは、人の親族關係より生ずる私權にして、戸主と家族との關係より生ずる戸主權、親子の關係より生ずる親權、夫婦の關係より生ずる夫權の如きものを云ふ、財産權とは、處分し得べき利益を目的とする權利にして、物權は此種の權利に屬するもの也、右權利の類別中、人格權は人たるの性格より生じ、人たるの資格と分離すべからざる關係を有するを以て、吾人人類は、生れながらにして當然此權利を享有することを得ると同時に、之を抛棄し、之を讓渡することを得ざるものとす、是人格權の特質なり、親族權も亦人の身上の地位より生じ、人の身分と分離すべからざる關係を有するを以て、之を抛棄し、讓渡する事を得ざるは人格權に同じ、物權は、全く之と異り、吾人は物權を有することあり、又は有せざることあり、之を有せざるも、人たる身分に毫も缺くることなく、又之を有するも人たる身分の增加することなし、唯權利を有するに因り、吾人の本來享有せる能力は、一層其範圍を擴張すべきのみ、且つ物權にして、巳に人たる身分と分離すべからざる關係を有せざる以上は、一旦取得したる後、之を抛棄し、之を讓與することを得べきは論を俟たず、換言すれば、物權に在りては、法律に依り保護せらるる利益は、權利者に於て隨意に處分し得べきものとす、是物權が處分し得べき利益を目的とする權利として、財産權の一種に屬する所以也、物權は、物の上に直接に行はるる權利なるより左の效果を生ず、□一物權には、權利の目的たる特定の有體物たる事を必要とす、我民法にありて物と稱するは、有體物(動産、不動産)のみを云ひ、物權は、直接に物の上に行はるる權利なるを以て、其存立には、權利の目的たる有體物あることを要するは勿論、其有體物は、特定することを必要とす、何となれば、權利者と權利の目的たる有體物との間に、直接關係を生ずるには、其有體物の特定することを要するは言を俟たざるを以て也、□二物權は、物上請求權を生ず、物權には、特定の對手人なく、唯一般の人をして不行爲の義務を負はしむるに過ぎず、而して之を侵害する者あるに當り、初めて特定の人に對して特定の行爲、不行爲を要求するの權利を生ずるものなれば、物權を有する者は、場合に從ひ、侵害者に對して目的物の返還、原狀回復、妨害排除、損害の賠償を請求することを得べし、物上請求權又は物上訴權と稱するもの即ち是也、□三物權は、追及權を生ず、吾人の有する所の權利が物權なる時は、權利の目的たる者が輾轉して、何人の手裡に歸するも、其物に追隨して權利を行ふことを得べし、之を稱して追及權と謂ふ、例へば甲が一の家屋を所有する場合に、乙其家屋を冐認し、自己の所有家屋なりとして、之を丙に賣却し、丙更に之れを丁に賣却し、丁も亦これを戊に賣却し、戊これを占有するものと假定せよ、此場合に家屋の眞正の所有者たる甲は、追及權の作用に依り、戍に對して直接に其權利を主張し、其返還を請求することを得べし、尚他の一例を擧ぐれば、甲、乙に對して金一萬圓の債權を有し、其債權の擔保として、乙の所有に係る地所の上に、抵當權を設定したる後、乙其土地を丙に賣却したるときは、甲は地所の所有者の更迭に拘はらず、其權利を主張し、該地所の上に抵當權を行ふ事を得べし、□四物權は、優先權を生ず、吾人が或物の上に物權を有するときは、後に至り他人は最早同一物上に、同一の物權又は吾人の物權と相容れざる他の權利を取得することを得ず、故に同一物上に、時を異にして數個の物權が設定せられたるときは、其優劣は、設定の前後に依りて定まるべきものにして、前に設定せられたる權利は、後に設定せられたるものに優先するを原則とす、優先權と稱するもの即是也、蓋し或物が、巳に總べての關係、又は或關係に於て、或人の支配權に服從する以上は、最早同一の關係に於て、他人の支配權に服從し得べがらざるは、事物の性質上明白にして、所謂一物二主を容れざるの格言ある所以とす、例へば、イ甲一の地所を有し、乙の爲めに其地所の上に地上權を設定したる後、更に丙の爲め其地所の上に永小作權を設定したるときは、前に設定せられたる乙の地上權は、後に取得したる丙の永小作權に優先するものとす、何となれば、乙は完全に地上權を取得し、此地上權は、丙に於て之を尊重せざるべがらず、從つて丙は、乙の地上權を無視して、其地所の上に永小作權を行使する事を得ざるものなれば也、ロ甲、乙に對し、借用金の擔保として、其家屋に抵當權を設定したる後、更に丙より金圓を借用し、丙の爲めに同一家屋の上に抵當權を設定したりと假定せんに、前に設定せられたる乙の抵當權は、後に設定せられたる丙の抵當權に優先すべきものとす、從つて乙先づ其家屋の上に抵當權を實行し、其債權の完全なる辨濟を受けたる後に非ざれば、丙は該家屋に付き抵當權を行ふことを得ず、但し物件の一種たる先取特權も、亦優先權を生ずるも、先取特權は法律の規定より生じ、法律が之を設くるの理由は、其特權の附隨する主たる債權の原因に存するを以て、相互の間に於ける優先權の順位も、また普通の場合に於けるが如く、權利發生の前後に依らずして、主たる債權の原因に依りて定まるものとす、(乙)物權の種類、物權は物の上に行はるる權利にして、多少永續すべき性質を有し、目的物の存する限りは、何人に對しても之を行ふことを得べく、又物は動産たると不動産たるとに論なく、一國の富と密接の關係を有するを以て、物權に關する制度は、常に一國經濟に重大なる影響を及ぼすもの也、就中土地は、物權の設定に適し、その上に種々なる負擔を加ふることは、古來其の例に乏しからずと雖も、土地は、殖産興業の用に供せられ、國の一大富源を成すものなれば、各人をして、土地の永久の負擔となるべき物權を、濫りに設定せしむる事を得しむるに於ては、一國の經濟上頗る有害なる結果を生ずるに至るべきは賭易きの道理也、故に方今何れの國に於ても、債權の創設に就き、當事者に完全なる意思の自由を認許するに反し、物權の創設に關しては、嚴格なる制限を設け、法律に認むるものの外は、當事者の意思を以て、隨意に之を創設することを得ざるものとせり、我民法に認めらるる物權は、之を三種に區別することを得、所有權、他物權及び占有權是也、□一所有權、物權中最も完全なるものを所有權とす、何となれば、所有權は總へての關係に於て、且つ總べての方法を以て、物を支配するの權利なればなり、是所有權を稱して、物に關する統轄的支配權なりと云ひ、又は完全なる物權なりといふ所以なり、故に此權利を所有する者、即ち物の所有者は、其意の欲する所に從ひ、權利の目的たる物を使用、收益、處分する等、物の上に完全なる支配權を有す、然れども物に關する完全の支配權たる所有權は、第三者の權利に依りて制限せられ、所有權の目的たる物が、一若くは二以上の關係に於て、所有者以外の人の支配權に服從することあり、茲に於て、同一物が同時に所有者と其他の權利者の支配を受け、所有者は、其物の完全なる支配權を有せざることありと雖も、他の權利者の支配權は、要するに所有權の制限たるに過ぎざるを以て、第三者の支配權が消滅すると同時に、所有者は、其權利の目的たる物の上に、再び完全なる支配權を回復するものとす、□二他物權、所有權以外の物權は、單に或關係に於てのみ、物を支配するの權利にして、他人の所有に係る物、若くは權利の上に行はるる權利たるに過ぎず、而して此等の物權中には、或は所有者の權利を制限し、所有者以外の人をして、所有者に屬する權利の一部を行使せしむるを目的とするものあり、或は單純に所有者以外の人の利益の爲めに、所有者の權利行使を制限するのみを以て目的とするものあり、例へば地上權、永小作權の如きは、土地の所有者に屬する土地の使用、收益の權利を地上權者、永小作權者に歸せしめ、質權、抵當權の如きは、所有者に屬する處分權を質權者及び抵當權に歸せしめ、消極的地役權の如きは、地役權の利益の爲めに、土地所有者の權利者の權利行使を制限す、要するに、所有權以外の物權は、總べて他人の所有に屬する物又は權利の上に行はるる權利なるを以て、之を他物權と稱し、又或關係に於てのみ、物を支配するの權利なるより、之を不完全なる物權と云ひ、所有權と區別するを通例とす、地上權、永小作權、地役權、先取特權、留置權、質權及び抵當權は此種の物權に屬す、□三占有權、占有權も亦物を所持する權利として、直接に物の上に行はれ、我民法上一の物權なりと雖も、他の物權と稍々其性質を異にし、物權中に在りて特別の地位を占む、蓋し所有權及び他物權は、其本來の性質に於て、物を支配するの權利たるを以て、所有權者、他物權者は、其意の欲する處に從ひ、權利の目的たる物を支配する法律上の能力を有すと雖も、此等權利者は、其權利の本質に從ひ、事實上物を支配する事あり、又は之を支配せざる事ありて、現實に之を支配せざるも、此事實は其權利の存立に毫も影響を及ぼすことなし、占有權は之に異り、物の占有、即ち吾人が事質上物を支配するより生ずる所の權利にして、物の占有者は、本來物を支配するの權利を有すると否とに拘はらず、物を占有すると同時に此權利を取得し、物の占有を失ふと共に、此權利を喪失し、占有と占有權とは、斯くの如く分離す可らざる關係を有す、之占有權は、物權中にありて、特種の權利に屬すと謂ふ所以也、而して占有權との關係上、所有權及他物權を稱して、本權又は實體上の權利と謂ふ、次に物權は、又主たる物權及び從たる物權に區別することを得、主たる物權とは、獨立して存在するものを云ふ、所有權、地上權、永小作權の如し、從たる物權とは、他の權利に附隨して存在するものを云ふ、所有權に附隨する所の地役權及債權擔保として、之に附從する所の質權、留置權、先取特權の如し、我民法に認むる所の物權は、所有權、占有權、地役權、地上權、永小作權、質權、留置權、抵當權及び先取特權の九種にして、入會權も亦慣習上の物權として、民法に認めらるる所とす、右の外特別法に於て認むる物權あり、例へば永代借地權、鑛業權の如し、舊民法に於ては、無體物を認めたるが爲、版權、著作權を以て物權となしたるも、現行民法の下に在りては、無體物を認めざるを以て、版權、著作權は特種の財産權にして、物權にあらず、又舊民法には用益權、賃借權、住居權、使用權等の物權を認めたれども、現行民法は總べて之を廢し、賃借權は之を普通の債權とし、唯不動産を目的とするものは、之を登記するに於て、物權と等しく第三者に對抗し得べきものとせり。(民一七五條乃至三九八條、三三年法七二號地上權に關する件一、三條、三四年四月法三九號永代借地法)
- 英
- Real right
- 独
- dingliches Recht
- 仏
- Droit réél
物件
(ぶつけん)事物及事件を總稱して物件と謂ふ、尤も無體物をも物なりといへば、物件は、單に廣く物といふに同じきも、我民法は、物とは有體物に限るとなすが故に、茲に物件とは、事物及び事件の總稱なりといひしなり、例へば犯罪に供したる物件といへば、犯罪に利用せられたる物を意味し、訴訟物件など云ふときは、廣く有體無體の物、即ち事物及び事件を含むものとす。(刑四三條、衆議院議員選擧法八七條二項)
- 英
- Thing
- 独
- Sache
- 仏
- Chose
物上擔保
(ぶつじやうたんぽ)物上擔保とは、特定の物を債務辨濟の擔保に供するを云ふ、例へば債務者又は第三者をして特定の動産を供せしめ、其上に質權を設定し、債務者又は第三者の所有に係る不動産の上に、質權又は抵當權を設定するが如し、留置權及び先取特權も、亦同一の效用を爲すものとす、物上擔保は、對人擔保(保證人)に相對す、物上擔保は、擔保に供せられたる物として存在する限りは、債務者は其物の上に權利を行使し得べきを以て、債權の辨濟を受くべき確實なる希望を有するもの也、但し擔保の目的たる物も亦滅失又は毀損し、若くは其價額を減ずるの虞なき能はず、之が爲め債權者は、保證人(對人擔保)の無資力に陷りたる場合と均しく、債權の辨濟を受くること能はざるの危險ありと雖も、此危險は、比較的に稀なりとす、故に物上擔保は、對人擔保に比して稍確實なるものといはざるべからず、而して物權の内、從たる物權即ち留置權、先取特權、質權、抵當權は、皆債權を擔保するものなるを以て、所謂物上擔保の一種なりとす。(民二九五、三〇三條乃至三〇五條、三四二、三六九條)
- 英
- Security of thing
- 独
- Realkau-tion
- 仏
- Garantie sur la chose
物上保證
保證とは、債務者が其債務を履行せざる場合に於て、債務者に對して履行を爲すの債務を云ふ、故に保證は債務の履行を確保せんが爲に設定せらるるもの也、□一保證債務は主たる債務に付き債權者に對して負擔する債務也、□二保證債務の主たる債務者が其債務を履行せざる場合に於て、履行すべき債務なり、□三保證債務は、從たる債務なり、而して物上保證とは、物件を以て債務を保證することを云ふ、例へば乙が甲より金一千圓の貸借を爲す場合に於て、第三者たる丙が保證人とし、其所有に係る土地を乙の爲に甲に對し、擔保に差入るるが如き是なり、而して此物上保證の債務を負ふものを物上保證人と謂ふ、從つて物上保證人は主たる債務者が、其債務を履行せざる場合に於ては、其保證の爲に供したる物を以て、債權者に對し債務を辨濟するの義務を負ふものとす、但し物上保證人は、債權者に對し債務を辨濟したる以上は、債務者に對して由りて生じたる損害を請求すること(即ち求償權)を得べきは勿論なりとす。(民四四六條乃至四六五條)
- 英
- Guaranty with one's property
- 独
- Realgarantie
- 仏
- Assurance sur la propriété
物上保證人
- 英
- Guarantee with his property
- 独
- Realbürge
- 仏
- Garant sur la pro-priété
物的信用
(ぶつてきしんよう)凡そ信用とは、人が社會上に於ける地位名望に對する信賴の價値を指すもの也、而して物的信用とは、敢て人物の如何を顧みず、唯單に其物件のみに對して信用を拂ふことを云ふ、例へば甲が乙に對し、乙が所有する土地建物を擔保として、金錢を貸與したりと假定せば、即ち甲は物的信用を與へたるものに外ならざるが如し。(商七一條)
- 英
- Credit for thing
- 独
- ding-licher Glaube
- 仏
- Credit pour la chose
物品
(ぶつぴん)物品とは、物の品類を云ふ、物は我民法上に於ては有體物なり、物品と稱するは、此有體物に於ける品類を稱す、而して用語の慣例に於ては、物品といふ場合には不動産を除外するが如し。(非訟手續一二六條四項及商品の部參照)
物品會計
(ぶつぴんくわいけい)物品の出納計算事務を物品會計と謂ふ、□一物品會計に、所謂物品と稱するは、政府に屬する器具、備品、消耗品、動物其他一切の動産を云ふ、(但し陸海軍の兵備に關するものは包含せず)□二物品の會計は、總べて年度を以て區分し、每年四月一日より、翌年三月三十一日に至る十二箇月を以て一年度とす、□三物品の會計は、現に其出納を執行したる日を以て、年度の所屬を區分すべきものとす、□四物品を保管し、之が出納を掌る者を物品會計官吏とす、□五總べて物品は、責任ある官吏の保管に付すべし、□六各省大臣は、檢査の官吏を命じ、四年以内を以て一期とし、物品の全部を精細に檢査せしめ、其調書を作らしむべし、但し官廳に屬する物品は、各省大臣適宜に檢査の方法を設くべきものとす、(二二年六月勅八四號物品會計規則)
- 英
- Account of goods
- 独
- Güter-rechnung
- 仏
- Compte des biens
物品破毀罪
(ぶつぴんはきざい)他人に屬する器物を破毀するの罪にして、本罪の構成要素を擧ぐれば、□一犯罪の目的物は他人の所有たること、他人の所有物たることを要するが故に、自己の所有物又は典物に對しては、本罪を構成せず、所有者の承諾を得たるとき又同じ、而して本罪の目的物は他人の所有物たることを以て足れりとし、金錢に見積り得べきものたると否とは問ふ處にあらず、□二犯罪の目的物は他人の器物たること、器物とは、凡ての有體物を總稱す、動産に限らず、生物たると死物たるとを問はず、(但し刑法第三編第二章第一節に擧げたる器物を除く、こは他の罪に該當すれば也)、□三毀棄の所爲あること、毀棄とは、器物の需用に應ずる能力の一部又は全部を害することを云ふ、例へば時計の針を折るが如し、□四不法の意思あること、凡そ犯罪の成立には、必ずや不法の意思の存在を必要とす、故に此意思の存在せざるときは、槪して(過失犯は例外なり)犯罪を構成せざるもの也、從つて例へば自己の所有物なりと誤信して、他人の所有器物を毀棄するも本罪を構成せざるものとす、本罪を犯したる者は、十一日以上六箇月以下の重禁錮に處し、又は三圓以上三十圓以下の罰金に處す。(刑二六〇條)
- 英
- Crime of destroying of goods
- 独
- Gütervernichtungsverbrechen
- 仏
- Infraction de détruire les biens
不適法
(ふてきはふ)法律は、人に對して命令し、又は禁止するの力を有するものなり、而して此等法律の命ずる處、又は禁ずる處に從はざるもの、即ち法に適はざることを不適法と謂ふ、例へば第一審の判決に對して控訴をなすには、控訴狀を提出してなすべく、其控訴狀には、□一控訴せらるる判決の表示、□二此判決に對し控訴を爲す旨の陳述等を記載すべきものとす、從つて此等の要件を揭げざる控訴狀は不適法なるべく、又從つて其訴は不適法となるが如き是なり。(民訴法一三一、四〇一、四〇六條)
- 英
- Unlawful
- 独
- unrechtlich
- 仏
- Illégitime
不適齡
(ふてきれい)法令に定むる一定の年齡に適合せざることを云ふ、民法に於ては、滿二十歳を以て成年とすと規定したるを以て、一般法律行爲に就きては、未成年は不適齡といふことを得べし、然れども婚姻に就きては、男子は滿十七歳、女子は滿十五歳に逹したる場合に於ては、之を行ふことを得べし、從つて此年齡に逹せざるものは、婚姻に就きては不適齡なり。(民三、七六五、七八一條)
- 英
- Under age
- 独
- Unter der Mündigkeit
- 仏
- Sous l'àge
不動産
(ぶどうさん)不動産とは、其本質を變更するにあらざれば、其位置を動がすことを得さる物を云ふ、此定義に從へば、不動産は土地に限り、其他の物は總て動産なりと稱するを得べし、然れども、各國の立法例は、土地のみを不動産と爲し、其他の物を悉く動産と爲すの規定を設けず、元來法律に於て、動産、不動産の區別を立つるは、其區別に依て各別の規定に依らしむるの必要あるが故なり、土地が古來他の物と、法律上特別の取扱を受くるは、何人も能く知れる處なり、而して土地以外の物にして、土地と同一の取扱を受くる必要ある物あり、故に不動産中に、土地以外の物を包含せしむるは巳むを得ざる所とす、我民法に於ては、土地及び其定著物は不動産と爲す、土地は、地表、地體、地上、空間より成る、定著物とは、土地と別個の存在を有するものにして、其用方に從ひ、持續して土地に連結せらるる物を云ふ、□一定著物は土地の構成分子にあらずして、土地と全く別個の存在を有する物なり、□二定著物は土地に附著せられたる物なり、□三定著物は持續して土地に連結せらるる物なり、□四定著物は物の用力に從ひ、土地に連結せられたることを要す。(民八六條定著物の部參照)
- 英
- Immovable
- 独
- unbewegliches Vermögen
- 仏
- Immeuble
不動産質
(ふどうさんしち)質權とは、債權の擔保として、債務者又は第三者より受取りたる物を占有し、且つ其物に付き、他の債權者に先ちて、自己の債權の辨濟を受くる權利を云ふ、□一質權は他物權也、□二質權は從たる物權也、□三質權は當事者の意思表示により生ずる權利也、□四質權は目的物の占有を必要とする權利也、□五質權は目的物を占有し、且つ他の債權者に先ちて、目的物を債權の辨濟に供するの權利なり、□六質權は不可分の權利なり、(轉質の部參照)而して不動産質とは、質權の目的を特定の不動産に存する場合を云ふ、故に地所及び建物は、共に不動産質の目的たることを得るものとす、然れども實際に於ては、不動産質權は收益ある土地の上に行はるるを常とし、家屋其他の建物は、土地と共に不動産質權の目的と爲る場合は格別、單獨にて質權の目的となることは殆ど稀なり、□一不動産質權は、一の不動産上の物權なるを以て、登記を經るにあらざれば、之を以て第三者に對抗することを得ず、故に不動産質權者は、動産質權者と異なり、第三者に對して、其權利を主張するには、其權利を登記することを要し、必ずしも之を占有する事を必要とせず、但し質權の一般の效力に關する規定は、之を不動産質權に適用することを要するを以て、我民法の解釋としては、不動産質權の設定に就きても、亦目的物たる不動産の引渡を必要とすると同時に、質權者は、目的物の占有を質權設定者に、委任すること能はざるものと論ぜざるべからず、然れども、不動産上の權利の得喪は、登記を以て之を公示し、目的物の引渡は、不動産上權利の得喪と何等の關係を有せざるものとなすは、文明諸國に於ける立法の趨勢にして、不動産質の爲に、例外を設くるの必要なし、故に不動産質に在りては、權利の登記を以て、質權の成立並に保存の要件となすを適當とし、動産質の如き引渡又は占有を以て、其要件となすは不可なりとす、□二不動産質權者は、質權の目的たる不動産の用法に從ひ、其使用及び收益を爲すことを得、之れ不動産質權の特質にして、不動産質權者は、權利の目的たる不動産を占有し、其不動産に付き、優先辨濟を受くるの外、なほ其不動産の用法に從ひ、其使用收益を爲すの權利をも有するものとす、蓋し動産は收益なきを常とし、且つ使用收益を爲すに於ては、之を滅失せしめ又は之を毀損するの虞あり、從つて質權者をして、動産質物の使用收益を爲すの權を行はしむるは、害ありて益なきものとす、之れに反して、不動産は、使用收益に適するのみならず、使用收益の爲め、其滅失毀損を招く虞なし、之れ古來不動産に關してのみ此制度の行はれ來りたる所以也、故に質權の目的物が田畑なる時は、質權者は、之を耕作して其收益をなし、權利の目的物が牧場なる時は、之れを使用して牧畜を爲し、權利の目的物が宅地なる時は、家屋を築造して之に住居する事を得べし、就中田畑は、其收益の點より不動産質の最良の目的となるものとす、但し質權者は、常に權利の目的たる不動産の用法に從はず、其使用收益を爲す特約なき限りは、其用法を變ずることを得ず、質權者は、其一己の獨斷を以て、質權の目的たる土地を變じて田畑と爲し、若くは住家を變じて倉庫となし、又は宅地を變じて山林と爲すことを得ず、不動産質權が目的物の使用收益を爲すことを得るより、左の效果を生ず、イ不動産質權者は、管理の費用を拂ひ、其他不動産の負擔に任ず、不動産質權者が、巳に目的物の使用及び收益を爲す以上は、物の使用に伴ふ費用にして物の收益を以て支辨すべきものは、總て不動産質權者に於て之を負擔すべきは理の當然也、即ち不動産の管理に必要なる費用、及び不動産の負擔に屬する費用、即ち通常の必要費は凡て質權者の負擔に屬すべきものとす、ロ不動産質權者は、其債權の利息を請求することを得ず、不動産質權者が、目的物の使用收益を爲すときは、其使用收益は即ち債務者をして、一時元本を使用せしむるの對價にして、利息に代るべきものなれば、不動産質權者は、債務者に對して債權の利息を請求することを得ず、蓋し此場合に於て、質權者が利息の請求を爲し得べきものとする時は、質權者は、元本の給與に對し、二重の報酬を受くるの不公平なる結果を生ずべければ也、ハ質權者は、目的物を他人に賃貸することを得、質權者は質權の一般の效力として、自己の責任を以て轉質を爲すを得るは勿論、權利の目的たる不動産を他人に貸與し、賃料を受取りて其所得と爲すことを得べし、是他なし、不動産質權は、專屬的の性質を有せざるを以て、質權者が自ら目的物の使用收益を爲すの權利を有する以上は、他人をして代りて之れを行はしむるも、毫も妨げなきのみならず、賃貸は要するに、質權の目的たる不動産收益の一方法たるに過ぎざるを以て也、□三不動産質權の存續期間は、十年を超ゆることを得ず、不動産質權は、十箇年以上の期間を以て設定することを得ず、之れ他なし、所有者にあらざる質權者をして、永く不動産の使用收益を爲さしむるに於ては、不動産の永久の改良を目的とする諸般の計畫は、等閑に付せらるるを以て、爲めに生産力を減じ、經濟上不利なる結果を生ずるを以てなり、故に若し當事者が、十ケ年以上の期間を以て、此權利を設定したるときは、其期間は之を十箇年に短縮すべきものとす、但し其十箇年の期間經過後、之れを更新して又十箇年の契約を爲すは妨なし、質權は左の事由に依りて消滅す、ア目的物の滅失、イ主たる債權を消滅したるとき、ウ混同、質權は他物權なるを以て、質權と所有者とが同一人に歸するときは、質權は混同によりて消滅す、混同とは相容れざる二個の資格が、同一人に歸することを云ふ、エ抛棄、オ質權の實行、即ち質權者が、其權利を實行して目的物を賣却したるときは、質權者は、質權の創設に因りて、企圖したる目的を逹したるものなれば、其權利は當然消滅するは勿論とす、カ消滅時效、質權者が二十年間、其權利を行使せざる時は、其權利は時效に因りて消滅す、キ質權消滅の請求、質權者が質物の保存に就き用ふべき善良なる管理者の注意を怠り、又は質物保存の必要以外に於て、之を使用し、又は他人に貸與したる時は、質權設立者の請求により、質權を消滅すべきものとす。(民三四二條乃至三五一條、三五六條乃至三六一條、二九八三條)
- 英
- Pledge of immovable
- 独
- Pfand des unbeweglichen Vermögens
- 仏
- Gage de l'immeuble
不動産質權
(ふどううさんしちけん)不動産質權とは、不動産を以て目的とする質權の謂にして、即ち不動産質を以て擔保を供したる場合に、之を擔保として其物を占有し、且つ第三者に優先して辨濟を受くる權利を云ふ。(不動産質の部參照)不動産質權利者とは、他人の不動産上に質權を有する者を云ふ、不動産質權利は、債權の利息を受くることを得ざるも、其の用法に從ひ、不動産を使用收益するの權利あるものとす。(民三五六條)
- 英
- Pledge of immovable
- 独
- Pfandrecht des unbeweglichen Vermögens
- 仏
- Gage de l'immeuble
不動産質權利者
- 英
- Pledgee of immovable
- 独
- Pfandgläubiger des unbeweglichen Vermögens
- 仏
- Gagiste de l'immeuble
不動産登記法
(どうさんとうきはふ)不動産に關する登記原因、登記機關及其手續を定めたる法規也、即ち(甲)登記は、左に揭けたる不動産に關する權利の設定、保存、移轉、處分の制限又は消滅に就き之れを爲す、所有權、地上權、永小作權、地役權、先取持權、質權、抵當權、賃借權之なり、(乙)登記には、假登記、豫告登記、附記登記あり、□一假登記は、左の場合に於てこれを爲す、イ登記の申請に必要なる手續上の條件が具備せざる時、ロ所有權、地上權、永小作權等の設定、移轉、變更又は消滅の請求を保全せんとするときこれなり、□二豫告登記は、登記原因の無效又は取消に因る登託の抹消、又は回復の訴の提起ありたる場合に於てこれを爲す、□三附記登記は權利の變更に就き、登記上損害の關係を有する第三者ある場合に於てこれを爲すものとす、(丙)登記すべき權利の目的たる不動産の所在地を管轄する區裁判所、又は其出張所を以て管轄登記所とす、不動産が數個の登記所の管轄地に跨がる時は、其各登記所を併せて管轄する直近上級の裁判所に於て、申請に因り管轄登記所を指定す、(丁)登記簿は、土地登記簿及び建物登記錄の二種とす、登記は法律に別段の定ある場合を除く外、當事者の申請又は官廳若くは公署の囑託あるにあらざれば、これを爲すことを得ず、登記は、登記權利者及び登記義務者又は其代理人登記所に出願して之を申請することを要す、登記を申請するには、左の書面を提出することを要す、一申請書、ニ登記原因を證する書面、三登記義務者の權制に關する登記濟證、四登記原因に就き第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、之れを證する書面、五代理人によりて登記を申請するときは、其權限を證する書面、申請書には左の事項を記載し、申請人これに署名、捺印することを要す、イ不動産所在の郡、市、區、町村、字及び土地の番號、ロ地目及び段別又は坪數、ハ申請人の氏名、住所、若し申請人が法人なるときは、其名稱及び事務所、ニ代理人に依りて登記を申請するときは、其氏名、住所、ホ登記原因及び其日附、ヘ登記の目的、ト登記所の表示、チ年月日。(三二年二月法二四號)
- 英
- Registration of immov-ables
- 独
- Grundbuchordnung
- 仏
- En-registrement de l'immeuble
不動産の先取特權
(ふどうさんのせんしゆとくけん)先取特權とは、債權者が法律の規定に從ひ、債務者の總財産又は特定の財産に付き、他の債權者に先んじて、其債權の辨濟を受くるの權利を云ふ、□一先取特權は物權なり、先取特權を有する者は、權利の目的たる物に付き、直接に其權利を行ひ、之を賣却して、其代金を債權の辨濟に充つるの權利を有す、故に先取特權は、物權の效力たる優先權及び追及權を生じ、先取特權者は、他の債權者に優先して、權利の目的たる債務者の財産を、其債權の辨濟に供するの權利を有するのみならず、其財産が輾轉して、何人の所有に歸するも、之れに追隨して、其權利を行使することを得べし、但し先取特權は、其種類頗る多く、其效力に至りも亦強弱の差異あるを免れず、□二先取特權は他物權にして從たる物權なり、此權利は、債權者が他人の所有に屬する物、即ち債務者の財産に對して有する所の權利なり、又權利は、債權の辨濟を確保するを以て、唯一の目的とする權利にして、常に債權に附隨し、債權と分離して、獨立の存在を有すること能はざるものとす、□三先取特權は法律の規定によりて生ずる權利なり、債務者の財産は總債權者の共同擔保なるを以て、債務者が債務を辨濟せざるときは、其財産は債權額に應じ、總債權者に平等に分配せらるるを原則とす、而して先取特權は、其名稱の示す如く、他の債權者に先んじて、辨濟を受くるの權利なるを以て、債權同等の原則に反し、他の債權者を害するの結果を生ずるもの也、然るに債權者が、時に或は此特權を享有することを得るは、全く法律に依りて付與せらるる所の一の特典也、法律は、或種類の債權は、公益上の理由又は公平の觀念に基き、特別に之を保護し、優先權を與へて之を鞏固ならしむるの必要ありと認め、之を付與するに先取特權を以てす、先取特權の性質にして巳に斯の如くなる以上は、此權利は、常に必ず法律の規定により生ずるものたる事を要し、法律の規定以外に於て、此權利の存在を認むることを得ず、從て債務者は、其一己の意思を以て、特に或債權者の爲めに、此權利を設定することを得ざるものとす、□四先取特權は債務者の財産に付き、他の債權者に先じ、自己の債權の辨濟を受くる權利なり、之れ先取特權の名稱ある所以にして、此權利の實質は、實に此一點に存するもの也、故に先取特權を有する所の債權者は、債務者の財産を賣却し、他の債權者に優先して、其代金を自己の債權の辨濟に供するの權利を有し、普通債權者に比して、特別の權利を享有するものとす、蓋し普通債權者は、債務者の財産に付き、平等均一を有するに過ぎざるを以て、其賣却代金は、債權額に應じ、他の債權者と分配せざるべからざるに反し、先取特權は、他の債權者を排斥して、其權利を行ふことを得べければ也、□五先取特權は不可分の權利なり、先取特權は、其債權の存する限りは、目的物の全部に付き、其權利を行ふことを得べく、又目的物の存する限りは、其債權の全額に付き、其權利を行ふことを得べし、偖て、不動産の先取特權とは、先取特權の目的物が、不動産たる場合を云ふ、不動産の先取特權には、不動産の保存、工事、賣買の三種あり、□一不動産保存の先取特權、此特權の附隨する債權は、不動産の保存費及び不動産に關する權利の保存、追認實行の爲めに要したる費用の債權にして、其目的物は、保存せられたる不動産其物とす、□二不動産工事の先取特權、不動産工事の先取特權とは、其名稱の示す如く、不動産の工事より生ずる債權に伴ふ先取特權を云ふ、A不動産工事の先取特權によりて保存せらるる債權、特權の附隨する債權は左の要件を具備する事を要す、(甲)其債權は工匠、技師及び請負人が、債務者に對して有する契約上の債權なること、工匠とは、大工、左官、屋根職、土工等、直接に工事に必要なる勞務に服する者を云ひ、技師とは、製圖、測量、設計等、工事を計畫して之を準備する者を云ひ、請負人とは、請負契約に因り債務者に對して、一定の工事を完成することを約したるものを云ふ、而して不動産の工事は、事務管理に基因することあり、契約に基因する事ありと雖も、不動産工事の先取特權は、契約上の債權者のみに附隨し、事務管理により生ずる債權は、先取特權に因りて保護せらるる事なし、又請負人が、工匠、技師を使用する場合には、先取特權を有するものは請負人にして、工匠、技師にあらざるものとす、蓋し工匠、技師は、請負人に對して債權を有するに止まり、直接に債務者に對して、債權を有せざるを以て也、(乙)其債權は不動産の工事に起因することを要す、不動産工事の先取特權は、即ち工事に要したる費用の債權に附隨し、工事に關係なき其他の債權に此特權の附隨せざるは、特權の性質上明白なり、而して不動産の工事とは、家屋其他の建物と堤防、池窖、牆壁、溝渠の築造又は修繕、庭園の裝飾、排水、灌漑、開墾、道路の開設、其他土地に關する一切の工事を云ふ、B不動産工事の先取特權の目的物、此特權の目的物は、工事を加へたる不動産其のものなり、例へば甲なる大工が、債務者の家屋を修繕したりと假定するときは、甲は其家屋を賣却し、其代金に付き、優先辨濟を受くることを得べし、然れども甲は、其代金の全部に付き優先權を行ふことを得ず、即ち不動産工事の先取特權は、工事に因りて生じたる不動産の增價が現存する場合に限り、其增價格に就てのみ存在するものとす、故に前例に於て、家屋本來の價は百圓にして、修繕の結果百五十圓となりたるものと假定するときは、甲は單に五十圓の價格に就き、先取特權を行ふことを得るに止まり、殘餘の百圓に就ては其權利を行ふことを得ず、且つ債權者が、其特權を行ふことを得るには、其權利行使の際に、增價額の尚現存することを必要とするを以て、前例に於て工事の爲めに生じたる家屋の增價が、二十圓に低落したりと假定するときは、單に二十圓に付き其權利を行ふことを得べく、工事に因りて生じたる增價が滅失したるときは、甲の特權も亦消滅に歸すべきものとす、我法制に依るときは、土地と建物とは、別箇獨立の不動産を成すものたるを以て、先取特權の原因たる不動産の工事に就きても、土地の工事と建物の工事とに區別し、土地の工事費に就きては、土地の增價に對して先取特權を與へ、建物の工事費に就きては、建物の增價に對して先取特權を與ふることを要す、茲に於て建物新築の場合に於ては、其建物は土地の增價と見ることを得ず、又巳に存在せる建物の價格を增加したる場合にあらざるを以て、法律の適用に於て疑を生ずべし、然れども不動産の增價中には、巳存の建物に工事を施して、其價格を增加したる場合は勿論、新に建築して、新に價格を生ぜしめたる場合を包含し、債權者は建物の增價として、其全價額の上に權利を有するものと解釋するを正當とす、□三不動産賣買の先取特權、此特權は、不動産の賣買代金及利息に附隨し、賣買の目的たる不動産其ものを目的とす、例へば甲が乙に對して土地を賣却したる場合には、其土地に就き賣買代金の先取權を有するが如し、總て不動産に關する先取特權は、不動産上の物權なるを以て、其得喪は一般の原則に從ひ、第三者との關係に於て登記を爲すことを必要とす、然れども民法は、不動産に關する先取特權の效力に就き、特別の規定を設けたるを以て、此等の規定に就き説明するの必要あり、即ち□一不動産保存の先取特權は、保存行爲完了の後、直に登記するに因りて、其效力を保存す、□二不動産工事の先取特權の效力に關しては、右の原則に從ふべきものとす、イ工事を始むる前に、其費の豫算額を登記するによりて其效力を保存す、ロ工事の費用が豫算額を超ゆるとき、先取特權は、其超過額に就きては存在せず、ハ工事に因りて生じたる不動産の增加額が配當加入の時、裁判所に於て選任したる鑑定人をして、之を評價せしむることを要す、□三適法に登記を爲したる不動産保存の先取特權、及び不動産工事の先收特權は、抵當權に先ちて之を行ふことを得、□四不動産賣買の先取特權は、賣買契約と同時に、未だ代價又は其利息の辨濟あらざる旨を登記するに依りて、其效力を保存す、□五不動産の先取特權の效力に就きては、抵當權に關する規定を準用するものとす。(民三〇三條乃至三〇五條、三二五條乃至三二八條、三三一、三三二條、三三七條乃至三四一條)
- 英
- Preferential right in immovable
- 独
- Priorität des unbeweg-lichen Vermögens
- 仏
- Droit de préfér-ence sur l'immeuble
不特定
(ふとくてい)一定せざる事物を指示する場合に之を不特定と謂ふ、不特定なる觀念は、總べて特定の反對の場合を意味するも、法律上に於ては、何れかの方法に依り特定し得べき場合を指すを普通とす、例へば不特定物といふは、一定せざる物を指すには相違なきも、其種類若しくは範圍を示して、之を特定し得べきやうなる場合を指意するが如し、元來特定なる觀念は、變更す可らざる程度に於て、例へば何某又は其の物などいふ如く、一定せる場合の觀念にして、之に反し不特定とは、範圍の限界はあるべきも、人若くは物などいひたらんが如く、普貫の場合に於ける觀念とす、唯如何なる程度に於て限界を付すべきかは、各場合に於ける實際に依て異なるものとす。(特定の部參照)
- 英
- Indefinite
- 独
- unbestimmt
- 仏
- Indéfini
不特定人
(ふとくていじん)一定することなく、槪括的に人を指示する場合に、之を不特定人と謂ふ、何某若くは其人、又は此人などいふは、不特定人の反對なる特定人にして、多衆人の集合せる中の十人、五十人などいふは不特定人なり、或は此の人又は彼の人を選擇的に指示する場合も不特定人とす、例へば債權は特定人に對する權利にして、物權は不特定人に對する權利なりなどいふが如し。
- 英
- Indefinite person
- 独
- un-bestimmte Person
- 仏
- Personne indéfinie
不特定物
(ふとくていぶつ)特に何の物たることを一定せずして指示したる場合は、不特定物なり、單に數量又は種類を以て指示したる場合の如し、例へば羊なる種類を以て指示せるも、群羊中の何れの羊なるか不明なる場合の如き之れ也。(民五三四條二項及特定物の部參照)
船鑑札
(ふなかんさつ)船舶法により、船舶國籍證書を受くることを要せざる船舶中、航行の用に供せざる船舶、登錄噸數五噸未滿、又は積石數五十石未滿の帆船、櫓櫂のみを以て運航し、若くは主として櫓櫂を以て運航する船舶を除き、其他の船舶の持主が船鑑札規則により受くべき鑑札を云ふ。登簿船免狀を受有するに及ばざる船舶は、左に記載するものを除く外、船鑑札を受有すべし、イ航行の用に供せざる船舶、ロ登簿噸數五噸未滿若くは積石數五十石未滿の帆船、ハ櫓櫂のみを以て運航し、若くは主として櫓櫂を以て運航する船舶、□一船鑑札を受有せんとするときは、左の事項を記載したる件名書を添付し、本船定繫所を管轄する地方官廳に其の下付を申請すべし、イ船名、ロ定繫所、ハ船の種類、(滊船若くは帆船等)、ニ船質(鐵、鋼若くは木)、ホ檣數、ヘ製造地名、ト製造年月、チ造船工長氏名、リ形の原名(若しあらば)、ヌ所有者の氏名、住所、ル尺度(量噸、甲板上最大の長、内法最大の幅、艙室に於て量噸甲板より船底中央の内板に至る深さ)、ヲ總噸數、ワ登簿噸數、カ公稱馬力(汽船にありては)、日本形船舶の件名簿には、右ル號以下の事項を除き、積石數を記載ずべし、□二地方官廳に於て、右申請書を受けたるときは、件名書に記載したる事項を審査し、船鑑札を下付すべきものとす、□三船鑑札は、船舶に備へ置き、本船管理者之を保管し、當該官吏に於て檢閲を要するときは、之を提供すべし、□四船鑑札に記載したる事項に變更を生じたるときは、其事由を疏明し、三十日内に、船艦札の書換を申請すべし、但し所有者の變更したる場合には、其申請書に之に關する證明を具備すべし、定繫所を移轉し、本船管轄官廳を變更するに至りたるときは、三十日以内に、舊管轄官廳に船鑑札を返納し、且つ件名書を添付して、其證明を申請し、舊管轄官廳に於て、件名書の證明を附與してより三十日以内に、之を添付し、新管轄官廳に船鑑札の下付を申請すべし。(二九年一二月遞信省令二五號)
- 英
- Ship's license
- 独
- Schiffserlaub-msschem
- 仏
- License du navire
舶鑑札規則
- 英
- Rule of passport of ships
- 独
- Schiffserlaubnisscheinsregel
- 仏
- Règles du passeport des navires
船積免狀
(ふなづみめんじやう)船舶に貨物を積載することを許可する免許狀を云ふ、多くは輸出入税を課する場合に於て、税關の許可して下附する免狀とす。(冲繩縣酒類出港規則參照)
- 英
- Shipping permit
- 独
- Ver-ladungserlaubnisschein
- 仏
- Permis du chargement
船荷證劵
(ふなにしようけん)船荷證券は、海上物品運送に就き最も重大なる書類にして、其效用の主要なる點を示せば、第一は法律上の必要にして、之を分ち三とす、イ運送契約の成立せること、並に其契約の條件を知ることを得、ロ物品の船積巳に終れることを證し、及び、ハ荷送人を確認することを得、第二は、經濟上の必要にして、運送品の所有たる傭船者又は荷送人は、船荷證劵を以て運送中に在る物品を處分し、其融通を爲すことを得るもの也、右に述べたる第二の點は、就中重要なる事項にして、傭船者又は荷送人の利益に基くものとす、故に船長は、傭船者又は荷送人の請求を俟ち、運送品の船積後、遲滯なく一通又は數通の船荷證券を交付するの義務あるものとす、然れども大なる般舶に船積する無數の運送品に就き、一々船長が船荷證券を發行することは、頗る煩雜なるのみなず、陸上に支店又は代理店を有する會社等に於ては、其店員をして、之を發行せしむるを便とす、故に船舶所有者は、船長以外の者に船長に代りて、船荷證券を交付することを委任するを得るものとせり、又船荷證券は、運送契約の成立せることを證明し、又は運送品の種類、數量、運賃等の各條件をも證す、故に船長又は其代理人に於ても、後日の證據書類として之を所持せんことを望むは當然なるを以て、船長より請求あるときは、傭船者又は荷送人に於ても、其謄本に署名して之を交付する義務あるものとす、船荷證券には左の事項を記載し、船長又は之に代るもの署名することを要するものとす、□一船舶の名稱及び國籍、□二船長が船荷證券を作らざるときは船長の氏名、□三運送品の種類、重量若くは容積及び其荷運の種類、個數並に記號、□四傭船者又は荷送人の氏名又は商號、□五荷受人の氏名若くは商號、又は所持人に運送品を引渡すべきこと、□六船積港、□七陸揚港、但し發航後傭船者又は荷送人が陸揚港を指定すべきときは、其之を指定すべき港、□八運送賃、□九數通の船荷證券を作りたるときは、其員數、□十船荷證券の作成地及其作成の年月日是也、船荷證券は、記名式、無記名式又は指圖式にて發行することを得るものにして、荷受人の氏名若くは商號を記載するときは記名式と爲り、所持人に運送品を引渡すべきことを記載するときは無名式となり、又之に指圖文句を記載すときは指圖式となりて、裏書を爲すときは、單に證劵を讓渡するの效力を生ずるのみならず、運送品其ものを讓渡すると同一の效力を生ずるものとす、又記名式の船荷證券と雖も、振出人即ち船長又は其代理人に於て、裏書を禁ずる旨を記載せざる限りは、裏書を爲して讓渡することを得るもの也、故に船荷證券なるものは、法定の指圖證券なりといふことを得べし、元來船荷證券を發行すると否とは、傭船者又は荷送人の請求に基くものなりと雖も、一旦之を發行したる以上は、船長は右の證券と引換にあらざれば運送品の引渡を要せざるものとす、故に船荷證劵は、殆ど運送品其のものを代表せるが如き性質を有し、證券の處分は即ち運送品の處分となり、以て運送中に在る物品を自由に融通することを得る便あるものとす。(商六二〇條乃至六二九條、三三四、三三五、四五五、四八三條)船荷證書とは、船荷證券といふに同じ。
- 英
- Bill of lading
- 独
- Schiffs-ladeschein
- 仏
- Connaissement
船荷證書
- 英
- Bill of lading
- 独
- Schiffs-ladeschein
- 仏
- Connaissement
不納缺損額
(ふなふけつそんかく)不納により缺損に歸したる金錢其他の物の量額を云ふ、此の用語は、主として國庫の出納に於て收納すべき金額其他の物件が、或法定の事由に依りて、收納せざるが爲めに生じたる、不足額を指すもの也。(會計規則一一四條)
不認可
(ふにんか)法は、往々一個人の行爲又は官廳若くは公共團體の行爲に對して、官廳の承認なきときは、縱令其行爲を爲すも、法の規定する效果を生ぜざることを定むる場合あり、蓋し其立法上の趣旨たるや、或行爲を禁制するにあらずして、唯妄に或行爲を爲さざらしむるに外ならず、此場合に於て、有效に其行爲を爲さんとする者は、豫め官廳の承諾を要求するを要す、此要求に對して官廳が承認を與ふる形式を認可と謂ふ、例へば同業組合の役員は、農商務大臣の認可を得るにあらざれば、其資格を得ざるが如き、又は市町村會の或議決は、内務大藏兩大臣の認可を得ざれば、其效力を生ぜざるが如し、而して右等の如き出願又は請願をなしたる場合に、其官廳に於て之れを認可せざる處分を不認可と謂ふ。(町村制六二條五項)
- 英
- Disallowance
- 独
- Miszbilligung
- 仏
- Défense
不能犯
(ふのうはん)不能犯とは、行爲の性質上、犯罪行爲者の豫期したる結果を惹起し得ざるものを云ふ、是れ廣義に於ける未遂犯の一種なりと雖も、普通の未遂犯と異なるものとす、而して不能犯の生ずべき場合は凡そ左の如し、□一犯罪の目的に關する不能、犯罪の目的物に關する不能に二あり、一を絶對的不能と謂ふ、即ち目的物の全く此世に存在せざる場合なり、蓋し此世に存在せざる物體に就ては、權利の存することなし、隨て之れを侵害するに由なし、二を相對的不能と謂ふ、是れ目的物が、犯罪行爲者の豫期せる場所に存在せざりし場合是なり、例へば人なりと信じて樹木を切りたる場合の如し、□二犯罪の手段に關する不能犯、犯罪の手段に關する不能にも亦二あり、一を絶對的不能とす、即ち犯罪行爲者の豫期せる結果を、到底惹起すること能はざる手段を以て、罪を犯さんとせる場合これなり、例へば丑の時詣に依り、人を呪ひ殺さむとするが如し、二を相對的不能とす、即ち手段の運用拙かりし爲め、豫期の結果を生ぜざりし場合これなり、犯罪の目的物に關すると、其手段に關するとを問はず、絶對的不能の場合にありては、不能犯として之れを無罪と爲すべしとの説を多數とす、されど相對的不能の場合に在りては、普通の未遂犯にして、無罪たるべき不能犯にあらずとするの説亦多しとす。(相對的不能犯、絶對的不能犯の部參照)
不法
(ふはふ)不法とは、適法に對する言葉にして、廣く法律命令に違反の行爲を云ふ、即ち犯罪を犯すものの如き、又民事上の詐欺を爲すが如き共に不法也、不法は、法律が之を禁止するものなるを以て、不法行爲者に對しては、一定の刑罰若くは一定の負擔(民事上の)を命ずるものとす、之れ法律が社會の安寧秩序を維持せんが爲めなり。(民一三二條等)
- 英
- Illegal
- 独
- ungesetzlich
- 仏
- Illégal
不法行爲
(ふはふこうゐ)不法行爲に廣狹の二義あり、廣義に於ては、法律の禁制又は命令に違反する行爲を總稱し、狹義に於ては、廣義の不法行爲中、債權發生の獨立の原因たるべき行爲のみを指稱す、債務不履行の如きは、獨立なる債權發生の原因にあらざるが故に、廣義の不法行爲なるも、狹義の不法行爲にあらず、又詐欺取財未遂の如きは、廣義の不法行爲なりと雖も、未だ他人に損害を生ぜしめざるときは、債權發生の原因たらざるが故に、之れを以て狹義の不法行爲なりといふことを得ず、我民法に所謂不法行爲とは、即ち狹義に於けるものを意味す。狹義の不法行爲とは、故意又は過失に因り、他人の權利を侵害し、之れが爲めに損害を生ぜしむることを云ふ、以下之れを説明すべし、□一故意又は過失に基く行爲なることを要す、故意とは、自己の行爲の結果を豫知するを云ふ、故意の不法行爲にありては、行爲者に於て、槪ね自己又は他人の利を圖り、若くは他人に害を生ぜしむる意思を存すること多しと雖も、必しも斯の如き意思あることを必要とせず、次に過失とは、不注意に因りて、自己の行爲の結果を豫知せざるを云ふ、故に過失に因る行爲も、故意に因る行爲と等しく、意思の發動に外ならず、唯二者相異なるは、單に行爲の結果を豫知するや否やの點に存するのみ、從て過失に因る行爲は、之を無意の動作と混同すべからず、所謂無意の動作とは、全く意思の發動に基かざる身體の擧動にして、法律上謂ふ所の行爲にあらず、過失の有無を斷ずる標準に二主義あり、主觀主義及び客觀主義これなり、前者は通常人の爲すべき注意を標準とするにあらずして、各行爲者が自ら爲ずべき注意を以て標準とするものなり、換言すれば、各行爲者の注意の主觀的缺乏を標準として、過失の有無を斷ずるものとす、從て此主義に依れば、性來粗忽なる者は、通常人の爲す注意を盡さざるも、過失なきことあるべく、又性來注意深き者は、通常人の爲す注意を盡すも、尚過失の責を免るるを得ざることあるべし、蓋し主觀主義に於ては、各人をして單に自己の注意を蓋し、其他を顧慮することなく、自由に行動するを得しむるものなりと雖も、其行爲の爲めに、權利を侵害せられたる者に取りては、頗る迷惑を生ずる主義なりといはざるべからず、次に客觀主義は、通常人の爲すべき注意を標準とするものにして、各行爲者の爲すべき注意を標準とするものにあらず、換言すれば、通常人の盡すべき注意を缺きたるや否やに依りて、過失の有無を斷ずるものとす、故に此主義に依れば、性來注意深き者にありては、縱令平生自己の爲すべき注意を缺くも、未だ過失ありとなすべからざることあるべく、又性來粗忽なる者に於ては、平生其爲すべき注意を盡すも、尚過失の責を辭すべからざることあるべし、而して我民法に於ては、原則として客觀主義を採用し、其例外の場合にのみ主觀主義を採用したり、從つて不法行僞に於ても、客觀的過失を指すものなること論を俟たず、□二他人の權利を侵害する事を要す、縱令故意又は過失に因りて、他人に損害を被らしむるも、苟も其權利を侵害せざる以上は、未だ不法行爲を成立せしむるに至らず、蓋し不法行爲が債權發生の原因たるは、全く各人の權利を保護せんが爲也、故に例へば、同業者の間の競爭に於て、一方が他方の爲めに其得意を奪はれ、遂に其收益を減ずるに至るも、決して不法行爲は存在する事なし、何となれば、其間には毫も權利の侵害なるものなければ也、又或者が其所有地に牆壁を築きたるが爲めに、隣地の眺望を害するに至るも、其間に地役關係の存在せざる限りは、隣地所有者の權利を侵害したるものにあらざるが故に、不法行爲の成立せざるは明かなり、不法行爲に於て、侵害の目的だるべき權利は、私法上の總べての權利なり、故に財産權はいふに及ばず、彼の人格權、身分權と稱するものの如きも、亦其中に侵害せらるべきものとす、唯債權は然らず、何となれば、債權の侵害は即ち債務不履行に外ならず、然るに債務の不履行は、債務の效力に役りて、之が救濟を求むるを得べく、獨立なる債權發生の原因を爲さざる也、然れども、之唯當事者の一方たる債務者の侵害行爲、即ち債務不履行に就て云ふのみ、若し夫れ第三者の爲めに債權を侵害せられんが、不法行爲の成立を見るべきは、敢て辯明を俟たざるなり、右に述べたる如く、不法行爲の成立するには、他人の權利を侵害することを必要とするが故に、必ずや一方に於て、義務違反の行爲なかるべからず、蓋し權利と云ひ、將た義務といふは、畢竟同一の事柄に對し、唯其觀察の方面を異にするに因りて生ずる觀念に過ぎざれば、從つて一見權利侵害なるが如き外觀を呈するも、苟も義務違反の事實なくんば、不法行爲は斷じて成立することなし、例へば親權者が、其子を懲戒するが爲めに、多少其自由を拘束するも、相當の程度を超えざる以上は、是れ唯親權の執行たるに止まり、義務の違反にあらざるが故に、之を不法行爲なりといふべからず、其他權利の執行に出づる行爲、又は正當なる業務の執行に出づる行爲の、不法行爲を組成することなきは、説明を須ゐず、□三現實に損害の生じたること要す、故意又は過失に因りて、他人の權利を侵害したりとするも、之れが爲めに、他人に何等の損害を被らしめざるときは、未だ不法行爲の問題を生ずることなし、何となれば、民法上の不法行爲は、損害賠償の請求權を發生せしむる原因に外ならず、然るに今、何等の損害を生ずることなくして、獨り賠償を請求するの權利を生ずる謂れなければ也、然れども其所謂損害の意義及び範圍に至りては、諸國の立法例一樣ならず、或は之れを金錢上の損害、即ち金錢に見積り得べき損害に限るものとし、或は金錢以外の損害をも包含するものとなす、前者は之れを制限主義と名づけ、後者は之れを無制限主義と稱することを得べし、或は損害は、現實に生じたるものに限るとなすものあり、或は單に現實の損害に限らず、名義上の損害を認むるものあり、前者は之れを現實士義と稱し、後者は之れを名義主義と呼ぶを得べし、而して我民法は、無制限主義と現實主義とを採用せるものなり、以上三箇の要件を具備するときは、茲に不法行爲の成立を見るに至る、然れども、之れに一の重要なる特例あり、即ち失火に關しては、失火者に重大なる過失あるにあらざれば、不法行爲の規定を適用せざることと定めたる事是也、蓋し失火の場合に限りて、斯くの如き特例を設けたるは、本邦の家屋は槪ね木造にして、市街地等人家稠密の所に於て、一たび火を失するときは、忽にして多數の家屋に延燒し、之れが爲めに巨萬の損失を生ずることあるべく、縱令失火者に於て、其有する財産を盡すも、尚多くは之れを賠償するに足らざるのみならず、古來の慣例に依れば、類燒の厄に遭ひたる者は、之れを以て殆ど一種の天災と思惟し、失火者に對して之れが賠償を要求せんとする者なきを以て也、然れども、失火者にして、重大なる過失に基く場合に於ては、毫も失火者を保護すべき理由なし、是れ例外を設けある所以とす。(民七〇九條乃至七二四條、三三年法四〇號失火に關する件)
- 英
- Illegal act
- 独
- unerlaubte Handlung
- 仏
- Acte illégal
不法監禁罪
(ふはふかんきんざい)不法監禁罪は、權利なくして、即ち不法に、他人を自己の家屋若くは建築物内に監置する罪を云ふ、換言すれば、擅に人の肉體運動の自由を防止する所爲を云ふ、法律は、不法監禁者に對しては、十一日以上二箇月以下の重禁錮に處し、二圓以上二十圓以下の罰金を附加す、但し監禁日數、十日を過ぐる每に、一等を加ふるものとせり。(刑二二〇條、私擅監禁罪の部參照)
- 英
- Crime of illegal detainment
- 独
- Verbrechen der rechtswidrigen Frei-heitsberaubung
- 仏
- Infraction de la déten-tion illégale
不備
(ふび)法律、命令の定むる一定の要件を具備せざることを不備と謂ふ、例へば裁判所の爲す判決には、必ず其理由を付すべきものなり、故に判決にして、若し其理由を付せられざりし場合には、即ち法の命ずる要件を具備せざるものなるが故に、其判決は不備たるを免れざる也、從つて斯かる不備の判決は、常に上告の理由となるものとす。(民訴二三六條四號、四三六條刑訴二六九條)
- 英
- Imperfect
- 独
- Mangelhaft
- 仏
- Imparfait
不平等關係
(ふびやうどうくわんけい)不平等關係とは、上下の關係を云ふ、臣民は統治權の客體にして又國家構成の分子なり、從つて各人の間に於ては、敢て貴賤、貧富等の懸隔に依りて、生活上の狀態に上下の關係を生ぜざるを文明國の通義とす、我國の現狀又然らざる事なし、然れども、四民平等の關係は、時として不平等の關係に立つ場合あり、斯かる場合は、主として臣民が、國家若くは公共團體に對する場合也、例へば治者と被治者との關係、若くは裁判所と被告人との關係の如き是なり、之一は國家統治上の必要に依り、他は裁判權の行使より由來するもの也、換言すれば、此等は皆國家の生存發逹上止むを得ざるものとす、何となれば、治者と被治者との間に、若くは裁判所と被告人との間に於て、何れも平等關係なりとせば、國家の統治權又は裁判權なるものは、之を行使するに由なく、社會の安寧秩序は之を維持するに由なければ也、之不平等關係の生ずる所以とす。(權力關係の部參照)
- 英
- Unequality relation
- 独
- Ungleichverhältnisz
- 仏
- Relation inégale
不服
(ふふく)意に滿たざることを不服と謂ふ、其命又は處分に從ふを敢てせざるを云ふ也、從つて不服なる語は、其從ふを欲せざる又は意に滿たざる意思の狀態を云ふものにして、現に之に從はざる時は、或は抗拒となり、反抗となる、而して國家の命令又は處分に對する不服は、特定の場合に於ては之を申立て、取消又は變更を求むることを得、例へば民刑事の判決に對する不服、又は行政處分に對する不服等は、法定の方式に從て上訴又は訴願をなし得るが如し。(民訴三九七、三九八、四三三條、市制八條、町村制八條)
- 英
- Discontentment
- 独
- Unzufrieden-heit
- 仏
- Mécontentement
部分株
(ぶぶんかぶ)部分株とは、完全なる株主權を與へざる株主にして、其株主は、唯純然たる財産上の權利のみを有し、利益の配當、殘餘財産の分配に與る事を得るのみ、蓋し部分株を認むるの理由は、小額の株券を發行し、以て流通の便に供するに在り、然れども其實質は、議決權を有する株主と、之を有せざる株主とを認むるの結果を生じ、株主は、株式會社に對し、必ず一個のる議決權を有せざるべからざ原の則と抵觸す、故に我商法に於ては、此部分株を認めず、即ち商法は、株金額は必ず均一なることを命じ、且つ其最少額を定むるを以て、部分株の思想あるべからざるなり、株の共有は、部分株とは全然別個の觀念にして、數人共同して一個の株を有するは、株を單位とするの原則に反するものにあらず、唯共有者は、株主たる權利を行ふべき者一人を定めざるべからざるに過ぎざるものとす。(商一四三條乃至一五五條)
- 英
- Partial share
- 独
- Aktienan-theil
- 仏
- Action partiale
不文法
(ふぶんはふ)不文法とは、文書に依らずして發生したる法律、即ち慣習法を云ふ、其之を不文法と稱するは、文書に記載せられざる法律といふの意義にあらずして、其法律たる效力あることは、文書に記載せられたるに因りて生ずるにあらざるを云ふ也、例へば英國普通法は不文法なるが如し。
- 英
- Unwritten law
- 独
- Gewohn-heitsrecht
- 仏
- Loi non-écrite
不文律
不文律といふは、不文法といふに同じ、(慣習法、習慣法の部參照)
- 英
- Unwritten law
- 独
- Gewohn-heitsrecht
- 仏
- Loi non-écrite
部分林
(ぶぶんりん)國家は、國有林野を、造林者と其收益を分收するの契約を以て、部分林を設定することを得るものなり、部分林の林木は、國家と造林者との共有とし、其持分は、收益分收の部分に均しきものとす、部分林の設定を出願せんとする者は、願書に、實測圖、造林豫定圖及び造林設計書を添付して、之を大林區署に差出すものとす、其願書及び造林設計書は左の如し。
部分林設定願
何國何郡(市)何村(町)大字何字何番森林(原野)
臺帳面積何程(の内)
一實測面積何程
一植付樹木の種類
一收益分收の部合
一存續期間
一伐期
一伐採回數
右ハ前記ノ條項ニ依リ部分林設定御許可相成度別紙實測圖造林豫定圖及ビ造林設計書相添ヘ此段相願候也
年月日
住所
造林者氏名印
大林區署長氏名殿
造林設計書
年數
樹種
面積
苗
全數
數
一町步當り
第一回補植
步合苗數
第二回補植
步合苗數
手入年數
防火線
幅長
道路
幅長
造林成
效年限
合計
備考出願地の地勢、地質、毛上の狀況、地拵の方法其他造林に必要なる事項を記載すべし
部分林の存續期間は、八十年を超ゆることを得ず、但し此期間は更新することを得。(三二年三月法八五號國有林野法、一九、二〇、二一條、三二年八月農省務省令二五號國有林野法施行規則五二條)
不表現地役權
(ふへうげんちえきけん)不表現地役とは、表現地役に對するの語にして、地役權の行使が、外形的標識に依りて、表面に現はれざるものを云ふ、例へば地下の水道を以て水を通ずるの地役、其他一般に消極的地役(消極的地役とは、例へば窓又は櫞側を設けしめざる地役、竹木又は工作物を所有せしめざる地役の如し、總べて此等の場合に於ては、承役地の所有者は禁ぜられたる行爲をなさざる義務、即ち不行爲の義務を負ふものとす)は、不表現地役に屬するもの也。(民二八〇條乃至二九三條)
普遍
(ふへん)又普汎と謂ふに同じ、特殊てふ語と反對の意義を有し、其範圍は、極めて廣汎に、又包括的なれども、其内容は甚だ乏しく、要するに其意義頗る茫漠たるものなり、而して普遍といふも、實は相對的の語にして、決して絶對的のものにあらず、例へば鳥と謂へば、鷄、雀、烏、鶯鶴等に比すれば普遍なれども、動物に比する時は尚特殊的なり、更に又動物を生物に比する時は特殊となるが如く、總べて相對的也、然るに普遍には、又無制限、無限完全又は圓滿等の意義を有するを以て、宇宙の本體、神の存在、佛の慈悲等をいひ表はすに、此の語を用ふること多し、普遍的とは、夫れを形容詞として用ひたるもの、例へば普遍的理法と謂へば、個々の特殊的理法を包括したる理法を指し、神の愛は普遍的なりと謂へば、神の愛は、一鄕一國に限るものにあらずして、世界萬國に及び、津々浦々に至る迄等しく其愛を垂るといふことを指示するが如し。
- 英
- Universality
- 独
- Allgemein-heit
- 仏
- Universalité
不變期間
(ふへんきくわん)當事者の合意に依り、伸縮することを許さざる民事訴訟上の期間を云ふ、而して如何なる場合の期間が不變期間なるかは、民事訴訟法は一々之を法定す、例へば控訴期間は一箇月にして、此の期間は不變期間とし、判決の送逹を以て始まると定めたるが如き、故障申立の期間は十四日にして、此期間は不變期間とし、缺席判決の送逹を以て始まるとあるが如し。(民訴一六八、一七〇、一七四、二五五、四〇〇、四三七、四六六條等)
分
(ふん)分とは、度量衡法上に於ける衡の一名稱にして、貫の一萬分の一を分と謂ふ。(二四年三月法三號度量衡法三條)
文意解釋
(ぶんいかいしやく)文意解釋とは、又文理的解釋ともいふ、即ち法律の文意及び字義に基き、法律の眞意を闡明する方法を云ひ、主として法文の不明なる場合に其必要を見る、而して此方法による解釋の材料は、文辭の本義、章句の構造等、必ず其法律以内に有するものなり、文意(文理)的解釋の標準と爲すべき重なる原則は下の如し、□一法律の文辭は、法律の全體に關聯して之を解釋すべし、法律の文辭は前後相關聯するものなるが故に、若し孤立して解釋するときは、矛盾を免れず、例へば我刑法に「他人の私印を僞造し」とある「他人」中には、親族を含むや否やと云ふが如き疑義は、刑法全體を考按して之を定め、帝國憲法に「法律」とあるは、命令を含むや否やは、憲法全體を通覽して初めて之を定め得べきが如し、□二法律の文辭は、平易通常の意義に從ひ之を解釋すべく、特別の意義に解釋するには、特別の理由なかるべからず、茲に平易通常の意義と云ふは、普通其文辭に附する處の意義を指し、專門家若くは技術家が附するが如き意義、又は一地方の慣例に依る意義にあらざるものを云ふ、蓋し法律は國民全般の爲に制定するものなるが故に、普通一般の意義に於ける文辭を用ひて、法文を綴りたるものと推測すること當然なればなり、然れども其文辭にして、立法者の意思特別の意義に用ひたること明白なる場合には、其意義に依るべきこと勿論なりとす、商工、技藝、學術等に關する法律に於ては、屢々此例を見る、□三法律の文辭は法定の意義に從ひ、之を解釋すべし、此原則は、右第一則の例外を爲すものにして、若し法律に於て、文辭の意義を特定したるときは、其文辭は特別の理由あるにあらざれば、其意義に解釋せざるべからず、例へば法律中に、商人とあるときは、商法に所謂商人を指すものと解すべく、又法律中養子とあるときは、通俗に之を解すれば男子のみなれども、我民法親族編に養子とは、男女を總稱することと爲せるが故に、此意義に從ひて解すべし、□四法律の文辭は、法律成立當時の用例に從ひて之を解釋すべし、言語は、時代に依り其意義を異にすることあり、故に法律成立の當時の用例に從ひ、之を解釋せざるときは、法律の眞意を枉ぐるが如きことなしとせず、例へば汽船なき時代に於ける船舶なる文辭は、汽船を包含せず、又馬車なき時代の車輛なる文辭は、馬車を含まざるが如し。(憲法三七條、刑一五九條、民八三七條、商四條)
- 英
- Grammatical interpretation
- 独
- grammatische Interpretation
- 仏
- Inter-prétation grammalique
文官試驗委員官制
(ぶんくわんしけんいいんくわんせい)文官試驗及び文官任用の詮衡に關する事務を掌らしむる委員の組織及び事務分配を定めたる命令也、□一文官高等試驗委員は、内閣總理大臣の監督に屬し、各官廳高等官の内より内閣總理大臣の奏請に依りて之を命ず、而して常任は三名(一箇月三百圓以内の手當)臨時委員は、試驗施行の際之を任じ、二百圓以内に於て事務の繁簡に從ひ手當を給せらる、□二文官普通試驗委員は、各官廳に置く、從つて各長官の監督に屬し、其廳の高等官中より之を任命す、□三書記は、文官高等試驗、文官普通試驗の各場合に之を置き、上官の指揮を承け庶務に從事するものとす。(二七年五月勅五四號)
文官試驗規則
(ぶんくわんしけんきそく)文官試驗の手續及び受驗資格、試驗科目等に就きて規定したる命令なり、□一文官試驗は別ちて文官高等試驗、文官普通試驗となす、年齡滿二十年以上の男子にして、左の諸項に該當せざる者は、文官試驗を受くることを得べし、イ重罪を犯したる者、ロ定役に服すべき輕罪を犯したる者、ハ破産、家資分散、身代限りを受け復權せざる者、□二文官試驗を受けんとする者は、手數料として、高等試驗は金十圓、普通試驗は金二圓を納むべし、□三高等文官試驗は、每年一回東京にて行ひ、文官高等試驗を分ちて、豫備試驗及本試驗とす、豫備試驗は中學以上の學力あるや否やを試驗するものにして、論文、論文に關聯する口述、迅速作文、外國語とす、本試驗は受驗人、學理上の原則及現行法令に通曉し、其修得したる學術を實務に應用するの能力あるやを考試するものにして、憲法、刑法、民法、行政法、經濟學、國際法とし、此の外、財政學、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法の一を選擇せしめて試驗す、而して考試の方法は、筆記及び口述に依る、□四文官普通試驗は、各官廳の須要に應じて行ふものにして、中學の科程を標準とし、各官廳所掌の事務を斟酌して、文官高等試驗委員の承認を經、其廳の文官普通試驗委員之を行ふ。(二六年一月勅一九七號)
文官試補及見習規程
(ぶんくわんしほをよびみならひきてい)舊文官任用令(二六年勅一八三號)及び文官任用令施行前の規程に依れる試補等任用方(二六年勅一八四號)に依りて、奏任文官に任用せらるべき者を試補とし、舊文官任用令に依り、判任文官に任用せらるべき者を見習として、之に各官廳の事務を練習せしむる事を得る旨、及び以上の試補は奏任文官、見習は判任官の待遇(但し無給)を與ふる旨を規程せる勅令なり。(六二年一〇月勅一八六號)
文官懲戒令
(ぶんくわんちやうくわいれい)一般文官に就き懲戒を行ふ場合、懲戒手續、懲戒罰、懲戒委員會の組織、權限等に就きて規定したる命令也、但し親任式を以て叙任する官及特別の規定ある官吏には本令を適用せず、□一官吏懲戒を受くべき場合左の如し、A職務上の義務に違背し、又は其職務を怠りたるとき、B職務の内外を問はず、官職上の威權又は信用を失ふべき所爲ありたるとき是なり、□二懲戒の罰目は、イ免官、官職を免じ、其日より二年間官職に就くことを得ず、ロ減俸、一月以上一年以下年俸月割額又は月俸の三分の一以下を減ず、ハ譴責これ也、□三其他懲戒委員會の組織、懲戒手續等に就きて規定せらるものなるも、此等は各其項目に於て説明せるを以て略す。(三二年三月勅六三號及び懲戒、懲戒罰、懲戒委員會の部參照)
文官任用令
(ぶんくわんにんようれい)一般官吏を任用するに就き、其資格條件を定めたる勅令也、但し親任式を以て叙任する官吏及び別に任用の規定あるものは、此例外とす、□一勅任文官は、下の資格ある者の中より任用す、イ奏任文官(特別任用の者及教官技術官を除く以下之に傚へ)の職にありたる者及在る者にして、高等官三等の者、ロ滿一年以上勅任文官の職に在りたる者、ハ勅任文官の職にありたる者にして、文官高等試驗に合格せる者、ニ滿二年以上勅任檢事又は判事の職に在りたる者は、司法省内の勅任官に任ずることを得、ホ帝國大學等の勅任教授たりし者は、文部省内の勅任文官に任ずることを得、ヘ陸海軍將官は別に任用の規定ある者を除くの外、各其部内の勅任文官に任用することを得、□二奏任文官は、左の資格を有する者の中より任用す、イ文官高等試驗の合格者、ロ滿二十年以上高等文官の職に在りたる者(特別任用の者及び教官技術官を除く)、ハ滿二年以上判事、檢事の職にありたる者は、司法省の奏任文官に任用することを得、□三判任文官は左の資格ある者の中より之を任用す、イ文官普通試驗合格者、ロ高等文官試驗合格者、ハ官公立中學校卒業者、ニ滿二年以上文官の職に在りたる者、□四教官、技術官、特別の學術技藝を要する行政官等は、高等官にありては、文官高等試驗委員、判任官にありては、文官普通試驗委員の詮衡を經て之を任用す、□五滿五年以上同一官廳に雇員として勤續したる者は、文官普通試驗委員の詮衡を經て、判任官に任用することを得るものとす、以上本令の大要とす。(三二年三月勅六一號)
文官文限令
(ぶんくわんぶんげんれい)一般文官に就き、其免官、退官、轉官及休職の事由を定めて保障したる法令なり、本令は、親任式を以て叙任する官、公使、秘書官、及び法令に別段の規定あるものを除く外、一般の文官に適用す、□一官吏は刑法の宣告、懲戒の處分又は本令に依るにあらざれば、其官を免ぜらるることなし、□二官吏左の各號の一に該當するときは、其官を免ずることを得、イ不具疾病に因り又は身體若くは精神の衰弱に因り、職務を執るに堪へざるとき、ロ傷痍を受け若くは疾病に罹り、其職に堪へざるに因り、自己の便宜に依り免官を願出たるとき、ハ官制又は定員の改正に依り過員を生じたるとき、右イ號に依り其官を免ずるときは、高等官にありては、文官高等懲戒委員會、判任官にありては、文官普通懲戒委員會の審査に付す、□三官吏は其意に反して、同等官以下に轉官せらるる事なし、□四官吏左の各號の一に該當するときは、休職を命ずることを得、イ懲戒令の規定に依り、懲戒委員會の審査に付せられたるとき、ロ刑事の件に關し、告訴若くは告發せられたるとき、ハ官制又は定員の改正に因り過員を生じたるとき、ニ官廳事務の都合に係り、必要なきとき、□五休職者は本の本官を奉じて職務に從事せず、其他總べて在職官吏と異ることなし、□六右四號に依り、休職を命ぜられたる者には、休職中俸給の三分の一を給す、□七免官は勅任官に在ては内閣總理大臣、奏任官に在りては内閣總理大臣を經て、本屬長官之を奏請し、裁可に依りて行ふ、休職は勅任官に在りては、内閣總理大臣奏請し、裁可に依りて之を行ひ、奏任官に在りては、内閣總理大臣の認可を經て本屬長官これを命ず、其後職を命ずるときも亦同じ。(三二年三月勅六二號)
分家
(ぶんけ)分家とは、家族が其屬する家より分離して、更に一家を新立することを云ふ、而して其家族が從來屬したる家を本家と稱し、分立したる家は、本家に對せば分家とす、同一の家より數個の分家を生じたるときは、其一分家と他分家との互ひの家を同家と稱し、分家より再分家を生じたるときは、其再分家は、本家の本家に對して末家と稱す、分家に就きては、從來別に法令に依りて一定の條件を設けたるものなく、唯分家を爲す本人が、戸主と連署して以て分家を爲すこと、及び其分家に屬すべき家族の名を認めて、戸籍吏に屆出づるを要したると、明治七年第七一三號の布告を以て、華士族の者分家したる時は、平民籍に編入すとの制限を設けられたるのみ、民法に於ては、分家の成年の家族にありては、戸主の同意を受け未成年の家族に在りては、尚親權を行ふ父、若くは母、又は後見人の同意を受け、何時にても之を爲すを得るものたることを明言せり、但し法定の推定家督相續人は、廢除若くは家族の養子と爲したる後にあらざれば、分家を爲すことを得ざるべし、分家を爲すに就きての條件は、□一家族たること、□二法定の推定相續人又は妻にあらざること、□三戸主の同意あること、未成年者の家族に在りては、尚ほ親權を行ふ父又は母、若くは後見人の同意あること是也、而して分家に因る一家創立は、本家に對する場合の外、他の一家創立の場合と異るなしと雖も、分家は一家創立夫れ自身を以て目的となし、家名の分與を受くるの趣意に出づるものたれば、分家は總べて本家の姓氏を稱するを以て本則となすもの也、分家は戸籍吏に屆出づるに因りて效力を生ずるものとす、分家を爲したるものは、戸主の同意を得て、自己の直系卑屬を其家族となすことを得、其直系卑屬が滿十五年以上なるときは、其者の同意を得ることを要す。(民七四三、七四四、七三三、七四五條、戸籍法一五四條)
- 英
- Branch family
- 独
- Zweighaus
- 仏
- Famille détâchée
分遣
(ぶんけん)數多の人員を各所に分ちて派遣するを分遣と謂ふ、例へば一箇大隊の兵員を一箇中隊づつに分ちて、二若くは三の場所に派遣するが如し。(陸軍々樂學校條例三條)
分權
(ぶんけん)分權とは、集權に對し、地方分權を意味す、即ち全國の事務を中央の機關に分掌せしめずして、却て全國を數多の管轄區域に分ち、其管轄區域内に於ける一切の事務を、一の機關に集中せしむる制度の極端に走ることを分權、即ち地方分權と稱す。(中央集權及び地方分權の部參照)
- 英
- Division of power
- 独
- Gewaltsab-teilung
- 仏
- Division du pouvoir
分限
(ぶんげん)法律上に於ける人の地位、資格を稱して分限と謂ふ、例へば臣民たる分限、子たる分限、軍人たる分限といふが如し。(陸軍將校分限令二條)
- 英
- Legal quality
- 独
- Stand
- 仏
- Qualité légale
分掌
(ぶんしよう)一の事務を數多の機關の間に分ちて掌理することを分掌と謂ふ、例へば郵便の事務を數多に分ちて、各課に分屬掌理せしむるが如し。(郵便及電信局官制三條三項)
文書僞造行使罪
(ぶんしよぎぞうかうしざい)刑法上、文書とは、物の上に永續的に結合することに依りて形を與へられたる文字、又は代用文字に係る意思の表示にして、證據能力あるものを云ふ、永續的と云ふは、直に消滅する場合の反對にして、例へば水を以て板の上に文字を書するが如き場合を包含せざるの謂なり、而して文書の僞造行使とは、新に虛僞の文書を作成して、其文書を眞實の文書の如くに裝ひ、以て文書の效用を完うすることを云ふ刑法が文書僞造行使罪を認め、文書を保存する所以は、文書に依りて表示せられたる意思表示(權利義務に關する事項に屬するものと、若くは單純なる事實に屬するもとを包含す)は、文書に依りて之を證明し得べきが故に、其文書の證據力を保存せんが爲めのみ、從つて文書の爲造行使者に對して、文書の如何によりて(例へば官文書、公文書、私文書)之が處罰を異にす。(刑一五四條乃至一六三條、舊刑二〇二條以下私文書及び官文書僞造行使罪の部參照)文書僞造罪は、虛僞の文書を作成することを云ふ、即ち文書の作成者として表示せられたる者に於て、全然此の如き意思表示を爲さざるか、若くは其文書の表示せられたる時、若くは場所に於ては、此の如き意思表示を爲さざるに拘はらず、文書の外觀に於て、恰も此の如き意思表示ありたるが如き形式を與ふることを意味す、從つて本罪に於て官文書、私文書、公文書に依りて其刑罰を異にせり。(刑一五四絛乃至一六三絛)
- 英
- Crime of forgery and fraudulent use of authentic writing
- 独
- Verbrechen der Fälschung der Urkunde und der Ausübung der Fälschungsurkunde
- 仏
- Infraction de forge et d'emploie des documents authentiques
文書僞造罪
分職制
(ぶんしよくせい)分職制は、或は中央組織と稱し、全國の事務を中央の機關に分掌せしむるの方法なり、政務が中央機關に集中する分職制(中央組織)の極端は、即ち中央集權なりと稱するを得べし、從つて國家は、此制度と分地制とを加味して、政務を執行するを現今の狀態とす。(分地制の部參照)
- 英
- Organization of distribution on business
- 独
- Geschäftsteilungsorganisa-tion
- 仏
- Organisation de la distribution des affaires
文書審理
(ぶんしよしんり)文書審理は、即ち書面審理也、書面審理は、當事者より訴狀、答辯書又は抗辯書、若くは再抗辯書等を提出し、互に書面上に意見を述べ、裁判官(又は審判官)は之に因りて審理を爲し、判斷を下すものにして、全く口頭辯論を用ひざるものとす、從つて書面審理は、秘密審理に屬するものとす、例へば農商務省特許局に於て爲す特許、商標等の審判は、槪して書面審理なりといふことを得べし。
- 英
- Trial by writing
- 独
- Unter-suchung von Schrift
- 仏
- Procès par les documents
文書變造行使罪
(ぶんしよへんぞうこうしざい)文書の變造とは、眞正なる文書を基礎として、之を不眞正に變更することを云ふ、分ちて私書及び官文書變造行使罪の二となす、各部を參照せられたし。(刑二〇二條乃至二〇七、條二〇九條乃至二一二條)
分擔
(ぶんたん)分擔とは、事物を數多に區分して、其一部づつを負擔することを云ふ、例へば土地の共有者は、其持分に應じて、土地の利用、改良、保存、其他租税等の諸費用を支出若くは納付せざるべからざるが如し。(民二五三條)分擔額とは、各自が分掌負擔する事物の數額を云ふ、例へば共同海損の分擔額と云へば、海上に於ける共同の危險を免るる爲め、船長の故意の處分に依り生じたる損害を、依つて救助せられたる船舶、又は積荷の所有者が、分配負擔する數額を指すが如し。(商六四三條)
- 英
- Contribution
- 独
- Mitwirkung
- 仏
- Contribution
分擔額
- 英
- Quantity of contribution
- 独
- Ausgleichungswerth
- 仏
- Somme de la contribution
分地制
(ぶんちせい)分地制は、或は地方組織とも稱し、全國を數多の管轄區域に分ちて、其管轄區域内に於ける一切の事務を一の機關に集中せしむるの方法を云ふ、政務が各地方に於て處理せらるるの狀態、即ち分地制の極端は、地方分權となる、從つて國家は、此制度と分職制とを加味し、以て行政事務を行ふものとす。(分職制及地方分權の部參照)
- 英
- District system
- 独
- Bezirk-system
- 仏
- Système du district
分任
(ぶんにん)事物を數多に區分して、其一部づつを擔任することを分任と謂ふ、例へば市町村住民は、市町村の負擔(費用、債務等)を分任するの義務を有するが如し。(市制六條、町村制六條)
- 英
- To take a portion of business
- 独
- Teilnahme
- 仏
- Division des affaires
分配税法
(ぶんぱいぜいはふ)國家が歳出額を豫定し、其額を府縣、郡、市町村等の地方團體に分賦納税せしめ、團體が更に之を各人民に分賦納税せしむる制度を云ふ、之に對するものは定量税法にして、此の制度は、國家に於ける歳出額の如何に拘はらず、常に一定の數額に對して一定の税金を課する制度を云ふ、之に反して分配税法は、數額の如何に拘はらず、豫定したる歳出額に應じて之を分配納税せしむる制度とす、前説の如く、普通分配税法に依る租税の徵收は、市町村等の地方團體を納税義務者として之に分賦し、市町村が、更に之を各納税人に分割配賦するものなり、茲に注意すべきは、市町村が彼の地租等の徵收に於て、之が徵收義務を負擔することあるも、之を必ずじも分配税法に依る租税の徵收となすべからざること是也、此等は租税の賦課徵收手續の一方法なるも、分配又は定量税法の區別は、課税方法の區別に屬するものとす。
- 英
- Distributed taxation
- 独
- Teilungssteuergesetz
- 仏
- Loi de l'impôt distribué
分筆
(ぶんぴつ)土地の實際上の區劃内に於ける地坪(即ち東京市神田區錦町一丁目何番地市街宅地何千坪と云ふが如し)を登記法上一筆と謂ふ、一筆を分割して數筆と爲すことを分筆と謂ふ、例へば甲地を分割して、其一部を乙地となしたる場合に於ては、乙地は分筆なり。(不動産登記法八二條)
- 英
- Subdivision of an article denoting the dimension of ground
- 独
- Teile (Stücke) eines Grundes
- 仏
- Subdivision de l'article
分賦
(ぶんぷ)負擔を分配して課することを分賦と謂ふ、例へば市町村内の數個人に於て、專ら使用する處の營造物あるときは、其修築及び保存の費用は、之を其關係者に分賦するが如し。(市制九九條、町村制九九條)
- 英
- Charge
- 独
- Last
- 仏
- Charge
文武官
(ぶんぶくわん)武官及び文官なり、文武官に任命せらるるものは、帝國臣民に限るものにして、外國人には之を許さざるを原則とす、是文官武官に任命せらるるは、等しく國民參政權に外ならざれば也、從つて帝國臣民は、皆其資格に應じて任命せらるるの特權を有す、貴賤貪富、又は楷級の異なるによりて其間に差異あることなし。(憲法一九條)
- 英
- Civil and military officers
- 独
- Civil- und Militäroffiziere
- 仏
- Officiers civils et militaires
分別の利益
(ぶんべつのりえき)保證人が共同して一の債務を保證したる場合、又は數人各別に一の債務を保證せる場合に於て、特別の意思表示(例へば連帶するが如き)なき限りは、保證人は其人數に應じて、平等の割合を以て保證債務を分擔するもの也、從つて主たる債務者が其債務を履行せざる場合に、債權者が保證人に對する請求に向つて、其保證人は、分別の利益を主張するを得べし、即ち分別の利益とは、平等の割合を以て各保證人間に分擔せしむべしとの抗辯を云ふ、此分別の利益又は抗辯は、羅馬の昔に於てバトリアン帝が、フイデイ、ユジシイオ及びマンダトオルに與へし分別の抗辯に始まり、近時多くの法制に於ては、之を襲繼し、多數の保證人間の關係を定むるものとす、我民法に於ても、數人の保證人ある場合に於ては、其保證人が各別の行爲を以て、債務を負擔したるときと雖も、債務平等分割の原則を適用し、分別の利益を有すべきを規定せり。(民四五六條)
扶養
(ふやう)扶養とは、自己の資産又は勞役に依りて生活を爲すこと能はざる者、又は自己の資産に依りて教育を受くること能はざる者に對し、其生活の資料を給し、又は引取りてこれを養ひ、又は必要ある場合に、これをして教育を受けしむることを云ふなり、扶養をなすべき義務を扶養義務と云ひ、其の義務を負ふべきものを扶養義務者と謂ふ、法律上扶養の義務を負はしむる者には一定の範圍あり、抑も戸主は、家族に對して扶養の義務を負ふことは、家族制度の然らしむる處なり、又夫婦は、相互に扶養の義務を負ふことは、亦婚姻の結果として當然の事とす、故に以下此の以外の扶養に就きて述べん、而して扶養の義務を負ふ者は、□一直系血族、即ち父母と子と祖父母と孫と、皆相互に此義務を負ふ、直系の血族中には、法定の血族をも包含す、故に養父母又は其直系尊族と、養子との間は勿論、繼父母と繼子と嫡母と庶子との間も、互に扶養の義務を負ふ、直系血族は亦同一の家に在ると否とを問はず、故に他家の養子と爲りたる者、又は其直系卑屬と、其實家の父母又は其直系尊屬との間及び他家に嫁したる女子、又は他家の入夫となりたる男子、又は直系卑屬と、其實家の父母又は其直系尊屬との間に於ても互に此義務を負ふ、□二兄弟姉妹、兄弟姉妹中には、法定の血族を包含す、故に例へば養子は養親の實子又は他の養子との間に扶養の義務を負ひ、繼子も亦繼父母の實子との間に此義務を負ふ、而して其同一の家に在ると否とを問はざる也、□三夫婦の一方と他の一方の直系尊屬にして、其家に在る者との間にも亦扶養の義務を負ふ、例へば他家に嫁せし女は、其夫の父母其家に在る時、其父母と婦の間に其義務を負ひ、他家の入夫となりたる男は、其妻の父母其家に在るときは、其父母と入夫との間にも其義務を負ふ、(甲)扶養義務の發生、抑も人は各自立して生活を營むべきことを本則とし、他人の扶養を求むるは、自立の生活を營むこと能はざる場合に限らざる可らず、故に原則として、扶養の義務を存在するには、左の二場合にありとす、□一自己の資産又は勞役に依りて生活すること能はざる時、即ち其財産より生ずる收入を以て、生活の資料を給すること能はず、且つ自ら勞役を執りて、其生活を營むこと能はざる場合に限る、勞役を執ることを得べき狀態に在りながら、故らに之を執らざるが如き者には、扶養の義務あることなし、然れども眞に勞役を執ること能はざるときは、其執る能はざる事由が何に基くかを問はざるものとす、故に身體精神の不具又は病症に因るときは勿論、社會の經濟上の事情により、其勞役を失ひ、相當の手段を盡すも其就くべき業務を發見する能はざる者は、扶養の權利を有す、□二自己の資産により教育を受くること能はざるとき、扶養の義務は啻に生活を補助する義務に止らずして、必要なる場合に、其教育の資を給する義務を含むは、蓋し近代の社會に於ては、人は教育を受けずして生活すること能はず、國家は一定の程度迄は、教育を受くることを以て、國民の國家に對する義務とせり、但し教育の義務は、幼年者に對してのみ存在するものなるは言を俟たず、故に自己の資産に依り、教育を受くること能はざる幼年者に對してのみ、教育の資を給する義務を負ふものとす、而して以上の原則に對する例外の一は、夫婦間の扶養義務なり、夫婦が特に財産契約を結びたる場合の外、夫又は戸主たる妻は、婚姻より生ずる一切の費用を負擔すべきものにして、夫又は戸主たる妻は、其配偶者が、縱令自己の資産又は勞務に依り、其生計を營み得る場合と雖も、尚扶養の義務を負ふものとす、又例外の二は、親權を行ふ父又は母の未成年の子に對する義務なり、親權を行ふ父又は母は、未成年の子を教育する費用を支辨すべき義務あり、其義務は其子が自ら生活の資を有し、若くは勞務を爲し得ると否とを問はざるなり、然れども之等は、皆婚姻若くは親權の效力として發生する義務に屬す、而して又兄弟姉妹間の扶養の義務は、本人の過失に因ちずして、生活すること能はざるに至りたるときに限り、存在するものとす、故に例令自己の資産又は勞務に依りて生活すること能はざるも、自ら責を負ふべき事由に依りて資産を失ひ、又は勞務に就く能はざるに至りたるときは、其兄弟姉妹に對して扶養を求むることを許さざる也、例へば生活を爲し得べき資産を有しながら、自ら放蕩無類にして、爲に其資産を失ひ、又は故らに投機等を試みて失敗し、其資産を蕩盡したるが如き、又は自ら破廉恥の罪を犯し、爲めに世の信用を失ひ、勞務に就くこと能はざるが如きは、皆兄弟姉妹に對し、扶養を求むるの權利なきものとす、(乙)扶養義務者の順位、扶養の義務は、素と德義の觀念に其基礎を有するを以て、扶養義務の順位を定むるにも亦德義に基からざるべからず、□一夫婦は共同生活を爲し、同心一體たるべきものなるを以て、配偶者が、第一位に扶養の義務を負ふべきは當然也、□二孝は、我國社會道德の基本也、故に配偶者に次ぎては、直系卑屬を以て其義務者とす、直系卑屬中子と孫等あるときは、子は孫に先ちて其義務を負ひ、孫は卑孫に先ちて其義務を負ふ、□三第三位の義務者を直系尊屬とす、父母と祖父母とあるときは、父母先づ其義務を負ふ、□四第四位の義務者を戸主とす、之れ我家族制度より來る特色也、□五夫婦の一方の直系尊屬と、他の一方、其直系尊屬に親等を異にするものあるときは、父母先づ其義務を負ふ、□六兄弟姉妹の扶養を負ふは、寧ろ變例に屬すべきものなるを以て、最後の義務者とす、一例を以て之を説明すれば、例へば自己の資産又は勞務に依り、白ら生活すること能はざる男子ありと假定せば、先づ其妻に扶養を請求すべく、其妻なきとき、又は妻に資力なきときは、其子又は孫に請求し、次に父母又は祖父母に、つぎに戸主に、つぎには其家に在る妻の父母、若くは其家に在る子の配偶者に請求し、以上の者皆在らず、又は資力を有せざるとき、始めて兄弟姉妹に之を請求すべきなり、若し又親等相等しき同一順位の扶養義務者數人あるとき、例へば數人の子あるとき、父母數人あるとき、(實父母、養父母、繼母嫡母)配偶者の父母の双方共に其家に在るときは、又は配偶者の父母と子の配偶者と共に在るとき、其家に在る子の配偶者數人なるとき、兄弟姉妹數人あるとき等は、扶養義務を負ふべき者の前後を定めざるべからず、仍て民法は此の如き場合に於ては、□一其家を同じくするものと否らざるものとあるときは、其家を同じくするものより先づ義務を負ふ事とせり、例へば數人の子ある者、其一人は他家の養子と爲り、他は同家にあるときは、其同家に在る者先づ義務を負ふ、養子と爲りたる者は、之に次きで義務負ふ、是家族制度を認めたる當然の結果なりとす、□二家を同じくする者又は家を異にする者數人なるときは、其數人は各資力に應じ、其扶養を負擔すべきものとす、此場合に於ては、順序を付すべき理由あらざるに依る、例へば子二人ありて、共に其家にあるとき、其一人は六の資産あり、一人は四の資産ありとせば、前者は扶養の十分の六を擔任し、後者は其十分の四を擔任すべきものとす、餘は凡て之に準ず、(丙)扶養の程度、扶養の義務は、扶養權利者の生活を扶助するに至るも、如何なる程度迄其生活を扶助することを以て、扶養義務者の義務となすべきやは、事情に依りて異ならざるを得ず、之等の事情を定むるものは、□一扶養權利者の需要なり、扶養權利者には、或は全く資産を有せず、且つ全く勞務に就くことを得ずして、生活需用の全部を給せらるべき必要あることあるべく、此場合に於て、其需要は生活費用の全部也、或は多少の資産を有し、又は多少の勞務に就くことを得、其收入を以て生活費用の一部に充つるを得るも、之のみを以ては、未だ生活を爲すに充分ならざることあるべし、此場合に於ては、其需要は生活費用の補充たるに過ぎず、或は幼年者の如き、生活費用の外、尚教育を受くることを要することあるべく、或は又疾病に罹れる者の如き、其疾病の療養を要することあるべく、等しく生活費用に於ても、亦扶養權利者の身體の狀態に應じて、多くを要することあるべし、又少くして足ることあるべし、即ち扶養義務の程度は、之等の事情に應じて定むべきものとす、□二扶養義務者の身分及び資力也、扶養權利者にして、縱令自ら生活を爲す能はざるにもせよ、若し扶養義務者の身分資力にして、僅に自ら生活を維持し得るに過ぎざるときは、之をして、更に他人の生活を助くる義務を負はしむべからざるは當然なり、若し又身分資力にして充分ならんか、啻に扶養權利者の生命を保持するに止まるのみならず、尚相當の資料を給せしむべき也、之等の程度は、扶養權利者の資力如何に依り定むべきは勿論なるも、必ずしもの資力みを以て定むるを得ず、負擔の額遙に資産の額に超へ、法律上は、全く無資力なる者と雖も、社會上相當の身分を占め、相當の信用を有する者の如きに在りては、之をして扶養の義務を負はしめざるべからず、(丁)扶養の方法、扶養は、往々金錢を以て爲すべきものとする立法例なきにあらず、然れども我民法は、我國の事情に照して、金錢を給するを以て扶養の唯一の方法となすの不當なるを認め、扶養權利者を引取りて養ひ、又は引取らずして生活の資料たるべき金錢其他の物品を支給するを撰擇するの權利を扶養義務者に付與せり、從つて扶養義務者は、自己の便宜とする方法に從ひ、或は金錢其他の物品を給して扶養を爲すも、或は扶養權利者を引取りて扶養を爲すも、一に其自由なり、但し或場合に於ては、全く扶養義務者の撰擇に一任することは、扶養權利者の利益の爲め甚だ危險なることあるべく、或は又此二種の方法の外、扶養權利者にして病人なるときの如きは、之を相當の病院に入るる等の必要あることあるべし、斯くの如き場合に於て、若し扶養權利者と扶養義務者との意思一致せざるときは、扶養權利者は裁判所に其方法を定むることを請求するを得るものとせり。(民九五四條乃至九六三、七四七、七九〇條)
- 英
- Support
- 独
- Unterstützung
- 仏
- Aliment
扶養義務
- 英
- Duty of support
- 独
- Stütz-ungspflicht
- 仏
- Devoir de l'aliment
扶養義務者
- 英
- Person bound to furnish support
- 独
- Stützungsschuldner
- 仏
- Obligé de l'aliment
扶養權利者
(ふやうけんりしや)扶養權利者とは、扶養を受くべき權利を有するものを云ふなり、扶養權利者が數人ある場合に於ては、其順位は、自然の性情及び德義の觀念に依りて、これを決せざる可らず、民法は、直系尊屬を第一順位に置けり、蓋し我國の德義上孝を重ずること最も大なれば也、直系卑屬を其次位に置きたるは、子を愛する人情に基き、次に配偶者、次に其家にある配順者の直系尊屬、又は其家に在る直系卑屬の配偶者とし、次に兄弟姉妹とし、最後に以上の親族にあらざる家族と爲せり、其同一順位中親等の異るものあるときは、其近き者を先にす、例へば父母と祖父母とあるときは、先づ父母を扶養し、其資力尚餘あるに於て祖父母を扶養し、資力尚餘あるときは、次に子、次に孫、次に夫又は妻等を扶養する義務を負ふものとす、故に例へば、配偶者に對して扶養を請求するには、其配偶者が父母、祖父母、子又は孫に對して扶養の義務を負はざること、又は縱令其義務を負ふも、之を扶養したる上、尚資力に餘あることを證明せざるべからず、其餘皆之に準ず、同順位の扶養權利者即ち同じく父母たり、祖父母たり、又は子又は孫たる等の場合に於て、其權利者中家にある者と、在らざるものとあるときは、其家にある者、先づ扶養を請求することを得、其家に在らざる者之に次ぐ、同じく家に在に在る者なるとき又は同じく家に在らざる者なるときは、各其需用に應じて扶養を受く、例へば子二人皆な其家に在るとき、其一人は六の扶養を需要し、一人は四を需要し、而して扶養義務者の資力一なるときは、前者は十分の六の扶養を請求し、後者は十分の四を請求することを得べきが如し。(民九五七、九五八條)
- 英
- Person entitled to support
- 独
- Stützungsrechthaber
- 仏
- Personne intitulée à l'aliment
不融通物
(ふゆうつうぶつ)物の中、私權の目的と爲り得べきものあり、又其性質上又は法律の規定に依り、私權の目的と爲り得可らざるものあり、物が私權の目的と爲り得べき性格を物の權利能力と稱す、私權の目的と爲り得べき物の中、取引の目的と爲り得べきものあり、取引の目的と爲り得べからざるものあり、前者は之を讓渡することを得、後者は之を讓渡することを得ず、物が取引の目的となり得べき性格を、物の取引能力と稱す、物が權利能力及び取引能力を併有するときは之を融通物と稱し、然らざるものは之を不融通物と稱す、物は一般に融通物なり、通常不融通物として列記せらるるものは、公共物、公有物、禁制物、世襲財産及び屍體なり、□一公共物、公共物は、公衆の使用に供せらるる物にして、人の獨占することを得ざるもの也、例へば空氣又は水は、其一部分を他の部分より分離して、之を獨占することを得れども、自然の狀態に於ては之を獨占することを得ず、故に不融通物とす、□二公有物、公有物とは、國家又は地方團體に屬する財産を總稱す、公有物中、財政上の財産に屬するものと、行政上の財産に屬するものとあり、財政上の財産は、國家又は地方公共團體の收益の淵源と爲るべき物にして、個人が其所有物を處分し得るが如く、之を處分することを得、故に不融通物にあらず、例へば公有の山林の如し、行政上の財産は、公共の用に供せらるる財産なり、其中公衆の使用に供せらるる物(公用物)と、然らざるものとあり、例へば道路、橋梁、公園の如きは前者に屬し、軍艦、要塞、砲臺の如きは後者に屬す、行政上の財産は、國家又は地方團體の所有に屬する物にして、之を何人の所有にも屬せざる物と爲すは誤なり、然れども公共の用に供せらるべき物が、其性質を失はざる限りは、取引能力を有せず、故に之を不融通物と爲す、□三禁制物、禁制物とは、製造又は所特を禁ぜられたる物を云ふ、斯くの如き物は、私人の所有することを得ざる物にして、之を賣買、交換等の目的と爲すことを得ず、例へば僞造の文書、僞造の貨幣、僞造の兌換券の如きは總べて不融通なり、單純に權利能力又は取引能力を制限せられたる物は、不融通にあらず、例へば風俗を害する繪画の如きは、其成立を禁ぜられたるものにあらずして、公然取引することを禁ぜらるるに止まる、又劇藥の如きは、警察上の取締に依り、自由に販賣することを得ざるも、全然取引能力なきものにあらず、故に此等は總べて融通物なり、□四華族の世襲財産、華族の世襲財産は、其世襲財産たることを解除せられざる間は、之を處分することを得ず、即ち世襲財産は、權利能力を有すること勿論なるも、取引能力を缺如す、故に一種の不融通物なり、民法の規定に從へば、系譜、祭具及び墳墓の所有權は、家督相續人の特權に屬す、斯くの如き物は、讓渡するを得ざるものと解するときは、一種の不融通物と爲さざるべがらず、□五屍體、屍體は一種の物なり、而して學術上の目的に供せらるべき地位に在るときは、之を權利の目的又は取引の目的と爲すことを妨げず、然れども他の目的の爲めに之を獨占し、又は取引することは、善良の風俗に反す、故に屍體は槪して禁制物として、私權の目的とならず、又は之を取引することを許さず、故に特別の地位に置かるる場合の外、不融通物と爲すを至當とす。(民九八七、八五條)
- 羅
- Res extra commercium
付與
(ふよ)付與は、主として官廳が、私人に對して物件等を下付する場合に用ひらるる用語なり、例へば保證證明書、執行正本を、裁判所が請求人に付與するが如き之れなり、但し私人相互間に於ける物又は權利の贈與又は移轉等を付與と云ふことあり。(民訴五一三、五一六條)
- 英
- Gift
- 独
- Verleihung
- 仏
- Don
不履行
(ふりかう)債務の履行なるものは、適法なる時期にこれを爲すを要するものにして、債務者が適法なる時期に於て、債務の履行をなしたるときは、債權は、これによりて消滅す、然れども、債務辨濟の期限以前に於ては、其履行の責任を生ずべき理由なきは、期限の性質上明白なることに屬す、所謂債務の不履行とは、期限の到來せるにも拘はらず、債務者が其辨濟をなさざることを云ふ、而して不履行は、期限の設定如何によりて、自づから其場合も異なるものなるを以て、左にこれを分説すべし、□一確定期限を付したる場合、確定期限は、當事者に於て豫め確知することを得べき時期なり、故に債權者の請求なきも、期限の到來するや否や、債務者に於て履行すべきは當然なり、期限の到來したるに、なほ之を履行せざるは、履行すべき時の至りたるを知りつつ、これを經過するものにして、所謂不履行の責を免れざるものとす、□二不確定期限を付したる場合、不確定期限は、當事者の豫め確知するを得ざるもの也、又其到來したる後と雖も、これを知ることを得ざる場合あり、故に期限の到來と共に、直に履行の責を生ずるものとするは、債務者を責むること酷に失するものといはざるべからず、故に其到來を知りたるときより履行の責任を生ずるものとす、債務者が、不確定期限の到來を知り得べき場合種々あり、債務者が自ら實見することあり、第三者より聞知することあり、債務者よりの通知に依り之れを知ることあり、債務者の請求に依りこれを確知することあり、方法の如何を問はず、債務者が之れを確知したるときは、其時より直にこれが履行の責を生ずるものとす、從て此場合に於て、債務の履行を怠りたるときは、所謂不履行の責を免れざるものとす、□三單純債務の場合、單純債務は期限を定めざる債務にして、成立と共に辨濟期にあるもの也、從つて債務者は、債務の成立と共に其辨濟期にあるを確知するもの也、故に單純に論理を貫くときは、成立と同時に履行の責任を生ずるものと斷定せざるべからず、然れども成立するや否や、直に履行せざるを以て、怠慢と爲すは、債務者を不利益の地位に陷らしむるものにして甚だ穩當ならず、故に法律は、債務者の請求あるまで履行するに及ばざるものとし、請求を俟て始めて履行の責を生ずべきものと定む、從つて此場合に於て、債權者の請求あるに拘はらず、債務の履行を遷延したるときは、所謂不履行の責を負ずるものとす、債務不履不に對する制裁に二あり、強制履行及び損害賠償の請求是なり、強制履行とは、公力に依りて強て債務の履行を爲さしむることを云ひ、損害賠償とは、債務の不履行に依る損害を補塡せしむることを云ふ。(民四一二絛乃至四二〇條)
- 英
- Non-performance
- 独
- Nichter-füllung
- 仏
- Non-accomplissement
部理代理
(ぶりだいり)代理とは、代理人が本人の名に於て、自ら意思を決定表示し又は之を受け、其效果を直接に本人に及ぼすを云ふ、即ち代理に因りて生ずべき法律關係の當事者は本人なるも、意思表示の當事者は代理人なる場合に存するなり、從つて代理には、左の要素を具備するを要す、□一代理に於ける意思表示は、代理人自身の意思表示也、又代理に於ける意思表示の受領は、代理人自身の受領也、□二代理は、代理人が本人の名に於て爲す意思表示也、□三代理に於ける意思表示は、直接に本人に對して效力を生ずるもの也、□四代理に於ける意思表示は、代理人に對して效力を生ぜず、而して部理代理とは、ある事項を限りて、本人の爲めに代理行爲をなすことを云ふ、例へば米百俵の賣買、金千圓の貸借を代理するが如き是なり、從つて部理代理は常に委任契約によりて生ずるものとす。(民九九條乃至一〇二條)部理代理行爲をなすべき者を部理代理人と謂ふ、代理人は、必ずしも能力者たることを要せざるものにして、從つて能力者たる者にあらずとも、部理代理人たるを妨げざるものとす。(民一〇二條)
- 英
- Special agency
- 独
- Artvoll-macht
- 仏
- Agence spéciale
部理代理人
- 英
- Special agent
- 独
- Artbevoll-mächtigte
- 仏
- Agent spécial
振出
(ふりだし)振出とは、手形又は郵便爲替等を發行することを云ふ、爲替手形を振出(發行)すには、左の要件を記載し、振出人之に署名することを要す、□一一定の金額、□二支拂人の氏名又は商號、□四受取人の氏名又は商號、□五單純なる支拂の委託、□六振出の年月日、□七一定の滿期日、□八支拂地、又約束手形を振出には、左の要件を記載し、振出人これに署名することを要す、□一約束手形たることを示すべき文字、□二一定の金額、□三受取人の氏名又は商號、□四單純なる支拂の約束、□五振出の年月日、□六一定の滿期日、□七振出地、又小切手を振出すには、左の要件を記載し、振出人之に署名することを要す、□一小切手たることを示すべき文字、□二一定の金額、□三支拂人の氏名又は商號、□四受取人の氏名若くは商號又は所持人に支拂ふべきこと、□五單純なる支拂の委託、□六振出の年月日、□七支拂地これなり、(手形の部參照)これを要するに、振出は新たに手形等を作製し以て手形上の權利義務關係を發生せしむるの行爲なり。(商四四五、五三〇、五二五條、郵便爲替規則二章一節)
- 英
- Issue
- 独
- Ausgabe
- 仏
- Issue
不論罪
(ふろんざい)犯罪とは、國家が刑罰を制裁としたる不法行爲也、從つて國家は犯罪者ある每に、これが處罰を爲し以て社會の秩序を維持するものとす、然るに茲に罪を犯したるものあるに對し、國家は特にこれを處罰せざることあり、此場合を稱して刑罰法上不論罪と謂ふ其場合は例へば、抗拒すべからざる強制に遇ひ、其意にあらずして罪を犯したるが如き、天災又は意外の變に因り、避くべからざる危難に遇ひ、自己若くは親屬の身體を防衞するが爲めに罪を犯したるが如き、長官の命令に依りて、職務上罪を犯したるが如き、知覺精神の喪失によりて、是非を辨別せずして罪を犯したるが如き、又は正當防衞の爲めに、罪を犯したるが如き場合是なり、蓋し此の如き場合にありては、犯人は常に犯意を缺くか、若くは罪を犯すことが權利行爲に屬するを以てなり、換言すれば、斯る場合に於ては、犯罪の構成要件を欠缺するが爲めなり。(刑法第一篇第七章三五條乃至四二條、舊刑七五條乃至八〇條參照)
- 英
- Exclusion of penalty
- 独
- Aus-nahme von der Strafe
- 仏
- Exclusion de la peine
兵役義務
(へいえきぎむ)兵役義務とは、陸海軍の軍隊に編入せられて、服從せざるべからざる所の義務を云ふ、我國法の下に於て、此兵役の義務は、左の如く定めらる、□一兵役義務は、國民一般の義務也、我古代の制度は、國民皆兵主義にして、兵農の區別なかりしと雖も、封建時代に至りては、兵役に就く者は特別の階級に限られ、明治元年の維新の際に於ても、尚此制度を維持し各藩に命じて其石高に應じ、其藩士中より兵士を出さしむることとなせり、然るに明治三年に至り、徵兵規則を作り、藩士より出でたる兵士の外、尚一般人民よりも兵士を出さしむるを得ることとなり、而して明治五年に至りては、從來の制度を全く一變し、廣く一般人民に兵役に就かしむることとなせり、是今日の徵兵制度の基礎にして、現今の徵兵令は、明治二二年の法律を以て定められたる所なりとす、□二兵役の義務は、國民のみに負擔せしめらるるものにして、外國人に之を負擔せしむる事なし、□三兵役の義務は、公法上の義務にして、且つ憲法上法律を以て定めざるべからざる義務なりとす、□四兵役の義務は、命令に接して、服役せざるべからざる義務を指すものにして、現實に服役するの義務のみを指すものにあらざるものす、□五兵役の義務は、代人を以て代ふることを得ざる義務也、蓋し兵役の義務なるものは、單に金錢に見積ることを得る勞務に服するの義務にあらざれば也。(憲法二〇條)兵役義務者とは、兵役に服する義務者を云ふものにして、現在に於ては滿十七歳以上滿四十歳以下の男子は、總べて此義務あるものとす、尤も不具癈疾等特定の事由により、兵役を免除せられたる者は此の限りに非ず、兵役義務者の負ふ兵役義務は之を分ちて、□一規役に服するの義務、即ち國家の戰鬪力を組織する爲め、現實に兵營に入りて役務に服するの義務を云ふ、此の義務は壯丁を身體檢査の上、現役兵として指定せられたる者に限り之を負ふ、□二召集に應じて國家の戰鬪力を組織するの義務、即ち戰時又は事變に際して、召集に應じて部隊に入り、戰鬪に從事するの義務之也、此の義務は、豫備、後備、補充、第一國民兵、第二國民兵等總べての兵役義務者の負ふ所とす。
兵役義務者
兵役相續人
(へいえきさうぞくにん)屯田兵の服役期限中滿四十歳に至り、又は死亡若くは事故によりて免役したる場合に、其家族中適當の男子をして、兵役の殘期を相續せしむ、此相續者を稱して兵役相續人と謂ふなり。(屯田兵條例及屯田兵土地給與規則一〇條)
- 英
- Heir of military service
- 独
- Erbe des Militärdienstes
- 仏
- Héri-tier du service militaire
兵役免除
(へいえきめんぢよ)癈疾又は不具にして、徵兵檢査規則に照らし、兵役に堪へざる者に、全く兵役を免除するの處分を兵役免除と謂ふ、こは聯隊區徵兵官又は警備隊區徵兵官が、兵役義務者に對して爲す裁決の一種に屬し、兵役免除は、全く兵役の義務を免除するものにして、彼の徵集を免除又は猶豫するものと異なり、國民兵役にも服するの義務なきものとす。(徵兵事務條例三〇條乃至三六條)
- 英
- Remission of military service
- 独
- Abnahme vom militärdienst
- 仏
- Rémission du service militaire
兵屋
(へいおく)屯田兵に給與する住家を兵屋と謂ふ。(屯田移住規則五條參照)
- 英
- Military building
- 独
- Lager
- 仏
- Etablissement militaire
平穩
(へいおん)暴行又は強迫に依らざる狀態を云ふ、即ち強暴に依りて域狀態を持續せざることが謂ふ所の平穩にして、之に反して強暴とは、暴力又は強迫に依り、其狀態を持續することを意味し、彼の平穩の占有なるものは、即ち斯くの如き強暴の方法に依り、占有の特續を爲さざることを云ふ也。(民一六二條一項)
屏禁
(へいきん)監獄署に於ける囚人が、獄則を犯したる場合に處する懲罰の一種にして、晝夜他の監房又は役場と隔絶したる監房に獨居せしめ、服役時間、座作の役を課するものを屏禁と謂ふ。(監獄則四二條)
- 英
- Solitary confinement
- 独
- einsame Haft
- 仏
- Emprisonnement solitaire
併科主義
(へいくわしゆぎ)數罪倶發(參照を要す)の犯人に、其犯せる各罪の刑罰を併合して科する立法上の主義を併科主義と云ふ、併科主義に反對するものは、所謂吸集主義なり、現行刑法は、違警罪に就きては併科主義を採り、他の犯罪には吸集主義を採れり、其他特別法、例へば新聞紙條例、出版法等に於ては、併科主義を採用せり。
兵權
(へいけん)兵權は、天皇大權の一種にして、兵馬の權を云ふ、兵權を別ちて、編制權及び統帥權となすを通例とす、所謂編制權とは、陸海軍の軍隊及艦隊を組制編織するの權にして、其常備兵額を定むるが如きも此内に屬す、統帥權とは、其編成したる軍隊及び艦隊を指揮統帥する權を云ふ、我が法に於ては、編制權及統帥權ともに天皇に屬するものにして、天皇は軍の大元帥として兵馬の大權を統べ、其司令權及軍政實施の權限をこそ臣下に委すれ、此等は單に兵權の行使に補助機關として參與するに過ぎざるものとす。(憲法一一、一二條、司令權、軍政の部參照)
- 英
- Military authority
- 独
- Militär-authorität
- 仏
- Pouvoir militaire
平時國際公法
(へいじこくさいこうはふ)平時の場合に於ける國家と國家との間に於ける規律、即ち生存條件を確むる法律的形式を稱して、平時國際法又は平時國際公法と云ふ、一層之を學者らしく云へば、文明諸國の一般の承認により、國家相互の關係に於て遵守せらるる行爲の法則なりと解するも差障なし、故に國際公法は、文明國團體間の行爲の規則にして、文明諸國の承認に係るものなりとす、學者が更に語を精密にして、國際法とは、文明諸國の團體に屬する諸國相互の關係、及び文明國と其國に屬せざる一私人又は團體の關係に關し、文明諸國の容認せる行爲の規則なりといふものあり、何れにせよ國際法は、文明國間に遵守せらるる法則たるものにして、文明諸國團體の行爲の規則なりといふ點に於ては、非議せらるるの餘地なし、而して如何なる國家が國際團體を組織すべきや、耶蘇教的文明國に限らるるや、歐洲的文明諸國に限らるべきか、將た一般文明國を含むべきや、歐米の學者中、往々にして耶蘇教的文明國又は歐洲的文明國に限らるるものと論じ、彼のウエストレーキ氏すら尚文明國の極度を論ずるに當りては、歐洲的文明を基礎とし、歐米共通同等の文明を基本とす、幸にして斯かる僻見は、我日本帝國の勃興に伴ひて漸次に薄らぎしと雖も、果して如何なる國家を以て文明國と稱すべきや、現時世界の實際に於て之を觀察すれば、ウヱスレーキ氏の云へるが如く、少くと▲領事裁判權を滯りなく行使し得る丈けに組織的強力を有し、之に依りて國家の秩序を維持するの國家なりといふも、多く誤なかるべく、更に語を抽象的に用ひて、凡そ國の東西と、宗教の如何とを問はず、國家的秩序を維持し又之は維持するに足るべき固有の強力を有する國家也といふを得べし、故に國際法上國家とは、共同の下に一定の領域を有し、共同の獨立を目的とするものならざるべからざるなり、次に國際公法は、文明諸國の容認によりて成立す、抑も法なるものは、必ず會社を前提とす、國際法は國際社會を前提とす、故に國際社會の容認によりて成立するなり、從づて文明諸國の容認は、國際團體に加入し、國際法を適用し、國際法上の主體たるの要件なりとす、假令實際上に於て國際法なるものは、歐洲諸國に依りて設定せられ、國際爭議の多くは、歐洲協調に依りて解決せられ、萬國の容認と稱する虛僞の名義の下に、大國のみの容認と小國の服從的默認とによりて、國際法を成立したる事疑ふべからざる事實なりと雖も、今や歐洲協調は漸く擴張せられて、米西戰爭以來歐米協調となり、日英同盟と共に、更に其一部を東洋に擴張し、終に世界協調なるものを生ずるに至れば、此協調も公平なるを得べく、要するに歐洲協調は、最早國際爭議解決の機關に非ず、歐洲列強の容認は、國際法成立、國際團體加入の要件にあらざるに至らん、國際法は文明諸國の容認によりて成立し、文明諸國の容認は國際團體加入の要件たるは前示したる如し、此容認の方法に二種あり、條約によるもの之を明示の容認といひ、慣行によるもの之を默示の容認といふ、故に國際法は、條約又は慣行によりて成立するものとす、以上論説したる如く、國際法は、文明諸國の容認による文明國團體等の行爲の規律なり、故に國際法の適用を受け、國際法上の主體たるを得るものは必ず文明國ならざるべからず、又必ず國際團體に加入せざるべからざるものとす。(國際法の部參照)
- 英
- Pacific international law
- 独
- friedsames Völkerrecht
- 仏
- Droit inter-national pacific
平時國際法
平時萬國公法
- 英
- Pacific international law
- 独
- Friedensinternationalrecht
- 仏
- Droit international pacific
平時徵發
(へいじちようはつ)平時の場合に於ける軍の演習、又は行軍の際に於ける徵發を平時徵發と謂ふ、平時徵發は、戰時徵發と同じく、明治十五年發布の徵發令に依るべきものにして、徵發は、陸軍若くは海軍官憲徵發書を以て之を行ふものとす、而して徵發書を發する權限を有するものは、第一に陸海軍大臣及び師團司令官にして、第二に陸軍に於ては特命司令官、軍團長、師團長、旅團長、分遣隊長若くは演習及び行軍の軍隊長にして、第三に海軍に於ては、特命司令官、艦隊司令官、分遣官長若くは操縱及び航海の艦隊司令官又は艦長なりとす、徵發書は、徵發區に從ひ、府縣知事、郡區村町長若くは停車場長、船舶會社の店長に委するものとす、右の徵發を課せられたる者は、時期に違ふことなく之を供給するの義務あるもの也、次ぎに徵發すべき物品は左に擧ぐるものとす、□一米、麥、秣蒭、鹽、味噌、醬油、漬物、梅干及び薪炭、□二乘馬、駄馬、駕馬、車輛其他運搬に供する獸類及び器具、□三人夫、□四宿舍、廐圍及び倉庫、□五飮水、石炭、□六船舶、□七鐵道汽車、□八演習に要する地所、□九演習に要する材料器具等とす。(徵發令參照)
- 英
- Levy in peace
- 独
- Erhebung in Friedenzeit
- 仏
- Levée pendant la paix
平時封鎖
(へいじふうさ)平時封鎖に、自國領海の封鎖と他國領海の封鎖との二種あり、平時封鎖の主旨は、國際法上に於ける戰爭開始以前に於ける一種の強行手段にして、其目的とする所は敵國との交通を妨げ、自國船舶の蒙むる損害を避けんとするにあり、封鎖の要件等は、戰時の封鎖と異るなきを以て、封鎖と題する項目の説明に讓る。
- 英
- Pacific blockade
- 独
- Friedens-blockade
- 仏
- Blocus pacific
平水航船
(へいすゐかうせん)平水航路とは、船舶檢査法に依りて定あられたる四種航路(違洋航路、近海航路、沿海航路、平水航路)の一にして、船舶檢査法施行細則に依れば、平水航路とは河川港灣及左に揭ぐる各區内の航路を云ふものとす、即ち□一相模國觀音崎より上總國富津に至る線内、□二駿河國三保崎より伊豆戸田港に至る線内、□三三河國伊良湖崎より志摩國菅島に至る線内、□四紀伊國宮崎より加太浦に至る線内、□五紀伊國友ケ島水道及播磨國明石瀨戸以内の沿岸、□六播磨室津より小豆島大角鼻を經て讚岐國小田鼻に至る線内、及多度津より備中國青佐鼻に至る線内、□七伊豫國梶取崎より岡村島、安藝國大崎上島を經て三津に至る線内、及び三津港より周防國屋代島を經て上の關に至る線内、□八讚岐國多度津より備中青佐鼻に至る線内、及伊豫國梶取崎より岡村島、安藝大崎上島を經て三津に至る線内、□九豐後國地藏崎より美濃崎に至る線内、□十豐前國今津より長門國六連島を經て村崎鼻に至る線内、十一筑前國西浦三崎より志賀島大崎に至る線内、十二筑前國鹿家崎より肥前國神集島を經て呼子港に至る線内、十三對島國津崎より鹿兒島を經て値賀崎に至る線内、十四肥前國向後崎より番所崎に至る線内、十五肥前國能母崎より三重崎に至る線内、十六對島唐洲崎より鄕崎に至る線内、十七肥前國口の津より肥後國天草島大島崎に至る線内、十八肥後國天草島牛深港及黑瀨戸以内、十九薩摩國山川港より大隅國小根古川に至る線内、二十出雲國地藏崎より伯耆國日野川に至る線内、廿一丹後國鷲崎より博奕崎に至る線内、廿二越前國遠石崎よりヲカ崎に至る線内、廿三能登國觀音崎より沖波鼻に至る線内、廿四陸奥國平館より九艘泊に至る線内、廿五陸前國花淵崎より宮戸島〓の崎に至る線内、廿六渡島國函館山尾花崎より菓登支岬に至る線内、廿七後志國辨慶崎より磯谷に至る線内、廿八後志國高島岬よりカムイコタンに至る線内、廿九釧路尻羽岬より大黑島を經てルムセシマ岬に至る線内是なり。(三三年一二月遞信省令八七號五二條)
- 英
- Smooth-water vessel
- 独
- Glattwasser-Schiff
平水航路
平水航路の航行に用ふる汽船及び帆船を平水航路と謂ふ。(船舶檢査法一條四號)
- 英
- Smooth-water line
- 独
- Glatt-wasser-Linie
- 仏
- Ligne de la navigation pacifique
兵籍
(へいせき)陸海軍人として編入せられたるものを稱して、通常に兵籍に入ると謂ふ場合あり、又兵籍とは、陸海軍々人の身分に關する事項を登記する帳簿を云ふことあり、之は通常人民の戸籍といふと同意義なりとす、陸軍兵籍は、第一種兵籍と第二種兵籍とに區別せられ、第一種兵籍は、將校相當以上の者に關し、第二種兵籍は、以下のものに關する事項を記載するものなり。(陸軍兵籍規則刑法三一條五號)
- 英
- Military register
- 独
- Militär-register
- 仏
- Registre militaire
兵籍簿
(へいせきぼ)兵籍を編綴したる帳簿を兵籍簿と謂ふ、兵籍簿第一種兵籍及び第二種兵籍に區別して編綴せらるるものとす。(陸軍兵籍規則及軍人恩給法三五條)
- 英
- Military register
- 独
- Militär-register
- 仏
- Registre militaire
兵村監視
(へいそんかんし)砲臺監視などと同じく屯田兵村(北海道に移住したる者二五〇戸以内を以て一兵村となし、一戸凡そ一萬五千坪の割合を以て戸數に應じ、其村の公有財産として土地を給與せられたるもの)の監視に任ずる者にして、屯田兵各科の曹長を以て之に充て、師團長に隷屬して開墾耕稼に關する監視を掌り、聯隊區司令官に隷屬して下士兵卒に關する軍務を取扱ふ者也。(二九年勅二三九號屯田後備役兵村及下士卒監視規則參照)
- 英
- Survey of military village
- 独
- Aufsehen vom militärdorfe
- 仏
- Sur-veillance du village militaire
平和條約
(へいねでうやく)條約の一種別にして交戰國相互間に於ける交戰行爲廢止に關する條約を平和條約と謂ふ、日清戰爭に於ける馬關條約、日露戰爭に於けるポウツマス條約の如し。
- 英
- Peace treaty
- 独
- Friedens-vertrag
- 仏
- Traité de la paix
平和封港
(へいわふうかう)戰爭の開始前に行はるる強制手段にして、兵力を以て一國の港を封鎖し、外部との交通を遮斷することを云ふ、平時封港若くは平時封鎖といふと同意義なりとす。
- 英
- Pacific blockade
- 独
- Friedens-blockade
- 仏
- Blocus pacific
表意者
(へういしや)或行爲につきて、自己の意思を發表したる者を表意者と謂ふ、詳細は意思表示の條下に於て説明したるを以て參照せらるべし。(民九五條)
- 英
- Person made expression
- 独
- Erklärer
- 仏
- Personne qui déclare sa volonté
標記
(へうき)或物件に其標章として記載せる文字、或は符號を標記と謂ふ、例へば專賣特許又は登錄商標等を得たる者は、其物品に其登錄せられたることの標記を爲すべしといふ場合の如き此用例なり。(意匠法一五條、醬油税則施行規則五條二項)
- 英
- Mark
- 独
- Marke
- 仏
- Marque
表決
(へうけつ)會議體に於て其議事を決する爲め、其議案に對して最後の可否の意見を表示することを表決と謂ふ、例へば衆議院に於ける議事の表決、法人の機關たる社員總會、株主總會、若くは民法上の親族會に於ける議事の表決の如し。(民六五條二項)
- 英
- Vote
- 独
- Stimmung
- 仏
- Vote
表決權
(へうけつけん)或議事を爲すに當り、其表決を爲すの權利を稱して表決權と謂ふ、表決權は、通常其議事に與り得る者の有する所なれども、時としては其議事に與る場合と雖も、法律の規定によりて其表決權なき者あり、例へば會社總會に於て、自己の利害に關する議案に就きては表決權なく、又親族會、民法上、法人の議事に關する場合にも同樣なる規定あり。(民六五條一項)
- 英
- Right to vote
- 独
- Stimmrecht
- 仏
- Droit de vote
表見地役權
(へうけんちえきけん)表見地役權といふは、地役權の行使が、外形的標識によりて、表面に現はるるものを云ふ、例へば無制限に窓又は櫞側を設くるの地役、建物の屋根を境堺外に突出せしむるの地役、地面上に露出する水道によりて水を通ずるの地役權の如し。(民二八三條)
- 英
- External servitude
- 独
- äuszerliche Servitut
- 仏
- Servitude ex-térieur
表示
(へうし)意思を外部に發表することを稱して表示と謂ふ、其詳細は、意思表示と題する項目に於て詳説したるが故に參照すべし、其他凡べて一般的に或事項を公衆に示すことを稱して表示といふ場合もあり。(民訴一九〇條二項一號衆議院議員選擧法八九條)
- 英
- Expression
- 独
- Ausspruch
- 仏
- Expression
表示番號欄
(へうじばんがうらん)土地建物に於ける登記簿の番號にして、表示欄に登記事項を記載せし順位番號を記入すべき欄を云ふ。(不動産登記法一六條)
- 英
- Column of number of register
- 独
- Zahlcolumne des Registers
- 仏
- Colonne du numéro de registre
標章
(へうしやう)總べての物件に對して、特種の事項を表明することを目的とする記號を云ふ、例へば專賣特許の標章、意匠登錄の標章等といふ場合の如し。(二八年勅一一八號)
- 英
- Sign
- 独
- Zeichen
- 仏
- Signe
標準
(へうじゆん)事物の延長、廣袤、容積、分量、性質、價値等に就きて、其等を計算判別せんとする規矩準繩、或は又吾人の思想行爲の準據となるべきものを標準と謂ふ、標準は之を人爲的のものと、自然的のものとに大別する事を得べし、人爲的のものとは、夫れを特に法律又は契約等の如き、人爲的方法に由りて制定したるものにして、かの度量衡の如き、本位貨幣の如きをいひ、自然的の標準とは、敢て特に法を設けて規定したるにあらざるも、自然の結果因襲習慣の結果等によりて、自ら判斷標價の規準となれるものを云ふ、文藝上、倫理上等のそれの如きは好適例なり、更に標準は之を主觀的と客觀的との見方より區別する事を得べし、前者は自己自身の用の爲めのみに立つるものにして、後者は一個人の目安たるのみに止まらず、又萬人の依據する所となるものを云ふ。
標準時
(へうじゆんじ)特定の子午線を以て定めたる時を標準時と謂ふ、地理上に散在する各地は、地球の廻轄より生ずる現象として經緯度を異にするに從ひ、時に變動を生ずるは免れざるの結果なりとす、而して此等の變動は、何れの場合に於ても不便尠しとせず、是標準時の必要を生ずる所以なりとす、明治一九年勅令第五一號を發分せられたる子午經度計算方は、標準時、並に明治二八年勅令第一六七號を以て發布せられたる標準時改稱の件によれば、東經百三十五度の子午線の時を以て中央標準時と名づけ、本邦一般の標準時となす、又東經百二十度の子午線の時を以て西部標準時と名づけ、之を薹灣、膨湖島列島並に八重山、宮古島の標準時となすと定められたり。(二八年勅五一號幷に二八年勅六七號參照)
- 英
- Standard time
- 独
- Normalzeit
- 仏
- Temps de l'étendard
表明
(へうめい)總べて不判明なる現象意義を陽に取り出てて明にするを云ふ、心理學上に於ては、吾人の思想又は感情を言語、文章、音聲、外貌、動擧等によりて發表するを表明と謂ひ、論理學上に以ては、含蓄といふことの反對の意義を有す、含蓄は或槪念に顯はれずに包有せらるる要素、又は特性を指すが、これを外面的に表白することを表明とは謂ふなり、例へば犬といふ語には何等の特性をも有せざる如きも、之を解剖すれば、家畜とか、忠義心を有すとか、狩獵に必要とかの諸種の特性を發見すべく、これ等が含蓄的に、犬と謂ふ槪念に存せしを、今は表明し、指示したるが如し、表明的とは、含蓄的の如く、其の性質の内面に包含せられて不判明なるに反し、意義の明白に外面に發表せられあるを指示する形容詞なり。
標流物
(へうりうぶつ)難船其他災害過失の原因によりて、占有者が其動産の占有を喪失したる爲め、水上に漂流する物を標流物と謂ふ、漂流物は、水難救護法に支配せらるる所にして、其取扱は、遺失物拾得の場合と同樣の方法に依る、即ち漂流物を拾得したる者は、之を市町村長に引渡さざる可らず、但し其物件の所有者が分明なる場合に於ては、拾得の日より七日以内に限り、所有者に引渡す事を得るものとす、此後の但書の場合に於ては、拾得者は所有者より河川に漂流する材木にありては、其價額の十五分の一、其他の物件にありては、十分の一に相當する報酬を受くることを得るものとす、市町村長が漂流物の引渡を受けたる時は、之を保管するの義務あるものにして、市町村長は其物件を所有者に引渡すべきことを公告す、但し所有者の分明なる場合に於ては、公告を爲さずして直に所有者に告知するを得るなり、右の公告又は告知を爲したる日より一年以内に限り、其物件の所有者は其物件が材木なるときは、其價格の十五分の一、其他の物にありては十分の一に相當する金額、幷に公告保管等の費用を市町村長に納付して、其物件の引渡しを受くることを得るものとす、又右の一ケ年の期間内に、所有者が其物件の引渡を請求せざるとき、又は引渡を請求せざるの意思を表示したるときは、市町村長は、期間を定めて物の引渡を受くべきことを拾得者に告知すべく、拾得者は、其費用を納付して物件の引渡を受けたるときは、其所有權を取得するものとす。(三二年法九五號水難救護法二四條乃至二九條)
別訴訟
(べつそしよう)或訴訟の手續上に於ける一の訴訟と、全く何等の關係なき訴訟を稱して別訴訟と謂ふなり。
別除權
(べつぢよけん)破産的強制執行に於て、優先的辨濟を目的とする請求權を別除權と謂ふ、即ち破産財團に屬する特定の財産に付き、優先權其他特定の權利を有する者が、一般の破産債權者より優先して、該財産の賣得金上に滿足を享くる事を目的とする權利なり、例へば質權、抵當權、特別の先取特權者が、被産財團に屬する物の賣得金より優先して、辨濟を受くる權利の如し、但し一般の先取特權者は、被産債權者と目的財産を同ふするが故に、優先辨濟を受くる權あるも別除權を有せず、又留置權の如きは賣得金上に優先辨濟を得くるの權利にあらざるが故に、別除權を有することなしとす。(破産法三章、破産法草案三〇條)
便宜處分
(べんぎしよぶん)行政官廳が、其職權によりて法令の範圍内に於て、便宜に從ひ自由に裁量して行ふ所の處分を稱して、便宜處分と謂ふ、便宜處分は、右の如く其官廳の自由裁量に出づるものなれども、其裁量に對して、左の如き限界ある事を注意せざるべからず、□一處分は法規に違反する事を得ず、處分は、常に法令の範圍内に於て爲すことを要するを以て、其法規に反することを得ざるや勿論なりとす、假令自己の發したる命令なりと雖も、法規の性質を有するものに對しては、處分を以てこれに變更を加ふるを得ざるものにして、自己が前に發したる命令の規定に反する處分を爲すことを得ざるも當然なりとす、□二處分は、必ず法規の根據あるを要するやは、其處分の内容によりて定まる、若し處分の内容にして臣民の自由を侵害するものなるときは、常に法規の根據を要す、臣民の自由は、法規に基くにあらざればこれを侵害することを得ざるは、近世の國家に共通なる原則なり、之に反して臣民の自由を侵害するにあらずして、却つて臣民に利益を供與するの處分は、法規の根據あるを要せず、行政權當然の權限に屬す、□三臣民の自由を侵害するの處分と雖も、若し受命者にして自らこれを承諾するときは、法規の根據なくともこれを爲すことを得、□四自由を侵害する處分と雖も、既に存在する特別の權力關係に基くものなるときは、法規の根據あるを要せず、便宜處分を爲すことを得べし、特別の權力關係といふは、例へば官吏、軍人の國家に對する關係、營造物の利用者の營造物の主體に對する關係の如し、此の如き權力關係の成立せる場合に於ては、其權力に基きて、其權力に服從する者に對し、權力關係の範圍内に於ては、如何なる處分命令をも下すことを得べく、法規の根據あるを要せざるものとす、次に便宜處分の内容は極めて種々にして、或は臣民に對し、特定の作爲、不作爲を命ずるものあり、或は臣民の出願に對し、之を聽許し、又は拒絶するものあり、或は臣民に權利又は利益を附與し、又は其義務を免除するものあり、其他種々の内容を有するものにして、一々枚擧に遑あらず。(自由裁量の部參照)
- 英
- Convenient management
- 独
- gelegene Verwaltung
- 仏
- Disposition convenable
辯護士會
(べんごしくわい)辯護士會は、各地方裁判所每に、其所屬辯護士を以て組織する團體にして、其地方裁判所檢事正の監督を受け、辯護士の職業に關する規律を維持し、及び共同の利益を全ふするを目的とするものとす、此辯護士會に關しては、辯護士法に規定の存する所にして、其大要を擧ぐれば、辯護士は其の所屬地方裁判所每に、辯護士會を設立するの義務あるものにして、會長及副會長を置くことを得べく、每年定期會又は臨時總會を開くことを得、又便宜によりて常議員を置くことを得るものなりとす、辯護士會を設立したるときは、其會則を定めて檢事正を經由し、司法大臣の認可を受けざる可らず、其所屬辯護士は、該會則を遵守するの義務を負ふもの也、又辯護士は、其職務を行はんとするには、其辯護士會に加入せざるべからず、辯護士が所屬地方裁判所管轄外に事務所を設けて職務を行はんとする時は、其職務を行ふべき地方裁判所の辯護士會の會則を遵守するの義務あるもの也、總べて辯護士會會則には、會長、副會長、常議員の選擧及其職務、總會常議員會及其議事に關する規程、辯護士の風紀を維持する規程、幷に謝金及手數料に關する規程、其他會務の處理に必要なる規程を設くべきものとす、辯護士會に於ては、左に揭ぐる事項の外、決議することを得ざるもの也、□一法令又は辯護士會則に規定したる事項、□二司法大臣又は、裁判所より諮問したる事項、□三司法上若しくは辯護士の利害に關し、司法大臣又は裁判所に建議する事項是なり、檢事正は、辯護士會の會場に臨席する事を得べく、又會議の結果を報告せしむることを得るものなり、辯護士會の會議にして、法律命令又は辯護士會の會則に違ふものある場合に於ては、司法大臣は、其議決を無效とし、又は其議事の停止を命ずることを得るの權限あり、辯護士にして辯護士會會則に違反したる所爲あるときは、會長は常議員又は總會の決議によりて、懲戒を求むる爲めに檢事正に申告することを得るものとす。(辯護士法一八條以下三〇條)
- 英
- Advocates' association
- 独
- Advokatsgesellschaft
- 仏
- Association des avoués
辯護士試驗規則
(べんごししけんきそく)辯護士試驗規則は、明治二六年司法省令第九號を以て發布せられ、其後三六年六月同令第二〇號によりて改正を加へられたり、今其大要を擧ぐれば、辯護士試驗は、每年一回之を行ふものとし、其期日は、司法大臣に於て之を定め、其三ケ月前に官報を以て公告せらる、試驗委員長及び委員は、判檢事及び司法省高等官中より、試驗施行每に司法大臣之を任命するものとす、辯護士志願者にして左に該當する者、即ち、□一重罪を犯したる者、但し國事犯にして復權したるときは此限りに非ず、□二不敬罪、僞造罪、僞證罪、賄賂罪、誣告罪、竊盜罪、詐欺取財罪、費消罪、贓物に關する罪、遺失物埋藏物に關する罪、家資分散に關する罪等を犯したる者、□三公權停止の者、□四破産若くは家資分散の宣告を受け復權せざる者、又は身代限りの處分を受けて債權の辨濟を終へざる者等は、辯護士試驗を受くる事を得ざるものとす、試驗志願者は、其證書に履歷書を添へて委員長に差出すべし、手數料として、金拾圓を收入印紙を以て納むべきものとす、試驗は、之を分ちて豫備試驗及び本試驗の二とし、豫備試驗に合格したる者にあらざれば本試驗を受くるを得ず、豫備試驗は、論文及び外國語の二科目に就きて行はる、外國語は、英、佛、獨の中につきて一種を選ばしむ、本試驗は、筆記及び口述の二試驗に分たれ、筆記試驗に合格したる者にあらざれば、口述試驗を受くることを得ず、本試驗の筆記試驗科目は、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法、國際公法、國際私法の各科目に就きて之を行ひ、口述試驗は民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法の中少くも三科目に就きて之を行ふ、試驗に關する細則は、試驗每に委員長に於て之を定むるものとす、試驗及第者には、及第證書を附與せらる、氏名は官報を以てこれを公告せらるるものなり、試驗願書及び履歷書の書式は左の如し。
試驗願書(用紙美濃紙)
族籍
氏名
何年何ケ月
私儀辯護士志願ニ付キ試驗相受度別紙履歷書相添へ此段奉願候也
現住所
氏名
辯護士試驗委員長氏名殿
履歷書
族籍
氏名
何年何ケ月
學事
一何年何月ヨリ何地何某ニ就キ又ハ何學校ニ入リ何月何日迄何學ヲ納メ又ハ何學科ヲ卒業セシノ類
一何年何月ヨリ何官私立學校ニ入リ何學科ヲ修業シ何年何月卒業ス其證書別紙寫ノ如シノ類
一何年何月何學校若クハ其他ニ於テ何々ノ試驗ヲ受ケテ及第ス其證書寫別紙ノ如シノ類
職業
一何年何月ヨリ何年何月迄何會社ノ役員トナリ又ハ何學校教員若クハ何官廳何官ト爲リタルノ類
賞罰
一何年何月何地ニ於テ何々事由ノ爲メ何廳ヨリ賞ヲ受ケ何年何月何々ノ事由ノ爲メ何地ニ於テ罰又ハ刑ヲ受ク其辭令書又ハ宣告書寫別紙ノ如シ
右の各項中記載すべき廉なき者は其旨を記載すべし、
現住所
年月日氏名□印
- 英
- Examination rule for lawyer
- 独
- Adovokatsexamenregel
- 仏
- Règles des examens de l'avoué
辯護士法
(べんごしはふ)明治二六年三月法律第七號を以て發布せられたる所に係り、辯護士の資格、職務及び權利義務等に關して規定したるもの也、其大要を擧ぐれば、□一辯護士の資格及び職務、辯護士は、當事者の依類を受け又は裁判所の命令に從ひ、通常裁判所に於て法律に定めたる職務を行ふものとす、但し特別法により、特別裁判所に於て其職務を行ふことを妨げざるは勿論也、辯護士たらんと欲する者は、左の條件を具備するものならざるべからず、イ日本臣民にして、民法上の能力を有する成年以上の男子たること、ロ辯護士試驗規則によりて、其試驗に合格したる者たることを要す、然れども判事檢事たる資格を有する者、又は辯護士にして其請求により登錄を取消したる者、幷に法律學を修めたる法學博士、帝國大學法律科卒業生、舊東京大學法學部卒業生、司法省舊法學校正則部卒業生及び司法官試補たりし者は、試驗を要せずして辯護士たることを得るもの也、次に左に揭ぐるものは、辯護士たることを得ず、イ重罪を犯したる者、但し國事犯にして復權したるときは此限りに非ず、ロ不敬罪、僞造罪、僞證罪、賄賂罪、誣告罪、竊盜罪、詐欺取財罪、費消罪、贓物に關する罪、遺失物藏匿に關する罪、家資分散に關する罪、及刑法第一七五條、二六〇條、二八二條、二八六條、二八七條、三六〇條に記載したる定役に服すべき輕罪を犯したる者、ハ公權停止中の者、ニ破産若くは家資分散の宣告を受け復權せざる者、又は身代限りの處分を受け債權の辨濟を終へざる者は、辯護士たる事を得ざるものとす、辯護士は報酬ある公務を兼ぬることを得ず、但し帝國議會議員、府縣會常置委員となり、又は官廳より特に命ぜられたる職務を行ふは此限に非ず、辯護士は商業を營む事を得ず、但し辯護士會の許可を得たるものは此限りに非ず、□二辯護士名簿、辯護士は、辯護士名簿に登錄を受くるに非ざれば、其職務を行ふを得ず、辯護士名簿は、各地方裁判所に之を備ふるものにして、其登錄せられたる辯護士は、其地方裁判所の附屬とす、辯護士名簿に登錄を請ふものは、其地方裁判所の檢事局を經由して、司法大臣に請求書を差出すもの也、登錄を願ふ者は、其手數料として金貳拾圓を納付せざるべからず、又登錄換へを爲すときは、金拾圓の手數料を納むべきものとす、□三辯護土の權利、義務、辯護士は、正當の理由を證明するにあらざれば、裁判所の命じたる職務を行ふを辭するを得ず、辯護士は左に揭ぐる訴訟事件に就きては、其職務を行ふを得ざるものとす、イ相手方の協議を受けて之を贊助し又は委任を受けたる事件、ロ判事檢事奉職中取扱ひたる事件、ハ仲裁手續により、仲裁人となりて取扱ひたる事件の三項目に關するものは、取扱ふを得ざるものとす、辯護士は、總べて係爭權利を買受くることを得ず、辯護士は訴訟事件の委任を承諾せざるときは、速に其旨を委任者に通告せざるべからず、若し其通告を怠りたるときは、之が爲め生じたる損害賠償の責あるものとす、辯護士は、所屬地方裁判所又は其管内區裁判所所在の地に、事務所を定めて之を屆出づべき義務を有す、□四辯護士會、辯護士會と題する項目の下に詳説したるを以て之を省略す、□五懲罰、辯護士にして、本法又は辯護士會の會則に違背したる所爲あるときは、會長は、其常議員會又は總會の決議により懲戒を求むる爲めに、檢事正に申告すべきものにして、檢事正は、其申告により又は職權を以て、懲戒訴追を檢事長に請求すべきものとす、右の辯護士に對する懲戒事件に就きては、管轄控訴院の懲戒裁判に附するものとし、其懲戒罰は、譴責、百圓以下の過料、一年以下の職務停止、除名の四種に區別せらる。(辯護士會の部參照)
- 英
- Law of advocate
- 独
- Ado-vokatsgesetz
- 仏
- Loi de l'avoué
辯護士名簿登記規則
(べんごしめいぼとうききそく)明治二六年四月司法省令第五號を以て規定せられたる所にして、辯護士名簿に登錄を請ふ者は、登錄請求書に辯護士法に定むる貳拾圓の手數料金額に相當する收入印紙を貼附し、所屬地方裁判所檢事局を經由して、之を司法大臣に差出すべきものとす、登錄換へを爲すとき又同じ、辯護士名簿の登錄は、司法大臣の命令により、地方裁判所檢事局に於て之を爲すものとす、又登錄の取消は辯護士の請求により、又辯護士死去したるときは、辯護士會長の申告により、又辯護士法の規定に該當し、除名せられたるときは、受訴裁判所檢事の通知により、地方裁判所檢事局に於てこれを爲すものとす、辯護士名簿には、次の諸件を記入するもの也、即ち、□一辯護士の族籍氏名及び年齡、□二登錄の年月日、□三辯護士會加入の年月日、□四事務所、□五懲戒是なり。
- 英
- Registration law of lawyers' list
- 独
- Registrirungsregel der Adovokatsliste
- 仏
- Règles de l'enregistre-ment des avoués
辨濟
(べんさい)辨濟とは、債務の履行によれる債權の消滅を意味するの語也、其履行といふは、債權の目的たる給付を爲すを云ふ、故に本來の目的に代へて、他の給付を爲して債權を消滅するものは眞の辨濟に非ず、辨濟には、債務の現在することを要するは勿論なり、債務の現存せざるとき、辨濟として爲したる給付は眞の辨濟に非ず、若し債務の現存せざる事實を知りて之を爲せば贈與となり其現存せざることを知らずして爲せば不當利得の原則に從つて之を取戻すことを得べし、辨濟は、辨濟を爲すべき人の爲すべき法律行爲なり、故に辨濟を爲すべき人が債務を消滅せしむべき目的を以て、其意思を表示することを要す、辨濟者の意思表示によらず、辨濟として給付すべき物が偶然に債權者の手に入り、又は債權者が辨濟すべき人の同意なくして其物を取り去るも、之を辨濟といふことを得ず、又辨濟の性質は單獨行爲なり、即ち辨濟すべき人の意思表示のみを以て足るものにして、辨濟受領者の承諾を必要とせず、但し承諾を要せずといふは、受領を要せざるの意に非ず、辨濟には常に受領を要す、然れども辨濟の受領は敢て辨濟の双面行爲なるが爲めにあらずして、辨濟者の單獨行爲を完成する爲めに必要なるに過ぎず、債權者が右の辨濟を受領したるときは、全く債權債務の關係を消滅せしめ、後に至りて原狀を回復することを得ず、故に債權者が一旦辨濟に受けたる上は、受領したるものを債務者に返還するも、債權を復活せしむる能はず、債務者が一旦辨濟を爲したる上は、債權を復活せしめて其物を取り戻すを得ざるもの也、今茲に辨濟に關して法律上の重要なる點を説明せん、而して辨濟者及び辨濟受領者幷にそれ等に關するものは、別項に於て説明したるが故に、宜しく參照せらるべし、□一辨濟の目的、辨濟は、債權の目的たる給付を爲すに在り、之に代へて他の辨濟を爲すは、眞の辨濟にあらず、若し辨濟者が始めに定めたる目的と異りたる給付を提供するときは、辨濟受領者に於て之を拒む事を得べし、而して辨濟者の提供したる目的は、數量に於て異ることあり、又其の性質に於て異ることあり、若し提供せられたる數量が、債務者の負擔したるものより多きときは、受領者に於て超過したる部分の受領を拒む事を得、受領者が超過したる部分を受取りたる場合に於て、若し辨濟者が提供したる數量の超過するの事實を知らざりしときは、不當の辨濟として之を取戻すことを得、共に超過したる事實を知りたるときは、これを贈與したるものと見做す、之に反して若し提供せられたる數量が、負擔したるものより少なきときは、受領者に於て之が受領を拒むことを得、之を受領するも一部辨濟に止まるを以てなほ殘餘に就きて請求する事を妨げず、唯一部の辨濟により滿足するの意思を表示したるときは、殘餘に就きては、債務者に免除を與へたるものと見做し、辨濟の提供が其性質に於て異りたる給付を提供するときは、常に其受領を拒むことを得、然れども若し債權者が他の給付を受領して滿足する事を承諾したるときは、有效に債務關係を消滅す、斯くの如く債務者が債權者の承諾により、其負擔したる給付に代へ他の給付を爲し債權を消滅するを代物辨濟と謂ふ、代物辨濟は、眞の辨濟に非ざれども、其效力は法律上に於て辨濟と異る事なきもの也、次ぎに辨濟の目的は物の引渡なることあり、又他の給付なることあり、引渡すべき物が不特定なることあり、特定物なることあり、何れの場合に於ても、當事者間に定めたる通り履行するの必要あり、其内容に就き爭あるときは、債權關係を創成する當時に於ける當事者の意思に從ふて決せざるべがらず、而して特定物の引渡が債權の目的なるときは、有形的に特定せられたる物自體を引渡すを必要とす、且つ其辨濟者は、其引渡しを爲すべき時の現狀に於て之を引渡す事を要するものとす、何んとなれば、債權發生當時の特定物の狀況は後に至りて變更せらるることあるは、當事者の豫想する所なればなり、而して引渡すべき時期に於ける特定物の情況が、債權發生當時の現況と異る場合に於て、其變更が債權者の利益となる事あり、又其不利益となる事あり、債權者の利益となるときは、別段に問題は生ぜず、其不利益となるときは、變更が天災又は債權者の責に歸すべき事由により生ずる場合と、債務者の責に歸すべき事由により生ずる場合とあり、前二つの場合に於ては、其引渡によりて完全に債權關係を消滅す、最後の場合に於ても、其引渡なきも尚辨濟となる、然れども債務者は債權者に對し賠償の責任を免るる能はざるものとす、之に反して債務者が引渡すべき時期に引渡しを爲さずして、後に其物の狀況が變更したるときは、如何なる結果を生ずるやといふに、債權者の利益に變更したるときは、其變更したる情況に於て引渡を受くるの權利あり、又不利益に變更せられたるときは、債權者は損害賠償を求め又は受領を拒むことを得るものとす、□二辨濟の提供、前に述べたるが如く、辨濟は辨濟者の單獨行爲なり、然れども、之を完了するには、債權者の受領を要す、即ち辨濟者は自己の爲すべきことを完了するも、受領なき間は辨濟を完了したるものといふを得ず、所謂辨濟の提供なるものは、右の完了せられたる辨濟にあらずして、債務の履行に就き債務者の爲すべき行爲の完了なりとす、提供の要件及び效力を擧ぐれば、イ提供の要件、辨濟の提供は、次の要件を具備せざるべからず、(甲)辨濟者の爲すべき行爲は債務の目的たる給付たることを要す、換言すれば、其受領により直に辨濟の完了となり得べきものたらざるべからず、(乙)現實に之を爲すことを要す、現實に爲すことは行爲の自體が完了するの謂にして、單にこれを爲さんとするの意思を表明するを以て足れりとせず、(丙)正當の場所に於て爲すを要す、債務者が履行すべき場所以外に於て辨濟を爲さんとするも、債權者が受領を拒むことを得、(丁)正當の時に於て爲すを要す、正當の時といふは即ち債務の履行期を指すものとす、(辨濟期の部參照)以上に述べたる四個の要件は一般の法則なり、此法則に例外あり、即ち債權者が豫め受領を拒みたるときは、債務者に於て現實に提供を爲すも受領せられざること明白なり、又債務者が行爲を完了する爲め債權者の行爲を要する場合には、債務者一人にて現實の提供を爲す事能はず、故に是等の場合には、辨務者は單に辨濟の準備を爲し、之を債權者に通知し、其辨濟を催告せば、之を以て完全に提供を爲したるものと見做るることこれなり、ロ提供の效力、提供なるものは、眞の履行に非ず、故に債務を消滅せしむるの效力を有せず、然れども提供したるものは債務者が辨濟に付き爲すべき總べての行爲を完了したるものなれば、其時より以後は、之を不履行者と爲すを得ず、故に法律は、辨濟者をして提供の時より不履行によりて生ずべき一切の責任を免れしむ。(民四七四條乃至五〇四條)
- 英
- Payment
- 独
- Bezahlung
- 仏
- Paiement
辨濟期
(べんさいき)債務の履行を爲すべき時を稱して、辨濟期と謂ふ、此履行の時期は、當事者の意思表示によりて定まることあり、又法律の規定によりて定ることあり、何れの場合を問はず、履行の時期到來したる時は、債務を辨濟期に在るものと謂ふ、辨濟期を説明するには、債務を分別して、期限附債務及び單獨債務の二種に分つを便とす、期限附債務は、法律の規定若くは當事者の意思表示により、之を履行すべき未來の時期を指定したる債務を云ひ、其指定すべき未來の時期に二種あり、第一を確定期限とし、第二を不確定期限とす、次に單純債務といふは、之に附したる條件期限なく、又法律の規定により、若くは當事者の意思を以て、特定したる履行の時期なき債務を云ふ、此單純債務は、債務の發生と共に履行の時期にあるものとす、即ち何時にても、債權者は請求するを得べく、債務者よりも履行するを得るもの也、右の何れの場合たるを問はず、辨濟期に關して通ずる一般の原則を分説すれば、□一債權者が履行を請求することを得べき時期、凡そ辨濟期なるものは、債務者の利益の爲めに定めらるる場合あり、又債權者の利益の爲めに定めらるる場合あり、然れども債權者のみの利益の爲めに定めらるる事なきを以て、如何なる場合を問はず、期限以前に履行すべき義務を、債務者に負はしむることなし、故に債權者は、期限以前に於て、履行の請求を爲すを得ず、之に反して期限到來するときは、債權者は債權の目的たる利益を享受するを得べき地位にあり、故に期限後は何時たりとも債務者に對して履行を請求することを得べし、之期限の性質より當然推究するを得べき結果にして疑を容れず、此法則は確定期限に附したる場合と、不確定期限を附したる場合と、單純債務との場合に就き區別なし、即ち確定たると不確定たるとを問はず、債權者は、期限の到來迄履行の請求を爲すを得ざるも、其到來するや否や辨濟期に達したるものなるが故に、即刻之が請求を爲すを得べし、又單純債務の場合に於ては、債務の成立以後何時にても履行を求むることを得べし、之前述したるが如く單純債務は成立すると共に、直に辨濟期にあるものなるが故也、□二債務者が履行を爲し得べき時期、債務が辨濟期に達するや、直に債務の履行を爲し得可きは論なし、又爲さざるべからざるものあり、若し辨濟期以前に債務者が辨濟を爲し、債權者に於て之を受領せば、有效の辨濟となるを以て、別段議論を生ぜず、問題を生ずとすれば、債權者が辨濟期以前に提供したる辨濟の受領を拒む事を得るや否やにあり、凡そ期限なるものは、原則として債務者のみの利益の爲めに設けらるるものなり、即ち反對の意思を推測すべき事情なきときは、債務者の利益の爲めのみに期限を附したるものと見做す、故に一般の場合に於ては、債務者が期限前に履行するも、債權者の利益を害するものに非ずと推定す、果して然らば、原則として期限は、債權者が其以前に請求することを妨ぐるに止まり、債務者の其以前に履行することを禁ずるものに非ずと斷定せざるべからず、この理由より推究せば、債務者が辨濟以前何時にても履行を爲すことを得、債權者に於て辨濟期の到來せざることを理由として辨濟の受領を拒むことを得ざるや明也、これ即ち一般の場合に適用すべき法則とす、然るに此法則には例外あり、即ち當事者の意思表示、又は成立當時の事情により期限が、債權者の利益の爲めにも定められたる事明白なる場合にして、此場合には、債權者に於て辨濟期以前の辨濟の受領を拒絶するを得べきや勿論とす、□三債務者に履行すべき責任を生ずる時期、辨濟期以前に履行の責任を生ずる理由なきは、期限の性質より推して明白なりとす、然らば辨濟期の到來以後は、直に履行すべき責任を負ふやといふに、必ずしも然らず、或前提の具るを以て、初めて此責任を生ずる場合あり、又辨濟期の到來するや否や直に此責任を生ずる場合あり、此區別は、如何なる點に於て存するや、此問題に答へんとすれば、前に述べたる三種の債務に論及し、其法意の存する所を明にせざるべからず、イ確定期限を附したる場合、抑も確定期限なるものは、當事者に於て、豫め確知することを得べきものにして、故に債務者の請求なきも、期限の到來するや否や債務者に於て履行すべきは當然也、期限の到來したるに、尚之を履行せざるは、履行すべき時の至りたるを知りつつ之を經過するものにて、不履行の責任を免るべからざるや勿論とす、ロ不確定期限を附したる場合、此場合には、其期限は當事者の豫め知得するを得ざるもの也、又到來したる後と雖も、之を知ること能はざることあり、故に期限の到來と共に直に履行の責任を生ずるとするは、酷に失するものと云はざるべからず、故に法律は其到來したることを知りたるときより履行の責任を生ずるものと定む、債務者が、不確定期限の到來を知るを得べき場合種々あり、即ち債務者が自ら實見することあり、第三者より聞知することあり、債權者よりこれを通知することあり、債權者の請求によりてこれを確知することあり、其の方法の如何を問はず、債權者が之を確知したるときは、其時より直に之が履行の責任を生ずるものとす、ハ單純債務の場合、單純債務は前示したるが如く、期限を定めざる債務にして、成立と共に辨濟期にあるもの也、此の場合に於て、債權者が債權の成立後、何時にても請求を爲し得るは前に述べたるが如し、而して債務者は債權の成立と同時に其辨濟期にあるを確知するもの也、故に單純に論理を貫くときは、成立と同時に履行の責任を生ずるものと斷定することを得べし、然れども成立するや、直に履行せざるを以て怠慢と爲すは、不相當に債務者を不利益の地位に陷らしむるものにして、甚だ穩當ならず、故に法律は債權者の請求あるまで、履行するに及ばざるものとし、請求を俟ちて初めて履行の責任を生ずるものと定めたり、以上に述ぶる所は、一般の場合に適用すべき原則にして、當事者の意思を推測して定めたるものなれば、若し當事者が之に反する意思を表示したるときは、素より其意思に從ふべきは言を要せず。(民一二四條)
- 英
- Time for payment
- 独
- Verfall
- 仏
- Terme du paiement
辨濟者
(べんさいしや)債務の辨濟を爲すべき者及び辨濟を爲したる者を稱して、辨濟者と謂ふ、辨濟を爲すべき者は、通常之を債務者とす、債務者は、如何なる場合に於ても、自身又は代理人によりて辨濟を爲す事を得べし、第三者も又一般に辨濟を爲す事を得、此場合には、第三者も亦辨濟者と稱せらるるや勿論也、然れども債務の性質が第三者をして、辨濟を爲さしむるを得ず、又は法律に特例ある場合は、第三者は辨濟者たるを得ざるや論なし、今辨濟者に關して法律上の法則を左に示すべし、□一辨濟者は、辨濟の目的の上に權利を有する事を要す、辨濟が物の給付なるときは、其物の引渡により、債權者をして其物の上に權利を取得せしめざるべからず、若し辨濟者が他人の物を引渡したるときは、有形の引渡しは行はるるも、債權者をして其上に權利を取得せしむる能はず、故に他人の物の引渡しは辨濟として無效也、故に此場合には、辨濟者に對して債權者は、更に有效の辨濟を求むる事を得べし、右の場合には、辨濟者も亦自己の辨濟を無效也と主張することを得、されど辨濟者は、更に有效の辨濟を爲す迄は、前に引渡したる物の返還を求むることを得ず、即ち債權者は、辨濟者に對して辨濟を有效なりと主張するを得ざれども、有效の辨濟を受くる迄之が返還を拒むことを得べきなり、辨濟者が更に有效の辨濟を爲したるときは、前に引渡したる物の返還を求むることを得、辨濟者は、其物の上に所有權を有せざるも、其物の占有者たり、故に占有權を基として返還を求め得べきや勿論なりとす、右の法則は、不特定物の引渡を債權の目的と爲す場合に、之を適用するを得るも、特定物の引渡を目的とする場合には、之を適用するを得ず、不特定物の場合には、目的物を定むるに種類のみを以てするを以て、一旦引渡したる物を取り戻して、更に同種類に屬する他の物を以て辨濟することを得べし、故に前に引渡したる物が辨濟者以外の人に屬するときは、更に辨濟者に屬するものを引渡して、有效に債務を消滅し之が返選を求むることを得べし、特定物の場合には然らず、辨濟として引渡すべきものは唯一にして、債權者をして、其物の上に權利を得しむるに非ざれば、有效の辨濟を遂ぐるを得ず、故に他人の物を引渡したる場合に、更に有效の辨濟を爲して之を取戻すの問題を生ずるの餘地なき也、□二辨濟者は、讓渡を爲すの能力を有せざるべからず、無能力者の爲したる辨濟は、一般の原則に從ひ之を取消すことを得、辨濟を取消せば、辨濟せざる以前の狀態に復するを以て法則とす、此法則に從へば、辨濟の取消しによりて、辨濟として引渡したる物を無能力者に取戻すことを得べし、然れども法律は此結果を生ずる爲めに一の前提を必要とせり、即ち無能力者の爲したる辨濟を取消すも、更に有效の辨濟を爲す迄引渡したる物の取戻しを求むることを得ざらしむ、有效の辨濟は、無能力者が能力を得たるとき自ら之を爲し、又は其法定代理人が之を爲すによりて生ず、□三他人の物の引渡し、又は無能力者の爲したる物の引渡を辨濟として有效ならしむる場合、前段述明するが如く、他人の物の引渡しは辨濟として無效也、又無能力者が辨濟として爲したものの引渡しは、之を取消すことを得べし、例外として右の辨濟を有效と爲すべき場合二あり、イ債權者が辨濟として受けたる物を、善意に費消したるとき、物が債權者の手に在る間は辨濟者に於て其爲したる辨濟を無效とし、又は之を取消し、以て其物の返還を求むることを得べし、されど債權者が之を費消したるときは、其物は債權者の手に存せざるを以て、之を辨濟者に返還することを得ず、右の場合に、若し債權者が其物が辨濟者に屬せざること、又は辨濟者の無能力者たることを知りて、之を費消したるときは、自ら其責に任じ、其物の對價を辨濟者に返戻せざるべからず、然れども、之に反して債權者が善意に之を費消したるときは、法律上其辨濟を有效となし全く債務關係を消滅せしむ、故に斯かる場合は、債權者が更に辨濟を求むるを得ざるは勿論、辨濟者に於ても更に辨濟を爲して、其物を取戻すことを得ず、ロ債權者が善意に辨濟の目的物を他人に讓渡したるとき、此場合に於ても辨濟を有效ならしむること、及び債權者が眞の所有者より賠償を求められたるときは、辨濟者に對して求償權を有するは明なり。(民四七四條乃至四七七條)
辨濟受領者
(べんさいじゆりやうしや)債務の辨濟を受くべき者を稱して辨濟受領者と謂ふ、辨濟を受くべき人は、履行を受くるによりて、辨務を消滅する事を得べき人ならざる可らず、□一辨濟者又は其代理人は、有效に辨濟を受領することを得、而して債權者又は其代理人以外の人に爲したる辨濟は、一般に之を無效とす、右の如く辨濟者たるべき者は、債權者若くは其代理人たること明白なりと雖も、此原則に對する例外あり、左に之を説明せん、(甲)辨濟者が受領を受くべき人を、正當に債權者又は其代理人なりと信じたる場合、此場合は別てば次の如し、イ債權の準占有者、債權の準占有者と謂ふは、自己の爲めにするの意思を以て、債權を行使するものを指す、此等の人は、眞に債權を有するが如く見ゆる者にして、通常他人に於て眞正の債權者なりと信ずるに正當の理由を有する者也、而して眞の債權者は、其準占有を止むるの權能を有しながら之を止めざるにより、他人をして此誤見に陷らしむ、故に此場合には寧ろ辨濟者を保護して、準占有者に爲したる辨濟を有效となし、債權者をして請求權を喪失せしむるを相當とす、右の場合に於て、辨濟者の善意なることを要するは勿論とす、即ち辨濟者が準占有者の眞の債權者にあらざることを知りて之に辨濟を爲したるときは、更に債權者に對して辨濟を爲すにあらざれは、債務を消滅せしむることを得ず、ロ受領證書の持參人、債權者の受取證書を有する者は、辨濟受領の權限あるものと推定す、債權者が他人に受取證書を交附するは、辨濟者に對して之を代理人と爲すの意思を表示したるもの也、故に假令眞の委任を爲さざるも、辨濟者は、之に辨濟して債務を免るるを得べし、又債權者が之を盜取せられ又は拐帶せらるる場合の如く、其意に反して他人の手に渡したるときと雖も、一般の場合に於て辨濟者は、正當に交附せられたるものと信ずるを以て、尚右の法則に從ふ、又辨濟者が債權者と面識なきときは、受取證書を有する者を以て本人なりと信ずる事あり、此場合に於ても、之に辨濟して責任を免るることを得べし、以上の如く辨濟者は、受取證書の持參人を本人又は代理人と見做し、之に辨濟することを得、然れども若し辨濟者が其權限なきことを知り、又は之を知らざるも、之を知らざるべからざる地位にあるときは、之に對する辨濟により、債務を免るることを得ず、之辨濟者が善意ならず、又は過失ある場合にして、之を保護するの理由存せざれば也、(乙)債權者が、辨濟受領の權限なき者になしたる辨濟によりて利益を受けたるとき、即ち前示甲に揭げたる場合の外、辨濟受領の權限なき者に爲したる辨濟は無效なり、然れども債權者が其辨濟より利益を受くるときは、其受けたる部分に就きては、其辨濟の效力を有せしむるの、意思あるものと推定して可也、而して債務者に於て其辨濟を有效とせられたるときは、再び債權者に辨濟するの煩累を免れ、少くも害を被ることなし、故に法律は債權者の受けたる利益の限度に於て、其辨濟を有效となす、□二債權者又は其代理人に爲したる辨濟が、債權を消滅せしめざる場合、一般に債權者及び其代理人に爲したる辨濟は、債務を消滅せしむ、之に對する例外として、(甲)指圖債權及び無記名債權、右二種の債權にありては、眞の債權者に辨濟を爲したる後と雖も、證書の移轉によりて、其所持人に債權を得しむるものとす、(乙)債權の差押ありたりとき、債權者は、民事訴訟法の規定に從ひ、債務者の有する債權を差押ふることあり、此場合に第三債務者(債務者の債務者)は、債務者又は第三債務者の債權者に對して支拂を差止めらるるもの也。(民四七八條乃至四八一條)
變造貨幣
(へんざうくわへい)眞正なる貨幣の上に變更を加へて、眞正貨幣の外觀をして、更に高價なる貨幣の體裁を現出したるものを云ふ、或は眞正の貨幣の緣邊を剪取り又は摩削し、其他の方法を以て其定量を減少するが如きも亦變造の一種なりとす、例へば二錢の眞正なる銅貨に變更を加へて、五十錢銀貨の外觀を現出せしめたる場合の如く、又金銀貨を剪取りて其定量を減少せしめたる場合の如し。(刑一四八條以下)
- 英
- Counterfeit coin
- 独
- falsche Münze
- 仏
- coin contrefaçonné
變造紙幣
(へんざうしへい)眞正なる紙幣を基として、其外觀を變ぜしむることを變造紙幣と謂ふ、然れども紙幣なるものは、其外觀に於て、一圓、五圓、十圓などは、著しく異るものなるが故に、一圓の紙幣を變更して五圓、十圓等外觀を有せしむることは殆ど不可能なるべく、從つて紙幣に就きて變造の問題を生ずること甚だ稀なりとす。(刑一四八條)
- 英
- Counterfeit paper-money
- 独
- falsches Papiergeld
- 仏
- Papier-monnaie contrefaçonnée
辨償
(べんしやう)賠償又は辨濟の意義に用ふる文字にして、法律上に於ては主として賠償の意味を有するもの也、例へば或人に對する損害を賠償するを云ふ場合の如し。(衆議院議員選擧法一一條二號)
- 英
- Compensation
- 独
- Ersatz
- 仏
- Compensation
騙取
(へんしゆ)騙取とは人を欺罔して錯誤に陷りたしめたる結果、其財物若くは證書類の保持を奪ひて、之を移付せしむることを意味す、騙取と強取との區別は、他人が物を引渡すと否とにあらずして、保持を移すことを受諾したると否とに存す、尚騙取に關することは、詐欺取財罪の部を參照せらるべし。(刑二四六條)
- 英
- Swindle
- 独
- Schwindelei
- 仏
- Escroquerie
片務契約
(へんむけいやく)契約當事者の一方のみが、義務を負擔する契約を片務契約と謂ふ、例へば贈與又は無報酬の委任契約の如き是なり。(契約、双務契約の部參照)
- 英
- Unilateral contract
- 独
- ein-seitiger Vertrag
- 仏
- Contract unilatéral
辨理公使
(べんりこうし)外交官及び領事官々制によりて設けられたる外交官中の公使の一種にして、其官等上特命全權公使の次位に位するものを云ふ、而して辨理公使は勅任にして、其の職務は他の公使と異なる所なし。(外國官及領事官々制一條及公使の部參照)
- 英
- Minister resident
- 独
- Minis-terresident
- 仏
- Ministre résidant
偏理主義
(へんりしゆぎ)偏理主義とは、一切の思想系統を全然經驗より、獨立に、純粹に、合理的に、打ち立てんとする一派の哲學主義にして、吾人の理性によりて合理的に考へられたることは、如何なるものも客觀的の妥當性を有すと信ず、例へば吾人が神の存在、靈魂の不滅等を合理的、即ち吾人の思想に於て必然に證明したりとせば、現實に神又は憲魂が然ることを信じて疑はざる、畢竟理性に過度の信用を置き、吾人の經驗を疎んじ、後天的知識を顧みずして、全く理性の先天能力に信賴する哲學傾向なり、歷史上に於ては、一方英國に於て經驗派の盛なるに對し、十七八世紀頃專ら歐洲大陸に行はれたるものにして、デカルト、スピノーザ、ライプニッツ等は其代表者なり。
- 英
- Rationalism
- 独
- Rational-ismus
- 仏
- Rationalisme
辯論
(べんろん)裁判所に於て、訴訟當事者の爲す申立及び法律上の陳述を總稱して辯論と謂ふ。(民訴二〇六、二一六條刑訴四三、一七九條等)
- 英
- Debate
- 独
- Verhandlung
- 仏
- Débat
辯論主義
辯論主義とは、訴訟に於ける事實上の材料、即ち事實上の主張及證據方法の提出は、常に當事者に於て爲すの主義を云ひ、之に反するの主義を職權取材主義と稱す、即ち訴訟に於て、判決の基本となるべき事實及證據方法は、總べて職權を以て爲すを云ふ、抑も裁判の基本となるべき事實は、通常吾人の目に觸るること少なく、當事者にあらざれば之を知ることを得ず、故に若し裁判所をして之を探求せしむるときは、勢ひ訴訟の遲滯を來すのみならず、裁判所は事實の探求に先ちて、豫め其方針を定めざる可らざる結果として、自ら偏頗に陷り易く、且つ裁判所は事實の探求に就き、利害の關係を有せざるに依り、怠慢に流るるの恐あり、之に反して、利害を異にする當事者雙方をして、事實及證據方法の提出をなさしむるときは、此等の弊を救ふことを得るもの也、是本主義の可なる點にして、畢竟辯論主義なるものは、當事者の利己心を利用し、之をして事實の主張及び證據方法の提出に關する責任を負擔せしむるものなれば、事實の眞想を發見するに最も便宜なる主義と謂ふべし。
ベルン條約
(べるんでうやく)一八八六年九月九日瑞西國の首都ベルンに於て獨乙、白耳義、西班牙、ハイチ、佛、英、伊太利、蘆森堡、モナコ、モンテネグロ、諾威、瑞西及突尼斯の諸國間に締結せられたる條約を云ふ、本條約は、文學的及び美術的著作物保護に關する萬國同盟條約にして、我國も明治三二年七月之に加盟せり、本條約は、主として文學的及美術的著作物の著作權を保護せるものにして、此等の著作權を侵せる僞作物は、各國の國法に從つて、同盟國内に輸入の際差押ふることを得、又以上の著作物は各同盟國に於て適當に著作したる著作物と同一の保護を受くべきもの也。(三三年七月勅本條約、三二年七月内務省告示八一號、同八四號)
- 英
- Bern Convention
- 独
- Ver-trag von Bern
- 仏
- Convention à Berne
保安警察
(ほあんけいさつ)警察なる語を廣義に解するときは、その内務行政の範圍に屬すると否とを問はず、總べて自然力に原因する災害及び人力に原因する危害に對し、之を未然に豫防し、又は既發に禁壓し、以て安寧秩序を維持するため、人民の自由を制限する國家の行爲を云ふ也、然るに之を狹義に解するときは、凡て人力に原因する危害を豫防し、又は禁壓し以て安寧秩序を維特せんがため、國家が人民に對して強制命令する行爲を云ふ、而して廣義の警察を分て、行政警察及保安警察の二種となす、保安警察とは、即ち此狹義に於ける警察を云ふものとす、故に保安警察は、内務行政の一部たるは勿論、一に人力に原因する危害を豫防禁壓して、安寧秩序を維持するを目的とす、例へば言論、著作、印行、集會、結社に對する自由の制限若くは犯罪人の捜索、逮捕、監視及び豫戒を目的として行ふ強制命令の如き是也、要するに警察本來の目的は、安寧秩序を維持するに在りて、此安寧秩序を維持するが爲に、人民に強制命令して、其自由を制限する國家の行爲を警察と稱するものにして、或國家の行爲が警察たるには、人民の自由を制限する國家の強制命令なること、其強制命令は、安寧秩序の維持を以て目的となすものなること、及び人民に對する自由の制限其ものが、安寧秩序を維持するものなることの三要件を具備するを要す、而して人力に原因する諸般の危害を未發に豫防し、又は既發に禁壓するために行ふ警察を指して、保安警察と謂ふ也、此保安警察は之を分て、非常保安警察及平時保安警察の二種となす、非常保安警察とは、戒嚴令施行の場合に於ける軍隊司令官が行ふ警察にして、平時保安警察は、更に之を分て普通警察及高等警察となす、高等警察は之を公安警察、又は治安警察と稱するものにして、集會、結社、言論、著作、印行等の事項に關する警察を云ひ、普通警察は、更に之を私安、秩序、戎器の三警察に分つ、□一秩序警察とは、社會の秩序及び風紀の維持を目的とする警察にして、違警罪に對する處分の如き是也、□二戎器警察とは、各種の銃砲、刀劍、火藥、其他爆發物等の取締のために行ふ警察を云ふ、□三私安警察は、又之を分て禁壓警察及び豫防警察の二種となす、□一禁壓警察は或は之を司法警察とも云ふ、即ち既發の違犯に關する警察を云ふものにして、□二豫防警察とは、上記禁壓警察に對し、違犯の行爲を未發に豫防する警察を云ふもの也。(警察の部參照)
- 英
- Police of peace
- 独
- Sicher-heitspolizei
- 仏
- Police de sûreté
保安林
(ほあんりん)保安林とは、國土保安に對する危害豫防又は其他公益上の必要より、法律上特別の保護を與へられたる森林を云ふ、保安林に編入する事を得べき條件として、森林法に規定する所のものを擧ぐれば、□一土砂壞崩流出の防備に必要なる個所、□二飛砂の防備に必要なる個所、□三水害、風害、潮害の防備に必要なる個所、□四頽雪、墜石の危險を防止するに必要なる個所、□五水源の涵養に必要なる個所、□六魚附に必要なる個所、□七航行の目標に必要なる個所、□八公衆の衞生に必要なる個所、□九社寺、名所又は舊跡の風致に必要なる個所等にして、保安林の編入及び解除は、主務大臣が地方森林會の議決を經て之を決するものとす、而して保安林に編入せられたる森林は、地租及び公課を免ぜらるるべく、若し其森林にして官地私木なる場合には、借地料を免ぜらるべきも、保安林に編入せらるるときは、開墾及び皆伐を爲すことを得ざるのみならず、主務大臣に於て必要と認むる場合には、其伐木を禁止し又は之を制限することあり、尚營林及び保護の方法を指定し、且つ其利用又は收益を制限することあるべし、而して此指令に係る事項を施行せざる時、又は其森林の伐木、開墾等をなしたる場合には、或は政府に於て造林を爲し、其費用を徵收せられ、或は復舊の造林を命ぜられ、又は伐木の場合には、伐採したる木材の代價相當の罰金に處せらるる等の制裁あり、保安林に於て、土石、切芝の採取、樹根の採掘又は牛馬の放牧を爲さんとするときは、府縣知事の許可を得る事を要す、若し此許可を得ずして此等の事を爲したるときは、三圓以上三十圓以下の罰金に處せらるべし、斯くの如く保安林に就ては、法律上重大の效果を其所有者に及ぼすべきものなると同時に、公益上極めて必要の制度なるが故に、法律は府縣、郡、市町村、及び其他直接利害の關係を有する者をして、其編入又は解除に就き、府縣知事に申請をなし、若くは府縣知事を經て地方森林會に異議を提出することを得べく、其編入解除の處分に就きて不服あるときは、行政裁判所に出訴することを許せり、政府に於て保安林を買上げんとするときは、其所有者は之を拒むことを得ざるも、其買上代金に就き、當局者と協議調はざるときは、地方森林會の評決を受くることを得べく、所有者に於て仍ほ其評決に不服なる場合には、裁判所に出訴することを得るものとす。(三〇年四月法四八號森林法三章參照)
- 英
- Protecting forest
- 独
- Schutz-wald
- 仏
- Bois protecté
俸給
(ほうきう)俸給とは、國家が官吏をして、其地位に相當なる生活を營ましむる爲めに、給與する金額を云ふ、俸給は、官吏の勞務に對する報酬に非ず、官吏たる關係の繼續する間は、官吏が實際其職務に從事せざる場合と雖も、これを給與するを原則となす、而して國家が俸給を給するは、官吏をして其地位に相當なる生活を營ましめんが爲め也、蓋し官吏は國家を代表する者なるが故に、其地位相當の生活を營み、以て官吏たるの威嚴と品位とを保持するの必要あり、然るに官吏は、其全力を盡して職務に忠勤するの義務を有するものなるを以て、他に其生活の資料を得べき手段を有する事なし、即ち國家は一面に於て官吏に對し、上記の義務を強要すると同時に、他面に於て、官吏をして其義務を全ふせしめんが爲め、其地位に相當の生活資料を給與する也、次に官吏の俸給を受くるは、公法上の權利なるや、將た私法上の權利なるやに關しては、嘗て學者の間に議論ありたる問題なるも、苟も官吏關係の公法上のものにして、俸給は當然此官吏關係に伴ふものなりとする以上は、最早議論を挾むべき餘地なかるべし、而して俸給はこれを讓渡し、又は質入し、若くは差押ゆることを得ざるは、俸給の性質より推して知り得べし、最も反對の明文ある場合は此限りにあらず、俸給は辭することを得べきやといふに、之に對し或學者は、俸給は國家が官吏をして、其地位に相當なる生活を營よしむるを目的として給與するものなるが故に、官吏の利益たるは勿論、一は國家の利益のためにこれを支出するなり、果して然らば、官吏は任意に之を辭することを得ざるものと論定するを妥當なりとす、現行法上官吏が、一定の期間内に俸給を受取らざるときは、消滅時效に罹るべき旨を規定せるも、畢竟此規定は會計上の便宜に出でたるものにして、自ら別問題なりと論ぜり。(憲法一〇條)
- 英
- Salary
- 独
- Gehalt
- 仏
- Salaire
謀殺
(ぼうさつ)謀殺とは、刑法上の用語にして、加害者が深思熟慮したる結果人を殺すことを云ふ、刑法に「豫め謀つて人を殺したる者は、謀殺の罪となし死刑に處す」とある是也、即ち謀殺は、人を殺すに豫謀を以て之を實行するの所爲を云ふものなれども、豫謀あるものは、必ずしも之を謀殺といふを得ざる場合あり、例へば加害者に久しき以前より豫謀ありたるときと雖も、偶然或事のために憤激動亂して、其の所爲の實行に著手し、以て人を殺したる場合の如し、故に或殺人の所爲が謀殺たるには、豫謀あることを必要とすると同時に、所爲に對して豫謀を實行するものならざる可らず、抑も刑法が、謀殺を以て殺人罪の最も重きものとなすの理由また實に茲に存す、蓋し吾人が或事のために憤激動亂して、一時理性を失却し、以て人を殺す場合の如きは、固より兇惡暴戻の所爲たるを免れずと雖も、また人情の弱點として、多少酌量すべき點なきにしもあらず、されど深思熟慮して、以て人を殺さんことを謀るが如きは、既に其心情の極めて惡むべきものあり、然るに更に其豫謀を所爲を實際に決行するが如きは、殘忍刻薄の最も甚しきものといはざる可らず、要するに謀殺の所爲に於ける豫謀は、故意に固著するものにあらずして、即ち所爲の實行に伴隨するものなる事を要す、隨つて前例の如く豫謀ありし者と雖も、其所爲の實行著手に際し、憤激動亂の心を以て殺人罪を犯したるときの如きは、之を謀殺といふ能はざるに反して、加害者の突然或事のために憤激狂亂して殺人の所爲に著手せんとしたるも、其實行に際し、忽ち熱情を冷却して理性の平均點に復したるに拘はらず、なほこれを中止することを爲さず、竟に殺人の罪を犯したる場合の如きは、寧ろ謀殺を以て論ずるを妥當を得たるものといはざる可らず、何となれば謀殺故殺の區別は、之を主觀的に考察するときは、憤激狂亂の結果、一時理性を失ひたるより決行したる所爲なると、何等憤激狂亂等のことあるなく、冷然己が理性に訴へ、平靜なる思慮に出でたる所爲なるとの差異に存するものなり、爰を以て以上の場合は、無論故殺にあらざるべきが故に、結局謀殺たらずんばあらず、然れども實際の問題としては、此兩種の犯罪を鑑別するに、事實の眞相を確めがたき場合少なからざるべし。(舊刑二九二條)謀殺罪とは、豫謀に出でたる殺人罪を云ふ、豫謀とは、加害者が殺人の所爲を實行するに就き深思熟慮を回らすを云ふ、謀殺罪は之を四種となす、即ち其一は、普通の謀殺罪にして前項に説明せし處のもの是也、其二は毒殺罪とす、毒殺罪とは、毒物を施用して人を殺す所爲を云ふ、例へば毒物を内服せしめ、又は其他の方法を以て殺人の手段に使用するが如きを云ふ、其三は、豫謀に出でたる誘導殺人罪也、誘導殺人とは人を殺すの意に出で、危害に陷れ以て死に致すの所爲を云ふ、例へば海水浴に於て、水深を詐り欺きて深處に誘導し、以て故意に溺死せしむるが如き是也、而して此種の所爲にして豫謀に出でたるものは、謀殺を以て其罪を論ぜらるるものとす、其四は、豫謀に出でたる誤殺罪也、即ち謀殺を行ひたるに、誤つて犯者の目指せる人にあらざる人を殺したる所爲を云ふ、此種の犯罪は、犯者より見るときは其目的を達せざる過誤の所爲なる可きも、客觀的に之を見るときは、普通の謀殺罪と異なること無し、故に謀殺を以て論ずるものとす、而して以上普通の謀殺罪及び謀殺を以て論ずべき殺人罪に對する刑罰は、凡べて死刑とす。(刑一九九條、二〇〇條、舊刑二二九條以下參照)
- 英
- Premediated murder
- 独
- Mord
- 仏
- Homicide prémédiée
謀殺罪
- 英
- Crime of premeditated murder
- 独
- Mordsverbrechen
- 仏
- Infraction de l'homicide prémédiée
幇助者
(ほうじたしや)幇助者とは、凡て他人に助力して、其所爲の實行を容易ならしめたる者を云ふ、例へば犯罪者に助力し、其犯罪を容易ならしめたる者は、即ち犯罪の幇助者にして、刑法に所謂從犯の罪を構成すべく、自殺者に助力して、自殺を容易ならしめたる者は、自殺幇助罪を構成すべく、又他人の不法行爲に助力して、其實行を容易ならしめたる者は、即ち不法行爲の幇助者にして、其共同行爲者たるの責任を負はざるべからず。(刑一〇九、三二〇條及び民七一九條)
- 英
- Assistant
- 独
- Helfer
- 仏
- As-sistant
保甲條例
(ほかふでうれい)保甲條別は、明治三一年八月律令第二一號を以て公布せられたる、臺灣に於ける地方制度に關する條例也、其内容は、臺灣總督府管轄區域内に於て、各地方の安寧を保持するため、舊慣を參酌して保甲制度を設け、保及甲の人民をして、各連坐の責任を負はしめ、其連坐者を罰金又は科料に處する事を得るものとなし、保及び甲に於ては、地方長官の認可を經て、各其規約を定めしめ、其規約中には、褒賞金及び過怠金の法を設くることを許し、若し保及び甲の役員にして、其職務に違背するときは、地方長官に於て之を懲戒するものと定め、其懲罰は、八百圓以下の罰金、剝職及び譴責の三種となすこと、其保及び甲に於ては、府令の規定に從ひ、匪賊並に水火災の警戒防禦の爲め壯丁團を設置するを得ること、及び此條例は、地方長官の必要と認むる地方に限り、臺灣總督の認可を經てこれを施行すべきものなること等を規定せり、因みに甲は大凡十戸、保は大凡十甲を以て編成する團體にして、保には保正あり、甲には甲長あり、何れも其團體に於てこれを選擧し、所轄辨務署長の認可を受けて就職し、保正は所轄辨務署長又は支署長の指揮監督の下に、甲長は保正の指揮監督の下に、保内又は甲内の安寧保持に任ずるものとす。
保管
(ほくわん)保管とは、法律の規定又は契約に基き、他人の爲めに他人の金錢其他の物體を占有する事を云ふ、例へば供託所が、供託に係る金錢物件を保管する如き、或は私人が寄託契約に基き寄託物を保管するが如き是也、即ち保管人が他人の爲に、他人の有體動産の占有に任ずるものにして、之に關する權利義務は、特別法に別段の規定あるものは、固より其規定に依るべく、其他の場合にありては、民法寄託契約の規定に依るべきものとす。(三二年二月法一五號供託法及び民法六五七條乃至六六六條)
- 英
- Keeping
- 独
- Aufbewahrung
- 仏
- Garde
保管義務
(ほくわんぎむ)保管義務とは、金錢又は其他の物件の保管者が、其保管に關する物に就て負擔する所の義務を云ふ、抑も保管は、法令の規定に基くものと、寄託契約に基くものとの二種あるを以て、隨て保管義務の如きも各場合に依り同一なることを得ざる也、然れども通常保管義務といふときは、政府に於て保管する公有金幷に私有金に關する保管義務を指稱するものの如し。(二三年一月勅二號及び二六年七月勅七〇號等)
- 英
- Duty of superintendence
- 独
- Aufbewahrungspflicht
- 仏
- Devoir de la garde
保管金
(ほくわんきん)保管金とは、凡て法律の規定又は寄託契約等に墓き、政府又は私人が保管する金錢を云ふ、然れども通常單に保管金といふときは、政府に於て保管する公有金幷に私有金等を指稱するものの如し、而して此種の保管金は、金庫に於て保管するものとす、次に保管金に關する現行の法令は、明治二三年一月法律第一號保管金規則、同年同月勅令第二號、同二六年七月勅令第七號及び同三二年二月法律第一五號供託法、同年三月大藏省第六號供託物取扱規定等とす。
- 英
- Money kept
- 独
- Aufbewahr-ungsgeld
- 仏
- Argent réservé
保管金規則
(ほくわんきんきそく)保管金規則は、明治二三年一月法律第一號を以て發布せられたるものにして、法律勅令又は從來の規則に依り、政府に於て保管する公有金幷に私有金は、別に法律を以て失權の期限を定めたるものを除き、滿三十年を過ぎて拂戻の請求なきときは、政府の所得とすべき事、而して其期間計算法は、第一、保管義務解除の期あるものは其義務を解除したる翌日より起算し、第二、保管義務解除の期なきものは保管の翌日より起算し、第三、訴訟事件のために拂戻を請求する能はざる場合に於ては、裁判確定の翌日より起算するものなる事、保管金は法律勅令又は從來の規則若くは契約に因る外、凡て利息を付せざる事、保管金證書は賣買、讓與又は書入、質入をなすを得ざる事、及び保管金の受渡に屬する證書は、證券印税を納むるを要せざる事等を規定せり。
- 英
- Rule for money kept
- 独
- Regel des Aufbewahrungsgeldes
- 仏
- Règle de l'argent réservé
保管葉煙草
(ほくわんはたばこ)保管葉煙草とは、葉煙草專賣法に依り、政府の保管に付したる葉煙草を云ふ、抑も輸出に供する葉煙草は、政府の認可を受けたるときは、之を政府に納付せずして他に賣渡す事を得べきも、此場合には取締の必要上政府の保管に付せざる可らず、而して政府は、保管葉煙草を受取り、保管證を附與するものにして、其所有者は此保管證を以て自由にこれを賣買することを得べく、又これを輸出せんとするときは、其輸出港を指定して所管葉煙草專賣所に申出で、其送還を請求するものとす、而して該葉煙草輸出港に到著したるときは、保管及び運搬のために生ずたる資用を納付し、且つ保管證を差出して其交附を受くることを得べし、若し托者に於て、保管後一年内に輸出せざるときは、政府は相當の賠償金を與へて該葉煙草を收納する事を得るものとす、而して托者に於て、保管中該煙草に調理を加へんとするときは、調理の理由場所及び日時等を詳記したる書面に、保管證を添へ、所管葉煙草專賣所に差出し、其承認を得てこれをなすを得べし、若し保管證を毀損汚染したるときは、其保管證の交換を求むることを得べく、これを亡失したる場合には、保管葉煙草の價格に相當する現金又は國債證券を擔保に提供し、又は相當の資産を有する者二人以上を保證人と定め、損害の保證をなすときは、保管葉煙草の交附を受くることを得。(二九年三月法三五號葉煙草專賣法三條及び三七年三月法一四號煙草專賣法、同年五月大藏省令一九號參照)
保管費
(ほくわんひ)保管費とは、或物件の保管の爲に生じたる費用を云ふ、保管費は、原則として保管物受取人の負擔すべきものにして、保管者は、保管物受取人が保管費の支拂をなすまで、其保管物件を留置することを得べし。(民二九五條乃至三〇二條)
保管物取扱規程
(ほくわんぶつとりあつかひきてい)保管物取扱規程は、明治二六年九月大藏省令第二一號を以て公布し、同年十一月一日より施行せられたるものにして、明治二三年勅令第二號、同二六年勅令第七十號に依る金錢及び有價證券の保管受渡は、此規程に依り金庫に於て取扱ふべき事、及び其取扱手續に關する準則を定めたるものなるも、此規程は明治三二年三月大藏省令第六號供託物取扱規程を以て廢止せられたり。
保管林地
(ほくわんりんち)保管林地とは、保管林所在の土地を云ふ、保管林とは社寺上地の國有森林にして、主務官廳の許可を得て其社寺が保管する森林を云ふ、其森林保管の期間は十五年とし、其間社寺は、森林の保管上一定の義務を負擔すると同時に、保管林伐採量の二分の一に相當する主産物、及林地の資質を爲さざる副産物を採取する權利を有す、社寺は、大林區署長の許可を得るときは、保管林地を使用する事を得べきも、其使用に付き林地の資質を害し、又は風致を損することを得ず、尤も一時祭典又は法用のため之を使用するが如きは、大林區署長の許可を受くることを要せず、されど此許可を受けずして林地の資質を害し、又は風致を損するが如き使用を爲すときは、農商務大臣は其保管を解除することを得、社寺の管理者は許可を得ずして保管林地を使用し、又は之を他人に貸付し、若くは之を使用せしめたるときは、五十圓以下の罰金に處せらるるもの也。(三二年八月勅三六一號社寺保管林規則及び同年同月農商務省令二五號國有林野法施行規則八條)
保險
(ほけん)保險は、現行法上商事契約の一種にして、之を大別して損害保險及び生命保險の二種となす、即ち損害保險契約は、當事者の一方が、偶然なる一定の事故に因りて生ずることあるべき損害を塡補することを約し、相手方が之に其報酬を與ふることを約するに因りて、其效力を生ず、生命保險契約は、當事者の一方が相手方又は第三者の生死に關し、一定の金額を支拂ふべきことを約し、相手方が之に其報酬を與ふる事を約するに因りて、其效力を生ずるものとす、而して損害保險の主もなるものは、運送保險、及び火災保險の二種となす、抑も此運送、火災、及び生命の三種の保險は、各其發達の經路を異にせり、運迄保險は最も古く、海上保險なる名の下に發達せり、蓋し商業の歷史を閲するに、最も早く發達せしものは海上商業也、隨て運送保險が海上商業の進步に伴ひ、其發達を促されしは自然の勢なりといふべし、今學者が各種保險の發達に關し説明する處を摘錄すれば、歐洲に於て最も先きに海上保險契約を利用したるものは、古代伊太利の一部なる、ロンバード人なれども、保險に關する規定を設けたるは、實にウヰスビーの商人及び船長法六十六條を以て嚆矢となし、而して最初伊太利に於て此種の保險を利用したるは、第十三世紀の初葉と爲すものの如し、次に火災保險は、素と海上保險より分岐したももの也、蓋し海上保險は、航海中に生ずる一切の危險を包含するものなるが故に、火災保險の觀念は當時既に存在せし事を推知し得べし、然るに古代に於ては、火災保險に效力を附するときは、一に其保險に依賴して、財産上の不注意を來すの傾向を免れずして、從て自然火災をして頻繁ならしめ、一般經濟に、至大の影響を及ぼすならんとの思想より、其發達を遲れしめしも、降つて十七世の頃、英京倫敦に於て未曾有の大火ありし以來、漸く一般に其必要を感じ、茲に初めて其發達の端緖を開けりといふ、今日に於ては運送保險及び火災保險を始め、其他の損害保險は商業界の利器として大に尊重せられ、從つて何の邦國に於ても、之に關して綿密の規定を設くるに至れり、次に生命保險に關する思想は、既にウヰスビーの法律中に之を認むることを得べく、歐洲諸國中最も早く生命保險の發達せしは、英國にして、佛國に於ては自由民の生命は、奴隷の夫れの如く金錢を以て評價するを許さずとの單純なる理由より、特に法令の規定を定て之を嚴禁せしことありといへり、然れども今日に於ては大に社會の利益を增進するものとして、文明諸國に於ては一般に行はるるものとす。
- 英
- Insurance
- 独
- Versicherung
- 仏
- Assurance
保險價額
(ほけんかがく)保險價額とは、損害保險の場合に於ける被保險利益の價額を云ふ、抑も保險は其性質として、被保險利益の上に生じたる損害を塡補するを以て目的となすものなるが故に、保險を以て利益獲取の具となすことを許さず、隨つて若し保險金額が保險契約の目的となせし利益の價額、即ち茲に所謂保險價額に超過したるときは、其超過したる部分に關する保險契約は、保險の性質に反するものといはざ可るらず、法律が其超過保險に關する契約を無效とし、且つ同一の目的に付き同時に數個の保險契約を爲したる場合に於て、其保險金額が保險價額に超過したるときは、各保險者の負擔額は、其各自の保險金額の割合に依りて定むべきものとなし、之に反して相次ぎて數個の保險契約を締結したる場合に於ては、前の保險者先づ損害を負擔したるも、若し其負擔額が損害の全部を塡補するに足らざるときは、契約締結の前後に從ひ、順次後の保險者之を負擔すべきものと定めたり、從つて此結果として、既に保險價額の全部を保險に付したる場合には、最早其上保險契約をなすを得ざるは勿論の事也、然れども法律は、前の保險者に對する權利を、後の保險者に讓渡す事を約したる場合、又は前の保險者に對する權利の全部、又は一部を抛棄すべきことを、後の保險者に約したる場合、若くは前の保險者が、損害の塡補を爲さざることを條件としたる場合に限り、法律は保險價額の全部を保險に付したる後と雖も、更に保險契約を締結することを許せり、次に保險價額の一部を保險に付したる場合に於ては、保險者の負擔は、保險金額の保險價額に對する割合に依りて之を定む、又保險價額は、保險金額と均一なることを要するが故に、保險期間中保險價額が著しく減少したるときは、保險契約者は保險者に對して保險金額及び、保險料減額を請求することを得べし、而して此場合に於ける保險料減額は、將來に向つてのみ其效力を有するものとす。(商三八條乃至三九一條)
- 英
- Value of the insurable interest
- 独
- Versicherungswerth
- 仏
- Valenr de l'intérêt assuré
保險期間
(ほけんきかん)保險期間とは、各種の保險契約に於て、保險者が其危險を擔保する期間を云ふ、此保險期間は、當事者が自由に之を定むることを得べきものなるも、保險契約の種類に依りては、其性質上自然に其期間の定るものあり、例へば運送保險の保險期間が、運送人に於て運送品を受取りたる時に始り、これを荷受人に引渡したる時を以て終るが如き、又生命保險が、通常被保險人の生存期間を以て其保險期間となすが如き是なり。(商三九二條)
- 英
- Duration of insurance
- 独
- Versicherungsfrist
- 仏
- Durée de l'as-surance
保險金
(ほけんきん)保險金とは、各種の保險契約に於て、契約に定めたる損害又は其の事故の發生したる場合に、保險者が被保險者又は其契約に定めたる第三者に支拂ふべき金錢を云ふ、例へば火災保險の場合に於て、其契約の目的となせし家屋が燒失したるとき、保險者が其損害塡補のため、被保險者に支拂ふ金錢の如き是なり。(保險金額の部參照)
- 英
- Premium
- 独
- Versicherungs-geld
- 仏
- Prime
保險金額
(ほけんきんがく)保險金額とは、即ち保險金の數額を云ふ、此保險金額なるものは、保險契約の一要素たるものなるが故に、必ず當事者に於て契約締結の際確定することを要す、從て其他の條件を具備したる契約と雖も、若し此保險金額を確定せざりし場合には、其契約は未だ成立せざるものといはざるべからず、而して損害保險契約の場合に在りては、保險金額は保險價額より超過する事を得ざるとのとす、蓋し損害保險なるものは、元來被保險利益の上に生じたる損害を塡補するを以て、其目的となすものなるが故に、若し此制限を設けざるときは、啻に損害保險の性質に戻るのみならず、斯くの如きは保險を以て利益獲取の具となすものにして、其結果たる賭博と異なること無く、旁々以て公益を害するに至るべければ也、故に法律は保險金額が保險契約の目的の價額に超過したるときは、其超過したる部分に就て保險契約は、無效なるべき旨を明定せり、而して損害保險契約の場合に於て、保險價額の一部を保險に付したるときは、保險金額の保險價額に對する割合に依りて、保險者の負擔を定むべきものとす、次に保險金額を受取るべき者は、通常被保險者なりと雖も、生命保險契約の場合に在りては、契約當事者が被保險者以外の者を其受取人として定むることを得るが故に、必ずしも被保險者なりといふことを得ざるのみならず、殊に死亡保險の如き場合に在りては、其受取人は第三者なるを通例とす、是れ蓋し契約の性質上然らざるを得ざるなり、然れども之に關して何等の制限を設けざるときは、竟に利害關係なき第三者の生命を賭し、保險を以て利益取得の手段となすが如き弊害を生ずるに至るべし、爰を以て法律は、保險金額の受取人は被保險者其相續人又は親族の三者に限定せるが故に、是外の者を以て其受取人と定めたるときは無效なりといはざるべからず、而して損害保險契約の目的は、被保險者に於て其讓受人の何人たるを問はず、自由に之を讓渡す事を得るに反して、生命保險契約に因りて生じたる權利は、被保險者の親族以外の者に對しては之を讓渡すことを得ざるものとす、これ生命保險本來の性質に基く規定にして、此結果として保險金額を受取るべき者が死亡したるとき、又は被保險者と保險金額を受取るべき者との親族關係が止みたるときは、保險契約者は更に保險金額を受取るべき者を定め、又は被保險者のために積立てたる金額の拂戻を請求する權利を有す、然るに若し保險契約者が此種の權利を行はずして死亡したるときは、被保險者を以て保險金額の受取人となすべきものとす、保險者は保險契約の無效なる場合を除き、保險金額支拂の義務を免るべかざるも、損害保險の場合に於ては、戰爭其他の變亂に因りて生じたる損害は、特約あるに非ざれば其責任を免るべく、其他保險の目的の性質若くは瑕疵、自然の消耗、又は保險契約者若くは被保險者の重大なる過失に因りて生じたる損害に就きても亦同じ、次に生命保險に在りては、被保險者が自殺、決鬪、其他の犯罪、又は死刑の執行に因りて死亡したるとき、及び保險金額を受取るべき者が、故意に被保險者を死に致したるとき、(但し其者が保險金額の一部を受取るべき場合に於ては、保險者は其殘額を支拂ふことを要す)の二場合に限り、保險者は保險金額支拂の責に任ずることを要せざるなり、而して此保險金額支拂の義務は、總ての保險を通じて二年を經過したるときは、時效に因りて消滅するものとす。(商三編十章參照)
- 英
- Sum insured
- 独
- Versicher-ungsgeldsumme
- 仏
- Somme assurée
保險契約
(ほけんけいやく)保險契約は之を損害保險契約と生命保險契約の二種に分て説明するを便なりとす、□一損害保險契約は、當事者の一方が偶然なる一定の事故に因りて、生ずることあるべき損害を塡補するを約し、相手方が之に對し報酬を與ふることを約するに因りて、其效力を生ずる契約を云ふ、即ち保險契約は、所謂射倖契約の一種に屬するものとす、何となれば、當事者の一方が擔保せる損害は、偶然なる一定の事故に因りて生ずるものなるが故に、其果して生ずるや否やは、未確定の問題なるを以て也、然れども夫の偶然なる事爲を賭して、利益の獲得を目的と爲せる賭博とは全く其性質を異にするものとす、蓋し賭博は、現在當事者は何等の利益を有すること無く、一に其賭事の勝敗に因て或は利益を獲得し、或は損失を負擔することを約するものなるに反して、保險契約は現に當事者の一方が有する被保險利益の上に、生ずることあるべき損害を塡補することを約するものなるが故に、等しく射倖契約なるも、其内容は全然別異の性質を有するもの也、要するに損害保險契約は、偶然なる一定の事故に因りて、生ずることあるべき損害を塡補することを約する者と、これに對し其報酬を與ふることを約する者との、二人の當事者の合意に依りて成立する一種の射倖的有償契約にして、其損害を擔保せる當事者の一方を保險者といひ、保險者に對し報酬を支拂ふことを約する他の一方を被保險者といひ、若し第三者が被保險者に代て契約締結の任に當りたる場合には、此第三者を保險契約者と謂ふ也、而して保險者に依て擔保せられたる被保險者の利益を被保險利益といひ、保險者が被保險利益の上に生じたる損害塡補の爲めに支拂ふ金額を保險金額といひ、被保險者の支拂ふ報酬を保險料といふ、□二生命保隨契約は、當事者の一方が相手方又は第三者の生死に關し、一定の金額を支拂ふべきことを約し、相手方が之に對して其報酬を與ふることを約するに因りて、其效力を生ずる契約を云ふ、抑も生命保險契約の性質に關しては、學者の間に議論少しとせざるも、我現行商法に於ては、以上の如く定義するを以て、此點に關しては格別の議論を生ずること無し、今生命保險と損害保險との差異如何を略述せんに、第一、損害保險は被保險者の財産上の危險を擔保するものなるに反して、生命保險は被保險者の生命に關する危險を擔保するものなること、第二、損害保險は被保險利益の上に現に生じたる損害を塡補するものなるに反して、生命保險は其性質寧ろ貯金に類すること、第三、損害保險に於ける保險金額を定むるに就ては、常に保險價額を標準とするものなるに反して、生命保險に於ては斯かる標準なきが故に、當事者は自由に其金額を定め得ること、第四、損害保險に於ける被保險者は、被保險利益を有する者を指稱するものなるに反して、生命保險に於ける被保險者は、保險に付したる生命を有する者を指稱するものなること、即ち以上の四點を以て兩者の差異の主もなるものとなす、而して其他の點に付きて、は此兩種の契約は殆ど大同小異なり、唯茲に何種の保險たるを問はず、最も注意を要する一事は、保險契約は最上の信用を基礎とするものなるが故に、保險契約者又は被保險者が、契約の當時惡意又は重大なる過失に因り、保險者に對して重要なる事實を告げず、又は重要なる事項に就き不實の事を告げたるときは、保險者が其事實を知り、又は之を知ることを得べかりし場合の外、其保險は法律の規定に因り無效なること是なり、此等の點に關しては下の保險契約者の説明を參照すべし。(商三八四條及び四二七條)
- 英
- Contract of insurance
- 独
- Versicherungsvertrag
- 仏
- Contrat d'as-surance
保險契約者
(ほけんけいやくしや)保險契約者とは、保險契約の當事者を云ふ、即ち保險契約の當事者とは、保險者及び被保險者なることを通例とす、然れども保險は第三者が、被保險者の爲めにこれを爲すことを得るものなるが故に、時としては保險契約の當事者は、保險者、被保險者、及び被保險者のために實際契約締結の任に當りたる第三者の三人なること在り、而して此第三者を法律上保險者及び被保險者と區別して、保險契約者と謂ふ也、法律に保險契約者の權利義務に就きて詳細の規定あれども、總ての保險に通じて最も重要なる事項は、保險契約者の告知の義務及び開陳の責任これなり、即ち告知の義務とは、保險契約者が契約締結の際、保險者に對して被保險利益又は被保險者の健康狀態に關し、重要なる事實を正直に告知することを要するを云ひ、次に開陳の責任とは、重要なる事實を默秘することを許さざるを云ふ、蓋し保險者に取りて被保險利益又は被保險者の健康狀態の如何は、其擔保義務の輕重に至大の關係を及すものなるが故に、契約を締結するに方り出來得る限り詳細明瞭に、これを知悉するの必要あり、而して保險者は或は技師をして被保險物の性質構造を鑑定せしめ、或は醫師をして被保險者の健康を診察せしむる等、其他相當の方法を以てこれが調査を怠る事なしと雖も、未だ以て被保險者又は保險契約者が之を知悉すること難如く、充分其事實の眞相を察知する能はざるべきは普通の狀態とす、事情斯くの如くなるが故に、保險者は或程度までは之を調査するを得るも、或程度を越えて重要なる事實は、一に保險契約者の陳述に信賴して、其契約を締結するを常とす、即ち保險者は其相手方の信義に依賴して、危險の地位に立つものといはざるべからず、然るに若し相手方が、惡意又は重大なる過失に因り、重要なる事實を默秘し又は詐欺の事實を陳述したる如きことあらんか、保險者は如何なる不慮の損失を被るに至るや知るべからず、爰を以て法律は、保險者を保護し旁々以て保險に伴ふ詐欺的の弊害を防止するの目的より、契約の當時保險契約者が惡意又は重大なる過失に因り、重要なる事實を告げず、又は重要なる事項に付き不實の事を告げたるときは、保險者が其事實を知り又はこれを知ることを得べかりし場合の外、其保險契約は無效に屬すべき旨を明定せり。(商三九八、四二九條等參照)
- 英
- Insurance contractor
- 独
- Versicherungsnehmer
- 仏
- Preveur d'as-surance
保險契約の目的
(ほけんけいやくのもくてき)保險契約の目的とは、所謂被保險利益のことを云ふ、保險契約の當事者は、苟くも偶然なる一定の事故に因り、損害の生じ得べき危險ある利益は、如何なる種類の利益たるを問はず、これを以て其契約の目的となすことを得べしと雖も、元來損害保險なるものは、保險者が其目的たる利益に關して、現に生じたる損害の塡補をなすことを約するものにして、又其損害は無論、金錢を以て塡補するものなるが故に、若し保險契約の目的にして、金錢を以て見積ることを得ざる利益なるときは、保險者に於てこれを塡補する能はざるは固より言を俟たざるべし、故を以て法律は金錢に見積ることを得べき利益に限り、保險契約の目的となすを得べき旨を明定せり、從て金錢に見積ることを得べからざる利益は、之を以て保險契約の目的となすを得ざるものとす、而して同一の目的に付き、幾何の保險契約を締結するも、決してこれを妨げずと雖ども、保險契約は原則として、保險全額が其目的の價額に超過することを許さざるものなるが故に、斯かる場合に於て、其數個の保險金額が合して如何に多額に上るとも、被保險者は其目的たる利益の價額以上に、これを取得するを得ざる也、蓋し是損害塡補の原則より生ずる當然の結果にして、且つ法律の明定する所なれば也。(商三八五條乃至三八八條)
- 英
- Subject of insurable contract
- 独
- Zweck des Versicherungs-vertrags
- 仏
- sujet du contrat d'assurance
保險業法
(ほけんげふはふ)保險業法は、明治三三年三月法律第六九號を以て公布せられ、同年七月一日より施行せられたるものにして、即ち保險業取締に關する事項を規定したるもの也、此法律に依れば、保險事業を營まんとする者は、主務官廳の免許を受くることを要し、又保險事業は、株式會社若くは相互會社にあらざれば、之を營むことを得ざるものとす、而して保險會社は他の事業を兼ね、又は同一の會社にして生命保險と損害保險とを併せて其目的となすことを得ず、而して保險會社の業務は主務官廳の監督に屬し、主務官廳は何時にても保險會社をして其事業の報告を爲さしめ、又は會社の業務及び會社財産の狀況を檢査することを得べく、若し保險會社の業務又は會社財産の狀況に依り、其事業の繼續を困難なりと認むるときは、其事業の停止を命じ、又は期間を定めて業務執行の方法若くは計算の基礎の變更を命じ、其他保險契約者被保險者、又は保險金額を受取るべき者の利益を保護するに必要なる命令を爲すことを得べきものにして、保險會社が其命令に違反したるときは、主務官廳は事業の停止若くは取締役の改選を命じ、又は其免許の取消を爲すことを得るものとす、而して保險會社の清算に關しても、主務官廳は監督權を有し、其監督上必要なる場合には、何時にても之が檢査を爲す事を得、次に損害保險を目的とする會社が免許を受けんとする時は、其申請書に□一定款、□二事業方法書、□三普通保險約款、□四保險料及び責任準備金算出の基礎に關する書類を添ゆる事を要し、生命保險を目的とする會社なるときは、以上の書類の外に責任準備金利用の方法を記載したる書類の添付を要し、此免許後以上の書類を變更せんとするときは、更に主務官廳の認可を受けざるべからず、而して主務官廳は保險會社をして、上記書類の規定に從はしむるために、必要なる命令を發することを得るものとす、普通保險約款には、□一保險會社が保險金額の支拂を爲すべき事由、□二保險契約無效の原因、□三保險會社が其義務を免るべき事由、□四保險會社の義務の範圍を定むる方法及び其義務履行の時期、□五保險契約者又は被保險者が其義務不履行のために受くべき損失、□六保險契約全部又は一部の解除の原因、及び其解除の場合に於て當事者の有する權利義務、□七保險契約者、被保險者又は保險金を受取るべき者の利益、又は剩餘金の分配に與かる權利の有無、及び範圍等に關する事項を揭ぐることを要する也、以上説明する處は、同法の總則の規定にして、此外株式會社、相互會社及び各種の保險會社の計算手續、其他本法違反の場合に於ける罰則等に關し細密の規定をなせり。
- 英
- Law of insurance business
- 独
- Gesetz des Versicherungsgeschäftes
- 仏
- Loi des affaires de l'assurance
保險事業
(ほけんじげふ)保險事業とは、株式會社及び相互會社が、明治三三年三月法律第六九號保險業法の規定に從ひて、經營する損害保險又は生命保險に關する營業を云ふ、即ち保險事業は株式會社又は相互會社にあらざれば、之れを營むことを得ざるものにして、尚此等の會社は他の事業を營み、若くは同時に損害保險及び生命保險を合せて、之れを管むことを得ざるものとす。(前項保險業法參照)
- 英
- Insurance business
- 独
- Ver-sicherungsgeschäft
- 仏
- Affaires de l'as-surance
保險證券
(ほけんしやうけん)保險證券は、保險者が保險契約者の權利を證明するために、保險契約者の請求に因り、法律の規定に從ひて作製する一種の信用證券なり、商法の規定に依れば、損害保險に關する一般の保險證券には、□一保險の目的、□二保險者の負擔したる危險、□三保險價額を定めたるときは其價額、□四保險金額、□五保險料及び其支拂の方法、□六保險期間を定めたるときは其始期及終期、□七保險契約者の氏名又は商號、□八保險契約の年月日、□九保險證券の作成地及び其作成の年月日を記載して、保險者之れに署名することを要し、火災保險證券には、以上の事項の外、□一保險に付したる建物の所在、構造及び用法、□二動産を保險に付したるときは之れを納むる建物の所在、構造及び川法、運送保險證券には上記一般損害保險證券に記載すべき事項の外、□一運送の道筋及び方法、□二運送人の氏名又は商號、□三運送品の受取及び引渡の場所、□四運送期間の定めあるときは其期間を記載することを要し、次に生命保險證券には、上記一般損害保險證券に記載すべき事項の外、□一保險契約の種類、□二被保險者の氏名、□三保險金額を受取るべき者を定めたるときは、其者の氏名及び其者と被保險者との親族關係を記載することを要するもの也。(商四〇、四二二條、四二五條及び四三〇條)
- 英
- Insurance policy
- 独
- Ver-sicherungsschein
- 仏
- Police d'assurance
保險の目的
(ほけんのもくてき)保險の目的とは、被保險利益の存するものを云ふ、例へば建物火災保險の場合に於ける建物の如きは、即ち被保險利益の存するものなり、此被保險利益は、被保險者に於て固より自由に之れを讓渡すことを得べきも、之れが爲めに保險者に不利益を及すが如きは、法律の精神にあらず、故に商法は保險の目的の讓渡が、著しく危險を變更し又は增加するが如き場合には、其保險契約の效力を失ふべき旨を明定せり、而して保險の目的の讓渡は、保險契約に因りて生じたる權利を同時に讓渡したるものとの推定を受くるが故に、之れを爭ふ當事者は、須らく其反證を擧ぐることを要す、因みに保險契約の目的と、保險の目的との差異如何と云ふに、前者は被保險利益其ものを意味し、後者は被保險利益の存する實體たるべきものを意味するものとす、例へば名譽を保險に付したる如き場合に在りては、名譽は即ち被保險利益にして、保險契約の目的と云ふべく、名譽を保有する人は、即ち被保險利益の實體にして、保險の目的と云ふべし、從て保險の目的たるものは、獨り物とのみ云ふを得ざるを知るべし、尤も本例に就ては、被保險利益を廣義に解すると、狹義に解するとに依り、其論決を異にすべければ、學者宜しく保險に關する學説に就て研究する處あるべし。(商四四、四〇八、四一三、四一五條)
- 英
- Subject of insurance
- 独
- Assekuranzsubjekt
- 仏
- Sujet de l'as-surance
保險料
(ほけんれう)保險料は、保險契約當事者の一方が、他の一方に支拂ふことを約したる報酬を云ふ、例へば損害保險の場合にありては、危險擔保を約する當事者の一方に對し、他の一方が其報酬として支拂ふ處のもの也、即ち危險擔保に對する代價と云ふことを得べし、此代價は金錢なることを要するや否やと云ふに、法律は、之れに關して何等の規定を設けざるのみならず、或は相互保險の場合にありては、一社員に於て他の社員の危險を擔保することが、此代價即ち報險料となるものなるが故に、保險料は、必ずしも金錢に限るべきものに非ざるを知るべし、要は唯當事者が保險料を確定すべき一事なり、蓋し保險契約は、損害塡補の約束と、報酬支拂の約束とが相合して成立するものなり、從て保險料は契約成立の一要素をなすものといはざるべからず、爰を以て當事者は、契約締結の當時に於て、保險料を確定することを必要となすは、固より其處なり、此結果として、若し當事者が明示又は默示の方法を以て、保險料の種類數額等を確定せざりし場合には、這般の保險契約は、完全に成立したるものと云ふを得ざるべし、次に保險料は前拂をなすことを要するや否やの問題に關しては、法律の明言せざる處にして、實際に於ては前拂をなすを通例となすも、必ずしも前拂を要するものと解すべき理由なきが故に、其支拂の時期は、當事者に於て自由に之れを約束することを得と云ふべし。(商三編十章一二節參照)
- 英
- Premium
- 独
- Assekuranz-prämie
- 仏
- Prime
補佐
(ほさ)補佐とは、なほ補助と云ふに同じ、即ち或人が其主體たるべき者に附從して、其事務に助力することを意味す、固より其勞働の肉體的なると精神的とを問ふことなし、補佐と其主體たるべき者との關係如何と云ふに、補佐たるべき者は、其主體たるべき者に對し、命令服從の地位に立つを常とす、從つて補佐たるべきものは、補佐たる資格に於て、主體たるべき者の事務に付き、獨立專行の權能を有することなし、即ち斯かる權能を有する如く見ゆる場合なきにあらずと雖も、そは主體たるべき者の、否認を解除條件として成立したる行爲と云はざる可らず、即ち補佐たるべきものの爲したる行爲に對する法律上の效果の歸する處は、主體たるべき者に在るべく、補佐たるべきものは、主體たるべき者の意思に反して、法律上有效の行爲をなし得べき權能ある事なし、補佐と代理と異なる處は、補佐たるべき者の行爲は、主體たるべき者を通じて初めて有效なるに反して、代理は、代理人が其權限内に於て、本人の爲にすることを表示して爲したる場合には、直に效力を生ずるの點に在り。(刑訴四七條二項)
- 英
- Help
- 独
- Hilfe
- 仏
- Aide
保佐人
(ほさにん)保佐人は、法定代理人と同じく、民法上無能力者の利益保護のために設けられたる制度にして、保佐人は、主として無能力者の財産權の監護に任ずる者なり、無能力者とは、法律上行爲能力を缺くものと認めらるる者にして、之を分つて一般無能力者及限定無能力者となす、一般無能力者は未成年者及び禁治産者にして、限定能力者は妻及び準禁治産者となり、保佐人は即ち此準禁治産者に付せられ、財産權の監護者たる者を云ふ、茲に準禁治産者と云ふは、心神耗弱者、聾者、啞者及び浪費者にして、裁判所に於て準禁治産の宣告を受けたる者を云ふ、抑も保佐人と法定代理人と異なる處は、前者は準禁治産者の財産監護人たるに反して、後者は未成年者の保護者なり、前者が準禁治産者の行爲を許否する權限は、原則として法律に明定せるものに限るに反して、後者が未成年者の行爲を許否する權限は、特に法律に明文を以て除外するものを別にして、其行爲の全般に亘る等の點を主もなるものとす、要するに保佐人は、準禁治産者の相談者とも云ふべき資格にして、法律に明文を以て判記せる事項、若くは裁判所の指定せる事項に付き、準禁治産者のために其利害得失を鑑別して、其行爲を許否し、幷に其財産權の監護に任ずるものにして、準禁治産宣告の際裁判所の任命する處のものとす。(民一一、一二、及び一三條)
- 英
- Guardian
- 独
- Vormund
- 仏
- Gardien
補佐人
(ほさにん)補佐人とは、民事訴訟上原告若くは被告に附從して出廷し、口頭辯論に參與して、權利の伸張又は防禦に付き、其附從する原告若くは被告を補助する者を云ふ、茲に原告若くは被告と云ふは、單に主たる原告若くは被告を指すに非ずして、原告若くは被告に附從する參加人をも意味するのみならず、此原告又は被告、又は其參加人を代表する法律上の代理人、幷に訴訟代理人をも包含するものとす、保佐人は、辯護士は勿論其他の者と雖も、裁判所の許可を得るときは補佐人となすを得べきも、辯護士以外の者が補佐人たる場合には、裁判所は何時にても其許可を取消すことを得るものとす、これ蓋し所謂潜り代言等の、妄りに法廷に出入するの弊を除去せんがために出でたる規定に外ならざる也、次に補佐人は、原告若くは被告のために、其口頭辯論を補佐するものなるが故に、其原告若くは被告と共に出廷することを要すべきは勿論、共に出廷したる場合には、凡ての訴訟行爲をなし得べしと雖も、元來獨立の資格を有する者にあらざるが故に、補佐人がなしたる訴訟行爲は、補佐人たる原告若くは被告が、更正せざるときに於てのみ、其效力を有すべきもの也。(民訴七一條參照)
- 英
- Counsel
- 独
- Beistand
- 仏
- Conseil
保證
(ほしやう)保證なる語には二樣の用例あり、□一は將來生することあるべき債務の履行を確保することを云ふ、民事訴訟法に「事情に從ひ費用及び損害の保證を立てしめ云々」とあるは其用例にして、此場合には現在に於て、何等の債務も存在すること無く、將來に於て生ずること有るべき債務の履行を確保するもの也、從て將來果して生するや否やは未確定の事實に屬す、又彼の身元保證の如きも、解釋の如何に依りては、將來に生ずべき債務の保證と云ふことを得べし、要すに此の如きは、條件附債務なりと云ふことを得べし、□二は現在成立せる債務の履行を確保するものを云ふ、例へば民法上の保證債務の如き是なり、此保證債務に就ては、保證債務の部を參照ずべし、つぎに保證の方法には二種あり、其一は第三者をして擔保の責に任ぜしむる方法にして、此第三者を保證人と稱す、其二は債務の額に相當する金錢又は有價證券、其他の有體動産を提供して、債務の履行を擔保する方法にして、此種の金錢を保證金と稱し、其他の物を擔保物と稱するなり。(保證金、保證債務、及び保證人等參照)
- 英
- Guaranty
- 独
- Bürgschaft
- 仏
- Garant
保障
(ほしやう)保障とは、將來に向つて或行爲又は不行爲を確保する事を云ふ、例へば人民納税の義務は、憲法の保障する所なりと云ふときは、國家が憲法の規定を以て、人民の納税義務を定め、將來憲法の規定に違反するが如き行爲をなさざることを確保するものにして、即ち憲法の規定は、人民の納税義務に付き、國家の任意行動に對する保障となるを知るべし、抑も保障なる語は、元來政治上の用語にして、政治上に於ては極めて重要の關係を意味す、蓋し古昔專政時代に於ては、國王又は上級行政者の意思が、直に法たるの效力を有し、人民權利の與奪は、一に國王又は上級行政官の任意處分に屬し、之れに對して何等の保障を與ふるものなかりき、然るに近世人智の進步に伴れ、國家の一要素たる人民をして、斯くの如く不安の地位に立たしむるは、決して國家の目的を達する所以にあらざるを認め、特に立憲政體の國家に於ては、立國の大典章たる憲法に於て、之れに對し相當の保障を與へ、以て人民の權利を安固ならしむる至りたるものにして、國王又は行政官にして、猥りに此保障を侵害するが如き施措に出べきときは、政治上實に容易ならざる大問題となるべきものとす。
補償
(ほしやう)補償とは、或行爲の結果として生じたる損害を、賠償塡補することを云ふ、明治二二年七月法律第十九號土地收用法に「此法律に依り損失を補償して云々」とあるは其用例なり。(同法一條、土地整理法五八條)
- 英
- Indemnity
- 独
- Entschädigung
- 仏
- Indemnité
保證金
(ほしやうきん)保證金とは、或行爲より將來生ずることあるべき損害又は費用等を保證するに方り、其擔保として保證を立つべき者が、提供する金錢を云ふ、明治二二年四月勅令第六〇號會計規則に「■■現金又は公債證書を以て保證金を納むべし」とあるは是其用例なり。(會計規則六九條三項、刑訴一五五條)
- 英
- Security
- 独
- Kaution
- 仏
- Cautionnement
保證契約
(ほしやうけいやく)單に保證契約と云ふときは、廣くある人が他人に對し、ある事實に付き、保證の責任を負ふことを約する契約を云ふ、此保證契約の當事者たる能力、及び資格等に關しては、固より普通契約の場合と異なること無し、而して債務者が債權者に對して、保證を立つべき義務ある場合に於ては、其保證人たるべき者は、法律上一定の條件を具備することを要するを以て、此場合に於ける保證契約の當事者の一方は、法定の資格を有する者なるを要す、茲に法定の資格と稱するは、□一能力者たること、□二辨償の資力を有すること、□三債務の履行地を管轄する控訴院の管轄内に住所を有し、又は假住所を定めたること是なり、畢竟斯くの如きは、保證人をして其責任を完うせしめんことを期する精神に外ならざるべし、次に無能力者に對し保證に立つることを約したる者にして、其無能力者たることを知りたるときは、其無能力者の行爲一切に付き、當事者として其責に任ぜざるべからざるは勿論のこと也、其他保證契約に伴ふ法律關係は、各場合に於ける内容に從ひ、一般の原則に依りて之れを解釋すべきものとす。(民四四九條)
- 英
- Guranty
- 独
- Garantievertrag
- 仏
- Garant
保證債務
(ほしやうさいむ)保證債務とは、主たる債務の履行を擔保する從たる債務を云ふ、茲に主たる債務とは、他人間に存在する債務を云ふものにして、即ち保證債務は、或人が他人間に存在する債務の履行を擔保するものなるが故に、其他人間に存在する債務を指して主たる債務と稱し、此主たる債務に對して保證債務は、從たる地位に在るものとす、從つて保證債務は主たる債務と其範圍を同うすべく、保證人の負擔が債務の目的又は其體樣と、主たる債務より輕重あるが如きことは、固より之れある可らず、尤も保證人が債務の目的又は體樣に付き、主たる債務より重き負擔を約したる場合は此限りにあらざるも、其他の場合に在りては主たる債務の限度に於てのみ、保證人たるの義務を負擔するものと云ふべし、而して保證債務は從たる債務として、主たる債務の履行を擔保するものなるが故に、主たる債務の目的と異なりたる給付を以て、其目的となすを得ざるは勿論のことにして、若し主たる債務の目的が債務者の行爲にして、保證人が、主たる債務者に代りて其行爲を爲すことを得ざる場合に在りては、保證人は、單に其不履行に基く主たる債務者の損害賠償の責任を擔保するものと云ふべし、而して保證債務は通常主たる債務、及び之れに伴ふ一切の債務を擔保することを約するものなるを以て、法律は保證債務は主たる債務に關する利息、違約金、損害賠償其他總て其債務に從たるものを包含すべき旨を明言せり、故に保證人たる者は、特別の約束をなさざる場合と雖も、當然以上の負擔に任ずる責を有するものとす、然し保證人は特約を以て其負擔を制限する事を妨げざるのみならず、進んで主たる債務の不履行に因りて、意外の損失を受くることを防止するの方法として、其の保證債務に付き、違約金又は損害賠償の額を特約を以て豫定することを得、次に保證債務は主たる債務の不履行の場合に於て、之を履行することを要するものなれば、主たる債務の不履行を條件として成立する獨立の債務とは、其結果に於て大なる差異あり、蓋し保證債務は主たる債務の不履行を目的とする從たる債務なるが故に、此從たる保證債務を履行するときは、主たる債務者は其債務を免るると同時に、保證人に對して償還を爲すべき義務を生ずべし、之に反して主たる債務の不履行を以て條件となせる獨立の債務は、主たる債務と相關することなきが故に、縱令其條件附債務者が、其履行をなすときと雖も、之に因りて主たる債務者は、其債務を免るる能はざるは勿論、尚條件附債務者に對して何等の償還を爲すを要せざるもの也。(民四四六條乃至四六五條)
- 英
- Suretyship
- 独
- Bürgschafts-schuld
- 仏
- Cautionnement
保證責任
(ほしやうせきにん)單に保證責任と云ふときは、保證人が保證契約の結果として負擔する處の責任を云ふ、一般の原則に從て説明するときは、元來保證なるものは、主たる債務を擔保する從たる債務なるが故に、保證責任も亦主たる債務の目的、又は體樣の異なるに從ひて、同じからざるは勿論のことなるべし、從つて其責任の限度は、主たる債務と均等なるを原則とす、若し保證人の負擔が債務の目的又は體樣に附き、主たる債務より重き場合には、之を主たる債務を限度に減縮することを得べし、而して保證責任は、主たる債務者が其債務を履行せざる場合に於て、其履行に任すべき責任にして、數人が同一の事實に付き、保證責任を有する場合には、其責任に伴ふ債務は、之を數人の間に均等の分配をなし、若し不可分なる場合、又は連帶の責任を有する場合には、不可分債務又は連帶債務の規定に從つて、之を決するを要す、要するに如何なる事實に關する保證の責任と雖も、これに伴ふ義務の履行は、結局損害賠償其他の債務に外ならざるを以て、民法は保證債務の原則を適用すべきものとす、尤も他の法令に特別の規定あるものは、此限りにあるざる也。(産業組合法二條、無限責任、有限責任及び無限責任組合の部參照)
- 英
- Responsibility of guaranty
- 独
- Bürgschaftsverantwortlichkeit
- 仏
- Responsabilité de garant
保證人
(ほしやうにん)保證人なる語には、二樣の用例あり、□一將來他人間に生ずることあるべき債務の履行を擔保する者を云ふ、例へば通常身元保證人と稱する者の如きこれなり、即ち此種の保證人は、條件附債務を貨擔するものと云ふを得べし、□二民法上所謂保證人にして、他人間に現在存する債務の不履行を目的となせる債務を負擔する者を云ふ、此兩種の保證人は、等しく他人の債務の履行を擔保する者なれども、前者は將來發生するや否や未確定の債務の履行を擔保する者なるに反して、後者は現在成立せる債務の履行を擔保する者とす、而して前者の法律關係は、極めて單純にして、別に説明を要せざるも、後者に就ては少しく説明するの必要あり、抑も此種の保證人は、他人の間に存在する主たる債務の履行を擔保する者なるを以て、相當の資力を有せざる可らず、然れども當事者が契約に於てこれを定むるときは、何人を以て保證人となすも固より其自由に屬す、之に反して債務者が保證人を立つべき義務を負擔する場合に於ては、其保證人たる可き者は法律上一定の條件を具備することを要す、即ち第一、能力者たること、第二、辨濟の資力を有すること、第三は債務者の履行地を管轄する控訴院の管轄内に住所を有し、又は假住所を有することこれなり、而して保證人が主たる債務の履行期限までに、上記の三條件を缺くに至りたるときは、債權者は完全の保證人を以て之れに代ゆることを債務者に要求することを得べし、尤も債權者に於て保證人たる可き者を指名したるときは、以上の條件を具備せざる者と雖も、保證人となすを妨げざる可し、次に一個の主たる債務に對し、數人の保證人ある事あり、此場合に於ける保證人相互の關係如何と云ふに、其數人の保證人が各別の行爲を以て債務を負擔したるときは、其保證債務は數人の保證人間に等分せらるるものとす、尤も其等分の負擔をなす場合は、主たる債務の目的の可分なる場合に限るものにして、若し不可分なる場合には、保證債務の目的もまた不可分なる可きを以て、數人の保證人は各自全部辨濟の義務を負擔すべきは勿論のことなりとす、而して保證人の一人が主たる債務の不可分なるがため、又は各保證人が全額を辨濟すべき特約あるがため、全額を辨濟し、又は其他自己の負擔部分を超ゆる額を辨濟したるときは、連帶債務の原則に從ひ、保證人は他の保證人に對し求償權を行ふことを得べく、之に反して互に運帶せざる保證人の一人が、全額其他自己の負擔部分を超ゆる額を辨濟したるときは、其保證人が他の保證人の意思に反して保證を爲したる場合と否らざる場合とに依り、他の保證人より其保證人に對する賠償額に差異を生ずべし、次に保證人と債權者との關係に就ては、債權者より主たる債務者に對する履行の請求、其他時效の中斷は、保證人に對しても其效力を生ずるものにして、保證人は主たる債務者が其履行をなさる場合には、之に代つて辨濟をなすの義務を有すべく、されど連帶債務の場合と異なりて、債權者は先づ主たる債務者に對して其履行を請求し、其執行をなすことを要す、然るに若し債權者が主たる債務者に對して履行を請求せずして、保證人に對し其請求をなしたるときは、保證人は主たる債務者が破産の宣告を受け、又は其行方が知れざる場合の外、先づ主たる債務者に對し催告をなすべき旨を請求するの權利を有するのみならず、又債權者が主たる債務者に對し催告をなしたるも、主たる債務者が其履行をなさざる場合には、保證人は更に進んで、主たる債務者に辨濟の資力あり、且つ其執行の容易なることを證明して、債權者に對抗することを得べし、所謂檢案の抗辯なるものは是也、而して保證人が這般の請求をなしたるに拘はらず、債權者が其催告又は執行をなすことを怠りたるがため、主たる債務者より全部の辨濟を受くることを得ざるに至りたるとは、保證人は債權者が直に催告又は執行をなせば、辨濟を得べかりし限度に於て其義務を免るることを得、若し保證人が辨濟をなすべき義務を有する場合に於て、主たる債務者が債權者に對し債權を有せしときは、保證人は其相殺を以て債權者に對抗することを得べし、次に保證人と主たる債務者との關係に就て一言せんに、保證人が辨濟其他自己の出捐を以て、主たる債務者に其債務を免れしめたるときは、主たる債務者に對して保證人は、其賠償を求むることを得るは勿論にして、されども保證人が主たる債務者の委託を受けて保證を爲したる場合と、委託を受けずして之れを爲したる場合、及び主たる債務者の意思に反して保證をなしたる場合とに依り、其の賠償額に差異を生ず、又保證人が主たる債務者に對して、豫め求償權を行ふことを得るは、其委託を受けて保證をなしたる場合に限るものとす、次に連帶債務者又は不可分債務者の一人のために、保證をなしたる保證人が、辨濟其他自己の出捐を以て債務者一同の免責を得しめたるときは、他の債務者に對して、其の各自の負擔部分に付き求償權を行ふことを得べきは、説明するまでもなかるべし。(民四四六條乃至四六五條參照)
- 英
- Surety
- 独
- Bürge
- 仏
- Cau-tion
保證物
(ほしやうぶつ)保證物とは、或債務の擔保として、債務者が提供する物件を云ふ、例へば債務者が法定の條件を具備する保證人を立る能はざる場合に於て、其債務の額に相當する有價證券又は其他の物件を擔保として提供したるときは、其擔保物件は即ち保證物なり。(酒造税法七條)
- 英
- Security
- 独
- Sicherheit
- 仏
- Sécurité
保釋
(ほしやく)保釋とは、刑事訴訟上の用語にして、裁判所が豫審中、拘留狀を受けたる被告人の請求に因り、一定の條件の下に其拘留を中止する處分を云ふ、蓋し拘留狀を受けたる被告人は、其の事件が免訴となるか、若くは禁錮以下の刑に係る場合にあらざれば、其事件の終結を告ぐるの日まで拘留を受けざる可らず、然れども被告人を永く拘留するは、啻に其者獨り不利益を被るのみならず、國家の經濟上より看るも亦決して策の得たるものと云ふことを得ず、爰を以て、事に害なき限り、被告人をして其自由を得しむるは、相互の利益たるべきが故に、國家は保釋の制度を設けて、一定の條件の下に其拘留の中止を許可するものにして、此保釋の條件として法律の規定する所は、□一被告人より保釋の請求ある事、蓋し保釋は裁判所の職權に屬せざるが故に、被告の請求を待つて始めて之が許否を決するものにして、此請求は被告人自ら之れをなすを要すべきも、若し被告人が無能力者なるときは、法律上代理人より代つて之れを爲すことをを得べし、□二保釋の請求をなし得る者は未決拘留中の被告人なること、裁判の確定したる被告人、及び單に拘引狀を受けたる被告人には保釋なるものあることなし、□三被告人より何時にても裁判所の呼出に應じて出頭すべき旨を記載せる證書を差出し、且つ保證金を差出すこと、此保證金額は豫審判事の定むる處にして、金錢の外有價證券を以て之に代ゆることを得、又此保證金の代りに、其裁判所の管轄内に住し且つ充分なる資力ある者より、金額に充つる保證書を差出さしむる事を得るものとす、即ち以上の三條件を具備するときは、豫審判事は檢事の意見を廳きたる後、其許否を決定す、而して被告人は保釋を許さざる言渡を受けたるときは、これに對し其裁判所に異議の申立を爲すことを得べく、此異議の申立あるときは、其裁判所に於て、檢事の意見を廳きたる後、之れが許否を決するものとす、次に保釋は法律の規定に該當する原因の存する場合には、裁判所に於てこれを取消すべきものにして、今これが取消の原因となるべき事項を擧ぐれば、□一被告人が故なく裁判所の呼出に應ぜざるとき、是れ被告人が保釋を許されたる條件に違反したる場合にして、違背の制裁として之を取消すは、至當の事なりとす、而して被告人が保釋を取消さるるときは、保證金の全部又は一部を沒收せらるることあるべし、□二被告事件が重罪なるとき、此場合には豫審判事は重罪公判に附すべき言渡を爲し、同時に保釋を取消すべきものとす、□三裁判所に於て必要と認めたるとき、例へば被告人が保釋中或は犯罪を行はんとしたるとき、又は其被告事件に關する罪證の湮滅を圖るが如き場合には、これを取消し拘留をなすの必要ある可し、□四被告事件が禁錮以下の刑に該るとき、元來被告人を拘留するは、禁錮以上の刑に該る場合に限るべきものなるを以て、若し其被告事件が禁錮以下の刑に該る場合には、當初より拘留すべき者にあらざるが故に、此場合に於て保釋を取消し、被告人を釋放するは當然のことに屬す。(訴刑一五〇條乃至一五八條)
- 英
- Bail on security
- 独
- Freilassung gegen Sicherheitsleistung
- 仏
- Liberté provisoire
保守
(ほしゆ)組織、制度、慣習、方法等何れにしても、在來の狀態を保持する事を謂ふ、故に改良、進步等に反對す、然れども保守は必ずしも常に辨斥すべきものにあらず、進步と保守と兩々相制約して、始めて有效なる結果を擧ぐることを得べし、保守は、頑迷、不決斷等に流るる恐れありと雖も、之を善用すれば持重、穩健等となり、暴擧、妄進等の其の根底の甚だ危險簿弱なるに對して、強固堅實なる狀態を維持し得べし、然れども人事に限らず、宇宙の現象には進化發展の理法の恒に行はるる事實より、保守は單に保守として止まらば、有害なること云ふ迄もなし、例へば道德慣習にしても、吾人が日本在來の風習とは隔絶せる如きものに向つて、強ちに暴進し以て進步と考ふるあらば、甚だ誤れるものなること勿論なるが、さりとて飽迄も日本固有の風習を因襲的に持續せんとすることあらば、道德の發展に悖りて、終には自滅を免れざるべし、例へば恰も維新前の日本に於て、攘夷主義を飽迄貫徹したりしならんには、日本の存立知るべからざるものありしならん、然るに又日本固有の精神を失はざりしが爲めに、再度の大戰爭にも見事なる勝利を得たるが如き、以て其の利害の懸る所を窺ふべきなり、而して保守的とは、其形容詞にして、消極的などいふと或意味に於て相通ず。
補充法
(ほじゆうはう)補充法とは、或法令の規定中、不備なる事項、又は或法令の施行上必要なる細則を規定したる法則を云ふ。
- 英
- Law of recruit
- 独
- Ergänz-ungsgesetz
- 仏
- Loi de la recrue
補充兵
(ほじゆうへい)補充兵とは、徵兵上其年に要する處の現役員に超過する者を、抽籖の方法に依りて服役者の補缺、又は不足の場合に召集せらるる兵員を云ふ、陸軍に在りては補充兵は現役兵の補缺に充て、又は戰時若くは事變に際して之を召集するものとし、平時に在りては、百五十日以内教育のため之れを召集し、其他勤務演習又は簡閲點呼のため召集せらるるものとす、尤も補充兵を以て現役兵の補缺に充るは、其服役の初年に限るものにして、補充兵役の服役年限は十箇年四箇月とす、而して在來存したりし第二補充兵は、戰時若くは時變に際し、第一補充兵を召集するも仍ほ兵員を要する場合に召集する者なりしが、現時に於ては之なし、次に海軍補充兵に在りては、服役年限は一ケ年にして、其所要の現役兵員に超過するものこれに服し、現役兵の補充に充て、又は戰時若くは事變に際し之れを召集するものなること、陸軍の補充兵に異なることなし。(二二年一月法一號徵兵令第一七條參照)
- 英
- Recruit
- 独
- Rekrut
- 仏
- Recrue
補充命令
(ほじゆうめいれい)補充命令とは、所謂行政命令の謂にして、行政命令とは、天皇が憲法の規定に基き、公共の安寧を保持し、及び臣民の幸福を增進するために、天皇自ら之れを發し、または他の機關をして發せしむる處の命令を云ふ、抑も憲法上必ず法律を以て規定することを要する事項を立法事項と稱し、其必ず命令を以て規定することを要する事項を命令事項と稱す、而して此立法事項及び命令事項に屬せざるものは、法律を以て之れを規定するも、或は命令を以て之れを規定するも、時の便宜に從ふことを得るものとす、學者の稱して自由立法事項又は法律命令共同の區域と云ふものこれなり、此法律命令共同の區域内に於て、公共の安寧を保持し、又は臣民の幸福を增進するがために、天皇の自ら之れを發し、又は發せしめ給ふ命令は、即ち行政命令にして、行政命令を指して補充命令と稱するは、法律の足らざる處を補充するの義とす、換言すれば、法律命令共同の區域に於て、法律の未だ先占せざる部分に就て、規定をなしたる命令なるが故に、斯くは補充命令と稱するものとす。(行政命令の部參照)
- 英
- Order of recruit
- 独
- Ergänz-ungsbefehl
- 仏
- Ordre de la recrue
補助機關
(ほじよきくわん)補助機關とは、ある行政官廳に於ける職務の執行を補助する機關を云ふ、例へば次官又は局長等の如きこれなり、其補助の機關なるや否やは、一に其官廳の權限に屬する事務に就て、決定處分をなすの權を有するや否やに依りて之れを知るを得べし、即ち如何に樞要の事務に任ずるも、外に對し自ら決定處分をなすの權を有せざるものは、補助機關なりとす。(機關の部參照)
- 英
- Auxiliary organ
- 独
- Scheide-organ
- 仏
- Organe auxiliaire
補助貨幣
(ほじよくわへい)補助貨幣とは、貨幣制度上の用語にして、法律上其強制通用額に一定の制限ある貨幣を云ふ、即ち貨幣の流通上、本位貨幣を補助するがため制定せられたるものにして、我貨幣法の規定に依れば、補助貨幣には三種あり、即ち銀貨幣、白銅貨幣及び青銅貨幣これ也、銀貨幣には五十錢二十錢及び十錢の三種、白銅貨幣には五錢の一種、青銅貨幣には一錢及び五厘の二種ありて、各補助貨幣は法貨として各其通用額を異にす、即ち銀貨幣は十圓迄、白銅貨幣及び青銅貨幣は一圓迄とす、因に從來の發行に係かる五錢銀貨幣及び二錢銅貨幣は、補助貨幣として從來の通り通用するものとす。(三〇年三月法一六號貨幣法三條、七條及び一七條)
- 英
- Auxiliary coin
- 独
- Scheide-münze
- 仏
- Coin auxiliaire
保税倉庫
(ほぜいさうこ)保税倉庫法に「保税倉庫は輸入手數料未濟の貸物を藏置する處とす」とあるは是なり、抑も凡ての輸入貨物は、税關通過の際直に貨主に於て、制規の輸入税を支拂ふに非ざれば、之れを引取ることを得ざるを原則となす、然るに貨主は其商機に關する畫策上、往々販賣の期節にあらざる貨物を輸入するの必要に遭遇することは、實際上ありがちのことにして、此場合に於て、貨主は現在取引をなさざる貨物に對し、多額の輸入税を支拂ひたる上、其貨物を引取りて、販賣の期節に至り、相當の値段まで、相場の昂騰するを待たざる可らず、之れを貨主の經濟上より看るときは、其間貨物に對して支拂ひたる代價、幷に輸入税を始め、其他の費用に消費せし資金は、全く活動を中止するものにして、最も苦痛を感ずる處なりとす、爰を以て、充分の資金を蓄ふる商人は兎に角、資金に餘裕なき者は、之がため勢ひ其輸入を見合せ、有利の商機を逸せしむるが如きことは、商業の實際上少なからざる事實なりとす、斯の如きは獨り商人の遺憾とする處に止まらずして、實に國家の商業政策上よりするも、決して商業の發達を圖る所以にあらざるが故に、國家は保税倉庫の制度を設けて、商人が輸入したる貨物を保税倉庫に藏置する間は、其輸入税の支拂を猶豫し、以て商人に資金運轉上の利益を得しむるの途を開きたるものにして、商業上最も重要にして、且つ進步したる機關なりと云ふを得べし、次に我法制上、保税倉庫の如何なる性質を有するものなるやは、請ふ次項保税倉庫法の説明を參照して了得する處あれ。
- 英
- Bonded warehouse
- 独
- Frei-lager
- 仏
- Entrepôt
保税倉庫法
(ほぜいさうこはふ)保税倉庫法は、明治三〇年三月法律第一五號を以て公布せられ、同年七月一日より施行せられたるもの也、以下其規定事項の内容に就き少しく説明せんに、抑も保税倉庫は、輸入手數料未濟の貨物を藏置し、其藏置中は輸入したるものと看做さるが故に、其貨物に對する輸入税は、藏出の際に於て、最初庫入の時の性質及び數量に依り、之れを徵收するものにして、保税倉庫の貨物藏置期限は、庫入の日より滿一年と定め、其藏置中藏置貨物の庫移を爲すも、藏置期限に變更を生ずることなし、此場合には、事宜に依り、當該官廳は貨主をして、其貨物に對する輸入税を假納せしむることを得べし、而した凡て保税倉庫より、輸入手數料未濟の貨物を運搬するときは、命令を以て定められたる通路を以てすることを要し、保税倉庫に藏置することを得べき貨物の種類は、主務大臣の定むる處に依るべく、且つ保税倉庫に藏置する貨物の輸入に關しては、此法律の外税關法及び税關規則を適用すべきものと定めたり、次に官設保税倉庫に藏置する貨物に對しては、記名の預證券を發し、此預證券は、裏書を以て之れを讓渡すことを得るものと定め、此預證券を盜取せられ、又は紛失滅失したる場合には、其旨を直に當該官廳に屆出ることを要し、此場合に於て、民事訴訟法に依り、其證券を無效とする除權判決ありたるときは、權利者に新證券を交付せらるるも、若し屆出に係かる預證券を持參したる者あるときは、持參人及び屆出人に於て、相當の手續をなし、其權利者の確定するまで、藏置貨物の引渡を停止するものとす、尤も保税倉庫に藏置する貨物は、預證券と引換に之を交附するものなることは勿論のことにして、此藏置貨物の取引上に關する權利に就き訴訟ある場合には、當事者は其藏置期限の延期を求むることを得べし、而して若し藏置期限を經過するも、仍ほ貨主に於て貨物を引取らざるときは、無請求品として、當該官廳は其貨物の記號、番號、品名、及び個數等を公告し、公告當日より六ケ月を經過して、之を引取る者なきときは、當該官廳に於て其貨物を競賣に付し、輸入税、公告料、競賣手數料、庫敷料其他一切の費用に充て、殘金ある場合には之を貨主に還付するものとし、藏置の貨物が腐敗其他の事故に因り、倉庫又は他の貨物を害する虞あるときは、當該官廳は相當の期間を定め、之れを公告して其引受を命ずるものとし、若し此期間を經過するも、其貨物を引取らざるときは、當該官廳に於て、之を滅却することを得べく、若し緊急の必要あるときは、期間内に於ても、仍ほ之を滅却することを得るものと定めたり、尤も滅却したる貨物に對しては、輸入税を徵收せらるることなし、次に私設の保税倉庫は之を營まんとする者に於て、主務大臣の特許を受くることを要す、此私設保税倉庫の貨物保管規則及び庫敷料は、主務大臣の認可を得て之れを定むることを要し、庫主は命令の定むる處に依り、保管貨物輸入税の擔保として、金錢又は國債證券を供託せざる可らず、而して庫主は其保管する貨物の輸入税に就き、自ら一切の責任を有し、天災事變其他何等の事故に因るを問はず、貨物の紛失滅失若くは盜取せられたる場合と雖も、其責を免るることを得ざるものとす、而して私設保税倉庫には、庫主に屬する貨物を藏置することを得ざるものにして、其他の保管貨物は、庫入の日より滿一年を過ぐる時は、輸入税を徵收せらるるものとす、此營業特許の消滅原因は、□一庫主其營業を廢止したるとき、□二庫主死亡したるとき、□三庫主破産の宣告を受けたるとき、□四特許の期限滿了したるとき、□五主務大臣に於て特許を取消したるときの五場合にして、當該官廳は特許消滅の旨を公告し、庫主をして指定の期間内に其藏置貨物の處分をなさしむるものと定め、此期限内に庫主に於て、貨物の處分をなさざる時は、當該官廳は之を官設保税倉庫、又は他の私設保税倉庫の保管に移し、此庫移の費用は貨主をして之を負擔せしむるものとす、尤も此場合に於て、前營業者の業務を引續ぐが爲めに、特許消滅後一ケ月以内に、營業の特許を出願したる者あるときは、此處分をなすことなし、而して上述營業特許の消滅したる私設保税倉庫の庫主、及び其相續人は、其藏置貨物の引取又は庫移の終はる迄は、保税倉庫に關する一切の義務を免るることを得ざるもの也、次に私設保税倉庫の庫主は、當該官廳の指揮監督の下に、其營業をなすものにして、當該官吏は、其監督上必要なりと認むるときは、何時にても私設保税倉庫の貨物又は帳簿書類を檢査し、其貨物の運搬中に在るものは、其所在に就さて檢査をなすことを得べく、主務大臣は、庫主が業務に關する法律命令に違背したるとき、輸入税の負擔に堪へざる虞あるとき、及び重罪、輕罪の刑に處せられたるときの三場合に於ては、其營業の特許を取消す事を得るものとす、而して庫主に對する罰則としては、當該官廳の許可を得ずして貨物を庫出したるとき、及び輸入手數未濟の貨物を命令を以て定めたる以外の通路に依り、運搬したるときは、其貨物を沒收し、既に讓渡し又は消費したるときは、其代金を追徵し、當該官廳の許可を得ずして保税倉庫に貨物を庫入したるときは、三圓以上三十圓以下の罰金に處し、主務大臣の許可を受けずして、私設保税倉庫の貨物保管規則、又は庫數料を定めたるとき、及び私設保税倉庫に庫主に屬する貨物を藏置したるときは、五圓以上五十圓以下の罰金に處し、當該官吏の檢査を拒み、又は之を忌避し若くは之に支障を加へたるときは、二圓以上二十圓以下の罰金に處し、其刑法に正條あるものは、刑法の規定に依るべきものと定めたり、要するに私設保税倉庫に關し、斯く嚴重の規定を設けたるは、脱税の弊害を防遏せんとの目的に外ならざるなり。
保全處分
(ほぜんしよぶん)保全處分とは、裁判所又は其他の官廳が、特定の財産を保全するために行ふ處分を云ふ、破産法に保全處分とある是なり、以下少しく破産法上の保全處分に付て説明せんに、即ち此場合に於ける保全處分は、破産者の財産の隱匿若くは轉送等を防止するために、裁判所の行ふ處のものとす、蓋し破産の場合に於て、破産者が不正の手段を弄して、其財産の隱匿轉送等を企て、以て破産の結果を免れんとすること無きを保せず、爰を以て法律は特別の規定を設け、這般の弊害を防遏するものにして、此規定に基き裁判所が保全處分の方法として行ふ處のものは、即ち動産の封印及び占有、破産者の看守幷に引致、及び送達物の差押之れなり、□一(動産の封印及び占有)裁判所は破産宣告と同時に、債務者の動産に封印を命ずべきものにして、會社破産の場合には、連帶無限の責任を負へる總社員の財産に對しても、亦同一の處分を行ふものとす、然れども民事訴訟法上強制執行のため、差押ふることを得ざるものは、固よりこれを破産財團に加ふることを得ざるものなるが故に、此種の動産及び腐敗若くは價額低落等の虞ありて、即時に換價すべき必要ある物、又は封印のため繼續利用を妨げらるる物の如きは、之に封印を施さざる事を得べきも、此等の物は直に破産管財人に於て、之を財産目錄に載せ、且つ之を占有せざる可らず、而して其封印を施したる物も、亦管財人に於て之を財産目錄に載せ、且つ占有をなしたるときは、其封印を解く事を要す、次に破産者の商業帳簿は、敢て破産財團の增減に影響を來すものにあらずと雖も、財産の保全に付ては最も必要なるを以て、即時之を管財人に交附し、且つ其帳簿の現狀は、破産主任官之を認證することを要す、其特に高價なる物は、即時之を管財人に交附し、又は一時之を裁判所に引取ることを得るものとす、尚破産者に對して債務を負ひ、又は財團に屬する物を占有する者ある場合に於て、此等の債權及び占有物に對する保全處分如何と云ふに、破産決定の際裁判所がなしたる拂渡差押の命令は、同時に此等の債務者及び占有者に對し、其支拂又は交附を管財人にのみ爲すべき事を催告せられたるものと看做さるるが故に、特に此等の者に對し、一々其催告をなすを要せざるものとす、□二(破産者の監守幷に引致)裁判所は破産者が逃走し、若くは其財産の隱匿するの虞ありと認むるときは、其監守を命ずるを得べく、會社に在りては業務擔當の任ある社員、又は取締役に對して右の處分を行ふものにして、裁判所は、破産者に對して、監守を命じたるときは、其命令書を檢事に送致し、檢事は其破産者の住所を管轄する誓察署に命じて、其處分を行はしむるものとす、而して破産者にして監守を命ぜられたるときは、裁判所の許可を受くるに非ざれば、其住所を離るることを得ざるもの也、而して裁判所は必要ある場合には、何時にても引致を命ずることを得るものとす、裁判所が破産者に對し此等の處分をなすは、其財産の保全上巳むを得ざるに出でたるものとなるが故に、管財人が破産者の財産を財産目錄に載せ、且つ之を占有したるとき、又は監守の事由最存在せざるに至りたるときは、其上引續き破産者の自由を拘束する必要なきを以て、裁判所は其決定を以て破産者を釋放せざる可らず、然れども元來破産事件に就き、破産者は最も重要の關係者なるが故に、其在不在は事件の進行上大に便不便を來すべし、爰を以て裁判所は、破産者をして裁判所又は管財人の呼出に應じ、何時にても出頭すべきための擔保を供するの義務を負はしむることを得るものと定めたり、□三(送達物の差押)破産者に宛てたる電信、書狀其他の送達物は、之を管財人に交附し、且つ其管財人は開封の權を有し、裁判所は、これがため郵便局、電信局其他の運送取扱所に必要なる命令を發すべきものと定めたり、蓋し電信書狀等は破産者が第三者と共謀して、其財産の隱匿等に就き、往々秘密の交信をなすことある可きを以て、此等奸策を防止するため、管財人に於て之れを領收し、其開對をなして之を檢する必要あるべく、其他の送達物は、時に破産財團に之を加入することを得べき物體なきにしもあらざるを以て、管財人をして之を領收し、開封して其如何を檢せしむるは、保全處分上必要のことと云はざる可らず、然れども這般の送達物にして、破産財團に何等の關係を有せざるものは、固より保全處分に必要なきが故に、管財人はこれを破産者に引渡す事を要するは勿論のことなり、上述の如く、破産者は破産の宣告と同時に、直に其一切の財産に對し、保全處分を執行せらるるものなるを以て、一物と雖も、之を自由に處分することを得ず、從つて之が爲めに全く其生計の途を社絶せらるる場合なしとせず、故に斯かる場合には、破産主任官は破産者及び其家族に對し、其財團より給養のため、相當の扶助料を與ふることを得るものと定めたり。(破産法一〇〇二條乃至一〇一七條)
- 英
- Conservative measure
- 独
- Sicherheitsverfügung
- 仏
- Mesure conser vatoire
保存行爲
(ほそんかうゐ)保存行爲とは、ある物又は權利の毀損又は滅失、若くは其性質の變化等を防止するに必要なる行爲を云ふ、民法に「但し保存行爲は、各共有者之をなすことを得」あるは其用例にして、此保存行爲に原因して生ぜし債權は、債務者の財産に對し先取特權を有するものとす。(民二五二條但書參照)
- 英
- Act of preservation
- 独
- Unterhaltungshandlung
- 仏
- Acte conserva-toire
保存費
(ほぞんひ)保存費とは、ある物又は權利の保存に原因して生じたる費用を云ふ、民法に「動産保存の先取特權は、動産の保存費に付き其動産の上に存在す」又「不動産保存の先取特權は、不動産の保存費に付き其不動産の上に存在す」とあるは其用例なり、抑も此保存費は、所謂必要費に屬するものなるが故に、其債權者に對し斯くは先取特權を與へて、法律上之を優遇し、占有物返還等の場合に於ても回復者より之を償還せしむることを許したるものにして、彼の有益費に比すれば、大に其法律上の效果を異にするものとす。(民一九六、三二一、三二六條)
- 英
- Expense of preservation
- 独
- Erhaltungskosten
- 仏
- Frais de conser-vation
基地及埋葬取締規則
(ぼちおよびまいさうとりしまりきそく)此規則は、明治一七年一〇月第二五號布達を以て公布せられたるもの也、其規定事項の内容は、墓地及び火葬場は、管轄廳より許可したる區域に限り、其場所を定むることを得べく、且つ此等の場所は、總て所轄警察署の取締を受くべきものなること、死體は別段の規則に依るべき場合の外、死後二十四時間を經過するに非らざれば、埋葬又は火葬をなすを得ざることと、埋葬又は火葬をなすには、區長又は戸長の認許證を要し、改葬をなすには、警察署の許可證を要し、此認許證又は許可證を得たる者にあらざれば、基地及び火葬場の管理者は、其埋葬、火墓又は改葬をなさしむ可らざること、葬儀は寺院若くは家屋構内又は葬地若くば火葬場に於てのみ之を行ふべきこと、凡そ碑表を建設せんとする者は、其墓地内なると墓地外なるとを問はず、所轄警察署の許可を受くることを要し、若し此許可を得ずして建設したる者は、之を取除けしめらるること、幷に此規則施行に關する方法細則は、警視總監、府知事縣令に於て、便宜取設け、内務卿に届出づべきこと等とす。
北海道一級町村制
(ほつかいだういつきふちやうそんせい)明治三〇年五月勅令第一五九號を以て公布せられたるもの也、其内容は第一章を總則とし、町村及び其區域に關する事項、町村住民及び其權利義務に關する事項、町村條例及び町村規則に關する事項を規定し、第二章を町村行政と題し、町村吏員の組織及び選任に關する事項、町村吏員の職務權限に關する事項を規定し、第三章を町村會と題し、町村會の組織及び町村會議員の選擧に關する事項、町村會の職務權限及び處務規程に關する事項を規定し、第四章を町村の財務と題し、町村有財産及び町村税に關する事項、町村の歳入出豫算及び決算に關する事項を規定し、第五章乃至第七章には町村内一部の行政に關する事項、町村組合に關する事項、町村行政の監督に關する事項を規定し、第八章を附則とし、此勅令施行の時期、一級町村となすべき地に關する事項、其他實施に伴ふ必要の事項を規定せり、要するに内容は、一般町村制と大なる差異あることなく、唯町村會議員の選擧に付き、一級選擧の制を採りたるのみ。(町村制參照)
北海道舊土人保護法
(ほつかいどうきうどじんほごはふ)明治三二年法律第二七號を以て公布せられたる法律にして、□一北海道舊土人にして農業に從事する者、又は從事せんと欲する者には、一戸に付き土地一萬五千坪以内を限り、無償下附することを得、□二以上に依り下附したる土地の所有權は下の制限に從ふべきもの也、イ相續に因るの外議渡する事を得ず、ロ質權、抵當權、地上權又は永小作權を設定することを得ず、ハ北海道廳長官の許可を得るに非ざれば、地役權を設定することを得ず、ニ留置權、先取特權の目的となることなし、又上記により下附したる土地は、下附の年より起算して三十年の後にあらざれば、地租及地方税を課せず、及び登錄税を徵收せず、舊土人に於て從前より所有したる土地は、北海道廳長官の許可を得るに非ざれば、相續に因るの外之を讓渡し、又は質權、抵當權、地上權、永小作權、地役權等の物權を設定することを得ず、□三又上説の土地にして、其下附の年より起算し、十五年を經るも、尚開墾せざる部分は之を沒收す、□四北海道舊土人にして貧困なる者には、農具及種子を給することを得、□五北海道舊土人にして疾病に罹り、自費治療すること能はざる者には、藥價を給することを得、□六北海道舊土人にして疾病、不具、老衰又は幼少の爲め自活すること能はざる者は、從來の制規により救助する外、仍ほ之を救助し、救助中死亡したるときは埋葬料を給することを得、□七北海道舊土人の貧困なる者の子弟にして就學する者には、授業料を給することを得、□八以上に要する費用は、北海道舊土人共有財産の故益を以て之に充つ、若し不足ある時は國庫より之を支出す、□九北海道舊土人の部落を爲したる場所は、國庫の費用を以て小學校を設くることを得、□十北海道廳長官は、北海道舊土人共有財産を管理することを得、北海道廳長は内務大臣の認可を經て、共有者の利益の爲めに共有財産の處分を爲し、又必要と認むるときは其分割を拒むことを得、北海道廳長官の管理する共有財産は、北海道廳長官之を指定す、十一北海道廳長官は、北海道舊土人保護に關して、警察令を發し、之に二圓以上二十五圓以下の罰金若くは十一日以上十五日以下の禁錮の罰則を附することを得、以上本法の大要也。
- 英
- Protection law of the natives of Hokkaido
- 独
- Schütz-gesetz der Ureinwohner Hokkaidos
- 仏
- Loi de la protection des natifs d'Hok-kaïdo
北海道區制
(ほつかいだうくせい)北海道區制は、明治三〇年五月勅令第一五八號を以て公布せられたるもの也、此規定に依れば、區は郡の區域に屬せずして、別に一種の行政區劃をなす、但し法律命令に依り、區の區域と符合せる行政區域を設くることを妨げざるものとす、而して區は法人たるの資格を有し、法律命令を以て定めたる範圍内に於ける公共事務、幷に從來の法律命令若くは慣例に依り、又は將來法律命令に依り、區に屬する事務は官の監督を受けて、之が處理に任ずるものとす、本規則の内容は、第一章を總則となし、區及び其區域に關する事項、區住民及び其權利義務に關する事項、區條例及び區規則に關する事項を規定し、第二章を區行政と題し、區吏員の組織及び選任に關する事項、區長及び區吏員の職務權限に關する事項、區長及び區吏員の給料及び給與に關する事項を規定し、第三章を區會と題し、區會の組織及び選擧に關する事項、區會の職務權限及び處務規定に關する事項を規定し、第四章を區の財務と題し、區有財産及び區税に關する事項、區の歳入出豫算及び決算に關する事項を規定し、第五章第六章には、區内の一部に關する事項、區行政の監督に關する事項を規定し、第七章を附則とし、此勅令施行に關する事項を規定せり。
- 英
- District system of Hokkaido
- 独
- Bezirksystem Hokkaidos
- 仏
- Sys-tème du district d'Hokkaïdo
北海道官設鐵道用品資金會計法
(ほつかいだうくわんせつてつだうようひんしきんくわいけいはふ)此會計法は、明治三二年二月法律第一〇號を以て公布せられ、三二年度より施行せられたるもの也、此規定に依れば、北海道官設鐵道の用品を購入、貯藏し、其運輸營業幷に建設事業の需用に應ずるため、北海道官設鐵道用品資金を置きて特別會計となし、此資金を五十萬圓とし、必要に應じ漸次一般會計より繰入するものと定め、而して此北海道官設鐵道用品資金の會計に關しては、明治二六年法律第二號官設鐵道用品資金會計法を適用するものとす。
- 英
- Law of account of the reserve fund for the rail-way materials of Hokkaido Government Railway
- 独
- Rechnungsgesetz des Fonds für die Eisenbahnstoffe der Hokkaido Regierungseisenbahn
- 仏
- Règles des comptes du fonds pour les matière du chemin de fer d'Etat d'Hokkaïdo
北海道國有未開地處分法
(ほつかいだうこくいうみかいちしよぶんはふ)此處分法は、明治三〇年三月法律第二六號を以て公布し、同年四月一日より施行せられたるものにして、北海道國有未開地の賣拂、付與、交換及び貸付の處分を定めたるもの也、以下其規定事項の梗槪を説明せんに、開墾、牧畜若くは植樹地に供せんとする土地は、無償にて貸付し、全部成功の後無償にて之れを付與するものにして、全部成功に至らずと雖も、土地整理上支障なしと認むる場合に於ては、成功地の全部又は其一部を付與することを得べく、又公用若くは公共の利益となるべき事業に供せんとする土地は、直に賣拂、付與又は有償若くは無償にて貸付することを得べし、而して市街地、市街豫定地其他土地の狀況に由り必要と認むる土地は、之れを競爭に付して直に賣拂ふことを得べく、社寺地又は基地に供せんとする土地、其他事業の目的に由り必要と認むる土地は、直に賣拂ひ、素地の儘使用せんとする土地は、有償又は無償貸付をなすことを得べく、民有地と交換することを得べき土地は、其評定價額相均しきものに限るものとす、而して以上土地の貸付には、一定の制限あり、則ち無償貸付は十ケ年、有償貸付は十五ケ年とし、植樹又は泥炭地の開墾に限り二十ケ年以内の期間を以て貸付することを得、天災其他避く可らざる事故に因り、貸付期間内に成功すること能はざりしときは、貸付期間の半期間まで之れを延期することを得べし、次に植樹、開墾、牧畜等の目的を以て土地の貸與を受けたる場合に於て、政府は豫定の事業成功の程度に從ひ、其成否を點檢し、豫定の如く成功せざるときは、未成功地の全部を返還せしむべきものにして、拓殖上若くは土地整理上支障ありと認むるときは、成功地の全部又は一部を無償にて返還せしむることあるべし、而して下記の三場合に於ては、天災其他避く可らざる事故に由る時の外、賣拂、付與及び貸付の處分を取消し、其賣拂に係るものは、既納の代價を還付するものとす、即ち□一植樹、牧畜、開墾等のため貸付したる土地にして、一ケ年以内に其事業に著手せざるとき、□二公用若くは公共の利益となるべき事業に供するため、又は社寺若くは墓地其他政府に於て、事業の目的に因り必要と認めて、賣拂、付與又は有價貸付をなしたる土地にして、三ケ年以内に豫定の目的に使用せざるとき、□三公用又は公共の利益となるべき事業に供するため、若くは素地の儘或事業のため、無償貸付をなしたる土地にして、二ケ年以内に豫定の目的に使用せざるとき等にして、其貸與地の返還又は賣拂、付與及び貸付取消の處分に對し、不服ある者は、訴願又は行政訴訟を提起することを得べし、而して貸付地を返還せしめ若くは自己の便宜に依り之れを返還し、又は上述取消處分の場合に於て、其土地に在住する建物其他の物件の所有者は、行政廳の定めたる期間内に之れを除去することを要し、若し所有者が其期内に除去せざるときは、國の所有に歸するものとす、尤も政府に於て、公用又は公共の利益となるべき事業に供せんため、之れを返還せしめたる場合には、所有者の請求に因り、評定の上移轉料を辨償し、又は相當價格を以て之れを買收し、且つ土地に對して費したる直接の費用等も、辨償を受くることを得るものとす、次に貸付地にして、此法律の規定に該當する場合に於ては、行政廳の許可を得て、貸付地の上に有する權利を債務の擔保に供し、又は賣買讓與する事を妨げざるなり、次に植樹牧畜開墾等の目的のため、貸付を受けたる土地は、貸付期間滿了後一ケ年以内に、其付與を請求するにあらざれば、其權利を抛棄したるものと看做さるべし、而して此法律に依り、賣拂、付與又は交換を受けたる土地は其民有となりたる年の翌年より、二十ケ年後にあらざれば、地租及び地方税を課せらるることなく、且つ土地の付與を受けたるものに限り、六ケ月以内に其登記を請ふとき、及び土地臺帳に登錄するときは、其登錄税の免除を受くることを得べし。
北海道水産税則
(ほつかいだうすゐさんぜいそく)此税則は明治二〇年三月勅令第六號を以て公布せられたるもの也、其規定事項の梗槪を摘錄すれば、北海道水産營業人は、此税則の規定に從ひ、水産税を納付するの義務を有し、其徵税方法に就ては、北海道長官は、水産物營業人の組合を定め、各組合水産物産出價格百分の五を以て、其組合一ケ年の税額となし、これを各營業人に賦課するものなり、而して其税額の算出は、明治一五年より同一七年まで、三ケ年の水産物産出高を平均し、其三ケ年間北海道に於て、該税品拂下を爲したる代價を平均して價格を定め、以て其組合の税額を算出するものにして、明治二〇年以後三ケ年以上を經過し、大藏大臣に於て北海道の全部又は其幾分に付き、水産物既定の價格不相當なりと認むるときは、更に既往三ケ年間の産出高幷に其賣買相場を平均して、之を改正するものとす、次に此税則に於て水産物と稱するものに二類あり、即ち其第一類を生〓、生鮭、生鱒、生〓、生鮪、生鱈、生鮊、生𩸽、海鬲となし、其第二類を魚粕、乾身缺〓、乾胴〓、乾脊割〓、乾外割〓、乾二つ割鰊、〓鯑粕、〓鮭、〓鱒、〓鰤、〓鮪、鹽𩸽、乾鱈、乾粕、乾𩸽、乾鮑、乾河豚、煎海鼠、〓、海扇殻、乾海扇、乾牡勵、昆布、細布、布海台、若布、銀杏草とす、而し此第一類の水産物を採取するもの、又は原品に勞力を加へて第二類の水産物となす者を水産物營業人となし、水産物營業人とならんとする者は、水産物營業人の組合に加入することを要する也、次に水産物營業人組合は、納税委員を置き、其組合に係る納税の事を擔理せしむる事を要し、此納税委員は組合會に於て其會員中より之れに充つべき者若干名を選擧し、其中に就き北海道廳長官之れを指定するものにして、三ケ年每に之れを改選し、此納税委員は水産物營業人組合會を開き、組合の税額に對し各自の負擔す可き税金を評決せしめ、郡區長の認可を經て之れを定む、而して此納税委員に關する一切の費用は、其組合の負擔に屬するものとす、次に此税則に規定せる組合に加八せずして、水物の營業をなしたる者は、二圓以上二十圓以下の罰金に處せられ、其水産物は沒收せらるべく、既に賣捌きたるものは、其代金を追徵せらるるものにして、此税則の違犯には、刑法の不論罪及び減刑、再犯加重、數罪倶發の例を用ふる事なし、而して營業人にして、其水産物の産出高を僞り、逋税したる者は、其逋税高三倍の罰金、又は科料に處し、其水産物を沒收し、既に賣捌きたる者は、其代金を追徵せらるるも、自首するときは、其税金を追徵して其罪を免ぜらるるもの也。
- 英
- Rule of marine product tax in Hokkaido
- 独
- Regel der Wasser-produktensteuer in Hokkaido
- 仏
- Règles de l'impôt sur le produit maritime d'Hok-kaïdo
北海道拓殖銀行法
(ほつかいだうたくしよくぎんかふはふ)明治二二年三月法律第七六號を以て公布せちれたるもの也、此法律に依れば、北海道拓殖銀行は、北海道に於ける拓殖事業に資本を供給する目的を以て設立するものにして、其組織は株式會社となし、北海道札幌に其本店を置き、資本金を三百萬圓と定め、將來增資の必要ある場合には、政府の認可を受け、之れを增加する事を得べく、且つ其存立時期を五十ケ年と定め、此の期間も將來必要の場合には、政府の認可を受けて延長することを得るものとす、而して此銀行には、取締役四人以上、監査役二人以上を置き、取締役は五十株以上を所有する株主中より、株主總會に於て之れを選任し、其任期を三ケ年となし、監査役は三十株以上を所有する株主中より、株主總會に於て之れを選任し、其任期を二ケ年とす、次に其事業としては、□一三十ケ年以内に於て定期償還の方法に依り、不動産を抵當とする貸付、□二五ケ年以内に於て、定期償還の方法に依り、不動産を抵當とする貸付、□三北海道の拓殖を目的とする株式會社の株劵債券を質とする貸付、及び其他社債券の應募引受、□四北海道の農産物を擔保とする貸付及び荷爲替、□五預り金及び保護預、以上の事業を營むものにして、北海道區町村制を施行せる區町村、其他法律を以て組織せる北海道の公共團體に對しては、無擔保にて年賦若くは定期償還の方法に依り、貸付をなし、又は營業上餘裕金あるときは、國債證券、地方債證券、及び社債券を買入るる等のことをなすを得れど、法律に記載せざる業務を營むことを得ざるもの也、而して債券の發行は、拂込資本金額の五倍を限り之れを爲すことを得べく、債券の償還は、每年二回以上抽籖の方法に依り之れを償還する事を要す、拓殖銀行は、此法律の規定に從ひ、每營業年度に準備金として、資本金の缺損を補ふため、利益の百分の八以上を積立て、及び利益配當の平均を得せしむるため、利益の百分の二以上を積立ることを要するもの也、拓殖銀行の業務は、政府監督に屬するが故に、定款の變更配當金の分配、每營業年度に於ける長期貸付金に對する利子の最低步合の確定、及其變更等に就ては、一々政府の認可を受けざるべからず、而して政府は拓殖銀行の營業上、法律命令又は定款違背若くは公益を害する行爲を制止し、其他營業に關する諸般の報告を徵する等、一般の監督の外、特に北海道拓殖銀行監理官なるものを置き、主務大臣の指揮の下に、銀行の業務を監視せしむるものとす、而して此監理官は、何時にても金庫、券書庫、帳簿及び諸般の文書の檢査を行ひ、且つ監視上必要なりと認むるときは、何時にても銀行に命じて、營業に關する諸般の景況及び計算報告書を差出さしむる事を得るのみならず、株主總會其他諸般の會議に出席して、意見を陳述するの權限を有するものとす、拓殖銀行の設立に付ては、主務大臣は北海道拓殖銀行設立委員を定め、銀行設立に關する一切の事務を掌理せしむるものにして、設立委員は定款を作り、主務大臣の認可を受けて後株主を募集し、此募集を終りたるときは、株式申込證を主務大臣に提出して、銀行設立の認可を禀請し、設立認可を得ると同時に、設立委員は各株式に付き、第一回の拂込をなさしめ、創立總會を召集し、此總會を終結したるときは、其事務を銀行の取締役に引渡すものとす、而して政府は百萬圓を限度となし、拓殖銀行の株式を引受くべき義務を有し、此政府の引受けたる株式に對しては、其創立初期の末日より、十ケ年間は利益配當をなすことを要せざる也。
- 英
- Law of Hokkaido Industrial Rank
- 独
- Gesetz der Hokkaido Industriellen Bank
- 仏
- Loi de la Banque industrielle d'Hokkaïdo
北海道聽高等官俸給令
(ほつかいだうちやうかうとうくわんほうきうれい)明治三一年一〇月勅第三二號を以て公布し、同年一一月一日より施行せられたるもの也、此勅令の規定に依れば、北海道廳長官の年俸は、四千圓、勅任事務官の年俸は一級三千圓、二級二千五百圓、奏任事務官の年俸は、一級二千圓、二級千八百圓、警部長の年俸は千八百圓、支廳長及び參事官の年俸は之れを七級に分ち、一級千六百圓、二級千四百圓、三級千二百圓、四級千百圓、五級千圓、六級九百圓、七級八百圓となし、警視及び典獄の年俸は、之れを五級に分ち、一級千圓、二級九百圓、三級八百圓、四級七百圓、五級六百圓となす、此外凾館支廳長の年俸は特に二千圓まで之れを給するを得べく、奏任事務官以下の高等文官にして、最高俸を受け、在職五年以上に至り、功績ある者に限り、奏任事務官に在ては五百圓以内、其他に在ては三百圓以内の年功加俸を給することを得。
- 英
- Ordinance of sala-ry of the higher civil officials in Hokkaido
- 独
- Salärsordnung der höheren Civil-offiziere in Hokkaido
- 仏
- Ordonnance de la salaire des officiers civils supéri-eurs à Hokkaïdo
北海道廳官制
(ほつかいだうちやうくわんせい)北海道廳官制は、明治三〇年一〇月勅令第三九二號を以て公布し、同年一月五日より施行せられたるもの也、此官制の規定に依れば、北海道廳には、長官、事務官、警部長、支廳長、參事官、警視、技師、典獄、屬、▲手、警部、翻譯生、監獄書記、看守長及び監獄醫等の職員を置き、長官は勅任一人、事務官は專任二人奏任とし、内務部長及び殖民部長に充つ、内務部長に立つ事務官は勅任となすことを得べく、警部長は奏任一人、警察部長に充つ、支廳長は各支廳一人奏任とし、參事官二人奏任、警視及び典獄各一人奏任とし、技師は定員十人奏任とす、屬、警部、翻譯生、監獄書記、監守長、監獄醫は判任とし、通じて四百九十人を以て定員とし、技手は八人、翻譯生は二人を以て定員とし、何れも判任とす、要するに其大體に於ては、地方廳の官制に異なること無きを以て、以下北海道に特有なる事項のみに就き説明せんに、長官は北海道の拓地、殖民並に部内の行政事務を總理し、屯田兵の開墾、授産、事務の監督に任ずるものとす、道廳内の殖民部に於ては、□一殖民地の選定、計畫其他殖民に關する事項、□二土地の處分及び開墾に關する事項、□三地籍に關する事項、□四官有地管理に關する事項、□五土地收用に關する事項、□六農商工務に關する事項、□七水陸運輸に關する事項、□八水産及び漁獵に關する事項、□九山林に關する事項等の事務を掌理す、支廳長は長官の指揮監督を受け、法律命令を部内に執行し、部内の行政事務の掌理に任じ、行政事務に就きては其部内の戸長を指揮監督し、法律命令に依り若くは長官より委任せられたる事件に就き、支廳令を發するの權限を有するものとす、其他は地方官廳と大同小異なり。
- 英
- Government organization of Hokkaido Government Office
- 独
- Behördeordnung der Hokkaido-Behörde
- 仏
- Organisation du gouvernement d'Hok-kaïdo
北海道廳森林監守
(ほつかいだうちやうしんりんかんしゆ)北海道廳の森林監守は、百六人を以て定員となし、判任官の待遇を受く、其俸給は、之れを三等に分け、一級月俸十五圓、二級月俸十二圓、三級月俸十圓とす、而して勤續七箇年以上に及ぶときは、月俸二十圓まで增進せらるることを得、其職務は上官の指揮監督を承け、官林の保護に從事する者なり。(三〇年四月勅一〇二號北海道廳森林監守規程參照)
北海道鐵道部官制
(ほつかいだうてつだうぶくわんせい)此官制は、明治三一年一〇月勅令第三〇六號を以て公布し、同年一一月一日より施行せられたる法律也、今其内容を摘錄すれば、北海道鐵道部は、北海道廳内に之れを置き、北海道に於ける官有鐵道の建設、保存及び運輸に關する業務の掌理に任ずるものにして、部長一人(奏任)、專任鐵道技師八人(奏任)、專任鐵道書記六八人(判任)、及び專任鐵道技手三〇人(判任)を以て之れを組織し、部長は北海道廳の高等官をして兼務せしめ、北海道廳長官の命を承けて、鐵道部一切の事務を掌理し、鐵道技師は部長の命を承けて部務の分掌に任じ、鐵道書記及び鐵道技手は上官の指揮を承けて、各其事務に服するものとす。
- 英
- Government organiza-tion of Hokkaido Railway Department
- 独
- Amtsordnung des Hokkaido Eisenbahn Departements
北海道鐵道敷設法
(ほつかいだうてつだふせつはふ)明治二九年五月法律第九三號を以て公布せられたる法律也、此法律は、政府が北海道に於ける交通上必要なる鐵道を完成するため、漸次豫定の線路を調査し、及び敷設すべきものなることを定め、其豫定線路としては、□一石狩國旭川より十勝國十勝太、及び釧路國厚岸を經て、北見國網走に至る鐵道、□二十勝國利別より、北見國相の内に釧路厚岸より根室國根室に至る鐵道、□三石狩國旭川より北見國宗谷に至る鐵道、□四石狩國雨龍原野より天鹽國增毛に至る鐵道、□五天鹽國奈與呂より北見國網走に至る鐵道、□六後志國小樽より、渡島國凾館に至る鐵道の六線路を擧げ、上記北海道鐵道事業に要する費用は、公債を募集して之れに充て、この公債には、一ケ年百分の五以下の利子を付するものとし、公債の發行に關しては本法の規定の外、凡て明治九年勅令第六六號整理公債條例に依るべきこと、及び北海道鐵道敷設の費用に充るため、金三千三百萬圓を限り、明治三〇年度より工事の緩急と、財政の都合とを圖り、漸次公債を募集すること、幷に政府は鐵道線路を實測し、每區の工費豫算を定め、帝國議會の協贊を求むべきことを規定せり、而して尚北海道鐵道敷設に關しては、明治二五年法律鐵道敷設法の第一四條及び第一五條を適用すべきものとせり、因に鐵道敷設法第一四條は豫定鐵道線路中、未だ敷設に著手せざるものにして、若し私設鐵道會社より敷設の許可を願出づる者あるときは、帝國議會の協贊を經て、之れを許可することあるべき旨を規定し、同第一五條は、鐵道工事著手の順序、及び鐵道工事の都合に依り、其都度募集すべき金額の二事は、政府より之れを鐵道會議に諮詢して、施行すべきことを規定せるもの也。
- 英
- Law of Hokkaido railway construction
- 独
- Gesetz der Eisenbahnserbauung Hokkaidos
北海道二級町村制
(ほつかいだうにきふちやうそんせい)此規則は、明治三五年二月勅令第三七號を以て公布せられ、北海道に於ける二級町村制を定められし地に施行せらるるもの也、其内容は、全編八ケ章に分ち、其第一章を總則とし、町村及び其區域、町村住民及び其權利義務、町村條例及び町村規則に關する事項、第二章を町村行政と題し、町村吏員の組織及び任用町村吏員の職務、權限、其給料及び給與に關する事項、第三章を町村會と題し、町村會の組織及び町村會議員の撰擧、町村會の職務、權限及び處務規程に關する事項、第四章を町村の財務と題し、町村有財産及び町村税、町村の歳入出豫算及び決算に關する事項、第五章乃至第七章には、町村内一部の行政に關する事項、町村組合に關する事項、町村行政の監督に關する事項等を規定し、而して第八章を附則とし、命令の施行時期、及び施行の場合に於て、初めて二級町村となす、此の勅令に於て直接又は間接税となすべき類別、其他施行に必要なる事項は、内務大臣に於て之れを定むべき事、現役及び豫備役の屯田兵村には、此勅令を施行せざる事等を規定せり。
北海道衞生會規則
(ほつかいだうえいせいくわいきそく)此規則は明治二九年九月勅令第二九九號を以て公布せられたるもの也、今其規定事項の梗槪を摘錄すれば、北海道衞生會は、北海道廳長官の監督に屬し、其の諮詢に應じて、管内公衆衞生に關する事項の審議に任ずる衞生行政上の機關にして、會長一人、委員一二人を以て之れを組織し、會長は北海道廳長官之れに任じ、委員は事務官一人、警部長、參事官一人、支廳長四人、醫師三人、獸醫一人及び藥學家一人を以て之れに充るものにして、此委員中醫師、獸醫及び藥學家より出づる委員の任期は、二ケ年と定め、滿期後再任するを妨げざるものとす、而して臨時必要ある場合には、以上の委員の外に三名以下に限り、臨時委員を設置する事を得べく、警部長を除き凡ての委員及び臨時委員は、北海道廳長官之れを任命し、委員及び臨時委員にして、有給の官職を帶びざるものには、開會中一日一圓五十錢以内の手當を給することを得べく、此外相當員數の書記を置き、書記は會長の指揮を承け、議事の筆記及び庶務に任ずるものにして、北海道廳屬又は警部を以て之れに任ずるものとす。
- 英
- Rule of Hokkaido sanitary society
- 独
- Regel der Hokkaido Sanitätsgesellschaft
發起株
(ほつきかぶ)發起株なるものは、株式會社成立の後、會社の創立に就き、發起人其他之れに盡力せる者の勞に報ゆるため、其會社より無償にて、此等の者に分與する株式を云ふ、即ち其法律上の關係は、贈與行爲の目的たる株式なるも、我法は此の種の株式を認むることなし。
- 英
- Founder's shares
- 独
- Urhebers-aktien
- 仏
- Action des fondateurs
發起認可
(ほつきにんか)發起認可とは、或事業の發起行爲に、法律上に於ける效力を付與する官廳の處分を云ふ、抑も認可を要する行爲は、許可を要する行爲と異なり、元來爲し得ざる行爲にあらず、從つて認可を受けずして之れをなすを妨げずと雖も、認可なき場合には、法律上の效力を有せず、即ち認可は管轄官廳が、其行爲に法律上の效力を付與する處分にして、茲に所謂發起認可も、其發起行爲に法律上の效力を付與する行政處分に外ならず。(取引所法施行規則七條)
- 英
- Permission of projection
- 独
- Gründungserlaubnis
- 仏
- Permis du projet
發起認可申請書
(ほつきにんかしんせいしよ)發起認可申請書とは、發起人が或事業の發起認可を當局官廳に申請する書面を云ふ、明治二六年七月農商務省令第一三號取引所法施行細則に「會員組織の取引所を設立せんとするときは、發起人は左の事項を記載したる發起認可申請書に、假定款及び發起人の履歷を添へ、農商務大臣に差出し認可を受くべし」とあるは其用例なり。(同則一條)
- 英
- Petition of permission of projection
- 独
- Bittschrift des Gründ-ungserlaubniszes
- 仏
- Pétition du permis du projet
沒收
(ぼつしう)沒收とは、豫め法令の規定を以て明示せる事項に該當する場合に於て、國家が強制的に私人に屬する物又は權利を剝奪することを云ふ也、國家が沒收をなすには、必ず法令の規定を以て、豫め之れを許せる場合ならざるべからず、從て法令に明文なき場合には、決して沒收をなすことを得ざるものとす、今刑法に依て沒收し得べき物は、法律に於て禁制したる物件、犯罪の用に供したる物件、及び犯罪に因て得たる物件の三種とす、□一法律に於て禁制したる物件とは、法律に於て製造、輸入又は其所有を禁じたるものを云ふ、□二犯罪の用に供したる物件とは、犯罪たる所爲の手段となりたる物を云ふものにして、人體以外の物ならざるべからず、從て手足の如きは、犯罪の用に供したるものなりと雖も、之れを沒收するを得ざるは勿論なりとす、又此種の物を沒收する場合は、其物が所有主なきときか、若くは犯人の所有に係るときに限る、□三犯罪に因て得たる物件とは、犯罪たる所爲に原因して獲得し又は生産したる物を云ふ、現行刑法は、沒收を以て刑罰の一として規定せるも、時に其性質の刑罰に屬せざることあり、例へば禁制品の如きは、元來私人の所有又は所持を許さざるものなるが故に、斯かる物件を沒收するは、唯だ事實上其所持を奪ふに過ざればなり、而して裁判所に於て沒收をなす場合には、必ず其旨を宣告するものとす。刑一九條、二〇條)
- 英
- Forfeiture
- 独
- Konfiskation
- 仏
- Forfaiture
沒收物品
(ぼつしうぶつぴん)沒收物品とは、裁判所其他沒收をなす權限を有する官廳に於て、沒收をなしたる物品を云ふ、凡そ官廳に於て沒收したる物品は、國家の所有に歸するものとす、明治二九年一一月大藏省訓令第三六號沒收品取扱方の件に「別に沒收物品出納簿を設け云々」とあるは其用例なり。(辯護士法三條二號)
- 英
- Thing confiscated
- 独
- Kon-fiskat
- 仏
- Chose confisquée
母法
(ぼはふ)母法とは、法系上ある國家の法律の典型となりたる國家の法律を云ふ、即ち他國家の法律を典型として制定したる法律を、典型となせし法律に對し、子法と稱し、此子法に對して典型となりたる法律を母法と稱す、例へば、我現行刑法は、佛蘭西の刑法を典型として制定したるものなるが故に、佛蘭西刑法は我現行刑法に對して、法系上母法たるものと云ふを得べきが如し、因みに母法と子法とを區別する必要は、子法の解釋上疑義又は不明の點あるに當り、母法の精神を討究してこれが解決をなすの利益あるに依る。
- 英
- Mother law
- 独
- Mutterrecht
- 仏
- Droit maternel
輔弼
(ほひつ)輔弼とは、憲法上の用語にして、國務大臣が國政の執行に就き、天皇を輔佐翼贊し奉ることを云ふ、然れども法理上の解釋としては、單に輔佐翼贊の義なりと云ふを以て足れりとせず、蓋し國務大臣が天皇を輔弼するの一事は、實に憲法上大臣責任の由て生ずる處にして、從て輔弼なる語の意義は、須らくこれを大臣の憲法上に於ける地位に求めざるべからず、抑も立憲國に於ける國務大臣なるものは、君主の國務の執行に就き、其責に任ずるの機關たると同時に、君主の意思の範圍に制限を加ふる處の機關なり、これ夫の專政國に於ける行政長官たる大臣が、一に君主の旨を承けて、國政の執行に任ずるものとは、大に其性質を異にする處なり、爰を以て國務大臣が、君主を輔弼するは、唯絶對的服從の關係に於て、輔佐翼贊するにあらずして、或範圍に於ては、意思の自由を有するものとす、此意味に於ける輔弼ありて、始めて大臣が其責に任ずべき關係を生ずるなり、且つや何人も其自由意思に出でざる行爲に就き、責任を負はすと云へる責任の原則に背かざるを得る也、知るべし、憲法義解に、輔弼とは獨り獎順贊襄するにあらず、又匡救矯正することをも包含するなりと説明せるは、能く憲法上に於ける大臣の職責を明かにせるものなることを、即ち國務大臣は、君主の國政の執行に就き奬順贊襄する所あり、且つ匡救矯正する處ありて、輔弼忠勤を全ふするものと云ふを得べし。(憲法五五條)
賣冠章
(ほふくわんしよう)婦人にして國家に勳勞ある者に賜はる勳章なり、勳一等より勳八等までありて、章は實冠と竹櫻との形を以て飾り、綬は地黃色雙線紅色とす。(二一年勅一號參照)
本案
(ほんあん)本案とは、訴訟法上の用語にして、訴訟の目的、即ち其の裁判に於ける判決の目的となるべき請求を、附帶の請求又は中間の爭に對して本案と稱するものとす、元來本案なる語は、本來の案件とやうの意を有し、訴訟手續に關する形式上の其れに對し、訴訟の實體に關する事實及び法規の適用を本案と謂ふ也。(民訴六二、一九八條一項、刑訴一八七條)
- 英
- Main suit
- 独
- Hauptsache
- 仏
- Note principale
本案前の判決
(ほんあんぜんのはんけつ)本案前の判決とは、訴訟上本案の判決又は審理をなすに當り、先決問題となるべき事項に就き、下したる判決を云ふ、例へば刑事訴訟の場合に於て、管轄達又は公訴受理すべからざる申立に對する判決の如き是なり。
- 英
- Interlocution
- 独
- Zwis-chenurtheil
- 仏
- Jugement interval
本案の判決
(はんあんのはんけつ)本案の判決とは、訴訟上訴訟本來の目的たる請求に對する判決を、附帶の請求又は中間の爭に對し本案の判決と謂ふ、本案の判決は、夫れと同時に、其審級に於ては、其訴訟關係を終局するものとす。(刑訴二五三條)
- 英
- Final judgment
- 独
- end-liches Urtheil
- 仏
- Jugement final
本家相續
(ほんけそうぞく)本家相續とは、本家の家督を相續するを云ふ、法定の推定家督相續人は、他家に入り又は一家を創立することを許さざるを原則となすも、分家に於ける法定の推定家督相續人にして、本家の家督を相續する場合は、此限りにあらざるものとす、斯くの如き場合に本家相續なる語は用ひらる。(民七三一條、七四四條但書)
- 英
- Succession to principal house
- 独
- Erbfolge zum Stammhause
- 仏
- Suc-cession de la maison principale
本權の訴
(ほんけんのうつたへ)占有權以外の物權に基き、其物の保護に關して請求する訴を本權の訴と謂ふ、本權の訴は、占有の訴と相對するものにして、されど此兩訴は、全く其保護の理由を異にするを以て、互に獨立して相妨ぐることなく、本權に基く理由に依りて、占有の訴を裁判することを得ざるものなり。(民一八九條二項、民訴二二條一項)
- 英
- Petitory action
- 独
- Petitor-ische Klage
- 仏
- Action pétitoire
本國法
(ほんこくほう)本國法とは、ある人の本國の法令と云ふの義にして、ある人の本國の如何は、國籍の如何に依て之れを定むるものとす、法例に「人の能力は、其本國法に依りて之れを定む」とあるは、其用例にして、所謂國際私法的國内法に於て、外國人の私權關係を定むる準據法として、其本國に行はるる法令の規定に從ふ主義を本國法主義と云ふ、我法例は即ち此本國法主義を原則として採用せるなり。(三一年七月法一〇號法例三、四、一三、一四、一八條三項乃至二七條)
本籍
(ほんせき)本籍とは、法律上に於げる土地と人との關係を意味する語にして、即ちある人の身分に關する事項が、本來の關係上或地方の戸籍吏の管轄に屬する場合に、其の地方を指して其の人の本籍と稱する也、而して本籍は一般の原則として、其人の住所に依りて定まるものとす、明治三一年五月法律第一二號戸籍法に「被登記者の本籍」とあるは其用例とす。(同法二〇、一七〇條等)
- 英
- Original domicile
- 独
- Ortsan-gehörigkeit
- 仏
- Domicile original
本籍地
(ほんせきち)本籍地とは、或人の本籍所在地を云ふ、此本籍地に對するものは、即ち其人の寄留地なり、戸籍法に「身分に關する屆出は、其屆出人の本籍地の戸籍吏に之れをなすことを要す」とあるは用例なり。(戸籍法四二條前項本籍の説明參照)
- 英
- Original domicile
- 独
- Ortsan-gehörigkeit
- 仏
- Domicile original
本訴
(ほんそ)本訴とは、民事訴訟上の用語にして、或訴訟事件に於て、其權利拘束中、被告が反對に原告に對し、訴を起したる場合に其訴を反訴と稱し、此反訴に對し最初原告が被告に對して提起したる訴を本訴と稱するなり、民事訴訟法に「若し其反訴が本訴なるとき云々」とあるは其用例とす。(民訴二〇〇條二項四條)
- 英
- Action in chief
- 独
- Hauptklage
- 仏
- Demande principale
本則
(ほんそく)本則なる語の用例は一定せず、或は法則又は原則なる意義に用ゆることあり、若くは或規則の條項中、其規則を指して本則と稱することあり、要するに各場合に於ける用例に從ひ、其意義を判定するの外なし。
- 英
- Principle
- 独
- Grundgesetz
- 仏
- Principe
本體
(ほんたい)宇宙の現象は、一として常住のものなく、其形態性質は時々刻々に變化し行くものなり、故に昨の物は今の物にあらず、今の我れは明の我にあらざるべし、然るに昨の物と今の物とを同一物と觀じ、今の我れは尚明の我れと信じて疑はざれば如何にや、かかる變化の相に於て、尚不變のものありや、この不變の所を觀得して同一なりとせば、其の不變の相は果して如何なるものなりやと云ふ問題は、古來の哲人の最も心を痛めし重要なる哲理なるが、未だ定論なく、實體、本體、本質、實質などいふ名辭は、多くの哲學論爭の深刻なる題目として止まる、カントは之れを物自體と稱し、宇宙人生の現象の奥底に密める、到底其の眞相の不可知なるものなりとせり、然れども一般の解釋は、事物の事物たる姿を保つに缺くべからざる根本成素にして、其の存在を常住ならしむるもの、或は又屬性の根基となりて、そを支持し以て一個の存在物たらしむる所のものを指すと謂ふも、今屬性を漸次除き去る時は、其事物の存在は消滅すべく、かくして本體の何物なるかは、遂に不可知なるに至るべし、然れども吾人は、少くとも實體なるものの存在することを直覺的に信じて疑はざるなり、近時この常識的解釋に滿足する傾向哲學界に盛んなるが如し。
- 英
- Substance
- 独
- Substanz
- 仏
- Substance
本能
(ほんのう)本能とは、總て動物が思慮を俟たず、機械的に發したる行動が、然かも自然の要求に適合するが如くなる性能を云ふ、例へば鳥の巢を構へ、猫の鼠を捕ふるが如き、反射的行動を促がす心意自然の作用を云ふなり、而して本能の性質起原に關しては多くの異論あり、或は宗教的又は形而上學的に全然本能を以て先天的能力と解するものあるも、今日の心理學上より下す見解は、本能を以て習得的性質の遺傳となすものの如し、即ち幾多の同樣なる經驗を積重することによりて、意思の向ふ方角を漸次固定し、其が遺傳によりて生得的となり、其の活動や機械的、必然的、將た無意的にして、而かも目的に合するが如き複雜なる作用を營むに至ると、然れども本能の遺傳は、極めて粗漫なるものなるを以て、適當なる修練を加へざる時は、其の働き鈍り、或は全く消滅するに至るべし、尚吾人日常の動作は、多く本能的なる事を注意せざるべからず、若し然らざる時は、吾人は非常なる精神の勞力と、生活の不便とを感ずることなるべし、本能的とは、機械的にして、而かも目的に合する如き行動を指意する形容詞なり。
- 英
- Instinct
- 独
- Instinkt
- 仏
- Ins-tinct
本夫
(ほんぷ)本夫とは、法律上婚姻の成立中に在る夫を云ふ、抑も法律上配偶者の一方は獨り夫あるのみにして、夫なるものは、我法制上二人以上あることを許さず、從て故らに本夫と稱するは、尚他に本夫ならざる夫あるが如き感想を與ふるが故に、語弊なしとせざるも、姦通の場合に於ける相姦者たる男子を、通俗に姦夫と稱するより、此姦夫に對して斯くは本夫と稱するなり、刑法に「此條の罪は本夫の告訴を俟つて之を論ず」とあるは此語の用例とす。(刑一八三條二項)
- 英
- Husband
- 独
- Ehegatte
- 仏
- Mari
本位貨幣
(ほんゐくわへい)本位貨幣とは、國家が貨幣制度上、價格の本位として制定したる貨幣を云ふ、此本位貨幣には、法貨として其通用額に制限あること無し、茲に法貨と稱するは、法律上強制通用の效力を有する貨幣と云ふの義也、我國貨幣法に依れば、金貨幣を以て本位貨幣と定め、金貨幣には、二拾圓、拾圓及び五圓の三種ありて、其品位は、純金九百分參、和銅一百分となす。(三年三月法一六條貨幣法三條及び五條)
- 英
- Standard coin
- 独
- Währung-münze
- 仏
- Monnaie d'étendard
埋藏物
(まいざうぶつ)埋藏物とは、ある動産又は不動産中に埋藏せられたる物件にして、所有者の何人たるやを知ること能はざる物をいふ、例へば土中に埋沒せる古刀、古金銀、又は屏風若くは額中に埋沒せる紙幣等の如し、埋藏物には、埋藏の事實と、所有者の不明なる事實とを必要ととするを以て、或物件の所有者不明なるも、其物件が、容易に目擊し得べき場所に在りたるときは、其物件は所謂埋藏物に非ず、又鑛物は、地中に伏在して人目に觸れざれども、土地の自然的産出物にして、地中に埋沒したるものに非ざるが故に、是埋藏物にあらざる也、而して埋藏は多くは人爲に出づると雖も、常に必ずしも然らず、水火震災の爲め、金銀類が地中に深く埋沒したる場合と雖も、其金銀は尚埋藏物たるを妨げざるものとす、埋藏物に關して法律の規定の存するもの二あり、先づ民法の定むる所によれば、埋藏物の發見は所有權取得の一原因にして、發見者は埋藏物の上に所有權を取得す、而して發見者に此恩典を與ふるは、發見者は埋藏物の發見により社會の爲めに一旦失はれたる物件を回復し、世の需要を充たすことを得しむるが故なり、埋藏物發見は、所有者の不明なる物件の所有權を取得するの方法として、遺失物取得に類似するを以て、現行の遺失物法は、同一の規定を埋藏物の發見に適用せられたり、埋藏物發見の效果としては、□一自己の所有物中に於て埋藏物を發見したる者は、其全部の所有權を取得し、他人の所有物中に於て發見したるものは、其物の所有者と折半して其所有權を取得するなり、抑も物の所有者は其物に附隨する一切の利益を享受することを得るは、一般の原則なるを以て、物の所有者が、其所有物中に於て埋藏物を發見したるときは、之をして其發見より生ずる全部の利益を享受せしむるは毫も妨げなし、然れども物の所有者と埋藏物の發見者とが其人を異にする時は、埋藏物の所有權は、物の所有者と發見者との間に平分するを公平なりとす、何となれば發見者は、物の所有者より所有權に附隨する利益は奪ふ事を得ず、又物の所有者も、埋藏物を發見したる發見者の效績を度外視することを得ざれば也、□二埋藏物に關する權利を取得するには、これを發見したること、即ち他人に先んじて埋藏物の存在を發露したるのみを以て足る、之を占有することを必要とせず、即ち其發見物を所持せずと雖も、發見したるものを以て其所有權の取得原因とする也、□三發見者は、特別法の定むる所によりて廣告を爲し、六ケ月の期間の經過するを要す、即ち遺失物の定むる所に從ひ、之を警察官署に屆出で、其官署が公告を爲して六ケ月を經、所有者の申出でなきときは全部發見者の取得すべきものとなるなり、□四埋藏物にして學術、技藝若くは好古の資料に供すべき物なるときは、國庫の所有に歸屬す、蓋し此種の物件は、之を一私人の所有に歸せしむるよりも、寧る國家の所有に歸せしむるを以て、公益に利ありと認めたるが故なり、然れども之が爲め發見者の權利を奪ふは不當なるを以て、此場合には其相當價格を發見者に給與し、若し發見者と、埋藏物の發見せられたる物の所有者と、其人を異にする時は、原則に從ひ其給與金を折半して受くべきものとす、而して埋藏物の發見者にして、其發見の屆出を爲さず、惡意を以て之を處分したるときは、埋藏物隱匿罪として罰せらるべし。(民二四一條及次項參照)
- 英
- Hidden property
- 独
- bedeckter Schatz
- 仏
- Propriété cachée
埋藏物隱匿罪
(まいざうぶついんとくざい)埋藏の物品を獲得して之を隱匿する罪をいふ、刑法は此の罪に就て規定する所あり、されど其後の發布に係る、遺失物法も之を規定するより見れば、前者の法條は暗默に廢止せられたりと見るべく、現時に於ては、後者の規定に依りて處罰さるべきなり、遺失物法に依れば、遺失物其他本法の規定を準用する物件を隱匿し、若くは不正に處分したるものは、三月以下の重禁錮、又は二十圓以下の罰金に處せらるべきものとせり、而して本法は、埋藏物に準用せらるべき故に、本罪も亦同法の支配を受くべきものとす、本罪の構成要件を擧ぐれば、□一犯罪の目的物は埋藏物たることを要す、埋藏物の何たるやは、前項の下に於て説明したる如く、唯注意すはべき犯罪の目的物となり得るものは、其埋藏物は、何人かの所有に屬することを要するが故に、無主物たる如き、又は法律が所有所持を禁じたる物件の如きは、本罪の目的物とならざるなり、□二隱匿若くは不正に處分したる行爲あることを要す、隱匿及び處分は、共に自己の物とする意思の實行を總稱するものにして、隱匿は、其埋藏物の所在を不明ならしむることを謂ひ、處分は費消を意味す、面して自己の物とするの意思は、發見當時に存在することを必要とせず、然れども發見後に於て、單に屆出でを怠るのみにては、自己の物とするの意思なきものなるが故に、本罪を構成するの限りにあらざるなり。(遺失物法一六條、刑二五四條)
- 英
- Crime of embezzlement of another's things which have been buried or hidden
- 独
- Asylverbrechen des be-deckten Vermögens
- 仏
- Infraction de céler la propriété cachée
毛
(まう)度量衡法の定むる所の衡目の一名稱にして、衡は貫を以て其單位とし、貫の百萬分の一を以て毛といふなり。(度量衡法二條)
申入
(まうしいれ)從來の用例としては、相手方の承諾を俟たずして、其の法律上の效力を生ずる、ある特定の意思表示を相手方に通告するの行爲を稱して申入と謂ふ、彼の委付、法律行爲の取消、催告等の場合に、其意思の實行はこの例なり。(民六一七條)
- 英
- Offer
- 独
- Antrag
- 仏
- Offre
申込
(まうしこみ)申込とは、相手方の承諾によりて、直に契約を成立せしむるの目的を以て、相手方の決意を喚起せしめんが爲めに爲す所の意思表示を云ふ、申込其れ自身の法律上の性質は、單獨的の意思表示なれども、他の單獨行爲、例へば追認、催告等の如き場合とは、大に其趣を異にするなり、他の單獨的表示は、夫れ自身に於て直に法律上の效力を生ずれども、申込は然らず、相手方の承諾を俟ちて、效力を生ずるものなることに注意せざるべからず、而して其申込を發したる者を稱して申込者若くは申込人と云ふなり、重要なる點を説明せんに、□一申込の主旨は極めて明瞭にして、契約成立に必要なる内容を有せざるべからず、若し其主旨茫乎として不明なるものは、申込と云ふことを得ず、□二申込は相手方の承諾によりて、直に契約の成立すべき狀態及び其意思を以て爲されざるべからず、故に彼の申込の誘引なるものと混同せざることを要す、申込の誘引即ち申込の挑發は、是又一の意思表示に外ならざれども、相手方の應答を得ば、直に契約の成立を告ぐるの意を以て爲したるものに非ずして、此の答を俟つて、更に自己の確定意思を示めさざれは契約成立せざるものなり、換言すれば申込の誘引は、申込みを喚起する爲めの意思表示なり、例へば貸家札、新聞廣告の如きこれなり、實際上此二者を區別して明にすることは、頗る困難にして、事實上の問題として屢々論爭せらるる所なれども、要は行爲の性質、種類等の狀況を斟酌して、申出者の意思を解釋し之を定むべきものとす、□三申込の效力、申込の目的とする實體的效力は、相手方の承諾に會ひて始めて生ずるものなれども、申込が一たび法律上の存在をつぐるときは、申込みたるの效力、即ち相手方の承諾に會ふときは、直に契約を成立せしむべきものたるの效力は、直に發生するものとす、然らば申込の法律上の存在を見るは何時なりやと云ふに、申込も一の意思表示なるを以て、我民法の原則により相手方に到達したるときを以て其の效を生ずるものとす、是隔地者間の場合なれども、對話者間に於ても此理によりて、相手方が知りたる時より其效を生ずるものとす、此の如く到著以前には何等の效力なきものなるを以て、此申込の先方に到達する以前又は之と同時に、申込取消の通知が相手方に到達するときは、申込みは其效を生ぜずして止むものとす。(民五二一條)
- 英
- Offer
- 独
- Antrag
- 仏
- Offre
申込書
申込人
- 英
- Offerer
- 独
- Antragssteller; Anbieter
- 仏
- Personne qui offre
申込價額
(まうしこみかがく)ある賣買契約を爲すに當り、賣主若くは買主より相手方に對して價額を定めて申込みたる其價格を指して、申込價格と云ふなり。(競賣法一四條八號)
申立
(まうしたて)申立とは訴訟法上に於ける用語にして、裁判所に對し自己の主張を陳述することを意味す、其詳細は、一定の申立の項目の下に於て詳説したるが故に、(イ)の部を參照することを要す。
- 英
- Statement
- 独
- Petitum
- 仏
- Exposé
申立書
(まうしたてしよ)官廳に對して申立を爲すべき場合に於て、法令の定むる所によりて之を文書に作成するを要することあり、此場合に於ける申立の主旨、又は申立の理由を記載せられたる文書を稱して申立書と稱するなり。
- 英
- Written statement
- 独
- Petitum-schrift
- 仏
- Assertion
間切
(まきり)冲繩縣に於ける郡内の一區劃にして、恰も他府縣の村に當り、最下級の自治公共團體とす、元來冲繩縣は之を分ちて、郡及び區の數者となし、郡を數間切に分ち、間切を分ちて數村となす、此村は、普通の町に於ける字又は區に該當す。(冲繩縣間切島規程參照)
增賃金
(ましちんきん)汎く增賃金と云へば、雇傭契約若くは運送契約に於て、特約したる賃料より成る一定の額を增加する場合を云ふものなれども、主として用ひらる場合は、鐵道規則に關する場合にして、一定の等級の客車にて、一定の停車場迄の賃金を仕拂ひたる後、更に上級の客車に移り、若くは更に遠隔の停車場迄乘車せんとする者が、仕拂ふべき增加賃金を指示するものとす。
- 英
- Increased fare
- 独
- vermehrte Miete
- 仏
- Prix augumenté
町役場
(まちやくば)町長が其管轄に屬する町の自治行政を執行する事務所を稱して、町役場と謂ふ、町役場の建築、位地、變更等の件は町會の決議によるべきものにして、特に其位置を變更すべき場合は、町會の議決は地方長官の許可を受くることを要するものなり。(二三年法七七號町村役場の位置變更方)
- 英
- Town office
- 独
- Stadtgemeinde-behörde
- 仏
- Bureau de la cité
滿期
(まんき)或期間の滿了、若くは期間の滿了する時期を稱して滿期と謂ふ、我民法の規定によれば、期間を定むるに時を以てしたるときは即時より起算し、一定の時の滿了したるときを以て滿期とす、日、週又は年を以てしたるときは、其末日の終了を以て滿期とする也、例へば三十日間に履行すべしと謂へる時は、其期間を定めたる日より數へて、三十一日目の午後十二時は即ち滿期の時となるなり、而して期間の末日即ち滿期日にして、大祭日、日曜日、其他の休日に當り取引を爲さざる慣習あるときは、其末日の翌日を以て滿期と看做す。(民一四一、一四二條)
- 英
- Expiration
- 独
- Fälligkeit
- 仏
- Expiration
滿期解任
(まんきかいにん)公法關係たると私法關係たるとを問はず、職務に關して一定の任期を定むる場合に、其任期が滿了したる爲めに職務を解くことを汎く滿期解任と謂ふ、例へば法人の理事者が法令、又は定款の定めたる期間の滿了によりて、其職務を解かるる場合の如き、又陸海軍々人が、現役滿期に依りて、其の職務を解かるる場合の如し。(陸軍將校分限令四條二項四號)
- 英
- Time-expiring
- 独
- Ver-fallentlassung
- 仏
- Expiration
滿期日
(まんきじつ)汎く滿期日と云ふときは、債務を履行すべき時期に到達したる日を稱す、故に之を債務辨濟期に達したるときとも云ふなり、法語として主として滿期日なる語を用ゆるは、手形法に關する場合なりとす、此場合に於ける滿期日と云ふは、手形金額の支拂あるべき日にして、例へば一覽拂手形によりては、支拂要求の提示を爲したる時、其他の手形にありては確定せる日、日付後確定せる期間を經過せる日、若くは一覽後確定せる期間を經過したる日は、各滿期日にして、或は振出人が手形に記載するにより、或は引受の日附により、滿期日は手形上に明示せらるる所也、總べて此期日到來したるときは、所持人は支拂を求むるを得べく、被呈示者が債務者なるときは、此滿期日に於て支拂を爲さざるべからざるものなり。(商四四五條七號、四五〇、四八七條、民一四三條)
- 英
- Day of maturity
- 独
- Verfalltag
- 仏
- Jour de maturité
滿了
(まんれう)一定の期間の終了することを稱して滿了と謂ふ、全く滿期と云ふと同意義なり、滿期の項を參照すべし。(民一四三條二項)
- 英
- Expiration
- 独
- Ablauf
- 仏
- Ex-piration
未決監
(みけつかん)刑事被告人として、有罪の嫌疑の爲め、之を拘禁する場所を稱して未決監と謂ふ、未決監と稱するも具體的に監獄的に建造されたる建築物の意に非ずして、すべて刑事被告人として嫌疑ある者を拘禁する警察署の留置場、裁判所の拘禁拘留場をも未決監と稱する中に包含せらるるものとす。
- 英
- Detention house
- 独
- Unter-suchungsgefängnisz
- 仏
- Prison de la détention
未決囚
(みけつしう)囚徒に既決、未決の二種あり、未決囚とは、犯罪の嫌疑の爲めに身體の自由を奪はれ、當該法令執行者の監督の下に在る者を云ふ、巳に有罪の確定判決を受けたるものは、未決囚にあらずして既決囚となり、又犯罪の嫌疑の爲めに拘禁せられたるものなるを要するが故に、彼の懲治場留置處分、精神病者監置處分の爲め、一定の場所に拘禁せられたるものの如き、若くは戰時捕虜の如き、刑罰の執行に屬せざる者は、未決囚徒中に包含せられざるものとす、未決囚徒に關する刑法上の規定は、未決囚徒が逃走したる場合、及び之等のものを庇護したるものある場合に關するものにして、即ち未決の囚徒が入監中に逃走した者は、三箇月以上三年以下の重禁錮に處し、原犯の罪を判決する場合に、數罪倶發の例によりて處斷せらるるものにして、若し原犯にして無罪の判決を受くる場合と雖も、逃走罪として責に任ずべきものとす、又未決囚若しくは其逃走者たることを知りて之を藏匿し、隱避せしめたる者は、十一日以上一年以下の重禁錮に處せらるるものなり。(刑九七條、九八條)
未決囚徒
未遂罪
(みすいざい)犯人が、犯罪の實行に著手し、又は實行を終結するも、意外の障礙ありて遂ぐるに至らざるときは、之を未遂犯と稱し、未遂罪と云ふと同意義なり、而して未遂犯に二種あり、著手未遂犯及び實行未遂犯是なり、犯人が犯罪の實行に著手するも、意外の障害によりて其實行を終了するに至らざるときは、即ち著手未遂犯也、例へば刀を揮ひて人を斬らんとするとき、他人に手を捉へられて殺人行爲を終了し能はざりし場合の如し、之に反して實行を終了するも、意外の障害により、犯罪成立の要素となる結果を生ずる能はざりし場合は實行未遂犯と謂ふ、例へば殺人罪に於て殺人的擧動を終るも、其採りたる行動が、被害者の死亡といふ、殺人結果を生ずるに至らざりし場合の如し、未遂犯は舊刑第一一二條の規定する所にして、曰く「罪を犯さんとして巳に其事を行ふと雖も、犯人意外の障礙若くは舛錯により未だ遂げざる時は、巳に遂げたるものの刑に一等又は二等を減ず」と、即ち法文に罪を犯さんとしてと云ふは、罪を犯すの故意を以てとの意にして、其當然の推理上、故意に出でざる犯罪殊に過失犯には未遂犯なきものとす、又巳に其事を行ふと云ふは、其罪の實行に著手し、或は實行を終了したる場合を指す也、犯人意外のと云ふは、犯人が自己の意思を以て中止したる場合を除外するの意にして、犯人が自己の意思を以て犯罪を中止したる場合は、學者の所謂中止犯として罪とならざる場合也、障礙若くは舛錯に依り云々と云ふは、失策又は故障に依りと云ふの意にして、未だ遂げざると云ふは、犯罪の實行に著手するも之を遂げざりし場合、及び實行を終りしも、必要なる結果を生ぜざりし場合を包含するものとす、未遂犯の處分は、重罪の未遂犯は一般に之を罰し、輕罪の未遂犯は刑法の各本條に記載あるに非ざれば之を罰せず、違輕罪の未遂犯は一般に罪とならず、以上の區別に從ひ、未遂犯は既遂犯の刑より一等又は二等を減ぜらるるもの也、終に未遂犯と既遂犯との區別は、從來學者間に議論ある所なれども、要するに未遂犯は、犯罪の實行に著手し又は實行を終了するも、本人が意外の障礙又は舛錯によりて遂げざりし場合を指すものにして、既遂犯とは、實行を終了して、刑法の犯罪成立要素として、各條に於て明にしたる結果を生ぜしめたる場合を云ふなり、此區別につき或學者は、犯人が其目的を達せしや否やに依りて區別するも、是大なる謬見にして、既遂なるや否やは、刑法の各本條によりて決すべきものにして、犯人が假令其目的を達せざるも、其所爲を爲し遂げ、然かも刑法の要求する結果を生ぜしめたる以上は、既遂なりと云はざる可らず、尚注意すべきは、既遂犯と云ひ、未遂犯と云ふも、別種の罪にあらずして、同種の罪が完全に成立したるや否やの區別なる點にあること是なり。(障礙、舛錯の部刑四三、四四條參照)
未遂犯
- 英
- Unaccomplished offence
- 独
- ungevollendetes Vergehen
未成年者
(みせいねんしや)我民法は滿二十歳を以て成年とし、其時期に達せざる者を未成年者又は未丁年者と稱す、法律が未成年者と爲すものの中には、嬰兒の如く全く意思能力を有せざる者と、成年々齡に近き者の如く、意思能力を有するも、僅に完全を缺くものとあり、全く意思能力を有せざる未成年者は、法律行爲の基本たるべき意思を缺如するが故に、其行爲は法律上有效に成立せざるは勿論なれども、意思能力ある未成年者の法律行爲は、不完全ながらも成立するの理なり、故に獨乙民法の如きは、未成年者を七歳未滿と七歳以上とに區分し、七歳未滿の幼者は全く無能力とし、七年以上の未成年者の能力を制限せり、然れども我民法は斯くの如き區分を設くることなく、未成年者の意思能力の有無は、之を事實問題に委ねたり、未成年者にして事實上意思能力を有すれば、其法律行爲は成立すべしと雖も、元來未成年者は、身體智識の發育未だ充分ならずして、自己の行爲の利害得失を辨別するの能力に乏しきが故に、單獨に權利の發生、消滅、變更の效力を生ずべき行爲を爲さしむるは、未成年者の爲めに危險なりと云ふべし、故に法律は未成年者を保護せんが爲めに、未成年者の法律行爲には、法定代理人の同意を必要とし、法定代理人の同意なき未成年者の法律行爲は、之を取消すことを得しめたり、法定代理人と云ふは、法律の規定によりて當然代理權を有する者を云ふ、即ち未成年者に對して親權を行ふ父、又は母、母あらざるか、是有るも之を辭したる場合は即ち後見人なりとす、以上の如く未成年者の法律行爲には、法定代理人の同意を必要とせしは、結局未成年者の利益を保護するが爲め也、此主旨を貫くが爲めに、左の如き例外を設けたり、即ち□一法定代理人の同意なき法律行爲を取消すことを得しむるは、未成年者の利益を保護するに有るが故に、未成年者に於て單に權利を得るの行爲、例へば他人より贈與を受くるが如き、單に義務を免るる行爲、例へば債務の免除を受くるが如きは、未成年者に利益ありて何等の損害なき故に、單獨にてこれを爲すことを得る也、□二未成年者の法律行爲は、如何なる場合と雖も、法定代理人の同意を經ざるべからずとせば、未成年者は、之が爲めに生活の必要物さへも得るの機會を失するに至るべく、却て未成年者を困難ならしむるの結果を來たすことあるが故に、我民法は特にこの弊を救はんが爲めに、法定代理人が目的を定め、或は定めずして一定の財産の處分を許したる場合には、其範圍内に於ては、一々法定代理人の同意を得ずと雖も、有效に法律行爲を爲すことを得るものとせり、例へば修學の爲めに、或は財産の處分を許し、又は小使錢として若干の金錢を與へたる場合の如し、□三親權を行ふ父、若くは母、又は後見人に於て、未成年者が獨立して營業を爲すの智能を具備せりと認むるときは、年齡の如何に拘はらず、未成年者に一種又は數種の營業を許可することを得るものにして、此許可を受けたる未成年者は、其營業に關しては總べての法律行爲を獨立して爲し得ること、成年者と異ることなし、然れども其範圍を超越する法律行爲は、法定代理人の同意を要することは勿論なりとす、以上の如く、法定代理人は未成年者の能力を認定して、或營業を許可すと雖も、後日に至り、未成年者が未だ營業を爲すに堪へざることを發見するときは、其許可を取消し又はこれを制限することを得るものなり、右説明するが如く、總べて我民法は二十歳を以て成年とするを通別とす、されど人事の複雜なる、或は生理上の原因に基き、或は實際上の必要に依り、此原則を貫く能はざる如き場合あり、法律は此の點を鑑みて、或例外を認めたり、例へば婚姻は男十七歳女十五歳に達すれば爲すことを得べく、これ一般風俗の壞敗を防ぐの注意に出でたるものなり、又私生子の認知は未成年者と雖もこれを爲すことを得、即ちこれ一は私生子保護の目的より、速に認知せしめんとする法意に出づると、一は子を擧ぐべき年齡に達せる未成年者に對して、認知の權を與ふるも弊害なかるべしと認めたるに依る、又養子緣組は、十五歳に達すれば之を爲すことを得、これ身分上の事項にして、直接に利害を感ずる本人に於て決定すべきものなれば也、遺言は十五歳に達すれば爲すことを得、これ遺言は畢生の大事にして尊重せざるべからざるのみならず、他人の代りて爲すことを得べきものにあらざればなり。(民三條乃至六條)
刑事上に於ける未成年者は、民事上の未成年者とこれを區別の必要あるべく、民事上の責任能力は、必ずしも刑事上の能力と一致するものにあらず、故に刑法は特別なる規定を設けて未成年者を三期に區別せり、即ち□一第一期は十二歳未滿の幼者とし、この年齡にあるものを精神成熟の有無につき審判を許さずして、常に責任無能力者とし、犯罪を構成せざるものとなす、但し八歳以上の者は、其情狀によりて滿十六歳に過ぎざる期間懲治場に留置することを得る也、□二第二期は十二歳以上十六歳未滿の幼者にして、此時期に在る者につきては裁判所に於て其責任能力の有無を審判し、即ち所爲の是非を辨別したると否とを以つて其能力の有無を判定する標準となし、其能力なき者は犯罪を構成せず、但し二十歳を過ぎざる期間懲治場に留置するを得べく、これに反して是非の辨別を爲す能方あるものと判定したるときは、其行爲は犯罪を構成す、然れども其罪を宥恕して本刑に二等を減ぜらる、□三第三期を十六歳以上二十歳未滿の者とし、此時期に達したるものにつきては法律は常に是非の辨別あるものと看做し、其責任を宥恕して本刑に一等を減ぜらるるものとす。(舊刑七九條乃至八一條)
- 英
- Minor
- 独
- Minderjährige
- 仏
- Mineur
未丁年者
- 英
- Infant
- 独
- Minderjährige
- 仏
- Mineur
未成年者喫烟禁止法
(みせいねんしやきつえんきんしはふ)一般未成年者即ち滿二十歳に達せざる幼者に、煙草を喫することを禁じ、其の監督者及び煙草、喫煙器具販賣者にして、情を知りて之を許與制止せざる者を罰する旨を定めたる法律なり、今其の重なる點を擧ぐれば、□一未成年者の喫煙を禁じ、違反する者は行政處分を以て、喫煙の爲めに所持する煙草及び器具を沒收するものなり、□二未成年者の親權者及び監督者にして、情を知りて制止せざる者は、一圓以下の科料に處せらる、□三末成年者に其の自用に供するものなることを知りて、煙草、煙器を販賣したる者は、十圓以下の罰金を科せらるるものとす。(三三年四月法三三號)
未成年者登記簿
(みせいねんしやとうきぼ)未成年者、其親權者若くは後見人より商業を營むことを許されたる者は、商法の定むる所によりて登記を爲すことを要するものにして、此場合に登記所に於て未成年者の登記を爲すべき帳簿を指して未成年者登記簿と云ふなり。(商五條、非訟手續法一六六絛)
- 英
- Infants' register
- 独
- Register der Minderjährigen
- 仏
- Mineur enregistré
水先區
(みづさきく)水先區は、水先法及び水先法施行細則に於て規定せる所のものにして、危險なる區域を航海する場合に、船舶水先案内として水先人に限り、嚮導し得る區域を云ふ、現行法の定むる所によれば、水先區は左の六種とせらる、即ち□一東京灣水先區、安房國州の崎より相模國城ケ島西端を經て諸磯崎に引きたる線を以て境界とす、□二和泉灘水先區、紀伊國田倉崎より談路國生石鼻に引きたる線及び淡路國江崎より播磨國明石川口の西岸に引きたる線を以て境界とす、□三内海水先區、紀伊國田倉崎より淡路國生石鼻に引きたる線、淡路國潮崎より阿波國大磯崎に引きたる線、伊豫國佐田岬より高島を經て豐後國地藏崎に引きたる線、及長門國網代崎より筑後國岩屋崎に引きたる線を以て境界とす、□四下關水先區、豐後國部崎より北東に引きたる線、及び筑前岩屋崎より長門國網代崎に引きたる線を以て境界とす、□五長崎港水先區、肥前國福田崎より伊手島北端に引きたる線、及同國沖の島南端より香燒島南端を經て深堀に引きたる線を以て境界とす、□六凾館水先區、渡島國尾花岬より葛登支岬に引きたる線を以て境界とす。(三七年遞信省令四五號)
- 英
- Pilots' water
- 独
- Gewässer
- 仏
- Eau de pilote
水先人
(みづさきにん)水先人とは、水先區に於て船舶の水路を嚮導することを常業とするものを云ふ、水先人に關することは、水先法に於て主とて規定せらるる所にして、水先人たるには、一定の試驗(其項目參照)を經て、水先免許狀を有する者たるを要す、此水先免狀を受くべき者は日本帝國臣民にして、主務大臣の定むる試驗規定により試驗に合格したる者たることを其要件とする也、但し下の如きものは、水先人たることを得ざるものとす、即ち□一滿二十三歳に達せざる者及六十歳以上の者、□二剝奪公權者、□三家資分散者及破産者、□四瘋癲、白痴者及財體不具又は羸弱にして、業務を營むに不適當なる者、□五水先免狀の行使を禁止せられたる者是なり、水先人が其業務に從事する爲め、水先船に乘込みたるときは、晝間にありては水先旗を揭揚し、夜間に在りては、海上衝突豫防法に定むる一定の色燈を揭ぐるを要す、水先人が要招の船長より水先信號を受けたるときは、直に之に應ぜざるべからず、水先人が水路を嚮導すべき船舶に乘込みたるときは、氏名及水先人たることを船長に告知するを要す、若し二個以上の船舶に於て、同時に水先信號を爲したろ場合に於て、水先人は自己に最も近き船舶の招きに應ずべく、若右の二船舶の中に危難に罹りたるものあるときは、其遠近に拘はらず、其危難船の招きに應ずるを義務とす、水先人が水路を嚮導したるときは、船長に對して水先案内料を請求するの權を有す、水先人にして其業務に從事するに當り、下の各場合に該當する時は、海員審判所に於て裁決を以て懲戒に附せらる、即ち□一過失懈怠又は不當の行爲により人を死傷に致したるとき、□二過失懈怠又は不當の行爲により船舶に損害を加へ、又はこれを沈沒せしめたるとき、□三業務を怠り又は業務に違反したるとき、□五亂醉、粗暴、其他の失行あるとき是なり。(水先法參照)
- 英
- Pilot
- 独
- Lotse
- 仏
- Pilote
水先人組合
(みづさきにんくみあひ)水先法及び水先法施行細則によりて、同一の水先區に屬する水先人を以てこれを組織し、業務上相互の便益幷に出入船舶の便益を計り、且つ營業上の風紀秩序を維持するを目的とする組合にして、主務大臣の命令によりて設置せらるる所の強制的の性質を有する組合なりとす、遞信大臣より、水先人組合を設くべきことを命じたるときは、當該水先區の水先人三人を創立委員に命ず、此創立委員を命ぜられたるものは、組合規約を起草して水先區の水先人の會議に附し、創立委員に於て、其成案を直に遞信大臣に差出し認可を受けざるべからず、組合規約には左の事項を揭ぐることを要す、□一名稱、□二組合長及副長の選擧、任期、職務に關すること、□三組合員の營業に關すること、□四組合の風紀秩序に關すること、□五會計に關すること、□六會議に關すること、□七水先修業生の資格に關すること、□八其他組合の處理に關して必要なることの八項目にして、必ずこれを記載せざるべからざるなり、其規約が許可せられ、組合長が其任につきたるときは、直に組合の事務所を定め遞信省に屆出づべく、其所在を變更したる場合も亦同じ、組合長は每年一月前一年間に於ける組合員の業務に關する狀況及び組合の會計に關する事項を遞信省に報告するの義務あり、組合員にして、水先人たるの業務上の義務に違反したる行爲あるときは、組合長は組合事務所を管轄する管海官廳に其始未を申告すべきものとす。(水先法施行細則三九條乃至五六條)
- 英
- Pilots' guild
- 独
- Lotse-genossenschaft
- 仏
- Corporation des pilotes
水先人試驗規程
(みづさきにんしけんきてい)明治三二年遞信省令第三四號を以て、發布せられたるものにして、水先人の試驗に關する事項を定む、水先人の試驗を受くることを得るに必要なる資格は、一年以上五百噸以上の航洋船に乘組み船長の職を執りたること、もしくは六ケ月以上右の職務を執り、且つ六ケ月以上試驗の目的たる水先區に於て水先修業生となり、實務に練習したることの履歷あるを要し、水先人たることを得ざる事故あるもの(即ち水先人の項目に於て説明せり參照)は、如何なる揚合に於ても試驗を受くることを得ず、水先人試驗は、遞信大臣に於て其場所及び期日を定め、其期日三十日前に試驗を行ふ管轄官廳の名稱、及水先區名稱、期日等を公告すべき也、試驗を受けんとする者は、試驗期日七日前に履歷書及び身分書を添へ、受驗申請書を試驗を行ふ管海官廳に差出すを要す、水先人試驗は體格檢査及學術試驗とし、體格檢査に合格したる者に非ざれば學術試驗を受くとを得ず、試驗は筆記又は口述とし、下の如き科目に付きて行はる、□一航路標識潮流、地勢、水路、港灣、錨地及危險物の説明、□二船舶の嚮導及運航方法、□三羅針違差の檢定方法□四船舶衝突の豫防、水路港灣の取締、其他水先人本分の職務に關する法規につきて、之を行はるべし、受驗者は體格檢査につきては金五十錢、學術試驗につきては水先區每に七圓の手數料を納付すべく、手數料は手數料納付書に相當收八印紙を貼用して納付すべきものとす。
- 英
- Examination rule of pilot
- 独
- Prüfungsregel des Lotsen
- 仏
- Règles de l'examen du pilote
水先法
(みづさきはふ)水先法とは、水先人たるの資格、其業務上の權利義務及び監督方法に關して規定せられたる法律なり、其内容は、水先人、水先組合等に於て説明せる所なり。(三二年法六三號)水先法施行細則は、明治三二年七月遞信省令第三三號を以て發布せられたる所にして、水先法の施行に關する細則を定めたるもの也、第一は水先人の登錄及水先人免狀の事を規定し、第二に於ては水先區の件に關し、第三には水先案内料の件に關し、第四には水先旗及水先信號旗に關し、第五には水先組合等に關する規定を詳細に揭げられたり、是等の大體は、已に前々項又は前項等に於て説明したるを以て、茲には之を省略す。
水先法施行細則
- 英
- Regulation for the ap-plication to the law of pilot
- 独
- Aus-führungsregulierung des Lootsengesetzes
- 仏
- Règles de l'application de la loi du pilote
未登記
(みとうき)法律の規定によりて或事物に關して登記を經ることを要し、又は法律の規定により登記することを得る事物に關して、未だ登記を經ざる狀態を稱して未登記と云ふなり、未登記に對しては、法律上一定の制裁を附せらるる場合と然らざる場合とあり、登記を以て法律上の必要事項と爲したる場合、例へば會社に關する登記事項の如きは、これを爲さざる場合は一定の罰金又は過料に處せしむるが如き、又法律上の必要條件とせざるも、當事者以外の者に對抗するに必要なる條件とする場合あり、此揚合は、他人に對して或權利の存在を主張するを得ざるものなれども、法律上制裁を附せらるることなし、例へば不動産又は船舶に關する權利の設定移轉の場合に、登記せざるときの如き是なり。(不動産登記法一三〇條)
- 英
- Non-registered
- 独
- noch nicht eingetragen
- 仏
- Non-enregistré
認
(みとめ)單に認といふは、或事物に對して認定の意思を表示する場合、又は推定の意思を表示する場合に用ひらるる語にして、例へば總會に出席せざる場合には、異議なきものと認むとか、若くは一定の期日迄に追認の通告を爲さざる場合には、追認したるものと認むといふ場合の如し。
- 英
- Recognition
- 独
- Anerkennung
- 仏
- Reconnaissance
認印
(みとめいん)自己の一身に關する一般の事項中、比較的事態の重大ならざる場合に使用する印を稱して認印と謂ふ、彼の實印に對するものにして、如何なる印を以て認印とすべきや否やは、法律上の解釋を附することを得ず、要は其使用者の意思によりて、之を決定せざるべからず、又法律上何等の形式の存することなし、或は認證の爲めに使用する印を認印と云ふことあり、刑法附則第二七條第一號に「監視の票を出し官吏の認印を受くべし」とあるは其の一例なり。
- 英
- Ordinary Seal
- 独
- Gemeinsiegel
- 仏
- Sceau ordinaire
看做
(みなす)法律が其の確定推測を現はす場合に使用する法語にして、或事柄に關聯して、一の事項を確定的に推測する場合に看做すの語を用ふるものとす、看做すと法律上確定せられたる場合は、最早法律上確定的に或事柄を推測したるものにして、當事者は、反對の證據を舉げてこれを覆すを得ざるものにして、例へば民法の規定に於て、無能力者と法律行爲を爲したるものは、法定代理人に對して、若くは能力者となりたる本人に對して、其行爲を追認すべきや否やを催告し、一定の期間内に於て確答なきときとは、其追認を爲したるものと看做すの規定ありとせよ、斯かる場合は無能力者の行爲を追認したるものとして、法律上の確定推測を受くるものなるが故に、法定代理人若くは本人はこれに反對する證據を舉ぐると雖も、此法律上の完全なる推測を破ることを得ざるものとす、之れに反するものは、法律上に推定すとの文字を用ひたる場合にして、推定に對しては反對證據を以て、其推定を覆すことを得るものとす。(民一九條一項三項四項、二二、二四、三一、四二條二項、一八九條二項、九六八條、商三二條二項、六〇絛二項)
- 英
- To be deemed
- 独
- Beurtheilung
- 仏
- Considéré
身分
(みぶん)身分と云ふは、人の法律的關係に於ける人事上の地位を指稱す、換言すれば華士族平民、戸主、家族、夫妻親子、原籍、其他親族等の法律上の地位なりとす、又出生地、出生の年月日、氏名も身分の一種たるや勿論とす。(刑六五絛、舊法例二條)
身分詐稱罪
(みぶんさしようざい)刑法第二三一條の規定する所にして、官署に對し、文書又は言語を以て其屬籍身分、氏名職業を詐稱したる者は、二圓以上二十圓以下の罰金に處せらるるものとす、茲に所謂屬籍といふは、原籍、寄留地を意味し、身分とは華士族平民、戸主、家族等の法律上の人の地位を意味す、法律は其詐稱の方法として、文書又は言語に依ることに限定したるを以て、形容等の手段に依る揚合はこれを罰するを得ず、又詐稱と云ふは眞實を詐るの謂にして、即ち眞實に反したる屬籍身分を詐り稱し、有籍を無籍と稱するが如きこれに包含せらるるものとす、又官署に對し云々と法文にあれども、官署を代表する官吏をも包含するものと解せざるべからず、本罪は詐稱の意思を以て爲したる詐稱の事實あるときは、犯罪を構成するものにして、別にこれによりて不當の利得をなし、又は害を生ぜしむるの意思の在在すると否とを問はず。(舊刑二三一、二三二絛)
- 英
- Usurpation of costume, in-signia, titles or decorations
- 独
- Stand-täuschungsverbrechen
- 仏
- Infraction de l'usurpation de la personalité
身分登記
(みぶんとうき)法律上、身分の變更、發生消滅に關する事項の登記を身分登記と稱す、身分登記は主として、戸籍法の支配する所にして、戸主の變更、隱居、婚姻、養子緣組、離婚、離緣、廢絶家再興、分家等の事項を生じたる揚合に、必ず一定の時期内に戸籍吏に屆出で、戸籍吏は、此屆出でによりて登記を爲すの義務あるものなり、是身分登記の揚合なりとす。(戸籍法七條乃至五條參照)
- 英
- Registration of one's quality
- 独
- Standsregistrirung
- 仏
- Enregistre-ment de la qualité
民有地
(みんいうち)官有地に對するの語にして、私人又は私法上の團體の所有に屬する土地を民有地と稱す。(七年布告一二〇號)
- 英
- Private land
- 独
- Volksland
- 仏
- Terre privée
民事
(みんじ)私法上の法律關係を稱して汎く民事と稱す、然らば私法とは如何なるものなりやと云ふに、所謂公法と私法との限界を明にして、初めて了解すべきものなれども、此區別に關しては、古來より學者間の議論の存する所にして、現今一般の通説によれば、國家と一私人との關係を定めたるものを公法と云ひ、私人間の事項を定めたるものを私法と謂ふ、例へば民法、商法の如きこれなり、然からば民法、商法の支配を受くべき法律關係は民事と稱すべきなり、然れども此民事なる語を狹義に解して用ふる場合あり、即ち商法に關するものを商事と稱し、民法に關するものを單に民事と稱する場合の如き、所謂民事を狹義の意義に用ひたるものなりとす。(民施二條)
- 英
- Civil case
- 独
- Civilsache
- 仏
- Civil
民事會社
(みんじくわいしや)我商法は、其第二編を會社と題し、之が定義を下し「本法に於て會社とは、商行爲を爲すを業とする目的を以て設立したる社團を云ふ」と規定せり、故に會社とは常に、商行爲を業とするを目的とするものにして、從つて商行爲を業とせざる社團は我法律の上に於ては會社に非ずと斷言せざるべからず、然るに飜つて我民法の規定を見るに、其第三五條に於て、商事會社なる文字あり、之等の文字によるときは人をして、會社には商事會社と然らざるものとあるやの誤想を生ぜしむるを免れず、民法が此商事會社なる文字を用ひて、別種の會社あるが如き規定を存したるは如何なる理由によるやは、我法典編纂の沿革によりて之を知ることを得べし、先に我民法が法典調査會に於て起草せられ、帝國議會に提出せられたるときに當り、第十二節を會社と題し現行民法に用ひられたる組合なる文字は、悉く會社なる文字を以て充たされたり、即ち草案起草者の意思によれば、會社を分ちて一般民事を目的とするものと、商事を目的とするものとの二種となし、民法に於ては一般民事會社に關する法則を定め、商法に於ては一般商事を目的とする會社に關する規定を爲さんとの方針を採りたるなり、故に民法第三五絛以下特に商事會社なる文字を用ひて、商事を目的とするが爲めに商法に定めたる法則を適川せらるる會社たることを明にしたり、然るに民法草案が帝國議會に於て討議せらるるに當り、衆議院の委員會は、其當時に於て會社なる名稱は、多く商事を目的とする社團にのみ用ひらるるにより、俄にこれを擴張するに於ては、世人の誤解を招くの虞ありとの理由を以て、右十二節の會社なる文字を悉く組合なる文字に改めたり、其結果として一般民事を目的とする會社なるものは我法律の下に存在せず、會社と云へば、必ず商事を目的とするものに限らるるに至れり、既に此修正を加ふる以上は、法文の體裁より考ふるも第三五條以下に用ひたる商事會社なる文字は、改めざるべからず、然るに疎忽にも、我立法者は之を遺忘したるが爲めに、遂に今日に於ては、我國の法典上會社は、商事を目的とするものの外之なきに拘はらず、商事を目的とせざる會社あるが如く疑はしむる法條を民法に存するに至れり、然りと雖も茲に會社は、商事を目的とするものの外之なしと云へるは、固より法律上に於て、會社と稱せらるるものは、商事を目的とする社團に限るの意に過ぎず、右の如く我現行の法典の上に於て、會社は總べて商事を目的とするものに限らるるなり、然らば從來民事會社と稱せられたる社團は、我法典に於てこれを認めざるやと云ふに、決して然るに非ず、既に前説述したる如く、我現行民法に組合と稱するは、即ち從來の民事會社と稱する社團を指すものにして、其特にこれを民事會社と云はずして組合と稱するに至りたるの理由は、單に民法に依るべきものはこれを組合と稱し、商法に依るものはこれを會社と稱する方の、法典の用語上明確を得んとの思想に出でたるに外ならず、故に其名を異にするも其實質に至りては毫末も草案に定められたる民事會社と異る事なきなり。
- 英
- Civil company
- 独
- Civil-gesellschaft
- 仏
- Société civile
民事原告人
(みんじげんこくにん)單に民事原告人と云ふときは、民事裁判所に對して民事の訴訟を提起したる者をも指示するが如き感あれども、我法律上民事原告人として特に用ひらるるは、刑事訴訟法により公訴に附帶して、其犯罪に依て生じたる損害、又は贓物の返還を目的とする、所謂附帶私訴を起したるものを指稱するの語とす、此民事原告人の主張することを得べき訴訟の目的は、其公訴の犯罪によりて生じたる損害の賠償、及び損害の賠償を目的とする場合に限るものにして、其金額の多寡に拘はらず、公訴の第二審の判決ある迄は、何時にても公訴に附帶して其訴を提起することを得べきものとす。(刑訴二、四條)
- 英
- Plaintiff in a civil suit
- 独
- Kläger im Civilprozesz
- 仏
- Plaideur civil
民事裁判
(みんじさいばん)司法裁判所が、特定の私權保護の請求事件に關して、法律の適用を定むるを目的とする審判の手續を民事裁判と謂ふ、詳細は民事々件、民事訴訟の項目を參照せらるべし。民事裁判▲は、司法裁判所の一種にして、民事々件を(次項參照)審判するの裁判所を稱す、現時我國に於ては、特に民事裁判所なる官衙は是無しと雖も、法律の規定によりて組織せられたる裁判所にして、民事々件を審判する職權を有するものは、即ち民事裁判所に當るものとす。
- 英
- Civil judgment
- 独
- Civil-rechtssprechung
- 仏
- Jugement civil
民事裁判所
- 英
- Civil court
- 独
- Civilgericht
- 仏
- Tribunal civil
民事々件
(みんじじけん)民事々件とは、私法上の權利に關する訴訟を指稱するものにして、彼の行政裁判法により行政裁判の管轄に屬する事件、若くは刑事訴訟法による刑事々件は素より民事々件と相對するものにして、全く別個の觀念に屬するものなりとす。
- 英
- Civil case
- 独
- Civilsache
- 仏
- Cause civil
民事上告豫納金手續
(みんじじやうこくよなふきんてつづき)明治一〇年二月一九日布告第一九號に依りて定められたる所に係り、現今尚效力を有する法規也、即ち民事々件につき上告を爲さんとするものは、其上告狀に、金拾圓を添へて上告裁判所に豫納すべきものにして、之を豫納せざる者は上告を爲すことを得ず、若し上告裁判に於て其上告を取上げざるときは、其預り金を沒入し、之に反し上告を取上げ、原裁判を破毀したるときは、之を還附すべく、若し上告を取上げ被告人と對審したるの後、之を斥けて原裁判を破毀せざるときは、預り金を沒入し、又訴訟費用規則に照して、被告人の費用を償はしむるものとす、此に被告人と云ふは上告者の相手方を指すものとす。
民事訴訟
(みんじそしよう)民事訴訟とは、私權を侵反する者あるとき、國家機關に向つて法律上實行の保護を求むるの方法を云ふ、以下分説すれば、□一民事訴訟は法律上の保護を受くべき權利の侵反を主張することを要す、總べて訴訟なるものは、權利の侵反に對する法律上の保護方法なれば、民事訴訟に於ても亦其事由ある事を要するや勿論なりとす、然れども權利侵反の事實眞正に存在せざれば、訴訟と爲らざるに非ず、果して權利の存在するや否や、又侵反の事實あるや否やは、訴訟上の判定の結果によりて定まるべきものたり、□二權利を侵反したりとする特定の相手方に對して、權利を主張することを要す、(公示催告の如き相手方の不明なる場合は特例也)相手方なければ訴訟なしとは、訴訟法の大原則にして、公示催告手續の如き不明瞭なる相手方に對し訴訟を起すことあれども、是一個の變例に屬し、一般民訴には特定の相手方あるを必要とする也、□三民事訴訟は、國家の司法機關に向つて保護を求むることを要す、訴訟は總べて法律上の權利保護にして、法律上の權利保護は、國家の機關に屬すべきものなるが故に、民訴も亦國家機關によらざるべからざるや當然なりとす、故に彼の國家の機關によらざる仲裁判斷の如きは、之を訴訟と云ふを得ざる也、□四民事訴訟は、其目的が私權につき保護を求むるものなる事を要す、民事訴訟は、法律上の私權保護にあるが故に、其目的は私權關係にあることは言を俟たず、而して私權關係は、或は財産上の關係に出づることあり、或は身分上の關係より生ずることありて、其多くの場合は民法、若くは商法の規定する所によりて發生す。
- 英
- Civil suit action
- 独
- Civil-prozesz
- 仏
- Procédure civile
民事訴訟手續
(みんじそしようてつづき)民事訴訟に關する、起訴より確定の終局判決迄に至る間の訴訟上の手續の全體を總稱して、民事訴訟手續と云ふなり、其手續の詳細を知らんと欲せば、民事訴訟法全斑を通覽するに若かずと雖も、今其訴訟提起に必要なる手續のみを擧げんに、□一地方裁判所に對する訴訟提起の手續は、一定の形式を具有する訴狀を提出して、之を爲すものにして、其訴には、當事者及裁判所の表示、請求の一定の目的物、請求の一定の原因、一定の申立を記載する事を要す、此訴狀が法律上の形式を具備する場合には、裁判所は、口當辯論の期日を定めて、之を被告人に送達するものとす、被告は裁判所より此送達を受けたるときは、十四日の期間内に答辯書を差出すべきものにして、答辯書は所謂訴訟の準備書面なるが故に、之を差出さずと雖も口頭辯論の期日に出頭して辯論を爲すの權を失はず、されど差出すべき場合には、實體上の答辯即ち原告の請求に關する云爲、形式上の答辯即ち妨訴の抗辯を有する場合には、之等を記載するを普通とす、右の手續を經て裁判所の指定する口頭辯論期日に當事者雙方は出頭して、權利の存否を爭ふべきものとす、□二區裁判所に訴訟を提起する場合は、特に簡易の手續によることを得べきものにして、訴訟法上特別なる規定なき以上は、地方裁判所の起訴の手續を準用せらる、所謂簡易なる手續と云ふは、起訴は單に口頭を以て之を爲すことを得べく、又書面によるも妨なし、而して地方裁判所に關するが如く、準備書面の交換を要せざるなり、又當事者は通常の裁判日に於て、豫め期日の指定なくして裁判所に出頭し、訴訟につき辯論を爲すことを得るものとす、□三控訴提起の手續、控訴の提起は控訴裁判所に控訴狀を差出して之を爲すものにして、控訴狀には控訴せらるる前判決の表示、此判決に對して控訴を爲す旨の陳述を記載する事を要す、控訴は前判決ありたるときより、一ケ月内に之を提起せざるべからず、□四上告提起の手續、上告の提起は上告裁判所に上告狀を差出して之を爲すべく、上告狀には、上告せらるる判決の表示、此判決に對して上告を爲す旨の陳述を記載するを要す、上告提起の期間は一ケ月なり、(民訴參照)
- 英
- Civil suit
- 独
- Civilver-fahren
- 仏
- Procès civil
民事訴訟法
(みんじそしようはふ)民事訴訟法は、二三年法律第二九號を以て公布せられたる所に係り、國家の司法機關の爲す法律上の私權實行の保護、即ち民事訴訟を處理するに必要なる手續を定めたる手續法也。民事訴訟手續法とは、民事訴訟に關する手續法の全般を指示するものにして、民事訴訟法と云ふと全く同意義なり、何となれば、民事訴訟法は、民事訴訟の手續に關する法律なればなり。
- 英
- Law of civil suit
- 独
- Civilprozeszordnung
- 仏
- Code de pro-cédure civile
民事訴訟手續法
- 英
- Law of civil process
- 独
- Civilverfahrensordnung
- 仏
- Loi du procès civil
民事訴訟法施行條例
(みんじそしようはふしかうでうれい)明治二三年法律第五〇號を以て公布せられたるものにして、民訴訟施行前より裁判所に繫屬する訴訟の處理に關して規定を爲したるものなり。
- 英
- Regulation for the application to the code of civil procedure
- 独
- Ausführungsregulierung der Civil-prozeszordnung
- 仏
- Règles de l'applica-tion du code de procédure civile
民事訴訟費用規則
(みんじそしようひようきそく)明治三一年臺灣總督府律令第一〇號を以て定められたる所にして、臺灣島内に於ける訴訟に關する費用の件を定めたる規則とす。
- 英
- Rules of expense of civil procedure
- 独
- Regel der Civil-prozeszkosten
- 仏
- Règles des dépens de la procédure civile
民事訴訟費用法
(みんじそしようひようはふ)民事訴訟に關して、當然生ずる所の費用額に就きて規定したるものにして、即ち費用の算定方法としては、訴訟其他總ての書類の書記料は、半枚十二行二十字詰につき金貳錢五厘とし、飜譯料は同半枚につき五十錢とす、貼用したる印紙は其代價に依り、執達吏の手數料及び立替金は執達吏手數料規則に從ふ、官報新聞紙を以て公告したる料金は其定價による、當事者の日當は出頭一度につき金五十錢とす、但し滯在費を給する場合は日當二十五錢とす、證人の日當は出頭一度につき金五十錢とす、但し滯在費を給する場合には日當を給せず、鑑定人及び通事の日當は、出頭一度につき金五十錢乃至五圓の範圍内に於て裁判所の意見を以て定む、當事者の滯在費は滿八里以外の地より來り滯在するときは一日金貳十五錢とし、證人、鑑定人、通事の滯在費は一日五十錢とす、而し右三者の族費は海陸一里につき十錢とす、其他の費用は總べて實費によるものとす。
- 英
- Law of expense of civil procedure
- 独
- Gesetz der Zivilprozesz-kosten
- 仏
- Loi des dépens de la pro-cédure civile
民事訴訟用印紙規則
(みんじそしようよういんしきそく)明治三一年臺灣總督府律令第六號を以て定められたるものにして、臺灣島内に於ける訴訟提起の場合に貼用すべき印紙額を定めたるものなり、其實額は次項に説明する料金と同樣なりとす。
- 英
- Rules of stamp in civil procedure
- 独
- Stempelregel im Zivilprozesz
- 仏
- Règles du timbre de la procédure civile
民事訴訟用印紙法
(みんじそしようよういんしはふ)民事訴訟の書類には、本法の規定に從ひて、其正本に相當額の印紙を貼用せざるべからず、裁判書記に對し口述して調書を作らしめたるときは、其調書に印紙を貼用すべきものとす、印紙貼用高は、財産上の請求に係る第一審の訴狀には、訴訟物の價格に應じ左の區別に從ひて印紙を貼用せざるべからず。
訴訟物の價格
五圓迄
二十圓迄
七十五圓迄
二百五十圓迄
七百五十圓迄
二千五百圓迄
印紙類
二十錢
六十錢
二圓廿錢
六圓五十錢
十三圓
二十圓
訴訟物の價格
十圓迄
五十圓迄
百圓迄
五百圓迄
千圓迄
五千圓迄
印紙額
三十錢
一圓五十錢
三圓
拾圓
拾五圓
二十五圓
(五千圓以上は千圓に達する每に二圓を加ふ)財産上の請求に非ざる訴訟につきては、其訴訟物の價格を百圓と看做し夫れに相當する印紙の貼用を要す、財産上の請求に非ざる訴訟と、其訴訟に由り生ずる財産權上の訴訟と併合するときは、其多額なる一方の訴訟物の價額により、印紙を貼用すべきものとす、若し本訴と之に對する反訴と同一訴訟物なるときは、反訴の訴狀には印紙を貼用するを要せず、控訴狀には前表の半額、上告狀には前表の通り印紙を更に加貼すべきものとす、左の書類には、五十錢の印紙を貼用す、□一抗告、□二故障、□三證據調の申立、□四假差押假處分の申請、□五判決の送達ありたしとの申立、□六執行力ある正本を求むる申立、但し此正本の數通を求むるときは、一通每に五十錢の割合を以て貼用すべきものなり。(二三年法八五號)
- 英
- Law of stamp in civil procedure
- 独
- Stempelgesetz im Civil-prozesz
- 仏
- Loi du timbre de la pro-cédure civile
民事權當人
(みんじたんたうにん)犯罪によりて生じたる損害の賠償、贓物の返還を目的とする訴訟に於て、犯罪者にあらずして犯罪者の行爲につき、私法上の責任を有するものを民事擔當人と稱す、例へば公訴に附帶する私訴を提起して贓物の返還、損害の賠償を請求したる揚合に、未だ判決なくして本人死亡したる揚合の如きときに、相續人に對して其要求を爲し得るものにして、此場合に於ける相續人は、即ち民事擔當人に該當するものなりとす。(刑法附則六二條、刑訴一一條)
民主國體
(みんしゆこくたい)國家の統治權が國民全體にある國體を稱して民主國體と謂ふ、民主國體に、直接民主國體と代議民主國體との兩種あり、直接民主國と云ふは、一定の資格を有する國民を以て、直接に組織せる合議體を國家の最上機關となす國を云ひ、代議民主國とは、一定の資格を有する國民が直接に會合するに非ずして、其選舉したる代議會を以て最上合議體の機關となすものを云ふ、民主國は何れも共和國の一種に屬するものにして、古代に於ては直接民主國ありしも、現今に於ては共和國は何れも代議政體によるを多しとす、佛蘭西、白耳義、瑞西、北米合衆國の如き其例なり。
- 英
- Democracy
- 独
- Demokratie
- 仏
- Démocratie
民政
(みんせい)國家の内務行政を稱して民政と謂ふ、内務行政とは主として人民の幸福安寧を計るを目的とする行政にして、警察行政、衞生行政、經濟行政、交通行政等を包含するものとす。民政事務とは、民政に關する事務の總稱にして、内務行政事務と云ふも同じとす。(臺灣總督府官制九條)
- 英
- Civil administration
- 独
- Civil-verwaltung
- 仏
- Adminsitration civile
民政事務
- 英
- Civil administration
- 独
- Civil-verwaltung
- 仏
- Adminsitration civile
民籍
(みんせき)國籍、若くは臣民籍と云ふに同じ、即ち個人が、國家に對する絶對的服從關係に立つべき身分を表示するの語なり、民籍即ち國籍に關しては、從來より法學者間に數説ある所にして、佛國流の法學者は槪ね此民籍を解して、國家と人民との間に存する契約關係なりと主張し、又之を一の權利と解し、若くは義務と爲すものなきに非ず、然れども佛國流のいふが如く、國籍の特質は、決して個人の自由意思に出でたる合意的關係にあらず、又國籍には種々の權利義務を包含すと雖も、國籍其ものは權利に非ず、又義務に非ず、國籍を有するの結果として種々の權利義務を生ずるに至るのみ、故に民籍とは、個人が國家に對して絶對的服從關係に立つの身分也と解するを正當とす、外國人の如く我國に滯在する間のみ我國權に服從するのみならず、世界何の國に至るも無條件に我國權に服從するの意なりとす。(國籍の部參照)
- 英
- Census
- 独
- Volkszählung
- 仏
- Recensement
民族
(みんぞく)此語は拉丁語の「ナスカル」より出で生産血族等を意味する語なれども、民族本來の性質は、最も能く政治的團體を形成する自然的性質を有するが故に、民族は廣く政治學上用ひらるるに至りて、初めて嚴密なる定義を下さるるに至れり、即ち民族とは一元より發したる血族種屬にして、其經由の歷史を一にし、總べて生存狀態に於て同一の性質を有し、其棲息する地域は自然的に他と劃然區別されたるものなり。
- 英
- Nation
- 独
- Volk
- 仏
- Nation
民法
(みんぱふ)民法なる文字の語源は、羅馬の「ユスチビレ」に發したるものにして、佛蘭西に於て之を「トロアシヴイル」と謂ひ、獨乙に於ては「チヴイルレヒト」と謂ふ、我國に於て民法と云ふは佛語の「トロアシヴイル」を飜譯したるものなり、然れども其意義は全く羅馬の「ユスチピレ」と異にして、「ユスチビレ」は市民法即ち自國人に適用すべき法律との意なれども、佛の「トロアシヴイル」獨の「チヴイルレヒト」若くは「ビュゲルリッヘンレヒト」は、專ら公法に對する私法、又は特別私法に對する普通私法たるの意義を有するものなり、我國に於ける民法は勿論後者の意義に從ふものにして、其意義を説明すれば、實質上の意義と形式上の意義とに區別せざるべからず、□一民法の實質上の意義に關しても廣狹二權の意義あり、之を廣義に解するときは、民法の實質は實體的私法の全體なりと云ふことを得べし、即ち其實質は權力の主體たる性格を離れて、二個の人格の間に存する關係の全體なりと云ふべきなり、民法を狹義に解するときは、實體私法の一部に限定せらる、即ち適用を受くべき事物の範圍を標準と爲し、一般に私法的法律關係に適用せらるるものを民法と稱するなり、□二民法の形式上の意義に從へば、民法なる名稱を附して公布せられたる成文の法典を指す、民法々典中に包含せらるる規定の内容は、大體に於て實體的私法なり、然れども實體私法の全部を包含せず、商法は別に法典ありて民法中に入らず、其他實體私法上の規定にして他の法令に讓り法典中に揭げざるものあり、例へば著作權は、私法上の權利なるも、民法法典中に揭げずして他の法律を以て規定したるが如き、其一例なりとす。(二九年法八九號民一篇乃至三篇、三一年法九號民四篇及び五篇)
- 英
- Civil Law
- 独
- Civilrecht
- 仏
- Droit civil
民法施行法
(みんはふしかうはふ)明治三一年法律第一一號を以て發布せうれたる所に係り、新民法の施行に關して、其施行前よりの法律關係を施行後如何に決すべきやを定め、進むで施行上必要なる事項を定めたる法律なり。
- 英
- Regulations for the applica-tion to the civil law
- 独
- Ausführungs-ordnung des Civilrechtes
- 仏
- Règles de l'application du droit civil
民約説
(みんやくせつ)社會の原始は契約にありと説くものにして、佛國のルーソー以來頗る世に勢力を得たる説なりとす、ルーソーは十八世紀の末年「コントラソシアル」なる一書を著はし、曰く「人類が自然的狀態より社會的狀態に變じたるは、偏に社會契約によるもの也」と是より先き英のホップスは、十七世紀に於て「レビアサン」なる著をものし、「人類自然の狀態より社會的狀態に變じたるは、社會契約の結果によるものなり、されど各人は其の權利を君主に捧げて其の保護を受くるに至れるものなれば、各人は決して主權者其の人の命に逆ふことを得ず」と然して此の點ルーソーと異なり、ルーソーに於ては、其素志に違ふ事あらば、各人は孰れの時孰れの日を問はず、隨意に社會契約を解除し、各人平等の地位に歸り得べしとなす、二氏均しく社會契約説なるに拘はらず、一は君主專制を辯護し、一は革命に左袒して之を辯護するものなり、さればにや、ル氏の此の説は机上の空論たるに止まらずして、彼の恐るべき佛國革命の一大原因となり、然も得たる結果は各人の平等にあらずして、國力の疲弊なりしが如き事實を現出したりしなり、要するに社會契約説なるものは、大體に於て歷史上の事實に反し、殊にル氏の説は、政治上の説と云ふよりも、寧ろ無政府説の傾ありといふべく、試に危險の空論なりと謂つべし。
- 英
- Social contract
- 独
- Socialver-trag
- 仏
- Contrat social
民林
(みんりん)官林に對して、私人若くは私法上の團體の所有する林野を、民林と云ふなり、民有林と云ふと全く同意義なりとす。
- 英
- Private forest
- 独
- Privatwald
- 仏
- Bois privé
無意解散
(むいかいさん)設立者又は社員の意思に基かずして、法律上當然解散するを講學上無意解散と稱す、即ち彼の有意解散に相對するものとす、無意解散は、法人若くは組合に就いて存するものにて、□一組合に就いては、其事業の成功又は成功の不能に依りて解散し、□二法人に就いては、イ定款又は寄附行爲を以て定たる解散事由の發生、ロ法人の目的たる事業の成功又は成功の不能、ハ破産、ニ設立許可の取消、ホ社員の缺亡、但し此原因は單に社團法人に限り、財團法人にはこれなき所とす、蓋し財團法人は社員を其の成立の基礎とせざればなり、法人及び組合は、以上の原因あるときは法律上當然解散するものにして、この他任意に解散する事を得、而して解散によりて組合は當然消滅するものなるも、會社は消滅することなく、唯其設立の目的たる事業を遂行するの能力を失ひ、現務の結了、債權の取立、債務の辨濟及び殘餘財産分配の爲め、其の清算の目的の範圍内に於て存續するものとす、今便宜の爲めに左に清算人の選任及び解任申請に關する書式を示さん。
清算人選任申請
所在地
何々會社
住所身分職業右
何々會社取締役
代表者氏名
原因タル事實
一、(清算人の必要となりたる事實を記す、例へば會社解散したるとか、取締役清算人たることを辭したりと云ふが如し)
二、依テ申請人ハ左ノ者ヲ清算人ニ適當ナリト認メ候
住所身分職業
氏名
同
氏名
申立ノ趣旨
右ノ次第ナルヲ以テ清算人御選任相成度候
附屬書類
一何々
一何々
右申請候也
右
年月日氏名□印
何區裁判所判事氏名殿
清算人解任申請
住所身分職業
申請人氏名
何々會社清算人
被申請人氏名
原因タル事實
一、(申請人が利害關係人たる事由及び申請人を解任する重要の事實を記す)
申立ノ趣旨
右ノ次第ナルヲ以テ清算人御解任相成度候
證據書類
一何々
一何々
右申請候也
右
年月日氏名□印
何區裁判所判事氏名殿
(民六八條一項及二項二號、六八二條、商七四條一一八、二二一、二四六條等)
- 英
- Natural dissolution of juridical person
- 独
- Naturauflösung einer juris-tischen Person
- 仏
- Dissolution naturelle de la personne morale
無意識的
(むいしきてき)睡眠中に於ける吾人の心意狀態の如きを云ふ、然るに覺醒時に於ては、吾人は何等かを常に意識に浮べ居るも、それとて制限ある事にて、空間上の原則として同一空間に、同時に二個以上のものが存在する事を得ずといふが如く、吾人の意識に於ても、同時に二個以上の全然無關係の現象が共存することを得ず、他は暫く意識の下に沈み居らざるべからず、即ち無意識の狀態にあらざるべからず、尤も意識の狀態と無意識の狀態との間は、全然隔絶したるものに非ず、半意識の狀態によりて繫がれ、走馬燈の如く廻轉して、意識上に現出し來たるを法とす、故に無識とは、吾人の心意が全然其の活動を止めたることに非ず、唯吾人の自我が其を對象として認めざる場合、即ち其の對象となるべきものが、意識の閾下にある揚合を唱ふるなり、尚吾人が花の美に打たれて恍愡となりし狀態の如きも、全然自我の念を喪失するを以て、其の心意狀態は無意識の狀態にありと云はざるべからず。
- 英
- Unconscious
- 独
- bewusztlos
- 仏
- Inconscient
無意退社
(むいたいしや)法律上當然會社社員たるの地位を脱退するを無意退社と謂ふ、無意退社の原因は、各會社に依て同一に非ず、□一合名會社社員の無意退社は、イ定款に定めたたる事由の發生、ロ總社員の同意、ハ死亡、ニ破産、ホ禁治産等にして、□二合資會社員の無意退社は合名會社社員と同じ、唯有限責位の社員の禁治産宣告は、退社の原因とならざるものとす、有限責任社員が死亡したるときは、其相續人當然被相續人の資格を承繼して、其社員となるもの也、□三株式會社社員の無意退社は、法律は之を規定せず、蓋し株式會社社員は、株券と始終するを常とするものなる故に、特別の規定を必要とせざるに依るなり、□四株式合資會社社員の無意退社は、株主に付ては株式會社と同じく、無限責任社員の退社に付ては、合資會社に關する規定が準用せらるるものなれば、イ定款に定めたる事由の發生、ロ總社員の同意、ハ死亡、ニ破産、ホ禁治産の宣告即ち是なり、以上株主を除き其他の社員の退社は、之が登記を爲すにあらざれば、第三者に對抗することを得ざるものとす。(商六九、一一七條)
- 英
- Involuntary retire
- 独
- un-willkürlicher Austritt
- 仏
- Retraite in-volontaire
無意犯
(むいはん)凡そ犯罪は行爲にして、行爲は意思の發動に基くが故に、犯罪にして無意なるものなし、從つて無意犯なるもの非ざるなり、彼の過失犯の如きも、認識するを要し、且つ認識し得べきに拘らず、之を認識せずして事を爲せるの過こそあれ、常に意思の實行にして、斷じて無意に依りて犯したる犯罪にあらざる也、されど用語の慣例に從へば、通常犯罪を有意犯及び無意犯に分ち、故意に基く犯罪は之を有意犯となし、過失に基く犯罪、即ち過失犯の如きは之を無意犯となす、過失犯を無意犯となすは、上説の如く誤れる見解にして、正當なる用例にあらざるものとす、(何となれば、過失ある行爲は無意の動靜と異なり、故意ある行爲と毫末の差なし、唯過失ある行爲は、其の意思發動に際して、之に隨伴すべき事實の認識を缺くに止まるもの也)さもあらばあれ、茲には用語の慣例に從つて、無意犯とは過失犯のことなりと定義せん。(過失犯の部參照)
- 英
- Unintentional crime
- 独
- un-vorsetzliches Verbrechen
- 仏
- Infraction involontaire
無效
(むかう)無效なる文字の用途頗る廣しと雖も、法律上の用例を案ずるに、法律行爲が、其目的としたる效力を發生せざる場合を指して云ふ如し、法律行爲の無效は成立條件を缺如するが爲めに、絶對に當事者の欲望したる效力を發生する能はず、然れども無效の法律行爲也と雖も、他の法律事質として效果を生ずる事なきに非ず、例へば一種の不法行爲となり、損害賠償の義務を生ずるが如し、法律行爲が無效となるは一般の成立要素又は特別の成立要素を缺如するに因る、一般の成立要素を缺如するときは、如何なる場合に於ても絶對に無效なり、特別成立要素を缺如するときは、其特種の法律行爲としては無效也、從つて假令他の法律行爲の要件を具備するに至るも、依然として他の法律行爲をも成立することなしと云はざるべからず、蓋し我民法に於ては、所謂法律行爲の轉換なるものを認めざれば也、所謂法律行爲の轉換とは、當事者が甲法律行爲を欲して爲したるに拘らず、甲法律行爲として無效なるも、乙法律行爲の要件に該當するが故に、當事者が其甲法律行爲として無效なることを知りたらんには、乙法律行爲を成立せしむる事を欲したるならんと認め得べきときは、其意思表示により、乙法律行爲を成立せしむべきものと爲すを云ふ、法律行爲の無效の例は、□一妻子を奴隷として之を賣却するが如き、□二終生他人に使用せらるることを約する契約の如き、□三已に妻あるに拘らず更に婚姻を爲すが如き、□四姦通を約するが如き、□五將來夫婦たらんことを約するが如き其二三の例なりとす。(民九〇條一一九條參照)
無期刑
(むきけい)犯人を終生其身體の自由を拘束して、監禁する刑罰を無期と謂ふ、舊刑法に於ては之を二種に別つ、無期徒刑、無期流刑即ち是なり、舊刑第三九條に「無期刑」とあるは其用例とす。無期徒刑、重罪の主刑にして、犯人の終身集治監に拘禁し、定役に服せしむるの刑罰を無期徒刑と謂ふ、舊刑第七條に「無期徒刑」とあるは其用例に屬す。
- 英
- Penalty for life
- 独
- lebensläng-liche Strafe
- 仏
- Peine à vie
無期徒刑
- 英
- Penal servitude for life
- 独
- lebenslängliche Zuchthausstrafe
- 仏
- Em-prisonnement à perpétuité
無期流刑
無期流刑、大體に於て無期徒刑と同じ、唯定役に服せざる點に於て異なるのみ、舊刑第七條に「無期流刑」とあるは其用例なり。
- 英
- Transportation for life
- 独
- lebenslängliche Überschiffung
- 仏
- Dé-portation à vie
無機體
(むきたい)有機體が生理的に機能を營むに對し、全く無生的なる組織構造を有する物體例へば礦物の如きを稱す、即ち其組織には何等の因果的關係將た統一的作用なく、全然機械的にして、其變化に於ても自己自身の作用に出づる能はざるなり、然るに生物學上無機體と有機體との窮極關係は、終に兩者をして判別に苦しましむといふも、一般には一見其の差異を認むるに難からず、其無機的とは如上を意味する形容詞にして、又無生的といふと殆ど同義なり。
- 英
- Inorganism
- 独
- Unorganismus
- 仏
- Inorganisme
無記名
(むきめい)廣く無記名と云へば、單に記名なきことを稱し、或權利を表彰する證書、又は權利實行の手段たる投票の如きに名を署することなきを謂ふものとす、彼の無記名公債、無記名證券、無記名投票などいふは此の用例とす。(日本勸業銀行法三五條、農工銀行法二六條二項)
- 英
- Unregister system
- 独
- Un-registersystem
- 仏
- Système non-enregistré
無記名式
無記名式とは、證券等の形式に記名せざるものを謂ひ、彼の記名式に相對す、普通の債權等は、其の權利を表彰する證券に、權利者の氏名又は番號を記載するものにして、之を記名證券と謂ひ、權利者の氏名又は商號等を記さざるものを無記名と謂ふ、此の無記名の形式に依れる證券は即ち無記名式證券にして、株券、公債、手形等なるときは、夫れ夫れ無記名式又は無記名株券、無記名公債、無記名手形と稱す、通常彼の持參人拂のものは無記名なりとす。(商四四九條)
- 英
- To bearer
- 独
- Inhabersystem
- 仏
- Système du non-enregistrement
無記名公債
(むきめいこうさい)無記名公債とは、無記名式に依る公債をいふ。
- 英
- Stock to bearer
- 独
- In-haberanleihe
- 仏
- Bon non-enregistré
無記名公債證券
無記名公債證券とは、公債證書の債權者の氏名を記載せざる證券を以て表彰せる公債證書自體をいふ。(海軍公債證書條例五條以下)
- 英
- Unregistered bond, stock to bearer
- 独
- Staatspapier auf den In-haber
- 仏
- Bon non-enregistré
無記名債權
(むきめいさいけん)無記名の證券を以て表彰する債權を無記名債權と謂ふ、元來無記名債權の存在は、證書其ものに存し、證書と化體したるが如き關係を有するを以て、法律上に於ては、全く動産と同一の取扱を受く、從つて之を所持することを動産を所持すると同じく、其讓渡に就ても、動産と同一の規定に從ひ、證書を引渡すに非ざれば第三者に其讓渡を對抗することを得ざるなり、而して證書の引渡に依りて無記名債權は讓渡され、敢て記名債權、指圖債權に於けるが如き、讓渡に關する面到なる手續を要することなしとす。(民八六條三項)
- 英
- Obligation performable to bearer
- 独
- Inhaberforderung
- 仏
無記名債券
無記名債券とは、無記名債權を表彰する證券をいふ、學理上に於ては二者を區別するも、實際に於て、無記名債權は證書なくんば成立することなきが故に、無記名債權といふも、無記名債券といふも大差なきなり。
- 英
- Unregistered debenture
- 独
- Schuldschein auf den Inhaber
- 仏
- Dé-benture non-enregistrée
無記名投票
(むきめいとうへう)議員の選舉又は意見の表決に當つて、法定の用紙に其の旨趣を記し、可否を決するの方法を投票と謂ひ、投票に其被候補者又は意見を記す外、投票者自身の氏名を記載するものを記名投票と云ひ、之を記さざるものを無記名投票と稱す、理論上より云へば、選舉等は記名投票に依るを可とす、蓋し選擧は投票者の責任を以て行ふものなるが故に、其の氏名を明かにする要あればなり、されど現時の如き、選舉人の德義程度低く、賄路、脅迫其他選舉運動の爲め、其の意思を動かざるる虞あるに依り、寧ろ投票者の意思の自由を保證する爲めには、無記名投票の方法を採用するを可とす、是現行の選舉法の多くが、無記名投票の制を採る所以なりとす。(投票の部參照)
- 英
- Open ballot
- 独
- namen-loser Wahlzettel
- 仏
- Boule ouverte
無記名約束手形
(むきめいやくそくてがた)凡そ手形は法律上當然の指圖證券なり、即ち債權者の氏名、商號を記載するも、振出人が裏書讓渡を禁せざる以上は、自由に裏書讓渡することを得るもの也、而して法律は流通の容易なるを欲するが爲め、更に無記名の手形を認めたり、即ち金額三十圓以上なる場合には、手形に受取人の氏名、又は商號を記載せざるも可なりとせり、此債權者の氏名、商號を記載せざる約束手形を無記名約束手形と謂ふ。(商四四九、五二九條)
- 英
- Unregistered promissory note
- 独
- unregistrirter eigener Wechsel
- 仏
- Billet à ordre non-enregistré
無形的文書僞造
(むけいてきぶんしよぎざう)他人の名義を僞りて文書を作製するに相對し、文書の作製名義を僞らざるも、其内容を詐るを指して、無形的文書僞造と謂ふ、官吏が、其職務の範圍内に於て文書を作製するに當り、自己の名義を以て虛無の事實を記載するが如き、又登記官吏が所有權登記の申請なきに拘らず、詐つて申請ありしかの如く之が登記を爲すが如き、執達吏が強制執行を行はざるに拘らず、詐つて之れが調書を作製するが如き其例也、舊刑法に於ては第二〇五條に於て斯かる場合を律するよ、其他の場合に於ては之を明言せず、されば廣く無形的文書の僞造變造を認むるべきがか否やは、大に異論の存する所也、佛國刑法の無形的僞造變造を認め、獨國刑法は之を認めず、要するに僞造其ものの觀念如何によりて定まると雖も、余は寧ろ有形的僞造も無形的僞造も共に之を包含すと解するを妥當と信ず、若し無形的文書僞造を認めざらんか、實際上の不都合は勿論舊刑法の沿革に反すればなり。
- 英
- Immaterial forgery of writing
- 独
- immaterielle Urkundenfälsch-ung
- 仏
- Forge immatériel des Documents
無形人
(むけいにん)無形人とは、吾人の如く體軀を有せざる所の、所謂法人を指して云ふに外ならず、例へば會社の如き、市町村の如き、府縣の如き、國家の如き、皆生物學上に於ける人に非ざるも、法律上に於ては權利義務の主體として認めらる、即ち人格者たるに至りては吾人と彼れ此れ軒輕あらずと雖も、唯吾人の如く生物にあらざるに、之を理會して知り得べく、一見無形の如き觀あるに依るなり、而して此法人又は無形人に付て議論あるは、事實上存在せざるものなるも、法律が存在するものとして取扱ふに過ぎざるや、將又現實に存在するものなるや是なり、嚴格に云ふときは、此問題は法人其ものの實在の有無にあらず、法律が人格を與へたる本體、即ち法人の基礎となりたる人の集合は財産の集合か、人として實在するや否やの問題也、從つて法律學上の問題にあらずして、社會學其他の學問に於て研究すべきものなりと雖も、法律上に於ても其實益ありて存す、從つて之を法律學より驅逐して無視する事を得ず、蓋若し法人が無形のものならば、法人は不法行爲を爲し得ざるべく、犯罪能力又なしと云はざる可らざるに至るべし、元來人の結合あるは結合の目的あり、此目的は、必ずしも之を組織する所の個人の目的と一致せず、啻に一致せざのみならず往々にして之と相反す、故に此目的を達するには、箇人の意思と異なりたる獨立の意思を要し、箇人の生活機能と異なりたる獨立の生活機能を要す、即ち人類の結合が、固有の目的、固有の意思、固有の生活機能を具備するに至るときは、之を組織する箇人の別異の生存を有する一の組織體を生ず、此の如く人類の結合によりて生ずる獨立の組織體を社團と稱す、以上の如く固有の目的、固有の意思、國有の生活機能を有する組織體は、素より人類と同一なる形體を有するものにあらず、故に眼を以て之を見ること能はず、手を以て之に觸るること能はず、然れども決して虛無假装のものには非ず、形體を具へざるが故に幻影なりと云ふは、誤解の極めて大なるもの也、若し形體なきが故に實在せずとせば、法律も實在せず、電氣も實在せずと云はざるべからず、現に國家地方團體は、其實在を吾人に感得せしめつつあり、然り而して社會萬般の目的は、單に人類の結合のみを以て遂行せらるるものにあらず、個人又は社團に屬せざる營造物が公共の用に供せらるる事あり、例へば祭祀、宗教に關する目的を有する寺院、教育を目的とする學校、慈惠を目的とする病院、養育院の如し、此の如き營造物が一箇人の所有に屬し、又は國家地方團體其他社團の爲めに設立せられたるものなるときは、箇人又は社團の機關たるに過ぎず、從て獨立の本體として存在する能はず、然れとも此の如き營造物が現に存在する所の權利主體に從屬せずして、一定の目的に供せらるるときは、獨立の組織體として存在を有するに至る、此の如くして發主したる組織體を財團と稱す、之に因つて是を觀れば、法人の本體は實在的の組織なりと云はざる可らず、此組織體に法律が人格を與へて始めて法人又は無形人として權利を有し、義務を負ふの資格を得ることとなるものなり、而して法人は之を別ちて、□一公法人と私法人、即ち權力團體と權利團體とに別つ、國家地方團體の如きは前者にして、各種の會社の如きは後者なり、□二營利法人と公益法人、即ち財産上の利益に關する事項を目的とするは營利法人にして、然らざるは公益法人なり、學校の如きは公益法人にして、各種の會社の如きは營利法人なり、□三社團法人と財團法人、即ち人の團體を基礎とするものと、目的財産を基礎とするもの是なり。(法人の部參照)
- 英
- Juridical person
- 独
- juristische Person
- 仏
- Personne morale
無形倶發
(むけいぐはつ)無形倶發とは、想像的數罪倶發の別名也、凡そ犯罪は、吾人の意思發動に基く物界の現象、即ち行爲を以て物質的要素とす、行爲は、意思發動及び物界の現象、即ち結果を以て成る、人の意思發動にして、單一の結果を生じたるに止まるときは、素より論なし、例へば短銃を以て人を銃殺したるが如し、之に反して、單一の意思發動より多數の結果を生じたるときは如何、例へば一發の彈丸を以て硝子窻を破り、更に人を殺害したる場合の如き、或は一發の彈丸を以て夫婦二人を殺害したるが如し、前の場合を別種の想像的倶發と云ひ、後の場合を同種の想像的倶發と謂ふ、想像的數罪倶發合の場合は、果して二罪として罰することを得るや、單に一罪を構成するに過ぎざるや、大に議論の存する所なり、されど犯罪の要素の一を行爲なりと解し、行爲は行動と結果とを以て成るとせば、單一の行動は假令數結果を生ずるも、單一の行爲なりと云はざる可らざると共に、一の行動を以ては假令結果に於て多數なるも一罪なりと云はざる可らず、從つて想像的數罪倶發も亦一罪なりと云ふを妥當と信ず。(數罪倶發の部參照)
- 英
- Abstract concurrence of sever-al offences
- 独
- abstrakte Konkurrenz mehrerer strafbarer Handlungen
- 仏
- con-cours abstrait de plusieur délits
無限
(むげん)無限とは、吾人の判斷推定を超越して終に測定すべからざる、例へば時間の連續、空間の延長、數量の增滅の如き、到底吾人の思考若くは經驗に訴へて、其際限を思議し得ざる底の現象を云ふ、而して眞に無限と云はるべきは、畢竟吾人の思考上にあることにて、實際界に於ては通俗に無限又は無盡藏等と稱するも、多く相對的なるを免れず、例へば撫順炭礦は無盡藏也、又は大平洋の際涯は限り知られず等と稱するも、是吾人の感覺知覺による經驗に訴へて計り知られざる迄にて、吾人が思考上に於ては明に地球の一部分として有限ならざるはなし、故に眞に無限と稱せらるべきものは時間空間數量の如き、吾人の思惟の根本制的となる、對象に於て絶對的性質を有するものに限るべし。
- 英
- Infinite
- 独
- unendlich
- 仏
- Infini
無限責任
(むげんせきにん)或責任を負擔する上に於て、特定の財産のみを以て、其責に任ずるを有限責任と謂ひ、之に反するものを無限責任と謂ふ、元來有限責任なるものは、特定の人を保護し、其事業を奬勵せんが爲めに生じたる制度にして、海運業に於ける船舶所有者が、海産に就てのみ其責を負ふが如き、株主が其有する株式の金額に就きてのみ會社事業に於ける危險を負ふが如きこれなり、之に反して、人が自己の負債に就き、自己の全財産を擧げて其責に任ずるが如きは、所謂無限責任にして、本來よりいへば、人は其負債に就き、無限の責任を負ふを至當とし、且つ斯るもののみを無限責任と謂ふべかりし也、さるを現時に於ては、人の負債に就き、自己の全財産を擧げてその責任にに任ずるを、無限責任と云ふに至れり、彼の法人たる合名會社の社員、合資會社及び株式合資會社の無限責任社員の、その會社の債務に對し負へる責任の如き是なり、蓋し斯る會社は、法律上に於てこそ法人なれ、實際上に於ては組合の如きものにして、組合員が其債務に就き、全責任を負へる制度より脱化しるものなれば、現時に於ける無限責任の意味は、或は自巳の全財産を舉げてその責に任ずるの外、尚自己の關聯せる法人の債務に就きてとの一條件を附加すべきものなりと謂ふべきか。(商六三、一〇四、二三五條參照)
- 英
- Unlimited liability
- 独
- un-beschränkte Haftung
- 仏
- Responsabilité non-limitée
無隈責任組合
(むげんせきにんくみあひ)組合にして無限責任の組緘によるものを稱して無限責任組合と云ふ、無限責任組合は彼の有限責任組合及び保證責任組合に相對するの語にして、各種の目的を有する組合に、此の組織あり得べし。(産業組合法二條二項及無限責任の部參照)
- 英
- Unlimited liability associa-tion
- 独
- persönlichhaftende Genossen-schaft
- 仏
- Association de la responsabilité non-limitée
無限責任社員
(むげんせきにんしやいん)會社社員の責任は必ずしも一なりといふ能はず、出資の限度に於て、會社債務に付き責を負ふ社員あり、出資の限度を超えて無限に責任を負ふ社員あり、合資會社の有限責任社員、株式會社、株式合資會社の株主の如き前者にして、合名會社社員、合資會社、株式合資會社の無限責任社員の如き後者の例なり、要するに無限責任社員とは、會社債務を完濟することを能はざる場合に、自己の全財産をあげて迄も其責に任ずるものにして、現行法の下に於ては合名會社社員、合資會社無限責任社員及び株式合資會社社員を指すものとす、而して此等の社員は社員たる間其責に任ずるのみならず、退社後と雖も退社の登記したる後二箇年を經過せざる間は、其責を免るるを得ざるもの也、從つて退社の登記を爲さざるときは、何年を經過するも會社債權者に對して其責を辭すること能はざるなり。(商六三、一〇五、二三六條)
- 英
- Partner with unlimited liability
- 独
- Komplementär
- 仏
- As-socié de la responsabilité non-limitée
婿養子
(むこやうし)他人の養子となると同時に、養親の娘の夫となるを婿養子と謂ふ、即ち婿養子は緣組と同時に婚姻を爲す者にして、婚姻と緣組とは分離することを得ざるものを指す。(民七八八條二項)婿養子緣組とは、甲男と乙女と婚姻すると同時に、甲男が同時に乙女の親たる丙者と養子緣組を爲すを云ふ、即ち婚姻と養子緣組とが同時に行はるるを指す也、從つて養子緣組の要件を守り、婚姻に付きては婚姻の要件に遵はざる可らず、要するに二個の行爲なるも、併合して同時に行はるるを以て特色とするもの也、俗間婿と唱へて養子と區別するが如きも、法律に於ては婿養子と雖も、一般の養子と異なることなし、而して當然の結果として、自己の妻と共に、養親(妻に採りては實親)等の遺産を他の實子、養子と相並びて相續し得べきなり。(民七八六、七八八條參照)
- 英
- Adopted son-in-law
- 独
- Schwieger-sohn
- 仏
- Beau-fils adapté
婿養子緣組
- 英
- Adoption of Mukoyōshi
- 独
- Ehebund vom Schwiegersohn
- 仏
- Adop-tion de Mukoyōshi
無罪
(むざい)廣く無罪といふ時は、刑罰を執行せられざる凡ての場合を含む、例へば刑の全免、期滿免除等をも含むが如し、之に反し、狹義に於て無罪といふ時は、犯罪不成立の場合のみを云ふ、例へば故意犯に付き、故意の缺欠、正當防衞、急迫危難に基く行爲、知覺精神の缺如に基く行爲の如し、更に別箇の意味に於ては、人違の如く其人に付て毫も犯罪の無かりし場合、犯意ありと雖も犯罪行爲に至らざる場合及び犯罪の實行に著手せしも、自ら任意に其行爲を中止したるが如き揚合を指す、例へば人違の爲め、犯罪行爲なかりし爲め、中止したる爲め、刑事被告人として拘禁せられたる者に對し無罪なりと判決する場合の如し、從つて無罪の用例は區々として一定せざる也、要するに無罪とは、犯罪と同一狀態の行爲あるも、罪の違法を阻却すべき原因ありて、犯罪成立せざる揚合を無罪と謂ふ。(刑訴二二四條)
- 英
- Innocence
- 独
- Schuldlosigkeit
- 仏
- Innocence
無緘配達
(むしんはいたつ)電報に於ける指定事項の一名稱にして、電報を封緘せずして受信人に配達すべき旨を指定するを云ふ、其略符號は、和文に於ては「ナシ」にして、歐文に於ては「RO」とす。(電報規則九條參照)
- 英
- Delivery without seal
- 独
- Verteilung ohne Siegel
- 仏
- Délivrance sans le sceau
無償
(むしやう)無償とは相手方より反對給付を受けざること、即ち報償なきことを云ふ、民法第五九三條に「無償にて使用及び收益を爲したる後云々」とあるは其用例とす。無償貸付とは、廣く反對給付を得ずして、金錢其他の物品を貸附くるを云ひ、無利息にて消費貸借を爲す事使用貸借を爲す事をも含むも、狹義に於ては之を除外す、北海道國有未開地處分法第九條に「無償貸付」とあるは狹義の用例也。
- 英
- No consideration
- 独
- Unentgelt-lichkeit
- 仏
- Gratuit
無償貸附
- 英
- Lending without consideration
- 独
- unentgeltliche Verleihung
- 仏
- Prêtgratuit
無償契約
(むしやうけいやく)無償契約は有償契約と相對し、契約當事者の一方のみ義務を負擔し、他の一方は何等反對給付の義務を負擔せざる契約を云ふ、例へば贈與、使用貸借、無利息の消費貸借等の如し。
- 英
- Contract without consideration
- 独
- unentgeltlicher Vertrag
- 仏
- Contrat gratuit
無償行爲
無償行爲、財産權に關する法律行爲は之を大別して有償行爲、無償行爲とす、各當事者が双互に出捐を爲すに依りて、相手方に利益を供與する法律行爲を有償行爲と謂ひ、當事者の一方のみが出捐を爲すに依りて、相手方に利益を供與する法律行爲を無償行爲と謂ふ、此二者の區別は、一方の出捐と他の一方の出捐を前提とし、一方の出捐に依る利益の供與と、他の一方の出捐に依る利益の供與とが、相互に對價となるや否やに依りて區別す、別言すれば雙方の爲すべき出捐に依る利益の供與は、互に索連して同一法律行爲の内容となりて、分離する事を得ざるや否やによりて定む、若し二者の利益の供與が相分離する事を得べしとすれば、各別の法律行爲を爲し、二個の無償行爲を成立せしむ、例へば賣買、交換は有償行爲にして、贈與は無償行爲なるが如し、賣買に於ては當事者の一方が權利を移轉し、他方が之に對して金錢を支拂ふ、其揚合には權利移轉若くは、權利移轉の債務を負擔する事と、代金支拂の債務を負擔する事とが互に前提となりて一個の法律行爲の内容を組織す、之に反して贈與の場合には、當事者の一方が單純に權利を相手力に移轉し、若くは之を移轉するの債務を負擔し、相手方は、之に對して何等出捐を爲さず、此場合に贈與者の爲す所の移轉は、前に受贈者より或利益を受けたる事を緣由と爲すことあるべきも、之が爲め有償行爲とならず、蓋し前に贈與者が受贈者より或利益を得たることは、法律行爲の内容となるに非ずして、單に法律行爲を締結するの理由たるに過ぎざればなり、無償行爲なるや否やに依て其效果を異にする場合尠しとせず、無償行爲に付きては、贈與に關する法則に依りて支配せらるるが如き其一例なり、いふ迄もなく無償契約は無償行爲の一種とす。(被産法九九〇條)
- 英
- Act without consideration
- 独
- unentgeltliche Handlung
- 仏
- Acte gratuit
無主
(むしゆ)特定の所有者に屬せざることを云ふ、遺棄の動産、山野の鳥獸、河川の魚鼈の如き其一例なり、民法に「無主の動産は所有の意思を以て之を占有するに依りて其所有權を取得ず」「無主の不動産は國庫の所有に屬すとあるが如き即ち此用例也、無主物とは、所有者なき動産、不動産を總稱する語とす、遺棄の動産、不動産、相續人なきこと確定したる相續財産中の動産、不動産、山野の鳥獸、河川の魚鼈の如き是なり。(民二三九條)
- 英
- No owner
- 独
- Besitzerlosigkeit
- 仏
- Sans le propriétaire
無主物
- 英
- Thing without owner
- 独
- Ding ohne den Besitzer
- 仏
- Chose sans le pro-priétaire
無資力
(むしりよく)廣く無資力と云ふときは、資産又は資格なきを云ふ、例へば民事訴訟法第九三條に「訴訟費用支拂の無資力を證すべし」とあるが如し、狹義に於て家資分散法等に於ける家資分散の宣告を爲すの要件として揭ぐる所の無資力は、強制執行の結果、愈々債務を完濟するの資力なきことを指す。
- 英
- Insolvency
- 独
- Unvermögen
- 仏
- Insolvabilité
無請求品
(むせいきうひん)無請求品とは、官設保税倉庫に於て、藏置期限(貨物藏入の日より滿一ケ年)を經過するも貨主の引取らざる貨物を云ふ、當該官廳は、此揚合に其貨物の記號、番號、品名、個數等を公告し、其當日より滿六ケ月を經過するも、尚之を引取る者なきときは、該貨物を競賣に付し、輸入税、公告料、競賣手數料、庫數料其他の費用に充て、殘金を貨物所有者に還付するものなり。(保税倉庫法一六條)
- 英
- Non-requested articles
- 独
- unerforderte Artikel
- 仏
- Article non-requesté
無籍者
(むせきしや)何れの國籍をも有せざる者を指して無籍と謂ふことあり、法例、國籍法等に於て、無籍者と云ふは此の用例とす、何れの屬籍をも有せざる者を無籍者と謂ふことあり、元來屬籍なるものは、人事に關する身分及其の存在を明にせんが爲めに現出したるものにして、族稱、戸籍、身分登記に依りて證明せらる、而して此の屬籍なき者を無籍と云ふ用例は、通俗無籍無宿者など唱ふるが如き、其の他戸籍法等に於て無籍者と云ふは此の用例なり。(國籍法戸籍法參照)
- 英
- Person without forum
- 独
- Person ohne Forum
- 仏
- Personne sans le forum
無責任
(むせきにん)法律上其責任ある場合に之を負はざるを無責任と謂ふ、責任なきを云ふに非ざるなり、意思無能者は法律上無責任なり、精神病者も法律上無責任なり、而して無責任と云ふも範圍に廣狹あり、支配すべき法律の如何によりても異なる、瘖啞者は刑法上無責任なりと雖も、民法上は必ずしも然らず、從つて各箇の場合に具體的に定むるの外なし、唯意思無能力者、精神病者は、如何なる場合に於ても無責任とす。
- 英
- Free from duty
- 独
- Unver-antwortlichkeit
- 仏
- Irresponsabilité
無責任行爲
無責任行爲とは、法律上の責任生ずるも之を負はざる行爲を云ふ、意思無能者、精神病者の行爲は一般に渉りて無責任行爲なり、正當防衞、危迫危難に基き爲したる行爲も無責任行爲なり、官吏が職務執行として適法に爲したる行爲も、責任を負はず、兩議院に於て發言したる意見及表決に付ては、院外に於ては無責任なり、但し議員自ら其言論を演説刊行筆記又は其他の方法を以て公布したるときは責任あり、尚天皇は國法上凡てに渉りて無責任なり、攝政も然りと解するを可とす、天皇に民事上の責任ありと解する者あるも、事實に遠かざると共に妥當を缺く。(憲法三、五二條)
- 英
- Act without responsibility
- 独
- unverantwortliche Handlung
- 仏
- Acte irresponsable
無訴權
(むそけん)訴權なきことを無訴權と謂ひ、原告の提起したる訴は、通常裁判所に於て審理すべき權限に屬せず、從て被告は應訴の義務、即ち本案に付て答辯する義務なき事を主張し、原告の訴の却下を求むる抗辨を無訴權の抗辯と謂ふ、而して此抗辯を提出したるときは、裁判所は本案を措きて先づ此抗辨の適否に付きて裁判を爲すの義務を生ず、若し此抗辯にして、理由あるときは原告の訴を却下し、理由なきときは抗辨を却下し、本案事件を審理す。(民訴二〇六條)
無訴權の抗辯
無租地
(むそち)租税を賦課する土地に相對し、租税を賦課せざる土地を無租地と云ふ、官有地及免租地即ち是なり、北海道區制第七六條に「無租地」とあるは其用例とす。(免租地の部參照)
- 英
- Land free from tax
- 独
- steuer-freies Land
- 仏
- Terre sans la taxe
無體物
(むたいぶつ)物理學上に於て物といへば、必ず液體、固體、氣體の何れかに屬す、從つて通俗物と云へば必ず有體物也、我民法上に於ても亦然り、されど法律上に於て、古來物を別ちて有體物、無體物となし、五感の作用に依り認識し得べき存在物を有體物と唱へ、之に反して、思想上單に理解し得べきものを無體物と稱へ來れり、我が舊民法に於ても亦然り、例へば權利の如きは無體物なりと、若し物は物自身が人生に役立つにあらずして、物に存する一種の力が有用なりとの見解に從ひ、又は物はエーテルの波動に依て認識し得るに外らなず、從て物は常に存在物なるも、發しては氣體となり、凝りては固體となるものなれば、吾人が單に一種の力に過ぎずと信ずる電氣の如き、果た單に吾人の思想上に於ける理會力により感得し得るに過ぎざる所謂無體物も、或は此が體形を認識して、有體物の分類に入り得ることなきを保せず、さらば物は有體物に限るとなすは理由なく、物を有體、無體と區別する如きは一層兒戯に類するものと謂ふべし。(物の部參照)
- 英
- Incorporeity
- 独
- Unkörperlich-keit
- 仏
- Chose incorporale
無擔保裏書
(むたんほうらがき)手形所持者が手形を裏書讓渡したるときは、其裏書を受けたる者即ち被裏書人、及び其後者全員に對して擔保及び償還の義務を負ふ、此の如く引受人が手形債務の引受を爲さざるときは、手形所持人又は後者の請求により、擔保を供するの義務を負ふと共に、引受人が手形金額の支拂を爲さざるときは、手形金額及之に附隨する損害金の支拂を呈供せざるべからず、斯る責任の生ずる裏書を稱して、擔保裏書又は單に裏書と謂ふ、擔保裏書たるには、如上の責任を負ふ旨を明定するを要するに非ず、法律は手形の流通を計らんが爲め、裏書人に當然斯る責任を負はしむるものとす、而して裏書人が斯る責任を免れんと欲する場合は、即ち無擔保裏書に依るべく、即ち無擔保裏書とは擔保裏書に對するの語にして、被裏書人及び其後者全員に對して斯る責任を負はざる性質の裏書を云ふ、裏書を爲す場合に、手形に手形上の責任を負はざる旨を記載したるときは、一切其責任を負はざるもの也、斯る裏書は必ず手形其ものに爲さざるべからず、口約、別紙を以て斯る責任を負はざることを約するも、手形上の效力を生ずることなし。(商五五九、五二九、五三七條)
- 英
- Endorsement without securi-ty
- 独
- Indossament ohne Obligo
- 仏
- Endossement sans garant
無定役囚
(むていえきしう)定役に服せざる囚徒を稱して無定役囚と謂ふ、凡そ囚徒は常に定役に服するものにあらず、流刑、禁獄、輕禁錮及び拘留に處せられたる囚徒の如きは、即ち定役に服せざるものとす、此等の囚徒を無定役囚と謂ふ。(監獄則一九條)
- 英
- Criminal without given work-ing
- 独
- Gefangene ohne bestimmte Arbeit
- 仏
- Condamné sans le travail
無條件債務
(むでうけんさいむ)債務に條件附債務あり、單純債務あり、無條件債務とは、條件附債務と相對するものにして、單純債務の別名とす、此金剛石を汝に與へんと約するときは、是單純債務即ち無條件債務なり、此金剛石を汝に與ふべし、然れども若し余が某子爵令孃にして交際社會の花と呼稱せちるる其女子と結婚せば、此剛石を以て其女子即ち余の未來の愛妻の装飾品と爲さんことを希ふ、故に其女子と結婚せば速に返戻せよと約するときは、是解除條件附債務にして、條件附債務の一例とす、明日雨降らば、此傘を汝に與へんと約せるときは、是停止條件附債務にして又條件債務の一例なり、而して無條件債務と條件附債務とは、之を區別するの實益あり、即ち停止條件附債務の場合には直に其效力を生ずることなく、條件の成就によりて始めて效力を生じ、解除條件附債務の場合には、條件の成就によりて效力を失ふものなればなり。(民五一三條參照)
- 英
- Unconditional obligation
- 独
- unbedingte Obligation
- 仏
- Obligation sans condition
無能力
(むのうりよく)法律行爲を爲すの能力なきを云ふ、無能力とは、法律行爲を完全に爲し得る能力を制限せらるるに止まり、權利を得る能力、義務を負ふ能力を缺くものにあらず、此の點特に注意せざるべからず。無能力者とは、我民法に於ては、未成年者、禁治産者、準禁治産者及び妻なり、前三者は無能力者を保護せんが爲めに之を設け、後者は夫權保護の爲めに之を設く、又未成年者妻は當然無能力者なるも、禁治産者、準禁治産者は、裁判所の宣告に依りて始めて無能力者となる、而して未成年者、禁治産者及び未成年の妻に對しては、法定代理人を附して之を保護し、準禁治産者に對しては保佐人を選定して之を保護す、且つ此四者は無能力者なりと雖も、其範圍は財産上の事項に付きてのみ、身分上の事項に付きては能力者ることを原則とす、但し意思能力なき場合は、身分上の事項に付きても無能力なりと雖も、是無能力者たるが爲めにあらず、意思能力なきが爲めなり。(民四條乃至二〇條、行使無能力の部參照)
- 英
- Incompetency
- 独
- Unfähigkeit
- 仏
- Inhabilite
無能力者
- 英
- Incompetent person
- 独
- un-fähige Person
- 仏
- Incapable
無名契約
(むめいけいやく)凡そ契約事項は、其細目に至る迄當事者に於て、悉く之が取極めをなさざる可らずとせば、頗る煩勞に堪へざるが故に、法律は豫め契約中重要にして且つ適用の頻繁なるものを選び、其の細目の規定をなして、この煩勞を避けしむ、此契約を有名契約と謂ふ、之に反して、其の適用の多からざるが故に、立法者の豫め細目の規定をなさず、其特別の名稱をも附せざるものを無名契約と謂ふ、敢て名なきの意にあらざる也、凡そ契約は、吾人に於ては重要なる事項にして、人の生活せる上は最大となく是あるは實際なり、それ吾人の意思は自由にして、事苟も公安に害なき限りは、如何なる事項と雖も自由に契約を締結し得べく、敢て有名契約の範圍に限られざるものとす、而して法律が特に命名せざる契約と雖も、又法律の保護を受くるは言を俟たず、唯之を保護するは、其の契約に類似せる有名契約の規定を準用するものとす。(契約の部參照)
- 英
- Anonymous contract
- 独
- In-nominalkontrakt
- 仏
- Contrat anonyme
無名著作物
(むめいちよさくぶづ)著作者が其氏名を表はさずして發行せる著作物を稱して無名著作物と謂ふ、此種の著作物の著作權は、發行又は興行の時より三十年間繼續す、(普通の著作權は、著作者の生存間及び其死後三十年間繼續す、)但し其期間内に著作者其實名の登錄を受けたるときは、其著作權の存續期間は普通の著作權と異なることなし。(著作權法三、五一五條)
- 英
- Works without its author's name
- 独
- Innominalwerk
- 仏
- Ouvrage sans le nom d'auteur
明記
(めいき)通常明記といふは、或事柄を明瞭に記載するを云ふ、即ち特に或事柄を記載せずして、全體を推考して始めて知り得べきことの反對を指して云ふ也、法律上に於ても大體之と異なることなく、「道路修繕の爲め、車馬の通行を禁ず」とあれば、即ち車及び馬の通行を禁ずるに明記を以てしたるものにして、從て其以外の物は之を禁ずるにあらざるが如きも、牛象の如きものの通行は勿論之を禁ず、蓋し特に道路修繕の爲め車馬の通行禁じたるに、更に道路の修繕に不可なる牛、象を禁ぜざるの理なければなり、民事訴訟法第三九七條に「不服を申立つることを得ずと明記したるとき」とあるは其用例とす。
- 英
- To be in pursuance of the provi-sion
- 独
- Vorsichtgemäsz
- 仏
- Disposi-tions expressées
名義上の損害賠償
(めいぎじやうのそんがいばいしやう)自己の行爲に基き他人に損害を與へたる者は、之が損害を賠償すべきは、洋の東西、時の古今に論なく、道理の要求する所とす、而して其の損害たるや、敢て金錢上の損失たるを要せず、心神の不滿、慾望充足の欠缺等即ち名義上の損害も亦損害の一種たるを得べし、斯る揚合に於て、其の名義の損害を賠償せしむるを名義上の損害賠償と稱す、損害賠償の方法に於ては、其の如何なるものたるを問はず、金錢を以て普通とし、其他の方法に依るは寧ろ特例にして、元來なれば名義上の損害は、敢て金錢的の損失にあらざるを以て、之が損害を金錢に見積るべきものにあらざるなり、されど實際に於ては金錢に依るものとし、假令實益が金錢的にあらずとするも、裁判所は猶金錢を以て其の賠償を命ず、以上を要するに、名義上の損害賠償は、金錢的の意義に於ては何等の損害あらざるも、或權利の毀損者に名のみの損害賠償を命ずるものを謂ふ、蓋し權利思想の盛んなるより生ずる所の制度にして、主として英國法系の國に於て採用せらるる所なり。(民七一〇、七一一條參照)
- 英
- Compensation for damage by name
- 独
- namentliche Ent-schädigung
- 仏
- Compensation du dom-mage par nom
明告書
(めいこくしよ)廣く明細に告知する書面を明告書と謂ふ、敢て私人に告知すると、官に告知するとは問ふ所にあらざるなり、されど普通は官に告知する書面を指すこと多く、例へば檢疫官吏の請求に依り、檢疫を受けんと欲する船舶の船長又は乘組員が、豫め一定したる用紙に、一定の事柄を記載し、申告者の氏名を署して提出すべき書面の如し。(臺灣海港檢疫施行規則四條)
- 英
- Report
- 独
- amtlicher Bericht
- 仏
- Rapport
明細書
(めいさいしよ)槪要を記載したる書面に對して、或事柄の顚末、其他の諸關係に渉りて、明細に記載したる書面を明細書と謂ふ、如何程詳密に記載したるものが明細書なるかは、各場合に依りて決すべき問題にして、一槪に論ずることを得ざるものとす、例へば或犯罪事件に關する明細書といへば、少なくとも犯罪に關する發見の次第、證據物件、被告人逮捕の次第等其の一切に渉りて記載すべきものなるが如し。
- 英
- Specification
- 独
- Verklärung
- 仏
- Specification
明示
(めいし)意思表示の力法に、明示を以て爲すことあり、默示を以て爲すことあり、明示を以て爲すとは、直接に法律行爲的意思に該當する表示を爲すを云ふ、例へば買入の意思を以て買入れんと申込むが如し、之に反して債權者が辨濟期に達したる債務に付き、債務者より次年度の利息を受領するが如きは、默示を以て元本の支拂を猶豫したるもの也、然れども明示と云ふは、必しも明白なる口頭、書面を以て爲すことを要せず、直接に法律行爲的意思を表彰すべき舉動は凡て直接の表示たる事を得べし、例へば他人の申込に對して默頭したる者は、直接承諾の意思を表示したるものなり、當事者間に特約したる秘密の暗號を用ひて品物の代金を取極めたる者は、明示に依りて賣買の意思表示を爲したるもの也、又他人より買入れの申込を受けたる者が何等返事を發せざるも、其目的物即ち相手方の買入れんと欲する物を送付したるが如き、等しく明示の意思表示と云ふに妨ぐる所なし。(暗默の意思表示の部參照)
- 英
- Clear expression
- 独
- deutliche Darstellung
- 仏
- Expression claire
名籍元簿
(めいせきげんぼ)各人の姓名等を記載したる元簿を名籍原籍と稱す、監獄則施行細則第二條に「入監者には先づ之に番號を付し、通身を檢査し、名籍原簿に其要項を詳錄し、仍ほ在監人遵守の要件を説示すべし」とあるは其用例なり。
- 英
- Names' last
- 独
- Namenslitse
- 仏
- Registre des noms
メイトル條約
(めいとるでうやく)本條約は、西曆一八七五年佛國巴里府に於て、獨逸國外十六箇國の間に締結せる條約にして、我國に於ては明治一九年之に加入せり、此條約の内容は、□一新製メートル及びキログランム原器の比較監査、□二萬國原器の保存、□三定規を以て各國摸製原器を萬國原器及び其擬品と比較し、且つ各國標準寒暖計を相比較すること、□四新製原器を以て各國及び學術上に於て使用する所の度量衡原器にして、メートル法に基かざるものに比較すること、□五測地用の尺度をメートル原器に照準して之を比較すること、□六政府、學士協會、美術家又は學士の囑託に應じ、諸原器及確正尺度を比較監査すること是なり、而して加上の事務を掌らしむる爲め、度量衡萬國中央局を設く、萬國中央局は總て度量衡委員會の指揮監督を受けて事務を取扱ふ、但し該委員會は締約各國政府の委員を以て組織する度量衡總會議の支配を受くるものとする等其重なるものとす。(一九年四月一六日公布勅令參照)
- 英
- Metre treaty
- 独
- Meter-vertrag
- 仏
- Traité de mètre
明文
(めいぶん)法律が直接に或事項を明揭する條項を明文と謂ふ、民法第三條に「滿二十年を以て成年とす」とあるが如き即ち是也、之に反して法律は、何年以下を未成年とすと規定せず、右の條文より推して、當然二十年に達せざる者は、凡て未成年なるなることを暗示することあり、此の如きは明文にあらざるなり。
- 英
- Provision
- 独
- Vorsicht
- 仏
- Dis-positions
名簿
(めいぼ)姓名を登載せる帳簿を名簿と謂ふ、例へば或資格を有する者を選擧人となし、此の選擧人の姓名を登載せる帳簿の如き是なり。(衆議院議員選擧法八條、貴族院多額納税議院互選規則一三號)
- 英
- List
- 独
- Liste
- 仏
- Liste
命免
(めいめん)命ずること、免ずることを、併稱せる語にして、兼任又は囑託を命ずとか、官職を免ずとか、依願免本官とか云ふ場合を總稱するものなり、要するに任命と免官とを合して命免と謂ふ、消防規則第三條に「消防手は、警察署長之を命免す」とあるは此の例なり。
- 英
- Appointment and dismission
- 独
- Anstellung und Entlassung
- 仏
- Nomina-tion et démission
名譽刑
(めいよけい)刑罰は之を類別せば、生命刑、自由刑、財産刑、名譽刑となる、名譽刑は、直接に犯人の名譽を毀損する刑なりしも、現時に於ては斯る方法に出でずして、法律上各人の享有する資格を剝奪し、間接に其名譽を毀損する能力刑となれり、□一剝奪公權、□二停止公權之にして前者は重罪に、後者は輕罪に、何れも附加刑として之を科せられ、主刑として之を科する場合なし、而して即ち剝奪公權は終身下の公權を失はしむ、あ國民の特權、い官吏となるの權、う勳章、年金、位記、貴號、恩給を有するの權、え外國の勳章を佩用するの權、お兵籍に入るの權、か裁判所に於て證人となるの權、き後見人となるの權、但し親族の許可を得て子孫の爲めにするは此限にあらず、く分散者の管財人となり、又は會社及び共有財産を管理するの權、け學校長及び教師、學監となるの權これなり、停止公權は、輕罪の刑に於て監視に付せられたる者に、監視の期間中科せらるるものにして、主刑を免じ監視に付せられたる者も亦同じ、刑の執行中は無論監視に付せられざる輕罪と雖も公權を停止せらる。(舊刑三一條乃至三四條參照)
- 英
- Punishment of honour
- 独
- Ehrenstrafe
- 仏
- Peine à l'honneur
名譽權
(めいよけん)自己の名譽を保全するの權利を名譽權と謂ふ、別言すれば、法が人の名譽を保護するに依りて生ずる權利也、而して名譽權が我國法上果して認められたるものなるや、殊に法人は名譽權を有する者なるや否やは大に議論の存する所なり、我國法上人の名譽が保護せらるることは明白なり、蓋し民法に他人の身體、自由又は名譽を害したる揚合と、財産權を害したる揚合とを問はず、……■其の賠償を爲すことを要すと規定せられ、又刑法に「惡事醜行を摘發して人を誹毀したる者は、事實の有無を問はず左の例に照して處斷す」とあり、之に依て見るも、人の名譽は保護せられ、一種の權利として認められたるものと解するを妥當とす、次に法人が果して名譽權を有するや否やは、更に疑を容るべき餘地あれども、之を認めらると解するを近時學説の趨向とす、同上の刑法の規定が、法人を誹毀したる場合迄も含むや否やは疑なきにあらざるも、之を含むと解するを妥當とせん、民法の規定も亦然り、故に法人にも名譽權ありと解するを可と信ず。(民七一〇、舊刑三五八條)
- 英
- Right of fame
- 独
- Ehrenrecht
- 仏
- Droit de l'honneur
命令
(めいれい)天皇が、帝國議會の協贊を經ずして發し、又は發することを他の機關に委任して發せしむる法規を命令と謂ふ、命令は其發する者の如何によりて之を別ち、□一勅令、即ち天皇の自ら制定するもの、□二閣令、即ち内閣總理大臣の制定するもの、□三省令、各省大臣の制定するもの、□四臺灣總督府令、即ち臺灣總督の制定するもの、□五北海道廳令、即ち北海道廳官の制定するもの、□六府縣令、即ち府縣知事の制定するもの、□七警視廳令、即ち警廳總監の發するもの等となす、又更に其實質に依りて種別せば、□一大權命令即ち大權事項に付ての命令、□二緊急勅令、即ち公共の安全を保持し、又は其災厄を避くる爲め緊急の必要に依り、帝國議會閉會の場合に發するものにして、法律に代るべき效力を有するもの、□三執行命令、法律執行の爲めに制定するもの、例へば其細則を定むるが如き、□四獨立命令、公共の安寧秩序を保持し及び臣民の幸福を增進する爲めに發する命令等となす、尚此外に委任命令なるものあるや否やは議論あり、所謂委任命令とは、法律の委任に基き、法律に於て規定すべき事項を命令を以て規定する其の命令を云ふ。(憲法八、九條、緊急勅令、法規命令、委任命令の部參照)
- 英
- Order
- 独
- Befehl
- 仏
- Ordre
命令案
命令案とは、命令の草案を云ふ、尚法律に對して法律案と云ふも同じ、帝國議會の協贊を經て裁可公布なき以前は、法律となるべき内容を有するも、法律の草案即ち法律案也、命令案も亦然り、假令法制局に於て之を脱稿するも其公布なき以前は命令案に過ぎず、公布ありて始めて命令となる。(法制局官制一條一號)
- 英
- Bill of order
- 独
- Bill des Befehls
- 仏
- Note de l'ordre
命令關係
(めいれいくわんけい)單に命令關係といへば、服從關係と併稱して、命令服從關係と云ふに同じ、即ち治者被治者の關係にして、權力の關係なり、命令關係は、上説の如く公法部面にのみ存し、私法部面にはこれあることなし、彼の子が親に對する關係、妻が夫に對する關係の如きは、舊時に於ては一種の權力關係にして、親若くは夫は、其の子又は妻に對して生殺與奪の權を有したりしも、現時に於ては、純然たる私法上の關係となり、權利關係にして決して權力關係にあらざるものとす。(權力關係、戸主權、親權、夫權の部參照)
- 英
- Relotion of command and following
- 独
- Befehlsverhältnisz
- 仏
- Relation de l'ordre et de la soumission
命令書
(めいれいしよ)命令なる語は、諸種に用ひられ、或は法規としての命令即ち勅令、省令等の如き、(この意義に於ける命令は、一方に於ては彼の法律に對し、一方に於ては彼の處分に對するものとす)或は處分の一種なる命令即ち禁止又は命令を命ずるが如きこれなり、此の後義に於ける命令は、即ち人の意思を制限する或特定の處分にして、例へば司法裁判所に於ける裁判の或もの、行政官廳に於ける處分の或ものの如きこれなり、而して命令書と云ふも此の二義に依て異なり、勅令、閣令、省令を記載したる書面も命令書なれば、裁判所に於ける彼の判決、決定に對する、所謂命令を記載せる書面も命令書なれば、又行政官廳或は地方自治團體が、臣民に對して或命禁を命ずる命令を記載したる書面も、亦命令書といふことを得、されど普通は、此の最後の場合にのみ用ひらるるが如し、例へば豫戒命令を命令書を作りて命ずるが如し。(豫戒令五絛)
- 英
- Precept
- 独
- Befehl
- 仏
- Pré-cepté
命令法
(めいれいはふ)法規の内容を分析せば必ず二種に分る、即ち禁止法又は禁止法規、命令法又は命令法規是なり、所謂命令法とは、其法規の精神が被治者に對して或事項を命ずるにあり、例へげ兵役の義務を履行すべし、租税を納付すべし、手數料を納入すべし、老親を養ふべし、家族を扶養すべしと云ふが如き是也、之に反して禁止法又は禁止法規とは、或事項を禁ずるにあり、例へば人を殺す事勿れ、官廳の命令に違背する事勿れと云ふが如き是也、要するに命令法又は命令法規は禁止法規と相對するの語にして、被治者に對して或積極行爲を命ずる内容を有するにあり、國家が初めより此法令は命令法也、禁止法なりと明言するにあらず、學者其性質を案して其何に屬するかを定むるに過ぎず、刑法の如きは、大部分禁止法規にして、命令法規は極めて尠なきものとす。
- 英
- Imperative law
- 独
- zwingendes Recht
- 仏
- Droit impératif
命令法規
命令法規とは、上逑の如く命令法と云ふに同じ、學者或は法令の大體を察して、被治者の積極行爲を要求する場合は之を命令法規と云ひ、各條に渉りて、其條文が果して被治者の積極行爲を要求したるものなるや否やを察し、積極行爲を要求したるものとせば、則ち命令法なりと解し、以て兩者を區別すべしと云ふ者なきにあらざるも、果して斯る區別は如何なる實益を吾人に與ふるものなるや疑なき能はず、又或は命令法と云ふときは、其實質法規にあらざる揚合、例へば單箇の事項を規定する法令をも含むも、命令法規と云ふときは、必ず抽象的規定たる場合に限ると云ふ者なきにあらざるも、斯る區別も實益なし、要するに彼れ此れ差異なしと解して可なるべし。
- 英
- Rules of imperative law
- 独
- zwingende Rechtsnorm
- 仏
- Règles du droit impératif
免役
(めんえき)汎く免役と云へば、役務を免がれ又は免ぜらるるを云ふ、□一廣く解して服從を免るることを稱して免役と云ふ事あり、例へば舊刑第一七八條に「陸海軍の徵兵に編入せらべき者、身體を毀傷して疾病を作爲し、其他詐僞の所爲を以て免役を圖りたるときは、一箇月以上一年以下の重禁錮に處し、三圓以上三十圓以下の罰金を附す」とある如き其用例也、□二癈篤疾又は不具等の爲め、全く兵役に堪えざる者には、當該官廳は兵役義務を免除する旨の裁決を爲す、此裁決に依りて徵兵を免除するを免役と謂ふ、蓋し如何に癈疾不具と雖も、如上の裁決を受けざる以前は、尚兵役義務者たるを失はず、兵役義務を免除する旨の裁決に依て始めて免役者となり、全然兵役義務を免除せられ、爾後國民兵にも編入せらるることなく、從つて國民兵役にも服する義務なし、徵兵令第三章に「免役」とあるは其用例也、□三囚徒が服役を免ぜらるるを指して免役と云ふことあり、例へば免役日と云ふが如し。(監獄則施行細則四八條)
- 英
- Exemption from conscription
- 独
- Militärfreiheit
- 仏
- Exemption de la con-scription
免役税
(めんえきぜい)廣く免役税と云へば、役務を免ずる爲めに徵收する租税を云ふ、例へば、兵役に服するの義務に代えて徵收する租税の如し、昔時は往々にして外國人の自國に滯留する者に對し、租税を課したることありしと雖も、今日に於ては兵役の義務に服する者を内國人に限るとするを通例とする故に、從つて斯る税目なし、又或は内國人と雖も、免役税を納付する者には、兵役の義務に服することを免除したるの例もなきに非ずと雖も、現今の如く國民皆兵主義を採るに於ては、勿論斯る税目を認むることなし、注意すべきは免役税と兵役税と區別あること是なり、兵役税とは、或一定の租税を納付して、兵役の義務を免るるに非ずして、抽籖の結果現役兵として徵募せられざる者に對して課する一の人頭税也、從つて抽籖の結果其選當りたる者は、兵役税を收むるの義務なきも、假りに之を收むるも現役兵たることを脱退し得ざるものとす、此兵役税は歐洲に於て現今採用せられつつあり。
- 英
- Tax in the place of military service
- 独
- Steuer für die Konskription-freiheit
- 仏
- Impôt au lieu du service militaire
免役日
(めんえきび)監獄に於て法律上當然に服役を免ずる日を免役日と謂ふ、下の日即ち是なり、□一一月一日、二日、□二元始察、□三孝明天皇祭、□四紀元節、□五春季皇靈祭、□六神武天皇祭、□七秋季皇靈祭、□八神甞祭、□九天長節、□十新甞祭、十一一二月三十一日其他父母の喪に遭ふ者は、三日の免役を受く、監獄則第九一條に「免役日及日曜日の教誨は教誨に於てし、休役間の教誨は被教誨者の居所に就き之を爲すものとす」とあるは其用例なり。
- 英
- Dismissal days from criminal service
- 独
- Tage der Strafarbeitsfreiheit
- 仏
- Jour de la démission du service crim-inel
免許
(めんきよ)免許は、又許可とも云ふ、一般に禁止せられたる行爲を、特別の場合に其禁を解く行政處分也、從つて□一法規が許可の目的たる行爲を一般に禁止せる場合なることを要す、豫め一般に禁止なければ、禁止を解くと云ふ觀念生ずることなきなり、□二法規を以て一般に禁止せる場合に、特に其禁止を解くことを許容したる法規あることを要す、蓋し法令の根據なくして禁止を解くこと能はざればなり、□三當事者の請求あることを要す、若し當事者の請求なくして免許を與へたるときは違法也、從つて上級官廳は之を取消すことを得べし、而して免許には人に重きを置くものあり、目的物に重きを置くものあり、若し目的物に重きを置きたるときは、其效力は讓受人に及ぶを原則とす、免許は、認可、特許と異なる、認可は、公私人の行爲に對し法律上效力を生ぜしむる處分にして、免許の如く一般に禁止せられたるものを、特に爲すの權利を與ふるものにあらず、唯之に一種の效力を與ふるに過ぎず、從つて免許なくして爲したる行爲は違法なるも、認可なくして爲したる行爲は違法にあらず、唯無效たるに過ぎず、特許は免許の如く處分を受けたる者に對し、公法上の權能を生ぜしむるに止まらず、一種の私法上の權利を生ぜしむるものなり、此權利は、純然たる私權なるを以て、免許と異なり之を侵害したる者に對しては、民事訴訟を以て之が救濟を求むることを得るも、免許の侵害は行政上の手段に依るの外なしとす。(非訟手續一八七條八號許可の部參照)
- 英
- Concession
- 独
- Bewilligung
- 仏
- Concession
免許營業
(めんきよえいげふ)一般に禁ぜられたる行爲を、特定の場合に許して爲さしむる營業を免許營業と謂ふ、例へば一般に禁ぜられたる銃砲商、火藥商を、特定の場合に許して爲さしむる營業の如し。(免許の部參照)
- 英
- Concession of business
- 独
- Gewerbebewilligung
- 仏
- Affaires de la concession
免許料
(めんきよれふ)免許料とは、免許に關して徵收する手數料を意味し、ある場合に於ては、營造物使用の許可に對して徵收する手數料も、免許に際して徵收する免許税をも等しく免許料と謂ふものとす、故を以て免許料なる語は、法令の各場合に當て決すべき問題にして、一槪に之を論ずることを得ざるも、免許を與ふるに際し徵收する金額なりと謂ふべし。免許税とは、一般に禁止せられたる事項を爲すことを許す場合に、賦課徵收する一種の租税なり、例へば狩獵の免許を與ふるに際し、出願人より徵收する狩獵税の如き是なり、狩獵法九條に「免許税」とあるは此の用例とす。
- 英
- Fee of permit
- 独
- Erlaubnisz-gebühr
- 仏
- Honoraire du permis
免許税
- 英
- Tax of remission
- 独
- Erlaub-nissteuer
- 仏
- Remise de l'impôt
免許狀
(めんきよじやう)免許狀といふも免許書といふも略ぼ同義にして、ある一般の禁止を特定の場合に解除せることを證明する書面、又は書狀を云ふ、免許狀又は免許書は、免許の出願者に對し下さるべきものにして、以て出願者が其の免許の事實を證明するの要に供するものとす。(非訴手續一八七條八號)
- 英
- License
- 独
- Gewerbschein
- 仏
- Licence
免許書
- 英
- Permit
- 独
- Erlaubnisschein
- 仏
- Permis
免許鑑札
免許鑑札も前二者と等しく、免許の事實を證する爲めに其出願者に對し下附するものなるも、免許狀、免許書と異り、一種の證票たる點にあり、即ち前二者は書類なるも、鑑札は一の證票たり、所謂證票とは、或事實を證する爲め作成せられたる文書にて、記號を以て證せられたるものを云ふ、故に名は鑑札と稱するも、一種の書類なる時は實は鑑札に非ずして、是等は他の種類に屬すべきものとす。(證票の部參照)
- 英
- License
- 独
- Gewerbschein
- 仏
- Licence
免官
(めんくわん)免官とは、官吏關係を解除する國家の行爲なり、即ち或者の官吏たる身分を剝奪するを云ふ、免官は國家の單意を以て任意に之を爲すことを得るを原則とす、官吏が免官せられんことを望むも、之を拒否するも、亦妨げざる所なし、例へば免官を求めたるにより、之を容るれば依願免官となるも、之を拒否して懲戒免官に付するを得べし、免官の原因は一ならず、國家が官廳を廢したるに依ることあり、懲戒に依ることあり、願に依ることあり、然れども官吏關係を解除するを云ふに至りては即ち一なり、從軍記章條例第五條に「免官」とあるは其用例とす。
- 英
- Dismissal from office
- 独
- Eutlass-ung
- 仏
- Démission de la poste officielle
免職
免職と云ふも、免官と云ふも、俗間之を同一視すれど、觀念に於ては勿論異なる、免職あるも、官吏關係は依然として存續す、免官に依て始めて官吏關係止む、從つて免職せらるるも官吏たるに妨なし、例へば退職、非職を命ぜられたる者も、依然官吏たるが如し、されど法令に於ても、命官と免職を略ぼ同義に解すべきことあり、即ち一定の職務に從事するが故に、或關係を生ずる場合に、免職に依りて其の關係終止するが如き是なり。(判事懲戒法二條)
- 英
- Dismission
- 独
- Entlassung
- 仏
- Renvoi
免罪
(めんざい)廣く免罪と云ふときは、□一刑罰執行の免除を受くるを指して云ふことあり、例へば特赦又は親族相盜なるの故を以て、刑罰執行を免るるが如き是なり、□二刑罰執行を受けざるに止まらず、更に曾て罪を犯したること無きと同視せらるることを稱することあり、例へば大赦を受けたる者の如き是也、蓋し特赦等により刑罰執行を免れたる者は、後日再び罪を犯すときは、再犯を以て論ぜらる、之刑の執行を免除したるに止まり、曾て罪を犯したることなしとせらるることなければ也、舊刑第六四條に「免罪」とあるは其用例とす。
- 英
- Remission of crime
- 独
- Straffrei-heit
- 仏
- Permission de la crime
免責
免責を廣く解せば、公法、私法上に於て、其責任の消滅する場合を指して云ふ、其責を免ぜらるる原因の免除に依ると、履行に依ると、罪及其他の原因に依るとは問はざるなり、狹義に之を解せば、債權者の拘束を離脱するを云ふ、民法第四四二條に「連帶債務者の一人が、債務を辨濟し、其他共同の免責を得たるときは、他の債務者に對し、其各自の負擔部分に付き求償權を有す」とあるは其用例とす。
- 英
- Liberation
- 独
- Freilassung
- 仏
- Libération
免除
(めんじよ)債權者の爲す債權の抛棄を免除と謂ふ、債權は物權に同じく、享有者に於て之を抛棄することを得、而して抛棄は、常に之を消滅せしむる效力を生ず、免除は、債權者が債務者に向て爲すべき意思表示に依りて效力を生ず、物權の抛棄は、常に權利者一人の意思表示によりて完成す、債權も然り、債權者が之を抛棄する意思を表示せば則ち完成す、然れども債務者以外の者に對して之を表示するも、抛棄したりと解するは早計也、單に其意を示したるものと解し、相手方即ち債務者に對して爲したるとき、始めて其效を生ずと解せざる可らず、抛棄の意思は、明示を以てするも、默示を以てするも妨げなきはいふ迄もなし、債權者が免除を爲すの原因は一にして足らず、和解の結果として爲すことあり、報酬を得るの前提として爲すことあり、單純に之を爲すことあり、何れも債權の抛棄なるが故に、無償ならざる可らざるは勿論なり。(民五一九條)
- 英
- Exemption
- 独
- Erlasz
- 仏
- Ex-émption
免税
(めんぜい)汎ねく免税と云へば、其の特定たると一般たるとを問はず、租税を免除せらるるを云ふ、例へば荒地の地租を、被害の年より向ふ十五箇年以内免税せらるるが如し。(市制一〇四絛)
- 英
- Exemption from tax
- 独
- Steuerfrei-heit
- 仏
- Exemption de l'impôt
免租
免租とは、地租を免除せらるることにして、免税と云ふと略ぼ同義なるも、免除せらるる租税が地租に限るの點に於て狹義たり、或は之を廣義に解して、免税と同一に使用する者なきに非ざるも、敢て誤りたる用法と云ふにあらず、現行の法令に於ては此の如く廣義ならざるを慣例とす。(地租條例一一、一九、二〇條等)
- 英
- Remission of land-tax
- 独
- Steuer-freiheit
- 仏
- Remise de l'impôt sur la terre
免責時效
(めんせきじかう)免責時效とは、現行民法に於ては、消滅時效と云ふに同じ、所謂時效を別ちて、取得時效、消滅時效となす、後者は時日の經過に因りて權利を喪失するを云ふ、此の消滅時效を或は免責時效と謂ふ、蓋し消滅と云ひ、免責と云ふも、一方は權利者の方面より觀て消滅となし、他は義務者の方面より觀察して免責と云ふなり、二者全く同一なる事知るべし、而して權利の如何に因りて其期間異なる、即ち左の如し、□一普通の債權は十年、□二及び所有權以外の財産權は二十年(但し所有權は何程經過するも時效に罹ることなし)、□三定期金の債權は第一回の辨濟期より二十年又は最後の辨濟期より十年、例へば二年目每に、金二百圓づつ十五年給付せしむる債權ありとせんに、最初の辨濟期に至るも辨濟を求めず、放任したるが如き揚合に、二十年を經過したる場合は、最終に給すべき二百圓は、僅五年を經過したるに過ぎざるも、尚消減すべきものとす、又最終の辨濟期より十年を經過したるときも消滅す、□四年又は之より短き時期を以て定めたる金錢、其他の物の給付を目的とする債權は、五年間之を行はざるに因りて消滅す、例へば利息、借賃、給料等の如き是なり。(民一四四條乃至一六一條、一六六條乃至一七四條)
- 英
- Liberatory prescription
- 独
- Freilassungsverjährung
- 仏
- Prescription libératoire
免訴
(めんそ)免訴に二種あり、免訴の判決、免訴の豫審決定是なり、前者は犯罪を認むるも、刑罰消滅原因により、科刑權を認めざるものなり、即ち、□一公訴の時效に罹りたるとき、□二確定判決を經たるとき、□三大赦ありたるとき、□四法律に於て其罪を全免したるとき、□五告訴を待て受理すべき事件に付きては、告訴の棄抛ありたるとき、□六犯罪後頒布したる法律により、其刑の廢止ありたるとき是なり、而して刑事訴訟法に於て、免訴の判決は之を無罪の判決と區別したりと雖も、其實益なきなり、何となれば兩者とも被告人より上訴を爲すことを得ず、又兩者とも確定するときは既判力の效果を生じ、一事不再現の適用あり、別に異なる點を見ざればなり、後者即免訴の豫審終結決定は下の場合に爲す、□一犯罪の證據充分ならざるとき、□二被告事件罪とならざるとき、□三公訴の時效に罹りたるとき、□四確定判決を經たるとき、□五大赦ありたるとき、□六法律に於て其罪を全免したるとき、□七告訴を待つて受理すべき事件に付き告訴の抛棄ありたるとき、□八犯罪後頒布ありたる法律に於て其刑を廢止したる場合、□九訴追の條件を缺きたるとき、□十起訴の手續無效に屬するに由り公訴不受理となるべきとき即ち是なり。(刑訴一六四、二二四條)
- 英
- Dismissal of a law case
- 独
- Prozesz-freiheit
- 仏
- Démission de procès
免租地
(めんそち)地租を課せざる民有地を免租地と謂ふ、從つて官有地に免租地なるものなし、鄕村社、墳墓地、公立學校地、用惡水路、溜池、隄塘、井溝、鐵道用地、禁伐林及び公衆の用に供する道路これなり。(地租條例一一條以下)
- 英
- Land free form taxation
- 独
- Steuerfreiheitsland
- 仏
- Terre nom-im-posée
免租年期
(めんそねんき)免租年期とは、荒地が被害の年より十五年以内に於て、其地租の賦課徵收の免除せらるる期間を云ふ、此の期間内は、地租の賦課及納付を免除せらるるものにして、免租繼年期の許可なき限りは、其の年期明けの翌年より、地租の賦課納付を免れざるに至るべきなり。(地租條例二〇條)免租繼年期とは荒地となりたるが爲め、耕作に堪へずとして、地租の免除を得たる土地が、其の期間を經過するも、依然として荒地たるを免れざるか、又は原形に復するに容易なるざる揚合に、更に引續きて地租の免除を受くる期間を云ふ。
- 英
- Term free from taxation
- 独
- Steuerfreiheitstermin
- 仏
- Terme du remise de l'impôt
免租繼年期
- 英
- Continued term of remission of land-tax
- 独
- fortdauernde Frist der Steuerfreiheit
- 仏
- Temps continué du remise de l'impôt sur la terre
默契
(もくけい)言語文字等の如き一般の意志表示の方法形式によらず、暗示又は前後の事情によりて相互より首肯せられたる意思の契合一致を云ふ、吾人が他の意思を了解する爲めには、言語文章に依らざるも、其前後の事情より或は其の擧止行動又は顏容表情により、能く其の意志の存する所を看取し肯認することを得、斯くして兩者の間に意志の一致契合を見る時は、其默々の契合一致を稱して默契と稱するなり、而して默契の成立は、大體二樣の過程を分つを得べし、即ち一は推理的判斷より來たる意志の投合にして、他は直觀に依る意志の合致なり、前者は即ち當面の擧止動作又は前後の事情を論理的に判斷して默契を成立せしむるものにして、後者は當面の顏容表色又は事情の表はれ方を即座に直觀し、何等の間接的手續を經ずして成立せしむるものを云ふ、更に換言すれば前者は專ら智的判斷作用に依り、後者は直下に意思の交感作用をなす所謂神秘的作用とも謂ふべきものなり。
默示
(もくし)意思表示の方法に、明白になすものと、暗默になすものとあり、例へば物品を買はんとして又は家屋を賣らんとして、相手方に書面又電信、電話を以て通知するが如き明白の揚合と、又平常取引する者より物品の送付を受け、之を買受くるや否やを回答せずして先づ賣捌くが如き、取引先きの呉服店より購買せられん事を望み、反物の送付を受けたるに拘らず之を返還せず、其儘に爲し置くが如き暗默の方法に依る揚合あり、此後の場合を稱して默示と謂ふ、要するに默するも、尚且つ當事者の意思が判別せられ得べき場合なり、從て默するは絶對に反對を示し、又は不承諮と見ざる可らずと云ふことを得ず、默するも社會一般の通念によりて、其行爲を爲したると見るを妥當とする揚合あり、此の場合には、積極的に或行爲を爲したると同じ、徒に默するを以て、不同意なりと解するは、少くとも法律上に於ては不通の言なりと云はざる可らず、されど嚴格にいふときは、明示と云ふも、默示と云ふも、程度の差異に過ぎず。(暗默の意思表示の部參照)
- 英
- Tacit declaration
- 独
- Stillschwei-gende Erklärung
- 仏
- Déclaration tacite
默示の廢止
(もくしのはいし)默示の廢止なる語は、種々の場合に使用せらる、營業を廢止する如き、支店を廢止するが如き、法令を廢止するが如し、然れども法律語としては、法令の廢止にのみ專用せらる、例へば法令を暗默に廢止すると云ふが如し、大凡法令の廢止に二あり、□一は、法律廢止の内由と謂ひ、例へば法律を以て、豫め定めたる實施期間の滿了に因る場合の如き、法律を適用すべき事物を消滅したる場合の如し、□二は、法律廢止の外由と謂ひ、外部より來る廢止原因なり、而して之を別ちて、イ直接の廢止、例へば新法令を以て舊法令を廢止するを云ひ、ロ間接の廢止、例へば新法令を以て定めたる事項が、舊法令中に存する事項と矛盾するとき、其矛盾する範圍内に於て舊法令の效力を失はしむるを云ふ、此間接の廢止を一に默示の廢止と謂ふ、其默止の時期は、新法令が效力を生じたるときなり、例へば明治四十年一月一日に公布せられたる法律が、明に舊法律と矛盾するも、これを廢する旨を明定せざるときは、直に舊法令が效力を失ふものにあらず、現實に新法令が效力を生じたる時に於て其效を失ふ、故に新法令の施行期限が三ケ年の後にある場合には、國家が公布したる法令は、明かに明文上矛盾するも、毫も默示の廢止とならざるなり、又效力の同じきものにあらざれば、默示の廢止とならざるは、明示の廢止と同じ、從つて普通の命令と舊法律と矛盾するも、法律の默示の廢止となるものにあらざるなり。
- 英
- Abolition of tacit declara-tion
- 独
- Aufhebung der stillschweigenden Erklärung
- 仏
- Abolition de la déclara-tion tacite
默諾
(もくだく)默諾とは、暗默の意思表示による承諾なり、承諾は申込と相對す、即ち相手方が契約の申込みを爲したる場合に、明示に依りて承諾せず、暗默に承諾するを默諾と謂ふ、例へば平常取引する者より物品の送付を受けたる場合に、之を買入るとも買入れずとも明答せず、其儘放任し時日を經過するが如き場合なり、其時日の經過が何程なれば默諾となるやは事實の問題にして、固より之を斷言するを得ずと雖も、夏物の送付を受けたるに拘らず、秋物の入用の時迄放任するが如き、春衣の送付を受けたるに、春衣を著用する時期を經過したるが如き場合は、通常之を默諾したるものと看做さる、但し商法に於ては、取引の敏活を計らんが爲めに、商人が平當取引を爲す者より、其營業の部類に屬する契約の申込を受けたるときは、遲滯なく諾否の通知を發することを要し、之を怠りたるときは、申込を承諾したるものと看做すと現定せられたり。(民五二六絛、商二、七一條)
- 英
- Tacit consent
- 独
- stillschweigende Übereinstimmung
- 仏
- Consentement tacit
默認
默認なる語は或場合には、默諾と同樣に用ひらるることあり、然れども之俗用に過ぎず、法律上普通に認めらるるは、國家が是を默示にて承認すと云ふが如き揚合に用ひらる、例へば慣習法は國家の默認に因ると云ふが如き是なり、要するに暗默の意思表示に依る承認を意味す、文字は大體に於て默諾と同じきも、必ず同一なりと云ふことを得ざるなり。
- 英
- Tacit acceptance
- 独
- stillschwei-gende Genehmigung
- 仏
- Acceptation tacite
目的
(もくてき)廣く目的と云へば、或手段を採るに依りて、直接に達せんとする效果を云ふ、換言すれば、或手段を採ることが、依りて達せんとする效果を希望するにより生ずるときは、即ち目的ある行爲なりと謂ふ、例を以て之をいはんに、犯人が、朝憲紊亂の結果を得んと欲して内亂を爲したりとせよ、犯人が内亂なる手段を採りし目的は、朝憲紊亂の效果を見んと欲したるに在り、又賣買契約を締結せるものありとせよ、甲は金錢を欲し、乙は或特定の物を欲せる揚合に、甲の欲したる目的は金錢を得るに在りて、乙の欲せる目的は特定の物を得るに在らん、之を要するに目的なるものは、依りて得んとする對象の狀況にして、對象が物なるときは目的物と云ひ、事なるときは即ち現わるべき狀況其の者が目的なり、或は目的と目的物とを混同し、例へば債權の目的は財産權なりと云ふが如き場合あり、されど嚴格に之を云ふときは、債權の目的は給付にして、給付の對象たる物又は行爲は、目的物又は目的の對象なりと云はざる可らず。(民三七條一號、四六條一號、三九九條乃至四〇二條、商五〇條一號、一二〇條、一號參照)
- 英
- Object
- 独
- Objekt
- 仏
- Objet
目的物
(もくてきぶつ)目的の對象たる物を目的物と謂ふ、換言すれば、目的ある行爲は常に希望を伴ひ、其希望の對象たる物は、即ち目的物なり、物にあらざる其他の事は、所謂狹義に於ては之を目的物と云ふ可らず、例へば雇傭契約に於ける勞務は一種の事にして、我民法上素より物にあらず、故に之を債務の目的の對象となすも、目的物なりと云ふべきにあらざるが如し、されど法律は或は之を廣義に解し、之をも目的物と云ふことなきにあらず、又目的と目的物とは、上説の如く之を區別すべきものなるに拘はらず、法律は往々二者を混同して使用することあり、例へば民法第四〇二條第一項に「債權の目的物が金錢なるときは、債務者は其選擇に從ひ各種の通貨を以て辨濟を爲す事を得」とあるは、債權の目的たる給付の對象を指したるものにて、同條第二項に「債權の目的たる特種の通貨が、辨濟期に於て、強制通用の效力を失ひたるときは、債務者は他の通貨を以て辨濟を爲す事を要す」とあるは、債權の目的たる給付の對象、即ち債權の目的物を目的なる語を以て顯したるものにて、如何に目的、目的物なる文字の使用が混雜せるかを知るに足らん、是即ち法律が此二者を混用せるの例證なり、各場合に當りて注意するを要す。(民六八條二號、七一、七三、三九九條乃至四〇二條、四〇六、四九四、五六三、五六六、一〇九五、一一〇一條、商三九六、四〇三條二項一號等)
- 英
- Object
- 独
- Objekt
- 仏
- Objet
目論見書
(もくろみしよ)一の事業を爲さんとする場合に、其設計及將來の豫想等に付き、大體の綱要を記載したるものを目論見書と謂ふ、現今株式會社が、株式を募集せんとする場合には、多く目論見書を附して、應募、即ち將來株主たらんとする者の參考に供す、水道條例第三條に「市町村に於て水道を布設せんとするときは、其目論見書に左の事項を記載し云々」とあるは其用例なり。
- 英
- Memorandum
- 独
- Anmerk-ung
- 仏
- Mémorandum
摸造
(もざう)摸擬して製作するを摸造と謂ふ、所謂摸擬とは、茲に一の原物あり、其の原物に紛らはしき程度に迄之を摸するを指し、其の模する程度は、多くの人に於て之を原物夫れ自身と信ぜしむるか、又はそれと類似の原物なりと信ぜしむれば足る、而してこの原物を摸して製造することが、人を僞るの目的に出でたるときはこれを僞造と謂ひ、原物それ自身を變更して、なほ原物たりと摸するをば變造と謂ふなり、而して法律上僞造又は變造は、共に人を僞るの目的ある摸造にして、等しく摸擬して製作するにはあれども、二者の差異は、一は原物以外に其の材料をとり、一は原物に材料を取るの點にありとす、例へば地金を材料として貨幣を摸造するは、即ち僞造にして、或他の貨幣を材料として、其の儘これを應用し、多少の變更を加へて他の貨幣に模するは、これ即ち變造なり、又證書に就きてこれを見るも、新に作製名義を僞り文書を作成するは、これ即ち僞造にして、既存の文書の内容を增減變更するは、變造なるが如きこれなり。(僞造、變造の部參照)
持越食鹽收納規則
(もちこししよくえんしうなふきそく)明治三二年臺灣總督府令第五三號を以て公布せられたる命令にして、臺灣食鹽專賣規則第一三條による、持越食鹽の納付手續、賠償價格等を規定したるものなり、其持越食鹽とは、該規則施行前より所持せる食鹽を指して云ふものとす。
- 英
- Collection rules of salt carried over
- 独
- Sammlungsregel des übergetragnen Salzes
- 仏
- Règles de la collection du sel passé à
持分
(もちぶん)所有權は一人に歸屬することあり、數人に歸屬することあり、數人に歸屬したる場合は之を共有と云ひ、其所有者の一人が有する權利の部分、即ち共有物の上に他人と共に有する權利を持分と謂ふ、故に持分には所有權の内容を有するものあり、債權の内容を有するものあり、其他の内容を有するものあり、普通持分と云へば、所有權の持分に限るが如く思惟する者少からざるも、そは普通の揚合たるに止まり、之に限らるべきにあらざるは勿論也、而して持分の性質如何に付きては、古來議論の存する所とす、□一共有權にありては、共有者は其目的物を分割して有するものなりとす、此所説を可とすれば、共有者は目的物を分割して所有する者なれば、分割せられたる物の上に各個の所有權が存立すべく、共有權にあらざるに至ると云はざる可らず、從つて本説の不可なるは言を要せず、□二共有物を分割するに非ずして、所有權其ものを共有者が分割して有するものなりと、若し此説を可とすれば、各共有者は、所有權を分割して、各其支分權を有するに過ぎずといはざる可らざるに至らん、從つて本説も亦可なりと云ふ能はず、□三所有物、所有權を分割すると云ふは非也、されば其價値を分割するものなりと、されど本説の如く、價値は目的を離れて獨立するものに非ざれば、本説も結局上記の説と異なる所なきものと云はざる可らず、□四共有權は所有權が數人に歸屬する狀態にして、各共有者が、共有物に關して行ふことを得べき權利の分け前は、其内容に於て單純の所有權と同じく、唯外部の關係即ち各共有者相互の關係に於て、各制限を受くるに過ぎずと、本説を通説となす、□五共有の場合は、其所有權一個なるが故に、各共有者は所有權を有する能はず、從つて其權利の分け前即ち持分は、所有權にあらずして特種の權利なりと、本説は共有の揚合にも尚一個の權利に過ぎずとなすは正當なるも、この理より、直に共有權を特種の權利なりと推論せるは極端なり、何となれば、各共有者が有する特種の權利相合するも、一個の所有權とならざるべし、蓋し各共有者の權利は特種の權利にして、所有權にあらざるものなれば、合して一の所有權を爲すとは、理に於て然る可らざればなり、要するに前揭、四説が最も穩當なる説ならん、而して此説の是非は、其性質の如何に依りて、之を擔保とする揚合に、所有權質とすべきや、權利質とすべきや等に付き實益あり。(民二四九條乃至二五五條、商一一二條等)。
- 英
- One's interest in the partnership, Share
- 独
- Antheil
- 仏
- Part
物
(もの)法律上物とは、外界の一部にして、一體として獨立の存在を有し、吾人の利用し且つ支配し得べきものを云ふ、分説すれば、□一物は外界の一部なり、即ち空間を占領して場所的の存在を有せざる可らず、空間を占領し、場所的の存在を有するは形體を具有するに由る、人の視官又は觸官に依つて覺知し得べきものは皆形體を有す、從つて物たるを得、□二物は人の支配し得べきものならざる可らず、日月星辰の如きは、吾人の需要を滿足せしむるも、吾人の支配力の範圍内に入るべきものに非ざるが故に、之を物也と謂ふ可らず、□三物は獨立の存在を有せざる可らず、從つて机、馬等は無論物たるも、机の足、馬の首は物にあらずして單に物の一部に過ぎず、而して法律上物を分ち、□一單一物と集合物、單一物とは一個の獨立體にして、其構成分子は法律上獨立の存在を有せず、集合物とは多數の物の集合也、例へば群羊、書庫の如し、□二可分物と不可分物、物理上一切の物は之を分割するを得、然れども法律上に於ては、其分割が分割に依りて、本質を害せざる場合に於て始めて可分物と謂ふ、一頭の牛、馬は、之を分割すれば其本質を害し效用を失ひ、牛肉となり、馬肉となり、單に吾人の食膳を賑すに過ぎず、之に反して金屬の如きは、分割するも甚しく本質を異にせず、是牛馬は不可分物にして、後者を可分物となす所以なり、而して性質上可分物と雖も、當事者の意思により不可分物と爲し得ることを得るものなり、□三動産と不動産、古來より、動産とは本質を害せずして、自力又は他力を以て、其位置を變更することを得る物を云ひ、不動産とは其本質を變更するに非ざれば、其位置を動すことを得ざるものを云ふと解するを常とす、我民法の正文によれば、土地及び定著物を以て不動産とし、其他は凡て動産とせり、故に土地、建物、樹木の如きは不動産なり、□四主物と從物、物の所有者が、其物の常用に供する爲め自己の所有に屬する他の物を以て、之に附屬せしめたるを從物と云ひ、附隨せらるる物を主物と謂ふ、以下分説すれば、あ主物と從物との所有者は、同一なる事を要す、い常用に供する爲め之に附屬せしめたる物なる事を要す、例へば時計の鎖、簞笥の鍵の如し、而して主物が動産にて、從物が不動産なるも妨げなし、例へば馬小屋は不動産なるも、動産たる馬の從物なるが如し、從物は主物の處分に從ふ。前例に於て、時計、簟笥を賣却したるときは、特に何等の意思表示なき限りは、鎖、鍵は、買主に移轉するが如し。(民八七條參照)
- 英
- Thing
- 独
- Ding
- 仏
- Chose
摸範定款
(もはんていくわん)法人定款の摸範として、法令に定むる定款を摸範定款と謂ふ、例へば商法等に於て、合名會社、合資會社の定款の模範を示すが如し、要するに公益等の理由により、設立を便ならしめんと欲して特に設けたるものなり、英國に於ては此摸範定款を會社法中に規定するも、我商法は之を規定せず。
- 英
- Normal articles of association
- 独
- Normalstatut
- 仏
- Article normales de la société
文部省官制
(もんぶしやうくわんせい)文部大臣、及び其補助機關の組織權限を定めたる命令なり、今其の槪要を舉ぐれば、□一文部大臣は教育學藝に關する一切の行政事務を管理する行政機關にして、□二文部次官は、下の事務を掌る補助機關也、(A)官吏の進退身分に關する事項、(B)公立學校職員、教員免許に關する事項、(C)圖書に關する事項、(D)建築營繕に關する事項、(E)高等教育會議、學校衞生、博覽會に關する事項、(F)褒賞に關する事項是なり、□三文部省專任參事官は、四人、專任書記官三人を以て定員とし、尚視學官、圖書審査官、技師、學校衞生主事及屬を置く、□四文部省に左の三局を設けて、下の事務を分掌せしむ、(甲)專門學務局、□一帝國大學及び高等學校に關する事項、□二專門學校に關する事項、□三以上の學校に準ずべき各種學校に關する事項、□四海外留學生及教員の海外派遣に關する事項、□五圖書館及び博物館に關する事項、□六天文臺、氣象臺及び測候所に關する事項、□七學術技藝の奬勵及び震災豫防調査會に關する事項、□八測地學委員會及び震災豫防調査會に關する事項、□九學士會院に關する事項、□十學術會に關する事項、十一學位及び之に關する稱號に關する事項、(乙)普通學務局、□一師範教育に關する事項、□二中學校に關する事項、□三小學校及幼稚園に關する事項、□四高等女學校に關する事項、□五盲啞學校に關する事項、□六以上の學校に準ずべき各種學校に關する事項、□七教育博物館に關する事項、□八通俗教育及び教育會に關する事項、□九學齡兒童の就學に關する事項、(丙)實業學務局、□一工業學校に關する事項、□二農業學校に關する事項、□三商業學校に關する事項、□四公立及び私立商船學校に關する事項、□五徒弟學校及び實業補習學校に關する事項、□六以上の學校に準ずべき各種學校に關する事項、□七實業教育費國庫補助に關する事項、□八實業學校教員の養成に關する事項。(以上三一年勅二七九號參照)
- 英
- Government organization of the Educational Department
- 独
- Amts-ordnung vom Ministerium des Unterrichts-wesens
- 仏
- Organisation du ministère de l'instruction publique
文部省直轄學校諸官制
(もんぶしやうちよくわつがつかうしよくわんせい)□一文部直轄諸學校の種類、□一東京、廣島高等師範學校、□二女子高等師範學校、□三札幌農學校、□四盛岡高等農林學校、□五東京、神戸、山口高等商業學校、□六第一乃至第六高等學校、第七高等學校造士館、山口高等學校、□七千葉、仙臺、岡山、金澤、長崎醫學專門學校、□八東京、大阪、京都高等工業學校、□九東京外國語學校、□十東京美術學校、十一東京音樂學校、十二東京盲啞學校、此等の學校には校長、教授、助教授、書記等の職員を置き、高等師範學校、女子師範學校には舍監(他の學校にても舍監を置くことを得るも教官の兼任に限る)教諭、助教諭、訓導及び助手を置く、高等女子師範學校には保姆を置く、札幌農學校には農事部長、植園部長及び博物館長を置く、尚文部大臣は校務上の須要に依り學校に商議委員會を置くことを得、□三職員の待遇、校長、勅任又は奏任とし、教授は勅任又は奏任、教諭舍監は奏任とす、助教授、助教諭、助手、書記、訓導、保姆は判任とす。(二六年勅八六號)
- 英
- Government or-ganization of schools under the control of the Educational Department
- 独
- Amts-ordnung der Schulen unter der direkten Verwaltung des Ministeriums des Unter-richtswesens
- 仏
- Organisation des écoles sous la contrôle du ministère de l'instruc-tion publique
養家
(やうか)養子緣組ありたるときに、養子の入るべき養親の家を稱して養家と謂ふなり、我民法の規定によるときは、養子は緣組に因りて同時に養親の家に入らざるべからず、養親の家即ち養家に入るは養子の義務たるが故に、これを拒むことを得ざるものとす、從つて養子は養家に入ると同時に、實家の氏を捨てて養家の氏及び族稱を稱すべき結果となる也、外國の制度に於ては、養子は養家に入るを以て其必要なる條件とせず、是我國の養子制度と甚だ異る點にして、又我家族主義の特長とも云ふべき點なりとす、我民法は原則として、子たるものは父の家に入り、若し父が知れざるときは、母の家に入ると規定し、養子は養親に對して子たる身分關係を生ずるものにして、實父母に對しても尚親子たる關係を失はざるが故に、特に民法に於て、養子は養家に入るべきことの明文を揭げ、以て我國の慣例を應用し、且つ緣組に關する本法の主旨を明にせしなり。(民八六一條)
- 英
- House into which one entered by adoption
- 独
- Adoptivhaus
- 仏
- Maison adoptante
養子
(やうし)養子緣組によりて養家の家籍に入りたるものを養親に對して養子と謂ふ、我國に於ける養子制度の沿革は甚だ古くして、史家のいふ所によれば、天祖天照太神が皇弟の六男を入れて養子とせられたるを以て、養子の始めとなすものの如し、其起源の何たるを問はず、養子制度は、家を存續するの必要に出でたることは爭ふべからざる所にして、古來より其制度漸時に發達して今日に至れるものなり、然して我近代の習俗に於ては、家を存續するの必要あるのみに止まらず、別に家を繼承すべき者ある場合に於ても、或は家女と婚姻を爲さしむるが爲めに養子を爲すものあり、所謂婿養子なるもの即ち是なり、或は單に其家に屬する身分待遇を得しむるの目的を以てなすものあり、例へば社會上の階級地位を異にする男女間に婚姻を爲さんとするとき、其女子を養ひて自家の養女となし、更にこれを他の婚家に嫁せしむる如きは屢實際に見るところなり、或は單純なる愛情に基き養ひて子となすあり、是等は皆養子制度の最初の本旨たる、家督相續の爲めに必要なる範圍を脱せるものなりと雖も、我國の慣習となること已に久しく、而して一朝これを禁ずるの理由なし、我現行民法は、單に家督相續を得るの必要ある場合に於て、養子を爲すことを許せるのみならず、其必要なき場合に於ても、一定の制限の下にこれを他の場合に於ても、爲すことを許せり、これ一に我古來よりの慣例を保存するの主旨に出でたるものなりとす、我民法の規定によりて、養子は緣組によりて養親と如何なる關係を生ずるやの點を擧ぐれば、□一養子は緣組の日より養親の嫡出子たる身分を取得す、即ち緣組の日は、養親子の關係を生じたる時なるを以て、此日よりして養親の嫡出子たる身分を取得す、即ち緣組は、養親子間に、實親子と等しき關係を生ずるものにして、そは養子緣組の日に發生するものなるが故に、此時より養親の嫡出子たる身分を取得するものとす、而して養子は、家督相續につきては、其嫡出子たる身分を取得したる時を以て、即ち緣組の時を以て生れたるものと看做さるるもの也、□二養子は緣組によりて養親の家に入る、養子は實家に其籍を有するも、養親と親子の關係ありとするを妨げずと雖も、我民法は明文を以て養子制度の本旨を貫くが爲めに、且つ舊慣上よりするも然らざる可らざるが故に、實家を去つて養家に入るべきものと定めたり、□三養子と養親及び其血族との間に於て、緣組の日より血族間に於けると同一の親族關係を生ず、□四養子は養親の親權に服せざるべからず、□五養子は養親との間に於て相續の權利を生ぜしむ。(民八〇六、八六一、七二六、七四六、八六一、七七一、九七〇條等及養子緣組の部參照)
- 英
- Adopted son
- 独
- Adoptivsohn
- 仏
- Fils adopté
養子緣組
(やうしえんぐみ)養子緣組は、當事者の一方たる養子をして其家を去らしめ、相手方即ち養親たるべきものの家に入らしめ、養親子の關係を生ぜしむる所の合意に依る法律行爲なり、養子緣組は、一の法律行爲たる點に於て、自然の血緣より生ずる實親子と區別せらる、又養子緣組は、二人以上の合意に依る法律行爲なるが故に、契約と相似たり、養子緣組は、啻に親子の關係を生ぜしむるに止らず、進むで其養子をして其實家の家族團體を脱し、養親の家に入らしむるの效果を生ず、法律上養子緣組には種々なる手續條件を必要とし、此條件を具備するに非ざれば、緣組は決して成立する事あらざるなり、法律の規定により其必要なる點を列擧せんに、□一緣組の要件、此要件には、實質上の要件と形式上の要件とあり、(甲)其實質上の要件としては、第一に於て當事者雙方の身上に關する要件也、養子を爲すもの即ち養親となるべきものの身上に關する要件として、イ養子を爲すものは成年に達したる者たるを要す、養子を爲すの必要は、到底實子を擧ぐる見込なき場合のみに限らずと雖も、緣組の事たる他人の子を收養して嫡出子とし、之によりて種々なる權利義務の關係を生ずるものなるが故に、法律上の能力者に非ざれば、此負擔を負はしむるに十分ならざるは明也、ロ尊族又は年長者を養子と爲すことを得ず、何となれば養子緣組は、天倫を摸傚し親子の關係を立てんとするものなれば、被收養者にして尊族又は年長者たらんか、倫序を顚倒し親よりも年長の子ある事となり、奇怪なる現象を呈するに至るべければ也、ハ法定の推定家督相續人たる男子を有するものは、男子を養子と爲すことを得ず、是全く既得の相續權を害せざらしめんが爲めにして、此場合には、別に男子を養子と爲すの必要なきは勿論、これを許すときは、徒に相續上の紛爭を生じ、一家の和熟を害するの虞あればなり、但し女壻と爲す爲めにする場合は此限にあらず、ニ後見人たらざることを要す、後見人にして被後見人を養子と爲すことを得しめ、又は後見の計算終了以前に於て、被後見人を養子と爲すことを得しめば、後見の任務を瞹昧摸糊に付し、自己の私曲を逞ふせしむるの虞あるを以てなり、ホ配偶者あるものは、配偶者と共にするにあらざれば養子を爲す事を得ず、夫婦各別に養子を爲すが如きは、我舊慣の認めざるところにして、必ずや夫婦一致して爲すことを要す、然れども夫婦の一方が、他の一方の子を養子と爲すときは、一方の同意を以て足れり、又夫婦の一方が其意思を表示する能はざるときは、他の一方は、雙方の名義を以て緣組を爲すことを得るなり、つぎに養子と爲るものに對する身上の要件としては、若し其の養子と爲るものにして配偶者を有する場合には、其の配偶者と共に養子と爲ることを要す、但し其の一方が意思を表示すること能はざるときは、他の一方は、雙方の名義を以て緣組を爲すことを得る也、第二の實質上の要件は、即ち承諾に關する條件なり、イ養子を爲すものは、其家に在る父母の同意を得ることを要す、又家族にして養子緣組を爲さんとするものは、戸主の同意を經ざるべからず、ロ養子と爲るものも同じく保護者の同意を經ざるべからず、即ち養子となるべきものが十五歳未滿なるときは、其家にある父母これに代りて承諾するを要す、繼父母又は嫡母が右の承諾を爲すには、親族會の同意を經ざるべからず、滿十五歳以上なるときと雖も、其家にある父母の同意を經るを要す、緣組又は婚姻によりて他家に一旦入りたる者が、更に養子として他家に入らんとするときは、實家に在る父母の同意を經るを要するなり、又家族にして養子緣組を爲すには、戸主の同意を必要とす、(乙)形式上の要件としては、緣組はこれを戸籍吏に屆出づるによりて其效力を生ず、これ養子緣組の形式上の唯一の條件にして、其他の儀式の如きは法律上の要件にあらず、而して緣組の屆出では、當事者雙方及び成年の證人二人以上より、口頭にて又は署名したる書面を以て、これを爲すことを要し、其屆出での場所及び其他の手續は戸籍法の規定に依る、緣組の屆出では、戸籍吏の受理により完全なる效力を生ずるもの也、□二緣組の無效及び取消、緣組の無效なる場合は二あり、即ち當事者に緣組を爲すの意思なきとき、及び當事者が緣組の屆出でを爲さざるとき是なり、緣組を取消すことを得る場合は、イ成年に達せざるものが養子を爲したるとき、此の揚合は養親又は其法定代理人より取消を求むるを得べく、養親が成年に達したる後六ケ月を經過し、又は追認を爲したるときは取消權消滅す、ロ尊族又は年長者を養子と爲し、又は法定家督相續人たる男子あるに拘はらず、養子を爲したるときは(女壻となす爲めなる時は此限に非ず)各當事者及其戸主、又は親族より取消を求むるを得べく、時日の經過又は追認によりて取消權消滅することなし、ハ後見人が被後見人を養子と爲したる場合に於ては、養子は其實方の親族より取消を求むることを得、但し管理の計算が終りたる後に、養子が追認を爲し、又は六ケ月を經過したるときは取消すを得ず、ニ配遇者あるものにして養子を爲す場合に、他の一方の同意を經ざりしとき、此揚合には同意を爲さざりし配偶者より取消しを求むるを得べく、配偶者が緣組ありたることを知りたる後六ケ月を經偶したるときは、追認を爲したるものと看做すが故に取消すを得ず、ホ承諾に關する條件に違反したるとき、此場合には同意を爲すの權利を有する者が同意を爲さざりし時のみならず、若し同意ありたりとするも、其同意が詐欺又は脅追によりたるときは取消を求むることを得べきなり、ヘ承諾に瑕瑾ありたるとき、即ち詐欺又は強迫によりて緣組を爲したるものは、緣組の取消を求むることを得、而して此取消權は、當事者が詐欺を發見し若くは強迫を免れたる後、六ケ月を經過し又は追認を爲したるときは取消すを得ず、ト婿養子緣組の揚合に於ては、各當事者は婚姻の無效又は取消しを理由として、緣組の取消を求むる事を得、以上に列擧する取消の場合に於て、取消權を行使せんとするときは、訴の方式を以て裁判所に請求すべきもの也、其手續は、人事訴訟手續の規定によるべきものとす、緣組の無效の效果としては其緣組なるものは、初めより成立せざるものにして、將來に於ても亦過去に於ても、毫も親たる關係效力を存せしめざるものとす、之に反して緣組の取消は、其緣組なるものは一旦成立するも、裁判所の判決により取消さるるものなれば、其判決の確定以後に於てのみ緣組の效を繼續せしめず、其判決以後に於て、初めて將來に向つてのみ、親子たるの關係を脱離せしむるものとす、換言すれば取消の效力は、既往に遡らざるなり、□三養子緣組の效力、イ養子緣組のありたる日より養親の嫡出子たる身分を取得す、緣組の日は養親子の關係を生じたる時なるを以て、此日よりして養親の嫡出子たる身分を得しむ、ロ養子は緣組によりて養親の家に入る、ハ養子と養親及び其血族との間に緣組の日より、血族間に於けると同一の親族關係を生ず、ニ緣組は婚姻に關して或障害を生ぜしむ、即ち其養方と親族關係が、離緣によりて止みたる後と雖も、前養親たるもの及び其配偶者、直系卑屬等と婚姻を爲すことを禁ぜらる、ホ緣組は養子と養親、及び其他親族の間に扶養の義務を生ぜしむ、ヘ緣組は養子をして養親の親權に服せしむ、ト緣組は養子と養親との間に相續の權利を生ぜしむ。(民八三七條乃至八六一條、七四六、七二七、七七一、九五四、九七〇、九九六條)
- 英
- Adoption
- 独
- Annahme an Kindesstatt
- 仏
- Adoption
養子緣組事件
(やうしえんぐみじけん)養子緣組の無效若くは取消、又は離緣を目的とする訴訟を養子緣組事件と稱す、右に關する訴は、總べて養親の住所を管轄する地の地方裁判所に提起するを要し、養親が死亡したる後なるときは、死亡の時に於て有したる地の地方裁判所に提起するを要する也、然れども婚姻事件に附帶して訴を提起すべき場合、即ち婿養子たるが如きときには、其の婚姻事件の繫屬する裁判所に訴を起すべきものとす、取消の各揚合は、養子緣組の項下に於て説明したるが故に再説せず、裁判上の離緣を爲すべき場合を茲に舉ぐれば、□一離緣の原因、裁判上の離緣を爲すの原因は制限的のものにして、下に揭ぐる場合の外は之を許さず、即ち、イ他の一方より虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、此場合は、雙方の關係を持續し、相互の親愛を保持し得べからざるが故とす、ロ他の一方より惡意を以て遺棄せられたるとき、此場合は親子の關係を持續し、相互の扶養、義務をつくし得る見込なきが故なり、ハ養親の直糸尊族より虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき、これ又親子間の親愛を保持すべからざるに至るの怖れあればなり、ニ他の一方が重禁錮一年以上の刑に處せられたるとき、これ他の一方に對して大なる汚辱を與ふるものなれば也、ホ養子にして家名を汚し、又は家産を傾くべき重大なる過失ありたるとき、養子を爲すの目的は、畢竟家名を繼がしめん爲めなれば、養子にして茲に揭ぐるが如き原因の存するときは、養子を爲したる本旨を貫く能はざるに至るべければなり、ヘ養子が逃亡して三年以上復歸せざるとき、養子逃亡して永く復歸せざるに於ては、養子を爲したるの目的を達し得ざるは勿論、此の如き場合に、尚親子の關係を特續すべしとするは頗る酷なれば也、ト養子の生死が三年以上分明ならざるとき、此揚合は、養親をして更に良緣を結ばしめんとするの理由に依る、チ他の一方が自己の尊親屬に對し、虐待を爲し又は重大なる侮辱を加へたるとき、リ婿養子緣組の揚合に於て、離婚又は婚姻の取消しありたるとき、又は家女と婚姻を爲したる場合に於て、離婚又は婚姻の取消しありたるとき、以上の列舉の場合には、離緣の訴を提起するを得るものとす、而して離緣の訴を提起するには、下に揭ぐるが如き不受理の原因の存せざることを必要とす、即ち□一養子が戸主となりたるとき、養子にして一旦戸主となりたる後は、假令前示の原因の一あるときも、養親は勿論養子と雖も、共に離緣の請求を爲すことを得ざるなり、何となれば、戸主權を奪ふの結果を生ずるが故也、但し其戸主が隱居したる後は此限に非ず、□二宥恕、即ち前示の、イよりへに至る迄の原因ある揚合に於て、當事者の一方が他の一方又は尊族の行爲を宥恕したる後は、離緣の訴を起すを得ず、□三同意、前示、ニの原因ある場合に於て、當事者の一方が他の一方の犯罪行爲に同意したるときは、自己も亦これを是認したるものなれば、共犯者たらずとするも、一方の處刑によりて汚辱を蒙むれりとするを得ず、故に此場合にありては、離婚の訴を起すを許さざるなり、□四相殺、前示、ニの原因によりて離緣の訴を提起せんとするものは、自己に同一の原因の存せざることを必要とす、共に自己に於ても斯る事由あるときは、他の一方に同一の理由あるを原因として訴を起すを許さず、□五期間の經過、以上の離緣の訴訟は、一定の法律上の期間を經過したる場合には、最早何れよりも離緣の請求を爲すことを得ざるなり、即ち前示の、イ乃至、ホ及び、チの原因に基く離緣の訴は、之れを提起する權利を有するものが、其原因たるべき事實を知りたるときより一年、又これを知らずと雖も、事實發生の時より十年を過ぎたるときは訴を起すを得ず、又への原因に基くものは、養親が養子の復歸したることを知りたるときより一年、又は歸りたるときより十年を過ぎたる場合、又前示、リの原因に基くものは、當事者が離婚又は婚姻の取消しありたることを知りたる後六ケ月を經過したるときは、何れも時效によりて消滅するものとす、訴訟提起の手續はすべて人事訴訟手續法に從ふべきものなり。(民八八六條、人訴訟法二四、二五、二六條)
- 英
- Case of adoption
- 独
- Adoptionfall
- 仏
- Cause de l'adoption
樣式
(やうしき)樣式といふは、方式といふに同じ、又之を形式といふと同意義に用ふることあり、例へば婚姻緣組の屆出でには一定の樣式を要し、手形振出しには一定の樣式によらざるべからず等といふ場合の如し。(方式の部參照)
- 英
- Form
- 独
- Formal
- 仏
- Forme
養親
(やうしん)養子緣組によりて養子に對し、法律上其親たるの身分を得たるものを養親と謂ふ、養親に關して法律上注意すべき點少なからず、養子緣組と題する項目に於て詳説すべきを以て參照せらるべし。(民七三〇條等)
- 英
- Adopter
- 独
- Adoptiveltern
- 仏
- Adoptant
養親子
(やうしんし)養子と養親との關係を養親子と云ふ語を以て表すことあり、又養子と養親とを總稱する場合に略して養親子とも云ふ、其關係其他法律上の事項は次項を參照すべし。(民訴四二條四號)
- 英
- Adopter and adopted
- 独
- Pflege-eltern und Pflegekind
- 仏
- Adoptant et adopté
養方
(やうはう)養子緣組によりて養子の入るべき家、即ち養家、及び其養家に關聯して、法律上本家、分家等の關係あるものを總稱して養方と云ふなり、又單に養家のみを指して養方と云ふ事あり、例へば法律上に於て、養方の親族等と云ふ場合は養家を指すのみならず、養親との親族關係による者全體を指稱する場合の如し、故に養家と云ふと養方と云ふと、多少其意義を異にし、主として養方なる文字を用ふる場合は實家、即ち實方との關係上相對して用ふるを例とす、要するに養方とは、彼の里方に對して養子先の親族關係を意味する語なりとす。(民七六九條)
- 英
- Adopter
- 独
- Annehmer
- 仏
- Adoptant
養料
(やうれう)汎く養料と云ふときは、他人の生活を支持する爲めに給與する所の金品を指稱するものなれども、法律上に於ては其意義を限定せられ、主に親族間の扶養義務者より扶養權利者に對して支給する所の生活資料を指すものなりとす、此場合の養料なるよのは、公益上の必要より、法律の規定によりて設けたるものなれば、この養料を受くるの權利は、其人の一身に專屬し、自由に之れを處分することを得ず、從つて之れを他に讓渡し、又は抛棄するを許さず、又此養料を受くるの權利は、民事訴訟上差押ふることを得ざるものとす。(民九六三條、民訴四二條六號、六一八條)
- 英
- Aliment
- 独
- Alimente
- 仏
- Ali-ment
夜間
(やかん)夜間とは、如何なる時間より如何なる時間の間を指すものなるやは、常識を以て容易に判斷することを得べし、即ち日沒後より日出前を指すものと解すべきなり、然れども法律上に於ては夜間なる文字を用ふる場合には、其法律の主旨を通覽して之を定むべきものにして、必らずしも理學上の夜間なる見解と一致せざる場合なしとせず、主として法律の條文に夜間の文字を用ひたる例は、□一舊刑第一七二條に「夜間故なく人の住居したる邸宅又は人の看守したる建造物に入りたる者云々」とあり、斯る場合の刑法の主旨とする處は、夜間は晝間に比して闇黑と云ふ事情の加はる故に、犯罪を犯すに易く防ぐに難きものなれば、書間の家宅侵入罪よりも重しとして、特に一ケ條を設けたるものなれば、此主旨より解すれば、假令曆に現はたる嚴格なる日沒前と雖も、雨天若くは山間等に於て既に闇黑となれる場合に於ては、夜間の侵入罪として處罰するに缺く所なし、之に反して、□二民事訴訟法第一五〇條第二項に揭ぐるが如く「夜間とは日沒より日出までの時間と云ふ」と明示せられたる場合には、曆に示す日沒、日出の時間を指すものたるは勿論なりとす、之を要するに、法文の各揚合につき其主旨を了解して、夜間の意義を定むべきなり。
- 英
- Night time
- 独
- Nachtzeit
- 仏
- Nuit
役印
(やくいん)役印なる語は、近來之を用ひざるを例とすれども、從來に於ける役印なる語は、役人の使用する印即ち官公吏が、其職務權限上使用する所の印を役印と稱し來れり、現時は之を官印又は公印と稱す、役印なる文字面より解すれば、法人の理事者が、理事たるの資格に於て使用する印も、亦役印中に包含せらるるが如し、然れども從來役印と稱するは、主として官公の印を指示したるものなりとす。(公證人規則一〇條)
- 英
- Official seal
- 独
- Officiellsiegel
- 仏
- Sceau officiel
約因
(やくいん)約因と云ふは、英米法に於ける契約成立の要件とする所のものにして、其契約を爲すに至れる原因及び目的を指示するものなり、英米法に於ては、かかるものを以て契約成立の必要條件と爲すが故に、約因なき揚合は契約の成立せざるものとせり、我民法に於ては、約因なるものを以て契約成立の必要條件とせず、契約は苟も公序良俗に反せざる以上は、各人の自由に約することを得べきものにして、意思の合致ある場合は、必ず成立し得べきものとし、其契約を爲すに至れる當事者の原因若くは目的は、之を以て契約の成立要素となさざるものとせり、右の契約の目的なるものは當事者自身に取りて必要なる場合多しと雖も、殊更法律に於ては、要件とするを要せざるなり、何となれば、法律上に於て契約の目的なるものは、法律上の效果を發生せしむることを主たる目的とするものにして、當事者が利益を得るの目的たりしや否やは問ふ所にあらず、法律上見る所のものは、前示の如く法律上の效果を發生せしむるといふ、即ち意思表示の内容なり、既に之を以て意思表示の内容と認むる以上は、此外に別個の條件として目的を必要とするの理なきなり、又契約の成立に原因を必要とせざる理由は、抑も原因なるものは、義務を負擔するに依りて反對に得んと欲する所のもの、換言すれば何故に義務を負擔するやの問に答ふる所のものは即ち原因なり、果して然らば、契約當事者が契約を爲さんとするの緣由なりと云はざるべからず、已に斯の如きものとすれば、意思の外に緣由なるものを加へて、契約の成立條件とする要を見ざるべきなり。
- 英
- Requisites of contract
- 独
- Ver-tragserfordernisz
- 仏
- Conditions requises pour le contrat
役員
(やくいん)古來よりの用例によれば、政府の官吏公吏を指して役員と云ひたるものの如し、然れども現時役員と云ふは其意義を異にし、主として會社其他の法人若くは、組合に於ける業務の執行、若くは監督の任に當るものを役員と謂ふなり、例へば株式會社の取締役、監査役、其他社團法人の理事、監事の如きを指すものとす、故に法人若くは組合と、傭雇契約に立つ所のものは雇員にして、通常役員中には包含せられざるものと解すべきなり。(民六三條、民訴一四七條)
- 英
- Official
- 独
- Beamte
- 仏
- Officier
約束
(やくそく)約束と云ふは、嚴格なる法律上の用語にあらずと雖も、法律語としての契約は以て約束に當るべきなり、然れども廣く約束と云へば、法律上の契約のみならず、法律の關せざる社交上の行爲に關しても、約束なるもの存するが故に、其包含する所は契約よりも範圍を廣くし、總べて二人以上の者の間に成れる約定を稱するものなりとす、而して法律上の效力を生ずる場合に於ても、俗に約束と云ふものあれども、斯る場合は契約と稱するを可とす。(樞密院官制六條四號及び契約の部參照)
- 英
- Compact
- 独
- Versprechen
- 仏
- Pacte
約束郵便
(やくそくいうびん)定期刊行物及印刷物に限り、特に郵便官署と約束して、郵便物に一々郵便切手を貼付せず、一定の期間を定めて、其期限滿了の後に於て、其期間内に差出したる郵便物の料金を納付する、郵便法上の特殊取扱方注を約束郵便と云ふなり、郵便規則の示めす所によれば、約束郵便として差出すべき郵便物には、別に定むる所により約束郵便の印章を捺押すべきものにして、此約束郵便として差出すべき郵便物に、他の特殊取扱、例へば書留、別配達等として差出すことを得ざるものとす。(郵便規則六四、六五條)
(第號)
約束手形
一金何百何拾圓也
右金額貴殿又ハ貴殿指圖人へ此手形引換ニ仕拂可申候也
○振出地
○支拂地
支拂ノ場所
支拂ノ時期
明治年月日
住所
振出人何野何兵衞□印
何山何吉殿
- 英
- Promissory post
- 独
- eigene Post
- 仏
- Poste promissoire
約束手形
(やくそくてがた)約束手形は、我商法に於て認めらるる所の形式的證券の一種にして、振出人が一定の金額を一定の滿期日に於て支拂ふことを約する旨を記載して、受取人に交附する所の證券なりとす、手形の法律上の性質は有價證券なれば、即ち其の手形面に記載したる權利を實行せんと欲せば、必ず手形の存在することを要し、該手形と離れてその權利を行使することを得ず、手形、即ち債權、債權即ち手形として、密接の關係を有するものなりとす、故に手形受取人はこれを裏書して他人に讓渡することを得べく、自ら振出人に對して請求することは、必らずしも手形上の必要條件にあらざるなり、茲に示したるは約束手形の雛形にして、以下重要なる事項に就きて説明せん。
(甲)手形振出の要件、約束手形の振出は、下に揭ぐる要件を必らず記載せざるべからず、然らざれば手形として無效とせらるるに至らん、□一約束手形たることを示すべき文字、これ學者の所謂手形文句と稱するものなり、□二手形金額、手形金額は手形上の債權債務の目的にして、債務者は其支拂ふべき金額如何を知り、債權者をして其請求すべき金額如何を知らしむるなり、手形金額として記載すべきものは、必らず金錢なることを要し其他商品等の記載を認めず、且つ金額は一定にして確定し居らざるべからず、例へば百圓以上百圓以下を支拂ふべしとか、百圓若くは二百圓を支拂ふべし等の如き不確定なる記載は手形として效なし、必らず何百何十圓と云ふ如く、確定不動のものなるを要す、又利息の附記は商法上これを認めず、□三受取人の氏名又は商號、此場合に用ふる商號は、登記したるものたると否とを問はざるなり、□四單純なる支拂の約束、單純なる支拂と云ふは、此手形に對して無條件に支拂を爲すの意にして、條件付なることを許さず、例へば此手形の滿期迄に或る事情の生じたるときは金額の支拂を爲さずとか、或事項の發生するにあらざれば、支拂はずと記載するが如きは、手形として其效なきものとす、□五振出の年月日、此記載は後日の論爭を妨ぐの用となるべきものにして、振出人が、手形發行の當時法律上の能力者なりしや否や、破産に頻して爲したる行爲にあらざるや等を識別するの便あり、□六一定の滿期日、此滿期日に關する原則としては、其滿期日は不能なるべからず、例へば振出日附以前の時期を記載するが如きを許さず、つぎに不定なるべからず、必ず到著することあるべき時期なる事を要す、年の記載は、之を缺くも必ずしも、手形を無效とせず、例せば明治四十年三月に振出して、五月三十日の支拂日を記載したる時は、明治四十年五月三十日を以て滿期日と爲すべきなり、而して滿期日を定むるにつき、之を四種に分つことを得、即ち一は定日手形にして、確定の日を以て滿期日となしたる手形を云ふ、ニは日附手形にして、振出の日附後三十日を經過したる日を以て滿期日と定めたる場合の如し、三は一覽拂手形にして、其手形呈示の時に於て支拂はるべき手形を云ふ、四は一覽後定期手形にして、一覽後確定せる期間を經過したる日を以て滿期日と定むる手形を云ふ、□七振出地、其手形を振出したる地を記載するなり、□八振出人の署名捺印、以上は約束手形に必らず記載せざるべからざる要件にして、其他支拂地の記載は、商法上の必要件にあらざるも通常これを記載するを例とす、其支拂地の記載なき場合は、振出地を以て支拂地となす也、(乙)振出の效力、約束手形の振出人は、手形の振出しによりて、受取人及び被裏書人の總員に對して金額の支拂を擔保す、此擔保義務は振出行爲に當然附隨するものにして、振出人に於てこれを負擔するの意思あると否とを問はず、發行の直接の效果としてこの效力を生じ、他に何等の關係を必要とせざる也、(丙)裏書、我國法は、手形は總べて裏書によりて讓渡することを認めたり、即ち學者の所謂裏書性を認めたるものなりとす、裏書は手形の通有性にして、記名式を以て發行したる場合と雖も、裏書により轉輾流通せられ得べきものとす、故に若し振出人に於て此裏書性を奪はんと欲せば、特に其旨を手形面に記載せざるべからず、これを裏書禁止の文句、或は禁轉文句と稱す、此禁止を爲すの目的は、振出人に於て受取人に對してある抗辯を有する場合にこれを留保し、且つ手形の流通に件ふて生ずることあるべき費用の償還を免るるにありとす、裏書の方式は、手形行爲として裏書人の署名を必要とするも、必ずしも手形其ものに爲すを要せず、補箋にもこれを爲すことを得べきなり、而して裏書は必ず法定の形式を履行せざるべからず、其形式に二あり、一は裏書人が被裏書人の氏名又は商號及び裏書の年月日を記載して署名するもの、これを完全なる裏書又は記名式裏書と稱す、二は裏書人が被裏書、人の氏名又は商號を説載せず、單に署名のみを爲すもの、これを略式裏書又は自地裏書と稱す、□九裏書の效力、記名式裏書の場合に於ては、其裏書數多あるときは、必ず相聯絡せざるべからず、例へば甲より乙、乙より丙、丙より丁と云ふが如く、其間に間斷あるを許さざるなり、斯る聯絡ありて始て完全なる效力を生ず、第一に裏書の效力なるものは、被裏書人が、其裏書によりて手形の所有權を取得し、從つて手形上の債權者となる也、嚴格に云へば物權的作用は裏書の主たる效力にして、債權的作用は寧ろ從たる效力なりとす、又裏書人は裏書を爲するよりて手形上の擔保義務を負擔す、若し該手形が振出人に於て支拂はれざる場合に於ては、手形金額の償還を爲さざるべからざる義務を生ずるなり、此の裏書人の擔保義務は法律の規定によりて當然發生し、裏書人に於てこれを負擔するを欲するの意あると否とを問はず當然裏書に伴ふものとす、然れども此義務なるものは、裏書人が裏書を記載するに當りて、手形上の義務を負はざる旨を明示したる場合には、此擔保義務なきものとす、これ一の特例として我國法の認むる所なり、學者はこれを無擔保裏書と稱す、現時に於ては、此無擔保裏書なるものは、手形の信用を害するが故にこれを爲すこと甚だ稀なりとす、(戊)支拂の要求、約束手形の所持人が、支拂の要求を爲さんとするときは、滿期日に支拂地に於て、其手形を振出人に對して呈示せざるべからず、支拂地の記載なき時は即はち振出地を以て支拂地とせらるるが故に、振出地に於て支拂要求の呈示を爲すべきものとす、此呈示の法律上の效果としては、債務者をして支拂を爲さざるべからず、且つ此履行の請求を受けたる時より遲滯の責に任ずべきものとす、此場合に於て、振出人が直に手形金額の支拂を爲したるときは、茲に手形は其效用を完了して何等の問題を殘留せざるに至る、之に反して、若し支拂を爲さざる場合に於ては、所持人は執達吏、若くは公證人に依賴して、滿期日より二日以内、支拂拒絶證書を作らしめ、以て裏書人ある場合には、其裏書人に對して償還の請求を爲すべきものとす、裏書人數人あるときは、敢て順に依るを要せず、請求者の隨意を以て、其内何人に對しても償還の請求を爲すことを得べきものとす、法律上此權利を稱して遡及權と謂ふ、若し裹書人なき場合に於ては、訴訟法上の手續により、振出人に對し強制執行の方法を以て、債權の辨濟を受くべきものなりとす、(己)手形所持人の資格、手形の所有權を取得し、手形上の債權者たるには、惡意又は重大なる過失なくして手形の占有を取得するを必要とし、又手形の外面、即ち手形面上に表したる文言に於て、受取人若くは最後の被裏書人として、手形に指定せられたるものなることを要す、前者を實質的條件といひ、後者は形式的條件といふ、此の二個の條件を具備するものは完全なる所有者なり、即ち完全なる債權者たることを得るものなりとす、故に手形の取得に關して、惡意若くは重大なる過失ありたるもの、又は最後の被裏書人若しは受取人として指定せられたるにあらざるものは、完全なる債務者として債權者に對し、其の支拂を請求するの權なきものと知るべし、(庚)約束手形に關する時效、約束手形の振出人の債務は、滿期日より三年を經過したるときは時效によりて消滅し、又裏書人に對する償還請求權の時效期問は六ケ月なりとす、而して時效の中斷、停止其他の時效に關する法律上の效果は、總べて一般の規定に從ふべきものとす。(商五二五條乃至五二九條)
- 英
- Promissory note
- 独
- eigener Wechsel
- 仏
- Billet à ordre
約定
(やくじやう)約定なる用語は、法律上其の用途區々にして一定せず、契約を稱して約定と云ふことめり、又は契約中の一特約條項を指して約定と云ふことあり、又通俗に於ては、事實上の單純なる約束を指して約定と云ふことあり、然れども少くとも約定と云はんには、二人若くは二人以上の意思の合致により、或事項に關して合意の上確定したる場合ならざるべからず、換言すれば、約束確定是れ即ち約定なりとす。(民四四七條二項)
- 英
- Stipulation
- 独
- Konkordat
- 仏
- Stipulation
約定代金
(やくじやうだいきん)賣買の契約に於て、約定したる物件又は權利の代價を稱して約定代金と謂ふ、約定代金の存在せんには、必ず契約の存せざるべからざることは勿論にして、契約にして成立せざるときは、又約定代金も存在する事を得ず、且つ約定代金と云ふが故に、必ず金額を以て之を持定せざるべからず、物と物とを交換するが如き場合には、反對給付として物存在すと雖も、金額に非らざるが故に、斯るものを約定代金と稱することを得ざるなり、而して約定代金なるものは、必ずしも契約の成立と共に定めざるべからざるを必要とするに非ず、後日履行の時に至り、代金を定むべき方法さへ存すれば、其時期の到來と共に定むる代金を約定代金と云ふに妨げざるものとす、例へば賣買契約を爲し、目的物の代金は、其履行せらるべき時の相場によるべきこととを定めたる揚合も、尚約定代金と云ひ得べきが如し。(取引所税法四條)
- 英
- Contract money
- 独
- Ver-tragsgeld
- 仏
- Argent du contrat
約定手形
(やくじやうてがた)世上の通俗に於て、金錢其他の物を引渡すことを約する旨を記載したる文書を約定手形と稱することあり、されど此の如きものは、我手形法に於ける所謂手形たるを得ざるものなり、何となれば、我商法の手形面に於て認むる手形は、爲替手形、約束手形、小切手の三種に限り、其他の手形を認めざればなり、約定手形として或手形を發行すと雖も、手形法上に於ける特殊の強大なる權利を付與するものにあらず、然れども民法上、若くは其他の法律上に於て、一種の債權を記載したる證券として、保護を受くべきは勿論とす、例へば酒屋の發行する酒の切手、若くは運送人の發行する貨物引換證の如きは、通俗に於て約定手形と云はるることあり、是等は素より手形法の效力なきは勿論と雖も、其の以外に以て一種の權利として保護せらるることあるべきは勿論なり、而して現行刑法に於て約定手形と稱するは、上説の意義に於ける證書にあらずして、商法に所謂約束手形を指すものと解するを可とす。(刑二〇九條)
- 英
- Contract note
- 独
- Vertrags-wechsel
- 仏
- Note du contrat
約定利率
(やくじやうりりつ)金錢債權に對し、當事者が特に利息を約定したる場合の率を約定利率と謂ふ、例へば一年一割五分等といふが如し、元來約定利率と云ふは、彼の法定利率に對するの語にして、特約ある場合に限るは勿論なりとす、而して利率は、一定の時限を標準として、元本に對する比例を以て之を定め、其時限は日月又は年とし、通常十分比例又は百分比例とす、又其他の方法を以て指定する事あり、一日百圓につき日步五錢と云ふが如し、要は一定の時限に應じて、元本に對する比例を示めすことを要するものなり、此約定利率につき注意すべきは、法律上の制限を超過することを得ざるの點是なり、元來利息の制限なるものは、債務者を保護するを以て目的とす、近代の信用制度に於ては、一般に利息の制限を解くの傾向を生じ來しりと雖も、債權者にして特に貪慾なる者は、債務者の窮乏に乘じて暴利を貪るものなきに非ず、故に我國に於て利息制限法なるものを設け、一般に斯る場合に生ずることあるべき弊害を防ぐに力めたり利息制限法によれば、百圓未滿は年二割、百圓以上千圓未滿は一割五分、千圓以上は一割二分となせり、故に當事者は、必ず前揭の制限内に於て、利率を定めざるべからず、但し約定利率が其制限を超過するときは、其約束は全部無效となるに非ずして、唯制限に超過したる部分のみ其效を生ぜざるものとす、例へば金五拾圓に對し年三割のの利息を付したるときは、債務者はこれを制限額に引直し、年二割の利息を支拂ふの義務ありとするが如し、然れども債務者は既に支拂ひたる超過部分の利息を請求することを得るものに非ず、何となれば、義務の存在せざるを知りて任意に辨濟を爲したる債務者は、其債務の存在せざることを理由として、給付したるものの返還を請求する事を能はざるものなれば也、以上説示せる所の利息制限は、總べて商事に適用なきを注意すべし。(利息制限法參照)
- 英
- Rate of contract interest
- 独
- Vertragszinssatz
- 仏
- Intérêt du contrat
約款
(やくくわん)契約書又は約定書の條項を指して約款と謂ひ、又は國際法上條約文の條項を指して約款と謂ふなり、茲に約款と云ふは、契約若くは條約其ものを指示するの語にあらずして、其條項の項目を指すの語たるを知べきなり。(逃亡犯罪人引渡條例一九條)
- 英
- Company contract
- 独
- Klausel
- 仏
- Contrat de la compagnie
雇人
(やとひにん)民法上の傭雇契約に基き、他人の爲めに勞務に服するものを雇人と稱す、今法律上の權利義務の大體を説明せんに、□一雇人の義務、雇人は、使用者に對して、自ら勞務を供給するの義務を負ふ、是れ雇傭契約の要素にして、必ず自ら勞務に服することを要し、他人をして自己に代りて勞務に服せしめ、自己は此義務を免るる事を得るものに非ず、蓋し雇傭契約なるものは、特定せる人の勞務に著眼して、使用者が此契約を結ぶを普通とするが故に、若し餘人をして其勞務に服せしむることを得るものとすれば、契約を爲したる主旨を沒却するに至るべければ也、尤も使用者の承諾あるときは、固より他人をして己れに代らしむるも敢て妨なし、使用者の若し勞務者即ち雇人の意思に反して、其使用に關する權利を他人に讓渡したるときに於ては、固より其行爲は無效にして、雇人は讓受人に對して、勞務に服する義務なきは勿論也、且つ契約の解除をも爲すことを得べし、□二雇人の權利、雇人は使用者に對して報酬を請求するの權利あり、雇傭契約は使用者が雇人に對し、報酬を支拂ふことを以て契約成立の要件となすが故に、共に使用者が報酬を支拂はずして、勞務者を使用する事を約したる場合には、他の契約を成立することあるも、雇傭契約は成立せず、されば斯かる場合の勞務者は、法律上に於ては雇人と謂はざるなり、必ず報酬を受くることを其要素とするものなり、其報酬の金額並に支拂の時期は、當事者間に於ける約束又は慣例によるべきや勿論なりとす、支拂の時期に關して約束なきときは、勞務を完結したる後に於て請求すべきものなりとす、□三雇入の終了、雇入の終了時期は、即ち雇傭契約の終了する時期にして、其時期は期間の定めたる場合と否らざる場合とにより自ら異る、(甲)期間の定めある場合、舊民法時代に於ては、長期の雇傭契約は、公の秩序又は善良なる風俗に反することあるを以て之を許さざるものとし、使用人、番頭、手代に付ては五ケ年、職工其他の雇人に於ては一ケ年、習業契約に依るものは、未成年の時期を超ゆることを得ざるものとせり、現行の民法に於ては、聊か此規定を修正して、長期のものと雖も無效ならざるものと定めたり、併しながら、長期のものに對しては、一の規定を設けて期間の制限を加へたり、即ち五年以上の期間を有する場合、若くは當事者の一方又は第三者の修身問を期するものは、當事者の何れよりも、五ケ年經過の後は解除する事を得るものとす。此解除權を行使せんとする場合に、三ケ月前に豫告する事を必要とす、以上述ぶる所の期間は、公益上に關するものなるが故に、當事者が終身間又は五年以上の雇傭に於て、其期間内、解約を爲さざる事を契約すると雖も無效也、(乙)期間の定めなき場合、此場合には、各當事者は何時にても解約を申入るる事を得るものとす、尤も突然に解約を申入るるときは、相手方は或は損害を蒙むることあるべきを以て、解除の效を生ずるは解約申込後二週間を經過したるときなりとす、換言すれば二週間を經過したる後に至つて解約の效を生ずるものなり、然れども若し報酬を定むるに期間によりて定めたる場合、例へば一ケ月何程と云ふ如き場合には、次期以後の分にあらざれば解約を申込むことを得ざるものとす、(丙)已む事を得ざる場合、期間の定めある場合と否とを問はず、已むことを得ざる事由の發生したるときに於ては、豫告を爲すことを要せず、直に契約を解除することを得るものとす、果して已むことを得ざる事由あるや否やに付き爭の生じたる時は、裁判官の裁判によらざるべからず、(丁)雇傭契約の更新ありと推定せるる揚合、即ち定めたる期間の滿了後に於て、勞務者が其の勞務に服するも、使用者に於てこれを知りながら異議を述べざるときは、前契約と同一の條件を以て契約を更新したるものと看做す、(戊)使用者が破産の宣告を受けたるとき、此の如き場合には、使用者が報酬を支拂ふこと能はざるに至るべし、又或は雇入を要せざるに至るべきを以て、契約は之と同時に終了するものなりとす。(民六二三條乃自六二九條)
- 英
- Employe
- 独
- Dienerschaft
- 仏
- Employé
融通物
(ゆうづうぶつ)物を法律的性質によりて分類するときは、融通物と不融通物との二種とせらる、此區別は法律上の取引の目的となし得るや否やによりて生ず、物にして法律上私權の目的と爲り得べきものあり、又其物の性質上又は法律の規定によりて、私權の目的と爲り得べからざるものあり、物が私權の目的と爲り得べき物の中に於て、特に取引の目的と爲し得べからざるものと取引の目的と爲り得べきものとあり、此取引の目的を爲り得べき性格を稱して物の取引能力と稱す、右に述べたる權利能力と取引能力とを併有するものを稱して、學者は之を融通物と謂ふ、物は一般に融通物にして、通常不融通物として列記せらるる所のものは、公共物、公有物、禁制物、世襲財産及屍體なりとす、右の如く融通物は法律上の取引の目的と爲すを得べきものなるが故に、法律行爲の目的物と爲し得べきは勿論なり、換言すれば、取引の目的と爲し得べき物は、必ず融通物ならざるべからざる也。(不融通物の部參照)
諭告
(ゆこく)或人に對して其の上位にある者が、口頭を以て説諭を加ふること汎く諭告と稱す、然れども一般に用ひらるるは、下級官の過失ある場合に、監督權を有する上級官吏が之れを説諭する揚合に用ふるを例とす。(裁構法一三六條)
- 英
- Instruction
- 独
- Instruktion
- 仏
- Instruction
諭示
(ゆし)前項に於ける諭告と殆ど同意義なれども、書面を以てする説諭をも諭示なる文字を用ひて言ひ顯すものなり、此の點諭告と異なるものとす。
- 英
- Instruction
- 独
- Instruktion
- 仏
- Instruction
諭旨
(ゆし)官吏關係に於て、下級官吏が職務に關係して過失ある場合に、其缺點又は事情を示して、上級官吏より説明諭示することを云ふ、例へば諭旨免官など云ふ場合の諭旨の如し。(公使館領事館費用條例二〇條)
- 英
- Proclamation
- 独
- Proklamation
- 仏
- Proclamation
輸出酒類戻税規則
(ゆしゆつさけるゐもどしぜいきそく)明治二一年勅令第五四號を以て公布せしめたる所に係るも、今は廢法に歸せり。
- 英
- Rule of paying back of tax of Sake to be exported
- 独
- Rück-zollsregel von ausführendem Sake
- 仏
- Règles du remboursement de l'impôt sur Saké exporté
輸出羽二重精練業
(ゆしゆつはぶたへせいれんげふ)輸出羽二重精練業法の支配する所にして、輸出羽二重精練業を營まんとする者は、精練の方法、工場の設備其他精練に關し、必要なる事項を具して地方長官に願出で、其許可を受くることを要す、主務大臣は、本業の事項に關して必要なる命令を發し、及び相當の處分を爲すの權限を有するものとす、主務大臣及地方長官は、官吏をして精練所に臨檢せしめ、帳簿、工場、倉庫其他の物件の檢査を爲さざることを得、又主務大臣及地方長官は、精練業者の行爲にして、法令に違反し、又は公益を害すと認むるときは、其許可を取消すことを得るものとす、許可を受けずして此業を營みたる者は、五十圓以上千圓以下の罰金に處せらる、又當該官吏の尋問に對し、虛僞の答辯を爲し、又は職務執行を拒み、之を忌避し、若くは之に支障を加へたるときは、三十圓以下の罰金に處せられ、尚刑法に正條あるものは、刑法に依りて罰せらるること勿論とす。(三九年四月法二二號輸出羽二重精練業法參照)
- 英
- Refining business of Habutae to be exported
- 独
- Raffinirenges-chäft von Habutae zu ausführend
- 仏
- Affaire du raffinage de Habutayé exporté
輸出羽二重取締
(ゆしゆつはぶたへとりしまり)輸出羽二重取締規則の明示する所にして、此業に從事する者は、營業所に每に帳簿を具へ、各匹につき下の事項を記載する事を要す、□一受入年月日、□二受入番號、□三生羽二重の量、□四依賴者の氏名、名稱及住所、□五精練の年月日、□六精練後の量目幷練減步合、而し右の帳簿は、最終の記載を爲したるときより一ケ年間、これを保存するの義務あるものとす、精練業者は、增量の目的を以て水分を附著し、マグネシューム、鹽類、其他農商務大臣の指定する材料を施用することを禁ぜらる。(三八年農商務省令五號參照)
- 英
- Superintendence of Habutae to be exported
- 独
- Beaufsichtig-ung des Habutae zu exportirend
- 仏
- Surveillance de Habutayé exporté
讓受
(ゆづりうけ)當事者間の法律行爲によりて、物權其他の權利を一方より相手方に移轉せしめたる場合に於て、これを其の取得したる者の方面より觀察し讓受と稱す、其の取得者を讓受人と謂ふ、讓受は、所謂繼承取得の一方法にして、取得者の權利は、常に原權利者、即ち讓渡人の權利を基本とし、其全部若くは一切を受繼するものに外ならざるを以て、原權利者の有せし權利如何は、常に讓渡人の取得したる權利に、重要なる關係を有するもの也、何となれば、何人と雖も自己の有せざる權利を、讓渡することを得ざるは事明の理なればなり、爰を以て、讓受が其權利を取得するには、原權利者に於て現に其權利を有したることを前提要件とし、唯讓渡人の有せし權利の範圍に於て、讓受人は、其取得すべき目的たる權利を受繼するに過ぎざるものとす、讓受に相對するもの即ち讓渡にして、此名稱を異にするは、其觀察の方面を異にするより生ずる差異にして、何れも其内容と爲する所は、權利の移轉に關する問題に過ぎず、斯る場合に於ける法律的關係は、民法は、讓渡の方面より之れを規定するを常とせり、故に本書に於ても、便宜上讓渡の題目の下に雙方を聯結して解説を試むべし。
- 英
- Acquisition
- 独
- Erwerbung
- 仏
- Acquisition
讓受人
- 英
- Assignee
- 独
- Cessionär
- 仏
- Cessionnaire
讓渡
(ゆづりわたし)讓渡とは、或者が有する權利を、他の者に移轉せしむる法律行爲を云ふ、其の法律行爲は、賣買によると、贈與によると、將た又交換によるとを問はず、當事者の法律行爲による場合にして、主として契約によりて生ずるもの也、故に彼の相續、寄附行爲等に係るものは、契約にあらざるを以て、茲に云ふ讓渡中に包含せられざるものとす、而して其讓受を爲したる者を讓渡人と謂ひ、其相手方を讓渡人と謂ふ也、讓渡の目的となり得る權利は、吾人の自由に處分することを得べき財産權ならざるべからず、換言すれば融通物ならざるべからず、彼の一身に專屬する權利、例へば恩給、年金、勳章、其他一般に不融通物は、如何なる場合と雖も讓渡し得べからざるものとす、而して讓渡に關する法律上の規定は、其讓渡せらるべき權利の性質を異にするによりて、其方法效力に關して多少の差異あり、今法律の定むる所の大體を左に分説すべし、□一物權の讓渡、物權の讓渡に關して、當事者に於ける效力と、第三者との關係に於ける效力との二場合に分つべし、(甲)讓渡の當事者間に關するもの、物權の讓渡の當事者に於ける關係を定むるに就き、古來より二ケの主義あり、一を意思主義と云ひ、一を形式主義と云ひ、意思主義と云ふは、當事者の意思のみにて物權の移轉に效力を生ずるの主義なり、即ち一方が物權を移轉せしむるの意思を表示し、相手方がこれに承諾を與へたるときは、直に其の讓渡の效果を生ずるものにして、他に何等の方式を採ることを必要とせざるの主義なり、形式主義と云ふは、移轉せしむる法律行爲の外に、ある方式を採ることを必要とする主義なり、此の主義中にも方式は種々ありて、或は引渡、或は登記と云ふが如く一定せざるものなり、左の二個の主義中、何れが至當なるやと云ふに、社會の創造時代に當りては、百事形式を重んずるの風貴ばれ、人の意思に信用を置かず、總べての法律行爲は、必ず或方式を履踐するを要せり、蓋し證明の方法完備せず、又取引の頻繁ならざる時代にありては、斯かる方式も亦必要なりしならん、然りと雖も、漸次社會進步し、取引の頻繁を來たし、且つ證明の具完備するに至りては、方式を履行するが如き迂遠なる手續を遵奉せしむる必要なきのみならず、吾人の自由意思に效力を附するの今日に至りては、物權を設定、移轉するにも、亦意思主義を以て勝れるものなりと云はざるべからざるが如し、然れども未だ俄にこれを斷定するを得ざるものあり、即ち關係的にこれを適用するときは、物權の性質に悖ることなきあらず、又絶對的に之れを適用するには、第三者をして不側の損害を蒙むらしむる場合を生ずべければ也、然らば形式主義は是なりやと云ふに、これ又然りと云ふを得ず、元來形式主義なるものは、一名獨乙主義とも云ふべきものにして、獨乙法に於て認められたる主義にして、これを採用したるの理由とする所は、物權は直接に物を支配し得る性質を有する權利なれば、一方に對して▲權利者たることを主張し得るも、或場合に於て、第三者に對して權利者たることを主張し得ざる場合あるが如きは、物權の本質に反するものと云はざるべからず、故に物權の移轉は、當事者間と雖も、必ず一定の方式を履まざるべからざるものなりと云ふにあり、然れども近世の一大原則たる、吾人の自由意思の效力を減殺するの不利益あるを免れず、此の如く此の兩主義は、何れも多少の缺點あるを免れず、依て我民法は從來よりの慣習を參酌し、佛國主義なる意思主義を採用し、物權を移轉するには、單に當事者の意思表示のみにて、直に其效を生ずるものと爲せり、尤も我國の採用せし意思主義は、所謂關係的に用ひたるものにして、當事者間に就てのみ云ふべきことにして、第三者即ち他人に對しては、これを適用する能はざるものとす、(乙)物權讓渡の第三者に對する效力、前述したる意思主義の原則は、當事者間にのみ適すべきものにして、第三者に適用することを得ず、第三者に對して物權移轉の效力あらしめんには、一の形式を履むことを要するなり、若し當事者の意思のみによりて、第三者に對しても、物權の移轉の效力ありとするときは、第三者をして不測の損害を蒙むらしめ、又は詐僞の手段を廻らして、眞正の權利を取得したるものを害するの奸策者を容るるの餘地あり、斯かる現象は、單に一私人の利益を害するのみならず、惹いて一國の經濟を害するに至るが故に、我民法は此弊害を防がんが爲めに、第三者に對して物權ありたることを主張するには、一の形式を取るべきことを命ぜり、其方法は動産と不動産とによりてこれを異にす、先づ不動産に關する方法より説明せんに、不動産に關する物權の得喪變更を、第三者に對し效力あらしめんには、登記法の定むる所に從ひ、登記を經ざるべからず、故に登記を要する不動産上の權利の得喪、變更を、他人に對して主張せんとするには、己れ先づこれを登記するに非ずんば、其權利を主張する能はざるなり、次に動産に關する物權の讓渡を、第三者に對抗せしむる方法としては、其動産を權利者に引渡すことを要するなり、換言せば、動産に關する物權の讓渡は、當事者間に於ては意思表示のみにて充分なれども、これに次いで第三者に對抗せんには、其動産の引渡を完了せざるべからざる也、□二債權の讓渡、債權も亦物權と同じく移轉を許す、債權の移轉は、一人が債權者たるの地位を脱退して、他人がこれを繼承するものにして、當事者間の契約によりて效を生ずべきもの也、債權の讓渡ありたるときは、讓渡人たる債權者が、其地位を脱退す、故に讓渡が效力を生ずれば、爾後債務者に對して權利を有せず、讓受人は讓渡人の地位を承繼す、故に讓渡が其效を生ずれば、讓受人は債權を自己に領得し、自己の名を以て、債務者に對し請求を爲すことを得、(甲)讓渡し得べき債權及讓渡し得べからざる債權、債權は、總べて讓渡し得べきを以て原則とすれども、我民法はこれに例外を認め、第一に債權の性質が讓渡を許さざる場合、及第二に當事者間の意思を以て讓渡を許さざるの二場合は、これを例外として讓渡し得べからざるものとせり、即ち債權の性質上讓渡を許さざるものとは、例へば債權者たる人に著眼し、若くは債務者たる人に著眼して契約を結びたる雇傭契約の如き、(當事者間の承供あるときは此限にあらず)若くは法律の規定によりて讓渡するを得べからざるもの、親族關係より生ずる養料の債權の如き是れなり、又當事者の意思によりて讓渡を許さざる場合とは、當事者が其債權成立に關して、この債權を他に移轉せしむるを得ずと明約したるが如き場合を云ふものとす、以上の二場合は、法律に於て其讓渡を禁ぜらるるものなるが故に、若しこれに反して讓渡行爲を爲すも、無效とせらるるものとす、(乙)債權讓渡の完成及效力、債權讓渡の完成並に效力に關して、物權の場合と同じく當事者間に關するものと、第三者に對する場合とを別たざるべからず、イ當事者間に於ける債權讓渡の完成及效力、債權の讓渡は當事者、即ち讓渡人、讓受人間の合意によりて完成す、此契約は一般の場合に於ける如く諾成契約なり、合意あれば直に其效果を生じ、他の手續を要せず、別に債務者の承諾若くはこれに對する通知を要せず、又債權證書の交附を要せず、此點に於て物權の讓渡と異る事なし、而して此讓渡の效力として當事者間に生ずる關係は、讓渡人は、債務者及他の第三者に對して讓渡の效力を完成せしむるの責任を有し、其債權に證書あるときは、讓渡人はこれを讓受人に交附せざる可らず、又擔保物を占有するときは、これを讓受人に引渡すの義務あり、讓渡人は、讓渡契約の後に於て、債務者より辨濟として受取りたるものあるときは、讓受人に引渡すの義務あるものとす、ロ債務者及其他の第三者に對する債權讓渡の完成及效力、前に述べたるが如く、債權の讓渡は、物權の讓渡と同じく、當事者間の合意によりて直に效力を生ず、然れども、債務者及其他の第三者に對しては、一定の手續を要し、此手續を了りて始めて債務者及他の第三者に對して效力を生ずる也、此完成の手續並に效力に就きては、指名債權、指圖債權、無記名債權に就き區別あり、□一指名債權の場合、指名債權とは、債權者の何人たるの確定せるもの也、即ち普通の債權は、一般に指名債權たり、此指名債權の債務者及第三者に對する讓渡完成の手續は、債務者に對しては其讓渡の通知又は承諾を必要とす、此通知は、讓渡人より之を爲すを要す、但し其通知の方法に就きては、別段法律上の制限なし、書面を以てするも、口頭を以てするも可也、而して債務者以外の第三者に對しても、同じく讓渡の完成效力を生ぜしめんには、讓渡人より債務者に對する通知を必要とし、此場合に於ける其通知の方法は、確定日附ある證書を以てすることを必要とす、他の方法を以て爲したる通知は、債務者に對して效力を生ずるも、其他の第三者に對しては、讓渡の效力を生ぜざるものとす、□二指圖債權の場合、指圖債權とは、證書に指定したる債權者若くは其債權者の指圖せる人に、辨濟すべきものを云ひ、此種の債權には、必ず證書の存在するを必要とす、例へば約束手形、爲替手形、小切手の類は、此種に屬するものなり、指圖を讓渡するには、第一に裏書を爲すを要す、裏書とは、證書に債權の讓渡を爲したることを明記するものにして、通常は裏面に記するを以て此名稱あり、然れども何れの餘白にこれを記するも有效なり、普通裏書の書式は「表面の金額何某又は其指圖人に御渡し被下度候也、月日、氏名」とするが如し、而して此裏書を爲したる後、此證書を讓受人に交附することを必要とするなり、抑も指圖債權なるものは、證書の存在のみを以て、其の成立を認むることを得べきものにして、第三者若くは債務者は證書を所持する者のみを以て、正當の權利者と看做すの外なし、故に證書の引渡を以て讓渡の完成したるものと爲すなり、□三無記名債權の場合、無記名債權は、其價格が證書其ものに存し、法律上に於ては全く動産と同一の取扱を受く、これを所持すること動産を占有するに同じ、故に其讓渡に關しても、動産と同一の規定に從はしめ、當事者間にありては、契約によりてこれを移轉するも、第三者に對しては證書の引渡なければ效力を生せず、此證書の引渡あれば他の手續を爲すの要なし、□四其他の財産、以上説明したる點は、專ら世上に於て必要なる物權、債權に關するものなり、其他商號、專用權、商標權、發明專用權、鑛業採掘權等の私權も讓渡を爲し得ること勿論にして、其讓渡の手續、效果は、各特別法を以て規定せらるる所にして、主として登記制度によりたり、是等は省略す。(民、一七六條乃至一七八條、四六九條乃至四七三條)
- 英
- Assignment
- 独
- Übertragung
- 仏
- Transport
讓讓人
- 英
- Assignor
- 独
- Übe lieferer
- 仏
- Cédant
輸入禁制品
(ゆにふきんせいひん)外國より輸入する貨物を無限に許容するに於ては、國家の秩序、國民の健康を害し、若くは善良なる風俗を害するの虞なしとせず、故に我法律は、特に品目を揭げ、一定の制裁を附して其輸入を禁ずるものあり、此等の物を稱して輸入禁制品と謂ふ、關税定率法によるときは、左の貨物を以て輸入禁制品とせらる、即ち、□一法律命令により有害なりと認むべき、純良ならざる藥材、化學藥、製藥、食物若くは飮料、□二阿片吹煙具、□三法律命令により、公共の衞生又は動植物に危險なりと認むべき物件、□四特許、意匠、商標及版權に關する帝國の法律に違反したる物品、□五贋造貨幣及贋造と認むべき摸造貨幣、□六阿片(政府の輸入する藥料阿片を除く)□七公安及風俗を害すべき書籍、圖画、彫刻物其他の物品の七種とす、而して輸入禁制品の輸入を計り、又は其輸入を爲したる者は、犯罪に係る貨物の元價に相當する罰金、若くは科料に處し、其貨物を沒收せらる、但し他の法律に於て別に刑を定めたるものは、其法律によるべきものとす。(關税法七四條、關税定率法一條)
- 英
- Contraband of importation
- 独
- Einfuhrcontrebande
- 仏
- Contrebande de l'importation
輸入申告
(ゆにふしんこく)ある貨物の輸入を爲さんとする者が其檢査を受けて、輸入免許を得んが爲めに、税關又は收税官吏に輸入申告書を以て、其貨物の輸入を爲さんとする由を申告することを輸入申告と稱す、我關税法の定むる所によれば、貨物の輸入を爲さんとする者は、税關に申告し、貨物の檢査を經て、其免許を受けざるべからず、輸入申告書には、仕入書を添附するを要す、仕入書とは、輸入貨物の積載、船舶の名稱、國籍、貨物の仕入地、産出地又は製造地、記號、番號、箇數、數量等を記載したる書面なり、但し當該官吏に於て、仕入書を添附すること能はざる理由ありと認むるときは、此限に非ず、此場合を除く外、輸入申告書に仕入書を添附せざるときは、關税の附加に關して異議を申立て、若くは訴訟を提起することを得ざるの制裁ありとす、而して關税は、すべて此輸入申告の日に於て行はるる法規に從ひ、〓收せらるるものとす、關税は、輸入申告者より〓收せらるるものなり。(關税法三、三一、三二條)
- 英
- Announcement of import
- 独
- Aussage der Einfuhr
- 仏
- Annonce de l'importation
輸入税
(ゆにふせい)關税法及關税定率法によりて、貨物を外國より輸入するに當り、輸入申告者に課賦する税金を輸入税と稱す。
- 英
- Import duty
- 独
- Einfuhrzoll
- 仏
- Impôt sur l'importation
傭員
(よういん)傭員とは、雇傭契約により、相手方(使用者)の爲めに一定の勞務に服すべき者を云ふ、(雇傭の部參照)□一勞務者は使用者に對して勞務に服することを約する者なり、□二勞務者は、使用者に對して一定の報酬を請求するの權利を有す。(民六二三條及宮内省官制六二條)
- 英
- Employee
- 独
- Angestellte
- 仏
- Employé
用益者
(ようえきしや)他人の所有に屬する物件に付き、其物の用法に從ひ、之を使用收益する權利を有する者を用益者と謂ふ、例へば他人の田畑を賃借して、これを耕耘し、其收穫を得るが如き、又はある物件を他人より借用して使用する如き是れなり。(民五九三、六〇一條、民訴法一六條)
- 英
- Usufructuary
- 独
- Nieszbraucher
- 仏
- Usufruitier
用水地役權
(ようすゐちえきけん)地役權の目的が、水汲取りの使用、灌漑等なる場合に於てこれを用水地役權と謂ふ、地役權の性質は左の如し、地役權とは、設定行爲を以て定めたる目的に從ひ、他人の土地を自己の土地の便益に供する權利を云ふ、□一地役權は他人の土地の上に行はるる物權なり、地役權の目的は土地なることを要し、且つ其土地は他人の所有に屬することを必要とするを以て、地役權は土地以外の物の上に行はるることなく、又自己の所有地の上に行はるることなし、地役權は一の物權なるを以て、直接に物の上に行はれ、地役權者は其權利の範圍内に於て、直接に土地を支配するの權利を有すると同時に、士地の所有者は地役權者に對して、積極的に或行爲を爲すの義務を負擔せざるを原則とす、詳言すれば、地役權者が、權利の目的たる土地の上にある行爲を爲すの權利を有するときは、土地の所有者は、地役權者の行爲を認容するの義務を負ひ、地役權者が土地所有者の權利行使を制限するの權利を有するときは、土地の所有者は禁ぜられたる行爲を爲さざるの義務、即ち不行爲の義務を負ふに止まり、地役權者に對して、積極的に或給付を爲すの義務を負ふことなし、故に土地の所有者相互の間に於て、其中の一人が相手方に對してある行爲を爲すべきことを約したるときは、其契約は債權關係を創設し得べきも、地役權を發生せしむることなし、□二地役權は土地の所有者が他人の土地の上に有する權なり、地役權は土地と土地との關係より生じ、此權利の存立するが爲めには、所有者を異にする二個の土地の存在することを要するは明白なりとす、而して此二個の土地中、地役權の附著せる土地を稱して要役地といひ、地役權を負擔するものを稱して承役地といふ、地役權は要役地の所有者が、要役地の便益の爲めに有する權利なるを以て、獨立して存立することを得ず、常に必ず要役地に從屬し、要役地の所有權と分離すべからざる關係を有するものとす、□三地役權は土地の所有者が他人の土地を便益に供するの權利なり、地役權は、承役地を要役地の便益に供するを以て目的とす、換言すれば、地役權は承役地に依て供せらるる要役地の便益を以て、其内容となすものとす、A便益の性質、地役權の目的たる土地の便益左の性質を具備することを要す、(甲)地役權の目的たる要役地の便益は、要役地其ものの便益を主眼とするものなる事を要し、所有者其人の便益を主眼とするものは、地役權の目的たることを得ず、例へば隣地を通行し、又は隣地を通じて水道を設くるが如きは、要役地の利用上に於て一定不變の便益を與ふるものにして、此便益は土地其ものに附著し、所有者の變更に拘はらず、常に存在すべきものとす、故に此種の便益は、土地の便益として、地役權の内容たることを得べし、之に反して、隣地に於て狩獵、漁獵を爲し、若くは隣地の庭園に於て自由に散步を爲すの權利の如きは、要役地其のものの便益を目的とする所の權利にあらずして、寧る所有者其人の便益を目的とする所の權利なりとす、(乙)要役地の爲めに承役地の供する便益は、承役地其ものに存することを必要とし、承役地の所有者の勞役に存することを得ず、例へば土地の所有者が、他人の土地を通行するの權利を有する場合に、通行の便益を土地の所有者に供するものは、土地にして人にあらず、故に其權利は地役權なり、然れども土地の所有者の爲めに工事を爲し、又は草木の植付を爲すが如きは、人の勞役に依りて供せらるる便益にして、土地の供する便益にあらざるを以て、地役權の目的たることを得ず、蓋し土地の所有者が、他の土地所有者をして、此種の便益を供せしむるの權利を取得するは、頗る有益なりと雖も、其權利は一の債權として、法律の保護を受くるに止まり、地役權として法律の保護を受くることを得ざるものとす、(丙)地役權の目的たる便益は、公の秩序に反せざることを要す、所有者を異にする二個の土地ある場合に、其所有者は、任意に土地相互の關係を定むるの全權を有し、これが爲めに一の土地の便益に、他の土地の上に負擔を加ふることは固より隨意也、蓋し此等の事項に關する當事者の意思表示は、素と私益を目的とするものなれば、法律は一般の原則に從ひ、其意思表示に效力を與ふるものとす、然れども土地所有者は、其支配する土地相互の關係を定むるに當り、公の秩序に反する便益を以て、地役權の目的となすこと能はざるものとす、(B)便益の種類、土地の所有者が、他人の土地を以て、自己の土地の便益に供するの方法は、區々にして一定せず、或は自己の土地の爲めに、他人の土地の使用を爲すを目的とし、或は自己の土地の爲めに、他人の土地の使益を爲すを目的とし、或は自己の土地の爲めに、他人の土地に於ける權利の行使を制限するを目的とし、或は又自己の土地の爲めに、相隣者の關係より生ずる法律上の覊伴を脱する目的とす、例へば通行地役權、水道地役權の如きは承役地の使用を目的とし、山林に於て、薪材、柴草を採取するの地役權、荒蕪地に於て、牛馬を飼養するの地役權は、承役地に於ける收益を目的とし、隣地の所有者をして、一定の高さを超過して、若くは境界より一定の距離内に於て、竹木、工作物等を所有せしめざるの地役權は、隣地に於ける所有權の行使を制限するを目的とし、雨水を隣地に注射せしむべき工作物を設くるの地役權、建物又は工作物を築造するに付き、法定の距離を有せざるの地役權は、相隣者の關係より生ずる法定の義務を免脱するを目的とするが如し、□四地役權は不可分の權利也、地役權者は、地役權の全部を所有することを要し、之を分割して其一部を所有することを得ず、これ他なし、地役權は、不可分的に要役地に附隨する所の權利たると同時に、不可分的に承役地の上に有する負擔なるを以て、之を分割することは、地役權の性質に反するものなれば也、例へば地役權者が、隣地を通行するの權利を有し、若くは隣地の所有者をして、境界より一定の距離内に於て、竹木又は工作物を所有せしめざるの權利を有するものと假定せんに、第一の場合に於て、地役權者は隣地の全部を通行することを得るにあらざれば、其目的を達すること能はざるや明かにして、隣地の二分の一若くは三分の一を通行するを得るは、毫も通行權を有せざるに等しく、地役權は何等の效用をもなさざるなり、又第二の場合に於ては、地役權の目的たる便益は、有形上及び理想上、分割し得べからざることは多辯を要せずして明かなり、地役權は不可分の權利にして、一部の地役權なるものは、法律上存存せざるを以て、此權利の取得は常に全部たることを要すると同時に、其喪失も亦全部たることを必要とす、換言すれば、吾人は地役權を分割して、其一部を取得し、又は反對に其一部を喪失することを得ざるものとす、從つて、イ土地の共有者の一人は、其持分に付き地役權を設定することを得ず、又其一持分に付き地役權を取得することを得ず、ロ土地の共有者の一人は、其持分に付き、土地の爲めに有する地役權を消滅せしめ、又は土地の上に有する地役權を消滅せしむることを得ず、ハ土地の分割又は其一部の讓渡の場合に於ては、地役權は其各部の爲め又は其各部の上に存す。(民二八九條一項、二八〇條至乃二九四條)
- 英
- Servitude of using water
- 独
- Servitutsrecht des gebrauchenden Wassers
- 仏
- Servitude de l'emploie de l'eau
傭船契約
(ようせんけいやく)當事者の一方が船舶を艤裝し、乘組員を備へて相手方の運送用に供し、相手方は之に對して報酬を支拂ふ契約を傭船契約と謂ふ、傭船契約は船舶の全部又は一部を相手方の運送用に供するものにして、茲に船舶の一部又は全部といふは、船艙の全部又は一部のことにして、從て傭船契約にありては、船主は單に船艙を用ゐしむるを以て足れりとせず、尚ほ自ら之が運送に從事することを要す、此點船舶の賃貸借と異なる所にして、運送契約の一種たる所以なり、□一傭船契約の種類、傭船契約は上説の如く、當事者の一方(船主又は船舶賃借人)が船舶の全部又は一部を貸切り、之に船積し又は乘組みたる旅客物品を運送することを約し、相手方(傭船者)が之に報酬を與ふることを約する一種の運送契約にして、其全部を以て契約の目的となす場合は、俗に船腹借切と稱するものにして全部傭船契約とす、又其一部を以て契約の目的となすときは、所謂一部傭船契約の存する場合にして、外國に於ては廻漕問屋が船艙何番などといひて之を借入れ、他人の貨物運送に從事する場合に行はるるものなり、次に傭船契約は其期間の如何によりて、これを定期傭船契約と、定航海傭船契約とに別つことを得べし、此二者は多く全部傭船契約の場合に行はるるものにして、何年何個月又は何個月間と定めて、期間により傭船せる場合は前者にして、或航路の間傭船せる場合は後者とす、總て之等は傭船契約の内容如何によりて定まるものにて、傭船契約書により表示せらるるものとす、茲に一言すべきは、傭船料は定期傭船と、定航路傭船とにより其定め方各特色あるものなれば、此區別は頗る實益ありとす、□二當事者の權務、傭船契約當事者の權利義務は、契約上の權利義務なるを以て、一方の義務は他方の權利となる、左に船主の義務より之を述べん、(甲)船主の義務、船主の義務中最も大なるものを堪航擔保の義務となす、船主は傭船主に對し、發航の當時船舶が安全に航海を爲すに堪ふることを擔保する義務を負ふ、之を堪航擔保の義務といふ、傭船者は如何に注意するも、自ら船舶が航海に堪ふるや否やを調査すること能はず、國家は時期を定めて之を檢査し、事變の生ぜしときは關係者を訊問して更に船舶を檢査するも、航海每に此手續を採ること能はず、且つ現今の如く保險制度發達して、古き船と雖も相當の保險金を得べきを以て、船主の注意も勢ひ自ら薄くなるべく、故に法律が金錢上の制裁として、堪航擔保の義務を負はしめたるものとす、次に船主は海上運送人として、船長が其法定權限内に於て爲したる行爲、又は船員が職務を行ふに當り加へたる損害に就きては、船舶運賃等の海産を委付して其責を免るることを得るも、船主は特約をなしたるときと雖も、自己の過失、船員其他の使用の惡意若くは重大なる過失、又は船舶が航海に堪へざるに因りて生じたる損害を賠償することを免るるを得ざるものとす、蓋し海運は往々獨占的性質を帶びて、荷主の隨意に船主を選ぶ事能はざるよりして、已むを得ず斯る不利益なる條件の下に契約を取結ぶことあれば也、次は準備及通知の義務也、船主は運送品を船積し得るに必要なる整備を爲し、此準備整ひたるときは、遲滯なく傭船者に對して通知を發するの義務あり、(乙)傭船者の義務、傭船者は傭船料支拂の義務、通知により直に船積を爲すの義務等あり、之等は傭船者の部に讓り、茲には傭船料に就きて一言せん、抑も傭船料は運賃のことにして、傭船契約に於てのみ之を傭船料といふに過ぎず、されば一般は運賃の理論に從ふべきは勿論なり、傭船料の定め方に就きては、定期傭船と定航海傭船とに依て區別あり、前者にありては一日一噸に付き幾何、又は一個月若くは定期每に總噸數一噸に付き若干と定む、後者にありては普通引渡貨物に付き幾何と定む、茲一噸といふは、英國に於ては汽船は四十吋、帆船五十吋なり、稀には甲港より乙港まで料金若干と定むることあり、之をランプ、サムと謂ふ、又傭船料は運送行爲の完了後支拂ふを原則とするも、定期の傭船契約にありては每月末に之を支拂ふを普通とし、特に本邦にては十五日每に前拂をなすとか、定航海傭船の場合に於ては、其傭船料は一部を前渡し、船舶仕向港到著の上殘部を支拂ふを一般の慣習となす。(商五九〇乃至六四〇條、及び船荷證券の部參照)
傭船者
(ようせんしや)傭船者とは、傭船契約により、相手方をして物品運送を爲さしむる者を云ふ、傭船契約とは、船舶所有者が、船舶の全部又は一部を相手方の使用に供し、相手方は一定の運送賃を支拂ひて、其部分に運送品を積込み、而して船舶所有者又は船長をして、之を運送せしむる契約を云ふ、此場合に於て、其船舶所有者の相手方を傭船者と謂ふ、傭船契約中、船艙の全部を目的とするものは、船舶の賃貸借契約なるものと、外形上頗る相類似せり、然れども兩者の間には差異なきにあらず、賃貸借契約に於ては、船舶所有者は船舶のみを賃貸し、賃借人は船長及び海員の雇入、艤裝、其他一切の航海準備を爲し、而して自ら運送を爲すものなりと雖も、傭船契約の場合に於ては、唯傭船者が、其運送品を積込む爲めに使用すべき場所を專用するに過ぎずして、船長及び海員の雇入、石炭及び糧食の積込、其他航海の準備は、一切船舶所有者に於て負擔し、運送なる行爲も、船舶所有者の責任を以て之を爲すものとす、約言すれば、賃借人は船舶所有者と同一の地位に立つものにして、寧る傭船者の相手方となる地位に立つものとす、其他船舶の賃貸借は、之を登記するときは、爾後其船舶の上に物權を取得したるものに對し、其效力を有するも、傭船契約にありては、第三者に對して、何等特別なる權利義務を有するものにあらず、然れども、傭船者も亦更に第三者に對して、第二の傭船契約、若くは個々の運送契約を締結することを得るものにして、之が爲めに船舶所有者と、第一の傭船者との間に於ける關係は、毫も其の影響を受くべきものにあらず、又第一の傭船者と、第二の傭船者、若くは荷送人との關係は、船舶所有者と、第一の傭船者との關係と殆ど異る所なし、唯此場合に於て、船長任免の權利は、依然として船舶所有者に屬し、第一傭船者は、船長を左右することを得ざるの地位にあり、其結果、第二の傭船契約の履行が、船長の職務に屬する範圍内の事項なるときは、其事項に就き、第一傭船者をして、尚其責に任ぜしむるは酷に失するを以て、此點に關しては、船舶所有者が、直接に第二の傭船者又は荷送人に對して責任を有し、第一の傭船者は、責任を負はざるものとす。(商五五六、五五七、六一二、五九〇、五九一條、五九四條乃至六一九條)
- 英
- Charterer
- 独
- Befrachter
- 仏
- Chartre
用方
(ようはう)用方とは、物の性質に從ひて之を使用するの方法を云ふ、例へば田畑の賃貸借の場合に、借主は其田畑を耕作し、以て收益を計るは、是其用方を誤らざるもの也、然るに今其田畑を變して、池を穿ち、或は牧場と爲す如きは、田畑の用方に適せざるもの也、要するに物の用方とは、其性質を變ぜすして、之を利用する事を云ふに外ならず。(民八八、三五六條)
- 英
- Good use
- 独
- Benutzung
- 仏
- Moyen d'emploie
豫戒
(よかい)豫戒とは、豫戒令に依り、警視總監、北海道長官又は府縣知事が、公共の安寧秩序を保持する爲め、浮浪の徒其他、他人の自由權利を防害せんとする虞ある者に對し、一定の期間特に謹愼を命じ、其期間特別なる警察上の監督を受けしむる事を云ふ。豫戒命令とは、公共の安寧秩序を維持するが爲め、地方長官、警視總監、北海道長官が、豫戒令に基き發する命令を云ふ、即ち此の命令は、保安警察上重要なるもに屬す、□一豫戒令を受くべき者は、次の事項に該當する者たるべし、即ち、イ一定の生産を有せず、平常粗暴の言論行爲を事とする者、ロ總べて他人の開設する集會を妨害し、又は妨害せんとしたる者、ハ公私を問はず、他人の業務行爲に關渉して、其自由を妨害し、又は妨害せんとしたる者、□二ロ又はハに揭ぐる妨害を爲すの目的を以て、イよりハまでに記載したる者を使用したる者これ也、□二豫戒命令の内容は次の如し、即ち、イ一定の期限内に、適法の生業を求て之に從事すべき事を命ず、ロ總て他人の開設する集合場に立入り、妨害を爲す可らざることを命ず、ハ如何なる口實に拘はらず、財物を強請し、不當の要求を爲し、強て面會を求め、脅迫に渉る書面を用ひ、勸告書を送り、又は如何なる方法たるを問はず、暴威を示して、他人の進退意見を變更せしめんとし、其他他人の業務行爲を妨害し、又は妨害せんとするの所行を爲すべからざることを命ず、ニ人を使用して、總て他人の開設したる集合を妨害し、又は妨害せんとし、又は他人の業務行爲に關渉して、其自由を妨害し、又は妨害せんとするの所行を爲さしめざること、及び豫戒命令を受けたる者を扶助し、又は使用すべからざることを命ず、被命令者中一のイに該る者には二のイロハの三つを併せ命じ、又一のロハに該る者には、二のロハの二つを併せ命じ、なほ一の二に該る者には二の二を命ず、□三豫戒命令を受けたる者、其現住居を轉ずるときは、轉居の前二十四時間内に、其旨を舊住居の所轄警察署に屆出で、轉居の後二十四時間内に、其旨を新住居の所轄警察署に屆出づべし、□四豫戒命令を受けたる日より、三年以内に其命令に違犯し、又轉居の屆出を怠りたる者は、條件の輕重に依り、三日以上十日以下の拘留に處し、又は一圓以上、一圓九十五錢以下の科料に處せらるることあり、又十一日以上六月以下の重禁錮に處し、又は禁錮に代へて二十圓以上二百圓以下の罰金に處す、此他豫戒命令を受けたる者は、海外旅券の下付を受くることを得ず、□五豫戒命令は次の事由に依り其效力を失ふ、即ちイ豫戒命令に違犯したるが爲めに之を處罰せしとき、ロ豫戒命令を受けたる時より、三年間其命令に違反せずして經過せるとき、ハ受命後一年以上を經過し、改悛の情狀著しきに依り、警視總監、北海道長官及び府縣知事より、豫戒命令を解除せられたるとき是也。(二五年一月勅一一號豫戒令、三三年外務省令二號外國旅券規則八條)豫戒令は、保安警察の目的上、公共の安寧秩序を維時せんが爲めに、豫戒命令の發布方法及び取消方法等に關する事項を規定したるものなり。(二五年一月勅一一號)
- 英
- Warning
- 独
- Warnung
- 仏
- Avis
豫戒命令
- 英
- Ordinance of pre-warning
- 独
- Warnungsverordnung
- 仏
- Ordonnance d'avertir
豫戒令
預金
(よきん)預金とは、利殖の目的を以て、郵便貯金管理所、又は銀行等へ預入れたる金錢若くは有價證券を云ふ、預人は、之に對して一定の利息を附すべきは勿論、預け人は其預り人に對する債權者たる地位に立つことも、亦普通の寄託と異なることなし。(預り、寄託の部參照)
- 英
- Deposit
- 独
- Geldeinlagen
- 仏
- Dèpôt
豫告
(よこく)豫め或事項を通告することを豫告と謂ふ、例へば債權者が一月二十五日に債務者に對し其債務の辨濟期限は一月三十日なるを以て、同日には必ず辨濟をなすべき旨を通告するが如き是也。(商四〇條)
- 英
- Imforming beforehand
- 独
- Kündig-ung
- 仏
- Précaution
豫告期間
豫告期間とは、豫告をなしたる日時と、其到來すべき豫告日との間に存すべき時間を云ふ、右の例を以て云へば、一月二十五日より一月三十日の債務辨濟時間迄を云ふ。(商九九三條二項)
- 英
- Term reported
- 独
- Kündig-ungsfrist
- 仏
- Terme reportée
豫告日
豫告日とは、前以て到來すべき日を定めたる日を云ふ、例へば豫め汝は明後日正午出頭すべしと云ふが如き是なり。(郵便規則六五條)
- 英
- Fixed day reported
- 独
- Kündig-ungstag
- 仏
- Jour fixe reporté
橫濵正金銀行條例
(よこはましやうきんぎんかうでうれい)橫濵正金銀行の組織、營業等に關する事項を定めたるものなり、□一橫濱正金銀行は、有限責任にして、其負債に對して、株主の負擔すべき義務は、株金に止まるものとす、□二橫濵正金銀行は、本店を橫濱に設置す、又内外國に於て、貿易上要用なる地に、支店又は出張所を設置し、又他の銀行とコルレスボンデンスを締結することを得、□三橫濵正金銀行の營業年限は、開業の日、即ち明治一三年二月二十八日より滿二十ケ年とす、但し株主總會の決議に依り、營業の延期を請願することを得、□四橫濵正金銀行の資本金は、六百萬圓と定め、之を六萬株に分ち、一株を百圓とす、但し株主總會の決議に依り、資本金の增減を請願することを得、橫濱正金銀行の株式は、日本人の外賣買讓與することを許さず、□五橫濱正金銀行の營業は左の如し、イ外國の爲替及び荷爲替、ロ内國の爲替及び荷爲替、ハ貸付、ニ諸預金及保護預、ホ爲替、手形、約束手形、其他諸證券の割引又は代金取立、ヘ貨幣の交換是也、□六橫濱正金銀行取締役は五人以上とし、其任期を一ケ年とす、株主總會に於て其人員を定め、五十株以上を有する株主より之を選擧し、大藏大臣の認許を受くべし、其滿期に當り再選せらるる者も亦同じ、□七頭取は取締役に於てこれを互選し、大藏大臣の認可を受くべし、但し大藏大臣に於て、必要と思考するとき、特に日本銀行副總裁をして、橫濱正金銀行頭取を兼ねしめ、又は橫濵正金銀行頭取をして、日本銀行理事を兼ねしむることあるべし、□八銀行事務の都合に依り、取締役に於て副頭取一人を互選することを得、但し其職權は、頭取事故あるとき之を代理するに止まるものとす、頭取、取締役の職權及び責任は定款を以て之を定む。(二〇年七月勅二九號)
- 英
- Regulation of Yoko-hama Specie Bank
- 独
- Regel der Yoko-hama Bargeld Bank
- 仏
- Règles de la Banque de l'espèce de Yokohama
餘罪
(よざい)二個以上の罪を犯したる者に付き、一罪發覺して判決を經たる場合に於て、未だ發覺せざる殘餘の犯罪を、此判決を經たる犯罪に對して餘罪と謂ふ、而して一罪前に發し、已に判決を經て、餘罪後に發し、其輕く若くは等しきものは之を處罰せず、其重きものは更にこれを論じ、前發の刑を以て、後發の刑に通算す、但し前發の刑、罰金、科料に該り、已に完納したるものは、一圓を一日とし、後發の刑期に通算す、若し前發の罪を判決するとき、未だ發せざる罪、再犯の罪と俱に發したる者は、其再犯と比較し、一の重きに從ひ、前發の刑を通算せざるなり。(舊刑一〇二條)
- 英
- Another crime
- 独
- anderes Ver-brechen
- 仏
- Infraction
豫算
(よさん)廣く收入支出の見積を豫算と稱す、豫算は國家自治體の歳計に限るに非ざるも、特に法律上の關係を有するは、國家自治體等の豫算なるを以て、以下國家の豫算に就きて槪説する所あらん、豫算は、我國法上財政監督の方法として、政府が、任意に使用するを得べき將來の歳出歳入を定めたる、一種の訓令なりとす、從て、□一豫算は一種の訓令也、訓令とは、行政機關に對してのみ效力ある命令を云ふ、豫算は天皇の裁可公布を要するも、帝國議會の恊贊を其要素と爲さざるを以て、之を法律と云ひ得ざるは勿論、其效力は又單に行政機關内部にのみ行はるるに止まり、他の命令の如く、一般人民を拘束する效力なし、故に豫算は、訓令的性質を有する一種の命令にして、其の存すると否とは、毫も一個人の權利義務に影響するものに非ず、□二豫算は政府の任意に使用するを得べき歳出歳入を定めたる一種の訓令也、憲法に「國家の歳出歳入は、每年豫算を以て帝國議會の恊賛を經べし」と規定し、又會計法に「租税及び其他一切の收納を歳入とし、一切の經費を歳出とし、歳入歳出は總豫算に編入すべし」と規定せり、從て豫算は國家の歳出歳入を計算するものにして、豫算によりて歳出歳入初めて生じ得るものにあらず、歳出歳入の基礎は法律命令にありて、豫算に基くにあらざることは、憲法が「現行の租税は、更に法律を以て之を改めざる限りは、舊に依り之を徵收す」と云ひ、又會計法が「租税及び其他の歳入は、法律命令の規定に從ひ之を〓收すべし」と云ひ、又憲法が「皇室經費は現在の定款に依り、每年國庫より之を支出し云々」と云ひ、又「憲法上の大權に基づける既定の歳出及び法律の結果に由り、又は法律上政府の義務に屬する歳出云々」と云ひ、豫算に依りて〓收支出すべし、若くは豫算に基くの歳出と云はざるのみならず、憲法が特に豫算の款項に超過し、又は豫算の外に生ずる支出あることを認めたるを以て、之を推知するを得べし、法律命令にして、已に國家の歳入歳出の基礎なるときは、歳出歳入に對し、殊更に豫算を以てこれを帝國議會の議に付すべきの理由なきも、單に法律命令のみに依り、政府をして任意に收入支出し得べきものとせば、政府の濫費浪出を防ぐに由なきを以て、憲法は豫め歳出歳入を計算して豫算を定め、政府は豫算に定めたる範圍内に於ては、任意に其の歳出を爲すを得べく、又其歳入は、自由に之を該年度歳出の目的に使用するを得ることを命ずるにあり、從て政府は、豫算の範圍にありては責任なく、任意に收入支出するを得るも、若し豫算に其の款項なきときは、政府は其の必要を理由として之を支出し、又は之を該年度の經費に充つべき財源と爲すの自由を有せざるなり、□三豫算は財政監督の方法として、政府の任意に使用するを得べき歳出歳入を定めたる一種の訓令なり、國家の歳出歳入を計算して豫算を定むるは、其の目的とする所財政を監督し、政府の濫費冗出を防ぐに在りて、事業の計畫にあらず、從て政府は、豫算に依りて收入支出せざるべからざるも、豫算にある費目存するが爲めに、其の事業を企圖せざるべからざるの義務あることなし、□四豫算は財政監督の方法として、政府の任意に使用するを得べき將來の歳出歳入を定めたる一種の訓令なり、財政監督の方法として、國家の歳出歳入を計算するは、決算も亦豫算と同一なるも、決算は單に既往の歳入歳出を計算するに止まり、豫算の如く、將來の歳出歳入を定むるものにあらず、其の結果豫算には、款項の超過又は豫算外の支出あり得べきも、決算には此の如き場合全く生ずることなし、此の如く、豫算は我が國法上財政監督の方法として、政府の任意に使用するを得べき將來の歳出歳入を定めたる一種の訓令なるが故に、帝國議會のこれに恊贊するは、財政監督の一方法たるに止まり、立法行爲の如く、帝國議會の恊贊なきときは、豫算存在し得ざるにあらず、但し豫算にして帝國議會の恊贊を經べきものとせば、財政の監督上一層嚴密なるを得べき政事上の利益あるを以て、我が憲法はある場合を除くの外、常に帝國議會の恊贊を經べきものとせるのみ。(憲法六四、六三、六六、六七條二二年四月法四號會計法二、一〇、一二條)
- 英
- Budget
- 独
- Etat
- 仏
- Budget
豫算案
(よさんあん)豫算を記載したる案文を豫算案と謂ふ、而して豫算案は、大藏大臣が歳入の景況を調査し、各省の豫定經費要求書に基き調製するもの也、故に豫算書の調製、權限は、政府に存するものにして、貴衆兩議院は、其權限なきなり、豫算案の調査方法に二種あり、純計豫算及び統計豫算是なり、□一純計豫算とは、歳出には歳入に關せざる經費のみを揭げ、歳入にありては、〓税等の經費を控除して、單に純收入を揭ぐるを云ひ、□二統計豫算とは、歳出歳入共に其總額を揭げ、徵税費等を歳入より控除せざるを云ふ、憲法に「國家の歳出歳入」とあり、又會計法には「租税及び其他の一切の收納を歳入とし、一切の經費を歳出とし、歳入歳出は總豫算に編入すべし」とあるを以て、我國の豫算は、總計豫算たるべきは勿論、其の歳出、歳入は、總べて之を一個の豫算に總括するを原則とし、法律を以て特別會計の設置を定むる場合の外は、特別の豫算を設くるを許さず、但し豫算成立後に於て、臨時の必要に基き、追加豫算を編製するは、憲法及び會計法の禁ぜざる所也、豫算案は收入支出に分ち、收入支出はこれを經常臨時の二部に、各部は更にこれを款項に區分す、款項は歳入にありては、其の性質を示し、歳出にありては、其の目的を明にするものにして、其區分は大藏大臣の定むる所とす、但し皇室費は、每年國庫よりこれを支出すべく、又憲法上規定せる豫備費は、法がこれを設くべきことを命ずるを以て、豫算には必ず二種の項を設くるを要し、是等の費目を揭げざる豫算は、憲法上豫算の效なきものとす。(憲法六四、六九、六六條、會計法二、四、三〇、六條、二二年四月勅六〇號會計規則二章一款、五章四款)
- 英
- Bill of budget
- 独
- Budgetbill
- 仏
- Note du Budget
豫算委員
(よさんいいん)豫算委員とは、政府が議會に提出したる豫算案を審査する爲め、任命ぜられたる議員を云ふ、政府が豫算を衆議院に提出したるときは、衆議院は、豫算委員に附託して之を審査せしむ、豫算委員は責任委員にして、其數六三人なり、豫算委員豫算の審査を終りたるときは、確定の議決を爲し、豫算案を受取りたる日より一五日以内に、其の經過及び結果を議院に報告すべきものとす、衆議院に於て、豫算を議決したるときは、これを貴族院に移す、貴族院の豫算委員は衆議院と異なり、四五人にして、其審査の日數に制限なし。(二二年二月法二號議院法二〇、四〇、四一條、二三年一二月衆議院決議、衆議院規則四二、六一條、二三年一二月貴族院決議、貴族院規則二八條、一一四條乃至一六〇條、一〇三、一七條)
- 英
- Budget committee
- 独
- Bud-getcomité
- 仏
- Comité du budget
豫算議定權
(よさんぎでふけん)豫算議定權とは、豫算に對する恊贊、廢除、削減等をなすことを云ふ、而して此權限に就ては、貴衆兩議院の間に軒輊なし、唯豫案は常に第一次に衆議院に提出せらるるを以て、衆議院は、貴族院に先んじて此議定を爲すことあるべきのみ、此事より考ふれば、豫算も亦決議案と同じく、議會任意に之を廢除削減するを得と云はざるべからず、然れども、憲法に其の制限の規定ある場合、例へば皇室經費、豫備費の如きは之を全然削減廢除することを得ざるもの也、豫算の廢除、削減に就ては、憲法上制限規定の存するあれども、其增加に至りては之を規定せず、元來豫算案の調製は、獨り大藏大臣の權限にあるを以て、議會に於て新に款項を新設し、若くは之を分割するの權なきは明かなり、唯豫算款項内の全額を增加するは、款項の區分を定むるものと異るが故に、議會の自由權内にありと云はざるべからず、然れども又この增額をなしたるを理由として、議會は政府に事業を強ゆることを得ず、何となれば、法令の範圍内に於てある事業を行ふと否とは、政府の任意にして、法律上議會は、之に干渉するの權なければなり。(憲法六五條乃至六九條、會計規則七條)
- 英
- Right to decide
- 独
- Etats-entscheidungsrecht
- 仏
- Droit de décider le Budget
豫算外の收入支出
(よさんぐわいのしうにふししゆつ)國家の收入支出は、豫算によりて之を定むるもの也、然れども臨時緊急なる事情の爲め、豫算の支出項目中に記載せざる國家の支出を生ずる事あり、之を豫算外の支出と謂ふ、斯かる場合に於て、通常國家は、豫算の外に豫備費なるものを設くるを以て、此内より支出するものとす、又豫算外の收入とは、以上の場合と反對にして、國家が一箇年間に於ける財源の收入を、豫算の收入項目に記載したるもの以外の收入を云ふ、これ又豫算の想到せざりし臨時の收入に外ならず。
- 英
- Outley out of budget、Income besides budget
- 独
- Zahlung neben dem Budget、Einkommen neben dem Budget
- 仏
- Dépens hors du budget、Revenu dehors du budget
豫算超過の收入支出
(よさんてふくわのしうにふししゆつ)豫算に於ては、凡そ一箇年度に於ける國家收入支出の總額を計上するもの也、然れども豫算は、所謂豫想計算なるを以て、其收入支出を以て毫も遺算なきを期すべからず、即ち時としては、豫算に計上せる收入若くは支出より、多大の收入若くは巨額の支出を生ずることありとす、之を豫算超過の收入又は豫算超過の支出と謂ふ。(會計法二〇條乃至二三條、憲法六九條)
- 英
- Income over the budget、Payment over the bud-get
- 独
- Einkommen über dem Etat、Zahlung über dem Etat
- 仏
- Revu surpassant le Budget、Dépens surpassant le Budget
豫審
(よしん)豫審は、被告事件を公判に附すべきや、將た免訴すべきやを定むる爲め、材料を蒐集する下調手續也、豫審の性質は、其實質に於ては搜索の繼續にして、其形式に於ては裁判所の審理處分也、故に豫審の手續も彈劾方式にして、唯糺問に傾くに止まるものとす、豫審の目的は、被告人の犯罪行爲に就きて下調を爲し、被告事件を公判に附し、其證據調を準備すべきや、將た被告人を免訴し、訴訟を終了すべきやを決するに必要なる限度まで、事實の關係を明確にするにあり、故に豫審は、公判の準備手續なり、若し公判に於て、豫審處分の如き手續を爲すものとせば、煩雜に堪へず、且つ公判に於ては、判事は多數なるが爲め、其意見を一致せしむるに就きて日時を要するが故に、爲めに迅速なる臨機の處分を爲すを得ず、又公判に於ては、公開生義を採るを以て、其取調は世間に公となりて、證據を蒐集檢擧するに困難なり、加之其の取調中、判事の變更あれば、其都度手續を新にせざるべからずして、豫審の處分は、到底公判にて爲す能はざる所なれば、公判前に於て、此豫審なる下調處分の必要あるものとす、而して公判の準備たる豫審は、訴訟手續の重要なる段階を成すものにあらずして、訴訟の燒點は公判にありとす、換言すれば、公判を準備する手續は眞の訴訟にあらず、公判の審理辯論が眞個の訴訟にして、且つ眞實を得るの基礎たるものなり、是れ刑事訴訟法に於て、直接審理主義を採りたる當然の結果なりとす、而して此直接審理主義は、實に公判と豫審との關係が因て定まる處なり、爰を以て豫審に在ては、公判の審理、殊に其證據調を妨ぐべからず、元來裁判に必要なる事項は、總て公判に於て直接に終局の確定を爲すを本則とするが故に、豫審に於ては總ての證據材料を集取し盡し、公判に於ては單に其取調を反覆するに過ぎざるを以て其目的となすべきものにあらず、斯くの如き豫審は、畢竟其目的の範圍を超過するものにして、爲めに訴訟を遲延し、公判を無視し、公判審理の結果をして正確ならしむることを害するものなり、豫審の目的は一定の被告人に對する罪責に就き、豫審の審理を爲し、且つ公判に附するの原由ありや否やの問題を決するに必要なる取調を爲すに在るが故に、證據保全の如きは、其湮滅の虞ある場合に限り、公判に供するが爲めに之を保全すべきなり、換言すれば、被告人に犯罪の充分なる嫌疑ありや否やを決するにありて、犯罪の確信を期せず、唯嫌疑を得れば足るものとす、是即ち豫審の實體は、公判に於ける證據調の準備たる所以なり。(刑訴六七、一七五條)
- 英
- Preliminary examination
- 独
- Vor-untersuchung
- 仏
- Jugement préliminaire
豫審處分
(よしんしよぶん)豫審處分とは、豫審手續によりて被告事件を調査したる上、豫審判事に於て其事件を處置することを云ふ、換言すれば、豫審判事が檢事の意見を求め、豫審終結決定をなすことを云ふ、□一檢事の意見を求むること、豫審處分即ち豫審決定は、豫審判事に依りて行はるるものなれば、其終結の時期は、豫審判事の思料に依りて定まるものとす、而して豫審判事は、被告事件を其管轄に非ずとするか、又は他に取調を要することなしと思料したるときは、豫審終結の處分に就き、檢事の意見を求むる爲め、訴訟記錄を送致すべきものとし、檢事は、此訴訟記錄に意見を附し、三日内にこれを豫審判事に還附すべきものとす、若し檢事にして豫審充分ならずと思料するときは、其條件に就き、更に取調を豫審判事に請求することを得べし、然れども豫審判事は、其請求に覊束せらるるものにあらざれば、若し其請求を肯ぜざるときは、檢事は豫審終結に就き、意見を附し、二十四時間内に訴訟記錄を還附せざるべからず、此の如く、檢事に意見を求むるに、檢事が豫審の請求を爲したる報告は、嫌疑充分なれば公判に附することを求むと云ふに在るを以て、此條件が充されたるや否やに就き、檢事の意見を述ぶるは、豫審請求の趣旨に適合するが爲め也、故に豫審の請求は、公判の請求に對し、條件附起訴又は間接の起訴と稱す、豫審判事は檢事に意見を求めたる後に於ても、ある豫審處分を必要とするときは、檢事の請求なき場合に於ても、自ら進で其取調を爲すことを得、蓋し豫審終結決定を爲さざる間は、未だ豫審處分の結末を告げたるにあらざれば也、□二豫審判事終結決定を爲すこと、豫審の終結決定は、被告人に充分なる嫌疑ありや否やを決するものなり、然るに其終結決定の材料たる所のものは、豫審調書、其他搜査證類にして、即ち書面審理に依りて決定せらるるもの也、故に豫審終結決定は公判と異り、必ずしも其取調を爲したる豫審判事に於て、終結決定をなすを要せざるものとす、而して終結すべき範圍は、檢事の起訴に依りて一定したる被告人及び其所爲に制限せらるべし、唯現行犯の場合に於ては、豫審判事が檢證調書を作るを以て、起訴ありたるものとなすが故に、被告人の一定せざる事あるも、此場合と雖も、豫審の終結決定を爲すに當りては、豫審判事は被告人を一定せざるべからず、豫審終結は、書面審理に依るものなるを以て、被告人逃走して其所在分明ならざる場合には、缺席の儘にて終結を爲すことを得べし、豫審終結決定の種類は左の如し、イ管轄違の決定、管轄違の終結決定を爲したるときは、時效中斷の效力ある外、豫審處分は全部無效に屬すべし、然れども、令狀(拘留狀、拘引狀等)の效力は、尚有することを得べく、又新に之を發することを得べき也、ロ免訴の決定、免訴の決定を爲すべき場合は、□一犯罪の證憑十分ならざるとき、□二被告事件罪とならざるとき、□三公訴の時效にかかりたるとき、□四確定判決を經たるとき、□五大赦ありたるとき、□六法律に於て其罪を全免するとき、□七告訴を俟つて受理すべき事件に就き、告訴の抛棄ありたるとき、□八犯罪の後頒布ありたる法律に依り、其刑を廢したるとき、□九訴追の條件を缺き、又は起訴の手續無效に屬するに依り、公訴不受理となるべき場合これ也、ハ公判に付する決定、公判に附する決定に左の三種あり、□一區裁判所の公判に附するの決定、被告事件違警罪なりと思料したるときは、區裁判所に移すの言渡をなすものとす、□二地方裁判所の輕罪公判に附するの決定、豫審判事は輕罪なりと思料したるときは、其裁判所の輕罪公判に附するの言渡を爲すものにして、被告人拘留を受けたる場合に於て、罰金の刑に該るものと思料したるときは、釋放の言渡を爲し、又禁錮の刑に該るべきものと思料したるときは、保釋若くは責付を許すことを得べく、若し被告人未だ拘留を受けざるときは、令狀を發することを得べし、□三地方裁判所の重罪公判に附するの決定、豫審判事は被告事件が重罪なりと思料したるときは、其裁判所の重罪公判に附するの言渡を爲すものとす、若し被告人に對し、保釋又は責附を許しあるときは、其言渡を取消し、被告人未だ拘留を受けざるときは、必ず令狀を發せざるべからず、豫審終結決定の種類は以上述ぶる所の如し、而して終結決定の内容は、公判に附する言渡の外、なほ事實上及び法律上の理由を附せざるべからず、豫審終結決定の正本は、速に檢事及び被告人に送達す、是れ豫審は書面審理なれば、此送達に依りて初めて決定は成立するものなれば也、而して重罪公判に附する場合に於ては、被告人に送達すべき正本には、其決定に對し抗告を爲し得べきこと、及び其期間を記載すべきものとす、若し其記載なきときは、更に決定の送達あるまで、抗告期間の經過を停止すべきものとす、檢事は、重罪公判に附するの決定、又は免訴、若くは管轄違の決定に對し、抗告を爲すことを得、被告人は、重罪公判に附する決定に對し、抗告を爲すことを得るものとす。(刑訴一六一、一六二、一七一條、一六四條乃至一七三條)
- 英
- Execution of preliminary ex-amination
- 独
- Voruntersuchungsbehandl-ung
- 仏
- Exécution du jugement pré-liminaire
豫審手續
(よしんてつでき)豫審手續に在りては、犯罪事實の有無を確定し又被告人が犯人なりや否やを確定すべきものとす、而して此目的を達するには、總ての審理處分を爲すを得べくして、殆ど豫審に於て爲す能はざるの審理處分なしと云ふを得べし、例へば證人、鑑定人、被告人の訊問、證書の利用、檢證處分の如き、證據調を爲し、或は物伴の搜索、差押、被告人の拘引、拘留の如き、總ての強制處分を爲すを得るものとす、而して其之を爲すの範圍は、外部に於て起訴の範圍に制限せられ、内部に對しては、準備の目的に制限せらる、豫審手續の實行は、豫審判事の計劃に一任し、法律は其方針を訓示せず、唯重大なる方式は、法律に於て之を定む、即ち豫審に於ては證據を集取し、之を公判を爲すに保全するを目的とするを於て、其調査行爲に就きては、調書を必要とす、而して此調書を作るが爲めには、豫審に於ては裁判所書記の立會を必要とし、若し裁判外に於て急速の際書記の立會を得る能はざるときは、二人の立會人あることを必要とす、若し書記又は立會人なくして爲したる處分は、其效あらざるものとす。(刑訴九二、二〇、九五、九六、九九、一〇一、一〇三、一三一條、六七條乃至一七五條)
- 英
- Procedure of preliminary ex-amination
- 独
- Voruntersuchungsverfahren
- 仏
- Progrès du jugement préliminaire
豫審判事
(よしんはんじ)刑事に關する被告事件に就き、豫審手續を行ふ判事を豫審判事と謂ふ、豫審は、糺問に傾くものなれば、豫審の處分は、當事者の申立に關係なく進行するものにして、豫審判事は獨立して其の意見方針に從ひ、豫審の目的を實行するものとす、豫審の目的の範圍、及び檢事が指定したる訴の範圍に就きては、豫審判事の必要なりと信ずる所に從ひて取調を爲すを得べく、其取調の順序も、亦自由に之を定むることを得べし、右の如く豫審判事は、豫審の主働者にして、且つ獨立のもの也、爰を以て豫審判事は、公判の受命判事又は受託判事と異なる、又公判の代理者にあらずして、公判と上下の關係に立つものに非ず、故にと審判事が、公判より事件の送致を受けたるときに於ても、豫審判事は獨立して豫審を爲し、通常の手續に從て豫審終結を爲し、免訴をも爲すことを得べし、豫審判事は國難又は重要なる問題に對しても、自己の責任を以て之を裁判すべく、裁判所の裁判を求むるが如き權を有するものにあらず、豫審判事は、常に其處分を自ら直接に爲すを原則とす、然れども管轄區域外に於て處分を爲すを要するときは、囑託の方法に依らざるべからず、又其管轄區域内に於ても、臨檢、搜索、差押、證人訊問の處分を、區裁判所判事に囑託することを得べし、而して此受託判事は、豫審判事にあらず、又其代理者にもあらずして、單に各個の豫審處分に就て豫審判事を補助するものたるに止まれり、故に其結果として、豫審全體を囑託するを得ず、又豫審判事は、必しも一人にて其處分を爲すことを要せず、同一に、裁判所の數人の豫審判事が、同時に其處分を行ふを得る也、斯くの如く豫審判事は、他の豫審判事又は區裁判所判事に其處分を囑託することを得れども、司法警察官に對しては、命令を下すことを得ざるものとす、豫審は密行にして書面審理なり、且つ豫審に於ては當事者間に辯論あることなく、審理者の一方のみの行爲より成るものとす、豫審の密行は證據を擧ぐるに容易なると、又被告人の利益の爲めとに由るものにして、他方に於ては、豫審の糺問に傾き、豫審判事より當事者に對する地位を示すもの也。(刑訴一八四、一九五、二四一、一一二、一三二、一八〇條)
- 英
- Preliminary judge
- 独
- Unter-suchungsrichter
- 仏
- Juge préliminaire
豫想
(よさう)一般には未だ未來に屬する事柄を發現し得べきもの、現實となり得べきもの、眞理となり得べきものと推測想像することを稱し、學問上にては、多く事物を決定し、事理を推究する爲めに、假りに其條件として、設置推定することを云ふ、されば此意味に於て豫想は、假定と殆ど同義となるべし、例へば吾人が第二の日露戰爭を豫想すと謂へば、諸種の事實を總合して、其が實現せらるべきことと推定するが如し。
- 英
- Presupposition
- 独
- Voraussetzung
- 仏
- Présupposition
豫定計算書
(よていけいさんしよ)特別會計(特則會計とは特別の須要に依り、普通會計法に據り難きものあるとき設置する會計を云ふ)に屬する歳入、歳出の計算書を豫定計算書と謂ふ。(作業局及鐵道會計規則六條)豫定經費要求書とは、各省大臣が、翌年度に於ける其の所管經費の需要高を算定し、之を本年度の定額と比較調製し、本年度八月三十一日までに、大藏大臣に送附する書面を云ふ。(二二年四月勅六〇號會計規則四條)
- 英
- Proposed account
- 独
- vor-herbestimmte Rechenschaft
- 仏
- Compte proposé
豫定經費要求書
- 英
- Writing of claim of proposed expences
- 独
- Anspruchschrift der vorherbestimmten Kosten
- 仏
- Re-clamation du dépens proposé
豫定經費算出槪則
豫定經費算出槪則は、豫定經費算出方法を規定したるものにて、全部十條より成る、其大體を示せば、□一經費を算出するには、其必要を生ずる法律、命令、契約、其他經費を請求する確實の理由を示すべし、□二經費中其給與に屬するものは、一人當りの給額より積算し、又其物件に屬するものは一人當りの費用より積算すべし、□三一人當りの給額を算出するには、規定の給額あるものは其規定の額を基とし、又規定の給額なきものは各々其據る所を示すべし、□四一人當り費用を算出するには、規定の價格あるものは其價額を基とし、又規定の價格なきものは時々の相場に依り其據る所を示すべし、□五給與に屬する經費を積算するには、定員あるものは定員を限定し、定員なきものは前年度の四月一日の現員を標準とすべし、但し事務の繁閑に從ひ、臨時傭入及び解傭をなす人員は、前々年度以前三年度の人員の平均を標準とすべし、□六物件に屬する經費を積算するには、規定の箇數あるものは規定の箇數を限度とし、規定の箇數なきものは前々年度以前、三年度間に實際使用に供したる箇數の平均を標準とすべし、□七國債償還の金額(定期あるものを除く)は、財政の都合により其利子及び手數料は、定規によりこれを豫算すべし、□八常例の旅行に屬する旅費は、各用務每に、人員、旅費等級、里程及び滯在日數を槪定して豫算すべし、□九法律命令契約に依り支出すべき總金額の定まりたるものは、其總金額を以て豫算額とすべし、□十右一乃至九の場合に據るべからざる經費は、最も適實の方法を以て豫算し、其計算の基く處を示すべし。(二二年六月閣令一九號)
- 英
- General rule of count-ing of proposed expences
- 独
- Allgemein-regel von der Rechnung der vorher-bestimmten Kosten
- 仏
- Loi générale du compte des dépens proposés
豫防警察
(よばふけいさつ)危害の防止を目的として、人の自由を制限する行爲は警察也、而して警察は、其防止すべき危害が、既發なるか、未發なるかに依りて、之を豫防警察と禁壓警察とに分つことを得、所謂豫防警察とは、末發の危害を防止する事を目的とする警察にして、之に反し禁壓警察は、既發の危害を排除することを目的とする警察なり、即ち防止すべき危害の如何に係る區別なりとす、豫防警察は、警察の主たるものにして、犯罪を未發に防制する警察、其他銃砲火藥類の取締の如き、主として危害防止の目的に出で、然も未發の危害に對するものなるが故に、豫防警察の一例なりとす。(制壓又は禁壓警察の部參照)
豫備支拂人
(よびしはらひにん)手形の引受若くは支拂を爲すべき第一位にある者、其引受若くは支拂を爲さず、又は主たる債務者破産の宣告を受けたる場合に於て、手形に他人を指定し、第二位に引受若くは支拂を爲すべきを委託することあり、此委託を受くる者を稱して豫備支拂人と謂ふ、蓋し爲替手形の振出人及び裏書人は、各々引受及び支拂あるべきを擔保すと雖も、支拂人として指定せらたる者は、固より支拂人たる資格に於て、引受若くは支拂を爲すの債務を負擔せざるのみならず、縱令引受をなしたる後と雖も、故意若くは過失に因り、又は破産の宣告其他資産缺乏の故を以て、支拂を爲さざることあるべし、此等の場合に、擔保義務者に於て、一は自己の負擔を輕減し、一は商業上の信用を保證する目的を以て、豫め其の急に應ずるの手段を講ずるは、最も穩當の措置と云ふべき也、豫備支拂人の指定は、即ち此趣意に基くものとす、□一豫備支拂人は之を手形に記載せざるべからず、我商法は振出人の指定したると、裏書人の指定したるとを問はず、手形に記載すべきを定む、故に補箋若くは謄本に、之を記載するを得るや否やは問題たるべしと雖も、裏書人のこれが記載を許す以上は、裏書を爲すを得るものに、之を許さざるの理なかるべし、殊に原本を支拂人に送付し、謄本を以て裏書を爲すときは、豫備支拂人は、謄本に指定するの外途なき也、□二豫備支拂人は、手形の支拂地にあらざるべからず、斯の如く法律が規定したるは指定者が隨意に地を指定し、所持人、擔保請求權及び償還請求權の行使に就き、常に豫備支拂人の參加引受、若くは參加支拂を求むるは、容易ならざる負擔にして、然かも支拂拒絶證書作成の期間内に、參加支拂を求むるの必要あり、且つ支拂地を一定せしむるの趣意に反すればなり、指定者支拂地以外の地を記載したるときは、豫備支拂人の指定としては法律上の效力なく、所持人これを顧みずして可也、又特に地を記載せざるときは、支拂地にあるものと看做し、所持人は此地に於て參加引受若くは參加支拂を求むるを試むるを以て足る、□三豫備支拂人を指定するを得る者は、擔保義務者たるべきは、參加の遡求權行使を阻止する目的より論じて之を當然となす、爲替手形の振出人裏書人等即ち是れなり、然れども、振出人は指定せざるを常とす、何となれば、順當の引受若くは支拂あらざるべきを危惶し、支拂人に信用を措かざるを表白すればなり、裏書人と雖も、手形上の責任を負はざるものは豫備支拂人を指定するを得ず、擔保義務なき者の爲めにする參加は、參加の觀念に反するものとす、故に又所持人保全行爲を爲さずして、手形上の權利を喪失したる後は、參加は其效力を生ぜず、引受人は主たる債務者として、自ら支拂の義務を負擔する者にして、從て豫備支拂人を指定するを得ず、□四豫備支拂人たるを得る者は、手形上の法律關係に立たざる第三者のみならず、振出人又は裏書人も、亦豫備支拂人たるを得、即ち自己に豫備の委託を爲すを得、□五豫備支拂人の指定有效なるときは、所持人は先づ第一位に於て、引受若くは支拂を爲すべき者に手形を呈示して之を求め、之を得ざる場合に於ては、更に豫備支拂人に對して引受支拂を求め、然る後始めて前者に對する遡求權(擔保請求權及び償還請求權を云ふ)を行ふことを得るものとす、而して第一位にある者の拒絶及び豫備支拂人の拒絶は、共に拒絶證書を以て之を證せざるべからざるが故に、數多の豫備支拂人あるときは、所持人は遡求權の行使に就き煩雜なる手續を履行せざる可らざるに至る、然れども所持人は、豫備支拂人の記載あるを知りて、手形を取得したるものにして、これを度外視するは豫備支拂人の趣意に反し、又指定者が、これをして參加を爲さしむるが爲めに施したる準備を水泡に歸せしむるの虞あり、A擔保請求、擔保請求權を行ふと否とは所持人の自由にあり、然れども引受欠缺若くは引受人の破産宣告を理由として、前者に對し擔保を請求せんと欲すれば、先づ豫備支拂人の引受を求めざるべからず、これを得ざる場合に於て、初めて擔保請求權を行ふ、イ所持人が指定者及び其後者に對して擔保を請求するに、豫備支拂人の引受の拒絶を前提とするは勿論なり、ロ指定者の後者は、豫備支拂人の參加引受を以て充分なる擔保と認めざるべからざる地位にありては、若し參加引受ありしならば、擔保請求權を失ふべかりしものなるを以て、參加引受を求めざる場合に於ては、擔保請求權を行ふを得ざる也、ハ被參加人及び其前者は、所持人が參加引受を求めざる場合に於ても、擔保を請求するを得るの理なり、何となれば、參加引受は其與かり知らざる所にして、これが爲めに擔保請求權を失ふべからざれば也、B償還請求、所持人は豫備支拂人の參加支拂を求めたる後にあらざれば、前者に對して償還の請求を爲すを得ざるは、法律の明定する所なりと雖も、參加支拂を求めざる場合に於ける制裁は、豫備支拂人の指定者及び其後者に對する手形上の權利を失ふに止まる、故に指定者の前者に對する償還請求權は、依然として存するものと云はざるべからず。(商五〇〇條乃至五〇七條、四五八、五〇八、四四八、五一三、四八〇、四五〇條)
- 英
- Referee
- 独
- Adressat
- 仏
- Arbitre
呼出狀
(よびだしじやう)民事訴訟、刑事訴訟又は行政訴訟等に於て、原告、被告、證人、鑑定人等に對し、裁判所に出頭すべきことを命ずる命令書を呼出狀と謂ふ、民事訴訟に於ける證人の呼出狀に就きて云へば、其呼出狀には左の事項を記載すべきものとす、□一證人及び當事者の表示、□二證據決定の趣旨に依り訊問を爲すべき事實の表示、□三證人の出頭すべき場所及び日時、□四出頭せざるときは法律に依り處罰すべき旨、□五裁判所の名稱。(民訴二九二、二五四條、刑訴一一五條)
- 英
- Subpoena
- 独
- Ladungsbrief
- 仏
- Citation
豫備犯
(よびはん)凡そ犯罪とは、國家が刑罰を付したる不法行爲也、從つて犯罪は、□一行爲あること、□二法律に違反したること、□三有責行爲たること、□四國家が刑罰を制裁としたる不法行爲たることの四要件を必要とす、而して犯罪行爲の發生には、イ準備(豫備)、ロ著手、ハ實行の三階段を經るものとす、犯罪實行者を處罰するは論なき處なりと雖も、其實行未遂犯若くは著手未遂犯に於ては、重罪はこれを罰するを原則とし、輕罪の場合に於ては特別の處罰規定ある場合に限りこれを處罰するものとす、然れども、所謂豫備行爲、例へば殺人の爲めに兇器を調達準備するが如き、又は殺人の時機を採知するが如き、又は犯罪の場所に向つて進行するが如き行爲は、これを處罰せざることを刑罰法上の原則とす、然るに法律は、例外として豫備行爲をも處罰する場合あり、此場合を稱して豫備犯と謂ふ、豫備犯を認むるものは、重大なる犯罪又は意思を懲戒すべき重大なるものに限る、刑法は「兵隊を招募し又は兵器金穀を準備し、其他内亂の豫備を爲したる者は、これを處罰す」と規定し、内亂罪に於ける豫備犯を罰せり。(刑七八、一五三、二〇一、二三七條)
- 英
- Preparatory crime
- 独
- vor-läufiges Verbrechen
- 仏
- Infraction
豫備費
(よびひ)豫備費とは、避くべからざる豫算の不足を補ふ爲めに、又は豫算の外に生じたる必要の費用に充つる爲めに設くる費目を云ふ、豫備費は、豫算中に記載するものにして、帝國議會は、之が廢除を爲すことを得ざるものたり、豫算中に設くべき豫備費は、左の二項に分つ、第一豫備金、第二豫備金是なり、第一豫備金は、避くべからざる豫算の不足を補ふものとす、第二豫備金は、豫算外に生じたる必要の費用に充つるものとす、豫備金を以て支辨したるものは、年度經過後帝國議會の承諾を求むることを要するもの也。(憲法六九條、二二年二月法四號會計法七、八條、二二年四月勅六〇號會計規則一六條乃至二四條、三九年四月法三七號帝國鐵道會計法九條)
- 英
- Reserve funds
- 独
- Reserve-fonds
- 仏
- Fonds réservé
豫約
(よやく)將來に於てある契約を締結せんことを約する契約を豫約と謂ふ、豫約は契約を締結する債務關係を内容とするが故に、契約の一種にして、然かも債務的契約の一に屬し、一般契約の原則のこれに適用せらるべきは言を要せず、唯本來達せんとする目的は、將來契約せんとする契約に依て達し得べく、其の締結すべきことを豫め約束するものなるが故に、將來結ばんとする契約と其内容を異にするは勿論、其形式に就きても亦異なるは論を俟たず、例へば將來結ばんとする契約が要物契約なるも、其豫約に於ては諾成契約なるが如し、而して豫約あるときは、其多くは將來一方より本來の目的を達せんとする契約の申込あるときは、直に契約を成立せしむるものの如し、但し特別の形式を踐むべき契約は此の例外とす。(民五五六、五八九條)豫約者とは、豫約を締結せる當事者の一方又は双方を云ふ、即ち双務豫約に於ては、其双方の當事者は各豫約者にして、片務豫約に於ける義務の負擔者は、又豫約者なるが如し。(民五五六條二項)
豫約者
勞働者取締規則
(らうどうしやとりしまりきそく)明治三二年臺灣總督府令第七五號を以て發布せられたる規則にして、臺灣島内に於ける勞働者にして、臺灣諸島人なるときに、其れ等勞働者の取締に關する諸規則を規定したるもの也。
- 英
- Rule of superintendence of workmen
- 独
- Verwaltungsregel der Arbeitsleute
- 仏
- Règles de la surveil-lance des ouvriers
勞働者備恤規程
(らうどうしやびじゆつきてい)清國勞働者取締規則によりて、勞働者受負人が、其雇傭による勞働者の病災救濟の爲めに、臺灣總督の認可を受けて定む所の規則なり、而して此規則の内には、少くとも左の諸件を定めざるべからず、□一備恤資金の設置方法、□二同資金保管及び利殖方法、□三同資金の支出方法、□四同資金精算の方法是なり。
- 英
- Rules of blessing work-men
- 独
- Unterstützungsregel der Arbeits-leute
- 仏
- Règles de la bénédiction des ouvriers
浪費者
(らうひしや)浪費者とは、財産濫費の性辟ある者を云ふ、即ち濫費の事跡あるの一事のみを以ては、未だ浪費者といふ事を得ず、實際濫費が回數を重ねて、其人の性辟となりたることを要す、而して茲に所謂濫費するとは、財産を不相應に、然も無用に費消することを云ふものにして、不相應といふは、人の資産に相應せざるの意也、即ち費消額が收入額に比して不權衡なるを云ふ、無用に費消するといふは、必要なる生活費、又は身分に適應する所の體面を維持する爲めに、必要なる以外に投ずることを指すなり、我民法は、斯かる性辟あるものは、其資財を維持する能はず、一家を亂し、惹ひて公益を亂すものと認め、之を準禁治産者として宣告することを得るを認む、準禁治産者は、一定の法律行爲能力を制限して、之を保護するの主旨より出でたるもの也。(民一一條及準禁治産者の部參照)
- 英
- Spendthrift
- 独
- Verschwender
- 仏
- Depensier
勞務
(らうむ)勞務とは、智力を用ひてある業務に從ひ、又は體力を以てある作業に從ふことを總稱するの語也、夫れ等の事に從ふものを勞務者と謂ふ、勞務を以て主として智力の方面のみに用ひらるる場合は、會社又は組合の出資として勞務を供する場合に之を見るべく、(勞務出資の部參照)主として體力のみによる場合は、雇傭契約による勞務の場合に之を見ることを得べし。(雇人の部參照、民六六七條、商二六四、七一條)
- 英
- Service
- 独
- Dienst
- 仏
- Partdu service
勞務者
- 英
- Hireling
- 独
- Arbeiter
- 仏
- Mercenaire
勞務株
(らうむかぶ)舊商法に於て、勞務を以て出資の目的となしたる株式會社の株式を勞務株と稱せり、然れども現行商法に於ては此種の株式を認めず。
勞務出資
(らうむしゆつし)民法上に於ける組合、若くは商法上に於ける合名會社、合資會社の設立に關して、勞務を以て其の出資の目的と爲したる場合を稱して勞務出資と謂ふ、勞務を以て出資の目的と爲すと云ふは、自己の身體若くは精神を會社、又は組合の爲めに使用することを云ふに外ならず、勞務を出資の目的となす多くの場合は、特別なる技藝上の智識を有する者が、其智識を會社又は組合の爲めに使用するにありとす、然れども必ずしも特別の技藝上の智識を必要條件とするものにあらざるが故に、其心神を會社又は組合の爲めに使用するも、亦勞務を以て出資の目的と爲したるものと云ふべき也、□一民法の組合に於ける勞務出資、組合員各自は其共同の事業を爲すが爲めに、出資を爲さざるべからず、出資は、必ずしも財産權のみに限らず、勞務も亦出資の目的と爲し得るものたるは民法の認むる所なり、此勞務を以て出資の目的と爲したるときは、組合の契約に從ひ、必ず勞務を以て組合の事業を經營するに任ぜざるべからず、若し其勞務を提供せざる場合は除名せらるるものとす、而して勞務出資者が他の財産を出資したる者と一般に、權利義務を有するは勿論なりとす、□二商法に於ける合名會社々員の勞務出資、合名會社々員が勞務を以て出資の目的と爲し得ることは、我商法の認むる所にして、其社員は定款の定むる所に從ひ、其身體若くは精神を會社の用に供せざるべからず、故に若し身體又は精神の衰弱により、會社の爲めに其勞務を供することを得ざるに至りたるときは、所謂出資を爲すこと能はざる場合に該當すべく、又身體若くは精神を會社の爲めに使用せざるが如き時は、所謂出資を爲すことを懈りたるものと云ふべき也、(此點は前示組合に就きても亦同樣也)而して其社員は其勞務を會社に提供するの義務あるに拘はらず、他の用に供したるときは、會社に對して之によりて生じたる損害を賠償するの義務あるは言を俟たず、而して此場合に於ては、我民法、商法共に別段なる規定を存せざるが故に、一般の債務不履行の場合に於ける損害賠償の法則に從ふの外なし、然し茲に、商法上の一問題となるは、合資會社々員の退社に關する計算の場合にして、右の勞務を以て出資の目的としたる社員が退社したるときは、其出資の拂戾は如何なる計算を以て爲すべきかの點是なり、舊商法に於ては、勞力の出資に就きては、特約あるに非ざれば、之に對する報償を爲す義務なきことを規定せり、蓋し勞力を出資の目的と爲したる社員の如きは、退社と同時に其勞力を會社の用に供することを止むるが故に、會社に勞務の見積價格に對する金錢を失ひたると同一の結果を受くべし、然るに此外に金錢を以て勞務に對する拂戾を爲すときは、會社は二重の拂戾を爲すと同一の結果を生ずべしと認めたるが故なり、然るにこれに反して新商法は、其退社員が勞務を出資の目的と爲したるときも、其持分の拂戾を受くることを得べく、但し定款に別段の定めあるときは此限に非ずと規定せり、茲に所謂持分の拂戾を受くることを得とある文字は、少しく明瞭を缺くの嫌なきにあらずと雖も、勞務の見積價格に相當する高を拂戾さるることを得との意にして、全く舊商法と反對の主義を採れり、其理由たるや、既に會社の爲めに勞務を供したる者は、金錢を會社に差入れたると異なる所なしとせるにあらん、然しながら、十年間會社の爲めに勞務を爲し、これを一萬圓と見積りたる場合に、五年に退社せるときは、一萬圓の半分即ち五千圓の拂戾を受くることを得しむるは、其の當を得たるものなりと雖も、若し勞務を供する時間の定めなきときは、退社の場合に拂戾すべき金額を定むることを得ざるべし、要するに現行商法のこれに關する規定は、甚だ不備なるを免れず、會社設立者は宜しく定款に於てこれが不備を補ふことに注意せざるべからず、□三商法に於ける合資會社々員の勞務出資、合資會社員は、其無限責任社員に限りて前示の合名會社々員と同じく、勞務を出資の目的と爲すを得るものとす、有限責任社員は勞務を以て出資の目的と爲すことを得ざるもの也、蓋し合資會社の組織なるものは、無限責任社員の經營する事業に有限責任社員が資金を供給するの觀念を基礎とするものなるが故に、有限責任社員の出資は、必ず有價物のみを以て、出資と爲すことを必要とするものとす、而して無限責任社員の勞務出資に關しては、全く前上に説示せる合名會社々員の場合の規定を適用せらるるものなるが故に、茲に再説せざるべし。(民六六七條、商七一、一〇六、一〇五條)
- 英
- Service contribution
- 独
- Dienstbeitragen
- 仏
- Contribution du ser-vice
勞力請負業
(らうりよくうけおひげふ)他人の爲めに勞務を提供することを請負ふ營業を勞力請負業又は勞務請負業と謂ふ、勞務の請負なるものは、其文字の示めす如く一種の請負契約にして、當事者の一方が勞働者即ち勞務に從ふ者をして勞務を爲さしむることを得べし、相手方は之に對して、報酬を支拂ふことを約するによりて效力を生ずる契約なり、其勞務の目的は何等の制限なきものとす、此請負を營業とするに至りては、勞務請負業となるものにして、商法上商人として觀察せらるるものなるが故に、此者に關する法律關係は、總べて商法の支配を受くべきものとす、例せば人夫請負業の如きは好適例なりとす。(商二六四條五號)
落選
(らくせん)總べて何種の選擧たるを問はず、其選擧に於て法令規定の票點を得る能はずして、其選に當る能はざりし場合を落選と謂ひ、其者を落選者と稱す。
- 英
- Fail in election
- 独
- Verfehlenin Wahl
- 仏
- Insuccès de l'élection
邏卒
(らそつ)現今の巡査は明治初年に於て之れを邏卒と稱したり、今はこれを用ひず。
- 英
- Patrol
- 独
- Polizeidiener
- 仏
- Patrouille
臘虎膃肭臍獸獵法
(らつこをつとせいじうれうはふ)明治二八年三月法律第一〇號を以て公布せられたる所にして、其規定する所によれば、臘虎膃肭獸を獵獲せんとする者は、出願して農商務大臣の免許を受くる事を要す、(手續は次項を參照すべし)臘虎膃肭獸保護の爲め、勅令を以て禁獵區及び禁獵期を設け、獵船、獵具、獵法を制限し、又は牝牡、年齡によりて其の獵獲を禁示する事あるものとす、軍艦長、警察官吏、税關官吏其他特に命令を受けたる官吏は、勅令の定むる所により獸獵船、獵具及獵獲物の檢査を行ひ、犯罪者と認むべき者及船員を拘留し、右に關する物件を差押ふることを得るものとす、而して禁獵區域内に於て禁獵期内、右獸類の獵獲を爲したる者は、一箇月以上一年以下の重禁錮、又は二十圓以上五百圓以下の罰金に處し、何人の所有を問はず獵船、獵具、又は獵獲物を沒收せらる、又獵船、獵具、獵法の制限、及牝牡年齡による獵獲の禁止に違背し、又は此等の檢査に關する規定に違背したる者は、十一日以上一箇月以下の重禁錮、又は二十圓以上五十圓以下の罰金に處せらる、又免許を受けずして之を爲したる者は、二圓以上五十圓以下の罰金に處し、獵獲物を沒收せらるべし。
臘虎膃肭獸獵免許規則
(らつこをつとせいじふれうめんきよきそく)明治二八年農商務省令第一二號を以て發布せられたる所に係り、臘虎膃肭獸を獵獲せんとする者の免許に關して規定したる省令也、即ち臘虎若くは膃肭獸を獵獲せんとする者は、其住居地又は獵船定繫場管轄の地方長官(東京府下は警視總監以下これに傚ふ)を經由して、農商務大臣に出願するを要す、其免許の願書には次ぎの事項を記載すべし、即ち□一獵業の種類、□二本籍及住所及身分、□三獵船の數及船名噸數、□四獵船定繫場、□五獵期及獵場、□六獵具、獵法是れなり、尤も地先沿岸に於て、獵銃を使用せずして、臘虎若くは膃肭獸の獵獲を爲す者は、右の三號の事項を記載するを要せず、而して免許せられたる者に對しては、一定の雛形による免許狀を下付せらる、右の獵業免許を得たる者獵業に從事するときは、出港地管轄警察署又は分署に屆出で、獵期の終了に際し、獵船定繫場若くは寄港地管轄の警察本分署に免許狀を差出して、其檢査印を受けざるべからず、又免許を得たる者は、一定の雛形による旗章を製し、獵業に從事するときは、常に船檣又は船部の見易き場所に揭げざるべからず、又常に免許狀を携帶し、軍艦々長、警察官吏、税關官吏其他特に命令を受けたる官吏に於て、之を檢閲せんことを求むるときは、直に之を示すべし、獵業免許を受けたる者、獵業に從事したるときは、終了の後二ケ月以内に於て、其獵獲したる臘虎膃肭獸の獵獲時日、頭數、場所及び獵業に使用したる端艇の數、乘組員の種別、人員等を詳記し地方廳を經由して農商務省に報告するの義務あり。
藍綬褒賞
(らんじゆはうしやう)藍綬褒賞は、褒賞條例によりて、學術、技藝の發明、改良、著述、教育、衞生、慈善、防疫の事業、學校、病院の建設、道路、河川、提防、橋梁の修築、田野の墾闢、森林の栽培、生産の繁殖、農工業の發達に關し、公衆の利益を起し成績著明なる者、又は公同の事務に勤勉し、勞效顯著なる者に賜ふ所の褒章なり、此褒賞を賜はりたる者は、本人に限りて修身これを佩用し、及び徽號となすことを得、然れども、重罪の刑に處せられたるときは、これを沒收し、未だ授與せざる前に同上の刑に處せられたる者には授與せざるものとす、右の褒章條例によりて褒章を賜ふべき者あるときは、警視總監、北海道廳長官、又は府縣知事より主務大臣に具申し、主務大臣は其當否を審査して賞勳局總裁へ移牒するものとす、但し官吏職務上の勞效に對して此褒章を賜ふの限に非ず、賞勳局總裁は此移牒書を覆覈し、褒賞を賜ふべき者と認むるときは、奏請裁可を經て之を本人に傳達するの手續を執るものとす。(一四年布告六三號褒賞條例參照)
濫發
(らんぱつ)或事物の程度を超へて、紊りに發布又は發行することを濫發と云ふ、例へば法令の濫發、紙幣の濫發といふ場合の如し。
- 英
- Over-issue
- 独
- Überausgang
- 仏
- Trop de l'issue
濫費
(らんぴ)正當なる用途以外に於ける金錢又は物件の消費を濫費と謂ふ、濫費なる語は主として公法關係に用ひらるる語にして、恰も私法上の浪費にも對すべきものとす。
- 英
- Unnecessary expense
- 独
- un-wichtige Kosten
- 仏
- Frais inutile
濫用
(らんよう)或權力又は權利を用ふべき程度を超えて、濫りに使用することを云ふ、例へば親權濫用、其他官吏が權限濫用するといふ場合の如し。(刑一九三條參照)
- 英
- Abuse
- 独
- Miszbrauch
- 仏
- Abus
里
(り)里とは度の長さを測定する場合に用ゆる一名稱にして、三十六丁則ち一萬二千九百六十尺を稱す。(度量衡法三條)
吏員
(りいん)自治團體の選出により、其團體の事務を取る者を吏員と謂ふ、自治團體は國家統治の一機關也、官廳も國家統治の一機關也、而して吏員は自治團體の事務を掌り、間接に國家の事務を處理す、官吏も官廳の事務を掌り、同じく國家事務を處理す、故に吏員の何たるを如らんと欲せば、勢ひ官吏との區別を明瞭にせざるべからず、官吏と吏員との區別に就ては種々の説あり、□一俸給を受くると否とにより區別する説、自治行政とは名譽職によりて行はるる行政なりと解する者は此説を採る、されど今日多數の學説に依れば、名譽職を以て行ふことは必ずしも自治行政の要素に非ず、從て我國の如く市長、市助役を有給職と爲す國に於ては、此説の不可なる多言を俟たず、□二事務の種類に依て區別する説、即ち國家の事務を處理する者は官吏にして、自治團體の事務を處理する者は吏員なりと云ふも、自治團體の事務も畢竟するに國家の事務に外ならず、且つ夫れ現行制度に於ては、市町村長をして市町村の事務以外に國家の事務をも處理せしむ、從て此説も亦採るに足らず、□三地位責任に依て區別せんとする説、吏員と雖も上級の者の命令は、下級の者に於て遵奉せざるべからざること官吏と同一なり、又吏員と雖も服務規律上に關しては官吏と差異なし、故に此説も當を得ず、□四其資格を得るの手續に求むる説、即ち官吏は任命に依りて其地位を得、吏員は其團體の選出に依りて其資格を得るもの也、或は市町村長、助役の如くに、府縣知事の認可又は君主の勅裁を必要條件とするを見て、此説を不可なりとする者あるも、此勅裁又は府縣知事の認可は、任命と其性質を異にし、自治團體に對する監督權の作用に外ならず、故に兩者を區別する標準は、本説即ち官吏は任命により其地位に就き、吏員は選擧により其資格を得るものと解するを正説とす、獨乙に於ては此官吏、吏員なる文字を、直接、間接の文字を以て區別し、官吏を直接のベアムタート、吏員を間接のベアムタートと稱す、蓋し官吏は統治權者の直接の權關なるも、吏員は自治團體の機關にして、統治者より見れば間接の機關なればならん、參事會員、市町村長、助役、收入役、郡吏員等は皆此吏員なり。(市制四九條、公吏の部參照)
- 英
- Official
- 独
- Beamte
- 仏
- Officier
留置權
(りうちけん)他人の物を占有する者が、其物に關して有する債權の辨濟を受くる迄、其物を留置するの權利を稱して留置權と謂ふ、即ち占有者は、其占有する物を返還する義務を負ふも、若し自己が返還義務を履行せるに拘らず、相手方より其債務の辨濟を受けざるときは、甚だ不公平なる結果を生ずるが故に、一時其物の返還を拒絶し、相手方より其債務の辨濟を受くる迄、占有を繼續するに在り、要するに其物の所有者は、占有を復せんと欲せば、辨濟を爲さざるべからざることとなるが故に、留置權は間接に辨濟を促がすの一方便なりとす、留置權の要件は、□一他人の物を占有すること、從て自己の物に對しては留置權を認めず、(例へば賣買契約に於て、或時期迄所有權の移轉を延期したるが如き場合には、賣主は自己の所有物を占有するもの也、而して斯る場合に代金の支拂に期限なきときは、直に其支拂を請求する權利を有す、固より自己も引渡の義務を履行せざるべからず、然るに代金を提供せざる買主に對して、留置權を主張することを得ざることとするは、其理由なしといふ學者あり、參考の爲め一言す)然れども他人の物なれば、敢て債務者の所有に屬することを要せず、例へば他人の物を管理する者が、其物を修繕する爲めに之を或職人に交付したる場合に、其職人は己が支出したる修繕費に付て、留置權を行ふに妨げなし、□二留置物に關して生じたる債權たること、即ち留置物は債權との間に直接且つ密接の關係あること、例へば運送人、保存者、其他出費の償還請求權を有する占有者の如きは、此留置權を有す、物の賣主に果して留置權ありや否や、多少の疑なきにあらざるも、留置權を有すと解するを通説とするに似たり、□三債權が辨濟期にあること、□四其物の占有が不法行爲によりて始まりたるものにあらざること、以上の條件を備ふる者は、民法の所謂留置權を有す、留置權の效力は、□一目的物を留置すること、是れ頗る大なる效力なり、假令所有者に更迭あるも、他人が質權、抵當權を有するも、留置權者の承諾を得ずんば其物を受取ること能はず、從て辨濟を促す、□二留置權者に留置物を賣買する權利ありや否やは大に爭ある所なり、或學者は競賣法に依て競賣することを得べしと云ひ、或は之に反對す。(民二九五條乃至三〇二條及び一般留置權の部參照)
- 英
- Lien
- 独
- Retentionsrecht
- 仏
- Nantissement
留置權者
留署權を有する者を留置權者と謂ふ、即ち他人の物の占有にして、其他人に對し債權を有し、尚其債權が辨濟期にある場合に、其辨濟を受くる迄物を留置し得る者を云ふ。(民二九六條)
- 英
- Lien-holder
- 独
- Retentions-rechthaber
- 仏
- Personne qui tient le nantissement
流刑
(りうけい)自由刑の一種にして、重罪の主刑として國事犯に科する刑罰也、流刑は大體に於て徒刑と異なることなし、唯國事犯人に科すると、定役に服せざるの點に於て異なるのみ而して之を無期、有期に別つ、有期は十二年以上十五年以下の刑期を云ふ、流刑の囚一定の期間を經過するときは、行政處分を以て幽閉を免じ、島地に於て地を限り居住せしむることを得、其期間は無期流刑にありては五年、有期流刑にありては三年とす。(舊刑七、二〇、二一條)
- 英
- Exile
- 独
- Exil
- 仏
- Exil
留置
(りうち)留め置くことを云ふ、□一物を留置くが如き場合に使用することあり、例へば留置權者が目的物を留置すと云ふが如し、□二人を拘禁するが如き場合に使用することあり、例へば警察署に之を留置す、未決監に之を留置すと云ふが如し。(舊刑二四條、民二九五條)
- 英
- Retention
- 独
- Retention
- 仏
- Rétention
留置場
(りうちば)監獄の一種にして、刑事被告人を一時留置する所を留置場と謂ふ、但し警察署に於ける留置場に於ては、罰金を禁錮に換うる者及拘留に處せられたる者を拘禁するを得。(監獄即一條及び監獄の部參照)
- 英
- House to arrest
- 独
- Verhaft-ungshaus
- 仏
- maison d'arrêt
留置人
留置人とは、刑事被告人にして留置場に留置せらるる者を云ふ。(囚人及刑事被告人押送規則六條)
留置物
(りうちぶつ)留置權者が留置する目的物を稱して留置物といふ、從て各場合に依て異なる、賣主が留置權を有するときは賣買の目的物也、職工が修繕費に付き留置權を有するときは其修繕を爲したる物也、代理商が留置權を有するときは本人の爲めに占有する物也、而して如何なる場合に於ても即ち有體物に限るは勿論也。(民二九六條乃至二九九條、商四一條)
- 英
- Thing retained
- 独
- zurückbe-haltenes Ding
- 仏
- Chose retenue
流通證券
(りうつうしようけん)流通證券とは、記名證券に相對するの語なり、凡そ證券は、證券上の權利者を指定する形式より之を別ちて三とす、□一記名證券、一定の人を權利者とするもの、□二指圖證券、一定の人又は其指圖人を權利者とするもの、□三持參人證券、證券所持人を、權利者とする形式の證券にして純然たる持參人式のものと、一定の人又は持參人を權利者とする混同のものとあり、前者は所謂無記名證券にして、後者は指名持參人證券也、而して指圖證券は、裏書に依り之を讓渡し得べく、持參人證券は交附により讓渡し得べし、斯く裏書又は交附によりて讓渡し得ることを證券の流通性と稱す、流通性を有する證券は即ち流通證券なり、從て流通證券にあらざるものは名記證券なり、勿論記名證券と雖も讓渡し得ざるにあらず、然れども裏書又は交附に依り讓渡し得べき簡易なる流通性を有せず、記名證券の中には法の特別規定に依りて當然流通性を具備するものあり、記名手形、記名倉庫證券及び記名船荷證券の如き即ち是也、普通の債權證書の如きは記名證券にして、手形の如きは流通證券也。
- 英
- Circulating bill
- 独
- Zirkulie-rendepapier
- 仏
- Bill circulant
留保
(りうほ)留保なる語は、殘留して保持する義に用ひらる、女戸主が入夫婚姻を爲したる場合に、尚戸主として維然たらんには戸主權を留保せざる可らざる如き、君主が政務の一部を議會又は裁判所等に分ち、尚君主の手に殘留する權を留保權と云ふ如き、總て或ものを殘留保持する事を云ふ、彼の時機に後れて呈出せられたる證據方法を却下し、然かも後日に留保する旨を揭ぐる判決に於ける留保の如きは此用例とす。(民訴四二六、七七〇條、民九八八條)
- 英
- Sovereignty not entrusted to the organ
- 独
- zurückgehaltene Oberherrschaft
- 仏
- Souvraineté non-confiée à l'organe
利益年度
(りえきねんど)損失年度に相對するの語にして、或事業に於て損益計算の結果利益ありたる年度を云ふ。
- 英
- Interest year
- 独
- Interesse Jahr
- 仏
- Année d'intérêt
利益配當案
(りえきはいたうあん)組合、會社等多人數相集合して一事業を經營する場合に、其事業の結果得たる所の利益を組合員、社員等に配當するに就き、其割合、金額等を定めたる草案にして、其確定に至らざるものを稱して利益配當案と云ふ、株式會社、合資會社の利益配當案といふが如き其用例なり。
- 英
- Dividend bill of interest
- 独
- Gewinnvertheilungsbill
- 仏
- Note de ladistribution des dividendes
離緣
(りえん)養子緣組の效力を解除するを離緣といふ、我國從來の用語例に於て、離緣とは養子緣組の場合の外、婚姻解除の場合をも包含したりと雖も、現行民法に於ては婚姻の解除を離婚と云ひ、以て之を區別せり、而して現行民法は、我國從來の慣例と、既に相互の愛情の變更せるものの間に、強て親子の關係を繼續せしむることの人情に合せざるを認め、當事者の協議に由り、又は裁判所の宣告を以て之を許す、離緣に二あり、□一協議上の離緣、即ち當事者の協議に依りて爲すもの、□二裁判上の離緣、即ち當事者の協議調はざるとき、一定の法定原因ある場合に限り、當事者の一方より之を裁判所に請求し、其裁判の確定に依り離緣するもの是なり、其書式左の如し(裁判上の離緣及民八六二條乃至八七六條參照)
養子離緣屆
住所戸主(又は家族)士族(又は平民)
職業
養父
氏名
何年何月何日生
養母
氏名
何年何月何日生
養子
氏名
何年何月何日生
住所戸主
「養子が復歸すべき家の戸主」
氏名
養子の實父職業
氏名
同實母
氏名
右何年何月何日緣組候處今般協議ノ上離緣候間別紙何々同意證書相添此段及御屆候也
年月日
(養父の)氏名□印
(養母の)氏名□印
(養子の)氏名□印
住所職業
證人
氏名□印
何年何月何日生
住所職業
證人
氏名□印
何年何月何日生
何郡市町村戸籍吏氏名殿
- 英
- Dissolutton of adoption
- 独
- Auflös-ung der Adoption
- 仏
- Dissolution de l'adoption
利害關係人
(りがいくわんけいにん)或特定の事項に就き、法律上の利害關係を有する者を指して利害關係人といふ、而して如何なる者が利害關係人なるかは、之を抽象的に定むるを得ず、具體的に決定するの外なし、例へば隱居による家督相續に於ては債權者、債務者等は、利害關係人也。(民三〇條等)
- 英
- Person interested
- 独
- In-teressent
- 仏
- Interessé
履行
(りかう)履行とは、廣く解せば公法上と私法上とを問はず、或義務を負ふ者が、其義務の本旨たる行爲を爲すを云ふ、而して其行爲が積極たると消極たるとは因より之を問はず、而して私法上履行と云ふは辨濟と云ふと同じ、唯觀察の方面を異にせるのみ、履行と云ふは債權の效力より見たるもの也、辨濟と云ふときは其消滅より見たるものとす、民法に「債務者が其債務の本旨に從びたる履行を爲さざるときは」とあるは即ち辨濟を爲さざるときはと云ふに同じ、要するに履行とは、債權の目的たる給付を爲すことを云ふに外ならず。(民四一五條等)
- 英
- Performance
- 独
- Erfüllung
- 仏
- Exécution
履行地
(りかうち)債權の目的たる行爲を爲すべき地を指して履行地と謂ふ、而して常事者は任意に之を定むる事を得るを原則とす、若し當事者が履行地に就き、別段の意思表示を爲さざるときは、特定物の引渡は債權發生の當時其物の存在する地、其他の場合には債權者の現時の住所、即ち履行を爲すべき時に於ける住所に於て之を爲さざる可らず、商行爲によりて生じたる債務の履行地に就ては更に特殊の規定あり、□一行爲の性質又は當事者の意思表示に因りて履行地の定まらざるときは、特定物の引渡は行爲の當時(必ずしも債權發生の當時と一致せず、例へば停止條件▲にて物の引渡しを爲すべき債務を負ひたるが如き場合には、行爲の當時未だ債權發生せず)其物の存在せし場所、其他の履行に就ては債權者の現時の營業所、即ち債權發生當時の營業所にあらずして、履行當時の營業所、若し營業所なきときは其住所、□二指圖債權、無記名債權の履行の場所は、債務者の現時の營業所、即ち履行を爲す當時の營業所、若し營業所なきときは其住所、□三支店に於て爲したる取引に就ては、其支店を以て營業所と看做して履行の場所を定む、履行地を定むるは極めて實益あり、即ち民事訴訟法によれば「契約の成立若くは不成立の確定、又は其履行若くは銷除、廢罷、解除又は其不履行若くは不十分の履行に關する賠償の訴は、其訴訟に係る義務を履行すべき地の裁判所に之を起すことを得」と、即ち契約によりて債權者となりたる者は、其請求の訴を自己の住所に起すことを得るなり、故に例へば債務者北海道にあり、債權者長崎にあり、而して長崎に於て損害賠償の訴を提起したりとせんか、債務者は大なる不利益の地に立たざるべからざるに至らん、之を避けんと欲せば特約を爲さざるべからざるものとす。(民四八、四條商二七八條)
- 英
- Performing place
- 独
- Erfüll-ungsort
- 仏
- Place de l'exécution
陸軍一年志願兵條例
(りくぐんいちねんしぐわんへいでうれい)明治二六年勅令第七三號を以て公布せられたる勅令にして、□一〓兵令により一年志願兵となる者は、志願の際本籍のある師管内の軍隊に於て服役せしむ、但し軍事上の必要ある時は、他の師管内の軍隊に於て服役せしむることあるべし、□二一年志願兵科は、本人の冀望と軍事上の必要とによりて定む、但し騎兵科は本人の冀望に依るものとす、□三一年志願兵出願者にして、下の各號中、イに該常する者は主計生、ロに該當する者は軍醫生、ハに該當する者は藥劑生、ニに該當する者は獸醫生たらんことを志願するを得、イ專門學校又は之と同等以上の學校に於て、法律又は經濟の課程を卒業したる者、ロ醫術開業免狀を有し、又は之を受くべき資格ある者、ハ藥劑師免狀を有し、又は之を受くべき資格ある者、ニ獸醫開業免狀を有し、又は之を受くべき資格ある者、□四一年志願兵服役に關ずる費用は之を前納せしむ、其金額及び納付の方法は陸軍大臣之を定む、以上の金額は食費被服料、又は貸與する者の費用等に充て、不足あるときは之を追〓し、剩餘あるときは之を還附す、□五一年志願兵は入營後四ケ月間一般の兵卒と同一の教育を爲し、之に一等卒を命じ、二ケ月以上通常教育の外特別の教育を施し之に上等兵を命し、其材幹は學術修得と成績とにより下士及士官の勤務を練習せしむ、其成績の優秀なるときは、伍長の階級に進むる事を得、一等卒又は上等兵を命し、及び伍長の階級に進むるは聯隊長に於てす、□六一年志願兵は戰時又は時變に際し、通常の現役勤務に服せしむることあるべし、此場合に於ては、階級相當の給料を給し、服役に關する費用は之を官費とす、□七一年志願兵は現役滿期前、終未試驗を施行す、其方法は師團長之を定む、□八一年志願兵にして各號の一に該當する者は、之を二等卒と爲し、一般の兵卒と同一の教育を爲し、其必要に應じ、現役滿期の後每年六十日間勤務の爲め召集す、之に要する費用は自辨とす、イ怠慢にして勤務習得の見込なき者、ロ軍紀を紊り、屢法則を犯し又は品行不正にして改悛の見込なき者、以上其主なる規定なり。(一年志願兵の部參照)
- 英
- Regulations of one year's volunteer
- 独
- Regulierung des Freiwilligen für ein Jahr
- 仏
- Règles du volontier militaire d'une année
陸軍要塞砲兵射擊學校條例
(りくぐんえうさいはうへいしやげきがくかうでうれい)明治三一年勅令第二三二號を以て公布せられたる所にして、□一陸軍要塞砲兵射擊學校は、學生に要塞砲兵の射擊及戰術の訓練を爲し、以て各隊教育の進步を圖り、且つ要塞電燈使用員に電燈使用術を教育し、射擊及戰術の調査研究を爲し、要塞砲兵材料の研究及試驗を行ふ所とす、□二學生を別ちて下の三種とす、甲種、各野戰砲兵隊より分遣する大中尉學生、乙種、砲工學校卒業の上入校する大中尉、丙種、要塞電燈使用員に充つる爲め、各要塞砲兵際より分遣する下士兵卒、□三以上の外、時として佐官を召集し、所要の修學を爲さしむる事を得、但し修學期日は、其時々教育總監の移牒により陸軍大臣之を告達す、□四甲種及乙種學生の訓練に供し、且つ諸般の研究に充つる爲め、本校に教導大隊を置き、要塞砲兵隊より下士兵卒を分遣して編成す、□五本校に下の職員を置く、イ校長、ロ副官、ハ教官ニ教導大隊長、ホ教導大隊副官、ヘ教導大隊中隊長、ト教導大隊附士官、チ軍醫、リ獸醫、ヌ副監督、ル准士官、下士、判任官、□六校長は要塞砲兵監に隷し、校務を總理し、學術進步の責に任ず、□七副官は校中一般の庶務を掌る、□八教官は學生學術科の授業を分擔し、且つ要塞砲兵に關する學術、林料の調査研究及試驗に任ず、□九教導大隊の大隊長以下の服務は、軍隊内務の定則を適用す、□十學生修業期下の如し、イ甲種學生は槪ね三ケ月とし、每年二回に別て入校せしむ、ロ乙種學生は槪ね二ケ月とし、每年一回に入校せしむ、ハ丙種學生は槪ね一ケ年とし、每年一回に入校せしむ、但し其修學期は場合により陸軍大臣、教育總監協議の上伸縮する事を得、十一學生の人負及入校期日は、其時々教育總監の移牒により陸軍大臣之を告達す、但し砲工學校卒業の上直に入校する學生にありては、教育總監之を命ず、十二學生分遣の告達あれば、師團長は隊長をして修學に適當の者を選定し、入校期二十日前に其人名を要塞砲兵射擊學校長に通報せしむべし、但丙種學生中下士は、現役尚二ケ年以上の期ある者、兵卒は前年十二月入營の者中より選拔すべし、十三甲種及乙種學生は、校外に、丙種學生は校内に居住せしめ、修學に所要の兵器、彈藥、馬匹、馬具、書籍、器具は貸與若くは支給する事を得、丙種學生の武器、被服、裝具は所屬隊より之を携行せしむ、十四學生中の願屆其他業務に關する諸件は總て校長の管理に屬す、十五學生は情願を以て退校するを許さずと雖も、疾病及其他の事故により、學術修得の目的なき者は、校長其事由を具し、要塞砲兵監の認可を受け退校せしむ、十六校長は學生の修學期末に於て、各教官を集め會議を開き、學生修學の成蹟を調査し、要塞砲兵監の認可を受け、士官にありては修得證明書を作りて署名捺印し、下士、兵卒にありては考科列序表を製し、師團長を經て本人所屬の隊長に送付し、又下士卒には更に學術修業の證書を付與し學生を歸隊せしむ、十七教導大隊へ分遣の下士兵卒は、所屬隊より其武器、被服、裝具を携行せしめ、分遣中は特別の徽章を附せしむべし、十八教官は教育上便宜の時期に於て、隊附勤務を爲さしむることあるべし、以上本令の大要なり。
陸軍監獄
(りくぐんかんごく)陸軍監獄とは、輕罪以下の刑に處せられ、未だ現役を離れざる軍人若くは其官職身分を失はざる軍屬、諸生徒及刑事被告人を拘禁する所とす、而して之を區別すること下の如し、□一未決監、刑事被告人を拘禁する所、□二既決監、禁錮拘留の刑に處せられたる者、及罰金、科料を禁錮、拘留に換へたる者を拘禁し、茲集治監、假留監及地方監獄に送付すべき者を一時留置する所とす、□三留置場、刑事被告人を一時留置する所、但し留置場には拘留の刑に處せられたる者、及罰金、科料を禁錮、拘留に換へたる者を拘禁する事を得、未決監、既決監は軍法會議所在の地に之を置き、留置場は各隊に之を置く、且つ未決監、既決監は衞戍司令官之を管理し、留置場は師團長、臺灣守備混成旅團長、憲兵司令監之を監理し、陸軍大臣の監督に服するもの也。(陸軍監獄條例、同施行細則參照)
- 英
- Military prison
- 独
- Militär-gefängnisz
- 仏
- Prison militaire
陸軍監獄看守
(りくぐんかんごくくわんしゆ、かいぐんかんごくくわんしゆきふじよのけん)明治二七年勅令第八一號を以て公布せられたる所に係り、陸軍監獄看守、海軍監獄看守の給助は、明治一五年太政官達四一號、巡査看手給助例に依る、但し會計卒にして、看守の職を奉じたる者、引續き看守卒となり、猶引續き看守となりたる者、若くは看守卒より看守となりたる者は、前在職中の年數を看守在職年數に通算す、以上の規定を爲したるもの也。
海軍監獄看守給助の件
陸軍監獄看守給助例施行細目
(りくぐんかんごくくわんしゆきふじよれいしかうさいもく)明治二七年省令第一八號を以て公布したる陸軍省令にして、□一陸軍監獄看守にして明治二七年勅令第八一號(前項參照)により給助を受けんとする者は、左の區別に從ひ書類を具し、師團長又は屯田兵司令官に願出べし。
一退職給助
願書、履歷書
一傷痍給助
願書、履歷書、軍醫診斷證書
一死亡給助
願書、履歷書、軍醫若くは主治醫の診斷證書及戸籍寫
一療治料
願書
一祭祀料
願書、戸籍寫
死亡給助の願書には、親戚二名若くは死亡者居住地の戸主二名連署すべし、戸籍寫には、市町村長の説明、市町村制を施行せざる地方に在ては、區戸長の證明を要す、
□二師團長又は屯田兵司令官前條の書類を受けたるときは、監獄長をして在職中の功勞、又は傷痍疾病、若くは死亡の原因及金額の等差を調査せしめ、適當と認むるときは陸軍大臣に進達すべし、□三年金は四月、十月の兩度に於て、前六ケ月分を給與す、但し六ケ月に滿ざるものは現月數に應じ給與す、□四年金は之を受くべき事故の生じたる翌月より給與す、□五年金を受けたる者死亡したるときは、其翌月より給助を廢止す、□六年金を受けんとするときは、其前月の盡日に於て、市町村長、市町村制を施行せざる地方に在りては、區戸長の證明したる生存證書を添へ元所屬衞戍監獄に出願すべし、以上其の大要也。
陸軍監獄看守採用規則
(りくぐんかんごくかんしゆさいよらきそく)明治二七年省令第三號を以て公布したる陸軍省令にして、□一陸軍監獄看守は、陸軍各兵科、豫備役、後備役、下士、兵卒より、其志願により之を採用す、但し屯田兵豫備役及警備隊區所屬の者は、採用するの限にあらず、□二下に揭ぐる者は看手に採用せず、イ身體虛弱の者、ロ年齡四十歳以上の者、ハ重罪又は重禁錮の刑に處せられたる者、但し國事犯にして復權を得たる者は此限にあらず、ニ賭博犯處分規則により懲罰に處せられたる者、ホ家資分散若くは破産の宣告を受け復權を得ざる者、及身代限の處分を受け債務辨濟を終へざる者、□三下士、上等兵にして監獄看手たらん事を望む者は、現役滿期前一月内若くは滿期後三月内に、志願書に履歷書を添へ、現役滿期前に係る者は、隊長若くは長官を經、滿期後に係る者は、聯隊區司令官を經て、採用を望む地の師團長に出すべし、屯田兵下士上等兵にして、監獄看手たらん事を望む者は前項の規定に準じ、豫備役滿期前に係る者は隊長を經、滿期後に係る者は直に志願書を第七師團長に出すべし、但し家族中本人に代りて耕耘に從事することを得る男子なき者は、志願することを得ず、□四師團副官は以上の志願書に依り志願者名簿を作り、之を備へ置くべし、□五看守に缺員を生じたるときは、師團長上記の志願者中より其身體を檢査し、品行方正、學術優等の者を撰み、之を採用すべし、以上の者の中より看手の缺を補ふに足らざる時は、師團長、其管内居住の兵卒より募集し、身體檢査學科試驗を行ひ、及第者中より之を採用すべし、□八學科試驗の項目下の如し、イ讀書、假名交り文、ロ作文、往復文、ハ算術、四則、分數、比例、□九檢査及試驗は、師團長委員を命じて之を爲さしむべし、□十以上の檢査及試驗を行ひたるときは、委員長試驗の成蹟に依り、順序を定めたる及第者名簿を作り、之を師團長に出し、其認可を得て及第者に證書を付與すべし、十一志願書、及第證書の効力は凡て一年限りとす、十二看手は本則により採用したる後、免職すべき事由あるときは、監獄長の具申により師團長之を免ず、十三豫備後備役服役中の者、戰時召集に應じ戒護上差支を生ずる時は、師團長一般人民より募集し、上記の檢査及び試驗を行ひ、看手を採用することを得、十四本則は明治二七年四月一日より施行す、十五明治二八年四月一日前屯田兵監獄に於て看手に缺員を生じ、本則の規定に依り其缺を補ふ能はざるときは、司令官より第二師團長に照會し、第二師團長は本規則に照し、志願者を採用し赴任せしむ、十六本令施行の際に限り、現に陸軍監獄にありて看手卒たる者は本則の規定に拘らず、別に辭令を須ひずして看手に採用せられたるものとし、押丁たる者は、師團長、屯田兵、司令官看手に採用することを得るものとす。
陸軍監獄官々制
(りくぐんかんごくくわんくわんせい)明治二六年勅令第一四二號を以て公布せられたる官制にして、□一陸軍監獄に左の職員を置く、イ陸軍監獄長、ロ陸車監獄書記、ハ陸軍監獄看守長、ニ陸軍監獄看守、□二監獄長は奏任とし、監獄書記及監獄看守長は判任とし、監獄看守は判任官待遇とす、□三監獄長は衞戍司令官若くは屯田兵司令官に隷し、監獄の事務を掌理す、□四監獄長は陸軍懲罰令に定むる所に從ひ、監獄所屬員を懲戒す、□五監獄書記は監獄長の命を承け庶務に從事す、□六監獄長事故あるときは、上席監獄書記其事務を代理す、□七監獄看守長は監獄長の命を承け、監獄の戒護を掌り、監獄看手を指揮監督す、□八監獄看手は監獄看守長の命を承け、看守、獄送及門衞等の事務に服す、□九監獄看守長及監獄看守職務に服するときは、刀を帶び制服を著す、□十監獄内の衞生事務は、其地所在の衙戍病院附軍醫及び看護長をして之を管掌せしむ、但し札幌に在ては屯田兵軍醫部附軍醫をして之を管掌せしむ、十一本令施行前より陸軍監獄に職を奉ずる下士卒は、本令施行の日を以て現役滿期とす、下士にして服役年數七年未滿の者は豫備役に、七年以上十三年未滿の者は後備役に服せしむ、但し明治二四年勅令第一八七號、施行以前に任せられたる軍吏部下士にして、服役九年未滿の者は豫備役に九年以上十二年未滿の者は後備役に服せしむ、十二本令は明治二六年十一月十日より施行す、本令中獄監看手に係る規程は明治二七年四月一日より施行す。
- 英
- Government organisa-tion of prison officials
- 独
- Amtsordnung von den Militärkerkerbeamten
- 仏
- Or-ganisation des officiers de la prison mili-taire
陸軍監獄官特別任用令
(りくぐんかんごくくわんとくべつにんようれい)明治二六年勅令第一九六號を以て公布せられたる所にして、□一陸軍監獄長は理事、陸軍尉官又は陸軍監督補より之を選任す、□二陸軍監獄書記にして滿五年以上一級俸を受け、學識經驗ある者は、文官高等試驗委員の詮衡を經て、陸軍監獄長に任ずることを得、□三陸軍監獄書記及陸軍監獄看手長は、陸軍下士文官採用規則に定むる所の資格ある者、又は錄事より之を選任す、□四陸軍監獄看手にして滿五年以上其職を奉じ、學識經驗ある者は、文官普通試驗委員の詮衡を經て、陸軍監獄書記又は陸軍監獄看手長に任ずることを得、□五陸軍監獄看守の採用規則は陸軍大臣之を定む、□六陸軍監獄書記及陸軍監獄看手長は、陸軍監獄官官制執行の際に限り、以上の資格に拘らず、從來陸軍監獄に職を奉ずる下士にして、監獄に經驗ある者及び其他の判任官より選任することを得、□七本令は明治二六年十一月十日より施行す、以上其大要也。
- 英
- Ordinance of special appointment of prison officials
- 独
- Specialanstellungsordnung der Militärker-kerbeamten
- 仏
- Ordonnance de la nomina-tion spéciale des officiers de la prison mili-taire
陸軍監獄條例
(りくぐんかんごくでうれい)明治二七年勅令第三號を以て公布せられたるものにて、□一陸軍大臣は、二年若くは三年に一回、陸軍省法官部長若くは法官部々員をして、未決監、既決監を巡視せしむべし、衞戍司令官は、隨時其所管未決監、既決監を巡視すべし、理事は、少くとも二箇月に一回、其所屬軍法會議所在地の未決監、既決監を巡視すべし、□二水火風震等の非常の變に際し、監獄圍内に於て避災の手段なきときは、監獄長は在監人を他所に押送して其災を避けしむべし、若し押送するの途なきときは、一時之を解放することを得、解放せられたる者は其時より二十四時間以内に、監獄署又は憲兵隊、警察署若くは所屬本隊に其旨を申出づべし、□三在監人は下の區別に從ひ其監房を別異すべし、イ將官及其同等の軍屬、ロ上長官及び其同等の軍屬、ハ士官、准士官及其同等の軍屬、ニ下士及其同等の軍屬、ホ諸卒、諸生徒及判任官以外の軍屬、□四在監人中、罪名、刑名、初犯、累犯、共犯、丁年未滿等の區別に從ひ、成るべく其監房を別異すべし、□五婦女を入監せしむべきときは地方監獄に囑託すべし、□六下に記載する日は服役を免ず、イ一月一日、二日、ロ元始祭、ハ孝明天皇祭、ニ紀元節、ホ春季皇靈祭、ヘ神甞祭、ト天長節、チ新甞祭、リ十二月卅一日、ヌ靖國神社大祭日、ル父母の喪に遇ふ者は三日間服役を免ず、□七定役に服すべき囚人一百日を經れば、始めて各自の工錢を料定し、其十分の四を囚人に與ふ、無定役囚及刑事被告人には其十分の六を與ふ、定役に服する囚人にして科程外の作業を爲したるときは又之に準ず、即ち十分を六を與ふ、□八囚人領置の工錢を以て食物を購求せんと請ふときは、獄則を謹守し作業に勉勵する者に限り、相當の制限を付して之を許すことを得、□九在監人法律命令書の閲覽を請ふときは之を許すべし、囚人書籍の閲覽を請ふときは、内務省操典の類、及修身、宗教若くは教育に必要なるものに限り之を許すべし、刑事被告人書籍の閲覽を請ふときは凡て之を許す、但し領置外の書籍は主任理事の承認を經べし、新聞紙及時事の論説を記したるものは、總べて閲覽を許さず、以上其主なる規程なり。
- 英
- Regulation of military prison
- 独
- Regulierung vom Militarischen gefängnisze
- 仏
- Règles de la prison mili-taire
陸軍監獄條例施行細則
(りくぐんかんごくでうれいしかうさいそく)明治二七年省令第一號を以て公布せられたる陸軍省令にして、□一新に入監する者あるときは、之に番號を付し、通身を檢査し、名籍を詳記し、房内揭示の事項を諭示すべし、□二各監房には在監人の遵守すべき事項を説示し、傍訓を施し、解し易からしむべし、其事項下の如し、イ在監人は互に和順を主とし常に教令を謹守すべし、ロ教詞聽聞の席に就くときは、愼で容止を正しくすべし、ハ每朝父母若くは墳墓所在の方位に向て禮拜すべし、ニ每朝常用の諸器具を清潔にし、之を排列して點檢を受け、及席壁厠圊等を掃除すべし、ホ窓壁若くに物を汚損し、不淨器の外に唾はき、及貯水を濫用す可らず、ヘ房外に出たるときは、他人と手を交へ又は妄りに交話す可らず、イ夜間は殊に鎭靜を旨とし、談話、發聲、又は妄に起步す可らず、晝間と雖も放歌、喧噪、又は高聲に誦讀し及隣房の者と通聲交話すべ可らず、チ許可を得ざる物件を監房に入れ、或は勝負を爭ひ、若くは睹博類似の遊戯を爲し、或は他人に汚辱を蒙らしめ、猥褻に渉る如き所爲ある可らず、リ服役中其作業に關せざる他事を談話し、及服役せざる時間と雖も部外の役場に到る可らず、ヌ許可を得ずして衣食其他凡ての物品を貸借受授す可らず、ル監房に於て異常の事あれば、晝夜に拘らず直に看守に通聲すべし、ヲ患者あるときは同房の者互に介保し、殊に看護たらしむる者は切實に之を看護すべし、ワ日沒後發病者あるとき、輕症の者は翌朝に至り治療を請ふべし、重症若くは急劇の症なるときは直に看守に通聲すべし、カ水火風震等に際し解放せられたるときは、其時より二十四時間内に監獄署或は憲其隊、警察署若くは所屬本隊に其旨を屆出づべし、□三未決監と既決監とは墻塀を以て之を區畫すべし、□四刑事被告人に差入るべき飮食物は監獄内に於て炊烹を要せざるものにして、一日三回一人一食の量分に限るべし、差入品は看守長立會ひ、看守之を檢査し、毒氣、酒氣、包藏物、其他通謀の媒介となるべきものなきや否を精査し、監獄長に具申べし、□五各兵營留置場は其隊所屬の營倉を以て之に充つ、□六兵營留置場に刑事被告人を留置し、若くは罰金科刑を禁錮拘留に換へたる者、及拘留囚を拘禁するときは懲罰犯人と別異し、相當の取締を爲すべし、以上其主なる規定なり。
- 英
- Regulation for the application to the rule of Prison
- 独
- Ausführungsregel des Militärkerkersregle-ments
- 仏
- Règles de l'application des lois de la prison militaire
陸軍給與令
(りくぐんきふよれい)明治三二年勅令第二二二號を以て公布せられたるものにして、□一俸給、□二宅料、□三糧食、□四被服、□五馬匹、□六消粍品、□七陣營具等に關する給與等を定めたるもの也、而して俸給は之を分ちて、イ俸給准十官以上に給するもの、ロ給料、下士卒に給するもの、ハ手當金、諸生徒に給するものの三とし、其類は左表の如し。
第一表現役表
官名
年額
官名
年額
大將
三千圓
少佐
五百十六圓
中將
二千圓
同相當官
五百十六圓
同相當官
二千圓
大尉
三百圓
少將
千五百七十五圓
同相當官
三百圓
同相當官
千五百七十五圓
中尉
二百二十八圓
大佐
千百十六圓
同相當官
二百二十八圓
同相當官
千百十六圓
少尉
百八十圓
中佐
八百十六圓
同相當官
百八十圓
中佐相當官
八百十六圓
准士官
百四十四圓
第二表職務俸
官名
年額甲乙
大將
三千圓
中將同相當官
二千圓
少將同相當官
千五百七十五圓
大佐同相當官
千二百三十六圓
中佐同相當官
九百三十圓
少佐同相當官
七百八圓
大尉同相當官
一等五百四十圓
二等四百二十圓
中尉同相當官
一等三百十二圓
二等二百四圓
少尉同相當官
百八十圓
一等三百六十圓
二等三百圓
准士官一等二百九十七圓六十錢
二等二百三十七圓六十錢
三等百七十七圓六十錢
備考
明治三十二年六月六日、現在の中尉、同相當官、少尉、同相當官たる者の職務俸額、本表の給額と異なるときは、其職務にある間に限り其多額に從つて之を給す、但し憲兵司令部及憲兵隊附中少尉に限り、職務を轉ずるも尚多額に依る。
第三表甲給料
名稱
等級
月額
名稱
月額
曹長並相當官一等諸工長
特別
甲乙
二十四圓十錢
十五圓十錢
一等二等三等十五圓三十錢
十三圓二十錢
十一圓七十錢
上等兵看議卒
一圓五十錢
軍曹並相當官二等諸工長
一等
二等
三等
四等
九圓九十錢
八圓四十錢
六圓九十錢
六圓
憲兵上等兵樂手補
二圓六十四錢
伍長並相當官三等諸工長
一等
二等
四圓五十錢
三圓六十錢
三等卒
一圓二十錢
下士勤務上等兵看護長勤務看護所
一圓八十錢
警備隊下士勤務上等兵警備隊看護長
上等兵
勤務看護手
一圓八十錢
二圓七十錢
懲兵卒
六十錢
備考
本表中下士勤務上等兵とは、伍長、蹄鐵工長及計手勤務上等兵を云ふ。
下士勤務上等兵、又は看護長勤務看護手の定員内にて、伍長竝相當官に任ぜられたる者の給料は、其定員内にある間下士勤務上等兵の給料に同じ。
特別給を給するは、營外居住の一等蹄鐵工長、一等看護長に限る。
縫工長又は靴工長の勤務に服する上等兵の給料は、下士勤務上等兵の給料に同じ。
第三表乙召集中給料
名稱
等級
月額
名稱
月額
曹長並相當官一等諸工長
一等
二等
三等
五圓四十錢
四圓五十錢
三圓九十錢
上等兵
看護手
一圓五十錢
軍曹並相當官二等諸工長
一等
二等
三等
四等
三圓三十錢
二圓八十五錢
二圓四十錢
二圓十錢
樂手補
二圓六十四錢
伍長並相當官三等諸工長
一等
二等
一圓八十錢
一圓六十五錢
諸卒
諸工
一圓二十錢
備考
豫備役後備役見習士官、同見習主計、同見習醫官、同見習藥劑官、豫備役見習獸官の給料は月額四圓五錢とし、補充兵の給料は諸卒の給料に同じ。
曹長並相當官及一等諸工長にして、明治三六年十一月三十日以前に於て、現役滿期の際一等給を受けたる者は二等給を、二等給を受けたる者は三等を給す。
伍長並相當官及三等諸工長にして、明治三六年十一月三十日以前に於て現役滿期の者は一等給を給す。
窮四表手當金
名稱
月額
名稱
月額
見習士官
見習主計
監督候補生
見習醫官
見習藥劑官
見習獸醫官
四圓五錢
下士
候補生
一等
手當
二等
手當
一圓五十錢
一圓二十錢
經理部依託學生
衛生部依學生
獸醫部依託學生
軍醫學校生徒
十五圓
十二圓
砲兵工科學校生徒
一圓二十錢
衞生部依託生徒
獸醫部依託生徒
十圓
戸山學校軍樂生徒
陸地測量部修技所生徒
一圓五十錢
十圓
備考
監督候補生にして經理學校に入學を命ぜられたる者の手當金は、在職少尉の俸給額に同じ。
經理部依託學生出身の者の手當金は、在隊中に在りては見習主計の額に、經理學校に入學したる者にありては在職少尉の俸給額に同じ。
陸軍騎兵實施學校條例
(りくぐんきへいじつしがくかうでうれい)明治三一年勅令第二三〇號を以て公布せられたる所に係り、□一陸軍騎兵實施學校は、學生に戰術及馬術の訓練を爲し、以て各隊教育の進步を圖り、諸科學術の調査研究を爲し、且つ乘馬具及馬匹器具の研究、竝に試驗を行ふ所とす、□二學生を左の二種に別ち、イ戰術科學生は、騎兵大中尉を以て之に充つ、但し時として少尉を以て學生となす事あるべし、ロ馬術科學生は、騎兵中少尉及下士を以て之に充つ、但し時として野戰砲兵、要塞砲兵、輜重兵士官及下士を以て學生となすことあるべし、□三戰術研究の爲め、時として佐官を召集する事を得、但し修學期日は、其時々教育總監の移牒により陸軍大臣之を告達す、□四學生の訓練に供し、諸般の研究に充つる爲め、本校に教導中隊を置き、騎兵隊より下士兵卒を分遣して編成す、□五本校に下の職員を置く、イ校長、ロ副官ハ教官、ニ教導中隊長、ホ教導中隊附士官、ヘ廐長、ト調馬手長、チ軍醫、リ獸醫、ヌ副監督、ル准士官、下士、判任文官、□六校長は騎兵監に隷し、校務を總理し、學術進步の責に任ず、□一副官は校中一般の庶務を掌る、□八教官は戰術及馬術科學術の授業を分擔し、且つ其各科に於ける學術の調査、研究、竝に乘馬具及馬匹器具の研究及試驗に任じ、高級故參の教官を以て各科の科長とす、□九廐長は校廐一切の事を統べ、馬匹の調教に任ず、□十調馬手調は廐長に隷し、馬匹の調教を掌る、十一教導中隊の中隊長以下の服務は軍隊内部の定則を適用す、十二學生の修學期は各科とも槪ね十一ケ月とす、但し修學を終りたる馬術科騎兵士官學生中より若干名を選拔し、更に槪ね一ケ年在學せしめ、尚須要なる學術を修習せしむることを得、十三學生の人員及入校期日は、其時々教育總監の移牒により、陸軍大臣之を告達す、十四學生分遣の告達あれば、師團長は隊長をして各科の修學に適當の者を選定し、入校期二十日前に、其人名を騎兵實施學校長に通報せしむべし、十五學生士官は校外に、同下士は校内に居住せしめ、修學に所要の兵器、馬匹、馬具、書籍、器具、消耗品は貸與又は支給する事あるべし、但し下士學生は、所屬隊より其武器及被服裝具を携行せしむ、十六學生中の願屆其他業務に關する諸件は、凡て校長の管理に屬す、十七學生は情願を以て退校するを許さずと雖も、疾病及其他の事故により學術修得の目途なき者は、校長其事由を具し、騎兵監の認可を受け退校せしむ、十八校長は修學期末に於て、各教官を集め會議を開き、學生修學の成蹟を調査し、騎兵監の認可を受け、士官に在ては修得證明書を作り、署名印捺し、下士に在ては考科列序表を製し、師團長を經て本人所屬の隊長に送付し、又下士には更に學術修業の證書を附與し、學生を歸隊せしむ、十九教導中隊へ分遣の下士は尚二ケ年以上の期ある者、兵卒は前年十二月入營の者中より選拔すべし、二十教導中隊へ分遣の下士兵卒は、所屬隊より其武器、馬具、被服、裝具を携行せしめ、分遣中は特別の徽章を附せしむ、廿一教官は教育上便宜の時期に於て、隊附勤務を爲さしむることあるべし、廿二當分の中必要に應じ、學生の修學期を短縮し、及戰術科學生を一ケ年二回召集することを得、以上其の大要也。
陸軍々醫學校條例
(りくぐんぐんいがくかうでうれい)明治二九年勅令第一九四就を以て公布せられたるものにして、□一陸軍々醫學校は、學生の練習、生徒の教成、衛生部に關する教科用書の編修、若くは撰擇及兵衣、兵食、兵營兵器等の軍陣衞生に關する試驗を行ふ所とす、□二學生は各部隊附の衞生部士官を分遣して之に充て、其特科を練習せしむ、時宜により、練習の爲め三等軍醫正を召集することあるべし、□三生徒は醫術開業免狀又は藥劑師免狀を所持し、衞生部現役士官に出身志願の者を選拔して採用す、□四本校に下の職員を置く、イ校長、ロ副官、ハ教官、ニ副監督、□五校長は陸軍省醫務局長に隷し、校務を掌理し、上記の事項に關して其責に任ず、□六副官は校中の庶務を掌り、其下に陸軍屬を置く、□七教官は各專門學科の教授に任じ、兼て上記の事項を分擔す、□八學生の練習期は四ケ月以内とし、生徒の教成期は一ケ年以内とす、□九學生及生從の人員、入校時日竝に生徒採用に關する規定は、陸軍大臣之を定めて告達す、□十學生分遣の告達あれば、軍醫部長は入校期十日前に、其人名を軍醫學校長に通報するものとす、十一學生及生徒は校外に居住せしめ、其科業に關し、所要の書籍、器具、消耗品は貸與又は支給することあるべし、學生の名籍は原所管を離るることなしと雖も、分遣中の願屆其他業務に關する諸件は凡て校長の管理に屬す、十三學生の練習を終る時は、校長は原所管に復歸を命じ、練習中の成蹟を醫務局長に報告し、且つ所管の軍醫部長は之を通知す、十四生徒の教成を終る時は、校長は卒業試驗を行ひ、其成蹟により列序を定め、考科を製して醫務局長に進達し、其認可を受け卒業證書を付與す、十五學生及生徒は情願を以て歸省又は退校するを許さず、十六學生中疾病又は其他の事故により、練習を終るの目途なき者は原所管に復歸せしむ、十七生徒中下の事項の一に該る者は退校せしむ、イ學力乏しくして卒業の目途なき者、ロ軍規を紊り又は屢々法則を犯す者、ハ品行不正にして改悛の見込なき者、ニ疾病により卒業の目途なき者、ホ卒業試驗に落第せし者、以上に該る者ある時は校長は其事由を悉し、醫務局長に上申し、其認可を受け、復歸若くは退校を命ず、十九現役、豫備役、後備役にある者にして生徒となりたる者、以上の處分を受けたる時は、原所管に復歸せしめ、前役を通算(入校中の日數を含有す)して現役、後備役、豫備役に編入す、以上は其要旨也。
- 英
- Regulation of the military surgeons' school
- 独
- Regulier-ung der Militärarztschule
- 仏
- Règles de l'école des chirurgiens militaires
陸軍々樂學校條例
(りくぐんぐんがくがくかうでうれい)明治三一年勅令第六二號を以て公布したる所にして、□一陸軍々樂學校は、各軍樂隊の樂手補を補充する爲め生徒を養成し、又譜調學生に鼓譜、喇叺譜の訓練を爲し、且つ軍樂學術の發達を計る所とす、□二生徒は華士族平民中、軍樂部に出身志願の者を選拔して採用す、□三譜調學生は、步兵隊の鼓手長及騎、砲、工、輜重兵隊の喇叭長を分遣せしめて之に充つ、□四本校に生徒隊一隊を置く、□五本校に下の職員を置く、イ校長、樂長、ロ生徒隊長、樂長若くは樂長補、ハ准士官下士、□六校長は陸軍戸山學校長に隷し、校務を總理し、學術進行の責に任ず、□七生徒隊長は學生の訓練及生徒の教育を掌り、其成蹟に就き責に任ず、□八修學期は學生に在ては槪ね二ケ月とし、每年二回に別て入校せしめ、生徒に在ては槪ね十二ケ月とす、□九學生の人員及入校期日は其時々教育總監之を定め、陸軍大臣之を告達す、□十學生分遣の告達あれば、隊長は就學に適當の者を選定し、入校期二十日前に其人名を戸山學校長に通報すべし、十一學生及生徒は校内に居住せしむ、修學に所要の兵器、書籍、器具、消耗品は貸與又は支給し、學生に在ては武器、被服、裝具を携帶せしむ、生徒の諸給與は別に定むる所の規定による、十二學生の願屆其他業務に關する諸件は、總て軍樂學校長の管理に屬す、十三學生及生徒は情願を以て歸省又は退校するを許さず、十四生徒中下の事項に該る者は退校せしむ、イ學術の修得全からず、卒業の目途なき者、ロ軍紀を紊り又は屢法則を犯す者、ハ品行不正にして改悛の目途なき者、ニ傷痍疾病に罹り卒業の目途なき者、十五校長は學生の修學期末に修學の成蹟を調査し、考科列序を定め、戸山學校長に具申し、戸山學校長は師團長を經て之を當該隊長に交付し、又修學の成蹟を教育總監に報告す、十六校長は生徒の修學期末に於て、卒業試驗を施行し、考科列序を定め、戸山學校に具申し、戸山學校長は其及第者には卒業證書を附與す、十七生徒疾病事故により、卒業試驗を受けざる者、又は卒業試驗に落第したる者は猶滯學せしめ、更に前條に準じ卒業試驗を施行することを得、以上の規定を爲したるものが本令なりしが、明治三六年六月勅令第一〇六號に依て廢止せられ、陸軍戸山學校附屬として、同例中に上説の意味に於ける條文を存せり。(三六年六月勅一〇七號陸軍戸山學校條例參照)
- 英
- Regulation of the mili-tary music school
- 独
- Regulierung der Kriegsmusikschule
- 仏
- Règles de l'école de la musique militaire
陸軍々人恩給取扱手續
(りくぐんぐんじんおんきふとりあつかひてつづき)明治二三年省令第二二號を以て公布せられたる陸軍省令にして、□一軍人恩給法に依り恩給を請求する手續は、軍人恩給法施行規則に示したるものの外、陸軍部内に在ては此細則に準據すべし、□二退職恩給、免除恩給、增加恩給の請求書は、當該軍人現役を離たる後、法定書式に依れる書類を具備し、舊所屬長に呈すべし、所屬長之を調査し、計算書を作り、順序を經て所管長官に呈し、所管長官は之を陸軍大臣に進達すべし、□三傷痍疾病に基く恩給の請求に係るときは、所管長官其診斷證書を軍醫長に移し、審査せしめたる上、之を陸軍大臣に進達すべし、地方醫師の診斷證書を以て恩給を請求するは、陸軍軍醫官の診斷を受くる事能はざる場合に限る、其證書には原因經過療法及び現症を詳記して、醫師二名署名せしむべし、所管長官は醫官をして其傷痍疾病の等差を判定し、査覈證書を作らしめたる上、書類を軍醫官に移し之を審せしむべし、□四軍人恩給法法第十一條に當る者は、(軍人恩給法參照)其期限内に於て、居住地方の師圍長若くは屯田兵司令官に檢査を請求することを得、師團長若くは屯田兵司令官其請求を受けたる時は、醫官をして其症狀を實査せしめ、診斷證書を作らしむ、□五休職者停職者の恩給請求書は、直に所管師團司令長若くは屯田兵司令官(兵籍を寄留地に移したる者は其寄留地の師團等)に呈すべし、師團長は之を參謀長、屯田兵司令官は參謀に下して調査せしめ、計算書を作り之を陸軍大臣に進達すべし、□六賑恤金の請求は、法定の書式による書額を具備し、舊所屬長に呈すべし、所屬長は順序を經て所管長官に呈し、所管長官は三の例に依り之を取扱ふべし、□七給助金の請求は法定の書式による書類を具備し、本人若くは遺族より舊所管長官に呈すべし、所管長官は之を陸軍大臣に進達すべし、□八恩給を受くる權利を有する士官候補生の内、見習士官は曹長に、又は軍曹、若くは伍長の各階級に進みたる者は其階級に、其他の生徒は總べて兵卒に準ず、□九服役年を算するに當り、初任の月に端日數を生じたるときは、其月の大小に依り積算するを法とす、故に現役を離れたる月の端日數と合せて三十日以上に及びたるときは、其初任の月の大小に從ひ一箇月の區域を定む、□十軍人恩給法施行規則に依り、所管長官より死者の履歷書を其遺族へ下附するときは、兵籍の寫を添ゆべし、但し給助金のみを受くべき遺族に在ては、兵籍の寫を下附するに及ばず、十一恩給、賑恤金、給助金の請求書及履歷書は各二通を差出すべし、以上其の大要也。
- 英
- Process of treat-ment of the soldiers' pension
- 独
- Behandl-ungsverfahren der Soldatenpension
- 仏
- Progrès du traitement de la pension mili-taire
陸軍々人軍屬歸鄕療養者給與規則
(りくぐんぐんじんぐんぞくききやうれうやうしやきふよきそく)明治二七年勅令第一九二號を以て公布せられたるものにして、□一陸軍軍人軍屬にして戰役に從事し、傷痍を受け又は疾病に罹りたる者、病院に於て治療の後、鄕里に復歸療養せしむる時は、本規則に依り給與す、□二紙鄕歸養中手當として、軍人には第一表の金額、軍屬には本俸三分の二を給す、□三歸鄕の際歸鄕療養の者に、一回限り病衣一具を給す、傷痍の狀況に依り、簡易の補缺器械若くは副木等を要するものは、一回限り之を給することを得、□四歸鄕旅費は當該病院所在地より、本籍地若くは寄留地迄、順路に應じ、出發の際精算拂と爲し、第二表の金額を給す、但し途中川留、雪支、船待其の他避くべからざる事故の爲め滯在し、其の事由確實なるものは、日數に應じ同表の日當を追給す、前上策定の爲め召喚を要するときも、亦前上に准じて往復の旅費を給す、□五歸鄕療養中傷痍、疾病再發し、地方醫師若くは地方病院に就て治療を受けたる者は、其の醫師又は病院の證明書に依り實費を官給することあるべし、□六俸給其の他從來受くる所の諸給與は、歸鄕療養中其の支給を停止す、
第一表
官名
月額官名
月額
大將
二百十三圓准士官
二十一圓
中將
百七十圓見習士官、見習主計見習醫官、見習藥劑官、見習獸醫官ニシテ士官勤務ニ服スル者
十五圓
少將相當官
百四十九圓
曹長相當官
九圓五十錢
大佐相當官
百六圓
軍曹相當官
八圓五十錢
中佐相當官
八十一圓
伍長相當官
七圓五十錢
少佐相當官
六十四圓
大尉相當官
四十三圓
諸卒
諸工
五圓七十錢
中尉相當官
三十二圓
諸生徒
少尉相當官
二十六圓
第二表
旅費
汽車料一哩每に
船舶料每に
一海里車馬料一里每に
日當一日每に
大將
高等官親任
八錢
十錢
二十八錢四圓
將官
相當官
同一等
同二等
七錢
八錢
二十錢
二圓五十錢
上長官
同三等以下
同五等以下
六錢
六錢
十五錢
一圓六十錢
士官
同六等以下
六錢
六錢
十五錢
一圓三十錢
准士官
試補
四錢
五錢
十錢
七十錢
下士
判任
四錢
五錢
七錢
五十錢
諸卒
諸工
諸生徒
三錢
三錢
五錢
三十錢
見習士官、見習主計、見習醫官、見習藥劑官、見習獸醫官にして、士官の勤務に服する者、又は在職中准士官たる曹長は、准士官の額を給す、雇員等にして、月給六十圓以上は准士官に、十二圓以上は下士に、十二圓未滿及傭人は諸卒に準ず、下士以下及判任官に在て、步行し難き者の車馬料は、一里每に金三錢を增加す。
陸軍々人軍屬歸鄕療養者給與細則
(りくぐんぐんじんぐんぞくききやうれうやうしやきふよきそくさいそく)明治二七年省令第二三號を以て公布せられ、三八年同二號を以て大改正を加へられたる陸軍省令にして、□一本細則に依る手當金は、傷痍疾病者所屬の師團若くは其留守師團の經理部に於て每月之を支給す、但し師團に屬せざる者は、總て臨時陸軍會計監督部に於て支給す、歸鄕療養者は、每月末日に於て其月分の手當金請求書(第一號書式)に市町村長の證明を受け、當該經理部又は陸軍會計監督部に出して受領すべし、□二手當金は歸鄕療養を命ぜられたる當日より、休暇終了の日、又は服役處分決定の日迄之を支給す、但し休暇終了前、復職、復隊、死亡又は再び入院したる時は其當日迄支給す、日割計算の法は、月額に支給すべき日數を乘じ、其月の現日數を以て除し、四捨五入厘位に止め、支給額を得るものとす、□三本規則規定の病衣、補缺機械又は副木類は、歸鄕を命じたる病院に於て貸與又は支給す、□四本規則の旅費は、行程三里以上にあらざれば給せず、但し三里未滿と雖も、步行し難き者は車馬料を給す、旅費計算の法は、陸軍給與令に依る、途中に於て川留、雪支、船待其他避く可らざる事故の爲め滯在したる時は、其滯在地の郡區長若くは市町村長の事實を證明せる書面を得て、日當を請求すべきものとす、□五歸鄕旅費は歸鄕を命じたる病院に於て支給し、召喚旅費は召喚を命じたる廳に於て支給す、□六本規則の治療費を請求せんとする者は、地方醫師又は地方病院の證明書(第二號書式)に、請求書(第三號書式)を添へ、歸鄕を命ぜられたる病院へ差出すべし、但し平時の姿勢に服し、歸鄕を命ぜられたる病院閉鎖せる場合に在ては、在住地所管の師團司令部を經て當該衞戍病院へ差出すべし、病院に於て之を審査し、正當と認むるときは、其治療費を支給すべし、□七傷痍疾病再發者にして、陸軍病院に於て治療を爲すときは、其治旅費を官給とす、但し入院せしむるときは、其食料を自辨せしむ、□八傷痍疾病全癒し、復職復隊を命ぜられたる者は、其所屬部隊に於て居住地より部隊所在地迄、陸軍給與令により給費を給す、□九歸鄕療養を命じたる病院は、當該傷痍疾病者の所屬部隊、並に居住地官氏名及歸鄕を命じたる、年月日を、現時所屬師團監督部(師團に屬せざる者は陸軍省經理局第三課)竝に現時本人の其他の給與を爲したる部隊へ通報するものとす、現時俸給其他の給與を爲したる部隊に在ては、前項の通報により歸鄕を命ぜられたる翌日より之が支給を止む、退職、免官、免役若くは復職復隊を命じたるときは、其所屬部隊より直に之を手當全支給の廳に通報すべし、□十歸鄕療養中死亡したる時は、其遺族若くは親戚より、郡區長若くは市町村長の證明(第四號書式)を得て、歸鄕を命ぜられたる病院へ屆出づべし、但し平時の姿勢に復し、歸鄕を命ぜられたる病院閉鎖せる場合に於ては、上記六號の但書と同じ、十一甲師團の歸鄕療養者の居住地、乙師團の所管なる時は、其手當金の支給を乙師團監督部に請求することを得、此場合に在ては、本人より甲師團監督部へ願出で、甲師團監督部は、其名籍を乙師團監督部に移すものとす、臨時陸軍中央金櫃部より手當金支給を受くべき者、其居住地第一師管外なるときは、其の例に準ず。(第一號書式、用紙半紙)
手當金請求書
一金何圓也
但シ歸鄕療養手當金何年何月分(何年何月何日ヨリ何日迄ノ分)
右請求候也
何府(縣)何郡(區)(市)何町(村)何番地住何師團(軍)何部(隊)付
年月日官氏名□印
何師團經理部
(陸軍會計監督部)御中
右生存者ニ相違無之候也
何府(縣)何郡(區)(市)何町(村)長
年月日氏名□印
(注意)
「支給廳の所在地外に居住の者は、此請求高を郵送するも妨げなし、此場合に在ては、金額の送付を受けたるとき、直に受領證書を郵送するものとす」
「支給廳の所在地に居住の者は、此請求書を持參し、金額引換に受領證書を差出すものとす」「以下金額受領のときは前二項に準ず」
(第三號書式、用紙半紙)
證明書
府(縣)郡(區)(市)町(村)番地
陸軍何兵何等卒氏名
右ハ何年何月何日何ノ爲メ診ヲ請フニヨリ之ヲ診スルニ當時ノ症狀何々依テ何々ノ部ニ何々ノ手術(何々の療法)ヲ施シ爾後經過云々治癒(死の者は「遂ニ何々ニヨリ何月何日死亡」と記す)セシモノニシテ既往何々ノ傷痍(症狀は成るべく丈け詳記す)再發シタルモノト診斷ス而シテ右治療中ニ消費シタル入院料(診斷料藥價)ハ別紙明細書ノ如シ、(別紙は適宜の體裁を以て金額内譯を詳記し署名捺印すべし)前書ノ通リ證明候也
府(縣)郡(區)(市)町(村)番地
醫師(何病院主任醫)
年月日氏名□印
(第二號書式、用祇半紙)
請求書
何府(縣)何郡(區)(市)何町(村)何番地住何師團(軍)何部(何隊)附
官氏名
右何年何月何日歸鄕療養ヲ命ゼラレ候處何月何日創傷(病症)再發何月何日治療(死亡)候ニ付右加療の爲メ金何程ヲ費シ候間陸軍々人軍屬歸鄕療養者給與規則第五條ニヨリ該費御下付相成度別紙醫師證明書相添及請求候也
右
年月日氏名□印
(死亡者に在ては遺族署氏捺印すべし
)何陸軍豫備病院(何衞戍病院)御中
(第四號書式、用紙半紙)
死亡屆
何府(縣)何郡(區)(市)何町(村)何番地住何師團(軍)何部(隊)附
官氏名
右何年何月何日歸鄕療養命ゼラレ候處何々ニヨリ何月何日死去致候間此段及御屆候也
右遺族(親戚)
氏名□印
何部隊御中
前書ノ通相違無之候也
何府(縣)何郡(區)(市)何町(村)長
年月日氏名□印
陸々人軍屬違警罪處分例
(りくぐんぐんじんぐんぞくいけいざいしよぶんれい)□一陸軍々人軍屬の犯したる違警罪は、違警罪即決例に依り、憲兵部に於て其處分を爲し、憲兵隊設置なき地に於ては、警察署に於て其處分を爲すべし、□二憲兵部又は警察部に於て被告人を留置したるときは、直に其所屬の長官若くは隊長に通知すべし、□三即決の言渡に對しては、軍法會議に正式の裁判を請求することを得、其裁判管轄は陸軍治罪法に從ふ、□四正式の裁判を請求する者は、違警罪即決例に記載したる期間内に其理由を記したる書面を即決の言渡を爲したる憲兵部若くは警察署に差出すべし、□五憲兵部若くは警察署に於て、以上の書面を受領したるときは、二十四時間内に訴訟に關する一切の書類を管轄軍法會議の所管司令部に送致すべし、□六軍法會議に於て、被告人の訊問を要せざるものと認むるときは、書面により其裁判を爲すことを得、□七即決の言渡確定し、若くは正式裁判の言渡を爲したるときは、憲兵部、警察署、軍法會議より、被告人所屬の長官若くは隊長に其執行を囑託することを得、□八軍法會議の裁判に對しては上訴を爲すことを得ず、以上本例の大要とす。
陸軍軍法會議
(りくぐんぐんぱふくわいぎ)軍法會議は、軍人の犯罪を審理する裁判所にして、之を別ちて海軍軍法會議、陸軍軍法會議の二となす、陸軍々法會議は、陸軍に屬し、軍人の犯したる重罪、輕罪の審判及び違警罪の正式裁判を審理裁決するものとす、又陸軍官署若くは軍人の損害に係る本案附帶の私訴あるときも、軍法會議に於て之を審判す、□一各師管には軍法會議一個若くは數個を置く、東京に高等軍法會議一個を置く、軍中に於ては軍團、師團、混成旅團に軍法會議を設け、合圍の地にも亦軍法會議を設く、□二軍法會議は判士長、判士、理事若くは理事試補及錄事を以て構成す、□三判士長、判士は高等軍法會議に於ては第一表により、他の軍法會議に於ては第二表により、將校を以て之に充つ、軍中若くは監戰合圍の地に於ては判士二名を減ずることを得。
第一表
判士長
判士
被告人
佐官一名
尉官四名
陸海軍下士以下の軍人
佐官一名
大尉若くは中尉二名
少尉二名
陸軍少尉及び同等の陸海軍人並に准士官
佐官一名
大尉二名
中尉二名
陸軍中尉及び同等の陸海軍人
大佐若くは中佐一名
少佐三名
大尉二名
陸軍大尉及び同等の陸海軍人
大佐一名
中佐二名
少佐二名
陸軍少佐及び同等の陸海軍人
少將一名
大佐二名
中佐二名
陸軍中佐及び同等の陸海軍人
中將一名
少將二名
大佐二名
陸軍大佐及び同等の陸海軍人
中將一名
中將二名
少將二名
陸軍少將及び同等の陸海軍人
大將一名
大將一名
中將三名
陸軍中將及び同等の陸海軍人
大將一名
大將二名
中將二名
陸海軍大將
第二表
判士長
判士
被告人
佐官一名
尉官四名
陸海軍下士以下の軍人
佐官一名
大尉若くは中尉二名
少尉二名
陸軍少尉及び同等の陸海軍人並に准十官
佐官一名
大尉二名
中尉二名
陸軍中尉及び同等の陸海軍人
大佐若くは中佐一名
少佐二名
大尉二名
陸軍中尉及び同等の陸海軍人
大佐一名
中佐二名
少佐二名
陸軍少佐及び同等の陸海軍人
少將一名
大佐二名
中佐二名
陸軍中佐及び同等の陸海軍人
中將一名
少將二名
大將二名
陸軍大佐及び同等の陸海軍人
□四判士長、判士、理事下に記載したる者なるときは、其審判に從事することを得ず、イ被告人、被害者及び其配偶者の親族、ロ被告人被害者の後見人、ハ告發人被害者及證據を陳述したる者□五原裁判に從事したる判士長判士理事は、再議及再審の裁判に列することを得ず、但し缺席裁判に對する再審に於ては此限にあらず、以上軍法會議の構成に付きての大體なり。(陸軍治罪法參照)
- 英
- Council of military court
- 独
- Kriegsgericht
- 仏
- Conseil du tribun-al militaire
陸軍會葬式及表葬式
(りくぐんくわいさうしきおよびへうさうしき)明治二四年勅令第二一〇號を以て公布せられたる勅令にして、陸軍會葬式と陸軍表葬式とを定めたるもの也、即ち□一陸軍會葬或は陸軍現役軍人竝に召集中に係る陸軍豫備役、軍人及陸軍現役將官、竝に勳三等(寳冠章佩用者を除く以下同じ)功三級以上の死亡者に對する禮遇にして其式下の如し、イ儀仗兵發差、ロ吊銃齊發、ハ總代會葬是れ也、而してロ及ハは海軍現役將官及勳三等功三級以上の者に施行せず、ニ陸軍會葬の式は、死者の團體的軍人なるときは、該團長之を管理し、其他の軍人に在ては、其地衞戍司令官之を管理す、海軍現役將官及勳三等以上の者の送葬を執行するときは、遺族より其地衞戍司令官に儀仗兵發差の事を請求すべし、□三將校竝に同相當官、准士官の柩は、黑布を以て之を覆ひ、其上に本人生前所用の勳章徽章、褒章、正衣、袴、肩章、第一種帽前立、飾緖、飾帶刀(劍)及正緖を排置す、而して乘馬本分の者は、乘馬を柩後に牽かしめ、其馬具は黑衣を以て凡て之を覆ふべし、下士、兵卒の柩は黑布を以て之を覆ひ、勳章、徽章、褒章を其上に排置す、□四儀杖兵の兵員及編制は、死者の官階により其區別下の如し、イ元帥の稱號を有する大將には、步兵一聯隊にして聯隊長之を指揮す、ロ大中將には、步兵二大隊にして大佐又は中佐之を指揮す、ハ中將相當官及び少將には、步兵一大隊にして佐官之を指揮す、ニ少將相當官及大中佐には、步兵二中隊にして、少佐之を指揮す、ホ大中佐相當官及少佐には、步兵一中隊にして大尉之を指揮す、ヘ少佐相當官及大尉には、步兵二小隊にして中尉之を指揮すト大尉相當官及中少尉並に同相當官には、步兵一小隊にして少尉又は特務曹長之を指揮す、チ特務曹長には、軍曹、伍長、各一名、上等兵二名、兵卒二十名にして、曹長又は軍曹之を指揮す、リ曹長には軍曹、一名、上等兵二名、兵卒十六名にして、軍曹之を指揮す、ヌ伍長には兵卒十名にして、上等兵之を指揮す、ル上等兵には卒六名にして、故參の卒之を指揮す、ヲ一二等卒には卒四名にして、故參の卒之を指揮す、□五弔銃齊發は弔禮の爲め、小銃を齊發するものにして、將官竝に隊附佐尉官の送葬に限り之を行ふ、□六弔銃齊發は、葬祭の告詞終るの際、儀杖兵隊長の號令により行ふものとす、其回數は死者の官階に依り區別すること下の如し、イ將官三回、ロ佐官、二回、ハ尉官、一回、□七總代會葬は陸軍々人一般葬の時、死者と同官等以下の者をして、其葬儀に合同せしむるもの也、其總代の人員は、死者の官階によりて同じからず、陸軍表葬式に付きては、陸軍表葬式の説明を參照すべし。
陸軍管區
(りくぐんくわんく)明治二九年勅令第三八一號を以て公布せられたる勅令に依りて、陸軍に關する軍事行政の敏活を圖らんが爲め、全國の土地を區劃したるものにして、其一區劃を陸軍管區と謂ふ、即ち全國を十二師管に別ち、各管區每に師團長を置き、師團長其管區を管轄し、而して各師管を更に數箇の聯隊區、及び警備隊區に別ち、聯隊區司令官、警備隊司令官之を管轄す。(陸軍管區表參照)
- 英
- Military jurisdiction
- 独
- militärischer Gerichtsbezirk
- 仏
- Juridic-tion militaire
陸軍管區表
(りくぐんくわんくへう)明治三六年勅令第一三號を以て公布したるものにして、左の如し。(改正管區表の部を參照)
陸軍管區表
師
管旅
管聯隊區
警備隊區
管府縣
第第東京
{麻布區、麴町區、神田區、日本橋區、京橋區、荏原郡、豐多摩郡、赤阪區、四谷區、小石川區、牛込一
一
麻布
神奈川
區、芝區、西多摩郡、南多摩郡、北多摩郡、伊豆七島
{橘樹郡都築郡
小笠原島
東京{小笠原島
橫濱
山梨及神奈川
{橫濱市、久良岐郡、鎌倉郡、三浦郡、中郡、高座郡、愛甲郡、津久井郡、足柄上郡、足柄下郡
高崎
群馬及埼玉
{入間郡、比企郡、秩父郡、兒玉郡、大里郡
長野
長野
第佐倉
千葉
水戸
茨城
{水戸市、東茨城郡、西茨城郡、那珂郡、多賀郡、久慈郡、鹿島郡、行方郡、新冶郡、筑波郡稻敷郡、北相馬郡本鄕
東京
{本鄕區、淺草區、下谷區、南葛飾郡、本所區、深川區、南足立郡、北豐島郡
埼玉
{北足立郡、南埼玉郡、北埼二
玉郡、北葛飾郡
宇都宮
栃木及茨城{眞壁郡、猿島郡、結城郡
第二
第三
仙臺
宮城
{仙臺市、宮城郡、柴田郡、刈田郡、伊具郡、亘理郡、名取郡、黑川郡、加美郡、志田郡、玉造郡、遠田郡、桃生郡、牡鹿郡
福島
{伊達郡、相馬郡福島
福島
{若松市、信夫郡、安積郡、安達郡、岩瀨郡、南會津郡、北會津郡、耶摩郡、河沼郡、大沼郡、東白川郡、石川郡、田村郡、石城郡、雙葉郡、西白河郡
十
第新發田
新潟
{新潟市、南蒲原郡、北蒲原郡、中蒲原郡、西蒲原郡、東蒲原郡、岩船郡、古志郡
柏崎
新潟
{刈羽郡、三島郡、北魚沼郡、南魚沼郡、中魚沼郡、東頸城郡、中頸城郡、西頸城郡
五
佐渡
新潟
{佐渡郡
第三
第五
名古屋
愛知
{名古屋市、愛知郡、知多郡、海東郡、海西郡、東春日井郡、西春日井郡、丹羽郡、葉栗郡、中島郡
津
三重
{津市、四日市、桑名郡、員辨郡、三重郡、鈴鹿郡、河藝郡、安濃郡、一志郡、飯南郡、多氣郡、度會郡、志摩郡、北牟婁郡、南牟婁郡
第十七
豐橋
愛知
{幡豆郡、額田郡、西加茂郡、東加茂郡、北設樂郡、南設樂郡、寳飯郡、渥美郡、八名郡、碧海郡
靜岡
{靜岡市、駿東郡、富士郡、庵原郡、安倍郡、志太郡、賀茂郡、田方郡、榛原郡、小笠郡、周知郡
第第大阪
大阪
{西區、南區、東區、北區、東成郡、南河内郡、中河内郡、堺市、泉北郡、泉南郡
四
七
和歌山
和歌山及奈良
{字智郡、吉野郡、兵庫津名郡、三原郡、第十九
大津
滋賀及三重
阿山郡{名賀郡
京都
京都
{上京區、下京區、愛宕郡、葛▲郡、乙訓郡、紀伊郡、▲治郡、久世郡、相樂郡、綴喜郡
奈良
{奈良市、添上郡、生駒郡、磯城郡宇陀郡、山邊郡、北葛城郡、高市郡、南葛城郡
第第九
廣島
廣島
{廣島市、呉市、安藝郡、賀茂郡、豊田郡、安佐郡、佐伯郡、山糠郡、高田郡
尾道
廣島
{尾道市、御調郡、世羅郡、甲奴郡、神石郡、沼隈郡、藘品郡、深安郡
岡山
{阿哲郡、上房郡、吉備郡、都窪郡、口郡、小田郡、後月郡、川上郡
第松江市、八束郡、能義郡、仁多郡、大原郡、五
二十一濱田
島根
{簸川郡、飯石郡、爾摩郡、安濃郡、邑智郡、那賀郡、美濃郡鹿石郡
廣島
雙三郡{婆比郡
山口
山口
{大島郡、玖珂郡、熊毛郡、都▲郡、佐波郡、吉敷郡厚狹郡、美禰郡、大津郡、阿武郡
隱岐
島根
{周石郡、穩地郡、海士郡知夫郡第第十熊本
熊本
{熊本市、飽託郡、宇土郡、阿蘇郡、上益城郡、下益城郡、八代郡、蘆北郡、球磨郡、天草郡鹿兒島
鹿兒
島
{鹿兒島市、鹿兒島郡、日置郡、楫宿郡、川邊郡、出水郡、伊佐郡、薩摩郡
大島
鹿兒島{大島郡熊毛郡
沖繩
沖繩
五島
長崎
{南松浦郡
六
一
對馬
長崎
{上縣郡下縣郡
宮崎
宮崎及鹿兒島
{囎唹郡、肝屬郡姶良郡
第第十三
札幌
北海道{札幌區、札幌郡空知郡(富良野村を除く)夕張郡、樺戸郡、雨▲郡濱益郡、厚田郡、石狩郡、(石狩團小樽郡、高島郡、忍路郡、余市郡、古平郡、美國郡、積丹郡、岩内郡、古宇郡、(後志國)千歳郡、室蘭郡、有珠郡、虻田郡幌別郡、白老郡、勇拂郡、(膽振國)沙流郡、新冠郡、群内郡、浦河郡、樣似郡、幌泉郡、三石郡、(日高國)
函館
北海道
{凾館區、龜田郡、上磯郡、松前郡、檜山郡、爾志郡、茅部郡、(渡島國)久遠郡、奥尻郡、太櫓郡、瀨棚郡、島牧郡、壽都郡、歌棄郡、磯谷郡、(後志國)山越郡(膽振國)
七
第十四
旭川
北海道
{上川郡、空知郡、富良野郡(石狩國)增毛郡、▲萠郡、苫前郡、天▲郡、中川郡、上川郡(天鹽國)宗谷郡、枝幸郡、禮文郡、利尻郡、綱走郡、斜里郡、常呂郡、紋別郡(北見國)
釧路
北海道
{釧路郡、厚岸郡、阿寒郡、川上郡、白糖郡、足寄郡、(釧路國)廣尾郡、當緣郡、中川郡、十勝郡、河西郡、河東郡、上川郡(十勝國)根室郡、花咲郡、野付郡、標津郡、日梨郡(根室國)色丹郡、得撫郡、新知郡、占守郡、國後郡、振別郡擇捉郡、蕊取郡、沙那郡、(千島國)
第
第
弘前
青森
{巖手、二戸郡九戸郡、盛岡
巖手
{盛岡市、巖手郡、紫波郡、和賀郡、膽澤郡、江刺郡、西磐井郡、東磐井郡郡、氣仙郡、八
四
稗貫郡、上閉伊郡、下閉伊郡、
宮城
{登米郡、本吉郡、栗原郡、
第十六
秋田
秋田
山形
山形
第九
第六
金澤
石川
富山
富山
第十八
鯖江
福井
{福井市、足羽郡、吉田郡、坂井郡、大野郡、南條郡、今立郡丹生郡、敦賀郡、
岐阜
{梅津郡、養老郡、不破郡、揖斐郡、本巢郡、山縣郡、
岐阜
岐阜
{岐阜市、稻葉郡、羽島郡、武儀郡、郡上郡、大野郡、益田郡、吉城郡、加茂郡、可兒郡、土岐郡、惠那郡、八郡、
第第福知山
京都
{與謝郡、加佐郡、中郡、竹野郡、熊野郡、南桑田郡、北桑田郡、船井郡、天田郡、何鹿郡、
十
二十兵庫
{出石郡、養多郡、氷上郡、父紀郡、朝來郡、加東郡、多可郡、
福井
{三方郡、遠敷郡、大飯郡、
神戸
兵庫
{神戸市、武庫郡、川邊郡、有馬郡、明石郡、美囊郡、加古大阪
{郡、
西成郡、三島郡、豊能郡、
第八
姫路
兵庫
{姫路市、飾磨郡、神崎郡、加西郡、印南郡、揖保郡、宍粟郡、佐用郡、赤穗郡、
岡山
{岡山市、兒島郡、御野郡、上道郡、津高郡、赤坂郡、磐梨郡、邑久郡、和氣郡、
鳥取
鳥取
{鳥取市、岩美郡、八頭郡、氣高郡、東伯郡、西伯郡、日野郡、
岡山
{眞島郡、勝南郡、勝北郡、東北條郡、東南條郡、西北條郡、大庭郡、久米北條郡、久米南條郡、吉野郡、英田郡、兵庫
{城崎郡、美方郡、
第十一
第十
松山
愛媛
高知
高知
第二十二
九龜
香川
德島
德島
第十二
第十二
小倉
福岡
{遠賀郡、企救郡、田川郡京都郡、築上郡、
大分
{玖珠郡、日田郡、下毛郡、宇佐郡、
山口
{赤間關市、豊浦郡、
大分
大分
{西國東郡、東國東郡、速見郡、大分郡、北海部郡、南海部郡、大野郡、直入郡、
熊本
{鹿本郡、菊池郡、阿蘇郡、
第二十三
福岡
福岡
{福岡市、糟屋郡、宗像郡、鞍手郡、嘉穗郡、朝倉郡、筑紫郡、糸島郡、早良郡、八女郡、浮羽郡、山門郡、三池郡、
佐賀
佐賀及福岡
{三潴郡、久留米市、三井郡、
一警備隊設置點は、東京府小笠原島は麻布聯隊區に、新潟縣佐渡郡は備考
柏崎聯隊區に、島根縣周石、穩地、海士、知夫四郡(隱岐)は、濱田聯隊區に、鹿兒島縣大島、熊毛二郡は、鹿兒島聯隊區に、長崎縣南松浦郡は大村聯隊區に屬す。
二臺灣の管區は他日を竢て之を定む。
- 英
- List of military jurisdiction
- 独
- Liste der Militärgerichtsbarkeit
- 仏
- Liste de la juridiction militaire
陸軍會計監督部條例
(りくぐんくわいけいかんとくぶでうれい)明治三六年勅令第一九九號を以て公布せられし所に係り、其内容を略述すれば、□一陸軍全般の會計經理を監査し、師團及臺灣陸軍經理部以外の各部の會計事務監督の爲めに、陸軍會計監督部を設け、尚臨時陸軍各部各隊に就き、其會計事務を監督せしむ、□二本部には左の職員を置く、部長、部員、下士竝に判任官是也、而して部長は陸軍大臣に隷屬し、部務を掌理す、部長は實地檢査を行ひたるときは、意見を具し、其成蹟を陸軍大臣に報告すべきものとす、又部長は其の職權に屬する各部各隊の廢品處分を承認する權、及之を當該長官に分任せしむるの權限を有す、□三部員は部長の命を受けて部務に服すべきものとし、□四下士、判任官は以上の上官の補助機關として、各種の庶務に從事すべきものとす、□五本令により從前の陸軍會計監督部條例は廢止せられたるものとす、以上本例の大要なり。
陸軍刑法
(りくぐんけいはふ)明治四一年第四六號を以て公布せられたる布告にて、總則としては、□一法例、□二刑例、□三加減例、□四數罪倶發、□五數人共犯、□六未遂犯罪、各論として□一反亂、□二抗命、□三擅權、□四辱職、□五暴行、□六侮辱、□七違令、□八逃亡、□九詐僞を規定したるもの也、要するに、海軍刑法と共に、一般刑法に對する特別法たるの地位にあるものとす。
陸軍經理學校條例
(りくぐんけいりがくかうでうれい)明治三六年勅令第一九一號を以て公布せられし所に係り、□一陸軍經理學校は陸軍主計候補生を生徒とし、陸軍經理部初級士官に必要なる教育を施し、及び陸軍經理部士官中より選拔せる者を學生とし、高等の學術を施す所とす、□二生徒及學生の教育綱領は陸軍大臣之を定む、□三本校には、校長、副官、教官、生徒隊長、軍醫、下士、判任官等の職員を置く、校長は陸軍大臣に隷し、校務を總理し、生徒及び學生の教育の責に任ずる者にして、副官は之が補助機關たり、即ち校長の命により庶務に從事す、教官は學術の教授、生徒隊長は生徒の訓育、軍醫は校内の衞生事務を、等しく校長の命を受けて分掌す、□四學生は現役一、二等主計中、身體強健、勤務勉勵、操行高尚、且つ將來發達の見込ある者より檢定の上採用す、陸軍會計監督部長、師團及臺灣陸軍經理部長等は、所管内に於ける適當の者を選拔し、考科表を附して陸軍省經理局長に進達し、經理局長は之に依りて候補の者の名簿を作り、陸軍大臣に進達す、陸軍大臣は試驗委員を設け以上の者の學力及び活用を檢定し、試驗委員長の上申に基き之を裁定す、其採用の人員は陸軍大臣之を告達す、□五生徒の修學期は一箇年九箇月とし、學生は一箇年とす、□六生徒及び學生の修學に要する兵器、圖書、器具及消耗品は貸與又は支給することを得、尤も生徒中各隊より派遣する者は所屬隊より携行せしむ、□七生徒及び學生は情願を以て退校を許さず、生徒にして、イ卒業の目途なき者、ロ紊紀反則者、ハ品行不良改悛の目途なき者、ニ傷痍疾病に依り修學に堪へざる者、ホ落第者等は退校せしむ、□八學生卒業者中優秀の者は、陸軍大臣之を員外學生とし、帝國大學の規定に依り入學せしめ、必要なる學科を研究せしむ、□九校長は每年生徒及學生に、三週間以内の夏期休暇を與ふることを得、其他附則として經過的規程の二、三及び六箇月講習の主計講習生を置くこと、此等の者は現役上等計計中より選拔し、陸軍大臣の認可の下に之を命ずること等を規定したり、以上本例の大要とす。
- 英
- Regulation of the military paymasters' school
- 独
- Regulir-ung der Kriegsfinanzschule
- 仏
- Règles de l'école des trésoriers militaire
陸軍教官
(りくぐんけうくわん)陸軍武官教官、及び陸軍文官教官を總稱して、陸軍教官と謂ふ、即ち陸軍士官學校條例に「軍事學教官は、軍事學各科の授業を分擔し、佐官教官を以て各科の科長とす、文官教官は外國語學の授業を分擔す」とあるは其用例なり。
- 英
- Military teacher
- 独
- mili-tärischer Lehrer
- 仏
- Maitres militaires
陸軍工兵會議條例
(りくぐんこうへいくわいぎでうれい)明治三〇年勅令第二三七號を以て公布せられたるものにして、□一陸軍工兵會議は、工兵技術竝に兵器材料に關し、陸軍大臣の諮詢に應じ、且つ其改良進步を圖り、審査立案する所とす、□二陸軍工兵會議に左の職員を置く、議長
少將若くは工兵大佐
議員
工兵佐官
臨時議員
各兵科各部上長官或は陸軍技師
審査官
工兵佐官、同大尉
□三以上に揭ぐる職員の外、審査官の下に工兵上等監護、工兵下士並に屬、技手を置く、□四議長は陸軍大臣に隷し、議事を整理し、會議一切の事務を總理す、□五審査官は審査試驗の事を分擔し、其分擔事項に關しては、議事に列席、答辯、説明の任に當り、且つ會議の事務を處理す、□六審査官には陸軍技師を混用する事を得、□七議員は他に本職ある者を以て兼補す、臨時議員は議事の必要に當り、陸軍大臣他に本職ある者を以て之を命じ、議事を終れば直に解任するものとす、□八議長不在のときは、議事に關しては員中高級故參の者其代表をなすべし、但し議員は事務に關して代理することなし、□九陸軍工兵會議の立案に依る事項は、陸軍大臣に建議するものとす、但し輕易の事項にして、議事に付するの必要なしと認むるものに在りては、議長は直に建議するもの也、十八合同會議は凡て本會議の規定に依る、十九合同議會々長は、砲工兵會議の審査案を建議する事を得、□十陸軍工兵會議は、軍事規則を議定し、陸軍大臣の認可を請ふべし、十一總護員二分一以上出席するにあらざれば、議事を開き議決を爲すことを得ず、但し緊急の場合に在ては、總議員三分一以上出席するときは、議事を開き議決を爲すことを得、十二議長は議事裁決の數に與ることを得ず、十三議事は出席議員の過半數により之を決す、可否同數なるときは議長の決する所に依る、十四輕易の事項にして議事に付するの必要なきものは、陸軍大臣は單に審査又は起案を命ずることあるべし、十五試驗の爲め軍隊を要するときは、議長は師團長に禀議して之を使用することを得、十六砲工兵兩科の技術に跨る議案にして、砲工兵兩會議の議員を合し討議せしむるの必要あるときは、合同會議を開くものとす、此場合に在ては陸軍大臣之を特達す、十七合同會議を開くときは、砲工兵兩會議議長中、高級故參の者議長となり、下級の者は議員に列し會議に預るものとす、議事の必要により陸軍大臣は、特に他の將官を以て議長に命ずることを得、(此場合に、然らざれば議長となり得べかりし者は、會議に列し表決に預ることを得るものとす)但し其議事終れば直に解官して、上記五號の事項を處理せしむるものとす、以上本例の大要なり、されど現時本令は發止せられたり。
陸軍參謀條例
(りくぐんさんぼうでうれい)明治三一年勅令第二〇號を以て公布せられたる所に係り、□一參謀將校は、高等將帥の職務を補佐し、殊に國防及用兵に關する職務を參畫し、又軍隊練成の事務を掌る、其他特別の任務は各條規の定むる所による、□二參謀將校は、參謀總長之を統轄し、編制の定むる所に於て服從せしむ、□三參謀の職に補すべき者は、各兵科の大尉以上の者にして、下の資格を有する者より選拔すべきものとす、イ陸軍大學校卒業後一箇年以上隊附勤務に服したる將校にして、參謀總長の適任と認むる者、ロ學識才能卓越する將校にして、參謀總長の適任と認むる者、□四參謀將校は、進級する每に、少くとも一箇年間隊附勤務に服せしむるを例とす、□五參謀將校は、其職務に熟達せしむる爲め、彼れ是れ更任せしむるものとす、□六參謀將校は、每年凡そ二箇月間、兵科を選で隊附勤務に服せしむることを得、以上本例の大要とす。
- 英
- Regulation of military Staff
- 独
- Regulierung des Generalstabs
- 仏
- Règle de l'Etat-major militaire
陸軍獸醫學校條例
(りくぐんじういがくかうでうれい)明治三二年勅令第四二〇號を以て公布せられたる所に係り、□一陸軍獣學校は、學生に各專門の學術を練習せしめ、常に獣醫及蹄鐵に關する學術の調査研究を爲し、軍馬衞生に關する試驗を行ひ、且つ蹄鐵工長候補生に蹄鐵工長たるに必要の教育を爲す所とす、□二學生は獣醫部士官及隊附騎兵、砲兵、輜重兵、蹄鐵工長、候補生は騎兵、野戰砲兵、輜重兵隊より分遣する蹄鐵工長候補生を以て之に充つ、□三本校に下の職員を置く、イ校長、ロ副官、ハ教官ニ、軍醫、副監督、下士、判任文官、□四校長は陸軍省軍務局長に隷し、校務を總理し、學術進步の責に任ず、□五副官は校中一般の庶務を掌る、□六教官は學術の教授及其調査研究を分擔し、軍馬の衞生に關する試驗に從事す、□七學期は槪ね學生士官に在ては五ケ月、同下士に在ては三ケ月、候補生に在ては九ケ月とす、□八學生、候補生の人員及入校期日は、陸軍大臣之を告達す、□十學生候補生分遣の告達あれば、師團長は學生士官に在ては獸醫部長、同下士に在ては當該隊長をして選定せしめ、入校期日十日前に其人名を校長に通報せしむ、十一學生士官は校外に、同下士及候補生は校内に居住せしむ、但し營外居住の下士に在ては校外とす、十二學用品は學生士官に在ては自辨とし、同下士及候補生には之を貸與又は支給す、但し學生士官と雖も科業の種類により之を貸與又は支給する事あるべし、學士下士、候補生に在ては、武器被服及裝具を其所屬隊より携行せしむ、十三學生、候補生、願屆其他業務に關する諸件は、總て校長の管理に屬す、十四學生、候補生は情願を以て歸省又は退校するを得ず、十五學生、候補生中下の事項に該る者は、校長其事由を具し、軍務局長の認可を受け、退校歸隊せしむ、但し候補生に在りては、豫め所屬隊長に通報し、退校と同時に除隊の處分に付することありイ學術の修得全からず、卒業の目途なき者、軍紀を紊り又は屢法則を犯す者、ハ品行不正にして改悛の目途なき者、二傷痍疾病により卒業の目途なき者、ホ終末試驗に落第せし者是なり、尤も候補生にして、疾病傷痍其他の事項により、終末試驗を受けざるも、望みある者は若干日の後、特に受驗せしむることを得、又終末試驗に落第するも、尚望みある者は、若干日間學術の補修を爲し、卒業せしむる事を得、十六校長は學期末に於て、學生に在ては教官會議を開き、其成蹟を審査して修得證明書を附與し、候補生に在ては終末試驗を施行し、及第者には卒業證書を附與す、學生及候補生修學を終れば校長は原所管に復歸を命じ、且つ其成蹟を軍務局長に報告し、所屬長及所管師團獣醫部長に通知す、十七授業上所要の馬匹は、陸軍騎兵實施學校飼養の馬を以て之に充つ、時宜により他の學校及軍隊、飼養の馬匹をも之に充つることを得、將校及同相當官飼養の馬匹は、本人の希望により前項の所要に供することを得、以上其の一班なり。
- 英
- Regulation of the veterinary college
- 独
- Regulirung der Kriegsvieharzneischule
- 仏
- Organisation de l'école vétérinaire
陸軍士官學校條例
(りくぐんしくわんがくかうでうれい)明治三一年勅令第二二六號を以て公布せられたる所に係り、□一陸軍士官學校は、陸軍各兵科士官候補生を以て生徒と爲し、初級士官たるに必要なる教育を爲す所とす、□二生徒の教育は之を別ちて教授及訓育とし、其綱領は教育總監之を定む、□三生徒教育の實施は教則による、該教則は上説二號の教育綱領に基き、校長案を具し、教育總監の認可を受け之を定む、□四本校に下の職員を置く、イ校長、少將又は大佐を以て之に充つ、ロ副官、大尉又は中尉を以て之に充つ、ハ教官、中佐、少佐、大尉、中尉、軍醫、獸醫、陸軍教授、陸軍助教を以て之に充つ、二生徒隊長、中佐又は少佐を以て之に充つ、ホ生徒隊中隊長、大尉を以て之に充つ、ヘ生徒隊附士官、中尉を以て之に充つ、ト軍醫、チ獣醫、リ軍吏、ヌ准士官、下士、判任文官、□五校長は教育總監に隷し、校務を總理し、生徒教育の責に任ず、□六副官は校中一般の庶務を掌る、□七軍事學教官は、軍事學科の授業を分擔し、佐官教官を以て各科の科長とす、□八馬術教官は生徒の馬術訓練に任し、兼て校廐一切の事を統べ、馬匹の調教を掌る、□九文官教官は、外國語學の授業を分擔す、□十生徒隊長は生徒隊を統べ、生徒の訓育を監督し、各中隊長をして擔任の訓育に任ぜしめ、校長に對して齊一進步の責に任ず、十一中隊長は生隊徒附士官を指揮し、中隊生徒の訓育を擔任し、其成蹟に就ては專ら擔保の責に任ず、十二生徒隊附士官は生徒訓育の諸科目を分擔し、日常生徒の躬行を監視し、分擔の訓育に就ては其責に任ず、十三生徒の修學期は每年十二月一日、翌年十一月下旬に至る十二ケ月とす、十四生徒の諸給與は別に定むる所の規定に據る、十五生徒入校中は凡て校長の管理に屬す、十六生徒は情願を以て退校するを許さず、十七生徒中下の事項に該る者は退校せしむ、イ學術の豫修全からずして、實際修學の識力に乏しく、卒業の目途なき者、ロ軍規を紊り、又は屢法則を犯す者、ハ品行不正にして改悛の目途なき者、二傷痍疾病により修學に堪えざる者、ホ卒業試驗に落第せし者、十八上の一七號中ニ及びハを除き、其他に該當し、退校せしめたる士官候補生にして、尚望みある者は、次學期に於て再び入校せしむることを得、十九生徒中疾病其他の事故により、修學期内に所定の學科を修め得ざる者、又は卒業試驗を受け得ざる者は、猶滯學を命ずることを得、二十上記一七號及び一九號に該る者あるときは、校長其事由を具し、教育總監に上申し、教育總監之を裁定處分す、廿一生徒修學期末に至れば、校長は卒業試驗を撰み、教育總監に上申す、教育總監は之を裁定し、校長を▲て卒業試驗を行はしむ、廿二卒業試驗を終れば、校長は各教官、生徒、隊長及中隊長を集め、會議を開き、成蹟を調査し、考科列序を定め、教育總監の認可を受け、及第者に卒業證書を附與す、廿三卒業證書を付與したる者には、校長直に歸隊を命ず、廿四滯學を命ぜられたる生徒、修學を終れば前諸條に準じて取扱ふものとす、廿五生徒は三週間以内の夏期休暇を與ふることを得、廿六教官、中隊長及生徒隊附士官は、教育上便宜の時期に於て、隊附勤務を爲さしむることを得、以上本令の一斑なり。
- 英
- Regulation of the military cadet school
- 独
- Regulierung der Kriegsschule
- 仏
- Règles de l'école des cadets militaires
陸軍志願兵身體檢査規則
(りくぐんしぐわんへいしんたいけんさきそく)明治三二年第六號を以て公布したる陸軍省令にして、□一陸軍志願兵身體檢査は、其身體の合格と不合格とを判別するものとす、此檢査は學術上諸種の方法を施す事を得、此規則は陸軍士官候補生竝に諸生徒志願者にも適用す、□二志願者身長の定限は五尺以上とす、但し別に定むる所あるものは此限にあらず、□三志願者、體格を區別する事下の如し、イ甲種、身體強健なる者、ロ乙種、身體甲種に亞く者、ハ丙種、前二項に當らざる者及身長定限に達せざる者、□四以上の甲種、乙種を合格とし、丙種を不合格とす、□五丙種となすべき者槪ね下の如し、イ全身發育不完全なる者、ロ精神機能に妨げある者、及諸種の神經系病にして急治すべからざる者、ハ諸種の内臟疾患にして急治すべからざる者、ニ視力に障礙ある者、但し一年志願兵、士官候補生、軍醫學校生徒、各部依託學生及依託生徒志願者は、近視に限り其度を斟酌して、特に合格となす事を得、ホ聽機に障碍ある者、ヘ咀嚼言語の機能に妨げある者、ト骨軟部の疾患にして急治すべからざる者、チ諸種の瘢痕、畸形、缺揖等にして醜形甚しく、又は運動に妨ある者、以上本則の大要とす。
- 英
- Rules for the physical examination of one year's volun-teer
- 独
- Physischexamensregel des Frei-willigen für ein Jahr
- 仏
- Règles de l'examen physique des volontiers militaires d'une année
陸軍省
(りくぐんしやう)陸軍省なる語は種々に使用せられ、□一陸軍大臣が屬僚と共に、其所管事務を掌理する場所、即ち建物を指して陸軍省といふことあり、例へば何月何日陸軍省に出頭すべしと云ふが如し、□二陸軍大臣と其屬僚とを包括して、之を陸軍省といふことあり、□三更に陸軍大臣を指して、陸軍省と云ふことあり、從つて一槪に之を斷言することを得ず、各場合に臨みて具體的に之を定めざるべからず、而して法律上に於ては、上説の三義を正當なる用例とす。
- 英
- Department of War
- 独
- Kriegs-ministerium
- 仏
- Ministère de guerre
陸軍將校生徒試驗委員條例
(りくぐんしやうかうせいとしけんいいんでうれい)明治三一年勅令第二四五號を以て公布せられたるものにして、□一陸軍將校生徙試驗委員は、將校生徒の召募試驗に任ずるものにて、之を分ちて常置委員及臨時委員の二とす、□二當置委員は之を教育總監部に置き、士官候補生、地方幼年學校生徒、及一年志願兵志願者の召募、學術試驗、體格試驗、問題其他試驗に關する事項を調査立案し、士官候補生の志願書類を審査し、且つ士官候補生及地方幼年學校生徒召募試驗の成蹟を調査するものにして、其組織は、イ常置委員長、ロ常置委員、ハ常置委員主事を以てす、□三常置委員長及委員は他に本職ある者を以て兼補し、主事は之を專任す、但し主事には豫備後備役の者を以て充つることを得、□四常置委員長は教育總監に隷し、委員以下を統督し、試驗の事に關しては教育總監に對し責に任ず、□五常置委員は試驗問題の起案成蹟の調査を分擔す、□六常置委員主事は試驗に關する一切の事務を處理し、委員長に對し事務處理の責に任ず、□七常置委員主事の下に書記として判任文官を置く、□八教育總監は常置委員長の具申により、常置委員の外所管の將校、同相當官、陸軍教授、判任文官をして試驗事務を補助せしむる事を得、□九臨時試驗委員は、各檢査場に就き、試驗を實施するものにして、其都度各師團長部下將校、團長若くは佐官中より所要の人員を選びて之を命ず、臨時委員は試驗實施の事に關しては、師團長に對して責に任ず、但し一師團長は、近衞師團長に協議し、近衞師團の將校、團長若くは佐官若干を臨時委員に加ふることを得、□十師團長は前條臨時委員の外、受驗者の數に應じ、部下大中尉に命じ、試驗の事務補助せしむることを得、但し第一師團長は、近衞師團長に協議し、近衞師團の大中尉若干補助員に加ふることを得、十一臨時委員は、書記として准士官、下士若干を使用することを得、十二師團長は試驗實施の事に關しては、教育總官に對して責に任ず、以上其の一班也。
- 英
- Regulation of the examination committee for the student of military officer
- 独
- Regel der Ex-amencomites für die Militärstudenten
- 仏
- Règles des comités des examens des élèves des officiers militaires
陸軍將校分限令
(りくぐんしやうかうぶんげんれい)明治二一年勅令第九一號を以て公布せられたる所にして、□一將校は終身其官を有し、其制服を著し、其官に對する禮遇を享く、之を將校の分限とす、□二將校は左に揭ぐる事項の一に因るに非ざれば、其分限を失ふ事なし、イ本人の請願を許容し其官を免ぜられたるとき、ロ日本人たるの分限を失ひたるとき、ハ重罪の刑に處せられたるとき、ニ剝官の宣告を受けたるとき、ホ武官たるの本分に背き、勅裁に依り免官となりたるとき、□三將校の位置を分つこと左の如し、イ現役、豫後備ハ後備、ニ退役、□四現役とは現に軍務を奉ずる者、修學を命ぜられたる者、及び陸海軍將官各其部内の文官に任ぜられたる者を云ふ、休職及停職に在る者は現役に準ず、休職とは左に揭ぐる事項の一に因り、職務なき者を云ふ、イ解隊、ロ廢職、ハ定員改正、ニ滿期解任、ホ俘虜となりたる者歸朝し、他員己に代りて其職に在るとき、ヘ特別の職務を終へ、又は修學滿期にして就職の命なきとき、ト傷病六箇月に至り、尚快復の候なきとき、但し本人の請願或は職務に依り、代員を必要とするときは六箇月を待つの限にあらず、チ本人の請願に依り修學を許容したるとき、リ陸海軍上長官、士官各其部内の文官に專任したるとき、停職とは其行爲懲戒すべきものにして、其情狀稍輕く、在職又は就職を停めらるる者を云ふ、但し停職者は一箇年の後に非ざれば、就職するを得ず、□五豫備とは左に揭ぐる事項の一に當る者を云ふ、イ旨を諭され現役を退きたるとき、ロ休職に入り五年に至り就職せざるとき、但し上記四號のチ及リに該る者は此限にあらず、ハ停職に入リ二年に至り就職せざるとき、ニ陸軍各部外の文官に專任したるとき、貴族院令に依り貴族院議員と爲りたるとき、ホ一年志願兵より士官に任ぜられたるとき、ヘ豫備准士官にして士官に任せられたるとき、□六後備とは左に揭ぐる事項に該る者を云ふ、イ年齡滿期に至り現役を退きたるとき、ロ豫備滿期に至りたるとき、ハ後備准士官下士にして士官に任ぜられたるとき、□七退役とは後備滿期に至りたる者、又は傷痍疾病の爲め永久服役に堪えずして、現役又は豫備又は後備を退きたる者を云ふ、□八豫備後備者は召集に應ずべきものとす、豫備後備の服役年期は別に之を定む、□九本令は將校相當官に適用す、以上其の大要なり。
陸軍省官制
(りくぐんしやうくわんせい)明治三六年勅令第七五號を以て公布せられたる官制にして、□一陸軍大臣は陸軍軍政を管理し、陸軍々人軍屬を統督し、及諸官諸部を監督す、□二陸軍省に副官を置き、大臣官房の事務を掌る、□三陸軍省に下の五局を置く、イ人事局、ロ軍務局、ハ經理局、ニ醫務局、ホ法務局、□四人事局に補任課及恩給課を置く、□五軍務局に軍事課、步兵課、騎兵課、砲兵課、工兵課を置く、□六經理局に主計課衣糧課及建築課を置く、□七醫務局に衞生課及醫事課を置く、□八法軍局に於ては下の事務を掌る、イ軍事司法に關する事項、ロ監獄に關する事項、ハ特赦及罪人引渡に關する事項、ニ理事、錄事及監獄職員の人事に關する事項、□九法務局の職員は高等軍法會議の事務に服す、以上其主なるもの也。
- 英
- Government organization of the Department of War
- 独
- Behörde-ordnung des Kriegsministeriums
- 仏
- Organisation du ministère de guerre
陸軍省令
(りくぐんしやうれい)陸軍大臣が其主管事務に就き發する命令を陸軍省令と謂ふ、凡そ陸軍大臣は一面國務大臣として、憲法上の補弼機關たると共に、他の一面行政長官として、種々の權限を有す、省令を發するの權も亦其一也、卽ち陸軍大臣は其分配せられたる國務を執行するに就き、省令を發するを得、而して其省令には二十五圓以下の罰金、若くは二十五圓以上の禁錮の制裁を附加することを得。(各省官制通則參照)
- 英
- Ordinance of military depart-ment
- 独
- Verordnung des Kriegsminis-teriums
- 仏
- Ordonnance du ministère de guerre
陸軍准士官下士文官採用規則
(りくぐんじゆんしくわんかしぶんくわんさいようきそく)明治二〇年勅令第八三號を以て公布せられたる規則にして、□一陸軍准士官、下士にして、左に揭ぐる者は、文官奉職を請願する事を得、イ戰役又は公務上の傷痍疾病により、現役を退きたる准士官、若くは免官となりたる下士にして、尚文官の勤務に堪え、技倆證明書を有する者、ロ現役を退きたる准士官、若くは現役滿期の下士にして勳章を有し、且つ技倆證明書を所持する者、ハ現役七ケ年以上にして現役を退きたる准士官若くは現役七ケ年以上服役の後滿期となりたる下士にして、共に技倆證明書を所持する者、但し准士官、下士の服役年は、下士任用の日より起算し、其兵卒より出身の者に在りては入營の日より起算す、□二陸軍准士官、下士は、本人の請願により前記恰當の者は、試驗を要せずして判任官となる事を得、□三海軍省を除くの外、各官廳に於て判任官を任用するには、少くとも五人に就き、一人は陸軍准士官、下士の文官請願者を以てすべきものとす、□四文官たらん事を望む者、准士官に在りては現役滿期の時より、下士に在りては服役滿期の時より前一ケ月間又は其時より三ケ月間に請願すべし、其免官の場合に於ては、免官の時より後四ケ月間に請願すべし、□五請願者に於て教官技術官たらん事を望む者あるときは、之を採用せんとする官廳に於て、相當の試驗を施行することを得、□六請願者の名簿は本人請願順序に從て調製し、之を陸軍省に備へ置くべし、□七請願者の採用は、其同年内に係る者は、上記一號の順序に從ひ、其同格内に於ては服役時日の多き者より採用し、其服役時日の同じき者は、請願時日の順次により採用すべし、本人の技倆及任務の必要によりては、以上の順序に拘らず、採用することあるべし、□八各官廳に於て、請願者を採用するときは、陸軍省に紹介し直に本人を其廳に呼出すべし、□九陸軍省に於ては、以上の紹介により前記七號に照し、請願者の氏名及履歷書を其官廳に交付すべし、□十請願者に於て其請願を取消さんと欲するときは、陸軍省に屆出づべし、十一本則施行に要する細則及技倆證明書の規程は、陸軍大臣別に之を定む、以上其の一班也。
陸軍准士官下士文官採用細則
(りくぐんじゆんしくわんかしぶんくわんさいようさいそく)明治二八年省令第二二號を以て公布せられたる陸軍省令にして、□一本則(本則とあるは陸軍准士官下士文官採用規則を云ふ、以下傚之)に因り文官奉職を請願せんと欲する者にして、同則所定に該當する者は、それぞれ第一書式、第二書式及第三書式に據るべし、第一書式(料紙美濃紙以下傚之)
某儀
某戰役(公務上)ノ傷痍(疾病)ニ因リ過ル年月日現役ヲ退キ(免官相成)候ニ付キ陸軍准士官下士文官採用規則ニ因リ文官奉職仕度候間御採用相成度別紙履歷書(陸軍出身後の經歷及賞罰等を詳細に記載し正副二通差出すべし以下履歷書とあるもの傚之)茲ニ診斷書(診斷書とは傷痍若くは疾病を認むる爲め下附せられたるものを云ふ)及技倆證明書寫相添へ此段奉願候也
道廳(府)(縣)國郡(區)町(村)族籍
退役(豫備、後備)元何官
年月日官姓氏□印
年號月日生
年號月何年何ケ月
陸軍大臣爵姓名殿
(豫備後備役の者に在りては宛名を所管長官となし左の奥書を要せず)
前書ノ趣キ調査候處相違無之候也
道廳(府)(縣)郡(區)(市)(町)(村)長
年月日姓名印
第二號書式
某儀
來ル(過る)年月日退職(現役滿期)相成候ニ付キ陸軍准士官下士文官採用規則ニヨリ文官奉職仕度候間御採用相成度別紙履歷書茲ニ技倆證明書相添へ此段奉願候也
隊號(所管)(豫備)(後備)
年月日官氏名印
年號月日生
年號月何年何ケ月
(所管長官)
職官姓名殿
第三號書式
某儀
過ル年月日退役(現役滿期免官)相成候ニ付キ陸軍准士官下士文官採用規則ニ因リ文官奉職仕度候間御採用相成度別紙履歷者竝ニ技倆證明書寫相添へ此段奉願候也
道廳(府)(縣)國郡(區)町(村)族籍
退役(元何官)
年月日官姓氏印
年號月日生
年號月何年何ケ月
陸軍大臣爵姓名殿
前書ノ趣キ調査候處相違無之候也
道廳(府)(縣)郡(區)(市)(町)(村)長
年月日姓名印
□二願書及履歷書は楷書又は行書を以て自ら之を書すべし、□三本則五條により教官技術官たらんん事を望む者、及び其官廳に限り奉職せん事を望む者は、其志願の廳名を願書中に記載し、又教官技術官志願の者に在ては、其習得せし學術を履歷書中に記載して差出すべし、但し教官技術官たるの志願を爲し合格せざる者は、更に普通判任官たるを請願することを得、□四本則第一條の資格を有する者と雖も、服役以來下の項目に觸るる者は請願する事を得ず、又既に請願の者は其請願無效に屬す、イ禁錮の刑に處せられたる者、ロ賭博犯に就き懲罰に處せられたる者、□五本則第一條により請願する者あるときは、所管長官又は北海道廳長官、府縣知事に於て、其請願書類を審査し、陸軍大臣に進達すべし、□六各官廳に於て請願者を採用せし上は、直に其官等を陸軍省に通牒するものとす、□七各官廳に於て請願者を採用し、他日非職を命じ、又は本官を免じたるときは、其理由を陸軍省に通牒するものとす、□八教官、技術官たらんことを望む者、受驗の爲め官廳に往復する旅費は總て自辨たるべし、□九本則第一〇條に依り其請願を取消さんと欲するとき、又は請願者の身上に異動を生じ、或は轉居、轉籍若くは處刑等にて、履歷上改正を要することあるときは、其旨を詳記し、最始願出の手續により屆出づべし、以上を其の一班とす。
陸軍所屬特別文官俸給令
(りくぐんしよぞくとくべつぶんくわんほうきふれい)明治三二年勅令第三二五號を以て公布せられたるものにして、□一勅任官及び奏任官の年俸は第一表、判任官以下の月俸は第二表により之を給す、理事試補は軍法會議の構成員を命ぜられたる者に限り、五百圓以下の年俸を給す、□二臺灣衞戍監獄附陸軍監獄看手、及び臺灣陸軍法官部附陸軍警守には、三級以上を給す、□三陸軍教授及び陸地測量師には、第一表の定むる所の年俸最低額以下を給することを得。
第一表
官名
年債等級
一級俸
二級俸
三級俸
四級俸
五級俸
六級俸
七級俸
八級俸
九級俸
十級俸
十一級俸
十二級俸
理事
二千圓
二千四百圓
二千二百圓
二千圓
千八百圓
十六百圓
千四百圓
千二百圓千圓
九百圓
八百圓
七百圓
六百圓
陸軍教授
二千五百圓
二千二百圓
二千圓
千八百圓
千六百圓
千四百圓
千二百圓
千圓
九百圓
八百圓
七百圓
六百圓
陸軍編修陸軍通譯官
千八百圓
千六百圓
千四百圓
千二百圓
千圓
九百圓
八百圓
七百圓
六百圓
五百圓
陸軍測量師
千八百圓
千六百圓
千四百圓
千二百圓
千圓
九百圓
八百圓
七百圓
六百圓
五百圓
四百圓
陸軍盤獄官
千二百圓
千圓
九百圓
八百圓
七百圓
六百圓
千住製絨所長
二千四百圓
二千二百
圓二千圓
千住製絨所事務官
千八百圓
千六百圓
千四百圓
千二百圓
千圓
九百圓
八百圓
第二表
官名
月俸等級
一級俸
二級俸
三級俸
四級俸
五級俸
六級俸
七級俸
八級俸
九級俸
十級俸
錄事陸軍助教陸軍編修書記陸地測量手陸軍通譯生
七十五圓
六十圓
五十圓
四十五圓
四十圓
三十五圓
三十圓
二十五圓
二十圓
十五圓
陸軍監獄書記陸軍監獄看守長
四十圓
三十五圓
三十圓
二十五圓
二十圓
十五圓
陸軍監獄看手陸軍警守
十五圓
十四圓
十三圓
十二圓
十一圓
十圓
九圓
陸軍召募規則
(りくぐんせうぼきそく)明治三二年陸軍省令第三四號を以て、公布せられし所に係る、□一本則は陸軍各兵科現役士官候補生、中央幼年學校豫科生徒、地方幼年學校生徒、見習醫官、見習藥劑官、衞生部依託學生、同依託生徒、軍醫學校生徒見習獸醫、獣醫部依託學生、同依託生徒、各兵科下士候補生、蹄鐵工長候補生、砲兵工長候補生、衞生部下士候補生、縫工長候補生、靴工長候補生及戸山學校生徒召應の手續を規定するものとす、□二各兵科現役士官候補生、中央幼年學校豫料生徒、地方幼年學校生徒、軍醫學校生徒、砲兵工長候補生、縫、靴工長候補生及戸山學校生徒の召募人員は、陸軍大臣其時々之を告示す、□三下の各項に該る者は採用せず、イ妻ある者、(軍醫學校生徒、見習獣醫志願者を除く)、ロ本人竝に父若くは戸主が、家資分散又は破産の宣告を受け、未だ復權を得ざる者、及身代限の處分を受け、辨償の義務を終べざる者、ハ禁錮の刑に處せられたる者、及賭博犯の處分を受けたる者、二素行修まらざる者、及家庭不良なる者、入學證書の書式は左の如し
士官候補生願(用紙美濃白紙以下同じ)
某儀
士官候補生志願ニ付キ御許可被成下度御採用ノ上ハ御規則嚴重ニ相守リ誓テ陸軍ニ從事可仕候仍テ戸籍謄本、履歷書、證明書、(入隊承認書)相添へ身許保證人連署此段奉願候也
府(縣)郡(市)町(村)番地住
府(縣)郡(市)町(村)番地寄留
府縣族籍職業
戸主(戸主にあらざれば誰子弟)
氏名印
年月日生
身許保證人
府縣族籍職業
府(縣)郡(市)町(村)住(寄留)
年月日氏名印
同
氏名印
何師團長氏名殿
追テ左ノ通リ希望致候也
受驗外國語
英(獨)(佛)露語
受驗場
何地(所住地所管師管内に限る)
希望兵種隊號第一何兵何隊
第二何兵何隊
(入隊すべき隊長の承認を得たる者は其旨を記すべし)
前書ノ趣調査致候處相違無之候也
年月日
府縣郡市長氏名印
陸軍部内の志願者に在ては本書式に準じ調製すべし、二十歳未滿の志願者に在ては、身元保證人の中、一人は其志願者に對し親權を行ふ者たるを要す、此場合には身元保證人氏名の上に「親權者」と記載すべし、以下第一號書式皆同じ。
陸軍地方幼年學校生徒願
某儀
地方幼年學校生徒志願ニ付キ御許可被成下度御採用ノ上ハ御規則嚴重ニ相守リ卒業ノ上中央幼年學校生徒被命候節ハ誓テ陸軍ニ從事可仕ハ勿論入學中ノ費用ハ御規定ノ通相納候仍テ戸籍謄本履歷書相添へ身元保證人連署此段奉願候也
府縣族籍職業
戸主(戸主にあらざれば誰子弟)
府(縣)郡(市)町(村)番地住
府(縣)郡(市)町(村)番地寄留
氏名印
年月日生
身許保證人
府縣族籍職業
府(縣)郡(市)町(村)番地住
(寄留)
年月日氏名印
同
氏名印
何地方幼年學校長氏名殿
追テ左ノ通希望候也
入校希望ハ御校ノ外第一何地方幼年學校第二何地方幼年學校第三何地方幼年學校ニ有
之候
受驗場何地(居住地所管師管内に限る)
入校後ノ外國語學
佛(獨)(露)語
前書ノ趣調査候處相違無之候也
年月日府縣郡市長氏名印
志願者にして陸軍下士以上及海軍將校の養子なるときは本人氏名の肩書に「養子」又は「家督相續者たる養子」と明記すべし。
生計候補生、見習醫官(見習藥劑官)(衞生部依託學生、同依託生徒)(軍醫學校生徒)(見習獸醫官)(獸醫部依託學生、同依託生徒)願
某儀
主計候補生、見習醫官(見習藥劑官)衛生部依託學生、同依託生徒)(軍醫學校生徒)(獣醫部依託學生、同依託生徒)志願ニ付キ御許可被成下度御採用ノ上ハ御規則嚴重ニ相守リ誓テ陸軍ニ從事可仕候仍テ戸籍謄本履歷書證明書何々免許狀相添へ保證人運署此段奉願候也
府縣族籍職業
戸主(戸主にあらざるは誰子弟)
府(縣)郡(市)(町)(村)番地住
府(縣)郡(市)町(村)番地寄留
氏名印
年月日生
身許保證人
府縣族籍職業
府(縣)郡(市)町(村)番地住
(寄留)
氏名印
同
氏名印
陸軍省經理局長氏名殿
追テ左ノ通リ希望候也
受驗外國語英(獨)(佛)(露)語受驗場
何地(居留地所管師管内に限る)
前書ノ趣調査候處相違無之候也
年月日府縣郡市長氏名印
陸軍部内の志願者に在ては本書式に準じ調製すべし。
砲兵工長候補者願
某儀
陸軍出身志願ニ付何々候補者ニ御採用被成下度入校ノ上ハ御規則嚴重ニ相守リ誓テ陸軍ニ從事可仕候仍テ身許保證人連署此段奉願候也
府縣族籍職業
戸主(戸主にあらざれば誰子弟)
府(縣)郡(市)町(村)番地住
府(縣)郡(市)町(村)番地寄留
氏名印
年月日生
身許保證人
府縣族籍職業
府(縣)郡(市)町(村)番地住(寄留)
年月日氏名印
同
氏名印
何聯隊區司令官氏名殿
前書ノ趣調査候處相違無之候也
年月日府縣郡市町村長氏名印
陸軍部内の者に在ては本書式に準じ調製すべし。
戸山學校軍樂生徒願
某儀
陸軍出身志願ニ付キ戸山學校軍樂生徒ニ御採用被成下度入校ノ上ハ御規則嚴重ニ相守リ誓テ陸軍ニ從事可仕候仍テ戸籍ノ謄本、履歷書相添へ身許保證人連署此段奉願候也
府縣族籍職業
戸主(戸主にあらざれば誰子弟)
府(縣)郡(市)町(村)番地住
府(縣)郡(市)町(村)番地寄留氏名印
年月日生
何年十二月當何年何月
身許保證人
府縣族籍職業
府(縣)郡(市)町(村)番地住(寄留)
年月日氏名印
同
氏名印
陸軍戸山學校長氏名殿
前書ノ趣キ調査候處相違無之候也
年月日府縣郡市町村長
氏名印
- 英
- Rules of military calling
- 独
- Regel des Militärzusammenrufes
- 仏
- Règles de la vocation militaire
陸軍召集諸費支出規程
(りくぐんせうしうしよひししゆつきてい)明治三三年陸軍省令第一號を以て公布せられたる所に係り、□一充員召集、補充召集に係る諸費は、臨時費に屬す、定期演集召集、教育召集及補缺召集に係る諸費は、經常費に屬す、但し動員せる師團に係るものは臨時費に屬す、臨時演習召集、其他臨時の召集に係る諸費の所屬は臨時之を定む、□二召集諸費を別ちて、召集旅費、歸郷旅費召集旅費とす、召集旅費は應召員の旅費、歸郷旅費は應召員中事故により歸郷を命ぜられたる者の旅費、召集雜費は召集事務所の諸費、應召員の引卒諸費、召集に關係ある官吏公吏の出張旅費、諸部、團體、官衙、公署に要する郵便電信用使丁の賃金等とす、□三召集諸費の支拂命令官は經理部長とす、□四師團長は召集旅費支給の地方區域、及其區域に於ける出納官吏、又は分任出納官吏の官(職)を定め、一月卅一日迄に聯隊區司令官警備隊司令官を包含す、(以下同じ)に達し、警視總監、地方長官に通知すべし、但し應召員の到著地に到著したる後に於て、旅費を支給せしむべきものあるときは、其出納官吏又は分任出納官吏所屬の諸部團體長にも達すべし、召集旅費支給の區域は、數郡市島嶼を併せ、一區と爲し、若くは郡の一部を他の郡市に分屬して一區と爲し、或は一郡を二區以上に分つことを得、□五召集諸費の出納官吏、分任出納官吏の任命は、郡市長を除く外、諸部團體長、警視總監又は地方長官に於てすべし、□六應召員中召集旅費を受領し、傷痍、疾病其他の事故に依り、該旅費の返納を要するとき、決算後に在ては支拂命令官より、其徵收を地方長官に委任することを得、□七寄留地に於て演習召集又は教育召集の許可を受けたる者、竝に陸軍補充條例により召集するとき、之に支給すべき旅費は現在地より召集地迄の里程に應じ、本人現在地所管の師團より支給するものとす、但召集中住居を轉じたる者と雖も、應召前の現在地迄の里程に應じて歸郷旅費を給す、□八國民兵召集諸費の支出に關しては臨時之を定む、□九師團長は島嶼に於て、本規定を實施する事能はざるものあるときは、適宜の方法を規定し、陸軍大臣の認可を受くべし、以上其主なる規定なり。
陸軍召集條例
(りくぐんせうしうでうれい)明治三二年勅令第三九八號を以て公布せられたる所にして、□一召集及簡閲點呼は、在郷軍人及國民兵本籍地所管の師團長之を掌る、將官同相當官の召集は本條例の規定によらず、師團長直に之を行ふ、□二戒嚴を宣告し得る權ある司令官、時機切迫して命を請ふ途なきときは、獨斷して充員召集、補充召集及國民兵召集を行ふことを得、此場合に於て該司令官は召集に關し、師團長と同一の職權を有す、□三在郷軍人の召集には召集令狀を用ひ、召集部隊到著地及到著日時を指定し、簡閲點呼には點呼令狀を用ひ、點呼場及到著日時を指定す、國民兵の召集には召集令狀を用ひずして召集令を達す、□四充員召集とは、動員に方り諸部團體の要員を充足する爲め、在郷軍人を召集するを云ふ、□五充員召集事務に關し、職責ある者は、平時之に關する諸件を計畫準備し、召集實施に方り其事務に關し、訓示を請ふことを許さず、□六補充召集とは充員召集實施後、缺員を補充する爲め在郷軍人を召集するを云ふ、□七國民兵召集とは、國民軍を動員する爲め國民兵を召集するを云ふ、國民兵召集を分て、第一國民兵召集、第二國民兵召集の二種とす、□八演習召集とは、演習の爲め在郷軍人を召集するを云ふ、演習召集を分て、定期演習召集、臨時演習召集の二種となす、□九教育召集とは、教育の爲め補充兵を召集するを云ふ、□十補缺召集とは、平時に於て臨時に兵員の補缺を要するとき歸休兵を召集するを云ふ、十一簡閲點呼とは、豫備役、後備役、下士卒、歸休兵及補充兵を集合して、之を點檢査閲するを云ふ、十二師團長は簡閲點呼の時期を定め、之を聯隊區司令官に達すべし、十三聯隊區司令官は點呼令狀を作り、之を郡長に送付すべし、十四令狀又は參會の通報を受けたる者は、指定の日時に點呼場に到著し、簡閲點▲執行官に屆出づべし、十五簡閲點呼執行官は、遲參の爲め簡閲點呼を終らざる者には、他の點呼場を指定して參會を命ずることを得、此場合に於ては、令狀を作り、之を交付し、受領證を受取るべし、十六正當の事由なくして、簡閲點呼を受けざる者は、場合により一日以上十日以下の拘留、五日以上十日以下の拘留五十錢以上一圓九十五錢以下の科料、又は五錢以上一圓九十五錢の科料に處せらるることあり、以上は其主なる規定なり。
- 英
- Regulations of military calling
- 独
- Regulierung des Militär-zusammenrufes
- 仏
- Règles de la vocation militaire
陸軍召集條例施行細則
(りくぐんせうしうでうれいしかうさいそく)明治三二年陸軍省令第二九號を以て公布せる所に係り、□一召集に關係ある官吏公吏は、動員手簿を作り、之に充員召集、補充召集及國民兵召集に關し、自ら計畫準備したる事項の要領、竝に召集實施に方り、其景況及參考となすべき事項の要領を記し、其他前記載法により、馬匹徵發事務に關する事項をも附記すべし、□二召集に關係ある官吏公吏に於て、召集に關し保管する諸名簿及諸表は、其異動を知りたる每に直に訂正すべし、□三市町村長は、其所管外に在郷軍人又は第一國民兵の轉籍したる者あるときは、本人に關し在郷軍人名簿、又は第一國民兵名簿に記載せる事項を轉籍地市町村長に通知すべし、但し第一國民兵に係るときは、仍ほ其戰時名簿を送付すべし、□四郡市長は動員令の達を受けたるときは、到著日數を動員令に示せる動員第一日より起算して、▲際の歷日に換算し、令狀表面到著日時を記入すべき空位に記入し、直に豫定の方法を以て、郡長は之を町村長に送付し、市長は之を各自に交付すべし、汽車、汽船に乘るべき日時を記入すべき令狀には、聯隊區司令官の通知に其き之を記入するものとす、□五郡市長は聯隊區司令官より、補充召集令狀を受けたるときは、直に待命員名簿に照較し、該名簿に召集部隊及到著期日を記入し、郡長は其令狀を町村長に送付し、市長は其令狀を各自に交付すべし、□六郡長は聯隊區司令官より、第一國民兵役に轉入すべき者の人名書を受けたるときは、之を十一月十日迄に町村長に達すべし、□七郡市長は聯隊區司令官より國民軍編入を許可せられたる指令の送付を受けたるときは、郡長は之を町村長に送付し、市長は第一國民兵名簿に追記すべし、□八町村長は前上指令の送付を受けたるときは、第一國民兵名簿に退記すべし、□九市町村長は第一國民兵役に轉入したる者の戰時名簿を受けたるときは、之に依りて其人名及其他の事項を第一國民兵名簿に追記すべし、□十師團長は簡閲點呼執行官に、當該聯隊區司令部書記一名を附屬せしめ、點呼に關する庶務を處理すべし、十一屯田兵下士兵卒の演習召集、簡閲點呼に關しては、第七師團長本則に準じ、適宜其方法を規定し、陸軍大臣に報告すべし、以上其主なる規定なり。
- 英
- Regulations for the application to the regulation of mili-tary calling
- 仏
- Règles de l'application des règles de la vocation militaire
陸軍戰時給與規則
(りくぐんせんじきふよきそく)明治二七年勅令第一三三號を以て公布せられたる所にして、□一戰時又は事變に際し、各部、各隊及軍人、軍屬の給與は本規則に依る、但し本規則に明文なきものは、平時給與の規定を適用す、□二本規則に於て俸給と稱するは、陸軍給與令第一表の俸給に、職務俸給若くは特別俸、上級の職務心得勤加給俸を加算したるもの、給料と稱するは、同令第三表の給料に、加俸を加算したるものを云ふ、□三上長官の職務俸は、陸軍給與令第二表甲額とす、但し特別の俸給を受くる者は、各其定むる所に依る、□四士官の階級にあらずして、士官の勤務に服する者の給料は、准土官の俸給に、短期下士の給料は、長期下士の給料に依る、□五戰地若くは臨時合圍地境に出發の者は、其の出發の日より歸者の日、又は給與停止の前日まで、准士官以上、文官及前條士官の勤務に服する者には、俸給五分の二、下士以下には給料四分の二を增給す、守備隊又は臨戰合圍地に在る者は、戒嚴布告又は宣告の日若くは開戰の當日より戒嚴解止の日、又は平定の日まで前項に依る、出戰若くは戰備の姿勢を完成したるものは、其の完成の日より戰地若くは臨戰合圍地境に出發の前日、又は戒嚴布告若くは宣告、又は戰地となりたる日の前日まで、前項の區分に依り、俸給は五分の一、給料は四分の一を增す、敵の俘虜と爲り又は生死未詳と爲りたる者には、其の間增給を停止す、□六戰地若くは臨戰合圍地境に出發する准士官以上、營外居住の下士以下及び文官には、手當として一回限り其の俸給若くは給料の一箇月分を給す、但し單に往復に止る者は、一回限り其半額を給す、准士官以上、營外往居の下士以下、及び文官にして前上に依り增給を受くる者も、亦前項に同じ、豫備後備の軍籍にある准士官以上にして、召集に應じ就職する者には、一回限り手當として其の俸給の半箇月分を給す、但し上記六號前半に説明したる手當金を受くる場合に於ては、此の金領に差繼支給す、□七軍人軍屬の糧食、及び馬匹の飼料は、前上の增給を受くるの期間現品を給す、其の定量及臨時飮食物加給の要否は陸軍大臣之を定む、軍人軍屬外の者にして、糧食給與の必要ある時は、前上に依り適宜現品を給與することを得、平時定額繫畜料の支給は、上説の現品を給する期間之を停止す、□八下士以下及將校勤務下士の被服は、營内居住と營外居住とに拘はらず、前上の增給を受くるの期間、實際の所要に應じ、現品を給す、但し年時定額を以て交付すべき金額は、出發の翌月より歸著の前日まで、守備隊又は臨戰合圍地境に在る者には、戒嚴布告又は宣告の翌月、若くは開戰の翌月より、戒嚴解止の前月又は平定の前日まで之を停止す、軍屬には必要に應じ、特種の被服を給與し、若くは貸與することを得、軍人軍屬外にして、戰役に從事する者に在ても亦同じ、□九軍人軍屬死亡するときは、官費を以て之を埋葬す、但し軍人軍屬外にして、戰役に從事する者、官に於て埋葬を要するときも亦同じ、□十傷痍を受け、又は疾病に罹りたる軍人軍屬の藥餌は、總て官給とす、軍人軍屬外と雖も、戰役に從事する者は時宜に依り官給することを得、十一各部、各隊及軍人軍屬に要する筆紙墨、文具其他消耗品等は、總て現品を給す、十二戰地若くは臨戰合圍地境に非ざるも、戰時若くは事變に際し、特別の任務を受け、外國に出張する者の給與も亦本規則に依ることを得、十三戰時若くは事變の爲め、繁劇の事務に從事する官衙にある者は、其の期間、准士官以上及文官は俸給五分の一、下士以下は給料四分の一を增給することを得、以上其の一班なり。
- 英
- Rules of military support in wartime
- 独
- Regeln der Militärausfüllung in Kriegszeit
- 仏
- Règles du la provision militaire durant la guerre
軍軍戰時名簿規則
(りくぐんせんじめいぼきそく)明治三〇年陸軍省令第一五號を以て公布せられたる省令にして、□一陸軍戰時名簿は、陸軍々人、軍屬及兵役義務ある者の、動員以後身上に關する必要の諸件を登記するものとす、□二陸軍戰時名簿を以て第一及第二種とす、第一種戰時名簿は、將校、同相當官、准士官、第二種戰時名簿は、下士、兵卒(雜卒職工を包含す以下同じ)補充兵、國民兵、軍屬に用ふ、□三戰時名簿は將校、同相當官、准士官、下士、兵卒の始めて任官▲られたる時、又は入隊したる時、軍隊官衙學校に於て調製すべし、補充兵の戰時名簿は始めて其役に就く時、聯隊區司令部(警備隊區に在ては警備隊司令部以下同じ)に於て調製すべし、但し人相は本人の始めて召集に應じたるとき、聯隊區司令部より名簿を召集部隊に送附し、該部隊に於て之を記入するものとす、第一國民兵の戰時名簿は、編入前調製のものを以て之に充て、第二國民兵の戰時名簿は其召集に應じたる時、諸部團隊に於て調製すべし、□四戰時名簿は復員後更に之を調製し、軍人名簿に記載する叙勳、任官、進級、其の他履歷中主要の事項を兵籍に轉載すべし、但し第一國民兵の名簿は更に調製するを要せず、□五留守擔當者の氏名、現役將校、同相當官の寄留地及動員の所屬は、召應の際軍隊官衙學校に於て記入するのとす、但し師團長は平時より之を記入すとの規定を設くる事を得、□六豫備役、後備役下士、兵卒、補充兵、元下士以下なる第一國民兵の戰時名簿に記載する人相は、召集の際諸部團隊に於て本人に照合して訂正するものとす、□七戰時名簿は左の區分に依り之を備ふべし、イ在職將校、同相當官、准士官、現役下士、現役兵卒(歸休兵を除く)軍屬は、軍隊、官衙、學校、ロ休職、停職、豫備役後備役將官、同相當官は、師團司令部、其の召集中は、諸部團隊、ハ休職停職豫備役後備役上長官、士官、同相當官、准士官、豫備役、後備役下士兵卒、歸休兵、補充兵は聯隊區司令部、其の召集は諸部團隊、ニ第一國民兵の戰時名簿は、本籍地市區役所町村役場、戸長役場及之に準ずべきもの、□八第一國民兵役に轉入したるものの戰時名簿は、聯隊區司令官(警備隊區に在ては警備隊司令官)より本籍地の島司、郡市區長に送附すべし、島司、郡長に在ては、町村長戸長及之に準ずべき者に送附すべし、□九轉職轉役及在郷者の轉籍等所屬を轉換したる者の戰時名簿は、舊所屬に送附すべし、但し現役より第一國民兵役に轉入したる者の戰時名簿は、聯隊區司令部に送附すべし、□十士官候補生、見習醫官、見習藥劑官、見習獣醫官、見習軍吏の戰時名簿は、戰役中動員を行ひたる諸部團隊に附屬したるとき、其の諸部團隊に於て本人の階級に應じ、將校下士兵卒に準じて調製すべし、以上其大要也。
陸軍大學校條例
(りくぐんだいがくかうでうれい)明治三六年勅令第七一號を以て公布せられし所にして、□一陸軍大學校は才幹ある少壯士官を選拔し、高等用兵に關する學術を修めしめ、併て軍事研究に須要なる諸科の學識を增進せしむる所とす、□二學生教育の實施は參謀總長の定むる教育綱領に據る、□三本校に左の職員を置くイ校長、少將、ロ幹事、大中佐(高級故參の專任佐官兵學校教官兼勤)、ハ副官、太尉、ニ軍醫、ホ獸醫、ヘ副監督、ト兵學教官、陸軍將官、陸海軍士官及陸海軍大尉、チ馬術教官、少佐大尉、リ教官監督部、衞生部、獣醫部上長官若くは監督補、一等軍醫、一等獣醫、陸軍教官、ヌ下士、判任文官、□四校長幹事及專任の兵學教官は參謀官とす、□五校長は參謀總長に隷して校務を總理し、幹事及諸教官を統督して學生教育の責に任ず、□六幹事は校長を補佐し、教育の實施及其の齊一を規畫し、副官、軍醫、副監督を督し、校務を整理し尚學生を監督す、□七副官軍醫獸醫副監督は校長の命に從ひ各事務を擔任す、□八兵學教官、馬術教官は校長の命に從ひ學術の教授に任ず、馬術教官は校厩一切の事を統べ馬匹の調教を掌る、□九陸軍大學校學生は左の資格を備ふるものより選拔す、各兵科の中少尉にして二年以上(入校當年七月一日調)軍務に服し(戸山學校、騎兵實施學校、野戰及要塞砲兵射撃學校に派遣中の時日は、隊務として計算する事を得)身體強健、勤務精勵、學才に富み、且つ操行高尚にして將來大に發達の見込あるもの、□十聯隊長(獨立隊に在りては其の隊長、官衙學校等に在りては其の所屬以下同じ)は上記の資格ある者を選拔し、學生候補生名簿を製し、順序を經て所管長官に進達し、所管長官は之に意見を附し、每年一月盡日迄に參謀總長に進達す、聯隊長は學生候補者選拔に關しては特に擔保の責に任ず、十一學生候補者試驗課目竝に初審試驗開始の時日は、參謀總長の移牒に由り、每年十二月陸軍大臣之を告達す、十二參謀總長は候補者の學力を檢定する爲めに試驗委員を設け、校長を委員長となし以て左の試驗を行ふ、イ初審試驗、初審試驗は候補者の學識を檢定するものにし、各師管每に、當該師團長(近衞師團に在りては近衞師團長、臺灣に在りては守備管區每に各旅團長以下同じ)の定むる場所に所管の候補者を集め、參謀長若くは參謀の監視下に在りて、各地同時に筆記の試驗を行ふ、之が爲め每年三月試驗委員長をして、試驗問題に受驗者名簿を添へ、當該師團長に送附せしむ、初審試驗終れば、各師團長は答解書類を纏め、直に試驗委員長に送附するものとす、試驗委員長は試驗委員をして其の成蹟を調査せしめ、順次名簿を製して參謀總長に進達す、ロ再審試驗、再審試驗は學力の活用を檢定するものにして、陸軍大學校に於て之を行ふ、參謀總長は、試驗委員長の進達せし順次名簿に據り、受驗人名を決定し、陸軍大臣に移す、十三參謀總長は上記の試驗書類及學生候補名簿を參照し、入學者を裁定し、之を陸軍大臣に移し、陸軍大臣は之に入學を命じ、十一月盡日迄に陸軍大學校に屆出でしむ、十四入學中學生の名籍は、原所管を離るる事なしと雖も、願屆其他業務上に關しては總て校長の管理に屬す、十五學生の修學期限は三箇年とし、其の各學年の學期は十二月に始まり翌年十一月に終る、十六校長は學生入學の後に、其の資格不適合と認むることあるときは、參謀總長に具狀す、參謀總長は之を査覈し、陸軍大臣に移し退學を命じ、原所管に復歸せしむ、疾病の爲めの缺課多きも、尚成業の見込ある者に在りては、校長の上申に由り參謀總長は之に滯學を命ずることあるべし、十七每年八月より十月に亘り、學生を各兵種の部隊に派遣し、隊附勤務を爲さしむ、隊附勤務は通常秋季演習を以て終りと爲す、但し陸軍大學校の授業上必要と認むるときは、校長は期に先ち學生を召還することを得、學生隊附勤務中は、當該隊長の指揮命令に從ふこと、其の部下將校に異ることなし、又當該隊長は學生に對し懲罰を科する權を有す、十八學生隊附勤務を終れば、當該隊長は其の成蹟を校長に申報す、十九教育上適當の時機に於て、要塞砲兵射撃砲臺、軍艦其の他製造所等を實視せしむ、二十校長は各學期の終りに於て、幹事及兵學教官を會し、學生の修學結果及伎倆を審査し、第一第二學年學生の爲めには其の修學結果報告を、第三學年學生の爲めには伎倆證明書竝成績順次名簿を製し、參謀總長に呈す、廿一學生の卒業者には卒業證書及之を表彰すべき徽章を附與し、原所管に復歸せしむ、但し成蹟不良の者には單に修學證書のみを附與す、廿二修學に所要の圖書器具は貸與することを得、廿三武官教官は校務に差支なき時期に於て隊附勤務を爲さしめ、若くは機動演習に參與せしむる事あるべし、廿四校長は每年學生に三週間以内の夏期休暇を與ふる事を得、以上其の大要也。
- 英
- Regulation of the mili-tary college
- 独
- Regulierung der Kriegs-akademie
- 仏
- Règles du collège mili-taire
陸軍治罪法
(りくぐんぢざいはふ)明治二一年法律第二號を以て公布せられたる法律にして、刑法の運用を規定したる手續也、即ち刑事訴訟法と其性質を同うするものとす、而して普通刑法の適用は、裁判所に於て爲すものなるも、陸軍刑法の適用は軍法會議に於て爲す、即ち□一軍人の犯したる重罪、輕罪の審判及違警罪の正式裁判は、軍法會議に於て之を爲す、陸軍官署若くは軍人の損害に係る本案附帶の私訴あるときは、軍法會議に於て之を審判す、□二高等軍法會議は、將官若くは其同等軍人の犯罪を審判し、及び再審の審判を爲す、但し他の軍法會議に於て爲したる缺席裁判に對する再審は此限にあらず、□三臨戰若くは合圍の地の軍法會議に於ては、從軍常人の犯罪を審判し、又何人と雖も陸軍刑法を以て論ずべき罪を犯したるときは、其審判を爲す也、其他陸軍の檢察、審問、判決、再審、復權及び特赦に關する規定を爲したるものとす。(陸軍軍法會議の部參照)
- 英
- Military criminal law
- 独
- Militärstrafprozeszordnung
- 仏
- Droit criminel militaire
陸軍治罪法執行規則
(りくぐんぢざいはふしかうきそく)明治二一年陸軍省令第二〇四號を以て公布せられし省令にして、陸軍治罪法の執行に關する細則を定めたるもの也、□一陸軍檢察官、各所管の長官、團隊の長たる將校、大隊區司令官、監獄長、衞兵司令、理事檢察の處分を終り、陸軍大臣若くは長官に具申するときは、下の書類物品を添ふべし、イ被告人調書、ロ被害屆ハ、私訴の請求書、ニ證據人調書、ホ證據物品其他參考書類、ヘ鑑定書、ト檢證調書、チ所在分明ならざるときは被告人の人相書、リ書類及物品目錄、當該被告人所屬の長官、隊長檢察の處分を爲し具申をなすときは、被告人の前罰科(宣告書あれば其全文)素行調書を添ふべし、□二長官審問、若くは審判判決の命令を下すときは、命令書を訴訟書類と共に理事に下附すべし、□三理事陸軍大臣若くは長官より被告事件の下附ありたるときは、錄事をして其事件及所管、隊號、氏名等を帳簿に登記せしめ、審問判決の手續を爲すべし、以上其規定の一班なり。
陸軍地方幼年學校條例
(りくぐんちはうえうねんがくかうでうれい)明治三一年勅令第二二九號を以て公布せられし所にして、□一陸軍地方幼年學校は、陸軍將校に出身志願の者を選拔して生徒と爲し、軍事上の必要を顧慮して普通學科を教授し、軍人精神を涵養し、陸軍中央幼年學校生徒と爲すべき者を養成する所とす、□二陸軍地方幼年學校は、左の六箇所に置く、イ東京、ロ仙臺、ハ名古屋、ニ大阪、ホ廣島、ヘ熊本、□三生徒の教育は之を分ちて教授及訓育とし、其綱領は教育總監之を定む、□四生徒教育の實施は、教則に依る、該教則は、上記の教育綱領に基き、校長案を具し、教育總監に上申し、教育總監之を裁定す、□五本校に左の職員を置く、イ校長、少佐、ロ副官、中尉、ハ教官、陸軍教授、陸軍助教、ニ生徒監、大中尉、ホ軍醫、ヘ軍吏、ト下士、判任文官、校長以下將校同相當官及下士は、豫備後備役の者を以て充つる事を得、其身分取扱は召集中の者に同じ、□六校長は教育總監(東京陸軍地方幼年學校長は陸軍中央幼年學校長)に隷し校務を總理し生徒教育の責に任ず、□七副官は校中一般の庶務を掌る、□八教官は各學科の授業を分擔す、教官中適任者一名を選で教頭と爲し、教授部全般の授業を監視し、校長に對し齊一進步の責に任ぜしむ、□九生徒監は生徒の訓育を擔任し、軍人精神を涵養し、日常其窮行を監視し、自ら摸範となりて之を指導し、其成蹟に就ては專ら擔保の責に任ず、□十生徒の修學期は、九月一日より第四年の八月下旬に至る三十六箇月とし、之を三學年に分ち、各學年は每月九月一日より開始す、十一生徒の修學に所要の器具及圖書等は、貸與又は支給することを得、十二生徒は總て校内に寄宿せしむ、生徒は入學中被服糧食其他の費用として、若干の納金を爲すものとす、之を自費生と稱す、十三生徒中左の各項に該る者は、列記の順序に從ひ資産を顧慮し、若干名を限りて特に納金の金額を免除することを得、之を特待生と稱す、イ戰死及戰場に依り死歿し、又は戰役中危難を冐したるに起因して死歿したる陸海軍將校及同相當官、竝に高等文官の孤兒、ロ增加恩給權を得たる陸海軍將校及同相當官の孤兒、ハ恩給權を得たる陸海軍將校及同相當官の孤兒、ニ生徒中左の各項に該る者は、列記の順序に從ひ資産を顧慮し、若干名を限りて特に納金の内、帽、日覆、絨衣袴(肩章共)、夏衣袴、外奪及精米料を免除することを得、之を半特待生と稱す、但し前記の各項に該る者の内特待生と爲さざる者は、之を半特待生と爲すことを得、イ現職に在る陸海軍尉官及同相當官の兒子、ロ恩給權を得たる陸海軍尉官及同相當官の兒子、ハ陸海軍少佐及同相當官に名譽進級を爲したる者の兒子、十四家督相續者たる養子は、上説の孤兒或は兒子に準ず、十五特待生、半特待生と爲すべき人員及其區分は、教育總監陸軍大臣に協議して之を定む、十六本令中孤兒及兒子は總て同戸籍内に現在するものに限る、又一家より重複して特待を受くるを得ざるものとす、十七特待生、半特待生及自費生の納金額は、陸軍大臣之を定む、十八生徒中止を得ざる事故ありて退校を願出づる者あるときは、其事情に依り之を許す事あるべし、十九生徒中左の事項に該る者は退校せしむ、イ學術の修得全からずして卒業の目途なき者、ロ屢法則を犯し又は品行不正にして改悛の目途なき者、ハ傷痍疾病に依り修學に堪へざる者、ニ卒業試驗に落第せし者、二十生徒中各學年に於て、所定の學科を修め得ざる者、或は疾病等に依り卒業試驗を受け得ざる者、又は卒業試驗に落第せし者と雖も、尚望みある者は一學年延期修學せしむることを得、廿一前上に該る者ある時は、校長其事由を具し、教育總監に上申し、教育總監之を裁定處分す、廿一生徒修學期末に至れば、校長は卒業試驗規格を選み、教育總監に上申す、教育總監は之を裁定し、校長をして卒業試驗を行はしむ、廿三卒業試驗を終れば、校長は各教官生徒監を集め、會議を開き、成蹟を調査し、考科列序を定め、教育總監の認可を請け、及第者に卒業證書を附與す、廿四教育總監は地方幼年學校長をして、卒業者に中央幼年學校へ入學を命ぜしむ、廿五前上の生徒は中央幼年學校に入校の期日に至る迄、休暇を與へ、歸省又は他行を許すことを得、但此間に於ける生徒の身分は地方幼年學校に屬す、廿六每年生徒に五週間以内の夏期休暇を與ふることを得、以上其の大要なり。
- 英
- Regulation of the local military preparatory school
- 独
- Regulierung der Lokalkadettenschule
- 仏
- Règles des école préparatoirs militaires locales
陸軍懲罰令
(りくぐんちようばつれい)明治一四年陸軍省令第二七三號を以て公布施行せられたる所に係り、陸軍々人の行爲にして刑法に該當せざるも、之を罰すべき行爲を爲したる者、及び素行修らず、軍人たる體面を汚す者を懲戒することを規定し、其の戒目數條を規定したるものなり。
- 英
- Ordinance of military punish-ment
- 独
- Verordnung von der Militär-strafe
- 仏
- Ordonnance de la punition militaire
陛軍中央幼年學校條例
(りくぐんちゆうあうえうねんがくかうでうれい)明治三六年勅令第一〇八號を以て公布せられたる所にして、□一陸軍中央幼年學校は、陸軍地方幼年學校卒業者及本校豫科卒業者を以て生徒と爲し、地方幼年學校の教育に連繫して、士官候補生たるに必要なる普通學科、及軍人の豫備教育を爲し、陸軍各兵科士官候補生と爲すべき者を養成する所とす、□二生徒の教育は之を分つて教授及訓育とし、其綱領は教育總監之を定む、□三生徒教育の實施は、教則に依る、該教則は前上の教育綱領に基き、校長案を具し、教育總監の認可を請け之を定む、□四本校に左の職員を置く、イ校長、大中佐、ロ副官、大中尉、ハ教官、大中尉、陸軍教授、陸軍助教、ニ生徒隊中隊長、大尉、ホ生徒隊中隊附士官、中尉、ヘ生徒監主事、ト生徒監、チ軍醫、リ獣醫、ヌ副監督、ル准士官、下士、判任文官、□五校長は教育總監に隷し、校務を總理し、生徒教育の責に任ず、(東京陸軍地方幼年學校を管轄す)□六副官は校中一般の庶務を掌る、□七馬術教官は生徒の馬術訓練に任じ、兼ねて校廐一切の事を統べ、馬匹の調教を掌る、□八文官教官は、各學科の授業を分擔す、教官中適任者一名を選みて教頭と爲し、教授部全般の授業を監視し、校長に對し齊一進步の責に任ぜしむ、□九中隊長は中隊附士官を指揮し、中隊生徒の訓育を擔任し、軍人精神を〓養し、生徒をして軍紀に慣熟せしめ、其成蹟に就ては專ら擔保の責に任ず、□十中隊附士官は、生徒訓育の諸科目を分擔し、日常生徒の躬行を監視し、自ら摸範と爲りて之を指導し、分擔の訓育に就ては其責に任ず、十一生徒の修學期は、九月一日より翌年五月下旬に至る二十一箇月とし、之を二學年に分ち、各學科は每年九月一日より開始す、十二生徒の修學に所要の器具及圖書等は、貸與又は支給することを得、十三生徒は情願を以て退校するを許さず、十四生徒中左の事項に該る者は退校せしむ、イ學術の修得全からずして卒業の目途なき者、ロ軍紀を紊り又は屢法則を犯す者、ハ品行不正にして改悛の目途なき者、ニ傷痍疾病に依り修學に堪へざる者、ホ卒業試驗に落第せし者、十五生徒中各學年に於て所定の學術を修め得る者、或は疾病等に依り卒業試驗を受け得ざる者、又は卒業試驗に落第せし者と雖も、尚望みある者は滯學補修を爲さしめたる後卒業せしめ、又は一學年延期修學せしむる事を得、但し滯學日數は士官候補生教育に支障なきを度とし、又延期は全學期を通じて一回限りとす、十六生徒中卒業試驗に及第するも、傷痍疾病等にて士官候補生と爲すを得ざる者には、單に卒業證書を附與して退校せしむ、十七前上に該る者あるときは、校長其事由を具し、教育總監に上申し教育總監之を裁定處分す、十八生徒修學期末に至れば、校長は卒業試驗規格を選し、教育總監に上申す、教育總監は之を裁定し、校長をして卒業試驗を行はしむ、十九卒業試驗を終れば、校長は各教官及中隊長を集め會議を開き、成蹟を調査し、考科列序を定め、教育總監の認可を請け及第者に卒業證書を附與す、二十教育總監は卒業者中士官候補生となすべき者を定め、之に士官候補生を命じ、各隊に配賦す、前項士官候補生を命ぜられたる生徒には、入隊前に於て一週間以内の休暇を與ふることを得、廿一滯學を命ぜられたる生徒補修終れば、前記所定に準じて取扱ふものとす、廿二每年生徒に五週間以内の夏期休暇を與ふることを得、廿三教官、中隊長及中隊附士官は、教育上便宜の時期に於て、隊附勤務を爲さしむることあるべし、以上本例の大要なり。
陸軍電信教導大隊條例
(りくぐんでんしんきようどふだいたいでうれい)明治三五年勅令第二三四號を以て公布せられたる所に係り、其内容を略述すれば、□一電信教導大隊は、學生に電信通信術の教育訓練を爲し、且つ軍事通信に關し必要なる事項を調査研究する所とす、□二學生は騎兵、要塞砲兵、工兵士官竝に、要塞砲兵及工兵下士兵卒を以て之に充つ、□三電信教導大隊には左の職員を置く、隊長、副官、大隊附將校、中隊長、軍醫、副監督、準士官下士、以上の外教官として技師、技手を置くことを得、□四學生の修學期は士官は一ケ年、下士兵卒一ケ年半とす、尤も場合によりては、陸軍大臣之を伸縮することを得、□五學生の入隊期は槪ね四月とす、學生の人員及び入隊期日は、時々陸軍大臣之を告達す、而して學生下士は現役年限二箇年以上ある者、兵卒は前年十二月入營の者より選拔すべきものとす、學生士官は之を隊外に居住せしめ、學生下士兵卒は之を中隊に編入し、總て修學に要する兵器、器具、書籍等は之を支給又は貸與す、□六學生卒業の後は士官にありては修得證明書を、下士兵卒にありては學術證明書を附與して歸隊せしむ、以上其の大要とす、終りに本令は三五年一〇月二九日より施行せられたり。(三五年一〇月陸軍省令三四號)
陸軍特命檢閲條例
(りくぐんとくめいけんえつでうれい)本例は明治三四年一〇月勅令第一九三號を以て發布せられし所に係り、其規定の内容を略記すれば、□一特命檢閲は、元帥其他の將官勅命に由り檢閲使となり、團隊、官衙、學校に於ける軍紀の張弛、服務の能否、教育の精粗、保育の良否を檢し、法規實施の度を察し、動員計畫の完否、會計經理の整否、兵器材料其他の軍需品及諸營造物保存の景況を實檢査閲するもの也、□二檢閲使には所要に應じ、屬員として軍人軍屬若干名を隨行せしむるものとす、□三檢閲使は檢閲事項に關し、檢閲の結果を當該團隊、官衙、學校の長に訓示すべし、□四檢閲終れば檢閲使は、其狀況及意見を復奏し、且つ之を陸軍大臣參謀總長、竝に教育總監に移牒するものとす、□五檢閲後當該團隊、官衙、學校の將校以下に、三日以内の休暇を與ふることを得るものなり、□六陸軍々隊檢閲條例(二九年勅二九〇號)は、本例發布の日より之を廢止す、以上其大要也。
陸軍戸山學校條例
(りくぐんとやまがくかうでうれい)明治三六年勅令第一〇七號を以て公布せられし所にして、□一陸軍戸山學校は學生に戰術、射撃、體操、劔術竝に鼓譜、喇叭譜の訓練を爲し、以て各隊教育の進步を圖り、常に諸科學術の調査研究を爲し、且つ携帶火兵の研究及試驗を行ひ、又軍樂生徒に樂手補たるに必要なる教育を施す所とす、□二學生を別ちて下の三種とす、イ戰術科學生、步兵大、中尉を以て之に充て戰術射撃の研究をなさしむ、但し時としては要塞砲兵及工兵士官を以て學生となす事あるべし、ロ體操劔術科學生、步、騎、砲、工、輜重兵中少尉及下士を以て之に充つ、但し士官學生にありては小銃射撃の研究を爲さしむ、ハ譜調學生、步兵隊の皷手長及騎、砲、工輜重兵隊の喇叭長を以て之に充て、皷譜、喇叺譜の訓練を爲さしむ、(以下は舊法軍樂學校條例に略同じき故に略す)□三戰術及射撃研究の爲め時として佐官を召集する事を得、但し收學期日は其時々教育總監の移牒により陸軍大臣之を告達す、□四學生の訓練に供し、且つ諸般の研究に充つる爲め本校に教導大隊を置き、步兵隊より下士兵卒を分遣して編成す、□五本校に下の職員を置く、イ校長、ロ副官、ハ教官、ニ教官大導長、ホ教導大隊副官、ヘ教導大隊中隊長、ト教導大隊附、チ軍醫、リ副監督、ヌ准士官、下士、判任文官、□六校長は教育總監に隷し、校務を整理し、學術進步の責に任ず、□七副官は校中一般の庶務を掌る、□八教官は各學科の授業を分擔し、且つ其各科に於ける學術の調査研究竝に携帶火兵の研究及試驗に任じ、各科中高級故參の教官を以て科長とす、□九教導大隊及軍樂生徒隊の職員の服務は、軍隊内務の定則を適用す、□十學生及軍樂生徒の修學期下の如し、イ戰術科學生は槪ね十ケ月とし、每年一回入校せしむ、ロ體操科學生は槪ね七ケ月とし、每年一回入校せしむ、ハ譜調學生は槪ね二ケ月とし、二回に分ちて、入校せしむ、十一學生の人員及入校期日は、其時々教育總監の移牒により、陸軍大臣之を告達す、十二學生分遣の告達あれば、師團長は隊長をして、各科の修學に適當の者を選定し、入校期二十日前に其人名を戸山學校長に通報せしむべし、十三學生士官は校外に、同下士及軍樂生徒は校内に居住せしめ、收學に所要の兵器、彈藥、書籍、器具消耗品は貸與又は支給することあるべし、但し下士學生は、所屬より其武器、被服、裝具を携行せしむ、十四學生及軍樂生徒の願屆其他業務に關する諸件は、凡て校長の管理に屬す、十五學生は情願を以て退校するを許さずと雖も、疾病及其他の事故により、學術修得の目途なき者は、校長其事由を具し、教育總監の認可を請け退校せしむ、十六校長は修學期末に於て、各教官を集め會議を開き學生修學の成蹟を調査し、教育總監の認可を請け、士官に在ては修得證明書を作りて署名捺印し、下士に在りては考科列序表を製し、師團長を經て本人所屬の隊長に送附し、又下士には更に學術、修業の證書を付與し、學生を歸隊せしむ、十七教導大隊へ派遣の下士は、現役尚二ケ年以上の期ある者、兵卒は前年十二月入營の者中より選拔すべし、十八教導大隊へ派遣の下士兵卒は、所屬隊より其武器、被服、裝具を携行せしめ、分遣中は特別の徽章を附せしむ、十九教官は教育上便宜の時期に於て、隊附勤務を爲さしむることあるべし、二十演習上の必要に依り、砲工學校校馬を使用することを得、以上其大要なり。
陸軍砲工學校條例
(りくぐんはうこうがくかうでうれい)明治三一年勅令第二二五號を以て公布せられたる勅令にして、□一陸軍砲工學校は、砲工兵科の少尉を以て學生と爲し、砲工兵各科の勤務に必要なる學術を教授する所とす、但し少尉にして入學し得ざる者は、中尉又は大尉に進級の後に在も學生と爲す事を得、□二學生教育の綱領は教育總監之を定む、□三學生教育の實施は教則に依る、該教則は前示の教育綱領に基き、校長案を具し、教育總監の認可を請け之を定む、□四本校に左の職員を置く、イ校長、ロ副官、ハ教官、ニ軍醫、ホ獣醫、ヘ副監督、ト下士、判任文官、□五校長は總監に隷し、校務を總理し、學生教育の責に任ず、□六副官は、校中一般の庶務を掌る、□七砲工兵科教官は軍事學各科の授業を分擔し、高級故參の教官を以て各科の科長とす、□八馬術教官は、學生の馬術訓練に任じ、兼て校厩一切の事を統べ、馬匹の調教を掌る、□九文官教官は、數學、物理學、化學、圖學及外國語學の授業を分擔す、□十學生の修學期は槪ね一箇年とし、之を普通科と稱す、十一前上修學を終りたる學生中より、各兵科每に三分の一以内を選拔し更に一箇年在學せしめ、尚須要なる學術を修めしむ、之を高等科と稱す、十二學生の人員及入校期日は、其時々教育總監之を定め、陸軍大臣之を告達す、十三學生は校外に居住せしめ、修學に所要の馬匹、馬具、書籍、器具、消耗品は貸與又は支給することを得、十四學生中の願屆其他業務に關する諸件は、總べて校長の管理に屬す、十五學生は情願を以て退校するを許さず、十六學生中疾病及其他の事故に依り、修學の目途なき者は、校長其事由を具し、教育總監の認可を請け退校せしむ、十七普通科學生中左の事項に該る者は、校長其理由を具し、教育總監の認可を請け滯學を命ず、イ疾病及其他の事故に依り修學期内に所定の學術を修め得ざる者、ロ卒業試驗を受け得ざる者及卒業試驗に落第せし者、十八高等科學生にして前示の各項に該る者あるときは、校長は教育總監の認可を請け、滯學を命ずる事を得、十九校長は修學期末に於て、學生の卒業試驗を施行し、各教官を集め會議を開き、修學の成蹟を調査し、考科列序を定め、教育總監の認可を請け、及第者に卒業證書を附與す、二十高等科卒業者中若干名を選んで員外學生となし、更に必要なる科學を研究せしめ、又は外國駐在員として發遣する事を得、其在學又は駐在期限等は、教育總監陸軍大臣と商議して之を定む、廿一卒業證書を附與したる者の中、更に高等科若くは員外學生として在學する者、及野戰、要塞各砲兵射撃學校乙種學生として入校を命ぜられたる者の外は、校長直に之を歸隊せしむ、廿二普通科學生にして、退校を命ぜられたる者は隊長の上申に依り、教育上便宜の時期に於て、再び入學を命ずるものとす、廿三滯學若くは再び入學を命ぜられたる學生修學を終れば、上説の所に準じ、卒業證書を附與す、廿四普通科學生にして前上卒業試驗に落第せしときは、歸隊自習の上隊長の上申に依り、更に試驗を受けしめ、及第者には卒業證書を附與し、尚落第したる者は特別の詮議に附す、廿五每年學生に三週間以内の夏期休暇を與ふる事を得、以上其の一班とす。
- 英
- Regulation of the artillery and engineering school
- 独
- Regulierung der Artillerie- und Ingenieur-schule
- 仏
- Règles de l'école d'artillerie et de génie militaire
陸軍砲兵會議條例
(りくぐんはうへいくわいぎでうれい)明治三二年勅令第一二號を以て公布せられし所にして、□一陸軍工兵會議は、工兵技術竝に兵器材料に關し、陸軍大臣の諮詢に應じ、且つ其改良進步を圖り、審査立案する所とす、□二陸軍工兵會議に左の職員を置く、イ議長、少將若くは工兵大佐、ロ議員、工兵佐官、ハ臨時議員、各兵科兵部上長官或は陸軍技師、ニ審査官、工兵佐官同大尉、□三前條に揭ぐる職員の外、審査官の下に工兵上等監護、工兵下士竝に屬、技手を置く、□四議長は陸軍大臣に隷し、議事を整理し、會議一切の事務を總理す、□五審査官は審査試驗の事を分擔し、其分擔事項に關しては議事に列し、答辯説明の任に當り、且つ會議の事務を處理す、□六審査官には陸軍技師を混用する事を得、□七議員は他に本職ある者を以て兼補す、臨時議員は議事の必要に方り、陸軍大臣他に本職ある者を以て之を命じ、議事を了れば直に解任するものとす、□八議長不在の時は、議事に關しては議員中高級故參の者其代理をなすべし、但し議員は事務に關し代理する事なし、□九陸軍工兵會議の立案に係る事項は、陸軍大臣に建議するものとす、但し輕易の事項にして議事に附する必要なしと認むるものに在りては、議長は直に之を建議する事を得、□十陸軍工兵會議は議事規則を議定し、陸軍大臣の認可を請ふべし、十一總議員二分一以上出席するにあらざれば、議事を開き議決を爲す事を得ず、但し緊急の場合に在ては、總議員三分一以上出席するときは、議事を開き議決をなす事を得、十二議長は議事表決の數に預る事を得ず、十三議事は出席議員の過半數に依り之を決す、可否同數なるときは議長の決する所に依る、十四輕易の事項にして、議事に附するの必要なきものは、陸軍大臣は單に審査若くは起案を命ずる事あるべし、十五試驗の爲め軍隊を要するときは、議長は師團長に禀議して之を使用する事を得、十六砲工兵科の技術に跨る議案にして、砲工兵兩會議の議員を合し、討議せしむるの必要あるときは、合同會議を開くものとす、此場合に在りては陸軍大臣之を特達す、十七合同會議を開くときは、砲工兵兩會議議長中高級故參の者議長となり、下級の者は議員に列し、表決に預るものとす、議事の必要に依り、陸軍大臣は、特に他の將官を以て議長に命ずる事を得、但し其議事了れば直に解任するものとす、十八合同會議は總べて本會議の規定に據る、以上其の大要とす、されど現時は廢法に屬す。
陸軍砲兵工科學校條例
(りくぐんはふへいこうかがくかうでうれい)明治三二年勅令第四二一號を以て公布したる所にして、□一陸軍砲兵工科學校は東京砲兵工廠に置き、同廠提理の管理に屬し、火工學生に火工術を教授し、砲兵工長候補生に、鞍工、銃工、木工、鍛工長たるに必要なる教育を爲す所とす、□二火工學生は砲兵隊長期下士中より分遣し、砲兵工長候補生は、陸海軍豫備役後備役に在らざる者、及各兵科初年兵にして、召募試驗に及第したる者より採用す、砲兵工長候補生中、兵卒より採用分遣せしものを砲兵工長候補生、其他より採用せしものを砲兵工長候補生徒と稱す、□三本校に左の職員を置く、イ校長、ロ學校附、ハ軍醫、ニ准士官下士竝に判任文官、□四校長は東京砲兵工廠提理に隷し、校務を總理し學術進步の責に任ず、□五學校附砲兵少中尉は、訓育及學術の教授に任じ、日常學生生徒の躬行を監視し、分擔の教育に就ては擔保の責に任ず、助教は圖書等の教授を擔任す、□六學期は、火工學生に在ては槪ね一箇年、砲兵工長候補生に在ては槪ね二箇年とす、□七火工學生及砲兵工長候補生、各工科專問の實業は、東京砲兵工廠に於て之を教授す、學校の内務は槪ね軍隊内務の規定に依る、□八火工學生及砲兵工長候補生の人員は陸軍大臣之を告達す、□九火工學生分遣の告達あれば、師團長は、砲兵工長をして修學に適當の者を選定し、入校期十日前に其人名を提理)東京砲兵工廠提理以下之に做ふ)に通報せしむべし、□十砲兵工長候補學生を命ぜられたる者も亦之に準じ、其人名を提理に通報すべし、十一火工學生及砲兵工長候補學生は、校内に居住せしめ、修學に所用の書籍、器具、機械、雜具、消粍品竝に修業用の原料は、學校より貸與又は支給するものとす、但し武器、被服、裝具は所屬隊より携行せしむ、十二砲兵工長候補生徙に關する一切の費用は官給とし、且つ手當金を給す、十三火工學生及砲兵工長候補學生分遣入校中、願屆等に關する諸件は、總べて堤理の管理に屬す、十四火工學生及砲兵工長候補生は情願を以て退校するを許さず、十五學期末に於て終末試驗を施行し、及第者には卒業證書を授與し、火工學生に在りては原隊に復歸を命じ、其の試驗成▲を提理より師團長を經て、當該砲兵工長に移す、十六火工學生及砲兵工長候補生にして、左の事項の一に當る者は、學生若くは砲兵工長候補生を免ず、イ學術の修得全からず卒業の目途なき者、ロ軍紀を紊り又は屢格則を犯し、若くは品行不正にして改悛の目途なき者、ハ傷痍疾病に依り卒業の目途なき者、ニ卒業試驗に落第したる者、十七前上各項の一に該る者あるときは、學校長其事由を悉し、提理に具狀し、認可を受け之を處分す、十八火工學生及砲兵工長候補生中、傷痍疾病其他の事故に依り、終末試驗を受けざるも、なほ望ある者は、若干日の後特に受驗せしむることを得、又上記一六號のニに該るものにして、なほ望ある者は、若干日間學術の補修を爲し、卒業せしむることを得、以上其の大要とす。
陸軍服役條例
(りくぐんふくえきでうれい)明治二九年勅令第二三八號を以て公布せられし所にして、□一現役將校は所屬部隊の兵籍に編入し、現役定限年齡に滿つる迄服役せしむ、但し別に規定ある者は此限にあらず、□二將校の現役定限年齡は下の如し、イ中將、六十五歳、ロ少將、六十歳、ハ憲兵大、中佐、五十七歳、ニ步、騎、砲、工、輜重兵大、中佐、憲兵少佐、五十四歳、ホ步、騎、砲、工、輜重兵少佐、憲兵大尉、五十一歳、ヘ步、騎、砲、工、輜重兵大尉、憲兵中、少尉、四十八歳、ト步、騎、砲、工、輜重兵中少尉、四十五歳、□三現役定限年齡年齡に滿つるも、他人を以て代ふ可らざる職にある者、又は補充上必要ある者は留任を命ずることあるべし、□四現役定限年齡に滿つるも、戰時若くは事變に際するとき、又は航海中或は外國駐劄中は、現役期限を延ばすことあるべし、□五准士官の現役定限年齡は下の如し、イ砲兵、工兵、上等工長、五十一歳、ロ憲兵特務曹長、樂長補、四十八歳、ロ步、騎、砲、工、輜重兵特務曹長、三十四歳、□六下士の服役は十七箇年四ケ月とし、之を分て現役、豫備及後備役とす、其服役を終りたるときは、第一國民兵役に服せしむ、□六各兵役期限既に滿つると雖も、戰時或は事變に際するとき、若くは臨時に演習或は觀兵の擧あるとき、若くは航海中或は外國駐劄中は、其期限を延ばすことあるべし、其服役年期の計算は延期せざる者に同じ、□七現役下士は所屬部隊の兵籍に編入し、現役期限滿つる迄服役せしむ、□八現役下士の服役期限は下の如し、イ各兵科及衞生部下士候補生より下士に任ぜられたる者は、任官の月より四個年、ロ憲兵科下士は前服役年月を通算し六ケ年、ハ砲兵工長、蹄鐵工長、縫工長、靴工長候補生(兵卒を除く)より諸工長に任ぜられたる者は、任官の日より四ケ年、ニ經理部下士(縫、靴工長を除く)は、各兵科下士に任官の月より四ケ年、ホ軍樂部下士は、樂手補を命ぜられたる日より五ケ年、ヘ步騎、工、砲、輜重兵科上等兵及看護手より下士に任ぜられたる者、及縫工長、靴長長は、入隊の月より三個年、□九下士の服役定限年齡は下の如し、イ諸工長、四十八歳、ロ憲兵科下士、ハ衞生部下士、ニ經理部下士(縫靴工長を除く)、ホ軍樂部下上は四十五歳、ヘ步、騎、砲、輜重兵下士(諸工長を除く)は何れも四十歳、□十兵卒は年齡滿四十歳を以て服役の終期とす、十一現役兵は入隊の日より、其隊の兵籍に編入し、現役期限滿つる迄服役せしむ、十二憲兵上等兵の現役期限は前服役年月を通算し六個年とす、十三砲兵助卒、砲兵輸卒、輜重輸卒及看護卒の現役期限は、二ケ年四ケ月とし、砲兵助卒は一個年間、砲兵輜卒は四ケ月間、輜重輸卒は三ケ月間、看護卒は四ケ月間在營の後歸休せしむ、戰時若くは時變に際するとき、其他必要の場合には、在營期限を伸縮することあるべし、十四警備隊現役兵は一個年在營の後歸休せしむ、十五兵卒の現役定限年齡は下の如し、イ憲兵上等兵、雜卒、四十歳、ロ步騎、砲、工、輜重兵卒、三十五歳、十六現役中本人を要するにあらざれば、家族自活し能はざる事故を生ずるときは、其家族の願により現役を免ず、十七現役を離るるときは、其服役したる年月を通算し、七ケ年四ケ月に滿たざる者は豫備役に十七ケ年四ケ月に滿たざる者は後備役に服せしむ、以上の規定を爲したるものとす。(尚三七年九月勅二一三號、同年一〇月勅二三三號參照)
陸單服制
(りくぐんふくせい)明治三拾三年九月勅令第三六四號を以て公布せられたるものにして、三五年勅令第二五號、第一八六號、第二二五號及び三七年勅令第二七號等を以て圖例を改正せられたり。陸軍戰時服制は、明治三八年勅令第一九六號を以て公布せられしものにして、以上二制ともに其被服、帽(一種、二種等)同前立、刀緖、肩章、刀、刀帶等に就きて、其色合、長幅、地質等を圖解せるものとす、圖式は之を略す。
陸軍戰時服制
陸軍武官進級令
(りくぐんぶくわんしんきふれい)明治二二年勅令第六一號を以て公布せられし所に係り、□一陸軍武官の進級は、級を追ひて歷進せしむ、又缺員なきときは除隊することなし、□二陸軍武官は實役停年最下期限を超ゆるにあらざれば、進級することを得ず、□三實役停年最下期限を定むること下の如し、伍長より軍曹に進むは、實役停年半年、軍曹よリ曹長に進むは、實役停年一年、曹長より特務曹長に進むは、實役停年二年、特務曹長より少尉に進むは、實役停年二年、少尉より中尉に、中尉より大尉に進むは、實役停年各二年、大尉より少佐に進むは、實役停年四年、少佐より中佐に進むは、實役停年三年、中佐より大佐に、大佐より少將に進むは、實役停年各二年、少將より中將に進むは、實役停年三年、中將の大將に進むは、歷戰者に就き特旨を以て親任するを例とし、最下期限を定むることなし、□四戰時に在ては各官の實役停年を其半に減ずることを得、□五休職停職の年月は、實役停年に算入せず、但し敵の捕虜となり、休職に入る者は、正當の理由ある時は、其年月を實役停年に算入することを得、□六陸軍武官の進級法二あり、一を停年補除とし、一を拔擢補除とす、□七停年補除とは、實役停年最下期限を超えたる順次に依り、進級せしむるを云ひ、拔擢補除とは、實役停年最下期限を超えたるものに就き、拔擢進級せしむるを云ふ、其區別下の如し、伍長より軍曹に、軍曹より曹長に、曹長より特務曹長に進むは皆拔擢とす、少尉より中尉に進むは停年三分二拔擢三分一とす、中尉より大尉に進むは、停年拔擢相半す、戰時若くは事變に際し、動員を行ひたる各部團隊に屬する中少尉の進級は、皆拔擢とす、大尉より少佐に、少佐より中佐に、中佐より大佐に進むは皆拔擢とす、□八將校は職權に依て部下を拔擢するの權を有す、但し直屬長官ある者は、其監督の下に於て之を行ふ、□九將官の進級及將官に進級するは、上裁に出ると雖も、先づ内旨を陸軍大臣に諭すを例とす、□十特務曹長の少尉に進級するは特例とす、此選に當るを得る者は功蹟拔群にして、士官たるの學力を有するものに限る、十一陸軍大臣は、每年將校の實役停年名簿を作り之を奏上すべし、十二將校の拔擢進級候補及准士官の將校に進級する候補は、上裁に出るものとす、陸軍大臣は上旨を奉じて、決定候補名簿を調製すべし、十三下士の准士官に進級し及び下士の進級する候補は、師圍長及之と同等以上の權ある長官、竝に經理局長、醫務局長之を裁決して、決定候補名簿を調製すべし、十四決定候補名簿は、其調製の日より次年決定候補名簿調製の日迄之を用ふべし、十五下の場合に在ては前記の例に依らず、進級せしむることを得、イ敵前に在て殊勳を奏し、首將之を全軍に布告せし者、ロ敵前の軍隊に在て、人員缺乏し、補除定規を履む能はざるとき、十六興軍の日に方りて、戰地に臨むの首將には、特に進級補除の權を假入することあるべし、十七將校相當官、經理部、衞生部、軍樂部、下士及諸工長の進級は、將校及各兵科下士進級の例に依る、十八曹長の特務曹長に進級するは、入隊後八箇月以上服役したる者に限る、砲工長曹長及砲兵一等諸工長の砲工兵上等工長に進級するは、入隊後(砲兵工長候補生徒より出身の者に在りては入校後)八箇月以上服役し、實役停年二年を超えたる者に限る、前上砲工兵曹長の進級に就ては、其の服役中砲兵工廠兵器廠、築城部、砲工兵會議に於て、二箇年以上服務したることを要す、十九一等樂手の樂長補に一等計手の上等計手に進級するは、實役停年最下限を二年とす、樂補長の樂長に進級するは、實役停年三年を超え、功勞顯著なる者に限る、以上に依り進級するは皆拔擢とす、上記の服役年は、教導團、要塞砲兵射撃學校出身者に在りては、入隊又は入校の日より起算す、廿一短期下士たる伍長は、平時に在りては軍曹に進級せしむることなし、以上本令の大要也。
陸軍兵備品會計規則
(りくぐんへいびひんくわいけいきそく)明治二三年勅令第六四號を以て公布せられたる所にして、□一陸軍兵備品は分て、出師準備品、通常兵備品の二類とす、□二出師準備品とは下に揭ぐる物を云ふ、イ兵器、彈藥及各兵器具、竝材料、ロ秘密圖書、ハ馬匹及戰時之に要する器具、ニ戰用糧末及炊爨具、ホ戰用被服及裁縫具、ヘ戰用衞生材料、ト戰用獸醫材料、チ戰用天幕、リ陣中事務用品、ヌ軍隊輸送用補助物件、□三通常兵備品とは下に揚ぐる物を云ふ、イ圖書、ロ糧抹、ハ被服及裁縫具、ニ衞生材料、ホ獣醫材料、ヘ兵營備付陣營具、□四出師準備品の品目、數量は、陸軍大臣參謀總長と協議の上上裁を經て之を定む、□五出師準備品は、其保存を全からしむる爲め、通常兵備品と新陳交換するを例とす、□六出師準備品は近衞都督、各師團長及當該長官之を管理す、□七出師準備品及其數量に關する書類は、主任者の外關與することを得ず、□八通常兵備品中軍隊其他委託經理に係る糧食、被服消耗品、陣營具にして、特に保存の方法を定めたるものにありては、各保管者聯帶して其責に任ず、□九通常兵備品の會計は、明治二十二年勅令第八四號物品會計規則に依る、□十出師準備品の保管出納、及檢査の方法、其他細則は、陸軍大臣之を定む、以上本令の大要とす。
陸軍兵籍規則
(りくぐんへいせききそく)明治三七年陸軍省令第六號を以て公布せられし所に係り、其規定内容は、□一陸軍兵籍には二ありて、一を第一種となし、將校同相當官及准士官以下卒の兵籍を登記し、二を第二種となし、見習士官以下卒に至る迄の兵籍を登記す、陸軍諸生徒、同依託學生の兵籍も亦二種とす、□二現役者の兵籍は、各所屬軍隊學校又は官衙の所管とし、休職、停職、豫備役、後備役、將官同相當官の兵籍は、本籍地所管の師團司令部、上長官以下の兵籍は、本籍地所管の聯隊區又は警備隊區司令部の所管とす、□三兵籍は、其の一種にありては、初めて官に任ぜられたるとき、第二種にありては入隊又は入校のとき、所屬の部隊、官衙、又は學校に於て調製すべきものとし、其の戸籍に關する部分は戸籍謄本に依り之を登記す、□四轉官、轉役、轉籍等に依り異動を生じたるときは、舊所管より新所管に兵籍を送附し、新所管廳に於て之を訂正すべきもの也、□五免官、免役、免職となりたる者、後備役又は補充役を終りたる者、又は死亡したる者の兵籍は、之を兵籍簿より除去すべきものとす、尤も恩給又は扶助料の支給上差支あるときは、別冊として保存するもの也、以上を本則の大要とす。
陸軍表喪式
(りくぐんへうさうしき)明治二四年勅令第二一號を以て規定したるものにして、□一陸軍表喪式は、陸軍及軍人喪章を附し、其喪を表するの式とす、□二喪章は黑布を以て、軍旗、喇叺、樂器、刀(劍)及衣の左袖を蓋ふ、□三聯隊長の喪には、軍旗は後任者拜命迄、部下將校竝に同相當官は一ケ月間、刀、(劍)に喪章を附す、□四大隊長及中隊長の喪には、其部下將校竝に同相當官は一ケ月間、刀(劍)に喪章を附す、□五將校竝同相當官は、宮中喪のとき參内するには、其時々の命令に從ひ、喪章を附すべし、□六將校竝に同相當官、准士官は、親族の喪に居るときは、一定の喪期間は衣の左袖に喪章すべし、但し隊服本務に服するときは、之を除去するものとす、□七陸軍會喪式により發差する軍隊は、軍旗、喇叺、樂器に喪章を附す、其將校及總代たる將校、竝に同相當官、准士官、見習士官は刀(劍)に喪章を附す、□八喪章の製式は下の如し、イ軍旗の喪章、幅二寸、長四尺の黑衣を旗竿の上端に附す、ロ喇叺の喪章、幅二寸、長二尺の黑布を前身と後身とに附す、ハ樂器(大小太皷)の喪章、黑衣を以て太鼓の全體を蓋ふ、ニ刀(劍)の喪章幅二寸、二尺の黑布を柄に附す、ホ衣の左袖に附する喪章、幅二寸の黑布を左腕に卷く。
- 英
- Military funeral ceremony
- 独
- militärische Leichengebräuche
- 仏
- Cérémonie des funérailles militaires
陸軍編修官々制
(りくぐんへんしうくわんくわんせい)明治二三年勅令第八九號を以て公布せられたる官制にして、□一兵要、戰史、地誌、政表等の編修の業務に從事せしむる爲め、陸軍編修官を置く、□二陸軍編修官は陸軍大臣の管轄に屬し、其業務に關しては參課總長の指揮監督を承く、□三陸軍編修官を別ちて陸軍編修及陸軍編修書記とす、□四陸軍編修は奏任とし、陸軍編修書記は判任とす、□五陸軍編修官の定員は下の如し、イ編修四人、編修書記十四人、以上本制の大要とす。
陸軍補充條例
(りくぐんほじうでうれい)明治二九年勅令第三七九號を以て公布せられたる所にして、□一本條例は陸軍將校、同相當官、下士、上等兵、看護手、樂手補を補充するの方法を規定す、□二步、騎、砲、工、輜重兵科現役士官の補充は、士官候補生にして少尉の資格を備ふる者を以てし、憲兵科士官は他兵科の士官より轉科せしむ、□三下官候補生に採用し得べき者は下の如し、但し准下官、下官、兵卒(一年志願兵にあらざる者)及陸軍諸生徒は採用の限に非ず、イ中央幼年學校生徒にして卒業試驗に及第したる者、ロ官立、府縣立中學校、若くは文部大臣の指定したる中學校を卒業し、該校長の保證竝に入隊すべき隊長の承認を得たる者、ハ上記に揭ぐる中學校卒業者と同等の學力を有し、入隊すべき隊長の承認を得召募試驗に及第したる者、□四士官候補生入隊の上は、隊長は其中隊を選び之に編入し、該中隊長をして訓育を掌り、諸勤務の訓練に任ぜしむ、□五士官候補生軍事學の教授は、隊長、部下大尉若くは中尉をして之を任ぜしむ、□六隊長は陸軍候補生の教育に就き、總て其責に任ず、□七陸軍候補生にして下に揭ぐる事項の一に該る者は、士官候補生を免れ、イ乃至トに該る者は、其階級に應じて本官に任じ又は兵卒と爲し、豫備役に編入す、イ軍紀を紊り又は屢法則を犯し、若は品行不正にして改悛の目途なき者、ロ勞力乏しくして士官候補生たるに適せざる者、ハ將校たるの才能に乏しき者、ニ士官候補生たること得可らずと認められたる者、ホ諸勤務の修得充分の結果を得ず、若くは疾病の爲め士官學校へ分遣し得ざる者、又は疾病若は傷痍に依り一時服役に堪えざる者、ヘ士官學校條例の規定により、退校歸隊して從來の望なき者、ト將校會議に於て否決したる者、チ疾病若は傷痍により常備後備の服役に堪えざる者、及永久兵役に堪えざる者、□八經理部現役士官の補充は、現役各兵科中少尉にして、經理學校卒業證書を有する者、及監督候補生にして、經理部士官たるの資格を具ふる者を以てす、□九監督候補生に採用し得べき者下の如し、イ帝國大學法科學生にして、陸軍經理部委託學生となり、同學の課程を卒へたる者、ロ高等商業學生徒にして、陸軍經理部委託生徒となり、同學の課程を卒へたる者、ハ依託學生又は依託生徒にあらずして、帝國大學法科大學又は高等商業學校の課程を卒へたる者、□九監督候補生を免れ、イ乃至ニに該る者は、其階級に應じ本官に任じ、又は兵卒と爲し豫備役に編入す、イ軍紀を紊り又は屢法則を犯し、若くは品行不正にして改悛の目途なき者、ロ監督候補生たるを得可らずと認められたる者、ハ疾病又は傷痍により一時服役に堪えざる者、ニ經理部士官となるべき資格なしと認められたる者、ホ疾病若くは傷痍に因り常備後備の服役に堪えざる者、及永久服役に堪えざる者、□十衞生部現役士官の補充は、見習士官、見習藥劑生にして、衞生部士官の資格を具ふる者を以てす、十一見習士官見習藥劑官に採用し得べき者下の如し、イ帝國大學醫科大學學生にして、陸軍衞生部依託學生となり、同學の課程を卒へたる者、ロ醫學專門學校若くは文部大臣に於て、中學校の學科程度と同等以上と認めたる府縣立醫學校の生徒にして、陸軍衞生部依託生徒となり、同學校の科程を卒へたる者、ハ依託學生又は依託生徒に非ずして、帝國大學醫科大學又は醫學專門學校、若くは文部大臣に於て、中學校の學科程度と同等以上と認めたる府縣立醫學校の課程を卒へたる者、ニ軍醫學校生徒にして卒業試驗に及第したる者、十二見習醫官、見習藥劑官にして下に揭ぐる事項の一に該りたるときは、見習醫官、見習藥劑官を免じ、イ乃至へに該る者は、一等看護長に任じ、豫備役に編入す、イ軍紀を紊り又は屢法則を犯し、若は品行不正にして改悛の目途なき者、ロ學力乏しくして見習醫官、見習藥劑官に適せざる者、ハ上官たる才能に乏しき者、ニ見習醫官、見習藥劑官たるを得べからずと認められたる者、ホ痍病若くは傷痍により一時服役に堪えざる者、ヘ士官選擧會議に於て否決したる者、ト疾病若くは傷痍により常備、後備の服役に堪えざる者、及永久兵役に堪えざる者、十三獣醫現役士官の補充は、見習獣醫にして獣醫部士官の資格を具ふる者を以てす、十四見習獸醫に採用し得べき者下の如し、イ帝國大學農科大學獸醫科學生にして、陸軍獣醫部依託學生となり、同學科の課程を卒へたる者、ロ帝國大學農科大學獣醫學實科生徒にして、陸軍獸醫部依託生徒となり、同學實科の課程を卒へたる者、ハ依託學生又は依託生徒に非ずして、帝國大學農科大學獸醫學科、又は同大學獸醫學實科の課程を卒へたる者、十五見習獣醫官にして下に揭ぐる事項の一に該る者は、見習士官を免れ、イ乃至へに該る者は一等蹄鐵工長に任じ、豫備役に編す、イ軍紀を紊り、又は屢法則を犯し、若くは品行不正にして改悛の目途なき者、ロ學力乏しくして見習獸醫官に適せざる者、ハ士官たるの才能に乏しき者、ニ見習獣醫たるを得べからずと認められたる者、ホ疾病若くは傷痍により常備後備の服務に堪えざる者、及永久兵役に堪えざる者是なり、十六其他豫備役、後備役將校並に同相當官の補充、現役下士の補充、步、騎、砲、工、輜重兵科下士の補充に關する規定を爲したり。
陸軍補充兵召集規則
(りくぐんほじうへいせうしうきそく)明治一九年陸軍省令第二七號を以て公布せられたる所にして、□一戰時若くは事變に際し、又は平時に於て勤務演習、簡閲點呼等の爲め、召集するの方法及其の解散の取扱は、本則中特に規定せるものの外、豫備後備兵召集及解散の例に依る、□二教育の爲め補充兵を召集するは、其服役の初年に於てするを例とす、□三本則により召集に應ずる者の旅費は、陸軍召集旅費支出規程に定むる出納官吏に就き受領すべし、□四補充兵召集令狀を領收したるときは、二十四時間以内に旅費を受領し、其時間内に出發し、召集地參著の上は、大隊區司令官又は同司令部出張員に屆出づべし、但し正當の事故にて二十四時間を經過したるときは、其事由を屆出づべし、召集途中一日の行程は、汽車路は二百哩、海路は百海里、陸路は十二里詰を以て最下限とす、□五近衞師團の召集に應すべき補充兵、召集令狀を領收したるときは旅費を受領し、指定の期日に近衞兵集合地に參著し、大隊區司令官又は同司令部出張員に屆出づべし、□六補充兵を召集するには、郡市(束京京都大坂の三市に在ては區)島廳吏員をして、召集地又は近衞兵集合地迄引率せしむるものとす、□七補充兵召集令狀を領收したるときは、旅費を受領し、指定の期日に其の場所に參著し、前上の引率員に屆出づべし、□八補充兵疾病其の他の事故に依り召集に應じ難きときは、本人或は戸主若くは其家族より二十四時以内に、町村長の奥書證印を以て、監視區長に屆出づべし、但し疾病傷痍の者は、醫師の診斷書、其の他の者は憲兵或は警察官の承認書を添ふべし、九召集に應ずべき補充兵、上記の事故止りたるときは二十四時間以内に、本人或は戸主若くは其の家族より町村長を經て監視長に屆出づべし、□十前八號及九號に違背したる者は、五十錢以上一圓九十五錢以下の科料に處し、又は五日以上十日の拘留に處す、十一教育の爲め補充兵を召集するには、先づ大隊區司令部所在地、若くは便宜の地に集合し、大隊區司令部員若くは其の他の下士兵卒をして、召集地に引率せしむるものとす、但し召集員五人未滿なる時は單行せしむ、十二教育の爲め補充兵を召集するには、師團長(近衞師團長を除く)、其の召集期日及日數を地方長官に通知し、大隊區司令官に達すべし、十三地方長官前上の通知を受けたるときは、之を管内に告示すべし、十四大隊區司令官一二號の達を受けたるときは、集合地及集合期日を郡市長、(東京、京都、大坂の三市に在ては區長)を經て之を本人に達すべし、十六補充兵教育の爲め召集の達を受けたるときは、旅費を受領し、指定の期日に其場所に參著し、其引率員に屆出づべし、十七補充兵演習令狀を領收したるときは、旅費を受領し、其令狀に記載する期日に、其場所に參著し、大隊區司令官又は同司令部出張員に屆出づべし、十八補充兵、點呼令狀を領收したるときは、其令狀に記載する期日に其場所に參著し、監視區長に屆出づべし、但し點呼の場所に往復の旅費は自辨とす、十七補充兵疾病其他の事故により召集に應じ難きときは、本人或は戸主若くは其家族より、召集期日迄に(點呼の時は其當日)上記八號の例により、監視區長に屆出づべし、前項に違背したる者は、五錢以上一圓九十五錢以下の科料に處す、十九補充兵疾病其他の事故に依り、前記一四號の召集に應ぜざる者は、翌年之を召集す、二十戰時若くは事變に際し、近衞師團に召集すべき補充兵は、町村長豫め之を本人に告知すべし、以上其の大要也。
陸軍野戰砲兵射撃學校條例
(りくぐんやせんほうへいしやげきがくかうでうれい)明治三一年勅令第二三一號を以て公布せられたる所に係り、□一陸軍野戰砲兵射撃學校は、學生に野戰砲兵の射撃及戰術の訓練を爲し、以て各隊教育の進步を圖り、常に射撃及戰術の調査研究を爲し、且つ野戰砲兵材料の研究竝に試驗を行ふ所とす、□二學生を分て下の二種とす、イ甲種、各隊野戰砲兵隊より分遣する大、中尉學生、ロ乙種、砲工學校卒業等の上入學する中、少尉學生、□三以上の外時として佐官を召集し、所要の修學を爲さしむる事を得、但し修學期日は其時々教育總監の移牒により、陸軍大臣之を告達す、□四學生の訓練に供し、且つ諸般の研究に充つる爲め、本校に教導大隊を置き、野戰砲兵隊より下士兵卒を分遣して之を編成す、□五本校に下の職員を置く、イ校長、ロ副官、ハ教官、ニ教導大隊長、ホ教導大隊副官、ヘ教導大隊中隊長、ト教導大隊附士官、チ軍醫、リ獣醫、ヌ副監督、ル准士官、下士、判任文官、□六校長は野戰砲兵監に隷し、校務を總理し、學術進步の責に任ず、□七副官は校中一般の庶務を掌る、□八教官は各學術科の授業を分擔し、野戰砲兵に關する學術、材料の調査研究及試驗に任ず、□九教導大隊の大隊長以下の服務は、軍隊内務の定則を適用す、□十學生の修學期下の如し、イ甲種學生、槪ね三ケ月とし、每年二回に分て入校せしむ、ロ乙種學生は槪ね二ケ月とし、甲種學生の修學期中に併せて入校せしむ、ハ學生の人員及入校期日は、其時々教育總監の移牒により、陸軍大臣之を告達す、但し砲工學校卒業の上、直に入校する學生に在りては教育總監之を命ず、十一學生分遺の告達あれば、師團長は、隊長をして修學に適當の者を選定し、入校期二十日前に、其人名を野戰砲兵射撃學校長に通報せしむべし、十二學生は校外に居住せしめ、修學所要の兵器、彈藥、馬匹、馬具、書籍、器具は貸與することを得、十三學生中の願屆其他業務に關する諸件は、凡て校長の管理が屬す、十四學生は情願を以て退校するを許さずと雖も、疾病及び其他の年故に因り、學術修得の目途なき者は、校長其事由を具し、野戰砲兵監の認可を受け退校しむ、十五校長は修學期末に於て、各教官を集め會議を開き、學生修學の成蹟を調査し、野戰砲兵監の認可を請け、修得證明書を作り、署名捺印の上、師團長を經て、本人所屬の隊長に送付し、學生を歸隊せしむ、十六導教大隊へ分遺の下士は、現役尚二箇年以上の期ある者、兵卒は前年十二月入營の者中より選拔すべし、十八教導大隊へ分遣の下士兵卒は、所屬より其武器、被服、裝具を携行せしめ、分遣中は特別の徽章を附せしむ、十九教官は教育上便宜の時期に於て、隊附勤務を爲さしむることあるべし、以上其の大要也。
陸軍六週間現役兵條例
(りくぐんろくしうがんげんえきへいでうれい)明治二六年勅令第一四一號を以て公布せられし所に係り、其内容は、□一徵兵令により六週間陸軍現役に服せしむべき者は、教職に就きたる年若くは其翌年に於て、其居住地師管内の步兵隊(警備隊を置く島嶼に在ては警備隊、其隊に在ては最寄の步兵隊)に編入し服役せしむ、□二六週間現役兵の入營期日は、每年六月一日(臺灣に在ては十月一日)とす、但し疾病其他の事故に由り、期日より三日以内に入營し難き者は、翌年之を徵集す、戰事若くは事變に際しては、其徵集を延ばす事あるべし、□三現役服役日數は、入營期日より起算す、□四六週間現役兵の教育は、聯隊長(獨立大に在りは其の隊長、警備隊に在ては司令官、以下之に傚ふ)其責に任ず、□五六週間現役兵中勤務勉勵品行方正にして、第二國民兵を以て編成する部隊の幹部たるを得べき材幹ある者は、聯隊長其の成蹟を具し、順序を經て師團長(臺灣に在ては旅圍長)の認可を受け、國民軍幹部適任證書を授與す、□六六週間現役兵の身體檢査は入營すべき年に於て、一般の徵兵檢査と同時に之を行ふ、徵集に適せざる者は、徵兵檢査規則に照し處分す、北海道臺灣及沖繩縣に在る者の身體檢査に關する規定は、陸軍大臣別に之を定む、□七檢査往復旅費及入營旅費は官給す、□八北海道に在る者は、第七師團管に常備步兵隊を置く迄は、第二師管の步兵隊に編入し服役せしむ□九本令は明治二九年四月一日より施行せらる。
- 英
- Regulation of 6 weeks' military soldiers in active service
- 独
- Regulirung von den Sechs-Wochen-Soldaten
- 仏
- Règles du service militaire active pendant six semaines
陸軍六週間現役兵條例施行細則
(りくぐんろくしうかんげんえきへいでうれいしかうさいそく)□一六週間現役兵の身體檢査は、教職に就きたる居住地所在の聯隊區内、又は警備隊區内便宜の徵兵署にて之を行ふ、但し其年の入營期日に接し、若くは入營期日後教職となりたる者は翌年廻しとす、□二府縣廳に於ては、徵兵事務條例施行細則所定の樣式に準じ、六週間現役兵名簿を作り、身體檢査に先ちて之を聯隊區司令官又は警備隊司令官(沖繩警備隊區に在ては該司令官以下同じ)に送附し、檢査の手續を協議すべし、但し官立小學校の教職も、亦本文同樣該校所在府縣に於て取扱ふべし、□三聯隊區司令官、警備隊司令官は、六週間現役兵の身體檢査に關しては、尋常徵兵と同一の取扱を爲し、合格者には本則附錄所定の合格證書を附與し、其名簿を師團長に差出し、且つ其成蹟を北海道廳長官、又は府縣知事に通知すべし、其徵集に適せざる者は、徵集延期、徵集免除又は兵役免除の處分を爲し、徵集延期名簿を北海道廳又は府縣廳に送附し、合格者竝に徵集延期者の人名書、徵集免除名簿及び兵役免除名簿を本籍所管の島廳、郡、市町(北海道に在ては北海道廳支廳長、東京市、京都市、大阪市及沖繩縣の區に在ては區長以下同じ)村長に送附すべし、□四師團長は合格者在職地の遠近に應じ、適宜之を各隊に配付すべし、□五北海道及沖繩に在ては、師團長地方長官協議の上、時宜に依り教職に就くべき年身體檢査を爲し、又北海道に在ては居住地所在の聯隊區外に於て、身體檢査を爲す事を得、□六身體檢査後入營前教職を罷めたる者あるときは、道廳、府縣廳より直に師團司令部に通知すべし、□七臺灣に在る者の身體檢査は、下の諸項により施行すべし、イ總督府に於ては身體檢査を受くべき者を調査し、徵兵事務條例施行細則所定の樣式に準じ、六週間現役兵名簿を作り、最寄の步兵隊に送付し、身體檢査を施行せしむべし、ロ步兵隊長は上説三號に準じ、身體檢査及徵否の取扱を爲し、合格者には合格證書を附與し、合格者徵集延期に屬する者の名簿を總督府に差出し、總督府に於ては上説四號に準じ、合格者を各步兵隊に配賦すべし、□八步兵隊長は合格者及徵集延期に屬すべき者の人名書、若くは徵集に適せざる者の名簿を添へ、本籍所管の聯隊區、又は警備隊區徵兵官に通知し、該徵兵官は其徵集に適せざる者の處分を爲すべし、□九六週間現役兵退營するときは、聯隊長(獨立大隊に在ては其の隊長、警備隊に在ては該司令官以下同じ)は、該名簿を本籍所管の聯隊區司令官、又は警備隊司令官に送付し、聯隊區司令官、警備隊司令官は、之を島司郡市長に送付すべし、國民軍幹部適任證書を授與したる者ある時は、聯隊長其の旨を名簿に記載し、其國民軍幹部適任證書は、附錄所定の樣式に準じ調製すべし、□十國民軍幹部適任證書を授與せられたる者にして懲戒處分を受け、又は家資分散若くは破産の宣告を受け、若くは禁制の刑に處せられたる時は、其證書を返還せしむ、十一前諸號に揭ぐるものの外は、師團長及道廳長官府縣知事協議の上臺灣總督之を定むるものとす、以上其一班也。
陸地測量官官制
(りくちそくりやうくわんくわんせい)明治二二年勅令第三四號を以て公布せられし所に係り、本制の内容を揭ぐれば、□一陸地則量の業務に從事せしむる爲め、陸地測量官を置く、□二陸地測量官は、陸軍大臣の管轄に屬し、其業務に關しては陸地測量部長の指揮監督を承く、□三陸軍測量官を分て、陸地測量師及陸地測量手とす、□四陸地測量師は奏任とし、陸地測量手は判任とす、以上其一斑也。
- 英
- Government organization of the officials of land survey
- 独
- Amts-ordnung des Landvermessungsbeamten
- 仏
- Organisation des officiers de l'arpen-tage
陸地測量官任用規則
(りくちそくりやうくわんにんようきそく)明治二二年勅令第三五號を以て公布せられたる勅令にして、□一陸地測量師は、陸地測量手中其任に適する者を選み、陸地測量部修技所に於て、二ケ年以上高等の學術を修業せしめ、卒業したる者を以て之に任ず、□二陸地測量手は、陸地測量部修技所生徒の卒業したる者を以て之に任ず、□三以上に揭ぐる者の外、陸地測量部に須要なる特種の學術技藝を有する者、又は陸地測量部修技所卒業者に等しき學術を有する者は、特に陸地測量部に於て實地試業の上、適當と認むるときは、陸地測量官に轉任せしめ、若くは任用することを得。
- 英
- Rule of appointment of land-surveying officials
- 独
- Anstell-ungsregel des Landvermessungsbeamten
- 仏
- Règles de la nomination des officiers de l'arpentage
陸地測量部條例
(りくちそくりやうぶでうれい)明治二四年勅令第一七五號を以て公布せられしものにして其内容は、□一陸地測量部は陸地測量を施行し、兵要地圖及一般の國用に充つべき内國圖を製造修正し、其他陸地に關する事を掌る所とす、□二陸地測量部に三角科、地形科及製圖科を置き、各科を數班に分ち、又別に修技所を置く、□三陸地測量部に下の職員を置く、イ部長、少將或は各兵科大佐、ロ事務官各兵科少佐及尉官ハ材料主管、各兵科大尉、ニ軍吏、ホ科長、各兵科、佐官、ヘ科僚、各兵科中尉或は少尉、ト班員、各兵科大、中、少尉、或は同相當陸地測量師及陸地測量手、チ修技所幹事、各兵科大尉、リ修技所教官、各兵科大、中、少尉、或は同相當陸地測量師、ヌ修技所助教、陸地測量手、□四部長は參謀總長に隷し、部務を整理し及び陸地測量官養成の責に任ず、□五事務官は部長の命を承け、部内の事務を掌る、其下に陸軍屬或は陸地測量手を置く、□六材料主管は部長の命を受け、器具材料及圖籍の整理に任じ、其下に陸軍屬或は陸軍測量手を置く、□七軍吏は部長の命を受け、會計一般の規定に據り、部内の會計、物品の賣買供給を掌り、其下に書記或は陸軍屬を置く、□八三角科量地の事を管し、三角測量及水準測量を施行し、諸測量の基點を設爲し、地形科は地形測量を施行して原圖を製造修正し、製圖科は諸地圖を製造して製版印刷するを掌る、□九修技所は陸地測量官を養成するの所にして、測量手たる學生及生徒を置く、其教授科目は陸地測量部長之を定む、□十科長は部長の指揮監督を受け、班長以下に職務を科し、各其課の整理に任ず、十一科僚は科長の命を受け、科内の庶務を掌り、其下に陸軍屬或は陸地測量手を置く、十二班長は科長の命を受け、其班員以下に職務を課し、各班の事業を管理す、十三班員は上官の命を受け、各其業務を分掌す、十四科長及班長は陸地測量官を以て之に充つる事を得、十五修技所幹事は、部長の命を受け、學生及生徒の養成に任じ、庶務を掌り、其下に下士或は陸地測量手を置く、十六修技所教官及助教は、部長の命を承け學術科の教授を分掌す、十七修技所教官は、定員の外他に本職ある者を以て兼勤せしめ、若くは學識ある者を選びて之に囑托する事を得、以上其大要也。
- 英
- Regulation of the sur-vey office
- 独
- Regulierung des Mes-sensamtes
- 仏
- Règles du bureau de l'arpentage militaire
陸地測量標條例
(りくちそくりやうへうでうれい)明治二三年法律第二三號を以て公布せられし所に係り、□一本條例中測量標と稱するものは、三角點標石、水準點標石、覘標、標抗、測旗、假抗とす、□二陸地測量部に於て、宅地にあらざる民有地に、測量標を設置する爲め敷地を要するときは、所有者之を拒むことを得ず、土地及民有宅地内と雖も、亦官有地に在りては之を所管廳に通知し、或は民有宅地と共に已むを得ざる場合に於ては、測旗假抗に限り之を設置することを得、□三民有地に標石を設置するときは、其敷地を買上ぐべし、但し所有者に於て其土地を寄附し、又は借地料を要せず、永遠貸地と爲さんことを望むときは格別とす、□四民有地に測標及び標抗を設置したるときは、陸地に在ては相當の借地料を給し、田畑、鹽田、鑛泉地に在ては一箇年一坪に付き三錢、其の他に在ては同一錢の割を以て借地料を給す、但し所有者に於て、其土地を寄附し又は借地料を要せず、貸地と爲さんことを望むときは格別とす、□五測量主任官測量の爲め、官有土地及び民有地内若くは牆垣者柵内に立入らんとするときは、先づ其所管廳又は所有者に通知すべし、但し或官有地竝に宅地にあらざる民有地、及び所有者又は管理人の所在遠隔する田畑等の牆垣内に在ては、直に立入ることを得、此場合に於ては主任官たるの證票を携帶すべし、□六官有土地及宅地にあらざる民有地内に於て、測量施行の爲め障碍となる竹木は、已むを得ざるものに限り之を伐除し、又樹上に覘標を設置することを得、此場合に於ては相當の補償を爲すべし、□七測量施行の爲め、牆垣、籬柵等又は植物を毀損したるときは、相當の補償を爲すべし、□八上説三號の敷地買上料、四號の陸地借地料、及び六號七號の補償金額に就き、所有者と協議調はざるときは、市町村長をして之を評定せしむ、市町村長の評定に服せざる者は、其評定を受けたる日より一箇月以内に、裁判所に出訴することを得、□九標石は諸測量の基準點として、官民共に使用することを得、□十標石を▲轉し若くは毀壞したる者は、一箇月以上一年以下の重禁錮に處し、又は五圓以上五十圓以下の罰金に處す、十一測旗及假抗を移轉し、若くは毀壞したる者は、二圓以上二十圓以下の罰金に處す、十二過誤により測量標を毀壞し、又は之に瓦礫其他の雜物を擲ち、獸類を繫ぎ、繩索の類を懸け、或は貼紙し、或は戯書し、其他惡戯を爲したる者は、五錢以上一圓九十五錢以下の科料に處す、十四本條例施行の細則は、陸軍大臣之を定む、十五本條例中市町村制の實施に至らざる地方に在ては、市町村長の職務は區戸長をして之を行はしむ、以上其一班とす。
- 英
- Regulation of surveying mark of land
- 独
- Regulierung der Land-messensmarke
- 仏
- Règles de la marque de l'arpentage militaire
利己説
(りこせつ)自利説、自我説、自愛説等何れも同義に用ゐ、利他説、主他説、他愛説等と相對す、廣義に解すれば、總て行爲の目的を自己の爲めてふことに置く見解にして、之を普通倫理上の主義として、狹義に個人的快樂説又は個人的幸福説等に於て論ずる所は、即ち自己一個を中心として、其の快樂、幸福、利益等を增進するを以て、道德的行爲の唯一の目的となす見解也、此の如きは是れ人の自然の欲求なれば、從つて吾人は各自其の自家の快樂利益を增進することに向つて努力するは、道德的善行爲として、之に反するものは即ち惡行爲なりと謂ふ更に換言すれば、かく吾人の自己の快樂利益を主眼とし、小なる快樂より大なる快樂を得るが何故に善行なりといふに、自己の快樂は自己に取りて望ましく、畢竟人の本性は、利己的なるが心理的根本事實なればなりといふにあり。
- 英
- Egoism
- 独
- Egoismus
- 仏
- Égoisme
離婚
(りこん)夫婦の生存中婚姻を解消するを離婚と謂ふ、卽ち婚姻に因りて生じたる一切の效果を將來に向つて消滅せしむる法律上の原因なり、而して離婚ありたるときは□一配偶者間の親族關係止む、從てイ親族たるが爲めに生じたる利益を享有すること能はず、ロ夫婦たるに由りて生じたる相互の權利義務(例へば他と通ぜざるが如き)を免る、ハ當事者は双に新婚を爲すことを得、但し妻は六箇月を經過せざる可らず、ニ妻は無能力たることを免れて能力者となる、ホ他家に入りたる者は實家に復籍す、ヘ婚姻後當事者間に於て子を擧げたるときは、其子は庶子又は私生兒なるべし、以上其主なるもの也、□二婚姻に因りて生じたる姻族關係、繼親子關係、嫡母庶子の關係は、離婚の日より消滅す、但し直系姻族の間に於ては、關係消滅後も婚姻することを得ず、□三離婚の配偶者と其子との關係は、繼父母と繼子、嫡母と庶子との間にありては其關係止むも、實親子との間にありては毫も變更せらるることなし。(民八〇八條乃至八一九、七七〇條參照)
離婚屆の書式は左の如し。
離婚屆
住所戸主(家族)平民職業
夫氏名
何年何月何日生右父職業氏名
右母名
妻名
何年何月何日生
住所戸主(家族)平民職業
妻が復籍すべき家の戸主
氏名
妻の父職業氏名
妻の母名
右何年何月何日婚姻候處今般協議ノ上離婚候間別紙何々同意證書相添此段及御屆候也
年月日
夫の氏名□印
妻の名□印
住所職業
證人氏名□印
何年何月何日生
住所職業
證人氏名□印
何年何月何日生
何郡(市)町村戸籍吏氏名殿
- 英
- Divorce
- 独
- Ehescheidung
- 仏
- Divorce
理財學
(りざいがく)財貨及財政の理法を研究するの科學にして、財貨に就て硏究する學は所謂經濟學なり、財政に就て研究する學は其の部門の異なるに依りて、財政學と行政學となり、(詳細は各部參照)學者往々にして理財學を經濟學同樣に解し、又は之と反對に財政學と同一義なりとするも、用語の慣例は寧ろ此の二者を包含せるものの如し、但し行政學に屬する部面はこれを除くを慣例とするものなり。
理想
(りさう)吾人は經驗を重ねて其の豐富を致すも、それを以て滿足すること能はず、より以上の善なる美なる眞なる完全圓滿なる狀態を欲望して止まらざるもの也、是抑も吾人に理想てふ事の生ずる所以にして、理想とは一言にして吾人が經驗、智識、想像の範圍内に於て、此の上はあるまじと假定せらるる程に、其の粹を極めたる標準、規範、若くは師表、即ち將來の目安の謂なり、然れども各人の經驗思想は各異なるを以て、其の理想とする所も亦異ならざるを得ず、同一人にありても其の人の變化と共に、其の理想も變化し行くべく、斯く理想は各人又同一人にありても常に差別變化を免れざるものなれども、或一代或一國の人々の思想は、往々にして其の窮極の志望に於ては、相一致する所あるより、時には十八世紀の理想、十九世紀の理想、英國人の理想、日本人の理想等、一時代、一團體、一社會の上に共通なる理想を認む、かかる理想は要するに吾人の想像の上にのみ存して、實際には實現せられざる類をいふなり、又理想主義とは、多く文藝上の用語にして、觀念を理想に求め、其理想によりて行動云爲せんとするものを謂ふ。
- 英
- Ideal
- 独
- Ideal
- 仏
- Idéal
利札
(りさつ)利札とは、主たる債權證券に附屬する利息債務の證券なり、利札は通常無記名にして、一定の年限に對し之を發行し、各利札は其期間中、一定の時期に對する利息を代表し。此時期到來するときは其證券は滿期となり、所持人は之に依りて利息を請求するを得るものとす、法律上の性質下の如し、□一利札は所持人拂の有價證券なり、凡そ證券は之を大別して二種となすことを得、流通證券、記名證券是なり、流通證券は更に之を指圖證券、持參人拂證券の二種に分つ、而して利札は所持人拂の有價證券、即ち持參人拂の流通證券なるが故に、利札を所持する者は何人と雖も、其代表する利息の請求權を取得す、故に債務者は之を辨濟するに當り、其者が果して利息に對する正當の權利を有するや否やを調査するの義務なし、但し債務者は利札を記名と爲すことを得、□二利息は利息債務を代表す、利札の發行に依りて利息債務は一の獨立せる債務となる、然れども之が爲め利息債務たるの性質を變更せず、故に凡て利息に關する規定を適用せられ、又別段の定めなき以上は、償還其他の方法に依り、元本債務消滅するときは、債務者は其後に滿期となりたる利息を支拂ふの義務なし。
- 英
- Coupon
- 独
- Zinsschein
- 仏
- Cou-pon
理事
(りじ)理事とは、通例法人其他の社團又は財團の代表者を意味し、日本銀行理事、勸業銀行理事などは此の用例に屬す、其の他特殊の官公職、例へば、陸軍々法會議に於ける理事の如き、宮内省御料局理事の如きものあり、此等は各部の官制等を參照せられよ。(民五二條)
理事官
(りじくわん)理事官は韓國駐劄の官吏にして、統監の指揮監督を受け、理事廳管轄區域内の事務を管掌する官吏なり、此他海員審判所に於ける理事官なる官吏あり。(三八年十二月勅二六七號統監府及理事廳官制參照)
- 英
- Japanese Korean local gover-nor
- 独
- japanischer Lokal-Verwalter in Korea
- 仏
- Gouverneur locaux japonais en Corée
理事主理任用令
(りじしゆりにんようれい)明治二七年勅令第一三號を以て公布せられたる所にして、□一理事は理事試補、主理は主理試補により任用す、滿三年以上理事又は主理の職にありたる者は、直に之を本官に任用することを得、□二理事試補及主理試補は、理事試補、主理試補登用試驗に及第したる者、若くは司法官試補たるの資格を有する者より採用す、□三理事試補は陸軍省若くは陸軍々法會議、主理試補は海軍省若くは海軍々法會議に於て、一箇年半以上實務を修習し、實務修習試驗に合格したる者にあらざれば本官に任用することを得ず、□四滿三年以上理事又は主理の職に在る者、及其職に在りたる者は、明治二六年勅令第一八三號文官任用令所定の判事檢事の例により、他の奏任文官に任用することを得、但し理事試補、主理試補登用試驗により採用せられたる者は、此限にあらず、□五下の諸項の一に該當する者は、理事及主理に任用することを得ず、イ重罪を犯したる者、但し國事犯にして復權したる者は此限にあらず、ロ定役に服すべき輕罪を犯したる者、ハ破産若くは家資分散の宣告を受け復權せざる者、又は身代限の處分を受け債務の辨償を終へざる者、□六理事試補及主理試補は奏任官の待遇とす、□七登用試驗竝に實務修習、及び實務修習試驗に關する規則は、理事試補に係るものは陸軍大臣、主理試補に係るものは海軍大臣之を定む、□八勅任理事及勅任主理は、本令の規程に拘らず之を任用することを得、□九明治二一年勅令第一〇號により理事試補、主理試補たる資格を有し、本令施行の際現に理事試補又は主理試補たる者は、別に試驗を用ひず、直に之を本官に任用することを得、□十司法官試補たるの資格を有し、判事檢事及他の高等文官の職に在る者、及び在りたる者は、本令施行後三年間は直に理事又は主理に任用することを得、以上の規定を爲したるものなり。
- 英
- Ordinance of appoint-ment of manager or chief-manager
- 独
- Anstellungsverordnung des Verwalters und Oberverwalters
- 仏
- Ordonnance de la nomination du directeur ou du chef-direc-teur
理事試補出願並實務修習及修習試驗規則
(りじしほしゆつぐわんならびにじつむしうしうおよびしうしうしけんきそく)明治二九年陸軍省令第二一號を以て公布したる省令にして、□一理事試補たらんと欲する者は、志願書に下の書類を添へ、地方官廳を經豫備後備の兵籍にある者は、聯隊區司令官(警備隊區に在ては警備隊司令官又は(警備隊區司令司令官)及師團長を經て陸軍大臣に差出すべし、イ履歷書ロ族籍、年齡、兵役に關する證明書、ハ司法官試補たるを得る證明證、ニ明治二七年勅令第一三號理事主理任用令所定の缺格の各項に(理事主理任用令の部參照)觸れざる證明書、□二理事試補は陸軍省法官部若くは師團法官部、臺灣陸軍法官部に附屬して實務を修習せしむ、□二實務修習の指揮監督は、陸軍省法官部に在ては部員たる上席理事、師團法官部及臺灣陸軍法官部に在ては部長たる理事之を爲す、□四實務修習試驗委員は、委員長一名委員數名を以て之を組織す、□五委員長は試驗委員を監督し、試驗に關する一切の事務を綜理す、□六實務修習試驗委員長及試驗委員は、陸軍省法官部理事若くは師團長法官部理事臺灣陸軍法官部理事の中より、其附屬の書記は陸軍省法官部書記、若くは師團長法官部錄事、臺灣陸軍法官部錄事の中より試驗を行ふ每に、陸軍大臣之を命ず、□七實務修習試驗は陸軍省法官部理事試補に在ては、陸軍省法官部に於て、師團法官部理事試補、臺灣陸軍法官部理事試補に在ては、陸軍省法官部又は所屬師團法官部、又は臺灣陸軍法官部に於て之を行ふ、□八試驗の期日及場所は、陸軍大臣之を定む、□九實務修習試驗は筆記及口頭とす、但し師團法官部理事試補及び臺灣陸軍法官部理事試驗を陸軍省法官部に於て試驗する場合は、口頭試驗を以て筆記試驗に換ふることを得、□十筆記試驗は、試驗委員、受驗者に刑法、陸軍刑法に關する刑事各二件以上、民事一件若くは數件の訴訟書類を付與すべし、十一受驗者は付與せられたる訴訟書類に就き、事實及理由を詳示し判決案を作り十五日以内に之を試驗委員に差出すべし、十二口頭試驗は陸軍刑法、陸軍治罪法、刑法、民法、戒嚴令、徵發令、陸軍徵罰令、陸軍監獄條例、其他陸軍々制の大畧、國際法等、少くとも三科目に就きて之を施行す、十三口頭試驗を筆記試驗に換ふる時は、試驗委員口頭試驗の科目中に就きて問題を作り、之を上説の訴訟書類と共に、試驗所屬の師團法官部長若くは臺灣陸軍法官部長に送付す、前項の問題及び訴訟書類は、場合に依り試補所在地の師團法官部長、若くは臺灣陸軍法官部長に送付する事を得、十四師團法官部長、臺灣陸軍法官部長前上の書類を受領したるときは、訴訟書類に就きては直に之を本人に交付し、上説一一號に依り十五日以内に判決案を差出さしめ、口頭辯論に換ふる問題に就きては、試驗期日一定の時間内に答案を作らしむべし、前項末段の答案を作るときは、場内に參考書を携帶することを許さず、十五師團法官部長、臺灣陸軍法官部長は以上の答案の監督を爲し、答案を取纏め、試驗狀況書を作り、答案と共に之を試驗委員に送付すべし、十六受驗者の及第、落第及び及第者の優劣は、試驗者の成蹟に對する委員過半數の意見に從ひ之を決す、及第、落第に就きての意見數相半するときは、落第者と看做すべし、十七試驗委員長は、及第者の氏名及其試驗成蹟を陸軍大臣に報告す、以上其大要なり。
理事試補登用試驗規則
(りじしほとうようしけんきそく)明治三〇年陸軍省令第二〇號を以て公布せられたる省令にして、□一理事試補登用試驗は須要に應じ、陸軍省に於て理事試補登用試驗委員之を行ふ、□二理事試補登用試驗を行ふべき期日は、豫め官報を以て之を公告す、□三理事試補登用試驗を受くることを得る者は、成年以上の男子にして下に記載したる者に限る、イ官立學校及判事檢事登用試驗規則により、司法大臣の指定したる公私立の學校に於て法律學を卒業したる者、ロ外國の大學校又は之と同等なる學校に於て、法律學を修め卒業證書を有する者、□四理事主理任用令所定の缺格の項(理事主理任用令の部五參照)に該る者は試驗を受くることを得ず、□五受驗者募集に就きては、豫め人員、年齡等制限を付することあるべし、□六試驗志願者は書式に照し、試驗願書に下の書類を添へ陸軍大臣に差出すべし、イ履歷書、ロ身分、年齡及兵役に關する證明書、ハ缺格の項に該らざる證明書、ニ醫師の作れる體格證明書、試驗志願者は、試驗手數料として金拾圓を納むべし、但し其手數料は登記印紙を用ひ、之を試驗願書に貼付すべし、□七試驗は受驗者の學識を試驗するを以て目的とし、筆記口述の二樣とす、□八筆記試驗は、刑法、陸軍刑法、刑事訴訟法、陸軍治罪法、民法、憲法、行政法、國際法の各法に就き之を施行す、□九口述試驗は筆記試驗に合格したる者に對し、前上に揭ぐる各法中少くとも三科目に就き之を施行す、□十受驗者は理事試補登用試驗委員長の揭示、其他試驗委員の命令を遵守すべし、十一試驗に及第したる者は官報を以て廣告し、仍ほ之を本人に通知す、十二試驗委員及試驗成蹟調査に關しては、理事試驗出願並に實務實習及實務修習試驗視則を本令に準用す。
理事試補登用試驗出願書式(用紙美濃紙)
試驗願書
□印印紙
族籍
氏名
生年月
私儀理事試補登用試驗相受度候ニ付理事試補登用試驗規則第六條ニ揭グル書類相添へ此段奉願候也
現住所
年月日氏名印
陸軍大臣爵氏名宛
(陸軍省若くは試驗委員より發する通知書を送付すべき宿所を便宜の爲豫め現住所外に置かんとする者は左の書式により追記すべし)
追テ御省若クハ試驗委員ヨリ發スル通知書ハ左ノ處へ御發送被成下度候
何府縣何郡市何町村何番地
(何某方)
履歷書
族籍
氏名
何年何ケ月
學年
一何年何月ヨリ何地ニ於テ何某ニ付キ又ハ官公私立何學校ニ於テ何學ヲ修メ所修ノ科目大略左ニ云々
一何年何月ヨリ何地官公私立何學校ニ入リ法律學科ヲ修業シ何年何月卒業ス其證書寫幷ニ本校證明書別紙ノ通リ
職業
一何年何月ヨリ何年何月迄何業ヲ營ミ若クハ何業ニ從事ス
一何年何月ヨリ何年何月迄何地何會社ニ傭ハレ何々ノ業務ニ從事ス
官職
一何年何月ヨリ何年何月マデ何地官公私立何學校何科教員トナリ教授ニ從事ス
一何年何月ヨリ何年何月マデ何官廳ニ於テ何々拜命何々ノ事務ニ從事ス其他何々ノ歷任
賞罰
一何年何月何地ニ於テ何々ノ事由ニヨリ賞ヲ受ク其辭令書寫左ノ如シ
(辭令書寫は其全文を揭げ辭令書なき者は本文中に受賞の事由を記すべし)
一何年何月何地ニ於テ何々ノ事由ニヨリ罰ヲ受ク其辭令書寫宣告書要領左ノ如シ
(辭令書あるものは其全文を揭げ辭令書なきものは本文中に其事由を記し又裁判所の宣告書は其要領を記し總て罰は其受罰の日數科料罰金の額等を記すべし)
破産家資分散又ハ身代限處分ノ有無
一何年何月何地ニ於テ身代限リノ處分ヲ受ケ何年何月負債ノ辨濟ヲ終リタルコト又ハ破産若クハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ何年何月復權シタルコト
(裁判所の言渡書寫を記すべし)
一破産若クハ家資分散ノ宣告又ハ身代限ノ處分ヲ受ケタルコトナシ
右ノ通相違無之候也
右
年月日氏名
身分證明書
族籍
氏名
何年何月
本籍
一何府縣何國何郡市何町村番地華(士)族(平民)戸主(何某男兄弟叔父等)
現住所一何府縣何國何郡市何町村何番地(何某方)
年齡
一何年何月何日何地ニ於テ出生
兵役
一何年何月何日何々ヲ以テ何兵何聯隊ニ入營何年何月何日何等卒トナリ何年何月何日現役滿期ヲ以テ豫備軍へ編入若クハ何年何月何日其徵兵署ニ於テ兵役免除等兵役上ノ事項ヲ記載スベシ
一理事主理任用令第五條ニ觸ルルコトナシ右ノ通リ相違無之候也
右
年月日氏名印
右ノ通相違無之此段證明候也
何府縣何市區何町村長
年月日氏名印
(本籍地の市區町村長に限る)體格證明書
一定の書式を示さざるに就き、擔當醫師に就きて、身體強壯にして、從軍に堪ふべく、且つ著大なる畸形等あらざることの證明を受くべし。
- 英
- Examination rule of adopting the probationary manager
- 独
- Examenregel von der Aufnehmung des Probeverwalters
- 仏
- Règles des examen pour l'adoption des directeur probation-aires
理事分限令
(りじぶんげんれい)明治二八年勅令第一二五號を以て公布せられたる勅令にして、□一理事は刑法の宣告又は懲戒の處分に依るに非ざれば、其意に反し免官轉官せらるることなし、理事を兼任する者は其本官在職中前上の規定を適用す、□二左の場合に於ては、理事に非職を命ずる事を得、イ戰時若くは事變に際し、臨時の必要に應じて增員し、其必要止み、平時の定員に復するとき、ロ制度の變更により過員を生じたるとき、ハ傷痍を受け若くは疾病に罹り、六ケ月に至り尚快復の候なきとき、但し本人の情願に依るとき、又は代員の必要あるときは六ケ月を待つの限にあらず、□三理事下の事項に當るときは豫備とす、イ現職若くは非職中他の文官に專任したるとき、ロ非職滿期となりたるとき、□四理事非職中は、其俸給三分の一を給す、但し官吏非職條例所定の許可を得たる者には之を給せず、□五豫備理事は、戰時若くは事變に際し、必要に應じ現職に復するの義務あり、其必要止むときは豫備に復す、□六理事年齡六十歳に滿るときは退職とす、現職の理事前項の年齡に達するも、勅任官は上裁に依り、奏任官は陸軍大臣特に留任を命ずることあるべし、□七理事身體若くは精神の衰弱により、職務に堪ゆること能はざるに至りたるときは、勅任官は上裁により、奏任官は陸軍大臣之に退職を命ずる事を得、□八理事豫備又は退職となりたるときは、退官者と同視し、明治二三年勅令九八號により退官賜金を給す、□九理事は現職中下の諸件を爲すことを得ず、イ公然政治に關係すること、ロ政黨の黨員、政社の社員となり、又は帝國議會、府縣郡市町村會議員となること、ハ俸給ある公務に就き、又は金錢の利益を目的とする公務に就くこと、ニ商業其他行政上の命令を以て禁じたる業務を營むこと、□十本令は發布の日より施行す、以上の規定を爲したるものなり。
- 英
- Ordinance of the competency of manager
- 独
- Amtskreisordnung des Verwalters
- 仏
- Ordonnance de la compé-tence des directeurs
離籍
(りせき)離籍なる語に用例二あり、廣義に於ては家族が其戸主の家、即ち家籍を脱して他家に入り、又は一家を創立する等、凡て戸主の家を離るることを云ひ、狹義に於ては、戸主が一定の事由に基き、家族を其家籍より排斥するを云ふ、而して民法は後者を採りたるものの如し、離籍に就きては種々の制限あり、□一配偶者は之を離籍することを得ず、如何に妻に不行跡あるも、夫が如何に妻の名譽を害するも致方なし、親と雖も戸主の意に反して居所を定めたるときは、之を離籍するを得べしとも雖、自己の配偶者は離籍するを得ず、離籍せんと欲せば離婚するの外なし、□二家族の妻も家族と共にするにあらざれば離籍することを得ず、離籍せんと欲せば、家族たる其夫も共に離籍せざる可らず、以上の場合を除き其以外の者は、一定の場合に離籍するを得、即ち□一家族の戸主の意に反して其居所を定めたる場合に、戸主が指定したる居所に轉ずべきことを催告したるに、尚之に應ぜざるときは、之を離籍するを得べし、但し未成年者なるときは離籍するを得ず、茲に爭あるは、成年の家族なるときは、法定の推定家督相續人と雖も離籍する事を得るや否や是なり、民法の規定に依れば、イ本家相續、ロ戸主の同意を得ずして配偶者を迎へ、又は養子を迎へ、又は養子となりたるときの外、其の家を離籍する事を得ず、然るに之を離籍することを得とせば、該條の精神に反するに至らん、されど大審院は離籍することを得と判決せり、□二家族が配偶者を迎へ、又は養子を迎へたるときは之を離籍するを得べし。(民七四九、七五〇、七八九條)
- 英
- Excluded from house
- 独
- aus dem Ortsregister streichen
- 仏
- Exclusion de la maison
利息
(りそく)流通資本より生ずる所得にして、元本債務の附從として支拂はるるものを利息と謂ふ、□一利息は所得なり、法律上に於ては經濟上の慣例に從ひ、資本と所得即ち元物と果實とを區別す、資本の存在を減却せずして、之より生ずる收入を所得即ち果實といふ、利息は他人の元本を利用するの對價にして、即ち所得の一種たり、□二利息は流通資本より生ずる所得なり、他人をして資本を利用せしめて受くる所得に二あり、イ資本を使用するの對價として受くるものあり、小作料、家賃の如し、ロ資本を消費するの對價として受くるものあり、利息是なり、蓋し資本が生産の爲めに、一回の外は活動する能はざるか、又は數回の活動を爲すを得るかに依り、經濟學上流通資本と固定資本とに別つ、流通資本は消費の爲めに用ひらるる資本にして、固定資本は使用の爲めに用ひらるる資本なり、利息を生ずるが爲めには、資本は流通資本として消費せざる可らず、即ち利息は家賃、小作料の如き、固定資本より生ずる所得に反して、流通資本より生ずる所得也、元本が流通資本と看做さるる場合には、之に對し支拂はるるものは皆利息なり、故に第一に元本が如何なる物より成立つを問はず、利息の元本となるべきものは、通常金錢其他の代替物なり、然れども之に限るにあらず、不代替物と雖も亦利息の元本たることを得、第二に利息が如何なるものより成立つを問はず、利息も亦金錢其他の代替物より成立するを通常とすれども、亦必ずしも然るに非ず、要するに所得たるや否やに歸す、又元本と同種のものたるを要せず、金錢の元本に對して米穀を支拂ふも尚利息たるが如し、□三利息は元本債務の附從として支拂はるるもの也、則ち利息たるには、第一に法律關係の存在を要す、消費資本より生ずる資本なるも、法律關係に基かずして生ずる所得は利息に非ず、例へば資本の所有者自ら之を消費し、所得を得るも利息にあらざる如し、第二に必ず債權關係の存在を要す、元本債務なくして利息債務のみ獨り存在する能はず、□四從つて下のものは利息にあらず、イ貸主が貸出の際爲す控除金、又は借主が返還の際出すべき增加金、ロ分割辨濟即ち元本を數回に分割し、年賦又は月賦を以て辨濟を爲す場合は利息にあらず、蓋し其支拂ふものは元本の一部なれば也、而して利息は、法律規定又は法律行爲に因りて生ず、前者を法定利息といひ、後者を約定利怠といふ、更に之を詳説すれば下の如し、□一約定利息、當事者間の契約によりて生ずる利息を云ふ、其額も亦契約によりて定る、但し利息制限法に定むる以上の利息を約するを得るや勿論とす、若し利息を附すべきことを定めたるも、其額を定めざるときは法定利率によりて之を定むるものとす、約定利息は更に別ちて二とす、イ塡補利息、賠償利息に相對するの語にして、債務者が債權者の金錢其他の財物を利用するの報酬として、之に與ふる金錢其他の財物を云ふ、從て賠償利息又は法定利息と異なり、損害賠償の一種にあらず、俗に利息又は利子と稱するは、此塡補利息を指す、ロ賠償利息、塡補利息に相對するの語にして、債務者が其債務の履行を遲延したる場合に、當事者の約定(即ち損害賠償の豫定)に基き、損害賠償として支拂ふ金錢其他の財物を云ふ、□二法定利息(遲延利息)債務者が其債務の履行を遲延したる場合に於て、法律の規定に徒ひ損害の賠償として債權者に支拂ふ金錢其他の財物を云ふ、其額は法定利率によりて之を定む、但し其元本たる債權が本來塡補利息附きのものなるときは、其利率は塡補利息の利率によりて之を定むるものなり。(民四〇四、四一九條參照)
- 英
- Interest
- 独
- Zins
- 仏
- Intérêt
利息制限法
(りそくせいげんはふ)明治一〇年第六六號布告を以て公布せる法律にして、奸黠なる債權者が、債務者より格別の高利を取るを妨遏せんとする目的の爲めに發布せるもの也、其内容は、□一契約上の利息に就きてはイ元金百圓以下は一ケ年に付き百分の二十(俗に十五圓歩)ロ百圓以上千圓以下は百分の十五(俗に二十圓步)千圓以上は百分の十二(俗に二十五圓步)以上を受取ることを得ず、若し此以上を超過したるときは、裁判上無效のものとし、各制限額迄引直さしめらる、□二以上の利息の外、總て人民相互の契約を以て、禮金棒利等の名目を用ふる者あるも、凡て裁判上無效とせらる、□三返還を違ふるときは、負債主より債主に對し、若干の償金、罰金、違約金、科料等を差出すべきことを約定することあるとも、槪して損害の補償と看做し、裁判官に於て該債主の事實受けたる損害の補償に不當なりと思量するときは、之に相當の減少を爲すこととせらる、注意すべきは此利息制限法は、商事には適用せられざること是なり、從て商事に就ては何程高利に定むるも、如何程高額の損害金を支拂ふことを約するも自由なり。(商施一一七條)
- 英
- Law of legally limited in-terest
- 独
- Gesetz von der Zinsbesch-ränkung
- 仏
- Règle de l'intérêt légale-ment limité
利他説
(りたせつ)利他説とは、自利説の反對の主義にして、行爲の標準目的を總べて他人の爲めてふことに置くもの也、即ち他人の幸福の爲め、快樂の爲め、自由の爲め等、苟も吾人の行動云爲は他人を單位とせざるべからずとし、吾人の本性には他意の自然の欲求を存すといふ心理的事實に其の説を立つるものなり、若し之を狹義に解すれば、公衆的快樂説即ち功利説となる。
- 英
- Altruism
- 独
- Altruismus
- 仏
- Altruisme
律
(りつ)刑に關する制を意味する語にして、我が古代法に於ては令に對し、律令格式と併稱せられたりき、現時に於ては法と相連續し、法律てふ熟語を成し、此の意義に於ては因果の則と同義にして、敢て刑に關する制のみにあらず、弘仁格式の序に、「蓋聞律以懲肅爲宗云々」とあり、舊唐書の刑法志に、「人之爲惡入于罪戾一斷律云々」とあり、明治一四年一二月布告第七二號罰例處斷法四條に「法に照し律に照し、違令違式に照し云々」とあるは、刑に關する制とやうに解すべき用例とす。
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
立案
(りつあん)法律案、命令案、豫算案、決算案等、其他凡ての案を作ることを立案と云ふなり、參謀本部條例に「國防の計畫及び用兵に關する命令を立案し云々」とあるは其用例なり。(參謀本部條例三條及案の部參照)
- 英
- Design
- 独
- Absicht
- 仏
- Dessin
立憲行政
(りつけんぎやうせい)立憲制度、即ち代議會(我國に於ては帝國議會)を有し、三權分立の精神に則りたる制度の下に行ふ行政を稱して立憲行政といふ、立憲國を法治國と云ふ如く、立憲行政といふも、法治制といふも、別名同義なるものとす。(立憲國の部參照)
- 英
- Constitutional administration
- 独
- verfassungsmäszige Verwaltung
- 仏
- Administration constitutionelle
立憲國
(りつけんこく)立憲國とは、立憲政體の國家と云ふの義にして、憲法を設けて統治行動の形式を規定したる國家也、別言すれば統治權の行動を各個の機關に分配し、例へば立法に就きては議會をして參與せしめ、行政に就きては政府をして之を行はしめ、司法に就きては裁判所をして之を行はしむる國家を立憲國と謂ふ也、英、米、佛、獨其他多くの國家は之に屬す、我國は上古以降專制の政體にして時に汚隆ありと雖も、政體は國體と共に變ずることなかりしが、明治維新以降、今上天皇陛下の御聖旨に依り、大に制度文物を革新し、裁判所及び各種の代議會を設けて、漸次立憲政體の基礎を定め、明治二二年憲法を欽定し、明治二三年之を施行せさせ給ふに迨び、立憲政體始めて茲に大成を告げ、立憲國となるに至りたり。
- 英
- Constitutional country
- 独
- verfassungsmäsziger Staat
- 仏
- Etat con-stitutionel
立憲政體
(りつけんせいたい)國家統治の形式に於ける分類中、憲法に依て代議會、裁判所、政府等を參與せしむる制を定め、國の政務を三權分立の精神に基き、以上の機關に分配し、其憲法の條規に準據して執政する政體を立憲政體と謂ふ、之に對するものを專制政體と稱へ、憲法の有無を問はず、當該國家の有權者獨斷にて政務を執行する政體を云ふ、專制政體は、常に君主國のみに限らず、或種の共和國に於てもあり得べきが如く、立憲政體も亦君主國及共和國に存す、佛、米の如きは立憲共和國にして、日、英、獨の如きは立憲君主國の例とす。(政體、立憲國の部參照)
- 英
- Constitutional goverment
- 独
- verfassungsmäszige Regierung
- 仏
- Gou-vernement constitutionel
立憲制度
(りつけんせいど)凡そ一國にして憲法を定め、代議會、裁判所、政府等の機關を設け、三權分立の精神(三權分立論に於けるが如き極端なる分立にあらずして、單に同精神に則るを云ふ)に基き、以上の機關に政務を分配し、互に其の權限を侵すことなからしめ、上には之を統一すべき有權者を置き(君主又は國民總會の如き)國家の政務を執行する制度を立憲制度と謂ふ、近世多數の文明國は、此の制度を採用し、人民の行動云爲を保障し、國權の圓滿活動を計るを普通とす。(立憲國の部參照)
- 英
- constitutional system
- 独
- verfassungsmäziges system
- 仏
- Système constitutionel
立證
(りつしよう)爭又は疑ある事實に付き、其爭又は疑を除去する行爲を證明又は立證と謂ふ、換言すれば爭又は疑ある事實に付き、其事實の眞實なることを裁判官をして確信せしむるを云ふ、而して立證の責任は、刑事訴訟に於ては檢事之を負ひ、(從て刑事訴訟に於ては立證の責任なるものなし)民事訴訟に於ては當事者之を負ふものとす。(民訴二一九條參照)
- 英
- Testification
- 独
- Zeugnisz
- 仏
- Témoignage
立證の責任
立證の責任とは、之等事實に關し證明を爲すの必要を稱す、立證の責任は又證明の責任とも云ふ、而して立證の責任は、當事者、殊に自己に利益なる判決を受けんとする當事者に在り、然れども下の事項に就ては立證の責任なし、□一法律上の推定、□二顯著なる事實、□三實驗則、□四自白是也、其他法律の規定をも擧ぐる學者あるも、立證は事實に關するものなれば、法律の規定は固より之を立證するの責任なし、殊に法律の規定に付きては、其適用、解釋、皆裁判官の職權に包含せらるるものなり、唯法律、命令、慣習法の存在に就ては、當事に存在の立證を爲す責任あることあり、されど裁判官は、地方慣習法、商慣習及び規約又は外國の現行法に付きては、職權を以て調査するを得べし。(民訴二一八、二一九條參照)
- 英
- Responsibility of testifica-tion
- 独
- Zeugniszverantwortlichkeit
- 仏
- Responsabilité de la testification
立法
(りつぱふ)立法なる語に廣狹二義あり、廣義に於ては、法律、命令等總て法規を制定するを云ひ、狹義に於ては、法律即ち帝國議會の協賛を經て臣民を覊束する準則を制定するを云ふ、而して立法なる文字は、常に後者即ち狹義に用ひらる、從て狹義の法律を制定することを云ふものにして、命令を制定することを云ふにあらず、抑も立法は之が立案、協賛、裁可の三段を經るにあらざれば成立せず、我現在に於ては、立案は起草委員に於て主として之に當り、協賛は議會、裁可は君主に於てなさるべきものとす。(立法手續の部參照)
- 英
- Legislation
- 独
- Gesetzgebung
- 仏
- Législation
立法機關
(りつぱふきくわん)立法機關の意義に就ては諸説あり、□一國家を以て統治權の主體とし、天皇も國家の統治機關なりと解し、立法機關は天皇及び帝國議會の二なりとなす説、□二天皇は統治の主體にして立法權を有す、唯帝國議會は之に參與し、協賛するに過ぎず、故に議會のみ立法機關なりとなす説、□三天皇が統治權の主體たるや否やは姑く之を措き、兎に角立法權を有す、議會は之に參與するも立法者にあらず、單に其機關に過ぎずとなす説、□四立法機關なる語は、天皇を含まざること明なり、議會は即ち立法機關なり、但し之が爲めに立法せざるものといふ能はず、立法權は天皇と議會と共同して之を行ふものなりと、何れの説に依るも第一説を除くの外は、立法機關は議會のみなりと解するが如し、憲法第五條に「天皇は帝國議會の協賛を以て立法權を行ふ」と、即ち天皇が立法權を有し、帝國議會は之に參與して協賛を與へ、以て法律成定の政務を完成するものなるを知る、さらば此の立法機關は議會のみなりとの説を通説と見るを穩當とせん。
- 英
- Legislative organ
- 独
- Gesetz-gebungsorgan
- 仏
- Organe législative
立法權
(りつぱふけん)立法の語に二義ある如く、立法權にも二義あり、廣くと云ふときは、法律、命令等凡て人民行爲の準則となるべき法規を制定するの權利を云ひ、狹く云ふときは、形式上の法律のみを制定するの權利を云ふ、而して普ねく認みらるるは後者也、我國に於ては、立法權は天皇に歸屬し、天皇は帝國議會の協賛を經て之を行ひ給ふ。(憲六條)
- 英
- Legislative power
- 独
- Gesetz-gebungsrecht
- 仏
- Legislatif pouvoir
立法事項
(りつぱふじかう)立法事項とは、必ず法律を以て規定すべき事項を云ひ、法令共同事項と相對す、法令共同事項とは、法律を以て規定するも、命令を以て規定するも任意なる事項を云ふ、而して法令共同事項中、一度法律を以て規定すれば、命令を以て規定することを得ず、即ち最早法令共同事項にあらず、然れども之が爲め立法事項なりと解するは早計なり、假令法律を以て規定したりと雖も、後日其法律を發止せんか、命令を以て規定するも自由となる、我憲法に於て立法事項として揭ぐるものは下の如し、□一戒嚴の要件及び效力、□二日本臣民たるの要件、□三兵役義務、□四納税の義務、□五居住及び移轉の自由の制限、□六逮捕、監禁、審問、處罰、□七住所の安全、□八信書の秘密、□九所有權の不可侵、□十集會結社の自由、十一租税の賦課、税率の變更等其主なるものなり、尚注意せざる可らざるは、立法事項と雖も緊急勅令を以ては之を規定し得べきこと是なり、蓋し緊急勅令は法律と同一の效力を有すればなり。(憲法二〇條乃至二九條、三五、五七條二項、五八條三項、六二、六三、七二條二項等)
- 英
- Articles of legislation
- 独
- Gegenstand der Gesetzgebung
- 仏
- Articles de la législation
立法者
(りつぱふしや)立法者なる語は廣狹二樣に用びらる、廣義に於ては臣民を拘束する所の法令を制定する者を指し、狹義に於ては命令を除外し、帝國議會の協賛を經て臣民行爲の準則を制定する者を指す、而して普ねく認めらるるは後者なり、從て命令を制定する者は之を立法者と云はず、後者の意に於て立法者と云ふときは天皇を指して云ふなり、但し帝國議會も立法者なりと云ふ者あり、此點に付きては立法機關を參照すべし。
- 英
- Legislator
- 独
- Gesetzgeber
- 仏
- Législateur
立法上の解釋
(りつぱふじやうのかいしやく)立法上の解釋とは、嚴格に云ふときは讀みて字の如く法律の解釋にあらず、法規の性質を案じて、學者之を命名したるに過ぎず、□一法令を以て他の法令の規定の意義を一定するものあり、之を例へば、民法施行法第二條に「民法に於て破産と稱するは、民事に就ては家資分散を云ふ」と規定し、民法に於て使用したる破産なる文字の意義を一定したるが如し、一見立法者が自ら解釋したるが如きも、是解釋にあらず、立法なり、裁判所人民は立法者の解釋に服するものにあらず、斯る法規に服するものなり、されど講學上稱して此の類に屬するものを立法上の解釋と稱す、□二或は以上の外上級機關の訓令、伺令を以て立法上の解釋と解する者あるが如し、然れどもこは誤解とす、これ有權的解釋に外ならず、立法上の解釋と異なるや勿論なり、要するに立法上の解釋とは、法律を制定して他法律の解釋をなすを云ふものとす。(刑七條)
- 英
- Legislative interpretation
- 独
- gesetzgebende Auslegung
- 仏
- Inter-pretation législative
立法手續
(りつぱふてつづき)立法は本來に於ては法規を制定することなれども、今日憲法上に於ては、法律を規定することのみを稱するに至れり、故に立法手續は、議會の協賛を經て裁可公布に依て行はるるものと云ふを得べし、□一立案せられたる法律は先づ議會の協賛を得べく發案又は提案せられざる可らず、發案に就て研究すべきことは、イ發案又は提案權は、政府と貴衆兩院とにあり、而して議院の發案は議員先づ其の院に提案し、其院の可決に依り初めて發案となる、ロ政府は自己の發案を撤回するを得るも、議院は自己の可決したるものを取消すを得ざるなり、□二協賛は兩院の可決を以てせらる、或學者は法律を實質と命令とに別ち、協賛は此の實質を確定するの行爲なりとなし、君主は裁可に依り、拘束力を附して命令するものなりとなす、されど法律は拘束力ある法則にして、拘束力ある命令と其の實質とを區別する如きは、極端説にして餘りに抽象論也、□三裁可は法律たるべき國家意思を確定する君主の大權作用也、從つて裁可は、彼の法律の效力發生を妨げずとの消極的なる不認可權の作用と同一視す可らず、積極的に法律を成立せしむる力を有するものとす、□四公布は完成したる法律を人民に周知せしむる大權作用なり、されど公布は法律實施の要件となるものにして、單純に法律の知識を得しむる手段に止まらざるものとす、□五施行は法律の活用を始むるを云ひ、施行期限に達して始めて法律は活動す、されば嚴格に云へば、施行は法律の制定手續にあらざるなり。(立法の部參照)
- 英
- Legislative prooedure
- 独
- Gesetzgebungsprozesz
- 仏
- Procédure légis-lative
立法例
(りつぱふれい)立法上の前例を稱して立法例と謂ふ、例へば現今各國の立法例を案ずるに、奴隷の制度は之を認めざるも、昔時の立法例に於ては之を認めたることは、羅馬法に徵するも疑なしと云ふが如きは、羅馬の立法を前例に擧げたるものなり。
- 英
- Instance of legistration
- 独
- Gesetzgebungsbeispiel
- 仏
- Exemple de la législation
立法論
(りつばふろん)立法論なる語は、解釋論に相對するものにして、法令の是非得失に關する立論、又は如何なる法令を制定するやを論ずる政策論なり、之を例へば現行民法の規定を案ずるに、或場合には兩親と雖も之を離籍することを得、蓋し兩親も家族なり、家族が戸主の居所指定權に從はざる場合には、之を離籍する事を得るは明かに民法の認むる所なりと云ふは解釋論なり、民法が兩親を離籍することを定めたるは、實に國情に悖る、況んや自己の配偶者は絶對に離籍することを得ざるに於てをや、速かに改正せざるべからずと論ずるは立法論なり、法律の解釋を爲すに當りて大に注意すべきは、此立法論と解釋論とを全然區別すべきこと是なり、現行法令にして如何に不備、不完、不都合なりと雖も、法令として存在する以上は、其法律を案じて之が解釋を定めざるべからず、不都合を恐れて明文を無視し、精神を度外するは斷じて非なり、少くとも立法の趣意に遠ざかる。
- 英
- Legistration theory
- 独
- Gesetz-gebungstheorie
- 仏
- Théorie legislative
律令
(りつれい)明治二九年法律第六十三號により、臺灣總督が其管轄區内に發する法規を律令と謂ふ、此律令は大體に於て内地の法律と同一の效力を有す、從て憲法上の立法事項に該當するものなりと雖も、律令を以て規定するに毫末の不都合なし、此律令は憲法に背くものに非ず、臺灣總督の發する律令を以て違憲なりと云ふは、一國憲法は必ず絶對に領土の全部に行はるるものなりとの前提を斷定せざるべからず、されど爾く解すべき何等の根據なしとすれば、少しく意を致さば斯かる解釋は僻見なりと云ふを得べきか、遮莫本令は所謂六三問題として其效力繼續と共に是非せられしも、現時は有效無違憲として是認せらるるに到れり、而して之を發するには、臺灣總督府評議會の議決を得、更に内務大臣を經て、勅裁を請ふべきを原則とす、但し臨時緊急の必要あるときは、斯かる手續を要せずして發することを得、此場合には發布後直に勅裁を請ひ、且つ之を臺灣總督府評議會に報告すべく、若し勅裁を得ざらんか、總督は直に其律令の將來に向て效力なきことを公布せざるべからず。
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
律例
(りつれい)律とは刑に關する制、例とは其れが總規の意にして、之を連續して熟語とせる律例なる語に於ても亦然り、即ち刑制の總則とやふの義なりとす、或は法律及條例の略語として用ひらるることあり、茲に法律とは、議會の協賛を經たる國家の意思にして、條例とは國家に依て認められたる範圍に於て、自治體が自主權に依り制定公布せる法規を云ふ。
- 英
- Law
- 独
- Gesetz
- 仏
- Droit
臨檢
(りんけん)或一定の場所に臨み實地に檢査するを臨檢と謂ふ、刑事訴訟法に「豫審判事は、被告人の住居又は事實を證明すべき物件を藏匿する疑ある者の住所に臨檢し、搜索を爲すことを得」とあるは其の用例なり。(刑訴一〇四條)
- 英
- Inspection
- 独
- Augenschein
- 仏
- Inspection
禀告
(りんこく)申告と云ふと意に於ては即ち一なり、官吏服務紀律に「本屬長官に禀告すべし」とあるは其用例なり。(同律一六條)
臨時
(りんじ)臨時とは、定時又は常時に相對するの語にして、豫定すべからざる時又は一時的の意に用ひらる、これを例へば通常議會に對して臨時議會と云ひ、常設委員に對して臨時委員と云ひ、定時總會に對して臨時總會と云ふが如し。
- 英
- Temporary
- 独
- zeitweilig
- 仏
- Temporaire
臨時沖繩縣土地整理事務局官制
(りんじおきなはけんとちせいりじむきよくくわんせい)明治三一年勅令第一四四號を以て公布せられたる勅令にして、□一臨時沖繩縣土地整理事務局は大藏大臣の管理に屬し、沖繩縣土地整理に關する一切の事務を掌る、□二臨時沖繩縣土地整理事務局に左の職員を置く
長官
勅任
一人
事務官
奏任
專任一人
技師
奏任
專任一人
書記
判任
專任三十六人
技師
判任
五十人
□三長官は沖繩縣知事をして之を兼ねしむ、□四長官は大藏大臣の指揮監督を承け、内務省の主務に就ては内務大臣の指揮監督を承け、局務を掌理す、□五長官は判任官定員に缺員あるときは、判任官俸給豫算定額内に於て、臨時雇員を使用することを得、□六長官は所部の官吏を監督し、奏任官の進退は大藏大臣に具狀し、判任官以下は之を專行す、□七長官は法律命令の定むる所に從ひ、所部の官吏を懲戒す、其奏任官に係るものは大藏大臣に具狀し、判任官以下は之を專行す、□八沖繩縣參事官及那覇税務署長は、事務官を兼任す、□九事務官は長官の指揮監督を受け局務に從事す、長官事故あるときは首席の事務官之を代理す、□十書記は上官の指揮監督を受け庶務に從事す、十一技手は上官の指揮監督を受け土地測量に關する事務に從事す、以上其大要也。
- 英
- Govern-ment organization of temporary office of arranging law of Okinawa prefecture
- 仏
- Organisation du bureau temporaire de l'arrangement de la terre d'Okinawa
臨時海港檢疫所官制
(りんじかいかうけんえきじよくわんせい)明治三三年勅令第七五號を以て公布せられし所にして、□一臨時海港檢疫所は、臨時海港檢疫に關する事務を掌る、□二臨時海港檢疫所は、内務大臣の命を承け地方長官之を管理す、□三臨時開港檢疫所の開設及閉鎖は内務大臣之を告示す、□四臨時海港檢疫所に下の職員を置く、イ所長一人、ロ臨時海港檢疫官補、ハ臨時海港檢疫所書記、ニ臨時海港檢疫員、ホ臨時海港檢疫醫員、□五所長は、臨時海港檢疫所所在道廳府縣の警部長を以て之に充つ、所長は地方長官の指揮監督を受け所務を掌理し、部下を監督す、□六臨時海港檢疫官補、及臨時海港檢疫所書記は、道廳府縣判任官を以て之に充て、地方長官之を命ず、□七臨時海港檢疫員及臨時海港檢疫醫員は、地方長官之を命じ其待遇は判任とす、□八臨時海港檢疫官補は、所長の命を承け檢疫に從事す、□九臨時海港檢疫所書記は、所長の命を承け庶務に從事す、□十臨時海港檢疫員は、上官の指揮を承け檢疫に從事す、十一臨時海港檢疫醫員は、上官の指揮を承け醫務に從事す、十二本令は明治三三年四月一日より之を施行す、以上の規定を爲したるものなり。
- 英
- Government or-ganization of temporary guarantine station of port
- 独
- Behördeordnung der zeit-weiligen Quarantäne-Station des Hafens
- 仏
- Organisation de la quarantine tem-poraire
臨時株主總會
(りんじかぶぬしそうくわい)株式會社に於ける臨時總會、又は株式合資會社に於ける臨時總會を臨時株主總會と云ひ、以て定時株主總會と相對す、定時總會は每年一回一定の時期(年二回以上配當を爲す會社に於ては每配當期)に於て、取締役又は無限責任社員之を召集して、取締役又は無限責任社員が提出したる書類、及び監査役の報告書を調査し、且つ利益若くは利息の配當を決議するものなり、之に反して臨時總會は、必要ある每に、取締役又は無限責任社員之を召集するものにして、決議すべき事項も豫め一定せず、又資本の十分の一以上に當る株主は、總會の目的及び其召集の理由を記載したる書面を、取締役又は無限責任社員に提出して、臨時總會の召集を請求することを得、若し取締役又は無限責任社員が、前上の請求ありたる後、二週間内に總會召集の手續を爲さざるときは、其請求を爲したる株主は、裁判所の許可を得て其召集を爲すことを得べし、其他大體に於て定時總會召集の手續と異なることなし。(商一五九、一六〇、二三六條)
- 英
- Temporary general meet-ing of shareholders
- 独
- zeitweilige Aktionärgeneralversammlung
- 仏
- Assem-blée générale extraordinaire
臨時薹灣土地調査局官制
(りんじたいわんとちてうさきよくくわんせい)明治三三年勅令第三四〇號を以て公布せられし勅令にして、□一臨時臺灣土地調査局は、臺灣總督の管理に屬し、地籍調査、圖根測量及地圖臺帳の調製に關する事務を掌理す、□二臨時臺灣土地調査局に左の職員を置く
局長
一人
勅任又は奏任
事務官
專任六人
奏任
技師
專任五人
奏任
監督官
專任十七人
奏任
屬技手
專任七百八十人
判任
□三局長は薹灣總督の指揮を受け、局中一切の事務を掌理し、部下の官吏を監督す、□四局長は奏任官の進退は之を臺灣總督に具狀し、判任官以下の進退は之を專行す、□五事務官は局長の命を承け、局中の事務を分掌す、□六技師は上官の命を承け技術に關する事務を分掌す、□七監督官は上官の命を承け、實地業務の監督事務を分掌す、□八屬は上官の命を承け、庶務及調査事務に從事す、技手は上官の命を承け技術に關する事務に從事す、□九局長は高等官の懲戒を臺灣總督に具狀し、判任官以下の懲戒は之を專行す、□十臺灣總督は必要に應じ、地方に支局を置くことを得、十一支局長は其局所在地縣廳の長を以て之に充つ、支局長は局長の指揮監督を承け、局務を掌理す、以上其の一班なり。
- 英
- Government organization of the temporary inspection bureau of land of Formosa
- 独
- Behörde-ordnung des zeitweiligen Landuntersuch-ungsbureaus Formosas
臨戰地
(りんせんち)戒嚴の宣告に依り、臨戰地境と定められたる土地を稱して臨戰地と謂ふ。(臨戰地境、戒嚴の部參照)
臨戰地境
(りんせんちきやう)合圍地境と共に、戒嚴地境の一種にして、戰時又は事變に際し、警戒すべき地方を區劃して、臨戰の區域と爲せる土地を云ふ、而して臨戰地境内にありては、地方行政事務及司法事務にして、軍事に關係ある事件は、凡て其地の司令官に管掌の權を委するものとす、從て地方行政官、裁判官及び檢察官は、其戒嚴の宣告あるときは、速かに該司令官に就きて其指揮を仰がざるべからず。(戒嚴、合圍地境の部參照)
林野整理審査會規則
(りんやせいりしんさくわいきそく)明治三二年勅令第一七九號を以て公布せられし勅令にして、□一林野整理審査會は農商務大臣の監督に屬し、國有林野の特別經營に關する重要の事項に付き、農商務大臣の諮詢に應じ、意見を開申す、□二林野整理審査會は、會長一人、委員十一人を以て組織す、委員は農商務省高等官四人、内務省高等官二人、陸軍省、海軍省、文部省及遞信省高等官各一人を以て之に充つ、□三臨時必要の場合に於ては、前上定員の外五人以内の臨時委員を命ずることを得、□四會長は勅任官を以て之に充つ、會長委員及臨時委員は農商務大臣の奏請により、内閣に於て之を命ず、□五會長の議事規則により議事を整理し、會議の決議を農商務大臣に具申す、□六會長事故あるときは、委員中上席の高等官をして其事務を代理せしむ、□七林野整理審査會に幹事二人を置き、農商務省高等官を以て之に充つ、幹事は會長の指揮を受け、庶務を整理す、□八林野整理審査會に書記を置く、會長及幹事の指揮を受け庶事に從事す、□九林野整理審査會の議事及び會務整理に關する規則は農商務大臣之を定む、以上其の大要也。
- 英
- Rule of inspection committee of arrangement of forest and field
- 独
- Regel von der Einrichtungs-aufsichtsgesellschaft des Forstes und Feldes
- 仏
- Règles de l'association pour l'inspec-tion de l'arrangement des bois et des champs
量
(りやう)容量の標準を量と謂ふ、度量衡法に依れば、量の基本は度と同一即ち尺にして、六萬四千八百二十七立方分を以て一升となす。(度量衡三條)
- 英
- Measure
- 独
- Masz
- 仏
- Mesure
領海
(りやうかい)古來海洋は、一國統治權の下に屬すべきものなるや否やに就て爭あり、されど今日に於ては絶對に一國統治權の下に屬することは、固より之を認めず、反對に絶對に萬國共通のものなりと云ふにもあらず、一國の陸地に沿へる海洋の一部は、一國統治權の下に專屬せしめ、其他は皆萬國共通のものなりとす、而して領海に對する國家の權利として國際法上認めらるるは、□一沿岸航海を内國船にのみ許す權、□二沿岸漁業を國民にのみ許す權、□三警察權中保安警察及び衞生警察權の行使、□四水先案内及航路標識に關する規則の設定、□五海關税に關する規則、□六海難に關する規定、□七海上禮式に關する規則の設定等にして、要するに國際法上の原則に反せざる範圍内に於て、國法を以て諸般の規則を設定するを得、而して領海の區域は、必ずしも一定したるものにあらず、從來三哩となせるも、西紀一八九四年巴里に開會せる國際法會議以來、從來の三哩を以て不足なりとし、平時に於ては六哩を以て領海と爲すことに傾けり。
領事
(りやうじ)領事とは、本國の經濟上の利益を圖る目的を以て、外國に駐箚する者を云ふ、故に公使の如く、本國若くは本國君主の政治的代表者として派遣せらるる者にあらず、其他公使と異る點は、□一常置の公使は本國と駐箚國との親密を計る目的を以て派遣せらるる者なるも、領事は本國の經濟上の利益を計る目的、即ち其駐在國との間に締結せられたる交通條約が、完全に履行せらるるや否や、本國の生産物の如何に販賣せらるるや否や等の目的を以て派遣せらるるもの也、□二公使の性質は上の如くなるを以て、一國に付き一人なるも、領事は一國に數人を派遣するも可なり、數人を派遣するときは其管轄區域を定むるを例とす、而して之を定むるには、其駐在國と本國との間に於て、交渉の結果之を決定するの慣例なり、領事の駐在國に在りて執る職務は、各國皆國法を以て定むると共に、條約を以て定むるものなれば、一定不變の原則なしと雖も、大體に於て、□一通商航海に關する本國の利益を保護し、□二本國と駐在國との間に締結せられたる交通的條約が、完全に履行せられたるや否や、□三本國人の駐箚國にある者に對し、保護を與へ、又は忠告を爲す等は普ねく認めらるる所なりとす、領事の種類は左の如し、「官職に基く區別」□一任命領事、本國の任命を受けて外國に駐在する領事を云ふ、選擧領事、名譽領事にあらざる領事は皆任命領事なり、任命領事は本國の官吏にして、一定の奉給を受く、從つて其の結果として、專ら其の職務にのみ從事することを要し、他の職業を併せ營むことを得ず、且つ常に本國臣民を以て之に充つものとす、□二選擧領事、駐在國にありて、本國の人が其の駐在國に在る本國の人民より選擧せられて領事となりしものを云ふ、故に選擧領事は官吏にあらず、且つ俸給を受けず、單に手當を受くるのみ、從つて他の職業を營むも妨げなし、但し現時選擧領事を認むる國なきが如し、□三名譽領事、駐在國又は其の他の國の人民にして、本國の委託を受けて領事の職務を行ふ者を云ふ、選擧領事と同じく本國の官吏にあらず、且つ俸給を受けず、單に手當を受くるのみ、從つて他の職業を營むも妨げなし、「管轄に基く區別」□一裁判權を有する領事、本國が駐在國に對して領事裁判權を有する場合に、其の條約に規定せられたる事件に就きて、裁判權を有する領事なり、此の領事は單に裁判權を有するのみならず、又通商領事と同一の權限を有し、且つ警察權及警察命令を發することを得べき職權を有するを常とす、斯くの如く裁判權を有する領事は、其本國が駐在國に對し領事裁判權を有する場合に、其條約に定められたる事件に付きて、裁判を爲すべきものなるが故に、其派遣に付きては、領事裁判權に關する條約中に其定めあるか、又は特別の條約なかる可らず、單に領事派遣に關する條約のみを以て、領事に裁判權を行はしむることを得ず、別言すれば、單純なる領事派遣の條約によりて派遣せられたる領事は、單に通商に關する職權のみを有するに止まり、裁判權を有するものにあらず、而して裁判權を有する領事は、常に任命領事にして、選擧領事、名譽領事は之を有せず、現在に於て裁判權を有する領事は極めて少し、我國に於ても條約改正(明治二七、八年)前に於ては、各國領事は裁判權を有したりしも、今は何國の領事も之を有せず、却て清國及暹羅國に派遣せらるる我國の領事が之を有するのみ、□二裁判權を有せざる領事、通商に關する權限のみを有する領事なり、或は之を通商領事又は商業領事とも謂ふ、「國際法上の階級による區別」□一總領事、普通の領事より比較的廣大なる管轄區域を有し、自己の管轄區域を數分したる其の各部に、駐在する普通の領事を直接に監督するの權を有する領事なり、而して或場合には、公使の職務を掌ることあり、斯かる領事を稱して總領事兼代理公使と稱す、□二普通領事、通常單に領事と稱するもの是なり、總領事と異なる所は、其監督に服し、其の管轄區域狹少なるの點にあり、□三副領事、總領事又は普通領事の職務執行を補助するものなり、□四領事代理、總領事又は普通領事の不在中、其の職務を代りて執行するものなり。
- 英
- Consul
- 独
- Konsul
- 仏
- Consul
領事官特別任用令
(りやうじくわんとくべつにんようれい)明治二六年勅令第一八八號を以て公布せられし勅令にして、□一公使館書記生及領事館書記生にして、滿五年以上公使館、領事館又は貿易事務官に勤務し、三級以上の俸給を受くる者は、外交官及領事官試驗委員の銓衡を經て、副領事又は貿易事務官に任用することを得、□二以上により任用したる者は、領事及總領事に任用することを得、□三本令は明治二六年十一月十日より施行す、以上其の一班なり。
- 英
- Ordinanoe of special appointment of consul
- 独
- Specialan-stellungsverordnung des Konsuls
- 仏
- Or-donnance de la nomination spéciale du consul
領事裁判權
(りやうじさいばんけん)外國に在留する自國臣民に係る一切の訴訟、又は或種の訴訟を其在留國の裁判權に服せずして、其國に駐在する自國領事の裁判に服せしむる權利を領事裁判權と謂ふ、按ずるに領事裁判權の制度は、法の屬人主義に胚胎したるものなり、而して其最も古く發達したる所を土耳古とす、土耳古に於て何故に斯く發達したるものなるや、領事裁判權に關する近世に於ける根本觀念は、一方に於ては、歐米各國が文明に進み、其制度の發達したるにも拘はらず、土耳古に於ては依然として進步の域に達せず、從つて其制度殊に裁判官、其官廳其法律等の完全なるものを有せざるを以て、歐米各國は本國より領事を土耳古に派遣し、之に其居留民に對する裁判權を有せしむるに至りたるものなり、又他の一方に於ては、其當時外國人にして土耳古に居留するもの多かりしに、土耳古は此等の外國人に對し自國の法律を適用し、又は自國裁判所をして裁判せしむることを肯ぜずして、自國法律は自國の土地に附著するものにあらずして、自國臣民に適用するもの也、加之自國は完全なる制度及び法律を有するものと信じ、外國人の如き者を裁判し、外國人に自國の法律を適用することを嫌忌したり、爰に於て外國人の所屬國は喜んで領事を派遣し、裁判を爲さしむるに至りたり、而して第一に土耳古と領事裁判權に關する條約を締結したるは佛國なり、領事裁判權は之を分ちて相互的と片面的とす、前者は双方の國家が之を有するを云ひ、後者は一方の國家のみ之を有するを云ふ、我國も明治三二年七月以前は、歐米各國の領事裁判權を認めたりと雖も、今日は既に之を撤去せり、而して今日我國が領事裁判權を片面的に有するは、支那と暹羅との二國に對してなり、元來領事裁判權を條約を以て之を定むるものなるが故に、確定不動の原則なるものなしと雖も、國際法上普ねく認めらるる原則は、□一刑事に關する領事裁判權、刑事々件に付ては如何なる場合に於ても、領事裁判權に付する場合は、原告が本國人たるか、被告が本國人たるか、又は事件が本國に關する場合に限る、□二民事に關する領事裁判權、民事々件に付ては、同一領事の管轄權に服從する人民間の事に係る場合は、其領事裁判す、若し異りたる領事の管轄權に屬する人民間の爭に係る場合に於ては、双方の領事が合議裁判を爲すことあり、土地の裁判所に裁判權を與へ、双方の領事が之に立會ひ審理裁判することあり、此等は皆條約に依て定むるを原則とす、其審級は條約又は國法の定むる所に依る、注意すべきは領事裁判權と、治外法權との區別なり、世の學者論客往々にして場言して曰く、我國も漸く治外法權を撒去せしめ、文明國の班に列するに至れりと、實に憫笑に堪へず、如何に一國が文明國となり、之を誇るを得るに至るも、治外法權なるものは國際社會のあらん限りは、撒去せらるべきものに非ず、消滅もするものにあらず、全然異なりたる觀念也。(治外法權の部參照)
- 英
- Consular jurisdiction
- 独
- Konsulsgerichtsbarkeit
- 仏
- Juridiction du consul
領事職務條約
(りやうじしよくむでうやく)交通を爲す二國間に於て、相互に其相手國に駐在せしむる領事の行ふ職務權限に關し、特に約定する條約を稱して領事職務條約と謂ふ、日獨領事職務條約、日白領事職務條約等即ち是なり。(日獨及日白領事職務條約參照)
- 英
- Convention of consuls' business
- 独
- Vertrag vom Konsulsdienst
- 仏
- Convention des affaires du consul
良心
(りやうしん)各人の心裡に存する道德意識即ち自他の行爲思想に對し、直接に其の正邪善惡の判斷を吾人に與ふる心的作用を云ふ、古來良心の本性に就ては、幾多の學者によりて討究せられたるも未だ尚定説なし、然れども其の討究の點は、良心てふものの存在を認むるや否やといふことにあらず、良心が一種の能力として吾人の心裡に存し、直覺的に道德的判斷を下す事實は如何なる學者も認むるを拒まざるべし、かの倫理學上の直覺説は即ち此處に立せられたる學説なり、尤も此直覺説には非難あれども、良心の存在は事實なりとして、然らば斯かる良心の起原如何といふことこそ重要なる問題たるなれ、良心の起原に關しては説の最も異なるものある所なるが、近時心理學の研究益精緻を致すに從ひ、良心の起原に關しても、科學的解釋を下さんとするに至れり、即ち良心を以て單に先天的生得性能となさず、他の一般智識と等しく、幾多の經驗と幾代の遺傳とによりて漸次發達馴致せられたる心意作用となすに至れり、更に換言すれば、人間が始め道德的經驗を積重し、先づ其性情は習慣性をなし、更に遺傳を加ふるによりて、遂に良心てふ一種特別なる性能を心裡の根底に形成するに至る也、從つて他説の多くが論ずる如く、良心は一定不變のものにあらずして、常に發達變化するものなることを許容せざるべからず、倩々良心の性質を事實に徵して考ふるに決して普遍的にあらず、其の境遇時代風俗慣習文物發達を異にするに從つて其の性質を異にするを見るべし、此事實は偶々以て良心の起原が經驗的習得性にあることを證するものと認むべきなり。
- 英
- Conscience
- 独
- Bewusztsein
- 仏
- Conscience
領地
(りやうち)領地とは、一國が國際法上他國の統治權により侵さるることなき權利を有する土地及び領海を云ふ、從て一國領地内にある者は、内國人は勿論、外國人と雖も、其滯在國の統治權に服從せざるべからざるものとす、然れども或場合には、一國領海に對して、特に陸地を指して領地と稱することあり。領土と云ふも、領地と云ふも毫も異なることなし、即ち別名同義のものなり。
- 英
- Territory
- 独
- Territorium
- 仏
- Territoire
領土
- 英
- Territory
- 独
- Territorium
- 仏
- Territoire
領地主權
(りやうちしゆけん)國家の領地は、國家の物的根本を形成するものにして、人民は國家の人的根本を形成するものとす、而して國家に人民と土地とを要するは、外部に對する關係に於て然るのみならず、之有りて始めて國家たるを得るもの也、別言すれば、人民と土地との二者あるが故に、國家は政治上の成立を爲し、又其作用を爲し得るものとす、國家にして法律上の作用を爲すは、即ち統治にして、國家意思の作用は、人民と土地とを統治するにあり、從て其土地は所有の目的たる土地にあらずして、國家權力の下に服從する物的基礎なり、人民は人的基礎なり、國家が國家として行動する行爲は、即ち公權にして、今日の所謂主權は毫も私權の臭味を帶びず、之を今日の主權の槪念とす、國際法上國家と國家との關係は、一國家の主權が他國家の主權に服從せざるに在り、即ち消極的の觀念なり、之に反して國際法上に於ては、人民が國家主權に服從するの關係なり、即ち積極的の觀念なり、故に國際法上主權の觀念は命令服從の關係にして、國際法上主權の觀念は、相互平等の觀念なり、換言すれば一は上下の關係にして、一は對等の關係也、されど國家は二個の主權を有するものに非ず、唯其對篆の如何により關係を異にするのみ、主權は其對象の如何により、□一人民主權と領地主權とし、□二對外主權と對内主權とに別つ、然していふ迄もなく其實體は即ち一也、從つて領地主權と云ふも、別箇獨立のものにあらず、唯領地に對して發動する場合を指稱したるものに外ならず。
- 英
- Territorial sovereignty
- 独
- Territorialsouveränität
- 仏
- Souveraineté territoriale
領土高權
領土高權と云ふも、領地主權と云ふも其實體は即ち一なり、唯領土高權なる文字は、中古の遺物たるのみ、蓋し十八世紀の末より國家の權利は公法的のものにして、私法的の意味を含まざることに想到し、中古に於て君主を土地所有者とし、其所有權を以て臣民の有する所有權より一層上位にあるものとしたりしが、此思想依然として暗々裡に學者の頭腦を支配し、領土權も亦所有權の一種なりと誤解し、遂に領土高權なる文字を産み出したるなり、然れども今日に於ては、領士高權なる文字は漸く閑却せられ、假に使用するも領地主權と同一意義に使用せらるるに至りたり。
- 英
- Territorial sovereignty
- 独
- Territorialsouveränität
- 仏
- Souveraineté territoriale
領土權
領土權、領土主權なる文字も前二者と略ぼ同義にして、領土權は領土に對する權力、領土主權は領土に對する主權を意味す。
- 英
- Right of territory
- 独
- Ter-ritorialrecht
- 仏
- Droit de territoire
領土主權
- 英
- Territorial sovereignty
- 独
- Territorialsouveränität
- 仏
- Souveraineté territoriale
領土保全
(りやうどほぜん)一國領土の喪失を防ぎ、之を保持するを領土保全と謂ふ、蓋し領土保全は、近時國際間に於ける通念なり、若し如何に國家の進運を企圖し、國力の充實を計らんと欲するも、領土にして小ならんか、以て覇を唱ふることを得ざればなり、是れ各國競ひて領土保全に意を致す所以也とす、而して此趨勢は將來益々甚しからんとす、新版圖發見の望絶えたる今日に於ては、蓋し自然の勢ならん。
- 英
- Integration of the territory
- 独
- Territorialsicherung
- 仏
- Intégration du la territoire
兩院
(りやうゐん)貴族院及び衆議院を各別に觀察し、之を相併稱して兩院と謂ふ、兩議院と云ふも異なることなし、此兩者即ち貴衆兩院なる一箇の議決機關を指示して、帝國議會又は單に議會と稱す。(憲法三三條)
- 英
- Both houses
- 独
- beide Häuser
- 仏
- Deux chambres
兩院協議會
(りやうゐんけふぎくわい)貴族院に於て甲議案を可決し、之を衆議院に廻付せしに、衆議院に於て之を否決したる場合には、全然否決となるが故に、別に問題を生ぜざるも、之に反して、衆議院に於て修正して可決したる場合には、兩院より委員を出して會同協議せしむ、此協議會を稱して兩院協議會といふ、兩院協議會の組織は、各院より各十名以下同數の委員を選出して之に充つ、議長は兩院協議委員會に於て各一名を互選し、每會交替してこれに代る、而して其初會に於ける議長は、抽籖に依て之を定む、委員の協議案成立したるときは、先づ議案の提出ありたる議院の議に付し、次で之を他院に移す、而して協議會に於て議決したる成案に對しては、各院は更に修正の動議を爲すことを得ざるものとす。
- 英
- Joint council of both houses
- 独
- Beratungsgesellschaft von den beiden Häusern
- 仏
- Conseil reunir des Deux Chambres
略取
(りやくしゆ)威迫又は暴行を加へて幼者を他所へ伴ひ去るを略取と謂ふ、彼の從來の監護權者の支配を破りて、他の支配の下に移すことを意味するに於ては、誘拐と同一なりと雖も、其手段が詐僞又は誘導に出ざる點に於て異る處分は、□一十二歳に滿たざる幼者を略取し、自ら藏匿し、又は他人に交付したる者は、二年以上五年以下の重禁錮に處せられ、十圓以上百圓以下の罰金を附加せらる、□二十二歳以上二十歳に滿ざる幼者を略取して自ら藏匿し、若くは他人に交付したる者は、一年以上三年以下の重禁錮に處せられ、五圓以上五十圓以下の罰金を附加せらる、□三略取したる幼者なることを知て自己の家屬僕婢と爲し、又は其他の名稱を以て之を收受したる者は、以上に照して一等即ち四分の一の刑を減じて處斷せらる、□四以上の罪は、被害者又は其監護すべき親屬の告訴を俟て其罪を論ぜらる、但し略取せられたる幼者が略取したる犯人と、有效に婚姻を爲したるときは、假令告訴あるも犯人は處罰せらるることなし、後日婚姻が取消され、離婚となることあるも亦同じ、□五二十歳に滿たざる幼者を略取して、外國人に交付したる者は、輕懲役に處せらる。(刑二二四條乃至二二六條)
利用
(りよう)物又は權利の性質を變ぜずして、之を收益の資に供するを利用又は利用行爲と謂ふ、例へば金錢なれば確實なる銀行に預けて利息を收め、地所、家屋なれば相當の人に賃貸し、確實なる方法により、地代又は屋賃を徵收するが如き即ち是なり。(民一〇三條)
- 英
- Utilisation
- 独
- Benutzung
- 仏
- Utilization
利率
(りりつ)利息の高は、其元本に對する割合と支拂時期とによりて之を定むるを常とす、而して一定の期間に支拂はるべき利息の高が、元本に對する割合を利率といふ、通常元本の百分を以て之を算す、即ち何割何分といふ、通常は一年を以て利率を定む、然れども或特別の取引又は小取引には、月又は日を以て定むることあり、而して法律行爲を以て之を定むることあり、法律の規定を以て之を定むることあり、前者を約定利率といひ、後者を法定利率といふ、□一約定利率、利率の約定は明示たると默示たるとを問はず、故に一定の利息を附する習慣あり、又は永く一定の利息を支拂ひたる事實あるときは、此利率を約せるものと見るを得べし、若し又當事者が單に利息を生ずべきことを定め、利率を定めざるときは、法定の利率に依るものとす、尚利率に就きては一定の制限あり、利息制限法の説明を見るべし、□二法定利率、別段の意思表示なきときは、皆此利率に依る、而して一般には年五分にして、商行爲より生じたる債務に就きては年六分とす。(民四〇條、商二七六條〕
- 英
- Rate of interest
- 独
- Zinssatz
- 仏
- Taux d'intérêt
理論
(りろん)理論とは、推論の方則に準據して打ち立てられたる系統あり、組織を有する或事象の説明也、一言にいへば、合理的論議の謂にして、其が客觀的妥當性を有すると否とに關せざる也、然れども其理論を價値の方面より論ずる時は、矢張其標準は客觀的妥當性を有するか否かに依りて定るべし、而して理論は、事實の經驗より獨立に打ち立てられ得るを以て、之を實際に應用し、兩者相併行制約して始めて好果を擧ぐべき也、即ち科學とは體系をなせる理論の謂にして、何れも事實を發見し、之等の事實を滿足に説明することを以て目的となすも、かかる理論は、常に必ずしも眞理と稱することを得ざるを以て、事實の經驗に參酌して、之を補修することを力むべきが如し、而して理論は多くの事象、特に社會の實際問題を解釋する上に於て、之を使用するときは、大なる簡約と利便とを得べし、理論的とは多く實際的應用的等と對して使用せられ、總て系統的組織的將た綜合的と云ふことを指意す、然るに又事實に遠かる傾向あるより、之を惡意義に取りて空想又は空理等と同義に考へ、實際に迂遠なりとか或は單に個人の思辨に過ぎず等の非難を受くることあり。
- 英
- Theory
- 独
- Theorie
- 仏
- Théorie
類似解釋
(るゐじかいしやく)裁判官は、自己の前に提出せられたる一切の問題に對し裁決を與ふべきものにして、法規の存在せざるを理由として職務を辭することを得ず、然るに法規は、將來發生することあるべき總べての事項を豫想して、これを網羅することを得べきものにあらず、人事は多端なり、社會に於ける事物は千態萬狀にして、悉くこれを豫測して、一々之に應ずるの法規を制定するは不能の事に屬す、故に法律は全く缺漏なしと云ふことを得ざるや勿論とす、裁判官が其缺漏を理由として、裁判を拒むことを得ずとせば、如何なる方法によりてこれに應ずべきや、裁判官が一定の準則に依らずして、隨意に裁判するを得ざるや論を俟たず、此の如き場合に於ては、他の事項につきて設けられたる規定よりして、適合すべき法規を發見せざるべからず、即ち裁判官は法律に規定なき事項に就きては、類似の關係存する所の規定を準用して裁判すべき也、此の如く類似の規定によりて、規定なき場合に其關係を解釋するの方法を類似解釋といひ、其補充することを類推と謂ふ。
- 英
- Similar explanation
- 独
- ähn-liche Auslegung
- 仏
- Explication simil-aire
類推
(るゐすい)類推とは、法律の類似解釋を爲すべき意思の作用を云ふ、即ち類似の關係に於て、已に存在する法律を根基として、法規の存在せざる關係に適合せしむる補充的作用に外ならざる也、故に類推は立法にあらず、又解釋にもあらず、法律自體の補充とも云ふべきものとす、類推には二種あり、第一種は單一なる法規を基礎とし、解釋上これに該當せざる類似の場合に之を應用するにあり、第二種は第一種と異り、相關係する所の多數の法規より推究して一の法律觀念を得、其法律觀念により支配すべき法律關係にこれを應用するに在り、注意すべきは、類推と擴張解釋とを混合せざらんこと是れ也、擴張解釋なるものは、法文の文字の意義を擴張して、立法者の眞意を發見し、立法者の意思中に在りし事項に、これを適用するにあり、然れども類推は一の法規の明文を以て、立法者の意中に存せざる事項に適合せしむるにありとす、故に二者全く其性質を異にするは注意すべき點なりとす。
- 英
- Supposition by similar case, analogy
- 独
- Analogie
- 仏
- Supposition par le cas similaire
累犯
(るゐはん)刑法上に於ける用語にして、再犯以上の犯罪を稱して累犯と謂ふ、其前罪と後罪とは必ずしも同一犯罪たるを要せず、汎く犯罪の累加を稱するものなりとす、換言すれば、一旦刑に處せられたる者が、更に罪を犯せるを再犯と謂ひ、再犯によりて處刑せられたる者が、更に罪を犯すときは三犯なり、以下これに準ず、此の如く再犯以上の犯罪を稱して累犯とは謂ふなり、累犯は其の刑を加重して罰せらるるを例とす、是れ蓋し目的刑罰主義の要求する所にして、凡そ刑罰は犯罪に科する惡報にして、犯罪行爲者に科するに苦痛を以てすると同時に遷善ならんことを目的とす、然るに一度以上苦痛を與へられたる累犯者が、再三犯罪を敢てする以上は、刑罰の目的上之を加重すべきを至當となす、是れ累犯は加重せられたる刑を科せらる〓所以也。(刑五六條乃至五九條再犯加重の部參照)
- 英
- Relapse, crime of third or of more
- 独
- Rückfall
- 仏
- Infraction du troisième ou plus
隷
(れい)上下の關係に於て、下級者が上級者に服從的の狀態にあることを隷と謂ふ、隷屬といふと同意義なり、支那古代の法典に於ては、(隷也石力)と稱して、人民が君國の爲めに盡さざることを意味したることあり、然れども現時我國の法典に於ては、例へば天皇に直隷す等といひて、國家行政の機關が天皇に隷屬することをいひ現すに用ふるを見れば、一般臣民の服從義務を説明するに、隷なる文字を用ふる例なし。(二九年勅二三九號屯田後備役兵材及下士兵卒監視規則、陸軍衞生會議條例一條等)
- 英
- Belong
- 独
- Gehören
- 仏
- Apparte-nir
例
(れい)例には數意義あり、□一數多の場合に通ずる一般の原則を持して例と云ふことあり、例へば人は私權を享有するを例とすといへば、人の私權享有の能力あることを原則とする場合の如し、□二過去に於て生じたる事實を例と云ふことあり、例へば先例若くは判決例等といふ場合の如し、□三法規の意義を現すことあり、例へば法例若くは違警罪即決例等といふ場合の如し。(舊刑八七八九條)
- 英
- Provision
- 独
- Vorsicht
- 仏
- Pro-vision
例規
(れいき)國家内に於ける慣例規則を汎稱して例規と謂ふ、通常特に何々例、何々條例、何々規則等の名稱を有する慣例法則を總稱する場合に用ふること多し。(典範六〇條)
- 英
- Regulation
- 独
- Regel
- 仏
- Règle-ment
禮遇
(れいぐう)皇族、華族其他一般人民に比して、特に厚き待遇を皇室又は國家より受くることを禮遇と謂ふ、或意味に於ては、皇族の特權。華族の特權等と云ふと同意なり、皇族の禮遇としては貴族院議員と爲ることを得ること、皇族會議の議員となること、租税に關する免除の特別待遇を受ること、司法上の特權を受くること等其著しきものなり、華族の禮遇としては、貴族院議員たるを得ること、司法上特權を有すること、天皇及び皇族と結婚し得ること等又著しき例なりとす。
- 英
- Respectful treatment
- 独
- höfliche Behandlung
- 仏
- Traitement respectueux
例外
(れいぐわい)或法律上の原則に對して、其原則の適用を受けざる部分範圍を稱して例外と謂ふ、例へば民法上の原則として、人の私權享有は其出生に始まるとするに拘はらず、相續等の特別なる場合に於ては、出生せざる胎兒と雖も其權利を有し得べきことを定めたる如き場合は、此後の部分を指して特に例外といふ也、之を又除外例とも稱す。
- 英
- Exception
- 独
- Ausnahme
- 仏
- Exception
令狀
(れいじやう)裁判所及び豫審判事、受託判事が必要なる場合に於て發する所の召喚狀、拘引狀、拘留狀を總稱して令狀と謂ふ、□一令狀の性質、イ召喚狀の性質、召喚狀とは、其名の如く、裁判所又は判事より一定の時期に於て、一定の場所に出頭すべきことを、一定の人に對して命令する所の書類也、此令狀は執達吏をして送達せしむるものにして、令狀の送達と受命者の出頭との間には、少くも二十四時間以上の猶豫を存せしめざるべからず、重輕罪の被告人に對しても、先づ普通の場合には此召喚狀を發するを以て原則とす、ロ拘引狀の性質、拘引狀は其性質召喚狀に似たれども、召喚狀は被命令者に自働的出頭を命ずるものにして、拘引狀は強制的にこれを判事の面前に引致するにあり、公判には原則として禁錮以上の刑に該る者にあらざれば、拘引狀を發することを得ざれども、豫審に於ては此の如き制限なきを以て、罰金刑以下の者に對しても拘引狀を發することを得べし、ハ拘留狀の性質、拘留狀は禁錮以上の刑に該る被告人を訊問したる後、因つて以て其の自由行動を拘束せしむる所の令狀なり、拘引狀は裁判官の面前に、受命者を出頭せしむる爲めに強制力を用ひるものなれども、拘留狀は被告の爾後の證據煙滅又は其逃亡を豫防するが爲めに、一定の場所に拘禁するものなり、被告人逃亡したる場合に於ては、訊問を爲さずして拘留狀を發することを得るものとす、□二拘引狀を發する條件、豫審判事が拘引狀を發するには、下の條件の一に該當することを要す、イ召喚狀を受けたる被告人が其日時に出頭せざるとき、ロ被告人一定の住所を有せざるとき、ハ被告人罪證を煙滅し、又は逃亡するの虞あるとき、ニ被告人未遂又は脅迫罪を犯し、尚ほ其目的を遂げんとする虞あるとき、ホ證人正當の事由なくして其の呼出に應ぜざるとき、□三令狀の效力、イ召喚狀の效力としては、被告人に出頭の義務を生じ、出頭したる被告人は、即時に訊問すべく、遲くとも出頭の日を過ぐることを得ず、ロ拘引狀の效力としては、被告人又は證人を訊問する爲め、判事の面前に引致せしめ、引致したる被告人又は證人は、其引致したる時より四十八時間内に訊問せざるべからず、四十八時間を經たるときは、拘留狀を發するにあらざれば、之を釋放すべきを原則とす、ハ拘留狀の效力としては、被告人を其令狀に記載したる監獄に引致し、一旦拘留せられたる被告の、これを取消し又は釋放出監を指揮し、又は有罪の判決確定する迄は繼續して拘禁の效力を有す、□四令狀の樣式、總べて令狀には被告事件及び被告人の氏名、職業、住所を記載せざるべからず、但し召喚狀を除く外は、其氏名分明ならざるときは、容貌、體格等を明示するを以て足るものとす、令狀を發する場合には、年月日を記載し、判事及び裁判所書記これに署名捺印すべきものにして、右の樣式を缺く令狀は、被告人に於て其命令を拒むことを得べし、□五令狀の執行、召喚狀は執達吏をして被告人に送達せしめ、拘引狀及び拘留狀は、巡査、憲兵卒をして之を執行せしむ、拘引狀、拘留狀は、時宜により正本數通を作りて、巡査、憲兵卒數人に分付することを得るものとし、拘引狀、拘留狀を執行するには、其正本を携帶して被告人の請求あるときは、これを示さざるべからず、其執行を爲したるときは、其正本に執行の場所、及び日時を記載し、若し執行すること能はざる時には、其事由を記載し署名捺印すべく、其令狀に關する書類は、これを檢事に差出すものとす、次に注意すべきは、令狀執行の命を受けたる巡査、憲兵卒は、被告人、其家宅若くは他人の家宅に潜匿したりと思料したるときは、其地の市町村長、又は其差支あるときは、隣祐二名以上の立會を以てするにあらざれば、其搜索を爲すことを得ざるもの也、家宅搜索は、日出前、日沒後之を爲すことを得ざるものとす、但し旅店、割烹店、其他夜間と雖も衆人の出入する場所に在ては、其公開時間内に限り、何時にても搜索を爲すことを得るものとす。(刑訴六九條乃至八六條)
- 英
- Warrant for arrest
- 独
- Verhaft-ungsbefehl
- 仏
- Mandat d'arrêt
隷屬
(れいぞく)下級者が上級者に對し、服從的觀念に基きて、從屬的關係に在ることを隷屬と謂ふ、然れども一般人民が國家に服從するが如き、一般服從の場合に用ふる文字にあらずして、特別なる義務に基く服從關係、即ち國務大臣が天皇に隷屬する場合、官廳が天皇に隷屬すといふ場合の如き之を用ふ。
- 英
- Subjection
- 独
- Unterwerfung
- 仏
- Sujetion
料金
(れうきん)國家が個人の利益の爲めに、國家の行爲、又は營造物、若くは公用物の利用に對し、其報酬として個人が國家に納付すべき手數料を指して料金といふ、此料金の割合は、必ず法令の定むる所によらざるべからず、例へば郵便料金、電信料金等と云ふ場合の如し。
- 英
- Fee
- 独
- Gebühr
- 仏
- Fief
料金率
料金率とは、個人が國家に納付すべき料金の定率を云ふ、茲に定率と云ふは、特定せられたる割合を指す。(鐵道船舶郵便規則一二條)
- 英
- Rates of fee
- 独
- Gebührsrate
- 仏
- Taux du fief
連印
(れんいん)同一文書に、二名以上の者が其姓名を列記して、各々これに捺印することを連印といふ、例へば連帶債務に於て、其證書に連印すと云ふ場合の如し。
- 英
- Joint signature
- 独
- Verbindungs-marke
- 仏
- Signature réunie
聯合國家
(れんがふこくか)聯合國家とは、これを又結合國家とも云ひ、單獨國家に對して稱するの語也、即ち聯合國家は、二個以上の國家の結合する團體にして、對外主權を有するものを云ふ、二個以上の國家と云ふが故に、其主權も亦二個以上なることを要するや勿論とす、而して各聯合國には、或は外交上の點にして結合するものあり、或は内治上の點に關して結合するものあり、此聯合國家はこれを細別して、聯邦、君合國、政合國、合衆國の四種と爲すことを得べし、□一聯邦、聯邦とは、多くの國家が集合して、聯邦なる團體を作りたるものを云ふ、故に聯邦には、必ずや各國間に或共通なる部分を有することを要す、其共通なる部分とは、其各國家の主權を合して一となし、以て外國に對するもの也、從て聯邦國は、外國に對する利益關係共通の部分に關してのみ、其聯邦が主權を有するものにして、其以外の主權は、依然聯邦が組織する各國家之を有す、現今に於ける獨逸國の如きは、此種に屬するものとす、□二君合國、君合國とは、君主の身體を以て結合する國家を云ふ、即ち二個以上の國家が、單に君主を同一にするに過ぎすして、其他の事項に就きては餘り關係なきなり、君合國の實例としては、白耳義とコンゴー國との關係にして、白耳義國王レホボルト第二世は、亞弗利加コンゴー國の王を兼ぬ、而して此の君合國は、其君主を同一にするも、國際法上其人格を喪失するものに非ず、又其稱號を異にし、數國が其政體を異にすることあるも、何等の支障あることなし、□三政合國、政合國とは、或事項を以て結合するものにして、即ち政治上の事項を以て結合し、國際法上一個の主體として外國に對するもの也、政合國の實例は、墺地利、匈牙利の兩國也、此兩國は、外務と軍務とを互に共同とし、之に關する財政も亦共同なるも、其他の事項に關しては、兩國の間に何等の關係なく、各別に行動するものとす、□四合衆國、合衆國は、元來數多の國家を聯合するものにあらずして、合衆國を組織せる國家は、國際法上の所謂國家にあらず、單に國内法上に於てのみ國家たるものとす、故に合衆國を組織せる各國は、外國に對して直接何等の權利をも有するのに非ず、北米合衆國の如き其實例とす。
- 英
- Joint state
- 独
- Staatverein
- 仏
- Etats réunis
連記法
(れんきはふ)連記法と云はば、數多の事項を連續して記載するを總稱するの語なれども、主として用ひらるるは、選擧法に關する連記投票を指す場合なりとす、投票に於ける連記法とは、所謂單記法に對するの語にして、選擧區内の全數の候補者の投票に、之を記載せしむることを云ふ、此連記法は、第一に選擧人間に投票を行ふ上に於て、不公平なる結果を生ぜしむるのみならず、多數代表の弊を現實すものなるが故に、我國現時の法規に於ては、此連記投票を捨てて單記法を採れり。
- 英
- Continued writing method
- 独
- Methode des fortdauernden Schreibens
- 仏
- Méthode d'ecrire continuellement
連坐
(れんざ)共同して二人若くは二人以上の者が責任を負ふことを連坐と謂ふ、例へば刑事犯罪に於ける共犯の場合の如し。(保甲條例二條)
- 英
- Joint responsibility
- 独
- Mitver-antwortlichkeit
- 仏
- Responsabilité reunie
連坐者
共同して責任を負擔すべき各人を連坐者といふ、即ち連帶して責任の負擔に坐す各人を云ふ也。(保申條例二條)
- 英
- Persons who have joint responsi-bility
- 独
- Mitverantwortlicher
- 仏
- Per-sonnes qui sout responsables communément
連借
(れんしやく)連帶して借用することを連借といふ、即ち數人が連帶して金錢若くは其他の物を借入れたる場合を指すもの也、連帶債務と云ふと稍其内容を狹くすと雖も、大體の觀念に於ては異る所なきが故に連帶債務の條を參照すべし。
- 英
- Borrow on joint security
- 独
- Borgen auf der vereinten Versicherung
- 仏
- Emprunt sur le cautionnement com-mun
連借者
連借者と云ふは、連帶して借用せる各人を云ふ、茲に連帶とは、同一の責任を帶ぶる連合を意味す、即ち甲乙の二者にて金千圓を連借せりと云へば、各自が千圓の全部に就き返濟の責任を負ふことを意味し、各自五百圓づつの債務を負ふに在らざるを云ふ、尤も全部の債務が千圓なれば、其の一人が之を辨濟するときは、本例に於ける甲乙二人とも其の債務を免るるは勿論とす、唯一人に於ても全部の辨濟を肯ぜざる可らざるのみ。(連帶責任の部參照)
- 英
- Borrowers on joint security
- 独
- Borger auf der gemeinschaftlichen Bürgs-chaft
- 仏
- Emprunteurs sur lecautionne-ment commun
連署
(れんしよ)或證書面に、二人以上其姓名を例記して署名するを云ふ、署名とは自ら自己の姓名を手記することにして、我が邦の慣例に於ては記名調印とす、法律も亦之を認む、されば二人以上の者が、或證書面に其の姓名を例記して、調印するときは連署なり、連署は、其の證面上の權利義務に對して、其の關係者又は共同義務者たることを明にするに用ふ。(署名又は自署の部參照)
連續犯
(れんぞくはん)連續犯とは、刑法學上の用語にして、數個の行爲が法規によりて單一なる罪を爲す場合の一種に屬す、即ち同一なる罪となる行爲が、繼續せずして數回反覆せらるる場合を指稱するもの也、此數個なる行爲が、法律上單一なる罪として連結せらるるには、各行爲が同一種たることを要す、即ち其各行爲が同一なる法益に對して、然かも其侵害行爲が類似の方法によりて侵されたることを必要條件とす、故に例へば甲女が乙男と夫婦關係を有する間に於て、丙者と屢々夫婦外の交接を爲し、又は甲が其雇人に對し每夜猥褻の行爲を爲し、又は甲が一回に收受したる僞造貨幣を數回に使用し、丁稚が主人の同一なる卷煙草箱より、每日巻煙草を數本宛竊取するが如きは即ち連續犯也、之に反して甲が丙と姦通を連續する中途に於て、乙男は夫婦關係を解除し、更に丁男と結婚したるとき、丁稚が最初主人の封鎖せる卷煙草函より巻煙草を竊取したる後、其箱が封鎖せられたる爲め、更に之を破壞して、卷煙草を竊取したるが如き場合に於ては、前後の行爲は連續犯を成立せざるものとす、大審院判決例に於ても、犯人が一の犯罪を行はんとするの決意を爲し、其決意の實行上犯罪遂行に必要なる數個の行爲を爲したる場合に、其各所爲が互に相連絡し、犯人が當初希圖したる目的の範圍内に於て、之等の行爲を爲したるものなるに於ては、各個の所爲は獨立の犯罪を構成せずして、相共の一罪を構成するものと解せり、是れ所謂連續犯の場合なりとす。
- 英
- Continuous offence
- 独
- fort-gesetztes Verbrechen
- 仏
- Infraction con-tinueuse
連帶義務
(れんたいぎむ)二人若くは二人以上の者が、連帶して負擔する所の義務を連帶義務と謂ふ、例へば數人が會社を發起したる場合に於て、其發起に係る出願其の他の事項に就き、連帶して義務を負ふべき場合の如き、若くは連帶債務者が、連帶して債權者に對する義務を負擔する場合の如し、尚連帶債務の條を參照せらるべし。
- 英
- Ioint obligation
- 独
- Solidar-obligation
- 仏
- Obligation réunie
聯隊區司令部條例
(れんたいくしれいぶでうれい)明治二九年勅令第五六號を以て公布せられし所にして、同例に示す所によれば、各聯隊區に司令部を置き、其の司令部に司令官(佐官)副官(大中尉)及び書記を置くものとす、司令官は師團長に隷屬し、聯隊區内に於ける徵兵事務及び召集事務を司る者なり、但し徵兵事務に關しては、尚當該旅管に於ける步兵旅團長の監督を受くるものとす、又司令官は、聯隊區内に現住する在郷陸軍々人、及び各補充役に在る者の身上異動其他の願出でに關することを掌るものとす、副官は司令部一般の事務に服す、書記は上官の指揮を受けて、記注計算の事に從ふ、聯隊司令部の位置は陸軍大臣に於て定むるもの也。
- 英
- Regulation of regi-mental district commander office
- 独
- Regulierung des Regimentbezirk-Com-mandos
- 仏
- Règles de l'Etat major du régiment
連帶債務
(れんたいさいむ)連帶債務とは、共同債務者をして、共同且つ各別に債務の目的たる全給付を爲すの義務を負はしむる所の債務也、連帶債務に於て履行を爲すべき當事者は、各獨立して債權者に對す、然れども履行すべき目的は同一なり、例へば甲乙丙三人にて、連帶債務として三百圓の義務を負ひたるときは、甲乙丙は各自獨立して、三百圓の全額を給付する義務を負擔するものにして、各自百圓づつ分擔すべきものにあらず、而して其履行の目的は、三百圓なる金額の給付の唯一目的たるのみなれば、其唯一目的が履行せらるれば、他の債務は殘存せざるもの也、故に唯一の目的のみにして、決して當事者の數と相當する債務の目的ありと云ふべからず、凡そ原因が唯一にして、債權者及び債務者も各唯一なるときは、唯一の目的によりて唯一の債務を爲すものなるは明かなれども、連帶債務の場合は、唯一の目的ある多數の債務者を連結するものなることを注意せざるべからず、故に其唯一の目的にして履行せられたる以上は、債務全部は消滅すること當然なりとす、而して連帶債務に於て、各債務者が全部の債務を負擔すると云ふは、債務者に對する關係に於て云ふべきことにして、債務者のみの相互の關係より云へば、各自の間に負擔部分より、一人が全部を負擔することあり、數人がこれを分つことあり、其負擔部分は各場合に付き同一なるを得ざるも、各當事者間の契約によりて定まるべきものにして、其反對なる意思を推測し能はざるときは、各自平分に負擔すべきものとす、右述ぶるが如く、連帶債務なるものは數人が各獨立して、同一の目的に就きて義務を負ひ、數個の獨立したる債務を成立せしむるもの也、各自の債務が獨立なるよりして、當然下の如き結果を生ず、即ちイ發生原因たる法律行爲が、債務者中の一人に對して無效なるも、他の債務者の債務の有效なるを妨げず、ロ一の債務者に存する取消の原因は、他の債務に影響を及ぼすことなし、ハ各自の債務は同一の原因を有することを要せず、即ち多數の債務者が、別異の原因に依り義務を負擔するも、其間に連帶の存することを妨げず、ニ各自の債務の體樣は同一なることを要せず、即ち一人は條件に付きて債務を負擔し、一人は無條件にて之を得るも、一人は期限附にて之を約し、一人は期限を附せずしてこれを約するも、其間に連帶あることを妨げず、ホ各債務は同一の時若くは場所に於て創設するを要せず、以上は連帶者が各自獨立して、債務を負擔するより生ずる當然の結果なりとす、つぎに連帶債務なるものは、元來原則に對する一の例外なり、故にこれを推測することを得ず、即ち當事者が連帶を約するの意思を明示せざるに、連帶債務を創設したるものと推定するは不當なり、故に當事者が、明かに約束したるとき以外に於ては、當然生ずるものにあらず、連帶債務に關して法律上必要なる要點を下に槪説すべし、先づ連帶債務の效力を説明せんに、效力は債權者と債務者との間に生ずるものあり、又債務者相互の間に生ずるものあり、□一債權者と債務者との間に生ずる效力、(甲)債權者の請求及び債務者の履行、各債務者は獨立して全部の義務を負擔するものなるが故に、債權者は其一人に對して、全部又は一部の請求を爲すことを得、而して一人に對する請求は、敢て他の債務者の債務を消滅せしむるものに非ず、故に一人に對して一度請求したる部分と雖も、履行を受けざる間は、之を他の債務者に對して請求することを得、各連帶債務者は、各自同一の目的に付き義務を負ふものなれば、同時に總債務者に對して、全部又は一部の履行を請求し得べきは勿論とす、而して此場合に於ても、各連帶債務者に對し別々に全部又は一部の請求を爲したると同一の效力を生ずべきもの也、(乙)債務者の一人に付き生じたる事項が、他の債務者に對して效力を及ぼすべき程度、前述せるが如く、連帶債務は數多の債務より成り、各債務者が債權者に對して有する關係は獨立なり、故に連帶債務者の一人に就き生じたる事項は、他の債務者に對して效力を及ぼさざるを以て一般の例規とす、然れども此原則には、債務の性質幷に法律の規定より生ずる制限あり、之を左に説明せん、イ成立以後消滅以前に關する事項、成立に關する事項に就きては、前段に説明せしが如く、一の債務に關する事項は、他の債務に影響を及ぼさず、成立以後消滅以前にありても、債務者の一人に付き生じたる事項は、他の債務者に對して效力を及ぼさざるを以て原則とす、例へば一人に對して期限を變更するも、他の債務者は何等の影響を蒙むらず、又一人に對して辨濟を猶豫するも、他の債務者は其利益を受けざるものとす、之に對する一の例外として、債權者が債務者の一人に對して爲したる請求は、全員に對してこれを爲したると同一の效力を生ずるもの也、ロ消滅に關する事項、連帶債務の性質上、一の債務に付き生じたる消滅原因が、當然他の債務を消滅せしむることあり、今連帶債務の性質並に法律の規定に基き、一の債務者に付き生じたる消滅原因が、他の債務者に對して效力を及ぼすべき場合を擧ぐれば、(1)一の債務者の履行は、當然他の債務を消滅せしむ、是れ連帶債務の性質より生ずる效果にして、債務は數多ありと雖も、履行すべき目的は同一也、同一の目的に付き再度の履行あるべき謂れなし、故に債務者の一人が、全部又は一部の履行を爲せば、他の債務者に對して履行を求むる事を得ず、從て連帶債務者の一人の履行は、當然他の債務者の義務を消滅せしむるの效力あるものとす、(2)一人の債務者と債權者との間に爲されたる更改は、當然他の債務者の債務を消滅せしむるものとす、通常債權者の一人が債務者と更改を爲すに當つて有する意思は、他の債務者に免責して更改を爲したる債務者のみを拘束せんとするにあり、故に法律は一般の場合に於ける當事者の意思に重きを置きて、此の如く規定せり、(3)相殺、連帶債務者の一人が、債權者に對して自己の債務と相殺すべき債權を有するとせんか、其の原因を有する債務者が之を援用せば、當然自己の債務を消滅せしむべきや明かなり、他の債務者も亦之が爲めに、其の債務を免るべきことも明かなり、然れども相殺は、相殺の原因となるべき債權を有する債務者にあらざれば、之を援用することを得ざるを原則とす、法律は之に例外を設けて其公平と便宜とにより、他の債務者をして其相殺の原因を有する債務者の負擔部分に就きて、共同の免責を得る爲め、自ら進みて其相殺を援用することを得しむ、(4)連帶債務者の一人に對して爲したる免除の效力、債權者が連帶債務者中の一人に對して爲したる免除は、其債務者の負擔部分に付き、他の債務者の債務を免除せしむるものなり、(5)連帶債務者の一人と債權者との間に生じたる混同の效力、債權と債務と同一に屬するに至りたるとき、即ち混同したるときは、其債務を消滅せしむ、今連帶債務者の一人が、債權を相續したるが如き事實によりて、其債務者と債權者との間に混同ありたるときは、其債務は消滅するものとす、故に混同の原因を有したる債務者は、他の共同債務者に對して、求償權を行ふべきものにして、債權者の資格を繼ぎて、之に臨むを得ざるものとす、(6)連帶債務者の一人に對して時效が完成したる場合、一人に對してのみ時效が完成したるときは、他の債務者には何等の影響を來たさざるや、單に純理を貫けば、時效の完成したる債務のみを消滅せしめて、他の債務は全部繼續するものと云はざるべからず、然れども法律は、連帶債務者の一人の爲めに時效が完成したるときは、其債務者の負擔部分に付きては、他の債務者も其債務を免るるものと定めたり、ハ連帶債務者の破産より生ずる效力、債務者の一人が破産したるときは、債務者は現に有する債權の全部に付き、其財團の配當に加入することを得べきは當然とす、未だ全部辨濟を受けざるときは、全額に付きて加入することを得、破産者たると他の債務者たるとを問はず、既に一部の辨濟を爲したるときは其部分を控除し、殘餘の全額に付きてこれに加入することを得るなり、他の債務者に對して請求を爲すも、未だ辨濟を受けざる間は、尚ほ全額に付きて配當に加入することを得、一人に對する請求は、他人に對する請求を妨げざると同じく、其破産財團に加入することを妨げざる也、同一の理由により、破産の精算ありたる後全額に相當する比例により、其財團より辨濟を受けたる後と雖も、他の債務者より殘額の辨濟を受くることを得、又其破産算後、他の債務者に對し、破産が開始したるときは、殘額に付き其財團に加入することを得べし、つぎに債務者の全員又は二人以上が、破産の宣告を受けたるときは、同一の理由により、未だ辨濟を受けざる全額に付き、各財團に加入することを得、然れども各財團より全額を超過すべき辨濟を受くるを得ざるや勿論なり、若し超過して受けたるときは、債權者に於て之を財團に返還せざるべからず、□二債務者相互の間に生ずる效力、(甲)負擔部分、各連帶債務者は、債權者に對して、債務の全部に付き義務を負ふ、然れども債務者各自の間に於て、債務の負擔を分つを常とす、即ち債權者に對する關係より論ずれば、各自全部の義務を負へども、相互の關係より云へば、各自の間に負擔部分あるなり、此負擔部分は債務者間の特約によりて定まることあり、又債務の成立當時に於ける事情により定まることあるなり、然れども特約なき場合に於ては、常に平等の割合を以て負擔部分とするものとす、(乙)求償權、連帶債務者中の一人が債務を辨濟し、其他自己の出捐を以て共同の免責を得たるときは、他の債務者に對して各自の負擔部分に付き、求償權を有するものとす、所謂共同の免責を得ると云ふは、債權者に對して自己が他の債務者と共に債務を免るるを云ふ、辨濟其他自己の出捐によりてと云ふは、有償に債務を消滅せしむるの意なり、故に無償にて債權者より免除を得たるが如き場合は、此の求償權を有する能はざるものとす。(民四三二條乃至四四五條)
- 英
- Joint obligation
- 独
- Solidar-obligation
- 仏
- Obligation réunie
連帶債務者
(れんたいさいむしや)連帶債務に於て、其連帶の債務を負擔するものを稱して連帶債務者といふ、連帶債務者は、如何なる法律上の義務を有するやの點は、前項に於て詳説したるを以て之を再説せず。(民四三三條)
- 英
- Joint debtor
- 独
- Mitschuld-ner
- 仏
- Debiteur reuni
連帶責任
(れんたいせきにん)二人若くは二人以上の者が、共同して或責任を負擔する場合を連帶責任といふ、例へば連帶債務者の如き、又は合名會社員の如きは、連帶責任を負ふ一例なりとす。
- 英
- Joint liability
- 独
- Solidar-ität
- 仏
- Solidarité
連帶無限責任
(れんたいむげんせきにん)二人もしくは二人以上の者が、連帶して無限に負擔する責任を連帶無限責任と謂ふ、例へば合名會社の社員の如きは、連帶無限の責仕を有するものとす。
- 英
- Unlimited liabilty for joint
- 独
- unbeschränkte Solidarhaftung
- 仏
- Responsabilité réunie non-limitée
聯邦
(れんぱう)聯邦とは、聯合國家の一種別なりとす、詳細は聯合國と題する條下に於て詳説したるを以て參照せらるべし。
- 英
- Confederation
- 独
- Bundesstaat
- 仏
- Confédération
連名投票
(れんめいとうへう)連名投票は、又之を連記投票又は連記法とも稱し、選擧に關係して用ふる語にして、被選擧者の氏名を列記して、投票するものを云ふ、連記法と題する條下を參照すべし。
- 英
- Voting of series of name
- 独
- Stimmzettel mit den verschiedenen Namen
- 仏
- Vote de serie de noms
羅馬法
(ろおまはふ)紀元前七百五十三年、羅馬の建國以來(我神武天皇の卽位に先立つこと九十有餘年)紀元六世紀の半項に至る迄、羅馬に於て發達し、羅馬に於て行はれたる羅馬市民の私法を汎稱して羅馬法と謂ふ、羅馬法は實に古今に絶冠して東西に卓越し、其當時輩出せし法律學者の議論は、敢て空想にあらず、實務の應用に著眼して、然かも克く法理に適合せり、是れ世人が羅馬法學を讚美して已まず、古今東西の法律學者の研究の題目たるも亦實に所以なきにあらざる也、羅馬建國の時より三百年間に於ける法律の大略は、載籍の以て徵すべきものなきが故に、これを確知することを得ず、唯僅に想像に得るのみ、紀元前四百五十年頃始めて十二銅標の法律世に出でたり、此法律は十二の銅版に記載して、これを裁判所に揭示したるを以て此名あり、此十二銅標の法律は、實に幼維なるものなりしと雖も、其後に制定せられたる法律は皆之に基くと見做すが故に、歷史上極めて重要視せらる、此の法律は、今日に於ては散逸して其全豹を窺ふを得ず、されど一般學者の謂ふ所によれば、此十二銅標は、賣買、婚姻、貸借、其他何事にも面倒なる儀式を要したるものの如し、元來羅馬は其當時武力強大にして諸國を征服し、其版圖擴大に、諸外國人羅馬に輜輳し、羅馬固有法に定めたる儀式を用ひずして取引を爲したり、又假令右の儀式を實行したりとするも、凡べての儀式に羅馬市民に依てのみ行はるべきものにして、他國人が之に加はるときは效力を生ぜざりしなり、然れども外國人の取引を一切無效として、保護を與へざるは實際の許さざる所なれば、本來の法律のみにては如何ともする能はず、遂に紀元前二百四十年頃、外國人の爲めに一の裁判官を置き、羅馬人と外國人間との爭訟に關して裁判せしむるに至れり、斯かる狀態の下に於て、法學者の研究は年を追ひて進み、有名なる法學者の輩出して、議論を試みるもの多く、法律も亦駿々として發達し來り、其底止する所なく、紀元五百年頃に至りては、其必要に應じて發布せられたる一條一例は、積みて殆ど山の如くなるに至りぬ、其局遂に羅馬に於て法典編纂の氣運を促すに至り、東羅馬皇帝ユスチニアヌスの時に至り、委員を命じて其編纂に著手し、五百三十三年を以て完成したり、是れ實に有名なるユスチニアン法典にして、後世の立法者學者が仰いで以て摸範とする所のものなりとす。
- 英
- Roman law
- 独
- römisches Becht
- 仏
- Droit romain
六週間現役兵
(ろくしうかんげんえきへい)徵兵令の條項により、特に六週間陸軍の現役に服するものを六週間現役兵といふ、同法の示す所によれば、滿十七歳以上二十八歳以下の者にして、官立府縣立師範學校の卒業證書を所持し、官立公立小學校の教職にある者は、六週間陸軍現役に服せしめ、其服役に關する費用は官給とす、而して右の服役を了りたる時は、直に國民兵に編入せらるるものとす、六週間現役に服せしむべき者は、其教職に就きたる年又は其翌年に於て、其居住地師管内の步兵隊に編入して服役せしむるものにして、其入營期日は每年六月一日とす、六週間現役兵の身體檢査は、入營すべき年に於て、一般の徵兵檢査と同時に之を行ふ、而して徵集に應ぜざるものは、徵兵檢査規則に照して相當の處分あるものなり。(徵兵令一三條三項六週間現役兵條例參照)
- 英
- Soldier in active service for six weeks
- 独
- Soldaten während der Sechs Wochen
- 仏
- Soldat en service militaire active pendant 6 semaines
錄事任用令
(ろくじにんようれい)明治二九年勅令第二九五號を以て定められたる所にして、錄事の任用に關する規定なりとす、錄事は左の資格を有する者より之を任用す、□一錄事登用試驗を經て其合格證書を有する者、□二二ケ年以上裁判所書記の職に在る者及び在りたる者、□三曾て二ケ年以上錄事の職に在りたる者、□四裁判所書記登用試驗を經て其及第證書を有する者是れ也、次に陸軍准士官下士にして、試驗を要せず判任文官たるの資格を有するものは、陸軍に限りこれを錄事に任用することを得、但し高等學校の法學部を卒業したる者、判檢事登用試驗規則によりて、司法大臣の指定したる公私立の學校、又は文部大臣の認可を經たる學則により、法律學を教授する私立學校に於て、法律學を卒業したる者は、本令施行後五ケ年間は、文官普通試驗委員の詮衡を經て、錄事に任用することを得るものとす。
- 英
- Ordinance of appointment of Rokuji
- 独
- Anstellungsverordnung von Rokuji
- 仏
- Ordonnance de la nomination spéciale de Rokuji
六等親
(ろくとうしん)自己又は自己の配偶者より、或親族に至る迄の間の親等の隔離を云ふものにして、如何なる者が六等親に當るやは親等と題する條下を參照して知らるべし、我民法に於ては、六等親内の血族を以て親族の範圍となせり。(民七二五條)
- 英
- Family of sixth degree
- 独
- Familie des Sechs Grads
- 仏
- Famille du sixième degrès
論證
(ろんしよう)普遍的原理より、確實なる論理の手續を以て斷案を引き出すをいふ、即ち純理的智識作用にして、彼の數理學の斷案を引き出し來る方法の如き其の好例なり、而して論證は、普遍的原理より必然的確實の方法に依りて、斷案を引き出すを以て、其の斷案は動すべからざる眞理と認められざるべからず、然れども其の論證の道程に於て、往々誤謬に陷るより、其の斷案をして常に客觀的妥當性を有せしむることは困難なり、是れ隨つて經驗的智識を要する所以なりとす。
- 英
- Demonstration
- 独
- Demonstra-tion
- 仏
- Demonstration
論理
(ろんり)宇宙の現象は、一として因果の理法に制約せられざるものなし、吾人の思惟に於ても、此の理法を適用して智識欲を滿足せしめ、確實なる推論判斷を得るなり、即ち或普遍的原則を前提として、的確に理路を進め、以て必然的斷案を導き出すことを得、此の道程を稱して論理と謂ひ、吾人が宇宙萬物の事理を説明する主觀的法則なり、論理學とは即ち此の論理の方式を攻究する科學にして、今日最も普通に行はるる方式は、演繹法と歸納法との二也、論理的とは論理の法則に適合することを云ひ、前提より斷案を引出し來る道程に於て、矛盾撞著なく、理路整然と貫徹せるを云ふ、論理的必然とは、前提となるべき公理より、正當の推論に依れば必ず爾かあらざるべからざる斷案の生ずることを云ふ。
- 英
- Logic
- 独
- Logik
- 仏
- Logique
論理解釋
(ろんりかいしやく)論理解釋とは、法律の解釋に關する一方法にして、所謂學理解釋中の一に屬するものとす、即ち論理的推理によりて、法律の意義を探究し、之を確定するの方法とす、論理解釋は、一の法規と、其法規を包含する法律全體の關係、立法の目的、法律判定の原由、其他一の法規と成立當時に於ける外部の事情との關係を參酌して、立法者の眞意を解釋するを以て其本旨とす、又論理解釋は文理解釋と相俟つて、法律の眞意を解釋すべき方法にして、法文中に包含する意思を探究するを以て唯一の目的とするものなれば、單に法文によりて現れたる法則を認識せしむるに止まらず、暗默に表示したる法則をも明かにするものとす、而して論理解釋を爲すに就きては、草案の理由書、又は帝國議會の議事錄、委員會の對論筆記等を參照することを得、然れども之等の材料は、立法に參與したる者の一部の意思表示にして、立法者の意思にあらざるを以て、一の有力なる參考となるに過ぎざるも、之にのみよりて其意義を解釋すべきものにあらざるなり。
- 英
- Logical interpretation
- 独
- logische Auslegung
- 仏
- Interpretation logique
賂遺
(ろゐ)賄遺と云ふと全く同意義なり、賄賂收受罪の條下に於て詳説したるを以て、同部を參照せられよ。(舊刑一三二條)
- 英
- Bribery
- 独
- Bestechung
- 仏
- Corruption
猥褻罪
(わいせつざい)猥褻罪とは、猥褻の行爲によりて行はるる犯罪にして、十二歳に滿たざる男女に對し猥褻の所行を爲し、又は十二歳以上の男女に對して、暴行脅迫を以て猥褻の所行を爲したる罪、(一ケ月以上一年以下の重禁錮に處し二圓以上廿圓以下の罰金を附加す)十二歳に滿たざる男女に對し、暴行脅迫を以て猥褻の所行を爲したる罪、(二ケ月以上二年以下の重禁錮に處し、四月以上四十圓以下の罰金を附加す)を總稱す、主要なる點を説明すれば、□一猥褻の所行、猥褻の行爲とは、色情を喚發し、又は滿足せしむる爲め、若くは既に喚發したる色情を外部に表現する目的に於て爲され、之と同時に、淫事に關し現時社會に於て書かれたる一般風儀上の感情を、著しく傷害する所の總べての行爲を稱するものにして、例へば人類異性間の交接、鷄姦、獸姦、手淫の類是れなり、而して猥褻行爲と云はんには、色情に關する事を要するが故に、此要件を缺くときは、假令他人に對して著しく羞耻の感情を喚發すべき行爲なりと雖も、猥褻と云ふことを得ず、例へば放尿の爲めに局部を露出するが如き、又は子弟を懲戒する目的を以て、衣服を脱し裸體とするが如き、入浴の爲めに裸體となるが如き、何れも猥褻と云ふことを得ず、つぎに淫事に關する風儀上の感情を害したるや否やは、現時の社會に於て一般に書かれたる風儀上の感情を標準として決すべきものにして、裁判官の認定によるべきものとす、□二十二歳に滿たざる男女に對して猥褻の所行ありたること、即ち十二歳未滿の男女に對して、暴行脅迫を用ひずして猥褻の行爲ありたる場合也、此場合に於ては、相手方が猥褻の行爲を受くることを承諾したると否とを問はず、本罪を構成するものとす、蓋し幼者にして色情の發達未熟なる者に於ては、猥褻の行爲の何たることを解せざるが故に、其者に依て與へられたる承諾は、眞實の承諾と目すべからず、從て是等幼者に對しては、其承諾の有無に拘はらず、他人より猥褻の行爲を受けしめざることとし以て、其人の貞操に關する感情及び自由を保護する必要あり、而して現行刑法は、十二歳未滿の男女は、常に此狀況にあるものと看做し、これを保護するもの也、終りに若し十二歳未滿の幼女に對し、其承諾の有無に拘はらず、交接を爲したるときは、茲に姦淫罪として嚴罰せらるるものなり、□三十二歳以上の男女に對する場合、此場合に於ては、暴行脅迫の手段によりて、猥褻行爲を爲したるときに限り處罰することとせり、蓋し任意にして眞實なる合意により、互に猥褻の行爲を爲すことは、公然の場合の外は、他を害せざるが故に、法律は之を處罰せざることとし、相手方の眞實なる承諾なきに拘はらず、然かも暴行脅迫の手段により、相手方の抵抗力を排除して、猥褻行爲を爲したる場合に限り、其貞操に關する感情幷に自由を保護する爲めにこれを處罰せり、而して暴行とは、生命身體に對する不法の體力を意味し、脅迫とは生命身體に對し、現に危害を加ふべしと威嚇することを意味す。(刑一七四、乃至一七六條)
賄賂收受罪
(わいろしうじゆざい)賄賂收受罪は、官吏が人の囑託を受け、賄賂を收受し、又は之を聽許したる罪(一ケ月以上一年以下の重禁錮に處し、四圓以上四十圓以下の罰金を附加す、依て不正の處分を爲したるときは一等を加ふ)を云ひ、其構成要件としては、犯人は官吏たる身分ある事、職務上の行爲に關し囑託を受けたる事、賄賂を收受し又は聽許したる事、以上の四條件を必要とす、今之を槪説せんに、□一官吏たる事、犯人は官吏たる事を一要素とす、官吏とは任命の手續によりて、官制の定むる國家の政務を執行すべき義務を負擔したる一個人の身分を云ひ、其俸給の有無、現に採る職務の有無を區別せず、而して明治二三年法律第百號によりて、公吏も亦刑法上の官吏に關する規定の適用を受くべきものなるが故に、公吏も亦本罪の主體たることを得るものとす、公吏と云ふは、選擧又任命によりて、地方自治體(府縣郡區市町村)の機關を組織し、階級的所屬ありて、官吏に非ざる身分を云ふ、然れども國會議員、府縣會議員、市町村會議員の如きは、官吏にも公吏にもあらざるが故に、本罪の主體たることなきもの也、右の如く、收賄罪の成立には、官公吏たる身分を以て第一の要素とするが故に、一私人が官吏なりと詐稱して、他人より囑託を受け贈與を收受したるときは、詐欺取財罪を構成すべきも本罪を成立することなし、□二第二要件としては、職務上の行爲につき囑託を受けたることを要す、本罪は官吏瀆職罪中の一種なるを以て、官吏が官吏たる資格に於て、即ち職務の範圍内に屬する事項に就き、囑託を受けたる場合に限り成立するものとす、從つて假令官吏と雖も、單に一種人の資格に於て、他人より贈與物を收受するも罪とならず、又自己の職務權限外に屬する事項に就きて、囑託を受くるも本罪を構成せず、權限外に屬する事項を自己の權限内に屬する如く、他人を欺罔して、囑託を受け、賄賂を收受したるときは、詐欺取財を構成すべきも本罪を成立せず、而して苟も自己の職務に關する以上は、其の囑託が不當處分の請求に屬すると否らざるとを問はず、本罪を構成す、つぎに囑託の目的たる行爲は、常に特定したることを要す、從て行爲の種類幷に時期の不確定なる場合に於ては、本要件を完成せず、然れども其行爲の作爲に屬すると、不作爲に屬するとは問ふ處にあらざる也、□三第三要件として、職務上の行爲に對する報酬としたることを要す、本要件は、贈與者が贈與に附帶したる要件たるに止まり、受贈者に於て眞實囑託を受諾したると否とは問ふ所にあらず、而して職務上の行爲に對する報酬としたる以上は、其報酬が既往の行爲に對すると、將た現在又は將來の行爲に對するとを問はす、本罪を構成す、然れども囑託を受けをたることを要するが故に、官吏が囑託を受けたることなくして爲したる行爲に就き、贈與を受くるも本罪を構成せず、□四第四要件として賄賂を收受し、又は聽許したることを要す、賄賂と云ふは、職務上の行爲に對する(報酬たる)不法の利益を總稱するものにして、金錢を得べきものたると否とは問はず、苟くも有形的のものたる以上は、一時的の利益と雖もこれを包含す、例へば交接の許容、又は饗應の類是れなり、つぎに收受と云ふは、官吏が直接に賄賂を收受するのみならず、間接に收受する場合も包含す、例へば官吏の家族に對し贈物を供與したる者あるに當り、官吏情を知りながらこれを贈與者に返却せざるが如し、又聽許と云ふは、贈與の申込みに對する承諾を意味す、間接の聽許をも包含するは前段に同じ、以上の四要件を具備するに至りたるときは、收賄罪を構成するものにして、其官吏が收賄の結果不正の處分を爲したると否とは問ふ所にあらず、然れども現行刑法は、其刑罰に於て不正の處分を爲したるときは、單に收受又は聽許にしたる者の刑に一等を加へて、處分することとせり。(刑一九七、一九八條)
- 英
- Crime of receiving bribe
- 独
- Bestechungsempfangsverbrechen
- 仏
- Infraction de reccvoir l'appât
王
(わう)單に王と云へば、廣く外國の主君を指す場合ありと雖も、我國法の下に於て王と云ふは、天皇より五世以下の皇族男子を王といひ、女子は之を王女と稱す。(典範三一條)
- 英
- Prince
- 独
- Prinz
- 仏
- Prince
抂斷
(わうだん)裁判官が不法に法を抂げて處斷することを稱して抂斷と謂ふ、抂斷に關する罪は、刑法に規定する所にして、「裁判官、檢事、警察官吏、刑事の裁判に關して賄路を收受し、又は聽許し、因て被告人を曲庇したる者は、三ケ月以上三年以下の重禁錮に處し、十圓以上百圓以下の罰金を附加せらる、因て其被告人を陷害したるものは、二年以上五年以下の重禁錮に處し、二十圓以上二百圓以下の罰金を附加す、若し抂斷したる所の刑、此刑より重き時は……反座す」とあり。(舊刑二八六條)
- 英
- Corruption
- 独
- Verderben
- 仏
- Corruption
王妃
(わうひ)天皇より五世以下の皇族男子の配偶者を王妃と謂ふ。(典範三〇條)
- 英
- Princess
- 独
- Prinzeszin
- 仏
- Princesse
和解和解契約
(わかい)和解とは、當事者が互に讓步を爲して、爭を止むることを約する契約也、故に第一に、當事者間に權利關係に就き、爭の存することを必要とす、抑も和解の目的たるものは、平和を維持しながら權利義務の確在を定むるものなるを以て、爭なきに和解を爲す必要なし、是れ爭の存することを必要とする所以也、爰を以て、將來に爭の起らんことを豫め契約を爲すことあるも、和解と云ふことを得ざるなり、尤も其爭は爭ふべき事由の存するや否や、爭ふべきことの正當なるや否やを問ふに及ばざるなり、又爭に係る權利義務は、財産上の爭に限らず、財産に關せざるものも亦和解の目的となし得べし、第二に當事者が互に讓歩を爲すことを要す、即ち權利を有すと主張する一部を抛棄し、負擔せずと主張する義務の履行を承諾することを云ふ、又或は全部を抛棄し、全部を承認するも、相手方に他の給付を爲すことを約するときは、是れ又讓歩と云ふことを得べし、斯くの如く當事者各自が互に讓歩を爲すに非ずんば、和解契約を成立せざるものなり、故に一方のみが讓歩を爲すは抛棄認諾となることあるも、和解を成立せざるものなることを注意せざるべからず、以上の解説によりて和解の性質を考ふれば、和解は、諾成契約にして有償契約なり、何となれば、意思の合致によりて成立し、互に讓歩するものなるを以てなり、注意すべきは、和解は、仲裁契約とは大に異る點あり、蓋し仲裁契約は、爭ある當事者が、第三者をして其爭を判斷せしむることを約するものなれば也、つぎに和解の法律上の效力としては、和解契約成立すれば、當事者間に存在したる爭を除却するの效力を生ず、故に再び其權利關係に就きては、爭を爲すこと能はざるものとす、爰を以て、其權利關係に就き訴訟を提起して、再び之を爭はんとするときは、相手方は和解契約の成立を以て、防禦方法と爲すことを得るものとす、而して和解によりて、當事者の一方が權利を有するものと認められたる場合に於て、其權利を有するの確證出でたるときは、始めよりこれを有するものとなし、之に反して、始めより權利を有せざるの確證出でたるときは、和解によりて權利を取得したるものと見做すものとす、又和解に於て相手方が權利を有せざるものと認められたる場合に、權利を有せざる確證出でたるときは、和解を以て認定的のものとなし、之に反して、權利を有したる確證出でたるときは、其權利は和解によりて消滅したるものと見做さる、斯くの如くせば、和解は事實に反せずして、能く當事者を保護することを得べし、又一度和解成立したる後は、和解に於て認められたる事實と、反對なる事實の確證が發見せらるるとも、之を理由として和解契約の取消を求むることを得ざるものとす、蓋し和解の目的は爭を止むるにあるを以て也。(民六九五、六九六條)
- 英
- Compromise、Contract of compromise
- 独
- Vergleich、Vergleichsvertrag
- 仏
- Compromis、Contrat de com-promis
私
(わたくし)私の意義は甚だ汎博にして、一定に論ずることを得ず、其用ひられたる場合を酙酌して、其意義を定めざるべからず、然れども多くは下の如き意義を出でざるべし、□一濫りに事を行ふ狀態を稱して私といふ、例へば醫士の免許を得ずして醫を業とするを、私に醫業を爲すと云ふ場合の如し、□二公共に關する事に關して、個人の私事に關することを私と云ふことあり、例へば公益法人に對して、私益法人と云ふ場合の如し、□三公然に對し隱秘の狀態を指すことあり、例へば前例に於ける私に醫業を爲すとの場合の如し、□四或人が自己の私益の爲めに、不法に公共の權利又は利益を處分することを私と稱することあり、例へば官金を私すと云ふ場合の如し、これを要するに、私なる文字を用ひられたるときは、其法文の全體に鑑みて之を定めざるべからず。(舊刑一三三、一五七條二項等)
- 英
- Illegality
- 独
- Unrecht
- 仏
- Ill-égalité
私の組合體
(わたくしのくみあひたい)私法の規定によりて設定したる組合團體を私の組合體と謂ふ、即ち民法上の社團法人、商法の規定によりて設定したる諸種の會社、産業組合の規定によりて設立したる諸種の組合の如し。(私法人の部參照)
- 英
- Private guild
- 独
- Privat-verein
- 仏
- Corporation privée
和文電報
(わぶんでんぱふ)和文電報とは、日本語電報を云ふものにして、これに記載すべき文字記號は、片假名、濁點、半濁點、日本數字、長音、句讀點、新章、括弧、小括弧歸除線等を用ふべきものとす、左の如し。片假名「イロハニ……■スン」濁點「゛」半濁點「○」數字「一二……九〇」長音「―」句讀點「○」新章「▲」」括弧「()」小括弧「「」」歸除線「/」是れ也。(電報規則八條)
- 英
- Japanese language telegram
- 独
- Telegramm von der japanischen Sprache
- 仏
- Télégramme en à la langue japonaise
割印
(わりいん)相分離せる二個の書類に記載せし事項が、互に相關聯することを證する爲め、此兩紙に跨りて一印章を押捺すること、又は其押捺せる印形を割印と稱す、元來割印なるものは、通常二個の書面が相分離せる場合に、其の各部にかけて押捺し、其の押捺せる書面を常に單獨に使用せる場合を云ひ、之を連結して使用し、又は合綴して使用する場合に、其の各部にかけて押捺せる印は、之を割印と云ふことなく、之を契印と云ひて割印と區別す、此の點特に注意を要す。(民施六條一項契印の部參照)
帷幄
(ゐあく)法律上に於ける帷幄の意義は、天皇が軍事に關する機密を畫せらるる所を云ふと解すべき也、戰時大本營條例の示す所によれば、參謀總長及海軍々令部長は、各其幕僚に長として帷幄の職務に奉仕し、作戰を參畫し、終局の目的に稽へ、陸海兩軍の策應協同を謀るを任とするものとす、又軍事參議院條例によれば、軍事參議員は、帷幄の下にありて重要軍務の諮詢に應ふる所とす。(戰時大本營條例三條、軍事參議院條例一條)
- 英
- Imperial headquarters
- 独
- kaiser-liches Hauptquartier
- 仏
- Etat-major im-périal
帷幄上奏
(ゐあくじやうそう)帷幄の中に於て、上奏することを帷幄上奏と謂ふ、而して帷幄上奏は、軍事の機密又は重要軍務に關する事項に限るものとす、帷幄は前項に於て説明せし所なり、軍事參議院條例に示す所によれば、軍事參議院は、天皇の諮詢を俟つて參議會を開き、意見を上奏するものとす、是れ即ち帷幄上奏の場合の一例なりとす。(軍事參議院條例二條)
- 英
- Statement to the Emperor in the imperial headquarters
- 独
- Bericht an den Kaiser im kaiserlichen Hauptquar-tier
- 仏
- Assertion à l'Empereur à l'Etat-major impérial
位階
(ゐかい)位階とは、叙位條例に認められたる、正一位より從八位に至る十六階級の位を稱するの語也、位なるものは、華族、勅奏任官及國家に勳勞ある者に對して、天皇より賜はる所の功蹟の表彰なりとす。(叙位條例一二條)
- 英
- Rank
- 独
- Reihe
- 仏
- Rang
位記
(ゐき)叙位條例によりて、叙位の榮典に接したるものに、爵位局より交附せらるる所の一定の形式を有し、叙位の旨を記載せられたる文書を位記といふ、位記を有する者は、禁錮以上の刑に處せられ、其他特別に定められたる場合、及び體面を汚辱する行爲を爲したるときは、返上を命ぜらるることあるものとす。(叙位條例四條)
- 英
- Rank
- 独
- Reihe
- 仏
- Rang
遺棄
(ゐき)遺棄とは、法律上の扶養保護の義務を負ふ者が、殊更に其傍を離れて扶養保護を施さざるを云ふ、遺棄には二の方法あり、一は被害者を遠くるにありて、俗に捨つるの場合にして、他は加害者自らこれを遠かるにあり、俗に所謂退去の場合にして、遺棄は此二場合を包含するものとす、刑法上罪となる場合、又は民法上問題を生ずる場合あり、刑法上に於ける遺棄罪は次項に説明すべく、民法上に於ては夫が若し妻を遺棄したる場合は、妻は如何なる法律行爲を爲すにも、夫の許可を經るを要せず、父母が其子を遺棄したるときは、親權喪失の問題をも生ずることあるべきなり。(民一七條、刑三三六條)
- 英
- Abandonment
- 独
- Verlassen
- 仏
- Abandon
遺棄罪
(ゐきざい)扶養保護の義務を負ふ者が、八歳に滿たざる幼者、又は自ら生活すること能はざる老者、疾病者を遺棄したる罪、及び自己の所有地又は看守すべき地内に、遺棄せられたる幼者、老疾者あることを知りて、之を扶助せず、又は官に申告せざる罪を汎稱して遺棄罪と謂ふ、本罪の一般的成立要素を擧ぐれば、□一遺棄罪の客體は、八歳未滿の幼者又は自ら生活すること能はざる老者、疾病者たること、即ち遺棄の客體は、自己の力によりて自己の生命身體に害を生じ得べき危險の狀況より、避くることの能力を有せざる者たらざるべからず、而して我現行の刑法に於ては、八歳未滿の幼者は常に此能力を有せざるものと見做し、老者疾病者は事實上其能力を有せざる者に限り、遺棄の客體たり得ることを認めたり、而して右の疾病者中には、白痴、瘋癲者、酩酊者及び魔醉劑又は催眠術に罹りたる人等を包含するものと解すべし、之に反して普通の健康狀態に於て一時知覺を失ひたる者、例へば睡眠中の人を包含せず、又老者とは、法律に於ては別段に年齡を定限せずと雖も、各場合に於て事實問題として決すべきものとす、□二遺棄の所爲あること、遺棄の所爲は、之を二個に區別することを得べし、一は現在の狀況より生命身體に害を生じ得べき危險なる場所に移轉せしむる場合、即ち危險なる狀況に移すことを要するが故に、假令現在の狀況より移轉するも、被移轉者が第三者に因りて救助せらるべしとの希望が保證せられ得る場合は、遺棄と云ふことを得ず、然れども單に第三者の救助を得るならんとの希望を置くのみにては、遺棄となるに妨げず、例へば被移轉者の親屬の集會せる場所へ置き去るか、又は警察官署へ置き去るが如きは、遺棄と云ふことを得ず、これに反して、公衆往來の道路に移し去るときは、被移轉者は或は道路の人の救助を受くることあり得べしと雖も、其希望は果して遂げ得べきや否やは、素より保證すべからざるを以て、遺棄と云ふことを得べし、蓋し遺棄を罰するは、保護の責任を免るる行爲を罰するの主旨にあらずして、被遺棄者の生命身體に關する危害を防衞するにあるを以て、此危害なき場合は本罪を以て罰することを得ざるものとす、而して監護の義務ある者に於て、自ら生活する能はざる被監護者が、自ら危險なる場所に移轉するに當り、故意にこれを防止せざるとき(不作爲によりて)は、遺棄の行爲ありと云ふことを得べし、例へば八歳未滿の幼者が、土地不案内の所へ外出するを防止せざるが如し、二には生命身體に害を生じ得べき危險なる狀況に放任する場合、但し此場合に於ては、被放任者は放任する者の保護の下にありたる場合に限り、遺棄として處罰せらるるものとす、換言すれば、放任する者に於て被放任者を監護する法律上の義務ある場合に限り、責任を負ふものとす、而して此監護の義務は、直接法律に基くと、又は先きに行はれたる行爲より發生する所の義務たるとを問はざる也、例へば子孫が祖父母、父母を監護する義務、親が子を監護する義務、保姆が契約によりて嬰兒を監護する義務あるが如き、又捨子を拾ひたる者が、これを拾ひ上げたりと云ふ行爲よりして、更にこれを監護する義務を生ずるが如き場合是れなり、要するに遺棄罪の犯意とする所は、犯人に於て行爲の性▲が、被遺棄者の身體生命に對して、傷害を生すべき危險あることを認識せざるべからず、然れども、此犯意は、原則として殺人の意思と併存することを得ずと云ふことなかるべし、從つて殺人の手段として、遺棄の行爲ありたる場合に於て、殺人罪は中止となり得ることあるも、若し遺棄に關する條件に就き犯意あるときは、遺棄罪として責を負はざるべからざる也。(刑二一七條乃至二一九條)
- 英
- Offence of abandonment
- 独
- Verlassungsverbrechen
- 仏
- Infraction de l'abandon
違警罪
(ゐけいざい)違警罪は、我現行刑法上の主刑の一種にして、科料及び拘留を以て其刑とす、而して違警罪の性質に至りては、學者間議論ある所にして、未だ一致せざる所也、然れども、實際の便宜よりして、警察官廳に於て訊問處罰せしむべき輕微なる犯罪を槪括して、違警罪なる名稱を附するものと解す、次に本罪に就きて注意すべき點は、故意に出づると過失に出づるとを問はず、本罪を構成すべきの點なりとす、但し不可抗力によりたるときは此限りに非ず、違警罪は、警察署長及分署長又は其代理たる官吏は、其管轄地内に於て犯したる違警罪を即決することを得るものにして、即決とは、正式の裁判を用ひずして被告人の陳述を聞き、證憑を取調べて其刑を言渡す簡易手續にして、主として、便宜により出でたる方法なりとす、而して即決の言渡に對しては、區裁判所に正式の裁判を請求することを得るもの也、即決言渡後五日間に正式の裁判を求めざるときは、其即決の言渡は確定して執行を受くべきものとす。(舊刑一四二五條以下、違警罪即決例)
- 英
- Contravention
- 独
- Uebertret-ung
- 仏
- Contravention
違警罪即決例
(ゐけいざいそくけつれい)明治一八年九月布告第三一號を以て公布せられたる所に係り、違警罪犯人ある場合に於て、便宜的に即決を爲すべき手續を規定したる法律也、大要を擧ぐれば、警察署長及分署長又は其代理たる官吏は、其管轄地内に於て犯したる違警罪を即決すべきものにして、(但し私訴は此限に非ず)即決とは裁判の正式なる手續を用ひずして被告人の陳述を聞き、證憑を取調べ、直に其言渡を爲す簡易手續なり、又被告人を呼出すことなく、若し呼出したりと雖も、出廷せざるときは、直に其言渡書を本人又は住所に送達することを得、又被告は右の即決に對して不服ある場合は、違警罪裁判所(區裁判所)に正式の裁判を請求することを得るものにして、其申立を爲さんとするものは、言渡又は言渡書の送達を受けたる日より三日又は五日間内に、其申立書を警察署に差出すべきものとす、警察署は右の申立を受けたるときは、二十四時間内に訴訟に關する一切の書類を、管轄裁判所の檢事に送致するものとす、而して右の期間内に、正式の裁判を受くる申立なきときは、即決の言渡は確定不動となりて、如何ともすべからず、被告人は其刑の執行を受けざるべからざる也、即決に於て科料の言渡を爲したるとき、確定前と雖も、其金額を假納せしむべきものにして、若し納めざるときは、一日を金一圓に折算して、これを留置するもの也、又拘留の言渡を爲したるときは、一日を一圓に折算して其刑期に相當の金額を保證として差出さしむるもの也、若し差出さざる者は、言渡の確定する迄、即ち三日乃至五日間之を留置することを得るものとす。
- 英
- Example of immediate judgment of delicts
- 独
- sofortiges Ent-scheidungsexempel der Uebertretung
- 仏
- Exemple du jugement immédiate de la contravention
違憲
(ゐけん)帝國憲法の規定に抵觸違背するのことを汎く稱して違憲と謂ふ、例へば憲法上の立法事項たるに拘はらず、命令を以て規定するが如き、又は帝國議會を召集せざるが如き場合を云ふものとす、而して或行爲が違憲なるや否やは、憲法の條文を解決して、之を決すべきものにして、或場合に、憲法に違背するものなるや否やを論定せんとせば、其前提として憲法の解決問題を決せざるべからず、憲法の解決に關しては、欽定憲法と民定憲法との區別に就き一言せざるべからず、蓋し解決權の所在と此兩種の區別と密著の關係あればなり、其欽定憲法と云ふは、我帝國憲法の如く、君主の制定に係る憲法を指すものにして、これに反し、民定憲法とは、佛國憲法の如く、國民の直接間接に制定したる所の憲法を云ふ、而して民定憲法の最高解釋權は、國民又は議會に屬し、欽定憲法の最高解釋權は、君主に屬するを原則とす、而して外國の立法例には、憲法の明文に關して爭を生じたる場合は、其解釋に就き何等の明文なきを以て、當然憲法制定權を有する天皇が、其最高の解釋權を有せらるるものと論定せざるを得ず、故に違憲なるや否やも、天皇の最高解釋によりて、初めて決すべき事にして、吾人臣民の喋々するを得ざる所なりとす。
- 英
- Violation of constitution
- 独
- Ver-fassungsverletzung
- 仏
- Violation de la constitution
遺言
(ゐごん)遺言とは、遺言者が其死後效力を以て爲したる要式の單獨法律行爲也、遺言は相續に關する場合多しと雖も、必ずしも相續のみに限りて爲す事を得るに限ぎらず、私生子の認知、養子緣組の意思表示の如きも、遺言を以て爲す事を得るものとす、又未成年者に對しては、最後に親權を行ふものは、遺言を以て後見人、後見監督人及び親屬會員を指定することを得べし、今遺言に關する民法の規定を分説せん、□一遺言能力、古語に曰はく、鳥の將に死せんとするや其聲悲し、人の將に死せんとするや其言善しと、法律も亦遺言者の處分を以て、法律に定めたるものよりは、最も善く當該關係を悉くしたるものと看做し、多くの場合に於て、即ち公益に關せざる以上は、遺言を以て法律の規定に代ゆることを許し、法律の規定は遺言によりて別段の意思を定めざる場合に適用すべきことと定めたり、遺言は此の如く其效力強大なるを以て、これを神聖に成立せざるべからず、隨ひて他の法律行爲の如く、他人に委託してこれを爲し、又は他人の同意を以て其足らざる遺言者の意思を補完するが如きは、遺言に於て認むること能はず、遺言は必ず遺言者自ら之を爲し、其遺言者たるものは、完全なる能力を有する者なることを要す、然れども遺言は、他の法律行爲能力とは多少異にして、下に擧ぐるものの外は遺言を爲す能力を有する者なり、即ち、イ意思能力なき者、遺言も一の法律行爲なるが故に、之を爲すには、意思能力を要すること言を俟たず、故に疾病其他精神の狀態により、完全なる意思能力を有せざる者の爲したる遺言は勿論無效となす、然れども我民法は、成るべく死者の言に重きを置き、遺言の自由を認むること、他の法律行爲に於けるよりも廣大なり故に禁治産者と雖も、其本心に復したる間に於て遺言を爲すことを得べく、準禁治産者及び妻は、保佐人若くは夫の許可を受くることなくして、自由に爲すことを得と定められたり、ロ滿十五歳に達せざる者、遺言は滿十五歳に達したる者は有效に之を爲すことを得、蓋し遺言は多く臨終の際爲すべきものなれば、之を後日に延ばす事能はず、然かも法定代理人代りて之を爲す事を得ず、又同意を得て爲す事を許さざるが故に、其能力を一般の法律行爲より寬にしたる所以とす、ハ無筆なる瘖啞者、言語を發し、他人の言語を聽く能はざる者も、文字の智識ある者は、自筆證書又は秘密證書によりて遺言を爲すことを得れども、唯一片の文字なくして及び聽官語官の機能を失せる者は、殘念ながら遺言を爲すの方法なきものとす、ニ被後見人、被後見人は絶對に遺言能力なきに非ず、唯後見人は往々被後見人に對する地位を濫用して、將に死せんとする被後見人を捕へて、自己に利益ある遺言を爲さしむる虞あり、故に法律は、其弊害を防がんが爲めに、被後見人が後見の終了前に、後見人又は其配偶者若くは其直系卑屬の利益と爲るべき遺言を爲したるときは、其遺言は無效となす、但し被後見人の直系なる血族配偶者又は兄弟姉妹が、後見人たる場合は此限りに非ず、□二遺言の方式、普通方式と特別方式との二種あり、イ普通方式、遺言の普通方式に三種あり、自筆證書、公正證書、秘密證書式是也、何人と雖も普通の場合に遺言を爲すには、必ず其一を撰擇せざるべからず、若しこれに該當せざる書面を用ふるときは、遺言の效力なきものとす、第一、自筆證書式は、自筆證書に依りて遺言を爲すものにして、遺言者に於て遺言全文、日付及び氏名を自書し、之に捺印することを要す、若し其何れを缺くも效力なし、自筆證書は、斯くの如く遺言者に於て一切の記載を爲し、且つ自ら捺印するものにして、更に他人の關與するを詐さず、故に其記載事項は悉く遺言者の眞意に出でたるものと見做すべきが故に、證人又は立會人等の方式を要せざるものとす、第二、公正證書を以て遺言を爲すには、公證人に於てこれを作成することを要す、然かも遺言者は、普通の證書よりも一層嚴格なることを要するが故に、公證人規則に定むる方式のみを以て足れりとせず、尚下の要件を具備するを要す、即ち證人二人以上の立會の前に於て、遺言者が遺言の主旨を公證人に口授し、公證人が其口述を筆記し、これを遺言者及び證人に讀み聞かせ、其正確なることを承認したる後、各自が之に署名捺印し、終に公證人が、此證書は右の方式に從ひて作らるる旨を記載して、これに署名捺印し、始めて其遺言書は成立するものとす、第三、秘密證書による遺言には、次に述ぶる要件を具備せざるべからず、秘密證書も前示せる自筆證書と同じく、遺言者の作成する證書なりと雖も、其異なる要點は、遺言者に於て證書の全部を記載することを要せず、單に署名捺印のみ自ら爲せば足るものなるの點にあり、尤も遺言者が秘密證書の場合に於て、其全文を自書したるに拘はらず、其遺言を秘密にし、紛失、僞造、變造等の危險を避けんと欲し、これを秘密證書と爲すことは、法律上何等の妨げなきのみならず、此場合には、若し秘密證書としての要件を缺くに至るも、自筆證書の方式を具備するときは、自筆證書に依る遺言として其效を有せしむ、次に秘密證書の成立するには、遺言者が其證書に對し、證印に用ひたる印章を以てこれに封印し、而して公證人及び證人二人以上の面前に封書を提出して、自己の遺言書なる旨及び其筆者の住所氏名を陳述し、公證人が提出の日附及び遺言者の申述を封紙に記載して、後に遺言者及び證人と共に、之に署名捺印することを要するものとす、而して秘密證書中に、文字の挿入、削除其他の變更は、遺言者其場所を指示して之を變更したる旨を附記し、特に此場所に署名し、且つ變更の場所に捺印するを要するものとす、ロ特別方式、遺言者に特別の事情存し、前述せる普通方式を以て遺言を爲すことを得ざる場合には、特別方式に依ることを得、第一、疾病其他の事情によりて死亡の急迫に迫りたる場合、此場合には、自筆證書を作る事能はず、又公正證書若くは秘密證書に依る暇なきを以て、例外として特別方式に依るを得るものにして、即ち此の場合にば、證人三人以上の立會を以て、遺言者が其一人に遺言の主旨を口述し、遺言を爲すものにて、其口授を受けたる者は、之を筆記して遺言者及び其他の證人に讀み聞かせ、各證人が其筆記の正確なることを承認したる後に、之に署名捺印するものとす、而して此の場合には、遺言の日より二十日以内に、證人又は他の利害關係人より裁判所に請求し、其確認を得る事を要す、是は遺言の錯誤を防ぎ、詐欺者の奸譎を防ぐの主旨とす、此裁判所に於ける確認の場合は、遺言者が遺言當時の狀況を按じ、證人の性行等を調査し、其他一切の事情を斟酌して、遺言者の眞意に出でたる心證を得るに非ざれば、確認することを得ざるものとす、第二、傳染病の爲め行政處分を以て、交通を遮斷せられたる場合に在る者の爲す遺言にして、此場合にも、普通方式によりて遺言を爲す能はざるは勿論、又證人も數人を得ること甚だ難し、依て人民保護の任を帶びて斯る場所に出入することを得る警察官の立會を以て、證人一人以上の面前に於て、遺言を爲すことを▲るものとす、然し立會警察官及び證人、遺言者及び筆者は、各自遺言書に署名捺印するものとす、若し署名不能の者は、立會人又は證人に於て、其事由を附するを以て足るもの也、第三、從軍中の軍人軍屬の爲す遺言にして、此場合に於て、遺言を爲さんとする者は、將校又は相等官一人、及び證人二人以上の立會を以て、遺言書を作ることを得、若し將校又は相當官にして其場所にあらざるときは、準士官又は下士一人を以て、之に代ふることを得るものとす、又疾病若くは傷痍の爲めに、病院に在るときは、其の院の醫士を以て、これに代ふることを得るもの也、而して此場合に於ても、前同樣遺言者筆者立會人及び證人は、各自遺言書に署名捺印することを要し、若し不能の者あるときは、立會人に於て其事由を附記するを要す、第四、從軍中疾病傷痍其他の事由により、死亡の急迫に迫りたる軍人及び軍屬の爲す遺言にして、斯かる場合には、單に證人二人以上の立會を以て、口頭にて之を爲すことを得しむるものとす、而して此場合には、證人は其趣旨を筆記して之に署名捺印し、且つ其一人の證人又は利害關係人より、遲滯なく陸軍理事又は主理に請求して、其確認を要するに非ざれば效なきものとす、尤も理事又は主理は、一切の事情を斟酌して、遺言が遺言者の眞意に出でたる心證を得るに非ざれば、之を確認することを得ざるものとす、第五、艦船中にある者の爲す特別遺言方式にして、軍艦及び海軍所屬の船舶に於ては、將校又は相當官一人及び證人二人以上の立會を以て遺言書を作ることを得、將校又は相當官が其艦船中にあらざるときは、準士官又は下士一人を以て之に代ふる事を得るものとす、而して此特別方式に依る場合にも、遺言者、筆者、立會人及び證人は、各自遺言書に署名捺印することを要す、若し不能なる者あるときは、立會人又は證人に於て其事由を附記するを要す、第六、艦船中の遭難者が爲す特別遺言の方式にして、艦船が沈沒捕獲等の場合にありては、恰も從軍中の軍人軍屬が疾病、傷痍等により死亡の危急に迫りたると同じ、故に斯かる場合に於ては、遺言は證人二人以上の立會を以て口頭にて爲すことを許したり、而して此場合には、證人は遺言の主旨を筆記し、之に署名捺印し、且つ證人の一人又は利害關係人より、主理に請求して其確認を得ることを要するものとす、又海軍の所屬にあらざる船舶中に在る者が遺言を爲したる場合は、主理なるものなければ、其確認はこれを裁判所に請求すべきものとす、右に述べたる六個の特別方式によりて爲したる遺言は、皆何れも急速已むことを得ざる理由の存するもの也、其手續方式の簡易にして、遺言の神聖を保證する點に於ては、遠く普通方式に及ばず、故に特別方式に依りたる遺言者が、直に死亡せずして、普通方式によりて遺言を爲すに至りたるときは、之を普通方式に改めしむるに若かず、依て法律は、特別方式に依る遺言は、遺言者が普通方式に依りて遺言を爲すことを得るに至りたるときより、六ケ月間生存するときは、其遺言は效を失ふものと定めたり、□三遺言の效力、遺言は前示したるが如く、遺言者が其死亡後に於て、效力を生ぜしむる目的を以て爲したる單獨行爲也、故に遺言の效力發生時期は、遺言者の死亡後なること、遺言其ものの性質より來る當然の結果なりとす、從ひて遺言は、遺言者に於て何時にてもこれを取消すことを得、遺言は其性質上、遺言者の死亡後效力を生ずるものなりと雖も、死亡後何れの時を以て效力發生の時期と爲すべきか、我民法は一方に於て、遺言者の意思を忖度し、他方に於て受遺者の利益を保護するが爲めに、遺言者死亡の時より直に效力を生ずるものと定めたり、然れども法律は、法律行爲の性質、又は公益上の理由等により、遺言の效力を既往に遡らしむることあり、而して遺言による法律行爲の期限を附する場合には、固より其期限到來の時に其效を生じ、又は消滅するものとす、□四遺言の無效及取消、遺言は遺言の性質に反する場合、遺言の形式を缺く場合、遺言者が遺言能力を失せざる場合、其他法律の規定に違反する場合に於て、或は無效となり、或は取消すことを得、加之遺言は、遺言者の意思によりて、何時にても取消す事を得、而して遺言の形式を缺く場合、遺言者の能力を有せざる場合に就きては、既に前説したる所なるを以て、茲には遺言者意思に欠缺ある場合及び遣言者の變心に因り取消しを爲す場合に就き説明すべし、即ち遺言の無效となる場合は次の如し、(1)遺言者が眞意を以て遺言を爲さざりし場合、遺言者が冗戯を以て遺言を爲すも、遺言たる效力を生ずることなし、然れども其遺言を受くる者に於て、冗戯たることを知り、又は知る事を得べかりしときに限るものにして、若し遺言者のみが眞意に非ざることを知り、遺言を受くる者が遺言者の眞意を知らざりしとき、又は知り得べからざりしときは、遺言たる效力を失はず、(2)遺言の要素に錯誤ある場合、遺言者にして眞正の事情を知りたるには、遺言を爲さざるべきこと明かなるに、錯誤により眞正の事情を知り得ざりし爲め、遺言を爲したる場合には、其遺言は無效なりとす、(3)法律の公益規定に違背せる場合は、當然遺言たるの效なき也、次に遺言の取消には三種の區別あり、一は遺言者が詐僞又は脅迫によりて遺言を爲したる場合、二は遺言者の變心により遺言を取消す場合、其他の一は相續人より爲す遺言の取消是れなり、逐次に説明すべし、□一遺言は詐欺又は脅迫に因るときは、之を取消すことを得べし、若し第三者が詐欺を行ひたる場合には、遺言を受けたる者が其事實を知りたるときに限り、取消すことを得、此取消は通常相續人より爲すべきものとす、又遺言者は何時にても遺言の取消を爲すことを得るが故に、必ずしも詐欺又は脅迫ありたることを主張する要なし、而して相續人が、詐欺又は強迫によりて、被相續人をして相續に關する遺言を爲さしめ、若くはこれを變更せしめ、又は被相續人に於て、相續に關する遺言を爲し、これを取消し、これを變更することを妨げたるときは、相續權を剝奪せらる、而して茲に注意すべきは、遺言には無能力に因る取消なるもの無きこと是れなり、□二遺言者の變心に因る遺言の取消の場合、遺言は遺言者の死亡の時より其效力を生ずるものなれば、遺言者の死亡前に於ては、何人に對しても拘束力を生ずることなし、故に一般の法律行爲の如く、一旦之を爲したる以上は、行爲者に於て自由に取消すことを得ずと爲す必要なし、遺言者が、一旦遺言を爲したるも、其意思を變じて遺言の一部又は全部を取消し、又變更せんとするときは之を許すものとす、從ひて遺言の取消權を抛棄する事は、法律の認めざる所にして、例令遺言者が遺言を取消さざる旨を明言すと雖も、遺言其ものが未だ效を生ぜざる間は、取消權の抛棄も效を生ずるに由なし、然れども遺言を取消すには、又遺言能力を有せざるべからず、故に遺言者の法定代理人は、遺言の取消を爲すことを得ず、而して遺言取消は、明示又は默示にて爲すことを得るものにして、明示の取消の場合は、一定の方式に依りてこれを爲さざるべからず、但し公正證書による遺言は、之を取消すにも、必ず公正證書に依らざるべからざるにあらず、秘密證書によりてこれを取消すも、亦特別方式によりて取消すも隨意なり、唯遺言の方式に適せざる方式を以て之を取消すことを得ずと爲すに過ぎず、次に默示の取消と看做さるる場合は、第一に前の遺言と後の遺言、又は生前處分其他の法律行爲と抵觸したる場合にして、此場合に於ける遺言の取消は、其抵觸せる部分に限るものにして、抵觸せざる部分は依然其效力を有するものとす、第二に遺言者が、故意に遺言書又は遺言の目的物件を毀滅したる場合にも、默示の取消ありたるものと見做さる、遺言者が遺言書を毀滅したるときは、遺言書は一定の方式を維持する能はず、故に遺言は其效を失ふこと當然なり、又故意に遺贈の目的物を毀滅したるときは、其遺贈を爲さざらんと欲したるものと見做すべきなり、然れども前示せる遺言書、又は遺贈の目的物件の毀滅は、遺言者の故意に出づる行爲なることを必要とす、若し天災、不可抗力、過失によりて毀滅せられたるときは、遺言者の意思は遺言を取消すにありと推定するを得ず、但し斯かる場合は、遺言は自ら其效力を失ふべきも、遺言者の取消しありたると云ふを得ざる也、以上説示する明示の場合と默示の場合とを問はず、一旦取消したる以上は、其取消の行爲が取消され、(即ち取消の取消なり)又は效力を生ぜざるに至りたるときと雖も、遺言は其效力を回復せざるものとす、是れ遺言者の意思は、遺言の取消行爲が取消され、又は效力を生ざるに至りたるも、最初の遺言を復活せしむるに在りたりと看做すことを得ざるが故なり、故に遺言者にして、最初の遺言を復活せしめんと欲せば、更に相當の方式によりて遺言を爲すことを要す、尤も遺言の方式が、詐欺脅迫によりて成りたる場合には、元來遺言者は遺言を取消す意なかりしものと看做すべきが故に、最初の遺言が其效力を回復するは素よりとす。(民一〇六〇條乃至一一二九條)
- 英
- Testament
- 独
- letzter Wille
- 仏
- Testament
遺産
(ゐさん)家族が死亡したる場合に遺したる一切の權利義務を包括して遺産と稱す、普通世上の意味に於ては、戸主の死亡したる場合にも、其の遺したるものを稱して遺産といへども、法律上に於ては前示の如く、之を狹義に用ゆるものとす、遺産に關する法律上の問題は、遺産相續又は遺贈の場合なりとす、之等の詳細は各其項目の下を參照せらるべし。(民一〇一二條)
- 英
- Inheritance
- 独
- Erbschaft
- 仏
- Hérédité
遺産相續
(ゐさんさうぞく)遺産相續とは、或家に屬する家族が死亡したる場合に、法定の遺産相續人が、死者の有したる一切の權利義務を承繼する行爲を云ふ、家督相續は、戸主死亡の場合に開始せらるるものなれども、遺産相續は家族の死亡の場合に生ずるものたるに注意すべし、(相續の部參照)元來遺産相續なるものは、歐米各國に於て專ら古來より行はれたる所なるも、我邦維新前にありては、家族制度盛んなりしため行はれず、維新後歐米の個人主義東漸するに及び、往々此の相續を爲す者ありたるも、極めて稀なりき、然れども親族法上の身分地位よりも、財産を尊重するの風漸次盛んとなり、家族にして財産を貯へ、義務を負ふ者日一日と夥多なるべければ、將來に於て遺産相續は開始せらるること多かるべし、□一遺産相續の開始、家族の死亡したるときに限り開始せらるるものとす、彼の家督相續の場合に於ける如き、他の原因は一も認められず、□二遺産相續人の資格、遺産相續も一の私權に過ぎざれば、何人と雖もこれを享有することを得るものとす、遺産相續人に就きて、家督相續人と同じく缺格又は廢除の制度ありて、一定の原因を有する者に、特定の相續權を喪失せしむるものとす、卽ち遺産相續の缺格者たるものを擧ぐれば、イ故意に被相續人又は遺産相續に就き先順位にある者、若くは同順位にあり者を死に致し、又は死に致さんとしたる爲めに刑に處せられたる者、ロ被相續人の殺害せられたることを知りて、之を告發又は告訴せざりし者、但し其者に於て、是非の辨別なきとき、又は殺害者が自己の配偶者若くは直系血族なりしときは此の限に非ず、ハ詐欺又は脅迫により、被相續人が相續に關する遺言を爲し、又は之を取消し、若くは變更することを妨げたる者、二詐欺又は脅迫によりて、被相續人をして相續に關する遺言を爲さしめ、又は取消さしめ、若くは之を變更せしめたる者、ホ相續に關する被相續人の遺言書を僞造、變造、毀滅又は藏匿したる者、以上の者は其缺格者として、法律上相續權を剝奪せられ、遺産相續人たることを得ざるものとす、つぎに遺産相續人の廢除なるものは、下の原因の一の存することを要するものとす、あ廢除せらるべき者は、遺留分を有する推定遺産相續人たることを要す、遺留分を有する推定遺産相續人とは、直系卑屬、配偶者及び直系尊族なり、い廢除せらるべきものが、被相續人に對して虐待を爲し、又は重大なる侮辱を加へたることを要す、う遺産相續人の廢除は、被相續人より裁判所に請求することを要す、此請求を訴を以て、被相續人の普通裁判籍を有する地の地方裁判所に提起すべきものとす、□三遺産相續人の順位、遺産相續人にありては、家督相續の場合の如く、指定及選定の相續人なる者なし、故に遺産相續人は、悉く法定にして、其順位は、第一直系卑屬、第二配偶者、第三直系尊屬、第四戸主なりとす、而して第一位に在る直系卑屬、例へば子にして數人あるときは、同順位に於て共同して相續するものとす、□四遺産相續の效力、イ相續人の承繼すべき權利義務の範圍、即ち遺産相續人の承繼すべきものは、被相續人の財産に屬する一切の權利義務なりとす、即ち被相續人の有せし物權債權は固より、著作權、商標權等の專用權に至る迄、包括して承繼すると同時に、被相續人が他人に對して負擔する財産上に關する義務は、一切これを承繼す、然れども被相續人の一身に專屬せし權利義務は、これを承繼せず、ロ相續の效力發生の時期、此效力發生の時期は、即ち相續開始の時に生ずるものとす、而して遺産相續なるものは、被相續人の死亡によりて開始するものなるが故に、遺産相續人は被相續人の死亡後、一定の時期を經過したる後、相續の承認を爲したると、相續を抛棄せざるの意思を確定したるとを問はず、被相續人の死亡したる時に於ける、被相續人の權義利務に繼ぐものとす、ハ遺産相續人數人ある場合に於ける相續財産、若し遺産相續人が一人のみなる時は、其者に於て被相續人の權義を一切承繼すべきが故に、別に困難なる問題を生せずと雖も、遺産相續人が數人あるときは、相續財産は何人は幾何宛歸屬すべきものなりやに就きて問題を生ず、法律は相續財産が分割せらるる迄は之を遺産相續人全體の遺産相續人の共有とす、右の如く、其遺産を共有すと雖も、其共有の割合は、相續分に應ずべきものとす、即ち各共同相續人は、其相續分に應じて被相續人の權利義務を引繼ぐもの也、而して遺産相續に關する相續分及び限定承認等に關するものは、各其項下を參照せらるべし。(民九九二條乃至一〇一六條)
- 英
- Succession of property
- 独
- Erbfolge des Vermögens
- 仏
- Succession de la propriété
遺産相續人
遺産相續人とは、前説の如く遺産を相續すべき者を云ふ、即ち□一直系卑屬、□二配偶者、□三直系尊屬、□四戸主是也。(民九九四條乃至一〇〇〇條)
- 英
- Inheritor
- 独
- Erbe
- 仏
- Héritier
遺失
(ゐしつ)物の占有者が、其占有を抛棄する意思なくして、偶然に其占有を失ひたる場合を遺失と云ひ、其遺失したる物件を稱して遺失物と謂ふ、故に遺失物には、占有者が占有を抛棄する意思なきこと、占有の喪失が偶然に出でたることとの二條件を要す、されば故意に遺棄したる物件、又は他人より奪取せられたる物件は遺失物にあらず、然れども、占有の喪失が占有者の過失に基因すると、其他の出來事に基因すると否とは之を問はず、例へば震災洪水其他の事件の爲め、或物件が占有者の占有を脱したる場合と雖も、其物件は遺失物たる事を失はざるものとす、占有者の置き去りたる物件は、遺失物なるや否やにつき議論より、現行の遺失物法は、此種の物件を以て純然たる遺失物と見做さず、特に規定を設けて、遺失物に關する規則を之に準用することとせり、右の外誤つて占有したる物件、逃走したる家畜も亦遺失物に準ぜらる、漂流物も亦同じ、而して右等の遺失物の拾得は、所有權取得の一原因にして、拾得者は次に述ぶる條件に從ひ其所有權を取得す、□一遺失物は法禁物にあらざることを要す、法律が所有を禁ずる物件は、何人も所有することを得ざるを以て、此種の物件を拾得したる者が所有權を取得するを得ざるは、無論とす、□二特別法の定むる規定に從ひ、公告を爲したる後一ケ年を經過することを要す、現行遺失物法に依れば、遺失物は拾得者より警察署に屆出でたる後、警察署に於て公告の手續を爲すものとす、所謂拾得者とは、現實に遺失物を拾得したる者を云ふ、然れども遺失物法によれば、看守する舟車、建築物其他公衆の通行を禁じたる構内に於て、他人の物件を拾得したる者は、これを看守者に交付する義務あり、此場合に於ては舟車、建築物等の占有者を以て拾得者とす、蓋し右等の場所を占有する者は、其場所にある總べての物件を占有するものと見るを得べければ也、而して遺失物に付きて公告を爲すは、其の所有者をして遺失物の返還を求むることを得しむるが爲めにして、公告後一ケ年を經過するも、所有者より何等の申出でを爲さざるときは、所有者は遺失物の所有權を抛棄したるものと見做し、無主物先占の場合と同じく、拾得者をして其所有權を取得せしむ、但し遺失物法に依れば、犯罪人の置き去りたるものと思料せらるる遺失物に關しては、公訴權消滅の日より一ケ年を經過するに非れば其效果を生せざるもの也、□三拾得者が遺失物を隱匿し、又は不正に之を所分するの行爲を爲さざりしことを要す、拾得者をして所有權を取得せしむるは、畢竟一の恩典に過ぎず、然るに拾得者に於て前記の不正の所爲あるときは、此恩典を與ふるの必要なしと認めたるによる、終に注意すべきは、拾得者は其權利を抛棄することを得、而して拾得者が權利を抛棄し、又は權利を失ひたるときは、遺失物は國庫の所有に屬するものとす。(民一九三、二四〇條、遺失物法一二條)
- 英
- Loss
- 独
- Verlust
- 仏
- Perte
遺失物
遺失物隱匿罪
(ゐしつぶついんとくざい)遺失物を拾得したる者が之を隱匿し、又は所有者に還附せず、警察署に屆出でざるによりて犯されたる罪を遺失物隱匿罪と謂ひ、舊刑法第三八五條に於て規定したる所なれども、明治三二年法律第八七號遺失物法の發布によりて、右刑法の規定は暗默に廢止せられ、遺失物に關する罪に就ては、遺失物法によりて處罰せらるべきものとす、遺失物法によれば、他人の遺失したる物件を拾得したる者は、速に遺失者又は所有者其他物件回復の請求權を有する者に、其物件を反還し又は警察署にこれを差出すべし、遺失物其他本法の規定を準用する物件を隱匿し、若くは不正に處分したる者は三ケ月以下の重禁錮又は二十圓以下の罰金に處せらるるものとすとあり、左に本罪の構成要素を擧ぐれば、□一本罪の目的物は、拾得物及び本法の規定を準用せらるる物、即ち誤つて占有したる物件、他人の置き去りたる物件、逃走したる家畜なりしことを要す、茲に拾得物と云ふは、拾得したる遺失物を指示す、遺失物の何たるやは前項により明かなるべし、而して拾得とは遺失物を自己の保持に移す事を意味す、次に誤つて占有したる物とは、例へば浴場に於て下駄を穿き違へ、又は荷物配達人が甲の家に配達すべき荷物を乙の家に配達したる場合の如し、但し後の場合に於て、先方の誤を利用して、其の受取權なきことを告げずして受取たるときは、詐欺取財を以て論ずべきことあり得べき也、又他人の置き去りたる物件とは、他人が自己の保持する範圍内に遺留したる物、即ち遺留品の如きを云ふ、□二隱匿若くは不正に處分したる事、遺失物法に隱匿し、又は不正に處分し云々と云ふは、共に自己の物とするの意思の實行を總稱するものにして、隱匿は其所在を不明ならしむることを云ひ、處分とは費消することを意味す、而して自己の物とするの意思は、遺失物を拾得する當時に於て存在すると否とに關せず、苟も前示第一要件に列擧したる物件に對して、此意思の實行あるときは本罪を構成するものとす、而して本罪は、自己の物とする意思實行を必要とするが故に、單に拾得物の屆出でを爲さざるのみにては本罪を構成せず。(遺失物法一、一六條)
- 英
- Crime of hiding object which has been lost
- 独
- Funddiebstahls-verbrechen
- 仏
- Infraction de céler la chose qui était perdue
遺失物法
(ゐしつぶつはふ)明治三二年法律第八七號を以て公布せられたる所にして、遺失物の拾得者及び埋藏物の發見者の盡すべき手續、及び其違背したるものの處罰方法、幷にこれに關する官署の取扱等に關して規定したるもの也、其大要を擧ぐれば、他人の遺失したる物件を拾得したる者は、速に遺失者又は所有者、其他物件回復の請求權を有する者に、其物件を返還し、又は警察署にこれを差出すべし、其物件の差出しを受けたる警察官署は、其返還を受くべき者にこれを返還すべし、若し其者にして不明なるときは、公告を爲すべきものとす、而して警察官署は右の場合に、其保管に係る物件が滅失又は毀損の虞あるとき、又は保管に就き不相當の費用又は手數を要するときは、別に命令の定むる方法によりて、之を賣却することを得るものとす、物件の返還を受くべき者は、物件の價格の百分の五以上、二十以下の報勞金を拾得者に與ふべき義務あるもの也、又看守者ある舟車、建築物其他公衆の通行を禁じたる構内に於て、他人の物件を拾得したる者は、管守者に交付するの義務あり、此場合に於ては、其管守者を以て物件の拾得者と見做す、然し此場合に於ける報勞金は、此物件拾得者と折半とす、犯罪者の置き去りたる物件と思料すべき物を拾得したる者は、速に警察官署に差出さざるべからず、又誤つて占有したる物件、他人の置き去りたる遺留品、又逸走の家畜に關しては本法を準用せられ、埋藏物に關しても本法を準用せらる、而して特に學術技藝若くは考古の資料に供すべき埋藏物にして、其所有者知れざるときは、其所有權は國庫に歸するものとす、此場合に國庫は埋藏物の發見者及び其發見したる土地の所有者に通知して、其價格に相當する金額を給與せらるるものとす、本法及び民法に規定する所によりて、所有權を取得したる者が、取得の日より一年内に警察官署より其物件を引取らざるときは、其所有權を喪失するものとす、終りに本法の規定を準用する物件を隱匿し、又は不正に處分したる者は、三ケ月以下の重禁錮又は二十圓以下の罰金に處せらるるもの也。(刑二五四條)
- 英
- Law of object lost and regulation for the application to the law of object lost
- 独
- Gesetz von der verlorenen Sache und Regel für die Anwendung zum Gesetze
- 仏
- Loi de la chose perdue et règles de l'application de cette loi
同法施行細則
遺失物法施行細則は、明治三二年四月内務省令を以て公布せられたる所にして、遺失物取扱に關する細則を定められたるものなり。
圍障
(ゐしやう)圍障とは、相隣接せる土地の境界に設る障壁を汎く稱するの語にして、其用材の土塀たると竹垣たると若くは板垣たるとを問はざるものとす、尚次項を參照せよ。(民二二五條)
- 英
- Fence
- 独
- Einfriedigung
- 仏
- Clôture
圍障權
(ゐしやうけん)土地の所有者は、其所有權より生ずる權能の一として、其土地の周圍に圍障を設くるの權利を有す、これを稱して圍障權と謂ふ、此權利を有するは、第三者の干渉に對して、其土地を保護するが爲めに必要なるを以てなり、然れども、之が爲めに隣人の有する通行權、又は地役權の行使を妨ぐることを得ざるや勿論とす、今民法の認むる場合を擧ぐれば、二棟の建物が其所有者を異にし、且つ其間に空地あるときは、各所有者は他の所有者と共同して、其境界に圍障を設くるの權利を有す、蓋し相隣地の建物が接近する場合に、兩地の境界に圍障を設くるは、相隣者の干渉に對して建物を保護する爲め、又は相隣者をして猥りに家屋内を觀傍することを得ざらしめ、以て住居の安寧を保つが爲めに、極めて必要なるを以てなり、此場合に於ては、圍障の設置は次の條件に從ふべきものとす、□一圍障の設置及び保存の費用は、相隣者平分して之を負擔するものとす、何となれば、圍障は土地の所有者相互の利益の爲めに設けらるるものなれば也、□二圍障に用ふる材料及び其高さに就き協議整ひたるときは、其の協議に依る、然れども若し其協議整はざるときは、板塀又は竹垣とし、其高さは六尺たることを要す、然れども、之が爲めに相隣者の一方が之より良好なる材料を用ひ、又は其高さを增して圍障を設くるの權利を妨ぐることなし、唯此場合に於ては、費用の增加額を他の一方に負擔せしむることを得ざるものとす、故に一方が右の權利を行使したるときは、法定の圍障に要する費用の外、他の一方に要求することを得ず、之に超過する費用は、自ら之を負擔することを要するものとす、右の如く民法は、圍障の設置及び費用の分擔に就きて、一般の原則を設けたる上、更に反對の慣習あるときは、これに從ふべきことを規定せり、是れ圍障の設置及び費用に關する前記の原則は、單に相隣者の利益を目的とするものなれば、反對の慣習を認むるも、爲めに公益を害するの結果を生ずることなければなり。(民二二五、二二七、二二八、二二六條)
- 英
- Right of fence
- 独
- Zaunsrecht
- 仏
- Droit de clôture
居職人
(ゐしよくにん)居職人とは、印版師、縫職、染工、理髮職等の如く、專ら自宅に於て仕事に從事する職工を云ふ、我民法は、右等の居職人の職より生じたる債權は、二年間之を行使せざるときは、時效によりて消滅する旨を規定せり。(民一七三の二號)
- 英
- Mechanic
- 独
- Handwerker
- 仏
- Mécanicien
遺贈
(ゐそう)遺贈は、遺言者が他人に贈與を爲すの遺言也、遺言者は、其自由意思を以て、他人に自己の死後に效力を生すべき贈與を爲すことを得るは勿論にして、此贈與を名けて遺贈と謂ひ、贈與を受くる者を受遺者、贈與の履行を爲す義務を負ふ者、即ち遺言者の相續人を以て遺贈義務者とす、遺贈も遺言の一種に過ぎざれば、遺言の方式によらざる贈與はこれを遺贈と云ふを得ず、遺贈が效力を生ぜざるときは、遺贈の目的は相續人に歸屬するものなり、但し遺言者が其遺言に別段の意思を表示したるときは、其意思に從ふものとす、遺贈に關する法律の規定は、□一遺贈の目的物、遺贈の目的は其種類を問はず、財産上の利益は總べて遺贈の目的と爲すことを得、故に特定物又は代替物の引渡等は勿論、債權の抛棄も遺贈の目的と爲すことを得、遺贈は遺言者が受遺者に直接に權利を移付するものなり、故に受遺者は遺言者の死亡により、直に遺贈の目的を取得することを得、然かも遺贈義務者が其目的物を占有する場合には、遺贈義務者に對して其目的物の給付を請求することを得、而して特定物の遺贈に就きては、其目的物件が遺言者の死亡の時に存在せざるときは、通常これを無效とす、存在せし物が遺言者の死亡の時迄に滅失したると、元來の其形を存せざるとは區別せず、遺贈の目的物が他の物と附合又混和したるときも、遺贈は無效となるなり、然れども其目的物の滅失若くは變造又は其占有の喪失によりて、第三者に對し償金を請求するの權利を有するときは、其權利を以て遺贈の目的と爲したるものと推定せらる、故に受遺者は、當然其義務者に對して償金を請求することを得るなり、又遺贈の目的物が遺言書作成後、遺言者死亡前に添附により遺言者の所有に歸したるときは、其全部の所有權又は共有權を以て、遺贈の目的物となしたるものと推定せらる、又債權を以て遺贈の目的と爲したる場合に於て、遺言者が死亡前に其辨濟を受け、且つ其受取りたる物が尚相續財産中に存するときは、其物を以て遺贈の目的と爲したるものと推定する也、又金錢を目的とする債權に付きては、相續財産中に其債權額に相當する金錢なきときと雖も、其金額を以て遺贈の目的と爲したるものと推定するものとす、而て如何なる場合を問はず、遺贈は其目的たる權利が遺言者死亡の時に存在するも、これが相續財産に屬せざるときは、遺贈は其效無し、右は遺言者の意思を推定して設けたる法律の規定なりとす、故に遺言者の意思が、相續財産に屬せざる權利なるに拘はらず、これを以て遺贈の目的と爲したるものと特に認むるときは、其遺贈は效力を有するものとす、此場合には、遺贈義務者は、其權利を取得して受遺者に移轉せしむるの義務を負ふものなり、次に遺贈の目的たる權利が、遺言者の死亡の時に於て、地上權、永小作權、地役權、抵當權、賃貸權等の如き、第三者の權利の目的たる時も、其遺贈は有效なりとす、不特定物の遺贈に關しては、遺贈義務者は遺言の主旨に基き適當の物を受遺者に引渡し、又は其引渡したる物の所有權を受遺者に移轉する事を要するものとす、故に若し受遺者が其物を他人の爲めに追奪せられたるときは、遺贈義務者は賣主と同じく擔保の責に任ずるもの也、又引渡しを遲帶したるときは、損害を賠償せざるべからず、包括財産を以て遺贈の目的と爲すことも亦有效にして、包括受遺者は資産と負債とを合せて受くる者なれば、遺産相續人と同一の權利義務を有するものとす、□二受遺者の能力、遺言なるものは受遺者に於て遺贈を受くる意思を表示すると否とに關せず、苟も法律上の要件を充たす以上は其效力を生ず、然れども、受遺者に於てこれを受くる意思を表示せざる以上は、其效力の目的は之を達するに由なし、而して遺贈を受くる意思表示は、又法律行爲に外ならざれば、行爲能力を有する者は、通常受遺の能力ある者と云はざるべからず、行爲能力の欠缺せるものは、法定代理人によりて其意思を表示すべし、胎兒は權利能力なしと雖も、從來の習慣及び一般の人情に於て、相續の場合と同じく遺産を受くるの權利を有するものとす、而して行爲能力を有する者は、獨立して遺贈を受くる權利を有し、行爲能力なき者は、法定代理人によりて之を受くるを得るは、前示せる如しと雖も、左に擧ぐる非行ある者に對しては、法律は家督相續人の資格を剝奪すると同じく、受遺能力を遺失せしむ、□一故意に遺言者又は遺言に就き先順位に在る者を死に致し、又は死に致さんとしたる爲め刑に處せられたる者、□二遺言者の殺害せられたることを知りながら、之を告發又は告訴せざりし者、但し其者に是非の辨別なきとき、又は殺害者か自己の配偶者若くは直系血族なるときは此限にあらず、□三詐欺又は脅迫により、遺言者が相續又は遺贈に關する遺言を爲し、之を取消し、又は變更する事を妨げたる者、□四詐欺又は脅迫により、遺言者をして相續又は遺贈に關する遺言を爲さしめ、これを取消さしめ又は變更せしめたる者、□五相續又は遺贈に關する遺言者の遺言書を僞造、變造又は毀滅、藏匿を爲したる者、以上の五項中に該當する者は、受遺者たる資格なき、ものとす、□三遺贈の承認及び抛棄、遺贈は遺産相續と同じく、遺言者の死亡と共に當然受遺者の爲めに開始し、受遺者の明示又は默示の承認を要せず、受遺者が其遺贈のありたることを知りたると知らざると、又は其受遺を欲せざるときと雖も、猶且つ遺贈は受遺者の爲めに開始せらる、但し遺贈が期限附又は條件附なるときは、遺言者の死亡の際に其條件又は期限が到來せざる場合は、其到來まで開始することなし、茲に所謂遺贈開始なる用語は、民法の用語に非ずと雖も、便宜上受遺者の權利の成立を指して、假りに之を名くるものとす、遺贈開始前に於ては、受遺者は何等の權利を有せず、然れども、其條件又は期限の到來する迄は、遺贈開始せずと雖も、遺言者死亡後は、一種の權利を生ず、即ち條件又は期限の到來の時より、完全なる受遺者となるの權利是なり、遺贈義務者は、條件の成否未定の間は、條件の成就により受遺者の受くべき權利を害することを得ず、之を害したるときは、損害を賠償せざるべからず、又債務者が破産の宣告を受けたるとき、擔保を毀滅し、又は減少したるとき、擔保の義務を履行せざるときは、期限が到來したるものと見做さるる事あるべし、茲に注意すべきは、遺贈開始するも、受遺者の遺贈の目的物に對する權利は、終局に確定したるものに非ず、受遺者は一定の期限内に、遺贈を受くべきや否やを決すべき事是れなり、之を受くるの意思表示を遺贈の承認と謂ひ、受けざる意思表示を抛棄と稱す、尚この事に就きては、下に述ぶる所に注意せざるべからず、一親權を有する母が、子に代りて遺贈を抛棄し、又は子の遺贈抛棄に同意するには、親族會の同意を得ることを要す、後見人が被後見人に代りて遺贈の承認、若くは抛棄を爲し、又は被後見人のこれを爲すに同意するには、親族會の同意を經ざるべからず、準禁治産者及び妻は、保佐人の同意又は夫の許可を受くるにあらざれは、承認又は抛棄を爲すことを得ず、二遺贈の抛棄又は承認は、遺言者の死亡後に於てこれを爲すことを要す、三遺言者の死亡後は、其承認抛棄は、何時にても之を爲すことを得、即ち幾十年を經るもこれを爲すことを得る也、然れども受遺者が、其意思を確定せざる間は、遺贈義務者、其他の利害關係人の權利義務を確定せざるに至り、公益を害すること少なからざれば、遺贈義務者其他の利害關係人は、相當の期間を定め、其期間内に遺贈の承認又は抛棄を爲すべきことを受遺者に催告することを得、而して若し受遺者が其期間内に、其意思を表示せざるときは、これを承認したるものと見做す、四遺贈の承認及び抛棄は、遺言者の死亡の時に遡りて其效力を生ずるものとす、五承認及び抛棄は法定の方式に依るを要せず、六受遺者が遺贈の承認又は抛棄を爲さずして死亡したるときは、其承認又は抛棄の權利は其相續人に移轉するものとす、七受遺者が遺贈を抛棄したるときは、受遺者が遺言者に先き立ちて死亡したるときも、同一の效力を生ず、即ち其遺贈は全く效力なきものとなるなり、八一旦遺贈の承認又は抛棄を爲したるときは、これを取消すことを得ざるものとす、遺贈の承認及び抛棄は、利害關係人に影響を及ぼすこと大なり、故に之を隨意に取消すことを許すときは、却つて公安を害すること少なからざるを以て、一旦此意思表示を爲したるときは、直に確定の效を生じ、再び取消すことを許さず、然れども其意思表示に瑕疵ありて、通則に從ひ取消し得べき場合は此限に非らず。(民一〇八七條乃至一一〇五條)
- 英
- Legacy
- 独
- Vermächtnisz
- 仏
- Legs
遺贈義務者
- 英
- Person bound on legacy
- 独
- Beschwerte
- 仏
- Débiteur du legs
遺族
(ゐぞく)死亡者と同一戸籍に在る生存者を總稱して遺族と謂ふ、又特に生存中の或者のみ、例へば現戸主のみを指し、又は死亡者の配偶者のみを指して遺族と稱するの用例あり、要は其用ひたる法條に於て、其全體の主旨より何れに用ひたるやを推究せざるべからず。
- 英
- Survivor
- 独
- Hinterbliebene
- 仏
- Survivant
遺族扶助料
(ゐぞくふじよれう)文官、軍人、學校教員等の官公吏が、其在職中に死亡し、又は恩給を受くべき資格を有する者が死亡したる場合に、政府より其遺族に給與せらるる金額を遺族扶助料と謂ふ、普通官吏たると、軍人たると、教員たるとにより、多少其規則を異にするものあり、大要を分説せんに、□一官吏遺族扶助料、明治二三年法律第四四號官吏遺族扶助法の支配する所にして、文官判任以上の者にして、次に擧ぐる事項の一に該當するときは、其遺族扶助料を受くるの權利を有するものとす、一在官十五年以上の者にして、在官中死亡したるとき、二在官十五年未滿の者、公務の爲め死去したるとき、三恩給を受くる者死亡したるとき、以上の一に該當する者なるを要す、而して其遺族にして、寡婦の受くべき扶助料年額は、亡夫の受けたる若くは受くべき恩給年額の三分の一とす、其亡夫にして公務の爲めに受けたる傷痍に原因して死去し、又は非常の勞働及困苦を忍びて勤務に從事し、爲めに發病死去し、又は公務によりて傳染病に接し、該病毒に感染して死去し、又は戰地に於て若くは公務旅行中流行病に羅り死去したる者の寡婦は、特に前示年額の三分の二を受くるものとす、扶助料を受くべき寡婦なきとき、又は死去し若くは其權利消滅したるときは、其扶助料は孤兒に給せらるるものとす、孤兒扶助料は數子あるときは家名繼襲者に給せらる、戸主に非ざる者の孤兒にありては長子に給せらるるものとす、右の家名承繼者若くは長子が死亡し、權利消滅し、若くは支給期限に滿つるときは、順次年少者に轉給するものとす、但し家名承繼者を除き、男子を先きにし女子を後にす、恩給を受けたる者の寡婦にして、其夫が退官後婚姻したるものは、扶助料を受くることを得ざるものとす、茲に孤兒と云ふは、年齡滿二十歳以下の男女にして、未だ結婚せざるものを指す、但し養男女の場合は、家名承繼者に限るもの也、總べて扶助料は之を受くべき事由の生じたる月の翌月より給せらるるものにして、これを受くべき權利の生じたる月より、三箇年内に請求せざるときは、其權利を抛棄したるものと見做さる、扶助料は賣買、讓與、質入、書入することを得ず、又負擔の抵償として差押ふることを得ざるものとす、つぎに扶助料を受くるの權利は、次の時期より消滅するものとす、□一寡婦が死去し又は婚嫁し、若くは戸籍を去りたる月の翌月、□二孤兒が死去し、又は婚嫁し、他家の養子女となり、若くは年齡二十歳に滿ちたる月の翌月より、□三父母、祖父母死去し、戸籍を去りたる翌月より消滅す、其他日本臣民たる分限を失ひ、重罪の刑に處せられたる者は、扶助料の支給を止めらるべし、次に在官十五年未滿の者にして、公務の故にあらずして死去したるときは、遺族に一時扶助料を給せらる、此扶助金は、在職最終の年額百分の一を、在官年數に乘じたる總額とす、□二軍人遺族扶助料、軍人恩給法の規定する所にして、軍人が左の各號の一に該當するときは、其寡婦は扶助料を受くるの權利を有するものとす、□一戰死し又は戰鬪による負傷の爲め死歿したるとき、□二公務の爲め傷痍を受け、若くは疾病に罹り、又は戰地に於て若くは公務旅行中流行病に罹り死歿したるとき、□三退職恩給若くは免除恩給を受け、又は之を受くべき權利を有して死歿したる時、以上の三項に該當する者たるを要し、其受くべき扶助料金額は年額として、下に揭ぐる表により前記、一のものは甲號、ニのものは乙號、三のものは丙號によりて金額を受くるものとす、而して扶助料を受くる權利者にして左に揭ぐる事項の一に該當するときは、其權利消滅するもの也、イ重罪の刑に處せられたるとき、ロ日本臣民たる分限を失ひたるとき、ハ扶助料を受くべき權利の生じたる日より三箇年内に請求せざるとき、ニ扶助料を受くる者が、死去若くは戸籍を去り、又は他に婚嫁したるとき是なり、而して若し公權を停止せられたるときは、其間は扶助料を停止せらるるものとす、前記の扶助料を受くべき寡婦なきとき、又は死去し、權利消滅したるときは、其扶助料を孤兒に給せらるるものなり、茲に云ふ孤兒とは、滿二十歳以下の男女にして、未だ結婚せざるものを云ふ、但し養男女は家名承繼者に限るものとす、右の孤兒扶助料は、數子あるときは、家名承繼者に給せられ、非戸主軍人の孤兒にありては長子に給せらる、其承繼者又は長子死亡し、又は權利消滅し、及び支給期限の充つるときは、順次年少者に及ぶものにして、但し家名承繼者を除く外は、男子を先にし女子を後にす、而して右の寡婦及び孤兒なく、又はあるも其權利消滅したるときは、父母又は祖父母あるとき、寡婦に相當する扶助料の金額を父母又は祖父母に終身給するものとす、而して扶助料金表は左の如し。
右の外遺族扶助料に關しては、府縣立師範學校及公立中學校の校長、正教員、舍監及書記の遺族扶助料なるものあり、こは前示の官吏遺族扶助料に關するものと異る點なきにより、前示を準照すべし。(官吏遺族扶助法、軍人恩給法、公立學校職員遺族扶助料支給規則參照)
將官及相當官
佐尉官及相當官
高等官
轉任
一等
二等
三等
四等
五等
六等
七等
八等
甲號
千五百圓
千二百圓
千〇五十圓
七百五十圓
六百圓
四百五十圓
三百圓
二百二十五圓
百八十圓
乙號
千圓
八百圓
七百圓
五百圓
四百圓
三百圓
二百圓
百五十圓
百二十圓
丙號
五百圓
四百圓
三百五十圓
二百五十圓
二百圓
百五十圓
百圓
七十五圓
六十圓
準士官
下士卒
判任官
海軍
陸軍上等兵
陸軍一等卒
陸軍二等卒
海軍
一等
二等
三等
四等
一等兵
海軍二等兵
海軍三等兵
同上四等兵
五等兵
甲號
百五十圓
九十圓
八十圓
七十圓
六十圓
五十五圓
五十圓
四十五圓
四十圓
三十八圓
三十四圓
三十圓
二十六圓
十九圓
十七圓
十五圓
十三圓
乙號
百圓
六十圓
五十四圓
四十八圓
四十二圓
丙號
五十圓
三十圓
二十七圓
二十四圓
二十一圓
- 英
- Allowance for the support of the family of the deceased
- 独
- Sterbe-gehalt
- 仏
- Gratification pour la pro-tection du survivant
圍繞地
(ゐねうち)圍繞地とは、袋地の周圍に存在する土地を云ふ、袋地とは、(甲)土地が他の土地に圍繞せられて公路に通ぜざるとき、(乙)土地が池沼河渠又は洋海に依るにあらざれば、他に通ずること能はず、又は崖岸ありて、土地と公路と著しき高低を爲すとき、これ等の土地を稱するものにして、甲號の場合には、所有者は全く其土地を利用すること能はざるべく、乙號の場合に於ては、所有者はこれが爲めに非常なる不便を感ずべし、茲に於て乎法律は、圍繞地通行權なるものを袋地の所有者に與へて、此經濟上の不利なる結果を保護するものとす、而して右の圍繞地通行權の行使は、つぎの條件に從はざるべからず、□一通行の場所及び方法は、通行權を有する者の爲めに必要にして、且つ圍繞地の爲めに損害少なきものを擇ばざるべからず、即ち袋地の所有者は、隨意に隣地を通行することを得ず、通行の場所及び方法は、袋地の必要を以て標準とし、此必要を超過することを得ず、例へば收穫の少なき田畑に往來するが爲めには、徒步を以て通行し得るに必要なる通路を有するを以て充分にして、車馬に依て通行を爲し得ることを必要とせず、又他方に於て、通行權の行使はなるべく、圍繞地の所有者に損害を及ぼさざることを必要とす、例へば圍繞地に通路又は空地あれば之を使用し、畑地を先にして庭園を後にし、萬已むを得ざる場合にあらざれば、家屋其他の建物を變更して通路に供せしむることを得ず、而して必要なる場合に於ては、袋地の所有者は特に圍繞地に其固有の通路を開設することを得るものとす、□二通行權者は其撰擇に從ひ、通行地の損害に對して一時に賠償金の全額を支拂ひ、又は一定の年金を支拂ふことを要す、圍繞地の所有者は通行權の行使によりて、多少の損害を受くべきを以て、其損害は通行權者に於て、之を賠償するの義務あるは勿論なりとす、而して賠償金は、他人の土地を使用するの對價なりと見るを得べきにより、通行權者は一時に其全額を支拂ひ、又は年々一定の金額を給付するか、何れか一方を擇むことを得るものとす、然れども通路開設の爲めに生じたる損害は、其全部を支拂ふことを要するものとす、而して袋地が土地の分割又は讓渡より生じたるときは、通行權者は償金を支拂ふことを要せずして、圍繞地を通行することを得べし、蓋し土地の分割又は讓渡の場合に袋地を生じたるは、全く當事者の行爲に基因するものにして、當事者が既に其行爲により袋地を生ぜしめたる以上は、これが爲め必要となりたる通路を供するは、其當然の義務に屬すればなり、但し當事者間に反對の特約ありたるときは、其特約に從ひ償金を支拂ふことを要するは勿論なり、而して何れの場合たるとを問はず、通行の場所、方法及び賠償金に付き、當事者間に協議の整ひたるときはこれによるべく、協議整はざるときは、當事者間の爭は裁判所に於て、前記の標準に基きて之を決定するものとす。(民二一〇條乃至二一三條)
- 英
- Surrounding land
- 独
- um-gebendes Land
- 仏
- Terre environnée
違背
(ゐはい)國家の法律命令、規則等、又は私人の契約條項、若くは國家間の條約事項等、苟も遵守すべき條項に背反することを稱して違背と謂ふなり。
- 英
- Violation
- 独
- Verletzung
- 仏
- Violation
違法
(ゐはふ)法令の規定に違背することを稱して違法と謂ひ、其行爲を違法行爲と謂ふなり。(憲法六一條)
- 英
- Illegality
- 独
- Rechtswidrigkeit
- 仏
- Illégalité
違法裁決
(ゐはふさいけつ)主として行政法規に關して用ひらるる語にして、國家官廳又は公共團體の機關が、法規に違背したる裁判を云ふ、此違法裁決に對しては、上級の機關に其救濟を求むることを得べきを通則とす、詳細は裁決の項を參照すべし。(土地收用法八一條)
- 英
- Illegal verdict
- 独
- rechts-widriger Bescheid
- 仏
- Verdict illégal
違法處分
(ゐはふしよぶん)國家機關の下命處分にして、其機關が自己の權限を超え、又は法規に背きたる場合を稱して違法處分と謂ふ、違法處分に對しては、訴願、行政訴訟の方法によりて救濟を求むることを得べし。(憲法六一條)
- 英
- Illegal measures
- 独
- rechts-widrige Verfügung
- 仏
- Disposition ill-égale
違犯
(ゐはん)法規處分等の國家の命令に背反する行爲を汎く違反又は違犯といふ、違背といふと同意義なれども、稍其範圍は狹し、(犯、反の部參照)
- 英
- Contravention
- 独
- Kon-travention
- 仏
- Contravention
違反
- 英
- Contravention
- 独
- Kon-travention
- 仏
- Contravention
遺命
(ゐめい)遺命とは、皇室典範に於て用ひらるる語にして、天皇が皇室の事に關して、死後に效力を生ぜしむる目的を以て爲されたる遺言を云ふ、例へば天皇が遺命を以て太傅を任ぜらるる場合の如し。(典範二七條)
- 英
- Will of preceding Emperor
- 独
- kaiserliche letztwillige Verfügung
違約
(ゐやく)契約事項に違反することを稱して違約といひ、其違約したる者を違約者といふ、違約ありたる場合は、法律上如何なる結果を生ずるやは、各契約事項によりて多少異る所ありと雖も、主として生ずる效力としては、違約者は相手方に對して、其違約によりて蒙らしめたる損害を賠償せざるべからず、又其相手方は、違約者に對して契約を解除するの權を生ずる等は、主として生ずる結果なりとす。
- 英
- Breach of promise
- 独
- Contract-bruch
- 仏
- Briser la promesse
違約者
- 英
- Promise-breaker
- 独
- Vertrags-widrige
- 仏
- Personne qui brise la pro-messe
違約金
(ゐやくきん)違約金とは、債務者が違約に對する制裁として、債權者に給付することを約したる一切の金額を云ふ、我民法は違約金を以て賠償額の豫定と推定し、當事者間に別段に意思表示なき限りは、賠償額の豫定に關する規定を適用すべきものと定めたり、抑も此違約金の效力に關して、實際上疑を生ずるを免れず例へば違約金は一の懲罰なるを以て、債權者は其名義を以て、債務者より違約金を徵收することを得るは勿論、債權者は違約金の約定によりて、其本來の權利を制限せらるることなきを以て、一般の原則に從ひ、本來の債務の履行を求め、又は右履行より生ずる一切の損害賠償を求め得べしと論ずる事を得べし、或は又違約金は履行に代るべきものにして、債權者は契約本來の履行と、違約金の請求と何れか其一を撰擇せざるべからずと論ずる事をも得べく、或は當事者の意思は、違約金を交附して、契約を解除するにありと謂ふ事をも得べし、蓋し違約金の契約なるものは、實際に於て往々行はるる所なれど、此種の契約中或は多少の懲罰の意義を有するものあり、或は單純に損害額の豫定に過ぎざる事あり、其内容區々にして一定せざるを以て便宜上我民法は一の推定を設けて、前示の如く、別段の意思表示なき場合は、之を損害額の豫定と推定せる也、然れどもこは一應の推定に過ぎざるものなるが故に、當事者が反對の意思なる事明かなるときは、裁判所は其意思に基きて違約金の效果を定むべきものとす。(民四二〇條)
- 英
- Penalty
- 独
- Vertragsstrafe
- 仏
- Clause pénale
違約處分
(ゐやくしよぶん)組合又は其他法人の契約又は定款によりて定めたる規定に違反せるものに加ふる裁判處分を稱して、違約處分といふ。(取引所法一五條)
- 英
- Punishment for violating the articles
- 独
- Bestrafung für den Contract-bruch
- 仏
- Punition contre la violation des articles
遺留財産
(ゐりうざいさん)人が生前又は失踪前に、其人に屬せし財産を總稱して留遺財産といふ、遺産と云ふと稍其意義を異にし、遺産と云はば、其人に屬したりし權利義務を包括するの名義なれども、遺留財産と云ふは之より意義を狹くし、積極的に現在する資産のみを稱するに用ふる語とす。
- 英
- Legal property
- 独
- Pflicht-theilsvermögen
- 仏
- Propriété legale
遺留物件
(ゐりうぶつけん)汎く人の死亡、失踪又は所在變更の際に、遺留したる物件を遺留物件と稱す、主として用ひらるるは、行旅死亡人取扱に關する場合にして、行旅死亡人の遺留物件あるときは、市町村長は之を保管し、其保管の物件が滅失又は毀損の虞あるとき、又は不相當の費用若くは手數を要するときは、之を賣却して代金を保管するを要するものとす、而して行旅死亡人取扱費用を辨濟する者なきときは、其遺留物件を賣却して、其代金を以て之に充つるものとす。(行旅死亡取扱法)
- 英
- Legal portion
- 独
- Pflicht-theil
- 仏
- Portion légale
遺留分
(ゐりうぶん)遺留分とは、特定の相續人の爲めに、必ず遺留せざるべからざる財産にして、被相續人の自由處分を許さざる相續財産の一部を云ふ、故に遺留分は、之を被相續人の側より觀察するときは處分權の制限にして、相續人の側より論ずるときは、法律に定むる一種の特權なりとす、相續人は、此特權の存する限度に於て、被相續人の處分したる目的を自己の有に歸せしむる事を得るものなり、今遺留分制定の理由を案ずるに、凡そ權利の尊ぶ所以のものは、これを有する者に於て自由に處分し得るが爲めなり、故に遺留分の如き人の權利處分を禁遏する制度は、大に社會の公安を害し、取引上の安全を危殆ならしむる弊あり、然れども法律は、公益に基き、戸主は生前に於て家族を養ひ、親は子を鞠育し、子は親に對して扶養の義務を負ふべきことを規定せる以上は、其死後に於ても相當の扶養料を遺留すべきことを認めざるべからず、死後處分の自由を無制限に許さんか、相續人は相續を爲して其家族を養ふこと能はず、親子血族は忽ち路頭に餓死するを免れず、斯くの如きは人情に反し、公益を害する實に甚しきもの也、斯くては生前扶養の義務を認めたる法律の精神は、之を一貫する能はず、是れ幾多の國に於て、遺産の強制保存又は遺留分を認めたる所以なりとす、左に遺留分に關する法律規定を分説すべし、□一遺留分權、遺留分の權利を有する者は、我民法に於ては確定相續人也、故に相續人の近親者なりと雖も、相續人に非ざるものは此權利を有することを得ず、又相續人なるも、未だ相續開始せざる以上は、確定相續人と云ふを得ざるものなれば、亦此權利を主張することを得ず、而して遺留分は確定相續人のみに屬すと雖も、相續人の種類によりて其受くべき額同一ならず、即ち法定家督相續人たる直系卑屬及び遺産相續人たる直系卑屬は、被相續人の財産の半額を受け、此他の家督相續人及び配偶者又は直系尊族にして、遺産相續人たる者は、被相續人の財産の三分の一を受く、而して戸主が遺産相續人たる場合には、遺留分權を認めず、是れ戸主が他種の遺産相續人たる者なき場合に限り、巳むことを得ず相續人と爲るものにして、固より財産を受くることを期せざるのみならず、通常多少の財産を有し、獨立の生活を爲せるが故に、被相續人の意思に反し、又取引の安全を害してまで、之に財産を與へざるも、敢て酷に失することなきに由るなり、而して遺留分を受くる權利は、相續權に基くが故に、直接被相續人の財産の上に行はるる一種の身分權なり、從ひて相續人たる身分確定すると同時に、遺留分權を生じ、承認を要せず又抛棄することを得ず、但し遺留分權の目的たる財産を取得せざらんと欲せば、之を抛棄するも妨げず、然も是れ遺留分權の抛棄に非ず、又遺留分權を有する者は、後に示すが如く、贈與滅殺權を有す、又代位相續によりて相續人となりたる者は、被代位者の受くべかりし遺留分を受くるものとす、□二遺留分の算定、相續人の受くべき遺留分を定むるには、被相續人の財産を算定せざる可らず、之は先づ第一に相續開始の時に於ける被相續人の有したる積極的財産を合計し、第二に被相續人が贈與及遺贈によりて與へたる財産を合計して之に加へ、第三に被相續人の債務を合計し、以上第一第二の合計額より之を控除して、其殘額を以て被相續人の財産と定め、其二分の一若くは三分の一は即ち遺留分となるなり、尚此算定に資すべき財産に就きては下の事項に注意するを要す、イ被相續人が相續開始の時に於て有せし財産、是れ遺留分算定の基本と爲るべきものにして、苟くも相續開始の時に於て有したる確證存する限りは、開始後に價格を滅し、全部滅失するも猶當時の價格を基本となすべきなり、これに反して、計算の當時其價格を增加したるものあるも、遺留分の算定には、相續開始の時の價格によることを要す、債權は其額面により、其他の財産に就き爭あるときは評價せしむべし、特に條件附權利又は存續期間の不確定なる權利は、條件成就又は存續期間確定する迄抛棄するときは、遺留分を永く不確定の狀態にあらしむる弊あるを以て、裁判所に於て選定したる鑑定人の評價に從ひ其價格を定むべきものとす、但し家督相續人の特權に屬する祭祀用具、系圖、墳墓等はこれを算入せざるもの也、ロ遺贈及ひ贈與の財産、被相續人が生前に人に贈與したる物は、一切これを算入すべし、又遺留分權利者の受けたるものも、之を算入すべきものとす、而して其價格の算定に就きては前同樣の方法による、而して贈與物は、一切遺留分の算定にこれを加ふべしと雖も、相續開始前一ケ年間に爲したるものに限るものとす、幾年の上に遡りてもこれを算定すべきものとするときは、大に取引の安全を害することあり、然れども贈與の當時、當事者双方が遺留分權者に損害を加ふることを知りて之を爲したるときは、相續開始の時を去る幾年前のものと雖も、なほ之を算入すべきなり、是れ斯くの如き贈與は、獨り遺留分權利者を害するのみならず、公の秩序に背反するものなれば、其效力を認むべきものに非ざれば也、又當事者雙方が遺留分權利者に損害を加ふることを知りて、不相當の對價を以て爲したる有償行爲は、之を贈與と見做すべきものとす、ハ債務、遺留分權利者は、被相續人の財産を取得するものなりと雖も、相續債權者を害することを得ず、故に遺留分算定に就きては其財産中より之を控除すべきものなり、而して爰に所謂債務中には、民法の規定による債務のみならず、行政法上の債務をも含むものとす、□三減殺權、減殺とは、遺留分權利者及び其承繼人が、遺留分を保全する限度に於て、遺贈及び贈與の目的を其有に歸せしむることを請求するの權利也、故に遺留分を保全するに必要ならざる部分に付きては、減殺權を行ふことを得ず、而して全部の遺贈又は贈與の目的を減殺するにあらざれば、遺留分を保全する能はざるときは、其全部に付き減殺を行ふことを得るは論を俟たずと雖も、一部の贈與又は遺贈が遺留分を害する場合には、其部分に付きてのみ減殺を行ふものとす、又此減殺を行ふべき順序は、第一次に遺贈を減殺すべきものとす、第二次に於ては贈與に及ぶべきを本則とす、蓋し被相續人の爲したる贈與及び遺贈が違法なるは、相續人の遺留分を害するが故なり、相續人の遺留分を害するに至るまでは、被相續人の處分は總べて之を有效なりと論ぜざるべからず、而して贈與は生前處分にして、相續開始前に既に其效力を生じ、遺贈は相續開始の時より效力を生ずるものなり、總て遺贈の全部又は一部を減殺せば、遺留分を保全する場合には、贈與を減殺するの理由なし、此場合には被相續人が遺贈を爲さざるに於ては、遺留分を害することなければ、贈與に對しては、減殺權を及ぼすの必要なし、而して右の遺贈のみ減殺すべき場合に於て各種の遺贈全體を減殺せざるも、其一部のみ減殺せば、以て遺留分を保全するに足るべきときは、各遺贈の目的の價格に應じて平等にこれを減殺すべきものとす、但し被相續人が豫め遺贈が、遺留分を害することを知りて減殺の順序を定めたるときは、其の定めたる順序に從ふべきものとす、つぎに遺贈を減殺し盡すも、仍ほ遺留分を保全するに足らざるときは、贈與を減殺せざるべからず、然かも各種の贈與全體を滅殺せざるも、其一を減殺せば足る場合には、後の贈與より初めて順次に前の贈與に及ぶべきものとす。(民一一三〇條以下參照)
- 英
- Legal portion
- 独
- Pflichtteil
- 仏
- Réserve
遺留分權利者
- 英
- Person entitled to a legal portion
- 独
- Pflichtteilsberechtigte
- 仏
- Personne intitulé au la réserve
威力
(ゐりよく)威力は、暴行若くは暴行に對立する脅迫、恐喝又は人が自己の地位、又は權勢によりて人を畏怖せしむる力を意味す、例へば上級官吏たる位地又は會社銀行の重役たるの位地、父兄教師たるの位地を濫用して、強ひて人に或行爲を爲さしめたるが如きは、即ち威力を用ひたる場合の一例なりとす。(刑一六三、二七二條)
- 英
- Force
- 独
- Kraft
- 仏
- Force
違令
(ゐれい)違令と云ふは命令違反を意味し、又は陸軍刑法或は海軍刑法上に於ける特種の犯罪を云ひ、即ち總べて軍令に反したる場合を違令として處分せらるるもの也、陸軍刑法に於ける違令と稱すべきものは、軍人哨兵に對して哨令を犯したる者、哨兵が擅に其守地を隔れたる場合、哨兵が睡眠若くは酩酊して事を省みざる者、現に軍務に服しながら其の地を離れたる者、戰時軍中若くは合圍地に在りて急呼の號報あるとき、故なく來會せざる者、秘密を要する圖書、兵器、彈藥の製法、其他軍事に關する機密を洩したる者、軍人允許を受けて地方に赴き、故なくして歸著の期に後れたる者、反亂の罪を犯さんとする者あるを知つてこれを申告せざる者、捕虜降人を逃走せしむる者、又は之を隱匿、藏匿したる者等は、違令として陸軍刑法によりて罸せらるるものとす、輕きも禁錮にして、重きは死刑なり、又海軍刑法にも之に類する規定あり、宜しく參照するを要す。(陸軍刑法九七條乃至一一六條、海軍刑法一一二條乃至一三二條參照)
- 英
- Violation of ordinance
- 独
- Ver-letzung der Anordnung
- 仏
- Violation de l'ordonnance
衞士長衞士副長衞士服務規則
(ゑいしちやうゑいしふくちやうゑいしふくむきそく)明治三二年内務省令第五三號を以て發布せられたる所にして、神宮衞士服務規則を定めたるものなり、同規則によれば、衞士長、衞士副長は部下諸員の勤惰を視察し、諸般の報告を徵し、職務に關し指揮を行ふものにして、衞士は神地又は其接近地に駐在し、若くは神地を巡羅し、水火災、惡疫及び流行病の豫防幷に防止、犯罪及び不良行爲の制止、其他神地の取締に從事するものとす、衞士は宮域内に於て、服裝言語、擧動等敬意を失し、又は火災の虞ある行爲を爲す者あるときは、嚴に之を制止し、又神地に死亡人、病人、迷兒、發狂人等を認知したるときは、相當の處分を爲し、神地に於て殿舍、橋梁、道路の破壞樹木の顚倒等を認知したるとき、衞士長に報告すべく、衞士長はこれを宮司に報告すべきものとす、衞士は其職務を加ふも、爲めに必要なる場合に於て、制止を肯せざるものあるときは、これを神地外に退去せしめざるべからず、神地に於て重罪又は禁錮の刑に該るべき輕罪の現行犯人あるときは、これを逮捕して司法警察官に引渡すべし、罰金の刑に該るべき現行犯あることを知りたるときは、其氏名住所を問ひ、輕罪に就きては檢事に、違警罪につきては即決を爲すべき官署に告發すべきものとす、神地又は其近傍に於て火災其他の事變あるときは、臨檢の處置を行ふの外、宮司、司廳、齋宿及び衞士長へ急報すべきものとす、宮司及び衞士長は、事變又は其他必要の場合に於ては、衞士長以下衞士を總べて召集することを得、以上は本則中其主要なるものとす。
衞戍
(ゑいじゆ)警備の爲めに、陸軍軍隊の永久一地に配備駐屯することを衞戍と謂ふ、詳細は次項を參照すべし。(衞戍條例一條)
衞戍條例
(ゑいじゆつでうれい)明治二八年勅令第一三八號を以て公布せられたる所にして、衞戍司令官の職務權限を定めたる法則也、其大要によれば、陸軍軍隊の永久一地に駐屯するを衞戍と稱し、東京に在りては第一師團長、各要塞に在ては要塞司令官、其他に在りては其地駐屯の高級團隊長之が司令官たるものとす、衞戍司令官たる東京防禦總督、要塞司令官及び團隊長は、衞戍勤務上に於ても亦其所屬長官の區處を受くるものとす、各衞戍地には所要に應じ、監獄を置き、衞戍司令官の管轄に屬せしむるものとす、又其衞戍地の陸軍諸官廳、及陸軍の建築物に關する火災、水害等の救防は、衞戍勤務に屬するものとす、衞戍地司令官は、衞戍地警備の責に任じ、衞戍勤務に關しては、其地駐屯の軍隊を指揮し、衞兵の部署及其人員を定む、衞戍司令官は、警備上必要と認むるときは、衞戍上其管轄に屬せざる軍隊と雖も、其衞戍地に駐在するものに對し援助を請求し、又憲兵をして地方の狀況を報告せしめ、且つ火急の場合に於ては、直にこれに命令することを得るものとす、衞戍司令官は有事の日に當り、住民公共の保安に關する處置に就きては、當該地方官と協議するものとす、又衞戍線内に騷擾の事あるに當りて、地方長官より請求あるときは、兵力を以て便宜事に從ふことを得るものとす、衞戍地に駐屯する軍隊は、衞戍司令官の管轄に屬せざるものと雖も、衞戍司令官の定めたる衞戍上の諸規則に對しては、總べて遵守の義務あるものとす。
衞戍病院
(ゑいじゆびやうゐん)衞戍病院は、衞戍地に置き、所在地陸軍部隊の患者を收療し且つ衞生材料の保管供給、及び衞生部下士以下の教育を司る所也、東京衞戍地には、衞戍病院二個を置き、各病院に收容すべき患者の部隊は陸軍大臣これを定め、又衞戍病院は其衞戍地の情況によりて、分院を設くることを得。(衞戍病院條例參照)
- 英
- Military hospital
- 独
- Mili-tärhospital
- 仏
- Hôpital militaire
衞戍病院條例
(ゑいじゆびやうゐんでうれい)明治二一年勅令第二七號を以て發布せられたる衞戍病院の事務及職制等を定められたるもの也、衞戍病院は之を五等に區分す、各衞戍病院には、病院長、軍醫、藥劑官、主計、下士を以て其職員となす、病院長は所在地高級團體長(東京にありては第一旅團長、習志野に在りては、騎兵第二旅團長、臺灣に在りては、臺灣守備混成旅團長)に隷し、院務を總理し、院内の衞生、治病、教育、經理及衞生材料整理の責に任ず、軍醫以下の職員は、病院長の命を受け、院務を分掌す、入院患者の治療に關する諸費は、病院の支辨とす、但准士官及び自費服役の一年志願兵幷に軍屬にして、其傷痍疾病公務に起因せざるもの、又は公務の爲めに傳染病に感染し、手當金を受くる者は、其定額を納付せしむるもの也。
- 英
- Regulation of the military hospital
- 独
- Verordnung des Militärspitals
- 仏
- Règles de l'hôpital militaire
衞生行政
(ゑいせいぎやうせい)國民の身體の健康を保全する爲めにする行政の全體を總稱して衞生行政と云ふ、衞生は、危害の豫防と、既發の疾病の療醫とにあり、強ひて衞生行政も亦二大部に分る、一を保健行政と謂ひ、一を醫藥行政と謂ふ、而して保健行政とは、健康に對する危險を未發に防ぎ、又は其傳播を防ぐを目的とする行政の作用を云ふものにして、傳染病豫防、飮食物に關する警察、墓地及び埋葬に關する警察、病毒媒介たる特種の營業に關する警察等を主とし取締る、醫藥行政とは、既發の疾病を療養するを目的とする行政にして、醫士、藥劑士、藥局及び病院に關するものを云ふ、醫藥行政と題する條下を見て知るべし、要するに衞生行政は、其性質上地方警察規則によりて、其目的を達する場合多きが故に、法律勅令は其重要なる事項を規定して、各人の自由に關渉する範圍を示めすに過ぎざるものとす。
- 英
- Sanitary administration
- 独
- Gesundheitsverwaltung
- 仏
- Administra-tion sanitaire
衞生警察
(ゑいせいけいさつ)衞生警察は、衞生行政に屬するものにして、一般公衆の健康に對する危險の豫防、及び排除を目的とする警察行爲を總稱するもの也。
- 英
- Sanitary police
- 独
- Gesund-heitspolizei
- 仏
- Police sanitaire
衞生試驗所
(ゑいせいしけんじよ)衞生試驗所官制の認むる所により、内務大臣の管轄に屬し、衞生上試驗に關する事項を掌る所を衞生試驗所といふ、現今は東京、大阪及び橫濵に設置せらる。(次項參照)
- 英
- Sanitary laboratory
- 独
- Gesundheitslaboratorium
- 仏
- Sanitaire laboratoire
衞生試驗所官制
(ゑいせいしけんじよくわんせい)明治二三年勅令第一五五號を以て發布せられたる所にして、其官制の規定する所によれば、衞生試驗所は東京、橫濱、大阪に置かるるものにして、内務大臣の管轄に屬し、衞生上試驗に關する事項を取扱ふものとす、各衞生試驗所には、所長、技師、技手、書記の職員を置き、所長は技師を以てこれに充て、内務大臣の指揮監督を受けて所内の事務を管理し、所屬職員を統括するの職務あるものとす、技師はこれを奏任とし、專任九人を以てこれを定員とし、各試驗所に分屬して、所長の指揮を受け、試驗の事務を分掌するもの也、技手はこれを判任とし、二十人を以て定員とし、上官の指揮を受けて試驗の事務に從事し、書記も判任として定員を六人とし、上官の指揮を受けて庶務を掌るものとす。
- 英
- Government organiza-tion of the sanitary laboratory
- 独
- Amts-ordnung des Gesundheitslaboratoriums
- 仏
- Organisation de la laboratoire sanitaire
汚物掃除法
(をぶつさうぢはふ)明治三三年法律第一五號を以て公布せられたる所に係り、市内の汚物を掃除し、其清潔を保つことに關する義務者、及義務履行の監視に關する規定なりとす、其大要を擧ぐれば、市内の土地所有者、使用者、又は占有者は、命令の定むる所により、其地域内の汚物を掃除し、清潔を保持するの義務を負ふもの也、市は本法其他の法令により、別段の義務者ある場合を除くの外、其區域内の汚物を掃除し、清潔を保持するの義務を負ふ、市は義務者に於て蒐集したる汚物を處分するの義務を負ひ、其處分を爲したる爲めに生じたる收入は市の收得とす、地方長官は、掃除の施行及び實況を監視せしむる爲め、必要なる吏員を市に置かしむることを得、當該吏員は、掃除の實況を監視し、必要なる事項を實施する爲め、其事由を告知して、私人の土地に立入ることを得べし、私人に於て本法又は本法によりて發する命令を履行せず、又は履行するも充分ならずと認むるときは、其吏員に於てこれを施行し、其費用は市に於て支辨するものとす、右の處分を爲したるときは、其費用を義務者より徵收することを得るもの也。
- 英
- Law of clearing filth
- 独
- Schmutzräumungsgesetz
- 仏
- Loi de l'évacuation de l'ordure
汚物掃除法施行細則
(をぶつさうぢはふしかうさいそく)明治三三年内務省令第五號を以て發布せられたる所にして、汚物掃除法の施行に關する細則を定めたるもの也、其示す所によれは、掃除すべき汚物は、塵芥、汚土、汚水及屎尿とす、掃除義務者は、覆蓋ある容器を備へ、掃除したる塵芥を蒐集すべきものとす、而して土地に定著したる塵芥溜は、之を設置するを禁ぜざる市に於て、掃除義務者の蒐集したる汚物を一定の場所に運搬し、塵芥は成るべくこれを燒却すべく、市は公共便所を築造修繕すべきものとす、市は其義務に屬する場所の掃除、掃除義務者の蒐集による汚物の運搬、及び其汚物の處分に關して、方法順序を定め、地方長官の認可を受くべきものとす、本則により私人の履行すべき事項を、吏員の指定したる期間内に履行せざる者は、一圓九十五錢以下の科料に處せらるるものとす、公共溝渠に、塵芥、土石を投棄したる者は、十日以下の拘留、又は一圓九十五錢以下の科料に處せらるべし。
- 英
- Subdivision of ex-ecuting the law of clearing filth
- 独
- Aus-führungsregel des Schmutzräumungs-gesetzes
- 仏
- Règles de l'application de la loi de l'évacuation de l'ordure
惡性
(あくせい)惡しき傾向を有する品性を云ふ、主として刑法學上に使用せらるゝ用語也、元來犯罪は、一方に於ては其行爲が危險なると、又他方に於ては犯人の惡しき性癖の標識なるより、之に刑罰なる制裁を科して、一は其危險を豫防し、一は其性癖を威嚇改善するに在也、知る可し、犯罪は其行爲が危險性を有すると、犯人の惡性を其條件とすることを、然らば謂ふ所の惡とは何ぞや、凡そ人にして瘋癲白痴乃至提孩にあらざる限りは、皆仁義忠孝の善たるを知り、不義不忠の惡たるを知らざるものは非らざる也、されど一步進みて忠義正直の何故に善なるか、不義倫盜の何故に惡なるかを問はゞ、究竟の理由に關しては答ふると容易ならざるを知るべし、是れ軈て倫理學上の最後の斷案を俟たざるべからざる所にして、然も未だ一定の定説あるを聞かざる所以也、故に茲に惡又は惡性と云ふも、眞個の槪念的意義を説くこと能はざると同時に、一般の常識常智に訴へて知り得る具體的個々的惡の意義に滿足せざるべからず、只法律は人類共同生存の規則として社會的のものなれば、此点よりして人の反社會的非社交的の性質を惡性と稱し、此傾向を惡なりと假定するを通説となす也、抑々行爲にして若し社會一般の常規を脱せざらんか、以て反社會的(卽ち惡)の性格を徵するに由なきのみならず、行爲にして社會一般の常規を脱せざる以上は、危險性を有する行爲と雖も之を犯罪として罰すべきに非ざる也、何となれば、社會は生存競爭を以て終始するものなるが故に、各人の行爲は其反面に於て常に他人の損害となるものなればなり、只其行爲が社會の常規を逸脱するに於て、初めて之を犯罪として禁すべく、斯の如き行爲を敢てする性格は之を惡性なりとして鎭壓せざるべからざる也、惟ふに生存競爭は自然界の大事實にして、人力の得て排除し能はざる宇宙の大則と謂ふべし、從て法律は只此生存競爭に一定の限界を定め、安寧の間に秩序よく字宙の大則をして運行せしむるに過きず、されば或種の行爲は其結果として他人の利益を害することあるも、尚之を正當の行爲として保護せざるべからざるべく、或種の行爲は之を禁じて他人の利益を尊重する所あらしめざるべからす、斯の如くして社會の常規は存し、法律上の惡不惡の標準は此點を基準とし限界とする也、我現行刑法は犯罪の惡性を積極的に規定せず、之を消極的に規定して數多の違法阻却條件(惡性は法に違背するに依て認めらる、故に違法阻却の場合は、其行爲は惡性の表現たらずして正當行爲なり、蓋し茲にいふ惡は社會共存條件に反することを意味し、社會共存條件は實質的の法なれば也、從て違法阻却の規定は消極的の惡性に關する規定と謂ふを得べし)を認めたり、卽ち或種の行爲は法律が特に之を權利として保護するが故に違法阻却の原因たり、例へば民法の認むる懲戒權、訴訟法の認むる逮捕權、精神病者監護法の定むる監禁權の如し、又或種の行爲は法律が特に之を放任するが故に違法阻却の原因たり、例へば緊急狀態に基く行爲の如し、而して或種の行爲は法律が之を權利として明示せず、又之を放任することを明にせざるも、單に其正當なるの故を以て違法阻却の原因たり、例ば正當業務の執行に屬する行爲の如し、或は特に罪の構成要件として違法なるを要する場合に、自己の行爲を違法ならずと信じて爲したる場合は惡性を缺く、故に違法阻却の原因たり、凡そ此等の行爲は社會上の常規を逸脱せざるが故に違法阻却の原因となり、犯罪を構成せざるものなり、之を要するに惡性なるものは、犯人の心裡に於ける性格の傾向惡なることを意味し、犯罪は行爲として惡性の標識たる場合に、且つ其行爲が危險性を伴ふ場合に於て、刑罰なる制裁を以て臨むものなるを知るべし。(刑三五條乃至四二條舊刑三一六條參照)
反社會性
非社會性
明渡
(あけわたし)自己の所有に非らざる不動産、船舶等に占據する者をして其占據を止め引渡さしむる場合に用ゆる法語なり、元來他人の建物又は船舶等を使用占據する者に對し、其明渡を求むる訴は、價額の如何に拘はらず區裁判所の管轄に屬し、此種の訴に於ては債權者の申立に依り假執行の宣言を附することを得るものなり、蓋し事重大ならざるが故なり、又強制施行に於ても、執達吏は此場合は債務者の占有を解き債權者に其占有を得せしむべき手段を採るを要するものにして、執達吏が執行々爲を爲すに際し抵抗を受くるときは、威力を用ひ又は響察上の援助を求め、或は執行裁判所に申出でゝ兵力を假ることを得べし、尤も此種の方法を採るは其必要の程度を超ゆべからざるは勿論にして、抵抗を除去するに必要なる程度を超て濫りに威力を用ゆるときは、懲戒上及び刑法上の制裁を受くべきは固より其所なり。(裁構法一四條、民訴五〇二條一號、七三一條參照)
字
(あざ)字とは市町村内の區分の俗稱にして、古來よりの統治若くば自治の關係より生じたるか、又は區画指定の便宜上呼びなされたるものを云ふ、字は之を別ちて大字及び小字とす□一大字とは市町村制施行の際分合したる舊區町村名及び從前獨立せる町村内の支鄕又は某組と唱ふる部落等の總稱にして、此種の大字名を改稱するには、關係市町村會に於て之を議決し、府縣知事の認可を受くべきものなり、但し町村に屬するものは郡長を經由すべきものとす、大字の區域を變更する場合も亦同じ、□二小字とは以上の大字名以外の字名を汎稱し、之を二に別つ、一を市内從來の町名とし、二を其れ以外の小字とす、此第二に屬するものは單に字何々と呼ぶ、例へば南葛飾郡本田村字四ツ木の如し、而して第一に屬するものゝ改稱又は區域の變更は、大字の改稱に準ずべきものにして、第二の狹義に於ける字の改稱及び區域の變更は、關係地主の竟見を聞き市町村會之を議決し、府縣知事の許可を得べきもの也、元來字なるものは、其地固有の名稱にして、往古より傳來のもの甚だ多く、土地爭訟の審判歷史の考證、地誌の編纂等に最も要用なるものなれば、政府に於てもなるべく之が變更改稱を許さざる方針を採るもの也、されば以上の如き丁重なる手續を定めたるものとす、而て新開地等に新に字名を附すべき場合に於ても、なるべく故實關係名稱等に依るを可とすべきが故に、以上の場合に準じて府縣知事の許可を要するものとせり、終りに府縣知事が以上の許可を與へたる時は、其處分を爲したる翌年三月末日限り、之を内務大臣に報告すべき義務あり。(一四年九月大政官八三條達、二六年一月内務省訓令二二號參照)
預置送達
(あづけおきそふだつ)送達とは、書面を以て或事項を訴訟關係人に通知する行爲を云ひ、送達は其方法の如何に依り、之を送達吏に依る送達、郵便に附する送達及公示送達となす、送達吏による送達は普通の送達にして、執達吏又は郵便配達史によるなり、郵便に付する送達及公示送達は所謂特別送達に屬し、前者は受訴裁判所々在地に送達を受くべき者が住所をも假住所を、有せざる場合に爲す、此送達は郵便に附するを以て送達を了したるものとし、着否如何を問はざる也、次に後者卽ち公示送違は、送達を受くべき者の現在地知れざるか、又は外國に在る場合に、囑託による送達を爲し能はざるとき之を爲すものにして、法定の要件の下に之を裁判所の揭示所に揭示して爲す送達方法也、偖て送達吏による送達は、本來ならば之を被送達人に手渡して爲すべきものなれども、被送達人住所に居らざる場合に、法律は補充送達の方法を認む、卽ち成長したる同居の親族又は雇人に交付して之を爲すは其一にして、營業所又は事務所にて送達を爲す場合に、其營業使用人又は役員若くは筆生に之を僞すは其二なり、此の如き方法に依るも尚送達を施行し得ざる場合には、其交付すべき書類を其地の市町村長に預置き、送達告知書を作りて之を住居若くは事務所の戸に貼附し、且近隣に住居する者二人に其旨を口頭を以て通知し、斯くして送達を爲すものなり、之を預置送達と謂ふ、故に預置送達は、他に送達の方法なき場合に之を爲すことを得るものにして、送達し能はざる場合の補充方法なりと謂ふべし、故に學者は講學の便宜上預置送達並に差置送達等を總稱して補充送達と言へり。(民訴一四五、一四八、刑訴一九條參照)
壓制
(あつせい)威力を弄して壓迫制御することを云ふ、必らずしも人をして義務なきことを行はしめ、又は爲すべき權利を妨害する場合に關するを要せずと雖も、法律は公務員職權を濫用して此種の事を爲したる時は、職權濫用罪として六箇月以下の懲役又は禁錮に處するものと定めたり、又壓制は權力者のみ之を爲すを云ふに非らずして、反て一私人が權力者に向て或行爲を強求する場合にも存す、法律は一私人が暴行又は脅迫を加へて辭職せしめ、又は或處分をなさしめ若くは爲さゞらしむる爲め、公務員に強求する處爲を罰せり、要するに壓制なる語は、事實上の有力者が其威力を弄して人を壓迫制禦することを意味し、法律上の權力者たると否とは其の觀念を異にす、普通に壓制政府など言ふは、たま〳〵以て事實上の有力者が法律上の權力者と同一なりし場合に過ぎす。(刑九五條二項、一九三乃至一九六條參照)
押印
(あふいん)印顆を押捺することを云ふ、抑々印顆とは通俗謂ふ所の印形のことにして、或物體の一面に一定の形狀を刻み、此形狀を他の物體に押捺して其影蹟を現出せしむるに用ゐ、以て或事實の證明に供するもの也、而て其形狀たるや成は文宇を輪廓にて圍めるものあり、或は紋章なることあり、刑法には印顆及び印顆の押用によりて現はれたる影蹟を總稱して印章を押す、印顆は此の如く印影を現す器具にして、木なることあり、玉なることあり、金屬なるあり、其材の何たるを問はず、以上の作用を爲す器具を單に印又は印顆と謂ふ、次に押捺とは印顆を或は印肉により、又は印顆を燒きて他物體に押すことを云ひ、依て他物體に影蹟を現出せしむるの作用なり、押捺の方法は以上の如く濕用に依ると、乾用に依ると、單に壓迫作用に依るとの諸種の方法あり、何れも等しく押印とす、我邦古來より證書其他權利義務を證する書類に、記名調印して其眞正の作成名義なるの證據とせり、是れ歐米の俗、此場合に單に署名すると異る所なり、尤も古昔花押と稱し書風を變へて署名するの例ありしと雖も、一般には記名押印の方法に依るを例とす、爰を以て法律は、一般に署名すべき場合に、記名調印を以て足ることを定む、是れ古來よりの風習を參酌し實際の便宜を計りたるに外ならず、之を要するに押印とは、彼の調印と言ふに同じく、印顆を物體就中紙類に押用することを意味し、普通は朱肉に依り、また黑肉に依るものあり、其何れたるも等しく押印なる作用に屬す、終りに注意すべきは押印と言ひ調印と云ふ、皆當該文書の作交名義を證するを普通とすること是れ也、然らずんば其物體の所屬名義を明にする場合に用ゆ、此他の場合は所謂押印に非らずして戯捺のみ、眞の押印に非らざる也。(二三年四月大藏省訓令五六號、印及び印顆、暑名の部參照)
押捺
(あふなつ)單に押捺といへば、押し捺すことを意味し、必らずしも印章に關するものに限らずと雖も、法律上此語は、主として印章記號を他物體に現出せしむる作用を指す場合に用ひらる、此意味に於ける押捺は、印章記號の原體たる印顆を、或は燒きて他物體に捺し付け或は朱黑青等の所謂印肉を以て之を濕し、他の物就中紙等に押し、叉は印顆を其まゝ他物體に壓し付けて、一定の影蹟を現出せしむる作用を云ふ也。(尚押印、印顆の部參熊)
- 英
- Pressing one's seal
- 独
- Besiegel-ung
- 仏
- Apposition d'un scean
安寧
(あんねい)社會的生存に於て、各人が他人に對し一定の境域を守りて互に相侵さヾるときは、斯る共同生活上の狀態は秩序あるものにして、此秩序に對し何等の危險を伴はざる狀態を稱して安寧と謂ふ、抑々人は社會的動物なるが故に、單獨個存の狀態に甘ずること能はず合しては夫婦となり集つては社會をなす、而て斯の如き共同生存に於て、各人無限に其欲する所を逞せんが、共同的生存は得て期すべからず茲に於てか各其分を悟り、其境域を持して相侵すことなからんとす、是れ社會に秩序の生ずる所以にして、秩序紊れんか各人の幸福は素より人寧所なきに至らん、是を以て有權者あり法を制定し、權力を以て秩序の維持を務む、茲に有權者と言ふは必らずしも君主の如きを指すに非らず、慣習法の生ずる慣行の原動者の如きも等しく有權者也、偖て此の如くにして秩序維持せられ、各人其分を侵さるゝことなきに於ては獨り個人の幸福のみならんや、卽ち安寧は此場合に存ずるの狀態なり、一言にして之を掩へば安寧とは公共の秩序維持せられて、各人安穩なる狀態の謂なり、されば、秩序は社會の活動其宜しきを得、最も圓滿に存ずる有樣を規則的見地より觀察したる語にして、安寧は之を個人的見地より看たる語とす、但し個人的と言ふも、之を具體的に見たるに非らずして、個人の幸福卽公の幸福たるに至れる場合を指す也、之を要するに秩序は人の社會的生存に於ける要件の言明にして、此の要件が違はざる場合が安寧なりと謂ふべし、換言すれば、安寧とは人の社會的生存に於ける秩序が、紊るゝことなくして最も圓滿に存ずる有樣を云ふ也。(憲九條參照)
阿片烟に關する罪
(あへんえんにくわんするつみ)阿片は麻醉劑として使用せらるゝ一種の藥品なり、日本藥局法に依れば、其第三表劇藥の部類に屬し、罌粟殼乳液の乾固せるものにして、莫兒比𣵀を主成分とす、一日大人の極量〇、五瓦、一囘の極量〇、一五瓦とし、此範圍内に於て醫療に用ひて特效あれども、之を過量に吸用し又は習慣的に常用するときは、恐るべき中毒を起して遂に死亡を導くに至る虞あるもの也、而も人の好んで之を吸食する所以のものは、此中毒の作用たる吸食者をして恍惚として快境に入らしむるに因る、而て一度此快感を覺えたる者は吸慾抑へ難く、之を重ぬること再三なるに至らば常用の習癖を爲し、茲に病膏盲に入りて一日も之を廢すること能はず、遂に不測の災害を來すなり、爰を以て刑法は之が吸食者等を罰するに至れり、元來刑法は自殺未遂又は自傷を罰せざるを原則とするが故に、自ら阿片中毒を招く者をも亦放任すべきが如しと雖も、遠き大患を慮らずして近き快感を貪らんとするは人情の弱点に屬し、阿片吸食の惡習は社會の各層を侵犯して、遂には民建國富の消長に影響を及ぼすの虞あるが故に、阿片の吸食に關する罪を定めたるなり、以下本罪の内容を分説せん□一本罪は阿片煙、又は阿片煙吸食器を其物體とす、茲に阿片煙と言ふは、日本藥局法並に阿片法に所謂阿片のことなり、只吸食の方法として煙吸するが故に爾か言ふのみ、次に阿片煙吸食具は其何たるを問はざるが故に、煙管の如き物に限らざるや明也、□二本罪の行爲は輸入、製造、販賣又は所持、吸食、房屋給與とす、(A)輸入とは阿片煙を帝國外より帝國内に運移する也、船舶に依ると否とを問はずと雖も、我國の如き四面海なる國に於ては、船舶に依らざる場合を想像し能はず、而て船舶に依る場合に輸入既遂時期に就いて、陸揚説と、我領海内に入ると共に輸入既遂なりとの二説あり、我大審院は陸揚を以て輸入なりとの説を採れるが如し、(B)製造とは阿片煙を罌粟より造出する場合のみならず、藥用に供する正當なる阿片を以て、煙吸すべく裝作する場合をも包含する也、(C)販賣とは不定の多數人に賣捌くことを云ひ、既に此目的に出づる限りは、現に數人に賣捌を僞したることを要せず、(D)所持は阿片煙等を自己の實力的支配の下に置くことを意味す、販賣の目的に出でたると否とに依り其刑を異にす、(E)吸食とは用法に從て阿片煙を消耗することを意味し、從て吸食は吸食者自身に害あるものなり然れども前説の如く、吸食を不問に附するときは此惡習を社會一般に傳播すべき危險あるが故に、之を嚴重に處罰するなり、(F)房屋給與とは阿片煙吸食者の便を圖り、吸煙する居室を準備して供給するを云ひ、刑法は依て利を圖る者を從犯中より別離し、獨立罪として重く處罰す、□三本罪に對する處罰は、(甲)阿片煙を輸入製造又は販賣し、若くは販賣の目的を以て所持したる者を六月以上七年以下の懲役に、(乙)阿片煙吸食器を製造輸入、販賣又は販賣の目的にて所持したる者を三月以上五年以下の懲役に、(丙)税關官吏呵片煙又は阿片吸食器具を輸入し、又は其輸入を許したるときは一年以上十年以下の懲役に、(丁)阿片煙を吸食したる者は三年以下の懲役に、(戊)房屋を給與して利を圖りたる者は六月以上七年以下の懲役に、(己)阿片煙又は阿片煙吸食器を所持したる者は一年以下の懲役に處せらるゝもの也、而して本罪の未遂は總て罰せらるべし、舊刑法が本罪に擬するに無期徒刑を以てせしは、支那に於ける阿片吸食の慘毒に鑑むる所在りしが故也、茲に注意すべきは、臺灣に於ては既に阿片癖に陷りたる者に特許を經て阿片煙を購買し、且吸食することを許せり、是れ蓋し止むを得ざるより出でたるものとす。(刑一三六條乃至一四一條、舊刑二三七條、三〇年律令二號參照)
阿片法
(あへんはふ)阿片は法定の範圍内に於て使用するときは、醫療に用ひて特效あれども、之を阿片煙として吸食するときは恐るべき害を生ずるにより、政府は取締の爲め嚴重なる規定を設けたり、之を阿片法及び阿片法施行規則となす、今其大要を略記すれば、□一阿片を製造せんとする者は、地方長官の許可を受くべきものにして、許可を受けたる阿片製造人は、每年十二月二十日迄に其製造したる阿片を政府に納付するを要するもの也、政府は納入されたる阿片の莫兒比𣵀含量度を試驗し、五分以上を含むものには賠償金を交付す、其不適品は無償にて燒却する也、而て以上適量阿片は、醫藥用品に限り封緘を施して之を賣下ぐ、其方法は、先づ地方長官をして其管内藥劑師又は藥種商中相當の人員を限り、卸賣人を指定して賣下げしむるものにして、次に醫師及び藥劑師等にして阿片を要するときは、數量竝に件所氏名年月日を記して調印し、此證書引換に卸賣人より購求するを得るものとす、以上の外阿片は醫師の處方箋を以てするに非らざれば之が賣買を禁ぜらる、□二地方長官の許可を得ずして阿片を製造したる者及び、政府の賣下ぐる阿片にあらざる物を賣買授受又は所持する者は、百圓以上五百圓以下の罰金に處せらる、地方長官の許可を得て製造せる阿片と雖も、之を每年法定の期日迄に納付せざる者は、三十圓以上三百圓以下の罰金に處する也、尚上説せる所の方法に違反して賣買したる者は、十圓以上百圓以下の罰金に處せらるべし、□三阿片の賠償價額は、莫比含量五分以上六分未滿の物は百匁に付き金一圓にして、其九分迄は一分を增す每に五十錢、九分以上十二分未滿は一分を增す每に金一圓、十三分以上は一分を增す每に金五十錢を加ふる也、而て賣下價格は一匁金十錢の割にして、一匁入、十匁入、五十匁入の三種あり。(三〇年三月法二七號、同年内務省令四號、及内務省告示三〇號參照)
阿片法施行規則
有價證券僞造罪
(いうかしようけんぎぞふざい)有價證券とは證券其ものが價値を有する文書にして、卽ち證券は權利が證券面に化體し、常に其證券と引換にあらざれば有效なる辨濟を爲すことを得ざるもの也、有價證券僞造罪とは斯る證券を僞造、變造又は虛僞の記入をなし、若くは僞造變造の有價證券及び虛僞の記入を爲したる有價證券を行使し、及び行使の目的を以て之を人に交付し、或は此種の證券を輸入する罪を總稱す、舊刑法に於ては特別に章を別ちて此種の罪を規定せず、一般官文書又は私交書の僞造、變造又は行使罪の一種とせしも、改正刑法は此種の文書は、前説の如く普通の文書と性質を異にするが故に、官文書たると私文書たるとを區別せず、一括して有價證券僞造の罪となしたり、左に本罪の構成要件を上くれば、□一客體、本罪の容體は有價證券なり、有價證券とは前説の如く、證書面に表示せられたる權利の讓渡又は行使の爲には、法律上其證券の占有を必要とする證券にして、之を別てば公的のものと私的のものとあり、公債證書、官府の證券類は公的のものにして、株券手形の類は私的のもの也、又有價證券は法定の形式を要するもの例へば手形の如きものと、一定の形式を要せざる事實上の有價證券、例へば切手の如きものもあり、何れも本罪の客體たる有價證券とす、法文に公債證書といふは、國債證券、其他府縣債證券を云ひ、官府の證券とは、官廳より發行せる記名持參人拂の支拂命令を記せる證券の如きをいひ、會社の株券といふは、商法の規定其他法令に基きて成立したる社團法人の株主權を表す證券を云ふ也(有價證券の部參照)□二行爲、本罪の行爲は、行使の目的を以て僞造、變造又は虛僞の記入をなすか、或は僞造、變造の有價證券又は虛僞の記入をなしたる有價證券を行使し、又は行使の目的を以て之を人に交附し、若くは輸入したることを要する也、(い)僞造とは作成名義を僞て新に有價證券を作製するを云ふ、卽ち眞の有價證券に非らざる有價證券を作製することを云ふなり、既に存在する有價證券に摸して新たに有價證券を僞作すると、全く存在なきに拘はらず、之れある如く作製者の名義を僞て有價證券を作成するとは何れも僞造なり、從來僞造には、有形僞造と無形僞造との二別ありとせらる、所謂有形僞造とは、有形的に文書其ものを詐る場合にして、文書の作成者として文書に指示せらるゝ者が其文書の作成者に非ざる場合也、無形的僞造とは、文書の作成名義には詐りなきも、其内容が虛僞なる場合をいふ、無形僞造は一は自ら自己の名義に於て文書を作製する揚合と、他人をして其名義に於て文書を作成せしむる場合とあり、本罪の行爲たる僞造は、此無形僞造を包含せず、(ろ)變造とは眞正の有價證券の内容を變更するとをいふ、變造と僞造の區別に就ては二説あり、一は眞文書を利用して其文書の内容たる權利關係其他の事實の態樣效力を變更する場合を變造とする説にして、無形的利用説といふ、二は眞文書の外形を利用して新文書を作成する場合を變造となす説にして、有形的利用説と名付く、茲に變造とは第一説に從ひたるものと信ず、(は)虛僞の記入とは、所謂無形僞造の一場合を指し、眞正の作製名義を使用するも内容の虛僞なる場合を云ふ也、例へば手形に裏書を爲す者が故意に内容の虛僞なる記入をなしたる場合の如し、(に)交付とは之を他人の占有に移すことを意味す、其贈興によると、交換せるによると、其他の附與なるとを論せず、(は)輸入とは外國より帝國の領土内に移送することを云ふ、以上の僞造、變造、虛僞の記入、交付、輸入は何れも行使の目的に出でたることを要す、例(ば單に僞造有價證券を人に交付するも本罪を構成せず、必らず行使の目的を以て交付せる場合ならざる可らず、(へ)行使とは有價證券を有價證券として使用するの謂也、故に有價證券を有價證券として使用したるときは、反對給付を得たると否とを問はずと雖も、因て對價を得たるときは、本罪と詐僞取財罪との間に總則五十四條の適用あるものとす、□三處分、本罪に對する刑は、行使の目的を以て有價證券を僞造、變造又は虛僞の記入を爲す者は三月以上十年以下の懲役に、此等の有價證券を行使し又は行使の目的を以て之を人に交付し、若くは輸入したる者は三月以上十年以下の懲役に處せらる、此後者の場合の未遂は之を罰せらるべき未遂罪とす。(刑一六二、一六三條、三九年法五一號紙幣類似證券取締法參照)
有期禁錮
(いうききんこ)國事犯の如き非破廉耻罪に科する主刑の一種にして、禁錮の期限あるものを云ふ、禁錮は獄監に拘置して定役を科せざる刑罰也、之を別ちて有期禁錮及び無期禁錮となす、無期は終身間拘置せらるゝものにして、有期禁錮は一个月以上十五年の範圍に於て之を處斷するもの也、尤も之を加重して二十年に至らしむることを得べく、輕減して一个月以下に降らしむることを得る也、有期禁錮は舊刑法に謂ふ所の有期流刑、重禁獄、輕禁獄及び輕禁錮の四を包含し、單に輕禁錮とは異なるものとす。(刑一三、一五條、刑法施行法二條、有期刑の部參熱)
有期刑
(いうきけい)自由刑の期限あるものを云ふ、元來刑罰は犯罪に科する惡報にして、法益の剝奪を其内容とす、今之を別てば生命刑卽ち死刑、自由刑、身體刑例へば笞刑の如き、名譽刑、財産刑の五とす、定期刑は此の自由刑に於ける區別にして、所謂無期刑に對す、舊刑法は刑を別ちて主刑及び附加刑とし、主刑を別ちて死刑、徒刑、流刑、懲役、禁獄、禁錮、罰金、拘留、科料の九とし、徒刑及び流刑を有期及び無期の各二とし、懲役、禁獄及び禁錮を各重輕の二とす、而て以上の有期徒刑、有期流刑、及び重懲役以下輕禁錮並に拘留は有期刑なりしが、改正刑法は主刑を別ちて死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科科の六種とし、懲役及び禁錮を各有期、無期の二とせるが故に、現行法の下に於て有期刑と言へば、有期懲役、有期禁錮、拘留の三種に過ぎず、卽ち舊刑法の有期徒刑、重懲役、輕懲役、重禁錮は現行法の有期懲役に等しく、舊刑法の有期流刑、重禁獄、輕禁獄、輕禁錮は現行法の有期禁錮に等しき也、□一有期懲役、懲役なる刑は主として破廉耻罪に科する主刑にして、有期懲役の刑期は一个月以上十五年以下とす、懲役は監獄に拘置し、定役を科するものにして、所謂定役とは法が自由刑執行の方法として強制する勞役の謂也、□二有期禁錮、禁錮は國事犯の如き非破廉耻罪に科する主刑の一種にて、有期禁錮の刑期は一ケ月以上十五年以下なり、而て禁錮は監獄に拘置するも懲役と異なり定役を科することなし、尤も以上の有期禁錮又は懲役を加重する場合は二十年までに至ることを得べく、之を輕減する場合に於ては一箇月以下に降すことを得る也、□三拘留、其刑期を一日以上三十日未滿とし、拘留場に拘置する刑なり、拘留科料に處せらるべき罪は、主として單純なる法規違犯に關するものにして、講學上警察犯又は違警罪と稱するものなり、舊刑法が之を違警罪の主刑とせしことは、改正刑法が違響罪なる罪別の名稱を廢したるが故に異なることなし、舊刑法は拘留を一日以上十日以下となし、之を加重するも十二日を超ゆることを得ざりしも、新刑法は之を三十日未滿に擴張したり、而も之を加重して其最長期たる一月未滿を超ゆることを許さず。(刑九、一二、一三、一六條、刑法施行法二條參照)
- 英
- Penalty for a limited time
- 独
- zeitliche Strafe
- 仏
- Peine pour le terme limité
有期懲役
(いうきてふえき)主刑の一種にして懲役の期限あるものを云ふ、元來懲役は破廉耻罪に科する刑罰にして、有期無期に別ち、有期は一ケ月以上十五年以下を以て其範圍とす、但し之を加重して二十年に至ることを得べく、輕減して一月以下に降すことを得、懲役は其何れなるを問はず、等しく監獄に拘置して定役を科するものなり、舊刑法に於ては有期懲役なる名稱なく、懲役は重懲役、輕懲役の二となしたり、現行法に於ける有期懲役は此重輕の懲役より其範圍廣く、舊法の所謂有期徒刑、重輕の懲役及び重禁錮の四を包含するものなり。(刑一二、一五條、刑施二條)
優先辨濟
(いうせんべんざい)一般の債務者に優先して辨濟を受くることをいふ、優先辨濟は主として債務者の財産が債務を完濟する能はざる場合に其效果を現はすものにして、優先辨濟の權を有する者は、抵當權者、質權者、先取特權者、其他の別除權者等にして、留置權者は一般の場合に優先辨濟を受くるの權なし、只果實に關してのみ此權利を有す、尤も留置權者は其占有する物に關して生じたる債務の辨濟を受くる迄、該物件の占有を繼續し之を第三者に對抗し得べきが故に、實際に於ては常に優先辨濟を受くることゝなるべし、今優先辨濟の權利を大別するときは二となすことを得べし、一は當事者の意思に基くものにして、質權、抵當權の如き是れ也、二は法律上の恩惠に基き當然優先の權あるものにして、先取特權其他の別除的權利は之に屬す、今法律が何故に此の如き優先的別除權を認めたるやといふに、當事者の意思に基く場合は固より之を禁ずるの必要なきに依る、只法律の規定當然の結果として之を認めたる場合は、此種の債務は他の一般の權利に比して多少保護すべき點あるに依る、然れども保護すべき程度の異なるに因り、一般に斯る權を認むるを可とすべきや否やは別論とす。(抵當權、質權、先取特權等の部參照)
郵便法中改正
(いうびんはふちうかいせい)明治四〇年三月法律第七號を以て、郵便法中を改正したるものにして、其結果、遞信省令第六號を以て、郵便規則中に改正を加へ、同年四月一日より施行せらる、其要點を擧ぐれば、□一小包郵便に書留と書留ならざるものとを區別し、夫より生ずる條項の改正頗る多し、而して料金も亦左の如く改めらる、
一内地小包郵便料
同一郵便區内
{普通金四錢
書留金八錢
同一郵便區外
{普通書留
二百匁まで八錢十二錢
四百匁まで十二錢十八錢
六百匁まで十六錢廿四錢
八百匁まで二十錢三十錢
同一郵便區外
{普通書留
一貫匁まで廿四錢卅六錢
一貫二百匁迄廿八錢四十二錢
一貫四百匁迄卅二錢四十八錢
一貫六百匁迄卅六錢五十四錢
一内地、臺灣、樺太相互間小包郵便料
二百匁まで三十錢
四百匁まで卅五錢
六百匁まで四十錢
九百匁まで五十錢
一貫二百匁迄六十錢
一貫五百匁迄七十錢
内地、臺灣、樺太相互間に發著する小包郵便物は、價格表記の指定あるものの外、書留小包郵便物として之が取扱を爲す、又小包の重量は、一般に一貫五百匁までを限りたるが、改正法には、内地相互間は一貫六百匁、内地、臺灣、樺太相互間は、一貫五百匁を超過すべからずとなせり、□二價格制限擴張、又價格表記其他代金取立等、三百圓の制限を千圓に擴張せらる、□三無料郵便表記「通信事務」の四字とし、無料郵便の取扱嚴格となれり、□四繪葉書表面に通信文を記し得る樣になりたり、卽ち、郵便葉書は其の表面に、左記の事項に限り之を記載することを得。
一差出人及受取人の宿所氏名、身分、職業及商標其他の稱號
二日附及要用、至急、貴酬の慣用語
三送達上郵便局所に必要なる注交を示す語辭
四郵便繪葉書の表面に左記の如く、下部三分の一以内に線絛を劃するときは、其の線内に通信文等
郵便はかき
郵便葉書は原形の儘使用し、契約書、委任狀若くは受領證と爲さむが爲め、收入印紙を裏面に貼附する場合を除くの外、何等の物品と雖も添附するを得ず、以上の規定に違反したる郵便葉書は、第一種郵便物と同一の取扱を爲すものとせられたり、□五特殊郵便物、其の料金左の如く改正せらる。
一、別配達料一箇に付
{陸上二里以内は金二十錢、二里を超過したるときは、一里每に金十五錢を加ふ、艀船料は別に其實費額を受取人より徵收す、受取人之を納付せざるときは差出人より徵收す、
二、留置通知料一箇に付金三錢
三、配達證明料一箇に付金三錢
四、通常郵便物書留料一箇に付金七錢
五、價額表記料
{金十圓までは金十五錢、十圓以上は其超過したる額に對し十圓迄每に金五錢
六、代金引換料一口に付金五錢
外に取立金送達料として、其引換金額十圓迄は金五錢、十圓以上百圓迄は其超過したる額に對し、十圓每に金四錢、百圓以上千圓迄は其超過したる額に對し、十圓迄每に金三錢、
七、現金取立料一口に付金五錢
外に取立金送達料として、代金引換と同一の割合に依る料額
□六印刷せる書狀、印刷せる無封の書狀は其料金十匁又は其端數每に金二錢とす、□七廣告郵便、郵便局に於て、廣告引札等各種の印刷物を配付するの制度を設けられたり、之を廣告郵便といふ、廣告郵便は受取人を指定せずして、差出人の指定したる郵便局所に於て、其區内に送達せる廣告引札等各種の印刷物を云ひ、其料金は百通又は其端數每に同一郵便區内は金二十錢、同一郵便區外は金三十錢とす、總て廣告郵便は一通各二匁を超ゆる事を得ざるものにして、配達を要する郵便局每に把束し、差出入の宿所、氏名、配達を要する郵便局名、及び通數を記載したる請求書に、料金相當の郵便切手を添へ、之と共に、郵便局所に差出すべきものとす、廣告郵便物は適宜の方法に依り之を配達すべきものにして、別に日附印を押捺せざるもの也以上改正の大要とす。(郵便法、郵便規則の部參照)
誘惑罪
(いうわくざい)未成年者の知慮淺薄又は人の心神耗弱に乘じて其財物を交付せしめ、又は財産上不法の利益を得若くば他人をして之を得せしむるの罪を云ふ、□一被害者、本罪の被害者は未成年者及び心神耗弱者也、所謂未成年者とは二十歳未滿の幼者を云ひ、心神耗弱者とは生理的の故障に依り意思の不充分なる者を意味す、而て心神喪失者及び全然意思能力なき幼者は本罪の被害者たることを得ず、何んとなれば、此等の者は全然意思能力を缺くを以て誘惑不能なればなり、故に此の如き者に對して本罪の如き行爲を爲すものあらば、窃盜又は強盜罪を構成すべきものとす、或は之に反對する説なきにあらねど、心神喪失を全然意思能力を缺かざるものと解する見解の差より生ずるものなれば、彼是氷炭相容れざるの説にあらざる也、□二行爲、本罪は未成年者の知慮淺薄又は人の心神耗弱に乘じて財物を交付せしむる等の所爲あることを要す、未成年者心神耗弱者と雖も之を欺罔恐喝することを得べく、此場合は詐欺取財罪を構成す、然れども此等の者は一般に利害の判斷力に乏しき爲め、欺罔等を受けざるも容易に誘惑せられ、或は財物を交付し、其他利益を喪失する場合あり、本罪は此場合の誘惑者を處罰し、此等の者を保護するに在る也、例へば一塊の飴を與へて此等の者の所持する金貨を交付せしむるが如き、卽ち知慮淺薄又は心神耗弱に乘ずるに在り、法律は此等の者より財物を受けたる一切の場合を罰するに非らずして、此等の狀態に乘ずる行爲を要件としたるが故に、此等の狀態を利用して暴行脅迫、欺罔恐喝に至らざる一定の行爲(誘惑的取財的行爲)を爲すに非らざれば本罪を構成せざる也、□三處罰、本罪に對する處分は、十年以下の懲役に處す、尚本罪の未遂は之を處罰す、但し親族相盜の規定準用せらるゝものなり。(刑二四八條、舊刑三九一條)
有位
(いうゐ)位を有するをいふ、位とは正一位に始まり從八位に終る十六の階級あるものにして、もと宮中に於ける位置を定むるに起り帶勳者有爵者の如き者にして、特に功勞あるものに賜はるものとす、而て有爵者帶勳者又は有位の者禁錮以上に該る刑を犯したるときは、當該檢察官は其旨を司法大臣に具狀し、司法大臣は其事由を奏聞して後に處分すべきものにて、唯現行犯に係る場合は處分して後に奏問することを得べきも、兎に角以上の者は國家に特別の功勞あるよりして優遇せらる、者なれば、其手續を丁寧ならしめしものとす。(一五年三月太政官達及同年司法省達一一號參照)
醫師會規則
(いしくわいきそく)醫師會は醫師又は齒科醫を以て組織し、醫事就中治療術、衛生事務等の改良發達を計り、醫師の風俗を戒瀆し、其他共同の職業上の利益を增進することを目的とす、醫師會規則は、此醫師會の設立、維持、種類及び權限等に關し規定したるもの也、其大要を略述すれば、□一種類、醫師會は之を別ちて區醫師會、市醫師會、郡醫師會、道醫師會、府醫師會、縣醫師會とし、當該區市郡名又は道府縣名を冠して何々何醫師會と呼ぶ、本令に基くに非らずして以上の名稱を有する會を設立することを得ざるものとす、但し齒科醫師會は以上に準じて會を組織することを得べし、□二設立、郡市醫師會を設立せんとするときは、其會員となるべき者十人以上發起人となりて會則案を作り、其會員となるべき者の總會議に附すべし、會員となるべき者は、官立若くば公立の病院を除く外、其郡市内に診察所、治療所若くは其出張所を設けて醫業に從事する者とす、本會は公共組合の性質を有するも、其上説の者は強制して會員たらしむべきものなりや否やは法文上不明なり、余は任意的公共組合の一種なりと解す、是れ農會と同じく辯護士會と異なる所とす(本令七條八條比較參照)、偖て上説の會員となるべき者三分の二以上出席し、出席者三分の二以上の多數の同意を得たるときは、發起人は會則を添へ地方長官の認可を請ふべし、地方長官之が認可を與へたるときは、郡市醫師會設立の旨を告示するものとす、而て道府縣内三分の二以上の郡市に於て郡市醫師會設立せられたるときは、道府縣醫師會を設立することを得べし、道府縣醫師會は郡市醫師會を會員とす、設立手續は郡市醫師會と略ぼ相同じ、□三權務、郡市醫師會は會員中、禁治産、聾啞盲となれる者又は業務に關し不正の行爲ありて、免許取消若くは醫業停止處分を必要と認むるときは、其意見を地方長官に具申することを得べし、又以上の者に對する處分に付き辯疏を必要と認むるときは、其事實を内務大臣に具申することを得、其他會則に定めたる權限あるは勿論にして、若し定めたるときは、會則違反の會員に對して百圓以下の過怠金を徵收することを得る也。凡て行政廳は醫事衛生に關する報告又は調査を醫師會に命ずることを得、□四維持、醫師會の費用は郡市醫師會にありては會員たる各醫師の負擔とし、道府縣醫師會にありては郡市醫師會の負擔とす、醫師會其會則を變更せんとする時は地方長官の認可を受くべきものにして、尚地方長官は維持及び醫師會の議決に就いて屆出又は認可を要する旨を定むることを得、□五消滅、醫師會は總會の議決に依り之を解散するを得べく、解散の議決は總員三分の二以上の多數決に依らざるべからず、醫師會の議決法命又は會則に違反し、其他公益を害すと認むるときは、地方長官は其議決を取消し、或は内務大吏の認可を得て解散を命ずることを得、○東京市、京都市、大阪市に於ては區醫師會を設立することを得、其手續其他は以上説述したる所に同じ。(三九年一一月内務省令三三號、同三四號參照)
醫師法
(いしはふ)國民の健康を保全する爲めに、國家は醫師の免許及取締に關する規定を爲したり、醫師法は此種の法規に屬す、元來醫師なる者は、病患の治療及び其發生を豫防することを業とする自然人を云ふものにして、個人の健康を保全するを其職とす、今一般人にして生理思想の完備せる者のみならしめば、醫師の良否を選ぶに於て遺憾なかるべきも、若し誤て智識なき醫師に賴りて其治療の方法を誤らば、反て病患を重らしむるの結果を來すべきが故に、國家は一定の學識經驗ある者にあらざれば之を醫師として免許せず、又免許せし醫師に對しても尚取締を爲す所以也、今本法所定の大要を略記すれば、□一免許、醫師たらんとする者は左の資格を有せざるべからず、卽ち帝國大學醫科又は官立公立、若くば文部大臣の指定したる私立醫學專問學校醫學科を卒業したる者、或は外國醫學校を卒業し又は外國に於て醫師免許を得たる者。及び内務省にて施行する醫師試驗に合格したる者なるを要す、此醫師試驗は中學校若くば修業年限四介年以上の高等女學校の卒業者、又は之と同等以上の學力を有する者にして、醫學專問學校を卒業し、若ば外國醫學校に於て四介年以上醫學課程を終了したる者に非らざれば受驗資格なきものなりとす、以上の資格を有する者は、内務大臣の免許を經て醫業を開始することを得べきも、以下述ぶる者は内務大臣に於て免許を與ふることを得ざる也、卽ち(A)重罪の刑に處せられたる者、但し國車犯にして復權を得たるときは此の限にあらず、(B)公權停止中の者、(C)未成年者、禁治産者、聾者啞者及び盲者、(D)禁錮に處せられたる者(茲に重罪といふは舊刑の重罪の意なれば、改刑に於ては死刑、無期又は短期一年以上の懲役又は禁錮に該る罪を云ひ、茲に禁錮といふは、短期一年以下の懲役若くば禁錮を意味す、以下傚之)又は醫事に關し罰金刑に處せられたる者、但し此場合は免許を與ふると否とを内務大臣の職權に留保し、法交には免許を與へざるとあるべしと規定せられたり、□二醫師の義務、醫師は帳簿を備へて患者の氏名、年齡、住所、職業、病名及び療法の大要を記入すべき義務を負ふものにして、此帳簿は十年間之を保存せざるべからず、又醫師は自ら診察せずして診斷書、處方箋を交付し、若くば治療を爲し、又は檢案せずして檢案書、若くば死産證書を交付することを得ざる也、□三醫師の權利、醫師は醫師會を設立することを得べく、醫師會は醫事衛生に關し官廳の諮問に應じ、又は建議を爲すことを得べし、醫師會に關しては別項醫師會規則を參照すべし、□四免許の取消及び停止、醫師にして重罪に處せられ又は禁治産等の宣告を受くるときは免許を取消さるべし、又禁錮に處せられ若くば業務に關し罰金に處せられ、其他不正の行爲ありたるときも免許を取消さるゝことあるべし、尤も此場合は情狀により一定の期間内醫業を停止して、免許の取消をなさゞることを得、以上の處分は内務大臣之を專行し、又は中央衛生會の審議を經て之を行ふ、□五處罰、免許を受けずして醫業をなしたる者、停止中醫業を爲したる者、醫師にして自ら診察又は檢案をなさずして診斷書、處方箋、治療、檢案書、死産證書を交付したる者、帳簿を備へず又は備ふるも法定の事項を記載せざる者、若くば其帳簿を法定の期間保存せざる者、及び其技能を誇稱して虛僞の廣告を爲し若くば秘密療法を有する旨を廣告する者、凡そ是等の者は五百圓以下の罰金に處すべきものとす。(三九年九月法四七號、三九年九月内務省令二七號、三九年九月勅二四四號參照)
移住民
(いじゆうみん)或特定の土地を去て他の土地に轉移して住居する民をいふ、移民と移住民とは實際上の觀念に於ては、甲地より乙地に轉じて生活の本據を經營する點に於て全く同じく、從て此の二の語は混用されつゝあり、法令の上に於ても亦混用さるゝことなきに非らざれども、學理上に於ては其觀念を異にするものとす、卽ち移民は某國の領土より他國の領土に轉じて住居する民を云ひ、移住民は之に反して其國家の領土内の甲地より、其同一領土内の乙地へ轉住する者を指す也、例へば四國又は九洲の人が北海道に移住する場合は、是れ卽ち移住民の例にして、日本人が米國に勞働の目的を以て渡航する場合は移民の例とす、或は移民と移住民との區別を轉住の点に置き、單に勞動の目的を以て諸外國に渡航する民を移民といひ、斯る移民の一種にして、其外國に永住の目的を有する場合の者を移住民と稱する用例あり、又は以上の二用法を混用して用ひたる場合あり、其何れに屬するかは各場合に於て、其前後を對照し又は全體の趣旨より判斷するの外なし。(日布移住民條約、北海道移住民規則、屯田兵移住給與規則參照)
一件記錄
(いつけんきろく)一の事柄に關する記錄をいふ、例へば某裁判所に屬する或事件の記錄を云ふが如き是れ也、或は一事件の記錄の意味にも使用せらる、ことあれど、多くはある事件の記錄を指すに用ゆ、俗に「ヒトクダリ」の事柄に關する記錄を一件記錄といふ場合は前義に用ゐられし用例にして、之に反して某の事件に關する一件記錄などいふときは後義に用ゐし用例也、茲に記錄といふは、其事件に關する出來事を記せる記事及び其事件に關する意見其他を錄したるものを意味す。(記錄の部參照)
溢水罪
(いつすいざい)溢水せしめ物を浸害するに因て公共の危險を生ずる罪を總稱す、刑法によれば溢水罪は左の三種を包含す、第一は純溢水罪ともいふべきものにして、卽ち溢氷せしめて人の住居せる家屋其他の物件を浸害する場合をいひ、第二は準溢水罪とふ云ふべきものにして、卽ち水害の際防水用の物を隱匿又は損壞し、若くは其他の方法を以て水防を妨害する場合を云ひ、第三は過失溢水罪也、此の第三なる過失溢水罪は別項くの部に説明したれば參照せらるべし、以下純溢水罪及び準溢水罪に就いて略説すべし、(甲)純溢水罪=溢水せしめて現に人の住居に使用し又は人の現在する建造物、汽車、電車若くは鑛坑を浸害し、及び其他の物を浸害することに因て公共の危險を生ぜしむる罪を純溢水罪といふ、□一客體、建造物、汽車、電車、鑛坑及び其他の物たることを要す、茲に建造物といふは、人の住居し又は現在するものなるを要す、而て人の住居に使用する以上は一時不在なるも妨なし、又現在する以上は住居することを要せす、船舶は建造物なる語中に包含せらるゝや否といふに、陸上の建造物たる家屋と全く其性質を同うし、海上の建造物なるが故に之を含むと解す、次に人の住居に使用し又は人の現在する建造物、汽車、電車若くば鑛坑に係るときは、其所有權何人にあるを問はず、溢水と浸害との結果あるときは常に本罪を構成す、之に反して上記以外の物なるときは、因て公共の危險を生じたる場合のみ本罪を構成し、公共の危險を生ぜざるときは本罪を以て論ずるの限りにあらず、只因て物件毀棄の結果を生じたる場合には物件棄毀罪に問はるべし、又浸害したる物自己の所有に係るときは、差押を受け、物權を負擔し、又は賃貸若くば保險に附したる場合に限り本罪を構成するに過ぎず、□二行爲、浸害したることを要す、浸害とは物が其用の全部又は一部を失却するに至りし狀況を云ひ、必らずしも舊刑法の如く漂失及び荒廢に限らざる也、而して此浸害は溢水に依て生じたることを要す、溢水は必ずしも舊刑法所定の如き提防の決潰、水閘の毀壞に限らず、苟くも河川湖海の水を其界域外に氾濫せしむるの方法なれは溢水の所爲ありといふことを得、但し前説の如く、人の住居し又は現在する建造物の以外の物なるときは、因て公共の危險を生ぜざれば本罪を構成せず、茲に公共の危險といふは、具體的に他人にまで其危害を及ぼすの恐あることを意味し、單に其浸害の危險が自已一人のみなるときは、公共の危險あるものといふを得ざる也、尤も法律が、自已の所有に係る物なるに於ては(人の住居し又は現在する上説物件を除いての謂也)其物が差押又は物權を負擔し若くば賃貸、保險等に附せられざる場合は、公共の危險を生ずるも尚本罪を以て論ぜずとなすは、公共危險罪たる溢水罪を設けし立法の趣旨を貫かざるの嫌あるものと謂ふべし、□三處罰、本罪に對する刑は、現に人の住居し又は人の現在する物件に係るときは死刑、又は無期若くは三年以上の懲役に、其れ以外の物に關するときは一年以上十年以下の懲役に處す也。(乙)準溢水罪=水害の際防水用の物を隱匿又は損壞し若くは其他の方法を以て水防を妨害する罪をいふ、本罪は先づ水害の際なることを要す、其水害の原因が他人の犯罪の結果たると、或は偶然の出水たるとを問はず、總て溢水による災害ある際に關するを要す、次に水防を妨害せることを要す、謂ふ所の水防の妨害とは、水災防禦の障碍となるべき一切の行爲を包含す、防水用の物を隱匿又は損壞するは其例示に過ぎざる也、本罪に對する刑は一年以上十年以下の懲役とす。(刑一一九乃至一二二條、一二三條後段の罪、過失溢水罪の部參照)
一時賜金
(いちじしきん)戰役若くば事變に際し功勞ある者に一時限り賜與せらるゝ金圓をいふ、單に一時賜金と稱するは、其他の場合に於て一時限り賜與せらるゝものを含まざるには非らずと雖も、主として一時賜金と稱するは上記の場合に限るが故に之に就て左▲略述せん、抑々一時賜金は、戰役若くは事變に際し功勞ありて、勳章を受くるも年金を賜はらざる者又は勳章を授けざる者に限り之を給せらるるものにして、例へば明治二十七八年の日清戰役、又は明治三十七八年の日露戰役、若しくば明治三十二年の北清事變に關し、功勞ありたる者にして年金を賜はらざりし者に賜與されしもの、如きは是れ也、一時賜金は公債證書を以て賜はり、賜金を受くべき者は地方廳を經由して受けたる所の辭令書に基き、該金額の請求書を所屬に差出すべきものにして、受領人受領の公債を現金に換へんとするときは、授與の際なれば該公債に交換請求書を添へて差出すべく、然るときは現金にて之が交付を得るものなり。(二八年七月勅一一五號、三五年五月陸軍省令一五號參照)
一時犯
(いちじはん)一に之を偶發犯と云ひ、犯人の善良なる性質を外界の事情が激烈に刺激せるに依て犯せる犯罪をいふ、元來犯罪は犯人各自の性質と、外圍の境遇又は事情等に依て發生するものなり、而て其發生の狀況を觀察すれば大凡二の場合あるを見る、一は犯人の獰惡なる性質が主となり、僅の外圍の狀況が之を刺激するに依て罪を犯す場合にして、二は外圍の動機が犯人の特質に打勝ちて犯罪を發生せしむる場合なり、此前者を必然犯といひ後者を一時犯といふ、故に一時犯なるものは、外圍の激烈挑發、又は切迫したる必要的狀況に驅られて、其善良なる性質に反し罪を犯すに至りたる場合を指し、例へば他人の挑發に基き一時の憤怒に依り他人を傷害するが如き、或は一時の饑餓を防ぐ爲めに他人の財物を竊盜するが如き、何れも犯人の善良なる特質に反し、其人の履歷に全く孤立したる一の汚點を遺すに止まり、犯人は犯行後直に悔悟の狀況にあるもの也、此の如き犯罪は犯人を畏嚇するに依りて宜く刑の目的を達するを得べく、或は單に刑を宣告するのみにて、又は之を宣告せざるも可なることあり、微罪不檢擧主義及び刑の執行猶豫の制度は此種の罪に關して最も効果を生ずるものなり。(偶發犯、刑の執行猶豫、微罪不檢擧主義の部必照)
瘖啞者
(いんあしや)聽能と語能とを共に喪失せる者にして、先天的に然ると果た生後に於ける病的故障に基けるとを問はず、所謂聽能を喪へるといふは、意思交通の媒介たる言語を悟る所の聽官能力なき者を云ひ、卽ち耳聽くこと能はざるをいふ也、次に語能を缺くといふは、意思を交通せしむる所以の言語を發する能はざるをいひ、瘖啞者なる語は此二の作用を共に缺く場合にして、瘖者及び啞者を指すにあらず、瘖にして且つ啞なる者を意味するものとなすを通説とす、舊刑法に於ては、瘖啞者の行爲は罪として常に罰せざるが故に、學者瘖啞者を解して生前又は刑事未成年者たる時代より瘖にして且つ啞なる者たるを要すとせしも、新刑法は瘖啞者の行爲を常に罰せずとなさず、或は之を罰して單に其刑を輕減すべしとなせり、從て幼時より瘖且啞たる者に限るとなすの要なしと信ず、抑々瘖啞者は之が爲めに精神の發達を缺く者にして、卽ち一般の智識を採る重要なる機關に故障あるものなれば、罪たるべき行爲を犯すと雖ども是れ教育なきの罪のみ、爰を以て舊刑法は常に之を罰せずとなし、新刑法に於ては之を罰せず又は其刑を輕減すべしと定めたる也、而て之を罰して其刑を減輕すべしとせしは、現時は瘖啞者と雖も反て瘖啞ならざる或者よりも充分の教育を受くる設備あり、此等の者に於ては常人と同じき知識を有するに拘らず、尚斯る行爲を敢てせるものなるを以て、一般に刑を科すとなせしなり、但し其刑を減輕すとなすは不具者を憐む法の恩惠なり、余は此理由に基きて、幼時より瘖且つ啞ならざる者と雖も、本條を適用すべきものと信ず、何となれば發瘂者は其何れを問はず、社會に生存する上に於て非常に不利益なる地位に立つべきが故に、遂には生活し能はざるの理由により罪を犯すに至るべければ也。(刑四〇條)
- 英
- Deaf and dumb
- 独
- Taub-stummer
- 仏
- Sourd-muet
因果關係
(いんぐわくわんけい)或原因に對する結果の關係を因果關係と謂ふ、抑々因果の兩者が常に同一の狀態に於て發生する場合に、其因果律の言明は法規又は規則てふ觀念に屬し、茲に所謂因果關係は、抽象的なる因果律の具體的に現はれたる場合を指す、卽ち、常に或事實が或結果に對する原因なりと云ふは因果律にして、此因果律に充てはまるべき、此事實なかりせば此結果は全く發生することなかりし關係は、則ち茲に謂ふ因果關係なりとす、偖て此の如く、因果關係は當該事實が其時期其態樣に於て發生したる結果の一條件たりし場合に存し、苟くも或事實が結果の一條件なる以上は、其影響の輕重如何を問はず、又起果條件たると妨果條件たるとを論せず、尚直接の原因たると間接の原因たるとを問はざる也、此の論理上の因果關係は、法律の各部の硏究の上に於て、〓多の制限と例外とを存じて解せらるを見る、例へば損害賠償義務を論ずるに當り、果た犯罪たる行爲と結果との關係に於て、如何なる關係を歸責の客觀的條件とすべきや等に關し、〓多の見解を持して論ずるを見る、以下因果關係の觀念を明にする爲め刑法上の目的に從ひ制限せんとする各説を上げん、□一刑法上に於ても制限する必要なしとの説、=本説に依れば、或行爲と特定の結果との間に因果の關係ありや否やは、當該行爲を假りに計算以外に置くときは、此結果亦存在するを得ざるの關係なるか、或は當該行爲の有無は、此結果の存否に何等の變更を生ずることなきか否やに依りてのみ之を決定し得べきものなるが故に、此論理上の關係に何等の例外を存するの必要なし、以下の論者が説く如き、教唆及び從犯と雖も從たる條件を與ふるものなるが故に、意思の態樣を異にする外、因果關係を中斷さるべき理なし、只歸責の客觀條件として、行爲者の豫見するを得ざる偶然なる結果を除外せざるべからざるは、故意又は過失の主觀關係を論ずる上より生ずる唯一の制限なりと、然れども、現行刑法の如く因果關係の中斷を認め(刑六一條以下)且つ結果犯の如きは、豫見の有無により其責に任ずるに非らずして、豫見なきときも(結果犯は過失を存するを要せずとなすを通説とす)其責に任ぜざるべからざるが故に、本説は論理一貫するに拘はらず解釋論として採用すべからざる也、□二原則として論理上の因果關係に依り、刑法の目的より二の例外を認むべしとする説=卽ち(甲)現行法の規定より生ずる例外、教唆及び從犯は正犯の行爲より生ずる結果に對し一の條件を與ふるに拘らず、因果關係の中斷を認むるが故に獨立の原因と認むることを得ず、(乙解釋上より生ずる例外、加重罪の場合ば結果に付き故意又は過失を要せずと解す、故に因果關係の論理上の結果を貫くときは、主觀的條件を以て制裁負擔の限界を定むることを得ず、故に此場含は相當原因、卽ち因果の連絡が行爲の本質に適合する場合に限り、刑法上の因果關係ありと認むべしと、本説は解釋として比較的妥當なるも、加重罪卽ち結果犯に就いてのみ相當原因を認め、之を一般に及ぼさゞるは論理の一貫を缺くの嫌あり、□三有力條件説=卽ち論理上の因果關係中刑法の目的に照し、有力又は最後の條件のみを原因と限定する説にして、卽ち原因と他の條件とを區別せんとする説也、然れども、原因と條件とを區別するは困難にして、漫りに有力又は最後の條件等といふも、其如何なるものを有力となすべきやが問題なれば、▲竟本説は問に答ふるに問を以てするもの也、□四相當原因説=本説の要旨に曰く、抑々刑法上の因果關係は、論理上の因果關係に基を置くは勿論にして、刑法上の因果關係は一般因果關係に限界を置かんとするに在り、而て刑罰は非社會的行爲に對して加へらるべきものなれば、此行爲が危害を及ぼすや否やを一般の經驗に依て定むると同時に、非社會性を伴へるや否やに依て行爲と結果との一般律を制限とすべし云々と、本説を目下の通説とす、以上論ぜく因果關係の制限は、行犯卽ち作爲的犯罪と、不行犯とに應用すべきものなるも、不作爲による行犯、卽ち不純正不作爲犯に就いては別に論せざるべからず、之に就ては以下の數説あり、(い)消極説=不作爲には因果關係存せず、何となれば不作爲は無的の條件なるが故に、有的條件たる因果關係存ずべきに非らず、不純正不作爲犯は單に義務に違反して結果を妨止せずといふ關係あるに過ぎず、故に一種の因果關係類似の關係存ずるにて足ると、然れども惟ふに、刑法に於て人を殺したる者は云々と定むるは、人の死に原因を與ふることを言ふものにして、其死てふ結果と原因との間に因果の關係存ずることを要求せるは明か也、之と類似の關係ありといふを以て、同一の處分を爲さんと欲するは不當に非らざるなきか、而て義務違反を以て之が結果の原因となすは、不行犯に於てのみ正當なる解釋なるは論ずるまでもなし、(ろ)積極説=從來の學者は、不作爲と結果との間の物質的の因果關係を證明せんとして、(A)他行爲説、(B)先行爲説、(C)他因利用説(他に發生せし原因を利用すとなす説にして、例へば、食を與へざれば死すといふ一般因果律を利用して、母が乳兒に乳を與へず之を死せしめたるが如き)ありしも、(D)近時有力なる學者は、起果條件を防止すべき義務を有する場合に、其妨果條件を成立せしめざる意思活動(不作爲)は、其結果に對する原因を爲すものなりと論ぜり、余輩之に就て別に一説あり、惟ふに靜止を動作と同じく行爲となすは誤りにして、行爲は意思に基く動作のみ、固より起果的動作たると妨果的動作たるとを問はず、然れども意思に基く靜止はどこまでも云爲也、行爲にあらざる也、只云爲も行爲と同じく犯罪を構成し得べく、此云爲と結果との關係は、行犯的不作爲犯と單純なる不行犯とを論せず、義務違反といふ關係を存ずるにて足るものと信ず、然れども是れ固より立法論にして、解釋論として當れりや否やは別に硏究を要す、不純正不作爲犯の部を參照すべし、之を要するに、因果關係は刑法に於て論ぜらるゝものに限らず、一般に法律上に於て、或事實が結果に對する原因なりといふ場合に、此事實なかりせば此結果は全く發生することなかりし關係を云ふ也。(因果の部參照)
淫行勸誘媒合罪
(いんこうかんいふばいがふざい)單に淫行勸誘罪又は淫行媒合罪ともいふ卽ち營利の目的を以て淫行の常習なき婦女を勸誘して姦淫せしむる罪也、□一客體、本罪は善良の風俗を紊るべき性質の犯罪にして、特定の被害者を有せす、是れ法典配列の順序より見て爾く論ずることを得る也、唯本罪は直接には淫行の常習なき婦女の貞操を保護するものなるが故に、本罪の客體は淫行の常習なき婦女と謂ふことを得べし、舊刑法は十六歳未滿の男女は、常に貞操に關する觀念未熟なるものと看做し、本罪を以て保護したるが、改正刑法は年齡に拘らず淫行の常習なきことを要件とし、且つ婦女に限れり、此點大に舊刑法と異なる點なり、蓋し十六歳末滿の男又は女を、常に貞操に關する觀念未熟なる者と看做し、未通の男女たると否とを問はざるは、其範圍一方に於ては廣く、一方に於ては反て狹きに過ぐると、男子は婦女に比して之を保護すべき必要少なく、且つ婦女と雖も平生品行善良にして、淫行の常習なきもののみを保護すれば足るが故ならん。□二行爲、營利の目的を以て淫行を勸誘することを要す、茲に營利の目的といふは、勸誘者が之に依て經濟上の利益を得るの意思に出づることを意味す、蓋し淫行を勸誘するも、營利の目的に出でざる場合は、所謂戀の取持ちは親より可愛きものなれば、法律上刑を制裁として迄も之を禁ずる必要なきを以て也、次に淫行といふは、男女間の姓交に關する行動を意味し、其他の猥褻なる行爲を包含せざるものとす、之を勸誘するとは、姦淫の決意を爲さしむる作用を指し、勸告、誘導其他の手段を以て之を爲すことを得べし、而て本罪は勸誘して姦淫せしめたるを以て既遂とす、姦淫せしめしといふは、淫行の常習なき婦女をして、姓交の決意を爲さしめ、現實に交接を爲さしむるのことにて、若し此決意を有する婦女に係るときは本罪を構成せざると同時に、決意を爲さざる者をして姦淫せしめたる場合には、本罪にあらずして強姦罪の教唆又は從犯、若くば間接正犯を以て論ぜらるべきものとす、若し夫れ勸誘に先ち淫行の意思ありたるや、又は勸誘するも快意を爲さざりしや否やは事實問題として、前後の事情により裁判官の判定に俟たざるべからず、□三處分、本罪を犯したる者は三年以下の懲役、又は五百圓以下の罰金に處せらるべし、茲に注意すべきは、淫行の常習ある者と雖も、婦女にして賣淫者なるときは別に賣淫の媒合罪として處罰せらるべし終りに本罪は被勸誘者と第三者との姦淫なるを要するも、立法論としては此等媒合者のみならず、營利の目的を以て淫行の常習なき婦女と自ら交接したる者に就ても之を處罰せざるべからず、蓋し此種の行動は婦女をして淫行の習性を養ふに至れば也。(刑一八二條、四一年九月内務省令一六號警察犯處罰令第一號二號)
印章僞造罪
(いんしやふぎぞふざい)茲に印章僞造罪といふも暑名僞造罪をも包含し、凡て印章又は署名を僞造し、印章又は署名を不正に使用し、若くば僞造したる印章又は暑名を使用する罪をいふ、而て印章若くば署名を僞造し、又は之を不正に使用して交書を僞造する場合は、文書僞造の罪を構成すべきが故に、印章僞造の罪といふは文書僞造を伴はざる場のみを云ふ也、以下本罪の構成要件を摘記すれば、□一印章又は署名に關すること、印章とは法律上關係ある事實を認明し又は承認する爲め、押捺作用に依り影蹟を他の物體に現出せしむべき器具並に其影蹟を云ひ、卽ち印顆及び印影の總稱也、或は印影を現出せしむべき印顆のみをいふとの説あれども通説に非らず、印章には種々あり、(い)御璽とは天皇の御印にして、文に天皇御璽とあり、(ろ)國爾とは大日本帝國の印にして、文に大日本國璽とあり、(は)公務所の印章とは、官廳又は官衙等の印にして、文は各公務所の名稱を記す、而て公務所の印に就ては、印章と記號を區別するが故に、印章は常に文字を主とするものならざるべからず、(に)公務員の印章とは、官吏、吏員、議員其他の公務上の職員の印章にして、文には各其官氏名を記すを普通とす、(ほ)記號とは公務所の印なれども、其印顆に依て現出する影蹟が發音し能はざるものを云ふ、(へ)一私人の印章とは各自に屬せる印章にして、上説の印以外のものとす、次に暑名とは、法律上關係ある事實を證明し、又は承認する爲め記載せられたる氏名を云ひ、御名と狹義の暑名とに別つ、御名とは天皇の暑名を指し、狹義の署名は公務員及び一私人の署名をいふ也、□二行使の目的を以て僞造し、又は使用し若くば不正に使用したることを要す、(甲)僞造とは所屬名義を僞て新に印章又は署名を作製することを言ひ、必らずしも眞正の印顆又は署名に模して作製するを要せず、眞正の印顆又は暑名なるべしと人を信ぜしむる程度のものたれば可なり、茲に一言すべきは、印章には變造なきこと是れ也、蓋し印章又は署名の文字等を變更するときは、全く別種の印章又は暑名を生ずべきに因り、此の如き行爲は變造といふべからずして一種の僞造を以て目せざるべからざれば也、(乙)使用とは、印顆の押捺をいふに非らずして、印顆を押捺したる物を利用するをいふ、是れ文書及び通貨等に就いて行使なる文字を用ひたるに拘らず、印章又は暑名に就いて特に使用なる文字を用ひたるより爾か解する也、但し文書に押捺して其文書を行使したる場合は本罪に非らずして文書僞造罪なることは既に一言したる所の如し、(丙)不正の使用とは權限なくして他人の印影を使用するの義なり、舊刑法に盜用とありしは畧ぼ之と同義にして、只盜用といふときは、印顆を盜取して押用するが如く聞ゆるが故に、其交字を異にせるのみ、故に等しく權限外の使用の意とす、□三本罪に對する處分は、印章又は暑名の所屬名義の異なるに依て差あり、(A)行使の目的を以て御璽、國璽又は御名を僞造し、若くは僞造したる此等の物を使用し、及び御璽、國璽又は御名を不正に使用したる者は二年以上の有期懲役に處せらる、(B)行使の目的を以て公務所又は公務員の印章若くば暑名を僞造し、或は僞造したる此等の物を使用し、及び公務所又は公務員の印章又は暑名を不正に使用したる者は三月以上五年以下の懲役に處せらる、(C)行使の目的を以て公務所の記號を僞造したる者、又は僞造記號を使用し、若くは眞正記號を不正に使用したる者は三年以下の懲役に處せらる、(D)行使の目的を以て他人の印章若くば署名を僞造し、又は僞造印章、暑名を使用し、及び眞印章又は署名を不正に使用したる者は三年以下の懲役に處せらる、而て以上の不正使用及び僞造印章等の使用に關する罪に就いては、其未遂は處罰さるべき未遂罪に屬す、終りに、一人にて僞造と使用とを兼ね爲したるときは、刑法五十四條の適用を受くべきものと解するを通説とす。(刑一六四條乃至一六八條)
隱匿罪
(いんとくざい)他人の信書を隱匿するの罪を云ふ、廣く隱匿の行爲を罰する罪は本罪の外、舊刑法の遺失物隱匿罪の如き罪なきに非らずと雖も、新刑法は拾得物を隱匿する行爲は其故意を伴ふ場合は常に橫領の意思あるものと言ふを得べきを以て、之を橫領罪の一種としたり、爰を以て新刑法上隱匿罪といへば、常に信書を隱匿する罪に限るもの也、以下本罪の構成要件を述ぶれば、□一客體、信書なることを要す、信書とは他人に意思を傳達する文書を總稱す、電信又は電話も他人に意思を傳達するものなるが故に、或意味に於ける信書といふことを得ざるに非らざるも、余は之を消極に解せんとす、尤も電信に就ては稍疑あり、次に信書は必らずしも封書たることを要せず、是れ秘密侵害罪に於ける信書と其意味を異にする點にして、卽ち端書其他の有形的音信文書の總てを包含する也、□二行爲、隱匿せることを要す、隱匿とは俗に「かくす」ことを云ひ、信書の所在を不明ならしむること也、其の何の爲めになすやは之を問はざるも、若し他の犯罪の手段として之を爲すときは、其犯罪と本罪とに關し刑法五十四條の適用を受く、□三處分、本罪を犯したる者は六箇月以下の懲役又は禁錮、五十圓以下の罰金又は科料に處せらるゝもの也、終りに、隱匿が郵便官暑の取扱中に係るときは、本罪を構成せずして郵便法五十一條の罪となる。(刑二六三絛及び郵便法參照)
因得物件
(いんとくぶつけん)犯罪に因りて得たる物件をいふ、卽ち犯罪を直接の原因として得たる物件にして、例へば賭博罪に依て勝ち得たる賭金、密賣淫に依て得たる對價の如き是なり、因得物件は一方に於ては犯罪行爲より生じたる物件と異なり、一方に於ては所謂臟物と異なる、犯罪行爲より生じたる物とは、例へば僞造貨幣の如き通貨僞造罪を犯すに依りて生じたる物是れなり、又臟物とは其物件を得ることに依て罪を完成する物にして、例へば強盜の贓物の如し、元來強盜罪は財物を強取するに依て成立し、其臟物は犯罪成立の要素なり、之に反して因得物件は犯罪に因りて生じたる物にして、卽ち賭金の如きは、既に成立したる賭博罪を原因として取得するもの也、敢て賭博罪の要素にあらざるを見るべし、密賣淫の對價も亦同し、茲に注意すべきは、贓物を以て交換し、因て得たる物は因得物件にあらざること是なり、蓋し交換に因て得たる物は、交換を原因として得たる物なり、犯罪を原因として得たる物に非らざればなり、終りに因得物件は沒收の目的物たるべきものなれば、其物犯人以外の者に屬せざるときに限り、附加刑として之を沒收することを得る也。(刑一九條三號後段)
飮料氷に關する罪
(いんりようすゐにくわんするつみ)本罪は人類の飮料に供する淨水を汚穢して用ゆると能はざらしめ、若くは之に健康危害品を混人し、又は水道を損壞壅塞する罪を云ふ也、以下之を分説すれば□一本罪の物體は飮料水也、抑々飮料に供する淨水は公衆の衛生上一日も缺くべからざる必須品にして、されば一定の嗜好を有する人々にのみ使用せらるゝ他の飮料品、例へば酒ラムネの如きは、縱令人類の飮科に供する液體なりと雖も、本罪を以て保護せらるゝ範圍外とす、又田圃に灌漑せらるる水、又は家畜の飼養のみに供せらるゝ水の如きは、同じく本罪の物體に非らざる也、蓋し本罪は法典配列の上より見るも、其性質より考ふるも、公衆の衛生に關する罪の一種と見るべきものなれば也、□二本罪の行爲は、汚穢して之を用ふること能はざらしむるか、又は毒物其他健康危害品を混入すること、及び水道を損壞壅塞することを要す、(い)汚穢すとは淨水の清潔なる狀態を害して不潔ならしむる行爲を總稱す、而て本罪を構成すべき汚穢は、依て淨水を用ふること能はざるに至らしむることを要す、(ろ)健康危害品の混入とは、少量にても人の身體の健全を害し、又は生命に危險を及ぱし得る物品を投入して混和せしむることを云ふ、法文にいふ所の毒物は、健康危害品の例示なり、元來健康を害すべき物とは、少量にて人の身體生命に危害を及ぼす性質の物を云ふ、如何なる物品と雖も之を過多に使用するときは、人の健康を害し得べきは勿論にして、故に法文にいふ所の他人の健康を害すべき物といふは、此の加く凡ての物品を包括するものに非らず、次に毒物といふは、少量にても化學的作用に因り健康を害すべき無機物なりとなすを通説とす、故に黴菌の如きは健康危害品なるも毒物に非らず、(は)水道の損壞壅塞とは、公衆の飮料に洪する淨水を送給するの用に供せらるゝ一定の裝置を損壞し、又は壅塞することを意味す、其一定の裝置たるや工作物たると溝渠なるとを區別せず、然れども下水道の如きは所謂水道に非らざる也、茲に損壞とは毀損破壞を云ひ、壅塞とは水道の效用を失はしむる損壞以外の有形的動作を總稱す、例へば水路を壅ぐ如き是れ也、□三本罪に於ける故意の觀念も一般の槪念に從ふは勿論なるも、只淨水汚穢の罪及び因て人を死傷に致したる罪は所謂結果犯なるが故に、使用不能の結果又は死傷の結果に就いては認識を必要とせざること明かなり、其認識ある場合は本罪を構成するは勿論、死傷の場合は殺人又は傷害罪の既遂と本罪との併合罪なりとす、□四本罪に對する處分は、淨水を汚穢する罪は、水道に由り公衆に供給する飮料の淨水に關する場合と其他の飮料水に關するとに因り刑を異にす、前者に在りては六月以上七年以下の懲役に、後者は六月以下の懲役又は五十圓以下の罰金刑とす、尤も以上何れの罪たるを問はず、因て人を死傷に致したる者は傷害の罪に比較し重きに從て處斷せらる、次に人の飮料に供する淨水に健康危害品を混入したる罪は、水道に依り公衆に供給する飮料の淨水たると否とに依り刑に輕重あり、卽ち水道に由り公衆に供給する飮料の淨水又は其水源に毒物其他の危害品を混入したる者は、二年以上の有期懲役に處すべく、因て人を死に致したる者は死刑又は無期若くは五年以上の懲役に處せらる、之に反して水道以外の淨水に建康危害品を混入したる者は三年以下の懲役に、因て人を死傷に致したる場合は傷害の罪に比較し重きに從て處斷せらる、終りに、水道損壞壅塞の罪は一年以上十年以下の懲役に處せらるべきもの也。(刑一四二條乃至一四七條、舊刑二四三條乃至二四五條參照〕
入會權
(いりあいけん)一定の土地に住する人が一定の場所に於て共同して收益をなすの權利をいふ、例へば或村の住民が共同して山林を伐採し、或は下草を刈取り、若しくば牧畜を爲すが如し、或は入會權は海面の上に行はるゝてことあり、例へば沿岸の住民が一定の海面に於て共同して漁獵をなすが如し、入會權は他人の所有に屬する土地の上に行はるゝことあり、此場合に於ては法律は地役權に關する規定を準用すべきものとし、又入會權の目的たる山林又は草生地が入會者の共有に屬することあり、法律は此場合に共有の規定を之に準用すべきものとなせり。(にの部入會權參照、民二六三絛、二九四條)
- 英
- Right held by a whole village to take wood or grass from certain land, especially forests
- 独
- Recht in die Kom-mune
- 仏
- Droit à la commune
訴
(うつたへ)訴とは權利主體が裁判所に對し判決を求むる行爲をいふ、訴には種々あれども民事訴訟法上の訴、刑事訴訟法上の訴、行政訴訟の如きは其重なるものとす、以下民事訴訟法上に於ける訴の意義に述べん、他は類推して其意義のある所を知るべし、抑々民事訴訟法に於て訴と稱するは、權利主體が通常裁判所に對し判決を求むる訴訟上の行爲を云ふ、國家が人類の共同生存の秩序を維持するが爲め、自力防衛を禁じたる結果として、民事訴訟の制度を設備し、且之に關する法則を定めたるを以て、權利主體は自己の私權に就いて國家の機關たる裁判所に對し、訴訟上の法律保護を求むる法的請求權ありとす、而して國家の訴訟上に於ける法律保護は、判決、強制執行、假差押及び假處分の四なりとす、強制執行には個人的の強制執行卽ち民事訴訟法に規定せる強制執行及び一般的強制執行卽ち破産手續の區別あり、右各種の保護の中、判決に基く保護を要求することを訴と云ひ、其保護を要求する權利之を訴權と云ふ或は訴とは訴訟手續及び判決を求むる裁判上の行爲なりと云ひ、或は訴とは攻擊者が自己の希望を裁判所に提供する訴訟上の意思表示なりと云ひ、或は訴とは當事者が裁判所に對し判決を求むる希望なりと云ひ、或は訴とは訴を爲すの行爲及び訴權の二者なりと理解すべきものなりと云ひ、或は訴とは不正に對する裁判上の保護の請求にして、裁判上の保護を惹起す行爲、自己の滿足を達するが爲めに、裁判上に於て爲す訴訟演述及び裁判上の保護を求むる權利卽ち訴權、此三者を包含するものなりと云ひ、數多の異説ありと雖も、結局裁判所の判決を要求する行爲に歸着すべきものと云ふを得べし、左に訴の種類を擧ぐれば、□一給付の訴給付の判決を求むる訴を云ふ、給付の判決とは原告の實體法上の請求卽ち被告に對し、行爲若くは不行爲を請求することを得る原告の權利の存在を確定し、且つ原告の請求に服從すべきことを命令する判決を云ふ、故に給付の訴は、原告の權利の存在を確定し、且つ被告に給付を爲すべきことの命令を求むる訴をいふものにして、給付の判決は權利の確定及び給付の命令の二者を包含するものなり、從て強制執行の名義となるものは、給付の判決のみなりとす、如何なる場合に給付の訴を提起することを得るや否やに就いては法律に規定する所なし、然れども法律保護の目的たるや、權利不滿足ある場合に、國家が強制力を以て其滿足を得せしむるを原則とするものなるを以て、權利不滿足ある場合に、給付の訴を提起することを得るは當然にして、特に法律の規定を必要とせざるなり、之に反し權利不滿足の狀態存在せざる場合にありては、法律保護の必要なきものなるを以て給付の訴を提起することを得ざるや亦當然なりとす、故に權利不滿足の狀態現存せざるも、將來に於て權利不滿足の狀態發生すべき虞ある場合の如きは、原則として給付の訴を提起することを得ざるものなり、獨逸の新民事訴訟法に於ては、將來に於て發生すべき權利不滿足の狀態に就いて、特に明文を以て給付の訴を許せり、卽ち曆日の到來に因り、金錢支拂の請求、土地若くは建物の明渡を請求し得べき場合に於ては、其請求に付き豫め給付の判決を求め置く爲め、期日の到來前、給付の訴を提起することを許し、又定期金の如き、定期に給付を請求し得べき請求に付きては、判決後に到達すべき時期に於ける給付に就いて、豫め給付の判決を求むる訴を許し、又前二者の場合を除き、債務者が正當の時期に給付を爲さゞるの虞るときは、如何なる請求と雖も、債權者は時期の到來前の給付判決を求むるの訴を許せり、給付の訴に就いて此の如き例外を認めたる理由は、給付の時期到達し、權利不滿足の狀態を發生したるとき、直に給付の判決に基き強制執行を爲し得るの便宜あるを以てなり、此例外なる場合に限り、獨逸の民事訴訟法に於ては權利不滿足の狀態發生前に於て給付の訴を認めたり、然れども此例外なきときは此の如き請求に付き、當然給付の訴を提起することを得ざるなり、我民事訴訟法に於ては強制執行に關し、養料を支拂ふ義務を言渡す判決は、訴の提起後の期間に支拂ふものに付きても假執行の宣言を爲し得ることを規定す、又請求の主張が日時の到來に繫るときは、其日時の滿了後に限り、強制執行を始むることを得べしと規定するも、此等の規定は強制執行に關する規定なるを以て、此規定に依て給付の時期の到達せざる請求に付き、給付の訴を提起することを得るものと爲すを得ず、而して我民事訴訟法に於ては、將來の給付に付き給付の訴を提起ずることを得べき規定存せざるを以て、結局給付の訴は、權利狀態の不滿足ある場合に限りて提起することを得るものと爲さゞるべからず、只民法の規定に基き、占有を妨害せられんとする虞ある場合に、妨害の停止若くは損害の擔保を請求し得るは、給付の訴の例外なりと云ふべし、□二確認の訴法律關係の成立若くは不成立に付き、判決を求むる訴を云ふ、確認の訴は、權利狀態の危險に對する保護にして、裁判官の判決を以て權利狀態を確實にするものなり、確認の訴に於ける原告は、相手方の異議を不當とし、相手方の主張は原告に對して效力なきものなりとの判決を受け、以て敗訴者をして爭を止めしむるにあり、故に之を確定の訴とも稱す、確認の判決は強制執行の名義となるものにあらず、如何となれば、請求の成立に付て給付の訴の如く其存在を確定すと雖も、給付の訴の如く強制執行を爲すに必要なる被告に對する命令を包含せざるを以てなり、確認の訴は分て、獨立的確認の訴及び附隨的確認の訴の二とす、(甲)獨立的確認の訴、獨逸民事訴訟法及び墺太利民事訴訟法は明文を以てこれを許すことを規定せり、卽ち法律關係の成立不成立の確定證書の眞否確定の訴に就いては、原告が其法律關係又は證書の眞否を確定するに付き、權利上の利益を有する場合に之を提起することを得と規定せり、我民事訴訟法に於ては特別の明文存せざるも、第十八條に於て契約の成立若くは不成立に就いての訴の裁判籍を定め、第七百三十六條に於て、債務者が權利關係の成立を認諾すべきことの判決を受け云々と規定せり、是れに由て之を觀れば、確認の訴を禁じたるものにあらざること明白なり、給付の訴に就いては私權の實行に關して不滿足なる場合に實行を求むるものなるを以て、特に法律の規定を要せず、當然提起することを得るものといはざるべからず、確認の訴に就いても亦同じ、權利狀態に危險を及ぼすの虞ある場合には、危害を加へんとする者に對し、權利の存在若しくは不存在を確定することは、私法上の利益保護を目的としたる法律保護の結果といふを得ざればなり、故に特に明文なしと雖も、利益保護を求むる必要の生じたる場合に在ては、確認の訴を許さるべきものと謂はざるべからず、獨立的確認の訴には積極的及び消極的の二種あり、(A)積極的確認の訴とは、法律關係成立の確定を求むる訴にして、次に述ぶる三箇の條件を必要とす、(1)法律關係存在することを要す、法律關係とは法律の規定に依て生じたる人と人との關係若くは人と物との關係を云ふものにして、其法律關係が私法的の法律關係なる以上は、物權、債權、親族、相續等の法律關係等總て確認の訴の目的と爲すことを得るものなり、訴訟當事者間の法律關係に限らす、當事者と第三者との法律關係も亦目的と爲すことを得、唯法律上の狀態例へば行爲能力の有無慣習法の存在、或は法律の解釋等に付き爭ある場合には、此等は法律關係と稱することを得ざるものなるを以て、確認の訴の目的と爲すことを得ず、(2)法律關係は起訴の當時成立せることを必要とす、條件に係る權利若くは期限に係る權利の如き、未來に於て其權利實行を爲すことを得る場合にても、起訴の當時に存在する法律關係なるときは、確認の訴の目的と爲すことを得るもの也、將來に於て發生すべき法律關係の如きは、確認の訴を許さゞるものなり、(3)原告は、法律關係を卽時に確定するに於て、權利上の利益あることを必要とす、卽ち被告に行爲が原告の權利の安全を害し、之を保全するが爲めに法律の保護を求むる必要ある場合に限るものなり、換言すれば、原告の權利が栽判上確定せざるときは、其成立若くは實行に付き將さに危害を受けんとする場合に於て、原告は法律關係を卽時に確定するに於て權利上の利益を有するものなり、而して其危害の存否を決するは事實問題にして、裁判官の認定に屬するものなり、被告が原告に對し權利の存在を爭ひ又は其行使を妨けたる場合の如きは、通常原告に於て權利上の利益を有するものと謂ふことを得ざれども、原告の權利が既に實行の期に達し、權利不滿足の事實を發生し、從て給付の訴が成立する場合には、原告は法律關係を卽時に確定するに於て、權利上の利益を有するものと云ふことを得ず、蓋し給付の訴は法律關係の確定を爲すことを包含するを以て、給付の訴が成立する場合に於ては、確認の訴を必要とせざるものにして、原告は給付の訴を以て法律保護の目的を達し得べきものなればなり、(B)消極的確認の訴の目的は、法律關係不成立の確定を求むるにあり、故に訴訟の被告となるものが、原告の主張する法律關係が成立せりと主張するを必要とす、又積極的確認の訴と同じく、原告は其法律關係を確定するに於て、權利上利益あることを必要とす、故に被告が法律關係の成立を主張するに於て、原告は權利上の損害卽ち原告の權利に危害を蒙らしむるの虞あることを要す、之を要するに、消極的確認の訴の成立條件は、被告が原告との間に法律關係成立せりと主張すること、原告は被告が法律關係の成立を主張することに就いて、權利上の損害を受くるの虞あることの二なり、右陳べたる獨立的確認の訴の外、獨逸、墺太利の民事訴訟法に於ては證書の眞否に付き確定の訴を許せり、證書の眞否を確定する事は事實の確定にして、法律關係の確定と稱すべきものにあらず、我訴訟法に於ては絶對に事實の確定に關する訴訟を許さず裁判所は法律を適用することを目的とする機關なるを以て、從て事實の確定に關する法律の規定なきに拘らず、裁判所は事實の確定裁判を爲すことを得ざるものと謂はざるべからず、唯我民事訴訟法に於て、公正證書又は檢眞を經たる私書證書を僞造若くは變造なりと主張する者は、其證書の眞否を確定せんことの申立を爲し、裁判所は其證書の眞否に付き、中間判決を以て裁判する方式を定めあるも、是れ證據調に關する裁判にして、證書の眞否確定に關する獨立的確認の訴を許したるものと認むるを得ざるなり、(乙)先决的確認の訴、訴訟の進行中に爭となりたる法律關係の成立、又は不成立が訴訟の裁判に影響を及ぼすべき場合に於て、原告は申立の擴張、被告は反訴の提起に依て法律關係の成立、不成立に付き確定を求むる訴なり、民事訴訟法二百十一條に依れば、判決は主交に包含するものに限り確定力を有すと規定し、此規定に依れば、訴若くば反訴を以て起したる請求自體に付ての裁判のみに限り、實體的確定力を生ずるものなりとの意義なるや明なり、而して請求自體に就いての基本となるべき法律關係の成立、不成立に就いては、裁判官は判決の理由中に説明すと雖も、或場合には法律關係の成立不成立は、實體的の確定力を生ずるものにあらざる場合あり、斯の如き場合に於ては其法律關係の成立若くは不成立に關して、當事者間に爭ありたる場合には、新なる訴訟に依て之を確定せざれは、其法律關係に關して確定の效力を發生せざるものなり、如此するときは、二重の訴訟を爲す弊害あるのみならず、時としては裁判の牴觸を來す場合あり、故に主たる訴訟に牽連したる法律關係の成立若くは不成立に就いては、當事者の申立に依り、其法律關係を訴訟の目的物と爲し、之に對して實體的の確定力を生じ得べき裁判を與ふるの方法、卽ち先決的確認訴訟を認めたるなり、先決的確認の訴を起すには次の條件を必要とす、(1)主たる訴訟の原告若くは被告に限りて提起するの權利を有す、從參加人は自已の補助する主たる當事者の申立以外に、訴訟を擴張するを得ざるものなるを以て、從て獨立して此訴を提起することを得ず、此訴を原告が提起する場合は、訴の申立の擴張を以て爲すべきものとす、茲に申立の擴張とは民事訴訟法百九十六條第二號の申立の擴張と同一にあらず、第百九十六條の申立の擴張は、訴の原因を變更せざるものなれども、此訴に於ける申立の擴張は、獨立の訴の原因を有する新なる訴を主たる訴訟に結び付くるものにして、一種の訴の併合なりとす、而して被告が之を提起するには、反訴提起の方法に依るものなり、(2)訴訟の進行中に爭となりたる法律關係に限り、訴の目的と爲すことを得るものなり卽ち獨立の確認の訴と同じく法律關係の成立、不成立に限りて確定を求むることを得べく、事實の確定は之を許さず、又法律關係は主たる訴訟の進行中に當事者間に爭を生じたるものなることを必要とす、(3)訴の目的たる法律關係は主たる訴訟の裁判の全部若くは一部に影響を及ぼすべきものなることを要す、卽ち法律關係は主たる訴訟の裁判に先決的の性質を有するものにして、裁判官は主たる訴訟の裁判を爲すが爲め、其成立不成立に付き判斷を爲さゞるべからざるものに限る、例へば地役權の訴に於て所有權の爭を生じ、元本貸借の成立に付き利息の訴に於て爭を生じたる場合の如きは、所有權若くは元本貸借の法律關係は先決的の性質を有するものなり、(4)主たる訴訟の第一審の口頭辯論終結前に提起することを要す、(5)主たる訴訟が通常訴訟なることを要す、證書訴訟爲替證書、督促手續等に於ては、之を提起することを得ざるものなり、此確認の訴は主たる訴訟の一部を構成するものなり、故に主たる訴訟と同一の手續卽通常訴訟の手續に依る時のみ提起することを得るものなり、□三創設の訴裁判官の判決を以て當事者間に權利を創設し、若くは存在したる權利の變更消滅を目的とする訴なり、此訴は給付の訴の如く、當事者が私法上の請求を主張するものにあらず、又確認の訴の如く、訴訟外に於て成立したる法律關係若くは成立せざる法律關係の承認を求むるものにあらず、判決に依て當事者間に權利を創設し、若くは存在したる權利を變更消滅せしむることを目的とするものなるを以て、性質上非訴訟事件に屬すべきものと解するを通説とす、故に法律に於て此訴を許したる場合に限り、提起することを得るものと謂はざるべからず、我國の法律に依れば、民法、商法等の規定に數多あるも、之を二種に區別することを得、其一は將來に向て權利の創設若くは變更消滅の效力を生ずる訴、例へば共有物分割の訴、離婚離緣の訴家督相續の癈除、執行文附與の訴、執行の判決を求むる訴等は之に屬し、判決の效力を既往に遡らしむるものは、詐害行爲癈罷の訴、親族會決議に對する不服の訴、再審を求むる訴、除權判決を求むる訴、仲裁判斷取消の訴等之に屬す其他數種あるも法律の規定を參照せらるべし。(民訴一九〇、二一一條、訴訟の部參照)
訴の原因
(うつたへのげんいん)起しだる訴訟に於ける請求の原因をいふ、刑事訴訟に於ていへば、起したる訴訟の原因たる犯罪にして、行政訴訟に於ても亦之に同じ、唯訴の原因は民事訴訟に於て、其法律關係をいふや、又は法律關係を生ずる原因たる事實也やは爭あり、以下民事訴訟に於ける訴の原因に就て一言ぜん、□一法律關係説此説に依れば、訴の原因とは原告より被告に對して請求の基く法律關係を云ふものとなす、之を訴狀に表示するには他の法律關係と區別し得る程度に於てすることを必要とす、卽ち法律關係を特定的に表示するを以て足るものにして、實體法に從ひ法律關係及び請求に因て生ずる事實の證明は之を必要とするものにあらず、蓋し法律關係を特定的に表示するには、右の事實を表示することを要するは勿論なりと雖も、其事實の表示は法律關係を特定する爲めの要素にあらず、故に法律關係を發生せる根據たる事實は、口頭辯論に於て演述することを必要とするも、訴狀に之を記載することを必要とせず、訴狀には右事實より生ずる結論を以てすれば足れり、法律關係發生の根據だる事實は之を準備書面に記載すべきものなりと云ふにあり、□二事實説此説に因れば、訴の原因とは特定の原告が特定の被告に對して起したる請求を正當なりとする必要なる事實の全體を云ふ、故に訴狀の表示としては單に法律關係を記載するを以て足れりとせず、殊に訴の基本たる法律關係と他の法律關係とを區別し得る程度に於てのみ事實を記載するを以て足れりとせず、一定の法律關係及び請求を發生するに付き實體法上に於て必要とする事實全體の表示を必要とするものなり、右の二説あれども、民事訴訟法に於て訴の原因とは事實なりと云ふを正當とせざるべからず、故に請求の原因とは、實體法に從て訴の申立を正當となすに必要なる事實の全體を云ふものにして、從て訴狀には請求の原因の表示として單に法律關係を特定的に表示するを以て足れりとせず、實體法に從ひ法律關係並に原告より被告に對して起したる請求の成立に必要なる事實の全體を裁判所及び被告に於て明に認め得べき程度に表示するを必要とす、然れども請求權の發生に直接緊要ならざる説明の如きは之を必要とせず、又法律上の意見の如きは之を表示することを必要とせざるなり、蓋し法律上の判斷は當事者の行爲如何に關係せず、裁判官に於て爲すべきものなればなり(民訴一九〇)
訴の提起
(うつたへのていき)訴訟手續は訴の提起を以て始まる、訴には刑事訴訟上のものあり、民事訴訟上のものあり、行政訴訟上のものあり、等しく訴の提起は原告たる權利主體が裁判所に對し判決を求むる公法上の行爲とす、刑事訴訟上に於ては起訴處分なるものと、告訴告發なるものあり、而し起訴は茲にいふ訴の提起なるも、告訴又は告發は訴追卽ち訴の提起を希望する行爲なれば、訴の提起とは全く觀念を異にするもの也、以下民事訴訟法に於ける訴の提起に就いて略述せんに、民事訴訟に於ては、總て訴の提起は裁判所に對して私權保護を要求する公法上の意思表示にして、地方裁判所に於ける訴の提起は、原則として一定の要件を具へたる書面卽ち訴狀を裁判所に差出して之を爲すべきもの也、訴狀の差出とは、訴訟の原告若くは其代理人が、訴狀を裁判所に交付することを意味し、卽ち原告が訴狀に依て自已の主張する私法上の利益に就いて、裁判所に保護を要求する書面上の意思表示をいふ、獨逸の民事訴訟法に依れば、訴の提起は訴狀の送達に依りて爲すと規定す、從て原告は第一に訴訟を口頭辯論の期日を定むるが爲めに裁判所に差出し、期日の定めたる後に被告に對して之が送達の手續を爲すにあり、故に獨逸法に於ける訴の提起は、訴狀の差出、期日の指定、及び被告に對する訴狀送達の三の行爲より成立するもの也、是れ送達主義の異なる結果にして、我民事訴訟法は職權送達主義を採用したるが故に、裁判所書記の行爲卽ち訴訟送達の遲速に依て、原告の訴の提起に依て生する效力に影響を及さゞらしめんが爲め、訴狀の差出のみを以て訴の提起と爲したる所以なり、偖て訴狀とは、先に一言したる如く、原告が口頭辯論に於て主張すべき訴訟上の請求に就き訴訟の開始を表示する書面なり、訴の提起に訴狀を必要としたるは、訴の基礎を確定ならしむるにあり、故に訴狀は獨り口頭辯論を準備するのみならず、開始すべき訴訟の内容を確定する性質を有するものなり、是を以て訴狀には、當事者、請求の原因請求の目的及び一定の申立を明確に表示するを要する也訴狀の要件に就ては尚訴狀の部を參照せよ、之を要するに、民事訴訟法に於ける訴の提起は、原告たるべき者が訴狀を提出して爲すを原則とするものにて、唯區裁判所に於ては口頭を以て訴を提起するを得べし、卽ち口頭を以て訴の提起をなしたるときは、區裁判所書記は法定の手續に依り之が調書を作るものにして、軈て此調書は訴狀と同一の效果を爲す、其他當事者は豫め期日の指定なくして、通常の裁判日卽ち區裁判所の開廷日に於て、裁判所に出頭し、原告が被告の面前に於て訴旨を口述するときは、訴の提起と同一の效力を生ずる也、刑事訴訟法上に於ける訴の提起卽ち起訴は、原告官たる檢事の爲す處分なり、檢事或事件の搜査を終りたる場合に、事件罪となるべきものと思料したるときは、其輕重難易に從ひ或は豫審を請求し、又は直に公判にすべきものにして、此の起訴處分は決定の形式に依る。(民訴一九〇、三七四、三七五條、刑訴六二條、起訴、訴訴狀、上の部參照)
運河
(うんが)人工を以て陸地の一部を河流的に開鑿し以て水運に便するものを運河といふ、運河は一國内に終始するものあり、之を國内的運河と云ひ、國際間に跨るものあり、國際運河は是れ也、我邦に於ては運河といひ得べき重大なるものなく、從て特殊の法令定められたることなし、只國際運河は、國際法上重大なる關係を有すれば、左に略述する所あらんとする也、國際的連河として數ふべきものは穌土運河及びニカラガ運河とす、□一穌士運河、同運河に關しては一八八八年十月二十日土國首都コンスタンチノーブルに於て、英、佛、獨、墺、西、伊、蘭露、土の國家間に條約を締結したり、全部十箇條より成りたるものにして、其要旨を摘説すれば下の如し(イ)如何なる國の船舶と雖も、又其軍艦なると商船なるとを問はず、又平時たると戰時たるとを問はず、スエズ運河を通航することを得べし、(ロ)該運河内及其三海里以内に於て、交戰行爲又は他の船舶の通過を妨害するが如き行爲をなすことを得ず、又之を封鎖することを許さず、其他戰爭用の糧食、武器を其運河内に於て陸揚又は塔載し、又は捕獲せし船舶を其内に曳き入るべからず、(ハ)軍艦は平時に於ても戰時に於ても、ポート、サイドに於て、二十四時間以上碇泊することを得ず、又運河内に於て交戰國の軍艦相會するときは、一方の發したる後二十四時間を經過せざれば、他方の軍艦は發航することを得ず、其他締盟國は二隻以上の軍艦を同時に運河内に置くことを許さず、(ニ)巳むを得ざる場合に於ては、運河内に於て交戰國の軍艦の乘員を上下せしむることを得べしと雖も、軍隊は千人よりも少數の一隊となして之を進退せしむべく、一時に多衆人を進退せしむることを得ず、之を要するに同運河は之を中立と認むることを得べく、此規則は同運河を領土とせる土耳古も亦之を遵奉せざるべから而して該條約は、一八五〇年英米兩國がニカラガ運河に就いて締結せし、所謂「ブールワー、クレートン」條約に倣ひたるものにして、其實行以前に於て既に開鑿の效を奏したるなり、□二ニカラガ運河、同運河に關しては、一九〇一年十二月に於て、英米間に締結せられたり、其條約の要旨は一八五〇年に於ける「ブールワー、クレートン」條約に代るものなることを定め、前條約と異り米國のみ獨り同運河に就いて支配權を有すること、及び一八八八年に於けるスエズ運河に關する規定は、此運河にも適用すること等を定めたり、尚詳説すれば(イ)如何なる國の如何なる船舶と雖も、運河内を航通することを得べく、其手數料は國に依りて異るべからざること、(ロ)運河は之を封鎖することを得ず、又其内に於て戰鬪行爲をなすことを得ず、(ハ)北米合衆國は運河に付き一定の法律を設げて、之を支配し得ること、(ニ)交戰國の軍艦は、飮水、薪炭を運河内に於て需むることを得ず、又不可抗力に因りて已むを得ざる場合の外は、軍隊、兵器、糧食等の陸揚を爲すことを得ず、(ホ)運河開鑿の器具は平時たると戰時たるとを問はず、之を妨害すべからず、(へ)以上の規則は運河内のみならず、運河より三海里以内の範圍にも適用せらるゝものにして、交戰國の軍艦は二十四時間以上運河内に留ることを許さず、又他の軍艦の去りたる後二十四時間を經過して發航すべきものとす、之を要するに、其大體に於てはスエズ運河に關する規定は、殆んど其全部を之に適用するものとす。(國際法の部參照)
運動
(うんどふ)洽ねく運動といふときは、一般の動作擧止總て運動ならざるはなし、然れども法令の上に於て運動といへば、單に或る目的の爲に各人の間に立ちて周旋することをいふ、例へば選擧運動といはんが如く、卽ち被選擧人の側に立ちて、選擧者を或は繰縱し、或は依願して投票せしめ、其他此目的の爲めに爲す一切の行動の謂也、換言すれば、被選擧人の爲めに各選擧人の間に奔走盡力することを意味す、運動は單に選擧にのみ關せず、其他一切の政治上於ける運動、公共事業經營に於ける運動を包含するものにして、卽ち運動なるものは公的意義を包むものなるを知るべし、故に個人が私務の爲に働く場合は、縱令奔走周旋することあるも、之を運動といはずして勞働と稱する也、爰を以て運動なる觀念には左の二義を包含するを見る、□一其目的公の事に關すること、國事の爲めに運動するとか、其他公共事業の經營施設の爲めに奔走することを要す、□二各人の間に立ちて周旋奔走すること、單に公事の爲に思を致すも、之を各人の間に周旋奔走するにあらざれば運動に非らざる也。(衆議院議員選擧法八七條、九二條參照)
運輸
(うんゆ)物件の運送及び人馬の輸送を包含する語なり、卽ち人馬物件を某地点より他の地點に移送することを運輸といふ、單に運送又は輸送といふも同義也、陸軍には運輸部なるものあり、臺灣守備及び在外陸軍部隊竝に之に關する人馬物件の海上輸送及び臺灣輕便鐡道の事務を掌り、戰時軍隊輸送用補助物件を整備保管するを職務とし、本部は之を宇品に置き、門司、基隆、臺中に支部を置けり、此運輸部なる語は、以上の運輸の用例よりは廣義にして、運輸に關する一切の事務を包括するものなり。(三六年一一月勅令二〇〇號參照)
浦役場
(うらやくば)漁業其他に關する海事上の事務を執る役所にして、町村制に依れば、浦役場に關する事務は、法令に從ひ町村長に屬することあるものとす、此場合には、浦役場を當該町村役場に附置する也、浦役場に關する費用は當該町村の負擔に屬するを原則とし、小笠原島、伊豆七島は從前の通り國庫の負擔に屬す、浦役場は前述の如く、漁業取締及び船舶に關する事務其他海事に關する事務等の内、或種の事務を執る所にして、現時に於ては、此種の事務は管海官廳として指定せられたる町村役場に屬するもの也。(町村制六九條第一項二號、二二年一月勅令二號及び管海官廳の部參照)
賣掛代金
(うりかけだいきん)賣買は其代金の支拂方法に依りて左の數種に區別せらる、一は前拂賣買にして、卽ち前金賣買及び荷爲替付の場合是れ也、二は貨物引換拂賣買にして、貨物と現金と同時に引換を爲す賣買をいふ、三は交互計算に依る賣買にして、賣買の代金を交互計算に附して決算する賣買をいふ、四は手形拂の賣買にして、其代金を小切手、爲替手形又は約束手形にて仕拂ふ賣買なり、五は掛賣買にして代金を掛けにてなせる賣買をいふ、茲に賣掛代金とは、物品を掛けにて賣りたる場合の未だ受取らざる代金をいふ、卽ち賣買に於て、其代金を信用其他の理由に依り異時に延引したる場合の代金にして、廣義に於ては荷爲替付の賣買に於て、現實に支拂るべき代金、交換計算に依る賣買に於て、現實に相殺せらるゝ代金、手形拂の賣買に於て、現實に其手形に支拂ふ代金の總てを含むものとす、然れども商業の實際に於て賣掛代金といへば、掛賣買に於ける未だ受取らざる代金のみを指すものなれば、茲にも亦此意義に從へるものとす。(賣買又は賣の部參照)
賣下
(うりさげ)賣捌かしむる爲め政府より物品を賣渡すことを賣下といふ、例へば印紙又は切手、若しくば阿片の類を賣捌かしむる爲め、賣捌人を指定して其者に交付する行爲は賣下なり、但し政府に於て反對給付を得るは勿論とす、政府が物を賣却するには左の方法あり、一は競賣に付して之を賣却する場合にして、原則としては此方法を採用す、二は競爭入札の方法に依る場合にして、或場合に於ては競賣の方法に代ることを得るものとす、三は卽ち賣下なり主として政府の專賣に屬する物品を賣捌人に賣却する場合に用ゆ、或は賣下なる語を賣捌人が消費者たる個人に賣却する場合を指すことあり、例へば郵便切手又は收入印紙を賣下ぐるが如し、郵便切手は元來郵便局、郵便受取所又は郵便切手賣下の許可を受けたる者をして賣下げしむるものにて、郵便切手及び收入印紙を賣下ぐる者は、其住所中公衆の最も看易き場所に左の標札を揭出すべきもの也。(三二年三月勅五〇號、三三年九月遞信省令七二號參照)
二尺五寸
七寸五分
郵便切手收入印紙
賣下所
賣捌
(うりさばき)廣く物品を販賣することをいふ、卽ち物品を提供し、以て收入の所得となすべく何人に對しても其行爲をなすをいふ、例へば政府が收入印紙を賣下げて之を賣捌かしむるが如し、印紙の賣捌人には元賣捌人及び賣捌人とあり、政府は賣捌人をなるべく左の者より採用するの主義を採る、卽ち先づ陸海軍人其他公務の爲めに受けたる傷痍又は疾病を以て法律に依り恩給を受くる者を第一とし、次は法律に依り扶助料を受くる者とし、之れなき場合に於て一般人民とす、煙草小賣人に就ても亦然り。(二三年一一月勅三七一號、同年大藏省令三四號參照)
要路
(えうろ)重要なる路をいふ、漠然として要路といふときは、總て重要欠くべからざる場所位置等をいふ語にして、例へば要路の大臣とか、本黨の目的は要路に立たんとするに在りとか、又は要路に當て障碍物ありとかいふが如し、人生の行程難きを行路難といふが如く、要路といふも重要なる道路の意味にあらずして、抽象的にいふ路を指す場合あり、重要なる位置を指すことあり、或は具體的なる路を指すことなきに非らず、但し通俗には專ら政權を執る職を指す也。(當局の部參照)
營業讓渡
(えいぎやうじよふと)營業は一種の權利義務の總括なり、民法に於ては權利の讓渡を認めたるも、義務の讓渡を認めざるを以て、營業を權利義務の總括なりとずるときは、其總括財産の讓渡に就いては民法の觀念を以て之を説明すること能はざるなり、故に營業の讓渡と云ふには、更に特殊の觀察の存在することを必要とす、余の解する所に據れば、義務の讓渡たる觀念は必ずしも存在せざるものにあらずと信ず、商の實際に於て、商人が自已の精勵に因り取得したる所の利益は、其者の爲めに充分に之を利用するの便宜を必要とすべきは茲に論ずるまでもなく、其利益を利用するに就いても法律の保護を與ふることは最も適當なり、又營業を爲さんとする者が、自己固有の力に依り一定の設備を爲すは、啻に至難なるのみならず一定の信用を得ることは、蓋し容易の業にあらず、是を以て、從來一定の營業に對して充分なる便益を有する方法に於て設備せられたる組織は、依然其營業を爲さんとする者に於て、之を取得することを得べきものとせば、其者及び社會の利益上一擧兩得の結果を收むることを得るものと云はざるべからず、斯る觀念に基き、營業の讓渡なる思想が漸次發達したる取引社會に於て、必要的に發生するに至り、又各國商法規の上に於て之に關する多少の規定を存するに至りし也、營業は權利義務の綜合にして、其營業中より一部を除去するも尚ほ營業たるを失はず、故に營業の讓渡は、其全部を一括して讓渡することあり、或は又其一部分を除去して他部分のみを讓渡するとあるべく、是決して法理上不當なる觀念にあらざるなり、然り而して、其一部分を除去すると云ふ觀念は、商號を除去する場合に於て、極めて注目すべき價値ありといふべし、我商法は其第二十二條に於て、商號と共にする營業の讓渡に就いて規定し、又第二十三條に於て、商號を除去したる殘部を營業として讓渡する場合に付き規定せり、然れども營業の各分子を別々に讓渡することあるも、是決して營業の讓渡にあらず、營業の讓渡といふには、少くとも或程度に於て其分子を集合したる狀態に於て、讓渡するものならざるべからず、商法は營業の讓渡に就いて特に其讓渡の效力に關する規定を爲せり、卽ち營業を讓渡するときは、讓渡人と讓受人との間に、如何なる法律關係の發生すべきやを明にしたるものなり、余は便宜上之を二分して説明する所あらんとす、□一同一營業を爲さずとの特約ある場合、營業を爲さずとの契約は、所謂商業の制限に外ならず、之に關する規則は、商法歷史の上に於て頗る著明なる事實なり、爾來〓多の判決例を有する英國に於ては、最も多く爭はれたるの事跡あるを見る、而して其歸する所は卽ち場所を限り、人を限り、若くは其方法を限りて商業の制限を爲すは、所謂一部制限なるものにして、其範圍内に於て有效なりとす、然れども其制限の契約は少くとも當事者間に於て至當ならざるべからず、又社會全般に對し、有害ならざるものなることを必要とせり、故に場所若くは年限等に就いては一定の具體的の規定なきも、是れ英國の特徵たるに過ぎず、我邦に於ても商業の制限に付き、一般的の制限を許容するとせば、固より甚しき批難を免かれざるべく、此點に就いては英國判決例の歸着する所と敢て異なるの道理なし、然れども英國に特殊なる點、卽ち場所若くは年限等に付き一定の具體的規定を設けずして、常識に訴ふることは我國に於て行はるべからざる事に屬す、故に此制限の範圍に就いては法律の規定を必要とするなり、換言すれば、當事者間に斯る制限的特約ある場合に於ては、其契約は勿論履行せざるべがらざることは明かなれども、其營業を爲さざる期間及び場所の範圍に就いては、法律上多少の干渉を必要とするなり、卽ち當事者が特約に依りて期間を定めたる場合に、其期間が永久に其自由を束縛するものなるときは、法律は之に對し一定の制限を加ふるの主意に基き、其契約期間は三十年を超過せざる範圍内に於てのみ之を有效なりとし、又場所に就いての特約ある場合に於て▲、同一の主意に基き法律は之に對して同府縣内に限るとの制限を設けたり、故に若し三十年以上の期間、又は同府縣以外に於て同一の營業を爲さずとの契約を爲したる場合に於ては、之を三十年に減縮し、又は同府縣内に於てのみ其效力を有ずるものとす、□二同一の營業を爲さずとの特約なき場合、當事者間に於て斯る特約なき場合と雖、其營業を讓渡したる精神よりすれば、直に營業讓受人の附近に於て同一の營業を爲すが如きは、固より理論に反するのみならず、又實際に適せざるものと云はざるべからず、是を以て、商法は讓渡人は同市町村内に於て、二十年間同一の營業を爲すことを得ずとの規定を設けたり、而して此規定は特約なき場合に適用すべきものなれども、特約ありて其地域若くは期間を定めざる場合に於ても其適用あるべきこと言を俟たず、以上二個の場合に於て説明せる如く、法律は期限及び地域に付き讓渡人に對して一定の義務を負はしめたり、然らば其期限及び地域の範圍外に於て、讓渡人に如何なる事をも爲し得べきや否や、蓋し期限及び地域の制限は未だ以て充分に其弊害を防止することを得るものにあらず、是を以て、法律は一方に於ては、期限及び地域に就いての制限を設くると同時に、他万に於ては、其期限若くは地域の範圍如何に拘はらず、讓渡人は不正の競爭の目的を以て同一の營業を爲すことを得ざる旨を定め、以て讓受人を保護するの精神を貫徹せり。(商二二條第一項乃至第三項參照)
役權
(えきけん)役權とは特定の土地又は人の爲にする物權にして、他人の所有物の使用又は收益を目的とするものをいふ、役權には、屬人地役及び屬地地役とあり、屬地地役といふは、我民法にいふ所の地役權にして、或土地の所有者が、他人の土地を其所有地の便益に供する權利也、屬人地役なるものは、用益若くは使用又は住居等の爲め、他人の所有物を特定の人の利益に供する權利也、此種の物權は、外國法に於ては認むる國尠からず、我舊民法も佛法に從て之を認めたるも、現行民法は全然此種の權利を認めず。民二八〇條、地役權、屬人地役、屬地々役の部參照)
延期
(えんき)期限を延すことをいふ、所謂期限とは、到來すべきことの確定なる時期にして此の到來すべきことの確定なる時期を、尚後に到來すべき確定なる時期まで延引する場合は卽ち延期也、例へば金圓を來る十月一日までに辨濟すと定めたる場合に、之を十二月三十一日まで猶豫せらるゝときは、是れ延期なり、故に始期附權利に就て延期ありたるときは、其權利の實行が後に延引せらるゝ結果を來し、又終期附權利に於ては延期は其消滅を延引せらるるの結果を生ず。(期限の部參照)
沿革法理學
(えんくわくはふりがく)法的現象の沿革を討究し、歷史的に法理を説明するものをいひ、法理學の一分科に屬す、抑々法理學は其内容別れて沿革法埋學、比較法理學及び理論法理學卽ち法理學原理の三となす也、比較法理學とは各國各地方に存する法的現象を比較分析するに依て法理を闡明するものにして、沿革法理學と共に之を實驗法理學となす、法理學原理は以上の實驗法理學の教ふる所に基き、法理の原則を歸納し、又は分析して法制の如何にあるを可とすべきかを説明する也、以下少しく沿菫法理學の内容を示さんに、元來法律的現象は一定不變のものに非らず、從て法律の原理は必らずしも萬古不易のものといふべからず、蓋し法律は社會的共存の規則にして、社會事物の反照なれば、社會にして變遷進化するものたる以上は法律も亦進化變遷すべければ也、故に法律を立法者の製作物となさず、發達醇化すべきものとなす也、從て法理を闡明するには沿革的硏究方法を採らざるべからず、是れ沿革法理學の生ずる所以とす、今一例を契約にとらんに、古代に在りては人々の交通少なく、從て人の信用發達せざりしが故に、契約は普く行はれざりしも、近世に至りては各人の交通盛んに、又自ら信用充分となりしを以て、契約の締結大に發達し、古昔身分に依りて定まりたることも、今日にては契約に由りて定まるに至れり、此沿革的事實を硏究して、社會は身分より契約に進むものなりとの原理を發見するが如きは沿革法理學の任務とす、法理を沿革的に硏究するに至りしは獨逸の「ライプニツツ」に始まる、其後英國の「べーコン」佛の「ボーダン」等を經て獨逸の「サビニー」に至りて沿革法理學は始めて大成せり、故に學者「サビニー」を以て沿革法理學の鼻祖となす、近時英國の學者「メーン」大に沿革法理學を再興し、之に關する著書を公にしたる爲め、或は同國の學者は「メーン」を以て沿革法理學の鼻祖となせり、之を要するに沿軍法理學なるものは、法理を闡明するに歷史的硏究方法を採れるものにして、眞に法と稱すべきものは社會事物の反照として發達したるものをいひ、決して立法者一個の考按又は便宜に基き制定すべきものに非らず、立法者は民心の機關となりて法典を編纂改長すべきものなることを教ふるものなり。(法理學の部參照)
援助
(えんじよ)單に扶助といはんが如し、卽ち救援又は救助の意なり、明治三十二年三月法律第六十八號外國船舶乘組員の逮捕留置に關する援助法なる法律あり、こは援助なる語の用例にして、同法に依れば、逮捕又は留置に關する援助は、通商條約又は領事職務條約に依り此種の援助を約せる場合に、逃亡外國乘組船員が帝國臣民にあらずして、我法に照して禁錮以上の刑に該り且つ訴追を受け、又は處刑中に在る者なるときに限り、我邦の檢事は援助を爲すべきものにして、詳細は同法を參照せらるべし。(三二年法六八號)
演説
(えんぜつ)廣く演説といふときは、演述説明することを意味す、他人の面前に於て之を爲すと、又は全く單獨にて之を爲すとを問はざる也、然れども演説なるものは、主として自已の意見を演述説明する場合のみを意味し、又不定多數の人に對して爲すを例とす、政談演説又は宗教演説といふが如きは此例にして、卽ち政治に關する講談論議をなすが如き、宗教に關する論旨を演述説明するは是れなり、要するに演説とは、衆人の面前に於て演述説明することを云ひ、其演述等にして人の私行に渉るときは、侮辱罪を構成することあるべきものとす。(舊刑一四一條二項參照)
延滯利息
(えんたいりそく)支拂るべき時期に支拂はれずして、利息が延滯せる場合に於て、此利息を延滯利息といふ、延滯利息は、之を元本に組入れて之に利息を附することを得、又は延滯利息其ものを元本として利息を附することを得、然れども法律は左の場合に於ては當然重利を附することを得る也、卽ち□一利息が一年以上延滯したること、延滯とは利息支拂の時期を經過するも尚ほ之を支拂ざるを云ひ、支拂はざること一年に及べる其利息に對しては重利を附するなり、□二債權者が一應其延滯せる一年分以上の利息を支拂ふべき旨を催告し、債務者が尚之を支拂はざること、以上の二條件を具備すれば、債權者は直ちに之を元本に組入れ、元本の利息と同一の利率に依ち重利を發生せしむることを得、此場合に於て從來の元本は、延滯利息と相合し法律上一の元本を組成するものなるが故に、其履行の時期は元本と同一なり、此の如きに至りては、債權者は最早延滯利息のみを請求することを得ざる也、或は延滯利息なる語を遲延利息の意味に使用する者あり、遲延利息の部を參照せよ。(民四〇五條)
延着
(えんちやく)後れて到着するを延着といふ、卽ち或る方面より到着する物品が運送されつゝありと假定せよ、而して其れが某月某日までに到着すべき場合に、其某月某日より後れて到着したるときは是れ卽ち延着なり、物品運送に於て貨物が延着するときは、運送業者は損害賠償の責あるものにして、旅客運送に於ても其引渡を受けたる手荷物に就いて亦同じ。(高三三九條、運送契約、運送人の部參照)
遠因
(えんゐん)
緣由
緣由又は遠因は動機といふに略ぼ同じく、或行爲の原因の原因をいふ本來動機又は緣由なる語と、遠因なる語は多少其看察の方面を異にし、或行動の生ずる機會となれるときは是れ卽ち動機にして、又或行爲の緣て生ずる理由は卽ち緣由なり、之に反して遠因は遠き原因を意味し、卽ち結果より看察したる語なりとす、茲に原因といひ結果といふ、結果は軈て原因となり、遂には遠因となるべきものにして、因果は常にそれよりそれと廻るが如きものなりとす、今之を例解せんに、殺人の目的を以てピストルを買ふは、殺人なる行爲の結果を動機として賣買行爲をなすものなれば、殺人行爲に對してピストルを買ふ動機たるものは遠因なり、ピストルの賣買は其原因なり、買ひたるピストルに依て殺人行爲を爲したるが故なり、然れども殺人の結果たる被害者の死てふ点より見れば、ピストルの賣買は其遠因にして、殺人行爲は其の原因なり、尚被害者死したるが故に、其被害者の幼兒の困難せる事より見れば、此困難の原因は被害者の死にして、遠因は殺人なる行動なり、然れども殺人行動は此の困難てふ結果の動機又は緣由といふべからず、之を動機又は緣由といふときは、全く遠因なる語と同一の用法に從へるものなり、偖て此の如く、結果の結果より見れば原因は卽あ遠因にして、單に結果より見るが故に原因の原因が遠因なり、倫理學上に於ては、動機の善惡は常に行爲の善惡を區別する標準となし得べきやに關し困難なる問題あるも、法律上に於ては原則として、遠因は法律上の行爲(適法行爲又は犯罪)等の要素にあらず、只遠因を條件となしたる場合、結果が動機となりたる場合のみは、法律上の行爲の效力如何を左右することゝなる也。(法律行爲、動機の部參照)
應訴
(おうそ)或る訴訟に於て、原告が訴を提起せるとき、法定の條件を備へたる場合には、裁判所は之を審理判決するの職務上の義務存するを例とす、卽ち原告は訴權を有するもの也、而て原告の訴權に對して被告は同じく裁判所に對し、原告の攻擊に向て防禦すべく、其審判に關與するものなり、之を應訴といふ、或は就審といふも之と同義なり、就審卽ち應訴は、被告の義務なりや權利なりやは爭の存する所なり、之を義務なりといふ説は、次項應訴義務の部に於て説明すべし、之を權利なりと解する者は曰く、應訴を被告の義務とし、原告を其權利者とせんか、是れ訴訟上の關係を誤てるものなり、何んとなれば訴訟は民事と刑事たるとを問はず、原告と被告及び裁判所間の關係にあらずして、原告と被告とは各別に裁判所に對する關係なれば也、又應訴を被告の義務と解し裁判所を其權利者とせんか、刑事訴訟に於ては兎に角、民事訴訟法上に於ては正當なる解釋といふべからず、何んとなれば、被告其審判に缺席すれば、單に失權の不利益を被むるのみにして、應訴を強制せらるべきものに非らざれば也、或は應訴を一種の責任なりと解する學者あり、蓋し應訴は義務の如くにして、之に對する權利者なけれぱならん。(應訴義務の部參照)
應訴期間
(おうそきくわん)一に就審期間と云ひ、訴訟に於て應訴すべき期間をいふ、民事訴訟に於て之をいへば、先づ原告が訴の提起として訴狀を裁判所に提出すれば、裁判所は一應其訴狀が法定の要件を備へたるや否やを審査し、法定の要件を備へたるときは、期日を指定して其訴狀を被告に送達す、而て此訴狀の送達と口頭辯論の期日との間には少なくとも二十日の時間を存することを要するものにして、外國に於て送達を施行すべきときは、裁判長相當の時間を定むべきもの也、此時間は卽ち應訴期間と稱するものにして、若し右の期間が完全に存せざるときは、權利拘束の發生には關係なしと雖も、出頭せざる被告に對して缺席判決を爲すことを得ず、但し此期間は被告の利益の爲めに定めたるものなれば、被告に於て此期間の利益を抛棄することは妨げなしとす、故に法定の期間を存せざる呼出に對して被告が出頭し、原告が缺席せる場合に於ては、被告は缺席判決の申立を爲すことを得べし、尤も應訴期間は特別の事情ある場合に限り、原告の申立に基き二十四時間までに短縮することを得べく、此場合に被告が答辯書を差出すことを得ざる場合に於ても亦之を爲すを得る也。(民訴一九四、一六七、二〇三條)
應訴義務
(おうそぎむ)應訴義務とは、原告の訴に對し、裁判所に向て該訴訟に關與するの義務也、或は之を就審議務と稱す、應訴を義務となしたるは從來よりの見解にして、原告は訴の提起を以て裁判所に對し審判を請求するの權利を有し、被告は權利拘束に依て其訴に關與するの義務ありとなしたる也、卽ち被告の應訴義務は原告の訴權に對するものと看做されたるものとす、從て從來の立法例に於ては、被告の應訴義務を履行せしむる爲めに、其身體に強制を加へたることあり、殊た刑事訴訟に於て然りとす、されど現時に於ては、原告の訴權は裁判所に對するものと解せられ、裁判所は原告の訴に依て形式訴權(訴訟條件の審判)實質訴權(本案の審理裁判)に應當する審裁義務ありと解せられてより、應訴の爲めに被告の身體を拘束して強制することなく、尚欠席裁判の制度までも認めらる、に至りたり、爰を以て、應訴は義務に非らず、權利なりとの説を生じ、又は應訴は權利にもあらず、さりとて義務なりといふも其權利者なきが故に、之に應當する權利なき一種の義務卽ち責任なりとの折衷的解釋も生ぜしなり、但し何れが可なるやに就いては讀者の判斷に委す。(應訴の部參照)
送狀
(おくりじよふ)貨物運送に關し、其貨物の送達又は受渡に就いて勘定書を添ふるを一般の慣例とす、俗に之を送り狀といふ、送狀には普通のものと特別のものとありて、前者は更に之を二に別つ、□一内地送荷勘定書、一に内地送狀ともいひ、其雛形は左の如し、
送荷勘定書
一□高印麥稈眞田第一號貳百個金五拾錢替
此代金壹百圓也
一同第三號五百個金四拾錢替
此代金貳百圓也
一同第三號壹千個金貳拾五錢替
此代金貳百五拾圓也
合計金五圓五拾圓〇錢也
右代金貨物ト引換ニ支拂ハルベキ約定
右之通御座候也東京
明治四拾一年拾二月一日渡部商店
橫濵志田商會御中
□二船積送荷勘定書、外國に發送する場合に用ひらるゝものなり、故に之を一に外國貨物送狀といふ、其雛形を示せば左の如し、
船積送荷勘定書
一NS1/20信州生絲貳拾梱
正味重量貳千斤也
總量目貳千九百貳拾六封度也
此原價金壹萬八千四百圓也
但壹梱金九百拾圓替
諸掛
一金百六拾圓九拾參錢也
運賃總目量百封度ニ付金五圓五拾錢
一金壹百拾圓也
海上保險金額貳萬圓單獨海損擔保百圓ニ付金五拾五錢
一金四百參拾圓也
荷造、船積其他諸入費壹梱ニ付金貳圓拾五錢小計金七百圓九拾三錢也
合計金壹萬九千零壹百圓九拾參錢也
但橫濵正金銀行荷爲替相場五拾壹弗四分三換米貨金九千八百七拾九弗五拾六仙
右之通本日海門丸ニテ積送候也
橫濵
明治四拾一年拾二月一日志田商會
紐育ロバートソン商會御中
□三領事送狀、「コンシユラー、インヴイス」といふものにして、卽ち米國に輸入する貨物は其輸出地の同國領事より承認を受くべきものとし、領事は手數料を收めて此種の送狀を交付する也、此他小荷物賣渡證なるものあり、通俗之を「附け」と稱するものは是れ也、こも亦廣義の送狀の一種に屬すといふことを得べし。(運送の部參照)
恩赦
(おんしや)大赦及び特赦を包含す、大赦特赦の意義は下の如し、□一大赦、憲法の規定に依れば、天皇は大赦を命ずることを得、而して法律上此天皇の大赦に對し何等の制限を加へざるを以て、天皇は自由に大赦を爲すことを得べく、必ずしも一定の原因の存在を必要とせず然れども外國一般の慣例に依れば、大赦は主として國事犯罪に就いての恩典なるが如し、大赦の效力も亦天皇の自由に指定し得る所なり、然れども舊刑法第九十七條には、大赦に依て免罪を得たる者は、再び罪を犯すとき再犯を以て論ずることを得ずといひて、間接に裁判言渡の效力を全滅せしむることを示したり、然らば刑の執行權の如きは大赦に因り免除せられ得ること勿論なりとす、□二特赦、天皇は特赦を爲すことを得べく、特赦とは罪に對せずして人に對す卽ち特定の人に存する人的事由に依り附與せらるゝ恩典にして、其效力は只刑の執行全部を免除するに止まるものとす。憲一六條)
海軍刑法
(かいぐんけいはふ)主として海軍々人軍屬の犯したる罪に關し、其刑を定めたる法律にして、左に内容を略説すれば、□一本法は主として海軍々人軍屬の犯したる罪に適用せらる、海軍々人といふは、海軍の高等武官、候補生准士官及び下土卒にして、現役中の者、(但し召集中にあらざる歸休兵を除く)、豫備役又は後備役に在りて召集中の者をいひ、海軍々人に準ぜらるべき軍屬等は、海軍所屬の學生、生徒、海軍の勤務に服する陸軍々人及び海軍文官、同待遇者又は宣誓して海軍の勤務に服する者をいふ、□二本法は海軍々人及び之に準ぜらるゝ者に非らずと雖も、守兵侮辱罪、軍用物損壞罪、掠奪罪、俘虜を逃走せしめし罪、違令の罪の或ものを犯したる一般の人に之を適用す、本法に定むる罪は左の如し、□三叛亂罪、帝國に叛きて騷亂を爲すの罪なり、本罪は黨を結び兵器を採りて反亂を爲したる罪と、反亂の目的にて黨を結び、兵器其他の軍用物を刧掠する罪と、其他軍事上の機密を漏泄する罪と、敵國を利する爲め軍事上の不利益なる行動を爲す罪等を包含す、□四擅權の罪、擅に權利を濫用し、軍事上不利益なる行爲を爲すの罪にして、卽ち指揮官外國に對し故なく戰鬪を開始するの罪、指揮官權外の事に於て已むことを得ざる理由なく、擅に艦船又は軍隊を進退するの罪の如きを包含す、□五辱職罪、軍人軍屬等が其職務を辱しむるの罪にして、例へば指揮官其盡すべき所を盡さずして敵に降り、又は敵前に於て艦船を率ゐ逃避する罪、指揮官敵の船舶を拿捕すべき場合に、故なく之を拿捕せざる罪等を包含す、□六抗命罪、上官の命令に反抗し服從せざる罪をいふ、例へば黨與して上官の命令に反抗し、之に服從せざる罪、暴行を爲すに當り上官の制止を肯ぜざる罪の如し、□七暴行脅迫罪、上官又は守兵等に對し、暴行脅迫を加ふる罪にして、卽ち上官に對し暴行又は脅迫を爲す罪、守兵に對し暴行又は脅迫を爲す罪、上官又は守兵以外の海軍々人の職務執行に對し、暴行脅迫を爲す罪、多衆聚合して爲す暴動罪及び職權を濫用して凌虐の行爲を爲す罪等を包含す、□八侮辱罪、上官又は守兵に對し侮辱を爲す罪をいひ、此等の者の面前に於て、或は文書圖画又は偶像を公示し、或は演説をなし、其他公然の方法に依る侮辱罪也、□九逃亡罪、敵に奔り又は故なく職役を離れ、又は職役に就かざる罪をいひ、其他襤船の乘組員、故なく其發航期に後れたる罪を包含す、□十軍用物損壞罪、軍用に關する艦船、兵器、彈藥等を損壞し、其他棄害したる罪也、十一掠奪罪、戰地又は帝國軍の占領地に於て、其住民の財物を掠奪し、又は戰場に於て、戰死者等の衣服其他の財物を褫奪したる罪にして、特殊の窃盜罪なり、十二俘虜に關する罪、俘虜を逃走せしめ又は奪取し、其他此等の者を藏匿若くは隱避せしむる罪なり、十三違令の罪、守兵を欺き守所を通過するが如き、又は定役を免るゝ目的を以て疾病を作爲するが如き、守兵故なく銃砲を發するが如き、特定の法令に違反するの罪なり、以上本法の大要とす。(四一年四月法四八號、同年法四九號參照)
- 英
- Naval criminal law
- 独
- Schiffsstrafrecht
- 仏
- Droit criminel mari-time
海外
(かいぐわい)帝國の領海外を廣く海外といふ、例へば海外在勤手當といふは、日本以外の諸外國に在て、勤務に從事する者に與ふる手當をいひ、又海外諸港より帝國の領海に入り來るときは、檢疫番船若くは見張所附近に於て、長汽笛三聲を發し臨檢を求むべしとある場合の海外の用例の如し、(三三年九月遞信省令六一號、三二年一〇月内務省告示一〇三號、三一年七月勅一七七號)
改竄
(かいざん)主として文字を塗抹し改訂することをいふ、卽ち文字を消して之を改むるをいふ也、證書類に於て文字を改竄するときは、其行の欄外に於て改正の旨を朱記し、認印するを普通とす、特に權務に關する證書類に於て然りとす、刑事訴訟法に於ては、官吏公吏訴訟に關する書類の原本、正本又は謄本を作るに付き文字を改竄す可らず、若し揷入、削除及び欄外の記入あるときは之に認印すべし、文字を削除するときは、之を讀み得べき爲め字體を存し、其數を記載すべし、此規定に背きたるときは其變更增減の效なかるべしと定めたるにて知るべし。(刑訴二一條、戸籍法二九條)
拐取
(かいしゆ)誘拐及び略取の總稱なり、卽ち拐取は、他人を不法に自己の實力的支配に移す行爲にして、其被害者の行爲の自由を侵害するもの也、而て略取と誘拐とは手段に於て異なるに過ぎず、略取と誘拐との區別に就いては二説あり、□一略取は被害者の意思に依らずして、之を自己の實力的支配の下に移す行爲也、必らすしも暴行又は脅迫を用ゆることを要せず、意思無能力者に對しては常に略取行爲を存すべし、誘拐とは、被害者の瑕疵ある意思に基て之を自己の實力範圍に移す行爲をいふ、之を第一説とす、□二略取は暴行脅迫に依り被害者を自己の實力的支配の下に移す行爲にして、誘拐は欺罔又は誘惑を手段として、自己の實力範圍に移す行爲をいふと、之を第二説とす、以上二の説は大體に於て一致せるも、其區別の標準異なるが故に、差異も亦少からず、其可否は讀者の判斷に委せん、拐取の行爲が未成年者に係るとき、營利、猥褻又は結婚の目的に出でたるとき、帝國外に移送する目的に出づるとき等の場合は、刑法に於て處罰さるべき拐取罪にして、其詳細は略取及び誘拐罪と題する部を參照せられたし。(刑二二四條乃至二二九條)
海上法要義
(かいじようはふようぎ)西曆千八百五十六年四月十六日巴里公會に於て、澳地利佛蘭西、大不列顚、普魯西、露國、サルジニア、及土耳古の間に締結せる海上國際法に關する規定にして、卽ち□一私船を拿捕の用に供するは自今之を廢止する事、茲に私船といふは、軍艦其他戰鬪の用に供する船舶に非らずして、單に戰時に於てのみ交戰國の特許を受け、其相手國の商船其他を拿捕する用に供する一私人の船舶をいひ、此種の行爲を自今爲すべからざることを約せる也、□二局外中立國の旗章を揭ぐる船舶に搭載せる敵國の貨物は、戰時禁制品を除くの外之は拿獲すべからざる事、卽ち中立國旗は敵國貨物を掩ふの原則を定めたるものにして、海上の戰鬪に於ては、從來敵國民の私有財産をも捕獲沒收するとを得たりし也、本則は此場合に局外中立國旗の下に在る敵國貨物は、之を拿捕沒收すべからざるの制限を定めたるもの也、但し局外中立國の旗章の下にある敵貨と雖も、戰時禁制品たるときは尚之を拿獲し得べし、戰時禁制品の何たるかは其部を參照せよ、□三敵國の旗章を揭ぐる船舶に搭載せる局外中立國の貨物は、戰時禁制品を除くの外之を拿獲すべからざる事、前則は中立國旗の下に在る敵國貨物に關するも、本則は之と反對に、敵國々旗の下に在る中立國の貨物に關す、從來は敵國々旗の下に在る此種の貨物と雖も、之を沒收することを得たりしが、斯くては大に不都合を生ずべきが故に、戰時禁制品を除き、之を拿捕沒收すべからざることを定めし也、□四港口の封鎖を有效ならしむるには實力を用ゐざるべからず、卽ち敵國の海岸に接到するを實際防止するに足るべき充分の兵備を要する事、從來いふ所の紙上封鎖を禁ずる旨を定めたるものにして、封鎖には實力を以てする封鎖と紙上封鎖なるものとあり、紙上封鎖とは其の海岸又は港口を封鎖すとの宣言を通達して、之に違背せる者を罰するをいひ、本則は此種の封鎖を禁ずるに在り、尚封鎖の部を參照せよ、之を要するに、海上法要義は、海戰に關する從來の惡風を一洗し、以て紛議の原因となるべき困難を豫防する主旨の條約なり、目下此條約には、前述暑名國の外、白耳義、智利、亞爾然丁、獨逸、瑞西、丁抹、希臘、和蘭、祕露、葡萄牙、瑞典及諾威等の諸國加盟し、我國も一八八六年十月十三日を以て之に加入せり、唯現時之に加入せざるは北米合衆國あるのみにして、故に本條約は國際法的條約の一なりといふべし。(二〇年三月勅令、二〇年三月外務省告示一號)
海戰
(かいせん)海上に於ける戰鬪をいふ、陸戰と海戰との區別は、單簡明瞭の如くにして實は然らず、陸上のみに於ける戰鬪の陸戰なるは明かなると同時に、海上のみに於ける戰鬪の海戰たるは明也、されど彼の要塞戰の如く、一方は陸上より陸兵を以て之を防禦し、一方は船舶を以て之を攻擊するが如きは、之に陸戰の法規慣例を適用すべきか、又は海戰に關する法規を適用すべきか、困難なる問題なり、學者は此場合に陸兵に關しては陸戰の法規を適用し、又海兵に關しては海戰の法規を適用すべきものとなせり、而して海軍に於ける陸戰隊の加きものが、陸上に於て戰鬪勤務に就きたるときは、陸戰の法規慣例を適用すべく、陸兵が海上に於ける場合も亦同じ、元來海陸戰は其法規慣例を異にす、例へば陸戰に於ては敵國民の私有財産を拿獲することを禁ずるを原則とするに反し、海戰に於ては原則として此禁なきが如し、又陸戰に於ては從來赤十字條約なるもの有りて、仁義博愛の趣旨に基き、敵味方の區別なく病傷兵を救護し、其救護員及び救護材料を中立として侵害を禁じたりしも、海戰に於ては必らずしも然らず、只千八百六十四年八月二十一日海牙に於て赤十字條約の趣旨を海戰に應用すべきことを定めたり、此條約に加盟したる國家間の海戰に於ては、陸戰と略同じき法則行はる、左に其締盟國を上くれば、卽ち、獨、墺洪、白、清、丁、西、亞、黑、佛、英、希、伊、日本、和、波、葡、露、瑞典、瑞西、米、モンテネグロ、廬森堡、羅馬尼亞等の諸國とす。(三三年一一月勅令、及び赤十字條約の部參照)
戒飭
(かいちよく)戒め飭むの義なり、至尊が改訂條約實施に就いての戒飭の詔勅に曰く、朕祖宗の遺烈に賴り、紀綱を振ひ治化を施き、内國運の隆昌を致し、外列國の交誼を敦くすることを得たり、而して朕が年來の宿望たる條約の改訂は、規画を悉し交渉を累ねて竟に締盟各國と妥協を遂ぐるに至る、茲に其實施の期に迨ひて、帝國の責任重きを加ふると共に、列國の和親愈其の基礎を鞏くしたるは、朕が中心の欣榮とする所なり、朕は忠實公に奉するに厚き臣民の、深く朕か意を體して、開國の國是に恪遵し、億兆心を一にして善く遠人に交り、國民の品位を保ち、帝國の光輝を發揚するに努むことを庶〓ふ、朕が在廷の臣僚は、朕が爲に新條約を施行するの責に任じ、百官有司を飭し、愼重措置、中外臣民をして均しく其惠澤を享けて憾なからしめ、以て列國の和好を永遠に鞏固ならしむることを期せよと、卽ち自ら飭み人をも戒めて誤なからしめんと欲するの義なるを知るべし、(三二年六月三〇日勅參照)
海底電信
(かいていでんしん)公海又は領海に於て設置せられたる電信をいひ、海底電信に關しては、千八百八十四年巴里に於て海底電信保護條約を締結し、又此條約の附則を定めたり、本條約は同年十一月に之を議定し、翌年三月に其宣言を公布したり、此條約に同意したる國は、獨逸、墺地利、佛蘭西、英吉利等なりとす、後に至り日本も亦之に加入せり、又千八百八十年五月一日には、敵國の領地、殖民地に連る海底電線のことに關する條約を締結せり、此條約は、沿岸海に適用すべきものに非ずして、公海に於てのみ適用することとなせり、何となれば、沿海岸は其國家の權力の及ぶべきものなればなり、又此條約は平時に於てのみ適用すべきものにして、戰時に於ては之を適用せずと定めたり、然らば戰爭ありたるときは、此海底電線を切斷することを得るや否や、此點に關しては學説區々たりしが、一九〇二年九月白耳義の「ブリユクセル」に於て開かれたる國際法協會は、此問題を解決して左の如く決議せり、□一交戰國間の海底電線は、之を切斷することを得るも、中立國を通過する其間に於ては、海底電線を斷つことを得ず、□二中立國間の電線は之を切斷することを得ず、□三中立國との間の電線に就いては、交戰國は自國の領海内のもののみを切斷することを得るも、封鎖せられたる公海内に於ては之を切斷することを得ず、□四中立國は海底電線を切斷することを得るも、交戰國の一方又は他方を助くることを得ず、□五此規定は海底電線が國家の有たると、私人の有たると及び何れの有たると、何れの國人の有たるとを問はざるものとす、平時に於て、若し海底電線を故意又は過失に因りて切斷したる者は、國法に依りて處罰せらるゝものとす、而して軍艦は之等の電線を監督するものなるを以て、若し其切斷を企つる嫌疑者あるを發見したるときは、之を逮捕することを得べきなり、然れども同法に依りて之を處罰するは、一に其船舶所屬國の權限に屬するを以て、其處罰は之を所屬國の裁判所に請求せざるべからす、又同條約に於ては、之に加入したる各國は、海底電線を保護するが爲めに、國法を制定すべき旨を規定す、我國に於ては之に關する罰則を左の如く定めたり、□一萬國聯合條約に依る海底電信線を切斷又は破損し、因て通信を障害したる者は、一月以上五年以下の重禁錮に處し、五十圓以下の罰金を附加す、其未だ遂げざるものは、刑法未遂犯罪の例に照して處斷せらる、過失に依り以上の海底電信線を切斷、又は破損し因て通信を障害したるものは、五十圓以下の罰金に處せらるべし、□二過失に因り自己の生命若くは船舶を保護する爲め、已むを得ずして海底電信線を切斷又は破損したるものは其船舶の初めて到着したる地の電信官暑又は警察署(外國に於ては其地所在の帝國領事館)に到着の時より二十四時間以内に屆出づべし、以上の規定に違反したる者は二十圓以下の罰金に處す、□三其他條約の規定に違反した者は百圓以下の罰金、暴行脅迫を以て公書の呈示を拒みたる者は、四月以上四年以下の重禁錮に處し、五十圓以下の罰金を附加す、茲に重禁錮と云ふは有期懲役のことなり。(三五年三月法二七號)
海堡
(かいほ)海堡とは、灣口其他の海中に築造したる防禦物にして、例へば東京灣口に設備せる海堡の如き是れ也、東京灣口に於ける海堡は、之に砲臺の設備をなし、東京灣要塞の防備に任ずる建造物にして、其第一海堡地及び第二海堡地は千葉縣の管轄に屬せしめ、第三海堡地は神奈川縣の管轄に屬す、然れども其防備は陸軍の管轄にして、東京灣重砲兵旅團の直轄とす。(二七年六月勅七一號)
改良費
(かいれうひ)汎ねく改良費といへば、事物を善良ならしむべく改むる爲めに加へられし費用にして、例へば物の用方に從ひ、其收益又は便益を增加すべき狀態に物を變更する費用の如き是れなり、改良費は一方に於ては必要費と區別せらる、必要費とは、其通常たると非常の場合たるを問はず、物又は事の維持若しくは保存に必要缺くべからざる費用にして、通常有益費といふものゝ一部なり、卽ち家屋を改築し又は沼澤を變じて田畑とするが如きは改良費にして、其他一般に物の便益を增加すべき費用は有益費なるが如し。(民一九六條二項參照)
強姦罪
(ごうかんざい)暴行脅迫又は人の心神喪失若くは抗拒不能に乘じ、或は之をして心神を喪失せしめ又は抗拒不能ならしめて婦女を姦淫する罪をいふ、本罪の行爲は姦淫なり、姦淫とは男女間の正當ならざる交接をいふ、而て姦淫を手段として暴行又は脅迫を用ゆるとが強姦なり、故に強姦に於ける暴行又は脅迫は、被姦淫者の抵抗力を抑壓する爲めに用ひられたることを必要とす、然れども被姦淫者の心神喪失若くは抗拒不能に乘じ(抵抗力を失ひたるに乘じ)又は心神を喪失せしめ若くは抗拒不能ならしめて(暴行脅迫以外の手段に依ることを要す)之を姦淫したるときは、暴行又は脅迫に依る場合と同じく強姦罪を構成す、強姦罪は強制猥褻罪と同じく、被害者の名譽を保護する爲めに之を親告罪とせり、本罪の處分は、十三歳以上の婦女を強姦したるときは二年以上の有期懲役にして、十三歳未滿の婦女に對するときは、暴行脅迫を用ひざる場合も同刑なり、本罪の未遂罪は總て之を罰す、終りに強姦に因て人を死傷に致したる場合は無期又は三年以上の懲役なり、本罪は結果犯とす、但し親告罪にあらざるは注意を要す。(一七七條乃至一八一條參照)
強盜罪
(がうとうざい)暴行又は脅迫を以て他人の財物を強取し、財産上不法の利益を得又は第三者をして之を得せしむる罪をいふ、□一強取は被害者の反抗を抑壓して所持を奪取するに依て成立す、強取の手段は暴行又は脅迫なることを要し、暴行とは被害者の反抗を抑壓する有形の手段にして、身體其ものに加へらるゝ不法の物質力也、脅迫は反抗を抑壓する無形の手段にして、精神上に加へられたる不法の勢力をいふ、然れども暴行又は脅迫は、強取の手段たるが故に、被害者の反抗を有形又は無形的に抑壓するに足るべき程度のものたるを要するは明なり、強盜の手段たる脅迫は此點に於て廣義の脅迫の一種の恐喝と區別せらる、□二暴行又は脅迫に依る財産上の不法利得、例へば他人の不動産を無料にて占據使用し、或は脅迫して勞力を提供せしむるが如き行爲と、財産強取との區別は、暴行又は脅迫を手段としたる點に於て一致するも、一方は財物の奪取なるに、他方は然らざるに在り、或學者は、被害者が處分行爲をなすと否とに其區別を求むるも、此の如き場合の處分行爲は機械的行爲なるが故に、之を處分行爲といふべからず、茲に注意すべきは、相當の賃錢を支拂ふて申込に應ぜざる者を強制し、其勞力を供せしむる行爲の如きは、或は脅迫罪となるも、茲にいふ不法利得となることなし、本罪に對する處分は五年以上の有期懲役とす、強盜の目的を以て其豫備を爲したるときは二年以下の懲役に處せらる、□三準強盜、準強盜といふべきものは二あり、一は竊盜財物を得て其取還を拒ぎ、又は逮捕を免れ若くは罪跡を湮滅する爲め、暴行又は脅迫を爲したる罪にして、本罪は財物盜取の現場又は其機會の繼續中に於てのみ犯し得べく、既に非現行の狀態に至るときは、本罪を構成する場合なかるべし、本罪は公務の執行を妨害する罪と想豫上の倶發たることあるべし、二は人を昏醉せしめて其財物を盜取したる罪にして、法文は別に昏醉の方法を定めざるが故に、或は魔醉を用ゐると、又は催眠術に依るとは問ふ所にあらざる也、以上の二罪は張盜を以て論じ其刑を科す、□四加重強盜、強盜人を殺傷し又は強姦する罪にして、加重情狀の伴へる強盜罪也、(A)強盜傷死、強盜人を傷し又は死に致したるの罪にして、本罪は結果犯なり、從て死傷に就いて故意又は過失の有無に拘らず、其結果に從て強盜傷人又は強盜致死を以て論ずる也、卽ち苟くも強盜の現行中又は機會の繼續中に於て、犯人の行爲より此の如き結果生じたるときは、其行爲が強盜の手段たりしと否とを問はず本罪を構成す、致死の原因となりたる行爲が、財物強取の手段たりし場合に於ても本罪のみを以て論ずべく、殺人と竊盜又は橫領の二罪となすべからず、卽ち致死が強盜の手段なりしときは、相手方は死して人格なく、從て盜取に就いて暴行の相手方なきに至り、自ら所持存せずとの結論を生ずべきも、此場合に於ては、此理論を認むべきに非らざる也、次に財物奪取未遂の場合に於て、殺傷の結果生じたるときも尚本罪なりや、或學者は此場合は本罪にあらずとなすも、我大審院判例若くば通説は之に反す、蓋し苟くも強盜に着手したる者は強盜(犯人)と稱するを妨げざる故に既遂説を可なりとす、本罪の處分は無期又は七年以上の懲役とす、(B)強盜強姦、強盜が(強盜行爲の既未遂を問はず)其現場に於て強姦する場合にして、強盜強姦は故意犯なり、本罪の處分は無期又は七年以上の懲役とす、(C)強盜強姦致死、強盜婦女を強姦し因て婦女を死に致したる場合にして、其強姦に就いては故意あるを要するも、致死の結果に就いては豫見あるを要せず、豫見ある場合は強盜強姦と殺人罪との數罪競合なり、本罪の處分は死刑又は無期懲役とす。(刑二三七乃至二四一條、奪取罪の部參照)
- 英
- Robberies (by open force or com-mitted with violence)
- 独
- Raubver-brechen
- 仏
- Vol commis à l'aide de vio-lence
確定日附印
(かくていひづけいん)法令の規定に依り、私署證書に確定日附を附することを裁判所又は公證人に請求するときは、一件每に金拾錢を納むべきものにして、區裁判所又は公證人役場に於ては、左に示せる雛形の如き印章を調製し置きて、以上の出願に對し之を押捺して交付す、但し確定日附簿にも件名及び押印をなして保存する也。(三一年七月司法省令七號)
明治何年・何月何日 某區裁判所
明治何年・何月何日 公證人何某役場
外圓徑一寸外圓徑一寸
内圓徑六分内圓徑六分
確認
(かくにん)單に確認と稱するときは、正確なることを承認するの意にして、例へば特別方式に依りたる遺言の確認は此例なり、元來遺言の特別方式は、遺言の普通方式たる自筆證書、祕密證書、公正證書等に要する條件を履行し能はざる急迫の場合、又は其條件を履行するに困難なる場所等に於て爲すを得る方法なれば、遺言者の意思の正確を保證する爲には、法定の承認を求むることを要するもの也、今之を例解せんに、甲者あり疾病の爲め死亡の危急に迫りたりと假定せよ、此場合に遺言の普通方式に依る能はざるときは、民法は證人三人以上の立會を以て、其一人に遺言の趣旨を口述し之を書せしむるの特別方式に依るを許せり、此場合に於ては、其口授を受けたる者之を筆記し、遺言者及び他の證人に讀聞かせて、各證人其筆記の正確なることを承認したる後、之に署名捺印することを要する也、然れども尚其遺言の正確なるを保せんが爲め、斯る遺言は、之ありたる日より二十日以内に、裁判所に請求して確認を求むべきもの也、然らずんば公の效力を生せず、裁判所は種々の證據により遺言者の眞意に出でたることの心證を得て、該遺言を確認すべきものとす、尚從軍中の軍人軍屬、死病の危急に迫りたる場合に於て作りたる遺言も、亦理事の確認を要する也。(民一〇七六、一〇七九條、三三年二月法一三號)
加減例
(かげんれい)刑法上犯人の刑罰を加重又は減輕すべき場合に依るべき規定をいふ、卽ち法律に依り刑を減輕すべき一箇又は數箇の理由あるときは、左の例に依りて減輕す、□一死刑を減輕すべきときは無期又は十年以上の懲役若くは禁錮とす、□二無期の懲役又は禁錮を減輕すべきときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とす、□三有期の懲役又は禁錮を減輕すべきときは其刑期の二分の一を減ず、□四罰金を減輕すべきときは其金額の二分の一を減ず、□五拘留を減輕すべきときは其長期の二分の一を減じ、□六科料を減輕すべきときは其多額の二分の一を減ずるものとす、而して以上の輕減は、法律に依り二箇以上の刑名あるときは、先適用すべき刑を定めて而て後之を輕減すべきものにして、其輕減の結果一日又は一錢に滿たざるときは之を除棄す、酌量減輕も亦以上の例に依る、同時に刑を加重減輕すべきときは、先づ再犯加重をなし、次に法律上の減輕をなし、次は併合罪の加重をなし、終りに酌量減輕をなすといふ順序に從ふべきものなり、而て改正刑法は、舊刑法と異なり減輕の範圍廣きが故に、一箇又は二箇以上の法律上の減輕の理由ある場合と雖も、上説の範圍に於て一囘之を減輕するのみとす。(刑六八條乃至七二條)
下士
(かし)准士官と卒との中間にある軍人を呼ぶの稱呼にして、陸軍にては步、騎、砲、工、輜重、憲兵の六科に於ける伍長、軍曹、曹長、砲兵又は工兵の一等乃至三等工長(工長には鞍工長、銃工長、木工長、鍛工長等あり)衞生部に屬する一等乃至三等看護長、經理部に於ける一等乃至三等計手及び縫工長、靴工長、軍樂部に於ける一等乃至三等の樂手、獸醫部に於ける蹄鐡工長等を包含す、海軍にては一等乃至三等兵曹(兵曹中には機關兵曹、信號兵曹等を包む)一等乃至三等の船匠手、軍樂手、鍛冶手、看護手、厨宰等を意味す。(二〇年一二月勅八三號、二九年九月勅三〇一號)
加擔
(たかん)行爲に於ける意思實行に加入して之を分擔することをいふ、犯罪に於ける加擔には教唆及び從犯の二種あり、加擔は此意味に於ては意思實行者と異なり、自ら結果を惹起し又は防止せざるに非らずして、他人が結果を惹起し又は之が防止せざることに關與するの謂也、加擔の一なる教唆は、故意に他人をして犯罪行爲を實行せしむべく決意せしむるを謂ふ、卽ち勸告其他懇諭、嘆願又は威權の亂用等の行爲に依りて、他人に犯罪の決意をなさしむる行爲也、故に教唆は犯罪の造意を以て完成す但し犯罪の造意は教唆者に依て故意になされざるべからず、次に加擔の一なる從犯は他人の犯罪を故意にて幇助することを謂ふ、幇助は必らずしも積極的行爲に依ることを要せず、例へば金庫の番人が財物を竊盜する者あることを豫知し、金庫に錠を施さゞるが如き消極的行爲に依りても之を爲すことを得、加擔は其教唆なると從犯たるとを問はず、過失に基く他人の行爲に對しては之なしと解するを通説とす、又故意ある他人の行爲に對する過失の加擔は、之を加擔となさゞる也、而て加擔は主たる行爲が罰せらるゝ場合に限り之を處罰さるべし。(教唆及び從犯の部參照)
賢所
(かしこどころ)天皇の神事大權は、我が憲法に於てこれが明文を見ずと雖も、事實に於いてこれを皇祖皇宗より繼承し給へり、天皇は常に親からこの大權を行ひ、國家及び皇室の大事は、これを太神官及び皇祖皇宗の神靈に奉告するを例とす、之が爲めに設けられたる特別の機關あり、一を伊勢神宮司廳とし、一を宮中の賢所と爲す、賢所は明治四年九月十四日の勅に因り、これを宮廷に般け、天皇神器と、皇祖皇宗及び皇考の聖靈を奉安し、親ら奉齋して政治の基本とし給へるなり、使節の命を奉じて海外に赴くとき、又は命を果たして歸れるときは、必ず賢所參拜の榮を賜はる、特に歳末には百僚有司の主もなるものを召し給ひ、賢所に於いて大祓の式典を行ふ、賢所奉齋のことは、決して宮中の私事にあらざるは論を俟たざる所、國家の公事たるや明かなり、其詔に曰く、朕恭しく惟みるに、神器は天祖威靈の憑る所、歷世聖皇の奉じて以て天職を治め給ふ所のものなり、今や朕不逮を以て復古の運に際し、恭しく鴻緖を受く、新たに神殿を造り、神器と列聖皇靈とをこゝに奉安し、以て萬機の政を視むと欲す、爾群卿百僚、其れ斯旨を體せよ。(宮内省官制の部參照)
加重罪
(かちよふざい)或意味に於ける結果犯と同義にして、卽ち其結果に對する犯意若くは過失を要せず、單に現實に生じたる結果に對して責任を加重する罪をいふ、例へば傷害致死、強姦致死の如き此例なり、此種の犯罪は其結果に對して過失をも要せずとなすを通説とす、此種の罪は法律が其結果を要件とする罪の一種にして、只其結果の大小如何に依りて其刑を異にするのみ、之を例解せんに、人あり他人を毆打して其他人の身體を傷害したりとせんに、今若し其傷害が人の死を惹起せざりし場合は單純の傷害罪にして、又毆打其他の暴行を加ふるも、之を傷害せざりし場合は暴行罪に過ぎず、然れども一步進みて、其毆打の結果人の死を惹起したる場合は、以上の二場合よりも重く處罰する也、此重く處罰する場合の罪を講學上加重罪といふ、加重罪の重なる場合を擧ぐれば、火を放て自己の所有に屬する物を燒燬するに當り、因て他人の所有物に延燒せしめたる罪、往來妨害又は交通機關を損壞し往來の危險を生ぜしむるに因て人を死傷に致したる罪、水道に依る飮科の淨水其他の飮料の淨水に健康危害品を混入するに因て人を死傷する罪、強姦又は幼者姦淫の罪を侵し因て人を死傷に致したる罪、公務員暴行凌虐の行爲を爲すに因て人を死傷に致したる罪、身體傷害に因り人を死に致したる罪、婦女の囑託又は承諾に依る墮胎行爲に因り婦女を死傷せしめたる罪、囑託又は承諾に依らざる墮胎罪を犯し依て婦女を死傷に致したる罪、老幼其他扶助を要すべき者を遺棄するに依て人を死傷に致したる罪、不法に人を逮捕監禁するに因て人を死傷に致したる罪、強盜婦女を強姦し因て婦女を死に致したる罪等是れなり。(刑一一一條、一一八條二項、一二四條二項、一二六條三項、一四五條、一八一條、一九六條、二〇五條一項、二一三條後段、二一六條、二一九條、二二一條、二四一條)
合衆國
(がつしゆうこく)國内法上の國家を數多結合して、國際法上唯一の國家を爲したるを合衆國といふ、從て合衆國を組成せる各國家は、外國に對しては何等の權利を有することなく、單に國内法上に於て或範圍内の獨立の權力を有するのみ、例へば北米合衆國の如き、各州(茲に州といふは「ステート」の譯にして、或は國とも譯す)其法律を異にし、外國人に對する待遇の如き必らずしも同一にあらざれども、對外主權は合衆國なる單獨國家之を行使し、各州には條約締結權あることなし、他に合衆國の例なきにあらざれども、北米合衆國が主なるものなれば、邦人合衆國といへば必らず北米合衆國と解するも是れ誤れりとす。(聯邦の部參照)
牙保
(がほ)汎く他人に對する處分行爲に加效することをいふ、多くの場合に於て、其處分行爲たるや有償なるを要する也、例へば贓物の賣買、質入又は交換の周施を爲すが如き是れ也、但し此場合に於て、牙保は引渡を要すとなすを通説とす、換言すれば、牙保は處分行爲たる賣買又は擔保權の設定等の媒介行爲を意味するものと知るべし、尚一例を擧ぐれば、富籖賣買の牙保とて、俗に運送屋と稱する者が、富籖購買者と富籖興行者との間に周旋媒介するが如き是れ也。(刑二六五條二項、一五年布告二五號參照)
監獄法
(かんごくはふ)監獄の種類、收監、獄内の拘禁、戒護、作業、教育、接見、賞罰、其他釋放、收監人の死亡等に關して規定せられたる法律をいふ、以下其内容を分説すれば、□一監獄の種類、監獄は之を別ちて、懲役監、禁錮監、拘留場及拘置監の四とす、懲役監は懲役に處せられたる者を拘禁する所にして、禁錮監は禁錮に處せられたる者を拘禁する所とす、拘留場は拘留に處せられたる者を拘禁するを原則とし、警察官署に附屬する拘留場は、懲役又は禁錮に處せられたる者を一个月以内拘禁することを得、次に拘置監は、刑事被告人及び死刑囚を拘禁する所にして、尤も拘置監は懲役又は禁錮若くは拘留に處せられたる者を一時拘禁し置くとを得、凡そ監獄は男監及び女監とを分隔するを原則とし、又二个月以上の懲役に處せられたる十八歳未滿の者は、特に分界を設けて拘禁するもの也、□二收監、新に入監する者あるときは、令狀又は判決書及び執行指揮書其他適法の文書を査閲して後、之を入監せしむべきものにして、新に入監する者婦女にして、滿一歳未滿の其子供を携帶せんと請ふときは、必要と認むる場合に限り之を許すもの也、監獄に於て分娩したる子に就ても亦此例に依る、□三拘禁、在監者は心身の狀況に因り不適當と認めざる限りは、之を獨居拘禁に付するを得るものにして、之を雜居拘禁に付する場合に於ても、在監者の罪質、性格、犯數、年齡等を斟酌して其監房を別異にすべく、勞役に就業せしむる場合に於ても亦同じ、刑事被告人に就ては、其被告事件の相關連するものは互に其監房を別異とすべく、監房外に於ても其交通を遮斷するものとす、□四戒護、在監者逃走又は暴行行くば自殺の虞あるとき、及び監外に在るときは戒具を使用することを得べし、而し監獄官吏は法令に依り携帶する劍又は銃を、法定の危險ある場合にあらざれば使用することを得ざるものにして、又監獄官吏は、天災事變に際し必要と認むるときは、在監者を應急の用務に就かしむることを得べく、天災事變の爲め獄内に避難の手段なしと認むるときは、之を他所に護送し又は解放することを得、被解放者は二十四時間内に監獄又は警察署に出頭すべく、然らざれば逃走の罪を以て處斷せらるべき也、□五作業、作業は原則として懲役囚に課すべきものにして、刑事被告人、禁錮囚又は拘留囚の作業に就かんことを請ふときは、之を許すことを得べきもの也、作業は衛生、經濟及び在監者の刑期、健康、技能、職業、將來の生計等を斟酌して之を課すべきものとす、作業に依る收益は原則として國庫の所得となすべきも、作業者の行狀、作業の成績に因り、之に作業賞與金を給することを得、此賞與金其他の手當は、釋放の際本人に給す、作業は大祭祝日及び父母の訃に逢ひたるときは之を免ずるものにして、司法大臣は臨時就業を免ずることを得べし、□六教育、受刑者十八歳未滿なるときは教育を施すべきものにして、其他の受刑者に對して必要に應じ教育を施し、其他一般に教誨を爲すものとす、而て在監者文書圖画の閲讀を請ふときは之を許す、□七接見、在監者に接見を請ふ者あるときは之を許し、受刑者と雖も親族なる場合及び特に必要なりと認むる場合には接見を許す、信書の發受に就いても亦同じ、□八賞罰、受刑者改悛の狀あるときは賞遇することを得べし、賞遇とは賞譽を與へ又は優遇することをいふ、在監者紀律に違ひたるときは懲罰に附すべきもの也、懲罰には叱責、賞遇の停廢、減食、屛禁等にして、屛禁とは受罰者を罰室内に屛居せしめ、屛禁の内重屛禁は其罰室を暗くし臥具の使用を禁ず、□九釋放、在監者の釋放は恩赦、職權ある者の命令(例へば假出獄又は保釋の命令の如き)又は刑期の終了に因り、關係書類を査閲して其手續を爲すべきものなり、此場合に恩赦又は假出獄等に依る者は、其裁可狀又は許可書の到達後二十四時間内に、其他の命令に依る場合(例へば保釋又は責付)には、命令書到着後十時間内に、刑期滿了の場合には、其終了の翌日午後六時までに之を釋放するもの也、□十死亡、死刑執行は獄内の刑場に於て之を爲し、絞首後死相を檢し五分間を經て絞繩を解く、其他在監者死亡したるときは之を假葬すべきものにして、死亡者の親族故舊にして、遺骸を乞ふときは、假葬後二年内之を合葬せざるを以て、其場合は何時にても之を交付す、以上本法の大要とす。(四一年三月法二一號)
姦通罪
(かんつうざい)有夫の婦姦通したる罪を云ふ、これを分説すれば左の如し、□一破婚の所爲あること、本罪の直接の被害者は、單に配偶者なりと雖も、他の一方に於ては善良なる風俗を害するのみならず、社會道義の根本を破るものにして、恕すべからざる犯罪也、蓋し社會秩序の根源たる婚姻より生ずる夫婦といふ親族關係を破ぶる罪にして、本罪の行爲は、有夫の婦、夫婦外の第三者と交接することを意味し、法文に姦通と云ひ、又は相姦するとあるは、何れも破婚の所爲を意味するものと解すべきなり、而して破婚は交接の所爲を必要とするが故に、假令夫婦の一方と第三者との間に、交接以外の猥褻の所爲あるも本罪を構成せず、□二有夫の婦と夫婦外の第三者に依て犯されたることを要す、有夫の婦とは、既に婚姻を爲せるものにして、現に夫を有する婦女を指す、法律上有效に成立したる夫婦關係の存在することを要す、從て最初より無效なる婚姻は、法律上有效なる夫婦關係を發生せざるが故に、此場合には破婚の問題は起らざるなり、之に反し一且有效に成立せし婚姻たる以上は、縱令法律上取消し得べきものなりと雖も、其取消の判決確定する迄は、其婚姻有效なるが故に、本罪を構成するに於て缺くる所なし、婚姻の形式は民法の規定に依りて、戸籍吏又は外國に駐在する公使、若しくは領事に屆出を爲すことを必要とするが故に、假令隣里郷黨の認めて以て、事實上夫婦と見做す可き者と雖も、若し婚姻の屆出を缺きたるときは、其婚姻は法律上無效にして、刑法に於ても亦夫婦と云ふことを得ざるなり、本罪は所謂必要共犯の一種にして、主體の一方は、前記の如く有夫の婦なることを要す、姦通とは不正の交接なれば、乃ち本罪主體の一方は夫以外の第三者とす、本罪に就いても故意を要するが故に、有夫の婦なることを知らざる者は罰するを得ず、一方がこれを知り、他の一方が知らざるときは、知りたる者のみを處罰するに妨げなし、男子が妻以外の女と通じたる場合は、我國法に於ては處罰せず、外國の立法例は此點に關し、區々として一致せず、本罪は本夫の告訴を待て之を論ずるものなるが、本夫に於て姦通を縱容したるときは告訴の效なし、本罪に對する刑は二年以下の懲役とす。(刑一八三條)
- 英
- Guilty of adultery
- 独
- Ehe-bruchsverbrechen
- 仏
- Crime d'adultère
樺太鑛業令
(からふとくわうぎやふれい)樺太に於ける鑛業に關し規定せられたる命令にして、これを槪説すれば、鑛業は内務大臣の指定したる地域に限り、出願に依り之を許可するものにして、鑛業を爲さんとする者は樺太廳長官に出願せざるべからず、樺太廳長官は内務大臣の認可を得、鑛業法所定の地域外に於て、鑛種及び鑛區を指定し、許可の際納付すべき金額を競爭入札に付し、落札者にこれを許可するものとす、競爭入札に於ては、樺太廳長官の豫定する金額以上の最高額の入札を爲す者を落札者とす、但し同額の入札者二人以上あるときは、抽籖に依り落札者を定む、出願地他人の鑛區と重複する場合に於て、同種の鑛物なるときは、其重複する部分に就いては之を許可せず、尤も鑛床の位置形狀に依り、鄰接する他人の鑛區に掘進するの必要あるときは、鄰接鑛業者の承諾を經て、鑛區の訂正を出願するの場合は此限りに在らず、尚出願地他人の鑛業に妨害ありと認めたるときも、これを許可せざるものにして、又公益を害するものと認められたるとき、及び鑛業の價値なしと認められたるときは、これを許可せず、併し前記出願地他人の鑛區と重複する場合に於ても、異種の鑛物なるときは、樺太廳長官は之を鑛業權者へ通知するものにして、鑛業權者は前記通知書到達の日より六十日以内に、自ら其鑛業を出願することを得る也、鑛業出願地又は鑛區の訂正、增減及び改正の出願等總べて鑛業に關する出願又は申請を爲す者は、樺太廳長官の定むる所に從ひ手數料を納むべきものとす、鑛業出願人は名義の變更及び出願地の增減等を出願することを得べく、出願地の位置、形狀が、鑛床等の位置狀形と相違し、鑛利を損ずるものあるときは、樺太廳長官は其出願の訂正を命ずべし、鑛業權者は鑛區の合併又は分割を樺太廳長官に出願することを得べく、尚鑛區の一部を分割して之を他の鑛區に合併せしめんとするときも、同じく出願することを得べきものとす、而て抵當權の設定ある場合に於て、前記の出願を爲さんとするときは、抵當權者の承諾及び抵當權の順位に關する協定を經べきものとす、鑛業に關する願書又は申請書等は、總べて法定の書式に該當せざるべからず、若し違反したる場合に於ては、之を却下すべし、鑛業に關する書面、又は圖面に不備ありと認めたるときは、樺太廳長官は期日を指定して、修正又は補充を命ずることを得べく、鑛業者許可の條件に違反したるときも、樺太廳長官は鑛業の許可を取消すことを得るものとす、終りに樺太に於て鑛業を許可すべき地域を示さんに、該區域は當分の「コルサコフ」「ドブキー」間幹線道路を以て境界とし、其以東全部と定む(四〇年六月勅二三四號、四〇年六月内務省令一一號)
樺太漁業令
(からふとぎよぎようれい)樺太に於ける漁業に關して規定せられたる命令を云ふ、以下其内容を分説すれば、□一本令は鮭、鱒及び鰊の漁業に適用し、其以外の漁業に關しては、樺太廳長官の定むる所に依るものとす、漁業は各漁場内に、年限を定めて每年納村すべき漁業料を競爭入札に付し、落札者に之を免許するものにして、競爭入札に於ては、樺太廳長官の豫定する金額以上の最高額の入札を爲す者を落札者とし、同額の入札者二人以上あるときは、抽籖に依り落札者を定むべし、樺太廳長官は競爭入札加入者の資格を定むることを得るものとす、漁業料の納付に關する規定は、樺太廳長官の定むる所に從ふものにして、既納の漁業料は如何なる場合と雖もこれを還付せず、漁業權者にして漁業料を定期内に納付せず、又は免許の條件に違背したるときは、樺太廳長官は漁業の免許を停止し、又は取消すことを得るもの也、本令施行の際、現に漁業の特許證を有するものは、特許證の定むる所に從ひ、本令の免許を受けたるものと看做す、如上の漁業者にして、特許證に定めたる期間の經過後、繼續して漁業を爲さんとする者は、樺太廳長官の定めたる期間内に、漁業の免許を得べく、此場合に於ては、樺太廳長官は當該漁場の漁業に付き、競爭入札に依らずして漁業を定め、免許することを得るものとす、□二漁業權者は行政官廳の許可を得て、無料にて薪炭用、住宅其他漁業に要する建築及び工作用竝漁船若くば漁業用の爲め、附近の國有山林を伐採することを得べく、又無料にて住宅其他建築及び工作用敷地、漁船漁具置場、網乾場、海産乾場、竝蔬菜園に必要なる國有海濵地を使用することを得べし、上記の規定は、樺太廳長官の定むる所に依り、鮭、鱒、鰊以外の漁業を爲す者にも適用することを得べく、但し料金を納付せしむることを要す、□三鮭、鱒及び鰊等の漁業に使用すべき漁具は建綱とす、但し鮭、鱒等の漁業に限り地曳綱を使用することを得べきも、如上地曳綱を使用する場合には、建綱を使用することを得ず、各漁場に使用する建網は一統に限るも、漁場の狀況に依りては、鰊漁業に限り、樺太廳長官は別に定むる所に依り、副綱として建網一統の使用を許可することを得べし、此場合に於ては副綱料を納付すべしと定む、又前記の地曳綱は各漁場一統に限るものとす、(明治四〇年三月勅第九六號)
樺太廳官制
(からふとちやうくわんせい)本官制は明治四〇年三月勅令第三三號を以て公布せられ、同時に勅令第三四號樺太官廳醫院官制同三五號樺太廳郵便局官制、同三六號樺太廳職員官等俸給令、同三七號樺太在勤文官加俸、同三八號樺太廳職員特別任用令を公布せられしを以て、以上六令を綜合して其内容を略説せん、□一職員、あ長官、勅任一二等(一級四千五百圓、二級四千圓)い事務官、專任四人、内一人は勅任と爲すを得、二等(一級三千五百圓、二級三千圓)奏任、三等乃至七等一級二千五百圓乃至八級千圓、う警視、專任一人(奏任事務官に同じ)え支廳長、專任三人奏任、四等乃至八等、一級千八百圓乃至八級七百圓、お技師、專任六人、か通譯官、專任一人奏任、五等乃至八等、一級千四百圓乃至七級六百圓、さ屬、警部、技手、通譯、通じて百十六人、各定員は長官之を定む(判任)□二職務及任用、あ長官は樺太守備隊司令官たる陸軍將官を以て之を充つることを得、長官は内務大臣の指揮を承け、法律命令を執行し部内の行政事務を管理す、但し郵便電信及電話に關する事務に付きては遞信大臣、銀行及關税に關する事務に付きては大藏大臣の監督を承け、其職權又は特別の委任に依り廳令を發し、之に禁錮二十五日以下又は罰金二十四圓以内の罰則を附することを得、非常の場合に臨み兵力を要し、又は警護の爲兵備を要するときは、樺太守備隊司令官に移牒し出兵を請ふことを得、所部の官吏を指揮監督し、高等官の功過は内務大臣に具狀し、判任官以下の進退懲戒は之を行ひ所轄官廳の處分又は命令にして成規に違ひ、公益を害し又は權限を犯すものありと認むる時は、其の處分又は命令を取消し、又は停止すること得、長官事故あるときは、第一部長たる事務官其の職務を代理す、長官及第一部長たる事務官共に事故あるときは、内務大臣に於て他の事務官の一人をして長官の職務を代理せしむ、長官は廳の官吏をして其の事務の一部を臨時代理せしむることを得、長官の職權に屬する事務の一部を支廳長に一任することを得、樺太廳に長官官房及第一部第二部を置き、事務を分掌せしむること左の如し、(甲)長官官房、一、官吏の進退及身分に關する事項、二、交書の往復及記錄編纂に關する事項、三、官印廳印の管守に關する事項、四、褒賞に關する事項、五、會計に關する事項、六、外國人に關する事項、(乙)第一部、一、教育に關する事項、二、商工業水産漁獵に關する事項、三、警察及衛生に關する事項、四、氣象測候に關する事項、五、他部の主掌に屬せざる事項、(丙)第二部、一、拓殖に關する事項、二、士木に關する事項、三、鑛山森林農業牧畜に關する事項是なり、長官は内務大臣の認可を經て前項事務の分配を變更することを得、い部長は事務官を以て之に充つ、長官の命を承け部下の官吏を指揮監督し、所部の事務を掌理す、部長事故あるときは、長官に於て廳官吏の一人をして、其の事務を代理せしむ、第一部長たる事務官は長官を佐け廳務を整理し、官房及各部の事務を監督す、部長に充てられざる事務官は長官の命を承け事務を分掌す、長官は事務官の一人をして審議立案を掌らしむることを得、う支廳長は長官の指揮監督を承け、法律命令を部内に執行し、部内の行政事務を掌理し、部下の官吏を指揮監督し、法律命令に依り又は長官より委任せられたる事件に付き、支廳令を發する事を得、支廳長事故あるときは、其廳勤務の上席屬又は警部其の職務を代理す、支廳長は其の廳の官吏をして其の事務の一部を臨時代理せしむることを得、え警視は第一部に屬し、上官の指揮を承け其部の事務を分掌す、三支廳及び支廳出張所、樺太支廳の位置、名稱及管轄區域は内務大臣の認可を受け長官之を定む、長官必要と認むるときは、支廳の下に支廳出張所を置くことを得、其位置、名稱及び管轄區域は長官之を定む、支廳出張所長は屬又は警部を以て之に充つ、樺太廳に巡査を置く、判任官の待遇とす、巡査に關する規定は別に定むる所に依る、以上其大要也。
下院
(かゐん)下院とは上院に對し衆議院をいふ、衆議院は一般臣民の代表的機關にして、萬機を公論に決するの主意に基くもの也、故に汎く一般臣民をして其議員を公選せしむるの法を採る、上院卽ち貴族院と相對して帝國議會を組織し、統治主體の意思成立に有效なる條件として、參與する憲法上の機關とす、而してこれを構成するには衆議院議員を以てし、議員は國民全體の利益を眼中に置きて、國政を審議すべきものとす、此事は往時の憲法に於て往々明言せられたり、今はこれが明文なしと雖も、確定せる國法の原則として公認せらる、一千七百九十一年に於ける佛蘭西の憲法に曰く、各州より選派する代議士は、一州の代表者に非ずして、全國民の代表者たり、故に州より代議士に委托を付することを得ず、又瓦敦堡の憲法に依れば、代議士は全國の代表者にして、一選擧區の代議士と見做さず、尚ほ伊太利の憲法に依て見れば、代議士は全國民の代議士にして、之を選派したる一州の代表者に非ず、故に選擧人は代議士に對し、一の委囑條件をも付することを得ず、以上は衆議院議員の公選に關する原則なり、而して多くの國法學者は、これのみを以て原則とし、其上に進むることなかりしが、最近時に至りて、二三の學者は之に次ぐ第二の原則あるを認め、衆議院を以て、一般臣民の利益を代表すると同時に、各部臣民の特殊の利益を代表するものと爲すに至れり、これを要するに、衆議院は國民各部の特殊利益を代表するものを一堂に會して、議論を戰はし、技倆を競はしめ、其歸決する所を以て、立憲君主政體に在ては、君主統治權行使の參考に供へ、民主政體に在ては、政府に方嚮を授けて、奉行せしむるの設營なり。(衆議院、議院の部參照)
救育所
(きういくじよ)孤兒院、育兒院の如き、棄兒又は迷兒等を救濟して養育する所をいふ、救育所には官設のものあり、私設のものあり、何れも迷兒又は棄兒、遺兒其他親權者なき者等を救濟養育するの目的を以て設立さる、救育は國家の救恤行政に於て、充分に其設備を爲し、養育の要ある幼者にして扶養者なきものを救濟すべきなれども、一方に於て此等公共事業は公共團體又は慈善家の援助を要すべきものなれどば、之を一私人又は公共團體の施設に一任するを妨げず、是れ私設を認め且つ奬勵する所以也、救育所ば以上の如く扶養者なき幼者を救濟養育する所なれば、救育所に在る幼者にして未成年者なるときは、此等の者に對する後見機關なかるべからず、法律は公設の救育所に於ては其所長後見人の職務を行ふべぎものと定め、私設の救育所に於ては救育所々在地の地方長官後見人たるべき者を指定すべしと定めたり、而て其後見の方法に關し、民法に依り親族會の同意を要すべきものに就いては、公設のものは之を設立せる公共團體、其他のものは救育所々在地の市町村長の許可を以て之に代ふべく、後見監督の任務に就いても以上に準じ市町村長等其職務を執るべきものとす。(三三年三月法五一號、三三年四月勅一四四號參照)
救援
(きうえん)洽ねく救援といへば、之を救ひ援くる總ての場合を指す、今海難に就いて救護の意味を述べんに、かの救助に對し救援といふときは、獨逸語の「ヒユルフスライスツング」に該當し、海難に際し船舶又は積が、未だ船長以下の乘組員の手を離れず、乘組員に依りて其危難を免れしめんと盡力しつゝある間に、第三者來て之に應援し其危難より救ひたる場合をいふ、商法に於ては救援と救助とを併用し、再者を全く同一に使用する如きも、余は上述の如きものと信ず。(船員法二一條、商法五六八、六〇六條及び救助の部參照)
給助
(きうじよ)給助は法定の原因ある場合に、一定の職に在る者に給與せらるゝ金錢をいふ、例へば巡査、看守、陸軍看守、海軍看守、海軍警査、皇宮警手、其他雇員及び或種の官吏に給與せらる、給助は之を別ちて凡そ左の五とす、□一退職給助、法定期間職務に在りたる者にして、其退職に依り恩給を受けざる下級官吏又は雇員に給與せられるゝものをいひ、巡査に就いて之を云へば、勤續滿五年以上にして退職する者には一時に之を給し、滿十年以上にして退職する者には終身之を給す、□二傷痍給助、職務に關し負傷したる者に給する給助をいひ、傷痍及び前述の官吏雇員の種類に依り、或は一時に之を給し又は終身之を給與す、□三死亡給助、職務の爲め重傷死に至れる者、負傷後其傷痍に基き死亡したる者、其他職務上の行動より傳染病に罹り死亡する者ある場合に給與せらるゝものにして、此種の給助は之を遺族に交付す、□四療治料、職務の爲め負傷し、又は職務上の行動より傳染病に罹りたるとき、其者に給與せらるるもの也、巡査又は看守に下給せらるゝ療治料は一日二圓以内なるを原則とし、治療實費之に超ゆるときは適當と認むべき額を精算して追給するもの也、□五祭祀料、奉職中死亡せる場合に之を給與せらる、但し其額は奉職の年限に依りて差あるを普通とす、今巡査及び看守に關するものを示さんに、弔祭料は死亡當時に於ける月俸一箇月分とし、勤續一年以上九年に至るまでは、一年每に死亡當時の月俸額の三分二を增加す、但し職務の爲め傷痍を受け、又は職務に依り健康を害し爲めに疾病に係り死亡したる者には、更に死亡當時に於ける月俸六箇月分を給す。(三四年七月勅一四九號、一五年七月太政官四一號達、二七年六月勅八一號、二六年六月宮内省達乙二號、三二年五月勅二一六號、四〇年五月勅一八六號)
救助
(きうじよ)廣く人又は物を危難より救ひて之を扶助し、又は困難若しくは貧困より救濟扶助することを含む、罹災救助基金の如き用例は救濟扶助の義にして、海法に於て、彼の救援に對する救助は人又は物を危難より救ふの用例たり、但し此場合の救助は特殊の意義あり、元來海難の救助なる語は獨逸語の「ベルグング」に該當し、船舶又は積荷の全部又は一部が既に船長以下乘組員の手を離れ、其支配の範園外に在るに當り、第三者之を救ひ安全の地に致したる場合をいひ、一般に救助なる語よりも狹し。(獨逸商法七四〇條以下、三二年三月法七七號、商六四九條、及び救援の部參照)
宮中顧問官
(きうちうこもんくわん)皇室の典範儀式に係る事件に就き諮詢に奉對し意見を具上する機關にして、内大臣と同じく天皇に直屬す、宮中顧問官は功勞ある者を以て之に任じ、故典に就き儀式に關する一切の範例を取調べしめ、陛下の諮詢に應じて之に奉對し、又は自ら進みて意見を具上せしむる者なり、宮中顧問官は定員を十五名以内とす、其官等は別ちて之を一等及び二等となす。(一八年一二月大政官六八號達參照)
毀棄罪
(ききざい)文書、建造物其他の物件を毀棄する罪をいふ、以下本罪の構成要件を略述すれば、□一本罪の物體は、公務所の用に供する文書、權利義務に關する他人の文書、他人の建造物又は艦船、其他の物件なること、茲に文書といふは思想の表彰たる文字に依て記されたる物體をいひ、公務所の用に供せざる以外の文書たるときは、權利義務に關することを要す、此文書に關する場合は卽ち文書毀棄罪といふ、次に建造物といふは、家屋其他陸上に於ける工作物にして、必らずしも人の住居に供するものなることを要せず、艦船とは水上を航行するの用に供する工作物にして、陸上の工作物たる建造物に對するもの也、艦船は水中を航行する潜水艇の如きを包含するや勿論とす、其他の物件とは、一私人に屬する權務に關せざる文書、及び建造物又は艦船に屬せざる一切の有體物を包含す、此種の物の毀棄は所謂物件損傷罪とす、□二本罪の行爲は毀棄又は損壞又は傷害なること、毀棄は文書に關する罪の行爲なり、いふ所の毀棄は毀損又は破棄をいひ、文書の文字の塗抹及び汚損を包含するものと解す、但し塗抹又は汚損が文書の全部又は一部の效用を失はしむる場合に限る、次に物件損傷罪の行爲は損壞又は傷害也、損壞とは損消又は破壞をいひ、傷害とは其他物の效用の全部又は一部を失はしむる行爲を總稱す、終りに、本罪に對する處分は目的物の如何に依て異なる、公務所の用に供する文書なる時は三月以上七年以下の懲役に、權利義務に關する他人の文書なるときは五年以下の懲役に、他人の建造物又は艦船なるときも五年以下の懲役に、其他の物件に係るときは三年以下の懲役又は五百圓以下の罰金又は科料に處す、本罪に就いては、自己の物と雖も差押を受け、物權を負擔し又は賃貸したる物なるときは他人の物と同じく處斷さるゝもの也。(刑二五八條乃至二六二條)
危險罪
(きけんざい)法益に對し實害を與ふる危險を生せしむるの罪にして、卽ち法益に對する危險を發生ぜしむる行犯と、或危險の發生を防止する義務あるに拘らず之を防止せざる不作爲犯とを包含す、故に危險罪は、法益に對し現實に侵害を與ふることを要せず、特定の法益に對して危險を發生せしむるのみを罪の既遂となす犯罪也、危險罪は更に之を別ちて一般危險罪、具體的危險罪の二とす、一般危險罪とは危險が現實に發生したるや否に就いて裁判官は審按することを得ず、苟くも法律に定めたる行爲ありたるときは、常に此危險あるものと看做され、之が反證を擧ぐることを許されざる危險罪をいふ、例へば人の飮料に供すス淨水に毒物其他人の健康を害すべき物を混入したる罪の如し、之に反して具體的危險罪は危險が現實に發生したるや否やに就いて裁判官の審按を要するものをいひ、現實に危險が發生したりとの心證を得たる場合に限り處罰を爲し得べき危險罪也、例へば自己の物にして他人の住居せず又は人の現在せざる物件に放火したる罪の如し。(刑一〇九條二項、一一〇條、一一六條二項、一一七條、一二〇條參照)
起算日
(きさんび)期間計算の起點となれる日をいふ、今一箇月又は一箇年なる期間を定めたりとせば、某年某月某日より之を起算し、曆に從て其應當日の前日は滿期日なり、此滿期日を知るには其基準となるべき日時なかるべからず、此日は卽ち起算日なり、民法は日週月又は年を以て期間を定めたるときは初日を算入せざるを原則とす、卽ち指定せられたる日の次日は起算日となるもの也、又民法に依れば、時效の效力は其起算日に遡るものにして、卽ち起算日より其權利を有し又は消滅したるものと看做さる也。(民一四四、一四三條二項)
記章
(きしよう)或特定の事件を表彰する爲めに製定せる標章をいふ、例へば從軍記章、帝國憲法發布記念章、大婚二十五年祝典之章、赤十字社々員章の如き是れ也、以上の記章は勳章と同じく之を胸間に佩用することを得るものにして、勳章又は褒章及び以上の記章の外は公然之を佩用するを禁ぜらるゝもの也、之に違反する者は特定の科料又は拘留に處せらるべし、偖て茲に從軍記章といふは、明治十年臺灣征討の從軍記章、二十七八年戰役の從軍記章、三十三年北清事變の從軍記章及び三十七八年日露戰役の從軍記章の如く、外國に對し又は外國の領土に於て爲したる帝國の戰鬪に從事したることを彰證する標章なり、憲法發布記念の章は金銀の兩種ありて、憲法發布に關りたる親王以下の諸員(判任官以下を除く)に賜りたるものにして、章は圓形に徑九分餘、金又は銀にて製し、環及び綬にて佩用す、綬は旭日桐花章の授と同じ、大婚二十五年祝典の章は同じく金銀二種ありて、大婚二十五年祝典の當日召に依り參内したる者に頒賜したるもの也、章は圓形にして徑九分餘、環及び綬にて佩用す、綬は紅色中央に黃線一條を交ふ。(二八年八月勅一八號、二二年八月勅一〇三號、二七年二月勅二三號、三二年六月勅三〇九號)
僞證罪
(ぎしようざい)法律に依り宣誓したる證人、鑑定人又は通事が、虛僞の陳述、鑑定若しくば通譯をなしたる罪をいふ、元來本罪は、證人鑑定人又は通事が眞實を述ぶべく宣誓したるに拘らず、虛僞の鑑定、證言又は通譯をなしたることを罰するものにして、蓋し法律は之に依て其眞正を維持し、以上の行爲を防遏して裁判の正碓を期するにある也、以下本罪の構成要件を分説すれば、□一法律に依りて宣誓を爲したること、宣誓とは其陳述鑑定若くば通譯が眞正なることを確保するの方法にして、判斷者は此宣誓に因り其陳述又は鑑定等に信用を置き、依て以て事實の裁斷の基礎となさんとするに在り、故に本罪は宣誓を以て虛僞の證言又は鑑定等を處罰するの要件となせしなり、或國の刑法に於ては此要件を必要とせざるものあり、例へば墺國刑法の如し、次に宣誓は法律に依り特定の事件に就いて、證人又は鑑定人若くば通事として其陳述を確保する爲めに之を爲したる場合に限り本罪を構成する也、故に例へば軍人軍屬が讀法の條々を守ることを宜誓したるが如き場合は、此れに違背することあるも本罪にあらず、然れども司法裁判所、行政裁判所、特許局の審判等に關して法律に基き宣誓したる以上は、虛僞の陳述等をなすときは常に本罪たり、茲に一問あり、法律が宣誓無能力者となしたる者が(例へば宣誓の何ものなるかを解せざる者、又は其事件の關係者なるが故に、人情宣誓を爲すも虛僞を述ぶる恐ありと考えて、宣誓を禁じたる者の如し)其資格を詐はりて宣誓をなしたるとき、此くの如き者が僞證を爲したる場合も尚本罪を構成するや、或説に依れば、此の如き者は元來法律が宣誓を許さゞる者なるを以て、詐はりて宣誓をなすも尚本罪を構成せずと、他の説に依れば、宣誓無能力者を別ちて二となし、宣誓の何ものたるかを解せざる者が詐りて宣誓を爲す場合と、事件の關係上眞實の陳述を期待することを得ずとの理由により宣誓を命ぜられざる者が、詐りて宣誓を爲したる場合とに依り論決を異にす、前者の場合は詐りて宣誓を爲すも、宣誓の何物たるかを了解するに必要なる精神上の發達を欠くが故に本罪を構成すべからずと雖、後者は法律が宣誓を命ずることを得ずと爲したるに止まり、本人が其無資格を蔽ふて宜誓をなし、然も僞證したるが如き場合は本罪を構成するに於て欠くる所なしとす、又或説によれば、詐りて宣誓を爲す如き場合は何れも本罪を構成す、何となれば智識の發達不充分と見做されて宣誓無能九者とせられたる者と雖も、詐りて宣誓をなしが如きは此智識充分あるものと認め得べければ也、從て詐はりて宣誓を爲したる者と雖も、故意に僞證を爲したるときは總て本罪を構成すべしと、從前に於ては第二の説を以て通説となしたるも、近來は最後の説採用せらるゝ傾あり。□二虛僞の陳述又は鑑定若くは通譯をなしたること、虛僞の陳述とは證人が或事件に關して自己の實驗に反する陳述を爲すことをいふ、良心に從ひ何事をも默秘せず又附加せざる時は眞實なる陳述にして、良心に反して事實を默秘し又は附加するときは虛僞の陳述たり、而して虛僞の陳述たるや否やに關しては尚左の点に注意すべし、(1)事實全部の默秘は虛僞の陳述にあらず、是れ訊問に答へざるものなれは也、(2)饒舌餘事に亘るも訊問の事項に影響なきものは虛僞の陳述にあらず、但し必らずしも證人召喚の主因となりたる豫定の訊問事項に關することを要せず、(3)陳述の眞僞は一言一句又は一問一答に就いて之を決定すべきに非らず、陳述の始より訊問の終結に至る迄全部に對して之を觀察すべき也、(4)從て一旦虛僞の陳述を爲したる後と雖も訊問終結前に之を眞實に變更したるときは本罪を構成せず、然れども豫審の訊問に於て僞證をなし、公判の訊問に於て之を取消すも尚本罪たり、虛僞の鑑定又は通譯に關しても略ぼ同じとす、□三本罪の主體は法律に依り宣誓したる證人、鑑定人又は通事なり、證人とは或事件に關して既往の經驗を陳述すべく命ぜられたる第三者を云ひ、鑑定人は現實の事項に關して觀察せる判斷を陳述すべく命ぜられたる者を云ふ、從て過去の實驗を其儘に陳述するは證人の本旨にして、過去に鑑定を爲したる者と雖も、其鑑定を過去の實驗として陳述するとを命ぜられたる者は證人なり、所謂鑑定證人は證人の一種とす、次に通事とは被告人又は對質人が聾又は啞なる場合、若くば日本語に通せざる場合に、審判者と此等の者との間に介在して、正實に一方の表示せる思想を他の一方に交通せしむべき者をいふ、從て通事は人格者相互の思想を自己の理解に依りて媒介する者なるが故に、鑑定人が其客觀事物に關する判斷を下すと稍〻其趣を異にす、然れども一方の表示したると異なる思想を他の一方に傳達する虛僞の通譯は、虛僞の鑑定が其審判を誤るの危險と同じきが故に同一の罪とせしもの也。□四本罪に對する刑は總て三月以上十年以下の懲役とす、但し虛僞の陳述又は鑑定又は通譯を爲したる者、其事件の裁判確定前又は懲戒處分前自白したるときは其刑を輕減又は免除さるるとあるべきものなり、茲に自白といふは自首を包含し、其範圍自首よりも廣く、自首の條件を備へざるも尚此特免に浴するとを得、茲に注意すべきは、舊刑法は刑事に於ては之を曲庇と陷害とに區別し、陷害の場合には反坐の刑に處したるも、新刑法は此の如き主義を採用せず、又證人が眞實の陳述を爲すときは自ら訴追せらるべき恐ある場合は、虛僞の陳述を爲す人情免れざる所、從て此場合に法律上の輕減を認むる立法例あり、我法は此の如き規定なきも酌量減輕の一理由たることを得べし。(刑一六九條乃至一七一條)
危難防衛
(きなんばうえい)緊急狀態に基く防衛をいふ、刑法第三十七條に、白己又は他人の生命、身體、自由若くは財産に對する現在の危難を避くる爲め、已むことを得ざるに出でたる行爲は、其行爲より生じたる害、其避けんとしたる害の程度を超えざる場合に限り之を罰せずとあるは是れ也、以下分説すれば、□一自己又は他人の生命、身體、自由若くは財産に對すること、正當防衛は單に自己又は他人の權利に對する事を要するのみにして、其權利の何たるを問はざるも、緊急狀態に基づく防衛行爲をなすには、必らず生命又は身體、自由若しくは財産に對する現在の危難ある場合に限る、名譽若しくは貞操に對する危難に就いては危難防衛權なき也、但し貞操の侵害は或場合(例へば強姦の如きは)は同時に身體に對する危難といふを得るが故に、第三者に對しても危難防衛を行ふことを得べし、□二現在の危難を避くる爲めなること、現在は急迫といふに同じく、現實に迫りたる危難をいふ、危難とは人より來る侵害は勿論、天變地異其他自然の出來事たる危害を意味す、但し其危害は前説の如く生命身體等法定の權利に關するものなるを要するは明也、□三已むことを得ざる行爲なること、茲に已むことを得ざるとは、防衛に必要なる程度を超えざることを意味す、換言すれば、危難を防衛するに最も適したる行爲を採りたることを要する意也とす、□四防衛行爲の内容たる侵害は、其避けんとしたる害の程度を超えざること、舊刑法は此點に就いて何等の定なかりしと雖も、改正刑法は此制限を設け、其避けんとしたる害の程度は、防衛行爲に依り他人に與へたる害の程度に比して劣らざることを要するものとなしたり、從て此程度に劣れる場合は、危難防衛にあらざるが故に罪として處罰すべきものなれども、刑法は其情狀に依り刑を減輕又は免除し得るものとなせり。(刑三七條、緊急狀態の部參照)
覊絆
(きはん)身體を覊束さるゝが如きことをいふ、卽ち行爲の自由を束縛さるゝを意味す、妻は夫の許可なくして、自己の身體に覊絆を受くべき契約を爲すことを得ざるもの也、例へば他家に年期奉公を爲すべしと約するが如し、是れ夫婦の和合竝に同居の義務を現實せしめんが爲に、法律が之を夫權の内容となしたる也、蓋し若し妻が一己の專斷にて、自己の身體に覊絆を受くべき契約を有效に締結し得べしとなさば、其同居の義務を履行すること能はざる結果、夫婦間の平和は維持し能はざれば也。(民一四條一項三號)
忌服
(きぶく)喪のことをいふを通常とすれども、或は喪に籠り居る期間を意味するとなきにあらず、古來に於ては忌服の制に武家に關するものと、京家に關するものゝ兩制ありしが、明治七年十月第百八號布告を以て京家の制は廢止せられたり、以下忌服に關し、其期間の大體を上ぐれば、□一祖父母、父方の祖父母に關しては定式として忌三十日、服百五十日、母方なるときは忌二十日、服九十日とす、□二父母、定式は忌五十日、服十三ケ月とし、嫡母なるときは忌十日、服三十日、繼父母なるときは忌十日、服九十日とす、□三夫、忌三十日、服十三ケ月を定式とす、□四妻、忌二十日、服九十日を定式とす、□五子、嫡子なるときは忌二十日、服九十日を定式とし、末子竝に娘に就いては忌十日、服三十日、養子の男に就いては忌十日、服九十日、養女なるときは忌十日、服三十日とす、□六兄弟姉妹、忌二十日、服九十日を定式とす、以上に忌といふは「イミ」の事にして、喪に籠ることをいふ、服といふは俗に「ブク」のことにして、忌の明けたる後平常の如く事務を執れども、尚死穢ありとて神事などに係らざるをいふ、卽ち忌服を併せて之を喪といふ也、喪には以上の定式の喪と然らざるものとあり、其一は聞喪也、聞喪といふは、遠國に於て死去を聞き込たる場合をいひ、此場合は之を聞込みたるとき、父母なるときは尚五十日の忌、十三个月の服を受け、其他の親族に係るときは、忌服を聞き込みたる日に於て、以上定式の忌服の殘餘日數あれば其殘日數を受け、忌の日數相立ちたるときは其日一日遠慮とす。其二は重忌服にして、例へば父の喪明けざる内に又母の喪に逢ふが如き、又は兄弟數人の喪に同時に逢ふ場合の如し、此場合は父母に就ては合算して其喪に服し、其他に就いては重き忌服のみを受く、其三は狹義に於ける變式の忌服とす。(七年一〇月一〇八號達、五年六月一七六號布告參照)
緊急狀態
(きんきゆうでふたい)他人の法益を侵害するにあらざれば、生命、身體、自由若くは財産を保護する能はざる現在の危難ある狀態をいふ、緊急狀態は人の行爲に由來することあり、自然の事實に由來することあり、同じく人の行爲に由來する場合と雖も、人の適法なる行爲に基くことあり、又は違法なる行爲に基くことあり、何れの場合に於ても緊急狀態の特色は其原因が緊急狀態行爲者に因て損害を受くるの地位に在る者以外に存することに在り、從て違法行爲者に對し其侵害に向て反擊を爲すは正當防衛にして、違法行爲者の強制を免るゝ爲めに第三者に對して加害行爲を爲すは危難防衛(緊急狀態に基く防衛行爲を危難防衛と稱す)なり、例へば茲に甲なる者あり、乙を強制して丙を殺さしめんとしたる場合に、乙に於て甲に向ひ反擊を爲すは正當防衛也、之に反し甲の強制の爲め止むを得ず丙を殺さば危難防衛也、緊急狀態は人をして意思能力を喪失せしむる場合あり、又時としては意識の作用を缺くことあり、是等の場合に於てなせる他人の法益侵害は心神喪失者として、又は行爲の要素を缺く者の行爲として無罪たり、危難防衛として無罪たるべきものに非らず。(刑三七條、危難防衛の部參照)
禁錮
(きんこ)非破廉耻罪に科する主刑の一種にして、舊刑法に所謂有期流刑、無期流刑、重禁獄、輕禁獄、輕禁錮の五を包含ずる名稱なり、禁錮は自由刑の一種として監獄に拘置するも、懲役と異なり定役を科することなし、禁錮は之を別ちて有期禁錮及び無期禁錮に區別す、無期禁錮は終身刑にして、有期禁錮は一月以上十五年以下の範圍に於て之を科す、但し加重する場合は二十年に至らしむることを得べく、又減輕する場合は一月以下に降すことを得る也。(刑一三、一四條、主刑の部參照)
- 英
- Imprisonment
- 独
- Gefängnisz
- 仏
- Emprisonnement
均霑
(きんてん)均しく其利益又は恩典に浴することをいふ、例へば最惠國條款と稱し、國際間の條約に於て、或國が相互又は片面的に、第三國に與へ又は與ふることあるべき權利及利益を、條約の相手國にも亦與ふべしと定むる條款に於て、其相手國を均霑國といふ、第三國たる最惠國と同一の利益又は權利を與へらるゝ殊遇に霑ふ國なることを示すが加し、均霑は均しく霑ふことなれば、不利益又は義務に就いて均霑といふは意味をなさず、常に利益を與へらる待遇等に霑ふことを意味する也。(最惠國約款の部參照)
恐喝取財罪
(きようかつしゆざいざい)人を恐喝して財物を交附せしめ、又は財産上不法の利益を得若くば第三者をして得せしむる罪をいふ、□一舊刑法は恐喝を以て欺罔と同じく騙取の手段と認めたるも、一は錯誤を生ずるものにして、一は畏怖を生ぜしむるものなるが故に、改正刑法は之を別箇の罪となせり、但し欺罔と恐喝とを併用して取財の罪を犯したるときは、一罪なりや數罪なりやは稍〻疑あり、通説は之を一罪と看做すか、又は總則五十四條の適用を受くべき場合となせり、□二恐喝は意思の反抗を抑壓する程度に達せざる威嚇也、恐喝は民法に謂ふ所の強迫と同じく、脅迫罪等に於ける脅迫と異なり、相手方の意思を全然抑壓せざるが故に、其行爲の效果たるや取消し得るに止まる、卽ち意思發動其者には何等の瑕疵なきも、意思決定の遠因に對し畏怖を伴ふ也、□三本罪は恐喝に依て財物の交付を受け、又は不法利得をなし又は得せしめたるに因て成立す、故に交付又は利得と恐喝との間に因果の關係あることを要するは明か也、本罪の刑は十年以下の懲役にして、本罪の未遂は處罰せらる。(刑二四九、二五〇條、詐欺取財罪の部參照)
共濟組合
(きようざいくみあい)共同救濟の目的にて設立せらるゝ組合をいふ、共濟組合は共同の事業に從事する者が、不時の災難其他疾病の治療に關し、共同救濟の目的にて設立するを普通とす、從て私人の共同事業に關する私設の組合あり、又公共の設備なることあり、左に帝國鐡道廳に於ける現業員の共濟組合に關して例解すべし、故に以下單に共濟組合といへば鐡道廳に於ける現業員の共濟組合なりと知るべし、□一共濟組合の必要、凡そ人間の此世に在る間は、何時天災地變の襲來に遭ひて生命財産に危害を被るやも計られず、中にも資本の力を借らず、其身の技能に依りて生計を立つる者は、最も其生命を大切にして災害の場合に對する心掛なかるべからず、殊に鐡道に從事する人々は、普通の人々よりは生命の危險を冐すこと多く、又從業の年齡には自然と限りあるものなれば負傷の場合の手當、病死の場合の遺族の保護、並に自身老後の安心の爲めに、平素より備ふる所の方法なかるべからず、而して此方法は、鐡道從事員が一致協力して他を救ひ、又自ら助けらるる所の相互救濟組合を作り、之に依りて其目的を達するの外に適當なる道なきなり、爰に於てか政府が、此の勅令を以て鐡道事業に直接從事する所の雇員以下の現業員をして、共濟組合を組織し、之に加入せしむることとなしたる所以也、□二共濟組合の目的、共濟組合の目的は、第一組合員が公務に從事せる間に於て、例へば汽罐の破裂、列車の脱線衝突、其他總て職務に原因する負傷の爲めに死亡し又は不具癈疾となりたる場合に、之を救濟すること、第二組合員が病死したる場合に、其遺族を保護すること、第三組合員が多年其職務を盡したる後退職するときに、養老金を與ふること、第四總て負傷の場合等に治療の手當を爲すことに在り、從來鐡道に奉職せる者、公務上負傷の難に遭ひたる場合に、政府より手當を與ふること無きに非らざりしも、其の金額些少なりしが、共濟組合は之に充分なる保護を行ふに在り、□三共濟組合の手當、組合員其職務に殫れたるとき、又は一生不具癈疾となりたるときは給料二箇年半分を與へ、其他は負傷の輕重に應じて、壹箇年半分より半箇年分までを與へ、療養の費用は總て組合之を負擔し、又病死の場合には、例へば年齡二十歳にして一ケ月給料拾圓の者何時死するも、百九十圓以上の救濟金を受け又退職の場合には、二十歳にして就職し五十五歳にて退職し、一ケ月の給料前後平均三十圓とすれば、養老金として凡九百圓を受くるを得べし、□四掛金の補助、組合員が前記の利益を享けんが爲めには、每月給料額の百分の三に當る掛金を爲さざるべからず、而して組合員より納めしむる掛金のみにては固より不足にして、到底充分に救濟の目的を達すること得ざれは、政府は各人に對し、每月其給料の百分の二に當る金額の補助を爲し、本人の納むる百分の三と合せて、之を救濟金の源に充つるものなり、□五掛金の拂戻、組合員が五十五歳に達する前に職を辭し、又は他の原因にて組合を脱するときには、自己の拂込たる掛金總額の凡そ七割より八割までを受取ることを得るものなり、□六組合の經費、組合の事務は鐡道廳の吏員之を行ひ、事務所も亦鐡道廳の建物を使用することを得れば、經費は〓んど要せずと謂ふも可なり、此点に於ても亦組合員の利益少からず、□七現業員以外の者加入、組合の主なる目的は、鐡道作業に直接從事する現業員の下級の者を保護するにあれども、其以外の者と雖も、苟も鐡道廳の吏員たる以上は、望に依りて之に加入することを許したり、但し是等現業員以外の者は、政府の補助を受けずして、每月給料の百分の五を支拂ふものとす、□八計算の基礎、此の共濟組合は、從來の無盡、賴母子講又は共濟會、互助會と云ふが如き者に比し、大に其の面目を異にし、目下文明の制度として世界に普及せる生命保險、並に傷害保險の妙味を斟酌し、人間の死亡率、並に鐡道職務の危險率を計算し、掛金と救濟金との割合を定めたれば、收支齟齬して中途に倒るるが如き薄弱なるものに非らず、故に組合員は唯之に信賴して可なりとす。(四〇年四月勅一二七號)
共犯
(きようはん)共犯とは數人が共同して犯罪を爲すをいふ、共犯の觀念に關しては二の異なる説あり、第一の説は共犯を以て、數人の共同に因り一罪を犯すもの也となすの説にして、之を假に犯罪共同説と名け得べし、此説は目下に於ける通説にして、卽ち共犯を以て同一の犯罪に對する數人の加功と解す、故に共犯の場合に於て成立する犯罪は、其各共犯者は每に同一の罪となるべく、且罪とならざる行爲に對する加功は、常に共犯關係を生ずることなしとなす也、第二説は假りに行爲共同説といひ得べく、卽ち共犯を以て數人が各其犯罪を爲すに當り共同の行爲を以てするものなりと解する説にして、此説に依れば、共犯は他人の行爲を利用するに過ぎず、從て間接正犯なる觀念を認めず、又數人の行爲を合一的に觀察するに過ぎざるが故に、結果其他の事情は共犯者各自に對し各別に評價し、各々別種の犯罪を構成することを怪まざる也、茲を以て一人の犯罪不成立は、他の共犯者の地位に何等の影響を及ぼすことなしとなす、其何れの説を可とずべきやは讀者の判斷に委す、共犯は之を別ちて共同正犯、教唆犯、從犯の三となす、以下分説すれば、□一共同正犯、共同正犯の何たるかも、上説正犯の觀念如何に依て異なるも、之を三説に區別することを得べし、第一説は加功行爲の性質に依て從犯と之を區別する説にして、卽ち實行々爲の加功を以て共同正犯となす、第二説は犯罪の完成に重大なる影響を與ふるや否やに依て從犯と之を區別する説にして、卽ち犯罪の完成に重大なる影響を與ふる行爲に加功するを共同正犯となす、以上の二説は通常之を客觀説といふ、第三説は主觀説にして、卽ち自己の犯罪を爲すの意思を以て罪を共同にするは共同正犯なりといふ説也、第一説を通説とす、改正刑法は二人以上共同して犯罪を實行したる者を皆正犯とし、各自に單獨正犯と同じき刑を科す、□二教唆犯、他人をして犯意を生ぜしむる行爲をいひ、正犯に對する從たる加擔となす、教唆犯は教唆罪と異なるを注意すべし、教唆罪とは教唆を獨立の犯罪として罰する場合也、例へば自殺教唆罪の如し、此種の犯罪は從たる加擔に非らざること明か也、改正刑法に依れば、人を教唆して犯罪を實行せしめたる者は正犯に準じ、正犯と等しく處罰するものとせり、其教唆者を教唆したる者亦同じとす、□三從犯、正犯を幇助するを從犯となす、正犯に對する從たる加擔の一種也、從犯と正犯との區別、卽ち幇助と罪の實行との區別に就いては數説あり、共同正犯の部を參照せよ、改正刑法に依れば、正犯を幇助したる者及び從犯を教唆したる者を從犯(廣義の從犯)となし、正犯の刑に照して減輕すべきものと定めたり、但し拘留又は科料にのみ處すべき罪に就いては、教唆者及び從犯は特別の規定なき限りは之を罰せざるもの也、終りに注意すべきは、犯人の身分に因り構成すべき犯罪行爲に加功したる場合也、舊刑法は此場合に從犯及び教唆に關して、其一部に就いてのみ規定したるに過ぎざりしが故に、大に議論の種となりたりしも、改正刑法は此點を慮り、犯人の身分に因り構成すべき犯罪行爲に加功したるときは、其身分なき者と雖も仍ほ共犯となし、身分に因り特に刑の輕重あるときは、其身分なき者には通常の刑を科すと定めたり、茲に身分といふは、犯人一身上の性質(例へば男女の如き)地位(例へば親族關係の有無の如き)及び資格(公務員たる資格の如き)を包括するもの也、故に身分に依り構成すべき罪とは、例ば收賄罪は公務員又は仲裁員たる資格を其構成要件とするが如き、強姦罪は加害者男性たることを要するが如き、近親猥褻罪は近親たる關係ある者の犯すを要するが如き是れ也。(刑六〇條乃至六五漁)
- 英
- Co-operation
- 独
- Teilnahme
- 仏
- Co-opération
漁業法
(ぎよぎやふはふ)漁業に關し、其主體方法及び取締に就いて規定したる法律也、抑漁業は水産物を先占して其所有權を取得するの行爲也、漁業は之を分ちて私有水面漁業と、公有水面漁業となす、私有水面の水産物は其水面の所有者に屬す、總て所有權者は之を任意に處分することを得べし、公有水面に於ける水産物は之に反し、國家の所有に屬するものなり、されど本法は公有水面に於ける漁業を原則として自由となし、何人と雖も特に官廳の許可を要せずして漁業を爲すことを許す、尤も漁具を定置し、又は水面を專用して漁業を爲するの權を取得するには官廳の特許を要す、故に漁業權は公有水面に於て漁具を安置して漁業を爲し、又は之を專用して漁業を爲すの權利也、其性質は私權の一種にして、官廳の特許に因りて生ず、特許を行ふは原則として官廳の自由なるも、從來の慣行あるものに就いては官廳は特許を與ふるの義務を負ふ、漁業權は二十箇年を以て其期間とし、之を相續、讓渡、共有及貸付の目的となすことを得べし、次に行政官廳は漁業の保護及び取締の爲め、法律に定めたる命令を發することを得べく、其制限又は禁止は、水産物の採捕又は販賣に關し、若しくば漁具、漁船又は採捕の方法に關し、其他漁業者の數又は其資格に關すること也、漁業權を有し得べき主體は啻に個人のみならず、又組合に於ても漁業權の主體たることを得、漁業權を有し得べき組合は之を漁業組合と稱す、漁業組合は純然たる私法人にして、一定の區域内に住所を有する漁業者が官廳の許可を得て任意に組織するもの也、終りに遠洋漁業に就いては之が奬勵の爲めに、遠洋漁業奬勵法なる法律あり、特定の場所に於ける特定の漁業に對し國庫が奬勵金を下附することを得べき旨を定む。(三四年四月法三四號、遠洋漁業法の部參照)
偶發犯
(ぐうはつはん)犯罪は犯人各自の性質と、其境遇との共同作用に依て發生するものにして、之を二の場合に別つことを得べし、□一外圍の事情又は境遇が犯人の特質に打ち勝ちて犯罪を發生せしむる場合、此場合に於ける犯罪を偶發犯又は一時犯といふ、卽ち一時の激烈なる挑撥又は切迫したる必要的狀況に驅られて犯人の特質に反し罪を犯すに至らしめたる場合にして、例へば一時の激怒により遂に人を毆打せるが如き、或は饑餓の爲めに止むを得ず他人の財物を窃取するが如き、何れも犯人の善良なる特質に反して其人の履歷に全く孤立したる一の汚點を存ぜしむるもの也、此種の犯人は犯罪後直に悔悟の狀況に在り□二犯人の不長なる特性が外圍の或僅少なる動機に逢ふや直に重大なる罪を犯すに至る場合、是れ必然犯又は性僻犯の存ずる場合にして此種の犯人は最も危險なる者とす、必然犯に就いては其部を參照せよ、偖て此の如く區別するも元來犯人の特質なるものは、外圍の事情其他の境遇に影響されてなれるものなれば、漸次善良なる者も偶發犯に依て懲罰さるゝときは、或は刑餘の者として常人に排斥せられ、遂には自棄の結果性癖惡的傾向を呈するに至るべく、さなきだに獄裡の人となれる間に、他の犯人に犯罪を誘導其他の方法を以て教示せらるゝの虞あり、旦つ然らざるも感染して惡人となること在るべきを以て、眞に畏嚇の目的及び遷善の目的を達せんには、斯る偶發犯人には種別に依て刑を宣告するも執行せざるを可とすべく、又は微罪なる場合は私和其他之を説諭して檢擧せざるを可とする也、近時刑の執行猶豫又は微罪不檢擧主義の採用さるに至れるは此の故に基く。(刑の執行猶豫、微罪不檢擧主義、必然犯の部參照)
偶然犯
一時犯
宮内省
(くないしよう)帝室に關する一切の事務を掌理する官衙にして、其長を宮内大臣といふ、宮内大臣は帝室に關する事務を總判し華族を監督するもの也、宮内省には宮内次官及び宮内書記官を置く、宮内省には庶務、調査、帝室會計審査の三課及び左の部局を設く、侍從、式部、皇后宮、内藏、御料、爵位、大膳、主殿、圖書、内匠主馬、諸陵、侍醫、主獵、調度是れ也、而て之れには各侍從長(御服御物を管守)式部長(祭儀典式及び雅樂を管理)皇后宮大夫(宮車及び内廷に關する事務を管理)内藏頭(皇室經費及▲主管に屬する財産會計を管理)御料局長(世傳御料に關する事務を管理)爵位局長(爵位に關する事務を管理)大膳大夫(供御饗宴及び其器具を掌る)主殿頭(宮殿の酒掃餔設及び皇宮警察を管理)圖書頭(圖書記錄の保管及び皇統皇譜に關する事務を管理)内匠頭(土木に關する事務を管掌)主馬頭(乘具調馬及び牧場に關する事務を管理)諸陵頭(陵墓に關する事務を管理)侍醫局長(診候醫藥を掌る)主獵局長(狩獵及び獵場に關する事務を管理)調度局長(宮中需用品の購買修補に關する事務を管理)等の部局の長を置て、其主管事務を管掌せしむ。(四一年一月宮内省達、二二年七月同一〇號)
軍衙
(ぐんが)陸海軍に屬する官衙をいふ、卽ち陸軍省、海軍省、陸軍軍法會議の加き是也、然れども軍衙といふは、かの陸海軍に屬する軍艦軍隊を指すに非らず、又軍營卽ち兵營を指すに非らず、其他軍人又は軍屬の執務する所の有形的建造物を指すに非ざる也、通俗に役所といふは官衙といふと異なる、故に陸海軍の役所と異なるや明か也、然らば軍衙とは何をかいふや、曰く陸海軍に屬する官廳及び官署を指すなり、其詳細は官廳、官署及び官衙の部を參照せよ。(三二年一〇月勅四〇五號)
君合國
(くんごうこく)二個以上の國家が君主の身體を以て結合するをいふ、白耳義王が「コンゴー」國王を兼ぬるが如き此例なり、君合國は此の如く同一の君主を戴くのみにして、各自單獨國家なり、決して二者合して一の國家を爲せるに非らず、又二國何れか一が從屬的國家關係に立つに非らざる也、從て澳洪二國の如き、瑞諾の二國の如きは君合國の例にあらざる也、君合國は君主の一代限り之を同ふする場合と、其王統を以て結合する場合とあり、何れも君合國たるに妨げなし。(合衆國、聯邦の部參照)
勳章
(くんしよう)國家に功を立て績を顯すものに授與せらるゝ表彰物をいふ、勳章は之を別ちて左の五とす、□一金鵄勳章、武功拔群の者に叙賜せらるゝものにして、功一級より功七級まであり、常に年金を附して賜はる、□二菊花章、持に勳績ある者に賜はる、菊花章には大勳位菊花大綬章及び大勳位菊花章の二種あり、□三旭日章勳功ある者に賜はるものにして、一等より八等まであり、勳一等には旭日桐花大綬章と單純なる旭日章とあり、而て勳七等及び八等は桐葉章なり、□四瑞寳章、功勞又は勳功ある者に賜はる、勳一等より勳八等までの種類あり、□五寳冠章、婦人にのみ賜はる勳章にして、勳一等より勳八等まであり、終りに勳等と勳章の別に就いて一言せんに、勳等は位階と異なり勳功及び功勞ある者の爲めに設けられたる階級にして、勳等には勳一等より勳八等まであり、勳一等の者には前説の趣旨に基き一等勳章を賜はるものにして、以下之に同じく、勳等に叙せられたる等級相應の勳章を賜はるものとす、故に勳章は勳等の表彰物にして、軈て國家に勳績又は功勞ありたる事の表彰物なりとす。(八年四月五四號布告、二一年一一月勅七六號、二三年三月勅一一號二七年一一月勅一九三號)
軍屬
(ぐんぞく)軍屬とは陸軍文官、海軍文官、同待遇者及び宣誓して陸海軍の勤務に服する者をいふ、茲に陸海軍文官といふは、主理、理事錄事、筆記、技師、技手、監守、警査の如きをいひ、同待遇者といふは、文官の待遇を受くる囑託、雇員等をいひ、宣誓して陸海軍の勤務に服する者とは、讀法に依り宣誓して陸海軍の勤務に從事する者にして、上説以外の雇員、給仕の如きを包含すべきものとす。(陸軍刑法九條二項、一四條、海軍刑法九條二項、一〇條、二八年一〇月勅一四〇號)
外患罪
(ぐわいくわんざい)帝國の外部に對する存在を攻擊する罪を總稱し、内亂罪に對應するもの也、本罪は之を大別して、外患誘致罪、抗敵罪、軍用物件及び軍隊交付罪、軍用物損壞罪、間諜罪及び機密漏泄罪、其他の軍事上の利益侵害罪となす、以下之を分説せん、□一外患誘致罪=外國に通謀して帝國に對し戰端を開かしむるの罪を云ふ。(あ)外國に通謀する事、茲に外國とは日本の版圖以外に於て、別に一定の土地及び人民を有し、唯一主權を以て統治するものを云ふ、次に通謀は、法律は其手段を限定せざるが故に、帝國と平和狀態を維持しつゝある外國をして、帝國と戰端を開始せしむる爲め、其外國の政府となしたる一切の協議を包含すと解す、(い)帝國に對し戰端を開かしむる事、戰端を開くとは國際上所謂開戰の義なり、而て本罪は外國と通謀して帝國に對し戰端を開かしむるを以て既遂となり、帝國の之に應戰したると否とは問ふ所にあらず、(う)本罪に對する刑は死刑也、茲に注意すべきは、外患に關する罪は帝國臣民が帝國に對する忠實義務に違背するに因て成立す(舊刑法は然りし也)るに非ず、故に犯人の國籍如何に關せず、行爲地の内國たると否とを問はざるものとす、尚注意すべきは、外患誘致罪に於ける攻擊の目的物は帝國と外國との間に於ける平和狀態なり、此狀態は獨立の法益なるが故に、朝憲紊亂の目的を以て暴動の方法として先づ外患を誘致したるときは、本罪と内亂罪との想豫上の二罪なること是れ也。□二抗敵罪=敵國に與して帝國に抗敵したる罪也、(い)敵國に與みする事、敵國とは、帝國の交戰相手國の意なり、從て本罪は戰時中に非らざれば犯すことを得ざるを知るべし、次に與みすとは、敵國の兵力に附屬する總ての場合をいふ也、卽ち敵國と合同するの義とす、必らずしも敵の軍隊中に入ることを要せず、(ろ)帝國に抗敵する事、抗敵とは戰鬪に從事して以て帝國に抵抗敵對することをいふ、故に必らずしも直接兵器を採て戰鬪に從事するに限らず、苟くも敵軍に附屬して戰務に從事したる以上は抗敵たるを免れず、然れども既に組織▲れたる敵の軍隊に附屬せずして新に軍隊を組織し、東西相應じて帝國の軍隊に敵對する場合に於ても尚本罪を構成す、(は)本罪の刑は死刑也、茲に注意すべきは、外患罪に就いて、外國人の犯したる場合をも處罰する原則を採用せる法律に於ても、抗敵罪に就いては其の國民に限るを普通とし、或は其國民と雖も敵國居住中は、其居住國の法律に依り兵務を負擔するも之を處罰せずと定む、然るに我刑法は此點に付て何等の制限なきが故に、帝國に抗したる者は敵國人と雖も之を處罰し得べきが如し、然りと雖も敵國の法律に依り兵役義務を有する者は、之を國際法上俘虜として取扱はざるが故に、特別の明文なしと雖も本罪を以て處斷すべきに非らざる也。□三軍用物又は軍隊交付罪=要塞、陣營、軍隊、艦船其他軍用に供する場所及び建造物、兵器、彈藥其他軍用に供する物件、及び帝國の軍用に供せざる兵器彈藥其他直接戰鬪の用に供すべき物を敵國に交付する罪なり、(あ)法律例記の物に關する事、(1)要塞とは兵力を以て防備せる砲臺を云ひ、(2)陣營とは野外に於て防備せる兵營を云ひ、(3)軍隊とは戰時編制に依て行動する部隊を云ひ、(4)艦船とは戰務に從事する船舶にして、(5)其他軍用に供する場所又は建造物とは、例へぱ兵舍、火藥庫、武器庫其他山川の要地を意味す、(6)兵器とは戰鬪用に供する武具にして、砲、銃、刀、劔等を指し、(7)彈藥とは主として砲銃に使用する彈丸、裝藥、其他の火藥類を云ひ、(8)其他軍用に供する物とは、例へば送彈車、輜重運搬用具等を總稱す、以上一より八までは總て帝國の軍用に供する人又は物なるを要す、(9)帝國の軍用に供せざる兵器又は彈藥とは、例へば拂下に係る兵器又は彈藥或は秘密製造の兵器彈藥の如きを云ひ、(10)其他直接に戰鬪の用に供すべき物とは、例へば要塞戰に使用さるべき砲臺鏡の如き類を云ふ也、(い)敵國に交付したる事、交付とは之を引渡すことにして、抛棄とは異なるもの也、故に例へば敗軍の將が退却の際其陣營を抛棄せるが如き、其他斯かる場合に軍用物を抛棄して敵の占領に放任するが如きは本罪を構成せず、(う)本罪に對する處分は交付したる目的物前説の一より五までの物なるときは死刑に、六より八までの物なるときは死刑又は無期懲役に、九及び十に係るときは三年以上の懲役に處せらる、茲に注意すべきは、本罪は多くの場合に於て現役の軍人にあらざれば犯すことを得ざるも、例へば軍隊を詐稱誘導して敵の合圍中に陷らしむるが如き、之を交付といひとべくんば、常人と言へども尚本罪を犯すこ得を得ざるに非らず、況んや現役の軍人が本罪を犯したる後本職を離れたる場合の如きは、常に本罪に依て處斷するの必要ありとす。□四軍用物損壞罪=敵國を利する爲め要塞、陣營、艦船、兵器、彈藥、汽車、電車、鐡道、電線其他軍用に供する場所又は物を損壞し、若くば此等の物を使用不能に至らしむる罪にして、以下分説すれば、(い)本罪の目的は上記の場所又は物なる事、要塞、陣營、艦船、彈藥、兵器に就いては軍用物件交付に於ける説明を參照せらるべし、電車は電力に依て運轉する車輛を云ひ、汽車は蒸汽力に依て運轉する車輛を云ひ、鐡道とは汽車又は電車の通過ずべき軌道を指し、電線とは電力を通じて音信を爲す設備の中、金屬の線を以て野外に架せる部分を意味す、但し電柱を包含するものと解す、電話線は之を含むやは疑問たるべきも、余は之を積極説を可と信ず、其他軍用に供する場所又は物とは、山川の要地、其他の軍用物を云ひ、軍用物交付罪に述べたる所に同じ、(ろ)損壞し若くば使用不能に至らしむる事、使用不能に至らしむることは、上説の物件の效用を失はしむることにして、損壞は其例示なり、所謂損壞とは毀損又は破壞の意味なり、此行爲は敵國を利する目的に出でたることを要す、從て過て之を損壞し又は毀滅せしめたるが如きは、適〻以て使用不能に至らしむるの結果を生ずと雖も本罪を構成せず、加之ならず故意ある場合と雖も、敵國を利する目的を有せざるときは本罪に非ざる也、(は)處分、本罪に對する刑は死刑又は無期懲役なり、以上抗敵罪以下本罪までを總稱して學者之を背叛罪と稱す、□五間諜罪=敵國の爲めに自ら間諜をなし、又は敵國の間諜を幇助するの罪なり、左に之を分解説述すれば、(あ)自ら間諜を爲し又は間諜を幇助する事、間諜とは敵國に通知するの目的を以て陰に軍事上の機密を探知し、又は軍事上の秘密に屬する圖書物件等を收集するをいふ、必らずしも其探知したる事項若くば收集したる物を敵國に通知し、或は交付したることを要せず、又公然戰鬪員の一人として、敵圖の軍情機密を探知する斥候兵は間諜に非らざる也、次に間諜を幇助するとは、間諜を誘導指示して便宜を與へ、又は藏匿する等の方法に依て間諜の行動を容易ならしむる一切の行爲をいふ也、(ろ)敵國の爲めに間諜をなすか、敵國の間諜に關する事、卽ち敵國の利益を計るの意思に出づることを要す、(は)本罪に對する刑は無期又は五年以下の懲役とず。□六機密漏泄罪=軍事上の機密を敵國に漏泄するの罪を云ふ、以下分説すれば、(あ)軍事上の機密に關する事、茲に軍事上の機密とは、敵國に知られざることを以て帝國の利益とする軍事上の事項にして、未だ敵國の知らざるものをいふ、例へば兵器の精粗、銃砲彈藥の秘密製法、兵員の多寡、軍隊又は軍艦の動靜、作戰方法、兵隊屯集の要地軍港の廣狹深淺、其他國防營造物の狀況、帝國と同盟國との間に於ける戰時秘密條約等の加し、(ろ)漏泄したる事、漏泄とは秘密を告知することを云ひ、其手段に制限なきが故に、或は言語文書を以て通知するも、又は使者を以て傳達するも、測量圖面、地圖類又は寫眞画の交付に依りて狀況を知得せしむるも、此以外手段のに依るも可なり、而て其機密の知得は職務上の原因に因ると、或は偶然の結果に依るとを問はず、されど間諜行爲に因りて知得したる機密に關する時は、間諜行爲の結果なるが故に間諜罪に包含せらるべし、(は)本罪に對する刑は無期又は五年以下の懲役とす、茲に注意すべきは軍機保護法の罪と本罪との關係なり、軍機保護法は一般的に平時戰時を問はず軍機の漏洩に關して規定し、其敵國に漏らずと否とを問はざるも、同法第八條に依れば、其規定は刑法の效力を妨げざるが故に、刑法に明文ある場合は刑法に從はざるべからず。□七軍事上の利益侵害罪=以上例記の六個の犯罪以外の方法を以て、敵國に軍事上の利益を與へ又は帝國の軍事上の利益を侵害する罪なり、例へば敵兵を帝國管内に誘導するが如き、又は陸海軍の委任に違背して軍備の缺亡を致さしむるが如き、其他敵情を詐報して帝國の作戰計畫を誤らしむるが如きを云ふ也、本罪に對する刑は二年以上の有期懲役とす。終りに以上外患罪全部に對して注意すべきこと二あり、一は外患罪は凡て其未遂、豫備、陰謀を罰せらるゝ是れ也、蓋し本罪は其影響重大なるに依る、而て其豫備陰謀に對する刑は一年以上十年以下の懲役とす、注意の第二は、以上の犯罪は帝國の戰時同盟國に對する場合も同樣なること是なり、茲に戰時同盟國といふは、帝國と同盟して戰鬪を共にする國家をいふ、斯る國家に對する以上の犯行は間接に帝國に對する犯行なるに依る也。(刑八一條乃至八九條、三二年法一〇〇號參照)
- 英
- Crime against external safety of the state
- 独
- Landesverrat
- 仏
- Infraction contre la sûreté extérieure de l'Etat
皇室に對する罪
(くわうしつにたいするつみ)天皇、三后、皇太子又は皇太孫、其他皇族に對し危害を加へ又は加へんとしたるか、或は以上の御方及び神宮、皇陵に對し不敬の行爲ありたる場合の犯罪を總稱す、講學上之を危害罪及び不敬罪に區別する也、以下此區分に從て其槪念を述べん、(甲)危害罪=天皇、三后、皇太子又は皇太孫、其他皇族に對し危害を加へ若くは加へんとしたる罪也、□一客體、天皇、三后、皇太子又は皇太孫、皇族たること、い天皇とは皇室典範の規定に基き、皇位を繼承し、大日本帝國を統治し給ふ御方を奉稱す、ろ三后とは皇后、皇太后、太皇太后の總稱にして、舊刑法の用語例に從て略稱せしなり、卽ち天皇の配遇者に立たせらるゝ御方は皇后にして、先帝の皇后たりし御方は皇太后、先々帝の皇后たりし御方は太皇太后なり、必ずしも天皇の生母たりし御方とは一致せざることは注意を要す、は皇太子又は皇太孫とは、皇室典範の規定に依り儲嗣たる地位に立たせらるる御方にして、皇子なるときは皇太子と奉稱し、皇孫なるときは皇太孫と奉稱す、儲嗣に立たせ給ふ御方なれば、皇太子あるときは皇太孫なきは辯ずるまでもなかるべし、に皇族とは天皇の御親族を云ひ、卽ち皇太子妃、皇太孫妃、親王、親王妃、内親王、王王妃を云ふ、□二行爲、危害を加へ又は加へんとしたること、危害とは生命又は身體に對する有形的侵害也、固より自由、貞操に關する侵害を包むや勿論なり、茲に加へ又は加へんとしたる云々といふが故に、獨り危害を加へたる場合のみならず、之を加へんとしたる豫備陰謀も亦之に包含せらるゝ也、故に本罪に對しては中止犯を認むるの餘地なく、又教唆及び從犯に對しても直に本條の適用を見るべし、□三處罰、本罪は天皇三后皇太子又は皇太孫に對するときは死刑に、皇族に係るときは危害を加へたると否とを區別し、前者は死刑に、後者は無期懲役に處すなり。(乙)不敬罪=天皇三后皇太子又は皇太孫及び皇族、其他神宮、皇陵に對し不敬の行爲をなすの罪也、□一本罪の客體は危害罪に述べたる御方の外、神宮、皇陵を包含す、神宮とは皇祖を奉祀せる伊勢の大廟を奉稱し、皇陵とは歷代の天皇の御墳墓を意味す、□二本罪の行爲は不敬をなしたることに關す、不敬行爲とは皇室の尊嚴を冐瀆すべき一切の行爲を包含し、其方法程度に制限なきが故に、其行爲たる通常の誹毀は勿論、侮辱、罵詈、讒謗に亘る一切の言語、形容及び書画等を包含し、皇陵に對しては毀損汚穢及び發掘を包含すべし、□三本罪の故意に就ても一般總則の規定に從ふは勿論なり、從來刑法學者の引照する、田舍の牧翁禮に傚はず鹵簿を拜し感動の餘り賽錢を投したるが如き、又は神事するの意思を以て南無阿彌陀佛の妙號を唱ふるが如きは、遇〻過て不敬の結果を生ずることあるも本罪を構成せざる也、□四處分、天皇三后皇太子又は皇太孫、皇陵又は神宮に關するときは三月以上五年以下の懲役に、皇族に對するときは二个月以上四年以下の懲役に處せらる。(刑七三條乃至七六條)
皇族職員制
(くわうぞくしよくいんせい)東宮職は左の如し、□一東宮大夫、東宮に關する職務を總理し職員を監督すべき者にして、定員は一人なり、□二東宮主事、大夫の下に在て職務を掌裡する者也、定員は二人にして官等は四等以下とす、□三東宮侍從長、常侍奉仕し侍從を監督する者にして定員一人、官等は二等とす、□四東宮侍從、常待奉仕する者にして定員五人、奏任とす、□五東宮侍講、侍讀進講し御學德を涵養することを掌るものにして、定員五人勅任又は奏任五等以上とす、□六東宮屬、判任にして庶務に從事する者、□七東宮内舍人、准判任とす、□八仕人、等外とす、以上二者は雜務を執る者也、東宮以外の皇族職員は左の如し、(あ)親王家に於ては(1)別當、輔翼の責に任じ家務會計を總理し家令以下を監督する者也、(2)家令、別當の職務を助け家務會計を管理す、(3)家扶、家務會計を掌裡す、(4)家從、庶務に從事する者也、(い)諸王家に於ては、(1)家令、輔翼の責に任じ家務會計を管理し家扶以下を監督す、(2)家扶、家務會計を管理す、(3)家從、庶務に從事する者とす、以上記せる外東宮武官、皇族附武官なるものあり、□一東宮武官長、皇太子の威儀整飾を奉助し、行軍、觀兵、演習其他の軍務及び祭儀、禮典、宴會、謁見等に陪侍扈從す、而て此職には東宮武官中高級故參の者を以て補する也、□二東宮武官、皇太子に常侍奉仕する者にして、其定員は陸軍將官及佐尉官五名、海軍將官及び佐尉官三名とす、□三皇族附武官、東宮武官長と略同じき性質の職務に從事する者にして、陸軍各兵科の佐尉官及び海軍佐尉官を以て之に充つ。(二二年一一月宮内省達二一號、二三年一月同一號、二九年八月勅二八一號、三〇年一〇月勅三六一號)
皇太子
(くわうたいし)皇室典範に依り儲嗣たる地位に立たせられたる御方を奉稱す、敬稱は殿下にして、皇太子殿下と呼ぶ、元來皇位は皇長子に傳ふべきものにして、皇長子を儲嗣と定め、立太子の詔を發するに及んで之を皇太子となす也、(皇室典範一五條、一八條、二條、一六條)
皇太孫
(くわうたいそん)儲嗣たる皇孫を皇太孫と奉稱す、皇太孫は皇長子あらざる場合に、皇長孫を立てゝ皇太孫となすもの也、故に皇太子あるときは皇孫あるも皇太孫は之なきものとす、皇太孫の敬稱は殿下にして、皇太孫殿下と呼ぶ。(皇室典範三條、一五條、一六條、一八條)
過失溢水罪
(くわしついつすいざい)過失に依て溢水せしめ、法定の物件を浸害して公共の危險を生ぜしめたる罪なり、本罪は失火罪と同じく過失罪の一種なり、□一過失に依て溢水せしむること、溢水とは堤防を決潰し、水閘を毀壞し、又は其他の手段を以て河川湖海の水を其界域外に氾濫せしむることをいふ、□二法定の物件を浸害したること、法定の物の何たるやは後述すべし、茲に浸害とは、生命身體財産等に危害を及ぼすべき程度に於て、水力を以て法定の目的物を侵浸せしむるをいふ、故に柄杓を以て物に水を注ぐが如きは溢水の浸害に非らず、然れども浸害は必らずしも物を漂流滅失せしむることを要せず、□三法定の物に關すること、卽ち現に人の住居に使用し又は人の現在する建造物、汽車、電車若くは鑛坑に關するか、又は其以外の有體物に關することを要す、此後者の物に對する浸害ある場合は、因て公共の危險を生じたるに非らざれば之を處罰せず、本罪に對する刑は三百圓以下の罰金とす。(刑一二二條、過失及び溢水罪の部參照)
過失傷害の罪
(くわしつしよふがいのつみ)過失に因り人を傷害し又は死に致したる罪をいふ、之を分説すれば左の如し、□一過失に因りたること、謂ふ所の過失とは、必要なる注意を怠りて認識せざるべからざる結果を認識せざるをいふ、卽ち主觀的に定めたる注意の能力ある者が、其なすべき注意を怠るに因て、人の傷害又は致死の結果を生じたることをいふ、過失は注意の如何に依りて二に區別することを得、一は普通の注意を怠るに依て生ずる過失にして、他の一は業務上必要なる注意を怠るに依り生ずる過失なり、此後のものに就いては、刑法は其刑罰を重くす、□二人を傷害し又は致死せしめたること、傷害とは身體の健康を害することを意味し、致死は過失傷害の甚だしきものにして卽ち過失傷害に因て人の生命を喪失せしむることをいふ、本罪は結果犯なり、卽ち過失行動に依り人の傷害を惹起したるときは、單純なる過失傷害とし、因て人の死を惹起したるときは過失致死の責に問ふ也、從て人の死又は傷害の結果に就いて豫見なきときは本罪にして、其或然的豫見なるときと雖も、結果に就いて認識したるときは常に本罪に非ず、唯此場合に結果に就いて認諾なきときは、學者之を認識ある過失として尚過失の一種となすを通説とす、茲に認諾といふは、其結果の發生を避けざるの觀念也、□三本罪の處分は、單に傷害に止まる場合は五百圓以下の罰金又は科料とす、而て此場合は告訴を待て其罪を論ずべき所謂親告罪の一種に屬す、是れ舊刑法と趣を異にする所にして、此場合は犯人に重大なる非社會性なきと、其結果も亦重大ならざるが故に、之を被害者の意思に一任す、強て法律の之に干渉するの必要なきに依れり、而て過失に因り人を死に致したる場合は千圓以下の罰金とす、終りに、新刑法は業務上必要なる注意を怠り因て人を死傷に致したる場合を重く罰する點に注意するを要す、卽ち此場合には三年以下の禁錮又は千圓以下の罰金に處するものとせり、是れ蓋し一般業務に從ふ者をして、其業務上特別なる注意を促さんとする豫防政策の要求を容れたるものなりとす、卽ち此場合は過失に因る罪なりと雖も、其業務上の注意を怠るに依りて生ずるものなるが故に、自由刑を科して其注意を怠ることなからしめんとせし也。(刑二〇九條乃至二一一條)
華族令
(くわぞくれい)明治四〇年五月皇室令第二號を以て制定せられし所に係り、同年六月一日より施行せらるるもの也、□一爵及華族、爵は公侯伯子男の五等にして、總て有爵者を華族とす、有爵者の家族も等く華族の族稱を享く、□二禮遇、有爵者は其爵に相當する禮遇を享くるものとし、有爵者の曾祖父、祖父、父、爵を襲ぐことを得べき法定の推定家督相續人、其嫡長男子、嫡出の男子なきときは其庶長男子、戸主たりし者、及び以上の者の配偶者は華族の禮遇を享くべきものにして、有爵者の婦は夫に相當する禮遇及び名稱を享くるものとす、有爵者の寡婦其家に在る場合は、特に從前の禮遇及び名稱を享けしめ、其家の戸主となりたるとき、又は襲爵者なくして其家にあるときは、其者に限り特に華族の族稱を保有せしめ、從前の禮遇及び名稱を享けしむ、□三禮遇族稱の停止及び喪失、有爵者及び上説の禮遇を受くべき者、左の一に該當すべきときは、其禮遇を享くることを得ず、あ禁治産及準禁治産、い身代限の處分を受け債務の辨濟を終へざるとき、及び家資分散若くは破産の宣告を受け、其確定せる時より復權の決定確定に至るまでのとき、う刑事の訴を受け拘留又は保釋中のもの、え禁錮以上の刑の宣告を受けたる時より、其裁判確定に至るまでの者是なり、有爵者死刑又は懲役の宣告を受けて、其裁判確定したるときは其爵を失ふ、家族及び禮遇を享くる者なるときは、其者に限り華族の族稱を失ふ、有爵者の婦以上の場合に該當するときは、其禮遇を禁止せらる、有爵者及び其禮遇を受くべき者、左の一に該當したるときは、其禮遇を停止せらる、A華族の品位を保つ能はざるもの、B宮内大臣の命令又は家範に違背し情狀重き者、以上の外華族の體面を汚辱する失行ありたる者は、情狀により爵を返上せしめ、華族の族稱を除き、又は其禮遇を停止若くは禁止す、□四家範、有爵者は法律命令、及び華族に關する法令の範圍内に於て、家範を定むることを得、家範は宮内大臣の認可を受くべく、之を廢止變更するときも亦同じ、□五襲爵、爵は男子の家督相續人をして之を襲がしむ、爵を襲ぐことを得べき家督相續人、又は其法定代理人は、相續の開始を知りたる時より六ク月内に、宮内大臣に家督相續の屆出をなすべし、宮内大臣此屆出を受理したるときは、勅許を經て襲爵の辭令書を交付すべきものなり、凡そ襲爵は家督相續開始の時より其效を生ずべきものにして、國籍喪失により家督相續開始したるとき、其他法定の期間に家督相續の屆出をなさざるときは、家督相續人は爵を襲ぐことを得ざるものとす、□六婚姻、緣組、隱居、協議上の離婚、離緣家督相續人の指定廢除、及び其取消等は、先づ宮内大臣の認許を受くべきものにして、總べて有爵者及び其家族の身分に關して、監督上必要なる事項は、宮内大臣之を管掌するものとす、以上本令の大要也。
- 英
- Peers' ordinance
- 独
- Adel-standsverordnung
- 仏
- Ordonnance de noblesse
間隔犯
(くわんかくはん)犯罪の内容たる意思實行と結果とが時又は場所を異にして發現したる場合をいふ、例へば甲地に於て欺罔を爲し乙地に於て騙取をなしたる場合の詐欺取財罪の如き、或は甲地に於て一刀を加へ、其結果被害者が乙地に於て死亡したる場合の如きは場所に關する間隔犯の例にして、例へば明治四十一年九月三十日の夕景人を毆打したるに、翌月一日午前死亡したる如きは時に關する間隔犯の例なり、而て前例の場合に於て甲地が北部樺太にして露國に屬し、乙地が南部樺太にして日本に屬せる如き場合、及び後例の如きは犯罪の舊刑法實施時代にして、結果の現出したる時は新刑法施行時代たりし如き場合に於て、其犯罪に何れの法律を適用すべきか、卽ち犯罪は何れの時又は場所に於て行はれたりと爲すべきかの問題に對しては從來〓多の説あり、今其重なるものを上げんに、□一は結果を以て標準となすべしとの説にして、此説の根據は、行爲の特質は結果に依て定まる、例へば殺人の特質は被害者の死亡といふ結果に依て定まり、之が原因たる意思實行卽ち或は鐡砲を射つとか又は刀を以て切るとかいふことに存ぜざるが如し、加之刑法の目的は法益の保護に存すといふにあり、然れども此説は行爲に重きを置かざるが故に、假令被害者の死亡といふ結果を生ずるも、其行爲は故殺なりや過失殺なりや將た傷害致死なりやを判定することを得ず、從て結果のみに依ては行爲の特質を定むることを得ざるの缺點あり、□二行爲及び結果の二者を以て標準とする説にして、行爲と結果とを通じて單一のものと觀念し、此關係の接續する總ての時及び場所を以て行爲の時及び場所なりとす、例へば文書に依て人を誹毀したるときは、其文書の通過する總ての場所は本罪の場所なりとなせり、□三行爲の時及び場所を以て犯罪の時及び場所となすべしとの説なり、此説に依れば、如何なる種類の犯罪に於ても意思實行卽ち行爲あるに非らざれば犯罪なく、或種の犯罪の如き結果の發生の有無を問はず犯罪となす場合(形式犯)に於ては、上記二説の如き結果に依て定めんとするも能はず、故に此の如き犯罪に於ては行爲に依るの外なし、故に行爲を標準として常に犯罪の時及び場所を定むるを可とすと、本説を通説となす。(犯罪の部參照)
換刑
(くわんけい)罰金又は科料に處せられたる者が、之を納入する能はざる場合に、金圓に準じて之を打算し、勞役場に留置することをいふ、卽ち左の如し、罰金を完納すること能はざる者は一日以上一年以下の期間を勞役場に留置するものにして、科料を完納し能はざるときは一日以上三十日以下の期間之を勞役場に留置す而して、罰金又は科料の言渡に於ては、完納し能はざる場合の留置日數を打算し言渡すべきものとす、其〓分を納入したるときは、金額と日數とに比例して之を留置すべし、但し納入に就ては、罰金は言渡後三十日、科料は同十日間の猶豫を與へ、其期間内は本人の承諾あるに非らざれば之を留置することを得ず、(刑一八條、一六年一一月三七號布告)
官國幣社職制
(くわんこくへいしやしよくせい)官幣社及び國幣社の職員は左の如し、□一宮司、内務大臣及び地方長官の指揮監督を受け國家の宗祀に奉仕し、祭儀を司り庶務を管掌する者也、□二權宮司、宮司を輔佐して祭儀及び庶務に從事する者とす、□三禰宜、宮司及び權宮司の指揮監督を受け祭儀及び庶務に從事す、□四主典、禰宜と同じく判任待遇にして祭事及び庶務に從事する者也、□五宮掌、主典と同じく判任待遇を受け、雜務及び祭事に從事する者とす。(三五年二月勅二七號)
管長
(くわんちよう)神佛二教各派各宗の長として、其派又は其宗に關し行政權の〓分を委任せられたる者をいふ、管長は神道各派に一人、佛教各宗に一人を置くを原則とし、一宗各派に別れ分立を認られたるときは其派每に一人を定むることを得、管長は其立教開宗の主義に依て左の如き條規を定め、内務大臣の許可を受くべきものなり、□一神道管長たる者は、一教規、二教師たるの分限、及び其稱號を定むる事、三教師の等級進退の事、以上の定をなす也、□二佛道管長たる者は、一宗制、二寺法、三僧侶竝に教師たるの分限、及び其稱號を定むる事、四寺院の住職任免及び教師の等級進退の事、五寺院に屬する古文書寳物什器の類を保存する事、以上の定をなすを要す、而て此認可を經たるときは、神佛各宗派内の者其宗其教に關し、該條規の範圍内に於て一切の權限を有し、宗教に關する屆出等は一切管長を經由すべきものとす。(一七年八月太政官一七號達、二二年五月内務省訓令二二號)
關東都督府官制
(くわんとうととくふくわんせい)明治三九年勅令第一九六號を以て公布せられたるものにして、卽ち□一關東州に關東都督府を置く、關東都督府の長は卽ち關東都督にして、都督は關東州を管轄し竝に南滿洲に於ける鐡道線路の保護及取締の事を掌る、兼ねて南滿洲鐡道株式會社の業務を監督する者也、都督は親任官とし、陸軍大將又は中將を以て之に充つ、□二都督は部下軍隊を統率し外務大臣の監督を受け諸般の政務を統理すべきものにして、特別の委任あるときは清國地方官憲との交渉事務を掌理する也、而て都督は軍政及び陸軍々人軍屬の人事に關しては陸軍大臣、作戰及動員計畫に關しては參謀總長、軍隊教育に關しては教育總監の區處を承く、□三都督は其職權又は特別の委任に依り、都督府令を發し之に禁錮以下又は罰金二百圓以内の罰則を附することを得べし、但し安寧秩序を保持する爲め緊急を要する場合は、事後勅裁を經る條件の下に以上の制限を超えて罰則を附する事を得る也、□四都督府には都督官房を置く、官房には副官一人(陸軍佐尉官を以て之に充つ)及び秘書官一人を置き機密の事務を掌どらしむ、□五都督府には民政部及び陸軍部を置く、民政部は軍事行政を除く外一切の行政事務を掌り、之を以下の四課及び一署とす、卽ち庶務課、警務課、財務課、土木課、監獄署是れ也、□六關東州は之を三區に分ち、各區に民政署を設く、其位置、名稱、及び管轄區域は都督の定むる所に依る、以上本令の大要とす。(三九年七月勅一九六號)
科料
(くわれう)科料とは犯罪の主刑にして、犯人に科する財産刑の一種也、科料は十錢以上二十圓未滿とし、主として警察犯其他輕微の犯罪に科す、科料の内容は犯人より強制徵收する金錢なれば、全く罰金に等く、又過料と同じきも、罰金は原則として二十圓以上たる點に於て科料と異なり、過料は刑罰の制裁にあらざる點に於て科料と其性質を異にするものとす、料料を完納し能はざる者は、一日以上三十日以下の期間之を勞役場に留置すべきものにして、科料を言渡す場合には併せて換刑さるべき留置日數を言渡すを原則とす。(刑一七、一八條及び換刑の部參照)
- 英
- Fine
- 独
- Geldstrafe
- 仏
- Amende
警察犯處罰令
(けいさつはんしよばつれい)警察犯の處罰に關する命令にして、警察犯の罪たる行爲及び其れに對する刑に關して定めたるもの也、以下其内容を分説すれば、□一以下に揭ぐる行爲ありたる者ほ三十日以下の拘留に處せらるべし、卽ち、一、故なく人の住居若しくは看守せざる邸宅建造物及び船舶内に潜伏したる者、二、密賣淫をなし、又は其媒合、若しくは容止を爲したる者、三、一定の住居又は生業なくして諸方に徘徊する者、四、故なく面會を強制し又は強談威迫の行爲を爲したる者是れ也、此第一に就いては住居を侵す罪を參照すべし、第二に就ては淫行勸誘媒合罪を參照せよ、第三は俗に浮浪罪と稱せらるゝものにして、第四は三百的行動及び面會強制を罰する罪也、總て以上の罪は爲めに公安を紊るの徒となるべき危險あるが故に、自由刑を科して、財産刑に處することをせざる也、□二以下の行爲を爲したる者は三十日以下の拘留又は二十圓以下の科料に處せらるべし、卽ち、一、合力、喜捨を強請し、又は強て物品の購買を求めたる者、二、乞丐を爲し、又は爲さしめたる者、三、濫に寄附を強請し、又は收利の目的を以て強て物品、入場券等を配付したる者、四、入札の妨害を爲し、又は共同入札を強請し、若くは落札入に對し其事業又は利益の分配、若くは金品を強請したる者、五、他人の業務に對し惡戯又は妨害したる者、六新聞紙、雜雜其他の方法を以て誇大又は虛僞の廣告を爲し不正の利を圖りたる者、七、新聞紙、雜誌其他の出版物の購讀又は廣告揭載に付強て其申込を求めたる者、八、申込なき新聞紙、雜誌其他の出版物を配付し又は申込なき廣告を爲し其料金を請求したる者、九、祭事、祝儀又は其行列に對し惡戯又は妨害を爲したる者、十、自已占有の場所内に老幼、不具又は疾病の爲扶助を要する者若くは人の死屍死胎あることを知りて速に警察官吏に申告せざる者、十一、公衆に自由に交通し得る場所に於て喧噪し、橫臥し又は泥醉して徘徊したる者、十二、公衆の自由に交通し得る場所に於て濫に車馬舟筏其他の物件を置き、又は交通の妨害となるべき行爲をなしたる者、十三、公衆の自由に交通し得る場所に於て危險の虞ある時點燈其他豫防の裝置をなすを怠りたる者、十四、劇場、寄席其他公衆會同の場所に於て會衆の妨害を爲したる者、十五、雜沓の場所に於て制止を肯ぜず混雜を增す行爲を爲したる者、十六、人を誑惑せしむべき流言、浮説又は虛報を爲したる者、十七、妄に吉凶禍福を説き、又は祈禱、符呪等を爲し、若しくは守札類を授與して人を惑はしたる者、十八、病者に對し禁厭、祈禱、符呪等を爲し、又は神符神水等を與へ醫療を妨げたる者、十九、濫に催眠術を施したる者、二十、官職、位記、勳爵、學位を詐り、又は法令の定むる服飾、徽章を僣用し、若くは之に類似のものを使用したる者、廿一、官公署に對し不實の申述をなし又は其義務ある者にして故なく申述べざる者、廿二、人の飮用に供する淨水を汚穢し又は其使用を妨げ若くは其水路に障碍したる者、廿三、河川溝渠又は下水路の疏通を妨ぐべき行爲をなしたる者、廿四、自己又は他人の身體に剌文したる者、廿五、出入を禁止したる場所に濫に出入したる者、廿六、官公署の榜示し若くは官公署の指揮に依り榜示せる禁條を犯し、又は其設置に係る榜標を汚瀆し若くは撤去した者、廿七、水火災其他の事變に際し、制止を肯せずして其現場に立入り若くは其場所より退去せず又は官吏より援助の求を受けたるに拘らず傍觀して之に應せざる者、廿八、濫に他人の標燈又は社寺、道路、公園其他の公衆用の常燈を消したる者、廿九、他人の田野、園囿に於て菜果を採摘し又は花卉を採折したる者、卅、使用者にして勞役者に對し故なく其自由を妨げ又は苛酷の取扱を爲したる者、卅一、濫に他人の身邊に立塞り、又は追隨したる者、卅二、他人の身體、物件又は之に害を及ぼすべき場所に對し物件を抛擲し又は放射したる者、卅三、神祠、佛堂、禮拜所、墓所、碑表、形像其他之に類する物を汚瀆したる者、卅四、人の死屍又は死胎を隱匿し、又は他物に紛はしく擬裝したる者、卅五、一定の飮食物に他物を混じて不正の利を圖りたる者、卅六、不熟の果物、腐敗の肉類其他健康を害すべき飮食物を營利の用に供したる者、卅七、濫に他人の繫ぎたる舟筏、牛馬、其他の獸類を解放したる者、是れ也、第一より第三及び第七、第八等に就いては、恐喝取財罪及び強盜罪を參照せよ、第四及び第五に就いては信用及び業務に關する罪を參照すべし、第十の罪に就いては遺棄の罪を參照すべし、第十一乃至十五の罪に就ては往來妨害罪を參照せよ、第二十の罪に就いては官名詐稱罪の部を、第廿一に就いては僞證及び誣告罪を、第廿二及び廿三の罪に就いては飮料水に關する罪を、第廿五、第廿七に就いては抗命又は違令の罪を、第廿六に就いては毀棄罪の部を第卅三及び卅四に就いては禮拜所及び死屍に關する罪を、第卅一に就いては風俗を害する罪を參照せよ、□三以下の行爲をなしたる者は二十圓以下の科料に處せらる、卽ち、一、許可なくして人の死屍又は死體を解剖し又は之が保存を爲したる者、二、公衆の目に觸るべき場所に於て、袒裼、裸體し、又は臀部、股部を露はし、其他醜態を爲したる者、三、街路に於て屎尿を爲し又は爲さしめたる者、四、濫に銃砲の發射を爲し、又は火藥其他の劇發すべき物を玩びたる者五、家屋其他の建造物若しくは引火し易き物の近傍又は山野に於て濫に火を焚く者、六、石灰其他自然發火の虞ある物の取扱を忽にしたる者、七、開業の醫師、産婆故なく病者又は姙婦産婦の招きに應ぜざる者、七、炮煮、洗滌、剝皮等を要せず其儘食用に供すべき飮食物に覆蓋を設けず店頭に陳列したる者、九、故なく官公署の召喚に應ぜざる者、十、濫に禽獸の死屍又は汚穢物を棄擲し又は之が取除の義務を怠りたる者、十一、監置に係る精神病者の監護を怠り屋外に徘徊せしめたる者、十二、濫に犬其の他の獸類を嗾かし又は驚逸せしめたる者、十三、狂犬、猛獸等の繫鎖を怠りたる者、十四、公衆の目に觸るべぎ場所に於て牛馬其他の動物を虐待したる者、十五、濫りに他人の家屋其他の工作物を汚瀆し若しくは之に貼紙をなし又は他人の標札。招牌、賣貸家札等を汚瀆し又は撤去したる者、十六、橋梁又は堤防を損壞するの虞ある場所に舟筏を繫ぎたる者、十七、通路なき他人の田圃を通行し又は此に牛馬諸車を牽入れたる者、是れ也、以上列記したる犯罪を教唆し又は幇助したる者は、總て正犯と同じく之を處罰すべきを原則とす、是れ刑法上の犯罪と異なる所なり、但し情狀に依り其刑を免除することを得べし、卽ち情狀を酌量して之を免除すると否とは警察犯處罰者の權限に屬するものとす、終りに本令は四一年一〇月一日より施行する所に係る。(四一年九月二九日内務省令一六號四一年九月勅二四五號、刑一六條乃至一八條參照)
形式犯
(けいしきはん)一に之を非結果犯と云ひ、實質犯又は或る意味に對する結果犯に對する用語なり、卽ち或種の犯罪に於て、法律は其犯罪の完成に關し單に行爲を以て其要件となし、結果の發生如何を除外する場合に存す、例へば侵害又は危險の發生と否とを問はず、單に法規に違背することを罪とする場合の犯罪は此例なり、之に反して實質犯は常に犯罪の實行に依て法益を危害さるか、又は危害さるゝの虞ある場合の罪をいふ也、或る説に依れば、形式犯と實質犯との區別は、結果の犯罪に於ける關係の分量的の差に過ぎずと、是れ此二者の區別を實質上より觀察したるものにして、實質上より論ずれば此二者の區別は實に論者の言の如きも、斯る見解は二者を區別する能はざるに至らしむるの恐あり、從て法學上兩者の區別に依る實益を沒却するもの也、故に余は形式上の觀察に基き、兩者の差を法律が結果を其罪の構成要件となすか否やに依りて別つを可とす、之を要するに形式犯とは、其罪の完成に關して單に行爲を以て要件となし、結果の發生如何を問はざる罪をいふ也、例へば濫りに車馬を疾驅し又は人の群集したる場所に車馬を牽くの罪の如き是れ也。(實質犯、非結果犯、動作犯の部及び舊刑四二五條以下參照)
刑事裁判所
(けいじさいはんじよ)刑事事件を審理裁判する國家機關を云ひ、司法裁判所の一種なり、司法裁判所に於ける通常裁判所は之を別ちて大審院、控訴院、地方裁判所、區裁判所となす、又之を區別して判決裁判所、決定裁判所、豫審裁判所、或は上訴裁判所、抗告裁判所等となす、(各其部を參照せよ)、而て此等各種の裁判所は、事物の輕重、土地の如何により各事件を管轄するものにして、刑事々件は、先づ犯罪地、被告人所在地の如何により同等なる各裁判所に其事件を分配す、土地管轄は則ち是也、事物管轄は、犯罪の輕重、職務の如何により大審院以下の裁判所に分配せらるゝものにして、各其部に説明したれば、茲には只區裁判所の管轄のみに就いて、四一年三月法三〇號に基き、其改正せられたる部面のみを略説せん、之に依れば、區裁判所は刑事に於て左の事件に就き裁判權を有するものにして、卽ち□一拘留又は科料に該る罪、□二窃盜罪、□三窃盜及び遺失物漂流物其他人の占有を離れたる物の橫領罪に關する賍物罪、□四家宅侵入罪及び其未遂犯、賭博及び富籖に關する罪、單純過失傷害罪、□五一年以下の懲役若は禁錮又は三百圓を超過せざる罰金に該る罪是なり、但し以上各號に該當する場合に於ても、第二以下の罪に就ては豫審を經ざるものに限らる、是れ蓋し豫審を經べきものは事態重大なりとせらるゝものなるが故に、單獨制なる區裁判所をして管轄せしむるは、審理を鄭重ならしむる所以に非ずとなすが故也、されば豫審を要せざる場合に於ても、二個以上の主刑中其一個を科すべき罪にして、其刑たる前記の第一より第五の各號に適せざるものある時は是れ又區裁判所の管轄に屬せざるものとす、但し上記第五號卽ち一年以下の懲役若は禁錮又は三百圓を超過せざる罰金に該る罪に就いては、累犯又は併合罪として處分すべき場合に於て、加重の結果其範圍を超ゆる懲役罰金等に該る場合と雖も、尚區裁判所に於て管轄權を有すべきもの也、蓋し此場合は犯罪の情狀に於て異なるにあらずして、再犯に係るとか、又は數罪競合に係るが故に其刑を加重するに過ぎざれば、例令一年を超ゆるも、三百圓を超過するも其鄭重の度に於て手續を異にするの必要大ならず、是れ尚區裁判所の管轄に屬せしむる所以とす。(四一年三月法三〇號及び裁構法一六條以下參照)
- 英
- Criminal court
- 独
- Straf-gericht
- 仏
- Cour de justice criminelle
刑事政策
(けいじせいさく)犯罪鎭壓に關する刑事上の政策にして、元來犯罪鎭壓の手段としての社會政策は、犯罪の誘導となるべき社會的條件を排除若くは制限することを勉むるに在り、從て刑罰は其目的に在らずして手段なりとの見地に立ち、各犯人に就て其特質に從ひ刑罰なる苦痛を科することに依て、犯人が再び罪を犯すことを防止し、又他方に於ては良民の罪を犯すことなき樣に畏嚇するに在り、刑事政策の應用として刑罰に關し注意すべき黙は、□一短期なる拘禁刑は犯人を畏嚇改善し、又は社會より分離するの目的に適せず、故に此種の刑罰に代ふる強制的勞働、名譽刑又は公衆集合の場所に立入ることの禁止等を以てすることを至當とす、□二被害の僅少なるものに就いては之を處罰せざるを可とす、蓋し此種の犯罪を處罰するは實益尠なく、反て犯人を自暴自棄するに至らしむる虞あればなり、故に此場合に處するに所謂微罪不檢擧主義を以てするは刑事政策の旨に適す、或は適當なる方法に依る私和を認め、又は輕微なる犯罪に對しては之を處罰することを免除し、他に適當なる方法を講ずるは其宜を得たるものなり、□三幼年者の犯罪に就いてはなるべく自由刑に代ふるに國家の強制的教育を以て犯人を改善するを可とす、現時の制たる懲治場留置處分は此主旨に基くものなり、□四特定の場合に於て偶發犯人に就いて宣告せられたる刑は、其執行を免除し又は其效力を消滅せしむるの方法を採用するを可とす、舊法たる刑の執行猶豫に關する法律及び改正刑法の刑の執猶豫の制度は此目的に應ずるもの也、□五立法上及び法律の適用に關しても、犯人の特質に應じて其刑罰を科することを要す、故に偶發犯人に對しては刑罰は畏嚇の目的に出づるにて足れり、從て例へば謀殺に就いても常に死刑を科するの必要なく、又罰金刑はなるべく換刑を禁じ犯人の財産の程度に應じて之を科することに依て其目的を遂ぐるを要す、必然犯人に對しては、法律秩序を維持する爲め之を社會より分離することを要するは、猶ほ精神病者を一定の場所に監置することを要するが如し、而て犯人が必然犯人なるや否やは必らずしも累犯を待て後に知るべきにあらず、初犯に於て亦之を識別することを得べし、次に未だ必然犯人といふ程度には達せずと雖も、稍〻此狀況に近き犯人に對しては、特に長き且つ激烈なる刑罰に依て其犯罪的傾向を矯正することを勤めざるべからず、而て此方法は幼年なる職業犯人に就ても亦其效を表することあり得べき也、□六刑罰の目的を達する爲めには刑罰を宣告する機關と刑罰を執行する機關と互に相關連することを要す、而して刑罰を宣告するに當り其刑期を確定せず、刑の宣告後其犯人の情狀を探究して、法律上定められたる刑期の範圍内に於て、其犯人に適合する刑期を確定するの主義、卽ち不確定刑宣告主義は其可否に就て是非の爭あるも、北米合衆國の諸州に於ては此制度を採用して着々其效を奏しつゝあり、以上略述したる諸原則を採用するに當ても或は、犯人に對する刑罰の效果を注意するのみならず、尚社會一般に對する效果に就いても常に着眼せざるべからず、其他犯罪の發生が犯人の社會的境遇に基く點を注意し、此点より刑罰目的の實行を制限すべし、且つ犯罪の發生以前に於ける社會全般に對して其發生を警戒するを要する也、以上刑事政策に關する硏究は、法學上一の分科を爲し、之を刑事政策學と名づく、刑事政策學の硏究範圍は、卽ち犯罪を行ふ當時に於ける犯人の特質を知る爲めに、一方には其人の性來の特質の發達を考へ、他の一方に於ては出生後に於ける外圍の社會的境遇を稽査し、此實質基礎に基いて犯罪を鎭壓し、又は其發生をなるべく抑壓するが爲めに、極めて必要の方法を硏究し、且つ刑罰をして宜く其目的に適合する樣に務め、依て以て個人の一般性狀を純潔ならしむること、並に社會の狀況を安寧秩序的ならしむるに在りとす。(犯罪學の部參照)
刑事未成年者
(けいじみせいねんしや)刑事上の責任を辨識すべき精神狀態の未だ完全に發達せざる者をいふ、凡そ法律上の效果を發生すべき行爲を行ふに就き必要なる精神成熟の時期は、其行爲の性質及び輕重に依り必ずしも一致することを得ず、或る行爲に對しては比較的短期の發達を以て完成するも、或行爲に就いては更に長期の發達を必要とすることあり、從て民事上の成年と、刑事上の成年は等しからず、同じく民事上に於ても債權關係に於けると、婚姻又は相續に關するとに依り異なる、刑法上の行爲に就ても之と同一理由に依り、其犯罪行爲に依り必要なる精神成熟の年齡を異にせざるべからず、而て精神の發達は猶肉體の發育の如く漸を追て進むものなれば、精神作用の稍成熟したる時期と否と、及び其過渡の時期を區別するを得べし、舊刑法は此理由に基き、刑事上の成年を民法と同じく原則として滿二十歳とし、刑事未成年の期間を分ちて十二歳未滿(此時期に在る者は例外なく責任無能力とせり)十二歳以上十六歳未滿(其是非を辨別したると否とを區別し、關係的責任能力者とせり)十六歳以上二十歳未滿(略ぼ責任能力者とするも尚其責任を宥恕して本刑に一等を減ぜり)の者の三期となせり、之に反して新刑法は、滿十四歳以上を以て刑事成年者となし、滿十四歳以下の者の行爲は常に之を罰せざるものとなせり、卽ち刑事未成年者は單に十四歳未滿の者に限り、過渡の時代にある關係的能力者を認めざりし也、其理由は、精神は年齡に從ふて發達すべきや論なしと雖も、責任能力の問題としては、一の行爲は本人の責に歸すべきか否やの二者其一を出でず、既に一の行爲を以て本人の責に歸すべきものとする以上は、刑罰は單に本人の惡性に基きて之を裁量すべく、單に年齡の故を以て責任に程度を附し、常に輕減の理由とすべきに非らず故を以て舊刑法の如き責任の過渡期又は疑問時代を認めざりし也。(刑四一條)
刑の變更
(けいのへんかう)或る犯人に科すべき刑罰に變更を生ずるをいふ、例へば明治十三年布告の舊刑法廢止せられ、四〇年發布の新刑法實施せらるゝ場合に、新舊刑法の刑或罪に對し異なる場合をいふ、此場合には、犯罪後の法律に因り刑の變更ありたるときは、其輕きものを適用するを原則とす、卽ち新舊比照の問題を生ずる也、此原則は法の不遡既往に對する例外にして、此例外を認めたるの理由は、凡そ刑法は社會の秩序を保護する爲めに制定したるものにして、新法に於て其罪を論ぜず、又は舊法に比して輕き刑罰を科する規定を設けしは、立法者に於て今日の社會狀態に鑑がみ、舊法の如く其罰を論じ又は重く處分するの必要なしと認めたるに外ならず、又他方より見るも、新舊比照は博愛主義の趣旨に基き、法の恩惠たる主旨に適するに依る、故に學者は數度刑罰法規の變更あり、從て刑に數度の變更を生じたる場合は、其新舊二法のみならず、介在法をも比照して、最も輕き刑を規定したる法律を適用すべしとなす、茲に輕き刑といふは、其主刑の輕重のみならず、附加刑の有無輕重をも比照して最も輕きものをいひ、其輕き刑を科するものと雖も無罪の場合に比照すれば其罪を論ぜざるものを以て猶輕きものとす、茲に注意すべきことあり、或る法に於て其有效期間を定め、其期間内に犯せる罪のみを處罰する趣旨のものありとせよ、此法が有效期間を經過したる場合に、其期間經過後に未だ判決に至らざる犯行ありとせば、舊法たる其の法を適用して罪となすべきか、又は其效用を失ひたる後は罪を論ぜざるが故に無罪とすべきか、卽ち本問に對する新刑法六條の適否如何にあり、有力なる學者の反説あるに拘らず、余は此場合に舊法たる其法を適用し、刑の變更ありたる者として新舊を比照すべきものに非ずと信ず、其理由は、此場合には刑の變更ありたるものといふを得ず、卽ち遡及すべき新法なく、又常に該場合を無罪とせば、此等刑罰法規の有效期間の末日に行はれたる違反行爲は、常に其刑罰を免るゝの不條理なる結論を生すべければなり、但し之と異なりて、刑罰法規が其處刑の條件として特定の規則に違反したることを必要とする如き場合、例へば局外中立の命令に違反する罪の如き、此刑罰法規は其特定の規則(局外中立命令)の消滅に依て效力を失ふべきに非らざるが故に、全然比照の問題を生ずることなき也。(刑六條、九四條新舊比照の部參照)
脅迫罪
(けうはくざい)自己又は親族の生命、身體、自由、名譽又は財産に對し害を加ふべきことを以て脅迫し或は以上の脅迫又は暴行を以て人をして義務なき事を行はしめ、又は行ふべき權利を妨害するの罪也、別て單純脅迫罪と強制罪となす、(甲)單純脅迫罪=自己又は親族の生命等の法益に對し、害を加ふべきことを以て脅迫するの罪也、本罪の構成要件を擧ぐれば、□一自己又は親族の生命、身體、自由、名譽又は財産に對すること、故に自已又は親族以外の者に對する旨の加害の告知は脅迫とならず、又生命、身體、自由、名譽又は財産に對するに非らざれば本罪にあらず、茲に疑となるは貞操なり、貞操に對する加害の告知は、或は肉體に對する加害となるべく、或は名譽に對する加害の告知となるべきが故に、余は本罪を構成ずべきものと信ず、次に犯人に於て以上のものに對し眞に害惡を加ふべきことを要せず、□二加害の告知を以て脅迫したること、脅迫とは一定の害惡の告知に依り、他人を威嚇する行爲を總稱す、卽人の意思又は行爲の自由を拘束するに在り、脅迫は他罪を犯す手段たる脅迫を除外して解すべきものなるかに就いては二説あり、例へば強盜罪の手段たる脅迫の如し、或る説に依れば此の如き場合は其罪と本罪との想像上の俱發なれば、刑法五十四條を適用すべきものなりと、他の説に依れば、之を想像上の數罪と解することなく、脅迫罪は斯る他の罪を構成せざる場合にのみ成立すとなす、通説は此第二の説に從ふが如し、そは兎に角、本罪に於ける脅迫の内容たる害惡の告知は、前述の如く制限さるゝものなるも、眞に加害の意あるを要せず、又被脅迫者に加害の告知が認知せらるゝことは必要なるも、實際上畏怖の念を生ぜしむるの必要なし、又脅迫の手段たる害惡の告知は口頭を以てすると書面に依るとを問はざる也、本罪の刑は一年以下の懲役又は百圓以下の罰金とす、(乙)強制罪=本罪は以上の如きものに對する害惡を加ふべきことを以て脅迫し、又は暴行を用ひ、人をして義務なき事を行はしめ、又は行ふべき權利を妨害するの罪也、故に本罪は行爲の自由に對する罪なること明か也、本罪が逮捕監禁罪と異るは特定の行爲が強制せらるゝにあり、次に本罪に依り強制せらるゝ義務なき行爲が他の犯罪行爲なるときは、脅迫又は暴行の程度強弱に依り、脅迫者又は暴行者は其罪の間接正犯となる場合あるべく(此場合に下手者は無意の行動として、又は緊急狀態行爲として無罪たり)或は教唆犯となることあるべし、又本罪の行爲を爲すに依て財産上の給付をなさしめたるときは、或は強盜罪若くば恐喝取財罪を構成すべし、本罪に對する刑は三年以下の懲役とす、本罪の未遂卽ち脅迫又は暴行をなすも未だ義務なき行爲をなし、又は行ふべき權利を妨害するに至らざる場合と雖も、總て之を處罰せらるべし、終りに注意すべきは、舊刑法に於ては脅迫罪は總て親告の罪なりしも、改正刑法は之を親告となすことなく、職權訴追の罪となしたることなり、蓋し舊刑法は犯人にして脅迫により畏怖せざる限りは、之を罰するの必要なしとして親告罪となせしならんも、此事たる前説の如く正當ならざれぱ、新刑法は之を改正したるものとす。(刑二二二條、二二三號、舊刑三二九條)
- 英
- Guilty of using threat
- 独
- Bedrohungsverbrechen
- 仏
- Infraction de la menace
建議
(けんぎ)或行爲に出でんことを議上論白することをいふ、建議と建白は略ば同義なるも、建議は其論白を數人にて議上する場合に用ゐ、建白は之に反して個人が希望を論白する場合に用ふの差あり、例へば政府に建議すといふときは、議會等が之を議上して其論白をなすことを意味するが如し、又政府に建白すといふときは、人民が自己の志望又は請願を論述して上白するが如き是れ也、憲法に依れば、兩議院は法律又は其他の事件に付き各々其意見を政府に向て建議するの權を有するが如きは此用例也。(憲四〇條、議院法五一條)
建白
減輕
(げんけい)加重の反對を意味す、刑法上に於て、或種の犯人に科すべき法定の刑より、或理由に基きて減輕する場合は此例なり、刑法上に於ける輕減は之を別ちて二となす、一は法律上の輕減にして、一は酌量輕減なり、法律上の輕減には從罪輕減、未遂輕減、自首輕減等ある、酌量輕減とは犯罪の情狀憫諒すべきものとして裁判上なすもの也、終りに、減輕は減刑と異なるを注意すべし、憲法上天皇の大權に屬する減刑は、特赦と同一の理由に基き大權行爲として命するものなるも、茲にいふ減輕は刑法上又は酌量の結果たる刑の減輕なり。(刑六六條乃至七二條)
減殺
(げんさい)減ずるが爲めに殺ぐことをいふ、例へば減殺訴權といふときは、或權利の範圍又は數を減ぜしめん爲めに、裁判所に訴求する權利をいふが如き是れ也、民法に依れば、相續の遺留分權利者が贈與又は遺贈に依り、其遺留分を害されたるときは、遺留分を保全するに必要なる限度に於て遺贈及び或種の贈與の減殺を請求することを得るものにして、先づ此場合には遺贈を減殺し、尚足らざるときは贈與を減殺す、而て此等の減殺は其目的の價額に應じて之を平等に減殺すべきもの也、但し贈與は後のものより初めて前のものに及ぶ。(民一一三三條乃至一一四五條、九六七條二項)
結果犯
(けつくわはん)二義あり、或は形式犯に對し實質犯を意味することあり、所謂實質犯とは法律が其犯罪構成要件として結果の實現を必要とする罪をいひ、例へば人を殺したる罪は他人が死すてふ結果の實現を其構成要件とす、從て殺人犯は實質犯卽ち結果犯なるを知るべし、此他傷害罪、窃盜罪、詐僞取財罪等普通の犯罪は之に屬す、次に或は結果犯なる語を加重犯と同樣に使用する場合なり、所謂加重犯とは其結果に就ての犯意若くば過失を要せず、單に現實に生じたる結果に就いて其罪を加重する犯罪をいふ、例へば傷害致死の如し、此犯罪たるや傷害に對する犯意を必要とするも、因て人を死に致すことに就ては犯意あるを要せず、又過失の存することをも必要となさゞるを通説とす、只致死の結果生じたるとに對して其刑を加重する也、斯る犯罪に於ける因果關係の範圍は、從來學者間に疑論の存する所にして、或は主觀的に豫見し若しくば豫見し得べかりし場合に限り其責に任ずとなす説あり、然れども豫見ある場合は前例に於ては致死に非ずして殺人犯なり、豫見し得べかりし場合は則ち過失の存する場合にして、通説に依れば過失を要素とせざるが故に此説明は不充分なり、或は一般の因果關係の例外として此場合に限り相當の結果に就て責ありと論じ、又は通常生ずべき結果に就て責を負ふとなし、其他因果關係は總ての場合に相當の結果に限るが故に、此原則に從て其限界を定むべしとなす、此最後の説を可とす尚因果關係に關する説明を參照すべし、之を要するに結果犯とは、結果の存在を構成要件とする犯罪、又は結果の存在如何により刑を加重すべき犯罪を意味し、其何れに從へるかは各場合の用法を注意して知るの外なし、只通常は此後者の用例に從ふ學者多しといふことを得るのみ。(加重犯、形式犯の部參照)
公海
(こうかい)一般の海洋にして何れの國家にも屬せざる部面をいふ、海洋は之を總て領有し得べきや否やに就いて、國際法の鼻祖たるヒユーゴー、グロチユース海洋自由論を著してより、反説尠からざりしに拘らず、漸次之を領有すべからざる説、勝を制し、沿岸海及び領海以外の海洋に就いては、一般自由なる航行權ありとなすに至れり、而て茲に公海といふは、沿岸海卽ち領地より干潮の時三海里の海洋、及び狹義の領海卽ち灣口六海里以内の領地を以て閉ぢられたる海洋を除き、其他一般の海洋をいふ也。(領海の部參照)
公務執行妨害罪
(こうむしつこうばうがいざい)公務員たる身分を有する者に對し、又は公務員の爲したる處分に對する妨害の罪を總稱するものにして、之を別ちて公務員に對し其職務に關して暴行脅迫を加へたる罪と、封印又は差押標示を損壞する罪となし、前者を更に執行妨害罪と行爲強求罪とに區別す、舊刑法に於ては此種の罪に、所謂官吏侮辱罪を包含したりしが、改正刑法は之を常人に對する侮辱罪と區別せず、其特別の規定を廢止せしが故に、茲に公務執行妨害罪の一種として認むることを得ざるに至れり、以下上記の區別に依て其槪念を略述すべし、□一執行妨害罪=公務員の職務を執行するに當り、之に對して暴行又は脅迫を加ふる罪をいふ、本罪の構成要件を上ぐれば、A公務員に對することを要す、公務員とは官吏公吏、法令に依り公務に從事する議員委員其他の職員をいふ、(1)官吏とは特別公法上の行爲に依り任命せられ、國家事務の擔任を爲すものを指し、官廳を組織する自然人の如き是れなり、但し雇傭契約に依り國務を行ふ雇員は官吏にあらず、(2)公吏とは特別行法上の行爲により選任せられ、主として公共團體の事務を擔任する者を意味し、自治團體の吏員及び公證人の如き此例なり、但雇員を包含せざるは官吏に同じ、(3)議員とは選擧の方法に依りて其資格を得、國務其他の公務に從事するものを云ひ、貴衆兩院議員、府縣郡市町村會議員の如き、府縣郡市の參事會議員の如き此例なり、(4)委員とは特別行法上の行爲たる委託に基き特定の公務を執る者をいひ、例へば市制又は町村制に基き特定の事務を委託され、其事務を執る委員の如き、又は所得税調査委員の如きは此例なり、(5)其他法令に依り公務に從事する職員とは、法令の規定に依り公務を執る總ての人を云ひ、囑託の如きは此例なり、但し執達吏代理の如き、雇員の如きは此内に包含せらるゝや否や、執達吏代理は法令の規定により公務を執行する者といふを得べきも、雇員は雇傭契約に基き公務に從事する者なれば、特に法令が此等の者に事務を分配して執務せしむるに非らざる限りは公務員にあらずと解す、以上略述せし公務員の内本罪の客體たるべき者は執行員に限るや否や、舊刑法は法律規則を執行し又は行政司法官署の命令を執行するに當り云々と規定したるが故に、執行とは強制してまでも其職務を實行すること、特に人又は物に對し、形式上及び實質上確定したる國家意思、卽ち法律命令又は行政處分若くは司法裁判を實行するの謂なりと解せられしも、改正法は單に職務を執行しと改めたるが故に、舊刑法の如き執行の觀念を認むべきに非らず、從て職務の執行といふも職務を行ふと云ふも同一なれば、本罪の客體を執行員と限るべき理由なく、反對に公務員其職に在る以上は總て執行員といふとを得る也、B職務の執行中に係ることを要す、茲にいふ職務執行は適法なることを要する也、元來公務員の職務執行適法なりといふは、其權限を超へざることなり法は二の標準に依りて公務員の權限を定む、一は職務を執行すべき土地の範圍を限定することに依て、一は職務を行ふべき事物の種類を制限することに依る、前者は土地の管轄にして後者を事物の管轄といふ、而て公務員が適法に職務を執行したりといふには、其士地の管轄區域内に於て且つ定められたる事物の範圍内に於て爲したる場合ならざるべからず、然らずんば公務員の行爲にあらずして一私人の行爲のみ、故に以上の適法不適法は職務の執行たるや否の別るゝ點にして、形式上及び實質上に於て其權限を超ゆるときは公務員としての行爲に非らざるに至る、只公務員が適法なりと誤信したるの理由を以て適法なる職務の執行と爲すとを得ざる也、或は客觀的に違法なる場合と雖も公務員が適法なる職務行爲なりと信じて爲したる行動に對しては、臣民は是が是非を判斷することを得ざるが故に、此の如き行爲に對して抗拒したるときは常に本罪を構成すと、又一説なり、次に本罪は其執行中ならざるべからず、法文に職務を執行するに當りといふは此意なり、されば職務執行の場所に趣く途中に於ける暴行の如きは、執行妨害を豫見するに在らざれば本罪を構成せず、況んや其歸途に於ておや、C本罪は以上の外暴行又は脅迫を以て成立す、暴行は公務員に對し直接に違法の體力を加ふる外、間接に違法の腕力を使用する場合を包含す、例へば公務員の乘車を顚覆し、又は其隨伴者を毆打するが如し、脅迫は急迫にして重大なる害惡の告知を以て公務員の精神的反抗を抑壓するをいふ、舊刑法は此外尚抗拒するを要すと定るも、暴行脅迫を加ふることは則ち抗拒する所以なるが故に、此の如き文字を使用せず、D本罪の處分は三年以下の懲役又は禁錮とす。□二行爲強求罪=公務員をして或處分を爲さしめ若くは爲さゞらしむる爲め、又は其職を辭せしむる爲め暴行脅迫を加ふる罪也、本罪は公務員をして以上の行爲(卽ち作爲及不作爲)を強求する爲め、暴行又は脅迫を加ふるとに依て既遂となり、公務員が現に強求せられたる行動に出づることを要ぜず、又本罪は行爲を強求するに存するが故に、公務員にして既に其行爲を爲し終りたるときは本罪を構成す、其行爲の執行中なるときは執行妨害罪又は其他の罪となる、本罪に對する刑は執行妨害罪に同じ、□三封印破棄罪=公務員の施したる封印又は差押の標示を破壞し、又は其他の方法を以て封印標示の效用を失はしむる罪を云ふ、本罪に對し舊刑法は之を靜謐を害する罪の一種となせしも、封印又は差押の標示は職務執行の標證にして、公務員が依りて職務の執行を完ふすべき手段なれば、此等を無效とするが如き行爲は間接に職務の執行を妨害するものといふべく、從て新刑法は之を職務執行妨害罪の一種とせり、あ封印とは物の披見、侵入、脱漏其他物に關する任意の處置を防ぐの目的に出でたる封禁を表示する印影にして、公務員が其職務を以て特に施したるものを云ふ、從て一私人の施したる封印又は公務員が職務以外に於て施したる封印は本罪を以て保護せらるゝの限にあらず、い差押の標示とは、權利の實行又は或處分擔保の爲め差押し物件を、差押公務員以外の者の保管に對する場合に、其物が差押に係ることを明白にする記標也、う損壞とは封印又は差押の標示を無效ならしむる行爲にして、物質的の方法を意味す、例へば封印を塗抹し、破壞し、又は除棄するが如し、法律は此の外封印又は標示を無效ならしむる一切の行爲を罰ずるが故に、使用を禁ずる爲めに封印を爲したる場合に於て、其を封印の儘使用する如き行爲も亦罰せらる、本罪に對する刑は二年以下の懲役又は三百圓以下の罰金とす。(刑九五、九六條及び官史侮辱罪の部參照)
拘留
(こうりう)主刑の一種として犯人の自由を拘束する刑罰也、此刑は主として警察犯の如き輕微なる罪の主刑にして、改正刑法に依れば一日以上三十日未滿とし、拘留場に拘置せらるるものなり、拘留は他の自由刑たる禁錮又は懲役と異なる、蓋し禁錮又は懲役は有期のものと雖も一月以上なるを原則とす、之に反して拘留は一月以下たることを原則とすれば也又拘留は罰金又は科料を完納せざる者が、其換刑として科せらるゝ勞役場留置處分と異なる、此等のものを科せらるゝは財産刑の換刑處分たるに過ぎずして、本來の自由刑たる拘留と其趣旨方法を別にする也。(刑一六條、監獄法の部參照)
- 英
- Imprisonment
- 独
- Haft
- 仏
- Détention
國庫債券
(こくこさいけん)國庫の收入を增す目的を以て起したる公債に對し交付せる證券なり、國庫債券なる語は之を抽象的に用ひ、國債に對し交付する證券を意味する場合あり、又は狹義に用ゐて特に國庫債券なる名稱を附し、國庫より債權者に交付したる證券をいふことあり、普通は之を國庫の收入を增す目的を以て起したる國債に對し交付せる證券を指す、此證券は有價證券の一種にして、債權其ものが該證券に化體したるが如きを以て、國債其ものゝ一部を現わすに國庫債券なる名稱を以てする者あれども、正當なる用法に非らず。(三七年二月大藏省令四號、三七年五月同一七號同年一〇月同四一號、三八年二月同八號、同年四月同二號、三七年一〇月遞信省令六七號)
國交に關する罪
(こくこうにくわんするつみ)本罪は主として國際交通の和親を侵害する罪を總稱し、之を別ちて外國の君主、大統領又は使節に對する暴行脅迫及び侮辱罪、外國に對し侮辱を加ふる目的を以て其國の國旗國章を損壞汚去する罪、私に戰鬪を爲すとに關する罪、局外中立に關する命令に違背する罪となす、左に順序を追ふて略説すべし、□一外國の君主、大統領又は使節に對する侮辱又は暴脅罪=本罪の性質に就いては、或は之を外國法若くば國際法に依て保護せられたる制度を侵害する罪となし、或は國内法に於て保護せらるゝ利益、卽ち帝國と外國との間に於ける平和狀態を危害する罪なりとなす、改正刑法の後説に從ひたるは、之を國交に關する罪の一種となしたるより見るも明かならん、以下本罪の構成要件を擧ぐれば、あ客體、君主、大統領又は使節に對すること、茲に君主とは我國に滯在せらるゝ外國の主權者を云ひ、其滯在の理由如何を問はず、我國に現在する外國の主權者を總稱す、而して外國の國家は、帝國、王國、大侯國又は侯國の何れに屬するも可なり、但し廢位されたる者を含まず、例へば前布哇女王の如きは君主に非らざるなり、次に大統領も亦君主と同じく我國に滯在せらるゝ者なるを要す、外國の攝政、羅馬法皇及び共和國に於ける主權者たる一般人民は、謂ふ所の君主又は大統領に非らず、但し外國の君主、大統領は必らずしも修好條約國の元首のみに限らず、苟くも國際法の主體たる國家の元首なれば可なりとす、次に使節には外交上の使節と儀式上の使節とあり、又臨時の使節たると否とを問はず等しく使節なり、使節は我國に派遺せられたる者ならざるべからず、蓋し本罪は帝國内に於ける行爲に限り罰するに過ぎざれば也、ろ以上の者に對し侮辱又は暴行脅迫を加へたること、侮辱とは以上の者の威嚴を損ずべき一切の言動を云ひ、暴行とは不法に有形力を弄するを云ひ、脅迫とは他人の精神反抗を抑壓するに足る害惡の通告をいふ、而て本罪に於ける暴行は、人の身體に加へらるゝと又は財産に加へらるゝとを問はずと雖も、常に以上の者に對すろことを必要とする也、又脅迫は恐喝を含むと解すべく、侮辱は公然たると否とを問はざるものと信ず、尚暴行、脅迫侮辱の部を參照せらるべし、う處罰、本罪の刑は君主又は大統領に對するときは、暴行脅迫者は一年以上十年以下の懲役に、侮辱者は三年以下の懲役に、使節に對するときは暴行脅迫者は三年以下の懲役に、侮辱者は二年以下の懲役に處するに在り、但し本罪は、君主大統領に係る侮辱なるときは外國政府の請求により、使節に關する侮辱なるときは被害者の請求を待て其罪を論ずべきものとす、蓋し本罪は國交の和親を侵害する罪なれば、侮辱を受けたる者の方面に於て介意せざる場合は國際交通の和親を危ふするの恐なきを以て、請求あることを訴追條件となしたるものなり、茲に請求は親告罪に於ける告訴と同じきも、之を告訴となさずして請求となしたる所以は、告訴の方式を遵守せしむるの困難なるを慮りしに因る也。□二外國に對し侮辱を加ふる目的にてなしたる國旗汚損罪=本罪は外國に對し侮辱を加ふるの目的を以て、其國の國旗其他の國章を損壞し、又は除去し、若くは汚穢するの罪を云ふ、外國に對し侮辱を加るの目的に出るを要るが故に、過て國旗國章を汚損するも本罪を構成せず、茲に國旗といふは、其國家を表彰する爲め使用する旗にして、我が國に於ける日章旗の如きものを指す、其他の國章とは、或國家が其國の權力を表彰する爲め使用する一切の徽章を意味し、例へば陸海軍旗、公使館徽章の類をいふ、次に損壞とは毀損又は破壞を指し、除去及び汚穢は國章を侮蔑する其他の行動の總てを云ふ也、本罪に對する處分は二年以下の懲役又は二百圓以下の罰金とす、但し外國政府の請求を待て其罪を論すること前説の罪に同じ。□三私に戰鬪を爲すことに關する罪=外國に對し私に戰鬪を爲すの目的を以て其豫備又は陰謀を爲すの罪也、本罪は此種の行動に依て當該外國の感情を害し、延て帝國との國交を侵害する恐あるに因る、茲に私に戰鬪をなすの目的を以てといふは、宣戰の大權に因る命令を受けずして、擅に戰鬪行爲を爲すの目的に出づるの義にして、外國に對するを要するが故に單に外國の海岸若くは一村落を却掠するの目的に出づるときは本罪にあらず、次に豫備陰謀のみを本罪の内容とせしは、實行卽ち外國に對し私に戰鬪を爲す場合は、事實上想豫し得ざるによる、何んとなれば、外國に對し私に戰鬪を爲したる場合に、事敗るれば則ち其國に於て充分の處罰を受くべく、若し勝たば征服に因る主權者たるべきが故に、之に對して處罰の必要なきを以て也、本罪に對する刑は三月以上五年以下の禁錮とす、而て此刑は自首したる場合は之を免じて科せざる也、□四局外中立に關する命令違背罪=外國交戰の際、局外中立に關する命令に違背するの罪にして、茲に外國交戰の際といふは、帝國以外の國家と國家が交戰中なることを意味す、此の如き場合に於て、帝國が交戰双方の何れにも加擔するとなく、公平不偏の地位を採るの必要を認むるときは、局外中立を宣言すと雖も、若し帝國内に在る者が、交戰國の一方に私して戰爭上の利益を與ふるが如きことあらば、他の一方の感情を害するに至り帝國との國交を危ふするの虞あり、是れ法律が本罪を認めたる所以也、而て本罪は帝國の局外中立命令に違反するに因て成立するものなるが故に、此命令なき以上は本罪を構成することなく、此命令の領布前に爲したる行爲は、後の頒布に係る命令に違背し居りたるの理由を以て處罰することを得ざる也、此の如く局外中立命令の有無は、或行爲をして本罪たらしむると否との分岐点にして、且つ罪たると否との行爲を中立命令に自由に定むることを得るが故に、此種の法規を講學上空白刑罰法規といふ、終りに本罪の故意に就いて注意すべきは、犯人に於て局外中立命令の領布ありたること、又は其内容を知らざるの故を以て罪を犯すの意なしとなすことを得ざること是れ也、蓋し法律の不識は寬宥せざるを以てなり、只局外中立違背の事實其ものを認識するを要するは、一般故意の問題として茲に論するまでもなし。(刑九〇條乃至九四條)
國際紛爭平和的處理條約
(こくさいふんそうへいわてきしよりでふやく)千八百九年七月和蘭國海牙に於て、獨、墺洪、白、清、丁、西、米、黑、佛、英、希、伊、日、和、波、葡、羅、露、暹、瑞諾、瑞西、土等二十六箇國間に締結せられたる所のものにして、列國間の關係に於て、兵力に訴ふることを成るべく制止せん目的に出づる條約也、本條約は周旋及居中調停、國際審査委員、萬國仲裁々判所の組織權限、訴訟手續等に關して規定せられたり、我國に於ては三三年九月三日之を批准せられ、三十三年十一月發布せられたり。(三三年一一月勅令)
誤想犯
(ごさうはん)廣狹の二義あり、狹義に於ては全く夢幻罪と同意義にして、卽ち違法に非らざる行爲を行爲者に於て違法なりと誤認したる場合を云ひ、例へば男女が合意上婚姻外の交接を爲したることに依て或罪を構成すべしと信じたる場合の如き、又は懲戒權の程度を超へたりと誤認して爲したる行爲が實際に於て其程度を超へざりし場合の如し、廣義に於て誤想犯とは、以上の場合の外尚ほ客觀的に違法たる事實を行爲者が違法にあらずと誤認したる場合を包含す、或は此の如き廣義の用法は謬用なりとなすものあり。(夢幻罪の部參照)
在勤俸
(ざいきんはう)元來俸給は一方に於ては官吏の勞務に對する報酬の性質を有し、從て職務の難易に依て特別に追加俸給を給せらるることあり、之を職務俸といふ、例へば陸軍海軍の武官が本俸の外受くる職務俸の如き、帝國大學教授の受くる講座俸の如し、而して俸給は尚此外在勤地の如何に依り、本俸以外に尚追加俸給を給與せらるゝことあり、通常之を在勤俸といふ、例ば外國駐剳の陸軍武官が受くる在勤俸の如き是れ也、又俸給は勤功の如何に依りて追加せらるゝことあり、此勤功に依りて追加せらるゝ俸給を在勤俸といふことなきに非らず。(三六年一二月勅二〇三號、三七年一月勅六號二二條以下參照)
在郷軍人
(ざいごうぐんじん)豫備後備の軍人軍屬にして召集中にあらざる者、現役軍人にして歸休を命ぜられたる者、及び教育召集を受けたる補充兵にして除隊となりたる者を總稱する語也、在郷軍人は主として以上の陸軍々人、軍屬に就いて之を指せども、稀には海軍々人に對しても此稱呼を以てせざるに非らず、凡そ在郷の陸軍々人は、平時に於て每年簡閲點呼を受くるの義務あるものにして、又時に依ては勤務又は演習の爲め召集を受くるの義務を負ふ、戰時に在ては、在郷軍人を召集するを充員召集といひ、動員に方り諸部團隊の要員を充足する爲めになす也、元來充員召集は動員令に依りて之を實施すべきものにして、先づ師團長は、動員令を聯隊司令官に達すると同時に、警視總監、地方長官及び憲兵隊長に其旨を通知すべく、地方長官(東京にては警視總監)は動員令の通知を受けたるときは之を警察署長に達し、憲兵隊長は之を憲兵分隊長に對すべきものなり、かくして一方聯隊區司令官は動員召集令狀を郡市區町村長を通じて本人に送達し、兩々相俟て應召員の充實を計るものとす、而して充召集後缺員を生じたるが爲め在郷軍人を召集するは卽ち補充召集也、其手續以上に略ぼ同し。(三二年一〇月勅三九八號一條、一五條、三七條參照)
財産
(ざいさん)吾人の資産を形成する財物は之を財産といふ、元來財産なる語は、以上の如く人の生活資料を形成する所の有形無形の一切の物にして、身分又は資格の如く處分し得ざるものに對し、處分し得べき利益を包含する語なりとす、人が此世に於けるや、其生活を繼續する爲めに要求する一切の物は、其生存の資料として他人に讓渡し得べき性質のものは之を財産なる語の内容となす也、而して財産なる語は法律上に於ては一步を進め、其積極的たると消極的たるとを問はず、人の活資に關連する總ての物は、處分し得べき利益に關する場合は之を財産と稱するに至れり、換言すれば、人が自己の生活資料として必要なる一切の財物のみならず、相手方たる者が其人に對して有する生活資料の持分をも包含して、其人を基準とし之を其人の財産といふに至れり、卽ち其人の積極財産といへば、其人の所有權に屬する家屋土地其他一切の物、其人に屬する一切の活資たる權利を指し、消極財産といへば其人に屬する債務等を指す也、而て其權利又は物の金錢的價値あると否とを問ざるものとす、從來の立法例に於ては財産は金錢的價値を有することを要したれども、我民法は債權は必らずしも金錢的利益を目的とすることを要せざるが故に、通説は之を解して財産の意義を擴張するものとなし、苟くも人の生活に利益を與ふる有形無形の物は之を財産といふものとなせり、尚次項財産權の部を參照せよ。(民三九九條、八〇一條乃至八〇三條、八〇四條乃至八〇七條、三三年一二月勅四〇九號、商二五條、二六條、二九條等)
財産權
(ざいさんけん)處分し得べき利益を目的とする權利にして、所謂身分權(人格權及び親族權)に對する權利の一分類なり、抑〻財産權なる觀念は、財産なる觀念如何に依りて定まり、財産は常に處分し得べき生活上の資料なりといふときは、財産權は斯る生活資料を目的とする者といふべき也、此の如く財産なる意義如何に依りて其觀念を異にするも、通説に依れば財産は、人の生存上に於て其資料として必要なる有形無形一切の物をいふとなすが故に、財産權は此有形無形なる活資を目的とする權利なりといふべし、但し財産權なる語は財産より狹く、彼の消極財産に對するものを含まず、斯る消極財産は相手方に於て財産權たるものとす、財産は之を別ちて債權、物權、智能權等となすを普通とす、債權とは特定の人に對して特定の給付を要求し得る權利にして、例へば貸金の請求權、利息請求の權利の如し、物權とは直接に物の上に行はれ且つ一般世人に對抗し得るの權利にして、所有權、占有權、地上權、永小作權、地役權、抵當權、質權、留置權、先取特權、入會權、永貸借權等之に屬す、次に智能權といふは、所謂精神所有權とも稱せらるゝものにして、例へば著作權、發明專用權(專賣特許權)實用新案權の如き是れ也、此他商號權、商標權、團體權卽株主權の如きは、通説に依れば之を財産權となす、但し團體權たる社員權、株主權に就ては疑あり、凡そ此種の權利は、持分又は株式の讓渡に依りて移轉するも、其持分の一部分又は一個の株式の讓渡に依りても、讓渡人被讓渡人ともに議決權其他の權利を完全に取得するを普通とするが故に、最近の學説は之を財産權中より除外し、一種特別の權利として其性質を硏むるの傾向あり、尚團體權の部を參照されたし。(債權、物權、智能權の部參照)
歳出
(さいしつ)某會計年度に於ける支出をいふ、國家其他の公共團體が、每年會計年度内に於て經費其他として支出するものは、之を稱して歳出といふ也、國家の歳出は歳入と共に豫算に編入し、豫め帝國議會の協賛を受くべきを原則とす、所謂豫算なるものは、國家の歳出歳入の見積表にして、議會の協賛を經て裁可公布せられたるものは、各官廳を拘束する訓令たるの效あるもの也、而て實際の歳出歳入は會計年度の終に於て、決算をなして會計檢査院之を檢査し議會に報告す、會計檢査院の檢査を經たるときは責任解除の效あるを原則とす。(憲六四條、七二條及歳入の部參照)
再審
(さいしん)汎ねく再審といへば、或事件を再び審査することなるも、通常は訴訟法に於ける再審を指すを例とす、訴訟法上に於て再審といへば、民事訴訟上に於ける再審の訴と、刑事訴訟に於ける再審とあり、以下之を分折略述せん、□一民事に於ける再審の訴=再審とは確定の終局判決に因りて終了したる訴訟手續を更新して其判決の當否を審査する手續をいふ、故に再審は一事不再理の原則の一例外たり又再審は下級裁判所の判決の當否を上級裁判所に於て審査するものに非ず、確定判決を爲したる裁判所が再び其判決の當否を審理するものなるが故に上訴にあらず、或は再審を非常上訴なりといふ者あるも、此語は普通上訴と大に異なる所あるを注意すべし、再審の訴には二種あり、一を取消の訴と云ひ、二を原狀囘復の訴といふ、取消の訴は、主として確定判決が訴訟手續に關する法則に違背したる手續に基きたることを理由とする場合に存し、原狀囘復の訴は確定判決の基本となりたる實體に不法あることを理由とする場合に存するもの也、而て再審の訴は、再審せらるべき事件に付き確定の終局判決をなしたる裁判所の管轄に專屬するもの也、以下此二者に就いて分説すれぱ、(甲)取消の訴、此訴は訴訟に關する法則に違背したる手續に因りて爲したる確定判決に對して提起することを得るものにして、次に述ぶる原因に基くことを必要とす、一規定に從ひ判決裁判所を構成せざりしとき、ニ法律に依り職務の執行より除斥せられたる判事が裁判に參與したるとき、三判事が忌避せられ、且忌避の申請が理由ありと認められたるに拘はらず、其判事が裁判に參與したるとき、四訴訟手續に於て被告若くは被告が法律の規定に從ひ代理せられざりしとき、此四の事由を原因とする場合に限り、其訴訟の主たる當事者より、管轄裁判所に再審の訴を爲すことを得るもの也、(乙)原狀囘復の訴此訴は判決の實體に關する不法を理由として確定判決の廢棄を求むるものにして、次の原因に基くことを必要とす、一刑法に揭ぐる職務上の義務違背の罪を訴訟に關し犯したる判事が裁判に參與したるとき、ニ原告若くは被告の法律上代理人若くは訴訟代理人、又は相手方若くは其法律上代理人又は訴訟代理人が罰せらるべき所爲を其訴訟に關して爲したるとき、三判決の憑據と爲りたる證書が僞造又は變造なりしとき、四證人若くは鑑定人が供述に因り、又は通事が判決の憑據となりたる通譯に因り僞證罪を犯したるとき、五判決の憑據と爲りたる刑事上の判決が、他の確定となりたる刑事上の判決を以て廢棄又は破棄せられたるとき、六原告若くは被告が同一の事件に付ての判決にして、前に確定となりたる判決を發見し、其判決が不服を申立てられたる判決と牴觸するとき、七相手方若くは第三者の所爲に依りて、前訴訟に於て提出することを得ざりし證書にして、原告若くは被告の不利益となるべき裁判を爲すに至らしむべき物を發見したるとき、此の七箇の原因の一に就き原狀囘復の訴をなし得べきも、茲に一の制限あり、卽ち原狀囘復の訴は原告若くは被告が、他の過失に非らずして前訴訟に於て、故障又は控訴若くは附帶控訴に依りて原狀囘復の理由を主張し能はざりしときに限り之を許す也、從て控訴又は故障等に依り、主張し能はざりしことが當事者の過失に基く場合は、原狀囘復の訴は許されざるものとす、次に再審の訴は、總て原告若くは被告が、法律の規定に從ひ代理せられざりしことを理由とする取消の訴を除き、當事者が不服の理由を知りたるときより一箇月の不變期間内に之を起すを原則とす、□二刑事訴訟に於ける再審の訴=事實の誤認ある確定判決を覆し、新なる審理裁判を求むる場合に存す、刑事訴訟に於ては、如何なる場合に於ても被告人の不利益の爲めに再審を許さゞるものなるが故に、無辜が刑を受け、又は輕き責に任すべき者が重き刑を受けたる場合に限り再審を許すものと謂ふべし、而て再審の原因となるべきものは左の如し、一人を殺したる罪に付き刑の言渡ありたるも、其殺されたりと認められし者犯罪後生存し、又は犯罪前既に死去したる確證ありたるとき、ニ同一の事件に付き共犯に非らずして別に刑の言渡を受けたる者あるとき、三犯罪ある以前に作りたる公正證書を以て、當時其場所に在らざることを證明したるとき、四被告人を陷害したる罪に因り刑の言渡を受けたる者あるとき、五公正證書を以て訴訟記錄に僞造又は錯誤あることを證明したるとき、六判決の憑據となりたる民事上の判決、他の確定となりたる判決を以て廢棄又は破棄せられたるとき、以上の六箇の理由の一に基くときは、刑の言渡をなしたる裁判所の檢事、刑の言渡を受けたる者等より再審の訴をなすことを得る也。(民訴四六七條乃至四八三條、刑訴三〇一條乃至三〇九條)
在職
(ざいしよく)其職に在るをいふ、元來公務員なるものは、普通職務を執る爲めに任命さるゝものにして、公務員卽ち官吏、吏員、議員、委員、其他の職員は、其れ〳〵國家事務、自治事務其他の職務を採り、其職責に任じて以て職權を完ふする也、此場合に、其職に在るは則ち在職なり、例へば教員が育英の任務を執り、某校の教授に任ずるは卽ち在職とす、公務員は普通在職の年限に依り、恩給、退隱料等を受くるものにして、在職年數の起算は任命書の交付の日より起算し、退職又は休職の月を以て終るを通則とす。(三二年五月勅一九六號、三五年一〇月勅二三二號參照)
財政
(ざいせい)國家又は公共團體が、其公共の職分を盡さんが爲めに要する經濟物件の收支處理に關する經濟活動をいふ、元來財政なる語は法律上二の意義を有す、一は一國法制の上よりせる觀察にして、卽ち財政を財務行政の意義に使用するもの是れ也、二は上説の如き經濟上よりの觀察にして、國家又は公共團體の經濟活動をいふとなす是れ也、抑〻國家又は公共團體は、其自存の目的たる公共の職分を盡さんが爲めに、諸種の經費を要するものにして、租税、手數料、公債等に關する收入を求め、其依て得たる經濟物件を各次に分配消費する等の經濟的活動を爲すもの也、此活動を國法就中行政法上より觀察して、之を財務行政といひ、主として大藏省、會計檢査院、及び議會に分屬せしめて之を執行するものとす、而て之を經濟上より觀察し、其理法を硏究する場合は所謂財政學にして、此場合の財政なる語は、純乎たる經濟見地より看察したる語なりとす。(財務行政の部參照)
罪體
(ざいたい)刑法に所謂犯罪行爲を組成したる物に同じく、卽ち或物に就いて犯罪の實行せられたる場合に於ける其物體也、換言すれば在來の物件にして犯罪行爲の要件となれるものを云ふ、例へば輸入されたる阿片煙、收得されたる僞造貨幣、授受されたる富籖の如きは、それ〳〵阿片煙輸入罪、僞造貨幣收得罪、富籖を授受する罪に於ける罪體也、元來沒收の目的たる物は、犯罪行爲を組成したる物に限らず、尚左の物を含む、一は犯罪行爲に供し又は供せんとしたる物にして、講學上供用物件と槪稱する物なり、卽ち殺傷の手段に供したる兇器、阿片煙吸食に供したる器具、貨幣僞造の用に供し又は供せんとしたる器械の如し、其二は犯罪行爲より生じ又は因て得たる物にして、先づ犯罪行爲より生じたる物とは、産出的行爲が犯罪の内容たる場合に於ける物體なり、例へぼ僞造貨幣の如し、此種に屬する物は本來罪體の一種なりといふを得べきも、因て生じたる物を別に規定したる刑法の趣旨よりすれば、罪體の内より此種の物を除外して解するを宜しとす、次に因て得たる物といふは、製造又は所持を禁ぜられざる在來の物にして、犯罪行爲に因りて犯人の領得したる物をいふ、例へば收賄の財物、賭博に因りて勝ち得たる物の如し、但し以上何れの場合を問はず、此等の物と交換賣買によりて得たる對價は因得物に非ず、偖て罪體は以上の如く犯罪行爲を組成したる物と信ずれども、學者に依りては必らずしも此の如く解せざるものの如し、舊刑法に於ては罪體は犯罪行爲を組成したる物としては沒收の目的に非らずして、法律に於て禁制したる物件又は供用物若しくば因得物に屬するときに限り沒收の目的物たるに過ぎざりき、從て舊刑法の解釋として、舊法違警罪に屬する犯罪の中、例へば濫りに車馬を疾驅して行人の妨害を爲したる罪に於て、其車馬を沒收するは、舊刑法違警罪の主刑たる拘留又は科料に比し、附加刑たる沒收の餘りに過重なるより、(舊刑法は上説の物件に對しては常に沒收を科すべしとなせり)之が權衡を失する結果を妨がんとして、此等の車馬は同罪の罪體に屬し、沒收の目的物となすべきに非らずと解せり、而して曰く、罪體なる物は供用物件たるを失はず、從て罪體を供用物件より除外せんには特別の規定を要するものとなせり、此解を正當となさば、多くの場合に於て沒收の目的物たる物は、新刑法上總て罪體となることを得べく、從て最初に記せし三種の物件は相亙に同一なることあり得べき也。(刑一九條、沒收の部參照)
歳費
(さいひ)某の職務に在る者が、一歳の費用として支給せらるゝ金錢其他の財物をいふ、歳費は其性質俸給又は給料と異なり、失費償還の意に於ける辨償と其性質を同ふするもの也、元來何の職に在る者も、歳費なる名義を以て實費償還を爲すを得べきも、我現行法上歳費といふときは、議員就中帝國議會の議員に關するものを指すを普通とす、抑議員は其議員だるが爲めに積極及び消極的に失費あるを免れず、而て其積極の費用は召集に應するが爲めの旅費、會期中國會所在地に滯在するの費用等にして、其消極の費用は會期中自己の本業を妨げらるゝに依りて生ずるの損害也、凡そ此等の失費を以て議員各自の負擔となすべきか、又議員をして之が辨償を求むるの權利を得せしむべきかに就いては、諸國の制度必らずしも一ならず、或は之が辨濟をなさず、議員自身をして之を負擔せしむるものあり、然れども此の如きときは自己の資産の其失費を償ふて餘りあるものにあらざれば、議員たるを得ざるの結果を生じ、議員を以て富裕者の專占となさしむるの弊あるを免れず、故に多數の國に於ては、議員に給費するの制度を採る、但し其給費をなす國に於ても、或は日當主義を採るものあり、或は歳費主義を採る國あり、我國に於ては歳費主義を採り、官吏にして議員を兼ぬる者及び皇族並に公侯爵議員の外は、凡て歳費を受くるの權利を有せしめたり、上説の如く、議員の給費は其日當主義を採ると歳費主義を採るとを問はず、唯議員たるに因りて生ずる失費を辨償するを目的とするものなれば、議員の勞務に對する報酬卽ち俸給と異るものとす、故に其金額も亦議員の失費を以て標準と爲すを要するものにして、之より高きに過ぐるときは、歳費は俸給類似の性質を有するに至るべきか故に、議員を以て職業となす職業的政治家を生ずるの弊を免れず、我國に於て議員の歳費額を二千圓となせるは、甚だしく高きに失するを以て、其幣特に甚しきものとす。(二三年一〇月勅二六三號、三〇年勅二三五號參照)
搜索
(さうさく)此語は主として刑事訴訟法に於て使用せられ、必要なる場合には強制して迄も證明の用に供すべき物を發見する作用を意味す、或は犯人又は被告人其他犯罪を發見する作用をも搜索と稱せざるにば非ずと雖も、此の如き用法は類推し得べきを以て、茲には主として物的搜査に就いて略述せん、□一搜査は主として差押の目的を以てするものにして、卽ち檢證の目的物又は文書を發見する爲めになすもの也、□二搜査を受くべき義務者は、凡て證明の用に供すべき物が存在すと思料すべき場所、身體若くは身體に屬する物の支配者にして、刑事訴訟法に依れば、被告人に就ては何等の制限を設けずと雖も、被告人以外の人に付ては常に事實を證明すべき物を藏匿する疑ある事を條件として搜索を許せり、□三搜索の内容は、裁判所が其支配する場所に侵入し、又は其身體若くは身體に屬する物を支配して證明の用に供すべき物を發見せんとするを妨げざるに在り、□四搜索は之を別ちて家宅搜索と身體搜索とに分つことを得、所謂身體搜索とは、人の身體及び之に屬する物の搜索の謂にして、我刑訴法に於ては身體搜索の時期方法等に就いて何等の制限なし、蓋し必要なきが故ならん。(刑訴七八條三項一〇四條、及び家宅搜索の部參照)
騷擾罪
(さうぜうざい)本罪は之を暴動罪ともいひ、舊刑法に所謂兇徒嘯聚罪に該當するものなり、新刑法が此名稱を改めたる理由は、特に兇徒と稱すべき種類の惡漢を嘯聚する行爲なるが如く考へられ、名實相伴はざるが故にして其内容に於ては略ぼ異る所なし、卽ち本罪は多衆聚合して暴行又は脅迫を爲すの罪とす、以下之を分述すること左の如し、□一多衆聚合したるとを要す、茲に多衆とは多數の人を意味す、故に又二三人又は四五名を以て足れりとせず、然れども法律は特に人數を規定せざるが故に、公共の靜謐を害すべき暴行脅迫を爲すに適當なる人數を以て足ると解するの外なし、而て其多衆聚合の目的たるや事項の如何を問はず、但し朝憲紊亂の目的に出でたるときは内亂罪となる、況んや暴動の目的を以て聚合するを要せざるは明也、只聚合したる多衆が暴行脅迫をなしたるときは則ち本罪を構成するのみ、例へば最初祭禮又は運動會等の爲めに聚合したる多衆が、興に乘じて暴行脅迫を爲すが如きは下の條件を具備するに於ては本罪なりとす、之に反して舊刑法に於ては、多衆が現に官廳に喧閙し官吏に強逼し、又は村市を騷擾するが如き暴動をなし、其暴動が多衆共同の目的たりし場合に限り成立すとなすを通説とせりき、□二暴行又は脅迫を爲したるとを要す、茲に暴行といふは人の身體に對するは勿論、物に對する毀棄破壞及其他の不法なる體力行使を包含す、此暴行たるや公衆に對すると個人に對するとを問ふことなし、次に脅迫といふは他人の精神的反抗を抑制するの害惡の告知を云ひ、他の一般の場合の脅迫と異なることなし、以上暴行又は脅迫は、例へば官廳に喧閙し、官吏に強逼し、村市を騷擾するが如き是れ也、□三公共の靜謐を害することを要す、數人集合して暴行又は脅迫をなすも、公共の靜謐を害するものに非らざれば本罪にあらず、他の暴行又は脅迫に屬する各種の罪なり、茲に公共の靜謐を害するといふは、民心を亂擾し、以て一般公衆をして其堵に安ずること能はざらしむるを謂ふ也、但し一般といふも當該地方の民をして其堵に安ずる能はざらしむることにして、日本全國又は世界人民全部の公の平和を侵すを要せず、本要件に就いては法文特に揭記する所なきも、騷擾なる文字自體に包含せらるる觀念なりと解するより出でたる也、□四處分、本罪に對する犯人を法律は以下の三種に區別し、其刑を區別す卽ちA首魁は一年以上十年以下の懲役又は禁錮にB他人を指揮し又は他人に率先して勢を助けたる者は六月以上七年以下の懲役又は禁錮に、C附和隨行したる者は五十圓以下の罰金に處す也、但し本罪の未遂以下の狀態に就ては最初より暴行又は強迫の目的にて多衆聚合し、當該公務員より解散の命を受くること三囘以上に及ぶも、仍ほ解散せざる場合に限り、首魁は三年以下の懲役又は禁錮に、其他の者は五十圓以下の罰金に處する也。(刑一〇六條、一〇七條及び内亂罪の説明中犯罪の種類の部參照)
創設判決
(さうせつはんけつ)私權の變更を宣言する判決にして、卽ち判決を以て當事者間に私權を創設し若くは消滅せしむるもの也、是れ確定判決と異なる所にして、元來判決は或事實を認定し、之に基きて判斷するを原則とす、單に事實を認定して、之に法律を適用し其關係を確定するものは卽ち確定判決也、創設判決は之に一步を進め、其確定したる關係に基きて之を變更せしむるものなり、故に創設判決の效果は判斷と執行とを同時に發生せしむるものといふべし、而て創設判決を爲すべき訴を創設の訴といふ、うの部訴を參照すべし。
相當官
(さうとうくわん)此語は主として特別の技術を以て其職とする陸海軍武官を本科の武官に對して稱する語なり、例へば陸軍に於て本科たる步騎砲工等の本科に屬する武官に對し、經理部、軍醫部、軍樂部等に於ける武官を稱するが如し、卽ち少尉相當官といへば經理部の三等主計、軍醫部に屬する三等軍醫、軍樂部に屬する軍樂長を指すが如し、普通將校同相當官といふは、本科の大將以下少尉までの將校と、之に相當する軍醫總監以下三等軍醫、主計總監以下三等主計まで等の武官を稱するが如し、海軍部内に於ても亦然り、例へば海軍に於て將官同相當官とい(ば、大將、中將及び少將並に之に相當する軍醫總監、軍醫監、主計總監、主計監、造船大監等を指す也、或は相當官なる語を廣義に用ゐて、軍屬にして各其階級に相對應する者を包ましむる場合あり、陸軍に於ける理事海軍に於ける主理等を包む場合の如き是れ也。(軍屬の部參照)
贓物に關する罪
(ざうぶつにくわんするつみ)贓物を收受、運搬、寄藏、故買又は牙保するの罪にして、學説上事後從犯と稱せらるゝものゝ一場合也、本罪の構成要件を上ぐれば左の如し、□一本罪の目的物は贓物也、贓物とは不法に領得せられたる物にして、通説に依れば被害者が其物の返還を請求し得べき物に限るとなす、領得とは不法に自己の物となすの行爲にして、從て領得行爲の不法なるを要するは明かなるも、行爲者が責任無能力なるが故に無罪となるべき場合に於ても、尚贓物の觀念を存するに妨なし、舊刑法の解釋としては、十二歳未滿の幼者が窃に持出したる財物を收受するも、本罪を以て論ずるを得ずとの大審院判例ありしが、此解は新刑法に應用すべからずと信ず、又親族又は家族間に於ける橫領罪の目的物となりたる物も、亦贓物たるを得べし、何となれば、此場合は單に刑を免ぜらるゝに止まり罪の不成立にあらざるが故也、從て必要親告の有無を問ふとなし、不法領得行爲は、強盜、窃盜、詐欺取財、恐喝取財及び橫領贓物收得の行爲をいふ、されど不法領得處分の對價は贓物に非らず、贓物は被害者より返還を請求し得る物なり、故に賣淫に因りて得たる金錢、詐欺賭博に因りて得たる物、收賄に因て得たる財物の如きは最初より贓物に非らず、舊刑法は犯罪に關する物件と曰ふ包括的の語句を用ゐたるが故に、收賄罪の目的物も亦贓物なりと解したる判例ありしも、余は此判例に賛するを得ず、尤も一度贓物となりたる物も、善意の第三者が之に就いて權利を取得し(民一九二)又は加工等の爲め新に所有權生じたるときは、之を贓物なる觀念より除外するを通説とす、□二本罪の行爲は收受、運搬、寄藏、故買、牙保なると、茲に收受といふは、賍物の所持を收得する行爲也、但し贓物を窃取又は騙取するは尚ほ窃盜罪又は詐欺取財罪を構成すべきが故に、此種の行爲を除外すべきは勿論、次に述ぶべき故買等の行爲を除外さるべし、故に交換、受贈、質取等の場合に於て收受たるを知るべし、次に運搬とは、所在を移轉する行爲にして、如何なる距離間の移轉なるかは、被害者の追及權との關係を審酌し、通念に依り決すべきもの也、寄藏は委託を受けて藏匿する行爲也、故買は有償にて事實上の處分權を得る行爲也、牙保は處分行爲の周旋を意味す、何れも故意あるを要するは勿論にして、只以上の行爲をなす約束の當時は、贓物に就いての認識を缺くと雖も、現實の取引に際し其認識あるときは則ち足る也、□三本罪の處分は、贓物を收受したるときは三年以下の懲役にして、贓物の運搬、寄藏、故買又は牙保に係るときは十年以下の懲役及び千圓以下の罰金に處せらるべし、此の如く收受の場合より運搬、寄藏、故買又は牙保に係る時の處分重き理由は、此等の行爲は通常營業的に行はるゝを通例とし、且其害著しきに因る也、終りに、本罪の犯人と主犯者との間が、直系血族、配偶者、同居の親族又は家族及び此等の配偶者に係るときは、以上の罪は其刑を免ぜらるゝものとす、是れ蓋し此等の者が主犯者を助けて以上の行爲を爲すは人情止むべからざれば也。(刑二五六、二五七條)
詐欺及び恐喝の罪
(さぎおよびきようかつのつみ)刑法第二編第三十七章に規定せらるゝ罪にして、元來詐欺罪と恐喝罪とは、他人の瑕疵ある意思に基て其所持内にある財物を交付せしむる點に於て一致し、其意思の瑕疵を生ぜしむる手段の差異に依り罪名を異にするもの也、又以上の二者が窃盜又は強盜罪と異なる点は、他人の意思に依て所持の移轉を受くるの點にあり、抑〻詐欺又は恐喝に因る法律行爲は、因て法律行爲の要素に錯誤を生ぜしめざる限りは、民法上取消し得べきに止まり、全然無效にあらず、而て其詐欺又は恐喝が犯罪を構成するには、相手方の行爲を無效とすべきや、又は取消し得べきものと爲すべきやの問題を生ず、近時の判例に依れば、法律行爲の要素に錯誤を來さゞる限りは、全然無效に非らずと解せらるゝが故に、被害者より明示又は默示に取消の意思を表示するにあらざれば、當然被害者に贓物を還付すべき言渡を爲すと能はざるや勿論也、□一詐欺罪、本罪には三個の態樣あり、(甲)詐欺取財罪=人を欺罔して財物を騙取し、又は財産上不法の利益を得若しくは第三者をして之を得せしむる罪也、茲に欺罔とは他人の錯誤を惹起する一切の行爲にして、義務違反の不作爲も亦欺罔行爲となることを得べし、例ば責任無能力者を他人が欺罔するに當り、其監督者故意に之を默過するが如き是れ也、次に騙取とは他人を欺罔したる結果として、其者の錯誤に因る行爲に基き、其本人又は第三者より財物の所持を取得するをいふ、故に欺罔と騙取との間には因果の關係存することを要する也、換言すれば、欺罔は他人の錯誤を生ぜしめたる結果として、被欺罔者が自ら財物を交付し又は第三者をして交付せしむる意思を決定し表示するに至りたることを要す、若し此關係なきときは詐欺取財罪の完成を認むるを得ざる也、例ば他人を欺き財物の支配力を一時弛緩せしめ、其機會に乘じて財物を取去するが如きは、他人に財物交付の決意なきを以て、詐欺取財罪に非ずして窃盜罪なり、但し上説の關係にして存する以上は、欺罔手段が特定の人に對して行はれたると、不特定の人に對し一般的に行はれたるとを區別せず、又被害者が自己の錯誤を防止するに必要なる注意を怠りたるや否やは本罪の成立に影響なし、從て例へば内容に僞りなき眞正の文書なりと雖も、文字の密植其他の關係上誤讀され易きものなるを奇貨として之を提示し、相手方の不注意なる誤讀に因り錯誤に陷りたるを奇貨とし、因て財物の交付を受くるが如きは本罪を構成す、又騙取したる財物中一部に就いては受領の權利あるときと雖も、尚全部的に本罪を構成すべし、從て實害の有無は、被害者が給付したる物と、犯人より提供したる物の價格を比較差引して判定すべきものに非らず、次に被害者が不法原因の爲め給付をなしたる場合に、民法上救濟を求むる權利を有せざる時と雖も、尚本罪を構成すとなすを通説とす、例へば詐欺賭博も尚本罪を構成するに妨げざる也、判例又然りとす、(乙)背信罪=此罪は舊刑法になき所にして、卽ち他人の爲に其事務を處理する者、自己若しくは第三者の利益を圖り、又は本人に損害を加ふる目的を以て其任務に背きたる行爲をなし、本人に財産上の損害を加ふるの罪也、本罪は一に之を背任罪ともいふ、(1)本罪の主體は他人の爲めに其事務を處理する者なること、父母、後見人、遺言執行者の如き、其權限法定のものなると、委任契約又は事務管理に基くものなるとを問はず、而して其事務たる法律行爲に限らず、總て財産上の行爲なれば足れりとす、(2)自己又は第三者の利益を圖り、又は本人に損害を加ふるの目的に出でたること、(3)任務に背きたる行爲をなすこと、任務とは自己の權限に屬する事務の性質の本旨に從ひ、適當に之を處理すべき義務をいふ、但し其任務の積極的なるを要せず、例へば電車の車掌又は鐡道の係員が乘逃を放任して賃錢を徵收せざるが如きは本罪とす、(4)本人に財産上の損害を加ふること、背任罪にありては人を欺罔するを要せず、唯本人に財産上の損害を加ふることが要件にして、自己又は第三者が現實に利得したることを要せず、是れ詐欺に於ける不法利得罪又は橫領罪と異なる黙也、(丙)誘惑罪=本罪に就いては、いの部誘惑罪を參照せよ、序に詐欺罪の刑を述べんに、詐欺取財罪の刑は十年以下の懲役にして、背信罪の刑は五年以下の懲役又は千圓以下の罰金とす、誘惑罪の刑に就ては誘惑罪の部に説きたれば參照すべし、□二恐喝罪=人を恐喝して財物を交付せしめ、又は財産上不法の利益を得、若しくは第三者をして之を得せしむるの罪也、舊刑法は恐喝を以て欺罔と同じく騙取の手段と認めたるも、一は錯誤を生ぜしむるものにして、一は畏怖を生ぜしむるものなるが故に、改正刑法は之を別箇の罪となせり、但し欺罔恐喝を併用して財物を交付せしめたるときは、總則五十四條の適用を受くるものと解す、茲に恐喝といふは、相手方の意思の反抗を抑壓するに達せざる程度の威嚇なり、恐喝は民法に所謂強迫にして、脅迫と異なり相手方の意思を全然抑壓せざるが故に、其法律行爲は單に取消し得るに止まる、次に恐喝は財物の交付又は利得との間に、因果の關係あることを要するは、前説詐欺と騙取との間の説明に同じ、尤も恐喝は被害者が實際畏怖せざるも、一般的に人を畏怖せしむるに足るべき性質のものたる以上は本罪の未遂罪を存することを得べし、本罪に對する刑は十年以下の懲役とす。(刑二四六乃至二五一條、親族相盜、誘惑罪、恐喝罪の部參照)
削減
(さくげん)或項目を削り、又は其效力を減殺することをいふ也、例へば經費削減といへば、經費を要する科目を削り、又は經費の量を減ずるが如き是れ也、憲法の定むる所に依れば、議會は豫算を議定するに當て、或ものに對しては之を削減することを得ざるものにして、此場合の削減は豫算の款項目を削除し、又は其他の部分の量を減ずることを得ざるの謂なり、卽ち議會は豫算議定に當て、憲法上の大權に基く既定の歳出及法律の結果に因り又は法律上政府の義務に基く歳出は、政府の同意なきときは之を廢除し又は削減することを得ざるものとす。(憲六七條)
作爲
(さくゐ)凡そ法律上の行爲は二の態樣に依て現わる、一は其行爲が動作の形を採る場合にして、他の一は靜止の狀に於て現わるゝ場合也、前者を名けて通常作爲といひ、後者は卽ち不作爲又は不行爲と稱す、前者は積極的行爲にして、後者は消極の行爲とす、作爲は意思に基く身體の動作にして、例へば人を毆打すとか物を借るとかいふ如き行爲は作爲なり、之に反して命ぜられたる行爲を任意に爲さざる場合は純正の不作爲なり、學者は純正の不作爲に對して不純正の不作爲なるものを認め、其法律上の效果に於ては作爲に等しきものとなすなり、所謂不純正不作爲とは、外界に於ける偶然又は任意に基く變動を故意に其儘放任する場合にして、例へば母が幼兒に乳を與へざれば飢て死すといふ外界の進行を任意に妨止せず、卽ち任意に乳を與えずして死せしめたるが如き場合なり、此場合は其行爲たる單純なる靜止にして、敢て純正の不作爲と異なることなきも、單に聽くべしと命ぜるに拘らず之を奉せざる不作爲と、死の結果を來すべきを知り、且之を妨止すべき義務あるに拘らず、之を外圍の進行に放任して死の結果を生ぜしめたる不作爲とは、其結果に對する關係に於て大に異なる、通説に依れば、不純正不作爲に於ては、其結果の發生を妨止する義務ある場合は、總て之を作爲に準じ、作爲と同一なる法律上の效果を發生せしむべしとなす也、之を要するに作爲とは、意思の發動が積極的なる物界の變狀を伴ふ場合をいひ、換言すれば、「爲さゞる」に對し「爲す」行爲を指す也、次に作爲の伴ふ法律の效果は、犯罪なるときは之を行犯といひ、人を殺すとか、人を傷害せしむるかの罪の如し、又義務なるときは積極義務となり、權利なるときは積極權利となる、例へば建築の債務の如き、物的給付をなさしむる權利の如きは此一例なり。(民四一四條二項、不作爲の部參照)
作業
(さげふ)主として製作の事業をいふ、廣義に於ては現實の一切の事業を指すことなきに非らずと雖も、普通は製出又は製作に關する事業を指すを普通とす、例へぱ鐡道作業局といへば、官設鐡道の建設、保存及び運輸の業務を掌る官署をいふが如し、作業會計法に依れば、造幣局、印刷局、製鐡所、電信燈臺用品製造所、廣島鑛山及び專賣局に於ては、それ〴〵造幣、印刷、製鐡、電信燈臺用品製造、採掘、賣買品の製造に關する作業を經營するものにして、以上の作業所は特別會計を立てしむるもの也。(三八年八月勅二六八號、二三年三月法一七號、三三年二月勅二〇號參照)
殺人罪
(さつじんざい)人を殺す罪にして、以下其構成要件を述ぶれば左の如し、□一本罪の客體は人なること、茲に人といふは自然人たる人類に限る、法人と雖も實在説を採用するに於ては、人類と異なる所なきが如きも、法人は生理上の人體組織を有するものに非らざれば、之を殺すことを得ざる也、抑々人類は、其發生の本源は不明なれども、今日の現在に於ては、男女異性の結合の結果出生するもの也、而て出生とは、人體を具ふる者が生活體として母體より分離することをいふ、其分離は何時を以て完了する者なるやは議論あり、或は胎兒が身體の一部を母體より顯はしたるときを以て完了すとなし、或は胎兒が其身體を全く母體外に出したるときを以て完了すと説き、或は人類の終了たる死は其呼吸の閉止なるが故に、人の出生は獨立に呼吸を開始したるときに完了すと説く、其他尚異説なきに非らざれども、此獨立呼吸説を通説とす、而て人は一旦出生したる以上は、其死亡するまでは人たるが故に、失踪宣告を受けたる者と雖も、事實上生存する限りは本罪の客體たるを得べし、□二本罪の行爲は殺人なり、殺人とは人の生命を失ふ原因を與ふるに依て、現實に死の結果を發生せしむるとをいふ、苟も或行爲にして死の結果を惹起するものたる以上は其方法の如何を問ふことなし、一般には有形的方法、卽ち身體を傷害するの方法を用ゆと雖も、無形的方法卽ち精神を懊惱せしむるの方法を用ゆるも、亦本罪を構成することを得、尤も此無形的方法に依る場合は、其行爲と死なる結果との間に存する因果關係を證明すること困難なる結果、其處罰を免るゝことあるべし、次に英米法に於ては、原則として殺人行爲に因る人の死の結果が、一年一日以内に生せざるときは、本罪の既遂を以て論ずるを得ずとなすも、我法の解としては、人の死と殺人行爲との間に於ける經過日數の長短は、本罪の成立に何等の關係なしと解す、□三本罪の態樣に三あり、一は普通の殺人にして、二は自已又は配遇者の直系尊屬を殺したるの罪なり、三は自殺とす、舊刑法は此外謀殺、故殺、毒殺、慘殺(慘刻なる所爲を以て人を殺す場合)、牽聯故殺(罪を犯すに便利なる爲め、又は已に犯したる罪を免る爲めに爲す故殺)詐殺(人を詐稱誘導して死に致す場合)誤殺(誤て人を殺したる場合)等の數箇に之を別つも、改正刑法は總て之を犯罪の狀態と看て、其刑を異にするとなし、卽ち普通殺人に對する刑は死刑又は無期若くは三年以上の懲役とし、其範圍内に於て犯狀に從ひ之を處罰せしむ、次に直系尊屬を殺したる場合の刑は死刑又は無期懲役にして、茲に一言すべきは、本罪の客體たる直系尊屬は、法律上の直系尊屬卽ち父母、祖父母等を指し、事實上の直系尊屬なるも、法律のものならざる場合を含まずと解すべきこと是れ也、例へば私生子は其父に對しては事實上の關係あるも、庶子として法律上の關係發生せざるが故に、通説に依れば、私生子が其父を殺したるは普通の殺人罪と解す、終りに、自殺に就ては其部を參照せられたし。(刑一九九乃至二〇一條)
産出物
(さんしつぶつ)自然的に原物より發生せる物をいふ、元來産出物なる物は、原物の用方に從て收取せられたるときは、民法の所謂天然果實たるべき物にして、産出物は未だ原物より分離せられざるときは、原物の成分として之と法律上一體をなし、分離せらる、に至て始めて獨立の物となるもの也、故に産出とは自然的に原物より發生せることをいひ、唯之を原物より分離するは人工を加へて産出せしむることを得べく、又は天然的に原物より分離することもあるべし、但し人工を以て或材料より新物を製作するは産出の觀念と矛盾するが故に、其新物は産出物にあらず、産出物は之を例ふれば、草木の果實の如き、動物の産兒の如き、自然的に産出さるゝものと、鑛山の礦石の如き、人工を加へて産出せしむるものゝ如き是れ也、産出物は上述の如く、原物の用方に從ひて收取せらるゝときは所謂天然果實として、其物は原物の權利者に屬するもの也、卽ち分離の時の所有權者、善意の占有者、留置權者、不動産質權者、使用貸借上の借主、賃借人等の何れかに屬すべきもの也、尚天然果實又は果實の部を參照せよ。(民八八條一項)
齒科醫師法
(しくわいしはふ)齒科醫師の免許登錄及び權務に關して規定されたる法律なり、□一齒科醫師たらんとする者は左の資格を有し、内務大臣の免許を受くることを要す、卽ち文部大臣の指定したる齒科醫學校を卒業したる者、齒科醫師試驗に合格したる者、又は外國齒科醫學校を卒業し、若くは外國に於て齒科醫の免許を得たる者にして、内務大臣に於て適當と認定したる者に限る、但し以下に揭ぐる者は免許を受くることを得ず、重罪の刑に處せられたる者、公權停止中の者、未成年者、禁治産者、準禁治産者、聾、啞及び盲者是れ也、縱令重罪の刑に處せられざるも、禁錮以上の刑に處せられ、又は醫事に關し罰金に處せられたる者には、内務大臣は免許を與へざることを得べし、□二内務省に齒科醫籍を備へ、齒科醫師免許に關する事項を登錄すべきものにて、其登錄事項は左の如し、あ登錄番號及登錄年月日、い族籍(外國人なるときは國籍)氏名、生年月日及び女子なるときは其旨、う如何なる資格なるや及び其資格取得の年月、え免許の取消、齒科醫業の停止、其事由、期間及び年月日、お免許證の再下附其事由及年月日、か抹消の事由及年月日是れ也、□三齒科醫は帳簿を備へ、患者の氏名、年齡、住所、職業、病名及療法を記載すべき義務を負ふものにして、齒科醫は自ら診察せずして診斷書、處方箋を交付し、又は治療を爲すことを得ざる也、齒科醫は其技能を誇稱して虛僞の廣告を爲し、又は秘密療法を有する旨を廣告することを得ず、此等の事項に反するときは三百圓以下の罰金に處せらる、□四齒科醫は齒科醫師會を設立することを得べく、齒科醫師會は齒科醫事衛生に關し、官廳の諮問に應じ又は建議を爲すことを得べし、以上本法の大要とす。(三九年五月法四八號、同年内務省令二八號、同年勅二四五號)
事後犯意
(じごはんい)犯意なき行爲をなしたる後に至り、犯意を生じて以前の行爲を追認し又は利用する場合の意思をいふ、例解すれば、甲なる醫師あり、患者乙に對して手術を施したる後、適々乙が自己の仇敵なるを悟り、之を殺すの意思を生じ、手術を中途にて止めたる爲め遂に乙の死を惹起するに至れり、此場合の醫師が前行爲を利用する犯意は事後犯意也、故に事後犯意は犯意の問題に屬せずして、寧ろ不作爲の問題なり、此場合に甲は、不純正不作爲に依て罪を犯したりといふことを得るやが問題たり。(不純正不作爲犯の部參照)
自殺關與罪
(じさつくわんよざい)人を教唆若くは幇助して自殺せしめ、又は被殺者の囑託を受け、若くは承諾を得て之を殺す罪也、元來自殺とは、自殺の何たるを解する者が、瑕疵なき決意に依る殺人行爲にして、其殺人の被害者が自己自身たる場合をいふなり、從て例へば自殺の何たるを解する能力なき者に對する場合、又は意思の自由を拘束する程度の脅迫を以て自殺をなさしめたるときは、是れ自殺關與の罪にあらずして殺人罪也、自殺關與の方法如何に依て本罪には三の態樣あり、□一自殺の教唆又は幇助は其一なり、例へば生計の持續困難なるを説きて自殺の決意を起さしむるか如き、又は自殺の決意ある者に對し、其決行の方法を指示して便宜を與ふるが如き是れ也、□二囑託を受けて自殺者の爲めに手を下す場合は其二なり、例へば情死の當事者の一方が、自刄の行爲の實行を相手方に委託し、相手方が因て之を殺したるが如き場合これ也、□三承諾を得て他人を殺す場合は其三なり、例へば嫖客が情死を相手方たる娼妓に相談し、其娼妓の承諾を俟て之を殺すが如きこれ也、但し此場合は承諾が任意なりや否やに依て、殺人罪なりや、又は本罪なりや岐るゝ点なれば、實際問題の起れるに際しては、宜く其眞相を判別して解決するを要す、本罪の處分は六月以上七年以下の懲役又は禁錮とす、舊刑法は本罪を別ちて、自己の利益の爲めにする場合と否とになし、其處罰を異にしたりしが、改正刑法は其刑期を廣くし、懲役と禁錮との選擇刑を存し、犯情に應じて其刑を上下するを得べきが故に、舊刑法の如き區別を設くることなし、而て本罪の未遂罪は之を罰せらるゝもの也。(刑二〇二條、二〇三條後段)
事前犯意
(じぜんはんい)或犯罪を既に遂げたりと誤認し、其發覺を妨ぐる爲めに、又は他の目的を以て更に他の行爲を行ふことに依り、初めて曩に豫見したる犯罪事實の發生したる場合をいふ、例へば、茲に甲なる者あり、乙を殺さんと欲して之を毆打し、既に死せりと信じて其犯跡を蔽はんが爲めに、其家に放火したりと假定せよ、然るに實際に於ては、乙は其火の爲めに燒死し、甲の毆打行爲に依ては單に假死の狀態に陷りたるに過ぎざりし場合に、其犯意を事前犯意といふ、事前犯意なるものは、此の如く犯意の一區分に非らざるが故に、當然犯意の問題に屬せず、寧ろ甲の毆打行爲と、其死との間に存する因果關係の問題とす、卽ち此場合に、因果の關係は放火行爲に依て中斷され、殺人未遂と放火及び過失殺との俱發と見るべきか、果た因果關係中斷されずとなし、殺人既遂と放火との二罪と見るべきやの問題なり、此点に就て頗る議論の存する所なれば、因果關係、共犯の部を參照されたし、通説は此場合に中斷あるものと見るが如きも、後説又學理上に於ては頗る有力なり。(事後犯意、犯意の部參照)
失火罪
(しつくわざい)火を失して法定の物を燒燬又は損壞する罪なり、別ちて失火罪及び準失火罪となす、以下分説すれば、□一失火罪=火を失して法定の物件を燒燬するに至らしめたる罪にして、本罪は過失罪の一種なり、先づ火を失してといふは、過失に因り火災を惹起するの謂にして、其目的物人の住居に使用し、又は人の現在する建造物、汽車、電車、艦船若くは鑛坑に關するときは、其何人に屬するを問はず三百圓以下の罰金に處し、又人の住居に使用せず又は人の現在せざる建造物、艦船若くは鑛坑に關するときは、其自己の所有に屬すると否とを區別し、他人の所有に屬するときは三百圓以下の罰金に處す、自己の所有に屬するときは依て公共の危險を生じたるときに限り以上の罰金を科し、以上例記以外に屬するときも因て公共の危險を生じたる場合又同じく三百圓以下の罰金に處らせる、茲に注意すべきは、失火罪の被害者の損害賠償請求權と本罪との關係なり、被害者が民法不法行爲の規定に從て、失火者に對して損害賠償の請求をなさんには、明治三二年法律第四〇號に基き、失火者に重大なる過失あるにあらざれば之を爲すとを得ざる也、然れども本罪の成立に就いては此の如き制限なく、被害者が賠償の請求權を有する重大なる過失ある場合と否とを問はず、本罪を成立することあるべきものとす。□二準失火罪=過失に因て、火藥其他激發すべき物を破裂せしめ、失火罪の目的たる物を損壞し、依て公共の危險を生ぜしめたる罪にして、茲に激發すべき物とは、點火に因り激烈急速なる膨脹力を惹起し、固形物を毀壞する如き性質の物をいふ、又損壞とは毀損破壞の意なり、本罪は失火の例に照して處斷せらる。(刑一一一六條、一一七條二項、過失及び放火罪の部參照)
- 英
- Crime of fire by imprudence
- 独
- Verbrechen des Feuers von der Un-klugheit
- 仏
- Infraction de l'incendie parla negligence
實質犯
(じつしつはん)實質犯とは形式犯に對する罪の一種にして、犯罪の内容が結果の現實を要件とするものをいふ、凡そ犯罪の構成要件たる行爲は常に何等かの結果を生せざるものなし、然れども法律は其行爲が一定の結果を生ずることを以て犯罪の構成要件とする場合と、結果を犯罪の完成に必要となさゞる場合とあり、前者は所謂實質犯にして、後者は形式犯と稱す、故に實質犯なるものは結果の發生に依て既遂となり、此種の犯罪に結果を伴はざるときは常に未遂以下の狀態にあるものとす、例へば殺人罪に在ては人の死なる結果は其構成要件の一なり、死なる結果生せざるときは殺人未遂又は其豫備にして、死なる結果の現出に依て初めて殺人の既遂を構成す、而して多くの罪は此實質犯に屬し、形式犯に屬するは寧ろ例外なり、但し茲に結果の現出を要すといふも、斯る犯罪に於ける犯意は常に此結果を豫見するものと解すべからず、彼の過失罪は此種の罪の一に屬すと雖も而も結果の豫見を缺き、又彼の加重罪は結果の豫見だも要せざるものなり、之を要するに實質犯とは、其物質的要件として、意思實行、意思實行と外界の變狀との間に存ずる因果關係、外界の變狀卽ち結果の三を要するものと謂ふ可し。(形式犯、結果犯の部參照)
支店
(してん)商法に所謂營業所の一にして、主從の關係を有する二箇以上の營業所ある場合に、主たる營業所に對して從たる營業所を支店と稱す、支店は卽ち本店に對するの稱呼とす、通俗出店と稱するは必らずしも支店に非らず、全く本店と營業主人を異にする彼の分店を含むことあれば也、茲に分店とは、固と本店に營業使用人として傭はれ居たりし者等が、年期を勤め終えたるより他に獨立して營業所を起すも、從前の關係よりして本店分店の關係ある場合也、又支店と區別すべきは出張所とす、出張所は一時便宜の爲め他に出張して營業をなすものなれば、其觀念たるや一時的なり、之に反し支店は營業所として永久的觀念に基くものなり、故に他に支店を設けたる場合には其地の登記所に法定の登記をなすべきもの也、茲に一問あり、支店は本店と商號を異にすることを得るや、余の信ずる所に依れば、此點に就き商法に特別の明文なきよりして何れにも解することを得るも、若し支店地に登記したる本店と同一の商號存する場合の如きは、自他を區別する必要上本店と異なる商號を附するとを得と解す、但し支店限りの破産を認むるが如きは、之を爲し得ざるものと信ず。(商一〇條、二九)
師範學校規程
(しはんがくかうきてい)本規定は明治四〇年四月文部省令第一二號を以て制定せられたる所にして、四一年四月一日より施行せらるゝものなり、左に其の大要を擧ぐれば(甲)生徒教養の要旨、師範學校は教職に從事する者を養成するにあれば、□一忠君愛國の志氣に富むは、教員たる者に在りては殊に重要とす、故に生徒をして平素忠孝の大義を明にし、國民たるの志操を振起せしめん事を要す、□二精神を鍛鍊し德操を磨勵するは、教員たる者に在りては殊に重要とす、故に生徒をして平素意を此に用ひしめん事を要す、□三規律を守り秩序を保ち、師表たるべき威儀を具ふるは、教員たる者に在りては殊に重要とす、故に生徒をして平素長上の命令訓誨に服從し、起居言動を正しくせしめん事を要す、□四教授は教員たるべき者に適切にして、小學校令及小學校令施行規則の趣旨に副はしめん事を旨とす、□五教授は常に其方法に注意し、生徒をして業を受くる際、教授の方法を會得せしめん事を務むべし、□六學習の方法は、偏に教授のみに憑らしむべき者にあらず、故に生徒をして常に自ら學識を進め、技藝を養はしめん事を努むべし、(乙)學科、本科及び豫備科並に講習科となし、本科は之を別ちて第一部及び第二部となす、本科第一部は四箇年にして、舊法と異なり男女とも全く同じとす、主として高等小學校の卒業生にして、豫科を終了したるものを入學せしむ、本科第二部は修業年限を一个年若くは二箇年とし、中學校又は高等女學校卒業生を入學せしめ、便宜以上の年限内に、小學教員に必要なる教育を施し、第一部生と同一の效果を修めんとするにあり、是れ舊法になかりし所にして、新令の始めて定むる所に係る、次に講習科は、現に小學教員たる者に必要なる補習をなさしむるものにして、特別の必要あるときは、尋常小學教員の養成を爲す爲に設くるもの也、從て其年限の如きは、目的の如何に依て異なる、(丙)學資及服務年限、師範學校は學資を給するを本則とし、入學志望者の多少、生活程度の如何に依り、必要に應じ或は之を支給し、又は全く私費生たらしむることを得、服務の義務年限も、以上の給費如何に應じ、第一部公費男卒業生は七箇年、第一部公費女子卒業生は五箇年、第一部私費卒業生は男女を通じて三箇年、第二部卒業生は二箇年となす也、是れ舊規程と大に異なる所とす。(四〇年四月文部省令一二號)
紙幣類似證券取締法
(しへいるいじしやうけんとりしまりはふ)明治三九年五月法律第五一號を以て公布せられたるものにして、其大要を述れば左の如し、□一一樣の形式を具へ、箇々の取引に基かずして金額を定め、多數に發行したる證券にして、紙幣類似の作用を爲すものと認むるときは、主務大臣に於て、其發行及び流通を禁止することを得るもの也、而して此規定は一樣の價格を表示して物品の給付を約朿する證券(例へば商品小切手の類)に之を準用するを得べし、□二以上の禁止は主務大臣に於て直に其旨を公告するものにして、禁止の公告後に發行し又は流通せしむる目的を以て授受したる證券は無效とす、且此證券に對しては、裁判に依り沒收する場合の外、何人の所有を問はず行政處分を以て之を官沒するもの也、□三禁止に違反して證券を發行し、其證券を授受し、又は流通の目的を以て之を授受したる者は、一年以下の懲役、又は千圓以下の罰金に處せらる、而て其證券を沒收せらるべきは前説の如し、以上本法の大要とす。(三十九年五月勅一〇九號)
資本
(しほん)或目的の爲めに投下せらるゝ金錢其他の有價物にして、其が直接又は間接に收益の方便として使用せらるゝ場合に、其物を指すの語也、故に資本なる觀念には、事業、投下使用の三要件あるを要す、卽ち或財産が某事業の爲めに提出せらるゝことを要し、單に之を蓄藏するのみにては資本といふべからず、又資本は或事業の爲め收益の方便として使用することを要するが故に、之を浪費するが如き場合は其財産を資本といふ能はず、但し現實に生産事業の上に働き、收益を生ずることを要せざるは論を俟たず、故に反て損失を見るも尚資本たる事を妨けず、次に資本は元本と異なる、元本は利息を生ずべき元金其他の物にして、資本は之より廣義にして、一切の收益の目的に供せられたる有價物なり、商法に依れば、株式會社の資本は之を株に分ち、各株の金額の總計は卽ち資本の額とす、故に資本は資産なる觀念と異なる、資産は例へば會社が現實に有する財産の總計なるも、資本は最初投下されたる額を變更することなきを普通とす、卽ち單に損失に依りて增減せらるゝことなき也、故に法律上いふ資本は、經濟學上いふ所の土地勞力に對する資本と異なるや明か也、經濟上いふ資本は、勞力の結果として提出されたる經濟物件なるも、法律上いふ資本は、某事業に投下されたる出資の總額を意味する觀念とす、故に法律上いふ資本は、經濟上所謂資本の一部分に過ぎず、而も目的による觀念なりとす、資本は通常固定と流通との二に區別せらる、固定とは消費して使用せられざる資本をいひ、例へば工業に使用せらるゝ工場建物の如し、流通資本とは消耗して使用せらるゝ資本を指し、例へば工場用の「コークス」油の如き、又は金錢の如き是れ也、法律上に於ては此二を區別するの必要存せず。商一二〇、一四三、一四八、一五一、一六〇、一九四、二六二條二號民一〇〇七條等參照)
心神喪失者
(しんしんそうしつしや)行爲の辨識力又は意思の決定力を喪へる者をいふ、元來精神なるものは、人に存する非物的の存在にして、或現象を遮斷して或現象を現すべきもの也、而て心神喪失は、斯る存在其ものを喪ふの謂にあらずして、依て發する活動力又は活動することの效果を辨識する能力を失へるをいふ也、心神喪失は一時的なることあり、例へば人が熟睡中意識を失へるが如き是れ也、又持續的なることあり、病的異狀に基くが如き場合これ也、或は失天的なることあり、白痴者の如き是れ也、或は其者の故意の行爲に基くことあり、泥醉したる者の如き是れ也、民法は心神喪失の常況にある者は之を禁治産者となすとを得べき旨を定む、卽ち持續的なる場合なり、但し常況といふが故に、間斷なく心神喪失の境にあるに非らずして、原則として其狀態にある場合をいふ也、刑法は心神喪失者の行爲は之を罰せずと定む、此場合の心神喪失は、一時的たると繼續的たると、先天的たると後天的たるとを問はざる也、但し故意に心神喪失を致したる者の行爲は、其行爲を爲す事あるべきを豫見して心神喪失を致したる場合を除外す。(民七、七一三條刑三九條、禁治産の部參照)
身代限
(しんだいかぎり)舊制度に於ける普通人の破産をいふ、現行の制度たる家資分散なるものは、此身代限なる制度に代れるものにして、民法は商人にも常人にも等しく破産なる畫一の制度を採る主旨に基きたるが故に、家資分散なる制度も遂には破産に代らるべきものとす、詳細は家資分散の部を參照せられよ。(一七年一〇月大藏省七三號達參照)
信託行爲
(しんたくこふゐ)與信者と受信者との間に成立する一種の意思表示にして、他人に對して生ずる法律上の效果以外に、當事者間に大なる經濟上の效果を生ずるもの也、而て其所謂經濟上の效果は信託行爲の内容に從ひて異なる、今其法律關係を説明するに先ち、一例を示して其槪念を得さすべし、甲者あり、其手形を裏書するに當つて、取立の爲めの裏書をなさんとするに拘らず、相手方に其手形を讓渡せざる義務を負はしめて、讓渡裏書をなしたる場合の如し、此場合の讓渡裏書は、信託行爲に依る裏書なり、信託行爲に於ける經濟上の效果(卽ち前例に於ける其手形を讓渡せざる義務)は、信託行爲の内容に從ひて生ずる法律上の效果なるや、將た信託行爲に附屬せる特別の意思表示(特約)の效果として之を生ずるやは疑問の存する所也、或説に依れば、信託行爲は虛僞の意思表示なるが故に無效なりと論じ、從て信託行爲の效果を否認し、又或説に依れば、當事者の欲する經濟上の效果を限度として有效なりと論じ、卽ち受信者は信託せられたる權利を行使し得るに止まり、其權利自身を取得せずとなす、或説に依れば、第三者に對しては、當事者の欲する經濟上の結果以上の效果、卽ち信託行爲の表面上の效果を生ずるも、當事者間に於ては其欲したる經濟上の效果を生ずるに過ぎずとなす、此説を通説とす、之を要するに、信託行爲なるものは近時の發達に係り、未だ其法理明かならず、一方に於ては虛僞の意思表示と混同せられ、又他の一方に於ては、假裝行爲に依て隱匿せらるゝ法律行爲と混同せらるゝものなり、通説に依れぼ、此行爲は以上の行爲と全く異なるは論なし、尚信託行爲は經濟學上いふ所の信託に基くものなれば、經濟辭典の信託の部を參照するを要す。(民九四條參照)
信認狀
(しんにんじよふ)此語は主として公使の授受に關して用ひられ、卽ち本國の元首又は外務大臣が、其使臣を信認する意思を表示して、駐在國の元首又は外務省に宛つる書狀なり、其信認狀は、全權大使、全權公使及び辨理公使に在りては、其駐剳せんとする國家の元首に宛て、代理公使にありては外務大臣より其駐剳國の外務省に宛つるもの也、信任狀中には公使たるべき者の官職、姓名等を記載するを例とす、但し特派の公使なるときは、別に全權を授與するを普通とするも、公使は特別なる事項に關して議する者にあらざる場合は特に全權狀を携ふることなし。(外交官又は公使の部參照)
人民
(じんみん)民族てふ見地より人類を觀察したる稱呼にして、國家てふ見地より看察したる國民、又は君臣の關係より看察したる臣民なる語に對する名稱なり、故に我等日本人は、大日本帝國の國民たると同時に、萬世一系なる皇帝陛下の臣民たり、大和民族に屬する人民たるものとす、或は人民なる語を統治者の側より被治者を見たる場合の稱呼とする實際上の用例あり、裁判所に於ける被治者たる普通人の控所を人民控所といふが如し、されど此用例は、全く認用の甚だしきものとす。(國民、臣民の部參照)
信用及び業務に關する罪
(しんようおよびぎようむにくわんするつみ)虛僞の風説を流布し又は僞計を用ひ、人の信用を毀損し、若くば以上の行爲又は威力を用ひて人の業務を妨害するの罪をいふ、□一信用毀損罪=信用とは人の名譽の財産的方面をいふ、換言すれば財産上の義務の履行に關する他人の信賴より生ずる社會上の價値なり、元來信用は其人の業務と相俟て分離すべからざる關係を有す、卽ち信用の有無は業務の消長を來し、業務の盛衰は信用の厚薄を致すものとす、是れ法典が二者を併せて規定したる所以也、然れども茲には、分析は學問の半なりといふ格言に從て、二者を區別して説明する也、信用を毀損する手段は、法典は之を二となす、一は虛僞の風説を流布すること、二は僞計を用ゆること是れ也、虛僞の風説を流布すといふは、事實無根の捏浩説を多數人の間に傳播するにあり、僞計とは他人を害する目的に出でたる權謀術數をいふ、但し單純なる詐言を含まず、此點詐欺より狹し、然しながら、必らずしも他人を欺罔するを要せず、例へば會社の支配人に贈與をなし、食はすに不正の利を以てし、因て支拂停止を爲さしむるが如し、此点詐欺よりも廣し、尤も人の信用を毀損すといふは、被害者に對する世人の信用が、犯人の行爲に因りて失墜するに至りたる結果を生ずる意味にあらず、法律の趣旨は名譽毀損罪と同じく、人の信用を害する虞ある虛説の流布、又は僞計の使用を處罰するに在り、本罪に對する刑は三年以下の懲役、又は千圓以下の罰金とす、□二業務妨害罪=業務とは、絶えざる所得の淵源となす意思を以て、人の屢々繰返して執行する事務の總稱なり、而て本罪に於て業務といふは、かの公務の執行を包含せず、此等は公務の執行を妨害する罪のみを構成し、余は本罪には之を包含ぜざるものと解す、業務を妨害する手段は、法律は虛僞の風説の流布、僞計を用ゆること及び威力を用ゆることの三とす、前二者に就いては信用毀損罪に就て説明したる所也、威力とは人の意思を制壓せんとする勢力を指す、有形無形を問はず、暴行、脅迫、威權の濫用等皆之を包含す、次に業務を妨害するといふは業務の執行又は發展上障害となるべき狀態を發生せしめたることを意味し、必らずしも業務を止息するに至らしめたることを要せず、本罪の成立に就いても行爲の違法なることを要するは勿論にして、從てかの同盟罷工の如きも、日々の勞務に對して賃錢を受くる者の如きは、何時從業すると、將た休業するとは其隨意に屬し、從て賃錢を抛棄して勞務に從事せざるは全く自由にして、何等違法の行爲に非らざるが故に、騷擾罪を構成せざる限りは、多數共同するも當然に違法なりと謂ふことを得ず、然れども隨意休業すべからざる法上の義務に違反して、不平連中の同盟を組織するが如き、又は他人を強制して之に加盟せしめ、因て罷業をなすが如きは、威力に因る業務妨害罪を構成するに於て缺くる所なしと信ず、本罪の處分は、三年以下の懲役又は千圓以下の罰金とす。(刑二三三條二三四條)
森林法
(しんりんはふ)本法は、明治四〇年四月法律第四三號を以て公布せられたる所に係り、其大要を示せば、□一森林は其所有者に依り、之を分ちて、御料林、國有森、公有森、社寺林、及び私有林とす、森林の立木竹を所有する爲、地上權、賃借權、其他土地に關し、使用又は收益を爲す權利を有する者あるときは、其權利者を以て本法に基き發する命令に規定したる森林所有者、森林立木竹所有者又は土地の所有者、若しくは占有者の權利義務は、森林若しくは森林立木竹又は土地の所有權、若しくは占有權と共に其承繼人に移轉するものとし、本法又は本法に基き發する命令の規定に依り爲したる手續其他の行爲は、森林所有者、森林立木所有者又は土地の所有者、若しくは占有者の承繼人に對しても其効力を有す、公園、社寺境内、及び命令を以て定むる土地に付ては本法を適用せず、□二營林の監督、地方長官に於て必要ありと認むるときは、公共團體又は社寺の代表者をして、森林又は森林として管理す可き土地に付き、施業案又は施業要領を定めて其認可を受けしむることを得、地方長官に於て必要と認むるときは以上の施業案又は施業要領の變更を命ずることを得、公有林、社寺林又は私有林にして、荒癈の虞あるときは、地方長官に於て施業の方法を指定することを得、以上の指定方法に違反し、伐木を爲したる者には、地方長官其伐採を停止し、伐木跡地に造林を命ずることを得、之に依り造林を命ぜられたる者、其造林を怠るときは、行政官廳に於て自ら義務者の爲す可き行爲をなし又は公共團體をして之をなさしめ、其費用を國税徵收法の例に依り、行政官廳に於て之を徵收することを得、公有林、社寺有林、又は私有林に付き、地方長官は土地の狀況に依り、箇所及期間を指定し、落葉、落枝、柴草、土石、樹根、草根、切芝の採取に關する制限、又は禁止を爲すことを得、□三保安林(保安林の部を參照せよ、□四土地の使用及收用、森林より其産物を運搬する爲、又は運搬に關する設備の爲必要あるときは、地方長官の詐可を得て他人の土地を使用することを得、但し御料局又は政府の使用に係るときは、當該官廳は之を地方長官に協議す可し、地方長官は以上の場合に之に許可を與へ、又は協議調ひたるときは、之を土地所有者及び關係人に通知す可し、以上により土地を使用せむとする者は、此の通知の後其土地に關する權利を取得する爲め、土地所有者又は關係人に協議するを要す、通知後一個年内に此協議を爲さざるときは、上記の許可及協議は其效力を失ふ、次に土地の使用三個年以上に亘るときは、所有者は其收用を請求することを得、土地所有者に於ても、土地の一部の收用に因りて、殘地を從來用ゐたる目的に供する能はざるときは、其全部の收用を請求することを得可し、以上により總て土地を使用又は收用するときは、土地所有者及關係人に、補償金(卽ち時價、使用料其他土地所有者及び關係人の通常受く可き損失に對する補償金を總稱す)を拂渡す可し、土地を使用又は收用するに因りて、通路、溝渠、墻柵其他の工作物の新築、改築、增築又は修繕を爲すの必要を生したるときは、又其補償金を拂渡す可きものにして、土地所有者又は關係人にして、地方長官の許可を受くることなく、土地使用の許可又は協議を地方長官より通知せられたる後、土地の形質を變更し、工作物の新築、改築、增築若くは大修繕を爲し、又は物件を附加增置せしときは、補償金を請求する事を得ざるもの也、土地所有者又は關係人は、土地の使用者若くば收用者をして、補償金に付き相當の擔保を供せしむることを得、但し土地の使用者又は收用者が、御料局、政府、府縣市町村及び之に準ず可きものなるときは、此限りにあらずとす、土地の使用又は收用の協議調ひ、裁判確定し、又は判決ありたるときは、補償金又は擔保の裁決確定せざるときと雖も、土地の使用者又は收用者は、其裁決による補償金を供託し、又は擔保を供して土地を用ふることを得、以上の補償金の拂渡又は供託を爲さず、又は擔保を供せざるときは、土地所有者及び關係人は、其土地の使用を拒むことを得可し、但し土地の使用者又は收用者が御料局、政府、府縣市町村及び之に準ず可きものなるときは、補償金の供託又は擔保の提供を要せざるものとす、土地の使用又は收用、補償金又は擔保に付き協議調はざるとき、又は協議を爲すこと能はざるときは、地方長官の爲す許可又は協議の通知後、一箇年以内に地方森林會の裁決を求むることを得、又以上の裁決中、土地の使用又は收用に關するものに付き、不服ある者は、主務大臣に訴願を提起することを得可し、又違法に權利を傷害せられたるときは、行政訴訟を提起することを得、以上の裁決中補償金又は擔保に關するものに付き不服ある者は、通常裁判所に出訴することを得、但し裁決の送付を受けたる日より九十日を經過したるときは此限に在らず、凡そ土地を收用するときは收用の時期に於て、所有權は收用者之を取得し、其他の權利は消滅するものとす、又土地を使用するときは、使用の時期に於て土地の使用者其使用權を取得し、其他の權利は其使用を妨げざる範圍内に制限せらる可し、土地の使用者其使用を終りたるときは土地を原形に復し又は原形に復せざるに因りて生ずる損失に對し、補償金を拂渡して之を返還す可し、□五森林組合、森林組合は左の一に該當する場合に於て、必要なる事業をなす爲め一定の地區を限り、之を設立するとを得、(甲)國土保安の爲め、又は森林の荒廢を防止し若しくは荒廢せる森林を囘復する爲め必要なるとき、(乙)森林が所有者を異にし、協同して施業を爲すに非ざれば其利用の目的を達するに困難なるとき、(丙)森林産物の運搬に必要なる工事を爲し、又は之を維持する爲め關係者の協同を必要とするとき、(丁)森林の危害防止に付き關係者の協同を必要とするとき是也、森林組合は營利を目的とせざる社團法人とす、森林組合を設立するには定款を定め、地方長官の許可を受くべし、而して其組合員は該地區内に於ける森林の所有者に限る、森林組合を設立するには、組合員たる資格を有する者三分の二以上の同意あること、其同意者の所有する森林の面積が、該地區内に於ける森林の總面積三分の二以上なるとを要す、而して此組合を設立したるときは、該地區内に於ける組合員の資格を有する者の總ては、特別の除外なき限りは總て組合員とす、森林組合の定款には法定の事項を記載し、其設立は主たる事務所の所在地に於て、登記を受くるに非ざれば、之を以て第三者に對抗するとを得ざるものとす、總て森林組合は主務大臣及地方長官の監督に服す、又森林組合本法の規定、又は本法に基きて發する命令の規定に違反したるときは、其役員を二圓以上二百圓以下の過料に處す、以上の外森林組合の設立及び管理、解散、清算、其他に付ては勅令を以て定むるものとす、□六森林警察、地方長官に於て必要ありと認むるときは、(あ)森林産物に使用する記號又は印章を定め、所轄警察官署に屆出でしめ、森林産物の搬出前之を使用せしむると、(い)以上に依り屆出でたる記號、印章と同一又は類似の記號、若しくは印章の使用を禁止すると、(う)森林産物に關する營業者をして、帳簿を設け其産物の出所、種類、數量、及び仕向先を記載せしむること、(え)以上の各號の外森林の危害防止に關すること、之等に關し命令を發し若しくは處分を爲すとを得可く、森林官吏、警察官吏又は犯罪搜査に付き職權を有する官吏、公吏其職務を行ふ爲め必要と認むるときは、森林産物又は森林産物に關する營業者の手帳、帳簿及器具に付き檢査を行ふことを得、森林又は之に接近せる土地に火入を爲さんとするときは、豫め防火の設備を爲し、且接近せる森林の所有者、又は管理者に其旨を通知す可し、森林に害蟲發生し、又は發生の虞あるときは、其發生又發生の虞ある森林の所有者之を驅除豫防す可し、森林に害蟲蔓延し又は其虞ある場合に於ては、地方長官は森林害蟲の驅除又は豫防の爲め必要なる處置を森林の所有者に命じ、又は自ら之を行ふことを得可し、されど此場合の費用は、其利害關係ある土地の面積又は地價を準率と爲し、森林所有者の負擔とす、□七罰則、森林に於て其産物を竊取したる者は、森林竊盜とし三年以下の重禁錮(茲に重禁錮といふは、改正刑法に從へば有期懲役に該る)又は贓額以上贓額二倍以下の罰金に處す、森林に放火したる者は輕懲役に處す、森林竊盜の故買、寄藏、牙保は一月以上三年以下の禁錮又は贓額以上二倍以下の罰金に處す、以上本法の要點とす。(四〇年四月法四三號)
- 英
- Law of forest
- 独
- Waldgesetz
- 仏
- Loi forestière
指名參加
(しめいさんか)第三者の爲めに物を占有することを主張する者が、其資格に於て訴へられたる場合に於て、本案の辯論前其第三者を指名して、自己の主張を正當と認むるや否やに付き陳述を爲さしむるが爲め、其者の呼出を求むるときは、第三者が陳述を爲し又は陳述を爲すべき期日の終りに至るまで、本案の辯論を拒むことを得べし、講學上此第三者を指名すとあるに依り、之を指名參加と稱す、此場合に、指名されたる第三者が被告の主張を爭ふか、又は陳述を爲さゞるときは、被告は必らずしも其訴訟を繼續することを要せず、直に原告の諸求に應じて物の引渡を爲すことを得べし、之に反して指名せられたる第三者が、被告の主張したる關係を承認したるときは、單に被告のみの承認に依りて、其者に代り訴訟を引受くることを得、此場合に於ては直に訴訟承繼の效力を生ずるものとす、卽ち權利拘束の效力は新なる被告に移轉す、故に裁判所は前被告の申立に依り、其者を訴訟より脱退せしむべきもの也、而て後の被告に對して言渡されたる本案判決は、前の被告に對しても當然效力を生じ、且つ執行せらるべきもの也、前被告に對し執行せんとするときは、其執行文に指名參加の規定に基き前被告の氏名を記載することを要す、或學者は此場合に、執行債務者に承繼ありたる場合の規定(五一九)を準用すべしとなすも、若し此の説に從はんか、原告をして非常なる不利益なる結果を生ぜしむべし、何んとなれば、指名參加に於て其第三者は、原告の承諾を經ずして訴訟を引受くるを得れば也、次に指名されたる第三者が、被告の主張を正當と認むるに拘らず、其訴訟を引受けざるときは、被告は原告の申立に應ずること能はずと雖も、其第三者は後に至りて被告が訴訟を不充分になしたりと主張することを得ざる也。(民訴六三條)
傷害罪
(しやうがいざい)廣義に於て傷害の罪といへば、改正刑法に於ては現實に傷害したる罪及び暴行を加へたるも傷害するに至らざる罪を包含す、以下其構成要件を分説すれば、□一本罪の行爲は人を傷害したること、傷害とは人の身體に對し生理的の毀損を加ふるの義也、傷害は有形的方法に依るを要するや否やは學者の間に議論あり、或説に依れば、次に分説する暴行罪と比較して、暴行に因るを要すと解し、常に傷害は有形的の方法に依ることを要すとなす、他の説に依れば、改正刑法は舊刑法と異り、創傷を毆打に依ることを必要とせず、卽ち傷害の手段を暴行の一種たる毆打に限らざるのみならず、此の如き有形的の方法に限れりとなす論據なしと解し、人の精神を苦ましむるの方法に依て、身體に損傷を與ふる如き無形的方法に依れる場合も、亦本罪を構成すとなす、而て此後説は通説たり、次に本罪は學説上所謂結果犯なりとせらる、從て本罪の犯意は、人の身體に對して傷害を與ふるの危險ある行爲を爲すの意思あるのみにて足るとなし、結果に就いて犯意なきも尚現實に生じたる結果に付き責に任ずとなすを通説とす、(因果關係の部參照)但此點に就いては異論存す、茲に一問あり、卽ち承諾に基き其人を傷害したるときは、尚本罪たるや否や是れ也、承諾が罪の成立に影響を及ぼすことに關し、二の異なる説あり、甲説に依れば、意思に反することが犯罪の特別構成要件たる時には、承諾あるに因り犯罪の成立を阻却するも、然らざるときは犯罪の成立に承諾の有無は何等の影響を及ぼすことなしとなす、乙説に依れば、承諾者が適法に處分し得べき法益に就いて與へたる承諾は、犯罪の成立を阻却すべし、然れども若し然らざる法、益に對する時は、承諾あるも犯罪の成立に影響なしと説くなり、以上の所説何れを採用すべきかは、茲に斷定する限りにあらざるも、余は承諾に依る傷害は原則として之を罰することを得ずと信ず、元より此点に就き反對説あるべきも、抑々舊刑法に依るも改正刑法に依るも、自殺の帮助は殺人罪よりも其刑罰を輕減せり、然るに自傷の帮助(承諾に依る傷害)は何等の規定なきに依て、若し之を傷害罪として罰すべきものとせば、承諾に基く殺人罪(自殺關與罪の一態樣)よりも却て重き刑罰を科せらるゝに至り、大に不權衡を生ずべきが故に、特別の明文ある場合を除き、之を罰せざる法意と解すべき也、特別の明文ある場合とは、例へば徵兵忌避の目的を以て、他人の承諾に基き自傷せしめたる如き場合也、此場合は固より徵兵忌避罪の從犯を以て論ずるを可とす、□二本罪の態樣に三あり、一は一般の傷害罪にして、卽ち人の身體を傷害したるの罪也、本罪の刑は十年以下の懲役、又は五百圓以下の罰金若くは科料とす、二は傷害致死にして卽身體傷害に因り人を死に致したる場合也、本罪は人の死の結果に對して故意なきを要し、之ある場合は縱令條件附の故意ありと雖も殺人罪なり、又其死なる結果を豫見せざることに就て過失なきも尚責を負ふべし、但し身體傷害と其死なる結果に就て、豫見せざることが過失なる場合を除き、其他の場合は相當の因果關係あることを要すとなすを通説とす、本罪の刑は一般人なるときは二年以上の有期懲役にして、特に自己又は配偶者の直系尊屬に係るときは無期又は三年以上の懲役とす、三は暴行罪なり、本罪は之を傷害罪の一態樣といふべきにあらず、されど人の身體を侵害する點に於て、傷害罪と異なることなきが故に、之を廣義の傷害罪の一種とせし也、故に以下特に之に就き一言せん、□三暴行罪=暴行を加へたるも人を傷害するに至らざる罪なり、暴行は脅迫に對し、人の身體に加ふる不法の腕力にして、有形的方法に依る身體侵害也、而て人を傷害するに至らざることを要するが故に、暴行に依て人の身體に生理的の毀損を與へたる場合は本罪に非ず、例へば單に人を毆ぐりしのみにて、人の身體に何等の傷痍を與へざりし場合の如き是れ也、本罪は親告罪にして、被害者の告訴を待て其罪を論ずべきものとす、本罪の刑は一年以下の懲役、若くは五十圓以下の罰金又は科料也、□四前説の傷害罪に就いて注意すべきもの二あり、一は傷害罪(暴行罪を除く)の或種の幇助に就いて、二は之が同時行爲に就いて也、卽ち其一は、一般の傷害罪及び傷害致死の罪を犯す者在るに當て、現場に於て勢を助けたる者は、自ら人を傷害せずと雖も、一年以下の懲役又は五十圓以下の罰金若くは科料に處せらるゝ是れ也、茲に現場に於て助勢せる者とは、單純なる聲援なり、例へば彌次馬連の如き者が、ヤレ〳〵!と聲援する場合是れ也、從て自ら暴行を教唆したるときは總則所定の教唆犯となり、現場助勢以外の幇助は從犯たるべし、現場助勢も固より從犯の一場合なるも、暴行罪との權衡上之を獨立罪とせる也、次に其二は、二人以上にて暴行を加へ人を傷害したる場合に於て、傷害の輕重を知ること能はず、又は其傷害を生ぜしめたる者を知ること能はざるときは、共同者に非らずと雖も共犯の例に依ること是れ也、此場合は所謂同時犯を以て、二人以上共に暴行を加へて人を傷害せる時、特に傷害を爲すの輕重を知り得る場合は格別、其傷害の輕重を知る能はず、又は其傷害を生ぜしめたる者を知る能はざるときは、總て之を共犯の例に依り處罰する也、固より意思の共通ある共犯の場合に於て、其共犯の例に依り處罰するは勿論のことゝす。(刑二〇四條乃至三〇八條、舊刑三〇五條參照)
社債
(しやさい)會社又は其他の社團法人の負債をいふ、但し公法人の負債たる公債とは法理を異にするが故に、社債なる觀念は通常國債其他の公債を除外し、主として會社の負債にして、募集に依て得たる負債のみを指す、以下商事會社の社債に就いて略述せん、抑々會社は一個人と同じく事業の成蹟に依り負債をなすの必要に遭遇することあり、其方法は或は一部の大資本家より爲すことありと雖も、通常其金額頗る大なるが故に、一個人より負債をなすこと少なく、法律の許したる特別の方法に因りて、廣く公衆より之を爲すもの也、此特別の方法を社債の募集といふ、社債の募集は會社が負債を爲す所の方法なれば、株式の募集と異なるは明かなり、株式の募集は會社資本を形式する爲めにし、新株の募集は會社の資本增加の方法なれども、社債の募集は會社財産增加の方法に過ぎず、從て社債は第三者が會社に對する債權にして、株式の如く社員權を表彰するものにあらず今株式と社債の異なる點を上ぐれば、以上の根本的の差異の外□一株主は社債權者に辨濟を爲たる後にあらざれば、會社財産の分配を爲し得ざるもの也□二株主が配當を受る所の利益は年度に依り差あれども、社債權者は常に一定の利息を受く、□三社債の辨濟は會社の義務なるも、株金の拂戻は原則として禁ぜらる、□四株主は會社の業務に參與するとを得るも、社債權者は此權利を有するとなし、次に會社が社債を募集するには、左の制限竝に方法に依ることを要す、其一は、社債の募集は定款變更と同じく重大なる事項なれば、特別決議に依ることを要するもの也、所謂特別決議とは、通常の多數決に依らず、總株主の半數以上にして、資本の半額以上に當たる株主出席し、其議決權の過半數を以て決することをいふ、其二は、社債の總額は拂込みたる株金の額に超ゆることを得ざるものにして、又最後の貸借對照表に依り、會社に現存する財産が拂込みたる金額に滿たざるときは、其財産の額に超ゆることを許さゞるもの也、是れ社債に對する擔保を確定ならしむると、會社をして濫りに社債を募集せしめて累を後時に殘さしめざるの法意なり、此點に就いては、擔保附社債信託の部を參照せよ、其三は、社債の金額は二十圓を下ることを得ざる也、其四は、社債權者に償還すべき金額が券面額に超ゆることを定めたるときは、其金額は各社債に就いて同一なるを要するもの也、是れ富籖に類する賭事を禁ずるの趣旨に基く、終りに、社債は通常一定の證書に記載せらるゝものにして、之を債券といふ、債券は讓渡の自由なるを原則とす無記名式の社債は合意のみにて完全に讓渡の效を生じ、記名式の社債は讓受人の氏名、住所を社債原簿に記載し、且つ其氏名を債券に記載するに非らざれば、之を以て會社其他の第三者に對抗することを得ざる也、茲に社債原簿といふは、會社が設備すべき帳簿の一種にして、社債の異動及び其數等を登錄するもの也。(商一九九條乃至二〇七條、擔保附社債信託法參照)
準士官
(じゆんしくわん)下士と將校との中間に位する軍人をいふ、卽ち陸軍に於ける步、騎、砲、工、輜重、憲兵の六科に屬する特務曹長、砲兵工兵の上等工長、上等計手、軍樂長補、上等看護長、海軍に於ける兵曹長是れ也、此等の者は士官に準じて待遇せらるゝものとす。(下士、將校の部參照)
受信主義
(じゆしんしゆぎ)意思表示の完成に就いて、其表示が相手方に到達したる場合に完成の效を生ずとなす主義也、此主義は主として意思表示中契約に就いて發達し、而も隔地者間の契約に就いて論ぜらるゝ主義なり、抑■契約の場合に於て、甲者が乙者に向て意思表示をなしたる場合に、若し甲乙兩人が對話し得るの地位に在る時は、其意思は表示すると同時に相手方に了解せられ、敢て表白、發信、受信、了知の各場合を區別するの必要なし、然れども若し甲乙地を隔て住居する場合に、例へば甲は東京に在て大阪なる乙に「賣らん」との意思表示をなすと假定せよ、甲は先づ賣るとの意思を表示する爲に書信を認むるなるべし、次に其信書を郵便函に投入すべし、郵便夫は之を大阪なる乙の家に配達し、乙は其配達されたる信書を披見して甲の賣るといふ意思表示を知るを順序とす、此場合に甲の賣るといふ意思表示は何時完成したるものと見るべきかの問題生ず、或學者は甲が書信を認め終りたるとき、卽ち意思を外部に表白したるときに完成すとなす、之を表白主義といふ、或學者は若し其意思を表白したるばかりなる時は、甲は自由に其意思を取消して、其信書を破棄し得べきが故に、其信書を投函して自己の處分權を存せざるに至りたる場合に完成すとなす、之を發信主義といふ、或學者は若し發信ありたるのみなるときは、或は途中に於て災害の爲めに信書を喪滅せしむることあれば、相手方に配達さるゝにあらざれば其意思表示を完成したるものといふことを得ずとなす、之を受信主義又は到達主義といふ、或學者は之に反して、本來意思表示は相手方に了知せしむるを其本旨とす、故に單に到達したるのみにては不可なり、乙が信書を披見して實際其意思表示を了知したる場合に於てのみ意思表示の完成といふべしと、此の如く各主義ありて、甲論乙駁するも、表白主義は前述の如く相手方に了知せしむる方法を採らずして意思表示の完成と見るが故に、何時にても取消し得るの缺点あると同時に、相手方が了知し得ざる場合あるを以て、學者は之を實際の便宜に變形して發信主義をなせし也、又了知主義は、相手方が到達せる意思表示を實際了解する手段を盡すと否との遲速に依て、意思表示の完成の效力に遲速あらしむるが故に、實際上不便尠からざるなり、之を實際の便宜に變形したるものが受信主義とす、而て發信主義と受信主義との何れを採用すべきやといふに、一槪に何れを可又は否と斷定する能はず、我民法は一般の意思表示に就いては受信主義を採り、契約の承諾其他に就いては發信主義を採れり。(民九七條、五二六條參照)
順位
(じゆんゐ)位置の順序の言明なり、卽ち次順位などいふは、某が或者の次ぎに位置することなり、皇位繼承の順位は、皇室典範所定に基き、祖宗の皇統に於ける皇胤の男子たる皇長子を第一位とし、之なきときは皇次子等に及ぶ、而て同順位に在る者の間に於ては、年長の順序に從ふ、次に相續の順位は、家督相續に在ては、先づ法定家督相續人、指定家督相續人、選定家督相續人等の順序にして、法定家督相續人は、戸主の嫡出男子先づ之を相續人とし、其順位を原則として年齡の長幼の順序に從ふ、此の如く順位なるものは、其位置の順序の言明なるを知るべし。(民三二九乃至三三二、九五五、九八二條等參照)
首服
(しゆふく)罪に服ずる爲めに自首することをいふ、舊刑法に於ては、官に對する場合を單に自首と謂ひ、被害者に對する場合を首服とし、以て財産に關する罪に限り、被害者に首服するを自首と同一の效あるものとせり、改正刑法に於ては之と異なり、官に對する場合の自己の犯罪の申告は之を自首といふも、總て財産に關する罪の被害者に對する場合を首服となして自首の效あるものとせず、單に親告罪なる場合にのみ其告訴權ある者に首服せるときは自首の效あるものとせり、故に改正刑法上首服といへば、獨り親告罪に關する場合にのみ存し、而も其親告權利者に對して犯狀を告知したる場合のみを指す也、首服は自首と同じく輕減の原因となすことを得るものにして、尤も舊刑法と異り必らず一等又は二等を輕減すべしとなさず、單に輕減することを得るに止む、蓋し自首又は首服に因り常に減等すべきものとなすときは、或は減輕を期して罪を犯すの虞あるが故也。(刑四二條、舊刑八七條參照)
承繼
(しようけい)廣き意味に於ては、汎く承け繼ぐことをいふも、普通は權利が前主より後主に移轉することをいふ、卽ち權利主體の變更を意味す、元來權利の取得は、主觀的觀念に基く卽ち承繼と、客觀的觀察に基く發生とあり、發生は一に之を原始取得といひ、他人の權利に基くことなく獨立に權利を取得することを指す、承繼には二の場合あり、一は移轉的承繼にして、卽ち權利が前主より全部又は一部移轉する場合をいふ、換言すれば特定の權利主體が變更するをいふ也。二は創設的承繼にして、前者の權利を消滅せしむることなく、其權利に基きて異なる權利を取得するをいふ、此は承繼にあらざる如き觀あるも、元來承繼は引繼にあらずして、前主の權利が後主に誘導さるゝものなれぱ、亦一の承繼といひ得べし、而て承繼の原因たる法律事實は、發生の原因たる法律事實と共に、之を權原又は名義と稱す、普通正權原に基きて物を取得したりなど稱するは、承繼又は發生の原因たる法律事實が正當なりし場合を意味し、又俗に、人より物を與へらるゝは名義が惡るしなどいふは、物品受贈の名義が理由なかりし場合也。(民訴一七八、五一九、五四六條、承繼人の部參照)
將校
(しようこふ)陸海軍の本科に屬する武官をいふ、卽ち將官、上長官、士官是れ也、將官とは陸海軍に於ける大將、中將、少將を指し、上長官とは、陸軍に於ては步、騎、砲、工、輜重、憲兵の六科に屬する大佐、中佐、少佐をいひ、海軍に於ては機關大佐及び大佐以下少佐までを指す、次に士官といふは、以上の如きものゝ大尉、中尉、少尉を指す、將校なる語は一方に於て將校相當官に對し、他の一方に於ては准士官下士卒に對して用ひらる(尚准士官、下士等の部參照)
使用盜
(しようとう)他人の所持を侵すも橫領の意思なき場合は、之を奪取と區別して使用盜といふ、使用盜なる語は現行の法文に用ゐらるゝ所のものに非らずして、學術上の用語たり例へば、下婢が羨望の餘り主婦の衣服を瞬時着用し、直に原狀に之を復し置く場合の如し、此場合は他人の所持を侵すは竊盜罪と同じきも之を領得するの意思を缺くものなるが故に、竊盜罪を構成することなきものとす、茲に注意すべきは、財物の經濟的價値を減損する程度の使用をなしたる場合は、反説あるも之を以上の使用盜と區別すべきものとなすこと是れ也、例へば貯金通帳を以て貯金を引出したる後、其通帳を原場に返還し置ける場合の如き、又は一時人の財物を質人したる後、之を受出して返還する意思を以て他人の所持を奪ひたる場合の如し、此場合は前説の如く、財物の經濟的價値を減損する程度の利用意思あるを以て、通説に依れば之を橫領的行爲となし、竊盜罪を構成すべきものなりと解す、又他人の飮食物を奪取して卽時に飮食するが如きは、勿論橫領の意思あるものなれば、之を使用盜となすべきにあらざる也。(奪取罪、竊盜罪、橫領罪の部參照)
證憑湮滅罪
(しようひやうえんめつざい)他人の刑事被告事件に關する證憑を湮滅し、又は僞造、變造し、若くば僞造、變造の證憑を使用したる罪をいふ、所謂人的庇護罪の一種なり、以下本罪の構成要件を分説すれば、□一他人の刑事被告事件に關することを要す、自己の被告事件に關して證憑を湮滅するが如きは、人情免る可らざる所にして、之を處罰するは苛酷に失するが故に本罪に非らず、茲に他人といふは自己以外の人を指示し、其犯人相互間にありても、一方より見れば他方は他人たること疑なし、而して他人の被告事件は刑事に關することを要するが故に、刑事被告事件に關せざる證憑に就いては本罪を構成せず、刑事被告事件とは科刑原因の有無に就いて審理せらる、事件を指し、民事事件、懲戒事件又は非訟事件に關する證憑を湮滅したる者は本罪に非らず、然れども刑事被告事件なるときは其輕重は之を問はず、又其事件が結局有罪と認められたるや、將た無罪となりたるやに關係なし、又被告事件は現に裁判所に繫屬中の事件は勿論、將來に於て繫屬すべき事件をも包含す、然れども將來に係る場合は將來其事件が裁判所に繫屬することが所罰條件なり、□二證憑を湮滅し又は僞造、變造し若くは僞造、變造の證憑を使用することを要す、茲に證憑といふは、有罪無罪又は刑の加重減輕の情狀の有無を認定するに資すべき物的材料を意味し、例へば犯所に於ける血痕及足跡、其他犯罪の用に供したる物件等の如き是れ也、文書も亦證憑たることを得べし、然れども證人を隱匿するは證憑湮滅にあらず、證言の拒絶亦同し、僞證は證憑僞造にあらざるも、之に反して證言を記載したる記錄は證憑の一なり、次に湮滅とは證憑を隱蔽するが如き、又は之を消散して其效用を失はしむる凡ての方法を包含す、例へば血痕の附着したる衣類を洗滌するが如き是れ也、證憑僞造とは、何人の名義を用ゆるを問はず虛僞の證憑を作出するを謂ひ、證憑變造とは證憑の原狀を變更するを云ふ、又之を使用するとは刑事裁判所、檢事又は司法警察官に對し僞造變造の證憑を眞正のものとして提供し、若くは呈示するの義なり、本罪は舊刑法の如く他人の罪を免れしむる目的を要せざるが故に、犯罪搜査官が自己の動きを示さんが爲め被告人に利益なる證據を湮滅するが如き場合も本罪を構成す、又證據を湮滅する目的を以て贓物を寄藏し、又は之を損壞する如き場合は、本罪と贓物罪又は毀棄との想像上の數罪俱發にして、本法五十四條の適用を受くべき一場合なり、□三本罪に對する刑は二年以下の懲役又は二百圓以下の罰金とす、本罪は犯人又は被告人の親族にして、被告人の利益の爲に犯したるときは之を罰せざるものとす、蓋し親族互に相憐むは人情の自然に基くが故也、然れども假令親族にもせよ犯人又は被告人の不利益の爲に證憑を湮滅したる如きは其罪を論せざる限りに非らず、茲に親族といふは、民法に於て親族關係を認めたる者に限る、從て師弟の如きは親族と異なることなき情誼あるも之を包含せざるものとす。(刑一〇四條、一〇五條、舊刑一五二條)
縱容
(しようやふ)容し縱むるをいふ、卽ち或事實あることを認容し、且つ縱勸する場合を指す也、或は縱に之を認容する場合を指すに過ぎざることあり、例へば本夫が自己の妻と第三者と姦通しつゝあるの事實を知るも、縱に之を默許する場合の如し、刑法の定むる所に依れば、本夫姦通を縱容したるときは、告訴の效なきものにして、卽ち姦通罪は告訴なきが故に處罰を免るゝに至るものなり、此場合にいふ姦通の縱容は、其行爲を縱めたる場合(本夫が縱めて女局をなさしめたるが如き)は勿論、單に默許したる場合をも包含するとなすを通説とす。(刑一八三條二項參照)
處罰條件
(しよばつでふけん)犯罪行爲以外に或狀態の存することが、之に刑を科する上に於て必要なる場合に、之を處罰條件と稱す、換言すれば、犯罪の構成要件以外に、或犯罪に於ては、尚或狀態の發生を以て處罰の要件とすることあり、此場合に於て、犯罪は構成要件を具備するが故に、既に其完成を告ぐるものにして、唯其犯罪に刑を科せんとするには、尚其外に或狀態の發生を要する場合あり、處罰條件なるものは此場合に存するもの也、例へば破産又は家資分散に關する罪は、法定の要件たる犯罪以外に、破産の宣告を受けたること又は支拂停止をなしたることを要す、此支拂停止又は破産の宣告は本罪に於ける處罰條件なり、處罰條件は訴訟條件と異なる、訴訟條件とは、訴訟の開始進行終結に關する形式上の條件にして、起訴の條件判決の條件等之に屬す、之に反して處罰條件は實體上の條件にして、之を缺くも訴訟は開始進行することを得べし、只處刑することを得ざるのみ、親告罪に於ける告訴は、處罰條件なりや訴訟條件なりやは議論の存する所にして、通説は之を訴訟條件となすものゝ如し、尚親告罪の部を參照せよ。(訴訟條件の部參照)
私和
(しわ)公の機關の介入を俟たざる和解なり、換言すれば、私に爭を解いて和合することをいふ、主として此語は、加害者と被害者とが和合する場合を指し、例へば過失に依りて人を傷害したる者が、被害者に自己の疎忽を謝して過失傷害の罪の宥恕を乞い、被害者も故意の行爲ならざるに免じて、之を恕して和合するをいふ、其間必らずしも金錢の授受あるを要せず、互に一步を讓合はざる點に於て和解と異なるも、公の機關の介入を俟たず、私に平和を恢復する點に於て二者全く同一なり。(和解の部參照)
隨意契約
(ずゐいけいやく)何れの方法に依るを問はず、任意に契約を締結し得るをいふ、元來政府に於ては、物品山野の拂下、工事、其他物品、土地等の買入は、競爭賣買又は入札の方法に依るを原則とし、隨意契約に依るを許されざるものとす、但し法令は特定の場合に於て、時に之を隨意契約に依り得べき場合を定むること尠なからず、例へば政府の工事又は物件の賣買貸借にして、會計規則に基き再度の入札に付するも、尚豫定價格の制限に達せざるとき、又は競爭に付するも初より入札者なき時の如き、其他政府に於て直接になす工事に從事する職工人夫の如きは、隨意契約に依るを得るが如き是れ也。(二三年九月勅一九三號、三四年二月勅八號)
出納
(すゐたふ)物品會計又は金錢會計の實際に當り、之を出し又は納るゝことをいふ、出納官吏などいふは此用例にして、三五年八月勅令二〇五號に依れば、各省大臣必要と認む場合に於て、物品又は現金の出納を掌る官吏に身元保證金の納付を命ずるとを得るものにして、各省大臣は相當と認むる期間内に於て、其身元保證金を分納せしむることを得べく、身元保證金は公債證書又は土地を以て代用するを得、但し代用すべき公債證書又は土地の代價は、各省大臣に於て相當と認めたる時價に依るべきものとす。(二九年五月勅一六八號、二三年六月勅一〇五號、二二年六月勅八四號第三條)
水利に關する罪
(すゐりにくわんするつみ)堤防を決潰し、水閘を破壞し其他水利の妨害となるべき行爲をなす罪にして、以下分説すれば、□一水利の妨害となるべき行爲をなすこと、茲に水利といふは、主として農業上の目的の爲めに流水を使用する便益を意味し、本罪は此の如き便益を妨害すべき行爲を爲すに因りて成立す、必らずしも具體的に水利妨害の結果を生じたることを要せず、堤防を決潰し、水閘を破壞するが如きは、水利を妨害すべき行爲の一例にして、其他水流を壅塞し、又は變更する等、凡そ水利を妨ぐべき危險を具ふる一切の行爲は本罪を構成するに至るべし、水利の妨害となるべき行爲は違法なること、水の使用に就き他人の有する權利を妨害するの事實あるに非らざれば本罪を構成せず、例へば規約慣例等により、上流及び下流の部落が共に一の用水を使用する場合に於て、上流の部落が之を使用したる爲め水の缺乏を來し、下流の者が之を使用するに不足を生ずるも本罪を構成せざるが如し、又本罪は舊刑法の如く自己の行爲に因り他人の便益を損し、又は自己の便益を圖るの目的に出づるを要せず、終りに、本罪に對する刑は二年以下の懲役若くは禁錮又は二百圓以下の罰金とす。(刑一二三條)
生活の本據
(せいかつのほんきよ)人が生計を立つる爲めに據る根本の中心点をいふ、住所は常住の本據にして、生活の中心とせらるゝ場所を意味す、民法は人の住所を生活の本據となし、生活の中心點とする心素と、常住の本據とする體素とを、住所の要件となせり、卽ち常住の本據とは、其一定の場所に歸來すべき狀況に在る地點を意味し、其歸來すべき狀況にある地點が、生計を立つる根本地として據らるべき意思ある場合に、其地點を住所となす也。(民二一條、住所及び營業所の部參照)
政合國
(せいがふこく)二箇以上の國家が、或政治上の事項に關し合同して外國に對する場合に、之を政合國といふ、而して此種の國家は通常同一の君主を戴き、唯國際法上に於てのみ政合國たるものにして、國内法上に於ては各何等の關係を有せざるものとす、政合國の著名なるものは、墺地利、匈牙利の兩國なり、此兩國は外務と軍務とを共同にし、併せて又之に關する財政を共同にするも、此以外の事項に關しては兩國の間に結合關係なく、各別に行爲するものとす、又瑞典、諾威も一九〇五年に至るまでは政合國なりしが、同年十一月政合關係を解きたり、此兩國は政合時代に於ては、單に外務省のみを共同にし、其他は各別に行動したりし也、政合國は君合國と異なるものにして、君合國は兩國が君主を同一にするに過ぎざるも、政合國に在りては此外、尚政務を合同すべきものなり從て普通の場合に於ては、政合國を組織する一國が他國と交戰するときは、其他の政合を組織する國家も亦交戰國となるものとす、又政合國は聯邦と異なる、蓋し聯邦は數多の國家の結合にして、結合國及び聯邦組織國何れも國家なれど、政合國は單一なる國家にして、只内部に於て組織國異るに過ぎざる也。(聯邦の部參照)
正當防衛
(せいとうぼうえい)刑法第三六條に曰く、急迫不正の侵害に對し、自己又は他人の權利を防衛する爲め已むことを得ざるに出でたる行爲は之を罰せずと、是れ正當防衛に關する規定にして、本條を解するに依り宜く新刑法に於ける正當防衛の觀念を了解し得べきが故に以下分説せん、□一正當防衛は不正の侵害に對すること、茲に不正とは違法なることを意味し、侵害といふは法益侵害に對する攻擊行爲をいふ也、偖て相手方よりなす攻擊が不正なるときは、其攻擊たるや必らずしも犯罪なるを要せず、從て外國の君主又は使節の如き其者の行爲が處罰の外にある場合に於ても之に對して正當防衛權を行使するを妨げず、稍疑あるも刑事未成年者の行爲に對し正當防衛を行ふことを得るやに關して、余は苟しくも行爲なりといひ得べき限りは積極に解するを可と信ず、但し全然意思なき者の擧動に對しては正當防衛權なし、次に相手方の侵害が不正なりといふは、客觀的に之を定めざるべからず、故に之を違法(不正)なりと信じて反對に防禦的侵害を爲したる場合と雖も、眞に不正に非らざりしときは其防禦的侵害は違法たる責任を免れず、□二相手方より加へらるゝ侵害は急迫のものならざるべからず、茲に急迫といふは現在の侵害といふ意味にして、卽ち攻擊は直接に切迫し又は現に開始せられたることを要す、故に將來に於て起らんとする攻擊に對し、又は既に過ぎ去れる侵害に對しては正當防衛權なし、例へば未だ入らざる竊盜者を毆打し、又は財物を得て逃げ去れる盜人を追跡して毆打するが如きは正當防衛にあらず、□三自己又は他人の權利を防衛する爲めならざるべからず、茲に權利といふは舊法の如く法定の權利に限らず、一般に生命身體自由貞操の權利、財産權等一切を包含す、而て其權利は必らずしも自己に屬する場合に限らず、正當に親族又は其他一般人の權利を防衛するに出づるも可なり、□四正當防衛は已むことを得ざるに出でたる行爲ならざるべからず、已むことを得ずといふは、防衛に必要なる程度を超へざることを意味す、但し侵害に對する防衛が如何なる範圍に於て必要なる程度を超えずといひ得るやは各場合に其侵害と比較して決すべき事實問題とず、尤も被攻擊者は他人の違法なる攻擊を避くる爲め自ら遁逃する義務なきが故に、例令不正の侵害を免るゝ爲め遁逃する猶豫あるも、尚進んで防衛手段を採ることを得べし、而て防衛の程度を超えたる行爲に對しては、刑法は情狀に依り其刑を輕減又は免除することを得と定めたり、終りに一言すべきは、正當防衛に依て相手方に損害を蒙らす場合にも、刑法上責なきは勿論民法上に於て賠償の義務なきものとす、卽ち民法第七二〇條に、他人の不法行爲に對し自己又は第三者の權利を防衛する爲め已むことを得ずして加害行爲を爲したる者は損害賠償の責に任ぜずとあるは是れ也。(刑三六條、舊刑三一五條二號、民七〇二條一項、正當防衛權の部參照)
正犯
(せいはん)自ら犯罪を實行したる者をいふ、現行法に於ては、正犯は之を教唆者及び從犯と區別す、正犯には單獨正犯あり、共同正犯あり、實行正犯あり、間接正犯ありとなすを通説とす、抑く自から犯罪を實行したりといふは、自己の意思實行が有責違法の結果を伴ふ場合にして、犯行と自己の意思發動との間に因果の關係を存する總ての場合を包含すべきに拘らず、現行刑法は教唆犯を正犯に準ずとなし、從犯と共に他人の有責行爲に加擔したる場合は因果關係の中斷せるものとなすが如し、故に正犯なる觀念は、自から犯罪を實行したる者の内より、教唆者及び從犯を除外せざるべからず、正犯は單獨にて犯罪行爲を實行したりしや否やに依り之を單獨正犯及び共同正犯に別つ、□一單獨正犯、犯罪構成要件を一人にて完成したる場合をいふ、例へば一人にて人を殺したるが如し、前述の如く此場合に、其犯意は教唆せられたるが故に生じたるときと雖も、現行刑法は教唆者を加へて共同正犯となすことなし、舊刑法は此點に就いて明言せり、又從犯に就いても同一とす、之を要するに、單獨正犯は一人に罪を完了したる場合にして、罪の最も普通なる場合とす、□二共同正犯、共犯のことにして、唯教唆者及從犯を除外することは前説の如し、共同正犯は二人以上共同して犯罪を實行したる場合に存すとなすを通説とす、例へば甲乙二人共同して窃盜をなしたる場合の如し、共同正犯には必要的共同正犯と否らざるものとあり、必要的共同正犯とは、或犯罪は一人にて之を實行することを得ざる場合に存する共同正犯にして、例へば姦通罪の如し、姦通罪は常に有夫の婦と夫婦外の第三者とに依るに非らざれば犯すことを得ざるものにして、此場合の共犯は必要的共犯なり、其他騷擾罪、重婚罪、賄賂罪の如し、但し此場合を常に共同正犯となすべきや否やに就ては疑あり、或學者は、此の如き罪は到底一人にて實行し能はざるが故に、之を共同正犯なる觀念中より除外すべきものなりと論ぜり、次に、正犯は直接に犯罪を實行したると、間接の方法に依る犯罪の實行なるとに依り、之を實行正犯及び間接正犯と區別す、□三實行正犯、直接に犯罪を實行したる場合をいふ、直接といふも、實は程度の問題にして、自己が其手に刀を以て人を切るが如き、普通の觀念に於て直接になしたりと認むべき場合を指す也、故に犬を使嗾して人を咬ましむるが如きは、學者に依りては之を實行正犯とし、又は間接正犯の例となす、其何れに從ふも犯人に科すべき刑を異にせざるが故に、之を論斷するの必要少し、□四間接正犯、間接の方法に依り罪を犯す場合にして、例ば醫師が患者を毒殺する目的を以て、其情を知らざる看護婦に毒藥を附與して服用せしめたる場合の如し、此場合の看護婦は醫師の機械として利用せられたるものなれば、醫師自から毒殺したると何等異なる所なく、從て斯る場合を間接正犯と稱す。(刑六〇條乃至六三條、數人共犯、共犯、間接正犯等の部參照)
消却
(せうきやく)公債、社債、株式、兌換券等を消滅せしむる目的を以て爲返却すをいふ、但し返却たる語は辨濟と同じく相手方の任意の受領を要件とするも、消却は之に反して任意なると否とを問はざるものとす、減債基金を設けて、其利子にて公債を消却すべしなど論ずるは此用例なり、左に株式の消却に就いて畧述せん、株式の消却とは株主權の除斥にして株式の數の減少をいふ、其場合二あり、□一株主に配當するを得べき利益を以て消却の財源とする場合也、此場合は、商法の定むる所に依れば敢て資本減少の規定に依るの必要なし、何んとなれば、消却の財源は利益にして、其利益は資本の額に相當する會社財産の存在を條件とすれば也、從て此場合は、株式消却の後と雖も尚資本の總額は貸借對照表の借方に揭ぐべく、資本其ものには異動を生ずることなし、尤も此点に就いては反説あり、或學者は、資本の額は每に株式の總額と一致すべきものなるが故に、此場合の消却と雖も當然株式の數を減ずべきを以て、資本の額の減少を見るは當然なり、只消却したる株式の額に相當する金額は、資本の額と共に貸借對照表の借方に揭げざるべからずと、次に此場合の消却は、抽籖の方法に依り強制的に行ふは株主の權利を侵し、又自由の買收に依るも、株式を消滅せしむる重要の事項なるを以て、豫め定款に消却の方法、其額及時期を定めざるべからず、商法に「定款の定むる所に從ひ株主に配當すべき利益を以てするは」云々との規定は此意味とす、□二株主に配當するを得べき利益を以てせずして株式を消却せんとする場合也、此場合は、自ら會社債權者の利益を害する結果を生ずべきを以て、商法は此場合に於ては、資本減少の規定に依るべきものとなせり、蓋し資本の一部を割きて消却に充つるものなるを以て、之を資本減少とすべきは固より當然とす、凡そ株式消却の方法に二あり、一は抽籖に依るものにして、卽ち抽籖して其對價を交付し株式を消滅せしむる場合なり、二は買收に依るものにして、買收は會社と株主との間の法律行爲に基く場合なり、之を要するに消却なるものは、或權利を消滅せしむるが爲めの返却にして、主として、公債、株式、社債、兌換券等に就いて行はるゝものなり、但し個人の債務を消滅せしむる爲めの返却は之を辨濟又は履行といひて消却とはいはざるを常とす、茲に消却といふは、銷却といふに同じ。(商一五一條二項)
銷却
召集
(せうしふ)命令服從の關係に於て、集合を促す行爲を召集といふ、例へば議員の召集を命ずるが如き、戰時又は平時に於て、在郷軍人を召集するが如し、次に招集といふは、權利義務の關係に於て、集合を促す行爲をいふ、例へば株主を招集するが如し、召集は以上の如く召し集むることにして、自から權力的の觀念を含み、招集は招き集むることにして、平等關係者間に於て爲さるゝもの也、但し法令に依りては、二者を混同することなきに非らず。(市制四〇條、町村制四二條、憲四一、四五條、民六一、六二條、商一五七、一五九條等)
招集
石油消費税法
(せきゆしようひぜいはふ)石油に消費税を課する旨及び其率並に手續を定めたる法律なり、石油消費税は、石油一石に就き金一圓の割合を以て消費税を課せらる、但し外國に輸出する石油は別に定むる所に依り其消費税を免除せらる、石油製造者は同一の場所に於て其販賣業を兼營することを得ざるものにして、蓋し同一人にして兩者を兼ぬるときは、納税を免るゝの所爲をなす虞あれば也、石油の如き日用品に消費税を課することに就いては、世に批難多き所にして、余も亦其廢止されんことを熱望する者也。(四一年三月法二一號、同年勅四號參照)
世數
(せすう)法律上に於ては主として親等の計算に用ゐられ、親子の間を一世となし、親孫の隔を二世となすが如く、其間に存する世の數をいふ也、世は代と異るものにして、代は主として家の觀念より觀察し、或戸主を一代となし、次の戸主を二代となし、斯くして何代なりと數ふるも、世數は家の觀念に關係なく、個人を主として計算し某と子との間を一世となし、某と孫との間を二世と數ふるが如く、某を基準として上下に其間隔を數へて世數を知る也。(民七二六條、親等の部參照)
竊盜罪
(せつとうざい)他人の財物を竊盜する罪にして、其構成要件を槪説すれば、□一他人の財物に對すること、他人の財物とは、自己以外の保持に屬する財物にして、但し窃盜に就いては電氣は之を財物と看做さる、刑法は自已の財物と雖も他人の占有に屬するとき、又は公務所の命に因り他人の看守したるものなるときは、之を他人の保持に屬するものと看做す、茲に財物といふは財産權の目的たる有體物をいふ、□二竊取したること、竊取とは他人の意思に反して、其保持を奪取する平援手段をいふ、平援手段なることを要するが故に、強取たる暴行脅迫に基く奪取と異なるや明也、又他人の意思に反することを要するが故に、瑕疵ある他人の意思に基く騙取と異なるも亦明なりとす、但し竊取は必らずしも竊に奪取したることを要せず、賊盜律に曰く、公取竊取共爲盜と、卽ち竊盜罪は被害者が其現行を認知したると否とを問はざるの謂也、□三舊刑法は竊盜を單純竊盜、變災盜、破壞盜、共同盜、特兇器盜、田野盜、屋外盜等となし、竊盜の手段方法又は目的物により區別し刑に輕重の差を附したるも、改正刑法は單に十年以下の懲役に處すと定め、犯情により自由に裁量せしむることゝなせり。(刑二三五條、二四二條、二四五條、奪取罪の部參照)
宣誓
(せんせい)證人鑑定人に對し訴訟法上眞實の供述を要求するの必要あるは茲に喋々を要せずと雖も、人の心裡を外部より洞察するの方法なきよりして、證人鑑定人等の陳述卽ち證言又は鑑定が、果して眞實なりや虛僞なりやを知り易からず、茲に於てか法律は、此等の者の良心に訴へて心理的に虛僞の供述を爲さしめざる方法を採れり、之を宣誓と謂ふ、凡そ心理的に虛僞の陳述を防ぐには、宗教を利用するを便宜とし、外國の多數の立法例槪ね宗教を利用して眞正の供述を爲さしむるに務む、然れども我邦の如き國家的の宗教を缺ける國に於ては、單に證人等の良心乃至體面に顧慮せしむるの外他に良手段なき也、此の如く宣誓は證人等の良心に顧慮せしめて眞實の供述を得んと欲するものなれば、苟も良心に顧みて宣誓せし以上は虛僞の陳述を爲さゞるべき程度の良心の存在を前提とせざるべからず、然れども此種の前提たる良心が一般人に存せざることは吾人の屢■經驗する所なるを以て、法律は不得止更に此種敗德漢に對し、一方よりは僞證罪の制裁を以て臨めり。(尚本書七三〇頁宣誓の部を見よ)
- 英
- Oath
- 独
- Eid
- 仏
- Serment
宣誓無資格者
(せんせいむしかくしや)格別の理由に基き、其宣誓を信用し難きの理由に依り、又は宣誓せしめて之に違背したる場合に、刑を以て臨むるの酷なる故を以て、其宣誓を禁じたる者をいふ、刑事訴訟に於ては、□一民事原告人、□二民事原告人及び被告人の親屬、但姻族に付ては婚姻の解除したる場合と雖も亦同じ、□三民事原告人及び被告人の後見人又は此等の者の後見を受くる者、□四民事原告人及び被告人の雇人又は同居人、□五公權剝奪者又は停止者、□六重罪事件又は重禁錮の刑に該るべき輕罪事件に付き公判に付せられたる者、□七現に供述を爲すべき事件に付き曾て訴を受け、其證據十分ならざるに因り免訴の言渡を受けたる者是なり、民事訴訟に於ても略ぼ之を同じく、□一刑事の判決に因り公權を剝奪又は停止せられたる者、□二原告若くば被告と一定の親族又は後見の關係ある者□三問に就いての答が證人又は證人と一定の親族又は後見關係ある者の耻辱に歸するか、又は刑事上の訴追を招く恐あるときは其者、□四問に就いての答辯が證人等に直接財産上の損害を生ずるときは其者、□五訴訟の成績に直接の利害關係を有する者等是れ也。(民訴三一〇條、刑訴一二三條、一二四條四號以下參照)
宜誓無能力者
(せんせいむのふりよくしや)宣誓の何者たるかを解せざるの故を以て、法律が宣誓を爲さしめざる者をいふ、民事訴訟に於ては、訊問の時十六歳に滿たざる者、其宣誓の何物たるやを了解するに必要なる精神上の發達を欠く者を宣誓無能力者とし、刑事訴訟に於ては、十六歳未滿の幼者、知覺精神の不十分なる者、聾啞者等を宜誓無能力者となす、訴訟法上宣誓を禁ぜられたる者に宣誓無資格者なるものあり、こは特別の理由に基き其宣誓を信用しがたきの故を以て、又は宣誓せしめて之に違背したる場合に、刑を以て臨むの酷なる故を以て、其宣誓を禁じたる者にして、宣誓無能力者と異なるものとす。(刑訴一二四條、民訴三一〇條參照)
船舶共有
(ぜんぱくきよういう)船舶の所有權が二人以上に屬する場合を船舶共有といふ、舊商法に於て船舶股分と云たるものは是れ也、元來船舶は他の動産に比して其價高きが故に、共同して其所有權を取得する場合多し、特に法典が船舶共有に就いて規定する▲此故也、英國に於ては、船舶の所有權は當然六十四(シエーヤ)株に分たれ、當事者の意思に依りて其數を伸縮することを得ず、而て若し船舶を一人にて所有するときは、其六十四分の六十四を有するものと看做され、其株數は依然として消滅せざる也、從て舶船の共有は此一を有するに依て成立す、我法に於ては、船舶は理想上に於て分割せらるヽことなく、共有といふも唯一の所有權が數人に分屬するに過ざる也、換言すれば、船舶の共有は民法上の共有と同じく、各共有者皆共有物の全部に付き所有權を有するものにして、唯一の所有權が數人に分屬するものなるが故に、其使用等に當ては互に制限を受くることあるべきのみ、次に船舶の共有は當然組合關係を伴ふや否といふに、此問題は各國學者の間に爭ありて、或は斷然組合なりといひ、又は共有當然の性質としては組合をなすものに非らずと論ず、我民法及び商法に於て共有とは、多數の人が所有權其他の權利を有する狀態をいひ、組合とは多數者の間に成立せる契約關係をいふものなれば、必らずしも當然同一場合に存すべきものに非らず、但し商法の適用を受くる船舶は、商行爲を爲すを以て目的とするものなれば、共同事業に使用する場合は組合關係を伴ふを普通とすといはざるべからず。(商五四六條乃至五五五條、共有、船舶管理人、組合の部等參照)
船舶所有者
(ぜんぱくしよいうしや)船舶の所有權者をいふ、船主といふも同一とす、船主船舶を築造したるときは、先づ船籍港を定め其船籍港を管轄する管海官廳に向て、船舶積量の測度を申請し、其測定を得たるときは、船籍港を管轄する區裁判又は其出張所に於て登記をなし、而て後管海官廳に登錄をなし、茲に至りて始めて船舶國籍證書を交付せらるゝもの也、其詳細は、管海官廳、船舶測度規則、船籍港、委任、船舶登記規則と題する部を參照すべし。(船舶法四條、五條、商五四〇、五四四、五四五條參照)
船主
奏任
(そうにん)官吏任命の手續に依る一區分にして、官吏には勅任(親任を含む)奏任、判任とあり、勅任とは天皇目から任じ給ふ場合にして、之を勅任官といふ、奏任とは奏宣に基き任命する場合にして、之を奏任官といふ、以上何れも高等官なりとす、次に判任とは、各省大臣又は所屬長官をして、判定の上任命せしむる場合をいひ、之を判任官といふ、普通文官及び武官是れ也。(任命の部參照)
總攬
(そうらん)總括して收攬することをいふ、別言を以ていへば、〓多に分任せしむるものを總べ括りて、之を一身に收め攬るとをいふ也、憲法に、天皇は國の元首にして統治權を總攬し、此の憲法の條規に依り之を行ふとあるは此用例とす、卽ち天皇は國家の首腦として、各機關に統治の作用をば分任せしむと雖も、其大本は常に天皇の總べ攬り給ふ所にして、其總べ給ふや常に此憲法の條規に依據して行はせ給ふことをいふ也。(憲四條)
屬
(ぞく)動詞として屬なる語は、附從の關係を表示する意味に使用せらる、例へば某物の所有權は甲者に屬すといふが如し、名詞として屬なる語は、屬人法、屬地主義、屬籍などいひて、他の語と結合して諸種の附隨關係を表示する意味に使用せらるゝも、單に屬といふときは、上官の指揮の下に各課に分屬し、庶務に從事する行政上の補助機關を指すことあり、屬なる官は判任を以て之に充て、各省及び各地方官府等に置く也、或は之を單に屬といはずして屬官といふ場合あり、兎に角其所屬廳名を冠して、何縣屬、何省屬などいふは、此用例なりとす。(官廳の部參照)
卽時時效
(そくじじこう)此語は舊民法に使用せられたるものにして、卽ち善意に動産の占有を取得したる者は、卽時に其權利を取得するをいふ、新民法は時效を時の經過を要するものとなしたるが故に、卽時時效は時效の一種にあらずとなし、占有の一種の效果と看做せり、民法占有の章に、平穩且つ公然に動産の占有を始めたる者が、善意にして且つ過失なきときは、卽時に其動産の上に行使する權利を取得すとあるは卽ち是れ也。(民一九二條、瞬間時效の部參照)
訴件
(そけん)訴訟に係る事件をいふ、訴訟とは權利の請求に付き、裁判所に其判定を求むることをいひ、裁判所に判定を求めたる事件を訴件又は訴訟事件といふ、訴件は刑事に係る場合あり、之を刑事訴訟事件といふ、民事訴訟に係る場合あり、之を民事訴訟事件といふ、行政に關する場合あり、之を行政訴訟事件といふ、民事又は刑事の訴訟事件に於て、其事件の輕重に從ひ裁判官の管轄を異にするものにして、之を事物の管轄と稱す。(管轄、訴訟の部參照)
訴訟事件
退隱料
(たいいんりよう)廣義に於ける恩給の一種にして、只退隱料は主として官吏以外の職員に給與せらるゝ点に於て、所謂恩給と異なるもの也、例へば府縣立師範學校其他公立學校の職員に支給せらるゝ退隱料の如し、退隱料には終身のものと一時限りのものとあり、終身退隱料は、多くは十五年以上其職に在りたる者が、疾病傷痍又は職制の變更、若くは老年の故を以て退職したる場合に給せらる、一時退隱料は、未だ以上の年限に達せざるも、同一の理由に依り職を退くに當り給與せらるゝもの也、其額は職員の種類、在職年限等に依りて異なる、然し職務上の原因に基き、疾病傷痍を受くるに依り退職したる場合は、年限に拘らず終身退隱料を給せらるゝを原則とす、今左に退隱料を給せらるゝ者を上ぐれば、府縣立師範學校及び公立中學校々長、正教員、舍監及書記、或場合に於ては、其准教員、市町村立小學校教員、臺灣等に在勤する地方税支辨の俸給を受くる判任以上の學校職員、巡査、看守、其他技術を以て奉職する者等、所謂奏任又は判任の待遇を受くる官吏にして恩給を受けざる者、及び吏員に支給せらるゝものとす。(二三年一〇月法九一號、二九年三月法一三號、同年一〇月法九〇號、四〇年七月法三八號參照)
第三種郵便物
(だいさんしゆいうびんぶつ)郵便規則に依り、第三種郵便物として認可されたる物をいひ、卽ち每月一囘以上定期に發行すること、記載事項の性質終期を豫定すべからざること、書籍の性質を有せざること、政事、時事、商事、學術、技藝、統計等公共の性質を有する事項を報道論議するを發行の目的となし、且汎く公衆に發賣すること等の條件を具備し、題號、記載事項の種類、發行の定日、發行所及び發行人の住所氏名を記して願出で、認可を受けたる定期刊行物及其號外は卽ち第三種郵便物とす。(郵便規則一九條、三三年九月遞信省令七三號)
待遇
(たいぐふ)或者と同じく遇らわるゝことにして、例へば巡査は判任官の待遇なりといふ、巡査を待つこと判任官を遇らふと同じく、略ぼ同一の特典、恩典等を與ふる也、會計檢査院長、行政裁判所長官、大審院長は親任を以て待遇せられ、公立中學校、高等女學校及び專門學校の教諭は奏任を以て待遇せられ、准士官は士官と同一の待遇を受け、巡査、看守、小學校訓導は判任を以て待遇せらるゝが如く、自からは其地位又は官にあらざるも、同一又は之に准じて遇らわるゝは卽ち待遇也。(二三年一二號勅二四四號、二四年一一月勅二一八號、三一年七月勅一六二號、二九年五月勅一六號、三四年五月勅一〇八號)
對審判決
(たいしんはんけつ)對へ審ぶる場合をいひ、卽ち原告と被告と兩々相對し、之を裁判所にて審理する場合をいふ也、茲に對審判決といふも、單に判決の言渡しのみを指すにあらざるは勿論とす、憲法に依れば、裁判の對審判決は之を公開すと定む、卽ち公判は之を公開する旨の規定にして、審理の正當なる旨を一般臣民に知らしめて、之に信賴せしむるが爲めとす、從て公開が安寧秩序又は風俗を害するの虞あるときは、對審の公開を止むべきは固より其所とす、要するに、對審判決とは豫審の如きに對し、原被相對して審理する公判を指すものと知るべし。(憲五九條)
逮捕及び監禁の罪
(たいほおよびかんきんのつみ)本罪は人の身體運動の自由を侵害する罪にして、不法に人を逮捕又は監禁するに因り成立す、□一行爲、逮捕監禁は共に人の身體動靜の自由を剝奪する行爲にして、逮捕は身體を束縛するが如き、其方法人の身體に物質力を加ふるに依り、監禁は一定の區劃の外に出づる能はざらしむる行爲也、其方法の如何を問ふことなし、逮捕及び監禁は共に繼續的の觀念を含み、就中監禁罪は繼續犯なりと解するを通説とす、故に時間の長短は問はざるも、單に人の手を握ると共に之を放つ如きは、暴行又は猥褻罪にして監禁罪にあらず、或は之を繼續犯なりとなすに就いて反説をなす者あり、此種の學者は、繼續犯を遺跡犯と混同し、總ての犯罪は犯狀を繼續すと説くも、其誤りなることは勿論なり、遺跡犯の部を參照せよ、或は犯罪狀態の繼續は、單に刑罰如重の事由たるに過ぎずとなすものあり、此説は、繼續犯と卽成犯との區別を無視するもの也□二犯意、不法なることを要す、蓋し逮捕、監禁は法律が之を認むる場合あり、犯罪人の逮捕監禁、又は精神病者の監置の如き是れ也、此等の場合に於ては、不法ならざるが故に本罪に非らず、法律は、不法なることを以て本罪の特別構成要件となしたるが故に、不法ならずと認識せる場合は本罪の犯意を欠く、從て此場合は本罪の成立を阻却す、□三處分、本罪の刑は三月以上五年以下の懲役に處するを本則とし、自己又は配偶者の直系尊屬に對する場合は六月以上七年以下の懲役に、因て人を死傷に致したる場合は、傷害の罪に比較し重きに從て處斷せらる。(刑二二〇、二二一條)
待命
(たいめい)現行の用例にては、外交官及び或種の武官のみに關して使用せられ、所謂休職のとなり、卽ち其職務を被免せられ、爾後何れの任地に赴任すべきや、又は何れの職に就くべきや、其命を待つ也。(二七年一一月勅一九〇號、同年勅一八九號、三〇年九月勅三〇九號)
臺灣總督府
(だいわんそうとくふ)臺灣及び澎湖列島を管轄支配せしむる爲めに置く官廳にして、民政部及び軍務部を置く、臺灣總督府の最高機關は臺灣總督なり、總督の權限は地方長官と大に異なり、左の四種の權限を有す、□一律令を發布するの權、總督は臺灣及び澎湖列島内に於て、法律の效力を有する命令を發するの權を有す、此命令を律令といふ、律令は緊急命令と異なり、議會の開會中なると閉會中なると、臨時緊急の必要あると否とを問はず、從て憲法が法律に依るに非らざれば定むることを得ずとの臣民の權利の保障は、未だ臺灣に於ては行われざる也、此事に關して六三問題として有名なりし、明治二九年三月法律第六三號に依り、委任せられたるものとす、□二軍隊の統帥權及び軍政權、總督は單に行政官廳たるのみならず、管内に於ける陸海軍を統帥し、及び軍事行政を行ふの權を有す、□三司法權、其直屬せる法院を通じて司法を行ふもの也、法院は憲法上の保證を有せざるが故に司法裁判所にあらざるも、權限の内容に於ては同一とす、□四行政權、此權に就ては地方官廳の權限に類似するも、勅令及び各省の命令は直に臺灣に行はれざるが故に、此點に於ても亦其權限大なりとす、次に總督府には總督官房を置くものにして、軍務に就いては副官、民政に就いては秘書官をして其機密に關する事務を掌らしむ、民政部には總務局、財務局、通信局、殖産局、土木局を置く、總督府に左の職員を置く、民政長官、參事官長、警視總長、局長、參事官、事務官、警視、技師、翻譯官、海事官(以上勅任又は奏任)屬、警部、技手、通譯是れ也。(三〇年一〇月勅三六二號)
臺灣總督府法院
(だいわんそうとくふはふゐん)臺灣總督府に直屬し、臺灣に於ける民事刑事の爭訟事件を審判する裁判所とす、内地に於ける司法裁判所と大體に於て異ならず、法院は之を別ちて地方法院と覆審法院となす、地方法院は單獨判事を以て民事刑事の第一審裁判及び刑事の豫審を管轄す、恰も内地の區裁判所に其構成の點は類似し、權限に於ては之と地方裁判所とを兼ねたるものゝ如し、覆審法院は合議制の部を設け、此部をして各地方法院の覆審、及び管轄に關する申請を裁判せしむるもの也、覆審法院は總督府在所地に一箇所を置くに過ぎず。(三二年八月勅三七〇號、三二年六月勅三〇〇號)
墮胎の罪
(だたいのつみ)本罪の性質に關しては二の異なれる説あり、一は墮胎行爲を以て胎兒を殺すの罪となし、他は之を以て胎兒を自然の時期より早く分娩せしむるの罪となす也、普通は此二説を折衷し、胎兒又は胎胚が母胎内に於て死亡するも、又は胎兒を自然の時期より早く分娩せしむるも、共に胎兒の生命に危險を及ぼす行爲なるが故に、等しく墮胎罪を構成すと解する也、墮胎行爲は其如何なる方法に依るを問はず、例へば藥物に依るも、機械の揷入に依るも、又は其他の人工的方法に依るとを問ふことなし、本罪は主體の異なるに依て左の數種となる、□一懷胎の婦女自ら墮胎する場合、此場合は、婦女自から手を下すと、又は他人に依賴して手段を施さしむるとを問はざるも、後の場合は其婦女は本罪に依り、其他人は次の場合以下の罪として處分せらる、本罪に對する刑は一年以下の懲役とす、□二婦女の囑託を受け又は其承諾を得て墮胎せしめたる場合、本罪の刑は二年以下の懲役なるを原則とし、因て婦女を死傷に致したる場合は三月以上五年以下の懲役とす、□三犯人の身分により刑を加重する場合、卽ち醫師、産婆、藥劑師又は藥種商が、婦女の囑託を受け又は其承諾を得て墮胎せしめたる場合也、本罪の刑は三月以上五年以下の懲役とす、但し因て婦女を死傷に致したるときは六月以上七年以下の懲役也、此等の身分なき者が共に本罪を犯したる場合は、同じく本罪を以て律せらるべきものとす、但し學理上不得止場合に、母體を助くる爲め胎兒を墮胎さするも本罪にあらざるは勿論也、□四婦女の囑託又は承諾なき場合、此場合に墮胎せしめたる者は、六月以上七年以下の懲役に處せらる、而て此罪の未遂は之を罰せらる、本罪を犯すに因て婦女を死傷に致したる者は、傷害罪の刑と比較し重きに從て處斷せらるべし。(刑二一二條乃至二一六條)
奪取罪
(だつしゆざい)竊取、強取、騙取の罪を總稱する學理上の用語にして、財産に對する罪の中、竊盜罪、強盜罪、詐欺取財罪、恐喝取財罪、橫領罪を總稱するもの也、此等の罪は何れも財産權を侵害する罪にして、其異なる所は手段如何にあり、卽ち強盜及び竊盜は、他人の所持内にある財物を其意思に反して奪取するにあり、詐欺及び恐喝は他人の所持内にある財物を其瑕疵ある意思に基き奪取するに因り、橫領の罪は自己の所持に移されたる他人の財物を不法に領得するに依て成立す、以下此等の罪に共通する要件を論ぜん、□一財物、物の意義に關しては二説あり、一は之を有體物に限るとなし、二は之を奪取可能性を有する總ての有體又は無體物となす是れ也、改正刑法は民法の主義に依り、物を有體物と限りたれど、強竊盜、詐欺恐喝に就いては電氣を物と見做したり、物が財物たるには、或は交換價格を要すとなし、或は金錢的價値を有するを要せず、財産權殊に所有權の目的たることを得る物たれば可也となすの二説あり、此後説は一般に採用せらるゝ説にして、茲に疑あるは死骸及び遺骨に就いて也、舊刑法の解釋としては、古き判例に積極説採用されたりしと雖も、新刑法は墳墓に對する罪に於て此等の物に關し特別罪を定めたるが故に、奪取罪の目的物たることを得ずと解すべし、次に奪取は他人の財物に就いて成立するを原則とす、從て無主物又は自己の財物に就いては成立することなきを原則とするも、改正刑法は左の物を例外とせり、卽ち強盜、竊盜、詐欺、恐喝の罪に於ては、他人の占有に屬し、又は公務所の命に依り他人の看守したるものなるとき、橫領罪に於ては、公務所より保管を命せられたるものなるときは、之を他人の財物に對する場合と同一に處分せらるべきもの也、次に奪取の罪は、動産又は不動産に對し之を犯すことを得るを原則とす、然れども盜罪は不動産に就いては犯すことを得ざるものと解せらる、蓋し竊取又は強取は、騙取等と同じく所持の移轉を要件とするも、騙取の場合に於けるが如く、被害者の意思(瑕疵ありとは言へ)に依り所特を犯人に移すものにあらざるが故に、其物の位置が現狀を變ぜざる以上は、犯人が之に占據することあるも、被害者其所持を失ふものといふを得ざれば也、從て不動産は騙取し得るも盜取し得ずとなす所以とす、若し夫れ不動産の不法占據が、或は住居侵入罪となり、或は脅迫罪暴行罪となり、又は業務妨害罪を構成することあるは別論とす、□二所持、奪取は所持の侵害なり、刑法二五二條以下に占有といふは、民法の所謂占有と異にして茲に謂ふ所の所持とす、所持なる語は之を保有又は保持と稱せらるゝことあり、所持は支配也、支配には法上の支配と事實上の支配とあり、法上の支配は權利の效果也、事實上の支配は所持なり、從て所持は其物に對する權利の存否と全く別種の觀念にして、一定の物に對し、一般の慣習に從て人が事實上の支配をなすをいふ、故に所有者又は占有者必らずしも所持に非らざるを知るべし、但し留守中の家財、歸還の慣習を失はざる限り家畜が戸外を徘徊するも、尚其所持者たるを得べし、所持は其意思あるを要するは勿論なるも、槪括的の認識にて可なりとすを通説とす、從て家内に其所在を忘却したる物も、在中の何たるかを知らざる鞄を預りたるも、尚其所持を取得するを得べし、自宅の玄關に投入されたる郵便物は、縱令不知の間に投入さるゝも尚所持關係を取得すべし、所持は數人にて爲すことを得べく、數人平等の關係にも物を所持する場合には、一人が他人を排斥して、自己單獨に所持を取得するも、盜罪又は詐欺恐喝の罪を構成することなかるべし、尤も反説あり、次に上下主從の關係にて物を所持する場合は、從者が主を犯して所持を獨占するときは、奪取の罪を構成するに於て缺くる所なく、之に反して主者が從を犯すことなし、但し借人は主從の關係ある場合にあらざるが故に、自から之を犯すときは橫領又は騙取の罪を構成すべく、但し盜罪を犯す場合あるなし、□三橫領、奪取罪は橫領するの意思あるを必要とす、橫領とは權利者の利益を排斥して不法に之を領得することを謂ふ、換言すれば、其奪取物を自己の物として、財物の經濟上の用法に從ひ之を處分することなり、此點に就いては有力なる反對あり、議論の岐るゝ所は主として左の二點に存す、(甲)直に財物を毀棄するの目的を以て他人の所持を奪ふは、橫領の意思を缺くが故に毀棄罪也、反説の如く橫領の意思を要せずとするときは、此場合は盜罪と毀棄とに就いて想像上の俱發の規定(刑五四條)を適用すべき場合なるも、余は之を單純の毀棄罪の適例なりと信ず、然らずんば單純の毀棄罪は想像することを得ざれば也、尤も他人の飮食物を奪取して直に飮食するが如きは、橫領の意思あるが故に盜罪を構成すべし、(乙)使用盜、卽ち一時使用したる後返還するの意思を以て他人の財物を持去る場合也、此場合を二に別ち、例ば貯金通帳を以て貯金を引出したる後、其通帳を原場に返還する場合の如き、又は一時他人の財物を質入したる後、之を受け出し返還する意思を以て所持を奪ひたる場合の如きは、反説あるべきも、余は之を財物の經濟上の用法に從ひ處分したるものと信ずるが故に、橫領の意思ある場合として奪取罪を構成すべしと解するも、他の場合、例へば下婢が羨望の餘り私に主婦の衣服を瞬時着用し、直に原狀に復し置くが如きは奪取罪を構成せざるものと信ず、故に反對論が橫領の意思を有せずとなし、使用盜の總てを盜罪なりと論ずる説には賛成し難き也、□四親族相取、奪取罪に在りては、犯人と被害者との間に於ける親族關係及び家族關係の有無親疎に依り、或は免刑の理由となり、或は必要親告の原因となるものとす、法律が此の如き規定を設けたる趣旨は、處刑に依り却て密接なる親族關係を攪亂するの虞あり、旦つ不必要なる(刑罰の目的に反する)訴追を爲すの弊を避けんとするに在り、免刑及び必要親告の場合を上ぐれば左の如し、(甲)直系血族、配偶者及び同居の親族又は家族の間に於ては、窃盜、詐欺、恐喝又は橫領の罪を犯すと雖も、其刑を免除す、但し此場合と雖も、第三者に關係ある場合、例へば公務所の命により他人の看守したる物に係るときの如きは、假令親族の財物なりと雖も其刑を免る能はず、又親族が寄託を受けたる他人の財物を橫領する場合の如きは、尚權領罪の刑を免ぜられざるが如き是れ也、(乙)前號記載以外の親族又け家族に係るときは、被害者より告訴あるを以て訴追の條件とす、此種の場合を必要親告又は相對親告罪と稱す、相對親告罪に於ては、他人が此等の者と共同正犯、又は此等の者に對する教唆若くは從犯なるときは、告訴なしと雖も其他人を訴追するを得べし、茲に注意すべきは、贓物に關する罪に就いても、親族又は家族の關係は、刑の絶對的免除の原因となるも、此免刑は以上の場合と其趣旨を異にし、此免刑は犯人藏匿又は證憑湮滅罪の無處罰の趣旨と同じく、人情を斟酌したるに因る、從て此場合は犯人と被害者との間に親族等の關係ある場合にあらず、主犯と所謂事後從犯との間に此關係ある場合なり、若し夫れ主犯罪の被害者と、事後從犯人との間に親族等の關係ある場合に於て、親族相取の規定を準用すべきやは、贓物罪を奪取罪と同じく財産に關する侵害罪と認むるを得とすれば、之を積極に解するに依て權衡を維持し得べきも、解釋上に於ては、事後從犯は獨立の罪となすべきが故に、消極の解を爲すの外なかるべき也、終りに、親族等の關係に基く免刑は、對人的の刑の免除なるを以て、犯罪の成立を阻止することなきが故に、免刑は共犯に及ばざるは勿論とす、又被害者法人なるときは、親族等の關係に基く免刑の規定は、絶對に適用すべき場合を生ずることなき也。(刑二三五條乃至二五五條)
拿捕
(だほ)拏取捕獲することをいふ、此語は戰時に於ける船舶の捕獲を指す場合に用ゐらるゝを普通とす、抑々海戰に於ては、私有財産の沒收禁ぜられず、故に軍艦は敵船を拿捕して之を沒收するの必要あり、就中戰時禁制品の輸送に從事する船舶は、何れの國民に屬す場合にも正當なる捕獲品となるべきものなれば、之を拿捕するの必要あり、軍艦拿捕をなしたるときは、之を捕獲審檢所に引致し、審檢の結果沒收を言渡すを順序とす、要するに拿捕なる語は、之を拿かみ捕ふることを指すなり。(三七年二月勅五〇號參照)
中學校令
(ちうがくくわうれい)中學校は男子に須要なる高等普通學術を授くる所にして、中學校令は此種の學校に就て定めたる法令とす、□一設立、道府縣に於ては土地の情況に應じ一箇以上の中學校を設置するの義務あるものにして、文部大臣必要と認むるときは府縣に中學校の增設を命ずることを得、但し以上の經費は北海道及び沖繩縣を除くの外其府縣の負擔とす、一私人も亦本令の規定に從ひ中學校を設立することを得べし、以上の設置廢止は文部大臣の認可を要するものとす、□二生徒、中學校に入學し得る者は年齡十二歳以上の男子にして、修業年限六箇年の尋常小學の課程を卒へたる者、又は之と同等以上の學力を有する者たるを要す、□三學科、中學校の學科及程度は、文部大臣の定むる所に依るべきものにして、教科書は文部大臣の檢定を經たるものゝ中、地方長官の認可を經て學校長之を定むべきもの也、□四教員、中學教員は文部大臣の授受したる教員免許狀を有する者に限る、但し文部大臣の定むる所に依り、此免許狀なき者と雖も之に充つることを得る場合あり、□五授學科、中學校に於ては之を徵收することを得べきものにして、公立中學校に於ては地方長官、私立中學校に於ては設立者より願出で、文部大臣の認可を經て之を定むべきもの也。(三二年二月勅二八號)
鎭守府
(ちんじゆふ)鎭守府は海軍出帥の準備、防禦の計畫、海軍區の警備、竝に所轄諸部の事務を監督する軍政上の機關にして、各軍港に置き、其所在の地名を冠して稱呼す、鎭守府には司令長官を置き、親補とす、從て親任の待遇を受くる者也、司令長官は天皇に直隷し、麾下の艦隊、艦船部、團隊を統率し、所屬各部を監督し、府務を總理す、又司令長官は麾下所屬艦團の軍紀、風紀及び教育訓練を統監す、但し軍政人事に關しては海軍大臣の指揮を受け、出帥防禦に關しては海軍々令部長の區處を受くるもの也。(三三年五月勅一九九號)
- 英
- Admiralty
- 独
- Admiralitäts-hafen
- 仏
- Amirauté
住居を侵す罪
(ぢゆうきよをおかすつみ)家宅侵入罪のことにして、只侵入の場合のみならず、要求を受くるも退去せざる場合を包含するが故に、家宅侵入罪なる名稱を採らざりし也、以下本罪の構成要件を擧説せん、□一行爲、本罪の行爲は侵入すること、又は要求を受けて其場所より退去せざるに在り、舊刑法は單に侵入の場合に就いて規定するに過ぎざりしも、改正刑法は要求を受けて退去せざる場合を加へたり、蓋し管理者の意思に反して侵入すると、又其督促に應ぜずして止まるとは、住居の平和を破る点に於て差異なきが故なり、但し茲に侵入するとは、住居者又は管理者の承諾なくして入るをいふか、或は其意思に反して入るをいふか爭はある所なり、其適用の差異は、承諾なきも承諾を豫想したる場合が罪となるや否やに存す、余は後説を可なりと信ず、□二場所、法律が例記したる左の場所に關すること、(1)邸宅、家屋又は家屋の附屬たる圍繞地をいふ、圍繞は境界と異なり、普通の步行に依て踰越し能はざる設備を指す、(2)建造物、二の意義あり、一は土地に定着する一切の設備をいひ、一は狹意にして、土地に定着する設備中、一定の掩蓋及び周壁を有する工作物にして、人の起居出人に適する物卽ち家屋の義也、茲には此狹意に解すべし、(3)艦船、廣く一般の船舶を包む、(4)皇居、禁苑、離宮、行在所、神官、皇陵、(5)以上の邸宅、建造物及び艦船は、人の住居し又は看守するぐのなることを要す、住居とは人間が秩序ある安靜を採る場所の意にして、必らずしも生活の本據、永住の居所又は寢食の場所たるを要せず、尤も此のことに關聯する左の問題あり、(A)旅人宿又は下宿屋に於ける客室又は下宿人の室に對して侵入罪ありや、此等の室を旅人又は下宿人の住居と言ひ得とせば本罪を構成すべきも、斯く一槪に論ずべきものに非らずと信ず、例へば下宿屋の下女は掃除の爲に侵入するも本罪に非らず、然れども全く關係なき第三者に係るときは本罪を構成すべし、(B)本罪を構成すべき住居又は看守は適法のものたるを要するや、余は權利者に依て侵入さるゝ場合の外本問を消極に解するを可と信ず、□三故なく侵入又は退去せざることを要す、故なくとは前述の如く管理者の意思に反してと解す、或は故なくの語を不法にといふ意味なりとなす者あるも、犯罪は成立上行爲が不法なることを要するは當然なるが故に、法文が此意味に於て故なくの語を用ゐたりとは考へられざる也、偖て管理者の意思に反してといふも、承諾なきの意に非らず、普通の人家に於ては、玄關までは何人も之れに入ることを禁ぜられざるを以て、承諾なきも尚それまで侵入するは本罪に非らず、但し此門内勸化乞食の者人るべからずの如き揭示ある場合に、此等の者入りたるときは本罪を構成す、蓋し此場合は其れ等の者の侵入を禁ずる意思明なれば也、本罪に對する刑は、人の住居又は看守する建造物、邸宅若くは艦船に侵入し又は要求を受けて其場所より退去せざる者は三年以下の懲役又は五十圓以下の罰金に、皇居、禁苑、離宮、又は行在所、神宮又は皇陵に侵入したる者は三月以上五年以下の懲役に處す、本罪の未遂は之を罰せらる。(刑一三〇條乃至一三二條)
鎭火妨害罪
(ちんくわばうぐわいざい)火災の際鎭火用の物を隱匿又は損壞し、若くは其他の方法を以て鎭火作用を妨害する罪をいふ、□一火災の際なること、火災の原因は問ふ所にあらず、放火、失火又は遇然なる事實に因る出火の何れに屬するも可なり、而して火災といふは通俗の觀念に異なることなく物の燃燒なり、只本罪は公共危險罪の一種なるが故に、放火又は失火の目的とならざる物の燃燒は火災と謂ふべからざる也、□二鎭火を妨害したること、鎭火とは火災消防の作用を云ひ、鎭火の妨害とは火災消防の障碍となるべき一切の行爲をいふ、法文に例示せる鎭火用の物の隱匿(發見を妨ぐる行爲)又は損壞(毀損及び破壞を意味す)の如きは、鎭火作用妨害の一例に過ぎず、抑▲鎭火の妨害は火災の結果に對する消極的の原因と見るべく、此點に於て放火と異ならずと雖も、放火行爲其者にはあらず、從て本罪の刑も放火よりは輕く、一年以上十年以下の懲役とす、もと此罪は舊刑法になかりし所にして、新刑法が其不備を認めて之を補ひたるものに屬す。(刑一一四條、放火罪の部參照)
重婚罪
(ぢゆうこんざい)配遇者ある者重ねて婚姻を爲したる罪をいふ、民法に依れば、重婚と雖も當然無效なるにはあらずして、戸籍吏が其屆出を受理したるときは婚姻關係其男女の間に成立す、然れども妻ある夫又は夫ある妻が重ねて婚姻するが如きほ、文明國の定則たる一夫一婦の制を紊り、一家の平和を害し、延ては公共の秩序を亂すことあるべきが故に、刑を制裁として此所爲を禁ずる也、以下本罪の構成要件を上ぐれは、□一配遇者あるものなること、夫ある妻又は妻ある夫にあらざれば重婚を爲すことを得ず、而て茲に配遇者といふは、民法上所謂夫又は妻をいひ、内緣の夫又は内緣の妻を包含せざるは勿論とす、但し此等の者と婚姻したる相手方も本罪を以て罰せらる、□二重ねて婚姻したること、既に婚姻關係成立し、妻たり夫たる身分を有しながら、夫婦外の第三者と更に婚姻したることをいひ、實際に於て第三者と夫婦關係を繼續したる場合には、本罪と姦通罪との想像上の數罪俱發たるべし、但し重婚は前婚の有效に成立したるを要するも、前婚が取消し得べき場合に於ても、現實に取消さゞる間に重婚したるときは本罪とす、本罪の刑は二年以下の懲役也。(刑一八四條)
- 英
- Bigamy
- 独
- Doppelehe
- 仏
- Bigamie
中止犯
(ちゆうしはん)罪を犯すも之を自已の意思に因り止めたる場合をいふ、犯罪の中止が任意なる点は、他の未遂罪と區別せらるる要點にして、中止が任意也といふは、自動的動機に基く中止をいふ也、されど其中止たるや、必らずしも眞に悔悟に出づるを要せず、利害の計算上馬鹿〳〵しき爲め之を止むると、又は畏怖に基きたるとを問はず、尤も他動的故障に基きたる場合は、そが風聲鶴涙に過ぎざるときと雖も、意外の故障に依る一般未遂罪なりとす、而て中止たるや一時的にても可なれど、例へば數囘少量の毒物を施用する爲めの休止は、繼續又は反複なれば中止といふべからず、中止犯には二の態樣あり、一は犯人自ら實行の終結を止めたる場合、一は一旦實行を終結したるも、自ら其結果の發生を妨止したる場合是れ也、此後者の場合に於ける中止は、實行のみにより結果を要せざる犯罪(形式犯)、結果の不發生が確定したる不能犯(一に之を失敗犯といふ)に就いては存ずべからざる觀念とす、舊刑法に於ては中止犯を罰するの規定なく、改正刑法に於ては其刑を輕減又は免除することを得とせり、中止犯の刑を免除し又は輕減する所以は、刑事政策上の理由に基き犯人の中止を促すに在り。(刑四三條但書)
懲役
(ちようえき)破廉耻罪に科する主刑の一種にして、自由刑とす、有期及び無期の區別あり、有期は一月以上十五年以下、無期は終身監獄に拘置し、定役を科する也、定役とは強制勞役のことにして、此點禁錮と異なる、有期の懲役は之を加重する場合は二十年に至ることを得、之を減輕する場合は一月以下に降すことを得、而て懲役に處せられたる者改悛の狀あるときは、有期は其刑期の三分の一、無期は十年を經過したる後、行政官廳の處分を以て假に出獄を許すことを得べし。(刑九、一二、一四、二八條)
懲罰令
(ちようばつれい)懲戒罰を規定したる法令にして、主として陸海軍の懲罰令を指す、陸海軍懲罰令は、軍人の故意、疎虞、懈怠、過失の輕犯にして、刑法に該らざる者及び素行修らず、軍人の體面を汚す者あるとき、上官之を懲戒するの罰典也、陸軍に於ける罰目は、將校同相當官に科すべきものは、重謹愼、輕謹愼にして、下士及び卒に科すべき罰目は重營倉、輕營倉とす、重輕の謹愼は、勤務を停め他出及び外人と接見通信することを禁ず、其日數は一日以上三十日以下とす、而て重謹愼は俸給の半額を減じ、輕謹愼は其四分の一を減ず、重營倉は演習の外勤務を停めて營倉に錮し、唯飯及び湯鹽を給し寢具を貸與せざるもの也、而て其日數は謹愼に同じ、但し七十二時の内二十四時間は輕營倉に移すべきもの也、輕營倉は演習の外勤務を停め、之を營倉に錮すのみ、其日數は謹愼に同じ、次に海軍に於ける罰目は、准士官以上には謹愼、下士以下は禁足とす、謹愼は陸軍のそれと略同じく、只重輕を區別せず、居宅又は艦團隊校内に於てする點異なる、禁足は勤務及び演習の外艦團隊校若くは居宅を出づることを禁ず、而て其日數は一日以上三十日以下とす。(一四年一二月陸乙七三號達陸軍懲罰令、二二年一二月勅一三四號海軍懲罰令)
徵兵令
(ちようへいれい)明治二二年一月法律第一號を以て公布せられ、二八年及び三七年の兩度改正を加へられものとす、其大要を摘記すれば、□一兵役、日本帝國臣民にして滿十七歳より滿四十歳までの男子は總て兵役に服するの義務あるものにして、兵役は之を常備、後備、補充及び國民兵役となす、常備兵役は現役及び豫備役に分かたれ、現役は陸軍にありては三个年、海軍にありては四个年とし、滿二十歳に至りたる者之に服す、豫備役は陸軍四个年四箇月、海軍三箇年にして現役を終れる者之に服す、後備役は陸軍十箇年、海軍十五箇年とし、常備兵役を終りたる者之に服す、補充兵役は陸軍十二箇年四箇月とし、海軍は一箇年也、其年所要の現役兵員に超過せる者の中所要の人員之に服す、國民兵役は之を第一と第二とに區別し、第一國民兵役は陸軍に在りては後備役又は召集されたる補充兵其兵役を終りたる者、海軍に在りては後備兵役を終りたる者之に服す、第二國民兵役は常備役、後備役、補充兵役及び第一國民兵役にあらざる者之に服す、但し重罪の刑に處せられたる者は以上の兵役に服すを許さゞるものとす、□二服役、在營して役に就くことをいひ、陸軍の現役兵及び補充兵は、每年所要の人員に應じ、壯丁の身體、藝能及び職業に從ひ、步騎砲工輜重及職工雜卒に區別し、抽籖の法に依り當籖の者を以て之に先つ、海軍に在りては所要の人員に應じ沿海地方及び島嶼の壯丁を調査し、職業に從ひ水兵、火夫及職工、雜卒に區別し、抽籖の方法に依りて之を定む、警備隊を置きたる島嶼の壯丁は總て之を充て、其地に於て服役せしむ、是れ抽籖に依るの例外たり、但し在營の期限は一箇年以内とす、但し壯丁(二十歳)に至らずと雖も、滿十七歳以上の者は志願により現役に服することを得べし、□三免役、癈疾又は不具等にして徵兵檢査規則に照し兵役に堪へざる者は兵役を免ず、例へば精神病にして自營の能力を缺く者、腦出血、脊髓勞等の者、營養失常者、内臓病就中肺勞、胃癌等の者、癩及び惡性贅生物ある者、全身の畸形、兩眼失明、偏眼失視し他眼の視力著しく減弱する者、啞及聾者、一肢以上の用を癈する者等是れ也、□四徵集延期、體格完全且つ強壯なるも身幹未だ定尺に滿たざる者、疾病中又は病後にてし勞役に堪へざる者、重輕罪の爲め訊問又は拘留中の者は徵集を延期さる、又徵集に應ずるときは其家族自活し能はざるときは、其確證に因り本人の願を以て徵集を延期す、但し其事故三箇年を過るも止まざるときは國民兵役に服せしむ、□五徵集猶豫、府縣立師範學校、若くは文部大臣に於て中學校の學科程度と同等以上と認めたる學校、文部大臣の認可を經たる學則に依り法律學、政治學、理財學を教授する私立學校に在學せる者は、本人の願に因り二十八歳まで徵集を猶豫す、其事故滿二十八歳までに止み、又は之を過ぐるも止まざるときは抽籖の法に依らずして之を徵集す、又外國に在る者は(但し朝鮮及び南滿沿岸諸洲を除く)本人の願に依り徵集を猶豫す、其者三十二歳までに歸朝するときは抽籖の方法に依らずして之を徵集し、三十二歳を過ぐるも歸朝せざる者は國民兵役に服せしむ、因に餘人を以て代ふべからざる職務を奉ずる官吏、吏員其他の職員は、勤務演習及び簡閲点呼の爲め召集することなし、□六屆出、每年一月より十二月までに滿二十歳となるものは、其年の一月一日より同月三十一日までに、本籍地の市町村長に屆出の義務あるものとす、但し寄留地に於て檢査を受くることを得る也、以上の屆出を爲さヾる者は三圓以上三十圓以下の罰金に處せらる。(二二年一月法一號、二九年三月勅一一二號、三二年三月陸軍省二六號達)
直接國税
(ちよくせつこくぜい)直接税にして國税たるものをいふ、貴族院令に於て直接國税と稱するものは、地租、所得税、營業税の三種にして、何れも國税たる場合を指す、因に國税とは國庫に收入を得せしむる税種にして、府縣税、市町村税等に對する分類なり、府縣制、郡制に於ける直接國税とは、地租、所得税(無記名債券の所得に係る所得税を除く)及び營業税也、市町村制に於て直接國税といふも以上に同じ、之を要するに理論上に於ては、消費者に轉嫁せしむる間接國税にあらざる總ての國税は、則ち直接國税なりとす。(二二年三月勅四一號、三二年六月内務省告示六九號、二一年七月大藏省告示九五號)
貯蓄銀行
(ちよちくぎんこう)複利の方法を以て專ら零碎の預金を取扱ひ、國家有用の資金を求めんが爲めに、國民の勤儉貯蓄を獎勵するの目的を以て設立せらるゝものをいふ、法律は、此の如き性質を有する銀行なるを以て、當事者の責任を嚴重に規定し、其目的を誤ることなからんを期せり、貯蓄銀行は資本金額三萬圓以上を要し、取締役は銀行の業務に付き連帶無限の責任を負ふべきものにして、貯蓄預金拂戻の擔保としては、預金總額の四分の一より少からざる金額に對し、利付國債證書又は地方債證券を準備し、之を供託所に預け入れて、萬一銀行が破産する場合に、預金者をして其擔保に付き優先辨濟を得せしむるもの也。(二三年八月法七三號、銀行の部參照)
通行税
(つうかうぜい)交通機關を利用して通行する者に課する一種の租税にして、現行の制度に依れば、汽車、電車又は汽船に乘じて内地を通行する者に、左の税率により之を賦課せらる、□一二百哩又は二百海浬以上、一等五十錢、二等二十五錢、三等四錢、□二二百哩又は二百浬未滿、一等四十錢、二等二十錢、三等三錢、□三百哩又は百浬未滿、一等二十錢、二等十錢、三等二錢、□四五十哩又は五十浬未滿、一等五錢、二等三錢、三等一錢これ也、但し通行税は營業者之を徵收し納付すべきもの也。(三八年一月法一號、非常特別税法三條三號、五條の六參照)
通貨僞造の罪
(つうくわぎぞうのつみ)廣く通貨の僞造又は變造し、若しくは此等の通貨を輸入、收得、交付及び行使したる罪を總稱す、□一通貨、價格の基準、交換の媒介物として國家の公認に因り、一般取引上に使用せらるゝものをいふ、一般取引上に於て、交換の手段として通用せらるべきものなるが故に、通用期限の到來前又は終了後は、外形上通用貨と同一なる物と雖も通貨にあらず、從て通用滿期後引換期限中の舊貨は通貨にあらずとなすを通説とす、然れども交換の手段として通用すべき額に一定の制限あることは、通貨たるの性質を妨げざる也、例へば補助貨幣の如し、通貨は國家若くは國家の承認を得たる者に於て之を發行するを普通とす、從て通貨僞造の罪は、此國家の發行權を侵害する罪と解し得べきも、引續き發行せざる通貨(現行に於ては文久永寳、寬永通寳の如きこれ也)と雖も、亦本罪の目的となり得べきが故に、本罪は寧ろ通貨の一般取引上に於ける信用を損じ、一般取引の安全を害する罪となすを可と信ず、通貨は之を別ちて貨幣、紙幣及び銀行券とす、貨幣は所謂硬貨にして、貨幣法に依れば金貨、銀貨、白銅貨及青銅貨の四種あり、此種の硬貨は其れ自體に於て價値を有するもの也、但し補助貨幣は名價相當の實價を有せず、紙幣は其れ自體に於て實價を有せずと雖も、發行者の信用に依り貨幣に代用せらるゝ紙の印刷物にして、國庫の爲めには無期且つ無利子の國債證書とす、本邦に於ては曾て政府及び國立銀行より發行せし紙幣ありしも、漸次之を硬貨に交換し、明治三二年十二月限り其通用を全部廢止したり(三一年法六號)其後紙幣の發行なきが故に、紙幣僞造に關する規定は有名無實の觀あり、次に銀行券とは、政府の認許に依り銀行に於て發行する一種の約束手形にして、交換の手段として強制通用の力を有する兌換券也、現時に於ては、日本銀行に於て發行する兌換金券、臺灣銀行に於て發行する兌換銀券は此例なり、但し韓國に於て通用する第一銀行發の銀行券、關東州及び清國に於て通用する橫濵正金銀行發行の銀行券は之を含まざるものとす、□二行爲、本罪に於ける行爲の一は僞造なり、通貨僞造の觀念に就いては二説あり、甲説は之を通貨製造發行の特權を害する行爲をいふとなし、乙説は之を通貨の眞價を僞るの行爲なりとなす、甲説を通説とす、通貨の僞造は實際に存するものに類似するを要するや、僞造の一般觀念に依れば、必らずしも實物に類似するを要せず、否寧ろ實物の存在を要せざれど、通貨の如きは寒村僻地と雖も流通するものにして、老幼貴賤の別なく之を知るものなれば、實物に類似することを要すと解せざるべからず、然らずんば一般人を欺くに足る程度を有するものと認むるを得ざれば也、從て五十圓の銀行券を僞造し、一定の紋章と價格を記したる角形の硬貨を僞造するも、現今の實際に於ては通貨の僞造といふべからず、次に通貨の僞造は、僞貨の實質が眞貨の實價と同等若くは優等なるときと雖も亦僞造なり、蓋し通貨の信用は、其發行者の信用如何に係るものにして、其實價が名價以下に存する場合と雖も、例へば補助貨幣も尚通貨たるを妨けざるに反し、僞貨の存在することは存在其れ自身が眞貨の信用を害すれば也、此點に就ては僞造の觀念に關し、上述甲説を採るより生ずる當然の論決とす、本罪の行爲の二は變造なり、通貨の變造とは、或眞貨に一部の變更を加へて他の眞貨に模擬するをいふ、變造には實質上のものと名價上のものとあり、實質上の變造は硬貨の緣片を削り取り、又は其中味を抉り取るが如き方法を以て、眞貨の實價を減損する行爲也、獨逸刑法は此種の罪を獨立罪とす、而て此種の行爲は紙幣及び銀行券に就いては想像することを得ず、名價上の變造とは、眞貨を基礎として新貨を製出するを謂ふ、而て眞價の實質及び形式を基礎とせざるべからず、例へば銅貨に鍍金して以て金貨を模擬するが如き是れ也、或説に依れば、某種の眞貨を基礎として他種の新貨を製出するは、變造にあらずして僞造なりとなすも、然るときは變造なるものは、實際上に於て名價上の物はなきに至らん、但し眞價の實質のみを基礎とする新貨の作出は僞造なるは論ずるまでもなし、例へば、眞貨を金塊として新貨を作出する場合の如し▲本罪に於ける行爲の第三は行使なり、僞造又は變造の通貨を行使するといふは、僞貨又は變造の通貨を眞貨として流通せしむべき狀態に置き、又は其他之を眞貨として使用することをいふ也、換言すれば、眞貨として其用に供することを意味す、故に必らずしも他人に僞貨を受取らしむることを要せず、例へば僞造の白銅貨を自働電話器に入るゝが如きも亦行使なり、然れども實を告げず、行使せしむるの目的を以て他人に交付する罪は獨立罪を構成す、本罪の行爲の四は輸入なり、輸入の意義に就ては阿片煙に關する罪の部を參照せよ、本罪の行爲の五は收得なり、收得は僞貨の所持を取得する一切の行爲をいふ、舊刑法は之を取受といへり、本罪の行爲の六は交付なり、交付は行使の目的を以て他人に其所持を移すことをいふ也、□三犯意、本罪の犯意として僞造、變造、輸入、交付、收得は何れも行使の目的に出づることを特別の構成要件とす、以上の行爲に就ては、此目的を缺くときは本罪にあらず、但し行使の目的なくして僞貨を收得したる後、其僞貨たることを認知しつゝ之を行使し、又は行使の目的を以て他人に交付したるときは、特別の獨立罪とす次に行使に就ては以上の目的を要せず、僞貨たるの事實を知らば故意の内容完成すべし、□四態樣、(1)行使の目的を以て通用の貨幣、紙幣又は銀行を僞造又は變造し、若しくば此等の通貨を行使し、又は行使の目的を以て人に交付し及び輸入するの罪、此罪は内國の通貨に限る場合也、本罪の刑は無期又は三年以上の懲役とす、(2)行使の目的を以て内國に流通する外國の通貨を僞造又は變造し、行使し、人に交付し又は輸入したる罪、本罪の場合は第一の罪と異なり、外國の通貨にして内國に流通するものに係るとき、之を處罰する場合也、但し現時に於ては、外國の通貨にして内國に流通を公認せられたるものなし、而て流通を公認せられたる場合に限るとなすを通説とす、本罪の刑は二年以上の有期懲役とす、(3)行爲の目的を以て僞造又は變造の通貨を取得する罪、本罪の刑は三年以下の懲役とす、以上第一より第三に至る場合の罪の未遂は之を處罰す、(4)通貨を收得したる後、其通貨が僞造又は變造に係ることを知て之を行使し、若くは行使の目的を以て之を人に交付したるの罪、本罪の刑は名價三倍以下の罰金又は科料とす、但一圓以下に降すことを得ざる也、本罪の刑單に財産刑に過ぎざる所以は、僞貨の政得に依て受けたる損害を改復せんとの慾心より出づるものなれば、罰金又は科料の三倍額を科するに依て妨止の目的を達し得るに依る、(5)通貨の僞造又は變造の用に供する目的を以て、器械又は原料を準備する罪、本罪は通貨僞造又は變造の豫備に係る場合也、而て器械又は原料を準備するにあらざる豫備は之を罰せざるものと解す。(刑一四八條乃至一五三條)
提供
(ていきよう)辨濟の提供は其提供の時より不履行によりて生ずべき一切の責を免れしむとの用例の如く、提示供出の意なり、辨濟の提供といへば、債務の目的たる給付を其本旨に從て提示し、之を供出する也、又申込の提供といへば、申込の事實を提示し、供出することを意味する也。(民四九二條、四四三條)
- 英
- Offer
- 独
- Anbieten
- 仏
- Offre
遞信省
(ていしんしよう)遞信省は遞信大臣の主管する所にして、遞信大臣は、官設鐡道、郵便、小包郵便、郵便爲替、郵便貯金、電信、電話及び航路標識を管理し、私設鐡道、電氣、造船、水陸運輸に關する事實及び航路、船舶、海員を監督するものとす、而て遞信省の監督する官廳は郵便及び電信局、鐡道廳、海事及び管海官廳これ也。(一年一〇月勅二九五號)
帝王神權説
(ていわうしんけんせつ)國家の起源を説くに當て、帝王の權力は神に依て與へられたるもの也となす説なり、此説は古來に於て頗る有力なりしも、近時に於ては其勢力尠し、抑▲君主の權力を神より出づるとなし、又は國家は神に依て組織さるゝといふは、宗教上の觀念に於て或は言ひ得べしとするも、政治學上に於ては國家を組織するの意思を人民に與へたるは神なりとか、帝王は國家を代表ずるものとして、他の人より多くの實力を神によりて與へられたりとは或は言ひ得ん、然れども其權力の源泉を神なりとし、又は帝王を半神と解し、神が己れに眤近せしめたるものとなすは、臆説も亦甚だしといはざるべからず、近時の學者「スタール」が、國家は神の名を以て支配するもの也、故に國家は神權を有すと説くも、基督甞て「シーザーに對する義務はシーザーに盡せよ神に對する義務は神に盡せよ」といひたるに依て見れば、基督は國家の權力神權なりと見ざる也、基督既に然り、科學的硏究を以て立つ政治學に於てをや、或は政權は神より來るとの説を敷衍して、帝王不可侵を説明せんとするも、其誤りなることは其部に於て説述せるが如し、之を要する本説は單に斯かりしならむとの臆説に過ぎず。(社會契約説、不可侵の部參照)
嫡出子
(てきしつし)正當の婚姻に依て出生せる子をいふ、卽ち私生子、庶子に對する用語なり、私生子及び庶子は父母によりて認知せられたる私生子を云ふ、之に反して嫡出子は父母の正當なる婚姻によりて出れたる子を指す、但し其父母の私生子にして、父によりて認知せられたる庶子は、父母の婚姻に依て嫡出子たる身分を取得するものなれば、嫡出子は之を父母の婚姻に依り生たる子、及び父母の婚姻に依て認知せられたる子を指すものと謂ふべし、(民四編四章第一節第一款)
- 英
- Legitimate son
- 独
- ehelicher Sohn
- 仏
- Enfant légitime
嫡母
(てきぼ)庶子に對し父の妻を嫡母といふ、庶子とは父と第三者との私通に依て生れたる子を指し、其父の認めたるものは卽ち庶子なり、而て庶子は父の正妻に對しては、本來姻族の關係存ずるに過ぎざれども、實際に於ては親子と同一の狀態生じ、我邦古來の慣習に於ても嫡母庶子の間に於ては、親子と同一の關係生ずとなしたるが故に、民法も嫡母と庶子の間に於ては親子と同一の親族關係を生ずるものとせり、故に嫡母なる語は、其子が嫡出子ならば當然母たるべき父の妻を指す語なるを知るべし。(民七二八條、七七三條、八四三條)
- 英
- Legitimate mother
- 独
- eheliche Mutter
- 仏
- Mère légitime
登記法
(とうきはふ)廣く登記原因、登記事項、登記官吏及び登記申請人の權利義務を規定したる法規をいふ、□一不動産登記、此登記は不動産に關する權利(所有權、地上權、永小作權、地役權、先取特權、質權、抵當權、賃借權)の設定、保存、移轉、變更、處分の制限又は消滅に付き之を爲すべきものにして、此種の登記は、設定登記、保存登記、移轉登記等と區別せられ、又一方に於ては本登記、假登記、豫告登記、附記登記と分つ、假登記は登記の申請に必要なる手續上の條件が具備せざるとき、及び上述の權利の設定、移轉、變更又は消滅の請求權を保全せんとする場合に爲すべきものにして、豫告登記は、登記原因の無效又は登記の抹消又は囘復の訴の提起ありたる場合に之を爲すものなり、次に附記登記は主登記に附記して爲す登記をいひ、附記登記の順位は主登記の順位に依るべきもの也、尚不動産登記の詳細に就いては不動産登記と題する部(本書一〇六九頁)を參照せよ、船舶登記、船舶の權利得喪變更に關する事項に就いて爲す登記をいひ、大體は不動産登記に同じ、尚船舶登記規則と題する部(本書七五一頁)を參照すべし、□三商業登記、商業に關し法定せられたる事項を登記する場合をいひ、其詳細は商業登記と題する部(本書六〇四頁)以下を參照すべし、□四法人及夫婦財産契約登記、營利を目的とせざる法人、及び夫婦財産契約の登記は、其事務所又は住所地を管轄する區裁判所を以て登記所と定め、左に示せる雛形の如き登記をなす也、
法人登記簿
何區裁判所
登記番號
第號
登記ノ年月日及ビ登記官吏印
第一欄ヨリ第八欄マデ
明▲年月日登記
一
名稱
二
事務所
三
目的
四
設立許可ノ年月日
五
存立時期
六
資産ノ總額
七
出資ノ方法
八
理事ノ氏名、住所
九
解散ノ原因及同年月日
明治年月日登記
十
清算人氏名住所
明治年月日登記
丁
變更
變更
夫婦財産契約登記簿
何區裁判所
登記番號
番號
契約者ノ氏名住所
夫婦財産契約
夫婦財産契約
丁
管理者ノ變更及ビ共有財産ノ分割
管者變及共財ノ割理ノ更ビ有産分
消滅
以上の外相互保險會社登記、産業組合登記、永貸借地權登記、身分登記等の手續を規定せる法令あり、就いて參照せらるべし。(三一年六月法一二號戸籍法第二章及第三章、三四年九月司法省令一五號永代借地及び永貸借地の上に存する建物に關する登記取扱手續、三三年七月司法省令三八號産業組合登記取扱手續、同年六月同一八號相互保險會社登記取扱手續、三二年五月同一五號、同年同月同十三號、同年六月同三五號、同年同月勅二七〇號、三二年二月法二四號參照)
逃走の罪
(とうそうのつみ)囚人其他法令に依り拘禁せられたる者逃走し、又は被拘禁者を奪取し若は逃走せしむる事に關する罪をいふ、本罪は之を大別して、被拘禁者の自ら逃走する罪と、他人が被拘禁者を奪取し、又は逃走せしめ、若くば逃走せしめんとする罪との二とす、以下分説すること左の如し、□一逃走罪=既決、未決の囚人又は拘引狀の執行を受けたる者自ら逃走する罪を云ふ、其構成要件を上ぐれば、(a)法令に因り監獄に拘禁せらるべき者なるを要す、此種の者三あり、一は既決の囚人にして、卽ち刑罰執行の爲め監獄に拘禁せらるべき者を云ひ、二は未決の囚人なり、卽ち犯罪審理の爲め監獄に拘禁せらるべき者にして、犯罪審理の爲め拘留狀の執行を受けたるときは、未だ入監前なりと雖も未決の囚人たり、舊刑法は未決の囚人入監中逃走したるにあらざれば犯罪を構成せざる者となすも、新刑法に於ては此の如き制限なし、其三は拘引狀の執行を受けたる者を云ひ、以上三者は本罪の主體たるものなり、從て懲治囚の如きは法令に因り拘置せらると雖も本罪の主體となることなし、(b)逃走したることを要す、逃走とは拘禁者の監督を離脱するの謂にして、監督の範圍を全く脱したるときは本罪の既遂となる、故に未だ監獄の構内を脱せざるか、又は追跡を受けつゝある間は逃走の既遂に非らず、逃走に單純なる逃走と否とあり、拘禁場又は械具を損壞し若くは暴行脅迫をなし、又は二人以上通謀たしる場合は單純ならざる逃走なり、既決又は未決の囚人單純なる逃走をなしたるときは一年以下の懲役に處し、囚人及び拘引狀の執行を受けたる者單純ならざる逃走をなしたるときは三月以上五年以下の懲役に處す也。□二被拘禁者を逃走せしむる罪=法令に因り拘禁せられたる者を奪取し、又は逃走せしめ若しくは逃走せしめんとしたる罪にして、其構成要件を分説すれば、(c)法令により拘禁せられたる者に關すること、既決未決の囚人、拘引狀の執行を受けたる者、懲治囚、捕虜其他法令により公力を以て其自由を拘束せらるる一切の人を包含す、但精神病監護法に基く監置者に就ては疑あり、然れども一私人に依て逮捕されたる現行犯人、若くは單に法令の規定上居所の制限を受くる者、例へば兵卒、娼妓の如きを包含せず、而て被拘禁者は現に公力看視の下に在る者を意味するが故に、既に逃走して看視の範圍を脱したる者に係るときは本罪にあらず、(d)奪取又は逃走せしめ若くはせしめんとしたる事、奪取は自らは逃走行爲を爲さゞる者を拘禁者の監督の下より奪ひ出すことをいふ、奪取の手段として拘禁者に對し、或は暴行脅迫を加ふるも又は欺罔恐喝を爲すも。茲にいふ奪取行爲の内に包含せらる、次に逃走せしめんとしたるときは、此目的を以て器具を給與し、其他逃走を容易ならしむべき行爲をなし、又は暴行脅迫を爲したる場合に限り本罪を構成す、此場合は、囚人又は拘引狀の執行に因る者に關するときは、其れ等の逃走罪に關する從犯なり、終りに、逃走せしめとは、被拘禁者の看守者又は護送者が、解放其他の行爲に依りて逃走を促し又は助けたる場合は勿論、逃走を覺知して妨止せざりし場合をも包含す、但し妨止の手段を盡したるも能はざりし場合の如きは之を包まざる也、又過失に依りて逃走を覺らざりし場合も之を包含するものとす、(e)本罪に對する刑は各行爲に對して同じからず、先づ奪取の刑は三月以上五年以下の懲役なり、逃走を容易ならしむるときは三年以下の懲役にして、但し逃走を容易ならしむる爲め暴行脅迫を爲したるときは三月以上五年以下の懲役に、看守者又は護送者被拘禁者を逃走せしめたるときは一年以上十年以下の懲役に處するなり。(刑九七條乃至一〇二條、舊刑一四三條、一五〇條參照)
動作犯
(どうさはん)形式犯又は非結果犯といふに同じく、實質犯又は或意味に於ける結果犯に對する用語也、抑▲行爲は常に何等の結果を伴はざることなし、然ども法律が或犯罪の構成要件として結果を必要とせざる場合は、其犯罪は單に行爲(作爲又は不作爲)のみに依りて成立すべし、換言すれば此種の犯罪は單に動作のみにて完成す、之を動作犯といふ、或は動作犯なる語を行犯なる意味に使用する學者あり、此用法に依れば動作犯は不行犯及び不純正不作爲犯に對する犯罪にして、意思實行が動的狀態(作爲)たる犯罪をいふ、爲すに依て犯さるゝ犯罪を意味し、爲さゞる犯罪たる不行犯及び爲さゞることに依て成る現象を妨止せざる犯罪に、相對す、此意味の動作犯は分れて純然たる動作犯と然らざるものとの二となる、純然たる動作犯は卽ち前義に於ける動作犯にして、卽ち動作のみに依て完成する犯罪をいふ也、例へば僞證罪の如き、單に法律に依て宣誓したる者が虛僞の陳述を爲すに依て成立し、別に因て事件の被告が曲庇せられ又は陷害せられたることを要せず、又因て國家の司法權が侵害されたることを要せざる也、凡そ此種の罪は所謂動作犯に屬す。(刑一六九條、形式犯又は非結果犯の部參照)
同盟
(どうめい)人又は國家が或行爲を合同する旨の盟をいふ、國家の同盟は、同盟條約に依りて爲すを通常とす、同盟條約は種々の標準に依りて之を分類するを得、□一平時同盟及び戰時同盟、同盟條約が平時に於て定めらるるや否やに基く區別にして、所謂獨墺伊の三國同盟、佛露同盟及日英同盟は平時同盟の例なり、かの明治二七年日韓の同盟條約が清國に對することを定めたるが如きは、局部的なれども戰時同盟に屬す、□二全部同盟及局部同盟、一國全部に關して定めたるや否やに基く區分とす、上例明治二七年日韓條約の如きは局部同盟の例とす、□三攻擊同盟、防禦同盟及び攻守同盟、攻擊を共にすべしと盟へる場合は攻擊同盟にして、防禦同盟は此反對に、防守を共にすべしと盟へる場合也、攻守同盟は此兩者を共にすべしと盟へる場合の同盟なり、舊日英同盟は何れも屬せずして、特種の性質を有したりしが、新日英同盟は、協約國の一方が外國と交戰するときは、他方は直に援助し、協同戰鬪に當り、講和其他の措置をも協同に考量すべしとなすものなるが故に、攻守同盟の一例なりといふべし。(三八年八月十二日龍動締結日英新同盟協約參照)
瀆職罪
(とくしよくざい)本罪は一面に於ては職務上の義務違反の罪たると同時に、他の一面に於ては人民の權利を侵害するの罪とす、而て本罪の主體は常に公務員又は仲裁人たることを要し、公務員とは官吏、公吏、法令に依り公務に從事する議員、委員其他の職員をいひ、仲裁人とは公務員に準すべき者にして、當事者間の爭を判斷する爲め仲裁手續(民訴七八六)に從ひ法律の保護を受て其職務を採る者を指す、本罪は其主體及び行爲の種類に從ひ數箇の體樣あり、□一職權濫用罪=公務員其職權を濫用し、人をして義務なき事を行はしめ、又は行ふべき權利を妨害するの罪也、職權濫用とは職權を不法に施用することをいひ、換言すれば、公務員が法令上其職權を認められたる趣旨に違ひ、職權本來の目的を逸脱して行使することを意味する也、故に職權の濫用は職權行使の形式に於て其範圍外に屬する行爲を爲すことなり、職權行使の形式に於てせざる行爲は、縱令公務員之を爲すも普通の暴行又は脅迫の罪とす、次に職權の亂用は人をして義務なきことを行はしめ、又は行ふべき權利を妨害したることを要するもの也、從て單に職權を濫用し又は利益を害するの事實のみにては本罪を構成する事なしとす、本罪の刑は六月以下の懲役又は禁錮とす、但し罪の主體裁判、檢察、警察の職務を行ひ又は之を補助する者にして、其職權濫用が人を逮捕又は監禁したることに係る時は、六月以上七月以下の懲役又は禁錮とす、檢察の職務を行ふ者とは、檢事の如き犯罪檢擧の職務に從事する者を指し、裁判、檢察、警察の職務を補助する者とは、巡査の如き者をいふ、此等の公務員は、元來犯人を逮捕又は監守すべき職權を有する者なるが故に、人の自由を侵害するに容易なる地位にある者といふべく、法が常人の逮捕監禁罪より重く處分すべき理由は主として此點に存す、次に暴行凌虐の犯罪も職權亂用罪の一體樣とす、卽ち裁判、檢察、警察の職務を行ふ者、又は之を補助する者が其職務を行ふに當り、刑事被告人其他の者に對して暴行又は凌虐の行爲をし、或は法令に依り拘禁せられたる者を看守又は護送する者が、被拘禁者に對し暴行又は凌虐の行爲をなす罪也、主として罪狀自白を得る爲めに行はる、本罪の刑は三年以下の懲役又は禁錮とす、以上逮捕監禁又は暴行凌虐を爲すに依り人を死傷したるときは、傷害の罪に比較し重きに從て處斷せらる、□二賄賂罪=收賄及び贈賄の罪なり、此罪に就ては賄賂罪と題する部を參照されたし。(刑一九三條至一九八條)
- 英
- Forfeiture
- 独
- Amtsdelikt
- 仏
- Forfaiture
瀆職法
(とくしよくはふ)明治三四年四月法律第三七號を以て公布せられたる所に係り、□一法令に依り選擧又は任用したる議員、會員、委員又は總代、其職務に關し賄賂を收受し、又は之を聽許若くは要求したるときは、一月以上一年以下の重禁錮(刑施により懲役となる)に處し、四圓以上四十圓以下の罰金を附加す、□二上記したる賄賂を己に收受したる時は之を沒收し、費用したるものは其價を追徵すとの規定を爲したるもの也、瀆職の意義に就いては瀆職罪、賄賂の聽許收受に就いては賄賂罪を參照せよ。(三四年四月法三七號)
獨立
(どくりつ)本來は何等の權力にも支配せられざるの觀念なれども、此の如き絶對的獨立は想豫し得べからずして、法律上に於て獨立といふは、他の同等者の權力の下に立たざるをいふ也、例へば司法權の獨立は、主とにて行政權に侵さるゝことなく、法律に服從する裁判所に行はしむるが如き、又獨立人といへば、後見人、保佐人等に依らずして法律行爲をなし得る者をいひ、或は獨立國といへば、他の國際法上の主體たる國家の支配を受けざる國をいふが如し、但し事實上の勢力、又は自己の意思に基く他人の權利の對抗を受くるも、事の獨立を害せざるは勿論也。(司法權、一部主權國の部、民一五條參照)
賭博及び富籖に關する罪
(とばくおよびとみくじにくわんするつみ)賭博及び富籖は共に善良の風俗を害する原因たるものにして、人をして偶然的の利益を欲し、僥倖を恃み勤勉の習慣を失はしめ、以て良民の墮落を誘致し、國家經濟の基礎を危殆ならしむるものなれば、自己の財貨を處分するの行爲なるに拘らず之を處分する所以也、□一賭博に關する罪=偶然の輸贏に關し財物を以て博戯又は賭事を爲すの罪をいふ、博戯と賭事とは只手段方法を異にし、其實質を同うす、尤も此二者の區別に關しては二説あり、一は主觀説にして、此説に依れば、賭事とは偶然の出來事に關し利益の獲得を目的とし財物を賭する行爲を云ひ、博戯とは自己の意見の正確なることを主張せんが爲めに財物を賭するをいふものとなす、他の説は客觀説にして、此説に依れば、博戯とは其賭者が相互の間に一定の行爲をなすものにして、之に反し賭事は、賭者以外の第三者の行爲又は事實に關して財物を賭するをいふとなす、改▲刑法は此二者を何れも本罪とするが故に、此二者を區別するを要せず、但し此二者と他の行爲との區別を爲すことを要す、次に法文に偶然の輸嬴といふは、偶然の勝負といふに同く、不確定の出來事に依て勝敗の決する場合を指す、客觀的に決定せる事實も、主觀的に不確定なる事實は、亦以て賭博の目的となり得べし、而て賭したる財物の多少は、賭博の觀念に何等の影響を及ぼさゞるも、法律は一時の娯樂に供する物を賭したる場合は本罪を構成せずと規定したり、例へば茶菓子を賭して壽語錄をなすが如き是れ也、本罪の處分は、千圓以下の罰金又は科料を科すべきものなり、但し常習として賭博をなしたる者(卽ち博徒又は遊人と稱する徒)は三年以下の懲役に處し、賭博場を開張し、又は博徒を結合して利を圖りたる場合は、三月以上五年以下の懲役に處すべきものと定めたり、蓋し常習として博奕をなすが如きは、財産刑にては其目的を達しがたく、是れ自由刑を科して善良の民と隔離し改善せんとする所以也、又賭場の開張、博徒の結合の如きは其害を及ぼす甚だしきが故に、重き刑罰を科して改善を計らんとする也、□二富籖に關する罪=富籖を發賣し、又は富籖の取次、授受を爲すの罪なり、法律は賭博と富籖とを區別す、但し偶然の事情を勝敗の基本となす点に於て其趣を同くす、其區別に關し二あり、一説は富籖を興行主が一定の條件の下に利益を與ふることを約し、購買者は無條件に代價を支拂ふものなりとなし、他の説は、賭博は財物を賭する行爲にして、胴元と賭者との間に取引の關係を有し、賭者胴元ともに危險の負擔に任ずるものなるも、富籖は之に反して財物を醵集する行爲にして、其興業者は如何なる場合と雖も危險を負擔することなしとなす、前説は通説にして、後説は判例の採る所に係り、又實際上の現象にも適す、本罪には三の態樣あり、一は富籖を發賣する場合にして、本罪の刑は二年以下の懲役又は三千圓以下の罰金とす、發賣とは發行者が自己の計算に於て財物を醵集し、其各部を分配するの行爲にして、必らずしも法律上の賣却たるを要せず、二は富籖の取次をなす行爲にして、其の處分は一年以下の懲役又は二千圓以下の罰金とす、取次とは發賣者と購買者の間に於ける媒介行爲なり、其分配に從事する所謂運送者又は牙保を爲したる者は、卽ち取次者とす、三は富籖の發賣及び取次以外の授受にして、其刑は三百圓以下の罰金又は科料とす、其授受の原因方法の何たるを區別せざるが故に、購買に依て授受せられたる場合は勿論、受贈又は典物の結果受授したるも尚本罪とす。(刑一八五條乃至一八七條)
内亂罪
(ないらんざい)一に之を國事犯又は政治犯といふ、卽ち朝憲紊亂を目的とする暴動罪也、抑▲本罪は國家の存立を危ふする重大なる犯罪に屬す、固より國家は其内部の組織に變更を生ずるも、そが當然の結果として外部に對する獨立を損ずるものに非らず、明朝滅して清朝興るも支那帝國は依然として支那帝國なり、されど之を一國内部の關係より看れば、朝憲紊亂は實に國家存立の基本的制度に對する侵害なれば、事最も重大なるものなりとす、爰を以て古來より國事犯を犯罪中最も重大なるものとする所以也、以下本罪の内容を分説すれば、□一目的、本罪は朝憲紊亂を目的とすることを要す、朝憲とは國家組織の大綱を意味し、憲法を以て之を定むると否とを問はず、之を紊亂するとは、此國家組織に對し變更を企つるが如き蹂躪行爲を云ふ也、例へば萬世一系の君主政體を變更せんとするが如き、或は代議政體を廢して專政制となさんとするが如き、皇位繼承の順序を變換せんとするが如き、國家組織の大綱に對し、事苟くも正當の手續を經ずして之を變更せんと企つるを云ふ也、法文に例示せる政府を顚覆しといふは、政治の中樞たる官府の權力を破壞するの謂にして、邦土の僣窃といふは、領土の一部に對して帝國主權の實力を排除するの謂也、之を要するに本罪は、常に朝憲紊亂の目的に出づるを要するが放に、此目的を缺くときは本罪にあらざると同時に、此の目的を以て他の法益を侵害したるときは、本罪と他罪とに就き總則五十四條の適用を受くべきもの也、□二行爲、本罪の内容は暴動なり、暴動とは多衆の結合による暴行脅迫を意味す、舊刑法は此點に付き内亂なる語を用ひしより、擧兵行爲あるを要すると解せざるを得ざりしが、改正刑法は單に暴動といふが故に、擧兵を要せざるは明かにして、只暴動なるが故に、多數人の結合力による暴行脅迫なりと謂はざるべからず、而て其暴行脅迫が、地方の靜謐を擾亂する程度のものたらざるべからざるやは疑あるも、此ことたる、紊憲の目的に出でたる多數人の結合力による暴行脅迫が、靜謐を擾亂せざる場合の例を想像し能はさるが故に、特に暴動の一要件とするを要せずと信ず、之を要するに暴動とは、國際法上所謂國内戰爭と目せらるべきものなるを要せず、又必らずしも擧兵行爲を要せざるものにして、單に多衆の結合力による暴行脅迫に過ぎず、謂ふ所の暴行とは、あらゆる不法に有形力を行使することを意味し、その他人の身體に加ふると財産に加ふるとを問ふことなし、又脅迫といふは、他人に畏怖心を生ぜしむる爲め害惡を通告する一切の行爲をいふ也、□三犯人の種類、刑法は内亂罪の正犯を四に區別したり、卽ち(1)首魁、暴動者の首領を云ひ、暴動者を指揮統率する者也、而し必らずしも一人に限らず、數人共同して全暴動者を統率するときは、皆首魁を以て目すべきは勿論なり、而て暴動團體に對する教唆者、又は首魁に對する教唆者は之に準すべきものと信ず、舊刑法は首魁及び教唆者を同一種の者と看做し明文に揭げたりしも、新刑法は之を削除したり、然れども單に教唆者といふときは、附和隨行者の教唆者をも含む疑あるよりして削除したる者と解すべきが故に、一般教唆の規定に基き以上の如く云ふことを得べしと信ず、(2)謀議に參與し叉は群衆の指揮を爲したる者、此等の者は暴動團體に於て樞要の地位を占め、主要なる職務を司る者にして、謀議に參與したる者とは、暴動の計画其他紊憲の目的に出づる行爲を議決したる者を云ひ、群集を指揮したる者とは、暴動の一部を指揮したる者を云ふ、(3)其他諸般の職務に從事したる者、暴動行爲を現實する者を云ひ、唯附和隨行し又は單に干與したるに過ぎざる者を除外す、(4)附和隨行其他單純なる暴動干與者、此等の者は單に暴動團體に附屬し、其勢力を增加せしむるに過ぎざる者にして、多くは上記の者に煽動せられ附隨したるに過ぎざるか、又は面白半分に附和干與したる者に過ぎざる也、茲に一言すべきは、法律が此の如く本罪の犯人を區別したるも、必らずしも内亂罪は此種の楷級を具備せざれば成立せざるものに非らざること是れ也、蓋し内亂罪は朝憲紊亂の目的に出でたる暴動なれば、多くの場合は組織的の計画を立て、主謀者、現實者及び兩者の間を斡旋する者、其他附隨者あるを普通とするも、此の内一階級又は二階級を欠くも、苟くも紊憲の目的に出でたる暴動行爲なるときは、之を内亂罪にあらずとなすの理由なき也、只法律が此の然く區別したる理由は、等しく正犯なりと雖も其内容に於て非常に差あるが故に、刑を異にし科する便宜上爾か別ちしのみ、□四處分、本罪に對する刑は、首魁は死刑又は無期禁錮、謀議參與者又は群集指揮者は無期又は二年以上の禁錮、其他諸般の職務に從事したる者は一年以上十年以下の禁錮、附和隨行又は暴動干與者は三年以下の禁錮に處せらる、内亂罪は其影響の及ふ所極めて重大なるを以て其未遂は勿論、豫備陰謀をも處罰せらる、但し未遂の場合は、附和隨行又は單純暴動干與者に限り之を罰せず、而て豫備陰謀者に對する刑は一年以上十年以下の禁錮とす、尤も内亂の豫備陰謀罪及び下記する所の本罪の從犯罪は、未だ暴動に至らざる前自首したるときは其刑を免ぜらるべし、是れ自首免刑によりて、豫備陰謀者をして實行の意思を翻へさしめ、又は幇助者の自首によりて犯罪の實行を抑壓するの機會を得んとする政策に出づる也、終りに、本罪は主犯者の階級によりて刑を異にするが故に、本罪の幇助は何れの正犯の刑を標準として減輕すべきか不明なり、是を以て刑法は特別の明文を置き、兵器、金穀を資給し、又は其他の行爲を以て内亂罪を幇助したる者は、七年以下の禁錮に處すと定めたり、此場合の幇助者は總則に於ける從犯者と異なることなきが故に一般從犯の要件を具備するを要するは明なりとす、尚一言すべきは、本罪の犯人に科するに禁錮を以てせるは、本犯者たる多くは公衆の利益の爲めに行はんとするものにして、適々其方法を誤りたるが故に刑辟に陷るものなれば、通常の犯人に科すべき刑と異にし、定役なき非破廉耻罪に對する刑を科せしなり、蓋し其心情を憐み之を優遇するの趣旨に外ならず。(刑七七條乃至八〇條)
- 英
- Felonies and delicts against the internal safety of the state
- 独
- Auf-ruhrsverbrechen
- 仏
- Infraction contre la sûreté intérieure
仲買人
(なかがいにん)主として取引所に於ける仲立營業者を仲買人といふ、廣義に於ては物品の仲買人、船舶の賃借傭船の仲立、運送又は保險の仲立をも總稱することなきにあらねど、商法は之を仲立人となしたるが故に、仲買人なる語は主として取引所に於て有價證券其他商品の媒介を爲す者を稱すと謂ふを得るに至れり、元來取引所に於ける賣買取引は、會員組織の取引所に在りては其會員及び仲買人に限り、又株式組織の取引所に在りては、其株主及び仲買人に限り之を爲すことを得べきものなり、而て一般人は此仲買人を通してのみ、取引を爲し得るに過ぎず、故に仲買人は大に取締を爲すにあらざれば、其間不正の行爲なき能ばず、法律は、仲買人たるには二ケ年以上其取引所の營業部類に屬する商業に從事したる商人にして、年齡二十五歳以上の者の中、出願に依り政府の免許を與へたる者たらざるべからずと規定せり、但し帝國臣民たることを要するものとす、又取引所仲買人は、免許を受くるときは免許料を納むべきものにして、尚仲買人は身元保證金を其取引所に納むるの義務あり、仲買人取引所の秩序を紊すときは、取引所は定款に依り營業を停止し、又は五百圓以内の過怠金を課し、或は政府の認可を受けて除名さるゝことあるもの也。(取引所法六條、一〇條、一三條乃至一五條等)
日韓新協約
(にちかんしんきようやく)明治三十七年八月二十二日締結の日韓協約の一部を廢止し、之に代る爲め、明治四十年七月四日、韓國京城に於て、統監侯爵伊藤博文と、韓國内閣總理大臣勳二等李完用との間に締結せられたるものにして、□一韓國政府は施政改善に關し統監の指導を受くること、□二韓國政府の法令の制定及重要なる行政上の處分は豫め統監の承認を經ること、□三韓國の司法事務は普通行政事務と之を區別すること、□四韓國高等官吏の任免は統監の同意を以て之を行ふこと、□五韓國政府は統監の推薦する日本人を韓國官吏に任免すること、□六韓國政府は統監の同意をなくして外國人を傭聘せざること等を規定せられたるもの也。(四〇年七月二五日公布)
日佛協約
(にちふつきようやく)明治四十六年七月十日巴里に於て、佛蘭西國駐剳帝國特命全權公使栗野愼一郞及佛國外務大臣元老議院議員「ステフアン、ビシヨン」との間に締結せられたるものにして、日本國政府及び佛蘭西國政府は、清國の獨立及び領土保全竝に清國に於て各國の商業上臣民又は人民に對する均等待遇の主義を尊重することに依り、兩締約國の亞細亞大陸に於ける相互の地位竝に領土權を保持せんが爲め、前記諸地方に於ける平和及び安寧を確保するの目的に對し、互に相支持する旨を約せるもの也。(四〇年六月一七日公布)
日本大博覽會事務局官制
(につぼんだいはくらんくわいじむきよくくわんせい)明治四〇年三月勅令一〇三號を以て公布せられ、同年四月一日より施行せられたるものにして、其内容を擧ぐれば、□一日本大博覽會事務局は農商務大臣の管理に屬し、日本大博覽會に關する一切の事を掌る所とす、□二日本大博覽會事務局には總裁一人を置く、總裁は皇族中より勅に依り之を命ず、□三日本大博覽會に左の職員を置く、副總裁一人、會長一人、事務總長一人勅任、事務官專任四人、奏任(内一名勅任となすとを得)理事官若干人、技師專任五人、書記專任十人判任、抜手專任七人、□四副總裁は農商務大臣を以て之に充つ、總裁を輔け部員を統督し、局務を總判す、□五會長は總裁又は副總裁の命を承け、日本大博覽會に關する一切の事務を總理す、□六事務總長は會長を輔け、部下の職員を監督し局務を掌理す、事務官及理事官の命を承けて事務を分掌す副總裁は其本官の待遇を受け會長は親任官の待遇を受く、理事官は奏任の待遇を受く、但し勅任官又は勅任官たりし者にして、理事官たる者は勅任官の待遇を受く、□七會長及び理事官は、高等官又は學識經驗ある者の中より選定し、農商務大臣奏請により内閣之を命ず、□八重要の事項を審議調査せしむる爲、學識又は經驗ある者を選定し、評議員百十人を置くことを得、評議員は農商務大臣の奏請により、内閣之を命ず、農商務大臣は緊急の事項を審議せしむる爲め、評議員中より七人の特別委員を置くことを得、以上を其大要とす。(四〇年三月勅令百四號參照)
年齡
(ねんれい)人の齡を年を以て數へたるをいふ、某の年齡十五歳なりといふは、某は既に出生してより生存すること十五箇年を經たるをいふ也、現行の法律によれば、年齡は出生の日を起點して計算すべきものにして、從來の如き「數へ年」と稱するもの、及び出生の月より起算して滿何歳と稱するが如き方法を採用せざる也、故に二十歳を以て成年とすといふときは、出生の日を起点とし、二十一年目の其月の應當日を以て二十歳となす也、但し其月に應當日なきときは、其月の末日を以て其歳に達したるの日とす。(三五年一二月法五〇號參照)
放火罪
(はうくわざい)本罪は公共の危險を害する罪にして、舊刑法は之を財産に對する罪の一種となしたるも、新刑法は其地位を移して騷擾罪の次に規定したると、各條規定の性質上より看るときは之を公共危險罪の一種となしたるは明なり、而して茲に放火罪といふは、左の罪を包含す、卽ち純放火罪、激發物破裂罪、瓦斯電氣及び蒸汽漏出罪是れなり、以下順序を追ふて其槪念を述べん、□一放火罪=火を放て法定の物を燒燬し依て公共の危險を生ぜしむる罪をいふ、(甲)本罪の客體たる物は、之を別ちて以下の三種とす、卽ち其一は人の住居に使用し又は人の現在する建造物、艦船、鑛坑、汽車若くは電車にして、所謂人の住居に使用するといふは、犯人以外の人類が常住に居しつゝあるをいひ、住居者の外出時中に於けるが如き一時不在の場合と雖も之を包含す、但し空家の如きは人の住居に使用すといふを得ず、又犯人一人のみ住居する場合又同じ、人の現在するといふは、住居に使用せらるゝと否とを問はず、當該瞬間に於て人が居る場合を云ふ、平素人の住居せざる汽車又は電車と雖も、他人の乘込つゝある間は人の現在する物なり、次に其第二は、人の住居に使用せず又は人の現在せざる建造物、艦船又は鑛坑にして、第一種の物との區別は人の住居せざるか現在せざるか、否やの點あり、其第三は上説以外の物にして、人の現在せざる汽車又は電車は勿論、其他一切の有體物を包含す、(乙)本罪の行爲は火を放つにあり、火を放つは燒燬の原因をなす行爲にして、物を燒燬したるときは本罪の既遂とす、然らば謂ふ所の燒燬とは何ぞや、一説に依れば、本罪は故意を以て火災を惹起し、依て以て公共の身體財産に重大なる危害を加ふる最も危險なる犯罪なるが故に其既遂未遂を區別する標準たる燒燬の觀念も、亦犯人の行爲が此危害を生ぜしむる程度に▲したるや否やの點に依るべし、換言すれば、目的物に燃移りたる火が犯人の使用したる燃料の火力に依らず、獨立して燃燒作用を繼續し得べき狀態に達したるときは、實際燃燒したる部分の大小廣狹を問はずして本罪の既遂を構成すとなし、他の一説に依れば、目的物が其用法上の效能を失ふ程度に於て燃損したる場合に限り既遂と爲るべく、然らざるときは未遂なりと説く、余は後説を可なりと信ず、蓋し刑法は火を放ちたる者を罰するにあらずして、放火に依て物を燒燬したる者を罰するものなるが故に、一般の觀念に於て物を燒燬したりといふは、其物の效用を失ふ程度に燃損したる事を指せば也、(丙)本罪に對する刑は其目的物の異なるに從て差異あり、(1)火を放て人の住居に使用し又は人の現在する建造物、汽車、電車、艦船若くは鑛坑を燒燬したる者は死刑又は無期若しくは五年以下の懲役に處せらる、茲に建造物とは土地に定着し、掩蓋及び周壁を有する工作物にして、人の起居出入に適する物をいひ、鑛坑とは、礦物を採取する爲めに開鑿せられたる地中の設備なり、(2)火を放て、人の住居に使用せず且つ他人の現在せざる建造物、艦船若くは鑛坑を燒燬したるときは、二年以上の有期懲役に處す、但し此等の物自己の所有に係るときは、公共の危險を生じたるや否やを區別し、公共の危險具體的に存ずるときは六月以上七年以下の懲役に處す、尤も縱令自己の物と雖も、其物が差押を受け、物權を負擔し又は賃貸し、若くは保險に附したる物なるときは他人の物を燒燬したる罪に同じ、(3)火を放て以上例記以外に屬する物を燒燬し依て公共の危險を生じたる時は一年以上十年以下の懲役に處す、其物自己の所有に係るときは一年以下の懲役又は百圓以下の罰金に處す、但し差押に係る物等なるときは他人の物の燒燬に同じ、(4)自己の物を燒燬することに依て他人の物に延燒せしめたるときは、其他人の物第一種又は第二種に係るときは三月以上十年以下の懲役に、第三種に係るときは三年以下の懲役に處す、(5)以上第一種及び第二種の物にして他人の所有に係る物に關する場合の未遂罪は之を罰す、又同上の豫備も二年以下の懲役に處す、但し情狀により其刑を免除することを得べし。□二激發物破裂罪―火藥、汽鑵其他激發物を破裂せしめて、放火の目的物を損壞したる罪にして、本罪に對する處分は放火の例に同じ、茲に謂ふ所の激發物を破裂せしむるは放火に非らず、又物の損壞は燒燬の觀念と異なるは明かなるも、此罪たる火熱に因緣あるが故に廣義の放火罪に包含せしめし也。□三瓦斯電氣及び蒸汽漏出罪=瓦斯及び電氣又は蒸汽を漏出若くは流出せしめ又は之を遮斷して因て人の生命身體又は財産に危險を生ぜしむるの罪也、此罪たる放火罪と大に異なる所あれども、瓦斯又は電氣及び蒸汽は多少火と因緣を有し、且つ不定多數の人類に危害を及ぼす傾向ある點に於て其作用稍相似たるが故に、廣義の放火罪に準ぜしめたる也、本罪の處分は三年以下の懲役又は百圓以下の罰金とし、因て人を死傷に致したるときは傷害罪に比較し重きに從て處斷する也。(刑一〇八條乃至一一三條、一一五條、一一七條一項一一八條)
- 英
- Crime of incendiarism
- 独
- Brandstiftungsverbrechen
- 仏
- Infraction de l'incendiaire
博士
(はくし)博士は古の博士(はかせ)と異なるも、或學の蘊奥に通じ大學院に入り定規の試驗を經たる者、論文を提出して學位を請求し、大學教授會に於て大學院に入り定規の試驗を經たる者と同等以上の學力ありと認めたる者、及び博士會に於て學位を授くべき學力ありと認めたる者に授與さるゝ學位にして、學士等の稱號と異なる、博士の學位には、法學博士、醫學博士、藥學博士、工學博士、文學博士、理學博士、農學博士、林學博士及び獸醫學博士の九種あり、各專巧したる所の學科の區別に從て之を授けらる、博士は博士會を組織するものにして、以上九種の法、醫、藥等の博士會は、各々當該博士に依て構成せらるゝ也、博士會は學位の授與褫奪に關する事項を審査す、博士會の召集は必要ある場合に於て文部大臣之を爲し、議決は會員の過半數出席して爲すを通則とし、學位授與に關しては出席會員の三分の二以上、學位褫奪は出席會員四分の三以上の多數に依り之を定む、而て其議決の方法は無記名投票とす、尚議事の細則は、各博士會に於て之を定め、文部大臣の認可を受くべきもの也。(三一年一二月勅三四四號、同年同月勅三四五號)
法治國
(はふじこくは)立憲國といひ法治國といふ、觀察の方面こそ異なれ略同一の意義を有す、夫れ立憲政體の本義たるや、一に代議制を採用することに存じ、國家の政務に重大なるものは、主として之が協賛を俟ちて行ふに在り、議會の協賛を經たる國家の命令は之を形式上の法律といふ、法治國なる觀念は此點に着眼し、法律に基き施政する國體を法治國と稱する也、法治國は警察國又は福利國に對す、所謂警察國とは、古代に於ける國家の如く、積極的に國利民福の增進を計るを主とせす、此等に對する危險生じたる場合に之を妨止するを政務の重なるものとせし國家也、之に反して福利國とは、積極的に國利民福の增進を政務の主たる目的とする國家にして、主として中世の國家之に屬す、以上の二は何れも國民を君主の所有としたる思想を存じたるが故に、其民福を重んずるも、一に君主の富強を計るにありき、法治國は之に反し、君主を國家の首腦とし代議制を採用し以て一方には消極的に危害を妨止し、積極的には民福を進め、而も之を進むるに當ては專斷の弊なからんが爲めに、其施政の方式を主として法律(形式上)を以て定むる也、以上は其大體の槪言なれば、現在の國家と雖も例外存ずるは勿論とす。(立憲政體の部參照)
法律取調委員會規則
(はふりつとりしらべゐゐんくわいきそく)明治四〇年四月勅令一三三號を以て公布せられし所にかかり、□一法律取調委員會は、司法大臣の監督に屬し、其指定したる民事刑事に關する法律を調査審議する所とす、□二法律取調委員會は、會長一人、及び委員五十人以内を以て之を組織す、會長及委員は、司法大臣の奏請に依り内閣に於て之を命ず、□三會長は會務を總理し、議事を整理して其決議を司法大臣に具申す、會長事故あるときは、司法大臣の指定したる委員をして、其事務を代理せしむ、□四法律取調委員會に起草委員及び主査委員若干名を置き、委員中に就き會長之を命ず、□五法律取調委員會に幹事若干名を置き、高等官を以て之に充つ、幹事は會長の指揮を承け庶務を整理し、臨時命を承け法令の調査に從事す、□六法律取調委員會に書記六人以内を置き、司法屬を以て之に充つ、書記は會長及幹事の指揮を承け、庶務に從事す、□七會長及委員には一箇年六百圓以内の手當を給す、但し起草委員及主査委員には、千二百圓以内を給することを得、又幹事には一箇年五百圓以内、書記には一箇年三百圓以内の手當を給す、以上本令の一斑とす。
萬國條約
(ばんこくでふやく)殆んど萬國といひ得べきほど、世界多數の國が加入せる條約をいふ、萬國條約中有名なるものは赤十字條約(「ジユネヴア」條約)なり、此條約は一八六四年に締結せられたる者にして、戰時に於ける病者負傷者の救護に就いて規定す、其他一八一五年の維納條約、一八五六年の海上法要議に關する巴里宣言、一八九九年の海牙に於ける萬國平和會議に於て議定せる國際紛爭平和的處理條約、陸戰の法規慣例に關する條約の如きは其著名なるものとす。(各其部參照)
萬國平和會議最終決議書
(ばんこくへいわくわいぎさいしゆうけつぎしよ)千八百九十九年五月和蘭國海牙に於て、露皇の發意に基き開かれたる平和會議にて決議調印したるもの也、而て此決議書は、第一、國際紛爭平和的處理條約、第二、陸戰の法規慣習に關する條約、第三、千八百六十四年八月二十二日「ジエネヴア」條約(赤十字條約)の原則を海戰に應用する條約を議定し(此等に就ては各其部參照せよ)□一輕氣球上より爆發物投下の禁、□二有毒瓦斯散布の禁、□三人體内に入りて開展又は扁平となるべき彈丸使用の禁に就ての宣言書を議定し、其他平和に關する諸種の希望を議せり、本議決書に調印したる各國は、獨逸、墺地利洪牙利、白耳義、清國、丁抹、西班牙、米國、墨西哥、佛蘭西、英國、希臘、伊太利、日本、盧森堡、「モンテネグロ」、和蘭、波斯、葡萄牙、羅馬尼亞、露國、塞爾比亞、暹羅、瑞典諾威、瑞西、土耳古、勃爾牙利の諸國是れ也、我日本國は全權委員男爵林董、同本野一郞の二氏、明治三二年七月二九日和蘭國海牙に於て之に記名調印せり。(三三年一〇月外務省告示四七號)
犯罪學
(はんざいがく)犯罪を對象として硏究する科學也、元來罪は、犯人の性質及び外圍の境遇の共同作用に依り犯さるゝものなれば、犯罪學の職分は、如何にせば犯人の性質を改善し得るか、又境遇を如何に改良せば犯罪を尠からしむるを得るかを硏究するに在り、此の如く犯罪に對する作用の如何に依り、犯罪學は分れて二となる、一は犯罪人類學にして、卽ち犯人の性質は如何にあるか、如何に在らしむるに依りて犯罪を防止し得べきやを硏究する也、二は犯罪社會學にして、犯罪は境遇又は氣候風土の關係に依り犯さるゝ點に着眼し、此等と如何なる關係あるか、又如何にあらしむれば罪を犯す事を防止し得るやを硏究する也、犯罪に關する學は未だ輓近の發達に係り、前者は主として伊太利の法醫學者「ロンブロゾー」の唱道に始まる、此種の學者は、犯人は到底改善の見込なき者あるが故に、之に對する方策は犯人を社會より排除するの外なしと論ず、然れども後者卽ち犯罪を社會的方面より硏究する者は、犯人は必らずしも先天的惡人にあらず、寧ろ自己の處する境遇に驅られて罪を犯すもの多きが故に、之を社會より排除するは酷なりとなす、所謂刑法學に於て新派と稱するものは、以上の硏究より刑事政策を論ずるものにして、意思定業の理論を前提とする舊派に對するもの也。(刑の目的の部參照)
犯罪組合
(はんざいくみあい)數人が其個々に就いては未だ確定せざる數個の罪を犯す爲めに結約するをいふ、古き見解に依れば(例へばカール五世の刑事裁判法一四八條の如き)犯罪的組合の全員は共同の結果に對して相互の教唆者たる責任ありと認め、又は結約自體を以て犯罪末遂の狀態に達したるものとして、之を處罰せり、然れども現今刑法學に於ては各結約者中實行正犯、教唆、又は從犯たるべき行爲ありと認むべき者に限り之を處罰すべきものなりとの原則を採用し、次に結約自體を禁じて之を罰することありとするも、而も結約自體を以て或罪の未遂として刑を科する事となし、換言すれば犯罪組合行爲自體に刑を科し、又は之を以て刑罰加重の原因と認むることあるも、之を直に某罪の未遂又は教唆、從犯となす事なし、茲に注意すべきは犯罪組合と陰謀との區別あり、陰謀も又數人間に於ける一個又は數個の罪を犯す結約なるも、之は犯罪組合と異なり常に特定の罪を犯すことに係り、漫然罪を犯す爲めに結合する犯罪組合と異なるものなり、又犯罪組合は共犯と異なるものにして、組合にありては罪を犯す爲めの結合自體に過ぎずして、數人共同の犯罪たる共犯と異なるは固よりなりとす。(共犯、謀謁の部參照)
犯人藏匿罪
(はんにんざうとくざい)罰金以上の刑に該る罪を犯したる者又は拘禁中逃走したる者を藏匿し若くば隱避せしめたる罪をいふ、元來本罪及び證憑湮滅罪の如きは庇護罪の一種にして、庇護罪は或は犯人をして處刑を免れしむる手段を講じ、或は犯人の罪により得たる利益を安固ならしめ、以て犯人を利する罪種をいふ、學説上前者は人的庇護罪にして、後者を物的庇護罪と稱す、本罪は此人的庇護罪の一種に屬す、以下本罪の構成要件を分説して槪念を示さん、□一本罪の客體は罰金以上の刑に該る罪を犯したる者及び拘禁中逃走したる者なることを要す、罰金以下の刑に該るべき罪を犯せし者に關する時は、事態輕微なるの故を以て之を處罰せず、茲に罪を犯したる者とは事實上犯罪を犯したる者のみに限るや、將に犯罪の嫌疑を受けたる者をも包含するや、起草者の見解によれば後段の如く解すべきものと爲、然れども法律は罪を犯したる者と規定するを以て、其者が罪を犯したりといふ事實の認定せらるゝことが處罰の條件たるべし、但し拘禁中逃走したる者は嫌疑に因る者をも包含するが故に、此等の者を藏匿したるときは本罪なること勿論にして、後日其者が無罪の判決を受くるも刑を免ぜらるゝことなし、次に親告罪の告訴なき前に其犯人を藏匿したる場合は學者間に議論ある所なり、或は親告罪に就て告訴ある以前に係るときは本罪にあらずとし、或は告訴の有無は犯罪に關係なきを以て、本罪に就ても尚告訴前に係るも罪を構成すと論す、余は此の後説に制限を加へて、告訴の抛棄ありたる時は、其事件の犯人に就ては本罪を構成することなしとし、之を採用せんとす、終りに拘禁中逃走したる者に就いては、逃走の罪の部を參照せよ、□二藏匿又は隱避せしめたることを要す、藏匿とは發見又は逮捕を妨くべき場所を供給することをいひ、隱避とは藏匿以外の方法を以て、發見逮捕を免れしむる行爲を云ふ、例へば潜伏の場所又は方法を指示誘導して旅費を給し、或は發見を妨くべき衣服を給與し、又は自ら犯人又は逃走者の氏名を詐稱して拘禁せられ、以て眞の犯人又は逃走を隱避することを助くるが如き是れ也、法律は其手段を限定せざるが故に、發見又は逮捕を妨ぐる積極又は消極の一切の行爲をいふものと解す、然れども犯人又は逃走者を逮捕又又は其所在を申告する義務なき者が、逮捕又は申告を怠る如きは本罪を構或せず、又本罪の犯人が其隱避又は藏匿せしめたる犯人若くは逃走者の親族にして、此等の者の利益の爲めに犯したるときは之を罰せざる也、之を罰せずとは刑の免除にあらずして犯罪の不成立なりと解す、□三本罪に對する刑は二年以下の懲役又は二百圓以下の罰金なり、舊刑法は本罪に對して無定役刑たる輕禁錮を科したるも、新刑法は本罪の犯人が往々盜賊を使役し、依て不法の利益を圖る者に係る場合あるを以て、之に懲役刑を科するものとせしなり、然れども單に知己又は老幼者を庇護する爲めに犯したる者の如きは其情狀極めて輕きを以て、此等の犯人には罰金刑を科するの餘地を存する必要あり、是れ二個の選擇刑を定めし所以也。(刑一〇三、一〇五條、舊刑一五一條參照)
非結果犯
(ひけつくわはん)形式犯といふに同じく、實質犯又は或意味に於ける結果犯に對する用語也、元來行爲は何等かの結果を生ぜざることなし、然れども行爲が一定の結果を生ずることを以て犯罪の成立要件とする場合は、之を實質犯又は或意味に於ける結果犯といふ、之に反して法律が其結果の發生を犯罪の成立要件となさゞる場合あり、是れ卽ち形式犯又は非結果犯と稱するものとす、卽ち非結果犯は、動作(行爲)の終了のみに依て既遂となるを知るべし、故に或は非結果犯を動作犯といふことあり、此の如く非結果犯は單に其行爲(作爲又は不作爲)の終了に依て罪を構成し、其結果如何を問はず既遂となるものなり、之を例へば僞證罪の如きに在りては、單に僞證なる行爲を以て足る也、其の因て他人が罰せられたると否と、又は因て司法權が侵害されたると否とを問はず、總て其結果の如何は犯罪に何等の影響を及ぼずことなし、故に此種の罪は非結果犯なりとす。(形式犯又は動作犯の部參照)
被告人
(ひこくにん)民事訴訟に於ける被告と異なり、刑事訴訟に於て自己の罪に付き審理せらるゝものをいふ、刑事訴訟に於て形式上の原告は官廳たる檢事なり、被告人は此檢事に依りて檢擧せられ、其裁判所に起訴せられたる者なり、民事訴訟に於ては原告被告殆んど同等にして、原告は攻擊的に被告に對し、被告は防禦的に原告に對す、此兩々相爭へる當事者の上に立ちて公平なる裁斷を與ふるものは卽ち裁判所なり、之に反し刑事訴訟に於ては、原告は裁判所と同等なる官廳にして、被告人より頗る便宜の地位に立つものとす、但し訴訟は民事刑事を問はず、相對する當事者ありて、此上に立ちて裁判所は裁斷を爲すを要するものなれば、刑事訴訟に於ても被告人は訊問の目的物にあらず、民事訴訟と同じく當事者能力を認めらる、故に被告人は檢事の攻擊に對し自己を辯護するの權利あり、檢事と雖も無辜を罰するを目的とせざるが故に、被告人の利益を顧みざるにあらずと雖も、其犯罪を搜査起訴せるものなれば、勢ひ豫斷を抱くの恐めり、從て過當の攻擊は免れざる所とす、爰を以て被告人に許すに辯護士を使用するの權利を以てせり、之を形式的辯護といふ、檢事が被告人の利益を顧みる所謂實質的辯護に對するもの也。(刑訴一四、六一、一六〇、二六五條)
庇護罪
(ひござい)犯罪を庇護して國權の作用を侵害する罪をいふ、庇護には、或は犯罪人をして處刑を免れしむる手段を講ずると、或は犯罪に依りて收得したる利益を安固ならしめ犯人を利する行爲とあり、前者を内容とする罪は所謂人的庇護罪にして、現行法に於ける犯人藏匿罪及び證憑湮滅罪の如き是れ也、後者を内容とする罪は所謂物的庇護罪にして、贓物に關する罪の如きこれ也、而て庇護罪の性質に關しては種々の見解あり、一説によれば本罪は事後從犯にして、共犯の一種に屬すとなし、他の一説によれば本罪は共犯に非らずして獨立の犯罪なりと解す、而て此第二の説を採用する者にありても、人的庇護罪は國權の作用を侵害する犯罪なるも、物的庇護は物の所有者をして更に其囘復を困難ならしむるものなるにより、第二次的に所有者の權利を侵害する犯罪なりと爲すものあり、或は何れも共に國權就中司法權の作用を侵害する罪なりとなすものあり、從て立法例に於ても亦一致せず、英米法に於ては之を從犯の一種なりとし、獨乙刑法に於ては人的庇護と物的庇護の罪を同一の章中に規定し、同一の性質を有するものと解し得べき位置を與へ、我舊刑法及び新刑法は、人的庇護罪と物的庇護罪とを以て何れも獨立罪とし、前者を國權の作用に對する罪と認め、後者を財産に對する罪の一種と爲したり、新刑法が庇護さるべき罪の輕重如何に關係なく庇護罪の刑を定めたるは、之を獨立罪としたる當然の結果とす、之を要するに庇護罪は其人的なると物的なるを問はず、犯罪を奬勵するが如き傾向あるを以て、之に對する刑罰は定役刑なる懲役とするを原則とす、尚犯人藏匿罪、證憑湮滅罪、贓物に關する罪の説明を參照すべし。(刑一〇三條乃至一〇五條、二五六、二五七條)
微罪不檢擧主義
(びざいふけんきよしゆぎ)被害の僅少なるものは之を處罰せず、從て之を常に檢擧して起訴せざるの主義をいふ、卽ち刑事訴訟法上いふ所の法定訴追主義に對するものとす、抑々犯罪は法益侵害の行爲なれば、正義の要求する所に基けば、之に對しては常に刑を加へざるべからず、罪惡必罰は此謂也、然れども此罪惡必罰の原則を常に如何なる性質の犯罪にも應用するは、社會共公の安寧を維持し、國利民福の實益を增進する所以にあらず、茲に於てか刑事政策の命ずる所により、微罪を處罰せざるの主義案出さるゝに至れり、然れども法益の侵害輕微なりとの理由を以て常に之を罰せざるものとせんか、或は反て社會の秩序益々紊亂するに至らん、此の如く一方に於ては微罪を處罰せざることは國利民福を增進する所以なるに反し、他の一方に於ては微罪を處罰するは亡しく國帑を損ずるのみにして、犯罪の習性なき者をして自棄せしめ、再び罪を犯すに至らしむるが如き、公共の利益安寧を損ずる所以なるより、爰に於て微罪と雖も處罰し又は之を罰せざることゝなし、起訴官をして便宜公益の爲め其責任を以て之が訴追を爲さしめ、又は爲さゞらしむるの主義を生ぜり、是れ卽ち法定訴追主義に對する便宜訴追主義にして、所謂又の名微罪不檢擧主義也、之を要るに本主義は、或程度の犯罪をして之を處罰することを免除せしむる爲め、刑事の訴追を免除せしむる主義にして、依て以て刑罰の目的たる所以を達せんとするに在り、但し此主義は、現時に於ては實際行はるゝ迄にして、未だ刑事訴訟法の明文上採用するに至らず、反て刑事訴訟法は此主義に反對なる法定訴追主義を採用せり、尤も此主義を法定訴追主義の例外として採用し得るや否は別論とす。(裁構法六條、刑訴法六二、六三條參照)
秘書官
(ひしよくわん)各省及び内閣、臺灣總督府、樺太廳、關東都督府等の官廳に於て、大臣又は長官に專屬し、政務上の機密事務を取扱ふ官吏を秘書官と稱す、秘書官は所謂副官に對する者也、副官は參謀本部、海軍々令部等の長官に專屬し各軍務に關する機密事項を取扱ふものとす、秘書官は普通の文官の如く地位の保障を有せざる政務官に屬し、大臣又は長官と進退を共にするを普通とす、其官等は高等官なり、但し此等の者と雖も、臨時命を承けて各部局の事務を取扱ふことあるは勿論にして、若し事務官より秘書官を兼ぬる者は、一般文官と同じく分限を保障さるゝもの也。(各省官制通則、臺灣總督府の部參照)
必然犯
(ひつぜんはん)必然犯は一に之を性癖犯といひ、犯人の不良なる特性が外界の微少なる動機に觸れて爲されたる犯罪を云ふ、卽ち偶發犯又は一時犯と相對するもの也、卽ち犯人の獰猛、冷酷、迷信、輕卒、嫌忌、淫猥なる特質が種々の階級を經て遂に犯罪的性癖となり、僅少なる外界の刺激又は機會に逢ふや直に犯罪を決行するに至る場合にして、斯る必然犯にして其品性の傾向が、如何なる場合にも良心の顧慮を許さゞるに至るときは、謂ふ所の職業犯と進化する也、例へば殺人に一種の興味を有するに至れる者の如き、又は猥褻なる行爲を爲す爲には、何等一身上の顧慮を爲さゞるに至れる者の如き、凡そ此等の者は當該犯行を爲すは吾人が職業に勉勵するに異らざるなり、されば極めて危險なる犯人にして、到底受刑等にては改悛の目的を達し得べからざる者とす、此等の者に對しては國家は全然彼等を社會より分離するの方法を採らざる可らず、例へば無期懲役又は禁錮に處し、或は死刑に處して刑の目的を達せざる可らず、但し受刑の結果改悛の目的を達し得べき者に對しては、敢て必らずしも此の如き方法を採るの必要なく、單に其改悛の程度に應ずる刑を科すれば則ち足る。(偶發犯の部參照)
秘密を侵す罪
(ひみつをおかすつみ)故なく封緘したる信書を開披する事、及び人の秘密を漏泄する罪にして、一私人の平和を害する罪の一種なり、本罪は之を別ちて信書開披の罪と陰私漏告の罪との二となす、以下其各罪に就いて略説する所あらん、□一信書開披の罪=故なく封緘したる信書を開披するの罪をいふ、(い)信書に關する事、信書とは特定の人より特定の人に宛てたる意思媒介の文書也、而て其信書は封緘したる者に限り本罪の目的物たるを得、所謂封緘とは其外包を破壞する事なくんば、容易に内容を知了する能はざる一切の設備にして、卽ち宛名人以外の者には外部より閲覽し能はざる樣の手段を施したるを云ひ、既に發信せられたる物に係るを要するや否やは疑あるも、郵便官署の取扱中に關するときは、別に郵便法による保護あるが故に、本罪の客體たる信書に非らず、(ろ)故なく開披したる事、開披とは封緘を破棄して信書の内容を知了する行爲をいひ、此開披したることが權利者の意思に反することを要す、或は開披を信書の内容を閲覽し得る程度に封緘を無效ならしむることを意味するに過ぎずして、必ずしも内容を了知することを要せずと説く者あり、或は封緘を破棄するも内容を見ざるときは開披に非ずと説くあり、按ずるに本罪は秘密を侵すの罪なるが故に、後説を採用するを可なりと信ず、但何れの説に依るも封緘を破棄することなく、内容を透見するは開披に非らざる也、(は)本罪の刑は一年以下の懲役又は二百圓以下の罰金なり、本罪は親告罪に屬す、卽ち發信者は被害者として告訴權あり、受信者も自己の保有に置かれたる以上は又告訴權ありと信ず。□二陰私漏告罪=醫師、藥劑師、藥種商、産婆、辯護士、辯護人、公證人又は此等の職に在りし者、故なく其業務上取扱ひたることに付き、知得たる人の秘密を漏泄したる場合、及び宗教若くば禱祀の職に在る者又は此等の職に在りたる者、故なく其業務上取扱ひたることに付き知得たる人の秘密を漏泄したる場合の罪を云ふ、(に)本罪の主體は法定の者に限る、卽ち醫師、藥劑師、藥種商、産婆、辯護士、辯護人、公證人、宗教若くは禱祀の職に在る者、又は此等の職に在りたる者を云ふ、茲に辯護人とはかの民事又は刑事訴訟法の規定に依り一時裁判所より辯護人たることを許可せられたる者を云ふ、宗教又は禱祀の職に在る者とは、神官、僧侶、牧師の如き、其他巫女等の如きをいふ、但し賽家に在る居士又は長老等を包まざるものと解す、以上の者は總て法令により其職を認められたるものなるを要するは論ずるまでもなし、(ほ)秘密の事項は其業務の取扱上知得したるものならざるべからず、茲に秘密といふは、一私人が他人に或事項を開示せられざるとに就いて利益を有する私事を意味す、而て此私事たるや以上の身分を有する者が、其業務上取扱ひたるとに依て知り得たるものに限る、尤も其れを本人より告げられたると、因て自己が鑑識して知りたるとを問はざる也、(へ)漏泄したると、漏泄は二の要件によりて成立す、卽ち其事項が未だ知られざること、第二は未だ知らざる人に向て開示すること是れ也、但し一般に公にすることを要せず、又喊默を守るべしとの條件を以てするも尚漏泄たり、茲に一問あり、本罪の主體たり得べき者が、法律に依る證人として秘密を開示したる場合も尚本罪を構成するや、一説によれば此等の者は證言の義務を免せらるべきが故に、進んで他入の秘密を開始するときは本罪の責任を免れずと、然れども法律は此等の者に證言を拒むことを得せしめたるに止まり、證言を拒むべしと命ぜるにあらざるが故に、任意に證言を爲すは適法なることを認めたるものなり、從て本問は之を消極に決するを正當と信ず、又故なく漏泄したるとを要するが故に、醫師が法上の義務として傳染病患者を官廳に屆出づるが如きは、本罪を構成せず、例へば癩病豫防法に基き某患者は癩者なりと申告するが如し、之に反して學問上の目的の爲めに特定患者の病歷を公にするが如きは、本人の承諾に依る場合の外は本罪を構成するものと解す、(と)本罪に對する刑は六月以下の懲役又は百圓以下の罰金なり、本罪は親告罪とす。(刑一三三條、一三四條、民訴二九八條第二號、刑訴一二五條第二號、郵便法等參照)
封緘
(ふうしん)此語は主として信書に就いて使用せらる、卽ち信書の内容を無權利者に於ては、之を破棄するに非らずんば閲覽し能はざる如く施したる設備をいふ、換言すれば、信書の封緘とは、其外包を破壞することなくしては内容を知了する能はざる樣に施したる手段にして、若し封緘したる信書を開披したる者は、秘密を侵すの罪として處罰せらるべきもの也、但し一般に封緘といふときは、信書に限らず一般の物に關し施されたる上述の如き設備をいふ也。(刑一三三條)
副共同正犯
(ふくきようどうせいはん)數人共謀することなく同一なる結果の發生又は不防止に關與する場合に存する罪の一種なり、此場合は、所謂共同實行正犯又は教唆若くは從犯に該當せざる場合にして、然も數人が犯罪の實行々爲に關與する也、されば犯罪の數人實行に於ける一態樣にして、從來同時犯と稱したるものは副共同正犯に屬す、副共同正犯には左の態樣あり、□一過失に基く共同作用の場合、例へば數人の大工が共に通行人に注意することなくして、取毀ち中の建物の棟梁を往來に取落し、其不注意なる共同作用に依て通行人を撲殺したる場合の如し、但し此場合は、過失に依る共犯を認むる説に從へば副共同正犯に非らずして單純なる共同正犯に屬す、□二同時に各故意を以て罪を實行したる場合、例へば甲乙共に丙を毒殺するの故意を以て、共謀することなく同時に各丙の飮料水中に毒を投じ、丙は其水を飮みたるに依て死亡したる場合の如し、此場合は各自單獨に其罪を實行したるものにして、甲乙の行爲が適々共同して其效果を生じたるに過ぎず、□三一方は故意に基き、一方は故意を缺く場合、例へば客觀的に於ては罪の實行者たるが如きも、其實一方は責任無能力者なりしとき、又は一方は過失を以て共同したるに過ぎざる場合の如き之に屬す、此場合は間接正犯に屬すとなすを通説とし、唯近時有力なる説は其故意あり且共同の認識ある一方を共同正犯を以て論ずべしとなす、之を要するに副共同正犯なるものは、適々犯罪を共にするも、其一方又は双方が共同の認識を缺く場合にして、若し共犯は常に双方共同認識を要すとの説に從へば、其客觀的の方面のみ共犯に等しきに拘らず、犯人主觀の方面に於ては全く其條件を缺如する場合を意味し、故に準共犯ともいふべき共犯に似て非なるものを指す語なりとす。(共犯の部及び刑六〇條乃至六五條參照)
複雜國
(ふくざつこく)單獨國に對し、主として聯邦の如き國家を指す、卽ち多數の國家相集合して一の國家を爲し、其國家が國際法上の主體たると同時に、之を組織する各國家も亦其主體たる場合也、例へば一八一五年より一八六六年卽ち普佛戰爭の時まで繼續せし獨逸聯邦の如き是れ也、現今に於ける獨逸帝國は、此意味に於ける複雜國なりや否は疑の存ずる所也、今日獨逸國を代表する者は獨逸帝にして、帝は亦同時に普漏西王たり、外國に對して公使を差遣し又は之を接受す、而て他方に於ては獨逸を組織する各國家も亦同じく外國に對して公使を授受するの權利を有せり、但領事を派遣するの權は獨逸帝に限る、領事を受くるの權利は各國皆之を有す、其他各國家は獨逸帝の權利として有せざる事項は自由に之を行使することを得るものとす、又獨逸國と獨逸國を組成する各國との關係を規定するものは獨逸憲法にして、此兩者の關係は亦關税同盟條約を以て之を定めたり、故に獨逸國と之を組成する各國とは、憲法の方面より觀察するときは合衆國なりと雖も、關税同盟條約の方面より之を觀察するときは聯邦國なり、從て學者は聯邦國にもあらず、合衆國にもあらざる特種の國家なりと論ず。(聯邦、合衆國の部參照)
誣告罪
(ぶこくざい)人をして刑事又は懲戒の處分を受けしむる目的を以て虛僞の申告を爲す罪なり、本罪の性質に關しては異種の見解あり、甲説によれば、本罪の法典中に於ける地位によりて之を見るも、國家の司法權及懲戒權の行使を誤らしむるの虞ある犯罪なりとし、乙説によれば、誣告せられたる個人に對する犯罪なりとす、丙説によれば、誣告罪は一面に於ては刑事又は懲戒の處分權ある官廳をして其處分を誤らしめ、他の一面に於ては被誣告者をして不當の處分を受けしむる虞ある犯罪なりとす、通説は此の丙説に從ふ、之れに依れば本罪は二個の法益を侵害する罪なりと謂ふべし、本罪は被告人を陷害する目的に出でたる僞證罪に類似す、只僞證罪は法律により宣誓したる者が、既に或官廳に繫屬せる事件に付き虛僞の事實を陳述するに因りて成立し、之に反して本罪は、未だ權限ある官廳に事件の繫屬せざる以前に於て、他人をして刑事又は懲戒の處分を受けしむるが爲め、自から進んで虛僞の申告を爲すによりて成立する点に於て異る、以下本罪を分説すれば、□一本罪の客體は刑事又は懲戒處分の客體となり得べき他人たることを要す、故に自己が自から犯罪を犯したりとの虛僞の申告は本罪を構成せず、尤も他人を處罰せしめんと欲して、自己と共犯なりとの虛僞の申告を爲したる如き場合は、固より其他人に對する誣告罪たるを妨けず、而て誣告は特定の人に對することを要す、故に例へば世界の人類は皆竊盜犯人なりとか、日本の婦女は皆賣淫者なりといふが如き虛僞の申告は本罪を構成せず、然れども被誣告者の何人たるが特定し得れば可なるを以て、必らずしも其氏名を表示するの必要なし、□二刑事又は懲戒處分の理由となり得べき事實に關して虛僞の申告を爲すことを要す、茲に申告とは自から進んで爲す事實の告知をいふ、告知の方式は文書又はロ頭を以てするも、或は告訴告發其他の方式によるも、若しくは自己の名義によると他人の名義を詐稱すると、其他匿名の投書を以てすると否とを問ふことなし、然れども訊問に答ふるは進んで告知するに非ざるが故に申告に非らず、而して申告されたる事實は虛僞に係ることを要す、此虛僞は申告者自身虛僞を信じたるも、實際は眞實なりしとき尚本罪を構成するや、之と反對に、申告者は眞實と信じたるも實際は虛僞なりしときは本罪なりや、此問題は本罪たる犯人の惡性を罰するに在りや、又は官廳の處分權を紊るを罰するにありやの一般刑の目的に關する問題に依て解決を異にす、余は本罪に關し以上兩者の場合を共に罰すべきものと信ず、但し下述する本罪の既遂未遂の説を參照せよ、偖て此の如き不實の申告は、刑事又は懲戒處分の理由となり得べき事實に關することを要する也、刑事處分の理由となり得べき事實は犯罪にして、懲戒處分の理由となり得べき事實は職務の懈怠其他義務違背、職務上の威嚴若しくば信用を失ふべき行爲なり、或は懲戒處分なる語を廣く解して、一般に罰を受くべき處分をいふとなす學者あり、何れに依るも、某者が某女と私通したりと申告し、又は告訴なき親告罪の申告の如きは本罪を構成せず、次に誣告は刑事又は懲戒の處分權ある者又は其搜査權ある者に對して爲されざるべからず、例へば巡査に爲したる虛僞の犯罪事實の申告は、檢事又は司法警察官に到達したる場合に限り本罪を構成する也、而して此場合に、其處分權者が該申告を認識したるときは本罪の既遂となるとの説と、誣告に依り刑事又は懲戒の手續を開始せらるゝことを要すとの説と、單に申告を爲すのみにて既遂なりとの數説あり、余は此の最後の説を可なりと信ず、從て誣告たることを自白して告訴等を取下たる場合と雖も本罪を構成すと信ず、但し此の如き場合は其刑を輕減又は免除することを得、□三本罪の成立には他人をして刑事又は懲戒の處分を受けしむる目的あることを要す、卽ち自己の誣告に因り其誣告者が刑事又は懲戒の處分を受くることを希望するを要す、此希望あれば、只面白半分に誣告を爲したると、或は自己の犯罪を轉嫁する爲めなるとは問ふ所に非らず、但し今や逮捕せられんとせる犯人が、嫌疑に係る犯罪を犯せる者は自己にあらすして、彼の人なりと欺き逃逸せんとするが如きは、常に本罪に必要なる目的ありといふことを得ざる也、終りに本罪に對する刑は三月以上十年以下の懲役とす、本罪を犯したる者其事件の裁判確定前、又は懲戒處分前自白したるときは其刑を輕減又は免除することを得る也。(刑一七二條、一七三條、僞證罪の部參照)
- 英
- Calumny
- 独
- Verleumdung
- 仏
- Infraction de la calomnie
不純正不作爲犯
(ふじゆんせいふさくゐはん)不作爲に依る作爲犯をいふ、行爲は之を別ちて作爲及不作爲となす、人の擧動が積極的なる場合は卽ち動作にして、動作に依て爲されたる行爲は作爲なり、人の擧動が消極的なる場合は靜止なり、靜止に依て爲されたる行爲は不作爲なり、而して作爲に因り犯さるゝ犯罪は卽ち作爲犯又は行犯にして、不作爲に因りて犯さるゝ犯罪は不行犯又は不作爲犯なり、此場合の不作爲犯は之を純正不作爲犯となす、不純正不作爲犯は此純正不作爲犯に對し、不作爲によりて行犯を犯したる場合なり、例へば母が幼兒に乳を與へずして之を殺したる罪の如し、本來殺人罪は行犯にして、普通積極的の行爲卽ち作爲によりて犯すなり、例へば人を斬るとか銃を以て射る場合の如し、不純正不作爲犯は殺人罪を此の如き積極的行爲によらずして犯す場合なり、前例の如き場合及び詐稱誘導して人を死地に陷れ之を殺すが如き此例なり、不作爲に依る作爲犯は如何なる場合にも存ずべきものなりや、佛法學者は多くの場合に於て不純不作爲犯の成立を否認し、近時の獨法學者は多く之を認む、其要件に就ては諸説あるも、通説は、原因の進行を遮斷すべき法律上の義務ある者が、任意に之を放任して遮斷せざる場合に存ずとなす、例へば父母は其幼兒を扶養すべき法律上の義務ある者也、今若し、母が乳を與へざれは其幼兒の死すべきを知り、其乳を與へざれば幼兒は飢て死すといふ自然上の因果關係を、故意に遮斷することなく放任する場合は、母は不純正不作爲による殺人犯を犯したる者といふべし、元來法律には命令の規定と禁止の規定とあり、命令の規定といふは、法律が其行爲を爲すべしとの作爲を命ずる場合にして、例へば變死人は檢視を受くべしと命ずるが如し、此場合に、此規定に違反して檢死を受けずして變死人を葬るの罪は不作爲犯なり、之に反し法律は不作爲を命ずることあり、卽ち某行爲を爲すべからずとなす場合にして、例へは人を殺す可らずとなす場合の如し、此禁止の規定に違反して人を殺したる殺人罪は卽ち作爲なり、不純正不作爲犯は、不作爲によりて此種の作爲犯を犯す場合をいふ、不作爲と結果との間に於ては、行犯に於けるが如き因果關係を要するや、是れ不純正不作爲犯に就いて起る問題なり、此點に就いては因果關係の部を參照すべし。(行爲又は作爲犯の部參照)
物上代位
(ぶつじようだいゐ)物を目的とする權利に於て、其物が處分又は侵害に依りて對價又は賠償權と變じたる場合に、尚其權利が受取らざる對價又は賠償金の上に代て之を目的とすることをいふ、例へば質權に於て、質物が賣却せられ又は故意に毀損せられたる場合に、質權は尚受取らざる代金又は賠償金の上に實行することを得べし、是れ講學上代位の存する場合也、但し通常の場合に於ては、變體したる目的物と雖も、他の財産を提供するに依て得たる補償金、例へば保險金の上には物上代位は行われざるものとす。(民三〇四條)
不定期刑主義
(ふていきけいしゆぎ)刑罰を宣告するに當り其刑期を確定せず、刑の宣告後其犯人の性情を探究し、法律上定められたる刑期の範圍内に於て、其犯人に適合する刑期を確定する制度をいふ、此制度は刑事政策上より出でたるものにして、刑罰の目的は、元來正義の要求に基く罪惡必罰と、公共の安寧上より打算されたる利益の要求する所に基き、犯罪の撲滅、犯人の遷善感化にあり、然して或犯罪は輕微なるの故を以て常に同一の刑を科せんが、以上の目的は全然達せられざるに終らん、何んとなれば同じく犯人といふ中にも、或は一時の饑餓又は憤怒に依り竊盜又は傷害の罪を犯したる者もあるべく、或は犯罪に趣興を持ちて職業的に此等の罪を犯す者もあるべし、等しく之を同一の刑に依て畏嚇改善せんと欲するは木に緣て魚を求むるが如し、此理由に基き此等の者に等しく刑罰を宣告するも、一時の狀況に驅られて罪を犯したるが如き、所謂偶發犯人に對しては、其悔悟を待ちて直に之を放免し、又必然犯人の如き者に對しては其最後の期間まで之を拘禁して改善するを待つ也、斯る理由に基き刑を宣告し行刑する主義を不定期刑主義といふ、本主義の可否に就いては今猶ほ學者間に爭ある所なるも、既に北米合衆國の諸州に於ては此制度を施行し着々として實效を奏しつゝあり、而して此主義を賛する者の内に在りても、刑罰を宣告する機關と執行する機關とを同一にし、卽ち刑期の確定其他を以前刑を宣告したる裁判所に留保すべしとなす者と、或は宣告機關と行刑機關とを互に相近接せしむべしと雖も、刑期の確定等は裁判所以外の特別なる官廳卽ち行刑機關たる檢事に委任すべしとなす者あり、其可否は今後の實際上に於ける經驗を俟つに非らざれば斷定するを得ず。(刑事政策の部參照)
分合
(ぶんごう)分別し又は合併することを總稱する語也、主として行政上の事物又は土地の領域に於ける場合に用ゐらる、例へば町村の分合といふときは、町又は村を分割して二の町又は村となし、或は町又は村の一部を分別して他の町村に合併せしめ、若くは二の町又は村を併合する場合を稱する也、又事物の分合を例へば、某裁判所に屬する管轄權の一部を分割し他の裁判所に屬せしむるが如きこれ也。(市制四條、二項町村制四條)
文書僞造罪
(ぶんしよきぞうざい)文書又は圖画を僞造又は變造し、若しくは之を行使する罪なり、本罪の構成要件を擧ぐれば左の如し、□一本罪の目的は文書又は圖画たること、文書は意識の記載にして、發意的符號により記されたるものをいふ、故に文書には意識の表明なかるべからす、此表明は發意的符號に依るを要す、發音的符號は主として文字なり、其文字たるときは、漢文なると日本語なると歐文たるとを論ぜず、但し外部の事情を附加するに依て、初めて其意思表示を知り得べき場合は、必らずしも文書にあらず、例へば訪問せるも不在なりしが爲め名刺を置きて歸りし場合に、其名刺は外部の事情に依て其訪問したるを知り得べきも文書に非らざるが如し、又文書は確定的に表示せられたるものならざるべからず、故に草案は文書にあらず、又文書は意識の表示自體なるを要するが故に、謄寫の如きは原則として文書に非らず、文書に依る意識の表明は、物件と化體せるものなるを要するが故に、砂上に書きたる意識の表明は文書にあらず、次に文書は一定の事實を證するものなるを要す、此點に關して文書を二に別つ、一は證明を目的とする文書にして、一は事實を證明し得る文書なり、此二に屬せざる文書は本罪の目的たる文書に非らざる也、文書は作成者の如何に依りて之を公正文書、私文書の二となす、公正文書は大權の發動を表示する文書と、公務所又は公務員が職務を以て作成し、若しくは作成に關與して證明したる文書なり、私文書は公正文書以外のものにして、主として一私人の作成に係る文書をいふ、次に圖画は發意し得ざる符號其他に依り意思を表明したる物をいひ、卽ち圖形に依る書類なり、此の如く圖画と文書とは其記載の方法に於て異なるも、其他の要件を同ふする也、舊刑法は圖画に關する規定なし、新刑法は文書に加ふるに圖画を以てす、以上は、縱令文書僞造罪の目的となるべからざる文書と雖も、刑事被告事件の證憑として之を僞造するときは、別罪を構成するものとす、□二僞造及び變造又は行使したることを要す、僞造の意義に關しては二説あり、一は形式説といひ、文書僞造罪は文書の形式的眞實を保護するものと解し、從て文書僞造を文書の形式を僞るものとなす也、換言すれば、文書の作成名義を僞て之を作製するときは總て僞造とし、因て文書の内容が事實に符合するに至れると否とな問はざるものとなす也、他は之を實質説といひ、文書僞造罪を以て文書に因り表示せらるゝ事實又は思想の眞正を保護するものと解し、文書の僞造は此行爲により其眞正が害せらるゝ總ての場合(變造を除く)を包含するものとなす、從て此説に依れば、文書が眞實に反せる場合に、作成名義者に依らず之を眞實に改むるも僞造にあらずとなす也、通説及び判例は形式説を採用するものゝ如し、從て僞造とは、文書の作成名義を僞て新に之を作製するをいふと謂ふべし、僞造は之を有形僞造と無形僞造とに區別す、文書の有形的僞造とは、無權利者が行使の目的を以て作成權利者の名義を僞り文書を作成する場合をいひ、文書の無形的僞造とは、文書作成者の名義に僞りなきも文書の内容が虛僞なる場合をいふ、無形僞造は更に分れて、自己の名義を以て作成したる文書の内容を僞る場合と、一は他人をして其名義に於て虛僞の内容を有する文書を作成せしむる場合とになす而て無形僞造は形式説に依れば當然文書僞造に非らず、故に法律が特に明文を揭げたる場合に於てのみ文書僞造を以て論すべしとなせり、文書僞造に於て、其僞るべき名義者は實在の者たるを要するや否や、通説は實在せる者と認めらるべき者と信ぜらるる程度の者なるときは、必らずしも實際存する人なるを要せずとなす、次に變造とは、文書を增減變換して效力を異らしむる場合をいふ、尤も文書の僞造と變造との區別に就いては二説あり、第一説は眞文書の外形を利用して新なる文書を作成する場合をいふとなす、假りに之を有形的利用説と名く、第二説は眞文書を利用するも、其文書の内容たる權利關係其他の事實の體樣效力を變更するに止まる場合にあらざれば、之を變造といふべからずとなす、假りに之を無形的利用説と名付く、通説は無形的利用説を採用す、終りに、行使とは僞造又は變造に係る文書を文書として使用することをいふ、圖画に就いても亦同じ、而て其使用の方法は、文書又は圖書の性質如何により一樣ならず、或は他人に交付するに依り、或は單に他人に提示するのみにて、又は一定の場所に備へ付くるに依りて行使と爲る、□三本罪は文書の種類、僞造に名義人の印章又は署名を使用せると否とに依り左の如く區別せらる、(1)行使の目的を以て御璽、國璽若くは御名を使用して詔書其他の文書を僞造し、又は僞造したる御璽、國璽若くは御名を使用して詔書其他の文書を僞造する罪、本罪の客體は詔書其他の天皇の文書なる場合なり、此點に就いては公式令を參照すべし、本罪の刑は無期又は三年以上の懲役とす、御璽、國璽を押捺し又は御名を署したる詔書其他の文書を變造したる罪も、其刑本罪と同じ、(2)行使の目的を以て公務所又は公務員の印章若くは署名を使用して公務所又は公務員の作るべき文書若くは圖画を僞造し、又は僞印若くは僞署を使用して以上の文書又は圖画を僞造する罪、本罪の刑は一年以上十年以下の懲役とす、公務所又は公務員の捺印若くば署名したる文書又は圖画を變造したる罪も亦其刑之に同じ、(3)印章又は署名を使用せずして公務所又は公務員の文書若くは圖画を僞造し、及印章又は署名なき以上の文書を變造する罪、本罪の刑は三年以下の懲役又は三百圓以下の罰金とす、但本罪に就ては行使の目的あるを要せず、(4)公務員其職務に關し、行使の目的を以て處僞の文書若くは圖書を作り、又は文書若くは圖画を變造するの罪、公務員の爲す無形僞造又は變造の場合也、本罪の刑は、印章又は署名の有無を區別し、上説したる有形僞造の刑を科する也、(5)公務員に對し虛僞の申立を爲し、權利義務に關する公正證書の原本に不實め記載を爲さしむる罪、本罪は私人が公務員を通して爲す無形僞造也、本罪の刑は二年以下の懲役又は百圓以下の罰金とす、但し免狀、鑑札又は旅券に不實の記載をなさしめたる場合は、六月以下の懲役又は五十圓以下の罰金とす、本罪の未遂は之を罰す、(6)上記の罪に依て得たる公正文書を行使する罪、一人にて僞造又は變造と行使を兼ねたる場合は、舊刑は一罪となすを原則とし、新刑法は明文なきも、通説は重き刑を科する想像的併合罪の規定(刑五四)を適用すべき場合となす、本罪の刑は上説せる僞造又は變造の刑に同じ、但し本罪の未遂は罰せらる、(7)行使の目的を以て私人の文書を僞造又は變造したる罪、本罪の刑は、權利義務又は事實證明に關することの要件の下に、印章又は署名の有無により區別し、之ある場合は三月以上五年以下の懲役、之なき場合は一年以下の懲役又は百圓以下の罰金となす、(8)醫師公務所に提出すべき診斷書檢案書、又は死亡證書に虛僞の記載を爲したる罪、一私人たる醫師なる身分を有する者が爲す無形僞造の場合なり、本罪の刑は三年以下の禁錮又は五百圓以下の罰金とす、(9)以上の私文書行使の罪、本罪の刑は僞造、變造又は虛僞の記入をなしたる罪の刑に同じ、本罪の未遂は之を處罰せらる。(刑一五四條乃至一六一條)
併合罪
(へいがうざい)舊刑法の所謂數罪俱發又は學者の所謂數罪競合(獨逸法は此語に當る文字を使用す)と等しく、確定裁判を經ざる數罪の關係を意味す、卽ち併合罪なる特種の罪あるにあらずして、數罪が併合して發覺したる場合に關する用語とす、先づ併合罪の何たるを知らんには一方に法規の競合と區別し、數罪の何たるかを知り、又一方には俱發の何たるかを知らざるべからず、以下極めて簡單に其要旨を略述すべし、(甲)數罪の觀念、抑々犯罪は刑罰を制裁としたる法律違反の責任行爲也、從て犯罪は人類の意思發動たる行爲の一種とす、故に犯罪の一なりや又は數多なりやを知るには、行爲の數に依て判斷するを可とす、或學者は犯罪は法律違犯なるを以て、違犯されたる法規の數は則ち犯罪の個數なり、故に法規の數に依て之を判斷するを可とすと論ず、然れども此説たる因果を顚到したるものにして正當ならず、尚下述する法規の競合なる節を參照すべし、□一行爲の單一なるに依り犯罪が一なる場合、行爲が單一なりといふには、先づ意思に基く動作が單一なるか、結果が單一なることを要す、卽ち、(あ)意思の實行が單一にして又結果が單一なる場合、例へば一發を以て一人を銃殺し、或は一言にて一人を誹毀したるが如し、此場合は單一なる犯罪たること最も明かなる場合也、(い)單一なる意思實行に依て數多の結果生じたるとき、例へば一發の彈丸に依て一人を殺し一人を傷け餘勢爲硝子戸を破毀したるが如き、又は一言にて數人を侮辱し、或は一個の過失に依り數人を死に致すが加き場合をいふ、此場合は所謂想像上の數罪俱發にして、其結果が同種類なる場合(一發數人を殺せる如き)を同種の想像的數罪競合といひ、其結果が異種類なる場合(一發の彈丸に依て一人を殺し一人を傷け、餘勢窓を破壞したるが如き)を異種の想像數罪競合といふ、而て此場合を一罪なりとなすべきや否やは疑問あり、下述の想像上の數罪競合の節を參照せよ、(う)意思實行は數個なるに拘はらず、其發生したる結果が一箇なりしとき、但し結果が一個なりや否やを區別するには左の標準に基くを通説とす、卽ち(1)享有者の人格に於てのみ害せられ又は危險が與へらるゝ所の法益に關する場合に於ては、其攻繫せらるゝ人格の個數に依る、例へば殺人罪に於ては被害者たる人の數に依るが如し、(2)亨有者の人格より分離して移轉し得べき法益に關する場合に於ては、其直接亨有者の數に依る、例へば一人の物を窃取するが如し、但し直接亨有者といふは、侵さるゝ所の直接關係者をいふものなれば、數人の所有に屬する物と雖も一人の所持に屬するときは、其侵害の結果は一なりとなす也、(3)創造權例へば著作權、商標權又は意匠權の如きは、其權利の個數にて依て定む、而して其權利が數人に分屬する場合に於て殊に然りとす、卽ち共同著作物を僞作するも僞作たる結果は一なりと解す、(4)法律が明示又は默示的に結果が一なりとなしたる時、例へば通貨僞造に於て單に通用の貨幣、紙幣又は銀行券を僞造したる者と規定し、特定の某貨幣の各片每に刑を科せざるが故に、此場合は結果一なりと解す、此他富籖を興行する罪、風俗を害すべき冊子圖画を頒布又は販賣する罪も亦之に屬す、(5)繼續犯も亦結果が單一なる場合と解す、遺跡犯に就ても亦同じ、繼續犯及び遺跡犯に就いては各其部を參照すべし、偖て以上の場合に於けるものは、通説に依れば行爲が單一なりとの理由に依り一罪と看做さるゝものなり、□二數個の行爲にして單一なる罪をなす場合、自然上の行爲は數個なるに拘らず、刑法上單一なる罪をなす場合にして、之を別ちて左の數種とす、(え)結合犯なる時、所謂結合犯とは法律が種類を異にする法益に對する二個の違法行爲を以て單一なる罪の構成要件とせる罪をいひ、例へば強盜罪の構成要件は窃盜と強制より成立し、強盜強姦罪の構成要件は強盜行爲と強姦行爲とより成立するが如し、此の如き罪は其一を犯すも一罪として罰せらるべく、唯法律が此自然上の二個の行爲を合一して一となすが故に一罪なりとす、(お)連續犯なる時、連續犯の何たるやは其部を參照せよ、元來連續は同一なる罪となるべき行爲が數囘反覆せらるゝ場合なれば、既に處罰せられたる部分の連續を缺くや勿論なれども、然らざる場合は同一の法益に對して類似の方法に依る限り、行爲は數多なるも一罪に過ぎずと解するを通説とす、改正刑法が、連續したる數個の行爲にして同一の罪名に觸るゝときは、一罪として之を處斷すと規定したるを見れば、本來一罪なるに非らずして、數個の行爲なるが故に數罪を構成し得べきも、同一の法益に對し類似の方法に依り連續して爲したるが故に一罪とするものなりと信ず、連續犯の例は、某が一囘に取受したる僞造貨幣を數囘に使用し、又は主人の同一なる卷煙草箱より每日煙草を少しづゝ窃取するが如き、或は甲女が乙男と夫婦關係を有する間に於て、丙と屢々夫婦外の交接(姦通)を爲すが如き是れ也、(か)以上述べたる以外の集合的犯罪なる時、此種の犯罪は狹義の聚合犯と稱せられ、左の三種の罪を包含す、(1)は營業犯にして、或る行爲を屢々反覆することに因て所得の淵源となす罪を云ひ、(2)は常業犯にして行爲を反覆する點に於て營業犯に等しと雖も、所得の淵源となさゞる點に於て異なる、(3)は常習犯又は慣行犯と稱せらるゝものにして、行爲を反覆することに依て犯人の習性をなす場合に成立す、以上三種の狹意の聚合犯は、之を單一の行爲とすれば處罰せられざる場合と雖も成立す、此種の罪の例は醫師法、齒科醫師法に認むる私に醫業を爲す罪、刑法に定むる常習賭博罪の如き之に屬すと解せらる、要するに以上三個の場合は、自然上の數多の行爲なるに拘らず、法律に依り單一なる罪とせらる、偖て以上により數罪の意義明になりたるを以て、次に數罪俱發の意義を述べん、(乙)數罪俱發の觀念、確定判決を經ざる數罪が俱に發覺したるときは、此罪は併合して處斷せらるゝもの也、併合罪は此場合に附したる名稱なるが故に、茲に俱發の觀念を述ぶる必要あり、先づ數罪俱發を實質上の俱發と、想像上の俱發とに區別し、次に之を同種のものと異種のものとに區別し、以上の俱發を法規の競合と區別す、分類を知るは其觀念を得るに最も便宜なるが故に、以下分迹せん、□三法規の競合、或る一の行爲に對して、二以上の法規が其適用を競ふ場合にして、此場合は數罪競合にあらずして數個の規則に違反せられたる場合に屬す、然れども犯罪を法規違反の數に依て算定すべしとなす説に於ては、此場合も亦數罪俱發の一の場合となす、余は前説の如く犯罪を法規違反となすは因果を誤るものと信ずるが故に、法規の競合は數罪俱發にあらずと信ず、法規の競合に關しては左の標準に從て適用すべき法條を定む、A特別法規は一般法規の適用を排すべきもの也、從て例へば皇室に對する不敬行爲には特別法規たる刑法七四條を適用すべく、一般の誹毀又は侮辱に關する罪の法條を適用ずべきに非らず、B充實法は補充法に勝るが故に、例へば貨幣僞造の豫備的行爲を罰する刑法一五三條は、貨幣僞造を罰する法條の補充法なれば、貨幣僞造の行爲に對しては一五三條を適用すべきに非ず、C實害法は危險法に優るが故に、例ば人家調密の場所に於て烟火を玩びたるに依り失火を致したる行爲に對しては、常に失火に關する規定を適用して烟火を玩びたる罪に關する規定を(舊刑四二五―四)適用すべきに非らず、D一所爲數法に觸るゝの外觀あるも、甲法規の罪は乙法規の罪の一變態に過ぎぎる場合、及一は法が數罪を併合したる罪に關する如き場合は、各行爲の態樣に應じて適用すべき法規に依り、二の規定を適用すべきに非ざる也、之を要するに、以上の如き場合は法規の競合に屬し、數罪の存ずる場合にあらざるを知るべし、□四想像上の數罪俱發、想像上の俱發は前に一言したるが如く、一の行爲が數個の結果を伴ふ場合にして、例へば一丸數人を殺せるが如き場合、及び一丸が一人を殺し一人を傷け餘勢尚器物を破壞したる場合の如し、此場合に數罪存するものなりや否やに就ては二説あり、一は之を一罪となりとなし、他は之を數罪なりとなす、説の岐るゝ點は此場合の法條が互に獨立せるよりして然るもの也、卽ち同一の行爲が數個の法條に觸れ、(此点より見れば法規の競合と同じく一罪とすべきに似たり、前説は卽茲に着眼す)而も其法條が獨立せる故なり(此点より見れば法規の競合と異なるが故に數罪となすべきに似たり、後説は此点に着眼す)刑法は此兩説中何れを採用せしや明かならざれども、其處斷方法に關して左の如く規定せり、卽ち一個の行爲にして數個の罪名に觸れ、又は犯罪の手段若くは結果たる行爲にして他の罪名に觸るゝときは、其最も重き刑を以て處斷すと、之に依て見れば新刑法は一罪説を採用したるものゝ如し、只其二項に於て、第四十九條第二項(二個以上の沒收は之を併科すと定む)の規定は前項の場合に之を適用すと定むるより見るときは、或は數罪説を採用したるやの疑あり、此点は讀者の考量判所に俟つ、次に想像上の俱發に關する場合を分説せん、(き)同種の想像上の俱發、數個の獨立せる法益が一の行爲に因て侵害せらるゝ場合にして、例へば一發の彈丸甲乙兩人を仆したる場合の如し、(く)異種の想像上の數罪俱發、等く一個の行爲にして數個の罪名に觸る場合なるも、其侵害せられたる法益の異なる場合にして、前屢々例示せる如き、一彈にて人を殺し器物を毀棄せる如き場合なり、(け)索連罪、此種の罪も廣義に於ける想像上の俱發の一場合にして、犯罪の結果若くば手段たる行爲が他の罪名に觸るゝ場合也、例へが竊取物の橫領行爲は竊盜罪の内に包合せられ、同一人に係る場合には茲にいふ索連罪の一種なり、又家宅侵入は竊盜罪の手段として包含せうる、凡そ以上の場合には其異種又は同種の想像俱發たると或は索連罪なるとを問はず、其最も重き刑を以て處斷せられ、沒收刑のみ併科せらるゝものとす、□五併合罪、以上略述したるが如く、數罪が相關聯して發覺したるときは、併合して之を判決するものなり、故に併合罪は數罪發覺の場合に於ける關係にして、併合罪なる一種の罪にあらざるを知るべし、而て併合罪は實體的數罪競合の場合を主とし、想像競合も之を數罪なりとする説に從へば當然包含すべきなれども、想像競合に就いては前説したる故に、茲には實體競合の場合に關して處斷方法を述べんに、此處分に關しては從來三の主義あり、(1)吸收主義、各罪を比較し一の重きに從て處分する主義なり、舊刑法は原則として此主義に依れり、(2)併科主義、各罪に對する刑を併科する主義なり、(3)折衷主義、以上の二主義を刑の目的に從て折衷する主義なり、新刑法は之に則る、卽ち死刑若くは無期刑に處すべき罪と然らざる罪と併合するときは、之を併科する能はざるが故に吸收主義に從ふも、其他の刑に關しては其最も重き罪に付き定めたる刑の長期の二倍に、其半數を加へたるものを以て長期とし、各罪に付き定めたる刑の長期の合算額を超ゆるとを許さゞる制限の下に之を處罰す、但し罰金及科料並に沒收に關しては總て併科主義に從ふ、要するに一罪に對する各刑を科するを本則とするも、事實上不能なる死刑、無期刑に就ては之を制限したるものにして、其他の刑に關しては制限加重の方法により、法定の制限内に於て加重したる刑を全部に對する刑として科し、財産刑の如きは何れの場合にも併科し得べきが故に、原則として併科することゝなしたるもの也、終りに本來併合罪たるべき數罪に就き二以上の裁判ありたる場合は、併合罪として其刑を定むる方法と同じき制限の下に、其刑を併せて執行さるゝもの也。(刑四九條乃至五五條、數罪俱發の部參照)
變更
(へんかう)或ものが變じて他のものに更まることをいふ、例へば權利に變更ありたりといへば、其權利の主體たる當事者に交代ありたるか、又は内容に移動あることを言ひ、物に變更ありたりといへば、物の内容形狀に異動あるをいふ、但し物の變更に就いては疑あり、蓋し物は、其變更の結果として新なる物を生じたるときは、從來存したる物の所有權は消滅し、新に生じたる物の所有權發生するものなれば、物の如何なる變更が、新なる物を生じたりと言ひ得べきやを硏むるの必要あり、卽ち物の變更は所有權の得喪に重大なる關係を有するものなれば、變更の觀念を硏むるの必要重大なりとす、前説の如く、物の變更には其物質に關する場合と、又は形狀に係る場合とあり、凡そ有機物は常に物質を變更す、然れども其變更たる極めて除々なるが故に、其物質の變更は新なる物の發生を來さずとなすを通念とす、從て物質の同一なると否とは物の變更を新なる物となさしめす、一の木片を以て或物を製作したるときは、物質の變更なきも新なる物を發生するより見れば、新なる物の發生は普通形狀の變更を指すを見るべし、然し剝製の鳥獸は、其外形に於て何等の變更を見ざるも、之を以て新なる物の發生と見るべきものなれば、形狀の變更必らずしも新なる物を生せず、此等の例に依れば、物の變更に依り新なる物を生じたりと認むべきや否やは、只吾人日常の生活に於ける觀察に依りて定むるの外なき也。(更改、讓渡、加工の部參照)
貿易事務官
(ぼうえきじむくわん)某地領事を置くの必要あるも、駐剳國家にして其地に領事官を駐在せしむるを便宜ならずとなす場合に、經濟上の視察監督等に關して其事務を執らしむる爲め派遣する官吏をいふ、領事は本來各國何れの地にも駐在せしむる義務なく、故に國際條約に於て、領事官の駐在を認許するに便宜ならざる場合に、其地に領事を駐在せしめざる旨を約することあり、日露條約一五條第一項但書の如き是なり、是れ日露開戰前貿易事務官を浦港に置く必要ありし所以とす、蓋し露國は同港を以て日本領事官を駐在せしむるに便宜ならずとなしたれば也。(三〇年八月勅二九〇號)
捕獲審檢令
(ほかくしんけんれい)捕獲審檢所の組織及び權限、其審檢手續に就て規定せられたるもる也、以下分説すれば、□一捕獲審檢所の組織及び權限、捕獲審檢所には高等捕獲審檢所と普通の捕獲審檢所とあり、捕獲審檢所は第一次に拿捕事件に就いて檢定し、高等捕獲審檢所は第二次に於て檢定す、卽ち高等捕獲審檢所は上級審なり、各捕獲審檢所には長官一人及評定官八人を置く、長官は勅任判事を以て之に補す、評定官は、判事、海軍將枝、海軍省參事官、主理、法制局參事官、外務省參事官、外交官、領事官等の内より之に補すもの也、但し高等捕獲審檢所に於ては、長官は樞密顧問官、評定官の中其一人は樞密顧問官、二人は海軍將官、三人は大審院判事、一人は法制局長官、一人は外務省政務局長たるを要す、各捕獲審檢所には檢察官三人、高等捕獲審檢所には同二人を置く、檢察官は又檢事主理及び高等行政官の中より之を補す、□二審檢手續、拿捕を行ひたる艦船の指揮官は、拿捕船を最寄の捕獲審檢所に引致し、拿捕を行ひたる理由を記せる供述書を添へ、之を捕獲審檢所に引渡すべし、審檢所長官は、先づ評定官中一人を指定して擔任評定官となし、刑事に於ける豫審に類する處分を爲さしむ、擔任評定官其處分を終へたるとき、卽ち其拿捕の全部又は一部を捕獲すべきか、解放すべきかの檢定を爲すに必要なる處分を終へたるときは、之を檢察官に送付する也、檢察官は檢定に關する意見書を作り、一切の書類を添へて審檢所に提出す、捕獲審檢所の檢定は書面審理に基くを原則とす、但し利害關係人の訴願あるときは之を審檢するものにして、必要ある場合には訊問手續を開始することあり、審檢所に於ける判決は卽ち檢定にして、檢定確定前に於ては抗議を爲すを得べし、法定の要件を具へたる抗議は、高等捕獲審檢所審檢の上檢定す、以上は其大要なり。(二七年八月勅一四九號、三七年二月勅二七號)
輔弼
(ほしつ)輔け弼くることなり、憲法に、國務大臣は天皇を輔弼して其責に任ずとあり、所謂天皇を輔弼すといふは、國務大臣は自己の意見を天皇に奉り、其聰明を啓くことにして、換言すれば、天皇の國務上の行爲を輔佐し奉ることをいふ也、而て大臣が輔弼をなしたるの形式は國務上の文書に副署するに在り、故に副署は輔弼を證據立つる形式なり、但副署せざる場合と雖も、一切の國務上の行爲に對しては其補弼の義務あるものなれば、大臣此憲法上の義務を怠り、又は其補弼宜しきを得ざるときは、常に責任あるものとす。(憲五五條國務大臣の部參照)
補箋
(ほせん)或文書の餘白を補ふ爲めの附箋をいふ、例へば手形に於ける補箋の如き是れ也、元來手形は裏書に依て移轉すべきものなれば、裏書の度數多きときは署名すべき餘白なきに至る、商法は此餘白を補ふ爲めに手形に附箋することを許し、之を補箋と名付たり、裏書は此補箋に爲すも、手形の原本に爲したると同一の效力を有するものなれば、補箋は殆んど原本と結合して同一體となりたる附箋を指すと謂ふべき也。(商四五七、四九七條)
抹消
(まつしよう)塗抹して消滅せしむることをいふ、主として文書に關し使用せらる、文書の抹消とは、文書に表示されたる符號の全部又は一部を塗抹し、其意味を不明ならしむる行爲をいふ、抹消は普通削除の方法として、又毀棄の方法として爲さる、文書を毀棄する爲めに抹消したるときは、文書毀棄罪を以て論ぜらる、削除の方法たる抹消は、黑液等を塗付して、或意思表示の存在を不明ならしむる場合也、多くは意思表示の存在の一部に就いて爲さる、登記の抹消の如きは全部の例にして、某行を抹消すといふ如きは一部の例なり。(商二四、三五五條、戸籍法二四條)
未遂罪
(みすいざい)犯罪の實行に着手し之を遂げざる場合をいふ、未遂罪は一方に於ては既遂犯に對す、未遂罪と既遂犯との區別は法定の構成要件を現實し終りたるや否やに在り、卽ち普通の犯罪に於て結果の實現は其構成要件なり、此結果を缺く場合は未遂罪とす、未遂罪は亦一方に於ては豫備犯に對す、未遂罪と豫備犯との區別は犯行は着手したるや否にあり、着手とは犯罪の構成要件の一を行ふか、又は之に近接密着したる行動を謂ふとなすを通説とす、普通の犯罪は犯意に基くを要す、此種の罪に於て犯意を識別し得る行動は着手なり、未遂罪は別ちて、一方に於ては着手未遂罪と實行未遂罪とに區別す、着手未遂とは實行に着手するも障碍に依りて遂げざる場合をいふ、實行未遂は一に之を缺效犯と稱し、實行を終結するも障碍に依りて結果の發生せざる場合をいふ、必らずしも意外の障碍なるを要せざるを改正刑法の趣旨とす、未遂罪は他方に於て中止犯と狹義の未遂犯とに區別す、不能犯も未遂罪の一種なりや否やは、不能犯の部を參照せよ、中止犯とは、其障碍が實行の意思に基きたる場合にして、狹義の未遂犯は其れ以外の未遂罪をいふ、改正刑法に於ては、未遂罪を罰する場合は之を各本條に定め、特に規定なき罪の未遂は罰すべき未遂罪となさず、而て未遂罪の刑は軍に之を減輕することを得るに止め、自己の意思に基きたる場合卽中止犯の刑は、減輕又は免除すべきものとせり。(刑四三條、四四條、中止犯の部參照)
- 英
- Unaccomplished offence
- 独
- ungevollendetes Verbrechen
- 仏
- Infrac-tion peu accomplie
身分
(みぶん)資格又は位地若しくは一身の分限をいふ、例へば官吏たる身分、議員たる身分、男たる身分、妻たる身分、嫡出子たる身分、家族たる身分、債權者たる身分、醫師たる身分、華族たる身分等の如し、身分は家族的の關係、親族的の關係及社會的の關係に就いては、之を登記すべきものにして、之を身分登記といふ、又身分に依りて特に構成すべき罪あり、瀆職罪、陰私漏告罪及び逃走罪の如し、此等の罪は、公務員又は之に準すべき者、醫師、藥劑師、辯護士、又は囚人其他被拘禁者等の身分ある者に依て犯さるものなれば也。(刑六五條)
- 英
- Personality
- 独
- Personalität
- 仏
- Personalité
身元保證
(みもとほしよう)主として雇傭契約の締結に際し、雇人の身上の理由より生ずべき一切の損害は、本人之を雇主に履行せざるに於ては身元引受人其支拂の責に任ずべしとの債務を負ふをいふ、卽ち雇人の身上の理由(行爲又は病氣等)により生ずることあるべき賠償債務を保證するをいふ、保證債務の一種とす、從て一般保證債務の規定に從ふべきは勿論なり、或は、身元保證は不法行爲等により生ずる債務を保證するものなるが故に、身元保證は不法なれば無效なりと論ずる者あり、然れども此説は不法行爲其ものと、不法行爲によりて生じたる債權とを混同したるものなるを以て正當なりといふべからず。(保證の部參照)
夢幻罪
(むげんざい)錯誤により罪となるべき行爲を爲したりと誤認せるも、其實は事實上罪となり得べからざる行爲なる場合をいふ、廣義に於ける誤想犯の一種なり、抑〻此場合に於ては、事實上罪と爲るべき行爲なく、其罪となるべしと信じて爲したる行爲は正當なる行爲にして、從て罪となるべき事實を知るといひ能はざるが故に、卽ち不能未遂の一場合に過ぎず、但し行爲者は自身罪を犯すの意思を以て罪となるべき行爲を爲したりと誤信せる也、例へば他人の物と信じて自己の物を窃取せるが如き場合是れ也、此の如き意思は之を犯意として其責任を負擔せしむるを得ざるや固より論を俟たず、茲に注意すべきは、例へば木を人なりと信じ之を殺す目的を以て發砲したるが如き、懷胎せる婦女なりと信じて墮胎の方法を施したるも、其者は姙婦に非らざりしが如き、砂糖を毒藥なりと信じ人を殺すに用ひしが如き場合は所謂夢幻罪に非らざる事是れ也、蓋し此等の場合は、適々其目的物を缺き又は手段を誤りたるに過ぎずして、夢幻の如く罪となるべからざる行爲といふことを得ざれば也、夢幻罪は之を別ちて左の二場合となす、□一錯誤に因り罪と爲らざる行爲を罪なりとなす場合、例ば有夫の婦と姦通すと誤信して處女と私通したる場合の如き、或は高利を以て金を貸すは犯罪なりと信じ、其罪を犯す意思を以て高利貸を爲したるが如し、□三罪たる行爲なりと雖も特に之を正當の行爲となすべき事由ある場合に於て、錯誤により此理由なしと思料したる場合、例へば自己に正當防衛權あることを自覺せず、罪たる行爲なりと誤信して正當防衛に屬する行爲を爲したる場合の如し、凡そ此等の場合に於ては、縱令主觀的に觀察すれば罪となるべき事實を知りたりと爲し得べしとするも、客觀的に論ずれば全く其事實を知らざるものと謂ふべく、從て犯意存せず又罪を成立せざるものとす。(誤想犯の部參照)
名譽に對する罪
(めいよにたいするつみ)名譽は人の社會的價値なり、本罪は之を毀損し又は毀損する恐ある行爲を爲すの罪をいふ、其方法により區別して二となす、一は誹毀罪にして、一は侮辱罪なり、以下之を分説するに先ち本法罪の被害者に就いて一言せん、抑〻人は何人に限らず法律上に於ては名譽權の主體たり、唯左の者に就いては多少の疑存ず、□一幼者、或學説に依れば、幼兒は一定の義務を負擔し、且之を認識し得る能力を有する時期より本罪の被害者たるを得るに過ぎずと説く、されど名譽は生人の行爲に基くと限らず、其系統、身分、家業等一切の關係を包含するものなれば、本人の意思能力の定まらざる以前に於ても本罪の被害者たるを得と解すべきに似たり、□二狂者、之に對しても幼者と同じく論ぜざるべからず、□三死者法ば死者の名譽毀損を規定するも(刑二三〇―二)死者は人格なきが故に、法律保護の目的たるに止まり、此法益には直接の關係なし、只間接に遺族の名譽を保護するものと解すべき也、□四法人、有力なる消極説ありと雖も、法人も人格を有し社會的活動を認められたる範圍内に於ては、其人格に就いて社會上の價値を有するや疑なき所にして、法律上之を保護せざるの理由なきが故に、積極説を採用せざる可らず、我判例も亦積極説を採る、(甲)誹毀罪=公然事實を摘示して人の名譽を毀損したる罪をいふ、公然とは不定の多數人に認知せられ得る狀態なり、公然ならざるときは秘密を侵すの罪を構成することあるべきも本罪を構成せず、事實を摘示すといふは事實を表示するの意に外ならず、舊刑法の摘發は指摘公布の意と解すべきも、摘示は末知の事實たることを要せず、茲に所謂事實は人の名譽を毀損するに足るべき一切の事實を包含す、但し其事實の有無を問はず、又其事實が被害者の行爲に關することを必要とせず、尤も此點に就いては反説あり、而て表示の方法の如何は關係なし、例へば演説によるも刊行によるも可なり、或は云々の風説あり、余は之を不實なりと信ずなどいふが如き否定的の文句を附加するも何等の影響なし、されど外部の事實を根據とすることなく、單純に輕侮的の言を爲すは侮辱罪なり、例へば單に詐欺師なりといふ場合に、其主張が彼は詐僞をなしたる者なりといふ事實の摘示に非らずして、被は詐僞根性を有すといふに過ぎざるときの如き是れなり、次に名譽の毀損といふは、人の名譽權を侵害するの意味也、苟くも人の社會的價値を貶するの虞ある事實を公然表示し、第三者に認知せられたる以上は、當然に本罪を構成す、必らずしも犯人の行爲により世人が被害者に對し不利益なる判斷を爲すに至りたる事實あることを要せず、從て此の如き結果の發生したることを具體的に證明し、判決に確定するの必要なし、若し此の如き結果を要素とせば、本罪の成立を認むることは殆んど不能に歸するに至るべし、本罪は死者に對する場合は誣罔に出でたる場合に限り之を處罰す、蓋し此制限あるにあらざれは、故人の單純なる傳記の發行も亦本罪を構成するに至るべし、死者の名譽は死者生前の名譽なり、間接に死者の子孫の名譽を保護するの罪なるも、死者の名譽は其子孫の名譽と異なる、但し死者を讒謗し、其事實より推理して子孫の名譽を毀損する場合は、現存者其者の名譽を毀損する行爲と、死者の名譽を毀損する行爲とに就いて總則五十四條の適用あるもの也、茲に誣罔といふは、事實相違の事を虛構して摘示する場合なり、卽ち讒謗をいふ、本罪に對する刑は一年以下の懲役又は禁錮又は五百圓以下の罰金とす、本罪は告訴を待て論ずべき所謂親告罪とす、(乙)侮辱罪=公然人を侮辱するの罪也、法文に事實を摘示せずと雖もとあるは蛇足にして、前條たる誹毀罪の事實を摘示しとあるに對應する外何等の意味なし、故に公然事實を摘示して人を侮辱する場合も尚本罪に過ぎずとの反面解釋を爲すべきに非ず、侮辱とは罵詈、嘲弄其他輕蔑の意味を包含する一切の行爲をいふ、德義的方面に關するのみならず、智能身分の輕蔑を含む、不作爲も亦法律上の作爲義務に反する範圍に於て本罪を構成す、同一の言動と雖も被害者の身分職業の差異、犯人との關係の親疎如何に因り、或は侮辱となり又はならざることあるを注意すべし、侮辱は一般的人格の輕視なるが故に、他人の個々の言動を批評するが如きは侮辱とならざるも、人身攻擊に渉るときは延て一般資性に及ぶが故に、誹毀又は侮辱となるべし、然れども多數の面前に於て、債務の履行を請求するが如きは權利の行使にして侮辱に非らず、蓋し公開の法廷に於て履行請求の申立をなすと同一なれば也、次に本罪は人を侮蔑するの意あるを要するが故に、朋友間にて戲言をなすが如きは其形式同一なりとするも侮辱に非らず、輕蔑の目的を以て公然輕蔑となるべき言動をなし、被害者又は第三者が之を認知するに依て成立す、必らずしも被害者自身の認知は要件にあらざる也、本罪の刑は拘留又は科料にして誹毀罪と同じく親告罪に屬す。(刑二三〇乃至二三二條)
免黜
(めんてつ)免職黜陟の意なり、卽ち職務を罷免し、之を黜くるをいふ、例へば後見人が其事務に着手する前親族會の招集を裁判所に請求し、後見監督人を選定せしめざるときは、親族會は其後見人を免黜し得るが如きは此用例なり。(民九〇八條四號、九一一、九一七條)
默秘
(もくひ)ロを默して秘密を語らざるをいふ、證人は原則として訊問に於て何事をも陳述すべき義務あるものにして、證言義務は卽ち是れ也、此義務は法律により命ぜらるゝ公法上の義務にして、裁判所は證人の陳述の眞正を確保せんが爲め宣誓を命ず、良心に從ひ眞實を述べ、何事をも默秘せず又何事をも附加せざる誓は是れなり、但し證人は一定の場合は反對に默秘の義務を有し、從て證言義務を命ぜらるゝ場合あるものとす、尚此點に就いては宣誓、官吏職業的陰私、秘密を侵すの罪の各部を參照せよ。(刑訴一一四、一二二、一二五條、民訴二九〇二九八條)
モンロー主義
(もんろーしゆぎ)一八二三年十二月二日北米合衆國大統領「ゼームス、モンロー」が、歐洲神聖同盟の干渉政略に反對して宣言したる意見書に採用したる主義なり、今其宣言の要旨を略述すれば、第一は主として露國及び英國に對して爲したるものにして、歐洲諸國が新に殖民地を亞米利加大陸に求むるは不當なりとし、第二は西班牙が亞米利加に有する殖民地の既に獨立したるものに對し、尚ほ自己の權利を主張するに對して合衆國の反對することに係る、而して此事項に關しては、合衆國は原則として歐洲の政治問題に容喙せざるべきを以て、歐洲諸國も亦亞米利加に關しては干渉すべからずと謂ふに在り、此宣言は合衆國の主義にも國際法の原則にも非らず、單に「モンロー」が合衆國の大統領として自己の意見を吐露したるに過ぎず、而て「モンロー」其人が實際上勢力ありたるを以て、其人の發言なるの故に基き世に重ぜられたるのみ、其後亞米利加に於ては自國に便利なる場合に於て、常に此「モンロー」主義を主張したりき、例へば拿馬運河に對して合衆國のみが監督を爲すの權ありと主張したるが如き是れ也、然れども此「モンロー」主義なるものは、國際法の理論に適し又は實際に合したるものに非らず、何んとなれば、如何なる國家と雖も正當の理由あるときは、外國の土地を取得し得べきことを認めらるゝにも拘らず、「モンロー」主義に依れば、亞米利加に於ては如何なる事變起るも、合衆國以外の國家は之に容喙することを許さゞるを以て、歐洲諸國は亞米利加に於ては、本來的若くは傳來的にも、土地を獲得するを得ざるべければ也、此點より觀察するときは、此原則は明に國際法に違反するものなるも、我邦の如き東洋に國を爲すものは、歐米の干渉あるに關して此主義を採るの必要なきかは一考を要する点なりとす。(干渉の部參照)
藥局方
(やくきよくはう)藥品の種類性狀品質を記載したるものにして、一方には、販賣授與する藥品は常に藥局方記載の性質形狀を有せざるべからざることを意味する也、藥局方には日本藥局方、陸軍藥局方、海軍藥局方及び諸外國にて定めたる藥局方あり、各其國人又は其種の人に適する藥品の性質形狀を定めたるものとす、我國に於ては、日本藥局方に記載する藥品は、其規定に適合する性狀品質を有するものにあらざれば販賣授與することを得ざるを原則とし、之に記載なき藥品に就ては、外國藥局方に依るものは該局方の規定に適合するを要す、何れの藥局方にも定めなき新藥は、衛生試驗所の檢査を經るに非らざれば販賣授與することを得ざるもの也。(三九年七月内務省令二一號)
藥劑師
(やくざいし)藥局を開設し醫師の處方箋に因りて藥劑を調合するものをいふ、藥劑師は行政官廳の許可を受くるにあらざれば開業ることを得ざるものにして、許可を受けんには一定の資格を要す、其資格は一定の學術試驗に合格じたる者、公立の藥學校(例へば醫科大學藥學科、專問醫學校藥學科)を卒業したる者、又は外國藥學校を卒業し、若くは外國に於て藥劑師たる免狀を得たる者にして文部大臣に於て相當と認めたる者に限る、藥劑師にあらざれば藥局を開設するを得ざるものにして、(醫師は自ら診療したる患者の處方に就ては例外とす)藥劑師にあらざる者が藥劑を調合して販賣授與したるときは刑事上の制裁を受く、特定の例外の外藥劑師にあらざれば指定藥品の販賣又は授與を爲すことを得ざるものにて、藥劑師は其指定藥品の販賣を拒むことを得ざる也、但し正當の事故ある場合は例外とす、其他の點に就いては略醫師と同じき取締を受く、醫師法の部を參照せよ。(四〇年四月法三五號、刑二一四、一三四條、刑法施行法四〇條)
雇止
(やといやめ)雇傭の解止をいふ、雇傭は當事者の一方が勞務を提供し、相手方が之に賃金を支拂ふ契約也、此雇傭契約を解き當事者をして雇傭の關係を止めしむることは卽ち雇止なり、俗に「暇を出す」といふに同じ、一般の場合に於て雇止めは、雇傭の期間の定めあるときは其滿了前已むことを得ざる事情あるとき、此定めなき時は何時にても雇止を爲すことを得べし、但し海員に就いては、船長は何時にても海員を雇止むることを得べしと雖も、法定の事項に因らざりし場合は、海員より給料の外一箇月分の給料及び送還費を請求することを得べし。(商五八一條乃至五八三條)
輸納
(ゆなふ)輸送納入の意なり、我貨幣法に依れば、一般臣民は本位貨幣の地金を輸入して貨幣鑄造を請ふことを得べく、地金は本位一千分中金九百九十以上にして、其含有物の性質造幣に障害なきものに限る、而て其量目百匁以上に限る者なり、又一般臣民は、金銀地金の精製又は品位證明の爲め、地金を輸納して造幣局に之を請ふことを得べし、品位證明の爲め輸納したる地金は、金型塊となし其品位を證明し輸納人に交付す、精製の爲輸納したる地金は、秤量して之を預り、金銀各一百匁の定型塊となし之を返却す。(三〇年四月勅一三八號、三〇年四月勅一三九號、三二年勅三七號)
用益質
(ようえきしち)我現行の制度たる不動産質に類するものにして、主として佛國法系に於て之を認む、卽ち債權者が辨濟を受くるまで債務者の不動産を留置して其使用收益を爲す質なり、恰も質權の效力の一部に過ぎざるもの也、從て用益質を有する者は、決して其權利の目的物を賣却して其代價につき優先權を行ふを得るものに非らず、故に不動産質と異なるは明かとす、我法に於ては此種の質權を認めざる也。(不動産質の部)
豫判事件
(よはんじけん)或る訴訟事件の審判に付ての前提たる問題に關する訴訟事件を云ふ、例へば贓物故賣事件の審判に付て、其前提たる問題卽ち窃盜に關する公判事件が豫判事件たることあるは此例也、凡そ豫判事件は當然本案事件の審判を覊束するを例とし、本案事件を審判するに付ては少くとも其前提問題のみは豫判事件の結果と同一の認定を爲さゞるべからざるものにして、我現行訴訟法は、此の如き豫判事件を認めざるものゝ如し、刑訴法に於て公判裁判所が附帶犯罪に付き豫審を要すと思料したる場合に於て、本案の辯論を停止すべき旨及び公判裁判所が證人又は鑑定人を所謂僞證の犯人として、事件を豫審判事に送致したる場合に於ては、訴訟關係人の請求に因り又は職權を以て本案の辯論を停止するとを得べき旨を定めたるが如きは、豫判事件に關して規定したるに非ざる也、何となれば、常に此場合に辯論を停止すべきものとするも、公訴裁判所は他の公訴審判に覊束さるべきに非らざる事明なれば也、又公訴の審判が民事又は商事の審判の憑據となる場合に於ても、其の前提事件を豫判事件と言ふべからず、只此場合は、前提事件たる確定判決が廢棄又は破毀せられたる時は、再審の訴を爲すことを得るに過ぎず。(刑訴三〇一條六號、一八四條二項、一九五條三項參照)
癩病豫防法
(らいびようよばふはふ)明治四〇年三月法律第一一號を以て公布せられたるものにして、□一屆出の義務、醫師癩病患者を診斷したるときは、患者及家人に消毒及其他の豫防方法を指示し、且三日以内に行政官廳に屆出づべきものとす、其轉歸の場合及死體を檢案したるとき亦同じ、□二消毒及豫防、癩患者ある家又は癩病毒に汚染したる家に於ては、醫師又は當該吏員の指示に從ひ、消毒其他の豫防方法を行ふべし、癩患者にして療養の途を有せず、且救護者なきものは、行政官廳に於て命令の定むる所に從ひ、療養所に入らしめ之を救護すべし、□三療養所、主務大臣は二以上の道府縣を指定し、其道府縣内に於ける療養の途を有せる癩病者を收養する爲め、必要なる療養所の設置を命ずることを得るものにして、但し主務大臣にして相當と認むるときは、私立の療養所を以て之に代用することを得べし、□四費用、總て救護の費用は被救護者之を負擔し、被救護者より之を得ざるときは、其扶養義務者の負擔とす、但し左の場合に於ては、北海道地方費又は府縣の負擔とす、(あ)被救護者又は其扶養義務者より辨償を得ざる救護費、(い)檢診に關する諸費、(う)其他道府縣に於て癩病豫防上施設する事項に關する諸費是なり、□五罰則、醫師本法所定の屆出を爲さず、又は虛僞の屆出を爲したるときは、五十圓以下の罰金に處す、癩患者又は其家人命ぜられたる消毒其他豫防方法に違反したるときは、二十圓以下の罰金に處せらる、以上本法の大要とす。
略取誘拐罪
(りやくしゆいふかいざい)人を略取又は誘拐するの罪にして、之を別ちて、未成年者を略取誘拐するの罪、營利又は猥褻若くは結婚の目的を以て人を略取誘拐するの罪、帝國外に移送するの目的を以て人を略取誘拐するの罪、人身賣買罪、以上の罪を犯したる者を幇助するの罪、營利又は猥褻の目的を以て以上の罪を幇助する罪等となす、先づ各罪に通ずる略取又は誘拐の何たるかを述べ、以下各本罪を説かん、□一略取又は誘拐、此二者は公に他人を不法に自力的支配に移す行爲にして、其被害者の行爲の自由を侵害するもの也、而て略取と誘拐とは其手段に於て異なるに過ぎず、卽ち略取は被害者の意思に依らずして之を自己の實力的支配の下に移す行爲をいひ、必らずしも暴行脅迫を用ふることを要せず、從て意思無能力者に對しては常に略取行爲を存ずるもの也、尤も此点に就いては反對の見解あり、拐取の部を參照せられたし、次に誘拐は被害者の瑕疵ある意思に基きて之を自己の實力的範圍に移すの行爲をいふ、此區別を強窃盜と詐僞恐喝とに譬擬することを得べし、略取誘拐は此の如く、他人の上に不法なる實力關係を設定するに因て其自由を拘束するにあれば、遺棄罪と異なるは明なり、蓋し遺棄罪は他人と從來の接在關係を絶つに因て其生命身體を危害するにあれば、二者の區別は混同すべからざる也、又略取誘拐は逮捕監禁と異なる、後者は場所の移轉を要せざるに反し、前者は之を要件とす、尤も略取誘拐の方法として逮捕監禁するときは、想豫上の俱發として刑法五十四條の適用を受くべし、□二一般拐取罪=本罪は未成年者を略取誘拐するに依て成立す、本罪の被害者は、被拐取者たる未成年の男又は女及び監督者なり、蓋し本罪は父母の監督權をも侵害することゝなれば也、從て本罪は未成年者及監督者の意思に反することを要す、但し監督權なき未成年者を適法に自己の實力内に收容して保護するは拐取罪にあらざる也、本罪の刑は三月以上五年以下の懲役とす、□三特別拐取罪=營利、猥褻、結婚又は外國に移送する目的に出でたる拐取罪也、本罪は以上の目的が動機となるとを要する外被拐取者の年齡に制限なし、成年者に對しては其者の眞意に、未成年者に對しては其監督權者の眞意に反對する場合に於て本罪は成立するを原則とし、監督權の作用は、猥褻の目的の爲めに被監督者を他人に交付し、又は外國移送の目的にて之を賣買するが如き行爲を適法ならしむることを得ざるべく、從て監督者が適法に處置する權能なき行爲は、其承諾あるときと雖も、苟くも被監督者の眞意に依らずして、之を從來の地位より自己の實力範圍に移すときは、本罪を構成するものと解す、而て此の如き關係に於ては其監督者も亦或は教唆又は從犯として、或は共同正犯(特に外國移送の目的に出でたる場合)として本罪の主體たることを得るものと解せざるべからず、特別拐取罪は左の如く別つ(あ)營利猥褻又は結婚の目的に出でたる拐取罪、男女共に被害者となり得べし、本罪の刑は一年以上十年以下の懲役とす(い)帝國外に移送する目的に出でたる拐取罪、如何なる必要より海外に移送するやは問はざるも、實際は海外に於て醜業を營ましむる爲めか、又は賣却して利を圖るを普通とす、本罪の刑は二年以上の有期懲役とす、(う)帝國外に移送する目的を以て人を賣買し、又は拐取者若くは被賣者を帝國外に移送する罪、人身賣買の行爲及び其目的を現實する移送行爲を罰するものにして、茲に賣買といふも民法上の適法の賣買をいふに非らず、唯之を有償にて第三者に交付し其對價を受領することをいふ也、本罪の刑は二年以上の有期懲役とす、□三拐取賣買の事後關與罪=本罪は拐取者被賣者又は移送者を幇助するの目的を以て、此等被害者を收受若しくは藏匿又は隱避せしむるに因て成立す、而て收受の目的が營利又は猥褻の目的たるときは加重の罪となる、幇助の目的なき收受は、營利又は猥褻の目的なくして事後關與をなすも罪とならず、蓋し結婚の目的に出でたる收受の如きは、一且拐取又は賣買に因り窮境に陷れる被害者の爲め却て利益となるべきこと多しと認めたるに因る、本罪の刑は三月以上五年以下の懲役を原則とし、加重の場合の刑は六月以上七年以下也、□四以上の未遂罪=上説したる拐取に關する總ての罪の未遂は之を罰せらる、終りに一言すべきは、一般拐取罪、特別拐取罪の(あ)及び此等の事後關與罪にして、營利の目的に出でたるものは親告罪なること是れ也、但し被拐取者と被賣者犯人(拐者、買者、收受者)と婚姻したるときは、其婚姻の繼續中は此等の犯人に對して有效に訴追することを得ず、協議上の離婚の場合に於ても亦同じと解すべし、茲に婚姻といふは民法上適法なるものをいひ、從て婚姻の無效又は取消の裁判確定したるときは親告するを得べし。(二二四條乃至二二九條)
流質
(りうしち)質權者が其辨濟を得ざる場合於てに、質物を賣却して優先辨濟を受くるの方法に依らず、直に質物の所有權を取得することをいふ、我民法は此流質を禁ぜり、流質禁止は高利貸を禁ずると同一の趣旨に出でたるものにして、此二者は存廢ともに其運命を同一にすべきもの也、而て利息の制限は、近世文明國に於ては一般に之を廢止するの傾向あり、蓋し無能力ならざる限りは、高利を以て借金するも、敢て之を無效とするの理由なければ也、而て流質に於ても之と同じく、當事者の意思を無視するは妥當にあらず、法律に之を許さゞるも買戻其他の方法を以て之と同一の效果を上げ得べく、故に流質禁止は必要なし、現行民法起草の際は此主旨に基て之が禁を設けざりしも、衆議院の委員會に於て實際必要なりとの理由に依て加へられし也、商法に於ては其改正案議會に提出されたる際、實業家の反對意見に依り、流質の禁止を商行爲に適用せずと定めたり、之を要するに流質は、委付の觀念と同一の觀念に基き、質權の目的物を競賣するの面倒と費用とを削く目的に出づる也、唯高利と同一の弊あることは前説の如し。(民三四九條、商二條)
陸軍刑法
(りくぐんけいはふ)主として陸軍々人の罪を犯したる者に適用する特別刑法也、茲に陸軍々人といふは陸軍の現役に在る者、召集中の在郷軍人等にして、陸軍所屬の學生、生徒、陸軍々屬、陸軍の勤務に服する海軍々人は之を陸軍々人に準ず、陸軍々屬といふは陸軍文官、同特遇者及び宣誓して陸軍の勤務に服する者を指し、在郷軍人と稱するは陸軍の現役以外の役に在る者、陸軍の現役に在りて未だ入營せざる者、陸軍の歸休兵及び退役陸軍將校、同相當官、准士官を謂ふ、本法に規定する罪は左の如し、□一叛亂の罪、□二擅權の罪、□三辱職の罪、□四抗命の罪、□五暴行脅迫罪、□六侮辱の罪、□七逃走の罪、□八軍用物損壞の罪、□九掠奪の罪、□十俘虜に關する罪、□十一違令の罪是れ也、其内容は略ぼ海軍刑法と同じ、本法は陸軍々人に非らずと雖も、左に記載したる罪を犯したる者に之を適用す、卽ち哨兵に對し暴行又は脅迫を爲す罪、哨兵を其面前に於て侮辱する罪、軍用物損壞の罪、掠奪の罪、俘虜を逃走奪取藏匿する罪を犯したる場合なり、茲に哨兵といふは、儀仗又は警戒の爲め守地に在る陸軍々人をいふ、又陸軍と共同作戰に從ふ海軍々人及び外國の陸海軍々人に適用することありとす、(四一年四月法四六號)
- 英
- Military Criminal law
- 独
- Militärstrafgesetz
- 仏
- Droit criminel mili-taire
流用
(りうよう)用途を異にして使用すべきものを彼是流通して混用するをいふ、主として經費其他費目を定められたる場合に、其費用を目的以外のことに流通して使用するをいふ、會計法によれば、豫算の款項は之を流用することを許さずと、元來豫算は費用の目的に從て節を分ち、款を分ち、項及び目を分つ、其れ〳〵其使用の額及び目的定まる也、此款項の經費は、之を互に流通して使用することを許さずと定めたるものとす。(會計法一二條)
陸戰の法規慣例に關する條約
(りくせんのはふきくわんれいにくわんするでふやく)一八八九年七月海牙に於ける萬國平和會議の最終決議書に依り、全權委員の間に締約し、我國に於ては明治三三年一一月批准を經て公布せられたるもの也、本條約は交戰者の資格、俘虜、戰鬪、軍使、降伏規約及び中立國の義務の一部に就いて規定せられ、全部六〇箇條より成り、赤十字條約、一八六八年の聖比得堡萬國會議の決議等と相俟て、陸戰例規の重なる部分を形成す、其詳細は以上の項目に揭げたる各部に説明したれば參照すべし。(三三年一一月勅令)
累進税
(るいしんぜい)税率が其課税物件の價額に從て累次增加する税をいふ、所得税法に依れば、法人の所得又は公債社債の利子以外の所得は、累進率により課税せらるゝなり、卽ち此種の所得は、累進税の一例なり、左に之を示さん、原則としては、三百圓以上は千分の十、五百圓以上は千分の十二、千圓以上は千分の十五、二千圓以上は千分の十七、三千圓以上は千分の二十、五千圓以上は千分の二十五、一萬圓以上は千分の三十、一萬五千圓以上は千分の三十五、二萬圓以上は千分の四十、三萬圓以上は千分の四十五、五萬圓以上は千分の五十、十萬圓以上は千分の五十五とす、此外尚非常特別税法に依る增徵あり、卽ち五百圓未滿は税額の一割、千圓未滿は同じく十一割、五千圓未滿は十三割、一萬圓未滿は十四割、一萬五千圓未滿は十五割等なり、元來累進税は貧富の差を標準とし、之が懸隔を打破し、保護に對する負擔を平等ならしめんが爲めの税にして、經濟社會學者の理想的税となすもの也。(三二年二月法一七號所得税法三條參照)
累犯時效
(るいはんじかう)一般に累犯といふときは、前に犯罪を爲し其確定判決を受けたる後、更に他の罪を犯したる場合をいふも、改正刑法は刑の目的に關する新派の所説に從ひ、懲役に處せられたる者其執行を終り、又は執行の免除ありたる日より五年内に、更に罪を犯して有期懲役に處すべき場合をいふとなせり、元來懲役なる刑は、新刑法に於ては破廉耻罪に科する刑にして、累犯は破廉耻罪に係る場合にのみ認めらるゝ也、而して累犯は前に刑の執行を受けたるに拘らず、尚懲りずまに罪を再三犯すの故に、此犯人の惡性の執拗なるを懲嚇する爲め加重して刑を科するものなれば、前に罪を犯して其刑を執行され、又は執行の免除を得たるときより數十年を經過したる場合は、刑を加重すべき累犯の理由となすべきに非らず、何んとなれば、人に過なきを保する能はず、然るに數十年を經過して過を再びしたるの理由に依り、常に加重したる刑を科すが如きは刑罰の目的に反すれば也、是を以て新刑法は、前に罪を犯して其刑を執行され、又は執行の免除を得たるときより五年以内に、更に罪を犯したる場合を累犯となす也、此累犯の要件たる五年の期間は、此期間を經過して更に犯したる罪を累犯たらしめざる豫定期間なれば、恰も時效に類似す、故に講學上之を稱して累犯時效といふ也。(刑五六條)
禮拜所及墳墓に關する罪
(れいはいしよおよびふんぼにくわんするつみ)本罪は宗教上に於ける善良の習慣を侵害するの罪にして、改正刑法に於ては左の罪を包含す、□一神祠、佛堂、墓所其他禮拜所に對し、公然不敬の行爲を爲す罪=神祠とは神社其他の祠をいひ、佛堂とは佛教に屬する佛閣其他の堂宇を指す、其他の禮拜所とは、基督教、拜火教、囘教等に於ける禮拜の場所をいふ、本罪の行爲は公然不敬の行爲をなすに在り、公然とは不定數の人に知り得べき方法を指す、必らずしも衆人の面前に於て當該神佛を詈るを要せず、本罪の刑は六月以下の懲役若くは禁錮、又は五十圓以下の罰金也、□二説教、禮拜又は葬式を妨害するの罪=説教とは宗教を演説する行爲にして、禮拜は信仰の外部的形式なり、葬式は人を葬るの儀式にして、此等の妨害行爲は人の信仰の自由を妨ぐる甚だしきものなれば、上説の罪より之を除外して一罪とし、一年以下の懲役又は禁錮、若くは百圓以下の罰金に處するととなせり、□三墳墓發掘の罪=墳墓とは人の永眠する奥津城にして、我邦の如き祖先崇拜の習俗ある國に於ては、最も神聖なる場所なりとす、發掘とは掘り又は發くことをいふ、其手段の何たるを問はず、又其目的の何たるを問はざる也、但し違法の認識を要するは勿論とす、本罪の刑は二年以下の懲役とす本罪を犯し因て死體、遺骨、遺髮又は棺内に藏置したる物を損壞、遺棄又は領得したるときは三月以上五年以下の懲役に處せらる、□四死體、遺骨、遺髮又は棺内に藏置したる物を損壞、遺棄又は領得するの罪=本罪は墳墓を發掘せずして犯したる場合也、本罪の刑は三年以下の懲役とす、□五檢視を經ずして變死者を葬る罪=本罪は殺人を掩ふが爲め、犯さるゝ恐ある罪なり、本罪の刑は五十圓以下の罰金又は科料とす。(刑一八八條乃至一九二條)
朗讀
(ろうどく)文書に證明力を生ぜしむる方法を朗讀と謂ふ、卽ち文書を訴訟の段楷に於て證書として證據力を生ぜしめんには朗讀の方法に依りて文書を音讀せざるべからず、換言すれば訴訟上文書を證據として引用するの手段は、法廷に於て文書を朗讀して爲すものとす、法典の定むる所に依れば、證據書類其他必要なる調書は書記をして朗讀せしむるものにて、所謂朗讀は文書全部の音讀を意味し、默讀又は摘讀の如きは朗讀と云ふを得ざるべし、但し檢證の目的たる文書は朗讀に依ることを得ざるものにして、此種の文書は觀察卽ち檢證に依りて證明力を生ずるものとす、之を要するに文書は、民訴刑訴の論なく朗讀に依りて證明力を生ずるを原則とするも、今日の實際によれば、當事者の異議なき場合、又は異議の有無を問はず裁判長に於て摘讀し、而て朗讀と同一視せるが如し、是れ理論上の結果にあらざるも、公判始末書又は辯論調書に朗讀せる如く記載するを以て、事實上缺点ありと指摘するの餘地存ぜざるも、外國の立法例に依れば、可成的直接審理の主義を適用せんとし、文書の中にても直接に審理することを得べき事物に關する文書は其朗讀を許さゞるを通常とす。(刑訴二一九、二三六條、民訴三三四條乃至三五六條參照)
往來を妨害する罪
(わうらいをばうぐわいするつみ)交通往來の便不便は政治上又は經濟上至大の關係を有し、之が機關たる設備の如何は、先づ以て其國家の文野を卜するに足る也、從て國家は此種の設備を完全ならしめ且つ維持する事を務む、若し之に對して妨害を爲す者あらんか、刑罰を制裁として之を禁遏するの必要ある多言を要せず、是れ本罪の規定ある所以也、本罪は之を道路妨害罪と重要交通機關の妨害罪とに大別し、後者を更に危險罪と實害罪とに區分し、之より過失による場合を別罪とす、以下之を略迹せん、□一道路妨害罪=陸路、水路又は橋梁を損壞又は壅塞して往來の妨害を生せじめたる罪をいふ、本罪の構成要件を擧ぐれば、(a)道路を損壞又は壅塞したること、茲に道路とは公衆交通の用に供する陸路、水路又は橋梁を意味し、茲に陸路といふは鐡道又は電車の軌道を含まず、又橋粱中には棧橋を含むものと解す、次に水路に就いては之を壅塞して渡舟の往來を妨害する場合を含むも、渡舟其ものに對する損壞は本罪に非らず、而て本罪は以上のものを損壞し又は壅塞することを要す、損壞といふは毀損破壞を意味し、壅塞といふは往來妨害の物質的方法を指す也、但し往來止又は車馬通行止の如き立札をなし、其他詐欺の標識に依る場合は之に入らず、(b)因て往來の妨害を生ぜしめたると、茲に往來の妨害を生ぜしむとは、往來の障碍と爲るべき狀態を生ぜしむることをいひ、必らずしも特定の人が往來を阻止されたることを要せず、尤も單に往來妨害の危險を生ぜしむるに止まらず、現に實害を生ずることを要すと論ずる者あり、余は此説を採用せず、本罪に對する刑は二年以下の懲役又は二百圓以下の罰金也、但し本罪を犯し、因て人を死傷に致したる場合は、傷害の罪と比較し重きに從て處斷せらるべし。□二重要交通機關危險罪汽車、電車又は艦船の往來に危險を生せしむるの罪をいふ、本罪の行爲は衝突、轉覆、脱線又は沈沒等の難事に遭遇すべき虞ある狀態を生ぜしむるに在り、法文に汽車電車に就ては鐡道又は標識、艦船に就いては燈臺又は浮標を損壞することを本罪の手段として例示し、同時に廣く其他の方法を以てするとを認めたるが故に、例へば鐡路に障礙物を橫へ、航路に水雷を布設するが如き、其他苟くも此等の交通機關の往來に危險を生ぜしむる一般の行爲を包含する也、本罪に對する刑は二年以上の有期懲役とす、但し本罪を犯し、因て人の現在する汽車又は電車の顚覆又は艦船の覆沒若くは破壞を致したるときは無期又は三年以上の懲役に、因て人を死に致したるときは死刑又は無期懲役に處す、□三重要交通機關實害罪=人の現在する汽車又は電車若しくは艦船を顚覆、覆沒又は破壞したる罪をいふ、本罪は常に人の現在する物なることを要し、人を全く乘載せざる場合を含まず、此點舊刑法と異なる、本罪に於ける行爲の一は顚覆なり、艦船に就いては覆沒とは顚覆及び沈沒の意なり、行爲の第二は破壞なり、破壞は之に依て人命に危害を生ずる程度に至るものなることを必要とすと解す、本罪に對する刑は無期又は三年以上の懲役に處するに在り、但し本罪を犯し、因て人を死に致したるときは死刑又は無期徒刑に處す。□四過失に因る場合の罪=過失に因り汽車、電車又は艦船の往來の危險を生ぜしめ、又は此等の物を顚覆覆沒又は破壞を致さしむる罪をいふ、前説の罪と本罪と異なるは、故意に基くか過失に因れるやの点にあり、故に茲に其説明を略すべし、本罪に對する刑は五百圓以下の罰金也、但し其業務に從事する者の犯したるときは、三年以下の禁錮又は千圓以下の罰金とす、是れ其從業者に特別の注意を促すの趣旨也。(刑一二四條乃至一二九條、鐡道營業法、航路標識條例、水先法參照)
橫領罪
(わうれうざい)本罪は三の罪を包含す、□一自己の所持に屬する他人の物又は公務所より保管を命ぜられたる自己の物を橫領する罪=本罪の目的物は自己の所持に係る他人の物なるを原則とす、此點に於て竊盜、強盜、詐僞取財の罪と異なる、但し動産たると不動産たるとを問はず、自己が他人の物を所持するに至りたる原因如何は問ふとなし、質物、賃借物其他委任又は法律の規定等に依り自己の所持する他人の物の總てを含む、自己と他人との共有關係にある物は本罪の關係に於ては他人の物に包含すべし、以上の外自己の物と雖も公務所より保管を命ぜられたる場合は本罪の目的物となる、本罪の行爲は橫領なり、財物の橫領とは、其財物に關し不法に他人の利益を排斥して、財物の經濟上の用法に從ひ處分する目的に出づる一切の行爲をいふ、例へば物の消費、抵當、典物、交換、贈與等を包含すべく、此目的の爲めに財物を冐認し、拐帶し、隱匿し、又は其物につき詐僞の行爲を爲すも橫領なり、但所有者又は保管命令者に對し、欺罔又は恐喝をなしたる結果として、其意思に依り處分權を得るは本罪の罪にあらず、又抵當、典物、販賣又は交換に因り第三者より財物を騙取したる場合は、本罪と詐欺取財罪との想像的數罪俱發なり、其他第三者に取去を許すは贈與と同じく橫領なり、之に反して經濟的用法に從はざる破壞、及び一時使用は橫領に非らざる也、本罪の刑は五年以下の懲役とす、□二業務上自己の占有する他人の物を橫領する罪=倉庫業者、運送業者、質屋等が營業上保管する物、辯護士が訴訟代理人として委託せられたる證據物件等の如き、營業又は職業の關係上占有する他人の物を橫領する場合なり、舊刑法に所謂看守盜も本罪の例なり、本罪の刑は一年以上十年以下の懲役とす、□三占有を離れたる他人の物を橫領する罪=他人の占有を離れたる他人の物とは、法律の例示する遺失物漂流物の如き、他人の意思に因らずして占有を離れたる物なり、此他行路死亡者の携帶品、逸走したる家畜、埋藏物も此例なり、但不動産及び無主物を包含せざるものとす、占有離脱物の橫領は、拾得の當時よ、り橫領の意思ありたると、拾得の當時不法の意思なくして其後に橫領の意思を生じたるとを問はず、何れも本罪を構成すべし、但橫領の意思なくして拾得する場合に於ては、拾得後橫領の意思を生じて隱匿せる時に於て罪となる也、而て拾得者は速に返還又は屆出の義務あるが故に(遺失物法一條)相當の時期に於て故意に此義務を履行せざるときは、此不作爲を以て橫領行爲となすことを得べし、又自己の家に置き忘れたる他人の物を處分したるときは本罪なり、本罪の刑は一年以下の懲役又は百圓以下の罰金若くは科料とす、以上橫領罪に就いては、親族相取の規定適用せらるべし。(刑二五二條乃至二五五條、奪取罪の部參照)
猥褻罪
(わいせつざい)猥褻の行爲に關する罪にして、公然猥褻罪、猥褻物頒布陳列罪、暴行猥褻罪を含む、□一公然猥褻の行爲を爲したる罪=猥褻の行爲とは、淫慾を興奮し又は之を滿足するの目的に出づる行爲にして、著しく他人に背倫の感念を抱かしむるものをいふ、例へは男女間の交接其他之に類似する行爲(手淫、獸姦)の如き是なり、本罪は公然なされたることを要す卽ち不定多數の人に覺知し得べき狀態に於て之を爲すを要する也、例へば公園又は路傍に於て交接を爲すが如し、本罪の刑は科料とす、□二猥褻の文書、圖画其他の物を頒布若くは販賣し、又は公然之を陳列し、及び販賣の目的を以て之を所持するの罪、=猥褻の文書圖画とは春画の如きもの也、頒布とは廣く之を分配するをいひ、對價を得て頒布するは販賣とす、次に所持は自己が其物を事實上支配するをいひ、本罪に於ける所持は販賣の目的に出づるを要す、本罪の刑は五百圓以下の罰金又は科料とす、□三男又は女に對し暴行若しくは脅迫を以て猥褻の行爲を爲す罪=淫亂の女子が強制して男子を自己と交接せしめ、又は男子が男兒に對して鷄姦をなし、或は男子が女子に對して交接以外の猥褻行爲をなし、若しくは女子が女子に對して猥褻行爲をなす場合なり、本罪ば強姦を含まざるが故に、男子が女子を強制して姦淫する場合は強制猥褻罪にあらず、次に十三歳以上の男又は女に對しては、暴行又は脅迫を以て猥褻の行爲をなしたることを要す、此等の者が合意の上密かに之を爲したる場合は本罪に非らず、然れども十三歳未滿の者に對するときは、縱令承諾あるときと雖も本罪なり、蓋し十三歳未滿の者が、猥褻に對して廉耻の觀念を知るの能力發達せざるべければ也、人の心神喪失若くは抗拒不能に乘じ、又は之をして心神を喪失せしめ若くは拒抗不能ならしめて猥褻の行爲をなしたる場合は、尚本罪に同じ、本罪の刑は二年以上の有期懲役とす、本罪の未遂は之を處罰せらるべし、而して本罪は告訴を待て其罪を論ずべき親告罪の一種に屬す、但し本罪と公然猥褻罪と俱發の場合に於ても、尚總てを親告罪とすべきや、又は公然猥褻罪のみを罰すべきやは疑あり、通説は此の後説を採る、本罪を犯すに因て人を死傷に致したるときは、無期又は三年以上の懲役に處せらる。(刑一七四條乃至▲八一條)
- 英
- Crime of mis-demeanour
- 独
- Unsittlichkeitsverbrechen
- 仏
- Infraction de la mauvoise conduite
賄賂罪
(わいろざい)賄賂を贈り又は受くるの罪を總稱す、本罪の構成要件を畧迹すれば、□一本罪の主體は公務員、仲裁人又は之に贈賄したる者なるを要す、公務員とは官吏、公吏、法令に依り公務に從事する議員、委員其他の職員なり、仲裁人とは當事者間の爭を判斷する爲め仲裁手續に從ひ、法律の保護を受けて其職務を執る者をいふ、此等の者に贈賄したる者に就いては、舊刑法は何等の規定をなさず、從て之を處罰し得べきや否に就て議論ありしも、改正刑法は之を贈賄罪となせり、□二本罪の行爲は收賄及び贈賄なり、收賄とは賄賂を收受し又は之を要求若くは約束するとにして、贈賄とは賄賂を交付、提供又は約束することなり、賄賂とは不法なる財産的利益にして、公務員又は仲裁人の職務に關し授受せらるゝもの也、職務に關すといふは、具體的に公務員又は仲裁人の處分し得べき事項に關することにして、必らずしも事を枉ぐるの處分を爲すに關することを要せず、但し因て不正の所爲をなし又は相當の行爲をなさゞる時は刑を加重さる、次に賄賂は財産上の利益なるも、無形の利益、就中淫行上の快樂を含むやは疑問あり、此等の物は提供、要求又は約束し得るも、收受し能はざるが故に消極に解すべしと論ずる者あり、然れども通説は之を含むと解す、□三本罪の處分は、收賄の場合は三年以下の懲役にして、因て不正の行爲を爲し又は相當の行爲をなさゞるときは一年以上十年以下の懲役とす、而て其收受したる賄賂は之を沒收し、若し其全部又は一部を沒收すること能はざるときは其價額を追徵する也、次に贈賄の場合は三年以下の懲役又は三百圓以下の罰金とし、此罪を犯したる者自首したる場合は、其刑を輕減又は免除し得る也。(刑一九七條、一九八條)
遺棄の罪
(ゐきのつみ)老幼不具又は疾病の爲め扶助を要すべき者を遺棄するの罪をいふ、本罪の構成要件を上ぐれば左の如し、□一扶助を要する者たること、本罪の客體たる扶助を要すべき者は、老年者、幼者、不具者又は疾病の爲め自ら其生計資料を準備するの能力なき者をいふ、如何なる者が扶助を要すべき者なるかは事實問題とす、但し貧困遭災其他同情すべき狀況に在る者は必らずしも扶助を要すべきものに非らず、□二遺棄したること、本罪の行爲たる遺棄には、遺留と移棄とあり、遺留は俗に置去りの場合にして、移棄は他の場所に運搬する也、何れも保護せざるの意思を以て被保護者と離隔するに在り、本罪の遺棄は、法律上之を保護すべき責任を有する者が犯したる場合と、此責なき者の犯したる場合とにより其刑を異にす、但し保護責任なき者は、單に之を扶助せずして通過するも、本罪を以て論ずることを得ず、卽ち特別の扶助可能狀態を場所的隔離に依て變更するを條件とし、同居同行等の關係ある場合にあらざれば本罪の成立を認むることを得ざる也、□三本罪の刑は、保護義務ある場合は三月以上五年以下の懲役に、此義務なき場合は一年以下の懲役に、自己又は配偶者の尊屬に對する場合は六月以上七年以下の懲役に處せらる。(刑二一七條乃至二一九條)
遺跡犯
(ゐせきはん)或る種の犯罪は違法なる攻擊に依て永く其印跡を遺すことあり、之を遺跡犯といふ、例へば傷害罪の如きば、一度毆打其他の暴行に因て加へられたる不法の形狀、卽ち傷害の結果を或期間内繼續する也、此の如く攻擊の對象となりたる法益に、永く其印跡を遺す犯罪は之を所謂繼續犯と區別して遺跡犯といふ也、故に繼續犯と異なるは明かなるも、或は此二者を區別せざる學者ありて、繼續犯の觀念を否認するの具となす、惟ふに繼續犯は不法の狀況を或期間繼續する點に於て同一なれども、繼續犯は其狀況の持續も尚不法にして或は加重情狀となり、又は重き刑を科する別罪となるものとす、之に反して遺跡犯にありては、或期間不法の狀況を持續するは其犯罪の結果にして、繼續を止めざることは罪にあらざるか、又は止むを得ざる結果として特に加重の情狀となすことなし、只永き期間不法の狀況を繼續せしむる原因其ものを罰するの標準となることあるに過ぎず、此點は此の如く大に異なるものなるを以て、之を混同せざることを要す、之を要するに遺跡犯に於ける遺跡は犯罪の結果にして、繼續犯に於ける不法狀況の繼續は原因たる犯罪實行の行爲其のものに屬するの差ありとす。(繼續犯の部參照)
有期流刑
- 英
- Temporary transportation
- 独
- zeitliche Übertragung
- 仏
- Déporta-tion temporaire
發送營業
- 英
- Mail-order de-partment store
- 独
- Versandgeschäft
- 仏
- Affaires
海軍造兵材料資金會計法
- 英
- Fiscal law of the fund of the materials of the naval arsenal
- 独
- Fiskalgesetz des Fonds des Materials des Marinearsenales
- 仏
- Loi fiscale du fonds des matières de l'arsénal maritime
強制運用
- 英
- Enforced current
- 独
- Zwangs-gangbarkeit
- 仏
- Courant obligatoire
強窃盜
- 英
- Clandestine robberies and rob-beries by open force or committed with violence
- 独
- Räuberei mit Gewalt und Diebstahl
- 仏
- Vol clandistin et vol commis avec violence
家制
- 英
- Family regulation
- 独
- Familien-regulierung
- 仏
- Règlement de famille
家族世襲財産
- 英
- Hereditary fund of fami-ly
- 独
- Erbgut der Familie
爲替事務
- 英
- Money order business
- 独
- Wechselgeschäft
- 仏
- Affaires de change
刊行
- 英
- Publication
- 独
- Herausgahe
- 仏
- Publication
漢城條約
- 英
- Seol Treaty
- 独
- Seolvertrag
- 仏
- Traité de Seoul
間税
- 英
- Indirect tax
- 独
- indirekte Steuer
- 仏
- Contribution indirecte
僞印行使罪
- 英
- Crime of counterfeiting seals
- 独
- Ausübungsverbrechen des nachgeahm-ten Siegels
- 仏
- Infraction de contrefaire le sceau
求濟者
- 英
- Reliever
- 独
- Ablöser
- 仏
- Celui qui secours
機械
- 英
- Organ; mechanical
- 独
- Organ; mechanisch
- 仏
- Organe; méca-nique
行務
- 英
- Business
- 独
- Geschäft
- 仏
- Besogne
共同海損
- 英
- General average
- 独
- gemein-schaftliche Haverei
- 仏
- Avarie grosse
虛殺
- 英
- Murder preceded or accompanied with barbarity
- 独
- Mord von der Grau-samkeit
- 仏
- Homicide avec barbarie
舉證者
- 英
- Party adducing the evidence
- 独
- Beweisführer
- 仏
- Partie apportant l'év-idence
軍事公債條例
- 英
- War loan regulation
- 独
- Regulirung von der Militäranleihe
- 仏
- Règles du prêt de guerre
外交官領事官及貿易事務官官等令
- 英
- Ordi-nance of official ranks of diplomatists, consuls and commercial agents
- 独
- Officiellrangsordnung der Diplomaten, Con-suln und Handelsagenten
- 仏
- Ordon-nance du degrès officiel des diplomates, consuls et agents commercials
鑛業警察規則
- 英
- Rule of mining police
- 独
- Bergpolizeiregel
- 仏
- Règles de la police de mine
火災保險證券
- 英
- Policy of fire insurance
- 独
- Feuerversicherungsschein
- 仏
- Police d'assurance contre l'incendie
華族
- 英
- Noble family
- 独
- adelige Familie
- 仏
- Famille noble
華族世襲財産
- 英
- Hereditary property of noble family
- 独
- Erbvermögen des Adel-standes
- 仏
- Propriété héréditaire de la famille noble
管内
- 英
- District under government
- 独
- Distrikt unter der Regierung
- 仏
- Dis-trict sons le gouvernement
官廳用電信電話規則
- 英
- Rule of telegram and telephone used in office
- 独
- Regel von Telegramm und Telephonie, im Amte zu gebrauchend
- 仏
- Règles de la télé-gramme et de la téléphone de l'Etat
警察官府
- 英
- Police office
- 独
- Polizei-behörde
- 仏
- Bureau de police
警察署
- 英
- Police station
- 独
- Polizeiamt
- 仏
- Poste de police
警察令
- 英
- Police order
- 独
- polizeiver-ordnung
- 仏
- Ordre de police
刑而上學
- 英
- Metaphysics
- 独
- Metaphysik
- 仏
- Métaphysique
刑事責任
- 英
- Criminal responsibility
- 独
- Kriminalverantwortlichkeit
- 仏
- Culp-abilité criminelle
續受法
- 英
- Accepted law
- 独
- recipiertes Gesetz
- 仏
- Loi acceptée
刑律
- 英
- Criminal law
- 独
- Kriminalrecht
- 仏
- Droit criminel
經理費
- 英
- Counting expense
- 独
- Rechn-ungskosten
- 仏
- Dépens des comptes
教育基金
- 英
- Educational fund
- 独
- Erzieh-ungsfond
- 仏
- Fonds de l'enseignement
缺效犯
- 英
- Unsuccessful crime
- 独
- Frucht-losverbrechen
- 仏
- Infraction infruc-tueuse
缺席裁決
- 英
- Judgment by default
- 独
- Versäumnisbescheid
- 仏
- Jugement par défaut
權限爭議裁判所
- 英
- Court of dispute of limit of right
- 独
- Konfliktsgerichtshof
- 仏
- Tribunal de la dispute de compétence
公開
- 英
- Prince
- 独
- Prinz
- 仏
- Prince
公文式
- 英
- Public written announcement
- 独
- öffentliche Schriftskunde
- 仏
- Annonce-ment publique
圍際公法
- 英
- International public law
- 独
- Völkerrecht
- 仏
- Droit international public
國際整理基金
- 英
- Sinking fund
- 独
- Staats-schuldentilgungsfond
- 仏
- Caisse d'amor-tissement
國税懲集法
- 英
- Law of collection of the national tax
- 独
- S▲mmlungsgesetz der Reichssteuer
- 仏
- Loi de la collection de l'impôt national
國民兵召集
- 英
- Summon of the militia
- 独
- Landwehrmannszusammenrufen
- 仏
- As-signation de la milice
最低競賣人
- 英
- Lowest bidder
- 独
- Mindest-auktionator
- 仏
- Enchérisseur au prix la plus bas
裁判管轄
- 英
- Jurisdiction of the court
- 独
- Gerichtsbarkeit
- 仏
- Juridiction du tri-bunal
私有鐵道
- 英
- Private railroad
- 独
- privat-eisenbahn
- 仏
- Chemin de fer privé
獸醫免許試驗規則
- 英
- Examination rule for veterinary surgeon
- 独
- Examenregel für den Tierarzt
- 仏
- Règles des examen du chirurgien
私權利
- 英
- Private right
- 独
- Privatrecht
- 仏
- Droit privé
自動
- 英
- Autonomy
- 独
- Autonomie
- 仏
- Autonomie
私署僞造行使罪
- 英
- Forgery and fraudulent use of private writing
- 独
- Fälschung und betrügliche Ubung der Privatschrift
- 仏
- Infraction de forge et d'emploie fraud-ulante des lettres privées
市制町村制
- 英
- Municipal organization or town and village organization
- 独
- Shi-, Cho- und Son-organisation
- 仏
- Organisa-tion municipale, de cité et de village
使節
- 英
- Ambassador
- 独
- Gesandte
- 仏
- Ambassade
私設電信ニヨル公衆通信取扱規則
- 英
- Rule of treatment of people's telegram by pri-vate telegraph
- 独
- Behandlungsregel der Volkstelegramme vom Privattelegraphen
- 仏
- Règles du traitement de la télégramme par la télégraphe privée
自然
- 英
- Nature
- 独
- Natur
- 仏
- Idiot; Imbécile
執行裁判所
- 英
- Court of execution
- 独
- Vollstreckungsgericht
- 仏
- Tribunal de l'exécution
執行手續
- 英
- Execution proceeding
- 独
- Vollstreckungsverfahren
- 仏
- Progrès de l'exécution
私法上の義務
- 英
- Duty in private law
- 独
- privatrechtliche Pflicht
- 仏
- Devoir dans le droit privé
私法上の關係
- 英
- Relation in private law
- 独
- privatrechtliches Verhältnisz
- 仏
- Relation du droit privé
私法上の權利
- 英
- Private right
- 独
- privatrechtliches Recht
- 仏
- Droit privé
私法上の人格
- 英
- Personality in private law
- 独
- privatrechtliche Persönlichkeit
- 仏
- Personalité dans le droit privé
私法上の責任
- 英
- Responsibility in private law
- 独
- privatrechtliche Verantwortlich-keit
- 仏
- Responsabilité dans le droit privé
私法上の法人
- 英
- Juridical person in private law
- 独
- privatrechtliche juristische Person
- 仏
- Personne morale dans le droit privé
師範學校官令
- 英
- Ordinance of normal school
- 独
- Verordnung der Normalschule
- 仏
- Ordonnance de l'école normale
紙幣交換基金
- 英
- Fund of exchange of currency
- 独
- Tauschfond des Papier-geldes
- 仏
- Fonds du change des papier-monnaies
資本株
- 英
- Capital stock
- 独
- Kapitalaktie
- 仏
- Fonds de capital
神官神職懲戒令
- 英
- Disciplinary ordinance of shinto officers
- 独
- Disciplinarverordn-ung der Shinto-Beamten
- 仏
- Ordonnance disciplinaire des officiers de Shintô
進化
- 英
- Evolution
- 独
- Evolution
- 仏
- Evolution
事務章程
- 英
- Rule of business
- 独
- Geschäfts-anweisung
- 仏
- Règle des affaires
訊問書
- 英
- Writing of hearing
- 独
- Ver-hörsschrift
- 仏
- Examen écrit
審理書
- 英
- Document of trial
- 独
- Ver-handlungsdocument
- 仏
- Document du jugement
森林
- 英
- Forest
- 独
- Forst
- 仏
- Forêt
受託物費消罪
- 英
- Squander of thing in-trusted
- 独
- Verbrauch des anvertrauten Dinges
- 仏
- Infraction de la dissipation de la chose déposée
准行
- 英
- To follow
- 独
- Nachfolgen
- 仏
- Suivre
準竊盜罪
- 英
- Quasi-clandestine robbery
- 独
- Quasidiebstahl
- 仏
- Quasi-vol
請願規則
- 英
- Regulation of petition
- 独
- Petitionsregel
- 仏
- Règles de la pétition
清算事務
- 英
- Liquidation business
- 独
- Liquidationsgeschäft
- 仏
- Affaires de la liquidation
生存證書
- 英
- Certificates of existence
- 独
- Lebensurkunde
- 仏
- Certificat de l'exist-ance
製鐵所
- 英
- Iron works
- 独
- Eisenhütte
- 仏
- Fabrique de fer
政府發行紙幣
- 英
- State note
- 独
- Staats-papiergeld
- 仏
- Note État
整理委員
- 英
- Consolidation committee
- 独
- Regulierungscomité
- 仏
- Comité de la consolidation
整理確定圖
- 英
- Drawing of definite land of cultivation
- 独
- bestimmte Zeichnung des Landgutes
- 仏
- Dessin de la cultiva-tion définite de la terre
整理公債證書
- 英
- Redemption loan bonds
- 独
- Tilgungsanleiheschein
- 仏
- Bon de la rédemption
整理地區
- 英
- District of land to be cultivat-ed
- 独
- Landgutsbezirk
- 仏
- District de la terre cultivée
設計書
- 英
- Writing design
- 独
- Prospekt
- 仏
- Dessin
絶對義務
- 英
- Absolute duty
- 独
- absolute Pflicht
- 仏
- Devoir absolu
占有物
- 英
- Possessory thing
- 独
- Eigen-thum
- 仏
- Chose possédée
占有保存の訴
- 英
- Action for the mainten-ance of possession
- 独
- Besitznahmsan-klage
- 仏
- Action pour la maintenance de la possession
占據地
- 英
- Land of occupation
- 独
- Besitz-land
- 仏
- Terre de l'occupation
選擧分會
- 英
- Part of election meeting
- 独
- Theil der Wahlversammlung
- 仏
- Part de l'assemblée des électeurs
占者
- 英
- Holder
- 独
- Besitzer
- 仏
- Por-teur
船難證書
- 英
- Protest
- 独
- Schiffsprotest
- 仏
- Protêt
全院委員
- 英
- Committee of the whole house
- 独
- Comites vom ganzen Hause
- 仏
- Comité de la chambre entière
總發起人
- 英
- All promoters
- 独
- alle An-stifter
- 仏
- Tous les promoteurs
屬地特權
- 英
- Territorial privilege
- 独
- Territorialvorrecht
- 仏
- Privilège ter-ritorial
測度法
- 英
- Counting method of degree
- 独
- Vermessungsmethode
- 仏
- Moyen de com-ter les degrès
屬人特權
- 英
- Personal privilege
- 独
- Per-sonalvorrecht
- 仏
- Privilège personnel
蘇洲日本居留地取極書
- 英
- Soshu convention of japanese settlement
- 独
- Vertrag vom japanischen Niederlasz in Soshu
- 仏
- Convention à Soshu à l'égard de la colonie japonaise
對審
- 英
- Cross-examination
- 独
- Gegen-verhör
- 仏
- Essai
住家
- 英
- Dwelling house
- 独
- Wohnsitz
- 仏
- Résidence
中裁々判
- 英
- Arbitration court
- 独
- Schiedsvertrag
- 仏
- Tribunal arbitr-aire
駐箚
- 英
- Station
- 独
- Standort
- 仏
- Station
手形債權
- 英
- Credit on bill
- 独
- Wechsel-forderung
- 仏
- Créance sur le billet
手形債務
- 英
- Obligation on bill
- 独
- Wechsel-obligation
- 仏
- Obligation du billet
統治機關
- 英
- Sovereignty organ
- 独
- Re-gierungsorgan
- 仏
- Organe de la souver-aineté
統治機關の總攬者
- 英
- Possessor of the organs of sovereignty
- 独
- Besitzer der Regier-ungsorgane
- 仏
- Possesseur du droit de la souveraineté
統治の主體
- 英
- Subject of sovereignty
- 独
- Souveränitätssubjekt
- 仏
- Sujet de la sou-veraineté
登錄税法施行規則
- 英
- Regulation for the application to the law of registration tax
- 独
- Ausführungsregel des Gesetzes von der Eintragensteuer
- 仏
- Règle de l'ap-plication de la loi de la tax enregistrée
獨齗
- 英
- Dogma
- 独
- Dogma
- 仏
- Dogme
獨法
- 英
- German law
- 独
- Deutsches Recht
- 仏
- Droit allemand
特別承繼人
- 英
- Special successor
- 独
- Sondernachfolger
- 仏
- Successeur spécial
獨創
- 英
- Original
- 独
- Original
- 仏
- Originel
取消し得べき行爲
- 英
- Voidable act
- 独
- ausleerbare Handlung
- 仏
- Acte annul-able
内相
- 英
- Minister of the home affairs
- 独
- Minister des Innern
- 仏
- Ministre des affaires étrangères
内政
- 英
- Home administration
- 独
- innere Verwaltung
- 仏
- Administration intéri-eure
納税期
- 英
- Tax days
- 独
- Steuertag
- 仏
- Jour de la taxe
納付手續
- 英
- Process of paying-in
- 独
- Einzahlungsmittel
- 仏
- Progrès du paie-ment
難破船
- 英
- Shipwreck
- 独
- Schiffbruch
- 仏
- Naufrage
荷卸免狀
- 英
- License of discharge
- 独
- Ausladenserlaubnisschein
- 仏
- Certificat de décharge
入札價格
- 英
- Amount of bidding
- 独
- Ge-botswerth
- 仏
- Somme de l'enchère
入札期日
- 英
- Date of bidding
- 独
- Tagefrist des Gebots
- 仏
- Date de l'enchère
入札人
- 英
- Bidder
- 独
- Bieter
- 仏
- En-chérisseur
入札凾
- 英
- Bidding box
- 独
- Kästchen des Auktionsgebots
- 仏
- Boîte de l'enchère
入札拂
- 英
- Payment of bidding
- 独
- Bezahl-ung des Auktionsgebots
- 仏
- Paiement de l'enchère
日本銀行條例
- 英
- Regulation of the Bank of Japan
- 独
- Regulierung der Bank von Japan
- 仏
- Règles de la Banque du Japon
日本居留地規則
- 英
- Rules of Japanese set-tlement abroad
- 独
- Regel vom japanischen Niederlasz
- 仏
- Règles de la colonie japo-naise à l'étranger
日本勸業銀行法
- 英
- Law of the Japanese Hypothec Bank
- 独
- Gesetz der japan-ischen Pfandbank
- 仏
- Loi de la Banque hypothèque du Japon
認可營業
- 英
- Officially sanctioned business
- 独
- officiellbestätigtes Gewerbe
- 仏
- Affaires officiellement sanctionnées
認可狀
- 英
- Certificate
- 独
- Certifikat
- 仏
- Certificat
認可證
- 英
- Certificate
- 独
- Certifikat
- 仏
- Certificat
認許書
- 英
- License
- 独
- Erlaub-nisschein
- 仏
- Licence
認許證
- 英
- License
- 独
- Erlaub-nisschein
- 仏
- Licence
年金票
- 英
- Document of annuity
- 独
- Rentecertifikat
- 仏
- Document de l'annité
賠償
- 英
- Compensation
- 独
- Entschädigung
- 仏
- Indemnite
賠償金
- 英
- Indemnity
- 独
- Ersatzgeld
- 仏
- Indemnité
賠償處分
- 英
- Execution of compensation
- 独
- Ersatzverfügung
- 仏
- Exécution de l'indemnité
賠償責任
- 英
- Responsibility of compensation
- 独
- Verantwortlichkeit das Ersatzes
- 仏
- Responsabilité de l'indemnité
配當金額
- 英
- Amount of distribution
- 独
- Vertheilungsgeldsumme
- 仏
- Somme du dividende
配達證明料
- 英
- Fee of delivery certificate
- 独
- Rückscheinsgeld
- 仏
- Frais du certi-ficat de la délivrance
配置
- 英
- Distribution
- 独
- Austheilung
- 仏
- Distribution
賣買契約
- 英
- Bargain
- 独
- Kaufvertrag
- 仏
- Contrat de la vente
癈兵院法
- 英
- Law of invalids' asylum
- 独
- Gesetz des Invalidenasyls
- 仏
- Droi de l'asile invalide
賣藥印紙税
- 英
- Stamp-duty of patent med-icine
- 独
- Patentmedicinsstempelsteuer
- 仏
- Impôt de timbre de la médecine bre-vetée
賣藥税
- 英
- Tax of patent medicine
- 独
- Patentmedicinssteuer
- 仏
- Impôt de la médecine brevetée
防禦
- 英
- Defence
- 独
- Vertheidigung
- 仏
- Défense
傍系親族
- 英
- Collateral relative
- 独
- Seitenverwandter
- 仏
- Parent collatéral
剝奪公權
- 英
- Deprivation of civilright
- 独
- Entziehung des Rechtes
- 仏
- Privation du droit public
派遣
- 英
- Despatch
- 独
- Abfertigung
- 仏
- Dépêche
破産管財人名簿
- 英
- List of bankruptcy ad-ministrators
- 独
- Konkursverwaltersliste
- 仏
- Liste des administrateurs de la faillite
破産債務者
- 英
- Bankrupt
- 独
- Bankrottier
- 仏
- Failli
破産宣告
- 英
- Sentence of bankruptcy
- 独
- Konkursrechtsprechung
- 仏
- Sentence de la faillite
破産當事者
- 英
- Party in bankruptcy
- 独
- Konkurspartei
- 仏
- Partie de la faillite
發案
- 英
- Initiative
- 独
- Vorschlag
- 仏
- Initiative
發意
- 英
- Projection
- 独
- Entwurf
- 仏
- Projection
發達
- 英
- Development
- 独
- Entwickelung
- 仏
- Développement
發程點
- 英
- Starting point
- 独
- Anfangs-punkt der Bewegung
- 仏
- Point de partir
發表
- 英
- Publication
- 独
- Bekanntmachung
- 仏
- Publication
法廷承認説
- 英
- Theory of permission in court
- 独
- Sitzunganerkennungstheorie
- 仏
- Théorie de la permission du tribunal
法定通貨
- 英
- Legal currency
- 独
- gesetz-liches Geld
- 仏
- Monnaie légale
法律上代理
- 英
- Legal representation
- 独
- gesetzliche Stellvertretung
- 仏
- Repré-sentation légale
法律上代理人
- 英
- Legal representative
- 独
- gesetzlicher Stellvertreter
- 仏
- Représen-tant légal
法律上の貨幣
- 英
- Legal money
- 独
- Rechts-münze
- 仏
- Monnaie légale
法律上の公役
- 英
- Legal public service
- 独
- gesetzlicher Staatsdienst
- 仏
- Service public légal
法律上の相殺
- 英
- Legal set-off
- 独
- gesetz-liche Kompensation
- 仏
- Compensation
法律上の準備金
- 英
- Legal fund
- 独
- gesetz-licher Fonds
- 仏
- Fonds légal
法律上の脱民籍
- 英
- Legal loss of one's na-tionality
- 独
- gesetzlicher Verlust der Reichsangehörigkeit
- 仏
- Perte légale de la nationalité
法律上の地役
- 英
- Legal servitude
- 独
- gesetzliche Servitut
- 仏
- Servitude légale
法律上の利息
- 英
- Legal interest
- 独
- gesetz-liche Interesse
- 仏
- Intérêt légal
法律現象
- 英
- Legal phenomenon
- 独
- gesetz-liches Phänomen
- 仏
- Phénomène légale
法律に代はる命令
- 英
- Order in place of law
- 独
- Ordnung in der Stelle des Gesetzes
- 仏
- Ordre au lieu du droit
罵詈
- 英
- Abuse
- 独
- Beschimpfung
- 仏
- Abus
反杭
- 英
- Opposition
- 独
- Wiederstreit
- 仏
- Opposition
萬古不變
- 英
- Unchanged from time im-memorial
- 独
- immerwährende Unver-änderung
- 仏
- Inaltérable du tempsimmémorial
範圍
- 英
- Limit
- 独
- Umfang
- 仏
- Limite
被雇者
- 英
- Person employed
- 独
- Ange-stellte
- 仏
- Employé
不合格
- 英
- Fail
- 独
- Fehl
- 仏
- Défaut
複數關係
- 英
- Plural relation
- 独
- mehrfache Beziehung
- 仏
- Relation plurielle
復任命
- 英
- Dsssolution of the organization of the army in war-time
- 独
- Auflösung der Kriegsorganisation
- 仏
- Dissolution de l'organisation de l'armée pendant la guerre
附屬上告
- 英
- Incidental revision
- 独
- ac-cessorische Revision
- 仏
- Revision inci-dente
附屬請求
- 英
- Accessory claim
- 独
- accessor-ischer Anspruch
- 仏
- Réclamation ac-cessoire
普汎
- 英
- Universality
- 独
- Allgemein-heit
- 仏
- Universalité
文官分限令
- 英
- Ordinance of officials' ap-pointment and discipline
- 独
- Standsver-ordnung der Civilbeamten
- 仏
- Ordon-nance de la nomination et de la discipline des officiers
分遺
- 英
- Despatch
- 独
- Abschicken
- 仏
- Dépêche
文書案
- 英
- Bill
- 独
- Bill
- 仏
- Note
佛蘭西法
- 英
- French law
- 独
- französisches Recht
- 仏
- Droit français
表示欄
- 英
- Column of register
- 独
- Columne des Registers
- 仏
- Colonne de registre
辯護士職服規程
- 英
- Rule of attorny's official uniform
- 独
- Regel der Adovokatsuniform
- 仏
- Règles de l'uniforme officielle de l'avoué
謀
- 英
- Intention
- 独
- Absicht
- 仏
- Inten-tion
保守的
- 英
- Conservative
- 独
- konservativ
- 仏
- Conservatif
申込價格
- 英
- Value of application
- 独
- Antragswert
- 仏
- Valeur de l'application
申込者
- 英
- Offerer
- 独
- Antragssteller; Anbieter
- 仏
- Personne qui offre
民事上の責任
- 英
- Civil responsibility
- 独
- Civilverantwortlichkeit
- 仏
- Respons-abilité civile
無効
- 英
- Invalidity
- 独
- Nichtigkeit
- 仏
- Invalidité
明諾
- 英
- Consent by clear expression
- 独
- offenbare Einwilligung
- 仏
- Consentement par l'expression claire
免許年限
- 英
- Permitted term
- 独
- erlaubte Frist
- 仏
- Terme du permis
模造
- 英
- Imitation
- 独
- Nachahmung
- 仏
- Imitation
勞力請負人
- 英
- Contractor of labour
- 独
- Arbeitsunternehmer
- 仏
- Contractant du travail
陸軍各兵科士官候補生服制
- 英
- Dress system of military cadet of every species
- 独
- Uniformssystem der Cadetten der jeden species
- 仏
- Règles de la costume des cadets militaires
陸軍監督總監陸軍々醫總監服制
- 英
- Dress system of the military chief intendant and chief surgeon
- 独
- Uniformssystem des Generalstabaufsehers und Generalstabarztes
- 仏
- Règles de la costume du chef intend-ant et du chef chirurgien
陸軍々隊檢閲條例
- 英
- Regulation of the in-spection of military body
- 独
- Regulier-ung der Heerschau
- 仏
- Règles de l'in-spection du corps militaire
陸軍將校服制
- 英
- System of dress of military officers
- 独
- Uniformssystem der Militär-officiere
- 仏
- Reglement de la costume militaire
陸軍戰事名簿規則
- 英
- Rules of military list in wartime
- 独
- Regeln der Militärliste in Kriegszeit
- 仏
- Règles de la liste militaire pendant la guèrre
陸軍衞生會議條例
- 英
- Regulation of military sanitary council
- 独
- Regulirung vom Militärsanitätsrath
- 仏
- Règles de la conférence de la santé militaire
主我説
- 英
- Egoism
- 独
- Egoismus
- 仏
- Égoisme
自利説
- 英
- Egoism
- 独
- Egoismus
- 仏
- Égoisme
自愛説
- 英
- Egoism
- 独
- Egoismus
- 仏
- Égoisme
臨時臺灣鐵道敷設部官制
- 英
- Government Organization of temporary railway con-struction department of Formosa
- 独
- Amtsordnung des zeitweiligen Eisenbahn-baudepartements Formosas
- 仏
- Organisa-tion du bureau temporaire de la construc-tion du chemin de fer à Formose
臨時臺灣鐵道敷設部職員官等俸給令
- 英
- Or-dinance of official ranks and salary of the faculties of the temporary department of railway construction of Formosa
- 仏
- Ordonnance des degrès officiels et des salaires des officiers du bureau temporaire de la construction du chemin de fer à Formose
臨時臺灣土地調査局職員官等俸給令
- 英
- Or-dinance of official ranks and salary of faculties of the temporary inspection bureau of land in Formosa
- 仏
- Ordon-nance des degrès officiels et des salaire des officiers du bureau temporaire de l'investigation de la terre à Formose
林野整理局官制
- 英
- Government organiza-tion of the bureau of arranging of forest and field
- 独
- Amtsordnung des Einricht-ungsbureaus des Forstes und Feldes
- 仏
- Organisation du bureau de l'arrangement des bois et des champs
兩替
- 英
- Exchange
- 独
- Wechsel
- 仏
- Change
遺失物取扱規則
- 英
- Rule of treatment of thing lost
- 独
- Behandlungsregel von der verlorenen Sache
- 仏
- Règles du traite-ment de la ohose perdue
院議
- 英
- Council
- 独
- Rat
- 仏
- Concile